1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年四月三日(火曜日)
午後四時開議
出席委員
委員長 早稻田柳右エ門君
理事 内田 常雄君 理事 岡本 茂君
理事 白浜 仁吉君 理事 中村 幸八君
理事 長谷川四郎君 理事 板川 正吾君
理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君
浦野 幸男君 遠藤 三郎君
小沢 辰男君 海部 俊樹君
神田 博君 齋藤 憲三君
始関 伊平君 中垣 國男君
中川 俊思君 林 博君
村上 勇君 加藤 清二君
岡田 利春君 中嶋 英夫君
中村 重光君 伊藤卯四郎君
出席国務大臣
通商産業大臣 佐藤 榮作君
出席政府委員
通商産業事務官
(大臣官房長) 塚本 敏夫君
通商産業事務官
(通商局長) 今井 善衞君
通商産業事務官
(企業局長) 佐橋 滋君
中小企業庁長官 大堀 弘君
委員外の出席者
専 門 員 越田 清七君
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四月三日
委員北山愛郎君辞任につき、その補欠として加
藤清二君が議長の指名で委員に選任された。
三月二十九日
工業用水法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一四〇号)(予)
同月三十日
輸出保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一一八号)(参議院送付)
家庭用品品質表示法案(内閣提出第一一九号)
(参議院送付)
同月三十一日
中小企業団体の組織に関する法律の一部を改正
する法律案(内閣提出(第一一〇号)(参議院
送付)工業用水法の一部を改正する法律案(内
閣提出第一四〇号)(参議院送付)
四月二日
海外経済協力基金法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一四七号)(予)
同日公共料金及び諸物価引下げに関する請願外
二十四件(石橋政嗣君紹介)(第三二六一号)
同外二件(森本靖君紹介)(第三二六二号)
同外四十二件(猪俣浩三君紹介)(第三三五一
号)
同外三件(石橋政嗣君紹介)(第三三五二号)
同外十七件(井伊誠一君紹介)(第三三八九
号)
同(片島港君紹介)(第三四四七号)
同外一件(河野密君紹介)(第三五〇五号)
同外一件(島上善五郎君紹介)(第三五〇六
号)
同外七件(板川正吾君紹介)(第三五三六号)
同(片島港君紹介)(第三五三七号)
同(井手以誠君紹介)(第三六三〇号)
同(石川次夫君紹介)(第三六三一号)
同外一件(石村英雄君紹介)(第三六三二号)
同外十一件(板川正吾君紹介)(第三六三三
号)
同外六件(稻村隆一君紹介)(第三六三四号)
同外十三件(岡本隆一君紹介)(第三六三五
号)
同外一件(片島港君紹介)(第三六三六号)
同(川俣清音君紹介)(第三六三七号)
同(栗原俊夫君紹介)(第三六三八号)
同外二件(小林進君紹介)(第三六三九号)
同外十一件(小松幹君紹介)(第三六四〇号)
同外一件(東海林稔君紹介)(第三六四一号)
同(田口誠治君紹介)(第三六四二号)
同外三件(田邊誠君紹介)(第三六四三号)
同外一件(坪野米男君紹介)(第三六四四号)
同外一件(中村英男君紹介)(第三六四五号)
同外二件(永井勝次郎君紹介)(第三六四六
号)
同(森島守人君紹介)(第三六四七号)
同(野口忠夫君紹介)(第三六四八号)
同外一件(長谷川保君紹介)(第三六四九号)
同(日野吉夫君紹介)(第三六五〇号)
同(堀昌雄君紹介)(第三六五一号)
同(松井政吉君紹介)(第三六五二号)
同(松井誠君紹介)(第三六五三号)
同外三件(松平忠久君紹介)(第三六五四号)
同外九十件(松原喜之次君紹介)(第三六五五
号)
同(武藤山治君紹介)(第三六五六号)
同(村山喜一君紹介)(第三六五七号)
同外一件(楢崎弥之助君紹介)(第三六五八
号)
中小企業基本法制定促進に関する請願(田中榮
一君紹介)(第三二六三号)
同(池田清志君紹介)(第三三一六号)
同(井村重雄君紹介)(第三三四八号)
同外二件(坂田英一君紹介)(第三三四九号)
同(宇野宗佑君紹介)(第三三九〇号)
同(江崎真澄君紹介)(第三四四六号)
同(竹山祐太郎君紹介)(第三四七四号)
同(天野公義君紹介)(第三五二七号)
同(宇都宮徳馬君紹介)(第三五二八号)
同(大野市郎君紹介)(第三五二九号)
同(椎名悦三郎君紹介)(第三五三〇号)
同(田中正巳君紹介)(第三五三一号)
同(濱地文平君紹介)(第三五三二号)
同(坂田道太君紹介)(第三六一四号)
同(中村幸八君紹介)(第三六一五号)
発明、発見等奨励のバッジ交付に関する請願(
大野市郎君紹介)(第三三一〇号)
商店街振興法制定に関する請願外一件(岸本義
廣君紹介)(第三三一七号)
同(田中榮一君紹介)(第三三五三号)
同(田中彰治君紹介)(第三三九一号)
同(冨田健治君紹介)(第三三九二号)
同(渡邊良夫君紹介)(第三三九三号)
同(宇野宗佑君紹介)(第三四四一号)
同(黒金泰美君紹介)(第三四四二号)
同外一件(堤康次郎君紹介)(第三四
四三号)
同(西村英一君紹介)(第三四四四
号)
同(古井喜實君紹介)(第三四四五
号)
同外一件(岸本義廣君紹介)(第三四
九七号)
同外二十一件(植木庚子郎君紹介)
(第三五三三号)
同(大久保武雄君紹介)(第三五三四
号)
同(大村清一君紹介)(第三五三五
号)
物価値上げ反対に関する請願外六十
六件(猪俣浩三君紹介)(第三三五〇
号)
同外二件(中村英男君紹介)(第三六
一六号)
同(楢崎弥之助君紹介)(第三六一七
号)
同(井手以誠君紹介)(第三六一八
号)
同(稻村隆一君紹介)(第三六一九
号)
同外十四件(岡田春夫君紹介)(第三
六二〇号)
同外十件(小松幹君紹介)(第三六二
一号)
同外一件(田邊誠君紹介)(第三六二
二号)
同(二宮武夫君紹介)(第三六二三
号)
同外四件(芳賀貢君紹介)(第三六二
四号)
同外一件(堀昌雄君紹介)(第三六二
五号)
同外十一件(松原喜之次君紹介)(第
三六二六号)
同外五件(森島守人君紹介)(第三六
二七号)
同(村山喜一君紹介)(第三六二八
号)
同(山口鶴男君紹介)(第三六二九
号)
電話加入権質による零細企業者育成
資金として商工組合中央金庫等に特
別融資わく設定の請願外十六件(有
馬輝武君紹介)(第三三九四号)
同外十一件(芳賀貢君紹介)(第三三
九五号)
同外十四件(堀昌雄君紹介)(第三三
九六号)
同外四十件(横山利秋君紹介)(第三
三九七号)
石油鉱業総合政策確立に関する請願
(石田宥全君紹介)(第三四七八号)
同(松井誠君紹介)(第三四七九号)
同(石山權作君紹介)(第三五〇三
号)
同(河野密君紹介)(第三五〇四号)
霧島山ろく総合開発に関する請願
(池田清志君紹介)(第三六一〇号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
中小企業団体の組織に関する法律の
一部を改正する法律案(内閣提出第
一一〇号)(参議院送付)
輸出保険法の一部を改正する法律
案(内閣提出第一一八号)(参議院送
付)
家庭用品品質表示法案(内閣提出第
一一九号)(参議院送付)
工業用水法の一部を改正する法律
案(内閣提出第一四〇号)(参議院送
付)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X02519620403/0
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001・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の中小企業団体の組織に関する法律の一部を改正する法律案、輸出保険法の一部を改正する法律案、家庭用品品質表示法案、及び、工業用水法の一部を改正する法律案の四法案を議題とし、まず趣旨の説明を聴取することといたします。佐藤通産大臣、
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中小企業団体の組織に関する法律の一部を改正する法律案
輸出保険法の一部を改正する法律案
家庭用品品質表示法案
工業用水法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X02519620403/1
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002・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 中小企業団体の組織に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及びその概要を御説明申し上げます。
政府におきましては、わが国経済に占める中小企業の重要性にかんがみ、従来より、各般にわたる中小企業対策を遂行し、その振興に腐心してきたところであります。
しかしながら、昨今の経済情勢の推移を見ますとき、貿易自由化の進展、経済の高度成長等わが国経済の新事態に対応し、大企業との生産性格差を是正するためには、従来の諸施策を一そう充実することはもとより、中小企業の組織制度の整備強化によってその組織化を一段と促進し、その経営の合理化を強力に推進する必要があるのであります。
従来、わが国の中小企業の組織制度といたしましては、中小企業等協同組合と商工組合があるのでありますが、協同組合は、中小企業者が相互扶助精神に基づき、共同経済事業を営むことによって、大規模経営の有利性を中小企業に導入するものであり、また、商工組合は、不況克服の調整事業のみを行なうことをその目的とした組織でありまして、いずれも当該業種に属する中小企業者があまねくその営む事業の改善発達をはかるための強固な団結を目的とするいわゆる同業組合的な組織としては、必ずしも十分ではなかったのであります。
従って、このような中小企業組織における不備を補うべく、現在の商工組合制度を拡充強化して、中小企業者が、その自主的組織を通じて総合的見地からその営む事業の指導調査等を行ない、業界の実態の把握、内外の経済情勢に即応する業界の振興策の樹立をはかり、必要ある場合には、生産技術の調整、規格の統一等経営の合理化のための調整事業を実施できることとし、さらに必要ある場合には、不況克服のための調整事業等をも行ない得る、いわば業種別の総合的中小企業組織制度を確立することが急務であると考えまして、この法律を提出することとした次第であります。
次に、本改正案の内容につきまして、その概略を申し上げます。
第一は、商工組合の設立について不況事態の存在を要しないこととしたことであります。
これは、商工組合を単に不況克服のための調整事業のみを行なう組織から、前に申し上げましたような中小企業の改善発達をはかる事業を行なう同業組合的組織に改めることに伴う改正でございます。
第二は、商工組合の事業内容を拡充して経営の合理化を遂行するための調整事業を新たに加えたことであります。
これは、中小企業の経営の合理化をはかるためには、商工組合が単に不況克服のための調整事業を行なうのみならず、むしろ積極的に経営の合理化のための調整事業を行ない、その事業の改善をはかる必要があるという趣旨に基づくものであります。
なお、この調整事業のうち、生産物の規格にかかわるものにつきましては、国民経済上必要ある場合には、事業活動規制命令を発動し得ることとしております。
第三は、事業活動規制命令違反者に対する制裁を強化したことであります。
これは、従来、事業活動規制命令の違反者に対しては、単に罰金を課するのみでありましたが、中小企業全般の経済的地位の向上のためには、事業活動規制命令の実効を確保する必要がありますので、主務大臣による事業停止の措置を加えることとしたものであります。
以上のほか、教育情報事業の拡充、商工組合の地域の明確化、輸出貨物にかかわる調整事業の特例等につきまして、中小企業の改善発達に必要な措置を規定しております。
何とぞ慎重御審議の上、御賛同下さいますようお願い申し上げます。
輸出保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
わが国経済の高度成長を安定的に維持してゆく上に輸出貿易の果たす役割が非常に重要であることは申すまでもないところでありますが、他方、貿易自由化の進展等により国際間の輸出競争はいよいよ激化の一途をたどっている現状でありまして、輸出貿易の一そうの振興が特に緊要であると存ずる次第であります。この意味におきまして、輸出振興策の一環としての輸出保険制度の持つ意義は今後一そう高まるものと予想されるのであります。
わが国の輸出保険制度は、現在海外諸国の制度に比してさして遜色のないものにまで発展しておりますが、遺憾ながら輸出契約が成立してから貨物の船積みまでに契約の相手方が破産してしまった場合等、いわゆる船積み前の信用危険を担保するまでには至っておらなかったのであります。従いまして、この船積み前の信用危険を担保し、輸出環境の改善をはかることにより、輸出の振興に資することを目的としてこの法律案を提案した次第であります。次に、改正案の概要を説明いたします。改正点は、普通輸出保険の担保危険の範囲を拡大し、次の二つの事由によって輸出ができなくなったためにこうむった損失をも填補することとしたことであります。その一は、輸出契約の相手方が外国の政府、地方公共団体、公社、公団等の公的機関である場合におきまして、相手方が、たとえば予算不足等を理由として、契約を一方的に破棄したこと、あるいは、たとえば当初の契約内容の変更を申し入れ、かつこれに伴う費用を輸出者に負担させるような不利益な条件を提示して譲らないといったように、相手方が明らかに不当であると認められる事情によって輸出者が輸出契約を解除したことであります。
いま一つは、輸出契約の相手方が破産したことであります。広義の信用危険としましては、相手方の一般的な債務不履行も含まれるわけでありますが、これらの危険まで担保いたしますためには、海外の輸入業者の信用調査の完備が前提となるのでありまして、わが国においても鋭意充実に努めてはおりますが、いまだ十分とは申せない現状でありますので、さしあたり破産に限定して担保することとしたものであります。
この改正によりまして、輸出者が従来よりもより強い立場で輸出を行なうことができ、ひいては輸出の増大に資することが期待されますとともに、限られた範囲ではありますが、船積み前の信用危険担保という新しい分野に踏み出した点に大きな意義があるのでありまして、将来はさらに一そうの充実をはかっていきたいと存じております。以上が、この法律の提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同下さいますようお願い申し上げます。
家庭用品品質表示法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
今日、いわゆる技術革新を背景にいたしまして、新しい商品が次々と市場に現われており、このために一般消費者が商品選択に際して的確な判断を下すことが困難となりつつあることは、御承知の通りであります。
かかる事態の改善をはかり、一般消費者の利益を保護いたしますためには、商品にその品質を適正に表示せしめることが必要不可欠と存じます。すでに繊維製品につきましては、このような見地から、昭和三十年に繊維製品品質表示法が制定されておりますが、最近の情勢にかんがみますと、合成樹脂加工品、電気機械器具、雑貨工業品のような家庭用品につきましても、同様な措置を講ずる必要があり、さらに繊維製品品質表示法につきましても、その運用にあたって得ました経験に照らしますと、なお改善すべき点があると存ぜられますので、その不備を補い、かつ、現状に即した規制を加えることとして、同法を廃止し、新たにこの法律を提案することとした次第であります。次に、この法律案の主要点につきまして、御説明申し上げます。
第一は、正しく、かつ、懇切な表示を確保いたしますために、家庭用品につきまして、品質等の表示の標準を定めることであります。この表示の標準では、成分、性能、用途、貯法その他品質に関するいかなる事項をどのように表示すべきかという基準を一般に対して明らかにすることとしております。
第二は、この表示の標準に従わない製造業者、販売業者等に対しまして、これに従うべきことを指示することであります。これは、品質の表示というような問題につきましては、罰則による強制に至る前の段階で、いわば誘導ないし指導という形で問題の解決をはかるのが妥当であろうという趣旨に基づくものであります。
第三は、こうした誘導ないし指導によっては問題の解決ができない場合には、表示に関しまして、命令ができることであります。
その一つは、表示をいたします場合には、表示の標準に定められましたどのように表示をすべきかという基準に従うべき旨の命令ができることであります。この段階では、表示を強制するものではなく、表示をするかどうかは製造業者、販売業者等の意思にまかされておりますが、表示をする場合には、表示の標準に定められました一定の基準に必ず従うべきこととなるわけであります。
いま一つは、生活必需品たる家庭用品につきましては、特に一般消費者の利益を保護する必要性が高いことにかんがみまして、表示の標準で定めました表示すべき事項を表示したものでなければ販売できない旨の命令ができることであります。この場合、製造業者、販売業者等の行なう自主的な表示にゆだねておいては、適正な表示が期待できないときは、通商産業大臣またはその認可を受けた検査機関等が表示をしたものでなければ販売できない旨の命令もできることとしております。
これらの命令は、製造業者、販売業者等に負担が加わることにかんがみまして、その発動要件を厳格にするとともに、運用上も特に慎重な配慮を加えることとしております。
第四に、以上の表示の標準を定めたり、表示に関する命令をいたします場合には、その誤りなきを期するために、通商産業省に、家庭用品品質表示審議会を設けまして、これに諮問しなければならないこととしております。
その他、家庭用品の品質の適正な表示を確保いたしますために、一般消費者からの苦情の申出制度を設けるほか、所要の規定を整備いたしております。
何とぞ慎重に御審議の上、御賛同下さいますようお願い申し上げます。
工業用水法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
近年における工業生産の発展に伴い、大工業地帯における工業用地下水のくみ上げ量が増加し、それがその地帯の地盤の沈下等の種々の、障害を誘発していることは、あらためて申し上げる必要もないことであります。地下水は、それ自体としては、良質、低温、低廉という好条件を備えたものであり、自然的に地下水脈に補給されている水量の限度内において適正に地下水を採取することは、地下水資源の有効利用という見地からは、むしろ奨励すべき事柄でありますが、工業の発展に伴い、ややもすれば地下水の過度くみ上げを招くこととなりやすいこともまた事実であります。
現に、東京、大阪等の大都市においては、工業用地下水及び建築物用地下水の過度くみ上げによって、異常な地盤沈下を招来しているのであります。
政府といたしましては、つとにかかる事態に対する対策の必要性を認め、昭和三十一年工業用水法を制定して地盤沈下地帯等における新規の工業用地下水のくみ上げを規制するとともに、既存の井戸についても工業用水道を重点的に整備することによって地下水から工業用水道への水源転換を促進してきたのであります。
しかしながら、昨年阪神地方を襲った第二室戸台風による甚大な被害の発生を契機として、建築物用地下水の採取の規制に関する立法措置と工業用水法による規制の強化を求める声が強く起こってきたのであります。
特に工業用水法については、既設井戸をそのまま存続することを許す現行法制は、地盤沈下の防止対策としては必ずしも万全ではないとの主張が広く唱えられるに至ったのであります。
国民の生命財産の保護のためには、地盤の沈下の防止を最重点に取り上げなければならないことはいうまでもありませんが、同時に井戸のくみ上げ規制の強化は、国民の権利に対する重大な制限となるのでありまして、政府といたしましては、この点に関し慎重な検討を続けて参ったのでありますが、地盤の沈下の防止を一そう効果的ならしめるためには、現行工業用水法を一部改正する必要があるとの結論に達しましたので、このたび法律案を提案することといたしたのであります。
この法律案の主たる内容は、次の通りであります。
第一に、現行工業用水法では地盤沈下の防止は、いわば副次的な目的とされているのでありますが、これを工業の健全な発達と並べて主目的として規定することとしたのであります。
第二に、許可を受けなければならない井戸の範囲を拡大したのであります。現行工業用水法では揚水機の吐出口の断面積が二十一平方センチメートル以下のものは規制の対象とならなかったのでありますが、吐出口の断面積が六平方センチメートルをこえるものは許可を受けなければ、新規に使用できないことといたしました。
第三に、既設の井戸に対する規制を強化し、一定期間経過後は、技術上の基準に適合しない既設の井戸は、その使用を原則として禁止することとしたのであります。この一定の期間すなわち既設井戸からの転換の時代は、代替水源としての工業用水道が給水を開始してから一年を経過したときとし、必要最小限の転換準備期間を置くことによって企業の活動を不当に圧迫しないよう配慮を加えております。
第四に、許可の技術上の基準が改正された結果、改正後の新しい許可基準こ適合しなくなった井戸についても一定期間経過後は、原則としてその使用を禁止することといたしました。その一定の期間については、前項の既設井戸の転換の場合と同様であります。
第五に、許可を受けた井戸であっても、予測できなかった特別の事情が発生し、緊急の必要があると認める場合には、通商産業大臣は井戸の使用者に対し地下水の採取を制限することができることとしたのであります。
第六に、以上に述べた規制の強化措置とあわせて、工業用水道への転換促進の措置として、転換のため必要な施設の設置に対する資金のあっせん、技術上の助言等の援助に努めることとしたのであります。
以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同下さいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X02519620403/2
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003・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
四法案についての質疑は、後日に譲ることといたします。
次会は明日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X02519620403/3
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