1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十七年四月十九日(木曜日)
午後一時二十四分開議
出席委員
委員長 早稻田柳右エ門君
理事 内田 常雄君 理事 岡本 茂君
理事 白浜 仁吉君 理事 中村 幸八君
理事 板川 正吾君 理事 田中 武夫君
浦野 幸男君 小沢 辰男君
海部 俊樹君 齋藤 憲三君
始関 伊平君 首藤 新八君
田中 榮一君 中垣 國男君
中川 俊思君 原田 憲君
山手 滿男君 久保田 豊君
小林 ちづ君 中村 重光君
西村 力弥君 伊藤卯四郎君
出席政府委員
総理府総務長官 小平 久雄君
公正取引委員会
委員長 佐藤 基君
総理府事務官
(公正取引委員
会事務局長) 小沼 亨君
委員外の出席者
議 員 宮澤 胤勇君
議 員 岡本 茂君
議 員 田中 武夫君
議 員 首藤 新八君
参議院議員 永末 英一君
専 門 員 越田 清七君
—————————————
四月十八日
委員始関伊平君辞任につき、その補欠として佐
伯宗義君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員佐伯宗義君辞任につき、その補欠として始
関伊平君が議長の指名で委員に選任された。
—————————————
四月十八日
商店街振興法制定に関する請願(高橋清一郎君
外一名紹介)(第四一四四号)
同外一件(濱野清吾君紹介)(第四一八一号)
同(金子一平君紹介)(第四三五一号)
同外十八件(薩摩雄次君紹介)(第四三五二
号)
同(中野四郎君紹介)(第四三五三号)
同外十九件(堂森芳夫君紹介)(第四四八〇
号)
同(木村守江君紹介)(第四五〇五号)
同(鈴木正吾君紹介)(第四五〇六号)
同(廣瀬正雄君紹介)(第四五〇七号)
同外二件(大野市郎君紹介)(第四五〇八号)
同(椎熊三郎君紹介)(第四五〇九号)
同(荒舩清十郎君紹介)(第四六二七号)
同(小山長規君紹介)(第四六二八号)
同(島村一郎君紹介)(第四六二九号)
同(保岡武久君紹介)(第四六三〇号)
物価値上げ反対等に関する請願外十三件(加藤
清二君紹介)(第四一四五号)
公共料金等諸物価値上げ阻止に関する請願外八
十一件(加藤清二君紹介)(第四一四六号)
物価値上げ反対に関する請願外十八件(久保田
鶴松君紹介)(第四一四七号)
同(山崎始男君紹介)(第四一四八号)
同外二百五十九件(鈴木茂三郎君紹介)(第四
二一九号)
同外一件(田中武夫君紹介)(第四二二〇号)
同外一件(森島守人君紹介)(第四二二一号)
同外一件(石橋政嗣君紹介)(第四三五六号)
同外二件(永井勝次郎君紹介)(第四三五七
号)
同(吉村吉雄君紹介)(第四三五八号)
同外一件(石橋政嗣君紹介)(第四四〇五号)
同(岡良一君紹介)(第四四〇六号)
同外八件(中村重光君紹介)(第四四〇七号)
同(安井吉典君紹介)(第四四三三号)
同外四件(石橋政嗣君紹介)(第四四七九号)
同(石橋政嗣君紹介)(第四六三一号)
同(五島虎雄君紹介)(第四六三二号)
同外一件(帆足計君紹介)(第四六三三号)
同外六十四件(渡辺惣蔵君紹介)(第四六三四
号)
公共料金及び諸物価引下げに関する請願外十二
件(安宅常彦君紹介)(第四一四九号)
同外五件(石橋政嗣君紹介)(第四一五〇号)
同外五十八件(加藤清二君紹介)(第四一五一
号)
同外百五十九件(川村継義君紹介)(第四一五
二号)
同外一件(久保三郎君紹介)(第四一五三号)
同(久保田鶴松君紹介)(第四一五四号)
同外三件(兒玉末男君紹介)(第四一五五号)
同外六件(下平正一君紹介)(第四一五六号)
同外百三件(中村高一君紹介)(第四一五七
号)
同(畑和君紹介)(第四一五八号)
同外十一件(原彪君紹介)(第四一五九号)
同外百二十五件(藤原豊次郎君紹介)(第四一
六〇号)
同外四十九件(山口丈太郎君紹介)(第四一六
一号)
同外一件(山崎始男君紹介)(第四一六二号)
同外百三十六件(山田長司君紹介)(第四一六
三号)
同外一件(淡谷悠藏君紹介)(第四二二二号)
同(井手以誠君紹介)(第四二二三号)
同外百六十七件(猪俣浩三君紹介)(第四二二
四号)
同外六件(大原亨君紹介)(第四二二五号)
同(兒玉末男君紹介)(第四二二六号)
同外一件(北山愛郎君紹介)(第四二二七号)
同外百十件(佐野憲治君紹介)(第四二二八
号)
同(島上善五郎君紹介)(第四二二九号)
同(島本虎三君紹介)(第四二三〇号)
同外四件(田中武夫君紹介)(第四二三一号)
同外二件(坪野米男君紹介)(第四二三二号)
同外一件(戸叶里子君紹介)(第四二三三号)
同外百七十四件(永井勝次郎君紹介)(第四二
三四号)
同外二件(芳賀貢君紹介)(第四二三五号)
同(畑和君紹介)(第四二三六号)
同(原茂君紹介)(第四二三七号)
同外一件(松本七郎君紹介)(第四二三八号)
同外八十七件(野原覺君紹介)(第四二三九
号)
同(森島守人君紹介)(第四二四〇号)
同外二件(森本靖君紹介)(第四二四一号)
同外六十三件(八木一男君紹介)(第四二四二
号)
同(島本虎三君紹介)(第四二八三号)
同外百二十三件(飛鳥田一雄君紹介)(第四三
六〇号)
同(片島港君紹介)(第四三六一号)
同外四十九件(佐野憲治君紹介)(第四三六二
号)
同外三件(中村英男君紹介)(第四三六三号)
同外百七十七件(中村重光君紹介)(第四四〇
八号)
同外三件(井伊誠一君紹介)(第四四〇九号)
同外百十六件(高田富之君紹介)(第四四一〇
号)
同(石川次夫君紹介)(第四四三二号)
同外二十四件(安井吉典君紹介)(第四四八一
号)
同外百六十六件(五島虎雄君紹介)(第四五一
〇号)
同外三件(松平忠久君紹介)(第四五一一号)
同外一件(石田宥全君紹介)(第四五一二号)
同外百三十二件(井岡大治君紹介)(第四六三
五号)
同外六件(下平正一君紹介)(第四六三六号)
同外一件(帆足計君紹介)(第四六三七号)
同外二十一件(八百板正君紹介)(第四六三八
号)
同外四百八件(渡辺惣蔵君紹介)(第四六三九
号)
中小企業基本法制定促進に関する請願(田中彰
治君紹介)(第四二一八号)
同(瀬戸山三男君紹介)(第四二八一号)
同(野田武夫君紹介)(第四三五四号)
同(櫻内義雄君紹介)(第四四〇三号)
同(濱野清吾君紹介)(第四四〇四号)
低開発地域工業開発促進法に基づく都城地区の
開発地区指定に関する請願(瀬戸山三男君紹
介)(第四二八〇号)
国民生活安定のための物価政策等に関する請願
外三十二件(五島虎雄君紹介)(第四二八二
号)
同外十七件(五島虎雄君紹介)(第四三五九
号)
同外十件(五島虎雄君紹介)(第四四〇二号)
金属鉱業保護政策確立に関する請願外一件(多
賀谷真稔君紹介)(第四三五五号)
日朝貿易の正常化に関する請願(田中彰治君紹
介)(第四五九〇号)
石油業法案反対に関する請願外一件(太田一夫
君紹介)(第四六二六号)
は本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
不当景品類及び不当表示防止法案(内閣提出第
十三七号)
商店街における事業者等の組織に関する法律案
(首藤新八君外四十四名提出、衆法第三九号)
中小企業基本法案(松平忠久君外二十六名提出、
衆法第二四号)
中小企業組織法案(松平忠久君外二十六名提出、
衆法第二五号)
中小企業基本法案(宮澤胤勇君外二百六十二名
提出、衆法第四二号)
中小企業基本法案(永末英一君提出、参法第一
〇号)(予)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/0
-
001・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 これより会議を開きます。
この際、参考人の出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
ただいま本委員会において審査中の内閣提出、北海道地下資源開発株式会社法の一部を改正する法律案について、参考人の出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/1
-
002・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
なお、参考人の人選、出頭日時等につきましては、委員長に御一任を願います。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/2
-
003・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 次に、去る十七日に本委員会に付託になりました宮澤胤勇君外二百六十二名提出の中小企業基本法案、松平忠久君外二十六名提出の中小企業基本法案、中小企業組織法案及び同日予備審査のため付託になりました永末英一君提出の中小企業基本法案の四案を議題といたします。
—————————————
中小企業基本法案(宮澤胤勇君外二百六十二名提出、衆法第四二号)
中小企業基本法案(松平忠久君外二十六名提出、衆法第二四号)
中小企業組織法案
中小企業基本法案(永末英一君提出、参法第一〇号)
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/3
-
004・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 まず提出者より順次趣旨の説明を聴取いたします。岡本茂君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/4
-
005・岡本茂
○岡本(茂)議員 中小企業基本法案につきまして、その提案の理由及びその概要を御説明申し上げます。
わが国の中小企業者が、鉱工業生産の拡大、商品流通の円滑化、海外市場の拡大等を通じ、国民経済の発展と国民生活の安定とに寄与してきた事情については、今ここにあらためて申し上げるまでもなく、すでに各位の十二分に御承知のことと存じます。
私は、このような中小企業者が今後も自由にして公正な競争原理を前提とする近代自由経済の中にあって変わることなくその重要性を維持し、かつ施策のよろしきを得るときは、旧に倍する成長を記録することもさして難事ではないと確信するものであります。
しかるに、わが国の中小企業者の多くは、その成長過程において諸般の事情から資本蓄積は進まず、経営基盤は弱く、機械設備等の老朽化にもおおいがたいものがあるのであります。このような中小企業者をこのままに放置するときは、中小企業者と大規模事業者との間にある生産性と所得の格差は、今日以上に拡大するばかりでなく、わが国経済の高度成長計画にも多大の支障を来たすものと深く憂慮いたしておる次第であります。いわゆる生産性格差の存在に代表される中小企業問題をこの際早急に解決することは、まさに公共の福祉を増進し、国民経済の健全な発展を招来するために、きわめて重要な課題であると信ずるゆえんであります。
このため、第一には、中小企業者の一そうの自覚と創意工夫を期待するとともに、中小企業者の経済的存立条件の不利を是正し、その事業の体質を改善して、その経済活動を促進すること。
第二には、自由にして公正な競争原理を確認するとともに、大規模事業者との間における経済活動を調整して公正な経済秩序の確立に努め、中小企業者の事業の安定と発展を期すること、この二つの課題を国民経済的立場に立って解決するための基本的方策を示すものとして、ここに中小企業基本法案を提案した次第であります。
次に本基本法案の内容につきまして、その概略を御説明申し上げます。
第一は、本法案の対象となる中小企業者の範囲を製造業等にあっては、資本金五千万円以下、または従業員数三百人以下、商業サービス業にあっては従業員数五十人以下としたことであります。
これは現行制度の多くが中小企業の定義を、製造業については、資本金は一千万円以下、商業サービス業については従業員数を三十人以下としている点を、今日の実態に合致するよう改め、諸般の施策が一そう浸透するよう意図したものであります。
第二は、生産及び取引について大規模事業者との間に、事業分野の調整その他必要な調整措置を講ずるよう規定したことであります。これは、現行憲法の許容する範囲内において、事業分野等の調整を行ない、中小企業者の事業の安定と振興をはかるよう意図したものであります。
第三は、中小企業者の事業経営の近代化を推進し、生産性向上のための施策を講ずるよう規定したことであります。これは、中小企業者にあっては、生産性の向上が格差是正の最捷径であり、このため設備の更新、経営の改善、技術の向上等、積極的に事業の体質改善を促進することが必要であるという趣旨に基づくものであります。
第四は、中小企業者の組織の拡充に必要な助成その他の措置を講ずるとともに、国の中小企業に関する施策も組織に関する施策を妨げるものであってはならないと規定したことであります。これは、経済事業や調整事業における中小企業者による組織の重要性にかんがみ、その拡充をはかり、もって中小企業者の事業の安定と発展を招来するよう意図したものであります。
第五は、系列関係において中小企業者の自主性を失わしめず、下請関係においてその公正な利益を保護するため、必要な措置を講ずるよう規定したことであります。これは、中小企業者の事業の多くが大規模事業者と系列ないしは下請関係に立って存在し、しかも親事業者の経済的優位性のゆえに、不当に従属的支配下に置かれており、このことが中小企業者の健全な発展を著しく阻害している実情にかんがみ、その適正な関係の確立をはかるよう意図したものであります。
第六は、特に小売商業について、大規模事業者等との間に事業調整を講ずる道を開いたことであります。これは、わが国の中小企業者のなかで最も数が多く、かつ零細である小売商業者の正常な事業活動が、往々にして、大規模事業者または協同組合等の進出によって阻害されている実情を矯正するための手段として特に規定したものであります。
第七は、官公需の発注につき、その一定割合を中小企業者に確保するよう必要な措置を講ずるよう規定したことであります。これは、米国等の先例に範をとり、中小企業者に対する需要を拡大して、その事業活動を促進するための手段として規定したものであります。
第八は、金融の円滑化をはかるため、中小企業者のための専門の金融機関を育成強化すること、財政投融資の充実に努めること、中小企業者に対する貸付条件の適正化をはかること等の諸措置を講ずるよう規定したことであります。これは、中小企業者の設備の更新、健全な商業活動等に必要とされる資金を潤沢に、かつ適正な貸付条件で確保するための手段として規定したものであります。
第九は、国税、地方税を通じて、中小企業者の税負担を適正にし、その税負担が大規模事業者等に比し、不均衡となることのないよう必要な施策を講ずるよう規定したことであります。これは、資本蓄積の弱い中小企業者に対し、極力税負担を軽減し、その事業経営の合理化と安定をはかるという趣旨に基づくものであります。
第十は、中小企業者に対し、資本調達の円滑化をはかるため必要な施策を講ずるよう規定したことであります。これは、中小企業者の資本の増額、社債の発行を容易ならしめる措置を講じ、所要資金の確保に資するとともに、その資本構成を是正して、中小企業者の事業の安定と成長をはかることを意図するものであります。
第十一は、小規模事業者に対しては、諸般の施策を講ずるにあたり、特別の考慮を払うよう規定したことであります。これは、製造業等にあっては、従業員数二十人以下、商業サービス業にあっては五人以下程度の事業者については、一般の中小企業者と異なり、特に手厚い施策を必要とするのが多いことから、かような規定を置くこととしたものであります。
第十二は、経済事情の変化により存立の困難となった中小企業者の事業について、他の事業または職業への転換を容易にするため、必要な措置を講ずるよう規定したことであります。これは、経済事情の変化等から他の業種または他の職業へ転換することを希望する中小企業者及びその従業員について助成の措置を講じようとの趣旨であります。
以上のほか、政府に対しては、中小企業者の実態を常時適確に把握するため、総合基本調査及び動態調査を実施し、また中小企業施策の効率的実施を確保するため、国会に対し、中小企業者の動向、施策の概要等に関する年次報告を実施するよう義務づける規定を設けた次第であります。
なお中小企業に関する重要施策を審議し、かつ意見を具申するため、総理府に中小企業審議会を設置することにいたしました。
本案については、わが党は慎重に調査立案をいたしましたので、中小企業者現下の実情にかんがみ、取り急ぎ御審議御賛成下さいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/5
-
006・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 次に社会党案について、田中武夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/6
-
007・田中武夫
○田中(武)議員 ただいま議題となりました中小企業基本法案並びに中小企業組織法案の二法案について、日本社会党を代表して、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
今さら今申し上げるまでもなく、今日、中小企業は、わが国経済の中で圧倒的多数を占ており、かつまた生産、流通等の面においてもきわめて重要な役割を果しているのであります。にもかかわらず、中小企業と大企業との間に大きな格差が存在し、中小企業の経営は常に不安定な、困窮した状態にあります。景気が悪くなれば、まっ先にその被害を受け、景気がよくなっても、なかなか中小企業にその余波が届かない。これを言いかえますならば、大企業は中小企業を踏み台にし、景気調整のクッションに利用しているといっても過言ではないのであります。
この点が欧米の資本主義諸国と非常に趣を異にしているところであります。欧米の資本主義諸国におきましては、わが国に見られるような大企業と中小企業との間の格差は、労働者の賃金あるいはまた付加価値額の面を見ましても、ほとんど存在しないのであります。従いまして、わが国におけるごとく、中小企業問題が社会問題にまで発展しているような事例はほとんど見当たりません。
こうした現状の中で、政府は依然として大企業に有利な財政、金融政策を推進し、また独禁法を有名無実のものとして、不当な独占支配を黙認しているのであります。さらに最近は、自由化を口実に大企業による吸収、合併並びに系列支配を容認し、中小企業を弱肉強食の冷酷な経済競争の中にはうり出したままであります。このように政府の中小企業対策は、場当たりの措置に終始して、一時を糊塗してきたにすぎません。一貫した方針が今日に至るまで一度も示されたことがないのであります。このため、中小企業者は今日、資金難、求人難等、きわめて窮迫した経営に直面しているだけではなく、明日の経営、中小企業の将来に大きな不安を抱かざるを得ない状態に追い詰められているのであります。
そこで、中小企業をこのような窮状から救い出し、大企業との間の格差を是正して、安定した、将来に希望の持てる近代的な経営に引き上げるには、どうしてもこの際、抜本的な基本政策を打ち立てる必要があるのであります。そして一元化された強力な行政機関のもとで、かかる基本政策が推進されること、今日ほど緊急を要することはないのであります。
これが、本法律案を提出する理由であります。
次に、そのおもなる内容を御説明申し上げます。
まず初めに、本案は中小企業政策の基本となるべき方針について明確に提示しているのであります。すなわち、基本方針として次の五つの目標を打ち立てております。その一つは、いわゆる国民経済の二重構造を解消して、経済の民主化を実現すること。その二つは、中小企業者の自主的な協同化を促進すること。その三つは、個々の中小企業者についてもその維持発展のため、直接必要な指導助成を活発に行なうこと。その四つは、中小企業とともにその労働者の所得増大をはかり、あわせて近代的な労使関係の確立に努めること。最後に、中小企業者、労働者、農民相互間の調和を絶えず考慮しつつ中小企業政策を推進すること。以上のような五つの基本方針に基づいて、以下具体的な政策、機構の内容に及んでいるのであります。
まず第一は、本案に規定される抜本的な総合政策を実施するには、従来の中小企業庁ではとうてい不可能でありますので、新たに中小企業省を設置し、強力に中小企業者の利益を擁護、推進していく考えであります。なお、中小企業省の詳細な規定については、本案と三位一体のものとして同時に提出しております中小企業省設置法案を参照していただきたいと存じます。
第二は、中小企業者を定義するにあたって特に零細な勤労事業者を分離し、政策の恩恵が勤労事業者にも十分に浸透するように考慮しているのであります。すなわち、前者については常時使用する従業員の数が三百人以下であって、かつ資本の額または出資の総額が三千万円以下のもの、ただし商業、サービス業では三十人以下のものとし、勤労事業者については、おおむね十人以下かつ百万円以下、ただし商業・サービス業ではおおむね三人以下としているのであります。もっとも鉱業など特定業種については、別途法令で、中小企業の範囲を定め得ることとしております。
第三は中小企業の組織についてであります。中小企業の経営を近代化し、発展させて、大企業と対等の地位に引き上げるには、協同化が必要であることは、今さら言うまでもありません。本案はこの協同化にあたって、自主的協同を原則として、あくまで強制や統制の考えを排除しているのであります。すなわち、加入、脱退は自由で、組合員の権利があくまで平等な協同組合を組織の基本としております。そして、協同組合の設立を簡易にし、これに国が積極的な援助を与えることによって、協同組合に入った方が中小企業者にとって有利になるような条件を作り上げていくべきだとしているのであります。これまでのように法律に基づいて組合を作っても、何ら見るべき助成がないために、魅力がなくなり、せっかく目ざめた協同精神を上からぶちこわしてしまうといったようなあり方を、この際根本的に是正してかからねばなりません。
さらに、中小企業者がその業種業態に応じて何らかの協同組合に組織されるように、組織の種類として、事業協同協同組合、勤労事業協同組合、下請協同組合、商店街協同組合、環境衛生協同組合、共済協同組合、信用協同組合、企業協同組合、並びにそれらの組合の連合会の九つを考えております。これらの協同組合は互いに協同して経済事業を営むほか、調整事業や、大企業との団体交渉もあわせ行なうことができるように規定してあります。なお従来の中小企業者の組織に関連する諸法律につきましては、この際、中小企業組織法案に一本化して、本案並びに中小企業省設置法案と三位一体のものとして本国会に同時に提出しておりますので、具体的な内容の説明につきましては、中小企業組織法案に譲りたいと存じます。
第四は、具体的な中小企業政策の内容についてであります。まず、産業政策全般に及ぶものとしては、中小企業に適切な事業分野を確保していくことを考えております。今日、大企業が中小企業の事業分野に進出して、中小企業の存立を脅かしている現状を是正するため、中小企業に適切と認められる事業分野に、大企業がむやみに進出することを規制しようというものであります。また国、地方公共団体、公共企業体などが外部に発注する場合にも、現在の大企業偏重を改め、中小企業に一定割合以上を優先発注するよう義務づけることといたしているのであります。
次に、経営近代化のための政策といたしまして、機械化の推進、経営の専門化、規模の適正化、設備の更新、共同施設の新増設、経営管理の改善、技能者訓練の徹底、試験研究機関の拡充などに努め、それらに必要な助成を積極的に行なう考えであります。中小企業の経営近代化のためには、同時にまた、直接中小企業者の相談に応じたり、診断、指導などの諸活動を積極的に行なうことが特に必要とされておりますので、そのための機関として中小企業センターを全国的に配置する方針であります。
また、中小企業の貿易を振興するために、海外市場の調査、開拓の機関を整備し、かつ貿易金融の円滑化をはかり、さらには中小企業が海外において行なう技術協力その他経済協力活動に対しても、指導と援助の手を差し伸べて参る考えであります。
具体的な政策内容の第二といたしましては、産業別にきめのこまかい振興政策をとるべきことを提案しているのであります。すなわち、工業にあっては、大企業への従属性を脱却して公正対等な関係を打ち立て、特に下請中小企業者に対する大企業からの不当な圧迫を排除すべきことを強調しているのであります。鉱業につきましては、地下資源開発事業の特殊性にかんがみ、特に中小企業の行なう探鉱、採鉱に対する助成の必要を認めているのであります。商業については、商品の流通秩序の維持、一般小売商業者の利益擁護の立場から、大企業との間の取引条件の改善、メーカー、卸売業による直接小売行為の制限、百貨店業者の進出抑制をはかるとともに、他方一般小売商業者みずからの経営改善、近代化を促進し、また横のデパートとしての商店街の共同事業活動に積極的な援助を行なわんとするものであります。本案は特に、従来の政府の中小企業施策が工業に偏していた傾向を是正し、商業部門についても明確な政策を打ち出しているのであります。
第三は、零細な勤労事業者に対する政策についてであります。初めにも触れましたように、零細な勤労事業者に対する施策は、従来中小企業政策一般の陰に隠れて、全く看過されてきました。そこで、この際、勤労事業者に対する施策は、中小企業政策一般から切り離して、別ワクのものとして、特に十分な政策的配慮を払うべきであると考えるものであります。すなわち、本来の経済政策に社会政策を加味していくべきであります。このため、協同組織化への特別の援助、無担保融資の増大、勤労所得控除制並びに家族労働者の給与所得制の確立、改善事業主負担分の軽減措置を伴う社会保険の強制適用、そのほか経理、技術の指導助成などを行なっていく方針であります。こうした政策によって初めて零細な勤労事業の体質改善が可能だと信ずるものであります。
第四は、金融、税制政策であります。まず、金融政策につきましては、金融機関の融資総額の一定割合以上を、常に中小企業者に確保することとし、また金融機関が一企業に一定割合以上の集中融資を行なうことを禁止しているのであります。さらに信用補完制度を拡充、強化するとともに、災害、景気変動等不慮の事態から中小企業者を守るために、中小企業緊急救済資金を設置することにいたしておるのであります。
次に、税制につきましては、協同組合に対する法人税の軽減税率の適用、設備近代化促進のための特別償却制、積立資金に対する税の特別措置などを実施する方針であります。なお、勤労事業者に対する税措置はさきに述べた通りであります。
第五は、労働福祉及び社会保障政策についてであります。中小企業の前近代的な経営のあり方は、その労使関係に顕著に現われております。これを是正する一助としても、また最近の求人難を打開してゆくためにも、中小企業に働く労働者の福祉厚生を真剣に考慮して参らなければなりません。このため、特に労働者の福祉に関する諸施設の建設並びに事業活動に対しまして、国及び地方公共団体に積極的な指導、助成の義務を課しているのであります。なお社会保障政策につきましては、勤労事業者に対する施策のところで述べた通りであります。
以上が中小企業政策の具体的な内容であります。
次は、中小企業と大企業等との間の紛争処理の問題についてであります。今日、中小企業は大企業による一方的な、不公正な取引に対し、全く泣き寝入りの状態であります。これを改めて、正常な経済秩序を確立し、中小企業に公正な機会、平等な立場を保障してゆくには、どうしても中小企業と大企業との間の紛争を調整する機関の設置が必要であります。その意味におきまして、労働者に労働委員会があるように、中小企業にも中小企業調整委員会を中央並びに地方に、新たに設けようというのであります。調整委員は中小企業者、大企業者、労働者、消費者等をもって公正にあて、中小企業と大企業等との間に生ずる紛争について、あっせん、調停、裁定を行なうものであります。
最後に、実態に即した適切な中小企業政策を実施するため、政府に対し、総合的な実施調査を行なわしめ、さらに中小企業政策に関する基本計画や実施計画並びにその実施状況について国会に年次報告させることといたしておるのであります。
また、総理府に中小企業審議会を設け、主としてこの法律の施行に関する重要事項を調査審議し、必要と認める事項について内閣総理大臣または関係各大臣に建議し得ることとし、本法運用に万遺憾なきを期しておるのであります。
以上が本法律案提出の理由ならびに内容の概要であります。
次に、中小企業組織法案について申し上げます。
本法律案は、中小企業基本法案と密接不可分の関連法であり、中小企業省設置法案とあわせて、三位一体のものとして、本院に提出しているのであります。
中小企業に関する組織は、中小企業団体組織法、並びに中小企業協同組合法によるもの、環境衛生関係営業の適正化に関する法律によるものがあります。この団体組織法並びに協同組合法による組織の数は、中小企業庁の調べによりますと昭和三十六年十二月末現在で二万七千二百三十八ということであります。統計上、これらは一応休眠組合でないとされておりますが、私どもが現存する組合の実態を見ます場合、どれだけ活発に活動しているかはなはだ疑問な組合がきわめて多いのであります。統計の上では、中小企業者が一体どれだけこれらの法律に基づく組合に組織されているかは不明でありますが、現在、未組織の中小企業者がいかに多いか、一応組織はされていても、これらの法律に基づく事業活動を現に実施している組合がいかに少ないかということは、およそ中小企業に関係する者のひとしく痛感するところであります。
この理由は一体にどこにあるのか。これは一つには、現行法律の規定が中小企業者の現状に適応しておらないというところからも来ておるのであります。二つには、一般に仏作って、魂入れずという言葉がありますように、法律は作っても、肝心の組織化促進の助成を積極的に行なわない、予算の裏づけがほとんどなされないということのためであります。
最近、中小企業者は組織化の必要、協同事業の必要について切実に目ざめつつあります。そして、現に何らかの組織、任意団体に参加するものが多くなって参りました。ところが、一歩進んで、これらの法律に基づく組合を作ったり、それに加入したりすることには、きわめて消極的であります。むしろ、魅力がなく、かえってわずらわしいとさえ感じているのであります。今日、技術革新に伴う経済情勢の著しい変化の中で、中小企業の経営を安定させ、その近代的な発展をはかるには、中小企業者の団結の強化、協同化の促進をはかることが最も急務とされているのであります。しかるに、以上のように中小企業の当面する課題と現状とは、不幸にも相離反した姿を示しているのであります。そして、この離反をもたらした最大の原因が、政府の施策の不備、怠慢にあるということは、何としても遺憾きわまりないことであります。
わが党は、ここに中小企業基本法案の重要な一環として、中小企業組織法案を提出するゆえんも、実にこの現状を打開せんがためであります。そして中小企業者の協同化への切実な要望にこたえ、だれもが、みずからの自由意思に基づいて、その業種業態に適応した組合に簡易に参加でき、協同事業活動のもたらす恩恵に浴することができるよう、国に積極的な施策の実行を義務づけんとするものであります。さらにまた、これらの組織に強力な団結権、団体交渉権を保障することによって、従来の大企業からの不当な圧迫に対し、それに動じない中小企業者の強固な、安定した地位を確立して参ろうとするものであります。これが、今までの中小企業者の組織に関係する諸法律を一本化し、中小企業組織法案として提案する理由であります。
次に、本法律案の概要を御説明申し上げます。まず、第一に、本法律案の定める中小企業の基本組織は協同組合であります。この協同組合は加入、脱退の自由、組合員の権利の平等を原則とし、設立の要件、手続を簡易にし、経済事業、調整事業、団体協約の締結をあわせ行ない得る組織として考えられておるのであります。これによって、組合設立を促進するとともに、組合の種類によって調整事業ができたり、できなかったりする従来の不便を解消して参るつもりであります。また、あくまで自主的な、中小企業者が喜んで入る組織を原則とし、強制加入はいかなる場合にもこれを認めていないのであります。
第二に、組合の種類としましては、事業協同組合、勤労事業協同組合、下請協同組合、商店街協同組合、環境衛生協同組合、共済協同組合、信用協同組合、企業協同組合、協同組合連合会を考えています。これによって従来の事業協同小組合を勤労事業協同組合に発展させ、また商工組合を廃止して、新たに下請並びに商店街の両協同組合を設けることといたしました。また今までの事業協同小組合、環境衛生同業組合、火災共済協同組合、企業組合は、それぞれ勤労事業協同組合、環境衛生協同組合、共済協同組合、企業協同組合に組織がえすることといたしております。
勤労事業協同組合は、地区内の勤労事業者すなわち、従業員おおむね十人以下にして、かつ資本金百万円以下のもの、ただし商業、サービス業にあってはおおむね三人以下のものによって、下請協同組合は、主として地区内の下請業者によって、商店街協同組合は、主として地区内の小売業またはサービス業者五十人以上によって、共済協同組合は、一または二以上の都道府県の区域の全部または全国の区域内の中小企業者によって組織され、他の組織は大体従前通りであります。
第三にその事業の内容につきましては、事業協同組合、勤労事業協同組合、下請協同組合、商店街協同組合、環境衛生協同組合の各組合は、経済事業、調整事業、団体協約の締結をあわせ行なうものであります。そして事業協同組合、下請協同組合、環境衛生協同組合が調整事業を行なう場合には、同一業種について地区の重複を認めないことといたしておるのであります。
また共済協同組合は、火災だけでなく、風水害、地震、盗難、交通事故、爆発等による損害をも共済事業の対象に加えております。信用協同組合、企業協同組合の事業については、従来の通りであります。
第四は調整事業に関する事項についてであります。すなわち、調整事業を行なう場合は、不当に差別的でないこと、一般消費者及び関連事業の利益を不当に害するおそれがないことを一般的な必要要件としております。さらに、それに加えて、不況カルテルの場合は、不況要件を、合理化カルテルの場合は、価格等に不当な影響を及ぼさないことを要件といたしております。また調整規程については、中小企業者のみが加入している組合の場合は届出制で足り、中小企業者以外のものが加入できる組合の場合は、認可制をとることにし、特に価格協定については公正取引委員会の同意を必要としたのであります。なお調整事業を効果あらしめるために、不況カルテルの場合について、アウトサイダー規制命令を出し得ることとし、違反者には従来の罰金三十万円を五十万円に引き上げて賦課することにいたしました。この場合、事業停止命令や加入命令は毛頭認めておりません。
第五は団体協約についてであります。協同組合は取引条件並びに調整事業について団体協約を締結することができ、相手方はこの団体交渉に対し、応諾する義務があります。そして団体協約のうち、取引条件に関するもの、中小企業者のみが加入している組合の締結したものについては、届出制で足りることといたしました。なおまた系列別の下請協同組合が親事業者との間に取引条件に関して締結した団体協約については、その四分の三以上が適用を受ける場合、その親事業者と取引関係のある組合員以外の下請業者に対し、一般的拘束力を持つことといたしておるのであります。
第六に、中央会の機構、運営につきまして、従来の天下り方式を改め、真に民主的な中小企業者の組織とするよう配慮いたしました。すなわち、中央会に正規の理事会を置き、理事会は業務の執行を決する、会長は理事会の定めるところに従って業務を行ない、会長事故あるときは理事がその職務を代理する、といたしたのであります。
第七といたしまして、特に政府の助成義務を明記しておるのであります。これは初めに申し上げましたように、せっかくの組織に関するりっぱな法律ができても、協同化を促進する政府の助成措置に欠けるところがあっては、法の効果的な運用を期すことができませんので、共同施設、福祉厚生施設に要する経費、組合の事務に要する経費について、国がその一部を補助することを義務づけたのであります。また商店街など協同組合の設置する街灯の公共性を考え、その電気料金について特別の軽減措置をとることといたしておるのであります。
その他、細目の規定につきましては、おおむね従来の法律の規定を準用しております。
以上が本法律案の提案理由と内容の概要であります。
何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げ、提案説明を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/7
-
008・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 次に、民社党案につきまして永末英一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/8
-
009・永末英一
○永末参議院議員 ただいま議題となりました私どもの提出にかかる中小企業基本法案について提案の御説明を申し上げます。
中小企業基本法の成立がなぜ必要か、それは今さら申し上げるまでもありません。私どもを初めとして与野党三党とも、それぞれの中小企業基本法案を提出している事実こそ、本案の重要性並びに一日も早く成立をはかるべき緊急性を立証しているものと考えます。
わが国の中小企業は、雇用面では全労働者の約七割を占め、生産におきましては全生産額の約六割を生産し、輸出面では輸出総額の五割強を受け持っております。わが国経済において、中小企業が実際に果たしている役割の大きさは、何人といえども認めざるを得ないと思います。しかるに中小企業の置かれている実態を見ますと、資本・労働・技術・経営のそれぞれの面で、まだまだ近代化が進んでおりません。大企業に比べて競争条件が著しく劣っているばかりか、企業の規模も、零細企業を底辺として、大きさに格差があり過ぎるわけであります。現在の中小企業は、大企業対中小企業といういわゆる経済の二重構造の桎梏に縛られているばかりか、お互いの間で激しい過当競争を繰り返しているという二重、三重の不利な条件のもとに置かれております。このような条件にある中小企業をどのようにして振興育成し、その生産性を高め、近代化を進めていくか、その基本策を定め、それに基づいて具体策の体系的計画的推進をはからない限り、わが国経済から、二つの経営構造、二つの労働条件が存在するという根本的な欠陥を取り除くことはできません。
中小企業基本法こそは、中小企業者が自分の正しい創意を生かして企業の発展と従業員の労働条件の向上をはからんとする努力を、高く評価し、この努力が生かされるよう保障していく中小企業の進むべき大道を示すものであると思います。私どもは、このような観点に立って本法案を立法し提案しているのであります。
本案は、前文及び十二章二十八条よりなる本文によって構成をいたしました。
まず前文におきましては、ただいま述べましたような本法の本質を明らかにいたしました。特に前文の最後にありますように、「国の将来の理想像は、全国民の中産階級化と福祉国家の実現にあり、この目標に向って、中小企業の安定と振興を図るため、ここに新たなる中小企業政策の基本原則を指向し、この法律を制定する。」という点に私どもの理想が集約されております。
本文の第一章「総則」におきましては、本法が目的といたしております中小企業政策の基本目標をまず明らかにし、この政策を実現する国、地方公共団体の責任を明らかにいたしました。特に私どもは、国の政策実施機関として中小企業省を設置すべきである旨を規定しました。なお、中小企業の定義につきましては、最近の経済発展の実態にかんがみまして、資本額は最高五千万円といたしました。また中小企業のうち、特に小規模事業の定義を明らかにして、小規模事業対策の確立に便になるようにいたしました。
第二章「調査及び計画」は、国が政策を実施するにあたり、調査、基本計画と実施計画の三案、国会に対する報告義務について規定をいたしました。
第三章「中小企業者の協力組織」におきましては、今後の中小企業者の基本組織は、業種別地域別に自主的に組織され民主的に運営される同業組合である旨を規定いたしました。従来の協同組合はもちろん活発に活動していかなければなりませんが、さまざまな産業分野を担当していく社会的責任体制を確立し、大企業に対抗していく実力を備え、かつお互いの過当競争を自主的に調整していくためには、同業組合の設立こそが、中小企業発展の土台となるべきであると思います。なお協同組合組織として商店街組合を新たに加えることにいたしました。
第四章「中小企業者の産業分野の確保」におきましては、今後のわが国の産業構造の中にあって、中小企業者による経営が経済的社会的に適切であると認められる業種を確保し、大企業をしてここに不当侵入せしめないような方向を明らかにいたしました。
第五章「中小企業者の事業活動の保護」におきまして、現在並びに将来にわたって起こる中小企業と大企業との間の紛争を処理し、中小企業の事業活動をこの面から保護する基本規定であります。
第六章「中小企業者に対する官公需の確保」におきましては、政府並びに政府関係機関としての公企業体、公団、公庫及び地方公共団体などが、わが国における最も大きな購買力を持つ団体である事実にかんがみまして、これらの諸団体が、できるだけ中小企業者より物質やサービスを購入するよう、その基本方針を規定いたしました。これによって、中小企業者に対する安定した発注先を確保しようとするものであります。
第七章から第十一章までは、「設備、技術及び経営の近代化施策」、「貿易上の施策」、「財政金融上の施策」、「税制上の施策」、「労務上の施策」の五つの面の基本施策を規定しました。
第十二章「中小企業政策審議会」におきましては、中小企業行政の民主化をはかる当然の措置として、国が中小企業政策の立案、実施にあたりましては、民間から選ばれた総理府付属の本機関に諮問すべき旨を規定しました。
以上が本案の概要でありますが、私どもは本案の関連法規、関連政策として、すでに六十件をこえる法案要綱を立案いたしました。そのうち、すでに本国会に、会社更生法改正案、百貨店法改正案、下請代金支払遅延等防止法改正案、小売商業調整特別措置法改正案の右四件につきましては提出済みであり、また今後、商店街組合法案、中小企業者に対する資金の確保等に関する特別措置法案、官公需の中小企業に対する発注の確保に関する法律案、中小企業同業組合法案につきましては本国会に提出すべく手続中であります。
何とぞ、本案につきまして慎重審議の上、御賛同あらんことを希望いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/9
-
010・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 以上で四法案について、それぞれ趣旨の説明は終わりました。
各案についての質疑は後日に譲ることといたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/10
-
011・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 次に、内閣提出の不当景品類及び不当表示防止法案を議題とし、審査を進めます。
本案は、前回の委員会において、すでに質疑を終了した議案であります。
討論に入るのでありますが、討論の通告がありませんので、直ちに採決するに御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/11
-
012・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 御異議なしと認めます。
本案について採決をいたします。
本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/12
-
013・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 起立総員。よって、本案は可決いたされました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/13
-
014・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 次に、自由民主党、日本社会党及び民主社会党を代表して、中村幸八君、小林ちづ君及び伊藤卯四郎君より、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、まず、提出者より趣旨の説明を聴取することといたします。小林ちづ君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/14
-
015・小林ちづ
○小林(ち)委員 私は自由民主党、日本社会党、民主社会党三派を代表して、不当景品類及び不当表示防止法案に対する附帯決議案を提出いたします。
まず案文を朗読いたします。
不当景品類及び不当表示防止法案に対する附帯決議(案)
本法は、消費者行政推進の一環として重要な任務をもち、しかも法の規制対象は極めて広い分野に亘るものであるにも拘らず、その施行に当る公正取引委員会の機能は必ずしも充分とは言えず、効果的運用を期し得ないおそれがある。
このような現状にかんがみ、政府は、公正取引委員会の機構を大幅に強化拡充するため、早急に予算措置等を講ずべきである。
以上の通りであります。何とぞ御賛同いただきますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/15
-
016・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/16
-
017・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 起立総員。よって、本動議の通り附帯決議を付することに決しました。
この際、総務長官より発言を求められておりますので、これを許可いたします。小平総理府総務長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/17
-
018・小平久雄
○小平政府委員 ただいまは、不当景品類及び不当表示防止法案を御可決になりまして、まことにありがとうございました。
また、引き続きまして附帯決議を、これまた全会一致で御決議をいただきましたが、その趣旨につきましては、審議中におきましても、各委員から非常に強調された点でございまして、また、それに対して政府当局といたしましても、十分御趣旨に沿う旨御答弁申し上げておったのでありますが、ここにあらためて附帯決議をちょうだいしたのでありますから、一そう努力をいたしまして、御趣旨に沿うようにいたしたいと存じます。(拍手)
…………………………………発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/18
-
019・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 お諮りいたします。本案に関する委員会の報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/19
-
020・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/20
-
021・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 次に、首藤新八君外四十四名提出の商店街における事業者等の組織に関する法律案を議題といたします。商店街における事業者等の組織に関する法律案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/21
-
022・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 まず、提案者より趣旨の説明を聴取することにいたします。首藤新八君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/22
-
023・首藤新八
○首藤議員 商店街における事業者等の組織に関する法律案につきまして、その提案の理由及び要旨を御説明申し上げます。
商業、サービス業等の店舗が多数集まっている地域には、消費者が大ぜい集まり、また、消費者が集まるところには、店舗が集まり、そこに、いわゆる商店街が形成されて参ります。商店街には、種々の業種の事業者が混在し、それぞれ自分の事業の繁栄をはかっておりますが、その地域内の事業者は、すべて、その地域全体の繁栄をはかることによって、自分達の事業の繁栄がはかれるという共通の利害関係を有しております。そこに、その地域内のすべての事業者が協力して商店街の繁栄をはかろうとする動きが生じ、現に、全国各地において、商店街振興会等の名称で、商店街の振興をはかるための組織が自然発生的に出現し、大いに活躍しております。そしてこのような組織が、より活発な活動をするために、法律の規定に基づく法人としての地位を得たいと願うのは自然な成り行きであると申すべきであります。
そこで、現行の法制を見ますと、中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合が目につきますが、はたして事業協同組合はその要求を十分に満たすことができるでしょうか。商店街における組織は、商店街という商業地域で営業をする異なる業種の事業者が組織すべきものであるのに対し、事業協同組合は、原則として、同業種に属する事業者が共同の利益を増進するため共同経済事業を行なうことを目的とするものであります。また同法によるいわゆる商店街組合も地域内の異なれる業種の小規模事業者のみが集まってその事業の発展のために共同事業を行なうことができるのみで、いまだ不十分な点があるのであります。
商店街の繁栄をはかるためには、事業者の事業活動を主眼とした共同経済事業のみでなく、その事業を行なう場所すなわちその地域の環境整備事業を行なうことが必要となって参ります。ところが、この点については、事業協同組合は、全く予想していないところなのであります。また組合員資格につきましても、商店街における組織は、特に環境整備事業を行なう上には、その地域内の事業者は、百貨店も、銀行も、中小小売業者も含めてあらゆる業種の事業者が、さらに必要がある場合には、事業者でない個人までも、組合員となるのでなければ、その事業を遂行することはむずかしいのであります。
現在、商店街振興会等の名称で商店街における組織が多数出現しているにもかかわらず、事業協同組合として法人格を持つものは、そのうちのわずかの部分にすぎないという実情も、以上のような理由からであると考えられます。
そこで、商店街における事業者等の組織として、新たに法人格を持った商店街振興組合を認め、商店街の振興のための活動主体としての地位を与えようとするのが、この法律案を提案した理由であります。
次に、この法律案の要旨を御説明申します。
第一に、商店街振興組合は、その地区内において商業またはサービス業に属する事業その他の事業を営む者及び定款で定めたときはこれらの者以外の者を組合員として組織されます。
第二に、商店街振興組合は、商業またはサービス業に属する事業を営む者の三十人以上が近接してその事業を営む市(特別区を含む。)の区域に属する地域であって、その大部分に商店街が形成されているものを地区とし、組合員資格を有する者の三分の二以上が組合員となり、かつ、総組合員の三分の二以上が商業またはサービス業に属する事業に属する事業を営む者であるものについて、設立を認めることにいたしました。
第三に、商店街振興組合は、商店街振興組合連合会を設立することができますが、連合会の会員資格者の二分の一以上が会員になるのでなければ、設立することができないことと致しました。
第四に、商店街振興組合の事業といたしましては、組合員の事業に関する共同施設、組合員のためにする商品券の発行、組合員に対する事業資金の貸付、組合員及びその従業員の福利厚生に関する施設等の共同経済事業のほか、街路灯、アーケード、駐車場、物品預かり所、休憩所等組合員及び一般公衆の利便をはかるための施設、組合の地区内の土地の合理的利用に関する計画の設定及びその実施についての組合員に対する助言または指導、組合員が建築協定を締結する場合における指導及びあっせん等の環境整備事業をもあわせて行なうことができることといたしております。
第五に、政府は、商店街振興組合の事業の維持発展をはかるため必要があるときは、予算の範囲内で、商店街振興組合に対して補助金を交付することができることとなっております。
さらに、既存の中小企業の組織体である商工会等との間に出来るだけ摩擦を生じないようにその地区その他について調整を加えたのであります。
以上が、この法律案の提案の理由及び要旨であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/23
-
024・早稻田柳右エ門
○早稻田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
本案についての質疑は後日に譲ることといたします。
次会は明二十日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後二時二十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004461X03219620419/24
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。