1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年二月七日(水曜日)
午後四時二十七分開議
出席委員
委員長 有田 喜一君
理事 岡本 茂君 理事 中川 俊思君
理事 岡田 利春君 理事 多賀谷真稔君
倉成 正君 藏内 修治君
齋藤 憲三君 舘林三喜男君
中村 幸八君 濱田 正信君
滝井 義高君 中村 重光君
伊藤卯四郎君
出席国務大臣
通商産業大臣 佐藤 榮作君
労 働 大 臣 福永 健司君
出席政府委員
通商産業事務官
(石炭局長) 今井 博君
通商産業鉱務監
督官
(鉱山保安局
長) 八谷 芳裕君
労働事務官
(職業安定局
長) 三治 重信君
委員外の出席者
通商産業技官
(大臣官房審議
官) 久良知章悟君
労働事務官
(職業安定局調
整課長) 北川 俊夫君
労働事務官
(職業訓練局管
理課長) 中田 定士君
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二月五日
石炭産業の危機打開に関する陳情書
(第二一〇
号)
石炭政策の改善等に関する陳情書
(第二六六号)
石炭政策変更に関する陳情書
(第三一四号)
同
(第四一八号)
炭鉱離職者の雇用に関する陳情書
(第四一九
号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
炭鉱離者臨時措置法等の一部を改正する法律案
内(閣提出第第六号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/0
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001・有田喜一
○有田委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、炭鉱離職者臨時措置法等の一部を改正する法律案を議題とし、前会に引き続いて質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、これを許します。岡田利春君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/1
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002・岡田利春
○岡田(利)委員 前回の委員会で事務当局に、今回出されております炭鉱離職者臨時措置法等の一部を改正する法律案の若干の質問をいたしておりますので、きょうは主として大臣に、これから炭鉱の合理化政策が進められていくにあたって、雇用を中心にして一体どういう特徴を持ってくるかという問題点について、まず基本的に考え方を聞きたいと私は思うわけです。というのは、昭和三十三年から炭鉱の合理化か政府の強力な指導のもとに行なわれておるわけでございます。しかも、最近とみに、千二百円の炭価の引き下げにあたって、諸物価の値上がり、あるいはまた電力料金、あるいは国鉄の輸送賃等の値上がりによって、相当マイナスの部面が多くなってきております。加えて、一般炭の場合には、消費構造が変化をいたしておりまして、電力用炭の需要の増大によって、その消費構造の変化によるいわゆる売上手取りが若干そのことによって引き下がってきている。こういう面で合理化の方向は当初の計画よりも相当強力に進めていかなければ、千二百の販売価格の引き下げはできない、こういう実情にあるわけです。従って、今日まで能率は相当上がっておりますけれども、相当部分は見せかけの能率であって、従来各来各炭鉱にある福利施設等は、これを第二会社あるいは別会社に切り離す、あるいはまた坑外の間接の現場については、これを組に移譲してしまう。あるいはまた坑内においても、組による進出というものが相当最近目立って参りました。しかも、当初の予定通り能率を上げ、修正能率の三十一トンを上回る能率に引き上げていくということになりますと、これらの炭鉱の合理化を進めるにあたって、炭鉱における雇用問題というのは、当初考えたよりも相当重要な問題を含んでありますし、また一面、特徴的な傾向をこれから特に示すのではないか、私はこういう考え方を持っておるわけです。従って、これから昭和三十八年十月までの炭鉱の合理化がこのままで進められていった場合に、雇用の問題を中心にしてどういう特徴、どういう傾向というものが出てくると大臣は考えられておるのか。また、三十七年度の予算がそういう前提に立って私は計上されたと思うのですが、そういう面から見て、一つ大臣の見解を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/2
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003・福永健司
○福永国務大臣 御質問が非常に広範にわたりますので、あるいは私のお答えが全貌を尽くすに至らないかと懸念するものでありますが、石炭産業における雇用事情というものは、日本の一般産業全体の傾向とは著しく異なる事情を持っております。それゆえにわれわれは石炭産業における雇用問題につきましては、非常に心配をいたしておる次第でございます。
御指摘のように、三十八年までに、今までも労働者はかなり減らして参りましたのが、さらに一そう減っていくというようなことであり、従ってこれと関連いたしまして、種々の複雑な問題があるわけでございます。新年度の予算につきましても、新年度における石炭産業の雇用事情を考慮いたしましての諸施策を予算化することに大いに努めたつもりであり、ことに、御承知のごとく、今次御審議をいただいておりまする法案に盛られておりますような雇用奨励制度を初めとする、従来政府がとり来たっていなかった施策も新たに取り入れるというようなことで問題の解決をはかっていきたい、こういうように存じて対処しておるわけでありますが、ほかの産業と違いまして、これを一言にして申しまするならば、非常に関係の人たちが努力をしておりますけれども、いよいもって深刻の度を加えていくようにも見られるわけでありまして、従って、ここ数年はとうてい気持をゆるがせにすることのできない事情にあるわけでございます。従って政府においても、この事態をよく認識しての施策が、必要なのであります。そういう意味での、前向きの施策を織り込んだつもりではございます。まだ十二分というところまでは参らないわけではございますが、そういう意味での前進を心がけておる次第であります。なおう事態の深刻の度は一刻もゆるがせにすることができないという認識のもとに、私たちは新年度から実施せんとする施策の一部につきまして、新年度を待たずして、この一月一日から実施するような措置もとりたい、こういうように、普通一般に施策を講じる場合における態度よりはより熾烈な熱意をもちまして、私どもは問題の解決に臨みたい、こういう次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/3
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004・岡田利春
○岡田(利)委員 私これからの石炭合理化政策を進めていく上に、雇用の問題の特徴点としてお聞きしたかったのは——実は昨年の十一月現在で、炭鉱に働いておる労働者の数が、二十七万八千二十人という記録になっておるわけです。この内訳は常用実働の労働者、さらにまた公傷、私病による長期欠勤者を加えて、臨時夫、請負夫、それに職員、これを含めると、依然として二十七万八千二十人の人々が炭鉱に働いておるわけです。しかも、常用実働労働者は漸次ずっと急速に減ってきておるわけでありますけれども、長欠者については、昭和三十五年度に比べてほぼ停滞をしておる。臨時夫についても若干減っておりますけれども、大体停滞をしておる。請負夫については、起業工事を今日やめても、なおかつ、若干でありますが増加をいたしておるわけです。この数字は、炭鉱の今の雇用の面の一つの特徴を私は物語っておると思うのです。よく炭鉱の合理化というのですが、問題はやはり、炭鉱の経営構造というものは、一体わが国においてはどういう経営構造が最も望ましいのか、あるいはまた合理化計画を進めて、しかも石炭産業を安定させる場合に、それぞれ個々の炭鉱の経営構造というものは、一体どういう構造が望ましいのか、こういう一つの前提がやはりある程度描き出されてこなければ、私は石炭産業というものはいつまでたっても安定しないと思うのです。たとえば極端な面では、病院を切り離してしまう、こういう面も今日出て参りましたし、福利施設はほとんど切り離している。それのみならず、黒ズリ、白ズリの捨て場の関係についても、全部これを組夫に移譲してしまう、あるいはまた極端な面では、同じ、個所で一番方が直轄夫で、二番方が組夫でやっておるのが、一番方の中に直轄夫が、組夫をやめて入っておる、こういう傾向も実は出てきておるわけです。しかもその傾向がより一そう強まっていこうとするわけなんです。ですからある面では、相当見せかけの能率、今まであったものを第二会社に切り離したから自動的に能率が上がる、こういう傾向が今月の能率上昇の中で相当大きいウエートを実は占めておるわけなんです。このように考えて参りますと、石炭産業の安定をささえ、離職者の対策を十二分に立てて、雇用の転換をはかっていくということを一方で国が進めながら、企業の中では、いわゆる過渡的な段階とはいえ、将来の石炭産業の安定におけるそれぞれの炭鉱の経営構造という一つの前提を置いて、何ら合理的に進められていないという、むしろ逆行した面が出てきておるわけです。これに対して、やはり政府が強力な指導をしないと、ただほうり出されてくる者は引き引けるというだけであって、積極的な石炭産業の恒久的な安定面における雇用の問題というものは、労働省においても、あるいはまた通産省の面で見ても、案外その点については触れていないのではないか。むしろ今日の段階は、昭和三十八年の十月で一応合理化五カ年計画が終わるわけなんですから、あと残された一年半というものはそういう点の総合的な、並行的な施策、指導というものが行なわれなければならない時期ではなかろうか、こういうことを実は考えておるわけです。しかも、特に大事な問題は、六千三百名に上る長欠者がおる、あるいはまた実際働いておる労働者の中でも、身体障害者が、災害率が非常に高いために相当おるわけです。今の合理化は、この長欠者をやはり解雇する。病気で長く休んでおる、肺結核とか、そういうことで休んでおる、あるいはまた公傷で長く休んでおる者も、症状が固定すれば一応解雇する、こういうところにずっと合理化の解雇の目標というものの重点が向けられつつある、あるいはまた、現在現場の中で身体障害者が働いておる、これも一応解雇の対象にしていく、こういう傾向が特に強くなってきたわけです。これから首を切るとすれば、やはりそういう人々を先に切りたいというのが、今日の経営者の偽らざる心境だと思うわけです。これらに対して一体労働省は、これは雇用奨励制度があるのだからといって、単に経営者にゆだねておくべき性質の問題だろうか、この点についてやはり深刻に考え、わが国の石炭産業の将来の安定を考える場合に、炭鉱の経営構造は諸外国と違ったいろいろな条件もあるのですが、そういう点を加味して、わが国の安定した、少なくとも近代炭鉱といわれる経営構造はどうあるべきなのか、そういう前提において強力な指導をしなければ、この問題は解決しないと思うのですが、こういう点についてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/4
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005・福永健司
○福永国務大臣 非常に大事な点についての御指摘がございまして、私もおおむね感を同じうするものでございます。石炭産業における経営構造、ことに雇用面における構造につきましては、私どもも、今力説なさいましたような点に大いに留意していかなければならないと存じます。
なお、今お話のありましたことのほかにも、経営構造が健全であらねばならぬという建前からいたしまして、これではいかがかと思う節もほかに幾つかあるわけでございますが、たとえば雇用の年令的構成等におきましても、今のような情勢をもって推移いたしまするならば、若年、青年の労務者が極端に減っていって、中高年令者が非常に多くなるというようなことにつきましても、この産業の将来を考えます場合におきまして、このままであってはならぬというようなことも痛感いたす次第でございます。従って、たとえば最低賃金制というようなこと等についても、他産業と違ったウエートを置いての考慮を払わなければならぬ、こういうようなことにも留意いたしておる次第でございます。石炭産業の雇用対策、特に安定した姿における石炭産業の雇用対策ということを願いつつの施策といたしましては、ただいまお説のようなことにも十分留意いたしまして今後処していきたい、こういうように存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/5
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006・岡田利春
○岡田(利)委員 私特にこの際労働大臣にお願いしておきたいのは、今までの委員会でも論議をいたしておる面もあるのですが、今日の炭鉱の雇用の実情、これが的確に総合的に把握されてないわけです。これは通産省にもないわけです。まして労働省にもないわけです。実際に炭鉱の今の就業構造というものはどうなっておるか、組夫はどういうところに使われておるか、臨時夫は一体どういうところに使われておるか、あるいはまた、非常に災害率の高い炭鉱でありますから、身体障害者は一体どういうところで仕事をやっており、あるいはまた、現在仕事についていない身体障害者、長欠者はどういう実情にあるのか、そういう数がどの程度あるのか、こういう総合的な炭鉱における雇用の実態というのですか、そういうものが解剖されていないというのが、私は今日の実情ではないかと思うのです。そういうものを的確に把握しないでは、最低賃金もなかなかできないでしょうし、これからの炭鉱の非常に複雑多岐にわたってくる雇用の問題についても、そういう総合的な資料かないと、十分指導もできないのではなかろうか、こういう感じが非常にするわけなんです。特に私はその点について、身体障害者、それから請負、組夫の実態については、労働省として、非常に手不足で困難な面もあるでしょうけれども、どうしてもこれを早急に把握をして、そうしてそういう基礎資料の上に立って、将来の経営構造というものは、わが国の炭鉱は、石炭産業はどうあるべきなのか、やはりこういうものを描いて、根本的に雇用対策を考えてもらう、雇用転換を指導してもらうということを特に私はお願いをいたしておきたいと思うわけです。
特に、ここで一つ通産大臣に私お聞きいたしたいのでありますが、千二百円のコスト引き下げのいわゆる最終年次の前年が昭和三十七年になるわけでありまして、三十八年は十月で一応これが終わるわけであります。そこで今までの委員会でも論議しておるように、炭鉱の合理化を進めていくにあたって、炭価を下げる場合に、非常にマイナスの部面が多くなって参ります。加えて、長期の見通しとしては、単なる電力料金が上がるとか資材が上がるという面だけではなくして、いわゆる消費構造の変化によって売上手取りが変わってくる、事実手取りが下がって参るわけですから、そのことが経営に響いてくるという面が出て参るわけです。たとえば電力用炭がどんどんウエートを占めていく。そうすると、さえもので今までハウス・コールなんかに出しておったものを、電力用炭に向けていく。こうなりますと、販売価格が違いますから、売上手取りがどうしても下がってくる。これは通産省の統計によりますと、原料炭も込みで全体として大体九十円くらい手取りが下がっておる、このように私は聞いておるわけですが、長期の展望に立てば、千二百円下げる上に、消費構造が変わることによって、なお一そう売上手取りが下がってくる。物価の値上がりというマイナス部面にプラスして、この問題が出てくるわけです。この面はもちろん当初基本部会でも若干の論議はされておりますけれども、この面が特に電力用炭の引き取りの増加によって増大するのではないか。ですから、今日の合理化のテンポというものは、今やはり再検討しなければ、このまま進めていくということになると、炭鉱経営者自身においても非常に問題が出てくると同時に、労働者を減らすという面でも、今までにないいろんな社会問題を含んだ要件というものが出てくるのではなかろうか、実はこういう気がするわけであります。しかも国鉄運賃の問題も一応延納だけの措置であって、この解決も出ていたい。物価はまだ上がる傾向にあるということは、予算委員会、本会議で政府が説明している通りであるとするならば、非常に問題が重なってきておって、お先まっ暗というか、先の見通しがつかぬというのが実情ではないか。まして、合理化法に基づく昭和三十六年度の標準炭価は、二月二日ですか、やっときまった。もう終わるというときに、昭和三十六年度の標準炭価がきまった、こういうような実態にもあるわけです。これらの一連した関連の中で、特に雇用対策を政府が思い切ってやる反面、これからの当面の石炭合理化政策について再検討される意思があるかどうか、今私が申し上げた点について、どういうお考えを持っておるか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/6
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007・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 石炭の価格決定の問題につきましては、審議会等の意見もいろいろ出ております。いわゆる値下げの年次計画については、今の実情に合わすという意味で、事務当局をして再検討させておる、こういう状況でございます。従いまして、例年よりことしは少しおくれるといいますか、三月末くらいになるのではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/7
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008・岡田利春
○岡田(利)委員 今日まで特に石炭政策を進めてきて、今年政府としてはある程度思い切った予算をつけて、さらに石炭政策を進めていくわけでありますが、やはり現時点までくると、石炭だけの問題では、石炭産業の安定ということはどうしても期し得られないのではないか。競合するエネルギーの問題なり、総合的なわが国のエネルギー政策というものを確立しなければ、石炭産業の安定というものは出てこない。また、安定に対する自信をそれぞれの企業家は持ち得ないのではないか。なぜかならば、三十万トン程度の新しい山をふやすについても、三年かかるわけであります。大体発電所の建設と同じで、発電所を建設して三年目に発電されるわけですが、炭鉱も、新しく開発しますと、やはり三年間は石炭が出なくてさ三年目から石炭が出るわけです。ですから、これは、昭和三十八年の十月までの合理化の傾向を見て、総合的にエネルギー政策を考え、石炭産業を位置づけるのではなくして、むしろやはり基礎的な条件というものを、大体ここ一年くらいの間に確立しておく必要があるのではないか、私はこういう感じを持つわけです。そのことをやらない限り、どうもお先に対して自信がないから、新しい地域の開発なり、あるいは投資というものが伴ってこない、こういう傾向が出て参りますし、あるいは坑道の切りかえについても、採算がとれるかどうかということで自信がないから、これを繰り延べにしてしまう、こういう傾向に今日あると私は思うわけです。従って、十月に重油の自由化もなされ、石油業法については今通産省で検討もしておるわけなんですが、今国会に間に合わないとしても、少なくとも次の通常国会には、やはり総合エネルギー政策というものを確立をする、そのために必要であるならば立法措置もとるという態度をお持ちになって初めて、石炭産業の労使ともに、そういうものを期待しつつ、今日の合理化あるいは炭価の引き下げに協力をする、こういう姿勢になるのではないか。そういう意味で一石をここで投ずるということが最も大事な気がするわけなんですが、御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/8
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009・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 過日も予算委員会におきまして、勝間田委員のお尋ねにお答えをしたわけです。いわゆる五千五百万トンの出炭といいますか、その意味の需要、それは一体どういう長期見通しになるか、電力用炭は二千万トン、さらに三百万トンふやして二千三百万トン、あるいは製鉄、ガス等の原料炭は千二百万トンの長期引取契約ができる。これで三十八年という時期、あるいはその後までの——電力などはもう少し先になりますが、それまでの予想は一応立つわけでございます。かねてから業界の安定というものを期待しております私どもとしては、これらの計画を途中で変更するということは避けたいと思っております。問題はエネルギーの需要量が非常に急激にふえてくる、こういう場合において、石炭が果たし得る役割が考えられるかどうかということが一つの問題でありましょうし、現在のエネルギーの需要量から申せば、石炭は、ただいま申すように、この数量が減るということは心配する必要はない、こういうように私は考えますので、一応業界はこれで安定するんじゃないか、かように思っております。そこで過日も申し上げたのでございますが、ただいまの段階は、それぞれのエネルギー部門においてそれぞれの計画を立てて、そうして進めていくということをお答えしたのでございます。しかし、将来において必要があれば、ただいま岡田委員の御指摘になりますように、必要な総合的なものも工夫して参りましょう、こういうことを実はお答えいたしたのであります。もちろんただいまの、石炭の需給の長期にわたる見通しを立てるとか、あるいは電力の長期にわたる見通しを立てるとか、それらのことは、総合的な産業発展の場合における総合エネルギーという観点に立ってそれぞれ行なうわけでございます。もちろん今の姿ではあるいは欠点もあり、弱さも出てくるんじゃないか。さらにみんなが納得する、こういうためには、御指摘になりますような総合エネルギー対策というか、そういう審議会を設けるとか、またその審議会の議を経て計画を進めていくということが望ましいのだろうと思います。思いますが、ただいまはそこまでまだ決意する段階じゃないんじゃないだろうか、かように実は考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/9
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010・岡田利春
○岡田(利)委員 基本問題はいずれまた質問する機会もあると思いますので、次に進みますが、今度、あとから出される法案で、産炭地振興法に基づく事業団が設置をされるわけです。事業団そのものは、融資をし、直接事業をするわけでありまして、この予算も具体的についておるわけです。それと今の労働省の雇用対策との関連、これは通産省、労働省双方関連を持って事業団の仕事をしていくと思うのですが、それはどのように運営されて総体の雇用の問題を考えられていくのか。これはどうも何かぽつんと離れておるような感じが私はするわけです。この面の見解を、これは労働大臣でけっこうですが、承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/10
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011・福永健司
○福永国務大臣 役所ないしこれに付随した諸機関で、今御指摘のようなことで、食い違いが過去においては間々あった実例もあるわけでありますが、今御質問の点につきましては、これはむしろ制度上の問題というよりも、実際上どういうようによく連絡をとっていくかということの方が問題であろうかと思うわけでござじいます。石炭産業につきましては、今日われわれが出しておりまする法案も、また通産省が出し、ないしはこれから出す法案も、全体として何とかして石炭産業を安定させ、これからうまくやろうというような考慮から出ておるものでございます。予算折衝の際等におきましても、両省が非常に協力をいたしまして、今日のようなところまで参っておるわけでございます。今後の運営にあたりましても、ぜひ従来にまさる協力関係を保持いたしまして、お話のようなことでのそごを来たさないようにしていきたい。ちょうど通産大臣もおられて好都合でございますから、今のお話の点を重々心いたしまして今後に処したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/11
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012・岡田利春
○岡田(利)委員 労働大臣は、先般の予算委員会で、勝間田委員の質問に対して、最低賃金の問題についていろいろ答弁されて、現在の進行状況について私も実は承知をいたしておるわけであります。問題は、炭鉱の最低賃金の場合、特に先ほど申し上げました通り、坑内と坑外の就業構造というものが、各山でばらばらなわけです。しかも五百六十程度の炭鉱があり、大から小まではものすごい格差がある。こういう状態で、調査そのものも相当時間を要すのではないか、私はこういう考えも持つわけでありますけれども、勝間田委員の質問したように、炭鉱の場合、いろいろ相違はあるけれども、坑内に労働して石炭を生産しておるという面では、私はそうむずかしい問題ではないと思うのです。そういたしますと、少なくとも坑内労働者の最低賃金というものは、そう時間を必要ともしないのではないか。今日の産業の賃金水準から見ても、一万二千円の坑外を含めた最低賃金制度、あるいはまた坑内労働者に対してのみ適用する最低賃金の制度、この二つが考えられると思うのです。特に今問題なのは、若い労働者の流出——一番問題なのは、技術屋あるいは坑内に働いておる労働者の流出が、今炭鉱では非常に大きな問題になっておるわけです。ですからこれを早急に安定させるためには、前に通産大臣も、やはりどうしても最低賃金が必要であろう、こういう言明をされておるわけですが、そういう面から見て、そういう点を十分勘案して、この問題の審議会ですから、行政府とは別でしょうけれども、労働省としても十分考えられてこれに対処してもらいたいと思うわけなんですが、この点について大臣は、一応その点を参考にしてそういう意向が伝わるようにいたしましょうというような答弁をなされておるわけなんですが、この点について大臣は特に何か具体的にお考えになっておる面があるかどうか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/12
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013・福永健司
○福永国務大臣 現実的な問題の処理という観点からいたしまして、坑内夫について特別に考えてはどうかという御意見、私は傾聴すべきものと存ずるのであります。ただこの間も申し上げましたように、ああいう形で今検討を願っておりますので、ことに労、使、公益、三者構成による機関でありまするだけに、結論的なものを私どもの方から示しましてこういう結論にいくようにということもいかがかと存じます。ただし私も、今傾聴すべきという言葉を使ったのでありますが、傾聴すべきような意見は、私のみが傾聴するのでなくて、こういうことを御検討願っている人の方へもしかるべき方法で伝わるような措置は講じたい、こう思うわけでございます。専門家、ことにそういうことについては権威者が集まっておりますだけに、私の方から結論を示唆するような形においてはいかがかと思いますが、今御説のありまする御趣旨は私にもよくわかりますので、今申しましたような趣旨において、審議会に無礼にならぬような形においての適切な措置を講じたいと存ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/13
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014・岡田利春
○岡田(利)委員 先般事務的な質問をずいぶんしたわけですが、炭鉱労働者という概念規定の問題、これは一般定義と法律の適用を受ける範囲というものは、おのずから別なわけなんです。特に今回の雇用奨励金の場合は、年令制限というものがあって、従来の場合とは違っておるわけなんです。そういたしますと、従来の炭鉱離職者臨時措置法では、一応そういう範囲は理解できますけれども、今度の場合は違うわけですから、炭鉱労働者の雇用範囲という問題については再検討しなければならぬのじゃないか。この面は実は具体的に先般質問をしておらなかったわけです。この面は従来通りなのかそれとも違うのか、この点明らかに説明してもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/14
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015・三治重信
○三治政府委員 この炭鉱労働者の定義につきましては、この措置法の第二条の定義のところに書いてある通りでありまして、今度の改正案でもこれについての改正はないわけです。この前多賀谷先生からこれについての解釈をお聞きになって、二、三質疑があったわけですが、われわれの方は定義として「作業に従事する」というふうになっておりまして、一般の退職金や何かを支給する合理化法のように、業務ということで全体を解釈できるようになっていない、作業に従事するというふうになっていて、よく研究したところ、やはり法律用語としても作業と業務というふうにはっきり分けてあります、こういうことでございます。それで、作業に従事する。ほかの通産省の方の炭鉱労働者の定義はそういう業務——業務というとどうしても範囲が広くなる。しかも、退職金でございますからやはり炭鉱に雇用されている者が全部含まれるという格好になるかと思いますが、これは作業でございますから、どうしても労務者関係というふうになる。その具体的な問題についてはこの前一応説明申し上げました。われわれの方としてここで、雇用奨励金が入るのだから今度は全部にというふうに、解釈を急に変えるということはとてもできないというふうに考えるわけです。しかしながら個々の問題やその他の、全部というわけにも参りませんが、できるだけその問題の解釈にあたってはやはり具体的なものとして、その作業に従事した実態に即して適用がどうかという部面の検討をするということについて、若干弾力的な解釈があるというふうにお答えしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/15
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016・岡田利春
○岡田(利)委員 今の問題はあとからまた伺うことにしまして、実は先般も身体障害者と女子の場合、これは二万円の保障に対して一万四千円、これの四分の一、しかもこれはやはり年令制限が重要原則としてあるわけです。しかし、身体障害者という特殊事情とか、あるいは、大体女子の作業に従事しておるものはおもに寡婦ですね。未亡人の場合が非常に多いわけです。そうして子供をかかえておる。これに年令制限をするのはどうなのか。この二つの問題については、年令制限をするのはきわめて当を得ていないのではないかということが第一点として考えられるわけです。
第二点の問題としては、私は一万四千円というのは非常に低いと思うわけです。特に三十五歳以上で一万四千円というのは、非常に低いと思うわけです。この点は逆に何も四分の一に限らぬで——一般論で四分の一という考え方はいいのですが、特に身体障害者、これから、先ほど言ったように、そういう人が出てくるわけです。あるいは夫を炭鉱で失い、未亡人が働いておる。子供をかかえて、子供の大きくなるのを楽しみにして働いておるという人々が、解雇の対象になる。他に流出しなければならぬ、職を求めなければならぬという場合には、むしろ四分の一ではなくて、たとえば五分の二とか、補助率もいろいろあるわけなのですから、この面については、むしろある程度補助率を高めて、雇用転換をはかっていく。もちろん一年たてば、雇用する人もある程度めどがあって雇用するし、雇用された者も大体保障されて、この賃金の保障というものはほぼ望まれるのではないか、私はこういう気がするわけです一この点について第一点どう考えておるかという問題。
その次の問題としては、先般二万円に対する四分の一というのは、基準外一割を見て、大体一万八千円と一応考えておる。一割が基準外でほぼ二万円、こういうことを前提にして四分の一を保障するということを将来業務方法書もしくは省令で定めるのだ、こういうことを聞いておったのでありますが、先般資料として出された内容を見ますと、今、雇用奨励制度をしなくても、特に昭和三十六年度の三カ月間の実績といわれる四月、五月、六月を見ますと、初任給一万八千四百四十円、現在給が三カ月にわたって二万百五十円になっておる。上昇額が千七百十円である。こういうわずかな期間においての実績が、労働省から出されているわけです。そうしますと、今度は雇用奨励金を出すのですから、私はやはり標準賃金、少なくとも毎月固定する賃金は二万円を対象にするのが妥当ではないか、こういう資料の結果そういう判断をするわけですが、この二点についてどう考えられておるか、お聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/16
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017・三治重信
○三治政府委員 その二万円を基準にすると、五千円出すわけですから四分の一ということでございますが、二万円につきましてはやはり五千円、それから寡婦、身障につきましては三千五百円という金額でございます。それをこえた上については四分の一というスライドで、最高が七千五百円ということでございます。それから寡婦の問題につきましては、ある程度年令の制限があって、実際問題としてもいいのではないかと思う。身障につきましては、これは非常に各方面からぜひ年令制限をはずしてほしいということが前々からございまして、一応現在関係方面との折衝は、年令制限につきましてはやっておりますが、業務方法書を作るまでには、さらに身体障害者につきましては努力してみたいと思います。寡婦につきまして年令制限をはずすのは、これはなかなかむずかしいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/17
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018・岡田利春
○岡田(利)委員 それでは、あとから多賀谷委員から今後の議事進行について発言があると思うのですが、なかなかデリケートな問題でして、一問一答で公式的に論議してもどうか——これは業務方法書、省令にわたる事項なんですね。ところが、これが今度の法案では一番大事な点なんですよ。もう少しお互いに実態認識なり、考え方——たとえば寡婦といってもいろいろあるわけですね。母子家庭というようなものもあるし、子供がなくても寡婦の場合があるわけです、そういう点がありますから、これは省令では相当弾力的にきめて運用ができると思うのですよ。それがある程度意思統一ができないと、この法案を通過させるにあたって非常に不安になるわけなんですね。そういう点で多賀谷委員から議事進行もあると思いますが、委員会を暫時中断して少し具体的に質問をし、意見を交換した方がいいんじゃないか。理事会形式でもけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/18
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019・有田喜一
○有田委員長 この際暫時休憩いたします。
午後五時十三分休憩
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午後五時五十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/19
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020・有田喜一
○有田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。岡田利春君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/20
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021・岡田利春
○岡田(利)委員 時間もおそくなりましたので、本日の質問は以上で私は終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/21
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022・有田喜一
○有田委員長 次会は明八日午後三時より社会労働委員会との連合審査会を開会し、その後引き続き本委員会を開き、炭鉱離職者臨時措置法等の一部を改正する法律案の採決を行なうことになっておりますので、この際念のため申し上げます。本日は、これにて散会いたします。
午後五時五十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X00619620207/22
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