1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年三月二十七日(火曜日)
午後一時二十分開議
出席委員
委員長 有田喜一君
理事 岡本 茂君 理事 神田 博君
理事 齋藤 憲三君 理事 始関 伊平君
理事 中川 俊思君 事理 多賀谷真稔君
理事 中村 重光君
倉成 正君 藏内 修治君
澁谷 直藏君 白浜 仁吉君
中村 幸八君 濱田 正信君
井手 以誠君 滝井 義高君
出席政府委員
通商産業政務次
官 森 清君
通商産業鉱務
監督官
(鉱山保安局
長) 八谷 芳裕君
委員外の出席者
通商産業事務官
(鉱山保安局管
理課長) 小林 健夫君
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本日の会議に付した案件
鉱山保安法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一二四号)
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001・有田喜一
○有田委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、鉱山保安法の一部を改正する法律案を議題として質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、これを許します。中村重光君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/1
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002・中村重光
○中村(重)委員 前会に引き続いて保安の問題で質問しますが、今度の保安法の改正は抜本的な改正であるというような局長の答弁に対して、政務次官は抜本的な改正じゃないんだということをはっきり言い切ったわけです。そのことに対していろいろと政務次官に質問をしてみたいと思います。
前回の委員会で保安局長は、今議題となっている保安法の改正について、私の質問に対してほ、中央鉱山保安協議会の中間答申に基づいての改正であるけれども、これは抜本的なものだ、こういうことで答弁をなさっておられたわけです。それに対して田中委員の質問によって、この程度のものは抜本的な改正と言えるか、こういう追及にあって、御承知の通り政務次官は、抜本的な改正じゃないんだ、中間答申である、こういう答弁であったわけです。そこで私は、政務次官が考えている抜本的改正というものはどういうことなのか、これが抜本的改正でないとするならば、どのようなことを今中央協議会に対して諮問をし、またどのような構想で審議が進められておるか、そしていつごろその結論が出るのか、そういった問題に対してお尋ねしておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/2
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003・森清
○森(清)政府委員 先般の委員会におきまして、田中さんの質問に対し局長から確かに、これは抜本的な方針に沿うてどうだというような回答をいたしまして、さらに私がそれに補足いたしまして、これは抜本的な結論ではないということをはっきり申し上げました。そこで私が考えますには、あくまでもこれは中間答申であることには間違いございません。これがすべてであって、これ以上もう直すことは何もないんだというふうには私ども考えておりませんで、引き続き検討は加えておるところでございます。ただ問題は、御承知の通りに、保安上の問題はいろいろ問題がございまして特に従業員やあるいは経営者の精神面に負うところきわめて大なるものがあるのでございまして、要は最終的にはそれ一つにしぼられると言っても過言ではない重要な面がございます。そうしたことでございますので、これから先さらにいろいろ検討いたしまして、次々と出てくるであろうところの対策に対して、われわれは真剣に取り組んで、その結論が出てき次第、皆さんの御意見も拝聴いたしまして万全を期していきたいというふうに考えておるのであります。ですから、わかりやすい言葉で言うならば、われわれが現在考えております。また今回改正願おうとした結論が、その峠の七〇%にかかっておるのか、八〇%にかかっておるのかというふうになってきますと、現在の段階におきましては、私どもはようやく峠を上り詰めかけているんじゃないかという気はいたしますけれども、まだこれから先の問題は多々あると思いますので、そのつど真剣な検討を重ねていきたい、こういうふうに考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/3
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004・中村重光
○中村(重)委員 もちろん私も、今度の改正が満足すべきものじゃない、当然これはもっと監督行政の問題や、ただいま政務次官が答弁されたような内容において鉱山保安の全きを期していく、こういう形に法の整備がなされなければならぬ、こう思います。その点については私は異論はないわけなのです。ただしかし、こうした法律案の改正をやるという場合、これはやはりすみやかに改正しなければならぬ。鉱山保安の見地から重要な問題、そういうものが当然先に答申され、改正されていかなければならぬ、これが大切だと思うのです。私は抜本的改正というのは、中間報告であっても、その内容がほんとうに鉱山保安の全きを期すという上において非常に重要な改正案である場合は、抜本的ということは言えると思う。最終的な、いわゆる事務的な関係等々、小さい問題がまだ残っておるから、それを残しておるうちは抜本的改正は言えないんだというようには私は思わない。ただ私が政務次官にこうしてお尋ねをするわけは、ただいま申し上げたような内容の問題もありますけれども、委員が何か追及的な質問をすると、気休め的な、その委員を満足させるような答弁をしなくてはならぬということで、おざなり的な答弁がややもすればあるということです。私は印象として、この前の委員会でそうした感じ持った。だから、これは抜本的な改正でないと政務次官が考えておるのならば、重要な問題というものを、すみやかに改正しなければならぬという問題を諮問し、答申を求めたのではなかったのかということです。この点は非常に重要なことですけれども、それを私はあなたにお尋ねをするのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/4
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005・森清
○森(清)政府委員 実は保安上の問題につきましては、昨年の大きな災害等にかんがみまして、私どもといたしましても非常に真剣にこれに取り組んできたのでございます。そこで保安確保のための全般的な問題についてその答申を求めたのでございますが、とりあえず出てきた結果はただいま上程されておることだけでございまして、私どもが今後も研究しなければならぬ問題等で、まだ検討していない二つ、三つの事柄がございます。その中には、たとえば保安教育をどういうふうにして徹底したらいいかとか、あるいは鉱山保安行政についての通産省と現実に働いている労務者との関係だとか、あるいは緊急土地使用要件の緩和のことだとか、そういうふうな問題もございます。これらのことは引き続き検討を加えたいというふうに考えておるわけでございます。決しておざなりな答弁を申し上げたつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/5
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006・中村重光
○中村(重)委員 まずこの鉱山保安の全きを期するという上についての一番重要な問題点、これに対してはどうお考えになっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/6
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007・森清
○森(清)政府委員 私は、先ほども申し上げましたように、一番の問題はいわゆる精神面ではないか、作業をする人も、これを指導する者も、あるいは経営をする者も、これが絶対に災害をなくすんだという気持に徹底することが、私は一番大事なことだと思います。従って、それに対する教育ということが、最も重点を置かれなければならぬことだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/7
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008・中村重光
○中村(重)委員 炭鉱保安のポイントという形で私は今あなたにお尋ねしたのですけれども、やはり炭鉱保安のポイントというのは、施設であるとかあるいは管理、心がまえ、それから今政務次官が御答弁になった教育、訓練、こういう問題がポイントにならなければならぬ、こう思うわけなんです。それによって今提案されているこの保安法の改正というものが、私は出てきたと思うのです。そういう点に対しては、前会も私指摘いたしましたように、また、ただいま政努次官の御答弁の中にもありましたように、やはり満足できないというものがある。少なくとも今度の改正においては、そうした重要な問題も当然改正すべきであった、そのように実は考えているわけです。しかしながら、前回の委員会の局長の答弁の中にも、この鉱業法の改正、それに伴っての改正というものがやはり必要になってくるわけです。やはり何といっても、根本は、鉱業権並びに租鉱権の許可、認可という問題が、どうしても第一に問題としては取り上げられてこなければならぬじゃなかろうか、そう実は思っているわけです。この前の大辻炭鉱の災害の際に、山で働いている労働者の座談会が実は開かれておった。その座談会の中で、ある鉱員がこういうことを言っておる。うちの山は租鉱権だ、租鉱権の山だ、年限が実は五年なら五年ときまっている、だから、それまでの間に掘って掘り尽くしておかなければもうからない、従って、保安なんということは全然問題にしない、ここに災害の起こってくる原因があり、誘因というものがあるんだ、こういうことを話しておったのを私は読んだのです。私は全くその通りだというふうに感じました。また、現地に視察に参りまして、その感を特に深くいたします。そうなって参りますと、この保安法の改正というものは、やはり鉱業法の改正というものが根本になってこなければならぬ。そういったような問題をどう検討しておられるのか。そこらあたりまですみやかにこれを改正していくという心がまえ、そういう構想で進めておられるのかどうか、そこらも一つ聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/8
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009・森清
○森(清)政府委員 先般局長からも、鉱業権の問題と非常に密接な関係がございますので、という答弁をいたしました。そこで、私ども通産省といたしましても、この問題と両々相待って鉱山保安を確保していかなければならないということで、ただいまの御指摘にありました租鉱権の問題等も、実は私ども研究の対象にはしております。実際には、たとえば例をあげますと、北海道炭鉱汽船というふうな大きな会社が租鉱権を他に貸して、そうしてそれで仕事をさせているような例も私は聞いておりまして、そういった業者から逆に、それを自分たちのものにして、自分たちに採掘させてくれぬか、そういうふうにすることが、保安上もあるいは採炭の上からいっても非常に成績が上がるのだということを、私どものところに陳情に来た方々もございます。そういう面から考えましても、これは緊急に取り組んで何とか解決策を講じなければならなぬ非常に大きな課題であるというふうに考え、よりより研究は進めておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/9
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010・中村重光
○中村(重)委員 この租鉱権の問題は、いつも議論になる問題です。合理化法の際にもこれらの問題に対しては質疑を続けたい、こう考えております。しかし保安の完全を期するためには、この租鉱権というものはやはり大きなガンになっておると思うのです。これを一つ直していかなければならないのじゃないかという感を深くいたします。この問題に対しては鉱山保安の見地から、一つ保安局長は積極的に、この租鉱権をなくするという、こういうことで取り組んでもらいたい、こう思うのです。
さらに、この鉱山保安の問題は、人命の尊重という点から出発しなければならない、これが根本でなければならぬと思う。そう考えてくると、鉱山保安という問題は、国がもっと責任を持つ、少なくとも国の責任において鉱山保安をやるというところまで私は進まなければならないのじゃないか。そうしなければ、いわゆる人命尊重ということについて十分目的を全うすることにならないのじゃないか、こう考えるわけなんです。今日まで直接保安の衝に当たってきたその責任者である局長として、この点はどう考えるか。また、これは大きな問題でありますので、事務的な問題でございませんので、政務次官にもこの点に対しては特にお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/10
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011・八谷芳裕
○八谷政府委員 租鉱権の問題につきましては、ただいま政務次官からお答え申し上げたのでございますが、鉱業の審議会におきましては、特にこの租鉱権問題は非常に真剣に取り上げられまして、全般的な問題といたしましては、鉱業権の設定要件を非常に厳重にする、今度の改正の審議会におきましてはこういう進み方をしておるわけであります。従いまして、これは単に鉱業権だけではなくて、租鉱権についても、当然同じように、設定要件をきびしくしていく。単に鉱区の売買の一形態みたいな形になって、五年間を一回延ばして十年間で、ただいま御指摘もありましたように、切れていく。その五年間の途中においてもまた、どれだけ延びるかわからない。こういう問題が、非常に不安定な操業が、災害の発生に影響を及ぼしているというようなことも、いろいろ考えさせられる点があるわけでございまして、従いまして、私ども保安を担当する者といたしましては、鉱業権、租鉱権の設定要件の厳重化を強く希望いたしまして、現在の審議会におきましても、そういう方向で答申が行なわれる段階になっておるわけでございます。
次に、人命尊重の問題で、国が相当の責任を負うべきではないか、この点についてでございますが、これは特に資本力の弱い中小炭鉱の問題においてその感を深くするものでございます。たとえば何かの災害が起きた際に、十分な救護隊の設置も行なわれていない。そうすると、大手の山から救護隊の応援を仰ぐ、こういうことでは、十分な救急措置がとれないわけでございます。従いまして、昨年の七月に省令を改正いたしまして、共同救護隊を置く、そうしてこれには補助金をやる、こういうやり方で、中小炭鉱にも徐々に救護隊の設置を進めていく、こういうふうな点には十分留意いたしておりますが、さらに、今後の問題といたしまして、私どもだけでなくて、保安法の改正審議会におきましてもこういう問題を取り上げまして、国がどういうやり方をとれば——たとえて申しますならば現在、派遣班と申しております。現地の全国九ヵ所の監督官のたまりがあるわけでございます。こういうところをさらに拡充いたしまして、たとえて申しますと監督署というようなやり方をとりまして、こういうところにその救護隊の相当な備品を置いておくとか、あるいはこれが指導の中心になるとか、そういう方面で特に中小炭鉱の災害対策について国も相当の責任を持って進んでいかないと、現在のところ、特に石炭鉱業の現況からいたしましても十分な災害防止もできないし、万が一災害が起きた際の救急措置も万全を期し得られないのじゃないか、こういう点につきまして、非常にむずかしい点はいろいろございます。しかしそういうむずかしい点を克服いたしまして、何らかの形でもう少し中小炭鉱対策としての災害防止は完璧を期する方向に進めていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/11
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012・森清
○森(清)政府委員 私は確かに、御質問の通り、鉱山保安の要諦は何といっても人命尊重からこなければならぬと思います。そこで私たちといたしましても、人命を尊重するために施設の点はどうか、あるいは規則を十分にする、いわゆる教育面はどうか、精神面はどうかというふうなことを非常に強く主張をし、そのためにこうした法律改正も行なわんとしておるものでありまして、従って今局長からも御答弁いたしましたように、人命尊重を中心としてさまざまな法律、さまざまな施設、そういったものが検討されなければならぬ、こう考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/12
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013・中村重光
○中村(重)委員 もちろん保安というのは人命尊重ということからやらなければならないし、法律改正もそれにのっとってやるんだ、それは当然のことだと思うのです。しかし実際問題として、今まで中小炭鉱を中心として災害が引き続き起こってきた。その面からどうしてもこれではいかないのだということを保安の衝に当たっている局長はお考えになって、もっと国が強力な監督権というものを持たなければならぬのだ。ところがやはり私企業という形において、国がやることについての限界があるというようなことではないかと思うのです。しかし、何よりも大切なことは人命尊重だ、このことを考えてみるときに、もう一歩進んで国が責任を持つてそこまでいかなければならぬと私は思う。単なる監督行政ということでは、保安の完璧を期していくということにならないのじゃないか。この今度の改正にあたって、単なる罰則といったようなこと、あるいは監督を何か強化していくといったようなことだけでなしに、やはりもっと進んで国の責任において保安はやらなければならぬというようなことについて突つ込んで検討を加えられたという点が、私はあるのではないか、そういうように思うのですが、どうなんですか。
〔委員長退席、中川委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/13
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014・八谷芳裕
○八谷政府委員 国が積極的に監督の面を強化していく、こういう問題につきましては、一つは監督官の増員、並びにその増員におきましても、特に現地にこれを配置しまして監督を効率的に行なう、こういう面、並びに行政力をさらに強めるために炭田地帯を持っております九州、それから北海道の鉱山監督部は監督局にこれを昇格していく、こういう面を検討していったわけでございます。そうしてただいまそれぞれ設置法等で御審議をお願いしておるわけでございますが、さらに、個々の炭鉱に監督をにじませていく、こういう面につきましてはどういうやり方をとるべきか、こういう点につきまして十分この鉱業保安法の改正の過程におきまして私どもも検討を加えて参ったわけでございます。しかし私企業というような形からいきますと、一々各山あるいは二、三の山ごとに——中小では二つか三つの山を一人が受け持つというような監督官健在制度、こういう姿のものができるならば、これは一つの進んだやり方ではないか。しかし考え方としてこの制度がはたして十分進んでいるかどうかという点も、いろいろ問題点もあるわけでございまして、こういうものを彼此勘案いたしまして、まず鉱山側といたしましては自主的な管理の面を強めていってもらいたい。監督官の増員に対応いたしまして、各山元にも自主的な保安管理の面を強めていってもらいたい、こういうふうな考えがあったわけでございます。この法案の形ではこの面は出ておりませんけれども、中間答申の中には保安管理者を全鉱山になるべく及ぼしていく、これは資格の問題ともからみまして、なかなか全鉱山に一挙に及ぼすということはむずかしい点もございますけれども、そういう方向で進めていく。さらに監督員というのが各山元に、千名以上のところには配置されなければならないようになっておりますが、この監督員というのは保安管理系統をわきの方から、第三者という言葉ではちょっと語弊がございますけれども、これは鉱業権者の配下にはあるわけでございますが、保安管理の責任者の系列から離れまして、監督員が横からこれをチェックしていく、こういう監督員も現在のような千名以上ということでなくて、さらにこれを中小鉱山まで及ぼしていく、しかもその監督員は、監督員の本来の業努を妨げるような他の作業にこれをつけてはならないというような意味から、これを専任の、用語として専任という言葉が適切かどうかは今後の検討に待ちますけれども、そういう専任体制でこの監督員を置く、こういう姿のいわゆる自主管理の強化でございます。この自主管理の強化の一環として法律に現われておりますのが、通産大臣または監督局長あるいは監督部長が処分した事項はこと保安委員会に通知して、労使協力してその対策を練っていく、こういう面にも一つだけ現われてきているわけでございますが、ただいま申しました三つの事項を合わせまして、自主的管理の面をまず進めていく。これは鉱業権者として、自分で災害を起こさないような方向に進むということが当然でございまして、こういう方向の方が、さしあたりとしては、監督官を各山元に配置するというような姿よりも、本来のあるべき姿ではあるまいか、こういうふうに考えて、この自主管理の面の強化をはかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/14
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015・中村重光
○中村(重)委員 確かにこの法律案の改正を見ましても、政府の行政指導という面から見ましても、保安を強化していくという熱意を持って取り組んでおるということは、これは認めるわけです。しかし、やはりもう一歩国の責任というものを強くした形が望ましい。戦時中において軍の機密兵器工場等は、軍は、私企業であっても、これはもっと強い権限を持って、これに対しては厳重な監視をしておった。こういうことから考えてみると、炭鉱の地下作業というものから見ましても、いつガス爆発があるかわからぬ、あるいは水没事故が起こるかもわからぬ、こういった危険な作業に従事するこの人たちの生命をどう守っていくかということについては、その事業が私企業であるとかなんとかいう問題をもう一歩進めて監督行政というものはやっていく必要があると私は思うのです。また中央鉱山保安協議会におきましても、さらに突っ込んで検討を進めておるわけでありますが、そのことにつきましては、なお一そう今までの考え方を進めて保安の万全を期していく、こういう形で取り組んでもらいたいということを強く要望しておきたいと思うのであります。
さらに、私どもは、大辻炭鉱の災害の状況を見に参りまして、監督官その他といろいろ懇談をいたしました際に感じたことでございますが、監督官というのは、よほど差し迫った危険というものがなければ、改善命令が実は出せないわけです。そこで、手を抜いておるということがわかっておっても、そのことが直ちに差し迫った危険に結びついておるかどうかということに対しては、そこに見方の相違ということもありまして、実は問題があるわけであります。それは、監督官としましても非常に苦心しておるところです。そういうことから保安規則というものができておると思うわけなんです。しかし保安規則ができておりましても、今度はその通りやらせるということになって参りますと、やはり先ほどから御答弁もございましたように、教育であるとか訓練という問題が出てくるわけであります。そういうようなことで、大辻炭鉱の災害の際に新聞に書いてあったのを私は見たのでありますが、いかに訓練が不徹底であるかということを痛感いたした一つの例といたしまして、火事が炭鉱で起こった、保安員がその火事を見てびっくりした、そして、あれよあれよと騒いでおる間に焼き尽くしてしまったということが、実は座談会の中に出ておりました。いかにいろいろな規則があり法律があっても、訓練というものが大切である。いかにこの訓練が未熟であり、行なわれておらぬかということの一つの例として、これを私どもは重視しなければならぬというふうに感じたのであります。
さらにこの大辻炭鉱では、あの坑内に火災が起こって、その際に救援作業に行った瓜生所長初め、入った人はほとんど保安員であったわけです。保安に対する認識というものは、その山におるだれよりも最も深い経験を持ち、認識を持ち、また責任を持っておる人たち、そういった人たちが、マスクをかけないでそのまま坑内に飛び込んでいって、あのように全員殉職という悲惨な状態に陥ってしまった。こういったようなことを考えてみると、いかに監督というものが不徹底であり、それに基づいての訓練、教育というものが行なわれていないかということを痛感したわけであります。ところが先日私の質問に対しても、そうした教育、訓練という問題に対しましては、あまり積極的な取り組みが行なわれていない。単に器具を備えたというような程度であるということを、答弁の中からうかがうことができたわけであります。こういったような問題は、非常に重要な問題なんです。これらのことに対しては、先日の答弁ではあまり満足できません。なぜ、こういった不備な問題をもっと改正するものなら改正して、完全なものにしようとしないのか、なぜもっと積極的な取り組みをやって教育を行ない、訓練を行なおうとしないのか、これらに対して一つ政務次官並びに局長からお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/15
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016・森清
○森(清)政府委員 先ほど来私るるお答え申し上げておりますように、何といっても鉱山保安確保の最大眼目は、それに従事している労務者にしても、監督する者にしても、あるいは経営者にしても、災害を絶対に起こさないのだという精神に徹底することだと思うのであります。従って、そのためには保安教育ということが一番大事なことではないかと思います。そこで、このことは先ほども御答弁申し上げましたように、非常に重要な事項として取り上げて、その具体的な方法について現在検討中でございまして、どうすれば一番徹底するかということを真剣に考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/16
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017・八谷芳裕
○八谷政府委員 ただいま先生から御指摘のあった通り、この保安の教育訓練、あるいは保安の順法精神を函養すること、また緊急の際に直ちに適切な処置がとれるようにすること、これはどういう規則ができ上がりましても非常に重要なことでございます。緊急の場合の退避についても、単に法律でどういうふうにしばりましても、日常こういう訓練をそういう本人たちにどうしてもさせておかなければならないというところから、先日の私の答弁はやや舌足らずであったかと思いますが、監督部におきましては、特に大辻炭鉱の例から申しまして、こういう日常の実例教育と申しますか、こういうものを再三保安管理者等を集めましてやるし、さらに監督官が現地に参りましても、どこでどういう災害が起こった、どうすればよかったかというようなことについては、よく保安技術職員等とも話し合いを進めておるわけであります。また特に必要性の多いものは、海底下の炭鉱等では一たび水が入ってくるというようなことになりますと、緊急の際に締めるシャット・ドアーというような単なる施設だけでは、十分に逃げられないというようなことから、再三そういう緊急の際の退避訓練ということを口をすっぱくしてやらせておるわけであります。しかしその面だけでは十分な成果が得られないということで、昨年の七月には警報の装置を重要個所にはつけまして、いずれの個所からも逃げ得るというような装置にするという省令改正を行ないまして、これを義務づけて、目下そういうやらせ方をとっておるわけであります。こういう施設面のものと、さらにベルが鳴る、あるいは赤ランプがつくという場合に、どういう形でどういう方向を通って退避すればよいのかというようなことを、日常の作業の面においても、たとえば昼食時間というようなときに、その払なら払の人たちが集まっておるところで係員が、もしここで何か起きた場合にはどちらに逃げるかというようなことも、いろいろと訓練をしておるわけであります。こういう面につきましては、今までも決して十分だとは申せないわけでございます。また特に炭鉱労働者におきましては非常に移動率が大きいということで、こういう保安教育の徹底しない面が非常に多いわけであります。こういう面につきましては、大きな根本的な問題として石炭鉱業を安定させていく、こういう大前提がなければ、次々に移動者が出てくるというようなことで、十分な保安教育の徹底を期し得られないということにもなるわけでございます。こういう方向と相待ちまして、今後も十分な保安教育の、あるいは訓練の指導に当たりたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/17
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018・中村重光
○中村(重)委員 炭鉱には保安委員会があるわけですね。この保安委員会には、規則が何かでやはり指導方法というものができておるんじゃないかと思うのです。それに基づいて保安委員の一つの義務づけというものもあるんじゃないかと思うのです。それによって、たとえば保安委員会は、一週間に一回なら一回、あるいは三日に一回なら一回、あるいは毎日点検をやらなければならぬとか、いろいろなことが義務づけられているのじゃないかと思いますが、そういう点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/18
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019・八谷芳裕
○八谷政府委員 現在の規定でございますと、保安委員会は月に一回以上開催しなければならない、こういう規定で、しかもそのやっておりますことは、保安に関する重要な事項を審議調査する、こういうふうになっておるわけでございます。その面につきまして、まだ一回以上必ずしも開いていないような中小炭鉱もございまして、これにつきましては、再三勧告等によりまして、必ず開いていくという方向で厳重な指導をやっておりますが、さらにこの法案の中にも、御審議をお願いいたしておりますように、監督局長、また監督部長あるいはまた通産大臣が出しました通達に対して、十分に審議をしてもらう、こういう法体系にしたわけでございます。ただこの条文だけから申しますと、監督部長からの通達の中にも非常に重要な事項もざざいますので、こういう面についても、通達がきたら、すぐにその通達に基づいて保安委員会を開催して、どういうふうにそれに対応するかというような問題を労使双方で十分話し合っていく、こういうふうにさせようということで、これは法律上は、通達というのは一つの注意事項でございますので、法律の面では載って参りませんが、実際上の指導で、この面までこの法律の精神をさらに押し広げていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/19
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020・中川俊思
○中川委員長代理 本会議散会後再開することとして、暫時休憩いたします。
午後二時三分休憩
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午後三時三十八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/20
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021・有田喜一
○有田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
鉱山保安法の一部を改正する法律案に対する質疑を続行いたします。中村重光君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/21
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022・中村重光
○中村(重)委員 時間の関係もありますので、簡単に質問いたしまして、次の機会に譲りたいと思うのですが、先ほど保安局長は、もっぱら法律の一部改正後における保安委員会の役割といったようなことをお話しになったわけですが、私が申し上げるのは、従来から保安委員会があったわです、ところが、どこまでその保安委員会の価値を認めて、これを活用してきたかということに問題があるわけです。御承知の通りに、保安委員会は労使双方が実は入っている。しかしこの保安委員会というものが、今までそう活用されてこなかった。全く形式的な存在というようなことを申し上げることは言い過ぎと思うのですけれども、この保安委員会に相当の権限を持たせ、先ほど私が指摘しましたように、保安点検等を十分やっていく、そこで保安上に支障がないように、その機能を発揮させていくという点に対しては、この保安委員会をあまり尊重する、活用するという形がなかったのではないか、そういうことを私は申し上げるわけです。今までこの保安委員会に対する指導あるいはこれの活用ということに対して、どのような考え方で臨んできておったのかという点をお尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/22
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023・八谷芳裕
○八谷政府委員 ただいま御質問の保安委員会の問題でございますが、保安委員会は本来保安法の中でも非常に民主的と申しますか、労使双方が同数ずつこの委員会の構成メンバーになりまして、保安に関する重要事項を調査審議する、そうして保安管理者に適当な助言をし、勧告をしていく、こういう会議体でございますが、従来のやり方を見てみますと、必ずしも法定いたしました本来の目的が十分に活用されていないうらみが、特に中小炭鉱においであったように見受けられるわけでございます。大きな炭鉱におきましては、労働組合関係も相当積極的にこの保安の面について保安委員会を活用するということをやりまして、非常に活発に動いているところが多いのでございますけれども、中小炭鉱におきましては、災害が起きた、あるいは保安の年次計画という面におきましても、十分にこれについて発言するような人が得られない面もあったかと思いますけれども、それより以上に、保安の責任は鉱業権者が負うんだというようなことで、こういう民主的機構が保安法の中で確立されながら、保安委員会の活用が不十分の点があったんじゃないか、こう考えられるわけでありまして、従来地方の各監督部ではこの保安委員会の議事録をとりまして、その十分なる活用が行なわれていないと思えるところにつきましては、この活発化につきましていろいろ勧告をして参ったわけでございます。しかし何と申しましても、法定されておりますところは、重要な事項を審議するというようになっておりまして、その重要なという面につきましては、これは鉱業権者が自分の認定によって、これだけのものが重要だというような考えで進む点が非常に多かったわけでございます。これは従来も鉱山には、特に人事面は別として、それ以外のものについてはこの保安委員会を大いに活用して、特に監督部長の指示事項等についてはこれを活用して対策を講じろというようなことは、再三にわたって指導してきたわけでございますけれども、従来のいき方は必ずしも私どもの要望に沿っていない面があったんじゃないかと思われる次第でございます。こういう点を勘案いたしまして、今回保安委員会に対する鉱業権者の通知義務を課したのも、一方におきましては、こういう保安委員会を側面的に、やむを得ず活用さしていくという形をとる必要もあるんじゃないだろうかということも考合えわせましてへ保安委員会に対しての重要事項というものは、従来は保安規程をかけるということだけがはっきりしているわけでございます。それ以外は単に重要な事項ということで、きわめて観念的といえば観念的な定め方であった。そこへ今度は政府の処分というものを明確にここに通知するということになってきますと、再三監督を実施いたしまして、そうして政府が法に基づいた処分をした際には、当然これにかけていかなければならない。こういう形の面からも、側面的にこの活用をはかっていく。本来の災害の防止というのは、きょうも再三話が出ましたように教育、訓練という面におきましても、すべての面において、その鉱山において働いておる人たちの協力が得られなければ、保安の完璧は期し得られないものだと考えております。今後は保安委員会を従来以上に非常に活発に活用してもらって、石炭鉱山の保安の確保に努めたいというふうに考えておる次第でございます。
それから、ちょっと御質問と異なる点につきまして、実はけさ炭鉱災害が一つございましたので、この際御報告を申し上げたいと思います。
炭鉱名は杵島炭鉱、災害が起こりました坑口は、第四坑というところでございます。それから鉱業権者は杵島炭鉱株式会社、これは住友の傍系炭鉱になっております。発生しました個所は東人道人車卸、人車を使用しているところであります。場所は佐賀県の杵島郡であります。発生の日時でございますが、三月二十七日、本日の午前六時でございます。労働者数は千六百六十名、出炭は月五万五千トンでございます。災害の概況でございますが、本日の一番方の早出人員二十名が、八両編成の人車で入坑しておったわけでございますが、この坑口から百五十メートル付近で坑道の崩落が起こりまして、ちょうど人車が通っておったところにこの崩落が起きたわけでございまして、コース元二両を残しまして、八両のうち六両が落盤に閉じ込められたわけでございます。午後二時二十分現在では、二十名閉じ込められたうちの十名は、自力で脱出して参りました。残りの十名のうち五名は救出をしたわけでございますけれども、六両目に乗車していた三名と七両目に乗車していた二名はまだ救出が行なわれておりません。目下救出作業中でございます。この崩落した個所は、まだ詳細な報告がございませんが、仕繰り作業付近であったようでございまして、ただいま福岡保安監督部の石炭課長と監督官が五名、計六名が調査に当たっております。保安法の審議の行なわれておるところでこういう災害の報告を行なわなければならないということは、保安を担当しております責任者といたしまして非常に残念であるとともに、責任の重大さを痛感する次第でございます。現地の監督部、監督官を督励いたしまして、今後こういう災害が起きないように、災害の絶滅を期するようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/23
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024・中村重光
○中村(重)委員 ただいのま報告で、お互いに非常に大きなショックを受けるわです。保安法の審議中でありますだけになおさらでありますが、けさ六時の事故を保安局長の方からただいま報告を受けたということになりますと、局長にはいつごろ連絡があったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/24
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025・八谷芳裕
○八谷政府委員 十二時半ごろになりまして、監督部からの報告でございますけれども、電話連絡で、二十名、そしてみんな応答しておるから救出ができるだろうというふうな、私、現場の状況が全くわからないような報告を十二時半に受けたわけでございますが、その後その状況を確かめておりまして、二時二十分現在の状況をただいま取りまとめたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/25
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026・中村重光
○中村(重)委員 五名がまだ救出されていない、これの生命が大体どういうことなのか、救出が可能であるかどうかという問題。それから監督官の現場巡回はいつごろ行なわれておりますか。住友の杵島炭鉱ということになると、ただいま御報告がございましたように、相当大きい炭鉱であるわけです。そうした炭鉱で入坑中に落盤をしたということになりますと、そのことが相当問題だと思うわけです。それらについての報告は出ないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/26
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027・八谷芳裕
○八谷政府委員 ただいま御報告申し上げました以上に、その間の詳しい情報が入っておりません。通常、坑口からこういう人車の通るメインの坑道でございますから、当然保坑が行なわれておるのが一般でございますけれども、この災害の報告からいたしますと、ちょうどそこが仕繰り個所であったのではないか、仕繰り個所のところで暫定的なとめ方が悪かったのじゃないか、そこへたまたま人車が通って、こういう従来の災害に類例を見ないような——きわめて運が悪かったといえば悪かったわけでございますが、今までに類例を見ないような災害でございまして、これは当時の状況をよほど慎重に調査してみないと、これに対処する方策並びに本件に対する処理ということがまだはっきりいたしませんで、私ただいま、報告を受けたままここで御報告申し上げておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/27
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028・中村重光
○中村(重)委員 杵島炭鉱は大手炭鉱であるわけです。そうなると、鉱員が入坑するときは、保安員が落盤のおそれはないかどうか十分検査をすることが常識であるわけです。にもかかわらず、ただいまの報告によると、相当な落盤だということが考えられるわけです。保安上の手抜かりがあったことが十分考えられるわけです。そういう面から、事故というものを重視されなければいけないと考えるわけです。大手炭鉱でそういった事故が起こる。中小炭鉱においてはなおさら、大きな危険が予想されるわけです。次の委員会までにはもっと詳細な報告をしていただきたいということを要望しておきたいと思います。
なお先ほどの保安委員の問題ですが、ただいま局長の答弁によりますと、保安委員会は重要な事項を審議するという、協議機関的な面に重点を置いておられるように実は感じられるわけです。実際問題といたしましては、中小炭鉱はそういった会議というものは、何というか、常識的に考えられる会議形式というものではないわけです。何名かの保安委員の人たちが集まっていろいろな話し合いをし、通達がきた、あるいは勧告があった、こういったようなことで、それをもとにしての協議というものももちろんあり得る。しかし、中小炭鉱の現実を考えてみると、そこに保安員がいる。保安委員がもちろん炭鉱にはおるわけです。これが日常の一つの仕事として、保安委員の職責から十分な点検をしていくとか、あるいは、あらゆる面に注意を配っていくということが行なわれなければならぬ、こう思うのです。ところが中小炭鉱になると、労使の力関係が大手の場合と違うわけです。そういうことで経営者の力が非常に強いために、ともすれば、労働者側の保安委員の発言が非常に弱い、あるいは極端に申し上げると、なれ合いになっておるといったようなことも、私たちは先般現地視察に参りましたときに感じた。保安監督官が巡回に来るわけですね。そういう場合に労働者と経営者がむしろ一体となって、実際保安上注意しなければならないこと、そういう面を隠蔽するといったようなことをやっておるのじゃなかろうか、そういったような感じを実は強くしたわけです。それだけに中小炭鉱の保安問題というものは、そういった会議といったようなものに重点を置くのではなくて、現実にその保安委員会を活用するというようなことに十分一つ留意していただきたいということを強く要望いたしておきます。
なお、監督官のことですが、監督官の検査が、先日の上清、大辻炭鉱におきまして私たちが感じたことですが、事前通告を監督官がやるというわけですね。そのことが、私が先ほど申し上げましたような、労使一緒になってなれ合いというのか、どの範囲まで見せるかというような話し合いが実際に中小炭鉱では行なわれておるというような現実を実は知ったわけです。あるいは消火器がないとか、あるいは検査器がないというのを、よその炭鉱から借りてきて、そして検査が終わったならばそれをまた戻すというような、実にでたらめなことが行なわれておるというような事実があるわけです。それらに対して十分の注意が行なわれておるというようには思うわけですが、検査方法は事前通告制ではなくて抜き打ち検査というものがなければならぬと思うわけです。それらの点に対してはその後の行政指導ではどうやっておられるのか、まずその点を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/28
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029・八谷芳裕
○八谷政府委員 保安監督の検査方法でございますが、これにはただいまもお話がございました通り、抜き打ち的なものと、それから事前に通告してやる、こういう方法があるわけでございますが、私はこのいずれも大切ではないかということで、監督部長会議等のときは話し合っておるわけでございますが、かりにこれを抜き打ちばかりでやっていったということになりますと、そのあとのトレースが——現在の巡回頻度でございますと、多いところで年に十二回、あるいはさらにきびしく回っておるところもございますが、次のときまでには十分に行なわない、こういうところもありますので、ある場合には、事前にいつ何日どういう検査をするんだというようなことをやる、ある場合には、今度そのトレースにおきましては全く抜き打ち的にこれを行なう、こういう方向で、どちらか一方に偏するのではなくて、現場の状況あるいは鉱業権者の性行等十分ににらみ合わせまして、両方の方法でやっていく、こういうことが必要ではないかと思っております。現在もこういう二様のやり方を織りまぜて監督をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/29
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030・中村重光
○中村(重)委員 監督官の監督、検査の際は、保安委員である労働者の代表を立ち合わせておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/30
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031・八谷芳裕
○八谷政府委員 現在は必ず労働者を立ち会わせるということにはいたしておりません。保安の最終責任者の鉱業者というものは当然ついて参らなければならぬわけでありますが、しかし先ほども私が申しましたように、労働者の協力というものが保安の確保にはきわめて重要なわけでございまして、最近は、鉱業権者から労働組合にも話をいたしまして、労働組合の方でついてくるということになれば一緒に回る、こういうことにしておるわけでございます。直接、鉱業権者を抜きにして、保安監督官が労働組合に、一緒に巡視しようというようなことはとっていないわけでございます。この点は私も、できるだけ鉱業権者もこれに協力しまして、労働組合も一緒に回ったって決してマイナスの点があるわけではないわけでございまして、いろいろそこで監督官が行なった注意その他も、単に通達事項でなくて、こういう系統のものについては監督官が現場指示をやるわけで、こういう点につきましても、いろいろ組合としても把握してもらうということは、むしろ私としては好ましいことじゃないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/31
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032・中村重光
○中村(重)委員 政務次官にちょっとお尋ねしますが、今お聞きの通りですが、実はこの前の事故が相次いで起こった当時、私たちが痛切に感じたことは、保安面において労働者というものがあまり発言権がない、そのことが大きな不安であるというようなことであったわけです。もっと保安を重視して、それに労働者の存在というもの、発言権というものを強めていくようにしなければならぬということが、強く要求された。そして先般成立をいたしました炭鉱の保安臨時措置法、この臨時措置法の審議の際にも、社会党から修正案が出た。その修正案の中身は、御承知と思いますが、労働者に保安に対する勧告であるとか、通達であるとかいうものを周知せしめろということで、その義務を鉱業権者に与えようとしたところが、その際に、労働者にこれを通知するということではなしに、保安委員会には労働者も入っているのだから、保安委員会にこれを通知するのだということで、実は私たちはそれをのんだと記憶しております。ところがただいま局長の答弁を聞きますと、労働者がついてくればいいのだとか、労働者がついてくることは何もマイナスにはならないとかいったような、そういう答弁では、全く心外といいますか、熱意のないのに、私は聞いておりまして、率直に言って、むしろ憤りさえ感じます。そういうことであってはならぬじゃないか。少なくとも中小炭鉱では、先ほど来私が申し上げましたように、保安委員の存在というもが、きわめて力関係で形成されている。こういう点、少なくとも監督官が巡回をして検査をするという場合、鉱業権者がそれに立ち会う。その場合はやはり労働者の代表——私は保安委員である労働者と、こう申し上げた。そういうものがともに立ち会って、そして監督官の注意も聞く、また、どういうところが悪いのかというようなことについてのいろいろ監督官と話し合いをするということは、そういう中でこそ初めて保安というものが完全に守られていく、こういうことになるのじゃないか、私はこう思います。だから行政指導の中において、保安委員会はこう活用しろ、監督官の巡回検査の際は、経営者も労働者もそこに立ち会って、十分遺憾なきようにしなければならぬ、このようなことくらいの行政指導は、私は保安監督の責任者である局長としてはあるべきじゃないか、こう感じます。政務次安としては、お聞きになってどお感じになられましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/32
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033・森清
○森(清)政府委員 私は、ただいまの中村さんの御質問を聞いておりまして、全く同感でございます。現実に保安委員会そのものも労使双方から出て構成されておるものでございますし、建前からいって当然その鉱山の保安を守るために、それこそ上は社長から下は一鉱員に至るまで、そうした神経を使わなければならないと思いますし、同時に、監督官が来てそうした指示、監督をする場合でも、労働者の一人々々に徹底するようにするためには、当然今中村さんが言ったような趣旨が生かされていかなければならないと思います。全く同感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/33
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034・中村重光
○中村(重)委員 保安局長とされても、先日から委員会の質問の際に申しげておる通り、あなたが非常に保安の問題に対して熱意を持っておる、答弁も技術的なそつのない答弁ということでなくて、率直にあなたが答弁しておられる態度というものには、むしろ好感を持っておるわけです。しかし今のは、答弁の態度という問題ではなしに、あなた保安局長としてこれはこうあらねばならないという自分の責任の中から当然出てこなければならないことなんです。ですからこの点に対しては、今の政務次官の答弁はあなたとしても異存はないと私は思う。ですから、今後の行政指導の面において十分遺憾なきようにしてもらいたいと思いますが、その点に対してはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/34
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035・八谷芳裕
○八谷政府委員 どうも私のお答えがまずかったかと思いますが、私はこれを強制するとか、法定するとかいう面でお答えをしたものですから、ああいうことになったわけでございますが、私も、御指摘のあった通りに、再三申し上げております通りに、労働組合の労働者の協力を得られない限り、真の保安確保はできないということは痛感しておる次第でございます。強力にこういう面は、保安監督官が現地に参る際にも厳重に、ただいま御指摘の趣旨が生かされるように努力をしていくつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/35
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036・中村重光
○中村(重)委員 それから、これもこの前の現地視察のときに感じたことなんですが、事故が起ったときに救護作業の応援に来るわけですね。その救護作業の応援に来たときに、大辻では救護に入った人がすべて殉職するという結果が起こったのですが、負傷するとか、いろんなことがあろうかと思います。そういう場合に労働基準法、労災法の補償があるのか。これは実は、救護に来られた方が非常な不安を持っておる。藤沼さんも一緒においでになって、そのことについてはどうもはっきりしてない、解釈によってどうにもなるのではないかというので、私ども実はこれではいかぬのじゃないかという感じを持ったわけですが、こういうことに対しては、基準法の関係で労働省の関係になろうかと思いますが、しかし、これは保安の責任者としては、労働省所管の問題であるからということではないと思います。これらのことについては、どういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/36
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037・八谷芳裕
○八谷政府委員 これは、労働省からあの問題のありましたあとに通牒が出ておりまして、補償するようにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/37
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038・中村重光
○中村(重)委員 それでは基準法、労災法ともに、いわゆる救護作業に出動する場合、すべてこの法律が適用される、こういうことなんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/38
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039・八谷芳裕
○八谷政府委員 通知が労働省から出ておりますのは、労災補償についてでございまして、そういう通知が労災補償について出ておりますので、今御質問があった通りと考えてよろしいと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/39
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040・中村重光
○中村(重)委員 なお当時、椎名大臣が現地に行かれたときに、中小鉱の保安指導員のことについて、特定指導員の制度を設ける、こういうことを実は約束されたのです。このことは約束通りに実施されておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/40
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041・八谷芳裕
○八谷政府委員 保安指導員制度は現在その予算を取りまして、石炭鉱山の方も金属鉱山の方も、民間から指導員を依嘱いたしまして、各希望炭鉱にこの指導員を派遣いたしまして、指導員に指導をやらせておるわけでございまして、現在指導員制度というものを設置いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/41
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042・中村重光
○中村(重)委員 それは前からあったのですよ。椎名大臣が約束されたのは、中小鉱に限って特定の指導員を設ける、そういう、制度を作るんだ、こういうことを言明になった。これは新聞にもはっきり書いてある。特にああいった事故が瀕発したあとで、現地に行って椎名大臣は当時約束された。ですから、その後そういった特定指導員の制度というものが作られておるかどうかということをお尋ねしている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/42
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043・八谷芳裕
○八谷政府委員 現在指導員と申しますのは、当切からこちらの方でも指導員として特定しているわけでございまして、現在の指導員制度はそういう特定した人に指導に当たらせるということにしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/43
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044・中村重光
○中村(重)委員 その特定した人というのは、あなたが先ほど御答弁になったように、民間の人を依嘱しているのですよ。そして指導している。そのことも問題なんですね。その指導員は有給じゃないんでしょう。日当か何か払うのですか、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/44
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045・八谷芳裕
○八谷政府委員 これは通産省の臨時職員としての取り扱いをいたしておりますから、当然日当も旅費も払っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/45
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046・中村重光
○中村(重)委員 それは何か毎日じゃなしに、特定の日に、講習みたいな形で指導されるのでしょう。その日の日当を払っていくのじゃないですか。有給の指導員制度というものを作って、そうして指導に当たっているということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/46
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047・八谷芳裕
○八谷政府委員 現在やっております制度は非常勤にいたしておりまして、ずっと常勤の指導員ではございません。しかし、保安監督官にもこの指導というものはずっとやらせておるわけでございまして、その監督官以外に技官もおりますし、そういう指導の面は、これは監督ということとあわせて行なっているわけでございます。ただいま民間から依嘱しておりますのは、非常勤制度にいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/47
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048・中村重光
○中村(重)委員 どうもずっとこうして伺ってきまして、まあいろいろ改善された点もあることは認めますけれども、こういった相当重視しなければならぬ面が改善のあとがないんですね。専任の指導員制度というものは、監督官からも強く要望されておる問題であると思うのです。私ども現地に参りまして、民間の指導員をその日だけ日当、旅費を払って、そうして指導を受けるといったようなことじゃなしに、もっとこの保安というものを重視するならば、専任の指導員というものを当然設くべきじゃないかと思った。今あなたはいろいろ制度があって、それらの人たちがいろいろと指導しているとおつしゃる。しかし民間の人をそのとき日当を払って来てもらって指導を受けなければならぬというところに、その必要性があるわけなんですね。にもかかわらず、いろんな問題はありましたでしょうけれども、ああいった事故が相次いで起きた、そのことで、保安の完璧を期するために、先ほど申し上げましたように、椎名前通産大臣が中小鉱に限って特定の指導員を設けるのだ、こういうことを約束しておるということ、さらには監督官の諸君が強く要望してきた民間の指導員の制度、こういうものに一歩も前進がないということですね。これじゃいけないんじゃないか、こう思うのですが、あなたは現在のような制度で何も支障はない、従って、椎名前通産大臣が当時おっしゃったこういう中小鉱の特定指導員というようなものも、これは事情を知らない前通産大臣が言われた、さらには、監督官が要求しておるところの専任のそういう指導員制度というようなものも、これは必要がない、こういう考え方に立っておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/48
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049・八谷芳裕
○八谷政府委員 保安の完璧を期します上には、一方においては法に基いてきびしい監督を行なうということが必要でございますが、その反面、そういう違反事項を起こさないような状態を作り上げていくということもまたきわめて必要でございまして、そういう面は保安技術指導、こういうことになるわけでございまして、これは私も監督の強化とともに、一方においては保安指導の面が非常に重要視され、また十分に活用されていかないと、真の保安の確保は得られないと考えております。こういう保安教育のすべての面につきまして、法改正委員会の方でも、この法律の現在提案いたしております改正関係の省令事項の次には、この問題を十分に取り上げて、実効を期せられる制度を何か作り上げたい、こういうふうに考えておる次第でございまして、速急にただいまの点は検討を進めまして、何か非常に効果の上がるような制度を打ち立てていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/49
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050・中村重光
○中村(重)委員 まだいろいろと質問したいこともあるわけですが、時間の関係もありますので、条文に入って二、三質問をしまして、きようは打ち切りたいと思います。
第十九条で、保安委員会に処分の通知をするということになったわけですが、これはさきに成立しております時限立法の保安臨時措置法の中にも実はあったと記憶をいたしますが、この処分の内容には注意であるとか、あるいは指示、勧告、そういったものも含みますか。それは処分ということにはならないんじゃないかと思うのですが、そういうことはどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/50
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051・八谷芳裕
○八谷政府委員 この保安委員会に通知いたします事項は、法律またはこの法律に基づく省令の定めるところによる処分でございまして、監督部長が現在行なっております注意、これは通達と呼んでおります。私の方では監督部長通達ということで、文書で指示しているわけですが、これは今度の改正の中での処分という中には入らないようになっております。当初中間答申を受けました際、中間答申の議論におきましては、それではどういうものに通知する義務を課するかという議論が出まして、二十四条、これは鉱業の停止命令でございます。それから二十五条の改善命令、それから二十五条の二、これも改善命令でございますが、そのほか二十四条の二の今度出ました鉱業の制裁規定、こういうもの、それから実質上は監督部長が通達する事項が、こういう命令事項よりも非常に多いわけでありまして、こういう通達事項まで入れたいということで答申が行なわれておるわけでございます。しかし法の制定の過程におきまして、こういう監督部長の一種の注意というようなものはどこにも法定されていないわけだから、これを法定して義務づけるということは困難である、こういうことになりまして、この点は改正委員会から、また中央保安協議会から答申を受けました点のうち、十分にこの改正においてその意が尽くされていないということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/51
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052・中村重光
○中村(重)委員 それはどうなりますか、監督部長の通達が今度の処分の中に入っていないということは、保安委員会の権限の範囲外ということになろうと思う。それでは先ほど来私がいろいろと質問いたしました、指摘をしましたそのこととも関連して考えてみますと、非常にやはり不安なんです。それではいかぬと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/52
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053・八谷芳裕
○八谷政府委員 ただいま御指摘のあった通りでございます。これは当然、保安委員会にかけるものは監督部長の通達まで含まなければ、私は実効を得られないと思っております。ところが法の作成、法文化の上におきましてはこういうことになったわけでございますけれども、この法の趣旨は当然監督部長の通達まで持っていかなければならぬということは明らかでございます。従いまして、それではこういう法文でこの趣旨を監督部長の通達まで及ぼす方法はどうするのかということでございますが、一つの方法といたしましては、極端なやり方をとるとしますと、通達というものをなくしまして、全部条文に基づく命令にしてしまえばいいわけなんです。そうしますと全部かかるということになるわけでございますが、現在通達が二千件前後、石炭鉱業だけでも行なわれていまして、そうしてこれには一々聴聞会も開催しなければならない、こういうことになりますと、九州で申しますと、監督部長は朝から晩までこの命令のための聴聞会だけやっておっても時間が足りない、こういうことになりますし、また必ずしも二十五条の条文に基づいての命令を行なわなくても、通達で十分に違反事項があるからここを改正しなさい、こういう通達で十分目的を達しておるわけでございます。しかし、こういう点で私どもが当初意図しましたことと、法律の作成技術の面においてそごを来たしたわけでございまして、従いましてなるべくこの通達というものは、二十五条の条文に基づく命令を一方においてはやりたい、こういうふうに考えております。しかし、それでも完全に通達がなくなるわけじゃないわけでございます。従いまして一方におきましては、炭鉱に通達を行ないます際に、一々、この通達事項のこの事項は保安委員会に通知して下さい、こういうことを現在のところ書き添えたらどうか、こういうふうに考えております。そういうふうに書き添えましたウェートと、それから通達自体もこれは同じ注意になるわけでございまして、その扱いにおいては別段欠けるところはないのじゃないかと思います。しかし、さらに私どもとして考えなければならないのは、一部の炭鉱におきましては、必ずしも条文の命令がスムーズに実施されているかどうかということも考えなければならぬと思います。まず、その通達が完全に通知が行なわれて、審議が行なわれたかどうか、こういう面も取り上げていかなければならぬと思いますので、今度は保安委員会の議事録を調製することにして、そうして監督官が回りました際にその議事録を見る。実際に通達まで含んで——通達は当然重要事項です。それは保安法の現在の十九条でも、「保安に関する重要事項を調査審議」するとなっておるわけです。ただ特定して指定しなかったというだけでございまして、本来通達事項というものは保安に関する重要事項であることには間違いないわけでございまして、当然これはかけてもらわなければならない。ただその手だてとしまして、一つは法定していく。ところが法定しただけではこの通達事項が十分に目的を達しませんので、あとは強力な指導、指示によりまして、さらに議事録の追跡等によって、私どもが意図いたしております通達までを含んで保安委員会に通知して、そうして審議をしてもらう、こういう方向に進めて参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/53
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054・中村重光
○中村(重)委員 それは今あなたが御答弁になった、この条文のいわゆる命令がその通り実施されておるかどうかというようなことですね。だから条文にあっても実施されておらぬじゃないか、だからという形になっているのですよ、今のあなたの答弁を聞いておると。それじゃいかぬと思うのですよ。そういう問題と、条文の中にぴしっと入れるという問題とは違うのです。やはり法律を作るということは、それだけ強くなるわけです。あなた方の当然法律によって拘束されるその義務というものも、より強くなると私どもは思うわけです。だから、今までこうして命令が実施されていなかったとか、あるいは条文の中に入っておらなくても、実施段階において議事録を見ていろいろとそれを直してやるとか、そういう問題とはこれは私は別だと思う。監督部長の通達というものの内容が保安上非常に重要なものであるということをお考えになるなら、この協議会の中間答申の中にもそれはあるわけですから、そういうものはやはり条文の中に入れていく。そうしてこれを実施されて、今までの条文の中にも実施されていなかった面もあるでしょう、そういうことからいろいろな保安上の大きな問題が起ってきておるのですから、だからその命令も守らせるように、さらには監督部長の従来の命令といったようなものも十分これを実施させるようにするということは、それはあなた方の責任でなければならぬわけです。ですから、この条文に入れていくということが、私はあたりまえだと思うのです。先ほど来、抜本的改正といったような問題もいろいろ私は政務次官に申し上げたのですが、今あなたからこうして伺ってみると、中間答申すらこの中に完全に法文として盛られていないということになってきて、いよいよもって政務次官の答弁と同じように、全く抜本的改正というものにはほど遠いというようにしか考えられない、これではいかぬと思うのですが、どうしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/54
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055・八谷芳裕
○八谷政府委員 これは私どもの立場といたしまして、決して抜こうとしたわけでもないわけでございまして、何とかしてこれを今度の法律改正の中に織り込んでいきたい、こういう方向で法制局とも相談しているわけでございます。これはもうぜひ私ども、先ほど申しますように、通達まで入れなければ、ほんとうの——あとは指導その他先ほど申しましたようなやり方をとって参りますけれども、やはりこういう条文の中に通達まで入るようなやり方をとっていったが一番いいということで、いろいろやってみましたけれども、法文作成技術としまして何分にも、通達というものが条文に基づく命令ですと、すぐこれにひっかけて持ってこれるわけでございます。そうしますと、その注意事項を、今度は通知をしなければならないと法定する、こういうことが非常にむずかしいわけでございます。極端なことを言いますと、監督部長は勧告することができる、あるいは指示することができるという条文が入れられるとしますと、その指示したものについてはとなるわけでございますが、監督部長は命令をちゃんとするようになっておりまして、監督することができるとかいうものを作ることも、これは変なものでございます。そういう関係上、やむを得ずこれは抜けたわけでございます。私どもも当初から、それだけは何とかしていきたい、こういうふうな方向で作文を進めていったわけでございますが、抜けた結果からしますと、先ほど申しますように、通達というものをできるだけ命令にほんとうに置きかえる、命令にさえ置きかえていけば、すぐこれに乗ってくるわけでございます。しかしそういう方向に全部が向け得られないと思いますので、これこれについては保安委員会に通知しなさいということを、また通達の中で指示していこう、こういうやり方、それからまた、それが実際に行なわれているかどうかということは、議事録で追跡していく、こういうやり方で、当初の中間答申にありました趣旨を貫いていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/55
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056・中村重光
○中村(重)委員 先ほど御答弁があったと思うのですが、処分の内容をもう一度お聞きします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/56
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057・八谷芳裕
○八谷政府委員 処分の内容につきましては、これは各監督部長並びに監督局長あるいは通産大臣が行ないます命令、それから許可、認可、こういうものはみんな入るわけでございます。しかし、それのうちどれをかけるかということは、今度の法律にも書いておりますように、省令でこれを規定していく、一々、許可を受けたとか認可を受けたというものを全部かけていくということでなくて、法改正委員会でも検討し合いましたように、二十五条の改善命令、これが一番中心になるわけでございます。それから二十四条の鉱業の停止、それから今度制裁規定で入れました二十四条の二の鉱業の停止命令、それから二十五条の二、これは二十五条と同じ趣旨のものでございますが、侵掘個所については鉱業の範囲内かどうかという議論から、二十五条の二ができ上がっております。この四つを省令では入れていったらどうか、しかしこの問題につきましては、さらに法改正委員会の方で、省令の段階でどれとどれを入れていくということは検討していこうということにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/57
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058・中村重光
○中村(重)委員 それから、使用人以外の者に作業させる場合、いわゆる請負人、これに対しては、今度はその際は届出をしなければならぬということになってきたのですが、それは保安委員会の同意というものは必要ないのですか。そういうことになっていないのですが、その必要は認めなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/58
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059・八谷芳裕
○八谷政府委員 今回、請負をする者、これはここで用語としては、「その使用人以外の者」、こういうような表現が請負というものを現わしておりますが、その実態は請負でございます。この請負人を使用する場合には届出させる、こういうことにしておりまして、届出とございますので、一応向こうの方からその内容を届け出てくるということで、その以前に労働者との間でどういうような協定を結ぶかという問題は、現実には、この請負を入れる場合には行なわれているようでございます。どこも完全とは申しませんけれども、請負を入れる際には、労働組合の承認と申しますか、そういうものが現実に行なわれているようでございますが、この法律面では、こういう届出でございますので、ただいま御指摘がございました保安委員会の承認を得るというところまではやっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/59
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060・中村重光
○中村(重)委員 この請負人の問題は、今あなたは労働組合との話し合いが現実には行なわれている、こうおっしゃる、そういうところもあるかもしれない、しかし話し合いというものは行なわれていないのが多いんですよ。しかも請負の場合は、掘さくですか、それをやっていけないところもあるんですね。この前の事故の場合は、やっていけないところを請負人にやらせた、鉱業法違反というものが実際にあった。これは大きな問題だと思います。ところが現実に行なわれているということをおっしゃいましたが、やはり裏返して言えば、その必要を認めているのならば、法の中にはっきり、使用人以外の者にこれをやらせる、いわゆる請負制度というものは、届出の際に、あなたが特に努力したこの保安委員会の同意をもってということが当然でなければならぬ。まだいろいろ条文に——今触れた二ヵ条だけでも非常に重要な問題がありますが、まだ時間がかかりますので、きょうはこの程度で打ち切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/60
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061・有田喜一
○有田委員長 次会は明二十八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時三十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X01919620327/61
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