1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年三月二十九日(水曜日)
午前十一時開議
出席委員
委員長 有田 喜一君
理事 岡本 茂君 理事 齋藤 憲三君
理事 始関 伊平君 理事 岡田 利春君
理事 多賀谷真稔君 理事 中村 重光君
藏内 修治君 澁谷 直藏君
中村 幸八君 濱田 正信君
南 好雄君 井手 以誠君
滝井 義高君 渡辺 惣蔵君
出席政府委員
通商産業政務次
官 森 清君
通商産業事務官
(石炭局長) 今井 博君
通商産業鉱務監
督官
(鉱山保安局
長) 八谷 芳裕君
委員外の出席者
通商産業事務官
(石炭局炭政課
長) 井上 亮君
通商産業事務官
(鉱山保安局管
理課長) 小林 健夫君
労働基準監督官
(基準局監督課
長) 小鴨 光男君
労働事務官
(職業安定局調
整課長) 北川 俊夫君
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本日の会議に付した案件
鉱山保安法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一二四号)
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001・有田喜一
○有田委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、鉱山保安法の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。
一昨二十七日、佐賀県杵島炭鉱において発生いたしました落盤事故について、政府から発言を求められておりますので、これを許します。森通産政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/1
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002・森清
○森(清)政府委員 先般この石炭対策特別委員会の開催中に、杵島炭鉱におきまして落盤災害がございましたので、とりあえず私ども連絡がございました概略について保安局長から当委員会に御報告を申し上げておったのでありますが、さらに詳細が入手できましたので、ただいま課長から御説明、御報告申し上げたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/2
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003・小林健夫
○小林説明員 杵島炭鉱の落盤災害につきまして、それ以後に入りました状況について御説明申し上げます。
お手元に資料を差し上げてございますが、炭鉱名、鉱業権者、その他この前の御報告のときと変わっておりません。罹災者数におきまして、これまでは行方不明といいますか、まだ五名ほど見つからなかった者があったわけでございますが、死亡者五名ということになって収容されております。また、重傷軽傷合わせまして十二名ということになっておりまして、罹災者は合計十七名でございます。
概況は、災害の発生いたしました東人道の人車卸はアーチわくの岩石坑道でございまして、平均十六度の傾斜ということになっております。災害当日、一番方の入坑者二十名が、八両編成の人車で入坑したわけでございますが、坑口から二百四十二メートルのところで天盤が崩落いたしまして、一両を残して七両が埋没いたしまして、乗車中の者のうち十名が自力で脱出いたしまして、残り十名中五名は間もなく救援者により救出されておりますが、六両目に乗車しておりました二名と、七両目に乗車しておりました三名が死亡いたしましたほか、十二名が重軽傷を負っております。
死亡者は、二十七日の十九時に一名収容したのを初めといたしまして、二十八日の一時七分を最後に全員の収容を完了いたしております。
崩落しました範囲は、長さ三十三メートル、幅約五メートルでございまして、崩落量は約四百立方メートル、千トンということになっております。
復旧には約一カ月を要する見込みでございます。
原因につきましては、目下福岡の鉱山保安監督部から課長以下現地に出張いたしまして、調査中でございます。まだ原因については明確な報告は入っておりません。
概略以上のような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/3
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004・有田喜一
○有田委員長 ただいまの発言について質疑の通告がありますので、これを許します。井手以誠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/4
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005・井手以誠
○井手委員 ただいま杵島炭鉱の落盤災害についての御報告をいただきましたが、二点お伺いをいたしたいのであります。
ただいまの報告は災害直後のものではないかと思いますので、その後の情報がどうなっているか、特に罹災者のことについて新しい情報が入っておれば御報告願いたいと思います。それが一つ。
いま一つは、原因は今調査中だということでございますが、保安関係について、若干保安上の施設に不用意がなかったか。この点は、かねがね炭鉱と組合間に保安施設の強化について交渉が行なわれておりましたので、あるいはという懸念もありますので、もしその点の調査が若干でもわかっておりますれば、御報告いただきたいと思っております。
以上二点であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/5
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006・小林健夫
○小林説明員 罹災者の点でありますが、現在まで入りましたところでは、これは御報告にも一部あったわけでございますが、死亡者五名の収容状況は、二十七日十九時に一名、二十七日十九時十五分に一名、二十二時に二名、二十八日一時七分に一名というふうに報告が入っております。それから、重軽傷十二名と申し上げましたが、その中に救援に参りました者一名が罹災している模様であります。現在のところ入っている状況はその程度であります。
それから原因の点でございます。災害前の検査といたしましては、災害が発生をいたしました第四坑につきましては、三十六年十二月八日から十日にかけまして巡回検査を実施しております。その結果、ある程度こちらで注意した事項が認められて、やっております。内容といたしましては、通気の関係、坑道施設の関係、電気施設の関係等につきまして、約二十項目ほど注意を行なっている模様であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/6
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007・井手以誠
○井手委員 保安上の注意事項について、当日までにその注意が注意通りに実行されたかどうか、その点はわかりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/7
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008・小林健夫
○小林説明員 特に坑道の関係でありますが、注意いたしました事項、坑道の仕繰り関係には会社側でも相当意を用いておりまして、災害当時は、坑内夫一千二百五十名でありますが、その約四〇%を仕繰りに従事させていた模様のようであります。大体平時の三倍程度のものが仕繰り関係にかかっていたという状況のようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/8
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009・井手以誠
○井手委員 はっきり聞き取れなかったのですが、注意事項については会社側で実施したかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/9
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010・小林健夫
○小林説明員 それぞれの項目一々について、これは現在までに完全に実施している、これは実施していない、そういうところまでまだ具体的な報告を受けておりません。今回の災害に直接関係しますのは、特に坑道の維持の関係だと存じます。坑道維持の関係につきましては、今申し上げましたように、坑内夫の約四〇%、約六百名を坑道の補修関係に充てまして、その是正といいますか、坑道を修理することに力を注いでいた模様であります。ただ、仕繰りの作業は、今回災害が起こりましたところは主要坑道でありますが、切羽に近い方からだんだんと修理を進めていくという方法をとっていた模様でございます。人車坑道につきましても現在実施中のようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/10
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011・井手以誠
○井手委員 原因についてはただいま調査中でございましょうから、あらためてお伺いをすることにいたしたいと思います。
本日は私はこの程度で終えますが、昨年私の近所の長部田炭鉱でガス爆発があり、九名死亡しました。小さな炭鉱でそれだけの大災害を起こしたのでありますが、いまだに原因がわからないようであります。関連してお伺いしておきますが、あなたの方にその原因について報告が来ておりますか。まだ一年にはなりませんけれども、半年以上にはなると思います。なお原因がこの間まではわからなかったようでありますが、どうですか。佐賀県東松浦郡相知町長部田の長部田炭鉱です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/11
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012・小林健夫
○小林説明員 現在まで、まだ原因についての報告は入っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/12
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013・井手以誠
○井手委員 ここ一、二カ月は知りませんけれども、正月ころまではまだその原因がわかっていないようであります。従って、原因不明のために労働者災害保険の支払いが内払いだけで済んでおったのです。罹災者の家族も困っておるのです。それにもまして、やはり保安上その原因がわからないということはなかなか不可解です。
この保安問題については、ここ一両年非常にふえて参りまして、各委員からも国会のつど、きびしく保安上の注意をいたしておるのであります。なお、杵島炭鉱の問題についてはあらためてお伺いをいたしますが、引き続いて起こっておる災害については、再びこういうことのないように厳重に保安上の注意を各炭鉱に通達をしてもらいたい。これを特にお願いいたしまして、本日はこの程度で私の質問を終わります。
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014・有田喜一
○有田委員長 次いで、議題となっております鉱山保安法の一部を改正する法律案について、質疑の通告がありますので、これを許します。中村重光君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/14
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015・中村重光
○中村(重)委員 私は、ただいま議題となっております保安法の内容に対しまして質疑を続けて参っておりますが、前会の委員会でも申し上げましたように、十九条の二項による保安委員会に対する鉱業権者の通知の義務というのは、保安法二十四条ないし二十五条の処分の内容だけを通知するということでは不十分である、従って、鉱山保安監督部長の勧告並びに通達事項も、当然保安委員会に通知する義務を鉱業権者に負わせなければならない、このことを申し上げたわけであります。これに対しては、監督部長の勧告あるいは通達の義務を負わせることになってくると、聴聞会をひんぱんに開かなければならない、現在ですら二千件くらいに及んでおるから、これを法定化していくということになってくると非常に繁雑だ、こういった御答弁があったわけであります。私はその答弁には満足できません。法定化すると非常に繁雑になるというが、私どもが法定化を主張しておりますのは、保安が非常に重要であるという考え方の上に立って申し上げておる。そのことを省令にゆだねるということになってくると、これは繁雑ではないか。法定化すると非常に繁雑になってくるというようなことで大切な保安関係の法定化を回避するということは許されない、このように考えるわけであります。聴聞会が多過ぎるならば、このことを十分精査して、これを整理するという必要はあるかもしれません。しかし、法定化を避けるということは絶対に容認できないわけであります。これらの点に対してどうお考えになるか、はっきりお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/15
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016・小林健夫
○小林説明員 多少この前の説明で不十分な点があったかと思いますが、聴聞会の手続が大へんなので法定化を避けるという趣旨とはちょっと意味が違うのでございます。現在、違反事項等がございますと監督部長が通達を出して注意を促しておるわけでありますが、こういったものは、はっきりした法律に基づいた処分というわけにいかない。従いまして、法定化という場合の対象に非常にしがたい。これは法律制定の技術上の問題となるわけであります。従いまして、私といたしましては、むしろそういう場合には通達といったようなことでなくて、できる限り——現在でも鉱山保安法第二十五条で法律または規則に違反するというような場合には命令が出し得ることになっておりますが、むしろはっきりした命令として乗せていく。命令を出していくということになりますれば、これは明瞭に鉱山保安法二十五条に基づく命令ということになりまして、今回この保安法の改正が認められるということになりますれば、これによって保安委員会への通知事項に入ってくるということでございますので、現在やっております通達というようなものはなるべく命令に移していきたい、命令としてはっきりした処分にしていきたい、こういう考え方であります。ただ、そうなりました場合のことをつけ加えて申し上げたわけでありますが、二千件からあるものは、重要なもの、それほど重要でないものと、いろいろあるわけであります。これを全部二十五条による命令として出すということにいたしますと、その間、聴聞あるいはただいま申しましたいろいろな手続がございまして、なかなかそこまでいきがたいのではないかということを申し上げたわけであります。われわれとしては現在出しております通達のうち、重要なものは極力二十五条に基づくはっきりした命令として出していくという方針におきましては、全然それを避けるというような考えは持っていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/16
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017・中村重光
○中村(重)委員 私は昨日の委員会で中野参考人に申し上げたわけでありますが、この保安法は省令への委任事項が多過ぎる、非常に重要な法律であるからこれを法定化するということに持っていくべきではないか、ということを申し上げた。これに対しては、お聞きになっておったと思いますが、非常に参考になる意見だということで参考人も肯定をしておられたわけです。さらにこの保安委員会のことに対しましても参考人の意見を徴しましたが、中野参考人は、これまたお聞きの通りです。保安委員会というものは活用していなかった、保安の完璧を期していくについては、労働者が入っているところの保安委員会を活用していくことが必要である、ということを参考人も意見の中に申しておったのであります。そのように考えてみますと、ただいまの御答弁もありますが、この保安委員会に付議すべき事項、このことをはっきりしていく必要がある。ただ運用の面で、通商産業局長のいわゆる行政指導によってそういう方向に持っていくということでは、私は不十分だと思うのであります。特に中小炭鉱の現状を考えてみますときに、その感を深くいたします。従いまして、法定化をしてはっきりして、また省令において明らかにする面においても、保安委員会を十分活用するように、これに付議するという形を明文化していく、運用という形にゆだねない、こういう形にやってもらわなければならない、そういった考え方を持つのでありますが、それに対してはどのようにお考えになるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/17
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018・森清
○森(清)政府委員 昨日中村さんが中野参考人に御質問をしておられるところを私は聞いておりまして、中野参考人も非常にりっぱな意見として耳を傾けたように私も聴取いたしました。そこで、私といたしましても中村さんの御意見には十分うなづけるところがございますので、一つ今後の研究課題として十分研究を続けていきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/18
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019・中村重光
○中村(重)委員 次に、二十三条の二で、掘さくの作業並びにこれに伴うところの作業に使用人以外の者を従事させるときは、その鉱業権者に届け出の義務を課したのでありますが、このことは非常に重要なことであります。特に、石炭問題に対するベテランの同僚委員からも、このことに対しましては詳細に質疑があろうかと存じます。従いまして、私は前回の委員会で申し上げた点をさらに強調しておきたいと思うのであります。前回の委員会で申し上げましたように、この非常に重要な事項を保安委員会に付議する、保安委員会の同意を得る、あるいはこれが協議機関であるという形が適当でないとすれば、いわゆる保安委員会の議を経て届け出をする、こういったことが必要であるのではないか、そのことを申し上げましたが、さらに慎重にこのことを検討して参りますとき、私はこの組夫、請負という制度が法定化して表に出てくるということになって参りますと、特に慎重に取り組んでいかなければならないと思う。この組夫で働くところの労働者に対しては、鉱業権者は作業に対する指揮監督権はない、保安に対する監督権はある、こうなって参りますと、保安と作業というものが切り離すことのできないものであることを考えてみますとき、ここに非常に危険な問題が起こってくるということを考えさせられるのであります。従いまして、この組夫をして坑道の掘さく作業並びに鉱物の運搬等の作業に従事せしめることは適当でないのではないか。むしろ積極的に、現実の保安上の問題から勘案するとき、これを禁止するという態度をもって臨むべきではないか、このように考えるのであります。しかし、先ほど申し上げましたように、このことに対しましてはさらに詳細に突っ込んで同僚委員からの質疑があろうかと存じますので、その際に詳細な御答弁をお願いいたしたい、このように考えます。従いまして、私のただいまの質問に対しての答弁は求めません。
次に、第二十四条の二を加条しまして、「この法律又はこの法律に基づく省令に違反したときは、その鉱業権者に対し、一年以内の期間を定めて、その鉱業の停止を命ずることができる。」ということになっておるのでありますが、この条文は行政命令であると思います。従いまして、法五十五条及び五十七条等の刑事処分というのがございますが、この保安法に違反した場合刑事処分と行政処分の二つの処分を受けることになると思いますが、その通りであるかどうか、お答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/19
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020・八谷芳裕
○八谷政府委員 行政罰と刑事処分とは、これは別個でありまして、両方が同時にかかる場合もありますし、あるいはかける必要のない場合もあるかと思いますが、少なくともこの二十四条の鉱業の一部の停止を命ずるというような場合には、一方におきましては条文違反として当然これは送致いたしましてやるべきものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/20
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021・中村重光
○中村(重)委員 ところが、この二十四条の二を読んでみますと、どうもはっきりしないわけですね。この法律のすべてに違反した場合に処分を受けるのか、あるいはその法律の条文の一つに違反した場合にこの条項の処分を受けるのか、その点明瞭でありません。一つ、はっきりお答えを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/21
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022・八谷芳裕
○八谷政府委員 これは「鉱業権者がこの法律又はこの法律に基づく省令に違反したとき」という書き方でございまして、いずれか一つの条文に違反したときには、一応この二十四条の二に該当することができるわけでございます、命ずることができるようになるわけでございます。すべての条文と申しますと、これは石炭だけでも何百条とありますから、これはもう、何らかの一つに違反したときでもかけ得る。ただし、実際の取り扱い方といたしましては、特に重大災害に直接結びつくような、通気のような問題の場合と、言葉は悪いかと思いますけれども、こういう重大な要素を含ました条文と申しますか、そういう場合等につきまして、このやり方につきましては個々の鉱山の違反状態を見まして適用させるわけでございまして、何回か違反したから直ちにこの二十四条の二を適用する、こういうわけには参らないと存じております。この条文はこういうふうにそっけなく書かれておるわけでございますけれども、実際の取り扱いは反復して、あるいは違反の態様が非常な悪質なもののとき、実際の運営はこういうことにならざるを得ないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/22
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023・中村重光
○中村(重)委員 そうしますと、その違反の軽重によって最高一年、さらに軽くなるとそれが三カ月であるとか、半年であるとか、こういう停止というものが行なわれる、こういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/23
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024・八谷芳裕
○八谷政府委員 違反の態様によりましてこれが最高一年と定めましたのは、この期間を定めないで単にその鉱業の停止を命ずるというような書き方は、どのくらいをやるのか、どこまでもつぶしてしまうのか、こういうこともございますので、一応最高限はどんなにしても一年以下でなければならない、こういうふうにこの法律では定めたわけでございます。実際の運営におきましては、とにかくこの条文は、いろいろなやり方をやってみましたが、最後のものと考えております。と申しますのは、最初は監督官が現地に行きまして、いろいろ注文いたして参ります。しかし、その重要なものにつきましては、監督部長が通達をいたしまして、改善の指示をやるわけでございます。ところが、その改善の指示をやりましても、十分に成果が上がっていない、あるいはさらに似たようなケースとしてこれが現われてくる、こういう場合には保安法の二十五条に基づいて、はっきり改善の命令を法的に行なう。通達事項違反というのは条文違反にはならぬわけでありまして、そういうことでは二十四条の二まで到達するということはどうかと思いまして、そういう場合には二十五条ではっきり改善命令を出す。その二十五条の改善命令をなおかつ聞かない、こういう場合に二十四条の二にいくものと考えております。その年限をそれではどのくらいやるかということは、やはり私ども保安の者といたしましては、鉱山をつぶしていくという観点に立つわけではございませんけれども、制裁規定とはいえ、やはり最終的には改善をして、安全な姿で作業をしてもらいたい、こういう念願を持っておるわけでございまして、なかなかそれを聞かないときに、いわば泣いて馬謖を切ると申しますか、そういう姿のものでございますので、やはりこれには改善ということが裏面においては相当に配慮されなければならぬのじゃないだろうか。広がりにつきましても全炭鉱を一律にやるということでなくて、ある場合には一卸とか、あるいは切羽というものに制限をされるだろうと思います。そういうものが反復して同じような二十四条の二で鉱業停止を命じられるというような悪質の鉱業権者については、制裁規定として当然のことでございますが、さらにこれを広げて、もう鉱業を営むには保安的には不適格者だ、こう認められるものにつきましては、一坑口全部停止を命ずる、こういう行き方、広がりを持つかと思います。それから、これは停止命令のときの広さでございます。ある場合には局限された部分の採炭を停止する。その場合には一坑口全体を停止する。これはまた一がいには言えぬわけでございまして、採炭の条文違反者とか、悪質なもの、あるいはその坑内の危険度の高いところが災害を起こした場合の災害の広がり工合でございますが、そういうところも十分ににらみ合わせまして、鉱業の停止と申しましても、これは一部の停止になるわけでございますが、そういうやり方をとる。さらに、どういう作業についてだけ停止をするか、採炭作業というようなものは当然やめてもらわなければならぬと思います。その範囲で鉱業の停止をやるわけでございます。しかし、ここだけは許しておる、あるいは連卸が整備していないためにそれが危険状態になっておるといった場合には、そのまま停止さしておったのでは全然改善が行なわれないわけでございます。保安法の目的にも沿わぬわけでございますので、連卸の方の作業はやらせる、これは改善作業でございます。そういういろいろな広がりと、それから作業の種類と申しますか、そういう縦の面横の面、両方にらみ合わせて鉱業の停止という姿を作り上げたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/24
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025・中村重光
○中村(重)委員 私はしろうとで、どうもよくわからないのですが、ただいまの御説明によると部分的な停止ということになるのですね。この条文の中の鉱業の停止というのは部分的な停止ということに解釈するわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/25
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026・八谷芳裕
○八谷政府委員 これはくどく書きますと、その鉱業またはその鉱業の一部、こういうふうな書き方をすればわかりやすいわけであります。ところが、その一部もその鉱業であるからということで、「その鉱業の停止」こういうふうになったわけでありまして、この中身は現在の二十四条でもそうでございます。「鉱業の停止」というのは一部の停止を含む、こういうふうな解釈でありまして、この場合にもそういう解釈のもとにこういう条文にしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/26
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027・岡田利春
○岡田(利)委員 ちょっと関連して。保安法に基づく部長の命令は二十七条に定められておるわけですね。しかも、保安監督官が部長の権限を代行するわけです。そこで、運用上の問題として二つあるわけです。法に基づく命令を出す場合と、それから部長通達といいますか、そういう二つの形式がとられておるわけです。しかし、法律、規則をずっと調べても、部長の通達の法的根拠はどこにあるか、こう考えるわけです。そうすると、通達根拠というものは実際保安法上私はないのじゃないかと思う。あるとすれば規則違反に該当する面、それは法二十五条になると思うのです。これもやはり命令なんです。これは保安規則に違反しておる、あるいはまた保安規則の定めておる基準を下回っておるという場合には、「移転又は鉱業の実施の方法の指定その他保安のため必要な事項を命ずることができる。」、これも命令なわけです。ですから、保安規則で坑道が規定上狭いというような場合、あるいはまた通気上どうも排気坑道の断面積が非常に狭いという場合も、すべて法の根拠は私は二十五条の命令だと思う。ところが、その命令で出さないで、通達とか何とかそういう方法で出すから、保安委員会に報告する場合に、改正点として問題になってくる。ですから、私は、部長通達というものは、あるいは監督官の権限というのは、監督部長の代行しかない。実際はそれ以外にはないはずです。その点が実際、法を運用している者と、われわれ法の根拠を見る場合とのズレが今日あるのじゃないか、こう考えるわけです。この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/27
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028・八谷芳裕
○八谷政府委員 ただいま通達ということが現実に行なわれております。これは確かに先生御指摘の通り、保安法を見ましても、保安規則を見ましても、通達をすることができるというような規定はないわけでございまして、通達というのは、あくまでこれは注意でございます。条文に違反しても、しかしこれに注意を与えれば直る。監督官が現場で注意を与えて参りますと、またそういう注意を与えたところはさらに監督表というようなものを現地に記録して参りまして、これだけ自分は注意を与えたということをはっきり向こうにも確認させるわけであります。さらに重要なものにつきましては監督部長が明確に通達を行なうわけでございますが、これは単に通達状、文書をやりっぱなしということでなくて、通達を読んだりもいたします。それから、すでに十分に相手が理解しておる場合には文書だけでございますが、そういうやり方をとりまして通達を出す、そして改善計画を作らせるというやり方をとっておるわけでございます。
それで、この法律の面からいたしますと、みな二十五条に集約されて参りますけれども、二十五条で改善命令を行なうということが法体系としまして一番はっきりしておるわけであります。また、これでやれば保安委員会にも通知義務を明確にするわけでございます。ところが、現在石炭だけでも二千件前後の通達をいたしております。これには一々、緊急な場合は別でありますが、聴聞会も開きます。九州だけでも約五〇%近いわけでありますが、通達が千件ございます。千件というと、まず一日に三件は通達をやる。こういうふうになって参りますと、それを部長が一々通達をやる場合には聴聞会も開く、こういう事務手続の面もあるわけでございますが、法の目的からすると、こういう事務手続の面がどうだからといって、通達をしておきたいということにはならないわけでございます。この辺は現実の問題としても、通達で十分その成果が上がると認められた場合には、一応注意でやっていって、しかし日ごろから悪質のものあるいは反復したものにははっきり二十五条の改善命令を出していく、こういうやり方を現実にとっておるわけでございます。しかし、この保安法をこういうふうに改正して参りました際には、何か通達ばかりやってますと、強力な指導をやるといってもその十分な成果が上がらぬのじゃないか、保安委員会に対する通知なんかも心配だという面もございまして、これは今後できるだけ通達というよりも、改善命令をやった方がはっきりしていいのじゃないだろうか、そうすれば二十四条の二に持っていく際にも、はっきり改善命令を出しておった、それから二十五条でございますと罰則も適用されるという面もございますので、これは相手もよく、ごく簡易なもの、あるいは監督官が引き揚げてくると改善されたという報告のあるのもございます。そういうものは別といたしまして、少なくとも重要なものはできるだけ二十五条の改善命令で行なったらどうだろうか、こういうふうに考えまして、ただいま監督部長とも先刻から、この面につきましてはそのやり方等につきましても話し合いを進めておりまして、今後はこういう方向でやって参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/28
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029・岡田利春
○岡田(利)委員 その部長通達というのは、行政上、運用上の問題で実際はやっておるわけです。しかし、法体系から見て、特に石炭の場合には、保安法からさらに四百条に上る石炭保安規則というものがあり、しかも、さらにそれぞれの山の実態に即して保安規程がある。これは届出をして認可を受けるわけです。そうなって参りますと、通達というのは何を根拠にやっておるかということを疑問に思うわけです。ですから、おもに二十五条の改善命令ですね、あとから二十七条で聴聞会も開かなければならないというところに私は無理があるのじゃないかと思うのです。ですから、あとの部長の権限は、これは聴聞会を開かなければならぬ問題ですが、二十五条については聴聞会を開かなくてもいいのじゃないか。改善命令の場合にはそういう工合に法の根拠を変えれば、今通達とか命令とかいうものが運用上非常に問題があるので、全部聴聞会を開いてやるということは実際にできませんよ。おそらく今のあれでは不可能じゃないかと思う。ですから、二十七条から二十五条をはずして、二十五条については聴聞会を開かなくてもよろしいといった方が、よりすっきり運用できるのじゃないかと思うのですが、実際運用してみて、この点についてどういう見解を持っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/29
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030・八谷芳裕
○八谷政府委員 保安法というのは、これが作られました当時からいろいろ、委員会規定、あるいは監督員の制度、こういう面から非常に民主的と申しますか、私言葉が不明確かとも思いますけれども、そういう姿のものが織り込まれておるわけでございます。そうしまして、改善命令をするのにも一々相手の意見も聞くという姿が聴聞会でございます。一方的に役人が、この場合は監督部長でございますけれども、監督部長が改善の命令を下すというよりも、一歩相手方にいろいろ言い分があるかどうかということをこの聴聞会で聞くという考え方が入ってきておるわけでございます。ところが、実際には運営といたしましては、一々そう聞かなくても、明らかに二十五条の条文に示す通り、規則等に違反しておる場合でございますので、この点は今後改善を考えた方がいいのじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。こういう聴聞会制度をはずすということになりますと、形の面において何か役所が非常に権限を持ったというふうな印象を一方において受けるということが、外部から見るとおかしいじゃないかと言われる点もあるわけでございます。しかし、事務的に申しますと、岡田先生御指摘の通りに、もう二千件近いものを、聴聞会を二週間前に通知して監督部長がこれをやるということは、そういう現実の姿から不可能に近いような状態になります。違反事項がだんだんなくなってくれば問題はございません。法律を作る際でも、そう違反事項があると思って作ったわけではないと思いますけれども、そういう一つの形から、運営上からこういう規定が定められておりまして、この点はどういう形でこれを条文改正をするのかということは、もう少し検討してみたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/30
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031・岡田利春
○岡田(利)委員 保安法の制定、保安規則の制定には、ずいぶん公聴会を開いてやったわけですが、これは上手の手から水が漏れた点ではないかと思います。二十五条に「鉱業上使用する機械、器具、建設物、工作物その他の施設の使用又は火薬類その他の材料、動力若しくは火気の取扱その他鉱業の実施の方法が、この法律又は」とあるのですが、法律を読んでも実際には何もないのだ。法律できめておることは原則的なことで、全部省令委任だ。そうすると、保安規則に具体的には全部ゆだねられておるのです。たとえば機械、器具等に関する制限とか、二、三ありますね。施設計画、性能検査、集積場の三つの規定があるわけです。ところが、その具体的な内容は全部省令への委任事項で、全部規則できまるわけです。ですから、法違反というけれども、二十五条の場合には直接の違反は出てこない。それ以外のやつは出てきますよ。だから、法違反で命令を出すものと、保安規則に違反しておるから改善命令を出すものとでは、実際ずっと見てみますと、法違反の場合は、二十五条の場合にはほとんどないわけです。どうしても規則の方の事項になるわけです。たとえば火薬の場合なんか見ても、きわめて簡単で、機械、器具等に関する制限についても、「省令の定めるところにより、機械、器具又は火薬類」、これは省令の根拠なんです。ですから、この二十五条の部面では、直接、法違反という問題は、機械、器具、施設の面については起きてこない。だから省令にゆだねられておって、省令に対する違反がどうか、それに対する改善命令を出すということだと思います。ですから、私はこの二十五条を他の条文、二十二条と一緒にして、聴聞会を開く制度というのは、特に鉱業権の一部または全部の停止があるから聴聞会を開かなければならぬ、だから規則違反の場合、改善命令を出す場合には、これはむしろ二十七条の聴聞会にかけるということをはずしていいのではないかと思います。省令で定めた事項に対する違反の問題ですから、そうすると結局、今度監督部長もしくは監督局長の命令で全部出せるわけです。その方がすっきりすると思うのです。実際にやっておることがこの聴聞会にひっかかってくるから、二十五条に基づく命令の場合は、いかなる場合でも二十七条の聴聞会を開かなければならぬから、便法としてウエートのあまり高くないものは、これは通達でやるということでやらざるを得ない機構にあるのが今日の保安監督の機構だと思うのです。ですから、この点は特に今、中間答申で、今回法が改正されるわけです。一つそういう点について、実情に即すかどうかという問題もあるでしょうから、保安協議会等でこの問題を一つ討議をして、もう一度改正する場合、鉱業法が変われば当然保安法も変わって参りますから、それまででけっこうですから、この点は十分一つ検討してもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/31
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032・滝井義高
○滝井委員 ちょっと関連しまして、今の改善命令の二十五条と、それから石炭鉱山保安臨時措置法の五条との関係です。石炭鉱山保安臨時措置法はもう通った法律ですね。これは五条は、通産大臣は総合調査をやります。「前条の調査の結果に基づき、必要があると認めるときは、採掘権者又は租鉱権者に対し、その石炭鉱山における保安に関する事項の改善に関し勧告をすることができる。」こうなっておるわけです。この二十五条の改善命令とこの改善の勧告というものは、一体どういう関係があり、どういう違いがあるのかということなんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/32
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033・八谷芳裕
○八谷政府委員 この二十五条はこの条文に示します通りに、「この法律又はこの法律に基く省令に違反している」こういう場合であって、非常に違反して状態が悪い、こういう状態なわけでございます。これは一般的なものでございますが、臨時措置法の方は、こういう条文に違反しているとかというよりも、むしろ現在はまだ改善すべき点が多々あるけれども、この炭鉱は将来大いに生きていける山だ、また金融的にもいろいろ改善さえすれば考慮のできる山だ、こういうところはこれに改善の勧告をする。そうしてこの改善の勧告はもっと、この条文違反とかなんとかいうよりも、石炭その立地条件、それから技術的能力あるいは経理的基礎、こういう大きな観点から改善を行なってもらいたいという勧告をするわけでございます。ちょっとこの立て方が、こちらの方は条文に違反して改善の必要があると思われるものについて、みな改善の命令を行なうというものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/33
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034・滝井義高
○滝井委員 ちょっとわかりかねますが、まず四条で、山に行って保安の確保のための調査をするわけです。その確保の調査をするものさしは何かというと、この「鉱山保安監督部長は、鉱業上使用する機械、器具、建設物、工作物その他の施設の使用又は火薬類」こういうようなものを、鉱山保安監督部長は鉱山保安法の二十五条に基づいておやりになるわけだ。ところが、そういうものがとにかく非常に不完全で鉱山保安法に合致してない、だから君の山はだめですよと、こうなるのが私は第一前提だと思うのです。そうなった上で、今度は総合的に、待て待て、これは経理能力はどうなんだ、それから技術能力はどうだ、こういうのをお調べになると思うのです。そうしてその上で、お前はだめだ、こういう決断が下ってくるのだと思うのです。そうしますと、実質的にはその改善命令の二十五条とこの臨時措置法の五条というものは、本質的にはものさしは変わったものじゃないと思うのです。五条は、二十五条の改善命令と別な法文の立て方、法律は別ですよ。しかし、そのものさしは、あくまでも鉱山保安法に適合していない炭鉱について、お前は知りなさい、こういうわけですからね。そこらあたりが、私が疑問に思うのは、二十五条は鉱山保安監督部長がおやりになるのですね。そして最終的には通産局長とも協議をやることになるわけでしょう。そうすると、臨時措置法の方は部長とか局長とか、そういうものは全部出てこない。通産大臣です。やり方も違うのです。ところが、通産大臣がやるについては、この鉱山保安監督局長なり鉱山保安監督部長あるいは通産局長、こういうところから上がってこないと通産大臣はできないはずなんです。ところが、この法律の方は、もう頭から政府とか通産局長とか、こう出てきているのですよ。どうもこの両者というものは、密接な関係があるにもかかわらず、法体系としては全然何の関係もない形になっているのです。これは私、ちょっと納得がいかないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/34
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035・八谷芳裕
○八谷政府委員 片一方のこれが何も遊離しているというようなことでなくて、監督部長といたしましては、現実に二十五条を適用する必要があればこれは二十五条を適用していくわけでございます。そして一方におきまして通産大臣といたしまして、これは監督部長と実際は一緒に仕事をすることは当然でございますが、そこの中で保安の総合調査を行ないまして、そうして悪いというものにつきましては、二十五条の改善の命令が出ている炭鉱が大部分でございますが、そういう炭鉱については廃止の勧告を行なう。しかし、いろいろな面につきまして、たとえば、この二十五条というのは法規違反とか規則違反について監督部長はやるわけでございますが、ところがこの総合調査の際には、えらい極端な場合を申しますと、そこの条文違反は何もない、しかし斜坑を切りかえなさいとか、そういう保安のための改善を行なえばこの山は十分に、経理的基礎、技術能力からするとやっていける、そういうところには、一方において廃止勧告をするとともに、そういう山に必要があれば改善の勧告をしていく。こういうことになっておりまして、この改善の勧告をしたものについても当然二十五条の命令はやりますし、それから廃止の勧告をしたものについても、それを聞いたあとはやりませんけれども、廃止の勧告を聞かない場合には、また追っかけて二十五条の再度命令を行なうという場合も出てくると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/35
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036・滝井義高
○滝井委員 関連質問ですから。ちょうど私、質問しようとして入ってきたら、たまたま私の質問したいところをやっておったから聞いたわけです。どうも臨時措置法の保安に関する事項の改善の勧告と二十五条の改善命令というものは、本質的に私は違っていないと思うのです。とにかく炭鉱を再々調査して、改善命令を再々出さなければならぬような山は、いかなる理由があるにしてもこれはやめてもらおうということになると思う。しかも、その山がいわゆる非能率群に入っていれば、当然そういう形になるわけです。しかも、その停止というのは二十四条の二で一年以内の期間を定めてこれは停止を命ずるのでしょう。それが一年以内、八カ月か九カ月、山が停止を命ぜられたら、その山は今の段階ではこれはもう廃山ですよ。だから、その停止を命ぜられたら必ず鉱業権を抹消して、この臨時措置法の方にきてしまう。そうしますと、これはあなたの方は鉱山保安法のつもりだったら、その山は翌日になったら臨時措置法で抹消の申し出をしておった、こういうことになりかねないのですね。それは一日か二日停止するわけではないから、一年以内というと八カ月でも九カ月でも十カ月でも停止の期間はあり得るわけだから、それが改善をやらぬ限りは許さぬわけです。そうすると、資金的な面で行き詰まって、金を銀行が貸してくれないというと、それではもうこれに切りかえましょうということになり得るでしょう。そうすると、あなたの方は鉱山保安法のつもりで、改善命令のつもりだったところが、それをやらぬから停止しておったら、いつの間にか臨時措置法の方に切りかえ得るわけでしょう。切りかえ得ないのですか。切りかえ得るはずですよ、これは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/36
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037・八谷芳裕
○八谷政府委員 臨時措置法とこの二十四条の二の関連でございますが、ただいま切りかえ得るかというお話でございますけれども、向こうの方は任意に事業団に買収を申し込むとかいう、相手の任意性を持たしておるわけではないわけでございます。あくまでこちらが廃止の勧告をするという、主体性は通産大臣にあるわけでございます。そして、向こうの方が切りかえようと思っても、極端な話をすれば、何ぼやめて補償をもらいたいと言うても、通産大臣が廃止の勧告をしない限り、あとの交付金その他はこの臨時措置法には乗ってこぬわけでございます。実態は、そういうふうに非常に悪質なものは二十四条の二でいくよりも、臨時措置法で予算がある間はこれは廃止の勧告をした方が適切だと思います。しかし、これは一方は臨時措置法でございます、一方は恒久法でございますので、臨時措置法がなくなった場合には、当然そういう面は配慮されないわけで、先生おっしゃったように、一年以内でございますから、非常に反復して悪質なものについては、やはり相当長期の鉱業の停止を、どうしても聞かない場合には、一切羽からだんだん拡大されていく、こういうことが考えられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/37
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038・有田喜一
○有田委員長 委員各位並びに政府当局にお願いしておきますが、本日、理事会の申し合わせによりまして、本会議前、一時ごろまでに質疑を終わりたいという予定になっております。あとだいぶ質疑の通告者がありますので、質疑者も答弁者も簡潔にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/38
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039・中村重光
○中村(重)委員 それでは私は簡単に打ち切りまして、同僚委員の質問に譲りたいと思います。
そこで、この二十四条によって鉱業の停止を命ずることは今でも可能である。この行政処分を受けた実例は相当多いわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/39
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040・八谷芳裕
○八谷政府委員 二十四条は現在まで一件も行なわれておりません。この二十四条の考え方は、これは条文に明確には定めておりませんけれども、たとえて申しますと、新潟の地盤沈下と申しますか、ああいうふうに法規違反も何もないけれども、全体の操業の仕方から相当大きな鉱害が起こる。鉱害と申しますか、ああいう被害が起きておるわけでございます。こういう大きなものをやる趣旨でできておりまして、立て方としては、二十五条の改善命令をやればこれは改善されるものだ。こういうふうになって、条文違反があったら二十五条で改善させる。しかし、条文違反がなくて、そういう場合には改善もできないので、これは鉱業の停止というような広がりを持つ、こういう建て方が本来のいき方だったわけであります。しかし、もちろん一々の山について二十四条が適用できぬわけではないのでございます。その辺の穴をこの二十四条の二という制裁規定でこれは監督部長限りでやり得る、こういうものにしていきたい。二十四条ではこれは過去においてありませんでしたが、この二十四条の二が施行されるまでにやる必要があるものがあれば、二十四条を適用することも当然考えられるわけでございます。これはあくまで大きな広がりだけしかやらないというのではないのでございます。それは法の趣旨でございまして、必要がある場合には現在は、二十四条で鉱業の停止を命ずるほかはありません。しかし、その手続といたしましては、聴聞会は当然でございますが、中央保安協議会を全国から招集いたしまして、たとえば一部の停止でも全国から協議会を開催いたしまして、そこに諮問してやるわけでございます。そういう形態からしますと、一切羽とか一坑道とかの停止命令ということは従来は非常にやりにくかった、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/40
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041・中村重光
○中村(重)委員 私たちも災害の際に現場に行きますと、その中には、保安なんか問題にしない、握るだけ握って金もうけをするという悪質な鉱業権者がある。これには罰金なんか問題じゃない。これはある程度停止をやらなければこたえないのじゃないかといったようなことを、現地視察をしました委員として雑談的に話したこともあったくらいです。従いまして、この条文をここに加条したことに対する心がまえというものもあろうかと思うのでございます。ところが、この二十四条の二によって二十五条の改善命令を聞かない、いわゆる質の悪い鉱業権者に対する行政処分を適用する場合には、必然的に起こって参りますのは労働者の保障の問題です。この労働者の保障の問題は労働省所管という形に実はなっていくのではないかと思うのでありますけれども、これは保安上密接な関係があるから切り離すことができない問題になるわけであります。これらの問題に対して労働省との間にどのような話し合いがなされておるのか。また、この条文をこれから適用していこうという心がまえの中に、労働者の生活の問題、いわゆる保障の問題をどのようにお考えになったのか、その点をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/41
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042・八谷芳裕
○八谷政府委員 この二十四条の二を作ります際には、失業者が出るとかいうような問題は、そういう形でこれをなるべく行なわないで、先ほど申しますように、当初は、二十五条を聞かなければその局部的な面で鉱業の一部の停止を行なうというやり方で目的は十分達せられるのじゃないか。
〔委員長退席、始関委員長代理着席〕
広範にわたって一坑口全部をつぶすということはよほど悪質なもので、万やむを得なかったならばこれを適用するほかはないわけであります。その万やむを得ない、他に方法がないというときに初めてとる措置でありまして、最初からこれを制度的に鉱業の停止を行なって、それによって失業者が出るというふうに、広い意味で、そういう考え方でこれを運用するという気持は持っておりません。しかし、結果的にどうしても相手が聞かない、そういたしますと、これは鉱業権の取り消しに結びついている条文でございますので、これを持っていく以外にはないわけでございまして、そういう点につきましては、それに至りますまでの間には再三通達もいたしますし、二十四条までいくには二十五条の改善命令をやるわけであります。二十四条の二、これも聞くか聞かないかというようなことも、保安委員会には当然通知義務を課すわけでございますので、そういう面も労使協力して話し合いを活発に進めて、再び大きな広がりを持ったこの二十四条の二の停止命令がないようにやってもらいたい、こういうふうに考えておる次策でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/42
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043・中村重光
○中村(重)委員 ただいまの答弁の中からうかがわれることは、受け取り方によっては威嚇的な一つの条文であるとさえとられるわけであります。しかし、威嚇的な考え方というものでこういった条文を作ったものではない、こう思うのであります。また、一部であるからということで失業者の問題、労働者の生活の問題などは起こってこないのだという考え方も、私は現実にそぐわないと思う。保安というものを考える場合、保安の完璧を期していく、炭鉱災害の根絶をはかるという考え方に立つならば、やはりこれに基づいて起こってくる労働者の生活の問題等も十分考えて遺憾なきを期してもらう、こういうことでなければならぬと思います。さらにこのことに対しては一つ十分検討をしていただきたい。
まだいろいろ申し上げたいことがございますが、委員長に協力いたしまして、私はこれをもって打ち切りたいと存じます。先日来から申し上げましたように、保安というのは人の危害を防止するという重要な問題であります。中小炭鉱等におきましては、炭鉱の現在の状態ということもある程度の影響はあろうかと思いますけれども、やはり生産を優先し、保安といいますと第二義的に取り扱う、いわゆるこれを軽視するという傾向があるわけでございますので、この点に対しましては保安委員会を十分活用する。そして労働者の考え方、意見というものも十分反映していく。そして保安の実をあげていくといったことに十分努力をしていただきたい。こういうことを強く要望いたしまして、これをもって質問を打ち切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/43
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044・始関伊平
○始関委員長代理 多賀谷委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/44
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045・多賀谷真稔
○多賀谷委員 今議題になっております法律の第二十三条の二の項について質問を申し上げたいと思います。
まず、「使用人以外の者を従事させる」ということが書いてありますが、これはどういう場合を想定しての条文ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/45
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046・八谷芳裕
○八谷政府委員 これはいわゆる請負組夫を作業に従事させる場合、こういうふうなことを想定してこういう文章を作ったのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/46
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047・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そういたしますと、これは当然その場合には職安法第五条の六項に規定をされております労務供給業、さらに職業安定法施行規則策四条、要するに労務供給業でない請負契約に該当する場合ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/47
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048・北川俊夫
○北川説明員 二十三条の二できめてございますのは、法律上請負として認められる業者、そういうものを前提として、その業者の労働者がこういう作業に従事する、こういうことになろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/48
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049・多賀谷真稔
○多賀谷委員 では、この鉱山保安法の適用を受けない一般産業の場合についてお聞かせ願いたいと思いますが、一般産業の場合に、第一に、第四条の規定の中で「作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定されたすべての義務を負うもの」、この「すべての義務を負うもの」とは、安全も入っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/49
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050・北川俊夫
○北川説明員 三号につきましては、われわれの解釈では、一応の目安として労働基準法とか労災法、失業保険法、健康保険法、こういう関係における使用者あるいは雇用主がこういうものの義務を負う、こういうことでございます。従いまして、今御指摘の安全衛生関係についても使用者としての責任を負う、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/50
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051・多賀谷真稔
○多賀谷委員 一般の場合には、今お話がありましたように、使用者は安全の全責任を負っている。すなわち下請業者というのは、安全に対する全責任を負っているわけです。この場合に、鉱山保安法では使用者という言葉を入れないで、鉱業権者になっているのですね。これはどういう理由からですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/51
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052・八谷芳裕
○八谷政府委員 鉱山保安法では、鉱山の作業に従事する者、鉱山保安法でもその範囲は定めてございますけれども、その定められた範囲内で作業に従事する者はすべて鉱山労働者でございます。この鉱山労働者については、その雇用形態がどういうふうになっておるということを問わず、すべて鉱業権者が保安の責任を持つ、こういう定めでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/52
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053・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そういたしますと、この坑内における請負業者というのは、安全については何ら責任はないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/53
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054・八谷芳裕
○八谷政府委員 保安法上、その使用人という人が、たとえば保安技術職員、こういうふうにして鉱業権者から選任されておる場合には、当然責を負うわけであります。しかし、保安関係の技術職員にも何ら選任されていないという形になっておれば、これは鉱業権者の保安の指揮に従った責任者でないわけでございますので、この使用人とか、あるいは請負組夫に至るまでの幹部職員、そういう人たちが坑内保安係員とか、ハッパ係員、そういうものになっておれば、その範囲内において業務上そういう保安法上の責任を持つ、こういうことになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/54
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055・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そうすると、結局は、技術職員が下請人ということはちょっと珍しいですから、ほとんど考えられない。そういたしますと、下請業者というのは安全に対する何らの責任もなく、また労働者に対する指示権もないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/55
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056・八谷芳裕
○八谷政府委員 保安法上は、そういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/56
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057・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そうすると、労働省にお伺いしたいのです。施行規則第四条二号の「作業に従事する労働者を、指揮監督するものであること。」、これは坑内において一体どういう事情になるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/57
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058・北川俊夫
○北川説明員 労働者を指揮監督すると申しますのは、その下請業者が自己の責任においていろいろ直接指揮監督する、こういうことになります。ただ生先、御指摘の場合の保安との関係でございますが、坑内における下請業者は、その請け負っておる作業現場につきましては、作業の指示をするとともに、保安的な、そのセクションにおける部分的な指示をやれると思います。ただ、坑内作業という非常に特殊な環境、危険度の高い作業環境におきましては、そのセクションを含めましたさらに有機的な全体の立場から、保安管理者がそれを越えての指示ができる、こういうことではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/58
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059・多賀谷真稔
○多賀谷委員 保安についての指示権が全然ない者が、その作業場について、保安についての監督ができますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/59
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060・北川俊夫
○北川説明員 保安法上の指示とそれとは別個に、労働者と使用者、請負業者が結んでおります雇用契約に基づきます指揮命令というものは別個の体系ではあるまいか。その点で、その労働者を危害から守るということからの指揮命令は出てくるのではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/60
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061・多賀谷真稔
○多賀谷委員 危害から守る責任はないんですよ。法律はそんな不明確なことはしてない。監督者が多かればいい、あるいは命令系統が多かればいいということは、これを逆にいいますと責任の転嫁になりますから、法律は鉱業権者以外には命じてない。それは別の角度から保安管理者があります。こういう保安法上の系列以外には、そういう命令系統はあってはならない。そうしないと、監督の責任の不明確ということは災害の防止にならない。ですから、その人の作業については、保安については全部鉱業権者系統の命令権、監督権がいくわけでしょう。それに関しては下請業者というものは何ら文句が言えないわけですね。指示もしてはならない。こういうことになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/61
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062・北川俊夫
○北川説明員 保安法上の保安に関する指揮命令権が、今御指摘のように鉱業権者にあることは、その通りでありますが、下請作業業者といたしましては、そのもとにおいてやはり独自の指揮命令が委任されるということになるのではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/62
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063・多賀谷真稔
○多賀谷委員 委任はされませんよ。鉱山保安法は労働省の管轄でないからあなたはそうおっしゃるけれども、保安管理職員だけでなくて、保安の資格を持った職員がおるわけですね、それが監督するんですよ。それは全然別個なんです。業者との関係はないのです。ですから、文理的に解釈すると、保安については鉱業権者からなる系統で命令を受ける、作業については請負業者がやる、こういうことになるのでしょうが、事実問題としては、生産と保安は不可分であるというので、わざわざ労働省の安全規則からはずして、鉱山保安法を通産省に持ってきたのです。そういう経緯を考えると、これは保安と生産は一体だという理論に立つのです。一体だという理論に立つと、作業の命令は即保安の命令でもあるわけです。ですから、これは解釈は文理解釈ができるにしても、こういうことを許しておると、立法論としては非常に問題だし、行政上の問題としては大きい問題だと思うのです。保安局長どう考えられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/63
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064・八谷芳裕
○八谷政府委員 確かに先生の御指摘のような人間的管理というのが行なわれがちになるわけでございます。従いまして、この二十三条の二というのは、一般でございますと何ら、かかる二十三条の二のような条文を入れる必要はないわけでございまして、ひとしく入ってきたものは鉱山労働者であり、鉱業権者がその保安管理者あるいは保安技術職員を通じて保安管理を行なえば足りるわけでございます。ところが、そういう保安法の条文の上にさらに「当該作業にその使用人以外の者を従事させることに伴い」と、こういうふうな付加的なものをつけ加えまして、その間にたとえば保安技術職員が請負業者の方から出ている。出ているというのは身分関係がそうで、選任は鉱業権者がするわけでございますが、そうしますと今度は、鉱業権者の保安に対する意思が十分に反映しない。そういうおそれがある場合には、これは当然保安管理者、鉱業権者が直接雇用いたしております保安技術職員をそこにさらに配置する、そうしてチェックもする。こういう形をとって保安管理の完璧を期そう。これはケース、バイ・ケースでございまして、一がいにどの場合どの場合とは言えませんけれども、そういうふうにこの二十三条の二は、今の保安法だけでは十分に行なえないうらみがあるのじゃないだろうが、こういうただいま先生御指摘のようなきらいのある点をここで新しく起こして、さらに詰めていく、こういうきめのこまかい監督を行なうということにしたわけでございます。
〔始関委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/64
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065・多賀谷真稔
○多賀谷委員 逆に質問しますと、坑内における下請業者というのはほとんど責任はないのです。今申しましたように、安全というものはこれは生産と不離一体であるということになると、実際上の指揮監督をする——何を指揮監督するかわからない、作業に従事する労働者を指揮監督するというけれども、これは二号は実効はないのです。実効のないのに、あなたの方はこれを四条に適合する請負契約と見られるかどうか。それは今申し上げましたように、文理解釈は頭の中でできるけれども、事実問題として作業に対して指揮監督していないじゃないか。この場合、一体請負契約と見られるかどうか。労働省の解釈を聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/65
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066・北川俊夫
○北川説明員 もちろんこの一号から四号までの規定は、一体として組み合わせて具体的な事例に当てはめなければわかりませんので、その作業がたとえば、この法律でもそうなっておりますが、坑道掘さくの場合と鉱物運搬の場合とでは、それぞれ保安の指示とかあるいは作業の指示の仕方も違うと思うのです。この四条の四号で施設を提供しなければいかぬというようなことがございますが、そういう点から見ますと、個々の請負作業について判断いたしませんと、坑内の場合に、先生おっしゃるように、保安法の関係ですべての場合に、この四条で定める使用者としての指揮命令権あるいは責任を持っておらぬと一がいに言うことはできないのではなかろうか、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/66
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067・多賀谷真稔
○多賀谷委員 この四条で、請負契約と見なす労務供給でないという規定をし、この一号、二号、三号、四号はあるけれども、これはすべての条項に当てはめなければならぬ。もっとも昭和二十七年ですかにこの四号を変えましたし、それから行政通牒を変えて、かなり骨抜きにしたことを私は知っておるのです。たとえば、従来器材は要するに下請業者が持たなければならぬ、こういうことになっておったのを、賃貸でもいいなんということをやったものですから、くずれてしまった。この職安法というものは、その面においては非常にくずれてきた。これは今申し上げませんけれども、非常にくずれてきたんです。それでも、今の解釈でも、この四つ書いてあるような責任を持っておれば請負業と見なすというのでしょう。しかし、最も大きな作業について指揮監督権が実際上ないというようなものを、私は認むべきではないと思う。さらに聞きますが、一体この四号は炭鉱の場合にはどういうような状態になるのでしょうか。これは保安局長でもけっこうですが、お答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/67
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068・八谷芳裕
○八谷政府委員 この炭鉱等で通常行なわれています姿は、この器材関係は請負業者が自分でやっております。ただ、その契約におきまして、会社側からこれを貸与するとか、いろいろな面は出ておりますけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/68
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069・多賀谷真稔
○多賀谷委員 それでは私、具体的に聞きます。災害が起こりました福住炭鉱の場合、一番方は直接雇用する労働者であり、二番方は請負です。同じ作業場で一番方は直接雇用する労働者、二番方は組夫、同じ器材を使うのです。こういうことが四条に規定をする請負契約になりますか。労働省、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/69
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070・北川俊夫
○北川説明員 福住炭鉱の具体的事例は存じませんので、何とも言えませんが、同じような作業現場で同じ作業を、しかも同じ器材をもってやるというような場合には、四条の四号の要件は具備していない場合であると、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/70
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071・多賀谷真稔
○多賀谷委員 まだ言いますと、同じ切羽に四十名いまして、五名は組夫になっているという場合、これは一体請負契約に入りますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/71
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072・北川俊夫
○北川説明員 それは、その五名が特別な作業についておれば別でありますが、そういうふうに込みでやっておるというような場合には、請負の形態をなさぬように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/72
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073・多賀谷真稔
○多賀谷委員 ですから、私は鉱山関係の場合は、一般の労働者の場合と違うと思うのです。そもそも一般の労働基準法の全面的適用を受ける企業というものは、全部使用者に安全の責任をかぶせておるのです。ですから、使用者は基準法の適用も受けるし、それに引き続いて安全衛生規則の適用も全面的に受けるし、労災保険の適用も受ける、健康保険その他の社会保険の適用も全部受けて、その責任を持っておるわけです。ですから、造船における下請、あるいは鉄鋼における下請とは様相が違うのです、最も大事な保安について責任がないのだから。しかも、生産と保安というものは不離一体ですからね。こういうことを私は見のがすことはできない。ですから、昭和三十五年のごときは七カ所爆発事故が起こって、四カ所が組夫の作業場です。これはゆゆしき問題です。これについて労働省はどういう勧告をしたか。鉱山保安法によって労働大臣に勧告権があるのだけれども、一体七カ所の爆発事故のうち四カ所が組夫の作業場であったというようなことについて、どういう勧告をしたか。これは金を払うのですから、あなたの方で調査をしなければならぬはずです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/73
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074・小鴨光男
○小鴨説明員 請負業者の関係について直接勧告したことはありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/74
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075・多賀谷真稔
○多賀谷委員 請負は職安、それから金を払う方はあなたの方の労災、要するに基準局ですね、それから保安の方は鉱山保安局ということになっているので、どこかでやってくれるだろうという他力本願がこういうことになっている。
第一、この法律を作るとき、二十三条の二については労働省とかなり相談をされたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/75
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076・八谷芳裕
○八谷政府委員 事務的にはいろいろ相談をして参りました。改正委員会の席上では、労働省からも来てもらって同時にこれを審議したということはございませんが、この条文につきましては、いろいろその考え方につきまして相談もしたわけでございます。両者非常に緊密にこの保安の面においては進めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/76
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077・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そうすると、労働省は二十三条の二を協議するときに、一体どういう実態把握をしてこれに合議したのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/77
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078・北川俊夫
○北川説明員 二十三条の二の点につきましては、通産省から御相談をいただきまして、坑内掘さくあるいはその他の作業で安定法の施行規則の四条の要件に該当する下請業者が前提である、ということで協議をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/78
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079・多賀谷真稔
○多賀谷委員 実はこの職安法ができる以前、炭鉱には労務供給業として斤先の形態をとっておった。その斤先は戦争中になって重要鉱物の増産をいわれまして、これは使用権というものに一応法的に認めたわけです。その使用権というのが現在租鉱権になって、鉱業権者と同格に扱われておるわけです。ですから、本来炭鉱の場合はいわば労務供給業を法定化したのです。法定化した関係で、この労務供給業の入ってくる余地はないのです。それは下請の場合でも特殊な縦坑の掘さくとか、岩盤の掘さく、このことを指定しているのじゃないか。これは法律の書き方によってある程度認められた。しかし、基幹の職場である切羽において一緒に働かせておる、あるいは番が交代であるというようなことが実際許されるかどうかです。あなたの方は労務供給業と使用権は違うとおっしゃるけれども、もとをただすと、あれは労務供給業であるからいかぬということで、斤先だという脱法行為が行なわれたのです。出た初めというのは、それは労務供給業なんですよ。石炭は山がみんなで扱っておったのでしょう。ですから、そういう歴史的な発生を考えても、従来の労務供給業は、法的に斤先を認めて、使用権にし、租鉱権にして、一応はっきり法的な責任をかぶせたのですから、もう炭鉱には労務供給業というものは、供給というような形の請負契約というものは入ってくる余地が少ないのですよ。本来そう考えなければならぬ。そうすると、全部鉱業権者にやらしたらいいのですよ。ですから、そういった余地の少ないものに、現状から見ると一歩前進だというが、わざわざ二十三条の二を持ってくるというところに、私はもう少しそれを十分考慮して一歩前進した方がいいのじゃないかと思う。それから、戦後からずっとほとんど組夫の状態で入った作業場というものはなかった。炭鉱が組夫を入れ出したのはごく最近の事例です。それは昭和二十七年の職安法の施行規則の改正等について、炭鉱からは一つも意見が出てないはずです。鉄鋼とか造船には、ぜひこの施行規則の四条を改正してくれという意見はあったろうけれども、炭鉱はそういうことはできないのだという考え方を持っていたのです。最近いろいろ研究してみると、あるいはできるかもしれぬというので、どんどん入れられた。そこに事故が起こる原因を作っておるわけです。ですから、これはやはり保安監督の面にある政府としては十分考えるべきである。それからまた労働省としても、これは十分監督権を発動して取り締まるなり、あるいはまた抜本的な改正をする必要があるのではないか。少なくとも労働省あるいはまた通産省で協議をして、認められるある部分の請負というものは是認し、それ以外の請負は認めないという逆の法律に改めるのが至当ではないかと考えるわけです。そうしないと事故は絶えません。届出とか講ずべきであるといいましても、請負自体が私は問題だと思います。政務次官、どうでしょうか。大臣がいらっしゃらないから、あなたから御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/79
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080・森清
○森(清)政府委員 多賀谷さんの今御指摘の問題は、非常に重要な問題をたくさんはらんでおると私自身も思います。確かに保安法の面からいきますと、この請負というものが二元的な形になりまして、保安上にいろいろな問題を投げかけておりますことも事実であります。しかし、現実には、確かに過去におきましては請負の場合は坑外だけに限られておったというしきたりがございまして、それが次第々々に今日では坑内にも進出しておる。この現状を少しでも保安上前進させなければならぬということになりますと、どうしても改正はこの二十三条二のような形になってくるのであります。ただ、この保安法の改正にあたりまして抜本的というような問題がしばしば問題になりましたように、この問題につきましても、やはり私どもとしては、確かに請負制度そのものに、今後保安上の面からでなくとも、あるいは労働問題からの面からいきましても、いろいろと検討を加えていかなければならぬ問題であると思っておりますが、とりあえず現状を少しでもよくするためにということで、そういうふうな形になっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/80
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081・多賀谷真稔
○多賀谷委員 労働省にお尋ねしたいと思うのですが、労働者に対するすべての義務を請負業者は負わなければならぬというのは、法の考え方としては、安全の面は人に負わしてもいいということではないのです。ことに安全の面は、一番重大な生命の問題ですから、これは使用者である業者が持たなければならぬというふうに解釈するのが妥当ではないか。ただ、法律が別の法律になって、鉱業権者ということになっておるから、本人はない。しかし、それは義務を免れたというのではなくて、逆にいうと、その安全に対して責任を持たないような業者は請負業者でないと考えるのが妥当ではないか。これは施行規則で、法律事項でないからあえて聞いておる。あなたの方だけで勝手に直せるから聞いておる。立法事項でないから聞いておりますけれども、そういう考え方が出やしないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/81
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082・北川俊夫
○北川説明員 一般的に申しまして、この職業安定法の施行規則の四条につきましては、御指摘のように非常に抽象的なきめ方であります。炭鉱の場合とあるいは一般の陸上の作業の場合と、これだけではなかなか判定しがたいというような批判の声も出ております。最近われわれといたしましては、特に問題になっております炭鉱などにつきまして、具体的にこの条文をどういうふうに適用していくか、そういう点を検討いたしておりますので、先生の今御指示の点につきましては十分参考といたしまして、もしそういうような指示をする場合には、その際織り込んで参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/82
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083・多賀谷真稔
○多賀谷委員 これは生命の問題ですから、ゆっくり考えられないのですよ。普通の請負の場合ならゆっくり検討していただいていいけれども、生命の問題だから早く通してくれ、こういうお話があるくらいだから——これはやはり現実に事故が起きておるという実態、全国七カ所のうち四カ所まで請負作業場でやったということは、ゆゆしき問題ですよ。しかも爆発事故です。ですから、逆に言うと、請負個所の災害率は一般の個所の災害率の数十倍すると言っていいわけです。早急に考えなければならない問題ではないかと思うのです。ですから、安全の責任すら持たされないような業者は請負とはみなされない、こういうことでいいのじゃないですか。それだけ責任のないものは、この面においては労務供給業と変わらぬと考えていいのじゃないかと思う。あなたの方で直してもらえばいい。要するに鉱山の場合は、特殊な場合を除いては、坑内においては鉱業権者が直接雇用する労働者を使うのだということが法の建前ではないかと思うのであります。さっき申しましたように、作業の直接の監督といっても、結局本人のところに二重に命令がくるという、そういう話はない。しかも、ほんとうは請負業者というのは坑外におるのです。坑内に請負業者が入ってくるというのは、私が申しましたような縦坑の開発であるとか、あるいは岩盤掘進であるとか、こういうような特殊的な場合です。あとはみな本人は坑外におる。そして労働者だけが坑内へ、直接雇用されておる労働者と一緒に下がるわけです。こういう実態です。ですから、これを放置するという手はないと思う。一つ早急に検討してもらいたい。もう一度御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/83
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084・北川俊夫
○北川説明員 今申しましたように、第四条の各号の規定につきまして、特に問題になっておる坑内作業についてどう適用するか、そういうことにつきましては、われわれといたしましても早急に検討いたすべく準備をいたしております。その場合に安全の責任をどうするかという点は、鉱山保安局とよく相談いたしまして、なるべく早く結論を出すようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/84
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085・岡田利春
○岡田(利)委員 今の多賀谷委員が質問した点に関連して若干お聞きしたいと思うのですが、昨年の十二月二十三日の当委員会で、福住炭鉱の爆発問題で、労働省に対してこの面の実態把握を要請しておるわけです。その後引き続いて通常国会でこの問題は明らかに資料を出してもらいたいということになっておるのですが、実態把握はどのように進んでおりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/85
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086・北川俊夫
○北川説明員 この前の委員会で御指示の点は、私が申し上げましたのは、組夫の実態がなかなかつかめておらない、従いまして、この際組夫の実態調査を早急に始める、こういう御答弁を申し上げ、それに従いまして、昨年の十一月から対象事業場約二十四カ所につきましていろいろ調査をいたしました。それは、産炭県全部にわたりまして抽出的に大手十三、中小十一の事業場を選んで抽出検査をいたしたわけであります。それによりまして、やや問題点らしきものが出ております。われわれの方としましては、さらにこの問題点に従いまして今度は具体的な調査事項をきめて、もう少し広い範囲にわたる調査をさらに進めたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/86
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087・岡田利春
○岡田(利)委員 私は具体的に二、三の実例を出して見解を承りたいと思うのです。たとえば、炭坑で坑外の運搬がありますね。受炭場、石炭を出したものを受けて空車をまた返してやる、大体こういうところは定員制のわけです。たまたま休んだりした場合に、あとの補充を、別な組夫、請負が材料運搬の業務をやっている、そこから人を一時的に供給してもらう。たとえば三人休んだ、その三人の補充は直接使用者でしないで、材料運搬関係、坑木関係を請け負っている組がある、そこから臨時に二、三人借りて受炭の作業をさせる。こういう場合は、職安法の施行規則の四条からいってどういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/87
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088・北川俊夫
○北川説明員 今おあげになりました例につきましては、下請業者がたまたま元請の方の事業場で人が足りないというようなことで応援に出すことは、別段差しつかえないと思いますが、継続反復してそういうことがやられるということは好ましくないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/88
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089・岡田利春
○岡田(利)委員 それから第二の問題は、現在の採炭方式というのは、ほぼ長壁式採炭法、ロング・ウォールで、一つの切羽にチェン・コンベヤ、ベルト・コンベヤをつけて三十人なり四十人が入るわけです。そのうち三十名が直接使用しているわけです。十名は組が使用しているのです。しかも組の人間に対しては、発破係が一人ついている。しかし、現場の指揮監督、総合的な責任は、もちろんその企業が職務命令に定めている指揮系統で行なわなければならぬわけです。これは四条違反になりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/89
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090・北川俊夫
○北川説明員 その場合どういう作業を請け負っておるか、下請組夫に対してどういう仕事をさしておるかという点がわかりませんと、何とも申し上げられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/90
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091・岡田利春
○岡田(利)委員 請負契約は一トン出したら幾らということで採炭をやる、直轄と同じく、混じってやっているわけです。極端に言えば、ばらばら混じっているために、そのどれが直接夫だか間接夫だかわからぬという面もあるわけです。あるいは、一番方は直轄でやっているが、二番方は組が入って採炭する。施設は全部会社のものです。二番方だけ譲渡するといっても、これはただし書き二項の脱法行為になるわけですね。こういう場合には、僕は明らかに現在の施行規則四条の面から見ても違反だと思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/91
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092・北川俊夫
○北川説明員 今おあげになりましたような例は、抽象的なことでございますが、やはり請負の業態には当てはまらぬのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/92
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093・岡田利春
○岡田(利)委員 まさしく請負の形態に当てはまらぬものをやっているわけです。だから私は違反ではないかと思うのです。そもそも出発から無理なのです。あるいはまた、切羽があって、その運搬坑道を先に掘り、掘進を進行さしていく、これはベルト・コンベヤ、もしくは普通の石炭を輸送するレールが敷かれて、炭車も全部その企業のものなのです。その切羽はセットになっているわけですね。ロング・ウォール採炭方式ですと、当然上と下には風孔とゲートは切らなければ、ロング・ウォール採炭方式にならぬわけです。そこの先端までは組夫に一メートル何ぼで請け負わせる。火薬その他については全部会社の方から支給する。施設その他については、もちろん坑道は炭鉱のものになるわけです。人事権といっても、係りの人がついているだけですから、総合的な計画というものは全部親会社がやる。その炭鉱の設計工務の方で全部やるわけです。ですから、その部面に対する局部的な請負になるわけです。しかも、そういう炭鉱の作業というものは、保安規則に定められておるように、やはり保安技術職員というものを配置しなければならぬわけです。しかし、一つの坑道を持って、しかもそこに高級技術職員が派遣をされておるという態勢がある場合に、縦坑とか、大きな一つの岩盤掘進等の場合には、そういう態勢でやっている組もあるのです。この場合には私は問題がないと思うのです。極端なものの言い方をすると、今のような場合以外には、私は、少なくとも炭鉱の場合には職安法の施行規則四条違反である、こうはっきり指摘できると思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/93
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094・北川俊夫
○北川説明員 坑内の場合にどういう作業が請負作業として認められるかということは、一がいには申せないと思います。しかし、先ほどから御指摘のように、はっきりと請負として認められるものの例としましては、縦坑の掘進あるいは坑道掘進あるいは坑内の機械の整備、こういうような専門的技術あるいは特別の機械をみずから提供することが必要である作業については、明らかに請負作業として認められるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/94
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095・岡田利春
○岡田(利)委員 従って、当初保安法が施行された当時は、組夫の問題というのはあまり問題がなかったわけです。今言ったように、縦坑開さく、もしくは採炭準備までの起業工事関係に限ってのみ組夫の使用というものがとられておった。坑外のような場合には若干別な形態があるけれども、坑内作業の場合にはほとんど限られておったわけです。中小であってもそうだったわけです。もちろん、そのころは炭鉱は景気がよかったせいもあるでしょうけれども、そういう態勢でこの保安法というものが施行されてきたわけです。ですから、その当時できた保安法としては、現状のような組夫の配置、使用状態、こういうものは想定してなかったと思うのです。想定してないころにこの保安法ができたと思うのです。たまたま地下労働に対するこういう明確な、具体的な組夫の問題についての見解が示されてないものですから、何かそういう点でふわっとそういうものが違反にならぬというような形で推移しているのではないか、実はこういう感じを私は持つわけです。ですから私は、特に地下労働に対しては非常に大きな問題になっておるわけですから、まして労働省としても、保安の問題については大臣が監督権を持っている事項でもあるわけです。地下労働に関するケースなんというものは、そう変わったケースはないのです。私は二、三申し上げたけれども、大体そういうケースがほとんど全部を占めている、こう言っても差しつかえないわけなんですから、労働省として見解を明らかにすることは、その時間がかからぬし、あまり時間をとる必要はないと思うのです。ですから、すみやかにこれは通達か何かで、地下労働に対する、これらの問題に対する労働省の見解を示すべきではないかと思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/95
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096・北川俊夫
○北川説明員 繰り返して申し上げますように、四条の解釈につきまして不明確な点がございますので、早急にその点の解釈を明確にしたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/96
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097・岡田利春
○岡田(利)委員 これは基準局の方に一度お聞きしておきたいのですが、たとえば福住炭鉱の爆発で、これは十日前までは組夫だったわけです。保安監督の面からいって、一本の切羽に直接夫と組夫が一緒に働いているわけで、これはやはり直接夫でなければいかぬということで、監督庁としては行政指導の面でこれは直接夫に切りかえるべきだということで実は会社の方も納得をしておったわけです。けれども、形態は前と全然変わらぬわけです。ただ形式的にこれを直接夫に切りかえた。しかし、切りかえない組夫もこの場合おったわけです。組のおやじさんは、坑外の飯場みたいなものがあるわけですが、そこで事務をやっておるということで、直接自分が指揮をしているわけでもない。もちろん、ハッパ係が一名おりましたけれども、言うならば昔の炭鉱の飯場制度と何ら変わらぬわけです。資材とかそういうものは一切持っていないわけなんです。こういう点が特に中小炭鉱に多いわけです。大手の場合には、やはり法律を研究して、何とかかんとかあまり法律には該当しないような形でやっていますけれども、中小炭鉱の場合ですと、いわゆる脱法的にこういう組夫を積極的に使用しているという傾向が実は非常に強いわけです。ですから、一応その形態は整っていても、実際問題として、こういう問題は調査すればわかると私は思うのです。ですから、極端な例を言うと、福住のような場合は、これは監督面からいって、明らかに中間搾取の条項に該当するのではないか、こういう考え方に私は立つわけなんですが、何か特に炭鉱でこういうケースについて調査されたことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/97
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098・小鴨光男
○小鴨説明員 ただいまおっしゃいました福住炭鉱の件につきましては、私今ちょっと詳細に存じておりませんけれども、昨年の災害多発に関連しましていわゆる安全以外の労働条件に対するいろいろな問題が予想されました。特に中間搾取、それから労働時間その他について特別の通牒を出しました。これについての監督を厳重にやっていき、それで形式上はきわめて把握しにくい面もございますが、実態を監督しまして、いわゆる使用従属関係に入る者に対するところの第三者の介入という問題がございます。その点については今までもやって参りましたし、今後も特に基準法の六条を中心として厳重に監督していきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/98
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099・岡田利春
○岡田(利)委員 大もとの方の解釈というものが、炭鉱の現状に対してはっきりした態度というものが出てないのですから、実際問題として、監督する方はそういうことで非常にむずかしいのではないかと思うのです。しかし私は、やはり今日の炭鉱の合理化が極端な速度で進み、炭鉱災害も非常に多い、しかもそういう組夫の現場で重大災害が起きておる、こういう面から見れば、基準局の立場でも、ケース・バイ・ケースだけでなくして、積極的にある程度——全体の調査は不可能でしょうけれども、その点をやはり監督行政として調査をして、実態はどうなのか、実情は六条違反ではないのかどうか、そういうものを的確に把握する必要があるのではないか、このように考えるわけです。合理化がこれから極端に進めば進むほどこの傾向が多くなるわけですから、形式上は法違反でなくても、脱法行為と認められる場合は、当然改善しなければならぬ事項だと思うのです。そういう点で、何か特に中小炭鉱における組夫の問題について監督行政の立場から特別のお考えはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/99
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100・小鴨光男
○小鴨説明員 先ほど申し上げましたように、三十六年の十一月、実はそういう調査を含めた調査的な監督ということについて、ただいま申し上げました六条関係はもとより、ほかの労働自体につきましても実施するように、特に石炭関係の局を呼びまして指示したところでございますが、その結果について明らかになりましたならば、また御報告いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/100
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101・岡田利春
○岡田(利)委員 中小炭鉱で災害が発生して、実際労災掛金を賃金カードからは差し引いているわけですが、その会社、鉱業権者が保険局の方に金を払い込んでないというケースが、最近非常に多くなってきているわけです。その結果、けがをしても、私病で健康保険でかからなければいかぬ、労災の適用を受けないというケースが、中小炭鉱の場合非常にふえてきているわけです。あるいは災害で死んだ場合でも、入ってないために補償金がもらえない。まして、そういう会社だから、遺族補償は何ら見るものがない。この点は非常に顕著になってきているわけです。こういう中小炭鉱の労災保険関係は、納入実績はどの程度になっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/101
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102・小鴨光男
○小鴨説明員 労災補償関係について私どもつまびらかにしておりませんけれども、全般的に申しまして、中小炭鉱に対するところの労災の収支状況というものが非常に悪いことは事実でございます。これにつきましても、労災補償部と連絡を密にいたしまして、至急監督なり手続をとっていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/102
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103・岡田利春
○岡田(利)委員 特に炭鉱の場合には災害率が高くて、今制度がメリット制なわけで、それだけかぶっていくわけです。災害率が高い山はそれだけ保険料を納めなければならぬ制度にもなっているわけです。しかも、とにかく炭鉱があすつぶれるかどうかというような状態ですから、保険関係は当然納めてないというケースがあるわけです。しかし、現実に労働者は働いているわけです。しかも、炭鉱の場合は全産業のうち一番災害率の高い産業なわけですね。私は、特にこの保険の問題については、実際問題としてある程度干渉しなければ、幾らうまい答弁があっても、結局は苦しければそっちの方には金を払い込みをしない。給料さえ払ってないところがたくさんあるわけですから。しまいには給料を払わぬでおいてやめる、また融資を持ってきて一カ月ぐらい払って、ずっと給料を払わぬでおいてまたやめる、いわゆるただ働き炭鉱という炭鉱もあるくらいです。ただで労働者を働かせて石炭を出している炭鉱が、今日存在しているわけです。そうなってくると、特にこの面に関しては、いろいろ融資をするような場合、積極的に干渉しなければ、作業している労働者がけがをした場合に何らの補償がないということになるわけですから、これは社会問題だと思うのです。こういう点について何か積極的に手を打つことができないかどうか、その点についていかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/103
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104・小鴨光男
○小鴨説明員 先ほど申し上げましたように、速急に労災補償部と連絡いたしまして、ただいまのような労働者の保護に実質的に欠けておるところの対策を早急に立てるようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/104
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105・岡田利春
○岡田(利)委員 時間がありませんから、話を本論に戻していきますが、質問はあまりしないつもりです。
今度の保安法の改正に基づいて、特に省令改正事項ですね。前にも一度国会決議でやっていることなんですが、この保安法の改正を契機にして省令改正事項はどの程度に及ぶか、その内容をお知らせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/105
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106・八谷芳裕
○八谷政府委員 まず策一番目に改正すべき点は、この法律改正で「省令の定めるところにより、」と書いております、このすべてを取り上げるわけでございます。その次に、中間答申を受けました保安監督員、それから保安管理者、この面につきまして、第二段として省令改正を行ないます。それからさらに、改正委員会といたしましては、一応の目的は保安法の全般についてやるわけでございますが、さらに緊急に省令を改正した方がいいんじゃないかという点も、この保安法自体の条文からは省令改正は出て参りませんが、今後たとえば教育の問題その他についても研究を進めまして、法律的に改正はしなくても、省令の改正の必要があるという、こういう面につきましても省令の改正を進めたい、こういうふうに三段がまえに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/106
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107・岡田利春
○岡田(利)委員 法第六条で定めているこの保安教育の問題ですが、「鉱業権者は、鉱山労働者にその作業を行うに必要な保安に関する教育を施さなければならない。」こうなっておるわけです。鉱山労働者の定義には組夫も実は入るわけですね。しかもその教育は組のいわゆる長がやるのではなくして、鉱業権者が教育をしなければならぬわけですよ。すべて保安教育の問題は、省令で定める特殊な作業に従事する者は別として、一般的な保安教育を施す基準というものは非常にまちまちであり、不明確であるわけですね。しかし、法で明らかに義務づけしているわけです。私は、この保安教育というものは保安法の一つの柱だと思うのです。監督行政、保安労働者の教育、それから規則を守る、省令に委任してこれを順守する。ところが、肝心の教育の問題については、その後実際の内容を見ると、教育をしないで使っているのが非常に多いわけです。特に組夫の場合には、十日働いていなくなった、あした来て働くと言うと、すぐ作業場にぶち込んでいるのです。これは明らかに鉱業権者は六条違反になるわけですね。こういう点については実態はどうなるのか。特に教育については、期間、内容などを定めて、今日やはり炭鉱の労働者の質が落ちてきているわけですから、そういう点を保安の面でぴしっと規制する必要があるのじゃないか、保安規則というようなもの一冊も配らぬで、すぐあすから坑内に使うなんということは、私はこれは六条違反だと思うのです。その点についての見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/107
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108・八谷芳裕
○八谷政府委員 ただいまの六条の保安教育の問題は、省令の方に第四節といたしまして、三十七条から三十八条、それから四十条、四十一条まで書いてございます。特に問題は四十条にあります「鉱業権者は、あらたに坑内に就業させる鉱山労働者については、当該作業を行うに必要な保安のための教育を施さなければならない。」こういう問題が一番ただいま御指摘の点ではないかと思います。しかし、この省令も必ずしも十分にこの間のどういう規定、やり方でというこまかいところを指定いたしておりません。ただ、教育のむずかしさは単に省令等で書きましても、それが生きていく姿で教育が施され、また、教育を受ける方が単に一週間あるいは十日間というふうな新たに入る人たちに教育を施しましても、その面だけでは不十分ではないか、むしろその面以外に日々の教育というのがさらに必要なわけでございます。また、その教育につきましても、単にこれを中小炭鉱等におきましては鉱業権者だけに単なる条文指定によりまして行なっただけでいいかどうか、こういう点も、今御指摘の通りいろいろ考えさせられる点がございまして、こういう点につきましては、先ほども申しましたように、この法律改正に伴います省令改正、それから第二次の監督員、管理者というものの改正に引き続きまして、保安教育の面を大いに取り上げまして、一つ遺憾のない所要の改正があればこれを改正し、また予算等について折衝をする必要がある面が生まれましたならば、そちらに向かいたい、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/108
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109・岡田利春
○岡田(利)委員 保安規程というのは、五十人以上の鉱山労働者を有する鉱山においては保安規程を作らなければならないわけです。そうすると、極端に言うと、教育の内容は、保安規程で定めなければならぬのに、五十人以下の炭鉱は保安規程を作らなくてもいいのだから、教育をしなければならぬということは法にあるのですが、五十人以下の場合は保安規程で定める必要も何もない、ただばく然として教育すればいいということになって、その間矛盾が出てくるわけですね。この保安規程ができれば、当然組の場合にも適用されるでしょう。しかし、これは届出だけなんです。保安規程というようなものは、一回認可を受けると、大きな組織のところとか、あるいは組合があるところとかいうような場合には、この保安規程を気をつけて見ております。ところが、組夫なんかの場合の規定というのは、ずいぶん労働者が守らなければならぬ事項が多いのです。そういうものが一冊も準備もされてないのが中小炭鉱の場合には多いと思う。そういうものを見せないで、とにかく保安規程を守りなさいといっても、無茶だと思う。保安規則というようなものは微に入り細にわたっておりますから、そういうものも全然一冊も見せないで保安教育といっても、実際に問題があるのではないかと思う。もちろん、実務において教育をするとするならば、賃金制度とか、そういうものが教育する体制にない状態で教育ができるだろうか。同じ歩合制で労働者が入って、新しい新規の労働者だけ実地の教育をするのだといっても、私は不可能だと思うのですね。しかし、賃金制度その他である程度固定給を払って、一定の期間というものはそういう点で賃金を保障していろいろ実地の教育をするということにでもなっておれば、これは確かにできると思う。保安法の重要な柱である鉱山労働者の教育というものは、規則で定めておる特殊な労働に従事する者以外は、ほとんど大手を除いては行なわれていない。多くの場合に組夫については行なわれていない、こう言っても差しつかえないと思う。従って、保安委員会との関連もあって、できるだけそういうものを作らしていくという方針のようでありますけれども、この教育の事項はやはり具体化する必要があるのではないか、炭鉱の労働者として新たに雇用された場合、炭鉱のいわゆる労働の態様から考えて、最低必要限度どの程度の教育をしなければならぬかということを明確に義務づける必要があるのではないか。今日やはり保安法を国会決議に基づいて改正する場合、特に今の法そのものは改正する必要はないでしょうけれども、規則において当然その柱である保安教育の問題は、具体的に保安規程にまかせるだけでなくて、基準の骨幹になるものについては、明らかにする必要があるのではないか。もし規則の改正でできぬとすれば、やはり通達ででも緊急とりあえず、移動の激しい炭鉱ですから、ぜひそういう配慮をする必要があるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/109
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110・八谷芳裕
○八谷政府委員 先生の仰せの通り全く同感でございます。ただ、法律改正あるいは省令改正にどういう点がなじむかということはいろいろ問題があろうかと思いますけれども、そういう法律か規則かというようなそのなじみ方につきましては別途研究するといたしまして、この保安教育の面は非常に大切なことでございますので、至急に検討を進めまして、一日も早く保安教育がよりよくなるように監督の面からも進めていきたいと思います。ただ、何と申しましても移動性が激しいということで、いろいろ定める場合でも、かりに定めましても魂が入ってこないというような面も多々あるかと思いますが、そういう面もいろいろ検討いたしまして、効果の上がるやり方をとるように検討を進めていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/110
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111・岡田利春
○岡田(利)委員 次に、保安監督員の問題ですが、これも今までいろいろ問題になって、特に労働者側から保安監督員を一名選任した方がいいのではないか、こういう意見も強く出て、私どもも実は主張して参ったわけです。現在大手の場合は、保安監督員というのは、監督する人を作って、ラインからはずしてスタッフのような立場に置いて、ある程度そういう監督員の性格を尊重している炭鉱もあるわけです。中小になってくると、ほとんど形式的に、監督員をだれか選任しなければならぬから選任しておるというような程度なわけですね。大手のような場合ですと、監督員は正式文書で保安管理者に勧告している。このようにぴしっとやっていますけれども、中小の場合にはほとんどそれがないわけです。中小炭鉱の災害視察に行くと、いつも保安規程の問題とか監督員の監督の問題とか聞くんだけれども、全然ない。しかし、やっています、こう言うわけです。しかも、これは特に必要なこととして報告させない限り、監督員なり、局の方としては提出されないわけです。これは機構の問題に関連してくるのですが、今度福岡と札幌が保安局に昇格をした。森政務次官に前に答弁をもらったが、逆であって、来年度はどうしても保安監督署を明確に制度化しなければならぬ、こういう問題が実は一つ残っているわけです。そうすると各地に監督署ができるわけですね。監督署は常時山の実態を把握して、保安上の動きを的確に把握する、こういうことではないかと思うのです。もちろん、その場合には、今は部長権限で必要なものは出せるのですが、私は、そういう点でやはり保安に対する動態を把握する方法をいろいろな面で検討すべきではないかと思う。そういうことによって、監督官も何か問題点があれば、直接早めに行くとか重点的に行けばそういう判断もつくが、そういう監督をしていないと、山の保安の状態に対する動向もわからぬわけです。保安委員会で論議したこととか、監督員が保安管理者に勧告したこと等が、今の場合札幌に全部来ても仕上げに困るでしょうけれども、監督署の制度ができると、当然このくらいのことはやらなければいけないではないか。監督署ができても、よく回ってせいぜい二カ月に一ぺんです。正直な話、二カ月に一ぺん回ればいい方です。実際見ましても、中小の悪いところは別にして、大体まじめに一生懸命やって二カ月に一ぺんというのがせいぜいではないか。そういうことを監督署に出して監督員が把握する。監督員の業務を完全に遂行する面からも、監督部長の権限を代行する、このくらいの措置は必要ではないかと思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/111
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112・八谷芳裕
○八谷政府委員 監督員につきましては、この保安法改正の際にも二つの事項を要望されているわけでございます。一つは、現在千名以上のところに監督員を置くようになっております。しかし、これをさらに全鉱山に推し進めていくという方向で今後の検討を行なう、これは省令の段階でございます。ただ、これを一挙に全鉱山に持っていけないということは、資格の問題ともからむわけでありまして、資格を下げてまでこういう監督員を推し進めていくべきかどうかというかね合いにつきましては、慎重に検討する必要があろうかと思っております。しかし、考え方としましては、この監督員制度は今後今まで以上に生かしていく。現在ラインの外からチェックし助言をしていく法の精神が貫かれているかどうか、いろいろ調査をいたしてみますと、十分でない点が見受けられるわけでございます。もう一つは、全鉱山にこれを及ぼしていこうという考え方と、そのほかに、他の業務にこれをつかせない。専任という言葉が妥当かどうか、この用語はいろいろ問題がございます。専任というのは一体どういう形を称するのか、少なくとも、ラインの外の仕事として外からチェックし助言をして勧告をしていくと真の業務が果たされる、それを阻害するような他の業務にはつかせない、こういう専任制度といいますか、そういう姿で監督員を置いてもらいたい、こういうことが中間答申においても行なわれているわけでございまして、これは専任制度、保安管理者、保安委員会の活用という三つのものから自主的な管理ということを強化しよう。これは監督官を増員して各山ごとに一人ずつ置くとかいうようなことはなかなか困難性もありますし、また、本来災害防止は鉱業権者の責任でございまして、ここで第一義的に自主管理を行なうということは当然だ、そういう観点から、ただいまも申し上げましたように、監督員については、専任制度の問題と、それから、できるだけ多くの鉱山にこの監督員制度を及ぼしていく、こういう二つの面を今後至急に取り上げまして検討を進めたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/112
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113・岡田利春
○岡田(利)委員 監督官の監督要領といいますか、その点第一義的に考えられるのは、やはりしょっちゅう行っているわけでないから、重要事項は保安委員会でも論議されるので、保安委員会の議事録、それから保安監督員の勧告の内容、保安管理者もしくは鉱業権者が保安教育とか保安の啓蒙について一体どうやっておるか、この三つは、回って行ったとき必ず点検することだと思います。この点、保安委員会というのは毎月一回やらなければならぬと省令ではなっている。しかし、一回やっているというところは少ないのです。中小なんか、あってもやらぬようなところが多いように見受けられるわけです。しかしながら、これは一回以上開催しなければならぬと義務づけられている。ですから、そういう意味で、二カ月に一ぺんくらいしか行けぬので、監督官は行った場合に、必ず保安委員会の議事録を見る。第二としては、監督員が一体どういう勧告をしているかということを見る。第三は、鉱業権者、保安管理者の保安上の啓蒙あるいは教育はどういうことをやっているか、ガス等が多く爆発の実績のあるようなところは、退避訓練をやっているか、こういうことは必ず前提条件として把握されなければならぬと思うのです。あとは坑内に入って山の規定に基づいて見ればよいわけです。これは絶対必要な条件ではないかと思うのです。これはやはり鉱務監督官心得といいますか、監督要領といいますか、そういうものではっきりさせるべき事項ではないかと思いますが、そういう点について、そうされているかどうか、特にそういう要領があるかどうか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/113
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114・八谷芳裕
○八谷政府委員 ただいま御指摘の点はごもっともだと考えております。単に坑内を巡視して足と目、手だけで見るのではなく、さらに、過去においてどういうふうな審議が保安委員会において行なわれたか、こういう点、あるいは保安監督員がどういう監督を行なったかという点は十分にチェックし、またチェックしておかないと、今後、今までも行なっていないというような面の是正もできないわけでございまして、これは先生の仰せの通りでございます。従いまして、私どもの方でも監督官のそういう作業の要領を定めておりまして、そういう点は十分に行なわせるようにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/114
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115・岡田利春
○岡田(利)委員 次に、保安委員会の問題で、いわゆる法に基づく監督局長または部長が命令を出した場合には、これは保安委員会に通知をするということが明らかになっておることは、非常にけっこうだと思うわけです。そこで、先ほど私が関連質問で触れました通達と命令の問題なんです。通達の内容を読んでみますと、規則上の問題だけではないけれども、改善する制度というのも、通達の中にはありますよ。注意事項というようなものもある。ほとんどが規則に対してその基準まで到達していないというか、不十分だから、改善通達を出しているのですね。私は、やはりどう考えてみても命令だと思うのですよ。だから、先ほど言ったように、現行法が規則の点について一々やっておると、とてもじゃないけれども、これだけやっておって、あとは何も議論ができないということに実はなるわけですね。だから、どうしてもここは法改正をしなければならぬところじゃないかと思うのです。この法の趣旨からいけば、通達の事項も命令と変わらないわけですね。ですから、私は、立法上の建前からいえば、なるほど、通達をも含むということは、立法上これは問題でしょうけれども、これはもう二十五条から発する命令なんですから、「命ずる」ということで、改善命令なんですから、それは聴聞会を開かなければならないという関係があるとすれば、実質上は、やはり当然保安委員会にそういう通達についても報告するというはっきりした運用をすべきではないか、こう思うのですが、この点についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/115
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116・八谷芳裕
○八谷政府委員 私といたしましては、ただいまの御発言、非常に心強く思う次第でございます。実は、聴聞会の件をはずすということになりますと、保安監督の面で非常に非民主的と申しますか、何かそういう攻撃を受ける面も多々あるのじゃないかということも考えていたわけでございますが、この点につきましては、さらに中央鉱山保安協議会等にも御審議をお願いいたしまして——事実上通達ということでなくて、むしろ、通達というのは、注意事項というようなものを通達にしまして、そうして実際に条文違反のうち重要なものについてはみんな命令で出す、そうしてそれがまた直結しまして保安委員会にも進んでいく、こういうあり方がより正しいと考えるわけでございます。そういう方向でこの聴聞会の件も至急に検討してみたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/116
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117・岡田利春
○岡田(利)委員 この保安法規の整備の問題ですが、残念ながら、これは石炭だけではなくして、鉱山保安法ですから、メタルも全部入るわけです。ですから、法の立て方に無理があるのじゃないかと思うのです。そうして炭鉱として非常に重要な石炭鉱山保安規則ですね、昔の鉱業警察規則、そこへ全部ずっと入るわけですよ。特に重要なものは全部規則で定められておるわけですね。やはりこの鉱山保安法規の立て方は、むしろ石炭と石炭以外の二つに分けて二本建にすべきではないか。そうして現行の保安法、保安規則の中で、特に保安規則の中で、重要な事項についてはやはり石炭鉱山保安法に載せる、それに基づくものを石炭保安規則で整備する、こういう行き方が私は妥当じゃないかと思うのです。実際問題として、メタルの場合にはあまり問題になっていないし、災害率も非常に低いわけです。今度は来年の通常国会には鉱業法が改正になる。そうすると、保安法は姉妹法のわけですから、その場合には抜本的なそういう意味における検討をすべきじゃないか。特に、鉱業法がメタルも石炭も一本であっても、保安法規の場合にはそうこだわる必要はないと思うのです。保安法規の場合には二本建でもおかしくないと思うのです。むしろ、鉱業法は石炭と石炭以外と二本建にすべきである、こういう意見を私は鉱業法に対して持っているわけですが、鉱業法の改正審議会ではその意見がなかなか通らないようです。通らなくても、保安法規だけは石炭と石炭以外と二本建にすべきじゃないか、それが現状に即すると思うのです。この規則の内容は非常に重要です。一つ押えられると炭鉱の機能がとまってしまうというくらい、ガスでも水でも、いろいろな問題で非常に重要な内容がこの規則の中にあるわけですね。ですから、今度鉱業法の改正に基づいて——部分的改正になるか、いずれにしろ改正しなければならぬ点が出てくると思うのですが、その場合、今から建議しておいて、抜本的なそういう検討をすべきじゃないか。でなければ、今の二十五条関係も、現行法だけでいじって改善するといっても、なかなかめんどうなところが実はあるのではないか、こういう気がするのです。こういう点についてはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/117
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118・八谷芳裕
○八谷政府委員 この保安法を、石炭あるいは亜炭でございますか、そういうものと、それから他のもの、あるいは流体燃料関係、これを別個にするとかいうようなことがあるかと思いますが、大体保安法と申しますのは、非常に基本的なことを定めまして、あとは省令委任が非常に多い。そういう形で、省令委任の段階で、石炭の方の規則、それから金属、非鉄金属関係の規則、それから流体関係の油等のいわゆる油則と申しますか、この規則、こういうものになっておるわけでございまして、このやり方も非常に要領を得たやり方ではないかとも思いますが、ただいまおっしゃいましたように、この保安法を分離しまして、どれだけそれでは保安法の方で石炭と、それ以外——まあ幾つになるかわかりませんが、そういうふうな分け方をした方が、いろいろな条文がより定めいいかどうかということは、十分検討したいと思います。実はただいまいろいろな保安法の条文改正の検討の過程におきましても、どうも石炭のきびしさが全部に及んできていて、別途に部会を設けて一つ審議したいというような意向も出てきておりますが、一つ一つの条文を取り上げてみますと、省令の段階では、分かれていって、重さ軽さをつけてもいいのでございますが、この条文自体が、たとえば、災害が多いから保安委員会に重要な保安の事項を通知しなければならぬけれども、災害が少なければ通知せぬでもいいという言い方もまたおかしな言い方でありまして、各条文に当たっていきますと、これを別個に分けるということもなかなかむずかしいと思います。しかし、その点につきましては、いろいろ鉱山関係側からの要望もございますので、今後も検討してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/118
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119・岡田利春
○岡田(利)委員 保安委員会の規則並びに保安規程、これは認可事項です。結局、届出をしなければならぬわけですね。その場合に、不十分であればこれは改正するわけですね。ですから、石炭の場合は、これは規則、省令で保安委員会が設置されれば保安規程があるわけですから、保安委員会の規定に、通達は報告しなければならぬ、こうはっきり書かせれば、当然、議長である保安管理者は報告しなければならぬですよ。あるいはまた、保安規程で、そういう事項については保安委員会に報告——保安委員会規定ではっきりさせれば、これはもう法に無理にうたわなくても、問題は同じわけです。これは検討していくと、通達を出して、通達事項は保安委員会に報告するということを保安委員会規定に明示すべきだ。その明示する事項を書いて改正した保安規程、保安委員会の規定は、変更の場合には届出をしなければならぬわけですね。それを届出させるということにするとすっきりすると思うのです。行政指導でやるといっても、なかなか炭鉱の数が多いから、やったのかどうかわからない。行政指導をするといっても問題があるでしょうし、ただ単なる局長通達ぐらいでやれといっても問題があるので、むしろ、これだけの整備した、完備した石炭保安規則があるのですから、この保安委員会の規定の中にそれを含むべきだと思うのです。そうすると私は、この条文で、命令だけを保安委員会に報告するという法改正でいけると思うのですが、その点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/119
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120・八谷芳裕
○八谷政府委員 私らの方といたしましては、通達事項を含めるという考えは当然必要なわけでございますが、ただ、法律的な条文といたしましてはそれが結局書けなかったわけでございます。従いまして、さらに省令の段階におきましてこれは検討を要することでございます。今先生のおっしゃったように、保安委員会の規定というような中にこれを含められるかどうか、あるいは、保安委員会の方で通達はかけなければならぬというようなことをきめてもらって、保安規程の方でそういう規定を入れて出してもらうか、これはいろいろむずかしいところがございます。それから、あるいは当分の間強力な行政指導をやっておりまして、もし議事録等を調べまして、こちらが通達した通りに保安委員会にかけていないというようなことになった場合には、保安規程の変更ということが監督部長もできるようになっておりますので、こういう監督部長の保安規程の変更命令というような形で進んだ方がいいか。とにかく答申を受けました趣旨だけは何らかの形で実質上貫いていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/120
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121・岡田利春
○岡田(利)委員 はっきり言えば、四十九条から五十四条、第六節保安委員会、この中にはっきり書けばほんとうは一番いいわけです。そうすると省令ではっきりなるわけですから。その場合にどういう形式にするかという問題は別にして、やはり保安規程にはっきりさせる。新しくそういう規定ができれば、当然保安委員会の規定を変えなければならぬわけですから、変えれば、十四日以内に届出をしなければならぬわけです。そうすると全部完全に確認できるわけです。そうなってきますと、保安規程にも報告することになっているのに報告しないということは別問題ですから、そういう方が一番すきっといくのではないか。しかも保安規則には第六節保安委員会という一節があるわけなんですから、この中で私は消化してほしいと思うわけです。しかし、ここは委員の資格、会議、運営、届出だけであるということになれば、別途に通達を出して、保安委員会の中に専議事項としてそれをはっきりうたわせる。従って、そのうたった保安委員会の規定というものは、変更ですから、十四日以内に届出をしなければならぬということで全部が確認をできる、こうなると思うのです。私はやはりそういう方法の方が望ましいと実は思うわけです。しかもこれをやっておかなければ、私は大へんなことになると思うんです。たとえば災害が起きた、調査をしてみたところが、保安監督部長は通達を出しておった、通達の内容を見たら、これは当然命令で出さなければならぬ事項である、規則違反の改善通達であるという場合には、法の建前からいけば、これは当然命令で出さなければならぬことでしょう。ところが、それを通達で出しておったということになりますと、これは忠実に法を運用しなければならぬ監督部長が、法の運用を便法でやった、こういうそしりは私はその場合免れないと思うのです。しかしながら、今言った法の改正もこれから検討していくわけで、中間答申ですから、これからも五十四条については検討するのですが、当面はやはり保安委員会なら保安委員会に通達事項というものを報告するということになっておれば、まあそういう点についてはぴしっとなっておるから、客観的にも監督部長の責めは免れる、こうなるのじゃないかと思うのです。非常にこれは大事なんです。たとえば上清の場合に、盗掘に対する通達を出しているのですね。あれは命令ですか、出しているわけです。出しているだけであって、結局盗掘をずっとやっておったわけです。あれは明らかに法違反ですから、実際は命令で出さなければならぬわけです。しかし、それは一応監督官が行って、とりあえず現地で出したものであるから、あの場合は監督部長の命令にはなっていなかったわけです。これなども当然、法の執行者として明らかなんです。三井の鉱区を盗掘しているのは明らかですから、命令を出さなければならないわけです。それがたまたま二、三日前に行って、とりあえず通知したということで、よくやったということになったけれども、その後聴聞も何もしないで、命令を出さなかった、そして災害が起きた場合には、法違反です。法を忠実に執行しなかったという監督部長の責任追及とは免れぬと思うのです。ですから、普通の場合にはあまり正面に出てこないけれども、一度災害があったような場合、われわれが行って調査したら、規則違反の改善命令を出していなければ、監督部長の法運用は便法を使っておって、その責任は免れないと思います。ですから、法の根本的な改正検討は別にして、せめてこれだけはぴしっと、保安局長から、これはそういうことにします、必ず保安委員会で通達は報告するようにする、省令でいくか、あるいは別な法律でいくかは別にして、これだけはぴしっと答弁をいただいておかなければ、ちょっと問題だと思うのです。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/121
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122・八谷芳裕
○八谷政府委員 これは再三申し上げておりますように、もし省令の何らかの条文改正で、通達が委員会にかけられない、かけるような形ができ上がらないということになれば、これは結局厳重な指導でいくほかはないわけであります。それじゃ指導でいくということはどういうことをするのかと申しますと、もともと通達というのは一つの注意、指示でございますので、その通達に、たとえばどこどこを切り広げなければならない、こういうふうに書いたその下に、これは保安委員会に通知しなければならない、こういうふうに、一々通達と同じウエートを持った形で通達文書の中に入れていったらどうか、こういうことを考えているわけでございます。しかし、できますならば、これもやはり一種の指導でございまして、そういう形よりも、省令等でどこがうまい工合に書く方向があれば、そちらの方向をとっていった方がさらにベターではないか、私はこういうように考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/122
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123・多賀谷真稔
○多賀谷委員 関連して。この処分は通達は入らないというけれども、通達は一体何なのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/123
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124・八谷芳裕
○八谷政府委員 通達は注意なのでございます。ここが違反している、すぐに直しなさい、こういうふうなことを監督官が現地でも言ってくるわけであります。言ってくるけれども、言ってきたうちでもさらに重要なものは、鉱業権者あてにまたはっきり言っておかないと、そこで鉱業権者が一々やらせるわけでもございませんし、係官が立ち会った……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/124
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125・多賀谷真稔
○多賀谷委員 私が言っているのは、法律上の話を聞いているわけです。行政の行為は行為なんです。処分というのを書いているのは、何か効果を現わす行政行為というものを処分という。だから問題は、罰則があるから、ここになかなか法制上の問題がある。通知をしなかった場合には罰則を伴うのでしょう。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/125
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126・八谷芳裕
○八谷政府委員 これは罰則を伴います。通達は注意でございますので、通達違反は罰則を伴わないわけです。そういう面で、十九条の改正と通達が完全になじんでこないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/126
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127・多賀谷真稔
○多賀谷委員 通達という文句を入れればおかしいですか。第十九条に「通達は保安委員会に通知するものとする。ただし、これは罰則を伴わない。」この通達はこうしたらおかしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/127
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128・八谷芳裕
○八谷政府委員 この通達という用語が、法律にも省令にもどこにも出てこないわけでございまして、やはり条文を立てる際には、法律上そういう字句が出てこないと、それをつかまえて言うわけでございますので——ただし、いろいろお尋ねの件はよくわかるわけでございます。しかも単に理解するだけでなくて、同じ意見を私も持っているわけでございますので、今後の問題として十分検討を加えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/128
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129・多賀谷真稔
○多賀谷委員 ですから「省令の定めるところにより、この法律又はこの法律に基づく省令の規定による」というのを削除して、指示または処分、こういったらどうですか。通達というのは一つの指示でしょう。ですから、指示または処分とすればいいじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/129
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130・八谷芳裕
○八谷政府委員 監督部長の指示ということになりますと、これはおのずから行政官としてそういう行為をやっているわけでございますけれども、やはり指示とあれば、そういう指示をすることができるとか、指示をしなければならないとかいうことが出てこないと、あとで省令で定めるときに、どれとどれということが指定できぬわけでございます。そうすると、監督部長が自由奔放にこれをやっていくというような、法律の立場からしますと非常におかしな形になるわけでございます。そういう姿から、ここで法律にどうしても書き得なかった、こういうふうになるわけでございまして、その点はぜひとも御了承をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/130
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131・多賀谷真稔
○多賀谷委員 その気持は、ぜひやりたいけれども法律に書けぬ、こういう話ですから、法律は書けるように直せばいいわけです。ですから第一の問題は、通達ということは、今までやっている行為は、法律、またこの法律に基づく省令の規定にない行政行為だと思う。ですから、そういういわゆる聴聞会を開くまでもない一つの行政的な行為について、どこかに規定を置かなければいかぬですね。この規定がなくて、すぐ命令、その命令はしかも聴聞会を開くのだ、こういうことになっておるから、この鉱山保安法の規定があまりよすぎて命令が出しにくい、こういうことになるのだ。ですから、その前の保安に関する注意指示というものは、やはりどこかに条文を設けて、その指示を受けて具体的には省令でそれを書く、そうしてその省令で具体的に書いたら、やはり処分の方は重いのですから、処分並びに指示、こういうふうにしたらどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/131
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132・八谷芳裕
○八谷政府委員 この問題は非常にむずかしい問題でございまして、二十五条の改善命令というのが、ただいま御説明した通りでございますが、それ以前のやり方として、監督局長または監督部長は改善を勧告することができるとか書きますのも、これは当然命令ができるのでありまして、勧告できる。これはいろいろ検討しました過程を申し上げているわけでございます。そういう条文か何か入りますと、これは通達といわないで、勧告と結びつければいいわけでございまして、通達と申しますのはどうせ内部で使っている用語でございますから、これは勧告としてもいいわけでございますが、何か勧告することができるというふうな条文の定め方もどうもうまくないようでございまして、一つ今後検討するということで御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/132
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133・多賀谷真稔
○多賀谷委員 われわれに付託されているわけでありますから、当委員会でよく相談をして修正をしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/133
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134・岡田利春
○岡田(利)委員 今の通達、命令の問題ですね。この条文でいきますと、命令を出す場合の、特に機械、器具、施設の場合は、第七条と第八条、第九条、第九条の二、この四つの条文が考えられるわけですね。だから、この内容をずっと検討して参りますと、こういう場合も当然あるわけです。しかし、この七条、八条——九条の場合は、これは大したことじゃないのですけれども、今まで七条、八条に基づいて命令を出したことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/134
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135・八谷芳裕
○八谷政府委員 この七条につきましては、私の知っている限りでは、この七条の大臣命令は今まで出したことはないと思います。これはちょうど適切な例が浮かびませんが、たとえばディーゼル・ロコというのが初めて入ってきたとします。そうした場合には、全国的にまだこれを使うのは早い、こういう定めをするわけでありますが、これは個々に、工事の場合でも事実上待たせまして検定を受けるとか、そういう方向を先に進めまして使わしていった、こういうやり方をとっておりまして、全面的に一斉禁止というのはとったことはないと記憶いたしております。それから八条の第三項でございますか、これにつきましては、設置の認可でございますので、認可に対しまして工事の着手禁止または計画の変更でございますので、これは相当に行なわれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/135
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136・岡田利春
○岡田(利)委員 この二十五条の命令を出す場合には、これは通商産業局長と協議しなければならぬということになっておりますね。実際は、通商産業局長と協議する場合は、法違反の場合に限られるのではないかと思うけれども、二十五条を読みますと、規則違反で命令を出す場合も、すべて命令を出す場合には、通産局長と協議しなければならぬ、実際問題としてこういうことになるわけですね。改善命令を出す場合には、そのつど全部通商産業局長と相談をしなければならぬということは、これはあまり必要がないのではないかと思うのです。基本的な重要事項は別です。法で定めている事項について出す場合には、当然協議しなければならぬでしょう。規則、政令違反まで、政令に基づく改善命令まで一々やらなければならぬというのも、どうも法の立て方からいっておかしいと思うのです。この点はどう考えるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/136
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137・八谷芳裕
○八谷政府委員 これは法律を作りました際に、この違反事項というのは、ただいま申しましたような、注意とか通達、そういうものでなく、二十五条の改善命令まで出すというのは、相当に大量の悪質なものでございます。この改善作業ということによって、いろいろ、たとえばちょうど二十四条の二と同じような、これは精神は違いますけれども、その改善によって休業状態が生まれるとか、いろいろな点が出てくる面があるわけでございます。結局、連卸がなくて本卸だけでやっている場合は、当然改善命令で、連卸で目抜きができるまでは停止をしなければならぬ、こういう二十五条の取り扱い方が非常に大きな面を取り扱っている場合もあるわけであります。そうしますと、通産局長によく協議しまして、あとの諸対策もあわせて考えていかなければならぬ、こういう面があるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/137
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138・岡田利春
○岡田(利)委員 時間が切れてこれ以上質問ができないのが残念ですが、最後の質問一つだけして終わりたいと思うのですが、地方保安協議会のこの改正は、私は妥当だと思うのです。ただ、地方保安協議会の問題ですが、これは十条と二十三条ですか、この場合には地方保安協議会に諮らなければならぬ、こうなっておるわけです。しかし、この開会要求は、手続に従って半数以上の要求があれば開かなければならぬとあるのですが、毎年度の予算を見ると、地方保安協議会は一回くらいの予算しかついていない。保安協議会の問題がずいぶん論議をされ、中央協議会でもこういう抜本的な検討を系統的にしておるわけですが、地方保安協議会の問題は、これも国会決議の中に論議をされておるわけですが、今のままでいいのかどうかということです。たとえば保安規程を定める事項なんかの指示を出す場合に、地方保安協議会にかけるということになっておるわけですが、むしろ、これはもう少し弾力的運用ができるようなものにすべきではないか。特に地方に重大災害があったような場合には、やはり協議会に報告をしてやる。ところが、実際は予算がないから開けぬのが実態ですよ。ですから、地方保安協議会を活用するという立場を積極的にとることによって、せめて四半期に一回くらい、年四回くらいは開いて、この保安の問題について、どんどん技術革新も行なわれて変わってくるから、検討して集約するということが検討されていいと思います。炭鉱条件も九州と北海道ではずいぶん違うわけですから、そういう意味で、この地方保安協議会の活用について特に検討してもらいたいと思うのです。これも法改正だと思います。これも法ではっきりしておると性格がわかって——年に一回くらいしかやっていない。私は四年間くらい地方保安協議会の委員をやっておったが、開催したのは、四年間に一回か二回だ。予算がないのだけれども、これはやはり国会決議の趣旨からいって、地方保安協議会の活用という問題について一つ研究してもらいたいと思います。そのことを特にお願いして終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/138
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139・有田喜一
○有田委員長 他に質疑の通告がありませんので、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。
次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時五十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02119620329/139
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