1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年四月四日(水曜日)
午前十時四十八分開議
出席委員
委員長 有田 喜一君
理事 岡本 茂君 理事 神田 博君
理事 齋藤 憲三君 理事 始関 伊平君
理事 岡田 利春君 理事 多賀谷真稔君
理事 中村 重光君
藏内 修治君 澁谷 直藏君
中村 幸八君 濱田 正信君
渡辺 惣蔵君 伊藤卯四郎君
出席政府委員
通商産業事務官
(石炭局長) 今井 博君
委員外の出席者
議 員 多賀谷真稔君
議 員 岡田 利春君
労働事務官
(職業安定局調
整課長) 北川 俊夫君
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四月二日
石炭政策転換に関する請願(岡田利春君紹介)
(第三二〇二号)
同(岡田春夫君紹介)(第三二〇三号)
同(松井政吉君紹介)(第三二〇四号)
同外八件(多賀谷真稔君紹介)(第三二六五
号)
同外六十四件(中村重光君紹介)(第三二六六
号)
同外六十件(渡辺惣蔵君紹介)(第三三五五
号)
同(野口忠夫君紹介)(第三六一三号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法
律案(内閣提出第七六号)
石炭鉱業安定法案(勝間田清一君外二名提出、
衆法第一九号)
炭鉱労働者の雇用安定に関する臨時措置法案(
勝間田清一君外二名提出、衆法第二〇号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/0
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001・有田喜一
○有田委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案、勝間田清一君外二名提出、石炭鉱業安定法案及び炭鉱労働者の雇用安定に関する臨時措置法案を議題として質疑を行ないます。
質疑の通告がありますので、これを許します。始関伊平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/1
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002・始関伊平
○始関委員 前置きを抜きにいたしまして直ちに質問に入りたいと思いますが、ただ、こういう法案の出て参りました背景なり、あるいは気持につきましては、一応了解ができないわけでもございませんが、法律案でございますから、客観的に一つ法律論の立場でお尋ねをしたいということと、もう一つは、率直にお尋ねしたいと思いますので、あるいはお耳ざわりな言葉が出ることがあると思いますが、この点は平素の御好意に免じて一つあしからず御了承をいただくようにお願いいたします。
この法案、と申しますのは炭鉱労働者の雇用安定の方でありますが、五条、六条の規定もございますけれども、一番の大きな骨格をなすものは三条、四条だろうと思います。それでその趣旨といたしますところは、一定数以上あるいは一定割合以上の炭鉱労働者を解雇しようとする場合には労働大臣の承認を受けなければならないものとする、もう一つ、労働大臣は当該労働者の再就職が困難であると認める場合にはその承認をしてはならないものとする、ということが骨子だと思います。しかしこういうような立法というものは、日本の労働法体系のうちにそれに比すべきものが全然ない。また世界各国の立法例を調べてみましても、こういう立法例というものは全く見出すことができないのでありまして、提案者の引用されております西ドイツの解雇制限法も、これはあとで申し上げますが、全くといっていいくらい立法の趣旨が違うというふうに私は考えております。従いまして、われわれはこの法案に対してはなはだとっぴな——とっぴという言葉が悪ければ唐突な感じ、そういう印象を持つものであります。世界のどこを探しても、労働法体系というものはずいぶん発達して参っていると思うのでありますが、類似の立法がないということは、同時に、この立法が客観的な妥当性と、それから合理性を欠いておるということを意味しておるのだというふうに指摘せざるを得ないと思うのであります。資本主義社会における企業が、原則として解雇の自由を持つということは申し上げるまでもありません。この原則に対して若干の例外がありまして、たとえば日本では労働組合法第七条あるいは労働基準法第百四条というようなものがありますが、これはこの法案とは全く関係がないのでありまして、提案者もこの点には言及されておりませんので、あらためて申し上げる必要はございません。
西ドイツの立法でございますが、この西ドイツの立法は、社会党案のように、解雇権そのものを奪う、承認なき解雇は無効とする、そういう趣旨のものではなくて、ただ単にその解雇の効力の発生を一カ月なりあるいは最大三カ月の間延ばすことができるにすぎないものであります。西独の労働市場の状況からいえば、このような程度の時期の調整でも若干の意義ありというふうにされているものだろうと考える次第であります。
そこで最初にお尋ねしたい点は、提案者がこの法案と西ドイツ連邦の解雇制限法とを、これはせんだって勝間田君が読み上げました提案理由によりますと、「連邦の解雇制限法と大体同様なものであります。」と言っておるのでありますが、実は同様でないので、同様だというのは、誤解に出たか、そうでなければ何かちょっと、これも言葉は悪いのでありますが、ごまかしのような感じを持たざるを得ないのであります。最初に、その点について御所見を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/2
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003・多賀谷真稔
○多賀谷議員 質問者の方から、日本の労働法体系の中にどこにあるかという話がありましたが、質問者自身が御指摘になりましたように、必ずしもこの法案と同じではありませんけれども、解雇制限というものについては、不当労働行為の解雇制限、あるいはまた基準法による、災害を受けた場合にはその災害がなおるまでは解雇ができない、こういう法律もあるわけであります。あえて日本の法制の中で探そうと思えばそういうものがあるのですけれども、しかし私たちもこれと同じ類型だとは申しませんが、解雇制限としての法体系は全然絶無ではございません。
それから今、西ドイツの州法並びに連邦法の、われわれが引用したことについての質問がございましたが、やはり経営者が解雇する場合においては、どれだけ努力をしたかということがかなり基準になると思う。それはたとえばヴィルテンベルグ・バーゲン邦の中の大量解雇における従業員保護に関する法律に、解雇は労働時間の適当な短縮を初めとして、職場維持のためになし得る一切の手段をしたときに初めて考慮すべきものである、こういう規定があるのであります。これは単に形式犯ということだけでなくて、かかる十分な手段を事前に尽くしたかどうかということが判定の根拠になるわけであります。さらにまた、ドイツの場合は日本の場合と違いまして、解雇された者は次の再就職まで、最初は失業保険でいきます、失業保険が切れますと、失業手当として再就職まで完全に生活が保障されておるというところに、問題が違うのであります。解雇された者の取り扱いも違うというところにわれわれは考慮しなければならないと思うのです。
それから、私たちが今出しております法律は、解雇を制限するということで、解雇を全然禁止するということではございません。「再就職が困難であると認める場合」こういうことが書いてあるのでありまして、就職ができるという条件においては当然労働大臣は承認をすべきものである、かように考えておるのであります。しかし、私企業においてそれだけの負担をかけることはこれはどうかと思いますので、あとに申します雇用奨励金の制度がございますから、新しい企業に雇用奨励金を補給して、そうして新しい雇用を持たすというと同じような意味において、いわば炭鉱側にその欠損分については解雇制限補給金というものを政府が支出するのだ、こういうように考えて、大体総合的に考えますと、あまり欠陥はないのではないか、こういうように考えるわけであります。
それから、あえて申しますならば、アメリカの完全雇用法というのが、例のニュー・ディール政策のときにいろいろ論議されたわけです。これもやはり企業家の社会的責任という意味において、どんどん解雇すべきではなくて、企業家は企業の許す範囲においてやはり雇用を維持すべきであるという社会的義務を課しておるのでありまして、やはり政府が完全な離職者に対する保障、あるいは憲法に規定しております労働の権利というものを保障するならば、資本主義国家においても私はこういう法律が出て至当ではないか、こういうように思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/3
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004・始関伊平
○始関委員 だから私は法律論として問題を限定してお尋ねしたい、こう言ったのでありまして、法律上の効果としては解雇権を剥奪する、承認なき場合の解雇は無効であるということは、その点法律上の要点について言えば、世界に準ずる例がないと思うのであります。ただいまお触れになりましたその他の点につきましては、これからの質問でだんだんとお尋ねをして参りたいと思います。
私の第二番目の質問は、あなたの方の法案の第三条の趣旨というのは、その二項に明らかになっておりますように、またただいまの御説明にありましたように、解雇されようとする炭鉱労働者の再就職が困難であると認める場合に、鉱業権者から解雇権を剥奪しようというものであります。この点は疑いのないところであります。しかしながら、再雇用が困難であるという労働市場の状況というものは、いわば当該企業の外側の問題であって、こういうような事態に対して全く責任のない経営者側に責任を押しつけるというのでは、理論上も、あるいは思想上もおかしい、筋の通らない話であろうというふうに私どもは考えております。このような労働市場の状況、つまり再就職ができないといったような労働市場の状況に対処する責任というものは、近代国家の通念として、政府の方にある。それだからこそ、前国会末期以来、社会党の方とも、協力をして、離職者対策というものにはかなり力を入れて参ったのであります。社会党のある議員さんのお話によれば、保守政党としてはなかなかやりにくいと思われるような雇用奨励金というようなものもやったのでありまして、再雇用が困難だという労働市場の状況に対処する責任というものは政府にあるのだという前提に立って、離職者対策等が不十分であればこれをさらに拡充強化するというふうな御議論ならば、非常にすなおに受け取れるのでありますが、労働市場の状況というものについては、とにかく企業者には責任はないという建前なのです。そこで私が提案者にお尋ねしたいのは、このような状態に対する政府の責任というものと、それから業者の責任というものとを混同し、間違えておるのじゃなかろうかという気がいたすのでありますが、この点一つお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/4
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005・多賀谷真稔
○多賀谷議員 労働市場に対処する責任は、当然政府でございます。しかし解雇権を乱用してはいけないのでありまして、また当然、なるべく自己の労働力を保全して解雇しないという責務は、現在の日本のような労働市場においては、企業家の社会的義務としてあるのではないか、やはり企業家は自分の思うように、どんな労働市場の状況でもどんどん解雇していいというわけではないのじゃないか、われわれとしては、やはり社会的責任がある、こういう考え方を持っておるわけです。しかし、それではそれが全部企業家の責任かというと、そうでもない。ですから、現在の日本の経済情勢においては大体政府が持つけれども、自己の労働力をどういうふうに保全をしてやるか、将来その労働者をどういうふうに見てやるかというのは、現在の日本のような終身雇用制の比較的多く行なわれておるもとにおいては、やはり企業家の責任という一半があるのではないか、かように思うわけです。しかし、それだけでは理論が通りませんから、ここに解雇制限補給金というものを出して、政府にその大半の責任があるのだということを明記したわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/5
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006・始関伊平
○始関委員 解雇される人間に対して企業自体としてもあたたかい心づかいをしなければいかぬということ、それから、必要な人員の確保は企業自体の責任であるということは、私もその通りだと思います。しかし、法律論としては、企業自体が過剰であると認める人員について、企業自体が養っておかなければならぬという責任を持たすことは、私は行き過ぎだろうと思います。補給金の問題もありしましたが、補給金というものは非常に不都合なものであります。これはあとでお教えを願いたいと思います。
その間、ちょっと第三問といたしまして問題をはさみますが、日本の石炭業の置かれている立場というものは、ともかくも合理化を進めて、国民世論の納得するところまでコストと価格を引き下げて、その基礎の上に、政府の施策と関係業界の協力と相待って、石炭業そのものの安定をまずはかるべきであって、そういうような企業そのものの安定を待って初めて、ほんとうの意味の雇用の安定が期し得られると考えるのであります。おそらく提案者は、理屈としてはそんなことはわかっておるのだが、目下の事態が急迫し過ぎておると考えておられるのだろうと思いますが、とにかく本筋はそういうことでございますので、この法案によりますと、企業の運営について、あるいは企業の存立について責任を持つ経営者が、合理化その他を遂行することが実際上できなくなる、あるいはきわめて大きな制約を受けるわけでありますから、提案者のお考えのような法律を作るということは、日本の石炭業の進むべき根本的な方向に逆行するきらいがある、このように思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/6
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007・多賀谷真稔
○多賀谷議員 私は、この法律が実際に運営されるならば、必ずしもお話になったような状況ではなくて、むしろ近代的な炭鉱の建設になるのじゃないかと思うのです。なぜならば、再就職が困難である場合には不承認にしていいわけです。これは現在の財閥石炭会社の状態からすれば——ほとんど鉱山から生まれた会社が大部分です。三井にしても、三菱、住友にしてもそうなんです。炭鉱は、元来、収獲逓減の法則ではございませんけれども、資源を枯渇させていく産業ですから、非常に利潤を得たときに新しい会社ができている。そういう関係からいいますならば、非常な努力をし、財界の協力を得るならば、財閥会社においては、政府にたよらなくても再就職はできるのじゃないかと私は思うのです。この努力が足りない。もしこの法律が実際運用されるということになると、少なくとも財閥会社の労働者の再就職は、政府の手を借りなくてもいいんじゃないか。しかし財閥会社でない、系列会社を持たない会社においては、あるいは中小鉱山等においては、むしろ政府がそういう部分の離職者について、積極的に市場を開拓してやれば、両々相待って私はスムーズにいくのではないかと思うのです。そこで、合理化の今の基本線から逸脱するではないかというようなお話ですけれども、現在の合理化の基本線は、政府が考えておりますようには現状はいっていない。これは私たち意見のあるところですが、現在の合理化の姿というものは近代化の方向にはいっていない。これはたびたび本委員会でも問題になりましたけれども、近代化でなくて、非近代化の方向にいっておる。ですからビルド・アンド・スクラップでなくて、スクラップ・アンド・スクラップという形になっておる。これは非常に問題点だろうと思うのです。それから、要するに人を減らすという面からいきましても、今のような、トラブルの中で解雇されるのではなくて、こういう制度が運用されますと、必ずスムーズな形の中で再就職も行なわれ、人員の縮小もできるのではなかろうか、こういうように逆に考えておるわけです。そういうことになるとこの法律は、先般も参考人の意見の中で全炭鉱の方々が、これは解雇奨励法になるのだということを言っておりましたが、私は必ずしもそういうことではありませんで、再雇用を促進する法律になる、実際上の運営としてはこういうように考えておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/7
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008・始関伊平
○始関委員 ただいまのお話の中で、財閥会社の問題に今お触れになりましたが、それは道義的な一種の責任といいますか、そういうような意味においては私ども同感の点が少なくないのでありますが、解雇権を奪うという形はいかにも不適当だという考え方をしておるのでありまして、これからその点をだんだん申し上げたいと思います。
今度は一つ実行上の問題につきましてお尋ねをしてみたいと思いますが、たとえば、ある中小炭鉱で現在三百名の労働者がおる、この法案が出ました場合に、自分のところでは百名でよろしいのだ、あと二百名は解雇したいという申請がかりにあったとして、労働市場の問題云々とおっしゃるのだが、何名の解雇が必要であるかというようなことからいいますと、企業自体の立場からも問題を判断しなければいかぬのでありますが、一体これはだれがどんなふうにして判断を下すのか、非常にむずかしいと思うのですが、その点いかがでありますか。
それから、私は今の情勢から申し上げますと、ここに二百名——二百名に限らないのでありますが、この場合でいえば二百名の解雇申請に対して、不承認にするほかない。その結果どうなるであろうということを考えてみますと、二つの場合が考えられると思うのです。一つの場合は、第四条にいろいろと補給金を出す条件が規定してございますが、この条件の当てはまり方いかんによって、二百名分の賃金全額を補給しなければならぬという場合があり得るであろうと思います。そういたしますと、その場合には、企業者は税金で遊んでいる労働者を養うということになるわけでありまして、これはどう考えても不都合ではなかろうか。もう一つ、こういう場合も考えられる。それは一定割合しか補給金が出ないという場合には、石炭業者に負担を負わせることになる。法律的に限定して考えれば、企業というものは失業救済機関ではない、これはもう明らかでありますから、石炭業者に不当な負担を負わせ、犠性をしい、企業の存立そのものを危うくするということになると思うのであります。どちらの結果になっても、これは著しく不都合だと思いますが、その点御見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/8
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009・岡田利春
○岡田(利)議員 今の一つのケースの問題ですが、どういう場合を想定しているかということが問題になってくると思うわけです。わが国の中小炭鉱の現勢は大体Aダッシュ・クラス、こう言って差しつかえないのではないかと思うわけです。しかも、今日の炭鉱の経営構造から判断をして、普通一般の中小炭鉱において坑内外の比率は七対三、この程度が今日の坑内外の人員の比率の傾向だと思うわけです。ですから、一挙に、三百名の炭鉱で二百名を解雇するという事態が起きる条件というものは、どういう場合が想定されるであろうか、こう考えてみますと、なかなかそういうケースはないという工合にわれわれは今までの実績から考えているわけです。ただ坑外関係を全部社外工に切りかえる、あるいは福利厚生施設を全部まとめてしまうというような場合に、一応過半数に近い者を一挙に解雇をするという場合が想定されますけれども、それ以外のケースとして、よほどの何か事故があって、坑内が半分水没をするとか、そういうアブノーマルな事態でない限り、三百名の在籍で二百名を解雇しなければならない、こういうケースはわれわれは想定できないわけです。そういう実例もないわけです。ですから、炭鉱そのものに対してそういう一つのケースを想定すること自体がおかしいのではないかという工合に、私は言わざるを得ないと思うのであります。人員は一応別にしても、中小炭鉱で大量の整理をする、この整理の中には、必ず坑内外の生産部門と非生産部門の関係があるわけです。たとえば配給所とか福利厚生関係を一応切り離す場合には、これは切り離すということであって、経営形態は別であるけれども、労働者はそこでやはり雇用されるわけです。ですから全部丸かかえをしなければならぬというケースは、今日日本の炭鉱の合理化のこれからの先行きの中で、私どもとしてはそういう想定はできないのだ、そういう事態はよほどの何か事故か災害がない限り発生しないであろう、こういうような点、現状認識なり実態認識についてちょっと飛び離れているのではないか、こう私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/9
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010・多賀谷真稔
○多賀谷議員 ですから、企業の存立を危うくするという場合には、これはただし書き条項で除外をしてあるわけです。企業の存立を危うくするものについてまでこれを適用しようという考え方ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/10
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011・始関伊平
○始関委員 それは、私が申したように、全額を補給してくれればいいです。しかし今百名、二百名、数字はどうでもいい。要するに一定割合しか補給金がもらえないという場合、やっぱり賃金として実際支払う額との差額との問題が起こって、非常に困難な事態になるということを申したのですが、それはそれでよろしゅうございます。これは御答弁の用意がないと思いますが、かりにこの法律が通ったとして、第四条にいう解雇制限補給金というものは総額どのくらい要ることになりますか。その算出根拠があったら一つお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/11
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012・多賀谷真稔
○多賀谷議員 今年大体政府が考えておりますのが二万七千名くらい解雇ということになりますと、この中で、山全体の継続が不可能であるような場合、これは主として合理化法にかかる山は大体その類型に入るのじゃないかと思う。それからこれにも書いておりますが、先般通過をいたしました石炭鉱山保安臨時措置法によるいわば整理炭鉱は、当然この法律から除外をして認可が要らない、こういうようにいたしたいと思います。これは生命の危険がございますから、当然除外をされるものである。そういたしますと、二万七千名のうちで大体二万人くらいが対象になる。そのうち大体半分適用されるということになると、最高七千五百円やりましても年間七億五千万円、大した金額ではないのではないか。こういう数字になる。一万五千名にいたしますと、十億程度ということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/12
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013・始関伊平
○始関委員 その次の問題に入ります。
これは提案者のすべてがそういう御意見であるかどうかわかりませんが、この第四条にいう解雇制限補給金と三十七年度予算で決定を見ておる雇用奨励金、これは大体同様の趣旨のものだというふうな見解が提案者の方にあるように私どもは推測するのですが、これも私どもに言わせれば、非常にとんでもない見当違いだと言わざるを得ない。その理由は、雇用奨励金というのは問題の根本的な解決ですね、従って前進の方向にあるわけでありますが、これに対して解雇制限補給金というのは、単なる問題の引き延ばし、さっき申したように大勢に逆行する方向にあるというふうに考えます。もう一つの点として、雇用奨励金というのは雇い主の意思に合致したものであるのに対して、解雇制限補給金の方は、雇い主の意思に反して、企業の自主性なりあるいは経験というものを踏みにじる結果になる。その結果、さっきあなたがおっしゃったように、国が財政的に責任を持つということになるわけですが、国が責任を持つことについてはまたあらためて伺いますが、そういったようなことで、どうも解雇制限補給金と雇用奨励金とは似たようなものだという考え方は、私は非常に困ると思うですが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/13
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014・多賀谷真稔
○多賀谷議員 確かに、問題のいわば引き延ばし、停止になることは事実です。しかし、今政府がやっておりますいろいろな政策を見ますると、たとえば失対事業をながめてみましても、これはまさに引き延ばし政策と何ら変わりがありません。これは事業効果を認めたものではない。むしろ今の失対事業の実態を見ますると、あの失対のプールの中に入り込んでしまいますと、なかなか出てこれない、よほどの決意がないと、新しい再就職に転職できないというのが実態ですね。それよりも私たちは、企業の中にとめておいて、そうしてスムーズに、空白期間を置かないで次の職場に行かすという方が、労働意欲の点からいっても、あらゆる点からいってもむしろいいのじゃないか。どうも私たちの法律はあなた方の思想と違うように書いておりますけれども、よく実施されると私は決して違っていないんじゃないかと思うのです。今少なくとも一年五十万円、炭鉱離職者に失対事業をさして使っておる。そのことを考えると、解雇制限補給金というようなものは、私は、金額からいきましても微々たるものではないか、こういうように考える。どうも質問者の方がイデオロギーにこだわっておられるのじゃないか。解雇の制限、剥奪だというようなものの考え方ではなくて、再就職さえあれば解雇はどんどん認めましょうという考え方です。なるほど一時はチェックになり、停止になることは事実です。しかもこれは臨時立法で、今中高年層が労働事情の非常に悪い状態にいきつつある中で、一時に、しかも同じ地域にはんらんするということを何とか緩和したい、こういう点でございますから、質問者の実際の気持とは、イデオロギーを抜きにすれば、あまり違わないのではないか、こういうように考えるわけです。それから一時、解雇が承認されなくても、就職がその後見つかればどんどん承認をしていくという考え方でありますから、停止をされました労働者も、就職場所さえあれば、その後にはやはり解雇を認めていくという制度になるわけですから、私は何らそこに支障はないのではないか、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/14
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015・始関伊平
○始関委員 元来失業救済機関でない企業に対して、そういったような責任を負担させることがよろしくないのだ、こういう前提に立っておりますので、だいぶ考え方が違うのでありますが、次の質問に入ります。
提案者がこういうような法案を出してこられたについては、私は結局企業というもののあり方について、われわれとの間によほど根本的な考え方の違いがあるということを指摘せざるを得ないと思うのです。およそ企業というものは自立経営を建前とするものであって、赤字を出したからといって、それは企業自体の責任である、これを国家に転嫁するというようなことを軽々しく考うべき筋合いのものではない、こう根本的に考えられます。それだからこそ、企業の自主性、いわゆる経営権というものが尊重せられねばならない、こういうことになるわけですね。雇用あるいは解雇ということが経営権の一番大きな、重要な柱であること、また時と場合によっては、それに対抗する手段として労働者側のストライキ権というものを認めるというのが、根本の建前だと思います。そこでこの経営権を侵すといいますか、制限する、あるいは剥奪するということになると、これを補うためにこの法案の四条のような考え方が出て参りますね。しかしこれは企業というもののあり方の根本に触れる問題だというふうに私どもは考えておりまして、そういう見地からこれは全く望ましくないと思います。たとえばイギリスやフランスなどの各国では、これは御承知のように自由主義国家ですけれども、石炭その他若干の基礎産業が国営になっております。国営になりました目的とか、趣旨とか、あるいは今日までどういう実績を上げたとかいう問題はここでは差し控えますが、しかし国営になった石炭業、あるいは電力もございますが、こういうところでも、やはり自立経営ということが非常に大きな建前である、赤字を出してこれを国に転嫁するというようなことは最大の禁物だというふうに、私はイギリスあたりの国営当局から直接聞いております。実際上の結果は必ずしもその通りいかぬような面もあるようですけれども、しかし依然としてこれは非常に大きな原則なんですね。
これは私、水谷長三郎さんの商工大臣当時以来長い間持っておる疑問なんですが、今非常にいい機会だからお尋ねしたいと思うのです。社会党が国営を主張する、あるいは国家管理的な構想や政策を打ち出すときには、いろいろなねらいがあるでしょう。いろいろなねらいがあると思いますが、しかしそのねらいの一つとして、イギリスやフランスの国営化とは逆に、意識して企業採算というものを国の財政に結びつけて、そして赤字を国に転嫁するということをねらっておるような感じがいたします。なぜそう思うかとおっしゃれば、私非常に長い間、いろいろな種があるわけです。一々申しませんが、そう思っております。つまり親方日の丸式なやり方をしていきたいというのが、社会党の国営論あるいは国家管理論の一番基調にあるということを、私は長い間疑問にしております。このもう一つの法案の安定法の方でも、たとえばコストの高い山には補助金をやるというようなことがございますね。それから一手買い取り、販売機関を作るとおっしゃるのですが、私に言わせると、これも結局今申したようなねらいに相通ずるのです。それはつまり買い値と売り値とを切り離すわけですから、食管みたいなもので、どうしたって赤字が出ざるを得ない。たとえば、電力業者に売る石炭の値段を上げるわけにいかぬ、しかしコストが高くなったから買取額を上げてくれというようなことで、買取価格と販売価格とを切り離せば、必ず私が申し上げましたような結果にならざるを得ないと思います。それで私は、企業のあり方あるいは企業責任、こういった非常に産業政策のポイントともいうべき点について、これは社会党としては伝統的な考え方だと思いますが、非常に不都合な考え方であり、なおまた世界じゅうに例のないような考え方だと思います。自由主義社会の私企業についてそういう考え方はない、自由主義国家の国営企業についてもそういう考え方はない。さらに、これは自分で行って見てきたわけではありませんが、たとえば社会主義の本家本元のソ連はどうなのか。ここでは個人労働者には非常に厳格なノルマというものがある。国営企業に対してはどういうふうになっているかということですか、これは生産数量なり品質なりあるいはコスト、価格なんかに対する計画上の要請というものがあって、それが達成されないときは経営者の責任が追及されて、最小限度、その地位にとどまることはできない、こういうようなことになっているようです。赤字を出したらこれを国家に補てんさせるというようなことは、てんで問題にならないというふうに承知をしておるのであります。この点は、さっき申したように、幾らでも私はここに並べる種がございますが、社会党としてはどうも企業責任というものをはっきりさせないというところに、一つの伝統的な考え方があるのではなかろうかと、私は長い間推測しております。それは今申し上げたような経済体制のいかんを問わず、日本社会党の独特な考え方で、ちょっと世界じゅうに比類のないものではなかろうかと思います、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/15
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016・多賀谷真稔
○多賀谷議員 ちょっと始関委員は忘れておることがあるのじゃないかと思うのです。それは確かに社会党が国家管理を出しましたときに、赤字補てんをいたしました。赤字補てんの場合は、二つある。一つは傾斜生産の面と、他の物価ことに重要産業に高い石炭を供給しない、低廉な石炭を供給する、こういう二つの目的があったと思う。それは当時、あの石炭の不足な時代に、自由価格であったら、大へんなことになるわけですね。幾らでも売れたわけですから、あの当時自由価格でやっておれば、これは莫大な利潤を得ておるかもしれません。政府が当時電力とか鉄鋼とか国鉄に納める石炭の価格というものを押えた、ここに一つの赤字補給金的なものが出た、かように考えるわけです。それからこれは何も社会党が政権をとったから赤字初給をしたのではなくて、その前の自由党政権においてもおやりになったのでございますから、これは戦後の経済が石炭傾斜生産に向かっておったということでありまして、国家管理をやったほかは、別に赤字補てんについてはそれほどの変わったところはなかったのではないか。これはむしろ伊藤先生の方が詳しいから、われわれからもお聞きしたいと思うわけです。ただしかし、そのとき企業者に対してその責任を十分監視しなかったということは事実です。この赤字補てんに出したつもりの金が石炭そのものに使われていない面が出てきたということは、残念ながら事実のようでございます。今日石炭界に対する不信の念は、やはりそういう点からもきざしているのではないか。当時あれだけ政府が力を入れたのに、なぜ基本的な縦坑の開発であるとか、大きな坑道の掘進であるとか、機械化をやらなかったろうか、われわれもそう考えるわけです。それから社会党の当時の国家管理というものが中途半端であった、もう少し鉱区問題の解決に乗り出しておったら、現在の炭鉱というのは、少なくとも欧州の炭鉱のように立ち直ったのでにないだろうか、こういうように考えるわけです。
それから、われわれは企業責任というものを十分に追及していきたいと思う。しかし今日出しておりますところの解雇制限補給金というのは、これは企業を甘やかして、赤字を補てんするという意味ではありません。言うならば、失業対策に使う金をこちらに一時使用する、こう言っても、私は、全然理論の通らない話ではない、こういうふうに思うわけです。どうも、今まで政府がおやりになった赤字補てん政策と、われわれの案とをくっつけたような御質問でありましたが、これは少し的はずれではないか、かような思います、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/16
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017・始関伊平
○始関委員 それは、過去の石炭国家管理の当時の事情は、お説の通りですが、私の言いたいのは、あの当時のものはやむを得ない事情があったにしても、原則としては、ああいったようなやり方が企業責任をあいまいにするという意味で非常に望ましくないというのが、私どもの方の基本的立場なんです。あなたの方は、どうもそちらの方が原則といいますか、きわめてそういうような方向に向かいやすい一つの基本的な態度といいますか、性格を持っておられるように思うのです。
そこで、まるっきり違う今日の情勢下においても——このもう一つの法案では、さっき申し上げましたような二つの点があると思うのです。一つはコストの高い山に補助金ですか、補給金ですか、やるという考え方。もう一つは販売機構を一元化する、そうすると買い取り価格と販売価格が遮断されます。ですから、これはどうしたって買い取り、販売の操作を通じて、やはり赤字を補てんするといいますか、自由市場であった場合に比べればそういう傾向になるのですよ。これはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/17
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018・多賀谷真稔
○多賀谷議員 この石炭鉱業安定法の問題でございますが、これはわれわれとしては、積極的にビルドをやるのだという考え方です。積極的にビルドをやりますと、そこの炭鉱のコストというのは非常に低い、そういたしますと、その低いコストの石炭と高い石炭とのある程度のプールというものが必要ではないか、こういうように考えてきたわけです。ですから、原則として補給金制度でなくて、価格プール制度、いわばバルク・ラインを引きまして、そうして全然プールじゃございませんけれども、普通ならば、自由競争でいきますと、倒れる部分もあるが、非常に生産が上がった、ことに開発株式会社でやりましたコストの安い石炭の面から出ました益金を、むしろ市場価格よりも高いコストの山に補てんをしよう、こういう考えで、純然たる補給金制度を原則としたものではございません。しかしそれにいたしましても、過渡的段階におきましては、やはり若干の交付金が必要ではないかというので、念のために書いた規定でございます。
それから生産と販売を分離するという話ですが、現在いわば石油についても御議論がされておりますし、メタル・マインにつきましても輸入物資と国内産のものについて御議論がありましたと同じようなものが、国内にあるのではないか、こういうことでプール機関を——プール機関というのが販売公社になる。販売公社という考え方は二つございまして、今の価格プールという面と、それから第二には調整的機能が必要ではないか。炭鉱の場合は、雨が一割降りますと三百万トンからの石炭が余ってくるという、電力問題と関係をしておる、自然条件からくる調整が必要です。ですから、景気変動のほか、そういう自然条件からくる調整が必要でありますので、どうしても調整機関というものが必要ではないか、この二つの点から販売公社という構想が出たのでございます。そして実際の取り扱いは、かつて配炭公団がやりましたように末端の石炭まで扱いません。ほとんど現在の販売ルートそのままを活用していきたい、かように考えておるわけです。ですから、ある炭鉱から出ました石炭は、従来通りの販売系列を通じて大手においては納める、しかしその操作は一応販売公社で行なう、それから小口のものについては全部委託をしてその業者にやらすということでございますから、非常に有機的に、かつその実情に応じて弾力性を持って運営をするわけでありますから、従来の官僚統制というようなそしりは免れるのではないか、こういうように考えるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/18
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019・始関伊平
○始関委員 ただいまのお話の中で、電力事情の変化などに対処する、時期的に見た需給の調整、これはある程度必要だという点は私どもは同感ですが、そのためにはある程度の一定量の石炭を操作すればいいので、全体的な買い取り販売機関を作るということ、しかもその場合に、何か山別にコストの違うのに応じて価格を違えようというようなお話ですが、これはやはり非常な弊害のあるもので、特に物資の不足な時代にはそういうことをやった場合もございますが、原則的にはやはり生産意欲、合理化意欲を阻害するというようなきらいもございますし、コストの高い競争をするようなことにもなるので、これは望ましくない。もう一つは、立案者の意図がどうであろうと、やはり販売価格と買い取り価格とを分離すると、私がさっき申したような傾向になりがちで、これは否定のできない事実だと考えております。しかし、これは押し問答でも困りますので、ちょっと問題を進めますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/19
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020・多賀谷真稔
○多賀谷議員 今の点をちょっと……。実は、始関先生も御存じのように、販売は私企業であるドイツにおいても一元化されておるのです。イギリスはもちろん生産から販売まで一元化しておるのです。フランスにおいてもそうですが、私企業であるドイツにおいても、やはり一元化しておるのです。このことはよくお考えになっていただきたいと思うのです。あれだけの重量物資を自由販売をして、いいところがあるかどうか。私は石炭そのものが、資本主義であろうと、社会主義であろうと、イデオロギーを抜きにして、自由競争をしてよくなる品物であろうかと思うのです。これは私たちの考え方は一貫しておるのですが、下にあるものを上に出すのです。そうして製品が、競争したからといって別によくなるわけではない。それを現在のように、北海道の石炭を大阪まで持ってきたり、九州の石炭を東京まで持ってきたり、あの重量物を交差輸送しておる。では、こういうむだをどうして直したらいいか。私たちにむしろあなたたちに聞きたいくらいです。私たちの法案も完全ではないし、運用においてはなかなかむずかしい点もあるでしょうが、では一体自民党さんはどういうふうにお考えになるのか。こういうむだはだれでも指摘しておるわけです。ですから、そういうむだをなくするためにはわれわれはこれが万全であるとは言いませんけれども、こういう方法しか考えられないのではないか、こういう考えから出発して今の一元化の問題が出たわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/20
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021・始関伊平
○始関委員 ただいまお話がありましたので、こっちも申し上げるわけですが、それは交錯輸送を避けるとかなんとかいうような意味からいって、あなたの方の構想もそれ相応の意味もあるし、効果もあると思いますが、ただ、どうもイギリスやフランスあたりと国情が違って、日本の場合には、やはり私がさっき申したように、販売価格というものと買い取り価格というものが一応断ち切られるということから、そこに非常な、今までにあったような弊害が出てくるおそれの方が、弊害の方の面がよけいに出てくる心配が大きい、こう考えております。
そこで、一つ先に問題を進めます。今度は第五条に入りますが、この五条は第二会社の問題でありますけれども、第二会社設立の目的が賃金低下などの目的に出るものであるときは、坑口の使用を禁止することができることにしよう、こういうわけであります。第二会社の問題は、私どもあまり好ましい事柄ではないというふうに考えております。しかしこれも、純粋に法律的な見地に立って議論をいたしますと、あなたの方のこの立案は不当です。まず第一に、こういうことを伺いましょう。とにかく、労働者とそれから経営者との関係というものは、労働組合を通じての労使の自主的な交渉というものを尊重するというのが、一番基本の建前だろうと思うのです。そういう意味からいいまして、第二会社は望ましくないにしても、そういう話し合いができれば、その話し合いの結果を尊重するというのが、私は一番大きな考え方の筋道だと思います。いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/21
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022・岡田利春
○岡田(利)議員 第二会社の問題は、現行の合理化法の第四章の坑口の開設の制限、第五十四条、第五十五条でいわゆる坑口の開設の許可基準というものが定められている。この基準に合致しない場合には、坑口の開設を許可しないわけです。これは新規の開坑であろうと、あるいはまた従来の炭鉱が第二会社という組織に切りかえようと、あるいはまた租鉱権の炭鉱であろうと、条文には全部当てはまるわけです。そこでわれわれは、なぜ一体合理化法が坑口の開設の許可基準というものを作って坑口の開設を制限しなければならぬのかということは、やはりこの合理化法が石炭鉱業の将来にわたる安定、そのためにはやはりビルド・アップの方式と、それからどうしても経営の成り立たぬものはこれをスクラップする、こういう思想に貫かれておると思うわけです。特にわれわれが問題にしておるのは、今日第二会社に移行しなければならぬというのは、非常に終掘に近くなってきておる、残りの炭層というもの、鉱量というものが少なくなってきておる、こういう条件の中で実はこの第二会社というものが発生してきておるわけです。極端な例を言いますと、三菱の方城、上山田のように、五年間でここはもう終掘してしまう、終掘するのであるから、五カ年計画でもって漸次人を減らしていって、五年後には終掘する、こういう労使間の協定を結んでおるわけです。しかし炭鉱は、御存じの通り、採掘する条件として、保安炭柱とか一定の炭層を残さなければならぬようになっているわけです。一定規模の炭鉱の経営の場合には、一定の炭量というものが必ず残るわけです。ですから終掘といっても、一体終掘がどこかという面については非常に議論のあるところです。しかも終掘をするという協定を結びながら、これを第二会社に切りかえて残りの残炭を採掘する、こういう形式が実はとられておるわけです。しかも小規模でそういう採掘形式をとりますと、これは五年ないし十年——今の実績では終掘であるという前提に立って第二会社が作られて、十年間経営が継続されておる、こういう実例が実は枚挙にいとまがないわけです。これであっては石炭鉱業の安定、スクラップをし、しかもビルド・アップをして将来に向かって石炭産業を安定するということに逆行するのではないか、こういう立場を私どもはとるわけです。ですから、極端なものの言い方をしますと、思想的には私どもは、第二会社というものは認むべきではない、そういう従来の形式で経営ができない炭鉱は、スクラップ化すべきである、こういう明確な立場に立っておるのでございますが、今日日本の雇用の実情等から考えて、あるいはまた炭鉱の所在する市町村の問題、あるいはまた、炭鉱というものが比較的へんぴなところに存在をしているという日本の実情、こういうものを勘案して、ある一定の労働条件というものが確保される場合に限ってのみこれを認めよう。労働者が認めるという場合は、ある一定の労働条件が確保されることによってこれは了解をする、こういう工合に私どもは理解をいたしておりますから、当然労働条件が極端に下がる、今の実例では賃金が半分になる、あるいは三分の一になる、こういう合理化法の精神に逆行する第二会社方式については、きつく規制をして、それができないものについてはスクラップをし、これをビルド・アップをする、こういう割り切った考え方に立たなければ、石炭産業の安定というものはないのである、こういう立場で第五条を規定いたしておるわけでございます。現行法の坑口の開設許可基準の設定等から考えてきわめて当然な措置ではないか、このように理解をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/22
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023・始関伊平
○始関委員 岡田さんの御答弁ですが、これは今スクラップ・アンド・ビルドのスクラップ化の方を盛んに進めておるわけですから、その趣旨に反するような、何といいますか、資源的条件その他の劣弱な炭鉱の再開を認むべきではない、これはもちろんそうだし、今坑口の開設許可という制度があって、そういう趣旨で運用しているのだろうと思います。ただ問題はすぐにもう一ぺんスクラップ・ダウンしなければならないという資源的な条件を理由とする坑口開設許可というのは、これは必要なら石炭局の事務が来ておりますから答弁させますが、それはできておるのです。これは、あなたの方で持ってきたのはほかの理由ですな。そういう理由に該当する場合は、当然坑口の使用は禁止される。まだ資源的には若干といいますか、相当のゆとりがあって、賃金低下という条件、企図がある場合にはこれを禁止しようというのがあなたの方の御提案の趣旨なんで、そういうことになれば、私は、さっき申しましたように、労働組合を通じての自主的な話し合いを尊重するのが、労働法体系からいっても、いろいろな点からいって、根本的な立場、尊重すべき筋道じゃないか、こういうふうに申し上げたのです。もう一ぺん一つ。
〔委員長退席、齋藤(憲)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/23
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024・岡田利春
○岡田(利)議員 第二会社の場合、先ほどから会社の経営権というものについてずいぶん強く主張されておるわけですが、会社形態を新しい第二の会社形態に移行するというとき労使の話し合いになることは、労働条件ですね。雇用条件、雇用契約の内容、こういうものが中心になってのみ、この問題について労使の話し合いになるわけです。会社の経営形態を変えるということは、これは経営者の権限事項であります。それ自体については労使の交渉事項ではないわけです。問題はそのことによって労働者の雇用内容が変わる、労働条件が変更されるから、その部分に限って労働法では、会社形態を変える場合に労使の交渉事項になる。これは明確に区別して理解をしなければならぬと思うのです。それを混同するところに理解の仕方の問題が出てくるのではなかろうか、こういう感じがするわけです。一方現行の合理化法では、そういう第二会社にする場合においても、これは新規の坑口の許可基準に該当しない場合は認めないという方針を、今日とっておるわけです。しかもこの許可基準は、当初定めて以来変わっていないものではなくして、順次趨勢に合わせて許可基準を変えておるわけです。ですから、私どもそこで問題にすることは、労働者が雇用条件が下がっていく、労働条件が低下をするという場合に、われわれとしては、当然労働者自体として労働条件が下がることは承認できないという立場を堅持をいたしておるわけですが、今日の第二会社に移行する労使の話し合いは、そういう労働条件以前の問題として取り上げられておる。いわゆる、やめるか第二会社にするかである。こういうどうかつ的な背景のもとに今日第二会社に移行という問題が浮かび上がっておることを、われわれは理解をしなければならぬと思うのです。その最も重要なことは、一体なぜ第二会社に移行するのかという内容を分析検討する場合に、今まで投資した資本を確実に合法的に引き揚げるということが、第一の問題として考えられておるとわれわれは理解をするわけです。
それから第二の問題は、租鉱権その他の設定あるいは販売権を完全に握るという契約のもとに第二会社を起こすことによって、従来と同じような自分の販路、営業力を確保しつつ、そこに中間利潤を確保する。そういう資本の利益の上に立って、そういう前提の上に立ってのみ今日第二会社が起こされておるのが実情なのです。この実態をわれわれは正しく把握しないで第二会社の問題を労使間の話し合いだけにゆだねておくことは、間違いではないか。むしろそういう実態を正確に把握することによって、石炭産業の将来の安定、ビルド・アップをし、炭鉱の規模を再編成をしていく、こういう場合には当然この措置が必要である。逆にいいますと、最低賃金が実施をされると、極端に労働条件が低下をする。第二会社はこれはやることができないということになるし、残念ながら最低賃金が実施をされていないわけですから、そういう意味では一応従来の労働条件を基準にして、これを下回らないことを前提にしてのみ許可さるべきではないかという立場に立っておるわけです。ですから、労働法上から見ても、現行合理化法の建前から見ても、坑口制限の趣旨等を勘案する場合に決して矛盾をしない。むしろこの方法を積極的にとることが、将来における石炭産業の安定の方向であると理解するわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/24
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025・始関伊平
○始関委員 問題点は結局のところ賃金低下という問題であるから、これは労使の話し合いを尊重するという根本の建前のもとに解決すべきであると思うのでありますが、ただいまのお話の中にも出て参りましたが、労働法の体系から申しますと、この第五条の趣旨といたしますようなところと、ちょっと矛盾がある。一つは、同一企業内部で雇用が継続しておる場合には賃金の引き下げということはあり得るわけなんで、その場合には坑口使用の禁止にならないのに比べて、第二会社にしたからといって、その場合にだけ禁止するということは、均衡を失するという法律論が一つある。もう一つは、今のお話の中に出て参りましたが、賃金の引き下げ防止ということは、必ずしも一ぺんきめた賃金をそのままずっといかなければならぬという問題でなくて、そういう問題があるからこそ最低賃金制度というものが必要になるわけです。ですから、今お話しのような資源的にだめだという場合の坑口許可の問題は、むしろ解決済みのことだし、異存はありませんが、賃金低下という問題に対処するためには、第一には労使の話し合いの結果を尊重すべきである。第二点としては、こういう問題は法律体系からいえば、やはり最低賃金制度の確立ということで対処すべきであるということ。それから第三点として、今申し上げたように、同一企業内部で引き下げる、それに対するそういう措置はございませんね。この場合だけやるというのは不均衡だ。こういう三つの議論から、遺憾ながら第五条の趣旨というものには賛成いたしかねる。もう一ぺん御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/25
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026・岡田利春
○岡田(利)議員 私はむしろ、今日の合理化法に貫かれておるスクラップ・アンド・ビルド方式で今日の炭鉱の合理化を進めていくという思想を正しく理解することが、まず大事じゃないかと思うのです。ですから、将来にわたって一定の労働条件が保障されない、しかも将来にわたって安定でき得るという保障のない炭鉱が継続的に残される、スクラップ化が行なわれないということは、現行法の建前からいっても逆行すると私は考えるわけです。しかしながら、一定労働条件が確保されて、しかもある一定期間、資源的な立場から見てもその炭鉱が継続的に確保されるということであるならば、これは問題ないわけです。もし同一企業内部で一カ所だけが赤字であって非常に困難な経営の状態にあるとするならば、これはプールして考えてみなければならぬと思うわけです。その山だけを独立採算的に抽出して考えるのではなくして、やはり全体として考えなければならぬ。ですから、労働条件をある程度下げなければならぬとするならば、こういう一カ所の山があるために現行の労働条件を維持することができないとするならば、その点について、それぞれ当該企業の労働組合に対して労働条件について話し合いをして、そこで労働者が納得すれば、その幾つかの事業所のうちの一つは維持し得るわけですね。そういう方法でオーソドックスにむしろ解決されるべきではないか、こういう立場を私どもはとっておるわけです。それを分解して、幾つかの事業所のうち一つだけが赤字で経営が困難である、その部面だけで問題を解決しようとするところに問題があると思うんです。第二会社は大体、幾つかの事業所を持つ場合の例が圧倒的に多いわけです。あとは中小炭鉱が経営が困難で、便法的に第二会社に切りかえて負債をたな上げする、こういう方式をとられる場合がありますけれども、ここでいう、われわれが一般論として取り扱っている第二会社の場合には、幾つかの事業所があるわけです。そういう立場に立って労使間で話し合いをし、了解するのがむしろ妥当である。まず、そういう立場を明らかにしなければならぬと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/26
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027・多賀谷真稔
○多賀谷議員 法律的な面だけお答えしておきたいと思いますが、どうも経営権を剥奪するものであるとか、労使関係についてはきわめて制限をするというようなことをいろいろおっしゃいますけれども、財産権、あるいはまた自由企業の立場をかなり日本の法制というものは制限しておる。坑口使用の制限等におきましても、いわゆる生産面ではかなり制限を受けておるわけですね。ですから、社会政策の面から制限を受けてはならぬという考え方がおかしいのじゃないか。現実に石炭鉱業合理化臨時措置法の中には、坑口使用の許可あるいは坑口開設の許可についてはかなりシビャーな制限があるのに、それを、社会政策的な面を入れてはならぬというものの考え方は、妥当でないのではないか。当然社会政策的な考え方を一つの要素として入れてもいいのじゃないか、こういうように考えて法制を出したわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/27
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028・始関伊平
○始関委員 いや、おっしゃるお気持はわからぬでもないのですが、ただ法律論として言えば、こういうような問題に対処するのは、ずばりそのもので言えば最低賃金制度であって、ここにこういうものを持ってくるのは適当ではあるまい。なお、実情論として、たとえば、私は全面的にそういうやり方に賛成だという立場じゃありませんが、雇用の条件というものは総合的にあんばいしなければいかぬということもあるし、第一会社の方をやめるときに相当退職金をもらうということもあるし、実情というものはあなたのおっしゃるようにそうみじめなことにはならないのではないかと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/28
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029・多賀谷真稔
○多賀谷議員 現実に第二会社を設立しております炭鉱の状態を見ますと、漸次、従来の鉱業権者に雇われておった人々はいなくなりまして、実際使っておる労働者というのはむしろ、従来の従業員ではなくて、よそから連れてきている従業員だという面が非常に多いのです。これは一体何を意味するかということです。ですから、そういう実態把握を、われわれを含めて皆さんで十分やっていただきまして、この問題は単に理論でなくて、実際の運用を考えてみると、われわれが出しました法律の内容がかなり御理解いただけるのではないかと思うのです。第二会社を作って、その付近に従来の解雇された人々がいましても、そこに来る従業員というものはよそから連れてくる、こういう実情を十分把握していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/29
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030・始関伊平
○始関委員 立法論としては、私はこういう場合に対処するのは最低賃金制度だと思いますがこれ以上の議論をよしまして、最後の問題に入ります。
第六条ですが、この六条の規定はいわば間接雇用の禁止でございます。坑内作業についての下請作業を禁止しようというのでありますけれども、一般産業で認められておる下請契約というのを、この場合についてだけ禁止するというのは、特別の事情がなければ妥当ではない、一般論としてはそういうことが言えると思います。もし禁止の趣旨が下請企業における労働条件がよくないという理由によるものであれば、これは下請企業の場合を含めたすべての企業について、法による最低賃金あるいは最低基準の確立と、それから労働組合の活動によってその向上をはかれば足りる、第一点については、こう言わざるを得ないと思うのです。
それから第二点として、下請企業では中間搾取の例があるのだというのでございますれば、労働基準法第六条、中間搾取の排除の規定、あるいは職業安定法第四十四条、労働者供給事業の禁止の規定、これらの規定の運用によって対処すればよろしいのではないか。保安上の理由によるということであれば、鉱業法あるいは鉱山保安法等の規制によって処理すべきである。つまり労務供給の疑いがあるというならば、職安法で取り締まればよろしいわけでありまして、この点に不十分あるいは遺憾の点があれば、労働省当局の責任を追及する。これはせんだって、多賀谷さんだいぶおやりになったと思いますが、要するに、既存の三つの法律体系によって十分に対処できるはずであって、もしできないというなら当該官庁の責任を大いに追及すべき筋合いであって、新しい立法はここに入り込む余地はあるまい、法律論として私はそう思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/30
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031・多賀谷真稔
○多賀谷議員 新しい立法としては入り込む余地がないとおっしゃいますけれども、これは保安法の建前からも言い得ることですし、それからまた、職業安定法の中間搾取の排除という面からも言い得ることなんです。確かに両面からぴしっと規制していただけば、何も取り立てて言う必要はございませんけれども、一応雇用安定の一つの項目でございますので、この法律で、他の法律と競合いたしますけれども、さらに特殊立法として考えたわけでございます。そこで保安法からいいますと、あれだけ保安法でかなり労働者の訓練とか、それから保安の責任を追及しているのですから、下請に坑内の、しかも基幹作業場における労働を許しておるということは、本来間違いではないか。それから安定法からいいますると、これは施行規則を改正していただけば、ある程度取り締まれるわけですから、これもやっていただく。これは確かにおっしゃるように、法だけの不備ではなくて、従来の行政の不備を一つこの法律で規制しようというところの面もなきにしもあらずで、おっしゃるように、両法案において正確に制限ができるならば、われわれはけっこうだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/31
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032・始関伊平
○始関委員 それでは、この程度にしておきましょう。御懇切な御答弁、どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/32
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033・齋藤憲三
○齋藤(憲)委員長代理 それでは、次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004589X02219620404/33
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