1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年二月八日(木曜日)
午後三時十九分開議
出席委員
石炭対策特別委員会
委員長 有田 喜一君
理事 岡本 茂君 理事 神田 博君
理事 多賀谷真稔君 理事 松井 政吉君
倉成 正君 藏内 修治君
小泉 純也君 齋藤 憲三君
中村 幸八君 濱田 正信君
井手 以誠君 滝井 義高君
伊藤卯四郎君
社会労働委員
委員長 中野 四郎君
理事 齋藤 邦吉君 理事 柳谷清三郎君
理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君
井村 重雄君 浦野 幸男君
小沢 辰男君 藏内 修治君
八田 貞義君 島本 虎三君
井堀 繁男君 本島百合子君
出席国務大臣
通商産業大臣 佐藤 榮作君
労 働 大 臣 福永 健司君
自 治 大 臣 安井 謙君
出席政府委員
通商産業事務官
(石炭局長) 今井 博君
通商産業鉱務監
督官
(鉱山保安局
長) 八谷 芳裕君
労働政務次官 加藤 武徳君
労働事務官
(職業安定局
長) 三治 重信君
労働事務官
(職業訓練局
長) 村上 茂利君
委員外の出席者
労働事務官
(職業安定局調
整課長) 北川 俊夫君
労働事務官
(職業訓練局管
理課長) 中田 定士君
自治事務官
(財政局財政課
長) 松島 五郎君
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本日の会議に付した案件
炭鉱離職者臨時措置法等の一部を改正する法律
案(内閣提出第六号)
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〔有田石炭対策特別委員長、委員
長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/0
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001・有田喜一
○有田委員長 これより石炭対策特別委員会社会労働委員会連合審査会を開会いたします。
社会労働委員長との協議によって、私が委員長の職務を行ないます。
内閣提出、炭鉱離職者臨時措置法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を行ないます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/1
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002・有田喜一
○有田委員長 本案の提案理由は、お手元に配布いたしてあります。その資料によりご了承願うことといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/2
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003・有田喜一
○有田委員長 本案について質疑の通告がありますので、これを許します。滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/3
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004・滝井義高
○滝井委員 炭鉱離職者臨時措置法等の一部を改正する法律案に関連をして、自治大臣、労働大臣、通産大臣に質問いたしたいのですが、自治大臣、お急ぎでありますから、先に自治大臣にやらしていただきたいと思います。
実は現在全国的に見て、一番生活保護が多くて、同時に失業人口が多くて、それから鉱害が一番多いという県は、福岡県なんです。これは現在石炭産業の危機のために派生した大きな三つの現象です。そこでこの三つの現象に対して、一体福岡県はどういうような財政負担をやっておるだろうか、こういうのを少し調べてみたわけです。そうしましたところが、県の一般財源の中で、昭和三十一年に、今申しました生活保護と失対と鉱害に対して、六億三千三百万円の財源を投入しております。それに対して特別交付税なり普通交付税でもらった金が五億二千七百万円なんです。従って、一億六百万円だけ一般財源をよけいに投入した、こういう結果がでてきておるわけです。それから三十二年を見ますと、それらのものが九億二千六百万円になっております。そして交付税は七億五百万円です。従って、二億二千万円だけよけいに出しておる。三十三年はさらに十一億一千万円になっておるわけです。そしてもらった金は六億七千万円で、四億四千万円よけいに出しておる。それから三十四年になりますと、十三億四千三百万円で、もらった金は六億九千六百万円で、六億九千七百万円よけいに出しておる。三十五年になると、さらに飛躍的に増加をしまして、十七億一千万円です。この生活保護と失対と鉱害に十七億一千万円、一般財源から出した。そして交付税で八億六千八百万円もらっております。従って、八億五千万円よけいに出しておる。こういうように、一般財源を、たとえば三十五年に例をとってみますならば、十七億一千万円も出す。こういうことになると、県全体の行政の状態を見るとこの産炭地域、すなわち失業多発地帯に事業が全部集中してしまうわけです。このほかにいろいろ、緊就その他に県の出す金がありますが、事業が集中して、それでたとえば筑豊地帯のような農村地帯には一般財源が回らないわけです。従って、県政というものが、炭鉱地帯に金が非常によけいに行って、必要とするものがあっても炭鉱地帯以外のところには金が回らないといういびつな、びっこの県政になる、こういう形になっておるわけです。従って、福岡県民の炭鉱地帯の人は炭鉱で苦しいが、しかし何とかそういう金がきて行政は幾分進んでいる。そうでないところは、これは全く行政が進まぬという、いびつな状態が出てきたわけです。そこでこれを何らかの形で解決をする必要がある。その解決のいろいろのことを考えてみると、やはりもとは非常に金を食っておる。たとえば三十五年で見てみますと、八億有余の中で、大体六億五千六百万円は生活保護関係なんですから、従って、まず生活保護の問題から重点的にメスを入れてみる必要がある。このように一般財源と交付税でもらった額との差額が非常に多くなってくるというのは、一体どこに原因があるかというと、一番よけいに金をつぎ込む生活保護で見ますと、生活保護における交付税の算定の基礎が人口割になっておるわけです。そうしますと、たとえばわれわれが福岡県における産炭地の生活保護の比率を見ると——全国の生活保護の比率というものは、一七程度です。多くても二〇くらいです。ところが福岡県の産炭地における生活保護の全県に対する比率は七〇から八〇、多いところは一〇八から一一〇になっているわけです。従って交付税の算定をする場合、いわゆる基準財政需要額の算定の際に、他の県は一七くらいですが、産炭地の市町村なり県というものは七〇、八〇、多い町になると一一〇になっているのだから、この生活保護者の数を算定の基礎に少し入れてもらうと、この十八億に交付税が八億というような半分のものが上がってくることになるわけです。こういうことを、われわれは自治省にこの前何か考えてもらいたいという要請をしているわけですが、こういうことについて自治省は一体その後どういう検討をされたか。もうすでに一昨日でありましたか、地方財政計画が御発表になりましたが、これだけでは、数字だけしか出ていないから、われわれは内容がよくわからない。これは生活保護費が一番よけい食っておりますから、この点についての自治大臣の御見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/4
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005・安井謙
○安井国務大臣 今の生活保護費の交付税基準財政需要額の計算につきましては、お話の通りに、基本的には人口を基礎にしております。
そしてそれが特に傾向の著しいところといったようなものには、一定のウエートをつけるようにはしておりますが、これが実態に沿うように、個々の面に合うようにはなかなか参らぬのは、御指摘の通りであろうかと思います。
従いまして、その分は年度が過ぎて非常に不足している、あるいは食い違いがあるという点につきましては、二月ごろに特別交付税でもってこれを補正していくという建前にしております。しかし今のお話のように、単に人口だけでは不合理であろうというようなことから、逐次そういった要生活保護者の数というものをでき得る限り基礎に入れる計算方法に改善はしつつあるわけでありますが、その内容につきましては、事務当局から詳しい説明をいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/5
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006・松島五郎
○松島説明員 ただいまお話のございました生活保護費の算定方法の問題でございますが、御指摘の通り、人口を測定単位としまして、人口一人当たり幾らという計算をいたします関係上、平均的なものとして見られるという結果から、実態が非常に多いところについては食い違いができるという問題がございます。
その点につきましては、実情補正を用いて、前年度における生活保護者数の多いところは、その多い事情が反映するようにいたしております。
しかしその補正の度合いが、現在のところ、結果的には、大体人口半分生活保護者数半分程度になるような補正になっておりますので、なお食い違いが起きてくるという問題がございます。そこで、来年度はこの補正の度合いをもっと強めるようにいたしたいと考えておりまして、交付税法の改正をいたします際にはその点を考慮して参る考えで検討いたしている段階でございます。
なお、ただいま大臣から申し上げましたように、従来はそういう食い違いがありますために、その差額は特別交付税で調整して参っているわけでございまして、今年度につきましては、引き続き特別交付税においてその調整をして参りたいと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/6
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007・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、ここに確約していただきたいことは、こういうような生活保護費の非常に増加している産炭地域の自治体の基準財政需要額の算定においては、人口のほかに生活保護者の数というものに相当の重点を置いて考える、こういう方向に自治省は大体現在検討中だということで了承して差しつかえありませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/7
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008・松島五郎
○松島説明員 そういう方向で検討いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/8
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009・滝井義高
○滝井委員 次は、緊急就労対策事業です。私たちは緊急就労対策事業に働く労働者は失業者だと思っておったわけです。ところが現在、交付税の算定上これは失業者に見られていない。これを一体どうして失業者に加えないのかというこの理由。労働省はおそらくこれは失業者だというだろうと思うのです。まきか緊就に行っている人を失業者じゃない、あれは普通のりっぱな雇用労働者だとは、労働省はどんなことがあったって言わぬと思うのです。ところが自治省は、交付税の算定では失業者に見ていないのです。なぜ見ないだろうか。私の聞くところでは、どうも緊就というのは投資的な性格を持つからだ、こうおっしゃるのです。これはちょっと私納得がいかないのですが、これに対する自治大臣の見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/9
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010・安井謙
○安井国務大臣 緊急就労は失業対策の対象にしていない計算になっておることは、御指摘の通りでございます。これは失対事業の方で全体の失業者というものを算定いたしまして、それぞれの府県の区分によって按分いたし、普通交付税でまず見る。それから緊急就労は、ある程度一般失対の事業と違いまして、いわば簡易工事といいますか、相当建設的な工事面がありまして、また、特殊の事情によって生ずるものでございますから、それによる特殊の財政需要ということで、それによる需要額は特別交付税の方で見ていく。地方的に非常に限定されたものでありますから、普通交付税の算定基準に入れるのは、ちょっとこれは妥当ではなかろうと思って別な扱いをいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/10
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011・滝井義高
○滝井委員 実は、大臣は特別交付税でごらんになると言うけれども、現在市町村に例をとってみますと、市町村では三千万円以上の特別交付税というものは大体やらないのです。たまにそれ以上出ます。しかし大体頭打ちは三千万円です。これは全国ごらんになるとわかります。それ以上のものはよほどの異例がなければやらないのです。ところが、緊急就労対策事業には相当の金をつぎ込んでいる。今度単価が千二百五十円に上がれば、その二割というものは自治体が出すわけですから、ますますこの負担がふえてくるわけです。そうしますと、私はこれを失業者に見ないということはいかぬと思う。特別交付税で見ると言われるけれども、今言ったように頭打ちの状態が出てくる。こういうことですから、私はこれはある程度投資的な性格であるかもしれぬけれども、何らか、算定をする場合、失業者に加えてもいいんじゃないかという感じがするのです。そんなに何十万といるわけじゃないのですからね、炭鉱の失業者というのは。ことしの緊就の計画をごらんになっても、七千人しか見ておらぬわけですから、失業者に加えてやれば、その分だけ自治体というものは非常にいいことになるわけです。わずか七千人です。ことしの予算は、去年と同じなんですよ。これを失業者の数に加えてもらうかもらわぬかということは、産炭地の自治体にしてみれば相当の影響があるわけです。この点一つぜひ考慮してもらいたい点なんです。福永さんのところで、まさかこれは失業者じゃないとは言わぬと思うのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/11
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012・松島五郎
○松島説明員 今の炭鉱離職者緊急就労事業の見方の問題でございますが、大臣からお話し申し上げましたように、特殊の地域に片寄っておる問題でございますので、普通交付税の算定技術上いろいろ問題がございます。と申しますのは、普通交付税の場合は一般失対を基礎として計算をいたしますために、賃金の単価にいたしましても、資材費の単価にいたしましても、それぞれ国が定めました基準によっておるわけでございますが、緊急就労事業の場合は基礎が非常に違いますので、同じような取り扱いをいたしますとかえって不利益になるという問題もございます。それでごく限られた団体でございますので、私どもといたしましては、国庫補助基本額から国庫負担額を差し引きました残り、いわゆる地方負担額につきましては、地方債を充当いたしますもののほかは、全部特別交付税で補てんをいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/12
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013・滝井義高
○滝井委員 緊就における地方負担分というものは、地方債を充当するもの以外は全部特別交付税で見ますという言明がありましたから、記憶にとどめておきます。
次は労働省の方になって、自治省にも関係してくるのですが、実は最近における失業者の増加によって産炭地、特に県なんかは失業対策事業の管理機構を作っておるわけです。たとえば失業対策課というようなものを作っておるわけです。ところが、こういう特殊のものをお作りになっても、これは現在交付税の対象にならないわけです。そこで労働省としては、失業者がたくさん出て、そうして県なりにそういう事務管理機構、失業対策課というものを作ったら、それに対する財政措置といいますか、国庫負担の措置を考えてもらわないと、その県としてはなかなか困ることになるわけです。これは労働省の下部機構ではないけれども、直接労働省と一番縁の深いところなんです。やはり労働省としては自治省に、ぜひこれは交付税の対象にしてくれということを言ってもらわなければならぬ問題だと思いますが、それが現在そのまま放置されておるのです。これは両大臣の見解を開きたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/13
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014・三治重信
○三治政府委員 失業対策事業の、下部機構につきましては、労働主管部が大体所管しておりまして、その下に職業安定課がございます。職業安定課長が県並びに市町村の失対事業の指導監督に当たっております。神奈川県、東京都のように失業対策部あるいは失業対策事業課というものを設けまして、これに県費で職員を相当置いておるところもございます。それは全体から見ると非常にまれでございます。それからなお、国家公務員に準ずる地方事務官として、労働省の方の定員として地方自治法による特別の附則の方の職員に追加して、県によっては四、五人あるいは二、三人県費で職業安定課の方にそういう係の増員の応援を置いておる県も若干ございます。大体において、大多数の県は労働省の下部機関としての職業安定課で、全部その職員で事務処理をしておる。しかし、一部のはっきりした機構を置いておる県と、数人ないし二、三人県費の職員を応援してやっておるところがございます。市町村につきましては、国のそういう市町村の機構における補助職員の対象は、全然一人もございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/14
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015・滝井義高
○滝井委員 職業安定課でやるのですが、それだけではなかなか手が回らないわけですよ。一般失対なり緊就なり、いろいろ多方面にわたるものですから。そうすると県としては、その失対の行政事務を円滑に推進しようとすると、やはり失業対策課というものを作らなければうまくいかない。それでそれを作ってやっておる。ところが、それはちっとも交付税その他の対象にならぬ。当然これは自動的にやっぱりやるべきだと思うのです。失業者がなくなれば、こういう課は要らなくなるわけですから。ところが、それがならないわけですよ。そうすると、これはよその県にないものが、産炭地の県だけにこういうものができてやるということになりますと、なかなか問題が出てくる。ところがそういうサービス的なものが国によってやっぱり交付税で見られておるということになれば、事務もうまくいくということになると思うのです。そうしないと、こういうものをだんだん縮小していけば、そのしわは失業者に寄ってくるわけです。どうですか。これはそう莫大な経費の要るものではない。こういう小さな経費までこうして質問をしなければならない程度に、結局財政が逼迫をしてきているということなんですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/15
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016・安井謙
○安井国務大臣 お話しのように、今御承知の通り、地方団体の中に一部国費の職員、国費でもって支弁すべき業務が入り込んでおる場合がありまして、この職業安定の分もまさにそれに当たるわけでございます。従いまして、建前からいいますと、職業安定における要員が少なければそれを国の方で増員をしていくというのが建前であろうと思うのです。しかしそれでは便宜上、行政の措置上困るからというので、特にそういうものを県でお置きになる場合に、これを今のところ、実情にもよりますが、全部交付税の対象にするということになりますと、都道府県の実態でいろいろそういう状況が起こってこようと思います。自分のところは特別こういう事情があるからこれをやりたい、あれをやりたい、それを片っ端から拾い上げていくということになりますと、ちょっとまとまりがつきませんので、今のところそういう国費で充当さるべきものにつきましては、県が特に便宜上おやりになっておる分については、交付税の対象には見ないでおるというような措置をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/16
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017・滝井義高
○滝井委員 これは普通の県が何か新しくちょっとした課を作るということではなくて、全く石炭産業の異常な状態のために、異常な人間の状態が出てやっておるわけです。そうでなければ、何万人とおる失業者が実際は職業安定課だけでははけないわけだ。そうすると、実は職業安定課の予算配分を、産炭地の自治体によけいにくれればいいわけです。ところがそれは他の職業安定行政との関係があって、そうはいかぬという問題もあって、幾分かはよけいにやっているけれども、必ずしも全部充当するわけにいかぬということで、やむなく県が一般県費でやっているわけです。これは他の県の関係もありますけれども、なお考慮していただきたいと思うのです。
次は、一番重要な鉱害の問題です。
私ちょっと昭和二十三年から三十五年まで福岡県がどの程度県費を負担したかを調べてみましたら、九億四千三百万円鉱害のために負担をしておる。
そうしてその九億四千三百万円をどういう工合な内訳の経費で出しているかというと、起債で五億六千百万円出している。そうして実質的な一般財源で三億八千二百万円出している。そうして実質的な一般財源で出した三億八千二百万円を、三億七千九百万円は特別交付税でまかなっておるのであります。だからこれは三億八千二百万円出して三億七千九百万円ですから、大体とんとんにいっておるわけです。これは交付税はなかなかうまくいっておると思うのです。
ところが問題は五億六千百万円です。これが大体十五年の年賦償還にななっておるようであります。そうしますと、九億ぐらいの金を払うことになるのですね。
三十七年には七千三百万円返すことになるわけです。そうすると、元利償還は全部一般財源で見ることになりますから、これは自治体にしても非常に苦しいわけです。ところが、これは通産省の関係になるのですが、この鉱害というものは、現在産炭地では年々歳々これから増加をしても減少することはないわけです。そうすると、これは無過失賠償責任だというけれども、いわばこれは一つの天災ですよ。知らぬうちに下を掘って、そうして家が狂ってくるのですから。そうして、それを今度は、一部は交付税で見てくれるけれども、あとは元利償還だ、こういうことになって、全部一般財源でその起債の分を元利償還をしなければならぬということになると、自治体は大へんなんです。それで私は、一体天然災はどの程度交付税で見ておるだろうかと調べてみた。天然災については、九割五分までは交付税で見るのです。私は鉱害というものは、自治体にとっては一種の天然災だと思うのですよ。だから、この九億四千三百万円の負担をした経費の中の五億六千百万の起債分、これについては私は元利償還を交付税で見る必要があるのじゃないかと思うのです。こういう点が一つ。
それからもう一つは、最近は炭鉱の事業主が金回りが悪くなって、無権者になるものがだんだんふえる傾向が出ておる。今までは二億円程度だったと思うのです。だんだん無権者とか、いわゆる資力なき者になるのがふえておる。こういうことになると、その資力のなくなった、あるいは無権者になった鉱業権者にかわって、自治体、県がその鉱業権者分を一部見ることになるわけです。これは全く県にとっては天から降ってわいたような天災です。天災というか、ほとんど天災と同じような人災なんです。ところが、これについても、自治省はどう言うかというと、一般財源のうちの二割程度は自由裁量ををやる経費を残しておるのだから、そんなものは県が見るのが当然なんだ、こういう言い方なんですね。これは県の行政の失敗のために起こったものではないのです。この二点については、やっぱり私は、この元利償還分は国が交付税で見てくれる、あるいは、そういう無権者に払ったものについてはきちっと交付税なら交付税ではっきりと見てもらうという形を作らなければ——これから鉱害というものはまだずんずん出てくるのですからね。こういう点を私どもずっと調べてみますと、今のようなことをもし福岡県政にやってもらえると、どの程度の金が浮いてくるかという、十億ぐらい負担が軽くなってくる。そうすると、この十億円を炭鉱地帯以外の地域の単独県費の事業に回すと、ずっと県政全体が均衝がとれてくるわけです。ところが、こういうのがないために、非常にいびつな県政になっている、こういう状態がはっきりしてきた。今の鉱害分における二点について、自治省はどう考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/17
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018・松島五郎
○松島説明員 ただいまお尋ねのございました鉱害復旧の地方負担の問題に対する処置でございますが、従来は地方負担に起債を充当しますもののほか、大体地方負担分の五割程度を特別交付税で措置するということでやってきたわけでございます。ただ、ただいま御指摘もございましたように、地方債が累積している、その元利償還金が大きくなっているということが、最近問題になっておるのでございます。これは御指摘の通りでございます。この点につきまして、交付税上どういう措置を講ずべきかという点は、なかなかいろいろな問題がございます。私どもは、一般に天然災害のほかに、緩慢災害というような言葉を使っていっております、地盤沈下現象でありますとか、あるいは高潮対策事業でありますとか、そういった、まあ全然同じではございませんが、似たような仕事がございますが、そういったものとの均衡等も考慮して措置をしなければならないのじゃないかというふうに考えておるわけでございますが、さしあたり本年度の特別交付税の配分から、この元利償還金については緩慢災害並みの取り扱いをいたすこととしたいということで、ただいま作業中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/18
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019・滝井義高
○滝井委員 緩慢災害の率は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/19
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020・松島五郎
○松島説明員 率は五七%でございます。
なお、無権者の鉱害復旧の問題につきましては、御指摘の通り、いろいろな問題がございますが、当該地方団体にとって天災であるとするならば、その経費を当該地方団体が負担することの合理性はどこにあるのかという問題もそもそもあるわけでございます。従いまして、こういった鉱害復旧に対する国の負担制度そのものとも関連して検討しなければならない面があろうかと思います。そういった面も今後なお引き続き関係省とも御相談いたしたいと思っておりますが、さしあたり今日まで起債をもって処理をいたしました分については、その元利償還金について、ただいま御説明申し上げましたような措置を講じて参りたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/20
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021・滝井義高
○滝井委員 多分農地等は交付税で見ていると思うのですよ。鉱害の問題その他は、全国的にきちっと統一した統計資料も整備していないんですね。だからあなたのところも、まちまちなもんだから、どの程度見てやろうかというのに困っておるところもあると思うのです。無権者の問題あるいは無資力になった者の問題は、なお今後一つ農林省なり通産省の石炭局の方と十分討議していただいて、少しく検討してもらう余地が私あると思うのです。農林省あたりについても、無資力である農地、果樹園等の取り扱いについては非常に差があって、一貫した、きちっとした方針が出ていないようですから、ぜひ一つこれは検討してもらいたいと思うのです。
それから、佐藤通産大臣お急ぎのようですから、この一問で自治省を終わりますが、実は工場などの誘致条例というのが各自治体にあるわけです。今度産炭地振興で、それぞれ産炭地にいろいろの鉱工業を誘致することになるわけですが、その場合に——私ある町の誘致条例を調べてみた。どういうふうな条例になっておるかというと、三千万円以上の資本金の会社であること、それから新設の場合は三カ年間固定資産税は無税にする、それから増設の場合は三カ年間五〇%の、まあ固定資産税だと思うのですが、減税をする、こういうようになっておるわけです。そこでたまたまその会社がやってきて、そうして増設をやったわけです。そして三十五年まではその会社は千百七十四万七千百三十円の税金を納めておったらしい。ところが三十六年になりましたら、こういう条例による増設で固定資産税がなくなったのと、それから所得税における法人税が改正されて、三十五年まで千百七十四万も取られておった税金が、三十六年になったら三百十七万七千九百五十円と減ってしまった。そこで工場誘致という形と法人税法の改正でこういうように減るということは、今後の産炭地の問題とも関連するが、一体それでいいのかという質問状が実はやってきたわけです。それで地方税法の六条二項に、「公益上その他の事由に因り必要がある場合においては、不均一の課税をすることができる」という条項がありますね。こういうものとの関係は一体どうなるのか。産炭地の自治体で工場を誘致して、そしていろいろ恩典を与えるとかえって自治体は苦しくなる。工場等を誘致したら産炭地はよくなるだろうと思って誘致をしたら——おそらく誘致条例は、自治省の方で模範例集を示しておるもんですからそれにならっておると思うのです。逆の結果になるのだが、この矛盾を一体どう解決するつもりだ、これはぜひ一つ自治省に尋ねてくれという産炭地からの私に対する要請なんですよ。それで私これを考えてみますと、なるほど一つの大きな問題点だ。こういう問題についてやはり自治省にある程度きちっとした指針を与えていただかなければならぬし、同時に、産炭地の振興法をお出しになる通産省としても、この対策はやはり何らかの形で考えていただかなければならぬのじゃないか。すなわち、そういうように税を減じてやる、その結果自治体に非常に大きな影響がもし及んでくるとするならば、自治体の基準財政需要額に応ずるだけの収入というものは、やはり何らかの形で確保しなければならぬが、といってこういう条例を作っているのに交付税を下さいということはなかなかこっちも言いにくいという、こういう矛盾が自治体としてはあるわけです。これはやはり今の日本のこういう失業多発地帯における悩みじゃないかと思うのです。矛盾点じゃないかと思うのです。これは一つわれわれが安心のいく解明をしていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/21
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022・安井謙
○安井国務大臣 工場誘致等をやりまして固定資産税等の減免をやりました場合、従来は自治体が独自でやったのだからということで補てんをしなかったのでありますが、せんだって出ました低開発地への工場分散の法律、それから今度出ております産炭地振興臨時措置法でございますが、これらによりまして、自治体が工場誘致等をして固定資産税等の減免をやりました場合には、別途財政上の措置を国でめんどうを見るということで、これは特別交付税になろうと思いますが、措置をいたすことにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/22
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023・松島五郎
○松島説明員 ただいま大臣のお答えになった通りでございますが、なお補足して説明をいたします。
産炭地振興臨時措置法によりまして工場誘致をやりました場合には、今大臣が申し上げましたように、普通ならば、減免をいたしましてもその税収入は当該市町村にあるものとして基準財政収入額の計算をいたします関係上、交付税がそれだけ減ると申しますか、減免した分だけは交付税がふえないという形になっておりますが、今度の法律によりまして、減免をした場合には、当該減免額相当額を基準財政収入額から控除いたします。従いまして、その分は税収入がなかったものとして取り扱われますので、自動的に補てんをきれるという仕組みになるわけでございます。なお、法人税を減免したためにそのはね返りとして市町村民税の法人税割が減るという問題は、現在の交付税なり税制上の仕組みから申しますと、それだけは当然基準財政収入額が減るわけでございますから、その分は交付税で自動的に補てんされるという仕組みになっているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/23
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024・滝井義高
○滝井委員 大体わかりました。しかしこれは、やはり一つの矛盾点として残ってくると思うのです。というのは、交付税なり特別交付税で、減額したそのままがきちっとくるものかどうか、わからぬ点があるわけです、いろいろな要素が錯綜しますからね。これはやはり今後低開発地域の開発をやる場合にしても、産炭地の問題にしても、なお相当問題が残る点だと思います。なお私どもも少しく検討させていただきますが、自治省の方もぜひ一つ今後御検討を願います。
それからもう一つ、自動車学校の起債の問題ですが、自治体が自動車学校をやる場合に、この前私質問をしましたら大臣は、それは起債できる、こうおっしゃったわけです。ところが実際に申請をしてみると、どうもだめなんですね。これはきょう御答弁ができなければ、検討をしておいていただいて後刻御答弁いただきたいと思うのです。ある町が、失業者が多いので自動車学校の経営をし始めた。ところがそれは起債の対象にならぬ。それで私これは職業訓練の方かと思って、労働省の方にいったけれども、それはだめだ、自治体はそういう訓練をやるようになっておらぬし、通産省の方もだめだ、やはり起債以外にない、こういうことになっているのです。ぜひ至急御検討いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/24
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025・安井謙
○安井国務大臣 この前そういう御質問がありまして、これは当然、その実情にもよりますが、起債の対象になり得るものであるということを申し上げたことを覚えております。どういうふうになっておりますか、実際を調べまして、またお答えしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/25
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026・滝井義高
○滝井委員 次は通産大臣ですが、まず第一に、こまかい問題ですけれども、産炭地における整備事業団が所有しておる住宅ですね。大臣ごらんになって、自分が、こういう悪い、雨が漏り、月のさし込む住宅を見たからにはほっておかぬという御答弁があったのです。そのうち、ああいう住宅の所在する市町村から、一体あれはどうなったか、どうなったかということを再々言われるわけです。これはいよいよこの法案の最後の段階ですから、一体通産省としてはどう処置をするか、明らかにしておいていただきたいと思うのです。公約を果たしてもらわぬと、われわれも立場がなくなるので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/26
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027・今井博
○今井(博)政府委員 事業団の所有の炭住につきましては、昨年大臣からのお話もありましてとりあえず非常にこわれているところについては緊急修理等の措置を至急講じるように、事業団等の方に申しつけておきました。現地に必要な人間が行って調査をいたしました。その後どの程度の手当てをいたしましたか、まだ報告を受けておりません。しかし、緊急修理はいたしたものとわれわれは考えております。さらに根本的にこの住宅をどうするかという問題は、一つは、これを今住んでいる人に非常に安い値段で払い下げるということが一番いい方法だと考えまして、いろんな方法、手段でそれを進めてみたのでございますが、今住んでおる方は、一文も出すのはいやだというふうな人が相当多いということで、払い下げるとすれば無償でやるよりしようがない。無償でやるということになりますと、これはほかの方に非常に波及いたしまして、相当大きな問題になりますので、やはり一定のきわめて低い金額でもってその払い下げを受けられるのが一番いいんじゃないかということで、今日までその方法で勧奨を続けて参っております。しかしまだ解決に至っておりません。もっとほかに名案があれば一番いいのでございますが、それにいま一つの案としましては、自治体にこの住宅を無償で譲って、自治体の方がそれを管理していただいて、その住民に貸していただくということも有力な一案かと考えました。これも自治体の方に再三交渉いたしましたが、自治体は無償でもいやだ、こういうことでございまして、実は処理にあぐんでおる次第でございます。これは滝井先生、実情等を非常に御存じでございますので、お知恵を拝借して、何とか合理的に措置をしていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/27
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028・滝井義高
○滝井委員 これは、おそらく合理化事業団が金を出して修理をするというだけの予算的な余裕は、事業団にはないと思うのです。だからおそらく修理まではなかなかいっていないだろうと思うのです。そうしますと、あなたが今言われたように、無料で本人に差し上げるか、できるだけ安い価格で売るか、それとも無償で自治体に払い下げて、自治体が貸す。ところが自治体は、これはごめんこうむろうというのがもう定説です。そうするとあとは、安い金で売るか無料で払い下げる以外にないと思うのです。やはりこの際これはけりをつけた万がいい。というのは、これは事業団が管理人なんかを置いて給料を払っておるだけ損だ。それならばもう無償で差し上げるということが一番いい。というのは、無償で差し上げないで今のままにしておると、これは他人の家ですから修理をしないのです。ところがこれは住めば都で、自分の家になると、これは青天井を、何と申しますか、破れトタンでも張ってやっていくわけです。あるいは軒を出す。そうすると、いつの間にかきれいな家になって、住まわれるようになっちゃう。ところが人の家を借りておると、やはり人間というものは、人の家の修理までして住みたくない。雨が降ったって、かささして住むということになる。だから、 これはもうこの際、実力者の佐藤さんが通産大臣のときに、一つ思い切って払い下げになる方がいいのじゃないか。これはきょうここで佐藤さんが勇断をもって、無料で払い下げると言ったら、これはトップ記事ですよ。筑豊は朗報として喜ぶだろうと私は思うのですよ。ところが何ぼ安い金でも、とるといえば、五年おけば、管理人の費用を出すだけ損になると思うのです。だからその管理人の費用を倹約して、——ものは考え方ですから、その費用で売ったと思って無料でやる、こういうことの方が、私は政策としては前進だと思う。しかもその人たちは、今度は家を持つことになれば、生活保護の人には、いよいよ金がなければ、国が今度は修理の金を出してくれますから、りっぱな家になっちゃう。やはりこの住宅の不足の時代ですから、建っているものは、ぼろの家でも修理をして使うということが、三百万戸の住宅の不足を解決する一助にもなると私は思うのです。これは一石二鳥、三鳥、四鳥、 五鳥ですよ。これはどうですか、佐藤さん、約束されたのですから、この際朗報をもたらしてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/28
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029・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 現地を見まして、非常に住んでおられる方に同情いたし、何らかの処置をとりたい、こういうことで今三案ばかりの案を出しまして、とりあえずは応急の処理ができるかどうか、現実に応急の処理をすること、これは貨すことが業務ではなくても、管理する以上それだけのことをすべきだということで、事業団に伝達いたしたわけでございます。ところで滝井さん御承知のように、家の問題と同時に、土地の問題がございます。また、そこに住んでおる人たちが一様の姿で住んでおるわけでもないのであります。そういうことを考えてみますと、ただこれは社会問題だからということで、理屈抜きに解決しろといわれても、どうも実際はむずかしいようです。そこに私どもの実は悩みがあるのです。もう少し具体的に申せば、家も家だが、土地は一体どうなるのか、土地までつけてというわけにもいかぬだろうと思う。また住んでおる人の実態も、これは廃止した炭鉱の従業員であった人もありますし、あるいはもうそれらの人が他へ転居してしまった、そういう場合に、とにかく雨露をしのぐという意味で入ってきた人もあるようです。その転換期は非常に複雑なんですね。そこで、お話しのように一様に簡単に参らないというのが実情であります。私は、とにかく通産省で考える処置とすれば、やはり住んでいる人が土地は別にして、建物だけでも何とか引き取ってくれないか、そうすることが、まあ利用できるものは利用するということにもなる。それにもまして、やはり地方自治体が引き受けて、生活保護世帯その他ともあわせて何かめんどうを見るというのが望ましい姿ではないか、かように考えておりますが、なかなかそこまでの結論が出ておりません。この点公約事項ということで責められることも、滝井さん実情を御承知でありますだけに、私どもが悩み抜いていることには御同情賜われるのではないか、かように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/29
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030・滝井義高
○滝井委員 それで問題は、家と土地と分けてお考えになるというのですが自治体は家をやるといってもなかなかもらわない。そこで私は、土地を払い下げたらいいと思う。家は本人に上げます。そうしますと、家なんというものは安いものです。一棟三千円とか四千円とかで——今筑豊では五軒住居の一棟の住宅を鶏小屋にするときには、大手の炭鉱は一万円から二万円で売っております。これは安いものです。だから、そのくらいの値段を土地につけたらいいのです。事業団が筑豊地帯の土地をお買いになるときは、坪二百円か三百円でお買い上げになる。従ってその二百円を二百十円か二十円にすれば、家の分は出てしまう。それを自治体にお払い下げになる。土地を払い下げてもらえば、だんだん人口のふえている日本ですから、土地は値上がりします。土地は自治体に売る。しかし家はそのとき住んでおる人に無料でやる、そして、家がだめになったときには立ちのく、何かこういう約束をしておく。合理化事業団に長く置いておくということは、足手まといになって事業団もかわいそうですよ。自治体は土地だけなら買うのじゃないかと思う。ただ問題は、その土地が大手の炭鉱の所有、三井さんとか三菱さんの所有だということになると、これはなかなか問題です。そういう土地は、三井さんなら三井さん、三菱さんなら三菱さんから自治体に安く払い下げてもらうように交渉する、払い下げてもらえなければそのまま置かしてもらうよりしょうがない、こういう形になると思うのです。だから二つ分けて処理すると、割合にうまくいくのじゃないかと私は思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/30
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031・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 一案としての滝井さんのお話、これは確かに一つの名案だろうと思います。ただ、ただいままで、そこまでの検討ができておりません。事業団が持っておりましても処置のつかないものがございますから、これは一つの研究課題として預からしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/31
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032・滝井義高
○滝井委員 ぜひ一つこれは何らかの形で解決していただきたい。今度のこの炭鉱離職者臨時措置法等の一部を改正する法律案では、新しく炭鉱離職者が広域職業紹介で遠方に行くときには、そしてその遠方に行ったところの事業主がその者のために家を建てるときには、四十万を限度として二十万の金をただでやるのですから、この気持をここに適用すれば、二十分の一の一万円あったら解決する問題ですから、そういう点ぜひ研究課題にしていただきたいと思うのです。
次は、いろいろたくさんありますが、時間がないそうですから大事な一点だけにしぼりますが、最近石炭の鉱業権者に市中銀行が金を貸さなくなってきたわけです。それから財政投融資による長期運転資金の貸付も、たとえば開発銀行の融資を予算要求では百四十二億要求したけれども、八十億くらいしか認められなかったという問題もあるわけです。それから三十六年に成立した炭鉱整備保証金の債務保証による市中金融というものについても、これは八割くらいの保証ということをしたけれども、それもやはり銀行は、八割くらいの保証ではあとの二割がどうなるかわからぬということで二の足を踏んでおる。こういう状態で、現在この法律を実施していく上の前の段階における一番の隘路は何かというと、退職金の問題です。離職者が炭鉱をやめる前提というものは、やはりそこに十年、十五年働いてまとまった二十万、三十万の退職金が入るというところで踏み切りがつく。これが一つのてこの作用をしておるわけです。ところが、銀行や財政投融資の問題、あるいは保証基金の八割という、あとの二割の問題等が関連をして、退職金が出ないという状態が至るところに出てき始めたわけです。そうしますと、広域職業紹介で自分は大阪に行きたいと思っても、やはり先立つものは金で、退職金を全部くれぬというのではちょっと大阪には行きかねるぞ、こういう形が出てくるわけです。その結果どういう傾向が出てき始めたかというと、直接一挙に大阪に行かない、とにかく退職金をくれるまでは炭鉱におるか、あるいは自分が出てきた宮崎とか鹿児島、熊本に一時ちょっと帰ろう、そして退職金を全部くれるという見通しがついたならば今度は出ていこうという、三角形の底辺を一挙に歩かずに、三角形の二辺を歩く形になってきた。これは私はむだだと思う。ところが、その退職金をどう確保するかというめどが、炭鉱はいまだにつかない。これを通産省の方でつけてもらわないと、福永さんの方で炭鉱離職者臨時措置法等の一部を改正する法律案というりっぱな竜を描いても、眼が入らないから竜が死んでおる。退職金を順当に支払うということは、これは竜の眼なんですよ。まず、ここを一体大臣としてはどう切り抜けていくかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/32
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033・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 今回初めてただいま御指摘になりますような退職金を貸し付けるような資金をここで作り出そう、こういうことをいたしております。これは初めての処置であります。これがどれだけ効果を上げますか——退職金というが、大手でもなかなか貸してくれないという姿なんです。中小炭鉱等はそれでは一そう困るだろうと思います。しかし、今回退職金の火種になる金を、十五億ですか作ったということが一つの道かと思います。さらにもう一つの問題は、いわゆる買い上げ資金といいますか、廃止炭田についても政府が支払うのですね。廃止補償の問題、それについての給料あるいは鉱害資金等、先取りの権利を認める、こういうことである程度まかないがつかないか。それからもう一つは保証協会、これを強化することによって、福岡なども早く地方の保証協会を作っていただいて、その保証協会の保証、その形において金融の道がつくようにする。もう一つは、いわゆる運転資金という部類になりますか、中小企業公庫等の中小企業向けの金融の円滑をはかる、こういう方法をとる。昨年来、年末金融あるいはその後においてもいわゆる石炭事業向け資金ワクを作った、こういう事柄がただいま申し上げたような点にある程度役立つのではないか、かように考えます。問題は、なかなかきめこまかに注意して参りませんと、一つだけのきめ手はなかなかないというのが現状でございます。私どもは事業者、経営者等に対して、給料あるいは退職金、こういうようなものについては優先的にそれを支給していただく、この美風を確立する必要があるのではないか、これは痛感しておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/33
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034・滝井義高
○滝井委員 実は福岡県なんかも、信用保証を県が作っておるわけです。作っておるが、前の借金を全部返さぬわけです。だから今度新しい制度で信用保証をやろうったって、やれないわけです。こういう形になっておる。だからこれはぜひこの法律に画龍点睛を欠かないように、退職金の確保ということについて、よほど通産省としては金融の道を考えていただかなければならぬと思う。この退職金の問題を労働省が一体どう考えておるか、労働大臣は別室に行っておるようですから、これはあとにしますが、今年度に、自然閉鎖分もかてると総トン数二百九十八万トンだと思いますが、自然閉鎖六十六万トンぐらいでしょう、それから今までの方式の買上げが六十七万トン、保安が四十五万トン、新方式が百二十万トン、だからこの二百九十八万トンが買い上げられたときに、一体幾らの退職金が要るかということですよ。これを計算されたことはありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/34
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035・今井博
○今井(博)政府委員 ただいまの二百九十万という数字は、われわれの方は六十八万トンの買い上げの残り、それから新しい方式の百二十万トン、それから保安が四十五万でございますから、合計いたしますと二百三十二万でございます。二百三十二万トンの山の整理をする、こういうことになっております。この場合の退職金がどのくらいかということにつきましては、これはどういう山が出てくるかということで違いますが、今まではおおむね退職金制度のない小山が多かったものですから、退職金というものは比較的少なかったと思います。従って今回これについて退職金がどの程度かということについては、まだ調査はいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/35
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036・滝井義高
○滝井委員 二百三十二万トンについてのおよそのリストはおわかりになっておると思うのです。特に六十七万トンについては、申し出がずっと順番できまっておりますからわかると思います。それから保安の方も、大体八谷さんの方で全国的に調査をされております。新規分といったって、これは前の六十七万トンですか、あとにずっと申し込みが続いておるはずですから、そういうのが繰り上げられてくるでしょうから、およそどの程度の退職金が要るかということはわかると思うのです。やはりこれを把握をして、その財政上の措置というものをある程度行政指導をしてやらぬと、これはもうスクラップ化は進む、労働者はほうり出される、退職金ももらえず国にも帰れぬということになるわけです。従ってこういうところは、次の機会でけっこうですが、通産省で、合理化事業団法その他の法律の審議がありますから、それまでに一つおよその見当を出していただきたいと思うのです。
それから、これで終わりますが、スクラップの方は今の方で、ビルドの方、近代化の方で今度、大手の炭鉱の縦抗開発等に二十億、水力採炭、選炭機等に三億、中小の炭鉱の機械化に三億四千万、石炭専用船に二十億ですか、こういうふうにお金を出したわけですね。設備投資のこういうものをいただいたところで、四割ぐらいにしかならぬわけですね。あと残りの六割ぐらいというものは、これは炭鉱が自分でお作りにならなければならぬと思うのですす。そうすると、今言ったように退職金さえもよう払えぬというのに、炭鉱近代化のためのビルドの面における六割の金の確保、これを一体炭鉱がどうめどをつけるかということですね。市中銀行は金を貸さないです。それから興業銀行も長期信用金庫も、もう炭鉱にはあまり貸さないですね。そうすると、あとは開発銀行だけになる。ところが一体ことし開発銀行に炭鉱は幾らの金を返しますか。ことしの、過去の借金に対する返済分は幾らですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/36
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037・今井博
○今井(博)政府委員 計画は約四十億となっておりましたが、実際に返済するのは、やはり多少延期した分もございますので、三十億程度になるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/37
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038・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、三十億ないし四十億、三十七年度に返す。そうすると、開発銀行から八十億としても四十億にしかならぬわけですね、返す分が出てくるから。借る金が四十億じゃ、こっちの補償は四割であと六割はということになると、これは計算が合わなくなっちゃうんですよ、いわゆるビルド・アップの方は。スクラップ・ダウンは退職金の面の金融で行き詰まり、ビルド・アップの方は今言ったように金融面の行き詰まりが出てくる。これは設備投資ができなければだめですからね。炭鉱はおそらく設備投資引き締めの例外的な措置をとられるだろうと思うけれども、それにしても今もう金詰まりですからいかないです。私、この二つを見て、どうもこれはうまくいくかなと、自信が実はないのです。この点一つ明快にお示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/38
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039・今井博
○今井(博)政府委員 近代化投資の関係では、政府の近代化資金を普通の工事には四〇%出します、開発銀行の金を三〇%出します、残りの三〇%を市中銀行にたよる、あるいは自分の金でやる、こういう計画になっておりますので、大規模の縦坑工事、大型の巻上機については、今までの実績から見ますると一応順調に進んでおる、こう考えております。それから御指摘の開発銀行の資金は、八十億というワクになっておりますが、確かに最近返済がふえて参りまして、この点はわれわれも非常に実は悩んでおります。しかし、会社によりまして非常にいいような会社もございますので、そういう会社は返済してでも十分にやっていける。しかし会社によりまして、なかなかそれだけの工事をやる場合に返済が困難だという会社も実はあるわけでございまして、そういう会社については個々に開発銀行と相談をいたしまして、返済の金を少し猶予していただく、あるいは削っていただく、そういうことで会社の資金繰りに非常な圧迫を与えないように、個々のケースについて実はいろいろ話をいたしまして、一般的に全部通算いたしますと、滝井先生のおっしゃるように非常にビルドが少ないということになりますが、個々のケースではそれぞれ良識をもってその辺はさばいていただいておりますので、今までのところはそう心配はないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/39
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040・滝井義高
○滝井委員 なお、あとは後日やらしていただきます。これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/40
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041・有田喜一
○有田委員長 他に質疑者もないようですから、連合審査会はこれにて散会いたします。
午後四時二十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004595X00119620208/41
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