1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年三月十六日(金曜日)
午前十時四十九分開議
出席委員
委員長 小川 平二君
理事 鴨田 宗一君 理事 黒金 泰美君
理事 細田 義安君 理事 毛利 松平君
理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君
理事 平岡忠次郎君 理事 堀 昌雄君
足立 篤郎君 伊藤 五郎君
岡田 修一君 金子 一平君
田澤 吉郎君 高見 三郎君
舘林三喜男君 津雲 國利君
永田 亮一君 濱田 幸雄君
藤井 勝志君 古川 丈吉君
坊 秀男君 吉田 重延君
岡 良一君 久保田鶴松君
佐藤觀次郎君 芳賀 貢君
広瀬 秀吉君 藤原豊次郎君
武藤 山治君 横山 利秋君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 水田三喜男君
通商産業大臣 佐藤 榮作君
出席政府委員
法制局参事官
(第一部長) 山内 一夫君
大蔵政務次官 天野 公義君
大蔵事務官
(主計局給与課
長) 平井 廸郎君
大蔵事務官
(主税局長) 村山 達雄君
大蔵事務官
(関税局長) 稻益 繁君
運輸政務次官 有馬 英治君
委員外の出席者
大蔵事務官
(主計官) 岩尾 一君
大蔵事務官
(国税庁間税部
長) 上田 克郎君
厚生事務官
(保険局次長) 熊崎 正夫君
通商産業事務官
(通商局次長) 山本 重信君
運輸事務官
(鉄道監督局国
有鉄道部長) 高橋 末吉君
専 門 員 抜井 光三君
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三月十四日
関税法の一部を改正する法律案(内閣提出第二
号)(参議院送付)
保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一一号)(参議院送付)
同月十五日
国民金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一三一号)
同月十四日
演劇入場税撤廃に関する請願(中嶋英夫君紹
介)(第二二八七号)
同(広瀬秀吉君紹介)(第二二八八号)
同(毛利松平君紹介)(第二二八九号)
同(安井吉典君紹介)(第二三三六号)
同外八十一件(阪上安太郎君紹介)(第二四六
〇号)
同(辻原弘市君紹介)(第二四六一号)
同(藤原豊次郎君紹介)(第二五二四号)
同(堀昌雄君紹介)(第二五二五号)
在外財産補償に関する請願(井堀繁男君紹介)
(第二二九〇号)
同(細田吉藏君紹介)(第二五二六号)
たばこ販売手数料引下げ反対に関する請願(稲
富稜人君紹介)(第二二九一号)
同(小笠公韶君紹介)(第二二九二号)
同(早稻田柳右エ門君紹介)(第二二九三号)
同(岡崎英城君紹介)(第二四五七号)
同(田口長治郎君紹介)(第二四八四号)
同(藤本捨助君紹介)(第二五二三号)
元外地鉄道在職期間のある公務員等の国家公務
員共済組合法等の特例措置に関する請願(春日
一幸君紹介)(第二二九四号)
同(伊藤郷一君紹介)(第二四三九号)
合成清酒の名称変更等反対に関する請願(阿部
五郎君紹介)(第二二九五号)
同(井手以誠君紹介)(第二二九六号)
同(井堀繁男君紹介)(第二二九七号)
同(石田宥全君紹介)(第二二九八号)
同(石村英雄君紹介)(第二二九九号)
同(勝間田清一君紹介)(第二三〇〇号)
同(川俣清音君紹介)(第二三〇一号)
同(久保田豊君紹介)(第二三〇二号)
同(栗林三郎君紹介)(第二三〇三号)
同外三件(古賀了君紹介)(第二三〇四号)
同(佐々木更三君紹介)(第二三〇五号)
同(佐野憲治君紹介)(第二三〇六号)
同外二件(鈴木義男君紹介)(第二三〇七号)
同(楯兼次郎君紹介)(第二三〇八号)
同(玉置一徳君紹介)(第二三〇九号)
同(西宮弘君紹介)(第二三一〇号)
同(西村力弥君紹介)(第二三一一号)
同(野口忠夫君紹介)(第二三一二号)
同(芳賀貢君紹介)(第二三一三号)
同(日野吉夫君紹介)(第二三一四号)
同(肥田次郎君紹介)(第二三一五号)
同(細迫兼光君紹介)(第二三一六号)
同(堀昌雄君紹介)(第二三一七号)
同(松井政吉君紹介)(第二三一八号)
同(松井誠君紹介)(第二三一九号)
同(三木喜夫君紹介)(第二三二〇号)
同(森本靖君紹介)(第二三二一号)
同(八百板正君紹介)(第二三二二号)
同(安井吉典君紹介)(第二三二三号)
同(山本幸一君紹介)(第二三二四号)
同(安倍晋太郎君紹介)(第二三三七号)
同(愛知揆一君紹介)(第二三三八号)
同(青木正君紹介)(第二三三九号)
同(秋田大助君紹介)(第二三四〇号)
同(荒舩清十郎君紹介)(第二三四一号)
同(有田喜一君紹介)(第二三四二号)
同(井原岸高君紹介)(第二三四三号)
同(伊藤五郎君紹介)(第二三四四号)
同(伊藤宗一郎君紹介)(第二三四五号)
同(伊藤幟君紹介)(第二三四六号)
同(伊能繁次郎君紹介)(第二三四七号)
同(飯塚定輔君紹介)(第二三四八号)
同(生田宏一君紹介)(第二三四九号)
同(池田正之輔君紹介)(第二三五〇号)
同(石橋湛山君紹介)(第二三五一号)
同(石田博英君紹介)(第二三五二号)
同(今松治郎君紹介)(第二三五三号)
同(宇野宗佑君紹介)(第二三五四号)
同(内海安吉君紹介)(第二三五五号)
同(遠藤三郎君紹介)(第二三五六号)
同(小澤太郎君紹介)(第二三五七号)
同(大石武一君紹介)(第二三五八号)
同(大上司君紹介)(第二三五九号)
同(大沢雄一君紹介)(第二三六〇号)
同(大高康君紹介)(第二三六一号)
同(大竹作摩君紹介)(第二三六二号)
同(大野市郎君紹介)(第二三六三号)
同(大野伴睦君紹介)(第二三六四号)
同(大平正芳君紹介)(第二三六五号)
同(岡田修一君紹介)(第二三六六号)
同(加藤高藏君紹介)(第二三六七号)
同(海部俊樹君紹介)(第二三六八号)
同(金子一平君紹介)(第二三六九号)
同(木村俊夫君紹介)(第二三七〇号)
同(木村守江君紹介)(第二三七一号)
同(岸本義廣君紹介)(第二三七二号)
同(河本敏夫君紹介)(第二三七三号)
同(久保田円次君紹介)(第二三七四号)
同(久保田藤麿君紹介)(第二三七五号)
同(黒金泰美君紹介)(第二三七六号)
同(小島徹三君紹介)(第二三七七号)
同(佐藤洋之助君紹介)(第二三七八号)
同(齋藤邦吉君紹介)(第二三七九号)
同(齋藤憲三君紹介)(第二三八〇号)
同(笹本一雄君紹介)(第二三八一号)
同(重政誠之君紹介)(第二三八二号)
同(澁谷直藏君紹介)(第二三八三号)
同(關谷勝利君紹介)(第二三八四号)
同(田中龍夫君紹介)(第二三八五号)
同(田澤吉郎君紹介)(第二三八六号)
同(高碕達之助君紹介)(第二三八七号)
同(高橋英吉君紹介)(第二三八八号)
同(高橋等君紹介)(第二三八九号)
同(高見三郎君紹介)(第二三九〇号)
同(竹内俊吉君紹介)(第二三九一号)
同(舘林三喜男君紹介)(第二三九二号)
同(田中角榮君紹介)(第二三九三号)
同(塚原俊郎君紹介)(第二三九四号)
同(渡海元三郎君紹介)(第二三九五号)
同(富田健治君紹介)(第二三九六号)
同(中垣國男君紹介)(第二三九七号)
同(中曽根康弘君紹介)(第二三九八号)
同(中野四郎君紹介)(第二三九九号)
同(中村幸八君紹介)(第二四〇〇号)
同(中山榮一君紹介)(第二四〇一号)
同(永田亮一君紹介)(第二四〇二号)
同(永山忠則君紹介)(第二四〇三号)
同(灘尾弘吉君紹介)(第二四〇四号)
同(南條徳男君紹介)(第二四〇五号)
同(丹羽喬四郎君紹介)(第二四〇六号)
同(野田卯一君紹介)(第二四〇七号)
同(橋本登美三郎君紹介)(第二四〇八号)
同(長谷川峻君紹介)(第二四〇九号)
同(八田貞義君紹介)(第二四一〇号)
同(濱田幸雄君紹介)(第二四一一号)
同(原田憲君紹介)(第二四一二号)
同(福家俊一君紹介)(第二四一三号)
同(福田赳夫君紹介)(第二四一四号)
同(藤枝泉介君紹介)(第二四一五号)
同(藤本捨助君紹介)(第二四一六号)
同(古川丈吉君紹介)(第二四一七号)
同(保科善四郎君紹介)(第二四一八号)
同(保利茂君紹介)(第二四一九号)
同(松永東君紹介)(第二四二〇号)
同(松本一郎君紹介)(第二四二一号)
同(松山千惠子君紹介)(第二四二二号)
同(三池信君紹介)(第二四二三号)
同(三浦一雄君紹介)(第二四二四号)
同(三和精一君紹介)(第二四二五号)
同(毛利松平君紹介)(第二四二六号)
同(森清君紹介)(第二四二七号)
同(森下國雄君紹介)(第二四二八号)
同(森田重次郎君紹介)(第二四二九号)
同(八木徹雄君紹介)(第二四三〇号)
同(柳谷清三郎君紹介)(第二四三一号)
同(山田彌一君紹介)(第二四三二号)
同(渡邊良夫君紹介)(第二四三三号)
同(鈴木義男君紹介)(第二四六二号)
同(玉置一徳君紹介)(第二四六三号)
同(安倍晋太郎君紹介)(第二五二七号)
同(愛知揆一君紹介)(第二五二八号)
同(青木正君紹介)(第二五二九号)
同(秋田大助君紹介)(第二五三〇号)
同(荒舩清十郎君紹介)(第二五三一号)
同(有田喜一君紹介)(第二五三二号)
同(井手以誠君紹介)(第二五三三号)
同(井原岸高君紹介)(第二五三四号)
同(伊藤宗一郎君紹介)(第二五三五号)
同(伊藤幟君紹介)(第二五三六号)
同(伊能繁次郎君紹介)(第二五三七号)
同(飯塚定輔君紹介)(第二五三八号)
同(生田宏一君紹介)(第二五三九号)
同(池田正之輔君紹介)(第二五四〇号)
同(石田博英君紹介)(第二五四一号)
同(石橋湛山君紹介)(第二五四二号)
同(石村英雄君紹介)(第二五四三号)
同(板川正吾君紹介)(第二五四四号)
同(今松治郎君紹介)(第二五四五号)
同(宇野宗佑君紹介)(第二五四六号)
同(内海安吉君紹介)(第二五四七号)
同(遠藤三郎君紹介)(第二五四八号)
同(小澤太郎君紹介)(第二五四九号)
同(大石武一君紹介)(第二五五〇号)
同(大上司君紹介)(第二五五一号)
同(大高康君紹介)(第二五五二号)
同(大竹作摩君紹介)(第二五五三号)
同(大野市郎君紹介)(第二五五四号)
同(大野伴睦君紹介)(第二五五五号)
同(大平正芳君紹介)(第二五五六号)
同(岡田修一君紹介)(第二五五七号)
同(加藤高藏君紹介)(第二五五八号)
同外一件(加藤常太郎君紹介)(第二五
五九号)
同(金子一平君紹介)(第二五六〇号)
同(川俣清音君紹介)(第二五六一号)
同(木村守江君紹介)(第二五六二号)
同(岸木義廣君紹介)(第二五六三号)
同(久保田藤麿君紹介)(第二五六四号)
同(久保田豊君紹介)(第二五六五号)
同(小島徹三君紹介)(第二五六六号)
同(佐々木更三君紹介)(第二五六七号)
同(佐藤洋之助君紹介)(第二五六八号)
同(佐野憲治君紹介)(第二五六九号)
同(齋藤邦吉君紹介)(第二五七〇号)
同(齋藤憲三君紹介)(第二五七一号)
同(重政誠之君紹介)(第二五七二号)
同(澁谷直藏君紹介)(第二五七三号)
同(東海林稔君紹介)(第二五七四号)
同(關谷勝利君紹介)(第二五七五号)
同(田澤吉郎君紹介)(第二五七六号)
同(田中角榮君紹介)(第二五七七号)
同(田中龍夫君紹介)(第二五七八号)
同(田邊誠君紹介)(第二五七九号)
同(田村元君紹介)(第二五八〇号)
同(高碕達之助君紹介)(第二五八一号)
同(高橋英吉君紹介)(第二五八二号)
同(高橋等君紹介)(第二五八三号)
同(高見三郎君紹介)(第二五八四号)
同(竹内俊吉君紹介)(第二五八五号)
同(楯兼次郎君紹介)(第二五八六号)
同(舘林三喜男君紹介)(第二五八七号)
同(塚原俊郎君紹介)(第二五八八号)
同(渡海元三郎君紹介)(第二五八九号)
同(富田健治君紹介)(第二五九〇号)
同(中垣國男君紹介)(第二五九一号)
同(中曽根康弘君紹介)(第二五九二号)
同(中村幸八君紹介)(第二五九三号)
同(中山榮一君紹介)(第二五九四号)
同(永田亮一君紹介)(第二五九五号)
同(永山忠則君紹介)(第二五九六号)
同(灘尾弘吉君紹介)(第二五九七号)
同(丹羽喬四郎君紹介)(第二五九八号)
同(西宮弘君紹介)(第二五九九号)
同(野口忠夫君紹介)(第二六〇〇号)
同(野田卯一君紹介)(第二六〇一号)
同(橋本登美三郎君紹介)(第二六〇二号)
同(長谷川峻君紹介)(第二六〇三号)
同(八田貞義君紹介)(第二六〇四号)
同(濱田幸雄君紹介)(第二六〇五号)
同(原田憲君紹介)(第二六〇六号)
同(日野吉夫君紹介)(第二六〇七号)
同(肥田次郎君紹介)(第二六〇八号)
同(平岡忠次郎君紹介)(第二六〇九号)
同(福家俊一君紹介)(第二六一〇号)
同(福田赳夫君紹介)(第二六一一号)
同(藤枝泉介君紹介)(第二六一二号)
同(藤本捨助君紹介)(第二六一三号)
同(古川丈吉君紹介)(第二六一四号)
同(保科善四郎君紹介)(第二六一五号)
同(保利茂君紹介)(第二六一六号)
同(細迫兼光君紹介)(第二六一七号)
同(堀昌雄君紹介)(第二六一八号)
同(松井政吉君紹介)(第二六一九号)
同(松井誠君紹介)(第二六二〇号)
同(松本一郎君紹介)(第二六二一号)
同(松山千惠子君紹介)(第二六二二号)
同(三池信君紹介)(第二六二三号)
同(三浦一雄君紹介)(第二六二四号)
同(三木喜夫君紹介)(第二六二五号)
同(三和精一君紹介)(第二六二六号)
同(毛利松平君紹介)(第二六二七号)
同(森清君紹介)(第二六二八号)
同(森田重次郎君紹介)(第二六二九号)
同(八百板正君紹介)(第二六三〇号)
同(八木徹雄君紹介)(第二六三一号)
同(柳谷清三郎君紹介)(第二六三二号)
同(山田彌一君紹介)(第二六三三号)
同(山本幸一君紹介)(第二六三四号)
同(渡邊良夫君紹介)(第二六三五号)
旧令による共済組合等からの年金制度に関する
請願(伊能繁次郎君紹介)(第二四五八号)
旧令による共済組合等からの年金制度に関する
請願外一件(永山忠則君紹介)(第二四五九
号)
同(森田重次郎君紹介)(第二四八五号)
同(福田赳夫君紹介)(第二五二二号)
分収造林等の過税適正化に関する請願(二階堂
進君紹介)(第二五〇三号)
国税通則法の制定反対等に関する請願(河野密
君紹介)(第二五二一号)
ガス湯沸器の物品税免除に関する請願(有馬輝
武君紹介)(第二六六一号)
国税通則法の制定反対及び減税に関する請願外
一件(横山利秋君紹介)(第二六八九号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
連合審査開会に関する件
関税定率法及び関税暫定措置法の一
部を改正する法律案(内閣提出第七九号)
公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する
法律案(内閣提出第六二号)(参議院送付)
国民金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一三一号)
酒税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第
八二号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/0
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001・小川平二
○小川委員長 これより会議を開きます。
国民金融公庫法の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/1
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002・小川平二
○小川委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。水田大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/2
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003・水田三喜男
○水田国務大臣 ただいま議題となりました国民金融公庫法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。
国民金融公庫は、銀行その他一般の金融機関から資金の融通を受けることを困難とする国民大衆に対して、必要な事業資金を供給することを目的として昭和二十四年六月に設立されて以来、国民大衆の旺盛な資金需要に対処して、その業務の推進をはかって参ったのでありまして、昭和三十六年度末において、その設立以来の融資総領は七千四百十二億円、その融資残高は千三百九十七億円に達する見込みであります。昭和三十七年度におきましても、昭和三十六年度に引き続き、特に、普通貸付及び恩給担保貸付を増額することとして、普通貸付千二百六十億円、恩給担保貸付百五十七億円を予定し、さらに引揚者国債担保貸付、更生資金貸付等に合計十一億円を予定するほか、その他貸付として、農地被買収者で生業資金の融通を銀行その他一般の金融機関から受けることを困難としている者に対し二十億円の貸付を行なうこととしており、総額千四百四十八億円の貸付を計画しているのであります。このため必要な資金として、公庫の自己資金を九百六十三億円と見込み、新たに四百八十五億円の政府資金を供給することとしておりますが、公庫の経営基盤の一そうの強化に資するため、政府資金のうち二十億円は一般会計からの出資金を予定しておりますので、これに伴い、公庫の資本金二百億円を二十億円増額して二百二十億円とする必要があります。
これがこの法律案を提出する理由であります。何とぞ御審議の上すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/3
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004・小川平二
○小川委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/4
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005・小川平二
○小川委員長 酒税法等の一部を改正する法律案、関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案、及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題といたします。
質疑の通告があります。これを許します。佐藤觀次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/5
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006・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 先回も大蔵大臣に質問したのですが、自然増収が非常に多いのにかかわらず、この間接税の減税が前の宣伝より非常に少ない。特に酒の税率と物品税などにつきましては、われわれとしてはこれくらいのものは当然じゃないかと思われますが、一体来年度はこれについてもっと抜本的な物品税の廃止とか、あるいは酒税法の改正を来年も引き続いておやりになるのかどうかを大蔵大臣にお伺いしたいとい思ます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/6
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007・水田三喜男
○水田国務大臣 来年度というと三十八年度ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/7
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008・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/8
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009・水田三喜男
○水田国務大臣 三十八年度も減税については引き続き税制調査会で検討を願うことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/9
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010・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 今年度の酒税の減税については、一昨日も村山主税局長にいろいろ伺ったのでありますが、どうも私たちの理想としては、二級酒を三百円ぐらいの程度にする、そういう建前から、ビールは一本百円ぐらいの値段にするくらいなら減税らしい減税だと思うのであります。自然増収が非常に多いにかかわらず、減税分が少ないと思いますけれども、その点は大臣どういうふうにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/10
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011・水田三喜男
○水田国務大臣 御承知のように日本の酒税は、蒸溜酒は割合に外国に比べて割安であっても、醸造酒の方は確かに割高になっているという事実はございますので、従って、今度の酒税の減税につきましても、醸造酒について特に大衆酒を中心にこの減税をやったということでございまして、今度の間接税減税の中心が酒であったことから考えましても、この程度の減税がやはり大体妥当じゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/11
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012・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 大蔵大臣は非常に忙しいと思うのですが、これは多岐にわたっていろいろな議論があると思うのです。私たちが考えております減税というのは、どのくらいのところが国民の生活の標準であるかということが問題になるわけです。ヨーロッパほどの生活程度はできないにしても、今の労働者あるいは勤労者の一般の方が、一体どれくらいの程度の酒やあるいはビールとかたばこというものを消費できるかという、収入と見合った立場からいえば、私はまだ油の税金が高い、酒やたばこの負担が高いというように考えておりますが、その点について、今度は酒は多少の減税になりましたけれども、たばこは全然減税にならぬような形になっておりますが、その不均衡をどのようにお考えになっているのか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/12
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013・水田三喜男
○水田国務大臣 不均衡という話でしたが、昔が高かったということでしたら、これはまた別の問題になりますが、たばこにおきましては、戦前の専売益金率を見ましても、今のたばこについての益金率が特に多く上がっているわけではありませんし、それから物価倍率というような点から見ますと、戦前のたばこの小売値段と今の値段においては、戦前に比べると割高になっているということもございませんし、また御承知のように、葉たばこの収納価格の値上げとか、あるいは専売のいろいろなコストの値上がり等が、この数年の間に相当ございましたにもかかわらず、たばこの値段は三十一年から据え置きにしておりますので、そういう点からは、実質的には益金率も下がっているということですから、そこらを考えまして、この際たばこの値段の引き下げということは、他のほかの物品税の方に手をつけることが先であって、これはあと回しにしようということになったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/13
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014・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 それからこれはいろいろ問題になりますが、大臣に伺っておきたいのは、一体酒やたばこというものはぜいたく品であるか必需品であるかということの観点を一応聞かしていただきたいと思います。
そこで実は私ある部隊の主計をやっておりまして、千八百人ぐらいの部隊の兵隊の嗜好率を考えますと、大体酒は三人に一人は絶対必要でありまして、それからたばこは、私はたばこを全然のみませんけれども、たばこは十人のうち九人は絶対に必要だということが、全体の千八百人の兵隊を調べてそういう結果が出てきたわけであります。酒をやめることもむずかしいことでありますが、たばこをやめることももっとむずかしい問題だということを、私はたばこをのみませんから知りませんけれども、そういうことを聞いております。従って、酒やたばこというものはある意味においてはぜいたくだという人があるかもしれませんけれども、これは生活必需品になっているのではないか。そういう点でフランスではブドウ酒というものが比較的安く手に入るようになっておりますが、日本人はそういう点で酒やたばこというものが、現在ではぜいたくというよりもむしろ必需品にかわってきている、そういう意味で酒やたばこの税金というものはあまりに商過ぎるように私たちは考えておりますが、その点について大臣はどういうような所見を持っておられますか、これも承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/14
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015・水田三喜男
○水田国務大臣 酒がぜいたく品とは言えないで、ある程度の必需品化していることは事実だと思います。従って、私どもは大衆酒はできるだけ値下げをしたいと考えておりますが、特にそのうちでほんとうを言いますと、私はやはりビールが高いと思います。ということは、ビールはもうあなたのおっしゃられる意味で相当大衆の必需品化しているというのが最近の傾向でございますが、明治以来ビールは舶来酒という観念があって、むしろぜいたくな酒というふうに一般が見ておりましたために、特にこの税金は商いということになっております。しかし最近はほとんどビールなどは、酒場とかそのほか料理店とかいうところで売るビールよりも、一般家庭で消費されるビールの方がはるかに量が多い。しかも最近の若い人たちは家庭でビールを飲むということが一つの楽しみになって、必需品という方向へ特にビールが向かっておるのですから、こういうものはもう少し下げたいと私は考えておりましたが、まだみんなビールについてこれは日本酒よりもぜいたく品だという観念が昔からございますので、これが残っておって、ビールを下げる必要ないという意見までがまだ非常に強いという現状でございますので、私どもは今度下げることは下げましたが、今あなたがおっしゃられる意味から言いますと、ほんとうはビールがもう少し下がっていいんじゃないかというような気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/15
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016・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 これはいろいろ観点の相違がありますから、それ以上は申しませんけれども、先日も村山主税局長にお話ししたのでありますが、現在中小企業の酒屋さんの生活のレベルが非常に下がってきました。そこでこれは大臣に伺っておきたいのですが、金の融資を、酒類公団というようなものを作って、金融の機関までも多少めんどう見てやる必要があるのじゃないか。それは先会でも申しましたが、酒というものは御承知のように間接税で、酒屋さんを通じて税金を徴収しておる。それに対して国家は何ら報酬的なものを出していないという立場から、零落な酒屋業者に対して、これから競争がひどくなりますと、二千石以下の酒を作っておる商売人は倒れていくのじゃないかということは、現に今東京の国税局長をやっている泉さんともお話ししたのですが、私はそういう心配をするわけです。そこで、村山主税局長もこの間それについて、そういう意見もあるけれどもなかなかむずかしいということを言われておりますが、少なくともたばこの手数料を値上げせよという運動もあるし、一方においてはやはり酒の中小企業者を救えというような意見もありまして、こういう問題について何らかの新しい手を打って、せっかく間接の税金でとにかく莫大な国家の税金を取っておる酒類業者に対して、もう少しあたたかい手を伸ばす必要があるのじゃないかというようなことを、私は近くに小さな酒屋がたくさんありますからそういうことを感じておりますが、大臣はそういうことについてお考えがあるかどうか伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/16
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017・水田三喜男
○水田国務大臣 これまでは醸造家は中小企業でございましても割合安定した企業でございまして、金融力というものは他の企業に比べて非常に多くあったために、問題がなかったようでございますが、最近になって醸造家が、ことに中小企業が金融に困るというようないろいろな事実が出て参りましたので、一般的にこれに対してどうこうという方針は、なかなかそういう措置はむずかしいと思いますが、そういう実情が出てきた地域というようなものに対しては、最近個々に金融のめんどうを具体的事実に応じて私どもが見るということは、すでにやっておりますので、やはりこういう形で実情に応じて金融についての配慮をするということは、今後むしろ強化してやっていきたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/17
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018・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 これはどういうふうになっているか、詳しいことは私も知りませんけれども、アルコール専売の問題について大きなメーカーと中小メーカーとの間にいろいろなトラブルがあります。それは御承知のように大きな酒のメーカーの方では自分の方でアルコールを安く作っております関係上それが非常に都合がいいけれども、中小の方ではやはりアルコールを買ってそうして醸造している面があるわけです。こういう点に対する不公平な面が出ておると思いますが、ある点まで非常にシビアなものになっていまして、政府にはたびたびアルコール専売については陳情もありましてお願いをしておりますが、そういう点について大臣はどのようにお考えになっておるのか、この点を一つアルコール専売のことについて伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/18
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019・上田克郎
○上田説明員 アルコール専売の方から、石数にして年間約三千石払い出しを受けておりますが、これは益として小業者であるみりん業者などに安くアルコールを提供するためにいたしておるのでありまして、原則的にはむしろアルコールを作っております業者の方からは、政府の安いアルコールをそうやって出されることは困るという話が出ておるくらいで、みりん屋さんなんかに安いアルコールを供給いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/19
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020・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 もう一つ、これは事務当局でもいいのですが、先ほど大臣からビールの話が出ましたが、昨年の秋ごろにビール業者の大会がありました。上田さんも行っておられたようですが、ビールの取引のマージンが非常に少ないということで決死的な形で——ちょうど私その席に出ておりましたが、ただいま大臣からビールの話が出ましたが、今度ビールびんの引き取り価格を十二月から七円に下げるという話を承っております。これは結局マージンの多い方へ回すのじゃないかと思いますが、一体消費者はビールが下がってもビールびんが下がればかえって何も減税にならぬような形になってくるわけですが、この点についてどういう見解を持っておられるのか。私はこういうことは結局政府の方で減税しながらビールのマージンを消費者に押しつけるというような形になるのじゃないかと思っているので、この問題を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/20
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021・村山達雄
○村山政府委員 ビールにつきましては、今度一本当たり十円の減税を提案申し上げているわけでございますが、現在ビールにつきましては、ほかの酒類と違いまして空びんの引き取り値段を基準価格として書いてあるわけでございます。基準価格をきめるその告示で書いております。もちろんこれは引き取ることを強制しておるわけではございませんが、値段は書いてある。これは他の酒類で申しますと全然例を見ないことでございまして、全体の基準価格の考え方は漸次標準的なものにする。従来の公定価格制から基準価格制に漸次フリーに持っていきたい、こういう考えを持っているときに、ビールだけの引き取り値段をきめるということはどんなものであろうという点が一つございます。と申しますのは、最近、御案内のように現在ビール四社ございますけれども、それぞれのメーカーでできましたビールびんが必ずしも返りませんで、ちゃんぽんになって返る。そのためにその選びんないし今度はびんに詰めるときに非常にコスト高になっているという事実がございます。業界におきましては、将来の合理化に備えて、自社製のびんだけを選別して引き戻すようにしたらどうかというような機運もございます。もしそういうように選びんをいたすといたしますと、あらためて選びん経費がかかるわけでございますので、引取値段も今のような値段で、一本十二円ということを強制することがはたして実情に沿うかどうかという点を考えているわけでございまして、われわれの考えとしましては七円と別にきめたわけじゃございませんが、少なくともあの値段をはずしていった方がよくはないかというふうに現在考えている段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/21
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022・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 もう一つ伺っておきたいのですが、あのマージンの問題で、ビール会社のマージンの問題はどういうふうになっておりますか。ビールのマージンの問題はその後どういうような経過になっておりますか、伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/22
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023・村山達雄
○村山政府委員 これはビールにつきましては、小売の方が一本当たり十一円でございます。現行八・八%のマージンがございますが、卸につきましては、御案内のようにマージンがきまっていませんで、いわばメーカーの代理店として別に出されているというような格好になっております。各酒類間のマージンをずっと通観してみますと、ビールのマージンが最も窮屈であるということは、どうも統計上出ておるようでございます。この辺、合理的な調整の必要があるのではないかということも同時に考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/23
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024・平岡忠次郎
○平岡委員 関連して。今のお話で小売マージンがビールの場合十一円、現行で百二十五円に対して十一円ですから、八・八%ということであろうと思います。卸の方は不明確だと言っておりますけれども、大体三円のマージンに、それから何か輸送の——実際には輸送せず、しかも与えているお金が一円三十銭か、そうすると卸の場合において四円三十銭ですから三・八%ですね。おおむねそうじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/24
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025・村山達雄
○村山政府委員 おっしゃる通り正式のマージンはきまっておりませんが、実際はリベートの形であるとかあるいは輸送費の補給であるとかいうことで、大体一本当たり三円十銭くらい出ておるらしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/25
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026・平岡忠次郎
○平岡委員 三円十銭じゃない。三円プラス輸送費の補給で一円三十銭ですから、四円三十銭のはずですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/26
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027・村山達雄
○村山政府委員 その輸送費の補給分というのが、その会社によって相当違うということが実情のようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/27
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028・平岡忠次郎
○平岡委員 いずれにしましても、小売において八・八%、卸において三・八%、そういうことになりますと、清酒二級、合成、しょうちゅう等の小売マージンが一四%、同じく卸が七%という点から見ますと、非常に低位にくぎづけにされているということは事実であろうと思います。問題はここにあると思うのです。ですから、今回百二十五円がびん付で百十五円に下げられました。つまり十円物品税、消費税が下がったわけですが、その分はそのまま消費者の方にいくとしますと、不当に圧縮されたマージン幅ですね、この点がマージン是正の問題とぶつかって、それで十二円の評価を七円にしようというような、きわめてイージー・ゴーイングな方式がとられると思うのです。そこで問題は、このびん付幾らであるとか、びんを抜きにして幾らというようなことは、ビールだけに言われておることで、ほかの酒類には全部ないのですね。ですからわれわれとしては、むしろこの際百十五円がびんのついたビールの正当な値段だということに考え方をきめないと、やはり問題があとまで尾を引くことになろうと思うのです。そうなれば、要するにびん付で百十五円というものがこの今回の改正をきっかけにしてのビールの価格だということになるならば、あとマージンの配分とか選びんの費用とかを正当に評価して、それを考慮に入れて、政令事項なら政令事項できめていけば問題はないと思うのですが、そういうことにつきましてどういうお考えでありましょうか、お伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/28
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029・村山達雄
○村山政府委員 基準販売価格はおそらく十円下げますようで、しかも基準販売価格の適用はびん付できめますので、おっしゃるようにびん付百十五円ということになると思うのでございます。ただ、そのびんの引取値段を従来きめておりましたのを、先ほど申しましたような事情から、はずした方がよくないかということでございます。はずした場合に幾らで引き取ることになるかというところが問題のわけでございますが、実際申しますと、ビールびんをくず屋が買いますと三円程度でございます。トリスあたりでございますと一円くらいでございます。そこを十二円で引き取っているところに非常に問題がある。一方それは同時に消費者の利益になっておりますけれども、いつまでもこの態勢を法律の規定でもってとらせていくということには無理があるように思われるわけでございまして、そういう意味で今度選びんをやって、自社製品のびんは自社で引き取る、そういうふうにして将来の生産の合理化に資するという機会に、今の引取価格というのを公定することだけはやめたらどうか。それをどの程度にするかというようなことにつきましては、いずれ国税庁の方でも十分なる指導をされるものとは思っておりますが、制度として強制することは無理ではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/29
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030・平岡忠次郎
○平岡委員 制度として強制することは無理だということは、裏から言えば百十五円というものは定価ですから、そういうようにむしろ観念する方が問題がすっきりすると思うのです。そういたしますと、十二円から実際上七円に評価がえすること自身で損をするのかどうか知りませんけれども、結局十二円のものを七円ですから五円の差ですか、それは選びんの実費というようなことも考慮される。それからあと、今言ったような清酒等との比較からいって小売、卸ともマージンが低いですから、その辺にも配分していくというようなことは当然考慮されなければならぬと思うのです。そういうふうにしてみたところが、小売、卸において現在の清酒二級、合成、しょうちゅうほどのマージンはやれぬということになると思うのです。そういう点は行政の方でしかるべく合理的な数字が出ると思うのですが、考え方としてびん抜き云々ということは、ほかの酒類においてすでに通用してないことですから、この際は百十五円をもってビールの価格とするというふうに観念し直した方が問題がすっきりすると思うのです。
以上要望を付しまして、関連質問を終わりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/30
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031・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 そこで、マージンの問題は間税部長、今片づいたのですか。ビール屋が非常に熾烈な要求をしておりましたが、あの問題は片づきましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/31
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032・上田克郎
○上田説明員 ただいまお話のようにマージンの増額、特にビール・マージンの増額については卸、小売ともに熾烈な要望をされておりますが、ただいま平岡先生おっしゃいましたように、今回ビールびんのびん付の値段を百十五円というような形に今予定しておりますが、そういう形で実際の引き取られる価格がどうなるかという問題につきましては、われわれとしては現状をなるべく続けてもらいたい、できるだけこの際だからがまんしてもらいたいとは言っておりますけれども、実際問題といたしまして、結局ビールびんの値段にはね返ることはあろうかと思いますが、そういう形で、しかし幾ら安くなっても七円よりも安くしては困るというような程度で、現在業者閥に話をしてもらっております。最悪の場合七円、しかしある部分につきましては、いろいろな競争もございまして、従来通り十二円でとる向きもあろうかと思います。おそらく半分くらいはそれでとられるのじゃなかろうかというふうに思います。全体になべてみますと、七円よりも下がることはないというふうに考えております。現在でも、十二円という基準価格の規定はございましても、十円でとっているところとか、八円でとっているところとか、場所によりましてはあるようでございます。そういうところで若干のクッションはあろうかと思いますが、マージンそれ自体の正面からの取り上げ方は、現在のところまだいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/32
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033・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 びんの話が出ましたから、ついでにいま一つだけびんの話を聞きたいのですが、最近冷蔵庫が普及しておりますから、冷蔵庫にジュースの貯蔵が非常に多くなっているという関係で、酒の一合びんがほとんど出回らない状態であります。これは昨年の夏、私ども経験したことでありますけれども、酒の一合びんがなくなってジュースびんにとられてしまうというようなことを非常に言っておりましたが、大蔵省はその関係をどういうふうに処理されていますか。これは関連して伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/33
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034・上田克郎
○上田説明員 びんの生産のことにつきましては、それぞれ酒屋さんの組合などで製びん業者の方とよく話し合ってはいただいておりますけれども、実は酒類行政の中でびんに直接タッチいたしますのはビールびんだけでございまして、あとはびんの市場にまかしておるというような格好でございます。御指摘のように、一合びんが最近かなり需要はあるようでございますが、びんそのものが足りないということのような話であります。われわれも関心を持ちまして、今後も増産していただくように努力はいたしたいと思いますけれども、何しろ直接タッチしておりませんので、びん屋さんにお願いするというような格好になる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/34
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035・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 この前もちょっと触れましたが、大臣に、日本における洋酒の政策についてちょっと伺いたいと思います。先日もちょっとお話ししたのですが、にせのホワイト・ホースが非常に普及して、えらい大問題になったことがあります。これは国際道義上非常に大きな問題であると同時に——日本における洋酒が非常に高い。ジョニー・ウォーカーなんかは、向こうで買ってくると千円のやつが、内地では三千八百円も四千円もするというような、べらぼうな値段がついているわけです。これは関税の関係もあるし、あるいは密輸の関係もあるだろうと思うのですが、先ほど大蔵大臣が言われましたように、日本人はビールに関心を持つと同時に、最近洋酒の需要が非常にふえました。こういうことは、将来日本の酒のなにに関連いたしまして、いろいろ問題が出てくるだろうと思いますが、その点についてどういう御見解を持っておられるか、洋酒問題について大臣の御所見を一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/35
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036・村山達雄
○村山政府委員 この間の問題に関連しまして、事案の内容がまだ司法当局の方にありますのでまだわかりませんが、新聞紙上が報道されたところから想像いたしますと、何かおそめというバーに売っておった人が、ホワイト・ホースとサントリーをある場所でまぜた、それでバーに売った、こういうことのようでございます。もしこれが事実であるといたしますと、同じ洋酒、舶来酒といい、国産酒といい、どちらもウィスキーでございますので、詰め合わせ等は無免許制度にはなりませんが、無免許販売を犯したことにはなると思います。従いまして、その事実がそうであるならば、罰則の適用のあることはもちろん、所持しておる酒類は没収されるというふうになるだろうと思います。何分事件が向こうの方に行っておりますので、いずれ判明してから国税庁の方でしかるべき手を打つだろう、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/36
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037・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 その問題は、かなり村山さんから聞きましたから、それ以上どうこう言いませんけれども、洋酒をどれくらい計画的に輸入されて、そして日本の酒をどれくらい外国に出すという問題に関連して、大蔵省に何らかそういう政策があるのか、ただ行き当たりばったり、入るものは入る、出るものは出るということでやっておられるのかどうか、その点をちょっと伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/37
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038・村山達雄
○村山政府委員 毎年の輸入金額を見てみますと、洋酒は、三十三年が五億四千万、三十四年が六億三千万、それから三十五年が八億七千万と、逐次上がっております。もちろん、日本のメーカーの洋酒も逐年ふえておりまして、これは戦前に比べまして、最もふえた割合で言いますと——もっとも戦前が、元が非常に少ないのでございますが、いわゆる洋酒系統でございます。われわれの考えとしましては、やはり現在の嗜好がだんだんその方に向いているということでございまして、洋酒全体が酒類の中で伸びることを無理に押えつけるとか、そういうことはちっとも考えておりません。むしろ現在のそういう消費動向に即応した酒類の規格あるいは税率の盛り方、そういうものをきめれば足りるのだろうと思います。ただ、輸入洋酒を幾らやるかという問題は、一方におきまして国内産の保護という問題もございますけれども、他方、御案内のように各国とも、今相互の貿易を拡大する方向に向かっておりますので、毎年々々、各国といろいろな貿易協定を結んで、その範囲内でやっているような次第でございます。現在の割当の仕方は、いわゆるグローバル方式というので割り当てていまして、その範囲でどの国が幾ら入れるかということは自由になっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/38
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039・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 間税部長に、みりんのことについて二、三伺っておきたいと思います。
新式みりんと旧式みりんの区別がはっきりしないという非難がありますが、その点はどういう区別をされておるか、ここで原則というものをあらためて伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/39
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040・上田克郎
○上田説明員 新式みりん、旧式みりんという言葉は、法律上の言葉ではないようでありまして、通俗的に言っております。それは先ほど先生がおっしゃいましたように、新式みりんと称せられるものは、大規模に、自分で蒸溜設備を持ってアルコールを作って、それを使ってやっておられるのを新式みりんと俗に言うのでございます。旧式みりんの方は、よそで作ったアルコールを買って、自分で小規模でやっておられる、そういうのを旧式みりんと言っておりますが、作り方は全く同じであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/40
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041・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 それから、もう二つだけお伺いしたいと思います。今度の酒税の改正法案では、度数の関係で課税をされておるようであります。それで、今までは二度のものがあったそうでありますが、今度は一度よりないということは、非常に不便が起きるのではないか。アルコールのいかんによって非常にあいまいなところが出てきて、非常に複雑な問題が起きるのではないかということが心配されておりますが、そういう点について全然心配はないかどうか、これも伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/41
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042・村山達雄
○村山政府委員 現行税法では、基準アルコール度数をこえるものにつきましては、特別二割の加算税率を適用しておったわけであります。ただ、その二割の加算税率を適用する場合のアローアンスといたしまして、二度のアローアンスを置いたわけでございます。今度は、その基準アルコール度数をこえる分についての加算税率という制度そのものをやめたわけでございます。従いまして、アローアンスという問題もおのずからなくなってくるはずだ。問題は、ただ度数計算が一度ごとにできるかどうかという技術的の問題に集約されるわけでございます。これは現在でも十分できますので、その心配は要らないのじゃないか。考え方といたしまして、アルコール度数を無理にある度数にきめておくということはいかがなものであろうか、かなり沿革的なものがあると思っております。過去においては基準アルコール度数を、二度のアローアンスを置きましたけれども、それをこえるものは二割高い税率だ。それから特別措置法のあれはありますけれども、基準度数より低いものは、原則として基準度数のアルコール度数によって税金を取る、これは少し行き過ぎではなかろうか。最近の嗜好から考えまして、消費者も低いアルコール度数を好む人もありますし、高い度数を好む人もあります。すべてその辺は一度ごとのアルコール度数を比例的に盛っていった方が将来の嗜好の方向にも乗りやすいし、酒類業界もそれによって伸びていくんじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/42
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043・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 時間がありませんから、最後にもう一点だけ伺っておきたいと思いますが、清酒なんかを飲む場合はいいけれども、みりんのように調味料として使って、これを飲まないようなものに対して特別な課税をするようなことが今度の改正案に出ておりますが、こういう点について、非常に不当じゃないか、少なくともみりんのような場合はそういうことは非常に不自然であるということが言われております。こういう点について、どういう御説明をしていただけるのか。これは業界も、そういうことについては非常に、今のみりんはほとんど飲まない、調味料として出しておるのだから、そういう点について考えが違っておるんじゃないかというふうなことが言われております。この点についての大蔵省の見解を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/43
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044・村山達雄
○村山政府委員 これは従来から非常にむずかしい問題でございまして、おっしゃるように、みりんは一方において調味料に使われると同時に、他方において本直しの材料になるものですから、そこで税率の盛り方がむずかしい。三十四年度のときも大幅に減税いたしましたが、今回もみりんにつきましては五割以上の減税をやっておるのもそこにあるわけであります。しかしこれを全然無税にするとかなんとかということは、本直しとの関係もございましてなかなかできかねる。これもまた一つの将来の研究問題とは実は考えておるわけでございます。この際といたしましては、おっしゃるような点も十分勘案いたしまして、できるだけの減税を行なったというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/44
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045・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 大臣の時間がきまっておりますから、酒税法についてはもう少し聞きたいことがありますけれども、きょうは私はこの程度にしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/45
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046・小川平二
○小川委員長 岡良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/46
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047・岡良一
○岡委員 せっかく大臣がお見えでございますので、私は旧令による共済組合等の年金受給者のための年金額の改定に関する法律案に関連いたしまして、大蔵大臣としての御所信を若干お尋ねしてみたいと思います。
そこで、まずお伺いをいたしたい第一点は、今度のこの年金の引き上げに伴う予算は、三十七年度五千万円、以後、平年度は二億円に相なっております。金額はともかくといたしまして、今後ともこのような事態において年金が引き上げられます場合は、国が責任を持って処理される、その負担をされるという方針でございましょうか。まずこの点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/47
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048・平井廸郎
○平井政府委員 大臣から御説明いただきます前に、ちょっと事務的でございますが、給与課長からお答えさせていただきます。共済組合の長期給付のベース・アップの問題につきましてはいろいろ御意見もあるところと存じますが、官吏について恩給、雇用人について共済組合長期給付という形で行なわれておりました時代におきましては、共済組合が完全な形において保険数理に基づいて給付を行なっておるものということも言い切れない情勢でありまして、いわば恩給に補完する制度というような考え方で共済組合の長期給付を考えておったわけでございます。従いまして、そういった段階におきましては、官吏の恩給のベース・アップが行なわれるたびに、雇用人についても当然ベース・アップが行なわれると同時に、旧令等の共済組合の実質上恩給とみなすべきもの、こういったものについても当然ベース・アップが行なわれていったわけであります。今回の改正も旧令等の共済組合の年金受給者並びに旧法時代の国家公務員共済組合の雇用人の年金のベース・アップを行なったものであります。こういったものについては、将来ともに恩給のベース・アップがあった場合は、これと並行してベース・アップが行なわれることになると思います。ただ、昭和三十一年に三公社については新共済組合法になり、さらに一般公務員につきましても昭和三十四年の十月、そのうち雇用人については昭和三十四年一月、現業官吏については昭和三十四年一月でございますが、それから全面的に国家公務員並びに公共企業体については、すべて共済組合による長期給付制度が恩給にかわって行なわれるようになったわけでありますが、この段階におきましては、公務員のベース・アップないし恩給のベース・アップがあったときは、当然共済組合の年金のベース・アップが行なわれるかどうかということについてはかなり論議のあるところでありまして、現在までの段階におきましては問題はございませんが、将来の問題としては、先生御指摘のように相当大きな問題になるだろうと思います。ただ、現在の段階でそれについてどう考えるかという御質問でございますが、現在のところではまだそれについての確定的な考え方は出ておりません。今後の研究課題として考えていきたいというふうに思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/48
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049・岡良一
○岡委員 それでは、事務的なことは別といたしまして、政策的に御所見をお伺いしたいのですが、この公務員のベース・アップに伴う共済組合の年金引き上げ、そのための所要の財源については今後とも国が負担する、それはするかしないか今後の問題として研究したい、こういう立場をとっておられる。大蔵大臣としての御所信はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/49
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050・水田三喜男
○水田国務大臣 今、課長からお答えになりましたように、これは非常にむずかしい問題でございますので、まだ私どもとしてはその問題に対する結論を出しておりません。これからの問題にしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/50
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051・岡良一
○岡委員 私が今特にこういう問題を提出いたしますのは、御存じのようにことしの二月一日に、この法律案について社会保障制度審議会が勧告を出しておる。その中で、今回の年金額の改定は一応了承はする、しかし年金額の改定は、国民皆年金の今日すべからく年金体系の総合的な見地に立って行なわるべきものと考えられる。この後段で、将来において国民皆年金の統一した体系というものを考えて、国としても措置をすべきであるということを強く要請しておる。その立場から私は若干、非常に包括的な答申に対して具体的に御所見を承りたいと思うのです。たとえば今度の場合に、ベースの引き上げに伴う年金の引き上げに対する所要の予算は国が持つ。ところが民間産業の労働者の厚生年金においては、これは適当な機関を置いて絶えず算定をしながら、ベース・アップに伴う年金額の引き上げの財源というのはいわば労使の負担によってまかなう。一方ではこういうふうな形で、あるものは国の責任においてその財源を確保するというような形、これは国民年金の統一体系という観点から見て、私は決して妥当なものではないのではないか、こう思うわけなんですが、この点について大蔵大臣はどう思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/51
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052・平井廸郎
○平井政府委員 私ども社会保障制度審議会に列席いたしておりまして、いろいろ委員の御意見を拝聴したわけでございますが、附帯決議的なものが出て参りましたその意義と申しますのは、いろいろの角度がございまして、先生御指摘のように、民間の場合においては、厚生年金のベース・アップをやるときには労使の折半負担ということになっております。ところが国の場合においては、こういった形で予算で見るというようなことが出てきたのはおかしいじゃないかという御意見があったことも事実でございます。そういう含みがありまして、先ほどの附帯決議等が出て参ったのだろうと思いますが、そういった点から考えますと、確かに今後一般に生活水準なりが上がりまして、こういった共済年金についても、ある程度引き上げをするのが妥当だというような判断がされる場合におきまして、当然国が持つのが妥当であるということになるかどうか、こういった点を検討しろ、こういう御議論であったような感じがいたします。私ども先ほど申し上げましたように、今回引き上げますのは、あくまでも恩給といわば代替すべき制度として考えられております現在の共済年金の受給者についてでございまして、従いまして、本格的な共済年金制度が社会保障制度の一環としてスタートした後におきましては、その後の分につきましては、今後どういう方向で考えるべきかということになろうかと存ずるのでありまして、先生が御指摘の点もございますので、十分一般の国民年金とのバランスも考えながら問題を検討していきたいというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/52
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053・岡良一
○岡委員 これはやはり一つの大きな問題点でございますので、社会保障制度というものが無差別平等に、特にこの年金制度というものが、やはり国の大きな責任において、何の商売であろうと、国民の老後の生活を保障されるという建前に立っております国民の所得の最も公平な再配分ですから、そういう意味で、ある特定なグループについて特に国が優遇するというようなことは、将来は許されないと私は思う。もちろん国家公務員という特殊な立場の人に対しては、特殊な優先的な措置が各国において講ぜられておるし、またその必要を私は否定するものではないのですが、それならばやはりちゃんと納得のいく形でやれ、ずるずるに何か一種のエリート意識でもってお手盛りをするというようなことは、正しい社会保障制度の観点から許されない、こういう気持で申し上げておるわけです。
そこで特に私が非常に不均衡だと思います一つの事実は、私が調べました結果によりますと、各種の年金受給者の一人当たりの平均額、昭和三十五年度末で、民間産業の労働者に支給されておる厚生年金が年額四万一千七百十四円、船員保険が五万三千四百七十九円、国家公務員の共済組合の年金が九万八千六百四十六円、公企体の組合の年金が八万八千六百八十六円、こういうようなことになっております。この数字は大体間違いはないでしょうか、給与課長なりあるいは保険局の次長なり……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/53
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054・平井廸郎
○平井政府委員 厚生年金関係は私の所管ではございませんが、大体今伺った範囲でも間違いはないように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/54
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055・熊崎正夫
○熊崎説明員 厚生年金、船員保険ともに大体その数字に合っております。なお詳しいことはまたあとで申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/55
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056・岡良一
○岡委員 そこで、二倍以上という年金額における非常な格差があるわけであります。どうして一体こういう格差があるのか、こういう格差は当然なことと思われるかどうか、大蔵大臣どう思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/56
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057・水田三喜男
○水田国務大臣 私も詳しいことはわかりませんが、問題はほんとうの保険計算に基づいた年金制度が樹立されているのなら、これは掛金の問題として差が出てくるのではないかと思っております。そういう意味で差が出てくるのなら、これは均衡、不均衡の問題はなくなると思いますが、こういうほんとうの保険計算に基づいてきめられた額でないとすれば、そこには問題があるわけでありますので、これは是正しなければならぬと思っていますが、要するに、保険計算に基づいてきめられているのでしたら、掛金が少なかった場合には年金が少なくなるし、その実情に応じて、生活条件に応じて、掛金が多いところは当然年金が多くなっていくということになろうと思います。問題は計算がそういうふうに統一された基礎の上に、はっきり立っておるかおらないかが問題じゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/57
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058・岡良一
○岡委員 そうではないのです。問題は、たとえばそれぞれの年金体系においては、国庫の補助率だとかあるいはまた被保険者なり、組合員の負担なりというようなものが、いろいろ不均衡がある。そういう不均衡を不均衡のままに保険数理でどうはじいてみても、いろいろな問題が出てくるわけであります。私がお尋ねをしているのはそうじゃなくて、いよいよ国民皆年金という時代になってきた、であるからこの場合に、現在のこのように不均衡な給付内容を持っているこういう年金制度というものを、もう少し一本の体系に持っていくべき方向になっているのではないか、であれば一体どれをめどに、どこをめどにこの国民年金というものの基準を設定すべきかという問題になる。そうすると、二倍以上差がある、まだまだ低いものがあるが、そういうことになりますと、一体公務員の共済組合年金というものをめどにしていいのかということです。これをめどにしてみんな引き上げるということならそれはそれでいい。だから保険数理以前の問題として、これは社会保障制度というものは一つの大きな政府の公約です。この社会保障制度も今や広げるだけ広がった、今度は納得いくように体系を編成がえしようという段階にきているときだ。そういうときに、こういう問題については、あなたは国務大臣としても、これはなるべく一本にすべきものだとするならば、何を基準にして、どこを基準にしてこれを一本にするのが妥当であろうか、どう考えるかということを私は聞いている、これこそ保険数理以前の問題です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/58
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059・水田三喜男
○水田国務大臣 その問題は今政府でも取り上げております。私も一本にする方向で、今この社会保障制度審議会においてもこの問題をやっておりますので、私どももその検討の結果を見ているところでございますが、これはいずれにしろいろいろそういう方向にいかなければなりませんので、これは今の審議会においても、重要な議題として取り上げてもらっている現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/59
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060・岡良一
○岡委員 今御指摘のように、社会保障制度審議会に対して内閣総理大臣は諮問をしております。それは、現在の社会保障制度の日本の体系をもっと総合調整する、その具体案を諮問しておるわけです。七月には社会保障制度審議会は答申を出すことになっている。七月を待たないでこうした法律案を出されるというならば、大蔵省としてはこれに右へならえをすべきだという腹があって出されるのか、それとも答申を出される前に、卑近な言葉で言えば実績を作っておこうというので出されるのかという点に、私は率直なところ若干疑問を持ったわけなんです。だから、大蔵大臣は、そうではない、こういうふうに年金額を改定するのが正しいのだという御所見であるならば、われわれは、七月にこの答申が出ました場合、大蔵大臣に対して大きな期待を持って刮目したいと思う。大蔵大臣の御所信をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/60
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061・岩尾一
○岩尾説明員 先生の御指摘になりますように、現在の年金制度におきまして、各制度においていろいろと給付の差のあることは事実でございます。しかし、この給付の差と申しますのは、沿革的な理由もございますし、政策的な理由もあるわけでございまして、本来国家公務員共済組合につきましては、恩給が変形をしてきたものでございます。恩給と申しますのは、公務員が在職中に失われた経済的能力の補てんという意味で恩給を給しております。従って、一般の民間の給与よりも公務員は低いということが前提になりまして、退職後についてはある程度の生活の保障をするということで恩給が出ております。それをそのまま共済に持っていき、あるいはそういったものを前提として雇用人等の共済というものができておったわけであります。そういう意味合いで給付の水準がある程度きまっておりました。厚生年金につきましては、昭和十七年に、当時の労働者に対する一つの年金といたしまして発足をいたしましたけれども、これは本来各企業が企業の独自性に基づきまして退職金を給したり、あるいは給付をやったりすることを前提に、なお最低限の年金を保証しようという趣旨でできておるわけでございます。従いまして、そういった沿革的理由なり、あるいは政策的な、労務管理というような言葉を使いますと多少語弊がありますけれども、それぞれ働いておる者の違いに応じて政策的な配慮が行なわれ、かつ大臣が申されましたように、財源といたしましても、保険料というものが一つの財源になるわけでございますが、その保険料の水準によって給付が変わってきておるという状態でございます。しかし、今申されましたように、昨年から国民年金というものが発足いたしまして、先生の申されました被用者年金以外の、いわゆる一般の農山漁村の自営業者につきましても年金を給することになりまして、この年金額は被用者年金に比しましてもさらに低い額でございます。政府といたしましては、そういった状況を考慮いたしまして、将来の方向としては、社会保障の水準をできるだけ均一な状況にいたしたいという気持はございます。しかし、また、その上に、企業あるいは事業の状況に応じて、たとえば現在各会社でやっております企業年金というような付加年金的な形のものもあるいはあってもいいではないかと考えております。そういうことを前提として、現在社会保障制度審議会におきまして、将来の政府の社会保障の水準はどうあるべきであろうかということを検討しておられるわけでございますので、われわれはそういった検討を待って結論を出したい、こういう気持でございます。法案自体は、そういう検討をする前に、先にうんといいのを作っておこうというような趣旨ではございませんで、恩給等の増額に伴う関連において必要最小限の調整をするために行なった、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/61
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062・岡良一
○岡委員 国家公務員に対する年金等については、あるいはまた恩給の意義、概念規定については、われわれも数年前よく論争したことがある。それはさておいて、具体的に先ほど申しましたこの数字ですが、三十五年度における国家公務員の共済組合年金、九万八千六百四十六円、一体この中で年金的な性格のもの、社会保障的な性格のものと、あなたの言われた言葉を用いれば、労務管理的なもの、退職年金的なもの、これを分析して分けると、どういうことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/62
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063・平井廸郎
○平井政府委員 ただいま先生御指摘のように、今の共済組合年金には、そういったいろいろなファクターが入っておるであろうことは、観念的には考えられるわけでありますが、そのうち、どれだけが社会保障的なものであるかということは、数字的には、現実には確定しがたい問題であります。ただ、観念的に申しますならば、いわば厚生年金のレベルに匹敵するものが大体において社会保障的なものである、それを越える部分は、いわば公務員たる性格に応じて付加的に給付されるものと考えてよいのではないかというように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/63
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064・岡良一
○岡委員 恩給といえば長い制度である。日本は、明治、大正時代は、いわゆる官尊民卑の時代である。官尊民卑の時代における封建的な慣行をそのまま引き継いできたから、これを数字で分析できない、こう言われるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/64
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065・平井廸郎
○平井政府委員 先生御指摘の、昭和三十五年度の数字と申しますのは、その大部分が旧雇用人並びに旧令共済組合員等の共済年金でございまして、いわば新法になって、新たに、本来の保険数理に基づいて給付される共済組合の年金というものは、純粋の意味ではまだ発生しておりません。と申しますのは、われわれ官吏であった者が、三十四年十月以降は共済年金制度の適用を受けるようになりましたが、こういった者を更新組合員という言葉で呼んでおりますが、その更新組合員については、相変わらず旧法時代の恩給期間というものがあるわけであります。そういったものと、新法に基づく純粋の保険数理に基づいて計算された掛金なり負担金を基礎として給付を受ける部分の両方にまたがっておる関係で、正確にはどの部分が幾らということは確定しがたい状況であります。少なくとも昭和三十四年十月以降に公務員になりました者については、それは純粋に保険数理に基づく共済組合制度のもとにおける給付金であるということは言えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/65
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066・岡良一
○岡委員 それは旧法に基づくものであるから、いわば古い慣行をそのまま引き継いできておるということはいなみがたい。新法に基づいて将来支給され得る年金については、私はさっき申し上げたように、退職年金的な性格のもの、いわゆる労務管理的なものと、純粋の年金的な、社会保障制度的なものとの区別は、ちゃんと前提に立てて数字をはじいておられますか、あったら、お示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/66
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067・平井廸郎
○平井政府委員 将来に向かって掛金を決定いたします場合に、そういった要点を分析して、ここまでは社会保障的なもの、ここまではいわば、プラス・アルファ的なものという考え方で掛金を考えるかというお話でございますが、少なくともわれわれ更新組合員が大部分であったわけでありますが、そういったものを前提としてものを考えます場合には、旧恩給時代に比べて給付は悪くならないということを前提に考えざるを得ない、その場合に、掛金を考える計算といたしましては、新たに入ってくる公務員については、当然保険数理に基づきまして、一般の社会保障水準より高いかもしれませんが、同時にまた掛金も高いという体系で処理されるということになるわけであります。しかし、われわれのように、いわば更新組合員である者については、今後の三十四年十月以降の部分については、いわば掛金も高いが給付も高いという形での一つの社会保険の保険数理に基づいたものと理解されてもよいと思いますが、それ以前の部分については、今さらもう一度計算のやり直しということはできないわけでございまして、その限りにおいては、なお旧法的なもののからが少し残っているということが言えようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/67
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068・岡良一
○岡委員 これは大臣もお聞きのような格好でございますが、将来の国民皆年金という制度の中では、やはり国民の年金の給付額というものについては一定の基準があってしかるべきものだ。保険料を高く払っておいてもらうということは、やはり社会保障制度全体の一番重要な一環なんだから、そういう基準に対して、高いなら高いで合理的なプラス・アルファを出さなければいけないと私は思う。そうでないと、こういうただ従来からの慣行を引き継いできた明治時代の官尊民卑的なエリート意識的なものが実際の給付につきまとっているという、いわば不幸な誤解さえもあり得るわけであります。そういう点、ぜひ一本の統一された基準において国民皆年金の制度、特ここの給付額については政府として方針を打ち出すべきだと思います。またこれはおそらく今後社会保障制度審議会の四月の答申の重要な部門になってくるわけですが、それに対して特に大蔵大臣はどういう立場に立っておられるか。御所信はいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/68
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069・水田三喜男
○水田国務大臣 私もその方向が望ましいと思っております。社会保障制度審議会の答申もやはりその方向へ向かったものだろうと私も期待しておりますが、これはその方向には賛成でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/69
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070・岡良一
○岡委員 厚生省の方にもお尋ねをいたしますが、国庫負担あるいは国庫補助は、国民年金、厚生年金また共済組合年金の給付に対してどういうことになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/70
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071・熊崎正夫
○熊崎説明員 厚生年金におきましては、国庫負担分が保険給付費の百分の十五を負担することになっておりまして、ただ坑内夫の場合につきましては百分の二十を負担することになっています。それから国民年金の国庫負担につきましては、保険料の総額の二分の一を負担する、これは拠出年金の場合でございます。そういうことに相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/71
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072・平井廸郎
○平井政府委員 国家公務員並びに公共企業体の職員の共済組合の場合におきましては、社会保険主体としての国または公共企業体が百分の十を負担する形になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/72
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073・岡良一
○岡委員 国庫の負担などもやはり基準の統一化とともに、きちっとそろえるようにしていただきたいと思います。
それから積立金の運用でございますが、厚生年金積立金の運用につきましては、私どもも非常な関心を持っておりますので、たしか七、八年前に積立金の運用に関する法律案を私提案をしたこともあると思っております。私がお聞きしたところでは、厚生年金や国民年金は、大体二五%程度のものが還元され、残りが資金運用部の資金に繰り入れられる。それから共済組合の場合は、大体厚生年金積立金の相当額だけが運用部資金にいく。それから今度問題になっておる地方公務員の共済組合年金では、一部のものを除いて全額が自己運用になる。だから四分の一が厚生年金あるいは国民年金では福祉還元、それから公務員等は七割が自己福祉還元、地方公務員共済組合年金ではほとんど全額が自己福祉還元というふうに私の調べた範囲ではなっておりますが、大体そういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/73
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074・平井廸郎
○平井政府委員 大体御指摘の通りでございます。ただ資金運用部に預託する問題と、資金運用部に預託しない場合は、ある意味では完全にフリーであるかどうかという問題につきましては、若干相違があると思っておりまして、たとえば地方公務員の共済組合につきましては、実費的に相当の部分を地方債に運用するというようなこともお考えになっておるようでございますし、また公共企業体等につきましては、私どもとしましては、現在のところ資金運用部預託はさておきまして、ある程度縁故債等に運用していく、そういった全体の社会保障体系の中でバランスのとれた運用をしていただきたいというお話をいたしておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/74
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075・岡良一
○岡委員 こういうように、組合員なり被保険者の福祉に還元するためにも、自分たちの積み立てた積立金をその福祉還元のための融資だけに許された限度が非常に低い、いわば不均衡である、これは私は妥当じゃないと思うのです。これはやはり均一化すべきだと思いますが、大蔵大臣、どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/75
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076・水田三喜男
○水田国務大臣 問題は、そういう国民各層の拠出金がどう使われるかということが問題でございますので、従って、一部は還元融資的な形で運用されるし、他は政府によって統一運用をされる。その場合にその資金がどう使われておるかを明確にすることに非常に意味があると思いますので、私どもは運用方法として昨年からそういう形をとって、どこでどういうふうに使われておるか、使途を明瞭にする。使途別分類表をつけて国会で御審議を願うという形にしてございますので、ただいまのところ、今度の財政投融資計画にしましても、この点にきわめて明確でございまして、五割程度は全部国民生活に直結した部門に使用され、三割が大体道路そのほか産業基盤の整備というようなことに運用されますし、あとが地方開発とかその他基幹産業に二〇%以下が運用されるというふうに運用の仕方、使途が明確になっておれば、やはり統一運用をすることが国の施策に最も寄与したやり方ということになろうと思います。すでに今でも還元融資の運用を見ましても、今それぞれのところで、住宅になったり、そのほか老人ホームになったり、青年の家になったり、いろいろあって、それでもすでに運用がばらばらであって、もう少し国はこういう問題と統制する必要はないかという声も出ておるときでもございますが、しかし、いろいろ御要請もございますので、そういう若干ばらばらに運用されることはございましても、一定額を還元融資として運用して、そのほか今言ったように、使途を明確にして施策を統制といいますか、十分国が調整する形においてその資金の運用をするということが望ましい姿、こう考えて、昨年からそういう運用をしておりますので、私は今の運用方法がやはり一番いいんじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/76
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077・岡良一
○岡委員 そういうことをお聞きしているのじゃないのです。厚生年金や国民年金では、積立金の四分の一が福祉還元のための融資の原資に充てられる。共済組合では大体七割が福祉還元の融資原資に充てられる。今度できょうとする地方公務員のよりはほとんどが福祉還元の自己運用にまかされるというふうに、私の調べた結果は出ておる。こういう還元融資のワクが、年金や厚生年金あるいは国家公務員の共済年金でみんな違っておる。これは不合理じゃないかということを私は申し上げておる。何に使われておるから云々じゃなくて、同じ老後の生活保障のために積み立てた金であるならば、これはやはり一本に福祉還元すべきだと思う。なぜこういう違った運用をしておるのかということをお聞きしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/77
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078・岩尾一
○岩尾説明員 先生の御質問は二つ問題があると思います。一つは、年金の積立金というものをどう運用するかという問題、それから第二は、その積立金の運用をやる場合に、別途福祉施設へのいろいろな拠出というものをどういうふうに行なうかという二点あると思います。厚生年金、国民年金あるいは地方共済、国家共済というようなものにつきまして、積立金は原則としては大体運用部の方に預託をすることになっておりますが、本来事業主が行なうような共済年金という建前のものにつきましては、全額運用部ということではございませんで、一部運用部に預け、一部はいろいろなものに投資いたしまして利回りの強化をはかるという方向で、たとえば私立学校の共済組合あるいは農林漁業団体の共済組合あるいは国家共済というようなものがそれぞれ運用をしておるわけでございます。その場合の運用の趣旨は、やはり将来の年金の原資になるわけでございますから、なるべく高利に運用される方がよろしいわけで、そういう趣旨で運用をいたしております。それから、福祉施設につきましては、その問題とは別に、そういった積立金をなお現在の被保険者の福祉の向上のために役立てたいということで、予算あるいはその他の点でそれぞれ調整をいたしまして、必要な福祉施設に拠出する。現在国家共済では大体三分の一くらいが福祉施設の方に回っておるような状況であり、かつ、厚生年金の方は、昨年来いろいろ御論議もございまして、その運用部の積み立てから還元融質の形でいろいろな施設に拠出をする、こういう形になっております。従いまして、その場合にも、福祉施設に回すことによって利回りがうんと下がるということでは困るわけでございます。その辺がかね合いでございまして、実際上の給付財源として利回りもよくなくてはならぬ、しかし福祉の方にも回さなくちゃならぬという意味で、それぞれの会計における実態を見て、その辺のところを見当をつけるということで運用いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/78
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079・岡良一
○岡委員 そうしますと、私の調べたデータでは、公務員の共済組合の積立金は七割が自己運用になっておる、こう結果が出ておるのですが、そうじゃなくて三割ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/79
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080・平井廸郎
○平井政府委員 先生のごらんになったデータを私拝見しておりませんで、私の方があるいは間違っているかもしれませんが、私どもの理解しておる限りにおきましては、長期経理の資産の運用割合というものは省令できめられておりまして、そのうちの大体三分の一が資金運用部預託、それから残りのうちで、現金または短期の預金、貯金または金銭信託、こういったもの、いわば流動資産の支払い準備に充てるもの十分の二、それから不動産が十分の一、組合の行なう事業のうち不動産の取得を目的とする貸付金十分の一、組合の行なう事業に対する前号以外の貸付金十分の二、こういう格好になっておりまして、現実には今申し上げた中の最後の十分の一、十分の二の部分、この部分が大体福祉事業に充てられている、こういった格好でございまして、先生の御指摘のように、自己で運用しているという限りにおいては十分の七相当額でございます。大体三分の二相当額でございますが、そのうちで実際上福祉事業に回されるものはその程度であるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/80
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081・岡良一
○岡委員 そうなりますと、結局資金運用部の方へ預入されているものが三割だ、これは厚生年金や国民年金の積立金の相当額であるということなので、私その点若干誤解があったと思います。ただしかし、この点われわれが現場を見ておって、恐縮ですが私の県の実情を申しますと、石川県というのは温泉県であり、どこを掘っても温泉がある。ところが、その温泉に行きますと、公企労の寮がずらっとできており、非現業の共済組合の寮ができておる。ところが、私どもの県の労働者というものは全く繊維中心の県ですから、中小企業が多い。この職業はそういう官業施設というものが全然ないのです。そういうふうに、現場で見ておると、とにかく一方ではどんどん施設ができ、家族連れでレジャーを楽しむ。一方は何もできないという現実を見ますと、やはりこの厚生年金の積立金の運用については、福祉還元のためによほど奮発してもらわないといけない。いわんやそれの運用部への預入が非常に不公平であるということは、一考を要する。一方、要するに非現業組合の幹部の中の諸君とあなた方との御相談で、自由に運用できるものを七割も確保しているというようなことでは、積立金の福祉還元というものが公平にならない。こういう点、通産大臣も来られましたから、大蔵大臣、ぜひ十分考えていただいて、福祉還元のための積立金の運用については不公平のないようにやってもらいたい。均衡のとれた福祉還元運用をするように言明していただきたい。これをもって私は質問を終わりたいと思いますが、一つぜひ御決意のほどを。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/81
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082・水田三喜男
○水田国務大臣 そうしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/82
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083・小川平二
○小川委員長 芳賀貢君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/83
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084・芳賀貢
○芳賀委員 通産大臣にお尋ねします。当委員会において関税定率法及び関税暫定措置法の一部改正案の審議を行なっているのでありますが、これに関連して、以前に予算委員会の分科会において通産大臣にお尋ねしたことがあるわけですが、特定物資輸入臨時措置法が今年の六月四日で期限が終わって消滅することになっておるわけです。従って、関税定率法においては、特定物資の輸入臨時措置法関係の六品目等については、この制度がなくなることによって差益金を関税の方にある税度吸収するという方針で、関税率の引き上げ等の措置が改正案の中に出てきておるわけですが、これに関連して、日本貿易振興会が行なっておる、たとえば雑豆、あるいは輸入会社等の差益金の徴収が、特定物資臨時措置法の失効によってこの差益金吸収の根拠を失うのではないかということを先日私は指摘したわけでありますが、そのときは政府の見解は明らかになっておらないということで、本日所管の通産大臣からその点に対しての政府としての見解を明らかにしてもらいたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/84
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085・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 お答えいたします。
基本的な方針は、今御審議をいただいておりますように、関税率でかげんしていくということが基本的な考え方でございます。ところで、そういう処置のとれないものはどうするか。これは順次数量をふやしていくことによって差益がたくさん出てこない処置をとる、そういう指導をするつもりでございます。そういう方法をとりますが、結局特別な差益がないというような方向に持っていくことが望ましいのだと思います。そこで今お話しになりました雑豆については、これは農林物資でございますが、農林省との話がまだ十分ついておりませんので、この段階でどうするということはまだはっきり申し上げかねますが、ただいま申し上げるように数量をふやすことでだんだん利潤が減っていく、そういうような指導が可能じゃないか、かように思いますので、両省の問でさらに話を詰めてみたい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/85
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086・芳賀貢
○芳賀委員 そういうことを聞いているのではないのです。この点については、予算分科会においては、通産大臣は、特定物資輸入臨時措置法はことし六月四日で期限が切れるが、これは延長するような考えはない、こうすでに言明されたわけですね。政府の方針として……。ですから、この法律が切れれば、臨時措置法の政令によって指定しておる、たとえばバナナであるとかパイカンであるとか腕時計であるとかスジコであるとか、そういう六品目というものは法律の根拠を失うから、自然納付金の吸収ということができなくなる。やれなくなるということになるわけですね。ですから、この品目については政府の関税定率法改正案の中にも、この法律の時限が切れたときから定率を引き上げるという措置が意図されておるわけです。たとえばバナナについては、現行法二〇%を六月から五〇%に引き上げるとか、そういうことが出ておるのですから、ある程度臨時措置法との関連というものを配慮しておるということはうかがわれるわけです。しかしそれ以外に、この臨時措置法と重大な関連のある、現在ジェトロに行なわせておるいわゆる雑豆とか外車の差益金吸収は、この臨時措置法が失効すると同時にジェトロが差益金吸収を業務として行なうことができなくなるのではないかということを、実は先日指摘したのですが、きょうこの点について大臣から明確なお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/86
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087・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 六月四日にこれが廃止される、これはもうはっきりしている。そして自由化されるまでの期間的な経過がございます。だから六月四日に廃止してすぐに自由化されるものと——大部分は自由化されない。そして十月か十一月の、次に自由化するときに取り上げるわけでございます。そうすると、その期間中はやはり外貨の割当をするわけですね。一つは税率を高くしておりますが、同時に外貨の割当もするということで、その話のつくものは、その間は外貨の割当等で差益の少ないような方向で指導していこう、こういうことであります。もう一つ雑豆については、ただいま事務当局からお話を聞いていますと、これはガットの譲許品目になっておるようです。従いまして、国内における雑豆関税率がきまりましても、相手国であるビルマ等が了承しないとそう簡単にはいかない、そういう交渉の問題があるようでございます。これらの点、一つ補足して事務当局から説明させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/87
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088・稻益繁
○稻益政府委員 ただいまの雑豆の件でございますか、補足して御説明申し上げます。
ただいま通産大臣からお話がございましたように、特定税率では先般引き上げを行なったわけです。何分にもガットで譲許いたしておりまして、これの交渉相手国はビルマでございます。昨年来私どもこのガットの交渉をやりたいということで申し入ればいたしておるのでありますが、まだこの交渉が実を結ぶに至らない。従いまして、ガットの交渉で従来の譲許いたしております低い税率を修正いたしまして、特定税率の線まで持って参りませんと、国産のアズキでありますとか、そういうものの受ける打撃が大きいということで、従って、自由化も困難であるというような形になっておるわけであります。一方、非常に窮屈な割当を行ないますと、その間にどうしても従来のような差益が発生する。従いまして、今後はできるだけ割当を徐々にふやしながら、そういう差益が縮小するという方向でやっていきたいというのが現在のところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/88
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089・芳賀貢
○芳賀委員 そこで、問題を分けてお尋ねしますが、臨時措置法に基づく六品目については、先般関税局長から、バナナについては十月から自由化したい、それ以外のたとえばパイカン等については、明らかに十月ということはまだ断定しかねる、そういう答弁があったわけですが、自由化の問題は通産省が中心ですから、この臨時措置法に指定された品目について、自由化の計画——われわれは自由化をみだりにすべきでない。しかも国際収支が逆調にあるような困難な中で、何も無理にスケジュールを進める必要がないではないか、そういう立場の上に立っているのですが、しかし政府の立場から見た場合、この六品目についてはどういうスケジュールで自由化を進めるか、この点をまず明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/89
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090・山本重信
○山本説明員 特定物資臨時措置法に指定されております品目につきましては、自由化できますものはできるだけ自由化をするという方針によって処理をいたしておるわけでございます。たとえば腕時計でございますが、これはは昨年の十月に関税率の引き上げをいたしますと同時に、自由化をいたしました。そして特定物資臨時措置法の指定を取りやめいたしたわけでございます。それからスジコでございますが、スジコはことしの四月に自由化をするという予定にいたしております。それからバナナ、パイナップルでございますが、これは農林物資でございますので、通産省だけの立場からは最終的な御回答はできないのでございますが、パイナップルにつきましては、一応現在の自由化計画大綱におきましては、ことしの十月に自由化することを目途とするとなっております。しかし先般来沖繩のパイナップル産業の特殊事情を考慮しなければいけないという意見がかなり強くなっておりますので、その辺をさらに検討した上で、場合によれば自由化をしばらく延ばすべきではないか、こういうふうに考えられます。しかしその点は、最近にも農林省から現地にパイナップルの調査に担当官が行っておりますので、その報告を待った上で最終決定を見ることになるかと思います。
また、バナナにつきましては特にパイナップルのような特殊事情はございません。現在のところは十月一日を目途として自由化を進めたいということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/90
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091・芳賀貢
○芳賀委員 そこで、ジェトロの関係なんですが、この臨時措置法が消滅してしまえば、ジェトロが現在やっておる差益金の吸収ができなくなると思うのですが、これは通産大臣は今後やれるという判断の上に立っておるのか、本法がなくなればできないという見解の上に立っておりますか。これは通産大臣から明らかにしてもらいたい。きょうは政府としての統一見解を携えてきてもらいたいということになっておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/91
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092・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 なかなか技術上の問題でございますし、信頼する山本君にかわってお答えさせますので、お聞き取りを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/92
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093・山本重信
○山本説明員 ジェトロの基本法であります日本貿易振興会法におきまして、ジェトロの設立の目的、その他事業が規定されておるわけでございまして、ジェトロの目的といたしましては、「わが国の貿易の振興に関する事業」という表現を使っておるのでありまして、一方において輸出の振興をはかることが非常に重要な任務でありますと同時に、広く解釈いたしますれば、秩序ある輸入をするということも、またその本来の目的からはずれていないというふうに考えられると思います。そういたしまして、今回のジェトロ方式による差益の吸い上げは、精神的には特定物資臨時措置法が制定されました当時の基本的な考え方、さらにその当時国会において行なわれました附帯決議、そうした線に沿って行なったものではございますけれども、必ずしも法的に特定物資臨時措置法に基づいて行なっている行為ではございませんので、必要があればジェトロがそれをいたすことは少なくとも法律的には何ら支障がない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/93
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094・芳賀貢
○芳賀委員 それでは臨時措置法がなくなっても、この日本貿易振興会法の目的に基づいて差益吸収はやれる、そういう確信の上に立っておるのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/94
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095・山本重信
○山本説明員 法律的な解釈といたしましては、ただいま申し上げましたような解釈をとっております。もちろん、実際にそれではどういうふうに行なうかという問題につきましては、国際収支の状況、あるいは国内産業に対する影響、それからさらにはガット、IMF等に対するいろいろな配慮も必要でございますので、その辺を勘案いたしまして、今申し上げたような方式を今後も続けるかどうかについては、十分検討の上で決定をいたすべきかと思います。
なお、御参考に申し上げますと、ただいま問題になっております雑豆及び乗用車につきましては、今期の割当をただいまちょうど進行させておる途中でございまして、これは特定物資臨時措置法も現にまだ有効でございますし、対外的にも特に問題はないと思います。次回の割当をいたします時期は秋あるいは秋以降になると思います。まだ若干の時間もございますので、その間に十分に関係各省とも打ち合わせをいたしまして、そのときの情勢に適した措置をとりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/95
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096・芳賀貢
○芳賀委員 この点は、たとえば雑豆についてはジェトロで輸入発券のとき二〇%の納付金を徴収しておるわけです。それから外車については車種ごとに百万徴収しておるのもあるし、二百万のもあるし、最高は四百五十万吸収しておるのもありますが、われわれとしては、外車の場合には国産車が十分競争に耐え得るということになれば、これは何も超過利益の吸収をしなくてもいいかもしれぬが、ただ農業の部面においては、たとえば雑豆等がガットの関係で現在関税の方では一〇%しか課税ができない。ジェトロの方で二〇%の徴収をして合わせて三〇%ということになるが、この分が行なおないということになると、これは相当国産の雑豆に圧迫を来たすということは回避できないわけです。それでは関税を上げればいいかということになると、やはり譲許の関係でそう簡単に一方的に上げるわけにはいかぬということになる。そうなるとこれは非常に問題が生じてくると思うわけです。しかもこの雑豆は、品目の中にはむしろ輸出振興の対象として今後奨励すべきものも入っているわけです。だから、この取り扱いが明確にならぬと、単純に、臨時措置法がなくなってしまった、今度はジェトロでもやれないというようなことになると、この国産の農産物の保護措置というものが全くできがたいということになるわけです。こういう点は政府としても好ましい形ではないと思うのです。だからわれわれとしては、自由化をやる場合においても、完全に国内の保護対策というものが確立して、しかる後に国際競争を行なうということであれば、一応の道筋は立つが、そういう明らかなる施策というものが考えられないうちに単に自由化を進めるということは、これは危険があるということでわれわれは主張しているわけですが、このジェトロの法律でやれるという場合には、第二十一条に業務の範囲というものは一号から八号まで掲げてありますが、一体このどの規定に基づいて差益金の吸収をやれるか、こういう点も明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/96
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097・山本重信
○山本説明員 ジェトロ法の第二十一条の業務の範囲の規定がございます。その第八号に「前号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するため必要な業務」という項がございます。そういたしまして、第一条の目的と申します規定はこのようになっております。第一条「日本貿易振興会は、わが国の貿易の振興に関する事業を総合的かつ効率的に実施することを目的とする。」きわめて広範な規定でございます。貿易の振興ということに関する事業ならば、法律的には相当広くできるようになっております。なお念を入れますために、この事業をいたすために振興会では特に通産大臣の認可を受けるという手続をとっております。その手続の根拠は同じく第二十一条の第二項に「振興会は、前項第八号に掲げる業務を行おうとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。」この規定によりまして、通産大臣の認可を受けてその業務を行なっている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/97
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098・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 ただいま芳賀さんの御意見を述べられました前段でございますが、その前段が実は大へん大事なことでございます。私ども貿易自由化の主務官庁でありますけれども、国内農業に影響があり、また一部は良質の豆を輸出しておるということもありますし、その意味において農林省と十分緊密な連携をとらなければいかぬと思います。農林省は関税を上げることで国内を保護したいという強い意見を持っておられます。これが先ほど申すように、ビルマ側はなかなか了承しないという状況でございますから、最後に折衝の結果あるいは数量協定ということになりますか、どういうことになりますか、もう少し農林省の立場に立って私どもがこれの扱い方をきめなければならぬ、かように思います。ジェトロの収入も大事でありますが、ジェトロの収入を上げるために大事な本末を転倒したような扱い方はしないつもりでございます。それは誤解のないように願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/98
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099・芳賀貢
○芳賀委員 それでは実力者と自他ともに許しておる佐藤通産大臣が、ジェトロ法に基づいて今後も差益金吸収をやれる、こういうことを断定されたわけですね。山本さんを通じて……。やれるならやれるとあなたからはっきり言っておいてもらわぬと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/99
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100・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 ジェトロの関係法規でやれる、こういうことは考えております。けれども、基本的には、ただいま申し上げるように、国内の農業に非常に影響のある問題でございますから、その方と十分話し合って、農林省は農林省の主張、同時に私どもはまたしろうとの立場において、国内産業保護という観点からも意見を述べるつもりでございますから、よく連携を緊密にして処理して参るつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/100
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101・芳賀貢
○芳賀委員 それでは、やれるということになれば、今後これは何も雑豆、外車だけに限ったわけではないですね。ジェトロの目的を達成するために必要がある、あるいは外貨割当のもとにおいては関税だけでは十分の運営ができないというような輸入物資等については、随時にジェトロの法律に基づいて、特定の物資については必要がある場合にはジェトロの業務で差益金の吸収を行なうことができる、そういうことになるわけですね。これはいかがですか。こういう点は大臣からなるたけ言ってもらわぬと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/101
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102・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 私がお答えするのが質問者にも当然のことでございますが、過去の経験等もあるそうでございますので、その実例なども事務当局からお答えさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/102
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103・山本重信
○山本説明員 特定物資の臨時措置法の精神を公平に適用しますためには、同じような条件の物資につきましては、できるだけ特定物資の法律に指定をするということが適当でございまして、またその点につきましては、国会の方でも附帯決議をいただいたわけであります。ただ中にはたまたま関税の関係でガットに譲許しておりますために、関税に類似の差益金制度を適用することがガットの規定に違反するのではないかという疑問がございまして、そうした国際的な問題を避けるために、便宜いわゆるジェトロ方式を特定物資の法律には指定しないで実際上行なうことをやって参ったわけであります。過去におきましては雑豆、一般用の外車のほかに、万年筆とかシャープ・ペンシル、安全かみそりの刃というようなごくこまごましたものでございますけれども、従来ほとんど輸入を認めておらなかったものに若干の輸入のワクを与えます場合に、一部の輸入業者が不当に利益を得ることは適当でない、こういう考えから、これらのものもまたほとんど全部関税率がガットの譲許品目になっておりますので、ジェトロで扱わしたことがございます。しかしこれらの品目はその後輸入のワクを相当に拡大いたしまして、あまり異常な差益金が出ないような状況になっておりますので、今後はこれらの物資については、いわゆるジェトロ方式を適用しないで、普通の割当方式をするという考えでおります。それからなおココア・パウダーにつきましても同じような例がございまして、前回一回雑豆と非常に似た方式をとったのでございますけれども、これもその後ココア・パウダーの輸入が相当にふえまして、差益金の額が一ころに比べると非常に小さくなっておりますので、これもこの方式からはずすことにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/103
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104・芳賀貢
○芳賀委員 大体事情はわかったが、そこで、現在は外車についてはこれを積み立てて見本市船の建造を今やっているわけですが、雑豆についてはジェトロが吸収した分を保管して、国庫に全部寄付という形で納付しているわけです。だからこれは取り扱い上不公平があると思うのです。通産省が扱っている外車関係等については、年間八億も吸収しながら国庫には全然納めていません。目的は見本市船ですから、ジェトロの目的にかなうとしても、雑豆は年間一億足らずですが、これは全面的に国庫に寄付する。やはりこれは事情については大臣も知っておられるわけです。たとえば国産の豆類等についても、非常に良質なものがヨーロッパ等の市場に進出していっても、国内価格よりも非常に安いわけです。いわゆる出血輸出ということになるわけです。そういう関係があるのに、また一方ビルマ等から品質はよくないが製あん等の材量にするには安くていいということで、そういうものが入ってくるわけです。ちょっと不合理な面があるが、しかし良質な日本の農産物が今後国際市場に進出するということは、やはり大いに奨励振興する必要があると思うのです。そういう一助に、このジェトロで吸収した差益金等はその目的を明らかにして活用するということは非常に好ましいことだと思うのです。何も大蔵省へ無条件で寄付しなければならぬことはないのですよ。だから、この納付金の運営について、この際通産大臣は大蔵大臣とも相談をして、もう少し生きた使い方にした方がいいじゃないかと思うのです。政府の自然増収が四千七巨億もある、取り過ぎをやっておりながら、一億ぐらいの零細な差益金でも全部水田さんの方に——これは国庫に納付するというのですから寄付するのですが、どうか受け取って下さいといって寄付するような形は改善の余地があると思うのですが、これはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/104
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105・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 この種の処置をきめたときのいきさつがあるだろうと思います。私、その当時の事情がどうであったか存じませんけれども、おそらくこの種の利益は本来国に帰属させるのが一番適当だ、こういうことで寄付し、そうして一面必要な支出は支出として出させる、こういうのが本筋だというその原則に立ったものだろう、かように私は想像します。けれども、当時あるいはもっと違う理由があったのかもわかりません。その辺事務当局から答弁いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/105
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106・山本重信
○山本説明員 ジェトロの方式を採用いたします場合に、その一番の動機は、輸入の秩序を保持するということにございまして、実は差益をジェトロが使うとか使わないとかいうところにはむしろ重点がなかったわけでございます。ただ、そうした事務を最も公正にガラスばりに行なうのにはジェトロが一番いいのではないかということで、ジェトロとしてはいわば若干迷惑な点もないではなかったのでありますけれども、広い意味の輸入も含めた貿易の振興という観点から、ジェトロに取り立てをしてもらうようなことになったわけであります。そうしますと、そこで上がりました差益は必要に応じて国庫に納めるし、ジェトロとしては必要な金は正式に予算として組んで財政支出を仰ぐ、こういうことが本筋でございまして、従来、そういう方式で雑豆、ココア・パウダー、万年筆等についてはその方式をとって参ったわけであります。御指摘の一般用外車の差益がジェトロから国庫にいかないで、直接巡航見本市協会の方に行っておる点でございますが、これは当時いろいろないきさつがございまして、こうなったのであります。巡航見本市協会の事業そのものは、これは絶対にやらなければいけない事業であるということについては、意見の一致を見たのでありますけれども、その財源をどうするかということでいろいろ予算編成の交渉の過程におきまして、外車の輸入差益が出たら、それではそれに充てよう、しかしそちらの方から上がってくる寄付をあらかじめ予定して、これを国の収入の方に上げるというのは適当でないというようなことから、本件だけはいわばきわめて例外的な扱いになった、これが従来のいきさつでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/106
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107・芳賀貢
○芳賀委員 申し合わせの時間が参りましたので、この問題については、今後通産、大蔵両大臣において特に雑豆の超過利益の吸収分の活用の問題については十分検討して、適当な機会に方針を明らかにしてもらいたいと思うわけです。ですから、きょうはこれは保留しておきます。
最後に簡単に一点お尋ねしておきたい点は、今回の関税定率並びに暫定措置法の改正に関係して石油関税の問題がありますが、これは通産大臣御承知の通り、石炭対策の一環として石油、重油を含めた関税引き上げを行なって、その関税の増収分を石炭対策の方に重点的に用うる、こういう方針は政府の方針であるし、われわれも支持しておる点ですが、今回の改正の内容を見ますと、単に暫定措置法の軽減税率だけを廃して基本税率に戻す、それだけの改正にしかすぎないわけです。われわれ長期的にエネルギー資源の輸入の関税を高率にしろとは言いませんが、一番大事な当面した石炭対策の一環として、その施策の財源をこの石油関税の増収面から求めるということであれば、この際緊急対策として、これは改正の面についてももう少し配慮が必要でなかったかと実は考えるわけです。これだけでいきますと、軽減税率だけが廃止になって、基本税率のキロリットルについて五百三十円、従価税にすると一〇%程度に、これは基本に戻るわけです。これでいくと三十七年度は五十億円程度の増収、平年度で七十億ということに実はなるわけです。こういう点は当然通産大臣としても、関税改正の場合もう少し積極的な主張を行なって、エネルギー対策に対しては全体の角度からあらゆる関連産業も協力して、この際関税面においても相当の税の負担をしても、危機に当面しておる石炭産業の危機打開のためにこの際協力する、そういう態勢はとれたと思うのです。この点について両大臣にお尋ねしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/107
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108・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 今あなたの御意見にありますように、エネルギー対策はやはり総合的に考えなければなりません。そこで石炭について五千五百万トン、千二百円下げということを要請した。この予定したときの国際原油の価格というものは、一応の想定がございます。ところが最近非常に安くなったというので関税をかけるということになった。そして現実に出たものを基本税率に返したという今回処置をするわけであります。それが今の国内石炭産業にどういう影響を持つか、総合エネルギー対策としてどういう結果になるか、実は十分検討したつもりでございます。私がしばしば他の委員会で申し上げておりますように、総合エネルギー対策として見たときに、石炭なら石炭を合理化するといいましても、安くする限度というものはもうきているというような感じが強くいたします。そうすると、石炭も下げることができないから、原油を高くしたら価格の面で均衡がとれる、こういう言い方をよくなさいますが、使用者の立場になってくると、これは必ずしも利口な方法じゃない、安いものは安いままで、また高いものは高くあるがままでこれを総合して使うところに妙味があるのじゃないか。問題はパーセンテージをどの程度にするかということであります。それは安い原油に全部切りかえる、こういうことになれば国内の石炭は手を上げるわけでございますから、そこで今の合理化する第一の目標の数量として五千五百万トンということを申し上げて、五千五百万トンの消費、いわゆる需要の長期的なものをはっきり政府としてはつかんでおく、そういう意味で五千五百万トンを出していただき、また千二百円下げもやっていただく、同時に安い重油はなるべくこれを上げないように適正な関税率に押えて、そして両方を混合して使うところにその妙味を発揮しようという政策をとっておるわけでございます。ただいままでのところは、大体においてそういう方向で、たとえば五千五百万トンの需要につきましても、さらに今後三百万トン増加というか、電力関係においても二千三百万トンに引き上げる、こういうような長期引取契約ができておりますから、今の重油を高く上げるばかりが実は能ではないと思うのでございます。ただ、石炭対策の予算的な財源として関税の引き上げを回せ、この御議論は一部私どもも採用し、また今回は予算編成にあたりましてこの関税率の引き上げの増収分を特に大蔵省の理解のもとに石炭対策の費用に充てたわけであります。だから関税率を高く上げればその対策の予算もふえるじゃないか、こういうことを御指摘されるのだろうと思いますが、やはりこれはものにはある程度の限度がございますが、ただいまのところでは今後増加分ばかりでなしに、実は石油関税の収入をあげて石炭対策の方向へ持っていく方法はないか、これを実は私どもも大蔵省にねだっておるような次第でございます。これは将来の問題として研究課題にさしていただきたいと思います。だから関税率は適正なところで上げないとまずい、こういう結論でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/108
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109・芳賀貢
○芳賀委員 時間が来たようですから、残余の御質問は保留して、あとでやります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/109
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110・小川平二
○小川委員長 横山利秋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/110
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111・横山利秋
○横山委員 通産大臣がおいでの間に一つお伺いをして、あとで大蔵大臣に関連していきますので、御意見をお伺いいたしたい。
この関税定率法の今回の第二回改正というものは、当面の問題としての処理であって、根本的な関税政策の方向を示唆しておるのではないことは言うまでもないことであります。私がこの際両大臣にお伺いをいたしたいのは、第一にEECの発展、アメリカの接近によって日本の産業に非常な影響がある。関税は逐次なくなっていく、為替の自由化が行なわれる、かきねが何もなくなるということによって、産業界にどういう影響をもたらすかということなんであります。それについて、佐藤さんは二月十五日の経団連の欧州共同市場特別委員会で、こういうことをおっしゃいました。政府はこのような産業構造の再編成につれて生ずる混乱に対し、長期的視野に立って強力な援護措置をとりたい。フランスが年間百五十億フランを産業転換に支出し、ケネディ大統領が一般教書で産業転換への助成補助を強調したのもこのためで、わが国も必要があれば産業転換のための特別資金措置を考える必要がある。これは新聞の抜粋ですから、あなたの真意がどこまで出ておるか知りませんけれども、少なくともこれを見た感じから申しますと、相当今後の産業界の再編成なり転換を予想されて、通産大臣としては強力な措置が今後必要であるとお考えになったと思うのであります。きょう私が聞きたい焦点となりますのは、将来関税というものがだんだんなくなっていく、制限された範囲内において関税が存置され、為替の制限も撤廃をされるという段階というものを通産大臣はどういうふうに展望されておるか。ここで談話を発表されたように、どのくらいの規模でそれをお考えであろうか。実はその直後、予算の分科会で大蔵大臣に御質問したのですが、通産大臣の談話も公式な場面であるかどうか疑問がありますのか、独自の見解を発表された手前もあったのでしょうか、大蔵大臣からは十分な御答弁が実はいただけなかったのであります。それで、この際両大臣おそろいのところで、まず佐藤通産大臣、このお話は非常に重要な示唆に富むお話であるけれども、どういうお考えで、どういう展望で、どういう計画で今後いられるのか、お伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/111
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112・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 もちろん大蔵大臣と連携をとったり、あるいは企画庁長官と話し合ったりした問題ではございません。従いまして、それぞれの大臣で意見は違っておるものがあるかもわかりません。ただ私が申し上げたいのは今のEECの問題でございます。EECが大へんな発展をしている、イギリスが接近し、加入する、あるいはアメリカもこれに接近する、これは私が御指摘するまでもなく、横山さんも御承知のように、EECはもちろん関税同盟からスタートしておるものでございます。関税同盟からスタートしたEECが、もう域内の問題ではなくて、域外に対しても、高度経済成長の結果、別な表現をすれば自由化を非常に広範に行なった結果は、もう関税同盟という立場から、それをさらに拡大していって、自分たちとすれば、関税保護というものはあまり必要がなくなる、こういう観点に立っての活動を展開しようとしておるわけであります。それで日本がEECの経済に接近していく、こういう場合に、日本経済の実態を見ると、今ようやく自由化に取りかかり、この秋になって九〇%自由化をする、しかもこの自由化は相当急テンポであるために、国内産業の立場から見ますと、いわゆる国際競争力の弱いものがある、こういう状況でございます。これを非常にかけ足で、そしてEEC諸国のような経済環境にまで持ち上げていく、そのためには幾つもの必要な施策があるわけだと思います。従いまして、あるいはガットでいわゆる国際関税率は設けてあっても、日本の国内産業の実態等からみると、そのまま適用することは、弱い国内産業としては手をあげる、参る、こういうこともあります。ただ、そういう意味ではいわゆる国内産業の保護という立場に立って関税をきめざるを得ない、あるいは保護という立場に立ってのウェーバーなり、その他の必要な措置をとらざるを得ない、こういうことでございます。この実態は、それらの持つ国の経済力の相違からくるのでありますが、EECに接近しようとする日本としては、今日のような関税のあり方はできるだけ短期間のうちに脱却して、そうして競争力に負けないように、そういう素地を作らなければならぬ、かように実は思うわけであります。そういうことを考えてくると、産業界の方々も、非常に進んだ長期の見通しとは申しませんが、五年なりの先を考えると、今の国内産業のあり方についての改善方法とか、あるいは増強方策というものを必ず主張されるようになるだろう、そういう意味の産業転換資金というか、これはどうしても必要になるのだ、これが私が指摘して、関係の方方の御協力を得たいという点でございます。ただいま直ちに幾らの資金を用意しろとか、かように申しておるわけではございませんが、そういうような方向で資金調達を考えていくというのが望ましいのじゃないか。EECに接近するといいながらも、おくれたままで接近することは本来の目的を達するゆえんではないだろう、これを指摘したつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/112
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113・横山利秋
○横山委員 もう一つだけ伺っておきたいのですが、そういたしますと、外向きに対する防御壁がなくなるから、風の吹き込んでくる中でからだを丈夫にする、丈夫にするためには政府も強力な援護措置をやるし、それに対する資金措置も考えなければならぬ、こんなお話のようでありますが、その体質改善という点について、どういう点をお考えなのか。たとえば、今までとって参りました、やれ延べ払いだとか、やれ自己資本の充実だとか、あるいはまた系列化だとか——金利の面はなかなかうまくいかないかもしれぬけれども、そういう今までの段階における問題を強化するのか。あるいはまた大臣が少しお述べになりましたような産業の転換、つまり国際分業の線に沿う産業の転換、つまり国際分業の線に沿う産業の転換なり、あるいは近ごろ世界ではやりの適正規模論に伴う企業の再編成、合同のような方向を考えておいでになるのか。あるいはまた、この間一つ案が出たのでありますが、私は政府の措置はまことになまぬるい、やる気がないのだ、こう悪口を言っておるのでありますが、国産品の愛用について強力な措置をするとか、何か今までの構想をそのまま強化するとかいう雰囲気では、今あなたのおっしゃったような構想とは合わない感じがするのでありますが、どんなことをお考えなのでありますか。お差しつかえない範囲で、新しいものの考えがあればお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/113
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114・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 どこまでも抽象的な議論でまことに恐縮でございますが、私は、このEECの発展あるいはアメリカのこれへの接近、あるいはこれを中心にしての世界経済の動向というものを考えますと、日本は日本の立場においての今までのおくれを取り返す、そういう意味の高度成長はどうしても必要だろうと実は考えるわけでございます。この意味で、新しいものができるとか、あるいは産業自体の規模等に新しい構想を生み出すとか、こういうようなことがもちろん国内産業として考えられると思います。将来の問題として、日本が東南アジアにおいての一つの指導的立場をとるというならば、やはり東南アジア諸地域に対してもそういう開発について協力方法というものがおのずからあってしかるべきだろうと思うのであります。これが一体、何かということは、なかなかむずかしいことだと思いますが、財界人として、おそらく新しい体制、いわゆる国際経済の変動期に対応する体制を作りたい、そういう場合においてやはり産業資金というものが必要だ、まあ資金にワクをつけなくともよろしいことでありますが、こういうことを特に銘打つことが資金の利用としても非常に楽なことじゃないか、かように私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/114
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115・横山利秋
○横山委員 最後にもう一つ通産大臣に伺います。ここ数日来、政府部内で景気調整策が非常に議論されておるわけであります。いろいろお伺いしたいことがあるのですけれども、あとで大蔵大臣にお伺いするために特に通産省関係としてお伺いしたいのは、景気調整策をやらなければ、引き締めを強化しなければならぬというのは通産省としても同感なのか、もしそうであるとするならば、鉱工業生産の問題で経済見通しを下げるべきだという説が経済企画庁の中にあるのでありますが、それにあなたは御同感であるのか、また設備投資を抑制するという行政措置だけでこの景気調整策ができるとお考えなのか。端的な聞き方をして恐縮でありますが、一つ簡明にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/115
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116・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 なかなか簡明に答えにくい問題でございます。ことに横山さん事情よく御承知でございますから、簡明に申し上げて、あるいはその言葉じりなどを理解できないといって御指摘を受けると困りますので、大へん申しわけないことでありますが、そういうことを前置きにいたしまして申し上げますが、とにかく昨年の景気について、その動向なり、ことに国際収支のアンバランスという点から国際収支のバランスをとりたい、それが経済成長からも一番望ましい姿だ、こういうことでどういう処置がいいだろう、それは今までの景気の動きを見たときに、設備投資が非常に過大になっている、あるいは自由化ということで一そうそれに拍車をかけた、あるいは各企業が自分のシェアを取りたいというような意味で過当あるいは二重投資という形になっているのじゃないか、こういうような点にメスを入れるということで、まず設備投資の抑制をはかったわけでございます。これはもう二回ほどにわたって計画変更等を要求してきた。ところがなかなか行政指導だけではいかない。そこでいわゆる金融の面から強力な引き締め措置をとって参りまして、ある程度効果が上がった、かように考えます。その効果が上がったと考えれば、どうしても鉱工業生産も横ばいまたは下降し、あるいは物価等も強含みが弱含みに変わる、あるいは国内消費の動向等についても変化が出るだろう、かように実は期待して、この引き締めの効果は、十一月あるいは十二月までが大体ピークだろうという見方を実はしてきた。ところが一月の鉱工業生産は意外に三・八%増、二月も消費電力等から見ると、あまり生産の面に減退は見られないということで、まあ一月だけならばともかく、二月までもそういう状態が続くと、これはややわれわれの引き締めの効果を期待したことと違っているのじゃないか。その違いがどういう点に出てきたか、こうして見ますと、製品在庫がふえてきておる、ここにその一つの違いの点があるわけであります。また私どもが期待いたしました素原料の在庫数量も検討しておりますが、私どもは、相当鉱工業生産が高い水準で推移すれば、ある程度食いつぶしをされて、輸入素原料が減るのじゃないかと実は思っていたのが、これもどういうわけかあまり減るような数字が出てきてない。これは事実が把握しにくいと申しますか、在庫数量はなかなか把握しにくい、そういうところからきているのだと思いますが、そういうことでやや私どもの見込みとは時期的にずれがあるように思う。これがこのまま推移して、そうしてさしたる変動なしに進めば大へんけっこうでございますが、こういう形で進めば、おそらく国際収支はアンバランスになる、今までのような状況のもとに年度を終わることはなかなか困難だ、まあ心配すれば際限のないことではございますが、そういうような見方も一部立つわけでございます。そこで、やはりわれわれが想定したように、ピークというところを早く一つここに実現して、そうしてそれから予想するような生産の線あるいは消費の線、物価の線に持っていくことはできぬだろうか、これが各界に対して私どもがただいま注意を喚起しておるゆえんのものでございます。
今日、それでは製品在庫がどうなっているのかと申しますと、〇・五六でしたか五七でしたか、〇・五七月分くらいのものが製品在庫としてあるということが言われておるのでございます。ところがこの数字は、これも製品在庫の品物にもよるわけでございまして、私が申すまでもないことでございますが、夏向きのものがある程度製品在庫として蓄積されたからといって心配はないのでありますが、しかしおそらく、最近の金融引き締めとあわせて考えてみると、製品在庫になるものはなかなか金融がつかないのではないか。金融がつかなくなると、これは数量が多くなってくると、非常な危険の様相がそこへ実現しはしないか、ここが一つの心配でございます。あるいはまた、品物によってはある程度価格が下落して安定した状態なら、これはけっこうな姿と言えるものもあるわけでございますが、ただ安定せず下落の方向をたどるといたしますると、その産業は非常な危険な状態で、繊維関係などにそういう一部の心配があるわけでございます。そうすると、この繊維関係などはすでに昨年来操短をしておりますが、今後もやはりその操短を続けていかざるを得ないということになる。この操短を続けるというような事態が各産業の面に幾つも出てくれば、なるほど鉱工業生産は下がってはいきますけれども、その操短の悪影響というものもやはり対策として私どもがつかんでおかなければならない。だから景気も、当初予定したような状況で横ばいの期間あるいは下がる速度なり下がり方というものを一応想定しておけば、大体予定したように期間がわずかで、それを経過した後に上向きになる、そういうことになろうと思うわけでございます。どうもそういう意味でやや心配すれば心配すべきような現象が出ておる、それをただいま各方面に対して注意しているというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/116
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117・横山利秋
○横山委員 時間がありませんそうですから、次に大蔵大臣にお伺いしたいのは、今の質問に続くわけでありますけれども、通産大臣はそういう心配がもるということで、どういう手段でそれをやるかについてはあまり言及をされませんでした。端的にあなたにお伺いをいたしますが、単に設備投資の抑制措置だけで一体景気調整策が行ない得るかという点であります。もっと具体的に言えば、預金金利を引き上げて、長期金利を引き上げて、そうして財政支出を思い切って繰り延べるというような措置か何か具体的な方法がなくては、せっかく今まで押えたやつがまた頭を持ち上げてくる。もう一ぺんちょっとというようなことではうまくいかないのではないかと思うのですが、この点は大蔵大臣はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/117
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118・水田三喜男
○水田国務大臣 今、通産大臣も触れましたが、私は三月から四月以降へかけて生産は落ちると思っています。それで、在庫調整の段階にこれから入っていく時期が少しずれたが、これから本格的に入っていくというふうに見ております。生産が落ちないで製品在庫がふえているという現象ですが、これはいろいろ理由はあると思いますが、やはり金融引き締め政策の影響も一つはあろうと思います。材料を寝せておくよりも、操短とかあるいは生産を少し手かげんするというよりも、この際やはり作るだけ作って、これを金融対策の一環にしようという傾向も業界に非常に多分に見られておるときでございますので、従って、今のような現象が出ておるのじゃないか、それが一つの原因じゃないかと想像しておりますが、もしそうだとしましたら、これは長続きするものではございませんで、二月まではああいう形でしたが、三月の、今月の統計が出ておりませんが、今月から四月へかけて、これは当然調整期に入っていく段階だと見られますので、私は生産は落ちていくだろうと思います。
それから原材料の食いつぶしというようなものも、一−三月の間に政府の見方は一億ドルぐらいの食いつぶしがあるだろう、こういう見方でございましたが、これはそんなに実際には食いつぶしはなかったのじゃないかと今思われる情勢でございますので、これも、この食つぶしというものは少し先に余力が延びているというふうにも考えられますし、設備投資につきましては、機械受注の現状から見ますと、昨年の同期に比べて、もう三割以上大きく落ちておりますので、これは当然先行き——指標がそういうふうに出ております以上は、先に行って見通しの落ちてくることは、方向としてはもう十分想像されます。一方輸出入の問題を見ますと、輸出もずっと信用状ベースでは順調に行く方向をとっておりますし、ことにそのうちでも対米輸出が非常にふえてきているという方向から見ましても、最初の予想程度の輸出確保というものはできるのじゃないか。輸出についてはいろいろな奨励策、振興策を今とっておりますので、これと合わせて、ある程度いくのじゃないかということをあわせて見ますと、従来の引き締め方針をここでゆるめないで、この程度でずっと押えて、たずなをゆるめないでいったら私どもが見通しておったような方向へ行くであろう。この三、四カ月の動向を見てからいろいろ手を打ってもおそくはないのじゃないかと私どもは思っています。
それともう一つは、去年設備投資の吟味そのほかは実際は六月から政府が始めたわけですが、これは少し手おくれの感がございまして、ことしは二カ月ぐらい繰り上げて、もう四月に入ったら早々今年度の設備投資についてのいろいろな計画の検討をしようというふうに今各省間で相談しておりますので、実はこの作業も四月へ入ってから私どもはやろうと考えております。その時期になると、経済動向というものももう少し今よりはっきりしてくると思いますので、今の見通しを変更したり、施策を特にどうこうするということは、三月から四月へかけた動向を見てからきめてもおそくない、今程度のことをずっと継続しておれば大体それでいいのじゃないか、政府の予想をした方向へ必ず、少し時期はずれてもくるのではないか、かように私は考えておりますので、この点は、今ここでいろいろな対策のやり直しとか、新しい強力な措置というようなことをまだ考えなくてもいいのじゃないか、私自身は今そういう気持でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/118
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119・横山利秋
○横山委員 通産大臣は結論は下しておりませんでしたけれども、通産大臣の情勢の認識と、それからあなたの情勢の認識とはやはり違うようでありますね。きょうの新聞で藤山長官が景気調整策について提案を考慮しておりますのは、もう少しあなたより——もう少しどころではなくて、相当シビアな考え方を持っておられるわけであります。これはもちろん通産大臣が語ったわけではありませんからいかがかとは思いますけれども、きょうの日本経済新聞によれば、「経済企画庁は最近の生産の高水準、製品在庫の増勢などの面から景気調整の進行が遅れていることを重視しており、「藤山長官は企業の強気観が問題だと指摘しているが、政府部内にもこれを押えるため三十七年度予算、財政投融資計画の支出の繕り延べ、金融引き締めおよび投資抑制措置の徹底化のほか場合によっては公定歩合の再引き上げも必要になってくるとの意見もでている。特に藤山長官は年初来、内需抑制のため預金金利の引き上げを主張している」。これはもちろん藤山長官が公式の場面で言ったのではなく、時に触れ、おりに触れて言った話が集約されて本日の新聞に載っているのでありますから、一言片句をとらえるわけにいきませんけれども、全体を通じて見る見方としては、大蔵大臣としてのあなたと経済企画庁長官の御意見とは相当懸隔があると私は思うのです。今私がどちらがよいかと言うよりも、あなたの、何といいますか、現状における政策を持続しておけば自然に三月から四月にかけて何とかなってくるという、その楽観説の根拠を、もう少し承りたいのであります。私は実はそう思っていないのでありますが、それはさておくといたしましても、あまりにも両大臣とあなたの見解に違いがあるようです。それじゃあなたの現状を持続するということは、特に新たなる政策をこの際行なわない、設備投資の抑制にしたところで効果が出ているからいいのだ、あるいは生産と在庫の関係についても心配をすることはないというような意味か。どういう根拠から言われているのか、それをもう一ぺんあなたにお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/119
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120・水田三喜男
○水田国務大臣 私は、打つ手はけっこう打っておる、一応打つ手は筋に乗っておると思っております。私どもが、下半期へいって国際収支を回復させる、収支の均衡を回復させるという目的で当初描いた経済の動きの見通しというものと、今の動きとの食い違いでございますが、私は、そう本質的な食い違いはないというふうに見ております。一時国際収支の均衡が早くくるのじゃないかという見方まで出ました。私どももあるいはそうじゃないかという考えを持ちましたが、これが早く来過ぎるというようなことは、また三十七年度の下半期との続き工合から考えますと、下半期の均衡というものとのつながりを見ますと、その方がどうも好ましい姿ではないように私は思いまして、経済はやはり大きい変化がなくてなだらかに基礎がためをしながら変わっていくことの方が、国民生活に影響を与えないことでございますから望ましい。そういう点から見ましても、方向がその方向へ行っておるという限りは、時期が若干ずれていくというようなことは、考えようによってはこれは大きい変化がなくて一つの方向へ進んでいくということとも思われますので、目的の国際収支の均衡というものは、これはできそうもないという傾向が出てさましたら、これについては、これは本質的な問題でございますから、私どもはさらに次の政府の措置というものを考えなければなりませんが、この暮れから考えておりまして見通しの方向は若干おくれても、今その方向を歩んでいるということはいろいろな経済指標からはっきりしておりますので、ここで特に特別な考えはなくて、三、四月の推移を見送って、そうしてこの実情をよく見ながらわれわれは対策を考えていくという態度でいいんじゃないかというのが私の考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/120
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121・横山利秋
○横山委員 それでは端的に申しまして、預金金利の引き上げ、長期金利の問題、それから公定歩合の操作ということはしないお考えと拝承してよろし
いですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/121
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122・水田三喜男
○水田国務大臣 ですからまだこの三、四カ月の推移を見てもいいことにして、今私どもの一応考えておった方向をたどっておるのでございますから、別にそういうことをここでやらなければならぬという必要に迫られている段階ではないと私は思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/122
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123・横山利秋
○横山委員 私は特に藤山さんとあなたの見解、情勢認識の見解について、ずいぶん違いがあるような気がいたすのでありますが、それらの点について、経済閣僚で意見の調整をなさるというお考えはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/123
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124・水田三喜男
○水田国務大臣 そういう問題が問題になれば、政府部内でも当然検討すべきだろうと思いますが、まだ政府部内で正式にそういう問題は現在問題になっておりません。預金金利の問題ですが、これは私の私見かもしれませんが、日本経済をもう少し長期的に見なければならぬ、関税政策の問題にしましても、私どもは今一つの矛盾にぶつかっておりまして、自用化は急がなければならぬ、急ぐためには一時国内産業の保護的な措置はここでとらざるを得ない。この措置をとらなければ、日本がここで急速な自由化ができないという事情にございます。と同時に、この自由化を終えた後に日本経済が迫られている問題は、もう一歩の関税引き下げ、こういう形で世界経済に溶け込むということを考えなければ日本産業は立たないという、もう先が見えておるときに、どうして日本の産業の体質を変えて、そうして国際競争力を増すかという長期的な考えを持ってみますと、そのときに必ず問題になるのは、日本の金利水準の世界的な高さということが問題になろうと思います。私どもはその先を見通して、その時期がよかったか悪かったかは別としましても、いつかは日本の金利水準を下げるという仕事をやっておかなければならぬ。日本の金利水準といいましても、問題は資本蓄積の少ない日本は昔から預金金利を高くする。預金金利でつって、国民の貯蓄を促してきたというのが、日本としては資本蓄積のやむを得ない方法だったろうと思います。このことが日本の金利水準を高くしている一番大きい原因でございます。ですから国民は金利につられないで、資本蓄積というものがどういう意味を持つかという別の観点から国民に貯蓄をしてもらうという奨励方法を、ほかの観点からとって、金利でつるという仕事をここで安易にこの時期にやってしまったら、将来日本が低関税政策をもって本格的な対外競争をしなければならぬという時期に、これは大きい障害になるので、国民は金利が高いから貯金するのだというようなことではいけないので、一時は預金金利を下げたことによって郵便貯金にしましても、預金の停滞があったかもしれませんが、落ちついてきますと、もう暮れごろから金利とは無関係に国民の貯蓄は現に始まっておる。せっかくここまで持ってきたときでございますから、私は一時的な貸し出しの金利の調整ということは経済調整策に関して当然とらるべき問題でございますが、せっかくここまできて、国民も約一年の訓練で、そういう方向へ向かってきて、貯蓄も金利にこだわらすにふえてきたというときに、ここで安易な考えを持って一時的な経済調整のために預金金利をここで日本が上げるべき時期であるかどうかということについては、私は長期的な観点から真剣に考えるべき問題だと思っておりますので、この点は十分検討はしておりますが、そう簡単な問題では私はないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/124
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125・横山利秋
○横山委員 きわめて強気な御意見を拝聴いたしましたが、私もその長期的な金利政策についてあなたと見解を異にするものではないのであります。むしろあなたの方から、金利政策については、長期的なことと短期的なことを区別して社会党としても考えてもらいたいというようなお話をいつも承っておったものですから、今お伺いしたのは、長期的な見解だと私は思うのでありますが、短期的に見て今の景気調整その他から言いましても、預金金利を引き上げるとか何とかというような具体的な措置が必要ではないか、こういう点で私は申し上げておるのでありまして、ずっと例証をしました問題点も、今の景気調整策について、長期的な展望があるがゆえに、短期的な景気調整策をとる必要がないというふうにあなたが口をきわめておっしゃるのは、いささか私はいかがなものかと思うのであります。あなたもおっしゃるように、昨年の暮れから本年にかけての見通しは、実はその後の経過から見ると間違っておった。見通しを誤ったのだ。誤ったからもう一ぺん景気調整策というものが必要ではないかというふうに、オーソドックスに今考えられておるのだけれども、それを大蔵大臣としては、長期的な展望をたてにとってやる必要はない、このままにしばらくやらしてもらいたいというふうにおっしゃることについては、いささか私は、あなたのお仕事上やむを得ないかもしれませんけれども、一抹の危惧なしとしないと思っているのです。今政府部内で、そういう相談がないから私は相談をいたしませんとおっしゃっておられるけれども、経済企画庁長官も通産大臣も、片一方は強く、片一方はそれを暗に示唆しておるのであります。私どもは、この衆議院で予算が通過いたしましたときに、私どものものの考え方を今回ははっきりさしたのでありますが、単に予算の数字を右から左、左から右といじくっただけではいかぬ。経済政策を少し考え直してもらわなければいかぬと言うたのでありますが、その点については、このような事態になってますます私どもは自信を深めておるわけであります。それは別として、重ねて申しますけれども、短期的なことをやる必要はない、この際経済企画庁長官が、あるいは通産大臣が、どんなことを言っておろうとしばらく様子を見てくれ、こういうことで大蔵大臣としては押し通しなさるおつもりでありますか、くどいようでありますが、あらためてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/125
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126・水田三喜男
○水田国務大臣 必要はないというようなふうに言ったのではございませんで、そういう事情でありますから、預金金利の引き上げというようなものは、もっと慎重に検討すべき問題だと考えておるわけでございまして、私は、今の段階ではその通りに信じております。経済というものは、中小企業も大企業も実際においてつながっている問題でございます。私どもは、今の金融政策をとり、金利による経済調整政策というものもとっておりますが、日本の中小企業の置かれている地位、そういうようなものを考慮しまして、この金利をもって経済を調整するという政策は、現在のところ中小企業には及ばしておりません。大企業への一般銀行からの貸付は、貸付金利を上げておりますが、中小企業については、金利は上げないという方針で二回もこの方針をとっておりますので、そこらについては、これは政策として見ましたら、いろいろむずかしいアンバランスの問題が出ておると私は実際には考えていますが、これはやはりやむを得ない政策であって、こういう形で引き締め政策をやらざるを得ない、またそれをやることによって、現にいろいろな効果が出ておりますが、この不均衡をまたそのままの形でもう一方の金融引き締めをやるかどうかについても、技術的にはいろいろむずかしい問題がございますし、今程度の、弊害ないところの、中小企業に対する大きい影響ない形の引き締めで、しかもこの引き締めを堅持していくということは、しょせん設備投資を急速に押えようという目的から出ているわけでございますから、その目的に合った金融引き締め政策としては、今程度のものがやはり妥当ではないかというふうに考えておりますので、一、二カ月の見通しの若干の指数のズレがあったからといって、これを急に変更するということもなかなか考えものだろうという気持でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/126
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127・横山利秋
○横山委員 時間があまりないそうでありますから、私は大蔵大臣に一つこの点については要望しておきたいと思うのであります。
私ども大蔵委員としてそれぞれ見解を持っておるのでありますけれども、しかし、超党派的に、今日金融画引き締めの声が出てきたことについては、非常な関心を持っておるのであります。関心を持っておる私どもにとりまして、主管大臣であります大蔵大臣と他の経済大臣との意見が相当違うということについては、これは非常に遺憾の意を表示せざるを得ないのであります。できるならば、すみやかに経済関係閣僚会議を開いていただいて、そうして統一した見解をもって臨まれるように願いたいと思うのであります。もちろん私どもとしては、大蔵大臣の言明を一応オーソドックスなものとして金融政策を議論するわけでありますが、閣僚の中において経済を論ずる人々が、それぞれ違った見解を持って、ある者は強く、ある者は現状通り、ある者は結論を下さないというようなことで、国会でそれぞれ御答弁をなさるということがありましたのでは、私どもとしても、単に大蔵委員会自体の問題だけではなくて発展せざるを得ないのであります。時間がありませんが、ぜひこれはすみやかな意見調整をはかっていただきたいと私は要望したいのであります。
それから大臣がおられるときに、ちょっとほんの二、三分でありますが、ほかの問題に触れることをお許し願いたいと思いますが、きょうだしか衆議院の本会議を、商法の一部改正が通過をするはずであります。私非常にうろんな話でありますが、その内容の中で、税法に重要な関係がありますことを、きょう初めて知りまして、大臣は一体御存じであるかどうか、大臣が御存じでなければ、きょうでなくてけっこうでありますから、部下に一ぺんただしておいていただきたい。それは商法の一部改正でこういう項目があるのです。二百八十五条ノ三の規定で、固定資産の評価については現行法の解釈に疑義があるから、この法律案で体系の理論を実際に合わして、「固定資産ニ付テハ其ノ取得価額又ハ製作価額ヲ附シ」ここまではいいのですが、「毎決算期ニ相当ノ償却ヲ為スコトヲ要ス」、つまり会社が毎期、決算期に相当の減価償却をしなければならないことに規定したことなんであります。相当の減価償却と法律に書いてあるのでありますが、相当というのは一体どういうことなのかはっきりいたしません。私がお伺いいたしたいのは、税法に償却の制度、耐用年数の制度がございますが、これは税法だけに適用がされておって、会社がそれによって減価償却をしなければならないという制限規定はないのでありますが、しかし今回この商法の改正によって、必ず決算期には減価償却をしろ、ただしその価額は相当だということから、株主総会においてそれこそ相当の紛糾が起こることが明らかに予想されるのであります。こういうような税法——私はいつも言っているのでありますが、税法優先主義、税法だけはきちんきちんと書いている、それが商法や民法と何らの関係がない。一体こういう相当の減価償却をしなければならないと固く商法に規定したことについて、大蔵省はどういう交渉をしたのか、大蔵省は知らぬ顔をしておったのか、交渉して、なおかつ商法に相当の減価償却を必ずしろといったことを大蔵省として認めたのか。私どもがよく言うように、税法ばかりが先行して、商法、民法がちっとも税法とマッチしていないとかねて言っておったにかかわらず、こういうようなことを一体きめるというのはいかがなものか、きめるにしても相当の減価償却をしろとは何事であるか。明らかに株主総会で、今後利権屋や何かが減価償却をなぜしないのだ、しました、相当していないではないかという紛糾した事態になる、またその多寡、その他について裁判ざたにもなると思うのでありますが、これは今後の非常に大きな問題だと思うのでありますが、大臣は御存じなのかどうか。もし御存じなければ、大臣から関係のところ、それから関係の各省についてだめ押しを一ぺんしていただきたい、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/127
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128・水田三喜男
○水田国務大臣 正確を期しますために、この問題はあとからお答えすることにしまして、大蔵省は十分知っておりまして、次官会議のあとで、この商法のこういう問題についても、一応大蔵省としては検討の結果、問題ないということで賛成したいきさつがございますので、あとから詳しくいきさつを御報告いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/128
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129・横山利秋
○横山委員 大臣が御存じなくて、しかも問題がないというのは、もちろん正確を期するためあとからでけっこうでございますが、気にかかるのであります。何かお差しつかえがあるのですか。問題がないというのは、どういう雰囲気であったかお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/129
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130・水田三喜男
○水田国務大臣 法案が出るときは、出す法案については各省別に一応全部検討して閣議に出すわけですから、全部知っておりました。そのときこの問題に関する大蔵省側の意見をいろいろ説明されましたが、そのときに、結論として一応問題ないから、これは省としては賛成する、そこだけ覚えていまして、その前の具体的な説明は私は詳しく記憶しておりませんから、あとから御説明いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/130
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131・横山利秋
○横山委員 わかりました。気にかかりますから、あとで一つお願いいたします。
次にまん中にはさんで恐縮でございますが、エカフェの総会が日本で開かれまして、結論的に言えば、先般予算委員会で大臣がおっしゃったような雰囲気のようでありますが、しかし、日本としてこれからの後進国の援助について、冒頭私が申しましたように、とにかく逐次関税がなくなって為替制限がなくなっていく。今後の貿易政策については相当白紙の態度で根本的に再検討しなければならぬと思うのでありますが、その中で、特に後進国の援助について、私は政府の態度がまだまだきわめて不明瞭だと思う。今まで岸内閣以来、大東亜共栄圏の二の舞のようなものの言い方、日本の技術、アメリカの金、現地の材料及び労働力というような考え方は、幾たびも幾たびも失敗したわけでありますが、これからの東南アジアの問題についてどうしたって金の問題が先行すると思うのでございます。対等の経済的な貿易関係というものは東南アジアでは行なわれ得ない。長期にわたってやらなければならないのでありますが、エカフェを通じて見て、大蔵大臣として今後の東南アジアにおける経済協力のあり方についてお考えがあったらばお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/131
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132・水田三喜男
○水田国務大臣 今度のエカフェ総会においては、御承知のように、第一次産品の価格の安定とか、あるいは域内経済協力のような問題についていろいろ意見が出たことを聞いております。私どももこれは今後の問題として、慎重にこの問題は検討したいと思っておりますが、御承知のように、今日本は東南アジアに対しては相当の経済協力をやっております。賠償は、これは経済協力とは違いますが、賠償を通じてその国の経済に日本が寄与しておることも非常に大きゅうございまして、各国との関係もこれによって非常によくなっておるという事実もございますし、また賠償に伴った経済協力も、ビルマが割合に進んでおりませんが、そのほかの国とは賠償に伴う経済協力は進んでおりますし、無償の技術協力、経済協力も順調にいっておりますし、それから延べ払いワクの設定とか、あるいは直接借款、政府間の協定による借款といろいろの形を通じてアジア地域に対する協力は金額も相当になっており、効果も相当おさめておりますが、まだまだ約束して未済の額が非常に多いというときでございますので、結局はこの経済協力の効果と国の財政力という問題を考えることが一つと、そして今度は受け入れの各国の事情を考えて、各国が喜んで受け入れられるようなものへの協力をしなければなりませんし、技術協力というようなことを各国とも望んでおりますし、日本としても一番やりいい形でございますので、技術協力という点はもっとこれを伸ばさなければならぬと思いますし、それに伴って資金の伴う協力も、まだ未済額が非常に多いときでございますから、約束したものの責任を果たしていくということにもう一段これは速度を早めてやらなければならぬ問題だと思っています。そういう問題、一連の問題を考えまして、これから具体的ないろいろなことを考えなければならぬと思っております。私どもも東南アジアへの日本の協力がまだ十分でないというような批評を聞きますが、実際面で今まで約束ができてこれから日本でやるといったものを全部集計してみましても、日本の財政力から見たら相当大きいものにもなっておりますので、これを完全にやるためには日本の蓄積資本だけでやるということの無理も出てきますので、やはり必要な外資の導入という政策とからんで、それと国内の力を合わせた中から東南アジアへの援助余力をどんどん出していくというような構想で対処しなければならぬというような根本問題もまだ控えているわけでございますから、これは今後じっくりと私どもはやりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/132
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133・横山利秋
○横山委員 本会議の時間だそうでございますから、これで私の質問を一応終わっておきます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/133
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134・小川平二
○小川委員長 連合審査会開会の件についてお諮りいたします。
ただいま本委員会において審査中の関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案について、農林水産委員会から連合審査会開会の申し入れがあります。これを受諾し、連合審査会を開会するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/134
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135・小川平二
○小川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
なお、連合審査会は本日午後三時より開会することにいたしますから御了承下さい。
この際、暫時休憩いたします。
午後一時五十六分休憩
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午後二時四十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/135
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136・鴨田宗一
○鴨田委員長代理 休憩前に引き続き大蔵委員会を再開いたします。
委員長の指名によりまして、私が委員長の職務を行ないたい芝思います。
関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案、及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
質疑の通告があります。これを許します。藤原豊次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/136
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137・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 私は、関税定率法の第二十一条の一項の三号についてお伺いいたします。この問題は三十四年のときにも参議院の大蔵委員会で問題になっておりますし、三十五年には私どもの堀委員が質問しております。三十六年には同じく私どもの方の安井委員が質問しておりますので、答える方はベテランでしょうから、簡単にお答えができると思います。ただ問題は、二十一条の第一項の三号が憲法違反かどうかという、合憲か違憲かということで重大な問題でございますので、重ねてお聞きしたいと思います。
その前に、私実は関税のことは伺ったこともございませんので、一応関税のことについてちょっと聞きたいと思います。
関税定率法の二十一条の一項は一号、二号、三号、四号に分かれていますが、その分かれているところの検査をする職員は一体どれくらいおられるか、その職員の数をお聞きしたい。一号の職員、二号の職員、三号の職員と、職員別に分けて聞きたい。それから同時に、たとえば第一号に関する検査の職員が、第一号が非常に忙しいときには二号、三号を検査しているような人たちもそれに協力してやるという人事の交流があるかどうか、それから三号に入りますと、三号にはいろいろな項目がございますが、その三号の職員は別々になっているのか、それをちょっとお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/137
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138・稻益繁
○稻益政府委員 お尋ねの二十一条第一項は一号から四号までございますが、税関当局としまして審査をいたします際には、この一号、二号、三号、四号というものをそれぞれ区別して職員に専断させておるということはございません。総じて密輸取り締まりと申しますか、一般的な関税法の六十七条による輸入貨物の検査ということに従事いたしております職員の中で、特に二十一条関係で問題が起こりますのが一項第三号の「公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品」この該当のものが比較的多いわけでございます。第二号の貨幣、偽造貨幣、そういったもの、それから第四号の特許権の問題、これはほとんどめったに起こらない問題であります。それから第一号のあへんその他のいわゆる麻薬類でありますが、これは間々起こっております。これは一般的な密輸の取り締まりの職員が従事いたしております。ただ第三号につきましては、事案の性質からいきましてかなり慎重な検査を必要とするということで、現在のところたとえば東京税関が主でありますので東京税関で申し上げますと、東京の場合は図書調査課であります。それから横浜の場合には図書調査室ということで、人員を申し上げますと、東京の場合には約十名の職員がこれに主として従事いたしております。横浜の場合は約二名の職員が従事しておる。大体入って参りますのが、航空機によるものが多いといった関係で、東京が大体中心になっておるようなわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/138
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139・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 そうしますと、特殊な人は別として、十名の人は全部第三号の方に、検査あるいは検閲のために携わるという結論が出てきますが、そこで重ねてお伺いしておきます。そうしますと、その第三号の中にはずいぶん問題が分かれて、書籍、図画、彫刻物あるいはその他の物品となっていますが、この十名の人はどういうふろに分かれているのですか。図書に何名とか、あるいは彫刻検査に何卒とか、その他のものに何名とか、そういう分け方になっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/139
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140・稻益繁
○稻益政府委員 別に、この三号を担当いたします職員の中では、図書とかそれ以外のものとかということでの分担はきめておりません。その職員が随時そういったものについての検査に当たっている、こういうことになっております。
〔鴨田委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/140
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141・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 そうしますと、十名の人が全部当たっているということになりますが、そこでもう一つ伺っておきたいのは、一体一年間に書籍はどれくらい入って参りますか。書籍の数量と、そうして大体書籍が何ページくらいのものだということがわかりますから、ページ数にすればどれくらいのものになるか。書籍が何冊で、それがページ全体にすると何万ページになるか、そういうことを、概算でようございますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/141
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142・稻益繁
○稻益政府委員 輸入されます一般の書籍の数量は、ちょっとここで算定が——私の方の資料がございませんが、私どもの方で、検査の結果、いわゆる二十一条該当であるということでやりましたものの実績を見ますと、昭和三十六年でありますが、東京税関で、雑誌類では、件数で四十四件、冊数で百七十冊、横浜の場合は件数で三十二件、冊数で百七十八冊ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/142
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143・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 これは雑誌類だけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/143
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144・稻益繁
○稻益政府委員 雑誌類でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/144
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145・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 ほかの、いわゆる書籍というものは入っていませんか。今日本に入ってくるのは雑誌だけで、書籍は一切入りませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/145
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146・稻益繁
○稻益政府委員 雑誌といわゆる書籍とはちょっとあれでございますが、大体ほとんどが雑誌でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/146
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147・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 そうすると、これはいずれ外国から入ってくるのですから、日本語じゃないので、書籍をこの十名の人たちで全部読めますか。つまり自由に外国語をそれぞれ駆使できますか。世界各国から雑誌が入ってくるでしょうが、十名の人たちが、その語学全部に通じているかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/147
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148・稻益繁
○稻益政府委員 各国語のものが参りますが、大体語学ごとに、英語、ドイツ語、フランス語といったことで分担はいたしております。ただ該当しますものは、いわゆる雑誌類の中の記述されておる記事というよりも写真がほとんどなんです。問題になりますのはその写真でございますので、それほど語学の力は必要としない。ただ、一応語学による分担はきめております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/148
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149・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 そこでもう一つお伺いしておきたいのは、この雑誌は全部お読みになるのか、中の絵だけを見られるのが中心なのか、それとも全部読まないで、ある特定のものだけを抽出して読まれるのか、あとのことに関係しますので、それをちょっと聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/149
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150・稻益繁
○稻益政府委員 輸入されます雑誌を全部読むというわけには、人手の関係と申しますか能力からもできませんので、従来の経験に徴しまして、一応二十一条該当の疑いがあると思われるものにつきましては、できるだけ詳細に内容を検討するということでやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/150
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151・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 もう一つ、今度は、その他のものというのがございますね、このその他の物品というのを解説してもらいたい。その他には何が入っておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/151
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152・稻益繁
○稻益政府委員 この三号の中のその他は、ほとんどフィルム関係であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/152
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153・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 そうすると映画はその他のものであって、映画なんというのは、その他について聞かないと出てこないわけですね。それでもいいんですけれども、その他の中の映画は、一年に何木ぐらい入りまして、それは全部見ておられますか、それとも、図書と同じように、抽出的に見られますか、その点を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/153
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154・稻益繁
○稻益政府委員 映画の関係は、一応全部検査をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/154
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155・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 一年にどれくらい入りますか、三十六年度でけっこうですが、数量を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/155
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156・稻益繁
○稻益政府委員 手元に持ち合わしております資料が実は若干古いのでございますが、御参考のために申し上げますと、これはほとんど東京税関でございますが、輸入映画フィルムを検査いたしました件数が、三十四年度で総数二千九百三十七件であります。これを大まかに分けますと、いわゆる長編の劇映画が七百六本、短編の劇映画が三百四十一本、いわゆるニュース映画が千四百八十一、それからテレビ関係のフィルムがございますが、これが百九十二件、その他が二百十七件、大体そういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/156
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157・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 三十六年度のがわかりませんか、大体でよろしゅうございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/157
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158・稻益繁
○稻益政府委員 まだとっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/158
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159・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 三十五年度はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/159
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160・稻益繁
○稻益政府委員 三十五年も、ただいまここに資料の手持ちがございませんので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/160
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161・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 それから、ついでにお伺いしたいことは、三十六年度でけっこうですが、三十六年度の映画を検閲せられまして、その中の何木が、大体カットせられたというのか、積み戻されたというのか、その数がわかりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/161
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162・稻益繁
○稻益政府委員 三十六年では、一応異議の申し立てが全部出ておりますが、これをいわゆる輸入映画等審議会で御審議をいただいたわけであります。それで申し上げますと、三十六年度に該当いたしましたものが五件ほどあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/162
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163・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 そうすると、昨年は映画をカットせられたが、向こうへ積み戻しというか返されたのは全然ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/163
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164・稻益繁
○稻益政府委員 ただいまの五件が私どもの方で該当の部分があるということで一部の削除をお願いした件でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/164
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165・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 それは審議会にかけないで、あなたの方で公共の福祉によくないというような理由で業者の方に言われたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/165
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166・稻益繁
○稻益政府委員 税関長の方から二十一条第一項三号該当の疑いがあるという通知をいたしまして、ただいま申し上げましたものはすべて異議の申し立てが出まして、これを輸入映画等審議会に諮りまして、その御答申をいただいて処置をした、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/166
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167・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 そして処置せられて、それからカットせられたのはその五件の中には全然ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/167
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168・稻益繁
○稻益政府委員 それぞれカットの部分の多い少ないはございますが、いずれもわずかずつカットいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/168
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169・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 それはどういう理由でカットされたのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/169
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170・稻益繁
○稻益政府委員 昨年の五件について見ますると、大部分が残虐ということでございます。問題になりましたのは、御承知かと存じますが、「夜と霧」でありますとか、あるいは「ニュールンベルグ裁判」でありますとか、「独裁者」でありますとか、大部分が残虐な場面の削除をお願いしておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/170
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171・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 カットする理由に公安を害するとか風俗を害するとかいうのがあって、残虐という項はこれまで入っていないのですが、いつからこの残虐という項目が入りましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/171
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172・稻益繁
○稻益政府委員 風俗を害するという中に当然含まれます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/172
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173・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 風俗を害するの中に残虐が入るというお話だと、ここでちょっと公安を害する、風俗を害するということに対する見解を伺っておきたいのです。公安を害する、風俗を害するということは、法律の条文でいうと、どの条項に該当するのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/173
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174・山内一夫
○山内(一夫)政府委員 公安という言葉はいろいろにとれるのでございますけれども、私どもの方で理解しております点は、やはり日本国憲法の民主主義体制というものがありまして、そういった国会、議会を中心とする民主主義の体制が暴力的な方法で否定されることを非常にあおり、そそのかすというととを内容とするものを公安を害するという言葉で日本国憲法下の関税定率法としては読むべきではないか、かように考えております。風俗の方は、人間の社会生活におきまするところの当然尊重されなければならない人倫としての感情を中心とした考え方だろうというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/174
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175・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 山内さんは大へん法律に明るいですから、私どもしろうとではわからないのでお伺いしますが、もしこれを刑法の条項に当てますと、どの条項に当たるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/175
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176・山内一夫
○山内(一夫)政府委員 藤原先生御承知のように、わいせつの方は刑法の百七十五条でしたか六条でしたかに規定があるわけであります。わいせつ性が風俗を害するということになるのはお認めいただけると思うのです。残虐については、現在国内法としての表現については罰則の規矩はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/176
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177・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 公安についてはどの条項によりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/177
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178・山内一夫
○山内(一夫)政府委員 公安については、現在の破防法が国内法としてはあると、かように私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/178
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179・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 そうすると、公安の点で破防法にかかるようなものはこれまで入りましたか、入りませんか。これまで入った映画に破防法にかかるようなものはあったですか、なかったですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/179
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180・稻益繁
○稻益政府委員 いわゆる破防法と申しますか、公安の関係でのそういった該当の物件は現在まではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/180
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181・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 今、風俗に該当するものは残酷なものとわいせつなものというふうに伺いましたが、そうすると、今までカットせられ注意せられた五件ですか、それは残虐だからというわけでカットせられたわけですね。それが審議会に出ているわけですね。そこで審議会のことをちょっとお聞きしておきたいのですが、審議会のメンバーは何人くらいで、そして一カ年に何回くらい審議会を開いていらっしゃるのですか。メンバーと、一年に何回くらい開いていらっしゃるか、それから出席人員はどうなのか、出席人員は過半数でしょうから、何名いつも出ていられるか、それからいつでもきまって出られない人は何人くらいありますか、もしいつでもきまって出られない人がおりましたら、教えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/181
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182・稻益繁
○稻益政府委員 最初に審議会の委員の方のお名前を申し上げます。五十音順で申し上げますが、作家の阿川弘之さん、放送協会の会長の阿部真之助さん、作家の有吉佐和子さん、慶応大学の教授をしておられます池田潔さん、日本映画連合会の事務局長をしておられます池田義信さん、小石川高校の校長をしておられます落合矯一さん、それから評論家の渋沢秀雄さん、渋沢秀雄さんには会長をお願いいたしております。それから映倫の関係で青少年映画審議会副委員長をやっておられます関野嘉雄さん、映画評論家の津村秀夫さん、国際ラジオ・センター会長の長沼弘毅さん、慶応大学の教授で特に医学の関係でお願いをいたしております林髞さん、評論家の村岡花子さん、それからILO東京支局の総務部長をしていらっしゃいます渡辺華子さん、現在十三名の方にお願いいたしております。
審議会を開きました回数は、先ほど申し上げましたように、昨年開きました回数が三回でありまして、本年に入りまして一回、現在まで四回開いております。
出席は、大体過半数の方が御出席になっておりますが、そのつど御欠席の方が変わっておりますので、ここでそのつどの欠席なすった方のお名前までは私調べがついておりません。御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/182
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183・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 そこでもう一つお伺いしたいのですが、今の二十一条一項三号——今のお話を聞いていますと、ほとんどの主力が映画に置かれておるようですね。雑誌やなんかでなくて、主力は映画のようです。しかもここで輸入映画等審議会までわざわざ公的に作られた。それなのにかかわらず、どうしてこの前の改正のときに映画という言葉を入れられないのですか。一項の第三号が、映画が中心になっているのですね。しかも審議会等とつけておりますが、映画が中心なんです。映画中心の審議会まで持たれるように、三号はほとんど映画中心にお仕事をしていらっしゃるにかかわらず、法文の中になぜ映画ということをお入れにならないのですか。むしろ入れられた方が本筋じゃないですか。それをちょっと伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/183
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184・稻益繁
○稻益政府委員 これは実は従来からも映画も入るということで参っておったものでありますから、ことさらに法文を改めなかったというだけのことでありまして、御指摘のように、映画が現在では相当多いということでありますると、映画と明記することも、別にそれで支障はないわけでありますが、従来ともに入っておるという解釈でやって参ったので、その関係で特に改正をしなかったということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/184
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185・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 映画を中心におやりになるなら、法的に映画を入れておかれる方がいい。映画が全然なかったというのはおかしな話で、だんだんに内訳を聞いてみないと映画が出てこないのですね。それで、やっているのは映画をやっているのです。何だか聞く方はすなおに聞いても、初めて聞く人は、想像すればいろいろなほかのことまで想像できます。という点でやはり入れるべきだと思いますね。その点はあなたの方で従来の関係で入れなかったなら入れなかったでいいとしておきます。
それから、ただ雑誌を抽出的に見られるということ自体に私はちょっと疑義があると思うのです。これは公安を害すると思って抽出的に雑誌をお読みになるのか、わいせつな雑誌だからといって見られるのか。つまり、最初に公安、風俗を害する雑誌だからといって特に抽出して見られるのかということをちょっとお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/185
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186・稻益繁
○稻益政府委員 書籍は非常に輸入の件数としてはたくさん参ります。大体表題等を見まして、疑わしいと思えばその内容を検討いたします。それでやっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/186
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187・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 それから、これは疑わしいから見られるということでありますから、疑いがなければ見ない。それからもう一つは、これだけ多くの映画を短編にせよ、長編にせよ、一巻を見るのにどれくらいの時間がかかるか、ちょっと私は想像できませんが、長ければ一時間以上になるだろうし、短かくても三十分以上になるだろうと思うのです。そうすると、これだけ多くの本数の映画を、十人の人が全部一人一人で見られるのですか、一人の人が一巻ずつ見られるのか、合同的に見られるのか、それをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/187
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188・稻益繁
○稻益政府委員 普通の商業映画でありますと、これがプリントが参りまして、国内の輸入映画の配給業者の方がそれを一応試写して見るという際に、税関の職員が便宜そこで検査をいたしておるわけであります。通常は職員の一人が参りまして見ております。ただ、その見た結果が疑わしい点があるということになりますと、その報告によりまして、その該当部分につきまして、さらにほかの職員も一緒にそれを検討する、こういうことでやっておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/188
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189・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 そこで一つ聞いておきたいことは、これは相当の数の映画なんですが、一人の人が一日に何時間くらい映画を見られますか。試写されるにしても何されるにしても、とにかく多くの数ですから二千本、三千本の映画を、一人の人がどういう内訳をして見られるか知りませんが、一人の人が一日に見る時間数は何時間くらいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/189
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190・稻益繁
○稻益政府委員 実際のやり方を申し上げますと、たとえば三十四年で二千九百三十七本入って参っております。そのうちの約半分の千四百八十一本がニュース映画であります。このニュース映画は大体非常に迅速性をとうとぶという点を考慮して、特に表題その他で見る必要があるものを除きましては、中身の概要を説明したものがございますので、そういうものでできるだけ済ますということでやっております。通常の映画でありますと、大体一日に一人の職員が一時間ないし一時間半程度のものを午前午後にわたって一本ずつ見るといったような程度のようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/190
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191・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 どうもあなたの、一日に二時間くらいで見られるというのはちょっと合わない。十人の人はそれだけではない、ほかの仕事もある。たとえば五人の人がそればかりやっておるとしましても、千五百本からのニュースを見るのに一時間や二時間くらいで見られますか。長編なら長編一つでも一時間半や二時間くらい要するのじゃないですか。それで私がお聞きしたいのは、こういうむりな仕事がどうしてできるのか。というのは、私は眼科医です。人間の目がどのくらい疲れるかは科学的にわかっている。それでこれを一体やっているかいないかということを基本的に知りたい。それならば目がどういうふうになるかという実態を知りたい。それで私は聞いておるのですが、もういいです。それはあとにします。
もう一つ聞きたいのは、おかしいのが一つございますから申し上げますが、審議会にかけるのに残虐だからというのがある。わいせつというのは国内法できまっておってカットできるが、残虐ということに対しては国内法に何もない。それをどうして勝手に処分してしまうのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/191
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192・山内一夫
○山内(一夫)政府委員 国内の製作で、たとえば残虐な内容の映画を上映したときに罰則がないのは先ほど御説明した通りであります。しかも外国からそれが入ってきたときにこの法規に従うというのはなぜか、こういう御質問であるわけですが、私どもの考えでは、やはり残虐というものの考え方が、国民性で日本人の場合と外国人の場合とよほど違うだろうと思います。日本の場合では、わが国の製作者ではそういう残虐なことがそれほど問題になりませんから、刑法なりそれ自体の罰則というものは設けておりませんが、国民性の違いからいいまして、外国の映画については日本国民の感情の許容しないような残虐が出てくる、それがここでひっかかるということに相なるのではないか、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/192
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193・天野公義
○天野政府委員 残虐のことが問題になっておるようでございますが、日本人の通常考えておりますいろいろな標準からうんとかけ離れて、そうして日本人の感情に非常に悪影響を及ぼすような、そういうようなものは当然カットされてしかるべきであります。私個人の考えといたしましても、もっと検閲は厳重にやってしかるべきではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/193
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194・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 今、次官は、検閲は厳重にやれということでありますが、私は、次官にこの前も新聞のことで問題がありましたときに申し上げたのですが、もうちゃんと新聞に出ていて、しかも現実に林野庁から木が流れているのに、これは新聞が悪いというような御説明はちょっと困るのです。しかし、今度の問題には、あなたは検閲はもっと厳重にやれというわけです。そこで、私ここで検閲のことをお伺いします。これは山内さんにお聞きいたしますが、検閲というのはどういうのを検閲と言っていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/194
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195・山内一夫
○山内(一夫)政府委員 憲法二十一条でございますが、検閲してはならないということが書いてあるわけでございます。検閲の概念をどう立てるかというのは、根本的に言うと、この関税定率法二十一条が、憲法に適合するかどうかの問題につながってくると思います。大ざっぱに言って、検閲という概念は、ある刊行物なり表現の内容が公表される前に事前に国家権力が審査して、その中身のいかんによっては発表を許さない、こういう制度を検閲だというふうに一応私は考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/195
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196・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 私、今までいろいろなことをお伺いしましたのは、検閲ということを聞く前提としてお伺いしたのです。それは今、次官がはっきり検閲はもっと厳重にやれというのですから、おそらく税関の方では、今後も厳重におやりになるのでしょう。しかし検閲はしてはいけないということが憲法二十一条の第二項にある、検閲をしてはいけないということになっている、そうすると、憲法で検閲してはいけないというのを、次官はどうして厳重にやらせるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/196
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197・天野公義
○天野政府委員 この法律にもありますように、風俗を乱したり、日本人にぴったりこない、いかがわしいものであるとか、そういうものは入っていただきたくないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/197
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198・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 その入っていただきたくないという検閲ということは、憲法の二十一条の二項ではっきりやってはいけないことになっているのですよ。憲法の二十一条二項ではっきりやっていけない検閲をなぜやるのですか。しかも、厳重になぜやらなければならぬのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/198
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199・天野公義
○天野政府委員 ここにありますように、公共の福祉のためということがあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/199
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200・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 公共の福祉のためということでごまかされては困るのです。公共の福祉のためということを言っていない、検閲ということ自体を言っているのです。第二項で検閲はやってはいけないことになっている。
それからもう一つお伺いしておきたいのですが、検閲をするのは、検閲というのはやっていただきたくないということと、もう一つものを検閲するというのはどういうふうな定義をしておられるか、これをお聞きしたい。天野次官は検閲ということを厳重にやれと言うけれども、検閲は憲法上許されない、それでは、検閲というものはどういうものかということを次官から答弁して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/200
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201・天野公義
○天野政府委員 検閲というとちょっとあれですけれども、今までお話し申し上げてありますように、悪い部分はちゃんと審議会にかけましたり、また輸入業者の了解を得たり、またこれを送り返したり、いろいろとやっているわけであります。私どもとしては先ほど申し上げましたように、公共の福祉に違反するようなものは、これは不必要であると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/201
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202・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 今度は公共の福祉のために不必要だとかいわれるのでありますが、それでは次に伺いますが、検閲をするということは行政官のすることなんですか、それとも司法関係でやることなんですか、どっちなんです。それと同時に、もう一つは税関は司法権に属するのですか、行政権に属するのですか、これをはっきりさしておいて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/202
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203・稻益繁
○稻益政府委員 誤解を防ぐ意味におきまして、事務的にまた法律的に一応申し上げますが、税関が現在やっております検査でありますが、私ども通常検査と申しております。ただいま政務次官が一般的な、俗な言葉で検閲というお言葉をお使いになったわけですが、税関の私どもが法的に根拠を持ってやっておりますものは、先ほどもちょっと触れましたが、関税法六十七条で輸入貨物について検査を受けなければならないということになっておりまして、その検査をやっておるわけであります。その際に、基準といたしまして定率法の二十一条がございまして、こういうものは輸入禁制品であるという建前になっておるわけであります。いま少しく申し上げますと、実は前国会でありますか、前々国会でありますか、この法律の二十一条を改正いたしました際に、どういう趣旨で改正したかと申しますと、旧法におきましては、そうやって検査しましたものが該当物件であるということになりますと、税関の方で没収、廃棄処分ということまでやっておったわけであります。これは一号、二号あるいは四号と内容が違いまして、思想の表現物でもあるといったようなことを十分尊重して、その取り扱い方を実は変更いたしたわけなんであります。変更いたしました主たる点は、こちらで一応そういう該当の疑いがあるということの通知を税関長がいたしますると、通知を受けた側で異議があれば一カ月以内に異議の申し立てをする。それで私どもとしましては審議会に諮りまして、審議会の答申を尊重しまして、さらに決定をいたすわけなんでありまして、決定をいたしました結果は、輸入された御本人が、その物件はなるほど税関の言う通りだということになりました場合には、送り返されるなりあるいは任意破棄されるなりということで、これを強制的に没収したり廃棄したりということはやめておるわけなんであります。ここまでは私どもとしては行政権としてやっておるわけであります。この行政権の決定に対しまして不服がおありの場合には、さらに裁判の方に訴えることもできるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/203
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204・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 今の話はほんとうはもっとあとで聞きたかったのですが、今話が出ましたから伺います。たとえば、これは公安を害するとか風俗を乱すとかいった場合に、業者の方で異議を申し立てれば、そこで今度は審議会があり、それから、それでもまだ不服なら裁判があるというのでありますが、業者がそんなことしますか、おそらくしないでしょう。それから異議を申し立てて裁判にかけたりする間どれくらい日にちがかかりますか、その間の金をどうするのか、経済的にもそういうことはできないということと、もう一つは、そういうことを業者がやりまして、たとえばニュールンベルグの裁判なんか、今いただきましたから見ましたが、これを強硬にやる。そうすると業者の人は悲しいかな何かほかの方のことでかたきを討たれやしないかという感じを持つのです。というのは、これはあなたの方だけではなくて税務書でもそうです。こうだなと思いながらもあきらめて言うことを聞くのです。であるから、そういう意味で、あなたの方では裁判もあると言われますが、映画をやっておる人が、これだけでもうやめるならいいですが、続けていこうとすれば、検閲をする人に対して強硬に反対できますか。その点はどういうふうにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/204
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205・稻益繁
○稻益政府委員 先ほど来申し上げましたように、私ども税関吏だけが勝手に独自な判断でやっておるわけではございませんで、異議の申し立てがありますると、必ず審議会に諮っておるわけであります。経験によりますと、審議会で私どもの決定が若干行き過ぎておるといったような場合には、これをある程度削除すべき部分をさらに減らす。従来の例を見ておりますと、そういう実績が出ております。従いまして、十分学識経験のあるそういった審査員の方々の御審査をいただいて十分公平にやっておる、法の趣旨にのっとるようにやっておる、かように確信を持っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/205
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206・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 今いろいろお話しになっていますが、この審議会の審議を採用するとしないとは税関長にあるのですよ。もしあなたの方でこれは公安を害するとか、風俗を乱すとか思えば、審議会がどう決定しようともこれはあなたの方で断わることができるのですよ。そういう実際の力のない、断わりのできないような審議会を、一体そんなことを、私たちはあなたの言われるようには信用できないですよ。審議会は、あなたの方でだめだと言われればこれは断われる。そうすると、審議会はあなたの方で断わられるようなことを反対しっこない。もししても断わられる。法律上ちゃんとそういうふうに書いてあるのです。そういう有名無実の審議会というものに私はそれほど信は置けない。それを映画界の人にたよりなさいと言っても、それは無理だろうと思います。そこで裁判になれば、何年も引き延ばされる。どこの映画か今記憶ありませんが、日本に入ってきて六カ年くらい引き延ばされておる映画がありましょう。そういう点で、審議会というものをあなた方が勝手なことをやるための法の隠れみのに使っておるとしか考えられないのです。権力も何もないものをこう形に置いておいて、これがありますという言い方はちょっと納得できません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/206
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207・稻益繁
○稻益政府委員 ただいま輸入されて六年間まだそういうあれが引き延ばされておるものというお話がありましたが、私どもの調べではそういうものはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/207
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208・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 「夜と霧」というのはどういうふうになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/208
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209・稻益繁
○稻益政府委員 あれは実は二回にわたって入って参っておるわけなんでありますが、第一回のときに該当の部分が非常に多いということで、そういう通知をいたしましたところ、それだけ削除されるのでは公開の意味がないということで突き戻されたわけです。それから何年かたちまして再度また輸入が行なわれまして、審査の結果やはり該当の部分はこれこれあるということで、これは先ほど申し上げました昨年の審議会にお諮りいたしまして、該当の相当部分をカットいたしまして、それが通っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/209
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210・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 あなたの説明にこだわっていますと、肝心の私の質問時間がなくなりますし、ごまかされますから、ほかのことをやります。
それはどの映画かよく読んでいないからはっきりわかりませんが、最初のとき、六年前は全部だめだと返された。その次には今度はまた入ってきまして、そして今度は八カ所か何カ所かそれでもいけない。今度は二カ所だけはストップさせて、二カ所だけストップすればというので許されたというふうな映画の話を聞いております。これは新週刊にも出ておりますから、あとでお調べになったらいいだろうと思います。そういうふうにして、あなたの方では今度はわいせつかあるいは残虐か知りませんが、おそらく残虐なんでしょう。六年前は全部いけない。それからその次にはだんだんと残虐というものが変わってくるのですかね。そうすると、あなたの言われる風俗を乱すという概念はそのつど変わるのですか。それとも検査員が違うと変わってくるのですか。そこには共通したものはないのですか。つまり全部に当てはまるスタンダードのものはないのですか。どうも検閲がこのときはこれでいけない。今度するとこれでよろしい。こっちの人が持ってくるとよろしい。そうすると、いろいろのことをやりますと、今度私らのような何も深くものを考えないでいますと、甲の人が持ってきてはだめだ。乙の人が持ってきてはこれだけはいけない。今度は第三の人がこれをこう直せばいいということになると、そこに何か非常な変な疑惑が持てるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/210
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211・稻益繁
○稻益政府委員 ただいまお話しの「夜と霧」の場合でありますが、第一回のときの方が削除部分が多かったということは、はっきりしておるようでありますが、そのときどきの検査官の態度とおしますか、そういうことは先ほど来申し上げましたように、こういう疑わしい、つまり二十一条該当だと思われます場合には、かなり慎重に、つまり審査関係の委員を動員してやっておるわけであります。さらに、審議会でこれをお諮りして、第一回に入りましたときはだいぶ前の話のようでありまして、現在の審査委員の方々と審議会の委員の方々も、実はメンバーが違っております。従いまして、そこらで若干の食い違いがあるということはあったようでありますが、そう大きな、第一回のときも全面的に輸入がまかりならぬといったようなことはございませんで、ただ、若干カットする部分が多かったということのようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/211
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212・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 映画のことにこだわっておりますと時間がありませんので、またそれは別の機会に聞くことにいたしまして、ほかのことを伺います。
先ほど検閲の問題が出ましたので、検閲のことをお伺いしたい。これは山内部長さんからお話しいただけるといいと思うのです。というのは、検閲に対する部長さんの方の定義はどういうふうになっておりますか。検閲とはこういうふうなものだというそれを一つお示しが願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/212
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213・山内一夫
○山内(一夫)政府委員 検閲がどうであるかというのを端的に言うのは、ある意味で非常に私はむずかしいと思います。申し上げますけれども、問題は関税定率法の二十一条が関税法の六十七条の検査制度と結び合わされたその制度が、憲法に違反するかどうかということは、実を言うと問題なのでありますが、それの前提問題として藤原先生がお聞きになっていらっしゃると思いますから申しますけれども、先ほど申し上げましたように、表現の内容を国家機関が検査して、その内容が一定の法規に触れるという場合に、その公表ができない、こういうふうにする制度を一応検閲だというふうに私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/213
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214・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 あなたの書かれたのがございます。ここに私は持ってきておりますが、関税検閲の合憲性ということで、あなたの検閲に対する大体今のような御意見が出ております。それでその意味から私お聞きしたい。つまり検閲というのはものを表現する前、発表する前にそれを公権の力によってとめてしまう、そういうことが検閲じゃないですか。これはこういうふうにはお書きになっていらっしゃるからあれだろうと思いますが、それから伊藤正己先生のがあります。「検閲とは事前検閲を意味し、憲法第三十一条第二項で禁止しているのもかかる事前検閲であり、それは、一定の表現が外部に発表されるにさきだって公権力がそれを審査し、」云々というようなことが書かれておりますね。そうしますと、事前に公権を使ってものを見られること、先ほどの雑誌を中止するというようなことが一つの大きな問題、これははっきりやる検閲だろうと思います。それから入ってきた映画が、まだ公開も何もしない前に公権を使って、そしていいとか悪いとかいうことをきめることは検閲とみなしていいのじゃないですか。これは検閲じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/214
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215・山内一夫
○山内(一夫)政府委員 検閲という概念をそういうふうにとれば、私は、それは一応検閲という概念に入るだろうと思うのです。ただ、それが合憲か違憲かということについては、まだ先生その通り御質問になりませんけれども、そこについては議論の余地が十分あると私は思っているわけであります。そういうふうに検閲という概念をとらえれば、今の定率法と関税法六十七条と結び合わさる程度は検閲という概念に一応入るだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/215
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216・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 山内部長さんの書いておられることには、そういうことが一つの検閲だということを響いておられますね。ですから、そうしますと、今、次官がお話になり、稻益さんのお話になったことから見まして、税関へ入ってきたものを先に見て、まだ入れるかどうかきまらぬ前にそれを見て、これは公安を害するとか、これは風俗を乱すとかいうふうなことを皆さんが勝手にきめて、そうしてこれはいいとか悪いとかということは、はっきり検閲じゃないですか。今の山内さんの話を聞いて、事前にそういうことをすれば、しかも公権を使ってそういうことをやるのは検閲だとしか考えられないのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/216
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217・山内一夫
○山内(一夫)政府委員 だから、そういう言葉をそういうふうに検閲だときめてこれを見れば、私は一応検閲というふうになると思いますけれども、それが憲法違反かどうかということは、私は問題だと思うのです。それで政務次官のおっしゃったのも、むろん憲法違反の検閲をこれからどしどしやろうこういう御主張じゃなくて、そういう言葉としては検閲といわれるかもしれないけれども、それを私どもの考えによれば、この制度は憲法に違反しないと考える。それを憲法に違反しないという意味で稻益関税局長は検査であるという言葉に置きかえて言われたのですけれども、そういった憲法に許された今の制度を法規通りにしっかりやるということは、憲法違反の問題は生じないだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/217
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218・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 どうもそこが納得いかないのです。実はそうじゃなしに、まだ何も発表しない前にそれを見て、これはいいとか悪いとか、公安を害するとか、風俗を乱すということを決定せられる場合には、それはもう検閲じゃないですか。たとえば、今映画を抽出する、雑誌を抽出する、たくさんあるものから抽出するということは、何かそこに一つの問題があるわけです。何もないのに抽出することはないのです。抽出する以上、抽出する意図があるわけです。そうすると、その雑誌はわいせつならわいせつというふうに、頭からそういうふうに見て抽出するわけです。映画だって同じだと思うのです。その概念でそれを見ますと、これは見た場合のことですよ。見ますと、普通の人が見ても何ともないようなものをわいせつに見る。わいせつという概念が入っておるから、それは言えるだろう。それは別にしましても、そういうふうに発表前に現実にやって業者に注意する、それから審議会に出すと言われるけれども、そうしますると、そういうふうなやっている事実行為そのものは検閲じゃないですか。私はそういう法理論の理屈は専門家じゃないから申し上げません。しかしやっておる現実に入ったものを勝手に見て、それからこの雑誌は公安を害する、破防法に引っかかりそうだといって勝手にきめて、これはいい、悪いということは検閲じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/218
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219・山内一夫
○山内(一夫)政府委員 勝手にきめるというお言葉に対しては私ども異論があるのでございますけれども、その制度が事前に検査することを検閲だということで前提を置けば、それは実際問題として検閲だというふうに私も言わざるを得ないと思うのです。先ほどから繰り返し申し上げますように、これが憲法に適合するかどうかということは残っておるわけでございます。そこで、私どもは、これは憲法違反じゃないということは、先生も先ほどおっしゃいましたように、昨年も一昨年もここで御説明申し上げたわけでございまするが、そういった意味では私どもの職責としては、これが合憲であるということを説明しなければならないし、それはまたお尋ねによって御説明いたそう、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/219
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220・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 もう時間がないようでございますから、続けてほかの点も聞きたいと思いますが、これは合憲ではなく違憲だと私は見ておる。そうして、そういう事実は検閲以外にほかにないと思います。あなたのお書きになったものの中にも、押収とか没収とかいう言葉が入っておりますが、しかし私は、没収とか押収とかいう言葉は、山内さんのおっしゃるようには理解できないのです。ですから、それで合憲だと言われることは、私には承服できない。
それからもう一つは、現実にやっておられる、特に雑誌を抽出するということは、はっきりした検閲です。私にはそうとしか考えられない。まだ発表しないものをそういうことをせられることは検閲としか考えられない。ですから、先ほど私が申し上げましたように、発表しない前に、すでに公権力を使ってこうだああだといってその発表を差しとめることは決して合憲のことではなくて違憲だと思います。
それからもう一つは、これが公安を害するか、風俗を乱すか、つまり公共の福祉を害するかをきめるのは、行政官である税関がきめなくてもいいと思うのです。そのために司法を取り扱っておる司法関係の機関があるのですから、それでおやりになればいい。それを自分の職分でもないところまであまり深入りされることはどうも納得いかない。そうでなしに、これが公安を害するか何かというふうなことは検察庁できめればいいことだ。それをその前に、そういうふうな税関が勝手におきめになることは、どういうことでやられるかということです。
それから先ほどのニュールンベルグなんかの問題で申し上げましたが、時間的に人によって、公安を害するとか、それから風俗を乱すとかいう尺度がみな違ってきておる。この前は悪かったが、今度はいいというふうなことになりますと、公安とかなんとかいうことが、今度は検査員として勝手にものをきめられるような気がしてしようがない。それには一つのスタンダードがある。標準になるのは、これは公安を害する、それは風俗を害するということをもっとはっきり明確にしておいてほしい。その点も一つお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/220
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221・稻益繁
○稻益政府委員 ただいまのお尋ねは、行政機関である税関がそういうことをやらなくても司法手続でやればいいではないかというお尋ねであろうかと思うのでありますが、わが国の場合には、大体こういう司法的審査と申しますのは、訴えあるいは告発を待って行なわれるというのが原則であります。従いまして、行政上の決定を全然待たないでいきなり司法的な手続に入ることは、わが国の場合にはいかがであろうかと思うのでありまして、現在の制度でも、先ほど申しましたように、行政機関である税関がそういう決定をいたしましたあとで、なお司法的な手続に訴えられるということで、わが国の場合は、非常に立法上の問題も含めての問題でありますが、現在やっておることが正しい制度であろう、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/221
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222・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 私は山内さんのお話を伺いましても稻益さんのお話を伺いましても、実は納得がいかない。これは合憲ではなく違憲だ。そうして現実にやっておられることは検閲なんです。それはどう詭弁を弄されようとも、そのことだけは言えるだろうと思います。私自身はそう信じておる。
そこで最後にお伺いしておきたいことは、山内部長さんは、第一部長になられる前にはこれは違憲と言われておった。これに書いておられる。けれども、第一部長さんになって担当の職をあずかったら、どうも違憲でなくて合憲らしい、第三部長のときには違憲らしい、そういうお考えだったらしい。ここに書いておられるから、そうだろうと思う。第一部長さんになってから、今度は合憲だとなられた。違憲か合憲かということは、非常に重大な問題です。違憲か合憲か、その重大な問題を第三部長のときには違憲と思っておられ、第一部長になったら合憲だという。今度また何かの部長になったら何になるかわからない。その点も、どういう意味でそういうふうに変化せられたかということだけをお伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/222
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223・山内一夫
○山内(一夫)政府委員 実はそこのところ、私の考えの移り変わりというものは、ざっくばらんに書いたらそうなったわけでありまして、決して第一部長になって——そのころすでにありました定率法の合憲性をぜひ立証しなければならないという職責からくるものではなくて、私自身がほんとうに考えてそうなった考えですから、私は率直に申し上げたわけであります。それで、この問題は実際問題として、簡単に発表する前に抑えるなら、それは憲法の二十一条二項に違反する、この論理がすぐ出てくるわけです。ところが、先生、そこにおあげになっております私の帯きものでも、お読みいただいたと思うのですが、実際問題として、そういう違憲論者はたくさんおられるわけですけれども、関税行政の技術的性格についての判断をどうも見誤っておられるということを私は痛感しましたから、そこのところを率直に包み隠すことなく書いただけでございまして、決して御用学者的な心境でそれを書いたわけではございません。私は、おそらく将来またほかの職につきましても、今の考えは持ち続けるだろう、かように思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/223
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224・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 そうすると、もう一つお聞きしておきたい。今、第一部長さんこなられて、前と変わってきた一つの原因は、税関の実際の手続その他のことを考えてというお話なんですが、どうもそうなるとなお私にはわからなくなる。憲法が先なのか、税関の仕事をするのに都合がいいので、それを基本にして憲法を勝手に解釈するのか。これをやりますと、たとえば極端な例で言いますと、警察官がどうしても犯罪をあげたければ拷問してもよろしいということが出てくる。ですから、あなたのおっしゃるように、税関のいろいろな手続その他のことを考えて、これは合憲でなければならぬと考えられることは、憲法なんか要らないということなんです。憲法というものは、ものをやるときに都合のいいように解釈すればいい、あなたはこれが都合がいいからこう解釈すればいい、それで今度ほかの仕事をするときは、あなたは憲法をこう解釈すればいいということになる。これは勝手に解釈してどうにでもなるのですか、それとも実際に憲法があってそれがきめられて、そして憲法に準拠してやられるのか、どっちが主体なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/224
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225・山内一夫
○山内(一夫)政府委員 それは、申し上げるまでもなく、憲法が先行するのは当然なんです。ただ、関税行政の非常に便宜的な性格というものを私は考えたわけではないのでございまして、要するに、外から中に入ってくる輸入という社会現象といいますか、そういうものに着目した場合に、日本の強制権力と申しますか、押収権力と申しますか、国家権力が及び得ないところから入ってくるという特殊性が事柄の性質上どうしてもそこにあるだろう、そこを考えて、憲法とにらみ合わせて考えれば合憲説が出てくるだろう、こういうことを申したわけでございまして、決して憲法が行政の下位に立つという心境からそういうことを言ったわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/225
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226・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 あまりやっておると連合審査会の時間がなくなりますから、私この辺でやめたいと思います。ただここで、委員長にお願いしておきたい。私は、伺っておれば伺っておるほどこれは違憲だと思うのです。それから、税関のやっていることは検閲だと思います。検閲のもとに置くということは、憲法二十一条の二項で絶対にしてはいけない。その絶対にしてはいけないということをやっておられる。今の二十一条というのはずいぶん時からのものなんです。明治憲法のときに作られていて、それの裏づけでできておるものなんですね。憲法自体が民主的になって、国の主権が国民にあるというふうに憲法は変わったが、あの当時、私たちは本を買っても読まれて没収された。そういう時代のものを残されるということはどうにも理解しにくいのです。むしろ、こういうのは逆に削ってしまって、それが公安を害したりなんかするときは、ちゃんとその職に司法官があるのですから、司法官にまかせればいい。よその仕事までしなくてもいい。よその仕事までするから、ときどき行き過ぎて汚職が出てくる。自分のことだけ頭を使って、人のことまでせぬでもいいと思うのです。そういう意味で、このことはお話を伺えば伺うほど、どうにも納得がいきません。
そこで、委員長にお願いしたいのは、適当な時期に、ぜひとも憲法解釈に関して、違憲かどうか、それからこういう行動が検閲かどうかを中心にしての公聴会なり、あるいは参考人を呼んで聞かしていただきたい。そうして私たちに勉強させてもらいたい。その時期とかなんとかはどうぞ理事会へ諮っていただきたい。私は、いつしてくれとは言いません。ぜひとも参考人を呼んで聞かしてもらいたい。これが合憲か違憲かということは重大な問題ですから、特にそれをやっていただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/226
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227・小川平二
○小川委員長 広瀬秀吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/227
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228・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 公企体共済組合法について、一つだけこの前の質問で聞き残したものを聞きたいと思います。
現行法で参りますと、年金受給資格を取得いたしまして、若年停止等によって支給が開始されないうちに死亡するというような事態が起きた場合に、その者に遺族があれば、当然遺族年金が発生しますけれども、遺族の範囲に入らない親族か何かしかないというような場合が起こり得るわけであります。そういう場合に、この者に対して、何らかの配慮が当然必要だろうと思うわけであります。もちろん、これはずっと掛金をかけて、年金受給の資格を取得しておるわけであります。しかし、それが支給が開始されない前に死亡する、しかもたまたま遺族がなかった、こういう事例の場合に、これに対して葬式費用一つ支給されない、こういう形になっておるのが今日の現状であります。もちろん、年金に重点が置かれるので、年金受給までに死亡された者についてまでそれを見てやることはできないという説明もあろうかと思いますけれども、法の運用は、そういう場面においてもやはり何らかの措置をして、これはバランスの問題としてもすなおに考えて、そういう者について、何らかの措置が行なわれ得る余地というものは十分に考えられる、かように思うわけであります。たとえば、公企体の中で、婦人職員等で結婚の機会を失しておるような女性もたくさんおるわけです。こういう人たちが、そういうようなことについて今日非常に不安を感じてきておるわけであります。そういう不安を解消するためにも、しかもその人たちは、今日職場の中でも相当ヴェテランで男性に負けない執務をしておるわけであります。そういう不安な状態に置くということは、やはりいけないことだと思います。そういう点について、今後いかに改正をされ、何らかの配慮をされるお考えがあるかどうか、この点を一点だけきょうはお伺いしておきたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/228
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229・高橋末吉
○高橋説明員 ただいまの御指摘の点、まことにごもっともなことと存ずるのであります。自分のなくなったあとの葬式をほかの御厄介にならなければならないというふうなことでございますので、まことに考えさせられる問題でございます。今回の法案を取りまとめて御審議をお願いするまでの過程でおきまして、そういった点につきましても気がつけばいろいろ検討も加えたことであったと思うのでありますが、実はそういった点まで話に出なかったような次第もございますので、今後もそういった点について十分検討をいたしてみたいというふうに考えます。一つの考え方といたしまして、共済組合というふうなものでお葬式その他のことをやってやるようなこともあるいは考えられるのじゃないかというふうな気もいたしますけれども、今後十分検討させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/229
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230・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 今のお答えは、これはいろいろ関連する諸問題があろうと思いますけれども、そういう事例に対して何かそこにあたたかい配慮をしてやろうという立場で十分な検討を願える、このように了解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/230
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231・高橋末吉
○高橋説明員 御指摘の通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/231
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232・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/232
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233・小川平二
○小川委員長 この際暫時休憩いたします。
午後四時一分休憩
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午後六時四十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/233
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234・小川平二
○小川委員長 休憩前に引き続き大蔵委員会を再開いたします。
関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案、及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
両案に対する質疑はこれにて終了いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/234
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235・小川平二
○小川委員長 これより順次討論、採決に入ります。
まず、関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案について討論に入ります。
通告があります。これを許します。有馬輝武君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/235
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236・有馬輝武
○有馬(輝)委員 ただいま議題となっております関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、社会党を代表して、反対の討論をいたしたいと思います。
少なくとも関税定率法の改正にあたりましては、国内の産業構造との対応の中で、現在問題になっておりまする貿易自由化、あるいは政府が掲げております本年度の輸出入目標四十八億ドルとの関連の中で、根本的な命題が解明されて、その線に沿ってこの定率法の改正が行なわれてしかるべきであると思うのであります。ところが、この法案審議の過程におきまして、わが党委員の諸君から再三指摘されましたように、たとえば産業保護の機能につきましても、おのずから限界があるにもかかわらず、たとえば農産物その他の保護の面につきましても、明確な見通し、そういうものを持っておられない。特に果樹その他につきましては、貿易自由化について相当考慮しなければならぬ、むしろ自由化の中からこれをはずすというような措置が、前もってとられてしかるべきであるにもかかわらず、やはり秋には九〇%自由化を行なう、こういう前提のもとに、ただ関税の産業保護機能、限界のある産業保護機能にこれを事寄せておる。こういう態度については、私どもの絶対に容認できないところであります。あるいはまた、ただいまも論議がありましたように、電力その他については、関税の還付の措置がとられておるにもかかわらず、農業用の重油については、特段の考慮がなされていない。こういう点、一つ一つ取り上げて参りましても、やはりこの関税定率法それ自体が、関税それ自体が、先ほど申し上げましたその前提となる国内産業の構造について、十分な対策が立てられないままに、イージーに考えられておる。私どもは、この定率法の改正についても、時前措置が十分でない、こういう点において、どうしても賛成できがたいところであります。
先ほども申し上げましたように、自由化についても、当然その準備対応策というものが十二分になされてから自由化は押し進めらるべきでありまするし、ことにEECその他に対する対応策についても、非常に混乱し、無定見といいますか、対応策を持たない現在において、私どもはこの関税についても根本的に再検討すべき時期にあると思うのであります。ところが、閣内においても、大蔵省では関税を上げる、通産省が関税を下げるべきである、こういった不一致さえ見られる点について、私どもの理解に苦しむ点が多々残されておるのであります。この点につきましては、詳しくは本会議の討論において明瞭にいたして参りたいと思いまするけれども、一、二の点をあげまして、ただいま申し上げました関税定率法及び関税暫定措置法の一部改正法律案に対しましては、わが党として反対の意見をこの際明瞭にいたしておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/236
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237・小川平二
○小川委員長 これにて討論は終局いたしました。
続いて採決に入ります。
採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/237
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238・小川平二
○小川委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決いたしました。
次に、公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案につきましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。
お諮りいたします。
本案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/238
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239・小川平二
○小川委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案の通り可決いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/239
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240・小川平二
○小川委員長 次に、毛利松平君より、本案に対し、三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
この際、提出者の趣旨説明を求めます。毛利松平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/240
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241・毛利松平
○毛利委員 ただいま議題となりました附帯決議について、提案の趣旨及びその内容について簡単に御説明申し上げます。
附帯決議の案文は、お手元にお配りしてありますので、朗読を省略さしていただきます。
御承知の通り、今回の改正により、更新組合員等の旧日本医療団及び外国政府の職員であった期間については、通算措置が講ぜられることとなっておるのでありますが、南満州鉄道株式会社等の職員であった期間については、なお通算措置が未解決になっておりますので、政府は公共企業体職員の、これらの職員であった期間についても、さらに通算措置を講ずるよう、今後において十分検討を加え、その実現に努める必要が認められますので、本附帯決議を提出する次第であります。
何とぞ賛成あらんことをお願い申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/241
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242・小川平二
○小川委員長 これにて提出者の趣旨説明は終わりました。
お諮りいたします。毛利君提出の動議のごとく決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/242
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243・小川平二
○小川委員長 御異議なしと認めます。よって、毛利君提出の動議のごとく附帯決議を付するに決しました。
なお、本附帯決議に対し、運輸政務次官より発言を求められております。これを許します。有馬運輸政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/243
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244・有馬英治
○有馬政府委員 ただいまはまことにありがとうございました。
決議になりました各項につきましては、今後政府といたしましては、関係各庁十分協議をいたしまして、できる限り御趣旨に沿うように努力いたしたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/244
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245・小川平二
○小川委員長 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02319620316/245
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246・小川平二
○小川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
次回は来たる二十日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後六時五十一分散会
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