1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年三月二十六日(月曜日)
午前十一時三分開議
出席委員
委員長 小川 平二君
理事 鴨田 宗一君 理事 細田 義安君
理事 毛利 松平君 理事 山中 貞則君
理事 有馬 輝武君 理事 平岡忠次郎君
理事 堀 昌雄君
足立 篤郎君 伊藤 五郎君
宇都宮徳馬君 宇野 宗佑君
小沢 辰男君 岡田 修一君
金子 一平君 久野 忠治君
佐々木義武君 篠田 弘作君
正示啓次郎君 田澤 吉郎君
高見 三郎君 濱田 幸雄君
藤井 勝志君 古川 丈吉君
坊 秀男君 前田 義雄君
吉田 重延君 米山 恒治君
石村 英雄君 久保田鶴松君
多賀谷真稔君 芳賀 貢君
広瀬 秀吉君 藤原豊次郎君
安井 吉典君 横山 利秋君
春日 一幸君 田中幾三郎君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 水田三喜男君
出席政府委員
大蔵政務次官 天野 公義君
大蔵事務官
(主税局長) 村山 達雄君
国税庁長官 原 純夫君
委員外の出席者
検 事
(訟務局参事官)杉本 良吉君
専 門 員 抜井 光三君
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三月二十六日
委員賀屋興宣君、久保田藤麿君、藏
内修治君、舘林三喜男君、津雲國利
君、永田亮一君、岡良一君、田原春
次君、武藤山治君及び春日一幸君辞
任につき、その補欠として米山恒治
君、宇野宗佑君、久野忠治君、佐々
木義武君、小沢辰男君、前田義雄
君、安井吉典君、多賀谷真稔君、石
村英雄君及び田中幾三郎君が議長の
指名で委員に選任された。
同日
委員宇野宗佑君、小沢辰男君、久野
忠治君、佐々木義武君、前田義雄
君、米山恒治君、及び田中幾三郎君
辞任につき、その補欠として久保田
藤麿君、津雲國利君、藏内修治君、
舘林三喜男君、永田亮一君、賀屋興
宣君及び春日一幸君が議長の指名で
委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
国税通則法案(内閣提出第一〇三号)
国税通則法の施行等に伴う関係法令
の整備等に関する法律案(内閣提出
第一一四号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/0
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001・小川平二
○小川委員長 これより会議を開きます。
国税通則法案及び国税通則法の施行等に伴う関係法令の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
質疑の通告があります。これを許します。広瀬秀吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/1
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002・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 国税通則法の制定に関して質問をいたしたいと思います。
最近における税制改正の中で、今度の国税通則法の制定ほど、納税者大衆に対して、非常に大きなショックを与えたものはなかったわけであります。この国税通則法の制定に関して、第二次答申が昨年の七月になされまするや、中小企業諸団体は、今まで政治的な発言等もあまりない団体でありましたが、これが猛然と反対の意思表明を、あらゆる団体で行なうというような事態も出て参りました。そのほか、民主団体あるいは労働組合等においても、国税通則法の制定に対して大きな反対の世論が巻き起こったわけであります。これはやはり、現在でも徴税行政をめぐって数多くの権力的な要素が非常に強く出て、国民の権利がこれによって侵害されるというような面が至るところにある段階において、この徴税行政をさらに権力的に強化するのじゃないかということがおそれられたわけであります。今日、国民はそういう気持で国税通則法制定を見ておるわけであります。今日、あらゆる行政というものは、憲法の原則に従ってやられなければならないわけでありますが、税務行政といえども、憲法の民主主義の原則に従ったやり方がなされなければならないのではないか、かように思うわけであります。ところが、今度の通則法制定について、そういう面についてはほとんど配慮がなされていないというところに一番大きな原因があったのじゃないかと思うわけでありますが、なぜ、このように重大な問題をはらむものを非常に急いだ形で、十分な審議もできないような形で出されてきたのか、あるいはまた、どうしても通してもらいたいというようなことを表明されているのか、私どもにはわからないわけであります。もし真に国民の民主主義的な権利を尊重するという立場を貫くならば、こういう国民の権利に重大な関係を持つものでありますから、もっと時間をかけて、慎重に国民的な世論というものの動向を見きわめた上で出すべきだと思うのでありますがそういう点について、今回の出し方というものはあまりにも急ぎ過ぎておるのじゃないか、なぜ一体急がなければならないのか。しかも、今度の通則法全体を通じて、こういう法律を出すからには、当然盛らなければならないものが盛られていないという非常に中途半端なものになっていると思うのですけれども、そういうことをしてまでこれを通さなければならない、そういう事情といいますか、客観的な背景、法案のバックグラウンドというものをどういうところに求めておられるのか、この点について政務次官にまずお伺いをいたしたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/2
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003・天野公義
○天野政府委員 この国税通則法の制定につきましては、現在、各税法の体系を見ますとなかなか複雑な、また難解な点が非常に多うございまして、これを納税者の理解しやすいように、各税法を通ずる基本的な法律関係を明らかにしたい。それから、これを簡素化し、また各税におけるいろいろな手続を、納税者の利便をはかる立場から改善合理化したい、従って、各税に共通する国税通則法を制定したいといいますことは、長い間の懸案になっていたわけでございます。従いまして、これらの諸問題につきまして税制調査会に答申を求め、長い間各界の代表者の方方の御意見を承り、また技術的にも検討して参ったわけでございます。昨年の七月五日にこの税制調査会の答申も出されたわけでございまして、政府といたしましては、その答申に基づきまして、今度は政府それ自体の立場から、いろいろこれに対して検討を重ねて参ったわけでございます。そこで、先ほど申し上げたような考え方に立ちましていろいろ検討いたしました結果、まず第一に、税法の簡素化、納税者の利便のため、そういう観点からいたしまして、現在のところでは、税制調査会の答申をそのままうのみにするわけにもいかないいろいろな事情も勘案いたしまして、税制調査会でいろいろと御決定を願いました中における問題点となりました数点につきましては、これを見送ることにいたしたわけであります。そして今回御審議願っておりまするように、利子税及び各種の加算税の軽減合理化、それから課税処分等に対する納税者の不服申し立て制度の改善、それから間接税における申告納税制度の導入、所轄税務署の明確化、到達主義の緩和、租税債権の成立確定等の法律関係の明確化、賦課点の除斥期間の合理化、各税における諸手続規定の統合というように、主として納税者の利益、こういう面を主眼として御審議を願うことにいたしたようなわけでございます。その経過におきまして、いろいろな方面で反対等の御意見も承ったわけでございますが、それらの反対のおもな点につきましては、先ほど申し上げましたように、税制調査会の答申にありました中から数点を除いたということを申し上げたわけでございますが、大体それらの点に御意見が集中されたように思うわけであります。従って、政府といたしましては、長年の懸案であり、税制調査会等を通じましていろいろと御審議を願った結果を、世論の動向やいろいろな研究によって問題点を整理いたしまして、そして慎重に検討を重ねた上、国会に提出をいたしたような次第でございます。従いまして、そうあわてて出した、準備不十分で出したというわけではございませんで、ここに至りますまでには、一方ならない研究と慎重な態度と、あらゆる面からの検討がなされた、その結果といたしまして、国会に御審議を願うことになったような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/3
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004・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 国税通則法の第一次答申は、たしか昭和三十五年の十二月に、非常に抽象的な形で出たと思います。次いで、第二次答申が昨年の七月五日に出たわけであります。そうしますと、とたんに、三十六年の八月あたりに、中小企業諸団体は、非常に大きな脅威を感じて反対し、こういうものを制定してもらいたくないということを言い出しました。そしてさらに税法学会が、いわゆる租税立法ならびに税法の解釈及び適用について法律学的研究をなす日本学術会議所属の唯一の学会であり、あくまで憲法の理念である民主主義思想に立脚して研究をなし、中正な総合的見解を公表し、国民の福祉増進に寄与せんとするという考え方のもとに、この税法学会が、十一月に至って「国税通則法制定に関する意見書」を池田総理に対して出しておるわけであります。この意見書というのは、私はりっぱな意見書であろうと思うのです。しかしながら、今度の通則法の制定にあたって、重要な問題点をたな上げをしたからということですが、今こういう種類の国税通則法というようなものを作ろうとするからには、こういうものがまず盛り込まるべきであるというような積極的な意見というものが、この中に相当数多く含まれておるわけです。そういうものについては、ほとんど何らの改善もされておりません。ただ、中小企業の団体もあげてこれに反対し、あるいは労働組合その他の諸君も反対している最大の問題点、これをたな上げしたということは、そこにやはりなぜたな上げしたか、将来どうするかということについての問題が非常にあるわけでありますが、とにかくそういう形で今日まできたわけであります。それでこの税法学会の意見というようなものについて、一体大蔵当局としてはどのような配慮を払って参ったのか、この点を第二番目にお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/4
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005・天野公義
○天野政府委員 ただいまお話しになりましたような税法学会の御意見や各界の御意見を承り、また政府はそれらの意見を参考といたしまして、この税制調査会の答申というものについて検討いたしたわけでございます。その税制調査会から出ました答申の大部分は、制度化することが必要であるという基本的な立場に立ちまして、先ほど申し上げましたような諸項目につきまして、今回御審議を願っております国税通則法案に盛り込んで、納税者の便宜並びに税の簡素化、合理化、そしてまた、納税者の利益のためという考え方に立って原案の作成に当たった次第でございます。しかしながら、その答申の内容におきましては、なかなか示唆に富んだ御意見と思われるものもあるわけでございますが、その制度化については、現段階においては時期尚早であるとか、また、もっとこれは再検討しなければならないというような問題もあったわけでございます。たとえて言いますと、実質課税の原則に関する規定、租税回避の禁止に関する規定及び行為計算の否認に関する宣言規定、二番目として、一般的な記帳義務に関する規定、三番目に質問検査に関する統合的規定及び特定職業人の守秘義務と質問検査権との関係規定、四番目に資料提出義務違反に対する過怠税の規定、五番目に無申告脱納犯に関する改正規定等、いろいろ検討しなければならない諸点があったわけでございます。従って、これらの項目につきましては、政府といたしましては今後大いに研究しなければならないという立場からいたしまして、この通則法案を作る場合において、答申からこれらの項目のところは抜いたようなわけでございます。今後におきましても、納税者の利益並びに法の民主的な運営、こういう面に主眼を置いて考えなければならない問題がある、かように考えている次第でございます。通則法案につきましては、先ほど申し上げたような観点に立ちまして、今回御審議願っているような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/5
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006・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 現在の租税法体系が非常に問題が多い、いろいろな意味で、基本的な法律構成に関する規定が税法全体を通じて欠けているというようなこと、これは税制調査会も指摘いたしているところであります。さらに規定相互間の不備、不統一というようなもの、あるいは重複等がある、従って、税法についての統一的な理解を困難にし、解釈上の疑義もそういうところから生ずる、こういうようなことも税制調査会で指摘をしているわけであります。従って、今日の税体系、さらに各税における今日の状態というものが、万全であるというようなことは私どもも毛頭考えていないし、これを改正しなければならない。やはり共通事項は何らか一つの法律に盛り込む、あるいはまた税に関する基本的な法律構成、国家と納税者の間における法律関係というようなものを明確に規定していかなければならぬというようなこと、その他税法が非常に複雑難解である、これを簡素化すると同時に、平易にしなければならない。こういうようなことはふだんから私どもも主張いたして参ったところであり、さらにまた、納税者の利益を守るということは、今も天野さんが述べられましたけれども、今度の通則法の中にも一部納税者の利益と思われる面もないではありません。そういう点では一部の前進というものはあるわけでありますが、しかし、まず国税通則法を先ほど申し上げたように倉皇として提案をして、そしてしかも、その形というものは、重要な法律関係の問題等について、抜いた形で出される。しかも一方において、この通則法の中に盛らるべきものとしては、そういうものがやはりもっと民主的な姿をとっててもらえなければ、これはスタイルとしてはまことに中途半端なものになっていると思う。納税者の利益と民主主義の要請というものを、もっと強くそれらの中に入れたものが出されなければならないと思うのです。それがほとんど抜け出てしまっているという状態の中で、しかもまた、一方において一部だけ納税者の利益をはかるというようなことも入ってはおるけれども、この通則法としてはやはり非常に片ちんばなものになってきたということは、おおいがたい事実だろうと思うのです。そういうことになりますならば、やはり各税法をまず最初に改正をして、納税者の利益をはかる部分、こういうようなものは各税法について改正を遂げて、そうしてそういう中では若干、今日以上に複雑なものになるかもしれない。しかしながら、そういった納税者の利益をはかる面については各税法をまず直しておいて、そうしてその利益の上に立って今度は租税関係全般を洗い直す。そして今日、納税者大衆からおそれられているような、先ほど政務次官があげた五つの問題点というようなことなども、これは相当問題があるわけでありますから、そういうものはもっと事態の推移を見、また判例等の積み重ね、あるいは今日における学説等もいろいろまちまちな面もある。それも今度の第一次の改正案等を見ますと、まさに非常に権力徴税が強化される形で出ておったわけでありますが、そういうものなどは、やはり各税法にわたって改めるべきところを改めて、この五項目についても世論を聞きながら改めて、そうしてその上で相当の日子を費やした上で、今度は全面的な通則法でもいいでしょうし、あるいは税法学会が指摘いたしておりますような租税基本法というような形のものに総合的に持っていく、こういうようなかまえが必要じゃなかったかと思うのですが、そういう点についていかがお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/6
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007・村山達雄
○村山政府委員 先ほど政務次官がお述べになりましたように、今度の通則法は、まず納税者に税法を理解していただきたいということが第一点でございます。条文の数でいいますと、この通則法でおよそ二百七十条程度簡素化したというふうにわれわれは考えております。同時に、体系的にも、従来各税法の中に税額算出までの実体規定と、それを実現し、あるいはその後における賦課権の行使、修正申告、あるいは納税の猶予、あるいは担保、それから租税債権の消滅あるいは不服審査、こういういわば実体規定ではなくて、各税を通ずる手続的な規定、これが各税の中に一緒にありまして、しかも各税ごとにございますので、非常に重複しておってわかりにくい、むしろこれらのものを共通のものとして国税通則法で規定すれば、実体規定は各税法を見ていただけばわかる、それから手続規定は、各税に共通なものとして国税通則法を見ていただけばわかる、こういうふうにしまして、条文の数を減らすだけではなくて、体系的にもその点がはっきりするであろう。しかも、従来各税法を通じてそうでございますが、税法の基本的な法律関係で不明確のものが非常に多い。納税義務はいつ成立するのか、いつ確定するのか、従って、確定があって初めて納付の問題があるわけでありますが、その成立、確定、納付、その間の法律関係がはっきりしない、あるいはいわゆる更正決定の権限というものと国税を収納する徴収権というものは性質的に違いがあるのかないのか、それらは除斥期間なのかあるいは時効であるのか、こういう点がはっきりいたさないために、非常にその基本的な性格は不明であったわけでございます。これらの点をこの国税通則法におきまして同時に明らかにする。これはやはり納税者の方々によくわかっていただくということでございます。
こういうふうにいたしまして税法の全体がわかるということになりますれば、その上に立って納税者の方々の新しい批判も出てくることと思っております。これらの理解の上に立った批判こそが、将来のわれわれの税制をよりよきものにする一つの重要な礎石である、かように考えたわけでございます。
なお、これらの整理をするにあたりまして、各手続規定ごとに十分検討いたしますと、なお現在納税者にとって少し不利になり過ぎてはいないかという点も多々見受けられますので、それらの点においてはそれぞれ手当をいたしたわけでございます。そういう意味で、この国税通則法は、やはり民主的な租税行政という場合に、何といってもわかりやすいものにするということ、それから基本的な法律関係との関係を明らかにする、それから直すべき事項はどんどん直していく、こういうようにやっておるわけでございます。お話しのように、なるほど答申に盛られました幾つかの事項につきましては今回は除外いたしました。除外はいたしましたが、これをきめなければ通則法の形が整わないものとは、われわれは実は考えていないわけでございます。これらをわれわれが除外いたしました理由は、先般いろいろ述べましたが、その事柄によって違いますが、たとえば実質課税のようなものにつきまして、これはなお頭だけできまる問題ではないというふうに考えておるわけでございます。やはり学説とか判例とかいうものがもっと積み重ねられて、それが実体法にしても何ら弊害を生じないという事態にならないと無理でございます。そういう意味で国税通則法からはずしておるわけでございまして、これらのことが盛られなければ、国税通則法の体をなさないというふうには実は考えていないわけでございます。なお、この答申が出ましてから、各界からいろいろの意見が出ております。これはとくと拝見いたしましたが、いずれも十分それらの意見は参酌いたしまして、現在規定できるものにつきましてはすべて盛り込んだつもりでございます。ただ言うごとく、記帳義務の問題、あるいは質問検査権の問題、これらにつきましては、答申は将来の方向として示唆をしておるわけでございますが、現在としては、それは統合することはまだ時期尚早であるというようなことで残したものはもちろんございます。しかし、今度提案しております国税通則法は、やはりそれがなくても、先ほど申し述べましたような意味におきまして、十分われわれはその理由を持っておるというふうに考えておるわけでございます。
なお、われわれは、今度間接税につきまして、特に物品税等につきましては、ひらがなで全文改正をしております。こういうふうにいたしまして、漸次古い各税法につきましても手を加えて参るつもりでございます。今後問題になりますのは、おそらく所得税法、法人税法をもっとわかりやすいものにするということが、将来検討さるべき問題であろうと思いますが、この場合におきましても、この国税通則法の礎石をまず布石しておきませんと、なかなかうまく受け入れ態勢が整わないような事情もございます。そういうような意味で、この国税通則法と申しますのは、先ほど申しましたような意味におきまして、現段階におきましても十分意味を持っておるというふうにわれわれは考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/7
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008・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 村山さんの説明によれば、まず不備であろうと何であろうと、相当、現行の条文の数だけにしても二百七十からの条文が簡素化されるというようなことにもなる、そのほか納税者の利益の面も若干あるのだ、こういうようなことを述べられたわけですけれども、しかし国民大衆がなぜあれほどおそれたか、そしてまた、今日も相当根強い反対が消えないか。実質的に、非常にその人たちのおそれた最大の眼目である五項目は、なるほど将来の検討にゆだねられた。しかしながら、今度現われた中でも、やはり非常に問題がある。まだまだとても賛成するわけにはいかない、そういう気持が根強く残っておるのは、今度の改正案を見ましても、なるほど幾らか簡素化された点もあろう、平易になった点もあろう、あるいは加算税に見られるごとく、あるいはその他の手続規定に見られるごとく、納税者の利益を幾分考慮したと見られる点もあります。あるけれども、しかし、それにもかかわらず、やはり依然として国庫主義といいますか、権力主義といいますか、そういうものが根強く残っておる。しかも税金は、大体十年前から見れば何倍かにふくれ上がっている。しかも、それの徴税に当たる税務職員というものが逆にどんどん減少している、こういうような中に、しかも国庫主義的な立場からの、どうしても税収を確保していかなければならないという強い要請というものが絶えずある。しかも職員はどんどん少なくなっている現実だ。こういうような中で、やはりこの国税通則法の制定の底流というものの中に、より一そうの権力的な徴税というものを強化することによって、あくまで国庫主義に立った税収を確保していきたい、そういう気持がひそんでいる、こういう疑念というものが国民の多くの納税者大衆の中から抜け切っていないし、また今度の案を見ましても、そういう面が安心のいくような形のものは出ていない。一体今度の案の中で、いわゆる民主的な徴税——税務職員のための、あるいは徴税者の側のための国税通則法という面は非常に強く整備をされたけれども、ほんとうに納税者大衆のための税制、税法、こういう点から見れば、非常にそういう点の配慮というものは欠けているんだということを、私ども言わざるを得ないわけです。何のために一体法人格なき社団、財団を全面的に通則法の中に盛らなければならないのか、あるいは更正請求のためには数多くの理由を付記して請求しなければならないということを言いながら、通則法では、決定をする段階では理由を全然付記しなくてもいい——もっともこれは整備法で、青色申告の場合には現行以上に改悪しているのではないと言われるかもしれないけれども、通則法の中に、請求の段階では、納税者の側にはいろいろな理由をつけなければならぬという要求をしておきながら、決定の段階では、税額と課税標準額を通知すればいいんだ、こういう書き方をなさっている。あるいはまた、租税や税務争訟における訴願前置というものが、行政全般については行政不服審査法あるいは行政訴訟特例法、こういうものの改正を通じて訴願前置というものを、廃止の方向に今向かっているわけでありますが、依然としてこれを残すというやり方——あるいは協議団、審査団というような形にして第三者的なものにする、そういうこともありますけれども、そういう点についても、やはり多くの運用の部分を政令にゆだねる。あるいは税法の解釈の疑義は、これは国税庁長官の指示に従わなければならぬのだ、そういうような点等で、税法における民主主義的な要請というものはほとんどいれられていない、こういうように考えるわけです。そうなってきますと、今主税局長、いろいろと今度の通則法の利点について述べられましたけれども、基本的な問題に対しては、やはりこの通則法というものはこたえるものではない。納税者の民主主義的な立場を擁護する、こういう面では全く配慮が欠けているんだ、こういうことはやはり一番大きい問題点だろうと思う。その点についてどういうように考えられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/8
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009・村山達雄
○村山政府委員 先ほど通則法の三つのねらいを申し上げましたが、御案内のように、税法は、何と申しましても課税の公平を実現するということが基本の理念でございます。そういう意味におきまして、個々の納税者の利益という問題と、それから全体の納税者の利益との調節をどこに置くのかというのが、実は公平のバランスの問題でございます。そういう意味で、今度納税者の利益という点から改正をいたしました点を申し上げますと、そのおもな点でございますが、一つは、御案内のように、加算税の税率を思い切って下げました。無申告加算税につきましては、従来期間の長さによりまして、一〇%から二五%までの無申告加算税でありましたのを、これを全部、期間の長短にかかわらず一〇%にとどめるということにいたしました。また重加算税につきましては、従来隠蔽、仮装にかかる部分の本税額の五割ということでございましたが、これはいろいろ執行をやってみますと、この五割はあまりにも重きに過ぎるということで、今度の通則法では三割に提案してございます。その他附帯税につきましては、御承知の通り現行利子税につきましては三銭、それから延滞加算税につきましては別に三銭、合計して六銭のあれがつくわけでございますが、これを一本に統合して四銭にし、督促状発付の日から十日までは二銭にするということにいたしたのでございます。
また、行政不服の問題につきましても、これは行政不服審査法と相関連する問題でございますが、従来は、税務署の賦課徴収に関する事柄について不服がある場合に文句が言える、こういう制度になっておったわけでございます。今度はそうではなくて、およそ賦課徴収のみに限らず、税務官庁のなした処分一切に対して不服の申し立てができる。しかもその処分は法律上の処分だけでなくて、事実行為を含む。不作為に対してもし文句がある場合にも、その道が開かれるということでございます。さらに従来と同じように、再調査の請求——今度は異議の申し立てになりますが、異議の申し立てあるいは審査請求の段階におきまして、従来でございますと、不服申し立ても、行政処分は執行の停止はしないというのが基本原則でございます。今度の行政不服審査法におきましても、その精神は出ておりまして、ただ本人からの申し立てあるいは職権によって、必要があるときには停止することができるということにとどまっているわけでございます。その点は、今度の行政不服審査法でも同様でございます。われわれの提案しております国税通則法では、それに一歩を進めまして、その場合といえども公売処分は絶対できない。せいぜい租税債権を保全する意味の差し押えまでしかできない。のみならず、その差し押えといえども、もし納税者側から担保の提供があれば、その差し押えをしないという道もまた開くのである、こういうふうにいたしておるわけでございます。なお、従来審査請求が非常に複雑でございまして、いわば審査請求は、従来の建前でいいますと、税務署長の再調査の決定を争っておるわけでございます。従いまして、原処分と決定と同時に争われている法律体系になっておりまして、審査決定の段階では本審査、副審査、こういう原処分と決定自体と争われておるという法律構成でございましたが、これを非常に簡単にいたしまして、あくまでも決定後の原処分を争うという道を開いておるわけでございます。この思想に従いまして、手続の併合等についても簡略化をはかっておるわけでございます。たとえば、従来でございますと、それぞれ訴願前置主義がございまして、同じ事案について、更正、再更正とあります。更正が審査にすでに移っている、再更正があった場合に、それは一々異議の申し立てからやってこなくちゃいけなかったわけでございますが、この場合は、異議の申し立てがあれば、同時に審査を併合いたしまして、みなす審査請求といたしまして一挙に解決してしまう、こういう道は開いてございます。なお、再更正について、納税者の方でもし不服の申し立てがなくても、この審査請求を取り扱っておる上級官庁におきましてこの再更正を問題にして、それについて同時に審査の決定自体において直すことができる、こういう道も開いておるわけでございます。また訴訟との関係におきましても、両方すでに最初の更正は訴訟にいっております。再更正がありますと、従来でございますと、訴願前置主義でございますので、一々やって、それからまたその分が訴訟にかからねばならぬ、こういうのを、全部訴訟にそのまま移行さしたわけでございます。こういうふうにいたしまして、その点は納税者だけの問題ではございません。国の事務を遂行いたします場合に、納税者の側もあるいは税務官庁の側も、両方にとって能率的にやる、こういう意味でそういうこともやっておるわけでございます。
なお、たとえば従来期間の制限がございます。たとえばいつ幾日までに申告しなければならぬとか、あるいは決定があってからいつ幾日以内に不服の申し立てをしなければいかぬ、こういうふうなことがございます。この点につきましては、従来は原則として到達主義がとられておったわけでございますが、今度の改正通則法では、その点はすべて発信主義によるという原則を明らかにしておるわけでございます。
そのほかに、従来いわゆる賦課権の更正の制限の期間がございましたが、これは所得、法人、相続につきましては、それぞれ各税法で原則として三年たったら更正はできません、こううたっておりますが、その他の税ではその規定がありませんために、実際の取り扱い上は普通の時効と同じ五年と考えておったわけでございますが、この点を明らかにいたしまして、その他の税につきましても、すべて原則として三年たてば更正決定ができないという点を明らかにする、これまた、結果的に見ますれば、納税者に政府の方の課税権がそれだけ行使制限を受けるわけでございますから、結果的には早く法秩序が安定し、納税者もそれだけ利益を受けるということになるわけでございます。
御指摘の、たとえば訴願前置主義をなぜやめなかったかという問題、これはもちろん問題でございますが、この点につきましては、税務は何分にもかなり専門的な問題であり、毎年々々相当数発生する問題でございます。そういう意味で、やはり相互に能率的に事柄を処理していただく意味におきまして、従来と同じような訴願前置はいたしました。しかし、この点はひとり税法だけでございませんで、これは今の行政事件訴訟法が今度の十月から施行される予定でこの国会で審議されておりますが、その方面の調査会とも十分連絡をとりまして、税務については依然として訴願前置をする方が相互にとって利益である、こういうことでそのようにいたしておるわけでございます。なお、われわれの承るところによりますと、従来と同じように、そういう見地で訴願前置を置く法律は、四十数件数えておるそうでございます。従いまして、税法だけではございません。そのうち、見ますと、おそらく税法あたりは最も大量的に毎年々々処分が行なわれておりますので、これらの四十幾つのうち、やはり税務については最もその必要があるものというふうに、われわれとしては考えておるわけでございます。
今お話しの質問検査権の問題もございましたが、この問題も規定についてはいろいろ検討を要する問題である、あまり急ぐ必要のない問題、あるいは時期の熟さない問題がございます。質問検査権につきましても、各税法につきましてしさいに検討を行ないましたが、各税の質問検査権は、それぞれの税の実体規定の必要から、かなり個別的に規定されておる関係がございますので、これをただ統合しろというだけの理由でわれわれは統合しなかったわけでございます。中身を見ますと、それぞれ発動の沿革なり必要性がございます。そういう意味で、さらに今後深く検討する必要がある、こういうことでいたさなかったわけであります。その点は、たとえば実質課税の原則であるとか、行為計算の否認に関する一般的制限規定であるとか、あるいは今の租税回避の禁止規定を一般的に設けたらどうかということに疑問があると同じように、この問題についても、ただむやみやたらに各税法の規定をそのまま通則法にずらずら並べることは意味がない、それらの問題の解決についてはより深く慎重に検討する必要がある、こういう意味で延ばしたわけでございまして、これらの規定がなければ通則法の体をなさないというふうには、実はわれわれは考えてないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/9
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010・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 国税庁長官にお伺いしたいのですが、行政機関のいわゆる定員法ができた当時の国税行政に携わる職員の定員と今日の定員、それからその間における国税徴収額、こういうものの対比について、一つ数字を示していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/10
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011・原純夫
○原政府委員 定員法制定の時期というのは、今卒然と私思い出せませんが、御存じでしたらそれをまず伺いたいのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/11
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012・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 二十四年です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/12
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013・原純夫
○原政府委員 二十四年前後の税務職員の数というものを申し上げます。資料を出す間ちょっとお待ち願います。——前後から始めて、昭和二十年七月一日の時期における定員は、全部合わせまして二万九千四百十八名、これがだんだんふえて参りまして、二十一年七月には二万七千四十五名、二十二年七月一日——これは恐縮ですが、改正の日で整理してありませんので、毎年七月一日現在で大局がおわかりになると思いますが、二十二年七月一日に非常にこれがふえまして、七万九百九十七名ということになっております。二十三年にはさらにふえまして、七万三千六百七名という数になっております。続いて二十四年から相当置きまして五万七千五百二十二名、自後二、三年大体そのレベルで続いておりますが、二十七年に四万九千四十九名、それがその後はごくわずかな変動がございまして、最近、昨年の四月一日現在では四万七千四百十一名ということになっております。今回お願いいたしております予算と関連して、定員にも若干の変動をお願いしておりますが、これは定員外職員を定員化するということであって、いわば一種の札のつけかえというものでありますが、実質的な増減はございません。大体そういうことになってきております。
なお、ただいま申し上げました数字は、用人または施設関係職員を除きました数字でありますので、ただいま五万五万と言いますのは、それに用人または施設関係職員の数三千三百名ばかり加えたものが五万ちょっとになるということであります。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/13
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014・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 徴税額は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/14
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015・原純夫
○原政府委員 一方で、租税及び印紙収入がどういうふうに推移してきているかということを合わせてのお尋ねでございますが、昭和二十二年度決算額で申しますと——便宜上一般会計分の収入額で申し上げますと、一千四百七十四億円でございます。それから三年飛んで昭和二十五年度は四千五百六十三億円でございます。それから五年飛びまして昭和三十年度は七千九百五十九億円、それから三十四年度に参りますと一兆二千百三十三億円、三十五年度一兆六千百八十二億円、三十六年度一兆七千六百四十六億円ということに相なっております。三十七年度予算額は二兆四百二十一億円、こういうことでございます。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/15
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016・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 今、国税庁長官が述べられたような数字でありますが、職員の数が定員法で五万七千に減って、それからさらに二十七年には四万九千に減って、さらに三十六年では四万七千四百十一人、ことしも実質的にはふえないということでありますから、大体こういう状態。この間における徴税額というのは、二十五年と三十七年を対比いたしましても、概算五倍近くに伸びているわけであります。もちろん、この徴税額に完全に正比例して職員が伸びなければならないなどということを私ども申す気持はございませんけれども、しかし、徴税額がこれだけ驚異的な伸びを示して国税収入というものが上がってきている、それを当時よりも少ない税務職員でやらなければならない、こういうところから私はやはり徴税面における相当な無理が出てくるんじゃないか。そういう無理な形が、あちらでもこちらでも税務署の役人と中小企業なりあるいはその他のところで問題にされるいろいろな事件が発生する原因じゃないか。主税局長は先ほどから一生懸命答弁されておりますけれども、こういう方向でいくということについて、むしろ徴税の任に当たっている国税庁あたりが、そういう少ない人間でより多くの税収を確保していく、そのためにはやはりこういう国税通則法というようなものも必要であったというようなことが、こういう面から裏づけられるのじゃないかと推測をせざるを得ないわけです。そういう点について、私ども、やはり先ほど申し上げた権力的な徴税方式が依然として貫かれている、これはこういう実際的な面からも来ているんじゃないかと疑わざるを得ないわけです。そういう面について国税庁長官はいかにお考えになっておるか、この点明らかにしていただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/16
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017・原純夫
○原政府委員 税務職員五万が一生懸命やってくれて、年々できる限り改善してきているつもりでありますが、まだまだ問題が多く、今非常にいい点をとっていると決して思いません。ずいぶん仕事に足らぬ点もあり、あるいは間違いもあるのではないかとおそれてはおります。ただ、ただいまお話のここ十年なり十数年の経過を顧みて、税収が伸びて参ったということと、定員がほとんど固定的である、ある意味では、最高時に比べますと相当減っておるということから、一人当たりの仕事が非常にきつくなっているんじゃないかという点は、私はそうは考えておりません。と申しますのは、昭和二十五年から比べますと、国民所得自体にいたしまして、当時三兆四千億円くらいでありましたものが、ただいまお話の三十七年度十四兆三千億、約四倍でございます。ただいま申しました数字四千五百六十三億の昭和二十五年度税収、四倍いたしますと二兆にかなり近いということで、大体経済自体、国の営み自体が大きくなってきている。従って、一人当たりの営みのものさしといいますか、これが全然違ってきていると思うのです。ですから、われわれの月給も何倍かになっておりますし、一人の仕事量というものがずっと大きくなってきているわけであります。それを数学の比例でふやしていったんではとうてい経済が回らないということで、これはただいまおっしゃるようなことはない、私はそういう角度で人が足らぬというふうに思ったことは全然ございません。その点は一つ御了解いただきたい。従って、この通則法によって本来ふやさなければならぬ人間を節約するというような考えは、毛頭持ったことがありません。そういう御質問を受けるのさえどうも私としては意外な、という感じであります。冒頭に税務行政にもいろいろ足らぬ点が多いだろうと申し上げましたのは、やはり申告納税制度になって納税者が自主的に正しい申告をするということが期待されておりますけれども、まだまだやはりその理想には相当開きがある。同時に、税務行政の側でもほんとうに申告納税制度的になり切っているかどうか、ずいぶん私ども努力しているつもりでありますけれども、いろいろまだ問題点、不満の点、努力しなければならぬ点が多いということを申し上げましたので、そういう角度ではやはり税務官吏側のやり方の倫理、同時に納税者側の倫理が一年々々向上するということを、私どもは政府側でありますけれども、納税者側にも呼びかけて大いに努力せんならぬということを痛感いたしております。そういうためには人をよけいいただけると非常にありがたいとは思いますけれども、何せ戦前に比べましたら三倍くらいの定員もいただいていることでありますし、世の中全般に人も必要だというときでありますので、今の定員でただいま申す意味での大きな改善の努力を一年々々続けているというふうに御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/17
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018・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 税制調査会の資料によりまして、昭和三十四年当時の法人数だけを見ましても、大体四十三万程度であったわけなんです。ところが、本委員会において最近の法人数を主税局長に伺いましたところが、六十万をこえているだろうというようなことであります。こういうようなふえ方をしている。そうなりますと、こういうようにだんだん少なくなってきつつある職員の数、大体三十六年で四万七千、その前あたりは幾らか多かったかもしれませんけれども、幾らでもない。これはほとんど動きのない数字でずっときていると思うのです。それで法人の数を調べなければならない、あるいは調査の対象になってくるものがその間に約二十万近くもふえる。そういった場合に、一体どういうことが現実の問題として発生するであろう。長官はそういうことを言われることすら心外であるというようなことなんですけれども、現実に調査対象が二十万にふえている。職員はほとんどふえない。もちろんこれは若干内部の切り盛りで法人税の係をふやすというような操作は行なわれるでしょうけれども、それにもかかわらず法人の係というものがそれに見合ったような形でふえているとは私思えないわけです。これは手元に資料もある程度あるわけですけれども、法人の数だけでもそういう伸び方をしている。異常な伸び方です。そういうものに対して現実に起こる事態というのは、やはり調査に行きましても、非常に冷酷と言いますか、きわめてビジネスライクに、権力というものを背景にして相当無理な調べでも何でもしなければならない。いろいろ納得を相手にさせるというような努力、あるいは相手の立場を尊重するというようなかまえ、こういうようなものは当然そういう中から薄らいでいくであろう、そうして権力だけが前面に出て能率を上げていく、こういう姿がやはり今日そういう中から出ているであろうということは容易に想像がつくわけであります。しかも税制小委員会等でも問題になりましたような幾多の事例というようなものもあるわけであります。こういうような点について、依然としてやはりこの国税通則法とは全然関係がないというお考えなのか、あるいは、これだけの人数で、国民大衆、納税者大衆の立場に立って、そういうものを尊重して、そういうものの協力を得ながら無理のない適正な税収を上げていく、こういうものが真にスムーズにいっているというふうに国税庁長官は判断をされているか、全然無理がないのか、そういう点についてもう一ぺんお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/18
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019・原純夫
○原政府委員 税務行政はやはりいろいろ権力を法律で与えられておりますので、権力を与えられている者が時に行き過ぎがあるというようなことについては、これはあり得ることと思い、いつも戒めなければならぬことだと思っております。従いまして、私としましては、長官として職員に三つの柱を示して職員を引っぱろうといたしておりますが、その第一に掲げているのが、税務署が近づきやすい税務署にならなければならぬということであります。第二に、適正公平という税務の本来の命題を忘れないように、第三に綱紀を厳正に保って清潔な職員として働いてくれということを申しております。その中で私としては、近ずきやすくということがやはり一番大事じゃないかということを申し、いろいろな形で言うておりますが、近ごろは、納税者が来たら、兄弟が税務署に呼び出された、問い合わせを受けたというときのように、教わりに来た、相談に来たという気持になってサービスをするようにとまでも申しております。なかなかそれに徹することはむずかしいこととは私も思いますけれども、その点については十分努力はいたしておりますし、これが私たちだけでなく、歴代国税庁の長官、さらには省にあります昔から、そういう気持は一つの大きな柱としてやってきておると思います。従いまして、先ほど申しましたように、通則法で何か権力的なことをやり回るという気持は毛頭ございません。法人の仕事のプレッシャーが最近ふえているということは確かでありますので、実は年々——年々というほどじゃございませんが、二、三年に一回、総定員五万程度の中でやりくりをいたしまして、法人の定員数はここ十年間に相当ふえております。ただいま十年間の数字を全部は持っておりませんが、最近でも、昨年度決心いたしまして、六百人ばかり、法人の定員としては一割程度の増加になっております。まだまだ法人の仕事の量のふえ方には追いつきませんけれども、仕事のやり方も改善していくならば何とかやっていけはせぬか。しかしだんだんふえていくところでありますから、今後も、こういう種類の配置転換と申しますか、これは行なうのが正当だろうと思います。法人の仕事というのは、職員としても一番仕事の中身としましてはやりたいというような気持の多い仕事でありますので、御案内の滞納の方が数字がだんだんよくなって参って、改善がこの十年間顕著なものがありますので、それらも考え合わせて、主として徴収系統並びに所得税と法人税とのウエートから言いまして、十年の間にずいぶん法人の方が多くなったということから、主として所得税、徴収関係から法人系統、あるいは若干資産税系統への配置転換は、これは昨年だけの問題ではなくて相当長く続いていることであり、今後も続くであろう。そういうふうにして仕事量と部課別の定員とのバランスをとるという努力はいたしております。決して通則法で権力的にやろうなどという気持は毛頭ございません。たださっきのお答えの際に申しましたような、やはり納税者の中で相当ごつく向けておるというようなことを聞く場合があります。たとえばブローカーであるとか、要するに表見的である、一見わかるたなおろし資産を持っている商売と、そうでない商売とを対照して言われますように、そういうような見えにくい形の商売について、申告が十分でない、また税務署の調査も十分でないというようなことを指摘せられる。これは一つの顕著な角度をつけての指摘であり表現でありますが、そういう面での問題点はやはり私は相当全般的にあると思うのです。税というものは税務署が権力的に取り立てるというだけのものであってはならない。申告納税制度というのは、納税者と税務署の協力的なものにしよう。あるいはもっと理想的に言えば、納税者が税のルールを知り、そしてどういう取引をしたか、どれだけ所得があったかということは、納税者が一番よく知っているわけでありますから、それを正しく申告して、それでお互いに、この世の中でそれだけの経済行為をやった、それによって所得その他を得たというので、その度合いに応じて公正な税負担をして、そして自分たちの住む社会の経営、建設というものに寄与しようというこの大義に、国民一般、納税者一般がレベルを高めてこれを理解する、そういうふうになっていただくということが大事じゃないか。
〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
その意味から言いますならば、税法でそういう納税者に対する強い期待を表わすということは、私はやはり必要だろうという感じがいたします。本来申告納税制度自体がそういう強い理念に立っているのだと思います。そういう意味では、何も職権でどうするというようなことではなくて、国民一般が互いに肩を組み、手をつないで、フェアにこの財政負担を分ち合おうじゃないかというような方向への事柄は、実は私は何も通則法に関するだけのことではございませんが、大いに進歩するのがよろしいのではないかというふうに感じておりますけれども、今回の通則法案では、本来いわば納税者側に痛いという点が非常に少ないと思いますので、あまりそういう問題はないと思いますが、それはただ痛いという点だけをなくすればいいというだけではなくて、痛くても、ほんとうに脱税的なものがある、それはやはりいけませんよという式のことは、本来直すべきだと思うのです。そういうような点もあってはいかぬのだというようなことでなくて、やはり国の納税倫理、納税に関するレベルを高めるという問題は大問題だというふうに思いますので、これは何も通則法に限る問題でありませんが、税法一般、そういう点では大いに努力せねばならぬと思っております。わが国が申告納税制度を採用いたしましたのは昭和二十二年であります。自来十五年をけみするわけでありますが、およそ一つの国が賦課課税制度から申告納税制度に転換するということは非常に顕著な転換でありまして、それ自体が大きな仕事でありますが、それを税法の上で転換したからといって、一朝一夕でなるものではないと私は思います。これを相当いい点に持っていくためには、税務署の方はもちろんでありまするが、納税者としての国民一般にも十分御努力を願い、協力を願わなければならぬ——協力というのはむしろ少し失礼ななにで、事柄が納税者自体の事柄でありますので、大いに進歩をするという方向に努力が必要なんじゃないかと私は痛感いたします。そういう意味で、まだ日本の現状というものは、賦課課税から申告納税への転換を一つの山登りにたとえるなら、私はまだどこか中腹のところまで——だいぶよくなってきたとは思いますが、中腹のところにあるという感じがいたします。われわれも努力したいと思います。同時に、納税者にも一緒になっていただいて、ますます改善するように相当息長くがんばらねばならぬと思っております。
以上所懐もあわせて申し上げてお答えといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/19
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020・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 国税庁長官の御高説を拝聴いたしましたが、そういう理想と、今度の国税通則法の制定の中で申告納税というものが、すでに本委員会を通過しました物品税法等においても全面的に申告納税方式を導入するというようなことになって現われたのだと思うのですけれども、現実の問題としては、これは各論であとで詳しくやりたいと思っていますけれども、申告納税というものがもう理想通りにいくならば、やはり第一義的にこれがきわめて尊重される、申告がそのまま是認されるというところまでいくことが理想だと思うのです。大体今日の申告納税でも、まだそこまでの理想的な姿にはいっていない。しかも、これをどんどん今の中でふやしていくということは、むしろこれは、基本的な理念においては一致するものがあるけれども、現実に私ども考えるのは、税務職員がこれほど少ないというようなところで、税務職員の手間を省くために、その企業について申告をさせて、そして、その調査の手間を省いていくのだ、しかし、それについての申告した数字に対しては、一体どこまで尊重をし、信頼をするのか、こういうことについては、やはり賦課課税の方式と幾らも違わぬ考え方を持ってそういう申告納税制度というものを扱っているのじゃないか、私どもとしてはそういうところに重大な疑義をはさまざるを得ない。これが実態じゃないか。申告納税制度というものがとられることは、理念的には私どももこれは反対じゃない。しかしながら、現実の運用というのは、やはり税務職員の便宜のために、税務職員の賦課徴収のための第一次的な資料提出を求める程度にしかなっていないのじゃないかということをいろいろな面から伺うわけであります。先ほども申し上げたような更正の問題あるいは更正請求に、いろいろ詳しい理由をつけなければ出せないというような条項も今度の通則法の中に入っている。しかも今度決定する場合には、この理由についてははっきりすべきだというようなことを何も言っていない。そういうようなところに、申告というのは名前だけであって、あくまでもやはり賦課徴収という考え方がそういうところにあるのじゃないかということを疑うわけなんです。そういう実態についてるる国税庁長官の御高見を拝聴したから、その点について答えていただかなくてもいいですが、その疑問と、今日の実態はそうなっているじゃないかということだけ申し上げておきたいと思うのです。
それで、主税局長に質問を移しますが、御承知のように、税法学会の指摘にもございますように、スイスで一九四七年の六月二十三日に、連邦税基本法、いわゆるブレーメンシュタイン草案というものができて、もうすでに十四年も経過している。そうして国民的な非常に慎重な討議に移されて、今日なお法律化していない。これはあまりにも長期過ぎて慎重に過ぎるかもしれませんけれども、非常に先進的な民主主義国スイスにおいてやはりこれだけ慎重な税に対するかまえをとっている。ところが、去年の夏に答申が出ると、とたんにもう八月には第一次草案がばっと出るというように、非常に急いで国税通則法を出してくる。今、私どもの見解によれば、先ほども述べましたように、現在ある税制の中で改正すべき点は幾らでもあり、先ほど主税局長からるる述べたような諸点は現行法を改正することによってもこれは可能なんだ、何も国税通則法をやらなければ、これを制定しなければやれないという法規的の問題はないと思うのですね。そういうものをやらずに、非常に問題の多い通則法を制定するというところに一挙に持ち込もうというこのねらいというものは、やはり何かあるのじゃないか。それで一方において、これは一つの側面ですけれども、税務職員の定員の問題、それから税収の額の問題、そういうところに相当今日でも無理がある。その無理を合法化するような底流というようなものがこの通則法にあるのではないかというようなことを私どもとしては疑わざるを得ないわけだし、また一般納税大衆の不安というものもそういうところにもあるわけなんです。従って、これほど無理をして出す理由というものは乏しい。その点について——スイスの問題は今日十四年間を経過してなおかつ、国民の判断、結論というものが出ていないで、これが法制化されていないわけでありますが、こういうような慎重な態度というもの、この半分でもいいから、あるいは二年なり三年なりの日子を費して、大蔵省の国税通則法についての考えはこうなんだということを天下に発表して、そうして少なくとも二年や三年は、あらゆる方面において討議を通じて練りに練って、あらゆる意見を吸収して出してくる、また、その間におけるいろいろな判例なり学説なりのごときものもこれを中心にして出る、そういうような形の中で、ほんとうに国民が納得し、了解されるような出し方というものをやはりすべきじゃなかったか、こういうように思うのですが、一体、スイスがそこまで長い期間かけてやっているという現状について大蔵省はどんなふうに分析されているのか。大蔵省が非常に短時日の間に法案を作成して出してきたこの考え方について、スイスの場合と比較検討しながら、一つその点についての御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/20
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021・村山達雄
○村山政府委員 われわれはここに通則法を検討するにあたりまして、できるだけ外国の制度も調べてみました。しかし、何分にも外国のことでございますので十分にはわかりません。通則規定を持っておりますのは、アメリカ、西ドイツ、フランス等ではございます。それぞれがそれぞれの規定を持っております。スイスにおいては検討中だということは聞いております。ただ税法は、御案内のように一国の経済の発達、それからその上に積み重ねられた税務行政の積み重ねの上に出るわけでございまして、なかなか一挙に抽象的にこれがいいからということで単にいかないということは、今度政府が、答申にもかかわらず、将来事柄の熟するのを待ったというのもその辺にございまして、やはり通則法にいたしましても各税法にいたしましても、公平の論理、それと実務上の最後の見通し、この両方をもってやっていかざるを得ないと思うわけでございます。そういう意味で、各国の税法は一応の参考にとどまるわけでございます。
非常に早急に出したのじゃないか、こういうお話でございますが、実はこの通則法の問題は、戦前から日本の租税体系ではっきりしない点が多いという点が、あげて研究されておったところでございます。ただ、戦争中戦後を通じまして、相次ぎ毎年税制改正をやって参りまして、根本的な改正をやるいとまがなかった。もちろん大蔵当局といたしまして、戦前からそのつど研究に研究を重ねて参ったわけでございます。去る昭和三十四年の五月十九日に、今度は初めて三年間の調査期間を持った税制調査会が発足いたしまして、毎年々々の改正ではなくて、税法の体系的整備に関していかなる改善策があるか、こういう諮問を受けたのでございます。まさしくこの国税通則法は、その実体規定と相並んで、この答申にこたえるための、一つの諮問事項に合致する事項であったわけであります。自来われわれといたしましては、関係の方々にお集まりいただいて、問題点について検討を続けていただきまして、先ほどお話しのように昨年の七月答申を見たわけでございますが、この間数十回にわたって検討に検討を重ねているわけであります。この答申が出ましたあと、との答申自体は何分にも、各界の経験者あるいは学識者でございますが、非常に広範な問題を含んでおりまして、それだけになるほど示唆には富んでおりまして、研究には値しますけれども、今直ちに実施するということについては、政府の立場でいろいろ考えねばならぬ点がございまして、検討の結果、この際としては時期尚早として見送るべきものは見送る、こういうふうにいたしまして、結論の出ました分を取りまとめて今度は提案いたしたわけでございます。しかもこの提案にあたりましては、答申のうちこれこれの事項についてはこれこれの理由によって今回は制定を見合わせますということを、調査会に一々確かめてございます。調査会に、こういう理由でこの点は落とさざるを得ませんということを申し上げまして、実は調査会の方の了解も得ているわけでございます。そういうわけでございまして、われわれといたしましては決して早急の間にやったわけでもございませんし、また今度のものをもってしては国税通則法の体をなさないというふうには一つも考えていないわけでございます。中身をごらんになっていただいてもわかるように、従来問題になっておる法律的な問題につきましては、できるだけここでもって明快にしたつもりでございます。それから諸手続の規定で、理由なくして不統一だと思われる点につきましては、この点を検討いたしまして、できるだけ統合したつもりでございます。また現状から見て納税者に重きに失すると思われる点につきましては、思い切って各方面にわたってその改善を加えてございます。そういう意味でございますので、これが早過ぎるとかなんとかいう問題ではないであろうというふうに考えておるわけでございまして、先ほども申し上げました通り、この通則法は今後日本の租税体系をわかりやすいものにする、納税者に理解しやすいようにするという意味におきましては、ぜひとも打たねばならぬ布石だと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/21
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022・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 大体各諸外国の例等も十分参酌をしたそうでありますが、主として参酌をしたのが一九四三年のドイツの租税調整法第一条、ナチ・ドイツのものがかなりのウエートを持って参照されたのじゃないか、税制調査会の審議の過程でもそういうことがあったということを私どもは聞いておるわけです。しかもこの第一次草案の実質課税の原則というところを見ますと、「国税の課税に関する法律の解釈及び課税要件となる事実の判断については、その法律の目的に従い、国民の税負担の公平を図るよう、これらの経済的意義及び実質に即して行なわなければならない。」こういうように第一次草案が書かれておったわけであります。この点は今回はたな上げにはなりましたけれども、今申し上げたドイツの租税調整法の第一条に書かれておるものと非常に似通った書き方がなされておるわけであります。このようなものがもし入るとすれば、これは大へんなことだと私どもは考えたわけでありますが、しかし大蔵省がこの答申を受けてまっ先に作ったものというのは、やはり私どもはこれを無視することはできないわけです。見のがすことはできないわけです。やはり大蔵省の基本になる考え方というものはそういうものだということをわれわれに推測させるに十分だからであります。それが非常にナチの租税調整法第一条というものに似ているわけであります。「租税法の解釈にあたっては、国民観、」——国民観というのはとりましたけれど、「租税法の目的及び経済的意義」というものはちゃんと入っているわけです。「要件事実の認定についても、前二項と同じである。」こういうような書き方がなされておる。これがそのまま第一次草案の三条の実質課税の原則ということに移されてきておるというところに、私どもはアメリカのも調べました、フランスのも、西ドイツのも調べましたという中で、やはり権力徴税の最たるものであるナチ・ドイツ時代における税法というものが参酌されたのじゃないか。しかもそれが一部第一次草案の中にそういう形で入ってきた。たな上げされても、やがてこれと同じようなものが、やはりたな上げされた五つの重要項目すべてにわたって同じような考えで、第一次草案に書かれたような答申を受けて、すぐ作業に取りかかって一応書き上げた、そういうものにこれが現われているとするならば、やがてまたこれと同じような形で出てくるのじゃないかということが最大の心配の種なんです。これらについても、先ほどもちょっと主税局長が答えましたこの五つの項目について、特に税制調査会の審議を通じてナチ時代の法律が非常に参照されたという経過の問題についても答えていただきたい。それからこの五つの項目をたな上げしたものについて将来どういうように考えておらるれのか、この点について答えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/22
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023・村山達雄
○村山政府委員 実質課税の原則の問題が、税制調査会において活発に論議されたことは事実であります。実質課税の問題でございますが、これは課税の公平を期するという意味におきましては、課税の公平の実態は何かと申しますと、これは経済的な負担の問題でございます。経済的な担税力対経済的の負担、この関係において公平でけなればならぬ、これがやはり租税の理念であろうと思うわけであります。そういう意味で、現行法でも、この実質課税の原則を具現したといわれる規定はたくさんあるわけでございます。典型的な例を申し上げますと、たとえば信託につきまして、これは法律上は受託者が所有権者でございます。従いまして、民法の形式をそのままとるならば、すべて受託者課税になるわけでございます。しかしあくまでもこの経済的利益は、信託報酬といたしまして委託者が受けるわけでございますから、課税上は委託者がその信託財産を所有しておるものと見て課税いたしませんと、課税の公平を貫けぬわけでございます。またいわゆる譲渡担保という問題がございます。担保のために譲渡しておる。これは担保目的のために形式だけ譲渡しているわけでございます。もし納税者が滞納した場合に、これにかかっていないということになりますと、これまた徴収の方の公平という問題からゆゆしい問題になるわけでございます。これらにつきましては、それぞれ手を打ってあるわけでございまして、そういう場合には、それぞれの実質に従って課税するという趣旨の規定が、所得税法なりあるいは法人税法の中にあるわけでございます。同じように、所得税法の三条の二のところに、法律的の権利の帰属者と認められる者と実際の収益の享受者が違う場合には、その収益の帰属する者に対して課税するといっているのも、またこれにほかならぬわけでございます。また実際の取り扱いにおきましても、譲渡担保をした場合に、その譲渡担保の目的のために機械を移したという場合に、譲渡所得税を課税してはまずいわけでございます。そういう意味で、税の公平の理念からいたしまして、当然ある程度経済的な実質に従って課税するということは、課税の公平上はからるべきものだと思うわけでございます。問題は、それを一般的に規定するかどうかということが論議になったわけでございまして、一々追っかけていくのは大へんなことであるから、一般的規定を置くことについてはどうかということが調査会の論議の対象になったわけでございます。その点に関する限り、一番はっきりしておるのが、今のドイツの租税調整法の規定であるということで、その点について参考になったにすぎません。ドイツの調整法は、御案内のように、ナチ時代にできましたが、これは終戦後根本的な改定を経て今日に至っておるわけでございます。こういうものを一応の参考にしてみたわけでございます。私はその第一次草案なるものを知りませんが、あるいはその途中で、これを法文化すればどんな形になるかということで、一応法文の形にしてみて、その上でどんな弊害が生ずるか、こういうふうな論議として考えてみたただろうと思うのであります。その場合、われわれが今度これを時期尚早だと申し上げましたのは、入れましても、その限界をめぐって非常なトラブルが起きてくるという問題がございます。現行の実質課税の原則でもその限界がどこにあるかという問題は、御案内のように、判例その他でもって非常に争われております。いわゆる意思の虚偽表示による取引というものと、それから実質課税というものが、どの分野でどう働くか、この問題についても非常に問題があるわけでございます。ある者は、虚偽表示と認められるものについて実質課税の規定が働くと言い、それは実質課税の規定を要さないと言い、また要さないと言った場合の実質課税の適用の限界につきましても、学説、判例いろいろあるわけでございます。現行のままに置きましても、もとよりこの問題は事柄のむずかしさのために問題があると思いますが、これを置くことによってどういうことになるかという問題を考えますと、これはまたこの規定があるゆえに、その限界はさらに一その将来の問題となってやかましい問題になるであろうと考えるわけでございます。この点は今の租税回避の禁止についても同様であります。そのときいろいろ議論をなす人がいまして、民法でも普は権利の乱用の規定は何もなかった、あるいは信義誠実の原則というものはなかった、しかし一たん私法においてその権利乱用の一般規定なりあるいは信義誠実の原則が出ますと、それはそれとして、裁判所においていろんな判例の積み重ねがある、そういう意味でも、それは置いた方が将来の立法上、将来の判例を固める方において日本のために非常にプラスになるのだ、こういう御意見もあったわけでございます。しかし何分にも税というものは国民の権利義務に非常に関係する問題でございまして、それがかりにそういう意味では利益になるにいたしましても、制定当時非常にあいまいな問題を残すということになりますと、これはまたその角度から批判されねばならぬ、こういうふうに考えまして、なおこの問題は将来の判例、学説が、大体こういうものが実質課税の原則であるということについて、およその帰趨が見定められるまでは、まだ日本としては定めることは尚早ではなかろうか、こういう意味ではずしたわけでございます。
先ほどおっしゃいましたドイツの租税調整法というのは、そういう意味で、その点に関する規定としては代表的の規定でありますので一応の参考にした、こういうことにすぎません。この通則法全体がドイツのものをまねたとか、あるいはアメリカのものをまねたということではございません。これはあくまでも日本の税法の現実の基礎の上に立って、当面の現実の問題を考えまして、その上で考えられたことでございます。もちろん各国の諸制度はそれぞれなりに一応は参考にいたしましたが、基本的な考え方といたしましては、日本の現状、現在の税務執行の状況、現在の法制の整備の状況、こういう基礎の上に立って今度の提案をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/23
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024・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 理事さんの方から十二時三十分で終わってもらいたいという要請がありましたので、質問を午後に持ち越しまして、午前中の分は一応これで終わりたいと思います。午後また再開と同時に一つ続けさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/24
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025・毛利松平
○毛利委員長代理 この際午後二時まで休憩いたします。
午後零時三十六分休憩
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午後二時十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/25
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026・小川平二
○小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
国税通則法案及び国税通則法の施行等に伴う関係法令の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
両案に対しまして、毛利松平君外二十五名よりそれぞれ修正案が提出されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/26
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027・小川平二
○小川委員長 この際、提出者の趣旨説明を求めます。毛利松平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/27
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028・毛利松平
○毛利委員 ただいま議題となりました本院二十五名提出にかかる国税通則法案及び国税通則法の施行等に伴う関係法令の整備等に関する法律案に対する修正案について提案の理由を御説明いたします。
御承知のように国税通則法の政府原案は、同法の制定に関する税制調査会の答申に基づいて提案されているのでありますが、答申事項のうち、実質課税の原則に関する規定等、若干の項目につきましては、なお将来の慎重な検討にゆだねることとして、その制度化がはかられていないのであります。これは国税通則法制定の趣旨についての誤解を解く意味においても妥当な処置であると考えるのでありますが、同様な観点から見ました場合には、いわゆる人格のない社団等に関する規定についても現行の課税関係に変革を加えるがごとき規定の仕方はこれを避けることとするのが適当であると考えます。従いまして、政府原案のうち、この部分につきましては、国税通則法には、現行の各税法の規定のうち、共通事項が国税通則法に移されることに伴う規定の整備にとどめるとともに、各税法における当該規定も現行通りとするように修正しようとするものであります。
本修正案の案文は、すでにお手元に配付してありますので、朗読は省略させていただきます。
その修正のおもな内容は次の二点であります。
まず第一は、国税通則法についての修正であります。すなわち、政府原案においては、人格のない社団等は、国税に関する法律の規定の適用については法人とみなしておりますが、これを国税通則法の規定の適用については法人とみなすと改めようとするものであります。
次の第二は、国税通則法の施行等に伴う関係法令の整備等に関する法律案についての修正であります。すなわち、現在国会において審議中の酒税法改正法案等の間接税改正法案、並びにすでに国会を通過した通行税法改正法及び印紙税法改正法の規定の中から人格のない社団等についての両罰規定を削除しようとするものであります。
以上が、両案に対する修正案の趣旨及び内容の概要であります。何とぞすみやかに御賛成あらんことをお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/28
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029・小川平二
○小川委員長 修正案の趣旨説明は終わりました。
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030・小川平二
○小川委員長 各案を一括して質疑を続行いたします。広瀬秀吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/30
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031・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 ただいま毛利委員から国税通則法案についての修正案が提案をされておるわけでありますが、このように中途において非常に重要な部分について修正をされなければならないような形の国税通則法案というのは、やはり先ほどから私が申し上げておりますように、非常に何らかの特定の意図というものを底に持ちながら急いで出したということをやはり疑わせるに十分であります。しかも今度の法律案の出し方について、現行法を幾分でも改善する部分も確かにある。そういうものと、今申し上げた底流になっている権力徴税の強化、これを抱き合わせにして出しているという状態が出ているわけであります。しかも今度の各税法の一部改正と、それから国税通則法の制定の問題、これをからめてみてみますと、本来ならば現行法の改正という部分と、通則法という新しい法律の改正の部分とが非常に密接な関係を持っている。それを一挙に通さなければ意味のないようなものを、国税通則法を最初から国会が通るものだというような予定をいたしまして、すべての税法の一部改正案を、全部それとの関連を持たせた改正をやってきている。こういう出し方というものはやはり国会の審議権に対する大蔵省のきわめて独善的な態度ではなかろうかと思うわけでありまして、まず現行の法律の一部改正をやって、そうしてその上でそれらのいい部分を国税通則法の中にやがてはめてくる、こういう段取りを踏んだやり方というものが当然穏当なやり方だと思う。
そこでこの前も入場税法等において問題になりましたごとく、法人格なき社団、財団の問題等もございましたように、国税通則法がもし通らぬとすれば、この法律部分は動かないのだ、読めないのだ、こういうような答弁をなさっているわけです。そういうようなからめ合いにおいて法律を提案され、しかも税法全体を通じて非常に大きな意義を持ち、しかも重大な役割を果たす国税通則法というものをそういう形で出してきたということは、非常に問題だろうと思う。この点一体大蔵省としては、今私が言ったような段取りを踏むのが当然だろうと思うのですが、そのようなことをしないで現在のような姿で一緒に出してきたというこの出し方について、国会の審議権との関係においてどういう工合に考えられておるのか、この点をはっきり承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/31
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032・村山達雄
○村山政府委員 各税法、これはすべての税法を通じてでございますが、やはり税の公平を実現するというためには、政府においてそれぞれ適当な権限を持たないとなかなかむずかしいことでございます。従いまして、その課税の公平をはるかに必要な権限をそれぞれの税法に規定をされておる。それが特に日本の場合他国に比べて権力的であるとは私は考えておりません。ただ、今度の通則法ではそれらの権限につきまして、さらに納税者の利益という観点から適当な調整を加えて提案したつもりでございます。広瀬先生のお話で、これを各税法でまず直しておいて、そうして時期を見て国税通則法にしたらどうかというお話でございます。われわれの考えでは、実はそれでは今の税法において難解複雑なものをわかりやすいものにするという意味は達成できませんので、事柄としては私は同じことだと思うのでございます。案を見ていただいてもおわかりになりますように、非常に基本的な法律関係あるいは手続関係でございまして、先ほど申しましたように、特に権限を強化したという部分はございません。むしろ納税者の利益の側に立ってある程度の調整をしているという点でございまして、それ以外はただこの法律にまとめたという内容でございます。形の上から申しますと、この方がおそらく納税者あるいは国民の方々にもはるかにわかりやすかろう、そうでありませんと、第一、条文の数からいたしましても二百七十条くらい違うわけであります。それから体系の上からいきましても、この方がわかりやすいであろう、将来納税者の方々あるいは国民の方々は、今度はでき上がった国税通則法これ自体を問題にされて、ここはこうすべきである、ここはこうすべきであるという新しい批判も起こしやすいのじゃないか、内容的に考えてみますと、事柄からいいまして、わざわざ各税法で同じ条文を設けて、時を待ってまた国税通則法を制定するというのは、かえって目的に合わないのではないかというふうに実は私自身は感じておるわけでございます。
それからただいまの人格なき社団の問題でございますが、われわれといたしましては、これは全く形式的の整備である、罰則に関して人格なき社団に関する規定を欠いておりますから、ほんとうに整備という意味においてそれは入れるべきである、こういうことで提案しているわけでございまして、それ以上のものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/32
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033・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 それならば実質課税の原則であるとか、あるいは記帳義務の強制であるとか、あるいは資料提出義務に対する過怠税の問題であるとか、いわゆる五項目等につきまして、将来これはもう出さない、国税通則法の中には盛り込まない、こういうようなことがなければ、やはりあの問題が税制調査会からも答申があり、しかもその答申自体も、中山税制調査会長もここで率直に言われておるように、国税通則法についての答申については、私も実はほんとうに弱い、わからないというようなことまで言われておるわけです。やはりその問題点というものは中山先生もよくとらえられておって、そういう率直な発言をされておった、こういうように私ども考えるわけですけれども、そういう点から見ましても、その問題になった点は国税通則法の中にはもう入れないという気持なんだ、こういうことが言われるならば、額面通り私どもも、もちろん納税者の側に立って納税者の利益に重点を置いた通則法の制定だということにある程度了解がいくわけなんですけれども、そういうものはやはり将来の検討に残されておる。とにかく国税通則法という器ができてしまえば、あとはどうにでも中身は盛り込めるのだという懸念というものが、この五項目については何としても残っておるわけです。従ってそういう約束が一体できるのかどうか、それに対する対処の仕方、考え方をこの際明らかにしてもらいたい。国税通則法をとにかく作りたい、それだけ重要な部分を抜いておいて、とにかくこれを通さなくてはならぬのか。私どもの見解では、さっきから何回も繰り返すように、現行法を改正すれば当面は足りるのだという立場でいるわけなんですが、それに対して国税通則法をこの際どうしても通さなければならないということには、何としても私ども疑いの念を晴らすわけにいかない。それはやはりその五項目というものがひっかかりになっておる。将来の検討にゆだねられておるとはいうものの、器だけとにかく作っておけば、あとは少しずつ中身を入れていけばいいのだ、こういう気持がどうしてもあるだろうということを推測するから、私どもひっかかっておるわけです。また大衆もそこに危惧を抱いて、これだけ大きな反対の機運も盛り上がってきたわけです。この点についてわれわれが安心できるような方針が示されるかどうか、この点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/33
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034・村山達雄
○村山政府委員 今度提案しました国税通則法は、われわれの考えとしては、それ自体、自足的なものであって、これだけで今通した方がいいという意味の緊急性は十分持っておると思うわけで、先ほど述べた通りであります。省略いたしました五項目を将来出さないことにするかどうかという問題でございますが、形式的に申しますと、将来の問題は私この立場で申し上げるわけには参りません。ただ私個人の観測といたしまして、今度提案を見合わせました理由から考えますと相当むずかしい。むずかしいと申しますか、判例とか問題によりましては、判例、学説がもう少し固まらないと無理ではないかという事柄の問題はございます。そういう学説、判例が今までの通性をもってしますとなかなかむずかしいのではなかろうか、固まるまでには相当の時日を要するのではなかろうかという個人的な観測はございます。
それからまた守秘義務との関係等につきましても、これまた非常に広範な問題を含んでおりまして、税務だけで先行できるかどうか。これは刑法の問題もありましょうし、あらゆる問題がございます。そういう広範な研究を遂げた上でないとなかなかこの結論は出ないであろうと考えます。
記帳義務の問題にいたしましても、これは記帳慣習の成熟を待たねばならぬ問題だろうと思います。そういう意味で、この記帳慣習の成熟が急速に望まれるかどうか、これは全く今後の見通しにかかる問題がございますが、そう頭で割り切って、これはいいことだからやるという事柄では直ちにはないだろうと思います。やはり税法の問題でございますので、一方においては公平という論理あるいはそれが能率的であるという論理もございますが、同時に一般の学説なり判例あるいは記帳慣習がどの程度まできた、ひいては納税者の方々のその納税に対する意識がどこまできているか、こういう問題も同時にあわせ考えねばならぬ問題でございます。そういう意味で個人的の観測を申しますと、そう早急にはこの問題について結論が出るということはむずかしいのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/34
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035・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 当たらずさわらずの答弁をされているわけでありますが、とにかく今度の国税通則法を見ましても、確かに加算税の面などにおける一部の税収というようなこと、あるいは先ほど村山さんからも答弁がありましたように、争訟手続等あるいは不服申し立て等についても、手続面での若干の改善というようなことはある。しかしながらこの国税通則法ができるならば、憲法で定められた義務として、ほんとうに喜んでその義務を果たそうというような気持に国民をさせていかなければならない。国税通則法が制定される意味というものは、そういうところにも大きく一つあると私は思うのです。この法律が出ることによって、国民がより一そう喜んで納税に協力できるようなものでなければならぬだろうというふうに思うわけです。そこで税法学会でもこの権力主義を排除すべきだということをいわれておるわけですが、その一つとして裁量処分の限界及び基準を設定する必要があるのではないかということ、それから課税処分の合法律性というものをこの通則法の中に明示をする、あるいは信義誠実の原則に反する税務行政処分は違法であるということを書く、あるいは納税義務の発生、変更、消滅に関する規定の拡張解釈やあるいは縮小解釈、類推解釈などを禁止する、こういうようなことなどをあげておられるわけでありますが、今日の税法の中に、遺憾ながらこういう権力主義を排除して、民主的な憲法の大原則である民主主義というものが税法上に明示されている規定というものはほとんどないわけであります。しかも今度国税通則法を作られ、納税者の側に立つというならば、やはりこういう憲法における民主主義の要請を今申し上げたような形で書くことは、最低限度の税法における民主主義の要請にこたえる立場ではないかと思う。今日の各税法を通じてもこういうものがないというところに、税務職員の行き過ぎた質問検査権が行使をされたり、あるいはいろいろな処分が通達等でいいかげんにやられたり、租税法定主義をくずすような形でやられたり、しかも、手続の不備等もあって、泣き寝入りになる。そしてまた、どういう処分をされても、結局はあとがこわいということで、その処分に従わなければならぬというような実態が今日あるわけです。だから、こういう規定こそ、通則法を真に国民の通則法、納税者の立場に立った通則法にするためには、少なくともこういう最低限の要求を満たすような規定を通則法の中に盛り込むべきじゃないか、このように思うのですが、そういう点についての御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/35
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036・村山達雄
○村山政府委員 ただいまお話しになりました、たとえば税法学会の問題で申しますと、裁量処分の限界とか基準の設定、これは租税法に関する裁量を何々できるという形でいっておりますけれども、これが法規裁量であるということは、言わずして当然のことだろうと思うのでありまして、一々言うことがおかしいのだろうと思います。やはり憲法上明示してあるその精神からいいましても、当然それは法規裁量だと思います。課税処分の合法律性の明示、これは租税法定主義でございます。当然のことでございまして、憲法がそのことをうたっておるわけでございます。さればこそ法律で一々書いているわけでございます。違法の処分があってはならぬわけでございます。ありましたら、それぞれあったと思う方については救済手続が開かれているわけでございます。納税義務の発生、変更、消滅に関する規定、これが従来はっきりしておりませんから、通則法においてはっきり書きましょう、ここにいうところの拡張解釈も、縮小解釈も、類推解釈も許さないようにするために、はっきりいたしたい、その案の妥当性において検討していただきたい、こういうことでございます。信義誠実に関する原則、これは何を言っているか、実はよくわかりませんが、実質課税の原則にいたしましても、何にいたしましても、あまり一般的な抽象的規定を税法の中に設けるということはどんなものであろうかという問題でございます。これは実質課税の問題についても、その点が問題になっているわけでございます。この規定を見ないとわかりませんが、どういうことを意図されて、どういう条文を書こうとされるかわかりませんが、一般的に申しますと、あまり抽象的なものを税法で書くことは、かえって税法の法秩序の上で危険性があるというふうに考えるわけでございます。そういう意味で、ここに書いてあることは、おそらくその精神においてはほとんど現行法に盛られていることであろうというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/36
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037・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 今申し上げたような裁量処分の限界及び準準というような問題等につきましても、この裁量処分の限界というようなものについて、具体的にどういう規定がそれでは現行法でございますか。これを制限する、あるいはまた裁量処分はこういう基準に従って行なわれなければならないのだというように、積極的に書いてある規定がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/37
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038・村山達雄
○村山政府委員 これは至るところにございます。たとえば今度の通則法で出しました徴収猶予の延滞税の免除に関するところで、第一項それから第二項は無条件免除になっております。条文で申しますと、今の徴収猶予のところでございますと、四十六条に書いてございます。「税務署長は、次の各号の一に該当する事実がある場合」には、納税を猶予することができるということで、要件は法律事項ですからみんな縛っておりまして、「税務署長は、次の各号の一に該当する事実がある場合において、その該当する事実に基づき、納税者がその国税を一時に納付することができないと認められるときは、その納付することができないと認められる金額を限度として、納税者の申請に基づき、一年以内の期間を限り、その納税を猶予することができる。」こうありまして、それぞれ一号から五号までにその事由が書いてあるわけでございます。「納税者がその財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、又は盗難にかかったこと。」こういうふうに事由が一々書いてございます。一時に納付することができないかどうかというのは、これは事実問題でございますので、それぞれその事実の問題として処理せざるを得ないことでございますが、要件なり、それからどういう場合にできるかということは、このようにすべて条件を明確にしてございます。同じような問題といたしまして、これに関する加算税の免除の規定、八十四ページをお開き願いますと、六十三条でございますが、四十六条の一項、それから二項の一号、二号、今の災害にかかった場合、あるいは本人が病気になった、あるいは負傷した、こういう事由で猶予する場合には無条件免除だ、こういうふうに書いてあるわけでございます。それから第二項は災害によって納期を延長した場合でございますが、これも延長した期間に対応する部分の延滞税は無条件免除でございます。それから三項にいって、先ほど読みました四十六条第二項の三号、四号、それでございます。五号はいずれかに準ずる場合ですから、こまかい問題でございますが、三号になりますと、本人が休業したとか、あるいは四号でございますと事業に失敗したという場合でございます。そのために税金を一時に納付するということが困難でありますと、その困難の限度において猶予いたします。猶予した場合には、今度はその免除の規定がそこに書いてございまして、途中から読みますと、「納税者が次の各号の一に該当するときは、国税局長、税務署長又は税関長は、その猶予をした国税に係る延滞税につき、猶予をした期間に対応する部分の金額でその納付が困難と認められるものを限度として、免除することができる。」とこう書いてある。その次にその事由が書いてあるわけです。「納税者の財産の状況が著しく不良で、納期又は弁済期の到来した地方税若しくは公課又は債務について軽減又は免除をしなければ、その事業の継続又は生活の維持が著しく困難になると認められる場合において、その軽減又は免除がされたとき。」ほかの方が免除されたような場合は、こちらもいたします。それから二号にいきまして、「納税者の事業又は生活の状況によりその延滞税の納付を困難とするやむを得ない理由があると認められたとき。」これは事業とか生活の状況から判定いたします。こういうことでございます。これを見てもわかりますように、徴収の猶予の方は期間の延長を定めまして、最長三年二カ月ぐらいまでいけることになっております。その場合に、ある事由に該当する場合には無条件免除、それからそうでない、ただ金繰りの関係でむずかしいとか、それぞれの事由はございますけれども、その事業に失敗したとか、あるいは休業等の場合におきましては、本人の生活なり事業の状況を見て、そして免除することができる、こういうふうにして、一々法律でその条件を縛っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/38
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039・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 国税庁長官にお伺いしたいのですが、国税庁の今日の徴収方式といいますか、これが大体において通達行政と言われるくらいに、そういう非難が寄せられているわけでありますが、課税処分等が行なわれる場合に、大体法律を税務職員が見てやるというよりは、通達だけを見てやっているというようなことがあるわけであります。その通達はわれわれには目の届かないところにある。そういうことがやはり今日の徴税行政を非常に非民主的なものにしているのじゃないかということが常に疑われておるわけであります。特に標準率表であるとか、効率表であるとか、こういうようなものは厳秘に付されておって、しかも過日それについての裁判所における争いの段階でも、国税庁はこれを裁判の証拠としてすら出すことを拒んだ、こういうような現実もあるわけであります。こういうものについて、これがはたして民主的なやり方であるかどうか、こういうような点について見解を伺いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/39
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040・原純夫
○原政府委員 御指摘の通り、税に関しましては、法令だけでなく、通達というものが相当こうかんに上っております。しかし通達が一般の目に触れないようになっているという点についてはそうではないのであって、大部分の通達は公開通達として天下に公開いたしております。これは、ここでちょっと申し上げるならば、日本の税務行政ないし税に関する全般の制度が非常に民主的であるという大きな柱の一つだと思います。戦前はその点について公開度は相当低かったと記憶しております。しかし戦後、やはり税はみんながオープンにルールを知ってやるという方向に行こうじゃないか、そしてルールについてはいろいろ議論も出るだろう、その議論をオープンに出すようにというようなことも、課税を合理的にやること、また公平にやることという見地から必要であるという考えが出て参りまして、昭和二十五年の税制改正を契機としまして、通達というものを相当詳細に定め、かつこれを天下に公表するという態度をとって参っております。ただしこれは通達全部ではございません。通達の中にも、仕事のやり方についての通達、これはそれぞれ、いろいろな商売にしましても、あるいは家庭にしましても、やり方についてすべてを天下に言いふらすということでなくて、部内の者として言うことは当然なことで、部内にとどめる通達もございます。最的には公開通達に比べればはるかに量の少ないものでありますが、大部分のものは公開し、かつそれによってみんながフェアな、公平な租税関係の実現に努力しようじゃないかという体制になっておるので、これは私は世界にも誇り得る体制だというふうに思っております。これによって税につきましてのもろもろの話なり議論なりというものは活発になり、自後十数年たちますが、その面での進歩があるというふうに私は自負しております。ただ後段に申しましたように、どういうものから調査しろ、一番きわどいところでいえば、この種の業態についてはどうも脱税があるようだ、それはこれこれこういう方法によって調べて、こういう点を資料をとって調べなさい、まずその業態のうち、いついつからこの種のものを始める、いついつからこの種のものを始める、このようなことは公開したらナンセンスのことでありまして、それは御了解いただけると思います。部内の人を動かすについて部内限りとすべき通達は当然あるのであります。ただいま出ました標準率でありますけれども、これにつきましても、私どもはこれを部内限りのものといたしております。その理由は、これが納税者に公開されて、しかもそれが、たとえばある八百屋さんなら八百屋さんの所得標準率が三五なら三五というふうになりますと、それ以上に所得の割合があるという人の場合とそれ以下の人の場合とあるわけです。あの標準率というのは、税務官吏がそれをもって、大体平均的にはこうである、しかし事情によって率の多く上がる業者もあれば少ない場合もある、それらはよく見ておやりなさいというわけでありますが、納税者の中で、それ以上に実際は所得がある人が、それが公開で、それでいくということになれば、それに悪平等で一本になってしまうというような弊害が考えられます。いずれにしましても、納税者に対して、自分の所得は自分の業種においてはこれこれ%以上には出す必要はないというようなことを言うていただくのは、課税の公平を保つ上においてはよろしくないという根本的な考えから、これは年来秘のものとしておるのであります。その他通達では、さっき申しました特殊な、抜けてるものを調べる場合の調べ方、調査には、いろいろの方法がありますが、その種のことは当然外部には出せない。いろいろそういうものはございます。それらを分けて、部内通達、部外公開通達というように呼んでおります。要は、租税法定主義の原則に立って、みんながルールを守りフェアにやろうという限りにおいては、日本は非常に勇敢にその線でやっておるというふうに思います。一般にルールとしてお互いに守るというものでないもの、部内の職員の使い方、動かし方、そういうものに関するものにつきましては、当然部内限りであるわけであります。むしろ通達の公開性というようなものについては、わが国は各国の中でも相当進んだ方ではないかというふうに考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/40
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041・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 標準率表のごときものを公開にできないという積極的な理由は乏しい、私はこのように思うのです。今、長官が答えられたように、ああ、そういうものかということで、それが出ると、大体そこにみな集まってしまう、こういうことなどはやはり納税者を信頼しない立場が一つあるだろう、それと同時に、それがあることによって、その標準率表におけるよりも所得が少ないというようなものをそこへ持っていく手段に当然使われておるのではないか。秘密にされておるから、われわれはそれをつかみようがない、従って、そういう疑問だけが残っておるという姿になっておると思う。そういうことを考えるならば、勇敢にやはり公開をする。大体税務署の考えは、こういうものについては、このくらいの所得があるはずだと一応推定しておるというようなものを出されることは、むしろ必要なことであろう。納税者の納得も得られ、またそれがやはり時勢に応じて改善をされ、適正に改正をされていくためにもやはりそういうことは必要だ。それを秘密にしておかなければ、どうしても徴税がうまくいかないのだ、みんなそこにきてしまう、非常に所得があるものもそれに合わせてしまう、そういうものは税務署で調査をすればわかることですから、実質課税の原則からいえば当然やれることだ、そういう積極的ないい面は残らずして、秘密主義、独善主義、権力主義というようなものだけがそういうようなものの中にあるんじゃないかということが、むしろ今日の徴税行政というものを暗くしておる。それが、非常に国民がおそれている点になっておるのではないか、そういうふうに思う。これは絶対に、どんなことがあっても公表できない性質のものですか、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/41
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042・原純夫
○原政府委員 先ほども申しましたように、やはり私は公開しない方が妥当であると思います、場合を分けて考えますと、所得税、法人税という税においては、青色申告制度というものが御案内の通りあるのであります。けさ申し上げたところとも関連しますけれども、やはり税の関係では、私納税者が自分の所得というものについてガラス張りで出るというような方向が非常に望ましい方向として一つあると思います。社会で国なり地方団体なりがいろいろな設備をする、そういう設備の利益を得て納税者各位も経済活動をして、そして所得を上げられるわけであります。所得の上げ方が多ければ多いほど、その通り社会に対する財政的な負担ということをしていただかなければこれは公平を欠くと思うので、申告納税制度というものは、そういう高い理念に立ってできた制度だと思うのであります。そこで青色申告という制度は、そういう理念を実際によりよく実現するためにあるものでありますけれども、今お話しの標準率というようなものを公開させて、そうしてどうなるかということになりますと、私先ほど申したような、それより実際には率が高い人は黙ってしまって、低い人はおそらくそんなに高くないと言って不平を言うでありましょうが、非常に悪平等的なことにこれが使われるということは実際にきわめてあり得ることだと思います。そしてそれが白色の場合ですと、帳簿も十分についてないというようなことから、標準率のウエートが実際には相当高くなりますが、今お話しのような標準率を公開して、これに悪平等的な引力が働くということになりますると、おそらく青色申告の中でも所得割合が標準率よりも高い人は、きちんと帳簿をつけて青色で出るなんというのはばかみたいなものだ、それでは白になって標準率のなにでいこう、あるいは青色で帳簿をつけるにしても、基本だけ、売り上げだけをつけておいて、あとはつけないというような、一種の退化運動が私は行なわれると思うのです。やはり日本の租税関係というものをよりよいもの、理想的なものに持っていくためには、そういう標準率の生理的な欠陥というものを十分注意して操作しないといけないというふうに思いますので、私は、先ほど言ったように、これは公開すべきものではないというふうに考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/42
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043・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 それではこの標準率というものが課税処分にあたってどういう意味を持っておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/43
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044・原純夫
○原政府委員 課税いたします場合には、商売でありますれば、収入はどうか、つまり売り上げはどうか、それから諸般の経費はどうかというように調べて、それを差し引いて所得を出すということであります。そして相当数の納税者が青色申告になっておりますから、そういう計算をやるについても納税者が協力というか、一緒の態勢がかなりにでき上がっており、これがだんだん伸展していくものと私どもは期待しております。これが課税についての本道であります。
さて、その場合に標準率はどういう作用を営むかということでありますが、標準率といいますのは、八百屋なら八百屋業における売り上げに対して経費がどうあるか、差引所得はどの程度のパーセンテージであるかということを中心に作るものであります。これは実際の課税ケースの記録の中から、なるべく適正なサンプリングを行なって、それによって出ましたデータをずっと集計し、平均して出すものであります。この納税者の帳簿記載状態がいろいろございます。帳簿が全然ないという場合も白色あたりでは相当多いわけでありますが、そういうような場合には、やはり標準率というものの働きが相当強くなって参ります。それは帳簿がないので売り上げというものをどうして確かめるか、いろいろなやり方がありますけれども、ごく通常、代表的にいわれるのは、たなおろし資産というものを見て、そしてその回転率というようなものを考え、それからさらに、その商売の品物が青果商などですと、市場からの仕入れというものがあって、場合によって市場からの仕入れ資料が手に入りますれば、それがいい資料になります。その仕入れをもとにして、どのくらいの割掛をして売っているかというようなことから売り上げを推定する。そして推定された売り上げから、さて経費はどうかということになるのですが、すべて張簿がない、記録がないという段になりますと、非常にむずかしい。そこでそういう場合には、標準率というようなものを一つのよりどころといたします。実際にはそれが店から店へいく経費が比較的多くかかる場合と、比較的少ない場合と、非常に大きな違いがあるわけではありませんが、やはりかなりの分散度合いがあります。実際には、それを精密に、帳簿が全然ないのを神様のように当てるわけにはいきませんから、標準率が一つの引力的な作用を持つ、それは必ずしも感心したことではございませんが、そういうようなことがありますが、私どもとしては、標準率は平均のものであるから、これで一律にやることはなるべくないようにということを教えておるわけであります。白色の場合には、標準率は大体そんなような形で現われてくるだろう。それから青色の場合は、青色で帳簿があるわけですから、頭から標準率を使うというようなことはいたしておりません。ただ非常に標準率と違うような結果が出てきた場合には、サイド・チェックの資料として標準率というものは、やはり一つの参考になるだろう。非常に経費が多い場合、あるいは少ない場合、事情を特に調べるというようなことはあろうと思います。大体そんなようなことが標準率に関して通常使われる使われ方だろうと申し上げてよいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/44
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045・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 ちょっと今の広瀬さんの質問に関連して、国税庁長官の原さんに標準率ということをお聞きしておきたい。
今の医者の方の収入は、健康保険と国民健康保険と生活保護で、ほとんど国民皆保険の関係上全部それに入っておるわけなんです。ところが今度医者の徴税に対して、それ以外に一五%だけは収入に自由診療があるとみなして、それへそれだけをかけろというふうな指示が出ておるのか、そういうことを医者の方へ言ってきておるのですが、その一五%という標準率はどこからおとりになったのですか。それをちょっと御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/45
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046・原純夫
○原政府委員 今藤原さんのお話の点は、私そういう指示をしておりません。社会保険診療をお医者さんがやられる。そのほか自由診療といいますか、これもやられる。従ってお医者さんの収入は、その両者がまざり合っているということは確かでありますが、その比率を一五という数字を言われましたけれども、一五%とかの一定率を示して、これだけはあるという指示はいたしておりません。これはお医者さんによって、また地域によって千差万別であると思いますので、そういうようなことをやるべきものでもないと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/46
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047・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 それでははっきり申し上げますよ。実は医者の方にはほとんど自由診療は現在はないと見ていいのだろうと思います。国民健康保険に入っていなければ社会保険に入っている。どっちかに入っている。社会保険と国民健康保険にほとんど入っています。今それ以外の人というと生活保護だけです。自由診療というのはほんとうはないのです。もしあるとするなら、それは社会保険と国民健康保険を徹底的にやっていないことなんです。皆保険の立場から言いますと、日本人は全部どっちかの保険に入っている。生活保護に行くか医療保護に行くか、どっちかなんです。それ以外はほとんどないのです。ところが今原さんのお話ですと、そういうことは指示しないと言いますが、税務署は一この十五日に申告したのですが、その際に自由診療はないという人に対して、自由診療はあるはずだ、少なくとも一五%はあるはずだから、一五%だけを余分に出しなさいということを言ってきている。ない人はどうするかと言っている。それからもう一つは、この点は今後税務署の方にいろいろ御指示を願いたい。たとえば八百屋さんの組合なら、組合の人たちの中に税務署対策の人、交渉委員というのができてくるのです。それと税務署の窓口との間に相当変な問題がたくさん出てきている。この点はある八百屋さん、あるいは魚屋さんの組合の人たちが対税務費というものを十万から二十万くらいずつ組んでいます。どんな小さいところへ行っても——医師会も組んでいます。そういう費用を組まなければならない。そうして今度は一五%なら一五%、一二%なら一二%はこれをしなければいけないことを税務署でも現実に言っていますよ。そうしてそれを指示しています。その税務署に対する交渉係の人が、やむを得ないので、うるさいから仕方なしにそういうことを聞いて出しているのです。そういうふうな指示が全然ないのに、一二%とか一五%とかいうふうな数を出してくるのが、税務署の人たちだけで出せるものじゃないのです。何か指示があるのじゃないですか。何か標準がなければ出せないはずなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/47
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048・原純夫
○原政府委員 指示はございません。ただ先ほども言いましたように、それはお医者さんによって違い、また地域によって違う。地域によって違うというところには相当の意味があると私は思います。社会保険診療が相当普及しているところと、やはり普及度の低いところとはあると私は思います。従いまして署別には、あるいは署の中でもその普及度によって市町村によって違いましょう。そういうような場合に、この町ならば社会保険が非常に普及しておる、ほとんど全部が社会保険であるとか、あるいはいや自由診療が相当多いというようなことはあるのじゃなかろうかと私は思います。そうである場合に、やはりその署としては大体いろいろなケースを調べてみると、この市のお医者さんの社会保険診療の度合いというものは、平均的に言えばこのくらいだというようなめどを持つということはあると思います。この種のことは、標準率となりますと業態によって全国からデータを集めて全国の平均をとりますが、各地域々々の所得関係のファクターであって、そうしてそういう平均的なレベルといいますか、そういうものがあり得るものについては、おのずから各署においてそういう知識を、平均なり通常はこうであるという形にまとめて、それを調査担当者に教えておくということはあると私は思います。おそらく実例があるとおっしゃるのは、そういう経緯で藤原さんのお耳に入ったということじゃなかろうかと思います。これは標準率と言いますと、売り上げに対する所得の割合ということで何業種というような形になっておりますけれども、およその所得の調査の各結節、各ファクターにおいて、そういう一般の通常のレベルというものがあり得るものについては、そういうレベルをふだんから探って研究するということは、これは税務署の仕事の一つの基礎的なデータとして持つのは、私はあってしかるべきだと思います。ただくれぐれも、それが一律押しつけになったり、またそれによって納税者がそれを逆に利用して悪用するというようなことがあってはいけないというふうに思うのであります。
第二段として、ただいま税務対策委員というものがあって、税務対策費というものが署ごとにといいますか、どの署についても、どの業態についても相当あるというようなお話でありますが、これは私こういうことがあっては非常に困る。けさほども広瀬委員の御質問に対してお答えしました中に、私として三つの柱を立てて職員を指導しております。その一つの柱は、綱紀を厳正にしてやってほしいということでありますが、ただいまのお話は、税務対策委員がこの対策費を集めるときに、集会をして御議論になるというようなことのためにお使いになる分がそのおもであろうと思いますけれども、これは何か職員にお金として渡るとか、経済的利益として渡るというようなことでありますならば、むしろもっと大きく御非難いただいて、私はどんどん改めていきたいと思います。
以上お答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/48
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049・藤原豊次郎
○藤原(豊)委員 その一五%とか一二%は一つの県でほとんど一定です。たとえば私の方は千葉県ですが、千葉県はどんないなかも都市も大体一定の方針、一定の率です。それから今の税務対策費というものは何に使われておるかというふうなことで、その人たちがたとえば納税者が集まって何かいろいろ議論したり、そういうことには使われていません。この金はほとんど税務署員に対する対策です。そうしてたとえば簡単ですけれども、ふろ屋さんもあれば、魚屋さんもあれば、髪床屋さんもあれば、パーマ屋さんもある。そういう各所で大体十万か二十万組んでいる。そうしてそこの税務対策委員に税務署の方は、たとえば青色の場合もそうです。青色の場合としますと、税務署の方は、あなたの方に魚屋が百軒あるとすると、その百軒のうち二十軒くらいは調査しなければならぬ、こう言うのです。それは個々の人に言わないのです。対策委員に言うのです。そうすると対策委員がその指定せられた二十軒の人たちを集めて、おい、こういうことを言っているから……。それから先のことは個々の交渉になってくる。それが現在の実情です。幾らでも例はあげられます。実証もあげることはできます。ですけれどもそれはあなたの方で綱紀粛正せられるというのですからそれ以上つつきませんが、その間に金銭の授受がないということは断言できないと思うのです。こういう意味で私は、ここにも切り抜きがありますが、こういう切り抜きのような状態もございますので、綱紀粛正もお願いしますが、同時にそういうふうなやり方を考えていただきたいと思います。対策委員なら対策委員ができるのですから、事前に、そのできた対策委員と税務署の係とが話し合って、そうして何人かを出して、これをどうこうするというふうなことはこれは税務署のすることなんです。それを係が対策委員を相手にしてやっているのです。こういうやり方は非常に不明朗ですし、いけないです。これだけは今後の綱紀粛正の点では気をつけていただきたい。そこにいろいろな疑惑が持ててきます。
それから標準と言いますが、大体そういうふうな標準が一般に出ているのじゃないですか。千葉県だけでなくて、ほかも出ているだろうと思います。私は医者ですからその点はそう言われているのです。そういう通知を受けているのですからよくわかるのですが、大体一割から一割五分、それを標準にしてやってくれということです。そうするとたとえば私のようなところは保険以外の患者はめんどうくさいから見ないのです。それでも出さなければならないという問題が出てきます。しかもそれを強制的に押しつけてくる。こういう点は考えておいてもらいたいと思います。
それから基準がないとおっしゃいますが、私は基準は何かで作って指示していられるのじゃないかと思う。今はほとんど保険でございますから、二八%の租税特別措置の関係がございますが、前のときには、もう初めから医者の、たとえば外科は幾ら、内科は幾らという基準を作っていられたはずです。それと同じような基準が今もあるのじゃないかという感じがいたしますがどうですか。あなたの方でないとおっしばゃれば一応了承しまして、あとでまた私よく調べて申し上げます。私の質問はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/49
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050・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 今も藤原委員から言われましたように、そういうことが現に行なわれておるということは、先ほども村山さんは、いろいろ裁量処分の問題で現行法でもこうこう書いてあると言っておられたけれども、やはりそういう裁量というものは至るところに現実に行なわれておるのです。そういうものをチェックするための何らかの規定というものがほしいということを税法学会でも言っておると思うのです。ところが先ほど答弁されたような次元において問題をとらえてこういうことを税法学会で言っておるのじゃないと思う。現実にそういう問題があるというところから、こういう裁量処分の限界というものをもっとその実効を上げ得られるような形において明示する必要があるのではないか、こういうことを意味しているのだと思うのです。そういうような点について何ら改善というものがされていないのじゃないか、国税通則法を制定される段階においてもその点が欠けておるのじゃないかと思われるわけです。
ここに東京新聞の千葉版——これは去年の五月ごろだと思うのですが、税務署員がある料理店において暴言した記事が載っているのです。女のサービスが悪い、税金をぶっかけるぞ、こう言ったというのです。これは飲み屋に行って酒に酔った上でのことだということでも、なるほど日本は酒飲み天国だと言われておりますから、酒の上でのことだと言えばそれまでですが、やはり税務署員の頭の中にそういう考えがあって、サービスが悪いぞ、税金をぶっかけるぞと言ったということは勝手な裁量処分があるということを雄弁に物語るものじゃありませんか。これは新聞記事を読み上げませんけれども、現実にそういうことが行なわれておる。これは栃木県においてもあった実例でございますけれども、法務局の職員と結託をして資産、所得等の問題について汚職事件があったわけであります。それは相当大きな脱税をむしろ指示して、そのようにうまく指導をして脱税をさして、そこからリベートをもらうというような内容のものだったわけです。現実にそういうことが行なわれておる。それをやはり有効にチェックするために、今日の国税通則法の段階においてむしろそういうものをこそ出すべきじゃないか。一方においてそういう暴言がはけないような、そういう不正が行なわれないような、そういう意味での裁量処分なりあるいは課税処分における法制の明示ということが非常に必要な段階だと思う。先ほどのような形式的な説明を越えた、実質的にそういうものをチェックするものが今現実に必要だ、こういうことについてどのようにお考えになられるのかということを聞いておるわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/50
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051・村山達雄
○村山政府委員 ただいま広瀬先生の申されたことは、これはやはり事実認定あるいはその基礎としての一般的の知識の問題だろうと思います。これはちょっと法律にはなりかねる問題じゃないか。たとえば今の自由診療が一五%あるかどうか、人によって違いましょうが、それを法律に書くといってもどうにもならぬことでございますから、事実認定は正確にしなくちゃならぬことは当たりまえのことでございます。先ほど言った例の実質課税のところで、法の解釈あるいは事実認定は法の趣旨とかあるいは経済的成果に即してやらなくちゃならない、書けばそういうことになるわけです。しかしそのこと自身が非常に問題を起こす問題でございます。従いまして、そういう意味での法律としての制度という問題と、今の事実認定をどうするかという問題は、少し分野の違う問題じゃないかというふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/51
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052・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 そういう形で答弁を逃げられるということは非常に不満なんです。現実の問題として、そういう事態が起きるのは一体どういうところに原因があるということです。この千葉県の例なんか、あるいは栃木県における職員の汚職事件というような問題がなぜ発生するのか、この点については一体どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/52
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053・村山達雄
○村山政府委員 実際の第一線の仕事は、これは税務官庁も納税者も含めてそうであると思いますが、全般的に見ますと納税倫理の問題、あるいは調査がどれだけ徹底するか、それがどれだけうまく運用できるかという問題が実際問題としてございます。ですから法律でそれが急に改まることでないことは、われわれが通則法を今度提案いたしましてもよく承知しているつもりでございます。やはり一歩々々踏み越えていかねばならぬ非常に長い道であるというふうに考えているわけでございます。ただしかし、それでも法律の制度というものはやはり一歩前進して、現実にやはり足を踏んまえながら漸次合理的な方向、能率的な方向に向かっていくことは必要であろう、こういうふうに考えているわけでございます。税法であるものを規定を設けたからといいましても、なかなか社会慣習なり人の考え方あるいは税務官庁の調査というものが一朝一夕に急にそこまでのレベルに上がるということはむずかしい。ただ制度としてとり得る限りその方向に向かっていくということ以外には制度論としてはないのではなかろうか、かように考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/53
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054・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 なるほど、これはその衝に当たる職員の倫理の問題その他職責に対する考え方の問題、いろいろ個人的な要素というものもあるだろうと思います。しかしやはり税制の面において裁量処分の限界というようなものがもう少し何らか——私も専門家ではございませんから、特にどう書いたらそういうものが前進するかということについて的確なる意見を今直ちに持ち合わせてないわけでありまするけれども、とにかくいろんな段階でもっとぶっかけるぞと言っておどかしの種にするというようなことを考えれば、やはり裁量処分というものがあるのだということを国民は考えているからそのおどかしにも乗るわけです。そういうような点で、幾らおどかされたとしても、税務署でどう来てもこの限界しか裁量はされないのだ、裁量の余地というものはこういうところに限界があるのだという国民の側における安心感というようなものがあれば、現実の問題としてそういうものもなくなるだろうと思うのです。課税処分というものは、やはり法律に合っているのだということがはっきり明示されないで先ほどの標準税率のような秘密独善の中でそれが処理されるということなどは、何らかの形でこれを抑制する方向が法制的にもとられなければならない、そういうことだけはその通りだろうと思うのです。そういう面に向かって一つ前進をはかっていただかなければならぬ。そういう面について今度の国税通則法においては抜けているということを指摘をいたしたいと思うわけであります。
次の質問に移るのですけれども、今この国税通則法を制定して租税公平あるいは租税正義というようなものを実現する方向に向かっているのだと言われるわけでありますけれども、今日やはり租税特別措置法が現存をいたしておりまして、千七百億も一部のものに減税が集中をしておるという現実があるわけであります。そういう中において今日の税制というものが相当権力的に行なわれている。まず私は、この国民の納税意識を高め、また喜んで納得して納税できるような状態にするというためには、こういう通則法を出す以前に特別措置法というものをもっときれいな、国民大衆が納得できるような姿に直すということがむしろ先決じゃないか、そういうようなことをやった上で国税通則法というようなものが取り上げられるということになれば、これはやはりよほど違った迎え方をしてくる、国税通則法に対する反応の仕方というものがあるだろうと思う。こういうような点について、いかに法律的な関係を明らかにするとか、あるいは実質課税の原則——これは消えたにしても、やはり底流として残っていると思うのですが、そういうものをいかに説いてみても、これでは実質課税の原則だ。公平な負担、経済的に同じ条件にあるものは同じ負担だといってみたところで、そしてそういう方向で通則法を作るのだといっても、租税特別措置法では一体どうなるか。これは法律できめれば何でもできるのだ、租税法定主義というものはそういうふうな片寄ったことでも何でもきめていいのかというような疑問も新しく出てくるわけであります。そういうような点についてどうお考えになるのか、一つその点の関係を明確にしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/54
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055・村山達雄
○村山政府委員 先ほど裁量という言葉を使われましたけれども、要するに先ほどの問題は所得が幾らであるかということについて相互にはっきりしない部面がある。これが相互にはっきりして参れば、お互いにそういう折衝を要しないことになると思うのでございます。そういう意味では、この所得課税というものはやはり記帳を推進する以外には本質的にはないのだろうと思うのであります。やはり所得課税に関する申告納税制度というものは、何といっても納税者の記帳がだんだん進んでいく、この慣習をつける以外にはないのでございまして、税務署の調査がどんなに進みましても、また納税者の記憶がどんなによくても、とても一年間の全所得あるいは事業年度中の所得を記憶できるわけはない、これは記録以外にはないだろうと思います。そういう記帳の慣習を醸成する方向に今後の納税制度というものを展開していかなくちゃならぬ、こういうことではなかろうかと思います。
それから、ただいまの租税特別指貫法と通則法の関係でございますが、先ほども申しましたように、各税法では税額算出までの実体規定を書くわけであります。国税通則法は、ここにありますように、そうではなくて主として国民と国との間に溶けるそれらの納税義務の成立、確定、納付による消滅、その間の手続関係をめぐりまして、相互の権利義務の関係を明らかにするということでございまして、分野が違うわけでございます。租税特別措置法はこれは手続法ではございませんで、御案内のように政策目的に出た特別措置ではございますが、その影響するところは実体に関する負担の問題でございます。従いまして租税特別措置は、課税の公平からいえば非常に問題点が多いから、われわれもできる限り、絶えず政策目的を考えたから、時宜に応じて整理の方向に根本的には向かいたいということは、この委員会において種々申し上げているところでございます。それはそれといたしまして、今の実質負担に関する問題として、この租税特別措置法は、そういう意味で今後も検討を続ける必要があると思います。国税通則法はそれとは別の問題でございます。そういう意味で、これはまたこれとして、その必要に応じて制定すべきときには制定すべき問題であろう、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/55
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056・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 それは専門的にそういう答えをされても、国民はやはりそういう答えでは全然納得しないわけです。国税通則法というものを作る前にまずやるべきことは何なのだということにいくわけであります。そういう感覚というのは、国民がそれほ間違っているのだ、だからわれわれはわが道を行くのだというだけでは、これは国民の納得を得られるゆえんではないと思う。そういう国民の今日の税制の受けとめ方というもの全体を通じた上に立って、こういうものを総合的に処理されなければならないと思う。なるほど理屈の上ではそういう区別はつくかもしれぬけれども、しかし国民はそれではやはり納骨しないのですね。そういうことをはっきりしておきたいと思うのです。
それから、今度の通則法の第十三条に、法人格のなき社団について総括的な規定を導入されたわけでありますが、今日までの税法では三十二年に所得税法、法人税法に法人格なき社団、財団の規定を設けたおけでありますけれども、今国会における入場税法であるとかその他万般の税法改正に、この問題を国税通則法との関連において全部導入された、しかもこれが全部課税の対象になるということ、それからいわゆる両罰規定というものを入れられたわけであります。その中で、今日までのところ入場税法に法人格なき社団について何らの規定はないわけですね。この今国会以前の状態です。そういうものに対して、たとえば勤労者音楽協議会といいますか、労研といわれるものなどを課税の対象にするということは、一体どういう根拠に基づいてそれをおやりになったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/56
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057・村山達雄
○村山政府委員 御案内のように、納税義務ないしそれに関連する実体規定につきましては、各税法におきまして人格なき社団または財団で代表者または管理人の定めのあるものは法人とみなす、ということを納税義務の方で書きました規定は、これは御承知のように所得税法、法人税法、それから国税徴収法だけでございます。また両罰規定につきましては、これもまたこの三法だけがはっきり明示しているわけであります。ほかの税法につきましては、大体納税義務者は法人、個人ということを問うておりません。所得税、法人税の場合はその法人たると個人たるとによって全く達って参ります。また相続税法は個人でなければ課税になりません。そういう意味でこの実体を明らかにする必要がある。それ以外のものにつきましては、われわれは、たとえば酒を移出したるもの、こういうふうにありまして、それは法人たると個人たるとを問うておりませんので、これはいわゆる法人格なき社団がやっても当然納税義務があるものと考えております。従いまして、納税義務に関する限り、今度の規定は単なる規定の整備にすぎぬわけであります。ただ両罰規定につきましては、先ほど申しましたように三法についてはございますが、ほかの税についてはございません。これは刑罰に関する一種の治外法権的な結果にもなります。規定の不備だと私は考えております。これは税法に限らす、各法律を見ましても、最近改正が行なわれました税法では、大てい相当数両罰規定が入ってございます。間接税その他で入ってないというのは、これまで大改正が行なわれなかったというようないきさつでございます。そういう意味で、われわれは今度の規定はそういう意味の整備に関する規定である、それ以上のものではない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/57
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058・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 法人格なき社団、財団等に対して今日どのくらいの課税がなされておりますか、課税件数と金額と……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/58
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059・村山達雄
○村山政府委員 これは法人税法の一条二項で、法人につきましては人格なき社団または財団で、代表者または管理人の定めるものであって、かつ税法で定める収益事業を営んでいるものは人格なき法人とみなしてこの法律を適用する、こういう規定になってございます。従いまして、収益事業を営んでいるものだけが統計上裁っているわけでございます。その点申し上げますと、三十五年七月現在の数学でございますが、全体で税務署でわかっておりますのが七百六十一件でございます。そのうち七百六件申告しておりまして、さらにそのうち収益事業から生ずる所得のありましたものが二百八十八件、その所得額八千三百四十八万五千円、税額にいたしまして二千七百十八万九千円でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/59
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060・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 入場税につきましては、その納税義務について規定がないにもかかわらず、労音のごときものから入場税を徴収した例はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/60
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061・村山達雄
○村山政府委員 われわれは当然納税義務があると実は思っておるわけでございますが、今労音のことはわかりませんが、これはおそらく両方ございまして、音楽に関する実績はわかります。これはちょっと古うございますが、三十二年から三十四年度まで三年度におたる件数で、都内のサンプル調査でございますが、七カ所でございます。大体この辺が入場税で言いますと全体の十分の一くらいのウエートを占めております。そこでその三年間のあれでございますが、友の会とかあるいは観賞会等とあります。これがいわば人格なき社団であって、観賞者が作っている人格なき社団であろうと思います。そういうもの全体で五十六件ございます。その他劇団、音楽、舞踊団体、これはおそらく主催者の方の人格なき社団だと思いますが、四百三十五件ございます。その他学生生徒の団体、これは免税主体になっておりますが、百十二件くらいございます。その他がありまして合計でこの三年間で七百三十一件でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/61
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062・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 人格なき社団あるいは財団というものは三十二年までは一切の課税の対象にはならなかったわけですね。そしてこれが一種の社会的な存在ではあるということで、私法上まだ民法においても商法においてもいわゆる権利能力を認められない任意的な団体として、これが人格を否定されて今日に至っておるわけです。税法の面にだけすでに法人税法あるいは所得税法あるいは国税徴収法とかいうところに算入をされたわけであります。しかも今度は各税に全部それが規定をされるということになっているわけでございます、それは一体どういう根拠で——税の主体はやはり財産の主体になり得るものだと思うのです。そういうものを、人格のない、しかも税法だけが先走ったそういうものでこれに課税をするということは、どういう法律的な根拠でそういうものが成り立つわけですか、この点の法率的な関係を一つ明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/62
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063・村山達雄
○村山政府委員 税法だけが先走っているわけではございませんで、実は最近の立法でずっと書いてございまして、たとえば貯蓄銀行法、信託業法、銀行法、無尽業法、独禁法、保険募集の取締に関する法律、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律、頑金等に係る不当契約の取締に関する法律、地方税法、あるいは民事訴訟法では当事者能力を四十六条で認めております。今度の行政不服審査法でも当事者能力を認める案になっております。この人格なき社団、これはむしろ非課税だというわけではございません。たしか戦前は、人格なき社団につきましての取り扱いは、当時はその代表者名義で個人課税をするという取り扱いになっておったと思います。ただし、その代表者の所得と社団の所得が分かれていることがはっきりする場合には、その分は固有の所得と分離課税するのだ、こういうことで、個人として今の累進税率で課税していた時代はございました。その後、戦後になりまして、人格なき社団というのが、世の中の進展に従いまして、だんだんいろいろ出て参るわけでございます。また事業も営むわけでございます。あるいは催しものもやるわけでございます。こういうことになりますと、その人格なき社団は、その本質からいいまして、なるほど法人格はないけれども、本来社団なんだ、その意味では組合と違うので、なるほど所有権の名義とか、そういったものになりますと、登記法その他の関係がございます。これは代表者なり管理人の名前でしなければならぬけれども、その実態においてはやはり社団のものなんだ、従ってそこの社員が待ち分を請求することもできなければ、かりにそれから生じた利益があったときに、それがその持ち分によって帰属するということもないわけでございまして、当然社団のものになるものでございます。そういう意味からいいますと、人格こそないけれども、むしろ社団として、社団たる本質においては法人に近いものである、こういうところに、実質に着目いたしまして、各法とも人格なき社団については両罰規定を入れられたのだろうと思うわけであります。この実体法で入れる必要のあるものといいますとも、今言ったように、ほかの税法ではそれぞれ酒を移出した者とか、あるいは物品を移出した者と書いてございます。この点は、入れるということは単に明確にするということにすぎないと私は思いますが、そうではなくて、今のその他の両罰規定につきましては、これは罰則の適用としては、整備の観点から申しますと抜けているのがやはり法の不備であろう、こういうふうに考えまして、今度は整備という観点からこの点を手当したい、こういう提案をいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/63
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064・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 まず一つは、人格なき社団である社団について、入場税法の中に令まで納税義務者たり得る資格は何も書いてない、それにもかかわらず、人格なき社団である、たとえば労音のごときものに対して、会員が会費を出し合って催しものをする、そしていわゆる不特定多数人の入場を許したというものでもない、そういうような場合において入場税を課してきた、これはまさに租税法定主義からいってもおかしい、全く租税法定主義を離れた勝手なやり方ではなかったか、勝手な裁量処分、類推解釈、こういうようなものをやったとしか見られないわけです。その点の解明というのはどういう工合になさるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/64
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065・村山達雄
○村山政府委員 これはほかの間接税も全部そうでございますが、入場税の書き方は「左に掲げる場所への入場には、この法律により、入場税を課する。」こう課税範囲が第一条に規定してございまして、第三条に「興行場等の経営者又は主催者は、興業場等への入場者から領収する入場料金について、入場税を納める義務がある。」こう書いてございまして、者には法人、個人、人格なき社団をうたっていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/65
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066・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 今読まれたことの中に、人格なき社団というものも、明確に納税主体になるのだという規定が、その中から読み取れないのじゃないですか。それにもかかわらず、労音そのものに入場税を納めさせるということは、今日まで行なわれてきたわけでありましょう。それはやはり租税法定主義からいってもおかしいじゃないですか。しかも人格なき社団であって、今の条文に照らしてもこれはおかしい、納得できない、こういう点があると思うのですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/66
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067・村山達雄
○村山政府委員 先ほども申しましたように、所得税法、法人税法では、法人でなければかけられない。それから所得税法ですと、個人は全体について納める義務がある。無制限納税義務者は別でございます。法人でございますと、源泉徴収にかかる所得税についてだけ納める義務があり、徴収の義務がある、こういう法律構成になっております。従いまして、人格なき社団については、これは法人であるか個人であるかということを、法律上明らかにしなければならぬわけでございまして、そういう意味で、所持税法、法人税法では法人とみなすと、ここまでうたいきっておるわけでございます。その他のものにつきましては、法人である、個人である、人格なき社団である、こういうことを問うておりません。その人格を、ただこういうことをやっておる者ということで抑えておりますので、当然入るとわれわれは解釈しております。それで、念のために先ほど読み上げました貯葉銀行法、信託業法、銀行法云々と、ずっとございますね。これは両罰規定はみな入っておるわけです。規定の対象になればこそ両罰規定が入っておるわけです。しかしこういう法律には、人格なき社団は法人とみなすということは何も書いてございません。それは、たとえば銀行業務を営むものとか、こういうふうに実体的に規定しているわけでございます。そういう書き方をした場合には、当然これが問題になってくるということは、解釈上の当然の前提として両罰規定が書かれておるわけでございます。税法におきましても、納税義務に関する限り、ほかの法律と同じように解釈しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/67
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068・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 法人税法、所得税法では、そういう規定を盛っているから疑義はない、それに対して賛成、反対は別として。しかも、それ以外の法律では法人であると個人であるとを問わないのだ、それでこうした者ということなんだという説明なんですけれども、一体その法律で予想していることは、立法当時においても、これは法人かもしくは個人か、その両方でしかないわけなんですね。法人格なき社団という、第三概念といいますか、権利能力の主体としての第三概念というものは書いてない。するならば、法人でもない、個人でもないものに対して、法人たると個人たるとを問わないのだという言い方で課税するというのは、やはりこれは行き過ぎであり、租税法定主義からいっても納得できないことだ、こういうわけなんです。それでしかも、たとえば労音で法人税まで納めろと言われる、しかも、それは決してその法人に利益が帰属しているというものじゃなくて、業務をやるためにその事業を次に持ち越しているだけであるというような場合に、その法人が、いわゆる企業として、あるいは営業としてやっていくものとはまるきり違う性質のものに対して課税していく、こういうような問題については非常にこれは疑問のある問題であり、しかも今日裁判にもなって係属をしておる問題でございます。そういうものを裁判の確定も待たずこれを法律で明定してしまう、今度は法人格なき社団は全部これは税制上は法人とみなされてしまう、こういうようなことはまさに行き過ぎだと思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/68
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069・村山達雄
○村山政府委員 入場税でも酒でもそうですが、酒の製造者はと、こう書いてあるわけであります。者といったときに人格が要るのかどうか、そういう御疑問を言っておるのだろうと思います。それが個人であろうが、あるいは商法、民法の規定によった法人であろうが、あるいはそういう規定の上に乗らない事実上の社団であろうが、あるいは財団であろうが、これは実質上そこにそのものの財産というものは、あるわけでございますし、またそれに帰属する所得というものは、社会的にも事実としてあるわけであります。またその登記名義がどうであるにしろ、実質上それに帰属する財産というものはあるわけであります。そういう意味で、実質的な権利主体になり得るものは、当然入るものだというふうにわれわれは考えております。またそれを否定すべき条文もないわけであります。また、先ほども申しました銀行法その他各法律でも、そういうものと前提して両罰規定しかないということでございますので、いわばその者というときの一種の言葉の約束だ、こういうふうに読んでいるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/69
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070・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 いずれにしてもこの法人格なき社団というものを、司法上において解決のつかない問題を、税法にだけ持ってきて、そしてあらゆる税法に、管理人もしくは代表者の定めさえあれば、今度はこれを全部法人とみなしてしまうのだという行き方というものは、私は非常に行き過ぎだと思うし、今日法人格なき社団に該当する存在というものは、いろいろあるわけでありますけれども、こういうものを、各税法にびしっと規定していくというねらいは一体何なのかということについて、非常に大きな疑問が諸団体から出されているのです。特に労働組合あるいは民主団体等において、このことによってもうすべて法人とみな去れて、税の対象になるということが、今度は明確に法定されることによって、争いがなくなってしまうわけです。そうしますとどんなところにでも、税の調査だということによって、会計帳簿でも何でも洗いざらいやられるというようなことになって、いわばこの一種の法人格なき社団に対する規定は、今主税局長が言われたような見地じゃなくて、今日の政治情勢が、いろいろな面でだんだん権力的な反動の状態に向かいつつある。そういう中の、一環として、言うならば、これは民主団体に対する一種の租税警職法、租税破防法的なものがこの中に現われたのじゃないか、こういうふうなことで、この問題について民主団体等に、非常に神経過敏なものを持たせている大きな原因になっているわけです。少なくとも今までいろいろ争いがあったので、そういう解釈をとるんだと主税局長は言っておるけれども、そうではなくて、もっと大きなねらいというものがあるのじゃないかということを、私ども疑っているわけであります。これは国税の執行の面にもなろうと思いますが、今度のように、通則法の中で税法上は全部法人にみなすのだ、しかもそれは各税法にもそれが受けられていくということになったら、税務職員は、どんな法人格なき社団にでも行って一切を調べ上げることができる。こういう状態になるわけです、そういうようなことを予想しておられるわけでしょう。この点一つ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/70
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071・村山達雄
○村山政府委員 見解の違いかもしれませんが、納税義務に関する限り、各税法について、現行法でも人格なき社団は納税義務があるのだ。実際具体的に納税義務を問題にするような、そういう人格なき社団が多いか少ないかという話は、これは別だろうと思うのであります。今まであまり人格なき社団についての規定は税法に限らずあまりなくて、これは最近の立法例でどんどん出てきたというのは、人格なき社団なり財団というものがだんだんできてきた。その地位がだんだん向上と言ってはなんですが、だんだんふえてきたということであろうと思うのです。民事訴訟法とか今度できる行政不服審査法についても、その名においてできるいわば当事者能力を正式にそれぞれの公法の上で認められておるということは、やはりそういったものが漸次できつつある、そういうものに関する法律的な関係を明確にしなければならない、こういう社会的の要請があるのだろうと思います。われわれは税法につきましては、納税義務については私はもちろんあると思っております。ただ、ですからわれわれの今度の整備はそういう意味では納税義務に関する限り形式的な整備だと考えておりますが、先ほど申しましたように、今の両罰規定を欠いておる幾つかの税につきましては、これは法の不備であるから、欠陥を補充する、そういう意味の整備をする必要がある。それだけの観点で出しているわけでございまして、先生おっしゃるように、そこに何らかの非常に大きな意図があるのじゃないかとか、そういうことではごうまつもございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/71
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072・原純夫
○原政府委員 私は、各種酒瓶を作るというのが人格のない社団が作っているから納税義務がないということは毛頭考えません。今の酒税法は、主税局長が言われましたように、それは納税義務があるというふうに規定していると思います。また実体的にもそれは当然の考え方であろうと思います。従いまして、今でもそういう団体についての調査は団体が作れば調査をやる。酒税の方は免許の問題がありますから、密造問題以外にはさしあたり起こり得ないのですが、入場税あたりでは当然そういう前提で調査もやるということになっております。何か今のお話の警職法というようなお話がございましたが、この調査権を税の目的以外に使うというようなことを御心配だとすれば、それは私どもとしては実は迷惑なお疑いであって、そんな気持は毛頭ございません。しかし税を適正に公平に納めていただくための調査は今でもしなければならぬ筋合いであるので、これはやらしていただくというつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/72
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073・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 そろそろ質問を終わりたいと思いますが、今、主税局長、国税庁長官からお答えがあったわけですが、たとえば岩手県の教員組合で相当な逮捕者なんかが出たというような場合があるわけなんですが、こういうような場合においても、まず警察がぱっと行って会計帳簿を押えるというようなことから、何のだれがしが何日にどういう会議に出席したというようなことが全部そういう面からわかる。そしてそれに従ってほとんどその処分というものの資料はそこから得られているというような事例を私ども見ているわけなんです。そういうことを労働組合の諸君などが考える場合には、今度やはり全部これが今まで問題のあった点が法律で明定されて、しかも全部法人としてみなされる。しかも各税法にも全部これが入っている、私どもも通行税法なんかに何のために入れたのか、ちっとも見当がつかないようなところにまで入れている。一体これは実質的にどういう効果があるのだろうかということすらわからないわけなんです。そういうようなふうに全面的にこれを取り上げてきたというところに、やはり何らかの意図が今の表面的なお答えの裏にあるのじゃないかということをおそれるし、そういった面でこれは執行の面等においても、税務署も警察もこれはやはり同じ官庁であり、しかも国税通則法の段階で各官庁の提出資料等について免除の義務というようなことも当初の段階では盛るのじゃないか、国税通則法の中に上げてくるのではないかということすら言われておるというようなことをあわせ考えると、この問題は単に今、長官がむしろ迷惑だと、言われた、ほんとうにその通りならば問題はないわけですけれども、現実の問題としてそういう疑いというものは非常に色濃いわけであります。従って、こういうような問題について何のためにここまできちんと整備をしなければならぬのか、今日の法制の中で私どもはむしろ三十二年以前の状態に戻すのが、正しいと思っているわけですけれども、しかもその上に今度はそういう形に持ってきたというところに非常な危惧を抱いているわけなんです。この点についてもう少し明確にそういう意図は全くないのだという点を明らかにしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/73
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074・村山達雄
○村山政府委員 おっしゃる意味が課税に関する規定の整備以外の目的があるかというお尋ねでございますれば、そんな意図はごうまつもございませんということを申し上げておるわけでございます。課税に関する規定を整備するということ以外にはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/74
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075・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 通行税の場合どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/75
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076・村山達雄
○村山政府委員 通行税も全く同様でございまして、法体系を整備するということ以外にはございません。
〔「実費的価値があるのか」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/76
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077・村山達雄
○村山政府委員 これはその事態が起きてから手当をするというものではないだろうと思うのでありまして、法律というものはやはり穴がないように作っておくというのが法体系だと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/77
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078・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 現に通行税などの場合にまで人格なき社団の規定を入れていくというような、実際に法律を制定することによって、何の効果を期待したのか、穴のないようにということだけの答えでありますけれども、はたしてそれだけなのか、とにかく全部入れておけばどの面ででもひっかけることができる、税制の調査に名を借りてどんな調査でもできるのだというところに道を開くのじゃないか、こういう疑いがあるわけなんです。われわれはどう考えても通行税の場合に該当する実例、法律の実効といいますか、効果を取り入れることによって何の効果があるのか、どういう具体的な適用というものがあり得るのか、どう考えても思い当たらないのです。そういう将来のことを予想して、とにかく全部法人格なき社団に対して税の対象にするのだということで抜けのないふうにということでやる意図というものについて、どうしても釈然としないわけです。もう一度国税庁長官と主税局長と二人からその点明らかにしていただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/78
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079・村山達雄
○村山政府委員 ただいま申し述べましたように、ひっかけるとか、あるいはそれ以外の目的などというものはごうまつもございません。先ほど申しましたように税に関する問題でございます。通行税等につきましては場合を考えますと、それは実益のある場合もあり得るようでございます。また今聞きますと若干問題があるやに聞いておりますけれども、しかしそういうところではなくて、その本質のねらいはやはり法の欠陥である、その点の法律関係を明確にしておくべきであるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/79
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080・平岡忠次郎
○平岡委員 関連して。村山さん、ほんとうに通行税に関してわれわれいろいろなことを想定してみても、該当すべき事項が現実に発生し得るかどうか疑いなきを得ないのです。ですから、具体的にそういう事例が起こるべきことの、予見される皆さんのお考えを少し述べていただきたい。人格なき社団は国鉄、日航、関西汽船等々と違う、人格なき社団が脱法的に何をやり得るか、お示しをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/80
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081・村山達雄
○村山政府委員 現在あるものが脱法なんということはわれわれはあまり想定したくないわけでございまして、これは人格なき社団に限らず、法人格があろうがなかろうが、個人であろうが、そういうことは想定したくないわけでございます。ただ法律の規定はその間穴があってはいかぬということでございます。考えられる問題としましては、人格なき社団——今の源泉徴収義務は御案内のように運輸業者でございます。現在運輸業者で人格なき社団はないようでございますが、ただ、今の代理店のようなものに人格なき社団もあるやに聞いております。そういたしますと、切符を売りますと、これは源泉徴収義務からはずれるわけでございます。しかし通行税の方の切符を取り扱っている場合には、記帳の義務が残るわけでございます。記帳の義務違反にございましては、これはあまり罰則適用したことはないでしょうけれども、条文だけずっと考えてみれば、記帳の義務違反について罰則をもし適用したとすれば、料罰規定があれば、そのときに、人格なき社団については法人と同じように罰金刑の適用はあり得る、こういうことにはなろうかと思うわけであります。しかしこれは現実にどういう必要があるからという問題上りも、やはり法律の規定の穴を埋めるということであろうというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/81
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082・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 今までだいぶ長い時間、いわば国税通則法の総論的な部分について質問したわけですが、ほとんど具体的な内容についての質問ができなかったわけです。時間がきましたので、あと、ほかの方に譲りたいと思いますが、またもう一ぺん、ほかの方が触れないところで各論的なこまかい点について質問を留保いたしまして、私の質問を一応終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/82
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083・小川平二
○小川委員長 横山利秋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/83
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084・横山利秋
○横山委員 先ほど村山さんのお話を聞いておると、まことに私は言語道断な気がしている。幾つかありますが、一つだけまず最初にお面を言ておかなければならぬのは、この答申が出た、それに対して、政府としては五項目はたな上げしたという中で、五項目をたな上げしたことについて、頭ばかりでは税の運営はできないからという趣旨のことを言うて、答申を作った人人がまことに実情を知らないからできもせぬことを作ったのだと、端的にいえばそういうことですね。そんなことを言ったって、あなた方、実際問題としては、中へ専門家として参画した。いつもの場合でいうならば、あの審議会なるものは実際は官僚の隠れみのであるという、天下周知の事実じゃありませんか。自分でそういう骨格を作り上げておきながら、 いざ人気がなくなったら、五項目は先生方が頭だけで作ったことで、わしたち責任はない——。そうして今また与党から修正案が出ておる。最初から今日まで作る間に、国税通則法の骨格は全くずたずたにくずれておると私は思う。これをあなたはほんとうにくずれちゃいないと言えるものなら、私はあなた顔を見直したいくらいですよ。自分も参画して、大蔵省も実際は参画をして答申は作ったんだけれども、自分も、答申を作られる先生方に実情判断をいろいろお話しするのにそう十分でなかったというふうな言い方なら、私はわかる。あれはおれは知らない、あれは先生方が頭で作ったんだから実情に合わない、こう思って私はたな上げしました——こういうことは、私はいささか頭脳明晰過ぎると思うのですね。もっと責任感を持った、誠実な態度でやってもらいたいというふうに注文しておきたいのです。もしお答えをしたければしてもいいし、したくてもよければ、それはよろしい。これは特に最初に言うておきます。
そこで、私は各論的にいく役目を仰せつけられたので、総論的なところは、また大臣が出てきたらちょっとやらしていただくことにして、少し問題がこまかいですが、そのおつもりで……。
まず第四節、送達、第十条——書類を送達したときは、郵便物が届いたか届かなかったか知らぬけれども、「通常到達すべきであった時に送達があったものと推定する。」手紙を出して、届いたか届いてないか、おれは知らぬ、届いたと思う日に届いたんだ、こういう勝手な法律があるかしらん。一体税務署から手紙が届いたと推察をして、それによって法律効果ありというふうに判断するのですか。私の質問はたくさんあるのですから、簡単に一つ、そのものずばり答えて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/84
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085・村山達雄
○村山政府委員 最初の答申のことについてお答え申し上げます。
この通則法の問題は、御案内のように非常にむずかしい問題でございます。そういった意味で各界、学識経験の方々、それから関係官庁の方々、いろいろ集まっていただいて、現行法に関する問題を洗いざらい問題にしていただいたわけであります。そういう意味でその答申は、たとえば実質課税の問題にしても経済的効果をねらい、この。ポイントは、確かに課税の公平という意味では非常に重要なポイントだと思うわけであります。そういう意味で十分論議はありました。ただ、われわれも参画しておりましたが、われわれももちろん官吏の立場でございますから、必要なことしか申さないで、主として御意見を伺ったわけでございます。その際、限界の問題についてはやはり非常な問題になったわけでございます。特に今の租税回避の一般規定をもしも設けたときに、たとえばこういう事例は一般規定で読めるだろうか読めないだろうかというようなことまで、いろいろ話したわけでございます。ワン・マン・カンパ二イの芸能法人が来たときに、租税回避でもって打てるだろうか打てないだろうか、こういう問題がございます。そういう意味で実行面の点は重々話しながら、しかしなかなかむずかしい問題だが、ポイントだ、この点は変わりないと思うのであります。今度見合わせようが見合わせまいが、今後の研究問題として当然検討に価する問題だ、こういうことでございます。われわれは今度は落としましたが、結論を申しますと、これらのものを落としたからといって、国税通則法の全構想が価値がなくなったなどとは、ちっとも考えておりません。これはこれとしての問題だというように考えております。
それから今御指摘になりました十条でございますが、「通常の取扱いによる郵便によって前項に規定する書類を発送した場合には、その郵便物は、通常到達すべきであった時に送達があったものと推定する。」これは現行の徴収法の規定をそのまま持ってきております。これは御案内のように、国税徴収法を新しく制定するときに、三年間にわたりまして、我妻委員会で非常に検証されて、できておるわけでございます。ですからそういう意味で、(横山委員「現行法にあるからあたりまえというばかげたことは……」と呼ぶ)特にやるべきことがたくさんあるということでございます。そういう意味で、ごく最近改正したばかりのものにつきまして、特に全部またもう一ぺん再検討してやるということは、実際はいたしませんでした。しかしこの規定の趣旨からいいますと、現存の郵便物の実際の状況からいって、これはこの規定として当時やはり必要があって設けられた規定でありますし、現在においてもその状況は変わらないだろう、こう思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/85
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086・横山利秋
○横山委員 言うておきますが、現行法にあるやつで、都合のいいやつは説明がつかぬけれどもそのまま置いておく、こういう考えはいけませんよ。
次に——私が次と言うときは決して納得しないからだということに御理解願いたい、あなたが答弁が下手だったということは、みなよく聞いてわかっているのだから、あなたの説明に納得できないということは、再質問しなくても十分わかるのだから。
次に5「次の各号の一に掲げる場合には、交付送達は、前項の規定による交付に代え、当該各号に掲げる行為により行なうことができる。」つまり税務署が手紙を持っていって、代表者がいなかった場合には「使用人その他の従業者又は同居の者で書類の受領について相当のわきまえのあるものに書類を交付すること。」この「相当のわきまえ」というのは、年は幾つで、分別はどうで、地位はどうで、一体どういう人が相当のわきまえがあるということになるのですか、これは税務職員が、お前は相当のわきまえがある。勝手に判断するのですか、簡単に一つ言って下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/86
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087・村山達雄
○村山政府委員 なかなかむずかしいところでございまして、民事訴訟法でも同じことが規定されております。いろいろ考えまして詰めてみましても、この辺以外には知恵が出ないというところだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/87
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088・横山利秋
○横山委員 そういう答弁がありますか。あなたは相当なわきまえのある人らしいけれども、われわれもそうだが、税務署員が八百屋さんへ行って、御主人は今おりませんわ、お前は相当なわきまえがある、そんなばかな考え方がどこにありますか。年は幾つで、知能程度はどのくらいで、地位はどのくらいの人間で、そうして職名は何か、それを全部政令できめるのですか。(「常識の問題だ」と呼ぶ者あり)そうだ、常識の問題だとだれかが言ったが、その常識の問題が税務行政ではちっともうまくいかない。この「相当のわきまえ」ということや、手紙が届かなくても届いたと「みなす」、こういう勝手な考え方がこの通則法には横溢しているのです。
それからまたその次の行に「これらの者が正当な理由がなく書類の受領を拒んだ場合」、この「これらの者」の中に「相当のわきまえ」のある者もあるわけです。税務署が「相当のわきまえ」があるとみなしたけれども、その人が、私は相当のわきまえがないという、そんなむずかしいことは言わないと思うけれども、主人がおらぬから私は受け取るわけにいかぬ、それじゃ相当のわきまえがあると税務署は見たのだから、本人が正当な理由がなく拒んだというて、一体その拒んだ場合にはどういう処分が行なわれるのですか。正当な理由がなく相当のわきまえのある者が書類の受領を拒んだ場合には、どういう処分が行なわれますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/88
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089・村山達雄
○村山政府委員 先ほどのところは、送達があったものと「みなす」とは書いてございません。「推定する」でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/89
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090・横山利秋
○横山委員 どう違うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/90
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091・村山達雄
○村山政府委員 「みなす」といいますと、それっきりでもうみなされてしまう。「推定」は反証をあげればもちろんけっこうでございます。わからないときには現在の郵便状況からいって推定します。現に届かなかったという何らかの反証があれば、この推定はもちろん破れるわけでございます。
その次に、今申したように「相当のわきまえ」があるというところと、「正当な理由がなく書類の受領を拒んだ」これは全然違うことだろうと思います。「相当のわきまえのあるものに書類を交付すること。」もちろんその意味がわかる程度のわきまえがある人の意味だろう、と思います。しかしその人がわきまえがあるからといって、その受領を拒むか拒まぬかということは、また別問題だろうと思います。わきまえがあれば拒まぬだろうということは、法律論としてはなかなか言えないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/91
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092・横山利秋
○横山委員 うしろへ戻るのはいやだけれども、あなたはわざわざうしろへ戻って「みなす」でない、「推定」だ、推定だということは、あなたの話によれば、相手が反証をあげればそれでいいのだ、そういう挙証責任をこの十条では相手に負わすということですか。「みなす」という場合には勝手にみなす。そうして「推定」の場合には、おれは絶対にもらわなかったという反証をあげればかんべんしてやる、こういうますます勝手な、言い分じゃありませんか。あなたの負けですよ。
次に移ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/92
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093・堀昌雄
○堀委員 ちょっと関連して……。届かないことについて反証をあげられますか。届いているものなら反証をあげられるけれども、郵便は発送した、しかし私は受け取っていないのです。受け取っていない郵便物はどこへ行ったかわからない。その場合に、一体われわれはどうやって届きませんという反証を出すのですか。ちょっとそこを聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/93
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094・村山達雄
○村山政府委員 これは、何だか知りませんが、届かないと主張しているときに、届いたという立証もむずかしいだろうと思います。一方今度は逆に返ってみまして、税務署に、本人が届きませんでしたと言ったときに、届いたという立証をしなさい、これはむずかしいだろうと思います。届かないということ、この立証も事実むずかしいでしょう。それですから、そこで「推定」がありまして、郵便物というものは届くものであるということで、この「推定」が動いているのだろうと思います。ですから今の反証の場合、たとえばこれは通常到達すべきときにおいて届いたものと推定する、こういうことでございますから、おくれているということ——ほとんど大部分の郵便物は届くでしょうが、事実おくれておったということになれば、それ自身は反証になるわけです。その期間についての推定はくつがえるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/94
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095・堀昌雄
○堀委員 今あなたは「推定」というのは「みなす」と違うのだという、どこが違うかと言ったら、反証をあげれば「推定」は取り消しますということが「みなす」と違うという、しかし反証が事実上あげられないでしょう。反証があげられない「推定」は「みなす」と同一じゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/95
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096・村山達雄
○村山政府委員 届いたか、届かぬかということが、まあ最後にないないと両方言っておるときには、おっしゃるようにむずかしいのです。多くの場合「推定」といっているところは、その実益は、その期間について「推定」しておるわけです。ですから、おくれたということは、これは言えるだろうと思います。最終的に、一方は送りましたと言っており、一方は届きませんでした、こう言っているときに、これは届かないことを立証しろといってもなかなかむずかしいでしょう。逆にまた届いたという主張をする方も非常にむずかしいでしょう。だからここは、そういうことはもちろん含んではおりましょうが、主としてねらっているものは、おくれた場合にはおくれたという反証あげれば、この期間に関する「推定」はくつがえるというところに「みなす」と違う実益があると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/96
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097・堀昌雄
○堀委員 今の場合、期間がおくれたということは、この場合は決定的な問題にならないと思うのです。ここでやはり決定的な問題になることは、「通常到達すべきであった時に送達があったものと推定する。」時期の問題よりも「送達があったものと推定する。」ということになっているから、それは時期の問題ではなくて、あったかなかったかの問題がここでは論議になる。そうすると、あったかなかったかの論議について、あなたの方は反証をあげれば「推定」でなくなるのだという。しかし反証があげられなければ、実質的には、形は「推定」と書いてあっても、実体は「みなす」と同じだ、こういうことにならざるを得ないのじゃないかと私は聞いているわけです。時期の問題はいいのです。しかし受け取らなかったということについて、あなたの方は逆に受け取ったという立証もできない。それは受け取ってないものに受け取ったという、立証のできるはずはない。だからこの場合は、この書き方は「推定」と書いたが、実体は「みなす」と書いたと同様で実体的には動いてくるではないか。そうではないという根拠があるならば、それを明らかにしてもらいたい。あなたがさっき言った「推定」というのは、反証があれば動きますということがあなたの言葉による「推定」の定義ですから、それをあなたが言ったのだから、それについて言っているのであって、その論理を発展させていけば、今のように「みなす」と同じことになるのじゃないか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/97
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098・村山達雄
○村山政府委員 こういう推定規定があるということは非常にむずかしい問題で、やはり非常に紛議を生ずることで、こういう問題については通常の確率に従って推定しているのだ、こう思います、実際問題として、この規定が、おそらくいろいろな期限の関係、それから申告の期限の問題あるいは再調査の請求、こういうところにその実益は出てくるんじゃないかと思います。こういう場合には、それぞれ別に宥恕規定がありまして、これが直ちに該当するかどうかは別ですけれども、こういうこともやむを得ない事由があるときには云々、あるいは正当の事由があるときには云々こういうことで、それぞれ弾力条項を持っているわけでございます。これはやはり一般的な今の郵送の状態からいって、郵便局が発送したというのならば、届くと推定する方が通常妥当性を持っているということであろうと思うのです。立証の難易の問題はもちろん事柄によっていろいろあると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/98
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099・田中幾三郎
○田中(幾)委員 関連。これは七十九条に、審査を請求することのできる時期を書いたところがある。いつ幾日知った場合と書いてある。処分の決定を知った場合、知るということは何かやはり税務署から通知がなければ知れないのです。その知る状態におかれるということが、審査の請求をする時期が開始をするのですから、非常に重大な問題だと思う。一日おくれたって権利は消滅するのです。このときから一カ月以内にやらなければ権利が消滅するのですから一日ではすまない。そこで、先ほどから推定の問題を言っておりまするけれども、郵便送達の場合は、ポストへ入れれば大体常識で東京ならば翌日配達になる、九州ならば二日なら二日、三日目なら三日目に到達するのが通常ですから、そのときに到達したものと推定するというこの推定も常識上やむを得ないかと思う。ところが交付の場合は持って行って交付するのです。この郵便通知の場合には記録を作るということを書いてありますね。税務署長、国税局長が記録を残す、いつ幾日書類を送達したという記録を残すということでありますから、役所の方には記録が残るはずです。ところが交付の場合は、税務署員が持って行って受け取らぬ場合には置いてくるのですから、風で吹っ飛んでいく場合があるかもしれない。そこで、ここに税務署の者が持って行って送達の記録を作ってくれるならいい。その記録は何も書いていないでしょう、ありますか。持って行って置いてきた、置いてこないということの問題になるから今の議論が起こるのですよ。郵便で出す場合には帳簿に記入するからわかる。持って行く場合には使いが持って行くのですが、送達証明という記録を何か残す規定になっておりますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/99
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100・村山達雄
○村山政府委員 これは省令の方でそこに渡した場合、差し赴いた場合にはその記録をとどめることになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/100
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101・田中幾三郎
○田中(幾)委員 この十条には何とも書いてないですね。ただそこの場所へ置いてきたらいいというのですね。ですから、記録でもあれば何用幾日の何時に本人が受け取らないからその場所へ置いてきた、差し置いてきた、こういえばいいけれども、何にも記録もないのに局へ帰ってから事務的に書いたところでそんなものは証拠にならないですよ。現場で書くならいいが、帰ってきてからしるすというようなことは証拠にも何にもならない。これは非常に重大な横利の得喪に関する問題だから、十分にそこは規定しておかなければならぬという横山委員の質問はもっともだと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/101
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102・村山達雄
○村山政府委員 これは班行法でも、国税徴収法施行規則の第二条におきまして「税務署所属の職員は、法第五条第二項又は第三項第一号(交付送達)の規定により交付送達を行った場合には、その交付を受けた者に対し、その旨を記載した書面に署名押印(記名押印を含む。以下同じ)を求めなければならない。この場合において、その者が署名押印をしないときは、その理由を附記しなければならない。」ということで、現在でも政令に譲ってございます。今度も最後のところに、九十六条に「この法律に定めるもののほか、この法律の規定による通知に係る事項及び納税の猶予に関する申請の手続その他のこの法律の実施のための手続その他その執行に関し必要な事項は、政令で定める。」ということにいたしまして、この該当条項、条文を引いて書くつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/102
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103・横山利秋
○横山委員 私は、実は問題点を全部提起してあとで結論を出そうと思ったのですが、やはり、一つ一つ切りをつけておかぬといかぬような気がいたします。議論をしておりますと非常に長くなりますから結論的にお伺いをしますが、第十条の「推定する」ということは、あとの九十六条でこれを受けて政令が出るのであるけれども、「送達があつたものと推定する」という「推定」は法律効果を伴わない、拘束力を持たない推定である、つまり税務署が送ったものと考えておるというふうに理解した方が正しいと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/103
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104・村山達雄
○村山政府委員 その点はやはり法律上の推定でございますので、当然当事者に反証がなければ、この推定規定はそのまま適用になるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/104
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105・横山利秋
○横山委員 当事者に届かなかったという反証がなければ、これは税務署の方は送達されたものであるという客観的判断が成立する、これはまことに勝手千万な話じゃありませんか。政務次官お聞きの通りですがどうですか。提案の局長としては、一応ああいうふうに言わざるを得ない立場だと思うのですよ。これは法律なんですからね、これはそういうことを言わざるを得ないと思うが、どう考えてもおかしいと思いませんか。政務次官も相当の分別とわきまえを持っておられると思うのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/105
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106・天野公義
○天野政府委員 なかなかむずかしい御議論のようでございますが、三項のところに、「発送の年月日を確認するに足りる記録を作成して置かなければならない。」という規定がございますし、今度は受け取る方が受け取らないということになりますと、いろいろ御議論があって、ほんとうに受け取らないという場合には、またそこでいろいろ折衝しなければならないと思うのでありますが、一般的には大体これでいけるのでありまして、特殊な場合には、当事者同士でよく話し合いで法律に基づいて処理をするということに結論的にはなるのだろうと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/106
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107・横山利秋
○横山委員 私は絶対その解釈に反対です。あなたは政務次官として私の言うのが正しいと腹の中に思っておられるだろうと思うのです。いざというときには、国は悪いことをしたいのだから、国の末端機関である税務署は悪いことをしないのだから、双方の意見が違ったら税務署の方が正しいという判断をするという考え方が、通則法の全文に横溢しているのですよ。向こうは届かない、こっちは届いた、けんかになったら税務署の方が正しいという言い方なんですよ。そういう考えですよ。そんなばかげたことがありますか。だから私の言うように、送達があったものと推定するというのは、税務署としてそう考えるという一方の立場であって、客観的な拘束力を持つものではない、こう言っているのがあなたにはわかりませんか。わからなければわからぬでもいいですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/107
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108・天野公義
○天野政府委員 大体先ほど申し上げた通りでございますが、重要な更正決定とかそういうものにつきましては、大体書留でちゃんとやっておりますから、その点ははっきりするわけでございまよす。あとのいろいろな問題については当事者同士で話し合いをする、そういうことになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/108
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109・横山利秋
○横山委員 先ほどとちょっとニュアンスが変わって、今当事者同士の話し合いというふうにはっきり明言をされましたので、一応次へ移ります。
十一条は「相続人に対する書類の送達の特例」です。その第二項で相続人のうちにその氏名が明らかでないものがあり、相当の期間内に届出がないときには、税務署長は勝手に相続人の一人を指定すると書いてある。そして第四項で、その者が死んだことを知らない場合においては、税務署は、その相続人の一人に書類が送達された場合には、すべての相続人に書類が送達されたと考える。これもまた勝手な話じゃありませんか。税務署長が勝手に、お前は相続人であるかどうか知らぬけれどもお前を相続人とみなすときめ、相続人がたくさんおった場合には、お前が代表者だと言って、お前に手紙をやるから全部連絡しろ、こういう勝手なことが法律上の拘束力をやはり持ちますか。税法ではこう書いてある、しかし、私は書類をもらいませんと言っても、お前の親戚の相続人にちゃんと手紙が出ているんだからお前には通知がいったんだとがんばってしまうということです。これもまた勝手な話じゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/109
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110・村山達雄
○村山政府委員 この場合は、まず十条の第一項があるわけでございまして、これは相続人が複数の場合には、相互の連絡の便利のために、お互いに関係のあることであるから、その代表者を定めて申し出てくれ、こういうことでございます。その場合に、申し出がない場合には、代表者とすることもできるということでございます。それを受けましてその四項がございまして、「被相続人の国税につき、その者の、死亡後その死亡を知らないでその者の名義でした国税に関する法律に基づく処分で書類の送達を要するものは、その相続人の一人にその書類が送達された場合には、当該国税につきすべての相続人に対してされたものとみなす。」ということでございまして、これは手続上両方の便宜を考えた規定というふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/110
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111・横山利秋
○横山委員 両方便利じゃないですよ。税務署の便利です。四項でも、その相続人の一人にその書類が送達された場合は、すべての相続人に全部届いたものとみなす。そういう勝手なことをせずに、わかっておったら相続人全部に何で送達せぬのです。これもこの通則法が全く税金の取りやすいようにだけ考えてあって、納税者のために書いてないという一例に私は引用しておるのです。これも私は反対をしておるところです。
今度は第五節。人格なき社団ですが、先ほど自民党からこの礼節の削除が提案されました。提案者に少しお伺いをしたいのですけれども、一体どういうつもりで御提案なさいましたか。これはいやらしい言い方じゃありませんよ。さっきから主税局長や国税庁長官が、人格なき社団についてあろうことなかろうこと全部勝手なことを言っている。そこで、あなたの方が第五節を削除されるについて、もちろん私どもが日ごろ言っていることを全面的にではないですね。これは私ども三十二年以前の状態に帰れと言っているのですけれども、それでもこれを削除するという意味においては天下の与党自由民主党と政府といささか考え方の違う点を明らかにされたと思うのですが、その修正の御趣旨をちょっとお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/111
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112・毛利松平
○毛利委員 原案では人格のない社団等に関する現行の課税関係に変更を加えるがごとき規定の書き方になっているが、今回の通則法制定の趣旨にかんがみるときは、このような課税実体に関する規定は、各税法にゆだねることとするのが適当であると考えたのでこれを修正しようとしたものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/112
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113・横山利秋
○横山委員 そういたしますと、少なくとも政府の御意見と違って、人格なき社団については現状の法律規定によってやるべきである、明記されておる法律規定によってやるべきである、こういうことでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/113
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114・毛利松平
○毛利委員 ただいま修正案の提案の趣旨に関して述べた通りであります。要は人格のない社団等に関する課税関係は全く現行法のままに維持しようとするものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/114
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115・横山利秋
○横山委員 それでは、私は修正案をすみからすみまで実は読んでおりませんので、まことに恐縮ですがお伺いをいたしますけれども、この修正案の趣旨といたしますのは、単に国税通則法の第五節削除そのほかのみでなく、整備法に至ってもその趣旨を貫く、それから、わが衆議院を通過した関連法、両院を通過した関連法すべてにわたって今あなたがおっしゃった趣旨を貫いて改正がなされているというふうに理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/115
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116・毛利松平
○毛利委員 その通りであります。国税通則法の施行に伴う整備法においては、関係あるすべての税法につき現行法の規定にとどめるよう所要の修正を加えようとしているものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/116
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117・横山利秋
○横山委員 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/117
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118・毛利松平
○毛利委員 社会党の諸君の要望にこたえて、われわれは友情と良心に従って、また仁義に従ってやったのでありますから、あまり深追いしないように、よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/118
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119・横山利秋
○横山委員 十六条についてお伺いします。
十六条の申告納税方式については、これは現行法にもなかったところですね。ここでお伺いしたいのは、申告納税方式とは「納付すべき税額が納税者のする申告により確定するのを原則とし、」とまず原則をうたって、そのあとで、申告がない場合とか、計算が間違っておる場合とか、あるいは税務署長が調査したところと違う場合とか、この三つの場合に限り税務署長の処分によって確定する方式をいう、こう言っているのです。この趣旨がよう私にはわからぬ。実際文字通り読めば、申告納税だから納税者の出した申告によって確定するのが原則だ。これが大黒柱である。あとはちょちょっとつけ加えたように読める。けれども、実際問題としては——いつか長官だったかだれだったかにお伺いをしたのだけれども、大体納税者というものは、一言で言うなら脱税をしたがっている、そういう気持がある。従って、申告納税についてはまずチェックをするつもりで、万年筆を持って申告書を見るという気持がどうしても税務署のすべてにある。だから文書でこんなことを書いていても、原則はたなの上へ上げて、まず計算が聞違っておりはせぬか、これはごまかしておりはせぬかという気持が先行する。だから私は、ここに書いてあることは、確定することを原則とするということだけにとどむべきではないか、こう思うのです。そうすると、それじゃ横山君は何か納税者の言ったことは全部のむかというあなたの答弁があるかもしれぬ。そういう点はうしろの方にいろいろ書いてあるからいいじゃないか。ここでは申告納税方式の基本原則をうたうだけでいい。こういうことを書いておくと、税務署長、税務職員は、やはりまず万年筆を持って疑ってかかるという気持が抜け切らぬ、こう考えるのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/119
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120・村山達雄
○村山政府委員 ここで書いてあります確定と申しますのは、たとえば抽象的に申しますと、暦年が経過すると、所得税法は、客観的な事実は一つございますので、従いまして、そこで納税義務が成立するということで通則法では扱っておりますが、税額はその法律要件がきまれば自動向にきまってくる筋合いのものでございます。ただその場合に、納付とのつながりをどうするかというので、確定という言葉を出しておるわけでございます。その場合に、納付の前提としては、確定したものでなければ納付する義務はないのだという、それだけの意味の確定でございます。納付の前段階として確定が要るものとそうでないものを分けてあるわけでございます。従って、申告納税したものが正しい税額であるとか、あるいは税務署長の処分によって追加した部分が正しいとか正しくないとかという問題は別の問題でございます。ただここでは、納付の前段階としてそれが具体的に確定しなければならない、これだけの意味で書いてあるわけでございます。申告した分は申告したなりに、それはそれとして確定するが、あとで読んでいただくとおわかりになりますように、その分は納付書で納めて下さい、あとで税務署長が調査したところと違うということになれば更正するかもしれない、増額更正もあるかもしれませんし、それからまた減額更正ということも法律的にはあり得るわけでございます。その場合には、その増額した部分はそれはそれとして処分によって確定する、こういうことがうたってあるだけにすぎません。従いまして、ここは納付との全く技術的の関係が書いてあるたけでございますので、これは申告によって確定する部分、それから処分により確定する部分ということをまずここに出しまして、あとの手続の方で、その場合はどの部分についてそれが確定するのか、相互の法律的の効果の関係はどうなるのかということがその間に響いてあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/120
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121・横山利秋
○横山委員 そうすると、私がひいき目にというか、実のところを言うと、あなたにそう答えてもらいたいために言ったことにどうも答えてくれぬのですけれども、私はこの十六条というものについては、少なくとも申告納税方式というものはどういうものか、納税者が自主申告をする、自主申告を尊重して、それによってとにかく税額も決定し、納めてもらうというのが申告の基本原則であるというふうに理解すべきであろう、またそれが望ましいことだ、こういうふうに考えたのですが、あなたは、単に十六条は技術的で、申告をする、納付金が来る、その前に一応確定しておくのだ、あとになってまたそうだということでは、この十六条はやや基本原則的な立場というものがないというわけですね。私の言う意見はわかっていますね。私の言う意見が一体あなたの方でどう思われるか。申告納税という趣旨に沿って、申告したらまず万年筆を持って、赤鉛筆を持ってという考え方を捨てて、それによってまず確定をするという基本原則でいくべきだ、こういう考えなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/121
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122・村山達雄
○村山政府委員 通則法は実はそこは書いてございませんで、納税義務がいつ成立して、それがいつ具体化して、それがどうして消滅していくかということの法律関係を明確にするというところをずっと書いてあるわけでございます。だから、申告納税というものは本来こういう趣旨であるべきだというようなことは、この通則法では書いてないわけでございます。その部分については、もちろんその裏には、申告納税というものがいいから各税法でもってそういうこともやっておりますが、ここではその申告にかかる部分は申告によって確定する、それから処分による分はそれによって確定するという、具体的に納税義務の発生、消滅の過程をずっと書いてあるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/122
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123・横山利秋
○横山委員 あなたがどういうふうにお考えになっておるかということは、その御答弁なりにはわかるのだけれども、みんながこれを読んで心配しているのはこういうことなんですよ。結局この基本原則らしい十六条というものは、いよいよもって税務署長の権限を強化したものだという考え方が頭にこびりついて離れないのです。ここでわざわざそういうことを言う必要はないではないか。あとの方の二十四条にも関連してくるだろうし、そのほか第三款からずっと関連して具体的に条項があるのだから、ここで、税務署長は万年筆を持つんだよ、赤鉛筆を持つんだよ、税務職員は疑ってかかるのだよと言わんばかりの条項を、わざわざ設けるべき必要が特にどこにあろうか、そういうことをみんなが疑っている。だから単なる技術的なことだったら、もう十六条は抹殺するか、私の言うように、申告により確定するのを原則とする、こういうふうに言ったらどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/123
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124・村山達雄
○村山政府委員 ここでねらっておることはそういうことではないのでありまして、具体的の納税義務がいつ発生し、確定後でなければ納付はないんだということを言いたいわけです。確定を待って、その確定部分について初めて納付があるんだ、こういうことを言っているわけでございます。その成立即確定です。確定がありますと、そのあとで納期はきめられるわけでございます。確定後でなければ納期はきめられぬ。こういうものについては成立即確定というわけには参りません。それぞれ申告納税については、その申告によって確定するし、そうでないものにつきましては、処分によって確定する。それぞれ確定部分について、その確定と同時に以降でなければ納付の問題は起きませんという法律構造を明らかにしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/124
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125・横山利秋
○横山委員 それではもうちっと突っ込んで伺いますが、確定したことがあって納付する——今まではそうじゃなかったというのですか、何か十六条によって、あなたのおっしゃるベースによって、今までと今日と違った取り扱いの問題が発生するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/125
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126・村山達雄
○村山政府委員 租税債務の成立、確定、こういう問題はすべて解釈にまかされておったわけでございます。われわれ税務官庁の方では、おそらく事柄の性質上大体これと同じことであろうというふうには考えてはおりましたけれども、しかしそのことはやはり国民の納付に関する問題でございますので、明確にする必要があるということでここに明文を設けたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/126
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127・横山利秋
○横山委員 その明文を設けたことによって法律上の関係が明らかになる。そうすると、申告をする、これが確定をする、そうして納付する、そのあとでまた更正決定する、それが確定する、納付する、こういう二段階に分かれるというわけですね。あなたのおっしゃることはわかりました。そうするとそれからどういう問題が発生するのでしょうかし少なくとも申告して確定して納付して、第一段階のものは税務署としては是認をして、もう動かさないものだというふうに意味をとってもいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/127
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128・村山達雄
○村山政府委員 そういうことではございません。税額はどうしてきまるかというのは、やはりさき申しましたように、抽象的に申しますれば、所得計算期間内における税額をきめる要件、事実、これは客観的にはわかるかわからぬかは別ですが、それによって自動的にきまるわけでございます。それを具体的にきめていく手続を帯いているわけであります。従いまして、申告納税すればそれなりに決定する。それがかりに過少であったとしても、納める義務はその後でなければ起きない。それから更正決定がちょうど正当のところにいくかいかぬかは、また話は別でございます。もしその金額に争いがあれば、お互いにあとで救済手続のところで相互に相談して直していくわけでございます。ただ納付の関係におきましては、どこまでが納税の義務があるのだということだけは明確にしなければいかぬわけでございます。そういう意味で、確定がなければ原則として納付の義務がないのだということをうたっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/128
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129・横山利秋
○横山委員 あなたの議論から、私はもう幾つも幾つも問題が発展しそうなんですけれども、それをやっておりますとあとの条項に関連してきますし、同時に、私の言わんとするベースが違ってきますから言うておきますが、私はこの十六条の第一項によって、あなたのおっしゃるような意図と違った問題が各第一線に生じてくるということを特に私はおそれるのです。もしそうでないとするならば、あなたは、政令や何かをお出しになるときに、この第十六条の一項の内容について、これが私の心配しておる税務署長の権限を強め、そして勝手にやるものではない、そういうことを意図したものではないということを徹底させる必要があると思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/129
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130・村山達雄
○村山政府委員 ここは、今言った税務署長の権限を強くするとか弱くするとかいうことには全然関係ない、具体的の納税義務が確定する手続は、どの部分についてはどういうことによって確定するのか、従って、その次に納付の問題がありまして、その部分については確定しなければ納付の問題が起きないということをそれぞれ明らかにしているにすぎないわけでございます。もちろん、これはどうせ通達も出ましょうし解説も出ましょうが、そのときには当然それらのことが明らかになると思います。これは納付からずっと見ていただきますと、これが非常にそういう意味の具体化の問題であるということが、この法律構成全体ではっきりするのだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/130
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131・横山利秋
○横山委員 一応注文は注文として、私は十六条については賛成はできません。いろいろ将来を想定し、今日までの経過を考えると賛成できません。
ここでちょっと質問検査の問題に入りますが、質問検査権の問題については、一応たな上げの部類でございますから、現状の質問検査権について国税庁長官にお尋ねをいたします。ちょっと技術的で恐縮なんですけれども、去年私が小委員会でやったところで、あなたの方に検討をお願いしておくと言うて残した問題であります。もうお忘れになったかもしれませんが、質問検査権を、所得税法では、六十三条第三号で「金銭若しくは物品の給付をなす義務があったと認められる者」つまりこれは過去の債務者です、それから「金銭若しくは物品の給付を受ける権利があったと認められる者若しくは当該権利があると認められる者」債務者については過去のものだけ質問検査ができる。債権者については、現在過去にわたって質問検査権が発動できる。その次、法人税法では、四十六条で「金銭の支払若しくは物品の譲渡をなす義務があると認められる者若しくは」それらの「権利があると認められる者」法人税法では、過去のことについてはともに質問検査権は発動できない。現在の債務者、債権者に対して、ともに質問検査権の発動ができる相続税法では六十条の第三号において、過去と現在の債権、債務者、それから第五号では過去と現在の債務、債権者、それからあとぎょうさんあるのだけれども、それだけにしておきますが、この現在の所得税法並びに法人税法及び相続税法の質問検査で、たとえば私の横山商店が税法について問題があって調査をするときに、私の取引先なり何なりを調査するときには、所得税法においては、債務者は過去のものだけに限り、私に対する債権者は現在及び過去の債権者に限る、法人税法においては、私の取引先は、現在取引がある、債権、債務があるものに限られる、相続税法においては、現在、過去を問わずに質問検査権が発動できる。これは私は厳密に解釈をしておるのですが、間違いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/131
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132・原純夫
○原政府委員 質問検査権に関する各税法の規定が統一されておらぬという点は確かにございます。そこで、今般の通則法におきましても、これは一つの大きな項目として取り上げられたわけです。私としては、いずれかの将来に統一的に規定する方が望ましいと考えております。さて、現状についてでありますが、たとえば法人税法は、現在の債権者、債務者についてだけだというふうに御指摘がございました。ただ過去のある事業年度の法人税について、それが申告がよろしいかどうかという調査をするというときには、なかなかそう参らぬ場合があると思います。実際の調査には過去のものもお伺いするということもあると思います。その辺のところを規定を非常に厳密にお読みになって、それはいかぬのだというふうにおっしゃるのか、あるいは今朝来申しておりますように、税というものは正しく公平に納税されなければならぬし、われわれの調査もそうしなければならぬというふうに思いますので、率直にいえば、若干、出ている法律を非常に狭く読むという見地からいえば問題は別にあると思いますけれども、その辺のところは私、何というか、もう少し実体的な公平ということを考えて御容赦を願いたいというか、御了承願いたいと思います。申告納税制度になってまだ短く、かつ制度をとりました経過が、御案内のように非常に混乱した社会情勢で新しい制度に振りかわっていったというような関係から、重々不備な点があると思いますが、私どもの気持としてはそういうことで、これは決して法律を無視してどうというような態度をあつかましく申しておるわけではございません。けれども事柄の実体からいって、ぎりぎり聞かれれば、法律はそう書いてあって、そのようにやらなければいけないのでありますけれども、実際に調べる場合にはそれだけでは済まない。それを法律の規定がなければいかぬというかどうかという問題も出て参りますけれども、それはそれでいかぬということには必ずしもならぬというふうに私は思います。ただいま申した実体的な公平と、また、調査としても全然任意の調査というようなこともあるわけでありますから、ぎりぎり言えば、それは法律的には、事あっても罰則の適用はないというようなことになると思いますけれども、そういうことでおっしゃているものとも思いませんけれども、全体の課税の公平を実現するために、私どもは、近づきやすくそうして適切公平な税制をやりたいと思いますので、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/132
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133・横山利秋
○横山委員 断わっておきますが、私はぎりぎり言っているのではありません。法律をその通り読んでいるのですから、その点は私の立場をそういうふうにぎりぎり攻めないで下さい。この質問検査権について、昨年以来問題にしてきました根本的な立場というものは、徴税の民生化ということについて、ぜひそうありたい、現在の納税者と税務職員の立場というものは絶対に対等ではない。かりに納税者側に黒の点があろうと、あるいは白の点で潔白であろうと何であろうと、やはり税の徴収に当たる者と、それから法律をよく知らないで調査を受ける者との立場というものは決して対等ではない。従って、特に法律で質問検査権が制限をされて、税務職員に権力として与えられている限りは、絶対にそれを守ってもらわなければ困る。私は、この法人税法、所得税法及び相続税法について質問検査権の相違点があることを私なりに考えてみた。それで理屈がつかないかどうかと思って、私は私なりに考えて理屈がつかないことはないと考えた。あなたは、税を徴収する立場においてはとにかくオールマィティーにしてもらわなければ困る、オールマイティーにしてもらって、あとは良識でやるのだから、そう心配してくれるなといつもおっしゃるところが、全国の国税職員数万人をどれだけあなたが監督できますか、さっきだれかが言ったように、飲み屋へ行ってばかやろうとか、税金をぶっかけてやろうという人間がいるかと思うと、この間うちでも、「税のしるべ」を見ましたら、「悪徳税理士、六人の処断、税務職員に日夜供応で」とここに書いてある。悪徳税理士がいばっているような記事はけしからぬ。この「税のしるべ」は、あなた方の機関紙でありましょう。あなた方としてはまずごちそうを受けた税務職員の非を正されなければならないのに、あなたの方の御用機関紙的な「税のしるべ」で、あたかもほんとうは職員が悪くなくて、ごちそうした人間が悪いのだというふうに転嫁されようとしておる最近におけるこういう例は枚挙にいとまがない。ただ、そうは言っても、あなたに一つだけは感謝したいと思うのは、ことしの税の運営方針を拝見いたしましたが、中で私がよく言うておることを数点取り入れた。質疑応答の席上では拒否的な態度だなと思ったけれども、取り入れたことには敬意を表します。敬意を表するにやぶさかではございませんけれども、しかし法律で厳密に規定してある、一番問題の質問権査権を、法律ではこう書いてあるけれども、それ以外のことも調査させてくれというのは、私は断じて納得できません。だからといって、私は何も質問検査権を戦後統一すべきであるという理論を今言っているのではない。この違いは違いだけの一つの理屈はあると私は思っているけれども、それは政治家としてのわれわれの立場です。法律を忠実に実施する総責任者が、質問検査権は、法人税については、必ず債権債務者については調査ができないことになっているけれども、やらせてくれということは、私は断じて承知できない。政務次官、どうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/133
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134・天野公義
○天野政府委員 事実は事実として聞いていきませんと、正しい事実が出てこないわけでございます。事実を聞くということで御了解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/134
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135・横山利秋
○横山委員 そうすると、法律で質問検査権はかくかくの場合でなければ発動できない、と書いてあるけれども、そのかくかく以外のところについても質問検査権を発動するとおっしゃるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/135
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136・天野公義
○天野政府委員 罰則の適用はないわけであります。やはり先ほど申し上げた通り、法律に基づいて質問をする、そして事実を確かめるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/136
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137・横山利秋
○横山委員 その法律に基づいてくれと言っておるのですす。法律に基づいて、ここにあるそれぞれきまった法律に基づく質問検査権を発動してもらうならば、私は文句は言わない。けれども、国税庁長官の話は、法律に制限があるけれども、越えさせてくれと言っておる。そんなばかげたことをあなたはうんと言いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/137
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138・原純夫
○原政府委員 私の答弁に関しての質問でありますので、私の答弁をもう少し敷衍して申し上げます。
法律には、税務職員の罰則の裏打ちのある権限として、調査できるのはこういう場合である、こういっております。従いまして、たとえば法人税の場合、必ず債権債務者に聞くという場合に、断わりましても、罰則の適用はできません。しかしながら、事実上こういう方々に対して伺う、そうしてお答えがあるのならある、ないのならないということをやるのに、それをやっちゃいけないというお話は一向成り立たぬと思います。そういうようなことでは、税務行政というものはできないと思います。罰則によって行政するという限度のほかでありますが、およそ行政官がいろいろやります場合に、すべてやることが、事実上いろいろやるというほどのなにを、全部法律に書くということは必ずしもいい例ではない。この場合には、質問検査権として規定されておりますのは、罰則の裏打ちのあることの限界であるということであります。先ほど言いましたのは、なおそれが申告納税制度に付加制度から振り変わったという、一国の租税制度の変換としては非常に大きな変換が、あの戦後の貧しい混乱した時代において行なわれたということにも若干の不統一はありましょうが、そういう点を特に取り立てて——またぎりぎりのなにになりますが、そういうようなことをなさるというよりも、むしろ租税関係を均衡によくするという意味においては、納税者も大いにその所得なら所得、その他課税標準を決定する諸元について、だんだんガラス張りにする、そういうような世の中になるというふうに御協力願いたいというふうに申したわけであります。
なお、先ほどお話の、納税者が、非常に知っている、そうして権限を持っている税務官吏とぶつかってはというお話は、私はまことにその通りだと思っております。そうして、先ほど来申しております近づきやすくという気持の根底を私はそこに置いておるのです。納税者は税のことにだんだんなれて、また知識も得られますけれども、やはり何といっても、そう申しては失礼ですが、しろうと的な方々が多い。税務官吏はずいぶんふだんから仕事を通して勉強し、いろいろ研修も何もやっております。これが、申告は自主的にしなさいと指摘したら、拝見して間違えば更正決定がいきますぞというようなやり方ではいけない。われわれの持っている税に関する知識をそのまま納税者に与える、納税者の頭の中にすぽっと入れるというような気持で申告のときにサービスしろということで、私は税務職員に強く教え、申し渡しております。なかなか一朝一夕ではできないことだと思いますけれども、じりじりと車の輪を回すようにがんばっていきたい。これ以外にほんとうの申告納税制度でこの事態を制する道はないと思ってやっております。
なお、先ほど悪徳税理士関係の新聞記事で職員をなぜほっとくのだというお話でございますけれども、その新聞に出ているケースは、私は具体的には存じませんが、今まで税理士の方を処分いたします場合の私の一般的な感じは、相手になった職員については相当思い処分をいたす、これは行政的な懲戒処分だけでなくて、刑事処分を受けているというのが通例であります。率直な感じで、こういう言い方はあるいは差しさわりがあったらなんでございますけれども、どうもそういう利益を供与されるというようなことは相互関係みたいたもので、やはり納税者あるいは税理士の方も大いに自粛していただきたい。見ていますと、私どもの者がそういう誘惑に陥って、刑事的に訴追され、刑罰を課せられる、また行政的な懲戒罰を課せられるというのが、残念ながらまだある程度ございます。そういう場合に、やはり特に税理士さんというような方が、これに介在しておられるという場合は、相当私は困ることだというふうに思って、そういう際はやはり処分をしっかりやらなければならぬ、私の感じでは、今おっしゃったような点はおそらくここで、大体その相手になった税理士はどの程度であるか、あるいは重いかもしれないほどの思い刑事上または懲戒上の処分を受けておるといって差しつかえないと考えております。御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/138
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139・横山利秋
○横山委員 私はあえて申します。はっきり言うておきますが、質問検査権を乱用してもらっては困る、法律に書いた通りやって下さい。もしも法律に書いた以外の質問検査権を発動された場合においては、断固として私は糾弾をいたします、そういう前提のもとに、もしあなたが、それじゃ罰則を伴わない、お聞きをしたいというような意味らしいですね。それは許してくれ、こうおっしゃる、もっともなようではあるけれども、それじゃ税務職員が質問検査権が発動できる店屋さんに行って聞くのと、ここで発動できないBという店屋さんに行って聞くときに、これはおたくは法律に基づくものではございませんけれども、済みませんが教えて下さったら教えてくれませんか、こういうふうに断わってやってもらうなら、私はまだいいと思う。河もそれを言わずに、いかにもずうっと入ってちょっとおたくの取引の横山商店のことをお聞きしますがわと言われたのでは困るのです。そこに明確に法律を忠実に執行する行政官としては一つ落差をつけてもらわなければ困る。今のあなたの雰囲気では、落差をつけたくないらしい。罰則だけは適用はせぬといっている。けれども実際質問検査権で罰則が適用される例というのはないでしょう。それは伝家の宝刀でしょう。その伝家の宝刀があるからこそみんな質問検査権が生きておるのです。伝家の宝刀が私はありませんと言わなければならぬ人間が、持ってもいない伝家の宝刀を持っているかのごとくやるということは、質問検査権の乱用もはなはだしい。そういう点で私はもしどうしてもあなたが行政上必要があるとするならば、まずそれを断わって、これは法律に基づく質問検査に来たのではありません、お差しつかえなければ、一つ聞かしていただきたい、お断わりになってもやむを得ません、こういうふうにまず明示をして、相手の承諾を得てやるべきである、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/139
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140・原純夫
○原政府委員 法人税で現在のと規定してある申告された年度は過去の年度である。そして大体現在まで取引が続いているという相手方が多いでしょうけれども、取引はその時期からあとやめてしまったという相手もあるでしょう。そういうところに寄って伺う場合に、私はそれを聞いてはいかぬ、また聞くならこれは罰則がありませんがと言って聞けとおっしゃるのも、どうも心得ぬと思います。もう少しやはり税というふうに諸元がガラス張りになるという方向にみんなお互いに協力するというふうにお願いしたい、これは横山さんにもお願いをしたいというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/140
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141・横山利秋
○横山委員 私はあなたの人間性を議論をするわけではありません。私に人間性を追及されても困る。少なくともわれわれは今立法をしているのですかう、法律が正しく行なわれるかどうかということを一番議論しておる。租税法定主義が過去から今日まで血潮をもってあがなわれて租税法定主義が確立した。その租税法短毛義があらゆるところで破られていると言っているのです。あなた方は破られていないと言っている。けれども今ここで議論しておることは、明らかに法律によってきめられておる租税の徴税方法について、あなたは逸脱よせてくれと言っておる。そういうことではありませんか。それが困ろうと因るまいと、私はどんなに困ったことがあろうと、租税法定お義を貫いてもらわなければ困るのです。それでなければ立法したわれわれの責任、法律を守るあなた方の責任はどうなるのです。これはやはり不便を忍んでもらわなければいけない。私は不便ではないと思う。法律できまっておる以上は、法律の通りやって下さいよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/141
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142・原純夫
○原政府委員 先ほどから申しております通り、罰則の罰を持っての質問は、それぞれ国税法に規定してある範囲内でしかできませんけれども、それ以外においても納税者の相手方に伺ってお答えをいただくということは、私は非常にけっこうなことだと思います。これはそれがいかぬとか何とかおっしゃるのは私は心得ぬと思います。なお罰則適用のことについて全然ないであろうと、言われましたが、二、三件はあるというのが事実でございます。(横山委員「問題にならないですよ」と呼ぶ)少ないですけれどもございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/142
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143・横山利秋
○横山委員 政務次官、冗談ではありませんけれども、ほんとうにこれは明らかに法律に違反するのですよ。明らかに法律で限定、制限されておる質問検査権を逸脱させてくれと言っておるのですよ。長官は税の徴収上困るから逸脱させてくれとこう言うのです。失礼な言い方をするけれども、私に、あたかもそれじゃ脱税者を防護することになるから、全部知らぬと困るから法律を逸脱させてくれと言っておるのです。これはまず第一にわれわれが議論する場合に、法律がその通りに行なわれておるかどうかということが大事なんです。租税法定主義というものが今日までこれほど議論されておるときはないのです。現行の租税の取りきめ、その中で重要なすべての納税者に影響のある質問検査権が、明らかに逸脱させてくれと言っておる以上は——現在逸脱されておるのです。ちょっとやそっとの、不便があろうがなかろうが、法律は実行してもらわなければ困る。法律できめられておる点が、国税庁の一方的な判断をもって納税者に多大の法律以外の不利益を与えておるということを私は看過できません。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/143
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144・天野公義
○天野政府委員 先ほどから国税庁長官がお答え申し上げております通りに、罰則規定を一持ちました質問検査権については、法律に明記してある通りだろうと思います。そうしてまた税の事実をはっきりつかむという意味におきまして、いろいろ聞いたりなんかするということも、これはやむを得ないことだろうと思う次第でございます。ただしこれが行き過ぎにならないようなことは、国税庁長官がしばしば職員に対して指示をいたしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/144
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145・横山利秋
○横山委員 どうなんでしょう政務次官、あなたも実際私に対する答弁に困るでしょう。これはわかっておるのでしょうね。あなたわかっておって、初めて聞いたものだから、一応長官の味方をせにやならぬと思っておるのでしょうが、あなたがかりにこちらにすわっておって、私の言うことを聞いておったら——この辺の人はみんな賛成なんです、理屈はわかっておるのですから。そうでしょう。——だって、明らかにこれは質問検査権がどれほど納税者に対していろんな問題を起こしておるかわからぬ、だから、質問検査権を乱用してはいかぬ、乱用はいたしませんと答えておるけれども、では、法律の通りにやってくれといったら、法律の通りに質問検査権を発動したら困るから、法律でこれだけしかやってはいかぬといっておるけれども、やってはいかぬところまでやらせてくれと言っておるのです。それで、最後に三人並んでの答弁は、どうも罰則の適用がない質問検査権をやらしてもらいたいということらしい。罰則の適用のない質問検査権なんてあり得ますか。あなたも今言ったでしょう、罰則は適用しませんから査問検査権をやらしてくれ。権とは何ですか。だれがそんな権を許しましたか。質問検査をしてはならないのです、絶対に。私はお聞きするのならいいというのです。しかし、お聞きするときには伝家の宝刀を抜いてもらわなければ困る。それがあなたにはわかりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/145
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146・原純夫
○原政府委員 まず第一に法人税の場合に、過去の年一度の申告があった、調査した、その相手方になったのがある会社であったとする。その会社はその後解放してしまってなくなってしまっておるというような場合に、まあ、その関係者に尋ねて回るというようなことをいたす、私は税務の調査として当然だと思います。その点を当然だとお考えになるかならないか、やはりそういう調査を、とにかく伺う、聞く。聞いて調べるということは当然だと思います。これは行政官がいろいろやる行為について、すべて法律で権限として規定するかどうか。まあ一般的な権限はあるでしょう。税務官吏には税務官吏の権限は一般的にはございます。その中には私は明瞭に入ると思うのです。ただ、たとえば税法その他で特定の罰則その他特定の強い法律的な意味を持たすというような場合に、それに特に狭い範囲を設けるということはありますけれども、行政官が一般に仕事をする場合には、法律的にこまかく書かないで一般的な権限規定で、あとは事実上のなににまかすということはたくさんあると思います。行政官の仕事の一つ一つについて税務官の権限規定として各実体法で一条々々を規定しているというものではないと思うのです。
そこでまず第一に申した、過去の法人の事業年度について、現在は消滅している、現在は債権、債務者でないというような人に対して聞くというのは、私は当然のことであろうと思うし、そうしてこれは税務官吏の権限一般の中には入る。たまたま質問検査権というもの、罰則の裏打ちのある質問検査権のその規定の中には入らぬかもしれないけれども、それは税務官の権限一般の中には入る。それは当然やってよろしいというふうに思います。そういうようにお考えいただけるのでなければ、横山さんのような話になると、実体的に非常に不当な、かりにその会社に相当大きな脱税の疑いがあるというような場合には聞けませんというようなことになって参る、これはどうもいかにもおかしいと思います。そうして何もおかしいからというだけじゃなくて、権限一般論としても税務官吏として設置法その他で認められている権限がある。その中には十分に入るというふうに思うので、何かそこをまたぎりぎり言われると、どうもそのぎりぎりが脱税者を応援されるようなことになりかねないと思います。私は横山さんはそういう方でない、大いに公平、適正な関係を実現していこうという気持は十分おわかりいただけると思うので、大へん何かぶしつけなようで恐縮ですけれども、私の考えを申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/146
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147・横山利秋
○横山委員 ややぶしつけでも何とでも言って下さい。けれども、常識で議論してはいかぬということを私ははっきり言いたいんですね。法律できまっておる以外に常識でやればいいと法律で書いてある、それはかりに百歩譲って不備だとしましょうか。不備だから常識でやる、その常識というものが、あなたの勝手な常識なんだ。私はあなたをけなしているんじゃない。けれども、しょせんあなたも一個の人間にすぎないんだから、そもそも欠陥のある人間なんだから、その人間が独立した常識でやらして下さいといっても、私は許すわけにいきませんよ。これはほかの問題と違うんですよ。質問検査権はきわめて重要なんです。それが制限列挙してある。制限列挙以外のことをやらしてほしいということを私は許すわけにはいかぬ。私はくどく言うんですが、決して無理なことを言っておるわけではない。どうしてもこの過去の債権、債務者に話が聞きたければ、その質問検査権という伝家の宝刀をしまってからやってもらわなければ困る。あなたは何か行政官吏に一般的な質問検査をする権限があるようなことをおっしゃっているんだが、どこにそういうことを書いてありますか。それもあなたの常識ですか。そういう常識論でやってもらったのでは困る。だから私が何回も言っているように、質問検査権の発動できるものと発動できないものとがある。それは区別してもらわなければ困る。税務職員は、いやこれは発動できないんだな、だからあんまり強く言わないでおこうという良識かもしれない。受ける納税者の方はそうじゃないですよ。それがわからぬ、あとから不当にその点については法律の乱用によって迷惑を受ける。これが脱税者であったか、脱税者でなかったか、そんなことは関係なしに質問検査権が発動されるんですから、どうですかね。政務次官、私の言うことはよくわかっているでしょうね。よう一わかって、しかも私はこういうやり方ならまたかんべんできますけれども、どうですか、と言っているんですけれども、それにもまだお答えがないようです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/147
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148・天野公義
○天野政府委員 やはり先ほど申し上げた通りに、質問検査権という罰則規定の裏づけのある権限をもってやるという場合には、おっしゃるような、非常に厳密な範囲でやる必要があると思いますけれども、いろいろな税務行政の円滑化並びに税の公平な把握というような点に基づいていろいろお聞きしたり、お伺いをするという程度のことは、やはりこれはやむを得ないことであろうかと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/148
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149・横山利秋
○横山委員 何ぼ言うても話が通じませんから、この問題は一応このくらいにして、次に移ります。けれども、私はあえて、言っておきますが、もし今後この質問検査権の発動が、この逸脱行為がありましたら、具体的な事例をひっさげて、断固としてあなたの不当を糾弾いたしますから、そのつもりでおって下さい。
十九条。十九条の「修正申告」のところでいろいろな項目が書いてあります。提出することができる条項が書いてありますが、これは一体どういうことなんでしょうか。二十五ページに一、二、三、四と修正申告を提出する場合が書いてある。私の読み違いかもしれませんが、一「先の納税申告書の提出により納付すべきものとしてこれに記載した税額に不足額があるとき。」第二番目に「先の納税申告書に記載した純損失等の金額が過大であるとき。」第三番目が「先の納税申告書に記載した還付金の額に相当する税額が過大であるとき。」みんな納税者が損なことばかりに修正申告しろということじゃないですか。第一号の規定は自分の出した税金に不足があるとき。第二号は、純損失等の金額が大き過ぎるとき。第三号も、還付金が大き過ぎるとき。何か私の読み違いですかね。これは本来不足額があるないしは過大額がある、ないしは金額が過大である、過少である。みな両方の場合をうたわなければならぬのだけれども、納税者が自分に損する場合だけ出せと言っているような気がしてならぬのですが、どういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/149
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150・村山達雄
○村山政府委員 通則法の全体の構成を見ていただきますとおわかりのように、「国税の納付義務の確定」と第二章でうたっておるわけでございます。その中でごらんいただきますと「通則」というのがございまして、次のことが書いてあるわけです。どういうふうにして確定するか、成立即確定、それから申告により確定する、賦課課税により確定する、その次からその具体化が書いてございまして、第二節「申告納税方式による国税に係る税額等の確定手続」、「納税申告」、その納税申告の一態様として書いてあるわけであります。次に「更生の請求」、この期限内申告は普通自分で出されるわけでありますが、ここに書いてありますのは、自分が出したものがあとで、あれでは少なかったと気がついたら、いつでも画せます、こういうことが書いてあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/150
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151・横山利秋
○横山委員 多過ぎた場合は、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/151
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152・村山達雄
○村山政府委員 多過ぎた場合は、史正の請求で御自分がなさっておるわけでありますから、更正の請求で直しなさい、こう書いてあるわけでございます。
その次に、そのほかに税務署で調べてみまして、本人の税額が過少である、あるいは申告がなかった場合には、更正決定をいたします。こういうふうにいたしまして、その申告にかかる部分の当初申告はそのまま確定します。修正によってふやせば、そのふえた部分はそれで確定いたします。更正の請求という権限がありまして、それを請求されて、それに基づいて減額すれば、その限度において減ります。それから、更正、再更正もそうでございますが、更正すればその分だけふえていきます。それから、もし申告がないような場合には、決定によりましてその税額は確定いたします。この順序がずっと書いてあるわけでございます。期限内申告までは、これは各税法ともそれぞれ実体規定に密接な関係がございまして、各税ごとに、いかなることを申告していただくかということは、それぞれ記載する事項が違いますから、各税法に譲ってあるわけでございまして、ここではそのフォームだけが出ておるわけでございます。あと今の修正申告あるいは更正後の修正申告それから更正の請求、更正決定、これは申告納税に関する限り全く同じでございます。各税に共通している事項でございますのでここに響いておるわけでありまして、同時にそれぞれ確定する分野の税額を明らかにしてある、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/152
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153・横山利秋
○横山委員 私の素朴な質問は、第一に、十九条の修正申告は、税額に不足額がある、つまりもっと多く出さなければならぬという場合には修正申告だ、もっと少なくすべき場合においては更正の請求だ、何でそういう区別をしなければならぬかという意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/153
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154・村山達雄
○村山政府委員 多くしなければならないと本人が考える場合には、修正申告書によって下さい、こう言っているわけです。少ないと考える場合には更正の請求にして下さい……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/154
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155・横山利秋
○横山委員 なぜです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/155
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156・村山達雄
○村山政府委員 その事柄を別にそれぞれ明らかにする意味でやっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/156
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157・横山利秋
○横山委員 あなたの、言っていることと私の言っていることは一緒です。なぜ区別をしなければならぬか。自分は税金をもっと多く出さなければならぬと気がついたときには、ええ便宜をはからってあげます、だから修正申告でたったっとやる、私は多過ぎた、少なくしてくれという場合には更正の請求でむずかしく取り扱う、こういう感じがしてならぬ。同じじゃないですか、多過ぎても少な過ぎても同じ取り扱いで修正申告でいいじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/157
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158・村山達雄
○村山政府委員 こういうことでございます。本来なら申告期限がきめてございます。これが妥当であればこれできまる、もうあとは申告とか更正の請求なんか、言わないで、税務署長が間違っておれば更正するという法律構成もございましょう。ただそういたしますと、理由がない場合には過少申告加算税がぴしゃっとかかっていくわけでございます。その場合に、人にはそれは間違いがございましょうというわけでございます。そこでそれを直すものを考えまして、自分であとで不足しているという場合には修正申告をして下さい、その場合には、それが初めから更正決定があることが予知された場合でなければ、その分についてはその期限内申告は過少なんですけれども、過少申告加算税は取らない、こういう法律構成で弾力条項を置いているわけでございます。それからこれは過大にいたしました——納税者には割と少ないと思いますけれども、それでもあり得ることでございます。この場合に、いつまでもそれを認めますと、法律関係がはっきりいたしません。本来は申告期限で切るべきでございますけれども、そこを、従来も一カ月間更正の請求がございます。その権限は依然として存置したわけでございます。これは直し得る、こういうふうに持っていったわけであります。それで更正決定ということになりますと、原則としてはその分については過少申告加算税がかかるわけでございます。そういう意味で、まだ申告納税全体が今のような状態の場合におきましては、間々間違いということはあるであろう、こういう意味で修正申告の条項を置いてあるというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/158
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159・横山利秋
○横山委員 二十六条再、更正「税務署長は、前二条又はこの条の規定による更正又は決定をした後、その更正又は決定をした課税標準等又は税額等が過大又は過少であることを知ったときは、その調査により、当該更正又は決定に係る課税標準等又は税額等を更正する。」とある。いろいろな疑問が出てくるのだけれども、これはつまり誤謬訂正のことですか、それだけ簡単に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/159
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160・村山達雄
○村山政府委員 増額の場合も減額の場合も両方含んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/160
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161・横山利秋
○横山委員 これは要するに、税務署が自分のやったことが間違いであったということが気がついたときの意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/161
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162・村山達雄
○村山政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/162
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163・横山利秋
○横山委員 ここでいう「この条」とは、一体何をいっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/163
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164・村山達雄
○村山政府委員 これは法律用語的なことでございますが、再更正をやってもなおできる、再更正の上に、間違ったとわかればまた増減できる、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/164
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165・横山利秋
○横山委員 税務署で更正をする、そのあとで間違ったと気がついたら、また自分で誤謬訂正で直す、またそれも間違ったと思ったら、それもまた自分で直してもよろしい、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/165
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166・村山達雄
○村山政府委員 増減いずれもさようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/166
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167・横山利秋
○横山委員 そこで私はお伺いをしたいのですが、税務署のやったことについてはなかなか誤診訂正を認めないのです。自分が間違っておったとはなかなか言わないのです。それで、私も聞いた話でありますが、自分がやったことが間違っておったということを認めるということは、決定的な恥辱とまではいかぬにしてもつらいことらしい。だから、総額で変わらない、間違っておってこれを直すなら、別なところを見つけてそこをふやして、そうして大体つり合いのとれたようにやる、こういうことが非常に多いのです。期限が過ぎたあとでも税務署で誤謬訂正で直そうというような場合も、ときにはないではないのですけれども、第二十六条がたった三行で簡単に終わっておるという点については、私はあなたの方も、もう少し税務署内部における、行政内部における間違いに勇敢にもっと手続をきめるべきである、こう考えるのですが、あなたはここにあるからいいじゃないいかとおっしゃるかもしれませんけれども、まあ一ぺん——税務署の間違いというものが会計検査院でもたくさん出ておるわけであります。税務署の職員、国税局の職員、国税庁の職員が神様ばかりではあるまいし、国税庁長官みたいに、法律以外のことをやらせておる人もあるのだから、どんなに間違いが多いかわからない。ですから、ここの条項については、もっと自分で間違いを勇敢に直すということに努力をする必要があると思うが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/167
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168・村山達雄
○村山政府委員 ここで一般的に申しますれば、納税者も税務署もできるだけ間違いが少ないということは望ましいと思います。その意味で、実は修正申告とか更正決定といったようなことはあまり望ましいことではないということは当然でございます。ただここでは法律のことでございますので、その期間内におきましては、行政機関の関係におきましては更正ということもあり得る、それから修正申告ということもあり得る、減額更正というのは五年間働きます、こういうことで法律問題でございます。そういう意味で、間違いがあった場合にその間違いを直せば、その限度においてそのふえた分だけはそのとき確定するのだ、減った場合には前からそれを引いたところで確定するのだといって、次の納付のところの法律関係に移しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/168
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169・石村英雄
○石村委員 関連質問。条がちょっとあとへ戻りますが、ただいま横山君の質問をしました納税申告の修正の問題と更正の請求の問題ですが、つまりもっとよけい納めなければならぬという場合には修正申告をしろ、それから申告が多過ぎたというときには更正の請求をしろ、こういうことだと思いますが、そういたしますと確定申告を出したときに間違ってよけい書いて出した、出したあとで過大だということがわかって、今度は更正の手続を申請するわけなんです。そうすると、税務署長が更正をするまでは最初自分が誤って出した過大な申告に基づいて納税をどうしてもしなければならぬという問題になる。これはどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/169
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170・村山達雄
○村山政府委員 そこはごく形式的に申しますと、直すまでは最初本人が申告した税額、それが確定しておるわけでございます。ただ実際問題といたしましては計算の誤記等がありますればおのずからわかるわけであります。当然直すわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/170
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171・石村英雄
○石村委員 当然直すというのは、正式な更正決定ということにならなくていいわけなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/171
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172・村山達雄
○村山政府委員 法律上はやはり減額更正でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/172
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173・石村英雄
○石村委員 だから、税務署長が更正決定をすぐ目の前でやってくれればいいわけですが、事務がめんどくさいといってほうられればそれまでです。いつまでたってもやってくれないということになると、法律上は、一たん誤まって出した確定申告書によって、自分では誤っておるということがその場でわかっておる、わかっておってもそれをやはり受け付けてくれない。更正の手続をとってくれないからやむを得ずよけい納めなければならないということになるのです。そうしてその間更正決定を受けない、もしかりに、それじゃ納めないということになれば、それぞれ加算税か何か取られるということになるわけなんですか、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/173
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174・村山達雄
○村山政府委員 今の問題はむしろ計算違い等で間違って過大に申告して税金を納めた場合の話でございます。実際問題としては、そういうことであれば当事者間に争いがないわけでございますから、すぐ直るかと思います。その場合にはむしろ今の加算税とかなんとかいうこととは逆に、還付加算金の問題になるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/174
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175・石村英雄
○石村委員 かりに申告を早くした場合、三月十五日というのを二月にでも出して、すぐあと気がついてもなかなかやってくれない。やってくれなければやはり納めなければならぬということに法律上は一応なるわけです。体、実際上はそういたしませんということなんですか。法律的には、こういうあとの更正の決定、更正の請求をしなければならぬという法律を作られた場合には、これはもう頭を下げて署長に頼むよりほかに手がないのですか、その前に修正ということが認められておれば、納税者の権利として少なく納めて当然なんですね。少なくという上りあたりまえの税金を納めることになるのですが、更正の手続を経なければならぬということになると、署長が何か——そういうことは常識的には考えられぬといえばそれまでですが、実際問題としてなかなかやってくれないということになると、とにかくあとで多過ぎたというので戻してもらえるかもしれませんが、一応は取るぞ、納めろ、こう言われる、法律的には言い得ることになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/175
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176・村山達雄
○村山政府委員 申告所得税に例をとりますと、確定申告は二月十六日から三月十五日までになっております。その場合に期限の利益は納税者のために設けられたということでございますので、その三月十五日五日までに申告を出されてそれが過大であった、それを期間内に直されるということは御自由でございます。これは全く納税者のための利益になるわけでございますから、納付も期限までに納めればそれでよろしいわけでございます。御本人の都合で早く申告されて早く納められる必要があればそうやる。法律で、要請されております期限までにして下さいというだけであります。間違っておれば差しかえは御自由でございます、ただ申告期限が一ぺん過ぎまして、更正の請求というところをあまり長くするというのは、要するに申告期限なり納期限をきめたという意味がないわけです。あとで法律関係を確定させなければいかぬわけです。そこから、更正の賦課権の行使の制限については、今度は全部の税について三年でございます。そこを確定する必要がある。そういう意味で更正の請求権制度というものは、申告納税制度からいいますとこれは過渡的なものだろうと思います。まだあまり発達していないときでございますので、実際のことを言いますと申告課税の意味がなくなるということは法律的には言えますが、従来通りやはり一月は置いてある、こういうことでございます。修正申告は五年間いつでもできるわけでございますが、これはやはり今のような状態でございますので、いきなり更正決定をやって、過少申告ということもどんなものであろうかということで、進んでやった分については原則として過少申告加算税もとらない、こういう法律構成になっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/176
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177・石村英雄
○石村委員 期限内なら差しかえてもいいということで、大へんいい話ですが、まあ期限内だけのことであります。期限を過ぎてからはそういうわけにいかぬので困るわけですが、そうするとどこかの条文に、確定するのは申告により確定するとあるわけです。前に出したとき一たん確定したんじゃないのですか。期限内は確定しない、期限がきた瞬間に前に出したやつが確定するわけですか。法律的にはその点どうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/177
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178・村山達雄
○村山政府委員 前に申告したものにかかる分の税額については、その申告のときに確定します。修正申告を出しましてふえた部分については、その修正申告のときに確定します。その後納付の問題が起きます。こういうことをこの法律は書いてあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/178
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179・石村英雄
○石村委員 私の言っているのは、増額しなければならぬときの修正申告を言っているわけじゃないのです。前の申告が間違って多過ぎたというとき、期限内なら取りかえて少ないやつを出せばいいじゃないか、こう、いう話です。大へんものわかりのいい話だと思うのですが、法律的には申告書を出したときに確定すると書いてあるのに、あとで確定したものをまた取りかえるのですか。そうすると、この確定申告書というものは、申告期限がきた三月十五日に初めて確定するのだという意味ならわかります。しかし提出したときに確定するということがあるとするとおかしな——そんな理屈を言うな、差しかえりゃいいんじゃないかという大へんものわかりのいい話で、その点はいいようなものですが、それでは法律的にはおかしいんじゃないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/179
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180・村山達雄
○村山政府委員 申告期限というのは納税者のために、期限の利益はやはり債務者のためにあるという一般的の原則でございます。そういう意味で、ですからそこは差しかえはできます。どこで最後の確定をするかというと、申告期限のところで確定するわけでございます。その後今の減額更正がありますれば、その確定したところからその分だけ減額するということで確定いたします。それからふえる場合には、その修正申告なりあるいは、更正決定によって、その増差部分だけが、修正があったときあるいは修正申告したときに確定いたします。納付の問題はそれぞれの部分についてそのとき以降起こります。こういう形にしてあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/180
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181・安井吉典
○安井委員 関連して……。今のやりとりの中でちょっと感ずるのですが、更正の請求によって確定するのはいつですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/181
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182・村山達雄
○村山政府委員 それは、更正の請求によって減額更正をすれば、その減額更正をしたときに、更正した限度においてその部分の減額ということに確定する、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/182
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183・安井吉典
○安井委員 そういたしますと更正の請求というのもいわゆる申告納税方式の一つのフォームになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/183
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184・村山達雄
○村山政府委員 そう申し上げておるのですが、申告納税制度を過渡的に補完する制度であろう、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/184
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185・安井吉典
○安井委員 そういたしますと、現実においてはいずれにしても申告納税制度のフォームの一つであるということは確かですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/185
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186・村山達雄
○村山政府委員 一つであると申しますか、申告納税でございますから、申告した分はそこでどんどん確定していきます。こういうことでございます。更正の請求というのは、自分が申告したのは、間違いました、こういうときの請求権として、認めたわけでございます。もちろん税務署の方で、そういう請求権がなくなっても、間違っているとわかって減額更正すれば、それは減額したところで確定するわけでございます。でありますから、これは現在における申告納税制度を補完するために納税者の利益のために設けられた過渡的の制度であろう、こういうふうにわれ一われ理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/186
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187・安井吉典
○安井委員 そういう御説明だとするならば、先ほど横山委員がお触れになった第十六条第一項第一号の申告納税方式の規定がございますね。これにずいぶん問題があるということをさっきお話しになって、「納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則」とする、これだけでいいじゃないかというさっき質問があったわけですね。それに対して保留されたます前に進まれたわけですが、しかしそうだとするならば、ここにある申告により確定するのが原則だ、それから他の場合は税務署長の処分により確定するのだ、その申告による確定と処分による確定と、この二つだけおあげになっているわけですね。その場合に、この申告という中にはどれが入るか、あるいは処分という牛にはどれが入るか、それを一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/187
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188・村山達雄
○村山政府委員 ここでいう申告には、期限内申告、期限後申告、修正申告、これが入るわけでございます。「その申告がない場合又はその申告に係る税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかった場合その他当該税額が税務署長の調査したところと異なる場合に限り、税務署長の処分により確定する方式」、前段の方は期限内申告、期限後申告、これは何でも申告を本則としておりますという税額を全部言っておるわけでございます。この方式はむしろ二号と関係がございまして、申告納税方式というものは税額確定の方法はそうなっているのだ、賦課課税の方は、これは参考までに課税標準を出して——これはほんとうに参考なんです。賦課決定によって初めてきまる性質のものでございます。これと対比しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/188
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189・安井吉典
○安井委員 この場合、更正の請求の問題がこの方式の中に書かれてないわけですが、どういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/189
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190・村山達雄
○村山政府委員 更正の請求だけによっては異同がないわけでございます、その場合、もし減額するにしろ、増額するにしろ、必ず税務署の——税務官庁の更正処分を必要とするわけでございまして、それは、増減の場合とも、税務署長の処分により確定する方式、こちらで読んでいるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/190
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191・安井吉典
○安井委員 それはこちらの方には納付すべき税額が納税者のする申告により確定する、というようにはっきり書いてありますね。これがまあ原則だ。例外の場合として、不申告の場合と、それからもう一つは、申告に係る税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかった場合こういうふうに書かれているわけですね。ですから、やはり更正の請求による場合の決定もこの中に例示としてお入れになるのがほんとうじゃなかったか、そう思うわけです。ですから、私が申し上げたいのは、こういうふうに、いろいろみんなお書きになるのなら——あとにみんな書いてありますよ。第二節というのは全部申告納税の方式による確定手続について一款、二款、三款と、もうすべての手続がみなあるのですよ。どうすれば確定するかということをここではっきり書かれているわけですね。これをことさらにここにこの第一号に響き出している。その場合にみんな例示してあるわけですが、ただ更正の請求による場合だけははっきりお書きになってないで、その他か何かでごまかしておられる。つまり納税者の利益になる部分だけは例示の中からはずしておられる。そういうような態度が私はこの中にあるような気がするわけです。だから、私はこれは納税の方式としてそのフォームを、原則だけをお響きになっておけば、これでいいのではないかと思う。この原則に違うような例外的なやり方、これはあり得るでしょう。申告がなかった場合、これは当然考えられます。あるいはまたその申告の内容に間違いがあった場合、こういうことは当然考えられます。それはちゃんとあとでその場合にはこうやるんだというふうなことをお書きになることが、私は法規定の正しい行き方じゃないかと思うわけです。立法方式として、申告納税方式というふうな打ち出し方の中に、そういうようなこまかな問題をずっとお書きになる方が私はむしろおかしいと思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/191
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192・村山達雄
○村山政府委員 更正の請求に基づいて税務署長が減額更正をした場合をここにはっきり書いてあるわけです。「その他当該税額が税務署長の調査したところと異なる場合に限り、税務署長の処分により確定する方式」これは増減ともに含んでいるわけでございます。調査したところと違わなければ、もちろん更正の請求はいれられないわけでございます。ですから、これは当然この中に入っておるわけでございます。ここは確定方式でございますから、やはり具体的に書くことが必要だろうと思うわけでございます。解説の場合に、たとえば申告納税というものはどういうものだ、こういういい理念を含んでいるとかなんとかいう問題、これは別でございます。ここで言っているのは、具体的の納税義務について一々どこの段階で確定して、その段階について納付の問題が起きるのだということをこれから書こうとしているわけでございます。その全般的なことをここに書いておくのですから、法律的にはここまで書いておきませんと非常に疑いが起きる。むしろこのあとで、個々のケースが、どの部分について増額し、どの部分について減額しているか、ここに書いた意味があとでそのまま出てくるわけでございます。そういう意味では、ここはあくまでも今のような書き方で、申告によった分は申告で、それから処分による分は処分でいくのだ、それぞれそのつど納税義務が確定するのだ、こういう書き方でないと誤解を起こすのだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/192
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193・安井吉典
○安井委員 関連ですからこれでやめますが、私が申し上げたいのは、申告納税方式という一つのフォームのきめ方は、申告によって税金がきまるというのが申告納税方式ですよ。これはだれが考えたってそうです。だからそれでいいじゃないですか。だから、これに異なる、この原則だけでいかない場合はもちろん当然出てきます。そういうことをあとでしっかりおきめになればそれでいい。この中にはっきりきめられているわけですね。だから、この第十六条第一項第一号の規定は、その原則だけをきっぱりおきめになって、それ以外の問題はほかの個所に、その原則にもかかわらずこういう場合はこうだ、こういう場合はこうだというふうにおきめになれば、それで私は通ると思うわけです。そういう点、この書き方について、先ほどこれは横山委員も保留された問題ですから、私はそれを申し上げるだけにとどめて、次の質問に移っていただきたいと思いますけれども、私はどうもこの点ふに落ちないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/193
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194・村山達雄
○村山政府委員 これは納付との関連で読んでいるわけでございます。そうでなければ、これが一般に解説のようなものでありますれば、そういう考えもあると思うのです。しかし具体的にどうして母体化していくのだ、それについていつの段階にその以降の納付なり徴収という問題が働くのだということを具体的に書いていかないといかぬわけでございます。通則法はそれをきめるということが一つの問題であるわけです。具体的にいつ納税義務が確定し、いつ納付すべき問題であるか、そういう意味でやはりこまかく書かないと、そこの関係は出てこないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/194
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195・小川平二
○小川委員長 この際午後六時三十分まで休憩いたします。
午後五時五十九分休憩
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午後六時四十六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/195
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196・小川平二
○小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。横山利秋君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/196
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197・横山利秋
○横山委員 二十三条とそれから二十八条、その関係についてお伺いします。
二十三条の「更正の請求」ですが、先ほども申し上げたように二十三条の更正と修正とはえらく扱いが違う。けしからぬと言うておきましたが、さらにけしからぬと思われるのは二十三条の第二項で、更正の請求をするときは「課税標準等又は税額等、更正後の課税標準等又は税額等、その更正の請求をする理由、当該請求をするに至った事情の詳細その他参考となるべき事項を記載した更正請求書」を出せと、えらい御念の入ったことをどんどん出せと要求をしておいて、二十八条の「更正又は決定の手続」「税務署長が更正通知書又は決定通知書を送達」するときには、その理由は書かぬでもよろしい、こういうことじゃないですか、これは。納税者が文句をつけるときには詳細全部出せ、「当該請求をするに至った事情の詳細」とは何ですか。そんなことを書かせる必要はないじゃないか。わしはえろう思うから、日夜苦悶したあげく、どうしても請求せぬならぬと思って請求することにいたしました、こんなことを書けというのですか。それでもって税務署長が更正決定通知書を出すときには理由を何も書かずに、こういうところに私は全く、国は悪いことはしない、お役人のやることはみな正しいのだ、なんじらが出すときにはちゃんと全部の理由を書いて出さなければならぬ、こういう思想じゃないですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/197
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198・村山達雄
○村山政府委員 これは御承知のように現在更正する場合には、青色申告につきましては、これは本人の帳簿に一つの法律的の効力を認めまして、更正するということは、調査したところが本人の申告と違うということはまあ当然でございますけれども、そのうちどういう理由、どこが違っておるのかということを更正の付記の理由として書くことになっておるのでございます。白色申告につきましては、実額調査も大体できないであろうというぐらいの帳簿の程度を予定しているわけでございます。それでなければ大体青色申告に行けるはずでございますので、そういう意味で現存のところただ間違ったという場合には更正をいたすことにしておりますが、特にその詳細の理由を要求してはおりません。一方この更正の請求につきましては、何分にも本人が申告していることでございますので、どこが間違っているかということをはっきりさせてもらいたいということで書いてあるわけでございます。本人が先に申告をしておりますので、それで先ほど申しましたような意味で、申告納税の補完的な制度でございます。そういう意味で更正の理由は、その理由が一見してわかるようにということで、必要な資料を同時につけるように規定している一わけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/198
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199・横山利秋
○横山委員 あなたの答弁は不十分ですよ。なるほど文句を言うなら少しはその事情を書け、どういうことが税務署のやることは気に食わないのか、それを出せというなら、これはやむを得ないと思う。それにしたって更正の請求をする理由だけでいいじゃないですか。「当該請求をするに至った事情の詳細」なんか書く必要はない。夜も寝れぬとか、あるいはどうしようどうしようと困っておりますとか、どういうことを言うのですか、「当該請求をするに至った事情の詳細」というのは。その前の「更正の請求をする理由、」だけでいいじゃないですか。それを今納税者には事情の詳細を書け、おれの方は二十八条には詳細はいらぬ。お前のところは十万なんというものじゃない、五十万だというてその一、二、三を金額、税額、減少する分、増額する分だけ書いて、何でお前のところの申告なりあれは違うのだという理由を書いてやらぬという片手落ちなことがありますか。少なくとも税務署が納税者のやっておることは間違っておるというなら、その理由を書くべきだ。青であろうが白であろうが、そんなことは当然のことでしょう。これはとにかく間違っておると税務署が判断をして、そうしてもうお前のところは百万だといえば、それでいい、文句があるならお前の方の挙証責任で、お前の方で文句があるならそれでまた書け、こういうのですか。私は先ほど長官でしたか言われたように、私がまた言ったように、今の納税者とそれから税務署長との立場というものは、対等ではない。これは心理的に対等でないのみならず、法律上にこういう片手落ちなことをしたのではいかぬというのであります。もしもさっきの話のような誤謬訂正のようなことについて、親切にやるということなら、「更正又は決定の手続」におけるこの第二項には、次に掲げる事項を記載しなければならぬ、一、二、三、そうしてそれに至った理由、当然税務署長が書くべきである。何で税務署長が、お前のところは間違っておるときには詳細は書かぬでいい。納税者が税務署のやることは間違っておるというときには理由の詳細、それに至った事情の詳細までなぜ書かせなければならないか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/199
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200・村山達雄
○村山政府委員 ここに書いてありますように、更正の請求をすることのできる場合は、一項の一号から三号までに書いてありまして、その場合に添付すべき書類が二項に書いてあるわけでございますが、そのときは前の課税標準、それから税額、それから今度は更正後の課税標準、税額、これは当然だろうと思います。幾らのものを幾らにしろというのか、更正の金額を明らかにする意味においてこれは当然だと思います。その理由その他、「当該請求をするに至った事情の詳細その他参考となるべき事項」、こう書いてあるわけであります。ですからその他参考となるべき事情を書いて下さいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/200
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201・横山利秋
○横山委員 「当該請求をするに至った事情の詳細」とは何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/201
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202・村山達雄
○村山政府委員 これは例文でありますのでなんですが、たとえば今の申告様式をずっと考えてみますと、あそこに収入金額、必要経費欄がずっとございます。十種類分類があるわけであります。そこでおそらく申告書は収入金額、必要経費というものが、それぞれ根拠を持って当初申告に書かれているだろうと思うのであります。それでなぜ必要経費がふえたか、あるいは収入金額が減ったかというところです。ここではおそらくは更正の請求をする理由、減ったとかふえたとかいう理由だけでなくて、たとえばどの取引、前にはこういう取引が入っておったが、この分は翌年度に回すべきものであるとか、そういうことを書いていただきたい、こういう意味でございます。それからたとえば経費にいたしましても、今のたなおろしが間違いましたということですね。おそらくあそこの申告書だけを見ますと、申告書の法定のフォームとしては、ただ経費一本で出ているわけです。経費につきましては、いろいろな経費があるわけでございます。その場合にたなおろしが間違いましたとか、そうでなくて、営業経費のこれこれこれが間違いました、そういうことを書いていただきたい。とにかくこれを見れば、なるほどと思える主張点がはっきりするということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/202
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203・横山利秋
○横山委員 それだって、更正の請求をする理由というだけでいいはずだと思う。本人が税務署のやっていることは間違っている、だからこうしてもらいたいというのは、更正の請求をする理由じゃありませんか。「当該請求をするに至った事情の詳細」とは何ですか。あなたのおっしゃるようなことは、みんな更正の請求をする理由なんだ。これではそんなことまで書いておいて、税務署長がお前のところは安過ぎる、お前のところは多くしなければならぬという更正の決定通知書については、理由を言わぬ、言う必要はないと言って、頭ごなしのやり方が気に食わない。ところがこの二十三条で、どうしてもそれを書け、「当該請求をするに至った事情の詳細」を書けというなら、税務署長も決定通知書に当該決定をするに至った事情の詳細を何で載せないのですか。そこをなぜ片ちんばにするのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/203
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204・村山達雄
○村山政府委員 申告納税の方は原則として、当初に申告、これと税務署長の調査、これが原則的には対立している形での法律構成を考えているわけであります。従いまして当初申告の場合には、そういうことは何も書いてないので、一定の申告すべき事項、税額が出るに必要な事項だけを書けば足りることになっているわけでございます。ところが今度自分の申告したもの、これが間違いであるということを、更正の請求をなさる場合には、その理由の上でどこが違っているのか、自分の申告でございますから、これは書面の上ではっきりしていないと困るだろうと思うのでございます。書面ではっきりしておれば、おのずから調査点もはっきりいたしますし、自後の手続が非常に簡略になるわけでございます。そういう意味で、単に更正の請求の理由、こう書きますと、白ですと、経費が少な過ぎたりあるいは収入が多過ぎたり、これではわからないわけでございます。はたして更正すべきものであるかどうか、従ってそれを本人が請求しているのです。ですからこの請求は一応なるほどと思わせるだけのことが書いてないと、自後の手続が非常に繁雑になる、そういう意味でここではかなりこまかいものをお願い申し上げている、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/204
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205・横山利秋
○横山委員 まだ私の質問をはぐらかしているのですが、更正の請求をする理由だけでいいと思う。もしも本人が必死になっていろいろなことを書きたければ、書いて出しても悪いことは何もない。それをわざわざ法律事項として、「当該請求をするに至った事情の詳細」までつけなければ受け付けぬということにこれではなる、そうでしょう。そうしておりながら、税務署長が更正決定する場合には、理由はつけなくてもよろしい。お前のところは五十万ではない、百万だ、金額だけ書いたらそれでいい。こういうことがきわめて不穏当だ。なぜ税務署長が更正決定通知書を出す場合にも理由をつけてやらぬか、こう言っている。長官の言う親切な税務署であるならば、それによって間違っておるところを教えてやって、これからそういうふうにしてはいかぬぞ、こういうふうにしなければうそでしょう。全く頭ごなしじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/205
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206・村山達雄
○村山政府委員 今受け付けないという話でございましたが、受け付けるか受け付けないかという問題とは違うのだと思います。これはとにかく更正の理由と申しましたときに、単に収入金額が減りました、経費が増大しました、これでは何ともしようがないわけです。ですから、本人がかつて申告なすっているわけですから、経費は幾ら幾らですと絶対額があるわけです。それを減らすからには、それだけの詳細な理由があるでありましょう。そのことを書いていただきたい。そういたしますれば、今後における減額更正をやるかやらぬかについて、お互いの手数が省けるわけでございます。だからそれに必要なことだけを書いてもらえばいいわけであります。その片方の更正決定の方でございますが、青色申告については理由を書きなさい、こう言っているわけです。この人については帳簿があるから、これを否認して——多くの場合増額決定でございましょう。増額するからにはそれだけの理由があるのだから、そのことを書きなさい。白色の場合には理由と申しましても、その帳簿そのものがないわけですから——ない場合が多いわけですから、その場合に一方においてその推計ということは当然働くわけでございます。そういうものとして所得金額が推計したところ違うから、それでもって更正いたしますということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/206
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207・横山利秋
○横山委員 なぜ理由を書かぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/207
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208・村山達雄
○村山政府委員 そこでいう理由というのは、調査したらどうも違っておるという答えになるのだろうと思うのです。もとより帳簿がないのですから、ない場合が多いのですから。ですからあなたのつけておる収入に比べて、こう言ってみても、帳簿がない人が多いのですから、根拠がないわけでございます。それを全部、そういったことに至るまで本人の帳簿に照らしてどうだという問題でございます、理由の問題は。ですからそういうもののない場合には、個々のものについてどこが違うかということを一々書くことを法律上強制するわけにはいかぬ、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/208
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209・横山利秋
○横山委員 あなたもずいぶん苦しい答弁だと思うのです。青色申告を更正決定する場合には理由を付記しなければならぬ、こうなっておる。それは百も承知なんです。私が第二段としと言おうとしておるのは実はそこなんで、この委員会でもう何回それはやったかしれぬ。帳簿に誤りがあるとか、計算の間違いがあるとかいう理由を付記しなければならぬといって、どのくらいやかましいことを言ったかしれぬのですが、理由を付記しない場合がある。理由を付記しておっても、全く簡単な理由——お前さんのところはこれだけという一行の理由を付記して、これで理由付記だ。それで御存じのように裁判にまでなったことがある。納税者には理由のみならず、当該請求をするに至った事情の詳細まで言わしておいて、税務署のやるものは原則としては理由は書かぬでもよろしい、青色申告に理由をどうしても付記しなければならぬのなら一、二語で書いてしまう。何でそうまでいやがるのか。自分のやったことについて批判されるのがこわいのか。もう少し税務署は自分のやったことについて責任を持ったらどうだ。納税者に対して説得力のあるように、あなたのところの帳面はこれだけ間違っております、あなたのところは帳面がないからわれわれが推計したところ、こういうことになったからこういう金額になりますとか、なぜ自信のある仕事をもっとしないのか。私がさっきから言うように、誤謬訂正だってなかなかやってくれない。ことごとくが、それには法律にも、それから税務官吏の心理にも、自分のやったことを批判されたくない、自分の間違いを訂正したくない、こういう心理が強く働いておる。それのもとは、大体法律がそうだからそういうことになる。法律に税務署の決定通知に対して理由を付記させなさいよ。青色申告にはもっとそれに至った事情の詳細を書かせなさいよ。納税者に要求するなら税務署がやるのが当然のことじゃありませんか。私の言うことは間違っていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/209
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210・村山達雄
○村山政府委員 その付記なりあるいはその参考資料を書かせる、その程度の問題だと思います。それでこちらの更正の理由の方は、先ほど申しましたように本人が自己所得、これは多くの場合一種類でございますが、申告書では売り上げ、経費、所得、これだけは書いてあるわけでございます。その場合これは本人が一ぺん申告されたものを直すとおっしゃっているのですから、その場合どの経費がどういうわけで減ったかということは、本人が一番よく知っているわけでございます。それを書いていただくということは、その後における減額更正をやるかやらぬか、その場合実際の調査が必要であるかどうか、そういう点がはっきりすることでございます。ですからそういう意味で、できるだけその請求の理由がはっきりした方が、相互に今後の運営が便利なわけでございます。そういう意味でこの更正の請求を認められた趣旨からいって、この制度があとで迅速に動くように書いている規定でございます。一方は、先ほど申しましたように白色申告でございますので、多少の帳簿があるものもございましょう。ないものも、たくさん実例としてあるわけでございます。青色申告の場合には、本人の帳簿との対比においてどこが違うかということでございます。一方におきましては、どうしても本人の帳簿がないために、税務署の方で実際は相当の作業を伴いますが、それによって所得金額を推計するわけでございます。しかし本人と違うという理由、これは帳簿がございませんのでなかなかわかりません、こういうわけでございます。もちろん推計には推計の理由があるわけでございます。しかし本人は本人で申告されているわけでございます。本人の申告された基礎がどこにあるかということはわかりません、帳簿がないのでございますから。そういう意味でその違いの理由を書くことを法律では強制してない、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/210
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211・堀昌雄
○堀委員 関連。今の最後の点ですが、法律で理由を書くことを強制し「ないということと、理由が書けるのか書」けないのかとは、私は別問題だと思います。一体理由は書けるのですか、書けないのですか。今の白色申告で帳簿がないときに更正決定をする場合に、法律で理由を書くことを強制するのは無理がある、こういう話ですね。強制するかしないかは別として、法律でどうこうということは離れて、実体的に理由は書けるのか書けないのか、それを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/211
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212・村山達雄
○村山政府委員 その理由の場合は、本人の申告と違う、なぜ違うか、こういう問題でございます。ところで相手の算出の根拠がわからないわけでございます。そういう意味で、違うということ以外にはないわけでございます。もちろん正しいと思うから、その所得金額で決定しているわけでございます。ただ本人との対比においてどこがどう違っているのだということは、向こうが帳簿がない場合が一般でございすから、そういう意味の理由だけは、理由があると思うわけでございます。ですからそういう意味で理由は法律上強制してない、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/212
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213・堀昌雄
○堀委員 私はそういうふうに法律のことで聞いているのじゃない。一体理由が書けるのか書けないのか。書けないのならいいですよ。書けるというなら書けるでいいのですよ。どっちか。法律で強制するかしないかは次の段階、書けないなら強制できませんね、絶対に。書けるのなら強制のしようがある。だから前段のところを聞いている。書けるのか書けないのか、それだけ、イエスかノーかだけでいい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/213
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214・村山達雄
○村山政府委員 理由というのはそういう意味でわれわれ解釈しておりますので、一般的には書けないだろう、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/214
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215・堀昌雄
○堀委員 そうすると理由は書けない。しかし具体的には決定が生ずるわけですね。その場合幾ら帳簿があろうとなかろうと、やはり申告をする以上は、収入が幾らで、経費が幾らで、所得が幾ら、こういうことは明らかに出しておりますね。そうすると、一体どこでそれが違うのか。収入の面において違うのか、経費の面において違うのかは、当然一つの理由になると思うのです。どこかで違いますよ。金額は、たとえば十万円の所得というのに対して、あなたの方は十五万円の所得だという一つの更正決定をしたその場合に、二十万円の収入で十万円の経費で十万円の所得が出ました、こう書いておるときに、あなたの方が十五万円の所得があるという場合には、二十万円の収入で五万円の経費しかない場合は十五万円の所得であるし、二十五万円の所得で十万円の経費であれば十五万円の所得になる。そうして見ると、あなたはただ単なる申告と決定との間の相違ということを言われましたが、これは明らかにそういう意味で理由が書けると思うのです。あなたの収入においてこれだけの相違がありますよ、あるいは経費においてこういう相違がありますよというのは、明らかな理由じゃないですか。これは理由になりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/215
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216・村山達雄
○村山政府委員 そういう意味では、それを理由というなら、その限りにおいては理由になるだろうと思うのです。しかし実際問題としまして、白色申告者は必ずしも収入、経費を全部書いておるわけではございません。中には所得をぱんと書いておるわけでございます。これもまた一つの申告の形でございます。もちろん全部書いておるものもございましょう。しかし問題は、帳簿が大体の場合ないという、またない人が多いということでございます。そこが一番問題だろうと思うわけであります。そこで確かなもの、本人がこれは間違いない、こういう記録に基づいてやらなければ、当然これは所得でございますから、一々記憶しておるわけには参らぬわけでございます。そういう帳簿があっての話だろう。そういう意味では、ほんとうになるほど申告書を見まして、収入、経費というものが載っておりますれば、それと違うということは、その意味では、その限りにおいて理由ということはあるいは言えるかもしれません。しかし問題は、やはりそのよるべき根拠の帳簿に基づいてやっておるかどうかというところが、ほんとうの本人が正しく計算したところの所得に対する違う理由になるだろう、こういうふうに考えて現在の規定はできておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/216
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217・堀昌雄
○堀委員 ちょっと国税庁長官、伺いますが、一体申告納税制度で、あなた方の税務署の末端では申告書を受け付けるときに、ぽんと所得だけ書いたのを——郵送で来たのは知りませんよ。それは仕方がないでしょう。しかし単に所得だけを書いた申告納税を窓口で受け取りますか。一応あの申告書には収入と経費を書く欄がついておるのに、一番下の所得だけぽんと書いたのを、一体税務署は受け取るのかどうか、それを一つはっきりしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/217
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218・原純夫
○原政府委員 申告所得税、御案内の三月十五日前の忙しいときでありますが、納税相談という形で来ていただいて、いろいろお話をいたします。その際に、納税者がそういうものを持ってきたという場合には、いろいろ伺い、お話をするだろうと思います。ただ法律的には所得と税額と入っておりますれば、申告書でそのまま受け付けざるを得ないということでありますが、実際上は申告所得税の場合は、そういうふうに納税相談に相当出ておいでになりますから、その際はこれだけではいかぬから、一つ中身も伺わせてくれというて、かりにその納税者について私どもの方で実額調査その他の調査をしてある場合ですと、それに基づいての意見というか、見たところについて若干申し上げることがあるかもしれないと思います。法律的にドライに言ってしまえば、所得が書いてある、税額が書いてあれば受け付けて、あと調査によって、調査したところが違えば更正に付するということになりますが、実際にはそういうことであります。法人の場合はああいう納税相談的なことがありませんから、だいぶ違って参ると思います。一応受け付けて、あと調査で処置するというものがほとんどだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/218
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219・堀昌雄
○堀委員 現実の取り扱いでは、そうすると今主税局長の言われたように、所得だけ出ておるというようなことは例外で、収入と経費が出ておるということになれば、収入が違うということは、どこに違いがあるかということを明らかにしないで、いきなり更正するというのは、私はやはりおかしいと思うのです。だから理由が書けないというのなら、法律で強制することはできないけれども、理由は書けると私は思うのですが、今の収入が見込みとしては幾ら違います、経費が幾ら違いますということは、少なくとも書けると思う。これは私は明らかに理由だと思うのです。その程度を理由でないということになるならば、あとのいろいろなものについても、それは理由としてどこからどこを理由と言い、どこからどこは理由でない、そういう限界が引けるようなものの性質では私はないと思う、この場合のものの考え方は。私特にこれを伺っているのは、そこまでをそういうものはもう理由でないというような格好でものを処理することは、建前は申告納税制度であるけれども、決定権は明らかに税務署にあって、賦課課税と何ら異なるところはないではないか、そういうことになると。帳簿がない限りは、ともかくいろいろ出してきても、更正決定するのに理由は要らない。ともかくお前の方は間違いだと言ってぽんと押しつければ、それで済むというのなら、申告納税制度というものは形式にすぎなくて、内実はもう端的に税務署長の一方的な権限によって決定をされる。こっちは更正決定を受けても、理由も書いてないということになって、これではさっきの横山委員の発言ではないが、申告納税制度の建前を生かすのならば、この青色申告は帳簿があるから、片一方は帳簿がないからといえば、その程度の差こそあれ、理由としてはあり得る。そうすると、強制してはいかぬということになると、一体なぜ強制してはいけないのか、その程度の理由を書くことを強制してはいけないのかどうかという問題が、次の問題になると思う。今私の申し上げた収入についての誤りはこういうふうに誤りがある。そうすると率直に言うと、あなた方の方でその収入の相違を来たしたということについては、調査によって何らかのその次の段階の理由があると思う。ということは、片一方のものを否認する以上は、こちらが正しいという理由が次に出てくるはずです。調査したことに基づいて出てくる。たとえばこのくらいの店舗があって、従業員が三名なら三名いて、そして周囲の条件から見ると、お宅の収入というのは申告は五十万円になっておるけれども、これはこの状態だから八十万円だというのが、私はその次の理由としてあり得ると思う。単に金額だけの相違でなくて、その金額が相違するということは、相手との相対関係において問題があるのではなくて、決定した金額全体の中で私は問題があると思う。だから、その次には相違の点だけの問題でなくて、その決定をしたことについての理由というものは当然あると私は思うのです。だから、結果として全体として問題があって、その間に申告分については内容はわからないけれども、あなた方はこれだけ出しておるから、残りのこの部分についてはこういう理由で更正したということは書ける理由であるし、書くのが申告納税制度の建前なら当然だ、どうでしょうか、そこは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/219
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220・村山達雄
○村山政府委員 実はこの確定申告のところに、これは法律構成の問題との関係がありますが、税法では各号別の所得金額を書けということを言っているわけであります。法律的にはそういうことになっておるわけであります。ただやはり事情を明らかにする意味で、様式の方では収入金額、必要経費ということになってございます。ですから、所得金額だけ書かれても、これは法律的には現在はやはり有効の申告だといわざるを得ないだろうと思います。ただ実際の実務で言いますと、法律がこうなっているからどうというこではなくて、お互いに能率的にやるという意味で書いてあるわけであります。ですから、そういうことから言いますと、帳簿がないということもあわせ考慮いたしますと、白色申告の場合に——これは青色については帳簿を見ておりますから、この所得金額が出た誘因がよくわかるわけであります。従いまして、これがどこがいかぬのかということが言えるわけであります。白色の場合は、この法律の面で見ますと、所得金額一本であります。この場合、これはどうも間違っておる——もちろんその算出根拠はあるわけであります。そういう意味で、その帳簿がないという場合をも考えまして、それでその法律事項としては、所得各号別の所得金額、こういうことになっておりますので、その理由の付記を法律上は何も白色についてはうたっていない、こういう形であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/220
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221・堀昌雄
○堀委員 それならこれは常に重大なところにいきましたから、ここではっきり約束をしてもらいたいのです。あなたの方は、今納税手続上の形式としては、収入と経費を書く申告書を出しておるわけですね。しかしそれなら、本年度から以降あの形式をやめなさい。白色申告書については、所得金額と税額だけを書く方式に改めてもらいたい。法律というものはもちろんその一つの限度としてありますけれども、あなた方が、納税者の便利、自分たちのいろいろな判断の便利をはかって、今の体系を整えている、そうしてある収入なり経費なりというものの欄を設けておい、しかしここでは法律の建前は所得金額と税額にしかありません、帳簿がなければそこから先は問題になりませんという、そういう答弁をするのなら、あれはやめなさい。ああいう形式で申告をさせることは法律に反するのです。あなたの表現であるとするならば、法律に反することを行政官がやるということはおかしいのです。ですからその点は、そちらをやめるのか、あるいは——私が今申し上げておることは、なるほど納税者の方の申告についての内容は、白ならばわからない。これはわからないでしょう。そこを私は論じません。しかし調査によってあなた方が何らかの更正をするときには、所得金額で更正するのじゃないでしょう。やはりその人の収入は幾らある、経費は幾らある、それによって所得は幾らあるかということを、当然あなた方は調査によってやるということになるならば、あなたの方のいわゆるこの収入は幾らになりますから、それはこういう経緯でわれわれは収入をこういうふうに見ましたよ、経費はこういう経費をこう見ましたよ、だから所得金額はこうなりましたよ、これは明らかな理由じゃないですか。片一方の申告が帳簿であろうがなかろうが、白色であろうがなかろうが、そのことを離れて、最終的に出てくる決定というものには、それだけの理由がなければ決定する価値がないと思うのです。その理由はそこにもある。だから、その理由を書くことにするのか、いずれか一つにしなければ、自分たちの都合のいい方ばかりをとるというわけにはいかぬ。どうですか、どっちにしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/221
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222・村山達雄
○村山政府委員 これはこういうことになっているのです。詳細を申し述べてなんでございますが、規則二十三条、確定申告書の記載事項で書いてございます。そこでは、「確定申告書には、法第二十六条第三項各号に規定する事項の外、左に掲げる事項を記載し、これを納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。」と書いてございまして、国庫補助金の関係、それから譲渡経費の関係、取得価額の問題、それから貸し倒れ準備金とか、その他特別修繕引当金がございまして、十のところに「その他参考となるべき事項」という規定があるわけでございます。それで全体の考え方としましては、確かに法律事項としては所得金額としておりますが、規則で書いてあるわけでございます。今の事業所得の必要経費は、ここで読んでいるわけでございます。問題は、やはり対立概念というよりも、納税事務の適正の実現を相協力してどういうふうにやっているかということに私は基本があると思うわけでございます。そういう意味で、お互いにその申告書を中心にしていけば、将来の紛議は少なくなる。それで主張の相違点もはっきりしてくる。こういう意味で、現在の申告の様式が成り立っているわけでございます。別に税務署の利益だけ、対立的な意味での利益だけを考えているわけでも何でもございません。所得の内容が必要な限度においてわかるということを中心にして考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/222
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223・堀昌雄
○堀委員 私はきわめて論理的な質問をしておるわけなんです。あなたのおっしゃったことは、さっきの前段では、ともかく法律には、所得金額と税額しか書けと書いてないから、所得金額しか書いてないものについては、収入や経費についての問題の論議のしようがありませんというから、私が、それならば、もうあなたが書いてないというものがあるというのなら、法律の定めたところによってやりなさいと言ったら、今度は「その他参考となるべき事項」があって書くのだ。書くのなら、今度は理由を当然それならやりなさいというだけで、私は論理の上でものを言っておるわけだから、あなたはそこでごまかしちゃいかぬです、私は絶対にごまかされないから。いいですか。だからいずれをとるかということを聞いておるだけなんです。私はどちらにしなさいと言うのじゃないのですよ。あなた方の方で、とにかく収入と経費を書くということを指導していくというような、これまでの建前をくずさないのならば、当然それに伴って起こる更正については、その変化を含めて、更正決定をした全体の額が出てきたら、理由があるわけだから、その理由を書きなさい。それを書くのはいやだ、どうしても書けませんというなら、これから白色申告というものは、所得金額と税額だけにしなさい。いずれをとるかということが、今あなたの話から論理的に私は引っぱり出した問題であって、私は勝手に前提を置いてものを言っているわけじゃないのです。だから、そのどちらをあなたは正しいと思うのか、それを言ってもらえればいいのです。詳細な説明は要りません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/223
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224・村山達雄
○村山政府委員 ですから、法律事項として、今の経費の問題でございますが、「参考となるべき事項」ということが政令では書いてございます。実際のフォームは、お互いの便利を考えて、こういうフォームにしているわけでございます。それで一方、白色申告については、その帳簿がほとんどない。あるいはあっても非常に不完全だということを前提にしているわけでございます。もしおっしゃるように、この場合——ですから、これを見ますとわかりますように、その必要経費の欄もありましょう。ありましょうが、書かない場合もあると思います。その場合に、書いた場合、書かない場合が両通り、実際問題としてはあると思うのでございます。どちらもある意味ではそれは有効な申告だろうと思います。そのときにその理由というお話を、今の堀先生のおっしゃるように、収入支出の書いてあるものについて違うというなら、その違うものがその理由である、こういうことでありますれば、その限りにおいて、その理由というものはありましょう。だがそれを法律的に強制できるかどうか、あるいは今の段階で法律的にそのことを規定しなくちゃならぬかどうかという問題になると、やはりそこはまた別個の問題ではないかということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/224
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225・堀昌雄
○堀委員 どうしてもそこがはっきりしないのは、問題は私が申し上げておるように、ほんとうに申告納税制度としてものが見られておるか。形式は申告であるけれども、賦課課税方式と同じ実態が行なわれておるというところに問題があるわけです。だから私が言っておることは、あなた方が帳簿はございません、しかし参考になる事項という政令を作ったのですから、その政令で、本来ならば所得金額と税額だけ書けばよろしいという法律を、あなた方はワクを広げて、その参考となる事項というのに収入と経費を書くということを含めておるかどうか。政令はあなた方が勝手に書くので、われわれまで相談がないからわかりませんけれども、しかしそれまで含んでおるものと仮定するならば、政令であなた方は一応強制しておるわけですね。そういうことになると私は思うのです。政令で含むというなら強制しますね。だからそうやって書かれておるのなら、あなたは違いと言われましたけれども、私は違いというよりは、大きな下からの更正の決定の土台を、理由がなければいかぬと言うのです。たとえばさっき私が申したように、二つの場合があるわけだ。二十万円の収入について、十万円の経費だという格好で書かされておる人があるとしますね。十万円の所得を得た。あなた方は十五万円という更正決定をした。五万円ふやした。その五万円ふえた中身は、収入が申告より五万円多い場合、経費が申告より五万円少ない場合と、二通りあるわけでしょう。そうするとその二通りの場合については、収入が二十五万円になったというなら理由がなければ、あなた方の方は調査をして二十五万円と言えないはずだから、二十五万円になったなら、こうこうこういうことで推計をして二十五万円になりましたよ。経費が五万円少ないというなら、こうこうこういう調査の結果、こういう推計をして五万円経費が少なくなりましたよ、こういうのが理由ではないですか。だからそれを書きなさい。これは私が言っておるのは無理でも何でもない。それを書いたときに初めて私は申告納税制度の趣旨が生かされる、こういうことを言っておるだけなんです。だからあなたの方で所得金額と税額だけでございますというのなら、それは理由の書きようがないかもしらぬけれども、そうなってないというなら、理由を書くのは当然ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/225
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226・村山達雄
○村山政府委員 これは実際問題としては堀先生よく御存じだと思いますが、たとえば農業等につきましては、これは反当たり標準でやっておるわけでございます。算出過程は全部農協とか、あるいは村の方にお知らせしておるわけでございます。これはこれこれの理由で出てきておりますということで、反当たりで現在はやっております。従いましてその一反当たりのものはわかりますので、そうすると標準でございますから、所得ずばりで出ておるわけでございます。こういうものにつきましては、ほとんど収入とかなんとか書く意味はないわけでございまして、事前にお互いにその年幾ら課税するかという話が出ておるわけでございます。これは農業はおそらく所得だけ出ておるわけでありまして、実際は税務署の方には反別は出ておりますということでございます。また経費を書いてもらってもどうにもならぬことでございます、現状の記帳状況では……。そういう意味で所得だけのものもございますし、それからまた収入、支出を便宜——便宜と申しますか、ここは商法のように必要的記載事項とか、任意的記載事項とか、そこまで厳密に書いてあればよろしゅうございますが、現在のところ申告書のフォームとして記載すべき事項云々、その他参考となるべき事項、まだかなりぎりぎり詰まらないなごやかな規定の仕方をしておるわけであります。そういうところでございまして、それでできれば書いていただけるにこしたことはございません。おそらく書いてなくても、それはそれとしてそれなりの申告として有効なものだろうと思います。そういう意味でございますので、全部収入、支出を書かして、それでそれぞれ違う理由を書かせる、更正の場合に付記させるというところまで、残念ながら実際の記帳の現状なりあるいは申告書のフォーム、添付書類を、今のところは申告書はありますが、添付書類を、ほんとうを言いますと、その計算書の根拠がほんとうに要るわけでございます。そこまでも行っていないのが、今の日本の申告所得税の現状であるわけでございます。ですからそういう何といいますか、ふわふわしたものの上に立って、実際はというと行政をやって参っておる。そこに非常に納税者もわれわれも相互に、今後の問題をどう持っていくかという苦心の存するところでございまして、それで法律的にだんだん詰めていきますと、われわれも頭の整理をしてもらってありがたいのですけれども、だんだん見ていきますと、まだかなりふわふわしたところで今の税法はできておる。証憑書類をつけろ、あるいは経費の内訳を一々言えとか、すべてが権利義務で一つ一つの申告に、それなりの法律で要求している厳密性を一々要求しているところまで、手続の上では行っていないというのが、ほんとうだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/226
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227・堀昌雄
○堀委員 関連ですからこれで終わりますが、私はどうも話がふわふわのところへ来ると、実は困ると思うのです。だから、それはその実態としてはいろいろありましょうが、ざっくばらんに言いますと、あなた方の方では何か問題を処理されるときには、効率表、標準率とかいうものを持ってきて、どんぱしりとものさしを当てて処理をされるわけでしょうね。そうするとものさしを当てた理由を書くこと自体は、効率表や標準率のよって来たった理由を書くと同じことになるので、これは困るということであるのかもしれません。しかしたとえば私が一つ商売をしておりまして、そうして私なりに、帳簿があるないは別として、自分の収入はこれだけです、経費はこれだけですと、あそこへ書く欄があるのだから書いていくとしましょう。そうしてあなた方の方はいきなりぽんと更正決定の額だけを、その場合には所得額と税額の変更だけをあなた方の方では出してくるわけですね。それでは私がもしその当事者であるならば納得できませんね。あとの異議申し立てとか、審査請求の前に、一体なぜそういうことが来たのかということについて、村山さん、あなた自身がもしそんなのが来たらどうします。あなたが商売をしているとして、あなたがともかく二十万円の収入で十万円の経費だと自分で思って申告書を出した。ところが所轄税務署がぽんといきなり、それは二十万円の所得があるといって、税額はこうですよというような更正決定をしてきたら、あなたはどんな感じがしますか、一ぺん答えて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/227
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228・村山達雄
○村山政府委員 自信のある申告であれば、それはやはりおかしい、こう思うだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/228
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229・堀昌雄
○堀委員 そうすると、一体申告をする諸君が、初めから自信のない申告をしているということだったら、これは私はやはり申告者が悪いと思いますね、実際は。それなりに申告者は自信があると思っていると思うのですよ。そうすると、今の村山さんのようにおかしいとみな思うでしょうね。あなたがおっしゃる通りなら私だってそう思う。みんなそう思う。おかしいと思っても、それから異議の申し立てとか、いろいろやるということになれば、これは実はなかなか大へんですよ。だれでもが気軽にぱっと異議申し立てができて、そうしていろいろなことがさつと非常に簡単に運ぶということなら、これはまた話は別になるのですが、やはりそのときにわれわれ日本人は残念ながら、泣く子と地頭には勝てないとか、要するにお役所に刃向かっても仕方がないとかということで、おかしいという気持はありながら泣き寝入りをするのが、私は過半だろうと思うのです。そこに申告納税制度の欠陥があるので、結果としてはおかしいと思いながらも、賦課課税を行なわれたと同じ事態が発生してくる。そのときにおかしいと思うについて、なるほどこういうことを向こうは言ってきたのだ、ははあ、そうしてみると自分の考え方が自信があると思ったけれども、ちょっと自分の方がおかしかったのだなと得心がいくことを、そのところでやるのが、私は申告納税制度というものの本来のあり方ではないかと思う。どうですか。だから私はあなたがいろいろ今までおっしゃった中で、それはちょっとだいぶ問題があれで、あっちこっちと理由をお探しになったと思います。しかし理由の問題は、いろいろな参考となるという政令があるとかなんとかということではなくて、かまえの問題だと思うのです。あなた方の納税者に対するかまえの問題だと思う。ちょうどあなたが、長官や主税局長は、商売をしてなくて事業申告なんかなさらぬものだから、やはりその実感がないのじゃないか。ところが事実商売をしておる人たちにしてみると、やはりあなたでもさっきおかしいとおっしゃったような気持を、国民は多数が持っておるけれども、それを具体的に表現ができないというのが、私は現在の実情だと思う。だから、私はここでちょっと大臣に一つお伺いをいたします。われわれは国民の側に立ってものを考えるのが前提であって、要するに税金をとるお役人の側に立っていいということにはならないと思うので、さっきからの話、大臣ずっとお聞きになっておってわかったと思うのですが、理由を書くのが適当だと大臣はお思いになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/229
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230・水田三喜男
○水田国務大臣 理由が書けるような状態にあるのなら適当だと思うのですが、今までの話を聞いておりますと、ふわふわしているということが、これがひとり徴税者のためであるか、そうではないで一方の納税者のためにもそれがなっているかということは、なかなか今の実情ではむずかしいのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/230
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231・堀昌雄
○堀委員 今の大臣の答弁は、私ははなはだ遺憾なんですよ。というのは、村山さんがさつき言っておられる理由とかなんとかいうものは、申告と更正の違いを立証するための理由ということを言っておられる。そうすると、土台の方の申告がはっきりしていなければ、その差をはっきりさせるには理由が成り立たないということなんですね。私が言っている理由というのはそうじゃないのです。要するにさっき話したように、私は二十万円の収入がありました、十万円経費がかかりましたから十万円の所得ですという申告をしたときに、税務署の方は、二十五万円の収入がある、しかし十万円の経費は同じだ、だから十五万円の更正決定をしましたということになりますと、二十万円が二十五万円になったのですからね。それはその二十万円と二十五万円の差の五万円のことを私は言うのじゃない。なぜ二十五万円が出てきたのかということについては、理由がなければ二十五万円と言えるはずがないのですから、その二十五万円の出た理由を書いてもらえば、私は得心するわけですよ。経費は同じだ、しかしあなたは二十五万円収入がありますよ、それはこういう理由で二十五万円になった、それが書いてないから、さっき村山さんも、自分が申告者の立場になって、二十万円は自信があると思って出しているのに二十五万円というのが出たら、おかしいと思うと主税局長がそう言っているのですが、大臣はおかしいと思いませんか。あなたはお仕事は何をしていらっしゃったかわかりませんが、あなたが申告者だった場合、どう思いますか。あなたに村山さんと同じ質問をしてから、次を聞いていきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/231
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232・水田三喜男
○水田国務大臣 これは税務署が勝手に理由なしで認定するということは、事実問題としてはあり得ないと思います。理由があると思います。しかしその理由を書くというためには、お互いに根拠がなければならぬ。だからその根拠について、一方はほとんど帳簿がない……(「いや、税務署が決定した理由だ」「挙証責任は税務署にある、今理由があるとあなたは言ったじゃないか」と呼ぶ者あり)これは実際問題として、いろいろな点から大体税務署が推定して、この申告は不足しているということを見てきめるわけでございますから、これは実際には理由があると思います。その理由をはっきり書くか書かぬかということは、これは問題でございまして、それは挙証責任がこっちにあると同時に、今度はこれに対する異議の申し立ての責任も向こうにあるわけですから、それが一方、申告者の方にはそういう実際の証拠となるべき帳簿というようなものがないのですから、これが明確にこちらから理由が書かれるということは、租税については始終問題を起こすことになりますので、その点がさっき主税局長がふわふわと言ったところでございまして、そういう問題はおのずから両方で、大体このぐらいはやむを得ぬ、一方も納得するには納得するだけの理由が大ていはあるのですから、その辺は今すっかり帳簿を、こういうものだという規定によって、全部届出を強制してないというところもそこにあるのですから、これは今のような日本の実情から見ましたら、はっきりこういうものは証拠を添えて書いて出せということになっておるのでしたら、こちら側の理由も明確にできるでしょうが、それがないのですから、これはやはり今までの経験その他によりましても、今程度のもので折り合うのが一番問題がない。実際問題として私はそうなるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/232
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233・堀昌雄
○堀委員 私、大臣に伺ったのは、そういうことを伺ったのじゃないですよ。あなたが商売をしておられて、そうして二十万円の収入があって、十万円の経費がかかって、所得が十万円だったと思って自信を持って申告をしたわけですよ。そうしたらいきなり税務署が十五万円という所得額を決定して、税額をこう書いてやってきた。そうすると、そのときあなたはどう思いますかと言うのですよ。あなたが申告者であった場合に、いやもう税務署は大へんりっぱな決定をしていただきまして、まことにありがとうございましたとあなたは思うのか。やはりおかしいなあと思うのか。どっちですか。主税局長はさっきおかしいと思うと言った、その通りだと思います。大臣はどう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/233
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234・水田三喜男
○水田国務大臣 全く正しい申告をした場合には、やはり私もおかしいと思うと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/234
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235・堀昌雄
○堀委員 全く正しい申告ということは、帳簿がない場合には、自分が思うということが土台になると思うのですよ。だから申告をしておる人たちは、さっき主税局長は自信のあると言われました。あなたは全く正しいと言われましたが、しかしそれは本人の申告者がそう思っておるだけであって、一体申告者の中に全然うその申告をしておると思っておる人間が一体どのくらいあるか。やはり大多数の者は、あなたの言ったように全く正しいと思って出しておるのですよ。全く正しいと思って出しておるけれども、やはりそこに相違が出てくる。だから更正決定が起こる。その場合はやはりおかしいと思うのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/235
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236・水田三喜男
○水田国務大臣 実際の責任者が国税庁長官ですから、一つ長官の方から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/236
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237・堀昌雄
○堀委員 大臣、まだまだだめです。長官にはあとで聞くから、ここは肝心なところだから、国民の立場に立ってあなたの答える場所でしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/237
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238・水田三喜男
○水田国務大臣 この問題を解決するためには、やはりこの申告納税については全部記帳義務というものを課するというところまでいかなければ、これはほんとうの合理的なことにはならないだろうと思います。今そういっていないのですから、その間においては、実情から見て、今の程度のやり方でやむを得ないのではないかというふうに考えております。あまりに不当な決定をしたときには、本人が黙っておるはずがございませんので、従ってこれは間違いだというものは、個々に税務署との折衝を事実上やっておって、結局はある程度現実に即したやり方に直されておるのが実情でありますから、これはやはりそこに一つの妙味があるのではないかとも私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/238
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239・原純夫
○原政府委員 大臣からお名ざしがありましたし、私伺っておりまして三百申し上げたいと思っておったのでありますが、それは理想的な状況を考えますならば——まずその前に租税関係というものは、政府側と納税者とが対立の関係において、申告は一種のオファーだ。それに対して税務署は間違いないか、間違いないかとやって、高く高くという問題ではなくて、国民の一人々々がそれぞれその所得なり何なりに応じて、公平に財政の基礎をになうという理念のものであって、そこでは両者の対立とか戦い合うとかいうような姿のものではなくて、一緒に足をそろえていくという姿のものであるべきであると思います。そういう大前提に立って理想的な状態を考えますならば、やはり納税者の全部が帳簿もしっかり整備している、申告に際しても相当詳しく収入、支出いろいろなことを書くということが理想的な状態だと思うのであります。ところが遺憾ながら、まだそこまでいかなくて、青色申告制度というのがありますけれども、青色申告でもまだまだ発展していただかなければならないし、向上していただかなければならぬ。白色の場合においては、実際上詳しいデータをつけて申告になるというのは非常に例がまれでございます。およそ一人の納税者の所得を幾らと判定するかということは、これは非常にむずかしい問題だと私は思います。一番わかっているのは納税者本人です。納税者本人は、かり発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/239
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240・水田三喜男
○水田国務大臣 理由が書けるような状態にあるのなら適当だと思うのですが、今までの話を聞いておりますと、ふわふわしているということが、これがひとり徴税者のためであるか、そうではないで一方の納税者のためにもそれがなっているかということは、なかなか今の実情ではむずかしいのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/240
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241・堀昌雄
○堀委員 今の大臣の答弁は、私ははなはだ遺憾なんですよ。というのは、村山さんがさつき言っておられる理由とかなんとかいうものは、申告と更正の違いを立証するための理由ということを言っておられる。そうすると、土台の方の申告がはっきりしていなければ、その差をはっきりさせるには理由が成り立たないということなんですね。私が言っている理由というのはそうじゃないのです。要するにさっき話したように、私は二十万円の収入がありました、十万円経費がかかりましたから十万円の所得ですという申告をしたときに、税務署の方は、二十五万円の収入がある、しかし十万円の経費は同じだ、だから十五万円の更正決定をしましたということになりますと、二十万円が二十五万円になったのですからね。それはその二十万円と二十五万円の差の五万円のことを私は言うのじゃない。なぜ二十五万円が出てきたのかということについては、理由がなければ二十五万円と言えるはずがないのですから、その二十五万円の出た理由を書いてもらえば、私は得心するわけですよ。経費は同じだ、しかしあなたは二十五万円収入がありますよ、それはこういう理由で二十五万円になった、それが書いてないから、さっき村山さんも、自分が申告者の立場になって、二十万円は自信があると思って出しているのに二十五万円というのが出たら、おかしいと思うと主税局長がそう言っているのですが、大臣はおかしいと思いませんか。あなたはお仕事は何をしていらっしゃったかわかりませんが、あなたが申告者だった場合、どう思いますか。あなたに村山さんと同じ質問をしてから、次を聞いていきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/241
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242・水田三喜男
○水田国務大臣 これは税務署が勝手に理由なしで認定するということは、事実問題としてはあり得ないと思います。理由があると思います。しかしその理由を書くというためには、お互いに根拠がなければならぬ。だからその根拠について、一方はほとんど帳簿がない……(「いや、税務署が決定した理由だ」「挙証責任は税務署にある、今理由があるとあなたは言ったじゃないか」と呼ぶ者あり)これは実際問題として、いろいろな点から大体税務署が推定して、この申告は不足しているということを見てきめるわけでございますから、これは実際には理由があると思います。その理由をはっきり書くか書かぬかということは、これは問題でございまして、それは挙証責任がこっちにあると同時に、今度はこれに対する異議の申し立ての責任も向こうにあるわけですから、それが一方、申告者の方にはそういう実際の証拠となるべき帳簿というようなものがないのですから、これが明確にこちらから理由が書かれるということは、租税については始終問題を起こすことになりますので、その点がさっき主税局長がふわふわと言ったところでございまして、そういう問題はおのずから両方で、大体このぐらいはやむを得ぬ、一方も納得するには納得するだけの理由が大ていはあるのですから、その辺は今すっかり帳簿を、こういうものだという規定によって、全部届出を強制してないというところもそこにあるのですから、これは今のような日本の実情から見ましたら、はっきりこういうものは証拠を添えて書いて出せということになっておるのでしたら、こちら側の理由も明確にできるでしょうが、それがないのですから、これはやはり今までの経験その他によりましても、今程度のもので折り合うのが一番問題がない。実際問題として私はそうなるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/242
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243・堀昌雄
○堀委員 私、大臣に伺ったのは、そういうことを伺ったのじゃないですよ。あなたが商売をしておられて、そうして二十万円の収入があって、十万円の経費がかかって、所得が十万円だったと思って自信を持って申告をしたわけですよ。そうしたらいきなり税務署が十五万円という所得額を決定して、税額をこう書いてやってきた。そうすると、そのときあなたはどう思いますかと言うのですよ。あなたが申告者であった場合に、いやもう税務署は大へんりっぱな決定をしていただきまして、まことにありがとうございましたとあなたは思うのか。やはりおかしいなあと思うのか。どっちですか。主税局長はさっきおかしいと思うと言った、その通りだと思います。大臣はどう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/243
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244・水田三喜男
○水田国務大臣 全く正しい申告をした場合には、やはり私もおかしいと思うと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/244
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245・堀昌雄
○堀委員 全く正しい申告ということは、帳簿がない場合には、自分が思うということが土台になると思うのですよ。だから申告をしておる人たちは、さっき主税局長は自信のあると言われました。あなたは全く正しいと言われましたが、しかしそれは本人の申告者がそう思っておるだけであって、一体申告者の中に全然うその申告をしておると思っておる人間が一体どのくらいあるか。やはり大多数の者は、あなたの言ったように全く正しいと思って出しておるのですよ。全く正しいと思って出しておるけれども、やはりそこに相違が出てくる。だから更正決定が起こる。その場合はやはりおかしいと思うのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/245
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246・水田三喜男
○水田国務大臣 実際の責任者が国税庁長官ですから、一つ長官の方から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/246
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247・堀昌雄
○堀委員 大臣、まだまだだめです。長官にはあとで聞くから、ここは肝心なところだから、国民の立場に立ってあなたの答える場所でしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/247
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248・水田三喜男
○水田国務大臣 この問題を解決するためには、やはりこの申告納税については全部記帳義務というものを課するというところまでいかなければ、これはほんとうの合理的なことにはならないだろうと思います。今そういっていないのですから、その間においては、実情から見て、今の程度のやり方でやむを得ないのではないかというふうに考えております。あまりに不当な決定をしたときには、本人が黙っておるはずがございませんので、従ってこれは間違いだというものは、個々に税務署との折衝を事実上やっておって、結局はある程度現実に即したやり方に直されておるのが実情でありますから、これはやはりそこに一つの妙味があるのではないかとも私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/248
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249・原純夫
○原政府委員 大臣からお名ざしがありましたし、私伺っておりまして三百申し上げたいと思っておったのでありますが、それは理想的な状況を考えますならば——まずその前に租税関係というものは、政府側と納税者とが対立の関係において、申告は一種のオファーだ。それに対して税務署は間違いないか、間違いないかとやって、高く高くという問題ではなくて、国民の一人々々がそれぞれその所得なり何なりに応じて、公平に財政の基礎をになうという理念のものであって、そこでは両者の対立とか戦い合うとかいうような姿のものではなくて、一緒に足をそろえていくという姿のものであるべきであると思います。そういう大前提に立って理想的な状態を考えますならば、やはり納税者の全部が帳簿もしっかり整備している、申告に際しても相当詳しく収入、支出いろいろなことを書くということが理想的な状態だと思うのであります。ところが遺憾ながら、まだそこまでいかなくて、青色申告制度というのがありますけれども、青色申告でもまだまだ発展していただかなければならないし、向上していただかなければならぬ。白色の場合においては、実際上詳しいデータをつけて申告になるというのは非常に例がまれでございます。およそ一人の納税者の所得を幾らと判定するかということは、これは非常にむずかしい問題だと私は思います。一番わかっているのは納税者本人です。納税者本人は、かり残ってくるのじゃないかと思うのです。だから問題は、あなた方のかまえが納税申告制度を伸ばしていこうとするならば、やはりそれは労が多いと思います。思いますけれども、必要なら私は国税関係の職員をふやせばいいと思うのです。特に私はこの前からも申し上げておるように、大きなところになかなか人はいけないということになっているのだから、有能なちょっとの人がやれば、何百億の税収が出る段階において、私はそういう必要な人は当然国の経費でふやせばいいと思う。どうかしてあるべき姿に努力するという方向にかまえを正してもらいたいのであって、今の時点の中でできないことをやれというのじゃないのです。できるようにあなた方が一つ国税庁の職員をふやしてくれという要求があれば、大蔵委員の諸君一致して主計局に対して、もっとふやしましょう。(「賛成」と呼ぶ者あり)どうです、皆さん賛成という声が与党からかかっておるわけだから、そうやって税制の正しいあり方に、国民の側に立ってものを考えるような、そういうかまえを正してもらいたい、こういうことですが、私の意見に間違ったところがあるでしょうか、長官いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/249
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250・原純夫
○原政府委員 私は先ほども申し上げましたように、白色の申告の納税者の相当部分については、やはりもう少し記帳ベース、あるいは申告にしても、自分の納税義務についての説明を、これはもう納税者が一番よく知っておるのですから、もっとしっかり構成するような将来を望みたいと思います。それまでの間、税務署側としてはいろいろ調査にも、今申したようないい状態になった場合と比べると、はるかに日数がよけい食われております。それにしてもその調査する間に、売り上げなり経費なり償却なり、いろいろそういう点について、お宅はどうもおっしゃることがおかしい、申告の基礎になったものがおかしいという点は、十分御説明さしておるつもりでありますが、それが足らないとか、場合によってラフになってしまうということは、これはまたあり得ないことでもありませんから、私は執行の責任者として十分努めたいと思います。ただ制度としてこの更正の場合、すべて理由を付せというのは、やはり私は白色の場合は、それは制度としてはいかがであろうかというふうに思います。もう少しそういうような理由を付すということの効果を得るためには、青色申告という制度があって、そして一種のバランスといいますか、とっておる。白色の場合はいかにも理由がないのがおかしいというふうに言われると、ちょっと形はおかしいのですが、調査の間には、もうそれこそ千言やそこいらの言葉をもってはいろいろ申し上げておるわけです。それをさらにフォーマルな文書をよこせというのは、私はやはり納税者が申告の文書にこれこれの書面はしっかり出しなさいということを、制度的にとるのでなければ、制度的にはバランスがとれないと思います。これは言いようでは、えらい納税者にそれでは意地悪いじゃないかというふうにお感じになるかもしれぬけれども、しかし冒頭に申した租税関係は納税者も税務官署も同じ方向に向かって、どれが正しい相応の担税力を示すものか尋ねようという気持になれば、やはりその納税者としての所得諸元の表現といいますか、記帳といいますか、そういうような問題と組んで、制度的にはお考えいただく必要がありはせぬかと思います。御趣旨は、今申しましたように執行上調査にあたって、納税者が初めに申告された基礎になったことが違っている点については、よくわかるようにこちらの意見を申し上げるということをますます努めて、いやしくもそういう際に高圧的な、また問答無用的なことのないようにということで処していきたいと思いますので、御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/250
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251・堀昌雄
○堀委員 私は関連ですからここまでにして、また私の持ち時間がきたときにやります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/251
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252・石村英雄
○石村委員 関連して。今、横山君は二十八条までのことでいろいろ言ったわけですが、二十八条に関連があるので、二十七条をお定めになった理由と、その意味を一応簡単に御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/252
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253・村山達雄
○村山政府委員 これはいわゆる調査課の職員の調査で、税務署所管法人あるいは国税局所管法人ということで、資本金区分によって分かっておりますが、そういう大きなものにつきましては、税務署の職員ではなかなかうまく調査ができない。課税の公平を期し、調査を徹底させるためには、大きい会社につきましては調査官組織で現在当たっております。調査官の調査したものにつきましても、その決定はやはり税務署長の名前で、そこの税務署における歳入になるわけでございます。ただその場合、ここではその調査官の調査に基づいて更正決定することができる、こう書いておきまして、調査官の調査に基づくということを明らかにいたします。そして後の方の審査請求のところで、これは国税局員の調査に基づく更正決定でありますので、税務署長にいかないで、直ちに国税局長に対する審査請求をしてくれということになっております。ここはその権限関係を明らかにするとともに、あとの審査請求のところで、不服がある場合は国税局長に対する審査請求にいくのですということを明らかにしている規定であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/253
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254・石村英雄
○石村委員 理由はそれで大体わかりましたが、えらい個々の文法的なことを申しますが、「国税局の当該職員」当該といえば、何かその前に受けるものがなければいかぬです。何を受けて当該というのですか。受けるものがないのに該当した職員というのはわけがわからぬです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/254
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255・村山達雄
○村山政府委員 これは用語の約束でありまして、調査の権限ある職員が、こう読んでいるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/255
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256・石村英雄
○石村委員 法律は国民が読むのだと思います。お作りになったあなた方だけが読むわけではない。当該職員と書いたら、それは権限ある職員なんだ、そんなことは国民にはわかりませんよ。わかりますか。あなたの奥さんにでも聞いてごらんなさい。当該とは何だ、何に該当する職員だ、これは前の文章にそれがなければおかしいじゃないか。日本語ならばそういう理屈です。大蔵省用語ならこれで済むかもしれないが、国民は日本語を使っている。大蔵省用語を使っているのではない。よく文句を言うのですが、一体税法は大蔵省用語ばかりでお書きになるから、国民にさっぱりわからぬ。わからぬままで税金をとる。一つ日本語で書きかえて出してもらいたい。それとも当該というのがあるというなら、どれを受けているということを明示していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/256
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257・村山達雄
○村山政府委員 これは大蔵省用語というわけでもございませんが、権限ある官吏というとき、裸で出てくるときに、法律用語では通常こういう言葉を使っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/257
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258・石村英雄
○石村委員 そういうように法律を国民に関係なしに都合のいいように、勝手に作っているから、法律用語だということになるかもしれぬけれども、これを国語研究所へ持っていって、この当該は何かと聞いたら、わからぬと言うにきまっている。専門家でなければわけがわからぬ。そんな文章の書き方はおかしいじゃないですか。国民から税金をとるのだから、とられる国民が読んでわかるように書いてもらわなければ、法律家でなければわからぬような文章の書き方をして、国民から税金をとるということは、実にごまかしだと思います。どうもこういう傾向が多いので、私はこんな文句を言うわけですが、これは何とか普通の日本人にわかるように、ここを書きかえてはもらえませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/258
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259・村山達雄
○村山政府委員 これは法律上の用語の約束になっておるものですからどうも……。まあ今後できるだけわかりやすい言葉で書きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/259
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260・石村英雄
○石村委員 法律用語と言って逃げずに、法律用語でもわかる法律用語があるのです。これは法律だから、みんな法律用語かもしれません。しかしわからぬ法律用語は困るのです。法律の専門家でなければわからぬ言葉を使って、国民から税金をとったり何かするということは間違いだと思う。昔なら国民なんかどうでもいい、これでとってやるのだということでいいかもしれないが、このごろは国民が読んでわかるような文章にして税金をとる、こういう方針に改めていただかなければならぬ。わからぬのはお前らが法律用語を知らぬからだめだでは、どうも法律として国会を通すわけにはいかぬと思う。われわれは法律の専門家ではありません。国会議員は専門家ではないのです。国会議員は国民の代表で、国民のわからぬ頭でこれを見ているわけですから、それはお前らが法律専門家にならぬからいかぬ、こう言われたのでは、私は間違いだと思う。どうですか、水田さんは法律専門家かどうか知りませんが、当該職員からすぐ権限のある職員なんという、こんな法律用語がすぐのみ込めますか。もしおわかりになるとしても、私の言うように一般国民にはわからぬだろうという考えなら、そういうように改めさせていただきたい。もしあなたにさえわからぬのなら、この法律はもうすぐ修正していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/260
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261・水田三喜男
○水田国務大臣 用語には一応約束がございますので、国民が一般に使っていない言葉でも、その用語を使うことによって概念がはっきりするということが、いろいろ問題を避けるゆえんにもなりますので、こういう法律用語とかいうようなものは、そう簡単に国民の一般の用語に直すわけにもいかぬ問題は非常に多いと思います。現にこの法律の中にもたくさんございますし、今予算委員会で問題になっておるのは発議と発案という言葉でありますが、国会できめたことを、その案を国民に示して国民投票を求めるときは、発議という言葉で約束になっておりますし、国会議員もしくは政府が国会に案を出すときには発案という言葉で、これも一般の国民用語ではございませんが、発議と発案というのはそういう約束の言葉になって、これをいろいろ混淆ることが政治上の大きい問題になるというようなことでございまして、こういう用語はその約束された観念を内蔵しておるものでございますから、できるだけ言葉はやさしくするにこしたことはないと思いますが、こういう約束になっておることが、その通り全部みな書き直せるというようなものではなかろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/261
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262・石村英雄
○石村委員 発議と発案とは、国民でも字を読めば、案を出したと議を出したとで、正確な意味はわからぬかもしれぬし、法律的に問題が起こるような解釈はあるいはできないかもしれぬが、大体の見当はつくのです。ところが当該職員と書いてある。その当該は何に該当するのか、全然前にない。こういうときには、権限のある職員という意味だと言うなら、調査の権限のある職員が、とめんどうでもお書きになればわかる。こういうことはほかにも私はたくさんあると思う。今ここで気がついたからまず第一着手として……。こんなやり方をいつまでもやっておったら、結局国民は税法はわからぬということになりますよ。だから書きかえることができないことなら、これはやむを得ません。しかし権限がある職員だという意味なら、権限のある職員と書いたって、字が少し行数が伸びるだけの話で、ちっともなにがないわけなんです。私は一つの例としてこれを言うわけです。こんなことが税法の中には非常に多い。とにかく国民を一番縛る、国民が一番心配する税金のことで、税法に使われておる文句が何のことやらわからぬでは困る。水田大蔵大臣は良識のある政治家だと思うのですが、一つ国民という立場に立って、まず言葉から国民にわかるように改めることに手をつけていただけませんかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/262
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263・水田三喜男
○水田国務大臣 こういう法律用語とかいうようなものを、こういうふうに直そうという新しい約束をする言葉がうまくできれば、これは賛成でございます。そういうことはやってもいいと思いますが、そういう約束がまだできないときには、従来はっきり用語として、意味はこういうものだと約束されておるものを使うというのは、やむを得ないと思います。再更正なんという字がございますが、これを直しとか二度直しとかというような新しい約束の用語ができて、その言葉はそういう意味だというふうにはっきりされるのでしたらいいでしょうが、そこまでの約束ができない限りは、やはり正確を期すためには、当該という言葉が通用しておるのですから、当該が一番間違いのない言葉だろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/263
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264・石村英雄
○石村委員 更正とかほかのことで逃げられては困る。私は当該職員の当該は何を受けているかと言うのです。言葉というものは国民の間の約束なんです。だから法律も国民の間の約束の言葉を使って書いていただきたい。あなた方役人だけが勝手な約束の言葉を使わずに、国民の約束の言葉を使っておやりになっていただきたい。その場合に、当該職員ということは国民の約束の言葉に書きかえることができるはずだと思う。それを聞いておるのです。大蔵大臣は、これを国民の間に通用する言葉に書きかえることができないというお考えなんですか。さっき説明を聞くと、当該はこういう調査をする権限のある職員のことだ、こういうことなんですね。それでは権限のある職員と書くことがどうしてできないのか。それをできないと勝手にきめて今までやってこられるから、このような国民にはわけのわからぬ税法ができておる。大蔵大臣、こんなこと、そうこだわることはない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/264
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265・水田三喜男
○水田国務大臣 ちっともこだわっていません。いろいろな用語がすべてそういう約束でやさしく書き直されることは賛成でございますが、これを一つやったからといって解決する問題ではございませんで、当該は当該で今まで通っておる言葉でございますし、これは用語としてあらゆるところに使われている用語でございますから、特にこれ一つを直しても解決する問題ではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/265
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266・石村英雄
○石村委員 なるほどあなたのおっしゃるように、これ一つ直しても解決がつかぬほどたくさんわからぬ言葉を使っておるわけなんです。そのまず第一拍手として、これから始めていただきたいと思います。大体この法律の審議にしても、われわれはとかく法律自体についての審議をやらないのです。なぜやらないかというと、実際は言葉がわからぬからです。予算だってそうですよ、大蔵大臣、あなたの一番大事な予算の審議だって、予算委員会で政治論ばかりに終始するのはなぜか。もちろん政治論も必要ですからやらなければなりませんが、同時に予算に即した質問をやらなければならぬ。ところが大蔵省のお作りになるあの予算書の書き方では、残念ながら何のことやらわからぬ。議員は幾らか知識を持っているようですが、あれはみんな受け売りなんです。新聞の解説なんかの切り抜きを持っておる。役人を呼んで説明を聞く。その受け売りの知識があるにすぎない。予算書をあけて読んでわかる議員がどれだけおりますか。専門家以外にはわかりませんよ。わからぬようなことをするから、結局予算委員会でも一般的な質問しかやれぬようになる。法律でも税法でも、量はなかなか各条審議でやっているようですが、これは従来でもやらぬ。おそらく現行の所得税法を引っぱり出してここの大蔵委員に一々聞いたら、わからぬことだらけだと思う。私たちもその審議に参加した者ですが、残念ながらわかりません。わからぬのになぜ審議を通したか。最初からわからぬから手がつかぬ。それだから所得税法の論議でも一般論をやるより手がない。どうですか。私は私の体験から聞いている。こんなわからぬものを書かれて、今の当該でもこんなに引っかかる。そうすると次には進めません。とにかくわかるように書きかえることは不可能なものなんですか。書きかえることができるものなら、国民に通用するように書いていただきたい。たくさんあるからこれ一つ書きかえてもしようがないというのは、これはまた無責任なんです。まず隗より始めよとかなんとかいいますが、まずこれより始めよです。大蔵大臣、そうあきらめずに、日本語に直す、国民に通用する言葉に直すように、一つ努力を始めていただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/266
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267・水田三喜男
○水田国務大臣 なるたけいい言葉を発見するように、一つ努力したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/267
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268・横山利秋
○横山委員 今私どもの審議は二十八条に到達いたしました。八十八条、九十五条、九十六条まである。きょう与党の皆さんも熱心に質問を聞いておってくれるのですが、決して私どもは何かことさらに議論を展開しておるようなことでなくて、今石村さんが言ったように一つ一つやってみると、ずいぶん問題があるということをますます私は痛感をするわけです。石村さんの指摘したのは、この当該という簡単な言葉のようではありますけれども、しかし私はそういう問題でとらえるならばまだまだ幾つもあります。これは明らかに国税通則法を国民にわかりやすくと言いながら、そういう用語の点においても、またさっきから指摘しているような、税納者はしっかりしたものを出せ、おれたちの方は決定だけ出す、こういう独善的な気持がごうも失われていないばかりか、ますますそれを強くしておるのであります。
さっきの二十八条とそれから二十三条——二十三条との関係を大臣はあとからいらっしゃったのでこの点だけ言うておきますが、二十三条では、納税者は三十二ページにあるように、「当該請求をするに至った事情の詳細」まで出せ、納税者はもう詳細まで出せ。二十八条の税務署長が納税者に出すものは決定だけ通知をする、こういうのです。そこで何で理由を出さぬのか、納税者には資料をぎょうさん持ってこい。税務署は理由は何にも書かぬぞ、こういう立場がけしからぬと言っているのです。これは税の理論上から言うと、挙証責任の問題です。私はなるべく理論的な問題は、議論としても皆さんもあまり聞いてくれまいだろうから、具体的に問題を条項によって提起したのですが、挙証責任は税務署にはない。あくまで挙証責任は納税者側にあるという立場が、全編を貫いておるのです。わずかに青色申告に、更正決定をする場合には、これは理由を付してやる、こういう立場ですね。これが私どもはいかぬと言っているのです。納税者と税務署とが相対的な立場で話し合いをせよと大臣も言い、長官も言うならば、お前のやっていることは間違っておるということを税務署側が言うならば、その理由をきちんとやって、挙証責任の責任を自分たちも負うという立場になぜしないか。
その問題が出ましたから一足飛びに飛びますが、八十八条を開いて見て下さい。第八十八条、「証拠申出の順序」、この八十八条は——ちょっと皆さんも聞いておって下さい、非常におもしろい問題ですから。八十八条の証拠申し出の順序は、国税に関する法律で裁判をやった抗告訴訟においては、裁判所が長官や局長や税務署長、税関長その他の行政機関の長の主張を合理的と認めたときには、その訴えを提起した者、つまり納税者がまず証拠の申し出をして、その後に役所が証拠の申し出をするのだと書いてある。そして第二項では、役所はいつでも証拠の申し出ができる。こういっておる。
一体証拠申し出の順序という、この八十八条はどういうことを言っておるのでありましょうか。つまり裁判所が役所の言うことが合理的だと思ったら、納税者は文句があったら証拠を出せ、こう言えと言っている。これは裁判所のことですよ。裁判官の権限に対して私はなぜ容喙をするかということが第一です。
次に第二番目には、私は裁判のことはそうは知らないけれども、常識をもってしても、役所がこの裁判所へいろいろな申し出をする、あるいはまた納税者が、わしはこうだというものを出す。出した間においては双方とも合理的なんです。どちらが合理的でない、どちらが合理的であるということは、これはないのです。そういうことは当然なことであります。私はこの問題はまことに奇怪な法文だと思う。ここでも役所の長の主張を合理的と裁判所が認めたときは、納税者がまず証拠の申し出をしなければならぬという言い方というものは、論拠としてもおかしいし、かりに論拠が正しいと百歩も千歩も譲ったところで、納税者側に挙証責任こここではっきり定義するのは言語道断ではないかと思うのです。これは八十八条ばかりではなくて、先ほどの二十三条と二十八条の関係、それから大臣は最初いらっしゃいませんで、最初こまかいことでもめましたけれども、郵便を送ったら、若いておっても着いておらぬでも、郵便局に発送して大体着くころには着いたと思うと推定する。そんなことに至るまでほんとうに一方通行です。
私は挙証責任の問題についてこれからお伺いしたいのですが、その前にまず八十八条というものはどういう理屈になっておるか。裁判所へ出して両方ともいろいろなことを述べた以上、その間においては両方とも合理的です。それを片一方だけ合理的と認めたら、片一方は証拠を出す責任を負わなければならぬ、こういう理屈はない、どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/268
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269・村山達雄
○村山政府委員 この規定は挙証責任の分配に関する規定ではないということでございます。証拠申し出に関する順序だけが規定されておるわけでございまして、お読みになっておわかりのように、主張を合理的と認めるかどうかは裁判所でございます。裁判所が認める場合には、その訴えを提起したものが、まず原告側が証拠の申し出をして、その後に相手方当事者が証拠の申し出をする。第二項で、相手方の当事者は随時証拠の申し出ができるということで、主張を合理的と認めれば、まず相手方に証拠の申し出をするという順序、証拠申し出の順序だけを書いたのでございまして、しかもその判断は裁判所にまかされておるわけです。この規定のできましたいきさつを申し上げますと、これは二十五年のシャウプ勧告のときに、シャウプの方では、まず国の側は大ぜいの納税者の所得を調査する、それで本人が一番よく知っておるのだ、こういう前提でございます。それからまた行政処分というものは、一般的にいえばそれはまず有効なものとの推定を受ける。それから実際問題として、そういう事態にあるから、まず納税者の方が証拠を出すべきものである。そういう規定を設けるべきであるということが、シャウプ勧告にあるわけでございます。これを受けまして、いろいろ当時これをいかにして日本の税法で立法化するかということが問題になったわけでございます。しかし御案内のようにこの挙証責任の問題というのは、そう事ほど簡単に言うべき問題ではございません。これは訴訟全体に関する問題でございまして、実体法でそのことをきめるということにはいかにも無理があるということにいたしまして、その形を残したのがこの形でございます。結局裁判所が、もしそれが適当と認めれば、主張が合理的と認めれば、証拠の順序について相手方にさせるのだということで、裁判所の認定に全部その順序をまかした、シャウプ勧告の挙証責任をまず納税者に負わせろということに対して、そこまではとても日本の実情としてはいけるわけがないということで、この規定になったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/269
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270・横山利秋
○横山委員 私の言うのは二つあるわけです。一つは挙証責任の転嫁ではないか、その点についてはあなたは、これは挙証責任の転嫁を意味してはいないと言うわけですね。ではその点は了解しましょう。
その次に、これはシャウプ以来の継続的ないきさつがあるとおっしゃるけれども、八十八条、これは裁判所が判断をしてやるべきことを、国税通則法の中で書かなければならぬ積極的な理由はどこにありますか。ここには何もそんなものを書く必要はないじゃありませんか。これは訴訟法の問題です。どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/270
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271・村山達雄
○村山政府委員 この問題の解釈をめぐってはいろいろございます。そしてまたこの規定がいろいろございますが、実際問題としてこの規定はあまり争われたことがないということも事実でございます。ただ今度の通則法は、通則事項をここに書いておる。それから先ほどの送達に関する問題もそうでございましたが、従来ありましてあまり問題にならなかった事項につきましては、そのまま移行するという方針を大体においてとってございます。事柄の問題で、従来のものを統一的に規定する必要のあるもの、その意味で整備を加えなければならぬものにつきましては、この通則法の制定につきまして、これは実質的には通則法の中身をなすわけでございますが、そういう意味で詳細に検討して、推敲の上出しております。いろいろの問題がございますが、そういった国税徴収法にある通則規定その他につきまして、われわれが軽々に判断して、そしてこの規定は削除をするとか、これはこうするとかいうことでなくて、それはそれなりに推敲に推敲を重ねてきた規定でございますので、原則としてはそのまま移してあるというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/271
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272・横山利秋
○横山委員 そんなうまいことをおっしゃるが、どうも朝から気がついているのですけれども、まだそういう点では長官の方が悪いことは悪いと認め、そのかわりこっちに逆襲してくるのですが、あなたはどうも手をここへやって、いんぎんに話をするけれども、ちっとも悪いことを悪いと認めないのです。あなたはこれからもみ手をしないようにして、下におろして話して下さい。
とにかく村山さん、どう考えたって、通則法の中に八十八条がなくてならぬという積極的な理由はないですよ。そうでしょう。これはどんな歴史があろうと、普通に通則法を作る場合においては要らぬ文章です。要らぬ条文です。場違いです。しかも挙証責任を転嫁すると見られるおそれが多分にある。かりに証拠申し出の順序にしたところで、ここに書く必要はない。そう思いませんか。村山さんもいつもこの法律の説明役として、原文を固執しなければならぬという気持があまり強過ぎる。率直にこれはまずいのですと言ってもいいじゃありませんか。どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/272
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273・村山達雄
○村山政府委員 まあ率直に申しますと、まずいよりもうまいよりも、あまり実益のない規定であるということでございます。これは各税法を通じて、やはり訴訟のところでございます。現行法では入っている規定でございます。そういう意味で、ほんとうを言いますと実益も実害もあまりないのだろうと思うのでございます、書いてあっておわかりのように、裁判所の認定にかかっている問題でございます。そういう意味で、従来からありました規定を特に削除するということはなかろうということで、入れてあるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/273
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274・横山利秋
○横山委員 さっきからずっとやってきていますと、あなたの御説明の中で、従来からあったもので問題のないものは全部入れているとおっしゃるのだが、私の指摘したいのは、これは従来から問題があったかなかったかは別としても、政府に都合のいいところは多少問題があっても入れておく、税務行政に都合のいいところは、おかしいと思っても入れておく、こういうことに私は帰一すると思うのですよ。どうころんでも、この八十八条は通則法の中に入れるべき筋合いのものではない。もしもあなたが、この通則法が世にもりっぱなものだとかなんとかおっしゃるなら、そういう観念で通則法を議論なさっておるならば、八十八条は誤解を生ずるおそれもあり、どう考えてもここにあるべき姿ではない。実害も実益もないとおっしゃいますが、納税者側においてはこれは実害の方に利用されるおそれが十分にある。しかも挙証責任転嫁のあれではないのだとおっしゃるならば、私はこれは削除すべきであると思う。大臣、どうですか。私の言うことはどうお思いなさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/274
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275・村山達雄
○村山政府委員 これは私は実益も実害もないと言いましたのは、この条文自体の性格をめぐって、あるいはこれが実際問題でこの条文で争われたことがない、そういう意味で申し上げておるわけでございます。もちろんその考えられる場合というのはございます。しかし問題は、裁判所がすべて実際問題としては挙証責任の問題として考えておられる。こういうことでこの規定を使わなくても済むというところから、今まで実際問題としてこの規定自身をめぐって争いになったことがない、そういう意味で申し上げておるわけでございます。もちろんこの規定はそれなりの意味はあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/275
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276・田中幾三郎
○田中(幾)委員 私、今訴願前置主義にからんで質問しようと思っておったところ、たまたまその問題に触れてきたので、関連してお伺いいたします。横山委員からも八十八条の不必要の議論が出ていますが、行政事件訴訟法の第七条によれば、「この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による。」つまり行政事件訴訟については、民事訴訟法を適用して、それによるわけです。この通則法によって訴訟になった場合には、やはりこの行政事件訴訟法が適用されるのだと思うが、どうですか。審査の請求、異議の申し立てをして、それに対する処分や決定もしくは裁決のあったことに対する訴訟の起こった場合ですね。その訴訟については、自余のことについては行政事件訴訟法の規定によるものと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/276
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277・村山達雄
○村山政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/277
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278・田中幾三郎
○田中(幾)委員 そうしますと行政事件訴訟法には、手続については民事訴訟によることを規定しておるわけです。裁判所はその規定によって、訴訟の指揮、訴訟の進行、それらを裁判官の自由な意思によって進行するのが裁判の原則であります。挙証の責任は何人に先にあるとか、あるいは何人がいつやるとかいうようなことは、裁判の進行によって自然に裁判官が必要に応じてやることなんです。あえて何も八十八条によって挙証責任を先に一方に与えるというような指図的規定、指揮的規定を設ける必要はないと思うのです。これは裁判の大きな原則にも反するので、裁判所からいうと要らぬお世話です。民事訴訟法があるのに、特に税務のことについては、挙証の責任についてこの法律は指図をしておる、裁判所に対して干渉しておるわけです。ですから、行政事件訴訟法には民事訴訟法の規定によると、こう厳然と規定があるのですから、税務の訴訟関係についても原則として民事訴訟法によればいいのじゃありませんか。特にこういうへんぼな、挙証責任を一方に先にやらせるというようなことをやれば、裁判所は裁判はできませんよ。必要があると思っても、先に一方から出せるということは挙証の原則に反する、私はさように思いますが、局長はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/278
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279・村山達雄
○村山政府委員 この規定が入れられましたその当時のいきさつを申し上げましたが、この規定がどういう場合を想定しているかということでございます。これは先ほど申しましたように、一方において税務官庁は大ぜいの納税者を相手にしているわけでございます。典型的な例はやはりその標準のような場合でございます。その場合にどちらに挙証責任があるかということは別にいたしまして……。それでもちろん標準率でございますから、平均値でもって標準率を組んでおるわけでございます。その場合、いずれ証拠の問題になりますれば、そこの標準率の妥当性の問題が問題になるだろうと思います。しかしそうではなくて、ここで言っているのは、その標準率算定の根拠まで詳しく言わなくても、標準率というものは、一体どういうメソッドに従って、どんなサンプリングをして、どういうふうにして出すのだ、これの適用については、特にその要件事実となったもののうち、例外と認められないものについては、それ以外によるべき方法がないからよるのだ、その標準によってやったとかりに主張した場合、こういう場合の証拠提出の順序、そういう場合を典型的な場合と想定しての証拠提出の順序を規定した規定である。このことはやはり税務官庁が、最もよく自分の所得を知っておるべきはずの納税者で、しかも記帳がないという人たち、この大ぜいの人々を相手にしてやっていく場合には、この程度の証拠申し出の順序についての規定が論理的に必要であろう、こういう意味で挿入されたものであろうと思います。そういう意味でいいますと、その規定はその規定なりに従来意味を持っておるといわれておるわけでございます。今度の通則法の制定にあたりましては、やはり税法に関する訴訟に関しましては、すべて共通的な事項でありますので、その部分はそのまま移してある、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/279
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280・田中幾三郎
○田中(幾)委員 今の点はどうしてもおかしい。八十八条は読んでわかる通り、「裁判所が相手方当事者となった国税庁長官、国税局長、税務署長、税関長その他の行政機関の長の主張を合理的と認めたときは、その訴えを提起した者がまず証拠の申出をし、その後に相手方当事者が証拠の申出をするものとする」当然のことじゃありませんか。裁判所はいわゆる相手方、被告となっておるもの、税務署の方でやった主張が合理的であったと認めたときは、まず納税者の方に挙証責任を課するというのでしょう。当然のことじゃないか。裁判官がそう認めたら、まず挙証責任は納税者の方にやろうということは当然のことじゃないですか。こういう規定はなくても、裁判所がそう考えれば、当然相手方に挙証責任を課しますよ。何でこういうものを入れたか。私はなぜこういう問題を取り上げるかというと、国民の権利といいますか、納税は義務ですけれども、納める金からいえば、そういう国民の財産の負担に関係のあることについて、率直に訴訟主義をとらないで、前置主義をとったというところに疑問があるから、私はこの問題を出しておる。前置主義をとらずに、いきなり訴訟ができるということにすれば、行政事件訴訟法の規定によって、はっきりと、公然と、明朗に、ガラス張りの中で、公平な裁判をやることができる。それを権力主義によって徴税が自由にできるというようなやり方を推し進めていこうという思想がここに出てきて、官庁、つまり権利者の方を擁護する思想がここに現われておる。ですから、私は前置主義をとらずに、租税の関係については今度の行政事件訴訟法を適用して、直ちに訴訟をして、国民も明朗に、裁判の判決を終えたならば喜んで納めましょう。不服ならば公平な裁判所へ訴えて、公平にさばいてもらいましょうという明朗な空気が出なければ、一方は金をよけいとろうというものと、一方は少ない方がいいという考えから、不明朗な納税の問題が出てきておる。ですから私は前置主義をとらないで訴訟主義をなぜとらなかったかということを聞くつもりでおりましたが、たまたまここに条文の問題が出てきましたが、私はやはり横山委員のように、この問題は不必要である。もしもこれを強制するならば、裁判の指揮、進行に関与するようなことになりはしないか、不都合な規定であるということを私も考えるから、これに関連して質問したわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/280
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281・村山達雄
○村山政府委員 訴願前置主義の問題でございますが、今度の行政事件訴訟法では原則として訴願の前置を要しない、ただし他の法律で別段の定めがあるものはこの限りではない。それでその行政事件訴訟法の方ではどういう基準で他の法令で定むべきかということで、両委員会の間でいろいろ話し合いが進んでおるわけでございます。それによりますと、やはり全体の行政能率という点からいいまして、すべての問題について直ちに訴訟に持っていくということは、かえって権利の救済の意味におきましても、あるいは行政能率の上においても問題がある。一つは専門的な知識を要するもの、それから年々回帰的に大量の処分のあるもの、こういうものについてはかえって訴願前置を置きまして、その上で行政訴訟にいった方が全体の救済の手続としては妥当である、こういうことでございまして、そういう基準に従いまして別段の規定が設けられることになるわけであります。われわれが聞いておりますところでは、税法はもちろんそうでございますが、自衛隊法、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律、犯罪者予防更生法、執行猶予者保護観察法、売春防止法、外務公務員法、関税法、接収貴金属等の処理に関する法律、外国為替及び外国貿易管理法、外資に関する法律云々とありまして、四十幾つあるわけであります。こういう意味でいいますと、やはり税のような非常に大量的なものにつきましては、訴願前置をすることもやむを得ないと思うわけでございますが、ただ御案内のように決定が遅延いたしますと、本人の選択でいつでもいけることになっております。これで見ますと、今度の通則法では、異議申し立てをしておりまして六十日以上たちますと本人が訴訟にいくというなら、遅延しておりますからいつでもいけます。審査の場合でございますと、三十日たつと本人がもし望むならば自動的に審査請求できる、審査にいけばまたいけます。それからまた緊急の必要があってどうしても訴訟にいかなければならぬという場合には、もちろん訴訟にいく道は全部開いてあるわけでありますが、先ほど申しましたような意味において、税に関しては従来と同じように訴願前置をした方が能率的である、こういう考え方で訴願前置をしておるわけであります。ここで先ほど申し上げております証拠申し出に関する順序というのは、実は税務訴訟に関する実態からいいまして、税務署の方ではあらゆる納税者の、先ほどのふところ勘定をしなければならぬ、こういう問題がございまして、その場合の能率的な処理の方法ということで、これらの規定が設けられているわけでございます。そういう意味ではこれは税務訴訟に関する一つの特質ということで、従来から規定があるわけでございまして、今回もそれをそのまま移したといういきさつでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/281
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282・田中幾三郎
○田中(幾)委員 その前置主義について、税務の事件が多いからということは理由になりません。これは国民の権利が侵される度合いがどうかということによって救済する規定を置かなければ、便宜的に事務が多いから、事件が多くなるのだから、これは訴訟主義はとらないというあなたの言う——これは前にもあなたはおっしゃったですが、事件の件数が多くてとてもやり切れないようなことを申しておりますが、訴訟というものは権利救済の方法ですから、その侵される権利の度合いがどうかということによって、直ちに、前置主義をとらないで訴訟を求めるかどうかということを決定しなければならぬ。行政事件訴訟法は私も法務委員会で審議をした。ですからあなたがいろいろ御説明しなくてもよく存じております。
それから先ほどのお言葉に、これは専門的な知識を要する、こうおっしゃった。それからこの事件が多いからということを理由に上げて、前置主義をとったのだということをおっしゃるけれども、裁判所は、特許事件は特許事件の専門家がおりますよ。税については御承知の通り検察庁にすら特捜部があって、税専門の検察官がおる。裁判所はいわんや特許についてはその道の権威、租税についてもその道の権威、私はおそらく税務署で税をとる方よりも、さばく方にその権威者が多いと考えておる。ですからそういうところに持っていってさばいてもらえば、国民もどれだけ税をたくさんとられても、私は喜んで納めるだろうと思うのです。ところが審査の請求とか異議の申し立てというようなことは、相手は同じ人がやるのでしょう。こういうことで信頼できませんよ。一たん決定した人に対して、その審査の請求あるいは異議の申し立てをするということでは、不服のある者は満足しません。それから協議団のことについても、これは私後ほど質問したいと思っておるのですけれども、これも国税庁に付置するというのでしょう。付置とは何ですか。独立した一つの機関ならばいいけれども、国税庁につけ加えて置いて、その協議の決定を待つということは、これは第三者的な批判を加える機関ではありません。こういうものでは国民は納得しません。私の言うのは、もっと国民が喜んで税金を納めるような制度にするには、税務署を、決定する方を信頼しないようなことではこれは対立です。対立があるからこそ権力でもってとっていこうというから、そこに国民、納める方ととる方との間に対立といいますか、壁といいますか、そういうものができていくのですから、やはり不服のある場合にはオープンで、裁判所なら裁判所にぽんと訴えて、そして民事訴訟法の原則によって挙証責任をみずから進んで果たしていく。そしてその判断によって負ければ、明らかにそれに服して納めるということに持っていかなければ私はいけないと思うのです。税金は財産全部を納めなければならぬこともあるかもしれません。預金を全部引き出して納めなければならぬかもしれません。これは義務とはいいながら、国民の財産に関する重大な問題でありますから、そういう一方的な、権力的な、取り上げるような印象を残して税を取り立てるということでは、私はうまくいかないと思うのです。ですから隠すというようなものもなきにしもあらず、そういうものも出てこないとも限らぬですから、私はやはりこれは前置主義をとらないで、租税については訴訟主義をとるべきであったと思うのであります。しかるにここの八十八条に訴訟になってからの訴訟指揮、訴訟の進行についての挙証をここで明示して、こういう規定を置くということは不合理である。私はやはりこういうものを削除すべきである、訴訟になったら裁判所に全部まかすべきではないか、かように考える次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/282
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283・村山達雄
○村山政府委員 異議の申し立てについて決定をし、また不服ある場合は、審査請求をして決定することになっております。実際問題としまして裁判所にいきまして、裁判所にいくと申しますよりも、その前にそれらの問題はやはり税法、会計の問題、それから事実認定の問題がかなり多いわけでございます。そういう意味で迅速、能率ということを考えますと、やはり相互の利益のために私は訴願前置をして、税務署段階からやった方が能率的だと思うわけでございます。現に従来の再調査の請求あるいは審査決定の内容を見ておりましても、ほとんど半数以上は取り消して、全部取り消しまたは一部取り消し事項でございます。中には却下あるいは取り下げもございますが、その決定に対して、また再び審査請求をするものは非常に少なくなっております。その審査決定に対しまして訴訟に持っていくのはなおさら少ない。パーセンテージもございますが、そういったことから言いますと、これを全部一々訴訟に持っていくということになると、お互いの能率を非常に阻害するということでございます。ここに四十幾つございますが、これは専門的なことは別でございますが、そうでない普通の行政処分については税務のようなものこそ、この訴願前置を置くという理由から見ますと、最も妥当するものではないかというふうに実はわれわれ考えておるわけでございます。この証拠申し出の順序の問題も、実は税務という性質から見て、税務訴訟に関する一つの特性ということで従来も設けられておりますし、現在の段階でいろいろ問題はございますが、特にこれをなくしてもいいというところまでわれわれは踏み切るわけには参らなかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/283
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284・田中幾三郎
○田中(幾)委員 それではちょっとついでにお伺いしますが、今の異議申し立て、それからそれについての期間の設けがあるわけですね。あなたの今おっしゃった三カ月、六カ月、その決定をする期間については、何かきめがありますか。決定をしない場合には三カ月後には訴訟を起こせるという、起こす方の規定はありますけれども、税務署の方でいつまでに異議の申し立てに対する決定をしなければならぬ、こういう規定がありますか。いつまでほうっておいてもいいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/284
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285・村山達雄
○村山政府委員 これはございません。ございませんが、おっしゃるように納税者の方が、非常に遅延しているという場合には、直ちにいける。別に法律的の制限はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/285
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286・田中幾三郎
○田中(幾)委員 そうすると三カ月の間、そのままにしておけば、訴訟を起こせる。そうしますと、不服の申し立てをして三カ月たって裁決がないから、処分がないから訴訟を起こした。その訴訟中に裁決がずっとおくれてきた。そうするとその裁決の謄本を裁判所に送付しなければならないという規定がありますね。そうしますとその謄本を税務署から送ってきたときに、訴訟が進行しておるという場合には、それとの両方の対立はどうなりますか。裁判所の訴訟の方はどうなるのですか。これは訴訟法によりますと、そういう審査の請求がわかったときには、裁判所は訴訟を中止することができるという規定があります。ところが中止しないで、どんどん訴訟が進んでいった。極端にいうならば、第一審の判決が済んだあとで裁決がきたというような場合には、あなたの方のその裁決はどうなるのですか。これは今の不服申し立てに対する裁決の期限をきめてないから、こんな問題が起こってくる。それはどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/286
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287・村山達雄
○村山政府委員 それはここに書いてありますように、その場合には両方で並行審理が行なわれる場合を想定しているわけでございまして、一方で裁決がございまして、変更がございましたら、直ちに行くということでございます。訴訟の方がそれを受け取りまして、はたして従来のその訴えの利益、依然として継続する実益があるかどうかという問題になるのだろうと思います。実益がなくなりますれば、おのずからその間、訴訟は事実的に解決する場合もあるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/287
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288・田中幾三郎
○田中(幾)委員 それは最初の不服の申し立てをしたときの処分と、それから異議の申し立てをしたそれに対する裁決決定と同じであればいいですよ。対象が今度は同じですけれども、もし後の不服申し立てした以後におけるところの決定が、最初の決定と違った場合には、裁判になっておるところの訴訟物の対象は何になるのですか。おくれてきた場合に、裁判は別に独立して進行しているのですよ。この裁判の訴訟というものは、最初の決定もしくは処分に対してやっておるわけですね。ところがやっておる間に変わった裁決がきたという場合には、裁判の対象は何になりますか。あとできた裁決というものは無効なんですか、最初の決定処分に対して訴訟を起こしているのですから。その点はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/288
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289・村山達雄
○村山政府委員 そこは今度の法律では、すべて審査請求も、その決定を争っているわけではございませんで、その決定にかかる原処分変更がありますれば、あくまでも原処分が争われているわけでございます。それで裁決もその原処分の——最初税務署の更正処分なら更正処分がございます。これを異議の申し立てをやります。たとえば一部取り消しといたしますと、その一部取り消しでも、なお不服があるということで審査にかかるわけです。審査の対象になっておりますのは、その異議の決定が対象になっているわけではなくて、その異議決定後における原処分が対象になっているわけでございます。それに対しまして審査が延びております。規定によりますと、三十日以上ぐずぐずしておれば訴訟にもいけます、こうなります。こうなりますと、論理的に言いますと両方かかっております。その間、裁決の方がきまりました。裁決はその決定後の異議申し立て、その原処分を争っているわけでございます。本人の当初申告と決定後の原処分との間において争っておりまして、その場合に請求があれば、全部棄却しますと申告まで戻ってしまう。一部取り消しという問題ももちろんございます。ですからあくまでも裁決自体も原処分に対する修正になるわけでございまして、その裁決があったらその旨を訴訟の当該裁判所の方に通報する。裁判所の方はそれを受けまして、争う実益がなくなれば、それぞれそのように措置をすることになりますし、なお争う実益が残りますれば、またその限度において争っていく、こういう法律構成を考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/289
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290・田中幾三郎
○田中(幾)委員 それはあなたの言葉が多い。あとの言葉は裁判所のやることで、あなたの関するところではない。訴訟を起こしておれば、最初の決定もしくは処分に対して裁判を起こして訴訟をやっているのですから、三十日までにやらなければですね。そこへ移ればあなたの方の手を離れて裁判所へ移っているのだから、裁判所がどうする、こうするということは、あなたは少し言葉が多過ぎて、それはまことにどうも行き過ぎだと思うのだ。
そこで、今決定もしくは処分に対して訴訟を起こしておる。そうするとあなたの方の決定をする期間がないから、極端に言うならば半年も一年も捨てておいて、場合によってはその決定の謄本が裁判所へ届く前に、第一審の判決があるかもしれませんよ。そんなものは、裁決というものがあとできたものは、おそらくこれは無効になりはしないかと思うのですが、そうも簡単に言い切れぬかもしれません、裁判の対象にならないのですから。そうすると受ける方から言えば、前の処分に対しては訴訟を申し立ててあるが、あとの決定もしくは裁決に対してもまた訴訟しなければならぬかという問題が起こってくるでしょう。そうすると確定してしまったらどうですか。後の裁決と後の決定が違ってしまったらどうですか。一方では最初の決定処分に対して裁判で争われている。あとの方が時間がたってから裁決、決定がきた。一方では裁判所の方で判決があって、これが確定する。あとになって、ずっと時期がおくれてあなたの方の裁決処分が決定する。そうすると裁判所の決定と、あなたの方のつまり最後の決定と、二つできるわけでしょう。効力の衝突が出はしませんか。これはあなたでなくてもいい、ほかの方でわかりませんか。それでいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/290
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291・村山達雄
○村山政府委員 どうも裁判のことはあれでございます。そこはわれわれが想定しておりますのは、裁判が確定してしまえばこれは問題ないわけでございまして、そのまま確定するわけでございます。確定しない場合にこちらでもって直りますと、原処分がその限りにおいて変更を加えられたわけでございますから、それを裁判所の方に通知するわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/291
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292・田中幾三郎
○田中(幾)委員 そうすると争いの目的は、自動的に変わっていくわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/292
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293・村山達雄
○村山政府委員 変わるだろうと思います。まだ確定しなければ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/293
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294・田中幾三郎
○田中(幾)委員 それはあなた、言い切れますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/294
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295・村山達雄
○村山政府委員 そうだろうと思います。今法務省の方から来てもらっていますので、われわれはそういうことを想定をして……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/295
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296・田中幾三郎
○田中(幾)委員 訴訟の目的物が全然変わっていくのですから、だから自動的に変わるということは私も言い切れる自信はない。それは法務省もいるから一つ聞いて下さい。なぜ私がそれを言うかというと、あなたの方の決定処分に対する異議の申し立て、審査の請求に対して決定する時期がないから、そういう問題が起こる。税務署に対して、いつまでにこれを決定しなければならないという期間を定めて責任を負わしておけば、こういうことはないわけですよ。ところが三カ月たてば一方は訴訟を起こせる、六カ月たてば訴訟を起こせるという、この訴訟を提起する期間については規定があるけれども、不服の申し立てをしたそのことに対して決定する期間が、今あなたがおっしゃった通りに定めがないから、そういう問題が起こってくるわけです。これはきめるべきじゃないですか。そういうものがあったときには、いつまでに決定しなければならぬ、裁決しなければならぬということを、期限を定むべきじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/296
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297・村山達雄
○村山政府委員 今の問題は、これは税法の不服審査に限らず、あらゆる二審制をとっておりますもの、あるいは一審制のものでも、その問題はあるだろうと思います。ですからその問題は、いろいろ共通の問題としてこれはあるだろうと思います。ただそのゆえに今の審査の期間を設けるべきかどうかということになりますと、われわれは直ちに賛成しかねる問題がございまして、現に訴訟になりますと相当の費用もかかります。また訴訟を望まない人もあるわけであります。事柄の難易によりまして、その審査決定をやるにつきましては、相当の時日を要するものもございます。しかし納税者の方で審査の方がよろしいということもたくさんあるだろうと思います。そういう意味でいいますと、これはにわかに期限を設けることについては、疑問があるのではないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/297
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298・田中幾三郎
○田中(幾)委員 それは不服の申し立てをするか訴訟を起こすか、どちらかの選択権を与えたらいいですね。つまり納税者の好むところによって、訴訟を起こしたければいつでも起こせるという道を開いておけば、今のような問題は起こらぬわけです。ですから今私の言うような、あなたの方に審査を裁決、決定する期間の設けがない。いつまでもずるずるほうっておいてもいいということになりますから、今の重なった問題が起こってくるのですから、私の方から言うと、選択権を納税者に与えるか、しからずんば前置主義を廃して訴訟主義に持っていくべきではないかという議論の根拠になってくるわけです。ですから、今のこまかいことについては、これは法務省で調べてもらって——そうしないと、不服の申し立てということは非常に権利に関係することですから、その道をはっきりしておかないと、途中へ行って迷うようなことになると、せっかく法律ができても、そこで問題が起こりますから、今の審議の過程ではっきりしておいてもらいたい。関連質問ですから、これでやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/298
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299・村山達雄
○村山政府委員 裁判の方に行ってどうかというようなことについては、法務省にまた詳しくお聞きしたいと思いますが、やはり根本的に税の争いについては訴願前置をした方が能率的であるということは、われわれはそう思っております。今言ったようなことがあるから、訴願前置をやめるということには直ちにならないであろう、こう考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/299
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300・田中幾三郎
○田中(幾)委員 横山委員の御承諾を得ましたので、私は党の立場から多少重複をいたしましても、質問を申し上げたいと思います。
最初通則法が発表せられましたときに、私の党におきましては、十月二十日にいち早く本法に対する反対の決定をいたしまして、越えて税制調査会の方々が衆議院に参りまして説明懇談会を開きましたときにも、われわれは反対の意思を強く表明いたしておいたのであります。先ほど来社会党の諸君からいろいろ御質問がありまして、いわゆる税制調査会の最初答申してきた中の最も重要と思われる五項目については今回は入れない。若干の項目と、こう理由の説明には書いてあります。今後における判例、学説等の見解を待ってこれはさらに検討する。これは広瀬委員の質問に対しても御答弁があったのであります。われわれはこの点を最もおそれるわけです。これが民主的でない、最も権力的な規定であるということでおそれておったわけでありまして、将来どうするかという広瀬委員の質問に対しまして、局長は先のことは言えない、こうおっしゃったが、水田大蔵大臣は先ほどの言葉のうちに、たとえば記帳義務の点なんかを考慮しなければならないと、つい口をすべらしてしまって、将来そういう意図があるやにわれわれは疑問を持つのであります。遠い将来のことは知りませんけれども、現在の段階においてどうも大蔵大臣がそういう口をすべらすというようなところから見ますと、やはりこういう考えがその心の中にあって、こういう方向にこの法律が前進していくのではないかということをわれわれはおそれる。まず通則法をここでワクをこしらえて、その中身を漸次権力的なものに持っていくのではないかという心配があるわけです。これはその点を民主的な方向から権力的な方向へ持っていくのではないか。これは先ほど大臣から記帳義務なんかを考慮しておるというような御説明がちょっぴりありましたので、今回見送った数項目については、将来どうするのであるかということを御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/300
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301・水田三喜男
○水田国務大臣 先ほどから御議論がありましたように、理想的な税制というものを考えることが必要でありますが、社会生活の現実から見まして、そこへ行き得ない実情というものがあるのでございます。記帳義務のようなものも、そこまでいったら今の白色申告のいろいろな問題も、問題がなくなるということになるのですが、そこまではやはり現実は行けません。従って私どもは当面青色申告の奨励というようなことを順々にやっていって、一歩々々と徴税の合理化というようなこともはかりたいと考えております。
通則法については、多年各方面の要望でございました。従って、ここらで国税通則法を一応考えたいということで、私どもは立案にかかったわけでございますが、その際今おっしゃったようななかなかむずかしい、将来もう少し検討しなければ困難であるというような問題もございますので、こういう点は一応全部省いて、各税法の中から通則的なものを抜き出して、一般の要望にこたえる第一着手をしたいというのが私どもの考えでございますので、今後どうするかということでございますが、今後もやはり実情に即した改正の行き方をするよりはかなかろうかと思います。日本の一般の実情から見まして、今すぐに理想的な徴税ということはむずかしゅうございますので、一歩一歩とやっていくより仕方ないものと思っております。ですからこれは通則法ができたから、すぐにこれをどうするというようなことも私どもは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/301
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302・田中幾三郎
○田中(幾)委員 この法律の中には、拾ってみると、徴税者の立場から、優位な立場から権力的にものを考えるという条項がまだ相当にあります。たとえば九十四条の相殺の規定、国民が政府に対して現金の請求権を持っておるにもかかわらず、税金と差引できない。権利という点からいけば、同質の金銭債務でありますならば、これは対等でなければならぬ。しかるに政府にたとえば貸しがある、とるべきものがある。現金を取り立てる、支払いを受ける期限が到来していても、なおかつ税金と差引ができないというこの相殺の規定、これらはやはり権利を対等に見ないで、政府の方の債権の方が強いのだという考え方からきておるのではないかと私は思う。税金だからといって別に先に払って、自分のとるものをあとにするという必要はないですよ、同じ債権で。支払いの時期がきていて、しかも金銭債権だという場合に、どこに差異がありますか。しかるにこれは相殺ができないという規定になっておる。同じ債権を一方を優位に考え、一方をそうでない考え方をしておるという考え方、それから今の前置主義もそうです。異議の申し立て、これらも訴訟によらずに、決定をしたものをさらに再度裁決処分をするというやり方、それから通知の方法の問題、先ほど横山委員の質問で問題になりましたけれども、これは私も先ほど申しました通りいつ処分があった、裁決があったという非常に必要な、肝心なことを知らせる方式でありますから、本人が受け取らないからといってその場所に置いてきたということでは、これは送達になりませんよ。たとえばほかの例をとりますならば、役場とか市役所に預ける方法もほかの法律にはあったかと思う。あるいは掲示する場所もあったと思う。それを、本人がどこかわからぬけれども、そこに置いてきたらいいのだということは、税務署の通知は、受け取らなければもうそこらへ置いてきたらいいのだという考え方が、そこにやはり出ておるのではないか。それから協議団の問題については後に申しますけれども、これも別に三者的なものではない。付置された自分の命令を聞くような者に決定をさせて、それを押しつけるというようなこと、つまり先ほどからしばしば問題になっておる申告納税方式のごときも、私から言わせるならば、署長の職権でできるという、いわゆる申告納税と職権による裁定の混合方式です。こういう点がありますから、やはりものの考え方を権力的に考えておるから、こういう条項があらゆるところに出てくると思うのであります。論点はだいぶほぐされたけれども、この申告納税方式の規定は、別に申告をしたからといって租税は決定するわけではない。やはり不確定な状態に置かれるわけですし、決定して動きがとれぬようになるなら、これはほんとうの申告納税方式でありますけれども、その申告をした後に更正決定、再更正あるいは修正というものができることになっておるのでありますから、実際は申告納税方式であるけれども、本質はやはり完全な申告納税方式ではないということです。先ほどしばしば問題になりましたが、この十六条の最後の二行の「その他当該税額が税務署長の調査したところと異なる場合に限り、税務署長の処分により確定する」という、いわゆる職権決定といいますか、これは申告ではない。税務署長の決定によってきまるのですから、これは一種の職権決定と言えると私は思うのです。しかもこの文句を一つごらん願いますと、二十四条の文句とほとんど同一なんです。「その他当該税額」という下から二十四条を読んでみますと、二行目のずっと下の方に「その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する。」とこうある。これはどこの文句が違いますか。多少字句は違うけれども、意味は全く同じことを書いてある。これはそう感じられませんか。字句は二、三違いますけれども、「その他当該」以下は、この申告納税方式を書いた「その他当該」以下の文句とほとんど同じです。そうすれば二十四条で職権によって更正という方法ではあるけれども税額を決定することができるのならば、最初からこの申告納税方式という銘を打ったここに、ことさらにこれを入れて、職権によって決定できると書く必要はないじゃありませんか。しばしば申されている通り、申告納税方式もそのまますなおな姿において原則とするということに書けばいいのであって、それならばむしろこの二十四条の職権による更正というものは必要ないのですね。どちらか不必要である、これはどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/302
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303・村山達雄
○村山政府委員 一番最後の問題から申し上げますと、これは同じことを書いているわけでございます。申告納税の中で申告によってきまる部分については、今の十六条の問題は、申告納税の方式というものの意義を書いているわけでございます。それを確定という観点からどう見ておるか。確定というのは具体的な債権がきまる過程、きまる方式をうたっておるわけでございますから、ここに習いてありますように、原則としては申告できまるのだ。一定の場合にはそれはその増差額あるいは減差額に関する限り税務署長の処分できまるものであります。十六条で定義をしているわけです。その中身をそのあとでずっと書いているわけでございまして、修正申告あるいは更正後の修正申告、これはやはりこの申告の段階の問題でございます。それで調査したところと違うときには更正いたします、あるいは申告がない場合には決定いたしますということを、この十六条で書いてあるわけです。その具体的の手続を先に書いて、先生が今御引用なさいましたのはまさにそれが書いてあるわけです。その具体的なことは書いてありますから、全く同じものが書いてありますから、これは合うのがあたりまえでありまして、そのことをさらに詳細に手続的にうたっておるということでございます。ここは合っているわけであります。
それから先ほどの九十何条でございましたか相殺に関する規定でございます。これは現行徴収法にも同じことがございますが、この問題は一つには、国に対する債権というのは方々にあるわけでございます。その額とか存在とかというものが、税務官庁ではなかなか確認ができないという実際問題がございます。同時にまたそれだけに、場合によりますと思わざる不正の問題もいろいろ出てくる、こういう考慮からいたしまして、相殺を禁止しておる規定といわれております。それから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/303
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304・田中幾三郎
○田中(幾)委員 そういうこまかいところはまたあとで聞きますからよろしい。今相殺のところで答弁がありましたから申し上げますが、これは金額も確定していない、あるいは請求する証拠も不確定なものをもって相殺しようというのではない。国の方からは相殺を主張する必要はないのです。自分は国家にかくかくの債権を持っておるから差引してもらいたいということを、納税者の方から言うのですから——納税者の方からは口で言ってくるものはありはしません。判決によるとかあるいは公正証書のあれによるとかしかるべき、あるいは損害賠償請求をして勝ったとかいう確然たる根拠に基づいて、金銭債権の確定した債権を持っておる場合に、納税者の方から相殺を主張した場合に、それができないというのはなぜですか。そういうふうに債権に差異をつけておるということは、国の債権は市いのだ、少し優位なんだ。国民の持っておる債権は、同じ債権であってもこれは低いのだという観念からきていやしないか。こういう規定は、納税者の方から主張するのですから、一定の証拠を持って、そして金銭債権で確定したものであれば、これは相殺を認めていいのじゃないかと思うものですから、私はそういう主張をしたわけです。それは一例としてあげたわけであって、別にこれは質問したわけじゃありません。
今あなたは、申告納税方式の定義をしたのだと言うけれども、その定義に従って、それでは納税の額を決定したらどうか。この規定によりますと、税額を確定する方式をいうのですから、その方式が申告の方法が一つと、その申告の方法によらずして税務署長の処分によって決定するという方式は、これは申告納税方式になりますか。一方的ではありませんか。しかも更正決定で同じようなことを書いて、更正決定ができるならば、むしろすなおに、この申告納税方式のところでは、「原則とし、」というところまで、あるいはその次には——申告をしなかったような不都合な場合は、これは本人の責任ですからやむを得ません。しかし申告をしておるにもかかわらず、なおかつ税務署長の処分によって税額を決定するということは、これは純粋の申告納税方式ではない。私に言わせれば、申告と職権の混合方式ではないか。それを表には申告納税方式とりっぱに、いかにも民主的な方法によって決するというようなことを書いてあるから、これはインチキではないかということを私は言っている。その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/304
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305・村山達雄
○村山政府委員 これは具体的な債権が確定する手続が書いてあるわけでございます。従いまして申告納税方式といっても、相手の言いっぱなしだといったところ以外ではその額がきまらない、そういう方式は考えられないわけでございます。申告納税方式と申しますものは、まず第一に本人の申告でいくのだ、違いがあるときに初めて税務署長が更正するのだ、これが原則であります。申告納税方式というものは、本来そういうものなんでございます。そこで、ここに書いてあります十六条は、納付に対する確定の手続をいっているわけでありまして、その次の第二節以下にその具体的なことが書いてございまして、申告によって原則としてきまるというところの具体的なことが書いてあるわけでございます。それは期限内申告であり、期限後申告であり、修正申告でございます。それはいつ、どういう要件のときにやるかというようなことも同時に書いてあるわけでございます。そして、これはこれこれによってこういう手続によって確定するのだ、その効力は二十条に具体的に書いてあるわけであります。今、効力が確定すると言ったが、確定するという内訳は何かといいますと、それぞれ申告にかかる分だけでございます。前後の関係は影響ございませんということを明らかにしておるわけであります。そこで、今度は税務署長の処分によっていくのは何かということが、第二款のところから始まるわけでございます。その場合に減額更正という問題はございますけれども、更正の請求はそれを促す一つの行為でございますので、それが書いてあります。すべて手続的に書いてあるわけでございます。第三款で、今度は更正あるいは決定をする場合でございます。二十四条、二十五条はいかなる場合に更正または決定をするか、あるいは再更正をするかということが二十六条に書いてございまして、それぞれの手続を今度は具体的に書いておりますのが二十八条、こういう具体的な手続を経て、その部分に関する増産額なりあるいは減差額というものが確定していくのです。それで二十九条でありましたか、効力が書いてあるわけでございます。さらにその場合の修正申告の場合の所轄庁であるとか、更正あるいは決定に関する所轄庁、これも手続関係でございますので一々明確にしてある、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/305
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306・田中幾三郎
○田中(幾)委員 まあるる説明がありましたけれども、ここにインチキがあるのじゃないですか。十六条の一項の二号、「賦課課税方式 納付すべき税額がもっぱら」と書いてあるのですね。「もっぱら」ここがやはりインチキで、前の方の申告納税方式は本人の申告に基づいて一応決定するが、税務署、長が調べてこれが不当ということであれば処分によって決定する、だから基礎はやはり申告にあるのだ、税務署長が処分によって確定しても、その確定する基礎は本人の申告があったからやるのだ。二号の方はもっぱら、オンリーで署長が何かやるのだ、これが賦課課税方式だ。これだけの違いで、一方は申告納税方式だといかにも民主的なやり方のように書いてあるのが、そこにインチキがあると私は理解する。しかしあなたの長い説明を聞く必要もないから、それでよろしい。聞く人が聞いてこれは判断しますから、ここであなたと押し問答するつもりはありません。
そこで、先ほどの例の裁決の不服の問題について、法務省からどなたか見えておりましたら答弁して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/306
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307・杉本良吉
○杉本説明員 先ほどの原処分に対しまして異議の申し立てがあり、それから審査の請求がある。その場合に、広い意味におきましても、行政庁の処分といたしましては、課税処分と異議決定、裁決とございます。それで訴訟の対象になっておりますのは、先ほど主税局長が御説明になりましたように原則として原処分でございます。そこでその異議決定なり裁決、これを広い意味において行政事件訴訟法の方におきましても裁決と申しておりますが、そういう裁決が非常におくれている、何とかそれに期間を設けたらどうかということでございますが、この点につきましては訴願制度調査会におきましても非常に問題になったところでございまして、ところが実際に裁決の期間を設けるということは、行政処分の性質によりまして、一律的にある期間を設けるということは非常に困難でございます。結局行政不服審査法におきましても裁決の期間は一応設けない、こういうごとになっております。それではそういう問題は、どういうふうにして裁決されるのかということでございますが、今度国会に提出いたしております行政事件訴訟法案では第三条の第五項であったと思いますが、不作為の違法確認の訴えという制度がございまして、それは原処分についてのみでなく、裁決についても、その申請に対して相当の期間たっても裁決がなされない場合には、裁判所にその不作為についての違法確認を請求することができるということによって、要するに裁判所が相当の期間かどうかということを判断して裁決をする、こういうことになっております。
それから第二点のそういう裁決があった場合に、現在訴訟の対象になっている原処分がどういう影響を受けるかということでございますが、その場合には、裁決の内容に分けて御説明申し上げますと、原処分を全部取り消すという裁決がございますれば、それはもはやその原処分の取り消しを求める、現在係属しております訴訟は訴えの利益がない、こういうことになります。一部取り消すということになりますれば、その部分について訴えの利益がないということでございます。それから審査の請求を棄却するということになりますれば、これは原処分が従来通りその訴訟の対象となって係属するということになるわけでございまして、この法案につきましては私どもとしてはそういうふうに解釈いたしておりまして、大蔵省の方からもそういうふうの案を示されまして、私どもといたしましても十分に検討した上で、これで国民の権利義務の擁護という観点から申しましても、何ら差しつかえがないというふうに考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/307
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308・田中幾三郎
○田中(幾)委員 ちょっと私の質問したことと違っている。あなたの説明はわかっている。私の言うのは、処分を一つの対象として取り上げている。税務署が処分をした、そしてそれに対して異議の申し立てをしたけれども、いつまでに異議の申し立てに対する決定をするという期間がないわけです。しかるに異議の申し立てをしてから三カ月たてば訴訟は起こせるという、こういう建前になっておりますから、その処分があってから三カ月たって訴訟を起こした、訴訟ができるのですから。訴訟を起こしておる途中で、裁決がずっとおくれて、極端に言うならば一審の判決が済んでしまってから、この処分に対する異議の申し立てに対する決定あるいは裁決がきたという場合に、訴訟は原処分を対象にしているのでしょう。ところが税務署からは異議の申し立てに対する決定がきましたね。そうすると裁判の対象は、あとできたその決定に対するのが裁判の対象になるのか、原処分がなるのか、もし原処分が依然として訴訟の対象になるとすれば、税務署からあとのおくれてきたこの決定なり裁決というものは一体効力はどうなるのか、二つあるわけです。裁判所の決定の対象になっておる、訴訟の対象になっておる処分と、それからやり直しをしてきた処分と同じならばいいけれども、もし間違ったときには、処分が二つあるわけですから。しかも裁判はもとの処分に対する裁判を起こす、一審の判決が出て、それが取り消しになって、その後に再審査の裁決があったというような場合には、一体どれが効力があるか。もう無効になるなら無効になるでよろしい。ですから私はやはり税務署の処分に対する異議の申し立てもしくは審査の請求に対して、決定をすべき期間を置くべきではないかということを私は聞いておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/308
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309・杉本良吉
○杉本説明員 お答えいたします。現在の税法におきましては、審査の決定というのは昭和二十五年のシャウプ勧告以前と違いまして、再び課税標準の決定をするという建前ではございません。民事訴訟法と同じで、全部または一部を取り消す、あるいは請求を棄却するという、そういう種類のものになっております。その点が違うものですから、ただいま先生のおっしゃいました点の解釈が違ってくると思います。先生のおっしゃいましたのは、昭和二十五年以前の、つまりもう一回審査決定をする場合、もう一回課税標準を決定する、こういうような建前の場合、この場合にはまた立論が違ってくると思います。私が申し上げましたのは、今の税法の建前を前提にして御説明申し上げたわけでございまして、今の税法の建前によりますれば、裁決というのは原処分の全部または一部を取り消すか、審査の請求を棄却する、こういう形態になっておりますから、それで私の答弁が先生に十分に通じなかったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/309
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310・田中幾三郎
○田中(幾)委員 まだちょっと不明確ですが、これはまた文書で一つ検討してもらうことにして、その次に移ります。
先ほどこれはやはり権力的な規定ということから、私は協議団のことについて一点触れておいたのであります。今度の規定によりますと、八十三条によりまして「国税庁又は当該国税局に附置された協議団の議決に基づいてこれをしなければならない。」こういう規定になっております。表から見ると非常に民主的な機関のように見えるのですが、国税庁に付置するというのは、国家の機関としての国税庁と協議団の関係は一体どういう関係になっておるか、またその組織の構成の性質はどういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/310
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311・村山達雄
○村山政府委員 これは通常組織法で定める付属機関、こういう意味に使われております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/311
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312・田中幾三郎
○田中(幾)委員 国税庁もしくは国税局の付属機関ということになると、長官もしくは局長との命令系統といいますか、権利関係ということはどういうことになりますか。付属機関というと独立した機関でないように思われる。その力の関係はどういうふうに解釈したらよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/312
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313・村山達雄
○村山政府委員 指揮命令はやはり国税局長、国税庁長官が持っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/313
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314・田中幾三郎
○田中(幾)委員 そうしますと、この八十三条の規定は「国税に関する法律の規定に基づく処分に対する不服申立てについて決定又は裁決をする場合には、附置された協議団の議決に基づいてこれをしなければならない。」命令系統からいくと、国税庁もしくは国税局の長の命令に服さなければならぬということになりますと、こういうものは何も役に立たぬことになります。これは本来は第三者的立場において公平なる意見を述べるという、その構成によって初めて権威があるわけです。聞いてもよし、聞かなくてもいい、こういうことなんですね、それでいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/314
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315・村山達雄
○村山政府委員 これは国家行政組織法の第八条に書いているわけでございまして、「第三条の各行政機関には、前条の内部部局の外、法律の定める所掌事務の範囲内で、特に必要がある場合においては、法律の定めるところにより、審議会又は協議会及び試験所、研究所、文教施設、医療施設その他の機関を置くことができる。」これがいわゆる付属機関でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/315
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316・田中幾三郎
○田中(幾)委員 そうしますと、この協議会を設置する根拠法であって、別に長と協議団との間の関係を規定した規定ではないじゃないですか。設けることができるという根拠ですね。私はそういうことを聞いているのじゃない。できたその協議団と長との間の権力関係といいますか、組織関係といいますか、それを聞いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/316
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317・村山達雄
○村山政府委員 もちろんそれは、長官の指揮、命令に従うわけでございます。ただそれはここにも書いてございますように、内部部局とは違う性質のものとして、別の特別な任務を持ったものとして、置かれておる、そういう意味の付属機関でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/317
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318・田中幾三郎
○田中(幾)委員 私はそういうものでは、つまり上司と部下との間の関係に立つような止揚で、協議団がそういう問題について審議をするということでありますならば、これは無用の長物です。何も役に立ちません。その長官と対等の立場において、三者的立場において意見を述べる、その意見も尊重されなければならぬ、提案理由の説明には、そう書いてあるけれども、尊重くらいでは何も役に立ちません。私は少なくとも、前に日本の裁判制度にあった陪審員程度の権威を持たせて、そうしてそういう国民の権利義務に関する不服に対して、一種の判断を加える段階でありますから、やはり主観的な先入観があってはいけない。そういうものを離れて、純粋に三者の立場にあって、そのやった処分なり行為が正当であるかどうかということを判断する立場に立たないと、何も役に立たぬではないかということを私は聞いておる。
なお伺っておきますが、この協議団の組織は、何か政令で定めるようなふうにもどっかに書いてあったと思いますが、組織並びに運営に関しては、政令によるのか何によるのか、その点を御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/318
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319・村山達雄
○村山政府委員 政令できめてございます。それから、これは先ほど申しました立法政策の方向の問題でございます。これを全く第三者的のものにするか、あるいは現在のような行政段階におけるところの救済手続であるという意味で、付属機関なり内部部局にするか、いろいろ問題があるところでございます。これは当初の考えとしましては、やはり何といっても、行政段階における救済の問題である。そういう意味では、ほかの官庁における審査請求と変わりないんだ、ただ訴願前置主義は、別の角度で置いている。そういう意味で、これはやはり行政的な統一というものは同時にはかられなければならぬということでございます。そういう意味で、これは現在のような方向で設けられておったわけでございますが、改正前の規定では、議決を経た後に決定するんだということでございます。今度の改正では、「議決に基づいて」といって、尊重の気持、あるいは思想をここに現わしたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/319
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320・田中幾三郎
○田中(幾)委員 この法案の提案の理由の説明によりますと、この協議団制、度の問題については、「議決を一そう尊重するよう、規定の整備をはかり、その運用の改善に努めることとしております。」といっておりますが、この「運用の改善」、「規定の整備」というものは、もう政令であらためて改正になっておりますか、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/320
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321・村山達雄
○村山政府委員 「規定の整備」のところは、ただいま申したところでございます。
議決を経てというところでございますが、これを尊重するという趣旨を含めて、「議決に基づいて」と、こういうふうに規定を整備したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/321
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322・田中幾三郎
○田中(幾)委員 そうすると、議決を経なければならないとあったのを、「議決に基づいて」とこう表現を変えただけですが、一体この議決に基づくということはどういう意味ですか議決を尊重するというその度合いもある。ちっとも拘束されないならば、これはただ参考意見にとどまるわけですね。「議決に基づいて」ということで、これを必ずしも採用する必要がなければ、参考にするというだけのことだ。参考にするというだけのものならば、「経て」と書いても「基づいて」と書いても、一向これは整備改善にならぬではありませんか。それならば、整備改善をするならば、もっと権威のあるものにしてやらなければ、ただこれは単なる飾りもので、置物であって、何も役に立たないということになる。大きく、理由の説明には、整備改善ということを書いてありますけれども、あけてみると、何もこれは効力がないというような感じがする。これをもっと第三者的な立場の学識経験ある者、それから税務官庁に何ら関係のない純粋の立場に立って協議団を作るということでありますならば、まだまだその意見は公平なものになりましょうけれども、上司と部下のような関係の協議団であって、そしてそれの決定を尊重して、基づいてやらなければならぬといったところで、そういうことは口先だけのことであって、実際には何ら役に立たぬわけです。むしろこれはそういう関係を切り離して、純粋の第三者的立場に立つところの協議団を設けて、そうしてそれの意見を聞くということでありますれば、採用する、しないは、これはまあ第二段の問題として、また私は権威あることだろうと思うのです。ですから、その政令を改めて、協議団の組織については、もっとそういう方向へ構成、仕組みを持っていくというお考えはありますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/322
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323・村山達雄
○村山政府委員 まあ拘束されるという意味で書きますと、何々により、ということになるわけでございます。それから、経て、拘束されないという意味では、それはいろいろのことがございます。法律的に拘束されないということについては、それは尊重すると書いても、何と書いても、法律的には拘束されないわけでございますが、実際問題は、その間いろいろな色合いはあるわけでございまして、その色彩の相当濃いところを出しましたということでございます。これを第三者的なものにするかどうかという問題についても、いろいろな議論がございました。しかしこの税務行政というものは、ここに訴願前置を置く事態からも推察できるように、かなり専門的な事項でありますから、そうして能率的に処理せねばいかぬ、それから同時に税務行政に対する統一というものは、これはまた別の見地からはかられねばならぬ。それらの諸要請をいかにして調整するかという一つの現実的の解決の問題として、この付属機関による議決、これを尊重する。あとはこの運用の問題でございまして、これに専門的なものをどんどん当てていくということでございます。これらについて、同じ指揮命令ではございますけれども、全くそういう目的のために設けられておるわけでございますから、決定したその部下とは系統の違うところ、本来、その議決をすること自体、これを使命とする付属機関できめるわけでございますので、先生がおっしゃったように、それは拘束されないじゃないかといえば、あるいはそうかもしれませんが、実際問題としては、相当この機関が違う、使命が違う。それでこれが付属機関としてその使命のために設けられたということによりまして、実際には相当違って参るというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/323
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324・田中幾三郎
○田中(幾)委員 私が先ほど来申しました通り、この税のことについては、国民は義務のあることは明らかなわけでありますけれども、この義務に対して賦課する方法、徴税の方法については、もっと民主的にやらなければならない。しかるにこの法案には、ずいぶん権力的な性格があるから、これを直さなければならぬではないかということを申しておるわけでありますから、せめてそこの協議団くらいは、単に国税庁、国税局の意見を聞く機関だけではなしに、国民を納得させる機関として、付置でもよろしい、協議団の意見が、あれは公平だから納得するという、やはり納税者を納得させる方向に持っていく組織の運用に一つ改めていただきたい、かように希望を申し上げておくわけであります。
それからさらにもう一点伺いたいのは、これは権力関係には何も関係ないかもしれませんけれども、四十二条に詐害行為の規定があります。代位弁済と詐露行為の規定がありますが、これはもう民法の規定をそのまま準用するというだけであって、何ら他意がないわけですか御承知のように詐害行為は、詐害行為があったからといって直ちにその行為が取り消されるわけではないので、詐害を受けた第三者から訴訟を起こして、裁判によって、決定して、初めて詐害行為は取り消される、これは御承知の通りであります。何かこれは税金と書いてあると、詐害行為があった場合にはすぐに税務署の者が行ってこれはだめだと言って、判決を待たずに詐害行為としてそれらの行為を取り消すことになるのではないかという、ちょっと疑念が起きておりますので、これは民法そのものの規定なのか、ほかにまだもっと権力的な解釈があるのか、一点伺いたい。
〔発言する者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/324
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325・小川平二
○小川委員長 委員各位に御注意をいたしますが、速記がとれないようでありますから、私語を御遠慮ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/325
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326・村山達雄
○村山政府委員 それはこの条文に書いてある通りでございまして、民法四百二十三条の規定をそのまま準用するわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/326
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327・田中幾三郎
○田中(幾)委員 そうしまするとも詐害行為があってもやはり詐害行為取り消しの訴えを起こした後でなければ効果がない、こういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/327
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328・村山達雄
○村山政府委員 当然そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/328
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329・田中幾三郎
○田中(幾)委員 じゃこれはあってもなくてもいい。なくたって税務署の方から声があればこれはでるんですから、あってもなくてもいいんですね。それで、私のあとにも質問があるそうですから、これで私の質問を打ち切っておきます、また明日にでもこれが続くのであればもっと質問をして参りますけれども、本日のところはこれで終わっておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/329
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330・小川平二
○小川委員長 堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/330
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331・堀昌雄
○堀委員 私、本題に入る前にちょっと伺っておきたいのですが、先ほどの関連質問の中で、長官が納税者とそれから徴税者側とのバランスのことを触れておられました。バランスとして、片方が記帳をしていないのに徴税者側の方が理由を書くというのはバランスがとれないというような意味のことをおっしゃったわけですが、そのバランスというものを、長官は納税者と徴税者というものは五〇、五〇でバランスをするのがいいと思っておられるのか、現状の姿の中でバランスとは一体どういうつり合いをバランスと見ておられるのか、ちょっとお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/331
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332・原純夫
○原政府委員 私午前中以来申しておりますように、非常に民主的なりっぱな社会になれば、税の問題は実は徴税当局の方はあまり手を加えないですうすうといくと思います。少し妙なたとえでありますけれども、私だいぶ前ですが、アメリカへ参りましたときに郊外電車に乗りました。郊外電車で十セント、二十セント、三十セント、いろいろあります。私は三十セントか何か払ったと思いますが、そうしたら車掌さんが受け取って、そして綱を引くんです。上からぶら下がっているひもを引きました。一つ引くと十のところにしるしが出るんです。それを三つ引くと三十と出るわけですね。つまり一種のキャッシュ・レジスターみたいなものだと私は思うのです。三十セントやるとそれで切符をくれますが、同時にそれがちゃんとレジスターされて会社に入るということが、お客さんが見ていますから、車掌さんはごまかしてそれに二十セントしか入れないというようなことができない仕組みになっている。これはバスなんかでもまさに、ガラス張りのような箱にお客がみんな投げ込んでいく。運転手は知らぬ顔をしている。ほかのお客さんが見ていますから妙なものを入れたり、これはどうもというのをみんな社会が見ているという、そこは非常に感心しました。
やはり税においてもみんなが見ているというような状態ができるというのがまあ一番フェアにいくのじゃないか。そういう社会というのは、やはり税のもとになる諸元を、今朝来のお話では、隠す納税者もありましょう。そういうのをそのままにしておいて、一つ税務署で探してみろ、そうしてものを言う場合にはがっちりした理由を付せろ、こういうようなお話なんで、そういうような行き方ではとうていいい社会はできないという趣旨を私は申したのです。いろいろな面で、先般来堀さんからも御指摘のありました貯蓄組合とか預金とかいうような問題、これは社会には社会の生理といいますか、社会の生理的な現状というものがありますから、一足飛びに今のようなことを申しても青くさいと言われる面があるかと思いますけれども、やはり私ども税を担当している者としては、何としてでもそういうガラス張りな社会、みんながオーブンに見ているという状態に一日も早く近づくというのが重要じゃないかと思うのです。そういうような意味で、やはり税法においても税務官吏に行き過ぎのないようにということを要求するのはもちろんでありますが、納税者に対して、自分の所得を決定する諸元は納税者側が一番よく知っている、一番データを持っておりますから、それをオーブンに出しなさいということは、私は常々と要求していいんだと思うのですが、その要求が実はまだ今の預金とか何とかに表裏見られるような日本の社会の生理的なレベルからかもしれません。私どもとしてはかなりまだ低いなという感じがいたします。そっちを相当上げていく、そしてお互いにフェアに担税力に合った正当な税額を納めようじゃないかということに、納税者自体が協力するようなあり方に持っていっていただきたいというふうに思うのです。納税者が隠し、また申告する場合にもいろいろなところで若干ずつ曲げて申告なさるというようなことがある程度あると思いますが、そういうのをそのままにしておいて、納税者の申告には、たとえば収入、支出にしても、先ほど来お話のように非常に詳しいところまでは絶対にこれを群かなければいかぬというまでの義務になっていないというような法律の状態において、そもそも納税者の側の方はそれを知る条件、知っている度合いはほとんど一〇〇%持っているわけです。税務署の方は初めはゼロなわけですね。それで帳簿もないとおっしゃる。いろいろ伺ってもわからぬというような場合が相当多いわけですね。それで、あちこちから光を当ててみてそうして決定するというようなことでありますから、そういうような状態で政府側にだけきちんとしたなにを御要求いただくというのは、非常にアンバランスだということを申し上げたので、従って、法律の形としても帳簿の記載のない場合であってもあるいはデータがないというような場合でも税務署はしっかりデータを作ってというのは、納税者のところにはちゃんとあるもので、それを出していただけば実はスムーズにいくのが、それが出ない。それをこっちで再更正して作ってなにするというようなことで、納税者の方は不問にして税務署の側にだけ御要求になるというのは、税法の規定としてはバランスがとれない。もう少し納税軒にも公然と胸を開き、肩を張ってこの社会で納税者としてのりっぱな態度を示してもらいたい。私はこれは納税者をとがめるというのではなくて、冒頭申したような非常におおらかな広い意味での明るい世の中が来るにはそういうことをお願いしてもいいのじゃないかということを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/332
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333・堀昌雄
○堀委員 長官のお話は非常に演繹的に長いのであれなんですが、私が端的に伺っておることは、やはりバランスという以上は、あなたがおっしゃったことは一応五〇、五〇というバランスのように聞こえるわけです。しかし、私は今の日本の客観情勢をもとにしてものを言わなけわばなりません。私はかねてから申し上げておるように、脱税を奨励しようとか、脱税しておるものを正当化しようなどという気持は毛頭ございません。これはかってから国民貯蓄組合等の問題においても、厳に皆さんに要求しておることは、そういうことをしないようにしてもらいたいということなのですから、時点はそこで理解をしていただかなければなりません。しかし、税務署というもの、これはやはり権力を背景にした一つの機構になっているわけです。そうして納税者は何らそういう裏側に立つものがないわけです。納税者一人々々として見れば、やはり税法についても無知であるし、いろいろな点において無知な者だと思うのです。先ほど石村さんもおっしゃったけれども、私ども大蔵委員として税法のことをいろいろやっておりますけれども、それでは税のことは何でもわかっておるかというと、自分の問題になると必ずしもよくわかっていないというのが実は現状なんです。それでは青色申告をする者としない者とあるのは、なぜその青色申告をしないのかということからやはり問題は出てくるのではないかと思います。青色申告をする方たちは、少なくとも経済的にも、人間としての能力の上においても、記帳ができる人たちがやはり青色申告をしていると思うのです。少なくとも白色よりは青色の方に特典が多いのだから、それだけのメリットを見るならば、当然やるのが建前ですが、にもかかわらず、依然として青色をやらない人たちが相当にあるわけです。それはやりたくても能力の面において、あるいは経済的な余力の面において、いろいろな面においてやれないという人がある。これは納税者の側では一番弱い人たちだと思うのです。一番強いのは百億以上の大法人ですよ。これが納税者の側で一番強いわけです。一番強い百億以上の大法人は、あなた方がやってみると増収額が何百億と出るという実態があるときに、一番弱い白色申告の人たちは、あなた方の方で理由も付さないで更正決定をぶっつけたときに、一体この人たちが異議の申し立てをやり、審査請求をやり、裁判をやる力があるかないか、私はここをはっきり見きわめていただかなければならないと思うのです。そのことと、その人たちが脱税をしていいか悪いかということは別の問題なんです。だから、そういうことが起きておるかもしれません。起きておるかもしれませんが、最も弱い納税者であるところの事業所得の白色申告者たちに対して、税務署とその納税者とが五〇、五〇のバランスだなどという考え方に立っていただいたのでは、これはかまえ方として問題があろう、こういうことを私は申したいわけです。だから、それはやはりあなた方が手を引き、要するに導くということによってでなければ問題は解決していかないのではないか。そういう人たちに理由も付さずに更正決定をやる、どうもその中にはさっきおっしゃったような意図的脱税をしようとする者がある。あるかもしれないが、私はそれがすべてだとは思わないわけです。だから、その中における善意の人たちを含めて、一部のそういう不徳の人のためにその人たちが国民としての正当な権利が守られないということになるならば、やはり国民の立場に立って、特に一番弱い者の立場に立ってその人たちに救済の道を明らかにするのが私は政府としての当然の責任ではないかと思う。だから、さっき私がバランスの問題で伺ったことは、百億以上の法人に対しては、私はバランスとして見るならば、皆さん方が八〇くらい力を持って、向こうは二〇くらいになっておっても、なおかつ私はその所得が完全に捕捉できないかもしれない。しかし、たった一人の白色の納税者の場合には、五〇、五〇の力でいったのではこれは小さくなってしまってものも言えないというのが、私は現在の姿ではないかと思う。なるほどアメリカのいろいろな制度は私も大へんけっこうだと思います。しかし、それは単に納税だけの問題に限らないで、やはり各般の条件が整わなければ、自然にその向上を期待することはなかなか困難です。しかし、それをずっと待っておるだけでは税務行政には発展がないのですから、そこでこの人たちに対して少なくとも手を引いて導く方法としては、更正決定をしたときに、こういうことでわれわれは更正決定をしましたよ、あなたは所得がこういうふうになっておるじゃありませんかということを明らかにしてやることが、当面一番重要な問題ではないか。だから、その場合にはバランスとして見るというようなことではなくて、少なくとも先生が子供たちに教えるごとく、やはりあたたかい手を差し伸べるのでなければ、私は問題の解決にはならないだろうと思うのです。学校の先生が子供たちを教える場合に、しかればいいということではないと思う。大きな声でしかる先生では子供の成績はよくならないと思う。やはり子供たちの立場に立って、あたたかく尊いてやってこそいい成績になると思うのです。だからそういう意味において、私は形式的に更正決定に理由を付せ、こういうことだけにこだわっておるのではないのであって、少なくとも更正決定をするについては、あなたはさっき、いろいろ調査をして、千言万言やっておるその中において明らかにしておる、こう言われましたが、われわれが聞いておる事実は必ずしもそうではないのです。更正決定が行なわれるときには、きわめて短時間に、はたしてそれで調査が完了したかどうかわからないというような時点でも更正決定が行なわれることがあるわけです。今あなたがおっしゃったように、更正決定をするについては、これこれこういう条項をちゃんと調査をして、それを納得さすというふうな政令でもあなた方がお出しになるのなら、私は何も形式的に法律の中に理由を書けなどと申しません。それはあなた方の心がまえの問題だと思いますから、これについて国税庁長官はどうお考えになるか、あらためて伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/333
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334・原純夫
○原政府委員 私が申し上げましたのは、白色申告者で帳簿その他のデータがないに近いというような場合には、まず第一段階として、納税者としてもう少し進歩していただきたい、御努力願いたいという希望を強く持つのであります。それはさっきの電車の例にも関連しますが、非常に強く持つのであります。しかし、それはそれとして、そういうような場合でありましても、税務官吏の方は仕事でありますから、出されました申告がいろいろな角度から見てこれではおかしいという場合には、さらに調べを突っ込んでするということになります。その際にその調べのために相当時間もかけ、その納税者だけでなく、反面調査あるいは資料を集めるというようなことをやっておるわけでございます。納税者を調べに参ります際には、仕入れなら仕入れについて、あるいはたなおろしについていろいろ話をして、おたくはこれだけのなにがあればこの値段は幾らだろう、それについての差益は大体どのくらいだろう、これは何回転するというような話があるわけであります。私先ほど申し上げましたのは、そういうような話をずっとしておれば、大体納税者の方も、うちは全部かまわず結論で所得三十万と出したけれども、税務署の言うところでは、これだけのたなおろしがあって、そして回転の度合い、今の時期——たなおろしは時期にも関連しますが、そういうことから考えると、売り上げがこのくらいあるだろう、売り上げに対して利益がこのくらいあるだろうという話があった、そういうだんだんの話を聞いていただけば、単純な更正決定の理由——理由を書く場合に一々学位論文みたいに詳細なことは実際問題としてなかなかできませんから、非常に簡単にならざるを得ないと思います。やはり実際は、調査の際に、納税者に納得して納めていただくために、調査のいろいろなポイントについて話をして、納得してもらうという点が大事であろう。私は、税務官吏が相当それはやってくれておると思います。もちろん、中にこれが十分にできていないというものもあるだろう。だから、先ほどお答えの末段で、そういうことが十分にできていないというような問題については非常に気をつけて、それを十分にするということを私としてはもう極力努力いたしますと申したわけでありまして、私が今比率でどうというところまでは申せませんけれども、ずいぶん近づきやすく、納税者に近づきやすいようにという気持で、納税者はデータは持っているのですから、そのデータをあてがう税法上の規定、また通達できめられたルールというものを教えてあげれば、そのフェアなルールがわかれば、納税者はデータを正当にあててくれるだろうという気持で、税務官吏にも、自分たちの持っている知識というものをそっくり納税者の頭に入れてあげるようにしなさい。その上で、納税者には正直にお願いしますよということは、うんと強く要求してよろしい。それから、いろいろなデータを十分これから積んでいくということもお願いして、できれば音色になっていただくというようなことをやる。そういうような方向で、何というか、向かい合ってけんかしている、たたき合うというようなことでなくて、こっちの知恵をあげましょう、そのかわり記帳その他もしっかりして下さい、一緒になって正しい所得というものを計算し、形成していこうじゃありませんかという気持です。まだまだ、おっしゃるように権力を持って行政をやるという場合は、とかく人間の弱味というものが出るかと思います。いろいろなところで権力的に追っかぶせるということが、私はずいぶんあるのじゃないかと思って、常々心配いたしておりますが、それをためようと思って私が第一の柱に立てたのが、近づきやすくということであります。同時に第二に適正、公平にということを忘れるなと申し、第三に綱紀を厳正にやっていけということを申しているわけですが、こういうようなかまえでいますならば、私はおそらく堀委員のおっしゃっているお気持は、私どもの努力の向きとしては合っているのではないかというふうに思うのです。先ほど申し上げたのは、法律の制度として、今の最後の理由を文書で書いて出せというところだけを取り上げて御要求になるというのは、どうも納税者の記帳の義務とか何とかいう問題とやはり相当の関連のある問題で、むしろ現在はそこでの問題よりも、データがほとんどしるされてない。申告ももう非常に簡単に、所得幾らというようなものが多い。それに対して遺憾ながら税務行政が相当手を食われる。いといはいたしませんけれども、早くこういうのが納税者として合格点をとり、あとうべくんば優等生になっていただいて、私どもはありがとうございますといって、それは済んでしまう。その余力をおっしゃる大法人なりあるいはほんとうに脱税している人の調査に向けるというのが、税務行政をやっていく場合の一番大きな重点ではないかと思っておりますので、どうぞ御了承いただきたと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/334
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335・堀昌雄
○堀委員 そこで、その次の段階として伺いたいのですが、更正決定が行なわれました、異議の申し立てをいたします、また税務署長が異議申し立てに対して決定をいたします、審査請求をいたします、それによる決定が行なわれる、こういうことが順序としてあると思うのですが、その過程の一体どこで、今度はその今の民謡申し立てに対する回答を与えるわけですか。その回答を与える中にはかなり具体的な内容がやはりなければ、異議の申し立てをしておるのに、依然として理由を付さないで異議申し立てに対する回答をするわけにはいかぬと思うのですが、主税局長、この法案を見たところではそういうところに対するものがよくわからないのですが、この法案のどこで一体そういう解明がされることになるのですか。何条のどこと言うて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/335
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336・村山達雄
○村山政府委員 この決定ないし裁決の内容でございますが、四十一条にございます。決定ないし裁決の内容につきましては、行政不服審査法の方に全部譲られております。行政不服審査法の四十一条、三十ページでありますが、「裁決は、書面で行ない、かつ、理由を附し、審査庁がこれに記名押印をしなければならない。」こういうふうにしてあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/336
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337・堀昌雄
○堀委員 これはもちろん行政不服審査法に出ておりますが、そちらに移すということは、じゃどこに出ているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/337
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338・村山達雄
○村山政府委員 それは百一ページをごらんいただきたいと思います。七十五条の冒頭に書いてございます。(行政不服審査法との関係)「国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立てについては、この節及び他の国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、行政不服審査法の定めるところによる。」……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/338
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339・堀昌雄
○堀委員 そこでちょっと私伺いたいのですが、これまで白色申告で更正決定がされて、今でも異議申し立てができますね。一体どのくらいのパーセンテージで異議申し立てが行なわれているのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/339
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340・原純夫
○原政府委員 申告所得税におきましては、再調査の請求が出ておりますのは、ただいま私の手元では、これが一番新しい分で、三十五年分の所得の分までのがございますが、近年は、ここ四、五年の間は、再調査の請求が出ておりますのは一万を若干上回っておりましたのが、三十五年分で九千五百件ばかりに下がった。その前には五年間が一万一千、二千、三千というような数字が並んでおります。大体そのくらいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/340
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341・堀昌雄
○堀委員 更正決定に対する割合は一体どのくらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/341
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342・原純夫
○原政府委員 更正決定件数は、その最近の五年分ならしてみますと七万くらいであります。七万ちょっと欠けるかと思いますが、三十五年分は五万八千とだいぶ落ちております。これは総納税人員のうちで二・五%ということであります。その更正決定五万八千件に対しまして九千五百でありますから、私は今比率は持ちませんが、幾らになりますか、二割は切れる、一側七、八分が再調査の請求を出しているということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/342
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343・堀昌雄
○堀委員 今のお話で更正決定が七万くらい行なわれておる、そして再調査要求が一万くらいというようなお話であります。数の上で七万くらいの数で、あと一万についてはやはり詳しい形の理由を付さなければならぬことになるわけですね。結果としては、ですから私はさっきちょっと申し上げましたけれども、その一万くらいの再調査を要求する人たちというのは、おそらくいろいろな意味で能力のある人が多くて、あとの六万の中に相当問題が残るではないかという気がしてなりません。
そこでこれは三税局長に伺いたいのですが、今皆さんの方で、今度の二十四条、二十五条、二十六条で「調査」という言葉をお使いになっておりますが、この「調査」を規定する何か具体的な内容というものがこの中にはございません。ただ「調査」という言葉だけになっておりますが、さっき国税庁長官の話ですといろいろと、たなおろしとか回転とか、いろいろのものを調べるのだという話があるのですが、その調査について、政令その他の中で、やはりこの程度のことは調査として行なう必要があるというような、何か定めをしていただくことができないのかどうか。調査にもいろいろありまして、ちょっとふらっと表へ来て、一通りじろっと見て帰っても調査だといわれれば、これも調査ということになろうかと思いますし、やはり私はある程度、更正決定をするについては、調査をしたということが納得のできる程度の調査にしてもらいたいと思うのですが、それについて何か省令なり政令なりの中で——大体皆さんの規定は納税者を縛るには厳でありますけれども、徴税者を縛るについてはきわめて寛大になっておるわけであります。私がさっきバランスを申したのも、バランスということでものを考えていくならば、納税者の方をいろいろ縛る規定があるのならば、徴税者の側もやはりバランスをとって、ある程度それに対しての責任の所在を明らかにする必要があるのじゃないか、こう思いますので、この二十四条以降に書かれておるこの調査については、これこれこれだけのことはやる必要があるという最小限度の規定を一つ設けていただきたいと思いますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/343
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344・村山達雄
○村山政府委員 率直に申しまして非常に困難だと思います。調査のやり方、あるいは内容、これは千差万別でございます。従いまして、どこの国
でもおそらく調査の内容について書いているところはないだろうと思います。問題はその実際問題にあるのでございまして、これはなかなか法律的に規定することはきわめて困難であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/344
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345・堀昌雄
○堀委員 きわめて困難だとおっしゃるのですが、ともかくちらっと見るだけで調査だということもあり狩るということで申し上げたのです。事実どれだけあるかわかりませんが、たくさんのものを処理する中では——今長官のおっしゃったようなことが行なわれるなら、その調査は非常にけっこうで、私はそれほど積極的に法律に理由を書けということにならないかと思いますが、調査がちらっと見るだけで済んで、そうして決定が出るということになるならば、逆に理由を書く必要が出てくるのじゃないか、私はこういうことを思うわけです。だからともかく最小限、そういう更正決定をなす場合における調査については、これこれこれぐらいはやるべきだという——最小限ですよ。何から何まで規定しろとは申しません。一応これとこれとこれぐらいのことを調べるのを最小限とするとかなんとか、私はそこらは少し自主的に皆さんが工夫をしてみようという態度になっていただきたいと思うのですが、工夫をする余地はないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/345
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346・村山達雄
○村山政府委員 率直に申しまして、これは法律事項として規定することは、ほとんど現在ではむずかしいと見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/346
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347・堀昌雄
○堀委員 私、法律に書けなんと言わないのです。省令でも政令でも規則でも通達でも何でもいいから、あなた方があなた方の内部を——さっき長官は規律で処理することはむずかしいというふうにおっしゃったけれども、やはり何かものさしがあるべきじゃないかと私は思います。だからそれは私は何にしろとは申しません。あなた方のできる範囲のことで、しかしわれわれ第三者が見て、なるほど調査というものは最小限度このぐらいやってくれるのなら、これはまあ理由を一々書かなくてもいいなという感じができる程度の何かがあってもいいのじゃないか。私は法律に書けとは言っておりません。そういう工夫はできませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/347
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348・村山達雄
○村山政府委員 これは、法律、政令、省令に限らず、規定することが非常にむずかしい。千差万別でございます。ですから、その納税者の記帳が定壁の場合もございましょう。それから全然ない場合で、反面調査だけでやっていく場合もございましょう。また小売現金取引で相手がわからぬ場合もございます。それぞれこれだけの納税者がおる、従って、その調査対象、あるいは調査の方法は、おそらく千差万別であろうと思うわけでございます。それについての規定を設けるということはほとんどできないだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/348
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349・堀昌雄
○堀委員 千差万別ということになれば、これはまああれでしょうが、それじゃ行政を執行する面で、国税庁長官としては、何かそういう点においてわれわれに多少納得させる方法というものもとれないのかどうか、これだけを行政執行の面で長官のお考えをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/349
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350・原純夫
○原政府委員 先ほども申しましたように、税務署が近づきやすくなければならない。しかし同時に、脱税者から近づきやすくなって、えらく抜けてしまうというようなことじゃしり抜けですから、適正公平ということを忘れてはいかぬ。適正公平ということが、今堀さんのおっしゃる調査を正しくやりなさいということにもつながるわけです。およそ税務官吏であれば、調査について、時間との比較でありますけれども、時間の割当のできる限り、十分に調査して的確な所得なり何なりを調べるというのは当然の義務であります。もろもろ部内の通達がございます。いろいろな会議をやり、また年に何度も何千人も集めて研修をやっております。そういう際に調査はこういうふうにおやりなさいということはいろいろ教えております。これは私ども税務官署とし、ての本来の仕事でありますから当然のこととしてやっております、ただ、それを部外に出して、こういう点を調査する、だから一つ納得してくれというようなものではなかろうと私は思うし本日通産を公開しろというお話がありましたが、納税者の権利義務について、こういうものが収入に入る、こういうものは入りません、こういうものが経費です、こういうものは経費ではありませんという、法律を補充しその解釈を——具体的なルールというか、われわれの考えるところを申し上げるという分は、これは一般に公開して大いに議論していただく。しかし、どの納税者を調査するか、調査する場合に、訓育の度合いを非常に厚く調査するというか、時間をかけて調査するものもあります。ざっと見るものもあります。そういうもののあんばいをどうするかということは、やはり外へ出して言いがたい。またちゃんとそれを調査する場合にはどういう点を調査するということも、世上よく税務調査法とかいうようなパンフレットみたいなものが出て、場合によっては部内の文書が漏れたのじゃないかという感じもいたしますが、ああいうものは私どもは、部外に出そうとしているのではなくて、秘の文書であります。困ったことだと思っておりますが、今堀さんのおっしゃった点は、納税者がわれわれ税務官吏の調査過程において御応待になって、いろいろ聞かれ。また話しておられれば、税務署はうちの言っていることのうちここがおかしいと思っているなと——それははっきり申し上げることが大体多いわけですが、相当おわかりになる。そのおわかりになるのをますますおわかりになるように、親切に説明し、質問も申し上げるということが、納得して納税していただく一番の大事なかなめになると思いますので、それは私は努めましょうというのです。ただその場合に、さてどこをどう突っ込んでいくという——まあ、突っ込んでいくという言葉は悪いのですけれども、どいう点については、これは業態によりましても、また調査の度合いによりましてもやり方がございますから、先ほど申したような意味で、本来そういうことは公開して、これでいくということを申し上げるような性格のものではないと思いますので、私のいう、実際の調査にあたって御納得いただけるような調査をし、またお話をするという点、これは私はもう全力を尽くして努力いたします。おまかせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/350
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351・堀昌雄
○堀委員 その次に、先ほどからいろいろ論議されております十六条のことで、ちょっと具体的にお伺いしておきたいのです。
さっきから何回か例を出しましたけれども、「申告納税方式 納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とし、」としてございますから、そこで私が、二十万円の収入があって、十万円の経費で十万円を所得と見たときに、一応十万円の所得として申告をいたします。ところが二十四条によって更正決定が行なわれます。税務署の調査によってともかく五万円所得がふえる、そうすると更正決定が行なわれるわけですが、そこで問題は、十万円の私が申告した納税額が申告納税として、原則として一応確定する、その次に更正決定が行われる、それは五万円について更正決定が行なわれる、こういうことに理解をしてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/351
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352・村山達雄
○村山政府委員 さようでございます。あとの方の更正決定の効力の確定に関する条文でそのことが具体的に出ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/352
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353・堀昌雄
○堀委員 そうすると、今度はその五万円に対して私が異議の申し立てをいたします。その後の争いというものは、そういたしますと、その五万円に関しての異議の申し立て等の争いになるのかどうか、その点を一つお聞きいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/353
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354・村山達雄
○村山政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/354
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355・堀昌雄
○堀委員 そのことは異議申し立て、審査請求等一貫してそういうことだと理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/355
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356・村山達雄
○村山政府委員 さようでございます。それで、今度そこをちょっと申し上げておきますと、従来の規定でございますと、異議の申し立てに対して税務署長が決定する審査の段階では、決定を争っておったわけです。同時に原処分も争っておった。二つ争いがあるという法律構成のために非常に複雑になっておる。問題は、一体幾らの税額になるのかというところが中心でございます。今度の審査の対象は決定後の原処分、たとえば今の設例で申しますと、初め十万円、その次十五万円とした、それでそのときの決定は十三万円にしたという場合に、争うのはあくまでも十三万円と、いう決定ではなくて、決定によって十三万円となったその原処分、まだ三万円多い、これを争っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/356
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357・堀昌雄
○堀委員 その点について、これは非常に今後の問題として、申告納税というものの体系として私は重要だと思います。これは私は確かに一つの進歩だと思います。申告分だけが確定をして、その後の問題は、更正部分についてだけ争いが起これば争う。こういうことは、やはり私は申告納税制度の原則が一歩前進したものだとして、その点は私率直に一つの進歩だと思います。進歩ですが、ただ問題は、やはりちょっと、さっきのところに戻って、必ずしもまだ完全に釈然としないものもあります。それはしかし、国税庁長官がおまかせをいただきたいということでございますから、私は一応おまかせをいたします。ただしかし、おまかせをしますが、私どもいろいろな関係者の中で、どうもそういう調査が不十分であって行なわれたという具体的事実がある場合については、再びこれを論議の対象にしたいと思いますので、そういうところの論議の対象が起きないように一つ指導をしていただきたいということで私の質疑を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/357
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358・小川平二
○小川委員長 有馬輝武君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/358
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359・有馬輝武
○有馬(輝)委員 私は簡単に二、三の問題点についてお伺いいたしたいと思います、それはけさも広瀬委員からも質問がありましたし、また横山委員、田中委員からも質問があって、この国税通則法を出さなければならない理由について、村山さんから種々御説明があったわけです。またそれを受けて大蔵臣からも御説明があったわけですけれども、たとえば十年前から準備しておったので云々というようなことでは納得がいかないのですが、私はただ一点だけに限って、大蔵大臣にお伺いをいたします。昨年、ことし、これは三十七年度も、税の自然増収は膨大なものが予想されるわけなんです。そんな時期に眠った子を起こすみたいな形で、権力主義的な通則法を出さなければならないという——ことしに限ってですよ。十年も前から準備されておったのなら、ことし特に出す理由というものがなければならないはずです。それについて簡単でけっこうですから、大蔵大臣と村山さんの方からお聞かせをいただきてたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/359
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360・村山達雄
○村山政府委員 これは部内におきましては、かねがねこの必要を感じておったわけですが、なかなかそのチャンスがなかった。それで、今度三十四年から三年間という期間をちょうだいいたしまして、根本的な税制改正をやるのだ、そこでの中身は負担の実質的公平のためにどういうことをやったらいいかという問題と、それから体系整備、このために一体どうしたらよいか、このの二つが問題点だと思うわけであります。通則法はその後の問題にこたえるためであります。これにによりまして体系的にも整備し、納税者の方々にもわかりやすい税法を作って、それから基本的な法律関係を明確にして、現在の諸手続で納税者の利益の方向に改正すべきものは改正する、この三つがこの調査会に与えられた使命でございます。そこで検討の結果が出ておりますので、今国会に提案した、こういう次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/360
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361・有馬輝武
○有馬(輝)委員 たとえば先ほどから論議になっておりました協議団、これはだれが見たって、第三者的な性格を強めなければ設ける理由がないですわね、それにもかかわらず、あなたの先ほどからの答弁を聞いておりましても、第三者的な性格をほんとうに強めて、そうして所期の目的を達成するような形にはなっていない。そういう形の中で、いろいろな欠陥を持ちながら無理押しして出さなければならない理由には、今の御答弁ではならないですよ。いま一度伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/361
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362・村山達雄
○村山政府委員 今、具体的な問題についてのお尋ねでございますので、協議団の問題に限って、しぼって申し上げます。現行に対しては、これでもわれわれは一歩前進したつもりでございます。立法論としてはいろいろの考えはあると思うのでございまして、第三者を入れろという議論は、実はシャウプ勧告のときにもあったわけであります。その前は、御承知のように所得調査員という制度がございましたが、これはなるほど利点もございましたけれども、非常に弊害もあったわけでございます。税務の問題はかなり専門的、技術的な問題でございまして、そういう意味で、従来のような所得調査員的なものを第三者的というならば、やはりそういうものではなくて、現在のような専門家、練達たんのうの者をもってする協議団制度の方がいいであろう、こういうことで現在の制度は出ております。その一点については、われわれは今日においても同じ考えを持っております。
もう一つ、第三者的な性格というときに、行政機関として国税庁とは別の機関にするかどうかという問題が一つございます。いわゆる審判所のようなものでございますが、それそれとして、行政の不統一という問題が多分にございます。やはり審査という段階、異議の申し立てを処理するという問題についてはなにでございすが、同時に、これはまた税務行政の統一という問題を別途要求するわけでございます。その観点からいたしますと、やはり同じ命令系統にある、しかし別の使命を持っているといった方がいいのではなかろうか。また、訴願前置をしたという意味から考えましても、これがいたずらに膨大な機関になりますと、その能率も非常に阻害されるわけでございます。この案をもっていけばあらゆる要求にこたえられるということではございませんが、あれこれ考えまして、現在の制度に一歩前進さしたところが現状においては適当である、こういう判断に基づきまして今回の提案をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/362
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363・有馬輝武
○有馬(輝)委員 体系整備という大上段に振りかぶったものにしては、これは先ほどから論議がありますように、多くの問題点を残しているのですよ。しかし、これはまた議論の蒸し返しになりますから、次に原さんにお尋ねをいたしたいと思います。
それは、先ほどから、綱紀の粛正を初めとして三原則に基づいて、前線の税務行政に当たっている諸君に対してあなたはいろいろな要求をされている。そうして、この困難な税務行政を遂行していく際には、あなたと末端の職員の方々とが一体になった空気というものがなければいかぬと思うのでありますが、そういった意味で、スムーズな、たとえば労働組合との団交が行なわれているかどうか、この点について率直な所見を聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/363
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364・原純夫
○原政府委員 おっしゃる通り税務職員五万が一体となって仕事をするというのは、最も望ましいことであり、私大体においてはできていると思います。ただ、ただいまお話の組合との交渉といいますか、話し合いがなめらかにいっておるかどうかという点につきましては、先般もある機会に申し上げたことがございますが、私、税の関係で、組合員の数は総数五万の中で半分程度、半分ちょっと上回るという程度でございますが、幾つか組合がありますけれども、どうもその中に秩序破壊的なテーゼを立をててそれで動いておる組合が、一番大きい組合でありますが、あるので、これはきわめてシリアスな問題であって、税務行政の健全な展開、発展のためには、何としてもそそれを改めてもらわなければならぬというふうに思っております。その組合とは、残念ながらそういうような点がかかりまして、必ずしもなだらかにいっておりません。これは私は事柄の本質からして、そういうことになってもやむを得ぬというふうに思っております。望むらくは、そういうような秩序破壊的なテーゼを引っ込めて、健康な組合活動を展開されるということを私は願望しております。早くそういうようなことにたなって、職場全体が明るい健康な気分でやれるようになることを希望しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/364
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365・有馬輝武
○有馬(輝)委員 私はこの際お伺いしたいと思いますけれども、税務行政に携わる職員であれば、言論の自由が抑圧されてもいいのかどうかという問題です。税務職員であれば何も言っちゃいかぬ、こういう形であなたは推し進めていらっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/365
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366・原純夫
○原政府委員 私が申しておりますのは、何も言ってはいかぬというのではなくて、行政なり職織物の秩序を破壊するような、侵害するようなことを言っちゃいかぬ、これはきわめて当然だろうと思います、組合であるならば、組合員、職員の勤務条件に関する事項についていろいろ考え、また私どもと話し合うというのが本来の仕事であります、そういう仕事に純粋に限ってほしい、それを越えて秩序を破壊するということをテーゼとし、かつそれに基づいていろいろな行動をやるというのはいけない。両方あるわけですが、とにかく今の破壊約な面がありますので、これを何とか、これがある限り税務行政の健康な展開、発展とは、私は全然相入れないものだということを先般この委員会でもはっきり申し上げました。いまだにその信念は変わっておりません。それを直して参りたい。なおこの勤務条件について話し合わないということではないのであります。その一面についてできる限り話し合いをいたしていくということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/366
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367・有馬輝武
○有馬(輝)委員 あなたはおいしいことをおっしゃる。そしてその隠れみのとして秩序あるいは健康なという言葉を使われるのだけれども、いま一つ重ねてお伺いしますが、確かに公務員は、できた法律については従わなければならない義務があると思います。しかし法律制定前にいろいろな意見を発表すること、これまであなたは禁じておられるのですね。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/367
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368・原純夫
○原政府委員 たとえば通則法につきまして、私どもの組合の一つが公然と部外に対して反対をする。これは望ましくない。あまり品のいい行為だとは思いません。そしてそのゆえに組合に対してもそういうことを申しております。法律について意見を言う、どうも疑問があるというならば、やはり内部で個人同士で言うということであるべきであって、組合が組合の活動としてそういうことをやるのは私は行き過ぎだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/368
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369・有馬輝武
○有馬(輝)委員 先ほども申し上げましたように確かに人事院規則がある。それに従って行動しなければならないことは厳然とした事実でありますけれども、しかし、法制定前に意見を述べることを禁止する条項はどこにありますか。これはあなたのところの国税庁の総務課から出されておる時報なんですが、これの二月十三日のものによって、今あなたがはしなくも言明されたように、国税通則法に従って、組合として意見を出すことそれさえも抑圧されておるのです。これは妥当だと思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/369
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370・原純夫
○原政府委員 組合は勤務条件に関することについて活動すべきであります。通則法全般について、これを全国税という組合が言っておりますような、全面的な態度でこれを否定してかかる、反対してかかる。しかもその際言うておりますことは、たとえば税務行政というものは独占資本の走狗として、国民に対してわれわれをかり立てて、そして国民を敵として徴税をさせるんだというようなことを申すわけです。私はこれはまことにけしからぬことだと思います。また政府の法律に対して意見を言うのは、職員個々として意見を言うということはあっていいでしょう。しかし、世間に聞こえよがしに言うということは、職員一人々々としてもこれはいささかどうかと思いますし、それがさらに労働組合ということになりますれば、これはもうまことに組合の権限と申しますか、仕事の範囲を明瞭に越えておるし、今申した一人一人でもあまり体裁のいいことでないというのが集団的になったことでありまして、これの及ぼす悪影響は、かなりに大きいと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/370
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371・有馬輝武
○有馬(輝)委員 自分の身分に関係してくることに関して、発言してはならぬという規定が労働組合法のどこにありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/371
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372・原純夫
○原政府委員 法律が必要なら出しますけれども、組合は勤務条件に関することについて云々しろというふうに書いております。組合が自分の所属する職場の官庁なら官庁、あるいは会社なら会社が方針として宣明し、打ち出しておることに対して、これに正面から反対するということを部外に対して公にやるというようなことが、私はいいとは常識的に考えません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/372
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373・有馬輝武
○有馬(輝)委員 僕が聞いておるのは、あなたの判断でなくて、どこにそういうことを禁止してある条項があるかということを聞いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/373
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374・原純夫
○原政府委員 明瞭に禁止規定があり、それに対する処分の規定がありますれば、私はすぐに発動いたします。しかし事柄が常識的であるかどうかということ、またしかるべきことであるかどうかという批判は、私は一向して差しつかえない。法律上はっきり禁止されたことでなければ、批判してはいけないということはないと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/374
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375・有馬輝武
○有馬(輝)委員 あなたのそういう態度こそが、困難な税務行政に携わっておる諸君とあなたとの意思を阻害しておる一番大きな原因だと思うのです。まだほかにもあなたが団交になかなか応じなかったり、一々いろいろな例をあげれば具体的にありますけれども、問題はそういったところにあるのではなくて、そういう角度で法に禁止していなければ、自分の意思に従わないことは何もやらせないのだ、憲法で保障された言論の自由さえも抑圧していくのだそういうあなたの態度では、今後の困難な税務行政がスムーズにいくとは思われないのです。あなたは一つの自分なりの、これが健康な秩序を守る通なんだという先入主を持って、あなたの手足となるべき諸君に対して、多くの疑惑を持って対処しておるから問題が紛糾するのです。その点についていま少しフランクになって、ほんとうにあなたの部下の諸君が言うことはどこにあるのかということを、すなおに聞く態度がなければ、せっかくこんな国税通則法ができたって何にしたってその効果は上がりはしませんよ。もう少し私はあなたがフランクになって、組合と話し合う。頭から押えつけていくという態度を改善して、まず話し合う。この空気を一日も早く作り上げてもらうように強く要望いたしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/375
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376・小川平二
○小川委員長 平岡忠次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/376
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377・平岡忠次郎
○平岡委員 今まで同僚各位から、各論的にも相当突っ込んだ質問がありました。そこでそういう各論的なことでは、かなり委曲を尽くしておると思うのです。この論議を通じて私の感ずることは、次のようなことであります。精神病者が神経衰弱者と違う特徴というものは、これは堀さんの分野かもしれませんが、その自覚が全くないということだそうであります。大蔵官僚さんは、役人のうちでも最も右翼に属しておって、非常にエリート意識をお持ちでありまして、このことが多かれ少なかれ、現状保守の意識につながるものであると考えます。事大主義の官僚意識が、政府に対する過剰サービスとなっておる。今回の場合のごときは、自民党すらあまり考えていなかったことまでこの通則法に盛り込もうとして、かえって与党さんから手痛いおとがめを受けたという形になっております。弱い層に向かって権力的徴税強化の制度化を試みんとする大蔵省の役人諸公は、一方に、租税特別措置等による偏向減税を少しも恥としておらぬ。本日国税通則法案をめぐるこの白熱した議論というものは、あなた方がよってもって立つ反民主主義税制墨守に対する一般国民大衆の怨嗟の投げかけであることを肝に酩じてほしいのであります。
そこで私はお伺いしたのです。実は本法案の作成までの過程におきまして、まず第一に、実質課税の原則の名のもとに、実は恣意的課税を合法化する根拠にしようとされた規定は削除された。また第二段におきまして、租税回避行為、行為計算の否認ということで課そうとした条文も削除いたしました。三番目に、簿記の原則に従って、整然とした記帳義務を課し、違反したときは推計課税することを合法化しようとした規定も除かれました。第四番目に、納税義務に関する調書の名をもって、他の公務員の協力を得て、質問し、検査し、住居に立ち入ることができ、これを拒む者に重刑を課そうとした規定も除かれたのであります。徴税強化の布石の総撤去であります。
かてて加えまして、ここに自民党の修正案も、少なくとも現状に変革を加えることを不可としまして、人格のない社団を納税義務者として、各税法に普遍的に適用せしめることをやめるべき提案となってきたのであります。その限りにおきまして、自民党さんはたたえらるべきだと私は考えております。まさか大蔵省当局が、間接税諸法律の新旧改廃の手順や提出の仕方が間抜けておって、新年度徴税に差しつかえるので、泣き泣き譲歩したなどとは、私どもは考えてもおらぬし、考えたくもないのであります。
それはともかくといたしまして、本法律制定の趣旨として、今主税局長は体系整備だということをおっしゃいました。租税制度の基本的な仕組みないしは各税に共通する事項、すなわち租税に関する通則事項と称すべきものについて、これを統一的に整備規定することが必要であると考えられるとして、大上段に振りかぶった大改正案は、後退に後退をして、何のための通則法の制定かと疑いなきを得ないのであります。まさに大失態と言うべきであります。言うなれば、時代錯誤の官僚的な税制、反民主主義は大きく後退したわけでありまして、私はむしろこの帰結は当然だと思っております。この事態におきまして、私の質問はただ次の一点に尽きます。(「討論か」と呼ぶ者あり)いや、そうではない。これは前提なわけです。結局、政府、大蔵省は、この始末を将来に向かっていかなる方向で収拾しようとなさるのでありましょうか。ということは一応の拠点ができた。時期を見てたな上げ諸条項も復活し、反民主主義的税制を確保したいということであるのか、それとも民主主義の前進の前に、税制もまた例外ではないとの謙虚な反省にあるのかどうか、この点につきまして大蔵大臣と主税局長の心底をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/377
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378・水田三喜男
○水田国務大臣 さっきから申しましたように、通則法でございますから、もう少し通則法的なものにしたいという意欲は私どもは持っております。しかし理論に忠実であろうとしても、なかなか現実はそういきません。たとえばこの記帳義務というようなことも、これはやはり徴税の適正化ということを考えましたら、そこまで持っていくのがほんとうだと思いますが、青色申告でさえこれをやるためには税理士に相当大きい報酬を払うとかなんとかいうようなことで、まだ自力でいかないで、相当大きい出費もかけておるという現実でございますので、白色申告というような部面が現在残っておることも、これは実情からやむを得ないと思いますし、それに対してすぐに記帳義務を負わせるというような理想も、私どもは一挙にはやれないというふうに考えておりますので、こういう点はさっき申しましたように、青色申告をもう少し奨励、普及させるということを徐々にやって、後に通則としてはっきり原則もきめられるということになろうと思いますので、問題は現実の実情に応じて、一歩々々理想に近づいていくということをするのが一番いいのじゃないか。急速にただ理論にとらわれて、実際においてなかなか困難な問題をここで急速にこれを規定していくということも問題だと思いますので、私どもは無理のない範囲で、いずれにしましても国民は要望しておりますから、この繁雑な税制をもっとわかりやすくする。そうしてこの程度の通則法を作るということがまず第一歩である。一歩の大きい前進であると考えて、いろいろむずかしい根本の問題は一応他日の検討にゆだねることにしまして、この範囲の通則法を立案したという次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/378
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379・平岡忠次郎
○平岡委員 私のお聞きしたいのは、たな上げ事項を復活するというお考えがあるかどうかということなんです。一歩築いて二歩、三歩というふうなお話がございましたが、やめる方にいくのか、少なくとも復活する方にいくのか、これをお聞きしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/379
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380・水田三喜男
○水田国務大臣 これは私はやめる方にいくべきものじゃないと思います。税制調査会の答申もございましたが、やはりそういうふうに近づいていくべきものだ。しかし近づくためには現実をそこまで持っていって、これはほんとうに税制の民主化に役立つという実効の上がるような環境が整備されなければ、こういう問題はすぐに解決できませんので、将来そういうふうに持っていくという理想はやはりこれは捨てるべきじゃない、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/380
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381・村山達雄
○村山政府委員 今の大臣の御答弁に尽きるわけでございますが、少なくともわれわれは、この国税通則法は、現行の制度に対しては数歩の前進である、かように考えております。今度見合わせました事項は、それぞれの理由があって見合わしているわけでございます。従いましてその見合わした理由が解除される事態が参りましたらば、おのずから検討になると思います。しかし事柄は非常に深く、また広範の問題であるということは、われわれ今個人的にはそういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/381
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382・横山利秋
○横山委員 ずっと質問を続けて個条的にやってくる予定でございましたが、もうすでに時間があまりなくなりました。私もその意味で、総括的な意味で四点ばかりお伺いをします。
われわれが少なくともこの法案に絶対反対を唱えてきたいろいろな理由がございますが、その一つとして、この国税通則法というものが非常な徴税攻勢になるおそれがある。これはどんなにここで皆さんがもっともなことをおっしゃっても、実際末端においてはそう受け取れないような情勢になるおそれがある。これをくどく言っておるわけであります。この点で端的にお伺いしたいのですが、一体この国税通則法による予算上の変化というものは、どういうふうにお考えなのか、これが第一であります。
第二番目には、抽象的ではありますけれども、これによって各末端における徴税攻勢のようなことはしない、こういうことがはっきり言い切れるかどうか。抽象的ではありますが、誠意をもってお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/382
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383・村山達雄
○村山政府委員 予算に直接関係いたしますのは、これによりまして利子税、加算税が平年度二十一億、それから初年度九億程度減収になります。これはもとより先ほど申しているような意味で設けているわけでございまして、これが徴税攻勢になるとか、あるいは徴税守勢になるとか、そういうこととは全然関係なくこの立法を考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/383
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384・横山利秋
○横山委員 私が特に念を押しましたのは、言葉のやりとりで終わらずに、必ずやこの通則法の運用によって問題が生ずると予見をしておるからであります。その予見が事実となって現われた場合に、大臣もお聞きの通りでありましょう、ここにお並びの三人の方は必ずそのことを忘れないようにしていただきたいと思います。
それから大臣にお伺いをいたします。私どもがこの法案に反対をするもう一つの理由は、形だけの公平ではだめだと私どもは確信をしておるからであります。形だけの徴税のあり方である限り、あなた方の言葉をとって公平であるように見えても、真の公平を達成するためには、もっと大きな手段によらなければならぬ。それはこの税制の中で、不公平なのはいろいろありますが、最も不公平きわまるものは、租税特別措置法です。これによって国税、地方税を通じて二千億になんなんとするものが政策減税をされておる。大きな某電力会社は二五%の実質法人税であると言われておる。これがどんなに政策的な理由があろうがなかろうが、中小企業には租税特別措置法の恩典は少ない、ほとんど皆無と言ってもよろしい。だからそういう、上にはべらぼうもなく合法的な減税がされて、そしてわれわれだけが苛斂誅求を受けるという気持は、ごうも忘れ得ない一般団体並びに納税者のものの考え方です。ですから夏の公平をなさんと欲するならば、租税特別措置法に対して勇敢にメスを入れていく決意がなければならぬ。この点、大臣の御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/384
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385・水田三喜男
○水田国務大臣 これは税制の問題でございまして、その点は私どもも特別法の改廃は勇敢にやりたいということは考えておりますが、それと通則法の問題は違いまして、それはそれとして私どもは税制として十分考えたいと思います。この通則法を作ることによって、先ほどお話しの徴税強化というようなことは一切いたしません。またそうなるようなことでございましたら、この通則法案自身私ども自体が反対でございますが、今回の通則法は、現行のいろいろな各税法の中から通則的なものを抜き出して整理しようということでございますから、これによって徴税強化となるような事態は一切いたさないつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/385
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386・横山利秋
○横山委員 私が申しますのは、納税者の心理をよく把握してもらわなければいかぬということであります。納税者の心理というものは、一つには、隣のげた屋さんとおれのところに不均衡がある。もう一つには、さらに進んで大企業と自分たちの間に不均衡がある。もう一つには、税金を出したけれども、汚職をして、無法に使われているという不信感がある。この多くの問題をとらえながら、真に納税者の協力を得るという意味では、先ほどからいろいろ御答弁なさる国税庁長官の立場だけでは、納税者の納得は絶対に得られないのです。その国民の心理、納税者の心理をくんで、真の法律の運用上の公平がはかられなければ、私は明朗にして協力ある納税者の把握はできない、これが私の言いたいところです。それから第三番目に大臣にお伺いしたいのですが、これもまた抽象的な御質問なのですけれども、私どもがきょう一日かかって多くの原則的な立場を明らかにいたしましたが、その原則的立場の一つに租税法定主義というものがる。この租税法廷主義は、お殿様が年貢米を勝手に自分できめた時代と違って、この法定主義が確立されるまでには、日本だって大戦争が幾つもあった。イギリスのマグナカルタやフランスの大革命やアメリカの独立戦争もまた人民の力で、人民が税金をきめる租税法定主義が全世界で血潮を流して確立されたと言っても私は過言でなはいと思う。この租税法定主義があればこそ、すべての国民は税に対しては納めなければならぬものとまず覚悟している。昔のお百姓さんのの立場とは違うのです。その租税法定主義というものが——これはあなた方の言い分もあるであろうし、しかしながら税務署のさじかげんとか、あるいは大企業はああだとかいうことが絶えて尽きないのは、租税法廷主義が貫かれていない、こういうところに問題がある。私はすべてこの法律をもってきめようとは言わぬけれども、きょうの質疑の中でも明らかのように、法律できまっている質問検査権だけでは困るから、法律以外の、法律を越えて質問検査権をやらしてもらいたいと国税庁長官は言う、こういうことでは私はだめだと思う。大臣は租税法定主義をあらゆる角度から貫く決心があるかどうか、これをお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/386
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387・水田三喜男
○水田国務大臣 税法を納税者のマグナカルタにするという方針は貫きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/387
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388・横山利秋
○横山委員 抽象的な御質問でありますから、あなたが一言でおっしゃった気持を、あらゆる角度で私どもは今度はあなたがお約束なさったと思ってやります。
最後にお伺いをしたいのは、今も平岡委員が、一体これからあとはどうするのだ、こういう質問をいたしました。あなたの御答弁がありました。私どもとしては、この国税通則法というものが、税務署が税金が取りやすいようにという立場から作られているからいかぬと言っておる。徴税民主化という立場で、権力行政を一歩々々はずしていって、納税者と対等の立場で各税法がきめられていくべきだ、こういうことを私どもは言っている。その角度であなたはどういう御反省をなさいますか。私の言わんとするところは非常に抽象的ではありますけれども、これはもうきょうの議論を通じても、税務行政に都合がいい立場ですべてが貫かれており過ぎる。納税者と税務行政第一線とが、対等の立場で税金が話し合われ、最終決定されるという立場ではない、こういうことが私どもの主張する大きな問題でありました。徴税行政を民主化するという立場でこれからおやりになる覚悟があるかどうか、それをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/388
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389・水田三喜男
○水田国務大臣 先ほどから国税庁長官も答弁しておられますように、徴税の民主化ということが私どものねらいでございますので、これはその方向で今後とも推進していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/389
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390・横山利秋
○横山委員 もしも大臣がそういうお気持があって、初めからこの通則法について気を配っておられたら、私はこういう法案はできてなかったのだと思う。現に答申ができたときに、——政府は知らぬとは言わせない。政府も実質的には参加し、意見を言い、資料を出しておる。その答申の五項目という重要な柱がくずれ、そうして今また与党の提案によって、人格なき社団問題も現状にとどめるという、この経過について平岡委員も言うたのですけれども、あなたは一体どういうふうにお考えなんでしょう、これは少なくとも私どもの主張するところへ一歩寄ってきたと思う。一歩寄ってきたというのは、行かぬ方から少なくとも現状の方へ、歩寄ってきたというだけであって、民主化の方へ、歩寄ってきたとは思っていない。けれども、そういうような経過をたどってこの通則法案が、がたがた、なってきたことについて、少しは大臣としても御反省がなければならぬところだと思うが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/390
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391・水田三喜男
○水田国務大臣 がたがたになったということではなく、まだまだそういう原則を立てるためには、日本の今の現実から見まして、未熟な点もございますし、相当研究しなければならぬ問題もございますので、そういう点を省いてこの通則法は作ったということでございます。やはり民主化ということは考えて、わざわざ問題があって未熟な問題を私どもは他日の検討にまかせてもらうということでこれを抜いたということ自身が、民主化の方向を考えたからでございます。いたずらにくずれたということが悪いことじゃなくて、私どもとしてはそういうむずかしい原則的な問題をそう無検討でここへ掲げることの方がいろいろ誤解を起こしますし、あなたのおっしゃられているようなこともやはり誤解だと思いますが、そういう誤解を生みやすいことだと思いますので、この問題を私どもは省いたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/391
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392・横山利秋
○横山委員 それではこれで私の質問を終わることにいたします。どうぞ大臣、いま私が最終的に質問いたしまして、抽象的ではありますけれども、お答えになったことを、あらゆる機会に銘記していただいて、私どもとの間に懸隔がないように、またかかる法案がこれから先出ないように要望して私の質問をこれで終わります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/392
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393・小川平二
○小川委員長 これにて両案並びに両修正案に対する質疑は終了いたしました。
両案並びに両修正案を一括して討論に付します。
通告がありますので順次これを許します。細田義安君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/393
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394・細田義安
○細田(義)委員 私は自由民主党を代表いたしまして、国税通則法及び国税通則法の施行等に伴う関係法令の整備等に関する法律案につきてまして、賛成の意を表明せんとするものであります。(拍手)
今回国税通則法を制定いたします趣旨は、第一に、税法の民主化をはかりまして、税法を納税者のものとする見地から、現行税法の複雑難解な仕組みを解きほぐしまして、各税に固有な課税実態に関する規定は各税法に、手続規定を主とする各税に共通する規定は取りまとめて国税通則法にそれぞれ規定することになったのでございます。税法の簡素平明化をはかるとともに、その理解を容易にすることにあったのであります。他面このように整備されました税法は、納税者においてもこれを批判することは容易になるわけでありまして、時勢の進展に伴いましてさらによりよい税法を作るための基盤となることが期待されるのであります。第二に、本案は税法の基礎にある事項にも深くメスを入れまして、従来の同法では明確でなかった種々の基本的な法律関係を明らかにしておるのであります。このことは政府と納税者との間における権利義務の限界その他の関係を明らかにいたしまして、従来のような解釈適用上のさまざまな紛議を解消するに役立つものでありますことはもとより、納税者の正当な権利、利益の擁護に資するところ大なるものがあると考えるのであります。
第三に、本案は各種の附帯税制度や不服申し立ての制度等、各税に共通する制度につきまして、納税者の利益に着目しつつ種々の改善をはかることとしております。附帯税の改善合理化が、先ほども御答弁がありましたが、平年度二十一億円軽減を見るというようなことは、納税者のためにきわめて利益な点でございます。さらに不服申し立ての制度につきましても、不服申し立て事項の範囲の拡大や、執行停止の拡充、あるいは協議団の運用の改善をはかる等、これらの制度についての画期的な改正を行なうこととしております。これらの制度は終戦後間もなく、いわゆるシャウプ税制によって改正されて以来、さしたる改正もなく今日に至っておるのでありまして、その改善が多年の懸案とされてきたのでありますが、今回国税通則法の制定を見まして、初めてそれが具体的に実現を見るわけであります。その意義はまことに大きいと申さなければなりません。
以上申し述べました通り、国税通則法の制定は税法の民主化をはかりつつ、あわせて納税者の権利、利益に着目いたしまして、諸制度の改善を行なうものとして、きわめて意義深い立法であると考えるのでありますが、この際特に私は本法案の制定の経緯について触れておきたいと存じます。
この法案の母体となりましたのは、本日早朝からの審議の過程においていろいろ論議がなされましたが、御承知の通りに税制調査会の答申でございます。同調査会は、各界の代表や学識経験者を集めまして、きわめて綿密かつ慎重な検討がなされたのであります。かくいたしましてこの調査会で決定されました答申は、いち早く世に公表され、広く国民の批判を仰いでおる点に着目しなければならぬと思うのであります。しかして本法案におきましては、これらの批判の聞くべきものにつきましては深く耳を傾けたのでございます。その立法化につきましては、問題の諸点については先ほど来論議されました五項目にわたりまして、将来の検討に待つというような慎重な態度をとっておったのであります。この態度は良識のあります国民の等しく賛同するものと私どもは信ずるものでございます。すなわちさきに発表されました国税通則法の試案のうち、現行法に対比いたしまして、徴税の強化あるいは納税者に心理的な圧力をもたらすと議論を生んだところの、いわゆるこれら五項目につきましては、その具体化を将来の検討にゆだねるとともに、なお問題点として論議のありました原案の第十三条に、いわゆる人格なき社団の問題を中心としての諸規定につきましても、現時限においては修正案によりましてさらにわれわれはこれを将来に譲ったのでございます。これによりまして、各階層を通じてこの法案につきましては不安を除き得たものと私どもは認識を深めておるわけでございます。われわれも国民とともに納税者であります。従って国民にとり納税者にとりまして不利益なしとの確信を、各般の事項についてその質疑を通じて確認をした次第でございます。
本法案は以上述べましたような改正内容を持ち、また経緯を経まして準備されたものでありまして、これらの点にかんがみまして、われわれは本案につき、毛利委員の提案の一部修正案を含め、全面的な賛意を表するものでございます。
ただ最後に一言つけ加えたいことがございます。と申しますのは、法律はあくまでも人が運用するものであるということでございます。いかにりっぱな法でありましても、人がその運用を誤るならば、法律はその真価を発揮することができない、納税者に最も身近な法であり、かつ納税者に負担を負わせる税の基本法たる本法律につきましては、先ほど来申し述べました通り、本法制定の趣旨にのっとりまして、今後において政府の適正な運用と慎重な配慮を求めてやみません。
以上をもって私の賛成討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/394
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395・小川平二
○小川委員長 広瀬秀吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/395
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396・広瀬秀吉
○広瀬(秀)委員 私はただいま議題になっております国税通則法案並びに国税通則法の施行等に伴う関係法令の整備等に関する法律案並びに毛利松平君外から提出されました両法に対する修正案、このいずれに対しても反対の立場において討論をいたしたいと思うわけであります。
最近における税制改正において、この国税通則法案の提出ほど国民大衆に対して非常なショックを与えたものはなかったのであります。そのことは、今日一方において、大企業独占資本に対して租税特別措置法によって至れり尽くせりの恩典を与えながら、中小企業あるいは零細事業者あるいは低所得階級等に対しては、きわめて冷酷な税制が今日行なわれておるわけであります。今日税制改正を真にその根本にさかのぼって行なおうとするならば、まずこの租税特別措置法を徹底的に洗い直して、そこからすべての税制改正の出発点というものを求めなければならない。これが租税正義を実現しあるいはまた租税における民主主義というものを、あるいは公平の原則を実現する最大の道であろうと私は思うのです。(拍手)しかるに今回の国税通則法案は、まさに今日のそういう不合理、不公平な税制をそのままにされておきながら、安保条約体制中でこれからアメリカに対して負っている義務を果たすために軍備を増強しなければならない、そのためにも独占資本を中心に経済発展をはからなければならない。こういうような要請によって国家財政の規模がどんどん拡大をしていく、こういうような財政需要に応ずるためには、どうしても今までよりも一そう徴税強化を行なわなければならない、こういうような点から、今日でもなお非常に問題のあるところの国庫主義的なあるいは権力主義的な徴税方式というものをより一そう強める方向、しかもその強める方同が常に今日の税制においても、あるいは国税通則法の制定によってより一そう中小企業や零細事業者の税負担において、非常に弱い立場に立つ人たちの上にその徴税攻勢がかけられるであろう、こういうようなことに対して、国民の大多数の納税者大衆は非常なおそれを抱いたわけであります。
国税通則法の提案の理由として、政府は現行税法の体系的な整備をはかる、あるいは基本的な法律関係、共通的な事項を統一的に定め、納税者の理解を容易にするとともに、納税者の利益に着目しつつ、各種加算税あるいは争訟制度等の改善合理化をはかる、こういうようなうたい文句を出しているわけでありますが、はたして今回の国税通則法の制定並びにそれに伴う諸法規の整備に関する法律案、これについて納税者の利益は一体どれほどはかられたであろうか。納税者の利益の立場、納税者の納税民主主義、租税民主主義の要請にどれだけこたえているであろうかというようなことについて、けさから追及をいたしたところでありますけれども、納税者の利益をはかったと言いながらも、たとえば加算税制度で一部減税をしたということは言われておりまするけれども、その中でも一つ与えれば一つ奪う。これはすなわち延滞税の最高限度を五%という、今日においてあるその制限すら撤廃をしているではありませんか。さらに還付加算金、この点では日歩二銭、誤って納税者がたくさん納め過ぎた、それを若干の時日を置いて返す、その間における還付加算金は日歩二銭であります。ところが延滞税は依然として、安くしたと言いながらも、日歩四銭であります。こういうようなことも現実にあるわけであります。これではたして納税者の利益をはかったと自慢することができるだろうか。あるいは九十四条における国税に関する相殺の禁止ということが一方においてうたわれながら、一方おいては還付金はこれを国税に充当することができる、こういうような面もちゃんと出ているわけであります。こんなことを考えますならば、これは依然として納税者の利益を守ることは薄いといわなければならないわけでありますし、また国庫主義的な考え方というものは、申告納税方式におきましてもあるいは賦課課税方式によりましても、この権力主義の考え方というもの、は、依然として色濃く貫かれているわけであります。特に更正決定の通知書に対して、青色申告であろうと白色申告であろうと、とにかく更正を請求する際には非常に厳密な条件、申請の手続というようなものについてこまかい規定を書き、申請をするに至った事情というようなことまで求めておきながら、いざ更正決定をする場合には、課税標準と税額だけぽんと通知してやればいいんだ、こういうようなやり力の中に、権力主義的な徴税の現われというものが見られるわけでありますし、あるいはまた、不服申し立て前置の制度というものを依然として変えておりません。そのことによって、国民が当然に享有すべき、憲法第三十二条において明定しておりまするような裁判を受ける権利というものを、不当に奪う結果にもなるわけであります。しかも裁判を最初から選ぼう、不服申し立てを選ぼう、これは納税者の自由に、選択にまかして何ら差しつかえのないものであります。それにもかかわらず、あくまで裁判所に対する出訴というものをさせないような、そういう形をとっておるわけでありまして、この点については裁判所を侮辱するもはなはだしいといわなければならないし、同時に、裁判を受ける権利に対する重大な制限というものであって、憲法上も重大な疑義があるんじゃないかと思われるわけであります。
あるいはまた、証拠申し出の順序の問題など、これはまさに簡素平明化すると言いながら、このような現在においてもほとんど実益のない規定を、そのままあわててこの法律を制定するために持ち込んできている、こういう不見識なこともいたしておるわけであります。あるいはまた、こまかい言葉の問題等も、先ほどの質疑において明らかにされたわけでありますが、簡素平明化をはかるというような点においてすら、ほとんど何らの進歩というものが見られないわけであります。
以上、時間がございませんので、それ以上詳しくは申し上げませんけれども、とにかく五項目がたな上げされた、あるいはまた、与党の修正によって法人格なき社団等に対する規定を削除する、これはけっこうなことでありますけれども、それについて、将来どうするかということについては、全く大蔵大臣の答弁からも、国民大衆が納得してほんとうに通則法ができることによって、日本の税制もようやく民主化の方向に向かったという確信を持って青んで納税に協力できるような態勢というものが、何らこの国税通則法の制定によって期せられないのであります。従って私は、与党議員の法人格なき社団に対する問題について修正案を出されたことに敬意は表しますけれども、私どもの立場としては、少なくとも法人格なき社団、財団等に対しては課税すべからず、三十二年以前の状態に戻すべきだという積極的な主張を持ちますがゆえに、その点についても反対をせざるを得ないわけであります。
すべからく、大蔵大臣は、先ほど最後に横山委員からの質問にお答えになったその大臣の考え方を、今後のあらゆる税制の問題について必ず生かし、実現をされるように強く要望をいたしまして、私の反対討論を終わる次第です。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/396
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397・小川平二
○小川委員長 春日一幸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/397
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398・春日一幸
○春日委員 民主社会党を代表いたしまして、反対の討論を行ないます。
本法は、あたかもトラを小羊の群れに放たんとする凶悪立法である。われわれはかねてこの種の実態を指摘いたしまして、昨年来本法の提出を阻止するために強硬なる反対の意思を表明し、政府並びに国民世論にこれを訴えて参りました。大蔵当局はみずから省みるところあってか、今回の法案はわれらが指摘したいわゆる権力強化の恐怖的な条項をひとまず削除して、ここにこの提案を見たものであります。しかしながら、その問題点五項目を今回削除した理由は、当局みずからの言うところによりますれば、これらの諸問題は今後判例、学説の展開に待って後日に譲るとしておるのであります。言うならば、このことは、今回納税者なる小羊の群れに放つこのトラは、権力調査のきばを抜いて強制調査のつめを切って放つのであるから、その危害は少ないであろうといったようなものでありますが、しかしながら、立法と行政の有機的な発展は、常にそのようなきばやつめをいつしかはやしてしまうのが通例であるのであります。まさにその将来おそるべきものがあるのでありますが、法は三章をもって足れりとする政治の極意に示されております通り、およそ為政者は、小羊の群れに対してはいかに無害のトラであっても、たとえば張り子のトラのごとき無邪気なトラであっても、この種の恐怖を与えるトラは一切放つべきものではないと思うのであります。特に国民のこれに対する確定債権の相殺権を剥奪するがごときは、憲法に保障されております国民の財産権をじゅうりん、圧殺するものであって、これは全く違憲立法である。政治の民主的制度の確立が強く要望されておりますこのときに、かくのごとき国家権力強化の反動立法を制定せんとするがごときは、全く時代錯誤、時代に逆行するの最もはなはだしきものと断ぜざるを得ません。
また本案は、別の観点から判断いたしますに、税制調査会の答申は支離滅裂に活殺されて、それはことごとく徴税当局、主として村山君、原君をトリオとするそれらのグループの独断と恣意にゆだねられて、その論点は乱離骨灰にくずれ去り、これは徴税理論として体系を全く失ってしまいました。
今や国民経済の発展とともに、税の増収は年々増大の実績をおさめております。また、納税者、国民の協力によって、租税秩序はおおむね確立されておる現状にかんがみまして、ここにこの種の徴税強化を策せんとする反動立法の制定を必要とする理由は全くありません。すべからく、政府はこの際、かかる反動立法の制定を断念し、主権者国民の理解を待ち、その総意に基づいて、各党の意見もあまねく取り入れて、さらに完全にして民主的な法案を提出すべきものであると思うのでありますが、政府にそのような民主的理解のないことを最も遺憾とするものであります。従いまして、わが党は、以上申し上げました理由により、かくのごとき徴税強化、国家権力の増大を策せんとする反民主的立法に対しましては断じてこれに反対せざるを得ないのであります。
以上をもって討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/398
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399・小川平二
○小川委員長 これにて討論は終局いたしました。続いて採決に入ります。まず、国税通則法案及び同案に対する修正案について採決いたします。
まず、修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/399
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400・小川平二
○小川委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/400
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401・小川平二
○小川委員長 起立多数。よって、本案は修正議決されました。(拍手)
次に、国税通則法の施行等に伴う関係法令の整備等に関する法律案及び同案に対する修正案について採決いたします。
まず、修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/401
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402・小川平二
○小川委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/402
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403・小川平二
○小川委員長 起立多数。よって、本案は修正議決されました。ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/403
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404・小川平二
○小川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/404
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405・小川平二
○小川委員長 参考人出席要求の件についてお諮りいたします。
ただいま審査いたしておりまする財政法の一部を改正する法律案について、来たる二十九日委員会に参考人の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/405
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406・小川平二
○小川委員長 御異議なしと認めますよって、さよう決しました。
なお参考人の人選等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/406
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407・小川平二
○小川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
次会は来たる二十八日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後十一時五十一分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02719620326/407
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