1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年三月二十八日(水曜日)
午前十時五十七分開議
出席委員
委員長 小川 平二君
理事 鴨田 宗一君 理事 黒金 泰美君
理事 細田 義安君 理事 毛利 松平君
理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君
理事 平岡忠次郎君 理事 堀 昌雄君
足立 篤郎君 伊藤 五郎君
岡田 修一君 金子 一平君
久保田藤麿君 正示啓次郎君
田澤 吉郎君 高見 三郎君
津雲 國利君 永田 亮一君
濱田 幸雄君 藤井 勝志君
坊 秀男君 吉田 重延君
久保田鶴松君 佐藤觀次郎君
芳賀 貢君 廣瀬 秀吉君
藤原豊次郎君 武藤 山治君
横山 利秋君 春日 一幸君
出席政府委員
大蔵政務次官 天野 公義君
大蔵事務官
(大臣官房財務
調査官) 松井 直行君
大蔵事務官
(銀行局長) 大月 高君
委員外の出席者
大蔵事務官
(大臣官房財務
調査官) 有吉 正君
大蔵事務官
(大臣官房財務
調査官) 柏木 雄介君
大蔵事務官
(銀行局保険第
二課長) 安川 七郎君
専 門 員 抜井 光三君
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三月二十七日
委員石村英雄君、多賀谷真稔君及び安井吉典君
辞任につき、その補欠として武藤山治君、田原
春次君及び岡良一君が議長の指名で委員に選任
された。
同月二十八日
委員廣瀬秀吉君及び横山利秋君辞任につき、そ
の補欠として中村英男君及び淺沼享子君が議長
の指名で委員に選任された。
同日
委員淺沼享子君及び中村英男君辞任につき、そ
の補欠として横山利秋君及び廣瀬秀吉君が議長
の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
五二号)関税法の一部を改正する法律案(内閣
提出第二号)(参議院送付)
保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一一号)(参議院送付)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/0
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001・小川平二
○小川委員長 これより会議を開きます。
法人税法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の通告があります。これを許します。堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/1
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002・堀昌雄
○堀委員 最初に、きょうは大臣がおいでになりませんから、天野さんを一つ大臣と見立てて、そちらも次官という答弁でなく大臣になりかわったお気持で御答弁をいただきたいということを、第一にお願いしておきます。
それから第二に、これは銀行局長を含めて大蔵省の関係者皆さんにお願いをいたしておきますけれども、私が本日論議をいたしますことは、ある一つの金融機関の問題であるとか、そういうことで論議をいたすわけではございません。そこで、実は私、昨日少し調査をしてみようと思いまして、本日論議をする金融機関の方に来ていただいて話を聞こうと思いましたら、黙して語らず、そして新聞の切り抜きだけを持って参りまして、私どもが何か先生にお願いをしたというような誤解をもし受けるようなことがありますと、今後のいろいろな業務運営上非常に支障を来たしますので、私どもの方から何も申し上げるわけには参りません、ここにそれに関連する新聞の切り抜きがございますから、これをごらんいたいて一つ御参考に供していただきたいということでございました。そこで、それは私、一つの私企業のことでありますのでやむを得ませんから、お帰りを願いましたけれども、そういう感じがいたしましたのは、私どもがこの委員会で論議をいたします場合に、何かある一つのものの利益につながる——私どもは利益を目的としておりませんけれども、結果として利益につながるような問題の提起が主務官庁の方針に反する場合には、そういうことでいろいろと事情等を私どもに話をすることが、何らか他の形で行政の監督上の問題としてはね返ってくることを非常におそれておる事実が感じられたわけでございます。そこでこの点について、これはそういうことはないと思いますけれども、一つこの場で、本日に限らず、私どもがこの委員会で論議をいたしますことは、ものの本体、そのいろいろな関係等を明らかにして、そして単に私と政府との間という問題ではなくて、お聞きをいただいておるところの与野党の各委員の皆さんが納得をした上で、いずれが方向として正しいかというものが出てくるような論議を私どもはするわけでございますから、その点においてはいささかなりとも私どもの論議がこれから関係業者にどのような形においてもはね返ることのないということを、一つ委員会の論議を始める前に確認をさしていただきたい。そういうことでないと、結局私がいろいろ論議をしたことによって——私はそういう機関と何らのつながりも何もありません。問題は新聞等を見て私が判断をし、この前藤井勝志君がやられたいろいろな論議の中で、あるいは当局側の答弁の中で、私は理解しにくい部分があることをつまびらかにしたいということが私の本旨でありますので、本日だけではありません、今後の論議を通じてそういうことは一切ないということを一つ政務次官の方からはっきりお答えをいただいておきたい。この点をちょっと最初に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/2
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003・天野公義
○天野政府委員 御心配になられるようなことはないように努めて参ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/3
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004・堀昌雄
○堀委員 そこで次官にお伺いをいたします。
現在行政は、おおむね法律をもととして行なわれておるものと私は理解をいたしますけれども、この法律と行政方針と申しますか行政指導の方針と申しますかこれとの関連は、大蔵省としては一体どういうふうに考えておるか、最初にお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/4
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005・天野公義
○天野政府委員 法律の範囲内におきまして、行政指導をやるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/5
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006・堀昌雄
○堀委員 ここが本日の論議の中で一番かなめになるところだと私は思います。そこで、法律のワクの範囲の中における行政指導方針でありますならば、まことに当然でございまして、立法府に携わるわれわれとしては法律の権威が行政の上に立つといいますか、法律あって行政があるのであって、行政あって法律があるのではないというふうにわれわれは考えておりますから、この点がただいまのように確認をされましたので、その次に参ります。
今度は法律というものはその制定の沿革のいかんによって、法律が並んでおりますが、その各法律間において相違があるかどうか。制定の沿革によって、効力という表現がいいかどうかわかりませんが、法律としてと申しましょうか、何条かの条項が法律にある、それが制定の沿革のあり方によって、効力に相違があるとお考えになるか。私は法律というものは、法律になった以上はそういうものではない。現在ある以上は同一の取り扱いを受けるものである、常に平等なものである。それは法律の性格によって特別法とその他というのは別です。けれども、一般的に並んでおる格好においてはですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/6
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007・天野公義
○天野政府委員 必ずしも法律は全部平等であるというわけには参らぬと思うわけであります。と申しますのは、基本的な憲法なら憲法という各項があるし、それに対してある程度の制限規定を設けるような法律もあるというわけで、ある程度優先するものもありますし、それから条文の解釈によっていろいろと考え方が違ってくる場合も若干なきにしもあらずというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/7
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008・堀昌雄
○堀委員 もちろん今おっしゃったように、私もちょっと触れましたけれども、法律の中にはある一つの法律と、それをもとにした特別法とか各種の法律の体系がございますから、私はそのように必ずしも同じではないと思います。ただ私が今触れましたのは沿革ですね、制定の沿革等がその法律の取り扱い等に特別な事情をもたらす結果、同じ体系で並んでおる法律の中で差異を生ずることがあるかどうかということを伺ったのです。その点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/8
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009・天野公義
○天野政府委員 抽象的で理解しにくいのでございますが、やはり法律というものは、できた以上はそれで動く面が相当強いんじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/9
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010・堀昌雄
○堀委員 私もそれを伺えばけっこうであります。
そこで、非常に抽象的なことばかりを先に申して恐縮ですが、行政方針と法律構成の方法が一致をしたというのは、私は最初次官がお答えになったことが解決されると思うのですが、もしかりに法律構成の要件とそれから行政指導の方針が百八十度違うという場合は、これはどうなりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/10
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011・天野公義
○天野政府委員 大体そういうことはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/11
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012・堀昌雄
○堀委員 そういうことはないということですね。大へんけっこうです。まず前段に少し問題を確かめさしていただいて本題の方に入りたいと思います。
そこで実は私が少しきょう時間をかけてやりたいという気になりましたのは、この間与党の藤井君と銀行局長との間で質疑がかわされたわけでございますが、その会議録をずっと読んでおりまして、いろいろと納得のいかない点がございます。そこでこれは局長にお伺いをいたしますが、「現在の金融の制度におきましては、それぞれの業務の性格に応じまして、別個の機関を立てておるわけでございます。」これは私も同様だと思います。そこで「たとえば保険に関しましては保険会社、これは保険会社法というもので規制いたします。それから銀行につきましては銀行法、その中で長期の資金を扱う銀行については長期信用銀行法、」こういうふうになっております。そこで言葉を少し整理をいたしたいと思いますが、ちょっと私時間が十分になくていま一つ調べが足りませんが、長期の資金の長期というのはどのくらいの期間を言うのかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/12
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013・大月高
○大月政府委員 そのときそのときに、使う場合によりまして意味が違いますが、大体におきまして六カ月以内を短期、六カ月から一年くらいまでの間を中期、それから一年を越えますと、大体長期というように普通考えておりますが、今度は短期に長期というように分類いたしますと、大体六カ月を越えますと長期と呼ぶ場合が多いと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/13
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014・堀昌雄
○堀委員 そういたしますと、今度は長期というのは、今のお話では一年以上が長期という場合と六カ月以上を長期という場合とある。長期の資金を行なう銀行については長期信用銀行法、こういうふうにございます。そこで一体、この長期信用銀行法で定める長期というのは、どれに該当することになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/14
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015・大月高
○大月政府委員 長期信用銀行法の六条二項によりますと、「長期運転資金以外の長期資金」という長期資金の定義があげてございまして、「(資金需要の期間が六箇月をこえるものをいう。以下同じ。)」となっておりますので、長期信用銀行法では六カ月ということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/15
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016・堀昌雄
○堀委員 そこで、私は、実は用語の解釈等の中にまず最初に問題を明らかにしておかなければならないものがあると思います。いろいろと大月さんのお書きになったものを具体的に例示しながら、お話を進めさしていただきますけれども、長期信用銀行法では六カ月以上は長期ということでございますね。そうしますと、現在の銀行法では、少なくとも預金関係については一年もの定期がございますが、一年ものの定期を認めておる趣旨はどういうことになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/16
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017・大月高
○大月政府委員 今の御説明、若干足りなかったかと思いますが、資金需要ということで、貸付の方について今申し上げたのでございます。もちろんそれは資金吸収部面にも当てはまりますけれども、これは銀行の性格が貯蓄銀行というように資金の吸収を主として表現いたしておりますときには、そちらの面から考えますし、今の金融の機構におきましては、大体において資金を貸す方、運用する方に重点を置いて書いておりますので、長期信用銀行は貸付の面において今のように六カ月以上、こういうことでございます。資金の吸収の面におきましても、同じく観念的にはやはり六カ月程度が限度であろうと思うわけでございます。従来もわが国の定期預金は戦前まで六カ月をこえるものはなかったわけでございまして、ただ終戦後になりまして、御存じのように経済の復興ということが非常に大切だ、インフレが進行しておりましてどうしても長期資金が集まらない、短期中心になるものですから、何とかして長期の資金を吸収する制度を考えなくちゃいかぬということで、一年の定期というものを戦後に認めたわけでございます。先ほど申し上げましたように、短期、中期、長期という概念は一応ございますけれども、非常に極端に走らない限り、それぞれの場合において適当に運用いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/17
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018・堀昌雄
○堀委員 今のお答えの中で、もちろん金融機関につきましては預け入れる場合と貸し付ける場合がありますから、それを長期とか短期とかいうことは——おのずから二つの問題になると思いますけれども、しかし一つの金融機関というものを頭の中に置くときには、預金の側の問題と貸付の問題を別々に離して、それを機関的にも別に取り扱うというのは私はおかしいと思います。そこで、これは常識的な判断になるかもわかりませんが、貯蓄銀行が一年の定期を認めたということは、沿革的にそういう過去の経緯があったということはわかります。しかし、現状でもそれがそのままになっておるということは、裏返していいますと、貸し出しについても一年のものはあり得るということに理解されると思います。これは現実の問題じゃないのですよ。今のそういう法形式といいますか、そういう形ですね、その点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/18
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019・大月高
○大月政府委員 預金の問題につきましては、一年の定期は戦後の制度ということを申し上げましたが、本来のわれわれの考え方からいたしますと、この一年定期はできれば適当な機会に廃止したいと思っております。これは一般の商業銀行的な性格を持っておるものといたしましては、やはり短期の資金の需給の調節に当たる方が適当だという考えを持っておりますので、今のように長期の資金が非常に不足いたしております現状では、これは過渡的にはやむを得ない。しかし、それではいつやめるかということになりますと、今のような金融情勢でございまして幾らでも資金は集めたいというような時期でございますから、今直ちにこれを廃止するという時期ではないわけでございますが、本来の考え方としては、適当な資本蓄積の段階になりましたならば、これはやはりやめる方がいいのではなかろうかと考えておるわけでございます。
それから、長期信用銀行の反対の概念として今普通銀行があるわけでございまして、ではこの銀行は長期の貸し出しを全然やっていかぬということになりますと、これは短期の金融を主とするわけでございます。それから、長期信用銀行におきましても、六カ月未満の貸し出しをやってはいかぬということになりますと、これはもちろん禁じられるわけではございません。御存じのように、金融の制度は、大きな筋というものを立てましても、それぞれ個々の取引に関連いたしておりますので、必ずしも法律でぴったりと、これとこれとはいけない、ここまでは許されるということの言えない場合、あるいは言うことが実情に合わないという場合がございます。そういう意味で、今の日本の金融制度におきましては、それぞれの機構の中に若干ずつダブっておる面が、これは意識してこしらえてあるわけでございまして、この線ははっきり画して、ほかとの競合を全然許さない、この部分はある程度ダブっておらなければ実情に沿わないだろう、そういうようなそれぞれの分野がございますので、適当にそれぞれの機関において調整されておるというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/19
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020・堀昌雄
○堀委員 実体的には経済というものは動いておりますから、法律の規制によってそう事こまかにはできないということもよくわかります。そこで、ちょっと伺いたいのは、銀行は本来の商業銀行的な預金業務に重点を置くべきだ、こういうことはわれわれも概念としてはわかります。そこで預金業務は現状でも確かに商業銀行的だろうと思います。今の一年がちょっとひっかかりますけれども、商業銀行的だろうと思う。それで、今度は、今の銀行の貸付業務は、実体としては一体何的になるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/20
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021・大月高
○大月政府委員 普通銀行の貸し出しは原則として三カ月程度の商業手形の割引、その他これに準ずる貸し出しをやっておるわけでございまして、全体としまして、最近のように設備資金の需要あるいは長期資金の需要の多い場合でございますので、戦前ももちろんそうでございましたが、短期の貸し出し以外はやらないというわけではございません。現状から申しますと、今申し上げましたように設備資金は市中銀行におきましておおむね資金量の一割程度を出しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/21
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022・堀昌雄
○堀委員 設備資金が市中銀行の一割程度とおっしゃったのですが、私、ちょっと今こまかい資料をそろえて持ってきておるわけではありませんから、これはあとで日をあらためて伺いますが、今の企業の側から見た借入金の実情ですね。これを見ますと、その借入金総額は市中銀行から借りておる借入金総額で、それが設備に充当されておるものが今の一割に当たるような気がしないのですが、それは、私が今申し上げておるのは形式的にはなるほど三カ月三カ月で繰り越しておるかもしれません。形式的には運転資金として借りておるかもしれません。しかし、実体的にはどうなのかということでございます。設備資金という形でお答えいただくよりも、中期なのか長期なのか。長期でも——私はまたあとで論議を深めさせたていだきますが、長期にもまたいろいろあると思います。しかし、まず今の段階は中期か、長期かということだけを一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/22
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023・大月高
○大月政府委員 今お話がございましたように、設備資金で実体が長いものにおきましても、形の上では手形の三カ月で切りかえておるものが相当あるわけでございます。これはもちろん手形で三カ月の期限がございますれば、相手方としてはそれの決済をやらざるを得ない。銀行といたしましては、そのときの状況を見てさらに切りかえるかどうかをきめておるわけでございます。そういう意味で、この資金の性質は、貸し出しておるそのものとしてみますと短期になるわけでございます。ただ、たとえば長期信用銀行の場合等につきましてはさらに副次的な契約がございまして、短期の手形で切りかえるけれども、これは三年間なら三年間はこの切りかえをやっていくんだという契約がある分もございますので、これを長期と見るか短期と見るかという点につきましては、そのときの問題の性質に応じてそれぞれ解釈しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/23
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024・堀昌雄
○堀委員 私が伺っておりますのは実体なんです。この問題は形式と実体とありまして、形式は先ほどおっしゃったような、われわれが当然あるべき概念の方向で形式は整えられておるわけです。それは、やはり行政方針というものがあるから形式が整えられるんだ、これがなければ、法律ではそこまで規定がしてございませんから、実体の形で動いていいのじゃないかと思いますが、形式がそういうふうにずっとそろえてあることは、私は行政方針との関連で出てきておるのだろうと思います。そこで形式はいいのです。今度は実体面、実体として見ると、預金の方は実体という形式が合っているわけです。もう一年以上の定期なんというものはないわけですから、一年になればこれはその人たちが、実体としては長期で預けておりましょうけれども、一年で区切られて、その点多少実体と形式、長期、短期の区別は違う点があるかもしれませんが、特に貸し出しは形式と実体と非常に違う。そこで実体として一体一年以上の貸し出しというものは——今これは市中銀行全体としてもいいのです。どこかの特定の名前は聞かなくていいですが、一行における一年以内と一年以上の貸し出しの割合は一体どのくらいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/24
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025・大月高
○大月政府委員 これは厳密に切りかえが行なわれておりまして、預金につきましても、たとえば六カ月定期というものは、大体においてまた切りかえるということがございますので、どこまでを実体と見るか、統計はなかなかとりにくいわけでございます。そういう意味でわれわれが持っております統計は大体において形式的なものが多いわけでありますが、また別の観点で、たとえば三十七年度の設備投資をどのくらいやったらいいかということになりますと、これは形にとらわれないでそちらの面から実体的な調査をするということで、今のお尋ねに対しまして、銀行行政自体として、一体実質上の長期かどうかという統計は率直に言ってとっておらないわけでございます。そこで、大体の感じでございますが、資金需要の非常に強いときと弱いときとにおいて非常に違っております。本来長期資金につきましては長期信用銀行が重点になっておりますから、もし長期の資金需要が非常に弱い場合には当然長期信用銀行だけに集中いたしまして、長期信用銀行でも一部短期のものを出すという方向になりますし、そういう情勢になりますと、普通銀行の方はほとんど長期はもうできないで、長期信用銀行にまかしてしまう。今のような情勢になりますと、長期信用銀行一本では足りなくて、普通銀行も手を出すということはございます。今具体的に実質どのくらい出しておるかという点でございますが、はっきりした数字はわかりませんが、先般来設備投資の規制をやりまして、いろいろ全銀協で試算をいたしております。本年度どの程度設備資金を出したらいいかという面の試算の基礎は、大体資金貸し出し総量の二割程度を一応のめどとして設備資金を考えておると思いますので、その程度のものは実質として出ておるんじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/25
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026・堀昌雄
○堀委員 過去からの貸し出しの総額でものを見ると非常にわからなくなりますから、今の実体の問題はその一年一年の貸し出しの増加額の問題の中で見なければならないと思います。今銀行局長のお答えも増加額の中で二割というお話だろうと思いますが、どうも増加額の中で二割は実体として少し低いのではないか、もう少し出ているんじゃないかという感じがいたしました。しかしこれは議論になりますからけっこうですが、二割は一応一年以上という格好で出ておる。そういたしますと、今おっしゃるようにいろいろ時期によって違いましょう。違いましょうが、最近のここ五年くらいの経過の中で資金需要はおおむね——非常にゆるんだというときが一時期あったと思いますが、あまりゆるんだ時期がないような感じがいたしますが、その中で今の二割くらいというものの変動ですね。これは過去五年くらいの間でどういう格好で変動しておったでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/26
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027・大月高
○大月政府委員 具体的な計数はわかりませんが、過去五年と申しますと、三十二年のとき、これは非常にふえておったと思いますが、経済の調整を実行いたしまして三十三年では相当成長率が鈍化しておりますから、三十三年の実績は相当低くなっておると思います。それから三十四、三十五年とふえて参りまして、大体二割くらいになっておると思います。そういたしますと、低い時代の三十三年ごろになりますと、あるいは一割から一割五分くらいのことかと思いますが、それは私の推計でございまして具体的にはわかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/27
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028・堀昌雄
○堀委員 そこで今度はもう少し話を延ばしまして、今一年以上で私はお話をしたわけですが、一年以上といいましても、これは五年もあるし三年もあると思います。そこで今度は上長期というものの概念でありますけれども、一年以上のものを扱う場合において、皆さんの方では、そこに保険会社あり、長期信用銀行あり、信託ありということで、ここにやはりそういうバラエティがあることは、おのおのその事柄の性格もありますけれども、金融における長期、短期という問題の位置づけは、どういう形の位置づけになって、おおむねそれらは、当該金融機関における長さ、標準的な長さといいますか、そういうものさしは大体どのくらいに置いておられるのか伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/28
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029・大月高
○大月政府委員 それはそれぞれの貸し出しの性格によりまして違いますので、むしろ銀行行政で長期をどの辺にすべしということではないわけでございます。具体的には、たとえば生命保険で考えますと、御存じのように大体二十年満期というようなものを中心にして契約いたしておりますから、少なくとも二十年をこえる、二十年、三十年というようなことが生命保険の実体であろうかと思います。それから信託の関係は、これは長期資金を主として扱っておりますので、今の一年以上のものでございますが、これは長期信用銀行についても同じように言えると思います。たとえば電力の貸付あたりになりますと、たとえば開発銀行は三十年で貸しております。市中銀行は、資金源が短期でございますからそれまではおつき合いができませんが、電力に市中から出ております貸し出しは十五年程度になっておるかと思います。それから船の関係は、これも十年程度になっておるかと思うわけでございます。個々の事例でございますからあるいは不正確な点がありましたらお許し願いたいと思いますが、そういうように個々の貸し出しの性格に応じまして相当長い二十年、三十年というものから、非常に短い三年、五年あるいは一年というのもございまして、長期の概念をどこにめどを置くかということは必ずしもはっきり申し上げられないわけでございまして、むしろこの観念は、普通の銀行が長期の貸し出しをできるだけやらないという感覚で考えておる。そういたしますと、一年以上の貸し出しをできるだけやらないようにする。それじゃこれについては何年をめどにするかというめどはないわけでございまして、具体的な資金の吸収力の面から、それとバランスをとって実際上運用しておるのが実体でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/29
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030・堀昌雄
○堀委員 そこでやはり私は、今局長がおっしゃったことが非常に重要な問題点になってくるだろうと思うんです。概念としては、私も今ここに局長が述べていらっしゃるように、銀行はいわゆる銀行らしくといいますか、貯蓄銀行、商業銀行らしく、信託は信託らしく、保険会社は、これはらしくも何もなくて、これが一番すっきりしております。しかし、長期信用銀行も割にいいと思うんですが、どうも私の感じとして一番らしくないところは銀行と信託だろうと思うのです。
そこで、ちょっとお伺いをいたしたいのですけれども、信託の問題を提起いたしましたから、一体このトラストというものは歴史的にはどこで発生をして、なぜ発生をしてきたのか、一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/30
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031・大月高
○大月政府委員 どうも私、現在の銀行行政で歴史を専門にやっておるわけではございませんので、私のほんとうの個人的な知識になりますので、相当間違っておるかと思いますが、もし個々の御論議が非常に重要な点になりましたら、あとで事務的に調べましてお答え申し上げます。そういう意味で若干不正確の点をお許し願いたいと思います。
信託の概念は英米の系統で発生したものでございまして、ドイツ、フランス、イタリアその他いわゆるヨーロッパ系統の概念には全然ない制度でございます。これは非常に重要なことだと思います。わが国の法制は歴史的に明治以来大陸系の法制をとっておりまして、独法系、仏法系を中心として、英米系の法理論というものは全然存在しなかったというのが実体でございます。それが大正末期ごろから信託の法理という英米系の思想になかなかおもしろいものがあるということになりまして、信託の法理を具体的に日本に取り入れようじゃないかということで信託法という信託の概念規定、いわば民法の特別規定ができたわけでございます。それまでに信託の関係として当時信託会社というのが非常に無数にございまして、信託の名において人の金を預かっておったという実体があったわけでございます。その信託法が施行になりました際に信託の概念をはっきりいたしまして、かつ当時ございました信託会社が、たとえば戦後の保全経済会的なああいうものと同じ泡沫的な存在でございまして、世の中に非常に害悪を流しておったということから、これを厳重な監督下に置かなければいかぬという世論もございまして、たまたま英米系の信託の法理念を入れましたと同時に、信託会社の法制をまたここで確立いたしまして、ここでようやく日本に信託の観念が導入された。これは大正の末期でございまして、たぶん大正十二年ごろだと思います。そういうように、従来大陸系の法制一本で進んでおりましたところへ英米系の理念が入りましたものですから、この調整をどうするかということが当時非常に論議されたわけでございまして、各種のいろいろな著述あるいは論議等が今残っております。いろいろ論議がありました結果、信託会社法というものができまして、銀行と別系統の信託関係を預かる機関を作ろうじゃないかということでできたのが大体の経緯だと承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/31
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032・堀昌雄
○堀委員 私が伺ったのは、わが国における信託のそういう歴史的経過ではなくて、トラストというものが英米でなぜできてきたか、私はやはり理由があると思うのです。その一番の源は結局今の信託業法、信託の問題を論ずる場合には、やはりここが私は非常に重要な点になるのではないかと思います。私はイギリスにおいて生まれてきたと思うのですが、これの歴史的な経過を御存じの範囲で……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/32
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033・大月高
○大月政府委員 お話の通り、信託の観念は先ほど申し上げましたように英米系の思想でございまして、アメリカはあの通りあとからできた国でございますから、イギリスに根源を持っておることでございます。それでこの場合には、結局人を信用いたしまして、自分の財産をその人に預けまして、これを管理運用してもらう、こういうことになったわけでございますから、この信託の観念は、たとえば預金を預かってそのものを返すという単純な法律関係でなしに、預けておる間使用収益もやってもらい、管理もやってもらい、ある人を全幅的に信用いたしまして、能力のない人が自己の財産の管理及び保管を一切やってもらった、これが歴史的な事業だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/33
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034・堀昌雄
○堀委員 私が大急ぎでちょっと調べたところでは、結局信託の問題のもとは、イギリスにおいて過去に漁師たちの収奪の非常に激しい時期に、これらの収奪をのがれるために、教会その他に自己のそういう財産を信託をして、それによってそういう収奪を免れ、その土地から上がる果実を受け取るというようなことが、私が大急ぎで昨日来調べた経過の中では、どうもトラストというものの源のような感じがいたします。
そこで信託業法では、受託財産の制限という格好の中では、これだけのものがいいということになっておりまして、一番最初に金銭が出ておるわけであります。しかし今の歴史的な経緯、それからものの本来のあり方からいうと、信託というものは金銭ももちろん必要でありましょう。しかし金銭のそういう管理その他については、いろいろとほかにもあるわけですから、大月さんのおっしゃっておる信託らしい業務というのは、そういう歴史的な過程を見ても、金銭信託というものが信託らしい業務ではなくて、どうもその他の方が本来的には信託業務としては比重が高いのが概念的には正しいのではないかという感じがいたしますが、この信託らしい業務というのを一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/34
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035・大月高
○大月政府委員 これは仰せの通り、銀行預金に対比いたしまして、銀行預金と概念的に判然と違っておるもの、そういうように考えればいいのではないかと思うわけでございます。そういう意味で、今お話がございました土地であるとか、建物であるとか、あるいは有価証券であるとか、それから最近の問題では社債投資信託あるいは株式投資信託というようなもの、あるいは今論議の対象になっております企業年金でございますとか、こういうようなものが本来私どもが考えております信託らしい信託ということでございまして、要するに預金の変形的なものだということは、本来の信託として決してそれを中心にやるべきものではない。もちろんそれがいけないというわけではございませんけれども、最初申し上げましたようなものにだんだん移っていく、そこらが中心になることが本来の信託の概念としていいのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/35
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036・堀昌雄
○堀委員 今おっしゃった点、私も全く同感なんです。信託らしい業務は、今お話しになったようなところだと思います。
そこで、もう一つ私は信託としての問題で伺っておきたいことは、投資信託というのはなるほど一つの信託らしい信託だと思います。ということは、あそこで運用益の問題、運用益が非常にうまく運用されるならば、運用益自体は大体委託者に還元されるようになっております。ところがここに非常に信託らしくないことが、現在信託で行なわれておることは、さっきもちろんそれ以外はいけないわけじゃないとおっしゃった、それは私も認めますが、貸付信託というものが、今信託会社では非常に大きなウエートを占めております。この貸付信託というのは今調べてみますと、予定金利というのですか、表現は私ちょっとそこまでわかりませんが、約定金利というのですか、何かこういう金利がきまっていまして、そうして五年なら五年そこへ金を預ける、そうすると信託会社はそれを適当に運用するのでしょうが、幾ら運用益が出ても委託者に返すのは、最初に定まった金利分だけを返す。金利というのはいいのですが、それは信託益ということですか、表現は別ですが、私は実体的には金利だと思うのですが、ちょっと貸付信託と金銭信託とについてお聞きの皆さんよくわからないと思いますから、それの取り扱いと金利を一つ簡単に伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/36
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037・大月高
○大月政府委員 貸付信託の制度は、信託銀行が金銭を受託いたしまして、これを貸し出しに回すという条件で受託するわけであります。そういう意味で信託銀行におきましては、この金をたとえば二年契約で受託いたしますと、主として二年で最高の収益が上がるような貸付に回す、五年で受けるといたしますと、五年間で最高の利回りになるように貸し出す。そこで入りました利息、それを一定の信託報酬を差し引きまして受益者に返す、これが貸付信託の制度であります。
それで現在貸付信託につきましては二年ものと五年ものというようになっておりまして、一応二年ものにつきましては現在六分五厘、五年ものにつきましては七分三厘七毛という予定配当率を業界できめておるわけでございます。これは一定の自粛レートというものを出しておりますゆえんのものは、いたずらに自由競争で非常に高利に回るところに回すという競争をいたしまして、それでもって一般の大衆から金を集めるといたしますと、とかく不良貸しが起きるわけでございます。高く貸せるところは必ずしも健全でない、そういたしますと貸し倒れでもできますれば、それは受益者の負担になることが建前でございますので、そういうことがないように今の金利情勢からいたしまして、モダレートな運用をして健全な運用をして受益者に対して非常な損害を及ぼさないという行政的な配慮を持って指導しておる金利でございます。そういう意味で、この辺のところを目安にして運用すれば、不健全な貸し出しもなく、また一般の受益者にも損害を与えることなくうまくいくだろう、こういう目安の金利でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/37
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038・堀昌雄
○堀委員 そこでこれはあとでちょっと議論がありますが、もう一つ金銭信託というものがある。名称はよくわかりませんが、貸付信託以外の金銭の信託というものがあるはずですね。それもちょっとやはり予定配当率というようなものがあるようですが、ちょっとそこのところが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/38
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039・大月高
○大月政府委員 今申し上げました貸付信託は、二年ものと五年ものというようにしておりますが、そのほかに貸付信託以外の指定金銭信託というものがございまして、これは個人々々が指定するのではなくして、一般的に合同運用と言っておりますが、多くの人から集まったものを一緒にいたしまして運用するもの、これについてやはり自粛レートがきめられておるわけであります。これは二年もの、五年ものだけではございませんので、あらゆる期限がつけ得るわけでございますが、一年以上のものにつきましては五分五厘、二年以上のものにつきましては六分三厘、五年以上のものにつきましては七分七毛という自粛レートがきめられております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/39
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040・堀昌雄
○堀委員 そこでこれは予定配当率、自粛レート、こういうことですが、現実には表現は……。そこで私は形式的には逃げ道ができているのだと思うのです。要するに信託なんだから、信託概念とすると、損得にかかわらず、これが損が起こるようなら、信託会社はだれも信託しなくなるから、これが資本主義の原則でありますから、やはり得をするものでなければならぬ。利益はそれは、高ければ高きほどよきということでなくて、高くて安心ができるということでなければ、これは資本主義社会で通用しませんから、そういうことになると、実は本来の信託の建前とするならば、運用益が手数料を除いては委託者に還元されるというのが建前だと思うのです。ところが予定配当率というものが形式的には、名目としては、そういう方向で設けられているけれども、これは逆にこの予定配当率が預金者、委託者の利益を守らなければならぬことにあるけれども、これがきまることによって、今度起きるのは、今度受託者側の運用でそれ以上にもし回るならば、それは手数料以上に信託業務にプラスしていく、こういうことに私はなると思うのですが、現在、これはいつからこれができたのかわかりませんが、予定配当率というものが、皆さんが指導をなさった以後、予定配当率を上回って配当が起きた事実があるかどうか、ちょっと伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/40
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041・大月高
○大月政府委員 ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/41
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042・堀昌雄
○堀委員 それでは予定配当率というのは、単なる言葉のあやであって、一つもこれまでないということ、これはストレートに金利はきまったも同然、こういうふうに実体的には理解せざるを得ませんが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/42
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043・大月高
○大月政府委員 実質的にはそれに似たようなことかと思います。これ以上に回りました場合には、信託報酬の取りきめがございまして、若干の幅がつけられてございますから、現実の貸し出しからくる収益が悪いときには、信託報酬を削る、あるいは予想以上に収益が上がりましたときには、信託報酬をときに少したくさんもらう、こういうことをやっておりますから、受益者に回ります分についてはほぼ固定いたしております。これが先ほど申しましたように、非常に過当競争を起こさないための一つの配慮でございまして、従来たとえば社債金利あるいは定期預金の金利その他あらゆる金利体系と彼此勘案といたしまして、この辺が最もつり合いのとれたところであろうということで、きめるときにはいろいろ議論がございましたけれども、われわれが見まして、最も妥当な水準にあるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/43
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044・堀昌雄
○堀委員 そこで妥当だということはいいのですが、妥当の問題の先に、ここが私は信託が信託らしくないことをやっている一番大きな問題になっているところだと思います。皆さんの方は行政指導をなさって、ともかく信託は信託らしく、銀行は銀行らしくということで、指導なさっているのですね。ところがその指導の中で貸付信託という指導が行なわれたわけですね。貸付信託というものは、今予定配当率でいろいろお話がございましたけれども、実質的に見るならば、これは固定した金利だと了解せざるを得ないのです。もしそれがたとい少しでも予定配当率を上回って配当金がある、あるいは予定配当率を下回って配当したものがあるのなら、私は問題は別だと思うのです。質的な問題は量的な問題との関連で常にあるわけですから。要するに、今の問題は、あなたの方は、質的にはこれは予定配当率だ、こう言っておられるわけですね。予定配当率なら、予定なんですから、配当率が変化をするというのがこの質的な原則の一つの面だと思うのです。変化をすることを予想するから予定なんです。予定配当率は動くのが原則なんです。動くのが原則であるのに、量的な面で見て一つも動かないということになると、この原則はくずれますね。完全に予定がくずれるのです。これは配当率になるのです。論理的にここはどうでしょうか。ゼロならば質的には予定を取り除かなければいかぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/44
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045・大月高
○大月政府委員 これは現在の時点において数字を申し上げたわけでございまして、過去、歴史的に申しますならば、逐次金融情勢の変化に応じまして変わっておるわけであります。そういう意味におきましては、一つの受益者としては、たとえば五年やっておりますれば、あれは年に二回配当がございますので、そのときの自粛レートに応じて逐次変化いたしております。ということは、大体において同じ歩調をもって運用いたしておりますから、どの信託会社もある程度、金利が下がれば配当率も下がる、金利が上がれば配当率も上がる、こういうような情勢を示しておるわけでございまして、決して千編一律に一定の率をきめておるわけではないのでございます。
御参考のために申し上げますと、貸付信託につきましては、五年ものについて昭和三十年の十一に七分七厘であったわけでございますが、三十一年の一月にはこれが七分になりました。それから三十一年の三月に七分八厘、三十一年の五月に七分三厘、三十二年の七月一日に七分六厘、三十二年の七月十一日に七分八厘、それから三十六年の四月一日、昨年からでございますが、七分三厘七毛、こういうようにときどきの情勢によって変化いたしておりますので、そのときに配当をもらう人はそのときのレートでもらう、こういうように変動いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/45
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046・堀昌雄
○堀委員 もちろん信託はそうでしょうが、私が申しておることは、この変化が、収益の変化というよりも、結局銀行その他の金利関係の公定歩合等の変化と符節を合わして起こるものであるならば、これは今の問題としては変化があるというふうには見られないと思うのです。これはなるほど長さと短さで、銀行預金その他の問題もやはりある時期がくれば上がったり下がったりするわけですから、その動き方の差が多少違うということと今私が申し上げたこととは問題は別だと思うのです。動くということは予定配当率が動いておるだけであって、私が言いたいことは、予定配当率ならば予定配当率で相談をしたときに、その期間の中における運用益がどう分配されるかということを私は言っておるわけです。だから予定配当率が動けば金利が動いたと同様のことになっておるわけであって、私が申し上げていることとこれが動いたということとはつながらないのです。私が申し上げていることは、要するに、七分二厘という予定配当率で運用を頼みました。ところが実際にはこれが八分五厘くらいに回ったために一分三厘ほどの運用益が出ておりました。ところがこの中で手数料としては五厘なら五厘もらいます。そうすると残り八厘出ます。その八厘を還元するかどうかというところに予定配当率という問題の本質的な問題があるのです。予定配当率自体が時期的に動く、それはその動いた時点で問題を考えばいいことですよ。五年ものなら、あなたのお話によると、予定配当率はずっと動いていくから、初めに約束したのと相違ができるかもしれない。それはその時点で変化が起こっておるのであって、その収益自体を分配するという格好で予定配当率を上回ったものに分配するということにならない。しかし結果としては、そういうものが非常に収益が上がってくれば、ある時期になれば予定配当率が動くということにはなるでしょうが、それはただ、予定配当率という必要はなくて、配当率が動くのである、私はそういうふうに理解をしていいのじゃないかと思うのです。だからその点の性格が——私は特にこれにこだわっておりますのは、預金と、今までの金銭信託のあり方はほとんど変わらない感じがするのです。それに私は今非常にこだわっておる。金銭信託でも貸付信託でも同じですけれども、こだわっておるところで、もう一つ私が気になりますのは、今伺った中で普通の貸付信託と指定金銭合同運用口というのですか、これは相当金利が違いますね。この二つは、しかし、金利は違うけれども、先ほどのように予定配当率、片一方が動けば片一方が同時的に動いておるのでしょうか、そこのところを……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/46
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047・大月高
○大月政府委員 簡単な点からお答え申し上げますと、今までの合同運用金銭信託と貸付信託は、お話のように同じ時期に同じように符節を合わせて動いております。
それから、この予定配当率が預金の金利と同じでないかというお話でありますが、これは非常に違うわけでございます。預金でありますと、一年定期預金ですと、五分五厘差し上げます、これは契約であります。そういう意味では、この五分五厘は最後に引き出されるまで絶対に変わることはございません。一年たって、途中解約いたしますれば、普通預金の金利でありますから別でありますが、このときには、金利の水準が下がっておるから、五分にしますとは絶対にいわない。金利がくっついたものですから……。しかし、たとえば貸付信託はその約束は全然ないわけでございますから、今申しましたように、逐次この予定配当率は変わっておりますれば、当初五年ものの貸付信託を契約した人につきますと、たとえば七分七厘を配当しますという約束はしておらないわけでありまして、そのときどきの金融情勢に応じて今のような、たとえば九月に七分三厘七毛という予定配当率がありますれば、それになっておるわけでありますから、その点は預金と本質的に違うということは、やはり実績主義、実績の中から信託報酬を差し引くという意味でやっておるわけでございまして、その点が信託と預金との最も違っておるところだと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/47
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048・堀昌雄
○堀委員 そうすると、逆に、厳密にいいますと、今の貸付信託も金銭信託も一体幾らに回るかは、極端にいえば委託者はわからない。その一応の目安だけをちょっと出しておくということに理解していいということになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/48
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049・大月高
○大月政府委員 これが信託の本質でありまして、つまり委託者は受託者を全面的に信頼いたしまして、一つ有利にこの金を回してほしい、その手数は、手数料として約束の手数料を差し上げますというのが信託でありますから、そういう面におきまして、今仰せの通り具体的に幾らに回しますという約束はいたしません。ただ信義誠実の原則に基づきましてできるだけ受益者に有利になるように信託銀行が運用するというのがこの建前であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/49
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050・堀昌雄
○堀委員 その点は明らかになりましたから、次に移ります。
この前の論議の中で、「われわれといたしましては固定的な観念をもってこの問題を考えるつもりはございませんけれども、今の段階でわれわれが見ておりまする観念では、むしろ行政指導の方針として、信託銀行と銀行とは次第に分離していく方がいいのではなかろうか、これが大蔵省のここ十年来にわたる一貫した方針でございまして、今のところこの方針を特に変える必要はないのではなかろうかと考えております。」とお答えになっております。そこで、最初にいろいろ伺った点にちっょと関連をするのですが、これはこの前に大月さんは、普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又ハ信託業務ノ兼営等二関スル法律というのは、藤井さんも指摘されておりますが、この昭和十八年の法律は、要するに兼業の認可をするということが明らかにされておるわけでありますね。法律は前段として兼業を認めておるということが一つ前提としてある。ところが、先ほども触れましたけれども、そういう前提がはっきりしておるときに、十年にわたって、行政指導の方針は分離をする方向だということですね。そうすると、私は最初にこの問題を概念的に伺ったのですけれども、分離をする方向であるならば、十年たった今日、一体実体的にそれらが分離をされる方向に行っておるのかどうか、ここに私は問題が出てくると思うのです。そこでお伺いをいたしたいのは、これはおたくの銀行年鑑ですかにも出ておりますから、名前を申し上げていいと思いますが、たとえば今の信託専業五社といいますか、これを少し調べてみますと、ここはやはり信託勘定と銀行勘定が並列をして並んでおるわけですね。あなた方の行政指導の方針というのは分離をする方針だということになりますと、専業信託について見るならば、銀行業務は過去においてだんだん下がってくるべきだ。バランスの問題がまだ別にあるでしょうが、バランスはさておいて、やはり実体的にその銀行業務部分がだんだん下がってきておって、信託業務がふえていくということならば、あなた方十年の行政指導の方針というものは実体的にも合っておるだろうと私は理解することになるわけですが、法律は前段でまず銀行と信託業務の兼併を認めておる。銀行と信託業務の兼営を認めておりながら、これを分離する方向に向って十年間行政指導をする方針だ。これは政務次官、私がさっき触れたように、片方は一緒にやるということをはっきり認めておるわけですね。片方は分離するという行政指導をやっておる。これは、あなたはそういうことはあり得ないとおっしゃったのだけれども、私は具体的にはあり得ると思う。集中する方向にとは書いてありませんね。ありませんが、しかし一緒になっておることは認めておる。実体としても一緒になっておる。これは専業信託といいながら、実は中が一緒になっておる。だから、分離の方向というのは一体何なのか。要するに銀行勘定と信託勘定を分離するということか何なのかわからなくなってきたわけです。ですから、この点一体何を分離しようとされるのかをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/50
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051・大月高
○大月政府委員 これは信託分離という言葉を正権に御説明申し上げなければ誤解が生じると思います。われわれが行政指導いたしておりますのは、今お話のございましたような兼営に関する法律に基づきまして現在信託を兼営している信託銀行が数行ございますが、これの銀行業務を次第に縮小いたしまして信託らしい信託を重点的にやるということを一般に信託の分離あるいは信託の専業化というような言葉で俗にいっておるわけでございます。信託分離という言葉は、この中で特に信託勘定につきまして別の信託銀行を作りまして、それを重点的にやる信託銀行を作るということを信託分離と俗にいっております。信託の専業化というのは、主として信託を中心にやっております信託銀行が、ますますその色彩を明確にしていく段階を称しております。それで、逆の面があるわけでありまして、かつて信託を兼営いたしておりました銀行がこれはやめていっておるという現象が一つございますから、そういう三つの現象、つまり今まで信託を兼営しておったものも一部は信託の仕事をやめてしまっている。それから従来信託を中心にやっておりましたものはますますその色彩を発揮している。それから信託を兼営いたして銀行業務を主としてやっておりましたものにつきましては、その信託勘定と分離いたしまして別の法人にいたしまして、本来の銀行業務を主とするものと信託を主とするものとに分かれていっておる、こういう三つの姿を全部総合して考えますと、信託分離と申しますか、信託専業化と申しますか、信託は信証らしい仕事に専念すべし、銀行は銀行らしくやってほしいという理念が現われておるわけでございまして、過去地方銀行におきまして信託を兼営いたしておりました銀行が八つあったわけでございます。これはいずれも信託業務を廃止する方針を宣明いたしまして、すでにそのうちの二行は信託勘定がゼロになりました。信託業務は廃止いたしますという正式の届出が大蔵省に出ております。その他の六つの地方銀行につきましては、新らしい信託契約は取りませんで、逐次整理を今実施いたしておりますから、間もなくこれは信託業務が完全になくなってしまう。そういたしますと、地方銀行といたしましては、信託業務をやるものは一行もない、こういう姿が一つ出ると思います。それからお話しの専業信託といっておりますのは、従来信託銀行として戦前やっておりましたものが、再建整備の際に信託銀行の形をとりまして、これは主として信託をやる信託銀行でございます。当時インフレの進行中でございまして、長期の資金が集まらない、このままでは信託制度は壊滅するであろうということで銀行業務を付加したものでございますが、その後の行政指導によりまして貸付信託の制度を創設し、またその他新しい車両信託でありますとかその他本来われわれが言っております信託らしい仕事を逐次最近付加して参ったのであります。それで証券投資信託のようなものもその後付加されましたし、今度はまた企業年金というようなものも加わり、われわれが希望いたしておりますように、銀行業務の分野が逐次縮小されまして、現在におきましては信託の取引がある人以外からは預金を取らない店舗というものが三分の二、何らの制限を置いてない店が三分の一というようにほぼ進んで参ったわけでございまして、われわれといたしましては、将来の姿としてはやはり信託関係の取引先以外からの預金はできるだけ取らないような格好に持って参りたい、これがわれわれの行政指導の一つの方法でございます。ただこの兼営の法律にもございまして、銀行業務を全廃しろということを言っているわけではございませんが、その点が信託分離という言葉が若干不正確ではないかと私は思います。
それから第三に、銀行業務を主といたしまして信託業務を兼営いたしておる都市銀行が数行あったわけでございます。これは具体的に申し上げますれば、三和銀行と神戸銀行、これは東洋信託という格好においていわゆる専業化をはかり、これがいわゆる分離といわれている第一点でございます。それから最近問題になっておりますのは、第一信託と東海銀行の信託部門とを分離いたしまして新しい信託銀行を作ろうという動きがございます。これは関係者間において種々相談中でございましたが、近く結論を得まして新しく発足するということになろうと思います。そういたしますと、残る都市銀行のうちで兼常をやっております銀行が一行残るわけでございまして、これはいろいろ個別の事情がございますから、今すぐにどうというわけには参らないと思いますから、われわれといたしましては、できるだけ各方面においてそういう方向に歩調をそろえて十数年間やって参りまして、何ら問題はなかったわけでございますけれども、どういう形をとるのがいいかということ、あるいは時期がどうだというような問題、いろいろあると思いますが、できるだけ円滑に調整をはかりながらこの問題を解決して参りたいというのがわれわれの従来やっております信託分離あるいは信託専業化というものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/51
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052・堀昌雄
○堀委員 そこでちょっとお伺いいたしますが、今地方銀行の話が出ましたが、地方銀行七行で信託業務が行なわれていた。これはなくなるようでありますけれども、一体これはどことどこか、この地方銀行の所在地をちょっと伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/52
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053・大月高
○大月政府委員 具体的に申し上げますと、中国銀行(岡山)、十六銀行(岐阜)、北陸銀行(冨山)、滋賀銀行(滋賀)、第四銀行(新潟)、秋田銀行(秋田)、福井銀行(福井)でございます。そのうちで最初申し上げました中国銀行と十六銀行はすでに完全に廃止いたしまして、すでに信託業務をやっておりません。その他は今整理の過程にあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/53
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054・堀昌雄
○堀委員 そこで、ちょっと政務次官にお伺いしたいのですけれども、おとといですか、大へん終日御苦労になって、国税通則法を論議いたしましたけれども、どうも最近私がこういうものを見ていて納得いかない点が一つありますのは、一体法律はだれのために作られるかということです。これは政務次官は、一体法律はだれのために作らるべきだと思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/54
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055・天野公義
○天野政府委員 国民のために作られるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/55
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056・堀昌雄
○堀委員 もちろん全部国民ですけれども、国民の中にも、たとえば税制の問題については納める方ととる方、金融関係については預ける者と預かる者、こういうものとございますね、そうすると、その場合には多数の方と少数の方とに大てい分かれている。そうすると、もちろん両者バランスがとれなければならぬと思いますが、きっちりフィフティ、フィフティにいくわけにはなかなかいかない問題だと思いますけれども、そういう場合には、法律の建前としては、私の気持は、やはり出す方の側が大体国民という言葉で総称されるのじゃないかと思います。利用者といいますか、あるいは納税者といいますか、これは国民という表現になる場合が多いと思うのです。そういう意味で国民という言葉を理解してよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/56
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057・天野公義
○天野政府委員 国民のために法律が作られるわけでございますが、それは国民が預ける者であり、また利用する者であり、また社会生活を営み、国家生活を営む上において、税金を納める。その税金がいろいろな公共投資とか社会保障とか、そういう面で返ってくる。いろいろな面からいいまして、やはり帰するところは国民のために法律は作られるのだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/57
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058・堀昌雄
○堀委員 上手な答弁で、何を答えられておるのかよくわからないということになるのですが、私は端的に今そういうことを伺ったのはなぜかといいますと、私も概念としては、大月さんの意見に別にそんなに反対じゃないのですよ。物事はやはりある一つの固定概念があるならば、その概念の方にやるのはいいと思うのです。私の性分として、合理的だからいいのです。ただ、それが実体との関係で概念通りいかないから、実体と概念の間をどう調節していくかというのが政治だろうと思うのです。そこはいいのですけれども、実は資料をいただいて、今の専業になった信託銀行五社の店舗の状態を調べてみました。そうしますと三井信託は——これも具体的ですから名前をあげますが、東京都内の店舗が十三店、東京以外は、大阪が三店、その他は四つしかない。三菱信託は、東京都内が十四、大阪が三つ、その他がやはり四つしかありません。住友信託が、東京が九つ、大阪が八つ、その他がやはり四つ、これは皆さん行政指導していらっしゃるから、おそらくその他は四つにしぼれということになっておるのかもしれない。みな符節を合わせて四つですね。安田信託が、東京都内が十三、大阪が二つ、その他が四つです。東洋が、東京都内が七つ、大阪が一つ、その他が四つ、こういうように実際なっております。これが店舗の配置状態です。そうすると、さっきお話しになった、これまでこの七つの地方銀行で、中国は岡山にございました、十六は岐阜にございました、北陸は富山にございました、滋賀は滋賀にありました、第四は新潟にありました、秋田は秋田にあります、福井は福井にあります。こういう中で、今この五大信託がその地域で持っておりますのはわずかに新潟だけですね。あとは、これまでこの地方の人たちは、この地方銀行に信託できたのに、もうその周囲には信託銀行がない。そうすると天野さん、どうでしょうか。さっきの国民のためにということはやはり寄託者の便利ということならば、当然もっと門戸を広げられておって、それらの地方の人々も国民として機会平等の権利が残されておると思うのにかかわらず、大蔵省の指導方針は五大信託に限るのだということで、その五大信託はほとんどが東京都内に集中している。大阪も東京に比べるとまさに六分の一くらいにしかならない。その他においては、その他の店舗はどういうわけか比較的同じところにたくさんあります。横浜が一番多い。そのほかにいろいろありますが、四つずつしかないですから全国には二十しかない——裏にあるのは気がつきませんでしたが、今の私の触れた部分はないですね。地方銀行のあるところはないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/58
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059・天野公義
○天野政府委員 裏の方の表を見ていただきますと、表と裏で大体全国の主要都市にあるということは御了解願えると思いますが、今後も利用度がうんと予想される、また利用が多いというところにつきましては、設置を考えていかなければならないのではないかと思います。また利用する方からいいますと、郵便その他で十分連絡もできるということも考えられるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/59
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060・堀昌雄
○堀委員 今の最後の点は、お役人がおっしゃるのなら私は仕方がないと思いますが、代議士である天野さんの発言としてはちょっと適正を欠くのではないか。われわれ何十万もの金を郵便でどこかに信託しようということが、現実の問題として考えられるかどうか。ちょっと感じとして無理ではないかと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/60
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061・天野公義
○天野政府委員 かりに金銭信託を例にとりますと、相当長期になるわけでありまして、年がら年じゅう銀行取引みたいに銀行に行ってどうこうするということではございません。従って、郵便なり書留でやれば十分目的は達せられるわけであります。そういう利用者も非常に多いということを聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/61
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062・堀昌雄
○堀委員 しかしそれは、国民にとって機会公平の原則から見ると、そういうことは可能の範囲としてはあります。しかし同じ立場に立つ国民として見れば、きわめて私は不便な問題であろうと思います。だから私、この前藤井さんからもちょっと触れられておりますけれども原則はわかるのです。原則はわかるのですが、そうすると、この原則だけが国民生活にバランスするかという実体との関係の中に政治があるということを、私はさっき申し上げたのですけれども、その点で見ると、岡山には住友が一つありますね。有名な伴睦さんのところにはないですな。東海道新線の駅までできるけれども、信託銀行の支店は十六銀行がないのでなくなった。富山もないですね。滋賀も、京都が近いといえば別でしょうが、ないですね。それから秋田もない、福井もない。大体これみなないですね。私は、今これを地方銀行にやらしなさいと言っているのじゃないのですよ。やらしなさいと言っているわけじゃないのですけれども、やはりあり方として見ると、私は、そういう点をやや急ぎ過ぎているのじゃないかという感じがしてならないわけです。
それはそこまでにしまして、昼の前ですが、もう少し進めておきたいと思うのですが、この法案が通りましたら、これらの企業年金信託というのは、一体いつから具体的に実施される段階になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/62
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063・大月高
○大月政府委員 準備整い次第、やらせたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/63
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064・堀昌雄
○堀委員 大体いつごろになったら準備整いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/64
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065・大月高
○大月政府委員 実はまだ法案も通っておりませんので、そういうことを見まして内々の準備は進めておりますけれども、パンフレットあたり、まだ勧誘もできませんし、それから職員に、やり方等を徹底する必要もございますし、これはなかなか大きな制度で、新しい制度でございますから、拙速よりも巧遅と申しますか、腰を据えてやりたいと思います。特にこれは信託の問題だけでなしに保険にも関係いたしますので、両業界が過当競争をやらないというような問題もございます保険では事業方法書の認可事項になっておりまして、われわれの方といたしましては、寄り寄り相談いたしておりますけれども、そういう全体を見まして、なるべく国民の皆さんに御迷惑をかけないように、十分御利用できるように、かついろんな変な競争の起きないようにというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/65
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066・堀昌雄
○堀委員 ちょっとあと戻りするようですが、さっきの専業信託の銀行勘定なんですが、ちょっと私の手元にあった銀行年報で見たら、三菱信託については、三十三年の九月は四百十七億の預金がありましたのが、三十六年の三月期で七百十七億と、倍近くふえているのです。住友信託も、三百九十億あったのが六百五十二億、これも倍近くにふえているのです。さっき大月さんの方では、こういう格好の兼業銀行勘定部分はだんだん小さくしていきたいとか、あるいはつながりのあるところだけの預金にしたいとおっしゃったが、七百億の、六百億のといいますと、小さな地方銀行よりは預金が多いのですね。銀行勘定がこれだけあるということは、さっきのあなたの行政指導の十年にわたる方針と、具体的にはやや同じになってないような気がするのですが、そこはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/66
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067・大月高
○大月政府委員 実は、預金もふえておりますが、信託勘定がなおふえておるわけでございまして、具体的には、三井信託で申しますと、三十一年三月の預金が二百三十四億、パーセントで三三・二%、信託勘定が当時四百七十二億でございまして、六六・八%、こういう比率でございましたが、最近の新しい資料によりますと、三十五年九月期でございますが、預金が五百三十七億と伸びております。しかし比率は二七・六%、減っておるわけでございます。信託は千四百六億とふえまして、七二・四%、こういう数字でございます。それから住友でございますが、三十一年三月の預金二百六十億、比率三四・六%、信託四百九十一億、六五・四%でございましたが、三十五年九月におきまして、預金が二八・九%、信託は七一・一%、こういうことでございまして、預金もふえておりますが、信託がさらに伸びておる。これは、いわゆる貸付信託のほかに投資信託その他の膨大な数量がふえておることは御存じの通りでございまして、量から申しますと、圧倒的に信託関係の仕事が多い、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/67
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068・堀昌雄
○堀委員 私もバランスの問題では確かにそうなっていると思うのですが、しかしバランスの問題を越えて、信託は信託らしくという指導がありながら、銀行勘定が、私が今見ただけで、三菱信託七百十七億、これは去年の三月ですから、もっとふえているでしょう。信友信託六百五十二億、ここにメモしてきませんでしたが、おそらく全部相当高い。これらの預金勘定というものは、中くらいな地方銀行よりは多いと思うのです。現実の問題として、伸び方だって決してそんなに少なくなくて、相当に伸びておる。あなたの方針に全面的に私は反対しているわけではないのですけれども、言われるところの指導方針でいくならば、足踏みをしているか微増というならしかるべしと思うのです。ところが微増どころか倍増になる。これは一体どういうことになるのでしょうか。分離というなら、やはりこの部分をもっと押えるべきじゃないかという気がするのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/68
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069・大月高
○大月政府委員 経済がどんどん伸びて参りますので、預金、信託を含めまして、信託銀行の業務は非常に拡大して参っております。そういう意味で、預金だけごらん願いますと今のような数字になりますが、逆に一般の銀行の銀行預金の伸びはどうかといいますと、はるかに大きな比率で伸びておるわけでございます。信託銀行が信託を専業にいたしましても、そこから生じてくるいろいろな収益があるわけでございます。たとえば信託配当をもらった人はどうするかと申しますと、これは当面その信託銀行の預金に置いておくのが一番便利でございまして、そういう意味でわれわれは、信託関係者の預金はとってもよろしい、ほかの預金競争に新しく乗り出しては困る、こういうことを言っておりますから、信託の業務がどんどん拡充して参りますと、たとえば社債投信の配当とか株式投信の配当とか、いろいろな収益が入ります。それは、その人としては大体その信託銀行に入れていく。その預金がたまりますと、初めてこれを長期の信託の方に振りかえていくということで経済が円滑にいくのではなかろうかと考えておるわけでございまして、今分離という言葉についてもし誤解があるといたしますれば、そういうように預金業務を全然やめさせてしまうのだというように誤解があるというところに問題があるのではあるまいか。われわれは、長期信用銀行につきましても、長期の取引のあるところからの預金はとってよろしいというふうに、興業銀行、長期信用銀行にも同じように指導いたしております。
そういう意味で、全体の経済が伸びますと、興業銀行あるいは長期信用銀行の預金もふえておるわけであります。これも全体の規模が五千億という規模でございますから、それに伴う預金、たとえば長期の貸し出しをいたしますれば、当座、当座預金にしておくというのは常識でございますので、そういうような意味の関連した預金は当然残っていくだろう。われわれの指導いたしております専業化の方針が単に遅々として進まないということではなしに、そういう意味での関連の預金をわれわれは禁止するつもりも、あるいは制限するつもりもないわけでありますから、どちらかといえば、信託の業務が本来信託らしくなっていくに伴って、それに付随した預金もまたふえていくだろう。しかし今統計的に申し上げましたように、比率といたしましては、だんだん信託の方が多くなっている。しかもこういう生きた経済でございますから、一挙にこの関係を断ち切ってしまう、あるいは一挙に比率を急激に変えるということはむしろ適当でない。われわれといたしましては、行政指導として一年間に二つとか、三つとか、そういうようなペースで少しずつ本来の姿に持っていっておるということでございまして、こういう機構の問題でございますから、別に一年、二年でどうという話じゃなしに、一定の方針でもって全体が動いていくということの方が大切ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/69
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070・堀昌雄
○堀委員 もちろん私は、今の片一方の配当が出た、それがちょっと当座に入る、こういう格好のことは問題ないと思うのですが、どうもこの伸び方を見ると、それ以外の預金が入っておるような感じがいたします。
もう一つ、今ちょっと長期信用銀行、興業銀行の問題でもお話が出たのですが、これもちょっと問題があると思う。ここの普通銀行勘定といいますか、片一方は、ともかく銀行が興銀債や長期銀行債をうんとこさ買わされて、あっぷあっぷ言っておるときに、片一方の預金勘定がふえていくということはロジックが合わないような感じがするのですが、ここはどうでしょうか。必要な範囲はいいが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/70
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071・大月高
○大月政府委員 この業務分野の調整もやはり実情に即して考えるべきだと考えるわけでございまして、具体的にはたとえば政府の金融機関、いろいろ貸し出しをやっております。たとえば開発銀行、輸出入銀行、それから中小企業金融公庫、国民金融公庫、こういうものは政府の金をつぎ込みまして貸し出しをやっております。建前といたしましては金融をやっておりますから、国民からその範囲において預金を預かっても、絶対郵便貯金と同じように安全なものでございまして、差しつかえはない。しかし、政府が民間とさらに預金競争に乗り出すことはいかがかという政策的な考慮もございますので、政府のあれとしては一切預金を受けないという法制にしてございます。しかし、民間の機関ということになりますと、今申し上げましたように、長期の貸し出しをやる、それの一時滞留する預金、これをよその銀行に持っていけということは取引者にとってむしろ不便ではあるまいか、そういう実情を考えまして、いろいろの特色のある金融機関、金融機構というものを立てておりますけれども、その分界はそれぞれにおいて妥当に調整されておるというように考えておるわけでございまして、必ずしも興業銀行の預金を全部三菱、三井あるいは富士銀行に持っていけという指導がはたしていいのかどうか、あるいは考え方としてはあるとは思いますが、そこまで徹底しない方がむしろ実情に合っておるかと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/71
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072・堀昌雄
○堀委員 今の点、私もたとえば信託なら信託勘定からこっちへ出てくる預金はまた別だろうと思うのです。しかし、それは少し調べてみないとわからないし、皆さんも一つ調べてみていただきたいのですが、こういう預金が七百億もあるものが信託勘定からちょっときたものとか、そういう格好のものなのかどうか、これがもっと小さければ私もそういうふうに理解できるのですが、六百億も七百億ものものが預金勘定であるのか、そういうものだけではないような感じがしてなりません。これは私どもではわかりませんから、一ぺんお調べを願って、銀行勘定の方へ入ってくる預金、信託勘定から払い出して銀行勘定へ来ておるものが何割、窓口から入って一それはもちろん信託に将来いくかもしれませんけれども、その理由と、銀行勘定に外から入ってもそれが今度は信託勘定に入っていく、これはいいのです。こうこうのことは私はいいと思うのですけれども、今の長期銀行でも同じだろうと思いますが、どうも分離の傾向ということになると、そこははっきりしていただいていいのじゃないかと思うのです。これは私も認めますよ、これは今度は利用者の立場として便利だから。しかし、それ以外に、ただ入ったりこう出たりということになると、これはもう銀行業務と変わりませんから、その点は分離の方向に反すると思います。あなたのおっしゃる範囲でも分離の方向に反すると思いますから、その点一つ調査を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/72
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073・天野公義
○天野政府委員 調査をいたしますけれども、実態から考えますと、先ほど申し上げましたように三年、五年という長期の信託を金銭関係でやればやるわけであります。そうすると、信託をしている人はあっちの銀行、こっちの銀行といって区切られてしまいますから非常に不便でありますし、また半年で要る金もあれば一カ月で要る金もある。そういうものを預金として、これを預けるということになりますから、預金があるということは当然だろうと思います。それから利用者がふえて参りますと信託の配当を積み立てていくというばかりでなくて、今申し上げましたような短期の金を預けておくという要望もふえて参るわけでございます。従って、信託銀行にだんだんと預金がふえてきたということは当然の結果だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/73
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074・堀昌雄
○堀委員 私それを聞いてないのです。調査してみて下さい、わかるかわからないかは別として一ぺんやってみて下さい、こう言っているわけです。だから、それは分離ということについていろいろありましたが、私も了解しております。しかし、今の点は、天野さんはそこと取引ができれば預金もそうすればいいのだ、こういうことに問題がくるとすれば、これはしかし、私は銀行業務が非常にウェートが出てくるということになってくるのじゃないか。だから、本来そういう預金業務というものは、局長のお考えによれば銀行がやるのが建前ですから、便宜上の問題としてここへ残されているというだけで、便宜と本来のものが取り違えられては困りますから、私は便宜のことは、利用者の立場に立ってみればいいと思うので認めておりますが、便宜でなしに、プラス・アルファでこれが残っているのじゃないかという感じがするから、あるかないか一つ皆さんの方でもって——行政指導の方針ですから、皆さんの方針ですから、お調べいただいても少しも私は問題ないのじゃないかと思いますので、一回どういう実情になっておるかをお調べ願いたい。午前の部はここまでにして、午後の部に移らしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/74
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075・小川平二
○小川委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。
午後零時三十七分休憩
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午後一時四十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/75
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076・毛利松平
○毛利委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
委員長が所用のため、指名により私が委員長の職務を行ないます。
法人税法の一部を改正する法律案、関税法の一部を改正する法律案、保険業法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題といたします。
質疑を続行いたします。平岡忠次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/76
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077・平岡忠次郎
○平岡委員 法人税法につきましてお伺いいたします。
大蔵省の三月十三日付のプリントに関してお尋ねしたいと思います。退職年金に関する税制整備についてというプリントです。このプリントで順を追って質問していきたいと思うのですが、「わが国の企業においても従業員の福利厚生のための制度として、退職年金制度が設けられる機運にある。従来、わが国における退職時の給付としては、退職一時金の慣行が圧倒的であり、いわゆる企業外拠出の方式による年金制度は現実には殆んどその例を見なかったため、」そういう機運に際会したので、税制上これに即応する整備をしたい、こういうことがうたってあるわけであります。留意に値することは、特に退職年金に関する税制を早急に整備するというておって、企業年金に関する税制整備といっておらない点です。次の第二項におきましても、例の税率千分の十二に触れて、退職年金積立金の税率、年金関係のということを特にうたってないわけですね。私が察するに、企業年金の積み立てを今回、今まで退職年金の積み立てが内部積み立てであったのを外部積み立てということで特徴を出してきた。それにもかかわらずやはり企業年金の積み立てを、性格的には相変らず退職金の範疇で把握している、こういうことだろうと思うのです。そこで実は、細見課長と私と滝井君との間で話をしたのですけれども、なかなか計数論争になりましてまとまりがつかないのです。そのまとまりがつかなかったということは、私どもとすれば、こうした課税は全廃さるべきである、少なくとも軽減さるべきであるという立場をとったことと対立するわけです。私どもの基本的な立場というものは、厚生年金制度の底上げ改定を見るまでは未熟な企業年金を先走りをするなということ、そういう立場に立っておるわけですが、一応企業年金を認める立場に立ったとしても、企業年金は社会保障制度の補完的制度としての意味を持つものであるから、課税はしてはなるまいということ、もし課税をするとしても低率たるべしという主張をしているわけです。そういう私どもの一応の立場というものを理解なさった上で、なおかつ千分の十二論を反省するお考えがないかどうかということであります。お尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/77
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078・松井直行
○松井政府委員 基本的に退職年金に関しまする税法を今度一部改正いたします趣旨といたしまして、税法の整備といっておりますことでもおわかりのように、積極的に税法が先走りまして、こういう制度の将来のあり方、伸び方、パターンといいますか、そういうものを規制するという考え方は全然ございません。今、平岡委員のおっしゃいましたように、社会経済の発達、発展に伴いまして、企業内に積み立てるというもののほかに、従業員の受給資格というか受給権の保障といいますか、確保するという点から考えまして、これを新たな方法で企業外に積むということが漸次普及して参っておるのであります。従って、こういう制度につきまして、現行法のままで置きますと、こういうものの発達に現在大いに支障になっている点がございますので、これを調整するといいますか、発展の障害になっている点を整理しようというところに、今回の意味があるわけでございます。従って、将来これがどんな形で発展するか。発展するにつきましては、今まさにおっしゃいました通り、公的年金との関係をどうするのか、どう調整するのかということにつきましては、将来大きな問題があろうかと存じますが、今のところはこういう制度、せっかく生まれ変わろうとする制度の障害になっておる点を除去しようというわけでございますので、その限度内におきまして各年度に企業が外部に拠出し、それから将来受給資格のある者が年金を受給する際に、現行法におきましてはそのつど給与所得として課税をされているという点を改めまして、企業に積むときは法人税上損金に、もらう方の側におきましては受給が始まるまで給与所得に対する課税を延長するという意味におきまして、こうした延滞利子的な課税をこの際課しておこうというところに、この年金掛金につきまして課税しようという趣旨があるということを、この点で御了承してもらえるんじゃないか、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/78
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079・平岡忠次郎
○平岡委員 結局大蔵省のおっしゃるのは、これは従来の退職一時金と同様に、やはり私企業の積み立てなのであるから、そういうことで、範疇としては、これは退職一時金それ自身も拡張解釈されて有期とかあるいは終身とかいうのもあるけれども、なおかてて加えて、今言うた企業年金それ自身も大きな範疇からいえば一つの退職金の範疇にあるという考え方をしていると思うのです。私の方はそうではなしに、厚生年金いまだしのおり企業がそれに補完的に出てくるという善意を見て、やはり社会保障の補完的制度としてこれを認めていくという立場をとっているのだから、今言った千分の十二のいろいろな計数論があります。積算のことも言われましたけれども、そういうことを越えて、やはり軽減すべしという立場に立っておること、このことだけを申し添えて、将来何らかのこうしたことの検討の資にしていただきたいことを申し上げておきたいのであります。
次に同じパンフレットの第三項として書かれていることでありますが、この改正が厚生年金の発展に支障を与えるおそれは全くない。この改正はさきに述べたように新たに出現し始めた企業外拠出制の年金に対する税制上の取り扱いを早急に明らかにして、その不備を是正する必要に迫られ、これに回答を与えようとするものであって、税制上特別の優遇を与えるものではなく、厚生年金とは全くその次元を異にするものであると言い切っておるわけですね。今私が申しました議論から、この点で新しいあなた方の答えが出てくるとは思いませんけれども、「厚生年金とは全くその次元を異にするものである。」と断定しておりますけれども、私は私見を申し上げれば、むしろそうではなしに、厚生年金が今月額にして平均三千二百円程度にしかならぬというような現状において、企業自体がこれを補完しようということでやってきたということ、大きく見るならば社会保障制度の補完制度としてこうした機運ができてきた、この機運を補完的な制度として消化するような方式にいくこと、従いまして、それに即応する税制上の考慮が払わるべしという立場に立っておるわけであります。しかしいずれにいたしましても厚生年金とは「全くその次元を異にするものである。」という言い切り方には、私どもは不満があるわけですが、どういう確信を持ってこの断書をなさったかお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/79
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080・松井直行
○松井政府委員 今おっしゃいました御趣旨、全く理解しがたいということじゃございません、しかしながら、今言われております厚生年金と今回われわれが税制上措置をとろうといたしております企業の私的な年金との間には、なるほど機能といたしましては今おっしゃいました通り、社会保障の補完といいますか、突っかい棒という意味は十分期待し得るのでございますが、社会保障年金というものは本来加入につきまして法的な規定といいますか、強制加入というものがあるわけであります。それから年金の管掌につきましては政府が介入をしております。それから給付額が法定されておるというようなことが社会保障年金本来の性質ということが言い得ると思うわけであります。今回はそれと、次元が違うという言葉は幾分強いかとも思いますが、そうした意味におきまする社会保障年金そのものではなくて、一般の企業が自由に私的な立場で従業者と経営者の間の契約で、将来の退職後の生活保障をやろうという意味で締結される自由な契約でございますので、あえて厚生年金とは違うということを申し上げたわけでございます。従って、将来この政府の管掌いたします厚生年金というものの給付額の引き上げ等につきましていろいろ工夫がこらされ、これが発展して参ると思います。従って、その時期になりまして、われわれが今手を打とう、手当をしようとしておることがあえて障害にならないようにということについては、十分検討いたしたわけでございまして、従って、民間ベースにおきます任意の退職年金制度につきまして、特別な優遇措置を講ずるというつもりは全然なくて、今あります税制上の不備を整備するという方向で今回の措置をとるのが適当である、こう考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/80
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081・平岡忠次郎
○平岡委員 それでは次に参りましょう。
第四項ですが、「企業内引当制における特定預金等の保有割合を二分の一に引き上げることは無意味である。」これはこの折衝の過程におきまして千分の十二をなお軽減すべしという主張がなかなかいれられそうもない、それならばオールターナティブな提案として、退職金の、今までの四分の一ですが、その限定を二分の一までに引き上ぐべしということで提案した社会党側の提案に対しまして、無意味だというお答えになっておるわけであります。そうして「現行の特定預金等については、直接担保に供することは認めていないが、それが事実上両建預金的な効果を生じ、別途の借入れの事実上の見合いとなることまでは禁止することはできない。」その通りであろうと思うのです。「退職給与引当金が企業内における引当金として認められている以上、その運用についてこのような規制を加えることは無意味である。」そこで私は反問いたしますが、現行の四分の一では意味があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/81
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082・松井直行
○松井政府委員 企業内に退職給与引当金といたしまして、特定のそうした資金を内部に留保することを承認いたしておるのでありますが、この場合におきましても、税法上受給権者といいますか、支給を受ける権利のある人間にそういう受給権を確保するという要請が当然出てくるものと存じます。従って、内部留保であるから何に利用してもいいというふうにはいかないわけでありまして、ある種の規制が必要になってくることは事実でございますので、今は、少なくともそれを面接担保に供するということを禁ずるという意味におきまして、受給権者の受給権の確保をはかろうといたしたわけでございます。今御質問にありました通り、一体これでもって十分なのかどうか、意味があるのかどうかということでございますが、ここは実際企業の内部に留保いたしております内部資金の運用に関する問題でございまして、形式的に今どんな規制をいたしましても、そういう預金が担保となったり、あるいは事実上それが貸出金の担保に運用されるという事態もあるわけでございまして、今の制度だけで十分なんだということはなかなか言えないところがあると存じます。しかし、少なくとも先ほど申し上げました内部資金の留保につきまして、こういう規制を設けるということは、受給者の権利を確保する意味におきまして意味がある措置だとは存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/82
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083・平岡忠次郎
○平岡委員 私が聞いているのは、一般にこうした規制を設けるのは無意味だというのならわかるのですが、現行四分の一があるのです。二分の一は無意味だとおっしゃるあなた方ですが、現行の四分の一では意味があるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/83
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084・松井直行
○松井政府委員 意味があるかないかという問題ですが、もう一つはこういうことであろうと思います。私は今受給権者の受給権の確保ということを申し上げましたが、もう一つ、受給権者のために、いわゆる有利かつ確実という点が要請されるのじゃないかと思います。従って、あとの点から申しますと、企業内の留保の場合でありまして、これにきつい制限を課するというときには、場合によってはその従業員のためにならないこともあるのじゃないか、こういう考え方で、さらにこういう規制を強めるということは、本来内部留保のこういう資金を運用することについて規制を設けている意味から申しまして、運用制限ということはかえって従業員のためにならない点もあるのじゃないか、両方の意味を含めまして御判断願える問題じゃないかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/84
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085・平岡忠次郎
○平岡委員 あまり明確な御答弁ではないようです。
引き続きまして、同じ項に「このように退職給与引当金制度が内部留保の仕組みである以上、運用を限定することをたとえ強化してみても、これによって従業員の受給権に対する安全性が強まったことにはならない。」こうおっしゃっています。先ほどあなたは、企業年金の外部積み立てば、これは受給者の安全性を確保する上において望ましいことであるということをおっしゃったんですが、今や逆なことがここに書いてあるわけですね。これは大蔵省のほかの方が起案されたので、あなたが知ったことではないとおっしゃるならば別ですが、私たちは常識的に外部積み立てをすれば安全性は明らかに増すと考えておる。その実例といたしまして、府中と所沢にまたがって工場を持っておったビクターオートという会社があります。特需の会社です。今度二千八百名のうち二千名の首を切ったわけです。ほとんど廃業同様になりました。特需の仕事がなくなったからです。そこでこうしたことは前から予見されておったのでありまして、私どもも労働組合の方の要請にこたえましていろいろ指導してきました。そのときにやはり退職金の積立金は税法上フェーバーが与えられておるということを根拠としまして、これは法律的にはまだ退職金が支払われないうちは企業自身の所有権になろうと思うのだけれども、これは特に特需等においては全額を労働組合と経営者側で共管にすべしということを指導しまして、そういう建前をとってきたために、今回は少なくともこの退職金それ自身が企業の壟断ずるところとはならなかったわけです。ですから、私は確かに外部に拠金された方が安全性があるように思うのです。多少傾向的には意味が違うかもしれませんけれども。そういうふうに私は判断しておるけれども、あなた方のおっしゃるこの限定する、つまり「運用を限定することをたとえ強化してみても、」これは従業員の受給権の安全性が増すわけではないというこの断定はいかがかと思われますので、どうお考えであるかお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/85
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086・松井直行
○松井政府委員 内部に積み立てる場合と、外部に拠出して責任ある金融機関等に保管してもらう場合と二つ分けて考えますときには、今おっしゃいました通り明確に後者の方に受給権の確保という意味が大いにあろうと存じます。同じ企業内部に留保する場合に四分の一よりも、現在四分の一ですが、四分の一を二分の一についてその運用を特定した方が一そういいかどうかという問題につきましては、この引き当てといいますか、留保の形自身がこの企業内の積立金であって、企業自身の金であるという意味におきまして、これに先取特権その他の方法でもってこれを規制する道があれば別としまして、そういうものがない以上は、これはあえて四分の一から二分の一にふやしましても、これでもって従業員の受給権の安全性が目に見えて強くなると
いうことは言いがたい、そういうふうに私判断いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/86
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087・平岡忠次郎
○平岡委員 次に、最後の第五項に参りましょう。この五項におきまして思い切ったことを言っておられるようであります。「終身年金についても退職給与引当金の積立てを認めることが適当である。」その理由として「現在、有期の年金については退職給与引当金の積立てを認めていたが、終身年金については、その要支給額の計算ができないとして積立てを認めていなかった。しかし、現在すでに相続税法では終身支給の定期金の評価において平均余命年数を応用しており、このような方法によれば、終身年金についても技術的に要支給額を算出することは可能である。しがって、終身年金についても平均余命年数を基として要支給額を計算し、何らかの程度において積立を認めることが、税法の合理的な解釈として適当であると考える。」ところが実際には退職一時金の拡張解釈としての終身年金は、従来債務確定の要件を欠くから通達では課税上のフェーバーを認めない立場をとっておるはずであります。あなた方の本音はどっちにあるのですか、お答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/87
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088・松井直行
○松井政府委員 第五の点の終身年金につきまして、企業内の退職給与引当金の積み立てを承認するかどうかという問題でございますが、この点につきましては税制調査会におきましても相当詳細検討が行なわれております。退職年金を現行の退職給与引当金制度を利用して企業内で積み立てる場合に、一つ支障になっておって、こういう答申案になってこれが利用できないのはおかしいじゃないかという批評もございましたので、内部留保の退職給与引当金につきましていろいろ検討したのでございますが、今、平岡委員がおっしゃいました通り、諸外国におきましても平均余命年数というものを使いまして、使うときには税法上債務性の確定し得る余地があるのじゃないか、従って平均余命年数の基礎として積み立てを認めるという方向で解決するということが税法上合理的な解釈運用として望ましい、こういう結論を得ておりました。しかし、その後いろいろ国会の審議も長期にわたり、非常に詳細な点につきまして御審議をいただきまして、われわれもいろいろ答申を受けて、こういう税制改正要綱というものを作ったわけでございますが、平均余命年数表を使うといいましても、一体どういった表を採用するのが適当か、それから予定と実際との調整をどう行なうかというようないろいろ技術的な問題もございます。企業も千差万別でございまして、その平均余命年数の出し方についてもいろいろ疑問があるという、それから現実にこういう方法をとっておる企業も非常に少ないということ等々を考え合わせまして、この際運用の面におきまして終身年金につきましても現行の社内積み立ての方法によることでもって運用を広げるということはこの際見合わせまして、当分現状通りでいくのが適当であるという判断を現在いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/88
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089・平岡忠次郎
○平岡委員 少し歯切れが悪い。もっと明確に言ってほしいのですが、要するに企業年金というのは厚生年金の補完的な一つの制度と見る限りにおいて、課税論におきましても別途の一つの工夫があってしかるべきものである。ところが、退職関係の延長といいますか、退職一時金の拡張解釈とか延長としての年金ということになれば、あなた方の立論の根拠がその私的な退職金の範疇にきょくせきしている限りは、あなた方がここのパンフレットに響いたような結論きり出てこないと思うのですね。しかし、私どもの主張は、これは滝井理論でもあるはずでありますけれども、退職金というものは企業の積み立ての形でも内部保留であるということでありますけれども、これは結局同じその退職金の拡張解釈と言いましょうか、延長解釈としても、年金、言葉は年金であったとしても、これはやはり大きな意味では退職金の範疇にとどまるものであろう、そういうことになろうと思います。だけれども、私どもの方は、今度の企業年金それ自体はやはり厚生年金の範疇としてとらえようとするのである。そういう点からいえば、老後の労働者福祉増進のために、社会保障に対しては、これは明確に国庫主義ということは許さない。そういうことで割り切ることができるわけです。あなた方が何かしょうがないから譲歩したというようなことでなしに、やはりこの企業年金が頭を出してきた、もっと深い根源に思いをいたして、将来あと戻りの形でなしに前進態勢をぜひともとっていただきたい、かように考えるのです。もう一回明確に、現行の通達ですか、これは確認するということをおっしゃっていただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/89
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090・松井直行
○松井政府委員 今後におきます社会保障制度の発達の一環といいますか、この補完という意味におきまして、外部に積み立てられる企業年金というものは相当発達もするでしょうし、こういうものにつきましては大いに力を入れる必要がある。現在の内部留保の形式のものが、私も、今おっしゃいました通り漸次給付の確実性ということもあわせまして発達するものと存じております。そういう時期でもございますので、現在通達におきまして、この平均余命年数でもって債務性を確定するということが適当でないという意味におきまして、終身年金につきましては、退職給与引当金の制度を使って内部留保をすることを承認いたしておりません。今回新たに通牒を直しまして、さらに広い範囲においてこのプリントにあります第五項のような意味で拡張するということにつきましては、今申しましたような点にかんがみまして、これを新たに通達を出して拡張するということはこの際取りやめまして、現行のままで、当分運用していきたいということをこの際明らかに申し上げておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/90
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091・平岡忠次郎
○平岡委員 当分というのがつくのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/91
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092・松井直行
○松井政府委員 この外部積み立ての年金の方法にいたしましても、漸次これから発達する過程にあるわけでございまして、約款と申しますか、約款の性格にしろ、あるいはその利用するものの数といいますか、量の問題にしろ、刻々大きな変貌をこれから見ることになろうと思います。従って、内部積立金自身につきましても、これとは無関係でございまして、企業者の方も労働者の方も、双方最も有利で最も確実な方法というものに制度がどんどん発達して参りますと、やはり漸次考え直すといいますか、こういう制度の改善あるいは発達につれまして旧式のままで推移するということではなくして、外部拠出、内部拠出合わせまして、相関関係に立った上で新しい境地がどんどん開けておるというふうに私ども考えているのであります。そういう意味におきまして、現在の部内留保の制度をにわかに後退ないしすっかり変えてしまうというのは適当でない、当分経営者と労働者の間の協約がどういう形で発展していくか、事態をじっくり観察するのが適当であろうという意味におきまして、現在の内部留保制度に大きな変革を加えることは適当でないというふうに判断してさように申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/92
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093・平岡忠次郎
○平岡委員 大体その程度であろうと思うのです、あなたの方の立場に立つ限りにおきましては。それはそれなりに了承したというのではなしに理解をしたということになろうと思います。今頭を出してきた企業年金というものも含めて、つまり補完的な年金制度を含めて、厚生年金は、権利概念といいましょうか、要求概念、そういう発明の言葉ですが、そういうことになろうと思います。しかもこれは、憲法の保障に基づく公的な事柄であると思います。地方におきまして、これは延長解釈としての年金であろうと何であろうとも、私の言うこれは退職金という範疇に属することなんですが、そういう広い意味での退職金というものは、これは恩恵概念だ。ですから、その点同じ年金という呼称によって混淆が生じておりますけれども、あなた方のおっしゃる従来の退職一時金の拡張解釈としての無期年金は、こうした公的年金と対比した意味におきましてはこれを認むべきではないということ。すなわち、この意味での無期限年金、終身年金は、課税上からも一切のフェイバーを与うべきでないとの趣旨を行政措置として明定してほしい。通達として今明定されておりますので、それを動かさないでほしいというのが私の主張であります。
以上申し述べて、もう一回御確認をいただきまして私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/93
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094・松井直行
○松井政府委員 今おっしゃいました御趣旨をよく理解いたしました上で、先ほど申し上げました措置をとることをこの際明らかにいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/94
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095・毛利松平
○毛利委員長代理 堀委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/95
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096・堀昌雄
○堀委員 午前に引き続きましてもう少し伺っておきたいのであります。午前中に伺ったことで二、三抜けておりました点がありましたので少し伺いたいと思います。午前中のものの考え方は、結局信託勘定と銀行勘定が、比重はともあれ混在してしておるというのが現実の姿だと思います。そこで分離の問題の前に、午前中にちょっと触れました店舗の関係の問題になりますと、今最終的には当分一つ残るであろうと思われるところは、百八の店舗を持っておる銀行が信託を併用しておるということになっておるようでありますが、この中においても、銀行勘定と信託勘定は、当然明らかに別立てにされておるということになりますと、利用者の側から見ると、百八全国に店舗があるということは、非常に便利なことではないか。あなた方の行政運営の側からいうならば、すっきりした姿が望ましい。結局問題は、概念的にはあなた方のお考えは間違っておるとは私も思いません。しかし、現実の経済のいろいろな情勢の中で見ると、やはり利用者の立場を考えてみるということと、概念的なものとをどういうふうにつなぐかというのが、政治の課題だろうと私は思うわけでありますので、これはあとで年金信託との関係に連なって参りますけれども、私のそういう考え——これはだから政治的な考え方になると思うのですが、そういう政治的な考えについて、政務次官はどういうふうに御判断になるかをちょっと伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/96
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097・天野公義
○天野政府委員 一つの信託銀行だけこれをずっと見ていくというのはやはり公平でないので、各信託銀行の店舗といろいろ見合ってやっていかなければならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/97
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098・堀昌雄
○堀委員 それが私が今申し上げたように、業者間の公平の問題が先にきて、今おっしゃった、一つだけ残っているのがそういう状態であるのは公平でないというのは、他の信託専業銀行とそうでないものとの間、あるいは他の銀行と併用信託銀行との間における不公平の問題ということをおっしゃっておられるのだと思います。それはその通りはっきりとあると思います。しかしそのことと、委託者である利用者側の利益の問題というものとを、私午前中からちょっと触れておるわけですが、考えてみるときに、それは銀行局長がそういうことを言われるのは私はわかるわけです。監督官庁のお役人の立場としてはわかる。政務次官、少なくともあなたは、監督官庁のお役人ということには相違ないけれども、しかし、大臣なり政務次官というものは、同時にその監督官庁におけるもろもろの行政事務を、政治的な判断にも配慮を加えながら指導をされるということが、あなた方の務めだろうと思うのですが、そういう私が申し上げている政策的な方向は、あなたとしては、やはりそれもいけないのだというふうにお考えなのか。あとの私が言っているのは政策です。監督官庁で考えられることは、それは政策でないとは言いませんけれども、本来的には多分に行政的なものではないと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/98
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099・天野公義
○天野政府委員 午前中にも申し上げたと思うのでありますが、必要があれば信託銀行の方もふやしていく、それでなるべく要求のあるところをよく見合って、店舗の増設をもっと考えていかなくちゃならぬというふうに考えておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/99
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100・堀昌雄
○堀委員 そこで今度は年金信託の問題に入りますが、今度の年金信託については、生命保険に委託をする場合と信託会社に委託をする場合があると思います。生命保険に委託をする場合の運用の基準等は、大体どういうふうに考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/100
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101・大月高
○大月政府委員 一般の保険の数理と同様でございまして、どの程度の退職者があって、それに対してどのくらいの掛金をすると、それがどの程度の利回りになるかという計算をいたしまして、それによって保険数理にのっとって制度を組み立てていくという、一般の保険の観念と同じでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/101
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102・堀昌雄
○堀委員 そうすると、この問題は二つに分かれてくると思うのです。生命保険会社に委託をするのも、信託会社に委託をするのも、これは委託者の任意選択にまかされる、こういうことになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/102
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103・大月高
○大月政府委員 完全に企業と保険会社ないし信託銀行との自由契約によるわけでございます。ただその契約の模範的な条件、模範定款的なものはもちろん指導いたしますけれども、どことどこが結びつくかというのは、完全に自由でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/103
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104・堀昌雄
○堀委員 そうすると、これもやはり一種の予定配当率になるのか、利回りになるのかわかりませんけれども、これが生保の場合と信託の場合には相違をしてくるのではないか、こういうふうに考えるわけですが、現在生保の場合に予想せられておる予定利回り、それから年金信託において予定しておる利回りは幾らになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/104
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105・大月高
○大月政府委員 今度実行いたします企業年金については、まだ最終的にはきまっておりませんが、一般の保険につきましては、一般の生命保険が運用利回り、予定利回り四分、それから企業年金以外に年金は自由にとれることになっておりますから、それは五分で回しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/105
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106・堀昌雄
○堀委員 保険会社の分が四分と五分である、こういうことでございますね。そうすると信託の場合は幾らになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/106
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107・大月高
○大月政府委員 これは午前中に御説明申し上げましたように、実績配当でございますから、今度の企業年金の場合にはどのくらいに回るかという予想が要りますけれども、新しい制度でございますので、保険とのつり合いをとって最終的にきめたいということで、現在検討中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/107
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108・堀昌雄
○堀委員 そこでちょっとまた問題が出てくると思うのですが、保険とのつり合いということに今度またここでなるわけですね。信託ならば、運用益があればあるだけ回すのが建前なんでしょうね。ところがこれはまた保険との関連で低くなる。高くなるのじゃないでしょうから、低くなるのだろうと思います。これは今の私どものものの考え方からすると、信託に預けて運用益が出れば、やはり委託者の方に返ってくるのが建前だろうと思う。だから信託に預けるのであって、保険会社とはおのずからちょっと違うのがあたりまえなんですね。あなたの方では、保険会社は保険会社らしく、信託は信託らしくという指導をされるのだから、理論の立て方としては異なるのがあたりまえです。それをバランスをとって見るというのは、あなたのお考えとちょっと方向が違ってくるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/108
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109・大月高
○大月政府委員 これは、予定利回りと申しますのは、年金でございますから、二十年、三十年後の利回りまでも考えて計算しなくちゃいかぬ、そういう意味で、現在の金利趨勢から申しすすと、保険会社の四分、五分というのは低きにすぎると思います。しかしこれはまた別に配当がございますから、それで実際上調整される、こういうことになるわけでございまして、われわれの指導といたしましては、戦前は三分五厘くらいの予定利回りしか組んでなかったわけでございます。これは何分にも単に数年ということだけでなしに、何十年先の金利情勢まで考えますと、わが国の金利水準は相当下がるであろうということを予定いたすわけでございまして、今の金利情勢を前提にして考えてみますと、あとになって経理上保険金を払う金が出ないということになる、これは非常に大へんなことでございますので、むしろ安全率を見まして、もし予定いたしたよりも上の利回りがとれれば、それは配当で調整していくというのが保険の考え方でございます。そういう意味で従来といえども戦後一般の保険については四分、年金については五分以上認めた例はございません。
信託でございますが、先ほどから申し上げましたように、実績主義でございますから、これは現に六分なり七分に回るということもあると思います。しかしこれもやはり二十年、三十年の先がございまして、その配当が非常に変動するというのでは、これはまた困るわけでございます。企業の側としても、たとえば今の利回りの八分なら八分に回るであろうということで、三十年やっているうちに穴があくということでは、実際の年金が払えないというので、これは低くきめなければなりません。そうしますと、そのつり合いというのは、二十年、三十年の先の金利をどう見るかということになりますと、保険会社は相当低く押える、信託会社の方は相当高利に回るであろうという判断はつかないわけでございますから、そういう点はわれわれの方としては、双方にらみながら考えるということでつり合いをとるわけでございます。従いまして現実に出ます予定利回りは、必ずしもこれが同じであるという意味ではないのでございまして、たとえば信託では配当というものはございません。そういたしますと、予定いたしました利回りが高いということになれば、信託財産として累積していくということになれば、この制度も長年の制度でございますから、たとえば数年たってレビューして、信託でございますから、信託する金額が相当余裕があるということになれば、これを下げていってやれば企業としても喜ぶ、しかしかりに相当高い利回りを予定いたしまして、非常に低い信託資金を預けまして運用してみた、しかしどうも予定通りいかないということになりますと、途中から企業はさらに信託資金を追加しなくちゃいかぬということになりますと、せっかく長い契約で始めたのが、あとへいくほど高い信託資金を出すということになると、商売からいっても非常におかしいことになりますし、あるいはこの制度の信義という点から申しましてもやはりよくないのではないか。むしろだんだんかけていく金、預けていく金というものはどちらかといえば低くなって、安全率が高くなっていくというのがいいのではなかろうか、こう考えるのでございます。この制度も今回ようやく発足するわけでございまして、新しい制度でございますから、いろいろ問題がある、そういう意味でわれわれといたしましては、一応の基準をきめまして運用をいたしてみまして、数年後にさらにレビューいたしまして、この料率を改定するということを考えてもいいのではないか。しかし全体の考え方といたしましては相当の安全率を見て、今申し上げましたような意味で保険と信託とのつり合いをとって料率をきめる、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/109
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110・堀昌雄
○堀委員 そうするとお話はわかりましたけれども、スタイルが違うのですから、スタイルは違うけれども、結果は同じになるかというと、やはり結果は同じにならないのではないかと思う。たとえば私がここで百万円保険会社へ企業年金を積み立てをしまして二十年先にとります、なるほどその約款かなにかは四分に回します、しかしあとで配当をやりますから一つまかして下さいという格好でしょうね。同じように百万円同時点で信託会社にまかした、片一方は予定利回りが七分だということで引き受けた。ところが二十年たった。そうしてみるとスタートのところは片方は信託が七分であり、保険会社は四分であっても、二十年たった先はそれは同じ額になるかどうかということになりますと、同じ額になるのなら、私はここのところに差が幾らであろうとかまわないと思う。ところがこれはやはり企業の立て方やいろいろな格好が違いますから、同じにならないのではないかという気がするわけです。そのスタートで七分とか四分はいいです。片方は配当で埋めますということになっているということでいいのですけれども、しかし長期のこととなりますと、今の信託の概念というものはあまりそういう長期のものをやっていないと思う。保険会社は長期だと思いますが、信託は何と言ったって二十年、三十年の信託財産というものは私はそうあまりあるものではないだろうという感じがしますので、運用のあり方自体が私は違うのではないかという気がしてくるわけです。たとえば生命保険の場合には、今のお話によると生命保険の運用のやり方でやるのだ。そうすると現在は株式二割、不動産二割、何らかの基準があるでしょう。じゃ信託の方はどうか、信託は別に今そういうことをこまかく規制しておられるわけではないと思いますが、今度はそうなるとその先普通の信託は規制していない。年金信託の場合は運用先を規制するのかということが次には起りますが、そこは次の問題として、結果としてはどういう形になりそうですが、同一額を信託にして同一二十年たった先において。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/110
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111・大月高
○大月政府委員 今の百万円を信託するか、保険料として払うかという問題は、若干問題が違うのではないかと思うわけでございますが、これは毎年従業員といたしましては少しずつ差し引いていきますわけでございますから、その年度の経過というものが保険なり信託に非常に重要でございます。そういう意味でかりに一定の率を考えていましても、将来信託としてもう少し回る。それじゃだんだん信託資金が具体的に運用上利益が出ますと非常にふくれてくるわけでございます。そうしますと信託の資金として払い込まなくてはいかぬ金額を少々減らしましても予定通りの利回りになる。こういうことになるので、二十年、三十年その人が在職する間、順々に積み上げていくその累計ないしその経過が重要だと思う。こういう意味におきまして、必ずしも保険と信託とは同じにならない。保険につきましては保険料幾ら、保険金幾らということはあらかじめ約束してしまいますから、その調節はむしろ配当の実績でなしに、いわゆる保険の配当として調節をする。信託はその実績自体で自然に調節が行なわれていく、こういうことでございます。そういたしますと、結局実質上の利回りが変る原因は一つはやはり運用の上手、下手、これがいわゆる信託には最も重要な要素であり、保険には重要な要素であると思います。一般の人がある保険会社、信託会社を信用するかどうか、自分の金を長年預けるわけでございますから、ほんとうに信用するところに預ける。これは運用の上手、下手ということと、信用がかたいということと、両方含むと思います。そういうような関係でやって参りますことと、もう一つはわれわれが行政なり法制的に運用先をどの程度規制して公平な競争をやるかというのが第二点の問題でございまして、お話のように、現在保険会社につきましては、たとえば不動産は総資産の二〇%、株式は原則として三〇%をこえる場合には大蔵省の認可、こういういろいろ条件がございます。今度の年金信託につきましても、そういうような公平の原理もございます。それから保険会社にこういうような運用の規制をしておりますゆえんのものも、やはりあまり投機的な面にばかりつぎ込んで、利益は出るかもしれぬけれども、ある月に非常にがたんと収益が落ちるということは困るという意味がこの規制の精神でございますので、今度の年金信託に関連いたしましても、われわれは保険会社と同様な運用の制限を行なって参りたい。それによってまず投資の対象としてはまず公平になる。あとは腕だ。こういうことになるわけでございまして、それが二十年、三十年たってくればおのずから信用度も違ってくるだろうし、そのころになって初めてこの制度が確立してくる。そういう意味で当初におきましてはあまり派手な競争をやらないということは、当初でございますから、自分の方が利回りがいいのだ、自分の方が有利だということで非常に無理をいたしますと、この制度自体をスポイルするのではないかということで、われわれとしてはできるだけ安全に見た利回りを想定いたしましてやりつつ、これを適当に修正していくというのがいいのではないかと考えている根本でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/111
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112・堀昌雄
○堀委員 そこで今の問題の中に二つ問題が出てくると思います。一つは生命保険会社と信託会社の競合の問題です。規制が同じワクでされておっても、そこはやはり自由競争が多少なければ、同じことなら何も各社がある必要はないわけですし、各社があるという以上は、多少何かそこにニュアンスの相違が出てくるわけであります。それが一つの競争のもとになるでしょう。
〔毛利委員、長代理退席、委員長着
席〕
それから今度は信託会社内部においての競争の問題が、五社なら五社、六社なら六社、七社の中で起こるでしょう。それからその次に今度は信託と保険の中の競争というものが起こる、こういうことになるわけですね。そこで今私は生保の内部——年金内部の問題はあとから起こるのですが、生保と年金間の競争といいますか、ここが今私が伺っておるところなんです。なぜこれが二つに同じに認めることになったのか、要するに年金信託というものを生命保険会社にも認めましょう、あるいは信託会社にも認めましょう、二つ同時に認めることになってきた積極的な理由は何でしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/112
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113・大月高
○大月政府委員 一つはやはり信託の形式におきまして、一定の金を社外に積み立てまして、これを最も有利かつ確実に運用する機関として信託銀行があるわけでございますから、それを使う。それから保険は御存じのように一定の保険料を払い込みまして、保険金を払う。その保険金の払い方として年金的に払うだけでございまして、本来の保険の観念に入っているわけでございますから、そういう本来やっております業務の範囲内に入る、その二つの機関にこれを預ける、こういうことでございますので、それぞれの特色に応じてフェアな競争をするということは非常にけっこうなことである、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/113
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114・堀昌雄
○堀委員 今の場合に、それがフェアになることであれば非常にいいと思う。ところが実態で見ますと、ここから先が少し問題が出てくるのですけれども、たとえば生命保険とかあるいは信託会社が、やはり企業会社との間に関係が出てきますね。そうするとそういうフェアな競争という問題の前にそういう関係のある、たとえば私のところはあなたの生命保険会社に一つ企業年金のあれをお願いします、承知しました、ところが今度は、そのかわり一つうちの株を保険会社に少し持って下さい、こういう余地が私は十分にあるのではないかと思います。拠出会社が自社の社債とか株式を持たせるような、そういう関係のところはどういうふうに指導されるお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/114
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115・大月高
○大月政府委員 今のフェアな競争ということは、別にコマーシャルな関係の特別な関係を否定する意味ではございませんので、たとえば三菱系統の会社がありまして、それが三菱信託なりあるいは三菱系統の明治生命保険と契約することは、これはまさに契約自由の原則で、そこまで関与するのは行き過ぎであろうと思います。そういう意味で、従来からあるいは株を持ってやっているのもあるかもしれません。あるいは持ってないものは、こういう取引をやるのだから少し株を持ってくれという話になるかもしれません。これはやはり非常に極端に弊害が起きるような現象がない限り、ある意味では公正な競争の中でありまして、自由競争の中であろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/115
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116・堀昌雄
○堀委員 そうすると、その株式、社債の保有と今の年金の関係については、限度なく、何らのそういう制限とかそういうものはないのだ、こういうふうになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/116
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117・大月高
○大月政府委員 今のお話、あるいは企業年金を契約いたしております当該会社の株を持つ場合の話かと思いますが、それはもちろん厳重に規制するつもりでございまして、たとえば信託をいたします場合には、たとえば株式にどのくらい、社債にどのくらいというようなことはやりましても、個別に自分の会社について、買ってくれ、今売ってくれ、こういうような指図はやらさないようにいたしたいと思います。しかしあらかじめ契約いたしますときに、自分の方の株式を何%ぐらい入れてほしい、いわゆる基本契約としてやる程度のことはやむを得ぬかと思います。そういうときには、われわれとして見るならば、模範定款その他で、どの程度なら自社株を入れてもいいかということを十分検討いたしましてやりたい。
それからもう一つは、これは御存じの独占禁止法でございまして、金融機関は自分の当該株式の一〇%以上は持ってはならない。これは絶対的な制限もございますから、そういう面の一応の制約もございますし、その制約の中で極端にならないように行政指導をやっていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/117
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118・堀昌雄
○堀委員 そこで年金信託の方の運用なんですが、年金信託の運用については、やはり何か運用川制が出てくるのじゃないかと思うのですが、どういうふうな点を考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/118
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119・大月高
○大月政府委員 一つは、年金信託用の一つの合同運用の形態を認めてはどうか。それからその運用につきましては、保険会社に準じまして、土地、建物等の不動産あるいは有価証券、あるいは貸付金、そういうものについての比率をきめようかと考えております。これはいわば保険会社との競争上のつり合いの問題でございますので、不公平がないように慎重にやりたい。しかし、いずれにしても野放しでなしに、妥当な健全性を保ちつつ、有利に運用でき、かつ保険会社との競争上も不公平でない、こういう観点できめたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/119
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120・堀昌雄
○堀委員 そこで、やはり今おっしゃったことの中にまた関連してくる部分が出てくると思うのですが、保険会社との関連の中で不公平にならないようにという一つの面と、しかし、不安定でなければできるだけ確実に有利に回る方向にいくということは、本来的にやはりちょっと相反する要素になってくるのじゃないかと思うのです。そこで、その点は、たとえば現在は投資信証の運用規制の問題が一つあると思うのですが、この投資信託の運用規制と、今度の年金信託の運用規制、その関係はどういう格好になりそうですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/120
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121・大月高
○大月政府委員 運用の規制は投資信託とは違いまして、やはり保険会社と同じような規制をやりたいと考えております。今保険会社の方は具体的に省令できまっておりまして、不動産は二〇%以内、株式は三〇%以内、その他というようになっておりますから、それと同じ方式でいいのじゃなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/121
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122・堀昌雄
○堀委員 そこで、あとこの問題については、たとえば厚生年金でも還元融資というようなものがありますね。ここで当然還元融資の問題が出てきていいのじゃないかという気持がいたしますが、これについては大体どういう考えでおられましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/122
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123・大月高
○大月政府委員 当然貸付金の限度の中で何らかの規制を加える方がいいのじゃなかろうか、今保険業法の方でも還元融資の限界を置いてあるはずでございまして、そういうものとにらみ合わせまして検討いたしたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/123
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124・堀昌雄
○堀委員 次に、今度は支払い準備の問題であります。さっきもちょっとお話が出ておりましたけれども、支払い準備については大体どういう対策を考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/124
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125・大月高
○大月政府委員 これは当然保険会社なり信託銀行におきまして、どの程度の支払いがあるかということは想定できるわけでございますから、それから短期の預金ないし税金で持っている、こういうことで今まで特に支障がございませんので、まかしておきたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/125
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126・堀昌雄
○堀委員 実は、今後の年金信託の増加の形で問題はまた変わって参りますけれども、私どもが心配をいたしますのは、非常に年金信託が広がってくる可能性はあるだろう、しかし、同町に企業の側は、将来とも常に安定であるかというと必ずしも安定でないものも出てくる。ちょうど昨年の一月ごろに当委員会で公社債信託の問題を取り上げたときに、一体解約に対しては十分な支払い準備があるかどうか、ずいぶん私は詰めて伺っておきましたが、結果としては今のような事態になってきておる。そこでやはりちょっと問題としては、この支払い準備は現在ある形の支払い準備のままでいいんだということになるのか、この年金信託の部分のふえ方、そういうものの性格が、今のほかの信託財産とはやや趣を異にしておるものがある。そういう点で今のままでずっといいのか、その点については十分対策があるのかないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/126
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127・大月高
○大月政府委員 従来生命保険におきましても、戦後非常に急速な伸びを示しておりまして、年間二〇%ないし三〇%程度伸びております。年金保険につきましても、当面の間はそんなに伸びるとはわれわれは考えておりません。地固めの時期でございますので、それほどじゃないと思いますが、少なくとも何十年来の歴史がございまして、一応の保険料を取って保険金を払うという仕事を使命といたしております。従来とも金がないので払えなかったというような例はございません。信託銀行におきましてもそういうための機関としてできておりまして、社債投信の場合のように、急に成立いたしまして急にふやしたというような問題でもございませんから、そういう意味で先ほどから申し上げております予定利回りの問題等につきましても、極力低く押えて、われわれとしては急速に伸びるよりも、とにかく安全に、世の中の信用をまず得ることが大事なんだ、そうすれば自然に伸びるときは伸びるという態度をとっておりますので、御心配をかけるようなことは絶対にないと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/127
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128・堀昌雄
○堀委員 そこで今度は、今の株式三割——そうするとおそらく年金信託も株式は三割入ってくる。この株式についての銘柄規制といいますか、そういうものは、現在生命保険ではどういうふうになっておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/128
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129・大月高
○大月政府委員 具体的に明文ないし、文書でもって、こういうものでなければいけないという制限はいたしておりません。しかしこれは銀行検査ないし生命保険の検査におきまして、原則として上場株に限るという指導をいたしております。その他特殊な事情がありまして特別な株を持つことはあると思います。これは禁じておりませんけれども、それは極力避けるということで、検査のつど、もし非上場株がございますと、指摘してできるだけ直してもらうようにいたしております。そういう意味で、金融機関としては株式投資というものは非常に安定性を欠いておるものだという認識を持っておりますので、従来からも銘柄の選定については非常に慎重でございます。従来から変な株をたくさん持ちまして、そのために事を起こしたという例はございません。今後も、年金問題は非常に長期の問題でございますので、監督行政の面においても十分配慮して参りたい、こういうように思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/129
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130・堀昌雄
○堀委員 大体年金信託についての運用のあらましを伺いまして、常識的な御判断だと思うのでありますけれども、この問題で一番終わりに来まして、現在やはり問題が残ってくるのは、具体的に名前をあげますと、皆さんの方で指導の対象になっておる大和銀行と日本信託があとに残ってくるのではないかと思います。そこで私、財政金融事情でちょっと拝見したのでありますけれども、何かこれについては、店舗の認可をするにしても店舗の制限がしたいんだ、こういうようなことが出ているのですけれども、これは私は、もし認可するとすれば、あなたの方のさっきのバランスの問題からいきますと、制限をしたい気持はわかりますが、私はさっきから立論をしておるのは、要するにできるだけ広くそういうものが委託される条件を、地方の中小都市にもあってもいいんじゃないかという論理からすると、これから広げるかどうかということについては、これはまた別の問題があろうかと思います。しかし、現状であるのなら、私はこれは政策的な判断としては、三十数店舗にしぼられるようだが、と、これは財政金融事情に出ておることで、どうかわかりませんが、 そういうのは、政策的な考えでは今あるものは認めた方が、私が将来と申し上げておるものの考え方とは現状の中ではマッチするのではないか、こういう感じがいたしますけれども、そこらのところはどういうふうなお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/130
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131・大月高
○大月政府委員 この問題は、先ほど政務次官からお答えがございましたように、一つは国民大衆の利便という問題で、これは広いほどいいということになると思います。それから一方は、先ほど来申し上げた信託銀行の現状及び将来の一つの構想という問題からいたしますと、一つの兼営銀行だけが非常に大きな店舗網を持って競争する、あとはせいぜい三十カ店舗くらいしかないというままで自由にやらせるということは、今度は業界の秩序という面からいってどうか。もし日本経済全体として足りないということでございましたら、これだけの数行の信託銀行で年金をやる機関があるわけでありますから、その需要の多いところにそれぞれバランスをとって店を置くのがむしろ妥当だろうが、しかし現に百八の店舗があるものにつきまして、あるいは三十にするのがいいか、五十にするのがいいのかという具体的な問題もあります。専業の信託が三十カ店ばかりございますので、どうしても同数にしなければいかぬというような固定的な考えは持っておりません。現在大和銀行などにおきましても、なるほどそういうようなつり合いの問題もあるということで、いずれ大和銀行の方で、このくらいのところにしぼりたい——と申しますのは、百八の店舗が必ずしも全部企業年金に適したわけでもないのでありますけれども、そういうへんぴなところにむずかしい店舗を置きましても、銀行の方がお客に対してはたして親切であるかどうかという問題も現にあるわけであります。いたずらに人間だけ使って、実際の需要がないということでも困りますので、信託業界全体としての店舗配置の面で非常に欠けておるところとか、あるいは非常に重要な、需要の多いところを選んで、ある程度制限的に実行したい。これは大和銀行側の意向でありまして、われわれとしても、そういうようなある程度つり合いをとった行政をやる方が全体の行政としていいだろう、こういうことであります。目下この法律の審議の状況とにらみ合わせて、どの辺に置いたらいいのかという話を具体化する予定で最近話し合っておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/131
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132・堀昌雄
○堀委員 それはけっこうなんです。信託銀行の店舗を広げるということは私も賛成なんですが、今度店舗を広げることになると、普通の銀行側との関係というものがこれから出てくるのではないか。私ども委託者というか預金者の側からするならば、ある程度あって過当競争にわたらない範囲で競争してもらってサービスをよくしてもらうということが利用者にとっては非常にいいことですから、今までの銀行の支店その他の店舗のあり方について私は少し疑義があるわけです。もう少し許してもいいのではないかという感じがしておるわけです。経済のスピードの広がり方あるいは人口の変移の仕方、いろいろなものの中から見ますと、もう少しあってもいいのじゃないかと思いますが、一体信託銀行の店舗の問題と銀行の店舗の問題は、今後どういうふうに考えていかれるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/132
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133・大月高
○大月政府委員 信託銀行の店舗の配置は、戦前におきましては非常に限られたものでございまして、多分六大都市に一つずつくらいの程度であったかと思います。戦後わが国の国民所得の分布が非常に違って参りまして、比較的中堅層がまんべんなく広がるということになって参りましたので、そういう情勢に即応いたしまして信託銀行の店舗というものも逐次ふえてきております。この表でごらんいただきますように、現在約三十カ店舗ずつくらいのものを信託銀行が持っておる。これはできるだけ銀行と競合しない業務をやらせるというふうにわれわれは指導いたしておりますので、そういう意味で、特に信託銀行の店舗がふえたために銀行界と大きなフリクションを起こすという問題はないというふうに考えております。従いまして、新しい年金信託あるいは投資信託その他どんどん新しい信託の業務もふえて参っておりますので、その地方の実情に応じまして、かつそれぞれの信託銀行の系列その他需要増にいろいろ特殊性がございますので、そういう問題を考えながら国民経済の推移に合うように配慮をいたして参りたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/133
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134・堀昌雄
○堀委員 そこで、今度は理財局の方に少し伺いたいのですけれども、株式ならば生命保険、年金信託等も上場株でいい、そういうことで投資信託等もやはりおおむねそういうことになっているんじゃないかと思うのですが、上場株でいいということになると、これは私は、上場株というのは第一市場、第二市場を含めて上場株だと理解するわけですけれども、今の第二市場の上場株というものは安定投資対象としてはたして適切なりやいなやという感じがちょっとしますが、その点理財局ではどう考えておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/134
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135・有吉正
○有吉説明員 昨年の十月二日から第二市場の設置が行なわれたのでございます。第二市場の上場株につきましては、従来いわゆる集団的な店頭取引の場におきまして取引をされておりました株をほとんど包摂いたしておる次第でございます。従前第一市場に上場されておりましたものと資本金なりあるいは浮動株と申しますか、一般に出回っている株数の多寡というものにつきまして、相当の開きがあるわけでございます。従いまして、市場の第二部に上場されておりますものにつきましては、第一部のものにつきましてよりも一定の取引に対応しまして相当値幅が広くなるという可能性が強くなるわけでございます。従いまして、私どもといたしましては、市場の第一部と明確に区別して、これに第二部という名前をつけまして、第二部におきましてはそういうような株が上場されておるのだということを世間に明確にするという意味におきまして、第二部という名称のもとに上場をいたしたわけであります。従いまして、ただいま先生がおっしゃいましたように、第一部に比しまして第二部に上場されております銘柄につきましては同じ取引量でありましても直幅が広くなる可能性がある、かかる観点から私どもといたしましては、第一部以上に売買管理も適正に厳格に行ない、あるいは第一部におきまして認められておるような信用取引というようなものは第二部には認めないというような措置もあらかじめ講じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/135
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136・堀昌雄
○堀委員 銀行局にお尋ねをしますが、先ほど上場株とおっしゃったのは、今私が申した第一部、第二部を含めての上場株ということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/136
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137・大月高
○大月政府委員 従来は第二市場というものはございませんでしたので、第一市場の株だけに事実上限定されておったわけでございますが、今後第二市場ができますとそれをどう扱いますか、これは具体的な裁量の問題でございますので、十分検討して参りたいと存じております。まだ結論を出しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/137
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138・堀昌雄
○堀委員 そこで明日また同価の横山委員がお触れになると思うのですが、ちょっとその前に、最近御承知のように第一部の上場株であったところの東洋電機の株式が、カラーテレビの問題という、私どもが見てもまことにどうも問題のありそうなことを中心にして、株価の異常な高下があったわけですけれども、そこでたとえば生命保険とかあるいは現在の信託、それからこれは投資信託もおそらく入っているだろうと思うのですが、こういうところに東洋電機の株がはたして組み込まれていたかどうかちょっとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/138
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139・大月高
○大月政府委員 具体的には調べてみないとわかりませんが、それによって保険会社の経理が非常に影響を受けたという事態はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/139
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140・堀昌雄
○堀委員 今伺ってすぐお答えはむずかしいと思いますが、私が心配をいたしますのは、やはり株式に三判と制限されておること自体は、そういう不測の事態に対する備えとして考えられておると思いますけれども、今の東洋電機という会社は、われわれは必ずしもそんなに信用のない会社だと思っておりませんでしたし、それが第一部上場株として認められてきた過去の経緯だろうと、こういうふうに思うわけですが、そういうものの中にもたまにはこういうことが起きる、こういうことになりますと、やはり長期のいろいろな問題については、この株式等の処理については、指導の面でかなり配慮がされておらないと、それは全体としてはあまり大きな影響にはならないかもしれませんが、必ずしも望ましい結果にならない場合もあり得るのではないか。そこらの点について、これは、こういう場合の指導というのは生命保険会社とか信託会社は、これは全部銀行局がおやりになるのか、そこらの点はどういうふうになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/140
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141・大月高
○大月政府委員 信託銀行及び保険会社の監督は一括して銀行局でやっております。これは銀行検査を通じて監督いたしておるわけでございますので今の東洋電機のような事態は万々起きないと思いますが、現に保険会社が持っております株式の簿価は、今の時価に比較いたしまして非常に低い値段でございます。そういう意味で、かりに持っておったといたしましても、現在の東洋電機の時価よりも多分さらに低いところで持っておるのではあるまいか、そういう意味で保険会社の経理というものは非常に健全であるというふうにわれわれは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/141
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142・堀昌雄
○堀委員 先ほど来年金信託の問題に端を発しまして、信託の問題あるいは銀行等の問題についておおむねお話を伺いまして、今後は実際に年金信託ができるわけでありますが、最後に一つ要望を申し上げておきたいことは、この点は藤井委員と私と全く同意見でございますけれども、やはり企業年金というものができるだけ、当初は大企業しかやっておりませんが、しかし次第にこれが中企業等に及んでもらいたいと思いますし、そのためにはきょうあすの話ではありませんが、郵便で処理をするなどということが適切かどうかということにもなりますので、やはり指導をしていただく場合に、店舗の指導でありますけれども、地方における店舗もダブッておるのが非常に多いと思うのです。なるたけこれからは信託銀行等の店舗を開設する場合については一行々々でものを見ないで、五行をプールにして、どこかにだれかが行けばまたそこへ行くということでなくて、考えていただきたい。東京、大阪以外のところから見ますと、拝見した範囲ではかなり同じ町におのおの集中している。信託の側からするならば、六大都市をやってその次に順次大きなところからやる方が信託会社としての営業としてはいいでしょう。しかしそういうことで同じようなところにできるであれば、私どもが申しておることと意図必ずしも一致しないわけでありますから、行政指導の方針としては一つプールにして順番制かなんかをとって、次はここというように一店舗ずつふえるならば、それは平均して五都市にふえるというような指導を一つ今後やっていただきたい。
それからやはり銀行行政今後のそういう分離その他の問題等を含めまして、やはり現状の問題があるし、利用者の立場というものも十分配慮されて、その中でやはり調節がとれたところで行政が指導されるということになるべきではないかと思いますので、その点を含めて要望いたしまして、法人税法に関する質疑は一応これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/142
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143・小川平二
○小川委員長 暫時休憩いたします。
午後三時三十三分休憩
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午後四時五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/143
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144・小川平二
○小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/144
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145・堀昌雄
○堀委員 保険業法の一部を改正する法律案について、二、三点だけちょっとお伺いいたしておきます。
今回の改正によりまして、現在損害保険算定会というのですか、何か損害保険料率算出団体に関する法律に基づくところの会議があって、そこで今料率の算定等が行なわれておるものを、業者間協定によって行なう道を開きたい、こういうことになっておるようであります。そこで、この現状で算定会がやっておることについてきわめて不利な事実、これは先ほどの話の続きではありませんが、概念的に不利だという問題もありましょう、実体的に不利だという問題もありましょう。その二つに分けてその不利な理由を一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/145
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146・大月高
○大月政府委員 現在算定会料率によりまして船舶保険の料率は一律にきめられておるわけでございます。そういたしますと、算定会という一つの機構であらゆる会社を通ずる料率をきめるわけでございますので、いわゆるきめのこまかい料率ができない。非常に単純化せざるを得ないわけであります。ところが、各船会社の持っております船舶の性能とか特性、それから乗組員の素質、教育、訓練、そういうものは一切それぞれのニュアンスがございます。程度が違っております。従いまして、船全体を考えた場合、あるいは個別の船を考えましても、またそれぞれ特性を持っておる。そういう特性に応じましてきめのこまかい料率がきめ得ない。保険は御存じのように一つの想定した危険の率に対しまして保険料を取るわけでございますから、単純化すればするほど実情に合わないわけでございます。今度それを協定料率にいたしますれば、そういう点の弊害が除去できるというのが第一でございます。
それから、今申し上げましたのは内容でございますけれども、第二の問題は手続の問題でございまして、算定会という一つの機構にいろいろなデータを持ち寄って料率をきめるわけでございますので、相当の時日がかかる。そうすると、そのうちに世の中が変わって参りますから、時間的にいってズレができる、これが実情に合わないという感覚があるわけでございます。
それから第三の問題といたしましては、御存じのように、船というものは国際競争にさらされておるわけでございまして、また船舶保険というものも同じく国際競争の非常に激しいものでございます。そういたしますと、外国の保険会社としては、日本の保険会社の出す料率を何とかして正確にキャッチいたしまして、それに対して有利な競争をやろう、こういうわけでございます。ところか算定会料率になりますと、これを公示するということになりまして、わが国の船舶料率の全貌を、いわゆる手のうちを外国に示してしまう、こういう不利があるわけでございまして、これは国際競争上非常にまずい。
大体この三点が算定会料率方式の欠点であろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/146
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147・堀昌雄
○堀委員 そこで一番最初の一律になる問題ですね。これは私は船舶保険も生命保険もそう幾らも変わらないのじゃないかと思います。ということは、なるほど船は製造時期によって優劣がありましょう。またそのときの契約した金額、造船所等によって優劣がありましょう。乗組員等についても優劣がありましょう。これはおのおの条件が違うものであって、同一のものは二つとないと私は思うのです。厳密に言えば同一の条件になるものは二つとない。千差万別相違がある。これは当然だろうと思う。これを生命保険で見ても、同一の人間は世界に二人といないわけで、一人ずつみな違うわけであります。個々における条件は保険の場合には違うのがあたりまえで、それが比較的似通っておるかどうかということに問題があるということになると思うのです。そうしますと、保険料率の算定というようなことが、一つ一つの船について保険料率が算定されるはずはないわけでありますから、やはりこれはあるグループになって保険料率の算定をする、こういうことになってくるのじゃないかと思うのです。そういうことになると、今度は結果としては保険とか、こういうようなものの企業はプール計算で問題が処理をされることになっておるのじゃないか、そのプール計算をされることによって、多少いろいろな問題の中にうまみができることが一つの保険のうまみではないか。ところが、たとえば古い船は保険料率はきわめて高い、それから新しい船は低いとか、ところが、古い船でも優秀な乗務員が乗っておれば、必ずしも事故が多いとは限らないであろうし、新しい船でも無能なる乗務員がもし乗っておったと仮定すれば、損害が起こる可能性がある。何らその点で船の新しい古いに関係してこない。これは千差万別になると思う。そうすると、協定料金なら、個々の船について、船員の適格条件、その船の各種性能、その運行の状態等、万般の問題についての保険料率をきめるのかどうか、そこらが私はよくわからないのですが、どういうふうになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/147
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148・大月高
○大月政府委員 たとえば生命保険の場合を考えますと、たとえば、結核の前歴のある人とか、こういう人は保険に入れないわけでございます。そういう意味で、保険団体を構成する人は、まず加入の際に一つの平等な、具体的に完全平等ではございませんけれども、イコール・プッディングの状態に立つ、そういう意味で、料金は一本化されてもそう不都合はないわけでございます。ところが、船はあらゆる船が保険につけられなければ非常に危険の多い問題でございますが、それぞれについて個性があるというような点は人間の比ではないわけでございまして、今お話もございましたように、船員の素質もあり、船齢もあり、船の構造もあり、いろいろなものが非常に側性に富んでおるわけでございます。それで、そういうものを総合いたしまして、保険にかけておきますと、長年の歴史によって、そのある会社、ある船の集団についての保険事故率というものが冷然に出てくるわけでございまして、必ずしも前向きの単なる予想ということではなしに、過去に保険料を受け取り、保険金を払っていく、そうすると、どのくらい危険が起きたかということは詳しい実績が出る、つまり勤務評定をやりまして、その勤務評定に応じて人事をやるというような感覚でございまして、これを全部一律にするということは船というものの特性に合わない。これが生命保険などと違っておる点であろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/148
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149・堀昌雄
○堀委員 私もそれはわかります。ところが昭和二十三年に損害保険料算出団体に関する法律ができて、今日まで大体この法律によって問題が処理されてきたと思います。十四年間くらいになるわけです。そうすると、今日まで処理されてきた中で、今までおっしゃったような過去のいろいろな勤務評定をやらずして算出の基礎はできなかったと思う。やはりやっていたと思うのです。個々にグループごとにやったと思う。それは私も時間がないのでよく調べておりませんけれども、この算定会というものから出てくる保険料率は常に一本でなければならないという規定があったのかどうか。たとえばこういうグループのものについてはということで、多少第一段、第二段、第三段といいますか、そういう条件があったのかなかったのか。これが単に船は一律だ、大きさにかかわらず、船齢にかかわらず、乗務員にかかわらず一律だというのなら、過去の歴史を調べる必要はないわけですから、そんなずさんなことが行なわれていたとは私は思わないのです、十四年間やっていたわけですから。そうすると、その点が今度はどこが著しく異なってくるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/149
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150・大月高
○大月政府委員 料率を一本と申しましても程度の問題がございまして、特に具体的な表がございますので、あるいはごらん願えればいいかと思うのでございますけれども、たとえば保険金額について三百億円以上、二百億円以上、百五十億円以上、百億円以上、こういうような金額のグループがございます。それから保険成績、つまり事故率、事故率について過去の数年間の統計によって事故率が一〇%未満のものは一体基準の保険料に比較いたしまして何%引き、それから事故率が二〇%未満のものは何%引きというような一つの一覧表がありまして、これに全部出てはめるわけでございます。そういたしますと、今申し上げましたようなものよりもう少しこまかい成績表が実は要るわけでございますので、そういう意味で単純でございまして、必ずしも一本にするという要請はないわけでございますが、技術的にせいぜいこの辺のところしかグロスで考えますときめ得ないという現実があるという問題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/150
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151・堀昌雄
○堀委員 そこで、そうすると、こういうことが起きてくるのじゃないかと思うのです。きめがこまかくなればなるほど今度は力の弱い者が多くの保険料を負担して、力の強い者は少ない保険料でいいということに結果としてはなってくるのじゃないか。私は国の政策として考える場合に、私、海運業界のことはあまり詳しく知りませんが、古い船はどんどんスクラップにしてしまって新しい船がどんどんできるような客観的な条件があるのならば別ですが、現状ではおそらく船会社は相当古い船もやむを得ずかかえて持っておるのじゃないかと思うのです。そしてそういう古い船が多いところはいろいろな面で企業として弱いところ、強いところは新しい船をどんどん作ってやっておる。そうすると、こういう保険の面できめがこまかくなればなるほど今のような逆の動き方といいますか、格差を広げる動き方が起きてくるような感じがしますが、そこらは今後もしこの法律を改正された場合にどうなるかをちょっと伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/151
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152・大月高
○大月政府委員 この協定料率に切りかえることによって中小船主の方に不利かどうかという問題は、ちょうど中小企業者が金融上不利になるかどうかという問題とやや似たところがあると思います。それは中小船主におきましては、一般論といたしまして持っている船の質はそうよくないだろうし、あまり大きいものもないだろうというようなことは言えると思いますが、しかし、その会社の特性によっては小さいながらもりっぱな船を持っている、あるいは船員の教育もいいというのもあるわけでございまして、必ずしも料率の問題が大きいか小さいかという問題には関係ないと思います。しかし、一般論から申しますれば、古い船、小さい船、あるいは素質の悪い船を持つ可能性はございますから、そういう点で中小船主に対する配慮は十分に必要であろうと思っております。ただこの船舶保険は、一般の火災保険で考えますれば一般大衆でございまして、保険会社に対してどちらかというと弱者の立場にあるわけでございます。自由に一般の需要者と保険会社と契約させるということになりますと、とかく弱く、保険料あたりも不利になる、そういう点から申しますと、船会社と保険会社というものが最も国際的な色彩の強い、最も商業的色彩の強いものでございますので、お互いにコマーシャル・ベースで話をさせましても、どちらかが圧力を受けて不利になるという問題はない。不利になるというのは、その持っております船の性質とか特性によって不利になるということでございますので、特に中小問題としてこの問題は心配あるまい。そして今度料率算定会の方式を協定料率に変えるという話が起きましたときも、海運界並びに運輸省御当局等におきましても、そういうような問題も含めていろいろ御相談になった結果、特にこれは支障ないのだ、それから保険業界の方も、先ほど申し上げましたような国際競争という問題もありますし、きめのこまかい保険料率制度の方が業界としては合理的でございますので、そういう意味で、ここ十年ばかり続いておりました料率算定会方式は変えた方がいいのじゃないか。むしろ料率算定会方式というものは戦後の特殊事情に基づく制度でございまして、戦前はもちろん協定でございました。それから世界各国ともに協定料率を使っておるということは、先ほど申し上げましたように非常に商業的色彩が強く、国際的色彩が強いので、各国の保険業界としてはできるだけ秘密裏に自国の船舶業界と相談をして、国際競争に負けないようにきめのこまかい勝負をしていこう、こういうことから出ておるわけでございまして、むしろ制度を切りかえるというよりも、戦後の特殊事情で、協定にいたしますと、どちらかといいますと、海運界は弱い、古い船が多くて、合理的な算出をやりますと非常に保険料が上がるわけでありますから、そういう非常に保険料が高くなって海運業界が困るということを避けるために、臨時的に置かれておった制度というふうにお考え願っていいのではないか。そういう意味で最近は新鋭船もどんどん出ておりまして、戦標船であるとか、あるいは老齢船が非常に少なくなっております。大体海運界としては、背のような制度に戻っても特に支障もないし、どちらかというと、積極的には、そろそろ自由化になってくるということになれば、国際競争上有利な保険の制度の方がいいというのが、この制度を変えようというそもそもの動機でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/152
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153・堀昌雄
○堀委員 そこで端的に伺いますが、算定会料率から今度協定料率に変わる場合に、上がり下がりはありましょうが、総体として見ると上がることになるのか、下がることになるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/153
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154・大月高
○大月政府委員 上がるか、下がるかの問題は、むしろ保険の保護対象の危険率が先行きどうなるかという問題にかかると思います。最近の海運界の状況から申しますと、老齢船とか戦標船はどんどん減っておりまして、新鋭船が非常にふえております。具体的に申し上げますと、昭和二十七年ごろの新造船の割合が四三・五%、戦標船が三二・二%、老齢船が二四・三%、こういうような割合でございましたが、三十五年になりますと新造船は八二%ということでございます。戦標船はわずか一〇・五%、三分の一以下に減っておりますし、老齢船は一〇%を割りまして七・五%、そういたしますと一七%ちょっとぐらいがそういう古い船でございます。あとは大部分が新造船だ、こういう状況になりますと、海難に対しましても抵抗力が非常に強いということで、海運界の趨勢として、保険料は自然に下がっていくというのが今後の見通しでございます。そういう意味で別にこの制度を切りかえたために全体としてどうなるという問題ではございませんので、むしろきめがこまかくなる、それから国際競争上有利というほかの理由からこれを考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/154
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155・堀昌雄
○堀委員 問題は、私が特にちょっと質疑をする気になりましたのは、やはりこれは一つのカルテル行為でございます。大体カルテル行為が行なわれるときには、行なわれない前と行なわれたあとでは、その価格といいますか、料率になりましょうか、そういうものに当然変化が起こるが原則だと思うのです。これは常識論ですけれども。そこでカルテル行為が認められて、しかしそれはカルテル行為が行なわれる前もあともトータルとして変わらない、ただ変わるのは、たといそれが算定会方式がとられておろうと、カルテル行為になろうと、同じトレンドの中でしか動かないというのなら、そういうカルテル行為がその他の要素でプラスになるのなら、取り立ててやかましく言うことはないと思うのですが、やはりカルテル行為の性格は、どちらかというと上がる方にいくことが原則的に、常識的に考えられるわけです。そうなると皆さん方は、保険業法第十条とか十二条を適用して、その場合にはチェックするということをおっしゃるだろうと思うのですが、しかし個々ばらばらにされてきますと、あなた方の方では、一体上がったのか、下がったのか、年度が終わってしまわないとわからない。要するに料率をきめたときにはわからなくて、結果として事故が起きるか何かで決算をしたときには、なるほどこれは変化があったということがわかるので、そこは見通しができないと思うのですが、その点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/155
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156・大月高
○大月政府委員 これは、保険の性格といたしまして、一応の保険率を想定して保険料をきめますけれども、決算はお話のように、締めてみないとわからぬわけであります。その決算に基づいてまた新しい保険料率をきめる。その算定会料率においても年に一回改訂いたしますので、協定料率になりますと、さらにきめがこまかくできるであろう、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/156
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157・堀昌雄
○堀委員 私はきめがこまかくなることを聞いておるのではなくて、結局あなた方がチェックする場合、料率をかえるところでチェックする以外に、終わったところでチェックしても何にもなりませんよ。しかし、現実には私が言った算定会料率と協定料率によって行なった場合、結果に差が出てくるのではないか。それは要するに、保険会社が少しもうける方に差が出てくるということになれば、その出てきた分は、当初に予想された分との差があるかもしれませんが、不測の事故等で減ったとかなんとかいうのでない限りは、やはり協定料率になって、きめをこまかくしたという表現の中で全体に上がった、要するに、一般的なカルテル行為と同じような利益が保険会社の方の側に出てきて、相対的に船会社の側が損失を招くということになりはしないか。その点をチェックするのは、十条や十二条は初めであって、わかるのは決算のときであるということになるから、そういう点を含めて、一体それを多少チェックする方法として、何らかあるかどうかということを伺ったわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/157
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158・大月高
○大月政府委員 従来の算定会料率におきましても、やはり実績を見てこれを改定する、その場合には、われわれが認可する、こういうことでございます。協定料率によりましても、やはり一定の実績を見て、それをこういうように変えたいという申請が参りますから、そのときにスクリーンすれば、中小の船舶の保護という点につきましては同じであろうと思います。算定会料率においてもやはり過去の一定の実績に基づいた新しい料率をきめる。そのときにチェックするということになろうかと思います。それから先ほどお話のありましたように、事前に認可をいたしますほかに、もしこの料率が非常に不当だということになりますと、公聴会を開きまして、その結論によって変更を命ずることもできますし、また公正取引委員会は、大蔵省の行政と全然別個に、公取の立場においてカルテル行為があったかどうかという審査をいたしまして、またこれの変更あるいは廃止を命令し得ることになっております。そういう意味では事前の認可及び事後の公聴会の制度及び公取による勧告、三段がまえになっておりますから、非常におかしな話になるということは万々ないと思います。それから先ほど申し上げましたように、船舶業界と海上保険は決して弱者と強者ということじゃないわけでありまして、かりに変な料率をある会社が出すということになれば、必ずほかの会社がそれを持っていくということになりまして、おのずから自由競争によって料率はきまってくる趣旨でございます。これは、今度の協定料率にかえようとすることにつきまして、海運業界、運輸省においても別に異議はないし、当然国際慣行に従って改めていくべきだろうという、御意見の根底にある思想だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/158
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159・堀昌雄
○堀委員 時間がありませんからもう一点だけ伺っておきますが、現在の海上保険の保険料収入支出関係を見ると、保険収入支出では赤字だということになっておりますね。しかし、赤字となったのは、要するに、各社の責任準備金等を相当大幅に積み立てることによって赤字になっておるだけで、それがない段階では赤字でないようです。その次に、今度はその赤字を一体何で埋めるかというと、これは貸付金及び株式の配当金収入で埋めるのだということになってますね。そうすると、一体貸付金や株式配当金というものが一そこがよくわからないのですが、おそらく損保の中にも、何か火災保険勘定、海上保険勘定なんか区別があるのではないかと思います。そういうことで、もし海上保険勘定ということで区別があるとすると、最近のところは赤字になっておるということになると、その赤字を埋めるための貸付金とか株式を購入した、その運用益の土台になったものは一体どこから出てきたかということを伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/159
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160・大月高
○大月政府委員 お話のように、一年一年の保険料収入と保険金の支払いというものを計算してみますと、責任準備金の積み立て等全部含めまして赤字になるわけでございます。具体的に申し上げますと、三十五年度では損害保険会社全部合わせまして三十四億ばかりの赤を出しております。それに対しまして資産収入がありまして、利息配当の収入が百三十億ばかり出る、その他いろいろな調整をやりまして、利益が八十二億ばかり出るということでございます。従いまして、今お話がございましたように、資産収入で食っておるのだというならその資産はどこから出たのか、もうけ過ぎておるのじゃないか、こういうお話でございますが、この三十五年度の責任準備金の積立額が百六十九億ございます。そういうような関係でありまして、御存じのように保険は大体一年でかけて参りますと保険料収入はある年の途中で起きる、しかし一年でございますから保険事故は次の年度に起きてくるわけであります。そういたしますと、次の年度における保険事故の可能性というものを算定いたしまして、これを損金として経理するために備準金を出しておる、それは一年契約でございますから相当大きな分量を払って準備金として立つ数字になるわけでございまして、それの運用益というものが相当大きなわけでございます。保険の契約者からすれば、自分で保険料を払って、それが一年間のうちに保険事故を起こしまして保険金をもらうほかに、その歩どまりのほかに、保険会社に運用してもらってその利益も保険料を安くする要素にしてもらっておるわけでございますから、必ずしも保険会社が非常にもうけて、それによって資産の運用が行なわれるということではなしに、もちろん内部蓄積ということは必要でございますけれども、年々の責任準備金という性格からくる分が相当あるわけでございます。そういう意味で保険の全体の経費といたしましては、保険料収入よりも保険金の支払いの方が多くても、それで会社としても健全にやっていく、お得意としても安い保険料で保険をかけられるというところが、この損害保険のみそであろうかと考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/160
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161・堀昌雄
○堀委員 私実はまだこの損害保険をいろいろやりたいのですが、お約束の時間がきましたから、本日はこれでやめまして、次会にいつか適当な機会に今度は損害保険を少し勉強さしていただきたいと思います。本日はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/161
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162・小川平二
○小川委員長 これにて三案に対する質疑は終了いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/162
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163・小川平二
○小川委員長 これより順次討論採決を行ないます。
まず法人税法の一部を改正する法律案について討論に入ります。
通告があります。これを許します。平岡忠次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/163
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164・平岡忠次郎
○平岡委員 私は、ただいま上程の法人税法の一部改正案に対しまして、日本社会党を代表して、反対の意思を表明するものであります。
今回法人税法の改正の中に、企業年金が頭を出してきたことが留意しなければならない点だと思います。従来企業の従業者に対する社会保障制度として、健康保険と厚生年金の制度がありますが、健康保険につきましては政府管掌の健保と企業健保が併存しておりまして、大企業は政府管掌をきらって企業健保としてやっているため、両者の間には格段の優劣が生じているわけでございまして、社会的効果の上で大きな疑問が投げかけられておるわけでございます。一方厚生年金は政府管掌の一本建で、老後の保障は政府の手でということで現在まできていますが、その給付額は平均月額三千二百円程度にすぎず、来年度から準備せらるべき定期改正で大幅なる底上げ改定が検討されようといたしておるのであります。そのやさきに企業健保の利己的利益に味をしめた一群の大企業が、日経連を先といたしまして、年金の面でも健保同様の企業年金を前面に押し出してきたわけでございます。企業の従業員の福祉の前進であるからといって、にわかにこれを正当視するわけに参らない理由がここに存します。もとより欧米の先進国では国または州の支給する年金と企業年金の併給によりまして、労働者の老後保障が一そう豊かな形で行なわれている事例もございます。わが国でもそうありたいのでありますが、政府管掌の厚生年金制度が月額平均にしてわずか三千二百円というスズメの涙ほどのものであって、いまだ大地に根をおろしているわけではない現状をこそ、この際直視すべきであると思うのであります。亭々たる大木に寄生する宿り木なら時として風景もあるかもしれませんが、企業年金という宿り木がはびこって青年の樹たる厚生年金の生成発展を阻止し、これを枯死せしめようとするならば、そうさせないために最大の配慮をめぐらすべしとするのが私どもの主張であり、政府の当然とるべき任務だと考えておるのであります。私どもの基本的主張は厚生年金給付額の大幅改定が先決であるべきであるから、企業年金の先走りはしばらく待てということにあります。従いまして、税法上も未熟な企業年金部門は引っ込めろという立場から本法案に反対いたすのであります。
一歩譲りまして政府案の土俵に入ってあえて主張するとするならば、企業年金は社会保障制度の補完制度としての意味を持つべきだと考えるものであります。労働者の老後安定という労働者の福祉の観点からいうならば、課税すべきものではない、課税するとしてもできるだけ低率にすべきであります。かくてこそ外部積み立てがより一そう刺激されて、将来厚生年金への合流を円滑にするものということができるでありましょう。何が何でも税金をとりまくろうとする国庫主義は、この場合には通用しない、通用さしてはならぬと思います。見さかいもなしに何でも取るということであってはならぬと思うのであります。また私は将来墓場までの老後保障は、あげて国の手による厚生年金制度にゆだねるべしとの見地に立って、退職一時金の拡張解釈としての終身年金はこれを認めるべきではないこと、すなわち、この意味での終身年金は課税上からも一切フェーバーを与うべきではないとの趣旨を、行政措置として明定し、徹底させることを主張するものであります。
幸いこの最後の主張は大蔵委員会の審議の過程で了承されましたが、以上の基本的並びに相対的諸理由に基づきまして、本法案に反対するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/164
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165・小川平二
○小川委員長 これにて討論は終局いたしました。
続いて採決に入ります。
採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/165
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166・小川平二
○小川委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/166
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167・小川平二
○小川委員長 次に、関税法の一部を改正する法律案及び保険業法の一部を改正する法律案の両案につきましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。
採決いたします。両案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/167
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168・小川平二
○小川委員長 御異議なしと認めます。よって両案はいずれも原案の通り可決されました。
ただいま議決いたしました三法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/168
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169・小川平二
○小川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
次会は明二十九日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時四十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004629X02819620328/169
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