1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年三月二十九日(木曜日)
午前十時五十七分開議
出席委員
委員長 園田 直君
理事 金子 岩三君 理事 纐纈 彌三君
理事 高田 富與君 理事 渡海元三郎君
理事 丹羽喬四郎君 理事 太田 一夫君
理事 阪上安太郎君 理事 野口 忠夫君
伊藤 幟君 小澤 太郎君
亀岡 高夫君 田川 誠一君
津島 文治君 前田 義雄君
山崎 巖君 安宅 常彦君
川村 継義君 二宮 武夫君
松井 誠君 山口 鶴男君
渡辺 惣蔵君 門司 亮君
出席国務大臣
国 務 大 臣 安井 謙君
出席政府委員
警察庁長官 柏村 信雄君
警 視 監
(警察庁保安局
長) 木村 行藏君
委員外の出席者
警 視 長
(警察庁刑事局
参事官) 町田 充君
警 視 長
(警察庁保安局
保安課長) 小野澤知雄君
三月二十八日
委員亀岡高夫君辞任につき、その補欠として谷
垣專一君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員谷垣專一君辞任につき、その補欠として亀
岡高夫君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
質屋営業法及び古物営業法の一部を改正する法
律案(内閣提出第一〇五号)(参議院送付)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/0
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001・園田直
○園田委員長 これより会議を開きます。
質屋営業法及び古物営業法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を行います。
質疑の通告かありますのでこれを許します。松井誠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/1
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002・松井誠
○松井(誠)委員 質屋営業法の改正案について法理的な点、一点だけをお尋ねいたしたいのでありますけれども、その前にちょっとお伺いをいたしますが、今度の改正案は、拝見しますと、質屋営業の取り締まりを多少緩和するという、態勢としてはそういう建前からの改正案であるように思うわけですけれども、これは何か現在の質屋営業の実態というものに即応した改正案かと思いますけれども、そういう点について簡単でよろしゅうございますけれども、このように警察の面からの営業取り締まりというものを、多少緩和をするようになった現在の質屋営業の実態といいますか、そういうものを一つ簡単にお教え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/2
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003・木村行藏
○木村(行)政府委員 今度の改正の直接の目的は、必ずしも質屋営業あるいは古物営業の取り締まりを緩和するということが目的ではありませんが、ただ、その後十数年の経過を見ますと、だいぶん質屋営業の実態が変わっております。また古物営業をめぐる実態も変わっております。たとえば質屋営業にいたしますならば、非常にかさばる物件を、あるいは変質しやすい物件を質に入れるという場合が非常にふえております。そういう関係もありまして、質置主と質屋との両者の関係を、その後の経済変化に応じまして公正な形に規定を直して参りたいというのが直接のねらいであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/3
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004・松井誠
○松井(誠)委員 この流質期限の問題は、当事者双方に確かに都合のいいことでありましょうけれども、たとえば許可の更新の問題だとか、あるいは三十三条、十八条の関係の罰則を除いた問題だとかいうようなことで、質屋営業の取り締まりが多少緩和されたという傾向は、私は争い得ないのじゃないかと思うのですが、ただその反面、質置人の保護という点について、あるいはどうだろうかと思われるようなことがあるわけなんですが、一つは、今ちょっと申し上げました十八条の改正に伴いまして、三十三条で罰則をはずした、これは必ずしもはずさなくても私はよかったのじゃないかという気がするのですけれども、この点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/4
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005・木村行藏
○木村(行)政府委員 この点は、御質問ごもっともな点があるかと思いますけれども、やはり当事者の、私法関係でありますので、できるだけ私法関係については罰則で臨まないで、別個の方法で解決した方がいいのではないかということで、罰則を除いたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/5
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006・松井誠
○松井(誠)委員 行政取り締まり、警察取り締まりの面からの罰則は、依然として残っておりますけれども、このような民事上の争いだから民事で解決すればいいというのは、通常の場合にはまさにその通りでありますけれども、しかし質屋へ品物を持っていくというのは、まさにほんとうの低所得者である場合が多い。そういう者を一体どうして守るか、それは民事上の争いで解決すればいいのだという一般論では、なかなかそういう問題は解決しないと思います。たとえばこの第一条の改正に関連する第二十二条の問題ですけれども、これは民法の百九十四条の有償回復のいわば例外規定になるわけなんですが、この例外規定も一年間という期限つきである。これは改正案とは直接の関係はございませんけれども、この一年間という期限つきの無償回復も、何も一年間という期限をつけなくてもいいのじゃないか。むしろ無償回復をやはり原則にして、百九十四条の例外のしっぱなしにしておいたらどうだろうか。盗難にかかった自分の品物が目の前にある、しかしそれが一年という期限があるために、有償回復という形をとらなければならなぬ。これはやはり経済的に非常に弱い質置主にとっては、私は負担になると思う。そういうことを有償回復という、民法の原則にもとるような形にしてまで質屋営業を保護するのは、取引の安全上必要かもしれませんけれども、特に質置主という経済的に弱者の立場を考えますと、必ずしも適当じゃないのじゃないか、そういうことを考えますけども、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/6
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007・木村行藏
○木村(行)政府委員 お答えいたします。ただいまの問題は、結局質屋営業法の二十二条は民法の百九十二条、百九十三条、百九十四条と関連いたしまして、特に民法百九十三条は、被害者保護、盗難の被害者あるいは遺失主の立場というものを保護するという民法の根本原則がありまして、その根本原則が二年間の無償回復請求権をそういう被害者に与えておるわけであります。それに対する特例として百九十四条があり、百九十四条に対する特例として、質屋営業法の二十二条なり古物営業法の二十一条があるわけでありますから、やはり戻す場合には民法の百九十三条の原則を土台にしなければいけませんので、永久に無償回復請求権があるということは、若干法の建前からいってはいかがかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/7
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008・松井誠
○松井(誠)委員 この二十二条の場合、通常の場合ですと、たとえば警察に盗品が出ておる、それは領置をして、結局事件が済めば被害者のところへ返るという形式を多くはとりましょうし、従って、そういう形で返る場合が多いかもしれませんけれども、そうじゃなくて、やはりあらためて裁判でも起こさなければ返ってこないという場合もあると思う。しかしそういうことは、質ぐさを持っていかなければならないような人にとっては、ほとんど不可能な仕事だと思います。私はこういう質屋営業の取り締まりを緩和するという能勢そのものはもちろん反対いたしませんけれども、逆にそれの一種の反作用として、質置主の保護が薄れてくるという、あるいはまた今まで足りなかった部分をもっと強くするということについての御配慮をいただきたかった、そういうことを申し上げたいのであります。
最後に一点、法律的な点についてちょっとお尋をいたします。この改正案の十八案の二項、三項の問題なんですが、この二項の「命令で定める方法により相手方が質物の受取りについて正当な権限を有する者であることを確認した場合」、これは具体にどのようなことを命令で定める予定になっておるのか、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/8
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009・木村行藏
○木村(行)政府委員 これは結局確認方法について、社会通念から見て最も妥当な方法を命令にうたいたいと思いますが、ケースといたしましては、質置主であるかどうかはっきりしない場合、それから質置主でないということがはっきりしておる場合、大分類としてはそういう分類がなされるわけです。それに応じて、その大分類の二つの場合に、質札または米穀通帳その他法権的な証明力を持ったようなものを提示できる場合、そうでない場合という、二つそれぞれありまして、大まかに言って四つのケースがあるわけであります。それらのケースに応じて、たとえば質札または米穀通帳の提示が受けられるという場合には、その相手方の氏名なり、住所なり、あるいは職業なり、年令なり、あるいは受け戻しをいたしたいという請求のあった質物の特徴なり、あるいは数量なり、そういうものをそれぞれ質問する、こういう方法によって質置主との関係なり、質物との関係についての正しい証明を確認いたすこと、またそれが提示できない場合においても、やはり質置主との関係の証明を確認するために、その者の住所あるいは氏名、あるいは質置主の住所あるいは氏名、あるいは受け戻しの請求をしておる質物の特徴なり品名なり、または質置主から委任状があるかどうか、まかされているかどうかというようなことについて確認するような方法をとりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/9
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010・松井誠
○松井(誠)委員 そうしますと、政令でそのように事こまかに規定をして、そしてそのような政令の規定を守って調査をして、なおかつそれが正当な権限のあるものでない者に返還をしたというような場合には、三項のいわゆる過失はないのだというように、これは三項の過失の有無の標準にもなるというように考えていいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/10
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011・木村行藏
○木村(行)政府委員 過失の有無の認定についての一つの有力な標準になりますけれども、それ以外の面においてもあるいは過失の有無の認定の材料が出てくる場合があります。しかし先ほど申し上げたような確認の方法というものが、正当になされているかどうか、あるいは非常に粗雑になされているかどうかということによって、過失の有無が問われるという意味合いにおいて有力な標準になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/11
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012・松井誠
○松井(誠)委員 三項の、「相手方が受取権者であることを確認して質物を返還したときは、正当な返還をしたものとみなす。」、この正当な返還というのは、提案理由では損害賠償等の免責という効果があると説明がなされておりますけれども、損害賠償等というと、損害賠償のほかにまだ何か——もしこれが正当な返還でない場合には、まだほかに何かがあり得る、そういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/12
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013・木村行藏
○木村(行)政府委員 その通りでございまして、たとえば損害賠償の請求以外に、慰謝料の請求なりあるいはその質物の返還についての請求といいますか、そういう類のものが入ってくると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/13
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014・松井誠
○松井(誠)委員 そのように確認をしてそして無過失である場合には、正当な返還として責任を免れる、これは民法の四百七十八条のいわゆる債権の準占有者に対する弁済の規定と同じ性質のものだと思うのですけれども、債権の準占有者に対する弁済という場合には、過失の有無について明文の規定はないわけです。それは大体無過失というのは要件ではないというように解釈をされておるかと思うのですけれども、それと、この三項が無過失を要件としておるという規定の仕方と、違いがあるかと思いますけれども、あればどうしてそういう違いがあるのかその点を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/14
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015・木村行藏
○木村(行)政府委員 その点に関しましては差異がありませんで、民法四百七十八条の、ただいま御引用になりました債権の準占有者に対する弁済というものが、やはり弁済は「善意ナリシトキニ限リ其効力ヲ有ス」ということでありまして、従いまして、悪意があればもちろん善意でありませんし、過失があれば善意ともとれないのでありまして、その規定と解釈が同じでありまして、むしろそれをもう少し明確にいたした、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/15
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016・松井誠
○松井(誠)委員 その善意について、過失がないという問題もあり得るわけです。従って善意について過失があっても、四百七十八条の場合には弁済の効力がある、そういうように、必ずしも善意かつそれについての無過失というものを要件としていないように私は思ったものですから、そうするとこの規定と違うのじゃないかというふうに考えたわけなんですが、これは今の御答弁でよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/16
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017・木村行藏
○木村(行)政府委員 字づらでは善意の中に過失という表現が入っていないわけですけれども、通説といたしまして善意という場合は、過失がある場合は善意と見ないということでありまして、善意かつ無過失ということは善意なりしときと同じというふうに解釈いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/17
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018・松井誠
○松井(誠)委員 質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/18
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019・園田直
○園田委員長 ほかに御質疑はありませんか。——なければ本案についての質疑は終了いたしました。
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020・園田直
○園田委員長 これより本案を討論に付すのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/20
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021・園田直
○園田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
これより質屋営業法及び古物営業法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/21
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022・園田直
○園田委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。
なお本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/22
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023・園田直
○園田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
この際暫時休憩いたします。
午前十一時十六分休憩発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004720X02619620329/23
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