1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十七年二月十五日(木曜日)
午前十時四十五分開議
出席委員
委員長 中島 茂喜君
理事 伊能繁次郎君 理事 内田 常雄君
理事 草野一郎平君 理事 宮澤 胤勇君
理事 石山 權作君 理事 山内 広君
内海 安吉君 大森 玉木君
金子 一平君 高橋 等君
藤原 節夫君 飛鳥田一雄君
緒方 孝男君 田口 誠治君
西村 関一君 受田 新吉君
出席国務大臣
国 務 大 臣 福永 健司君
出席政府委員
人事院事務官
(給与局長) 瀧本 忠男君
総理府事務官
(内閣総理大臣
官房公務員制度
調査室長) 増子 正宏君
外務政務次官 川村善八郎君
外務事務官
(大臣官房長) 湯川 盛夫君
外務事務官
(大臣官房会計
課長) 佐藤 正二君
委員外の出席者
外務事務官
(大臣官房人事
課長) 魚本藤吉郎君
外務事務官
(大臣官房文書
課長) 高瀬 直智君
外務事務官
(経済局経済協
力部参事官) 鶴見 清彦君
大蔵事務官
(主計局給与課
長) 平井 迪郎君
―――――――――――――
二月十四日
委員西村関一君辞任につき、その補欠として勝
間田清一君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員勝間田清一君辞任につき、その補欠として
西村関一君が議長の指名で委員に選任された。
同月十五日
委員高碕達之助君辞任につき、その補欠として
大森玉木君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員大森玉木君辞任につき、その補欠として高
碕達之助君が議長の指名で委員に選任された。
―――――――――――――
二月十三日
恩給、年金等受給者の処遇改善に関する請願(
有田喜一君紹介)(第八三一号)
同(小枝一雄君紹介)(第八三二号)
同(浦野幸男君紹介)(第八三三号)
同外三十二件(藏内修治君紹介)(第八三四
号)
同(坂田道太君紹介)(第八三五号)
同外三十六件(田中伊三次君紹介)(第八三六
号)
同外一件(田中彰治君紹介)(第八三七号)
同(渡海元三郎君紹介)(第八三八号)
同外二件(花村四郎君紹介)(第八三九号)
同外三件(廣瀬正雄君紹介)(第八四〇号)
同(赤澤正道君紹介)(第九四〇号)
同(久保田藤麿君紹介)(第九四一号)
同(齋藤邦吉君紹介)(第九四二号)
同(細田吉藏君紹介)(第九四三号)
同(相川勝六君紹介)(第一〇〇七号)
同(大高康君紹介)(第一〇〇八号)
同(田中正巳君紹介)(第一〇〇九号)
同(古井喜實君紹介)(第一〇一〇号)
同(有田喜一君紹介)(第一〇四九号)
同(田中彰治君紹介)(第一〇五〇号)
同外一件(西村英一君紹介)(第一〇五一号)
同(谷垣專一君紹介)(第一〇六六号)
同外一件(池田清志君紹介)(第一〇八三号)
同(古井喜實君紹介)(第一〇八五号)
同(松本一郎君紹介)(第一〇八六号)
同(井村重雄君紹介)(第一一二二号)
同(石橋湛山君紹介)(第一一二三号)
同外一件(受田新吉君紹介)(第一一二四号)
同(久保三郎君紹介)(第一一二六号)
同外一件(米田吉盛君紹介)(第一一二八号)
同(安倍晋太郎君紹介)(第一一五九号)
同(大久保武雄君紹介)(第一一六一号)
同(加藤鐐五郎君紹介)(第一一六二号)
同(高田富與君紹介)(第一一六三号)
同(瀬戸山三男君紹介)(第一一九九号)
同(田中榮一君紹介)(第一二〇〇号)
同(山田彌一君紹介)(第一二〇二号)
恩給、扶助料増額に関する請願(福田赳夫君紹
介)(第八四一号)
恩給増額に関する請願(森山欽司君紹介)(第
八四二号)
同(森山欽司君紹介)(第九四四号)
同(荒木萬壽夫君紹介)(第九八五号)
同外五件(山口好一君紹介)(第九八六号)
同(森下國雄君紹介)(第一〇一一号)
同外二件(渡邊良夫君紹介)(第一〇一二号)
同(浦野幸男君紹介)(第一〇八四号)
同(森山欽司君紹介)(第一〇八七号)
同外二件(尾関義一君紹介)(第一一二五号)
同(櫻内義雄君紹介)(第一一二七号)
同(井村重雄君外一名紹介)(第一一六〇号)
同(山崎巖君紹介)(第一一六四号)
同(山口好一君紹介)(第一二〇一号)
文部省に産業技術教育局設置に関する請願(有
田喜一君紹介)(第八四三号)
同(岡田修一君紹介)(第八四四号)
同(纐纈彌三君紹介)(第八四五号)
同(渡海元三郎君紹介)(第八四六号)
同(富田健治君紹介)(第八四七号)
同(前田義雄君紹介)(第八四八号)
同(齋藤憲三君紹介)(第一一三〇号)
同(池田正之輔君紹介)(第一一六六号)
同(岡田修一君紹介)(第一一六七号)
同(河本敏夫君紹介)(第一一六八号)
同(渡海元三郎君紹介)(第一一六九号)
同(永田亮一君紹介)(第一一七〇号)
傷病恩給の是正に関する請願(天野公義君紹
介)(第八四九号)
同(纐纈彌三君紹介)(第八五〇号)
同(白浜仁吉君紹介)(第八五一号)
同(田中角榮君紹介)(第八五二号)
同(渡海元三郎君紹介)(第八五三号)
同(花村四郎君紹介)(第八五四号)
同(渡邊良夫君紹介)(第八五五号)
同(阪上安太郎君紹介)(第九四九号)
同(西村英一君紹介)(第一〇五二号)
同(原茂君紹介)(第一〇九一号)
同(島村一郎君紹介)(第一一三一号)
同外二件(草野一郎平君紹介)(第一一七六
号)
同(櫻内義雄君紹介)(第一一七七号)
同(鈴木善幸君紹介)(第一一七八号)
同(高田富與君紹介)(第一一七九号)
解放農地補償に関する請願外三百五十五件(荒
舩清十郎君紹介)(第八五六号)
同外十七件(澁谷直藏君紹介)(第一〇一四
号)
同外十二件(青木正君紹介)(第一〇一五号)
同外九件(松永東君紹介)(第一〇五五号)
同外百十件(鴨田宗一君紹介)(第一一二九
号)
同外百六十六件(松山千惠子君紹介)(第一一
七五号)
建国記念日制定に関する請願外二件(齋藤邦吉
君紹介)(第八五七号)
同(荒木萬壽夫君紹介)(第九八四号)
同外三件(西村英一君紹介)(第一〇五三号)
同(荒木萬壽夫君紹介)(第一〇五四号)
同外十九件(菅野和太郎君紹介)(第一〇六九
号)
同外一件(森下國雄君紹介)(第一〇七〇号)
同(木村守江君紹介)(第一〇八九号)
同外一件(山本猛夫君紹介)(第一一三二号)
同(木村守江君紹介)(第一一七一号)
同(田中彰治君紹介)(第一一七二号)
同(濱田正信君紹介)(第一一七三号)
同(森下國雄君紹介)(第一一七四号)
同(荒木萬壽夫君紹介)(第一二〇四号)
同(田中彰治君紹介)(第一二〇五号)
元満州国官吏の恩給に関する請願(愛知揆一君
紹介)(第九四五号)
同(始関伊平君紹介)(第九四六号)
同(保科善四郎君紹介)(第一〇一三号)
同(内海安吉君紹介)(第一〇八八号)
同(濱田正信君紹介)(第一一八〇号)
同(簡牛凡夫君紹介)(第一二〇三号)
旧軍人恩給に関する請願(有田喜一君紹介)(
第九四七号)
国家公務員の賃金引上げ等に関する請願外一件
(岡良一君紹介)(第九四八号)
同外十八件(松井誠君紹介)(第九八九号)
同(中澤茂一君紹介)(第一〇〇〇号)
同外十一件(山口鶴男君紹介)(第一二四〇
号)
旧軍人恩給の引上げ等に関する請願(花村四郎
君紹介)(第九五〇号)
暫定手当全額本俸繰入れに関する請願(鈴木正
吾君外一名紹介)(第九八八号)
同外二十五件(上村千一郎君紹介)(第一一六
五号)
法務省職員の定員増員等に関する請願(中澤茂
一君紹介)(第一〇〇一号)
同外十件(山口鶴男君紹介)(第一二四一号)
基地周辺学校の防音対策に関する請願(青木正
君紹介)(第一〇一六号)
同(井村重雄君紹介)(第一〇一七号)
同(大野伴睦君紹介)(第一〇一八号)
同(高田富與君紹介)(第一〇一九号)
同(中曽根康弘君紹介)(第一〇二〇号)
旧軍人恩給の増額等に関する請願(細田義安君
紹介)(第一〇五六号)
恩給増額に関する請願外一件(田川誠一君紹
介)(第一〇六七号)
同(野田武夫君紹介)(第一〇六八号)
金鵄勲章年金及び賜金復活に関する請願(坊秀
男君紹介)(第一〇七一号)
国旗記念日制定に関する請願(瀬戸山三男君紹
介)(第一〇九〇号)
戦没者遺族の公務扶助料増額等に関する請願(
池田清志君紹介)(第一一四五号)
新潟県浦川原村下保倉地区の寒冷地手当増額に
関する請願(田中彰治君外一名紹介)(第一二
〇六号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
在外公館の名称及び位置を定める法律の一部を
改正する法律案(内閣提出第二〇号)
在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する
法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四五
号)
外務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第五〇号)
公務員の給与に関する件
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/0
-
001・中島茂喜
○中島委員長 これより会議を開きます。
この際、公務員の給与に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出がありますから、これを許します。石山権作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/1
-
002・石山權作
○石山委員 労働省でいわゆる賃金部を設けられるということ等については、それから労働行政等については、いささか後日質疑をいたしたいと存じますが、きょうは人事院勧告についてだけ質問申し上げたいと思っております。
私ども内閣委員会の一つの任務として、たくさんの審議会等の問題を議論しておりますが、調査会あるいは審議会で結論が生まれても、今までの例を見ますと、政府は御自分に都合のいいものは採用なさるけれども、御自分にあまり思わしくない、しかも金がかかるなどということになりますと、ごもっともな理由をつけまして、審議会、調査会の答申というものをば骨抜きにしてしまう、そういう例がたくさんあるわけなのです。ですから、私たちは、この設置法が出るたびごと、そんなのでは役に立たぬからおやめなさい、やるならばほんとうにそれをば尊重しなさいという、こういうふうなだめ押しを毎回々々重ねて今日まできているわけですが、私ども、それらの例と異なって、人事院の存在というものは違うのではないか。調査会あるいは審議会というものの存在と、人事院の過去の歴史、任務、こういうふうなものを見てみますると、人事院の勧告というものは、普通の調査会、審議会と同一視することであってはならぬのではないかというふうに、常に考えているわけです。しかし、この人事院の勧告も、どうも政府が、二年か三年年限を切ってお作りになる調査会、審議会と何ら異ならないような傾向を最近持っているのではないかというふうに見ているわけです。この前の給与勧告の場合でも、五月というふうに、人事院としては珍しい施行期日をば明記したのにもかかわらず、十月というふうになっております。これは過ぎ去ったきのうのことでございますから、私はあえて論及しませんけれども、そういう歴史の中において、去年の十二月十四日に、人事院は、当委員会、劉会の両度の要請もだしがたくしてでしょう、暫定手当の一部改正の勧告を出したのでございます。それに対して政府は、官房長官がこの案につきまして十四日に記者団の方々と会見をいたしまして、よく内容を検討した上で具体的な結論を出すようにしたいというふうに、政府側を代表して発言をなさっていられるわけですが、その後見ていますると、この問題に関しましては、どうも手を触れていないような感じを私どもは外部から受け取るわけですが、暫定手当の問題について内容を具体的に検討する、こういう声明に対して、どういうふうな格好で今日までやってこられたか、給与大臣としての労働大臣にほんとうのところを承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/2
-
003・福永健司
○福永国務大臣 冒頭に申されました政府関係のいろいろの調査会、審議会等につきまして、政府ができるだけその意見等を尊重しなければならぬということは、私も重々考えておることであり、わけて人事院勧告というものは、お話にもありましたように、これは一般の調査会、審議会とはさらにまた違う性格のものであることもよく認識いたしておるのでありますが、今具体的に御指摘になりまして御質問のございます暫定手当につきましては、今次予算に盛り込むに至っていないということは、私も非常に残念に存じておる次第でございます。この点について政府は手を触れなかったのかという表現においてお尋ねでございますが、給与担当の私といたしましては、勧告が出ましたあと、すみやかに閣議にその内容等も説明をいたしまして、これが実施につき意見を開陳もいたしたのであります。自乗、予算の最終結論を得ますまでの間に、幾たびかこれについての主張もいたしましたわけでございます。わけて予算の最終決定をいたします最後の閣議の際にも、この点についての注意を喚起いたしまして主張もいたしたのでありますが、遺憾ながら、政府全体の総合的結論といたしましては、今度の予算に盛り込むことができなかった、こういうわけであります。
その理由といたしましては、もとより、政府は、しばしば国会からも御意見をいただいておりますように、暫定手当はこれを整理するという方向に進めなければならぬという方針に全然異存はございませんが、今度人事院のお示しになりましたいわゆる底上げ方式による俸給繰り入れというものは、これは官民給与の格差に影響を与えるということでもございますので、直ちに今度の予算に盛り込むというところまでの結論にどうしても至らなかったのでございます。この点について、直接の担当者たる私の力が足らなかったといっておしかりを受ければ、私はこれはもう甘んじて受けなければならないのであります。私は私なりに努力もいたしたのでありますが、先ほど申し上げたような次第で、今度の場合は盛り込むに至らなかった。ただし、これはずっとこのままでというつもりではさらさらないのでありまして、さらにもっと検討の上でということになっておるわけであります。この上ともひたすらに努力をいたしたい、かように存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/3
-
004・石山權作
○石山委員 私が人事院の一つの性格として考えているのは、人事院の存在の丸めに、公務員が労働者として持っているいろいろな権利が押えられているわけでございます。ですから、人事院の持つ勧告権というものは、私どもは、政府に対してかなり強いいわゆる仲裁的な力を持つものだと信じているわけです。それでなければ、いたずらに公務員法をたてにとって、公務員が元来労働者として持っている権利を抑圧される理由というものは一つもないわけです。曲がりなりにも人事院勧告が政府を常に制肘をして、その勧告通り寝施される、そこに相対的に公務員のいわゆる活動というものを制限し得る一つの理由があるだろうと思うのです。そうでなければ、今とっている労働行政というものは、池田内閣は逆だ、反動的要素がかなりあると言われてもやむを得ないのではないか。勧告を無視したとは私は申しませんが、お流しにする、しかし、公務員法に一歩たがえれば厳罰に処す、これはだれが見ても正当なバランスの上に立った愛情のある政治だとは言えないと思います。私、給与担当大臣にお聞きしたいのは、今政府が暫定手当は予算化しないということは、予算上の問題のためなのか。底上げ方式でございますから、地域格差は少し詰まるわけです。しかし、底上げ方式ですから、東京に住む人にだって供給はされるわけです。しかも、この三・六%というのは、三年間かかってやるというのでございますから、財政的にも、人事院は、かなり大蔵省を見たり給与担当大臣の顔を見たりして作成した案なのではないかと見ております。こまかいことは公務員室長も来ておりますが、私どもは公務員の給与を論ずる場合に、初任給をもう少し上げなければならぬ、こういうことをしょっちゅう言っているわけなんです。優秀な官僚がなかなか地方転出をきらっている。これはやはり何と申しましても、かつての地域給、御定手当が非常にものを言っているということをわれわれは聞いております。いっか、私、人事院の方にも一例を申し上げて、ここに例証を引いた覚えがございますが、秋田県に来る高等裁判所の裁判官が、仙台から転任になるとき、渋ったという話を聞いた。その渋った理由も、秋田に来ると、非常に下品な言葉でございますけれども、寒くて取りまえが薄くなる、学校もないのだ、こういうことで、われわれが最も信頼し、国家に奉仕をなさる裁判官の身分のある方でも、そういう発言をなさったということを聞いて、ちょっとさびしい思いをしたこともございますが、今度の暫定手当は、その意味で人事院の考え方はかなりにいいのではないか。東京地方と格差を縮める、わずかであるが、初任給も上がる、こういう考え方が暫定手当改正の内容なのではないか、こう思っておりますが、今申したように、今度の勧告に対して――すみやかという言葉を使っているのですよ。(「比較的という言葉がついているよ」と呼ぶ者あり)すみやかという言葉に比較的という言葉はございません。すみやかにやってくれということにこたえる場合に、財政的措置が難点なのか、内容において難点があったのか。私ならば、財政的にも年間六億八千万を三年間かかってやるというこのやり方、内容的にも初任給あるいは地域格差を縮めて、給与体系としてはいい方向へ向かう傾向にある、こういうふうに私に思っておるものですから、すみやかにやれない政府は、一体財政的なのか、内容的に危惧があって問題を伏せているのか、どっちなのでございましょうか、これをお聞きしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/4
-
005・福永健司
○福永国務大臣 公務員が全体の奉仕者であるという特殊な地位にかんがみまして、一面において争議権等においての制約があるが、同時に、反面において、給与あるいは勤務条件等について法律でいろいろの保障をいたしておる。そしてまた、人事院という制度がございまして、これが給与その他について勧告を行なう。この制度は、私は現在の日本において適当な制度であると考えておるところであり、政府はこの勧告を尊重しなければならぬということに当然なるわけでございます。人事院がしばしば政府の顔色を見ておられるかのごとき表現がありましたが、これは私どもから申しますと、むしろあべこべで、顔色なんかなかなか見ていただけるというわけには参らぬのであります。しばしば政府の力でも、容易ならざる決意のもとに処置しなければならぬ問題等も経験をいたしておるわけでございます。人事院は非常に公平にやっておられるというように私は認識いたしておるのでございます。
そこで、御指摘のようなことになっていることについては、財政的な措置からないしはそういう顧慮からそういうことになったのかどうかというような御質問でございますが、これは大蔵大臣でない私が申し上げるのはいかがかと思いますけれども、わが国の現在の財政状態全体から見まして、金がないからできないんだということは言えないと思います。といって、今度私がいろいろ折衝しました経過において、大蔵省の方でそれは出そうと言っておったかというと、必ずしもそうもいかない、正直に申し上げますと、そういうわけなんでございますので、財政的な理由からできないとは申さない。とは言うものの、財政当局がやることに率先賛成してくれたかどうかということにつきましては、必ずしもそうとも言えないのでございます。そこで、先ほども申し上げましたように、政府全体の意見を取りまとめた総合的結論が、そういうわけに参りませんでしたという表現をいたしたわけでございます。しかし、これは今も御指摘になりましたように、すみやかに処置しなければならぬということにつきましては、私どもも強くこれを認識いたしておるところでございます。今後も大いに努力いたしまして、できるだけ早く、こういうように考えておる次第でございます。できるだけ早くというようなあいまいな話じゃいかぬというおしかりを受けるかもしれませんが、これからも、いろいろこうしたことについて閣内においても発言する機会もあろうと思いまするし、また、おのずから適切な時期もあると考えておりますので、一そうの努力をいたしたい、こういうように存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/5
-
006・石山權作
○石山委員 公務員室長がおいでになっているから、こまかい点、ちょっと参考に聞いておきたいと思いまするが、公務員のベースは今どのくらいでしょうか。それから人数が概略どのくらいになっているか。それから今までの例からいいますと、公務員がこういう給与をきめると、地方公務員あるいは三公社五現業もややそれにならってやっていくわけです。大ざっぱにいって、政府が公務員に六億八千万を初年度の所要額とすると、三公社五現業の初年度の所要額あるいは地方公務員の初年度の所要額は概略どのくらいになるか、お知らせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/6
-
007・増子正宏
○増子政府委員 ただいま御質問の職員の給与のベースでございまするが、一般職の給与法の適用を受けます職員につきましてのみ申し上げますれば、いわゆる平均給与月額、俸給と扶養手当と暫定手当を加えたものでございますが、この金額は、実は調査の時期によりましていろいろとこの数字は変わってくるわけでございまするが、人事院の調査によります昨年、つまり、三十六年四月の現在におきましては、二万五千百七十円、これは今申しましたように、三十六年四月現在におけるものでございます。最近のものにつきましての調査の数字はございませんので、それを申し上げたわけでございます。なお、今の二万五千百七十円というのは、その後、昨年の十月からいわゆる七・一%の給与改定をいたしましたので、その分をそれに単純に加えますと、二万六千九百六十七円、約二万七千円程度になるわけでございます。
それから人数でございますが、人数は、大体一般職の給与法の適用を受けますものは、大まかに申しまして、四十万程度でございます。その他、特別職あるいは五現業等がそのほかにあるわけでございます。
それから所要の経費でございますが、人事院の勧告通りに実施いたしますと、大体三年間で行なうことになるわけでございますが、その第一年度の経費を財政当局で概算しました結果を申し上げますと、一般会計で約二十億でございます。これはもちろん、一般職の国家公務員のほかに特別職もそれに準じて行なうという前提、それから地方公務員も同様に大体それに準じて行なうという前提のもとにおける計算でございます。すなわち、地方公務員であります義務教育職員の国庫負担の二分の一を含めまして一般会計で二十億、それからいわゆる五現業は特別会計になりますので、なお、この暫定手当の扱いは必ずしも一般職と同じではございませんが、かりに同様にやるといたしまして計算いたしますと、特別会計分として約九億、そのうち五現業が八億で大部分でございます。九億のうちの八億程度が五現業、それからいわゆる三公社等を含めました政府機関関係、これは直接政府の予算ではございませんけれども、それを推算いたしますと、約十二億、それからさらに地方公共団体、府県、市町村が国家公務員に準じておるというようなものといたしますと、地方のいわゆる純粋の負担分としましては三十二億程度、従いまして、これらを全部加えますと、約七十三億程度の金額になるわけでございます。これがいわゆる第一年度の見込みでございます。第二年度、第三年度は、職員構成その他で若干の相違は出てこようかと思いますが、おそらく三倍程度は考えられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/7
-
008・石山權作
○石山委員 内容の問題については、大臣、あまり疑義がないのでございましょうか。現段階という言葉でもけっこうですが、人事院の勧告の内容についてはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/8
-
009・福永健司
○福永国務大臣 内容は、先ほども申し上げましたように、過般人事院の勧告によりまして、給与の改定をいたしました。その後にこれが出て参りましたという意味において、底上げ方式によるというこの方法では、その部分に関する限りにおいて、民間給与との格差上の問題はどうかというようなことについての議論は出ておるわけでございます。これは決して閣内不統一とかなんとかいうことではございませんが、一つの結論に到達します前に、大臣によりましていろいろそれぞれの立場よりの議論があるということは、これは御理解をいただきたいと思うのであります。人事院がせっかく御検討願って何したのであるから、人事院もいろいろのことを考慮されて出されたというように了承いたしまして、これをうのみにして実施したいという気持の者も一部ございますし、またしかし、それでは一貫した公務員給与のあり方としてどうかというような意見等もございました。これは他日遠からず、そういうことについての意見の調整は一刻も早く行なわなければならないことは申すまでもないし、その方向に向かって第一私が努力しなければならないことでございますので、そういたしたいと存じておるのでありますが、まあ、いろいろ申しましたような意味で、若干内容に触れるところもあると思うのです。と申しましても、さりとて、それじゃ人事院から申してこられたのと違った内容でやるとなると、どうしてやるかということになって、さらにめんどうな問題になってくると、私自身はそう考えておるわけであります。そこいらのことも考えまして、これは率直に申しまして、また、人事院は作業をしておられるのでしょうが、民間給与の状況等について、御調査を願い、御報告を願うというのが、また近く――近くと申しましても、数カ月後になりましょうが、それを申しますと、それまで考えないのかといっておしかりを受けるかもしれませんが、それまでに絶えざる努力はもちろんいたしますが、たとえば一つの目安のものとして、これは正直過ぎるかもしれませんが、申しますと、そういうこと等もあり、従って、これらの点を総合的に考慮しつつ、できるだけすみやかにこの検討を終わっての実施に移りたい、こういうふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/9
-
010・石山權作
○石山委員 最近、国会の中で、国会の正常化ということが大へん問題になってきておる。国会の正常化ということは、いろいろあるようであります。暴力をふるってはいけないとか、多数決の原理を尊重しなければいかぬとか言っておるようですが、それは表に現われた一つの形式だと思うのです。真に国会の正常化をはかるということは、国会で論議された国会の意思、国会の論議の精神、そういうふうなものが尊重されることが、大まかに言って国会正常化の要素をなすものだと思うのです。暫定手当の問題については、長年論議をされてきております。何も前国会とか、今国会にこの問題は論議されておるのではない。長い間論議されて、その不合理を指摘され、今日にきて、少しでもその不合理性をば是正する方策の一つとして出されたのが、今度の人事院の苦心の作品だ、こう私たちは見ているわけです。この問題は、たとえば先ほど増子政府委員から説明を受けたのですが、公務員ベースの中で、今どのくらいか、二万六千九百七十円という数字が一つ提示されております。これに一・二%かけると、どのくらいの金額かということです。これはあなたもさっき言われておる財政的措置の問題とは別に、何か考え方があると思う。その考え方の一つとして、私は、労働組合の諸君が春闘を戦うというかけ声の前に、政府として、たとえ三百円であろうと五百円であろうと、賃上げをするのは、民間を刺激するだろう、春闘に油を注いでやるような結果になるだろう、こんなところが、一つの対策として人事院勧告をば延ばしておる要素なのではないか、こういうように思っております。
私は、この案の一つのよさをちょっとお話ししたいのです。せんだって、私の方の高輪宿舎で、お手伝いさんが少ないが、どうしても採用できない。私などもお手伝いして、舎長をばわざわざ東北の方まで出張願いまして、そうして採用したのです。採用の契約はしたのですが、人はまだ来ません。中学校を卒業して、三食をおあげして七千円の契約です。全く宝物のようにきめました。
増子さん、公務員の初任給は、全部諸手当入れて幾らになりますか、ちょっと大臣に教えてやって下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/10
-
011・増子正宏
○増子政府委員 公務員の初任給ということでございましたが、それぞれ資格によって初任給が違っておりますけれども、大学卒業公務員のことについて言えば、初任給は一定の基準によってきまっております。中学卒業程度ということによりますと、職種にもよりますけれども、技能労務関係で言いますと、五等級の一号俸におきましては、七千六百円というような俸給でございます。それに東京の場合でございますと、約千円程度の暫定手当がつくわけでございます。定期的なものとしましてはその程度でございますが、かりに扶養家族がございますれば、それに扶養手当が六百円あるいは四百円というふうにつくわけでございます。大体その程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/11
-
012・石山權作
○石山委員 大臣、お聞きになったでしょう。ですから、ほんとうから言えば、皆さんの方でそういうふうな政治的配慮をするだけの余地が公務員にはないわけなんです。国家に奉公させる、国民に奉仕さするのが非常に大きな部面を占めている公務員という性格は、私も是認します。しかし、国民に奉仕するには、やはりきちんとした建前でなければ奉仕ができないわけですれ。いい人も来ないと思います。皆さんの要望する、素質がよくて、皆さんの言い分をよくお聞きになって、国民に奉仕するような公務員、こういうふうなものをお選びするということであれば、私どもは東北までわざわざ汽車に乗っていって、そうしてこの四月に出る人を契約するというくらいにしないと、いい人は手に入らぬという現状でしょう。それが一部には、内容、格差を縮めることに不賛成もある。何だかんだいろいろなことを考えてみて、どうも決定をば延ばしているということは、どうしても政治的配慮をしているのではないかという印象でございます。もちろん、公務員の給料で民間に刺激を与えるという政治的配慮は、全然無視はされないと思います。無視はされないと思いますが、その場合においては、民間よりも公務員の給与が非常に優位であるのだ、こういう例証がはっきしてないと、そういう政治的配慮というものは、いたずらに給与体系というものをばゆがめると思います。私どもは常に考えておりますが、給与というものは、政治的配慮、思想的配慮というふうなものとは別個のものだ。そうでしょう。生活です。賃金というものは、労働に応じた代償であると同時に、そのことが、即われわれの生活につながるのでございますから、共産党の諸君だから給料が安くていいというわけはございません。ましてや、社会党だからといって……。生活というものはそういうものなんです。賃金というものはそういうもので、努めて独立したものの考え方で算定をされ、そうして支給をされなければいかぬと思うのです。それが延びているのは、やはり何と申して毛政治的配慮をしておる。政治的配慮をすることを一部私認めているから、あなたが本格的にこれを実施するという気がまえは、一体どこら辺までいくと熟するのでございましょう。来月、三月二十日、三月三十一日、どこらあたりに行ったら、あなたの努力が実際の形になって現われるでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/12
-
013・福永健司
○福永国務大臣 まず、先刻お話のございました春闘のことも考えてこういうことにしたのかというお言葉に対してでございますが、私自身よく考えますことは、労働大臣たる立場と、給与を担当する国務大臣であるということの調整は、私自身もなかなかむずかしいと思っております。しかし、今おっしゃいましたような意味においては、労働大臣たる立場におきましては、常に労働者諸君にも深く理解を持ち、同時にまた、経営の方面にも関心を持ちということでもございますので、従って、ある場合には、かえって都合のいいこともないとも言い切れないと思うのでございます。私個人としましては、なかなか苦しい場合が多いのでございます。それゆえに、一そう、今おっしゃいましたようなことにつきましては、春闘を考えて今度の問題をそういう方向へというようなことは、さらさらございません。それはむしろ私は逆に考えておるわけでございます。労働者諸君の立場については、努めて理解を持って処理していきたい、こういうように考えておる次第であることを御理解いただきたいと思います。
そこで、後段の、非常にこまかく期限をお切りになって、三月二十日、三月三十一日とかいうことで、どの辺で努力の実が結ぶのだという御質問でございますが、とにかく三月中に実を結べば新年度からということでございますので、予算の執行と時期を同じうするということになるわけでございますが、それなら大へん私もありがたいと思うのであります。実際問題としては、なかなかそうはいかぬのじゃないかというふうに、実は私心配いたしておるわけでございます。といって、年度中はとてもいかないのだといって投げかかっているという意味じゃございません。これは大いに努力をしなければならぬと思うわけでございます。
なお、格差についてお話がございましたが、私は、労働大臣たる立場においては、年令的の格差がかなり縮まってきておって、ことに初任給が若い人について特に上がっておる、この状況は、雇用の事情全体が解決されてきておるので、いろいろに見られるのでありますが、全体としてはいい方向に行っておるというふうに考えております。一般にはそういうわけで、若い人を雇うのにうんと高くなって困るという声がございますけれども、労働大臣としては、漸次高くなることもけっこうなんでございますので、今申し上げたような率直な気持でいるわけでございますが、今暫定手当につきまして問題の点は、地域格差について、民間の事情等を、すでにわが政府が給与改定を行なって現実に実施しておりまする状況等と比較いたしまして、今度の勧告通りにすると、民間の実情とそぐわないことになりはせぬかというような見方も一部にございます。これが支配的であるとは決して申し上げるのではありません。そういうこと等もさらに検討して、政府全体の関係者に納得してもらって、実施するように努力をしなければならぬ、こういう事情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/13
-
014・石山權作
○石山委員 この前、日米経済委員会を開く前に、あなたに来ていただいて、私ちょっと質問を申し上げたのですが、そのときのあなたの言い分は、事外交に関する問題でもあるし、日本の賃金が高いの安いのということを論ずることはこの際避けてもらいたい、こういう発言もありまして、私は、あのとき、その問題については触れないで過ごしておりましたが、やはり私が言った通り、だいぶあなた、アメリカから低賃金については言われたと私思います。今度の綿布の問題等を見てみましても、やはり日本の低賃金というものが、日本の貿易をかなりに押えている――と言うことが適当でないとすれば、貿易上から見て阻害をしているのが、日本の賃金問題だというようにわれわれは考えております。これは労働省から出された資料を見ますると、名目賃金では九分の一であるが、実質は五分の一だとか言ってみても、五分の一だって、あなた、これは大へんな話でしょう。九分の一が六分の一になったから、あるいは五分の一になったからで、これは済まされる問題でないと思います。その中においても、公務員は、一年前の民間の組合労働者の賃金の平均を横すべりさせておる。ですから、公務員の給与を算定する場合には、人事院としての妙味もないだろうし、出た数字は、どこへ出しても、公務員の給与は高いのだ、ひどいではないかという声がある余地がないというのが、私は現在のやり方ではないかと思います。地域格差に対して、かなり問題があるというようなことも言っておりますけれども、論じられた問題は、地域格差を是正するということなんですね。われわれがここで長年論じていたのは、いわゆる物価指数にそぐわない地域格差の指数、終戦後の食糧難のためにできた地域給を、今日までそのままにしておくというのはけしからぬというので、第一次があの通り底上げをしてもらい、今度は第二次ということになるのですが、その点では三年でなしくずしをするわけですから、実際行政上から見て何ら差しつかえないと考える。たとえば、暫定手当というのは、民間との比較でどうかというと、全国的に、あるいは三つか四つの県にわたっている民間の会社では、全部地域給は支給されております。ほとんどと言っていい。これは労働省であなた調べさしておるだろうから、一番わかるだろうと思うが、薪炭手当もやはり出すという形をとっておりますから、その意味では、私たちは、公務員だけが特にこの暫定手当を利用して、底上げ方式に便乗しているなどという批判は、生まれる余地がないと思います。私があなたの御意見を聞いていますと、人事院の勧告をば内容にして、これを予算化に努力したいという意向のように聞えます。聞えますが、施行期日に対してはどうも確信のないような、確信というよりも、責任の所在を明らかにしたくないということでございましょうけれども、それでは困ります。われわれが給与の担当大臣を求めたというのは、そうでなければ、今までのように総務長官でもよかったのです。それを無理に閣議で発言のできる大臣の資格を持った方を給与大臣にしなければならぬという社会党の意見は、そこら辺にあるのだろうと思う。責任を回避しないで、責任ある答弁をしていただく、これが公務員の労働運動の正常化に役立つ、こういうようにわれわれは理解をしておったものですから、あなたに無理にも担当大臣になっていただいたのであります。公務員の給与になると、ジャーナリストもあまり筆をとってくれないが、この暫定手当にはいい題目をつけてもらっているのです。地域格差をば縮める、人事院の意図している支給は年度当初からである、こういうふうに書いておるのですが、あなたは一体目標をどこに置いていただいておりますか。閣僚で、一部異議のある閣僚は御説得なされ、それから財政的には大蔵当局とも折衝なさるわけでしょうが、一体どこをめどにしてやっていただけるだろうか。やはりそのめどをこの委員会に一応示していただかないと、きょうあなたにおいで願った意味がなくなると思いますので、ちょっと苦労だと思うのですけれども、大体のところを一つ明示していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/14
-
015・福永健司
○福永国務大臣 一部御理解をいただきながら、おしかりをいただいているような格好でございますが、これはやむを得ないと思うのであります。初めにおっしゃいました、いわゆる低賃金の問題ですが、私は、日本の現実をことさらに事実でないように伝えようなどということは、一切考えておりません。確かにアメリカなんかに比べれば、低賃金であることは申すまでもないのであります。ただ、ヨーロッパの一部なんかとはさして違いのないようなこともあるのに、よく日本の繊維製品等の輸入について、アメリカ等で、低賃金なるがゆえに、そういうところから入ってくる品物は制限しようじゃないかというような議論が出るということにつきましては、これは非常に警戒を要するし、また、そういうことにならないような努力をしなければならぬ、こういうように考えておるわけでございます。国民経済全体の中に適当な均衡を保ちつつ、生産性の向上とも見合って、逐次賃金ないし勤労所得が上昇していくということは、私は衷心願うところでありまして、さればこそ、先ほどもちょっとお話もありました賃金部というようなものについても、非常な熱意を持っている次第でございます。一部私の考えていることと全然逆のこと等が、新聞等にも書かれておりましたが、これはこれから、先ほども石山さんが御指摘になる法案等の審議の過程において、いろいろ御検討いただけば、おのずから明らかになると思うのであります。賃金に関する係みたいなものが、労働省以外の役所にもございます。大蔵省等にもございますが、労働省のこの機関を強化することこそが、真に労働者諸君の立場においてもいいことになろうということは、私は絶対確信を持っておるのであります。そこで、そういう立場である私がこの給与を担当いたしておりまして、時期的にあまりはっきりしたことを言わぬという意味で、今おしかりもいただいておるのでありますが、私は私なりにかなり執拗に、かつ強く主張を続けておるのであります。いつからと言われますと、何しろ私自身が財布を握っているわけじゃないので、どうもそこまでいきますと、ぐっと詰まってしまうわけでございます。私自身が財布を握っておりますと、それは思い切りのいいことが言えるのでありますが、ここで皆さんとともにおりますときは、ほんとうにうんとふやしてやりたいようなことを言いたい気持になるのでありますが、なかなかそうばかりもいかないのでございます。そこで、先ほどは、別にそれが目安であるということで申し上げたわけではありませんが、人事院の方でもまた調査をなさって御報告になる、そういう機会もとらえなければならぬというような意味の表現もございましたが、そのことは、私の考えておる一つの時期でもございますけれども、おそらくそれでは、そんなぐずぐずしていていいかといって、おしかりを受けるだろうと思います。私は私なりに、これは一刻も早くというふうな念願なのでございますが、なかなかそういうことの手がかりということになると、むずかしいものでございます。しかし、本来考えてみますれば、すでにしてこの勧告が出ており、考え方の筋としては、私の前任者等も、ないしは違った閣僚諸君等も、ことにまた速記録等を見ましても、大蔵大臣というような立場のものも、勧告が出たらどうしたいというようなことをしばしば言っておるのでございます。内部におきましては、この種の発言は私もしばしばやっておるのでございます。そういうような過去の経過等にかんがみましても、より一そう私は声を大きくいたしまして、今後、皆さんの方でおっしゃいますようなお考えを実現に移すべく努力いたしたい、こう存じておるのでございます。明確な何月からというようなことについては、なおしばしお許しをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/15
-
016・石山權作
○石山委員 きょうお呼びして今すぐということは無理かもしれません。しかし、これは去年の十二月十四日に勧告をされているのですから、私らに言わせれば、無理ではないというふうにも考えられます。しかし、委員会としてはあなたをお呼びするのは本日が初めてでございますから、一歩譲りまして、考えていただきたいと思いますが、労働省の設置法、しかも、名前が賃金部でございます。この案の論議のうちにあなたは集約を説明される義務が当然出るし、その立場に立たざるを得ないのではないかというふうに私は思っております。ゆっくりこの法案を審議しながら、あなたの努力を私はこいねがうわけでございます。大臣に対しましては御努力を大いにお願いを申し上げて、質疑を打ち切りますが、大蔵省からおいでになっているだろうと思いますので、大蔵省の方に二、三質問したいと思います。
大蔵省の方に、これは将来にも私ら参考になるだろうと思ってお聞きするわけですが、つまり、国家予算の経常費の中に占める給与というふうなものの位置づけ、こういうふうなものを大蔵省ではやっていられて、人事院勧告に対してはたとえば、五月からやってもらいたいという勧告があっても、これを十月に延ばすというのは去年の例でしたが、何かそういうふうな確実な位置づけがありまして、そういうふうに延ばしたり――縮めることなんかは一ぺんもないのだから、延ばしたり額を減らしたりするわけですが、何か位置づけがあるわけですか、ありましたら一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/16
-
017・平井迪郎
○平井説明員 ただいまの御質問の趣旨は、私どもが理解する限りにおいては、たとえば一般会計の人件費の総額が、一般会計予算規模に対して何%であるべきだとか、そういう観点で何か基準があるかという御質問というふうにとってよろしゅうございますか。――もしそういう御趣旨の御質問ならば、特別にそういう何%でなければならないというような観念はございません。ただ、現在のところ、結果的には、防衛関係の予算と防衛関係人件費をそれぞれ除きまして、その場合の一般会計予算規模に対する人件費の比率はたしか九・何%であります。ちょっと正確な数字は覚えておりませんが、九・何%、一〇%未満であるというふうに覚えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/17
-
018・石山權作
○石山委員 その九・何%というのは、最近の三十二年以降なら以降、経済界が一応三十三年に落ちついたとすれば、三十三年からそういうふうな実績になっているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/18
-
019・平井迪郎
○平井説明員 ちょっと私、手元に正確な資料を持っておりませんが、必ずしも同じ比率ないしは同じ答えが出ておるわけではございませんので、年度によりまして若干の壊滅をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/19
-
020・石山權作
○石山委員 そうすると、比較的今度の人事院勧告が高いとかということになるわけですね。もっとも、今の給与は、そういうふうなきちっとしたものは人事院の中にはあるのだろうけれども、受け取るわれわれとしては、比較論が非常に雑なわけです。もし大蔵省が正確におやりになるとするならば、僕らとしては、たとえば去年よりもことしの予算が大へんふえるわけでしょう。ふえたならば、当然給与がかなり上がるか、人数がかなりふえるかしなければならぬのではないかという、これは大ざっぱな考え方ですが、そういうふうにならなければならぬ。それなのにもかかわらず、どうも賃金もちびったりちびったりで、定員化もさっぱり行なわれないとすれば、基準はあってもなきがごとく、大蔵省がそのときの貿易じりを黒にするとか赤にするとかという苦労のために、そういう人件費をいじっている向きがあるのではないか。地方財政の交付金なんかもそんな格好でいじるのではないか。大蔵省は数字をいじっているのが非常に厳格なようだけれども、実にだらしのない、政府の御用機関になって査定しているのではないかというような印象も受けるわけですが、最近は九・何%くらいでずっとやってきたというと、今年度は九・何%ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/20
-
021・平井迪郎
○平井説明員 ちょっと私今手元に資料を持っておりませんので、あとで正確にお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/21
-
022・石山權作
○石山委員 そういうふうな見方というもの、たとえば総事業費に対する人件費は、やはり外国でもあるところではやっているわけですね。だから、そういうことで皆さんの方でおやりになるとするならば、そういう意図をやはり示していただかないと、われわれ関係者としては非常に困るわけなんですね。問題の論議の仕方が、比較的多いとか、比較的少ないとか、比較的高いというような感じで給与問題を論ずるとすれば、非常にたよりのない話だし、それから問題がこじれると、財政当局である大蔵省がいい顔をしない、何でもそこに落ちていく傾向もありますし、そういう場合には、大蔵省、給与当局としては、われわれを納得さすような説明が行なわれなければ、延ばす原因というものは、非常に政治的な配慮だけで行なわれるということになっちゃうわけなんです。たとえば今度の暫定手当の問題にしても、かなり大蔵当局ではサボる――否定しているのでもないでしょうけれども、あまり好意的に問題を論じないで今日まできた。こういうことをあなたにお聞きしてもなかなかいかぬと思いますが、あなたは当面の給与課長さんだから、そういう意味でやはり検討をなさっていたと思う。ふに落ちなくて、やはりあなたなども、もう少し待てと言った方の組ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/22
-
023・平井迪郎
○平井説明員 諸外国との比較の問題でございますが、われわれいろいろな観点から議論をいたしましても、日本の一般会計の場合と、たとえばアメリカの場合、その他の場合、いろいろ考え方、立て方が違っておりまして、直接的な比較は非常に困難でございます。それから、少なくとも一般会計に関します限り、一定の事業量を達成するために一定の人件費が必要だというような考え方はいたしておりません。事業会計等でありますならば、原価計算などの過程において、人件費がその中に入ってくることは考えられるわけでありますけれども、少なくとも一般会計におきましては、そういうこととは別途の観点で人件費というものは考えられているわけでございます。それじゃどういう観点かということになりますと、結局は人事院勧告を基礎にいたしまして、民間企業とのバランスにおいて、あるいは生計費その他の観点に立って考えられていく。これは政府全体の立場において御決定いただくわけでありまして、その限りにおいては、大蔵省がそういう意味において予算の規模との関連においてチェックするというような性質のものではないというふうに了解しております。
それから今回の暫定手当の問題につきましても、大蔵大臣もかつて申し上げておりますように、筋としては、当然これは整理していくべきものであるということは、大蔵大臣以下のお考え方でございまして、私どもとしても、その点当然同じようなわけでございます。ただ、先ほど給与担当大臣からもお答えがあったと思うのでございますが、今回直ちに三十七年度予算に暫定手当の整理の財源を計上しなかったという理由は、財政上の理由ではなくて、むしろ、民間給与との比較の観点において、直ちに三十七年度当初から実施すべきものではないという決定に達したものというふうに伺っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/23
-
024・石山權作
○石山委員 そうすると、大蔵省の事務局、担当課長さんとしても、あえて内容その他について疑義を持っていないということに、私解釈してもよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/24
-
025・平井迪郎
○平井説明員 ただいまの御質問の趣旨がよくわからないのでございますが、内容その他について疑義がないという意味は、どういう意味でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/25
-
026・石山權作
○石山委員 内容ということは、皆さんの方では、財政的にそのことによって規模がふくれて困るというわけではないから、聞くところによれば、大蔵当局でこの問題に対して疑義があって進まぬというふうに聞いているものですから、今あなたの御意見を伺うと、整理をしなければならないという原則に賛成なさっていられるわけです。ですから、民間との関係だといえば、公務員自体としてはそんなに逡巡する要素は少ないと思うのです。その意味で、事務的な当事者としては、人事院勧告には今のところ疑義がないのか、こういうふうに聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/26
-
027・平井迪郎
○平井説明員 人事院勧告の内容そのものに疑義があるかという御質問でございますならば、特別の疑義はございません。ただ、こういうものを実施する場合におきましては、先ほど給与担当大臣も御説明なられたと思いますが、こういった形での底上げ方式による俸給の繰り入れを行ないますならば、官民給与の格差に影響を及ぼすということにもなりますので、その限りにおきまして、今年度の給与についての人事院調査というものとあわせて考えていくのが妥当であろうという結論で、閣議で御決定いただいたものというふうに伺っております。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/27
-
028・中島茂喜
○中島委員長 次に、外務省設置法の一部を改正する法律案、在外公館の名称及び位置を定める法律の一部を改正する法律案及び在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案の三案を一括議題とし、質疑を継続いたします。
質疑の通告がありますので、順次これを許します。緒方孝男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/28
-
029・緒方孝男
○緒方委員 私は、本日は、外務省設置法の中の重点問題にあげられておる経済協力局設置の問題についてお伺いいたしたい。
その前に、ちょっと事務的な問題ですが、外務省設置法の第四条の権限の中に、たしか二十六号だと思いますが、この二十六号の存在は今日まだ必要なのでございましょうか。「朝鮮、台湾、樺太、関東州、南洋群島その他の地域における日本の公私の財産及び負債並びに企業その他」という文章がありますが、この条項は今日なお必要であるかどうかということを、一つお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/29
-
030・湯川盛夫
○湯川政府委員 これは終戦の当時、拓務省とか関東庁とか、そういった役所がみな廃止になりまして、そういった事務を一切便宜上外務省に移管になりまして、そういった整理事務をやってきたのであります。相当な部分は片づいたのでありますが、まだ若干は外地事務整理というので残っておる部分があるので、これは残っておるのだと了解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/30
-
031・緒方孝男
○緒方委員 残務整理のためにあがっている問題だろうと思いますが、すでに終戦後相当な期間がたってしまいました。まして、その文章の中に、関東州とか南洋群島とかいうふうな旧日本統治当時の名称を、そのまま日本の法律の中に明示をしておくということは、あまり好ましくない問題ではなかろうかと思われますので、もう適当な時期でありますなら、外務省の方からこの条項は一つ削除していただいて、そうしてなお残存事務があるとするならば、他の方法でこれを処理していただく方が適当な処置ではなかろうかと思いますが、次官からでもよろしゅうございますが、御見解を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/31
-
032・川村善八郎
○川村(善)政府委員 ただいま官房長からお答えをいたしましたように、残務整理という形で残しておるということでありますが、これらはだいぶ片づいたということでありまするので、外務省といたしましては、研究をいたしまして、あなたの言ったような処置を早くとった方がいいのではないか、かように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/32
-
033・緒方孝男
○緒方委員 私はそういうふうな気持がいたしますので、早急に御検討いただいて、できますならば、この設置法の結論の出るまでに御善処方を一つお願いしておきたいと思います。
次に、今度の改正の要点として、経済協力部というものを新たに局に作り上げるということですが、それについても、もう一つ事務的にお伺いしておきたいのだが、第八条のアジア局の中の第四号に、これまた「賠償及びこれに伴う経済協力に関する条約その他」という文章が入っておるわけですが、そうしてみますと、同様事項を経済局がこれを担当局として遂行すると同時に、アジア局においても同様の作業を行なうということになりますと、これは作業の競合が起こりはしないだろうかという一つの懸念を抱くわけですが、この点に対する御見解を一つ承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/33
-
034・湯川盛夫
○湯川政府委員 アジア局の方に書いてございますのは、「賠償及びこれに伴う経済協力」、つまり、賠償及び賠償に伴う経済協力、それから一般的な、賠償に必ずしも伴っていない経済協力というものは、今度は経済協力局の方でやる、そういうふうに書き分けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/34
-
035・緒方孝男
○緒方委員 その点が非常にあいまいなものになりますと、経済協力そのものの内容を一つ一つ分類していかなければならない問題になりはしないかと思うわけです。たとえば今度のタイ国のような場合は、最初の方においては経済協力の面でやるのが、今度ははっきり賠償ではありませんが、特別円の補償になってきた。こういうふうに非常に複雑になってくるので、経済問題については、少なくともこれは経済協力の部面に一切含めるというのが至当ではなかろうかと思うのですが、やはり別個にしておかなければならない問題かどうか、その点も一つお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/35
-
036・湯川盛夫
○湯川政府委員 賠償協定の場合に、よくそれに伴う経済協力の協定が同時に結ばれたりしまして、賠償と賠償に伴う経済協力は、かなり緊密な関係にありますので、なるべくならばそれを一括して担当する方が都合がいい。これはそういうものと全然関係のないものも、しいて今度は賠償の方で扱う必要はありませんから、それは経済協力ということにしております。むしろ、それは実際問題としては必ずしもきちっと分け切れないのでございます。それはそのときの便宜で、その沿革等を調べて適当なふうにやって参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/36
-
037・緒方孝男
○緒方委員 私は、もちろん、賠償及びこれに伴う経済協力に関する条約を締結するまでの作業は、これはアジア局でつかさどるのはけっこうだろうと思います。その「約束の実施に関すること。」と実施という文字が入りますと、これは実施の段階になれば経済協力局の方に移すが至当ではなかろうか、こう思うわけです。賠償に伴う経済協力に対するところの条約締結まではアジア局でやるにしても、実施の段階になればこれは協力局の方に移すということが、作業の一貫性を見て、能率的に行なわれる性質のものではなかろうかと思いますが、その点はどうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/37
-
038・湯川盛夫
○湯川政府委員 いろいろ研究を要する問題だと存じますが、従来私どものやっておりますのは、賠償問題というのは、締結ないしその後も、かなりやはりこれはアジア局のいろいろな政策問題とも関係が深いのであります。これにも書いてありますように、「条約その他の国際約束の実施に関すること。」、実施の面もアジア局についていた方が便利である。そこで、賠償及び賠償と密接な関係をしておる経済協力、そういったものは、アジア局についておる賠償でもって行なう、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/38
-
039・緒方孝男
○緒方委員 あえて私はこの文書に拘泥するわけでもありませんが、あなた方がなさるお仕事が最も円滑に、なわ張り争いが起こらないことを希望して私は言っておるわけですから、その点はそれ以上追及しようとは思いませんが、御検討はなさるべき問題ではなかろうかと思います。
次に、私は、経済協力という問題で、この前、経済局の人がインドあたりでずいぶん活躍しておるというお話をなさっておりましたが、経済協力ということの定義と申しますか、その内容と申しますか、この点について明確にしておく必要がありはしないかというふうに考えるわけです。アメリカあたりにおきましては常に経済援助と、こう言われておる。日本の経済協力は、アメリカが言われるような援助も内容に含んでおるのか、おらないのか、その点も明らかにしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/39
-
040・鶴見清彦
○鶴見説明員 ただいまの御質問の点につきまして、わが国では常に経済協力というふうに申しておりますが、この前のこの委員会で若干御説明申し上げましたごとく、経済協力と一般的に言っておりますものを、二つに分けることができるわけでございまして、それは、一つはいわゆる資金協力、もう一つが技術協力であります。ただいま御質問がありました、アメリカではこれを経済援助というふうに言っておるというお話がございましたが、アメリカの一番最近の動きといたしましては、これを陶発援助という言葉で使っておりまして、現実には、援助というものが、何か援助を与える国と援助を受ける国との関係が、少し上下の関係のようなニュアンスを与えるものでありますから、最近は援助という言葉のかわりに協力――援助を受ける国も与える国も、両方が一緒になって、その援助を受ける国の経済開発及び民生の安定、向上に資そう、アメリカで最近言っておりますいわゆるパートナーシップといいますか、それの思想であります。従って、最近、この援助という言葉はだんだん使われなくなって、むしろ協力という言葉が使われてきておるような状況でございます。わが国の行なっております経済協力の内容につきましては、この前の委員会の席で御説明申し上げました通り、資金協力と技術協力がございまして、技術協力の中には、研修生の受け入れとか、専門家の派遣、あるいは海外技術センターの設置とか、あるいは投資前の基礎調査のための調査団の派遣というような方法がございます。さらに、資金協力の面につきましては、具体的な資金の贈与の問題もございますし、さらに有償借款の供与、あるいは延べ払いワクの設定、そういった方法がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/40
-
041・緒方孝男
○緒方委員 アメリカが援助と言うてきた範囲には、もちろん有償のものもあったが、無償のものもあったというふうに考えられる節がある。協力という言葉に変わっても、やはり内容には変わりがない、無償のものもあり、有償のものもあるというふうな解釈をしていいものかどうか、その点を一つ明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/41
-
042・鶴見清彦
○鶴見説明員 アメリカの援助と申します場合は、御指摘のありました点につきましては、御指摘のように無償のいわゆる贈与、それから有償の借款あるいはクレジットというようなものと両方ございます。最近のアメリカの傾向といたしましては、無償の贈与というものをだんだん減らして参りまして、むしろ有償の借款といろ方へ変わりつつございます。ただ、その有償の借款の期間というものが、非常に長い期間になりまして、デベロップ・ローン、開発借款という言葉で呼んでおりますが、長いのは五十年の期間、ほとんど贈与に近いような形でございます。贈与よりは、期間は長くてもやはり借款という形の方に次第に移りつつございます。しかしながら、援助の観念の中には、贈与と長期の借款というものと両方ございますことは、御指摘の通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/42
-
043・緒方孝男
○緒方委員 アメリカがそういう傾向に動いておるというのは事実でございますが、日本の経済協力の内容というものに、将来無償か有償かという問題が考えられるときに、無償というものは考えられないのだということがはっきり言われるのかどうか、その点を明らかにしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/43
-
044・鶴見清彦
○鶴見説明員 ただいままでに日本でもって対外開発援助諸国に行なっております経済協力のうちには、先ほど申し上げましたごとく、資金協力と技術協力と両方ございまして、技術協力はすべて無償でやっております。全部日本の政府の予算で専門家を派遣いたします。それから開発途上にある諸国から研修生が日本へ参りまして、研修を受ける場合も、その旅費、滞在費はすべて政府が負担するわけでございます。従って、技術協力の面におきましては贈与という形になるわけであります。ただし、資金協力の場合になりますと、これも無償だということになると、賠償との関係もございますし、なかなか現在の日本の国情では、資金協力の面での無償ということは困難であります。ただ、例外として、すでに御承知かと存じますが、カンボジアとラオスにつきましては、カンボジアについては十五億円、ラオスについては十億円という無償の資金協力をやっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/44
-
045・緒方孝男
○緒方委員 そういたしますと、将来も――例外とは言われましたけれども、例外は、一つの例を作ったことは事実でありますから、言葉は変わっても、経済援助ということと大体似通った性格のものであり、将来においてもやはり無償の供与なども含まれておるものと解釈しておいて差しつかえないと思うが、そういうふうに解釈しておいてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/45
-
046・鶴見清彦
○鶴見説明員 先ほど申しましたごとく、技術協力につきましては、引き続き無償という形で政府の予算でやるわけでありますが、ラオス、カンボジアのごとく、いわゆる資金協力の方での無償ということにつきましては、もちろん、原則として無償のものを排除する性質のものではございませんけれども、日本の状況におきましては、大規模な無償の資金協力あるいは資金援助というものは非常に困難な事情にあるということは、御承知の通りだと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/46
-
047・緒方孝男
○緒方委員 そういたしますと、経済協力というのは、あくまで技術援助並びに資金援助ということでありますが、民間の投資というものは、この経済援助の概念の中に入っておるのかおらないのか、この点を一つ教えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/47
-
048・鶴見清彦
○鶴見説明員 先ほど、経済協力の観念といたしまして、技術協力及び資金協力ということを申し上げましたが、現実に、ただいま御指摘のありました民間の投資というものを、経済協力の一環というふうにしてわれわれは考えております。と申しますのは、民間の投資によりまして、開発途上にある諸国の経済開発がそれだけ進むわけでございますし、同時に、援助なり協力を与える側のわが国としましても、それらの国との経済交流がそれだけ促進されるわけでございます。積極的な効果といたしましては、開発途上にある諸国の経済開発というものに寄与するわけでございますので、いわゆる民間による海外投資というものをも、経済協力の観念の中には入れてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/48
-
049・緒方孝男
○緒方委員 民間の投資が経済協力の一環であり、日本の国策の一翼をにのうておるということになりますと、民間資本は自由意思に基づく投資とみなさなければなりませんが、この自由意思に基づく投資に対して、日本政府として多少なりともそれを慫慂し、かつ国策の一環としてこれが採用された場合、将来そこにおける民間企業の投資資金、投資財産というものは、どういう形で保護されるものか、その点を一つ明らかにしておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/49
-
050・鶴見清彦
○鶴見説明員 ただいま御指摘のございました民間投資の促進という点につきましては、御承知のごとく、輸出入銀行にも民間投資のための投資金融がございますし、海外経済協力基金におきましても、投資のための金融あるいは協力基金自身が投資するという場合もございます。そういう方法によりまして投資の促進をはかっております。さらに、投資の保険制度がございまして、それによって、海外に進出した企業の投資の保護という面を国内的には措置いたしております。さらに国際的には、たとえば二重課税の防止条約というものを結ぶことによりまして、海外に進出しました投資が不当な課税を受けないように努力いたしております。さらには、通商航海条約というものが、民間投資が外に出ました場合に、それの促進にもなりますと同時に、その投資の相手国における立場の保護という役割を果たすわけでございまして、そういう民間投資の促進及び投資されたあとそれを海外において保護するということが、経済協力の仕事の一つの大きな内容ということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/50
-
051・緒方孝男
○緒方委員 私は、もっと本質的なものをお伺いしている。たとえばインドならインドに民間の会社が投資して、そこに一つの工場を建てる。工場を建てるとすれば、そこでもって営業する権利を持たなければならぬ。そこにおいて土地を使用するところの権利も持つわけです。これらは民間の資本でありながら、将来もしこれが脅かされるという状態になりました場合、かつて日本の権益という言葉が使われたが、この文中にも出ておるが、この民間投資の資本も、同様に日本の権益ということになるのかならないのか、この点をお伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/51
-
052・鶴見清彦
○鶴見説明員 ただいま御指摘になりました、かつての日本の権益というお話の点でございますが、権益というものの定義が必ずしもはっきりしない点もあるかと存じますが、民間が海外に投資いたしまして、そこで合弁企業、相手国の企業と一緒になりまして工場を建てるというものにつきまして、インドにしても、ブラジルにしても、日本の民間企業が投資して進出いたしておりますが、そういう企業が、将来その国における徴用とか没収とかの危険にさらされるという問題は、可能性としてはあるわけでございます。その場合、そういうための措置といたしまして、そういう国とできるだけ通商航海条約を結び、あるいは投資保障協定というものを結びまして、そういうものが危険にさらされた場合の保護措置というものを考慮いたしておるわけでございます。さらには、先ほど申し上げましたごとく、万が一、そういうことによってどうしても没収とかいうようなうき目にあった場合の措置といたしまして、国内的には投資保険というものによって保護し、助成をしてやるというような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/52
-
053・緒方孝男
○緒方委員 今の政府自身自由経済を建前に立っておる政府でございますから、国内の企業家のいかなる者が投資をしようとも、自由意思に基づくものである。その利潤が幾らあろうとも、政府としてこれ以上もうけてはならぬと言える筋のものでもありません。海外に投資するのも、その利潤を追求することを目的にするわけでありますから、海外に投資をされるところのものは相当の危険度は持っているかもしれないが、同時に、危険度を伴うところには利潤度も高いというのが、大体通常のあり方と考えるわけであります。それが国策の線に乗って、これがかつてのごとく、日本の金もうけを思想とし、金もうけを目的とする、外国に資本を投下する場合、これが一々日本の国の利害得失ということで問題が処理されるところに、大きな危険を私たちは感ぜざるを得ないわけであります。かつて満州の権益擁護、中国の権益擁護という言葉が、大きな戦争を引き起こした根源になっていると私は思う。もし今日――私は、民間が海外に投資をなさることをとめる筋合いは一つもございません。何もこれを侵害する建前は一つもございませんが、政策の一環として、海外投資を慫慂し、かつ、これを経済協力という名前のもとに遂行させていくことが、はたしていいか悪いかということには大きな疑問を持たざるを得ない面がありますが、大臣はおられませんので、政務次官からその点に対する御見解を私は承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/53
-
054・川村善八郎
○川村(善)政府委員 ただいまの質問の御趣旨は、私もさようなことを考えておりますが、要は、民間投資の場合、危険にさらされるおそれがあるから、いずれの国でもやろうというようなことは、われわれは考えておりません。従って、条約とかあるいはその投資に対する保護政策等をやり得るところの国々に対しては、われわれは民間投資をさせて保護していきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/54
-
055・緒方孝男
○緒方委員 ただいまの政務次官のお話の中から、一つ事務的にお伺いいたしますが、不安定なところに民間投資を勧めようとは思っていないということですけれども、現在民間投資を含めた、経済援助の対象となっておる国々の名前を一つあげていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/55
-
056・鶴見清彦
○鶴見説明員 具体的な個々の国につきましては、いろいろと差しさわりもあるかと存じますが、毎四半期ごとに大蔵省が発表しております海外の投融資残高という面で、地域別には大体の見当が出ておりますので、あるいはそれを御説明申し上げればおわかりになるかと存じます。たとえば民間の海外直接投融資残高という点で、昨年の九月末現在では、投資につきましては、中南米がやはり一番多うございます。といいますのは、投資環境と普通申しておりますが、投資環境が中南米は比較的いいということでございます。従いまして、民間の投資もそういう投資環境のいいところへやはりいっているということでございます。しかしながら、東南アジアの方にも投資の面で出ておるのでございまして、さらには中近東にも出ておりますが、これの大きなものは御承知のアラビア石油でございます。しかしながら、先ほど申しましたごとく、投資の面におきましては、一般的に、比較的に見まして投資環境のいい中南米に多く出ている状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/56
-
057・緒方孝男
○緒方委員 私も具体的な事実をあまりつかんでおりませんが、韓国の問題は別にしておきます。台湾、それから南ベトナム、タイ国、カンボジア、そういう地域にも、技術援助や――資金援助は別として、そういうふうな経済協力の面が進められておるかのごとく聞いておりますが、そういう事実はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/57
-
058・鶴見清彦
○鶴見説明員 ただいまの御質問の趣旨は、民間投資がそういう国々に出ているかという御質問かと存じますが、アジア地域につきましては、民間投資が出ておりますのは、多いところがやはりインドでございまして、ただいま御指摘のあったような国々につきましては、先ほど申し上げておりますいわゆる投資環境というものが、比較的に見まして十分ではないという考慮もございますし、また、それらの国との間の、たとえば二重課税の防止条約とか、あるいは通産航海条約とか、基本的な民間の投資を保護する手段というものがありません。従いまして、ほとんど出ておらない状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/58
-
059・緒方孝男
○緒方委員 けさの新聞を見ましても、ラオスの状態は、私はどういうふうに表現していいかわかりませんが、再度憂慮すべき状態で、また平和的な解決が妨げられておるかのごとき状態に聞いております。南ベトナムはまことに深刻な事態に直面しておるものと考えなければなりませんが、間々アメリカあたの政策を聞きますと、そういう危険な地域に主として援助を強化し、かつまた、そのおくれた民業の建て直しをはかろうとする動きが顕著に見られてきておるわけであります。日本もそういうふうな要請を受けておる事実もあると思います。日本の政府としては、かくのごとき状態のところに、民間投資まで含めての経済援助、協力等を推し進める意図があるのかないのか、そういう面について、一つ政府の方の御意見を聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/59
-
060・川村善八郎
○川村(善)政府委員 実は私、外務省に入ってからあまり長くないので、そうした研究は十分いたしておりませんけれども、私新聞を拝見いたしまして、御質問のように、いろいろ不安があるというふうに気がついております。ただ、米国はどういう気持ちでそれに対して援助あるは投資をしているのかわかりませんが、日本といたしましては、私もまだそう詳しくつかまえておりませんので、その点は事務当局からお答えをさせることにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/60
-
061・緒方孝男
○緒方委員 韓国の問題だけをとってみましても、予算委員会における総理大臣の御答弁などを見ますと、韓国の政府は非常に有能で、近く民政に移管するための準備工作をして、優秀な成績を上げつつあるというふうな御見解まで表明されておるように私は聞いておりますが、われわれ聞くところによりますと、今年の正月が明けてから今日まででも、朴政権を打倒しようとする動きが顕著に現われてきておるそうです。それらを押えるために、年が明けて以後今日でも、相当数の人たちが、白昼街頭でどんどん検挙されつつあるような事態もあるわけであります。もちろん、これは軍部の政権で偉大な力を持っておりますから、そうたやすく倒されるとも思いません。だからといって、このような銃剣に基づく政権がそう長続きできようはずがありません。してみますと、日本の今日韓会談を進めておる要点は、どうして朴政権の長命化をはかるか、そのために、朴政権のなし得ない仕事を日本が経済援助や民間投資でもって肩がわりしてささえてやろう、こういうふうな動きが顕著に現われており、これが日韓会談の道行きじゃないだろうかと思う。日本の自民党政府が朴政権に対して好意を持っておるかおらないかは存じませんが、御援助をするのであれば、借款が払えぬ場合、政府自身がパーになったということならばよいのです。経済協力という名前でもって民間から韓国に投資をさせていくならば、この政権が危機にひんした場合、これら民間の諸君に対して政府は補償をするという重大な問題に直面しなければならないようなことになるではなかろうかと思いますが、その点について、政府のはっきりした御方針を聞かしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/61
-
062・川村善八郎
○川村(善)政府委員 朴政権は、御承知のようにクーデターによってできた政権でございます。しかし、朴政権になりましてから、もちろん、そういう部分的な問題もありましょうけれども、前の政権よりはやや安定を保っているかのごとくわれわれは見ております。しかも、二年後におきまして文民に政権を移すということになりますので、私といたしましても、総理大臣が予算委員会で答えた通りの考えを持っております。ただ、その場合、民間の投資が朴政権が倒れて大損害を受けた、こういう場合のことにつきましては、先ほども鶴見さんからお答えをいたしましたように、やはり国外的にも国内的にも保険の制度を利用し、そうして保護していかなければならないものではなかろうか、かように考えておりますが、今のところでは、まだ交渉中でございますので、これらをどうするというようなことをお答えするのは早計ではなかろうかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/62
-
063・緒方孝男
○緒方委員 自民党政府が日韓会談をやるから、社会党はこれに反対してやれというふうな、観念的な立場から申しておるのじゃないのです。実際の韓国の中から発行される新聞から見ましても、ことしの一月の十五日からわずか十日の間に、京城初め釜山、大田、大邸の市街において、歩行しておる人たちが八万五千人も検挙されている、一日に百人ずつ裁判にかけられておる。これは、皆様方のところにはどういう御報告があるかも存じませんが、あるいはこれが違法者であったとかなんとかいうことの理由はあるかも存じません。しかし、十日間に八万人も十万人も裁判にかけなければならない、警察官が検挙しなければならないということは、私は異常な姿であろうと思うのです。こういう事実は、長続きする性質のものじゃないと私は思う。しかるに、こういう事態を作っておる政府をささえる政策の一環として、民間に投資を勧めたり、経済援助を進めるということになれば、その政治的な目的は何かというと、朴政権の弱みをささえてやろうということにしか、だれが考えても、これはそう解釈せざるを得ないわけです。ましてや、今日生活を追い詰められておる韓国の国民諸君の側から見れば、喜んでもらうべき日本の経済協力というものに、むしろ一つの敵意を持って見られるような状態の中に、今日の経済協力が進められるとするなら、その将来の帰結というものは、おのずから判然たるものが出てくるのではなかろうかという憂いを私は持つものであります。あえて民間の企業家がいかなる危険をもってしてもかまわない、あくまでも投機的な意思によって、自由意思で投資するものであるならば、いかなる損害をこうむろうとも投資した資本家自身の責任であります。しかし、日韓会談の政府交渉の中で、経済協力、民間投資という条件をつけて進められていったとするなら、最後にもし損害が起こった場合には政府はどうしてくれますかと、投資資本家の方から政府に迫られたからといって、あえて私はのがれる言葉はないだろうと思うのです。この点に対して、どういうお考えでおられるのか、私たちの非常に大きな杞憂の問題でございますが、その点も一つ御説明をしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/63
-
064・川村善八郎
○川村(善)政府委員 今のところは、政府では決して勧めてはおりません。いわゆる投資環境がよくないということでございますので、民間資本が出るとは私は思っておりません。と申し上げると、先ほど申し上げましたように、政府としてまだ保証もつけるということもいわれませんし、従って、そういう民間資本は出ていこうというような環境にないし、われわれもまた奨励するということは考えておらないのでございます。また、政府といたしましても、民間資本の進出を奨励するというようなことはしておりませんから、そうした事態が起きたといたしましても、これをまだ補償するという段階までいっておりませんことをお答えを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/64
-
065・緒方孝男
○緒方委員 政務次官をいじめてもしようがないと思うのですけれども、池田さんが朴さんとお会いになったときに、韓国側から八億ドルも九億ドルも財産請求権の金額を出された、それに対して池田さんは、財産請求権についての金額はできるだけ日本の世論と国情に合わして解決してもらい、その余分なものはいわゆる経済援助、経済協力の面で話し合いを一つ進めていくのがいいと思うというふうに、お互に話しておるわけですね。八億ドルも九億ドルものやつを、たとい半額あるいは三分の一に値切ったとしても、その間経済協力で一つ埋め合わせをしようとする、それに匹敵する経済協力というものは一体何をさすのか、この点は私はわかりませんと言われたのでは、私はきょう質問してもしようがないということになりますが、川村さん、あなたのお考えは、何をさしておるのか、お考えを聞かしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/65
-
066・川村善八郎
○川村(善)政府委員 韓国から八億ドルの財産請求権があったということは聞いております。しかし、日本といたしましては、つまり、証拠のないものについてはやれないという立場をとっております。しからば、証拠を今出せといっても、朝鮮動乱もあり、しかも、十四、五年もたっておりますので、どちらもおそらく証拠になるべき書類が完備しないのではないか。そうしますと、財産権の請求というものは、韓国の言う通り成立するとは思いません。そこで、総理大臣が言ったとすれば、言ったでしょうけれども、一体どういう経済協力をするというようなことは私は聞いておりませんので、私がこれをお答えすることができないことは残念でございますが、そうしたようなことでお許しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/66
-
067・緒方孝男
○緒方委員 一昨日でしたか、参議院の予算委員会で、相馬さんからだいぶこの問題を質問されておったように思いますが、民間経済界の人たちが韓国の調査に出かけていっておる。同時にまた、外務省、建設省の方々も多分現地調査に出かけていくようになっておるはずである。その主目的は、五台山地帯における工場地帯の立地条件の見学が一番重要な仕事になっておると私は思いますが、なければかまいませんけれども、あくまでも政府・民間一緒になって外務省が果たさなければならないところの日韓会談も、大阪の商工会議所の会頭にお出ましを願い、そうして民間投資を中心にしたような日韓会談というようなものが進められておるにもかかわらず、そういうものは、政府としてはあまりタッチしていないのだということは、これはあなたがよそにのけられておって、聞かれておらなかったと言われれば別でありますけれども、政府としての答弁にはあまりにもなっていないのではなかろうかというふうに考えられますが、外務省として韓国に対する経済協力の問題は、技術協力を除いては一切関心を持っておらないのだ、こう言えるのかどうか、その点をもう少し明確にしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/67
-
068・川村善八郎
○川村(善)政府委員 韓国は、当初大政治家を交渉代表として望んでおったようでございます。しかし、どういう事情かわかりませんが、杉さんが日本の代表になるということがきめられて、しかも、それは一度けったような形になりましたが、その後韓国は思い直して、交渉の責任者にして、今交渉をしておるようでございます。ただいまお尋ねのいわゆる技術協力、あるいはその他の問題だけでなしに、俗にいう投資あるいは融資の援助をするという気持かどうかという問題でありますが、私に言わせますれば、これは政府としてお答えするということよりも、外務省の考え方といたしましては、やはり投資か融資かで援助をしていくことが妥当でなかろうか、かように考えておるようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/68
-
069・緒方孝男
○緒方委員 あとにまだ二人ばかり関連して質問があるそうですから、私は長い時間これにとろうとは思いませんが、政務次官がどういう御答弁をなされようとも、現在の日韓会談の主要な交渉の内容は、もちろん、韓国側からは、財産請求権というものが重要な課題になっておりましょう。日本側の立場は、いかなる条件で経済的な進出をはかろうかということが主題になって、日韓会談は進められているものとわれわれは解釈せざるを得ません。まして、その会談の当事者は、韓国の商売人、日本の商売人、商売人同士の国と国との話し合いになっておるという、今までかつて世界の外交史上にも例を見ないような形で進められておるという内容から見ましても、そう判断せざるを得ないわけです。私は、そういう中から起こってくる将来の問題を懸念せざるを得ない。相手にしておるところの朴政権というものは、いかにひいき目に見たからといって、私は長期政権だとは絶対に考えられない。まして、今日二千数百万国民に非常な圧政を行ない、圧政ののろいの中に存在されておる政権というものと共同して韓国に投資をしたならば、やがて政変のときには、必ずそのまま没収をされるか、さなくばこっぱみじんになるかという運命を持たざるを得ないものとわれわれは判断せざるを得ない。もしそれを日本の権益として擁護するという形になるならば、欲すると欲せざるとにかかわらず、日本の自衛隊に対する何らかの措置も講じなければならぬという事態に直面するであろうということを、われわれは非常に心配をしております。あなたの御説明からするならば、そういう懸念は全くないような、資本投資なんということはあそこではとてもうまくできぬだろうというふうな御説明のようでありますけれども、われわれは非常に心配をしておりまして、将来またこういう問題についての内容がもしわれわれの中でもって探知することができましたなら、あわせてあなた方に御再考願わなければならない問題に直面するだろうと思いますので、私はあとの人に質問を譲りまして、これできょうは終わらせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/69
-
070・川村善八郎
○川村(善)政府委員 ただいまの御質問は、非常に重要な質問でございます。もちろん、われわれも、朴政権は長く続こうとは考えておりません。すなわち、二年後には文政に移すという約束が世界に広められておりますから、必ず政権が変わるものとわれわれは見ております。日韓会談の問題につきましては、今まだ交渉中でございまして、その交渉がどう妥結するかもまだはっきりしておりません。交渉の妥結によっては、やはり民間の資本も入れなければならない場合もありましょうけれども、今の段階では、われわれは、民間の資本を投じて韓国の開発に協力しろというようなことは、お勧めをしておりません。今の段階はそういうふうなことでありまして、永久に韓国に協力するなということも言えませんし、何もそういうことも考えておりません。でありますから、日韓の会談がまとまりますると、どういうふうにこれが変化していくかわかりませんが、今の段階では、民間投資ということはちょっと考えられないのじゃないか、かように答弁したようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/70
-
071・中島茂喜
○中島委員長 田口誠治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/71
-
072・田口誠治
○田口(誠)委員 私の準備しておったこと以外に、緒方さんの質問に関連して、先にお聞きをしたいと思います。
日韓会談の関係は、時期がくれば結論が出る。そうなると、やはり経済援助ということはあり得ると思いますが、そこで、先ほど次官の方から緒方委員の方に御回答があった中で、韓国のような、どちらかといえば、投資をしても自信の持てないような国に、民間の投資をするような場合が万が一にもあった場合には、保険制度をとりたいというようなお考えも披瀝されたのですが、こういうようなことは、やはり省内で話し合いがなされているのか、あなたがふっと頭に浮かんだのか、どちらですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/72
-
073・川村善八郎
○川村(善)政府委員 私は、韓国のようなところに民間投資はすべきではないと言ったのではございません。日韓会談がまだ開始されたばかりでまとまっておりませんので、現在のところでは、民間投資ということは、政府として奨励をしないし、おそらく民間投資もすることはないのではないか、こういうふうに答弁をしたようなわけでございます。今後につきましては、何といっても、日韓会談が妥結するかしないかという問題もございましょうし、妥結をした場合にはどうなるかということは、今ここでお答えすることはとうていできませんので、この点で御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/73
-
074・田口誠治
○田口(誠)委員 今の御回答の関係は、私もその通り受け取っておりますが、先ほど緒方委員の質問に対するお答えの中で、日本から設備投資なり民間の投資を行なっておるような場合に、またクーデターが起きたという場合に日本の事業家が損をするのではないか、これに対しては保険制度というようなものもやはり考えておるのだ、こういう御答弁であったので、そういうことはさまっておるのか、省内でそういうようなお話し合いがなされておるのか、それとも、あなたがふっと頭に浮かんだことを答弁なされたのかどうかということです。それをお聞きしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/74
-
075・川村善八郎
○川村(善)政府委員 まだ日韓会談の途上にありますので、妥結しなければ、これはどうとも言えないのでございますが、とにかく妥結をいたしましたならば、やはり国際的な問題でありますので、日本としては十分保護をしてやらなければなりませんし、保険制度で損をしないようにして保護してやらなければならぬ、かように考えておるのでございまして、私といたしましては、頭に浮かんだということも、これは考えられましょうけれども、私は私なりに、答弁としてはかようにせざるを得ないというようなことになっておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/75
-
076・田口誠治
○田口(誠)委員 そこで、なお突っ込んでお聞きするのですが、これは日本が大東亜戦争で負けたおりもそうなんですが、民間の保険会社というのは、クーデターが起きたり、また戦争で負けたようなときには、かけた金はなかなかもらえないものです。それを保険制度で保証するというようなことは夢のようなものであって、できないわけなんです。そうして、少なくともこれをやろうとすれば、国が保証するところの保険制度であるのか、それとも、もう一つの保険としては、今でも共済組合なんかが火災共済なんかやっておるのは、自分の共済組合だけでは危険だから、大きい火災保険の会社で再保険をするというような方法をとっておるのですが、やはりもし民間の保険会社で保証制度をとるということになれば、国が保証のでき得るような再保険制度というようなものをやらなければ、これは保証にならないと思うのです。だから、私は、こういうような内容のものを、省の方で慎重審議された内容であるとすれば、まことにこっけいなことであって、あなたが今ふと頭に浮かんだことを申されたのかというようにお聞きをしたのですが、その点、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/76
-
077・川村善八郎
○川村(善)政府委員 まだ、外務省の方では、それらについて何ら御相談をしたこともございません。ただ、民間の投資につきましては、今まで通例上国が保険をしております。ただ、民間の場合は限度がありますので、損した場合に全額保険ということは不可能だ。不可能だというよりも、むしろ、これはできないのだと言った方がいいのじゃなかろうか、かように考えております。しかし、現在は、まだ韓国につきましては交渉中なので、何もきまったことはございません。八億のいわゆる財産請求権に対しましては、まだこちらで一億とも一億五千万ともきまっておりませんし、それからさらに投資、融資につきましても、幾らやるということもまだきまっておりませんから、これ以上、私は、皆様に確定したというようなことでお答えすることができないことは、残念でありますけれども、何としてもきまっておらないととでございますので、私は、これ以上の答弁はできないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/77
-
078・田口誠治
○田口(誠)委員 日韓会談の進行状態については、若干次官のところまでくると認識不足の点があると思いますが、こういう点は、一々指摘しておると時間がかかりますので、指摘はいたしません。いずれにいたしましても、これは東南アジアの援助関係とも関連のあることですが、もし民間から投資を行なったような場合に、一つの例でいきますと、韓国のクーデターのような場合に、全く投資者が損害を受けるというような場合に、政府として補償される用意があるかどうかということ、この点をまずお聞きしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/78
-
079・川村善八郎
○川村(善)政府委員 私は、そういう詳しいことについては全くのしろうとでございますので、事務当局からお答えを申し上げさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/79
-
080・鶴見清彦
○鶴見説明員 東南アジア等、あるいは中南米につきましてもそうでございますが、民間投資が相当出ておるわけでございます。ただ、先ほど来御説明申し上げましたごとく、投資保険制度というものが国家の制度としてございまして、現実に投資をした民間企業がその投資保険制度を利用いたしました場合には、そういった没収等のうき目を相手国において見た場合には、当然その投資保険によってカバーされるわけでございますが、御承知のように、現行の投資保険制度では、私もちょっとはっきりいたしませんが、たしか七割までしかカバーしなかったかと存じます。そういうこともございますし、保険で全面的に補償を受けるということは、現実に投資をされた民間の企業の方にとっては期待できないという面があるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/80
-
081・田口誠治
○田口(誠)委員 聞き漏らしたかもわかりませんが、そういうような事態の場合には、全額補償とか、全面補償とかいうようなことはできないということなんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/81
-
082・鶴見清彦
○鶴見説明員 現在の国家が行なっております投資保険の制度では、全額はたしか補償できなくて、七割までだったかと思います。その点、七割でしたか、八割でしたか、ちょっと私も今覚えておりませんが、全面的な保険ではないということは申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/82
-
083・田口誠治
○田口(誠)委員 それにプラス・アルファをして、全面補償というような考え方はあるかないかということなのです。今お答えになったような内容のことはわかりますけれども、突き詰めて私のお聞きしたいことは、それだけでは完全補償ができないから、それにプラス・アルファをするところの補償を政府として考えられておるのかどうか、これをお聞きしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/83
-
084・鶴見清彦
○鶴見説明員 海外に対する投資の促進策といたしまして、そういったような投資に対する危険が起こった場合に、いかに保護するかという問題に関連するわけでございして、そういう保険制度のカバレージを全額にするか、あるいは危険負担をある程度企業自身に持たせるかという問題につきましては、外務省限りではなかなかできない問題でございまして、通産省、大蔵省、関係する省との十分な協議を必要とするものでございますので、ただいまのところ、今御質問になりましたような点につきまして、明白なお答えができないのは残念だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/84
-
085・田口誠治
○田口(誠)委員 それ以上の答弁は得られないので、宿題としておきます。
それから経済協力部を局に昇格するという理由については、やはり低開発国に対する開発の援助をこの際行なっていきたいという考え方は、日本の経済が成長するにつれて、また、日本の鉱工業の発展につれて、品物のはけどころをどこかに作らなければいけない、そういう点から、やはり東南アジア、アフリカ方面へ輸出の市場を作らなければならないという考え方を持っておられるようでございます。そこで、私は、そういう考え方から、今ここに海外技術協力センターについてという一つの資料が出ておりまするが、この資料を見まして、非常に不安に感ぜられることがあるのです。御承知の通り、東南アジアは――日本もアジアの一員ではありまするけれども、現在の地位としては、やはり指導する立場まで相なっておるわけなのです。従って、この東南アジアを指導し、また、経済的にも援助を行なって力をつけさせて、そうして日本の鉱工業が発展するにつれて、日本の製品がその方面へ輸出できるような場を、市場を作らなければならないということは、きわめて重要なことであって、これには強く大きく取り組まなければならないと思うのです。そこで、この文書に載っておりまするように、現在までには、インド-小規模の工業、パキスタン-農業というように出ておりまするが、御承知の通り、パキスタンの経済構造の関係は、日本と同じような一つのアジア経済構造の方式をとっております。これは、数字的には若干の相違はあろうと思うけれども、大体違っておらないと思います。現在全人口の約八〇%、これは全人口が九千四百万人としまして、八〇%が直接間接に農業に従事しておるというこの実態から、やはりこのセンターも、パキスタンの関係は農業関係のセンターを作っておられるということは、当を得たことであろうと思うのです。ところが、非常にあの地域はおくれておりまして、特に教育の面がおくれておるのですね。それで、一九六一年の国勢調査によりますると、読み書きのできない人が総人口の一五・三%あるということなんです。このように非常に教育の面もおくれておるわけなんです。しかし、パキスタンでは、おくれておるこの実態を何とか取り戻して、そうして先進国の市場と競争しようというので、今大きくこういう点に踏み出しをしておりまして、農業の振興についても、工業の生産増大についても、教育、医療、厚生の改革、拡充、また水産、運輸の改善、こういうような点についても大馬力をかけておるようでございます。そこで、ちょうど五カ年計画で二百三十億ルピーの予算を予定して、今のおくれを取り戻すために努力をする計画がなされておるようでございますが、その中で、アメリカのドルでいきますと四十八億三千二百万ドルぐらいでございますが、その三分の一に相当する額は外国の援助を仰ぐという考え方をとっておるわけです。そうしますと、日本の場合は、これは今パキスタンを例にとりましたが、ここに載っておる幾つかの国の開発をしようとする場合には、やはり何年計画でこれこれの援助をこうしてこうするんだという一つの計画がなければ、その年々に場当たり主義でその計画の予算を組んでみても、計画を立ててみても、これはなかなか前途遼遠なものがあると思うのです。だから、政府としては、こういう点について計画を持っておられるのかどうか、まず、この点を承りたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/85
-
086・鶴見清彦
○鶴見説明員 ただいまパキスタンの例を御指摘になったのでございますが、現在パキスタンは、いわゆる第二次五カ年計画を実行中でございまして、一昨年の七月から始まったわけでございますが、現在わが国といたしましても、その五カ年計画というものに対して積極的に協力をするという趣旨のもとに、パキスタンに対する世銀主催の債権国会議というものがございまして、すでに六千五百万ドルの借款の供与を行なっております。そういうふうに、それぞれ開発途上にある諸国の開発計画――パキスタンにつきましては第二次五カ年計画、インドにつきましては第三次五カ年計画、あるいはタイ、イランというそれぞれの国での計画がございますが、それぞれ開発途上にある国の開発計画に従いまして、同時に、日本自身の開発援助あるいは協力の余力――資金的な余力、あるいは技術者を派遣し得る能力といったものをも勘案しまして、どの国に対してはどの程度のことができるかということを逐次検討しつつ、開発援助あるいは協力の実施に当たっている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/86
-
087・田口誠治
○田口(誠)委員 開発計画というのは、日本の国内の場合にもとり得るわけなんですが、これについては一つの計画を立てて、その計画にのっとって、そして振興さしていくというのが常であるわけなんです。実際的には、国の力関係からいけば、何十年とおくれておる国を開発する場合に、ただそのときばったりの計画に基づいてなされるということになれば、これはなかなか実を結ばないと思うのです。やはり少々無理な面があっても、何カ年計画というものをきちんと立てて、そして、これには予算がどれだけ要るんだ、こういうことから踏み出して、積極的にやらなければ、なかなか開発計画というものは実を結ばないし、実を結ばなければ、こちらの方から援助をしても、援助しただけものになってこないわけです。いつまでたっても。だから、やはり日本から援助をすれば援助をしたその効果が早く現われるという、また効果を現わす方法はどうすればいいかということの計画が立てられておらなければならないと思うのです。ただ、ほうっておけばアメリカから手を出すとか、ソ連から手を出すとか、こういうようなことで、日本も何とかやらなければならないというので、そのときばったりの計画によっていろいろな事業を進められても、なかなかこれはものにならないと思うのですが、そういう心配の上から質問するのですから、これに答えられる御答弁をいただきたいと思うのです。不備であれば不備であるとか、これから十分に検討して、そういうような傾向でやるとか、これで十分とか、そういうような答弁があると思いますが、いずれにしましても、私の要求に対する率直な答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/87
-
088・鶴見清彦
○鶴見説明員 ただいま田口先生からの御質問の点でございますが、先ほど御説明申し上げましたごとく、日本といたしまして、開発途上にある諸国に対しまして資金協力あるいは技術協力というものを行ないますにあたりましては、やはり開発途上にある諸国自身の計画というもの、従いまして、その開発途上にある諸国自身の自主性というものを、やはり十分尊重しなければならない問題でございまして、従いまして、それらの諸国の開発計画というものに見合った形で、われわれの方の資金援助なり技術援助というものを逐次実施していくということが必要になるわけでございます。その限りにおきましては、そういう相手国の開発計画というものも、十分われわれの方でも検討いたしまして、それに見合った形でのわれわれの方の資金援助、技術協力の計画というものが成り立って参るわけでございまして、全然行き当たりばったりで、どこどこに資金援助で幾らぐらい出すとか、あるいはどこどこに海外技術協力センターを行き当たりばったりに作るといった性質のものではないわけであります。その点は御理解をいただけるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/88
-
089・田口誠治
○田口(誠)委員 おそらく、全く無計画というととは、それは政府のおやりになることだから、ないと思いますけれども、やはりここに載せられておるこのプリントの内容の程度でございますれば、私としては、将来この程度のことをやってどれだけ向こうに援助になるか、そして、おくれた東南アジアの国民をどの程度まで地位の向上をはからせて、そうして産業の開発に乗り出してもらえるかという点が疑問であったので、お伺いをしたわけなんです。
そこで、先ほど緒方さんの方からの質問にも若干ありましたが、どこの国でもそうですが、資本をつぎ込んだ場合には、まず見返品というものが目的であるわけなんです。従って、東南アジアの方を開発するということになれば、向こうから品物を買うけれども、日本の製品も買ってもらう事態をかもし出すのだという考え方がなければならないと思うので、そういう面からいきますると、私は、韓国の問題なんかはまた事情を異にするわけでございますけれども、そういう関係でおやりになるとすれば、まず留学生の受け入れ態勢なんかも、この際考える必要があるのじゃないか、こういうように思うのですが、そういう点は、御審議なさっているかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/89
-
090・鶴見清彦
○鶴見説明員 ただいま田口先生の御指摘のありました留学生の受け入れ態勢の問題でございますが、実は、これは所管外の問題でございまして、こういうことを申し上げるのも何かと存じますが、経済協力の方でやっております技術協力の面におきましては、いわゆる留学生、開発途上にある諸国から、あるいは先進国からもございますが、学生で、日本の大学その他の学校に来て勉強をするという関係の問題は、実は取り扱っておりませんで、経済協力部の方といたしましては、むしろ、向こうの学校を出たような人、あるいは役人であって、さらに技術をみがきたいような人、そういうような人たちの日本における技術の研修という点のことを実際に行なっております。また、その技術研修生の受け入れ態勢の整備のために、前々から大蔵省方面にもいろいろとお願いしておりましたが、来年度予算で、日本における滞在費、技術研修生に対する日当といいますか、そういうものも上げることができましたし、さらに技術研修生の宿泊施設というものも、着々と整備されつつある状況でございます。
留学生につきましては、直接には文部省でございますが、外務省といたしましては、情報文化局の方で所管いたしておりますので、私の方からそれについてお答えするのは、少し筋が違うかと思いますので、遠慮させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/90
-
091・田口誠治
○田口(誠)委員 私が特にそういう教育問題まで出しましたのは、アジア、アフリカ関係から海外へ旅行する人たちの帰国したときの感想は、アメリカなんかへ行った場合には、あまりにもオートメーション化されておって、とてもじゃない、それを見習って自国の産業を開発するということは、ちょっとむずかしいじゃないか、とにかく行ってみて、びっくりしてくるということなんです。それで、日本へ来た場合には、日本の産業をモデルケースとして開発する必要があるのだ、こういう帰国談話を旅行者がやっておるわけなんです。そういうことからいきますると、日本が東南アジアへ手を差し伸べるということについては、受け入れ態勢も非常に好意的に受け入れてくれるだろうし、そうしてまた、実績も上がるだろうと思うわけなんです。そうして特にアジア、アフリカと申しましても、人口の面からいきましても、世界の相当数を占めておるところでありまするから、やはりこういう方面へ日本が力を注ぐべき必要があるのじゃないか、こう考えましたので、こういう段階においては、留学生の受け入れ等も含めて行なって、十分に日本の実態も知ってもらい、そうして日本の製品というようなものを輸入してもらうように、貿易関係においても外交方針についても行なってもらうことが有利である、こういう考え方から申し上げたのでございまするので、ただいまの点につきましては、外務省は担当の省ではないのでございまするけれども、連絡会議等がございましたときには、十分そういうような点も話していただいて、やはりそこまで力を入れてもらいたいということを私は希望を申し上げておく次第でございます。
それから、次に、こまかいことになりまするが、これはミスプリントの面もあると思いますけれども、今度公使館から大使館へ昇格するもの、総領事館から大使館へ昇格するもの、領事館から昇格するものというふうに数字的には書いてありまするが、この内容をずっと見ますると、数字が合わないんですね。まず公使館を大使館に昇格させるものは十といわれるけれども、その十の名前があとにずっと並べてありまするけれども、この中で今もう大使館になっておるところが入っておるわけなんです。これは何か間違いですか、それとも、この提案の数字が違っておるのか、どちらなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/91
-
092・湯川盛夫
○湯川政府委員 公使館から大使館に昇格するものは十のはずですが、何か違っておりますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/92
-
093・田口誠治
○田口(誠)委員 今度の在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案というのに、ずっと各国の今度新しくベース・アップされる金額が載っておるわけなんです。その大使館の中にはイエメンというのが載っておるわけなんです。ところが、今度昇格するという国の方にもこの国が入っておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/93
-
094・湯川盛夫
○湯川政府委員 給与に関するものの方は、昇格後のものを入れてございます。昇格したあとの形で全部やっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/94
-
095・田口誠治
○田口(誠)委員 それで全部数字は合いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/95
-
096・湯川盛夫
○湯川政府委員 そういう考え方ですと、これは合うことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/96
-
097・田口誠治
○田口(誠)委員 それで合えばよろしいのですが、今大使が公使を兼官されているところはどのくらいあるのですか。――先日お聞きをいたしましたときには、大使が七十二人、公使が六人といわれたのです。そうだったと思いまするが、そうすると、だいぶん兼官されておるところがあるわけなんですが、どのくらい……。これは差し引いた数だけで間違いありませんですか。時間がかかりますから、その程度のことはわからねばよろしいですが、今ここにある表というのは、昇格したのを含めた国だというようにお話しになったのですが、そうしますると、そのあとの方に、公使館を十といわれたけれども、九つしか書いてないわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/97
-
098・高瀬直智
○高瀬説明員 お答えいたします。
イエメンも、このたび公使館より大使館に昇格いたしますが、他の九館と異なり、公使館として未施行のままでありましたので、この附則第三項の既設の公使館の中には入れる必要がないわけでございます。従いまして、このイエメンを附則の中の第三項できめておきます必要がありませんので、との中よりは抜かれておるわけでございます。御了解願えますでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/98
-
099・田口誠治
○田口(誠)委員 あまり時間がないからしっこく聞きません。
時間がないので、お気の毒ですが、ちょっとつき合って下さい。給与の関係ですが、これはだれが考えても、十年ほうっておいた、ほうっておけたということが不思議なんです。これは公務員の給与にいたしましても、昭和二十七年には一万四百七十三円ベース、ととろが三十六年には、先ほども答弁のあったように、二万五千百七十円ということになっておるのですが、二倍半になっておるのです。ところが、在外公館の公務員の関係は、十年春もほうっておけたのかどうかということ、それとも、その間何かの手当でカバーされておったのかどうかといろこと、この点がどうも不思議でしょうがない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/99
-
100・湯川盛夫
○湯川政府委員 まことにごもっともな質問でありまして、これはもっと早く改善を提案すべきであったのでありますが、いろいろ検討しておりまして、その間、初め全然なかった在外公館の増設という方が非常に急務でありまして、これまでの十年間、主として在外公館の新設の方に忙殺をされていた等の関係があって、在勤俸の改定問題もなかなか踏み切れなかったのでありますが、最近における世界各国の物価、生活条件等の変動の結果として、どうしてもやはり在勤俸が十分でない、また、各任地間の給与のアンバランスということが目立ってきたので、これ以上どうしても待っていられないということで、今度改定ということに踏み切ったわけでございます。しかし、お説のように、確かにもっと早くこういう問題は解決すべきであったと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/100
-
101・田口誠治
○田口(誠)委員 この額の面は、他国との格差是正という点が一つの理論づけのようですね。別に生活費からどうこうしたというわけでなくして、他国の給与と相当格差があるので、ここで是正をしたというのが、一つの理論づけに相なっておるわけなんですが、これは、この前の委員会にも答弁なさっておられるのですが、そのように受け取っておいてよろしいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/101
-
102・湯川盛夫
○湯川政府委員 外交官としての在勤俸でありますから、単に衣食住だけの費用でなくて、やはり品位、体面を保持して、十分な外交活動のできるものを支給しなければならぬ、そういうことから、もちろん各国の例も参酌しましたし、それからまた、十分な活動のできるように、それから同じ日本の在外公館の中でも、地域によって非常に不合理になってきたり、均衡がとれぬというような点も是正する、そういったいろいろな点を加味して改定ということにいたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/102
-
103・田口誠治
○田口(誠)委員 それから、大使館なり公使館が他の国と非常に見劣りがするということを、前の委員会で西村委員の方から追及されたわけなんですが、こういう点に対しては、政府は何も考えておられぬのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/103
-
104・湯川盛夫
○湯川政府委員 この間もちょっと御説明申し上げたと思いますが、ずいぶん見劣りがひどい。西村委員のおっしゃった通りでございますので、今回ある程度直すことができると存じますが、しかし、なおこれで必ずしも完全に均衡がとれたという事態にはなかなかなりません。しかし、一挙にそういうこともむずかしいと存じまして、この程度の案で御提案いたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/104
-
105・田口誠治
○田口(誠)委員 これは実態を把握されておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/105
-
106・湯川盛夫
○湯川政府委員 ただいまの見劣りするとおっしゃいましたのは、建物やなにかの話ですか。事務所とか公邸とか、その方は逐次だんだんとやっておりますが、これは在勤俸と別ですから、それで徐々にやっておりますけれども、なお相当の不満足の点がございます。それは、実態ももちろん把握しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/106
-
107・田口誠治
○田口(誠)委員 三十七年度の予算では、どことどこを改造されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/107
-
108・湯川盛夫
○湯川政府委員 会計課長からお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/108
-
109・佐藤正二
○佐藤(正)政府委員 お答えいたします。
三十七年度の予算で、ジュネーブの国際機関代表部で事務所を買う予算が認められました。それから国連の代表部のニューヨークの大使の公邸、それからビルマ、インドネシアの事務所、公邸、これは一部増築になりますが、この予算が入っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/109
-
110・田口誠治
○田口(誠)委員 いずれにしても、今どんなところから手をつけるという三十七年度の予算を発表されたのでありますが、大使館も、おそらく今度十を昇格して、七十幾つになりますし、公使館も八つか九つあるわけです。領事官、総領事館、いろいろありますが、そういうところが他国と比較して非常に見劣りするということになれば、ただ大使なり公使なり事務官なり書記官なりのふところ工合をよくしただけでは、これはやはり外交ですから、効果の上がらぬ面もあるわけです。場合によっては、ふところにはなくて毛あるような顔をしていかなければならぬ場合も、外交というものはあるわけですね。そういう面から、私は、今度の俸給の引き上げがそういう点を考慮されておるということだから、やはり建物その他の待遇の上においても十分に考慮してもらう必要があるのじゃないか、こういうように考えられるので、こういう点については、大蔵省と折衝するときには、これも大体調べ上げておいて、何カ年にどうするのだというくらいな計画を立ててやってもらわないといけないと思うのです。その点も一つお願いをしておきたいと思います。そのかわり、効果を上げてもらわなくてはいけない。その効果を上げる一つの方法として、やはりそういう手段も講じなければならないと思います。
それから、向こうにおられる方の交際費とか、こういう面については、聞くところによりますと、上がらぬ前でも、おえら方の方は、二、三年行ってくると相当ふところもふくらんでくるというようなことも、人によっては実際においてあり得るということなのです。そういうことも聞いておりますので、やはり必要なものを必要なだけ支給して、必要な活動をしてもらうということの指導を外務省でやっていただかなければ、金だけやればそれで活動を千分にするという考え方は大へんな間違いですから、そういう指導を怠らないようにしてもらいたい。これも強く要望しておきます。
まだいろいろありますけれども、時間がきましたので、これで終わらしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/110
-
111・川村善八郎
○川村(善)政府委員 ただいまの田口さんの御説はごもっともでございまして、人それ自体も、あるいは大使館、公使館の設備等、あるいは建物等におきましても、もう見劣りのしていることは私も見て参りました。今度二十七公館長会議に参って、十二月の二十九日に帰って参りました。在勤俸の改正につきましても、私も鋭意やりましたが、実はただいまおっしゃられたような風評も私は聞いてこないわけでもなかったわけであります。家が建てられるとかどうだとかいう人は、中にはあるということも聞いて参りました。しかし、こちらから行く方々が、事実相当お世話になって参っております。交際費等の問題につきましては、大公使が立てかえてやりますから、これはあまり心配がないようでございますが、それ以下の方々は、やはり待遇が悪いので、にぎやかなところといいましょうか、あるいはりっぱなところというのでございましょうか、そういうアパートにも入れない。従って、遠いのであるから――もちろん外交官であるから、やはり自動車は自分で買わなければならぬ。そうして油も自分で盛らなければならぬというふうなことで、非常に経費もかかる。一方待遇は悪い。また一方、こちらから行く方々の御案内は、下の方だけで御案内するので、大使や公使は御案内しません。従って、その油代も全くその下の方々が持たなければならないという実情を私はよく見て参りました。中には、もう二年くらい置いてもらわなければ、自動車の月賦も払えないのだから、どうかこのままであったら、二年くらい置いてくれろというような方もありました。いろいろそういう調査をいたして参りましたが、この際四億で、不満ではありますけれども、在勤俸を上げていただくことになりましたことは、私にとりましても、また外交官にとりましても喜ばしいことでございます。仰せはごもっともなことでございまして、われわれも十分指導的立場に立って一生懸命やって参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/111
-
112・田口誠治
○田口(誠)委員 今私が指導をよろしくと申し上げたことは、具体的に言えば、今までの大使にしても、公使にしても、領事にしても、政治的にその任命をするという面があったわけです。たとえば代議士を落選して浪人をしておるから、これをここへ持っていってやる、こういう式では、行ってもやはり事実は仕事をやらないということです。事実若い書記官なり事務官なりが、どんどんと優秀な人は次から次へと人事の交流を行なって、そうして必要なものはやり、それで住居もりっぱなものに住まわして、活動は外国人に劣らぬ活動をしてもらうということを私は申し上げたのであって、その裏には、今までの人事の交流というものが非常に不明朗であったという、これも一つあるわけなんで、この点は、おそらく今後はそういうことはないと思いますけれども、やはりその人事の交流の場合には、一つの政治的配慮とか、あるいは落選したから今回はここへやるのだというような、そういう配慮をしてもらっては――これは、やはり人にもよりけりですけれども、十分に仕事はやってもらえぬと思うので、この際そういう点も御忠告を申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/112
-
113・川村善八郎
○川村(善)政府委員 御説ごもっともでございまして、私がいる限りは、そういうふうな方途でやっていきたいと思いますから、どうぞ皆さんにも御援助をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/113
-
114・中島茂喜
○中島委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は、来たる十九日月曜日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、これにて散会いたします。
午後一時三十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X00719620215/114
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。