1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年三月八日(木曜日)
午前十時五十三分開議
出席委員
委員長 中島 茂喜君
理事 伊能繁次郎君 理事 内田 常雄君
理事 草野一郎平君 理事 堀内 一雄君
理事 宮澤 胤勇君 理事 石橋 政嗣君
理事 石山 權作君 理事 山内 広君
内海 安吉君 小笠 公韶君
大森 玉木君 倉成 正君
島村 一郎君 辻 寛一君
藤原 節夫君 保科善四郎君
緒方 孝男君 山中 吾郎君
受田 新吉君
出席国務大臣
文 部 大 臣 荒木萬壽夫君
自 治 大 臣 安井 謙君
出席政府委員
文部事務官
(大臣官房長) 宮地 茂君
文部事務官
(社会教育局
長) 齋藤 正君
自治事務官
(大臣官房長) 柴田 護君
委員外の出席者
文部事務官
(社会教育局著
作権課長) 渋谷 敬三君
専 門 員 加藤 重喜君
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三月七日
委員柳田秀一君及び受田新吉君辞任につき、そ
の補欠として栗林三郎君及び西尾末廣君が議長
の指名で委員に選任された。
同月八日
委員栗林三郎君及び西尾末廣君辞任につき、そ
の補欠として山中吾郎君及び受田新吉君が議長
の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
自治省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第二六号)
文部省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第六九号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/0
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001・中島茂喜
○中島委員長 これより会議を開きます。
文部省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、これを許します。山中吾郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/1
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002・山中吾郎
○山中(吾)委員 今度の設置法一部改正の内容である著作権制度審議会、その設置の目的ですね。著作権法を現在改正する必要があるという思想のもとにこの設置法をお考えになっておるのか、それを先にお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/2
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003・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 お答えいたします。
御承知のように、現行の著作権法は、明治三十二年に制定されたものでございまして、その間、著作権に関連いたしまして、いろいろな媒体が急速に進歩して参りました。そういう点で、全般について検討をする必要があろうということがございますが、そのほかに、戦後、敗戦当初の昭和二十三年に、現在日本が加盟しておりますベルヌ条約がブラッセルにおいて改定されました。日本といたしましても、現在加盟しておりますローマ規定のほかに、今後ブラッセル規定に加入するという問題を検討し始めなければならないという問題がございます。第三には、昨年の秋、実演芸術家、レコード製造業者、あるいはテレビ、ラジオの放送事業者に関する権利、いわゆる隣接権の条約ができまして、これに対する加入の問題を検討する必要もございますし、また、この隣接権は、著作権と、特にわが国の著作権法とかなりからみ合った問題がございますので、その問題も検討しなければなりません。また、著作権の仲介業に関する法律がございますが、これも戦前の法律でございますので、現在その運用上いろいろな問題もございますので、これを検討いたしたいという考えでございます。おもな点は以上の点でございます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/3
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004・中島茂喜
○中島委員長 質疑の途中でありますが、この際、自治省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。石山君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/4
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005・石山權作
○石山委員 今度の自治省の設置法の中で、共済関係に関して定員増がされるわけですが、これに関連して、共済問題について一応質問したいと思います。
前の予算委員会の場合にも、大臣に出ていただきまして、こういうふうな欠点と要望があるが、それらの点を十分考えて法案を出していただきたいと申し上げておきましたが、どうも私が申し上げた点がなかなか直っておらないというふうに考えているわけです。それで、先日の当委員会で、自治省の官房長にも私はその点を指摘いたしまして、既得権を尊重するのが日本の政治、経済の機構の根本をなしておるのだ、それから新しい制度を出すからには、その期待にこたえるようなものでなければならない。既得権を尊重しながら、期待にこたえるような施策を及ぼさなければいけないのではないか、こういうように申し上げて、既得権の問題については、事例を二、三申し上げました。特に仙台市、新潟市、秋田市等の事例のうちで、簡単に言えば、地方公務員の掛金が倍近くになる。金額から申して、四、五百円の増額をするという点、それから自治団体のうち、私は秋田市を例に引きましたが、七億八千万も持ち出しになる計数が出てきております。これはどこまで正確を期しておるか未知数でございますけれども、地方財政にとってはかなりな、その自治団体にとっては巨額なと言ってもよろしい持ち出しが出るようでございます。掛金がうんと高くなるということは、既得権を侵すのでございますから、これに対応する期待権、掛金が多くなるのだけれども、そのかわり、将来皆さんの手取りはうんと多くなりますよ、そういう期待にこたえ得るかということです。それから自分たちの出したお金が、より民主的に、公正に使われるだろうかという期待感もございましょう。こういうことにこたえられるかどうかということです。
もう一つは、地方財政の黒字というところに持ち出しが多くなるというめどが、今の場合出ているわけですね。秋田市の場合でも七億から七億八千万くらい持ち出しになる。この持ち出しになるのが、どういう方法によってこれをばめんどうを見るのか、それとも、めんどうを見ないのか。せんだっての官房長の話だと、めんどうを見るというようなことを言ったが、そのめんどうの見方があまりいい便法じゃないんだ。その例として、民間の最近における退職年金制度に対して政府が今考えている減税措置をば、私は事例にあげて、官房長の答えるのは少し薄過ぎるじゃないか。今大蔵省は、民間の退職年金制度を信託、保険類に積み立てた場合は、一・二%程度の低率でそれを預託させる。一・二%の低率ですよ。ただみたいなものだ。こういうやり方で民間を保護するということが、この四月一日からやられようとしておる。それにしては、今自治省がお考えになっているめんどうの見方は薄いのではないか、こういうふうに申し上げたわけです。
要約しますが、既得権を守ってあげる、期待感に十分こたえる、それから自治団体等における持ち出しに対してどういうふうにめんどうを見るのか、こういうことに大臣の御答弁を承ろうというふうに考えまして、今日まで待っていたわけです。その点御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/5
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006・安井謙
○安井国務大臣 地方公務員の共済制度につきましての御質問でございますが、一々私どもごもっともな御質問だと存じます。既得権として持っておりましたものは極力尊重していかなければならないということは、お話の通りだと思います。ただ、御承知の通りに、今度ばらばらになっておりました恩給制度その他の共済制度を一本化いたしまして、国に準じた扱いで、全般からいえば、非常に総合性を見せるような共済制度の改善を心がけておるわけでございまして、そういう意味から、あるいは個人のある部門については負担が若干ふえるというような場合もあろうかと存じます。しかし、従来持っておる既得権はできるだけ尊重していくということも、今お話しの将来につきましては、当然これは給付もふえますし、積み立てた金の使途につきましても、でき得る限り最小限度に大蔵省その他の干渉はとどめまして、これの用途については、地方の行政目的に沿うようなもの及びその組合員の福祉の施設に充てる、こういう方向で資金の運営も考えておるわけでございます。
もう一つ、地方団体の財政の問題でございます。これも御承知の通りに、最初一割の国庫補助を要求しておりましたが、これは成立しなかったわけでございます。そのかわりに、普通交付税の税率を〇・一上げる、こういうことによりまして、相当額の交付税の増収も今度からはかられるわけでありまして、その財源をもっていたしますれば、少なくとも交付団体に対する財源措置は可能であるというふうに私ども考えておるわけであります。なお、不交付団体についての経費高になるという問題がありましても、これももし計算上そのことによって不交付団体が収支上の赤字を生ずるというようなことがあれば、これは当然交付税の交付の対象になるわけでございますから、そういったことで財源的な措置は可能であるというふうに私ども考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/6
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007・石山權作
○石山委員 年金制度を討議するのは、本委員会の任務ではないのでございますけれども、私ども、定員等に関して、この問題はやはり考えざるを得ないのでございます。私たちは、地方自治団体の持ち出し分に対してのめんどうの見方は、在来のものの考え方だけでは非常に凹凸があると思う。私はかつての委員会において、たくさんは要らぬけれども、仙台市、新潟市、秋田市に対して具体策があるか、それを今出しなさいというふうに申し上げましたけれども、二、三日でその具体策がそんなに簡単に生まれるものでもないだろうし、調査もできない、これはわかるわけなんです。それほどいざ取っ組むとでこぼこがあって、持ち出し分のめんどうを見るにしても、非常に繁雑な条件がそこに出てくるだろうと思います。
それと同時に、もう一つは、民間の大企業が、今保険その他社外に積み立てようとしているわけです。これに対してほとんど税金をとらないというめんどうの見方をやろうとしている場合、民間だけが優位な退職年金制度が樹立されるような体制、それでは不公平があるわけでしょう。ですから、新しく出る場合に構想をきちんとしておかないと、それがもとになって積み重なっていくのですから、途中で改正するといっても、官の機構というものは、途中の改正はなかなかむずかしいのです。ですから、この出だしにおいて、大蔵省等で今民間における退職年金に対する援助の仕方を出しているのでございますから、これを見ながら、自治団体の持ち出しに対して十分な配慮をしていただきたい。
それから個々の公務員のかけ増しについては、僕らはなかなか苦労だと思う。簡単な言葉で言えば、秋田の場合には倍額になるようなケースがある。これは制度でございますから、持てる者が持てない者に上げるというのは当然なんです。だから、力のある者はよけいかけなければならぬというこの制度はわかる。しかし、現実的に倍額に近い増額が行なわれるとすれば、期待感にうんとこたえてあげなければいかぬと思う。あなた方が倍額やれば、こういうふうな町村の乏しい人も救われるのだという事例がはっきりしてくることと、それから積み立てられた資金はこういうふうな運営の仕方で、皆さんもこれぐらいの増額の退職金をもらえるのだ、皆さんに発言権があるのだというような期待感が十分に生きてこないと、どうも倍近くの金がとられるとなると、何だか理想というものと実生活の矛盾が現われてくるだろうと思う。それに対しては、十分皆さんがおやりになる責任の上において、組合関係なり職員組合なりいろいろあるだろうと思うが、そこで話し合いして、こまかく事例をあげて納得させるという手段が行なわれなければ、やはり悪法だ、反対だ、こういうことに私はなるだろうと思う。制度は賛成だけれども、理想は賛成だけれども、しかし、お前たちのやることは反対だよとくるのですね。そうすると、大臣の行政が悪いのだろうし、官房長の人心の収攬が悪いのだろう、皆さんが皆悪いことになる。制度はよろしいけれども、やり方が悪いということになりますから、一つ十分御考慮願いたい。
もう一つは、そういう意味では、期待感にこたえるという点で、持ち出し分に対しては、民間に対して大蔵省が考えている部分を十分に参照して、決して劣勢に終わるというふうにしない建前で行政をやっていくということを御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/7
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008・安井謙
○安井国務大臣 今お話しの通りに、いわば地方公務員にとりまして画期的な制度改善でございます。その具体的な改正につきましては、御心配のようなことも十分配慮しなければならぬと私ども考えております。ただ、体系としまして、これは国家公務員と同じような経路へ置くという上から、今お話しのような面も出てくるのであろうと思いますが、これにつきましては、御承知の退職金あるいは給付も年金も増額されるわけでございます。
もう一つ、大事なことは、積み立てた金の運用をどうするかという問題、これには、できるだけ組合員の福祉を充実させる、それからさらに、その地方団体の行政目的に沿うようにこれは運営をしていく、この方針は今度の法律では立てておるわけでございます。さらに、今御指摘のような市あるいは団体等につきましても、十分顧慮いたしまして、今後交付税を配付しますときの計算等は十分考えまして、これはいずれ来年度になりまして、七月、八月ころの交付税の交付になろうと思いますが、それまでには十分検討いたして、御懸念の少しでもないようなものに心がけてやっていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/8
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009・中島茂喜
○中島委員長 これにて質疑は終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/9
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010・中島茂喜
○中島委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。
自治省設置法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/10
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011・中島茂喜
○中島委員長 起立総員。よって、本案は可決いたしました。
本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、これに御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/11
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012・中島茂喜
○中島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/12
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013・中島茂喜
○中島委員長 引き続き文部省設置法の一部を改正する法律案に対する法律案に対する質疑を続行いたします。山中吾郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/13
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014・山中吾郎
○山中(吾)委員 この著作権の改正の必要については、ほとんど常識になっておる。その必要の確認を局長が答えられたのですが、聞くところによると、文部省の著作権課においては、数年前から世界の各国の資料、条約関係その他の資料を準備をして、そして著作権の改正は、そういう調査会を置かなくても作成できる程度まで準備ができておると私は聞いておるのですが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/14
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015・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 事務当局といたしましても、各国の立法例あるいは国内の問題点等は、着々準備を進めております。それから先ほど申しました著作権の改正にからみます隣接権の問題につきましても、ようやく昨年で問題が出尽くした感がございます。しかし、事柄はかなり広範多岐にわたっておりますし、内容自体が相互に関連がございますし、また、著作権の保護の事柄は、著作権者の権利の擁護と、利用者の立場と、それから一般公益の立場と、この三者を勘案して、妥当な線をきめるべきものであると考えますので、今回御提案いたしましたように、法律に基づく審議会において検討していただくという手続を経ることが適当であろうと考えまして、提案しておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/15
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016・山中吾郎
○山中(吾)委員 そうすると、準備は十分できておるけれども、利用者側の立場、公益の立場、こういう立場もあるので、調査会を作って、そしてあらゆる関係から非難を受けないような体制を作らないと困るから、調査会を作るということですか。直ちに法案を作るだけの準備はできている、こういうふうに聞き取れるのですが、その通りですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/16
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017・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 準備が完全にできておるとは申しません。それはなお補っていくことは、十分審議の過程でございますけれども、すべての問題点等の所在あるいは審議に付すべき材料等につきましては、かなり準備を進めておる段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/17
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018・山中吾郎
○山中(吾)委員 よく調査会を設置する場合には、改正を引き延ばすための、足踏みをするために作る調査会の場合、それから責任を分散をして、文部省が直ちにその法案を出すと抵抗がある、そのために調査会を作る場合、さらにほんとうに調査をしなければ結論が出ないという場合と、三つあると思うのです。私は、そういう意味においては、最後の場合以外はあまり審議会、調査会は好まないのですが、この場合、いずれにしても批判は別にして、今度の著作権制度審議会の目的は、準備は大体できておるのだ、しかし、いろいろと利害関係の対立もあるから、責任分散と言ってはいけないが、民主的に納得する線を持っていきたいから、審議会を作るのだ、これが主たる目的である、そうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/18
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019・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 完全な全面改正をして法典を作ります場合のすべての準備が、われわれ事務当局で現在可能だというふうにおとりになりますれば、必ずしもそうでもない。かなり入り組んだ専門的なところがございますから、学者等を入れまして、基本的な問題については一応討議をしてもらわなければ、われわれは簡単に結論を出し得ない問題がございます。ただ、今回審議会を設けて御審議願いますのは、先生が前段におっしゃいましたように、問題が多いが、その解決を延ばすと言うと語弊がありますが、そういうことでなくて、われわれとしては、積極的に著作権のいろいろな問題の解決を前進するということで、諸般の準備を進めながら、御審議をわずらわしていきたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/19
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020・山中吾郎
○山中(吾)委員 大体わかったのですが、そうすると、この調査を進めるのにそう長くはかからない、一年ぐらいで大体原案はできるというふうに、局長のお話では考えていいように思うのですが、大体数年前からいろいろ準備をされておることは、私も承知をしておるわけです。腹の底では局長も自信が相当あるはずだと思う。ほんとうを言えば、きっと専門家よりもさらに知っておるのじゃないか。原案はおそらく局長の方から出してくるということは、もう明らかなんです。従って、二年も三年もかかるはずはない。おそらく一年なら一年を目標にしてやるとか、そういうことは言えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/20
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021・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 これは審議会で御検討を願うことでございますけれども、われわれとしては、できるだけ審議会が能率的に行なえるように、すべての材料、問題点等は準備を進めて参り、また、現在も進めております。ただ、審議の過程におきまして、全問題を一括して全部そろえてなし得るか、あるいは重要事項について、あるいは問題の処理しやすいものから審議会がどんどん結論をお出しになるか、それはむしろ著作権法の改正を進めるという方向で、どちらの方法がいいかを私どもは検討して参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/21
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022・山中吾郎
○山中(吾)委員 お聞きしておるのは、一応文部省は著作権制度審議会を設置するについては、調査の期間のめどは大体お持ちになって提案をされておるのじゃないか。めどをお聞きしておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/22
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023・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 私どもは、この点を、先生のお尋ねのように、一年と区切ってお答えするのがいいかどうか、今ちゅうちょするものでございます。私たちは、少なくとも二年、三年重要な問題が引き続きたなざらしになるということがないようには、準備は進めたいと思っております。
それからもう一つは、問題点が非常にはっきりいたしましても、実際に相当の部分を立案いたしますためには、これは私どもだけでなく、立法技術の問題として時間がかかるということもあろうかと思います。
それからもう一つは、やはり世の中にこういう審議会の結論が出たということがはっきりいたします期間があることが、こういう文化の基本的な問題につきましては、結論は同じであっても、そういう制度が将来安定して運営されるためには必要なことではないか。各国のいろいろの改正法典のやり方から見まして、そのように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/23
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024・山中吾郎
○山中(吾)委員 としては、一年めどでやりますということは言えないだろうと思うのですが、少なくとも大臣その他が引き延ばしでやるのではなくて、今までの経過からいい、国際的な著作権水準からいえば、ほとんど常識でわかっているわけなんです。二年も三年もかけるような調査会なら、私はどうしても賛成できない。私は推進すべきだという立場で批判しているわけですから、その点は今までの過程からいうと、一年くらいで何とか結論を立てるように努力してみたいということくらいは言えないのですか。これは荷が重ければ、あとで大臣に聞きたいと思いますが、言えますか。別に責任を問うわけじゃないのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/24
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025・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 私どもとしては、できるだけ早く重要な問題について結論を得たいと思っております。ただ、先ほど申しませんでしたけれども、新たな分野で入って参ります各般の問題、たとえば応用美術の問題とか、いろいろな問題がございますので、そこが非常に短期間に解決がつくというようなものでもないかもしれません。従いまして、国内問題としてもあるいは国際関係におきましても、急を要するものから審議をして参りまして、そうして急を要するものについては、できるだけ早く結論を得るようにいたしたいと思っておるのでございます。しかし、著作権法は何しろ六十年にわたります現行制度でございますから、いろいろの点でなお長期にかかる部分がある。しかし、長期にかかる部分があるからといって、緊急を要するもの、あるいは早く解決した方がいいというものを延ばすというようなことは、私どもはしないように心がけたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/25
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026・山中吾郎
○山中(吾)委員 次に、この法案が成立をして、審議会が発足する場合の構成について、著作権法の本来の目的は、著作権者の保護が主たる目的であって、著作者を保護することによって、こういう文化物の発展をはかり、そうして公共性というものが制度的にどうされるかということが、考案、苦心される問題だと思うのです。従って、こういう場合に著作権者の側の意見が十分に通るような構成でないと、金もうけだけを考える事業者側の強い発言でいけば、著作権法の目的は喪失してしまう。それで構成については、著作者、学者とか、芸術家とか、美術家とかいうような人たちの代表者の発言が、正当に通るような構成をすべきであると思うのですが、それについての御意見をお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/26
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027・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 委員会の構成につきましては、単に利害関係者がそれぞれ主張してまとまらないというようなことのないように配慮はいたしたいと思います。お話のように、著作権法を担当いたしております者としては、著作権者の保護ということが第一でございます。ただ、保護がどの限度であるかというようなことが問題でございますし、それが公共の利用という観点でどの程度に折り合いをつけることが、実際の運営から見ても、あるいは国際著作権法のあれから見て、妥当であるかということは、十分学識経験者によって判断していただきたい。ただ利害だけの議論がまつわりついて、公正な結論が出ないような仕組みにはしたくない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/27
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028・山中吾郎
○山中(吾)委員 内容に入らないで、入口ばかりでなにしているのですが、今まで著作権審議会があって、そうして、これは大臣の諮問機関でなくて、局長の諮問機関ですか、局長の諮問機関というのが僕にはわからないのだが、いずれにしても、著作権制度の審議をする何か準備機関が作られた。ところが、この著作権制度審議会の運営が、どうも著作者の意見というものはなかなか出ないで、薄くなってきたということを聞いているわけでず。従って、新しく正式に設置法に基づいてこういう制度の審議会ができても、今までのように、そういう発言権の割に少ない、なれていない著作者の意見が、いつも第二義的になるというようなことでは、目的は果たさないのじゃないかと思うので、私は特に申し上げているのです。この点は、大臣が来たときにまたお聞きしたいと思います。
そこで、特にいろいろな点において改正すべき点は非常にたくさんある。その一々について大体どういう方針だということを聞くことはきょうはやめます。しかし、設置する限りにおいては、当然一定の方向は持っていなければいかぬと思うのですが、それは省略します。
そこで、もっと緊急に私が思うのは、著作者の保護期間です。死後三十年という現在の著作期間は短い、五十年にすべきだということが世論としてあること、ベルヌ条約体系の中にある国からいったら、三十年というのは日本とタイ国ぐらいしかないでしょう。共産圏とか、そういう最初から著作者についての保護の質が違うところは別としても、ベルヌ条約体系からいったら、三十年という短い保護期間を持っているのは、二国か三国と聞いておる。そういう点からいっても、私は、これだけは改正すべき中で緊急を要する性格のものだと思いますが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/28
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029・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 お話のように、現在著作権に関しましては、ベルヌ体制の国と、米州関係の条約の国と、それからいずれにも属さない国とがありますが、ベルヌ体制の国では、現在五十年に満たないものが四カ国ございまして、日本、タイ、ルーマニア、それに最近ポーランドが二十年にいたしましたので、四カ国になっております。それで、今新しいブラッセル条約の規定が最低五十年といたしておりますので、私どもの審議会に検討を願う目標というものは、おのずから判断されるわけでございます。ただ、一つ申し上げておきたいことは、日本の著作権法におきましては、かなり問題になっている著作物が入っております。その中には、先ほど申しました隣接権条約との関係におきまして、むしろ、世界の常識から見て、下げる必要のあるものも一、二あるわけでございます。そういうこともやはり審議会で検討していただいて、著作権法と隣接権との将来の世界の体制を見て振り分けていかなければならない問題も、私どもの頭の中にはあるわけでございまして、その点は、将来各国がどういう体制をとるかということを頭に入れながら、御審議を願いたい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/29
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030・山中吾郎
○山中(吾)委員 そういう公共性の問題も確かに解決すべきものがあると思いますが、日本の現在の状況から見ますと、ある文芸作品か、その著作者かなくなって三十年後に、未亡人、子供たちが保護の期間が切れて困るというふうな現実が非常に多いこと、それだけで五十年にすべきだとは考えないのです。三十年が切れたあと、出版会社が印税を払わないで同じ価格で売っている。従って、出版会社が利益を得るだけの話で、本を読む方からいえば、安く買っておるわけじゃないのです。そして、著作者及びその著作者が幸福を願う家族が、印税がなくなって、出版会社は印税を払う分だけ利益になる。保護する以前の出版の場合も、同じ価格で販売をされるという事実の中に、だれを保護する目的なのかという一つの大きな問題があると思うのです。五十年にして、五十年以後は、著作権の公共性を主張して、残りの印税は国に納めることにして、それを文化事業に使うとか、そういうやり方もしていいんじゃないか。個人のものから離れて公共的な著作物となってくれば、もっといろいろ考え方があると思う。今局長は逆の傾向があるとかなんとかおっしゃったが、共産圏は公共性を最初から考えて、著作者をうんと保護していると思う。その点は、常識的に三十年を五十年にする、そして著作者を保護しながら、そのあとは今言ったような文化事業に使って——出版会社だけの利益になって、他のものはみなマイナスになるというようなことは、ほとんど論議の余地はないじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/30
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031・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 私のお答え申し上げた点が少し不明確だったのでございますけれども、私は一般著作物の保護期間について言ったのではございませんで、現行の著作権法で著作物と定められております中には、たとえば実演家に関するものとか、あるいはレコード製造業者の権利でありますとか、そういうふうに隣接権に移行すべきもの、その性質から見て、別途の体系で保護期間をきめるべきものも入っておる。そういう関係もやはり検討しなければならないということで、その部分につきまして短期の問題が起こっておるということを申し上げたのでございます。
それから、保護期間が消滅いたしましてからの問題につきましては、要するに、無期限でありますれば、それが単に経済問題でなくて、それを利用するといろいろな立場に立ちました場合に、あるいは引用でありますとか、いろいろな点で、いつまでもその著作権者の許諾というものが必要である無制限な制度は、またいろいろ問題がある。著作権につきましては、わざわざ一定の保護期間を設け、その保護期間をどこに定めるべきかという問題が所在していますので、そういう点も十分に検討していただきたい、かように思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/31
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032・山中吾郎
○山中(吾)委員 その点はその通りなので、永久に保護するということは個人を保護するにすぎぬし、また短かければ、これは著作者を保護することによって文化的なものの発展をはかるという著作権法本来の目的から言ってもおかしいので、それを国際水準によるとか——日本のように子供とか未亡人が生きている間に保護期間がなくなるというのではいけない。寿命もずいぶん延びておる。若い天才的な者が書物を書いて、そうして夫人が非常に若いうちになくなるというような日本の実情からいって、緊急な問題として期間をどこに置くかということを論議しているので、永久に保護すべきだというような論議は少しもしていないのです。いずれにしても、三宅艶子さんですか、それから北原白秋さんの子供さんとか、ああいう人たちはすぐ切れるというので心配をしておるわけなんです。今局長が言ったように、非常に複雑なものだから、隣接権の問題も含んで全部結論が出ないと、法案としては出せないということになってくると、刻々として保護の期間がなくなっていくので、別途何か方法がないかと、今そういうことを心配しているわけなんです。その点、複雑な問題であるから、一つの項目の結論が出ても、総合的な結論が出るまで足踏みをしていなければならないというのでは、矛盾が出てくるのではないか。そういう矛盾をどうして解決するか。それはいろいろの点において考慮する余地もあるし、方法がないとは言えない。そういうことも十分検討されることを私は要望しておきたいと思います。その辺、複雑な問題であるだけに、一つのもののために他の関係を犠牲にすることにならぬよう配慮すべきだと思う。その点、抽象的でけっこうですから、理解ある考え方ができれば、ここでお答えしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/32
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033・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 いろいろな制度との関連が複雑であるから、一切がっさい全部結論が出なければ処置がとれないということでもないと私は思います。その問題は残しておいて、しかし、基本内な考え方、どういうふうに処理するかという方針を立てて、解決できるものから解決するという方法も、審議の過程で十分あり得るわけでございますから、私どもも、事柄の重要性等を考えまして、いやしくも審議ということで事柄の解決がいたずらに長引くというようなことのないように、十分注意して参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/33
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034・山中吾郎
○山中(吾)委員 今の問題、少しくどいようですが、審議会が発足することによって根本的に論議をされることはけっこうですが、それと並行して、きょうあすにも保護期間がなくなっていく人があるという現実があるので、保護期間を延長するという救済方法なんかも考えるべきではないか。行政的にはできなくても、政治的にでも延長すれば、法案を作るときに十分検討できると思う。一日あるいは二、三日の間にもだれかが保護期間を喪失するという現実を見て、それを審議会において慎重に審議するということと、そういう救済的な立場というものが調和がとれるようなことは、やはり検討すべきじゃないか。そういうことを思うので、この点については、局長の審議会設置を提案した立場からは、積極的にそういう答えはできないと思いますけれども、一方に別な一つの必要性、緊急性があるということについては、局長の審議会の設置を国会に提案して説明する立場と同時に、その期間、この分だけは不利益を与えない方向に救済的な処置をとるというようなことについて、私は矛盾のないような一つのあり方はあり得るのだ、こういうように思うのです。その点を、私は局長は今ここで明確には答弁はできないと思うのだけれども、私の方から要望しておきたい。そういう立場も私はあると思うので、大臣が来れば、今質問したことについての一応の要点をお聞きして、質問を終わりたいと思いますが、この点について何かお答えできれば一つしていただきたい。できなければできないでけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/34
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035・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 私どもが行政的に考えまして、今回の提案が一種の既得権というものを失わせるということでありますれば、今の御質問の点を行政的に考えたでありましょうけれども、現在の問題はそういうことでないものでございますので、今突然のお話で、それの適否についての考えを述べることを差し控えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/35
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036・山中吾郎
○山中(吾)委員 答えられないとは思います。実際は法案ができたときに、現在保護期間がなくなった人も、二年後に保護期間が延長される人も、保護される立場から条件は同じなんです。従って、二年後に法案が提案をされたときに、保護期間の適用については、二カ年さかのぼるとか何カ年さかのぼるということができればいいが、一たん喪失した保護期間を復活するということは法的技術がむずかしいから、そこで何とかならないかということで、私は緊急性を持った問題だと思って、意見を述べておるわけなんです。お答えできなければそれでけっこうです。
そこで、大臣が来られれば私は質問を終わってもいいのですが、まだおいでにならぬので、二、三のことについてお聞きしたいのですが、隣接権というものは、民法の改正とか、別な問題で処理することはできないのですか。著作権法へ入れなければならねものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/36
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037・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 これは、これから検討することでございますけれども、隣接権に関しては別個の法律を作るということになろうと思います。これは私の今の考えだけでございます。ただ先ほど申しましたように、日本の著作権法は、隣接権として定められるべきものが、現在部分的に著作権法としてございます。第一条等にもございますので、そういうものは、やはり私ども事務当局が考えますのは、隣接権ということの体系の中に仕訳をしていくべき性質のものだ。諸外国の関係もそうでございますし、条約もそうでございまして、これは、著作権として、他のたとえば小説でありますとか、そういうものと同じような角度でいろいろの規制をいたしますことが、困難な問題でございます。その全容が、実は先ほど申しましたように、昨年の秋の会議ではっきりいたしましたし、その会議の模様から見まして、各国がどういう方向をとるであろうかということも、私も出席いたしまして大体わかりましたので、隣接権の問題は、著作権法のこの改正とからんで検討して参りたいと思います。
なお、先ほどの保護期間の消滅の問題でございますが、これは年単位で消えて参りますので、その点は御承知願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/37
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038・山中吾郎
○山中(吾)委員 満単位でなしにですか。そうすると、三月なら三月から発足した著作権者は、三十年というのは、その次の年から数えられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/38
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039・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 著作権法第九条に起算点に関することがございまして、死亡した翌年から考えますので、著作権の消滅は、いつの時期になくなりましても、暦年の末に消滅する、こういうことになるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/39
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040・山中吾郎
○山中(吾)委員 そうすると、本年消滅するはずのものは、十二月末までは必ず保護はある、こういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/40
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041・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/41
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042・山中吾郎
○山中(吾)委員 それから、今局長が話された、隣接権は別の法案でやるという方針は、これも審議会において承認がなければならぬと思うのですが、そういう方針が通ると仮定すると、隣接権に関する法律を著作権に関する法律と同時に提案しなくても、著作権法を先に出すということは可能ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/42
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043・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 これは審議の過程によりますけれども、可能でございます。ただ、審議の当初におきまして、その考え方の基本というものをどうするかということは、著作権法とのからみ合いで御審議願わなければなりませんけれども、これを成文にいたしましていつ国会に提出するかということになりますれば、おのずから別の問題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/43
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044・山中吾郎
○山中(吾)委員 大臣がお見えになったので、結論的にお答えを願っておきたいと思うのですが、今局長と質疑応答したことは、この設置法の一部改正で著作権制度審議会を設置するについて、現地の著作権法は非常に古い、時代錯誤的なものであるから、改正の必要を認めて審議会を設置するのだ。この点は了として、むしろ、すみやかにこれは結論を出してもらいたいというのが、私の結論であります。著作権法の本来の目的は、著作権を保護して、文化制作物の発展をはかるということが目的なのでありますが、一方に公共性もある。だから、そういう著作者を保護しながら、一方に公共的な立場を配慮するということは当然でありますけれども、出版会社の場合は、著作権を長く保護されることは、営利的に好まない一つの性格があるわけであります。ところが、現在、著作者の死後三十年の保護になっておりますけれども、三十年の保護が切れて印税を払う必要がなくても、価格が下がらないで、それが出版会社だけの利益になる。一方、日本の場合においては、芥川龍之介にしても、あるいはその他の天才的な文芸家にしても、二十代に著作を出して若くして死ぬ。従って、未亡人が五十、六十になって生きておるまま、保護からはずれてくる場合が非常に多い。生存期間も長くなっておる。五十年にするというふうなことも、緊急に現実問題として必要な場合がたくさん出ておるわけです。そういうふうな一番利益を主張するという立場、著作権者を守るという立場が、こういう著作権制度審議会のメンバー構成の中に正当に意見が反映するというふうな構成でないと、私はこういう審議会制度を作っても逆なことになるのじゃないかということを心配するので、構成をするにあたっては、著作者の代表者が参加をするように十分配慮して、その人たちの意見が反映するような構成を特にしてもらいたい、こういう要望を申し上げたわけであります。その点について、大臣から責任のあるお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/44
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045・荒木萬壽夫
○荒木国務大臣 御指摘の通り、著作権法はずいぶん古いもので、かたかなで文語体で書いてあると記憶しておりますが、そのぐらいなものですから、時代に沿わない点がたくさんある。国際的にも、国際会議を通じてそういうこともあわせ考えられつつ進行しておるわけでございますが、何さま問題が非常にデリケートで、特にまた経済的利害関係、あるいは数年、数十年にわたっての見通しも必要であるという意味合いから、審議会を設置して万遺漏なきを期したいという考えであることは、申し上げるまでもございませんが、それについて、今御指摘のようなメンバーを委員の中に入れる、特に著作権者側の意向も反映するようなメンバーにしたらどうだということは、私も同感でございます。当然、著作権者あるいは著作権の利用者、それにまた客観的な立場で意見を述べるような方々、構成メンバーとしては当然そういうふうな構成であるべきだと抽象的には私も思っております。今御質問に応じまして、私も同感であることを申し上げ、選考にあたりましては、十分御意向のある点もしんしゃくしまして、万全を期したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/45
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046・山中吾郎
○山中(吾)委員 第二点をお聞きしたいのですが、文部省では、数年前からこの著作権に関する資料は世界的に集めて準備をされておる、審議に際して必要な資料はほとんど準備しておるということは、局長もお答えしておられる。従って、この審議会は、いつまでも調査で足踏みをするというようなことのないように、すみやかに結論を出して、世界水準についていくような合理的な法案といいますか、結論をすみやかに出すことを要望したいのですが、その点についても、この審議会は、引き延ばしの審議会ではなくて、いろいろの準備もほとんどできて、利害関係の意見の調整というものがおそらくあるのだろうと思いますが、すみやかに結論を出すということについての大臣の御意見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/46
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047・荒木萬壽夫
○荒木国務大臣 結論から先に申し上げますれば、お話のように、のんべんだらりと、いわば結論を出すのをおくらすための手段にこれが利用されるなどということは、許されざることだと思います。隣接権の問題等は、山中さんも御承知のように、現に具体問題として、国際的な関連において焦眉の問題ともなっております。そういうことからいたしまして、著作権条約の審議等ともからんで、日本自身もなるべくすみやかに、かつ慎重に、合理的な結論を得なければ当面に処し得ないということが、審議会を設ける趣旨でもございますから、もちろん、審議会それ自体の自主的な運営が尊重されねばならぬことは当然といたしましても、審議会設置の目的、性格等から申しまして、文部省という立場から申し上げましても、極力結論を出していただくのを推進するということこそ考えるべきで、引き延ばし的な要素は何らないわけと心得ますから、なるべくすみやかに結論を出していただくように、私どもの側からも審議会にお願いもし、措置もしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/47
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048・山中吾郎
○山中(吾)委員 大臣、おられなかったので、復習いたしますが、局長との話し合いの中にも、純粋の著作権保護に関する法案と、隣接権に関する法案との二本立にしてやりたいというような意見も今開陳されました。一つの法案にしますと、これは非常にまた複雑な問題が出ますが、二つの法案ということに審議会の中で方針がきまってくれば、あるいは純粋の著作権法案も先に出せるのではないか、そういうことも考えて、すみやかに直接の著作権の保護についての法案が先にできれば、同時に出すということになって、二、三年もおくれるというようなことでは、また一方に気の毒な人も出るので、そういうことは大いに配慮して御検討を願っておきたいと思います。これは御答弁はなくてもけっこうです。
それから最後に、著作権の保護期間の問題なんですが、年々保護期間が切れる人が、未亡人、それから子供たちがある。それで切れたあと、出版会社では、それなら印税を払わぬ分だけ定価を下げるかというと、下げないで販売をしておるわけですから、著作をした人の家族の保護をなくして、同時に書物の価格も下がらないで販売されているという現実からいって、救済的に、この審議会の結論が出るまででも、措置ができればしてやるべきではないか、そうして国際水準からいっても、それが常識であるのだから、何らかの方法で名案が出れば、一方に部分的にも審議会の審議と矛盾のないことを配慮しながら、そういうあり方についても弾力性のあるお考えを持ってもらいたい、こういうふうに私は思うので、御要望申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/48
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049・中島茂喜
○中島委員長 受田新吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/49
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050・受田新吉
○受田委員 この法案と直接関係のある問題についてお尋ねしたいと思います。
今度の法律の改正案の中に、国立近代美術館の分館を置く規定があるわけでございます。国立科学博物館とか国立近代美術館とか、こうした文化的な施設に力点を置かれることはまことにけっこうであり、また、そういうものの費用を増大させる措置をとることも、われわれとしては大いに共鳴するところなのですけれども、この国立近代美術館の中に、国際的な関係の美術品というものはどういう努力をして収集しておられるか。これはきょう直接担当の人がおられると思いますので、国際的な美術の収集にどのような努力をされておるかをちょっとお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/50
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051・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 外国の美術品につきましては、主として同じように国立でございます国立西洋美術館の方の任務としておりまして、国立西洋美術館につきましては、本年度資料購入費として新しく一千万円の予算の増額を行ないました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/51
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052・受田新吉
○受田委員 その収集にあたって、外国との折衝その他運搬費、こういうものがそれぞれ一千万円の中に計上されておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/52
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053・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 外国の資料の買い上げではなくて、交換につきましては、随時、たとえば西洋美術館長が外国へ出張いたします。そして、いろいろな審査員その他審査委員長になったこともございますが、そういう関係で出張いたしまして、外国の美術館長と折衝して、それぞれ受け持つ費用等をきめまして、数回にわたって国際的な展覧会を開催いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/53
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054・受田新吉
○受田委員 私は、この機会に特に文部省の態度をはっきりさせておいてもらいたいのですが、外国では、美術とか科学とか、国立のそうした文化的機関の設備費などに非常に思い切った予算を組んで、その施設を強化しているわけです。日本は精神的な効果として、そうした精神面の点についてはやや強調するにやぶさかではないけれども、科学性を追求するというような形、あるいは美術の真髄に触れるような問題については、私何回も外国を歩いた印象からは、文部行政の上で冷淡な印象が受け取れるわけです。ですから、文化財の保護、特にイタリアのごとく、すべてが破壊された中で文化だけを守り抜いたという、そういう国策を十分考えて、また、こうした美術館の拡充強化ということに努力されて、日本の重要文化財が外国へ流れ出るようなことも十分防いで、それを処罰するのに、法規的にももっと厳罰に処するような規定を設けて、日本の美術を生かし、あるいは科学を栄えさせるような努力をされて、日本の持つよさと、また外国のそうした同じ立場における比較から、国民を啓蒙する意味の努力をされる必要があると思います。そうした重要文化財、美術品というものを外国からこちらへ入れるということではなく、日本にあるそういう大事なものを、交換は別として、十分これを保護育成するという努力をもっと積極的にされる必要はないか。最近、重要文化財その他美術品等がいつの間にか外国に流れ出ておるような傾向を見るが、これはあなたの方がよく御存じだと思いますので、お答えを願って、私の質問を終わることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/54
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055・齋藤正
○齋藤(正)政府委員 文化財につきましては、重要な文化財、美術品の買い上げのための予算も組んでおりますが、私どもは今お話しの点については十分留意いたしまして、今後も予算の拡充あるいは施設の拡充に努力したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/55
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056・中島茂喜
○中島委員長 これにて質疑は終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/56
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057・中島茂喜
○中島委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。
文部省設置法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/57
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058・中島茂喜
○中島委員長 起立総員。よって、本案は可決いたしました。
なお、本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/58
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059・中島茂喜
○中島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
本日はこの程度にとどめ、次会は、明九日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、これにて散会いたします。
午後零時二十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01419620308/59
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