1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年三月十六日(金曜日)
午前十時三十七分開議
出席委員
委員長 中島 茂喜君
理事 内田 常雄君 理事 堀内 一雄君
理事 宮澤 胤勇君 理事 石橋 政嗣君
理事 石山 權作君 理事 山内 広君
内海 安吉君 小笠 公韶君
小沢 辰男君 大森 玉木君
木村 公平君 久野 忠治君
島村 一郎君 高橋 等君
辻 寛一君 藤原 節夫君
保科善四郎君 田口 誠治君
西村 関一君
出席国務大臣
通商産業大臣 佐藤 榮作君
運 輸 大 臣 斎藤 昇君
出席政府委員
通商産業事務官
(大臣官房長) 塚本 敏夫君
通商産業事務官
(通商局長) 今井 善衞君
通商産業事務官
(軽工業局長) 倉八 正君
通商産業事務官
(鉱山局長) 川出 千速君
通商産業鉱務監
督官
(鉱山保安局
長) 八谷 芳裕君
通商産業事務官
(公益事業局
長) 樋詰 誠明君
運輸事務官
(大臣官房長) 広瀬 真一君
運輸事務官
(海運局長) 辻 章男君
運 輸 技 官
(港湾局長) 坂本 信雄君
運輸事務官
(自動車局長) 木村 睦男君
委員外の出席者
通商産業事務官
(通商局振興部
長) 生駒 勇君
運輸技官
(船員局教育課
長) 木内 文治君
運輸技官
(航空局技術部
長) 大沢 信一君
気象庁次長 多田 寿夫君
運輸技官
(気象庁予報部
長) 肥沼 寛一君
専 門 員 加藤 重喜君
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三月十六日
委員小川半次君、金子一平君及び前田正男君辞
任につき、その補欠として木村公平君、小沢辰
男君及び久野忠治君が議長の指名で委員に選任
された。
同日
委員小沢辰男君、木村公平君及び久野忠治君辞
任につき、その補欠として金子一平君、小川半
次君及び前田正男君が議長の指名で委員に選任
された。
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本日の会議に付した案件
通商産業省設置法等の一部を改正する法律案(
内閣提出第四六号)
運輸省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第九〇号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/0
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001・中島茂喜
○中島委員長 これより会議を開きます。
通産省設置法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。
質疑の通告がありますので、これを許します。石山權作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/1
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002・石山權作
○石山委員 たとえば、今度の池田内閣の経済政策の中心をなすものが、高度成長政策であると同時に、為替貿易の自由化を機軸にする、こういう考え方だろうと思う。それはそれとしてよろしいと思うのです。ただ、そのことによって非常に優位な立場をとる産業と、そのことによって非常に苦労をしなければならない産業とが、顕著に現われてきている。この現実は理屈ではいかぬおけです。現実的に出ているものをどういう格好で救済するかということだろうと思うのです。今までおおむね、私ら聞いておりますと、池田さんにしても、おれにまかせておけと言うし、池田さんの経済政策の基本をなす開銀理事の下村さんなんかも、いまだにもって非常に強気で、そういうひずみのあることはあまり気にしておらない。しかし、現実に起きていることは気にせざるを得ないという立場が出ております。私たちの周辺を見ます中で、東北地方の場合は鉱山などが大へん多いわけであります。結局、自由化になった場合に、一番被害を受けるのは農産物だろう、その次に被害を受けるのは地下資源の物資であるだろう、こういうふうに評価をされているわけでありますが、なるほどそういう傾向が出てきているようにも見えます。一ころ、たとえば銅がトン当たり三十万ぐらいでなければコスト採算割れだといわれていたのが、最近二十八万まで下がってしまった。しかし、これを土台にしてやっていこう、だが、これもそういう業界の願望にすぎないのであって、いざとなると守られない可能性があるのではないか。今通産省で考えられている点では、二十八万を割るとなかなかやっていけないというので、業界、それからそれに従事している労働者の方が、最近になりますと、労働者の方々のほかに、その地域の自治団体、市町村団体の議会の人たちも大へん心配をし始めてきて、鉱山局長も御承知でしょうが、大きな鉱山になりますと、かなり長い歴史を持っておりまして、その地域の自治団体の七割ないし八割くらいが、その鉱山を主体にした税金によってまかなわれているというのが実態だろうと思うのです。ですから、私どもとしては、それを見ていますと、いろいろ政策をお立てになっていますが、これで安心したという政策のめどをまだ明示されていないように思うのでございまして、予算が衆議院を通過した今日でございますから、予算だけは相違なく実施できる段階でございますので、今鉱山局で最も創意工夫をこらしてやった一つの面として、たとえば弱小鉱山に対する開発面でも、例年に見ない、昨年より三倍以上の額を盛っておる、こういうふうなものが、どういう格好ででは実際その企業体におろしていくのか、あるいはある人に言わせると、これは県を通じ、あるいは地方の通産局を通じておろす、いろいろあるようでございますが、今鉱山局のお考えになっておる実際の金の出し方は、どういう経路を踏んで下部に落とされていくのか。それからもう一つお聞きしたい点は、当初の予算要求は六億くらいだと思っておりました。それが三億に減ったのとしましては、大手業者はこの場合御遠慮願うのだ、こういうふうな意見も一部承っておりますが、実際の実施にあたりまして、そういうことを本気になってとって、実質的には中小企業に対しては、当初の考えと同じくらいの金額で補助育成ができるのか、その二点をまずお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/2
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003・川出千速
○川出政府委員 ただいまの御質問についてお答え申し上げます。
まず第一に、今度予算案として提出されております探鉱の補助金三億の交付の手続でございますが、まだ予算は通過しておりませんけれども、現在申請を全国の鉱山から通産局を通じてとっておりまして、ただいまのところで、その倍の六億くらいの希望が出ております。これを交付しますのは、申請をよく審査いたしまして、国が直接企業に交付する、過去においてそういうふうにやっておりますので、今度も同じような手続でやりたいと思っております。その際に、通産局は現場をよく把握しておりますので、通産局の意見をよく聞きたいと思っております。それから通産局は、これは局によって多少のやり方は違うかと思いますが、 .たとえば東北地方におきましては、仙台の通産局は各県と非常に緊密な連絡をとっておるように聞いております。それが第一点です。
それから第二点は、探鉱補助金をどのくらい要求し、それがどういうふうになったのか、その経緯はどうかというお話でございますが、大蔵省に当初要望しました額は八億五千万でございます。この対象は、自由化によって受ける影響というものは、いわゆる中小企業ばかりでなくて、大企業も——大企業といいましても、国際的に見れば、日本の鉱山は規模はきわめて小さいわけでございますので、大も中小も含めまして、同じように影響を受けるであろうということで要求をしたわけでございます。しかし、予算の支出というものは、また別の角度から見なければならぬ面もございますので、従来通り中小を重点的にやるというところで、通産省も了承をした格好になりまして、三億という数字になったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/3
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004・石山權作
○石山委員 そうすると、たとえば資金が実際に業界におろされる場合には、自治団体の県等の機関はそれに何ら関与しないのか、地方の通産局と業界と直結して資金がおろされるのか、その点をもう少し明瞭に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/4
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005・川出千速
○川出政府委員 ただいまの御質問の通りでございます。建前としましては、国が直接鉱山事業に交付をするということになっておりまして、通産省の地方機関である通産局に鉱山部というものがございまして、これは非常によく現場把握を伝統的にやっておりますので、そこの意見を聞いてきめるということにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/5
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006・石山權作
○石山委員 たとえば秋田のような場合は、たくさんの鉱山があるものですから、県も今度のような場合には意欲的に開発に協力をする、こういう態勢を組んでおるようでございます。その組んでおるものの中で、私は地方新聞だけのキャッチの仕方でございますから、確実でないのですが、いささか秋田県としては少し膨大になるような数字を補助金として出す、こういうふうなことがついておるわけです。その中の一部分というより、半分くらいが、今度通産省が骨を折って作った、例の三億円のうちから、おそらく秋田県に配分になるだろうという想定のもとで、その金額を新聞記事等で出しておる経緯があるものですから、もしそうでないとすれば、県にも善処を促しておかないと、労働者やあるいは弱小の経営者にから公約をしたということになるのでございますので、私はお聞きしているわけですが、その点では間違いないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/6
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007・川出千速
○川出政府委員 私前に申し上げましたように、交付につきましては、府県とよく打ち合せをしてやっておるそうでございます。これは実際運用上の面で、手続上協議しなければならないというようなことになっておりませんけれども、密接に連絡をとってやっておるそうでございます。ただいま各通産局の鉱山部長を呼び集めて会議を開いておりまして、東北地方からも出て参りますので、先生の御質問につきましては、早速調査をして参りたいと思います。それから何といいましても、東北地方は、金属鉱山については、一番日本でも重点度の高いところでございますので、申請を集計し、いろいろ内容を審査いたしますと、東北地方がおそらく相当のウエートを占めてくることは間違いないことだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/7
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008・石山權作
○石山委員 次に、価格のことについてお聞き申し上げたいと思うのです。社会党は商工委員会に、支持価格制度と私たちは呼んでおりますが、これを中心にした法案を出しておるわけです。私は今そのものを力説して、あなたと論議をかわそうなどとは思っておりません。ただ、二十八万円を割ればコスト割れになるという懸念が、ラディカルにあると思うのです。ほんとうに二十八万円を割ればやっていけないのかというあなたたちの見方、ここを押せばここを援助する、たとえば製法でもよろしい、ここを援助すれば、二十五万円でもやれる、二十六万円でもやれる、こういうような見通しがあるのかどうかということ。それからもう一つは、割らせない、二十八万円より下げないのだ、現実的にそれより下げるとちょっと困るから、下げないのだ、下げないようにするにはどういうことをお考えになっていられるか、この二つの点についてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/8
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009・川出千速
○川出政府委員 二十八万円と申しますのは、どうも地金の建値と存じます。現在、この前まで二十八万八千円でございました。これは海外相場にスライドをして建値をきめる方針で、鉱山局は指導をいたしておるわけでございます。現在それでは二十八万円でやっていけるかいけないかと申しますと、これは非常に山によって違うわけでございまして、ある山については現在でも三十万をこえておるところがあります。あるいは二十万円そこそこの非常に安いコストの山もございまして、一様ではないわけでございます。山のコストを引き下げるには、何がきめ手であるかというお話でありますが、これはいろいろな合理化の段階があるかと存じますけれども、一番のかなめになるのは、探鉱を活発にいたしまして、品位を上げるということが、最も効果的であろうかと思います。現在、銅は全国の平均品位が一・二%でございます。これをかりに〇・一%上げますと、これは計算で出て参りますが、ほかの条件が同一であるならば、トン当たり一万数千円のコストが下がるということになるわけでございまして、鉱山、特に金属鉱山にとりましては、探鉱が一番のきめ手だと思います。もちろん、そのほかの採鉱過程あるいは製練過程においても、合理化の余地は十分ございますけれども、探鉱をして常に相当の鉱量を確認し、どこにどれだけの品位のものがあるかということを見ておいて、そうして、これは好況、不況というものがあるわけでございますので、好況の場合には比較的品位の低いところを掘る、不況の場合には比較的品位の高いところを掘るという弾力性を持っておることが、一番肝心かなめのことだと思います。従って、昔から鉱山は探鉱には一番力を注いできたわけでございます。この点が石炭とやや状況を異にいたしておりまして、鉱山は探鉱しなければわからないわけです。探鉱しないでおると、その山は閉山になってしまう。わかっておるものだけを探っておれば、必ず掘り尽くすわけですから、絶えず探鉱をし、高品位のものを探す。そのためには探鉱量を上げなければ見つからないわけでございますので、われわれとしては、来年度の予算も探鉱に一番重点を置いて要求したわけでございます。そのほかにも、開発銀行の融資、それから北海道東北開発公庫に対する融資の増ワク、中小企業金融公庫の融資の増ワク、それから中小企業の近代化の補助金、これについても鉱山関係に相当出してもらいたいということを要望いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/9
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010・石山權作
○石山委員 予算が衆議院を通ったといっても、まだ成立していないわけなんで、その配分が明確にならないのですから、実際にそれが速効薬になって現われるかどうかということは、まだ未知数なわけですが、言われているところの探鉱に対する補助とかいうようなことは、今年だけ問題が取り上げられたのではなくて、やはり前々から取り上げられているわけです。前々から取り上げられて、今回つまりこれが生きてくるという場合には、それが実数になって現われるか現われないかですね。たとえば十の金がなければやっていけないところ一、七か六くらいでは、育成にはならなくて、生きているということには通ずるかもしれない。しかし、これは決して弱小企業の育成になる数字にはならないということなんです。僕ら皆さんの説明を聞いておると、いつもよくなるだろうという錯覚を起こすのですよ。りっぱなものですよね。しかし、実際からいうと、一年あとで振り返ってみると、さっぱりよくなっていない。よくなっていないということは、やはり投資される資金というものが、育成に値しない資金になりがちだということだと思う。それがたとえば関税方式によってやってあげようという意見も前々からあって、石油関税のように目的税によってかなりな成功をおさめておるような部門もある。しかし、これも実際からいうと、中小企業、弱小企業をかなり下積みにした形で成功しているというふうに、僕らから見れば見えるのです。それではいけないと思うのです。やはり全体が上がっていく仕組み、弱いところを強くするというような仕組み、こういうものを実際に及ぼさないと、説明にはなっていても、実際は動いていないという証拠だろうと思う。今回の場合も、あなたの説明を聞いていて、私も前に皆さんの方から党のヒヤリング等で説明を聞いておるが、なるほどりっぱなものだと思う。だけれども、今までの実績を見ていて、ことしははたしてそれでうまくいくかという疑問点をたくさん持っておる。今申し上げました通り、実際の配分の数字がまだはっきりしていない。おそらくこの論議というものは、配分の数字がはっきりしてから論議されるべきものだろうと思うわけですが、僕らの言わんとするところは、やはり政治的なものですから、問題はいつも政治的に見られる可能性があるものですから、ぱあっと薄く広くというような考え方がやはり出るだろうと思うのです。今度の場合、大手を除いて、探鉱費三億を弱小に強く振り向けるというこの態度、これだけはやはり守っていただかなければいかぬのじゃないかと思う。そうでなければ、探鉱費は皆さんの方の要求したのは、大手を含めて六億だと解釈しておった。それが三億、半分に減ってしまって、それに今度また大手が割り込んでくるとすれば、中小、弱小には非常に薄い形で配分になる。先ほども申し上げたように、それでは生かしておくということにはつながるだろうけれども、育成にはつながっておらぬ。大企業は完全に押え得る——法律的にはなかなか押えにくいでしょう。行政措置ですから、行政措置にはやはり強い態度を示していただかないと、これは省としては決定しておるのだというような強い態度を示しておいていただかないと、大手だって苦しいときは苦しい、金詰まりがきていますから。そうすると、なかなか中断しにくい設備もあります。特に事業資金は必要になってくる。そこで、割り込んでくる可能性は多分にあると思うのですが、その点もう一ぺん御説明をいただきたい、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/10
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011・川出千速
○川出政府委員 通産省が大蔵省に当初要求いたしました補助金の額は八億五千万でございます。このうち、約五億近くが大手だったと記憶しております。従って、これが三億になったわけでございますので、大手、いわゆる産銅六社に出す余地はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/11
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012・石山權作
○石山委員 大臣が来ましたから、なるべく大臣を早く解放するように、集約して質問を申し上げたいと思います。
今、日本の経済問題で、私は、やはり通産省の方々の御努力によるところが一番多いのではないかと思っております。今景気がいいとか悪いとかという言葉があるのですが、この景気がいいとか悪いとかという言葉の前に、一つの変動期に来ているということは確かだと思うのです。変動期に来ているということに対して不況と感ずる人は、これは池田内閣あるいは通産行政に対して文句を言うだろうと思う。そうでなく、きのうの参議院の予算委員会の下村さんの意見を見ると、これは健全な一つの動き方だ、推移だというふうにまた強く言い切る方もおりますけれども、われわれから見ると、これはやはり不況の一種のはしりだと見て差しつかえないのではないか。不況だと言うと、あなたの方でいろいろ文句を言うだろうけれども、はしりだ、芽が出てきたということでは、否定されない事実がたくさん列挙できると私は思う。とにかく不況という言葉がいやであるならば、この変動に対してどういう手を打てば安定するだろうか。われわれは安定を欲しているわけなんですからね。国民生活は低ければ低いなりに、高ければ高いなりに、あまり大金持が利益を得ないような格好とか、物価の変動その他から見て、生活上の安定を欲しておる変動期が来ておるということです。ですから、この変動期に対して、安定を望んでいる国民に、通産行政として、通産大臣として、今いろいろ、たとえば景気調整を行なう、過剰設備に対してまた一つの調整を行なって、いろいろ案を最近お出しになっているようでございます。三月十四日、通産大臣は、製品の在庫が急増してきた、こういうことを心配されているわけですね。これも変動の一つの現われだと思うのです。その変動の現われに対して、どういう手を打ちながら国民が要望している生活安定にこたえようとしているのか、これはこまかく言えば、切りがない、たくさんの問題があるけれども、大ざっぱにどういうふうにお考えになっているかということを、この際お知らせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/12
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013・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 今の言葉じりをとってどうこう言うわけではございませんが、経済の変動期という場合の変動期は、石山さんの言われたような景気、不景気ということとは別な意味に私は実は使っておるわけでございます。これはどういうことかというと、いわゆる経済活動の機構が変わってきているというのが経済の変動期という意味で、ただいま指摘しているその一番大きな具体的な例がEECの結成、しかも、EECが非常に強化された。しかも、これを中心にして、イギリス自身もそれに加入する、あるいはアメリカもこれは無視ができない、こういう意味から経済の一つの変動期に来ている、あるいはまた技術的な革新、そういう意味からやはり経済の変動期に来ている、こういうことですね。このEECあるいは技術革新等から見て、最近の形の現われで、あれだけ進んだ国、ドイツでもフランスでも、あるいはイギリスでもアメリカでも、資本合同が行なわれている。しかも、国境を越えての経済協力が行なわれておる。これは明らかに経済の変動だ、こういう言い方を実はしておるのでございます。ただ、この変動という言葉には、石山さんが言われるように、景気自身の変調、それをまた変動という形で表現する方もございますが、これはなるべく使い分けした方がいいのじゃないか、こういうふうに思います。もちろん、国内の景気も今変動しているというか、動いている。動いていることは変動じゃないか、こういうことですが、言葉の観念は、経済の変動という場合の使い方と少し違いはしないかという感じが実はしております。
ところで、本筋の、景気だとか不景気だとかいう言葉のわけは一体どういうことか。経済が拡大し、どんどん消費が伸びていく、これは確かに好景気ということです。景気が上昇しておるということが言えるでしょうが、それも反対の方向にいけば景気停滞で、これが不況という形でも出てくると思います。ところで、経済自身は、下村説を紹介するわけではございませんが、やはり時期的に短い期間だけとって、そうしてこの様相はどうだということはなかなか言いにくい。いわゆる長い目で見て、その経済の動きを見ていかなければならぬのではないか、こういう考え方の方が実は強いのではないか。ことに、日本を初め各国とも所得増加計画をとっておる。日本は所得倍増計画、あるいは外国においては五倍の計画、私、つい二、三日前もラジオでモスクワ放送を聞いておると、チェコスロバキアでは、鉱工業生産が五倍増とかいうような放送をしておる。そういうようにどこでも倍増計画を立てて、それが二倍だったり三倍だったりしておる。ソ連の計画等を見ても、ソ連の農業が計画通りいかぬからというので、今一番議論になっておるようでありますけれども、そういう倍増計画を立てておるが、この倍増計画は相当長期の見通しのもとに立てなければならぬ。ところが、私どもの考え方の自由経済のもとにおいては、物事は計画通りいかない。資本主義経済、自由経済の特色でありますが、計画通りにいかない。その計画は、悪くいえば、目標の数字というようなことにもなりましょう。それはどうも腹づもりではないかということもありましょう。だから、自由経済のもとでは、そういう一つの目標を示し、それに諸施策を合わせていくことを実はやってきたのであります。そこで、ここ一両年の日本国内の経済の動きを見ると、その間に、自由経済の持ついい点でもあるが、同時に欠点も出てくる。それが設備投資の過大というような形になり、あるいけ国内消費が急激に伸びて、そうして国際収支がアンバランスになる、こういうような変調を来たしておるということです。だから、昨年来、設備投資を抑制するとか、あるいは内需をある程度押えるとか、あるいは輸出を振興するとか、そういうような方向でぜひとも国際収支のバランスもとろうし、また、一年で片づける倍増計画ではないから、もう少しテンポをゆるめたらどうだというような話に実はなってきたのだと思います。ただいまの状況は、今言われておりますが、いわゆる調整に入って、調整の効果がもう少し早く出てくるのではないかという見方を実はしていた。大体十一月あるいは十二月、その辺がピークで、それからは調整の効果が順次上がってくるから、鉱工業生産も落ちるとか、あるいは輸出入のバランスも順次好転していくとか、あるいは消費も落ちつきを見せるだろうということを期待していた。ところが、どうもその通りになっておらない。一月の鉱工業生産も三・八%伸びた、あるいは二月の数字はまだはっきりつかんでおりませんが、電力の消費量などもあまり変化はない。そうすると、鉱工業生産は高水準で横ばいしておるのではないか。そうすると、調整の段階に入って、その調整の効果の現われというものを期待した、それと、今の現状とを見ると、相当開きがあるのではないか。ここに一つの心配がある。これを政府とすれば、今までは一カ月の動向だけで計画を変えるつもりはございませんといって、はっきり申しております。まだ私どもの計画を変更するつもりはございませんが、この際とにかく財界の協力を得るように、実態を十分認識していただくような説明が必要ではないかと思う。きょうの新聞などは、経済企画庁は大体調整が三カ月くらいずれておるのではないかという言い方をしております。私どもは、三カ月ずれたかどうかは別といたしまして、ただいままでのところ、鉱工業生産が依然として高水準できている。高水準できているが、しかも、品物がどんどんはけて輸出に回るとか、あるいは国内で消費されるならけっこうですが、素原料の在庫もどういうような形をたどっておるか、いろいろ検討しますが、同時に、生産された物が在庫になっているものも相当ある。その在庫率というものもよく考えなければならぬというのが、経済の全体の動向を推定する一つの材料じゃないのか。製品在庫というものをわかりやすく極端な表現をすれば、工場ではせっかく作ったけれども、それが売れない、だから、在庫の形で蓄積される。そうすると、それが金融がつかないことになる。ことに金融引き締めの今日でございますから、なかなか金融がつかなくなる。そうすると、物は作るけれども、それが金にならないということで、事業自身困る。在庫はある程度なければならぬ。たとえば夏向き用の物は、仕入れは、時期とすればもう三月なり半年前にあるのだ、そういうことを考えると、冷蔵庫等が今在庫として上がっていることは、これは当然のことだろうと思います。しかし、一年じゅうになかなか需要の見通しのないものが供給として蓄積されることは、あまり望ましいことではない。しかし、これは一面に輸出をドライブすることにもなるのです。製品は作った、国内では金にならない、そうすれば、国外に持っていこう、こういうことになる。それがまたダンピングを招来したり、物価に悪影響があったりする。こういうようなことだと思うのです。だから、今の経済の動き等から見、今日の金融の実態等から見ますと、この辺で、金融をうんと締めておりますから、流通資金や運転資金は必ず窮屈になるわけなんですね。設備自身は抑制すると言っているけれども、だんだん手がけた設備だけはどうしても片づけなければならぬということで、また、自由化というものがあるから、おれたちはおくれるから、この際設備拡大だ、こういうことで、適正な規模に設備を抑制することもなかなか実現困難である。同時に、せっかく生産能力ができたら、どんどん作って製品化して稼働しなければいけない。稼働するということは、それが金にならなければならない。それが金にならなくなると、そこで物価に変調を来たす。いわゆる特価が下落し、混乱がくる。そうすると、不景気というようなことになるかもわからない。実はこういうことになるわけでございます。そこで、一面から申せば、昨年来の設備増加、これが一年たてば最低六割は生産能力をつけるのだから、国内の消費が減退すれば、生産過剰になる心配があるのじゃないか、こういうふうに、今度は生産の面から消費をせめてくる議論もあるわけです。そこらに経済としてのむずかしさがあるというのです。だから、私どもとすれば、一応調整期に入った、その調整期に入っての効果をできるだけ短い期間中に上げて、そうしてその次の発展というか、拡大の方向に力をいたす、こういうことでありたいと思う。これが一番議論されておるところでございます。これが一年あるいは半年、さらに短い期間をとって経済の動向を云々することは、これはちょっと困るということに実はなるのじゃないか、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/13
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014・石山權作
○石山委員 変調期に対していろいろと調整する方法論をお話しいただきましたわけですが、やっぱり一つの変動期であり、変動期の中で経済が動いていっているわけです。先ほどの不景気のはしりといろ言葉は、やっぱり製品在庫が急増しているということが一つの現象だろうと思うのです。私なども民間の製造会社に従事していますが、在庫の数量はその業種によっても違いますけれども、半年以上製品が在庫すれば、これは何と考えても危険です。そうしますと、コスト割れをしてもこれを現金化しなければならぬという努力をするわけですね。そうして、コストを割ったものが少しずつ流れていくというと、これは恐慌とまで言わなくても、不景気のはしりになることは間違いがない。さっき内需の問題等もお話が出ましたが、これらは、私の方の委員が予算委員会でもそれぞれ話したろうと思うのですが、内需を育てないやり方でこの場面を切り抜けるということは、いたずらにダンピングという形に——あるいは海外に対して、カット三十五条の問題がまだわれわれの眼前にぶら下がっている、こういう問題をうまく進めない一つの要素になりかねないと思うのです。
それからもう一つ、通産大臣にこの際お聞きしておきたい点は、われわれは自由主義経済だという皆さんの言い分を聞いているのですが、金によって一つの規制を行なう、こういうものによって投資抑制を行なうのがこの際よろしいのかどうか。それだけでいくと、私たちにしてみれば、小さいところは非常に被害を受けるという現象が現われるのではないか。ここで気がつくのは、いわゆる物、数量によって規制を行なっていく、規格によって規制を行なっていくという通産行政が、おのずから浮かび上がってくるだろうと思っております。この場合における通産行政は、どうも金の規制にたよっている面があるように見えてならぬのです。これをもっと物、数量、規格というふうなもので指導していけば、もっとやわらかい、味のある、現実に即したものになっていくのではないか。銀行家だと、お金を貸すときはもちろん工場などを厳格に調べます。調べますけれども、生きた工場を把握することは銀行家にはできないだろうと思う。金はそういう性格を持っているだろうと思うのです。ですから、大蔵省あるいは日銀に、この際、変動期の困難な場合、特に自由化をかかえている場合、金の面だけでおまかせしておくことは私は危険だと思う。特に中以下の業界は、そのことによって息がつけなくなってくるのではないか。
それからもう一つ、ここで大臣のおっしゃった中で、時期に合った、長い目で見ろ、こういう景気調整の意見でございますが、このことは、本年の想定された五・何%かの成長率、これをふくらませてみてもよろしいというふうな考え方、そうすると、これは自由化という一つの大前提からすれば、これを緩和するということになるだろうと思うのです。当初の目的通りやるとすれば、この成長率を五%以下に引き下げることになる。その場合うんと摩擦が起こるだろう。今政府がお考えになっているのは、摩擦が起きても、いわゆる高度成長というものをぐっと進めていくのだ、これも一つのやり方だろうと私は思うし、ずっと進めていって、伸びていくものは伸びていく、落ちるものは落ちていって、その次にまたひっぱり上げていくというやり方だろうと思うのですが、そういう摩擦を多くしても所期の通りやっていこうと努力をなさっているのか、それとも、大前提である自由化に対しては少しく緩和の策をとるのか。国際収支から見れば、これは赤字になって現われます。些少の赤字という言葉を使った方が、この場合妥当かもしれませんが、いずれにしても、通産省としては、そういう緩和策をとる行政を行なおうとしているのか、この点をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/14
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015・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 石山さん、次々に大問題を提起されたのでございます。御承知の通り、経済を拡大し所得倍増をやるという際に、池田総理が指摘しておりますことは、やはり経済の拡大は、同時に国民生活を向上さすのが目的なんだ、その国民生活向上に寄与する経済を作るのだ、それには日本国民の生活水準を高めることだ、こういうことを実は申したのであります。この面では、確かに国内消費が今日までの倍増計画、経済の急速な拡大に対応していたと思うのです。その国内消費、生活水準が高まるという意味においては、賃金も先に上がったということでございます。そこに国民の購買力ができ、生活が確かに上がったと思うのです。
ところが、日本の場合は、鉱工業の原材料を大部分外国に依存しなければならない。綿にしても毛にしても、あるいは鉄鉱石、石炭にしても、あるいは先ほど銅の話が出ておったと思いますが、非鉄金属にしても、あるいは油にしても、また食糧にしても、これは人間の食う食糧ばかりでない、動物の飼料まで外国に依存しなければならない。そうすると、外貨が少々赤字になってもいいじゃないかと言われるが、国際収支はアンバランスになる、その結果がただいまの調整に実は入ってきたわけでございます。これを調整しなければいかぬ。だから、消費を押えるというつもりは毛頭ございませんし、せっかく国民の努力により、政治がよくて上がった国民生活水準を低くすることはしてはいけない。だが、やはり生活水準が上がったというその言葉の裏には、相当のむだもあるだろうと思います。そのむだだけは排除しなければならない。これは生活水準が上がったということに役立っておるものじゃない。どこまでがむだかということはなかなかむずかしいことですが、そういう意味の適正な消費を一つ伸ばしていくことを考える。そういう立場で見ると、国際収支も落ちついてくるのではないかということです。ことしの調整に入った際の一番の目標としては、国際収支の悪化を防ぎよくするのだ、これを第一の目標にしておる。そうい丁意味では、やはり輸入も抑制せざるを得ないだろうし、輸出もできるだけ伸ばしていく、しかも、国内の消費に支障のないようにしていくということにしなければならない。それには一体どうするのか。鉱工業生産が落ちつくことが必要であろう、あるいは設備投資の抑制が必要だろう、こういうことで、設備投資の抑制を何でやるか、それが金融の点になるということでございます。
金融自身は、自由主義のもとにおいてはやはりコマーシャル・ベースで考えられることだ、だから、金融自身もそういう立場において処理されるから、これは自然の形で推移するだろう、あるいは金利そのものについて、政府は特別な政策は立っておりますけれども、資金量そのものは、主たるものはどこまでも民間資金だということであります。そうすると、石山さんが御指摘になりますように、大きいものはいいけれども、小さいものは参るのじゃないか、中小企業は困るのじゃないか、こういうことが指摘される。だから、調整期において、中小企業に対する金融は政府が特段のめんどうを見る。三公庫の資金量をふやすことはもちろんのこと、中小企業向け市中金融の実勢というものも十分つかんでおるつもりであります。これは大体今市中金融の中小企業向けのものは、私どものつかんだ数字では、総体の融資金額の四割四分というような数字が出ております。四割四分の数字というものは、過去の例等から見ると、非常に高いのです。三十二年の際は大体四割あるいは四割に近いものになっておる。そういうことを考えますと、今回は、この暮れにおいて中小企業が困るだろうと言われたが、割に困らなかったということで越年したのも、これは政府の特段な留意があった。そういうことを考えますと、金融の面で処置することは、いかにも中小企業にしわ寄せがくる、その理論は私認めないわけじゃありません。しかし、適切な処置をとれば、その方向は防ぎ得る、まずそれを防いでいかなければいかぬ、こういうふうに思います。また最近の、さらに中小企業基本法を作れというようなこと、こういうことにも関連してくるわけであります。これを、今の調整を金融によらないで、今度は物資でやれ、あるいは規格でやれ、数量でやれ、こういうお話でございますが、いわゆる戦時中の物資統制令だとか、あるいは物価統制令だとか、こういう政府自身が一つの権能をもって過去にやった、これが実はだんだんなくなって、自由になったということでみんな非常に喜んだ。これは逆行はしたくない。ここが基本の問題になるのです。いわゆる計画経済のもとなら、やはり物資統制あるいは物価統制、こういうことをやるでございましょうが、ただいまのところは、そういう統制は経済をほんとうに成長さすゆえんではない、その観点に立って、統制はどんどん排除してきておるわけであります。やはり民間の自主的な規制、これが第一で、そうして金融、これはコマーシャル・ベースに乗るものによって、相互に協調することが大事なことだろうということでございます。最近、物価等についても、物価がどんどん高くなる、だからけしからぬというような話がずいぶん出ております。確かに物価対策はしなければならぬと思う。しかしながら、これがもし必要性から昔の物価統制の方向にまで進むとしたら、これはとんでもないことだと思う。だから、これはやるべきでない。ただ、今物価について政府が持っておる唯一のものは、公共料金について政府が認可制度を持っておる。こういう意味で、これだけは左右できる。そうすると、その他の物価は一体どういうことになるのか。その物価の形成は、私が申し上げるまでもなく、生産コストなのだ、生産コストは何なのか、金利と労賃ではないかということだと思います。この物価のあり方についても、左右する大きな二つの原因についてメスを入れないで物価を論ずるくらい、間違ったことはないと私は思う。だから、先ほど来申しますように、生活を向上さすのだ、購買力を進めていくのだ、だから適正な賃金であるとか、適正な資本の報酬が得られること、これは望ましいことだと思う。産業の合理化なり機械化が進んでいけば、どんどんコストは下がってくる。そういう場合に、その合理化の利益を労使双方だけで分けないで、消費者に対しても分ける。それは幾ら分けるのが適正かどうかという議論はございますが、少なくとも労使双方が、この生産コストの引き下げの利益は労使だけで独占するのじゃなくて、大事なのは消費者なのだから、消費者にもこの合理化の効果を分かち与えるようにしようじゃないかとなると、私は物価は下落の方向にいくと思う。現に日本で大量生産をやっているテレビだとか、ラジオだとか、あるいは最近の綿製品の価格そのものにしても、これは少し金融が関係しておりますが、自動車などにしてもどんどん下がってきておる。電気洗たく機の下がり方などごらんになれば、これは今言うように、労使双方が生産コストの切り下げの効果というものを消費者にも分かち与えるという気持が物価の面に出ている、こういうように思うわけです。だから、必ずしも今のやり方自身で効果がないというのではなしに、また、物やいわゆる政府自身の統制という形でなくて、自由の形においてそれを伸ばしていくという方向で、産業を指導すべきだ。ただいま通産省がその意味においてしばしば誤解を受けるのは、通産省というところは生産者の味方なんじゃないか、あるいは商売をやっておる人の味方じゃないのか、はたして消費者自身の味方になってくれる役所かどうかというような批判がしばしばあるのです。これは厳に私どもも留意しなければならない。生産の目標は消費の健全化にあるのだから、消費者の利益に絶えずそれが返っていくということを考えなければならない。今回の国会に家庭用品品質表示法案等も出して、消費者の利益を保護しよう、あるいは誇大広告は一つ慎んでもらいたいとか、こういうような消費者保護の行政をいろいろやっておることがとかく忘れられがちでございます。なるほど、通産省は大企業から中小企業までのお世話をする役所ではございますが、基本的にはどこまでも消費者の利益のために活動しておる役所だということは、少なくとも石山さんには御理解をいまだきたいことでございます。今のようなことを申すと、現在やっておることにはいろいろの二律背反あるいは三律背反というか、相互に矛盾するものもある。しかしその矛盾するものを調和していく、協調さしていくところに、実は行政の妙味があるのじゃないかと思います。一面、自由化等を進めていかなければ、国際競争力がなくなって日本の産業は没落してしまうのじゃないか。ところが、自由化に備えるために国際競争力を強化するためには、やはり設備の増強もしなければならぬじゃないか。設備の増強をしようとすれば、設備抑制というじゃないか。また、外国からりっぱな原綿、原毛を入れてりっぱな製品を作ろうといえば、輸入を抑制しようというじゃないか。これではおれたちはできないじゃないか。外国へ輸出しようとすれば、その値段は幾らでなければならぬというようなことになっちゃ困るじゃないか。そういういろいろ背反するものはございます。しかし、これが経済の実態なんです。そこを調整をとっていくというところにあると思います。これはいかなる時代でも当然やっていかなければならぬことで、通産省としては各界の要望にこたえた行政をやりたい、また、やっておるつもりでもございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/15
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016・石山權作
○石山委員 日本の経済をたとえば上から見る、下から見る、横から見る、いろいろな見方はあるだろうと思うけれども、今のところはまずまずというところかもしれません。小康を保っているという現象かもしれません。これがいつ悪くならないという保証は今のところないようでございます。これが去年の初めくらいだと、そんなことはないということをかなり強く政府の方方も言い切れる情勢があったと私は思います。今の場合には、どうもそういうふうに言い切れないものがある。しかも、流行性を持っているだろうと思う。流行性ということは、恐慌という言葉を私は使いたいわけなんですが、そんなばかなことが今あるかなんて言われそうだから、言わぬけれども、そういう懸念があるということは確かだろうと思うのです。猛毒を帯びた伝染性のものがわれわれのそばにあるような気がしてなりません。ですから、これをどうして避けていくだろうか。その一例としては、私は、やはり内需をかなりふやしながら貿易に依存するしか方法がないのだろうと思う。
この貿易の問題になりますと、話が非常に大きくなりますが、いろいろ問題にしたい点もあります。経済協力部というものを設けるから、話して悪いことはないと思うんだが、概括的に言いまして、池田さんが東南アジアを回って、お金をそれぞれ上げますよと約束してきたわけですね。韓国の場合は、これから上げますよと言っている。だから、そういう話し方をしているとすれば、その金を基礎にして貿易の振興をはかって悪いことはないと思う。私たちは、今までたとえば経営者は無差別に設備を急いだものではないと思うのです。ただ、やはりある種の見通しを持ちながら、もうけたいから欲ばって、いろいろなものを大きく見たかもしれません。それはわかりませんけれども、いずれにしても、一応の企画を立てる場合には、これくらいは売れるだろう、こういう見通しのもとで設備をし、製品の優良化を急いだろうと思う。しかし、どっこい、作ってみたら、なかなか売れなくなってきたというのが現実です。何といってもそういうことが現実だと思います。製品在庫がふえてきたというこの現実、これを売りさばくにはどうするかということは、今まで私たちが聞いているところでは、やはりアメリカが何としても大きな市場であったことは間違いもないし、これからもより以上に拡大される市場だろうというふうに想定もしただろうと思うのです。この想定は、この現実になってもまだやはり妥当性があるのか、正確なものかということの認定の仕方だと思います。そのことによって、われわれちょっと考え方を変えるという必要性も出てくるでしょう。それからEEC、ヨーロッパ共同市場の問題、あれはけさのラジオか、ゆうべのラジオか、ちょっと忘れましたが、いずれにしても、このしおに日本の品物はヨーロッパに輸出する可能性は大きいというふうなラジオ解説の一節がありました。そういうふうな現実、われわれとしてはそう考えておりませんでした。ヨーロッパなどと太刀打ちすると、安い品物であるのだが、関税等の問題で日本はなかなか入るにむずかしいのではないか、こういう印象を受けておった。池田さんは、経済はおれにまかしておけ、コンビに佐藤通産大臣をかかえているから、前もってそれを予知して、東南アジアに金をばらまく約束をした、こういう推定はあながち無理な推定でもないように、私は今日この段階では思っておるのです。そうすると、なかなか頭がいいということになるかもしれません。しかし、われわれが学者先生の意見やいろいろの問題から見てみますと、皆さんが今金を出した国々、出そうとしている国々は、今の日本の生産性と引き合いで見比べてみますと、おいそれと品物のはけそうな要素の国ではないようでございます。ですから、ここを育成しながら、われわれ自体が伸びていく方策をこの際探し求めなければならぬのではないか、こういうように思っているわけですが、これは論ずると非常に時間が長くなると思います。この悪い病気のはやりかぜにかかりそうな日本の経済を当面防ぐために、今とろうとしている貿易の方策は、通産行政としてはどういうふうに考えているか、この点をお知らせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/16
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017・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 国内の対策はしばらくおいて、ただいまお話がありました国際的な視野に立って、貿易拡大といいますか、それはどういうふうに考えるかというようなお尋ねだと考えて、お答えをしてみたいと思います。
貿易の拡大、これは国によって差別はせず、どこまでも平等互恵の原則に立って貿易の拡大をしていくつもりであります。その意味では、資本主義も共産主義も差別があるわけはございません。これを前提にし、同時にまた、購買力というもの、これをやはり推定していかなければならない。ただいま東南アジア諸地域のお話が出ておりますが、なるほど相当の人口はいる、インドに五億の民族がいる、かように申しましても、その生活程度から見ると、これはお得意にはなかなかならない。だから、頭数と同時に、その生活水準というものが、輸出していく場合に、これは非常な魅力になるわけでございます。そういうところから考えると、現在の日本の工業水準も非常に高くなっていますから、いわゆる高級なものがどんどんできるようになる。そうすると、相手国をそういう意味で選んでいかなければならない。アメリカを特にマークしておるのも、アメリカの消費者力というものが、私どもは輸出の相手として非常に魅力がある、かように思うからであります。
それから、今、EECのお話が出ておりました。関税等のいろいろの問題はありますけれども、EECが在来の一億七千万からさらに二億五千万にもなるとすれば、これは大へんな人口であり、しかも、その購買力たるや、文化の程度から申しても第一の水準の地域でございますから、こういうところを相手にして日本の商品を売り込むということは、十分見込みのあることだ、かように実は思うわけであります。こういうところに対しては、いわゆる経済外交で日本商品に対する差別の撤廃をしてもらうとか、あるいは差別待遇をできるだけ軽くしてもらうとか、あるいは関税差別の撤廃、減税とか、こういう経済外交を進めていくということでありますし、また、非常に地域はおくれておるが、各国ともその生活を引き上げようと努力しておるのですから、そういう意味からは、東南アジア諸地域に対しては、やはり長期の延べ払いなりクレジットの設定等によって経済開発に協力してやる、それでお互いに助け合う、協力の実を上げていく、こういう方向が望ましいので、これは今日私どもも、東南アジア諸地域に対して、なるほど購買力が今は非常に小さい、しかも、それらの国々は一次産品を作っている国で、国際価格の変動で非常に困る国である、そういうような国の経済の安定成長に協力するということが望ましいだろう、こういうように実は考えておるのであります。
しばしば対共産圏貿易の話をどうもしないじゃないかと言われますが、ソ連とはもうすでに、三十七年の通商取りきめも、従前に増しての増額でございます。中共とは、ただいまのところ、いろいろ政治問題等がからんで、思うように進んでおりません。これはまことに遺憾であります。しかし、私は、中共との関係におきましても、互恵平等の原則に立って、政治とは別に貿易の拡大をはかっていきたい、かように思うわけであります。ことに、中国大陸とは、古くから歴史的に、また地理的にも、近接している。そういう関係から申せば、おそらく貿易拡大という気持になれば、これはよほど見込みのある地域だ、かように思いますので、経済を拡大していくという立場に立ち、また、相互に経済を通じて各国の国民生活の向上に協力するということを考えると、これはもちろん無視のできない地域だ、かように実は考えております。
そこで、当面の問題としてどうするか。通商産業省でいろいろ予定を立てておりますが、内閣には最高輸出会議というものがございます。この最高輸出会議をできるだけ早めに開いて、本年度の輸出目標を達成するように、各業界に業種別にじっくりと一つ相談してみる、こういう気持でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/17
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018・石山權作
○石山委員 そこで、貿易の問題の中で、私どもと関係のある石油の問題について、ちょっと触れておきたいと思うのですが、その前に、外国批評の中で、特に私たちが聞いておいていいということがあります。それは日本の経済のずっと終戦以後の動向を見て、日本の経済の成長率というものはすばらしいものだと言っている。これは手放しにほめておる。りっぱなものだ、しかし、日本の経済の困ることは、不安定だ、安定性を欠いていることだと言っている。安定性を欠いているために、国民の生活というものが非常に動揺する、人心というものは動揺している。これを今後安定させるというのが目的だろうというふうに言っているわけなんです。そうすると、日本の貿易をそれから見てみると、どうもそういう点では、安定をするような施策から遠ざかるようなことを今までやっていたような気味があるのではないか。これは終戦後のいろいろな問題あるいは日米経済協力等の今までの関係等で、そういうふうにならざるを得なかったのではないかというふうに、よく見れば言えるだろうと思います。しかし、これからは、特に日本の今度のような場合には、やっぱり自由化をするという意気込みでいるのでございますから、むしろ態度をきちんとして、全世界を相手とする経済の安定をはかるというふうな意気込みでないと、当座の毀誉褒貶だけに執着しますと、アメリカ経済に従属するという言葉でなくとも、かなりに関係が密接になり過ぎて、はたの目から見ると、どうも歯がゆいんだ、こう思われる形態が出る、もっとやり方があるんじゃないかというような形態が出るのではないかと思っております。
それから石油のことでございますが、これはせんだって、本会議でも私どもの方の板川議員から質問されておりますが、私どもが一番今心配しているのは、国際石油資本のために内地の産油界が非常にいじめられそうな関係でございます。私のそばのことを言ってはなはだ恐縮でございますけれども、たとえば帝石が新潟、秋田というふうにございます。秋田の量はかなりなものでございますが、その場合に製油をしておる会社は、船川の日本鉱業、秋田市の日石、それから平沢の昭和石油というのが、おもに帝石の油を製油しております。これがどうも最近の自由化等によって製油することをいやがる。こういう態度を示されているというので、経営者はもちろん気にもしておりますけれども、そこに従事している従業員の諸君は非常に——鉱山もその例で、大臣もたびたび鉱山の方方と会ってもらっているわけですが、真剣に心配している。少ない量でございますけれども、これを切り捨てていくというような、まさか蛮勇もないでしょう。資源が貧弱だから、育成するにはなかなかむずかしい面があるにしても、現在のこの立場をまず守ってあげるというのが政治の妙味だと思う。任務だと思っておるのですが、その内地産の石油、帝石だけではございません、大同もございますし、あるいは輸入されるアラビア石油等にも関連するわけですが、この際、大臣から国内産の原油等についての通産省の態度を説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/18
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019・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 ただいま国産原油あるいは国産系原油としてのスマトラ原油並びにアラビア原油についてのお尋ねでございます。私どもは、これにさらに国産ガス、さらにまた国産石炭、こういうようなことをも結びつけて、総合的にいろいろ政策を樹立しておるわけでございます。ただいま石油業法の御審議をいただいておるのも、そういう意味でございます。非常に国際資本というものをおそれた一部の動きのあること、これは見のがすことはできません。一番強く出ておりますものが、自由化に備えてのことだといわれておりますが、いわゆる国内の金属鉱山はこれは別といたしまして、石炭——今春闘という大へんな闘争が展開されつつありますが、石炭の部門、それからまた、国内における御指摘の原油並びにガス、それからスマトラから入ってくる国内資本による原油開発、それとアラビア石油、こういうものもいろいろ考えているわけであります。今までこの国内のエネルギー資源に対しては、通産省として石油の価格の動向を一応想定し、いわゆる合理化の目標をお示しして参ったのでございます。石炭についてのいわゆる五千五百万トン、千二百円下げというのは、石油がこの辺に下がるだろうという見当でやったわけであります。また、国内原油につきましても、六千円を目標にしてこのコストを下げることをいろいろやっておるというのも、いわゆる国際原油のあり方というものを念頭に置いて実はやっておるわけであります。ところが、この国際原油の価格というものが、新油田の開発等から見て、世界的に油が過剰生産になっている、そういうこともありましょうし、日本の市場がまだ固まらないという意味もありましょう、ただいま日本に対しては非常に廉売競争が展開されておる。そういうことでありますので、私どもが示したいわゆる合理化の目標の線とはちょっとけたはずれのものになっている。そこで、その合理化の目標というものをまた変えるのではないか、これが業界に非常な動揺を与えておる。石炭の場合しかり、また国産原油の場合しかりであります。その国産原油について申せば、一応合理化は進めてきたが、その国際価格の変動、これにはとてもついていけない。そこで、今言ったように、一体どうなるのかという心配が出てくるのです。ところが、幸い——幸いというと、貧乏をしあわせというようで、言葉は不適当でございますが、国産原油の量が非常に少ない。だから、その少ない原油でございますから、これを製油会社に、リファイナーに割り当てても、数量が少ないから、比較的ただいままでは行政指導のもとで引き取ってくれている。私どもは、現在の産額並びに五カ年計画によるガスを含めての二百万トンというもの、これは十分国内で消化さす義務もあるし、また、見通しも十分ございます。だから、国産原油はもう一切御心配なさらなくてよろしい、ただ、もう少しわれわれも低利な資金をつぎ込むことにより、合理化を進めることによってコストは下げていきたい、かように考えます。それからスマトラの石油自身は、これは値段等も相当幅もありますし、これも数量は非常に少ないのですから、大して問題ではございません。問題になるのはアラビア石油です。これはなかなか出油量というか、生産量が非常に多うございますから、これを今のようなままで各製油会社に引き取れというのはなかなか困難でしょう。出てきたものがすぐに一千万トンをこすような状況でございます。今までアラビア石油については、非常に値段が高いということをいわれておるが、値段は高くはございません。これは日本で大体四千五百円程度でございますから、その平均価格が五千円をちょっと割っている程度、四千八百円か九百円ぐらいだ、こういうことを考えますと、アラビア石油の四千五百円は高くはない。ところが、一部でこれが高いという宣伝を盛んにされておりますが、これは高いのではない、ただ、硫黄分が非常に多いのだということを非難する方では言っている。しかし、この程度の硫黄の含有量は、いわゆるアメリカ製の発電機械のもとにおいては、アメリカでは許容の含有量でございます。そういうことを考えると、日本の発電会社が特にりっぱな重油をたくという、そういう過去の経験を持っておるものですから、やや心配しておられるようですが、大体日本の発電機の大きいものはアメリカから輸入しているのですから、その辺に問題はない。だから問題は、一部に、国際資本力にどうこうされるという、非常な悲観的な見方もございますが、今日政府自身が一つの方針を立てていき、そうして国際的な原油についての差別待遇をしないで、平等な扱い方をする、そういう基本線があれば、米英もいかようにもこれは手の出しようがないというのが現状でございます。そういう意味から、私どもも、国内においていろいろな批判はございましたが、石油業法を提案して、ただいま御審議をいただき、一日も早くこれの成立を期しておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/19
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020・石山權作
○石山委員 それから、行政機構の問題について一つお聞きしておきたいのですが、これは三十六年六月に鉱山行政の監察という名目でなされておるわけですが、これは鉱山保安局と公益事業局との対立と申しますか、そのうち特に指摘されているのは、鉱山における自家用電気工作物の、特に変電設備においては、共管のせいか、非常に両者の立場がうまくいっておらない、見解が統一されないままに両局が張り合っておる。そして、よく問題が解決されないうち、落成検査を両者から受けさした。こういうのが行政監察されておるわけで、通産省と大蔵省が張り合ったというなら、これはちょっと話はわかるけれども、省内の保安と公益事業の中でこの問題が張り合われて、両者が監督しなければ現場のものがきまらないなどというのは、まことにいかぬと思う。こういうことは、私例を引きたくないのですが、たとえば東北開発会社のセメントあるいはハードボード、あれなんかも、私はやはり官僚の好みでああいうことをやったと見ているんですよ。許可権、通産省と経済企画庁で共管の問題だと思うのですが、まあ、こういうことは官僚の悪いところの典型的なことだ。大臣はこういう点知っておりますか。これは大臣就任されてからの書類ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/20
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021・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 私も官僚の出でございますが、とにかく権限争い、これはもう官僚の大へん悪い点だといって指摘されております。ことにただいま御指摘になりました内容、私の耳に実は十分入っておりません。おりませんが、もちろん大臣の責任でございますし、省内の問題でございますから、十分関係のところに私調整をはかりまして、もう御迷惑をかけないようにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/21
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022・石山權作
○石山委員 通産省がいろいろな問題を指導される、その任務も重大です。功績もあります。ただ、今度東北開発の場合のセメントの焼きがまですね。これは異例な焼きがまを許可している。それから福島のハードボードのいわゆるたけ、日本でいえば、たとえば六尺とか九尺以上でなければならない。新尺を規定外のものを指導しておる。市場に出すためには六尺に合わす、三尺に合わすというものを、半端が出るような指導の仕方、そういう機械を据えつげさせ、指導をしておる。民間を圧迫しないという美名のもとにやっておる。こういう実態は、これは大臣もさっきからいろいろなうまいことをおっしゃって、私も三分の一ないし四分の一くらい感心して、そういうこともあるだろうなと聞いておるのだけれども、こういうことに関する限りはまことにけしからぬと思うのだ。大臣はこういうこまかいことを知らぬと思うのですが、こういうことを下部でやっていることも通産行政の中にあるということです。ですから、これらを十分監督するのが大臣の任務である。大臣は知らないかもしれないが、ここには官房長も来ているから、もっと責任を追及したいくらいに考えておるわけです。幾ら国策会社でも、そういう許可、指導をすれば赤字が出る。赤字が出れば、それを何とかしなければならぬというので、苦労したのが、あの何とかの原因だ。これは私らも追及する意味ではない。いろいろの仕事の中ではそういうことがあり得る可能性があるわけですね。だけれども、こういうことをやっては困りますということですよ。十分注意をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/22
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023・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 一般にもちろん注意をして参ります。ただ、今東北開発のお話が出ておりましたが、セメントの製造方法、これはなかなか議論のあるところでありますし、また、建設費等の関係もございます。ハードボードの方は私よく存じませんが、前の方は私が通産省に来てからの問題じゃないと思いますけれども、これはいろいろ議論があり、現に私の国の宇部セメントなどは新しい方法で非常にうまくやっている。これが東北へ導入された、かように私は聞いております。だから、これは一がいには言えないことだと思います。しかし、今のお話も、一面、私どもも十分注意しなければならない点を御指摘になったと思います。一つ関係局長以下よく指導して、私の重責を果たすようにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/23
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024・中島茂喜
○中島委員長 田口誠治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/24
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025・田口誠治
○田口(誠)委員 通産省は、日本のみならず、内外の経済発展に寄与せられておるわけでございますが、そこで、大臣のお見えになりますときにお聞きしておきたいことは、今問題になっております。自動車の生産の制限を行なうことが、交通事情を緩和する、すなわち、交通麻痺状態を緩和する一つの方法として、そういうような世論が高まりつつあるわけです。従って、今日まで、当面大都市の交通緩和対策として、車種別に規制を行なうというので、路線トラックが夜間でないと乗り入れができないということに相なっておるのですが、これは、総数からいきましてもわずか六百台くらいでございまして、七十三万台も動いておる中で、わずか六百台ぐらいを規制をしても交通緩和にはならない。それで、今世論として盛り上がってきておりますのは、とにかく道路と自動車の不均衡が原因をしているのだから、これを解決しなければならない。こういう面から、この際、国民に自動車を買うな、登録はしないということになれば、憲法違反にもなるから、憲法違反にならないものとして、生産の規制ということはできるのだから、それで自動車の生産の規制を行なって、それと同時に、道路の拡張計画を行なうことが必要である、こういうことに世論が高まりつつあるわけです。この高まりは、今警察庁が考えておる車種別規制というような、こういう公共的な事業をやっておるものを規制することは、政治家としてやるべきことじゃないのだ、こういうことから問題になっておるのですが、当面降りかかってくるところの自動車の生産規制ということについて、大臣の御意見を承りたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/25
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026・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 大へんおそくなっておりますけれども、御熱心な御審議をいただいておりますので、一言お答えしたいと思います。
ただいまの交通制限について、関係閣僚が集まりましていろいろ協議しております。その中の一つに、トラックあるいは重量輸送車の制限であるとか、あるいは右折禁止であるとか、いろいろ交通の制限についての話し合いが進んでおる、そのことは、本筋からいって違うのじゃないかと言われる。その通りであります。本筋からいえば、明らかに違います。ただ、問題は、道をよくするというためには相当の時間がかかります。また、カーブ等の整備にいたしましても、相当の費用と日時を要する。ところが、交通混雑は、実は今日の問題であります。今日の応急対策——これが恒久対策とは絶対に私は思いませんが、応急対策としてそれかでき、できるだけ影響の少ない方法はないか、これが関係閣僚の知恵をしぼっておられるゆえんだと思います。そこで、トラックの通行制限などは、生産面から申したら、場合によればコストが上がるとか、あるいは非常に緊急を要する場合には支障を来たすとか、いろいろな困難な問題が明らかにあると思います。しかし、スピードの違うものが同時に同じ路面を使うというところに、混雑の原因も実は多分にあるのです。そういうところから見ると、できるだけ影響度を少なくしていく、まあ言ったら、どうしたらいいのかということで、ちょっと恒久的措置は時間がかかるから、ああいう基本線はきまっておるが、応急のものを一つ取り上げてみよう、こういうことで今計画されておるのが、路線の使用禁止であるとか、あるいは時間制限であるとか、あるいは右折禁止であるとか、あるいは地域による駐車の禁止であるとか、自動車使用の上から見ますと、いろいろ不都合な制限が次々に出てきている、このように思いますが、これは過渡的な状況としてはやむを得ないのじゃないかと思います。この状況は、同時に自動車の生産制限にまで発展するか、かように考えますと、私はその危険はないと思う。今の混雑は、都市を中心にしてということが主であることを考えますと、まだまだ自動車はふえてしかるべきでございますので、いわゆる生産制限ということに触れるのはよほど飛躍じゃないかと思います。私はこのように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/26
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027・田口誠治
○田口(誠)委員 自動車の生産制限ということは、将来もあり得ないというお考えを披瀝されたのでありますが、現在の交通麻痺の対策は、自動車生産の発展を押えるということと、道路の建設、拡張をするということ、それから現在の道路を高能率的に利用するということ、この三つより方法はないと思います。そういうようなことから、今いろいろと、先ほど申しましたようなことが世論として盛り上がっておるものでありますから、ただいま御質問を申し上げたわけであります。
そこで、石山委員の方からも、先ほど経済問題についてお聞きをされたのでございますが、日本の経済発展は十カ年の計画を立てておりますし、そして、この十カ年の計画を立てておりますれば、この経済発展と不離密接なものは、やはり交通運輸関係の行政を強化していくことであろうと思います。これは、幾ら生産性が上がりましても、輸送関係がきかなければ目的を達成することはできないので、経済発展を考えると同様に、輸送の面の計画を立てていかなければならないと思います。現在のところでは、日本の経済の発展ということは、言いかえますと、鉱工業の発展が柱になっております。鉱工業の発展と都市化ということは、関連をいたしておるわけであります。従って、日本の都市化というのは、工業が発展をして都市化になるのではなくして、農村が疲弊をしたり、その他非常に困難な生活状態があるというので、必然的に都市の方へ押し出されてきて都市化がなされているのであって、従って、そういうことから、経済の発展と工業の発展、都市化ということは、やはり並行して考えていかなくてはならないと思うのです。それで、経済通である大臣は、こういう点に対する対策をどういうようにお考えになっておるか、まずこれだけお聞きして、次に具体的な問題に入っていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/27
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028・佐藤榮作
○佐藤国務大臣 田口さんの御指摘の通り、最近は、工業の過度集中という事柄が、政治問題になり、社会問題になり、経済問題としても大きな問題でございます。そこで、いろいろ工夫された結果が、都市の地方分散、地方工業都市開発計画、そういうような計画がそれぞれ進められておるのは、御承知の通りであります。ただ、産業の変遷といいますか、変動といいますか、先ほど来石山さんの御質問の中にもございましたが、今の農業自身にしても、農業基本法のねらうところは、やはり今の零細農から一定規模の農業への推移だと思いますが、やはり農業の経営規模の適正化もはかっていく。そうすると、やはりそこに農村の過剰人員というものができるでしょう。そういうことも考えてくると、やはり農村疲弊という言葉だけでは片づかない実態的なものがあるわけです。だから、工場を分散していくそういう地方の立地条件を十分調査して、そして工場が適当に地方にも分散していけば、これは全体としての経済拡大になるだろう。ことに所得倍増計画で指摘されておりますのが、産業間の格差の増大、地域間の格差の増大、こういうことが指摘されております。そういう面からも、通産省としては、工業の地方分散ということをいろいろ考えて、そういう指導をしておるわけであります。そして、通産省の中に、ただいま非常に機構が弱いのでございますが、立地指導室というものがあって、経験者等の御意見も聞き、立地条件等も調べ、適地適産の方向で産業の分布を実は指導しておる、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/28
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029・田口誠治
○田口(誠)委員 大臣も時間がないようでございますので、この問題についてなおいろいろお聞きしたいのですが、もうこれで終わりますが、御承知の通り、農業基本法ができまして、やはり五反百姓は首を切られるということになって、二町五反以上の自立経営という線が打ち出されておりますから、必然的にこれは都市の方へ流れていくということ、従って、都市化と工業化というものが今後は問題になってこようと思いますので、この点についてのいろいろな質疑応答はまた後日に譲りますが、その点についての行政を一つしかるべくやっていただくことをお願いして、大臣に対する質問はこの程度で終わりたいと思います。
次に、お聞きしておきたいと思いますことは、この法案の中に改正されまする一つとして、通産省の国際経済協力に関する任務、権限を明確にして、そして通産局に経済協力部を新設するのだ、こういうことでございまするが、国際的な経済協力と申しましても、これはずいぶん幅の広いものだと思う。それで、ここにいわれておる経済協力という面は、どの範囲をさしておられるのか、この点を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/29
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030・今井善衞
○今井(善)政府委員 通産省では、従来から振興部の中に経済協力第一課、第二課、二つありまして、通商経済上の見地に立ちまして経済協力をやっておるのでございます。一つの国の経済協力案件につきまして、実は今外務省、通産省、大蔵省それぞれ協力しながら、経済協力を進めておるのでございます。外務省といたしましては、当然その立場上、外交政策上の観点からその問題を取り上げておるわけでございます。大蔵省としましては、財政上の観点から問題を取り上げておるわけでございます。通産省といたしましては、御承知のように、輸出関係は通産省が包括的にやっておるわけでございます。また、産業行政につきましても、通産省が大部分やっておるという関係からいたしまして、一つごとの案件につきまして、たとえばそれが輸出にどういう影響をもたらすだろうか、あるいは輸入原料の獲得という点についてどういういい結果をもたらすだろうかという観点からして、一つ一つの案件につきましてさような観点から取り上げておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/30
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031・田口誠治
○田口(誠)委員 時間がありませんので、これはこの程度にしておきます。
そこで、一つ重要な問題がございますが、昨年の三十八国会で、三月三十日に、三党共同提案の炭鉱災害防止に関する決議案が可決されております。従って、今年ここに通産省の設置法の改正を提案されるときには、この決議案にのっとって十分な改正を提案さるべきがしかるべきだと思うのです。ところが、これを拝見させていただきますと、局は新設をいたしましても、実際に監督する下部機関の構成には何ら手をつけておらないということ、こういうことからいきますと、昨年の決議案が決議として可決されたけれども、何ら通産省の方では重きを置いてあれを考えておられないというようにとれるのです。具体的に申し上げますと、昨年の決議案の内容は六つあります。六つの中で、今質問申し上げる内容に関係のありますのは、石炭鉱業安定政策の確立、二番目には鉱山保安監督行政の拡充強化ということです。それで、局の設置ということは、幾分拡充強化ということにはなろうと思いますけれども、上部機関である局を作って拡充強化をしてみても、実際の監督をする下部機関の強化がなされなければ成果は上がらないわけです。従って、こういうことから見て、昨年の決議にのっとってなぜもう少し保安行政を強化する提案が今日なされなかったのか、この点について解明をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/31
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032・八谷芳裕
○八谷政府委員 ただいま御指摘がございました点につきましては、昨年三月末に国会で決議が行なわれたのにこたえまして、一つは監督機構の拡充、それからその人員増によりまして、実際上監督の強化をはかっていく、そういうことでございまして、その一つといたしまして、ただいま御審議をお願いいたしておりますように、九州と北海道に二つのそれぞれの監督局を、昇格をさして設置するということでございますが、その下部機構といたしましては、いわゆる現地に監督班というのを現在派遣しているわけでございまして、九州には五カ所でございます。北海道に四カ所でございますが、まず監督班の内容の充実をはかるということで、昨年の七月に四十名の監督官の増員が認められました際にも、二名を除きまして、残りを全部この派遣班に突っ込んだわけでございます。さらに、来年度の予算といたしまして、監督官二十名の増員をお願いしておるわけでございますが、そのうち十一名が九州でございまして、北海道が九名になりますが、これもすべて派遣班の方に突っ込んでいく、こういうふうに、現在はその人員とその宿舎等の施設の拡充をはかっておるわけでございます。さらに、この派遣班を鉱山保安監督署というようなものに昇格させることにつきましては、これらの陣容の十分な整備充実を来年度中にはかりまして、そのはかられた結果を待って一つ検討していきたい、こういうふうに考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/32
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033・田口誠治
○田口(誠)委員 部を局に昇格させるということは、一つ上部機関の強化をはかられたわけなんですが、先ほど来申されましたように、上部の強化をはかられても、実際に実務をとられるところが強化されておらなければ成果が上がらないということ、従って、札幌の保安監督部管内には、夕張、岩見沢、滝川、釧路、これは距離的な面からいきましても、なかなか上部からの指導監督というような面、それからいろいろな仕事の状態を報告し、またそれに対して手を尽くすというようなことについても、十分にできないと思うのです。昨年の決議案で期待をしておったことは、これは福岡の田川市におきましても、また、福岡県の保安監督部の管内には四つあると思いますが、この四つともでなくとも、その重要なところぐらいは、私どもとしてはあまり機構をふやすことは好まないのでございますけれども、この鉱山の保安関係については、やはりきわめて重要なことを一昨年来からの事故において認識いたしましたので、昨年の決議案として出されたわけなのです。従って、単なる駐在というようなことでなくして、ここには部とか、あるいは署とかいうような機関を作って、そうして監督行政の充実をはからなければならないと思うのです。ただいまのお答えでは、明年度はそうしたことを提案し、予算化もいたしたい、こういう御回答でございますが、それをしていただくということになりますと、現在の定員をどの程度ふやして、そうして、今お考えになっておるところは、北海道と九州の関係はどことどこへさしあたりそうした機構をお作りになろうとしておられるのか、その腹案でもよろしゅうございますから、お聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/33
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034・八谷芳裕
○八谷政府委員 ただいまの現地機関の拡充でございますが、これはただいまも御指摘がございましたように、炭田地帯、特に炭鉱におきましては災害が多い。かりにこの調査をいたすにしましても、現場の保存等から直ちに出ていかなければならぬ。ところが、北海道で申しますと、釧路で起きたときに、札幌から出ていくというようなことになりますと、相当な時間がかかる。さらにまた、巡回監督の効率化というために、ぜひ現地機関は拡充していくということで考えておるわけでございますが、北海道の四カ所は、ただいまもお話がございました夕張、岩見沢、滝川、釧路でございます。それから九州は、筑豊炭田の飯塚、田川、直方の三カ所並びに佐賀、佐世保の五カ所、全国九カ所に現在派遣班を置いておりまして、さらに二十名の増員が認められますと、全部これに突っ込んでいくわけでございまして、どこをさらに監督署に昇格さしていくかということは、この五カ所の炭田のまん中に置いております派遣班は、いずれも重要なところでございますので、そのうちの一部というようなことでなくて、九カ所全部昇格させる場合には同時にやっていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/34
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035・田口誠治
○田口(誠)委員 それでは、昨年の決議の昇格というところまで持っていけなかったという理由を承りたいと思います。それを申しますのは、私この法案を見まして、あまりにも保安関係に対しての注意が足りないというように考えられましたので、本会議の官報の号外を繰ってみましたら、当時の国務大臣が、この決議案が可決されたあとで登壇して公約されたことは、人命の尊重は何よりも重要である、保安確保は生産に優先すべきものである、こういう点を強調されて、そうして決議の趣旨を十分に尊重して、鉱山保安行政の施策を早急に進めていきたいという約束をされておるわけなんです。従って、こういうような決議案を出された場合には、やはり省としては真剣にこれと取り組んで、少なくとも次の通常国会には提案の段階までに立ち至っておらなければならないと思うのです。それを、今日まだ調査の段階にあるとか、その体制がととのっておらないということは、私どもとしてはやはり了解のできない面があるのです。そういうことから、なぜ提案までの経過に立ち至らなかったのか、こういう点について、もう少し明快にお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/35
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036・八谷芳裕
○八谷政府委員 行政機構の拡充につきましては、いろいろ問題も多いところでございまして、もちろん、私とも担当者といたしまして、一日も早くこういう方向で進まれんことを希望はするわけでございます。決してこれをおろそかにしたわけでございませんが、まず来年度におきましては、実質上の人員の拡充と、それからその任地におきます家屋、こういう問題の解決をはかるということに力を注いだわけでございまして、その充実を待ちまして、至急に行政力を発揮させる意味からも、そういう形を作り上げていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/36
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037・田口誠治
○田口(誠)委員 これは今までの政府の悪いくせなんですが、一つの決議がなされて、それが実行に移されるまでには三年も四年もかかる場合があるわけです。それも毎年同じようなことを追及されて、初めて実現するというようなことがあり得るわけなんです。それは今申し上げるまでもなく、昭和三十五年の二月には、北海道の夕張炭鉱では、ガスが爆発して四十二名死亡いたしましたし、それから同年の九月には、福岡の田川の炭鉱で六十七名やはり死亡をいたしております。それから昨年の三月九日には、やはり田川の鉱山で七十一名、これは坑内火災事故によって人命を失っております。それから三月の十六日には、福岡県の八幡市の炭鉱で二十六名の死亡、こういうような惨事が重なっておるわけなんです。従って、水害対策なんかとはこれは内容的には違いまするけれども、こういうような惨事が重なった場合に出された決議案というものは、毎年とられておるところの、あの早急に手を尽くさなければならぬ水害対策と同じ性格のものであるというようにお考えをいただきたいと思うのです。そこで、そういう考え方の上に立って、そうした決議案が出たら、さっそく体制を整うべく手を下してもらわなくてはならないと思うのです。今年は住宅関係を完備して、来年はそこへ定員をふやして、再来年になれば今度は署に昇格をするというような、私らの方からやかましく言わなければ、おそらく三年くらいはかかると思うのです。そういうことであってはならないと思うので、私は、やはりこの問題は、毎年あるところの災害対策に早急に手を尽くさねばならないというあの考え方と同じ考え方の上に立って、この保安行政をやっていただかなければ、また同じようなことが発生するわけなのですから、この点は、今年出されておらないということについては、非常に遺憾の意を表しますると同時に、早急に取りかかっていただいて、これは来年の通常国会ということを待たずに、次の臨時国会にでも提案できるような準備をしていただきたいと思うのですが、この点についてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/37
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038・八谷芳裕
○八谷政府委員 一日も早くこういう事実上の拡充、さらに形も整え、名実ともに現地の強力な監督体制が整うということにつきましては、至急に検討を進めまして、解決するように努力をしたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/38
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039・田口誠治
○田口(誠)委員 そういうお答えが私は気に入らぬわけなんです。それで、今努力はしていただくのですけれども、実際にあなたの方で、この秋にはおそらく臨時国会が開かれると思いまするが、それまでには、どれだけ努力してもこういうような点がまだ十分に準備ができないとか、体制が整わないから提案できないのだとか、来年の通常国会には大丈夫であるとか、こういう内容のことをやはりこういう場で披瀝していただきたいと思うのです。ただ努力をする、努力をするで、毎年努力で終わっては困ると思うのです。できなければできない理由があるわけなんで、私どももお聞きをして、全くできない理由があれば、それはやむを得ないものとして努力をお願いするわけなので、ただ努力をするというような御答弁だけでは、私の質問に対する御答弁としては不満でありまするので、今までできなかったという理由は大体お聞きしましたけれども、今後努力しても、見通しとしてはいつごろになるのだというような点を、やはりもう少し具体的に内容もここへ出していただいて、御答弁をいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/39
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040・八谷芳裕
○八谷政府委員 関係方面との折衝その他もございますので、ただいま申し上げたようなことでお答えしたわけでありますが、それではいつ提案できるというようなことは、今ちょっと申し上げかねるのではないか、その点はお許し願いたいと思いますが、先ほども申しましたように、昨年の七月から充員をはかりまして、来年度の予算と二回にわたっての充員をはかるわけであります。人の充員関係も、相当特殊な技術者を雇い入れるわけでございますから、そういうものと相待たなければならぬわけでございます。どうも答弁がやや正確を欠くかとも思いますけれども、至急に進めたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/40
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041・田口誠治
○田口(誠)委員 答弁のための答弁でなしに、ほんとうに努力をしていただきたいと思います。
それから、時間がございませんので、もう一つだけお聞きいたしたいと思いますが、アジア経済研究所の関係でございます。この関係につきましては、今年度も予算の中では、出資金が一億円と補助金が二億七千三百万円というように予算化されておるわけでありますが、ここはどういうような仕事をされておるのか、そうして、今までの仕事の成果としてはどういうような成果があったか、こういう点をなるべく具体的に御解明をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/41
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042・生駒勇
○生駒説明員 ただいま御指摘のございましたアジア経済研究所の件でございますが、これは御承知のように、昭和三十三年だったと思いますが、財界、学界の要望によりまして、ある程度効率的な総合的なものを作って、アジア経済全般に関しまして研究を進めたいという議が起こりまして、そこで、最初は自発的なものとして出発したわけでありますが、それが三十五年に特殊法人になりまして、ただいま御指摘ございましたように、当初一億、三十六年で一億、それから来年度の予算でさらに一億というふうな出資をして参っておるわけであります。
業務の内容でございますが、機構は、御承知のように、所長がおられまして、所長は東京大学の名誉教授の東畑博士でございます。その所員といたしましては、やはり東京大学の川野教授を委嘱しておるわけであります。研究のテーマその他に関しましては、東畑所長と川野教授の指導によりまして研究を続けておるわけでございます。
おもな研究といたしましては、まず資料の収集でございまして、これは現在図書、地図その他によりまして、二万冊程度のものが集まっているわけであります。また、アジア全体に関するいろいろな相談というようなものもあります。こういうものを百件程度いたしております。
それから次に調査事業でございまして、この調査にはいろいろな方法がございますが、所員を使っての調査、それから部外者を招聘しての調査というようなものがございます。それは、国内でそういうアジア全般の調査をいたすわけでございますが、さらに海外の調査をやっておるわけでございます。これもやはり所員を使う、あるいは外部の人を招聘する、こういうようなことでございます。
それから第四に、海外に調査員を派遣しておるわけでございます。現在二十四名程度の人を各地に派遣しておりまして、いろいろな調査を行なっております。
それから第五に、広報活動、これは国内におきましていろいろな研究会、座談会、そういうものを催しまして、アジア経済の認識を深めるということが第五にございます。
こういうようなことをやっておるわけでございますが、それではどんなテーマをやっておるかということになるわけでございますが、三十六年度におきましては、経済開発と貿易収支というテーマを取り上げまして、東南アジアの諸国に調査を進めておるわけでございます。
現在発行されておりますところの書類でございますが、これは月刊の「アジア経済」というものでありますとか、あるいは「アジアの貿易統計」でありますとか、そういうものを除きまして、現在発刊されておりますものの二、三を拾って御説明申し上げますと、たとえば「インドの労働事情」あるいは「インドネシア糖業事情」あるいは「インドネシア貿易交流機構」あるいは「インド開発と資金問題」その他「中国経済発展の統計的研究」でありますとか、あるいは「アジア第一次商品の基本問題」でありますとか、あるいは「パキスタンの労働事情」でありますとか、こういうようなものが発刊されておるわけでございます。
そのほか、一々申し上げますと長くなりますので、省略いたしますけれども、そういう基本的研究を進めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/42
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043・田口誠治
○田口(誠)委員 理事会できょうの議事日程もきまっておるようでございますので、そういう予定を勘案して、まだいろいろありますけれども、質問を終らしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/43
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044・中島茂喜
○中島委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/44
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045・中島茂喜
○中島委員長 次に、運輸省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、これを許します。山内広君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/45
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046・山内広
○山内委員 今度自動車審議会が廃止されることに提案されておるわけでありますが、実は、私は、この時限立法はもう一年くらいは置いてくれという逆の提案がなされるものと期待しておった。ところが、廃止されるということは、今置かれている自動車行政のあり方からして、はなはだ了解に苦しむわけで、昨年の三月時限立法が切れまして、一年置いてくれという提案に対して、実は私、あとで考えると恥ずかしいくらい重箱のすみをいじるような質問をしたわけですが、これは当時置かれておる自動車交通事情から推して、むしろ私は叱咤激励の意味で申し上げたつもりであります。ところが、今度これが廃止されることになりまして、この問題の解決し得ない現状において、この自動車行政が、今度どういうふうにこの審議会の持っている使命が引き継がれ、強化され、そして問題を解決していくのか、今後の自動車行政について、一つ大臣からお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/46
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047・斎藤昇
○斎藤国務大臣 自動車審議会は、昨年一年間御延長を願いまして、その後、審議会において当面の事項について審議をしていただいております。近く今月中に最終答申をいただける予定になっておりますので、一応の任務が終わったということになるわけでございます。ただ、今日の状況から考えまして、自動車に関連をする交通の問題は、ますます複雑多岐になって参ります。従って、そういう意味からは、あるいは自動車審議会を存続せしめておいた方がいいという御議論ももっともだと存じますが、しかしながら、今後の問題は、むしろ自動車だけというよりは、非常に関連するところが広うございますから、従って、今後内閣に設置せられまする交通問題審議会で、自動車も含めて十分の審議をしていただくことが適当であろうと、政府はかように考えた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/47
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048・山内広
○山内委員 自動車審議会にかわって交通問題審議会、これは主管はどこになるのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/48
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049・斎藤昇
○斎藤国務大臣 内閣でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/49
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050・山内広
○山内委員 そうしますと、運輸省としての自動車行政を放棄したというような印象も受けるわけです。できればそうでなく、私はいろいろあとで質問の中にも指摘したいと思うのですが、もっと運輸省がすべての総合的な見地に立って、自動車行政を改正する必要があると思う。審議会の使命は一応終わったとしても、問題が解決したのではない。問題はますますこれから先鈍化していく。こういう立場から、運輸省自体が持つ必要を非常に私は感じております。なぜなら、運輸省自体ですでにいろいろな輻湊した問題が出てきて、解決を要求されている点があると思う。しかし、これは意見を申し上げておると非常に時間もかかりますので、その点はただ御注意だけ申し上げておきたいと思います。
それから、実は一カ年間の時限立法、この一カ年間審議会の好置をこの前認めたのですが、その後どういう仕事をおやりになっておるか、この参考資料の二でもって拝見いたしましたが、これによりますと、いずれも半端ですが、三つばかり問題が一応解決はしておるわけです。たとえば、八月二十三日に合同部会の中間報告が一ぺん、それから保安部会で自動車の検査制度のあり方と、それからもう一つは、最後の答申であるトラック輸送の問題、こういうことで、せっかくあのときあれだけ私いろいろ申し上げて、この成果を期待しておったのでありますが、とうとうその成果を十分に見ないでこの審議会がなくなってしまうということは、私は非常に残念な気がするわけです。そういうことで、ぜひ行政の面でこれから一つ問題を解決していただきませんと、自動車事故は大へんなことになって参ることは、申し上げる必要のないほど痛感されておると思うのであります。これを一ぺん希望を申し上げておきます。
それから、あのときに一つ議論になったのですが、現在陸運事務所が都道府県の知事の部局になっておる。このことは、私はよくない、これは運輸省に返すべきものだ。都道府県がそれぞれ自分で所管しておっても、もう自動車は青森から九州までトラックが走る時代なのですから、そういうときに、こまかい都道府県の小さいところにまかしておいても実効は上がらぬ。そして、そのことは、決して地方自治体の権限を縮小することになるのでもないから、自治省は思い切ってこれを放した方がいい。そして、一元的な計画を立てるべきだという私の意見も交えて、所信を聞いたわけです。ところが、その当時、大臣も、それから行政管理庁長官も、もうおかわりになりましたけれども、二人とも、このことは確かにその通りとお認めになりました。その後、どういうふうに作業を進められたか、どういう方針でおられるか、承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/50
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051・木村睦男
○木村(睦)政府委員 陸運事務所の運輸省直轄化の問題につきましては、一昨年来関係者の間におきまして、この実現方に努力をして参っておるのでございますが、たまたま当時内閣が更迭いたしましたり、あるいは責任者がかわりまして、話がとぎれとぎれになって参っておったわけであります。昨年来この仕事を引き受けましてから、引き続きましてこの実現方についていろいろ検討して参っておるのでございますが、何しろ、この問題は、御承知のように、運輸省だけの一存でできかねる問題でございまして、関係各省とも十分意見の調整交換をやって実現をはからなければならない問題でございますので、今国会にこれが実現するための関係法律の改正案を提出するまでにまだ時期が熟さなかったことは、大へん遺憾でございます。引き続き努力をいたす所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/51
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052・山内広
○山内委員 いろいろな障害があって実現を見ない、しかし、基本方針としては運輸省に移管する方針だ、そういう御答弁であるわけですが、そのいろいろな障害というものを私はあの当時指摘しておった。これは、官庁のいわゆるなわ張り争いの一番の標本だ、もうそういうことを捨てて大局につくべただという見解を持っておったわけです。おそらく今の御説明でも、そういうところの障害が災いしておるのだろうと思うわけですが、これは、大臣におかれても、ぜひ一つ大所高所に立って、早期に実現するように御希望申し上げておきたい。この点について、また大臣に御見解があったら承っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/52
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053・斎藤昇
○斎藤国務大臣 運輸省といたしましては、ただいま木村自動車局長から答えた通りでございますが、御承知のように、今日の交通状況等から、交通行政の一元化の問題も起こっております。また、もう少し範囲を狭めましても、自動車行政の一部を警察に移したらという議論も出てきておりまして、機構の問題についていろいろ議論が行なわれておりますので、これだけ切り離して特に今急にということには、支障を踏み切ってまでやるのはどうであろうかという考えで、そういう全体的な構想とあわせて考えていくべき筋なのであろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/53
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054・山内広
○山内委員 その点は、その程度で了解いたします。
次に、電波法が提案されまして、これが逓信委員会の方に、あるいはそれに伴う船舶職員法の改正が運輸委員会で審議中であります。私は、その内容についてとやこう今ここでお聞きしようとは思いませんけれども、この二つの法律は、気象庁の立場からすると、何か気象庁は、だんだん気象業務の拡充強化、充実を企図して、そうして的確に、しかも迅速に、いろいろな気象を国民全体に周知徹底させる、いわゆる拡充強化の方向にあるべきものが、この電波法の改正によって縮減されていく、そういうところの障害になる、私はそう考えております。そういうことで、気象庁は、この電波法の改正をどういうふうにお考えになっておるのか、また、これは大臣からも御答弁いただきたいと思いますが、この相反する法律が今出されておる、このことについて御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/54
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055・多田寿夫
○多田説明員 まず、運輸省における気象庁という立場でございますが、御案内のように、現在外国航路の通信士は三名おります。今度の改正によりまして、暫定期間二年の間において二名、法律が実施された三年の期間後におきましては通信士が一名ということになるわけであります。まず二名になった場合においては、現状とほとんど変わりがないという点で、これに対して気象庁として特別な措置をする必要はないと考えております。多少の法律の励行をお願いするという観点はございます。
それから、法律の実施後においていろいろ対策を考えなくちゃいけないという問題がございますが、運輸省内部でも、気象庁といろいろな点で相談しまして、一つのきちっとした対策といいますか、できておるわけでございます。というのは、われわれの方としましては、結局におきまして、広い太平洋海域のうちで、一定の海域をわれわれが持つ立場にございます。それはWMOの立場、それから一方は、今山内委員から御指摘されましたように、一つの災害防止ということに気象庁は非常に大きな責務を負わされておりまして、その両方の立場から、ある程度の人数になった場合でも、われわれとしてはこの程度の通数なら確保できる。一日四回のマップ・タイムの一定の通数は確保していくという線は堅持しておるわけであります。それから、そういうとき以外の、いわゆる台風等異常時の気象におきましては、そういうことにかかわらず、いかなるときにでも打っていただくという、この二つの原則を立てまして、これはこの法律改正後におきましても、はっきりわれわれの方でその線は打ち貫いていくという点で、対策は講じられておる、こう存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/55
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056・斎藤昇
○斎藤国務大臣 ただいま事務的な対策は説明員から申し上げましたが、それで大体御了解いただけると思いますが、私の考え方といたしまして、今電波法なり船舶職員法で、一定の船は三名以上の義務を負わせておりますが、国際航路に従事しておりまする外国の船の状況を見ますると、少なくとも法律の最低限度は一名になっておる。従って、私は、船会社に負わせる基準といたしましては、国際並みでけっこうだ、しかるべきだ、かように考えております。日本の気象という特殊事情に基づきまする措置は、これは会社の責任においてやらせるべきでなくて、政府の責任においてやらせるべきである、かように考えておりますので、その諸施策は今事務当局が申し上げた通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/56
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057・山内広
○山内委員 これは、内閣委員会で審議するにはやはり不適当な電波法の問題で、今よその委員会で審議中ですから、私はあえてそのことの内容は詳しくは申し上げません。ただ、私は、今の御答弁の中から大臣に少し御注意申し上げておかなければならぬことは、三名の通信士が一名になるということになりますと、三分の一、将来この三倍の人間を急に首を切るとかなんとかいうことは抜きにいたしましても、人間がそれだけ必要でなくなる、機械がとってかわるわけです。従って、事務的な答弁があった通り、いろいろな法的措置によってその点の不足分は補えるかもしれません。けれども、そういう特殊な技術を持つ通信士というものが、もう将来だんだん要らなくなるんだ、人の面を充実できないということは、一つの行政上の障害になるということだけは知っておいていただかなければいけない。これが、通信士が大きく社会的にどんどん養成されていく時代ならば、秀才もどんどんそこへ入ってくるでしょう。また、たくさんの人の中から、こういうあなた方のような気象事務を監督する人も出てきて、そこから初めてりっぱな行政も生まれてくるのです。人が養成されない、人が要らなくなってきたところからは、いい行政は出てこないと思う。そういう意味で、これは特に国際的なことを含めていますけれども、太平洋のような何日も相手方の船も見ないところの航海と、この沿岸の四六時中——これは世界的にも非常な危険区域といわれておる。いろいろ申し上げたいことがありますけれども、そういう中で、はたして人間を減らして機械だけでもって充実できるかどうか、この点も一つあわせて考えていただきたい。申し上げたいことはたくさんありますけれども、まあ、きょうはその程度にとどめたいと思います。
それから次に、共産圏との気象通報の関係なんですが、天気予報が当たるとか当たらぬとかいう責任は、向こうからの情報を詳細に得られないことが一つの障害になっておる。これは戦前、戦後を比較してどういう関係になっておるのか、今後の見通しはどうなのか、どういうふうな交渉が進められておるのか、国の方針などを聞かしていただければけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/57
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058・多田寿夫
○多田説明員 私がちょっと概括的にお話し申し上げまして、お許しを得まして、あとで肥沼予報部長を呼んでおりますので、実情をお聞き願いたいと思います。
今の共産圏との気象資料の問題でございますが、これは、問題を二つに分けて考えた方がいいのじゃないか。一つは、隣国としましてソビエト連邦、もう一つはいわゆる中華人民共和国、この二つがございます。そのうち、ソビエトの方とは、御案内とは思いますが、世界気象機関というのがございまして、これにソビエトも入っておりまして、一日一定時、二回でございますが、気象資料の交換をやっております。世界の気象は、おのおのわかるような仕組みに北半球においてできております。そういう実情でございます。
それから中華人民共和国の気象資料については、御案内のように、国交も開かれておりませんし、実はそういう組織、組み立てというのはできておりませんのでございますが、これはあとで予報部長から説明していただけると思いますが、中華人民共和国自身におきまして、すでにかなり気象関係が発達しておるのでございまして、それが国内に放送しておる。それを日本側は傍受するという形でできておるわけでございます。その内容は、もう少し詳しく肥沼予報部長にお話し願った方がいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/58
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059・肥沼寛一
○肥沼説明員 中共地区の気象通報は、昭和三十年前までは全然ございませんで、あのときに、天気予報に非常に困るということなどが新聞に出ましたので、その点を御懸念のことと思いますが、二十九年に気象庁長官が中共へ参りまして、そのことを申し上げて協力を依頼したのでございます。その後、三十一年だったと思いますが、中国では気象放送その他をかなりやっていたのでございますが、暗号でございまして、その暗号書が三十一年に日本に送られて参りまして、これは日本と香港だけだったようでございますが、それ以来、中国の資料は、よその国と同じように使える状況になりました。ただし、今のところ、中国は国連に入っておりません。従いまして、WMOに加盟はしておりませんので、独自に変え得る立場にはございますが、現在やっておりますのは、WMOできめた線にのっとった方式でやっております。従いまして、私ども現在不便はしておりません状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/59
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060・山内広
○山内委員 ちょっと事務的なことになりますが、いつでも国会で多少問題になるのですが、今度また気象庁の研修所が大学になることになります。このことは、私はきわめて大事なことだと思うのです。大学になってから、いや図書が足りないとか、いや学校の先生が少ないとか、校舎が悪いとか、あとから問題を持ち込む。今度の研修所はどこに置かれて、どういうことをやるのか、この資料の中にもいろいろ見せていただいて、表としては承知しておりますけれども、将来どういうことを拡充、計画しなければ大学としての充実が期せられないのか。御承知の上でやるならば、やはり国会にも周知さしておく必要があると思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/60
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061・多田寿夫
○多田説明員 お答えいたします。
気象庁研修所は、現在千葉県の柏市にございまして、実はこれは昭和二十六年四月までは、御案内かと思いますが、気象部内としての気象技術官養成所というのがございまして、これは旧専門学校令によって専門学校とされておったわけでございます。それが廃止されましたものですから、それにかわるべきものとして、部内としてこの研修所を作ったわけであります。内容としますところは、短期大学程度の基礎教育、それから気象業務に従事するに必要な専門教育、この二つを昔からやっております。実力としましては、端的に申しますと、その辺にあります駅弁大学よりはずっと実力はございます。中身としましては、高等部というものが中心でございまして、これが三十名。あと、普通科、専科というものがありまして、普通科が約五十人程度、それから専科的なものが八十人。後者二つは部内から選ぶということになっております。それから高等部の方は、人事院の試験によりまして、高等学校を出た者から理科方面の好きな者を採用しまして、毎年十五名、一年、二年で合計三十人。非常に試験もむずかしくなりまして、おおむね十人に一人ぐらいの難関でございます。簡単でございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/61
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062・山内広
○山内委員 今度、増員が千三百三十三名出されておりますが、これは要望されておった定員外職員の定員化のことなんですか、純増ですか、その辺の内訳と、なお、このほかに定員化すべき職員がどれくらい残るのか、数を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/62
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063・広瀬真一
○広瀬政府委員 定員の増加千三百三十三名の内訳を申し上げますと、この中で定員外職員が定員化されるものが千百六十八名でございます。定員外職員の関係をさらに申し上げますと、現在定員外の職員が千三百八十三名おります。今回で千百六十八名定員化されるわけで、未定員化のものは二百十五名ということになります。大部分のものは今回定員化されることになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/63
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064・山内広
○山内委員 この二百十五名の定員化できなかった理由は、どういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/64
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065・広瀬真一
○広瀬政府委員 行政管理庁が個々の職員につきましてこまかい調査をいたしまして、たとえば三十七年度末までに明らかに事務または事業の廃止または終了のもの、あるいは事務量から見まして明らかに過剰と思われるもの、明らかにパート・タイマー的なもの、あるいは期間的な雇用関係のもの、国費以外の費用で雇用されている職員、あるいはまた福利厚生関係等の職員、こういったものは定員化は適当でない、こういうふうに行政管理庁が判断されましたが、大体そういったものが二百十五名ございます。今回で大体定員化というものは一応終わるのではないかというふうに行政管理庁の方から聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/65
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066・山内広
○山内委員 将来なくなるものに置く必要もないのですから、その点の事務量やそういうことについては、議論の余地もあろうかと思いますが、申し上げませんが、この福利厚生関係が定員化できないという考え方はどうなのか、おわかりでしたら、職種別で一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/66
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067・広瀬真一
○広瀬政府委員 福利厚生関係の職員と申しますのは、寮の管理でありますとか、あるいは美容、食堂等の勤務でございまして、これは、今後大蔵省が中心となりまして共済方式の改定を考えるということで、今回定員化は保留になったものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/67
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068・山内広
○山内委員 問題はまだたくさんありますけれども、本会議の時間も迫って参りましたので、これで質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/68
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069・中島茂喜
○中島委員長 これにて質疑は終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/69
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070・中島茂喜
○中島委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。
運輸省設置法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/70
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071・中島茂喜
○中島委員長 起立総員。よって、本案は可決いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/71
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072・中島茂喜
○中島委員長 次に、通商産業省設置法等の一部を改正する法律案について、これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。
通商産業省設置法等の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/72
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073・中島茂喜
○中島委員長 起立総員。よって、本案は可決いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/73
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074・中島茂喜
○中島委員長 なお、両案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/74
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075・中島茂喜
○中島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
本日はこの程度にとどめ、次会は、来たる二十二日木曜日十時理事会、十時半委員会を開会することとし、これにて散会いたします。
午後一時二十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104004889X01819620316/75
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