1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年四月十八日(水曜日)
午前十時五十七分開議
出席委員
委員長 野原 正勝君
理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君
理事 田口長治郎君 理事 丹羽 兵助君
理事 山中 貞則君 理事 石田 宥全君
理事 片島 港君
安倍晋太郎君 飯塚 定輔君
大野 市郎君 金子 岩三君
仮谷 忠男君 草野一郎平君
倉成 正君 小枝 一雄君
田邊 國男君 谷垣 專一君
綱島 正興君 寺島隆太郎君
内藤 隆君 中山 榮一君
福永 一臣君 藤田 義光君
本名 武君 松浦 東介君
米山 恒治君 角屋堅次郎君
東海林 稔君 中澤 茂一君
楢崎弥之助君 芳賀 貢君
西宮 弘君 湯山 男君
安井 吉典君 玉置 一徳君
稲富 稜人君
出席政府委員
農林事務官
(農林経済局
長) 坂村 吉正君
農林事務官
(農地局長) 庄野五一郎君
委員外の出席者
総理府事務官
(経済企画庁総
合計画局参事
官) 近藤 武夫君
農林事務官
(農林経済局農
業協同組合部
長) 酒折 武弘君
農林事務官
(農地局管理部
長) 丹羽雅次郎君
参 考 人
(農政調査委員
会事務局長) 東畑 四郎君
参 考 人
(農政調査会副
会長) 田辺 勝正君
参 考 人
(南袋井農業協
同組合組合長) 恩田忠四郎君
参 考 人
(新利根開拓農
業協同組合組合
長) 上野 満君
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本日の会議に付した案件
農地法の一部を改正する法律案(内閣提出、第
三十九回国会閣法第六六号)
農業協同組合法の一部を改正する法律案(内閣
提出、第三十九回国会閣法第六七号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/0
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001・野原正勝
○野原委員長 これより会議を開きます。
農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案を一括議題とし、質疑を行ないます。安井吉典君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/1
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002・安井吉典
○安井委員 昨日に引き続きまして、両法案に対するお尋ねをいたしたいと思いますが、きょうは特に農業生産法人に関しましていろいろ問題点がありますうち、二、三をお尋ねいたしたいと思います。
今度の改正法案の中で、農業生産法人につきまして、いろいろなタイプをおきめになっているようでありますが、私は農事組合法人ですか、そういうような新しい様式を政府がお考えになっているという段階におきまして、現在農業法人という形でいろいろありますようなものも、むしろそういったようなタイプに統一をしていくという、そういうような方向こそが望ましいのではないか、そのような感じを受けるわけであります。特に社会党は、農業生産組合法案を出して、このような統一した形を打ち出していくという方向において農業政策の方向にも前進があるのではないか、このような考え方に立っているわけでございますが、いろいろありますタイプを一体どういうふうに運用されるお考えなのか、それを一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/2
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003・庄野五一郎
○庄野政府委員 農業生産法人といたしまして、農地法上農地等の所有権あるいは使用収益権の取得を認めて参ります法人につきましては、御質問のように、農協法上制定されます農事組合法人、それから会社法の関係で合資会社、合名会社、それから有限会社法によります有限会社、この四形態が考えられるわけであります。それぞれそれにつきましての要件をきめたわけでございます。これにつきましては、それぞれの法人形態におきまする特徴があるわけでございまして、これの運用にあたりましては、この法人形態を利用して協業をやっていこう、こういう農民の意欲によって決定されるもので、農民の創意工夫によって、どの形態をとるか、農民の選択にまかせる、こういう方針で運営して参りたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/3
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004・安井吉典
○安井委員 ただいまお答えがございましたけれども、実に幾つものタイプがある。たとえば農事組合法人にいたしましても、出資と非出資がある。あるいはまた合名会社があり、合資会社があり、有限会社がある。そういうようなそれぞれのタイプにおきまして、運用の妙味だとか、そういったようなものがあると私は思います。しかしながら、政府が今後の農業政策をお進めになっていく場合に、まちまちな動き方をし、しかもその運用の方法が非常に複雑なものでありますから、全体的な方向づけというものが非常にむずかしくなりやしないか、さらにまた合名会社の行き方と、それから農事組合法人の行き方とでは、当然その方向にニュアンスが出てくるわけであります。そういうようなものが政府の単なる政策だけじゃなしに、農村内部の社会構成の中で何か不協和音というか、そういうようなものをかもし出しはしないか、そういうような印象を受けるわけであります。今の段階では、現在いろいろなタイプがあるのですから、これを直ちに一本にするということはむずかしいかもしれません。しかし将来の方向においては、このうちのどれかということになりますと、農事組合法人というようなことに落ちつくと思うのですが、そういうようなものに自然に統一をしていく、暫定的には仕方がない、しかし自然に統一をしていく、そういうような方向が望ましいのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/4
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005・庄野五一郎
○庄野政府委員 先ほどから御説明いたしますように、農民の創意工夫と農民の選択、こう申し上げておりますが、やはり農民の意識、あるいは農民の農業経営というものに最もなじみやすい形態がおのずから農民の選択に相なる、こういうように考える次第でございます。現在の動向、大体農民が今考えておるといったようなところは、設立等について非常に簡便な有限会社の形式とかあるいは農協法によりまする農事組合法人、そういったようなものが、農民としてやはり一番なじみやすく、選択の可能性が多いんじゃないか、こういうように考えるわけでございますが、先ほどから申しますように、合資会社につきましても、あるいは合名会社につきましても、これは同族的な会社法人で、株式会社等のような形のものでございませんので、これによって農業経営をやっていこうという農民がありますれば、これらの道も当然開いておかなくちゃならぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/5
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006・安井吉典
○安井委員 農事組合法人というタイプを一つ設定する場合に、合名会社あるいは合資会社、有限会社等の長所をその中に織り込めるような、そういう仕組みをお作りになったらどうなんですか。そうすれば、会社法その他の法令を農業経営の中に持ち込む必要がないということになるのではないかと思うわけです。むしろ農事組合法人そのものの内容を充実するという方向で吸収していくべきではないか、かように私は考えるわけであります。
そこでこの内容の問題でありますが、いろいろな立場から問題を見つけることができますけれども、特に組合員の資格につきまして、出資と、それから常時従事するという、その二つの問題を政府案では離しておられるわけであります。私どもの社会党の農業生産組合法案では、出資と同町に常町従事ということは切り離すことができない要件であるというふうな考え方に立っているわけであります。そうでないと、私はずいぶんいろいろ問題があると思うわけです。それらにつきまして二、三伺いたいわけでありますが、ここでいわれております出資とは一体どういうものをさすのか、まず、それから一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/6
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007・坂村吉正
○坂村政府委員 お答えいたします。
農事組合法人の出資は、もちろん現金もございますし、たとえば現物出資もできるように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/7
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008・安井吉典
○安井委員 法律には農地等ということですね。農地その他ということだと思うわけでありますが、そのうち農地の出資については、物権あるいは債権の面からどういうふうな形になるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/8
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009・坂村吉正
○坂村政府委員 農地を出資いたしまして、その法人の出資金の中で評価いたされまして、それがその法人の出資金になるわけでございます。いわゆる普通の現物出資でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/9
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010・安井吉典
○安井委員 それでは、ここで設定しておりますのは所有権の移転というだけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/10
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011・坂村吉正
○坂村政府委員 所有権ももちろんでございますけれども、その他の農地についての物権、永小作権とか、そういうものがございます、そういうようなものも当然現物出資として考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/11
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012・安井吉典
○安井委員 ここで考えられております農地、今おっしゃいましたのは現金と農地ということでありますけれども、それ以外にはどういうような種類をお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/12
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013・坂村吉正
○坂村政府委員 そのほかといたしましては、農業経営に必要な施設でございまして、たとえば農機具あるいは家畜舎を現物出資するとか、そういうようなものも当然一つの現物出資として考えていいのじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/13
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014・安井吉典
○安井委員 この条文の解釈で、いただいております資料の中に説明がいろいろになされておりますので、ちょっと理解しかねる面もあるわけでありますが、出資をしておればつまり土地を提供する、あるいはまたさっきの御説明によりますと、所有権以外の民法上の債権やあるいはまた物権というようなものの出資もあるということでありますが、たとえば出資者が永小作権というようなものを出資するわけですね。そういたしますと、その人は従事しなくても、当然構成員ということでずっと最後までいけるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/14
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015・坂村吉正
○坂村政府委員 先ほどの御指摘にもございましたように、今度考えておりまする農事組合法人の場合に、従事義務を組合員に課しておりませんけれども、これは法人化をすることによりまして、その法人化いたしました組合員が全部その法人の業務に従事しなければならぬということになりますと、いろいろ合理化をしようというような面が阻害をされる、こういうおそれがあるのでございまして、たとえば十人の者が集まって農事法人をやった場合に、実際の仕事といたしましては五人でいいとかあるいは三人でいいというような場合も当然起こるわけでございます。そういう場合に全員に法人の業務に従事するという義務を課することは、今の状況では非常に実情に合わないのじゃないか、こういう感じがするのでございます。従いまして今度の法案では、従事する者のうち五分の四は組合員でなければならぬ、こういうふうに裏から規定いたしたわけでございます。そこでその法人の仕事は組合員の仕事になる、こういう考え方をいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/15
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016・安井吉典
○安井委員 私は普通の場合は、まともな見方からすれば今の御説明でもこれは通るのだと思います。しかし私は人が悪いから一番悪い例でお尋ねをするわけでありますが、たとえば三町歩持っている人があって、その人は法人に三町歩を出資をするという形にする。しかし御本人は町に行ってしまって百姓は何もしない。百姓には全く関係がない人が出てくる。そういうような場合であってもその人はその法人の出資者として、つまり構成員として堂々といける、こういうことになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/16
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017・坂村吉正
○坂村政府委員 ただいま御指摘の問題は、たとえば三町歩の土地を出資をいたしまして町へ出てほかの仕事をしてしまうというような場合、その人を農民として考えられないというような場合には、これは当然組合員にはなれないというようなことになるわけでございますので、そういうような姿では農業法人はできない、こういうようなことになろうかと思っております。やはり組合員はあくまで農民である、こういう考え方で考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/17
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018・安井吉典
○安井委員 これは農民でもいいわけですね。農民の場合に限定しても差しつかえありませんが、御本人は大部分の土地はそっちへ出資をして法人化している。しかし自分はほんのわずかな土地をどこかで耕作している。つまり法人としてのその人の農業生産の主たる部分には全く無関係なわけです。ただ土地の出資だけで従事義務がないわけでありますから、それだけであってもその人は法人の構成員で、その法人の中で配当も受けることができるし、堂々と運営の問題について発言もできるというタイプは、私はどうもおかしいと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/18
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019・坂村吉正
○坂村政府委員 いろいろと考え方があろうと思うのでございますが、農業法人を作って農業の共同化をやっていこう、農業法人によってやはり人手も少なくなりあるいは機械化もされ合理化する、こういうところがおもなねらいでございます。そういう意味におきまして、たとえば三町歩持っていた者が一反歩だけ自分で持っておって、あとの大部分は法人に出して、そして組合員になって配当をもらっているということがあっても、その三町歩のうちの大部分を出したことが農業法人として、いわゆる農事組合法人として農業経営が合理化されて近代化されて参るということになるのであれば、私はそれは当然そういう線で考えていいんじゃないかというふうに考えておるわけでございまして、わざわざそれを非常に窮屈に縛りますことは、これは農業の協業化というものを阻害するんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/19
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020・安井吉典
○安井委員 私は、これは昨日も問題を取り上げておりました農地の最高保有面積の制限を取っ払って青天井にしてしまうという考え方と、この出資につきまして、農地の出資と、それから従事義務を必ずしも課さないというふうな考え方とが結び合って非常にめんどうな問題が起きてくるのではないか、そういうようなおそれを持つわけであります。つまり不耕作地主が普通の場合でありますといろんな制限があるからなかなかできない。しかしながら農事組合に現物出資をするという一つのシステムを通しまして不耕作地主が発生するおそれがある。そういうようなことで相当規模の大きい面積の農地を持つ人によって出資がどんどん進められていけば、政府の基本的な考え方では金のある力は自立農家でいく、貧乏人は共同経営でいけ、協業でいけ、こういうようなお考え方だとすれば、結局貧乏人ばっかり集まっている農業生産組合が集団小作人というような新しいタイプに今後進んでいくおそれがあるのではないか、これは必ずそうなるとは私は申しませんけれども、そういうふうな可能性ができたことになりはしないか、このことを非常におそれるわけであります。この点、土地の現物出資と従事義務とを別々にしてあるというところにおいて非常に大きな欠陥がある、私もそういうふうに考えるわけであります。その点、見解の相違で私の期待する答弁はいただけないようでありますけれども、私はそういうふうに思うわけであります。特に最近農村では掛金がふえてきている。そういうようなことで農地の担保というような仕組みは表向きはできないにいたしましても、裏では実質的に土地が金貸しのところに集中をしておる、そういうような例もないわけではない。こういうようなものが今度の新しい法人の中に非常に都合のいい仕組みができた。農地の信託とこの二つが合わさっていかにもそういうような人に向くような仕組みがここにできた、こういうようなことになって悪用されるおそれがあるのではないか、このようなことを考えるわけであります。
それから金銭の出資でありますが、金銭の出資につきまして何か制限措置を講ずるとかいうようなお考えはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/20
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021・坂村吉正
○坂村政府委員 農事組合法人につきましては、そもそも法案の趣旨にもございますように、ほんとうに共同化しようという方々が集まって法人を作って共同経営をやる、こういうような姿でございますので、みんなお互いに知り合った人たちが多うございまして、非常に親近感の強い者が集まるという姿が大部分であろうと思います。そういうような意味でございまして、いろいろ相談をいたしまして出資やなんかもきめて参るわけでございますので、金銭につきましても制限はいたさないつもりで考えております。ですから法律の上でもいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/21
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022・安井吉典
○安井委員 一般的には今おっしゃったことで差しつかえないと思うわけです。先ほど私がいろいろ先回った心配を申し上げましたけれども、これはみんな杞憂で終わればよいわけでありますけれども、この農事組合の形態についてはありとあらゆる場合、か予想されて、それについて何も制限がありません。農業とその付帯事業というふうなごく大まかなきめ方でありますから、今後これがどういうふうに発展をしていくか全く見当がつかないものだと思います。しかも組合員は五人以上でいいわけですが、十人であるかもしれないし、百人であるかもしれないし、千人であるかもしれないし、一万人の組合はこれはできないかもしれませんが、しかしながらそういうふうな何らの制限がないわけですね。そういうようなことから、あまりにもワクがなさ過ぎるという点においていろんな心配が出てくるわけであります。その一つは、私は、金銭出資の面で、お金のある人が作った生産組合なるものをひっかき回してしまって、ちょうど昔の何々農場といった、北海道によくありましたけれども、そういう資本家的経営に実質的に変わっていくおそれはないか。その心配は要するに出資と従事義務とを全く切り離しているところから出てくるのではないか、かように考えるわけであります。その点はこの従事義務の面からも言えるわけでありますが、常時従事というふうな内容、これも非常に不明確だと思うわけでありますけれども、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/22
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023・坂村吉正
○坂村政府委員 初めの点でございまするが、おっしゃる通り新しい制度でございますので、運用して参ります場合にも、極端なことを考えますと非常な心配もあるわけでございます。しかし実際問題といたしましては、農村の一番末端の組織といたしまして、気持といたしましては、一つの総合された農協の系統組織に入っていくような、そういう組織で考え、今後も指導して参りたいというふうに考えておるのでございまして、そういう面からも、そういう極端な例は起こらないように一つ十分指導して参りまして、そして実際の動きを見まして、その上でどういうような姿に落ちついて参りますか、その点も十分一つ注視をして参りたいと思っておるわけでございます。
それから第二の問題でございますけれども、これは常時従事と申しますのは、常識的に常時従事というふうに考えておるのでございまして、現在のところ幾日以上というようなことで限定的な考え方はいたしておりませんけれども、たとえば農業経営なら農業経営をやっていきます場合に、大体どのくらいのものが常時従事と言えるか、そういうふうなことで、おのおの仕事の内容によっても違うと思うのでございます。そういう点で考えていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/23
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024・安井吉典
○安井委員 その常時従事というのも、単なる言葉のあやだけではいけないと思うわけでありますが、省令か政令で具体的にきめられるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/24
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025・坂村吉正
○坂村政府委員 農協法の関係におきましては、常時従事というものを省令なり政令なりで日にちをきちんときめるようなことは考えておりません。しかし農地法の関係で、そういうようなものに対しまして、農地法の特例を認めるわけでございまするから、そういうような意味で、農地法の関係でそっちの面からの何らかの規定は考えたらいいのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/25
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026・安井吉典
○安井委員 といいますことは、結局これは政令か省令でおきめになるというわけですか。それとも事務的な決定なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/26
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027・庄野五一郎
○庄野政府委員 農地に関しまする所有権あるいは使用収益権を認めますいわゆる農地法上の生産法人の構成要件としまして、常時従事する構成員が農事組合法人にありましては議決権の過半数以上を占める、こういうことになりまして、常町従事の構成員ということが問題になってくるわけでございます。その常時従事の規定は農林省令できめるようにしたいと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/27
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028・安井吉典
○安井委員 この常時従事という名前で結局これは構成員になるわけでありますから、それだけにこの規定の仕方は重要だろうと思います。省令の規定だそうでありますが、その際きわめて慎重を要する問題だと思うわけであります。
なお出資につきまして、いわゆる出資という概念の中に、信用出資あるいはまた労務出資という概念がありますが、それはこの法律の中に導入されていることになっておりますか、どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/28
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029・庄野五一郎
○庄野政府委員 この農地法上農地のいわゆる所有権、使用収益権の権利工体となりまする農業生産法人につきましての出資というものの中には、先ほど申しますように、農地等に関しまする所有権等の権利が中心になるわけでございます。農地法上のいわゆる農業生産法人につきましての構成要件といたしましては、農地の提供とそれから労務の提供、こういうことに相なるわけでございまして、その関係におきまして、ただいまのところは現物出資という観念で、現金出資、現物出資という考えで考えております。労務出資は考えられない、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/29
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030・安井吉典
○安井委員 合名会社、合資会社等の場合にはよく信用出資や労務出資というふうな考え方がないわけではありません。そういうような点からお尋ねをしたわけでありますが、この場合にはそういうふうな考え方は導入してないということでございます。
そこで、この常時従事という言葉に関連いたしまして、その組合の経営的な労働、これはその常時従事という言葉の中に含まれるのですか、それともまた雇用労働という形で想定しておりますか。これは組合の規模にもよるわけでありますが、その組合長というふうな立場の人の従事の仕方がそれは常時従事なのかあるいはまた雇用労働という形なのか。組合長の場合はこれはわかりますけれども、組合が大きくなれば会計係を置くとか庶務係を履くとかあるいは技術の担当者を置くとかそういうようなことになるはずでありますが、いわゆる経営的な労働の見方をどういうふうにお考えになっておられるか、それを一つ伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/30
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031・坂村吉正
○坂村政府委員 組合が経営をやって参ります場合には、労務も要りますし事務も要りますし、そのほかいろいろの仕事が要るわけでございまするので、もちろん経営面に携わる者も常時従事というふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/31
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032・安井吉典
○安井委員 そのマネージメントの見方でありますけれども、私がさっきいろいろ会計係とか技術係とかそういうふうに申し上げましたが、それはどの範囲までお入れになるおつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/32
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033・坂村吉正
○坂村政府委員 その組合が農業経営をやっていくのに必要な仕事については、これはその組合の仕事に従事する、こういうふうに考えていっていいのではないかと思いますので、実情に応じて考えるべきだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/33
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034・安井吉典
○安井委員 この経営労働の見方というのがおそらく組合の運営の問題で非常に大事になってくると思うのでありますが、常時従事という観念に当てはめていけば、これは組合の当然の構成員になるし、従って従事配当という形でお金が出てくるだろうと思います。しかしながら会計係を雇ったという雇用労働という形で出てくれば、これは組合の経費の中に労賃という形で入ってくるはずであります。一般の田植えの人が足りないので入れたとか、それと同じような形の労賃という形で入ってきております。それだけにこの見方というものは常に問題になるわけでありますが、その点の認定は結局組合自体にまかせる、そういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/34
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035・坂村吉正
○坂村政府委員 御指摘の通りの問題があるのでございまして、これらは先ほど申し上げましたように親近感の非常に強い人同士の集まりでございますので、それらをたとえば甲の人は会計の仕事をする場合に、いわゆる組合員として扱うのか、あるいは雇用労務者として扱うのか、そういう問題はその経営上いろいろな相談をしてきまって参る問題だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/35
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036・安井吉典
○安井委員 非常に問題を簡便に扱おうというお気持はこの法律の中に現われております。しかしながら私は、これは最後になってこの組合側の対外的な信用度という問題に行きついた場合には、単なる簡単に作って簡単に運営させればそれでいいだろうというふうなことでは済まされない段階がくるのだろうと思うのです。作るなら勝手にお作りなさいということではなしに、政府の方でもっと親切な扱いをしてあげて、善意の第三者にも十分に信頼を受けるような、そういうふうな組合の形成ができる、こういうような考え方でなくてはならないと思うわけであります。さらにまた先ほど雇用労働者の制限の規定がある、設けるつもりだというふうに申されましたけれども、私はむしろその雇用労働の制限の方は仕事の内容によりまして多く要るものもあるし、少なく要るような作業もあるわけでありますから、そちらの方はこれは実情にまかせるような方向にして、少なくともその制限は割合軽くしておいて、そしてむしろ出資者は全員従事しなくてはいけない、こういうような社会党の考え方の方が私はずっとすぐれた考え方だというふうに思うわけであります。そうでない限り先ほど来申し上げましたようないろいろな弊害が必ず起きてくる。こういうことを指摘しておきたいわけであります。特にこの組合の任意設置という、どういう形でもいいというふうなことになると、どうも、これは農業協同組合の正会員になるわけでありますから、あまり外部的な妙なものが介入してくるというようなことでありますと、農業協同組合そのものの運営にも私は支障を来たしてくるのではないか、こんな気がするわけです。もともと先ほどもお話がありましたように、この農業法人は農民の創意から出てきたものです。それを今度法難で定めようとしたわけでありますが、農民の創意から出てきたものはあくまでもこれは従事者本位でみんなが寄って集まって、それでむしろ素朴な考え方は税金を安くするような仕組みはできないか、こういうようなところから出てきたものも多いわけでありますけれども、そういうような素朴な考え方が法制の内容をゆるめることによりまして、その本質を今度の法律規定の中でゆがめてしまうものだというふうな印象を受けるわけであります。その運営内容を比較的簡素にやろうという考え方はこの法案をずっと見て参りますと、たとえば役員の選任の仕方にいたしましても、選挙というシステムを特にとろうという考え方をお持ちになっていない、選任というふうな言葉の書き方になっているようでありますし、あるいはまた監事も必ず置かなくてはいけないということには書いてないようであります、あるいはまた組合の議決事項の中にも、社会党の案によりますと、借入金の最高限度や、農協等の加入脱退というような重要な事項は必ず総会にかけなくてはいけないというふうに書いてあるわけでありますけれども、政府案にはそういうものもごく簡素な形になっております。そういうような意味で、私は第三者に対抗していくという場合に力がないようなものになりはしないかということをおそれるわけがあります。そこで、こういうような組織を将来指導運営していく場合に、政府は模範定款とでもいいますか、そういうようなものを準備しておられるわけですか、あるいはそのおつもりがおありですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/36
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037・坂村吉正
○坂村政府委員 いろいろ御指摘でございますけれども、先ほどから申し上げますように、たとえば十人なら十人、十五人なら十五人が集まった場合に、それがみな全員が従事しなければならぬ、こういう姿で参りますと、農業を法人化し、農業経営を法人で行なうということが全然消えてしまうのではないかという感じもするのでありまして、そこら辺も政府側におきましても十分考えまして、従事義務というものを全員に課さない、こういう考え方で裏から考えておるわけでございます。
それから農事組合法人の設立とか運営とかにつきましてはできるだけ簡素にしようということ、それから農村の実態から申し上げますと、たとえば五人なり十人なりの集まりで共同化をしていく、いろいろあるのでありまして、こういうようなものが出資をした力がいいようなものもごいざますし、出資をしなくてもいいようなものもございますし、法人格を持った方が便利だというものもございますし、それから法人格を持たぬでもいい、いろいろな形態があるのでございまして、そういうようなものがいろいろの事態に応じまして作業がうまく進みますように、こういう趣旨で考えたわけでございますので、不十分な点もあるかとは思いますけれども、これを運用しながら不十分な点は是正するように指導して参りたいというふうに考えておるわけでございます。
最後に定款等につきましては、これも画一的にこれを作ってしまって、はたしてそれを押しつけていいかどうかという問題が今ございますけれども、今後の指導の面からいいましても何らかの模範定款のようなものを作って指導する力がいいんじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/37
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038・安井吉典
○安井委員 非常に多様性のものが全体的に予想されるわけでありますが、しかしそれにいたしましても基礎になる問題だけはしっかりさせていかなければならないと思います。そういうふうな意味で私申し上げておるわけでありますが、ただ私、この農業生産法人につきまして、これに関する土地問題の扱い方が非常に不明確であるような気がするわけであります。この法案によりますと、農業生産法人につきまして、この法人が小作地を保有するということにつきましてこれを制限するというふうな規定が全く見当たらないわけであります。普通の場合でありますと、法人が小作地を持つということは考えられないわけでありましょうけれども、しかし全く制限を設けてないということは将来にわたりまして問題が起きはしないということであります。
さらにまた、この法人が取得する面積につきましても少しも制限を置いておりません。今度は個人についても上限を取っ払おうというような考え方に立っておられるわけでありますが、そういうような考え方も導入されておると見えまして、この中にはないように見受けられます。生産法人が本来の性格を持って目的を遂げていくというためには、私が今取り上げました小作地の制限や、あるいはまた、収得農地面積の上限制限や、こういったものもむしろ法律規定の中に設けることの方が合理的ではないでしょうか、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/38
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039・庄野五一郎
○庄野政府委員 農業生産法人の小作地保有につきましては、お説の通りこれを禁じておりません。これはたばこ耕作その他、連作をきらうような関係もあって一部をその他の耕作者と交代して使わざるを得ない場合に、法人の所有権を持っておる耕地について一時的に交代で耕作するというような関係もあろうかと存じてかようにいたした次第であります。
なお、先ほどから個人の自作農の三町歩の上限は青天井だ、こういうふうにおっしゃっておられますが、従来は自家労力のみによってこれが適正耕作ができる場合には許可する、こういうことになっておった点を、自家労力のみというのを、主として自家労力によって適正耕作ができると認められる場合に三町歩以上の収得を認める、こういう条件をかぶっておりますので、無条件の青天井ではございません。そういう点を御了解願いたいと思います。
それから農業生産法人につきましては、協業の助長という点もありまして、法人の必要労働の過半数以上を構成員が従事するということに相なっておりますれば三町歩以上の保有につき制限をしないのは、個人の場合と歩調を合わせて考えておる次第でございまして、別に個人、法人の区別があるわけじゃございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/39
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040・安井吉典
○安井委員 最高制限面積の問題につきましてきのうもいろいろ私の考え方も申し上げたわけでありますが、きょうは時間も回っておりますので繰り返しませんけどれも、やはり最高制限を三町歩で足りなければ四町歩にするとかいうようないろいろな方法があるわけでありますが、主としてという、そういうような言葉のあやだけで問題を処理されようとすると、これはおそらく悪用されるおそれが多分にあるのではないかということを考えるわけであります。そこに個人についても上限面積を何らかの形で輝くべきだし、もっと法律の中に規定すべきである。法人についても同様な考え方を導入すべきである。そうしなければ法人そのものが小作地を幾ら持ってもいいし、幾ら面積をふやしてもいいということになりますと、先ほど一番最初に私は疑問として申し上げましたように、農業に従事しなくてもいいような、人が自分の持っている土地を法人に出資する。幾ら出資をしてもいいわけですから、土地が余ってくる。その余った土地を法人の名前で小作地に出してもいい。そういうように、回り回って農地改革の本旨をゆがめるおそれがある。こういうような立場から申し上げておるわけであります。
そこで、次は財務の運営についてもこの政府の法案の中でずいぶん疑問を持つ点があります。この剰余金の配当の方法につきましても社会党の考え方とだいぶ違うわけでありますが、従事配当や出資配当、そういうようなものの順位の置き方等にも問題があると思いますが、その点は問題がこまかくなりますから、時間があればあとにすることにいたしまして、特に申し上げなくてはならない問題は、農地とか建物とか、あるいは金銭の場合もあるわけでありますが、そういうような出資に対して、それをどういうふうに評価をするのかというその評価の基準の問題でありますが、これらにつきまして農林省は十分確固たるお考えをお打ちでしょうか、それを一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/40
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041・坂村吉正
○坂村政府委員 現物出資の場合の評価の問題でございますが、これはやはりいろいろ物によっても非常に違うのでございまして、これらも実際先ほどから申し上げましたように、現実に農事組合法人ができて出資をし、そしてやっていく場合に、みんなで経営の問題等も考えて、どういう工合にその土地では評価をして農事組合法人を作ったらいいか、こういうことをよく話し合って、そして健全な農事組合法人ができて、健全な経営のできるように持っていく、こういう農民の集まりの自主性を十分尊重した姿で指導して参りたいと思っておるのでありまして、現在のところこういうものについてはどういうふうに評価するというものまできめておりませんが、その姿を見ながら、必要があればその評価方法につきましても何らかの指導をして参るようにやっていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/41
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042・安井吉典
○安井委員 一応ごもっともなお考えだと思います。しかしながらそのお考え方の基礎には、農林省が現在の日本の農地の価格について少しも確固たる考えをお持ちになっていないということが現われておるように思うわけであります。この組合の運営のみならず農地の制度全体を考えていきます場合に、農地価格の問題は非常に大事だと思います。さらにまた小作料の問題、借地料の問題も同様に重要だろうと思います。ところがそれについて一体どうすればいいのかというお考えをお持ちになっていないようであります。組合の運営をする場合に、その出資の配当をしていく。これはその土地をその付近の売買価格でやっていくのか、それで評価をしてやる方法もあるのでしょうし、あるいはまた現在の土地価格については、その辺の土地の収益を資本に還元するような形で土地価格を出していく方法もあるだろうと思いますし、あるいはまた固定資産税の基礎になる価格で評価をしていく場合もあるでしょうし、それによって実に大きな、月とスッポンくらいの差があるわけです。このような差をそのままにしておいて、それについての考え方を何ら示さないでおいて、組合が勝手におきめなさいというようなことでありますれば、組合の運営の中に土地だけを出資をしておる人は、評価をできるだけ一番伺い売買価格にしてほしいだろうし、お金がなくて従事するというだけで組合員になっておる人については、それらの出資をできるだけ安く見積もる方が従事分量配当の方がふえてくるわけですし、その組合員の利害に非常に大きな影響がこういうことの中から出てくるわけです。だから今の農政の中の土地価格に対する措置の貧困さを一日も早く回復するという御努力をしていただくのでなければ、全体的な問題も、あるいはこの生産法人に対する確固たる指導の方向も私は出ないと思うわけであります。特に最近は固定費灘の評価制度が昭和三十九年度を目標にして変わるわけです。それによって、農村においてその問題を中心にして大きな問題が起きておるのではないかということを私ども予想しておるわけでありますけれども、土地価格について一体どういう方向でいくべきか、こういう問題についてもっと真剣に農林省としてもお考えになる必要があるのではないでしょうか。そういう御努力はなされておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/42
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043・庄野五一郎
○庄野政府委員 土地価格というものにつきましては、昨日来ここでも御質問もあり、農林大臣からも御答弁があったわけでありまして、農地価格の問題につきましては、農地が農業経営の非常なる部門を占めるわけでございますので非常に重要な問題でございます。われわれといたしましても、この問題については、昨日から大臣も御答弁になっていますように、この問題の検討はかねてから続けておるわけであります。なかなかむずかしい問題でございますし、また農地だけでこういう問題の検討をするばかりではなく、宅地との関係もございましょうし、その他の関係もございまして、非常にむずかしい問題でございますが、何とかこういう問題につきましてはわれわれとしても適正な方向を見出すべく努力している段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/43
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044・坂村吉正
○坂村政府委員 農事組合法人の場合におきます土地の出資の評価の問題につきましては、これはいろいろそのとり方があろうと思うのでございますけれども、これは相談できめる、こういう考え方でいってとりあえず差しつかえないのじゃないかと思っております。ただし法律上は非常な水増し評価をやった場合には、これは第三者の債権者を害しますから、そういうような点につきましては有限会社法を準用いたしておりまして、それは組合員が補てんをしなければならぬ、こういう義務を負わせる、こういうようなことになっておるわけでございます。出資ということについて、現物出資の評価に非常に神経を使わなければならぬという問題は、出資配当を優先という考え方で参りますると、そういう問題がありましょうけれども、出資配当でもあるいは従事分量配当でもどちらでも組合員の相談で選択してこれはやれる、こういう法制をとっておるのでございますので、その点は出資をどういう工合に見ておきましても配当の問題はいろいろの配当ができるわけでございまして、出資配当優先という建前はとっておりませんから、その点は組合の運営としても組合員の方からいいましても問題はないのじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/44
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045・安井吉典
○安井委員 これは非常に大きな問題でさらに御検討願わなくてはなりませんが、今お話のありました従応分昂配当についても、これは労働の質及び量をどういうふうに評価するということで、これも大へんな問題なわけですね。今日まで共同化が進んだり、こわれたりしている原因はここにあるわけです。だからこういうようなものについても、今局長の御答弁の中では従来分量配当の方で普通いくからそれでいいとおっしゃるわけだけれども、それならこの従事分量配当の問題について、やはり農林省としての十分な御方針をお持ちなのか、特にいろいろな資料を作って配付するとかそういうふうな指導の方向がきわめて重要だと思うわけでありますが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/45
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046・坂村吉正
○坂村政府委員 おっしゃる通り従事分量配当をして参りまする場合には、その従事最というものが非常にむずかしい問題であろうと思います。これはたとえばソ連のコルホーズのように、どういう労働の量とか質とかによって点数まできめてそして賃金を払う、こういうようなものもございまするけれども、なかなかそういうようなことにはいかないだろうと思うのでございまして、これも先ほどから申しましたように非常に親近、近い人たちの集まりでございまして、一緒になって経営していこう、こういうことでございまするから、法人としての経営を育成してうまく持っていくためにどういう配当をするかという問題は、法人の内部の相談で経営をうまく持っていくようにきめていってもらう、こういう筋で指導をすべきじゃないかというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/46
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047・安井吉典
○安井委員 現在農村に非常に大きな負債があるわけですね。自創資金等もずいぶん入っておりますけれども、それも農地が担保というふうな形に実質的になっておるようなわけでありますが、土地出資を進めていくような場合に、今のような、そういう負債つきの出資というふうな形でやらなければなかなか進まないという場面が、これは実は非常に多いのではないかと思うわけです。その点、農地の出資というふうなやり方は、法律の条文では簡単に書けるけれども、現実の農村の中にはそういうケースが多いと思います。その借金を背負った農地の現物出資といいますか、そういうような問題につきましてどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/47
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048・庄野五一郎
○庄野政府委員 自作農創設維持の自作農資金につきまして貸し出す場合には、御指摘のように農地の担保をとる場合もございますし、あるいは人的担保の場合もございまして、必ずしも全部がその上に抵当権等の設定をされておるというふうには理解してないわけでございますが、なお自作農資金等によりまして抵当権がありましても、この問題については、やはり評価の問題としてわれわれは考えていって、評価の場合にどういうふうにこれを評価するか。それからこれが抵当権ということになりました場合に、その負債の処理につきましては、法人と出資する個人の間で、この問題の処理を十分つけておかなければならないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/48
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049・安井吉典
○安井委員 私はこの際こういうことをお聞きいたしたいわけでありますが、ほんとうに真剣に農業の法人化、共同化をお進めになるというふうなお気持がおありなら、そしてまた今日の農村の負債の問題にどう対処するか、それを真剣にお考えになるというお気持がおありなら、一挙両得というところで共同化の出資という方向に進もうとする農地についての借金は、そのための特別な負債整理の資金を出してこれを処理する、政府が責任を持ってすっかり腰を入れた形で処理をする、そういうお考え方をお持ちになっていいのではないかと思うわけですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/49
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050・庄野五一郎
○庄野政府委員 大体今までの扱いといたしまして、自作農資金が高利の一般の民間の負債の肩がわりの資金として使われておるわけでございまして、あらためて自作農資金以外にこういった制度を開始するというような考えはございませんが、いろいろ担保つきの農地の出資といったような問題につきましては法人の経営の運営に支障のないように十分注意し検討して参りたい、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/50
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051・安井吉典
○安井委員 これは簡単に今の御答弁だけでは済まされる問題ではないと思いますが、大きな将来に残る問題として十分御検討を願いたいと思うわけであります。あとの時間の関係もありますので、大体この辺で終わりたいと思いますが、さらにまた保留いたしましたいろいろな問題につきましては後に時間をもしいただければその際に質問いたしたいと思います。
なおもう一つだけ、この農業法人の扱いに関する農林省の通達等につきまして一つ伺っておきたいと思うのでありますが、昭和三十四年ですか、私は当時のいきさつはよくわからないのですが、三十四年に徳島県から農林省に対する農業法人の法的性格についての問い合わせに対しまして、法人が果樹の出資を受けて生産に従事することは農地法に違反するのだから、これを許可することはできないというふうに、きっぱり御返事になっており、税務署もこれを支持して、農業法人を拒否された。ところが三十五年の十月二十五日付の農地局長の通達では、この扱いを農地法の規定に抵触をしないというふうにはっきり断定をされております。一年くらいしかたたないうちに手のひらをひっくり返すように、一方では違法だといって、次は違法じゃないといっている、その御決定があまりにも唐突じゃないかという印象を私は受けるわけであります。当時の経過は知りませんけれども、さらにまたその内要の適否は別といたしまして、その取り扱いという形の中で一つお尋ねをするわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/51
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052・庄野五一郎
○庄野政府委員 いわゆる農業生産法人の取り扱いにつきましては、三十一年の暮れごろから当委員会におきましても非常に問題になり、この農業生産法人の制度的な認め方につきましては、自民党並びに社会党その他この委員会におきましても促進の決議等をいただいた次第でございます。ただその当時におきまして、農業生産法人に現行農地法のままにおきまして農地の収得を認めていくということにつきましては、特に農地法上禁止の規定はないわけでございますが、法人形態によりまする農業経営というものを予想してない段階において農地法が作られている、こういう状態におきまして、農業法人に農地の所有権あるいは使用収益権を認めていくということにつきましては、法人形態を通じまするいわゆる農地法の根本理念でありまする自作農主義に反して、不在地主の発生のおそれがあるということで、現行制度を整備するまでは、農業法人に土地所有権を認めていくということは非常に好ましくない状態である、こういう態度をわれわれはとって参った次第でございます。そういう段階におきまして、先ほど申しますように、当委員会で自民党なり社会党なりから農業法人の制度化の御要望もあり、決議もありまして、三十四国会に農業法人の制度化の立法を出した次第でございますが、不幸にして審議未了あるいは継続審議ということに相なりまして、今日に至ってまだ制度改正の法律が通ってない、こういう段階でございます。当時の状況といたしまして、いわゆる農地法の根本理念に反するようなことの起こる事態を防ぎまする条項の整備をいたしまして、農地法を出した次第でございまするが、その農地法が審議未了になる段階におきまして、片一方、自治体といたしまして、農業法人を認めていく実情の必要が生じたわけでございまして、それで、国会に出しました当時の農業法人の条件あるいは構成要件の限度内において農業法人を認めていくということは、必ずしも農地法が最も根本とする、いわゆる根本的理念に反しない限界にあるだろう、こういうふうに考え、そうして国会に提出いたしました農地法のいわゆる農業法人の構成要件の範囲内にある限りにおいて、農業法人に対しまして三条の許可を与えてもやむを得ない、こういうような通達を出した次第であります。それで当時の状況といたしまして、農業法人といたしましては、農協法による農協、あるいは有限会社それから合資、合名会社、これに限るということと、法人が収得いたします農地法上の権利は、使用貸借と賃賃借による権利に限る、こういうふうに限って一応通達で認めた。これは他方において、それと同じ法案が審議中であった、こういうような状態も勘案して迅速を出した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/52
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053・安井吉典
○安井委員 繰り返しますが、私はその適否とかなんとかということは別として、この書き方は非常におかしいような気がするのです。会期中に法案が議決に至らなかったから通知をする、そして審議未了になった、つまり法律として成立をしなかった、次の国会にこの法律をまた出すんだから、今国会の中で成立していない法律の条文を引用し、それによってこういうことをやれという通達は、私はちょっと例がないのじゃないかというような気がするのです。その適否は別として、この通達の書き方等は非常におかしい。そうなりますと、もう国会なんかどうでもいいので、政府は法案さえお出しになれば、これはいつか国会を通るのだろうから、その通るまでの間はその法案と同じことをやりなさいと言ったら、ここでこの法案が審議未了になったってちっともかまわないということになるわけです。立法府の権能を、一国の国務大臣、農林大臣がおやりになるならともかく、農地局長のお名前でこれを出しておられるわけですね。それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/53
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054・庄野五一郎
○庄野政府委員 当時国会に御審議願っておりまして、審議未了あるいは継続審議になりました法案は、その主たる点は大体ただいま御審議願っている農業生産法人と同じでございますが、その農業生産法人の要件の範囲内においてもっとしぼりまして、構成員の全員が従事する、さっき申しましたように所有権まで認めるというのに対して、使用貸借あるいは賃貸借の限度内、それから株式会社等は問題があるからいけない、こういった幅広い農業法人の制度の中におきまして、現行の農地法でやれる最小限界のところまでを実情に合わせて実施せざるを得なかった、こういうような状態に相なっております。これにつきましては従来から再々ここでも議論があったわけでございますが、そういう方向で農民の必要に応じていく、こういうことで、決して議会軽視とか、そういう問題じゃないのでございまして、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/54
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055・安井吉典
○安井委員 弁解の余地はないと思います。私が特に今ここで申し上げているのは、今度の改正法案の中で、いろいろ限度を広げるというようなお考え方がたくさんあるわけです。しかし限度を広げなくたって、お役所の方でこういうふうに広げた解釈をどんどんなすっておられる。これが今の日本の行政機関と立法機関との実際の姿だろうと思うのです。しかし農地局長はここまでお広げになっておられるけれども、農地局長よりもっとえらい人がいるのですよ。もっと拡張して解釈する人が、地元の農業委員会であり、農民の人たちです。そういうような人たちがボスに牛耳られて、せっかくきめた法律の運用をあくまでも広げていく、自分たちの利益になる方に広げていく、こういう傾向がずっと多いということです。今ある法律の中でさえ私は問題があると思うのです。ところが制限をさらに広げるということは、農地改革の今日までの仕組みを根本的にくつがえすところの一つのきっかけを作っていくことだと思う。そういうようなものをさらに広げていくことは、今度の改正法案の規定がそういうような方向に進める一つのきっかけになっている、私はこのような気がするわけです。法律というものは作ったそのあとから国会の仕事ではなしに役所の仕事になり、そして実際の運営は農業委員会の仕事になるわけです。ですから私どもは法律を作る場合にはきっかりしたワクをはめて乱用の道がないようにやっていく、これが私は立法府の任務だと思うのです。そのような立場で、私どもはこの問題の処理に当たっていかなくてはならないと考えるわけであります。
残余の問題は保留いたしまして、きょうはこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/55
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056・野原正勝
○野原委員長 午後一昨から再開することとし、この際休憩いたします。
午後零時十一分休憩
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午後一時三十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/56
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057・野原正勝
○野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
昨日の決定に基づき、参考人より御意見を伺うことにいたします。
御出席の参考人を御紹介申し上げます。
農政調査委員会事務局長東畑四郎君、農政調査会副会長田辺勝正君、南袋井農業協同組合組合長恩田忠四郎君及び新利根開拓農業協同組合組合長上野満君、以上四名の参考人に御出席をいただいております。
参考人各位には御多川中当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
それでは参考人より御意見を御開陳願うことにいたします。
まず東畑四郎君からお願いいたします。東畑参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/57
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058・東畑四郎
○東畑参考人 それでは私から、両法案につきまして私の意見を述べたいと思います。
今回の農地法の改正、農業協同組合法の改正を通覧いたしまして感じますることは、最近における所有と経営の問題だろうと存じます。農地改革当時所有と経営というものをいろいろ審議の結果、これを一致させる、いわゆる所有者即経営者、これが最も耕作権も安定し、またその当時の農地制度として最も健全な行き方であるという農地法が通ったのでございます。その後の経済の変化、諸般の事情によりまして、経営の発展あるいは技術の進歩というもので、零細な所有をより大きな経営規模へ発展させることが日本農業あるいは農民の生活を向上するという一つの条件のもとに考えまする場合に、今回改正されました案は私から申すまでもなく、三つの問題があるように存じます。
その一つが農地法の改正にございますような、従来平均三町歩、北海道は十二町歩というような上限の制限がございましたものを緩和しようという一つの考え方でございます。これは振り返りますと、農地改革を意図しました当時においても、経営面積の上限を制限をするということはやめたらいいじゃないかという考え方が強くございました。その当時の農業事情からいいまして、零細規模農家が多うございました。単に経営面積だけを拡充するということはどうかというような意見、あるいはその当時の技術水準からいいまして、家族自作農主義というものを堅持いたします場合に、まず四町歩程度は自家労働で経営する一つの限界であるというようなことから上限が置かれたと思うのでございます。今日技術が相当変わり、機械力が入りました場合において、こういう狭い経営規模を堅持することは、むしろ農業発展のマイナスになるのではないか。家族自作農主義という考え方の基幹さえくずさなければ、経営規模の発展というものを許した方が、むしろ農民の生活水準を上げるゆえんではないか。もちろんこれがために農民相互の間の話し合いというものは言うまでもないことでありまして、今日の条件においてすでに零細規模農家においては兼業という形において農業から離農をしていくという条件が非常に多うございます。従って一方において経営を縮小するという動きもあり、あるいはまた離農をするという動きがある、同時に農業だけで所得を上げていこうという農家もございますので、そういう農家のために上限を緩和していくという法案の改正につまきしては、私は異議はございませんし、むしろ賛成でございます。
第二の点は、これもたびたび問題になっておりますいわゆる農業生産法人、今回の改正におきましては農業生産法人の中に四種類あるようでございます。一部は農業協同組合法に基づく農事組合法人という形になっております。あるいはこれが非常に多いのだろうと思いますが、やはり経営発展という面からいって、協業という問題が最も零細農家の上における経営規模拡大の一つの考え方として当然農民の意欲として発展をしていくし、またすでにいろいろな形のものが考えられておりますが、何らか一つの法人という形においてこれを認めていくことは私としては積極的に賛成をいたすのであります。
その形態というものが実ははなはだむずかしい。資本と経営というものが完全に分離するというような形は日本の農業の現実においてはとうてい考えられないのでございまして、そうなりますとまず考えられるのは、やはり農業協同組合的な農民自体の法人というものが主になるだろうと思います。しかし現実に政府の案では有限会社あるいは合名会社、合資会社という株式会社以外の会社形態というものを認めておるわけであります。これをどうするかという問題はあげて農民の自主的な判断にまかす以外にない。ただ政府案というものは非常によく、むしろ私から見ますと憶病なほど制限しておる。一つは土地の面から構成員というものを制限をしておる。もう一方は農業従事者の量的、質的な面から制限をしておる。ことに協同組合経営という場合においては、員外者利用という協同組合の原則からまた制限を加えておる。こいうう形において協同組合的精神というものと、農業従事者あるいは農業自体を経営する能力のある者がその団体の主導権を握るということについて実は非常に慎重な考慮を加えておられるようであります。かりに会社形態で二人とか三人というものが共同で農業経営をやります場合においては、形は会社でありますが、実質は家族自作農経営の規模拡大の一つの形式だというようにとらざるを得ない、決して資本と経営が完全に分離したような形とは思えないのであります。協同組合経営と会社経営というものはそう実質的な変化はないと思います。ただ問題は、土地を出資した場合における地価評価ということが問題であって、これはなかなかむずかしい問題でございます。もちろん農業従事者が主導権を持っておりますので、労働の評価、土地収益の配当をどう配分するかということは、あげてその団体を構成する会員内あるいは従事員の主専権できまるものだと思いますが、そのときにおける土地評価というものは実はなかなかむずかしい問題であります。農業における土地価格というものは、地価というものではなかなかきまらない、結局収益還元額というものをどの程度に見るかということで、これはなかなかむずかしい問題でございますが、そういう土地評価基準というものは私勉強しましたけれどもこの法案からはなかなかうかがえないのです。その土地収益に対する考え方、労働評価という問題が今後の運営上非常にむずかしいと思います。ただ農業生産法人を作る場合に、労働貨金部分をあまりに優先的に考えますことは、むしろある段階においては土地を出資して生産法人を作るということの障害になる、ある段階においては土地を出資した人と労働を提供した人との間において、やはり土地出資というものに対してある程度の考慮をいたしませんと農業生産法人の発展はなかなかむずかしいのじゃないかというように実は考えております。
第三番目に大きな問題としましては、農業協同組合の信託事業という新しい制度が考えられております。この問題も、やはり単なる土地を信託して離農するということでなしに、同時にそれが残れる農民の土地を中心とした合理化といいますか構造改革といいますか、そういう方面に寄与するというものがねらいでなければならぬし、法案にもそれをうたっておるわけであります。信託業というものは、他人の重要な財産を預かるわけでありますから、最も信頼の置けるものでなければならぬ、同時にこれは信託事業という一つの経済事業を営むのでありますから、経済団体であることが望ましい、こういうことになりますと、その主体というものは、経済事業である限りにおいては一番農民に密着している農業協同組合ということにならざるを得ない、こういうふうに考えるのでございます。これについては、信託規定その他の監督を厳重にする。経済団体でありますから、他の事業で解散をしたという場合においてもこれを守ってやるということが必要であると思います。問題は貸付信託という場合が起こり得ることだと思いますが、やはりここで問題になりますのは、農地改革後今日における土地所有というものと農地改革前の土地町有というものは、およそ本質的に条件が異なってきたのではないかと私は思う。農民的所有というものが支配しております今日力において、過去における不在地主制というものはかりに形式的に同じであっても本質的にはむしろ違うものである、こういうふうに実は考えます。それを踏み切るかということはなかなかむずかしい問題でありますが、今日すでに農民的土地所有というものが支配をし、しかも金納小作制というものが厳重に統制をせられておる限りにおいては、過去のいわゆる農地改革前における土地所有と本質的に異なるものがある、こういう意味において土地の流動性をつける手がかりとして、一応信託事業というものの制度を借りて土地の流動化をしておるということも、この際完全ではございませんが一つの行き方である。またその場合に、これを地代収入として土地を充てるということになりますと非常に微々たる数字になるのでありますが、農業においては土地所有ということが一つの安定剤であり、心理的魅力である、土地を持っておって離農するということは、いざという場合にその土地を持っているということが単なる地代を取るということ以上に心理的魅力であるということは今の日本の現段階においては無視し得ない、そういう一つの気持で農業を離脱した人がなお所有権を持っておれるという制度を開くこと自体は、過去の農地改革前における地主制復活と本質的に異なるものである。近代的土地所有における不作地主制というものと過去の農地改革前における非常な高い地代収得を目的とした不在地主制とは本質的に異なるものであり、むしろ土地の流動化を促進する方が、今日の段階においては必要である。これを地代収得と考えますと、貸付信託等においては問題にならない。にもかかわらず、なおかつこういう形において土地を保有しておきたいという農民的魅力というものにこれが適用できれば、この制度も若干の効果を生むであろう、こういうように実は考えます。
総じて結論的に申しますと、農業生地法人その他においても、過去の農地改革から続きました農地法というものを堅持しつつ、新しい経営形態に何とかして大規模経営と零細所有経営との一つの妥協を見つけ出そうという努力を制度改革にもたらしたという意味において、今日、現実の農民の中にはもっと進歩的なものも、もっと違った形のものも出ておるようでございますが、まず最も慎重を期すべき制度としては、こういう案に私は賛成をいたす次第でございます。
簡単でございますが、私の意見を申し上げました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/58
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059・野原正勝
○野原委員長 次いで田辺参考人にお願いいたします。農政調査会副会長田辺勝正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/59
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060・田辺勝正
○田辺参考人 日本の農業の最近の変化を考えてみますると、農地改革を断行いたしまして、日本の農業生産の増加でありますとか、農民の生活の向上というものに相当の効果があったということは、何人も認むるところであろうと私は思うのであります。しかるにもかかわらず、その後農地改革後におけるところの日本の農業の内外をめぐる諸条件の変化というものに非常に著しいものがあったのであります。その中で、特にわれわれ考えなければいかぬことは、日本の経済のいわゆる成長が非常にはなはだしかった。特に昭和三十年以前の日本の経済の発展を見まするというと、大体四%程度でありましたものが、三十年以後になりましては、これが倍の八%以上にも上がっておる。しかもそれは平均でありますけれども、産業別に見ますると、農業のの方は非常に低くて、その他の鉱工業の方が非常に高い水準を示しておるというような結果になったのであります。このことは、言うまでもなく低い方から高い方へ農村の人口が流れていく、労働力が流れていく、あるいは資本がそっちの力に流れていくということを意味するのでありまして、農家で実際に働くところのいわゆる基幹労力というものが非常に弱体化して参りますし、数量においてこれが非常に減少したということは、いまだかつて日本の農村において見ざるところの大減少であったのであります。しかも最近において、特にその傾向がはなはだしいということは注目すべきことでありまして、このままほうっておきますというと、日本の農業経営は、いわゆる老人の経営であり、婦人の経営でありまして、農業経営は弱体化していかざるを得ないと思うのであります。産業の、いわゆる経済の成長は、結局働く者の所得を増加するということでありますから、生活が一般に向上いたしますというと、資本構造というものが非常に違って参りまして、従来のような穀菽農業だけをやっておるような農業は使命を果たせない。現状のままならば農業は行き詰まらざるを得ないというような立場にも追い込まれておると考えざるを得ないのであります。また貿易の自由化というものが、世界的ないろいろな観点から、国際的にどうしても振興をしなければならぬような立場になってきたのでありまするが、もしも日本の農業におきまして農産物が自由化の波にあおられるといたしまするならば、現在の構造下におきましては、非常に日本の農業が打撃を受けねばならぬというような場合にも立ち至っておるのであります。また日本の農業は、その後非常に農業の技術も発展をいたしました。特に農業機械、農薬というようなものの発展は非常に注目すべきものがあったのでありますが、農業経営の構造というものがこれとマッチしておりませんために、技術は発達いたしましたけれども、日本の農業の現在は、過剰投資で資本の効率が非常に悪くなった、こういうようなことになって参ったのであります。
以上のような諸条件によって、これをそのままにほうっておきますると、日本の農業は、生産は減少し、所得も減ずるというようなまことに大へんなところになって、これがいわゆる農業は曲がりかどに立っておると言われるゆえんでありまするから、ここに農業政策の大変換を一つやらなければならぬということになったことは、これは当然でありまするが、その政策の考え方につきましては、各人によって違うのであります。また政党によってもおのおの違うのでありまするが、ここにいわゆる農業経営構造という立場のみから見た現政府の考えておらるる点をあげてみますると、これはいわゆる基本法にも雷いてある通り、自立経営を推進しまして、協業を助長するというのがこの経済構造の根幹をなしておるように私は考えるのであります。
しからば自立経営とは一体何であるかということになりますると、これは他産業と同様な収益というものを個人経営においてもらたすような経営である、そして家族労働を完全に減少さすような経営であり、しかもその技術水準が平均以上のものであるというような条件を具備しておるものが自立経営農家でありまして、その面積を特に考えてみますると、農林省の案によりますると大体一町以上一町五反、一町五反以上二町五反という程度のものが自立経営農家である、こういうふうに考えておるように思うのであります。こういうものを推進しようというのがこの政策の基本になっております。
それから一方、協業につきましては、これはまだその内容の範囲がはっきりわかりませんが、これは察するところ、現在行なわれておりまするところの協定経営でありますとか、あるいは農業機具及び施設の共同利用でありますとか、あるいは共同作業、共同経営、こういうような部類がこの範疇に属するのでありまして、こういうものを奨励しよう、こういうように言うておるのであります。この農地法の改正及び農業協同組合法の改正というものは、要するに以上の目的を達成せんがための一の法制改正であるということを考えざるを得ないのであります。
そこで、この法制の内容を考えてみますると、まず自立経営農家の樹立につきましてはどういうことを規定しておるかと申しますると、第一に経営規模の規定を設けておるのであります。これは経営規模を広げるということでありまして、従来は、先ほども東畑さんからお話がありました通り、三町歩が大体内地でいって限度でありまして、その家族労働でもって効率的に農業経営を行ない得る場合には、特にそれは許可するという許可標準になっておったのであります。それがこのたびの改正によりまして、今度は主として自家労力によって効率的な経営を行なう場合におきましてはこれは許可する、こういうふうに変わって参ったのでありますが、これはまことにもっともな規定でありまして、現在のように農業技術及び農業機械というものがだんだん発展して参りますと、個人でも相当大きな農業経営を行ない得る。ことにアメリカあたりでは、個人経営におきましても機械を利用することによりまして、わずかの雇用人で七、八十町歩も作っておるという例もあるのでありますから、事実はそういうことができるかどうかは別として、こういう道を開く。現在の技術をできるだけ取り入れるために経営の規模を大きくしたということは当然のことでありまして まことに時宜を得た規定であると思うのであります。
次に、この規定を見ますと自立経営農家を促進する一種の規定であります。これも、先ほどお話がありましたが、いわゆる信託行為というものを協同組合に認めまして、そして土地の所有権の処分でありますとか、あるいは貸付等によって信託を受けた土地というものは、なるべく処分する場合においては自立経営農家になり得るようなものにこの所有権なり何なりを移す。こういう操作をやることによりましてこの自立経営農家の促進をはかろうということが、この農地法改正の自立経営農家に対する規定であろうかと思うのであります。しからばこの自立経営農家について実は問題があるのではないだろうか。一体どういう点が問題になるかと申しますと、これには相当の問題がひそんでいるように考えられるのであります。第一に、自立経営農家が、政府で今度考えておるように、この予定通りに一体進むものであるかどうかという点がまず第一に問題になると私は思うのであります。現在日本の農業人口及び、特に就業人口が非常に減じておりますけれども、一方農家戸数から申しますとほとんど減っていないのであります。しかも農林省なりあるいは企画庁の推定によりまする昭和四十二年の戸数というものと、戦前の昭和十五年の戸数というものを比べますとかえって増加いたしまして、三十六万ばかりの戸数がふえておるという形になるのであります。そうしますると、大体これは戦前よりも現在の戸数がふえるというのですから、自立経営農家がはたして予定通りできるかどうかということが一つの大きな問題になってくると思うのであります。それから農地の移動面積というものが少ない。現在、日本で農地の移動面積は三十四年の統計によりますと六万五千町歩、その中で、小作地の売買が約一万五千町歩でありますから、残りの大体五万町歩というものが自作地の売買であるのであります。この五万町歩の農地がどういう階層別で移っておるかと申しますと、大体富農といいますか、ここでいう自立経営農家等の方へ移っていくのが半分以上、大体これが六割といたしますと三万町歩くらいであります。残りの二万町歩が過小農にいく面積ですが、これが自立経営農家を促進するために役立ち得る面積になるのでありますが、一体この面積をどう移すのか、強制力がないのですから。信託の方へ持っていきますと信託の方でどうしなさい、こうしなさいということでうまく処理できますが、なかなかこれは一ぺんに信託へ持っていくということはないと思いますし、これは自立経営を予想通り作ることはなかなか困難であろうと思います。またこれに対する資金網ができておるかと申しますと、大体現在の自作農創設資金は二百億でありますが、これでは無理に動かすというふうにして融通する金には非常に足りない。社会党が計算したところによりますと、これをやるには三兆円の金が要る。十年間三千億円の金を要する。これに対しまして二百億の金ではとうてい問題にならぬ。
それからもう一つは、マイナスの条件であるところの現在の均分相続ということが一体どうなるか。均分相続をそのままにしておきますれば、自立経営農家であってもこれは割れていくのではないか、減っていくのではないかということが考えられるのでありまして、これらの点を総合して参りますと、経営の規模をふやすと申しましてもなかなか容易なことではないと思うのであります。
それからもう一つ性格の問題でありますが、町立経営農家がはたして農業生産の増加と所得の増加に役立つかどうかという問題が一つ出てくると思います。現在の農地価格というものは、先ほど東畑さんからお話がありましたように非常に荷いのであります。不動産協会で調べたところによりますと、水田反当が十七万円、全国農業会議所か調べたところでは反当二十万円、こういうことになって参りますと、これに対する利子が五分としまして普通一万円、元金償還二十年としまして償却分が二万円、そうすると毎年負担分として二万円の負担をしなければならぬのですか、これは現在の統制価格の二十倍の価格であります。この金というものは決して収益価格ではないのでありまして、こういう高い価格で一体農地を買ってそして自立経営を行なおうとすれば、これによってプラス的に年産が増加するように働くかどうか。この点が私は非常に問題になると思います。でありますからこの点についてもよく考慮を要するということを考えなければいかぬと思います。
それから経営規模が大体二町五反ということでありますが、現在の農業技術、特に農業機械の発展というものを農業経営規模というものを考えてみます場合に、トラクター一馬力につきまして大体一町ということですね。そうしますと五馬力のハンド・トラクターを動かすには五町歩ないし二十町歩の経営面積がなければいかぬ。そういうことを考えてみました場合に、日本の自立経営におきまして、この発達した農業技術を十分に吸収し、これを発揮し得るかどうかということに対しても、私は実は疑問があると思うのであります。そういうようなことで、この問題につきましてはいろいろな見解があろうと思いますけれども、経営面積の制限をはずしまして、力に応じて経常を増加するような形に直したということは、何を申しましても現在の農政の一歩を進めたものであるということを私はつくづく思うのであります。ただこれを運用する場合におきましてどれだけの効果が上がるか知りませんが、よほど慎重な態度をとりませんといろいろな方へこのことが影響を及ぼすというおそれがあるということを考えざるを得ないのであります。
その次に信託でありますか、この信託行為につきましては、処分信託いわゆる売買信託ということになりますと、たとえば農家がブラジルに移民をするという場合に、農地価格がたたかれてどうもいかぬから希望者に向く売ってくれという場合には、まことに私はいい制度であると考えるのであります。しかしこれを運用するにおいて、ここに持ってきますとなかなか手続がめんどうになってくるおそれがありますし、同時に、自分の土地でないものでありますから信託行為に乗りますとどうしても安く買われる、手数料も取られるということになりますと、そういうことが一般に考えられますとなかなか信託に持ってきて処分ということをやらない、持ってこない。こういうおそれもありますから、信託を行なって処分をする場合におきましては、よほど親切ということと公平な便宜な扱いをやっていかないと効果がないのではないかと思います。それから貸付信託につきましては、現在の農地法によりますると、いわゆる小作権というものは非常に強度に強化されておるのであります。それゆえに一たび農地を貸し付けますと、もうこれはなかなか自分のもとに戻ってこない。もし返還を要求すれば、いろいろな要求をされるというような立場に立たざるを得ないのであります。親が病気で数年間仕事ができぬというような場合、あるいは主人が死んで子供は学校へ行っておるから、その間どうも労力が足らぬという場合でも、この農地を小作に出さないで自分で経営するということによりまして、非常に粗放的な経営というものが現在行なわれておる。その例が三重県地方に非常に多いのでありますが、こういうようなものが信託によりまして非常に防止することができるということを考えまする場合に、これはまことにいい考えであるということを考えざるを得ないのであります。
しかしながらこれについても脱法行為が行なわれるおそれがあるということを考えざるを得ないのであります。信託行為によりまして機知を貸付信託をいたしますると、その農地の所有権というものは農業協同組合に移って参りますために、現行法では村内の者は平均一町歩以内の小作地を持つことができる、不在地主は一切小作地を持つことができないことになっておりますが、これを貸付信託に出しますと、その農地は農協の所有となり小作地でなくなりますので、これによりまして一方においては不在地主ができたりあるいは小作地保有制限以上の小作地を持つ者ができるというようなおそれがないとは言えません。ことに土地価格が暴騰しておるときにおきましては、その土地価格の暴騰を目的といたしましてそういう脱法行為が行なわれるおそれが多分にあるのではないかということを考えるのでありまするが、この点につきましては運用上非常に注意を要するということにならざるを得ないのじゃないかと思うのであります。
しかしながらこの小作地は普通の小作地とは著しく内容を興にしております。制度上から申しますれば、所有権というものは農業協同組合に移っておるのでありますから、自分が小作に出して小作人に対して小作料の上げ下げであるとかあるいはその他の小作条件の決定にタッチするわけにはいかないのであります。これが決定は公的機関であるところの協同組合が行なうのでありますから、従来の個人的な地主と小作人との関係とは非常に異なるのであります。こういうような問題点はありますけれども、私は先ほど言ったように、経営規模を拡大して技術を入れる幅を大きくした。それからその信託によりましても、これはいろいろな意味におきまして今までの農業経営をうまく利用すれば、これを行使し得るというようないろいろな関係がありまするので、運用のいかんによりましてうまくやっていけるという前提でこれは非常にいいことだ、そう私は考えているのであります。
それからその次の農業協同組合に対する規定はどうかと申しますると、これは先ほど申しましたようにいわゆる協同組合法の改正によりまして、いわゆる農業生産組合というものを農地法でもって認める、その一つがいわゆる農業協同組合法の中に新たに設定せられるところのいわゆる農事法人、農事組合というようなものができるわけでありまして、その他は合名会社、合資会社、有限会社、こういうことになっておりまするが、しかしこれは一定の条件がついておるのでありまして、これはあくまでも法人の行なう事業でありますとか、あるいは構成員の資格でありますとか、あるいは経営面積あるいは議決権というようなことに対して制限を加え、いわゆる一種の自作農的な経営、すなわち自分が働いて自分が利益を受けるのだ、こういう思想でもってこの協同和合法の規定というものができておるように考えるのであります。また設立に対しましてもきわめて簡単にこれは届出でできるような形になってみたり、あるいは運用する上におきましてもいろいろ手続の簡素化をいたしますとか、あるいはいろいろなその他の監査、監督につきましても最小限度にとどめておるというような規定から申しますると、これは私は、少なくとも現在の情勢では時宜を得た一つの法制であるということを考えなければならぬと思うのであります。
この農業の法人化ということにつきましては、これは最も新しい政策の大転換の中心をなすものでありまして、しかも農民がきわめてこれを要望しておるということをわれわれは忘れてはならぬと思うのであります。農林省が昨年の八月現在でお調べになったところによりますと、日本の農業経営の数は驚くなかれ現在全国で二千二百四十三にも及んでおるのであります。その中で全面的な共同経堂が二百六十九、部分的共同経営がその残りということで、部分的共同経営が非常に多いのであります。しかも、この二千何ぼというものがありますが、その上へ打ってきて、調査はせられておりませんが、その他に協定経営、農業機械その他施設の共同利用、共同作業といったものが相当あると考えられます場合に、この農業の共同化というものは非常に多くなってきた。しかも、この設立年次を見ますると、全面共同経営におきましては昭和二十七年以前にできたものはわずかに十二、四・五%、それから部分的共同経堂は二・二%にすぎず、三十四年以後にできたものが、いずれも九三%ということになりますと、この農業のいわゆる共同化というものは、きわめて最近に、この一、二年の間にこつ然としてこういう数が増加したということを考えてみます場合に、いかに農民がこの農業の共同化に対しまして希望を持っておるかということをわれわれは考えざるを得ないのであります。しかるに政府におきましては、もう去年でできると思ったのが、まだ法案が通らないで延び延びになっておるために、現在存在しておる共同経営和合がいろいろの点で不便を感じておるということが事実であるのであります。金を借りる点におきましても、法人化ができてないために信用度が薄く、資金の融通を受けることがむつかしく、それから事業を行なう上におきましても非常にめんどうである。税金の関係もありますし、その他農地の所有もできないということで非常に不便を感じておるということが事実であります。しからば現在共同経営団体中、どれくらいが法人となっておるかと申しますと、全面的共同経営において一五%、部分的共同経営はわずかに五・六%にすぎないのであります。しかも、これらの組合に対しましては何らの規制もないのでありまするから、組合員の現在におきまする利害関係というものが非常におそれられるおそれが多分にあるし、いろいろな点に不便を感じておるのでありまするから、どうしてもこの協同組合法の制度化ということは、できるだけ早くこれをやる必要があるのではないかというように私は考えるのであります。
以上をもちまして、私は、いわゆる自立経営という点におきましては先ほど言ったようにこれは十分でない、こういう考え方が不徹底といえば不徹底でありますけれども、しかしながら経営規模を拡大して、新しい技術を取り入れ、幅を広めたという点においてこの法案は一歩前進しておると言わねばなりません。
それから信託行為につきましては、先ほど申しましたように現在の農地法関係の欠点を調整するという建前におきまして、これは非常に役立つのではないかと思います。
それから生産共同経営の共同化の問題につきましては、これはいろいろこまかい規定には問題はありましょうが、できるだけ早くして、これらを全般的に通して制度化するということにならぬと、農民の世論に反することになるのじゃないかということを私は考える次第であります。
以上が私の大体の考えであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/60
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061・野原正勝
○野原委員長 続いて南袋井農業協同組合組合長恩田忠四郎君にお願いいたします。恩田参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/61
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062・恩田忠四郎
○恩田参考人 私が申し上げるまでもなく、農地法は実施されましてすでに十有余年を経ておるのであります。この間に日本の経済は時に起伏がありましても順次拡大成長を遂げてきておったのでありまして、ことにここ両三年の成長度というものは全く著しいものがあるのであります。ところが不幸に
いたしまして農業方面におきましては、そういう段階についていけないというのが現状であります。これが農業が曲がりかどにきたとかあるいは壁にぶつかっておるということでありまして、これは一面におきましては、私考えまするに、要するに経営面積に一つの限度がある。農林省は当初におきましてはいわゆる自立農家の経営面積を一町五反とかなんとか言っておりましたが、しかし経済の伸展に伴いまして、今日の情勢におきましてはなかなかその程度ではとうてい所期の目的は達成せられぬのであります。かりにこれを米にとってみますれば、われわれの地帯におきましても、少なくとも専業農家として百姓だけで水稲をやっていくということになりますれば、三町五反ないし四町くらいの経営をしなくては、ほかの産業と並んで歩調を合わしていくことはできないじゃないかというような意見も非常に多いのであります。さような観点で、今回の農地法の改正におきまして、いわゆる経営限度の拡大をはかったということは、むしろ当然のことでありまして、そうなくては自立農家の育成も全般的な農業の伸展もできないのではないかというような感じを打っておる次第であります。
それから農業協同組合法の改正の問題でありますが、その一つは農事組合法人の制度であります。これは現在全国的にそれぞれ協業とかあるいは共同とか、各分野におきまして農業の経営がされておる分野が出てきておるのであります。しかし、これをいろいろな面から見ますると、あるいは課税の問題、あるいはその他の問題で非常なつっかかりができ、農地法に抵触するというような関係もございまして、そういう線から考えますと、農事組合法人を制度の上ではっきり認めて、むしろこれを育成していくということに進んで参りたいと思うのであります。実際におきましてはなお任意組合的なもので、たとえば加工施設を設けるというようなことも一つの仕事のうちになっておりますが、製茶の工場等におきましては任意組合、申し合わせの組合でやっておるのであります。しかし一たび所得税の問題になりますと、たびたび税務署といざこざが起こるというような事態もありますので、こういう点を考えますれば、むしろこの際農事組合法人を認めていきたいということをわれわれは念願しておったのであります。この農事組合法人の問題におきましては、むろん漸進的な問題もあろうと思いますが、大局的にはすでにそこへいっておるというような考えが持たれるのであります。
それから第二の問題は土地の信託関係でございます。この問題につきましては、先ほど来参考人の方からお話があったようなわけでありまして、実際今の状況が、たとえば農業構造の改善におきましても、これをスムーズに進捗して参りますには、やはりある程度農地の交換分合というような問題も起こって参りましょうし、また二面におきましては兼業農家のわずかの土地が、しかもその間に介在をしておる。構造改善におきましても土地改良が四四%とかいわれておりまして、これが負担にたえ得られないというような問題もございましょうし、そういうような場合にこの制度で参りますれば、いわゆる貸付の信託もでき、あるいは売買の信託もできる、こういうことでありますれば、構造改善の事業推進の上におきましても順調に進んでいくのではないか。ことにお互い農村におきます農家といたしますれば、一つの考え方といたしましては、財産の保全にはやはり土地というものに対する執着が非常に多かったのであります。貯金をいたしましてもその窮極は土地を買う、こういう点があったのでありまして、そういう点も考慮いたしますれば、いわゆる貸付信託によってそれも一応満足をさせてやる。もとよりこれは窮極の進め方ではないかもしれませんが、途中の一段階といたしますればそういうようにやる。また生活様式の変化によりまして、あるいは都会へ出て仕事をしなくてはならぬ。また教育の面等でもそういう問題も起こって参りました場合に、これを十分円滑に進展をさせる上におきましては、少なくとも信託のような制度が設けられるということが現在の所有者におきましても、また借りる側におきましても工合がいいじゃないかというような意味合いにおきまして、この制度につきましても、私は賛成を申し上げたいと思うわけであります。
なお、こまかい点でありますが、農業協同組合のその他の事業運営の整備の問題で一言触れてみたいと思うのでありますが、員外利用の問題が盛られているようであります。これは従来とてもわれわれといたしますれば、農協法におけるいわゆる五%の線ということにつきましては、実際の面から必要度をいま少しく拡大をされる、あるいは市町村等に対する資金の融通等も現在の状況におきまして市町村の財政からいいますと、農協が莫大な資金を持っていながらこれに対する融資ができないということの不便も感じておったのでありまして、また最近のように共同会社あるいは合名会社、農業経営のそういうような分野も順次できてくるといたしますれば、そういうようなことに対してはやはり拡大をしていく必要があろう、かように考えるわけでございます。
それから組合員の選挙の問題でありますが、これも従来は総会におきまする組合員の出席の委任につきましては、一人一票ということになっておったのでありまして、実際においてわれわれ単位農協といたしまして総会を成立させますのにはいろいろな方法を講じております。あるいは弁当を出し、あるいは余興をやるというようなことでありますが、しかし根本的には、少なくとも組合員は年に一回ぐらいは総会に出席して、組合事業の運営についてお互いに意見の交換をし、検討をしていくことは当然でありますが、しかしなかなか多い組合員のうちにはそこまでいかない分野もあるのであります。ことさら一人の委任によりましては総会の成立に非常な心配をしていく、ことに委任によっては選挙権が持てないというような点を考えますると、どうしても四年に一回改選期には何と申しましても組合員の少なくとも実人員の半数の出席を求めなくてはならない、こういうような関係もあります。そういう線から考えますれば、今回の改正におきまして四人の代理が出る、しかもその代理によって選挙権の行使もできるということはまことにけっこうなことではないかと思うのであります。
それから農協の出資に対する配当の問題でありますが、この点につきましては、経済の伸展に伴いまして、臨時収入等の問題もございますが、五分の配当制限ということはあまりにも低過ぎやしないか。ことに農協の出資は証券市場へ出して、そうして売買をされる、それの値ざやによって利益を得るというようなことではございません。従って増資等におきましても、自己資本の増加のために非常な苦しみをして増資等を計画をいたしましても、いつも壁に突き出たるのは配当制限の問題でありまして、少なくとも現在の預金以上の配当くらいのものはぜひ確保する。もとより出資そのものは組合の施設の拡充なり建設なりの資金でありまして、組合員はそれを利用いたしまして自分の出資の使命、目的を達するのでありますが、しかし経済的なベースということもやはり考えなくてはならぬと思うのでありまして、そういう点から考えますれば、ここで配当制限について一つの拡大をされた、しかもこれは最高限度の決定でありまして、それぞれの組合の成績によりまして、適当にその範囲で調整ができるといたしますれば、八分見当によって制限を緩和するというようなことにつきましては、私といたしましては賛成を申し上げたいと思うのであります。
それから法人税法の関係もございますようでありますが、もとより農事組合法人につきましては、これは設立の趣旨から参りましても特別の法人税によってやっていただくということは当然のことでありまして、これを関係条項として取り入れられましたことにつきましてもまことにけっこうなことと思うのであります。
かような意味合いで、農地法、農協法の改正につきましては、私ども現地といたしますれば、この趣旨に賛成をいたしたい、かように考えておるわけで、もとよりつぶさに内容を検討いたしますれば、それぞれの多少の問題もあるかもしれません。しかし今日の情勢によりましてあまり遷延をいたしておりますれば、やはりただ時代に立ちおくれるだけでありまして、むしろそういうような意味合いで、私は今回の改正案そのものは一歩前進の意味で賛意を表したい、かように考える次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/62
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063・野原正勝
○野原委員長 次いで、新利根開拓農業協同組合組合長上野満君にお願いをいたします。上野参考人。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/63
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064・上野満
○上野参考人 私は終戦以来十五年にわたって共同化による農業の近代化を進めた経営者の立場で、意見を述べさしていただきたいと思います。
私は、人口が多くて土地の狭い日本としては、一戸当たりの保有面積の制限もまたやむを得ないだろう、こういう考えを前提として経営を考えております。しかしそうであった場合、今日の文明時代に、日本のような小農が文明の進歩発達に伴って生活を向上させ得るようにするためには、少なくとも農家の収入をこれまでの二倍ないし三倍にする必要がある。しかし一戸当たりの経営面積の拡大ができないとするなら、そのためには徹底的に経営の合理化をはかる以外にないんじゃないか、こういうことでございます。私はこれまでの経験によりまして、日本のような小さな農家でも、共同化することによって経営の合理化、近代化が可能である、合理化し近代化すれば生産は少なくとも倍ないし三倍にすることすらできるということを、ある程度経験をもって申し上げることができるのであります。ただ経営の合理化が行なわれるためには、農地の集団化あるいは土地改良あるいは経営規模の拡大というものが絶対的な条件であり、同時に在来の経営では考えられなかったような莫大な施設資金が要のるでございます。その意味において一日も早くそうした経営の合理化ないし近代化ができるための基礎づけとなるように、農地法ないし農協法の改正を一日も早くお願いいたしたい、そうして経営の合理化、近代化の道を開いてほしい、こういうふうに考えるわけでございます。
それで先ほど申し上げました経営を合理化することによって日本の農業に希望が持てる根拠について、簡単に申し上げたいと存じます。
私は、人口が多くて土地が狭いのに、それなら日本の農地は十分に土地利用が行なわれているかというと、実は土地の利用率は非常に低い。土地が狭い狭いと言っておりながら日本の水田の大部分というものが単作であるというのはおかしいんじゃないのか、あるいは未墾地が残されているというのはおかしいんじゃないのか、だから経営を合理化して土地利用率を高めただけでも収入はふえるはずだ。あるいは人口が多くて土地が狭いなら日本の農家はひまがあって仕方がないかというと、一戸当たり一町歩足らずの耕地を耕やすのに日本の農家は忙しくて裏作もできない。たくさんの未墾地をかかえながら、未墾地が現在そのまま残されておる。実に矛盾きわまる話であって、そういう矛盾がそのまま今日まで指摘もされずきていること自体に、私は長い間非常に疑問を持っておったのでございます。先ほど東畑先生からお話がありましたように、しかし今日は昔と違って技術がうんと発達をしておりますし、いい機械もできておるわけでございます。それで実際に機械化をすることによって、労力は昔の三分の一、五分の一に減らすことが文字通りできるのでございます。経営を合理化し近代化することによって、余った労力で土地の利用率を高め、収入を文字通り二倍、三階にするということも事実できるのでございます。これは私らの経営を見ていただいて、それだけでもわかっていただけると思うのでございます。ただそういうことが間違いがないのに、今日までそういう経営がなかなか進まなかった、あるいはわれわれが過去十五年の間もうわかり切っておることが遅々として進まず、いろいろな難関を越えながらようやく今日までかかってそうした条件を整備することができたというのは、結局日本にそういうものをやろうとする場合の根拠が与えられていない、あるいは道が開かれていない、こういうことでございます。人口が多くて土地が狭いのだから、これまでの自作農農地法の基本的な考え方をそのまま肯定するといたしますと、土地を制限しあくまでも自作農主義でいく限り、その自作農を守るためには経営の共同化ということを当然推進すべきじゃないか。
いま一つの理由は、先ほどもお話がございましたが、農地価格が非常に高い。かりに三町歩の土地保有を認めるにいたしましても、現在の一町歩平均の農家がさらに二町歩の土地を拡大するというようなことが実際できるのか、資金、資本の画からいってもおそらくはとんど不可能に近いと思うのです。それで耕地面積がかりに少なくてもいいのだ、ただそういう人が土地を持ち寄ることによって経営規模の拡大をはかる道を開いていかなければいけない。さらに私は、これまで日本の農家の平均耕地面積を一町歩ないし二町歩として、せめて五町歩ないし十町歩まで拡大したら経営の近代化ができるかと思って過去十五年間やって参りました。ところが五町歩や十町歩程度ではほんとうの意味の経営の合理化はできない。あるいは五戸ぐらいと推定して、五戸の労力を五人といたしますと、五、六人程度の労力の組み合わせではほんとうの意味の経営の合理化はできない。過去十五年の経験の結論としてそういう考え方に到達いたしました。
実は本年度から部落単位に拡大いたしまして、経営規模は平坦地では少なくとも二十町歩以上、経営の組織化のための人の構成は少なくとも十人以上でなければ、われわれの意図するような農家経営はできないという結論に到達したのでございます。それで実際にやってみまして、そこまで拡大いたしますと実にすばらしい経営ができる、文字通り労力を今までの五分の一ぐらいに減らして、生産を少なくとも三倍ぐらいにすることが可能であるということが確信を持って言えるように思うのでございます。そのことを考えますときに、二町歩や三町歩で合理化ができるならばいいけれども、十町歩、二十町歩まで拡大しなければ合理化ができないとするならば、これはもう絶対的に共同化を推進する以外にないのじゃないかということがはっきり言えるように思うのでございます。
そこで土地条件の整備あるいは資金の裏づけの問題、こういうことをやっていただくために、当然ここで農地法と農協法の改正を一日も早くお願いいたしたいと思います。それで農地法については、法人または農事組合の土地所有あるいは少なくとも土地利用を認めてほしい。それからいま一つの問題は、農業が近代化されて参りますといわゆる従来の農業労働だけでは新しい農業というのは成立しない、従来の農業は農民を守るということを強調するあまりに労働だけの価値を守ろうとしてかえって資本と技術を農村から追い出しているとも言えるように思うのでございます。それで知識人や技術者が新しい農業には参画することが必要である、こういう意味において農民というものの意義を拡大いたしまして近代化の促進をする必要があるのじゃないか。
それから、われわれが今最も苦労するのは、近代化をするためには農地の集団化と経営規模の拡大が必要である、ところが都市近郊のように兼業農家が非常に多い場合なかなか集団化ないし土地の経営規模の拡大というものがむずかしくなってくる、それで農地の集団化あるいは経営規模の拡大の障害となっておりますものは、あくまでも所有者が耕作しなければならないという今までの考え方にあまりにも固定している点にあるのじゃなかろうか。たとえば都市近郊の兼業農家の場合を想定してみますと、かりにおやじさんがサラリーマンであって奥さんが農耕をやっている場合でも、これが経営の共同ないし組織化ができていった場合に、女の人が農耕に従事するということをもう少し広い意味に解釈いたしまして、そういう場合の事務を担当することによって農業に実際に従事しているというような解釈ができないだろうか。今日の日本の各地の農業というものはある意味ではほとんど都市近郊の農業であり、兼業化の傾向をたどっておりますので、そういう障害を除去することを考えなかったならば実質的には経営の合理化というものが困難になるのじゃなかろうか、こういうふうに考える次第でございます。
それから農協法の問題でございますが、農業を合理化し近代化することによって収入は当然ふえて参りますので、それを前提といたしまして従来の融資——これは近代化資金によって発効されたわけでございますが、それを受け入れる農民の側といたしましては一日も早く法人ないし農事小組合というものを認めていただきまして、こういうものに対する融資の道を開いていただく、そのこと自体は組合側にとってはむしろ債権確保のためにかえって有利なようにも考えるわけでございます。あるいはまた兼業農家が安心して土地を信託し新しい経営に参画をする、経営規模の拡大をはかるという意峠において、今度の農協法の改正において意図されておる信託制度というものがこの道を開くことになるのじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。
それで、実際に今までいろいろな障害の中でこういう経営を進めて参った経験から、今度の農地法の改正、農協法の改正は今までのそうした諸問題を解決する少なくともその根拠になるように思うのでございます。それでいろいろと問題はあろうかと思いますけれども、もし問題があったらあとで改正いただくことにいたしまして、少なくとも従来より一歩も二歩も前進していくという意味において、本国会においてこの両改正法案の成立を希望いたす次第でございます。
これで終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/64
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065・野原正勝
○野原委員長 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/65
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066・野原正勝
○野原委員長 参考人の御意見について質疑の通告がありますので、これを許します。角屋堅次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/66
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067・角屋堅次郎
○角屋委員 ただいま東畑参考人以下三人の参考人の方々から、当面の審議の対象になっております農地法、農協法のそれぞれ一部改正についての貴重な御意見を承ったわけであります。われわれ本法案の審議に参加をしておるそれぞれの立場から、今の参考意見というのは率直に育って私どもの党の立場から見解を異にする部面もいろいろあるわけでありますが、この際参考人でありますので礼を尽くしまして、若干御質問を申し上げたいと思います。
問題は、今日の日本農業をめぐる諸情勢をどう把握するか、また今後の日本農業の発展の方向をどういうふうに持っていくか、そういう意味において土地制度の根幹である農地法というものをどういうふうに改正していったらいいのか、あるいは生産農民の共同体としての農協をどういう方向に改正をしていったらいいのかということであろうかと思います。従って問題は、今日の日本農業をめぐる諸情勢の認識いかんということになろうかと思うわけでありますし、またその諸情勢に基づいての農政の基本政策をどう持っていくか、そういう立場がまず出発点として非常に重要かと思われます。それには生産政策の問題にいたしましても価格政策の問題にいたしましても、あるいは構造改善政策の問題にいたしましても、各般の問題がからんでおるわけでありますが、きょうはその問題は避けまして、二法案に焦点を合わせながらお伺いいたしたいと思います。
先ほど来の参考人の意見の中では、何と申しましても最後に述べられました上野さんが、生産農民としての実践の上に立った経験からの意見でありまして、私どもはそういう立場から非常にその鷲見の内容について傾聴するわけでありますが、ただ良畑さんにいたしましてもあるいは田辺さんにいたしましても、その道の専門家でありますけれども、今日生産農民の実態はどうかという点がこの法案を審議するにあたって私どもとしては非常に重要だと考えます。
そこで、後ほど同僚少量の質問もありますので私は数点にとどめたいと思いますが、まず今新聞紙上で連日政府与党の動きの中で注目をされております例の農地被買収の問題、この問題はいずれ国会での大きな政治問題になってくるのではないかという予測がありまするけれども、この問題については、この問題を取り扱う立場として農地法の性格が変わってきたんだから、従って農地改革を行なった当時大きな改革の犠牲になった旧地主というものに報償すべきじゃないかというふうな意見が一部述べられておりますし、半面最高裁の昭和二十八年の判決、あるいはその後における政町並びに農林省当局の見解、こういうものが持続されて参りまして、この問題の今後の取り扱いということは大きな政治問題であろうかと思いますが、参考のためにこの点について特に東畑さんあるいは田辺さんから一つ御意見を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/67
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068・東畑四郎
○東畑参考人 ただいまの角屋さんの御質問でございますが、私、実は農地被買収者問題調査会の委員でございまして、しかも起草委員になっておりまして、その結論をこれから作るという段階でございますので、あまりその問題について、まだ調査会開催中でありますので述べたくないのでありますが、せっかくの御質問でございますから個人として申し上げることは、農地法の制度というものの是非についてはこの際触れたくない、その農地改革の過去の問題についてどうかということは私の考えとしては述べたくないということだけ一つ申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/68
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069・角屋堅次郎
○角屋委員 田辺さんどうですか。——それじゃ、ちゅうちょされておるようですから、上野さん一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/69
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070・上野満
○上野参考人 私はこういう問題はよくわかりません。この席でお答えできないのですが、ただ終戦当初非常に安い農地価格で買い取って創設された自作農家が、離農する場合にこれを非常に高く売っている、そしてそれがそのまま兄のがされていくということには日ごろ非常に矛盾を感じている。こういう購入価格と売買価格との間に極端に、坪で何千円、反で何百万という差のあるような売買が当然認められているということには非常に疑問を感じているのであります。こういうものについては何らか税金とかなんとかいう形で考えるべきじゃないだろうか、こういうふうに思っております。そういうものを昔の地主さんに還元することが妥当かどうかということは私にはわかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/70
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071・角屋堅次郎
○角屋委員 この問題はきょうの焦点としてあらかじめ心準備をしてこられなかったと思いますので、次に移りたいと思います。
昨日来、農林大臣を相手にいたしましていろいろ審議が続けられておりますが、農地法に関連をいたしまして、農地価格問題、特に産業の高度成長の中で農地転用という問題が非常に進んでいる。それが農地価格にはね返って参りまして、農地価格の相当大きな高騰を招来しておる。あるいは今日の金納小作料という問題については、いずれこの法案の進展とともにこの問題をどうするかという問題が再燃をしてくるのではなかろうか、こういう予想も一部にされておるわけでありますが、一体農業経営の立場から見ると、ことに自立農家その他農地取得の立場から見れば、農地価格の高騰という問題は非常に大きな障害をもたらすわけでありますが、こういう農地価格の適正な価格水準を維持するという立場から見る場合にどういう方途を考えたらいいのかということについて、特に御意見があれば、東畑参考人、田辺参考人から、小作料の現行の問題に対する意見を含めて、御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/71
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072・東畑四郎
○東畑参考人 角屋さんから一番むずかしい問題を実は御質問を受けたのであります。先ほど私申し上げたように、農地価格は原則として収益価格で評価するわけであります。地代というものも収益のうちからこれを出す。これがまた農地改革の趣旨でもあります。こういうように実は考えております。従いまして、農業の収益が上がって参りますれば、それとの関係において加代というものは考えなければいかぬ、こういうように実は思っております。しかし現実の土地というものは、必ずしも収益を反映しておるものではないのでございます。そこでこれをどうするかという問題になりますと、これは政策論になって非常なむずかしい問題である。過去においては地価統制ということをいたしたことがありますが、今日の専業農家が農地を買う。これは農民から農民に移る場合と、それから農民がこれを農業外に売るという場合において非常に価格の差がある。要するに宅地という問題が一片々々の農地価格を引き上げておる。それをどう評価するかという問題は、これは非常にむずかしい問題であって、根本的に言えば、土地利用を計画的にやらなければいかぬということに尽きると思うのであります。土地利用が合理的にいかないで、個々にはだんだん宅地になっていくということでありますれば、これはなかなかむずかしい問題だ。手としては、土地利用計画というものをきちっと立てて、その範囲内で農地の転用をやるということと、農地価格を統制しようという場合には、農地価格だけでなしに、宅地、工場地という全体の土地との関係において管理し統制するという政策を用いなければ、農地だけを統制するということはできないのではないか、私はこういうように考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/72
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073・田辺勝正
○田辺参考人 農地改革をやります場合におきましては、農地価格の統制ということをやると同町に小作料の統制ということをやりまして、価格と小作料との間は理論上の一つの関係をもって結ばれておったのでございます。ところが小作料の統制は、その額が多少は変更しましたけれども、プリンシプルは同じでもって現行法で統制をさせられておるのでありますが、一方農地価格につきましては、自作農特別措置法と同時に、大蔵省から土地台帳法の改正案が出され、その法律が通過すれば賃貸価格の何倍と定めている農地価格の統制ができなくなるので、小作料を基礎とする適正農地価格を定め、これで統制することとしていたのでありますが、その法案は不通過となったのに大蔵省の改正法律が通過したので、農地の価格統制は行なわれなくなったのであります。それから農地法を制定する場合におきまして、農業をやめんとする場合におきましては政府が売った価格で先買するのだ、こういう規定がありましたのを、これまたはずしましたために、ここに農地は自由に取引をせられることになりましたために、非常な価格を騰貴を来たしまして、いわゆる小作料との間に大なる矛盾がここに発生することになったということは、これは万やむを得ないことであるし、またそういうような対策をやらなかったということは、政府の責任ではないかということを私は考えるのであります。
しからば今日の統制は一体どういう方針でやればいいかというと、少なくとも農地は農業を経営する上においての生産手段でありますから、農業において引き合うところの価格という考え方を貫くべきものであると私は考えるのであります。しかしながら、これを実際にやりますと実際価格と収益価格との町に非常な差がありまして、事実容易なことではないのでありますから、これをもしもある程度統制をするということになりますと、少なくとも現状価格を大体標準にした、それを合理化したような価格にならざるを得ないのじゃないか、こう思うのであります。しかし私が計算したところによりますと、戦争以前の日本の農地の価格の経営総資本の中に占めるパーセントは、七〇%から七五%ぐらいであったと思いますが、現在農地価格の統制がはずされましたために価格は相当上がっておりまして、現在計算いたしますと大体五〇%ぐらいになると思います。こういう意味におきましては、現在で価格を統制いたしましても、やはり相当の効果があるんじゃないかと思いますが、しかし統制の方法ということになりますと、私は非常にむずかしいと思います。私案といたしましては、これは責任のないお話でありますけれども、いわゆる農地金庫と申しますか一大金融機関を作りまして、そこで、政府とその金庫の間におきまして、適当な時価主義によるところの収益価格というものをきめ、それを公示いたしまして、売買をする場合におきましては出先機関の許可を得るというような方針にする。それから農地が非常に高くなっていわゆる転用する場合には、その農地の価格は使用価値として評価せねばなりませんから、農地の評価の仕方とは全然違って参ります。そしてその価格は非常に高くなるのでありますが、その価格の騰貴は社会的原因によって上がったのでありますから、当然その差額というものは国家がこれを徴収いたしまして、そうしてこれは国民の福利施設に使用する、そういうようなものを考えてみたらどうかというような私案を考えたことがあるのですが、これはそうでもしないとなかなか統制はできないですね、むずかしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/73
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074・角屋堅次郎
○角屋委員 農地の信託の問題とも関連が出て参るかと思うのですが、農地を手放す場合、売り手の方はやはりなるべく高く売りたい、買手の農民の力は、今後の長期的な農業経営を考える場合には、なるべく安く買いたい、こういうふうな考え方の中で、農地の二重価格的な取り扱いの問題という一つの意見が、現実には出ておるわけであります。これらの意見の問題は、財政上その他各般の問題で、大へんむずかしい問題が当然からんでくるわけでありますけれども、考え方としては、やはりそれは一つ是認できるところがあると思うのですが、こういう今後の農政の推進上、あるいは政府自民党が考えておる農地の流血化促進という面から関連をして、これらの問題に対する参考人の意見として、これは、まだ一回も聞かないのは失礼でありますから、袋井農協の恩田さんの方から御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/74
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075・恩田忠四郎
○恩田参考人 ただいま、信託制度におきまする売り渡し信託の場合に、農地価格に対する二面価格制度に対する考えはどうかというような御質問があったのであります。大へんむずかしい問題だと思います。国の財政の問題もあるし、その二重価格の負担をどこでするかというようなことを考えますと、われわれの頭の範囲ではちょっとお答えができないのではないか、かように考えるのであります。ただ、売り渡しをする場合におきまして、簡単に、売る人は何でも高く、買う人は何でも安くというような考えは、この信託制度を設けた関係から考えまして、要するに農業の構造改善に役立つような線を狩っていかなくてはならぬ、かように考えまして、仲裁裁定のような意味で二重価格というような問題が出ておりますが、かりにこれをスムーズに進めて参ります上において実行ができるといたしますれば、私は必ずしも二重価格制度を採用するということにおいて反対するものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/75
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076・角屋堅次郎
○角屋委員 農林大臣をやっておる河野さんは、食管問題、各般の問題についていろいろ発言された。その点について政治問題をかもすことが多いのでありますが、御承知の通り、きのうの国会でもそういう構想の意見発表がありましたし、同時に旅先でも言っておる問題でありますが、先ほど田辺参考人あるいは上野さんあたりからも意見が出ましたように、今後の農業経営の近代化あるいは構造改善等を推進するためには相当大量の資金が必要である。その資金問題に関連をして、いわゆる系統金融あるいは場合によっては制度金融等も含めた農民銀行あるいは農業銀行、こういうふうな構想発表を——これはまだ必ずしもきちっと河野さんはまとめられて言ったわけではないと思いますけれども、今後やはりこれは金融問題あるいは系統金融の問題に関連してくれば、当然団体再編成というかなりの大きな問題になるわけでありますけれども、いわゆる農業近代化のための資金、こういうものをどういうふうな形にすることがいいであろうか。特にその問題では河野さんの構想等についても、御意見があれば含めて、これは東畑参考人、田辺参考人、あるいは恩田さん、上野さんあたりからも、意見があれば一つお述べいただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/76
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077・東畑四郎
○東畑参考人 私、河野さんの農業銀行の構想というものは存じておりません。そこで、何ら意見を申し上げる資格はございません。
農業近代化資金という問題につきましては、実は率直に考えまして、農地改革当時地価統制をしまして、小作料を統制をした場合に農地そのものを担保にして金融をつけるということは、私個人でございましたが、ほとんど考えていなかった。将来の経営発展の際に、土地そのものを担保にして金を貸すということは、おそらくできないのではないか。金融というものは、土地というものを離れて、経営のみの金融として考えていくべきではないかというふうに考えておりましたが、今日においても私はやはりそういう考えに変わりはございません。そこで、近代化資金というものにつきましては、根本的に言いますと、やはり農民自体の金利を下げていくということが根本じゃないか。これを、先ほど二重価格の問題が出ましたが、いたずらに低利資金的なものを財政で補足することだけで解決しようと思うことは、やはり根本の解決にならぬじゃないか。やはり農民自体の組織で、安い金利的なものをもたらすような組織を作るということが根本で、そうしませんとやはりまた非常な弊害的な現象が出てくるのではないか。団体再編成と言われましたが、金利を安くすることがやはり農業協同組合全体の組織に触れてくる問題ではないか。それをどうするかということについて、私はまだ研究をいたしませんので何とも申し上げにくい。
それからもう一つは、近代資金を出す以上は、やはり一つの長期な農業の資本を増加していくという計画を持たざるを得ないのではないか。いろいろ土地改良計画とかいうようなものが政府にございまして、これで一つの事業を推進していくと同じ意味において、日本農業近代化のために機械その他のものを入れてどういう形において資本投下をしていくことが農業経営の近代化に役立つかというある程度の長期計画をとって、その原資というものを、財政と農民の資本をどう結びつけるかということを考えた上で政策を立てることがやはり、この際必要ではないだろうか。去年は三百億、ことしは五百億、来年はどうなるかという一つの経過というものがあって、それで強い要求をするということが私は必要ではないかというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/77
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078・上野満
○上野参考人 前々から矛盾を感じたことでありますので、たった一言意見を発表させていただきたいと思います。それは資金の場合、特に土地整備資金でございますが、土地の整備というものは、子孫末代までのための土地整備でありながら、これを三年か五年、長くても十五年くらいの間に最小——たとえば私たちの場合は、私たちだけのわずか五年か十年くらいの間に子孫末代までの恩恵を受ける土地改良を負担しなければいかぬ。それで一切条件を整備しなければ近代化が進みませんので、私らは短期間にそれを完成しようといたします。ところが完成してしまったら、あとは子孫末代までその恩恵を受けて負担はやらないということは非常におかしいのじゃないか。だから経営に関するものは短期でもいいけれども、土地整備に関する資金というものは、少なくとも五十年くらい考えてもいいのじゃないか。それで経営について自分の時代においてはね返ってくるものについては、これは技術的に期限をきめることができるだろうと思います。そのことはかねて疑問に思った点でございますので、この機会に述べさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/78
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079・角屋堅次郎
○角屋委員 農業協同組合の今後の発展の方向ということは、これは単に農協法の一部改正の問題のみならず、農政上非常に重要な問題の一つだと思いますが、農業協同組合法の一部改正あるいは農地法の一部改正と関連して、御承知のように農協の組合員あるいは場合によっては準組合員、こういうふうな形の中に農業生産法人を初め各般の問題が入ってくる。そうすると今後農協の性格、これは農業生産法人が、かりにこの法案が通って実施されるという場合に、どういう発展の方向をたどるであろうかということはまだ未知数でありますけれども、たとえば農地保有の最高限度の問題にいたしましても、御承知の通り農業生産法人の場合には全然それは除かれておる。自立農家といいますか家族農業経営の場合においては、これは主として自家労力というふうなことで緩和はされましたけれども、農業生産法人の場合には、それは全然除かれた形になっておるわけでありますから、今後の発展の方向いかんによっては、農業生産法人等を含む農業協同組合の性格というものが変わってくる可能性があるように考えますし、それがまた農協全体の運動というものの中に、どういう影響をもたらすかということを考えるわけでありますが、そういう今回の農地法、農協法の改正を通じて、農協の性格、今後の発展方向というものについてはどういう判断を持たれておるか。これは一つ東畑参考人と農協の関係でありますから恩田さんの方からお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/79
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080・東畑四郎
○東畑参考人 今回の農協法の改正が農協そのものの性格をどういうふうに変えるであろうかという見通しの問題だと思いますが、農業協同組合というものは、これは農民そのものの一つのりっぱな組織でありますから、何をやっても、農民の利益になることはいいのでありますが、現実、生産関係については、あまり従来やっていない。主としてこれは流通組織の団体だということが言えると思います。こういうような農業改革の時期に、やはりより生産に密接に結びついていくということは、これは農民組織で当然必要であります。今回の改正においては、農業生産法人というものは大きな地域にはなかなかむずかしいために、農事組合法人というような一つの生産の下部機構ができた。これを農協そのものがつかんでいくという形において、ちょうど過去に農事実行組合というものを農協が結びつけて流通を整備していったと全く違う質でございますが、やはり農業生産に密着していくという一つの非常にいい農協発展の行き方であろう。ただこれには金も要るし、技術者も要るし、相当の質的な変化を見なければならぬ。それにたとえ得る農協を早く作らなければいかぬ。それには経済組織を強化していかなければならぬ。これをやること自体が、また農協自体を強化していくという一つの必然性も生まれてくるであろう、こういう意味において、私は今回の法案に農協法としても賛成をいたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/80
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081・恩田忠四郎
○恩田参考人 今後の農協がどうなるかというような御質問でありますが、私は思うに、現在各農協といたしましても、その体質改善の意味から再編成の問題が非常に強く叫ばれておるのであります。要するに、合併によって、その基盤を拡大をして、そして運営の面でも合理化す、こういう問題でありますが、そこで今かような線へ進んで参ります一つの大きな点は、従来農協そのものは流通事業がその重点であったのであります。しかし、これだけでは、これからできて参ります生産法人にいたしましても、あるいは農事組合法人にいたしましても、これを自分の傘下の一つの組合員としてしっかりつかまえていくということは非常にむずかしいのであります。何と申しましても、これらの誤らざる線を打ち出していくには指導事業へ十分な努力をしていく、重点を置いて進んでいくということが非常に必要であります。そんな関係で、農業関係の指導員というものは久しく至って貧弱であったのでありますが、農協もすでに結成以来十数年を経ておりまして、指導員も順次育成もされ強化もされて参りましたので、この線の一そうの強化拡大をはかりまして、そしてできて参りまする法人あるいはその他に対する指導事業に重点を置いていくことによって農協の発展が期せられる、また、農協再編成もそういうような線へ、職員の待遇向上の問題もありますが、やはり一面におきましてのねらいは指導事業の整備強化という問題だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/81
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082・角屋堅次郎
○角屋委員 午前中の質問でも安井君からあったわけですけれども、農業生産法人等に農地等を出資する場合の農地の評価問題、あるいは利益、余剰金の配当問題、この場合統制小作料の関係、これは小作に対して統制小作料を得る問題と、農業協同組合の信託等にゆだねて実際に出資をし、それから配当を受けるという、統制小作料と配当の場合の相互関係、これがやはり一つの問題になると思うのでありますが、これは専門家の田辺さんあたりはどういうふうにこの問題の取り扱いを考えておられるか、お伺いをいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/82
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083・田辺勝正
○田辺参考人 農業生産組合が農業経営を行なう場合に、養畜その他を別にいたしまして、いわゆる耕種農業を行なう場合には、農地が当然必要条件でありますが、この農地をどうして獲得するかということになりますると、これは法人でいわゆる農地を買い受ける場合が一点でありますが、この場合はいわゆる組合が買うのでありますから、この形は一種の共有という形になって現われてくると私は思うのであります。もう一つは農地を借りるという場合でありますが、これは組合員から借りる場合も組合員外から借りる場合も出てくると思うのであります。その場合の小作料はどうなるかということになりますと、これは現在小作料の統制が行なわれておる以上は、やはりそれに服してやらなければならぬのじゃないかということを考えまするが、これは事実は、私がいろいろな協同組合の話を聞きあるいは実際見てみますと、相当高い小作料を、やみ小作料として一万円から二万円くらいの小作料を払っておるものもありますが、しかし現行制度におきましては、やはり統制小作料の制限を受けるということになりまして、それ以上のものは、いわゆる利益の配当といいますか、そういう点で分けられるのではないかと思うのであります。
それから出資ということになりますと、これは非常にむずかしい問題であります。農地を出資した場合、これは一体どういう形になるのかということが非常に問題になってくるのでありますが、この場合に、農地の評価問題等いろいろむずかしい問題がありますので、現在実際行なっておる場合においては、農地を評価せずして、いわゆる面積でもってこれを提供するという場合が非常に多い。それだけ農地の評価というものはむずかしいのでありますが、この農地を出資したという形はどういうことになるのか。これはいわゆる金銭の出資あるいは機械、農具等の出資の場合とは非常に違ってくると思うのであります。やはりその個人のいわゆる土地というか、その土地の所有権が確保されて、その生産組合が解散をした場合におきましては、従来の農地が返ってくるということになってくるのでありまして、ほかの金銭出資の場合と違う。そうしますと、利用権というか、その組合の利用権というものがいわゆる共有的な一つの性質を持ってくるのではないかということが考えられるのでありまして、これに対する分配は一体どうかと申しますと、これは土地を借りた場合におきましては、小作料が統制せられておりますから、その統制せられておる小作料を所有者に支払えばよいわけであります。ところが出資の場合におきましては、その配当というものが不確定でありまして、その地代よりも低い場合もあれば上にいく場合もあるということで、非常に違ってくるということでありますが、ただ、ここで先ほど言ったように、価格を出しまして、それを出資の額にするということになりますと、先ほどの小作料との関係が非常に不自然なものが出てくる。すなわち実際の価格で出資したとすれば、その価格が非常に高いから、その利子を小作料と仮定すれば、実際の小作料よりも非常に高くならざるを得ないという矛盾を生ずるのでありまして、これはどうも現行法としては仕方がないじゃないか、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/83
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084・角屋堅次郎
○角屋委員 新しく農協に農地の信託ということを法改正でやろうとしておるわけですが、農民の立場から見て、農地の売買に自分みずからの手でやる、あるいは小作人を選んで小作地に出す、こういう農家自身の自主的判断でやる問題と、新しく農協が信託事業をやる、そこに貸付信託あるいは売買信託という形で信託をする、こういう場合に、一方の農協を通じての信託事業の場合は、はっきり政策として構造改善の一つの重要なてことしてこれを考えていこうという意欲を持っておる。問題は、そういう生産農民の自主的な立場で売買、あるいは小作に出す今までの方向と、新しく農協が信託事業としてやっていく方向というもの、農協の信託事業、これを構造改善のてことして重心に置いていくのだ、こういう一方向に喜んで生産農民からの信託がなされる方向に打っていくという立場からかりに問題を見た場合に、どういういろんな配慮をしなければならぬかということが一つの問題に相なるのじゃないか、それは生産農民の自主的判断にまかせるのだということで考えるのではなくして、先ほどの参考人の意見からいけば、たとえば海外移住の場合とか、あるいは死亡その他の状況で一時小作に出せば小作権が非常に保障されておる状況の中では、貸付の方がいいという特殊な例は別として、そうでない場合も含めて農協の信託事業を柱にしていくという場合、今政府の考えておるような方向でいった場合に期待のような構造改善事業のてこ入れになるのか、あるいはさらにこういう各般の問題を考える必要があるのじゃないかというふうな御意見がありますれば、東畑参考人か、意見のある方、意見の御開陳を願いたい、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/84
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085・東畑四郎
○東畑参考人 先ほど私申し上げたことが今のお尋ねに対するお答えになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/85
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086・角屋堅次郎
○角屋委員 恩田さん、どうですか。——上野さん、農協をやっておられないけれども、何か御意見があれば伺いたい。——いろいろ法案の審議上参考にいたしたいと思いましてお聞きをしたわけですけれども、格別の御忍見も承れませんのは残念です。
次から質問することも御意見が出ないと夜間だけに終わるわけですけれども、東畑参考人はかつて長年の間農林省におられたわけでありますが、政府の農基法に基づく構造改善という問題について、河野農林大臣になってから構造改善事業というものをこれから強力に推進していくのだということでパイロット地区、あるいは一般構造改善の事業地区、こういう形で推進をいたそうといたしておるわけでありますが、農基法あるいは農地法、農協法の関連の中で今進めようとしておる構造改善事業というものに対する所見がありますれば、東畑参考人の過去の経験の中から一つ御意見を承りたいと思いますし、田辺参考人、恩田参考人、上野参考人等も第一線におられる立場から、河野農林大臣の構造改善事業の構想あるいは今後の方向というものに対して御意見がありますれば、この機会に一つ承りたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/86
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087・東畑四郎
○東畑参考人 構造改善事業、非常にむずかしい言葉でありますが、一番大事な点は農業の生産の構造を変えるということでございます。生産の構造を変えるということで一番問題は、今日問題になっております土地と経営をどうしていくかということに尽きるのであろう、この問題は、考え方としては上から従来やっておりますような一律一体的な政策においてはなかなか達成しにくい。やはり農民自体の自主的な発展を基盤にして、それを政府が助成、保護していく、こういう以外に方法はない。一番むずかしい問題は、構造という問題はいろいろございますが、生産の構造を改革することである、その一環にこの法案が資する、こういうふうに私は考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/87
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088・田辺勝正
○田辺参考人 近ごろ構造改善事業ということが盛んに言われておるのでありまして、これは普通の農業経営の改善ということとちょっとニュアンスが違うように思うのであります。構造改善というもの、これはいろいろな立場からいえば、ほとんど全部がその中に入るかもしれませんが、少なくとも構造改心という狭い意味で考えてみますと、私は大体二つ大きな問題があると思うのであります。現在やられている構造改善事業という中には農業経営の基盤の改善、たとえば土地改良でありますとか、あるいは交換分合によって機械農業をするような便利がありますとか、こういうこと等がありますが、その上に農業機械その他のいわゆる近代化といいますか、近代施設の普及充実、こういうものがもう一つその基盤の中に入っていると思うのでありますが、もしそれを推進するということになりますと、先ほど言ったようにそのやった近代化のいろいろの機械なりいろいろな施設なりというものをフルに、有効的に効果を発揮させるということになれば、普通の現在の形の農業経営ではいけないのでありまして、農業経営の構造改善ということがその中にもう一つ加わっていかなければならないと思うのであります。それが農地法なり先ほど言った農協法の改正にからむわけでありますが、そのことが一向うたわれていないということを考えてみますと、そのやった効果はなかなか少ないのじゃないか。ですから、構造改善事業というものをやるならば、同町にその経営構造の改善ということも進めていくことが必要であるということを私は考えるのでありまして、この意味におきましてこの法案がもしも成立するとなると、そこに初めて車の両輪のようなことになってくるのでありますから、その意味においてこの法が一日も早く議会を通過することを希望する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/88
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089・恩田忠四郎
○恩田参考人 構造改善事業につきましては、むろん政府の施策として推進をされるのでありますが、この問題は決して私どもは言われてやる問題ではない、かような自覚を持って皆さんにも申し上げておるのであります。たまたま袋井市は三十六年度に一般構造改専業善事業の地域に指定を受けまして、三十七年度に調査をして三十八年度から事業実施に入る、こういう予定で進んでおるのであります。そういう線から考えまして、これを実際にやっていく上において事業量は平均一億一千万とか聞いておりますが、しかし、そのうち政府の助成は四千五百万で、あとは結局これはどれだけの期間になりましても、構造改善をやった農民自体が負担をしなくてはならぬ。従って十分自分が腹にきて、その期間においてはっきり元利の返済もでき、また生活設計の上にも多少のゆとりのできるような作目をいかにして選定するか、見出すかということが根本問題だと思うのであります。従って基礎調査の段階におきまして、私どもはそれをいかにして見出すかということに今頭を悩ましておるわけでありまして、十分検討して誤らざる線を農家とともにやっていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/89
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090・上野満
○上野参考人 構造改憲ということは多分生産構造、経営構造の改善ということだろうと思うのですが、その場合に一番考えられなければならないことは、結局、技術者の参画ということじゃないかと思うのです。現在、全国的に構造改善ということが進められ、土地条件の整備とか新しい経営の近代化が進められておりますけれども、そういうことの指導というものが主として役所の側の立場に立って、役人によって指導されておる。しかし実は農民の側に立って、その経営者の一人となって経営に参画する技術というものを考えなかった場合に、現在の近代化というものは非常に危険じゃないのか。そこに確信を持って経営そのものを運営して、引っぱっていく技術さえあったらば、これはものになると思うのです。職工だけ集めて技師のない工場を考えればすぐわかることであって、私、構造改善の一番大事なことは、農業経営における技術者の位置づけじゃなかろうか、その問題が現在一番忘れられているのじゃないかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/90
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091・角屋堅次郎
○角屋委員 あとあと同僚議員の質問もありますので、私の竹岡はこの程度にいたしたいと思います。大へんありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/91
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092・野原正勝
○野原委員長 東海林稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/92
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093・東海林稔
○東海林委員 私も数点につきましてお尋ねいたしたいと思うのであります。まず一番初めに、東畑参考人並びに田辺参考人にお伺いいたしたいと思います。
先ほどの御意見陳述の中で、農地の所有上限緩和についての御意見がございました。技術の進歩、機械の発達に伴って、経営を合理化する上においては、従来の三町歩に原則として限るという制限を緩和することが適当であり、賛成だ、こういう御点兄だと拝聴したのであります。私も、技術の進歩や機械の発展に伴って、経営をある程度拡大していくという方向については、もちろん異議のないものでありますが、しかし、実際どういう形において経営の拡大、合理化をはかっていくかという点になりますと、これは問題があると思うのです。一つは、それを個々の家族経営としてそういうふうにしていくか、それとも共同でやっていくか、こういう問題だと思うわけでございます。政府の農業基本法は御承知のように家族経営農家の育成を中心として、一部協業あわせて、こういう形でありますが、私どもは共同経営ということを非常に重視して、この点を農業基本法における政府案との最も対立の重要点として論争したわけてあります。御承知のように私どもが農政を考える場合には、一部の農家だけがよくなるというのではなしに——他に転出して農業をやる以上によりよい生活が約束されるような場合は別といたしまして、やはり農にとどまって農でもってやっていこうという人に対しては、全体としてこれを引き上げていくということを考えるのは当然であると思うわけでございます。たとえば一つの部落に一町歩の経営の農家が十戸ある場合に、これを三町歩に引き上げるということにするならば、農地の面からいうと三町歩の前後の農家が三戸できるためには六戸ないし七戸の農家が離農しなければならぬ、そこで十町歩の一農家を育成するということになりますと、十人のうち九人だけは他に転出しなければならぬ、こういう形になってくると思うわけであります。こういうことは実際問題として私は非常に問題があるのではないか、全体の農民を引き上げていくという立場からすれば、少数の力ある農家だけが大きく伸びるということは必ずしも望ましいことではないのではないかという点を一つ考えるわでございます。
それからもう一点でありますが、この点に関連して考えることは、政府は、今回の農地法の改正は農地法本来の使命を何ら変えるものではなしに、最近のいろいろな諸情勢の変化に即応する部分的な改正である、こういうふうに説明しておりました。あくまでも農地改革の成果はこれを堅持するのだということを主張しているわけでございますが、御承知のように農地改革の基礎法となりました自作農創設特別措置法の目的の中には、農業生産力の発展とともに農村の民主化を推進するということがあったわけでございます。この民主化を推進するということについて、当時私どもしばしば政府の説明を聞いたわけでありますが、一つにおいては、封建的な地主制度というものをなくして、そうして従来のように高額な小作料によって小作人を搾取し、圧迫するような点を排除するということと、あわせて農村における社会的なまた経済的なこの格差というものをなるべく少なくするという、そのことが民主化を推進するのだというような説明を開いたことを記憶いたしているのでございます。現在においてもこの点はほんとうに真剣に民主化を推進するということであれば、同じようなことが言えるのではないかと思うのであります。ところでこの上限を撤廃することに関連し、一面機械化の発展ということと関連するならば、政府が考えているようにこの緩和ということを若干引き上げるということではなしに、無制限に撤廃するというような形になると、私はそこに農村の階層分化というようなものが非常に進んでくるおそれがあるのではないか、こういうことを考えるわけでありますが、そういうふうな点からするならば、これは農地改革の成果を堅持する点から見ても、若干の疑問があるのではないか、こういう感じを抱くわけであります。そういうような点について両参考人の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/93
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094・東畑四郎
○東畑参考人 自立経営農家の上限を撤廃することが階層の分化を進めるのではないかという御質問だと思います。今までの農地法におきまして三町歩に制限してありますのは、おそらく東海林さんのおっしゃるように、狭い農地にたくさんの農民がいる場合に、ある農家だけが経営が発展していって、非常な零細規模の農家がたくさんあるという一つの階層分化ということを防止するために三町歩の制限を置かれたというのは、これは事実だと思います。今日の条件の違いますのは、経営規模が小さいからその農家は所得が低いかといいますると、今日の農民の中には非常な複雑な条件が出て参りまして、御承知のようであります。従いまして農業だけでやっていこうという専業農家と、農業を片手間にして他の所得でやっていこう、こういう場合に、経営面積を拡大するから零細規模の農家が外に押し出されるのではなくして、労働市場の他の荒業の誘引が強いから、また所得が高いがゆえに、農家のうちの長男であるとか次男というものが外に出ていく、むしろ労働市場の需要の力が多いのではないかという例も非常に多い。そうなりますると残った零細化規模の農家がその土地を縮小しようあるいは協業しようという場合に、これはどうも階層分化というものを促進するのではないのではないかというように私は考えております。従いまして上限を撤廃いたしましてある農家が伸びて、しかしそれがまたもつと大きく伸びるために協業をするという場合もあり得るでしょうし、小さい農家がもっと大きな経営の発展を期するために協業するという場合も起こるでしょうし、これは両方とも併存をして、相ともに生産力の発展に寄与していく制度ではないか。ことに家族自作農的な一つの基盤というものは、日本の農業からこれはなかなか取り去れるものではない。従って今度の法案においても家族自作農的な考え方を農業法人においてもなおかつ憶病なほどとっておるということにおいて、私は別段上限を撤廃したことだけがそうその階層分化をあなたのおっしゃるように進めるものではないのではないか、こういうふうに実は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/94
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095・田辺勝正
○田辺参考人 上限の制限をとったということが東海林さんの言われたようにそううまくいくのかどうかということにつきましては、私は先ほど申しましたようになかなかそういくものではないと思うのでございます。その上限をなくしたと申しますけれども、特別にこれには主としてというのがありまして、家族労働というのは主としてというのが加わっただけでありまして、おのずからその間に制限がやはりあるのだということを私は考えるのでありますけれども、そのやり方につきまして、もしもこれを無理に半統制的指導によって農地の移動を促進するということになりますと、先ほど言ったようないわゆる階級分化ということを促進するということになってくるのではないかと私は思うのでありますが、私の見方では、それが事実におきましてはそう顕著に効果が現われるものでも何でもないという、私は現状から見ると見通しを持っておるのであります。しかしながらそういう方針でいけば、多少はやはり自立農家というのが経営面積がだんだんふえるというようになるといたしましても、それは強制せぬのですから、自発的にやる。自発的にやる以上はそのほかに兼業なりなんなりの収入がある。なくて困った場合もありますけれども、あるという場合が相当私はあるのではないかということを考えますると、それほどそれによって階級分化が截然と現われるようなことはない。と同時にこれをやる場合に、私は先ほども言ったように非常に注意をして、そうして一方に無恥のいかないような方法でもってこれを漸次やっていくということを、やり方としてはやるのだ。それと同時に現在無業農家の数は非常に一方において増加しております。戦前は四五%くらいのものが現在は六五%、しかもこれの促進によって政府の推定によりますと十年後におきましては約八〇%程度に及ぶという推定さえもあるのであります。しかしこの生活状態を比べてみますと、やはり兼業農家の方が現在ではかえってほんとうの純農家よりも文化的生活ができて生活が向上しておるという面も多少ある。いわゆる所得をふやして生活を向上するという点におきまするとそういうことになる。でありますから私はそういうことをやると同時に、やはり兼業農家というものに対してある程度の保護なりあるいはこれに対する投資なり、同様に農地の移動を確保するならば、そういうものを通じてそれに対する対策というものをやはり同町に、これはやっていかなければならぬのではないか。ただ一方、いわゆる従来行なわれておる三割農政とかあるいは一割農政とか五分農政とかいうのではなくて、所得の面から抑えまして、やはり、平等になるようなふうに、一方に帰せないで他の方に対しましてのある程度の所得をふやすような政策を一つとる必要があるのではないか、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/95
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096・東海林稔
○東海林委員 次に東畑参考人にお伺いしたいのですが、農地信託の問題に関連してであります。先ほど、個人の大事な土地を預かるのであるから親切でなければいけない、さらに経済団体でなければいけないだろう、こういうような御趣旨であります。しかしそれが農地の流血を促進する意味においてけっこうな制度だと考える、こういう御趣旨であったのでありますが、私は二点についてお尋ねいたしたいと思います。
まず第一点は、実際に農民がこれをどの程度一体利用するだろうかという点であります。昨日、農地局長の答弁では、なじみのない制度であるし、やってみなければわからぬ、というようなことのようでございました。売買の信託の場合におきましては、御承知のように若干手数料が取られると同時に、幾らで売れたということがはっきりするわけですね。現在の農民心理として幾ら金が入ったというようなことをはっきりすることはなかなか好まないという点が一つでございまして、私はそこに一つの疑問を持つわけです。それからもう一つの貸付信託でございますが、確かにこれを信託に付する人の立場からいえば便利な制度ができたということになるかと思います。しかし、これは従来のこれを利用する人の側から見ますと、必ずしもそう望ましい形かどうかということには問題があるのではないか。一般の小作契約人におきましては、御承知のように期限がきますと、条件について相談し、条件がまとまらなければさらに更新する。こういうことでありますが、今度の信託制度においては、政府では六年以上にしたいというような答弁でありましたが、期限がくるとこれは返さなければならぬ、こういうことになるわけです。従ってこれをある一定の期間だけ自分の経営に取り入れるが、その後においては経営の基礎としてこれを活用することができない、こういうことでありますと、実際にそれをたよりとして長期的な見通しのもとに立った経営計画というものは成り立たないと思うのです。そういうような点からして、これは利用者の方面において必ずしもそう歓迎されるような制度じゃないんじゃないか。こういう意味において実際的なこれの油川がどの程度にあるのかという点で、私は疑問を持っております。その点についての御見解を一点伺いたい。
それからもう一つは、この農地信託を取り扱う機関として農協を選んだことが適当かどうかという点についてでございます。現在の農協必ずしも全部がりっぱに運営されておるかどうかという点について問題があるわけです。しかしこの問題は、漸次合併であるとかその他健全な運営ができるように指導するということによって、だんだんと解消されていく問題だと思います。しかしもう一つ基本的な問題として、今度の農協が農地信託をやるという問題は、これは強制的な問題ではございませんで、農協が信託制度をやることができる、これはもう農協の自主的な立場からして当然だと思うのですが、そういうことだと思うのです。従って信託制度をやるかどうかということは、これは組合員の総点に基づいて定款を改正して、そうして認可を受けてやるかどらか、こういう点にかかっていると思うのです。そうなりますと、政府が農業基本法の、これを重大な一つの関連法案として、農地の流動化をはかる方策としてこれを進めるという場合に、地域的に見てブランクができるはずだと思うのです。かりにその地域内において農地信託をやりたいと考えている人間があったとしても、農協においてこれを実施するという決定がない限りこれは活用されない、こういう点において私は、それは何か非常に政府でも農地信託制度というものについて自信がないので、やれるだけやってみい、こういうようなことで非常にこれは不徹底な考え方だ、こういうふうな感じを持っておりますが、この点についての先生の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/96
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097・東畑四郎
○東畑参考人 信託事業というのはなかなかなじまない制度でございますので、私自身も信託事業ということが農民によく理解されるかどうかについて東海林さんと同じように疑問は持っております。
信託事業うちの売り渡し信託というのは、おっしゃいますように、これはよほど急いで土地を売ってどこかへ引っ越す、移民する、先ほども話がございましたが、そういうような場合にこれは適用されるのであります。じっくりと土地を売ろうという場合は、これは農村に住んでおる人でございますから、おそらくこういう制度を利用しなくてもできるのではないか。それから貸付信託という一つの形において、一方土地を流動化する、私はこういう安い地代で土地を貸していく人があるかなあという、むしろ利用者の方じゃなくて、所有者の力のことを考えておったのでありますが、東海林さんの話は逆に利用者が利用しないじゃないか、これでは耕作権が安定しないじゃないかということでありますが、これは私よくわからないのでありますけれども、信託規定の貸付で何年くらいを政府は考えて——今五年ですか六年ですか、六年の貸付後はどうなるか、こういう問題はなかなかむずかしいので、都会へ出て、土地を持っておるという一つの公定というものを、全部の人が放棄するのじゃなくて、ある人は、持ってはおって転向しようという人もありましょうし、いろいろ複雑な——五年先の話であります。従って五年たてば必ず返すのだという規定であって、また五年先でも同じように更新をする場合もありましょうし、これはあながち利用者の方が利用しないだろうという考えに割り切るわけにいかぬのじゃないか。利用者の力もそれによって経営を拡大できれば五年間でも借りていこう。むしろ所有者の力が安い地代でそんなものを貸すのがいないじゃないかという議論もあると思います。これはやってみなければわからないのでありますが、一方だけが便利だというふうにはいかぬじゃないかというふうに考えます。問題は耕作権の安定をどうするかという問題、あまり短い期間であればこれはだめであるというように私は考えております。
その次の主体の問題は、それじゃ信託事業を市町村でやる場合どうするかという問題ですが、これは市町村か農協以外にはないのじゃないか。これは経済事業であり、しかも構造改善事業の融資をやり、いろいろな経済事業との関連において考えると、私はどうしても農業協同組合以外にないのじゃないかという気がいたします。ただ農業協同組によってはこれをやらない、農業協同組合の空白ができるじゃないかというふうなことでありますが、農業協同組合法をあまりよく研究しておりませんけれども、員外利用というものの許し得る範囲において少し緩和して、これをやらない農協に対しては他のやっておる農協に員外利用というような形で何か制度を結びつけることが可能であれば、あまり空白がないようにできるのではないか。農協法はあまり詳しくわかりませんが、何かそういうことの運用で解決し得る道があるのじゃないかというように、これは思いつきでございますが、考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/97
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098・東海林稔
○東海林委員 次に、やはり信託の問題で田辺先生に一つお伺いしたいのですが、農林省当局は今度の農地法の改正と関連して小作料の改定ということは一応考えていないという御答弁でございました。しかし私は今の貸付信託等をいたす場合に、現在非常に安い小作料、しかもその中から信託料も取られる、こういうことになってきますと、やはり地主側の気持としてはどうしてもそこに小作料という問題について非常に関心が強くなるといいますか、必然的に小作料の値上げの問題が出てくるのじゃないか。今度の農地法の改正と関連して、旧地主がばかに元気がついて、御承知のように農地の補償問題に現在非常に活発な運動を展開されておりますが、そういうような形が小作料についても今度のこういう改正、特に信託制度というようなことの関連において起きてくるのではないかということを私どもは懸念しているわけでございますが、そういうことについての御見解はいかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/98
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099・田辺勝正
○田辺参考人 小作料は現在、先ほど申しましたように統制されておりまして、農地価格というものと対比してみますと非常に安いということになってくるであります。信託制度ができたから小作料というものを上げなければならない、こういう結論にはならないのでありまして、農政という根本問題から考えた場合と、日本の農業経営というようなことを考えた場合から、小作料を動かすなら動かすということが考えられるのでありまして、それほど私は、先ほど言ったように小作地を信託に持っていって、それが世論化して小料作を上げなければならぬ、こういうようなことにはなり得ない。それから信託を行なうために、便利なために小作料を上げる、こういうことでありますと、これは主客転倒した一つの議論でありまして、そう簡単にいかないじゃないか。また、そういう世論というものは私はそう起こるとは考えていないのであります。しかし現在の小作料は適正であるかどうかということになりますと、これは将来大いに研究すべき問題でありますが、しかしそれを考えると同時に、それを関連して農地価格の点も同町にこれは考えるべき問題である、相関連した問題であるというのでありますから、私は信託行為をやるために小作料が不都合であるということはちょっと承服できぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/99
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100・東海林稔
○東海林委員 次にもう一つ田辺先生にお伺いしたいのですが、先ほどの御意見陳述には触れておられなかったのでありますけれども、現に自作農創設特別措置会計に所属の農地その他で自作農創設の用途に供しなくなったものは、現在では旧使用者に返すということになっておりますが、今度の改正では一般承継人まで及ぼす、こういうことになっているわけです。ところがこの中で、開拓不用地の問題と保有農地の問題を一本に法律改正がされておりまして、町村合併等があった場合に、新しい町村にこれを返す、そういうこと等のために改正するのだというような説明がついているわけです。この点はまだ私、政府に所信をただしてないのでありますが、私は、未墾地の場合におきましては、計画が確定しますと、おのずと不用地というものが判然として、事務的な処理さえ遅滞なく行なわれれば、ある一定の期間内には処理されるもの、そういう性格のものと考えますが、保有農地についてはその農地がいつ他に転用されるかということは予測されないですね。予測されないが、たまたまそういう事態が起きた場合には、いつになってもこれをもとの所有者あるいは一般使用者に返す、こういう法制は私は他に類例のない法制のように考えるし、また実際にも一度適法に失われた所有権がそのまま復活するというわけではないのですが、実質的に復活するような形があっていいのかどうか。たとえば同じような性格のように考えられます土地収用法におきましても、これは目的に供しなかった場合あるいは一度目的に供したが途中においてこれが不用になったという場合にどうこれを処理するかということをちょっと調べてみたのでありますが、御承知のように一定の年限を限って先買い権を認めるというような法制になっておるわけでございます。それともこれは著しく違うような点が出てくるわけでございまして、この点は私は法律専門家の意見も聞かなければならないと思うわけでありますが、農地法の制定について特に関係の深かった田辺先生に、この点についての御見解を承りたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/100
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101・田辺勝正
○田辺参考人 農地法のことはだいぶ忘れてしまったのでありますが、ちょうど農地改革をやる場合に都会周辺の農地が転用されるというおそれがある場合におきましては、五カ年保留というものをあの時分に考えたのでありますが、五カ年を経過いたしまして、そのときに従来農地で、やっぱり農地であるべき性質を持っておる場合におきましては、これはその小作農であった人に売りつける。それから転用その他にするような場合におきましては、これは旧地主に戻すということをあのときに定めたと思うのでございます。そういうことから今日までその問題が残っておりまして、もしもその思想でいきますと、現存の各種の法令で見ましても、その権利がいわゆるその当時の権利者から承継人に移るということは一般の通則であると思うわけでありまして、沿革的にそういうことに現在なつているのではないか、こう思います。しかしそのことがいいか悪いかという問題になりますと、これは新しく立法の問題になりまして、適当にやれば解決するのじゃないか、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/101
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102・東海林稔
○東海林委員 次に上野参考人にお伺いしたいと思いますが、先ほど来、共同経営をする場合の土地収益の評価というものが非常に問題であり、これの決定については慎重を要するというような御意見があったわけでございます。昨日の経済局長の答弁によりますと、これは当事者で相談してしかるべくやってもらうんだ、こういう御答弁のように承知しているわけでありますが、実際に上野さんが体験されて、これはどういうような点を特に注意しなければいけないかというような点を一つ教えていただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/102
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103・上野満
○上野参考人 ただいまの御質問は、集団化する場合、あるいは経営規模を拡大する場合に土地をまとめる場合のお話でございましょうか。(東海林委員「共同経営する場合です」と呼ぶ)転業農家等の土地を預かる場合でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/103
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104・東海林稔
○東海林委員 農地を持っておる農家が自分の農地を一緒に提供しながら自分も共同経営に参加する、こういう場合です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/104
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105・上野満
○上野参考人 結局、合理化し近代化することによって収益がどの程度高められるかによって条件というものが考えられなければならないと思うのです。それで、たとえば都市周辺の農家が共同化へいくという場合に、自分みずからが経営に参画していわゆる全面共同をやる場合と、それから兼業農家が三反とか五反のような小さな経営に不合理を感じて、農協への信託とは違いますけれども、それをまとめて共同経営に入れてもらうという場合、あるいは一種の出資の形で出すという場合、いろいろな場合があると思いますけれども、その場合に、さっき小作料の問題がいろいろ問題になったのですが、小作料とか何とかいうものが規定されておりまして、そしてそれに全然幅がなかった場合は結局損徳の問題で、そういうところが困難になりはしないか。だからそういう人たちが参画しないために大きな、当然やれば有利になる経営が成立しないために、やむを得ずして従来のような不合理な経営を続けていかなければならない場合の大きなマイナス、それからある程度の小作料を出しても、あるいは出資に対する配当を出しても、そういう人たちが全部一括されることによって上がる利益の幅というものが非常に大きかった場合には、そうした共同経営に踏み切る農家も多いんじゃないか。だから地理的なあるいは社会的ないろいろな条件によって弾力性を持たせなかったら、結局あまりに固定したものの考え方でやった場合には、法律ができても、実際の適用の範囲というのは狭くなるんじゃないか、こういうように考えます。問題は、合理化することによってどの程度利益が上がるかという問題であり、共同化され、合理化された経営のいわば合理性、収益性というものが、この発展を規定していくんじゃないか、こう思います。
それで私は共同化をやっていく場合に、自作農を守るための共同という基本線をいつも堅持しておるわけであります。つまり従来の経営規模が非常に小さかった場合には、自作農自体が自滅していく。特に経営規模が小さければ小さいほど自滅していくわけであります。ところがそれを集団化し共同化し、合理化することによって、小さな農家が存在する。しかしやはりそれにも限界がありますから、だからその程度の利益では承知ができないという人は離農していくとか、あるいは経営規模の割合に今度共同者の数が、非常に小さい面積の農家がたくさん参画した場合には、そこに今度またそういう面の不合理が出てきますので、収益性という面で一つの最も合理性のある一線というものがそこに引かれて、あまりに小規模の農家が共同の中へ入ろうとする場合には、かえって今度収益性が低くなってくるというようなことで、ある程度それで規制されていくのではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/105
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106・東海林稔
○東海林委員 最後にもう一つ、田辺先生にお願いしたいのでありますが、農地法の第一条には御承知のように、「農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて」いる、こういうことが書いてあるわけでございます。今度の農地法の改正は、先ほども申し上げましたように、政府当局としては、従来の農地法の本筋を変えるものじゃない、こういうことを言っておるわけであります。しかしこの法律の第一条に書いてある「耕作者みずからが所有する」という点は相当くずされている点が具体的に出ていると思うわけです。一つは先ほども話が出ましたように、貸付信託によってよそに出ていけば不在地主の形になるのではないかということ。それから農業生産法人に貸し付けた場合は、これは小作地の保有限度を越えてもよろしい、こういうような点が出ておるということが一つ。それからさらに、今度は農業生産法人としての所有を新たに認めるという点、こういう点から見ると、この「耕作者みずからが所有する」ということをせつ然と認めるということとは違った形が出ているのじゃないか。もちろん先ほどの不在地主とか、あるいはこの生産法人に貸し付けて保有限度以上の小作地を持つという地主が農地改革前の封建的な地主と同質であるというふうには私も考えませんが、少なくとも所有と経営が分離したという形は、これは形としてはっきりいたしておると思います。そういう点から見ますと、今度のこういう改正をするということについて、当然この法第一条から改正すべきじゃないか。ただ政府は第一条を改正すると、いわゆる本質的な改正だ、こういうような批判をおそれて、私は故意にこの点を怠ったのじゃないかという疑念を持つわけでありますが、先生この点はいかがでございましょうか。田辺先生と東畑先生と両方に一つ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/106
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107・東畑四郎
○東畑参考人 耕作者が土地を所有するという、いわゆる家族自作農経営的なものに農地法の根本精神があるが、今回の改正において、農業協同組合が所有する場合においても、いろいろと条件がございます。たとえば土地の半分以上は持たなければならぬとか、農業従事者の五分の四までは組合員でなければいかぬとか、いろいろな条件が出ておりますけれども、やはり家族自作農主義という根本をくずさないという考え方が背後に強く出ておると私はとっておる。経営と所有というものが完全に分離するということはまだまだ日本の今日の段階においては考えられないのであります。零細所有の上に少なくとも大きな経営形態をもたらすような仕組みを作っていくというのが限界になっておる。そこで形式的には所有者で不在の者も出てくるし、いろいろな現象が起こって参りますが、これは農地改革前の土地所有、しかも地主的なものと全く違う性格のもので、近代的な土地所有、その原則の、家族自作農経営というものはこの法案によっても根本的にくずれるものではない、また本質は、全国歩きましても、家族自作農が中心であって、その新しき発展の形として会社形態、法人形態というものが発生してくる、その本質は、よく洗ってみると、家族自作農経営の新しい一つの考え方じゃないか、そういうように法制も非常に綿密にできておるのじゃないかというふうに私はとっておるので、第一条の根本の趣旨をくずすほどの変革ではない、こういうように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/107
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108・東海林稔
○東海林委員 田辺先生にもお伺いしたいのですが、今の東畑先生の御見解に関連してちょっと説明を加えて田辺先生にお伺いしたいと思うのです。私は、耕作者がみずから土地を持つのが最善であるという考えがこの法の第一条にあるとすれば、現にその耕作者と土地が離れておった場合にも、なるべくそれを少なくするという努力をするのがこの法の精神だと思うのです。ところが今度のは、従来なかったこの精神と違うものを新たに認めるような形が改正の上において出ておるわけなんです。それですから、これをこのままにしておいて、こういう不在地主を認めるとか、保有限度以上の小作地を認めるとか、あるいは法人を認めるということは、従来のものを減らすのではなしに、新たにこれを作るというのですから、第一条そのままでいいというのは私はどうも考えられないのですが、今度は田辺先生、そこをつけ加えて御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/108
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109・田辺勝正
○田辺参考人 非常にむずかしい問題で、なかなか大へんなことだと思うのでありますが、第一条でいわゆる所有というものと経営というものが一緒になっているのが最もいいものである、こういうことが規定せられておるのでありますけれども、政府の今度考えられておられる新しい案におきましても、日本の個人的経営というものが、やはり自作農経営というものが、いわゆる自立経営農家というものが中心になって、そしてこれがいわゆる主要なるところの内部の部分をなすのである。その他の部分はどっちかといえばつけたりというのでありますから、家族的のものというような観念がそこに相当あるのじゃないかということが考えられます。特にまた、共同経営、共同化と申しましても、あのいろいろな規定を、あるいは合名会社、合資会社というのもありますけれども、しかしそれについておるところのいろいろの条件というものを考えてみますと、やはり自分の土地を自分らの労働で耕す、そうしてできたところの収益を各人によってこれを分配するということの思想というものは、従来の自作農の観念を拡大したところの一つの範疇に属するのである。それからもう一つは、先ほど言ったように不在地主ができるのじゃないかなんて言いますけれども、ここの信託によってできる不在地主というものは、これは従来の個人的関係の小作農あるいは地主というものとは全然性質が違うのでありまして、しかも、これは非常に有限的な、きわめて短い性質を持っておる。それから、その貸した地主というものは、それぞれの小作の条件をきめる場合にそこへ及ばないというのでありますから、従来の小作の観念とは非常に違ってくるのでありまして、これは従来のような不在地主ができるとか、あるいは一町歩以上の地主ができるとかいう考えは、ちょっと理屈的に言うと違うのじゃないかということが考えられるのであります。
そういうふうに考えて参りますと、無理して第一条をそういじらなくてもいいのじゃないか、いじったが最後いろいろの問題がまたそこにできてきて、収拾がつかないものになってくるということから、なるべくあのところをいじらないで、実質において内容を充実していく、こういうふうな観念でないか。これは政府の考えをそんたくした私の考えでありまして、政府はどういうように考えておられるか知りませんが、そうでも言うより仕方がないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/109
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110・東海林稔
○東海林委員 どうもいろいろとありがとうございました。以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/110
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111・野原正勝
○野原委員長 安井吉典君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/111
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112・安井吉典
○安井委員 お疲れのようでございますから、一つだけ簡単にお尋ねしたいと思います。
東畑さんにお伺いいたしますが、農林漁業基本問題調査会等でいろいろ審議をされた中で、自立農家の経営規模はどのようにお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/112
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113・東畑四郎
○東畑参考人 これは人によっていろいろ違うのでございますが、一町歩以上三町歩とか、いろいろ出ておりますが、基本問題調査会においてどういう規模のものが自立農家であるということをきめたことはございません。ただ、どの程度の専業農家であれば、今日の段階において都市の勤労者と生活水準が均衡しておるかという場合の計算をいろいろやったときに、まず地域別にいろいろ資料を出してやったときに、二町とか三町とかいう一つのデータが出まして、それがまず均衡をしておるという事実を論じたことはございます。それが政府なりあるいは基本問題調査会の自立農家の経営規模であると言ったことは一度もないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/113
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114・安井吉典
○安井委員 きっちりした線をお出しになったことはないと言われますけれども、大体今の御答弁でも、一町とか二町五反とか三町というふうなお話でございますが、今の農業構造改善ですか、そういうような問題の中で土地の流動性をはかっていく、そのためには農地の制限がじゃまだ、こういうように私ども簡単にすぐいってしまうわけであります。もっともその農業構造改憲という言葉も、先ほどのお話のように私も、全く同感なんですが、普通言われる構造改善が、河野さんの構想になりましたら、どうも主産地形成に変わって参りまして、概念内容を変えなければならぬのでありますが、河野さんのは河野改善で、私どもの言うのは構造改善ということで言っておりますが、それにいたしましても、農地の問題の制限がじゃまだというふうにすぐに私どもそこへ持っていくわけであります。しかし、今の御答弁の中で、一町、二町五反、三町歩ということになりますと、一番大きなおっしゃり方でも三町歩。ところが、今の農地法の中でも、内地はたしか三町歩ということになっているはずです。だから私は、今政府などが言っている農業構造改善、そういうふうな問題をお進めになるにしても、内地平均三町歩というふうな、県によって少し違いますけれども、そういうようなことでちっとも差しつかえはないじゃないかというような気がするわけです。私ども簡単に農地の制限がと言いますけれども、これは実はもっとほかに問題があるのじゃないかというような気がするわけです。先ほど恩田さんでしたか、もう三町歩やそこらでもできないのだ、五町歩くらいなければできないのだという話もありましたけれども、しかしそんなに大きな農家を作るほど日本には農地がないわけです。たとい全国の農家に三町歩土地を与えるにしても、六百万町歩を三町歩ずつ与えれば二百万戸ですか。そういたしますと、六百万戸のうち四百万戸は土地が一つもなくなってしまう。首を切らなければならない。全部五町歩にするということになりますと、これは百二十万戸にしかならないことになってしまう。ですから、私はこの三町歩という制限をとって、これよりも上に上げるということについて、恩恵を受ける人は、今の農林統計で調べてみますと、三町歩以上所有している農家は、北海道も入れまして十五万戸ですね。その十五万戸について見れば、この三町歩という制限をとるということは実益があるわけであります。ところで、今二町五反くらいの自立農家を作るという政府のその方針をもし本格的に進めていくということになりましたら、むしろすでに三町歩以上持っている十五万戸の方は足踏みしておいても、それ以下の三町歩ないような農家をどんどん引き上げていく、それの方に力を入れるのが本筋じゃないか、そういうふうな気が私はするわけです。そうしなければ、とても百万戸だとか二百万戸の自立農家を作るということはできないと思う。そこで、全体的に経営規模をもっと広くしてやらなければいけないというふうな強い要請があるのは当然で、そのためにこそ共同化の方向に進むべきなんです。面積がなければできないのですから、上野さんの御意見は正しいと思うわけであります。そういうような考え方につきまして、これは時間もございませんから一つお考えをお漏らししていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/114
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115・東畑四郎
○東畑参考人 どうもむずかしい問題でございますが、現実に三町歩以上の経営をやろうという意欲がある農家、そういう経営を発展する意欲がある農家があります場合に、その制限をして、これをとめる必要は全くないのじゃないか。ここに技術発展というのが伸びてくるわけであります。そこで、それが農業で所得を得て、専業でいこうという場合に、三町歩という平均的な形において押える必要はない。それが昔の地主さんになるというのでなくて、経営自体として発展していく場合に、抑える必要はない。その他の農家も、それによってまた経営を拡大したり、協業化を進めていく一つの生産競争の材料になる。それをまず二町のものを三町にするようにしたらいいじゃないか、片っ方は押える、そういうふうにしたらいいじゃないかと言われましても、現実は同町にそういうものが進むのでなくて、発展に応じて進めていくわけでございますので、そういう制限を撤廃することの方がより経営発展にいくのではないか、こういうふうに私は考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/115
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116・安井吉典
○安井委員 農地の流動化がそういうような重石がなくなることによって進むということは事実だと思います。だけれども、今のままでやりましたら、これもやはり力のある人だけが進んでいくわけで、おそらく三町歩現に持っておるような人だけが伸びていって、それより下の一町や一町五反、それ以下の人が三町歩に達するなどということは、今の姿をそのままにしておいて、幾ら制限を十町歩にしようと百町歩にしようと、できる道理はないと思う。だから、農地の流動化を進めるということはわかります。わかるけれども、その流動化は比較的上の階層にとどまってしまう。ほんとうに農地の流動化を進めるのには、たとえば融資の問題とか、あるいは土地価格を適正にするとか、そういうところにこそほんとうの行き方があるのじゃないか。何か俗にみんな話し合うと、農地の流動化が進まない、それは制限が悪いのだとすぐ言ってしまうわけです。私はそれは誤りじゃないかと思います。だから、その他の対策が伴わなければ、こういうふうなことをやっても全く無意義ではないか。特に下層の方は、上の方がどんどん伸びていけば、あとの方は土地がなくなってしまいますよ、この狭い国土の中で。ですからそのほかの対策が伴わなければならないという考え方、それについてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/116
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117・東畑四郎
○東畑参考人 農地法の改正だけで私も日本の農業改善が進むというふうには考えておりません。おっしゃいますように、これが非常に重要な問題でございますが、これに付加されたいろいろな財政なり金融の措置が当然伴わないと、なかなかむずかしく、解決しないことはおっしゃる通りだと思います。ただ、ある農家の経営が発展するということと同時に、小さい経営規模の農家も、もっと資本を入れた高度な農業経営を共同でやっていくという競争でございますから、意欲が当然出るので、またこれが同時に生産協同組合を合理的に発展させるという一つの推進にもなるのじゃないか、両々相持っていくのではないかというふうに考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/117
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118・野原正勝
○野原委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人各位には長時間御苦労さまでございました。両案の審査に資するところきわめて大なるものがあったことと考えます。
次会は明十九日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時三十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005007X03319620418/118
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