1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十七年三月十四日(水曜日)
午前十時四十一分開議
出席委員
委員長 櫻内 義雄君
理事 上村千一郎君 理事 臼井 莊一君
理事 八木 徹雄君 理事 米田 吉盛君
理事 小林 信一君 理事 村山 喜一君
理事 山中 吾郎君
伊藤 郷一君 小澤佐重喜君
坂田 道太君 田川 誠一君
高橋 英吉君 濱野 清吾君
原田 憲君 松永 東君
松山千惠子君 南 好雄君
杉山元治郎君 前田榮之助君
松前 重義君 三木 喜夫君
出席国務大臣
文 部 大 臣 荒木萬壽夫君
出席政府委員
総理府事務官
(公正取引委員
会事務局長) 小沼 亨君
文部政務次官 長谷川 峻君
文部事務官
(大臣官房長) 宮地 茂君
文部事務官
(初等中等教育
局長) 福田 繁君
文部事務官
(管理局長) 杉江 清君
委員外の出席者
文部事務官
(初等中等教育
局教科書課長) 諸沢 正道君
専 門 員 石井 勗君
—————————————
本日の会議に付した案件
義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法
律案(内閣提出第一〇二号)
学校法人紛争の調停等に関する法律案(内閣提
出第一二一号)
義務教育諸学校の児童及び生徒に対する教科書
の給与に関する法律案(山中吾郎君外九名提出、
衆法第一三号)
教科書法案(山中吾郎君外九名提出、衆法第一
四号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/0
-
001・櫻内義雄
○櫻内委員長 これより会議を開きます。
学校法人紛争の調停等に関する法律案、義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律案、義務教育諸学校の児童及び生徒に対する教科書の給与に関する法律案、教科書法案、右四案を一括議題として、質疑に入ります。
質疑の通告がありますので、この際これを順次許します。米田吉盛君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/1
-
002・米田吉盛
○米田委員 まずお伺いいたしますが、本法案を成立せしめて適用せんと考えておられるような大学なり学校、事件、紛争、そういうものがありましたら御指示、御発表願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/2
-
003・荒木萬壽夫
○荒木国務大臣 当面率直に申し上げて名城大学の問題以外にはなかろうと思います。その意味でこの法律案そのものが名城大学紛争処理法案ではないわけでございますから、当然のこととしては申し上げかねることはありますが、御質問の御趣旨は、現にそういう対象となるようなケースの学校があるかというお話でございますと、名城大学以外にはなかろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/3
-
004・米田吉盛
○米田委員 今までに国立大学その他国立の学校で教員等を解職した実例が戦後十年間にどのくらいございましょうか。全然ありませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/4
-
005・荒木萬壽夫
○荒木国務大臣 具体的事項でございまして、私もはっきり念頭にないことでございますので、政府委員からお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/5
-
006・杉江清
○杉江政府委員 一つもありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/6
-
007・米田吉盛
○米田委員 一件もないわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/7
-
008・杉江清
○杉江政府委員 ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/8
-
009・米田吉盛
○米田委員 そこで法案についてお尋ねいたしますが、本法案の第二条三項によりますと「学校法人の役員又は評議員の間における当該学校法人の管理及び運営についての紛争をいう。」こういう定義があります。こういうことになりますと、学校法人の役員と教職員との紛争はこの法律の適用は受けない、こうなります。そういうことですから、さような事件があれば当然労働基準法、労働関係調整法等の週田川を受けるのだと思われるのですが、さしあたって本法を適用せんとする名城大学については、私が間接に承っておりますところでございますと、役員、評議員の間の紛争もあるかも存じませんが、労働基準法八条十二号による労働組合代表と教職員代表と学年代表、こういう三者で組織されている三者審議会というものが、学生の授業料を収納して労働金庫に供託し、労働金庫より借入金として学校を管理運営している、こういう状況であると私は聞いておるのであります。これは事実でありましょうか、いかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/9
-
010・杉江清
○杉江政府委員 お説の通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/10
-
011・米田吉盛
○米田委員 そうしますと名城の場合には、法人の役員、評議員間における紛争ばかりでないのでありますから、本法を適用して整然と解決ができるというものではなくなるのじゃないか、むしろ労働関係調整法の適用をも必要とする複雑な事件だと私は思うのです。こういう点についての御見解を大臣に承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/11
-
012・杉江清
○杉江政府委員 先にちょっと補足説明させていただきます。
名城大学の紛争の実情はただいま御指摘の通りだと考えます。ところでこの法律の建前は、学校紛争のすべてを対象にするのでなくして、最も特殊な性格を持っております学校法人紛争そのものを取り上げて規制の対象といたしております。その趣旨は、私立学校はあくまでその自主性を尊重するというのが現行法の基本的建前でございます。だから学校紛争は学校自体が解決する。ということはその学校を管理運営しております主体は学校法人でございます。だから主体としての学校法人のあり方をまず改善し、これを正しい姿に持っていくということが根本だと考えて、その面の規制をしておるのでございます。その主体が確立されれば、みずからの責任においてその法人紛争を解決する、これが私立学校運営の基本的立場になっておるのでありますから、そういう立場をとっておるのであります。ところでその役員対教職員の間の紛争その他は、ただいま御指摘のように労働関係調整法その他関係法律をもって律する場合も当然考えられるのでございますが、その面はそれぞれの関係法律にゆだねまして、この場合は私立学校の主体としての学校法人のあり方を改善し、正しい姿に持っていこうとするところにねらいがあるので、このような規定になっておると了解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/12
-
013・荒木萬壽夫
○荒木国務大臣 御質問の趣旨に対しまして明確に法律的な立場から解明するお答えは困難でございますが、要すれば他日に譲らしていただきますけれども、今政府委員からも申し上げました通り、本法案が対象としておりますのは学校法人そのものに内在する紛争の調停ないしは解決を期しておるわけでございます。御指摘の通りいわば使用者たる学校法人対被使用者たる教職員の間に好ましからざる不当な状態もしくは違法な状態等があることと考えられますが、同町にまた学生までもこの中に介入いたしまして、一種の学生と教職員による学校管理的な姿がありますことは、それ自体違法な姿であり、不当な姿でもあろうかと思うわけであります。その問題は、今も政府委員から申し上げました通り、別途の法令に基づいて処理さるべき事柄と存じます。でございますが、学校運営の責任体たる学校法人それ自体に内在する紛争が、今申し上げましたような学生ないしは教職員に関する問題以前の課題としてございますので、これを是正することが先決問題、その面が混乱しておりますがゆえに、事実問題としては学生ないしは教職員が不当な姿、あるいは場合によっては違法な姿にまでなってこざるを得ない原因があろうかと考えられるわけでございまして、まずもって学校法人それ自体を正常な姿にするということから出発いたしまして、おそらくはおのずから解決するんではなかろうか、もし解決しないとするならば、正当な学校法人の姿になりましたその理事者が、次の問題として解決せねばならない課題として残る。しかしそれも今申し上げるように、もとが正されれば解決は少なくとも容易になるであろう、こう期待しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/13
-
014・米田吉盛
○米田委員 御苦心の点は私も了とできるのでありますが、名城大学の紛争なるものは、御承知のようにしかく簡単に私は解決可能な問題とは思わない。今のように長年にわたって学校管理を三者審議会というものを設けて管理している。そうしてこういう紛争の発端も結局そういう雰囲気があって、こういう紛争が持ち上がっておる、こう私は三十年来学校運営の責任者としての経験から判断しております。こういう法律ができますと、逆に容易に紛争を起こして、そしてあわよくばこの処理法の適用を夢見て考えるというような不心得な者が出ないとは保証できないと私は思います。このことはわれわれ同僚の者が私的に会合して最初にこの種の法案を拝見しました一年ほど前にも、長らく文部省で要職におられた方で即座にそういう発言をせられておったことにも徴して、私らはそれらの点がうなずけると思うのです。私はそういうような点から、第一この法案に根本的に反対の立場を党内でとっておるものでありますが、かりに百歩譲ってこの法律が通過したといたしまして、現在の名城大学の学校法人理事は、仮処分によって裁判所が任命した理事だそうであります。その仮処分によって裁判所が任命せられた理事を、本法の十条四項によって所轄庁が解任する、それは一体可能でありましょうか。裁判所が仮処分によって任命している理事を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/14
-
015・杉江清
○杉江政府委員 可能でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/15
-
016・米田吉盛
○米田委員 それはどういう根拠でですか。この法律があるからですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/16
-
017・杉江清
○杉江政府委員 裁判所の地位保全の仮処分は、その訴え当時における事情において地位を保全することが適当と考えられた判決でございますが、この調整はその後の経過も考え、なお紛争全体を解決するためにどうしたらいいかという別個の判断に基づく行政処分でございますので、その裁判とは別個の立場において措置されるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/17
-
018・米田吉盛
○米田委員 これは私は重大な問題だと思うのです。裁判所が裁判権によってかりに仮処分としても、権限に基づいて選定した者を、行政処分によってそういうことが自由自在にできましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/18
-
019・杉江清
○杉江政府委員 その点は私ども法案立案の過程において、十分法制局とも相談の上でございますけれども、それは可能だという判断でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/19
-
020・米田吉盛
○米田委員 それでは私はこれはかなり無理な御解釈だと思いますので、また他日研究をしてお尋ねしたいと思います。
それから次は第四条の調停委員の数の問題です。これは三名以上五名以下としてあります。この五名以下とした根拠を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/20
-
021・杉江清
○杉江政府委員 調停委員の実際を考えましたときに、あまり多くの調停委員を設けることは、調停の実際にかんがみて適当でない、やはり五入以下が妥当であろう、そうかといって一人、二人でも適当ではなかろう、こういうふうな両方の判断から三名以上五名以下、こういうようにしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/21
-
022・米田吉盛
○米田委員 これは名城以外に適用しないということが、この法案の生命であるということをどこかにはっきり書いてあるなら別でありますが、二年間にどんな大きな事件が発生しないとも保証できない。五名でこういうことができる程度の事件の場合も多くの場合ありましょう。私はその点の数の問題について、これは見解の相違になりますから、しつこくは追及いたしませんが、いま少し弾力を持たすべきじゃないか。事件の大小に応じて各分野の専門の委員というものが、その事件処理に必要な場合も私はあると思います。そういうような点で少なきに失する、私はそう判断いたします。
それから調停委員の資格であります。多くの法律には学識経験者という非常に弾力のある言葉が使われております。あまり学識経験のない者も、人によっては学識経験ありという主観で任用になっている人もあるかもしれません。これは非常に弾力のある言葉です。学識経験の程度というものは、学識経験といったってぴんからきりまであるのです。こういう点が権限の非常に大きな割合にあまりにお粗末というか、雑駁ではないか、こういう感じが私は資格のところでいたすわけであります。要は判断の公正を期する、そうしてその調停委員の信用というものによって事件の解決が左右せられる、そういう場合が私は非常に多いと思うのです。世間的にいかに著名な人でありましても、公明な人である、人格の高い人であるという点に疑いを持たれるようでは、私は調停の使命は多くの場合疑われて達せられないだろうと思うのです。ほかの問題における従来の事例もそういう場合があると思います。こういう点から私は、資格についてただばく然と学識経験者から選ぶ、それは文部省の知能を信頼せいといえばそれまでであります。それなら白紙委任でも何でもいいということにも、だんだん極論になるわけであります。事柄の性質上ここらは微に入り細にわたり客観的に信用を高めるような条件をもう少し用意することが、究極するところ、万人を納得さして解決に向かう結論に達すると私は思う。こういう点については、立法技術の上に急いでやられたのかもしれませんが、大学というもの、教育機関というものに対する認識の相違だろうと私は思うのです。裁判官でありますと、厳重な試験制度によって、その知識能力というものは、御承知のようにある水準を持っておる、身分の保障もある、その公正さというものは少なくも現段階で可能な範囲保障されている。ところが、それにも匹敵し、もしくはもっと簡単に大きな権利義務に関する問題を一応解決する調停委員でありながら、そういうような資格の問題が、ただ従来の普通の委員を選ぶときと同じように学識経験者、これではあまりにばく然とし過ぎておるという感があるのですが、これらについていかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/22
-
023・杉江清
○杉江政府委員 ただいまの御趣旨はよく了解できます。ただ立法技術の問題といたしまして、これを具体化することは非常に困難でありまして、他の例等におきましても、この種の委員の選考については、大体このような表現をとっておるわけでございます。具体的事件の処理にあたって事件ごとに選出される性格のものでございますので、いろいろなケースにおいてその場合における最も適当な人にお願いする、こういう性質のものでございまして、何か一般的な基準ないしは形式的な基準というものでは律し得ない性質を持っておるものであります。もちろんこの選考にあたりましては、この調停委員の立場の重大さを考えて、人物、識見等においてすぐれ、またその具体的事件を処理するのにふさわしい人物を慎重に選ばなければならないのは当然でございますが、法律の規定としてはこの程度にとどめることはやむを得ないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/23
-
024・米田吉盛
○米田委員 文部大臣の御見解も一致でございましょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/24
-
025・荒木萬壽夫
○荒木国務大臣 米田さん御指摘のお気持はわれわれもよくわかるのでございますが、今政府委員からも申し上げましたように、こういう場合の通例の表現に従っておるわけでございます。だからこそ、問題のというか、調停委員の権限なり責任の非常に重大であることにかんがみての御疑念を御質問に相なっておると思います。今米田さんおっしゃったような要素を十分考え合わせまして人選をしなければならない責任が加重されることを思います。これは当初もお述べになりましたように、政府当局を御信頼願いたいというふうなことになるわけでございますが、御信頼願うにいたしましても、今お話しのようなことを十分念頭に置いて、この問題の解決にふさわしい委員を人選する責任を感ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/25
-
026・米田吉盛
○米田委員 大へんしつこくなって、同じ与党で申しわけないと思います。しかしこれは事重大な問題であります。まず数の最初の問題、これの見解の相違と、それから従来文部省が、こういう問題がどのくらいか知りませんが、御選定になったいろいろなケースがあるだろう、そういうような点に私らが全幅の信頼を持っておれば、率直に申して、こういう質問は出ないはずであります。こういう点から、あまり十まで全部を私にしゃべらせないで、一つお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/26
-
027・杉江清
○杉江政府委員 名城大学の紛争の問題に関連して、かつて事実上の問題として、文部省が調停委員三人をお願いして、その解決に当たったわけでございますが、それが成功いたしませず、このような基礎を設けて処理しようということでございますが、今後どのような情勢になるかについては、この法律によりまする新しい措置でございますので、今の御趣旨をくんで、正しく慎重に調停委員会をやられることと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/27
-
028・米田吉盛
○米田委員 この問題について、趣旨はわかるが、法文にそういうことは書きにくいし、書かない、過去のことはともかくとして書けないと、こういうお考えでございますから、これ以上私は申しても仕方がないが、こういう相当無理と思われる法律を作る場合の心の用意が足らない。先ほど申すように、教育というものに対する認識の違いだということを申し上げると言葉がきつくなりますが、これでいいのだ、こういう見解、判断、これではいかぬのだ、こういう見解の相違があることを明らかにしておきます。多くはそういう分岐点が物議をかもすわけです。事務的に、あの人はどういう地位にあるから、われわれがその地位に任命しておけば私らの責任は一応ないのだ、こういう考え方では、調停を受ける方の立場に立てば、それでいい場合ばかりはないと思います。最も手腕がある人よりも、人格高邁な、あの人の言うことならというような人でなければ長年の紛争というものは解決できるものではありません。何々の会長だから、そういう形式一点ばりで今までたいていは文部省のいろいろの役職、こういうような形のものを御任命になっていると思います。またあなた方としたらそれでいい。私らはそういう立場の人を選びました、これで済んでいると思う。ここらが一番かぎになると思うのです。それでこれは相当に重く、もしこういう法律が通るとすれば、これが非常に大切なんだ。私はこう考えるがゆえに、ここをしつこく追及するわけなんです。局長、大臣、次官は終生おやりになるわけじゃないのですから、これはよほど考えなければ、たとえ時限立法といえども大へんなことになると思います。その次に、すべて調停のような法案というものは、原則に対する非常手段です。本来権利義務についての争いというものは、憲法に保障された原則に従って、裁判所による裁判を受けるのが原則なんです。しかし、より高い公共福祉の立場から、やむを得ず非常的にこういうものを例外的に認める場合もなきにしもあらずだと思う。これは全くの例外中の例外だと思います、かりにあるとしても。そうすれば、その基本原則を貫く意味において、少なくもどういう委員が調停委員に任命されたか、その顔ぶれを見て、調停を受ける人、争いの当事者が一回や二回は拒否権を行使するくらいの思想、教育、見識に対する考えというものをあなたの方にお持ち合わせがないから、そういう用意の規定がない。これで一体教育というものを正しく考えていると言えましょうか。戦時中のような工合に、右へならえでついてこいということは、これはもう簡単だと思いますが、今日はそんな国家権力万能の時代でないことはもとより御承知の通りである。しからば原則に対する例外中の例外規定をやむを得ず設けるのだという姿が、この調停委員の資格のところの条項にもなければ、一回の拒否権も規定の上にないというような点は、今私の言うような立場で指摘せられた場合に、どう答弁なさるか。どなたからでもよろしい、承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/28
-
029・杉江清
○杉江政府委員 委員の選考については、先ほど御指摘のような点を十分勘案して慎重に選ぶのでありますけれども、その上にその委員の調停を受けることを拒否する場合を認めますことは、紛争を遷延させる結果になることをおそれて今のようにしておるわけでございますが、それに関連いたしまして、この調停の手続については、相当慎重な段階を経て行なうし、それからまた調停の成立についても、当事者の立場を十分尊重し、また退職の人等については異議の申し立て等も認めておるわけであります。そういうような手続においては十分慎重な態度をとっておりますが、委員の選考そのものについて拒否権を認めるということは、迅速な紛争の解決ということから妥当でないと考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/29
-
030・米田吉盛
○米田委員 どうもその辺が最初から食い違っておる。迅速にやってしまう、教育なんか大したものじゃないのだとはおっしゃらぬけれども、下手をするとそういうような結果になるわけです。だから事教育、思想の問題については、文化国家というものは慎重な上にも慎重にする、そういう考え方は、自民党はもとより社会党も賛成のはずなのだが、社会党もこれは賛成して、この法律を大いに出せ出せとおっしゃるところに私らは合点のいかぬところがある。しかもそういうような用意が不十分である。一回や二回の拒否権を認めたからといって、どれだけ日にちが延びますか。そんなことで堂々たる文部省代表の教育的見解の答弁と受け取れますか。そういうことでは私は引き下がれないと思うんです。そういうことは見解の相違だけではないと思う。拒否権も何もない。どんなへんぱな悪癖を持っている人をあやまって文部省が選定なさっても、拒否権がない。切り捨てごめん、これは前世紀的態度ですよ。普通の事件と違います。これは事文教に関する問題です。だから最初から幅を持たせ、弾力を持たせ、用意周到におやりなさらなければ納得ができないのだという基本線から私は出発している。あなたは何でも事務的にぱんぱん処理していく、こういう考え方です。ごみをはいてきれいに掃除するという格好になるだけで、これは幅のない文化国家のやり方じゃないか。こういう考え方は今の憲法の建前から根本的にお心得違いじゃありませんか。憲法を読み直してごらんなさい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/30
-
031・杉江清
○杉江政府委員 憲法との関係でございますが、この法律は憲法にいう何人も裁判を受ける権利を奪われるものでない、この規定と何ら抵触矛盾するものではありません。調停とは別個に訴訟を提起することはもちろん可能でございますし、また調停の結果についてもそういった訴訟の提起を可能とするわけでございます。ただ調停といたしましては、やはりある程度きまりをつけていくということが必要でありますので、今のような委員そのものについての拒否権は認めなかったわけでございますが、ただその調停委員の職務は調停の成立ないし打ち切まででございまして、その後の解職等の措置は、その後におきます行政庁の、所轄庁の判断によって行なうものでございます。調停委員が直ちに解職等の措置を行なうべきでございません。調停は当事者の合意を必要とし、互譲の精神を基調として問題の解決に資そう、こういうものでございまして、その意味において、またその限りにおいて、このような制度で大体妥当であろう、このように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/31
-
032・米田吉盛
○米田委員 それだから私は言うのです。本来本人の自由意思によって、この調停委員の調停は多少無理であるが、まあこの人の調停ならいたし方ない、この気持が結局がまんすることになると思うのです。そこで資格の問題を私は追及する。人数の問題ももう少し弾力を持たしたいということを追及する。それから、初めからこの人はどうも適格でないと、調停を受ける方の者がはっきり考えている。それでもあなたがおっしゃったように、事柄が調停程度だから——調停といったってこれは職権調停ですよ。本人の申し立てだけでやる普通の民事調停とはだいぶ違うのですよ。そういうような調停であるにかかわらず、一回も拒否権を認めないというほどせっかちで急迫で、あなたの最後に求められるような姿が出るかということなんです。というものは初めからぶんなぐってばんとやって威圧して言うことを聞かしたのは教育にはならないと同じことで、やはりこれは広い意味のそれに類する仕事なんです。だから一回くらいは拒否権を認める制度を置いて、しょうがないと思わすような用意周到な規定をなぜお作りにならないか。そういう規定がないのは、教育の内容というものを軽くお考えになっていることになるのじゃないか、しかもそういうような精神が現在の憲法の基本ではないかということを私は突いているのです。あなたは事務的にお答えになるだけで精神論は一つもありません。現在の教育は形よりも精神が一番大切なんです。諸法令というものは、そういうものからやむを得ずして流れ出た法律であってこそ、教育に関する万人が納得するのです。不承々々でも納得する。その用意なくして何ぞ、何年来の名城の紛争がこんな一片の法律で解決できるでしょうか。私はそこを突いているのです。それに対するお答えにはなっていません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/32
-
033・杉江清
○杉江政府委員 御趣旨の点は、私は運用にあたって十分注意すべきことだと考えますが、やはりこの種の調停としましては、他の例もおおむねそのようになっております。やはりこの程度でいくことが妥当であり、他はやはり実際の運用にあたって十分注意して、なおその御心配のような点がもしありとすれば、その辺は委員の任命にあたって十分注意すべきでありますけれども、その調停の経過等において、ただいま御心配のような点があれば、その点を含んで文部省としてのあとの措置は別途考えられるべき余地もあるわけであります。ただこの際に委員そのものに対する拒否権を認めることは、制度として必らずしも適当でない、こういうふうに考えるわけであります。多少その点についての御見解において異なるものがあるかもしれませんけれども、あくまでも運用にあたって御趣旨の点を含んで解決にあたる、こういう気持でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/33
-
034・米田吉盛
○米田委員 私は政務次官には努めて直接質問はしないつもりでおりますが、お聞きのような見解の相違であります。執行手続きの政令等は何条でしたか、これに出ることになっております。そういうものについても今私の言ったような規定が、織り込まれるようなお考えはないだろうか、こういう点を大臣にお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/34
-
035・荒木萬壽夫
○荒木国務大臣 法律そのものに規定するのと同じ効果を持った規定はむろん書けないわけですけれども、米田さんの先ほど来の質問を通じての御懸念のお気持なり考え方は共感を呼ぶ点がたくさんございます。政令の制定にあたりましても、できることならばそういう気持を反映できるように検討さしていただきたいと思います。
同時に一言申し添えさしていただけば、御案内の通り一般に学校というものは学校みずからが自主的に、こういうことのないようにしてもらうのが理想状態だと思います。現行法は原則としてそういう気持でもって一貫して制定されておると考えられますが、最悪の場合もあるいはあるという予測をした痕跡は、文部大臣の権限として、どうしても最後の結論を出さねばならないときはその学校法人を解散させることができるという権限は一応認めておるわけでございますが、すでに数百名、数千名の学生がそこにおる。ただその管理運営、学校法人のあり方が適切でないために、せっかくそこにいるたくさんの学生に学びの場を与えないで奪いとってしまうということにいきなり持っていくことは、現実問題としてもほとんど不可能に近いわけでございまして、そういうことから何らか中間的な、学校法人そのものの命脈は保ちながら法人内部の不当もしくは不法な状態を排除する。一応正常な姿に立ち返らせる方法はないであろうかということがこの立法の根本の気持でございまして、あえて政府側が権限を拡大して私学の自由な学校運営に容喙しようなどという気持は毛頭ない。いかにして学校運営を学生本位に、あるいは社会の期待をつないでこそ学校法人が誕生しておるのであるならば、その本来の姿を取り戻して継続させる手はないか、そういうためのものでございますから、法文等のお説のようなこまかい心づかいがある程度欠けておろうかとも考えられますけれども、根本の趣旨がそこにございますから、少なくともこれが乱用さるべきものじゃない、はずもない、また調停委員の人選につきましても先ほど来のお話がありましたような気持をくんで入選さるべきものであり、人選するべく責任が加重された立場において善処せねばならぬと思うわけであります。そういうことをついでながら申し添えさしていただきまして、政令の段階等でできるだけの配慮をすべく検討さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/35
-
036・米田吉盛
○米田委員 ほかならぬ誠実な大臣の御発言ですから、そのままほんとうの研究と受け取ります。外交辞令でないものと受け取ります。
八条の四項の末尾に「当該受諾者の間に合意が成立したものとみなし、調停が成立したものとする。」この文言の意味は、調停が完全に成立したのであれば全当事者に成立したと理解すべきか、また十条あたりの規定と対比してみますと、必ずしもそうではないようにも見える。受諾した当事者だけの間に、合意が成立した者の間にのみ調停が成立したようにも見える。どうも調停がそういった半端な調停では大した意味もないと思うのですが、この調停が成立したものとするという意味の範囲、これを承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/36
-
037・杉江清
○杉江政府委員 この制度におきます調停の成立は、必ずしも当事者全員の同意のない場合、一部についての合意に基づくものでありましても、それが事件解決に資するということであれば、それを調停の成立とみなす、こういう考え方を持っておるわけでございます。この四項におきます場合も、当該受諾者の間において調停が成立したものとするわけでございますから、その受諾者が全員である場合もあれば、一部である場合もあるわけです。その一部である場合も、それがやはり調停の解決に資すると認めるときは、それを調停の成立として進めていくということが妥当である、こういう考え方に基づいておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/37
-
038・米田吉盛
○米田委員 そうすると、やはり十条に書いてあるところによって、同意しなかった者にはもちろん調停が成立したわけではないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/38
-
039・杉江清
○杉江政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/39
-
040・米田吉盛
○米田委員 この法案のように、主務官庁が団体の役員を解職する、勧告する程度でなしに勧告の上にさらに解任をする、こういう権限まで与えられているほかの例はどんなものがありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/40
-
041・杉江清
○杉江政府委員 解任を命じ、応じないときは解任する、こういう制度をとっておりますのは、国民健康保険組合法第九条の二項、三項に規定がございます。なお農業災害補償法の百四十二条六項にも同様の規定がございます。なお、解任を命じ、応じないときはという前提なしに解任できる規定はそのほかに数個の法律において規定がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/41
-
042・米田吉盛
○米田委員 私も実はそういうような関連法を調べさしてみたのでありますが、急にきょう質問することになりましたので、まだ全部調べておりませんが、しかし今まで調べましたところによりますと、これらの団体の役員が解任をせられる場合は、法令に違反するとか、不当な非行があるとか、そういうようないわばその者の責めに帰すべき理由があった場合に初めて解任、こういう規定に私が今まで調べた三、四の法律は全部そうなっております。ところがこの法案の解任をされる役員は、それとは趣を異にしまして、紛争そのものは必ずしも非行とのみは限りません。少数であっても正しさを守り通すというようなケースは、これは枚挙にいとまないのです。日本歴史をごらんになってもこれはたくさんある。そういうようなことから考えてみますと、今、例にあげられましたようなほかの法律の建前と違って、自分が非行をしないのにかかわらず、違法行為を自分がしないのにかかわらず、ただ法人の紛争の当事者であるというだけの理由で解任をさせられるという責任を負担するということが、一体真理を探求し、正邪を究明するところの教育の府においてそういう処断が正しいものでありましょうか、場合によっては。全部そういう場合とは限らぬでしょうが、ときには歴史をごらんになってる通り、そういう場合もなきにしもあらず、そのような、場合によれば乱暴なことも起こりかねないような、いわば整備の整っておらないような法律が一体日本の文教の将来のために必要でありましょうか、その点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/42
-
043・杉江清
○杉江政府委員 まず第一にこの調停は慎重な手続をもって進められるものでございますので、やはりその調停案は、多くの人の納得する、正しい者の味方をする調停になると考えられますが、なお、ただいま御指摘のような心配の点は、その解職は、その調停の成立または不成立のあとを受けて、所轄庁がその責任において判断するものでございます。しかもその判断は、その審議会の意見を聞いて、その上でそのような措置をとるものでございまして、その辺は十分慎重に審議されて最後の処断がとられるわけでございます。学校紛争の解決としては、やはりその法人の紛争全体を解決するということを考え、その紛争全体を解決し得ないような状態にある理事は、一般的にいえば不適格という判定も下されるわけでございますが、なお、特殊な場合においては、十分慎重な手続をとって解職されるのでございますから、御心配のような点は実際上は起こり得ないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/43
-
044・米田吉盛
○米田委員 これは大へん春めいた御答弁でございます。そういうことであれば法律も要らぬことになると思います。私がほんとうに日本の教学のために憂えますことは今申し上げた点なんです。教育というものは正義を探求する。技能だとかなんとかいいますけれども、終局においてそこなんです。それから歴史を顧みますと、多数の人が賛成することが必ずしも常に社会正義であるとは断定できない事例がかなりある。そういう場合に、あなたの今のお説からすれば、紛争の一当事者になっているような者は、多くの場合好ましくない。多くの場合そうでありましょう。それでよろしい。少数の場合でも、全くそうでない者を、文部省がそういうことをなさっていいのかということを私は聞いておる。私はそういう者が一人あってもいけないと思うのです。文化国家としてはそれはいけない。そこを言っている。今おあげになったようなほかの法令は、平素から政府がたらふく事務費その他の経費も負担しておる、いわば政府がかなりめんどうを見ている。そうして思想的に必ずしも教育その他のようなものばかりではない。健康保険だとか、国民健康保険だとか、さっきおっしゃったような鉄道の関係だとか、そういったようなものなんです。だれが見ても、思想の問題のように不明確に甲論乙論ある問題ではない。教育というものはそう簡単なものではない。これは歴史が証明している。ですから、そういう教育の場所で、一人でも何人でも、少数であるから、じゃまになるからたたき切ってしまえ、こういうことが文部大臣によって、あるいは地方長官によってなされる法律を、この文化国家の国会で議決していいかということに私は疑いを持つ。私は、反対なんです。これはどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/44
-
045・荒木萬壽夫
○荒木国務大臣 先ほどもちょっと触れたことでございますが、現在私立学校法第六十二条で、所轄庁が学校法人の解散を命ずることができるという権限を万一の場合に予定して規定しております。先刻申し上げましたように、その最後の法人そのものの解散を命ずる、元も子もなくするという以前の学校法人存続のための妥当な結論を得る措置としてこの法案を御提案申し上げておるわけでございますが、解散を命じますときには、学校法人が法令に違反した場合、解散を命ずるのでなければほかに処置がないというときに解散命令権がある。この法案もそれ以前の、法人の解散によらざる学校運営が正常に運営されることを期待する法律ではございますが、第一条の目的で、結局当該学校法人が法令の規定に違反するに至った場合以外は発動しないわけでございます。解散の場合は、一人一人の学校法人の理事者が違法、不当であろうとなかろうと、法人格そのものがなくなるわけでございますから、その身分も地位も一瞬にしてなくなるということすらも、学校なるものの公共性を重視して解散命令権が一応あると思われるわけでありますから、その趣旨はあくまでもこの法案にも受け継がるべきであり、第一条にその趣旨をうたっておると御理解いただけようかと思います。従いまして、その前提なくして、学校法人の理事者等がその個人として法令に違反したことなしに、いきなり解職されるということは、御指摘のように、不当だという判断が成り立つかと思いますが、それ以前に、学校法人そのものの公共性のゆえに、法人としての法令違反があった場合には、いきなり解散に至らないで、法人そのものを継続し、学生を含めました公共施設が生命をつないでいくことこそ妥当なりという前提において、この法案を御審議願おう、こういうことだと存じておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/45
-
046・米田吉盛
○米田委員 十条を読みますと、当事者が命令に違反した場合において云々、こういうような規定があります。それから、当該学校の正常な管理、運営をはかることができない云々、こういうような規定があります。その解職を命ぜられる人が、そういうようなことをしたかどうか、これは規定がそこまでくっついていないと思います。ほかの人たちがそうやった場合でも、これはさっき局長の言われたように、一人や二人が反対するために円滑な運営ができない、じゃまになる、こういうような見地からこの規定で処断できるのじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/46
-
047・杉江清
○杉江政府委員 それは規定上は、所轄庁の判断に基づいて最後の手段として、この法律に規定いたします諸般の慎重な手続を経て、その上、なお、その者を解職しなければ事件の解決することがむずかしいと判断される場合は、審議会の意見を聞いて、その上、所轄庁の判断によって解職できるわけでございます。そのときの問題として、その者個人が直接違反行為を行なっているというようなことでない場合もないとは言えませんが、しかし、その問題の解決にあたっては、やはりその役員のなしている紛争における役割、また、してきたこと等の総体を考えまして、不適格であるという判定を基礎にして、ただいまのような慎重な手続を経た上、解職の手続が進められ、その処分がなされるわけでございます。だから、法的にそのような場合は絶対ないという保証は、この規定の上からは直ちに出てきませんけれども、この趣旨からいって、当然そのような場合は運用上ないものにしていく、運用上それをなくするということが法の趣旨である、運用のポイントだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/47
-
048・櫻内義雄
○櫻内委員長 ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/48
-
049・櫻内義雄
○櫻内委員長 速記を始めて。
小林信一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/49
-
050・小林信一
○小林(信)委員 前の委員会で、昭和二十六年、二十七年に実施されました教科書給与のことを少し丁寧に聞いたのですが、これは今回の無償法案の出し方が、一つの宣言をして、これに必要な法律はさらにこの後検討する、それについては調査会を設けるのだ、こういうような法律の出し方でありますので、私は、政府がこれだけ教科書無償の態度をとるに至ったならば、かつてどういう形であれ、無償の態勢というものは一応はとったわけであります。従って文部省には、これに対する相当な検討というものも用意されておるはずなんで、従って今さら他官庁の行政官も頼んで調査会を設け、その中から無償の態勢というものを作るということは文部省としては不面目じゃないか、そういう点については十分検討され準備されておるはずなんだ、私はこういう見解で、前の教科書無償の給付のことについての経緯をお尋ねしたわけなんですが、残念ながらきわめて不明瞭なもので終わっておりまして、なおこの質問の中でこれを明白にしていきたいと考えておったわけですが、ただいたずらに時間をとるような形になっておりますので、これは省略していきたいと思うのですが、それでもなお念を押してお聞きしたいと思うのは、大臣もこう言っておられる。試みにやったんだ、試みにやったんだから時限立法のようなもので、法律自体の性格からいって、これがなくなっても仕方がないんだ、そのあとに何も残らなくても仕方がないんだ、こういうような見解を述べられておるけれども、もし大臣の言葉通りに考えていくならば、試みであるというならば、何かその中から教科書無償を行なう場合にはこうでなければならぬというものがつかまれなければならない。試みである以上、試験的である以上、そこにはそこから生まれてくるいろいろな経験というものが残されなければならないはずなんです。それを私は聞いておるのですが、残念ながらそういうふうなものがない。それから私は局長には、ことに無償の態勢から入学祝いになってきた、そうしてこれがなくなってしまった、その経緯は教科書に対するきわめて消極的な政府の施策を物語っておるものであって、何ゆえにそういう形をとったかということをお尋ねしたのですが、これも私の納得のいかない点があったために、局長にさらに御検討願いたい、こういうふうに申し上げておいたわけです。これをもし明白にしていただけるならば、もう一度御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/50
-
051・福田繁
○福田(繁)政府委員 この前にいろいろ御質問の点について私から申し上げたのでございますが、その点についていろいろ御了解いただけなかった点があったようでございます。これは当時の国会論議を通じてもある程度明瞭になっておるといいますか、昭和二十六年の法律の場合におきましては、これは先ほど御指摘の通りに昭和二十六年度限りの法律でございまして、時限法でございます。その昭和二十六年度に入学する児童に対する教科書の給与を行なうということでございますが、それにつきましては、考え方として憲法の義務教育は無償であるという、この理想に基づきまして、その理想をより広範に実現する一つの試みとしてこれをやるんだということをはっきり宣言しているわけでございまして、同時にこれはまたかねて子供に対します公共心の涵養と申しますか、そういった点から非常に有意義なものだというような考え方で進んでおるわけでございます。この点は時限法でございますけれども、そういう趣旨でもって極力やって参りたい、そうして十分検討した上で、二十七年度以降におきましてはこれをさらに拡大していきたいということは、当時の関係者が考えておったことだと思っております。この点は明瞭でございます。ところで二十七年になりまして、この法律が変わって参りまして、二十七年は新たに入学する児童に対しまして、児童の国民としての自覚を深めることに資するとともに、その前途を祝うために国が教科書を給与する、こういうふうに書いてございます。いかにもこれは二十六年と二十七年が変わったような表現になっております。若干私ども変わったとは認めております。しかしながらこの第一条の趣旨からいたしまして、やはり児童に対する国民的な自覚を深めるという趣旨におきましては、これはその根底におきまして憲法二十六条の義務教育は無償だという思想があるんだ、こういうように当時の大臣も明言されておりますが、私どもそうであろうと考えております。従って二十六年から二十七年に移りました際には、考え方としてはそういう考え方で進んだわけでございますが、これにつきましては当時の政府関係者の言明を見てみましても、全面的にやりたい気持は持っておったけれども、財政的な理由によってこれが実現できなかったのだ。それは事情の変更であった、こういうように言っておるのでございます。そういった点から申しまして、義務教育無償の原則に従ってこれをより拡大していきたいという考え方でそういうふうに努力されたと思いますが、財政的な理由等によって事情が変わってきたので、一学年に入学する児童に対しまして国語、算数の教科書をお祝いとしてやる、こういうような形になったのでございます。それがいきさつであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/51
-
052・小林信一
○小林(信)委員 先日より発展したところは、経済的な事情だから、こういう言葉が出てきたことが局長の答弁としては発展したところだ、進展したところだ。経済的に不可能であるならこれはやむを得ないことだと思うのです。しかし私の立場で言わせれば、政府がこれだけよいことだ、そして試みとして出発した以上経済的な事情でもってその信念を曲げるというようなことは非常に弱い政策であって、それは政策全体からいえば文教行政が特に弱い、こういうふうな指摘まで私は受けると思うのです。従ってこれがすべて私たちがこの法案を審議する土台だという立場は検討するものからすれば、そういう弱い考えで教科書無償というような宣言をして、そして調面会によってこれから答申されるものを採択してその制度をきめるのだというようなお考えであるとすれば、どんな答申が出てくるかわからない。せっかくの文部省の意図というものも財政的なものからちょっと検討すればこういうことになりますよ。おそらく今の情勢では全額を国庫でもって負担するというようなことはなかなか困難なことです。さりとて地方財政に半分これをゆだねるということも地方財政はこれは決して賛成しないところだと思うのです。というようなことになれば、何か折衷案があるだろう、やっぱりこれは財政的に困難であるからしばらく向こうに遷延しろ、あるいはこれをうやむやに葬ってしまえということがないとも限らぬわけですね。財政的な理由からこれほどまでに決意したものがなくなったというようなことは、やはり私たちは調査会というものを設けてやれるというようなことについて疑義を持たなければならないわけですね。しかしとにかく局長が財政的な理由でこの問題が雲散霧消した、朝令暮改のものになったということを発言されたということは、率直に御意見も出されたことを私は非常に了とするわけなんです。しかしやはりその経緯に納得できないことは、昭和二十六年に出されたものが昭和二十七年にはこういうふうになった。それは法律が変わったのだ、こういうふうにあなたは説明される。なぜその法律を変えなければならぬようになってきたかということを私は尋ねておるわけなんですが、それがやはり経済的な事情であるということならそれでよろしいわけですが、しかしそこには今のように非常に思いつきの場当たり的の教育行政が行なわれているということを国民の前にさらけ出したとも言えると思うのです。
そこで私はもっと、あなたに先日お聞きしたがったのはその間財政的な面もさることながら、教科書無償を行なう場合のいろんな機構ですね。こういうふうなものに対してどういうふうな反省を持っておられるか、どういうところが検討されておるかということを実は聞きたかったわけなんですが、おそらくもう何も大蔵省や自治省の御意見を承る必要はない。皆さんもそれが商売でもってやっておるのだから、何も調査会を持たぬだって、われわれの考えで前の経験があるのだから十分にやれますよというような態度が文部省に何でなかったか、調査会にゆだねるなんということは今まで怠慢だということにも私はなると思うのです。
そこで先日これは局長が私の質問に対して何か弁解するような様子で言われた点に、無償の態度から社会保障の態度に変わったのだ、それで入学祝いはやらなくなったけれども、そのかわり生活保護の家庭の子供に対しては支給するようにしてもる。従って態度が社会保障の形に変わったのだ、こういうことを言われたんですが、この点は、これは打ち消しますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/52
-
053・福田繁
○福田(繁)政府委員 まず最初の方の御指摘になりました点について、もう少し補足さしていただきますと、二十六年の場合におきましては、これは確かに義務教育無償の理想を広範に実現するということを冒頭に第一条に書いてございます。従ってこれは二十六年以降の法律としてさらに恒久的な制度に直す場合におきましては、あるいはこの第一条のような規定を置きたかったということを当時の関係者は考えておったと思います。しかしそれが今申しましたような財政的な理由によりましてその点は変わって参ったわけでございますけれども、その考え方としてはやはり二十七年の恒久法の場合におきましても、第一条において国民としての自覚を深めるためにやるんだ、こういうように明言しておるわけです。従ってその点は若干のニュアンスの差なり、趣旨について若干の違いはあると思いますけれども、この点はやはり根底にはそういう試みをやりたいということを思っておったんであろうということを考えるわけでございます。当時の大臣あるいは政府委員の考え方もそうであったと思います。ところで今度の場合におきましては、御承知のように第一条に持って参りまして、義務教育小学校の教科用図書は無償とする方針を確立してこれを明らかにしております。従ってこれは別に時限法でもございません。そういう点におきまして私は従来の法律と非常に違っておるということを考えておるわけでございます。二十六年の場合は一年限りのものでございます。そういう恒久的な考え方ではなかったと思います。その点を申し上げておきたいと思います。
さらに二十七年のお祝いの法律が、後に二年ほどたちまして、補助金等の臨時特例による法律によりまして効力を停止されております。そのときの停止された理由も財政上の理由で停止されたと思いますが その後におきまして三十一年にこの法律が廃止されたのでございますが、それは就学困難な児童のための教科用図書に対する国の補助に関する法律という形で出て参ったのでございます。私がこの前の委員会におきまして社会保障的な考えにこれが変わってきたと申し上げましたのは、二十七年、八年まではそういうお祝いとしてやるという法律のもとに実施されたのでございますけれども、それがまたその後の事情の変更によりまして、三十一年には貧困な子供にもあるいは富裕な家庭の子供にも、全部一律に教科書を国語と算数だけをやるということは、政策としては不徹底である。むしろ準要保護児童に対する教科書の支給を拡大していく方が適切である。こういうようなそのときの事情に応じましたそういう理由によって、就学困難な児童のための教科用図書の給与に関する法律というものが制定されたわけでございます。そのことをさして私は申し上げたつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/53
-
054・長谷川峻
○長谷川政府委員 ただいま政府委員からいろいろ御答弁申し上げましたが、二十六年あるいは二十七年にそれぞれの理由をつけてやったことが影が薄いじゃないか、理由が薄弱じゃないかというような御趣旨が先日以来議論となっておりますけれども、やはりそういうものの積み上げの中に、義務教育が無償の理想に近づくという一つの積み上げが行なわれた。しかしながら、ときにはお祝いなりあるいは国民に自覚をもたらすようにというふうな傾向でやられたことも——三十一年には、政府委員の説明のように、一年生の国語、算数だけ無償でやることよりは、現行の準要保護児童にやった方がいいのじゃないかということから教科用図書の給与が計上されて今日に至ってきたわけであります。そこで、今度の三十七年度には、御承知のように、来年の一年生の予算を全部計上しておりまして、さらに第一条に、御承知のように、従来と違って無償の原則を宣言して、それに向かって御審議を願って無償を実現しよう、こういう趣旨でありますから、従来とは——積み上げの中において拡大され、そしてりっぱなものをこの際に作ろう、その間、しかし何さま、二十六年、二十七年、あるいは三十一年の変遷などを見ましても、これだけの大きな問題でありますから、調査会を作って、そして、その方法その他については、私の方としてもいろいろ研究題目がありますが、大勢の委員さん、見識の高い方々に御議論を願って、その無償の原則をこの際はっきりやっていこう、一方においては、一年生の予算はそれでちゃんととっている、こういうふうに、大きな足どりをもって進む。その経過についてよく一つ御了察いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/54
-
055・小林信一
○小林(信)委員 それは次官のおっしゃる点もよくわかるのですが、政治の歩みというふうなものから考えれば、こうもあるものかとも思えます。
〔委員長退席、八木(徹)委員長代理着席〕
しかし、その中に流れるものは、われわれとしては、文教行政の弱さというものがどうしても指摘されなければならない。
それからもう一つ、やはり今度の調査会を設けるにあたっても、経験があるのだから、もういつ何どきそういう態勢が出ても、十分応ずるだけの準備は整っておるというものがありさえすれば、今さら調査会というふうなものを出して、あなた自身は調査会に対しては自信を持っておられるかもしらぬけれども、今までわれわれが、わずかな時間ではあるけれども、大臣並びに関係者に質問をして参るところでは、この調査会というものはきわめて不明瞭なものであって、今、次官のおっしゃるような純真な信念的なものを持ったものに受け取れないわけなんです。従って、私はよけいな、蛇足のような質問をしますが、これはやはり責任というものは政府の方にあるのだ、こういう法案を出してくるところにこういう疑義が生まれるということをやはり承知してもらわなければならぬはずなんです。もし、そんなことはないというならば、少なくとも、無償は地方行政なんかに負担させない、国家が全部やりますというくらいのことを次官ぐらいからは明瞭にお答え願ってもいいと思うのです。あるいは、無償というこの原則を宣言した以上、そんなに遠い将来に実施はしない、近い将来に行なう、しかもそれは毎年一年ずつ実施をしていって、九カ年によって全部を完了するというようなものじゃないのだというくらいのことが御発言願えなければうそだと思うのですが、今のところ、私たちの推測では、まだまだ大蔵省あたりの反対というものが相当あるために、そうはしたいのだけれども、言明できないのだというのがおそらく文部省の今のところの態度だと私は思うのです。そういうところが私たちの非常に残念なところで、やはり政治というものは常に発展しなければならない。ところが、前回のやってきたものは、みんなこれが後退するような形で足どりが今見られるわけなんです。だから、やはり今度の調査会というようなものは非常に危険なものにわれわれには考えられるし、そういう点から質問をして参っているわけですが、なるべくそういう点は早く片づけて本論に入れとおっしゃるかもしれませんが、あなた方がそういうような態度で出てきているので、質問をせざるを得ないわけです。十分あなたの方で御了承願いたいと思います。
そこで、今局長のおっしゃった点をもう一ぺんこちらから反問いたしますが、あなたの御答弁は、就学困難な子供たちに教科書をやった方がいいじゃないかという考えと、それから財政的な面で、入学祝いから生活保護家庭の子供に支給するようになった、この方がいいから財政的な面で、こういう御説ですが、私としては、文部省の態度とすれば、かえって、先ほど言われた無償の態勢から社会保障の態勢に移ったのだということを言った方がいいと思う。なぜかといえば、そこに信念がある。ところが、せっかく、教科書無償の原則にのっとって、これから順次拡大して全学年全教科に及ぶというようなことを、法律にはうたってないけれども、あのときには政府側はとうとうと述べたはずなんだ。だが、それがそういうふうな経済的な情勢で変わってきたのだというようなことでは、文教行政は非常に弱いものだ。これほど父兄が関心を持ち、そうしてこれをすることによって教育の効果を上げることができるというような精神を持ちながら、それが経済的なもので常に後退していかなければならぬというようなことは、文部省の弱さを国民に披瀝するようなもので私は非常に残念だと思うのですよ。あなたは、入学祝いの問題は入学祝いだというふうにおっしゃっておりますし、先日あなた方がこの法案を出すにあたって、法律自体がそういう性格でありますから聞いてもしょうがないのだというふうにおっしゃっておりますが、前回の入学祝いに教書科を与える法律では、第二条で、「国は、毎年度、小学校並びに」云々と書いてあって、「毎年度」ということをうたってあるのです。だから、これは永久的な、恒久的な意図をはっきりこの法案の中に示してあるのです。さらに質問の中から私たちが見ますものでは、私もそのときに確かに聞いておって知っているのですが、これは自民党の井出委員が質問しているのですけれども、「昨日の御説明を伺っておりますと、この国語ないし算数の教科書だけを、一種のはなむけといいますか、新入学のお祝いのようなつもりで贈られるという感覚もあるようですが、そういう感覚でなしに、憲法によって義務教育は無償で行うというような観点から、これをさらにもっと拡大する。単なる贈りものだという感覚では私は困ると思うのです。少くとも一学年のものは全部、あるいは続いては二学年、三学年に及ぼす、こういう強い決意で当っていらっしゃるか。単なるのしをつけたという感じでは、私は物足らないのですが、その点どうですか。」こういう質問に対して、そのときの田中初中局長は「お話まことにごもっともでございまして、私どもの気持といたしましては、義務教育無償の原則にのっとりまして、将来文字通り無償になるように、教科書等についても全教科にわたるようにいたしたいと考えております。ただ先般御説明申し上げました趣旨は、きわめて遠慮いたしまして、この程度のものを負担いたしますのに、あまり無償の理想を掲げますのも、少しどうかと思いましたので、きわめて内輪に表現したわけでございます。」もうこれから察しても、十分そのときの政府の意図というものは、入学祝いになりましても、義務教育無償の原則にのっとって、教科書は全学年、全教科にわたってやるように努力するということが約束されているわけなんです。決してその法案にうたってあるものが単なる入学祝いとか、あるいは時限的なものであるとかいうふうなものでなかったはずなんです。それがどうしてこういう形になってしまったか。もし経済的な事情でというならば、これこそその経済事情というものを政府は検討せずに、思いつきでもって教科書無償あるいは入学祝いというものに足を踏み込んで、そうしていよいよのっぴきならなくなって、これが雲散霧消するに至ってしまった。こういうふうにこの経緯というものを考えていかなければならぬわけなんです。幾ら今回りっぱな宣言をしたといっても、その宣言を、こういう前科から考えれば、その通りに受け取れないわけなんです。従って、あとの方にあります調査会というものに私たちは非常な疑義をはさむわけなんですが、そこで調査会の問題について少し承って参りたいと思います。
そこでこの無償という問題、非常にこれは疑問が多いと思うのです。先日文部大臣も答えられましたが、この無償に対してはいまだ大臣としましても一貫した、確立した考えは持っておらぬようだ。地方財政に一部負担させる場合はどうだとか、あるいは全額国庫負担でいくのが一番いいけれどもとか、あるいはその折衷案でというふうなことも言っているようですが、確たるものがおありにならないようなんだ。自分自身は持っておるかもしれぬけれども、これからどんな壁にぶつかるかわからぬというような予想のもとに、きわめてあいまいな発言をされておる。この点に対して何が一番理想であって、しかしどういうことがいろんな諸情勢から考えられるかというような点、今持っておられるものをお聞きしたいと思うのです。と同時に、今度は支給する場合も、給与の場合もあるし、全然くれてしまう場合と、そして貸与する場合と世界的な事例からもうかがえるわけなんですが、こういう点に対してどういう見解を持っておられるか、これを一つ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/55
-
056・福田繁
○福田(繁)政府委員 先ほど御指摘のありました国会での論議でございますが、確かに御指摘の通りで、当時の大臣あるいは政府委員の考え方は、できる限りこれを全面的に全教科にわたって無償としたいという気持を披瀝しておることは、これは事実でございます。その後になりまして、この補助金等の臨時特例に関する法律によってその効力を停止いたしました際にも、これは二十九年、たしか大達大臣のときであったと記憶いたしておりますが、そのときにもこれは緊縮財政のためのやむを得ざる措置であるので、なるべく早くこれを復活したいということを大臣はお述べになっておるわけでございます。従って、そういう教科書の無償の給与という点につきましては、これは一貫して当時もそういう処置をやることを考えておったものと考えております。
今、調査会の問題につきまして関連してお尋ねがございましたが、全額国庫負担がよろしいか、あるいは半額地方財政に負担させる方がよろしいかという議論につきましては、私どもの見解としては、全額国が持った方がよろしいという考え方を持っておるわけでございます。しかしながら、一方におきまして、地方財政も最近は非常に好転しておるからという議論もあるわけでございまして、従って、そういう点からいたしますと、これは政府で決定すべき問題でございますので、私どもとしては、その点も調査会に御検討を願いたい、こういうような考え方でございます。
それから給与にすべきかあるいは貸与にすべきかという問題でございますが、これはお手元に差し上げました資料でおわかりのように、世界のいろいろたくさんあります国の中でも、現在やっておりますのは大体貸与制度が多いようでございます。しかし、これはいろいろ国によって事情が違うのではないかというように私は考えるのでございまして、この貸与がいいか給与がいいかということも、私どもとしては、調査会の結論を待ちたいと思いますけれども、一応考えられますのは、現在のような教科書でございますと、子供に給与した方がいいのではないかというふうに私は考えるわけでございます。一例を申し上げますと、子供は教科書を買いますと、うちへ持っていってやはり予習、復習もやります。それからこれは特に水害、災害等の場合に起こるまれな例でございますけれども、子供というのは教科書を非常に大事にするようでございます。何をおいても避難する場合には一番先に教科書を持って避難するという事例も再々見受けられます。私は、そういう点から考えますと、教育的にも教科書を給与する方がいいのではないか、こういうように考えますけれども、いろいろな意見もあると思います。そういう点につきましては、教科書制度自体として、一つ調査会に検討してもらいたい、こういうような考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/56
-
057・小林信一
○小林(信)委員 今前段のお答えは、また局長はこれにどうもこだわっておるようですが、私どもますます納得がいかない。緊縮財政をとられた、だからなくなった。しかし、一貫して教科書無償給与という態勢には変わりはないのだ。こういうことは軽々に言われれば今後もそういうことになるおそれもあるし、また教育行政しかもこれほど国民の要望の的であり念願であり、悲願である問題に対して、文部省が今もそんな態度でおるのかということになれば、文部省はますます信頼されなくなる、さもなくても信頼されておらない。もっと文部省は強くならなければならないと思うのですよ。ことに私は、この教科書の問題は、本会議の質問のときに申し上げたように、本をくれるのではない、物をくれるのではないのですよ。今も局長は「ようだ」という言葉で表現しましたが、子供が教科書を大事にするということはわれわれおとなの想像できないくらいのものなんです。ほんとうに教科書という物質じゃないのです。それがほんとうに国から給与されるというようなことになれば、どれくらい子供に夢を与えるかわからないのです。文部省はそういう気持で常に強固な態度をこの教科書問題に関しては持たなければならない。勤務評定や学力テストに対する熱意以上に確たるものを持っていなければいけないと思うのですよ。それが今のような、私の質問に対して、さらに弁明されるようですが、かえって国民に文部省は弱いというような印象を与えると思う。私は、それよりももっと大事なことは、あれだけの仕事をやったんだ、あの中に教科書会社との関係とか、あるいは地方財政との関係というようなことで、今後教科書を無償にするような場合にはこうしなければならぬというものがあるときに十分準備され、今日そういう点については十分な検討ができておるというものがあるだろうということを私は実は一生懸命に聞き出そうとしておるわけなんです。ところがどうもあなたたちがそれをあいまいにしておるということは、調査会というものをやはり認めなければならぬという気持でおっしゃっているのかもしれぬ。局長はそうでもないかもしれませんけれども、教科書課長以下、その役所に働く人たちは、ほかの役所の人たちの意見を聞かなくても今度こそりっぱにやってみせますというところがあると思うんですよ。だから問題は、大臣以下文部省の幹部がしっかりした考えさえ持てば、調査会など持たずに、宣言と同時にりっぱな法律を用意されて、近々実施されるという希望を国民に与えることができたろうと私は思うのです。
そこで、後段で御答弁願いました無償の問題についてお話がありましたが、これから審議をしていく際に、どうも文部省がこういう発言を先にしてしまうと、調査会に対して何か越権のようなことになるから差し控えておこうというような気持をどうか一つこの際この委員会ではなくなして御発言願いたいと思うんですよ、おそらく文部省としてないはずはないのです。信念があるはずなんです。それを披瀝されて私は差しつかえないと思うんですよ。それが諸般の事情でもってほかの方向にいかれることは、これは仕方がないことです。そのときにはまたそのときで法案が出てきますから、国会でもって問題にさえすればいい。だから文部省としての意向というものは率直に言っていただきたいと思うのですが、全額国庫が負担をすることが理想だ、これはもうおそらくだれも異議ないことだと思うのです。地方財政が好転しておるというようなことをもしどこかの省でもって言うならば、これは非常な言いのがれであって、地方財政が今どんな事情であるかということを私たちは深刻に考えなければならぬと思うのです。そこへ持ってきて教科書の半額を負担せよということになれば、相当な反発がある。反発があればまたこれは遷延されるか、実現不可能になる。だからやはりここに重点を置いていかなければならぬし、そうしてあなたたちは前回と同じように、法案には出していないけれども内容においてはこういう信念を持っていますということで、憲法の精神にのっとっておるんだと今総理大臣を初め言っておりますが、明白にしないということは、やはり今後のことを憂慮するからだろうと思うのですけれども、それは弱いという印象を受け、ざるを得ないのです。だから私はこの金額の問題は、そういう点で金銭の出納処理というような問題から、全額国庫が負担をした方がいいという問題等もあるだろうと思うのです。そういう点は局長はどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/57
-
058・福田繁
○福田(繁)政府委員 いろいろお述べになりました点につきましては私ども全く同感でございますが、この全額国庫負担がいいということにつきまして、これは前回の経験にもなるわけでございますけれども、半額国が負担をいたしまして市町村に補助するということにつきまして、これはこの前の委員会でも申し上げましたが、補助でありますので、当該市町村が給与をいたしませんと補助ということはできないわけでございます。従って全部の子供にやるという点において、制度としてはどうであろうかという点は私どもも考慮いたしたわけでございます。それからまた市町村に補助いたしますので、支払いは市町村から会社の方に支払うということになるわけでございまして、その間の手数あるいは事務的ないろいろ会計上の技術的な問題としては、国から直接発行会社に支払いをなすという方が、私どもは簡明でいいのではないかというように考えております。そういった点でも全額国が負担するという方が手続的に非常に煩瑣なことがないというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/58
-
059・小林信一
○小林(信)委員 私たちがあの当時漏れ聞いたわけですが、その場合にはやはり今のところが非常に支障になって町村の支払いが非常におくれたり、また国が責任を負っているのだというところで支払いをしなかったというようなことがあって、そのために教科書会社の方から非常に困るという陳情があって、政府の方はいわゆる補助の形で半額国庫負担するということはとうてい不可能だというような技術的な面から、最初の教科書無償の問題が挫折したというふうにも聞いているのですよ。従って今後教科書無償を行なう場合に、そういう前に失敗したものをおそらく文部省としても採用はしないと思いますが、それに対してもっと十分な、今度はこうやらなければいけないのだという、そういう検討をされたものがあると私は思ってその点をお聞きしたかったわけです。おそらく調査会を作るという以上はあまりしさいにわたって検討してはいけないというふうな態度があると思うのですが、これはこの際ぜひ抜いて御発言願いたいと思います。
これから給与にするか貸与にするかという問題ですが、これは先ほど局長のおっしゃった児童の教科書に対する気持というふうなものは十分考慮されなければならぬと思うのです。私も一つ例をあげて申し上げれば、これがどういうふうな形で今国会で審議されているかというようなことは、素朴なお母さんたちは考えておらずに、ただ教科書の問題が国会でもって問題になったということだけで非常に関心を持ってきたわけなんですが、先日も相当な——これは農村においては中流の家庭なんですよ。その家庭においてすらも、教科書問題についてはこんな話し合いがされているわけなんです。三人の子供がありまして、一番最後の子供がことし入学するわけです。そこで長男の子供が、お母さん私は古い教科書でもいいが、今度入学する弟にはぜひ新しい教科書を買ってやって下さい。これは実に教科書は新しいものがいいということを表明すると同時に、教科書に対する家庭の負担というものはばかにならないものだという、子供ながらも教科書代に対するところの心配をしている一つの現われですね。それからまん中の子供は何を言ったかというと、教科書が改正になればいいと言っている。教科書が改正になれば古いものは役に立たないから私にも新しいものが買ってもらえる。これはまん中の子供らしくきわめて単純に言っているわけですが、これは新しい教科書を希望するというものなんですね。これほど教科書というものは、おそらく国民の一部を除いては、この問題が国会に上程されて審議されていることは、親ばかりでなくて子供たちにも大きな関心を持たしていると思うのです。(坂田委員「だから賛成したらいいんだよ」と呼ぶ)もちろん賛成を私たちはしたいのですよ。だから私はあのときにはっきり申し上げた。国会の中でもって反対だ、賛成だというふうなそういうものを残してこの法案を採決されたくない。ほんとうに与野党一致した気持で、しかも民族の将来を祈念するというような気持でこの法案を通していきたい。それにはまず第一番に政府、文部省が確たる信念を持って当たっていかなければいけない。大蔵省がまだどうも問題だとか、自治省が何と言うだろうかというふうなことにこだわるという弱さを持った法案の提出の仕方ということが、この際まず解消されなければいけないと思うのですよ。この法案に関係する人たちの純真な声を聞くときに、いよいよ私は文部省の態度というものは強力に立てていかなければならぬと思うのです。
それで給与、貸与の問題ですが、それは給与することが一番いい、しかし貸与ということも考えられると思うのですが、外国の教科書と日本の教科書は違うと思うのです。今の教科書では、保存上おそらく一年使ったら二年目に使う子供は新鮮な感覚を持って教科書に向かう気持が出てこないと思うのです。そういう点は十分考慮されておると思いますが、この際一つ御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/59
-
060・長谷川峻
○長谷川政府委員 従来文部省が弱かったという非常な激励叱咤でありますが、教科書無償に取り組んだ文部省はまさに皆さんの激励の中にあくまで実現するように、これは今までが弱かったら強くなります。おっしゃるように、子供のときに新しい教科書が入ればやはり子供は勉強する気になる、うれしいものです。そしてあなたのおっしゃるように、国からの贈りものという中に国民的自覚を持ってもらうというところに私は教科書無償の国民的意義がある、それがこの場において与野党を通じて御議論をされておる、足りないものをこの際に補っていくところの御議論だろうと思うのであります。そういう意味合いにおきまして、この調査会ができまして、その中にただいま福田局長が申されたように貸与の問題とかあるいは地方において負担する問題等々が議論に出ると思いますけれども、私たちは国の負担においてこれを無償にしてもらいたい、またするように努力してこれを実現する。
さらにまた貸与の問題ですが、小林委員のおっしゃったように日本の教科書は薄いので保存上悪い、さらにまた教科書を通じていろいろ勉強をしていく問題からいたしまして、私たちは文部省の中に調査会の委員を二十名置きまして、来年度の予算の関係上十一月の三十日までにこの委員会で結論を出してもらって、その年次的な区割等々あるいは給与の問題、貸与の問題等についての具体的な結論を出して、やはり大きな盛り上がりの中にこの新しい制度が実現される意義というものを国民に知ってもらう、そこに私たちの願いがあるのでございまして、文部省は、この問題について過去にどういうことがあったか知りませんけれども、これは与野党一致して御賛成をしていただいてやってもらいたい、こう思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/60
-
061・福田繁
○福田(繁)政府委員 給与、貸与の問題につきましては御指摘の通りだと思います。外国の教科書と日本の教科書の場合は事情が若干違っておると思います。外国の教科書等は非常にりっぱな装丁をいたしまして、相当保存取り扱いに数年も耐えるような教科書がかなりあるように私も見ております。日本の場合におきましては、今の場合はやはりちょっと乱暴に取り扱いますともう翌年は使えないような表紙あるいは装丁等が多いのでございまして、この現状を基礎にして考えると、やはり給与であろうと思いますが、そういう点を十分検討して、装丁その他についても外国の教科書と同じようにすればあるいは貸与ということも考えられるかもしれませんが、これはまた別個の問題でございますので、日本の場合と外国の場合は一がいには言えないというように私ども考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/61
-
062・小林信一
○小林(信)委員 次官の今の文部省としての態度表明、まことに敬意を表します。しかしその中には今まで弱かったというもうぬぐい去ることのできないところがあるわけなんですが、長谷川次官のような強力な次官がおいでになるときでございますので、相当信頼はしておるわけです。であるなら、なぜこんな調査会なんというほうけたものを出してきたかと言わざるを得ないのですが、それはさておきます。私も決して調査会そのものをむげに非難しておるわけではない。それは慎重を期する意味ではいいでしょう。ことに私ども最も了とするところは、昭和三十七年の十一月三十日までに答申をせよと書いてある、これは相当に早急に実現をしたいという意味が含まれておると思うのです。こういう点から考えれば次官の言われておるところを私はその通りに受け取ります。そこで私は、そういうような内容もあるのだから、この際表明できるなら、一体目安をいつごろに置いているのか。十一月三十日という答申の制限までしているとすれば、もうその答申を得て直ちに仕事に着手する意図があるわけなんですね。ことに先日局長から伺ったところでは、全教科、全学年に支給してその額幾らかと聞いたら、百四十億くらいだ、これはえらいといえばえらいでしょうが、今の総予算の中から考えればそう大したものじゃないと思うのです。だから大体いつごろを目安としては考えておるか。それからそれを一年々々実施して、九年たったら全学年に及ぶというようななまぬるいことはしないと思うのですが、そういう点についてもし表明できるなら、次官としての責任なんか追及しませんから、あなたのお考えをおっしゃっていただきたい。
〔八木(徹)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/62
-
063・長谷川峻
○長谷川政府委員 無償について御熱心な御推進、ほんとうに感謝します。そこでたとえば調査会にいたしましても、従来でありますとこれを内閣に置くとか総理府に置けというふうな議論もあったようでありますが、この法律案が皆さんの御審議を経て可決されますと、第一条にいう「義務教育諸学校の教科用図書は、無償とする。」という原則が通過するわけであります。そうしてその通過した建前においてしかも文部省の中に調査会を置くのであります。でありますから、調査会であるから従来のように雲散霧消するのじゃなかろうかという皆さんの御疑問は一掃されるのじゃなかろうか。文部省の中に調査会を置きまして、そうしてこの国会において無償の原則を確立するということを第一条にうたったところの法律案が通りまして、無償の基礎において調査会で二十名の諸君が御審議を願うとすれば、とてもそれは従来のように一年生だけというふうなばかな話はなかろう、しかも子供に贈りものを持たせるということは農村においても山村においてもあるいは海の中の孤島においてもみんな願っておることでありますから、これは必ずや当初私たちが一ぺんに中学校三年まで無償にしたいという気持を持っておりますその期待に沿って調査会が結論を出してくれるものだ、こう御期待を申し上げておる次第であります。
〔「うまい答弁だ」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/63
-
064・小林信一
○小林(信)委員 与党はうまいかもしれないけれども、私の質問にはちっとも答えていない。私は目安はいつだというきわめて簡単なことをお願いしておるわけなんです。それが言えないということは、やはり文部省の態度というものを疑わざるを得ないわけです。文部省の中に調査会を置くということを言われますが、しかしはっきり法案に書いてありますように、学識経験のある者及び関係行政機関の職員のうちから文部大臣が任命するので、たとえ場所は文部省に置いても他の行政機関の役人を連れてくるという場合に——今われわれの関知するところではとても大蔵省の官僚というのは、先日もこの文教委員会に来ていろいろ聞いたときに、無償の原則は、これは授業料に限るのだというようなことを堂々と言っている。そういうつわものを呼んできた場合に、調査会が文部省に設置されておるのだからというふうなことで、私たちはどうも了解はできないのですよ。しかし、あなたのようなそういう強い信念でもって、そういう行政官もほんとうに説得していただきたいと思うのです。私の質問に、もしあなたが、目安はいつだ、たとい大臣が何と言ってもおれはそれを通すと言われるなら、私はあなたの責任は追及しません。ここで言明すれば、追及しない態度でお聞きしようと思ったのですが、それがやはり明白にならない以上は、調査会というものはどんな形になるか、これは心配せざるを得ないのですよ。
そこで、大臣がいたらお聞きしようと思ったのですが、この無償の問題について、先日も大臣の腹を聞きましたが、大臣も幾つかの方法を言っただけであって、決して自分の考えというものを言っておらない。これは非常に残念なところなんです。そこで、われわれが想像するこの法案の体系ですが、与党の中の良識のある人たちが、どうしてもこれは無償にすべきだという考えで当たったけれども、幾つか障害があり、壁があって、結局折衷案として調査会を置いて、時期、方法を検討しようじゃないかというような、そういう意見の対立したものを現わした法案であって、ほんとうにあなたのおっしゃるような、児童を思い、日本の将来を考えるというふうな、そういう純真そのままの法案でないということは、私は言えると思うのです。だから、私たちがいろいろ憶測したり、あるいはこれに対して疑義をはさむということは、あなたたちもこれはやむを得ないと思うのです。大臣にこの点はお聞きしなくても、あなたの考えでもし御答弁できるならと思ったのですが、どうも与党の方のこういう様子を見ると、お答えできないようですから次へ移ります。
そこで、調査会で問題になるのは、何と言っても第一は無償の問題だと思うのです。無償の限界、範囲ですね。そしてさっきの給与の場合も、支給するかあるいは貸与するかというような問題が、相当検討されると思うのです。そのほかに問題になる点では、ちょっとこの前文部大臣が、私の質問の答えじゃないのですが、よけいな問題として答えた中に、発行会社に対するところの問題も、この際検討されるべきであるということをおっしゃっているのです。しかし、そのときに私はこれを追及しなかったのですが、この点で、長い問いろいろ問題になってきたことは私たちも聞いておりますが、文部省の発行会社に対するところのいろいろな御見解というものを、この際おっしゃっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/64
-
065・長谷川峻
○長谷川政府委員 せんだって大臣が、一つの考えとして申し述べたことでありますけれども、教科書会社というのは、昔は国定教科書、その後自由企業になりまして、電話一本、社長と従業員一人ずつぐらいでもできるということから、終戦後非常に教科書会社が乱立したことは、御承知の通りだと思います。そこで、今から先、無償の原則が確立して実施された暁においては、今からできる教科書会社ぐらいは、やはり信用度とか技術とか、そういうものなどもよく吟味する必要があるのではなかろうか。なぜかならば、国の大事な教育を担当してくれるところの、文部省の代行機関のような大事な出版会社でありますから。一つの例を見ますと、世俗的でありますけれどもたとえばタクシーなどにいたしましても、あのタクシーというものは、資本金と車庫、あるいは運転士が十年以上無事故であるというふうなことなども、許可される一つの資格条件になっていることから見ても、そういうふうな手だても、今から発行される教科書会社に対しては考える必要があるのじゃなかろうか。これなどについても、調査会において御議論が出るところじゃなかろうか、そう解釈いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/65
-
066・小林信一
○小林(信)委員 原則をお聞きしたいのですが、この調査会を設けられる場合には、諮問することができるわけですね。だから、文部省自体からもこういうことについて検討してくれという要望を出す考えですか。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/66
-
067・長谷川峻
○長谷川政府委員 出す考えであります。今の給与の問題とか、貸与の問題とか、負担の問題とか、あるいは教科書会社のあり方の問題とか、全部項目を提示いたしまして、まただんだん議論されている間に、思いつく議題があるかもしれませんが、そういうものを整理して諮問する考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/67
-
068・小林信一
○小林(信)委員 それがまとまっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/68
-
069・福田繁
○福田(繁)政府委員 調査会に諮問する事項としては、一応予定したものはございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/69
-
070・小林信一
○小林(信)委員 それが僕らの実に残念なところです。今まで何をしていたのです。教科書の問題は、あなたたちは全部そっちのけにして置いたんですか。こういうことについては、今まで常に検討されて、調査会なんというようなものは不満だけれども、いざ調査会ができたら、こういうことを諮問するというくらいの内容は、今御説明できていいと思うのですがね。ないというならば、ほんとうに文部省の責を果たしておらない、怠慢だと言う以外にないと私は思う。もしなければないでよろしいし、あるけれども言えないということなら、あるけれども言えない、こう言ってもらえばいいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/70
-
071・福田繁
○福田(繁)政府委員 先ほど政務次官からお答えしたわけでございますが、調査会に諮問する事項といたしましては、先ほど小林委員もお述べになったように、無償とする場合の範囲、限界というようなものも、これは一つの事項でございます。それから給与とするか貸与とするかというような事柄、それから費用の負担区分をどうするか、全額国で負担するか、あるいは地方にも分担させるかというような問題、それから教科書企業のあり方、それから供給機構の関連して定価の問題もあると思います。それから無償措置の段取り、逐年やっていくのか、あるいはどういう年次計画でこれを実施するかというような、そういう実施の方法に対する事柄、そういうものを一応腹案として考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/71
-
072・小林信一
○小林(信)委員 私がもう少し骨のある人間なら、この際ほんとうに文部省に対して一言言いたい。私が今言ったことは、まだ用意されておりませんということですが、横の方からお許しが出て、言ったらいいじゃないかと言ったら言うような、こんな態度は、ほんとうにさげすむべき行為ですよ。何のための役所だと言いたい。(「さっきあると言ったじゃないか」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/72
-
073・福田繁
○福田(繁)政府委員 私は、予定したものはございますと申し上げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/73
-
074・小林信一
○小林(信)委員 予定されているなら言っていただきたい、こう言ったのを、あなたの方でもって避けておったんでしょう。もし用意されてあると言ったのであれば、私の方があやまります。
そこで、第一番の発行会社の問題についてお尋ねをしたわけですが、自動車の例と比較されましたけれども、自動車の問題だって同じでしょうが、もう少し教科書という問題に対しては特別なものを考慮しなければいかぬと思うのですよ。というのは、あまり限定するということは——やはり教育というふうなものは大いにたくさんな意見、考えというものが出る方がいいわけですね。その中からできるだけ自由な立場で教師が採択するという原則から考えれば、あながち自動車屋さんの認可と同じように考えられるような態度はいけないと思うのです。もちろんそうでないと思いますが、例のとり方が次官としてはきわめて適切でなかったと思うのです。そこで認可制というものをとると、その認可を今度は取り消すというふうなことも考慮されますか、こういう点は少し具体的になりますけれども、この際聞いておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/74
-
075・福田繁
○福田(繁)政府委員 もし認可制度をとったといたしますと、これは行政的な認可でございますので、当然に認可するときの条件といろいろ違ってきた場合には、認可を取り消すというような行政行為が伴うことは、これは当然だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/75
-
076・小林信一
○小林(信)委員 私も今の次官の御答弁を伺いまして、これは大へんだ、こう思ったのです。やはり認可制をとれば、今度は条件が具備されないというような意向が文部省にあった場合はこれを取り消す。おそらく法案に出てくるものはきわめて妥当な形をとっておっても、これを乱用するような場合には、認可制あるいはこれを取り消す法律というふうなものをたてにとって教科書会社というものは非常に制約されて、ほんとうに自由な本の発行ということがなくなってくるのじゃないか、こう思うわけです。そうすると検定と、さらに発行会社の認可あるいはこれを不許可する、あるいは取り消すというようなことが行なわれて、教科書を作ることが時によると国家統制になるおそれがある。こういうふうな点が考えられるとすると、多少文部省としては意に沿わないけれども、今日のような状態でおくことが私は適当だと思うのですが、この点のお考えはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/76
-
077・福田繁
○福田(繁)政府委員 認可制にするかどうか、これは調査会の結論を待ちたいと思いますが、先ほど政務次官から御説明申し上げましたように、会社自体の財政能力あるいは出版経験といったようないろいろな点から考えまして、義務教育学校の教科書を出版するにふさわしい会社にやってもらって、しかも財政力の強い会社でございますから、従って過当競争も行なわれないというような見地からいたしますと、会社自体そういう適当な会社に義務教育諸学校の教科書を出版するにふさわしい会社にやってもらいたい、こういう趣旨に出るものでございまして、その点は今後検討すべき問題でございますけれども、今の教科書会社は大体八十六社ございます。これは今の教科書会社そのままでいいか、あるいは今言ったような点から考慮する必要があるかということは、これは慎重に調査会で検討していただいて、その結論によってやりたいと思います。文部省が一方的にこういう会社は不適当だというようなことのないように、慎重にする意味におきましても、そういう問題を調査会において検討していただきたい、こういう考えでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/77
-
078・小林信一
○小林(信)委員 時間が過ぎておりますから休憩してもいいのですが、委員長に適当にやっていただきたいと思うが、今の問題だけ一つケリをつけていただきたい。このことは今いろいろ考えて参りますと、非常に問題が大きいと思う。ただ過程からいえば、これから調査会で論議されてくるのだからその結果について、ということになると、調査会法案というものを審議する場合には何となく突っ込むことができなくて、われわれとしても遺憾なんですが、しかし今の問題は非常に重大であって、ことに次官の自動車屋さんの例から考えて非常に問題が深くなってくる。これはやはり大臣が来てからがいいと思うのですが、おそらく次官にも同じ思想があるのではないかと思う。文部大臣はここでこういうことを言っている。今の教科書のあり方は国定教科書も同じだ。これは指導要領を大臣が作って、それに沿っておるかどうかを検討をしておるからそういうことをおっしゃったと思うのだが、そのときに、国定教科書も同じだという考え方は、国定教科書にしなくても本質的にもうそうなっておるからいいのだという意味か、もうこうなっておるから国定教科書にしてもいいのではないかという意味か、まことにそこのところは不明確だったのですが、発言そのものが大臣としては軽率な発言だと思う。たといそういうふうな形になっておっても、腹では了承しておっても、決してそうではない、発行会社は自由な立場でとにかく指導要領に即して作る、私は指導要領を作るだけなんだ、それに従って教科書会社は自由な立場で教科書を作るのだ、そのたくさんの中から、今度は教師は学校の児童の特性を考え環境を考えて選択するのだ、そこにほんとうに民主主義の教育が行なわれるのであって、決して国家統一はないということを表明しなければならぬ大臣が、国定も同じだというような言を吐くことにおいては、まことに大臣は自分の権利を非常に過信しておるのではないかと思ったのですが、そんなような意図が大臣にあるとすれば、これは発行会社に対する問題も軽々に考えられないということになるわけです。大臣がおらぬからしかたがないが、しかし今の発言からは次官も同じような思想に考えられるわけです。このことについて一つお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/78
-
079・長谷川峻
○長谷川政府委員 タクシーの話が不適当だということでありますが、タクシーも、今のように神風タクシーをやっておりますから、これはやはり人命に関係があるのでありまして、なかなか大事な問題であると思います。教科書の問題は国の大事な子供たちを教育してもらうことですから、それ以上にさらに大事なことだと思っております。
今教科書の問題についてのことは小林委員のおっしゃった通りでありまして、文部省においては検定をやっておりますし、あとは採択——私は、今の指導要領によって非常に自由な、明かるい教科書がたくさんできておる、これに今のところ期待しておるものであります。巷間とかくこの教科書無償の問題が出ましてから、文部省が直ちに国定教科書にするのではないかという御議論が出ておるようでありますが、これは非常な誤解でありまして、私たちは、現行の制度を維持しながらやって参る、国定なんということは全然考えていないということをこの際に申し上げておく次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/79
-
080・櫻内義雄
○櫻内委員長 午後二時再開することとし、暫時休憩いたします。
午後一時七分休憩
————◇—————
午後三時十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/80
-
081・櫻内義雄
○櫻内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。三木喜夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/81
-
082・三木喜夫
○三木(喜)委員 教科書問題について続いて質問いたします。まず現在、義務教育の教科書無償法案に対する質問の前に重要な関係がありますので、二、三についてお伺いいたしたいと思うのです。
第一に教科書の採択の問題についてですが、昨年度関西地方におきまして教科書採択をめぐっていわゆる教科書汚職なるものがございました。まことに遺憾に思うわけでございますし、悲しむべき私は事実だとこう思うのです。これにつきまして一昨年四月に衆議院文教委員会におきまして教科書採択を公正に行なわれるよう決議がなされました。すなわち四月の二十七日、臼井委員から提案の決議案を見ますと、「教科書採択等の公正に関する決議案、本年は学習指導要領改訂に伴う、小学校新教科書の採択の時期に際会し、関係業者の宣伝売込活動も一段と活撥化しつつあり、その行きすぎについては憂慮に堪えない。すでに政府においては、採択の公正について、しばしば関係者に対し注意を喚起してきたと聞くが、この際、ことの重要性にかんがみ、今後とも不正な採択勧誘等によって、万一にも採択の公正が害されることがないよう、文部省並びに公正取引委員会は、更に一層関係者の注意を喚起し、遺憾なき措置を講ずべきである。なお、教科書の検定に当っても、一層公正妥当を期するよう、特に善処せられたい。右決議する。」こういう決議の案文が全会一致で決定を見、そうしてこれを政府ないしは公正取引委員会で善処するということになっておりますが、この教科書採択に関する憂うべき事態は、これでもはや両三度ということになると思うのです。こういうことによって傷ついた教師は職場においても問題でございますし、また教育を考える者にとりましても、まことに悲しむべきことだと思うわけでございます。この悲しむべき犠牲を出し、しかも業者もこのことについてはいわゆる罪人を出すというような結果も見ておりますが、私はこのことに対するところの諸官庁、あるいは公正取引委員会というようなものが国に設けられ、あるいは監督の地位にある者がやはり一段とこれに対して力を注ぐべきではなかったか、その点の施策について、文部省並びに公正取引委員会からお聞きいたしたい、こう思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/82
-
083・福田繁
○福田(繁)政府委員 ただいまお述べになりましたように、国会におきましても、採択が公正に行なわれまずように御決議をいただいております。従って、この教科書の採択自体が非常に重要なことでございますので、文部省といたしましては、従来ともにこの採択の問題につきまして、再々通達等も出しまして、そうして教科書の採択に関する不公正な宣伝行為と思われるようなことが絶無になる——たとえば駐在員、出張員といったようなものの宣伝活動によって不公正な採択が行なわれることのないようにというような点、あるいはまた見本等につきましても、一定の制限を設けたい、あるいは採択の時期にかかる六月ないし七月前後の講習会等の制限等の通達、並びに教科書の編著作者が選定、採択等に関与することを排除する、そういうようなことを、従来通達をもって指導して参っておりますが、特に三十七年度の使用教科書につきましては、御承知のように中学校の教科課程の改正もございましたし、特にいろんな点におきまして、この採択が公正に行なわれますように、採択事務の取り扱い要領というものをきめまして、それによって不公正な行為が行なわれないように、特に発行会社、あるいは販売等に関係する者に対する注意の喚起、並びに教育委員会関係者あるいは教育に対するそういう注意を喚起いたしまして、手引書みたいなものを作りまして、各方面にこの指導をいたして参ったわけでございます。昨年関西地方で一部の地域におきまして不祥事件が起きましたことは非常に遺憾でございますが、文部省としては、今後従来の指導をさらに強化して参りたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/83
-
084・小沼亨
○小沼政府委員 公正取引委員会といたしましては、一昨年、ちょうど三十六年度の小学校教科書の指導要領が変わるということで、従来とも、ただいま文部省から御説明もありましたように、教科書採択については不公正な方法で行なわないようにいろいろ業界に注意をして参りましたが、特に一昨年の初めごろから発行本社の責任者に、公正取引委員会に来ていただきまして、今回の指導要領変更によって、翌年度の教科書については総選挙だと言われておる、従って売り込み競争も非常に激しくなるので、十分不公正な取引方法が行なわれないように口頭で御指導申し上げますとともに、文書をもちまして四十六都道府県と五大市の教育委員長あてに、教科書の採択の公正化につきまして要望書を出しました。一方発行各社に対しましても、教科書公正取引協議会という団体を通じまして、それぞれ教科書売り込みについて、不公正な取引方法のないようにという警告を発しまして、このことを各出先の末端にまで徹底していただくようにという注意をして参ったわけでございますが、ただいま御指摘の通り、昨年あるいは一昨年の問題にからんで、若干問題が関西方面を中心に起こっておるのは残念でございますが、公取といたしましては、そういった趣旨で不公正な取引の行なわれないように、事前警告をやって参ったわけでございます。今後ともその方針を続けたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/84
-
085・三木喜夫
○三木(喜)委員 三十四国会で内藤局長がお答えになりましたこととちょうどそのまま同じような答え、たとえば見本を制限するとか、事前の講習会を禁止するとか、駐在員に教育関係者を出さぬようにするとか、こういうようなことをお答えになっておるわけであります。また同じ答えで努力をする、これでは私はいつの日か河清を持つというようなうらみが残ると思う。従いましてここに抜本的なあるいはまた異常な決意をもってこの事に当たっていただかなければ、今までの答えでは私は不満足です。両三度こういう事件がなぜ起こったか、その原因を端的に文部省にお伺いしたい。なお公取委員会の方も、この前は坂根政府委員の方から今と同じような御答弁をいただいております。すなわち一番は、金銭物品の供応をせぬように、教科書発行会社と販売業者の経済的行為というものを禁止する。それからお互いの本の中傷をしたり誹謗をしたりする、いわゆる独禁法二条七項に該当するようなことのないように、大臣からも、競争業者の事業を不当に妨害行為をしないようにということが、この前の臼井委員の質問のときにも答えられておるわけであります。そしてそのときには、法十九条違反で取り上げて審判にかける、判決に違反した者は刑罰もある、このようなお話が出ておるのでありますが、こういうように、すでに以前に異常な覚悟でやっておられるにもかかわらず、なぜこういう具体的な措置をとられなかったのか、そうでなかったら、言葉だけであればいつまでもこういうことは続く。その点について再度文部省ないしは公取委員会の責任者の方にお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/85
-
086・福田繁
○福田(繁)政府委員 三十五年の衆議院の決議にありましたように、三十六年度におきましては小学校の教育課程の改正に伴います、いわゆる新しい教科書の採択という問題が目前に控えておったときでございますが、三十七年度の教科書の採択につきましては、これは中学校の教育課程の改正に伴います問題でございますので、特にまた新しい教科書の採択の問題につきまして、普通のときよりもやや会社としては特に採択について熱心であったというような事情も考えられるわけでございます。従って那辺に原因があったかと申しますと、やはりそこには教科書の採択をめぐっていろいろな宣伝等も行なわれたという事実が一部に上がってきたわけでございます。そういった点から考えますと、やはりそういう特にかわり目でございますけれども、そういうときには特別な注意をやはり払う必要もございましょうし、それから今後の考え方といたしましては、従来、今申しました講習会等の禁止等につきましても大体採択時期を中心に考えておりますが、今後いろいろ対策を講じますには、そういう問題がある一定の時期あるいは期間だけに限ることなく、やはり常時化してくるというようなことも考えられるのでございます。従ってそういった面から私ども十分監視しまして不公正な採択が行なわれにくいような方法を今後講じなければならぬというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/86
-
087・小沼亨
○小沼政府委員 公正取引委員会としましては一昨年、前坂根局長が御答弁申し上げたわけでございますが、やはりこういった教科書問題というものにつきましては教育者がそこへからんでおりますし、もしこういうことが違反事件で独禁法に基づく審判というような形になりますと、どうしても教育関係の方もこれにいろいろ参考人なりということでお呼びするようなことになる。これはいろいろ教育上児童その他に与える影響が大きいことになるのじゃないかということで、なるだけ事前警告で、こういう不公正な取引方法は業界さらに相手方である使用者側に起こらないようにという趣旨からやって参ったわけでございますが、ただいま御指摘の昨年度の関西のああいう一種の刑事事件ということで取り上げられましたので、公正取引委員会としましてもいつまでも警告を繰り返すだけではやはり目的を達成できないのじゃないかということで、正規の独禁法に基づく違反事件容疑としまして、目下独禁法の手続に基づきます審査手続を進めております。これの審査の結果、あるいはこれはまだ審査段階でございますから、結果を申し上げるわけには参りませんが、あるいは審決の形になるのか、審判を開くことになるのか、そこらのことは予測できませんが、そういうことで違反容疑事件として職権
で取り調べをやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/87
-
088・三木喜夫
○三木(喜)委員 そういう病状に対しましては、病気の場合に予防ということが大事だと思います。事件が起こってしまってからその治療に当たる、いわゆる病気になってから治療をするというにひとしいと思うわけであります。従いましてこの前のときに坂根政府委員の方から特別指定を三十一年度にした関係上、毎年教科書売り込み競争については私ども役所としましては十分監視する、こう言っておる。今のお話では事件が起こってしまって、そこから出てくる者は教育者であるから、そういう方に迷惑をかけてはいけないからというような配慮を言われましたが、それは事件が起こってしまってからなんです。このときには十分監視する、こういうことが言われておるのですが、どういう方法で監視されたか、また三十社につきまして営業の最高責任者を私どもの役所に呼び、全国的な売り込みに対して十分決意を持って調査に当たる、十分決意を持って調査に当たるとは一体どんなことなんです。これが言葉だけに流れてしまっては、このときの坂根さんに責任がある。その坂根さんの国会における言葉の責任の追及もしなければならない事実をもって追及しなければならぬと私は思うわけです。その点公取委員会にお聞きをいたしたいと思う。なお、文部省側にもこういう話があった、こういうことが起こった分析の仕方として、業者側の宣伝があったからだというようなお話がありましたが、業者側が宣伝するのはこれは至当なんです。不正な宣伝、不正なやみ取引、そういうことはいけないのであって、今局長が言われたように、宣伝があってというような、こういう口頭禅といいますか、唱え文句のようなことをおっしゃって、それが原因だというように、事態の原因の把握の仕方としては、私はまことに甘い、こう思うのです。この点もう少し痛烈にこの事態をお考えになっておらぬ証拠じゃないかと私は思う。その点再度お伺いいたしたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/88
-
089・小沼亨
○小沼政府委員 監視の点でございますが、これは先ほども申し上げましたように、事前に文書で都道府県なり教科書発行会社に警告を出し、また依頼をしたということで、その文書を出しますとともに、公正取引委員会は非常に人数が小さいものでございますので、こういった行政的な指導も数人の者が当たる程度でございますが、問題のありそうな——ありそうなと申すと語弊がありますが、できるだけ都道府県の教育委員会をお尋ねしまして、こういう趣旨のことを出しましたについては、今年度の採択に十分教育委員会としても教育関係の方が巻き込まれないように御配慮願いたいということで歩き回って頼んでおります。それから教科書の会社の幹部を呼びましてお話し申し上げましたのは、やはり三十社程度次々事務所においで願いまして、地方の活動、その他いろいろ事情を聞きまして、こういうことで本年度は特に問題が起こるおそれもあるということで十分特殊指定、公平な取引方法を具体的に定めております特殊指定を守っていただきたいという指導を申し上げたということでございます。実際の教科書採択は、各地にあります教科書展示会という制度を経て採択されるわけでございますが、やはりいろいろ発行会社では地方をお回りになって、自分の教科書の宣伝もこれは当然なさっておる。その末端まで一々少人数の者でついていってもらうということはとてもできませんので、われわれの人員の許す範囲で会社の方に御指導申し上げたということでございます。その結果それを守っていただくのは、結局会社の方でやっていただかざるを得ないわけでございますが、なお、ああいった事件が起こったのはまことに残念でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/89
-
090・福田繁
○福田(繁)政府委員 私先ほど申し上げましたのは、そういうかわり目でございますので、いわゆる商行為としての発行会社等のいろいろな宣伝というものが、かなり一般的に激しく行なわれたのではないかということを申し上げたのでございまして、その間に今御指摘になりましたような不正な行為があったということで、そういうものが摘発されまして、それぞれの不正なものにつきましては刑事処分の手続をされておるものもございます。あるいはまた処分を受けたものもございます。そういったことで不公平ないろいろな行為というものが一部にあったということを私は申し上げたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/90
-
091・三木喜夫
○三木(喜)委員 公正取引委員会の方に申し上げたいのですが、今のお話を聞いておりますと、作文行政ですね、通達をした、お願いして回った、これは事前のことです。そこで実態に即してそういうことが行なわれておるということは一々ついて見て回れないけれどもというお話がありました。なるほどその通りですけれども、十分監視をするということは、その事態に対して監視をすることである。あなたが今御答弁になったことは、そういうような作文行政だけ私たちは知らせてもらった。それだったら三十五年のときも同じことなんです。坂根政府委員の方から、十分監視するということはその事態に対して監視するのだ、教育委員会を監視するのじゃない——教育委員会にそういう事態は起こり得ないと思います。そういう不正な売り込みを聞く場合はごくまれだ、現場の接触面に起こる問題だと思います。それですから監視という言葉を使っておりますし、業者に十分熱意を持って話し合って、もって調査に当たるということを言われたのですから、調査とはそういう不正が行なわれたということを調査することそれ自体です。それを今の御答弁では、公取委員会は回れないので、業者に回ってもらわなければならぬ、こんなことをおっしゃったわけですが、業者がやるのですから回るはずはないと思う。その点きわめてくつを隔ててかゆきをかくような御答弁で満足しないのですが、もう一ぺん熱意を持ってやられたことならやられたことを言って下さい。そうでなかったら国民は納得しない。またやられた教師も非常に彼らの不徳のいたすところであったとは思いますけれども、あなた方取り締まり当局がこういう答えをしておったら、これでは信用ないと私たちは言わなければならぬ。もう一ぺんお答え願いましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/91
-
092・小沼亨
○小沼政府委員 先ほど教科書会社の者が現場を回っていくと申し上げましたのは、監視の意味ではございませんで、売り込みで各学校にいろいろ教科書会社がおいでになる、それを一握りの公取の職員がとてもついては回れないということを申し上げたわけでございます。大体地方事務所と申しましても、ほんの大阪と名古屋と福岡に数名の者がおるという状況で、実際全国四十六都道府県のすみずみまで売られておる教科書をそういった監視はできませんので、そういう意味で公正取引を規定しました特殊指定を守ろうということで、教科書会社の間で公正取引協議会という機関を作っておりまして、ここでこの特殊指定を守るという、相互監視と申しますか、趣旨を自主的に徹底させていくという組織ができております。それでちょっとしたような問題でございますと、ここですぐお互いに話し合って、そういうことはやめよう、ああいうものを配ることはやめようという自主的な規制をやってもらっておりまして、ここでかなりの監視的な実績が上げられるのではないか、ここでやりまして、書類行政と御指摘がございましたが、書類でも指摘し、幹部の方に末端までこの趣旨を徹底していただきたいという御指導を申し上げまして、かなり波打ちぎわまでお連れ申したけれどもどうしても水を飲まれないということになれば、これはわれわれの方として処置をとらざるを得ないということで、それ以上のことはわれわれの事務所としてはできないということを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/92
-
093・三木喜夫
○三木(喜)委員 教科書の公正取引協議会のことにつきましてちょっと今触れられましたが、その件については後ほど触れたいと思まいす。
こいうと業者の自主的な規制に待つというようなお考えは、非常に他力本願的な甘い考え方だと思います。これは業者の方の言葉を後ほど申し上げますから、そのときに譲りますが、要するに三十五年四月当時、あなたも公正取引委員会の一人だったじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/93
-
094・小沼亨
○小沼政府委員 委員会の職員でありました。経済部長でした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/94
-
095・三木喜夫
○三木(喜)委員 それから初中局長も当時局長の地位におられたのじゃないかと思うのです。そうして当時、わが党の長谷川委員から、このような言葉が出ております。それは全くきょうの場合にも当てはまると思います。三十五年四月二十日、公正取引委員会あるいは文部省から今まで何回も通牒が出ておるが、実効が上がっていないじゃないか、警告程度ではものの役に立つべくもない、こういう言葉が出ておるわけでありますが、そういうことでは実効は上がらないと思います。
なお局長の方にお伺いしたいのですが、私は新聞紙上で、この教科書汚職が起こらなければならない必然性といいますか、原因をこのように把握しておるのを見ました。私は確かにその通りだと思うのです。それは東京のように学校単位の採択をしておるところは、そういうことの起りようがない。それを広領域の採択にして、無理にそういうことをやるために、そこから起こってくるところの病気であるというように把握しておるわけでありますが、そういうお考えはございませんか。ことに坂田さんの言葉も書いてあります。「自民党の文教調査会長、坂田道太代議士も「大地域採択が汚職を生みやすいということは考えられる。疑獄を起こさないという点からみるかぎりでは、各学校単位の採択の方がいいといえばいえる……」と、この点は認めた口ぶりである。」ということが補足して載っております。これが一つの原因ではないか、そういうような把握はなさいませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/95
-
096・福田繁
○福田(繁)政府委員 いろいろ採択の方法に関連して、どちらが起こりやすいかという問題になろうかと思いますが、私どもは採択の場合に公正な採択が行なわれるかどうかということは、やはりその採択に関係する委員なり関係者の心がまえの問題でもあり、そういった点から申しまして、これが学校単位に採択がなされれば、必ずこういう不正な行為は絶無になるというふうには考えていないわけであります。それはいろいろ程度の差はあるかもしれませんが、そういう場合におきましても指導いたしませんと、今後やはりそういう問題は起きる可能性があるということを考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/96
-
097・三木喜夫
○三木(喜)委員 しつこく言うようですけれども、率直にこの問題を把握していただきたいと、そうして将来起こさないという建前で一つ御配慮を願いたいと思います。今のは小さい学校単位の場合も起こらないとは限らない、心がまえの問題であるというような、こういう修身訓話的な考え方は、もう三十五年に過ぎておるのですよ。今も局長が言われたように、それについて十分指導しなければならない、その十分な指導とはどれかということを申し上げるのです。
それから大臣が今から参議院の方においでになるそうですので、私は大臣に、この問題について、前の大臣からの関連において一つ御決意を聞いておきたいと思うのです。前の大臣の松田文部大臣がこういうことを言われております。答申に基づいて慎重な態度をもって通達している。採択を得るために、競争が激しいがという臼井委員の質問に対して、松田文部大臣は、答申に基づいて慎重な態度をもって通達している、こういうことなんです。この慎重な態度とは何か、実質に合わして一つ大臣から御答弁いただきたい。これは一番扇のかなめみたいなことですから。
〔委員長退席、八木(徹)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/97
-
098・荒木萬壽夫
○荒木国務大臣 私は教科書現行制度というものは、競争していいものを、安いものを提供させるという建前からできておると思いますから、競争があることは喜ばしいことだ、その建前は維持していきたいとただいまのところむろん思っております。すなわち現行法の考え方が適当じゃなかろうか。汚職等が起きますことは、今政府委員が申し上げましたが、心がまえの問題であることはこれは当然でございまして、刑法を初めとする違法の行為がありました場合は、違法の行為を行なったそのものの責任において民主政治のもと処理される、これは国民として民主主義国家においては当然法に従うという約束ごとで存在しているわけですから、もし悪いことをしたらば、本人の責任、それでけりをつけらるべき問題だと思います。しかしながら精神訓話的でありましょうとも、こういうふうになって、こういう傾向もあるから、前例もあることだから、ついあやまって変なことにならないように注意しなさいということは、一種の行政指導として毎年やり来たっておりまして、これとても本来ならば、理屈だけからいえば無用のことだと思います。悪いことをするはずがない、人殺しなんかするはずがないのですけれども万一そういうことがあった場合は刑法で処断されるぞということで、法律上予防的な効果も念頭に置いて定められておるのが法治国家の基本的な態度だと思います。競争が不当であるかどうかということ、そのことはこれは公正取引委員会の立場において、その関係法令に基づいて責任を負わされ、もしくは指導されるということでございますから、先刻政府委員が申し上げました通り、本年もまたさらに、蛇足かもしれませんけれども、念のため通達を発することによって注意を喚起する、それ以上のことは何とも不可能であろうと思います。本人の心がまえの問題です。ただこの採択方法のいかんによってそういう傾向を帯びるかどうかということは、むろん一つの考えねばならぬ事柄だと思いますが私は現在の考え方、制度を一応妥当だと存じております。もっともその点につきましても調査会でもって審議される課題になろうかと思いますが、その答申を待ってあらためて啓蒙される点ありせば検討したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/98
-
099・三木喜夫
○三木(喜)委員 なるほど今の文部大臣のお話は、三十六年の三月十一日の参議院の予算委員会の席上これと同じことを言われております。教科書会社が何百あってもよろしい、そうして自由競争をさせることによって教科書が体裁もよくなるであろうし、中身も指導要領の線に沿った限りにおいてよくなっていくであろうということはまあ期待できたものと思いますがというように、現行制度に対しての是認はここでなさっておりますけれども、そのあとで会社が一千近くあると聞いておりますが、これがまあお互い不当競争、過当競争をやりまして青息吐息しておるということも聞いております。大臣はこれをお聞きになっておるのです。それに対してこういうふうに答弁されております。これなれば、そこに断然青息吐息するくらい過当競争をやっておるということを、からだをもって実感されておるのですから、ここに言葉上のことだけで事足れりとするのでは、私はどうかと思う。そこでお伺いしたのです。
答申に基づいてこれをやられたとおっしゃいますが、答申に基づいてどういうことをやられたか、この点、もう少し具体的にお聞かせ願いたいと思います。これは大臣の答弁にあるのですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/99
-
100・荒木萬壽夫
○荒木国務大臣 今お答え申し上げました答申に基づいてと申し上げるのは、御審議願っておる法律案に、調査会ができることになっておりますが、その調査会で、先般もお答え申し上げた通り無償に踏み切っていく段取り、年度計画等はもちろんのこと、要すれば現在の教科書会社のあり方あるいは採択の方法が適当であるかということも審議されるであろうと予想をいたしております。もしそうなりました場合に、新たにできる調査会で、御指摘のような点についても答申があるはずになるわけですが、その結果を待って、さらに私は、今申し上げた通り思いますけれども、より適切な合理的な答申等がありますれば、それに基づいて検討を加えたい、こういう意味で申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/100
-
101・三木喜夫
○三木(喜)委員 二つあるのですが、一つは松田文部大臣が答申に基づいて慎重な態度をもって通達している、こういうように言われておるわけですが、何の答申によってどういう方法で通達されたかということです、慎重な態度でやるということは。慎重な態度でやるということは、一歩前進ですから、それをお聞きしておるのです。今の調査会でなく……。
それからもう一点、これだけ大臣にお聞きしておきたいと思うのです。もう一点というのは、青息吐息だという実態をつかまれておって、そしてそれに何らの手も打たれてない。大臣としてこれはいかぬなと言うのです。国の最高責任者が自分の傘下の大事な教科書を供給する会社が青息吐息だということを実感として持っておられながら、それは修身訓話的なことだけででもやれぬおっしゃったけれども、これだけで、この実態のつかまえ方に即した措置でないと思いますね。この二つについてお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/101
-
102・荒木萬壽夫
○荒木国務大臣 前大臣のときに答申を待ってという言葉を言われたという御指摘ですが、どういう点をとらえてそう言われましたか、ちょっと私にもわかりかねますが、想像しますれば、教科用図書審議会というのがございますが、おそらくそういうところからの答申という意味ではなかろうかと想像いたすのであります。それ以外には、ちょっと教科書それ自体について答申ということをなす機関があろうとは、私の念頭にはございませんけれども、そういうことだろうと想像するわけであります。青息吐息しておるというのは過当競争をやって、分不相応な競争的な行為に対して出費が多過ぎる、そういう話を聞いておりますので申し上げたのであります。そのことは一面教科書の定価そのものが十年近く押さえられたままでございますための悲鳴もあるようでありました。そのことはすでに先日の御質問に対しましてお答えしたと思いますが、一割四分の値上げをすることによって経済的な妥当でない条件は一応解消し得たと思っております。それ以上の過当競争は、これは公正取引に関する法令に基づいて行動しないからのことであって、教科書会社みずからの自粛に待たざるを得ない、あるいは公正取引委員会の指導に待たざるを得ない分野だと思います。そういう意味合いも含めまして、近く例年のことでございますけれども、そういうことのないようにという、先刻お答え申し上げました通達等も出す予定でおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/102
-
103・三木喜夫
○三木(喜)委員 だんだん話がそれていくのですが、教科書の値上げの問題は別にして、今おっしゃっておるのはこういうことをおっしゃっていると思います。これがお互い不当競争、過当競争をやりまして青息吐息しておるということも聞いております。これはあなたのお言葉ですね。教科書の値上げ問題は去年の四月から起こっておったかあるいは十二月に急に盛り上がったか、それは後の問題にいたしまして、こういう過当競争があって、これでこうだということをおっしゃっておるわけです。それでそれについてまた通達を出す、こうおっしゃっておりますけれども、事が起こってしまっておるのですね。あなたがこのことを実感されたのは三十六年の三月十一日、去年の今ごろです。そうして事件が起こっておるのは、それから半年たった十一月から十二月にかけて起こっておるのです。そのときあなたは青息吐息だということを実感として持っておられて適当な措置を講ぜらるべきではなかったかということを申し上げておるのです。今になって罪人ができて、それから通達を出しても、それは出さないよりましですけれども、そういうところの実感をもう少し生かしてくるのが国の最高責任者の行政ではないかということを私は申し上げておるわけです。時間が参りましたので、後ほどまた関連したことがありましたらお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/103
-
104・荒木萬壽夫
○荒木国務大臣 過当競争の事実があるように聞いておりますとまさに申し上げたわけですが、そういうことを答弁し放しでおったというのではございませんで、その後、昨年文部省からも念のために通達を出しております。その通達があったにかかわらずなおかつ不祥なことが起こったことが遺憾ではありますが、通達すらも無視し、法律までも無視して遺憾な行為をした人、その人にあらかじめどうするということは、それ以上のことはこれこそ不可能であると私は思います。これこそが先刻政府委員が申し上げた通り、関係者一人々々の心がまえの問題、本来悪をなさざるものという前提に立ってこのことは処理すべきものと思いますが、それでもなおかつ過当競争があり、それから誘発されるおそれもあるということで通達を出したわけでございますから、政府側としましては一応できるだけの措置をした、こう考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/104
-
105・三木喜夫
○三木(喜)委員 冒頭申し上げたように、三たびこういうことが起こったのはまことに遺憾に思うわけであります。それを今もおっしゃったように、できるだけの措置をしたからもうあとはいいじゃないか、それをやった者に罪がある。もちろんそうだと思います。しかしながらやらざるを得なかったような事態、そういう原因の追及、排除、これをやるべきではないかと思うのです。そうして、これだけやっておけばもう責任はない、こういうような言い方は、こういう事態を次々に起こして、私は問題だと思うのです。そういう態度自体が、こういう事態が連鎖反応的に毎年次々に起こってくるという原因になっているのじゃないかと思う。もう少し抜本的な考え方あるいはやり方というものはないかと思うのです。それを先ほどから申し上げておるのですけれども、何か堂々めぐりばかりしておるのです。それに対して御意見があれば言って下さい。なければもうこれでよろしい。その次に行きたいと思います。
独禁法の第二条第七項によって、不当に誘引した事由によって業者の事業を妨害した行為、こういう問題とか、あるいは誹謗したものとか、本の中傷をやったとか、販売業者それから発行業者との間に経済行為をやったとか、あるいは金銭、物品、供応、こういうものによって独禁法を犯す指定行為をやったというような場合には、十九条の違反でこれを取り上げて審判にかけ、判決に違反した場合は刑罰もあり得る、これはこの前の答えとして出ておるわけであります。事実こういうことが今起こっておるわけでございますが、これについて今申しましたような措置がとられておるかどうか、その点一つお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/105
-
106・小沼亨
○小沼政府委員 先ほど申し上げましたように今回関西に起こりました事件につきましては、独禁法の手続で不公正な取引があった容疑として審査をいたしておるわけであります。その結果どういうことになりますか、これは最終的には公正取引委員会が決定するわけでございますが、審査中の案件であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/106
-
107・三木喜夫
○三木(喜)委員 刑事上の事件として去る本会議で質問がありまして、荒木文部大臣はこれに対して、業者においては八名、それから教員側は、指導主事も含めて需要者側としては二名、このようなお話があったのですが、私はこれは数が多少違っておるのではないかと思います。私が実態を見て参りましただけでもこういうことでないので、これをもう少し明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/107
-
108・福田繁
○福田(繁)政府委員 現在まで私の方でわかっております数でございますが、書籍会社関係におきましては八名でございまして、これは目下公判続行中のようでございます。それから指導主事一名、教員一名は間違いないのでございますが、そのほかに罰金を課せられた者が会社側に六名おるようでございます。大体その程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/108
-
109・三木喜夫
○三木(喜)委員 そうしますと、公正取引委員会の方はこの八名と六名が対象ですか、あるいはそれ以上が対象になっておりますか、今度それとの関係を一つ聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/109
-
110・小沼亨
○小沼政府委員 独禁法で取り上げますのは事業者の行為でございますので、会社の行ないました不公正取引容疑の問題を取り上げております。刑事上の問題は、これは個人の問題でございますから、あるいは一つ一つの会社から何名も出ておるということもあり得るかと思いますが、独禁法の関係では事業者を取り上げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/110
-
111・三木喜夫
○三木(喜)委員 それから数。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/111
-
112・小沼亨
○小沼政府委員 数は、今審査いたしておるのは六社でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/112
-
113・三木喜夫
○三木(喜)委員 十二月一日に公正取引委員会として、大阪の支社ですか、ここでこの容疑のあった者について取り調べを開始したということを新聞で見たのですが、それから大体二カ月半ですね。それだけかかっても調査が進まないのですか。それとももう調査済みなんですか。その点一つお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/113
-
114・小沼亨
○小沼政府委員 本件につきましては、さきに刑事事件としていろいろ関係書類を検事局の方へ持っていっておられまして、そのあと公正取引委員会が審査を始めたわけでございます。そういうことで、資料につきましてはできるだけ御協力を得て調べさしていただいたということでございますが、何分にも審査、審判という関係になりますと、これは普通の行政手続と違いまして、やはり会社の関係の方から一人々々正式に供述調書をとるというようなこととそれから証拠書類も十分裏づけるものがあるかというふうなことで若干手間どっておるかもしれませんが、現在ではなお調査は完了しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/114
-
115・三木喜夫
○三木(喜)委員 次に、ちょっと方向を変えて採択権についてお伺いしたい。これは三十五年度においても相当論議がなされておるようでありますけれども、依然として不明で、その後、新聞等を見ましても明快な解釈が下されていない。私も疑問に思うところでありますが、今、関西で起こっております八名と二名のこの裁判について、検事論告に対しまして、裁判を受けておるが弁護士はこの採択権の所在というものについて疑問に思うというようなことを言っておりますし、事実、この法によってここに採択権があるということを、一つこの機会に御明示願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/115
-
116・福田繁
○福田(繁)政府委員 採択権の問題でございますが、公立学校におきまして使用する教科書の採択は、所管の教育委員会、それから国立、私立の学校では学校長の責任でこれを行なう、そういうふうになっておるのでありまして、公立学校におきましては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の二十三条の六号と心得ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/116
-
117・三木喜夫
○三木(喜)委員 今の局長のお答え、それでよろしいですね、それで間違いないですね。念を押しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/117
-
118・福田繁
○福田(繁)政府委員 間違いはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/118
-
119・三木喜夫
○三木(喜)委員 これは新聞ですけれども、こういうことが言われておるのです。「文部省調査局編集の「文部時報」昭和三十五年六月号では、京都府教育庁学校指導課の仲島秀夫課長は「……旧教育委員会法の定めていた趣旨から、しいて採択権というならば、教育委員会にあるものと考えられる」と解説している。つまり、採択権が教育委員会にあるといいきってはいない。」こういうことが書いてあるのです。それから過日の裁判の弁護士側の疑義をもう一回申し上げたいのですが、教科書採択委員会というものを作って、一応それが諮問機関になっている。それから、その上に教育委員会が採択する。いわゆる地方教育行政法によってそのことを裏づけておるような個所があるのです。これはあともう一回論議したいと思うのですが、まず教育委員会、これはあなたのおっしゃるように採択権を持っている。その下の採択委員会というものは諮問機関です。それからその下のいわゆる教科主任会といいますか、それが意見を具申していく、この三段がまえになっておるわけですね。しかしながら、この委員会というものは全然法的な根拠がない、法の責任はない、こういうことをいわれておるのです。それが一つと、それから、今言うように教育委員会に採択権かあって、個人に採択権がない。このことと、二つの疑義が出ているわけです。その点について、法律の建前に立って一つ御解明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/119
-
120・福田繁
○福田(繁)政府委員 私どもの解釈は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の二十三条には「教育委員会の職務権限」としまして「次の各号に掲げるものを管理し、及び執行する。」という規定がございます。その中の第六号に、先ほど申し上げましたように「教科書その他の教材の取扱に関すること。」について、明記されております。従って、教科書その他の教材の取扱いに関しましては、教育委員会自体がこれを管理し、及びその事務を執行するというような建前になっておりますので、従って、教科書の採択につきましては教育委員会の権限である、かように考えております。今御指摘のありましたような委員会等は、これは全部が作っておるわけではないかと思いますけれども、そういう場合におきましても、教育委員会の採択権自体は変わるものではない、こういうように解釈をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/120
-
121・三木喜夫
○三木(喜)委員 そうしますと、それを教育委員会に権限を置いて考えるわけですが、その下の諮問機関であるところの採択委員会というものの権限ですね、それからなお下にあるところの教科主任会に属するところの権限、それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/121
-
122・福田繁
○福田(繁)政府委員 その教科書採択委員会と申しますか、そういう事実上の委員会を組織しておる場合におきましても、それは教科書を選定するという事実行為でございまして、法律上の権限として持っているものはやはり教育委員会である、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/122
-
123・三木喜夫
○三木(喜)委員 その権限として持っておるというのは、どの法によって権限として持っておるですか。それを明らかにして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/123
-
124・福田繁
○福田(繁)政府委員 それはただいま申し上げました第二十三条の六号に基づいて権限を持っておる、こういうように解釈いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/124
-
125・三木喜夫
○三木(喜)委員 六号に載っておるのは、「教科書その他の教材の取扱に関すること。」というのが載っておるのですね。この「取扱」ということは採択ということですか。その点非常に不明瞭なのです。それでいまだに採択権がいずこにあるかということに問題がある。取扱いに関する件というのは取扱いの事務だとわれわれは考えるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/125
-
126・福田繁
○福田(繁)政府委員 この規定はもちろん事務として掲げておりますけれども、これは教科書その他の一般の学校で使用する教材につきまして規定しておるのでございまして、今申しましたような採択等の事務もこの中に含んでおるというように解釈いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/126
-
127・三木喜夫
○三木(喜)委員 その根拠法であるところの教科書の取扱いについてということ自体が、教育委員会にあるかどうかということに非常に疑義があるにかかわらず、その下に諮問をして答申するもの、これは任意的にこしらえたものであって、便宜上のものであって、法的な根拠はないのじゃないですか。それにも関連して、法的な権限があるかのごとく規定づけることは私はおかしいと思うのです。なお、その下にあるところの主任会、これは今度の裁判で非常に論議のあるところです。主任会もそういう権限がないという解釈に立つわけです。これは何も法的な根拠がない。だから、これを明確にしておいてもらわなければ、後ほど裁判の進行につれて、あなたの方でもお困りになることだし、私らの解釈としても非常に不明朗なことになる。その点、もう一回……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/127
-
128・福田繁
○福田(繁)政府委員 私の説明、御了解いただけないようでございますが、私は、事実上の選定行為というものと、今の採択権というものを区別して申し上げたつもりでございます。採択権を持っておる者がその採択権を行使する場合におきまして、どれが実際上いいかどうかというようなことを、適当な機関にお諮りして、その意見を聞いた上で採択するということは、これは事実行為でございます。そういう場合は多くあると思いますけれども、それによって採択権が教育委員会以外のところにあるというようには考えていない、やはり採択権は教育委員会にある、こういう解釈であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/128
-
129・三木喜夫
○三木(喜)委員 ややわかったような気がするのですが、そういう事実行為をやっておる機関に対してそういうことを聞く。かりに今算数の主任会がある。これに聞くことは割合妥当なんですが、しかし民間に算数協議会というようなものがあって、不幸にしてそれに聞かれて、そこの委員がこういう教科書の問題に関係したということになれば、たまたまそちらから諮問されたためにそういう法的な規制を受けるということになれば、まことに迷惑だと思うのです。教育委員会がきめればいいものを、自分の便宜上聞いておる。主任会というものは任意団体ですよ。法によって何にも規制されていませんし、あるいは辞令を受けておるのでもない。そういう場合を言っておる。事実その問題にぶつかっている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/129
-
130・福田繁
○福田(繁)政府委員 私は、お述べになっているその個々の具体例を深く存じませんので、何とも判断いたしかねますけれども、その個人には採択権はないということは当然だと思います。ただその人が公務員であれば、公務員法上の規制は受ける、こういうことはあり得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/130
-
131・三木喜夫
○三木(喜)委員 それはそうです。公務員としてのなには受けますけれども、採択を一年やったということのつながりにおいて、採択権者が十の責任があるとすれば、答申した者は四だとか、あるいは主任会は一だというように、多少でもかかわりがあるのかないのかということです。その点一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/131
-
132・福田繁
○福田(繁)政府委員 私は一般的に申し上げたのでございまして、個々のケースについては、もう少し調査をいたしませんと判断はいたしかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/132
-
133・三木喜夫
○三木(喜)委員 それでは、けっこうでございますから、後ほど、この次のときにでも一つお聞かせ願いたいと思います。
〔八木(徹)委員長代理退席、委員長着席〕
これに例をとりまして、こういうことも出ておるわけなんです。東京都の場合です。学校ごとにこれを採択している。それも東京都で認めておるということが事実ですね、これは。小区域においての採択の実例として、その場合の法的な根拠というものがまた非常にくずれてくるわけですね。それは委任したものでしょうか。その点を、委任行為が成立するかどうかということも、あわせてこの次に一つお答え願いたいと思います。これは私も微妙な問題だと思いますので、一つよく聞いておきたいと思います。
それから公正取引委員会のうちで、公正取引協議会というのができておるようです。これについて、会長はいろいろな不正取引が行なわれないように配慮していかなければならないというようになっておると思うのですが、ここにたとえば白表紙をつけて配布し、意見を求めたり、批評を求めたりして、それに謝礼をする行為、これはいかぬので、それに対しては、公正取引協議会としても措置をしなければならない、こういうことにいわれておるようでありますが、その事実があってそういうことをもう審議されておるかどうか、ただいまこしらえる段階にあるということですか。その点、一つ指導なさっておる公正取引委員会からお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/133
-
134・小沼亨
○小沼政府委員 公正取引協議会は、教科書の公正な取引の特殊指定をしました後できておるわけでございますが、白表紙につきましては、その当時かなり多くのいわゆる白表紙というものが流れておる、部外へ出ておるという嫌疑がありましたので、公正取引委員会としてこの嫌疑のある会社に御注意申し上げたということと同時に、教科書協議会に対しても御注意をして、現在白表紙については自主的に、文部省で指導要領で認められておる母体教科書の範囲をこえては行なわれていないのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/134
-
135・三木喜夫
○三木(喜)委員 ちょうど公正取引協議会の問題になってきましたので、続いてその問題についてお聞きしたいのですが、教科書の不公正な採択は、昨秋司直の手で明るみに出されて、現行教科書制度の健全な発展を阻害するガンとして、この不正採択というものが憂慮をされ、ここに教科書乱売合戦に反省を求め、業界の自主規制をもって調査員を履き、監視の目を光らす。教科書公正取引協議会みずからも規制措置をとったという、このことについては私も非常に喜ばしいのです。しかし、ここに公取委員会が、十一月、業界の立ち入り審査を行なった、新聞に載っておるのです。これまでやられてきたら、業界の自主規制というものが割合くずれてくるのではないかと思うが、その点……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/135
-
136・小沼亨
○小沼政府委員 自主的に公正取引を守ろうということで、自主団体としてやってこられたわけでございますが、先ほど御指摘のありましたように、公正取引委員会も警告し、協議会でも、自粛態勢をとっておられたにもかかわらず、ああいったような刑事事件が起こったということで、それをまた公正取引委員会が黙って見ておったのは、やはり今後の警告の意味が、単に警告だけに終わるのではないかということで、実刑の措置をとったわけでございますが、これについてはやむを得ない措置であり、その後協議会の方におきましては、さらに強力な自主規制団体を作るという機運に向かってきておるようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/136
-
137・三木喜夫
○三木(喜)委員 私の言う意味は、そういう自主規制のものが一方にある。そうしてあなたの方では、すでに十一月、業界の立ち入り検査をやった。これについて、最近公取委員会の審査等が進められておる。このことの関連をお聞きしておる。一方では自主的な自粛の方法がとられておる。一方ではそういう立ち入り検査がある。これは相当の決意がなければできないわけですね。それで、その成果ですね、どういうような結果を得られ、どういうところを立ち入り検査なさったかということが問題になってくるわけです。あるいは業界も問題にするだろう。これをやられたら大へんだ、やめてくれということで、自粛の、こういう調査員を置くとかというようなことをやったのではないだろうかと思うのです。従ってお宅のそういうことをやられたことに対する決意、どういう意味合いでやられて、どういう結果が出たか、こういうこともやはり聞いておく必要があると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/137
-
138・小沼亨
○小沼政府委員 立ち入り検査と申しますのはやはりやらぬようにということで、法律の手続に従って検査を開始するという段階でございまして、先ほど申し上げました監査員における検査ということでございます。これはどこまでも自主規制を業界でおやりになったわけでございますが、自主規制ではどうしても規制し切れず、独禁法の違反容疑が起こったということで、それが刑事事件になることも問題になった以上は、公正取引委員会としては自主規制の及ばなかった点を法律の手続で措置するということになったわけでございます。それに対して、それを境にして業界の自主体制がくずれるかどうかということにつきましては、業界ではこういう問題が起こったことは非常に残念だということで、従来の協議会の中に、さらに互いに順法精神を徹底させる、そしてそれを実施するという新しい機関が生まれてきたわけでございまして、こちらの職権による措置とこれとは相矛盾しないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/138
-
139・三木喜夫
○三木(喜)委員 この協議会では、決定違反事実、あるいは採択の問題についての通知、あるいは文書による通知を受けた場合には、管理委員会の方でも事件の処理を委員会に通知してきた場合に、急速に処理しなければならない。これが私は機能だと思うのです。そういうことが今現実に起こっておるのですが、そういう機能を今はたして行なっておるか、その事実を一つ聞かしていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/139
-
140・小沼亨
○小沼政府委員 教科書公正取引協議会という自主団体としましては、非常に小さな問題と申しますか、全国的にいろいろお互いに話しておるわけでございまして、問題が起こりました場合には、まず自主的に正式な独禁法上の問題になる前の案件として数回お互いに了承し合って処理されて満足な結果に達したという事実はあるようでございます。その体制は今後とも、先ほど申し上げましたようにさらに強化していかれるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/140
-
141・三木喜夫
○三木(喜)委員 これに対して業界の人に私話を聞きますと、こういうものはなるほど作っておる、しかしながら事実はわかっちゃいるけれどもやめられない、これが事実だということを率直に聞いた。そうすると、私はこの協議会というものの値打が問題になってくると思う。結局そういうことに対する自粛しておるぞという形だけに終わってしまうのじゃないか。この点は公取委員会の方にも責任があると私は思うのです。そういうような考え方に対してどういうように対処されていくか。結局こういうことだけでは続発していくおそれがやはりあると思うのです。そういう点について伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/141
-
142・小沼亨
○小沼政府委員 自主規制で及ばなかった点はあるようでございますが、今回の事件を境にしまして、さらにまた業界でこれはがんばらなければいかぬということで強力な自主体制をしかれたということでございますから、従来もできるだけの努力はされたと思いますが、その効果がなかった点は今後の活躍にわれわれは期待して、こういった自主規制団体を育成していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/142
-
143・三木喜夫
○三木(喜)委員 そうするとこの協議会というものが実際的に力を発揮するのはどこですか。育成しなければならぬとか、片方はわかっちゃいるけどやめられないとか言っているが、どこが一体値打があると思うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/143
-
144・小沼亨
○小沼政府委員 やはり中の機構としては協議会の委員長以下がおられて、そこで最終的な決定をされ、それをさらに絶えずお互いに連絡されるものとして幹部会というようなことで、会社でいえば常務クラスの人がお集まりになっておる。これがこういったように結局効果がなかったということで、最近中央管理委員会というような組織を協議会の中の実施機関として、お互いに批判を行なうような自粛体制をしかれるとともに、こういうような若干煙が上がったという場合にはすぐにやめる措置をするという、従来よりも強力なものにするということでございますので、そういったものが働いていく余地が十分あるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/144
-
145・三木喜夫
○三木(喜)委員 今の御説明を聞くと有名無実になってしまうようなおそれがあるのですが、断固罰するというようなこと、あるいは立ち入り検査もお互いでやるというようなこと、それから再三警告しても聞かない場合はどういう方法をとるかというようなこと、あるいは密告制度に対してのこと、こういう点もこの辺での考え方をしておるのではないかということもちょっと聞くのですが、この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/145
-
146・小沼亨
○小沼政府委員 今度の管理委員会の職権と申しますか、事業そのものの細則というものはまだ聞いておりませんが、こういう組織ができた以上、今まで抜け道になっておったということに対しましては、そういう措置をとれるようになってくるのではないか。自主的に解決しないというものにつきましては公正取引委員会の方で事実をもって見まして、独禁法上の問題として処理するということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/146
-
147・三木喜夫
○三木(喜)委員 新聞では、柴田公取協議会の幹事長の談話として、そうひどいことはできないだろうけれども、お互いにいましめ合うということを言っておるのですが、いましめ合うのなら今まででもいましめ合えたと思うのですが、委員長にお願いしておきたいと思うのですが、柴田公取協議会の幹事長をこの文教委員会に来ていただいてお話も承りたい。このことがやはり冒頭申し上げたこうしたことに対して未然に阻止する方法ではないかと思いますので、もう少し様子もお聞きしたいと思います。公取委員会の方では責任がないので、割合のんきで、ゆっくりしたことを承るので、私もちょっとふに落ちない点がある。内田公正取引課長補佐は、万難を排してこれを実施せよというようなことを言っておられる。この辺が非常に食い違ってくるわけなんで、一つこの点は内田さんと柴田さんにこの国会に来てもらうことを要請したい。後日この点については詳しくお聞きして、こういう点の自主規制というものに対してはやはり敬意を表し、今後こういうことが起こらないように自粛することにはやはり協力しなければならぬ。
それから次に、読売新聞に出ておったわけなんですが、大阪初め近畿各府県、特に愛知、徳島、長崎に広がった教科書汚職、独自の立場から独禁法違反として公取委員会の方では調査に乗り出されておる。ここで問題なのは、この新聞によりますと、会社の指令でやったということが出ておるわけなんです。光がたから、自粛々々といいながら、会社の指令で出先の販売員といいますか、そういう社員がやっておるように思うのです。それが載っておるわけなんです。そうして、その中の一人が公取委員会に申し出まして、会社幹部が指令を出した資料があるから、教育界粛正のために徹底的に責任を追及していきたい、このような大それたことを言うておるわけです。けしからぬと私は思うのです、この言葉が事実だったら。私は、これは教育界粛正のためというのは、副次的には教育界の粛正である思いますけれども、お互いに自粛しようとする教科書協議会のことを公取委員会をもってやっていこう、その中で教育界を粛正する、こういう言い方は、みずからを知らぬものだと私は思う。もちろん教育界も、自分自身は非常に自粛も今後せなければならぬと思いますけれども、このことを否定するものじゃないですけれども、そういうことをこの証人が言っておるとなれば、考え違いもはなはだしい。そんな点で公正取引委員会がこの問題に対処されておるということになったら、これは法に書いた文句と違うと思うのです。法では、事業主がそれに対して責めを負わなければならないということになっているわけです。需要者の方には影響がまだないわけです。間接的には自粛にはなるかもしれませんけれども、本命的に教育界粛正のために徹底的に責任を追及する、追及してほしい、こういうようなことを言っておりますので、私は、でき得べくんばこの証人も、名前を今ここでは申しませんけれども、呼んでいただきたい。そうしてこの問題について、今後こういうことが起こらないように、病原がどこにあるか——先がた局長に聞けば、非常にやんわりしたところの分析の仕方をされました。また、公取委員会の方でも、作文行政よりも一歩も出ぬような御答弁を聞いて、私は不満に思うわけです。その点ここで一つ委員長にお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/147
-
148・櫻内義雄
○櫻内委員長 三木委員のお申し出については、後刻理事会で相談をいたしまして善処いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/148
-
149・三木喜夫
○三木(喜)委員 その二点につきまして、いわゆる教科書の公正取引協議会の問題と、なお教科書汚職の問題について、そうした証人が公取委員会に調査を依頼した、こういう事実についても、もう少し次の機会にお聞きしたいと思います。
きょうはこれで終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/149
-
150・櫻内義雄
○櫻内委員長 次会は来たる十六日金曜日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時四十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005077X01319620314/150
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。