1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年三月八日(木曜日)
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議事日程 第十八号
昭和三十七年三月八日
午後二時開議
第一 地方税法の一部を改正する
法律案(内閣提出)
第二 市町村立学校職員給与負担
法の一部を改正する法律案(内
閣提出)
第三 日本輸出入銀行法の一部を
改正する法律案(内閣提出)
第四 国民生活研究所法案(内閣
提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 地方税法の一部を改正
する法律案(内閣提出)
日程第二 市町村立学校職員給与
負担法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
日程第三 日本輸出入銀行法の一
部を改正する法律案(内閣提
出)
日程第四 国民生活研究所法案
(内閣提出)
午後二時八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/0
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001・原健三郎
○副議長(原健三郎君) これより会議を開きます。
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日程第一 地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/1
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002・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 日程第一、地方税法の一部を改正する法律案を議題といたします。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/2
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003・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員会理事高田富與君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔高田富與君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/3
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004・高田富與
○高田富與君 議題となりました地方税法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過及び結果の概要を御報告申し上げます。
本案の大要は、第一に、大衆負担、中小企業者の負担を軽減合理化するため、個人の市町村民税の所得割について低額所得者に対する税率を緩和し、中小企業者に対する事業税の税率を引き下げ、また料理飲食等消費税の負担を軽減し、さらに、電気ガス税の税率を引き下げる等の改正を行なおうとするものであります。
第二に、国、地方団体間の税源配分及び税源帰属の適正化をはかるため、別途政府は、所得税の一部を道府県に移譲する措置を講じておるのでありますが、本案においても、その一環として、たばこ消費税につき税率の引き上げと、課税標準の合理化をはかるとともに、入場税の譲与制度を廃止する等の改正を行なおうとするものであります。
第三に、税負担の均衡化の推進等税制の合理化をはかるため、住民税、不動産取得税、娯楽施設利用税、自動車税、固定資産税、電気ガス税、鉱産税及び国民健康保険税等について、税率区分、非課税範囲、課税標準等の整備を行なおうとするものであります。
第四に、固定資産の評価の適正化、均衡化をはかるため、さきに行なわれた固定資産評価制度調査会の答申に基づく固定資産評価制度の改正を実施するのに備えて、道府県知事または市町村長は、自治大臣が定めた固定資産評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならないよう規定を改めるとともに、中央、地方に固定資産評価審議会を設けようとするものであります。
本案は、二月一日本委員会に付託され、同日安井自治大臣より提案理由の説明を聴取し、自来、所得税の一部を道府県民税に移譲する措置とも関連せしめまして、さらに、地方税制度の根本問題にも触れて検討を行なうとともに、地方税法の一部を改正する法律案審査小委員会を設け、また、二月二十二日には、本委員会において参考人より意見を聴取するなど熱心に審査を行なったのでありますが、審議の詳細については会議録に譲ります。
三月七日には、小委員長より小委員会における審議の経過及び結果について報告があり、同日本案に対する質疑を終了したのでありますが、日本社会党より本案に対する修正案が提出せられ、二宮武夫君より趣旨説明がありました。かくて、政府原案及び修正案を一括して討論に付し、前田義雄君は自由民主党を代表して政府原案に賛成、修正案に反対、山口鶴男君は日本社会党を代表して政府原案に反対、修正案に賛成、玉置一徳君は政府原案及び修正案ともに反対の意見をそれぞれ述べられ、次いで採決を行ないましたが、修正案は賛成少数をもって否決、政府原案は賛成多数をもって可決して、本案は原案の通り可決すべきものと決したのであります。
右、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/4
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005・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 本案に対しては、山口鶴男君外九名から、成規により修正案が提出されております。
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地方税法の一部を改正する法律案に対する修正案右の議案を提出する。
昭和三十七年三月七日
提出者
山口 鶴男 太田 一夫
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/5
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006・原健三郎
○副議長(原健三郎君) この際、修正案の趣旨弁明を許します。二宮武夫君。
〔二宮武夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/6
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007・二宮武夫
○二宮武夫君 私は、日本社会党を代表しまして、ただいま議題となっておりまする内閣提出にかかる地方税法の一部を改正する法律案に対しまして、修正案の提案をいたしたいと思うものでございます。(拍手)
昭和三十六年度の当初予算審議の経過の中におきまして、政府は、三十七年度は税制調査会の最終答申案も出る年であるから、その答申を待って行政事務の再配分を前提として国税、地方税を通じて抜本的な改革を行ないたい、このような旨、語調強くその決意の表明をいたしたのでございます。従って、私どもは三十七年度における地方税法案に対しましては、非常なる期待を持っておったのでございまするけれども、実際提案をされました法案は、国税、地方税を通ずる抜本的な改革には触れることなく、全く技術的な改正にとどまっておるのでございます。その上、道府県民税の増税、高級料理店に対する税の減免、入場譲与税の廃止による地域格差の拡大等、国民の期待を裏切るものが非常に多いのでございます。なお、国税における税徴収法に見られる徴税強化の傾向は地方税にも及びかねない状態であって、国民はひとしく不安の気持を持っておるわけでございます。
われわれ社会党といたしましては、現段階における地方税改正の重点目標は、地域間の不均衡是正と税財源の再配分、大衆負担の軽減、大企業の特権的な税の減免措置の改廃と自主財源の充実、地方行政水準の向上等にあると考えておるわけでございます。この目標達成のためには、地方交付税の税率を引き上げること、税外負担の解消、法定外普通税の整理、後進地域開発に対する国の財政援助、基地、国有林等に対する交付金、産炭地市町村に対する国の財政援助等の諸施策を並行して推進することが必要であるというふうに考えるわけでございます。
以上のような基本方針の見地に立って、地方税法の修正案を各税目別に修正を要する分についてのみ簡潔に御説明を申し上げます。
まず第一に、地域間の不均衡是正と税財源の再配分のために、最も普遍性、安定性を持っておるととろのたばこ消費税を現行一九%から三〇%に増額をいたします。これによって四百二十五億円の増額をはかりたいと考えるわけでございます。入場譲与税はこれを廃止せずに、そのまま存置をすることによって九十九億円を浮かすことができるのでございます。計五百二十四億円の増でございます。
次に、大衆負担の軽減につきましては、まず住民税におきまして、給与所得者の控除限度をただし書きの場合に限り、二万円から五万円まで引き上げることによって三億円の滅、配偶者に対する扶養控除額及び扶養税額控除額の引き上げによりまして、本文方式をとっておりまする自治体におきまして十八億円の減、ただし書き方式の自治体におきまして九十二億円の減、政府案による道府県民税の所得割の比例税率には反対をいたします。農協、生協等に対する非課税措置を昨年新設されたのでございますが、これを従来のように復元をいたしますことによって三億円の減となるわけでございます。
次に、事業税について申し上げます。事業主控除額を現行の二十万円から三十万円に引き上げることによって四十四億円の減になるわけでございます。特別法人に対する税率を引き下げることにいたしまして、農協や生協等に対する非課税措置の復元をいたしまして、ここで二億円の減になります。
次に、料理飲食等消費税につきましては、高級料理店に対する徴税を強化いたしまして、公給領収書の発行を奨励いたしました。奢侈飲食というものに対しては、厳重にこれを監視することが必要であろうというふうに考えるわけでございます。また、本年度から実施されることに決定いたしておりまするところの外国人の非課税措置につきましては、とかくもやもやした空気があるわけでございますけれども、この際即時これを廃止することを要求いたします。
次に、電気ガス税の税率を一〇%から七%に引き下げることによりまして、ここに百五十億円の減を見るわけでございます。
固定資産税につきましては、農村生活の実態にかんがみまして、田畑の課税標準額を三分の二といたします。従って、ここに六十九億円の減を見ることになるわけでございます。
以上の大衆負担の軽減措置によりまして、総額三百八十一億円の減税となるのでございます。
以上の軽減措置によりまする地方自治体の自主財源を、次の特権的な税の減免を復元することによって補てんをいたして参りたいと考えます。
まず第一に、電気ガス税の大企業に対する減免措置を、とりあえず二割復元することによって、四十三億円の増徴を期したいのでございます。法人住民税の均等割、法人税割を引き上げることによって百七億円の増、法人事業税の税率の引き上げによりまして、特に年間所得が五百万円をこえるものに対しまして、その清算所得に対してわずかに一%引き上げることによりまして、百三十五億円の増を見ることができるわけでございます。以上合計二百八十五億円の増徴となるわけでございます。
次に、消防施設税の創設を考えておるわけでございます。これは年来の主張でございましたけれども、いまだ実現を見るまでに至っておりません。収入火災保険料の三%をこれに充てまして、十八億円の増でございます。
ゴルフ施設利用につきましては、娯楽施設利用税といたしまして、現在一人一日四百円を千円に引き上げることによって、ゴルフ人口の増大による四十四億円の増を見ることができるわけでございます。
これらはもっぱら地方行政水準向上に使うものとして、計六十二億円を確保いたしたいと考えます。
以上、大衆負担、中小企業あるいは農民の税軽減総額三百八十一億円となりますかわりに、担税能力を持つ、いわゆる従来政府から特権的に取り扱われておる人々から増徴いたしまして、それにたばこ消費税の増、入場譲与税の存置等によりまして、自治体の自主財源の増額を見ることにいたしたいと考えておるわけでございます。
地方行政水準向上に資したいと思うこの私どもの修正案に対しまして、何とぞ御賛成いただきますよう皆さん方の御賛成を希望いたしまして、修正案の趣旨説明を終わりたいと思うわけでございます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/7
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008・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。久保田円次君。
〔久保田円次君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/8
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009・久保田円次
○久保田円次君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました地方税法の一部を改正する法律案につき、政府原案に対し賛成、日本社会党より提出されました修正案に対し反対の討論を行なわんとするものであります。(拍手)
御承知のごとく、最近における地方財政は、各地方団体の財政再建への努力と国の適切な施策とにより、加えて経済の目ざましい成長にささえられ、逐年健全化の方向に参ってきたのであります。まことに喜ばしいことであります。しかしながら、地方を通ずる行政水準はなおきわめて低位にあって、国民の要望にこたえ得ない実情にあり、これが向上をはかることはまさに現下の急務であり、地方財源はさらに一そうの充実強化をはかる必要があるのであります。しかしてこの場合、民主政治の基盤をなす地方自治の一そうの伸長を期する立場から、地方団体の独立税を充実いたしまして、その地方財源中に占めるウエートを高めることが強く望まれるのであります。
政府の提案しております地方税法の一部を改正する法律案も、このような見地に立ちまして、一面地方財政の実情を勘案しつつ、他面大衆負担と中小企業者の負担の軽減、合理化と税負担の均衡化を促進しながら、別途所得税の一部移譲に伴う道府県民税所得割の税率改正を行なって、国、地方団体間の税源配分及び税源帰属の適正化をはかろうとしておるのであります。その内容は、おおむね税制調査会の答申の線に沿っており、現下の国家財政並びに地方財政の実情を勘案いたしますならば、一応均衡のとれた満足すべき改正であると認められるのであります。
まず、個人の市町村民税の所得割について、準拠税率における課税所得七十万円以下の段階区分を改正するとともに、市町村民税のただし書き方式採用市町村における扶養親族の数に応ずる税額控除に六百円の標準額を法定して、本文方式採用市町村との間の不均衡を是正しております。また、事業税においては法人、個人を問わず、中小企業者に対して思い切った税率の引き下げを行なっておるのであります。料理飲食等消費税につきましては、税率適用区分の改正、旅館における基礎控除額の引き上げ等を行ない、また電気ガス税の税率の一割引き下げを行なうなど、広く各税目だわたり、大衆負担並びに中小企業者の負担の軽減をはかっておるのであります。これらの減税措置は、いずれも長年懸案とされてきたのでありまして、今回国民の税負担のためとられた英断に対しましては、強く敬意を表するものであり、本案に賛成する第一点であります。
また、税源配分及び税源帰属の適正化をはかるために、所得税との総合負担を軽減する方向で、別途所得税の一部を都道府県に移譲し、道府県民税の所得割の税率を改正するとともに、たばこ消費税の税率を県、市町村ともそれぞれ一%引き上げ、その課税標準を合理化しております。反面、入場税の地方譲与の制度を廃止することとしておりますが、これら一連の措置を通じて、地方における普遍的なしかも安定した独立税源を増強せしめております。また、地域間の収入の不均衡の是正をもはかっている点は、昨年度行なわれました住民税における国税改正の影響遮断の措置と相待ちまして、地方財政の自主性と健全性を高める上に大きな意味を持つものとして、高く評価するものであります。これが本案に賛成する第二点であります。
もとより、国と地方間の税源配分は、この程度で十分であるとは考えません。さらに今後において国、地方を通ずる行財政のあり方については根本的検討を進め、その上に立って抜本的な税源配分を行なう必要があると思うのであります。
本法案におきましては、とのほか、税負担の均衡化の推進など税制の合理化をはかるため、住民税について障害者等の非課税の範囲を広げ、道府県民税について税額控除の額を千円に引き上げ、不動産取得税についても、寄宿舎、幼稚園を非課税とする等の措置を講じ、また小型自動車に対する自動車税を総排気量により段階を設けて軽減しております。固定資産税についても中小鉱業者の負担を考えて鉱産税に軽減税率を設けるなど、きわめて行き届いた、きめこまかい配慮が加えられたものと認められるのでありまして、これが賛成の第三点であります。
冒頭に述べましたように、現下の国、地方の財政事情のもとにおきましては、可能な限り各方面の要望にこたえつつ、しかも、地方税制の自主性と健全性を一歩いな数歩前進せしめた改正であると認め、われわれはこれを高く評価するものであります。ただ、われわれは、政府当局が今後さらに地方行財政全般にわたる根本的な検討を進め、すみやかに地方財源の一そうの充実と住民負担の軽減合理化に努め、もって国民の要望にこたえるよう善処されんことを期待して、本案に賛意を表するものであります。(拍手)
さて、次に、日本社会党から提案されておりますところの修正案について、反対の意見を申し上げます。
本修正案は、地方交付税率を現行二八・五%から三〇%に、たばこ消費税率を現行一九%から三〇%にそれぞれ引き上げ、入場譲与税を存続させることを前提とした上で減税を行なおうとするものでありまして、個々の減税の方向そのものにつきましては、われわれも賛意を表する点が多々あります。しかしながら、国、地方を通ずる現下の財政事情から見まして、今直ちに交付税率やたばこ消費税の税率をこれ以上大幅に引き上げることがいかに困難であるかは、今さら申し上げるまでもありません。のみならず、そのような措置が今後の地方財政のあり方にどのように影響をもたらすかは、国庫補助金や地方債のあり方とも関連をいたしまして、さらに精密な検討を要する問題であって、われわれはにわかに賛成することはできないのであります。(拍手)
減税案の内容について見ますと、政府原案においても、大衆負担、中小企業者の負担について、かなり思い切った減税が行なわれており、個人事業税のごときは、今日これ以上さらに大幅な減税を行なうことは、かえって税負担の均衡を乱すおそれがあると思うのであります。電気ガス税のごときは、政府原案以上に減税の必要が認められるのでありまするが、現実には市町村の財源との関係をも考えます場合、漸減の方向で行く以外にないと思うのであります。
また、修正案は特権的な減免税の復元による増収を打ち出しているのでありまするが、これらの多くは、生産コストの引き下げ、国際競争上の観点に立ちまして、また、基幹産業の育成のため、それぞれ国策上の見地からとられている措置でありまして、今にわかにこれを排除して、さなきだに脆弱なわが国経済の基礎に悪影響を及ぼすようなことがあっては、慎重な配慮を要する問題でありまして、漸進的に合理化をはかるべきものと思うのであります。
とのような理由から、日本社会党の修正案に対しましては、遺憾ながら反対の意を表せざるを得ないのであります。
以上述べました理由により、私は、政府原案に賛成し、日本社会党提出の修正案に反対いたすものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/9
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010・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 山口鶴男君。
〔山口鶴男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/10
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011・山口鶴男
○山口鶴男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました地方税法の一部を改正する法律案に関し、政府提出法案に反対、わが日本社会党提出案に賛成の討論を行なうものでございます。(拍手)
討論にあたって、まず、政府提出法案について指摘いたさなければならない点は、国税、地方税を通ずる国民の税負担の割合についてであります。昭和三十七年度の税負担率は二二・三%に達するのでありまして、昭和三十五年当初の二〇・五%、昭和三十六年度当初の二〇・七%をはるかに上回り、戦前の平均である一二・九%に比較すれぱ、ほぼその倍額に達しておるのであります。これでは池田内閣の政策は、所得倍増ではなく、税金倍増政策であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
さて、との二二・三%の税負担は、ドッジ・ラインが実施され、MPを使っての徴税強化が行なわれた、かの昭和二十四年以来の重税なのでございまして、当時の大蔵大臣は池田勇人その人であることを想起いたしまするならば、経済には弱いが税金には強い池田内閣の性格をみごとに現わしているものと存ずるのであります。
一方、税制調査会は、その答申の冒頭において、国民の税負担の割合を二〇%の線で押えることを基本目標として減税を行なうべきことを強調いたしております。しかるに、政府は、答申の枝葉末節のみを取り上げまして、この基本目標から故意に目をおおっているのであります。このことは全く遺憾にたえません。目下国民各階層からごうごうたる非難を浴びている諮問機関無視、すなわち、選挙制度審議会の答申の骨格ともいうべき連座制の強化、高級公務員の立候補制限を骨抜きにしてはばからない諮問機関軽視の態度と同一であるというべきでございましょう。政府の反省を強く求める次第であります。(拍手)
第二は、税負担の強化が地方税において著しい点であります。政府は、昨年の住民税改正におきまして、国税と住民税の関係を遮断いたしました。この結果、所得税において各種の控除が行なわれましても、本年の住民税にはこの恩恵は全くないのであります。また、道府県民税では、中央、地方を通ずる税源配分と称し、所得税の一部を都道府県に移譲いたしたのでありまするが、従来道府県民税は最低〇・八%から最高五・六%まで十三段階の累進税率を採用いたしておりました。今回は、これを百五十万円未満二%、百五十万円をこえるもの四%の二段階、比例税率に改めるというのであります。これは明らかに低所得者層の犠牲において道府県民税を強化する以外の何ものでもありません。(拍手)たとえば夫婦及び子三人の標準世帯を例にとりまするならば、年所得五十万円の者の道府県民税の増加率は実に八二%、年所得七十万円の者の増加率は五二%に対しまして、年所得二百万円の高額所得者はわずか五・九%の増であり、年所得二千万円以上の超高額所得者は逆に減税になるのであります。五十万円、七十万円の低所得者層が、今回所得税は減税、他方地方税は増税、差引スズメの涙ほどの減税であるのに引きかえまして、二千万円以上の超高額所得者は、所得税も地方税もともに減税になるという、全く不思議な減税案と称すべきでありましょう。(拍手)このことは全く悪平等以外の何ものでもございません。
かくて、本年の地方税負担率は、昨年の六・五%に比べ七・一%と、大衆の犠牲において大幅な増加となっていることを、ここに強く指摘いたしたいのでございます。
第三は、入場譲与税の廃止であります。この措置は入場税の廃止とイコールではありません。入場税は依然として政府が徴収をいたすのであります。ところが、今まで都道府県に譲与してきたものを今度は取りやめるというのでございまして、入場税は、本来、昭和二十九年までは地方固有の有力な財源でございました。特に譲与税制度を実施いたしまして以来、人口比率による配分の結果、財源に乏しい後進県に比較的有利であったことを考えまするならば、譲与税制度を廃止する今回の措置に対しましては、あくまでも反対をいたすものでございます。
第四は、大企業、独占資本に対し、依然として手厚い援助、税の減免を行なっている事実でございます。国税の租税特別措置によりまして、一千七百億円もの膨大な税の減免が行なわれておりますことは、すでに御承知の通りでございますけれども、地方税におきましても固定資産税の軽減百八十六億円、電気ガス税の非課税百五十九億円、不動産取得税その他を含めまして三百八十九億円、別に国税のはね返り分を含めまするならば、合計実に八百二十三億円の大幅減免税が地方税においても行なわれておるのでございます。昨年の見積もりは七百億円でございましたから、一八%ふえておるのであります。税制調査会は、その答申におきまして、かかる特別措置は整理合理化すべきことを勧告いたしておるのでありますが、今回政府は、たとえば国内航路の飛行機であるとか、あるいは電気ガス税につきましては、新たにレーヨンとかパルプを加えておるのでございます。今や日本の大企業は、歴代の保守政権の手厚い財政金融を通ずる援助によりまして、目ざましい発展を遂げつつございます。日本の大企業は国際的には中小企業である、こういう表現は今や全く過去のものとなりつつあるのでございます。従って、世界の中小企業だからという当初の軽減の理由は全く通じなくなっていることを、ここに指摘いたしたいのでございます。これでは、政府は、整理合理化ではなくて、増加合理化を堂々とやっておると申さなければなりません。これはまさしく税制調査会軽視であります。池田さんの字引には、多分「整理とはふやすことだ」と書かれているのだとしか私には思えません。(拍手)
さらに、昨年池田内閣は、昭和三十七年度におきまして中央、地方を通ずる抜本的な財源配分を行なうと確約いたしました。ところがこの点につきましては、まさに大山鳴動ネズミ一匹でございまして、全く不徹底に終わりましたことは、公約無視もはなはだしいと申さなければなりません。
以上の観点から、私は、政府提出にかかわる地方税法の一部を改正する法律案に対し、断固反対をいたすものであります。(拍手)
さて、わが日本社会党提出にかかわる法案でございますが、その内容は提案者である二宮議員が先ほど趣旨説明を行なった通りでございます。これに対しまして自民党の方々は、地方自治体の財源を圧迫するものであり、大幅減税をする余地は地方自治体にはないなどと申しております。しかし、これは全く誤りでございまして、わが党法案の内容は、入場譲与税制度の存続、たばこ消費税率の引き上げ、大法人の事業税の引き上げ、特権的非課税措置の改廃を初めといたしまして、差引三百億円もの地方財源強化をいたしておりますることを、十分見通していただきたいと思うのであります。
次に、指摘いたしたい点は、政府の態度であります。昨日、内閣を代表いたしまして安井自治大臣は、昭和三十七年度予算案が衆議院を通過した現在、社会党案の入場譲与税制度の存続とたばこ消費税率の引き上げが行なわれることは、本年の政府の財政運営に障害を与えるので、反対であると述べたのでございます。わが党は前々から、予算関係法案は予算案と同時に国会に提出すべきことを強く要求して参りました。この当然な要求を退け、サボリ続けてきたのは政府であります。みずからの怠慢をたな上げいたしまして、他をそしるがごとき非常識な自治大臣の言動は言語道断であり、この場合において強く抗議をいたすものであります。(拍手)
最後に、私は地方税改正の歴史を振り返ってみたいと存じます。わが党提出の改正案は、過去において否決せられることが多かったのでありますが、その主張の相当部分は一年後ないし二年後において実現を見ております。このことは、わが党の主張の正しさを証明するものではないでしょうか。「あすではおそ過ぎる」という言葉がございます。来年ではおそいのでございまして、今回は与党である自民党におかれても、大局的見地に立って御賛成いただきたいことを御期待申し上げます。
以上をもちまして、私の政府案反対、社会党案賛成の討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/11
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012・原健三郎
○副議長(原健三郎君) これにて討論は終局いたしました。
これより採決に入ります。
まず。本案に対する山口鶴男君外九名提出の修正案につき採決いたします。
山口鶴男君外九名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/12
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013・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 起立少数。よって、修正案は否決されました。
次に、本案につき採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/13
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014・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
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日程第二 市町村立学校職員給与
負担法の一部を改正する法律案
(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/14
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015・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 日程第二、市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/15
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016・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 委員長の報告を求めます。文教委員会理事八木徹雄君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔八木徹雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/16
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017・八木徹雄
○八木徹雄君 ただいま議題となりました市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案につきまして、文教委員会における審議の経過とその結果を御報告申し上げます。
本案は、現在公立高等学校の工業教科担当の教員に支給している初任給調整手当を、今後公立義務教育諸学校の教員にも支給し、これを都道府県の負担としようとするものであります。
本案は、去る一月二十二日当委員会に付託となり、二月六日文部大臣から提案理由の説明を聴取し、以来慎重に審議されたのでありますが、特に本案は、教員の給与体系に重要な影響を与えることにかんがみ、教員の給与はその勤務時間等の諸条件を勘案すべきであり、かつ、現在支給している各種諸手当を合理的に整理統合して、抜本的に給与制度を確立すべきではないか等の基本的事項について、各委員から熱心に検討が加えられたのでありますが、これらの詳細については会議録によって御承知を願いたいと存じます。
かくて、三月七日、本案に対する質疑を終了し、討論を省略して採決の結果、起立多数をもって原案の通り可決いたしました。
以上、御報告いたします。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/17
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018・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/18
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019・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/19
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020・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事鴨田宗一君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔鴨田宗一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/20
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021・鴨田宗一
○鴨田宗一君 ただいま議題となりました日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
この法律案は、まず第一に、日本輸出入銀行の資本金七百八十三億円を二百億円増額いたしまして、九百八十三億円とすることといたしております。すなわち、昭和三十七年度の財政投融資計画において、政府は日本輸出入銀行の融資見込額を一千二百五十億円と推算し、このため必要な資金として、出資及び貸付により新たに八百十億円の資金を供給することとしておりますが、このうち二百億円は産業投資特別会計からの出資金といたしております。
第二に、借入金の限度額を引き上げることといたしております。現在、日本輸出入銀行の借入金限度は自己資本の二倍となっておりますが、同行に対する資金需要の急増に対処し、輸出振興に万全を期するため、これを自己資本の三倍まで引き上げることといたしております。
以上が、この法律案の内容でありますが、本案は、審議の後、昨三月七日、質疑を終了し、直ちに採決に入りましたところ、起立多数をもって、原案の通り可決いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/21
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022・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/22
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023・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
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日程第四 国民生活研究所法案
(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/23
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024・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 日程第四、国民生活研究所法案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/24
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025・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 委員長の報告を求めます。商工委員会理事中村幸八君。
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〔報告書は本号末尾に掲載〕
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〔中村幸八君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/25
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026・中村幸八
○中村幸八君 ただいま議題となりました国民生活研究所法案の商工委員会における審査の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。
最近、国民生活に現われた各種の不均衡を是正し、その安定と向上に資するため、特殊法人国民生活研究所を設立して、国民生活に関する調査研究を行なわせる必要があるというのが提案の理由であります。
本案のおもな内容は、第一に、研究所の目的は、国民生活に関し調査研究を行ない、その安定と向上に寄与することであります。
第二に、研究所の資本金は、政府出資一億円と民間出資の合計額としております。
第三に、研究所の業務は、国民生活に関し調査研究を行ない、また情報や資料を収集し、その成果を普及することであります。
その他、役員、財務及び監督等について所要の規定を設けております。
本案は、二月十日当委員会に付託され、十三日提案理由の説明を聴取して質疑に入り、参考人の意見を聴取する等慎重な審議を行ない、昨七日、質疑終了に際し、田中武夫委員より、一、研究所の調査研究は消費者側に立っての観点より行なうべきこと、二、この立場よりする研究の結果を具体的な政策に反映させること、三、理事及び参与には、一及び二の観点から消費者及び労働者の代表も入れること、四、理事及び参与の選任の結果は当委員会に報告することの四点の要望があり、藤山経済企画庁長官より、御趣旨に沿って運営する旨の答弁がなされました。質疑終了後、採決に付しました結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決した次第であります。
以上をもって御報告といたします。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/26
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027・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 採決いたします。
本案は委員長報告の通り決するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/27
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028・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/28
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029・原健三郎
○副議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時五十四分散会
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出席国務大臣
自 治 大 臣 安井 謙君
出席政府委員
経済企画政務次官 菅 太郎君
大蔵政務次官 天野 公義君
文部政務次官 長谷川 峻君
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104005254X02119620308/29
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