1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十七年四月二十四日(火曜日)
午後一時四十五分開会
—————————————
委員の異動
四月十九日委員鳥畠徳次郎君及び前田
佳都男君辞任につき、その補欠として
柴田栄君及び堀本宜実君を議長におい
て指名した。
四月二十一日委員柴田栄君辞任につ
き、その補欠として鳥畠徳次郎君を議
長において指名した。
四月二十三日委員中村正雄君辞任につ
き、その補欠として赤松常子君を議長
において指名した。
本日委員江藤智君、天坊裕彦君、米田
勲君、松浦清一君及び白木義一郎君辞
任につき、その補欠として前田佳都男
君、村山道雄君、相澤重明君、田上松
衞君及び中尾辰義君を議長において指
名した。
—————————————
出席者は左の通り。
委員長 村松 久義君
理事
天埜 良吉君
金丸 冨夫君
谷口 慶吉君
大倉 精一君
委員
重宗 雄三君
鳥畠徳次郎君
平島 敏夫君
前田佳都男君
村山 道雄君
赤松 常子君
田上 松衞君
中尾 辰義君
国務大臣
運輸大臣 斎藤 昇君
政府委員
運輸大臣官房長 広瀬 真一君
運輸省海運局長 辻 章男君
運輸省船員局長 若狭 得治君
運輸省自
動車局長 木村 睦男君
運輸省観光局長 梶本 保邦君
事務局側
常任委員
会専門員 古谷 善亮君
説明員
気象庁次長 多田 寿夫君
気象庁予報部長 肥沼 寛一君
—————————————
本日の会議に付した案件
○自動車の保管場所の確保等に関する
法律案(内閣送付、予備審査)
○船舶職員法の一部を改正する法律案
(第三十九回国会内閣提出)(継続案
件)
○国際観光ホテル整備法の一部を改正
する法律案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/0
-
001・村松久義
○委員長(村松久義君) ただいまより委員会を開会いたします。
まず、委員変更について御報告いたします。
去る十九日前田佳都男君が辞任され、堀本宜実君が選任されました。また昨二十三日、中村正雄君が辞任され、赤松常子君が選任されました。さらに本日、江藤智君、米田勲君、白木義一郎君が辞任され、前田佳都男君、相澤重明君、中尾辰義君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/1
-
002・村松久義
○委員長(村松久義君) 続いて自動車の保管場所の確保等に関する法律案を議題といたします。
これより本案の提案理由の説明を願います。斎藤運輸大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/2
-
003・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) ただいま議題となりました自動車の保管場所の確保等に関する法律案につきまして、提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。
現下の交通情勢は、交通事故の激増、大都市における路面交通混雑の激化等、まことに憂うべき状態となっておりますが、これに対しては、政府といたしましても、従来から臨時交通関係閣僚懇談会及び交通対策本部において関係行政機関相互の施策の総合調整をはかり、道路及び駐車場の整備、踏切道の改良、交通安全施設の整備、交通規制及び取り締まりの強化、交通安全運動及び交通安全教育の推進等の諸施策を講じて、これが解決に鋭意努力して参ったところであります。
しかしながら、最近における交通の発達、ことに自動車の増加は、まことに目ざましいものがあり、大都市における道路交通量は、道路容量をはるかにこえて、著しい交通渋滞を招いておりますが、加うるに車庫等の保管場所を有しない自動車が多数道路上に放置されて、道路の適正な使用を阻害し、ただでさえ狭い道路を一そう狭めて交通の混雑に拍車をかける結果となっております。
かかる現状にかんがみ、政府といたしましては、道路を自動車の保管場所として使用しないよう義務づける等の措置を講じ、道路使用の適正化と道路交通の円滑化をはかりたいと考え、この法律案を提出いたした次第です。
次に、その要旨について御説明を申し上げます。
この法律は、自動車の保有者等に自動車の保管場所を確保し、道路を自動車の保管場所として使用しないよう義務づけるとともに、自動車の駐車に関する規制を強化することにより、道路使用の適正化及び道路交通の円滑化をはかることを目的としております。
まず、自動車の保管場所の確保の義務づけでありますが、この法律におきましては、自動車の保有者は当該自動車の保管場所を確保しなければならないものとし、これを担保するため、政令で定める地域内においては、保管場所を確保していることを証する書面を提出しなければ自動車の登録を受けることができないことといたしました。
しかしながら、自動車の保管場所の確保を義務づけても、その保管場所に自動車を保管せず、自動車を道路上に放置しては何の効果もないわけでありまして、この法律は、より直接的な手段として、政令で定める地域内においては、何人も道路上の場所を自動車の保管場所として使用してはならないものとし、また、保管場所としての使用でなくても、長時間にわたる駐車は、同様禁止することとし、違反行為に対しては、それぞれ罰則を設けました。
なお、これらの規定は、全国的に適用されることが本来望ましいのではありますが、一挙に実施することの利害得失を考慮して、当面道路交通の円滑化をはかる上において特に必要と認められる地域を政令で指定して実施し、逐次これを拡大していくことといたしました。
さらに、この法律におきましては、現行道路交通法の駐車禁止及び駐車時間の制限に関する規定を強化いたしました。
なお、この法律は、公布の日から三月を経過した日から施行することといたしましたが、自動車の保管場所としての道路の使用の禁止等に関する規定は、現在保管場所を有しない自動車の保有者が保管場所を準備するために必要な期間を考慮して、公布の日から一年後に施行することといたしました。
以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成いただけますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/3
-
004・村松久義
○委員長(村松久義君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/4
-
005・村松久義
○委員長(村松久義君) 次に、船舶職員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
前回に引き続き質疑を行ないます。通告があります。大倉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/5
-
006・大倉精一
○大倉精一君 船舶職員法につきましては、私はきょう初めて内容にわたってお尋ねするのですから、具体的にお答えを願いたいと同時に、しろうとが質問するのでありますから、しろうとによくわかるように御説明を願いたいと思います。
まず第一番に、提案理由の説明を何回も繰り返して読んでみましたが、どうしても了解ができない点があります。というのは、今度の改正は、何を目的にしているのか、どういう動機で改正になるのか、どうもその点が本末必ずしも一致していない、こういうところが見受けられるのですが、この法律を改正する動機と目的について御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/6
-
007・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 本法案を提案をいたしました理由は、先般申し述べましたとおりでございますが、今日、船舶職員法におきましては、船舶航行の安全等の見地から、通信士を三名以上、これは特定条件以上の船でありますが、乗せなければならないわけでございますが、通信機の進歩その他の情勢から考えまして、原則として一名をもって足りる事情になって参りましたのにかんがみまして、最低限度一名にしたいというのが本案の理由でございます。
さらに申し上げまするならば、今日通信士が非常に得がたくなって参っております。これは日本の産業全体の傾向でありますが、日本の経済の成長につれまして、必要とする従業員の数が非常に多くなってくることにかんがみまして、できるだけ少ない人数で能率を上げていくということが日本の産業のあり方であると同時に、特に船におきましては、そのことが痛切に要請をされるわけであります。世界の海運競争に打ち勝って参りますのには、できるだけ能率的、効率的な運営が行なわれなければならぬことはもちろんでございまするので、したがって、世界各国が最低限度として要請をいたしておりまする通信士の限度程度にいたして、そして海運界自身の経営をよくすることの一助にもいたしますると同時に、船に乗っておられる船員の方々の待遇の向上にも資したい、こういうような考えてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/7
-
008・大倉精一
○大倉精一君 本来船舶職員法の目的・というのは、航行の安全というのが法律の目的であります。でありまするが、今度の改正は、航行の安全という関係についてはちっとも触れてない。ただここで「海上航行の安全に支障を来たさない範囲で」という、こういう如才のない釈明をしておりますけれども、これによって海上航行の安全というものは私は後退すると思う。しかも今お話のように、一名でも足りるようになったからというのは、おそらくオート・アラームのことをおっしゃってのことだろうと思いすすけれども、海上の航行安全というのは、絶えず向上しなければならぬ。いやしくも海上の航行安全を後退させるようなことを政府みずからが措置しては相ならぬと思うのですが、今度の改正案を見ますというと、明らかに海上航行の安全を後退させる、こういうことがわかっておりまするから、これはあえて法律的な良心と申しますか、そういうものから気がとがめて、「海上航行の安全に支障を来たさない範囲」という如才のない申しわけをしておる。しかし、海上航行に支障がないということをだれが保障するか、どこで保障するか。この委員会におきましては、逓信委員会と違いまして、海上の航行安全というようなことに主眼を置いて審議しなければなりませんので、特にこの点について大臣の御所見を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/8
-
009・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 先ほども申しますように、三名の通信士を最低限として要求をいたしておりまするのは、航行の安全という点に重点が置かれておったことはもちろんであります。ただ、先ほど申しますように、今日の通信機の進歩その他から考えまして、一名で十分航行の安全が保てる、こういう確信を得ておりますので、そこで一名で十分である限りは、法律の最低限度を一名にすべきである、かように考えて提案をいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/9
-
010・大倉精一
○大倉精一君 本来ならば、海上航行安全の向上のために本改正案を提案すると、こうこなければならぬと思うのですけれども、それは書いてない。「海上航行の安全に支障を来たさない範囲で、」というきわめて消極的な申しわけをしておる。これは明らかに海上航行の安全を後退させる。それで、オート・アラームについては、これは専門委員会であるところの逓信委員会においていろいろ論議をしておると思いますから省きますけれども、当委員会においては、かりにオート・アラームという機械が精巧な機械であっても、それに一名をつけて航行をした場合に、一体海上の航行の安全ということ、並びに万般の業務にどういう支障があるか、こういうことが問題にならなければならぬと思うのです。この前の委員会で、そういう試験をしたかと言ったら、したことはないとあなたはおっしゃった。ここに私は問題があると思うのです。ですから、航行安全ということを積極的に政府が考える必要があると思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/10
-
011・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 前にも申し上げましたように、ほとんど世界各国の海洋国は、最低限を一名といたして航行の安全を保っておるわけであります。日本でも毎年相当トン数の論出船を作っておりますが、日本でできる輸出船にいたしましても、すべて一名の定員ということを前提にして船を作り、通信機をつけ、オート・アラームをつけまして、そうしてこれらの船舶がすべて安全な航行をいたしておりまするので、したがって、法の要求する最低限度は世界水準で足れりと、かように解釈をいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/11
-
012・大倉精一
○大倉精一君 航行の安全に支障のない限りというその中身は、おそらく外国もやっておるからやっても差しつかえないんじゃないかと、こういうことだろうと思うのです。国際水準にという言葉があるのですけれども、通常日本で使う国際水準にということは、レベル・アップのことを大体われわれは常識的に意識しておるのですね。今度の場合には、逆だと思うのですよ。外国の船舶と比べて日本の通信の執務体制というものは、私は世界的に見て最も優秀なものだと思う。航行安全のためにはこれでなければならぬ。ことにオート・アラームというものに対しましても、必ずしも世界各国において万全な信頼が得られていない。ですから、今度言うところの国際水準ということは、むしろレベル・ダウンであって、日本の通信執務体制を国際のレベル・ダウンに合わせようという、そういうところが今度の場合は違うと思うのですね。むしろ国際水準というならば、日本の優秀なる執務体制、これを国際水準にして、船舶の相互安全あるいは相互扶助という観点から、むしろこういう体制を世界に要求すべきじゃないかと思うのです。大臣、この点いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/12
-
013・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 同じ仕事をいたしますのに、多数の人間によってやるほうがいいのだということだけでは済まされない問題であると、かように考えます。先ほども申しますように、すべての産業がそうでありますが、特に海運界におきましては、相当激烈な国際競争をやっているわけでありまして、そこで多数の人を使ってやっていくというよりも、できるだけ人数を少なくして、そうして機械による、場合によればリモート・コントロールまで進んでそうしてやっていくという世界の趨勢にあるわけでありますから、この趨勢におくれるということは、私は日本の海運産業のためにとらざるところであると、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/13
-
014・大倉精一
○大倉精一君 その辺がどうもおかしいのですね。いわゆる他の産業の合理化ということであれば、これはまた今度の場合と少し意味が違うと思うのですけれども、何といっても航行の安全ということを第一番にしなければならないと思うのですね。でありますから、今の筆法でいきますならば、国際競争力を強化するために、あるいはここに書いてあるように合理化を促進するために、海上航行の安全を後退させる。こういう結果に相なるわけです。オート・アラームに対しましては、私はこの前の委員会でも言ったが、見たことも聞いたこともない。ただあれは、警急信号が出ると船中猛烈にがらがら鳴って、たいへんな音を出す。でありますから外国においてはオート・アラームはつけておるけれども誤作用といいますか、何か雷が鳴ってもがらがら鳴って安眠休養に妨げになるのでスイッチを切っておる。こういうことがたくさんあると聞いております。あるいはまた、国際的な海員組合の団体であるところのITUあたりもオート・アラームに対しましては信頼してない。ただ、企業家、資本家が企業利潤のために人件費を減らそうと、こういうための措置とより考えられない。今度でもいろいろ海上航行の範囲内、あるいはまた国際競争云々と言っておりますけれども、要するところ人減らしの法案なんです。人減らしということを国家の法律によって規定づける、こういうところにどうも私は法律案の不純なものがあると思うのです。特に戦時中に採用したものだから、今では支障はないのだ、こういうことも都合のよいような理由をつけておりますけれども、私は先ほどから申しておりますような観点に立って、今度の法律案というものは、いろいろ理屈を並べても、結局は企業利潤のために人を減らすのだ、これ以外に目的はないと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/14
-
015・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) オート・アラームの性能は日進月歩であろうと存じまするが一今日日本で作っておりまするオート・アラームは、決して世界水準に劣るものではない。むしろ世界の水準を上回るものであるということは、逓信当局も断言をいたしておるわけであります。また、日本でできたオート・アラームについては、ほとんど輸出先からクレームがこないということからも、私どもは自信を持っておるわけであります。船の航行の安全ということは、これは海員の方々を初め、人命の保全という面からもちろん最も大事なことではありまするが、企業家といたしましても、船が沈没するということはこれは一大事でありまして、私は、企業家としては、やはり船の航行の安全ということを最も心にかけるべきものである、かように考えております。企業利潤を上げるとおっしゃいますが、私はやはり国際競争に勝ち、そして企業の利潤を上げるというのでなければ、やはり船を動かす海員の方々の待遇の向上もできない、かように考えておりまするので、私は、これは海運の資本家の要請によって提案をしたのじゃないかという御質問には同調するわけには参りません。私は海運界全体、もちろん海運の企業家も、また海員の方々も、全体含めて、日本海運全体の問題として考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/15
-
016・大倉精一
○大倉精一君 今の御発言の中で少し勘違いがあるのじゃないかという気がするのです。つまりオート・アラームという機械は決して外国に劣ったものでない、非常に優秀なものであるということと、それから船主自体も自分の船が沈んではたいへんであるからという点がありましたが、第一番にオート・アラームというのは、幾らりっぱであっても、要はオート・アラームが受信をし、発信するものではない、こういうことにまず第一番に問題があると思うのです。もう一つは、船が沈むという緊急の場合に、一分間にわたるところの警急信号ですが、これははたして打つかどうか。これはたとえば先般洞爺丸のときでも警急信号ですか、これを打った船は二隻よりなかったという、こういう事態から考えてみますと、オート・アラームについても、必ずしも私は、相互扶助の、海上におけるお互いの義務を果たすことはできないだろうと思う。
それからもう一つは、いわゆる自分の船が沈むとおっしゃるけれども、オート・アラームの作用は、これは外国船の助けを、救助の要求を受ける装置だと私は思うのです。自分の船じゃないと思うのです。こういうことは船主か、だれかやってくれるだろう、こういうことではいかぬのであって、お互いに相互扶助に必要なる人員あるいは器材なりというものはやはり設置して、相互援助になるようにしなければならぬ。そういう点についてどうも納得がいかない。オート・アラームというのは、くどいようだけれども、幾らやってもしょせんは機械にすぎない。しかも、発信する機械じゃない、こういうところに大きな問題があると思う。世界的にこういう問題は非常に疑問を持たれておる。こういうところを皆さん方が、外国がやっておるのだからおれのほうもやるのだ、ただこういう単純なことだけでは、この船舶職員法の目的とする海上航行の安全という問題が非常に大きな難点があると私は思う。これは意見の食い違いかもしれませんが、私はそういうふうに思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/16
-
017・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 船舶が危険に瀕して通信を十分打つ間もないということでありますならば、これは救助に出向くであろう船がいかに待ちかまえておっても信号は受けられないということで、これは問題は私は別だと思います。かように考えます。同時に、航行の安全という意味で今おっしゃいましたオート・アラームの点は、これは救助の信号を受けることに関して、これはおっしゃったとおりでございますが、日本の船が三名で絶えずウオッチをしておる、外国の船は一名で夜間はオート・アラームだ、日本の船のみが外国の船を救助するということについて特に重くして置かなければならぬということも私はなかろうと思うわけであります、今おっしゃるようなことを前提といたしましても。しかしながら、今日のオート・アラームの性能は、各国とも信頼をして採用していることでありますから、私は警急信号を受けるのにさしたる支障を来たさない、かように思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/17
-
018・大倉精一
○大倉精一君 私はしろうとでわかりませんが、オート・アラームというのは遭難通信そのものを受けるものじゃなくて、警急符号を受けるだけのものであると聞いておる。でありますから、遭難信号をする場合に、受ける態勢は、人間はそこにいなければならぬということ。オート・アラームというのは、警急遭難信号を出す前に、いわゆる一分間の警急符号を出す、その警急符号をオート・アラームが、がらがら鳴って船中を全部起こしてしまう。私は目ざまし時計だと言ったのですが、そういう役目よりやらぬのですよ。ですから遭難船が警急符号を略してすぐに遭難信号を打つ。こういった場合に、オート・アラームでは全然役に立たぬ、こういうことだと思うのです。私はしろうとでよくわかりませんが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/18
-
019・若狭得治
○政府委員(若狭得治君) 現在、わが国において作っておりますオート・アラームは、お説のようにSOSの前置信号を受信する機械装置でございます。しかしながら、最近外国におきましてはSOS自体を受信する装置もできております。これは法律改正によりましてオート・アラームをつけるという条件になりますれば、先ほど大臣から現在のオート・アラームの性能は世界のどの国の装置よりもすぐれているという郵政当局のお話が御紹介ございましたがSOS自身を受信する装置を作ることもむずかしいということでもございませんし、また、そういう状況になると考えているわけでございます。したがいまして、オート・アラーム自身の問題につきましては、今後の技術の進歩ということを当然われわれとしては考えて参らなければならない。この法律は最低限度でございますが、そういう意味からこういうふうに改正していただきたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/19
-
020・大倉精一
○大倉精一君 法律は最小限度きめられればこれになるのです。これをやっておれば法律違反にならないのですよ。今あなたは、将来はオート・アラームでなくて機械みずから受信、送信する機械もできるという、現にできておる、あるいはできる可能性もあるとおっしゃったが、そういう機械ができてからやったらどうですか。将来できるというが、現在送信までできるのではないという機械をつけて、これがいかに優秀であっても、人間一人つけておったのでは、警急の場合には間に合わないという事態ができる。しかも、勤務時間が規制されますから、非番のときには非常に重大な問題が起こる。たとえば一九一二年ですか、タイタニック号という大きな事件がありましたけれども、北大西洋で氷山と衝突した事件です。このときの体験が、付近には貨物船がたくさんおったのですけれども、結局時間切れということがあって、受信を切ってしまった、こういうような事件があるのですね。このときのタイタニック号の乗組通信員は一人だった。このとき三人おったならばという体験もあったと私は聞いているのですが、そういう体験があったのですか、局長、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/20
-
021・若狭得治
○政府委員(若狭得治君) ただいまのタイタニック号の事実につきましては、今手元に資料がございませんのでお答えすることはできませんけれども、われわれの記憶では、タイタニック号に対しまして流氷の通信があったわけでございますけれども、それにつきまして、公衆通信にタイタニック号の通信士がかかり切ったために、十分通信が取れなかったということが一つの原因ではなかったかというように考えておるのでございます。
それから、先ほどの前置信号の問題でございますが、それにつきましては、SOSを直接受信することもできるということを申し上げただけでございまして、前置信号を受信するというオート・アラームの性能につきましては、先ほど申しましたように非常に優秀な状況にございます。ただ、非常に緊急の場合に、沈没する船舶が、はたして一分間の前置信号を打っておれるかどうか、場合によっては前置信号なしでSOSを打つ場合があるのではないかという御質問ではないかと思いますが、そういう場合がないということは断定できませんけれども、われわれとしては、オート・アラームが今後発達していくわけでございますし、SOSを直接受信できる装置もできるわけでございますので、そういう点では全く不安はないと考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/21
-
022・大倉精一
○大倉精一君 タイタニック号の事件は、私も詳しくは知らないが、非常に有名な事件だそうです。それから、今のそういう警急符号といいますか、警急符号を打たないという場合もままあるかもしれませんとおっしゃったけれども、私は実はつい最近北海道へ行きまして、それで連絡船の中で船員に直接聞いた。そうしますと、船員の実感としては、緊急に非常な危険な場合には、よほど落ちついた通信士でなければ、直接SOSを打ってしまうというのです。一分間の警急符号を悠長に打っておるというような余裕はない、これが乗っておる人の実感ですね。あなた方は、机の上で、そういうこともままあるというふうにおっしゃいましたけれども、それほどさように実態とズレがあるのです。私はこういう意味で、このオート・アラームというものに対しまして信頼をするというわけにはいかぬわけです。これはもうただ単に三名を一人にするという一つの手段にすぎない、口実にすぎぬと私は思うのです。今政府のほうと企業家のほう、資本家のほうと合同して、企業合理化、国際競争のためにという名目のもとに人を減らす、そういう風潮、ムードがずっと流れている、でありますから、こういうムードに乗って、最近は非常に危険な状態が起こっている。どういう状態かといいますと、船舶安全法の盲点を縫って、三千トン以上というような非常に大きな船、これが近海区域から沿海区域に格下げを勝手にやって、そうして今度は無線電信を——これは法律によって電信はつけなくてもいいのですが——電話に切りかえて、それで通信士を下船さしてしまおう、あるいはまた、こういうような船はそういうものも要らぬし、救命艇も少なくともつけなくて済むし、どんどんそういうような措置をして経費の節約をやっている。これはもう今政府と企業家が一体になって、そうして人減らしのムードを作っている。これを企業合理化と称してやっている。こういうものがどんどん蔓延してきますと、非常に大きな問題になるのです。今申しました例は北星海運の例です。御承知と思いますけれども、これは三千トンにわたる大きな船ですけれども、これが近海区域から沿海区域に勝手に格下げして、そうして自動電話に切りかえる、あるいは救命艇は一隻で、一隻おろしてしまう。消防ポンプも要らないというので、はずしてしまう、これでは一体海上の安全ということに対する思想はすっかり海運界から消えてなくなってしまうのじゃないかというふうにおそれるのです。これは関連して、ついでですからお伺いしますけれども、船舶安全法の盲点だと思うのですけれども、こういうような現象について、行政指導をどういう工合におやりになるつもりか、関連してお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/22
-
023・若狭得治
○政府委員(若狭得治君) 具体的な今御指摘になりました北星海運の船舶につきましての事情は、私のほうに報告が参っておりませんけれども、船舶はその航行区域によりまして、いろいろ設備その他について船舶安全法において規定いたしているわけでございます。したがいまして、航行区域の資格を変更いたしますれば、当然いろいろな設備についての軽減も受けられるわけでございます。したがいまして、実態は沿海区域を常に航行区域といたしているかどうか、資格は変更いたしましたけれども、依然として従来の近海区域を航行しているかどうかという点が問題になるわけでございまして、設備の面において沿海区域をもし常に航行しているということでございますれば、これは問題にならないというふうに考えるわけでございます。この安全の面につきましては、船舶安全法に厳重に規定いたしておりますので、その規定を守っているかどうかという点を十分検討すればよろしいのではないかというふうにわれわれは考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/23
-
024・大倉精一
○大倉精一君 私の聞いているのは、船舶安全法第四条というのは、確かにこれは一つの盲点です。これは沿海区域に格下げをすれば、どんな船でも無線通信員は要らない。いわゆるつける義務はないということになるのです。そこでお尋ねしたいのは、近海区域から沿海区域に変更するために、当局の許可か何か要るのですか。勝手にやれるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/24
-
025・若狭得治
○政府委員(若狭得治君) 船舶安全法によって管海官庁に資格変更の届けを出すわけでございます。そうしてその後におきまして検査の場合に、その資格とその設備というものについての船舶検査官の検査を受けるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/25
-
026・大倉精一
○大倉精一君 この場合に、格上げのときにはこれはいろいろ検査もしなければならぬと思うのですけれども、格下げのときの検査はどうするのですか。沿海区域というための必要な設備なり何なりをしておればいいわけですね。これは近海区域を航行しておったものですから、今までは沿海区域よりは上回った設備なり何なりをやっているわけですね。それを今度格下げするのですから、そういう場合の指導は、これは無条件に許可されるのか、あるいは全般の航行の安全なりあるいは無線電話に対する陸上の受け入れ態勢なり、いろいろなことを勘案して許可をされるのか、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/26
-
027・若狭得治
○政府委員(若狭得治君) 資格を変更いたしまして、より狭いより近い区域を航行区域とする場合におきましては、特別の検査は必要ないわけでございます。しかしながら、その資格どおりに航行しているかどうかという点につきましては、管海官庁がこれを取り締まっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/27
-
028・大倉精一
○大倉精一君 たとえば横浜から釧路へ行く場合には、これは近海区域を通らなくても行けますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/28
-
029・若狭得治
○政府委員(若狭得治君) 横浜から釧路までの間沿岸を沿って参りますれば、沿海区域の資格で参れるわけであります。それから直接東北方面から直線コースを通っていくということになりますれば、近海区域を通るということになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/29
-
030・大倉精一
○大倉精一君 私はそういう区域はしろうとでわかりませんけれども、これは、はたしてこの船が沿岸をぐるっと回って釧路へ行くものか、直行するものか、だれがこれを見張っているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/30
-
031・若狭得治
○政府委員(若狭得治君) 海上保安庁及び管海官庁が監督いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/31
-
032・大倉精一
○大倉精一君 私は関連質問ですけれども、将来のためにもお尋ねしておきますが、これは非常に危険なものだと思うのですね。むしろ船舶安全法第四条というものについては、再検討をする必要があるのではないか、こう考えるのですが、そういうお考えはお持ちになったことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/32
-
033・若狭得治
○政府委員(若狭得治君) 所管が違いますけれども、船舶安全法第四条につきましては、現在のところ検討する考えはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/33
-
034・大倉精一
○大倉精一君 私は、無線電話というものについても、これもオート・アラームと同じように、これは完全なものとはいえないと思うのですね。これもまた青函連絡船で直接話を聞き、また現実に見てきたのですが、島陰に入ったらこれは届きませんよ、島陰に入ったら。あるいはまたいろいろなむづかしい条件があって、はっきり言葉が聞こえる状態でないというと連絡通信はこれは無理なんです。があがあという音ばかりして、直接話し合いができない。あるいはまた鹿児島弁の人と東北弁の青森の人が話し合っても通じないのですよ。こういう不便があるということを現実に私は通信士から聞いてきたのですよ。ですから、無線電話によるということは、一見便利なようですけれども、非常に危険を伴う。これは無線電話と無線電信とを並用しなければならぬと思うのですが、そういうことは考えられませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/34
-
035・若狭得治
○政府委員(若狭得治君) 無線電話によるほうがより便利でございますし、また、通信の形態としても同時に通話できるわけでございますので、無線電信に比べてはるかに効率的な通信方法であるということは疑いない事実でございますので、われわれといたしましては、この無線電話の機器の発達改良という点について十分今後努力していかなければならないというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/35
-
036・大倉精一
○大倉精一君 電話は十分でないから改良しなければならないという工合に言っておられますけれども、改良する前に、不健全なままでどんどん電話に切りかえていく、これでは船の乗組員諸君が非常に不安じゃないかと思うんですね。海上安全ということ、航行の安全ということに対しましては、非常に感覚がだんだん鈍くなっておる。これは今のオート・アラームと同じ便法だと思う。ですから、こういうふうなことがだんだん蔓延すると、結局、企業合理化すなわち人減らしだということになりまして、航行の安全ということは二の次になる、こういうことは明らかです。思想的にそうなってくる。ですから、私は、そういう点について皆さん方のお考えがどうも少し私どもと違っておるような気がするんです。でありますから、この問題も含んで今度の措置というものは、結局は人減らしだけにすぎない、こういう結論が出されると思いますけれども、この問題についての、今の無線電話に切りかえるという問題ですね、将来の指導方針について何かお考えはありませんか。無条件に許可をして、そうしてもう陸上の受け入れ態勢ができていないという場合に、どんどん各船が無線電話に切りかえたら、一体どうなるか。たとえば現在北海道においては函館方面に機帆船の電話の組合があるそうですね。その他二、三組合があるそうですけれども、少数の場合はけっこうです。この風潮がどんどん蔓延して、どんどんこの無線電話に切りかえたら、一体この受信なり発信なりどうなるか、非常に混信してくるんじゃないか、これは、そういうことは起こりませんか。でありまするから、そういうことを想定して、近海から沿海に切りかえる、これに伴って無線電話に切りかえることについては、行政指導として格別関心を持たなければいかぬと思うのですが、これに対するお考えはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/36
-
037・若狭得治
○政府委員(若狭得治君) 船舶安全法におきまして無線の設置を義務づけている船舶がございます。これにつきましては、当然法律上の義務でございますので、通信士が非常な獲得難ではございますけれども、これを乗せておるわけでございますけれども、船舶安全法におきましては、この沿海区域を航行する船舶については無線は義務づけておらないわけでございます。したがいまして、そういう非義務船舶につきましては、最近、せっかく無線機を船内に取りつけておりながら、これを閉局するというような風潮が出ておりますことは事実でございます。これは船舶通信士の需給が非常に逼迫いたしておるための一つの悪結果でございますので、こういう点からもこの船舶職員法の改正をやっていただきまして、この需給緩和に努めていきたいというふうに考えておるわけであります。なお、電話自体の改善という点につきましては、今後郵政省ともなお連絡を密にして参らなければならないわけでございますけれども、現在のところ、こういう通信機を持っておる船舶、義務船舶の範囲というものをさらに下げるという傾向がございますので、そういう点からもこの電話の改善につきましては、今後一そうの努力をやっていきたい、また、これに加入する船舶が相当出て参りますれば、当然この機器の発達、また陸上施設の発達につきましても、電電公社その他との協力も十分考えられるわけでございますので、そういう点に努力をしていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/37
-
038・大倉精一
○大倉精一君 非常に私は重大なことを聞いたと思うのですけれども、無線電話がきわめて不完全な今日の状態において、なおかつ無線電信を備えなければならぬ義務船を下げる、資格を下げるといいますかね、そういうような傾向にあるとおっしゃったのですけれども、これは重大なことなんですけれども、大臣、どうお考えになりますか。そういうような傾向について、政府としてはどういう御考慮をしておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/38
-
039・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 通信機の発達に伴って、今までの規定が科学技術の進歩に応じて変わってくるということは、これは当然なことだと、かように考えております。ただ、それを故意に人手を減らすということだけのためにやるというような傾向があるとするならば、これは大いにそういうことのないようにしていかなければならぬと思いますが、そういう事実はないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/39
-
040・大倉精一
○大倉精一君 故意にやる傾向という工合に認めた場合にどうしますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/40
-
041・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 義務を命ぜられているものが義務を果たしていなければ、これは法の命ずるところによって処分する以外に手がございません。その点は厳重に監督していくつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/41
-
042・大倉精一
○大倉精一君 船舶安全法によって今言った盲点をついて、近海を区域としておったものが沿海にする、これは故意ということは当てはまらないかもしれませんけれども、人減らしのためにそういうような措置を企業家が勝手にとる、しかも無線電話という機能は、今、局長が言っておりますように非常に不完全である。将来この性能の向上に努力する、こういう段階に、そういうものを何らチェックする方法がないということは、これは重大だと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/42
-
043・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 法の盲点をついて、脱法を考えようと、これはどこまでも法律違反でございますから、厳重に取り締まって参ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/43
-
044・大倉精一
○大倉精一君 法の盲点をつくというのは、脱法行為ではないのですね。法律ではどうにも仕方がないのです。船舶安全法の第四条に従いますと、これこれの船はこの無線電信を備えつけなくてもいいということになっている。逆に、これこれの船は無線電信を備えつけろと。でありまするから、それ以外の船は無線電信を備えつけなくてもいい。したがって、三千トンというような大きな船ですね、これは当然近海区域を航行するという船でしょうけれども、これが単に経費節約、人減らしということで不完全な無線電話をくっつけるために、法には触れないということでもって沿海区域に回っている、こうなって参りますと、非常にそういう風潮が出てくるというと、無線電話の通話というものはますます混乱してくるのじゃないかと思うのですがね。この辺、何かひとつ法的にどうということでなければ、行政指導として何かおやりになる一お考えはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/44
-
045・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 三千トンでなくても、二百トンでも、外洋に出ようと思えば出られるわけであります。したがいまして、外洋に出てはいけないという船が外洋に出れば、すべて監視を厳重にして取り締まって参らなければならぬわけであります。三千トンであろうと二百トンであろうと、ここに三千トンという大きな船であれば、よけい外洋に出る可能性が多いわけでございますから、こういうものについては特別監視を厳重にいたさなければならぬ、かように考えているわけでございます。
なお、無線電話の点は、これは加入局がふえて参れば、あるいは通信に支障を来たすであろうという御意見も、ごもっともであろうと思いますが、無線電話もやはり電電公社で扱うものであれば、これは無制限に加入を許すわけではなかろう、やはり通話能力というものも考えてやっておるわけでございますから、これは郵政当局に信頼をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/45
-
046・大倉精一
○大倉精一君 機械の点を今ここで言っているわけではありませんけれども、たまたま現在の無線電話はまだまだ不完全で、将来この機能の向上のために努力するという、そういう答弁がありましたので、聞いたのですけれども、結局はこれも、航行の安全なり何なりということでなくて、さっきちょっと言われましたように、無線通信士の需給のアンバランス、こういうものから、航行の安全と言うけれども、優先してこういう処置をとる、あるいは経費の節約ということから、こういう処置をとる、裏から言えば人減らしということになる。そこでお伺いするのですけれども、現在の無線通信士の人員不足というその原因は一体どこにあるか。今度の法律改正によって、この需給のアンバラスは直りますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/46
-
047・若狭得治
○政府委員(若狭得治君) 現在の通信士の海運関係の状況を申し上げますと、法律上の定員数は二千七百八十名、この政府提案の原案によりますれば、暫定期間は千八百、したがいまして約九百名減少しておるわけであります。まだ三年後には千三百、約千五百名の減少になるわけであります。しかしながら、需給の面からいたしますれば、現在の二千七百八十名に対する実際の乗船いたしております定員は、それより上回っておりますし、また、それに対して約二割程度の予備員がございます。したがいまして、これらの補充に年間約三百名程度の補充が必要になって参るわけでございます。また、大体一年間の新造船に必要といたします通信士の数は、もし法律が現状どおりでございますれば、これにつきましても約三百名程度の新規需要が必要でございます。もし法律が改正になりますれば、これは約百五十名の程度になるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げました減耗補充、それから新規需要合わせまして、法律が改正になりましても、なお四百五十名程度の人員は必要でございます。また、もし改正にならないといたしますと、約六百名程度の人員が必要になるわけでございます。そういう点におきまして、需給関係からは、ぜひともこの改正案が通りまして、少なくとも年間、来年度七百名ないし八百名程度の減員が可能になってくるというような状況にまで持っていきたいとわれわれは考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/47
-
048・大倉精一
○大倉精一君 この船舶通信士の需給の問題は、当面のそういう現象ではなくて、もっと根本的な問題があるんじゃないですか。たとえば今度整理の対象になるのは、上級通信士ということになっているのですけれども、今後は外航船の通信長には二級通信士はなれない。だから事実上二級通信士というものは、これは職場がなくなってしまうことになる。しかし通信士の養成機関であるところの国立電波高等学校、仙台、熊本、詫間ですか、にあるのですが、これは二級通信士を養成目的とするのでしょう。職場のない者を養成目的にしておる。さらにまた一般資格の者は電通大学で教育されているようですけれども、この卒業生は海には来ない。みんな陸に行ってしまう。こういう点を改めない限りにおいては、船の無線通信士というものの需給はうまくいかないのではないかと思うのですが、お考えいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/48
-
049・若狭得治
○政府委員(若狭得治君) 二級通信士の処置につきましては、この法律は三年の暫定期間を置いておりますし、その間に再教育の問題も当然出てくるわけでございます。また、今後小型船等の需要も相当多いわけでございます。これについて失業の不安があるというふうには考えておらないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/49
-
050・大倉精一
○大倉精一君 養成機関に対する問題はどうです。ここにも問題点があるのじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/50
-
051・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 養成機関は郵政省でやってもらっておりますが、陸上、海上を通じまして、その需給の点を勘案をいたして、そうして、それに必要な養成をやってもらえるだろう、かように考えております。ただ問題は、通信士が今非常に需給が困難であるからという現状からではなくて、先ほどから申しますように、機械、技術が進歩してきて、人手が少なくて済むというものは、やはりそれに合わせるようにやっていくということは、私はこれは近代産業を発展させてゆくゆえんだと、こういう観点からやっておりますので、その観点に合わせて養成もあるいは待遇も考えていく問題だと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/51
-
052・大倉精一
○大倉精一君 まあそういう一般的な答弁で、この委員会は済むかもしれませんけれども、しかし、養成機関の問題はこの委員会の担当じゃないのですね、ありませんけれども、やはりこういうところは、閣内においていろいろ調整をされ、あるいは推進をされていかなければ、この通信士の需給問題というものは解決しないと思うのです。
それからもう一つは、海上における通信士の待遇ですね。しかも、こういう工合に人減らしをやられる。海上の通信というものには非常に不安が伴っていく、こうなってくると、電通大学を出た諸君が、これは船に乗って来ませんよ。陸のほうへ行きますよ当然。でありまするから、今度の船舶職員法の改正というか、改悪ですね、改悪ということ自体が、そういう悪循環の原因にもなる、私はこう思う。大臣、そう思われませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/52
-
053・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 海上の安全の問題は、一通信士に限ることではない。これは船員共通の共同の問題であり、また通信共同の問題であるというふうに考える。陸と海と、その勤務状況を勘案をして、そして適当な待遇を与えなければこれは陸のほうへ上がっていくことは当然であります。海上の待遇は陸にまさるように持っていかなければならぬことは当然だと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/53
-
054・大倉精一
○大倉精一君 まあ船員全部の問題とおっしゃるけれども、先ほどからずっと言っているように、船主あるいは政府みずからも海上の安全ということに関する認識というものが、熱意というものが、だんだん冷却してくるという傾向にあることはいなめない。今まで私がずっと質問しておりましてもそうだ。この法律の提案理由自体がそうなんだ。海上航行の安全を向上するためにと、そういうことをうたえないように、この法律は改悪だということをみずから証明している。そういうような傾向にあるということをわれわれは心配しているのですけれども、海上船舶通信士の需給の問題についても、そういうようなことから検討を加え、改正をしていかないというと、なかなか所要の優秀なる通信士は補充できない。こういうところに思いをいたさなければならぬと思います。なかんずく、先ほど申し上げましたように、通信士の養成機関等につきましても各省ばらばら。これは私しろうとでありますが、聞くところによりますと、船舶通信士の養成は、学校は文部省、この通信士の無線士資格は郵政省、乙種、甲種の国家試験があって、その間に何ら連絡調整の手段がない。こういうことで各省ばらばらだということを聞いておりますけれども、こういう問題についても改善する必要があると思うのですけれども、大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/54
-
055・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) それぞれの必要によってそれぞれの所管に分かれておりますことは、それはやむを得ないと存じますが、これらの関係の連絡を緊密にいたしてやって参らなければならないことも当然でございます。今までも十分緊密な連絡のもとにやっておりますが、今後も一そうこれを強化をいたして参りたいと考えます。
なお、航行の安全については、政府はだんだんおろそかな考えを持っているようだという御意見でございますが、政府といたしましても、船主といたしましても、あるいは海員の方々におかれても、決して航行の安全をなおざりにしているわけではございませんので、政府といたしましては、他の面におきましても航行の安全、また海難救助ということについては絶大な努力を払い、また、これを少なくするように努力をいたしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/55
-
056・大倉精一
○大倉精一君 それではこの法律案を出すにあたって、この無線通信士の需給の問題について、関係の文部省なわ郵政省なりと具体的にこの問題について話し合いをされ、あるいは協議をされたことはありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/56
-
057・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 今後この法案が通過をし、実施をいたして参れば、どういうようにやっていってもらわなければならないか、こういうことは当然今後起こる問題であります。十分それで間に合うと、かように考えております。現在の通信士の獲得につきましては、それぞれ努力をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/57
-
058・大倉精一
○大倉精一君 まあややこしい答弁があったんですが、やっていないならやっていないでけっこうです。これはすべて法案を出す前に、需給の問題が原因するなら、需給の問題をどうすればいいか、十分相談されなければならない。提案理由の説明にも、今度の改正の動機になったものは無線通信士の需給の逼迫であるということが動機になっておりますので、この法案を出す前に需給の逼迫の原因なり何なりを十分検討して、関係各省と協議をする。そうして必要な改正を出してくる。これが当然のことなんですけれども、この前にやっておられるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/58
-
059・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 需給の問題は一要因であるには違いありませんが、先ほど申しますように、どうしても三名必要なら三名必要という需給方策を考えていかなければなりません。今需給が困難だから、したがって最低限度一名にしょう、需給がふえてくれば三名、そういう考えではないのでございまして、先ほど申し上げまするような考え方でいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/59
-
060・大倉精一
○大倉精一君 これはしろうとにわかるように率直に言ってもらわぬと困るのですが、提案理由を見ましてもたとえば「乙種船舶通信士及び丙種船舶通信士の免許年令が満二十才以上でありますのを満十八才以上に改めた」、これは「当分の間、措置をとることによって船舶通信士の需給緩和をはかろうとするものであります。」と、こうなっておる。これは一要因とおっしゃるけれども、これは船舶通信士がたくさんおったら今読んだようなことが出てこないと思う。船舶通信士の需給が逼迫しておるから、この提案理由の説明の中にあるように「当分の間」こういうことをやるようになっているんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/60
-
061・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) だから私は一要因ではあるがと申し上げたのであります。また、ただいままで御議論になっておられたのは、最低限度三名を
一名にする問題をおっしゃっておられる。需給と無関係とは申しませんけれども、最も大きな要因は、今日の科学技術、機械の進歩に適応したそういろ法律の最低限度にしたい。こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/61
-
062・大倉精一
○大倉精一君 まあこれはやめますけれども、もう少しやはり率直に御解明を願わぬとこちらもますます疑惑がたまっていくんですね。一要因には違いないが、一要因にしてもだんだんありますよ。これは重大なる要因なんですよ。ですから当然こういうものを出すときに、事前に関係方面とも相談をされるのが私は至当だと思います。やっておられぬのなら、これから大いにやってもらわなければ困る。
それから航行の安全ということは、これは大臣じゃありませんけれども、いろいろな要素が積み重なって航行の安全ということになるんですけれども、特に日本の場合におきましては、気象関係の状態が非常に私は特異なものがあると思うのですね。気象庁にお尋ねしますけれども、今度の法改正で三名が一名になり一直制になるのですが、こういうことになるのですけれども、船舶の気象通信には影響がありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/62
-
063・多田寿夫
○説明員(多田寿夫君) 今の御質問でございますが、ちょっと前提がございますものですから、前提についてちょっと申し上げます。
御案内のように、この法案は経過期間が三年でございまして、そのあとでもって正式に実施をする、こういう段階でございます。三年の経過期間におきましては通信士が二名、三年を経過したあとにおきまして一名になる、こういう関係でございます。その二名乗っておる間におきましては全く支障がない。多少気象電報の励行をしていただければよい、こういうことでございます。じゃ一名になった場合にはどうなるかということでございますが、これにつきましては、その通信士が二名乗る場合におきましても、それから将来三年後におきまして一名になる場合におきましても、気象庁としましては、確固たる一つの方針をとっておりまして、この方針が維持される限りにおきましては十分である、こういうふうな態度をとっております。
それはどういう態度であるかと申しますと、一日四回、すなわち日本時間で申しますと、三時と九時と十五時と二十一時でございますが、これは専門語でマップ・タイムと称しておりますが、この時刻におきますところの一定の気象通報をいただくということが第一点であります。
第二点におきましては、台風等異常時がございますが、そういうときにおきましては、そういう一日四回という一つの原則にこだわらずに始終いただく。これは船自身においても自分の安全という立場から、当然それが守られるものと思っております。この二つを維持するために一人の場合においてはどうか、十分これが一人乗った場合でも維持されるということになりますものでございますから、一応支障がないというふうなことに相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/63
-
064・大倉精一
○大倉精一君 それはほんとうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/64
-
065・多田寿夫
○説明員(多田寿夫君) さようでございます。一定のこの方針をとるために一定の措置をとるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/65
-
066・大倉精一
○大倉精一君 一定の方針で一定の措置とはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/66
-
067・多田寿夫
○説明員(多田寿夫君) その措置といたしましては、特定航路における特定船舶と契約を結ぶというふうな一つの方法でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/67
-
068・大倉精一
○大倉精一君 それはあくまでも特定の船舶に限るわけですね。これは私はいろいろ調査をし、聞いておるところによりまするというと、航行中の船舶から一日四回、日本時間で三時、九時、十五時、二十一時、とうなっておるわけですから、これが一名になりまするというと、これは一日に三回より打てない、実際には。たとえば百六十度以東におきましては二十一時と三時の二回が不能になる、実際は。であるから、この二回は打てなくなる。さらにまた十五時は時間一ぱいになる。交代時間だ。交代時間になるから、運用時間切れになるから非常にこれはたとえば甲板でもって観測しておっても通信士がいなくなってしまう、あなたのせいじゃない、通信士のせいでいなくなってしまう。だから事実上は打てない、九時であっても九時に打てないということを聞いておるのですが、これはうそですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/68
-
069・多田寿夫
○説明員(多田寿夫君) 通信士が一名になりますと、御案内のように一日の労働時間は八時間でございます。どうしても一回は打ちにくい時間が出ると思います。これの時間の関係につきましては、時間の変更その他で片づくと思います。今御質問の内容をもう少し私のほうの予報部長が実情をよく知っておりますので、それでお答え願って、その上で御返事申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/69
-
070・大倉精一
○大倉精一君 聞くところによると、いろいろ気象庁のほうに対しては、いろんな方面から注文があるそうですけれども、きょうは遠慮なしに答えてもらいたいと思います。遠慮する必要はないと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/70
-
071・肥沼寛一
○説明員(肥沼寛一君) ただいまの御質問の十五時でしたか、ちょうど観測はそれで終わって、次に勤務時間でない時間に入るというのがございます。これは事実でございます。これは現在もそういうのがございまして、三名乗っていない船についてはそういうことがございまして、これは船側の御好意で数分程度延ばしてそこの電報を入れてもらっているという実情でございます。そういうことがありますので、まずこれはだいじょうぶだと私ども船のほうとのお話し合いで考えております。
それから百六十度以東の少なくなる問題でございますが、これは気象の技術に少しわたりますけれども、私ども西経百六十度までの資料がほしいと申し上げておるのは、これは日本が太平洋の西地域の中央気象台といいますか、国際間の中枢になっておりますために、その間の気象の資料あるいはそれを解析したものと申しておりますが、それを放送する責任を持っております。これをやるためでございまして、海難というようなことに対する台風その他の警報につきましては、日本の近海のところに重点を置く。これは先ほども次長からお答えしましたように、そういう場合には通報規定にかかわらずいつもやっていただく。これは在来やっておりますが、それを続けていただくということ。さらに海難の最も多い海岸につきましては、レーダーその他も整備されていく、こういう面で最小限はどうやら確保できると私ども考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/71
-
072・大倉精一
○大倉精一君 長官は非常に困難、支障があるというような意見もあったようですけれども、私も職員の方から、技術屋から直接いろいろ聞いてみたのです。聞いてみたらそういう答弁だった。もちろん外国からの通信も四回打ってくることはまれだそうですね。でありますから三時あるいは二十一時が不能になる、十五時が中途半端になる、こういうことで九時に通報してくるのが一番多い。こういうことを聞いておるのですが、これはいかがですか、そういうことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/72
-
073・肥沼寛一
○説明員(肥沼寛一君) 九時の通報が一番多いのは事実でございます。ただいま私どもいただいております通報の約八〇%ぐらいと思いますが、それは五千五百トン以上の大型船、現在三人乗っておるところから受けております。そういうののほかに、さらに二名、一名の船からもいただいているのが九時には加わっておりますので、最も多くなっております。それから夜になりますと、どうしても三名乗っている船からだけになりますので、その分だけ減ります。全体としては五千五百トン以上の船にほとんどが依存しておるのが現状だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/73
-
074・大倉精一
○大倉精一君 外国船も、一名乗っているので四回要求されておる通報が完全に行なわれていない。これは私事実だと思うのです。しかも特定の時間になるというと通信が非常に込んできて、海岸局が、呼び出してもなかなか出ないし、出てもその時分には出船入船の数が多くて、そのほうの通信が優先になってしまって、気象観測の通信があと回しになる。ついおっくうになり、打てないということになる。これはもう実際問題として聞いているのです。そういう傾向は確かにあると思うのです。そういう点で私は非常に支障があると思うのですが、支障がないと言えば、これは専門家だから、ないと言えばないだろうと思うのですが、こういうときにほんとうのこと言ってもらわぬと、みんなわからぬ、みんなしろうとばかりですから。ですから、たとえば九時なら九時に打つ、あるいは十五時に打つ。これが抜ける。抜けますというと今度は十二時の気象通報ですか、ラジオの。これができなくなる。そういうことも起こり得ますね。しかも、たとえば場合によっては三十分も四十分もおくれて気象の報告がある、そういうのは役に立たぬ、将来の役に立つけれども。そういう点で、だいぶん支障ができるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/74
-
075・肥沼寛一
○説明員(肥沼寛一君) 在来と同じにいくとはもちろん申し上げられません。ですけれども、今天気予報というもの、これは今晩とかあすとかあさってというような状況を申し上げておりますが、今、最小限必要だというのは、一日に四回、四回というと六時間の間の予報を正確にしなければならないということでございます。先ほど三時のことが問題になりましたが、三時が抜けますと、その間三時が全然ないということは、十二時間の間の予報を正確にしなきゃいけないということになります。その間全然ないのではなくて、特定の船舶などに御依頼をいたしまして、私どもの目標には八十通くらいは午前三時にもほしいと言っている。それが加わって、さらに十二時間、六時間前の資料はただいまございますから、そういうのを勘案いたしますと、まず最小限はやれるということがある。それから今通信がおくれてしまって役に立たないということ、これも確かに在来にもございました。しかし、予報というのが、ある過去の時間に観測したものを集めて、さらに将来の予想をするというのが在来の予報でございますが、そういうことが割合予報を進めていく上に、もう限度に来て参りまして、最近やっておりますことは予想天気図ということに移行しつつあります。これはすぐに制度が必要だということは、もちろん申し上げられませんけれども、将来の天気図をかいて、それによってやっていくというのが航空その他のほうでだんだん進んで参ります。数年前に御了解を得て入れていただきました電子計算機、そういうものも予想天気図を作るためのものでございます。将来はそちらに移行していくかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/75
-
076・大倉精一
○大倉精一君 それから百六十度以西については、これは八回の通信を要求されておったのですが、以西は、一名になった場合にどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/76
-
077・肥沼寛一
○説明員(肥沼寛一君) 気象電報につきましては、いろいろの経過がございまして、一応それを先に説明さしていただきます。気象電報は、これが始まりましたのは明治四十三年でございまして、最初三回ずついただいておった。三回というのは午前六時、正午、それから夕刻六時でございます。昭和十二、三年ごろと思いますが、シナ事変の始まったころ、これに夜中を加えて四回にいたしました。そして太平洋戦争のころ海軍の要望によって八回にしたものでございます。これは要望によったもので、、規定の上では四回ということが続けられて規定されておりました。戦後になりまして、一時混乱して電報が入らない時期がきたのでございますが、そのとき米軍のメモランダムによって、もっとはっきりさせろというので、私ども船主協会にそのメモランダムによりましてお願いに行って、戦時中の八回を続けていただくということにしました。そして平和条約が締結されましてから、その状態を踏襲して、運輸省の告示として現在八回やっているわけでございます。そのうちで八回というのは日本の事情でそうしたのでありまして、国際的には先ほど次長が説明しましたように、四回が規定でございます。日本の近くにつきましては、もちろん近くのほうにたくさんあるほうがいいのでありますが、これは近くの島その他のこともございます。それから最も危険のような状態のときには、必ず時間にかかわらず電報を打っていただくということを励行することをお願いして、八回の天気図はそういうときにはかくつもりをしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/77
-
078・大倉精一
○大倉精一君 これは一名になりますと、八回の通報はこれは無理になると思うのですね。そこで外国船からも今言ったように、四回の要請に対して完全に打ってくるのは九時であって、あとは非常に期待しておる八十通というのはこぬですね。四十通か、そんなものらしいですね。そうすれば、この百六十度以西において日本船からくる通報というものが、日本の気象業務にとっては重大なものになった。それが日本船があまり期待できないようになったら一体どうなるのですか、これは。こういうことが船自体の航行の安全にも非常に大きな影響があるのではないかと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/78
-
079・肥沼寛一
○説明員(肥沼寛一君) 私どもは船舶の海上の安全ということから、日本のように台風などの襲来の多い時期には、そういう規定したもの、そうして今後法律が通りました場合には、契約その他によりまして、四回だけはぜひ励行していただきたいということをお願いしている次第でございます。これは今の船の状況から、今後船舶の気象電報という考え方が変わってくるかと思いますが、以前には、海の上の資料がないからといって気象業務の面から船側にお願いして始めた仕事でございます。これは各国とも同じでございます。そのために気象台側あるいは国の面から、できるだけその裏づけをしようというので、国によっては気象測器を貸与する、あるいは電報一通について幾ら払うというような制度もございます。船側のほうでどうしてもいけないというのを、そういうお願いした事情、それは形は告示というような形になっておりますけれども、そういういきさつからいって、そういう災害時の安全のためにぜひお願いしたいということ。それ以上私ども言えない立場でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/79
-
080・大倉精一
○大倉精一君 非常に遠慮してござるが、どうもわれわれしろうとには、この際ちゃんと言ってもらわぬとわけわからぬのですが、今まで八回打っておったものを、船舶と契約して四回だけはぜひお願いしたい。情けない話だと思うのですね、八回打っておったのを四回さえも打てないのは。が、しかし四回だけは何とかお願いしたい。今まで八回も必要なければ、別に無理にお願いする必要ないということなんですね。特にかつて問題になった北方定点あたりも立ち消えになって、一体気象台が要るのやら要らないのやら、さっぱりわからぬ。特に日本の特異現象として梅雨という現象があるのですけれども、こういうときになってシナ大陸からの太平洋への気圧というものが非常に問題になるということを聞いておる。特に北太平洋のほうにおけるところの気圧が問題になるが、しかし、そこには定点観測船はいない。こういうことで今度は船の気象通報も八回のところを四回だけは何とかお願いしたい、そんな心細いことで日本の気象業務はどうなるのですか。
ここで大臣にちょっとお尋ねしますけれども、あの伊勢湾台風のときに、時の運輸大臣は、気象業務の強化は重点施策として実施する、そういう意思表示があったわけです。いつでも台風があると気象は重点施策、重点施策、それが行ってしまうというと、これは重点施策でなくなってしまう。こういう工合に重点施策でなければならぬ気象業務に対して、この法律案によって気象業務に対して実質的に非常に大きな障害が出てくる。これは大臣どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/80
-
081・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 気象業務の充実拡張は重点施策であることは変わりがございません。本年の運輸省の予算要求におきましても、重点項目の一つといたしまして相当本年も予算の充実がはかられたと思っております。これで十分とは考えておりません。ただ、先ほどから御議論になっております点は、気象業務のために必要な人員、経費を、これを海運会社に負担をさせるということは、これは私は適当とは思っておりません。したがいまして、もし通信士が一名になって、夜間の三時の通報が必要なものが得られなくなるという場合には、最小限度必要なものは、これは国の補助等の形におきまして受けるように、特定船舶と契約をいたして参りたい。そうして気象業務には関係のないようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/81
-
082・大倉精一
○大倉精一君 船会社に気象通報というような業務を負担をさせるということは適当でないという考え方もあるかもしれませんが、それならそのように、たとえば北方定点というのは復活される意思があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/82
-
083・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 定点観測をできるだけふやしたいという考え方も変えておりません。できるだけこれも拡充をして参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/83
-
084・大倉精一
○大倉精一君 できるだけふやしたいじゃなくて、北方定点の観測は昭和二十八年以来、これははずしっぱなしになっている。できるだけ多くするじゃなくて、はずしっぱなしになっているのですけれども、これはやはり船舶の通信が不十分になれば、やはり国の費用でもって船を作って北方の定点観測をしなければならないと思うのです。特にあそこの定点観測は、聞けば、東北なり北海道なりの農業に対しまして長期予報として非常に重要だということを聞いている。そういう点とどうも矛盾しますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/84
-
085・多田寿夫
○説明員(多田寿夫君) 北方定点、いわゆる定点問題でございますが、これを全然作らないというように否定しているわけではございません。しばしばこの委員会ですか、他の委員会でも、大臣あるいは長官その他から御答弁になっていると思いますが、御存じのように、今五カ年計画を遂行しておりまして、その五カ年計画が遂行できた直後くらい、あるいは直前くらいから、ぼつぼつそういう問題に取りかかろうという考えは厳として持っております。御案内のように、例の五カ年計画の備考にも、その点は書いてあると思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/85
-
086・大倉精一
○大倉精一君 あまりやりませんが、あまりその場限りの答弁をしておられるというと、いつまでもやらなければならなくなる。北方定点については、これは当初運輸省から三十何億の定点復活の予算が計上されておったが、それがゼロになって、今度十八億円ですか、要求があったが、それも消えてしまった。そういう工合に、ほとんど無方針じゃないですか。
でありますから、もう私は言いませんけれども、これはやはり要るものは要るのだから、そういうものを作って、特に気象業務は、明らかに船舶職員法の改悪によって非常に窮屈になると思います。そういった場合に、あらゆる方面に影響がある。ことに船舶の海上航行の安全というものにとっても非常に大きな影響があると思います。こういうときには、気象業務に関しては、やはり遠慮なく差しさわりのあるところを言ってもらわないというと、やはりみんなわからないのですね。
気象業務に関しては、この程度にいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/86
-
087・村松久義
○委員長(村松久義君) あなたの予定時間は、一時間半ぐらいということでしたが、なお、重複を避けて、簡潔にひとつ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/87
-
088・大倉精一
○大倉精一君 それでは、もう一点だけお伺いいたしますけれども、最後に、船舶職員法が改悪になったという場合、今いったような万般のいろいろな障害が起こってくるわけですけれども、そういう起こり得べき障害についで検討なさって、これに対する手当なり何なりということは検討済みなんですか。あるいはやってみて、その上においてということなんですか。この辺はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/88
-
089・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 十分検討いたしておりまして、これを通過をさせていただいて支障がないと、かように確信をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/89
-
090・大倉精一
○大倉精一君 何も支障がないのですか、全然支障ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/90
-
091・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 支障のないようにやって参る方針でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/91
-
092・大倉精一
○大倉精一君 どうも作文的な答弁になりますが、私はやはり、もう少しこの問題は真剣に考えてもらわなければならぬと思います。特に外国船がこうだからといって、だから日本もこうするのだというようなことは、これは非常に重大な問題だと思うのです。私は日本の国の特殊事情があるし、特に日本の国には、日本の国の気象状況なり、あるいは地理的の状況なりその他の状態から、外国と全く違った状態があると思います。そういう事情の中で、外国がやっているから、私のほうもやるのだ、これだけでは、私は非常にこの問題は危険だと思います。
でありますから、私の質問は、この辺で終わりますけれども、あとは討論においてやりますけれども、どう本納得がいきません。ただ、要望しておくことは、こういうような法案が、かりに万一多数をもって通った場合におきましては、まじめに、率直に、このよってきたるところの弊害なり、あるいは足らざるととろを検討されて、そうして法本来の目的であるところの航行の安全に支障のないばかりか、航行の安全をさらに向上する努力をするということを要望して、私の質問を終わります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/92
-
093・村松久義
○委員長(村松久義君) この際、委員の変更について御報告いたします。
本日、天坊裕彦君、松浦清一君が辞任され、村山道雄君、田上松衞君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/93
-
094・田上松衞
○田上松衞君 この際、特に申し上げますが、実は、今御承知になったように、民社党の委員の松浦君が、すでに御承知だと思いますが、昨日から五年ぶりの海上ゼネストが行なわれております関係から、神戸にありまして、幾百隻の停船している船の人々に対しまして、いろいろ説明をし、了解を求めなければならぬような事情等がございまして、出席できないわけであります。したがって、やむなく私がかわって出ることになったわけでありますけれども、率直に申し上げまして、今までちょうどときを同じくいたしまして、建設委員会が重要な法案を採決しなければならぬという事情にあり、これもまた、少数党の立場から、私一人でありました関係で、場をはずせない、今辛うじて委員長から御報告のありましたように、ただいま委員変更の手続をしなければならぬほど、時間的に制約されておったわけでございますので、この点、御了承いただきたいと考えます。
すでに、過去何回かにわたりまして、本問題については検討され、松浦君からも質疑があったろうと思うわけであります。したがって、これ以上質問申し上げますことは、まことに当を失しているという感じもいささかいたしまするし、ことに理事会において申し合わせがありましたように、もう大倉委員の質疑をもって、これで終了するということであったようです。これらのルールを正しく守っていかなければならぬことは万般承知でありまするけれども、ほんの一、二点だけきわめて簡単に、どうしても運輸大臣にお聞きしておかなければならぬ点がありまするので、答弁も要点だけをおっしゃっていただけばよろしいのでありますから、そのつもりでお許しをいただきたいと考えます。
たくさんございますけれども、不必要な点は申し上げません。ただ問題は、本法案は、言うまでもなく電波法改正を受けて立ってというか、むしろ本案が主であって、その理由づけとして電波法の改正案を持ち出したのか、これらの点については、いろいろありまするけれども、いずれに
いたしましても、このことは、今の時点に立って見ますると、電波法を受けて立っておるということもないではないのであります。そこでお聞きしておかなければならぬ問題は、オート・アラームについての認識が、実際運輸大臣できておるかどうかということなんです。外国船のように、この船舶通信士を減していくんだというような結論になるんですが、そうでありますれば、それにかわるには何をもってするかというと、オート・アラームということになる。オート・アラームというものは、よけいな話ですけれども、ほんとうに失礼な言葉ですけれども、運輸委員会全員の吹き込みか何か知らぬ、近ごろのオートメーションと同じような感覚でもって、高度な機械をもって、人間にかわり得るものがこれだ、そういう感覚で見られておるんじゃないかという私は心配をするわけなんです。オートメーションに使いまするオートと、このオート・アラームというものは、全然無関係のものであります、これは。言うなれば、これは率直に言うと、目ざまし時計の役しかしない程度のものなんですよ。つーつーつーと十二回これを鳴らして、寝ている者を起きてくれと、この程度のものなんです。この程度のもので、大事なところの一体人命、財産であるというようなものの安全を期待できるかということなんです。むしろこれはナンセンスなんです。こっけい千万である。オート・アラームの価値について、いかように認識されておるのかという点について、率直な大臣の御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/94
-
095・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) オート・アラームの機械の水準につきましては、逓信委員会においても非常に御論議がございました。郵政当局の答弁によりますると、日本のオート・アラームは、世界の水準を上回る程度にできておるという断言でございましたので、それで御承知を願いたいと思います。
なおまた、通信士にかえるにオート・アラームを用いることによって完璧かというお尋ねに対しましては、各国とも一名をもって通信士の定員といたしておりまするところがほとんど大部分でございますが、それはオート・アラームの活用によって十分まかなっておりまするので、これで心配はない、−かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/95
-
096・田上松衞
○田上松衞君 私が心配しておったそのものを、何といいますか、全くそのとおりだったわけなんです。さような認識の上に立って考えられるから、いろいろ非常に無理な点が出てきてしまうわけなんです。先刻申し上げましたように、オート・アラームなんというようなものは、まあこの場所で詳しいことは避けますけれども、すでに採決の寸前に入っておる時間的な関係、これから考えまして、私はこれを説明したり紹介したりするという煩を避けます。ただ問題は、価格からいって四十万か五十万かの程度のものであって、先刻申し上げたように、各国のものに劣らぬように優秀なものだなんといって、それを聞かされて、そう信じてしまっているという大臣の答弁、そういう感覚でこれを出されているところに心配があるわけなんですよ。とんでもないことですよ。これはほんとう言うならば、もっとこれを時間をかしていただいて、そうして現実に、たとえば横浜から、あるいは東京から乗ってもよろしい、神戸までの間でもよろしいから、一回り船に乗って行かれて、運輸委員会の方々が一緒に行って見られれば、これはもう説明の要はない、あぜんとしてしまうのですよ、こんなものなのかということになるのですね。こういうところにあるので、今のような御認識の上にあっては非常に危険千万であると、これはいまさら、どうこうということを議論しておったってしょうがありませんから……。もうこのことだけでも、いかに、この改正案というものが違った認識の上に、現実を知らない机上の空論でやっておる上にでっち上げられた案であるかということがわかるわけです。
私は実を申し上げまするというと、こういうようなことでありますると、——公正な立場にあって、国家的な立場にあって、あるいは船主側にもかわって、ものを考えているわけでありまするが、こういうことであっては、これは実際、国としても将来大きな後悔をされる。船主としても、実にどういう工合で要請されたか知らぬけれども、腹にもないことを言ってしまって、ただ、海運企業の基盤を作らねばならぬ、そうでないと国家の手が伸ばせないとか何とかいうふうにやって、そうして、こういうものを使われた。船主側でも、御無理ごもっともと、腹の中では舌を出しながら、まさかこんなものを通そうとは考えないだろうからということを考えた人々もあっただろう、それでもやっていくということは、これは何といいますか、文字どおり言って角をためようとして、国の立場を考えてみますならば、根本的に牛を殺してしまうたぐいのものであると断言して差しつかえないと私は考えております。しかしこういうことは、私はもう、あとで討論でもって、反対しなければならぬ理由の中で若干触れることにしまして、このことは省きまして、もう一つの問題は、外国船が一人で済んでおるのだ、それを日本の船員が、世界にゲルマン民族とともに優秀民族であると誇る日本人が一人で済まされぬはずはないと、精勤していくならばそれでいいはずだ、こういうような考えで、よって外国船並みに一人にしてしまうなんという考え方も、これもまた実情を知らないもはなはだしいものであると言わざるを得ないと考えるのであります。
外国船の場合におきます通信士に対する任務というようなものと、日本船における通信士の任務というようなものとは、たいへんな違いがございます。
この点についてもあえて質問申し上げるわけですが、大臣は、外国船並みというが、それはどこの船員をさしておるものであるか。ソビエトの船員であるのか、アメリカの船員であるのか、あるいはイギリスやイタリア、フランスと、そういうものの関係について、実際にその資料をとられ、あるいはみずからその目をもち、その耳をもって触れられてきて、確信の上に立って、大丈夫だという確信をお持ちになったかどうか。その点についても念を押しておきたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/96
-
097・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 外国船の状況も知らないわけではございません。大体承知しおるつもりでございます。日本の通信士は、通信士本来の仕事でないものを相当やっております事実も承知いたしております。私は通信士は、やはり通信士としての仕事に専念をするように、船内の労務体制を確立さしていくことが必要だと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/97
-
098・村松久義
○委員長(村松久義君) この程度でいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/98
-
099・田上松衞
○田上松衞君 お約束しておりまするので、非常に簡単に一、二点と申しましたけれども、よけいな時間を使って申しわけありません。委員会に対しまして、つつしんでその点おわび申し上げつつ、苦しい思いをして不安であるからお尋ねしておるわけです。御了承いただきたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/99
-
100・村松久義
○委員長(村松久義君) 田上君に申し上げますが、重複にならぬようにひとつ願います。あなたの今までのやつは全部重複になっておりますから、さよう御承知を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/100
-
101・田上松衞
○田上松衞君 この外国船の中に非常に通信士の技術の程度について甲種、乙種、丙種、いろいろな厄介な問題がございまするが、一体、陸上におけるいろいろな場合の技術者に対する免許状というようなものは、これは一本でやられておるんですが、無線通信士に関する限り——船舶通信士に関する限り、これがまらまちになっておるんですね。まあ逆に戻って、文部省で教育をして、運輸省で海員の免状を出して、郵政省で技術者の免許状を出す、こういうような工合に、一本でないんですよ。まちまち……。こういうようなことでもって、きちんとしたものがされていない。したがって、これはまことに通信士に対しては言いづらい話でありますけれども、相当の期間を費しながら、十分第一種甲種の免許状を取るまでに、陸上の技術者の場合と同じようなことにはできないことになっておる。これをいきなり小さな船でもって、丙種でやってしまうというようなことになりますると、ますます、もう目の前にちらつくものは、人命あるいは財産上の保護について——このことが結局、終局的に心配になってくるわけなんですが、これに対しまして、こういう姿の実態というものを十分御承知になっておるのかどうか。この点について、どう考えるかというような問題については、もうよしますけれども、御承知になった上でおやりになっておるのかという点について、一言でいいから、的確な御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/101
-
102・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 承知をいたしておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/102
-
103・田上松衞
○田上松衞君 質問は以上でもってよすんですが、……もう一点だけ、もう一点だけ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/103
-
104・村松久義
○委員長(村松久義君) もう一点だけ許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/104
-
105・田上松衞
○田上松衞君 人命や財産のあれを——特に人命についてする場合に、海上保安庁の巡視艇というものが、いざという場合には役に立つだろうというようなことも、今までの説明の中にあったかなかったかわからぬけれども、そういうような背景が、どこかにちらついておるだろうと私は推測するわけなんですが、この海上保安庁の巡視艇が、日本の沿岸のどの程度の海域に効力を出すことができるかどうかということについて、御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/105
-
106・斎藤昇
○国務大臣(斎藤昇君) 日本の海上保安庁の巡視艇の行動半径は、そう遠い、長いものではございませんで、海難の起こりました場所と、巡視艇のいる所によって相当変わってくるわけでございまするし、また、海難の状況等によっても違ってくるわけでございます。したがって、海上保安庁の海離救助の任務を達成できるように、あるいは船艇の増強、その他航空機等の増強もはかって参らなければなりませんが、しかし広い海域における海難救助を、これだけに頼るというわけにも参らない。このたびの改正は、日本の海上保安庁の救助能力がふえて来たから変えるのであるという意味は持っておりません。したがって、無関係でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/106
-
107・村松久義
○委員長(村松久義君) 他は御質疑もなければ、これをもって本案に対する質疑を終局いたします。
これより討論に入ります。
御意見のある方は、賛否を明らかにして、お述べを願います。
なお、修正案は委員長の手元に提出されております。修正案についても、討論中にお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/107
-
108・天埜良吉
○天埜良吉君 私は自由民主党を代表して、次の修正案を提出し、修正案の部分を除く政府提出の原案に賛成をいたします。
まず、修正案を朗読いたします。
船舶職員法の一部を改正する法律
案の一部を次のように修正する。
附則第二項中「昭和三十六年」を
「昭和三十七年」に改める。
修正案提出の趣旨は、本法律案が昨年九月提出され、今国会において継続審査となったため、附則第二項中の「(昭和三十六年法律第 号)」とあるのを「(昭和三十七年法律第 号)」と改めるもので、当然修正を必要とするものであります。
さて、船舶通信士につきましては、その乗組員数及び資格は、船舶職員法に定められているところでありますが、現行規定は、太平洋戦争中の特殊事情によって船舶通信士を増員しましてから今日まで、おおむねその体制を踏襲しておりまして、諸外国に比べて船舶通信士の乗組員数は相当上回っております。一方通信機は非常な進歩をしておりますので、これらを勘案して、海上航行の安全に支障を来たさない範囲で諸外国並みに改めようとするものであります。なお、あわせて船舶通信士の資格に関する制度を合理化せんとするものでありますので、修正部分を除き、本案に賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/108
-
109・大倉精一
○大倉精一君 私は日本社会党を代表して、本案に反対をいたします。以下、その理由を申し上げたいと思います。
わが国船舶乗組員は、海運企業合理化のあらましの中で、海上における安全を脅かされ、さらに生活を奪われようとしております。本法は海上航行の安全を目的とするものであり、船舶通信士の資格及び定員、その他の定員は、その手段であります。船舶の航行の安全は、不断に向上の措置を講ずるよう努力されなければならないにもかかわらず、本改正案は、国際競争力を強化し、企業の合理化を促進するといううたい文句で、もっぱら企業の採算のために航行の安全を後退させようとするものであります。
提案理由の説明においても、海上航行の安全に支障を来たさない範囲でと、如才なく言いわけをしているが、むしろ海上航行安全を維持高揚するためにという、こういうことが言えないところに、本改正案の改悪たる本質を、はしなくも立証していると思います。提案理由に言うところの日本海運をきわめて困難なる事態に直面せしめたのは事実でありますが、それは、低賃金に甘んじ、勤勉な日本の船舶職員のせいでは断じてないのであります。大きな戦時負担をしょわされている海運企業に対しまして、適切な施策を怠っていた政府の重大な責任であると言わなければなりません。政府はその責任を反省し、積極的な海運政策を樹立し、推進する努力をせず、かえって海運資本家と結託をして、もっぱら企業利潤の追求のために、企業合理化の名のもとに、人減らしを行なって、海上の安全と乗組員の生活を脅かす法改悪を押しつけて来たのであります。すでに資本家はこの風潮に乗って、船舶安全法の盲点をついて、盲点を悪用して、三千トン以上の大型船を近海区域から遠海区域に落として、無線電信を無線電話に切りかえ、通信士を下船せしめ、あるいは救助艇を減らし、消火ポンプをはずす等、船舶職員の激しい不安と憤激を巻き起こしているこの風潮を、政府は一体何と見るか、しかも人減らしの一番やり玉にあげられているのは、抵抗の弱い部門であり、しかも海上の安全に最も重大な役割を持つ船舶通信士であることに至っては、きわめて悪質な、許されないものがあると思います。
以下、この改悪の航行の安全を後退せしめる理由を述べます。
第一には、現行規定は、太平洋戦争中の特殊事情によって制定せられたものであると提案理由には言っておりますが、これは人減らし論者の都合のいいうたい文句にすぎません。戦時の特例立法は時限的なものであるから、戦争が終われば当然効力を失うものである。戦争に関する幾つかの戦時法令は、いずれも終戦とともに廃止になっております。しかるに無線の無休体制は、当時の無線電信法と船舶職員法という一般法によって制定せられたものであり、戦時中だけ適用される特別立法とは異なり、今日に至るまで実施されてきたのであります。
第二に、わが国の船舶通信士の乗組員数は諸外国に比べて相当上回っておるから、これを諸外国並みに改める必要があると、こう言っております。しかし通常、国際水準並みといえばレベル・アップを意味するものだと、われわれは意識いたしますけれども、船舶無線執務体制に関する限り、航行の安全のため諸外国よりもすぐれておる日本の制度から、政府の言う国際水準並みとは無線通信本来の使命のレベル・ダウンすることを意味するという重大なものであると考えるのであります。ただ単に、外国がやっておるからということだけでレベル・ダウンすることは恥ずかしいことであります。むしろ船舶相互安全のために、国際水準を日本並みにすることを要求し、主張すべきであります。無線の無休執務体制を制定したのは昭和十九年でありまするが、当時外国では、すでに一名の乗組員であったにもかかわらず、わが国が玉名にしたのは、それだけの理由があったと思うのであります。具体的には、逓信委員会等において審議をされておるので省略をいたしまするが、特殊事情をあげれば、第一には日本近海の気象、海象、地理的状態の特殊性と、さらに海難発生がきわめて多いという特殊事情を持っておることであります。これは説明の要もありません。
第二には、日本船の無線通信のやり方であります。日本は欧米諸国のように国際的通信網を自己の支配下に置いておりませんから、世界のあらゆる海上から遠距離直接通信の方法をとっております。もし一名になれば、遠距離直接通信は不可能になりますから、もよりの外国の海岸局中継となれば、外国語を用い、あるいは時間もかかり、料金も二十倍から四十倍近くにも多くなります。本法改正によって人件費等が十一億の節減と聞いておりまするけれども、外国海岸局経由の場合の経費等は十五億くらいと見られております。
第三に、わが国の気象業務のためには、広範な海域における船舶からの気象報告が絶対必要であることは明らかであります。しかるに法改正によって、船舶からの気象通報は重大な支障を受けることは、この委員会におけるところの質疑からも明らかであります。伊勢湾台風の当時、気象業務は重点施策とするという当時の大臣の言明があったはずでありまするが、この改正によって船舶からの膨大な、かつ貴重なる報告を不能にするがごときは、きわめて不可解であり、むしろ船舶からの気象報告を強化すべきであると思います。
第四には、日本の船員費が安いことであります。ゆえに船員費が国際競争の原因であるということは、これはナンセンスであります。
次にオート・アラームについて申し上げます。いわゆる船舶通信士の三名を一名にするというそのかわりにオート・アラームによって代行させる、こう言うのでありますけれども、オート・アラームの性能等については、一専門の逓信委員会において審議されておりまするから省略をいたしまするが、かりにオート・アラームの性能が優秀であったといたしましても、しょせんはアラームの機械にすぎぬ、みずから受信し送信するものではありません。しかも遭難という超緊急の場合、警急信号を一分間発する余裕がない場合が非常に多いということを聞いております。直接遭難信号を発する場合には、この機械は何の役にも立たぬ。さらに重要なことは、オート・アラームをつけて通信士を一名にした場合、航行の安全にとって、さらに万般の、業務の遂行にとってどういうことになるか、この起こってくるところの現象が重大であります。この体制で航行し実験したことは一度もないと聞いておるが、ただ単に、外国船がやっておるからというだけでありますが、外国船においても、しばしばの誤作動のために、乗組員の休養と安眠を妨げられることはきわめて多いのであります。スイッチを切り離している船もたくさんあると聞いております。外国の通信士も信頼しておりません。世界の海員団体の国際組織であるITFも海上の安全のためには、人間による聴守が必要であるとして、三名の通信士の乗り組みを強調しております。しょせんオート・アラームは通信士を減らす口実でしかありません。通信士の需給が逼迫をしておるということが改正案の理由の重大なる一つに相なっておりまするが、政府はこの問題に対する本質に目を閉じております。通信士の逼迫しておるというこの原因は、養成機関に第一はあるのではなかろうかと思います。すなわち現在の通信士の養成機関としての国立電波高校の三校は、文部省の方針として二級通信士を目的とする教育を行なっておる。今後必要な一級資格者は電通大で教育されておりますが、供給源は海には行かないで、これはほとんど陸に行ってしまう。そのことは、今言ったようにこの改正案によりまして、海上の安全を脅かされ、あるいは生活を奪われていくこの不安と同時に、海上における勤務並びに低賃金という悪条件が加わって、海に行くものがいなくなってしまうというこの事実を率直に見なければならぬと思います。さらにまた、このたびの改正によりまして、二級通信士は削減されまして、小型船はこの間質問をいたしましたように逐次無線電話に切りかえていくというから、郵政省の方針によりまして、上と下からその職場がなくなってくる、こういう不安も介入してきておるわけであります。船舶通信士の養成は、学校は文部省、通信士の無線資格は郵政省、海技面は運輸省の国家試験ということで、各省間に何の連絡もない。でありまするから、こういう抜本的な対策を、この際真剣に考える必要があるのでありまするが、政府におきましては、その決意はほとんど見えておりません。
以上をもちまして、以下は省略をいたしますけれども、本法案が、航行の安全を著しく後退するものであるということは明白なことであります。したがって、本法案に対しましては賛成することはできません。
なお、さらに最後にこの法律案が出て参りまするところの本源になりました航行安全審議会の運営につきましても、政府はいわゆる電波法の改正がきまっておらぬにもかかわらず、運輸大臣は船舶職員法の改正を諮問をし、さらに諮問の過程におきまして、一部の強い反対があったと同時に、欠員があるままに強引に採決をしてきめてしまった、特に航行の安全ということに主眼を置かずに、ただ企業の合理化という点について審議をして、しかも内容について審議らしい審議をしなかったという点、この事実に対しましては、この際遺憾の意を表明いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/109
-
110・田上松衞
○田上松衞君 民主社会党を代表いたしまして、船舶職員法の一部を改正する法律案に対して反対の意見を表明いたしまするが、反対理由の大部分につきましては、すでに大倉委員から詳細に述べられたことと、ほとんど同様でありまするから、なるべくこれが重複を避けつつ、しかもきわめて簡潔に申し上げます。
政府は、本法案の提案理由の説明といたしまして、わが国海運企業の現状は、きわめて困難な事態に直面しており、政府として海運企業の国際競争力を培養するために船舶乗組定員の合理化、すなわち船舶通信士を削減して、諸外国並みに改める必要があるのである、こう言っておられるわけでありますが、その点が、質疑の中でも申し上げましたように、実に実情の認識を欠いてしまった全くの机上の空論でありまして、私どもがとうてい納得できない点であります。
言われるごとく、今日の海運企業の危機の実態というものは、ほとんど言葉に尽くせぬほど深刻なものでありまして、国際競争力を培養するために企業基盤を確立することが急務であるということについては、異論の余地はございません。当然でございます。しかし、そのために船舶通信士を削減しなければならぬという理由は、どこにもないと信ずるのであります。私ども民主社会党といたしましては、再三再四政府に対しまして、海運政策の抜本的な樹立に関しまして、具体案を提示しながら常に進言し、要求を重ねて参ってきたのでありまするけれども、その措置は今日まで、大倉委員が言われるごとく、全く何も講じられていないという事実でございます。海運企業こそ、政府の補助政策の裏づけがない限りにおいては、とうてい成り立つものではないということは、私が説明しなくても、皆さんよくおかりのとおりであります。したがって、この実情というものを、今さら私は紹介したり説明したりという煩は避けまするけれども、一点申し上げたいことは、私は先進諸外国におきましては、少なくとも海運企業に関する限りは、政府の特段の手厚い保護施策のもとに運営されているということは、これは何人も御承知だろうと考えるのであります。ところが、わが国の海運企業に対しましては、政府は全く拱手傍観の姿である。間違いない、それは。ことほどさように大きなギャップがあるということが、まず前提になって、私どもにこの案件をどうするかということを示唆してくれるわけでありまするが、私どもは、国際競争力を把持し得るためには、船舶通信士の定員を減らすということではなくして、政府が補助政策の提示をなすことが、これが先決である。そうでなければならぬ。短い時間の間で言うのであるから、非常に抽象的な言葉になってしまうわけでありますけれども、こうした当然政府がなされなければならぬことを怠ってしまっておいて、そして海運企業の基盤固めのために、労働者にそのしわ寄せを持ってきてしまうということは、あまりにも本末転倒のことでございまして、これは断じて賛成できる筋合いの問題ではない、こう言うのであります。
次に、船舶通信士を削減する本案は、あまりにも実情を無視した無謀きわまるものであるということを具体的に、一、二だけ申し述べさしていただきます。
諸外国では、通信士一名乗り組みの船舶が多いから、日本船も外国並みにすべきだと説明されておりまするけれども、日本船舶は、その運航の実情から、ぜひとも航行中に無休の執務体制をとらなければならないという実情に置かれております。外国船のように、今大倉委員が言われたように、海外中継基地を持っていないところの日本船にありましては、日本内地と直接通信を行なう必要が多いわけであります。激しい気象変化と海難防止のためにも、船舶相互間の救援体制というものを維持して、もって航行の安全を期するためにも、現行どおりの体制が必要となって参るのであります。
さらに、改正の第二点としていわれておるところの船舶通信士の需給緩和を目途として資格低限を提案されておりまするけれども、これについても、ますます技能の優秀性が望ましいにもかかわらず、その低下を逆に促すことは、これはもう逆行であります。そのことが海上に対する熱情を失わさせ、陸上に転職することを顕著にいたしまして、需給をより一そう逼迫させてしまうことになると考えられるのであります。私は、この点から考えましても、さっき質疑の中で言いましたような、船主側に対しても迷惑千万なことだと言って差しつかえないと断言するのであります。
時間の関係で、全部端折ってしまいまするが、これを要するに、海運企業基盤強化のために船舶通信士の削減を内容といたしまするところの船舶職員法改正案は、何べん繰り返しても言い足りないほど、現実を無視した見当違いでありまして、定員を削減すること自体が、即航行の安全を低下させることになることは、あまりにも明々白々でございます。船主側及び国家的見地に立ってながめてみましても、さきにもこの言葉を引用いたしましたが、まさに角をためようとして牛を殺してしまうたぐいの本改正案であると、こう断言して差しつかえないと信じまするし、遺憾ながら反対せざるを得ない。
以上、内容を省略いたしましたが、反対の理由を言明いたしまして、討論を終わらしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/110
-
111・村松久義
○委員長(村松久義君) これをもって討論を終局いたします。
これより採決を行ないます。
まず、天埜君の提出の修正案を問題に供します。
天埜君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/111
-
112・村松久義
○委員長(村松久義君) 多数と認めます。よって、天埜君提出の修正案は可決されました。
次に、修正部分を除く原案を問題に供します。
修正部分を除く原案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/112
-
113・村松久義
○委員長(村松久義君) 多数と認めます。
よって本案は、多数をもって、修正議決すべきものと決定いたしました。
なお、審査報告書の作成は、委員長に御一任を願います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/113
-
114・村松久義
○委員長(村松久義君) 次に、国際観光ホテル整備法の一部を改正する法律案を議題といたします。
御質疑のある方は、順次御発言願います。——別に御発言もなければ、本案に対する質疑を終局いたします。
これより討論に入ります。
御意見のある方は、順次御発言願います。——別に御発言もなければ、直ちに採決を行ないます。
本案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/114
-
115・村松久義
○委員長(村松久義君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。
なお、審査報告書の作成は、委員長に御一任を願います。
本日は、これにて散会いたします。
午後四時一分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013830X02419620424/115
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。