1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年三月二十九日(木曜日)
午後二時十三分開会
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出席者は左の通り。
委員長 森 八三一君
理事
谷村 貞治君
横山 フク君
吉田 法晴君
牛田 寛君
委員
古池 信三君
伊藤 顕道君
小笠原二三男君
近藤 信一君
椿 繁夫君
国務大臣
国 務 大 臣 三木 武夫君
政府委員
科学技術政務次
官 山本 利壽君
科学技術庁長官
官房長 島村 武久君
科学技術庁振興
局長 前田 陽吉君
科学技術庁原子
力局長 杠 文吉君
事務局側
常任委員会専門
員 小田橋貞寿君
説明員
林野庁指導部造
林保護課長 福森 友久君
林野庁指導部治
山課長 手束 羔一君
気象庁気象研究
所予報研究部長 荒川 秀俊君
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本日の会議に付した案件
○原子力委員会設置法の一部を改正す
る法律案(内閣送付、予備審査)
○科学技術振興対策樹立に関する調査
(防災科学に関する件)
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001・森八三一
○委員長(森八三一君) ただいまより委員会を開会いたします。
原子力委員会設置法の一部を改正する法律案(閣法第一三四号)を議題といたします。
本案は、去る十七日予備審査のため本委員会に付託になり、二十二日提案理由の説明を聴取いたしました。本日は本案に対する質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/1
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002・小笠原二三男
○小笠原二三男君 予備審査いたします原子力委員会設置法の一部を改正する法律案に関連して、現行の法律についてちょっとお尋ねしたいのですが、これは大臣よりも事務当局に承りたい。第一条では「総理府に原子力委員会を置く。」ということになっておりますが、実態としては、原子力委員会の長は技術庁長官であるということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/2
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003・杠文吉
○政府委員(杠文吉君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/3
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004・小笠原二三男
○小笠原二三男君 それはどの法律にあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/4
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005・杠文吉
○政府委員(杠文吉君) 原子力委員会設置法の第七条に、「委員長は、科学技術庁長官たる国務大臣をもって充てる。」とございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/5
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006・小笠原二三男
○小笠原二三男君 だからそのことはわかったが、技術庁長官が原子力委員会を所管するということはどこに記載されているのですか。法文では総理府に置くわけですが、技術庁も総理府に置いてあるんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/6
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007・杠文吉
○政府委員(杠文吉君) 科学技術庁も総理府の中にありまして、いわゆる総理府の外局ということになっております。それから委員会は、国家行政組織法によりますところのいわゆる八条機関というものでございまして、総理府の付属機関ということに相なっておるわけであります。
それからまた委員長の所管に属しているかどうかという問題でございますが、これは原子力委員会は同じく第七条の二項でございますが、「委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。」というような表現になっておりまして、ここで読むということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/7
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008・小笠原二三男
○小笠原二三男君 そういうふうに読んでいるだけのことで、技術庁長官たる国務大臣が委員長に当たるということで、技術庁と原子力委員会という、機関と機関とは関係がない、そう考えていいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/8
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009・杠文吉
○政府委員(杠文吉君) それはお説のとおりに機関と機関との関係については関係ないと読むべきだと思います。ただし、この委員会の庶務は科学技術庁の原子力局において行なうということに相なっております。それは同じく原子力委員会設置法の第十五条でございます。「委員会の庶務は、科学技術庁原子力局において処理する。」ということに相なっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/9
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010・小笠原二三男
○小笠原二三男君 事務的なものを処理する局の長は技術庁長官である。一方原子力委員会そのものは技術庁長官たる国務大臣が当たる、機関と機関とは独立して関係がない。しかし指揮権というものがもしあるとすれば、事務局もむろんこれは長官として当然指揮する。しかし原子力委員会というものも長官たる国務大臣が指揮する。それで機関と機関とは関係がない。私にはどうもこの点がわからぬのですが、この立法の経緯がわからぬから、このことをお尋ねしているのですが、国務大臣が二つのものをかね合わせて、長官として仕事を見るということは、それはあっていいことである。何でもないことですが、この種の行政組織は他にもないことではないのですが、国務大臣が原子力委員会の委員長に当たるならいいのですが、そしてその方がたまたま技術庁長官であるということなら例はある。技術庁長官たる国務大臣と限定せられて、原子力委員会の委員長となる。一方事務局のほうも当然の長官となっている。こういう行政組織の例というものは他にありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/10
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011・杠文吉
○政府委員(杠文吉君) 私は他にこのようなものがあるかどうかということについては詳細は存じておりませんが、実はこの立法の経緯につきまして、当時私は行政管理庁の秘書課長をいたしておりまして、行政審議会の幹事を兼ねさせられておりました。その関係から多少消息に通じておりますので申し上げますというと、もともと原子力委員会というものを行政委員会として発足させようという意図が、国会のほうの原子力合同委員会にあったというふうに承知いたしております。しかしながら、当時独立の行政委員会を整理していくというような内閣の大方針でございまして、その間に調和を保たせて、このような原子力委員会ができたものだと承知いたしておるわけでございまして、したがいまして、委員会というような名前を存置するところの審議機関、これがはたしていわゆる審議会であるかどうかということは、非常なこれまた問題を持っているところでありますが、審議機関というものは他には例を見ないということでございます。したがいまして、この指揮命令系統というお話がございましたが、これは原子力委員としての立場においては皆さんやはり平等の立場で持っていらっしゃる。ただ委員長としては会務を総理し、あるいは委員会を代表するというような行為が他の委員にはないところのもの、そういう権限と申しますか、そういうものをお持ちになっておるということでございまして、今までの審議経過におきましても、すべて各委員平等の立場に立っていろいろ御発言もなさり、そうして、それが運用ておきましては、すべて一致したところにおいて結論を出し、いろいろの諸決定をなされておるというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/11
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012・小笠原二三男
○小笠原二三男君 この疑念にしておる点はあとあとだんだん申し上げますが、では、具体的に原子力委員会が何らかの決定をした、これを閣議あるいは各省にそれぞれ回して、行政的な措置をとらなければならぬという場合には、技術庁そのものが庁議という形ででもこの問題をもう一度当たるのですか。それとも原子力委員会からはストレートに閣議に先議せられて、最終的に行政上の方針が決定しておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/12
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013・杠文吉
○政府委員(杠文吉君) 今の行政の手続の関係でございますが、これは委員会としましては、先ほども申し上げましたように、行政委員会ではございませんので、この点ははっきりいたしております。そこでストレートに各省庁に対していろいろの行政上の手続をとるというわけには参りませんので、やはり庁議という形式を経て各省庁にはいろいろの行政手続をとっているということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/13
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014・小笠原二三男
○小笠原二三男君 原子力委員会は総理府に設置せられておるものであって、技術庁とは機関と機関において関係がない。しかるに手続上としては技術庁の庁議に諮ってそれから行政行為が行なわれる、これはどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/14
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015・杠文吉
○政府委員(杠文吉君) それは先ほど申し上げましたのは、原子力委員会で一応決定されましたものを、科学技術庁の権限内においてやれるものだけが先ほど申しましたような庁議という議を経てストレートに行なわれております。しかしながら、これが内閣総理大臣の権限事項としてやらなければならぬ、すなわち総理府に所属している、所管しているがゆえの行政行為のものにつきましては、内閣総理大臣のほうへこの委員会の決定を持ち込みまして、その内閣総理大臣の名において各省庁へ行政指示がとられているというのが今日の状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/15
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016・小笠原二三男
○小笠原二三男君 この法文で見ますと、第四条において、委員会が必要と認めて決定をした場合には全部総理大臣のほうへ回る。総理大臣のほうから技術庁に回ってくるのではないのですか。技術庁に関することはすぐ原子力委員会から技術庁に行って庁議にかけて処理する。技術庁所管外のものだけが総理大臣のほうに行くというようなのかどうか、私にはわからないですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/16
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017・杠文吉
○政府委員(杠文吉君) それは原子力局の所掌事項をごらんいただきますと、委員会の所掌関係と相当重複する部分がございまして、そうして原子力局において行ない得る面が相当にあるわけでございます。しかしながら、政策の大きな決定ということになりますと、原子力委員会のやはり議を経たいというのがわれわれ行政当局の考えでございまして、したがいまして、原子力委員会にお諮りをするというような段取りをとっている。そうしてその間でつないでいる。すなわち権限事項といいましょうか、所掌事務事項が重複している面をスムーズに円滑に取り行なって行きたいという考えのもとに行なわれているということでございまして、したがいまして、小笠原先生が御指摘のとおりに原子力委員会だけにおいて決定し得るものにつきましては、内閣総理大臣へ持って行くということはでき、内閣総理大臣から逆にまた科学技術庁等にいろいろな指示等があり得るということでございます。ただ、ここで考えなければならないと思っておりますのは、運用上、総理府の外局としての科学技術庁というものは、やはり総理府の長であるところの内閣総理大臣の補佐部局であるというような関係に立っているものでございますから、他の省庁とはおのずからそこに異なるところのものがあるというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/17
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018・小笠原二三男
○小笠原二三男君 そこで総理府の外局、付属機関としてこれが設置せられているとなれば、これは単なる調査や諮問の機関ではない。しかし行政そのものを扱う機関ではない。何かそういうふうに承っているのですが、それでなおかつ所管は技術庁と原子力委員会が独立している。そうして事務的な部分は技術庁が原子力局をもってこれに当てている。どうもこれらの関係が私にスムーズにわからぬのです。で、この点はまあそのままにおくとしまして、第二条でたくさんな仕事がある。そうして今回また一つ大きな基本対策を樹立すべき問題をこれに加えるということになっております。それで私は疑念を持っているのです。行政委員会でもない、諮問機関でもない、調査機関でもない。そういうものが各省庁にわたるこういう重要な諸問題を扱い、かりに決定となっても、それが直ちに各省庁を拘束し、一つの政府の方針として動かない、働かない。そういう仕組みにこれはなっているのですね。あるいは法律上の建前は内閣総理大臣は単に尊重しなければならない。この決定はしたくなければしなくていい。あるいは各省大臣は単に原子力委員会から勧告を受けて、いやだったらほうっておいていい。そこで、こういう建前にしておいて、なおかつこの今回やりますような放射性降下物による障害の防止に関する対策の基本に関することを決定せられる。実効が上がるのかどうかという問題に私は疑問を持つのです。だから組織上欠点があるのではないかという前提でお尋ねをしておることを御了承願っておきたい。どんどんこういう仕事が原子力委員会の仕事だということになるなら、やはり当初お考えになったような行政をみずから行なえるような委員会にしなければ、十分な効果を発することができないのではないかというふうに考えられるわけです。大体私が今まで申し上げてきたことから、大臣も私の言おうとしておるところが、法律上の建前から何を言おうとしておるのかおわかりになったことと思うので、原子力委員会というこの現行制度をこのままにしておかれていいのかどうかということをお尋ねしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/18
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019・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 法律的には言われるとおりであります。しかし、現在のところ重要な原子力委員会で決定したものは、これは総理大臣がこれを尊重して、そして措置が必要ならば、各行政機関にその処置を指揮しておるわけで、実際問題としては現在のところ格別大きな支障があるということではございません。しかし、原子力委員会のあり方というものに対しては、これはもう全然検討が必要でないとは私は思っていないのでありますが、実際問題としては、法律的にはともかく、スムーズに運営されておるということは言えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/19
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020・小笠原二三男
○小笠原二三男君 ではお尋ねしますが、今回挿入せられます放射性降下物の扱いについて原子力委員会にこれが基本対策を樹立せしむるということでありますが、その際においては、提案理由の説明にもありました、従来置かれておる内閣にあります放射能対策本部というものは解消するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/20
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021・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 将来においては解消したいと思いますが、今こういうことになり、原子力局に放射能課も設けるわけで、これが多少恒久的に考えざるを得ないわけですから、そういう点で移行が円滑に行なわれるような見通しがつけば、内閣に置いておる対策本部は、これは解消したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/21
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022・小笠原二三男
○小笠原二三男君 かりにこの新しい対策の基本ができた、緊急にこれを処理しなければならぬということで、各省庁に対して、総理大臣のほうからそれが命ぜられてお仕事をなさるということであっても、万々一怠っておるとか、十分な措置をとることができなかったとかいうような事態が起きますと、事人命その他にかかわる重要な問題ですね。それらのことが行政者として、どこも責任を負わないというような態勢で仕事がされることについて不安を持つ。各省にわたることであって、そうしてなさること自身も法律上の根拠があってなさる行為ではない。間違いが起こったらどこが責任を負うのか、どういう行政権限者がこれは追及されるのか不明だと思う。総理大臣は、ただ尊重する建前に立っておればいいんですから、各省大臣は勧告される建前だけなんですからね。この辺のところはどんなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/22
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023・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) まあ原子力委員会で決定をいたします場合は、相当各省との間にもいろいろ意見も徴したりして、その間全然各省と無連絡に、ある行政的な処置を講じなければならぬような事態のときには、そういう独走することはないですから、原子力委員会で基本的なことをきめて、それを実際に行政的な処置をするのは各省庁がやるわけですから、連絡をとらずにはなかなかやれないわけですから、実際問題としては、これの適宜の処置というものは、私はこの建前で円滑に運営をできるとまあ考えておるわけでございます。そしてまた、責任は、これは原子力委員会のこういうふうな設置法の改正も願いましたから、原子力委員長というものが責任を持つということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/23
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024・小笠原二三男
○小笠原二三男君 私はそうではないと思うのですがね。原子力委員会というものは、原子力委員会の長は行政責任は負わないのだと思う。ここは企画決定するところであって、実施機関ではないのですからね。計画上間違いがあったのならば責任を負うかもしれませんけれども、そのことが十分なる防止の対策をとっておらなかったという問題は、原子力委員会とは関係がない形になっているわけですね。喜んで三木さん責任をとるというのはどうも私はおかしいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/24
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025・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) こういうことです。科学技術庁としていろいろ総合調整をやっているわけですから、これは各官庁に影響を持っていますから、その総合調整を科学技術庁長官がやるわけです。そしてしかも、それが原子力委員長を兼ねている。基本方針を原子力委員会できめて、それを総合調整をして円滑に行政の面においてそれが実施されるようにする責任を持っておるわけですから、そういう意味において、原子力委員長兼科学技術庁長官というものの責任はあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/25
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026・小笠原二三男
○小笠原二三男君 それでわかりました。ただ原子力委員会のこの趣旨の決定というものは、政治的ないろいろな諸条件に拘束されることなしに決定せらるる必要があると思うのですね。その決定がそのまま実施に移されるということを強く望まなければならぬ問題であると思うのですね。そういう際に、こういう付属機関というような建前がやはり私は問題になると思うのですが、もっと前向きのしっかりした態勢をとるという建前からいって、こういう原子力委員会というものは、ただ何らかの問題を審議し、決定するということだけでなくて、実施面にまで触れて仕事をするというふうなあり方にできないものか、この点もお尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/26
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027・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) これはやはり実施面ということになってくると、たいへんな機構が要るわけでありますから、どうしても原子力委員会として、こういう放射性降下物などに対する原子力委員会の役割の限界は基本的な方針をきめる、その実施ということになれば、これは農林省も、厚生省もいろいろ関係するところが多いですから、実施の面までも原子力委員長がやるということになってくると、これは正常な状態ではないですから、放射性降下物が日本の国土に降ってくるというようなことは。そういうことのために膨大な行政機構を持つということは私は適当ではない、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/27
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028・小笠原二三男
○小笠原二三男君 アメリカのほうでは、この種のものはどこで所管し、どういう行政組織で——今防空壕みたいなものを堀ったりするああいう諸計画を進めておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/28
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029・杠文吉
○政府委員(杠文吉君) アメリカにおきましては、公衆保健省とでも申しましょうか、パブリック・ヘルスを取り扱っておるところのボードにおきまして責任を持ってやっております。いわゆる日本における厚生省に該当するところでございます。そこで責任を持ってやっておるわけでございますし、また一方、今のシェルターの話がございましたが、シェルターに対しましては、民間防衛局というのがございまして、民間防衛の立場からシェルターの指導をやっている、またその責任を持っているというような建前でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/29
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030・小笠原二三男
○小笠原二三男君 私は膨大な行政上の人員を要するというようなお話もありましたが、ほんとうにこういう問題に取り組むなら、やはり原子力委員会なら原子力委員会というところで、最末端にわたるまでの実施面を全部全責任を持って担当することができないというなら、実施についての監督、指導、助言、これらが各省に対して、各関係機関に対して、直接原子力委員会において行なわれるというふうな方法もあるでしょうし、いろいろ考究される点があっていいのではないだろうかと思うのですね。ただ現在の段階では、実験の段階から、ちょっと降下物がある、それで心理的にも騒ぐ、あるいは実態としても重要なことでもございましょうが、それに対して対処する姿勢をただ政府が見せておけばいいんだという程度のようにしかどうも聞き取れない。本格的にこの問題に取り組むということには、何か財政的にもあほらしいと、そんなことも万あるまいとは思うけれども、一面あるのではないかというふうにも思われます。けれども、この放射性降下物のみならず、その他の問題についてももう少し何というか、ざっくばらんに言うと、原子力委員会というものが実力を発揮できるような態勢にすべきではないかという感じをどうしても持つのですが、いかがなもんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/30
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031・島村武久
○政府委員(島村武久君) 放射性降下物の問題だけでなくというお話でもございましたので、私から原子力委員会設置法そのものができましたときの事情について簡単に御説明申し上げたいと思います。アメリカにおきます原子力委員会、これは行政委員会でございます。みずから試験研究も実施し、あるいは必要に応じて工場も持つというような形でございます。各国におきますいろいろな原子力行政のあり方ということももちろん参考にいたしまして、日本でも原子力の開発を進めていくためには、アメリカのような意味での原子力委員会が望ましいのではないかという意見がかなりございまして、いわゆる原子力行政をどうやったらいいかということだけにつきまして、原子力委員会が発足いたします以前の段階に、閣議決定で設けられました原子力利用準備調査会というところで一年間も議論がなされたわけでございます。その結果いろいろな議論もあったのでございますが、法律的に申しますならば、責任内閣制のもとにおきまして、あらゆる行政というものを、一切を原子力委員会というものにゆだねるようなやり方というものは、どうも憲法上疑義があるというようなお説もございましたし、学界、それから官庁側、あるいは国会側、それぞれの方の御意見の結局総合という形におきまして、このような委員会形式をとったわけであります。言いかえますと、あくまでこの原子力委員会は、国家行政組織法上第八条の規定に基づく機関であって、第三条機関、いわゆる行政委員会ではないという解釈のもとに、しかし単なる審議会あるいは協議会等、いわゆる通常の第八条機関と同じようなものであったのでは意味がないというところから、非常に行政委員会に近い性格のものにするという腐心がさまざまに払われまして、その結論といたしまして、第二条にございますように、審議、決定するというような形、これはまた「決定する」というような言い方をとりました設置法は実はあまりないと思うのでございますけれども、そういうような形もとりましたし、あるいは内閣総理大臣の尊重義務というようなものも加えられました。その運営におきましては、かなり行政委員会的な運営を行なうと、何と申しますか、了解あるいは期待のもとに生まれましたものでございます。したがいまして、原子力委員会をそのような性格づけをいたします結果といたしましては、直接原子力委員会の事務局というものを、その政策を大部分実施いたしますところの行政機関と同一なものにして、一体化をはかると同時に、委員会の長、当時科学技術庁はございませんでしたので、その当時は先生が先ほどおっしゃいましたように、国務大臣をもって充てるということだけが規定せられておったわけであります。科学技術庁ができます際に、原子力委員会設置法も改正いたしまして、科学技術庁長官たる国務大臣というふうに改めまして、いわば事務局の面でも、委員会の長たる者の面でも、行政実施のほうと緊密な連携をはかるという考え方に立ったわけであります。いわば当時といたしましては、非常に変則的な、御指摘のありましたように、かなり変わった性格づけのものとして生まれたわけでございますけれども、その後の運営におきましては、先ほど、長官からも申し述べましたとおりに、特に欠陥というようなことも意識せられませんで、大体初めに企図せられました原子力委員会の使命の遂行ということに遺憾なく運営されておるというふうに考えるわけでございます。もちろん、この原子力委員会設置法は政府提案によってきめられたものでございますけれども、根拠は御承知のとおり、原子力基本法にございまして、原子力基本法は当時国会で議員提出によりまして満場一致で成立をいたしました法律でございまして、私が申し上げましたのは、原子力委員会設置法の経緯でございますと同時に、基本法の精神、あるいはその解釈として論ぜられましたのとまた同じわけでございます。したがいまして、運営の面からいたしますと、心がまえといたしましては、原子力委員会のきめられましたことを、科学技術庁はもとよりでございますが、政府各行政機関もできるだけ、まあ百パーセント近くこれを尊重いたしまして行政に実施していくということになっております。それが現在において、大体遺憾なく行なわれておる、こういうふうに了解いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/31
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032・小笠原二三男
○小笠原二三男君 今の経過的なお話というものは、それはそれなりに了承される点がありますけれども、皆さんのほうで、これでうまくやっていっているのだというようなことは、そういう自画自賛的なことは私は聞きたくない。そもそも変則的な委員会を作って運用の妙を発揮して欠陥を補なう、法制的建前というものをあっちに向けたり、こっちに向けたりすることができるような、そういう建前自身を私は問題にしているのです。過去に私の知っている範囲では電波監理委員会ですか、あれは郵政省の中にあったのですが、あれは独立した行政委員会で、一切の日本の電波行政を扱っておった。決定も許可も免許も監督も一切扱っておった。私はあれはあれなりに非常に効果があったと考えております。原子力委員会もそもそも基本法が議員立法であり、そして委員会が作られるということで、従来の構想によって委員会をお持ちにならなかった事情というものは、まだまだ役所内の問題としていろいろな事情があったのだろうと、これは私推定ですが、思われる。今第二条に掲げているような諸点はその程度のことでいいと思うのです。確かに今運用の妙を発揮して万全を期するということには間に合うと思うのです。これは一つ一つとってみても、そしてまた技術庁自身が力を入れてやれば大体間に合う問題です。けれども放射能降下物の障害防止対策ということになると、従来行なわれておる原子力委員会の審議、調査、決定という、そういう建前とは非常に変わった、質、量ともに広範な問題を私は持っているように思うのです。ここにあります「原子力利用に伴う障害防止の基本に関すること。」などというのは、原子力利用というものがもう計画的に行なわれてくるのですから、そのときその場所をはっきり限定されておる中で問題が処理される基本対策ですし、また行政といいましても、通産省所管の民間会社なりで限定されておるからいいのです。しかし、この放射能降下物というのは、これはどれほどのものがどういうふうにやってくるものか、核反応の総合的な研究の上に立って対策を立てられる半面、その実施についても広範囲の問題を含んでいると思うのですね。これを私は、たまたまここにうまく原子力委員会があるから、これに放り込んでひとつやらせたらどうかというような安易な気持でここに飛び込ませたのではないかという疑点もある。何か今までの態勢と違うように思うのですがね。それで、もう一歩進められて、第三条の行政委員会なら行政委員会という姿勢になぜ持っていかれないのか、この委員会そのものをですよ。そういうことを私考えるのですがね。これはとっさに大臣からこうしますなどという答弁のあり得るはずのものではありませんけれども、ただこれでいいのだ、これでまかなえるのだという姿勢は私はいかがかと思うのです。もっと研究を加えられる必要があるのではないかと思いますが、大臣の御所見はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/32
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033・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 問題は放射性降下物です。これはやはり扱うとすれば原子力局の本来の業務に大部分が関係するもので、ほかの行政機関でこれを扱えといっても無理であります。非常に無理をしてこの中に放り込んだのだというのですが、無理をしたのではない、これは自然なものであります。しかし御指摘のように、これは非常に関連するところが多いのですから、今後ソ連の核爆発実験の連鎮反応を起こしたような形勢があってアメリカもやるかもしれないといいますから、そういうことから考えてみて、本格的に、この原子力委員会というものが基本的な対策なんかも検討して本格的に取り組むわけでありますから、これで私はやっていけると思っているのです。しかし非常な不便が出て参りますれば、制度というものはそんなに固定して考える必要はないのでありますから、非常に支障ができてくれば、いつでも検討をいたしたいと思っておりますが、現在のところはこういうことでやっていけるということで御審議を願う提案を行なったわけでございます。将来不都合が生じてくれば、いつでも制度はこれを再検討するのにやぶさかではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/33
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034・小笠原二三男
○小笠原二三男君 原子力委員会というものが日本の科学技術の英知を集められたところとして、こういう基本対策を立てられる、これはよろしい。一歩私も譲りましょう。しかし実施面については、おそらくこれほど重要なものであれば、各関係省、民間それぞれを通じていかにこれは消化していくかという点で、また一つ諮問的な機関と申しますか、あるいは連絡調整の機関と申しますか、そういうようなものでも持って、どこかで掌握しておいて仕事をしていくというようなまた二重の手間がほんとうは必要ではないだろうか。それを持たないならば、内閣に現在ある対策本部というものがそのまま存置せられて、そこにまたあらゆる英知を集めて実施に移すということになるのではないか。何か私は決定ということにこだわり過ぎるかもしらぬのですが、法文上の建前は決定であり、行政委員会でないこの委員会なんですから、他にその種のものが実際的な扱いの場においてなければ、総合的な対策そのものが実施できないのではないか。基本対策を作ることまではいいでしょうが、それを有効に実施していくというのには、何かそういうものがまた必要になってくるのでないかと思われるのですね。それなくして、ただ一片の紙切れを出したくらいで、そうして各省にそれぞれ小さい予算をつけたからというて、それで私は行政機能が発揮できるとは思わない。これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/34
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035・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) それはお説のとおりだと思います。ところで、何も連絡もなしに原子力委員会が決定をして、それが円滑に行政面で実施できるというものではないのです。決定に至るまでの間に緊密な連絡をとり、意見も徴することが必要になってくるので、別にそういう機関を置かなければならぬとも思いませんが、政府は一つの有機体でございますから、そういう点でこの基本的な対策の決定、これが円滑に行なわれるためには、事前において十分な意見も徴し、連絡もとる、そういう必要は起こってくる、そのためにまた別に一つの機関を置かなければならぬとは考えてないわけであります。私は対策本部も今すぐにこれを解消すると言わないのは、こういう過渡期に一つのこういうものを取り扱っていくのに円滑に推移をはかりたいということで、当分は対策本部なども置いておきたいと思うのですが、しかしだんだんとこれが軌道に乗ってくれば、あれも要らないと思っておるわけでございます。特に特別な機関というものは考えていないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/35
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036・小笠原二三男
○小笠原二三男君 私の申し上げておるのは、そういう二重の手数を要するという点で、やはり決定と実施とがある点において結びついた、表面切った施策として現われるような措置をとったらどうだろうか、それにはこの委員会というものは、やはり行政委員会として限度があってもやらせていいのではないかという感じで申し上げた。ただ後段に大臣がおっしゃったように、政府内の調整等がとられればいいのだという考えには、私必ずしもそれでいいとは考えられないと思うのであります。今の段階で日本における放射能降下物というようなものが長きにわたって人体に及ぼす影響というようなことで、直ちに今事が起こってふっ飛んでしまうというような問題を対策として考えることではない。あるいは動物、植物、これら直接人畜に害を及ぼす諸問題について科学的に対策を打ち立てるということも中心の問題だろうと思うのです。そうなれば、やはり民間人の協力なり、国民も今不安を持っておられる中で、いろいろ関心があることですから、それらの意見を聞いて施策していくという建前から言えば、まあ私言葉としては使いたい言葉ではないのですが、官民協力という、内容はそういう成果が上がるような形でこの対策を打ち立てられるのが望ましいのではないかという考え方を持つのです。それを何か政府部内のどこかで、どうやっているのか国民の前に明らかにならない形で仕事をなさるということについては、行政効率を上げるゆえんのものではないというふうに思うのです。いつでしたか、昨年でしたか、大騒ぎしたときにおいても、国民は政府部内においてどういう対策が万全にとられ、どういうことで安心ができるのか、ちっともわからない、そういうようなやり方はまずないように思うのです。ですから、どうしてもやはり民間の声を聞き、その協力に待つというような形で問題が処理されるということでお願いしたいと思う。お答えは要りません。
それから最後にもう一つ、この放射能降下物の基本対策は、自衛隊と申しますか、日本の軍事力の中でも戦術的な部面として考えられる点があるのですか。あるとすれば、それは原子力委員会所管の基本対策の中で問題が論じられるのですか。それは防衛庁内でそうした民間における対策的なものとは別個に行なわれるのですか。この点の基本的な考え方について承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/36
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037・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 御承知のように、日本の自衛隊は核武装しないということを言っているわけでありますから、自衛隊の中から、そのいろんな放射性降下物を出すような事態というものを、われわれは想像してないわけであります。しかし、われわれが今ここで御審議を願っていることは、これはもう原子力基本法によって平和利用ということで、軍事的な面というものを対象にしてやっているわけではない。原子力基本法の線にのっとってこれをやるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/37
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038・小笠原二三男
○小笠原二三男君 そのとおりですけれども、放射能降下物というものは、そもそもは平和的な利用ではない、破壊的なものから守ろうというほうの対策で、そういう理屈で大臣が言うならば、原子力委員会の所管外です、平和利用のもとに核爆発実験をやっているのじゃないのです。戦争目的のためにやっている、厳然と。それから落っこってきたものを処理しようとすることは、この委員会の範囲外だとのへ理屈はつけられましょう。しかし、これはそういうことではなくして、確かに日本の自衛隊はみずからそういう放射能降下物を出し得る装備をすることはできないけれども、被害を受ける側では同じなんです。それで民間における被害を受けるものの対策と、そういう軍事組織が被害を受ける対策もここで練られるのか、これは別途のものかということを聞いている。要するに日本の軍事力というものは、単に実験のために起こってくる被害を防止するという対策の一環の中にあるほかに、いざというときに、いかにして軍事力を維持し、これに立ち向かうことができるかという、戦術的な対策というものがあるのだとすれば、それは自衛隊内でそういう対策を講ずることができるとするのか、あるいは原子力委員会は平和利用の組織であるから、軍事的な、戦術的な建前で放射能降下物の障害防除ということは考えないのだというのか、その点お聞きするのです。自衛隊はやってもいいのか、いわゆる防空壕を掘ったり、その他これに対抗する消極的な手段、そういうものをとるのか、この関係はどうなるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/38
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039・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) これは自衛隊まで含めて考えていないのです。したがって、自衛隊自身としては、いろんな研究もしたり、防護態勢もとる場合がある。しかし、ここの場合は、戦略的と言いますか、自衛隊を含んでは考えていない。自衛隊はこの中に含まないという考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/39
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040・小笠原二三男
○小笠原二三男君 以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/40
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041・森八三一
○委員長(森八三一君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/41
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042・森八三一
○委員長(森八三一君) 次に、科学技術振興対策樹立に関する調査を議題といたします。
質疑の通告がございますので、この際御発言を願います。吉田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/42
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043・吉田法晴
○吉田法晴君 きょうは、自然災害に関連をして、気象庁の気象研究所の予報研究部長に来ていただき、また林野庁、経済企画庁、通産省からそれぞれ関係課長に来ていただいておりますが、御都合がおありのようでございますから、気象研究所の予報研究部長に初めお話を承りたいと思います。
前回、気象庁の予報部長から気象情報、それからその中で一般の天気図なり関連をいたします気象観測、そのほか特定の台風その他の気象状況の把握りために、レーダー・ネットが作られようとしておる。あるいは台風の観測に飛行機が使われる。将来にわたっては人工衛星等も利用せられるだろうというお話、あるいは降雨の観測について、ロボット観測の網を張りつつ、水が出ましたら——降った雨が水になったら、その観測なり情報は、これは気象庁と建設局と協力して連絡している。こういうようなお話がございました。それから気象や情報の伝達方法等については、電話あるいはテレタイプ等の方法、それから将来にわたってはマイクロウエーブも利用をしたい。こういうお話があり、それから受電設備の点で、台風の警報を受けたときに相撲を見ておったとか、あるいは漁船でラジオも持たない云々という点は、双方から問題にして、その警報の伝達方法等についても改善すべき点がある。
それから人工降雨、台風豪雨等の転換といいますか、あるいは弱体化の具体的な方法等については、これは荒川先生に聞いてもらいたい、こういうお話等もございました。この委員会で防災科学の発展促進をはかるために調査をしたいということで、自然災害あるいは人災、公害等についても調査をしているところでございますが、気象関係について予報部長から、先ほど大体申し上げましたようなお話をいただいたのですが、予報研究部長さんに、落ちていますところ、あるいはもっと詳しいお話を承りたいということで御出席をいただいたようなわけです。特に最後の人工降雨とか、あるいは台風豪雨の転換なりあるいは弱体化なりをする具体的な方法等について、あるいは気象に関係いたします科学、それから個々の災害の原因究明に関連をして個別的な科学的な検討、それから気象に関係いたしますあるいは自然災害を防止する機構等については、特に御造詣深いところでございますから、御披瀝いただけましたら幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/43
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044・荒川秀俊
○説明員(荒川秀俊君) ただいまのお話は非常に広範でございまして、どの一つをとりましても、災害の防止根絶のためにやりとげるということは、非常にむずかしい問題ばかりでございますが、いろいろここに問題のある点、あるいは今考えられている点をお話ししてみたいと思います。
第一に台風の防災のことでございますが、台風につきましては、その防備をするためには、現状を知り、あるいはそれからの将来の予測をする必要がございまして、それに対する対策が初めてできることと思います。で、その現状を知るためには、今申されましたように、全国に気象観測網が張られておりますし、その中には、最近レーダー網も張りめぐらされ始めてございます。で、今では大体、台風の銀座通りの南西諸島から九州、それから四国、近畿地方の海岸には、大体レーダー網が整備されました。今、問題になっておりますのは、台風が南のほうから参るときの穴になっております八丈島あるいは小笠原島方面に、どこかにレーダー網をつけたい、あるいはそれにかわるものとして、レーダーは、目で見るようにまっすぐに進む電波を使っておりまするから、高い所につければ、目の見える範囲がだんだん広くなるわけでございまして、そういう意味では、あるいは八丈島あるいは鳥島という所へつけるよりは、富士山の高い所につければ、それだけ広く見渡せていいのではないかというようなことも考えられております。で、地上の設備といたしましては、レーダー網を八丈島あるいは鳥島のほう、あるいは富士山の上というような所へつけて監視したいというのでございますが、そのほか現在非常に役に立っております武器は、飛行機による観測であります。この飛行機による観測は、現在アメリカ軍によって、極東空軍の手で実施されておりますけれども、この飛行機観測には、今では横田にあります飛行場に一個連隊ありまして、WB50という大きな飛行機を十一機持っております。で、こういうように気象庁でも飛行機をもって台風の防災に当たるべきではないかという話がございまして、かつては大阪の小学校や横浜の女学校というようなところから、学生が自主的に献金をいたしまして——募集いたしまして、この金で少ないけれども飛行機を買ってくれといって気象庁へ持って来たこともございます。なるほど十万円以上のお金でありますから、子供に対しては非常に大きなお金であったでしょうけれども、飛行機を買うようなまだ大金でもございませんので、それにかわるものとして、大阪湾で船が沈みました、そのころ南海丸とか何とかと申します船が沈みました近所に、レーダをつけましたが、そのお金でレーダーの見張所を建てたようなこともございます。しかしながら今われわれの希望といたしましては、アメリカ軍がいつまでも駐留しているのではなかろうと思われるし、また近いうちに飛行機観測をやめるかもしれないというニュースもときどき流れておりますので、それでぜひともこの飛行機観測は残しておいてもらいたい、でなければ自力でやれないか——ところが台風の中は思ったほど大きな飛行機でなくとも観測ができるような見通しでございまして、現在、実はかつて日華事変が起こったときに済州島から日本の海軍機で中攻機というのが、ちょうど東支那海のまん中に——上海事変が起こりましたときにはちょうど東支那海のまん中に台風があったのです。で、陸戦隊が支那軍に包囲されて非常に苦戦に陥ったときに、中攻機でひとつ大いに行こうというようなことになって渡洋爆撃をやったことがある、これは台風の中をりっぱに突っ切っております。古い飛行機でも台風の中を突っ切れるのでございます。実際私は二回ほど訪問しましたアメリカのハリケーン研究所では、日航が昨年まで使っておりました飛行機でございますが、その飛行機を使いまして——ジェット機で双発でございます。それを二機使って、今アメリカのカリブ海の沿岸に来るハリケーンの哨戒飛行をやっております。これで実際に研究観測はできておるのでございまするから、近いうちには気象庁でもそれと同じ程度の二機ぐらいの飛行機を持ちたいというような声も上がっております。それからもう一つは、台風の現状の哨戒といたしましては気象観測衛星タイロス、今上がっておりますが上に上がっている人工衛星にテレビを載せてありまして、そのテレビの画面を地上局で受けまして、そうして、それから実際に海の上——世界の三分の二は海の上でございますが、その海の上の雲の様子を観測をしている、偵察観測をしている。それで始終人工衛星で哨戒していれば海の上にできた台風もすぐにわかることになるだろうというので、そういう考えのもとに、今研究が進められておりますが、昨年気象庁でアメリカから入電しておりまする気象通報、気象衛星による観測の電報を受け取ってみて天気図に記入しておりましたところ、非常に人工衛星の観測が役に立った、特に台風の現状の把握に役立ったというので、おそらく気象衛星はもうじき、ここ一、二年のうちに実用になると思います。人工衛星はあまり役に立たないといわれておりますけれども、先ごろ国連で日本の大使が演説なすったように、オリンピックまでには通信衛星で全国に、全世界にオリンピックの状況をテレビ通信ができると言われておりましたけれども、その通信衛星とともに気象衛星はもうここ一、二年、おそらく二、三年のうちには実用になるだろうというような見通しでございます。そのときにはしかし、アメリカでも気象衛星を打ち上げるのにもお金がかかりまするから、必ず日本にもそのうちの一部を分担してくれと言ってくるに相違ないと思っております。まあ、台風はそういうようにして現状を把握して、その現状によりまして、今度は将来の移っていく様子を予想するという予測の段階になりますと、これはいろいろこれから気象学の理論の開発になりまして、要するに人間の頭脳の問題でありますので、そのうちにだんだん気象学の理論が進んでいけば、予測もだんだん確かになるであろうと思われる。そうしてその見込みによりまして、あるいは建設省なり警察、そういうような向きと共同いたしまして防災面において全能力を発揮したいという希望でございます。
なお、今問題になっておりますものは、台風のほかに集中豪雨というものがこのごろ大きな問題に取り上げられて参りました。この集中豪雨は何も最近に特別に頻繁に起こるというものではないと思いますけれども、何しろ災害というものは、人間があってからのことで、社会的な面が非常にあると思います。ところが、だんだん世の中がにぎやかになってきまして、がけの下とか、あるいは川のふちとか、そういう所に家を建てたり、あるいは農作物を作ったりするようになりますから、ちょっとも余裕がなくなる。そうすると、そこで土地がくずれたり、あるいは水がつかるということになると、災害が起こったということになって、非常に小さな規模の大雨が問題になってきているであろうと思います。たとえばまあ東京あたりでありますと、思いのほか大きな雨が——一日も二日も続く大雨でも大したことがないのに、夏、ざあっと三十分か四十分大雨が降ると下水があふれてしまってどうにもしようがなくなるというようなことがございます。それと同じように、小さな短期間大雨がどっと降る集中豪雨というものがごく局部的に災害を及ぼしまして、ここ最近数年間問題になっているわけでございます。これにつきましては、ただいま気象庁におきましては今年度予算をいただきまして、こういう集中豪雨の機構を解明してみよう、特別観測をやりまして、集中豪雨かあるいは集中豪雪、裏日本に、北陸地方に一時にどっと大雪が降る、そういうときのメカニズムを解明してみたい、そのために特別観測をやろうということになっております。そういう小さな規模の気象災害を及ぼすものは、世界的に見ましてもほかにも例は幾らもあるのでございまして、たとえばアメリカにとってみましても、アメリカの中南部平原にはいわゆるトルネードというたつまきがある、あるいは非常に強い雷雨が来る。それはもう目で見えるような小さなたつまきでございますが、それが通ったところにだけえらい災害が集中的に起こる。そういうもののやはり機構を解明して、防災に役立てようという試みがアメリカでもここ三年ばかり前から起こりまして、そのためにシヴィァ・ストーム・プロジェクトと言われる研究所ができました。その研究所は二つに分かれております。一つは今のアメリカの台風であるところのハリケーンの研究所、それからもう一つは中部のカンサスという所にありますが、トルネード関係の研究所、この二つを作りまして、今もっぱら飛行機観測、先ほど申しましたが、アメリカの気象局で飛行機を持っている、その飛行機を利用してハリケーンとか、あるいはトルネードの詳しい機構の解明をやろう。それからまたすぐに直結して、予報の技術の進歩になるだろうというようなことになっております。
それから、今御質問がございましたけれども、さらに進んで積極的に気象を左右できないかというお話でございました。これもまた、まだまだむずかしい面であろうと思います。ただ防災事業のために活発に働くだけでなくて征服してみたい、これは小規模なものであれば必人間が征服できると思います。たとえば雨が降るときに雨に当たらないでいるためには、うちの中にいればいいわけでございますし、あるいは寒いときに暖かくしようと思えば暖房すればいいわけであります。小規模なものは人工的に今までできているわけですが、それがかなり大きな規模になったとき、すなわち台風が来ないようにするとか、あるいは集中豪雨を分散して降らしてしまうというようなことも、これは考えの上では、こんなことをすればいいんじゃないかという案は立てられておりますが、まだそれを実行するまでには至っておりませんでございます。何しろ日本では雨が多いと言われていましたけれども、その多い雨でさえ最近ではもう水が少なくて工場に困るというような非常に水を要望されておりますので、そうすると台風が災害を及ぼす、集中豪雨が災害を及ぼすと言われておりましても、実際はそれをなだらかに分散して降らせることができれば、これは非常に利益になるのでありまして、ただ災害を避けるというだけでなくて利益が莫大にあがると思うのであります。しかし、それをどういうふうにして台風の大雨あるいは集中豪雨の大雨を、もっと長い期間にじわじわ降らせ、あるいはもっと広い範囲に降らして有効にできるかという問題になると、今すぐには解決できないと思いますけれども、ある種の案は立てられておるのでございます。それでこの案はまあ人工降雨をする技術を何とか改良すればできるのじゃないかという考えでございますが、結局、人工降雨というのは雨の降りそうな雲を見つけまして、その雲の中に種をまきます。雨粒を大きくするような種をまいてやります。そうすると、その種のまわりに水蒸気が余計くっついて雨になって降ってくる。降りそうな雲の中にまくのでありますから、当然雨が降る状態になっておるわけですが、その雨をもっとふやしてやろうというのが人工降雨でございますが、そうすると雨を少しでも余計降らせることができるというのであれば、その雨を多く降らせることによって自然現象を割合簡単に人為的に変えられるのじゃないかという考えでございます。それは一つは台風の動きというものは、台風が来る前にえらい雨が降りますけれども、この台風の栄養素は雨なんでございます。台風があれだけ狂暴をたくましゅうするのは、雨が降るときには水蒸気が水になる。水になるときに非常に大きなエネルギーを出す。たとえば鉄びんを火鉢にかけて、そこへ熱というエネルギーを与えておきますと、水が蒸発していく。すなわち水蒸気という状態は、水よりは非常にエネルギーを余計外からもらっている状態。逆に水蒸気が水になるときにはエネルギーを外へ出すわけなんです。あれだけ大きな雨が降るのでございますから、水蒸気が水になるときに出すエネルギーというものは大へんなエネルギーで、そのエネルギーが形が変わって、ああいう大きは暴風雨になるわけでございます。私ども、今考えておりますことは、台風の通り道を変えてやる。たとえば日本の沖を台風が通りやすいようにしてやろう。そうすると、沖を通れば日本にはたっぷり雨が降るけれども、あらしにはならないというようなことが考えられる。この沖を通らせるためには、沖のほうへ台風のえじきになるような、栄養素になるような雨を降らせて、そっちへおいでおいでをかけてやったらいいじゃないか。そういう考えでアメリカでも実際シカゴ大学のブラハムという教授でございますが、それが台風の道筋をそういう考えで変えられるのではないかというので、今ハリケーン研究所と共同いたしまして、実際にその研究中でございます。また同様に、雨が集中的に降るのをならさせるためには、ある程度まわりへ人工降雨をやって一部分に降らないように、多くの所へ降るようにしてやればいいのじゃないかというように考えられているわけですが、これを実際にそういうふうに実利だけをあげられるように、うまくできるようになるのには、ここ十年もかかるだろうかと思いますけれども、全くその希望がないわけではない。しかし、それはまた、たとえば地震を予知するのにえらい年月と、人と、お金がかかりそうだというのと同じように、希望はあるけれども、かなり険しい道が待っておると思うのであります。あるいは御質問に対してお答えになっていないかもしれませんが、こんなところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/44
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045・吉田法晴
○吉田法晴君 たいへんありがとうございました。関連をいたしまして一、二伺いたいのですが、この特別観測の中で飛行機の点について気象庁の予報部長に来ていただいたときには、小型というのですか、今お話しになるような小型でも困難だから米軍のあれに頼る以外にない、こういうお話でした。今意見の違うことを申し上げるのではないが、気象庁の中でも、研究所とそれから気象庁自体で若干の意見の違いがある。そうすると、あなたのように小さい小型の飛行機でも——小型と言っても、まあ中型になるかもしれませんけれども、日本の今の財政能力でできぬわけではないということになると、それじゃ予算をとって飛行機観測ができるようにしようじゃないかというような話になって、具体化する道ができてくる。これは一例ですけれども、自然災害についても、それからあとの人炭でもそうですが、非常にたくさん所管が分かれておって、たとえば豪雨と豪雨による被害についても、まあこれから林野庁のほうに伺っていきますが、このほうは林野庁、雨の降ったところは気象庁、川にかかってくると建設省、こういう工合になっていて、災害対策あるいは防災対策については今の行政官庁、あるいは研究機関もそれぞれの省に付置されているのですが、その研究機関も相当ばらばらで、そこに大きな欠陥があるんですから、それを統一する必要がある。これがわれわれの一つの問題点なんですけれども、そういう点について、飛行機観測なら飛行機観測についてまとめるとすれば、これは気象庁でまとまるものですか。それとも何といいますか、予算とか、行政機構の問題とかは私どもの問題になりますが、技術的にといいますか、飛行機で台風その他の特別観測ができるかどうか。それは、どこで取りまとめられれば、まとまるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/45
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046・荒川秀俊
○説明員(荒川秀俊君) 先ほど小さい飛行機でもできると申しましたけれども、これは言葉が足りなかったかもしれません。DC6という飛行機を今アメリカのハリケーン研究所では使っております。DC6というのは、ホノルル経由サンフランシスコ、あるいはロスアンゼルスに向けて日航が一昨年あたりまで使っていた飛行機でありましたが、今ではそれより少し大きいジェット機のDC7を使っております。DC6でも大体飛行機で台風の中を十分飛んでこれる。そういう意味で研究用に飛行機を気象庁で持ちたいということを、この間実は肥沼部長がお話をしたあとだと思いますが、気象庁に気象審議会という、まあ原子力委員会ではありませんが、気象審議会というやはり同じような諮問機関があります。そこへ、気象庁で一体研究用の飛行機を二、三機持つことはいいことだろうか、あるいは観測できるだろうかできないだろうかということを今諮問を出しましたところなんです。いずれ、その審議会の先生方からりっぱな答申が出てくることかと思います。それが出て参りまして、もし気象庁では二、三機でも飛行機を持てということになりましたらば、こちらへまたお願いに上がることになるだろうと思います。
それで、私はその災害関係のことがばらばらになっているのではないかということを御質問を受けましたけれども、私の視界ははなはだ狭いものでございまするから、今その日本全体の行政機構をどうというようなことに対しては、私意見を申す資格もございませんし、また意見も持ち合わせておりませんので失礼いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/46
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047・吉田法晴
○吉田法晴君 もう一つお伺いしたいのですが、その人工降雨の方法を改善なり、あるいは発展をさせて、台風の何といいますか、方向をかえるなり、あるいは分散をするなり、広い範囲にするなり、若干のあれができるのじゃないか。アメリカではシカゴ大学のブラハム教授が、なんですか、ハリケーン研究所ですか、トルネード研究所との協力でやっておられるという話ですが、そうしてそれを日本の場合にもしあれをするとすれば、台風研究所ということにまあなろうかと思うのですが、気象研究所の拡充でそれが実現をするものか、あるいは気象研究所は、気象万般にわたって研究しておられるから、別に台風研究所を作ったほうがよろしいということになりましょうか、その辺ちょっとお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/47
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048・荒川秀俊
○説明員(荒川秀俊君) お答えといたしまして、二つのことを分けてお話ししたいと思います。一つは、日本でそういう人工降雨あるいはそれを発展して気象の征服ということに乗り出せないかというので、昨年——三十六年度から——三十七年度の予算も近々通らせていただくのだろうと思いますが、科学技術庁が中心になりまして、人工降雨に関する何か研究補助金が何千万円か成立いたしまして、去年——三十六年度から、三十六年度には九州におきまして、九州電力を中心にいたしまして、九州大学の人たちを中心にいたしまして、人工降雨の技術の発展、並びに行く行くはその気象の征服という目的でもって予算が成立しました。ことしはそれを上回るお金をいただきまして、たしか関東地方でもその実験をするというように聞いております。
もう一つ、台風研究所がどうかというお話でございましたが、昭和三十四年に伊勢湾台風が参りまして、非常な被害を受けましたときに、当時科学技術庁の長官でありました中曾根大臣の発案で台風研究所を作れという御希望がございました。それで台風研究所という、そういう大きな機構もどうかと思いましたので、われわれからお願いいたしまして気象研究所の中に台風研究部というものを新設していただきまして、今もう二年目——三十五年と三十六年の予算をいただきまして、その台風研究部を整備いたしまして、この三十七年度で第三年目で、その部の建設が終わるわけでございますが、しかし当初の意気込みと違いまして普通の研究員の増員を大体五名程度いただきまして台風研究部を作りました。それはまだ非常に微力なものでございますが、そういうものができましたということをここで御報告いたしたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/48
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049・吉田法晴
○吉田法晴君 今の人工降雨に関する研究補助、三十六年度の九州での研究助成費ですか、それから関東での実験を三十七年度に拡大をしようということですが、それが幾らなのか。それからあとの気象研究所の中における台風研究部の予算はどのくらいついているのか伺いたい。
それから荒川さんにお願いをしたいのですけれども、アメリカの台風研究所でどのくらいの予算がついているのか、あとでお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/49
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050・山本利壽
○政府委員(山本利壽君) 人工降雨の研究委託費といたしまして、三十六年度には約二千七百万円、そして三十七年度に約三千七百万円ほどをつけておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/50
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051・吉田法晴
○吉田法晴君 三十六年度のは、これは九州ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/51
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052・山本利壽
○政府委員(山本利壽君) そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/52
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053・吉田法晴
○吉田法晴君 それから三十七年度の三千七百万というのは、九州の分を含んで関東でふやすということで、二カ所ですか。それとも三十七年度は関東の分だけですか。それからさっき九州電力の話がありましたが、これとの関係はどうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/53
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054・前田陽吉
○政府委員(前田陽吉君) 事務的な問題でございますから、私からお答えさせていただきます。三十六年度に取り上げました人工降雨の問題は、今後数カ年継続する計画で私どもは考えておるのでございまするが、科学技術庁におきましてこれを取り上げました理由は、人工降雨の問題はただいま荒川先生から御説明がございましたように、将来は気象の人工制御というような問題も含みますけれども、とにかく雨がほしい、水がほしいというような問題もあるわけでございます。たとえば工業用水あるいは農業用水——工業用水と申しますのは、発電用のダムなんかの水でございますが、雨を水にして使いたいというような要望が相当ございます。それから気象の問題もございます。それで多数の部門にまたがりました研究の助成ということにつながるものでございますから、科学技術庁のほうで取り上げまして、これを委託して研究の助成をはかることになったわけでございまするが、その委託先といたしまして、三十六年度に人工降雨研究協会という社団法人の組織が発足をいたしました。これはもともとそういう組織があったわけでございまするが、社団法人組織に直しましたものでございますが、そこに九州大学の武田教授その他九州大学の方々が参加しておられます。とともに九州電力の研究所の方々も多数参加しておるわけであります。なお九電あるいは九州大学以外にも、この人工降雨に関係されました研究者がこれに加入いたしておりますが、科学技術庁といたしましては人工降雨研究協会に委託をしたということでございます。それから三十六年度から開始したわけでございまするが、三十六年度は九州の地を選びまして、まだこれは本格的実験にはかかっておりませんので、相当長年月を要するものでございますから、能率よく実施いたしますために、まず三十六年度は地域をどういうふうにして決定するかというふうな予備実験をいたしたものでございます。二千七百万円余りでございます。三十七年度の計画といたしましては、御審議願っておりまする予算案におきましては三千七百万円余りの経費が入っておりますが、これは九州の分とそれから北関東におきまして予備実験を行なうという両方含んだものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/54
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055・吉田法晴
○吉田法晴君 今の答弁に気象研究所の台風研究部の予算が落ちましたが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/55
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056・荒川秀俊
○説明員(荒川秀俊君) はっきりした数字は存じておりませんが、大体、第一年、第二年、第三年と千数百万円ずつの整備費をいただきまして発足いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/56
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057・吉田法晴
○吉田法晴君 一年にですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/57
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058・荒川秀俊
○説明員(荒川秀俊君) 千数百万円ずつ毎年いただきました、今度三十七年度で三年目になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/58
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059・吉田法晴
○吉田法晴君 それからもう一つ、荒川さんにお伺いしたいのは、アメリカの台風研究所はどのくらいの予算でやっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/59
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060・荒川秀俊
○説明員(荒川秀俊君) 私は、このアメリカの台風研究所と特別な関係がございまして、その招待で三回訪問いたしました。今年の六月にも私招待されて行くことになっております。昨年カクテル・パーティでそこの所長さんたちに聞きましたところ、これは人件費がなくて、大体百五十万ドルでハリケーン研究所とトルネード研究所の二つを運営しているということでございます。人件費はこれには含まれていないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/60
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061・吉田法晴
○吉田法晴君 なお詳細を承りたいけれども、それはひとつあとで資料でできましたらお願いしたいと思います。
〔委員長退席、理事横山フク君着
席〕
それからなお、たとえばこの予備実験その他についてですが、人工降雨研究協会とかあるいは大学に委託調査ということで済みましょうけれども、飛行機を持って実際に沃化銀をまく云々ということになりますと、これは飛行機も要りましょう。そうすると、今のような委託調査費何千万円を計上するということでは済まなくなりますし、それから気象庁の中の気象研究所の中の台風研究部ではどうだという感じがするのですが、それらの将来のこれは予算はもちろん増額しなければいけませんけれども、機構ですか、研究ですか、研究に相当多額の費用を要し、それから飛行機等も要ってくるということになりますと、今のような形でいいかどうかという問題も起こって参りますが、そういう点についてはどういうようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/61
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062・荒川秀俊
○説明員(荒川秀俊君) 現在のところ科学技術庁に航空技術研究所というのがございまして、この航空技術研究所で、たしか今年度か、試験研究のための研究用飛行機を持つことになりまして、そこで沃化銀をまく装置もその飛行機に取りつけまして、科学技術庁の委託研究をその飛行機を使って実施することになっていると聞いております。で、気象庁で観測用の飛行機を持つことになりますると、もちろんこれは現在横田の飛行場にありますような一個連隊、WB50を十一機を持って、そうして整備員も三百五十名もいるというような大きな部隊はとうてい持つことはできないでしょう。研究用の飛行機を、たとえば気象庁で持つということになりますると、あるいはこういうことが参考になるかと思います。この間気象審議会があったときにも御披露したのですが、アメリカのハリケーン研究所あるいはトルネード研究所でも飛行機を、先ほど申しました双発のプロペラ機二機、それにジェット機一機を持っているのですが、都合三機持っているのですが、これの運用は自分ではやっていないのでありまして、その飛行機を自分が持っておりまして、それを整備する会社を外から頼みまして、外注いたしまして、そこの会社に整備してもらっておりました。ただそれが実際に観測に出るというようなときには気象庁の職員がそれに乗っていきます。もちろん、いろいろな機械を整備したり、いろいろすることは、みな気象庁の責任でそれはやっておるのですが、整備あるいは運航というようなことは外注しておるのでございまして、そういう形がいいんじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/62
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063・吉田法晴
○吉田法晴君 その辺は今までの研究調査の実態あるいは結果といいますか、それからアメリカの台風研究所のやり方等についてはあとで資料でいただきたいと思うのです。
それからもう一つ、最後にお尋ねをしたいのですが、この気象衛星は二、三年のうちには実用化するだろうというお話ですが、この気象衛星による観測に参加する形はどういうことになるのでしょうか。第一に、今ロケットの研究等は行なわれておりますが、そのロケットの今の、これは生産技術研究所ですか、糸川さん等がやっておられますのは直接気象衛星にはつながらぬようです。むしろ多少軍事的な面がある、かように考えられる現状のようなロケットの研究よりも、むしろ日本の国民の幸福、災害からのあれから考えるならば、気象衛星開発に協力すべきではないかという気がするのですが、いずれにしても気象衛星による観測に参加をする機会というものは近いようなお話もございますし、それは先般お話のありました国連の機構ですか、その中に入るということになるのでしょうか。先ほどアメリカの気象衛星に日本からもまあ参加といいますか、経費等の負担もして——一部分でしょうけれどもして、参加する云々という形を述べられましたが、その点だけを最後に伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/63
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064・荒川秀俊
○説明員(荒川秀俊君) 二つに分けてお答えいたします。
第一番目に、日本でやっているロケットの開発でございますが、これは内閣直属の宇宙開発審議会というものがございまして、そこの審議会に私委員となって出席いたしておりますが、今の御質問で非常にお疑いになったような点はございませんで、日本のロケット技術を推進するという意味で、それはロケットが今世界の科学技術の最先端のものである。そしてそれはロケットが進むということは、その一国の科学技術のレベルの向上、バランスのとれたレベルの向上があって初めてロケットが飛ぶのでありまするからして、その科学技術全体を、日本の国のレベルを上げようとして今やっておるのでございまして、決して軍事的なにおいは一切持っていないのでございます。
それからもう一つ、気象衛星につきまして、あるいはそれと対になって人間に役に立つであろうと思うのは通信衛星でありますが、現在通信衛星のほうは、アメリカでも、もう通信衛星を種にした会社が続々でき上がっているそうでありまして、商業ベースにしようとしている。すなわちそれを仲立ちにして通信会社を作る。それによって私企業としてりっぱに成り立つようにしつつあると思います。そうすると、今気象衛星でアメリカ政府も貢献しているのでございますが、気象衛星はただ酔狂で上げているのではない。そうすれば、それに実際のお金がかかっているんであるからして、当然それによって利益を得る国があれば、そのお金を分担してもらわなければならない。分担するとすれば、その仲立ちになる機構はどこかといいますと、今気象事業の国連の下部機関といたしましてはWMO——ジュネーブにあります世界気象機構といわれる国連の一部局でございます。そこは日本ももちろん大国といたしまして、その世界気象機構の費用は分担しているのでありますが、もしもソ連とアメリカとが共同して気象衛星を上げるということになりますれば、それによって台風の早期発見ができる。その利用を確かにしたいというような日本からの希望があれば、その通信を、電報を受けるかわりに、反対給付として気象衛星打ち上げの費用を幾分なりとも分担する形に当然なると思います。その仲立ちになるものは世界気象機構であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/64
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065・吉田法晴
○吉田法晴君 ありがとうございました。
次は林野庁の造林保護課長、治山課長に来ていただいております。先ほど申し上げましたように、雨が降るところ、それから雨が降る以前の気象観測云々については、気象庁なり、あるいは気象研究所にお伺いをしたのですが、林野庁には今までそのお話を承っておりませんので、治山部面のお尋ねをしたいのです。この災害を防止するために現にやられておること、それから問題点、それから科学開発の方向、まあ政策でもいいのですが、それから機構、こういうものを承っておるわけですが、造林の点から言えば、計画的に造林がなされておるかどうかということになるかと思いますが、砂防工事——山の砂防工事等は、これは治山課長のところですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/65
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066・手束羔一
○説明員(手束羔一君) そうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/66
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067・吉田法晴
○吉田法晴君 それから、そのあとの川になりましての多目的ダム、特に農林関係のダムは、これは治山課長のところではないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/67
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068・手束羔一
○説明員(手束羔一君) それは建設省でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/68
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069・吉田法晴
○吉田法晴君 建設省ですか——それではおそれ入りますが、造林課長、それから治山課長という順序で、木を植えるほうが先でしょうから、やられております点。それから問題点。それから今後の方向。それから機構等の点について、お気付きの点がございましたら伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/69
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070・福森友久
○説明員(福森友久君) 造林事業につきましては、現在日本の林野は大きく分けますと国有林と民有林に分かれておりまして、国有林につきましては、国有林は林野特別会計をもって実行いたしております。それから民有林につきましては一般会計をもってそれぞれの事業を実行いたしております。それで、造林事業の仕組みは、現在切られた跡の山を植えるということと、現在林業に供すべき土地に木を植えるという仕事に尽きるわけでございます。その目的につきましては、大きく分けますと、あくまでも木材資源を確保するということと水資源の確保、それと国土保全という大きな三つの目標をもって造林計画を立て、事業を実行いたしておるわけでございます。現在民有林のほうから申し上げますと、民有林は大体一千七百万ヘクタールぐらいでございますが、その中に造林の可能な個所、これは土壌調査、あるいは気象上の環境調査をいたしました結果、約一千万ヘクタールの造林地が可能であるということを推定いたしておりまして、それを昭和六十年までに造林を年次別に計画いたしまして、その一千万町歩造林を確保するようにいたしたい、こういうふうに考えております。なお国有林につきましては、国有林は約七百八十万町歩程度でございますが、このうちやはり環境、土壌調査等からいたしまして、造林可能な面積を推定いたしますと三百三十万ヘクタール程度が可能であろうというふうに推定いたしておりまして、これにつきましては国有林特別会計をもちまして昭和六十年までの計画をもちまして、全面積の造林を推進するというふうに考えておるのでございます。なお、私、造林のほうで担当いたしておりますのは、主として経済的な面を主体にいたしておりまして、保安的な面につきましては、これは治山事業をもって実行いたしております。造林事業のみについて申し上げますと、現在問題となっておりますのは、将来とも木材につきましては、日本におきましては不足物資でございます。パルプその他建築材料、土木材料、こういったものにつきましては将来とも需要がますます伸びる見込みでございまして、現在の日本の山の現状からいたしましてこれを供給することがなかなか至難でございます。それで先ほど申しました造林計画を立てましたよりどころと申しますのは、日本の山で自給自足をするようにいたしたいという目標をもちまして、その造林計画を立てておるのでございます。一部長大材でありますとか特殊な用材につきましてはソ連あるいはフィリピンその他南洋材等の輸入等もこれを考慮しなければならないかと考えますが、一応自給自足をするということを建前にして考えておるのでございます。ところが、現在の山につきましては、非常に不良な山が多いのでございます。と申しますのは薪炭林が、いわゆる雑木の山が多いのでございます。これをできるだけ成長の早い木にかえる、いわゆる針葉樹の造林を進めるということ、われわれのほうではこれを拡大造林と申しておりますが、その拡大造林を進める、あるいは原野状態である所に早急にこれを造林をするということが問題点でございます。なお、木を切った場合には必ず跡を植栽するということでございまして、これは再造林と申しておりますが、再造林しない人に対しましては現在の法律では造林の義務制をしいております。今国会で森林法の改正が提案されておりまして、その中においてはこれは一部変更になるかと思いますが、伐採後二年たてば必ず植えるというような指導をいたしたいと、こういうふうに考えておるのであります。このようにいたしまして、再造林と不良な林地を改良していくということをもちまして、資源政策上は自給自足態勢にもっていきたい、こういうふうに考えておりまして、あわせて造林事業と申しますものは単に木を植えるということによりまして、資源政策だけではなしに、おのずから水源涵養的な機能も果たしておりますので、そういった重要地域につきましては特に保安林でない個所につきましても、特別な助成をもちまして水源地域の造林を推進し、水の資源の確保をはかる、あるいは土壊侵蝕の起きる個所につきましては特殊な樹種の植栽についての指導をはかり、それにつきましての特別な助成もはかるというふうにいたしておるのでございます。
なお、林業は非常に長期であり低利であるということが第二の問題点になるかと、こう考えております。それで長期であるということをいかに克服するかということが問題でございまして、現在の杉であるとかあるいは檜であるとかいう樹種につきましては四十年あるいは五十年、六十年というふうに、その育成に非常に長年月を要しますので、これらをいかに早く切れるようにするかということ、あるいは現在の生長量をいかに大きくするかということにつきましての品種改良の問題が大きな問題かと考えております。なお、日本産の樹種だけではなしに、外国産の樹種も導入し、大いにこれの適するところに植栽するように指導いたしております。現在も適する樹種がございますので、これらの樹種の推進をはかっておるのでございます。
まあ問題点といたしましては、大体以上かと考えておりますが、組織は先ほど申しましたように、国有林野事業、これは林野庁におきましては業務部がこれを主管いたしまして、地方におきましては営林局がございます。その下に営林署がございます。なお、その下部機関といたしまして担当区がございまして、そこで事業の実行をいたしております。なお、一般会計の民有林の事業につきましては、農林省より都道府県に補助金を出す。あるいは融資につきましては、農林漁業金融公庫を通じまして一般の森林所有者に対し補助金の交付なり、あるいは融資なりをいたし、造林を推進するというふうなことで進めておる次第でございます。大体以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/70
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071・吉田法晴
○吉田法晴君 ありがとうございました。
問題点といいますか、お伺いをしたいという点は、大体おわかりいただいたと思うのですが、引き続いて手束治山課長にお願いして、あとで若干お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/71
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072・手束羔一
○説明員(手束羔一君) 森林の造成を手段といたします日本の国土保全政策という観点から、国際的に観察いたしてみますると、わが国の森林面積は国土の大体六五%程度でございまして、この森林の被覆率と申しますものは、現在のいわゆる文明国といわれる国柄の中では最高のものでございます。わが国は昔から人口が相当稠密でございまして、約千年前に、すでに一千万人程度の人口であった。現在の人口率からいたしまして、たとえばスウェーデン、スペイン、これらのものよりも千年前にすでに上回っておったというような記録もあるわけでございまして、大体森林と人文との相関関係を観察いたしてみますると、人口が進む、産業が進む、あるいは文化が向上するというようなときには、必ず森林の消失が認められるわけでございます。わが国が、さように昔から相当高い文化を誇っておりながら、何がゆえに今日まで、文明国で最高といわれる程度の森林率を持っておるかということにつきまして観察をいたしますると、これは結局、わが国の急峻なる地形が、経済的な開発というものをはばんでおったというところに原因があろうかと思われるわけでございます。ところが、地形が急峻であり、特に壮年期地形であり、また地方的に見ましても多雨であるということは、一方におきましては水害を多発する要因になっておるわけでございます。この水害を多発する要因が片方にあるということで、古来日本はまた水害国であったということもいわれておるわけでございます。で、ここに水害国であったという要因が、また一方では高い森林率を確保しまして、明治の初期に至りますまで土木技術がさして発達しなかった時代におきましても、水田耕作等を主体とする経済構造というものを相当発展させ得たという皮肉な現象を保ってきておるかと思われるのでございます。明治に入りまして、相当木材に対する経済的需要も高まり、また技術も進み、道路交通機関等も発達して参ったわけでございますので、諸外国等の例からいたしますならば、相当森林の破壊が進むべき要因というものがもうすでに生まれておったわけでございますが、歴史的に見ますると、明治以降におきまするわが国の発展は、相当海外への支配権の拡大という形において行なわれたわけでございまして、木材に対する需要の増大ということよりも、たとえば台湾、樺太あるいは朝鮮とか、昭和に入りまして満州国の三千万ヘクタールというような強大なる森林に対する支配権を確立したということが、このわが国の内地に対する開発の速度というものをおのずからゆるくしておったというような関係があろうかと考えられるわけでございます。ところが戦時中、戦後におきまして、相当過伐、乱伐が行なわれ、また保全工事が見捨てられておったということからいたしまして、相当、災害の多発が問題になって、昭和二十六年には、森林法の改正が行なわれまして、現在改正案が提出されておりますが、その前の森林法でございます——これによりまして森林全体の伐採制限制度をしき、ただいま造林保護課長から説明のありました造林の義務制度等も確立して参ったわけでございます。ところがそのときの考え方といたしましては、大体、経済的需要のとてつもない増大ということよりも、むしろ戦時中、戦後に起こった物理的な荒廃の回復と森林の危機の回復ということを主眼として政策が立てられておったわけでございまするが、これも御承知のごとく、昭和三十年以降におきましては、明治の初期に返りましたわが国の狭い領土の中に、一億になんなんとする人口が、猛烈なる経済発展を始めたということにからみまして、木材の需要等も飛躍的に高まって参ったわけでございます。現在すでに一億八千万石少々かと存じておりますが、薪炭等を合わせますると約三億ぐらいになろうかと思います。明治維新のときの薪炭需要量等が、あまり統計はございませんが、大体三千万石程度であったろうかと思われておりますが、かようなものに比べますると非常な懸隔を来たしておる。しかし森林資源全体としては、そのときと大体同じような範囲にとどまっておるわけでございます。
これをいかに処理していくかということが、保全行政上の最大の課題であろうかと思われるわけでございます。伐採量等から申しましても、大体わが国の森林面積約二千三百万ヘクタールといわれておりますが、これは大体数億ヘクタール、十億ヘクタールをこすというようなソ連あるいはカナダ、アメリカ、かような国の次でございまして、世界で大体四番目の木材の産出をいたしておるわけでございます。これだけの産出をいたしましても、この経済の発展に即応する国内産出は十分でない。したがいまして、外国からの輸入等も相当考えねばならぬというような事態に立ち至っておるわけでございます。いかに高峻なる地形といえども、最近は盛んに開発が行なわれまして、林道は海抜一千数百メーター、二千メーターになんなんとするところまでもつかんとしておるわけでございます。これに伴いまして、この保全をいかにするか、さきに造林保護課長の申しましたいわゆる経済造林——開発、保全、育成、この三つをいかに組み合わせるかということが課題になるわけでございます。で、一般造林は経済造林としていろいろ指導されておるわけでございますが、私どもの管轄といたしましては、特に林地の荒廃した部分を、早く一人前の状態に返して、そうして水源涵養機能を回復し、かつ土砂流出の防止機能を回復する。かような直接的な事業をただいま治山課のほうで担当をいたしておるわけでございます。大体この治山治水事業は、御承知のとおり治山治水緊急措置法というのが昭和三十四年の十二月にできまして、三十五年を初年度として四十四年を終期としまする治山治水十カ年計画、これが閣議で決定をいたしておるわけでございます。それは林野庁の所管いたしまする治山事業と、建設省の所管いたしまする砂防事業、河川事業、それから多目的ダム、かようなものと一連の計画になっておるわけでございます。ただいま三十四年度末で申しますると、全国の森林の中でいわゆる崩壊地と申しまする、森林が崩壊をして崩れつつあるというような部分の面積は大体三十一万ヘクタールばかりあるわけでございます。これを早期に回復をいたさなければならぬ、これが山地からの土砂の流出の根源になっておるということでございます。また水源涵養機能をゼロにしまして、そして洪水の多発というような原因をなしておる一番主なるものでございますが、しかしながら、これを直ちに全部回復してしまうということはなかなか経費的にも容易なことではございません。これは治山治水計画全体を通じての事柄でございますが、保全投資の妥当性ということが経済計画等の立案の際にいろいろ問題になりました。まあ治山の面におきましても、十カ年で大体七割程度はこれを回復をする。そのため経費といたしましては十カ年で国有林、民有林合わせて約千六百七十億円程度が、これが予定として考えられておるわけでございます。これは私の所管外でございますが、建設省の治水計画の八千五百億円をこれに加えたものが治山治水計画の総体になるわけでございます。私どもの所管をいたしております部分は山地の砂防でございます。河川のほうから来まする河川砂防というものは、これは建設省で所管をしておるわけでございます。諸外国の例を見ますると、大体河川改修等は土木の所管とする。山林に入って参りますと、山林砂防というものは大体一括して農林省が扱う。これはアメリカ、フランス、オーストリア、スイス、あるいは中共というようなところの例からいたしましても大体そのようになっておるようでありますが、わが国では明治以来のいろんないきさつがございまして、明治三十年に森林法と砂防法というものがあわせて成立をいたしておりまして、大体山腹工事を主体とする砂防事業はこれは農林省が行なう、渓流事業を主体とする砂防事業は建設省が行なう、かように現在分界線が引かれているわけでございます。要するに、渓流に流れ込んだ土砂を下流に対する保全の面から見て、いかに処理をするかという関係は建設省でやって参る。林野庁としましては、山腹の復旧あるいは維持ということに関連して、根固めをせねばならぬというような点は林野庁がやって参る、かような分界になっておるわけでございます。ただ、しかし災害防止という観点からいたしまして、この両事業が緊密な今日調整をとってやらなければならぬということは全く自明の理でございます。これにつきましては、十カ年計画の樹立の際におきましても、個所別によくその分界線並びに計画の関連について協定をいたす。また災害の発生のたびごとに現地に共同調査におもむきまして、お互いに分野を定めて実施をいたしておる。比較的円滑に進んでおるつもりでございます。特に林野の山腹保全というものは、要するに患部を単に治療する、砂が出るのを止めるというだけではございません。要するに森林状態に回復して一般の林業生産の場にしていく、こういうことなのでございまして、工事をするときには、これを保安林として指定をして、そして患部に当たるようなものにつきましては国費または県費等を投入いたしまして、その復旧をやって参るわけでございますが、これが一人前に回復した暁には、これはまた保安林を解除いたしまして、また林業生産の場に振り向けていく、かようなことでございます。経済活動を行ないながらこの国土保全の実をあげて参る、かような目的に奉仕することになっておるわけでございます。また、私どもは発生した災害あと地を復旧するということばかりをやるわけではございませんので、大体災害の起こりやすいところ、それからあるいは水源涵養上特に要害とも見られるべき地点、かようなものは保安林というものにしまして、これにつきましては所有者の自由な施業を制限をいたしておるわけでございます。これは現在三十六年度末で大体三百八十万ヘクタール程度でございますが、昭和二十九年に保安林整備臨時措置法というのができておりまして、その計画によりますと、昭和三十八年度末までに大体四百二十万ヘクタール程度の保安林を指定する、かような計画になっております。調査は完了しておりまして、現在着々その指定の手続を実行中でございます。大体わが国の森林面積の二割近くのものを保安林として押さえまして、自由な施業を制限して保全をして参る、かような計画になっているわけでございます。なお、この森林の水源涵養機能、あるいは土砂の流出防止機能というものは、計量的に考えた場合一体どうなのか。こういうことがいろいろ科学的に問題になるわけでございます。もともと雨が降ったときには水が増す。ところが、長い間干天が続きましてもこんこんとして絶えない川というものがある。このことは相当長い間世界的に問題にされておったことでございまして、人知の進まない時代におきましては、この泉の水、河川の水というものは何か神が作るのじゃないかというようないろいろな奇怪な説が流れておった時代もあるわけでございます。十七世紀の中ばごろに最初にフランスのペローという建築技師が、セーヌ川につきまして三年間の観測を行ない、そしてやはりセーヌ川へ流れる水は、その間に降った降水量よりも少ないということを立証したのでございまして、それ以後は、水はどこから出てくるのだという説はなくなりまして、要するに降水から出てくるということが確定したわけでございます。この森林が水源を涵養する機能、あるいは土砂流出を防止する機能というものが科学的に解明される以前に、すでに歴史的な事実から各国の国民が感得をしたわけでございます。要するに、だんだんと文化が進み、産業が進む、そして森林が減ってくると、妙に水害が起こるし、水がかれたりするという事実として最初に感得されたわけでございます。それがいかなるメカニズムによって行なわれるのかということにつきましては、研究の主として始まりましたのは大体百年程度以前からでございまして、鋭意各国において研究が進められておりまするが、なにさま降水の状態、あるいは地下構造の状態、地質、地形等いろいろの組み合わせが千差万別でございますので、なかなか一つの記録をもって普遍妥当性のある結論を出すというわけにはなかなか参らない。いわゆる電気とか機械とかというような法則でもって一ぺんに割り切るわけに参らぬ、そこにいろいろ問題があるわけでございます。水源涵養につきましては、大体消失するものと、それから流れるものと、それから地下に浸透するものと、大体この三つに分けまして観察をせねばならぬわけでございます。消失する部分につきましては、森林があるとないとでどう違うか。森林があります場合には、まず樹冠がその雨量を遮断する。ある程度の遮断が行なわれる。地下に入りましても、また樹木の作用によって蒸散が行なわれる。樹木があるほど蒸散はひどいのじゃないかという説があるわけでございます。樹木のない場合には蒸発がひどいわけでございます。大体、森林のある場合の遮断と蒸散と、それから樹木のない場合の蒸発は大体バランスするものじゃないかということが大体の定説になっておるようでございます。大体わが国で降りまする雨量、これは大体六千億トンくらいと推算されておるわけでございますが、大体そのうちの三分の一程度は蒸散、蒸発あるいは遮断というようなものによって地下に達しない。地下に達しても下に流れないで出てしまうのではないか。その残りのものが地下浸透し、あるいは流出するということになるわけでございます。したがいまして、その傾斜地に降りました雨は、地下に浸透しなければすぐに傾斜地を下って流れて、そうして川に入る、そうして増水を来たすわけでございます。一たん浸透いたしますると、これが水流となって流れるスピードは非常に弱まって参るわけでございます。その地下構造におきまして、海綿状態の水の保存とか、あるいは裂拠におきます水のたまりとかいうようなものがいろいろありまして、地中水といわれておりますが、地下水と、そのほか土壌構造に付着する水、かようなものが雨量を相当長期間山地に保留いたしまして、これが洪水を調節し、かつ渇水を調節する。かような機能を果たしておるわけでございます。
では、森林があったならばいかに浸透性を高めるのかということでございます。これにつきましてもなかなか一義的には申せないわけでございますが、優良なる森林におきましては大体七、八〇%浸透することが可能である。これは風化物に対する植物の作用が相待ちまして土壌に団粒構造をもたらす。その団粒構造が多くの小さなパイプになりまして地上に降った雨を地下に導くわけでございます。この森林の土壌構造というものがこわれますと、その穴がふさがれてしまって穴に入る水がなくなる。そうして全部地表面を流れる。かようなことになるわけでございます。で、森林のない裸地の場合は、一義的に流出率、浸透率がどのようになるかということもなかなか申せないわけでございますが、大体悪い林相になりますと二、三〇%程度に低下するのではなかろうか、かようにいろいろなデータから推測されるわけでございまして、非常にこれが悪化すればゼロという状態になるわけでございます。これに相当機能があることはわかっておるわけでありますが、しからば、それが定量的にどう働くのかということになりますると、まだいろいろ解明せられていない問題があるわけでございます。要するに、地下構造というものがよくわからない。浸透した水がどういう経路をたどり、どの程度、どの期間、どこにたまって、それから流出するのかということにつきましては、いろいろと各国におきましても研究されておりまして、たとえば近ごろにおきましては電探とか、あるいはアイソトープの利用ということも考えられておるわけでございますが、なかなか調査データの用い方、メカニズムの問題、また調査の方法論の問題、いろいろまだ問題点がありまして、完全には解明されていないわけでございます。
なお、いわゆる土壊流出防止の問題につきましては、水源涵養よりはやや明確にわかるわけでございます。大体崩壊地状態になりました山地は一年間に十の一乗のオーダーでエロージョンを起こす、いわゆる数十ミリということになるわけでございます。最近、わが国内でいろいろ調査をいたしました結果によりますと、大体三十ミリから五十ミリ程度はシート・エロージョンを起こしている。これは先刻申しました、先ほどの三百八十万ヘクタールにかけますと一億立米くらいの土砂が荒廃地から流れておる、かような勘定になるわけでございますが、これが裸地化した場合にどの程度になるか。裸地化した場合におきましては、大体それがまず十の〇乗のオーダーと申しまして数ミリ、まず三ミリあるいは五ミリというようなエロージョンを起こすという状態であるということでございます。これが優良なる森林状態になりますると、大体十のマイナス二乗のオーダー、要するに百分の何ミリというオーダーにとどめ得るということは大体見当がついておるわけでございます。かような機能を高めて参るその目的のために、先ほど申しました治山事業、保安林の整備、かようなことを実施をしておる、こういう段階でございます。
〔理事横山フク君退席、委員長着
席〕
一応御説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/72
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073・吉田法晴
○吉田法晴君 おすわりになったままでけっこうですが、崩壊地あるいは裸地化した場合、それから優良な森林地帯、蒸発なりあるいは浸透なりの模様も違うし、あるいは流出する水の量も違う、パーセンテージも違う、こういうことでしたが、地下水について、降った雨が木のある場合には土壌構造と言われたのですが、いわば根なり何なりを通って地下に入る、あるいはその先は亀裂なり何なりでしょうが、地下の浸透の点まで多少お話がございましたが、工業用水その他で地下水のくみ上げる場合に、地下水の流れの状態というものはあまり全国的によくわかってないということですが、降った雨が地下水になるところまではわかっているのですか、その辺の関係はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/73
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074・手束羔一
○説明員(手束羔一君) 降った雨の中で先ほども申しましたごとく、地下浸透したものが地下水になる。浸透水が地下水の根源であるということは大体わかっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/74
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075・吉田法晴
○吉田法晴君 しかし、それから先どういう工合に浸透した地下水が流れておるかという調査はない、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/75
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076・手束羔一
○説明員(手束羔一君) 全然ないというわけではないわけでございます。ただ義的な法則というものはまだ生まれておらず、ある場所においてある観測をしたならばここではこうなっておったという程度の記録はあるわけでございます。特にしかし、私どもの受け持っておりまするのは山地の部分でございまして、比較的平地でございますると地下構造なり地下水の移動を電探等によってとらえやすいわけでございますが、山地になりますとこれが非常に複雑でございまして、その利用方法その他もなかなかめんどうな点があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/76
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077・吉田法晴
○吉田法晴君 それからもう一つ、蒸発それから蒸散、浸透と言われましたが、初めのほうの三分の一云々という点はわかったのですが、蒸発、蒸散、地下浸透、これは何と言いますか、森林関係、それから土壌の関係、それから裂拠その他の関係で違うでしょうけれども、先ほど普通その蒸発は三分の一云々というあとのほうの数字をちょっと聞き漏らしましたから、おそれ入りますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/77
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078・手束羔一
○説明員(手束羔一君) わが国全体の水収支につきまして、はっきり統計的な、これが最終のものであるというような数字はまだないわけでございます。ただ、降った雨と面積と、それから需要方面のデータ、これをいろいろ合わせまして、そうして一応の推測を立てておるというのが先ほど申しました数字でございます。大体わが国の全面積は大体三十七万平方キロぐらいでございます。これに対しまして年雨量の平均が約千六百ミリ、かような計算をいたしますると大体六千億トンというぐらいのところになるわけでございます。実際は雨量と申しましても、観測されておる部分が大体は平地等でございまして、ほんとうの山地雨量を全面的にとらえる観測網というものは研究されてないわけでございまするが、大体かような荒っぽい計算でやってみますると、そのぐらいになるわけであります。先ほどの局部的な蒸散とかあるいは蒸発とかというようなもののデータからしますと、まあ大体三分の一程度は消失するのじゃないか。そうするとあとの三分の二が地下浸透したり流出したりしているのじゃないか。そうしますと、わが国で需要の対象となり得る雨量というものは、大体四千億トンぐらいというような推算が行なわれるわけでございますが、一方需要のほうから見ますると、現在農耕に使われておる水、これが約六百億トンといわれておるわけでございます。それから上水、工業用水等に使われております水が、大体二百億トン足らずではないか、これとダブるわけでございまするが、電源開発用に使われる水が、これが現在千二、三百億トンというような推定を公益事業局のほうでなされておるわけであります。この上水道とか、農業用水等につきましては経済計画等にも大体数字が載っておるわけでございます。電源用水等はまだそういう計画としては数字が載っておらないわけでございます。そういたしますると、四千億トンぐらい降っている雨の中でその程度しか使っておらぬということは、利用率が非常に低いということ、ただし、先ほど申しましたのは、日本全国の雨量でございますから、山地の雨量ということになりますると、その約三分の二というふうに考えていかなきゃならないということにもなるわけでございます。それから農業用水につきましては、一年中のべつまくなしに使っておるのではなしに、大体夏季の三カ月程度に集中して使われる、こういうことがありますので、その夏季の三カ月程度に集中して使われる場合の水量というものが十分確保し得るかどうか、こういう観点から水資源の問題は考えていかなきゃならぬと思うのでございますが、現在のところはたとえば利根川等にいたしましても利用率が十数パーセントと、水資源開発法の提案理由等にも入っておりますが、非常に利用率が低いということがさきに問題になっているようでございまして、水源涵養等ともあわせて考慮せよということになっておるわけでありまするが、現在のところ水源も涵養しなければその利用率がもっと低まるような状態ではないかと思いまするが、現在のような状態であっても、もっと利用できるような方法はないかということが相当問題になっている。そこで多目的ダムとかそういったものの利用建設ということが考えられなければならぬということになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/78
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079・吉田法晴
○吉田法晴君 先ほどこの国有林もですし、民有林にしましても、保安林として水資源の涵養という点をお話になりましたが、通俗的に言ってだんだん国有林については林道その他も奥のほうに入っているが、涵養なりその他あるいは水源の問題について言えば水源涵養の方策も及んでおるわけですが、しかし相当及ばないところもまだ残っておるし、それから民有林については一部分は保安林その他あるいは造林計画等で計画的に保存あるいは再植が行なわれておるようですけれども、これは部分的の見方になるかもしれませんけれども、戦後たとえば開拓その他で従前は林野であったものが農地になったり、あるいは農地に転換されたかどうかわかりませんけれども、実際に木が植わらないでイモを作ったり、何か不十分な利用かもしれませんけれども、もとの森林に戻っていないのが若干あります。それで先ほどお話のような、人口がふえて土手の下にもあるいは山の奥にも家ができたという点もありましょうが、そういう計画的な造林なりあるいは水源涵養その他及ばないところがあるから——そして大体昔に返ったかもしれませんけれども、洪水の多いのは昔のような森林状態が減ったからではないかというような通俗的な言い方がありますね。人口が一億になって、一億の人間が、この四つの島にひしめいている。けれども、森林分野なり森林状態というものは、大体保存ができているようなお話がございましたが、災害がふえた一つの原因の中に、そういう森林といいますか、あるいは治山が行き届いておらない、こういう通俗的な話がありますが、それらの点はどうなっておりましょうか、お二人から概略的な御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/79
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080・福森友久
○説明員(福森友久君) 戦中あるいは戦後非常に伐採がございまして、その後造林の進まなかったために伐採のままで残されているという土地が非常に多かったわけでございます。これはいろいろ各種の国の助成によりまして、昭和三十一年度で一応こういう伐採跡地というものが、国有林、民有林とも解消したというふうに考えているわけでございます。その後は一応切った跡に植えるということ、非常に不良な山の林種転換をするということと、原野状態の個所に新しく植えていくというふうなことで参ってきているわけでございます。それで一応大体予定の計画どおりに再造林等も行なわれているわけでございますが、ただいま御指摘のとおり開墾地その他の問題が介在しておりまして、相当国有林等におきましても、開墾地のほうに開放いたしております。その跡が完全に耕作が行なわれております場合は、大体土地も肥沃いたしておりますので、土砂流亡等につきましては、比較的安定した形でないかと、こう考えておりますが、しかし、一応開墾したものの、非常に不成績に終わっている、そういった個所につきましては、やはり御指摘のとおり裸地状態のままでございますので、土砂の流亡等もあるものと考えております。これは林野行政の範疇外でございますが、われわれとしましては、そういう不成績開墾地につきましては、極力もとの林野に戻していただくというようなことで、農地局その他と交渉いたし、それらにつきましては、林地保全ということを主体に考えて指導をいたして参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/80
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081・吉田法晴
○吉田法晴君 開拓が不成功で裸地で残っているところは、農地局と相談をいたしているけれども云々という土地はどのくらいでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/81
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082・福森友久
○説明員(福森友久君) 現在手元に資料がございませんので、後ほど資料を整えまして提出させていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/82
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083・吉田法晴
○吉田法晴君 治山の関係で、山にある砂防ダムあるいは崩壊地の回復等については、林野庁ではそれぞれ植林なりあるいは砂防ダム等で手当をされているようですが、これは渓流に入ったら建設省の分野だと、こういうお話ですけれども、人間がふえて、至るところに人間がいるという点もあって、雨の年間の量はそう違わないのでしょうけれども、災害がふえる一つの原因の中に、今のところは、山にはあまり問題がないという話ですけれども、それが渓流に入ってから下流に至るまでには、いろいろ問題があるんじゃないかという感じがする。たとえばこれは建設省のあれを含んで、治山治水十カ年計画が完成すればなくなると、こういうことになるかもしれませんけれども、現状で見ていると昭和二十八年の筑後平野をおおいました大水害のごときは、あれは夜明ダムが決壊したとか、こういうとにかく筑後川水系なら筑後川水系全体の治水計画が緻密でなかった、あるいは完成していなかったということから拡大されたという点は、これは間違いないと思いますけれども、そういう点がほかにもあるんだと思うのですが、渓流以下のあれは建設省だということで逃げられれば何ですが、治山課長さん、全体の水の点も、お話がございましたら感想でもいいのですが、どういう工合に考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/83
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084・手束羔一
○説明員(手束羔一君) 渓流に入ったものは全部建設ということではございませんので、山腹工事を主とする渓流工事は林野庁が所管いたしておりまして、渓流工事を主とする砂防事業は建設省が所管しておる、こういうことでございます。ですから、これは合わせて一本で、河川上流部の保全事業が成り立つわけでございますから、これは両省の共同責任といたしまして、計画の樹立に当たりましても、実施に当たりましても緊密な協定をやっておるわけであります。まあ河川治水という観点から一貫すれば、上まで全部建設がやったほうがいいんじゃないかというような意見をなす人もございますし、いや山林行政ということで一本化すれば、もう少し下のいわゆる河川法の適用除外の河川まで、これは全部山の中でございますから、産業基盤の育成という観点からも相当強くしなければならぬということもあって、農林省でやったほうがいいんじゃないかという意見をなさる人もおりますけれども、従来の沿革からいきまして現在のような業務区分になっております。さして国民に御迷惑はかけておらないような気がいたしておるわけであります。なお、先ほど御質問の中に山は大丈夫かというお話があったようでありますが、これは造林課長のほうから説明いたしましたのは、経済造林として放擲された伐採跡地が大体三十一年度末までに回復する、こういうことを申したのでありまして、荒廃地という観点から申しますと、経済造林の対象にならないところ、これは先ほど申しました三十四年度末に三十一万ヘクタールという状態でありますから、私どもといたしましてはこれは一挙にでも早く回復しなければならぬということになっておるわけでありまして、かような荒廃地がいろいろな災害の原因をなしておるということは目に見えて明らかなことであります。ところがこれを一年間で回復するわけにはいかぬ。十年間で——十年間でも全部やるとなると国費がたまらない、国民所得とのバランスがとれないということからして、大体七割程度を十年間でやる、このくらいの計画になっておるわけでございますから、これから申しますと、なお治山治水の問題点が残っておるという点はあります。それからいま一つ、治山治水十カ年計画の再検討が言われておりますが、これは閣議決定というものがその当時の物価ベースでなされていることも一つの問題でございます。実際から申しましても、毎年発生する災害の見込みというものが少し少ないような感じがするわけでありまして、たとえば私どものほうの範疇について申しますると、毎年やはり豪雨、台風等による災害があってそれで崩壊地が出るわけでございます。これは日本は壮年期地形でもあり、だんだんくずれて行く山でございますから、雨でたたかれればある程度くずれることはやむを得ないわけであります。こういうものは毎年回復して行かなければならぬわけでございますが、こういうもののベースは大体私どものほうは毎年四千八百ヘクタールぐらいを見込んでいるわけでございます。ところが計画の当初、三十五年度は大体そのワクでおさまりましたので、別に崩壊地の増はございませんが、昨年度は御承知のとおり六月の大豪雨、あの伊那谷の大豪雨から第二室戸台風、その他相当災害が連続して起こりまして、崩壊地だけで見ましても、大体去年一年で二万ヘクタール近いものが出ているということでございます。そういたしますと、毎年四千八百ヘクタール程度出るという見込みで立てられている計画が、その場で足踏みするということになって参るわけでございまして、なお経済的に見てやや無理があるといたしましても、治山治水という観点から見まするならば、それに対する公共投資がなお不足である。その不足であることが相当また今後の災害の発生等に影響してくるということは事実でございます。
それからいま一つ、私どもの観点から申しますと、全部山がくずれたあとばかり直しているじゃないか。保安林というものは一応制限行政をやっておりまするが、それでも、なおかつ、豪雨、台風等があった場合にくずれる危険の多い地帯がこれはあるわけでございます。そういうところは、現在まだくずれていないけれども、予防治山という観点から先々手を打って行けば比較的少ない経費で将来の発生を防止することができる、かようなこともあるわけでございますが、なかなかその予防治山につきまして方法論的に多少問題な点もございます。もしやって、あと災害が出なかったら、これはほんとうにそれをやったから出なかったのか、いや、むだなことをしたとかいう判定基準というものがなかなかむずかしいのでございまして、いろいろそういう調査を進めておりまするが、まだ大々的に行なうに至っていない。ここにも問題点が一つございます。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/84
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085・吉田法晴
○吉田法晴君 今のお話に関連して、四千八百ヘクタールほど直しているが、災害が相次いで起こると、いわば足踏みしているということですが、予防治山治水の方策については、最後にまあ話に出た点があるのですけれども、七割——まあ残すのではなくて、あるいは崩壊したところ、荒れたところを直すだけでなくて、予防を含んで十カ年計画の改訂をすると思いますけれども、この程度やったら、少なくとも大半の災害は防げるのではないかという、この改訂をされた十カ年計画の所要量といいますか、範囲、広さ、あるいは金額等は概括的に言ってどういうことになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/85
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086・手束羔一
○説明員(手束羔一君) これにつきましては昨年度ごろからいろいろと鋭意現地について調査もし、検討もいたしているわけでございまするが、まだ数字的には固まっている段階ではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/86
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087・吉田法晴
○吉田法晴君 それじゃ、今後の検討に待つことにして、時間がおそくなりましたから——林野庁、ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/87
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088・森八三一
○委員長(森八三一君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/88
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089・森八三一
○委員長(森八三一君) 速記をつけて。
本件につきましては本日はこの程度にいたしまして、本日はこれで散会いたします。
午後五時十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104013913X00719620329/89
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