1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年三月八日(木曜日)
午後一時五十六分開会
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理事
徳永 正利君
村上 春藏君
武内 五郎君
委員
岩沢 忠恭君
米田 正文君
内村 清次君
木下 友敬君
田中 一君
田上 松衞君
小平 芳平君
村上 義一君
国務大臣
建 設 大 臣 中村 梅吉君
政府委員
建設省都市局長 前田 光嘉君
建設省道路局長 河北 正治君
事務局側
常任委員会専門
員 武井 篤君
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本日の会議に付した案件
○阪神高速道路公団法案(内閣提出、
衆議院送付)
○派遣委員の報告
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〔理事武内五郎君委員長席に
着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/0
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001・武内五郎
○理事(武内五郎君) ただいまから建設委員会を開会いたします。
ちょっと速記とめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/1
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002・武内五郎
○理事(武内五郎君) じゃ速記を起こして下さい。
阪神高速道路公団法案を議題といたします。
本案につきましては、現地におきまして関係者等からの意見聴取並びに実情調査をいたしておりまするので、初めにその報告を聴取することにいたします。内村清次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/2
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003・内村清次
○内村清次君 私ども村上、徳永、武内、田上各委員と三月五日から三日間、阪神高速道路公団法案の審議に資するため、大阪及び兵庫県地区の交通事情の視察、並びに都市高速道路計画に伴います地元関係者の意見を多数聴取いたしまして、昨夜、帰って参りました。
以下、調査の概要を申し上げたいと存じますが、現地の交通事情につきましては、すでに御賢察のとおり、車両による交通障害は東京とほぼ同様でありまして、大阪の商業中心地はむしろ東京よりはなはだしい状況を呈しておりまして、ここにあらためて詳細を申し述べますることは省略させていただきたいかと存じます。
地元関係者の意見聴取につきましては、大阪地区については国際観光ホテルにおきまして、六日の午前九時半から午後二時半に至るまで、およそ十名の代表から聴取いたしましたが、その発言者は府、市の土木部長並びに計画局長、府会議長及び市会副議長、府警交通部長、大阪市立大学の富永教授、中小企業団体中央会の小西副会長、大阪タクシーの山口理事長、大阪地方総評議長の帖佐事務局長、全国交通運輸事業労働組合同盟関西本部の大井書記局長の諸君でありました。
また、兵庫県地区につきましては、神戸市オリエンタル・ホテルにおきまして、七日の午前十時から十二時まで、県会副議長、神戸市市会議長及び建設局長並びに県警交通部長、中林商工会議所副会頭、神戸合同労働組合の森下書記長及び尼崎、西宮、芦屋三市の市会議長並びに市長等の方々から意見を聴取いたしました。
次に、この二つの意見聴取会におきます意見の主要な点だけを申し上げたいと思います。まず府議会側の意見として、公団の設置は地方自治体の自治権の侵害にならないかとの点については、すでに府会の結論を意ており、運営によろしきを得れば何ら支障はないものと考えるとのことでありました。
また交通取り締まりの責任者たる府警側の意見としては、大阪の交通事情の特徴は軽自動車を含むトラックの類が圧倒的に多いことであり、交通事故による死亡率はきわめて高く、自動車の増加傾向からすれば交通の麻痺状態は絶望的と言わざるを得ない、都心部における全面駐車禁止、右折禁止等を含む第三次交通規制も検討しているが、これが経済界に及ぼす影響はきわめて大きいので苦慮している実情にある。かかる事態において、高速道路の第一期五ヵ年計画において、その最も必要視されている環状線の半分ぐらいしかできないということに対しては、まことに期待に反するものであり、かつ高速道路の建設に並行して、市内街路の整備はきわめて緊要であることが述べられました。
また富永教授からは、都市交通は高速道路と街路と互いに有機的に進捗しなくてはならないが、さらに交通問題としては高速鉄道網を完成しなければいけない、高速道路においてはまず環状的に作るのが世界各国の例であるが、大阪の計画としては原案よりもいま少し外側に作るほうが、通過交通によいとも考えられるが、農地問題を考えるときは、東西横堀川の利用による計画はやむを得ないものと思う。大阪における道路網計画としては、三環状線と十大放射線と、今度の高速道路網でほぼ十分であると考えられる。これ以上における問題は、過大都市としての都市機能の分散ということによるほかはない、この点について大阪の中心である問屋的性格のものは、都心でないとやっていけない業種のものが多いので、道路交通問題は東京よりも大阪のほうが、死活問題であると考えるとの意見が述べられました。
また労働組合側の意見としては、たとい民有地利用一割という少ないものであっても、その補償等は十分にさるべきであり、さらに計画の市民に対するPRは不十分である。計画実施にあたっては各団体の意見が十分に反映されるごとき場を作り、すべての市民の協力態勢をもって行なうよう強く要望するとの発言がありました。
兵庫県地区における意見もほぼ同様のものでありましたが、特に神戸側は大阪の計画より一年おくれ、本年は調査、来年から実施に移るという段階にもなって、阪神間の尼崎、西宮、芦屋の三市は兵庫県が代表して参画している関係から、三市の側からは密接な利害関係にある三市の当初からの企画参加を強く要望する発言がありました。
以上のごとき各関係者からの発言に対しまして、各委員からそれぞれ質疑がございました。これらの点につきましては、後刻各委員からの御質問に応じて、現地参加の各委員からお答えしたいかと存じますので、省略させていただきます。
以上をもちまして、報告を終わりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/3
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004・武内五郎
○理事(武内五郎君) ただいまの報告に関しまして、御質疑がございましたら、順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/4
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005・田中一
○田中一君 各現地視察の委員の方方、御苦労さんでした。
この阪神高速道路公団、阪神間の高速道路を作るということに対しては、何ら異議を感じておるものじゃない。ただ問題は、実態から見てその路線というものがどうなるかということ、その路線に対して現地において抵抗はないかという点などが私は聞きたかったのです。また、その路線について、内村委員の報告によると、富永教授は、それよりもっとほかにいい方法、いい案があろうけれども、用地などの問題で現在の堀割を使っていくのはやむを得ないんじゃないかという発言等もあったように聞いておりますけれども、この予定されている線を全部お歩きになったわけですね。それをひとつ御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/5
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006・内村清次
○内村清次君 ただいま田中委員から御質疑がありましたとおりに、政府が提出しておりまする今回の阪神高速道路公団法に基づきまするところの予定線の全部にわたりまして、六日の日に視察をいたしたわけでございます。この点は報告をいたしましたとおりでございまして、第二期線につきましても、神戸地区の予定線も、これもまた起点から終点に至るまでを視察いたしました。
それから、田中委員が言われましたように、富永教授の供述の内容につきましては、これはごくかいつまみましてその意見の本旨だけを御報告申し上げましたが、これは、別途田中委員の要求されましたように、テープレコーダーにもとってありまするから、その詳細につきましては、後刻報告をさせていただきたいと存じますが、大体意見にありましたように、現状としては堀割を使うよりほかに、大阪の地区においては道路面積が非常に狭隘のためにできないと。それから、しかしこれはどこまでも街路も利用しなくてはならない、特にまた予定された環状線の問題も、やはり既定線としてすみやかに国のほうでやってもらいたいということと、それからさらにやはり鉄道の網を完成して並行していかないと、とても大阪の自動車の混雑は、これは救うことはできないというような御意見がございました。この点につきましては、なお委員のほうからも、詳しく富永教授に対しましては再度質疑を展開をいたしておりますから、この状況につきましては、また別途報告書によって御検討をお願いしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/6
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007・田中一
○田中一君 そうすると、富永教授は、この堀割を使うのはやむを得ぬけれども、ほかにもこういう方法があるのではないかという、別途の方法というものを開陳されておられましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/7
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008・内村清次
○内村清次君 その点につきましては、先ほど申しあげましたように、別途の方法という特別な方法の意見の開陳はなかったようでございまして、総合的な街路の利用、環状線の利用、特にまた高速度鉄道を並行して建設しなければいけないというようなことでありまして、現況としては、この公団路線の問題についての変更をするような特別な発言はなかったようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/8
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009・田中一
○田中一君 そこで、この法律は御承知のように設置法であって、事業の内容というものは、建設大臣が認可すればそれでいいわけです。問題は、その事業そのものがどこに路線を決定するかということが、常に地元民の関心の的なんです。したがって私どもはこの法律を審議するにあたっては、一体どこに何を作るのか、どういう形のものを作るのかということに問題が集中されなければならないのです。で、この計画中の路線、一応案として出されているこの路線の住民等の意見もお聞きになりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/9
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010・内村清次
○内村清次君 実はこれは当初、田中委員も御承知のように、利害関係者の公聴会という問題もありましたが、なるべく、時間、手続、その他の問題によって、民主団体の代表者の意見をもってかえようという手続がなされておりました関係で、民主団体からは、先ほど報告いたしましたように、中小企業の団体、労働組合の団体、それから商工会議所の団体というような代表者の意見を聞いたわけですが、ただ私たちは時間の関係で、現地においての該当者の声という問題につきましては、実は、行きまして知りましたことは、まだ計画の段階でございまして、市側におきましても、あるいは県側におきましても、そのPRの点におきましては、まだ十分な徹底がなされておらないというような点が多々あったわけでございます、その点、PRの問題につきましては、十分各委員から徹底した質疑がなされておりましたが、まだどの地点が大よそ店が取り除きになるとか、家屋用地が補償の対象になるというような点は、大よその点は委員の間に御報告がありましたけれども、その当該した人に対して折衝段階というような点まではいっておりませなんだったもので、一々の利害関係者に当たって調査するという機会がなかったわけでございます。この点は、十分今後の政府に対するところの質疑においてただしていきたいと、かように感じてきたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/10
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011・田中一
○田中一君 問題は、この事業をしなければならないということに対しては、私どもよく承知しております。だから、やるほうの側の意見を聞いても困るのです。現に、東京の首都高速道路公団の事業は、所期の計画どおりに進んでおらないのは皆さん御承知のとおりです、大きな抵抗があって。それには十分に納得させるだけのこちら側に用意を持ってかからなければ事業は進まないわけです。道路というものは、御承知のように、一軒のうちが強い抵抗を示せば貫通はしないわけなんです。だから公共用地を主として使うのだといいながら、こういう公共用地に接続するところの民地もあるわけなんです。これに何ら影響がないとは言えないわけなんです。そこで今までのたくさんの用地取得の問題については、問題は残っておるわけなんです。それらの問題を十分に解決するような準備がなくちゃならないのです。私がこういうことを申し上げるのは、事業を一日も早く完成したいから申し上げるのです。かつて首都高速道路公団の計画というものは、法律案が当委員会に提案されて初めて計画というものを要求して明示される。道路計画を持っておるのかというと、これでございますと言ってようやく明示される。そういう誤まちを再び起こしちゃならないのです。かりに現在予定されたところの主として公共用地を通るからそうした抵抗は少ないのだというならば、この提出されておる資料にいろいろ書いてありますけれども、これに基づく実態調査というものはなされたかどうかということを実はもう一ぺん伺いたいのです。これはむろん法律が成立しなければ、この事業をするかしないかわからない、仮定の問題だということになるでしょうけれども、通ることは、こうしてだれもその必要性を感じておるのですから、通るでしょう。通らないからしないのだということは、これはいつも言っておる官僚意識であって、やるならやるで十分にPRして、計画どおり前期五ヵ年、後期五ヵ年で十ヵ年計画ができるのだという見通しを立てなければ、着手をしても何にもならないのです。いたずらに混乱があり対立があるということです。それらに対する補償の問題とかあるいは環境の問題とか、そういう点は計画されておる市とか府のほうでは今、内村委員はPRが足りないのだと言っているけれども、足りないのがおかしいのだ。十分に煮え尽くしてこの法案の提案をなされたというようにわれわれは理解しなきゃならないのです。その点はどうですか。市側、府側のほうでその点についてどういう考え方を持っておられたかですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/11
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012・内村清次
○内村清次君 実は田中委員から言われるとおりでございまして、私たち現地視察団におきましても、この法案の提出によりまして、大体の予定線路も書いてありまするからして、この線路の状況につきましても十分視察はいたしたわけでございます。問題の視察の要点といたしましては、まず大阪地区におきましては、これは質問外ではございますが、一応申し上げますると、自動車の輻湊の状況、それから堀川の現況、これは予定路線でございます。特にまた道頓堀の側の堀川の状況が問題の個所でございますが、この点は特に詳細に現況を見たわけでございます。それから現地利害関係者の意見を聴取する。特にまた神戸地区におきましては、第二号国道の自動車の輻湊の状況、第二阪神国道の状況、それから名神国道の終着点の西宮市の地点の状況、それから高速道路予定路線の状況、それから現地利害関係者の意見聴取、こういう点に要点をしぼりまして、提出法案の資料に基づいて視察は詳細にやったわけでございますが、ただ意見聴取の際に、大阪の府の土木部長、それからまた市の土木部長の話を聞きまして、委員の各位から質問をされました際におけるところの補償の状況につきましては、まあ一般的に私が察知しました点におきましては、大体補償の問題も見込みのあるような発言でございました。が、しかし何と申しましても、先ほど申しましたように、まだ該当者に対する直接の交渉とかあるいはまたPRというものが不徹底なきらいがございましたからして、今後進めていきまする建設予定地の該当者に対するPRのいかん、あるいは交渉の過程におきましてどういう事態が起こってくるかは、この点につきましてはまだ少し心配な点もありました。その点につきましては、労働組合の代表から特に発言があったようでございました。現況においてはまだよくPRもないから、自分たちは一日も早く自動車の輻湊あるいはまた機能の低下に対して、市民生活の安定のために作っていただきたいという点に対しては賛成であるけれども、交渉の過程においてどういうふうな状態になるか。この点は十分ひとつ市や当局において注意をしてもらわないと、反対同盟というようなものができるかもしれないというような発言もあったようでございました。が、しかし計画の方々は、その補償の問題については自信のあるような発言がありました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/12
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013・田中一
○田中一君 ちょっと政府に関連して質問しておきますが、この事業を遂行するにあたって、公共用地取得の特例を最初から適用してやろうという気持があるのですか。あるいは交渉している段階で用地取得がいよいよどうにもならんから特例を発動してやろうという考え方ですか。どちらなんです、政府は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/13
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014・前田光嘉
○政府委員(前田光嘉君) 御承知のとおりこの道路計画につきましては、今お話しの特別措置法が適用されるかと思いますけれども、まだそこまで用地問題としまして具体的な話がつまっておりません。市のほうでは一応地区の代表の人とは話をしておりまして、特別に支障ないように受け取れますので、今後、都市計画として道路路線がきまり、あるいは事業が進んできました場合において、その問題につきまして検討を進めたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/14
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015・田中一
○田中一君 もう一つ建設大臣に伺っておきますが、ぶつかったところで、できなければこれを使うのだ。できる場合には話し合いでそのまま進めていくのだという考え方はいいでしょう一いいでしょうが、今内村委員からの報告を伺っていると、何といっても直接利害関係者というのは団体ではないのです。第三者的な評論家の意見ではないのです。自分の土地がどうなるかということで一番心配なのが国民感情なんです。そこで私は再三そういうことを言うのですが、初めからこうやって特例でもって収用して、そうしてこういう工合に皆さん方に早くいい利益があるのだ、話し合いじゃ遅くなる、そのほうがあなた方の利益なんだというようなPRがなされれば、皆そのほうに飛びついてくるのです。しかも現在の土地収用法によるよりも特例でやったほうが得なわけです。しかし何といっても民地を取られてしまう場合には、かえ地を与えることがなかなか困難だから、話し合いでいこうということにならざるを得ない、こういうところは。そうするとやはりだましだまし折れないようにきたえていかなければならなくなってくるんです、事業というものはね。そこでそうしたものの単に道路を作ればいいんだというものじゃなくて、道路を作るためには、関連してどうすれば地元の人たちが納得するか、という点を中心にして考えるべきがこの計画の遂行のためのポイントなわけです。あの特例でもってやっていくと、それにはいろいろ条件もある。まあおれはこの土地は要らぬから公団のほうに取ってくれと、かえ地をくれといった場合には、かえ地はどうなるかという問題もあろうし、いろいろ問題があると思うんです。したがってそういう障害を事前に事業の執行者はPRして、そして納得ずくのものというのは、やはり法律でもってこれでいきますよということを明示したほうが一番早いと思うんです。ぶつかったらやるんだということじゃあ仕事は進まないですよ。まあ四年か五年かかる問題が今度は一年半ぐらいでもって解決するんだということになっています、あの法律を適用すればですね。仕事をしようとすれば、やはり準備と、それから仕事にかかった場合には相手方に対する信頼感というものを十分植えつけるような形でもってするには、やはり法の裏づけがなくちゃならぬ。前国会で通ったあの法律を、今度は伝家の宝刀であるかのごとき印象を国民に与えることは間違いなんですよ。あれこそほんとうに市民の利益を守ってくれる法律なんだという印象を与えるのに一番いい機会だと思うんです。こういう事業を行なうことが一番いい機会です。都市局長の話を聞くと、まあそのときになって考えるというけれども、これは政府の腹一つですよ。どっちにしろ指導するんだから。全面的に事業というものは建設大臣が認可しなければならないんですから。法律が通ったから考えましょうということじゃないんです。焦眉の急で、現在大阪の状態を見た場合には、これはもうしなければならないんです。するにはどうするかということになるならば、やはり政府が腹をきめて指導しなければならぬと思うんです。これは問題はそれしかないと思うんです。私は自分でせんだって行ってきまして、その路線の住民に知っている者もいるから、ちょいと寄ってみましたが、大体知ってまして、自分のところの裏にかけるんだと、この堀割が全部やられるんだと知ってました。で、君の宅地はどうなるかと言うと、どうも南のほうにがしゃっと自分の二階以上のものができてしまうと、まあほこりはくるだろうし、あるいはへたなものができたら荷台ぐらいすっ飛んで上から落っこってくるんじゃなかろうかというような心配をしてまして、自分の接続する民地がどういう工合になるか、これは本人は知らなかったですがね。そうしたものはないような法律なんだということを言わなければ、これはやはり抵抗があります。一人抵抗しても、もうできなくなるんですよ、こいつは。その点ひとつ政府として、今内村委員の報告を伺ってみると、そこまでのPRがいきとどいてないということになると、これはずいぶん激しい労働者もたくさんいる町ですから、どういうことになるか、私は心配です。それならばひとつ踏み切って、計画どおり遂行するにはあの法律の適用を考えたっていいじゃないですか。反対するから適用するんじゃなくて、最初から、その重要性を認めるならば、用地取得の特別措置法というものを適用するのは当然のことなんです。そうしてそのほうが利害関係者は利益なんだという印象を与えるならば、また実質的に利益になるような方法をとってあげるならば、今後の公共用地の取得に対しては困難さが薄らいでくると、いわゆる事業主体に対する信頼が厚くなってくるということがいえるわけなんです。まあこの問題は、きょう私はここで大臣から答弁を求めますまい。一つ省で十分お考えになって、省の関係の局長なり大阪なり神戸の人たちが、現地の人がそういう考えを持っているか存じませんが、そういう措置をとられるほうがいいんではないか。しかし大臣答弁するなら答弁しても、僕がそれならいいという答えが出るならけっこうですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/15
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016・中村梅吉
○国務大臣(中村梅吉君) 実は先ほど内村さんからの御報告の中にも、まだPRが行き渡っていないようだという御報告がございました。これはおそらく大阪府、市、その他神戸市等では十分PRしたい気持は持っていると思うのでありますが、まだ事業施行主体がきまりませんので、事業施行主体ができてから、事業施行主体の責任において大体の設計なり、たとえば今自動車もたまには落ちてくるのではないかという心配もまだ一般の人にはあると思うのです。そういうような危険のないように、ちゃんと高い路側を作りましてやるとか、あるいは高架の高速道路ができましたら、撒水とか清掃をきれいにしましてほこりなどが道路に残らないようにするとか、いろいろ設計その他基本的な計画がきまって、それからまあ本格的なPRという段階だと思うのです。そういう意味において、今はそういう状態にあると思いますが、われわれとしましては、事業主体がきまってそれから本格的にスタートをするようになれば、できるだけ手回しよくPRを徹底的に十分に行なわせるように指導をいたしたいと思います。
それともう一つは、特別措置法を初めから適用したほうがいいではないかという御趣旨の田中さんの御意見のように拝聴いたしましたが、実はこの点につきまして私どももかねがね考えを持っておりまして、できれば初めから統一的に一般公共事業につきましても、高速道路につきましてもPRをいたしまして、特別措置法にはPRが大前提でございますから、その事業の重要性、必要性、その他諸要件について理解を求める努力をすることが前提でございますから、そういうことをやりまして、せっかく特別措置法ができましたので、努めてこれを適用して緊要事業、重要事業として特定事業に取り上げるようにということがいいという実は私考えを持っておりますが、現在のところでは道路公団関係にしましても、東京都を初め事業実施の主体にしましても、たいていの事業は手をつけておるものですから、一部は話し合いで相当進んでおりますので、話し合いと特別措置法を適用したのとで評価に差異を生じては困るという配慮もございまして、やりかけの事業はあまりやりたがっておらないのであります。で、やりかけでないこれから一貫してやる事業については、努めてやるように私どもも関係機関に鞭撻をいたしておりますけれども、これから一貫して一本の路線をやる部分については、そういう方向に向かいつつございます。ただそこで問題は、一応の補償基準というものがしっかりできませんと、これは思うように進められませんから、今御承知のとおり公共用地審議会にこの点を御諮問してございまして、近いうちに答申のできる運びになる予定でございます。これは答申が出まして学識経験者が十分に検討して、いい補償基準というものができてくれば話し合いでいく分も、それから特別措置法を適用する分も、一般土地収用法でいく分も、できるだけこの補償基準で一貫するように努めて参りたいと存じます。そういたしませんと、話し合いでいくことによって事業を急ぐ関係等のために、どこか一個所奮発をいたしますと、それが地価のつり上げのきっかけにもなりますので、なるたけ奮発して話をつけられるものはつけるのはけっこうではありますが、それによって一般社会に及ぼす悪影響も考えられますから、そういうことのないようにできるだけ適正の補償基準を順守して、すべての事業を円滑に進めるようにさせたい、こういうふうに思っております。そこで補償基準ができますれば、話し合いでいこうが、公共特定事業に取り上げられようが、結果としては同じだということになってくれば、むしろ私はそういうような準備がすべて整えば、できるだけ重要にしてしかも社会的に非常に緊要性の高いものについては、初めから特定事業に取り上げて事業施行してもらうほうがいいように私自身も考えております。したがいまして補償基準がすっかり審議会の議も経ましてきまりましたら、そういうことにつきましては省内十分議論を尽くして、今、田中さんのお説のような点についても十分検討いたしまして、万全を期していきたい、こう思っているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/16
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017・田中一
○田中一君 けっこうな心がまえです。それでいいです。しかし時間がたちますと地価が今の場合でも相当値上がりになる傾向にあるのです。がんばって話に応じないという場合、一年たつと一年分下がるならいいけれども、上がる傾向にあるという場合にはこれはやっぱり困る。基準はきまっても価値というものは上がってくる場合には非常に困るわけですよ。これはまだそれが正しいのだ、一年後に交渉して、標準の地価というものが一割上がっていれば一割高いものが正しいことになり、がんばったほうが高いならばこれはおのずからがんばりますよ。交渉に応じなくなりますよ。したがって同じことになって、同じことにぶつかってくるのです。早くやったほうが、早く利害を生じたほうがばかを見るのじゃないかという印象を受けるのです。ちっとも変わっていないのですよ。地価はそのまま社会の条件によって上がってくる。つまり時価換算でくるでしょう。第三者というものは時価換算で、きますから土地収用委員会に持っていこうが、何に持っていこうが、三年前に買ったものが三万円だから三年後になって買うものも三万円だとはいえません。三年後に売る場合には三年後の地価で収用されることになりますよ。だから全部を一緒にやってしまいなさい、意思表示、態度をおきめなさいというのはそれなんですよ。そこから一緒にスタートするわけですよ、交渉というものは。そうでないと、今話し合いをしておるから云々といっても、一年がんばり、二年がんばり、三年がんばった者の、地価の上がったほうが正しい数字として売買されるわけなんですね。そういう点も考えてひとつ十分、——今、心がまえとしては非常にいいと思います。そういうことで少なくとも抵抗のない形の計画を立てていただきたいと思うのですよ。
それから、あと資金の問題その他ありますけれども、こいつはこの次の委員会に譲ります。
きょう、私はこれだけ質問しておきます。で、なお速記録ができましたら、それによって十分検討したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/17
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018・武内五郎
○理事(武内五郎君) なお、ほかに御質疑ございませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014149X01319620308/18
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019・武内五郎
○理事(武内五郎君) なければ、本日の審査はこの程度にとどめておきたいと存じます。
これにて散会いたします。
午後二時四十五分散会
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