1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年二月八日(木曜日)
午前十時五十一分開会
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出席者は左の通り。
委員長 高野 一夫君
理事
鹿島 俊雄君
阿具根 登君
藤田藤太郎君
委員
勝俣 稔君
佐藤 芳男君
山本 杉君
横山 フク君
藤原 道子君
相馬 助治君
村尾 重雄君
国務大臣
労 働 大 臣 福永 健司君
政府委員
労働政務次官 加藤 武徳君
労働大臣官房会
計課長 住 栄作君
労働省労政局長 堀 秀夫君
労働省労働基準
局長 大島 靖君
労働省職業安定
局長 三治 重信君
労働省職業訓練
局長 村上 茂利君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
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本日の会議に付した案件
○労働情勢に関する調査
(労働行政の基本方針に関する件)
(労働省関係昭和三十六年度補正予
算及び昭和三十七年度予算に関する
件)
○炭鉱離職者臨時措置法等の一部を改
正する法律案
(内閣送付、予備審査)
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001・高野一夫
○委員長(高野一夫君) ただいまから本日の社会労働委員会を開会いたします。
労働情勢に関する調査の一環として、労働行政の基本方針に関する件、並びに労働省関係昭和三十六年度補正予算及び昭和三十七年度予算に関する件を議題といたします。
質疑のおありの方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/1
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002・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私は、大臣が見えるまでに、今のその労働行政の事務的な面を先に聞いておきたいと思うのです。で、一つの問題は、きょう一ぺんに全部聞くわけにいきませんが、きょうお聞きしたいことの一つの問題は、雇用の問題がどういう推移にあるかということです。それから最低賃金、これは基準局からはまだ見えておらないですね。これは無理ならいずれ別に聞きますが、だから雇用の問題がどういっているか。しかし、それは最低賃金といわなくとも、生活に関係なくして雇用の問題というものはあり得ないのですから、その推移の上でどう動いているか。それから、学卒と中高年の関係、それから臨時工、社外工がどういう状態に進んでいるか、こういうことをずっとひとつ事務局として資料はないですか、資料を出していただいて御説明願いたい。そうして、その上で大臣にお聞きしたいと、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/2
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003・三治重信
○政府委員(三治重信君) アウト・ラインで全般的なことにつきまして御説明申し上げます。
全体的な計画から申しますというと、毎年国民所得倍増計画が長期計画としてできております。さらに年度間の計画があります。これにつきまして、明年度につきまして、三十七年度では雇用労働者が八十四万人増、今年度の三十六年度の実績は、大体八十万人程度の増加が期待できるというふうで、雇用労働者の伸びは、大体予想どおりに伸びて参ります。その間の一次産業、二次産業、三次産業との変化につきましても、三十六年度におきましては、第一次産業の構成割合が、これは就業者でございますが大体三三%、第二次産業が二八・六%、第三次産業が三二・六%、それから運輸交通と運輸公益事業が五・六%、それを従業上の地位別に見て参りますと、自営業者が二三・四%、家族就業者が二五・三%、雇用者が五一・一%というふうでございまして、これもだんだん雇用者が増加いたしまして、一番減りますのが自営業者、家族就業者という関係になりまして、いわゆる一般的にいう雇用の近代化が経済の成長とともに逐次近代化していく、こういうふうに考えております。しかしながら、まだ諸外国に比べてみると、わが国の雇用労働者の比率は、やっと半分を若干増加したというような程度で、先進国の七〇%、八〇%の雇用者という、生産労働者のほとんどが雇用労働者によって占められておるというふうにはまだなかなかならないという関係でございます。
それをさらに内容別に見ますと、いわゆる最近における労働力の地域的なアンバランスの関係を見ますというと、需給関係では、地域別には東北と九州という部面が、非常に求職が多くて求人が少ない。これが大体求職の三に対して求人が一人の割合。ところが、大工業地帯の京浜工業地帯、東海工業地帯、近畿というふうになりますと、求人の方が多くて、求人と求職の割合が非常に逆になって、求人一人に対して、求職者が〇・二人ないし四人程度というふうな関係になっておりまして、非常にアンバランスがある。このために労働力の移動化計画をわれわれのほうとしては政策としてはやりたい。
それをまたさらに別の角度から年令別に見ますと、若い若年層、二十才から二十四才という関係は、就職率におきましては非常に高い。この求職、求人の関係も、やはり一・三倍程度である。就職率は二二%程度で非常によろしいのであります。これが逐次年令が増加していきますと、たとえば五十才をこえるような人になりますというと、やはり十八倍の求職というふうになる。その就職率も五・二%、非常に下がってくる。こういう意味におきまして、やはり中高年令層の職業の確保の問題というものが一つ大きな問題……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/3
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004・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 若年は。もう一ぺん言って下さい、若年を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/4
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005・三治重信
○政府委員(三治重信君) 若年は、求人に対する求職の割合が一・三、四倍、五十才以上が十八倍にもなっております。こういう関係でございます。
それから、新規学卒は、これは非常に求人が多くて、完全就職といわれているわけでございますが、その場合に、やはり企業の規模の大きいところ、いわゆる雇用に魅力のあるところにおいては充足率はいいけれども、百人未満のような場合には、二割程度しか今年度において充足をみていないというのが実情でございまして、やはり新学卒のいわゆる求人難というのは、中小零細企業ほどはなはだしい、こういう関係にあるわけでございます。
それから、日雇い労働の関係につきましては、このように非常に片方においての新規学卒のほうが非常に足らないにもかかわらず、大体において定時とあまり変動なく、日雇い労務者の登録は、若干ではございますが、ふえておって、ほとんど横ばい、現在日雇い労働者は五十三万人程度でございます。
それから、石炭の関係につきましては、これがまあ唯一の代表的な衰退産業と申しますか、総雇用量が毎年二万五千程度ずつ減って、絶対雇用量において、昨年の十一月末において大体二十万人程度に総雇用量が——これは総雇用量ではございません。常用労務者——職員を除いた常用労務者が大体二十万ほどに相なってきております。まだ石炭産業の安定化のためには、ここ三、四年の間相当な炭鉱の休閉山、あるいは買い上げ、まあ大企業においては、企業の合理化というようなことで、先ほど申し上げましたように、二万五千程度が減少するような見通しでございます。これに対するいろいろの援護措置につきましては、ただいま本年度の予算と関連して、改正法案を出して御審議を願うことに相なっております。
以上、非常にごく簡単なアウト・ラインの見通しを御説明申し上げました。
なお、臨時工、社外工の問題につきましては、まだわれわれのほうは手が十分そのほうの調査まで参りません。われわれのほうとして臨時工、社外工の数の増減というような問題につきましては、まだ資料として整備したものがございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/5
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006・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 今あげられた若年についてはいい、まあ二十才から二十四才ぐらいの人は。しかし、あとは五十才以上ということを言われたが、五十才以上の人がポイントではなしに、三十五才以上三十九才までの働ける人についてはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/6
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007・三治重信
○政府委員(三治重信君) 途中ちょっと省略いたしましたが、三十五才から三十九才の例をとりますと、求人と求職の割合が一・六倍、三十五才から三十九才の……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/7
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008・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 就職率はいくらですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/8
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009・三治重信
○政府委員(三治重信君) 就職率は一六%、四十才から四十九才の辺で求人、求職の割合が三・七倍程度で、就職率が一二%、これはもちろん今申し上げておりますのは安定所紹介の率でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/9
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010・高野一夫
○委員長(高野一夫君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/10
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011・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 速記つけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/11
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012・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私は、大臣にお尋ねしたいのです。今、職安局長からアウト・ライン——具体的な問題についてお伺いしたのですが、実はことしは不況の年だということを言われているわけです。三十六年度の、今の雇用関係については、学卒、それから若年労働者、むしろ内容的に見ると、中高年の充足が、非常に雇用、就業というものが悪いわけですね。そこで、中小企業の関係を見ますと、中小企業は低賃金だから寄って来ないという一つの条件がそこについていることがある。それからもう一つの点は、昨年の十月ごろからの中小企業の倒産ということになりますと、非常に急速度に中小企業が倒産していくわけですね、十月からぐんと十二月にかけて。まあことしのやつはありませんけれども、非常にふえているわけです。そうして倒産しますと首切りという問題が起きるわけですから、ここで首切られた人は失業ということになると思うのです。一昨年から昨年の春までは、むしろ技術者をスカウトするという状態もあったという工合に私は思います。しかし、もう昨年の暮れから倒産、不況という状態の中では、もうスカウトどころか、全員が不況の渦の中に入っていくという状況にある。それで、今、職安局長から聞きますと、三十五才から三十九才が就職率一六%、四十才から四十九才が一二%、五十才以上が五・二%だというわけです。今の一六%、一二%、五・二%の人がどういう雇用条件で——雇用関係をたとえば充足したとしても、結んでいるかということの調査は、どうも労働省はこれからお聞きしようと思うのだが、さきに断わりがあって、その社外工や臨時工のことはよくわかりませんと、こういうことでいいのかどうかということが大臣にお尋ねする第一の疑問なんです。雇用関係における、要するに潜在失業と、それから中高年の方々が非常に困っている、これでは私は問題があるんじゃないか、これが一つ。
第二の問題は、最低賃金には非常に力を入れておられますけれども、まだまだ一日二百円をちょっとこえてきたことは私も統計上認めますが、なかなか最低賃金が町ぐるみ、地域ぐるみ実施されているところも非常に低い。私は、むしろ労働行政の長である労働大臣が、普通の賃金は、労使が今の労組法、労調法の建前によって賃金を引き上げる、対等の立場で引き上げることは私はいいと思うのです。しかし、最低の賃金が一日二百円とか二百二十円くらいでは生活が困難だ、私はそう思うのです。だから、これは私は少なくとも一日どれくらいは必要なんだ、一カ月の生計費というものはどのくらいは必要なんだということがもっと積極的であっていいんではないか。それにはやはりずっと宿題になっています最低賃金法の内容改善という問題を、その見方によっては業者間協定が横すべりしているような格好のもの、これはILO条約からいっても非常に疑問があり、問題のあるところなので、そこらのものは労働大臣も大胆に改正していく立場をとられたほうが私はいいんじゃないか。いかに説明してみても、ああいうニュアンスの法律というものは問題がある。また、実質的に二百円や二百二十円くらいの最低賃金では、二十日働いて二百円なら四千円ですわね。二十五日働いて五千円、これでは生活ができるわけがないですから、そこにも問題がある。これに対するひとつ所信を承りたい。
それから三番目は、今度は日雇い労働者の適格基準の問題ですね。だから、労働省は労働省なりに、事務的な言い分のあるような条件をこしらえている。労働者は、たとえば夫婦きちんと分かれてというようなところもありますけれども、しかし、私は、働く能力のある人が、賃金が安いから生活ができないから、自然の流れとしてそういう工作をせざるを得ないという面も一つあると思います。全部とは私は言いませんけれども、一つはあると思う。一世帯一人ということに限定してやっているこの考えは、私はやはり問題があるのではないか。だから、妻や未成年の子供というものが、たとえば働き主がおやじさんであるか奥さんであるかはともかくとして、一家の乏しいながら生活をささえるだけの賃金というものが支給されておれば、また違った要素で適格審査に対する議論というものも出てくるのではないか。今度四百二十五円にお上げになりましたけれども、三・五家族の失対労務者の中で、一世帯一人しか働らかせないという条件の中では、私は無理があるのではないか。だから、どちらかを改正するという格好というものが必要ではないか。これに関連して、いろいろ失対労務者の中にも議論が出ているところだと思うのですけれども、やはり緊急失対法できめられた、頭から賃金を、お前の賃金はPWの八〇だ、九〇だぞというやり方ではなしに、やはり生産に対する労働の提供、貢献の度合いというものは、そういう頭からお冠をかぶせるような格好にやるべきものではない。それなら基準法に違反するわけなんですから、だからやはり労働能力のあるものには、対等な立場、価値論までいけば問題がありますけれども、一般の賃金がきめられる形に持っていく。それから、老年とか虚弱者の失対業務については、社会保障的な面がありますから、だから、全部をひとからげに私は言えないにしても、労働能力のある人には、やはりその生産に貢献した度合いにおいて、やはり対等の立場で賃金がきまっていくという姿の研究は、私は積極的にせられるべきではないかという工合に考えている。それに焦点を合わせましたなれば、問題は、賃金というものがこれでいいのか、適格基準が一世帯一人でいいのか、こういうこと。もう一つ下がって、失対労務者で、片一方は働いて、片一方で生活保護を受けているというようなことが実際行政上いいのかどうかということにも、こまかくいくとまだあると思いますが、なってくると思います。保険の問題や家計の問題や、考えるといろいろありますが、そういう関係についての所信をまず三点伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/12
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013・福永健司
○国務大臣(福永健司君) たいへん示唆に富んだ御意見を拝聴したのであります。
まず第一点の、最近の雇用情勢から見て、中高年令者、ことに中小企業における中高年令者を中心とする労務者の状況等についてお話があったのでありますが、全面的に倒産、不況というようなお言葉がありましたが、全面的とまでは参らんとは存じますが、相当程度御指摘のような傾向もあろうかと思うわけであります。私は、基本的には、今行なわれておりまする引き締め政策ないしは、あるいは貿易の自由化と関連しての動き、こういったことは、日本の経済をしっかり将来伸ばしていくための措置として、できるだけ短い期間の摩擦現象ということに終わることを私は衷心期待をし、そう願っておるのであります。貿易の自由化にいたしましても、長期的に見ますれば、日本の経済全体のためにいい結果になることでなければならん。貿易の拡大を招く方向へいかなければならないのでありますが、それにしても、一部中小企業等における一時的には衰退の徴候を示す産業等も出てくることは、これは考えておかなければならんわけであります。現在のそうしたいろいろの事情よりいたしまして、中小企業において非常に苦しんでおられるようなところが間々あるわけであります。この点につきましては、単に雇用面ないしは労働対策面からだけの施策では、もとより十分でないわけであります。中小企業全体の基礎を強化するというためには、いろいろの国の施策を必要とするわけでありまして、また、私どもも、そういうように、常に関係各省とも話し合っておるわけでございますが、年少労働者等につきましては、最近の事情よりいたしまして、大企業と中小企業とでは、かなり賃金等も接近して参っておりますが、どうも中高年令者ではかなりの開きがある。開きがあるのみならず、安い需要にあっても、なおかつ就職の機会がなかなか得られないとか、御指摘のように、就職しておる者が失業するに至るというようなこと等も見られるわけであります。私どもは中小企業等におけるこうした傾向等にかんがみまして、御承知のとおり、相当多数の業種にわたりまして、むしろ中高年令者なるがゆえによけい適しているんだというような職種等を選定いたしまして、積極的に職業安定所等においては、今御指摘のようなことのないように、ないしは、それを減らせるように施策をいたしておるわけでございますが、何と申しましても、こういうことにつきましては、まだ率直な話、現在やっておる程度のことでは、はなはだ不徹底でございます。どうしても画期的に積極的な施策が講じられなければならんと、こういうように考えるわけでございます。
二番目の御質問に関連するわけでございますが、二番目の問題についても、最低賃金について二百円や二百二十円くらいのところが多いが、これはもう今の経済情勢より見て実際に即しないというような意味での御発言がございました。私も同感でございます。もっとも、最近では御承知のとおり、二百四十円から二百八十円程度のものが多くはなってきておるのでありますが、二百円や二百二十円のものは今の実情に沿わないので、これが上がるようなことに、先ほどの藤田さんの言葉をもってすれば、政府ももっと積極的にそういうことについては政策の展開を行なえと、こういうようなお話しのようであります。実は、前国会に、こういうようなことを含めまして、藤田さんからもそういう意味における賃金政策の展開をやらなきゃ政府はいかんじゃないかというような御注意等もございまして、主としてこういうことを念頭に置きまして、私どもは賃金部門を設置しまして、この際、最低賃金についても、お説のようなことも考慮しつつ、大いに従来とも努力はしておりまするけれども、より一そうの努力を傾けまして、当面三年間の二百五十万に持っていくというのもできるだけ早くやり、あとうべくんば、さらにもっと多くの人たちに最低賃金制が普及するようなことにいたしたいと、こういうようなこと等も考えまして、そういうことにするのは、先ほど幾つかの点をおあげになりましたけれども、やはり基礎資料等についても十分把握しておかなければならない。そして、また、藤田さんも指摘されるようなことについて民間に指導をいたしまするにいたしましても、的確な資料を用意して参考に供するような措置をしたいというようなことで、新聞等には、藤田さんが言われておるように、政府は賃金政策を展開せよというような社説等も一斉に出ておりましたが、まあ私どもは賃金法を設置するという決定をいたしました前後に、幾分われわれの意図と違うようなこと等も伝わっておりましたが、貴重な御意見を拝聴いたしましたときでございますから、率直に、私は、問題が関連いたしますので、私どもの考え方も一部お聞きとりいただきたいと思うわけであります。今御指摘のようなことについて、一段と施策の強化をしていきたいと、こういうような建前で今度の賃金法というようなことも考えておるわけでございます。まあできるだけ御期待に沿い得るように、そういう方向へ参りたいと考えるわけでございます。このことは、勢い最初に御質問になりました点とも関連するわけでございます。中小企業等につきましても、そうした指導的役割もこれはやらなければならぬ。もとより私どもはこういうことで賃金を引き上げるというようなことの交渉の個々の折衝等に介入するような意思は毛頭ないのであります。今申し上げたような意味で施策の推進をはかっていきたいと、こういうように考えておるわけでございます。なお、中央賃金審議会でこの最低賃金の問題につきましては、御説のようなことも含めまして、今検討を願っておるわけでございます。このほうの結論も大いに参考にいたし、ないしはこれを取り入れて善処していきたいと、こういうように考えておる次第でございます。
失業対策事業の就労者についてのお話でございますが、まあできるだけ高いにこしたことはないのでありますが、なかなかこの問題につきましては、労働省も頭を痛くしておる点でございまして、まあいろいろの状況の中において、お話のような工合に賃金の引き上げもいたしましたのでありますが、なお、お話のように、これはまあ十分の額とはもとより申せないのではありますが、私どもといたしましては、今度の予算措置については、できるだけの努力はいたしましたつもりでございます。そこで、御承知のように、一方におきまして失業対策事業の就労者等につきまして、これを藤田さんのおっしゃるような、労働能力のあるような者にこんな安いのではということで、私どもも、何もかも十把一からげということではいかぬとおっしゃいますその御趣旨はよくわかりますのでございます。幾らかでもそういう趣旨における施策を講じていかなければならぬ、こういうように考えております。なお、この労働能力のあるような人は、もうできるだけ早く失対労務者というお立場から離れて、常用化されていくようなことが望ましいとも私たち思います。そういうようなことからいたしまして、まあ今度新たに雇用奨励の措置等も講じましたわけでございます。これのみで問題の解消というわけにも参らぬかとも思いまするけれども、従来よりかなり前進した、前向きの施策であると私どもは考えておるわけでございまして、まあ適格基準の問題等につきましても、これはもうしょっちゅう労働省はおこごとをちょうだいしておるのでございますが、いろいろなことを考え合わせますと、この基準を画期的に改める、ないし撤廃するというようなことは、なかなか現在のところ困難でございます。したがって、先ほどから申しますような施策等とあわせ、一気にできればたいへんけっこうなんでございますが、そうは参りませんので、漸次御注意をいただいたような点について施策の推進をはかっていきたい、こんなようなふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/13
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014・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私は、もう同じようなことを何回も繰り返すのはいやだから、できるだけ端的に問題点だけを言ってきたのです。しかし、いろいろな経済との関係については、どうせ予算委員会で触れたいと私は思うのです。しかし、どうでございましょうか、今お答えになりました一つの問題は、あと二、三と関連する問題です。労働問題というものはみんなそうなんです。私は、中小企業の倒産——ことしは不況の年であるといわれている。この国民が持っている概念の中で中小企業が倒れていって、財政的にはむしろ二四・三%もことしは膨張をしている予算だ、しかし、金融の面からいうと、これは緊縮政策、デフレ政策といいましょうか、力のあるものだけはやりなさい、力のないものは倒れなさい。九〇%のことしの十月の自由化を目標に、国際競争に勝つのだといって、中小企業の手当というような問題は、むしろ政策の中ではなしに、この高度経済成長にじゃまにならないものだけはめんどうをみてやろう、むしろ恩恵的にみてやろうという域を、財政経済政策においては、政府の方針は一つも出ていないと私は感じている。だから、この議論は、私は大臣にいたしません。いたしませんが、そういう工合にあなたがお感じになるなら別として、今現実に中小企業が倒れてきている、倒れざるを得ない状態に置かれている。それでいて、要するに中高年の就業の機会というものは、もう二〇%もない、一六%、一二%、五%だ、その中に、まだそういう不況という名のもとに現実的に倒れていっているという方々が、どのような機会に就労を、たとえばなった人がどうする、それじゃ就労できない人はどうかというような問題を私はとらえて対策を立てなければいかぬのじゃないか。池田さんと議論をすると、所得倍増論といったところで、国民の所得がみんなが上らない限りは所得倍増もできないのだ、だから私はよく言うのですが、生産と消費のバランスのとれないところにどうして経済の維持ができるかと言うと、そのとおりだとおっしゃる。おっしゃるなら、そのような具体的な問題は労働省が行政上おやりにならなければいかぬのじゃないか。一つは社会に貢献する労働、それを通じて所得をふやしていくという完全雇用の道、それはやっぱり時間短縮その他によって就労の拡大という問題が、完全雇用の道として開かれてこなければいけない。もう一つは、私は、社会保障で所得の拡大というものをやらなければいかぬという問題がここで出てくるのではないか、そう思うのです。だから、賃金の問題に関しましても、たとえば弱年労働者は、中小企業の充足率は二〇%だといわれている。たとえばイギリスあたりの賃金と日本の賃金をあわせてみて、中高年以上の就労常用労働者の賃金は六〇%か七〇%ぐらいのところです。ところが、若年労働者の賃金は二〇%ぐらいですね。そういうところに各企業者が、新しい労働力として低賃金の若年労働者に集中して、その取り合いっこをしている。これは求職が百人で求人が二百人なら、どうせいいところに若年労働者は行く。ある程度の身分の保障のできるところに行くのは、これは自然の流れなんで、だから、その低賃金の労働力があるところに各企業がみんな集中して、中小企業に寄らないのはあたりまえなんです。だから問題は、学卒や若年は云々というようなことではなくて、やっぱりどれだけ労働力が、その生産に対し、社会に対して貢献しているその賃金はいかにあるべきか、それが全体の購買力と生産との関係で、生産と消費のバランスをどうとるかというようなことは、私は、労働大臣は去年おかわりになったから除くとして、事務当局は秀才がおそろいになって、ここで少し議論を始めると、あいまいなことばかり言って、今の労働力の配置がどうでございます、その中の雇用労働者はどうでございますと、肝心な就労の今の労使関係がどういうところに置かれているかという、臨時工や社外工についてのことになったら、まだ調査ができておりませんというようなことで、私は、何も外国人に政治をやってもらうわけではないのだから、日本人は日本人の幸福というものをやっぱり目がけていくというなら、私は事務当局が怠慢だと思う。ここで私は、こういうわれわれ以上に専門的に研究をされて、われわれが見れない資料でも実態でも、外国のことであるならば世界中のことをよく把握されているその事務当局の方々がこういういいかげんな答弁をして、それに横すべりで大臣が答弁をされるということであれば、何べんここで質疑をやっても、私は意味がないと思うのです。大筋のところで池田総理と議論をして、生産と消費はどうかと言ってやると、そのとおり所得倍増もできません。たとえばその所得倍増論のあの計画に出てくる労働力の配置、たとえば農民を五百万、四百九十九万を十年で首を切るということがちゃんと出ているわけです。配置転換するという計画の中に出ている。それは労働省は雇用労働者の問題だけで、農民の問題は知らぬのだ、商業行為における離職者の問題は知らぬのだということは、私は、あなた言い切れないと思う。労働省というのは、日本の働く人の全体の労働に対する問題の所管行政庁だと私は思う。ここで議論することになってくると、そういうものには一切触れないで、今の雇用労働者がどうのこうの、賃金を上げないといけないと思いますというぐらいの程度で、私はあまりにも、まあ大臣をこれ以上責めませんけれども、事務当局の怠慢は私はけしからんと思う。あなた方専門におやりになって、こういう議論が予算委員会で議論され、社労委員会で議論され、この前は迫水君にここに来てもらって、そこでその関係については特別委員会を作ってやりますと言ったけれども、迫水君はさっとやめてしまったから何もない、へみたいなものです。そうでしょう。労働大臣と企画庁長官と二人並んで約束されて、議事録に載っているけれども、それでもその問題は具体的に一つも引き継がれていない。今のような答弁をされて、私は、まあ労働者の立場からものを言っているというのじゃなしに、国民の幸福といいますか、日本の経済の繁栄といいますか、そういう筋道の中で議論をしなければ意味がないと思う。だからもう少し肝心なところに触れて御答弁を願わなければ意味ないと思うのですよ。ただ現状にあるのはこうこうですと。だから私はまあ極端な言い方をしたことがあります、今までにも。今までに、あなたがおいでになる前に、労働省というのは、失業者がこう出てくれば、それを受けてこれをどうするというようなことをやる行政庁ではないのだ。いかにして日本の九千三百万の国民が持っている労働力を通じて、国の経済を発展さす、国の繁栄をもたらすというところにむしろ主導性を持っていかなければならない。そのためには、経済はどういう方向の中で、経済生産との関係の中で労働力というものはどうあるべきか、その労働力を通じて、生活というものはどうもるべきかということを議論するのが本筋ではないか。そこまでいくと、まことにそのとおりと皆さん大臣が今日までお答えになっている。しかし、具体的の問題になってきたら、肝心のところになるとみな抜けてしまう。そうでしょう、私はそう思うのです。だから、もうこの問題については、私は日をあらためて十分に、今の労働力をどう配置し、その労働力を通じて国民の所得がどうふえ、それが購買力にどう反映して、日本の経済——生産と消費のバランスがどうなるかということを的確にひとつ労働省は案を作ってここでお答えを願いたい。そうでなければ、予算委員会で議論をしたってしようがない。ただ、はしばしに出てくる。今はこんなことであるが、次の繁栄のためにはやむを得ないのだということで、だれが犠牲になるでしょうか。中小企業者や農民、労働者たちだけが犠牲になるばかりで、経済だけが展開しているのではないですか。そんなことが今日の欧州の各国の政治として許されていますか。一ぺん見て下さい、よく調べていただきたい、そんなことが許されていますか。主権在民の国家体系、今の政治体系の中で、そんな行政が許されていますか。日本だけではないですか。あなたその肝心のところに触れないで行政をやるということは、もう一ぺん考え直していただきたいと私は思うのです。基本的な問題は、それは予算委員会で私はやったらいいと思います。いいと思いますけれども、具体的におやりになるのはあなた方のところですよ。あなた、周東農林大臣が、四百九十九万人を十年間に離職さすということが計画に載っているじゃないか。どうするのだと言ったら、十年倍増論の一年に入ったではないか、これからぼちぼち研究させてもらいますというような答弁は、労働大臣はできませんよ。実際に首を切るのを頭に置いといて、一年具体的に入っているのに、これからぼちぼち具体化しますということは労働大臣は言えない。そんなことは労働大臣は言えないと思うのです。しかし、その農民のことも商業のことも、日本の全国に労働力があふれて余っている。片寄って使われて、余って、労働力が埋もれているのですよ。これをどう社会のために、生産のために、国民が幸福になるために使うかというのが労働省の役割ではないですか。私はそう思うのです。だから、そこらはもっと的確に、きちっとひとつ秀才ぞろいの事務局は、もっとほんとうに真剣に取り組んでもらいたい。特に賃金の問題はそうでございましょう。私がイギリスと日本との例をとってみたけれども、そのとおりです。ただもう安い労働力のあるところにしがみついていこうというところだけで、何もないじゃありませんか。だから低賃金で、二百円や二百二十円で、たとえば二百七十円になったところで、二十六日働いて七千円じゃないですか、そうでしょう。二百七十円に賃金がきまっても、二十六日働いて七千円ですよ。だから私はやっぱりILOにおいても、だてには参加されておらないと思う。だから、やっぱりILOという世界の流れというものの中で、労働行政というものはどういう工合にやっぱりやるべきかということもお考えにならなければいけないのではないかと思う。
そこで、まあ文句ばかり言ったことになりましたけれども、ぜひこの委員会で、労働省も真剣に取り組んでいただいて、何もこう言ったからこうでと、言葉のはしばしをとってわれわれは議論したくはありませんから、だから、もっと実態に触れたことを掘り出して、大いに議論したらいいじゃないか。
そこで、炭鉱離職者の問題が、今度は少しことしは二十万のやつが二万五千人減って、三十七年度には十七万五千人になるのですか、そういう見通しだということなんです。しかし、あの議論を、だんだんとエネルギーの議論を聞いておりますと、日本は四十五年度に五千五百万トンだ、しかし、使うエネルギーは八千何百万トンですか、ということもいわれているが、その五千五百万トンと八千何百万トンの差はどうするかいうと、国内生産じゃない、こう言う。藤山さんはそうおっしゃっている、あの質疑の中から。そういうことでいいのか。そうしたら、石炭労働者というのは来年二万五千人減るけれども、機械化だということで、時間短縮も何にもしないで、来年二万五千人あるいは再来年はまた二万五千人、五千五百万トンの生産は、機械化生産によって石炭労働者は減るばかりだ。日本の石炭エネルギーは、そのほかは外国から輸入するのだ。日本にそれじゃもう石炭資源がないかというと、そうじゃないでしょう。燃料のエネルギーは、石油を主として、六〇%の輸入だということをいっておられるけれども、私は、こういうところにおいても、労働省は労働省なりに意見を吐かれていかれる余地が多分にあるのじゃないかと私は思うのです。どうなんですかね労働大臣、そこらのエネルギー対策の問題と石炭労働者の問題一つ取り上げてみても、労働省はどういう考え方でああいうことになるのですかね。ちょっと聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/14
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015・福永健司
○国務大臣(福永健司君) 前段お話しの点につきましては、私どもも強く御指摘のようなことを考えておる次第でございます。私は私なりに、労働行政というものがあと始末やしりぬぐいばかりではいけないのだというような観点から、積極労政という姿勢でありたい、こういうふうに表現をいたしておるのでございます。これはまあいろいろ多方面にわたってそういうような考え方であります。そこで、まあ前々から藤田さんも、完全雇用の達成、労働条件の改善というようなことと関連して、労働時間短縮の問題等も御指摘になっておられます。私も基本的には同感でございまして、こういうようなことを全体を考え合わせて、実は労働省に、もっと労働経済全体についていろいろの点を研究し、施策を確立していくというような機構に改めようという構想も実は立てたのでございます。新年度からというわけには参りませんでしたが、しかし、その中でも、賃金に関するものについては、前々から藤田さん等からも言われておりまするようなことを考慮いたしまして、まず前進しよう。で、行く行くは労働経済等について、今日の程度のことでなしに、労働省がもっともっと国の施策全体の中で大きな役割を演ずること、このことが先ほどお話のように、日本の勤労者全体に対しても期待に沿うゆえんだと、こういうように私どもは考えておる次第でございます。今後そういうような意味でのたゆまざる努力を続けていきたいと、こういうように感じておるわけでございます。まあちょうだいいたしましたお小言はけんけん服膺いたしまして今後に処したいと、こういうように存じておる次第でございます。
そこで、石油エネルギーとの関連や、まあ日本のエネルギー全体の政策がいかにあるべきか、これと石炭との関係、したがって、石炭労働者の今日の姿、それから将来どうであろうというようなこととの関連において、非常に重大な問題があるわけでありますが、労働省といたしますと、何としてもこの石炭産業はぜひ一刻も早く安定させてもらいたい、そういうことにおいてエネルギー政策全体の向上も期さなければならない。まあ先ほどのお話のとおりであるかないかは別といたしまして、こういうことだから労働者が出るのはあたりまえだというようなことでどんでん石炭産業が追い込まれていくようなことでは、われわれはもう非常に困るわけでございます。そういう意味から申しまして、外国の例等も実は藤田さんよくお引きになるのでありまして、私ども、確かにヨーロッパの国々における石炭対策等を、まあ十分ではありませんが、これを見聞いたしまするにつけても、日本の場合は、どうしても思い切って今私が考えておるようなことを考慮に入れた施策を講じてもらいたい、こういうように考えておる次第でございまして、まあドイツの例等も、この前も参りまして、向こうの労働大臣等からもいろいろ聞いて、大いに参考にしなければならぬということをつくづく感じておりまする一人でございます。エネルギー全体ではあるが、石炭というものに非常に重点を置いた総合エネルギー政策というもの、これを私は確立する必要を痛感いたしておるわけでございます。特に私は石炭労働者の立場を考慮して、それを感ずる次第でございます。この施策全体は、もとより労働省のみでというわけではございません。むしろ経済企画庁や通産省等を中心に総合政策が打ち立てられ、講ぜられていくわけであります。私どもはその間にあって、できるだけ労働省的センスによる主張を強くしていきたい、まあこういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/15
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016・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 僕はお願いしておきたいのですが、前段の議論で私はお願いしておきたいのだけれども、大臣もそうですが、むしろ事務当局に、私は、やはり大戦争後の世界の最近の姿、経済というような問題から見ても、それから国民生活の問題から見ても、まあ特に大臣は議会切っての国際的なエキスパートですから、これはもう私が申し上げることは釈迦に説法でございましょうけれども、しかし、少なくとも私はヨーロッパのOECとかEECとか、イタリアが復興したヴァノーニ計画であるとか、そういうものがどういう工合に国民生活と国の経済繁栄の道につながってきているのかどうかというような問題ですね、大いにそれは経済政策だ、経済計画だといわれればそうだけれども、一番基本的にとられているのは労働問題ですよ、この計画で。どれ見てもそうでしょう。国民生活、そういう点を一度資料としてここにお出しになって、これに対してなまの資料をお出しになって、そうして労働省としてこれをどう見ているかという説明もされたらどうですか。非常に私は日本の行政を進めるのに参考になると思うのですがね。だから、そういうこともおやりになったらどうかと私としては思うのです。きょうは第一日目ですから、あまり議論はいたしませんが、そういうことを、特に国際的なエキスパートである大臣が労働省に来ていただいたのだが、ぜひひとつそういうことをやっていただいたらどうかと私は思うのです。
それから、もう一つは、去年所得倍増論の政府の計画と、政府自身が主宰して行なわれた各民間部会の答申というものは非常にこまかく出ている。まあ、私の考えでは足らない面がたくさんあると思いますけれども、あの労働関係の雇用の部会なんかでも、やはり問題点は、把握できる限りの問題を把握して並べて、これが次への発展ということをずっと書いてある。ああいう問題もひとつ提起して、この社会労働委員会におかけになったらどうかと私は思うのです。
それから、もう一つは、どうも政府は日経連がものを言うとびびられるわけですよ。結局三十二年、三十三年のあのときと同じように、賃金はストップするのだ、ストップするのだと日経連が言い出すと、労働省は、何かしらん政府はそれに対してものを言うたらいかぬような姿勢をおとりになるけれども、そんなことで倍増論や経済繁栄というものはできるのだろうか。宝の持ちぐされの設備はどんどん拡大するけれども、操業短縮という問題もどんどん拡大していく、残るのは大企業だけで、中小企業は倒れていくという、財政インフレ、それから金融デフレという、そのままの格好が出てきて、ばたばた倒れていって、一番肝心な生産のほうの、いいところでも賃金ストップだ、賃金ストップだといって、国の経済がほんとうに外国と比べていいのか。私は、こんなことをやっていって、まともに近代国家と貿易ができるのかどうか、私はそれさえ国民の一人としておもんぱかっているわけです。そういうところの議論というものは、労働省が大いにやらなければ、厚生省が大いにやらなければいかぬというところへきているのではないか。だから、そういう点はひとつ資料をお出しになって、実態をここでお示しになって、労働省はこれについてこう考える、計画はこういう工合にいくんだというような格好のことを研究としておやりになることも、私は非常に国全体にプラスになるのじゃないかという気がいたします。だから、それはぜひお願いをしておきたいのです。
それから、もう一つなんですが、これは労働省は、今、職安局長は何か資料を持ってお答えになっていたようですけれども、その資料は委員に配っているわけですか。これはこの前、委員長とお約束をして、日本の雇用の状況や労働行政については、とにかくその資料をもってどうこうという委員会じゃないのだから、あらゆる資料はみんな提供して研究して、一番いいところをどこか見つけるということをやっていこうじゃないかという申し合わせで、資料を出していただくことになったのだが、労働行政調査の一枚の半ぴらの紙だけはきますけれども、その他の問題については労働省からこないわけですね。そうすると、社会労働委員会は、ここへ出てきてお話を聞いて、ああそうですかということだけで事は済んでしまうということじゃ、私どもの責任的な立場において非常に困るわけです。だから、日々の情報というものは、ぜひそれは出してもらいたい。特に三治職安局長は新進気鋭で、ぱりぱりとひとつやってもらわなければ、労働省の秀才といわれるのだから、これは大いにやってもらわなければ、私は期待しているのだが、どうなんだろうな職安局長、秘密に隠しておいてはどうにもならぬのじゃないか。これはひとつ大いに出していただいて、みんなに見せるようにしてもらいたい。そうでなければ、今お話しになったことは一つもわれわれわからぬじゃないですか。そうでしょう。それはぜひひとつ資料の問題はお願いをしておきたいと思います。まあ、大臣、予算委員会があるというので私も遠慮しているのです。ずっとここへおいでいただくということであれば、いろいろ質問したいことがたくさんあるわけですがね。どうなんでしょうかね、それ、委員長からひとつ聞いてもらって……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/16
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017・福永健司
○国務大臣(福永健司君) まず第一点の世界の動きの中で、日本の労働行政いかにあるべきかということにつきましては、もう大へん私は御意見を拝聴しつつありがたく存しておるわけでございます。どうしても国際的視野において、労働行政というようなものは進めなければならないと強く私は感じております。実はこれ私率直にそういうことを感じておるのでありますが、日本では金だとか物というものには非常に行政面でも力を置いた取り扱いをし、表現をしておりますが、どうもその人間のほうがその割合に軽くとは申しませんけれども、私の率直な感じからいたしますと、十分にその点に力点を置いた扱いをされてないような感じがするわけであります。私どもは、労働省というものは、人間の面の行政の大きな部分を担当している、こういうように考えておりまするので、労働省の発言権を大きくするということは、これはやはりいろいろ見方はあるかと思いますけれども、差し引きしまして、労働省の発言権が大きくなるということは、労働者のためになる、また、なるようにしなければならぬ、こういうように私はつくづく感じておるのであります。従来、まあ経済閣僚の集まりなどというと、割合に労働大臣というものはその仲間へ呼ばれなかったということ等が多かった。最近やや改まってきているように私も思うわけでございます。まだまだこれでは足りないのであります。どうぞひとつ有力な皆さんの応援をいただいて、こういうような方向へと、こういうように考えております。皆さんからちょいちょい施策がよろしきを得ないということでおしかりを受けますけれども、結局やはり何といっても労働省の力が大きくなるということは、やはり労働者のためだ、こういうように思いますので、よろしく今後ともお願いを申し上げたいと存じます。まあ所得倍増論なんかと関連して労働関係のこと等について問題を摘出して、むしろ皆さんに問題は問題として、ないし悩みは悩みとして、ここにお示ししていろいろお知恵も拝借するということ、これは私も望ましいことでございまして、ぜひ今後そうありたいと存じます。したがって、どうぞひとつ悩みとして申し上げることは、そんなことで悩んでおることがあるかといっておしかりをいただくことはけっこうですが、同時にこうしてうまくやれというお知恵もひとつぜひお貸しをいただきたいと、こういうように存ずるわけでございます。
三番目の日経連の、いろいろなことを言うことなんかに追随するとか気がねするとか、表現はいろいろ言葉がございましょうが、そういう傾向が政府にありゃせんかというような意味のことをおっしゃったのでありますが、少なくとも労働省はそういうことは考えていないのであります。私は私なりの所信を貫いていきたいと存じまするしいたしまするので、ぜひこの点については御理解をいただきたいと存じます。まあ賃金なりについて日経連がいろいろ言うということは、立場々々でものを言うのを、言っちゃいけないということは、これは言うわけにはいきません。これはけっこうだ。しかし、そういうことがあると、即自民党内閣は同じようなことを考えているのかというように早合点をなすって、いろいろお話もあることはあるのであります。さようなことはさらさらございませんから、ことに労働省はそういうことはございません。この点について御理解をいただきたいと思います。それにつけてもやはり、したがって、労働省の発言権をより強くすることがいろいろ御指摘のような問題を正しく解決していくのに必要であろう、これは手前みそではありませんけれども、私はつくづくそう感ずるのであります。労働面、人の面というものをどうしても重視しなければいけない。私はこの前のケネディの一般教書を見て、内容はともかくといたしまして、一番先に出してくるのは、労働問題を出してきておる。それは非常に長く、それから物の面、金の面というようなことになっている。これなるかなという——別にケネディを礼賛するわけじゃございませんけれども、少なくともその表現の仕方、力点の置き方の順序ということについては、私は非常に、やはり大いに参考にしなければならぬなあという感じを受けたのであります。内容について申し上げているのではございませんが、そういう重点の置き方については、私は考えていきたい。ヨーロッパ等においても、今お話がありましたような工合に、確かに日本とはかなり違うのであります。どうしても日本の政治の全体の中における労働行政というものの位置づけというものを、この辺で少し格差是正ではないが一するより、むしろ従来の考え方とかなり逆になるようなところまで持っていかなければならぬ、これを強く感じて、いささか熱情を実は燃やしつつあるところなんでございます。ぜひ応援を願いたいと思うわけでございます。
資料の提出等について御注意をいただいたのでありますが、これから努めて正直に出すことに——間々役所の資料というものは、出しますとついしかられるもとなんかになるものだから、どの役所でも割に出したがらないのであります。私どもは出すことにいたします。したがって、情勢の変化等で一度お出ししました資料でも時の推移とともに必ずしもそのとおりでなくて、時点の推移に従って数字等は違ってくるようなこともありましょうが、そういうことを御理解を得つつ、私どもできるだけ今後皆さんにも資料をお出ししまして、見ていただいてというように考えております。この点は事務当局の諸君にも私は徹底するように申します。まあ従来、御注意をいただいたようなことがあったかとも思いますが、今後大いに気をつけたいと存ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/17
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018・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 もう一つ、私はお願いを、きょうはこの問題だけに限ってちょっと発言をしたのですが、ILOというものをどうも、政府全体と私言うたら言い過ぎかもしれぬけれども、一般的にいわゆる労使関係の問題というような見方で、経済との関係において労働保護というもの、そういうものがILOの一つの大きな役割を持っているというようなことについて、どうも把握が足らないのじゃないかという気が私はするわけです。だから、各官庁を呼んでこうずうっとILOの議論をしてみたってそうだと思うのでありますが、ILOは通産行政にどう関係があるかとか、外務の行政にどう関係があるんだというくらいの認識しかないのが、今の全体のILOに対する見方ではないか、私はそういう工合に感じているわけです。ですから、ぜひこれは、国連にも参加されて、国連の有力メンバーになっている日本が、これでは今大臣がいろいろ言われたものとのギャップが出てくるのはあたりまえのことなんで、ILOというものをもう一ぺんひとつ、どっかと落ちついて、ILOの役割というものはいかなるものなのかということも、政府の部内でひとつ研究会かなんか持ってもらえたらどうかと私は思うんです。政府の部内でですよ。どうも私もILOに初めて参加したとき代表で行った当時を思い出してみると、三者構成できまっても、日経連や経団連は、そんなものは従わないんだと、ILOに参加するときだけ一生懸命にやって、内容へ入ってみて、多数できまったあんなものは日本で従わなくてもいいんだと、そういうような、もう推進運動から一ぺんに手を引いてしまって、ILOの本質をつかもうとしていないという経営者団体の動きを見て、私は今まで残念に思ってきた。政府の部内でもそれに——気がねだと言ったらまたあなた、そうでないとおっしゃるから言いませんけれども、そういう傾向を持っておるんじゃないか。だから、ILOの問題というのは、通産行政には非常に重要な問題だから、私はいずれここへ来てもらって十分にひとつ議論をしたいと思うんですけれども、そういう点、少しILOそのものを見る目を政府はもう一ぺんお考え直しになったらいいんじゃないか。それは労働省が指導してやらなければできぬことですから、これも一つつけ加えておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/18
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019・福永健司
○国務大臣(福永健司君) ILOについての再認識という点につきましては、確かに御指摘のような節もあるように私も感ずるのであります。まあこの再認識ということについて、労働省が能動的に役割を果たさなければならないということは当然で、そのようにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/19
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020・阿具根登
○阿具根登君 大臣、忙しいようですから簡単に質問いたしますが、本国会の大臣の基本方針の御説明がありましたが、その説明の中から二、三御質問申し上げたいと思うのです。藤田君、さっきちょっと触れたようにも思いますが、まず第一、第二は、石炭問題に関連しておりますから、あとで法案のときに質問いたしますが、第三から質問いたしますと、「経済の繁栄と民主主義の発展とは、健全な労働運動の進展」によりと、あるいは「労働慣行の確立に負うところが」大だ、こういうことを言っておられるわけですね。労使慣行と言われる場合に、「健全な労働運動」ということを言われるけれども、今度は一方の経営者については何も触れてない。そうすると、今日まで経済に阻害が少しでもあるとするならば、それは健全なる労働運動でないためにこうなったんだ、こうとしか解釈できない。大臣の基本方針の説明において、労使慣行、労使の双方の紛争の問題に触れる場合、今日まで労使の紛争は絶えずあっておりますが、それに触れる場合には、一方の労働者側に対するこういう大臣の所信を表明されるならば、相手側の経営者に対しても所信の表明があるべきである、たとえこれが中立的な立場にあっても。そうしますと、大臣の考え方は、労使慣行の確立に負うところがきわめて大きいのであるが、その前に、まず健全な労働運動だと、こういうことを言っておる。一体、「健全な労働運動」とは何か。今の労働運動は健全ではないのか、触れておらない経営者のやり方は正しいのか、こういう問題になってくると思うのです。だから、一方的に健全な労働運動ということを触れておられれば、これを見る人は労働運動が行き過ぎであるとか、あるいは足らないから今日のような事態になるのだということは一方的に聞こえる。これでは、どうも労働省の所管大臣として、何か労働者だけを戒めて、一方を戒めておらない、こういうことに私は聞こえる。これは、この委員会を通じて、国民へのことしの労働行政についての基本的な大臣の考え方だから、はっきりしてもらわねばならぬ。そういう点から「健全な労働運動」とは何か。今の労働運動が健全でないならば、どこが健全でないのか。そういう点が一点。経営者は一体正しいのであるか正しいのでないか、その点をはっきりひとつ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/20
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021・福永健司
○国務大臣(福永健司君) 「健全な労働運動」という表現でございますが、健全でないというようには書いてはないのでありまして、これは一般論といたしましてこういう表現をいたしましたのでございますが、まあ、法治国のもとにあって、順法精神について表現するようなつもりで、この表現をいたしておりますわけでございます。今日の事態が、経済も漸次繁栄してきたし、民主主義が成長してきておりますということは、健全な労働運動が多くあったからこういうことになったということにも読みかえられると思うわけでございます。経済が衰退しておるとか、民主主義が逆行しておるとかいうことでございますと、御指摘のような工合にも読めると思うのでございます。経済は発展しつつあり、民主主義は成長しつつあるという姿と見比べますと、そのことについて、健全な労働運動が役割を果たしてきたと、こういうようにむしろ読んでいただけば、こう書いたことが、かえってこの表現を書いたことについての意義を持つことになろうかと思うわけでございまして、私は、ことさらに経営者のほうはいいんだが、労働者のほうがというつもりではさらさらございません。今申し上げましたように考えておるわけでございます。それと、また「健全な労働運動」ということにつきましては、やはり経営者側での無理解があると、勢い健全でないような労働運動を誘発するということもあり得ると思うのでございます。これは、決して労働者のみに目標を置いて申しました表現でないのでございます。従来とも経営者の無理解や、あるいは労働法規ないし行政等についての十分な理解を欠除するということ等が、いろいろな阻害になっておりました事実もありましたことは、重々承知をいたしておるのでございます。こういうことがあってはもとよりならないわけでございまして、言葉が足らないといえば足らないのでございます。私の真意はそういうような次第でございます。しかし今後におきましては、両方表現することが勘違いを生じないゆえんであるということに意を用いまして、気をつけたいと存じますが、今どき私が表現いたしましたところの意味のものは、今申し上げましたようなことでございます。御理解をいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/21
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022・阿具根登
○阿具根登君 それでわからんではないけれども、そのあとに、さらにあなたが、健全なる労働運動と民主主義の発展によって今日の経済の繁栄を来たしてきたのだと、こういうように言われておることもわかります。そのあとに、「自由にして民主的な労働運動の発展」云々と、こうなっておるわけなんですね。そうすると、それが裏書きしておる——どうしても一方は、経営者は近代化されているのだ、しかし労働者が近代化されておらないのだということが、これは裏づけしてあるわけなんです。一番最初言われているのは、「労使関係の近代化について申し上げます。」、こうなっていますね。そうしてその近代化するためにはどうだ、繁栄はこうであったけれども、まだ自由にして民主的な労働運動ができておらないから、この近代化ができておらないのだ、こう規定づけられるわけです。そうすると、どうおっしゃられても、経営者は近代化されている。そうしてこの繁栄の基礎を作っている。しかし、労働者がまだ民主的な自由な労働運動をやられておらない。だから、これを伸張させねばできない。こういうことに一方的に、これはどの文章を見てみても、きめつけられているわけなんです。もしもこういうことになってくるとするならば、生産性が今日これだけ上昇線を示してきて、それに沿うた、それでは労働者の待遇がされているかどうか、こういう問題、これは藤田君が質問したと思いますから避けますが、私はもっとその点は考えてもらわなければならない。非常に生産は上がってきた、生産は上がってきたけれども、労働者の数は減った。事実そうなんです。労働者の数は減って、生産は上がってきた。それは相当な利潤があるはずである。もちろんそれは施設に回されることもそれはあります。それも否定はしませんが、しかし、それは労働者に還元されているかという問題になってくると、それが還元されておらないから、今日の労使の紛争ができている。ところが、それは言わずに、自由にして民主的な労働運動の振興をこれから考えるということになってくると、ちょっと別なんですね。「自由にして民主的な労働運動」というのは何なのか、今の労働運動は自由にして民主的ではないのか。だれかが独裁で勝手にやっているのか。一般の意見は入っておらないのか。こういうことが裏づけされてくるわけなんです。だから、全般に流れているものは、これは労働者諸君よ、もっとおとなしくやりなさい、ということに極言するとほかならぬと私は思う。基本的な問題だから、私はくどいことを言うけれども、労働大臣が基本政策を発表される場合には、経営者の諸君ももっと目を開いて、そうして他国の労働者の生活実態を見てみろ、日本の繁栄がここまできたというのは、とりもなおさず労働者が非常に働いてくれた、このことも忘れちゃならない。生産性が向上するならば、その還元を当然労働者にやるべきである。こういうものがあって、さらに、労働者諸君よ、もう少し自由に民主主義的にやりなさいと、両方に対して、これは一応労働大臣の立場から言われて、そうしていい労使慣行を作って下さいということならわかるけれども、一方でこれだけ繁栄をしているといいながら、今日労使関係の紛争が絶えないというのは、労働組合がまだ民主的じゃないのだというようなきめつけ方になっているから、これは非常に一方的であるし、これでは労働省に対する信頼が薄れていくのじゃないか、こう考えるわけなんです。その点、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/22
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023・福永健司
○国務大臣(福永健司君) 御注意のような見方もあろうかと思いますが、率直に申しまして、労働者は労働省の子だというような親しみといいますか、そういうような気持もあるわけです。(「そんなことないわよ」と呼ぶ者あり)いや、そうなんでございまして、別にそんなに強く意識しているわけじゃございませんけれども、どうも経営者のほうは、通産省その他のほうが関係のような——そうばかりじゃないのでございますが、そこで労働省、役所の名前が労働省というがごとく、何といいますか、私どものほうは、労働者諸君との関係が、まあ労使双方ともに関係があるわけではありますけれども、特に深いように意識し、実際問題といたしまして、私どもの役所に出入りする人は、経営者側はあまり、そうは参らないのでありまして、労働者諸君のほうが圧倒的に多いわけでありますが、日ごろそういうことが頭にありまするのでこういう表現に勢いなったということでございますが、本意といたしますところは、決して経営者のほうが近代化されておって、労働者のほうがそうではないというようなことを私どもは考えておるわけじゃございません。しょっちゅう答弁等において申し上げておりますように、経営者側、ことに中小企業なんか等におきましても近代化されていない面などがかなり多いのであります。これはしょっちゅうわれわれが事実を率直に申し上げて、したがって、どうあらねばならないかということの見解の表明をしておるとおりでございます。しかし、まあお話を伺いますにつけて、幾ら労働省でも、経営者についての表現もしておくほうがさらに誤解を生じないゆえんでございます。今後はそういう点にも気をつけたいと思いますが、先ほども申し上げますように、つい自分のところの子供のことだ、自分の子供の話をするというような表現で、自分の子をあまりほめるというより、やはり自分の子供については、うちの子はこうなってもらいたいというような表現になりがちでございます。しかし、あまりくさしておるわけではございません。先ほども申し上げたようなつもりで、日本経済の成長に十分労働者諸君は役立ってくれておるわけでございます。先ほどおっしゃいました生産ないし生産性の向上の成果が労働者にも、それから企業そのものの体質改善等のほうにも、さらにはまた一部は製品価格が下がるというようなこと、ないしは製品がよくなるというようなことにおいて一般国民への寄与、こういう三方面に向けられなければならぬのは申すまでもないわけでございます。わけて、労働省といたしましては、労働者諸君にそういう成果が分け与えられねばならないということは重々心得ていかなければならないところでございます。そういう表現はいたしてはおりませんが、これは自明の理というか、当然のことであるというようなつもりで書いてないわけでございます。書いてないから、そういうことは考えていないということではございません。この点も御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/23
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024・阿具根登
○阿具根登君 自分の子だからと言われることもわかりますけれども、自分の子をそういうふうな目で見られるとひがみますから、ひがまないようにその点お考えいただきませんと、自分の子だけはしかってよその子をほめる、実際の親心はそうではないでしょう。悪い子でも自分の子はよいように見えるのが親心でしょう。よく考えてもらいたいと思うのです。
それから、私はある所でこういうことを聞いたことがあるのですが、たとえば、閣僚会議等がある場合に、近代化とかあるいは合理化とかあるいは貿易の自由化、そういう問題がはなばなしくあって、そのしわ寄せは吐き出された労働者の問題になってくるわけですね。そのときに労働大臣がもっとその点がんばってくれたらという声を聞いたことがある。予算折衝になって、そうして金くれ、金くれ——今日までがんばってもらったことを感謝いたしております。しかし、予算折衝の、予算の問題になってから、金くれ、金くれ、こう言われても通らない、政策を立てるときに、それでは私のほうは全部受け身だ、相手は企業です、相手は貿易である、合理化である、非常にいいのです。労働省は受け身で、今度それからはみ出した人の処理なんです。その閣僚懇談会なら閣僚懇談会において政策を立てられる場合に、私はそういうはみ出した労働者は受けられません、それは受けられない、そのときに受けるためには一体どういうものをもっていくのだということをもっとやっていただいておったならば、ここまで進展しなかったであろうし、あるいはもっと政策面にも反映することがあったかもしれない。しかし、労働大臣はどうも閣僚会議の中に入れば、出たものはよろしゅうございます、引き受けましょう、こう言って男を上げたがる。こういうような、これは雑談ですからだれが言った、彼が言ったじゃなくて、それが真偽はどうかということでなくて、私はやはり経済問題をやる場合に、経済の発展だ、あるいは機械を入れる、あるいは合理化するというのははなばなしくていいけれども、その際に、それでははみ出した労働者が一番じみだ、労働者は一体どうなるのだ。そこでくぎを強く押しておけば、予算のときも非常に骨を折らぬのじゃないか。そのときは貿易自由化だと言えばそのとおりだ、近代化だと言えばそのとおりだ、生産性向上だと言えばそのとおりだと、これはなかなか反対しようがないだろうと思うのです。そうしておいて、今度はしわ寄せがきたときに大蔵省に、じだんだ踏んでも、もう歯車が回ってしまっている。なぜ歯車の回る前に、そうすればこれだけの失業者が出てくる、私は受けられぬ、そんなことは受けられない、まず労働者をどこに当てはめるか考えてくれ、出てくる労働者一体どうするのだ、まずそれをやろうじゃないか。家の中を掃除してきれいにしましょう。それはわかる。ごみは一体どこに捨てるのだ。これは非常に語弊がありますけれどもですね、労働者をごみみたいに考えておるならばそうかもしれません。私はそう考えていないから、言うたけれども、合理化するという、あるいは機械を入れてくるというならば、人力が余ってくることは理の当然です。しかし、それもいけぬということもできない。そうすれば、一体この労働力をどう持っていくのだということがまずそのときに論議されなきゃいかぬ。ところが、その合理化だけ先回りしておいて、そのあとで出てきた労働者が騒ぐ、騒げば自由にして民主的な労働組合を作ると、こういうような言い方では、私は労働者は助からぬ。だから、なぜ歯車回るときにどれだけの労働者が出てくる、こういうことが論議されないのか、私はこう思うのですが、その点、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/24
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025・福永健司
○国務大臣(福永健司君) ただいまの点は、私、常日ごろ強く感じておる点でございまして、そういう意味において私は少なくとも、私が願うところの労働行政というものは積極労政だということを表現いたしておるのでありまして、例にあげます場合においても、失業者が出るのがあたりまえで、出たものをこうしろというようなことの行政であってはならぬ。失業者を出さないようなことをする労働行政でありたい。これが積極労政であるという、実はその積極労政の例の中にまずあげる例がそれなんでございまして、まあ人間のからだで申しまするならば、病気になって医者にかかるよりも、病気にならないようなからだにする、こういうような意味において積極的な労政を推進していきたいというのが切なる私の念願でございます。
そこで、私、実は閣議でどう言ったということを申し上げるのもいかがかと思いますが、機会あるごとに、私は今阿具根さんのおっしゃるような立場での発言をいたしておるのでございます。そこで、先ほど藤田さんにもお答え申し上げましたように、どうしても、もっと労働行政面からする発言の強化をしていかなければならない。先ほどおっしゃったようなことについても、こうすればこうなるのだということについて、まあ労働面への影響を考えての考慮を初めからしながら施策を講じる、ないしは計画を立てるということであらねばならぬということを私強く感じておりまするし、実はそういうことに一番今気をつけておるつもりでございます。まだなりましてからあまり日もないし、大した成果も上がっていないので、成果が上がらぬのはお前が主張もしないで、ぼんやりしているからだろうということになろうかと思いますが、これは確かに、もう成果を上げてからでないと、そういうようにいたしましたということは申せないわけでございまして、ひたすらにそういうことは考えておりますが、考えておることが実績に現われるように、今後大いに努力をいたしたい。御注意は非常にありがたい御注意でありまして、私は今後強くそうありたいと念願しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/25
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026・高野一夫
○委員長(高野一夫君) じゃ、ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/26
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027・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 速記をつけて。
それでは、本件に対する本日の質疑は、この程度で終了いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/27
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028・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 御異議ないと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/28
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029・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 次に、炭鉱離職者臨時措置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/29
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030・阿具根登
○阿具根登君 じゃ、大臣に御質問申し上げますが、去年の十月三十一日に、衆議院のほうで石炭産業危機打開に関する決議案というのが出されて、決議されておるわけです。そのあと参議院の商工委員会でも決議されております。その中の三項目に、「転換職場と生活保障のない合理化とならないように指導」をするということになっておるわけなんです。ところが、現実は転換職場もない。生活の保障もなくて、合理化がされておる。一体どこを指導されたのか。国会が、衆参両議院で決議をしておるわけなんです。ところが現実の問題は、この法律案にもあとで触れていきますが、実際のその転換職場もない、生活保障もない、そのまま合理化が行なわれてきておる。なぜこれを指導しないのか。こういうことを指導しない限りには、結局先ほど触れたように失業者、出た人間をどうしようかい、一ぺん首を切っておいて、これはどうしようかいというような相談をしなければならないから、切られた人は塗炭の苦しみをしておる、そういうことのないために、合理化をやる場合には転換職場を見つけなさい、生活の保障をしてやりなさい、そうして職場を離れていく、それが前提だということを衆参両議院で決議しているわけであります。その決議が尊重されておらない、そうしてこういう法律案が出てくる、出てきた法律案はこれは失業者に対する対策です。これは大臣も先ほど言われたように、首を切らないのが政策だ、失業させないのが第一の労働行政だと言われた、そのとおりなんであります。それを裏づけするように両議院が、そうしなければならぬぞと決議している、ところが実際問題は、今日出されたものは、失業者をどうしましょうという法律案なんです。これは、国会の決議を軽視されているもはなはだしいと私は思うのですが、この点、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/30
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031・福永健司
○国務大臣(福永健司君) お説のように、このなにはまず、たとえば、あとの就職がきまった者を、合理化ということで首にするという意味になれば、確かにお話のような意味においての不都合はないわけでありますが、この最も望ましい姿はそういうことではございますが、現実的にはやはりある程度あとの処理をどうするかということ、まあ労働省とすれば、先ほどもお話のような、そういう措置が必要でないということであればたいへんありがたいのですが、なかなか現実そうも参りませんので、そこでまあ十分御承知をいただいておりまするように、いろいろの新しい施策、まあ、たとえば雇用奨励の措置をとって、できるだけ雇用が促進されるようなことにしたいとか、あるいは北九州のように特に石炭離職者の滞留する者が多くなることが当然予想されるところには、機構的にも、新たに安定事務所を置いて、そうして従来よりもかなり進んだ広域職業紹介の行なわれるように持っていくとか、あるいは御決議にはありませんでしたが、私ども考えて十分の資金量ではありませんけれども、とりあえずまあ雇用調整のためというので、初め大蔵省もなかなか承知してくれなかったけれども、ついに言うことを聞くことになったのでありますが、雇用調整のための特別融資の措置その他いろいろございますが、おおむね御決議をいただいた御趣旨に従っての措置を講じましたわけでございまして、先ほど御指摘になりました文字は、読み方によりましては確かにお説のようなことにも解せるのでありますけれども、まあその精神を受けて、離職いたしました者ができるだけすみやかに生活の安定を得て、また再就職の機会を得るということになるような措置をいろいろ講じて対処していくということになるわけでございまして、これは現実の問題をあげてお話しでございますが、将来そういう趣旨に沿うようにできるだけして参りたい、こういうように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/31
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032・阿具根登
○阿具根登君 たとえばですよ、確かに広域職業紹介とか、あるいは職業訓練とかというのに力を入れられておるのはわかりますよ。しかし、今度の炭鉱の場合、これは政策によってこういう失業者が出てくるんだと、こういう合理化をしなければならないということはお認めだろうと思うのです。油をじゃんじゃん入れてくる、そしてエネルギーの変革だなんとかということで、実際国内産業が非常な窮地に陥って、これは石炭ばかりじゃない、これは鉱山全部ですが、こういう事態になってきたというのは、これは一つの政策の変更であります。今日までは、まあ古いことを言えば戦争中は、石炭の一滴は血の一滴であるといって、坑内を下げてうんと掘らせてきた。戦争が済めば、日本の煙突から煙が上がらないようになりました。炭鉱の皆さん、米をあげます、服をあげます、一つ石炭を掘って下さいといって、あちこちから労働者を集めて、石炭を掘らせてきた。少し時勢がよくなれば、石炭労働者はもう要らないと、こういうようなことは、これは政府の責任だと私は思うのです。一企業だけが責任を持てるものではない。政府の責任だと思うのです。そうすれば、これこそ政府の政策によって職場転換をはっきりきめた上で、そうして納得づくで転換させなければならないと私は思うのです。かりにどこかの国で動乱が起こってみたり、あるいはスエズ運河のような問題が起こってみたり、あるいは運賃が高くなって、船賃が高くなったり、そうした場合に、日本は一体エネルギーを何をもって日本のこの経済をささえていこうと思うのですか。そうした場合に、また石炭の一滴が血の一滴である、あるいは石炭がなければ日本の経済がつぶれますといっても、労働者はもうついてきませんよ。ついてきません。外国に依存して、輸入に依存して日本の経済をささえていくならば、外国の事情が変わった場合は、必ず私はそういうことがあると思うのです。大臣もドイツに行かれたから御承知と思います。あれだけ完備され、労働者を優遇しているドイツでさえも、きょうの新聞で御承知のように、一つの炭鉱が爆発して、二百数十人の人が死んでいる。そういう苦しい炭鉱をやっている。おそらく大臣にはそういう必要はないかもしれないけれども、大臣が失業して飯が食えなくなっても、坑内での仕事は大臣はできないです。そういう苦しい産業をしている人を、時の情勢のまにまに政府が利用して、それでいいのか。これこそ私は政府の責任で次の仕事を、食えるだけの仕事を見つけてやって、初めて転換しなければならない。これは労働大臣の一番大きな責務だと思う。通産大臣にそういうことを言っても、あの人はどっちかといえば業者の立場です。ですから、油業者の代弁をするし、石炭産業の代弁をする。あなたは労働者の代弁をしなければならぬ人です。そうするならば、私は基本的な問題で相当対立すべきだと思うのです。その点が一点。
それから、そういう国の政策によって、多量の労働者がちまたにほうり出され、しかも仕事がない。そうして黒い谷間だ、地獄だということがいわれている。社会問題になっている。ところが一方どうです。政府がやっている郵便物は、年末になれば、遅配だ遅配だ欠配だということで、わんさわんさと騒いでいる。そうして政府も認めて、二万人近く、一万数千人の人を新しく雇います、こういうことをいっているわけです。一体どうしたことだ。同じ政府の政策でやるなら、そういうところに多量の人が要るなら、なぜそういうところに炭鉱の労働者を持ってこないのです。ほんとうにやる気があるならばできるはずです。それを広域職業紹介をやって、阪神方面の中小企業に、あなたのところに人間は要りまませんか、あなたのところに人間は要りませんかといって、まあそれはありがたいことではありますけれども、年をとっているから雇いにくい。それならば、五千円なり七千五百円なりつけて、そうして政府が金まで出すから雇ってくれぬか、家も少しではあるけれども補助するから雇ってくれぬかといって、仕事を探してもらっている。その点は感謝しますよ。感謝するけれども、同じ政府の機関内で、郵便局は人が足らぬ、それを政府も認めて二万に近い人を採用するといっている。なぜそういうところに炭鉱の労働者を持ってこないのです。郵便配達が炭鉱労働者にできませんか。集配ができませんか。いかに単純労働者とはいえ、私はそういうことのできない労働者はないと思う。炭鉱の労働者でも、あて名の読めない労働者は今おりません。本気でやるなら、政府部内、政府の所管の中で仕事ができる。一体こういうことはどうしてできないのだろうか。それは漫然とできるということはないですよ。しかし、こういう政策によって出てきたのは、政府の責任でやるならば、相当な障害があってもやるべきである。民間に押しつけるくらいならば、政府の所管している省で人が足りないならば、それも高級職員にせよとか何とかということではないのです。そうではないのです、足りないのは。そういうところに持ってくれば、何万という人がさばけると私は思うのです。そのための官舎を作ってもいいじゃないですか。補助も出していいじゃないですか、政府の仕事だから。どうしてそういうことができないか。その二点についてお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/32
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033・福永健司
○国務大臣(福永健司君) 第一点につきましては、御説のような御趣旨にも沿うようにというので、十分とはいっていただけないかもしれませんけれども、この種の離職者に対しまして特別の施策を行なうわけでございます。また他の業種の労働者とはそういう意味では差ができておるわけでありますが、私どもはこの程度の特別のことは当然であると、そういうように考えて施策を推進するわけでございまして、御注意の点は重々心得まして、今後さらに、より強力なる施策の推進を考えて参りたいと存ずるわけでございます。
それから第二点、同じ政府の関係で処理する問題であるのにということで、郵政の関係のお話がございました。実は事務的には郵政省の方へただいま阿具根先生お話のような趣旨によりまして採用するように実は申し込みをしておるのでありますが、実はまだ返事を得ておりません。ただいまもお話をいただきましたので、私みずから郵政大臣に強く申し入れをいたしたいと存じます。当然お話のようなことは私どもも考えていかなければならぬことでございますので、一そうお説の点に気をつけまして対処していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/33
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034・阿具根登
○阿具根登君 この点は予算委員会で質問しようと思ったのです。この委員会でも、予算委員会でも、こういう問題は質問したくなかったが、だから、郵政大臣でも、個人には話しておるのですね。われわれが行ってそうしたというよりも、政府の責任においてこうするんだということを言ってもらいたかったから、私は私の口から公式な場所で言いたくなかった。しかし、それが実らぬからこういう公式な場所で言うようになったんだ。これは郵政の問題が今出ておるから、一つの問題として出したわけです。しかし、考えてみれば、これは直接関係がなかったにしろ、たとえば学校の小使いさんですか、今は何とか名前が変わっておりますが、そういう人の問題とか、あるいは自治体の雑役というのですか、こういうような人たちも交付金でふやすなり何なりして、政府の政策によってやったんだから、なるたけ政府機関で一つ就職も探そうし、生活の安定もみてやろう。そうして民間でまかなえるような若い人は民間にそれじゃどんどん出しましょう、民間は若い人が足りないから、若い人は民間のほうになるべく行くようにしなさい、四十から五十になって中高年令で、子供が四人も五人もおって、そうして吐き出された人はいよいよ生活に困っている。皆さんの白書の中にも入っている。中高年令層の就職が非常に困難だ。困難なものは政府が政府の機関内で収拾する。私はこの親心がないなら、いかにわれわれが決議しても何にしても、出されたのはその場限りのものであって、実際はこれは生活保護に落ちる以外にないのです。生活保護に落として金をつぎ込むぐらいならば、政府の末端機関まで目を光らしてやりなさい、金がなかったら交付金なら交付金を出しましょう、そういう積極的な政策が私はほしいのです。そうしても出てくることはわかっているのです。それをこういう方策なり、こういう方法で救いましょうというならわかるけれども、自治体にしろ、あるいは所管省にしろ、なるべくそれが要らない、こういう格好であるから、これは政府の皆さんの口から言ってもらいたかったのです。私は政府の責任で、こういう政策によってこういう失業者が出たんだから、民間で一番雇いにくいのは政府の末端機関でも十分話し合って、そうしてそれに要る経費は出そう、同じ政府の問題だから。そういうことをすれば、やはり政府の、労働省の親心でこういうことになってくる、身分も保障される、そういうことで、トラブルが非常に少ないということになる。そうしませんと、たとえば、法案の中にこれは入っておりますが、たとえば二万円のところには五千円出しましょうということで、政府から金を出す法律なんですが、それは確かにいいことだけれども、実際われわれが世話してみると、一万五千円出しましょうというのはそうざらにはないのですよ。大体一万二、三千円、一万四、五千円、そうすれば、五千円は一年間は出るから、一万五千円でも二万円の給料が払える。しかし、一年たつと政府の補助金が出ないようになれば、雇った人は二万円出しますということはなかなか言い切れない。言えない。それじゃ一体どうするか。そうしますと、たとえば、二万円で雇いましょう、しかし、それは実質は国から五千円いただくから、一万五千円で雇うのですが、家も作ります、二十万円補助金をもらった、一年たったら五千円下がったから飯が食えない、私は帰ります、あるいは使い切れないといった場合に、業者は一年間は政府の補助金をもらって人を雇った、二十万円の補助金をもらって家を建てた、その後は何もしてくれない、五千円のかわりは何もないということであれば、一番ばかをみるのは労働者だ。今度は一体どこに行くのか。今までは政府がお世話して下さった、家も建てて下さった、金も五千円下さった、一年たったら家もない、金は五千円とられておる、子供は五人——一年たったら、その人は今度はどこへ行くのか。一体どうなるのか、そのときは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/34
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035・福永健司
○国務大臣(福永健司君) 今お話のようなことにつきましては、郵政のみならず、私は御説の趣旨を体しまして他の閣僚諸君にも適当な方法においてそれぞれ連絡をとりまして善処したいと存じます。一年後のことにつきましては、私も今のお話のようなことにつきまして、だいぶ先をおもんばかりまして、一年でなく、もっと長い措置がとれないものかというような折衝も実は大蔵省ともいたした経過はあるのでありますが、ただいままでのところ、一年をこゆる措置をすることには話がまとまらなかったのでございますが、できるだけ私はこういう点については、採用してくれる雇用者、雇用主のほうで深い理解を持って、一年たったら政府が金を出さなくなったから、そこで離職をする、その他のことにならないように、あとう限りの心配りをして、理解を求める措置をとっていきたい、こう思っておる次第であり、また、非常に苦しい事情のもとにおいて作業をされていました炭鉱労務者の諸君がほかへ行きまして、真摯な態度で仕事に従事されれば、一年後にそういうことにならないようになるであろうことを衷心期待いたしているわけでございます。しかし、それにしましても、今、お話のような点につきましては、私もひそかに心配しております一人でございまして、今後いろいろ検討してみたい、こう思っております。
一年先のことになるわけでございますが、一年だけの措置で、あと、ほんとうにうまくいくかどうかということについては、われわれも確かにある程度頭が痛いのであります。しかし、先ほど申し上げましたことで、今まで現われております、成果といたしましては御承知のようなことなんであります。なお、努力さしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/35
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036・高野一夫
○委員長(高野一夫君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/36
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037・高野一夫
○委員長(高野一夫君) それでは速記をつけて。
本件に関する本日の質疑は、この程度で終了いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/37
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038・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 御異議ないと認めます。
本日の審査はこれをもって終了いたします。次回は十三日午前十時より始めます。
本日はこれをもって散会いたします。
午後一時三分散会
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00619620208/38
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