1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年二月十三日(火曜日)
午前十一時二分開会
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委員の異動
二月八日委員中野文門君辞任につき、
その補欠として山本利壽君を議長にお
いて指名した。
本日委員森中守義君辞任につき、その
補欠として永岡光治君を議長において
指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 高野 一夫君
理事
鹿島 俊雄君
村山 道雄君
阿具根 登君
委員
勝俣 稔君
佐藤 芳男君
山本 杉君
横山 フク君
永岡 光治君
藤原 道子君
相馬 助治君
村尾 重雄君
石田 次男君
国務大臣
労 働 大 臣 福永 健司君
政府委員
労働政務次官 加藤 武徳君
労働省職業安定
局長 三治 重信君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
説明員
労働省職業安定
局調整課長 北川 俊夫君
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本日の会議に付した案件
○炭鉱離職者臨時措置法等の一部を改
正する法律案(内閣提出、衆議院送
付)
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001・高野一夫
○委員長(高野一夫君) それでは、ただいまから本日の社会労働委員会を開会いたします。
この際、委員の異動について報告いたします。二月八日付をもって中野文門君が辞任され、山本利壽君が選任されました。
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002・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 炭鉱離職者臨時措置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/2
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003・阿具根登
○阿具根登君 まず、住宅問題から質問いたします。
炭鉱労働者のアパートを名古屋、大阪地方に建てていただいたですね。その場合に、炭鉱労働者を収容するということであったわけなんです。ところが、それは一年後には、雇用者が住宅を建てなければいけない、一年たったら出ていけと、こういう条件付なんですね。だから、実際今度いよいよ雇用されていくようになって参りますと、雇用者が一年たって家を建てるだけの資力がない。また、意欲がない。また、新しく採用した人に家を建ててやる前に、古くからおる人に家を建ててやらねばならない。そういうことで、非常にこれが隘路になっておる。まあこういうアパートに一ぺん入れたが最後、何十年もそこに入っておるのだということは無理かもしれないけれども、あんまり頭から、一年たったらば雇用者は住宅を建てにゃいかぬ、あるいは公営住宅に優先的に入れてやる、こういうことになっておるけれども、公営住宅に優先だといっても、その公営住宅があいておるわけでもないし、また、あいておっても、入る条件というのもきびしいし、家賃も非常に高い。そうして、一年間ではそういうものを克服するだけの給与体系にもなっておらない、待遇も優遇されておらない。こういうことで、一年みれば、もうあとはどうでもいいのだというようなことになるのだが、この問題についてどういうふうにお考えになっておるか、まず一点質問申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/3
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004・三治重信
○政府委員(三治重信君) 炭鉱労務者用のための賃貸住宅につきましての御質問でございますが、御質問のような格好になっておりますが、それにはいま一つこういうことがございます。雇用主が一年後に家を建てるというふうに義務づけてはおりますが、その事業主が住宅を建てられない場合には、建設省のほうで公営住宅を心配する。公営住宅を心配する場合に、事前に、そういう場所、それから各労務者の家族構成というような問題について建設省と打ち合わせをして、建設省が、それについてそれだけの住宅を準備する。そのために、まあ先般雇用促進事業団の審議のときにもその問題が入っておるわけでございますが、しかし、実際問題といたしまして事業主も建てられない。それから公営住宅のほうも間に合わぬ場合には、これはやはり一年の期限はございますけれども、その方たちの住宅の処理ができない限りは、その住宅を明け渡すようにはわれわれのほうとしてはしない予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/4
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005・阿具根登
○阿具根登君 そうすると、この労働者の住宅と公営住宅の家賃の比率はどのくらいになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/5
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006・北川俊夫
○説明員(北川俊夫君) 炭鉱離職者用に東海それから近畿地方に建てました住宅の家賃は、現在二千四百円から二千五百円でございます。これは公営住宅の、大体同じ九・二坪程度の住宅と比べますと、二千円ないし三千円割安でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/6
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007・阿具根登
○阿具根登君 そうすると、特に苦しい、しかも広域紹介によってはるばる未知の所に行く人に建ててやった住宅の家賃が高くて、公営住宅の家賃が安いということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/7
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008・北川俊夫
○説明員(北川俊夫君) 今少し間違いまして、公営住宅のほうが、移転就職者用宿舎の家賃よりも二、三百円高い。したがいまして、具体的に申し上げますと、公営住宅は、大体同じ規模ですと、二千七百円から二千九百円程度の家賃でございます。これに対しまして、賃貸アパートのほうは二千四百円ないし二千五百円、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/8
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009・阿具根登
○阿具根登君 たとえば東京に例をとってみるならば、これは公営住宅に入るということは、宝くじに当たるよりもむずかしいといわれておるのです。何十倍、何百倍、もうこういう二千円台だったら何百倍、それ以上だと思います。そういうところに優先的に入ることができますか、実際問題として。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/9
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010・三治重信
○政府委員(三治重信君) この点には、われわれのほうとしても、この住居要件で、建設、大蔵とも、いろいろこの雇用促進事業団法の住宅を作る場合の関係機関との折衝で、やはり労働省が永住住宅を作るのは、国の住宅政策として、やはり住宅政策上よろしくない。労働省は、とりあえずの移転就職者のための住宅にしてほしい。それで、そのあとは建設省で責任を持ってやるというふうで、建設省のほうも、それなら労働省が住宅をお建てになってもけっこうだということで、これはわれわれのほうはそう急にできるはずはないのじゃないかということでございますが、結局そういう行政分野の調整ということでそういうふうになって、今の、ことに大都会の住宅事情から見ると、はなはだまあ常識をはずれたような結果になっております。しかし、建設省のほうがそういうふうに移転労務者のために作ったので、あとはどうしても事業主が建てられない場合には、公営住宅で必ず確保しますという約束をしているわけです。約束が守られない限りにおいては、われわれのほうとして、今の賃貸アパートの期限が切れたから出て下さいというわけにはいかんということは、十分話し合いができております。現在のところ、建設省には、そういうことで事業主が建てられない住宅については百九十六戸ありますから、建設省のほうで準備をしてくれという申し入れをしておりまして、建設省のほうも協力するという格好になっております。この実施のそれが期限どおりきちんと守られるかどうかということは、若干時期的にズレがあるかと思いますけれども、しかし、入居者その方に、そういう行政機関の協定が不調になっても、そのとおりスムーズにいかないからといって迷惑をかけるようなことは絶対しないようにしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/10
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011・阿具根登
○阿具根登君 そうすると、こういうように理解していいわけですね。労働者住宅に入った場合、一年たってそれとあまり変わらない公営住宅に優先的に建設省はお世話をする、もしもそれができなかった場合は、追い立てるようなことはしない、これが一点ですね。そうして、採用の条件で、事業主は一年後にこの労働者の住宅を建てねばならないという一札はどうなっておりますか。そういう一札がちゃんと入っている、だから雇用主はこれに逡巡している。これは一体どういうことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/11
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012・北川俊夫
○説明員(北川俊夫君) 先生御指摘の点は、従来の炭鉱離職者のアパートの入居基準にはそういうきめ方をしておりません。今回炭鉱離職者のアパート運営方針を若干改めまして、そういう非常にシビアな条件を排除いたしまして、したがいまして、一年後に必ず建設計画を立てねばならない、こういう条件は現在の業務方法書では削られております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/12
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013・阿具根登
○阿具根登君 わかりました。
それでは、そういう非常にシビアな条件はない、いわゆる阪神方面に行った方も労働者の住宅に入って、それが一年たった場合には公営住宅に入っていただく。なかった場合は労働者住宅に入ってよろしい。その場合でも、雇用主は無理に家を作る必要はない、こういうことに御答弁いただきましたから、それで了解いたしますが、もう一つ住宅奨励金の場合ですね、住宅奨励金の場合に、これは試算してあるようですが、補助金を出す。そうしますと、たとえば一年たって今度の住宅奨励金をもらって家をかりに建てた、ところが、一年たったところが、国からの補助もなくなる、待遇も悪くなる、そうすると食っていけない、結局一年たったらそこをやめなければできないようなことになる。そうすると、雇用主は家を作るのには、まあ一種二十万円からの補助をもらい、人を採用するのには四分の一の補助をもらい、一年たったらそれを打ち切ってしまった、そうすると雇用主は相当それで助かるけれども、今度は一年たったら雇われた労働者は何もない、こういうことになりはしませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/13
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014・三治重信
○政府委員(三治重信君) その理屈を、ロジックを追っていきますと、最悪の場合にはそういうことになろうかと思います。その住宅確保奨励金並びに雇用奨励金の支給にしても、やはりそういうことのないように行政指導をしていかなければならないと思います。
それから、その雇用奨励金の問題からまずお話申し上げますが、雇用奨励金のほうは、われわれのほうとして、四分の一、最低二万円までは五千円という場合に、それはどういうふうなプロセスで考えたかと申し上げますと、広域職業紹介で、昨年、一昨年始めまして以来、実際のその就職の賃金を見ますと、三十五年の場合においては、三十才以上の方で初任給が一万五千円から六千円のととろでございます。それが九ヵ月後の調査によりますと、大体一万九千円から二万一千円という賃金になっております。それから今年度の三十六年度の四月から六月の採用者の条件を見ますと、同じ条件で一万七千円から一万九千円という採用になっております。それを昨年度の就職した人と同じときに調べた、これはしたがって三カ月後になっておりますが、そのときにも、やはり後の調査では大体二万円程度というふうになっております。したがって、私どもとしては、就職後一年たてば、大体二万円以上は確実にその事業主としても出せる態勢に現在のところでもある。したがって、就職を促進するために、やはり炭鉱離職者が土地を離れて行く場合に、最初の生活に非常に不安がある。それを二万円程度は支給してもらいたい。せめてその親子が生活するためには最低限必要だということで、その最初の就職の場合に一万五、六千円、一万八千円のやつを二万円まで引き上げる。しかし、一年現実に労働者として働けば、それはたとい雇用奨励金がなくても、事業主としてはその労働価値を認めて二万円以上現実に支払う客観的な条件があるから、したがって、雇用奨励金がなくなるから、それによって二万円以下に賃金が下がるというようなことはまずないであろうというような考えで雇用奨励金というものが考えられた。事実われわれのほうとしては、そういうふうにやはり初めに事業主のほうとしても、最初どの程度働いてもらえる人か、どの程度の生産が上がるかということについて不安があるから、初めやはり雇用奨励金でそれくらいのカバーができる。やはり技術の修得なり職場環境になれる適応訓練の費用として初めやれば安心して雇える。それがなれて一年たてば、やはりその二万円以上の価値がある。生産できるし、労働者のほうもなれてくる。したがって、それによって雇用奨励金が打ち切られるということによってその職場を離れなければならん。また賃金が切り下げられるということのないという確信のもとにこういう制度を作ったわけであります。
それから住宅確保奨励金の問題につきましては、そういうふうな条件であるから、したがって、また住宅も必要である。したがって、事業主が建てられる場合に、最初にそういう場合に建てる決心を促すために住宅確保奨励金というものを出すわけでございますから、したがって、住宅を建てて、しかも、それだけの費用で援助してもらっている事業主が、そうラディカルに首切りだとか家を出て行けということはまずないというふうな確信、そういうふうなことが非常にすぐ行なわれるということは、やはり雇用する事業主にとってみても、やはり社会的責任というものもあるわけでありますから、そう非常識なことは行なわれない。もちろんわれわれのほうとしては、一年後すぐ解雇する、それからすぐ住宅を追い出すというような場合には、事業主に対しては、その適当な返済なり制裁の規定は準備はしておるつもりでありますが、しかし、そうかといって、それが行なわれるということを奨励するわけにはいかない。やはりそういうことに心配のないように行政指導してやっていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/14
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015・阿具根登
○阿具根登君 雇用奨励金の問題は、またあとで質問したいと思うのですが、その住宅の問題で、今、局長が言われましたことでもわかるのですけれども、現実問題として私どものところに陳情がきておるのは、いわゆるそういうような考え方で雇用していただいたにしろ、実際行ってみれば周囲に今度はもっといい工場がたくさんできてきた。その方面は、たとえば二万五千円なら二万五千円の収入がある、こういうことがある。ところが、そのほうには行かれない。ところが一方は一万七千円なら七千円で雇っておるけれども、国の補助もあって家が建つ。やめるといえばお前家を出て行け、行けない。だから、もっといい条件のやつもたくさんあるけれども、家に縛られて行けないということは、安定した職業についたことのない人でなければ、これは出ないわけなんですね。だから、そういう矛盾がたくさん出てきておる。また、雇い主のほうも、あんたが来てくれたら、あんたの腕だったら二万五千円、三万円あげますよというところもある。ところが、実際使っておるところは、家をあんたに貸してあげてやるんだからだめだ、よすんなら出ていけと、こういう問題が現実問題として起こってきているわけです。そういうときはどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/15
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016・三治重信
○政府委員(三治重信君) たとえばおっしゃる例からいきますというと、川崎なら川崎とか、東京に来られて半年なり一年過ぎて土地の事情もわかる。そうすると、現在勤めている会社、工場よりかほかのところで今よりは二千円なり五千円いい労働条件で雇われるという場合は、確かに予想されるところでございます。したがって、われわれのほうとしては、そういう場合には、やはりその事業主のほうに、そういう条件、その事業主のほうが昇給なりその本人の不平不満ということについてやはり聞いて、できるだけそれに沿うように事業主に措置するように指導するとともに、もしもどうしてもその本人がそちらのほうに行きたいというふうな場合には、採用する側のほうの事業主には、やはり住宅の改良なり、また、新しくそのほかに雇用奨励金、新しくそういうAからBに移転される人とともに、新規に炭鉱離職者を——それほど人がほしいならば、たくさんそういう人がいますから、そういう方もひとつ一緒に採用してもらう。したがって、われわれのほうとしては、雇われた方だけに住宅確保奨励金それだけということでなしに、それにプラスして、パイプ・ハウスなり住宅の貸与というようなことも、それと一緒にコンビネーションに基づいた考え方をしなければならないのじゃないかというふうな考え方をしております。したがって、ラディカルに一対一でやりますと非常に困る。そういうことを聞いて、その雇う事業主が、隣の人が雇っている炭鉱離職者を自分のところに引っぱりたいというくらいならば、相当労務者不足である。それならば、新しい人も加える。その人を加えて、たくさんの人にもパイプ・ハウスなり新しい雇用奨励金をその人にあげて、その人たちも一緒に入れられるようにその事業主に処置してもらうという点しか今考えられない。したがって、しかし、そこに雇用される人が入って半年、一年でやはり今度労働者側が、自分の労働条件を有利にするためにあまり移動をするということになると、今度事業主側として、いつ移動されるかわからぬということになると、今度熱がさめるわけで、われわれのほうとしては、労働条件において同一職種では同じようにしてもらうように奨励指導するとともに、どうしてもやむを得ず移転するという場合には、それにプラスして、新規に炭鉱離職者を雇っていただいて、そこでその住宅問題やそういう問題も一緒に処理解決されるように指導していきたい。そうすると炭鉱離職者の雇用の場所が発見されるのじゃないかというふうに考えております。そういうふうにせいぜい努力していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/16
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017・阿具根登
○阿具根登君 大臣がおいでですから、大臣にこの問題についてお尋ねいたしますが、住宅奨励金を雇用者にのみやるということは、今まで申し上げましたような弊害も当然起こると思うんです。それで、供給側のほうにこれをやったらどうか。そうして、人を出すかわりに、それには家をつけて出しますよというような制度も考えられるんじゃないかというのが一点と、これはまあ矛盾もあるようですが、私は考え方としてはそう間違っていないと思う。
もう一つは、本人にこういう考え方を持ったらどうか。たとえば本人だったら、そういう労働者住宅がちゃんとあればいいけれども、これはないところが多い。そういう場合に、本人が間借りをするとか、あるいは家を買う、そういった場合に、こういう奨励金を本人につけておけば、本人が移動する場合は、これはそれで終わりです。本人が、たとえば住居がここは非常に遠過ぎる。たとえば通勤に一時間以上もかかる、そういう場合でも、雇用主が建てた家なら、これは移るわけにいきません。雇用主だって自分の工場の近くに家を建てたいでしょうけれども、これは東京都で御存じのように、自分のひざ元に家を作るということは思いもよらぬ。とにかく土地の安い所に、はるか遠い所に作ると思うのです。そうすると、それから一時間も一時間以上も朝晩通わなければならぬ。本人にこういう趣旨の奨励金があるならば、今度は近所で間借りをしたい、あるいはあそこを借りたいのだけれども、敷金は幾ら、契約金は幾らと、こういうことで困る。そういった場合に、本人についておれば住宅を探すのに非常にいいんじゃないか、どうしても本人に支給できないか、こういう二つの問題を大臣にひとつ御答弁願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/17
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018・福永健司
○国務大臣(福永健司君) お説のような考え方も大いに傾聴しなければならぬと私は思うのでありますが、ただ、ただいままでの建前といたしましては、この種の住宅確保奨励金は、炭鉱離職者の再就職を促進するということのために、これを雇い入れる事業主に補助する措置としてやろう、こういうことでございますので、したがって、今までの雇用主であった供給する側に差し上げるということの建前をとっていないわけであります。
なお、またそういうような建前でございまするので、本人に支給するということもいたしておらぬわけでございます。今後の研究課題といたしましては、さらに検討さしていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/18
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019・阿具根登
○阿具根登君 たとえば二十年なら二十年炭鉱に勤めておって、不幸にして炭鉱が閉山になるとか、あるいは整理になったとか、そうした場合に、五十万なら五十万の退職金を持って後生大事に、これはトラの子ですから、後生大事に持っていると思うのです。そうして広域職業紹介であるところに行って、そこで本人がここにひとつ骨を埋めるのだ、おれはここで一生働くんだという気持になって、幸い手持ちに少し金がある、家もある、そういう場合に、本人にこの趣旨の奨励金を与えるようにするならば、本人は自分の家をそこで作ることができる。ということは、雇用者にあげる以上に、その人はその土地に落ちつくということになるわけなんです。だから広域紹介でよそに出ただれにもかれにもこれをやれというわけにはいかない。本人が家を買う、家を作る、そういう場合は、二十万なら二十万でたとえば借家に入る。これは二十万とかそういうことはできないでしょうが、これは額を当然減らしてやっていくということになれば、私は政治的にも非常に今の案よりは楽になると思うのです。これは大臣なんかは家の心配なんかされぬと思うのですけれども、日本国民の大部分の人は、一生のうちに自分の住む家を作りたいというのが念願であろうと思うのです。それは三十年なら三十年労働をやって、そうしてそれを退職していく人は、掘立小屋でもいいから、自分の死に場所は自分で作りたいというのが、これはもう私は家を持たない人の念願だと思う。また、そういうことをしてやることが住宅緩和に一番私は役立つと思うのですね。そういう点から考えて見ても、せっかく自分で家を作りたいというような人には、この雇用者に住宅奨励金を渡す以上のものをしてやっても、決して死に金じゃないと私は思うのです。また、雇用者が雇ってもらわなければ困るのだけれども、雇用者にやるのはやるとして、本人が建てたい、本人が家を作りたい、買いたいという場合のときは、これ以上のことをしてやっていいんじゃありませんか。私はそう思うのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/19
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020・福永健司
○国務大臣(福永健司君) おっしゃいますお話の趣旨は私もよくわかるのでありますが、先刻も申し上げましたように、ただいま政府が考えて措置しておりまする建前は、雇用を促進しようという趣旨であり、したがって、まあ新たなる雇用主に対してそういう処置を講ずるということで来たっておるわけであります。まあお話のようなことも確かに考えられるのでありますが、まあそういう方法をとりますと間違いが起こりやしないかというような考え方等も一部にあるわけであります。お話のような工合には政府全体としてはまだ踏み切れないということであります。労働省という建前からは、まあお話のようなこともよく頭に入れて、なお検討さしていただきたいというふうに存ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/20
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021・阿具根登
○阿具根登君 私は、雇用主の住宅奨励金をはずせと言っているのじゃない。そうじゃない。それはそれでいいではないか。しかし、本人が家を建てたいというならば、雇用主は家を作る煩雑をのかして、別に雇われる非常ないい条件になってくる。まあ五人なら五人雇ってもらった雇用主が、四軒だけは建てましょう、一軒の人は私は自分で建てましょうという場合、そちらのほうに補助金を回せば、そうすると、その人も助かるし、雇用主も助かる、まあこういう考えなんですから、一応これは十分検討していただきたいと思います。
それから、大臣がおられる間に大臣に対する質問をしておきたいと思うのですが、雇用促進事業団の金融の問題がここにかかっておるのですが、この業務を委託する金融機関はどうお考えになっておるか。私の考えを率直に申し上げるならば、これは労働金庫等が一番先にこれは委託になるところじゃないかと思うのですが、そういう点について大臣のお考えをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/21
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022・福永健司
○国務大臣(福永健司君) 今度の貸し付ける資金の内容等から見まして、適当な能力、性格を有する金融機関、まあたとえば住宅資金というようなものにつきましては住宅金融公庫というようなものに委託をさせるようなことを考えておるわけであります。労働金庫に融資を委託することにつきましては、この労働金庫が労働組合、消費生活協同組合等、労働金庫法によりまして規定された同金庫の会員に対してのみ資金の貸付業務を行なうものでありまして、申すまでもなく、事業主に対する融資は行なっておりません。こういうようなことを考慮いたしまして、現段階におきましては、住宅金融機関としては労働金庫を考えておらない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/22
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023・阿具根登
○阿具根登君 まあ労働金庫法によればそういうことを言えるかもわかりませんが、こういう一番身近な問題ですね、しかも失業者という問題、これをいかにして職につけるか、生活の安定をはかるかというような問題になってくれば、やはり一番身近なのは私は労働金庫だと思うのです。こういうことにこそまあ労働金庫は利用すべきじゃないかと私は思うのですが、何か労働金庫といえば組合側だけが金を出し入れするのだというようなことできめつけられているようです。また、一応労働者のこれは福祉機関になっておるのは、これはまた当然なんですが、しかし、こういう場合に労働金庫が利用できないということは、私はどうしても考えられぬのですが、まあ今の金庫法としてできないにしても、考え方としてはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/23
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024・福永健司
○国務大臣(福永健司君) まあ法律の建前等が今申し上げたようなことになっておりまするしするので、今申し上げたような考え方でわれわれいるわけでありますが、御説のようなことに考えを及ぼしていくとするならば、関係法律等も若干修正する措置等も講じなければならぬというようなことにもなろうかと思います。まあただいままでの建前からいたしますと、私が今申し上げた通りでございますが、今後さらにこの点についても検討はさしていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/24
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025・阿具根登
○阿具根登君 あまり内容の質問ばかりしておるようですから、少し角度を変えて質問してみたいと思うのですが、通産省の人はお見えじゃないようですが、私は三治さん御承知と思うから質問いたしますが、今日まで炭鉱の労働者がどのくらい首を切られて、どのくらい炭鉱がまた採用しておるかですね、これを大体年次別に教えてくれませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/25
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026・三治重信
○政府委員(三治重信君) 通産省の炭鉱労務者についての調査によりますというと、炭鉱の常用労務者は三十二年末で三十万、それが昨年の十一月末で約二十万、したがって、純減が約十万人、これは職員が抜けております。炭鉱労務者のほうで約十万人の減。そうして三十三、三十四、三十五年において大体二万五千人前後毎年純減がある。しかし、その一年間に離職される方はこれの約三倍ぐらいで、七万五千から八万人。それで炭鉱を離職されてまた炭鉱に帰られる人が大体五万人程度、したがって、その差引の二万五千人程度が純減、したがって、その純減以外の人が大体われわれのほうとしてはまた炭鉱に再就職するという格好になっておるというふうに推定をしております。現在のところ、はっきりいわゆる整理によってどの程度、それから純然たる事故退職または会社の都合によって退職という問題についてのはっきりしたことは出ておりませんが、失業保険のほうの求職の統計から推定いたしますと、大体そういうふうになっております。したがって、そこに山から出てまた山へ戻るという方々が、毎年よく調べてみると相当数あるわけです。これはわれわれのほうとしては、大体中小炭鉱が多いんじゃないかというふうに考えております。したがって、通産省のほうの炭鉱の合理化による指導、それから非常にそういう不良の、いわゆる解雇してはまた雇い入れるというような山、不良炭鉱を合理化によって買い上げるなり、行政指導で、保安指導によって万全をはかっていく。これもやはり働く環境がよくないためにこういうことが起きるということで、これについては通産省とも十分協力して、そういう経営の安定、いわゆる労働条件の安定化をはかっていけば、自然に労務者の移動というものも相当落ちついていけるんじゃないかというふうに考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/26
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027・阿具根登
○阿具根登君 そうしますと、大体一年間に七万五千人から八万人やめていく、そうしてそのうち五万人くらいはまた炭鉱に帰っていく、そうして県内紹介、あるいはいずれにしても安定所を通ったのが大体二万五千人くらい、こういうことですね。そうしますと、七万五千人から八万名の人が現実問題としてやめる。そうして、やめたうち、五万人の人がまた炭鉱に帰る。そうすると、自己都合でやめた人はこのうちの一割か一割五分か知らぬが、大体停年退職者が自己都合の第一にあげられる。そのほかの自己都合というのは実にわずかです。そうすると、ほとんどその六万人か七万人くらいの人は、これは整理になっておるのですね、会社の都合でやめているのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/27
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028・三治重信
○政府委員(三治重信君) 私のほうは、むしろそれよりか、そういう合理化による売山またはあがり山、または保安上の買い上げという方々は、やはりそういう所には相当の高齢者とか、なかなか炭鉱に帰れない人たちが相当含まれる。これがやはり広域職業紹介の失業対策の線に乗ってくると思います。そのほかの、先ほどの五万人前後の方は、やはり山から山へ移動される。これが自己の都合で移動される方もあるだろうし、あるいはそれが中高年齢者であるとかいうふうには、五万の山へ帰られる方でも、中高年齢者も相当あると思いますけれども、年齢別のはっきりした調査はありませんけれども、この方々はそういう中高年齢者で山で働けないのではなくて、やはり相当長年の、あるいは私の考え方が違っているかもわかりませんけれども、大体慣習で一、二年たつとAの山からBの山へかわる人が大部分ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/28
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029・阿具根登
○阿具根登君 そうすると、いずれにしましても、古い山、いわゆる中小の山をやめて、そうして大きい炭鉱に肩がわりしたというのは、まずこれにないと見ていいのですね。そうすると、大きい山をやめさせられて、そうして小さい山に行った人たち、こういうことになると思うのです。山は、御承知と思いますが、同じ炭鉱、坑内であっても、自分がなれた山、毎日仕事している坑内は比較的安心感を持っているのです。これがたった一つ坑口が違っても、自分がなれてない、自分がふだん入ってない坑内というのは非常におそろしいものです。そうすると、ほとんどの人が、だれでも自分の山をやめてよその山へ行きたくないのです。とすれば、この五万人からの人は、何らかで会社からやめさせられた人なんです。たとえば合理化でやめさせられた。あるいは、たとえば中小でも少しいいようであったけれども、賃金の遅配とか圧力とか肩たたきとか、いろいろな問題があってやめていくけれども、この人は炭鉱だけしか今まで生活したことがないから、やはり一番身近な炭鉱をたどっていった、こういうことになると思うのです。そうすると、労働者を一方では首切っておって、一方では採用しなければならぬ。同じ炭鉱技術を持っている人をやめさせて、今度はどこかで安い賃金でその技術を買っている、こういうことになるのですね。そういうことが一体許されるかどうか、私はこう思うのですが、これは突き詰めていけば通産行政になってくるのですけれども、これは労働省の立場としても、実際は相当な技術を持っている、坑内の経験を持っている、そういう人を首切っておいて、今度は逆に安い賃金で、保安の非常に悪いところで、労働の非常に強化なところでこれを雇う、こういう矛盾したことが一体いいのかどうかという問題について、局長のお考えはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/29
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030・三治重信
○政府委員(三治重信君) 大きな山から中小の山へかわって就職される方は、五万人の数からいけば非常に少ないのじゃないかと思います。やはり中小の山から中小の山へというのが、大部分われわれが実際安定所の職員や、実際今まで業務を取り扱っている担当の職員から聞いている経験からいっても、やはり大企業で首切られたから中小に行く、中小企業で首切られたからさらに零細企業へ行く、こういう雇用の形態は、ないことはないけれども、そういうのは少なくて、やはり中小企業の山の中で出入りがある。その理由は、とにかくよくわからぬけれども、やはりその中小企業の山が、結局Aというのが一、二年たつとまたほかのところからその山に就職している人がひっぱられる、むしろそういうふうに、相互に結局ひっぱり合いのためにそういうふうな移動が激しいのじゃないか、それが最大の原因ではないかというふうに労働省の関係としては見ているのであります。したがって、そこでだんだん大きな山から中小の山へ下がる人はないことはないけれども、それは限られている、むしろ中小の山の中であちこちひっぱり合いが多いのじゃないかというふうに見ております。結局これを少なくするためには、大企業がやはり雇用のほうが安定して、山をやめる方が少なくて、大企業の結局企業合理化による人員整理がストライキまで伴う非常に困難な問題があるというくらい雇用が安定してくる。やはりやめたくない、大企業のほうは割合やめたくない。したがって、客観的に見れば雇用も移動が少ない。しかし、中小の山は、そう整理しなくても、いわゆる売山とか、採掘権が消滅するとか、または、経営不振によってやむを得ず首切る以外は、やはり労務移動が激しいために、むしろその労働者確保のために中小企業はお互いに、相互に労務者を自分のところで引き抜かれると、またほかのところから抜いてくるというふうのための移動が多い。その結果こういう数字があがってくるのじゃないか。したがって、中小企業全体として安定して、相互にそういうふうな移動が行なわれなくて、大体労働条件が安定してくれば、そういうふうな移動というものも非常に少なくなる。したがって、通産省が中小企業の経営の安定合理化のために非常な資金を投じたり、また融資をしてやってくれないと、こういう環境はなかなかできない。労働省としても、そういう中小企業の労働条件の統一化、安定化に協力していきたい、こういうふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/30
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031・阿具根登
○阿具根登君 それは中小企業になれば、退職金等の制度等も非常にこれは微々たるもので、魅力も少ないから、そういう入れかわりもあるかと思うのですよ。しかし、それだけじゃなくて、そういう点も確かにあるでしょう。しかし、大体僕らが全国を回ってみるのに、大炭鉱をやめた人の大部分の人は中小炭鉱に勤めているわけなんですね。それは一体なぜかという問題が私のお聞きしたい問題なんです。これは予算委員会でもお聞きいたしますが、これが私どもが言っている炭鉱の最低賃金ということをきめておらないから、だから少し石炭が要るとなれば、だっと人間を集めるわけです。石炭が要らないようになったら、これは賃金が遅配になろうが欠配になろうがやむを得ない、こういうことでほうって置くわけなんです。これがもっと石炭の需要が盛んになってきたということになれば、御存じのように、畑でも何でもかまったものじゃない、これは水洗炭の水を流し、ボタ山を掘ってきて、労働基準法も何もあったものではない、十三、十四の子供を使って、水の中でじゃぶじゃぶ洗って、石炭だ石炭だと売っているときがあったんです。そういうことで、需要と供給によって人間があっちへ流れ、こっちへ流れしているのが現実でしょう。そういうことが実際の問題として行なわれているとするならば、これは今でこそその水洗なんかもずいぶん押えられておりますよ、しかし、ちょっと何か経済の変動があって、そうして油が入ってこない、いや、雨が降らない、水が足らない、電気が足らないというようなことになってくると、それはもう炭鉱のボタ山はどんどんくずしていくくらいやるのですよ。だから、まず炭鉱の労働者の最低賃金というのは、今、賃金審議会の小委員会にかけてはおられますけれども、一体これをいつまでに作るつもりなのか。これは大臣、予算委員会でも質問いたしますからね、そういう基本的なものをきめておらないから、だから問題が起こってくる。これは総理大臣に質問するやつですけれども、ついでに申し上げておきますけれども、週刊文春——まだ私は読んでいないが、買ってきた、田川市というのはもう破産宣告しているわけです。そうして箱根あたりになれば一泊五万円という旅館ができたそうです。一体こういうことをしておいていいものかどうか。一方においては五万円も六万円もかけて一晩アベックで泊まるところを作ってやっている。一方では町ぐるみ破産しなければいかぬというようなやり方をやっているからテロも出てくるのですよ。政治暴力防止法案なんか出さないでいいんです、こういうものさえ取り締まっていけば。一方では食えない、一方では雲の上の生活をするというようなことをするからこうなってくる。その一番どん詰まりのところが今の炭鉱なんです。その炭鉱の最低賃金も、これは賃金審議会できめたのだ、だから審議会の答申を待ってやりましょうというような態度では、これは直らないと思うのですよ。大臣、大体最低賃金はいつまでにお作りになるつもりですか。作るということは約束されているが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/31
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032・福永健司
○国務大臣(福永健司君) 最低賃金につきましては、私が申し上げるまでもなく、今御検討をいただいておるわけでありますが、労使、公益それぞれの立場の権威者によって今検討願っておるわけでありまして、私もできるだけすみやかにその検討の結果がわれわれのほうへ回ってくることを期待いたしておるわけであります。ずいぶんまあ向こうは向こうで御勉強願っておるようであります。いつまでにということですが、私どもできるだけ早いことを望んでおるわけでありますが、この審議会のほうへ、今申し上げましたような権威者の集まりで一生懸命やっていただいておるところへ、いつまでにというわけにも参りませんが、しかし、国会等でもこういう御論議のあること等につきましては、適当な方法で向こうへも伝えましてその促進をはかっていきたい、こういうように考えておる次第でございます。御承知のように、今月、全国的な規模でいろいろ調査を進めてということになって、その作業が進行中であります。そういうようなこと等からいたしまして、なお、この促進については適切な方法を考えたいと思います。ただ、先ほどから申し上げておりますように、いつまでにということは、この審議会の性質上、われわれもそういうわけにも参らぬというわけでございます。しかし、先ほども申し上げたように、ただいまのようなお説のあることが伝わる方法は講じたい、まあ、こういうように考えておる次第でございます。先ほどからいろいろお話がございまする点につきましては、究極するところ、石炭産業全体の安定に協力した施策が講ぜられて、そういう実をあげなければならないということでございます。労働省としては、御指摘のような事態のないようになることを心から願うものであり、まあ西独その他の実例に徴しましても、こういう面でかなり強力な措置が講ぜられておるわけでありますので、労働省所管のことはもとよりでございますが、むしろ労働省所管のことは、結果が出てから措置するということにおおむねなりますので、望ましからぬ事態の起こらないような、安定施策ということについて強力な措置がとられることについて、私どもは私どもなりの立場で、より強く発言していきたい、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/32
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033・高野一夫
○委員長(高野一夫君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/33
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034・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/34
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035・阿具根登
○阿具根登君 大臣は、今西独の話を出されましたが、西独へ行って、日本の炭鉱の労働者がどれだけ西独で重宝がられておるか、どんなに勤勉に働いておるかということは、大臣見てこられたとおりです。そうして日本の炭鉱労働者と比べて優遇されておることも、もうごらんになったとおりです。ところが、私が最低賃金を急ぐというのは、これは最低賃金といえば、炭鉱だけでなく、全労働者の賃金も作らなければならないということは理の当然です。しかし、今日のこの状態にあって、おとといですか、おとといも北海道で三人も四人も死んでおるということは、そういうように、大炭鉱が、少し炭が減ってくれば、炭丈が薄くなれば中小企業に落とし、租鉱権炭鉱にして、こういうことになると、租鉱権炭鉱になればもうかるんだ、石炭が出るんだということを通産大臣も答えられておるようです。また皆さんのほうからもそういう考えがあるようです。ところが、実際大炭鉱が資金もたくさんあって、技術屋もうんと持っておって、炭層もいいところを掘って合わないやつを掘っておる。底が薄くなって掘りにくくなったり、坑道が遠くなったり、そういうようなやつを小さい業者にまかせて石炭の出るのはうそなんです。それが何で出るか、実際問題として出てくる。金をかけて、炭層のいいところにいい技術屋をやってさえもよくいけないのに、金も持たぬ、技術屋も少ない、炭層も薄い、そんなところでなぜ出るかということを考えてもらうと、これはしろうとだってわかるはずだ。これは非常に強い労働強化をやっておるか、非常なノルマをあげておるか、あるいは賃金を低くしておるから、食うために長時間坑内にいるかでなければ出るわけがない。通産大臣から見れば、小さい炭鉱でも石炭が三十トンも出るんですよ、こう言うのです。しかし、労働大臣から見るならば、小さい炭鉱で三十トン出るわけないということが頭になければいかぬわけです。何で出るか、金もない、資材もない、技術もない、炭層は薄い、そこで三十トンも三十五トンも出るというのは、これはおかしい、出るわけないんだというのが大臣の頭にこなければいかぬ、労働大臣は。通産大臣は炭さえ出せばいいんです。しかし、労働大臣は、労働者はそのためにどういう苦しみを持っておるかということを一つ考えてもらわなければいかぬわけです。あれだけ整備されているドイツでさえも、二百三十九人ですか、爆発で死んでいるのですよ。ところが、日本は、さっき言ったように、大炭鉱で出なくなったやつを中小炭鉱に落としている、保安も何もあったものではない。そういうところで労働させておるから、同じ炭鉱をぐるぐる回っておるわけなんです、炭鉱労働者が。それで一年には八万人の首が切られているのだけれども、そのうち五万人くらい違う炭鉱に働らいている。そうして賃金がだんだん下がっていっておる。実際あの人たちの生活を見て下さい。家の中に何があるか、そういう生活に追い込まれているわけです。だからそういう危険があり、人道上の問題、社会上の問題から、早くこれを最低賃金をきめてやって、坑内に人間が下がった場合は幾ら出さなければいかぬということをきめれば、そういうことができないわけです。出てきたやつだけを、非常に労働大臣が消極的で、経済政策から出てきたやつを、おっぽり出された人間をおれは始末するのだというような消極的な考え方だから、これはいつまでも悪循環をしておるわけです。だから、まず炭鉱労働者というものは、最低幾ら払わなければできぬということをきめれば、人間が働らくような場所でないような所で命を危険にさらしてまで働らく、そういうようなところに追い込まないようになるわけです。かりに私が、暴論になるかもしれませんけれども、たとえば一般産業並みに——一般産業といってもどこをとるかという問題が問題になるわけでしょうけれども、それだけの保障をやるというようになってくれば、坑内に下がる者はだれもおらぬ。一般産業並みに賃金を保障しますというようになってくれば、坑内で命をかけて働く者はおらぬです、経済問題だけ考えれば。しかし、戦争中でも何でも、これは国のエネルギーの基本になるものだというようなことで一生懸命掘ってきたけれども、その結果が今日のようなことになっておる。だから最底賃金問題は、ひとつ大臣のほうからも小委員会のほうに早く出してもらいたいのです。そうして、まずそこの地固めをしていかなければ、いつまでたってもこうやく張りの法律案を出して、こういう法律案を審議しなければならない、こういうように思いますので、その点特に実力者の大臣にお願いをしておきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/35
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036・高野一夫
○委員長(高野一夫君) それから、質疑の最中でございますが、この際、委員の異動を報告いたしておきたいと思います。本日付をもって森中守義君が辞任され、永岡光治君が選任されました。質疑の続行を願います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/36
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037・阿具根登
○阿具根登君 それから先ほどの問題になりますが、二万円で、まあ五千円補助があるわけなんですね。そうすると、今局長の話では、最近は大体一万九千円から二万円くらい初任給で出ておるということを言われるわけですが、私らのところにくるのは、ほとんど一万四、五千円ですがね、一万四、五千円が大体雇用条件の初任給になっているのです。そこで、三池に今月の末に行かれるのですが、広域職業紹介で今求人を求めているやつの一覧表があったらひとつ見せていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/37
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038・三治重信
○政府委員(三治重信君) 今ちょっと手元に持っておりませんので、またあとで……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/38
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039・阿具根登
○阿具根登君 それではどうぞ、労働省のほうにはまとまっていると思うのですね。これはあとでどういう産業で給料が幾らだと、住宅がどういうふうになっているということはあると思いますが、それを一つあとでいただきたいと思います。
そこで、私が心配いたしますのは、先ほどもちょっと触れましたが、たとえば一万五千なら一万五千で雇った。ところが、政府から一月一日にさかのぼって五千円出るから、それならこれは初任給二万円として雇うに違いございません。そうすると、その場合、初任給二万円として雇えば、一年後に二万円払う人でなければそれは言えないわけですね。一年後二万円払う人でなければ言えないわけです。ところが一年後二万円払えない人でも、今人が足らない、今要るのだ、だから一万五千円払っておけば政府から五千円は出るのだ、二万円の給料で払うということになるわけです。そうすると、一年たって一万六千円か一万七千円かならなかったということになるわけですね。雇われていく人は、政府が補助金五千円は出してくれるけれども、一年後には少なくとも二万円よりも上がるだろうという気持で雇われていくわけです。そこに大きなギャップが出てくるわけです。極端に言えば、今二万円だから一年後には二万五千円くれると思って雇われておる。一方は、政府が五千円くれるから、一万五千円で、一年後に一万六千円か、一万七千円といっておけばいいだろう。そこに八千円のギャップが出てくる。そういうことを考えれば、二万円という問題が非常に大きな問題になってくる。それで二万円に対して五千円出される場合には、一年後あなたのところでは幾ら出されるかということを約束されて二万円出されるのですか、それとも二万円払えば五千円出されるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/39
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040・三治重信
○政府委員(三治重信君) 取扱いの表面上につきましては、必ずしも一年後、その雇用奨励金がなくなった後、必ず二万円以上払わなければ就職をあっせんしないというふうには今のところなっておりません。われわれの立場は、先ほども申しましたように、現在雇用奨励金がない人でも、半年ないし十カ月後には大体二万円の線が、この広域職業紹介で就職された方の実態の調査によって、大体今まででも、現在でも二万円ぐらい、就職一年未満で大体二万円ぐらいになるわけなんだから、そう心配はないというふうに考えておるわけなんです。したがって、よほど経済の変動があれば、あるいはそういうことも考えられるかもしれませんが、やはり今のところわれわれの調査の結果から見て、常識上そういうふうに現在のところ一万五千円で、それが一年後には一万六千円になって、五千円払っても一万七、八千ということは万々ないというふうに考えておる次第でございますが、もちろんその点につきましては、その現実に雇用される事業の事業主の、今雇っておられる方々の労働条件、賃金の支払状況というものを見れば、その炭鉱労務者だけ特別高く払ったり、また、特別安く払うというわけにはいかんわけです。したがって、われわれのほうの実際問題としては、雇い入れられる事業主が、現実に三十五才程度の人でどの程度払っているか、また、経験年数でどのくらい払っているかということを見て、そうして最初はやはり二万円というものをなかなか払えない人でも、それは一年後にはほかの労務者と同じように払ってくれる、また、現在の給与の支払状況から見ても、その雇用されている労働者がそういう状態であるということを確認して就職をお世話しなければいかんというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/40
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041・高野一夫
○委員長(高野一夫君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/41
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042・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/42
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043・阿具根登
○阿具根登君 そこがちょっと局長と私の意見の違うところなんですがね。局長はまあお世話されるほうだから有利なところを頭に描いておられるわけなんです。私は、お世話されるほうの逆の立場で今ものを言っておるわけなんです。で、極端に言えば、局長のところにくるのは、まあ二万円が二万三千円になった、五千円になったという情報が入ると思うのです。私のところへは、二万円が一万八千円、一万七千円になったという情報しか入らないわけなんです。苦しくなった人が一番私のところに頼ってくるわけなんです。特に東京都で仕事をしている人は、まあ炭鉱の離職者のほとんど九〇%は奥さんも働いております。一人じゃ家族を食わせることができないんです。ということは、二万円以下なんです、全部。全部二万円以下です。だから一万円そこそこで奥さんも働いて、そして二人で夫婦共かせぎでやっと食っているというような人が九〇%です。これはほとんど全部です。そういたしますと、局長が言われるのは、そういうものはないとは言いませんが、私は少し安易に考えられておるんじゃなかろうかと、こう思うわけなんです。それから、たとえば今二万円なら二万円になっているところがあるとしても、これは残業も何も含めてですよ。基本給じゃなくて、超過労働も何もかも含めて二万円です。そうしますと、これはいつとられるかわからない。極端に言えば、一年間はめんどうをみるけれども、あとは知らないぞということになると思うのです。これは若い人ならいいです、若い人なら。二十才台の人なら私はそれでもけっこうだ、そうであってもよろしいと思うのですよ。ところが、三十五才以上の人ですよ。この適用者が三十五才以上の人です。で、三十五才以上の人が家族を持って、一番子供の二人なり三人なりあるころですね。一番小さい、一番重要なときです。四十才前後、その人が一年後にどうなるかわからぬけれども、行かねばならぬということを考える場合には、一年間五千円というのは親切なようであるけれども、私は非常に不親切じゃなかろうかと思うのです。一面、一年間あなたがなれる間保障してやりますよというのは非常にありがたい。しかし、一年後、それを一年間使った会社が保障するという保証があれば別です、それは別ですよ。一年間はまあ技術も伸びないだろう、環境にもなれないだろう、仕事にもなれない。だから政府が五千円出してやるけれども、一年後にはその金額を下らないだけの待遇をしてくれぬかということが約束されて私はこれを紹介されるならば非常にけっこうだと思うのです。ところが、実際問題としてはそれはされておらない。そうすれば、せっかく今度は行って一年たって賃金が下がった場合の人のことを考えてみると、今度はどこに行くか、その人はもう政府も世話してくれない、里にも帰れない、一体その人はどこに行くか。どんなひどい目にあっても、泣く泣くそこにおるか、あるいは日雇い労務者になるか、それ以外にもう行き先がないのですよ。そうなった場合には——だからそこを何とか考えてもらわなければいかぬ。政府が四分の一を補助する、補助するけれども、一年後には補助額はもらわんでもあなたのところで払ってくれということが確約されるか、あるいはそうでなかった場合にはさらに延長して、そして二万円なら二万円になる間は政府がみる、あるいは二万五千円になる間政府がみるというような約束がなければ、私はほんとうの親切じゃないと思うのですがね。それは十年も二十年もということはむちゃです。そんなことはできない。できないけれども、現実問題として、一年後に二万円くれる——最低がですよ。私はそうまで経済が好調になっていると思わないが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/43
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044・三治重信
○政府委員(三治重信君) もちろんわれわれの調査で、これは基本給と申しますか、オーバー・タイムをなくした基準賃金で、そういうふうには参っておりません。したがって、われわれのほうとしても、二万円の線は、大体オーバー・タイムが一割の範囲、したがって、一万八千円とオーバー・タイムで二万円という線で、まだはっきりその二万円の支払いについて、今先生がおっしゃったように、ものすごいオーバー・タイム、また、深夜作業とか早出とか、非常に一般でいう労働の時間の違ったときの勤務というようないろいろの条件があるわけですが、そういうものをある程度規制して、そうして今現在われわれの考えておりますのは、特別のものでなく、大体普通のオーバー・タイムが一割以内、それくらいの基準でどうだろうかというふうに考えております。したがって、一年後の雇用につきましても、先生の言われる御心配は必ずしもないとは言えないわけですけれども、昨年以来、いろいろ雇用奨励制度を考える場合に、ただわれわれの一番心配したのも、それと同じ条件で一年は雇用奨励金をやるけれども、そのあと下がったりトラブルが起きるのでは、かえって一般的な言葉で申し上げれば、恩があだになる、争いのもとになるというのではまずい。そこをスムーズに切りかえていく線というものについていろいろと検討したわけでございますが、それが先ほど申し上げておりますように、大体一年後になれば、事業主のほうもその本人の、三十五才以上という男子の年令、それから女子では一万四千円という金額からいけば、これは現在のいわゆる年功序列型からいっても、経営者にとってもそう無理な賃金ではないという考え方です。したがって、これをやってみまして、さらにそういうふうな先生方の御心配が多数出てくるようになれば、あるいはやはり再検討しなければならぬかもしれません。しかし、これにもおっしゃるように、一年半がいいのか二年がいいのか、あるいは三年がいいのか、それは延ばせば延ばすほど多いにこしたことはないということにもなりかねない。そこにいずれか線を引かなければならぬ。そういう意味において、これはわれわれのほうとして、やはりまず雇用の奨励、しかも、それが安定した職業という二つの目的からいって、とりあえずはこの線でまずやってみる、これにつきましては、われわれのほうとしては、労使双方ともいろいろの条件を聞いて種々勘案したところで、大体それで特別な条件をつけなくてもいくんじゃないか。しかし、またこれを、おっしゃるとおり、雇用する前からあまり事業主にきびしい条件を、法律的にこれもやってはいかぬ、あれもやってはいかぬというふうにやるというと、これはまたあとで何を政府からいわれるかわからぬから、そういうものにはさわらぬ神にたたりなしだから、労務者はほしいけれども、そういうあまりきつい条件をつけられてはというようなことも考えないわけではないわけです。したがって、そこでやはり労使双方の常識とここに一般的な責任、また、そういうことに乗ってくる人というのは、そう非常識な方は事業主はお世話しないというふうに、安定所のほうとしても、そう無理やりに自分たちも、全然雇用主として関係のない人に、ただ言われたからするというような紹介というものではできないわけですから、その点は従来の一般の求人求職でやっている以上に、慎重に安定所としては取り扱う次第になるわけですから、その点はまあわれわれのほうとしては心配ない。しかし、やってみなければわからぬわけですけれども、その点は少しこの制度を活用してみて、そこの間に妥協点を見出す、そして心配ごとをみんな条件つけますというと、やはり雇うほうも今度はまたそれぞれに相当な心配がまとうわけです。やはりその点は常識にたよってやったほうがスムーズにいくのじゃないかというのが現在のわれわれの態度であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/44
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045・阿具根登
○阿具根登君 局長の御心配も私はわかります。しかし、現在言われておりますように、外部の問題を申しますとまずいかもしれませんが、たとえば五千円なら五千円のベース・アップを政府は考えている。ところが日経連は一銭もベース・アップしないのだ、定時昇給だけだ、こういうふうになっているようですね。そうすると、それをそのまま適用すると、雇われる人は給料をうんと上げてもらえるのだと思っても、雇う人は今度はベース・アップをしないのだ、これは定時昇給だけだ、こう思っているわけですね。そうすると、その基準を一応考えてみると、国家公務員は一年間に定期昇給で幾ら上がるかということを考えると、これは九百円か八百円くらいでしょう。そうすると、二万円になるというのが考えられぬようになるわけですね。だから雇うほうの人が、いや、給料上げてあげますよという考え方ならいいけれども、雇うほうの側の日経連は、給料は上げませんよと言っている。給料は上げませんよ、定期昇給だけだということになると、定期昇給はどこのものを持ってくるかといえば、一般常識からいえば、国家公務員の定期昇給あるいは地方公務員の定期昇給を見ても、上がっても微々たるものだ。そうすると、二万円に一年後、これは補助金がなくなっても二万円になるというのは甘いのじゃなかろうかという心配が一つ。それから局長の言うように、いや、相手の人も十分見ているし、それだけ良心のある人だから二万円にはなりますよ、特殊な例で二万円にならぬ人があるかもしれませんけれども、特殊な例というのはわずかなはずです。わずかなはずであるならば、それくらいなら政府が見てやっていいのじゃないかという反論が出てくるわけです。局長、今のことどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/45
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046・三治重信
○政府委員(三治重信君) 先生のお考えは、雇われるときに大体一万四、五千円なんです。それにプラス五千円がついているから、したがって、一年後に二万円以上払うというのはなかなか、しかもその経営者側のほうも、賃上げについては非常にきつい態度をとっているからというお考えなんです。われわれのほうは、そういう特別な離職者であるために、事業主が三十五才、また三十才以上の年令者に対しても、やはり最初はなかなか普通の三十才、三十五才の人たちと同じように払わなくて、やはりある程度割り引きした賃金しか出そうとしない。しかしながら、基本的にはその方が普通の労働になれれば、その職場になれれば、大体現在の職種別、または年令階級別に見ていって、三十才ないし三十五才の年令の男子の方の二万円の賃金というものは、そう不当に高いとは思わない。特別に考慮して払わなければならない金額ではないという基本的な考え方であります。したがって、大体においてわれわれお世話するところにおいても、また三十才−三十五才の平均賃金が、普通の人、特別な事情のある人は別として、普通の労働者であるならば、大体二万円は払われているのだ。したがって、初め雇うときの賃金について若干の不満がある。そういうところに経験がなくて、炭鉱労務者であるという、ほかの都会における工場労働者としても全然未経験だという、その未経験も、なかなかすぐなれるということでもない。したがって、このなれるまでの間を政府が保障するならば、またそれでなれて一人前に働いてもらえるならば、その土地においては大体において三十才から三十五才の人は二万円以上の所得があるのだ。したがって、それをほかの人よりは割り引いて払うということは、まず一人前になればない。その一人前になれるだけの期間というものが一年だ、こういう考え方であります。先生のほうのやつを推し進めていくと、三十才ないし三十五才の人でも、やはり一万四、五千円だ、また一万七、八千円しか払ってもらえないのが現実だというふうになりますというと、やはりそういうところもあるかもしれませんけれども、われわれの紹介する事業主にとっては、大体において三十才ないし三十五才の男子については普通二万円以上払われているのだから、それに特別の差別がない限り、必ずそういうものが相場なんだから、決して無理な賃金ではない。したがって一年の間は、初めて雇われる方についてやはりそこに心配がある。また雇われる人も未経験のために生産が上がらず、職場になれないために、やはりそれだけの賃金がもらえないということで、なれさえすれば普通の賃金だから、無理な賃金ではないのだというのがわれわれの基本的な考え方なんです。現在三十四、三十五、三十六年で事実雇用奨励制度がないときに、現在われわれの広域紹介によっていかれた方も、具体的に工場、事業場を調査してみても、現在において手取り二万円程度は一年後にはもらえるということが、大体これをやる準備調査としてずっと所々調査したところ、その調査結果からも自然に出ているということでございますから、まずまずそういうことについて御心配は要らないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/46
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047・阿具根登
○阿具根登君 非常に自信のある局長の御意見を聞きましたが、それではその事業主はどういう基準で選ばれておられますか。おっしゃるように、二万円以下で雇うようなことは一年後にはないのだ、だから安心してくれというお話だったのですが、しかし、それならそれだけ、それではみ出した人はわずかなものだ、それだけりっぱなところに世話していただけるならば、はみ出した人はわずかなものだから、救う道を考えて下さいということを第一点で申し上げておいたのですが、それではどういう基準で事業主を選んでおられるか。その基準をお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/47
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048・三治重信
○政府委員(三治重信君) その基準といって別に規模の何人以上の事業主だとか、またはそこの当該事業主の給与の支払いの年令階級別や職種別に賃金構成がこういうふうな事業というふうにまではわれわれのほうでは指示しておらないわけでございます。この調査の一、二の例を申し上げますというと、たとえば西田鉄工所、これは有名な会社でございますが、こういうところで鍛冶工なんかではやはり基準内賃金が一万五千円、初任級で。それで月の総収入が一万九千七百七十円、それが現在この調べた時点におきますというと、これは三カ月後の人なんですが、基準内賃金は上がってなくて、おそらくオーバー・タイムでしょうが、手取りから見た総所得で二万五千円。それから安いほうで申し上げますというと、日本ロール製造株式会社の江戸川工場というので、雑役に入られた人でも基準内賃金が一万五千円で、これはこの調査をしたときには一万七千五百円に上がった。こういうふうで、ずっと調べてその基準内でも上がっている人もあるし、上がっていない人もある。それからまた上がった理由としてやはり一番多いのが、正規職員になるのと、定期昇給とそれから超勤が一番多い。こういう未経験者でも入れようというところですから、どうしても仕事の繁忙なところだと思うのです。したがって、超勤がふえる。それから定期昇給、正規の職員になるというふうな、この三つの理由で賃金が上がったのが非常に多いというふうに思います。したがって、初めの場合においてはどうしても試用期間としての採用で、かたいところの賃金を払っていても、その働く職場になれるに従って、やはり正規の職員になる、あるいは仕事がふえる、能率が上がる、または定期昇給ということで賃金が一年後には相当上がる。その上がるのが普通の一般の公務員なり、または大会社のベース・アップなり昇給率よりか高いのじゃないか。というのは、大体中小企業では労務者各人によく事業主としての目が届く事業所が多いと思います。そういうところにおいては、やはりその作業のでき工合い、その人のまじめさというようなものによって、事業主としてはある程度自由に、そう束縛されないで賃金がきめられるということの結果であって、大企業のように年功序列型になっていて、団体交渉によってどれだけのベース・アップをする、定期昇給はどうだというふうに、きちんとエスカレーターなり碁盤の目のように給与規程ができておるところではないわけですから、その点は相当弾力的にできる。しかもわれわれがこういう広域職業紹介でお世話して雇われる企業主というのは、やはり相当労務者不足で困っている事業主が多いわけです。したがって、そういうところにおいては生産が上がり、能率が上がればやはりそれ相応の賃金を払う。また一般の賃金調査からいっても、そういう三十才から三十五才以上の方における賃金が二万円を下るということは、中小企業といえども日本の賃金の状態ではないというふうに考えているわけでございます。それから事業主の側の保障を取りつけるにしても、それをあまりやかましく言うと、初めから辟易されては、今度広域職業紹介の求人を探すのに容易でない。そこでそういう両者のかね合いを考えて、安定所で幅の広い紹介活動の線をやっている。われわれのほうが統計を見て、こういう事業主、何人以上の規模でなければならない、こういうふうなことをあまりやると、現地によって職業紹介をやるほうの者にしてみれば、あまりそれが型にはめられて、本省から指示されるということでは活動に非常に不便だ。しかもわれわれのほうとしても、どういうところにどういう事業主がおって、それが安定所の紹介を受け入れてくれるかということについても、まだまだ未経験のところが多いわけです。したがって、この点については、やはり経験を積んでいないと、そこに基準線がよく出てこないわけです。したがって、安定所の活動というものをそうこちらで理想的な線を引いて、ここからここの線の範囲、ここの線から向こうはいけないというふうな線を引かない。したがって、御指摘のようないろいろの事件も私どもは必ず出てくると思う。出てくる場合には、そういう経験を積んで、直す努力をして、それを通して行政指導として基準を作り、また安定所の第一線の活動をする者にもやはりこういう注意をという経験律をもってそこに指導していかないというと、初めからあまりワクをはめていくのはどうか。心配はわれわれのほうも必ずしも、強がりのようなことを申し上げますけれども、ないわけではないわけです。しかもこれからやった上で経験律から、やはり労使双方の意見を聞き、また紹介する立場の安定所の紹介官にも意見を聞いて、その間に全国の共通線を逐次作っていって、そこにより効率的な、より安定した紹介が行なわれるように指導していく。そこに指導態勢も出てくると思いますから、今しばらくそういう点につきましては、もう少しフリーな形でやってみてそこでその結果を是正していく、こういうふうにしていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/48
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049・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/49
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050・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/50
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051・阿具根登
○阿具根登君 どうも委員長から、あまりセーブなされるようだから……。今の問題は、局長の御説明も十分わかりますが、私が心配しておりますことが杞憂になりますように御努力願います。なおまた、一年後は何の保障もないのですから、もうこれで切り捨てごめんということでないように、ひとつ御尽力願いたいと思います。
それから質問の要旨をかえますが、訓練手当が三百円で据え置きになってしまった。これに対する問題は、私が言わんでも労働大臣御承知と思うから、私は長く質問しませんから、御答弁を願いますが、それに関連して、女子の職業訓練がなぜできないのかということを御質問申し上げたいのです。なぜかと申しますと、先ほどから言っておりますように、炭鉱では非常に災害が多くて、気の毒な未亡人になられる方が非常に多いのです。そうしますと、大体大きな炭鉱では、御主人が災害にあわれた、そういう場合には、その未亡人の方を使っているわけです。そうしますと、こういうような合理化になってきますと、この未亡人なんかが一番整理の対象になるわけです。そうすると、この未亡人は一家をかかえているわけです。主人のかわりに仕事をしているわけです。ところが、そういうところの女の方をおいそれと雇ってくれるところがない。そうするならば、そういう女の方に適しているような仕事を同じ訓練所でなぜ訓練することができないのか。訓練手当をなぜ女の人に上げることができないのか。訓練手当が三百円で据え置きになったというなにが一つ、これはもう理屈言わぬでもおわかりでしょう。生活保護から何からみな上がっているのだから、それはおわかりになっているのだから御返事いただきたいのですが、私がここで主張するのは、どうして炭鉱に勤めている女の人を、男子と同じように訓練所の仕事にひとつ考えてくれないのか、女子に対する仕事を修得させていただけないのかという問題なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/51
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052・福永健司
○国務大臣(福永健司君) 訓練手当の点は、確かに今度の措置ないしは新年度の予算においてこれを引き上げるということがなされておりません。御承知のように、今年度の予算の際にこれは相当上げたわけであります、決して十分とは申せませんけれども。いろいろ私どもとしましても、この点についても財政当局に対して折衝等もいたしたのでありますが、全体の予算を仕上げるときに、この分についてはほかの部分に比しまして、その前の引き上げのときに、まあ見方によっては相当額の措置がとられたということよりいたしまして、ついに今度の場合引き上げができませんでしたが、しかし、お説を待つまでもなく、これについては将来またさらに考えなければならぬことは当然でございます。この次にはぜひこれについての措置をいたしたい、こういうように考えておる次第でございます。
第二段の婦人に適した訓練の措置ということであります。御指摘のような事情で、非常にお気の毒な方々について特にこうした配意が行なわれなければならぬということは私も全然同感でございますが、率直に申しまして、比較的数も少ないしというので、特にそういう方々を対象としての措置が強調されてはおりませんけれども、お話の趣旨を体してこれは私は当然考慮すべきものと思います。事務的にもさらに検討いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/52
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053・阿具根登
○阿具根登君 今の問題、私が唐突に質問しましたから、大臣おわかりにくかったと思うんですけれども、たとえば洋裁とか、あるいは毛糸とか、そういう訓練をすれば、注文するところは県等が世話をしますというところまで福岡なんかは言っているんです。ところが、ばらばらだからそういう仕事は持っておられない。これは、そう、おっしゃったように、数も多いんではないし、半年訓練していただくならば相当な技術者にもなるし、県からそういう厚生関係の人の委託も相当ある。そういうものがないのでどうにもできない。また、女のことですから、訓練手当三百円といっても、これは大金なんです。それで、女だから家を離れてどっかへ習いにいくということは不可能なんです。だから、数は少ないけれども、これは犠牲者ですから、やはり町と同じような訓練機関を設けて訓練していただき、訓練手当も上げていただきたいと思うんです。数も少ないし、そうすれば仕事は非常に多い。これは、男のように、広域職業紹介でよそへ連れていくようなこともあまりないと思うんです。だから、そういう点は特に御留意を願っておきたいと思います。
それから、これを言うと長くなりますから、要点だけ申し上げますが、炭鉱の買い上げが、通産省のもので見てみますと、事業団で六十七万四千トン、保安整備で大体四十五万トン、それから自然閉山が大体六十四万九千トンぐらい、それからいよいよ今度の合理化で百二十万トン。二百九十七万三千トンを大体ことしつぶしたい、こういう考えなんです。局長そうでしょう。そうしますと、これは労働省答弁であったか、通産省の答弁であったかわからぬけれども、大体一千トン当たり七名くらいの首切りが出るわけですね。これは労働省所管とちょっとはずれるかもしれぬけれども、一体これはどこの山を対象にされているのか、ただ数字だけで労働省はその失業対策を考えられるのか、あるいはこれだけの数字が出てくるということは、どこかの対象の山をちゃんと考えておられるわけなんですね。どっかの対象の山を、どこがどうなるんだということを考えておられるわけなんです。一体どこをやめさせようと思っておられるのか。
それからもう一つは、個人能率が上がらない山は、これは整理の対象になる、こういうふうになると思うんです。そうすると、上は五千五百万トンに押えておる。個人能率は二十六・二だということになれば、みんなが二十六・二トンどこでも平均に出して、五千五百万トンであればわかるわけです、数字は。ところが、今から先は、合理化々々々で、三十トン、四十トン出す所が出てくるわけだな。そうすると、頭は、五千五百万トン、六千万トンにはならぬね。そうすると、二十六・二トン出さぬ山はぶっつぶさなければならぬわけになる。五千五百万トンしか使わないのですから。そうすると、二十六・二トンで大体計算して……。ところが二十六・二トンではもう生産ベースに合わぬということを言っておるわけです。そうすると、三十トン、四十トンを出すような山になってくる。そうすると、二十六・二トンの山をつぶさなければならなくなってくる。それは、労働省としては通産省とどこまで話をされているのか。ただ通産省の言うとおりに算術計算ではじき出して、そうして二万七千名ですか、二万八千名か、今度は失業者が出てきます、こういうような考え方なのか、どうなのか、この点を承っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/53
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054・三治重信
○政府委員(三治重信君) 三十七年度の買収する山、また保安の買い上げの山というものの買い上げのトン数につきましては、今おっしゃったような数字あたりも通産省との上でしているわけです。大体そういう計画でございますが、これが具体的にどこの山かということは、やはり通産省も、事業団の運営上やはり事業団が自主的にやるので、具体的には指示もしないし、そういうことでしておる。しかし、その事業団のほうに事情を聞いてみますと、これを初めから、年度始まる前からいうと、そういうための計画というものが事前にわかるということは、労務者自身も非常に不安を持つし、それから一番問題は、金融上の問題のようです。金融上、銀行なり債権者なり、または今まで売掛金を持っている者、商売人と申しますか、会社、そういう人たちが、すぐそれをほしがって、それによって非常な混乱を来たす。したがって、ある程度支払能力と申しますか、まず買い上げたあとで、労務者に対する退職金をやる、それからその山をどういうふうに処分して、また全体の債権なり銀行の債権とか、売掛金とか、そういうものを総合的に全部つかまえて、それをどういうふうに買い上げの費用で分配するか、そういう債権債務の問題で、非常にそれが事前にわかるということは、これはみんな知りたがっているけれども、それをやるというと、合理化事業団のほうでは収拾つかないことになる。それは、いかなる場合でも、事実上のこういう計画を進めていく場合において、それは外へは発表できない。労働省においては、そういうふうな、どこでいつごろどれくらいの解雇がある、買い上げによって失業者が出る、というような問題については、その大体の情報は出しましょう、しかし外へ出してもらっては困る、われわれのほうもそういうことによってやはり金銭上の問題が非常に深刻な問題になる、結局相当そういう意味で債権債務が打ち切られる、それで結局銀行、商社、個人というものの奪い合いになる、そこに混乱を来たすという問題で、われわれのほうとしても、そこまでは今のところ追及できない、事実上事業団のほうもそういうふうにいろいろ計画していても、その間に時期的に前後になって、こちらのほうを先に買いたいと思っても、早く話がついたほうを先に買うというようなことにもなるし、それから今までの経験で申し上げますというと、その資金計画、事業団のほうにもやはりそれぞれ四半期別の資金計画があるわけなんですが、それを年度全体、ことしじゅうの計画というようなものが、その四半期別に非常にアンバランスに希望が出てくると、それの処理にも困るということで、この具体的な山の買い上げのことは、これはとても実際上の問題として外へは出せないということでございます。できるだけわれわれのほうとしては、その事前に具体的な場所を知って、その建前でその準備はいたす予定でございます。それから今のところは、大体九州のほうが、今までの常識からいけば七割五分くらいになるのじゃないか、北九州のほうが。大体全体の七割前後になるのじゃないか、あるいは七割五分くらいになるのじゃないかというような見通しでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/54
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055・高野一夫
○委員長(高野一夫君) まだ続けますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/55
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056・阿具根登
○阿具根登君 そうすると、もうすでに買い上げる山はきまっておるのだな。きまっていなかったらこういうものは出ないはずだ。おっしゃるようにこれは一部の人はちゃんと知っておる。知っておるけれども、そういう周囲の情勢、四囲の情勢で、これを発表すれば大へんなことになるから発表しないのだ。その理由もわかるけれども、そういうことを知らない労働者はまことにかわいそうだ。自分の山は買い上げ対象にもうなっておる、自分の山はつぶれるということをね。お前の山はつぶれるということを知っておるけれども言わない、そうすると、労働者は自分の山がつぶれないようにあくせく働いておる、何ぼ働いてもこの山はつぶれる山だ、そして今度は次々にこれがつぶれた、あれがつぶれたとだんだんにつぶれていくわけだ。おそかれ早かれこれはつぶれる山なんだ、何ぼやっても。そうするならば、それは親切なようで親切じゃない。思い切ってこれこれだけの山はつぶれるということを言ってやったほうがいいと思うのですよ、私は。そうしないから、今度はもう山に働いている人は、やはり自分が山で働けば山がかわいいし、山で一生過ごしたいと思うものだから、どんなにやってもここ一年か二年の間には、三十八年度で大体終わるのだけれども、三十八年度までには自分の山はつぶれるのだということを知らずに一生懸命やっておるわけだ。それではあまり労働者が私はかわいそうだと思うのです、それでは。だから、やはりそういう基準をきめて、そうして一応の計画を立てたならば、これこれに当てはまる山はどれどれだ、残る山はどれどれだ、そうしてその山にこれはもっと維持費をかけなければいかぬとか、あるいはもっと機械化しなさいとか、あるいはもっと合理化しなさいとか、そのための金が二十八億から出ておると思うのですよ、二十八億から。そうすると、二十八億の金は出されておるけれども、みんなの考え方じゃ、その金が自分のほうに来て、自分のところがまた生き延びるのだというような考えを持っておるけれども、実際のところはお前の山はだめだと診断をされているわけなんですよ。そうするなら、それを私は知らせてやったほうがいいのじゃないか、私は論争した場合はこういうことも論争しました。ガンの患者に対してお医者さんは——ここにお医者さんがおられるかもしらぬけれども、あなたはガンだとなかなか言わない。胃かいようだとか何とかいうことで、その患者は死んでしまっている。ところが、それが親切なのか、親切でないのかという論争をやったことがあるわけですよ。私は、その場合、何ぼ隠しておっても、あと三カ月なり、二カ月で死ぬというなら、やはりこの山は伸びませんというようなことをはっきり言ってやったほうがかえって親切じゃなかろうか、こう思うんですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/56
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057・高野一夫
○委員長(高野一夫君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/57
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058・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/58
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059・三治重信
○政府委員(三治重信君) そういう御趣旨もわからぬわけではないんですけれども、実際の事業団の運営上非常に困るということで、現在そうなっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/59
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060・高野一夫
○委員長(高野一夫君) ほかに御質疑はございませんか。——別に御発言もなければ、本案に対する質疑は、これにて尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/60
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061・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 御異議ないと認めます。よって質疑は終了いたしました。
これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにして順次御発言を願います。なお、修正意見等のおありの方は討論中にお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/61
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062・阿具根登
○阿具根登君 それじゃ、私まだ質問が残っておりますが、あと予算委員会でやらしていただきますが、社会党を代表いたしまして討論をしたいと思います。
結論から申し上げますと、賛成はいたしますが、大臣も西ドイツに行かれて、よく御承知でございますが、西ドイツでは、たしか十一万名の人がやめていったと思います。しかし、その十一万名の人は九五%はみずから職を見つけて、いわゆるりっぱな職業があるわけなんです。だから会社から首を切られたのでなくて、次のいい就職があって出て行ったと、こういうふうに聞いております。なお、また、英国におきましても、同じような問題が起こって、六万かそれ以上の人がやめていったが、しかし、いずれを見てみましても、完全雇用が実施されているわけなんです。完全雇用が実施されているからこういう経済の変動の場合に、変革の場合に失業者を出す、こういうことはないわけなんです。だから、今申し上げた数字は、これは一昨年の数字です。外国では日本以上の合理化が進められているけれども、トラブルも何も起こらなくて、生活の保障、就職の保障が認められてやっているわけなんです。日本はちょうどそのときに、現在も非常に御心配をいただいておりますが、三池の闘争になったわけです。なぜ日本は千二百名の首切りにあれだけ血で血を洗うような闘争をやらなければならないか。欧州はなぜ十一万名あるいは六万名の職場転換があっても、何の紛争もなく、これが解決するかという問題は、先ほど申し上げましたように、完全雇用の問題、それに対する政府の考え方が日本とは全く違うわけです。日本は口では非常にいいことを言われるけれども、一般国民に向かって、時の責任者の総理大臣、あるいは労働大臣が西ドイツで言われたようなことを言っておられるかどうか。エアハルト経済相は、御承知と思いますが、ドイツの今日の繁栄をもたらしたのは、労働者諸君が勤勉に働いてくれたたまものである。そうするならば、われわれは労働者諸君にこたえなければならない。労働者諸君が職を失って生活が破綻するようなことがあってはいけないということを国民に訴えておるわけです。だから、全国民がこの経済相の言った言葉を信じ、それが正しいということで、手を広げて賛成しておるわけです。日本の責任者がそういうことを言われたことがあるか。私どもが質問すれば、それに似たようなことを言われるけれども、やられることは、先ほど申し上げましたように、一方では町ぐるみ破産の宣告をしておる。今まで働いておった奥さんが、法の目をくぐってやみの女になっておる。学校に行かぬ子供がたくさんはだしで遊んでおる。そうして一方では、一晩五万も六万もかけて泊まるような、どえらい建築物が建っておる。こういう状態であっては、私はかかる法案を何ぼ作られても、これで救済ができるとは思わない。現在の場合は、やむを得ず私はこの法案に賛成をいたしますが、ただいま質問を通じて申し上げましたように、まだまだ不備な点がたくさんございます。これを作る前に、まずそういう職を追われて、そうして子供をかかえて行くところもないということのないのをまず考えるべきであって、今の場合は、職を失われた方の事後処理が今日真剣に考えられておる。日本は工業においては世界の十指の中に入る伸展を示しておるけれども、事、労働問題については後進国並みだと私は思うのです。そういう点について、十分なひとつ関心と今後の御指導、あるいは対策を立てていかれるように、特に政府に要望いたしまして、賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/62
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063・村尾重雄
○村尾重雄君 私は民社党を代表いたしまして、本案に、すなわち炭鉱離職者臨時措置法等の一部を改正する法律案に対しまして、ごく簡単な要望をつけて賛成するものであります。労働者並びに関係者もこの程度の改正では物足りなさを感じておられることと思われまするように、われわれまだまだ不満足な点が多いのであります。御承知のように、山の合理化とともに山の失業者はまだまだ増加することを考えなければなりません。その山の離職者の再就職のために、いろいろと国会でも論議され、その要点が出ておるのでありますが、このたびの改正ではまだまだ不満足であります。たとえば勤勉手当の引き上げの問題にしても、あるいは住移手当の問題にしても、まだまだ引き上げをしなければならない点が感ぜられるのでありますが、このたび新たに別居手当、また技能者就職手当等も考えられてはおりますが、問題はその手当の内容であります。そういう点について、まだまだわれわれとしては不満足を感じるのでありまするが、なお関係者において、こうした山の離職者が再就職するまで、もっと考慮を払われるよう、今後の改正についての努力を要望してやまないのであります。
また、特に関係者の運営について、今後のこの運営について、特に熱意を持った態度をもってこれに当たられますよう要望いたしまして、本案に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/63
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064・鹿島俊雄
○鹿島俊雄君 私は、自由民主党を代表いたしまして、本案に賛成をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/64
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065・高野一夫
○委員長(高野一夫君) ほかに御意見もなければ、これをもって討論は終局したものと認めたいと思います。御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/65
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066・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 御異議ないと認めます。よって、討論は終局いたしました。
これより採決に入ります。
炭鉱離職者臨時措置法等の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案どおり可決することに賛成の諸君の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/66
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067・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 全会一致でございます。よって、本案は、全会一致をもって、原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、議長に提出する報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X00719620213/67
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068・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 御異議ないと認めます。
以上をもって、本日の審議は終了いたしました。次回は、明後日十五日午後十時より開会いたします。
本日はこれをもって散会いたします。
午後一時六分散会
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