1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年四月十七日(火曜日)
午前十時五十五分開会
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委員の異動
本日、委員永岡光治君及び村尾重雄君
辞任につき、その補欠として森中守義
君及び山田節男君を議長において指名
した。
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出席者は左の通り。
委員長 高野 一夫君
理事
鹿島 俊雄君
村山 道雄君
阿具根 登君
藤田藤太郎君
委員
勝俣 稔君
佐藤 芳男君
竹中 恒夫君
谷口弥三郎君
徳永 正利君
山本 杉君
横山 フク君
衆議院議員
修正案提出者 小沢 辰男君
政府委員
厚生政務次官 森田重次郎君
厚生大臣官房長 山本 正淑君
厚生省年金局長 小山進次郎君
厚生省援護局長 山本淺太郎君
事務局側
常任委員
会専門員 増本 甲吉君
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本日の会議に付した案件
○国民年金法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一
部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/0
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001・高野一夫
○委員長(高野一夫君) ただいまから本日の社会労働委員会を開会いたします。
まず、委員の異動について、報告いたします。本日付けをもって永岡光治君が辞任され、森中守義君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/1
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002・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 国民年金法の一部を改正する法律案を議題といたします。
前回に引き続き、質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/2
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003・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私は、事務的な面から少しお尋ねをしたいんですけれども、第一点は、今日の年金の加入率は、大体どういうことになっておるか、こういうことですね。これが一つ。
それから、その次には、年金の積立金の会計はどういう状態になっているかということ。
それから、その次は、ことしの状態の見通しですね。加入の見通しと、それから、積立金が幾らぐらいになるかということ。
それから、その積立金の二割五分——国民年金と厚生年金の二割五分を福祉関係に融資をやろうというんだが、それは実際にどういうところに融資されるのか、その内容の問題ですね。まずそれだけを先に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/3
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004・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) お尋ねの第一点、現在までの加入者でございますが、これは三月の末で一千九百四十六万人加入の申し込みがございます。これは国民年金の対象者であるべきものとして調査、推計されました数の八八%でございます。昭和三十六年の初めに目標として立てましたのが二千二十万人でございますから、この二千二十万人というものを頭に置きますと、おおむね九割六、七分ということになるのでありますが、実はこのほかに、まだ国民年金の対象者たるべきものがおりますので、この国民年金の対象者たるべきもの二千二百万人というものをもとにして考えますと、ただいま申し上げましたような八八%というようなことになるわけであります。八八%でございます。
なお、若干具体的に申しますと、二千二百万人のうち、強制被保険者の数、つまり強制被保険者たるべきものの数は千九百二十六万人でございます。それから任意加入の被保険者として予定しておりましたのが二百八十五万人、こういうものでございますが、この強制加入の被保険者たるべきもの千九百二十六万人のうち、今日までに入った者が千六百八十五万人、こういうことになっておりまして、この割合はおよそ八七%強になっております。それから任意加入の被保険者として予定しておりました二百八十五万人に対して、現在まで入っておりますのが、二百六十一万人でございまして、これは大体九二%程度でございます。こういう状況でございまして、おおむね軌道に乗ってはおりますけれども、まだ二百五、六十万人程度のいわば適用漏れがあるわけであります。これを何とか昭和三十七年度のうちに解消するようにして参りたい、こういう考えでございます。
それから、保険料の納入は、初年度の納入期限が今月の末までということになっております。したがってまだ年度の途中でございますが、三月の末までに入って参りました保険料の総額は百八十三億弱でございます。昭和三十六年度といたしましては二百億収入を得たい、こういうことでスタートしたわけでございますので、まだ十七億程度が足りないわけでありまするが、今のところでは、おそらく今月中にこれは入って参ると思います。したがって、初年度立てました目標から見ますというと、納入のほうはまあ目標は達したということになるのでございます。これも先ほどの加入と同様に、目標そのものに、やや控え目な手加減をしております。加入した人々が、当然納めるべきものであるというふうにして計算いたしますと、この保険料の総額というものは約一〇〇%の納入というものを予定して計算しますと、約二三十億程度になるわけでございます。これに対しまして、かねがね申し上げておりますように、国民年金においては、およそ計画上は八五%程度の収入を上げるということで計画を立てておりましたので、これはあまり初めから非常な無理をしないという前提をとっておるわけであります。そういう面からみると、どうやら目標として達した、こういうことになっております。それで納めました保険料の半分だけが負担するわけでありますが、この半分は当然加わっておるわけでありまして、今月の末には、ただいま申し上げましたように、ほぼ二百億をこえる保険料の収入があり、この半分の百億を国が負担するものを入れますから、したがって、本年度末におきましては、ほぼ三百億をちょっとこえる程度の積立金が国民年金でできる、こういうことになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/4
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005・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 三十六年度末で…。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/5
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006・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 三十六年度末と申しますのは、今月の末で三百億をややこえる積立金でございます。
それから、三十七年度の見込みなり、あるいは計画でございますが、これは今のところ、国の負担と保険料の収入を合わせまして、四百億積立金を持ちたいということで計画を立てておるわけでございます。これは初年度と比べまして、ややむずかしい計画になっておりますけれども、制度も逐次軌道に乗って参りましたので、おそらく三十七年度においては、努力をすればここまで持っていけよう、こういうふうに今のところ考えて努力をいたしておるわけでございます。
それから、第三のお尋ねであります還元融資の見込みでありますが、ただいま申し上げましたように、国民年金では四百億積立金が国の負担と合わせて新たにふえますので、このうちの四分の一、百億を特別融資として還元融資的に使うという計画を今年度の財政投融資計画の中で立てているのであります。この百億のうち、年金福祉事業団を通じて還元融資をいたしますのは十五億でございます。で、年金福祉事業団においては、この十五億を、病院に五億、厚生福祉関係の施設に十億充てるという計画をしております。それから、五十八億を地方公共団体に対する貸付として使う、特別地方債の引き受けをする計画でございます。この五十八億の内訳は、住宅及び生活環境関係の施設に十二億、病院に二十億、厚生福祉関係の施設に二十六億振り向ける。それからその次に医療金融公庫を通じて十億、それから一般地方債の形を通じて十七億、合わせて百億を予定しております。
それから、厚生年金につきましては、これも同じように、集まります保険料の四分の一、これは大体本年度において千四百億保険料が集まる見込でございまして、その四分の一、三百三十億を還元融資する計画でございます。年金福祉事業団を通じて百三十五億、この百三十五億の内訳は、住宅に七十億、この住宅の問題につきましては、当委員会の先生方からもしばしば御鞭撻をいただいて、ぜひ年金福祉事業団を通じて、中小企業の労務者に対する住宅の融資をやっていけという強い御鞭撻を受けたのでありますが、幸いにして、関係省、関係方面との調整がつきまして、三十七年度から年金福祉事業団を通じてやることができることになったのであります。これは御承知のとおり、前年度まではこれができませんでしたので、やむを得ず一時地方公共団体にお金を貸して、その地方公共団体からまた転貸しをしてもらう、こういうことにしておりましたので、まあ隔靴掻痒の感があるということで、どうも思うような融資がしがたかったのでありますが、これが三十七年度からできるということになったのであります。病院が三十億、厚生福祉関係の施設が三十五億、合わせまして、先ほど申し上げました百三十五億になります。
それから、特別地方債の形で還元融資をいたしますものが百十七億でございます。内訳は住宅及び生活環境が二十八億、これは零細な事業、あるいは零細よりやや大きいにいたしましても、小規模な場合、個々の企業で借りて従業員の住宅は整備しがたいというような場合に、都道府県なり、あるいは大きい市なりがかわって作って、そういうような人々に提供していく、こういうふうな場合に応ずるものとして二十八億を用意しておるのであります。先ほど申し上げました年金福祉事業団を通ずる直接貨しとでもいうべき七十億、この地方公共団体を通ずる二十八億、合わせて九十八億というものを住宅に振り向ける、非常に大きなウエイトをこれに振り向けて考えよう、こういう計画になっております。それから、病院が五十七億、厚生福祉施設が三十二億。以上二十八億の住宅及び生活環境と、五十七億の病院と、三十二億の厚生福祉施設、合わせて百十七億が特別地方債を通ずる融資でございます。
医療金融公庫については二十四億、一般地方債が五十四億、以上総計しまして三百三十億、大体そういうような計画でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/6
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007・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そこで、今の第一番目の問題ですが、二千二百万人を目標にして強制適用と任意適用との関係をおっしゃいましたが、強制適用というのは、全部予想される国民の中から、あの法律に基づいてですが、二十才以上は被保険者であるという明確な立場に立って強制適用という対象になっているのかということが一つ。任意適用というのは、奥さんとか、そういう任意適用がありますが、どういう立場から二百八十五万人というものを推定されているのか。全員がこれだけで、その中でどういう理由で二百八十五万を推定したか、これをまずお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/7
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008・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) お尋ねの第一点は、仰せのとおり、法律上は対象は確定しております。ただ、具体的にどの人が国民年金の対象であるかどうかということについては、なかなか実務上問題がございます。ほかの年金との入り込みというものが以外に多くて、初めの調査のときには、国民年金の対象だということで調査をしておりました人が、実際に当たってみますと、もうどこかへ勤めて、厚生年金の対象になっているというような形が、特に最近の雇用の情勢からいたしまして、この動きが予想以上に激しくなっているという傾向でございますが、法律上の建前としては、仰せのとおり、これは自動的にきまるという仕組みになっておるわけでございます。
それから、任意適用につきましては、現在の状態では、先生仰せのとおり、これはもう俗に申しまして、サラリーマンの奥さんがこの任意適用の加入者である。で、制度発足のときは、このほかに、当時五十をこえておった人々、つまりやがて年金受給の時期が十年もたてばくるというような人々が任意加入になっておったわけであります。で、この二百八十五万というのを出しましたのは、そのときの五十以上の人でほかの年金に入っていない人と、それから被用者年金の加入者の奥さんの数字を出しまして、その三分の一がこの制度に入る、こういうふうな計画を立てたのであります。これは制度を作りますときに立てた計画でございまして、三年前にいろいろ御検討願いましたときの資料には、そういう計画で計算してあったわけであります。その数が二百八十五万、こういうようなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/8
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009・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そこで、二番目の問題ですが、今の加入の問題、加入の動向について、二番目の加入財源積み立てというものが狂ってくるわけですね。そうしますと、その任意加入の方々は、今ここでいうと九二%だというのでありますけれども、その三分の二の方々の今度の年金に対する認識の動向はどうなのか。推定には九二%まで大体いっている、三分の一、しかし、あとの三分の二の人々のこの年金に対する要するに理解の仕方、それから、どうこれと取り組んでいくかというような傾向はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/9
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010・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 結論から率直に申し上げますというと、まあ評判がやっとやや持ち直して、上向きになっているという状況でございます。それで、先ほど任意加入の対象には、五十以上の人と、それから年令にかかわりなく、サラリーマンの奥さんである人と二つあると、こういうことを申し上げたのでありますが、昨年までの状況を申し上げますと、この五十以上の人々は、当初計画を立てました数をやや上回る程度入って参りました。一一〇%程度の加入がございました。これに対して若いサラリーマンの奥さんは、立てました計画に対して八〇%強程度、つまり計画にいかないわけであります。まあこれがその後逐次ふえて参ったわけであります。今後の方向としては、おそらくこれは漸増して参ると思います。年金問題に対するいろいろな情勢が安定をし、また、国民の側から見ても、理解のできるような形で年金制度が逐次充実されていって、いわばこの制度に託しても安全だという気持が強まって参れば、おそらくこの傾向はさらに強まって参るものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/10
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011・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 それから、三番目の還元融資の問題ですが、同じ項目で融資が分けられていやってると、たとえば年金の面から見ても、厚生年金福祉事業団が十五億、病院五億、厚生福祉が十億、地方団体の中でも、住宅関係が十二億、病院が二十億、厚生福祉が二十六億、それから厚生年金の千四百億の中の三百三十億を見てみても、年金福祉事業団、特別地方債という工合に、中でまた住宅と病院と厚生福祉というものが重なっているわけです。なぜこういうことになるのか、あの趣旨は、私たちが理解しているのは、国民年金と厚生年金の合算額の二五%を還元融資する、社会保障制度審議会もいっていると思うのだが、資金の管理というものは厚生省がやれとどの程度までいっておられるのか知りません。これは議論のあるところですけれども、少なくとも国民年金と厚生年金を合算した二五%分は、厚生省の指導のもとに還元融資というものを行なっていいんではないか。それがどうも別々に分けられて、地方団体と年金福祉事業団と分けて、それぞれ同じ項目が、たとえば病院には四種類出てくるわけですね。それで、同じ病院に貸すにも、こっちは何ぼ、こっちは何ぼと出てきた融資する金に、たとえば国民年金の年金福祉事業団から出る金と、厚生年金の年金福祉から出る病院なら病院を対象にしてやった場合に、いろいろ条件が違うのか。それから、地方団体に対するところで病院が二つあるが、これも条件が違うのかどうか、これは厚生福祉の問題、住宅生活の問題もあるわけですが、なぜこういうような分け方をしているのか、もっと一貫した厚生福祉行政に還元をするというような大方針を厚生省が立てて、あなたの場合、いつもいわれているように、貧富の格差がはなはだしいから、これを再配分しなければいかぬ、調整しなければいかぬといっているわけですが、一番ここが具体的に出てきた私は資金だと思うのですね、資金の面からいえば。その資金をなぜこういう工合にあっちこっちに分けて、自主性のないような格好でなしに、厚生省自身が自主性を持った金融というものをおやりにならないのか。どうもこれをやってみると、ちょうど予算のぶんどり闘争がこの年金二五%の資金に対して行なわれるという感じを私は持つわけです。なわ張り争い的な要素を持って、そこにむしろウエイトがいって、福祉関係へ還元するという大筋、柱が、何か薄れて消えてしまったような感じを、ここでこういうお話を聞いていると、持つのですが、そこらあたりはどうなんですか。これは年金局長ばかりじゃなく、次官のほうからもお話を承りたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/11
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012・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) まことにごもっともなお考えでありまして、実は、先生仰せのようなお考えでやりました結果がこういうことになってきたわけでありまして、事情を若干申し上げたいと思います。この還元融資は、もともと保険料を納めました人々に利益を広く均霑していく、こういう形でやるわけでありますが、その場合に、できるならば年金福祉事業団というものを通じ、しかも、直接貸す。勤労者であるならば、事業主を通じてそういう施設を作るように貸していくか、あるいはしかるべき勤労者の団体があって、直接貸すことが効果的であればそれをやっていく、こういうルートを通ることが一番望ましいわけでありますまた、農業関係の分についても、しかるべき農業関係の団体があって、そういういい施設をやる資金が足りないというような場合に、年金福祉事業団からそこへ貸付をしていく、こういう道を通ることが一番望ましいわけであります。ところが、実際の問題といたしまして、期待されるような住宅とか病院とか、あるいは社会福祉関係の施設、レクリエーション関係の施設というものをやって一般の国民の利用に供するというような仕事をする場合には、地方公共団体に受け持ってもらわなければならぬ面が非常に大きいのであります。とかくやって参っておりますうちに、費用がどうも相償わなくなって、ある程度の持ち出しをしなければならぬというようなことの多い施設がわれわれの融資をしたい施設には多いわけであります。どんどんもうかるような施設に融資をするというよりは、むしろ本来の収支からいうと成り立ちにくいけれども、しかし、国民のためにぜひやってもらいたい、こういう施設を大いに助長していこうというわけでありますから、施設を設置経営する側においても、ある程度持ち出しをする意思と能力があるということがある意味においては望ましいということになるわけであります。そうしますというと、どうしても都道府県とか市町村にそういう役割を果たしてもらわなくちゃいかぬという面が出て参りますので、そこで大きく分けまして、直接貸しのできる分と、地方公共団体の仕事を通じて還元融資の目的を達していく分との振り分けをする、こういうことをやらざるを得ないわけでございます。それが先ほど御説明を申し上げました融資総額の中で、一部が年金福祉事業団にいき、一部が地方債の引き受けというふうにいかざるを得ない事情に相なっておるわけであります。それからそれぞれの振り向け先の中で、住宅、病院、厚生福祉施設について、また国民年金と厚生年金が別々に項目を分けている事情はこういうことなんであります。つまり保険料を拠出した人々との関係において、事情が非常に違うのであります。
まず、住宅について申し上げますというと、これは国民年金関係の人々の住宅事情というものには、一般に農村が多うございますのと、それから、借り手が個々に分散しておりますので、どうも民間の団体等でこれをやるというものがおらない、個人個人に貸すということはここではできないことになりまして、これはもう住宅金融公庫によってやってもらわざるを得ないというような事情からしまして、国民年金については、住宅というものが還元融資の対象に事実上なりがたい。ところが、厚生年金については、これはもう今住宅が一番大切な、しかも、重点を置かなければならぬ施設であるだけでなく、実際上成り立ちやすいわけなんです。事業主も被保険者自身も、勤労者の住宅というものをこの際急速に整備していくということを望んでいるだけでなく、実際に金を借り受けて、それを返していくという能力が現にあるわけであります。そういう意味で、住宅については厚生年金関係は還元融資の項目にあげて、相当大きいウエートを置くことができますけれども、国民年金はそれをやらないということになるわけであります。
それから、病院につきましては、住宅ほど決定的に事情が違っておりません。ただ、金を拠出いたしました人々の感覚から申しまして、たとえば避地でありまして、ほとんどいわゆる厚生年金の被保険者になるような勤労者としての人々がいない、農民だけだというようなところにこの厚生年金の金を還元融資するということが、これは厚生年金の関係者、被保険者の気持の同調が得られません。逆に、今度は工場地帯等で、その地域の七割、八割というものが、そういう勤労者関係、あるいはその家族だけで占められているところに農村方面で集まった金を振り向けるということには、なかなか同調が得られないというような事情からいたしまして、比較的農村的な色彩の強いところには国民年金の金を還元融資をし、それから、それ以外のやや都市的色彩の強いところには厚生年金の金を還元融資していく。今のところ、この割合を、一応勤労者本人とその家族を含めまして、その地域の住民の三割以上を占めているところには厚生年金の金を還元融資をしていく、それ以外の三割を割るようなところには国民年金の金を還元融資をしていくということで、いわばすき間のないような形で病院あるいは医療施設に還元融資をしていく、こういう仕組みにしているわけであります。それから、厚生福祉関係の施設でありますというと、これはたとえば従業員の休息施設とか、あるいはレクリエーション施設というようなことになりますと、いわばもっぱら厚生年金だけという関係をもっておりますので、そういうようなものは厚生年金の関係に振り向ける、一般的な色彩の強いものは国民年金で補充的に受け持つ、こういうことになりましたので、結果として年金福祉事業団を通ずる融資は厚生年金のものがほとんど大部分で、残りを国民年金で補充的に受け持つ、こういう仕組みになったわけであります。それから、地方公共団体を通じますものは事情がやや違いまして、国民年金関係は、市町村なり、あるいは都道府県の活動を通じて施設を作ってもらい、それを通じて還元融資をしていくという点が非常に多いわけであります。そういう事情からいたしまして、先ほど申し上げましたように、両者に振り分けをしたのであります。年金福祉事業団になかった住宅が出て参りましたのは、国民年金の場合には、農村地方において、たとえば古いわらぶきの屋根をこの際、かえてトタンぶきというようなものにふきかえをするというようなことが、防災の見地からいっても、今農村方面ではかなり組織的に進められかけております。こういうものを全般的に助長していく。これについては、今のところ、どこからも資金が出ないという格好になりますので、これは農民に還元する趣旨で国民年金が引き受ける。また、災害等にあいましていろいろいたむというような場合に応ずるための防災改修を農村方面でやるという場合にもそれを貸していく。しかし、これは個々に貸すわけにいきませんので、市町村がそういう仕事をするという場合に、市町村に金を貸し付けて、市町村が自分の市町村民の個々の需要に応ずるような施策をしていく、こういう資金を提供するということで、住宅の面が地方公共団体のほうには出て参る、こういうようなことでございます。でき上がった姿をごらんいただきますと、多少ごてごてしておりますけれども、実は考え方はそういう考え方で整備してできたものであります。これは頭からどこかで押しつけたものが、こういうふうになったのではございません。したがって、中の内訳については、もちろん厚生省当局が需要を見まして振り分けて考えているわけでありまして、さらに実施して参りまして、需要がこの割り振りと非常に違って出て参りました場合には、事情に応ずるようにこの割り振りを変えております。そういうふうにして、ほんとうに還元融資の効果が上がるようにやっていくということでやっているわけでございます。まあ現在の事情はそういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/12
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013・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 次官どうですか、御所見がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/13
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014・森田重次郎
○政府委員(森田重次郎君) 厚生年金国民年金の性格、あるいはこれを貸し出す場合の機関との関係それから、これを消費した時間的な関係等、ただいま局長ら御説明のあったとおりでございまして、現実の問題としては、まあそういうような実情なんでありますが、しかし、これらは機関があまり複雑し過ぎるというようなことは、これはひとつこの法律ばかりじゃなく、政府から出ている資金のあらゆる面にまあ問題として考えなければならないものを含んでいると考えている次第でございます。まあいずれ、これを実施いたしました経験に照らしまして、十分反省すべきものは反省し、できるだけ単純化する方向へ持っていきたいというような気持でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/14
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015・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私は、今、次官のお言葉の中にありましたが、国の融資がいろいろの面にわたって、多岐にわたっているから、これにならざるを得なかったような口吻を漏らされたと私は思うのですけれども、これは今、小山さんがいろいろ言われましたけれども、私は、一つずつこれをとっていっても、今国民全体の中でだれが困っているか、どの層が困っているか、その困っているところをいかにして助成するかというところにむしろ柱が立たなければいかぬのじゃないか、私はそう思う。だから、厚生年金の分で、厚生年金が掛け分だから、この中の融資はこの関係者だ。国民年金のほうは国民年金のほうだから、これだけのワクの中なんだ。一体両方とも強制適用という格好で、国の施策としてやっていく。そうして厚生行政、要するに、福祉行政がおくれている。これを何とかして国民生活の格差是正のためにこの融資をやろう。そこで二五%に踏み切ろうというところまで大勢がきている。きておりながら、こういう格好で、たとえば病院を一つ建てるのに百万円金が要るなら、極端な例をとりまけすれども、国民年金の分からたとえば二千五百万、地方債のほうから二千五百万、厚生年金の中の分から二千五百万、こっちから二千五百万というような格好で資金の調達をする。まあそんなことにはならぬと思いますけれども、そういう感じを私はこれは持つわけです。病院には相当な金がこれは国庫からいきます。このほかに医療金融公庫というものがあるわけです。私は、やはり病院が非常によくなることはけっこうなことでございますけれども、病院がよくなっても、今の医療制度そのものが進まなければ、半額の治療費負担では病気になっても病院に入れない、かかれないというような人も相当多いという工合に——私は、これは医務局長の管轄かもしれぬけれども、やはりそういうものの配慮というものを私はしながら病院をよくしていくということでなければ、たとえば国保の給付をどう上げるか、健保の家族の給付をどう上げていくか、国がどう負担をしていくか、医療制度全体について、社会保障的な国民の負担を軽減していくという、この骨とあわせて病院の融資建設という問題がかみ合ってこなければ、金が二五%、四百三十億ことしは還元するのだ、それを四分してこう分けて、そうして病院に支給するということだけでは少し能がないのではないか、計画性がないという気がいたします。これは重要問題だと私は思うのです。そこまで私はやっぱり厚生行政がこれだけ踏み切ったならば、この病院の全体の額が多い少ないという問題を言っておるのではない。そのような方式で医療制度というものが国民の負担軽減という柱の中でいくならば、病院管理のために融資を多くしたところで、文句が出るどころではない。その面があまり進まないので、ここのところだけで、機械的にまあこれくらいがバランスだろうという格好で、ここで融資の額をおきめになるような感が私はするわけです。そういうことでは私はいかぬのじゃないか。
その次には、住宅の問題もそうなんです。住宅の問題でも、今わらぶきをトタンぶきにするとか瓦ぶきにするというそういう生活合理化の面からの要求があるから云々ということでおっしゃいました。そういうことになるなら、サラリーマンの住宅、要するに、雇用労働者に転換するための不足している住宅をどうするかということとあわせて、貧困農家における住宅の問題も、これはやっぱりそういう面から考えてきて、困窮の度合いがどこにあるかというところからウエートがきめられてこなければ、ただ機械的に原資がこうだからという分け方にはわれわれは納得できない。私は、やっぱりそういう配慮が必要ではないか。厚生福祉全般の融資の金額です。これこそほんとうに生活保護を基礎にした厚生福祉、ここにいわれている厚生福祉というワクをどの程度持っておられるか、私は詳しいことを聞かなければわかりませんけれども、これこそ貧困の度合い、困窮の度合いにむしろ集中していくべきじゃないか。頭から厚生年金の原資だ何の原資だ、これは相互扶助的な、掛金的な要素じゃなしに、もっともっとそこに重点のウェートを置いていくべきではないだろうか、私はそう思う。あとの七五%というのは、国家の経済建設といいますか、国の経済のところにずっと融資しているのですから、そこで足らなければ七五%分もこっちへとってきて、そうして困窮の度合いをほんとうに力を入れて上げるという——厚生省はこの一般会計の支出もむろん重点に置かなければなりませんけれども、この金をここへ持っていこうとするなら、そこらあたりに私は力を入れなければいけぬじゃないかという気がするわけです。何か年金局長は事務的に、これだけ金を持ってきたから、これだけ分けたらいいという、機械的な面になるかもしれませんけれども、厚生行政全体としては、生活保護の面からどう、医療保護の面からどうという工合に、総合的にこれだけの四百三十億という膨大な金を福祉行政に還元をするということなんですから、私は、それくらいの配慮が計画の中にぽんと出てきて、そうしてこの融資の配分というものがほんとうに生きるような格好でやらなければ、私は意味がないのではないかということを考える。あなた方がいつも主張される格差是正という問題は何でやるか、一つは生活保護があります。生活保護がありその他の施策もありますけれども、少しは地元の、要するに地方の財減の努力と、この融資の還元によってより進めようというなら、もっと大きな柱を立てなければ、私は意欲のある町村だけができて、意欲のないところはそのままという格好になってしまうと私は思うのです。この融資の問題が地方起債の地方債の問題にしても、意欲のある町村だけが事をなし得て、意欲のないところは、もう何にもなしという格好で終わってしまうというのがこの融資の結果だ。地方債に対して、特別地方債が百十七億、それから地方団体五十八億という金がありますけれども、病院はこの中で医療関係ですから、これは共通した能力をお持ちになって病院をよくしようという意欲が出てくるけれどもその他の住宅、厚生福祉という意欲は、町村ごとの、意欲のあるところだけにこの金が固まってしまう、偏在してしまう気が私はするわけです。ですから、大きな柱をぴしっとお立てにならなければ、この融資の金は生きてこないのじゃないかと、私はそう思う。だから、それは大臣がおいでになったら私は聞きたいと思っているのですが、大臣おいでにならないので、次官かわって今後の構想を話して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/15
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016・森田重次郎
○政府委員(森田重次郎君) ただいまの御意見拝聴いたしましたが、厚生省といたしましては、低いほうを重点的に考えて、それをできるだけ高めていきたいということを厚生省全体の方向として考えていることは先生御存じのとおりだと思うのであります。したがいまして、格差是正の問題等にも非常に意を用いて、ただいまのこの金の融通のほうも考えているつもりなのでございます。したがいまして、これを機械的に、ただ事務的に配分するというようなことはとってないつもりでございますけれども、しかし、これらの点につきましては、それぞれ御意見があることと存じますし、原則論としては、私は、先生の御意見に賛成でございますから、その御期待に沿うように十分検討いたしまして、事実の問題としてお答えできるような方針でいきたいと考えている次第でございます。これらの点について、具体的には局長のほうから答弁させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/16
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017・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私は、この地方債だけで百七十億の金ですから、これは病院を含めてでありますが、貧困町村では、これは町村が負担しなければ、この融資だけではできない仕組みになっているのでしょう。何パーセント一つの事業をやるという、その分類があると思いますが、そういう資料も私はいただきたいと思うのです。で、財源のない町村ですと手がつかぬというのが現実だと私は思いますから、今のような話をしているわけです。何ぼいい小判が前にあっても、小判が使えない。事業が行なわれないために、プラスする財源が町村になければできないというのが現実なんです。だから、そういうことのないようにしてもらいたいというのがこの数字なんですよ、この還元融資なんです。それを言っているのです。ですから、ゆとりのある、その財源のある町村ならどんどん事業を始める。たとえば失対事業の三分の二と三分の一の比率でも、三分の一財源がないから、ワクがあっても返上するという都道府県があるのですよ。都道府県ですらそういうことがあるわけです。ですから、厚生福祉になってくれば、これはなお一そうものも言わない、反論の出てこないところがある。それを福祉社会保障的な要素で直していこうというのだから、なお声が出てこないところを厚生省が目をつけておやりになる。それがこういうところだとは言いませんよ、内容は。十分配慮されていると思いますけれども、何も具体的に数字がないと、今の私が心配しているようなところに陥りそうな気がする。だから、私は、貧困の度合い、困窮の度合い、ここに重点を置いて、たとえば共同の保護施設であるとか、そういうものに重点的に厚生省が還元をする、一つの事業を行なう融資をする、この還元融資の仕事のウエートを高めるとか何とか配慮をして、貧困な町村であってもやれるような格好のものがここにずっと骨として出てこなければいかぬ、私はこう考える。そこに四等分して金をやっていけば、なおさらこんな格好では還元融資が生きてこないのではないかということを私は考える。これはどうせ大臣おいでになりませんけれども、ひとつ年金局は金の処理をどうするかというのは、一応機械的、事務的にそんなことを言っては悪いかもしれませんけれども、そういう立場に立って、厚生行政全体としては、この金をどうして生かすかという使途については、実際いろいろの面から考えて総合的な柱を立てて、それで配分をしていただきたいということを強くお願いをしたい。それでなければ四百三十億という膨大な資金が、結果を見せてもらえばわかりますけれども、私はどうも生きていないような気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/17
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018・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 先ほど来、藤田先生仰せになりましたお考え、私、前からお伺いしておりまするし、実はそういう考え方というものが、こういう結論を得るまでの間、ずっと厚生省側としては考えの底にあったわけであります。そういう考えで一つ一つ問題にぶつかり、それをたんねんに結論をなして参った結果がこういうところに落ちついてきた、こういうことなんであります。その場合の第一の問題は、これはやはりわれわれも、このお金を何とか最も格差の是正に役立つような方向に使いたい、従来国の予算に計上して、予算面で処置をするということには、ずいぶん厚生省は努力をして参りましたけれども、資金を提供して仕事をさせるという点の努力は必ずしも十分ではなかった。これをこの際、思い切って注ぎ込むことによって、一般会計の面における予算の計上と、それから、還元融資等を通ずる資金の注ぎ込みということで日本の福祉施策というものを画期的に前進させたい、こういうような考えでスタートしたわけであります。その場合に、まず第一に、どうしてもこえなければならぬ関門は、このお金はどうしても返してもらわなければならぬお金だ、これは当然のことでありますけれども、やればやるほどこの壁が高いわけであります。先ほど来おあげになりました社会福祉関係の施設というものは、大体においてお金を借りて施設を経営しておる、そのうちにまあ施設が逐次老朽化してくる、その間に次の施設を作るだけのお金を用意するということができない、いわば食いつぶしをしていくということが、ある意味において、社会福祉施設を社会福祉施設らしい運営をすることから言っても、宿命的な結論になるわけであります。そうしますというと、社会福祉関係の施設に金を注ぎ込むことによって返してもらうことは、原則論としては非常にむずかしい、そういう考え方からして、実は数年前までは、厚生省の関係者の中にも、社会福祉関係についてお金を貸して、それで施設を拡充するなんということは、もう問題にならぬといったような議論がいわば横行しておったのであります。そうじゃないじゃないか、現実に調べてみるというと、その金を返せないはずの社会福祉施設が、市中銀行とか何かにたよって、ある程度かえって金利の高い金を借りてやっている、返す金は大部分これは共同募金等に繰り込んでもらうわけであります。そうして返してもらう。ずっとこういう現実を見るというと、あまり機械的に議論だけしておっても問題は片づかぬ。もっと実態を見つめようじゃないかということで、今日の社会福祉振興会のあの施策が出たわけであります。これは御承知のとおり、実質五分で金を貸しているわけであります。そうして、ある程度金を返してもらって、今社会福祉施設の整備には、ある程度の役割をしているわけであります。それならば、その限度においてわれわれの年金関係の金だって役立てることができるのじゃないか、返せないところに返すということは、これは被保険者に対する責任から言ってできないにしても、返す当てがあるというところにはある程度これを活用することを考える。しかし、その場合に、一般に年金財政の上で期待しているような六分五厘というものを期待したのではとても無理だというので、実質五分強程度におさまる金を提供しようということになりまして、厚生年金から五億、国民年金から五億、毎年十億を提供いたしまして社会福祉関係の施設の整備に充てている。そうしますというと、このお金は六分五厘で年金財政上計算している金でありますが、実際上貸し付けて入ってくる利子は五分強になるわけであります。差額をどっかで埋めなくちゃいかぬということになりまして、これはひとつ国民全部に近い広がりを持っているという意味で、ある程度厚生年金と国民年金の利差益をその程度期待してもいいのじゃないかというので、それで持つ、こういう仕組で踏切ったわけであります。残りの部分については、やはりそうは言いましても、あまり多くのものを被保険者に結果としては転嫁させるような政策は、なかなかこれは関係者の納得が得られにくい。それ以上のものはやはり一般会計が金を計上して、金を入れるなり何なりしてくれなければ困る、こういうようなことになりまして、大体限度をそのくらいにして今やっているわけであります。残りは六分五厘の利子を払える限度ということで融資先を考えていく。その六分五厘を払える限度においては、今、先生おっしゃるような趣旨を最大限に生かすように考えて、やっていこう、こういう気持で現在計画を立てたりなんかしているわけであります。
医療施設の点につきましては、先生仰せのように、もう昔みたいに、むやみやたらにベットをふやすことだけを考える時代は過ぎたというのが厚生省の現在の判断であります。したがって、どちらかというと、もうベットのほうは、少なくとも都市の病院施設の整備したところでは、ほぼ横ばい程度に考えていい。残る問題は今までベットの整備がおくれておった、それよりも、もっと戦前戦後のあの木造の非常にお粗末な形で営まれているこの医療施設というものを、急速に都市におけるものと同じようなものに近いまでにもっていくということに相当金をつぎ込まなければいかぬ。この面には国民年金は最大の努力を払っております。僻地の医療機関の整備のためにはお金を積極的に持ち込む、こういうようなことで、厚生年金、国民年金を通じまして、これは厚生省全体として、日本のそういうことを考慮した医療施設の需要がどのくらいあるかということを、もちろん医務局を加えまして検討して、そのうち、厚生年金、国民年金を加えてこういうふうに分担をしよう、こういうやり方でしているわけであります。おっしゃいますように、完全に一本にやり、しかも、目的に対して、もっと端的にやればもう少しその効果は強まると思いますが、今のところは、まだまだ厚生年金関係についても国民年金関係についても、特に厚生年金関係について、それほどすっきりしたやり方をすることには、完全な気持の上の了解が得られにくい。方向としては逐次進んでいるけれども、自分たちの犠牲において国が一般的施策としてやることを怠るという結果になったんでは、かえって望ましくないという気持が、これは実のところかなり強いわけであります。私どももそういう気持を持つことにも、ある意味においてもっともな理由がある。そうすれば、これは逐次そういう方向を目ざしながら関係者の了解を得て、やり方をしっかりしてもっていくということで運んで参る、こういうことで今やっているわけであります。したがって、先ほど来申し上げましたように、逐次先生の仰せのとおりの方向に参ると思っております。いずれにしても、今日までいろいろやって参りました結果、痛感しておりますことは、厚生福祉関係の施設の充実のためには、もっともっとやはり一般会計で金を計上して、これは年金福祉事業団のほうに入れてもよろしゅうございますし、あるいは社会福祉振興会のほうに入れてもよろしゅうございます。あるいは社会福祉振興会のほうに入れることが順位としては適当かもしれませんが、もっともっと金を注ぎ込むという前提をとらないというと、日本の社会福祉関係の施設を急速によくするということがいろいろな面からむずかしい。しかし、そうはいいながらも、たとえば肢体不自由児の施設とか、あるいは盲人の施設とかというようなものは、努めてこちらのほうで整備充実をはかっていきたいということで、今実際上の運用ではそちらに相当のウエートを置いてやっているという事情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/18
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019・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 だから私は、社会保障的な厚生行政というのは、今積み立て経済の面から見て、返してもらわなければならぬという要素がある、そのとおりだと私は思うのです、この経済自身から見れば。だから、一般の厚生福祉、一般行政、一般財源から支出するというところにウエートが置かれなければ、せっかくこれだけやってみて、資金の効果だけの面を見てやったところで、ほんとうに貧困と困窮の格差是正になるかどうかという問題が一つ出てくるわけです。国のことしの予算を厚生省は努力されたといわれましても、昨年度より一般会計の中の社会保障比率は減っている。そうでしょう。四百幾らふえましたけれども、一般会計の社会保障比率は昨年より減っているという現状なんですね。これをどう高めるかというところに、私がさっき申し上げましたように、病院の医療給付をどう高めるかという、高めていく中で病院がよくなっていくと、それで調整がアジャストできるわけです。そうでしょう。厚生福祉の面から見てもそうなんです。だから、私は、やはり返してもらわなければならぬという、これだけ見ればそうなりますから、それは返してもらわなければならぬ。返してもらえるような格好の中で困窮と貧困を高めていくという形の柱というものが出てこないと、何かぼけてやせぬかという感じを持つということを言っている。それは今、小山さんの言われたように、社会保障というのは、融資なんかで力のあるところだけやれというような公式のものでないことは、私は万々承知です。だからむしろこれを効果的に使うのと同時に、一般会計の支出によって社会福祉を高めるその焦点をどこに当てるかということをひとつやってもらいたいということをお願いしているわけですから、まあこれはこれくらいにしまして、この具体的に支出されている、貸し出されている表が、今年度の表、計画があれば、資料をひとつ出していただきたいと私はお願いしたいと思います。
それから、その次の質問なんです。その次の年金の質問は、私は、議論をだんだんしていきますと、先ほどのお話のように、あの国民年金法の七条ですか、二十才以上は国民年金の被保険者であるという法律条文、強制適用ですね。そして、その五十才以上と、それから給与生活者の妻君が二次適用ということになっているわけです。三分の一に推定されておりますけれども、あとの三分の二はどうなるのかという問題が出て参る。一番卑近な問題は厚生年金だと私は思うのです。私が一番卑近な例は厚生年金、厚生年金をおかけになっている方々の奥さん方は、今フラット二千円の厚生年金で、それじゃ奥さんは何で保障をされるかということになってくると思うのですよ。そうすると、何としてもその奥さん方の老後の保障というものは、フラット二千円の厚生年金で二分して生活保障をする。これは調整金もありますけれども、そういうもの以外に何ものもない。だから、この年金制度そのものを見てみれば、所得保障の老後を保障するという概念があらゆるところに貫かれなければ私はならないものだと思う。そうなってくると、それじゃ今の上からいきますと、共済年金のほうは大体一万五千円から二万円の月収がある。その奥さんが、主人がなくなられても、半額の給付をもって生活の一助にできるという問題、その次に多い厚生年金は、フラットは二千円、調整金は少しはありますけれども、その奥さんは老後の保障はない。何もない。それも任意適用だ。それで政府の見通しは三分の一だった。だから、私は、老後の所得保障、年金制度というものを国の施策として生かしていくなら、これだけでは魅力がない。魅力のあるものにしなければならぬ。そうすればこの年金によって生活が維持できるという形が出てこなければ意味がないのではないか、私はこう思う。だから、給与生活者の奥さんだからといって任意適用だという格好でなしに、すべての国民は老後何才なら何才になったら生活が維持できるようにするという、年金法案のときのことをむし返すようになりますけれども、そういうことが、三十五年度から福祉年金が出発をして、昨年の四月から積立式の国民年金が出発したのですから、今日の日本の経済の状態からいって、私は、もっともっとそこに重点を置かれていくべきではないかということを強く考えておるわけです。だから、まず最初に聞きたいことは、この今の四十五年以後月三千五百円という年金制度を、一つの面で、一昨年の三十五年からの経済動向においてはどれだけの向上をする必要があるか、年金の額そのものをどれだけ向上する必要があるか。三十五年から今日までの経済成長、国民所得の面から見て、どれだけのものをしなければならぬかという推定、いつそれじゃこれに手をつけようとされておるのか、これをまずお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/19
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020・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 厚生年金とも関連をして国民年金の充実をはからなければいかぬ、特に厚生年金の充実をはからなければならぬということは、先生がすでに二年以上前から絶えず御主張になっておった点であります。実はやっとそういうことがまともに議論できることになってきたというのが現状でございます。二年前においては、まだ国民の五割前後のものが年金制度と全然無関係の状態に置かれて参りまして、先生のような御趣旨の考えを実現に移そうとする場合に何とも手がつかぬ、こういうことであったわけでありますが、幸いにして、現在は一とおり国民の全部が年金制度の網の目に入って、いよいよこれから第二段階として、厚生年金を機軸にし、それと並行して国民年金の充実をはかっていく、こういう時期を迎えたわけでありまして、何と申しますか、意気込みとしては、厚生省を中心といたしまして、先生仰せのような考えで、今、厚生年金のかなり大幅な改造というものに必要な基礎的な検討を始めたわけであります。最初におっしゃいました妻の立場をどうするかという問題は、現在社会保障制度審議会で深刻に論議されております。いずれにしても、今のように中途半端な状態にして置くことは、これはやめようじゃないか。厚生年金で完全にカバーできるようにするという考え方をとるならば、たとえばイギリスの制度に見られるように、厚生年金という制度の中に妻の分というものをはっきり入れる。たとえば夫の分の半分というものを入れるなら入れるというようなことで被用者年金の問題を考える。もしそうでなくて、今のような状態を続けざるを得ないというようなことであるならば、先生仰せのように、今年度は国民年金の中にこれらの人々を強制加入をさせる。言葉はどうも悪いのでございますが、当然加入として入ってもらって、そこで保障の実をあげていく。どっちかにこの際割り切る時期にきたのじゃないかというので、現在論議をしております。これは私ども審議会の何までほおっておくということじゃなくて、そういう論議を絶えず念頭に置きながら、どちらにこのかじを向けていくかということをいろいろ議論いたしているわけであります。御指摘のとおりに、これはいずれにしても次の厚生年金の改造あるいはその次の国民年金の大きな改正の場合には、この問題にある程度の解決をつけるべきだと考えております。
それから、国民年金の内容の充実の問題については、いつかも申し上げましたように、現在の経済成長に対応した国民年金の年金額の引き上げということについていろいろの案を検討しております。現在作っております目標は、少なくとも十年たったならば、今の三千五百円というものを、それを五千円ないし七千円に引き上げる、こういう計画を一応元にいたしていろいろ検討いたしております。検討いたしておりました初期は、どちらかというと、五千円に近い案に重点を置いておったのでありますが、最近は七千円のほうにやや動きを移して検討している。気持から申しますと、少なくとも七千円、できるならばもう少し上げるようにいたしたい、こういう考えでいろいろの可能性を検討いたしているわけであります。その際に大きく入って参ります問題は、現在国民年金制度の仕組、フラット制というものをこのまま続けていくか、あるいは所得比例制を導入するかという問題であります。フラット制を続けていくというと、どうも七千円以上にするということは非常に苦しい、あるいは七千円を切るというところに落ちつかざるを得ないかもしれないという可能性が強い、こういう見当であります。所得比例制に移して参りますならば、年金を七千円に持っていくことは可能であろう、あるいはそれ以上に持っていく可能性もある。気持としては、現在所得比例制をとるとするならばどういう点が問題になり、どういうやり方をするかということについてかなり立ち入った検討をいたしまして、一応第一回目の基礎的な検討を終えて、これから第二回目の検討に入るという時期でございます。ただこの際に私どもの念頭に絶えずありまして悩んでおりますのは、実は先ほど申し上げました社会保障制度審議会の社会保障に関する総合調整の際の意見では、どちらかというと、国民年金は将来フラット制を続けるべきだという意見が強いわけであります。率直に申しまして、私はこの意見にはあまり賛成できかねるという気持を持っているのであります。ただ、審議会の大勢としては、私どもの必ずしも賛成しがたいという気持は十分承知しながらも、学識経験者を中心とした人々はフラット制に傾く可能性が非常に強いのであります。こういう人々の考えは、国民年金というものをフラット制にして置くことによって、先生が先ほどおっしゃいましたように、厚生年金におけるフラット部分を国民年金並みにするという一つの目標を作ることができる、フラット部分というのは、特に国民年金の高さと相応ずるものとして考えていく。同様に、国家公務員その他の制度においても、そういうものを将来取り込むようにする、その上にそれぞれ所得比例部分を載せるというような構想を持っている人が多いので、それを主張しているわけでありますが、この点は、議論は議論として、うんと論議してもらっていかなくちゃいかぬ。そういうふうなものとの関連を考えながら次の段階の研究を進めて参る、こういうような事情になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/20
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021・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 厚生年金は、三十八年度に今の法律からいうと改正するのですね。厚生年金の改訂は、三十八年度、来年度ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/21
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022・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 法律から申しますと三十九年度からでございますけれども、すでに保険局長も申し上げましたように、できるならひとつ三十八年度からという心組みで準備を進めたい、こういうことにいたしているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/22
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023・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 年金はいつ。五年ごとですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/23
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024・小山進次郎
○政府委員(小山進次郎君) 国民年金は四十一年度から実施されるのが次の改正のスケジュールでございます。これも申し上げたことでありますが、四十一年度から実施に移すためには、おそくも四十年度までには結論をきちんと固めておきたい。四十年度までに結論をきちんと固めるためには、その前二カ年間くらい、相当整備された一応当局の試案と申しますか、試みの案をまとめまして各方面に発表して、二カ年間十分論議し、たたくべきものはたたいてもらう、そして二年間のうちに仕上げを行なう、こういうような心組みでおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/24
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025・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そこで、私は、大臣がおられないのは残念なんだが、次官ひとつお答え願いたいと思うのですが、所得倍増論というのが一昨年から出発をして、そして四十五年度の国民所得が二十三兆、総生産が二十六兆、それから労働力の配置の問題から比べて、ずっと非常にこまかしいことが出ているわけです。そして私は、今、小山さんが言われたフラットか所得比例制かという格好で、三千五百円を七千円にするとか、所得比例制ならもっと高くいけるであろうという一つの構想論が言われたわけです。しかし、私は、それは四十一年だということなんですけれども、今の所得倍増論は昭和四十五年までに完成するという形のものであります。それから、国民年金は二十才の人は四十五年後、昭和八十年に月額給付三千五百円であります。そういう格好で給付が行なわれるという格好で国民年金に入りなさいという。私は、もう素朴な国民から見れば、非常に疑念を持っている。だれが考えても疑念を持つ。片一方では四十五年。昭和八十年になって月三千五百円。所得倍増論で国民の総所得は十年間に九兆円あまりから二十三兆円になると計画が立っている。この所得倍増計画を四つ半の積み重ねが行なわれたときに月三千五百円の所得保障の年金給付が行なわれるとは、まことにもって理解がしにくいのであります。この状態で所得保障の年金の意義を説いてみても、また年金制度に早く入れという国民年金、要するに所得保障の意義だけは大いに宣伝しなければならぬ。われわれも一生懸命宣伝している。やはり医療制度と、それから所得保障の年金というのは、社会保障の柱として、これは何とか完成しなければならぬということで宣伝もし、理解も得るように努力をしております、政治をやる者としては。しかし、小山さんがここでやろうとして、早急に実地にやりたいという構想がここに出ているわけですけれども、表面に出ているのはそういう格好なんです。だから、私は、今の経済が成長している、また、われわれが成長さして、国民の生活を上げなければならぬ。これはほかの問題も入ってきますから議論が多くなりますけれども、その面だけ見ても、政府が今の経済がどういう工合に五%とか八%成長する中では、せめて国民年金所得保障というものはどれだけが必要なんだ、どれだけに上げなければならぬというくらいの構想と熱意というものは私は国民に訴えるべきだ。これを国民に一つも訴えないで、四十一年が改正ですが、技術の面からいう年金局長の考え方は今おっしゃいましたけれども、政府、厚生省自身としては、この年金に対して何ら触れてない。ただ、そういう所得倍増論と年金とのものすごいアンバランスの問題をそのままの状態に公式に置いておいて、そして年金の意義を説いてみたって私は無意味だと思う。だから、私は、やはり今ここでどうせというようなことを——法律が通った問題を今是正する——不足部分を助成するために法律が出ているのですから、これはこの形においてどう国で助成するかということはいいのです。しかし、構想というものは、日本の社会保障がどう進んでいくか、どう進めなければならぬか、その中で所得保障はいかにあるべきか、経済全体が上がっているときに、国民生活の向上の中で社会保障はいかにあるべきかということくらいは、厚生省がまとまった意見として私は片一方で出して、そして年金所得保障というものは、社会保障の必要欠くべからざる、近代国家の中でやらなければならぬ問題ですので、こういう構想で進んでいく、また、進めたいのだ、こういうことをなぜお出しにならないか。それを出さないで、ただ年金というのは必要だ、その意義をなんぼ説いてみたって、それは私ども素朴な意見なら、四百億も積み立てができる、この金を設備投資に使うためにこの年金を作った、そのためにわれわれが不況で苦しまなければならぬ、そんなことがあるかという意見がものすごくあります。しかし、私たちは年金の意義を説いて、まずとにかく加入しなさい、内容はわれわれがよくしようということで奨めて、だいぶ年金加入者はふえてきた。初めは、非常に憤慨していたけれども、最近では年金の所得保障の意義を説いて、加入するように努力している。しかし、全くもって何の意見も出さない。きょう小山さん初めてそういうことを考えているとおっしゃるけれども、それよりも、ひとつ公式に、何がいいか、七千円がいいか、経済の情勢でどうあるべきか、片方で所得倍増論を出しているなら、それについて、なぜひとつ年金はどうあるべきか、どうしていくべきかということをお出しにならないか、そこのところあたりはどうお考えですか。大臣にかわってひとつお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/25
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026・森田重次郎
○政府委員(森田重次郎君) これは御存じのとおり、時代の変遷、あるいは国民生活程度の向上、そうすると、年金は一体どれくらいが適当かということは、やはり社会の総合情勢に適応するように定むべきものであることは先生御存じのとおりでございます。したがいまして、厚生省としては、その点は弾力性ある姿で、必ず何らかの案を出さなければならないという意味で、今それぞれの機関に対して諮問し、そして検討中であるということは、先ほど小山局長からもその断片的なお話があったとおりでございます。しかし、もっとはっきり厚生省としての大体の見通しというようなものを立て、こういうふうになるのだからという国民の了解を得るということは、やはり一面私は必要だと考えます。したがいまして、この次には十分省として検討いたしまして、何らかの答案を出したいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/26
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027・高野一夫
○委員長(高野一夫君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/27
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028・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/28
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029・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 この議論はそれではあさっていたしましょう。しかし、私は、国民生活云々というような抽象論を、総理大臣が予算委員会で私に言ったときのように、そういう抽象論といっては失礼ですけれども、そういう意見をここでお吐きにならないで、ここは社労委員会ですから、たとえばフランスと日本とが国民所得がどうなって、その中で年金は幾ら出しておる。イギリスの国民所得と日本との差があって、どういう工合に出しておる、そういう具体的な面から、日本は経済と見合うというなら、外国が努力している目標までやはり到達しようじゃないか、それにはどういうところにしなければならぬくらいのことは、この社労委員会では発言してもらわないと、ただ国民の納得する経済の度合いに見合ってなんという議論なら、私はちょっと困る。だから、そこらあたりはざっくばらんに、どうきまろうと、きまるのはあとできまるんですから、ですから考え方だけは、格差是正をあなた方が厚生白書でお出しになっているのだから、私は賛成なんです。当然やらなければ日本の経済は持たぬのだから、そういう中では、外国ではこういうことをやっている、日本もどう近づけるか。あなた方は、最終決定はともかくとして、こうやっていきたい、こういう工合にやるように努力しようじゃないかということくらいは具体的に、ここは専門委員会ですから、専門的な立場から発言をしていただくようにお願いしておきたいと思う。それではあさってにします。それでは、それだけお願いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/29
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030・高野一夫
○委員長(高野一夫君) それでは、ほかに徳永さん初め、御質疑があるようでありますが、本件に対する質疑は明後日にしていただきたいと思います。
本案に対する本日の質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/30
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031・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 御異議ないと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/31
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032・高野一夫
○委員長(高野一夫君) この際、委員の異動について報告いたします。
本日付をもって村尾重雄君が辞任され、山田節男君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/32
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033・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
これから政府委員から細目についての説明、また、小沢衆議院議員から、衆議院における修正案についての説明を願いたいと思います。
まず、山本援護局長のほうから細部についての説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/33
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034・山本淺太郎
○政府委員(山本淺太郎君) 去る二月二十七日、厚生大臣から提案理由の説明をされました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案につきまして、お手元に配付いたしました資料の法律案要綱を中心に補足説明を申し上げます。
まず、この法律は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の外、未帰還者留守家族等援護法、引揚者給付金等支給法及び未帰還者に関する特別措置法の相関連する各法の一部改正をまとめて行なうことといたしております。以下、順次改正の内容について御説明申し上げます。
まず第一は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正でございます。この改正は、本国会に提出されております恩給法等の一部を改正する法律案によりまして、旧軍人に関する増加恩給、公務扶助料等の額が従来の一万五千円ベースから二万四千円ベースに増額されることに関連いたしまして、これに見合うように障害年金、遺族年金等の額を増額いたすものであります。すなわち、軍人軍属であった者に支給する障害年金の額につきましては、現在加給を加えて最高二十八万七千五百円から、最低二万二千円でありますのを、要綱の別表の(一)にございますように、加給を加えまして、最高三十八万五百円から、最低三万円に増額いたそうとするものであります。また、動員学徒、徴用工等の準軍属に支給する障害年金につきましては、現在加給を加えまして、最高十四万三千七百五十円から、最低二万二千五百円でありますのを、要綱の別表の(三)にございますように、加給を加えまして、最高十九万二百五十円から、最低二万九百五十円に増額いたそうとするものであります。さらに軍属に支給される障害一時金の額につきましては、現在最高十八万三千円から、最低十三万円でありますのを、要綱の別表(二)にございますように、最高二十四万八千円から、最低十七万六千円に増額いたそうとするものであります。これらの増額は、障害年金につきましては、第二款症及び第三款症のものを除き、本年十月から実施し、第二款症及び第三款症の障害年金並びに障害一時金につきましては、昭和三十八年七月から実施することといたしております。
次に、先順位者に支給する遺族年金の額は、現在五万一千円でありますのを七万一千円に、遺族給与金の額は、現在二万五千五百円でありますのを三万五千五百円にそれぞれ増額することとしております。これらの増額の実施時期につきましては、本年十月から増額分の半額の増額を行ない、全額を増額いたしますのは、七十才以上の者については昭和三十八年十月から、その他の者については昭和三十九年七月から行なうこととしております。
次に、第二は、未帰還者留守家族等援護法の一部改正でございます。まず、留守家族手当の増額でございますが、これはこれまで留守家族手当の月額が遺族年金の十二分の一でありますので、遺族年金の増額に見合うように、現行月額四千二百五十円を五千九百十円に増額いたそうとするものであります。その実施時期につきましては、公務扶助料及び遺族年金と同じく、本年十月から増額分の半額の増額を行ない、全額の増額実施は、七十才以上の者については昭和三十八年十月から、その他の者については昭和三十九年七月から行なうこととしております。
次に、死亡の事実の判明した未帰還者の遺族に支給する葬祭料及び遺骨引取経費の額を、社会情勢の推移、類似諸制度との均衡等にかんがみまして、現行額の三千円及び二千七百円を、それぞれ五千円及び三千五百円に増額し、本年四月から実施することとしております。
次に、未帰還者であった者が、帰還後療養を要する場合に行なっております療養の給付の期間を延長いたすことといたしました。すなわち、未帰還者留守家族等援護法に定められた療養の給付期間は、この法律施行前に帰還した者につきましては、帰還後十四年まで、この法律施行後に帰還した者につきましては、帰還後九年までとなっており、本年八月以降において療養の給付期間が満了する者が生じますが、これら帰還患者は、大部分結核性疾患及び精神病等、いずれも長期の療養を必要とする実情にありますので、今後も引き続き療養の給付が受けられることとするものでございます。
第三は、引揚者給付金等支給法の一部改正でございます。この改正は、引揚者国債の元利金につきましては、事務の簡素化、権利者の保護等のため、その消滅時効の完成後も支払いができることとし、本年四月から施行することとするものでございます。第四は、未帰還者に関する特別措置法の一部改正でございます。まず、厚生大臣が、戦時死亡宣告の請求をなし得る場合を広げることといたします。すなわち、現在厚生大臣が戦時死亡宣告の請求をなし得る場合は、昭和二十二年以後生死が分明でない者、または昭和二十二年以後昭和二十七年末までの間に、生存資料はあるが、昭和二十八年以後、諸般の事情により、生存していないと推測される者とせられておりましたが、時日の経過とともに、その後の時期において生存資料のあった者についても、今日生存していないと推測される者については、戦時死亡宣告の規定を適用し得るよう、生死不明の期間のとらえ方を、民法第三十条に規定する失踪宣告の場合と合致させることとし、本年四月から施行することといたしたいのでございます。
次に、未帰還者に関する特別措置法による弔慰料の受給者の範囲を広げることといたします。すなわち、未帰還者が戦時死亡宣告を受けたことにより、弔慰料を支給される遺族の範囲は、現在、配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹に限られておりますが、弔慰料支給の趣旨にかんがみまして、これらの遺族がないときは、三親等内の親族であって、死亡したものとみなされます未帰還者と生計関係を有していた者にも支給されるよう、戦傷病者戦没者遺族等援護法に基づく弔慰金の場合との均衡をはかることといたしました。昭和三十四年四月一日にさかのぼって適用することとしたいのでございます。
第五に、施行期日につき、最後に便宜取りまとめておりますが、その内容は、おおむね以上に申し述べたとおりでございます。
以上、きわめて簡単でございますが、法律案の概略を述べ補足説明にかえさしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/34
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035・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 次に、衆議院の社会労働委員会における修正点について、小沢辰男衆議院議員より説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/35
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036・小沢辰男
○衆議院議員(小沢辰男君) ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に関しまして、衆議院で行ないました修正の内容を、自由民主党、社会党、民主社会党、三党を代表いたしまして御説明を申し上げたいと思います。
本修正は、引揚者給付金等支給法の一部改正を行なうとするものでございまして、内閣提出の原案におきましては、引揚者給付金等支給法につきましては、国債の元利金の支払いの特例を設けるということのみが定められておったのでございますが、衆議院におきまして、三党で、これに加えまして、引揚者給付金等の支給対象の拡大及び請求権の時効の延長を行なうこととしたいという修正を行なったものであります。
修正内容は四点ございますが、まず、第一点は、現行法におきまして、引揚者の給付金は終戦時まで外地に六カ月以上生活の本拠を有していた者のみに支給することを原則としておりますものですから、したがって、終戦前六カ月未満の間で外地で出生をした引揚者の子供は給付の対象としないということになっておりまして、これでは非常にお気の毒であると同時に、親とともに外地に生活の本拠を有していたことが明らかでありますのに、一方、六カ月未満の間に生まれたというだけでこれが支給対象にならぬということは非常に不合理だ、こういうことで、
他の者との均衡上もありますので、これら六カ月未満の引揚者の子供さんにも対象としよう、こういうのが第一点でございます。
それから、第二点は、御承知のとおり、六カ月在外期間ということが条件になって大原則でございますが、この条文の中にカッコ書きで、開拓民につきましては六カ月未満でもいい、こういうことになっております。ところが、この開拓民の方々以外に、いわば農業移民以外に、工業移民と申すべきものがございまして、政府の命令あるいは要請に従って、全く生活の本拠を向こうに移そうということで、一切の生活手段、あるいは生活基盤を畳んで外地に行かれた方があるわけでございまして、これらの方々につきましては、当然開拓民同様に支給対象にすべきだ、こういうことにわれわれのほうで考えをいたしたわけでございます。これらの方々を引揚者給付金の支給対象としよう、これが第二点の改正点でございます。したがいまして、条文といたしましては、第二条の一項の中に「開拓民」の次にこういう方々を入れようというふうに改正をいたしたわけでございます。もともと六カ月の期間もさらに短縮するという議論もありましたけれども、やはり政府の命令または要請によって、全く生活の本拠を日本内地から外地に移したのだという事実をとらえて、そういう方々を全部対象にすべきであって、実質上それで大体解決するんじゃなかろうかと、いうことで、この六カ月の原則はそのままにしまして、例外の規定を置くようにいたしたわけでございます。
第三点は、引き揚げた後に死亡された方々に対しまして、その遺族の方々に対しまして給付をされております遺族給付金についてでございますが、現行は引き揚げ後昭和三十二年三月三十一日以前に死亡し、死亡当時二十五才以上という要件があったわけでございます。ところが、この遺族給付金が支給されることにされました趣旨は、御承知のとおり、引き揚げ後一家の働き手を失った遺族に対する援護にあるわけでございますので、二十五才が当時生計維持の基準として考えられておりましたのでございますが、せめて成年といわれる二十才以上の方々で、そうしてなくなられた方々には、その遺族の方に給付金をあげるべきじゃないか、こういう考え方に基づきまして、二十五才の年令制限を二十才に引き下げをいたしたわけでございます。
それから、最後の第四点の改正は、御承知のとおり、現在、引揚者の給付金及び遺族の給付金につきましては、昭和三十二年に法制定以来現在まで三百五万余件というものが申請がございます。裁定が終わっておるわけでございますが、現行法によりますと、引揚者給付金等を受ける権利の時効は五年ということになっております。そういうふうに考えて参りますと、この五月十六日で実は時効満了になりまして、大部分の、これから引揚者給付金を請求しようという方々が、あと一カ月足らずして権利が消減するということになります。ほとんど申請がなくなっておるような実情であればいいんですけれども、月々なお今日現在で、政府の説明によりますと、一千件前後は申請があるようでございます。そういたしますと、どうしてもこの時効の期限をさらに延長してやらないと権利の行使ができなくなるという人たちが出て参りますので、一年間時効期間を延長いたしまして、そうして請求をどんどんしていただくようにしたいという趣旨が第四点の改正でございます。
以上が私ども三党共同でやりました修正案の内容でございますが、この修正によりまして、新たに支給対象となられる方々の総数は四万七千ということになります。で、もちろんこの方々を新たに対象にしますために国債の発行額がそれだけふえるわけでございます。大体三億六千万見当というふうに含んでおるわけでございます。しかしながら、これは当初きめました五百億の国債発行のワク内で処理できる現在まだ相当の余裕があるようでございますので、今後の申請の件数を見込みましても、なおかつ、これくらいの余裕は十分あるという判断に立ちましてこの改正をやったわけでございます。ただ、国債の関係のものでございますから、三十七年度予算には直接関係がございませんので、予算関係の法案修正ということにはならないという判断でおるわけでございます。
以上、内容を申し上げさしていただきましたが、ぜひ本院におかれましても、三党共同修正案の趣旨を御了承いただきまして、御審議の上、御可決あらんことをお願いいたす次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/36
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037・高野一夫
○委員長(高野一夫君) これから質疑に移ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/37
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038・阿具根登
○阿具根登君 ちょっと今の修正の点について一つだけ……。
修正の第二番目の、六カ月未満のものであってという御説明の中に、もっとこれを縮めろという意見もあったが云々という御説明を今聞いたと思うんですが、これは、本法とこれを今ちょっと比較してみておるんですが、本法は六カ月以上のものとなっているわけですね。そうすると六カ月以内ということは全部ということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/38
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039・小沢辰男
○衆議院議員(小沢辰男君) 本法をごらんになるとおわかりのように、六カ月の在住期間がないとだめだという原則になっております。この原則を、たとえば四カ月なり三カ月なりというような考え方の議論もあったということを申し上げたわけであります。ところが、そういたしますと、出張旅行等の人と判然と分けるわけにいかない。四カ月向こうにいさえすればいいのだ、あるいは三カ月いればいいのだということになりますと、たまたまいろいろな用務で向こうへ行って、外地の出張ですから、非常に長い方もあるわけです。そういう人まで支給対象にする必要はなかろう。要するに、内地から生活の本拠をほんとうに向こうに移してしまったという人を救うのが本来のわれわれ議論したときの趣旨なんだから、そこで考えてみますと、政府の命令または要請によって、こちらから生活の本拠を向こうへ移したという人であれば、たとえ二カ月以内であっても、あるいはそれが三カ月であってもいいのじゃなかろうかという趣旨でこういう提案したような修正案にしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/39
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040・高野一夫
○委員長(高野一夫君) ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/40
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041・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 速記つけて。
本件に対する本日の質疑はこれをもって終了したいと思います。御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/41
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042・高野一夫
○委員長(高野一夫君) 御異議ないと認めます。本日の審議は終了いたしました。
次回は、明後日午前十時から開会いたします。
本日はこれをもって散会いたします。
午後零時四十五分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014410X02019620417/42
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