1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年二月二十日(火曜日)
午後一時三十分開会
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出席者は左の通り。
委員長 武藤 常介君
理事
川上 為治君
剱木 亨弘君
中田 吉雄君
委員
上原 正吉君
大泉 寛三君
岸田 幸雄君
吉武 恵市君
阿部 竹松君
近藤 信一君
椿 繁夫君
吉田 法晴君
田畑 金光君
委員以外の議員
発 議 者 永末 英一君
国務大臣
通商産業大臣 佐藤 榮作君
国 務 大 臣 藤山愛一郎君
政府委員
経済企画政務次
官 菅 太郎君
通商産業政務次
官 大川 光三君
通商産業大臣官
房長 塚本 敏夫君
通商産業省石炭
局長 今井 博君
通商産業省鉱山
保安局長 八谷 芳裕君
事務局側
常任委員会専門
員 小田橋貞壽君
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本日の会議に付した案件
○下請代金支払遅延等防止法の一部を
改正する法律案(永末英一君外二名
発議)
○小売商業調整特別措置法の一部を改
正する法律案(永末英一君外二名発
議)
○百貨店法の一部を改正する法律案
(永末英一君外二名発議)
○国民生活研究所法案(内閣送付、予
備審査)
○石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を
改正する法律案(内閣送付、予備審
査)
○派遣委員の報告
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014461X00519620220/0
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001・武藤常介
○委員長(武藤常介君) これより商工委員会を開会いたします。
本日は、本院議員発議にかかる下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案外二法案及び内閣送付にかかる国民生活研究所法案並びに石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案について提案理由の説明を聴取し、次いで、先般行ないました産炭地域の実情調査のための派遣委員から報告を聴取いたします。なお、右の外米国の綿製品輸入賦課金問題及び地下水くみ上げ等地盤沈下問題に関し調査を行ないます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014461X00519620220/1
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002・武藤常介
○委員長(武藤常介君) それでは、まず、下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案、小売商業調整特別措置法の一部を改正する法律案、百貨店法の一部を改正する法律案、以上三案を便宜一括して議題とし、発議者から提案理由の説明を聴取いたします。永末君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014461X00519620220/2
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003・永末英一
○委員以外の議員(永末英一君) ただいま議題となりました下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案、小売商業調整特別措置法の一部を改正する法律案、百貨店法の一部を改正する法律案、三案の提案趣旨の説明を申し上げます。
お手元に配付いたしました提案趣旨説明のプリントがミスプリントでございまして、非常によごれておりますることを最初におわびをいたします。
第一に、下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案の提案理由を説明いたします。
現行法は下請代金の支払い遅延等を防止することによって親事業者と下請事業者との取引を公正にして、下請事業者の利益を保護することを目的といたしております。しかし、親事業者に対して、下請事業者が、どうしても弱い立場に立つという事実は、中小企業の過当競争によって引き起こされるやむを得ない現象なのであります。したがって現行法の執行にあたりましては、法の運営につき、よろしきを得ることが必要であるとともに、法の不備な点は、一日も早く是正もしくは補足をしなければならないと存じます。
本法について改正を提案する点は左の通りでございます。
第一に、現行法は第三条において契約内容を書面として交付すべき旨を明記いたしておりますが、下請事業者の給付の内容云々と記載されておりまするのを、給付提供の時期、受領の時期、返品条件、支払時期、支払手段など、その内容の主要点を明記して、契約を公正ならしめる必要があると存じます。
第二に、現行法第四条の親事業者がしてはならない順守事項については、下請事業者の責任でないことが明白な場合にもかかわらず下請事業者の給付の提供に対して一定期日以降にもそれを受領しないこと及び給付に対する下請代金を支払わせないことを追加することが必要であります。
第三に、現行法第四条の次に、新たな追加事項として、
1 定められた支払期日までに親事業者が下請代金を支払わなかった場合の遅延利息の支払い義務と、その利息の取りきめ。
2 下請事業の給付提供に対して、親事業者がそれを受領しないことによって生ずる下請事業者の損害賠償。
3 親事業者が下請事業者に対する下請単価が不当に引き下げられておるので、その最低額の取りきめ。
4 下請事業者は、親事業者からの発注の受け入れについて、継続性が保障されず全く不安定な立場に置かれているので、やむを得ない場合を除いては、親事業者は一定量の発注を継続して下請事業者に委託する。
右の四件を明記して下請事業者を保護し育成する必要があります。
第四に、以上の改正に伴って、罰則について若干の追加が必要であります。
以上、下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案の提案の趣旨説明をいたしました。
次に、小売商業調整特別措置法の一部を改正する法律案についてでございます。
現行法は小売商と購買会並びに小売市場との関係を調整することをもって、小売商の事業活動の機会を適正に確保し、かつ小売商業の正常な秩序を阻害する要因を除去するという目的を遂行するものとしております。しかしながら、本法の小売市場に対する規制は、現状に対してきわめて不十分であります。また、小売商業者と製造業者との調整は、本法第十四条だけでは全く不十分であります。さらに本法には、都道府県知事があっせん調停または勧告し得ることになっておりますが、都道府県知事の行為は単独の判断によってなされるのではなく国、都道府県及び特別に必要ありと指定された都市において民主的な審議会を設置して、調整すべき事項について調査審議し、答申建議せしめる必要があります。
改正の第一点は、小売市場に関する条項についてであります。最近小売市場の営業内容が多種多様になり、一般小売商業者との調整を要する件数が増加しておりまするので新たに小売市場の定義を改めて、十以上の小売店舗を含む建物を小売市場とすることにし、小売市場の開設を許可制にいたしまして、小売市場の貸付、譲渡等によって営業内容が任意に変化することを防止する必要があります。無許可の開設に対しては厳重に規制するものといたします。
第二の改正点は、製造業者または卸売業者と小売業者との間の関係は、本法第十四条で単に製造業者等の小売商業兼業を届出にすればよいと規定しているのを各業間の業務分野を、商品と地域によって調整し得るように改正する必要があります。これは製造業者、卸売業者の小売商業兼業はすべて届出制とし、新たな新増設を禁止し、かつ兼業している小売商経営が既存の専業の小売商業者を署しく圧迫する場合はこれに適切な措置をとり得るようにする必要があります。
第三の改正点は、商業調整審議会を、国、都道府県、指定する都市に設置する件でありますが、この審議会は本法施行に関する事項をすべて調査審議し得るものとして、委員は小売業者、製造業者、卸売業者、消費者、労働者、学識経験者によって構成する必要があります。
このような改正によって、本法の名称は、当然に商業調整法と改称すべきであると考えます。
次に、百貨店法の一部を改正する法律案についてでございます。
昭和三十一年五月に、百貨店法が制定された趣旨は、本法第一条に明らかなとおり、百貨店業の事業活動を調整することにより、中小商業の事業活動の機会を確保し、商業の正常な発達をはかり、もって国民経済の健全な進展に資することにあります。
ところが、現行法がざる法といわれておりまするとおり、法実施の当初より、あるいは公然と、あるいはやみで、本法はじゆうりんされております。本法の目的とする趣旨を確保するためには、絶対に本法の改正が必要だと考えます。
改正の第一点は、百貨店業の定義そのものを拡大しなければならない点であります。すなわち、物品販売業もしくは物品加工修理業のほか、飲食店及び喫茶店営業をも含め、かつ規定の営業面積をこえる面積を他の物品販売業等に貸し付ける業をも百貨店という概念規定に入れない限り、中小商業活動を確保できなくなっているのが現状なのであります。
第二に、百貨店業が私鉄等の構内や駅建物を利用して経営を行なう現象が著しくなっておりますので、今後はこれを許可しない方針が必要であります。
第三は、最近は、百貨店業資本につながるスーパー・マーケットが著しく増加し、地域的に見て中小商業との間に紛争を起こしている例が少なくありません。そこで、百貨店業者もしくはこれと資本的、人的につながりのあるいわゆる同一系統資本がスーパー・マーケットその他の形で進出することを規制することが必要なのであります。このような認定については公正取引委員会が独禁法に基づいて指定すべきであります。
第四は、現行法は第九条において、通商産業大臣が、百貨店業の営業行為について勧告できることになっておりますが、これは特定の営業方法を明記して、その内容について一々許可制とし、百貨店業と仕入先との関係についても、事項を明記して、その内容を許可制とし、百貨店業の行き過ぎを抑制する必要があります。
第五に、国、地方公共団体、日本専売公社、日本国有鉄道等の国及び公共団体が、百貨店業に対して、特定の便宜を付与するような、土地や施設の提供は、これも百貨店業の行き過ぎを招くおそれが強いので抑制する必要があります。
第六に、以上のように百貨店業に対する必要な規制を改正するので、これに応じて、現行法第十七条に規定している通商産業大臣の百貨店業に対する報告の徴収を、報告の徴収及び検査にまで拡充する必要があります。
第七に、以上のような規制事項を増加いたしましたので、これに応じて罰則を改正する必要があります。
以上のように、改正案の趣旨は、いずれも最少限度必要な措置のみを含むものであります。
以上、三案について御説明を申し上げました。何とぞ慎重御審議の上、御賛成あらんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014461X00519620220/3
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004・武藤常介
○委員長(武藤常介君) 右、三案の質疑は、都合により後日に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014461X00519620220/4
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005・武藤常介
○委員長(武藤常介君) 次に、国民生活研究所法案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。藤山経済企画庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014461X00519620220/5
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006・藤山愛一郎
○国務大臣(藤山愛一郎君) 国民生活研究所法案の提案理由を御説明申し上げます。
戦後のわが国経済の成長は、目ざましいものがあり、国民生活もこれに伴いまして逐年向上し、最近では消費革命という言葉で表現されるような消費内容の質的な高度化が急速に進行しつつあるのであります。しかし、消費生活面の高度化の進展が急速でありますために、これに対応できない幾つかの問題を新たに生じつつあることも否定し得ない事実でございます。たとえば、社会共同の施設である各種生活環境施設の整備が著しく立ちおくれていることは、周知のことでありますし、一般の消費生活におきましてもきわめて進んだ面と立ちおくれた面とが併存し、国民生活に各種の不均衡が見られるのであります。
これら国民生活に見られます各種の不均衡を是正するため、政府は、国民生活向上対策審議会を設置するなど、消費者行政の推進に努めておりますが、その施策の適切を期するために、国民生活の実情と動向を正確に把握することが不可欠な問題であります。また、個人消費支出は国民総支出の中で大きな比重を占めております関係上、国民消費動向の把握は、民間企業にとりましても望ましい企業活動の方向を示唆することになるものであります。
しかるに、国民生活に関する調査研究は、その必要性が認識されていながらも、その対象が多岐にわたり、かつ特定の企業がこれを取り上げにくいなどの事情もありまして、本格的な研究体制も研究活動もほとんどなされていないという状況にあったのでございます。このような状況の中で国民生活に関する総合的な研究機関の設立を望む声が各方面から聞かれるようになりました。昭和三十四年九月に社団法人国民生活研究所の設立を見たのでありますが、国民生活の安定向上は政府としても十分力をいたさなければならない分野であり、また仕事の性質上も民間機関としては、一定の制約がありますので、新たに特殊法人として国民生活研究所を設立しようとするものであります。
次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
第一に、研究所の目的でありますが、研究所は、国民生活に関する基礎的かつ総合的な調査研究を行なうとともに、その成果を普及することによって、国民生活の安定と向上に寄与することを目的としております。
第二に、研究所の資本金は、政府と民間から出資する額の合計とし、政府は、研究所の設立に際し一億円を出資することとしております。
第三に、研究所の役員として、会長、所長、理事及び監事を置くこととしております。なお、国民生活に関する問題は、きわめて広範多岐にわたりますので、業務の適正な運営をはかるため、会長の諮問機関として参与会を設け、各方面の学識経験者の意見を取り入れるようにいたしております。
第四には、設立目的を達成するため、国民生活の実情や今後の動向に関して基礎的かつ総合的な調査研究を行なうことが研究所の中心的業務でありますが、あわせて国民生活に関する内外の情報や資料の収隻を行ない、これらの調査、研究の成果の普及を行なうことといたしております。
第五に、研究所の財務及び会計でありますが、研究所の特殊法人としての性格上、予算、事業計画、資金計画、財務諸表、借入金等については、経済企画庁長官の認可または承認を必要とすることといたしております。
第六に、研究所の監督は、経済企画庁長官がこれを行なうこととし、研究所の業務に対して、監督上必要な命令をなし、報告を求め、またはその職員をして研究所に立ち入り検査をさせることができることといたしております。
第七に、新設の特殊法人国民生活研究所と社団法人国民生活研究所との関係につきましては、特殊法人国民生活研究所の設立の際に社団法人国民生活研究所は解散し、その一切の権利、義務を新設の研究所に引き継ぐことといたしております。
なお、研究所の設立に関する事務は、経済企画庁長官が任命する設立委員に処理させることにするほか、研究所に対する課税を免除するために、各種税法の一部改正をいたしております。
以上が、この法律案の提案理由及び内容の概略でございます。
何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014461X00519620220/6
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007・武藤常介
○委員長(武藤常介君) 本案の質疑は、都合により後日に譲ります。
速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014461X00519620220/7
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008・武藤常介
○委員長(武藤常介君) それでは速記を起こして。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014461X00519620220/8
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009・武藤常介
○委員長(武藤常介君) 石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
提案理由の説明を聴取いたします。佐藤通産大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014461X00519620220/9
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010・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) 石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
エネルギー革命の進行に対応し、石炭鉱業は、その経済性を高めるため、極力合理化に努めており、石炭の販売価格を昭和三十八年度までに昭和三十三年度に比較し、千二百円程度引き下げることを目標として、現在スクラップ・アンド・ビルド対策を中心とする石炭の生産構造の再編成を進めているのであります。
これらの合理化施策の推進によりまして、今日までのところ、ほぼ基本路線に沿った合理化効果を上げてきたのであります。しかしながら、最近においてこの合理化計画遂行に対し、資材価格の上昇その他種々の障害が出て参りました。
また他方におきまして、石油輸入の自由化は、本年十月に予定されており、合理化の必要性は、一段と強まってきたと考えるものであります。したがって、石炭鉱業の当面の課題は、これらの新情勢に対処していかにして合理化目標を達成するかにあり、そのためには、従来行なってきたスクラップ・アンド・ビルド施策による石炭鉱業の体質改善を、この際一そう強化推進することが必要であります。
このような見地に立ち、政府といたしましては、従来の整備計画に加え、昭和三十七年度から三カ年計画で新たに六百二十万トンを追加整備することといたしております。また、高能率炭鉱の造成につきましては、近代化資金、開銀資金等の増額によって措置したいと考えております。
今回の改正案の内容の第一点は、上述の新たな整備計画の実施に伴い、炭鉱整備の迅速化をはかるため、従来の炭鉱買収方式に加え、石炭鉱山整理促進交付金の交付方式を新設することとし、石炭鉱業合理化事業団にその業務を行なわせることとしたことであります。事業団は、採掘権者または租鉱権者がその鉱業を廃止して、権利の放棄による消滅の登録を受けて申請したときは、廃止補償として一定の基準により交付金を交付するものとし、しかもその一定割合を留保して廃止事業者にかわって賃金債務及び鉱害賠償債務を優先的に弁済することといたしました。なお、廃止事業者の放棄した鉱区または租鉱区については、権利の再設定等を禁止することといたしております。
改正の第二点は、現行の整備資金の保証制度に加え、石炭企業に対し、業団が炭鉱整備のための長期運転資金の直接貸付を行なう制度を新設したことであります。
石炭鉱業の急速な合理化を進めて行く過程におきましては、相対的な過剰雇用の発生は避けられないところであり、政府におきましても、離職者に対しては、一般の失業対策のほかに、特別の対策を講じているところでありますが、石炭企業としても退職金等を円滑迅速に支給することはぜひとも必要であり、また非能率炭鉱の閉鎖に際しては、既発生の鉱害を処理する必要があります。これらの退職金、鉱害賠償資金等の整備資金の需要は、今後ますます増大するものと予想されるのであります。
一方、石炭企業の運転資金の借り入れ残高は巨額に上るとともに、限度一ぱい達しており、最近の金融情勢を考慮すれば、この種資金を借り増すことはきわめて困難な状況でありまして、石炭鉱業の合理化が金融面から制約されるおそれもあるのであります。この見地から、事業団を通ずる整備資金融資の措置を講ずることとしたのであります。
改正の第三点といたしましては、石炭運賃延納債務の保証を事業団に行なわせることとしたことであります。
石炭の流通経費の相当部分を占める運賃の上昇に伴う石炭鉱業の負担を軽減するため、昨年六月、国鉄運賃の値上がり分の半額について三カ年の延納を認めることといたしましたが、担保について未解決の点がありましたので、大手及びその系列炭鉱を除くいわゆる中小炭鉱の延納の担保として、事業団による債務保証の措置を講ずることといたしました。
なお、石炭鉱業に対する近代化資金の貸付対象設備に石炭専用船を加えるとともに、現行の整備資金保証制度の保証率を引き上げる等を内容とする改正もいたしておりますが、その他の点は、主として上述の三点の改正に伴う若干の手続的事項に関するものであります。
以上が、この法律の提案理由及びその要旨であります。
何とぞ慎重御審議の上、御賛同下さいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014461X00519620220/10
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011・武藤常介
○委員長(武藤常介君) 本案の質疑は、都合により、後日に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014461X00519620220/11
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012・武藤常介
○委員長(武藤常介君) 次に、産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題にいたします。
先般、石炭関係議案の審査に資する目的をもって、北海道及び九州の産炭地域の実情を調査するため委員を派遣いたしましたのでありますが、それぞれ調査を終了、無事帰京されました。
この際、各班より調査の報告を願うことにいたします。まず、北海道班からお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014461X00519620220/12
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013・川上為治
○川上為治君 北海道班から御報告申し上げます。
派遣委員は当初、阿部、牛田両委員と私の三名が予定されていましたが、牛田委員は御病気のため参加されませんでした。
日程は、十二日に札幌に集合し、十三日札幌通産局において、通産局、石炭合理化事業団、雇用促進事業団、道及び道議会からそれぞれ石炭関係の概況説明を聴取した後、記者会見を行ない、次いで石炭業界、労働組合、産炭地市町村との懇談会を開催し、十四日より現地視察を行ないました。
視察個所は、代表的な産炭地火力である北海道電力滝川火力発電所、次に住友赤平炭鉱で坑内に入って採炭現場を視察し、さらに北炭夕張炭鉱、北菱産業鹿島炭鉱で水力輸送などを見て参りました。また、夕張では市役所において産炭地振興法についての要望を聴取し、十五日夜、現地における日程を終了いたしました。
まず、北海道における石炭鉱業の概況並びに問題点について簡単に申し上げます。
北海道の炭鉱は他の地方の炭田と異なりまして、開発途上のまだ若々しい青年期にありまして、炭質、埋蔵炭量、炭丈、能率、さらには鉱害の心配の少ないことなど、いずれをとってみましても他の地域よりすぐれた採掘条件を備えており、現地の石炭関係者は、昨今の石炭にきびしい経済環境の中にあっても、北海道の山はまだまだやれるのだとの基本的認識に立って合理化に努力を続けております。今回、坑内視察を行なった赤平炭鉱のごときは、すでに出炭能率が四十トンをこえておりまして、今後一そうの企業努力と国の適切な施策が行なわれますならば、当地においては、まだ石炭は競合燃料と対抗し、生き抜いていくことが可能であると認められます。
しかしながら、北海道の産炭地域は、道全体の産業構造の後進性からいたしまして、石炭の大口需要産業が乏しく、道内炭のわずか四割足らずを道内で消費しているにすぎず、残りの六割以上は京浜市場等、流通経費のかさむ道外需要に依存している現状であります。したがって、北海道における産炭地振興の方向といたしましては、まず何よりも、道内石炭需要の拡大をはかるべきであり、このためには工場誘致を促進し、これに伴う電力需要の増加をまかなうための石炭火力発電所の建設を促進することが必要と思われます。
産炭地振興事業団法案については、三十七年度は北海道は事業団の対象からはずされておりますが、九州のように疲弊がひどくなってからではおそいから、早めの対策として、事業団の地方機関を北海道にも設置し、企業資金の貸付等、産炭地振興事業を推進してほしいというのが現地の石炭関係者の一致した要望でありました。
次に、懇談会等を通じて見聞して参りました石炭政策に対する現地の要望は、大要次のようなものであります。
まず第一に、総合エネルギー対策の確立であります。石油自由化の繰り上げ実施と、最近の石油価格の低落傾向からして、石炭関係者は将来に非常な不安を感じているから、国会並びに政府は一日も早く総合エネルギー対策を確立し、今後石炭をどうするのか、現地の石炭関係者に明確に示してほしいということであります。なお、石油業法案につきましては、これは新聞で伝えられておりますが、通産省の原案程度の法的規制は必要であろうというのが、北海道産炭地域の人たちの意向であると見受けられました。
第二に、今回の産炭地振興事業団法案は、九州的色彩の強い法案で、北海道はあと回しにされているようでございますが、石炭新政策でさらに出炭能率を上げることになると、道内の大手炭鉱でもかなりの離職者が発生しますので、筑豊のようになってからでは手おくれだから、事前に産炭地を疲弊させないための方策として、産炭地振興法を運用してほしいということであります。
第三に、北海道炭は主要消費地までの海上運賃が九州に比べて割高でありますから、石炭専用船の計画を進め、三十八年度に十隻ぐらいにふやし、就航を一年くらい繰り上げて効率的に運用してほしいということ。さらに、陸上運賃軽減のため、国鉄、私鉄間の連絡運輸につきましても、運賃併算制を採用しているものにつきましては、これを通算制に改めること等、流通合理化対策についての意見がございました。
石炭運賃の軽減対策につきましては、昨年十二月八日に閣議決定が行なわれているにもかかわりませず、このうちで「国鉄、私鉄間の連絡運輸にかかる国鉄運賃の延納措置」並びに「国鉄、私鉄の運賃の全面的な通算制の採用」、この二つの点につきましては、運輸省、国鉄両当局が難色を示しておるように聞いておりますが、そのために実施に至っていないようでございます。この二点の運賃軽減措置め適用対象となって恩恵を受ける石炭の九割までが北海道炭でありますだけに、道内の石炭業界におきましては、この閣議決定まで行なわれておりながら実施されていない点を非常に不満に思っておりますので、この早急な実現方について特に強い要望がございました。
第四に、石炭業界から、北海道は鉱産税、固定資産税等の地方税がきわめて高いので、炭鉱合理化のためには祖税負担の軽減が必要であるとの意見がございまして、これに対しまして産炭地の市長から、産炭地の自治体は、失業対策費あるいは生活保護費の増大で財政が逼迫しておりまして、今のままでは軽減が非常にむずかしいが、国が他の見返り財源を確保してくれるならば、減税に反対するものでないとの意向が表明されました。また、北海道のような遠隔な僻地に石炭需要産業を誘致するためには、誘致企業への特段の税制上の優遇措置と低利資金の確保等の対策が強く要望されておりました。
その他、「九州には鉱害対策として国の補助があるが、北海道にはこういうふうな補助が全くない、北海道の雪害にも対策を考えてほしい」とか、あるいは「炭鉱では災害はなかなか避けられないから、災害積立金制度を税制上考えていただきたい」それから「八戸あたりに揚地発電を考えて、北海道の産炭地振興の一策として取り上げていただきたい」それから「炭鉱の身体障害者専用の職業訓練所を設置してほしい」とか、また「最近の金融逼迫は炭鉱の経営を困難にしているから、開銀融資、近代化資金、中小企業金融公庫資金のワクを拡大して、返済期間をさらに延長してほしい」というような点につきまして、熱心な要望なり意見の開陳がございました。
また、夕張市では、産炭地への工場誘致の最大の特典である租税特別措置法第四十五条の地域指定から当市が漏れましたので——これは夕張市が指定基準より生活保護者の数が少ないという理由でございますが、夕張が産炭地振興政策の対象から落とされるようでは、産炭地振興法の本旨にもとる結果になるのではないか、地域指定基準につきましても再検討してほしいというような切実な陳情がございました。
なお最後に一点、私どもが現地調査にあたって痛感いたした点をつけ加えさせていただきます。北海道の炭鉱では、農林省の営林局所管の国有地を借りまして地上施設を設けておる山がたくさんございます。この国有地の地代が最近大幅に上がりまして、現地の炭鉱当事者は、一方におきましては国から炭価千二百円引き下げの合理化を要請されながら、反面におきましては国有地の地代は値上げされる、こういうことになりまして、合理化効果を相殺するような石炭政策といいますか、そういう壁にぶつかって非常に困っております。そういう問題がございます。国鉄運賃、坑木、その他諸物価の上がる中で、石炭のみ値下げを要求され、炭価引き下げももはや限界まで来ているのだとの悲鳴に近い炭鉱関係者の声もございます。一方で、国が炭鉱合理化の助成を行ないながら、他方でその効果を減殺するような政策の、何といいますか、矛盾が起きておりまして、この点、石炭対策は国の総合政策として一貫したものがなければならぬと私どもは痛感して参ったわけであります。
その他、多くの問題について、いろいろ要望なり意見なりを聞いて参ったのでありますが、これら現地の声につきましては、石炭関係二法案の審査の際に、質疑の形で詳細に取り上げまして質問をすることにいたしまして、ここでは単に報告だけにいたしておきます。
今回の炭鉱調査につきましては、雪の深い交通不便な冬の北海道で行なわれたにもかかわりませず、札幌通産局を初め、関係者の皆様の熱心な御協力のおかげで、無事に日程を終了し、十分に所期の目的を果たして帰ることができました。この席を借りまして、現地の関係者各位の御好意に対しまして、厚く御礼を申し上げまして、報告を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014461X00519620220/13
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014・武藤常介
○委員長(武藤常介君) ありがとうございました。
次に、九州班の報告をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014461X00519620220/14
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015・剱木亨弘
○剱木亨弘君 九州班について申し上げます。
九州班は、吉田委員、田畑委員と私の三名で、期間は二月十一日から十六日までの六日間でした。
今回の派遣は、産炭地振興事業団法案や石炭合理化法の一部改正案を中心とする産炭地振興方策と、それに関連して、先般、当委員会で行ないました石炭危機突破対策を内容とする附帯決議の施行状況について、現地の実情と要望を見聞することでありまして、そのため、まず、福岡において、通産局及び石炭合理化、鉱害復旧、雇用促進の三事業団より、それぞれの立場からの事情の説明を聴取後、経営者、労組、県市町村の代表の方々と懇談いたしました。
以後、唐津、粕屋、筑豊の各炭田を順次回り、佐賀県庁初め、それらの地区の市町村関係者とか、炭鉱関係者等から要望を聴取したのであります。
さらに、唐津港、若松港の石炭関係施設、三菱古賀山、明治佐賀、日炭高松の各炭鉱と、電発若松、九州電力苅田、西日本共同火力新苅田の各発電所または建設現場を視察して参りました。なお、今回、爆発事故のあった新大谷炭鉱へ参り、遺族へ弔意を表して参りました。
現地で見聞しました点は、きわめて多岐にわたります関係上、産炭地、石炭関係二法案の審査や、エネルギー問題の調査過程において、詳細かつ具体的に申し上げることとし、ただいまはごく概括的に報告させていただきます。
第一点は、石炭経営の安定化の問題であります。
まず、総合エネルギー対策を確立し、石炭の地位を明確にすべきで、九州地区は千二百円の値下げ、五千五百万トンの出炭規模の維持には協力的であるが、政府の一そうの援助を望んでおりました。
援助の内容といたしましては、第一に、スクラップに要する政策的なてこ入れより、むしろビルトのための措置を強力に行なうべきで、そのための財政的裏づけはもちろん、最近特に著しい坑木等の資材関係の値上がりを防止することのほか、運賃、電力料金を軽減するための措置を講じてもらいたいということがありました。
第二に、資金の問題については、たとえば開銀融資の返済条件の緩和とか、中小炭鉱の近代化、合理化資金の融資条件、基準が大手に比べてきびしいため、不利であるから、その点を是正されたい。また、中小企業信用補完制度を炭鉱に対して、もっと拡充強化してもらいたい旨の要望がありました。
第二点は、産炭地振興事業団の事業計画とその財政的措置の問題であります。
産炭地区の県市町村のいわゆる自治体関係者が最も関心を寄せているのはこの問題であります。炭鉱の不況と相次ぐ閉山で疲弊した自治体にとって、工場の誘致と雇用の増大は、最も期待しているところであります。しかし、このためには、産業基盤というか、社会資本の充実というか、要するに工場を誘致するための環境整備の強化が必要であります。私どもの参りました自治体関係者が異口同音に水資源の確保、産業道路の開設拡張、工業用、住宅用の土地の造成、交通通信網の拡充という先行投資を行なうべきだとしておりました。特に水資源の確保については農業用水、工業用水、飲料水の確保のためダムの建設を力説しておりました。しかし、現在提案中の事業団法案による事業団の事業計画には、工業用地並びにその関連施設の整備促進に七億円、企業への資金貸付分二億円、その他一億円、計十億円が予定されているので現地ではその増額を強く要望されました。この点は法案審査のときでもあらためて論議したいと存じております。
なお、工場誘致については単に中小企業のみならず大企業の進出も歓迎しており、融資その他の優遇措置を、進出しようとしている企業に配慮すべきであるとの意向がありました。
第三点は産炭地発電と流通機構の整備の問題であります。九州地区の産炭地発電はエネルギー懇談会の中間報告にあるような大きな構想ではありません。しかし、私どもが視察しました若松火力では、おもに日炭から三千カロリーベースの低品位炭の供給を受けるほか、ボタや遠賀川の汚水から微粉炭を回収する方法を実験または計画中でありました。また新苅田火力は、出資や開銀資金以外の一般融資による資金調達が難航しているで、開銀融資ワクの増加を望んでいる状態でした。この二つの発電所は低品位炭発電に九州地区において先鞭をつけるものでありますが、地元の九州電力も石炭専焼発電に力を入れております。たまたま私どもが視察中に九州電力が唐津港に石炭専焼火力を建設することを大体決定しまして、佐賀県及び地元市町村や炭鉱関係者が期待していました。ただし、今後産炭地発電は低品位炭を中心にすべきか、高カロリー炭を中心にすべきかは、出炭規模や中小炭鉱の問題未利用炭の処理等の観点から問題点として残りましょう。これら産炭地の発電計画の進行とともに内陸線の増強が焦眉の急となっております。特に唐津線の増強、油須春線の早期完成がそれであります。油須春線は、苅田地区の火力発電所の強化と若松港とともに、石炭積出港としての苅田港の整備計画の進捗と相待って、最も疲弊している筑豊地区にとっては死活の問題と思われるのでありますが、地元から熱心な要望がされていました。
その他、篠栗線の延長とか、あるいは石炭荷役設備の共同化や荷役料金の問題についても地元から要望もあり、今後流通機構の合理化の一助として研究されねばならないと思いました。
第四点は雇用の問題であります。この点については労組の一部から閉山は認めない、させないという原則を立てるべきで、そのためには中小炭鉱等へ特別の融資やその他の特別措置を講ずべきであり、また鉱区調整の緊急性をしばしば訴えられたのであります。その具体例としまして志免あるいは山口鉱山小城炭鉱から要望がございました。特に小城炭鉱は鉱区調整ができない限り、閉山、離職という深刻な事態に直面するという事実を視察途上の路傍で承ったのであります。
離職者対策については、買い上げ炭鉱の離職金の増額、生産、立ち上がり資金や住宅、移住資金の確保等、さきの当商工委員会の附帯決議と同様な点を要望されましたが、中でも中高年齢層の再就職が困難をきわめているとのことでした。
その他買い上げ炭鉱の炭住や浴場、飲料水施設等の処理について離職者に不安のないよう措置されたいとか、職業紹介の広域化、さらには職業安定所の強化拡充などを要望されました。また炭鉱付属産業、おもにサービス業が閉廃山に伴って生活が成り立たなくなるものが多いので、これらの人々に対しても生産資金の融通を行なわれたいとの希望がございました。
なお、県市町村のほとんどから離職者緊急対策事業費や失業対策事業費、生活保護費の算定基準が実情と隔たること遠いものがあり、ただでさえ財政逼迫にあえいでいる自治体財政を一そう苦しめている現状にあるので、全額国庫負担なり高率な国家補助の適用が必要で、この点、地方交付税の基準財政需要額算定について特別の配慮を行ない、特別交付税の増額等の措置を講ぜられたいという強い意見がありました。
以上のほかボタ山の処理、たとえば伊万里地区におけるボタの海中投入と港湾整備計画との関係、あるいは産炭地における中小企業対策、特に金融問題と団地化等についてもきわめて参考になる意見が開陳されました。その詳細は省略いたしますが、ただ直方市に見られるように事業費なり融資なりが円滑に行なわれれば、いつでもすばらしい工場団地化が実現するという所もございました。
なお、鉱害問題につきまして、融資機能の強化、家屋等の移築復旧、ポンプ施設による農地復旧方式の併用、ポンプ維持管理費の国庫負担等について、復旧事業団より要望を受け、筑豊地区市町村より工場誘致なり、工業開発のための鉱害復旧への国の補助を全面的に行なうよう要望されました。
最後に現在争議中の大正鉱業問題について若干触れたいと存じます。この問題についてはまた日をあらためて検討したいと存じますが、結局は福岡銀行及び新しい経営者田中直正氏と労組とが、再建方針についての意見の食い違いに基づくもののようであります。私どもが中間市において市及び経営者、労組の代表よりそれぞれの意見を聴取したところによりますと、労組側では田中社長が誠意を示してくれればいつでも話し合いに応じ、再建に乗り出す用意があるとの見解が示されたのであります。この問題は労使双方のみならず、中間市民の生死にも関係し、大正鉱業の関連産業にも重大な影響を及ぼすものと憂慮されておりますので、円満な解決の一日も早からんことを祈る次第であります。
以上、はなはだ概括的でありますが、今回の派遣により、深刻な石炭鉱業及び産炭地の実情と問題点について調査し、予期以上の成果を得ましたことは関係者各位の絶大な御協力のたまものでありまして、ここに衷心よりの感謝の意を表し報告を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014461X00519620220/15
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016・武藤常介
○委員長(武藤常介君) 速記をやめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014461X00519620220/16
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017・武藤常介
○委員長(武藤常介君) 速記を起こして。議事の都合により本日はこれにて散会いたします。
午後二時二十八分散会
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