1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年二月二十日(火曜日)
午前十時四十二分開会
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委員の異動
二月十五日委員野溝勝君辞任につき、
その補欠として小酒井義男君を議長に
おいて指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 棚橋 小虎君
理 事
上林 忠次君
佐野 廣君
荒木正三郎君
永末 英一君
市川 房枝君
委 員
大谷 贇雄君
木暮武太夫君
堀 末治君
前田 久吉君
木村禧八郎君
大竹平八郎君
原島 宏治君
須藤 五郎君
政府委員
大蔵政務次官 堀本 宜実君
大蔵省関税局長 稲益 繁君
大蔵省為替局長 福田 久男君
事務局側
常任委員会専門
員 坂入長太郎君
説明員
大蔵省主税局税
制第一課長 細見 卓君
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本日の会議に付した案件
○所得税法の一部を改正する法律案
(内閣送付、予備審査)
○法人税法の一部を改正する法律案
(内閣送付、予備審査)
○国際通貨基金及び国際復興開発銀行
への加盟に伴う措置に関する法律の
一部を改正する法律案(内閣提出)
○関税法の一部を改正する法律案(内
閣提出)
○保険業法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
○外国為替銀行法の一部を改正する法
律案(内閣提出)
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001・棚橋小虎
○委員長(棚橋小虎君) ただいまから委員会を開きます。
所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題とし、順次、提案理由の説明及び補充説明を聴取することにいたします。堀本大蔵政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/1
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002・堀本宜実
○政府委員(堀本宜実君) ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案外二法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
まず、所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案につきまして、申し上げます。
政府は、明年度における税制改正の一環として、さきに提案いたしました通行税法の一部を改正する法律案外二法律案に引き続き、この二法律案を提出いたす次第であります。
以下順次これら二法律案について、改正の内容を申し上げます。
まず、所得税法の一部を改正する法律案について、その大要を申し上げます。
第一は、中小所得者を中心とする税負担の軽減合理化をはかることとしたことであります。すなわち、基礎控除及び配偶者控除を現在の九万円から十万円に引き上げるとともに、青色申告者の事業専従者について十二万円の控除限度が認められる年令区分を現在の二十五才から二十才に引き下げております。
また、税率につきましても、課税所得百八十万円以下の附属に適用される税率の緩和をはかるとともに、国と地方団体との間の税源配分の適正化をはかるため所得税の収入の一部を道府県民税の収入として移譲することとし、この場合所得税及び道府県民税を総合した負担が軽減されるよう所得税の税率に所要の調整を行なっております。
すなわち、道府県民税の所得割につきましては、現在〇・八%から五・六%までの十三段階区分の超過累進税率によっているのでありますが、住民税の税率のあり方及び税源帰属の適正化の見地から課税所得のうち、百五十万円以下の金額については二%、百五十万円をこえる金額については四%の二段階の標準税率に改めることといたしております。
なお、その際、所得税との総合負担を軽減するため、一般的な所得税の減税のほか、所得税の税率において現行十万円以下の金額について一〇%であるのを八%に改める等、税率に所要の調整を行なうとともに、昭和三十六年分の所得税と昭和三十七年度分の個人の道府県民税との間における所得控除等の額の相違分については、特別の税額控除を行なうこととするほか、昭和三十七年度分の道府県民税の所得割の納税義務者のうち昭和三十七年分の所得税の課税所得金額がなくなったものについては、昭和三十七年度分の道府県民税の所得割額から改正による増額分を減額する等の措置によって負担の調整をはかることとしております。
以上申し述べました控除及び税率の改正により、夫婦及び子供三人計五人の家族の場合を例にとりますと、所得税を課されない限度は、給与所得者につきましては、現在の約三十九万円から四十二万円に、青色申告者である事業所得者につきましては、現在の約二十七万円が三十九万円に引き上げられるとともに、中小所得者の負担は、所得税、道府県民税を通じて相当程度軽減されることになります。
第二に、中小所得者の生活の安定と貯蓄の増強をはかる見地から、生命保険料控除の対象となる生命保険料の限度額を現在の三万円から五万円に引き上げるほか、退職年金については、あとで申し上げる法人税法の整備と相待って、所得税においては、企業が従業員のために拠出した掛金に対する課税の繰り延べを行ない、年金受給時に給与所得として課税する等所要の整備を行なうとともに、最近における生活水準の向上、消費支出金額の増加等を考慮して、寡婦、老年者等に対する税額控除を現在の五千円から六千円に引き上げることとしております。
さらに、寄付金控除制度を創設し、教育または科学の振興等のための寄付金について一定の金額を税額から控除すること、昭和二十八年一月一日前から引き続き所有していた資産の譲渡所得及び山林所得の計算上控除する取得価額を、原則として同日現在の相続税評価額によるものとするとともに、資産再評価法による再評価の制度及び再評価税の課税は廃止し、また、個人間の資産の贈与等の場合で譲渡等に関する明細書等の提出があったときは、その贈与等の際には譲渡所得課税を行なわず、受贈者が贈与者の取得価額を引き継ぐものとすること、事業用の固定資産等について生じた損失は、原則として事業所得等の計算上の必要経費とするとともに、その損失が災害による場合は被災事業用資産の損失として三年間の繰り越し控除を行なうこと、生活に通常必要でない資産について生じた災害損失は、雑損控除の対象から除外して災害を受けた年及びその翌年の譲渡所得計算上の損失とすること、予定納税基準額の最低額を現在の三千円から六千円に引き上げること、文化功労者年金を非課税とする等、税制の整備合理化をはかることとしております。
第五に、非居住者等の課税につきまして、わが国の締結した租税条約との調整等をはかりつつ、非居住者がわが国で事業を行なう場合における事業所得の課税の要件を明らかにすること、わが国に事業を有しない非居住者の資産の譲渡による所得の課税について不動産、企業支配的な株式の譲渡その他重要な資産の譲渡について課税するようその対象を列挙する等の措置を講ずる等、所要の規定の整備を行なっております。
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次に、法人税法の一部を改正する法律案についてその大要を申し上げます。
所得税法の改正のところで申し上げましたように、所得税及び法人税を通ずる退職年金に関する税制整備の一環といたしまして、法人税におきましても、所要の規定の整備を行なっているのであります。すなわち、企業が、その従業員の退職年金の原資に充てるため、一定の要件に該当する退職年金に関する信託または保険の契約に基づいて一定の掛金を拠出したときは、その拠出の際にこれを企業の損金に算入いたしますが、この場合、その従業員に対する所得税の課税が年金を実際に支給される時まで繰り延べられることは、所得税のところで申し上げたとおりであります。そこで、この繰り延べ措置に関連いたしまして、法人税においては、その課税延期に見合う一種の遅延利息に相当するものとして、この信託または保険の業務を行なう法人に対し、その退職年金積立金について千分の十二の税率による法人税を課税することといたしております。
この退職年金積立金は、企業が退職年金の掛金として支払った金額とその掛金について運用益として計算される金額の累積額との合計額から、退職金として支給した金額に見合う金額を控除した金額によることとなっております。
以上のほか、所得税法における非居住者に対する税制の整備と並行して、外国法人がわが国において事業を行なう場合にその事業所得に対して課税する要件を明確にし、また、わが国に事業を有しない外国法人の資産の譲渡による所得の課税については、所得税法の改正と同様な措置を講ずるとともに、外国で設立した一定の子会社が納付した外国法人税額をその親会社である内国法人が納めた外国法人税額とみなして、その税額控除を行なうこととする等、所要の規定の整備をはかっております。
以上が所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び概要でございます。
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最後に、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、御説明申し上げます。
近年、世界主要国の通貨がほとんど交換性を回復するに至りました結果、短期資本の国際的移動は大幅に自由になって参りました。これがため、これら主要国は、短期資本の流出により国際収支の安定を脅かされるという問題に当面しております。かかる現状にかんがみ、国際通貨制度の維持を目的とする国際通貨基金の資金的基礎を充実し、その機能を一そう強化する必要件が痛感されるに至り、このための具体的方法として、国際通貨基金協定第七条第二項(i)に規定する資金補充のための借り入れに関する一般的取りきめが、本年一月五日の国際通貨基金理事会で決議されたのであります。
この取りきめは、わが国を含む主要工業国十カ国が、国際通貨制度の安定を維持するため国際通貨基金の資金補充が必要と考えられる場合には、直ちに一定金額を限度として各国の自国通貨を国際通貨基金に貸し付けることを約束するということを骨子とし、その貸付の諸条件を定めたものであり、貸付限度額の総額は六十億ドル相当額となっております。
わが国といたしましても、主要工業国十カ国の一つとして、九百億円を限度として、この取りきめに参加することが期待されているのでありますが、この期待にこたえまして取りきめに参加することの意義はまことに大なるものがあると申さねばなりません。すなわち、欧米の主要工業国と並んでこの取りきめに参加いたしますことが、州際経済社会におけるわが国の地位を一そう高め、これら諸国との関係をより密接なものとすることに資するのみならず、この取りきめにより国際通貨制度の安定が維持され、特に取りきめに基づく補足資金は参加国だけが利用できるとされていることは、わが国にとっても利益があると考えられるのであります。また、この取りきめの運用にあたっては、参加国の国際収支事情は十分考慮されることとなっておりますので、この取りきめに参加してもわが国の外貨準備に過重な負担が加わるおそれはないのであります。
このような諸般の見地から、わが国としてもこれに参加することが望ましいと考え、そのための国内措置として本法案を提出いたした次第であります。
本法案におきましては、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律に、大蔵大臣が国際通貨基金に対して国際通貨基金協定第七条第二項(1)に規定する貸付を行なうことができる旨の規定を設けますとともに、外国為替資金特別会計法に、外国為替資金に属する円資金をこの貸付に充てることができる旨の規定を設けることとし、その他これに伴って必要な規定の整備をすることとしているのであります。
以上、所得税法の一部を改正する法律案外二法律案につきまして、提案の理由及びその大要を申し上げました。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/2
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003・棚橋小虎
○委員長(棚橋小虎君) 続いて補足説明を聴取いたします。細見説明員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/3
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004・細見卓
○説明員(細見卓君) それでは、所得税法と法人税法をごく簡単に補足説明申し上げます。
新旧対照表をお持ちでございましたら、それで申し上げたほうが一番見やすいかと思うのですが、お出し願えましたですか。——それでは、先ほど提案理由で申し上げました事柄を、大体条文を追って申し上げていきたいと思います。
第一条は、いわゆる非居住者、つまり「この法律の施行地に住所を有し又は一年以上居所を有する個人」以外の者に対する所得課税の関係について、法文の整備をいたしたわけであります。
第二項は、ここに書いてありますように、この非居住者はこの法律の施行地に源泉がある所得を有するときは、この法律により、所得税を納める義務がある。」といたしまして、三項で、それでは「この法律の施行地に源泉がある所得」とは何かということを、そこに列挙いたしておるわけであります。事柄は、一、二、三、四、五、いずれも若干字句の修正はいたしておりますが、法文の整備であります。五番目で、その最後のほうに、若しくは人的役務の提供に対する報酬又は人的役務の提供を主たる内容とする事業で命令で定めるものの所得」という条項がありますが、この条文は直接には個人を対象としているわけですが、あとで法人でこの条文を引っぱり出しますので、たとえばワンマン・カンパニーと称しますか、芸能人が自分で法人を組織して、自分一人が法人だというような形できますと、今では源泉徴収ができないこととなっており、本人の申告を待たなければならないということになっておりましたので、そこを整備するために、ここに条文の整備として入れております。六、七、八、九は、いずれも大体条文の整備であります。
それから、その六項でありますが、この項で、わが国に本店または主たる事務所を有しない法人の場合には、前に述べました」この法律の施行地に源泉がある所得のうち第三項第二号乃至第九号に掲げる所得」につきまして所得税を課しますと、こういうことにしております。
次に、事業の概念を明らかにいたしております。第八項であります。すなわち、第三項第一号に規定する事業は「支店、出張所、事務所、工場その他事業を行なう一定の場所を有して行なう事業」、これは当然のことであります。二番目は、そういう事業所は持たないのでありますが一定期間たとえば工事の請負にやってきて建設とか据付とかあるいは組み立てとかというような作業あるいは作業の指揮監督のために一定の外国人がやってきておるというようなことで、その期間が一年以上になるものは、これをやはり中業として考えることとしたことであります。三番目は、包括的な代理権を持っておりまして、外国人にかわっていつでも契約の締結ができるというような権限のある者が日本におりまして、それが行なう事業は、これもやはり事業でありますということにしております、ただし、あとで出て参りますが、日本にあるその他の所得を総合して合算いたしますのは、このうちの、八項のうちの第一号の、「一定の場所を有して行なう事業」を行なっておるものについてだけ総合課税ということになっております。
第九項は条約との調整であり、第十項も同様法文の整備であります。
それから、第二条第二項の改正で、「非永住者」という概念を明確にいたしております。
次は、第五条の三であります。これはちょっとめんどうでございますので、若干立ち入って御説明申し上げますと、従来、他人にものを贈与いたしました場合に、そのときの時価で譲渡があったものとして譲渡所得を課税し、もらったほうは贈与税をかけられる、こういうことになっておったわけですが、その点を、もらったほうが、そのくれてやったほうの取得価額を引き継ぎますということについて一定の事項を記載した明細書を出した場合には譲渡所得は取りませんということになるわけです。その場合の、それでは取得価額は幾らになるかと申しますと、譲渡した者の収得価額ということになるのですが、あとに出て参りますように、財産を譲渡した場合にその財産が昭和二十八年一月一日前に取得したものである場合には、その取得価額は、原則として、二十八年一月一日現在の価額に置きかえますので、戦前以前のものもすべて二十八年一月一日別注の価額に切りかわるわけであります。したがって、引き継がれる取得価格は、昭和二十八年一月一日前に取得したものは同年一月一日の価額をもととして計算した金額、それ以外のものは譲渡人が実際に取得した価額ということになります。
第六条は、先ほどお話の出ました、文化功労者年金を非課税にするというのが、第十二号で入っております。第十三号は、これは従来は、その下のほうを見ていただきますと、「第九条第一項第九号に規定する所得のうち」云々というふうに、一時所得のうちで、損害賠償金や、あるいは損害保険契約に基づき支払いを受ける保険金、これだけが非課税になっておったのでありますが、その一時所得でないものも含めまして、こういう肉体的、精神的な損害に対する損害の賠償は、これは非課税ということにしようというのが第十三号であります。第十六号は、先ほど提案理由にありました非居住者の課税に対する規定の整備に伴いまして課税いたしまする資産の譲渡を一定のものに限定することとし、それ以外のものは非課税としたのであります、第十七号は、これは外国政府あるいは外国の地方公共団体、あるいは国際機関に勤務する人が日本に相当多くなってきたのでありますが、そういう人につきまして、相互主義を建前にして非課税を考えますというわけであります。
第八条は、所得税のほうで寄付金控除というのを認めることにいたすわけでありますが、その際の特定寄付金しというものの定義をいたしております。すなわち、特定寄付金とは、「教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与する寄付金で命令で定めるもの」をいうのです。これは法人税法の施行規則のほうにあげておりまする寄付金の概念と大体同様のものであります。
それから、そのあと若干の整備を行なっております。まず、第九条について申し上げますと、従来は譲渡所得の課税は資産の譲渡だけであったわけでありますが、その場合不動産の上に存する権利の譲渡というのも譲渡所得の対象として入れますということがこの第八号に書いてございます。それから第二項は、法人税のほうで別途申し上げますが、いわゆる企業の退職年金制度が発達いたしまして、それによって支給される退職年金及び退職一時金についてそれを給与所得や退職所得として扱うことにいたしますというわけで、その退職年金に伴いまする規定の整備が第二項であります。
それから、第九条の二は、これは規定の整備と先ほど申し上げましたように、譲渡あるいは贈与、遺贈、低廉譲渡等の場合に、一定の事項を記載した明細書の提出を条件といたしまして、前から持っておった人の取時価額を引き継ぐ場合には課税しないことといたしました。その場合に、それじゃ取得価額より安く売った場合は損になるかというと、それは損に見ませんということにして、そのかわりにそのときの価額を引き継いでいきますということにしているのが第九条の二であります。
その第七号は、非居住者の資産の譲渡関係について、非課税規定の喪はらとして、非課税所得とされる譲渡資産について損失が生じてもその損失は考慮しないということが書いてあります。
それから、第九条の三については、特に申し上げることはございません。
第九条の四は、これは従来はたなおろし資産に限っておったのでありますが、事業用の固定資産を含めまして、被災した場合の被災事業用資産の損失という概念に拡張しておるわけであります。
それから第十条でありますが、まず第二項で譲渡の場合を除き中業用の固定資産の損失は事業所得等の所得計算上の必要経費とすることとし、また、従来は雑損控除の対象とされていた災害または盗難による生活に通常必要でない資産について化じた損失の控除についてその規定を改めました。すなわち、災害または盗難もしくは横領によってその化活に通常必要でない資産、つまり書画骨董とか宝石とかあるいは別荘といったようなものを失いました場合に、それは普通の所得との通算はいたしません。同種類の譲渡所得との間だけで通算いたすといたしました。しかし、一年間で引き切れぬ場合には翌年まで繰り越しますということが第三項であります。それから第五項でありますが、これは先ほど申し上げましたように、贈与者が財産をくれてやった場合に、もらったほうは贈与者の取得価額を引き継ぐことになっているのでありますが、後になってその取得価額を引き継いだ資産を譲渡したような場合における譲渡所得の計算上の資産の取得価額は、前に引き継いだ価額によるものであるということを明らかにしたものであります。
それから、その次は、第十条の四、第十条の五、いずれも、先ほど申し上げましたように、従来でありますと、資産を譲渡した場合には、御承知のように、財産税評価時期でまず押えまして、それを二十八年一月一日現在で再評価して、その再評価差額には六%の再評価税がかかる、その再評価した価額を取得価額とみなして、実際に売ったものとの差額が譲渡所得、こういうふうになっておったのでありますが、それを再評価税をやめまして、二十八年一月一日現在における相続税評価額、大体においてて再評価価額と同一のものでありますが、それを取得価額といたしますということにしました。そしてその取得価額の計算に関連して、その後要した維持管理の経費はどう見るかというような法文の整備を含めまして、第十条の四、第十条の五あたりで言っておるわけであります。
第十条の人は、資産を売りました場合の所得税は、御承知のように、売ったときに全部課税することになっておるわけでありますが、その代金があとになって返ってこなかったような場合、非常に酷になっており、また、その回収できないものを所得から引きようがないというようなことになっておったのでありますが、その点を整備いたしまして、その回収できなかった代金の限度でその所得がなかったものと見ていきましょうということにしている、それが第一項であります。第二項は、いろいろ他人の債務を保証いたしまして、そのために思わぬ損失が出まして、財産を売って弁償しなければならないというようなことになりまして、自分は他人の債務を弁償してやっているのにそれに対して譲渡所得がかかるのは酷じゃないかという議論があります。そこで、このような場合には、前に述べました資産を売りまして代金が入ってこなかった場合と同様に、債務を保証した範囲において譲渡所得はなかったものと考えます、こういうわけであります。これが第二項であります。第三項は、これは事業をやめますと、その場合にその年の所得がたとえば五十万円であったのですが、貸し倒れ債権などをいよいよ集めてみると、百万円もあるいは二百万円も貸し倒れがあって損になっているという場合に、その五十万円の所得では引き切れなくて、いわば過去に税金を取られ過ぎておったというような現象が免ずるわけでありますが、その点を考えまして、その年及びその前の年の所得から差引にいたしましょうというのが第二項であります。
第十一条の二は、青色申告者につきまして専従者控除が認められますのが、その最高限度である十二万円の控除は二十五才以上の専従者について認められるわけでありますが、それを二十才に引き下げております。
第十一条の三、これは規定の整備であります。
第十一条の四でありますが、先ほどちょっと申しましたように、従来は、震災とか風水害、火災等のいわゆる災害と盗難、これによって資産が失われる、しかもその資産はたなおろし商品等の資産以外の固定資産を失った場合に、雑損控除の対象にしておったのでありますが、今回、それにさらに横領を加えまして、横領によって資産を失った場合も雑損控除ができることとするとともに、その対象となる資産の範囲を改めまして、事業用の固定資産の損失並びに生活に通常必要でない資産等を除外したことであります。また、その損害の範囲を拡張いたしまして、災害に関連して発生した整理費用等のやむを得ない支出も損害額に加えてよいことにいたしました。この損害額のうちその者の所得の一割をこえる金額がその年の所得から引きされぬ場合には、御承知のように、三年間の繰り越し控除が認められる、こういうことになるわけであります。
それから、第十一条の七でありますが、これは生命保険料の控除を、現在は御承知のように一万五千円までが全額、それから一万五千円から三万円までが二分の一ということになっているわけでありますが、それを五万円までということにいたしますが、本年は初年度でありますので、その限度額は四万五千円になりまして、したがって、引かれます控除額も本年度は来年度より低くなるということになっております。
その次は配偶者控除でありますが、これは従来の九万円が十万円になります。基礎控除も同様に十万円に上がります。税率でありますが、これは後ほど地方税のほうで出て参りますので関係がありますので申し上げますと、十万円以下のところが百分の八、つまり二%軽減されているわけであります。御承知のように、地方税のほうは、都道府県民税は〇・八から始まっているわけでありますが、〇・八が今度二%になりますので、一・二%だけ税率が高くなります。それをカバーするために、十万円以下の金額につきましては百分の八という税率を設けております。それから、従来道府県民税のほうでは、最高税率は五・六%であったのでありますが、それが四%に引き下げられますので、それに見合いまして、高額所得者につきましては、そこにありますように、従来五千万円超七〇%であったものを四千五百万円超七〇%にします。それから、六千万円をこえますものにつきましては千分の七十五という税率をきめまして、こうした階層について道府県民税の税率の引き下げによって軽減にならないように措置をしているわけであります。
十五条は、これは条文の整備であります。
それから、十五条の二から士五条の五までは、障害者控除、老年者控除、寡婦控除及び勤労学生控除につきましての従来五千円であったものをそれぞれ六千円にしている一連の改正であります。
十五条の六は、これは寄付金控除であります。いわゆる特定寄付金といいますのは、先ほど申しましたように、教育、科学の振興、その他公益という目的に資するものということになっておるわけでありますが、ここではその控除額について書いております。所得の一〇%までを限度といたしまして、その実際に支出された寄付金について所得の三%をこえて一〇%までの金額を寄付金控除の対象としまして、その金額に二割を乗じた金額、それを税額から差し引く。これは御承知のように、もし所得控除にいたしますと、先ほどごらんになった税率でおわかりのように、たとえば現行法でありますと五千万円をこえる人たちにつきましては七〇%の税率になっておるわけでありますので、こういう人がかりに寄付金百万円をしたといたしましても、実は七十万円は税額で助かっておるということで、寄付金を出す人たちの犠牲の度合いと必ずしもマッチいたしません。そこで、税額控除にいたしました。また、その税率二〇%でありますから、所得で申しますと大体百万円あるいは二百万円足らずの人たちの寄付金がこれによって比較的有利になるということになっております。
それから十五条の八、これは簡単なる条文の整備でありまして、十五条の九でありますが、これはむしろ法人のほうで主として意味があるのですが、従来税額控除と申しますのは、外国で一定の所得を得ました場合に、それに対して外国が所得税なり法人税なりを課すわけであります。それを、日本で同額の所得があったならば、日本で所得税なり法人税なりを課されまして、それのつまり差額、日本の所得税額までは外国で払った税額は引きましょうというのが税額控除になっておったのですが、低開発国その他にかなり高い税率のところがありまして、引き切れない事例もありますので、それをいわば、グローバルに考えまして、外国で生じた所得全体に対して外国で税を引かれる、それの税額と、日本で同額の所得があった場合の税額とを対比して、税額控除を考えましょうというのが十五条の九であります。
十七条は条文の整備とお読みになってけっこうであります。ただ、その二項は非常に異例な場合でありますが、日本人が外国におるときにたまたま取締役に選ばれて、従業員としての退職金をもらったというような場合に、税法の上では外国人に、非居住者になる。したがって、二〇%の源泉徴収税率で所得税を取られるというので、酷になる事例がありますので、本人の選択によりまして、退職所得としての日本人並みの課税を受けるようにしようというのが第二項であります。非常に異例な事例ではありますが、若干事例はあります。
十八条は、これは今回新たに認められた退職年金にかかわる信託財産等の収益に対する二重課税防止等のための源泉徴収の免除についての規定の整備であります。
二十一条の二は、従来、予定納税基準額の通知がなされて予定納税基準額があるものとされたのは三千円であったのでありますが、その後所得水準も上がりましたし、そして確定申告で六千円程度の税は従来の三千円に対する感触とそれほど違わないのではなかろうかというようなことも考えまして、六千円まで引き上げております。
それから二十二条、二十二条の二、いずれも規定の整備であります。それから二十二条の三も同様であります。ずっとその辺はいずれも条文の整備であります。
それから、二十六条の確定申告のところでありますが、これは前のほうは、いずれも条文の整備でございまして、変わっておりますのは、先ほどの寄付金につきましては、四項でありますが、特定寄付金を支出いたしますと、確かに受領いたしましたという証書をうけて、確定申告に添付して出してほしいということにしております。それから七項は、従来居所を有しないこととなる日」ということになっておりまして、「日」というのは夜中の十二時までとあって、本人は、たとえば午後の三時とか四時に日本にいなくなるというような事例もありますので、それを「時」と改めました、これは条文の整備であります。
二十七条も、これも条文の整備でございます。二十八条も同じでございます。
二十九条におきましては、第二項でありますが、「事業を有しないこととなる場合に」、つまり「死亡又は出国等の場合の申告」でありますが、事業を有しなくなる場合も申告を出してほしいということを書いておるわけであります。二十九条の関係は、あとこまかくなりますが、いずれも条文の整備であります。
それから三十条、三十二条、三十三条、いずれも同様で、三十四条、それから三十四条の二、これも整備であります。三十六条、三十六条の二、同様であります。それから、三十八条も同様であります。
ここで、三十八条で、最後に第三項というのが加わっておりますが、これは退職年金に対する課税関係を明らかにしておるわけであります。本人が払い込みました部分を除きまして、それを給与所得として課税いたします。それからまた、一定部分を払い込んで一定部分が会社拠出となっている場合、そういうものは按分して、その本人拠出分に相当するものを除いた部分が給与所得になりますというのが三項の規定であります。
それから、三十八条の二、いずれも条文整備とお読みになってけっこうであります。四十一条、同様であります。
それから、四十二条でありますが、これの新しく加えましたのは、このごろ非常にはでな広告がありまして、百万だとか、あるいは何百万というような金が賞金として出るわけでありますが、これは所得税の上では一時所得に該当するものでありますが、これにつきまして源泉徴収の制度を入れようというわけであります。その場合、一時所得でありますので、十五万円を控除した金額ということにいたしております。それから三項は、生命保険の場合であります。
それから四十四条、四十五条、四十七条、特に申し上げることございません。ずっと参ります。六十一条へ参りまして、そこで若干支払調書の整備をいたしております。それから六十五条も、これも納税地の概念を整備いたしたものであります。そのほかは特に申し上げることはございません。
そうして三十七年分の所得税につきましては、四月実施の関係で、これが若干平年度と違う点が出るわけで、特に都道府県民税との振りかえのほうは、本年一月一日から実施するというようなこともありまして、税率のほうで、その振りかえ分に見合っての税率は、三十七年度のほうは四月以降の源泉徴収についてその分を年末調整で調整するなり、あるいは日雇い者の場合は税率で調整するというようなことがありますので、三十七年度にいろいろ特例を設けておるのがその附則でございます。
そうして附則で特に御説明申し上げなければなりませんのは、都道府県民税との関係をこの附則の中に入れております。十九条であります、附則の。地方税法の一部改正。ページで申しますと、七十四ページになります。これが問題の地方税との振りかえの部分でございます。先ほどちょっと申し上げましたように、その下のほうをごらん願いますと、十万円以下の金額は百分の〇・八から始まりまして、五千万円をこえる金額は百分の五・六ということに現行の所得割の税率はなっておるわけでありますが、それを百五十万円以下の金額は百分の二、百五十万円をこえる金額は百分の四というふうに、二本建てにいたしたわけであります。それに見合って、先ほど申しましたように、所得税のほうでは十万円以下の金額を現行の百分の十から百分の八にいたしまして、増税にならぬようにいたしておるわけであります。ただ、七十九ページをごらん願いますと、都道府県民税のほうは御承知のように一年おくれて課税になるわけでありまして、その間、たとえば所得税のほらで配偶者控除は三十六年に七万円が九万円に上がっておるわけでありますが、それが道府県民税のほうで、七万円が九万円に上がっておるにかかわらず、たとえば所得税の納税者はそれによって有利になるわけでありますが、もし都道府県民税だけの納税者という場合には、この従来の〇・八が二になりますことに上ってその分が噴くなることも考え得る。非常にまれなケースでありますが、起こり得るわけでありますので、一般的に二万円そこで控除が上がっております。それがその分について控除の恩典を受けられない人がかりに負担が重くなったとしますと、〇・八と二との差、一・二でございます、その一・二をかけました二万円を税額で引いておりますので、いかなる人も重くなる人はございませんというこの関係を書いておるのが五項であります。青色申告の専従者、そのほか全部同じ問題であります。扶養控除につきましても同様であります。その辺が当面の手当になっております。
あとはいろいろ地方税に伴いまする経過規定、それから租税条約その他の関係との調整がなされております。
以上、簡単ですが、所得税を終わりまして、法人税のほうに参ります。
法人税のほうも、特に最初のほうは、申し上げることは所得税の場合と同様であります。
一条の関係は、いわゆる非居住者、外国法人等に関する所得あるいは事業の概念を明らかにしておるのが一条であります。それから、二条も同様であります。二条に参りますと、これは先ほど申しました退職年金の積立金につきまして新しく法人税をかけることにいたしたことを書いておるのが、二項であります。
それから三条、四条、五条、六条の四、この辺いずれも所得税の場合と同様の趣旨の規定であります。七条も同様であります。それから、八条でごらん願いますと、従来は、法人の場合は法人の所得金額を課税標準として税を課したわけでありますが、ここに退職年金積立金の額を対象に加えておるわけであります。それから九条は、退職年金積立金に対して課せられます税は、法人の計算の上では経費にするのは当然のことで、条文の整備として書いております。それから十条も同様のことであります。
十条の三、これは外国税額控除でありますが、第一項のほうは、先ほど所得税で申し上げましたように、国別の対応で税額控除するのを外国税額という一括した概念で対応させるということにしておるのが第一項であります。第二項は、これは法人に特有なものでありますが、御承知のように、法人が支店の形体で外国へ進出いたしますと、そこでいろいろ税が課せられた場合、その税は所得に対応する国内の法人税から控除されるということで税額控除になるわけでありますが、もしいろいろな事情で外国法人、子会社を設立して事業活動をしなければならないということになりますと、それは別の会社が払った税ということで、法人自身としては支店形体を選びたかったにもかかわらず、いろいろ外国の事情でその国の法人にせざるを得なかったという場合に、引き切れない、税額控除ができないという不均一取り扱いの問題がありますので、それをその外国で課せられた所得に見合って、所得の中から本国へ配当として送金されてくるものに見合って、それに対する税額を本国法人が払ったものとして税額控除の対象にいたしましょうというのがこの第一項であります。
その次が十一条、十二条を飛ばしまして、十二条の二でありますが、これが先ほど申しました退職年金の課税方式であります。これはこういうふうに計算いたすことにしております。企業が年々払い込みます金額は、提案理由にもございましたように、これは企業の損金にしますと。その場合、普通は企業から外へ出ました場合は、何らかの意味でその受給者というものがあるものと考えて、もらったほうへ所得税がかかるというのが現行の税制になっておるわけでありますが、その退職年金積立金に対する払い込み金額につきましては、その間課税を待ちまして、企業のほうは支出した金額は損金になりますが、将来受領することとなる従業員に対し、掛金を企業が支出したときに、それを按分して所得税を課税するというようなことはしないで、年金の受領時まで待ちますという制度をとります。それにもちろん信託会社、あるいは生命保険会社は一定の予定利率をつけまして、それによって運用して年金業務をやりましょうという約束をするわけでありますので、その課税の対象になりますのは、課税の対象といいますか、従業員がもらいますのは、会社が払い込みました金額、それからそれを運用して生じました運用益、これが従業員が年金にもらう原資にたるわけであります。それを現実に年金をもらうときまで課税を待ちますというわけでありますので、その間、大体所得税が平均税率が二八・四%くらいになるわけでありますが、それを年七分くらいの金利で待ちまして、運用益を課税するのじゃありませんが、所得税を本来課さなきゃならないものを所得税を課さないと、その所得税額に見合う金利という意味で、千分の十二という全利相当部分を課税するということにしております。その場合、もらう立場からそうなるわけでありますが、積立金の立場で申しますと、企業から入ってきた金、それから運用益、それからその間年金支給事由が発生するわけでありますので、どんどん払っていくわけであります。そうすると退職積立金として課税の対象になりますのは、退職年金の掛金として入ってきた金とその掛金について運用益として計算される金額の累積額との合計額から、退職年金または退職一時金として支給した金額に見合う金額を控除した殊りです。この殊りが退職年金積立金として千分の十二の税率で課税されることになるわけです、これを書いておりますのが十二条の二であります。
その場合申し上げておきたいのは、これは予定運用利回りでありまして、経済変動その他によりましてその実績は若干違うかもしれませんが、建前は予定運用益に対して課税をする。とにかくこれは運用益そのものに課税するというわけではありませんので、猶予に見合う、その間所得税をかけないこことに見合う利子、その所得税の利子分だけをかけるというわけでありますので、予定利率で運用益が出るものとしての課税をすることにしております。
それから十三条は、これは退職年金に伴いまする清算所得の概念を明確にしておるわけであります。それから十四条も同様でございます。それから十六条は積立金額の関係で、退職年金とこれは別個のものでありますから、その辺の規定の整備をいたしております。それから、税率は先ほど申し上げましたように、十七条の第二号のところで退職年金積立金額の千分の十二という金額を課すことにいたしております。
それから、次は中間申告、これは整備でございます。
法人につきましては、今の企業年金と外国税額控除の関係が主たる改正でございますので、そのほかの点につきましては特別に申し上げることもありませんと思います。
簡単でございますが、以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/4
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005・棚橋小虎
○委員長(棚橋小虎君) 次に為替局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/5
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006・福田久男
○政府委員(福田久男君) 先刻、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、先ほど提案理由の御説明を申し上げたわけでありますが、それに関連いたしまして、この借り入れ取りきめの成立の背景、借り入れ取りきめのおもな条件等につきまして、簡単に補足して御説明申し上げたいと存じます。
まず、借り入れ取りきめ成立の背景についてでございますが、この点についてもただいま政務次官から御説明がございましたように、最近、主要工業国の間では自由化が相当に進展いたしまして、それに伴ってこれら諸国の相互の間で短期資金の移動が非常に活発になって参ったわけでございますが、この短期資金の移動が非常に活発になったということが、これらの国々の国際収支の面では撹乱的な要因とでもいうことができる事態になりまして、ひいては現在の国際通貨制度の定定維持に対する一つの脅威というふうにも言えるかと思うのであります。たとえば昨年三月に行なわれましたドイツのマルクの引き上げ、あるいはその後英国がIMFから相当多量の引き出しを行ないましたといったような事柄、こういった事柄を考えますと、いずれも一つの原因といたしまして、短期資本の移動ということが共通の一つの問題であったということが申し上げられるかと思うのでございます。
国際通貨基金は、御承知のように、一方で加盟国の為替の自由化を促進することを目標としながら、他方面では加盟国が一時的な国際収支の、不均衡に陥った場合に、基金の持っております資金を利用させることによって、その国が為替制限に訴えるということがなく、国際収入のバランスを回復することができるようにしてやることをその任務とするものでございますが、この場合におきまして、主要国の通貨の安定と、そのための協力ということが重要であることは申すまでもないのでありますが、現在、基金の持っております資金量は、約三十億ドルの金と、約六十五億ドル相当額の主要国通貨、現実に交換性を持っておる主要国の通貨、これを持っておるわけでありますが、加盟国の通常の引き出しの申請に対しましては、十分これだけの資金でまかない得るというふうに考えられるのでありますが、将来、ただいま申し上げましたような主要工業国が大量の短期資金の流出に直面いたしまして、基金の資金を利用しなければならなくなった場合が起こりますと、その金額が多額に上ることが予想されますし、これがために基金の保有資金が不足するというような緊急の事態も考えられるわけでございますが、このような場合に備える方法といたしまして、どんな方法がいいかということを、昨年を通じまして、関係者の間で種々検討されておったのでありますが、基金としては、今、現に資金が現実に不足しておるというわけでもございませんし、それに問題が、事実上、主要工業国の場合に限られるということでもございますので、とりあえず、主要工業国の相互の協力によって問題の解決をはかることがよいのではないか、こういう見地から、基金が必要といたします場合には、主要工業国十カ国はいつでも一定範囲の資金を基金に対して貸すことを取りきめておこうということになったわけであります。
主要工業国十カ国と申しますのは、具体的に申しますと、この取りきめに参加する予定の国でございますが、アメリカ合衆国、西独、英国、フランス、イタリア、日本、カナダ、オランダ、ベルギー、スエーデンの十カ国でございます。
次に、この取りきめのおもな事項について簡単に申し上げますと、この取りきめに基づいて、基金に対して資金を貸し付けます必要が生じましたときには、取りきめ参加国の間で協議をいたしまして、各国の貸付予定額の範囲内で合意に達した金額を基金に貸し付けるのでありますが、この協議におきまして、国際収支の状況がよくない国は貸し付ける額を少なくするとか、あるいは貸し付けることを断おるということも認められることになっておるのであります、このような配慮は、一たん貸し付けました後におきましても、期限前に返済を要求することもできるということになっている点からもうかがえるのでありますが、とにかく、そういう国にあまり無理なことにならないようにという配慮がなされておるわけであります。
次に、わが国の貸付予定額でございますが、これは円で九百億円、ドルに換算いたしますと一億五千万ドルになるわけでありますが、これは今回の十ヵ国の取りきめ総額が六十億ドルになっておるのに対しまして、総額に対して四・三%でございます。他方、この十方向が基金に対して出資いたしております金額の中で、わが国の出資額の比率は約五%でございますが、出資額の比率より若干下回ることになるわけでありますが、まずまず妥当な金額ではなかろうかというふうに考えております。
それから、この取りきめのその他の条件といたしましては、貸付の期間は最長五年ということになっておりますが、それ以前でありましても、基金の資金の都合によりまして、余裕が生じたような場合に、あるいは貸付国が要求した場合には、期限前といえども返済されるということになっております。
なお、この取りきめは、十カ国の中で七カ国以上のもの、それから、貸付予定額六十億ドルの中で五十五億ドル以上の額に、それ以上のものに達する国が参加の通告をいたしました場合に効力を発生するというようになっております。そうして、この取りきめ自体は四年間有効とするというようになっております。各国におきましても、目下それぞれ必要な国内措置をとっておる段階で、ございます。
最後に、法律改正案についてでありますが、税法と違って、ごく簡単な内容でございますのですが、要点は二つございます。
その一つは、現在の加盟措置法におきましては、わが国が基金から外貨を借り入れるというような取引につきましては、これを大蔵大臣が外国為替資金特別会計の負担で行なうことを規定いたしておりますけれども、今回の円の貸付というようなものにつきましては、規定がございません。したがって、この法律で本件の貸付ができるようにという規定を設ける必要があるわけでございます。
それから第二点は、これと関連いたしますが、この貸付は円で、つまり本邦通貨で行なわれるわけですが、外国為替資金特別会計の円資金をこれに充てるのもいいと思うわけですが、その際、この特別会計法に、これができる趣旨の規定がございませんので、特別会計法についても、外国為替資金に属する円資金を国際通貨唐基金に貸し付けることができるという道を開く必要があるというふうに思うわけでございます。
この二点がおもな改正の内容でございまして、若干それと関連して、法文の整理を伴うものもございますけれども、そういった趣旨のものでございます。
はなはだ簡単でございますが、これをもって補足説明を終わらしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/6
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007・棚橋小虎
○委員長(棚橋小虎君) ただいまの三法律案に対する質疑は後日に譲ります。
——————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/7
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008・棚橋小虎
○委員長(棚橋小虎君) 次に、関税法の一部を改正する法律案、保険進法の一部を改正する法律東、外国為替銀行法の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題といたします。
三案に対し質疑のある方は、順次、御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/8
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009・須藤五郎
○須藤五郎君 関税局長は、この前の私の質問に対して答弁のなかった点があるのです。まず、その点から御説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/9
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010・稲益繁
○政府委員(稲益繁君) 前回、須藤先生から御質問がございました事項は三点ほどで、ちょっとその際わかりませんでしたが、第一点は、ソ連船の入港実績というお話でございました。三十六年で申し上げますると、全体で五百二十八隻入港いたしております。大きなところで港ごとに申し上げますると、小樽が四十三隻、横浜六十九隻、神戸三十三隻、大阪二十二隻、舞鶴二十五隻、新潟百二十五隻、大きなものを申し上げますと大体そういうところでございます。
それから、第二点の軍用機の入出港の関係でございます。空港に外国の軍用機が出入りする場合にどういう規制があるかという、お尋ねでございますが、軍用機の中で、米軍と国連軍の関係は、例の行政協定で特別な扱いになっております。この関係は、協定で認められておりますいわゆる開港、それからまた、開港以外でも、特に提供いたしました施設があります場合には、協定で明らかな限り、そういう空港へは出入りが自由であるということであります。それから米軍、国連軍以外の軍用機でありますが、これは事前に、入国します前に、政府の、直接は外務省でありますが、外務省の入国についての許可をとらなければならないということになっております。
それから、第三点の、水鳥地区に出ております三菱石油、それから日本鉱業、これの三十六年中の輸入額はどういうものかというお尋ねがございましたが、調べましたところ、三十六年中におきまして、三菱石油の水島製油所、これは石油でありますが、約四十一億円輸入をいたしております。それから日本鉱業の水島製油所、これがやはり石油でありまして、二十七億円、この両者で六十八億円の輸入額と、かようになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/10
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011・須藤五郎
○須藤五郎君 今御答弁になった、アメリカ軍の軍用機の出入国の問題、これは法的根拠はどこにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/11
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012・稲益繁
○政府委員(稲益繁君) 米軍と国連軍の軍用機の場合は、行政協定で……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/12
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013・須藤五郎
○須藤五郎君 行政協定の何条ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/13
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014・稲益繁
○政府委員(稲益繁君) 行政協定の第五条でございます。ちょっと読み上げますると、「合衆国及び合衆国以外の国の船舶及び航空機で、合衆国によって、合衆国のために又は合衆国の管理の下に公の目的で運航されるものは、入港料又は着陸料を課せられないで日本国の港又は飛行場に出入する権利を与えられる。」という規定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/14
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015・須藤五郎
○須藤五郎君 ただいまあなたがおっしゃった国連軍は、どこの国々をさすのか、念のために伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/15
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016・稲益繁
○政府委員(稲益繁君) 国連軍の関係は別個の協定になっておりまして、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定、この協定で規定されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/16
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017・須藤五郎
○須藤五郎君 ここでいっている国連軍とは、どこの国々をさすのか伺っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/17
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018・稲益繁
○政府委員(稲益繁君) 協定の第一条でこの定義をいたしておりますが、その中で、国際連合の軍隊とは、これは例の朝鮮動乱のときに派遣されたものですが、「「国際連合の軍隊」とは、派遣国の陸軍、海軍又は、空軍で国際連合の諸決議に従う行動に従事するために派遣されているものをいう。」ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/18
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019・須藤五郎
○須藤五郎君 税関関係基本通達というのがありますが、おそらくあなたはお持ちでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/19
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020・稲益繁
○政府委員(稲益繁君) ただいまここには持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/20
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021・須藤五郎
○須藤五郎君 ここに言っているのは、「なお本法にいう国連軍の軍隊とは、国連協定の当事国である米国、連合王国(北部アイルランドを含む。)、カナダ、ニュージランド、オーストラリア、フィリッピン、フランス、イタリア、南阿連邦、タイ及びトルコ共和国の十一カ国の軍隊である。」とはっきり規定されているのを御存じですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/21
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022・稲益繁
○政府委員(稲益繁君) 以上の国々だと思います。要するに、朝鮮動乱の際に、あそこへ行っておった国々ということであります。軍隊を出しておった国でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/22
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023・須藤五郎
○須藤五郎君 そうすると、この行政協定第五条第一項によって——あなたがさっき読まれたのは第一項です。その第一項によって、アメリカ軍及びこの国連軍は出入りできる、こういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/23
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024・稲益繁
○政府委員(稲益繁君) 米軍の軍用機のほうは、先ほど申し上げましたアメリカ合衆国との間の行政協定の第五条によって入港できるということであります。国連軍のほうは、先ほど申し上げました国連車との協定、日本国における国際連合の三隊の地位に関する協定、この協定の第四条で、同じようにそういう権利が与えられているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/24
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025・須藤五郎
○須藤五郎君 まあ伺っておきましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/25
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026・木村禧八郎
○木村禧八郎君 ちょっと関連して。その国連軍協定で、やはりその国連軍は、日本に公務で入るときに、関税とか手数料とか、そういうものを課せられない、行政協定と同じように、米軍と同じ扱いを受けるわけですか、今のお話だと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/26
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027・稲益繁
○政府委員(稲益繁君) 御質問が、軍用機の入出港についてどういう扱いがあるかというお尋ねだったものですから、今申し上げておりますのは、軍用機の入出港については同じような扱いがとられているということでございます。空港に入ります際に、特別の許可が要らないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/27
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028・須藤五郎
○須藤五郎君 私の、鹿児島港に沖縄からのアメリカの飛行機が発着していないかどうかという質問に対しまして、あなたはこう答えているのです。「鹿児島の空港が一般にこういう、何と申しますか、外国との間の空路、これを開きましたのは、日本とアメリカとの協定で、昨年九月に実はそういう協定ができまして、」と、こう書いてあるのです。その協定の内容を示してもらいたいと思います。あなたが昨年九月とおっしゃったのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/28
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029・稲益繁
○政府委員(稲益繁君) ただいま申し上げておりましたのは、これは軍用機の場合についての行政協定のことでございますので、私が前回「協定」と申し上げましたのは、たとえば日本の航空機が、日航の飛行機がロスアンゼルスに航路を開くといったような場合には、いわゆる国際間の協定が行なわれるわけです。そういう意味の航空路開設に関する協定を昨年九月に日本が結んだ、これによりまして沖縄との間の定期航路が開設されたということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/29
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030・須藤五郎
○須藤五郎君 だから、協定ならあるでしょう、協定が。その協定の内容を示して下さい、協定のどこによってそういうことが言えるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/30
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031・稲益繁
○政府委員(稲益繁君) ただいま協定はここに持ち合わせておりませんが、何でしたらば、また後刻お届けいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/31
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032・須藤五郎
○須藤五郎君 念のために申し上げておきますが、昨年九月にきっとそういう協定が結ばれましたか、昨年九月に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/32
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033・稲益繁
○政府委員(稲益繁君) 結ばれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/33
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034・須藤五郎
○須藤五郎君 きっとですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/34
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035・稲益繁
○政府委員(稲益繁君) はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/35
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036・須藤五郎
○須藤五郎君 それでは、今お手元になければ、明日でも、この次の委員会に、その昨年九月に結ばれた協定の内容というものを示して下さい。委員長、よろしゅうございますか。その内容がないと、実際は審議がしにくいのですよ、資料がそろってこないのですから。それで、僕は、委員長が承認してくれるなら、この質問をここで打ち切って、次の金曜日にこれを続行したいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/36
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037・棚橋小虎
○委員長(棚橋小虎君) それでは、関税局長のほうからその書類を提出されるようこ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/37
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038・荒木正三郎
○荒木正三郎君 ちょっと関連して。国連軍との協定ですね、朝鮮動乱はもう相当以前に……。実際しないのですね。それにもかかわらず、今日なおそういう協定が改廃されないで残っておるということは、非常に疑問に思うのですがね。これはどういう意味でなお残っておるのですか。これはまあ政治問題だから、政務次官に答えてもらうべき性質の問題かもしれないが、われわれは実に意外に感じておるわけですね。今ごろ国連軍との協定があって、そういう軍用機がその協定に基づいて甘木との行き来が行なわれておるというのは、こういうものは実際上必要がないならば、廃止すべき性質の協定じゃないですか。なお今日あるということは不思議にたえない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/38
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039・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それは何の必要があって存続しておかなければならないか、その理由をやはり明らかにしてもらいたいのですね。今できなければ、この次でも。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/39
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040・棚橋小虎
○委員長(棚橋小虎君) 何かお答えありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/40
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041・稲益繁
○政府委員(稲益繁君) 国連軍とのこういった協定自体をどう取り扱うという問題は、ちょっと私、ただいまここで何ともお答えする立場にございません。もっと広い見地からの問題であると思います。私からは、ここで何ともお答え申し上げかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/41
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042・須藤五郎
○須藤五郎君 しかし、関税局長と全然関係ないというわけにはいかぬでしょう、あなたの管轄の問題になってくるのだから、実際は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/42
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043・棚橋小虎
○委員長(棚橋小虎君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/43
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044・棚橋小虎
○委員長(棚橋小虎君) 速記を始めて。
それでは、本日はこの程度で散会いたします。
午後零時五分散会
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104014629X00819620220/44
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