1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年二月二日(金曜日)
午前十時三十六分開会
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出席者は左の通り。
委員長 梶原 茂嘉君
理事
石谷 憲男君
安田 敏堆君
委員
青田源太郎君
値垣弥一郎君
岡村文四郎君
古池 信三君
柴田 栄君
仲原 書一君
藤野 繁推君
清澤 俊英君
天田 瞬正君
千田 正君
政府委員
農林政務次官 中野 文門君
農林省農地局長 庄野五一郎君
農林省振興局長 斎藤 誠君
農林省畜産局長 森 茂雄君
農林省蚕糸局長 立川 宗保君
林野庁長官 吉村 清英君
事務局側
常任委員会専門
員 安楽城敏男君
説明員
農林大臣官房審
議官 大沢 融君
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本日の会議に付した案件
○開拓融資保証法の一部を改正する法
律案(内閲送付、予備審査)
○農林漁業金融公庫法の一部を改正す
る法律案(内閣送付、予備審査)
○昭和三十六年五月の風害若しくは水
害、同年六月及び十月の水害、同年
七月、八月及び九月の水害若しくは
風水害又は同年八月の北美濃地震に
よる災害を受けた農林水産業施設の
災害復旧事業等に関する特別措置法
の一部を改正する法律案(内閣送
付、予備審査)
○昭和三十六年五月、六月、七月、八
月及び九月の天災についての天災に
よる被害農林漁業者等に対する資金
の融通に関する暫定措置法の適用の
特例に関する法律の一部を改正する
法律案(内閣送付、予備審査)
○農業機械化促進法の一部を改正する
法律案(内閣送付、予備審査)
○農林水産政策に関する調査(農業基
本法に基づく年次報告及び施策に関
する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015007X00319620202/0
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001・梶原茂嘉
○委員長(梶原茂嘉君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
開拓融資保証法の一部を改正する法律案(閣法第三号)、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(閣法第四号)、昭和三十六年五月の風害若しくは水害、同年六月及び十月の水害、同年七月、八月及び九月の水害若しくは風水害又は同年八月の北美濃地震による災害を受けた農林水産業施設の災害復旧事業等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(閣法第五号)、昭和三十六年五月、六月、七月、八月及び九月の天災についての天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の適用の特例に関する法律の一部を改正する法律案(閣法第二八号)、農業機械化促進法の一部を改正する法律案(閣法第四一号)、以上いずれも予備審査の五法案を一括議題といたします。
まず、五案について政府委員から順次提案理由の説明を開くことといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015007X00319620202/1
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002・中野文門
○政府委員(中野文門君) 開拓融資保証法の一部を改正する法律案の提案の理由を御説明いたします。
戦後開拓地に入植した開拓農家は約十五万戸ございますが、全般的に見まして、開拓農家の経営状況は、一般農家と比べてなおかなりの開きがあり、立地条件の劣悪、資本装備の不足等の事情によって、営農の基盤がいまだに確立できず不安定な経営を続けている農家も相当数あります。
政府といたしましても、開拓農家の経営を極力早期に安定させたいと考え、従来から各般の助成措置を講じて参っておるのでありますが、開拓農家の営農の振興をはかるためには、建設工事の実施、営農施設の整備等のほか、年々の経営資金が円滑に供給されることが必要であります。
この点、開拓農家は、営農の基盤も脆弱で、経営資金の調達が必ずしも円滑に行なわれがたいので、開拓融資保証法によって債務保証を行ない、肥料、飼料、農薬、乳牛および肥育牛その他中小家畜などの購入資金が、系統金融機関から円滑に融通されるよう措置して参っております。
この開拓歌資保証制度の仕組みは、各都道府県の地方保証協会が開拓農家の系統金融機関に対する債務を保証し、中央保証協会がさらにこれを保証する建前になっておりまして、政府は中央保証協会に対して五億四千万円を出資しております。
しかし、開拓地における営農の伸長に伴いまして、開拓農家の資金需要も増大し、現在の基金による融資保証ワクでは十分にその資金の需要を満たすことができません。そこで昭和三十七年度において、地方保証協会の増資の状況に対応して中央保証協会に対する政府の出資金をさらに三千万円増額し、政府の出資総額を五億七千万円、中央保証協会の基金総額を六億七千五百万円として融資ワクを増大し、開拓農家の資金需要にこたえて開拓地における営農の確立を促進して参ろうとするものであります。
以上が、開拓融資保証法の一部を改正する法律案の提案の理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお題いいたします。
次、ただいま提案になりました農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
農林漁業金融公庫は、その設立以来九年、農林漁業の生産力を維持増進するために必要な長期かつ低利の資金の融通をして参っております。公庫が設立以来貸し付けて参りました資金の総額は、昭和三十六年度末において約三千七百六十二億円、その融資残高は、約二千四百一億円に達する見込みでありますが、昭和三十七年度におきましては、前年度に引き続き、重要農林漁業施策に即応して、農林漁業の生産基盤の強化と経営の安定に必要な資金の融通を行なうこととし、このため公庫に対する政府の出資を増額するとともに、新たに公庫の行なう業務として、沿岸漁業者の経営の安定に必要な資金の貸付の業務を加えるため、本法律案を提案した次第であります。
以下、改正の内容について御説明申し上げます。
第一点は、資本金の増額であります。昭和三十七年度において公庫が貸付契約を行なうことを予定している領は、七百十億円でありまして、前年度に比較して百十億円の増加となっておりますが、この七百十億円の貸付を行なうために必要な資金は、年度内に交付しなければならない資金の額を勘案いたしまして、一般会計からの出資金十三億円、産業投資特別会計からの出資金百二十億円、借入金といたしまして資金運用部から二百九十六億円と簡易生命保険及び郵便年金特別会計から二十七億円並びに回収金等二百十億円、合計六百六十六億円となっております。
以上のとおり、政府が一般会計及び産業投資特別会計から百三十三億円を新たに出資することとなっておりますので、現行の資本金に関する規定を改正することといたしたのであります。
第二点は、公庫の行なう業務に、新たに沿岸漁業者の経営の安定に必要な資金の貸付の業務を加えることであります。沿岸漁業者は、わが国漁業経営体総数の九割に及んでいるにもかかわらず、その大部分は今なお零細な経営の状態にあります。それゆえ、沿岸漁業の構造を改善し、その生産性を向上することが必要であることは申すまでもありませんが、一方、沿岸漁業者の経営不振の原因は、単に生産性の低いことのみにあるのではなく、疾病、災害等やむを得ない理由による負債の累増・固定化が沿岸漁業者の経営の改善を妨げ、その生活を不安定ならしめていることも見のがすことはできないのであります。したがいまして、明年度より実施いたします沿岸漁業の構造改善事業を推進するため、これに即応して沿岸漁業者の長期固定化負債を整理し、経営の安定をはかることが、現在特に必要であると考えられますので、今回公庫の業務に沿岸漁業者の経営の安定に必要な資金の貸付の業務を加えることといたした次第であります。
以上が、この法律案を提案する理由及びその内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さらんことを御願いいたす次第であります。
次、ただいま議題となりました「昭和三十六年五月の風害若しくは水害、同年六月及び十月の水害、同年七月、八月及び九月の水害若しくは風水害又は同年八月の北美濃地震による災害を受けた農林水産業施設の災害復旧事業等に関する特別措置法の一部を改正する法律案」の提案理由を御説明申し上げます。
御承知のとおり昨年五月以降、集中豪雨、台風等による災害が全国的に相次いで発生し、農林水産業施設の受けた被害もきわめて大きく、現行制度による国庫補助をもってしては、急速に施設を復旧し、経営の安定をはかることが困難な状態にありましたので、さきの臨時国会におきまして農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律についての特例を設けること等を内容とする特別措置法を提出し、御審議御可決をいただいたのでありますが、その後十月上旬の台風二十四号により関東、東北地方等が、さらに十月下旬には集中豪雨及び台風二十六号により九州、四国、近畿、東海、東北地方等がはなはだしい被害を受けたのであります。
政府といたしましては、このような状況にかんがみ、これらの災害にかかる農地、農業用施設、林道、共同利用施設及び水産動植物の養殖施設の災害復旧事業並びに災害関連事業についても特別措置法に規定すると同様の措置を講ずることとし、ここに本改正法律案を提出した次第であります。
本法案の内容は、特別措置の対象となる災害としてさきに申し上げました昨年十月の風水害及び同月下旬の水害を加えるものでございますが、なおこの結果、改正前の法律による国の補助の額がこのたびの法律改正により少なくなることのないよう措置することとしております。
以上が、この法律案を提出する理由及び法律案の内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切望する次第であります。
次、ただいま提案になりました「昭和三十六年五月、六月、七月、八月及び九月の天災についての天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の適用の特例に関する法律の一部を改正する法律案」の提案理由を御説明申し上げます。
この法律案は、昨年九月下旬から十月上旬までの長雨、十月上旬及び下旬の暴風雨並びに十月下旬の豪雨により農林漁業者の受けた被害が著しかったことにかんがみまして、これらの災害を、五月から九月中旬までの災害と同様に、天災融資法の特例法による特例措置を受けることのできる天災とする必要がありますので、これらの災害を同法の対象として追加することとするものであります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さらんことをお願いいたす次第であります。
次、農業機械化促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
近年におけるわが国農業の機械化は、目ざましいものがありますが、今後におきましても、農業と他産業との間の生産性及び所得の格差の存在と、農村労働力の流出傾向にかんがみまして、農業構造の改善と農業生産性の向上とをはかるために不可欠な農業機械化への要請は、ますます強まるものと思われます。
しかしながら、わが国農業の機械化の現状を見ますと、農作業の各分野において機械化の進展が見られるとはいいますものの、各農作業間の機械化の度合に遅速があり、また、畜産、園芸部門等の機械化はおくれており、さらに全体としては、機械化の効率が十分に発揮されていないうらみがあるのでありまして、農業機械化のための各種助成指導をさらに強化する必要があることは申すまでもありませんが、特に農業機械化を推進するための試験研究を拡充強化することが急務であると考えられるのであります。
この分野における試験研究につきましては、国の農業試験研究機関が中心となりまして多くの成果を上げておりますものの、このうち農機具の開発改良に関する試験研究につきましては、他の農業関係試験研究に比べまして、多大の費用、施設等を要するものであり、また、民間企業との連繋が必要でありまして、今後時代の要請にこたえて参りますためには、このような現行の体制では、不十分であり、その飛躍的な改善強化が必要となってきておるのであります。
また、一方農業機械化のもう一つの重要な対策であります農機具の検査につきましては、昭和二十八年農業機械化促進法の制定以来、漸次対象機種を拡大いたしまして、優良農機具の普及に貢献して参っておりますが、農家が安んじて優良な農機具を購入することができますように、さらに多くの種類の農機具の検査を、常時にしかも高い精度で実施いたしますには、検査施設、人員等を大幅に拡充強化するほか、試験研究の成果を十分に取り入れ、権威ある検査を実施する体制を確立する必要があるのであります。
これらの実態にかんがみまして、新しい構想のもとに、国と民間の共同出資による農業機械化研究所を設立し、充実した施設、設備等をもちまして農業機械化の動向と農機具産業の動向とに十分対応し得るような農機具に関する試験研究及び調査を行なわせることといたしますとともに、これと密接な連繋のもとに検査を実施させますほか、その他の規定につきましても、農業機械化の進展に即応いたしましてその整備を行なうこととし、これがため農業機械化促進法の一部を改正することといたしたのであります。
次に、法律案の主要な内容につきまして御説明いたします。
第一に農業機械化研究所の設立と関連いたしまして、試験研究体制の整備をこの法律の目的に加えることといたしました。
第二に農業機械化の進展に対応した国及び都道府県の施策を明らかにするため、その農業機械化を促進する義務及び国の都道府県に対する援助の規定を整備することといたしました。第三といたしましては、研究所の設立等に伴い、農機具の検査に関する制度を整備改善することといたしました。その主要点の一は、国は、農業機械化を促進するため、この法律の規定により、依頼による農機具の型式検査を行なうものとし、型式検査を行なう農機具の種類及び基準は、農林大臣が定めますが、その実施は、研究所に行なわせることといたしますとともに、検査を常時行ない得るように改正を加えました。
なお、型式検査の成果を確保するため、事後検査は従来どおり農林大臣が随時行なうことができることといたしております。
第二点としましては、農機具の利用者等がその性能等をよく知ることができますように、農林大臣は、研究所から検査の結果を報告させ、合格した農機具の検査成績の概要等を公示しなければならないものといたしますとともに、依頼した農機具の型式につき合格の通知を受けた者は、その型式の農機具に検査合格証票を付する場合には、検査成績表の写しをもあわせて付さなければならないことといたしました。
なお、このほか、検査合格証票添付期間の限定その他今回の検査制度の改正に伴う所要の規定の改正をいたしております。
第四は、農業機械化研究所の設立であります。
この研究所は、農業機械化を促進するため、農機具の改良に関する試験研究及び調査並びに農機具の検査を行ない、その試験研究の成果の普及をはかることを目的とし、これらの事項をその主要な兼務とするものであります。
研究所の資本金は、政府出資額と民間出資額の合計額でありますが、政府は、研究所の設立に際し、二億円を出資することといたしますとともに、当分の間、国が農機具の改良に関する試験研究または農機具の検査の用に供しております土地、建物、物品等を出資の目的とすることができることとし、また、研究所は、必要があるときは、農林大臣の認可を受けて、その資本金を増加することができるものといたしました。
その他、研究所の組織業務及び財務会計に関し必要な規定を定めますほか、研究所に対する農林大臣の監督に関する規定を設けております。
なお、研究所は十月一日までに設立すること〜予定いたしております。
以上が、本法案の提案理由及び主要な内容でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015007X00319620202/2
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003・梶原茂嘉
○委員長(梶原茂嘉君) 以上で、五案の提案理由の説明は終わりました。
ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015007X00319620202/3
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004・梶原茂嘉
○委員長(梶原茂嘉君) 速記をつけて。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015007X00319620202/4
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005・梶原茂嘉
○委員長(梶原茂嘉君) それでは次に、農業基本法に基づく年次報告及び施策に関する件を議題といたします。なお、御承知のように、本件は、農業基本法に基づきまして、年次報告は十二月二十七日、それから、講じようといたしまする施策にきましては一月二十五日、それぞれ文書を各委員のお手元に配布済みでありまするから、御承知のことと存じます。この際、これらの報告及び文書につきまして説明を聞くことといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015007X00319620202/5
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006・大沢融
○説明員(大沢融君) おくれて申しわけございませんでした。ただいま、委員長からお話しのございました、農業基本法の第六条に基づきます農業の動向に関する三十六年度の年次報告を、お配りいたしました要旨を読みながら、御説明を申し上げます。
御承知のように、この年次報告は、過去において講じた施策と、過去の農業の動向、それも農業の生産性あるいは農業従事者の生活水準、農業基本法の第一条で掲げております、あの目標を中心として、農業動向の分析をして、国会に報告する、こういうことになっております。
昨年の暮れ、農政審議会の意見を聞きまして仕上げて、国会へ提出したということでございます。第一回のことでもございますので、単に前年度ということだけでなくて、大体三十年ごろまでにさかのぼりまして農業動向の記述、さらに前年度よりも最近時まで資料の許す限り触れるという態度でまとめております。
それからもう一つは、講じた施策の部分でありますが、これは年次報告の第二部になっておりますけれども、これは三十五年度、つまり農業基本法が施行されない以前の施策でもございますので、農業基本法の第二条に掲げられておりますような、ああいう観点から過去の施策を整理したらどういうふうになるかというような整理をしてみて記述をするというやり方をしております。おそらく基本法はこうして年次報告を出して、さらにそれに基づいて今後講ずる施策を明らかにして、それを講じて、過去のものとしてどういう効果があったかというふうなことを反省しながら、さらに動向分析して、また翌年度の施策につなげるというやり方になるのだと思いますけれども、ことしの講じた施策の部分は、基本法施行以前のものでありますので、そういう形にいたしました。
そこで、まず読みながら御説明申し上げますと、「第一部の中心課題と構成「経済の高度成長のもとで、昭和三十五年度に農業は一段の発展を遂げたのであるが、しかし農業と他産業との生産性の開差はこの間かえって拡大し、農業従事者と他産業従事者との生活水準の開きもなお縮小するに至っていない。昭和三十六年度「農業の動向に関する年次報告」の第一部「農業の動向」においては、以上の点を明らかにするため、(1)まず、経済の高度成長のもとで、三十五年度を中心とした農業経済はどのように発展したか、(2)その間農業と他産業との生産性および農業従事者と他産業従事者との生活水準の動向がどのようになっているか、(3)その動向の背景は何か、(4)またその中で農業の構造がどう変化しているか、」この四点を中心的課題として扱っているわけです。
したがいまして目録が並べてありますように、一章では昭和三十年以降の農業経済の発展、二章では生産性と生活水準の動向、第三章が生産性と生活水準の背景は何か、また第四章でさらに農業経営の変化というふうな扱い方をしております。
五ページを開いていただきます。第一章の要約でございますが、「一、昭和三十五年度の日本経済は、三十四年に引き続く景気上昇局面に位置し、とりわけ旺盛な設備投資に支えられてきわめて高度の成長を遂げた。この基調は、三十六年度にも受けつがれ息の長い繁栄を続けたが、ようやく高度成長の行き過ぎの徴候がみえ、夏ごろ以降御承知のような景気調整策がとられるようになった。二、一般経済の引き続く活況局面のなかで三十五年度の農業経済も概して好調であったといえよう。農業生産は、常態化した米の高水準の生産と、畜産物、果実、野菜等需要の増加しつつある農産物の増産によっ七、三十五年にも前年に比べ三・七%増加した。
うしろのほうに附表がついております、第一表でごらんいただきますと、耕種が、三・三、養蚕がO・四、畜産が非常に伸びて一〇・三、耕種の中で、成長作物のような野菜、果実のようなものは、一〇%以上の伸びを示しております。総じて三・七%の増、こういうことです。
また元へ戻っていただきまして、「三十年以降の農業生産の着実な伸長は農機具投資を中心とするおう盛な固定資本投資、公共投資による」公共投資による固定資本投資というようなものの額が、どのくらいというのは、別に表がございますので、後ほどごらんいただきます。「生産基盤の整備、農業技術の進歩等によるところが大きい。一方経済のきわめて高度の成長のもとでの食糧消費構造の変化」つまり食糧消費の澱粉質から蛋白質あるいは、ビタミンというようなものに移っていく高度化、特に低所得階層においてもこういう現象が顕著に見られるという変化と、「一般経済の好況に伴って飲食費支出が著増した、」これは過去四年の平均を見ますと、五・三%くちいの年率であったのが、三十五年は七・八%も伸びているというのは、「著増した結果、三子五年度には畜産物、夏野菜、果実等が大幅な値上がりをみせ、農産物価格全体としても前年度に比べて五・四%の上昇をみた。」これは第二表にございます。こまかく書いてありますので、後ほどごらんいただきます。「これに比べて農業用品価格の上昇率は小さく、農業経営をめぐる格価関係は有利に推移した」肥料とか農薬とかはむしろ値下がりをする。
木材とか家畜飼料というようなものは、多少値上がりいたしましたので、農業用品としては、対前年比三・七%くらいの値上がりをしておりますが、今申し上げたように、農産物価格全体としては、五・四%の伸び率ということで、交易条件がむしろ有利に展開されたということが見られます。
「三、農家の農業所得は前年度に比して六%増加したが、農外所得、特に労賃俸収入の増加はそれ以上に著しく、三十五年度の農家所得(全国平均一戸当たり)は四十一万円に上ぼり、前年度を一〇・三%も上回った。それに伴って家計費も増加し、とりわけ耐久消費財の購入増が目立ち、農家の消費生活の都市化が進んだ。農村消費水準指数の対前年度上昇率は七・五%に及び、二十九年度以降はじめて都市消費水準のそれを上回った。」この農家所得の伸びというようなことの数字は、第三表に出ております。まあ非常に伸びて、生活水準も消費水準も、農村の消費水準は過去の平均年率二・七%ぐらいの上昇率だったものが、三十五年は七・五%も伸びている。これに対して都市のほうは、消費水準は、過去四年の平均は、五・一%、農村の二・七に対して五・一%という高い伸び方をしておったのですが、三十五年は、逆に農村の七・五のほうが都市の五・六よりも高いというような状態になったわけです。
「四、一般経済の引き続く好況の中で他産業雇用が増大するにつれ農家人口の他産業への移動も活発化している。最近では通勤形態による移動の比重が増しているが、絶対数ではなお離村の方が多い。いぜんとして新規学卒者を中心とする若年令層が移動の主力をなしているが、近年、中年令層の移動もふえ、また移動先は第三次産業から第二次産業へと変わりつつある。このような移動に伴い農業就業人口は年率約二・五%の割で減少し、三十五年度には一千四百十三万人(総理府の「労働力調査」より推計)となった。農業就業人口の減少は機械の導入や省力技術の発表を促したが、その反面では農業労働力の老齢化、女性化による質的低下が進んでいる。」この辺の通勤形態による移動がふえた、あるいは若年令層が主体だ、しかし中年令層も移動するようになってきたということは第四表でごらんいただきます。それから就業人口の減少とともに労力面で老齢化女性化というようなことのその傾向は、付表の五表をごらんいただきます。
「五、経済の高度成長のもとで国民経済に占める農業の比重は相対的に低下したが、」、これは「主要国の就業人口及び国民所得に占める農業の地位」の表が出ておりますが、この中で、この十年間ぐらいの間に就業人口では、日本の就業人口は四二%から三二%、国民所得に占める農業所得のウエートは一九%から一二%ぐらいになったというようなことがそこに書いであります。「拡大する他産業の必要とする食糧、労働力等の供給や工業製品の市場としての機能を通じて農業及び農家と他の経済部門との連関は緊密化の度を加えている。そのことは、農業と農家がそれだけ、一般経済の景気変動の影響をますます敏感にこうむるようになったことを意味するものであろう。」
その次は消していただきますが、その次は三行ほどはミス・プリントでございます。
そういうことで、農業が一般経済の中に深く巻き込まれて、その景気の波の波動を受けやすくなったというようなことが、三十年から三十五年の農業経済の位置づけをやっております。
それから次は第二章、ここのところをちょっと削っておりますが、第二章生産性と生活水準の動向。
「一、三十五年度に農業の生産性は順調な伸び(四・六%)を見せたにもかかわらず、農業と他産業との生産性の開差は拡大した。すなわち、農業の製造業に対する比較生産性は、三十四年度の二六・九%に比べて三十五年度には二三・八%に、また非農業に対する比較生産性は三十四年度の二八・四%に比べて三十五年度には二六・五%に低下している。」まあ生産性の比較を、一つは物的生産性で生産の年次別変動を見、これは付表の第七表に出ております。それともう一つは、産業間の水準を比べるという意味で比較生産性、これは第八表にあります。で、比べているわけです。
二、農業従事者と他産業従事者との生活水準の比較の主要な指標として農家と勤労者世帯との世帯員一人当たり家計費を見ると、全国農家平均のそれは前年度に比し約一〇%も増加したが、勤労者世帯に比べると増加率がやや小さく、」勤労者世帯は、平均的には農家の一〇%増に対して一六・六%という、増加率がこっちのほうが高いわけです。「開差は依然として縮小していない。比較対象である各種勤労者世帯に対比して、三十五年度の全国農家平均の水準は」、これは第九表にいろいろのことで比べてあります。「六三%〜八二%であり、全都府県の二町以上の農家においても七二〜九五%程度である。」。
「三、しかし家計費の比較は生活水準比較の一つの指標にすぎない。消費水準指数で見ると、三十五年度には前述のとおり農村のほうが都市よりも上昇率が著しかった。」先ほど申し上げたとおりです。「他方、耐久消費財の保有量や経済余剰率を見ると、最近農家で増勢が著しいとはいえ、まだ勤労者世帯よりも低い、さらに保健状態や生活環境でも農村は都市に比べてなおかなり劣っている。」生活水準を比べる指標といたしまして、こういった保健状態だとか、あるいは住宅の状態だとかいうようなことを、本文のほうでいろいろ表を出して説明をしております。
そこで第三章ですが、このような生産性なり、あるいは生活水準の状態なりをもたらす要因になり、背景になるものはどういうものかというようなことを、所見をまじえながら書いているわけです。
「一、前章で述べた三十五年度における農業と他産業との生産性の開差の拡大は、一言でいえば、他産業の成長があまりにも急速であったため農業がそれに歩調を合わせられなかったことによるものである。」農業生産としましても、たとえば倍増計画でいえば年率二・九%というようなことなんですが、それ以上の伸びを示しており、生産性も三十四年には六・四、三十五年には先ほど言りた四点何%というふうに伸びているわけですが、「他産業の成長があまりにも急速であったため農業がそれに歩調を合わせられなかったことによるものである。生産性の不均等発展の背景には農業の資本装備の相対的低下、農業と他産業間の労働力移動の不円滑、農産物需要の高度化に対する農業生産の適応体制のおくれという諸現象が見られる。」それぞれについて(1)、(2)、(3)と書いてあります。
まず、資本の問題として、「農業においても設備投資が増加したにもかかわらず、他産業のそれに比べてはるかに及ばなかったばかりでなく、農業の資本効率は概して低く、農業と他産業の資本装備率の開差が一そう拡大している。このように農業において資本効率が低く資本の入り方が少ない裏には経営規模の零細性の問題がある。資本効率の低下を招かないで資本装備の高度化をはかるためには、資本の集約化による生産性の高い経営技術の確立と零細農耕の構造の改善とが必要であろう。」資本装備率の開差というようなことについての表は、うしろについておる第十表にございます。
それから「(2)農家人口の他産業への移動のテンポは前述のとおり高まったが、過剰就業は本質的にはなお解消するに至っていない。それにもかかわらず、三十五年度には農業の適応体制が十分整わないうちに急速な農家人口の移動を見た結果、老齢化、女性化等、農業就業構造の質的低下が進み、また農繁期の労力不足、農業労賃の高騰を招き、そのため一部では裏作の縮小等の現象をも生んでいる。」まあ不円滑な人口移動という現象が現われておる。「このような現象は構造改善のおくれと機械化技術体系の未確立を反映するものであり、したがって、一方では一般労働市場の諸条件の一そうの改善が必要であるが、農業内部においては構の改善と生産技術の革新が特に重要であろう。
それから(3)市場条件の変化のことをいっております。「畜産物、果実等成長農産物を中心とした食糧需要の急速な増大が前述のとおり三十五年度にはこれら食糧の価格の高騰を惹起したが、」この辺のことは第十一・表にあります。「これは経済のきわめて高度の成長の結果であるとともに、食糧需要の高度化に対する農業の適応体制がおくれていることによる面もある。また、特に畜産物、果実等の成長農産物については、生産に長期投資を要し、投資とその効果の発現に時間的ズレがあるだけに需要と価格の大きな変動がそれらの生産の安定的発展を乱す要因として作用しがちである。このことは、農業生産のなお一そうの選択的拡大の条件の整備とそのための構造改善や価格安定の必要性を示唆するものであろう。」こういうことで、生産性の状態の要因、背景をいっているわけです。
それから「二、生産性の格差の拡大は必ずしもそのまま生活水準の格差に反映しない。それは特に非農業では一般に生産された所得が労賃、利潤等に分割され、それぞれ異なった主体に帰属するからであり、また農業では農外所得の増大が農家の家計に大きく響くからである。」しかし基本的には、生産性の向上ということが、所得の増大の要因であるというようなことは、本文の中で触れております。
「三、農家所得及び農家の家計消費の水準は一般に上昇したが、農家間にはかなり大きな格差がある。経営規模別に見ると両極が高く、中間で低くなっており、農区別に見ると、近畿、北海道、東海、南関東等で高く、南海、北九州、山陰で低い。また経営規模別に見ても農区別に見ても前年度と比べて三十五年度にも開差は縮小する傾向が見られない。」ということで、地域的な格差あるいは階層的な格差ということに多少触れております。
「第四章、農業経営の変化〕、第十三表、第十四表にこれの裏づけの、参考の表が載っておりますが、あるいは十五表、農業生産性、十六表、協業というようなものが載っておりますが、きょうあとでごらんいただくことにしまして読みます。「農物産需要の高度化、農家人口の他産業への移動の活発化等に伴って経営規模別農家構成には近年かなりの変化が認められる。経営規模別農家数の推移から見ると、三十年以降は、一町を境に分化する傾向が明瞭となっている。」十三表でごらんになるとよくわかります。「また農地移動の推移から見ても、経営規模の大きい農家で拡大した戸数が縮小した戸数よりも多い。さらに専兼業別の戸数の変化においても、一般に兼業化が深化する」——兼業と専業の割合がそう変わらぬでも、専業、兼業のうちで第一種が減って第二種がふえるというようなことが読み取れるわけですが——「兼業化が深化する中で、経営規模の大きい専業的農家が発展する動きがうかがわれる。(2)「農家経済調査」の結果による経営規模別の農家経済の実態から見ても、五反未満の農家は資本集約化の方向に進まない限り、経営発展の見通しに乏しく、一方、ほぼ一町五反以上の農家は農業生産性も高く、旺盛な発展能力を持つとみられ」あとの十四表からにありますが、「その中間の規模の農家は経営規模の制約を流動資本と労働力の多投によってカバーし、困難な農業経営に立ち向かうとともに、農外収入に対する依存度を高めている」という、先ほど言ったように、生活水準というような、あるいは所得というようなことでまん中が引っ込んでいます。というのと対応する事実であります。それから「二、このような農業の発展的な基調の上で、規模の大きい専業的農家の経営の高度化あるいは協業の動きも近年かなり見られるようになった。しかし、全般的にはなお近代化しない農業経営も少なくないし、商品生産の専門化も十分でない。経営の近代化を困難ならしめている制約条件としては、経営耕地の零細性、資本の不足のほか、機械化技術体系の未確立、経営担当者の資質の問題があろう。」高度改善を進める上での制約条件を書いております。「特に、経営耕地の零細性の基底には、高い地価や零細兼業農家の零細地片の所有、現行農地制度の規制等、農地の流動性をはばんでいる事情があり、さらに経営耕地の零細性に関連する問題としては生産基盤の劣弱性もある。また資本の問題としては、多くの経営にとってみずからの経営発展に必要な資本の蓄積が困難であり、外部資金の導入も少ないばかりでなく、農業部門で蓄積された資金も農業外に流出する傾向があり、しかも資本の利用も必ずしも適正でない場合がある。これを要するに農業経営の近代化の動きは見られるが、この傾向をさらに促進するには経営の近代化のための諸条件の整備が必要であり、これがため適切な施策を講じなければならない。」というようなことで結んでおるわけです。これと同時に、基本法の第七条で、この動向を考慮して今後講ずる施策を明らかにした文書を国会に提出しなければならないというふうになっておるわけですが、それに基づいて提出申し上げたのが「昭和三十七年度において講じようとする農業施策要旨」であります。これは薄い刷りもの二、三枚にしておりますが、内容的には昨日大臣が今後、三十七年度の施策について説明をされたあれと大同小異であります。まず第一に、農業動向で指摘されております資本あるいは労働あるいは市場の問題、そういうことからいろいろ示唆されておりますたとえば構造改善であるとか、技術の発展であるとか、あるいは生産性の向上とか、あるいは市場条件の整備とか、価格安定性だとかいうようなことが今申し上げた動向から今後とるべき施策の方向として示唆されておるわけであります。そういろ動向に基づいて、刷りものの三ページにありますが、第一に、成長農産物を重点として生産の選択的拡大を一そう促進する。第二に、農業の生産性の向上を促進する。それから四ぺ−ジにいきまして、第三に、重要農産物等の価格安定措置を引き続きやる。ことに畜産物及び青果物の流通の合理化、価格の安定に重点的に力を入れる。それから第四に、最も重要な柱として農業構造の改善という施策をやるというようなことで、それぞれの柱に対していかようなことを来年度はするかということを具体的に述べておるわけであります。そうしてこれらのことを推し進めるために、まず第一に行政機構の改革、第二に予算の確保、あるいは金融の適正化、それから第三に法制上どういう措置をとることにしているかということを明らかにして、三十七年度に講じようとする農業施策を国会に報告をしておるわけであります。
大体内容的に御説明申し上げると、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015007X00319620202/6
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007・梶原茂嘉
○委員長(梶原茂嘉君) 以上で農業基本法に基づきまする年次報告及び施策に関しまする件の説明は終わったのであります。なお、本件に関連しましての御質疑につきましては、他日、農林大臣御出席の場合に基本的な事項についての御質問をお願いいたしておりますが、その際にあわせて御質疑をお願いするということにいたしまして、本日は説明を聞くことにとどめたいと、かように存ずるのであります。
それでは、本日の会議はこれにて散会することにいたします。
午前十一時二十八分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015007X00319620202/7
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