1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年三月二十日(火曜日)
午前十時四十七分開会
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委員の異動
三月十六日委員青田源太郎君辞任につ
き、その補欠として苫米地英俊君を議
長において指名した。
三月十九日委員苫米地英俊君及び松浦
清一君辞任につき、その補欠として青
田源太郎君及び赤松常子君を議長にお
いて指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 松野 孝一君
理事
井川 伊平君
亀田 得治君
委員
大川 光三君
加藤 武徳君
野上 進君
林田 正治君
高田なほ子君
赤松 常子君
辻 武壽君
国務大臣
法 務 大 臣 植木庚子郎君
政府委員
法務大臣官房司
法法制調査部長 津田 実君
法務省民事局長 平賀 健太君
最高裁判所長官代理者
最高裁判所事務
総長 下村 三郎君
最高裁判所事務
総局総務局長 桑原 正憲君
最高裁判所事務
総局総務局第一
課長 長井 澄君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
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本日の会議に付した案件
○理事の補欠互選の件
○行政事件訴訟法の施行に伴う関係法
律の整理等に関する法律案(内閣送
付、予備審査)
○民法の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
○訴訟費用等臨時措置法等の一部を改
正する法律案(内閣提出、衆議院送
付)
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001・松野孝一
○委員長(松野孝一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
この際、委員の異動について御報告申し上げます。
三月二十一日付松浦清一君辞任、赤松常子君選任、以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/1
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002・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 理事の補欠互選を行ないます。
去る三月十六日、理事青田源太郎君が一時理事を辞任されましたので、理事に欠員を生じておりますので、この際、その補欠を互選したいと存じます。互選の方法は、慣例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御意議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/2
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003・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 御異議ないと認めます。
それでは、私より青田源太郎君を理事に指名いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/3
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004・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案を議題といたします。
本日は、本案の提案理由の説明を植木法務大臣より聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/4
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005・植木庚子郎
○国務大臣(植木庚子郎君) 行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
現行の各種行政法規における訴訟に関する規定は、その基本法たる行政事件訴訟特例法が何分にも早々の際に制定されました関係上、その当時、各種行政法規との関連を十分に考慮して、これら諸法規における訴訟に関する規定を整備する余裕がなかったため、現在、これらの規定には不備、不統一の点が少なくないのであります。今回、行政事件訴訟特例法を全面的に改正し、新たに行政事件訴訟法を制定する必要があるため、さきにこれについての法案を提案いたした次第でありますが、その制定に伴い、各種行政法規における訴訟に関する規定を整理する必要があることはもちろん、この際、これらの規定における不備、不統一を是正し、その整備をはかる必要があるのであります。これが本法律案を提案いたします趣旨でございます。
次に、この法律案の要点について申し上げます。
第一に、現行の各種行政法規における訴訟に関する規定について、右に述べたところにより所要の整備をいたしております。すなわち、行政事件訴訟法案の趣旨にのっとり、これとの関連において、独占禁止法、公職選挙法等における訴訟に関する規定に所要の改正を加え、また、河川法等における不必要な規定を削除するとともに、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律にも所要の整備をいたすことにしたのであります。
第二に、各種行政法規に規定する処分のうち特定のものについては、訴願を前置する旨の規定を設けることといたしております。すなわち、先に提案いたしました行政事件訴訟法案においては、原則として訴願前置主義を廃止するとともに、必要に応じて各特別法で訴願を前置する旨の規定が設けられることを前提といたしているのであります。したがいまして、本法律案におきまして、特にその必要のある特定の処分に限りその旨の規定を設けることといたした次第でありますが、これを選定いたしますには、おおむね、大量的に行なわれる処分であって、訴願の裁決により行政の統一をはかる必要があるもの、専門技術的性質を有する処分、訴願に対する裁決が第三者的機関によってなされることになっている処分の三種のいずれかに該当するかどらかを基準とすることが妥当と考えまして、この基準に基づき各種行政法規に規定する処分を検討いたしました上、健康保険法その他法律に規定する特定の処分については訴願を前置する規定を設けることにいたしたわけであります。
第三に、各種行政法規に規定する処分のうちには、原処分でなく訴願の裁決を訴訟の対象とするのを適当とするものがあり、現行法でも、海難審判法、特許法等におきましては、このいわゆる裁決主義が採用されておりますが、その他にも、農産物検査法等におけるように、再検査の結果を訴訟で争うこととするのが妥当と考えられるものがありますので、同法その他若干の法律につきそのための改正をいたしております。
第四に、各種行政法規における損失補償の額等を争う訴訟についての規定を整備いたしております。すなわち、損失補償の額等を不服とする訴訟は、さきに提案いたしました行政事件訴訟法案における当事者訴訟とすることがその訴訟の性質に適合し、かつまた、国民にとり便宜であると存じまして、農地法等の諸法規において補償額を争う訴訟を当事者訴訟といたす規定を置くことといたしております。
以上をもって本法案の提案理由の説明を終わります。何とぞ慎重御審議をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/5
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006・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 以上で説明は終了いたしました。
本案に対する補足説明等は次会に続行することとし、本案については、本日はこの程度にとどめます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/6
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007・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 次に、民法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案については、去る二月二十七日に提案理由の説明並びに補足説明を聴取しておりますので、本日は、これより質疑に入ります。ただいま出席中の政府側は、平賀民事局長であります。御質疑のおありの方は、順次御発言下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/7
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008・井川伊平
○井川伊平君 民法第三十条関係につきましてお尋ねをいたします。
民法の三十条の新しい法律の第二項に、「戦争ノ止ミタル後」という言葉がありますが、この「戦争ノ止ミタル後」ということはどういうことであるか、こういうことから最初に承りましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/8
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009・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) この規定の趣旨から申しまして、この「戦争ノ止ミタル後」というのは、戦闘行為が終わった後という意味に解するものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/9
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010・井川伊平
○井川伊平君 そうすると、停戦の調印とか、講和条約とかというものとは関係ないという意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/10
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011・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) さように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/11
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012・井川伊平
○井川伊平君 そうしますると、過ぐる第二次世界戦争にいたしましても、すでに停戦条約はできているけれども、千島なり樺太なりにおいては、実際戦闘が行なわれているという場合がありましたね。こういう場合において、「戦争ノ止ミタル後」というのは、いつを意味するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/12
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013・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 停戦の取りきめができまして、なお局地的に戦闘行為が行なわれていると仮定いたしますと、その戦闘行為の行われている場所に臨んだ者につきましては、実際にその戦闘行為が終わった時というふうに解釈すべきものだと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/13
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014・井川伊平
○井川伊平君 しかし、国の家族のものは北千島へ行ったと思っている。ところが、それはすでに飛行機か何かで移動されて、全然別の所へ行っている。そこでは戦争はすでになかったのだというような場合ですね。そういう場合にはどう見るのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/14
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015・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) これは、規定にもございますとおりに、「戦地ニ臨ミタル者」、そこに臨んでおることが必要でございまして、そこにいなかったということがわかれば、この危難失踪による失跡宣告の適用はないと考えざるを得ないと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/15
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016・井川伊平
○井川伊平君 そうすると、「戦争ノ止ミタル後」というのは、戦争しておる当事国の間のすべての戦争がやみたる後という意味ではなしに、局地的に戦争のやみたる後ということをきめていくのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/16
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017・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) そう解釈すべき問題と思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/17
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018・井川伊平
○井川伊平君 そう解釈するとすれば、戦闘のやみたる後という言葉に何だか通じてくるような気がいたしますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/18
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019・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 従来もそういう解釈で臨んでおりまして、この規定の趣旨からいきまして、「戦争ノ止ミタル後」というのは、仰せのとおり、たとえば停戦の取りきめができるとか、あるいは平和条約が締結される、そのときに初めて戦争がやんだというふうにも考えられますけれども、この規定の趣旨からいって、そうは解釈すべきものではなかろう。で、制定以来そういう解釈が来ておりますので、この機会にこれを改めるまでもないであろうということで、この「戦争ノ止ミタル後」という言葉には、別に修正するということは必要ないのではないかと考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/19
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020・井川伊平
○井川伊平君 元の旧法からも、「戦争ノ止ミタル後」という言葉はある言葉ですが、そういうような解釈さえ統一されれば、私はそれでよろしいのですが、「戦争ノ止ミタル後」というのは、戦闘のやみたる後という意味ではなしに、とにかく当事者の、両方で戦争するという意思がなくなったということがはっきりすれば、「戦争ノ止ミタル」ことになるのであって、局部的に戦争が行なわれておるというような場合は、それは何か別の危難行為として見るべきではないかと考えるから言うわけです。そうしませんと、「戦争ノ止ミタル」ということがばらばらになってしまうんじゃないかと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/20
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021・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 私の承知しておりますところでは、私ただいま申し上げましたように、戦闘行為がやんだ後というふうに解釈すべきものだと考えておりますが、あるいはお考えのような意見も、これはあり得るかと思うのでございますけれども、私どもの戸籍の実務におきましては、先ほど御説明申し上げましたような解釈で処理をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/21
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022・井川伊平
○井川伊平君 そうしますと、「戦争ノ止ミタル後」というのは、ある地点における戦闘行為がやみたる後と、こういうように解釈するというのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/22
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023・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) そういうわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/23
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024・井川伊平
○井川伊平君 こういう法律を残しておけば、そういう解釈が将来まちまちになるおそれがあるのではないかという点を心配するからなんでありますが、たとえば、過ぐる戦争におきまして、アリューシャンのアッツ島ですか、アッツ島ではもう玉砕してしまった、一人も生きていないということが言われておりましたですね。ですから、そこの戦闘は終わったので、そこに生きている人は一人もないから、その戦地にいた者は戦死したものと、戦闘行為が済むと同時に、認められても仕方がないでしょうが、実際戦争が済んでみると、腹を切ったり自分で自爆したけれども、死にきれないで、若干の者はアメリカに収容されておったということはありますね。こういう点から見れば、一地域の戦闘がやんでも、どこかに隠れておるとか、負傷して人事不省になって助かっておったとかいうことがあり、そういうことが、両国の戦争の意思がなくなったときにはっきりしてくることだから、この戦争というのは、両国が戦争するという意思を放棄した何かの形式の時を境にしないと、まちまちの解釈になり、好ましくない姿が残るのではないかと思いますが、この点について、まちまちになっても、もうこのままでいいのだ、旧法そのまま言葉を用いてもいいのだというお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/24
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025・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) ただいまアッツ島の例がございましたが、まああの当時全員玉砕というようなことが言われておりましたけれども、やはりそうは言いましても、確実な情報とは言いがたいので、生存の可能性もあるということも考えられますので、そういう場合は、やはり慎重を期すべきではなかろうかと思うのでございます。生死が明らかでないと言える状態にあるかどうかということの解釈にかかってくると思います。生存の公算が非常に大きいということでありましたならば、やはりまだ生死が全然わからないという状態とは区別すべきできはなかろうかというふうに考えるのでございます。それからなお、仰せのごとく、たとえば第二次大戦というようなものをとりますと、明らかにその局地的な戦闘が行なわれた。そこで消息を絶った。ところが、その戦争が非常に長期にわたるというような場合に、いつまでたっても失跡の宣告ができないというような事態も考えられないことはないのでございまして、全体の戦争がやんだときと解することがはたして妥当かどうか、疑問のケースも出てきやしないかと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/25
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026・井川伊平
○井川伊平君 アッツ島と同じような例ですけれどもね。軍艦に乗っておった。軍艦が沈没した。沈没したので人が全部死んだという仮想に立てるから失跡の宣告ができるのですね。ところが、実際は敵の軍艦に助けられて助かっている場合もありますね。そういうことから考えてみると、局地の殲滅戦の場合も同じでございますけれども、戦争が済むまで宣告をそのまま待ってやってはいかがでしょうかね。どこかで生きておる。しかしながら、戦争から帰って来ないのだと、ですから、妻はほかへ嫁に行けるようにとか、あるいはその者の財産をほかの者がもらえるようにそれを急がせなければならないのだという考え方はどうかと思うのですな。だから、そういうことを考えると、実際両国が戦争の意思を放棄してしまい、そうしてあからさまに全部のことが明らかになってしまうまで待たなくてもいいのですかな。実際は、両国が戦争の意思を放棄して、あからさまになりましても、山の奥などに逃げ込んでおる人があるかもしれませんが、そういう場合には、その戦争の済んだときから一年なら一年という時期を経過すればいいけれども、敵の捕虜になっているかもしらぬ、救われているかもしらぬという不安があるのに、局地の戦争が済んだから、船が沈んだからというだけで失跡の宣告をするということは、少し早計のようにも考えられるが、しかし、あとに残っておる妻なりが再婚の都合があるとか、財産の相続の都合があるから、いつまでも引っ張っておくということもできないということならば、それも私は了としないわけではございませんが、解釈をここで統一をしておく必要があると思うので、あとで学者によって解釈をまちまちにして、いろいろ考えられることのないようにしておきたいと思うからあえて言うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/26
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027・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 仰せの点、ごもっともなところがあるように思います。なおこの点は検討いたしてみたいと思います。今後は、戦争ということはあまり直ちに起こるとは考えられませんけれども、特に私ども戸籍事務を監督いたしております関係で、今後もないとは言えませんので、なおその点は、私ども研究いたしてみたいと思います。従来の解釈ではあるいは妥当でない場合もあり得るかと思いますので、この点は、研究をさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/27
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028・井川伊平
○井川伊平君 ここで私は立法者の意思をはっきりして、将来裁判所や学者が、この点について学説を区々にできないようにしておきたいという老婆心です。それでは次会でけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/28
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029・高田なほ子
○高田なほ子君 それでは関連して。戦時国際公法と平時国際公法とあるんですが、その場合、戦時国際公法の戦時というのは戦争中という解釈と、今言われた「戦争ノ止ミタル後」といわれる解釈との関連はどういうふうになっていますか。そこでいう戦時というのは、またここでいう平時と、こういうふうに二つに分かれて国際公法があるのですけれども、これは、戦争というのは国家間の争いなんだから、国家間でやはり戦争がやんだという宣言をしなければ戦争はやんだというふうに私どもは考えていないのですが、これはどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/29
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030・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 細部の点はともかくといたしまして、国際法でいいます戦争というのも、ここでいう戦争というのと大体同じ意味だろうと私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/30
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031・高田なほ子
○高田なほ子君 そうすると、戦争の終わりたる後ということは、国家間の戦争を終結したという、いわゆる終戦の宣言を境にして、戦争というものの終わったか終わらないかということをきめるのが普通じゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/31
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032・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 先ほど井川委員の御意見もありました次第でございますので、なおこの点は、私どもといたしましては、従来の取り扱いにつきまして再検討いたしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/32
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033・井川伊平
○井川伊平君 それから、やはり三十条関係で、七年なり一年なりの期間がきめられておるわけでありますが、その期間の進行する最初の始期ですね。その始期について、意見が関係人の全部が一致しておればいいが、意見がまちまちになることがあるかもしれない。そういうようなことを考えますと、宣告に対しまして異議を申し立てて争うというような立場のものができてくるかもしれないが、その点に関しましては、どういうような争い方ができ、どういう手続によるものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/33
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034・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) これは、失跡宣告に対して即時抗告をするということになると思うのでございます、現在の手続から申し上げますと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/34
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035・井川伊平
○井川伊平君 即時抗告の規定はどこかにありますかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/35
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036・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) これは、大審判規則の四十二条に、「本人又は利害関係人は、失跡宣告の審判に対し、即時抗告をすることができる。」と、即時抗告の規定がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/36
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037・井川伊平
○井川伊平君 ありがとうございました。
次に、やはり三十条関係でありますが、死亡したと認定されました者が帰ってくる、意外にも生きて帰ってくる、あるいは生きて帰ってこないまでも、生存をしておるということがはっきりしたというような場合でありますが、そういうような場合におきましては、利害関係人から、あるいは本人から取り消しの申し立てができることは申すまでもなく規定されておるようでございますが、本人も利害関係人もそういう申し立てを全然しないということを仮定してみますと、現実に帰ってきておる、死亡したという人間が帰ってきて生活をしておる、あるいは郷里に帰ってこぬまでも、どこかにおいて生存をしておるということがはっきりしておる、こういう事実があります場合に、本人及び利害関係人から取り消しの申し立てがないといたしましても、事実に反する認定をしておるのであるし、または、生きておる人間を死亡したということにしておる、認めたということは、人間的な感情にも大きな影響がありましょうし、また利害の関係も出てくるのであるが、こういう点を考えてみますると、本人または利害関係人から宣告の取り消しを申し立てないでも、宣告をした裁判所が職権で宣言の取り消しをするとか、あるいは本人、利害関係人から申し立てがなくても、検事からそういう取り消しの申し立てができることにするとか、こういうことにしますことが事実に即することであり、何といいますか、人間的感情といいますか、人間の尊厳を保つとしましょうか、そういう関係から、そういうことは何か必要ではないかと考えられますが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/37
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038・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 現実に生存をしております場合には、生存をしておるということに基づきまして、いろいろのこれは法律効果が生ずる。これは当然でございまして、失踪宣告があったにかかわらず、死亡した者とみなしっぱなしということはもちろんないわけであります。ただ、失踪宣告が申し立てに基づいてなされておりまして、現に裁判としてなされておりまする以上、やはり取り消しということをやりまして、はっきりさせるということで、失跡宣告の取り消しという制度ができておるわけでございますから、本人あるいは利害関係人、利害関係人もこれは相当範囲を広く解釈していいんではないかと私思うのでございますが、でありますから、家庭裁判所の職権ということを入れませんでも、事実上はこれで十分まかなえるんではないか。ことに本人といたしましては、戸籍の上では死亡者の扱いになっておるわけでありますから、死亡したものとみなされたことになっております関係上、いろいろ身分行為をいたしますにつきましても、市町村上長に対しまして戸籍法による届出をする際に、失跡宣告の取り消しの裁判を終えませんことには、市町村、長としましては、はたして失跡者がそこに生存しておるのであるか、確認の方法がないわけでありますから、本人も、これは失跡宣告がそのままでは非常に不便であるわけで、本人としても、当然これは失踪宣告の取り消しの申し立てをするのではないかということが期待されるわけでございます。なるほど、それでも、よほどつむじ曲がりの者がおりまして、失踪宣告の取り消しの申し立てをしないという場合も考えられないことはございませんが、しからば家庭裁判所にやらせると申しましても、家庭裁判所としましては、職権で本人の生存を知り得るという機会は、これは非常に希有なことで、ちょっと家庭裁判所の職権の発動を期待できないのではないかというふうに考えるのでございます。そういうわけで、現行法の本人または利害関係人の申し立てに基づいて宣告の取り消しをするという制度で、実際問題としましては十分ではなかろうかというふうに考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/38
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039・井川伊平
○井川伊平君 今、よほどつむじ曲がりで、本人から申し立てがないのだという、つむじ曲がりと申されましたが、考えてみると、つむじ曲がりじゃない、もっと奥行きのある人の考え方としてそういう場合があるのじゃないか。たとえば、妻が再婚しておる、おれが帰ったというと、気苦労があるだろうから、おれは隣村に住む。あるいは自分の財産を他人が相続してしまっておる。おれが帰ってくれば、原状の利益の存する範囲でおれに返してくることになる。そうすることは相手方がかわいそうであるというような、人のそうした悲しみを自分が見るに忍びないから、おれは黙っておってやるのだ。こういうような人もないとは限りませんね。しかし、それが失跡宣告を取り消さなければ、あなたのおっしゃったとおり、公民権も何もないといった生活ですね。それは、物を現金で買って食うことはできましょうが、とにかくそうした公民権などなくなりますね。そういう事実があるとすれば、検事がそういう事実を知った場合に、検事からそういう場合には取り消しの申し立てができることに規定したって少しも差しつかえないと思うのですが、検事をなぜ利害関係人及び検事と入れなかったか。入れたら何か差しつかえがありますか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/39
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040・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) これは、検事も場合によりましては利害関係人に入る場合があり得るのであります。たとえば、思いつきでございますが、その者が犯罪を犯した、で、その犯罪を犯した者そのものの犯人の同一性を確認した上は、やはり住所のみならず、本籍も確認しなければならぬ。生年月日も確認しなければならぬ。調べてみると、失跡宣告で死亡したとみなされたことになっておる。これではやはり本人の同一性の確認に非常に因ることになりますので、その場合には、やはり検事が利害関係人ということで、その失跡宣告ということの取り消しを申し立てるということもあり得るのじゃないかというふうに考えるわけでございます。何か検事がそういうふうで知る機会というのは、検事といえども、人の動きをしょっちゅう見ておるわけではないので、実際問題としましては、やはり犯罪に関連いたしまして、職権で職務上知るわけでございますが、私がただいま申し上げましたような場合には、検事も利害関係人と言っていいのではなかろうかというふうに考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/40
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041・井川伊平
○井川伊平君 そうすると、あなたのお考えでは、ここの利害関係人といううちには、検事を含んでおるという立法者の考えだということにしてよろしいことになりますか。そんなことはないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/41
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042・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 場合によりましては、検事も利害関係人と言っていいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/42
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043・井川伊平
○井川伊平君 場合によるというのは、利害関係がある場合はいいですよ。少なくとも、司法上の利害関係はないが、検事という立場において失踪の取り消しを申し立てる場合には利害関係人と見るというふうな、そういううふうに含まれておるという立法の趣旨だとおっしゃるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/43
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044・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) そこまでは言えない。たまたま個人として知ったというのでは困るのじゃないか、利害関係人に含ませるということは無理じゃないかということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/44
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045・井川伊平
○井川伊平君 検事だって自分の友人がある。その友人が失踪宣告を受けた。ところが、たまたまたずねてきて、おれは助かっておったのだという、そういう場合には、職務上じゃなくして、職務上以外の関係において、失路宣告を受けた者が達者で国に帰っておるということはわかりますね。そういう場合、それから、今言ったように、その人間がたまたま犯罪等を犯して、いろいろ取り調べの結果、失跡宣告を受けた者であるというふうな事実がわかった場合もございましょうが、そういうあらゆる場合を通じて、検事も、検事という立場において、友人であろうがなかろうが、いかなる関係で知ったにしても、知った以上は、検事というものは失跡の宣告の取り消しを求める権利がある、こういうような意味にこれを解釈なさるのかと言うておる。私は、そう解釈するとすれば、少し無理がかかるのじゃないか。そういう場合には、利害関係人及び検事と、検事の文字を入れるべきでなかったかと考えるから言うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/45
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046・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 私の申し上げるのは、そういう趣旨でございません。たまたま友人で知っておったから、その当人がたまたま検事であったからという場合は、これは一般人の場合と同じことでございまして、それは利害関係人だというわけには参らぬだろうと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/46
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047・井川伊平
○井川伊平君 そうすると、あなたの御説で、きょう今ここではっきり言うて下さればいいし、そうでなければあとでもいいです。私は、あとで問題がいろいろ解釈が分かれては困ると思うから聞いておるだけでございますから、だから、それじゃ検事が利害関係人として失踪の宣告の取り消しを求め得る場合は左の場合であるということをはっきりと承っておきたいと思います。これはきょうでもいいし、どうせ次の日があるのですから、そのときにお答えをちょうだいしてもかまいませんが、はっきりしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/47
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048・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 私の先ほど申し上げましたのは一例で、これを限定的に、その場合にはそういう限定的な列挙ということは、ちょっと今私もとっさにはできないのであります。その点は、なお検討いたしてみます。しかし、この利害関係人というのは、かなりゆとりのある、広く解釈していい規定ではないかと私思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/48
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049・井川伊平
○井川伊平君 いかに広く解釈しても、私法上の利害関係、財産といいますか、利益、私法上の利益に対する関係がなければ、利害関係があるといわれないでしょう。死んだらつき合ってない。帰ってきたから一緒に酒を飲んで楽しめる。これは利益がある。ゆえに利害関係人ということには言えないと思います。いかがですか。したがって、利害関係人というのは、私法上の利益に限定されるのではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/49
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050・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 必ずしも私法上ばかりには限定されないのではないかと私考えるのでございます。ただ酒を一緒に飲んでおるとか、友人であるとか、口をきいたというだけでは、もちろんこれは利害関係人とは言えぬわけでございます。私法上の法律関係だけに限りというふうには解釈すべきものではなかろう。公法上の関係も考えられぬことはないと私思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/50
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051・井川伊平
○井川伊平君 公法上の利害関係を含むとすれば、一例をいえば、どういう例でございますか。失跡の宣告を受けた結果として公法上の権利を復活せしめる、利害関係があれば、どういう場合ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/51
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052・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 先ほど検事の例が出ましたので、申し上げましたような例の場合もある。その者が犯罪を犯しまして、起訴したいというような場合、やはり本籍、出生の年月日を確めなければならぬわけでございます。戸籍を調べてみると、本人は失跡宣告を受けておる。生存しない建前になっておる。そのままではやはり起訴できない。起訴に支障を来たすのじゃなかろうかと思うのでございます。やはりその場合に検事も、これは公法上の関係でございますけれども、その場合には失跡宣告の取り消しの申し立てができるのではなかろうかと私考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/52
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053・井川伊平
○井川伊平君 その場合のあなたの言う利害関係人というのは検事を意味するのだ、こういう意味ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/53
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054・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/54
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055・井川伊平
○井川伊平君 私は、その点は少しも研究しておりませんが、失踪の宣告を受けた者がかりに犯罪を犯した。それを検事が起訴する場合には、失跡の宣告を取り消さなければ起訴できませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/55
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056・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 取り消すのが筋ではなかろうかと私は思います。取り消さなくてもあるいは起訴できるかもしれませんが、私、刑事訴訟法の詳しい専門家でございませんので、その点は確信ございませんが、取り消すのが筋ではないか。戸籍を見ると、死んだことになっている。死亡した。失跡宣告を受けて、生存しない建前になっているのを起訴することは無理ではないかと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/56
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057・井川伊平
○井川伊平君 しかし、やはり裁判で、失踪の宣告でそうなっている、犯罪を犯した、他の利害関係人から失踪宣告の取り消しを求められない。その場合に、検事が失跡宣告の取り消しを求めるまでは、その者を留置することも拘置することも、何もできないということは私はなかろうかと思うのです。その点がはっきりせぬければ、お答えが、その点に関する限りは、全部はっきりしないのじゃないか。言いかえれば、私法上の利害関係ばかりでなく、公法上の利害関係も全部含むのだという御意見は、土台から全部きまっていないということになるのじゃないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/57
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058・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 私も実は、突然の御質問で、民法の学者ではございませんので、あるいは思いつきになって恐縮でございますが、なお、御質問の点は、帰りまして、よく研究をいたしてみますが、公法上の関係の例として、たとえば、失踪宣告を受けた者が班に生存いたしまして、たとえば収入がある事業をやっている。所得がある。所得税なんかかけられるわけです。税を滞納したという場合には差し押えたい。ところが、本人名義の財産がない。その場合に、失踪宣告で相続人の名義になっている。失跡宣告を取り消して、本人の名義に回復した上でなければ差し押えの手続ができないということもあります。その場合に、税務官署、徴税官署といたしましては、税法に基づく差し押えをする上で、失踪宣告の取り消しをしなくちゃならないということがやはりあり得るのじゃなかろうか。これも財産関係だから、私法関係といえば私法関係かもしれませんが、税務署と本人の関係は、これは公法上の関係で、財産にからんでおりますけれども、公法上の利害関係ということもやはり考えなければならぬのじゃなかろうか。これも一例になりはしないかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/58
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059・井川伊平
○井川伊平君 今の税の差し押えにつきましては、御説のような場合が出てくるかもしれませんね。出てくるかもしれないが、失跡の宣告によりまして相続された財産から生じた利益についての納税の問題ではなくして、それから全然離れた、独自の立場においての納税を滞納しておるのだとするならば、その差し押えの場合に、そこまでその人の全然利益に関係のない財産、他人名義になっておる、裁判の宣告の結果なっておる財産に及ぼすことがいいか悪いかの議論も別に出てくるかと思います。しかしその点も、それはその学者の解釈にまかすとし、まして、刑事事件の進行ができるかできぬかについては、お考えおきを願いたい。人を殺したけれども、あれは失踪の宣告を受けたやつだから、あれをつかまえるわけにいかんということはないと思う。これは調べざるを得ない。調べた以上は、起訴せざるを得ないのじゃないかと思うのですが、この点は次会でもけっこうでございますから、よろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/59
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060・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) ただいま申し上げましたように、刑事訴訟法は私あまり詳しくございませんので、その点は、なお勉強させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/60
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061・井川伊平
○井川伊平君 次には、全然問題をとりかえまして、代襲相続についての問題です。代襲相続の場合でありますが、被相続人に数人の子供がある。その子のある者は死亡し、ある者は生存しておるというような場合におきまして、死亡した子にさらに直系卑属がある。大体こういう場合には、代襲相続を認めることがきわめて適切であり、現行法におきましても認めておりますね。だから、そういうことはたいへんいいことでありますが、こういう事例の場合はどうか。被相続人の方に数人の子供があった。その子供が全部相続開始前に死亡してしまった。そして死んだ子供各員全部あるいは一部の者にさらに直系卑属である子、被相続人からいえば孫がありますね。こういう場合には、その孫の人を全部一列に置いて、そして相続分について平等にする。これは現行法ですね。現行法では、相続人の子供が全部死んで、その子供に子供がある、言いかえれば被相続人からいえば孫がある場合、孫は同じ列において和親権がありますね。現行法はそうだと思いますが、そうするほうが、現行のほうがいいのであって、改正されたほうがむしろ改悪になるのではないかという私は感じがするわけなんです。特に代襲相続ということを厳格に解釈しますと、子供さんがかりに三人あって、総領の息子さんに子供があった。あとの三人の人に子供がなかった。そうすると、その総領息子の子供が代襲相続をするということになると、代襲相続をする場合には、もう自分の父親もないのですから、三人とも、おやじもおじさんもおばさんも全部死んでおるのですから、そうすると、ほんとうに厳格に代襲相続ということをやるとすれば、おじの分の三分の一で、他のおじさんやおばさんの分の相続権ということに伸びていかないんじゃないかという心配があるのですが、その点はどうですか。私は、そんなことがあってはならぬと考えますが、そういうように考えられるのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/61
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062・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 今御設例の場合には、被相続人に子供が三人いて、三人とも被相続人より先に死んだ。ところが、その三人の子供のうち一人だけ子供がいる。被相続人からいいますと孫がいる。ほかの二人の子供には子供がないという御設例の場合ですね。その場合の相続関係は、被相続人に配偶者もないと仮定しますと、現在おります孫でございますね。かりに長男の孫だけがいると仮定しますと、長男の孫が被相続人の財産を全部相続するということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/62
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063・井川伊平
○井川伊平君 しかしそれは、代襲相続ということをいえば、相続開始の場合には、長男もいない、次男もいない、三男もいないのだ。もし三人が生きていれば、三人が平等の率でもらえるのだ。死んで三人ともいないのだ。そういう場合の代襲相続というのは、兄さんだけの子供さんが財産全部を、次男、三男の分も全部もらえるといったのは、孫であるがゆえにという観念で、代襲相続の観念じゃないのじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/63
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064・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) その場合は、代襲の関係が起こりますのは直系卑属の関係で、先順位者が被相続人よりも先に亡くなって後順位の直系卑属がおるという場合に、初めて代襲相続が起こるという場合があるわけでありまして、被相続人の子供のうち二人が全然子供がない場合には、代襲ということが起こる余地がないのであります。でありますから、孫がかりにないと仮定いたしまして、子供が三人おって、二人がもうすでに死んでおるとしますと、残った一人が全部相続するわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/64
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065・井川伊平
○井川伊平君 生きておればですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/65
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066・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) ところがそれには、生きておれば全部相続するわけでありますが、代襲と申しますのは、生きておれば相続人たるべき者にさらに子供がおる、直系卑属がおるという場合に、初めて代襲ということになるわけで、だから、この場合には、長男の子供というふうに例をとりますと、長男の子供がおるということによって初めて、その孫の父親すなわち被相続人の長男、これがあたかも生きておるものと仮定しまして、それが一たん相続してその孫に行く、これが代襲の観念でありまして、やはりこれは、孫は代襲相続だと観念すべきだと思うのであります。これは、改正後におきましても現行法におきましても、代襲相続ということになるかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/66
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067・井川伊平
○井川伊平君 その点はそれで了承しましたが、感情からいいましてですね。今のは、総領だけに子供があったが、総領に子供が二人、次男に一人ある、三男は子供は一人もいないという場合に、次男の子供は三分の一財産がもらえる、長男の子供は六分の一しかもらえない、こういうことになりますね、二人あるから。次男の子供は三分の一もらえるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/67
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068・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 長男には子供が二人ある、次男は子供が一人ある、その場合の相続分は、代襲相続になります関係で、長男のほうから生まれました孫というのはそれぞれ四分の一ずつ、それから、次男のほうから生まれました孫は二分の一ということになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/68
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069・井川伊平
○井川伊平君 そうなりますね。その場合に、その孫まで、そういうように、相続開始のときに、両方の親は死んで、全然ずらりとない場合に、子供が生きておれば子供に平等に行くんだという観念からいえば、子供が全部なくなって、孫だけおる場合に、孫に毛平等に行くのだという考え方のほうが、現在の現行民法のほうが、そこが人間の感情に適しているのではないかと私は思うのです。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/69
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070・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 現行法の解釈でございますが、これは、井川委員のおっしゃるような解釈も一部にはございますけれども、多数説と申しますか、現在の通説は、子供が全部死んで孫だけがおるという場合には、現行法の八百八十七条の二号でいくのではなくて、八百八十八条の代襲相続でいくのだというのが実は通説なのであります。その場合において、孫も全部平等になるのではなくて、その孫の親たちの相続分に応じて孫が相続するのだという代襲相続の考え方、これが現在の通説でございまして、現行法のもとにおきましても、学者の通説であるのみでなく、私どもの所管いたしております登紀の関係、それからまた、大蔵省のほうでやっております相続税の賦課の関係におきましても、その場合は代襲相続であるということでこれは実は処理いたしておるわけでございます。
それから裁判所のほうも、これは的確な判例は出ておりませんが、家庭裁判所におきまして、遺産の分割なんかやります場合には、やはり代襲相続の考え方に従って事実上事件を処理いたしておるのでございます。でありますから、今度の新法は、これは現行法を変えたというよりも、現行法に沿いまして、現在行なわれております解釈をはっきりさせる。そして先ほど井川委員のおっしゃったような孫平等代襲相続じゃなくて、その場合は、直接自己の固有の資格で相続するのだという少数説が現在あるわけでございまして、解釈上に疑義を生じておりますので、現在行なわれております解釈をはっきりいたそうというのが今度の改正の趣旨なんでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/70
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071・井川伊平
○井川伊平君 次に、全然別のことをお伺いしますが、相続が開始された場合に、相続人が全然ない場合に、特別の縁故者に財産の全部または一部を相続せしめることができますね。そのことについてお伺いいたします。
相続の財産を与えることのできる特別の縁故者というのは、どの範囲をいうのかということです。これは範囲をどうして決定するか。裁判官に勝手にきめさしていいのか。あるいは、何かここに一つのちゃんとしたきまったものがあるのかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/71
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072・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) これは、立案の段階におきまして、特別縁故者の範囲というものをもう少し明確にしたいということで、私ども、原案を作ります際にも努力いたしましたし、それから、法制審議会におきましても、この点が問題になりまして、検討いたしたのでございますが、なかなかこれは、具体的にもっとはっきりということがなかなかむずかしゅうございまして、仰せのように、こういう抽象的な規定になったのでございますが、趣旨としますところは、要するに、現行法のもとでありますと、相続人がない場合には、遺産というものは国庫に帰属するのでございますが、家庭裁判所におきまして、相続人不存在の場合の遺産の管理人の選任の申し立てがあります事例について見ますと、相続人に準じて考えてしかるべきような、そういう特別縁故者であった者が間々あるのでございます。たとえば、被相続人の内縁の妻であるとか、あるいは被相続人の配偶者が連れ子をしてきておる、その配偶者ももちろん死んでおるわけでございますが、その連れ子と被相続人が親子と同様の生活を営んできた。現行法では、これは一親等の姻族でございまして、親子関係はないわけでございます。したがって相続権もないわけでございますが、妻の連れ子を、あたかもこれは実子に同じように扱っていいような場合もあり得るわけでございます。そういうような場合、あるいはむすこの嫁が生き残っておる、そうして父親とむすこの嫁が家族共同生活を営んできた、これも一親等の姻族でございまして、相続権はないのでございますが、事実関係は、あたかもむすこと同じように考えていい場合があり得るわけでございます。そういうふうに、家族共同生活を営んでおりまして、あたかも相続人に準じて考えてしかるべきような者、そういう者がある例がやはり間々ございます。そのほかに、なおそういう点をここに例示といたしまして、被相続人と生計を同じくしていた者ということで表現したのでございます。それからまた、他人ではございますが、そういう血族関係あるいは姻族の関係のない者でありましても、非常に被相続人のめんどうを見て、家族同様に長期にわたってめんどうを見てやったというようなものも考える。それからまた、こういう例も実はあり得るのでございます。ひとり者の老人が養老院で生活をして、若干の財産を残して死亡した。そういうような場合に全然相続人がない。長年お世話になった養老院に、残った若干の遺産を与えてやるという、そういうようなケースも考えられるわけでございます。いろいろのケースがございますので、これを具体的に明確にするということが非常に困難でございましたが、この案にございますように、相続人と生計を同じくしていた、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者に、家庭裁判所が相当と認めるときは、財産を与えることができるというふうにしたわけで、最終的には、これは家庭裁判所の裁量にまつわけでございますが、この例示の場合、それから、この規定の全体の趣旨からいいまして、全く家庭裁判所がいかなることでもできるということにはならぬだろうと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/72
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073・井川伊平
○井川伊平君 今のお話の範囲で伺うのですけれども、そうしますと、特別の縁故があったと思う者は、その財産の分与を請求する権利があり、かつ、その権利は家庭裁判所へ向かって請求ができるという趣旨ですか。どういうことですか。権利があるのですか。ただ、くれればもらえるというだけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/73
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074・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 請求権があるというよりも、これは、家庭裁判所に、与えてもらいたいという、そういう申し立ての権利は、これはあるわけでございます。直接その遺産に対して請求権があるということではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/74
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075・井川伊平
○井川伊平君 しかし裁判所は、そういう特別の縁故の関係があれば、これはそれにやるべきでしょう。やるべきであるとすれば、それにやるべきことをやらぬとすれば、求める権利が発生してくるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/75
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076・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) そういう特別の縁故があって、家庭裁判所が相当と認める場合には、これは与えなくちゃならぬということになるのが当然でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/76
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077・井川伊平
○井川伊平君 そうしますと、それは、裁判所にそういうことを求める権利として求められると、こう承っておいてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/77
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078・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) これは、言葉の使い方の問題でございますが、相続人が遺産に対して相続権を持っているというような強い意味の権利ではない。しかし、家庭裁判所にそういう請求をする権利がある。家庭裁判所が相当と認めましたならば、それをもらえる権利があるんだと言われますと、これは、権利があると言ってもいいかと思うのでございます。しかし相続権とは違う、事柄の性質上これは当然違うと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/78
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079・井川伊平
○井川伊平君 そうすると、縁故者が家庭裁判所に、自分はこういう縁故があるから、自分のほうへちょうだいしたい、それを許されれば問題ありませんね。それが却下されたというような場合におきましては泣き寝入りですか、何かそれを争う道がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/79
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080・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) これは家事審判の手続の問題でございますが、私どもとしましては、やはりそれは争う道を与えるべきものであろうと思います。他の例から申しますと、これは即時抗告を申し立てることができるというふうにすべきものだと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/80
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081・井川伊平
○井川伊平君 これは、即時抗告でもって争える趣旨というものが含まれているという条文ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/81
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082・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 家庭裁判所に請求できるということで、その趣旨は現われておると思うのでございます。規則のほうでは当然そうすべきものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/82
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083・井川伊平
○井川伊平君 それならば、それは一つの請求する権利だということにはっきり認めていいじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/83
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084・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 相続権というような意味での権利じゃありませんが、一つの権利だと言っていいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/84
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085・井川伊平
○井川伊平君 相続権ではないかもしれぬが、法律上に規定された者が、権利という意味合いにおいて求める権利があるのでははないか。私は、これを権利として認めるか認めないか、単なる恩恵であるという観念か権利の観念かということをはっきりしたいからお伺いしているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/85
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086・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) そういう意味におきましては、権利と言ってしかるべきものだと考えます。家庭裁判所の裁量でどうなるかわからない、そういう不確かなものではありません。権利と言ってしかるべきものだと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/86
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087・井川伊平
○井川伊平君 そういう縁故者が数名あります場合におきましては、どう扱うべきであるか、厚薄はつけるべきものであるか、一定の同じ按分で平等に分けるべきものであるなら、また平等でなくて、厚薄をつけるとすれば、それを厚薄をつけるについて何か基準があるのか、こういうことをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/87
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088・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) これも、この条文をごらんのとおり、具体的な基準は掲げてないわけでございます。したがいまして、やはり家庭裁判所の裁量によりまして、その縁故関係が深いか浅いか、厚薄によりまして、やはり適当に裁量するということに相なると思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/88
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089・井川伊平
○井川伊平君 条文によりますと、縁故者に対して、相続財産の全部、あるいは一部を与えて全部を与えない場合が区別されておりますね。これは、一部だけ与えて、一部は与えないといったような、そういうような取り扱いをする標準は何によるのですか。相続の財産には、不動産もあり現金もありましょうね。縁故者にそれを全部やるというなら、事はここで簡単だけれども、一部を与えることができるが、他の一部を与えられぬといったようなことについて、どこに基準があるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/89
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090・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) これも法律に基準を出していないのでございますが、やはり具体的な事件ごとに、全部を与えてしかるべきものなのか、あるいは一部だけでいいのかと、これも家庭裁判所の裁量になると思うのでございますが、その縁故関係の内容のいかん、それからまた、財産の額、種類、内容によってもやはり違ってくる場合がありはしないかと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/90
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091・井川伊平
○井川伊平君 そういうことを裁量に一件しておいて、全然規定のうちに掲げないということはおかしいのじゃないかと私は思うのですがね。甲の裁判官は、同じ場合であっても、全部やる場合もあるだろうし、乙の裁判官は、同じ条件であるのに、半分しかやらないような場合もあるといったようなことになってくると、どう毛統一を欠いて、おもしろくないのじゃないか。むしろそういうことをはっきりさせるとか、全部または一部というようなことをきめるなら、何かそこに、かかるときには、一部、かかるときは全部を、こういったように規定したらいいんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/91
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092・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) 仰せのようなふうにいたしますと、これは非常にはっきりして参りまして、家庭裁判所の裁量によってどうなるかわからぬという、そういう不安定は解消されるわけでございますが、また、見方によりますと、あまりにそういうふうに、がっちり動きがとれないものにいたしますと、またこの制度の妙味が失われるという考え方もやはりあるわけでございまして、その点、仰せの点は、法制審議会におきましても、いろいろ議論が出たのでございますが、他にも、たとえば離婚の場合の財産の分与なんかにつきましても、民法といたしましては、あるいは家事審判法におきましても、ぴしゃっと割り切った規定を置いてございませんし、それから、扶養関係の問題にいたしましても、それから夫婦間の婚姻の費用の負担なんかにつきましても、民法といたしましても、非常に大まかな規定を置いて、家庭裁判所の裁量にまかせている例がほかにもございますので、これはやはり家庭裁判所の良識に待つのが筋ではなかろうかということで、こういう案に落ちついた次第でございます。しかし、先ほども申し上げましたように、あまりに不当だと、だれが考えても不当だというような場合には、これは、先ほど申し上げました即時抗告の制度なんかもございますので、ある程度これは統一がはかられるのではないかというように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/92
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093・井川伊平
○井川伊平君 その点は、私もいろいろ疑問がありますけれども、お説に従っておきます。
八百十一条関係でありますが、改正しようとする法律案の末項ですね。「養親が死亡した後に養子が離縁しようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。」と規定してありますが、養親が死亡した後に養子が離縁をするということができるという制度がいいか悪いかの問題でお伺いするわけでありますが、親子の関係は、一方の、死亡によってなくなってしまっている。そういう場合に、養子に行った者が、養親の死んだあとで、財産をちょうだいして、そうして離縁をしてもらうのだ、こういうことは、何ないような気持もし、背信の観念が浮かんでくるわけでございますが、養親が死亡した後においては、その養子が相続権を拠棄して離縁してくれというならば格別だけれども、そうではなしに、財産をすっかりちょうだいしておいて、離縁をしてくれというような場合は、許すべきではないのではないかと私は思うのですが、この点に関しましての御意見を承ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/93
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094・平賀健太
○政府委員(平賀健太君) この養親死亡後の離縁につきましては、旧民法のもとでは、戸主の同意を得てということになっておったわけでございます。戸主との協議で離縁ができるということになっておりまして、新民法におきましては、以前「戸主」であったものを、こういうふうに「家庭裁判所の許可」というふうに書いた例がほかにもあるのでございます。この規定の趣旨とするところは、要するに、養親は死亡しておりますから、養親子関係は解消しているわけでございますが、その養親の血族との間の血族関係が残っているわけでございます。その血族関係を解消するというのがこの規定のねらいでございます。その養親の血族——親、兄弟あるいは養親の子供というものは血族関係が残っておりまして、それらの間がうまくいかないというような場合に、この規定を置いて、それを解消させる道を開いたということだろうと思うのでございますが、実は、この規定につきましては、井川委員仰せのような問題があるわけでございます。そっくり財産だけは相続いたしまして、家庭裁判所の許可を待て、はい、さようならで、財産をそっくり持っていくという例があるわけでございまして、この規定はおかしいのではないかという改正の要望も一部にはあるくらいなのであります。そういうわけで、この法制審議会の民法部会、さらに、民法部会の中に身分法小委員会というのを設けてありまして、この八百十一条の末項の規定ははたして妥当であろうかということを検討いたしまして、実はこの改正を検討しているところでございます。しかしながら、これは根本の改正にわたりますので、今日までにまだ結論が出ておりませんので、これは、今後の問題として検討いたしたい。さしあたって、今回は非常に解釈が分かれておって、取り扱いに不便を生じて
いるというところに限定をいたしまして改正をしました関係で、ここには触れておりませんが、仰せのとおり、この規定は、実際の運用におきましては、いろいろ不都合な場合が生じ得る可能性がございます。これは、私どもといたしましても、改正すべく検討はいたしたいと思っている次第でございます。小委員会におきましては、改正の案も一部の委員からは実は出ているくらいでございまして、当然この規定は検討の対象にすべきものだと、私どもとしては考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/94
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095・井川伊平
○井川伊平君 この次の改正のときに御研究があるというならば、私、これ以上申しませんけれども、旧民法時代、戸主が家族の住居の場所まで指定するといったような戸主権などがあるときにおきましては、これは、戸主にあらざりし養親の亡くなった場合等において、その家から去る必要があるから、そういう場合におきましては、養親がなくなりましても離縁の制度を設ける必要は、当時はあったろうと思うのでありますが、今日は、そういうような戸主権というような毛のがないわけでありますから、全く自由な立場に置かれるのだから、親の財産だけをそっくりもらって、「はい、さようなら、おとっつあんの位はいは知らないよ」というようなことではおもしろくない。もし何かほかに理由があって、そういう場合に離縁ができるとすれば、その財産権は放棄をするとか、あるいは、何かそこに他に相続人がある場合には、その後順位人に譲らなければいかぬとか何とかというものがなければおかしいと思いますから、そういうような考え方を申し上げて、御参考までに……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/95
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096・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は次会に続行することとし、本日はこの程度にとどめます。午後一時半まで休憩いたしたいと思います。
午後零時五分休憩
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午後二時十三分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/96
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097・松野孝一
○委員長(松野孝一君) これより法務委員会を再開いたします。
この際、下村最高裁判所事務総長より発言を求められておりますので、これを許可いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/97
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098・下村三郎
○最高裁判所長官代理者(下村三郎君) ただいま御発言をお許しいただきました下村でございます。
去る十五日付で、石田前事務総長の後任を命ぜられました。はなはだ不敏の者でありますし、相当長い期間、もっぱら裁判事務のほうを担当いたしておりましたために、こういう席に出
ただいま出席中の当局側は、法務省ますので、皆さんの御期待に十分沿うことができるかどうか、はなはだ危ぶまれるものでございますが、これから大いにこの方面の勉強もいたしたいと存じますので、どうぞ皆さまの御高庇によりましてその職責を果たさしていただきたいと存じます。
新しい憲法が施行になりましてから、皆さま方の絶大なる御尽力によりまして、それ相当の法律、人員、設備というようなものが逐次整備されて参りましたが、時代の移り変わりが非常に急激でありますために、事件もある部門につきましては非常に激増いたし、また非常に内容も複雑となって参りましたために、裁判制度全体につきまして、ことに裁判官の任用あるいは人員というような問題につきまして再検討を要する時期に到達しておるように考えられるのでございます。ことに裁判所は、私から申し上げるまでもなく、内閣の行政と直接つながっておりませんために、私たちの考えておりますところも、あるいは十分御理解いただけないようなこともあろうかと存じます。私たち大いに力を尽くして皆さまの御理解を得たいと思いますので、どうぞ今後ともよろしく御支援のほどをお願いいたしたいと思います。この時間をかりまして、ちょっと以上ごあいさつを申し上げました。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/98
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099・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
去る三月十五日に引き続き、質疑を続行いたします。
ただいま出席中の当局側は、法務省津田司法法制調査部長、最高裁下村事務総長、同じく桑原総務局長、同じく長井総務局第一課長であります。
まず、提出資料について簡単に御説明願います。長井第課長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/99
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100・長井澄
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 提出資料につきまして御説明申し上げます。資料の中心をなします「証人日当支給基準試案」というのがございます。これはのちほど総務局長より御説明申し上げる予定でございます。
簡単なものから申し上げますと、一枚の用紙で、「昭和三十六年度、三十五年度執行吏国庫補助金受給者一覧表」というのがございますが、これはお求めによりまして、国庫補助金を受けております者の一覧表として、家族の構成、収入の状況、普通恩給受給の有無等について一覧表にしたものでございます。昭和三十六年度におきましては九名、そのうち、一から九番までの者のうち、まるがついておりますものは三十五年度から引き続き国庫補助を受けている者でございます。三十五年度は十番から十四番までと、上の欄にありますまるしるしのあるものということになっております。なお、家庭の状況はこの表に尽せませんので、なおこまかい調査がございますから、御質問によりまして御説明申し上げることにいたします。
次に、手数料収入が年間二十四万円未満の執行吏はどれくらいあるかという御質問に応じまして作成いたしましたのが、「手数料収入が年間二十四万円未満の執行吏調」という二枚つづりの資料でございます。一番左にその執行吏のありますところの裁判所の庁名が書いてございます。次に執行史役場が単独であるか合同の役場であるかの別がございます。その次に二十四万円未満の手数料収入を有する執行吏の数、最後の欄に収入額、このように記載してございます。そして二十四万円未満の執行吏の数は、昭和三十六年度におきまして合計四十九名となっております。
次に「証人の日当に関する若干の外国法制(抄)」という資料がございます。取り急いで作成いたしましたために内容が不正確にわたる点がたくさんあると思いますが、御容赦いただきたいと思います。内容をかいつまんで申し上げます。
第一ページに、米国における証人等に対する日当としての費用補償に関する説明がございます。合衆国におきましては、原則法であるところのコモンローでは、証言能力ある市民は、召喚されれば裁判所に出頭して証言する義務がございまして、これによって補償の権利は与えられておりません。一般に証人は、他人の権利とともに自分の権利をも保護する公共社会に対する義務として、時間を税負担と同様に提供する義務があるのだというふうにコモンローでは、慣例法によって解釈されておるようでございます。また何びとの特別な役務も正当な補償がなくして要求されてはならないという憲法上の規定は、正当補償の規定でございますが、すべての市民に対して要求される通常の役務、たとえば証人として事実について証言するような役務、これにつきましては、その正当補償の条項の適用はない。したがって、費用補償の憲法上の権利というものは、コモンロー上認められていないという解釈になっておるようでございます。これが基本観念でございますが、制定法や裁判所の規則によって、証人に対する費用の補償規定を設けている立法例は幾つかございます。その内容はいろいろでございますが、主としてその家庭から離れている間の出費を支給しようという趣旨のもののようでございます。したがいまして、裁判所にいわゆる在廷証人として出廷して証言するような者に対して補償をする必要はないというような規定がなされておるようでございます。そういう例もあるようでございます。それから証人が自発的に出頭する場合に補償を行なうかどうかということは、各州によって規定が区々でございまして、統一的なものはないようでございます。日当旅費ともに支給するところもあれば、全然支給しないところもあり、またその二者のうち、いずれか一方のみ支給されるというようなところもございます。それから五ページの四に参りまして、証人の旅費、日当として支給される額につきましては、法律、規則によって定められております。証人の手数料は、裁判所に出廷するために消費された時間に対する日当と、証人の家庭から裁判地までの旅費、このようなものを内容として含んでおるようでございます。そして通常の証人手数料を超過する支給額というものは正当な請求の対象とはならず、証人はその時間に対して補償されるべきであるとか、経済的損失を免かれるべきであるという理論に基づいて、制定法に定める額以上の金額を支払う取り扱いは推称されるべきではないというような判例があるようでございます。若干の法域では証人の日当は、旅行中の時間を含めて自宅を離れてから帰宅するまでの時間に基づいて計算すべきであるというふうに定められておりますが、また、あるところでは、日当は裁判所に出頭する時間についてのみ考慮すべきであるというような定めがあるところもございます。
以上が合衆国を概観した規定でございますが、連邦及び各州につきましてその次にその金額、内容等についてございますが、長くなりますので省略させていただきます。
なお、ニューヨーク、マサチューセッツの規定の翻訳がございますが、早急でございましたために、最近の規定に基づいて御紹介申し上げることができず、非常に申しわけなく存じております。
次に、イギリスに参りまして、県裁判所——カウンティ・コーツの規則を簡単に御紹介申し上げます。証人として出廷しました場合には、ページ数が打ってございませんが、イギリスのほうの「別表C」というまん中ごろに「時間の喪失に対する補償」と題しました表がございますが、原則として第二欄に掲げてございますような金額、これは職業別に金額が規定されておりますが、このような額が支払われているということでございます。ただ、特別な事情、すなわち証人が法廷に出廷することによって給料、所得その他の収入に何ら損失を受けていない、あるいは出頭するために住居を離れ、あるいは給料、所得その他の収入に損失を受けた期間が四時間をこえないとき、このようなときには第一欄にございますように減額された金額を支払われるというふうに定められております。イギリスのカウンティ・コーツの場合は、民事手続になるわけでございますが、イギリスの刑事訴訟の手続によりますと、証言を行なうために法廷に出頭し、これによって報酬を失い、あるいは出頭しないものとした場合には必要としなかった費用の支出を証人については支払うべきである。その損失または出費に対して一日に四十シリングをこえない損失手当を支給することができるというふうに定められております。なお、それに加えまして、生計手当を一日につき十二シリング六ペンスをこえない額で支給することができるという規定がございます。なお法廷に出頭しましても支給を受け得ない場合といたしまして、警察官あるいは刑務所の官吏がその職務上の事由に基づいて出頭した場合、それから在監中の受刑者、こういう方には証人としての日当と申しますか、補償がないというふうに規定されております。
その次にはドイツの例でございますが、ドイツの証人及び鑑定人の補償に関する一九五七年の法律、西ドイツのものでございますが、その第二条に、「証人は、収益の喪失について、補償を受ける。」、このような規定がございます。「補償の額は、喪失した労働時間一時間につき、〇・五マルク以上三マルク以下とする。一時間に満たない時間は、一時間とみなして計算する。補償は、証人の通常の総収益を標準として行なう。」、このような規定がございまして、なおその金額の算出につきましては、こまかい規定とその手続、様式が詳細に定められておるようでございます。
最後に、フランスでございますが、あとから二枚目の紙をごらんいただきたいと思います。非常に簡単な規定でございますが、フランス刑事訴訟法施行令第五編に、訴訟費用の規定がございまして、「証人に対しては、その請求により、次の補償を支給する。」——出頭に対する補償、旅費、避けることのできない滞在に対する補償、このように定められております。
以上が、お手元にお届けいたしました資料に関する説明でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/100
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101・桑原正憲
○最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) それでは、お手元にお届けいたしました資料のうち、証人日当支給基準試案というものについて御説明を申し上げることにいたします。
まず、最初にこれを朗読さしていただきたいと思います。
別表——尋問所要時間二時間以内、基準額三百円以上五百円以内、備考、「例えば尋問が午前中に終了する場合」、それから二時間をこえ四時間以内の尋問所要時間については、五百円をこえ七百円以内の基準額、この場合は、たとえば尋問が午後一ぱいにわたるような場合が考えられると思います。それから尋問所要時間が四時間をこえるものについては、基準額は七百円をこえ千円以内、この例としては、「例えば尋問が終日にわたる場合」というふうに基準を定めたわけでございます。
前回ここで御答弁申し上げましたように、証人の日当について損失補償というものが標準の一つの要素になっているということは、裁判所当局といたしても認めるわけでございまして、この基準案を作ります場合にも、そういった点を十分に考慮いたしまして、この基準をきめたわけでございます。要するに、客観的にとらえ得る基準をもって一定の基準を定める、その基準にのっとって各庁でそれぞれ適宜な基準額を具体的に定めてもらいたいというふうな考え方でございまして、もしこれがきまりますれば、通達の形で各庁へ通知いたしたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/101
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102・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 以上で説明は終了いたしました。
御質疑のおありの方は順次御発言下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/102
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103・亀田得治
○亀田得治君 この基準試案によりますと、別表を作られておるわけですが、各庁においてはこの基準試案をもとにしてまた各庁ごとの案を作る、こういうふうになりますと、具体的には、結論として言えることは、各庁において違った基準額というものが考えられるわけですね。予想できるわけですな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/103
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104・桑原正憲
○最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) その点につきましては、われわれといたしましては、その地方々々の実情等もございますので、そういった点を十分勘案してきめてみたいということでございますし、結果によっては、今御質問のような事情が出てくることも考えられるわけでありますけれども、われわれといたしましては、全国的なものがあまりに同じ状況の地方によって違ってくるというようなことのないように、十分な指導と申しますか、調整を加えていきたいというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/104
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105・亀田得治
○亀田得治君 この基準の一番基礎になっているのが、尋問に要した時間、この点ですが、これはまあ非常にはっきりした客観的な基準です。ところが、そのほかの出頭所要時間、裁判所における待ち合わせ時間、これも客観的に割合はっきりしていることですわね。そのあとの当該地方の実情というのは、これはきわめてあいまいですが、そういう客観的にちゃんと確定できるようなことが三つ書いてあるのであれば、その三つともにつきまして、別表で書いてあるような基準を出そうと思えば出せるわけです。これは地方の裁判所によって違うという性格のものではなかろうと思うのですね。一番最終のところは、これは違うでしょう。だから、せっかくこういうふうにして基準をきめるのであれば、三つの要素とも客観的に明確な要素についてきちんとしたものを出したほうが一定してくるわけですね。そうして、若干のゆとりを、当該地方の実情というふうなことで多少の幅をそこへ残して、プラス・マイナスできるようにしておくということにしませんと 結局は、ここに合計すれば四つ基準が出ておるわけですが、四つの基準の中の一つしかきめていないわけですね。で、証人などのような場合に、裁判所によって非常に結果が違ってくるというのは、はなはだ与える印象が悪いのじゃないかという感じもするわけですが、その点はどういうふうに……、いろいろ御相談があったのでしょうが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/105
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106・桑原正憲
○最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) ただいま御指摘のとおりに、尋問所要時間のほか、出頭所要時間、裁判所における待ち合わせ時間等は、これは客観的に把握し得るものでございますし、その点を第一の基準と申しますか、尋問所要時間と並列して基準にして基準額を定めるという考え方も確かに成り立ち得ると思うのでございます。そういった点につきましては、きょうの御審議の結果によりまして、まだまだ私たちはこれを練り直したいというふうに考えておるわけでございますが、ただ、裁判所における待ち合わせ時間とか出頭所要時間というようなことは、かなりその地方その地方で実情がございますので、そういった点については現地のほうへまかしたほうがいいのではないかというような考え方でこの案ができておるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、あまりに地方々々によって著しい差異を生じないような指導と申しますか、そういった点については十分検討して参りたいというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/106
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107・亀田得治
○亀田得治君 まあこういうふうにして通達をお出しになれば、でき上がってくる各庁の案は、おそらく違ったものになるはずです。それは、集計でもされて、検討でもされるお考えなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/107
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108・桑原正憲
○最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) これは、ただいま私のところの局で論議しているのでございますけれども、そういった点については、報告と申しますか、そういったものを徴して、全体的な立場、全国的な立場から検討を加えたいというふうに私の局では考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/108
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109・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、この試案では、どういうふうに実行されるのか、ちょっとわれわれとしては今のところまだ了解しにくい、そういうふうに理解しなければしょうがないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/109
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110・桑原正憲
○最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 具体的なものがどういうふうになりますか、この通達だけではわからないわけでございまして、各庁々々のいろいろな情勢から具体的な支給基準というものは定められてくると思うのでございます。ただ、証人の日当につきましては、その支給額を定めるのは、法律上当該の裁判所が定めるということになっておりますので、あまりこまかな基準をきめて、そういった当該裁判所の認定権と申しますか、そういったものを拘束することはいかがかというふうに考えて、こういった案を考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/110
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111・亀田得治
○亀田得治君 まあ当該裁判所がきめることでしょうが、あまりばらばらにならぬようにしませんと、非常にやはりおかしいと思うのです、こういうことは。それで、この基本的な考えは、この前、この損失補償ということが一つの問題、それからもう一つは、損失補償という考えじゃなしに、国民としての証人となる義務、こういったようなことが言われ、ただいまも外国の例などについても非常に尊い資料も御説明いただいたわけですが、これはどういう立場に立っておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/111
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112・桑原正憲
○最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 前回も御答弁申し上げましたが、現在の訴訟費用等臨時措置法のもとにおきます証人の日当の本質論につきましては、いろいろ考え方がございます次第でございますが、裁判所といたしましては、損失補償一本ということで割り切るのにちゅうちょを感じておる次第でございます。したがって、ただいま御指摘がございましたような国民としての義務履行に対する報償的な考え方も織り込んでこの基準を考えておるわけでございますが、ただ、損失補償としての性格といいますか、本質、そういったものも十分にこの中に盛り込んで考えておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/112
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113・亀田得治
○亀田得治君 まあこれは非常にむずかしい問題かもしれませんが、国民としての義務を果たすといいましても、証言そのものについての義務ということと、義務を果たすために受ける損失というものとは、やっぱり別な問題ですからね。損失補償という立場をとるからといって、決して義務を否定している観念じゃ私はないと思うんです。義務を果たすについての損失ができる、だからお金を出すということは、そこの本質に重点を置いてやるべきじゃないかという考えだと思うんですね、損失補償というものは。両立せぬ、まあ非常に相反するようなものではないのだろうと思うんです。したがいまして、具体的なこういう基準の立て方になりますと、どういう立場で準基を立てたかということは、説明もはなはだしにくい点もできるかもしれぬと思うんですが、実際に合わないようなことがともかくあっちゃいかぬということですね。それで、法務省の津田さんからの御説明は、やはり損失補償という立場を非常に強調されていたようでありまして、そこの関係ですね。たとえば、この前もちょっと具体的な例として出たわけですが、失対に出ておる労務者ですね、これは今一日休むと四百二十五円ですか。この人が裁判所へ出るために、結局一日棒に振る。この表でいきますと、午前中で終了する二時間以内のものは三百円以上五百円以内と、こういうふうに非常に少なくなっているわけですが、しかし、失対なんかに出る人が簡単な証言に立つとして毛、結局一日は棒に振ってしまうわけです。この前のお話ですと、損失補償という観念からいくと、それにプラス三百円で七百二十五円ぐらいと、こういうふうなお話がちょっと津田さんからあったわけですね。そういう立場から見ると、非常に損害を国が積極的にかけるようなことになるわけですが、そういうことではいかないと思うんですが、どうなんでしょうかな、失対なんかに出ている人の場合。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/113
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114・桑原正憲
○最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) ただいまお示しになりました例示の場合は、そういったことになるかと思いますけれども、何分国家予算の関係もございまして、損失を全額、全面的に補償するということもなかなか参りかねる状況でございます。
それから、損失補償一本に徹した場合にどういう不都合が起こるかというふうな点でごさいますが、考えられますことは、たとえば、前回にもちょっと例示として出ましたけれども、公務員が一日証人として出廷した、その出廷したことによって俸給を別に差し引かれることではないということになりますと、いわゆる出頭雑費だけに限られて、いわゆる損失補償——得べかりし利益を失ったという面においての損失補償ということは、必要ないのではないか。あるいはまた、会社の社員等が証人に出た場合も特にそのことによって給料を差し引かれることがないというような場合もいろいろ考えられますが、そういった場合に、いわゆる出頭雑費だけで、あとは別に補償をみないというようなことも、実際問題として非常に不合理な点が出てくるのではないかというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/114
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115・亀田得治
○亀田得治君 しかし、そのほうが合理的なんじゃないですか。失対労務者などは、みすみすもらえる賃金、しかもその人にとっては、これはもう最低の生活ですね、それがもらえないんですから、それに対してはきちっと全額みてやる。ところが、会社員なり公務員の場合には、これは月給をもらっているわけですから、それは私は国としてみてやる必要がないのだろうと思いますがね。損失補償というものをそういうふうにやっていくことのほうが、かえって一方では証人義務とも両立する考えになるのじゃないですか。証人義務があるから、一方で損失を受けていないのだから、みる必要がない、こういうふうにもなるのじゃないですか。だから、実際に損失のある人にだけみることのほうが、一方では証人義務を強調する。そのことをみんなが前提にして考えるというものの考え方に連なるわけじゃないですか。どうもややこしいが、津田さんどうですか。私はだから一方で証人義務があるんなら・もう月給なんかもらってる人ほんとにいいと思いますしね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/115
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116・津田実
○政府委員(津田実君) ただいまのお説のとおり、証人に義務の履行を求めるわけですが、その義務を履行したことに対して報償を与えるという観念は私はとるべきではないと思うのです。また、立法例からいいましても、必らずしも報償を与えるということははっきりしているとは思えない。しかしながら、損失があればできるだけ補償をしてやるということは、その方向にいくべきであって、完全補償が一番いいわけですけれども、これは所得の高い人について完全補償をするということにまで持っていくべきかどうか、これは議論の余地がありますしね。あるいは、それまで必要はないということは、いわゆる義務制からいってもある程度言い得るんではないかと思いますけれども、少なくとも最低所得層あるいはそれに近い人につきましては、いわばそれは生活を奪うことになるのでありまするから、やはりそれに、その人の損失というものは完全に補償するという考え方でいかなければならないというふうに考えるわけです。で、今回従来三百円であったのが、あまりに低過ぎるのが千円に上がったということは三倍以上に上がったことになるのでありまして、その上がった趣旨を考えますれば、やはりそういう面を考えてということでありまして、少なくとも、今日失対事業の就労者につきましては、やはり完全に補償をしなければその人の生活は困るんじゃないかということが考えられるので、そういう面を十分カバーして、なおかつもう少し上の状態の人でもある程度カバーできるという意味で千円まで最高類を考える。これに反しまして、特別に損失のない人は出頭雑費のみで差しつかえないということは当然言えるんでありまして、公務員が他の官庁その他に出張したのと少しも変わらないわけですから、それ以上の報償を与えるという必要は全然ないと思います。したがいまして、それらをかれこれ相入れますると、ちょうどある程度の予算単価でまかない得るんじゃないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/116
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117・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、だいぶ法務省と裁判所の考え方が違うわけですがね。私も裁判所のこの基準でいけばこれは計算はしやすくて楽ですけどね、統一なんかとるのにも。しかし、少ない予算をばらまくのに、公務員で月給もらってるそういう人が裁判所へ行って一旦証言したから七百円ないし一千円を二重にもらう、こんなことは私は必要がないと思うんですね。そんなところへ回すよりも、実際に失対労務者なり、あるいは実際に商売やっていて一日休むために相当の影響がある。この商売なんかの場合にも算定はなかなかむずかしいと思いますが、やはりそういう面での補償だけはできるだけしてやる。そういうふうに予算を使うということのほうが筋が通るように思うのですがね。各裁判所なり裁判官の認定において少し頭を使う点ができると思いますが、やっぱり方向としてはそのほうがよさそうに思いますがね。もう収入なんか多くてどっちでもいいというような人にまで与えるということは、結局裁判所に出て証言をするという義務というものを考えますと、私はよけいなことだと思うのです。多少ほんのしるしとして、義務を果たしてくれたというそのお礼のような気持だ。それはほんのしるしだ。ほんの百円とか二百円とかつけるというならば、これは意味があるかもしれぬけれども、根本はどうも法務省のような考え方でやられるほうが証人義務を強調する上からもいいように思うのですが、それはだめですか、裁判所のほうは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/117
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118・桑原正憲
○最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 裁判所といたしましても、証人の日当の本質というものが証言に対する報償ということは全然考えなくてもよろしい、損失補償一本でいいというふうな意見が固まりますれば、それにのっとって法律が制定され、そういうように運用することについては別にやぶさかではないわけでございますけれども、たびたび申し上げておりますように、現在の段階においては、必ずしも損失補償というものだけしかないのだというふうに言い切れない面があるように私たちは考える次第でございます。要は、非常に非常識な支給の仕方がないようにしなければならないということは仰せのとおりでございまして、ただいま御例示になりましたような場合につきましても、十分考慮に入れて、なおこの通達案を練り直してみたいというふうに考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/118
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119・井川伊平
○井川伊平君 ちょっと裁判所側にお伺いしますが、ただいまのお話の中に仕事の難易という点についてのお考えが含まれるかどうか。たとえば、会社に勤め、役所に勤めて手なれた仕事をやっておるときの苦労と、それからなれない裁判所に呼び出されて証言台に立たされ、宣誓をして証言をするその人の苦労というものは、会社や役所でやっている仕事よりも非常な苦労、玉の汗を流しておる場合もしばしばあることであろうと存じますが、そういうような場合も含めまして、単に損失補償だけではならぬと思うという、内にはそういうことが含まれているのですか、いかがですか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/119
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120・桑原正憲
○最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) ただいまお話しのありましたような点が証人の日当支給基準額を定めるについて全然無視していい要素だというふうには私たちは考えないわけでございますが、ただそういった要素をいかにして裁判所が的確に把握するかという問題については、いろいろ議論があろうかと思うのであります。それでここに掲げました基準案の中には、一応形式的には入っておりませんけれども、そういった点についてもし的確に知り得る状況があれば、各庁においてそういった点をしんしゃくするということについて別に禁止しているというふうには考えていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/120
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121・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 私から申し上げますが、ただいま植木法務大臣が出席されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/121
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122・亀田得治
○亀田得治君 この問題は裁判所側の意見もまだ必ずしも熟していないような印象を受けたわけですが、この委員会で出ましたいろいろな問題点などをやはりよく整理してもらってよく検討してほしいと思いますね。ともかく損失補償方式でいくか、あるいは証人義務という立場を強調していくかと、こういう抽象的な問題よりも、やはり実際に合うようにしてもらわないといかぬですね。費用の二重取りなんということはおかしいことだし、一方では明からに得べかりしものをそのために得られないという現象、こういうものに同じように与えるというのはおかしいですわね。しかし、義務の履行に対する若干のお礼というようなことも私は意味があると思う。そのために義務履行を進めるという意味でもないんですけれどもね。しかし、それも何でしょう、非常に義務ということに重きを置いて出てくる証人にしてみたら、少ない費用であればかえってありがたく受け取るかもしれぬですね。何かこうこれによって相殺されるのだというような感じでは、かえって変な感じを与えるかもしれない。非常に微妙なものがありますから、よく検討して、きまった上でまた適当な機会に報告していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/122
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123・桑原正憲
○最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) ただいま亀田委員からお話しのございました点を十分にしんしゃく検討いたしまして、いい案を作っていきたいというふうに考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/123
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124・亀田得治
○亀田得治君 この前もう一つ残っておりました旅費ですね、宿泊料ですね、証人の。この予算の作成の仕方はどういうふうになっておりますか。この最高額が予算単価になっているようなことでしたが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/124
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125・桑原正憲
○最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 前回、その点をよく調査いたしてお答えいたしますということで答弁を保留いたしたわけでございますが、調査してみました結果、予算では法律に規定されておる最高額で予算が組まれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/125
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126・亀田得治
○亀田得治君 そうすると、この宿泊料というものは、実際に宿泊費がどれだけかかったかかからぬか、あるいは出てきた人の身分なり地位なり、そういうことも一切おかまいなしに出しているわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/126
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127・桑原正憲
○最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 従来の支給の実績は、最高類を定額として支給しておるわけでございます。何分この額が公務員の最低額でございますので、それほど段階を設けて支給するということもいかがかというふうに考えるわけでございます。上へ持っていく、下へ持っていくというような区別をつけるにしては、あまりにも金額がそう多くないというふうに考えるわけでございまして、そういった点から最高額の定額支給ということが行なわれて参ったのだと思うのでございます。そういった見地から最高額を支給していきたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/127
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128・亀田得治
○亀田得治君 この資料として受け取りましたドイツにおける証人の報酬支払いに関する支出命令書ですね、これを見ますと、証人が実際に出頭するのにどれだけ時間がかかったとか、あるいは旅費は幾らだとか、宿泊費は幾らだとか、きちんと書き込んで、それを支払う、こういったようなことになっているようですが、こういう考え方なりやり方というものは何か検討されておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/128
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129・桑原正憲
○最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) ドイツの立法は、先ほども申し上げましたようなことになっておりまして、その支給の基準を的確につかむためには、こういった表を作らざるを得ないというように考えられるわけでございます。ただ、現在の段階におきまして、こういった表を作るということになりますと、これがやはり職員の事務量の増加ということになってはね返ってくるわけでございますので、現在の状況、定員法の改正でもいろいろ御質疑を受け、御答弁申し上げましたように、裁判所の職員のことに執務の状況からいきまして、にわかにこういったような事務がふえてくるということにつきましては、裁判所としては非常に危惧の念を感ずる次第でございます。将来、証人の日当の本質論というものが確定してそれが立法化されるという場合におきましては、あわせてこういったものを考えていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/129
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130・亀田得治
○亀田得治君 それから執行吏の関係のことについて、若干残っていた点についてお尋ねしておきます。
最初に、執行吏というものの制度ですね。現在ですと、判決の執行につきまして、有利な判決をとった者が執行吏のところへ頼みに行く。その依頼を受けて動く。頼んだ人からお金をもらう。こういう制度になっているわけですね。こういう制度はやはり基本的に維持されていくのか。あるいは判決の執行というものはそういうことじゃなしに、役所でちゃんとこれを執行してくれというふうに持っていけば、どんどん役所自体の一つの仕事として執行事務を進めていく。現在は両方がまじったような格好です。まあ民事という関係があるから、当事者ということも無視もできないという点もわかりますが、何か依頼者に使われておるような性格が強いわけですね。そういう点をそのままにしていくのか。もう少し、そうじゃなしに、執行関係の費用がなくても、ともかく国がちゃんと出した判決だから、これは国がきちっと執行してくれるんだといったようなことになるのか。そこら辺のことは問題になっているのかどうか、お答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/130
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131・津田実
○政府委員(津田実君) ただいまの執行吏制度の問題につきましては、これは非常に議論の多い問題であることは御承知のとおりでございます。法務省におきましても、法制審議会におきまして多年この問題を検討いたしておりまして、いろいろな案と申しますか、いろいろな素案のようなものもできておるわけでございますが、その考え方の中には、現行のような制度もあります。考え方もあり得ると思います。これは外国にもこういう制度はございますわけですが、あるいは考え方を変えまして、全面的に国家公務員、完全な国家公務員、いわゆる執行官制度にするという考え方もあります。ただいま傾向としてはむしろ執行官制度にすべきであるというふうな意見のほうがかなり有力になっておるのが現状でございますが、何さまこの執行官制度にいたしますと、今度は民事訴訟法その他の手続法との関係において、かなりその手続面の改正を要する問題を含んでくるわけでございます。そういう点におきまして、非常にいろいろ困難かつ複雑な問題を含んでおりますので、目下のところは、法制審議会において鋭意その最終案を決定すべく努力をしておる、こういう段階でございます。私どもといたしましては、できるだけ早い機会にこの問題を、どういう結論になりますかは別といたしまして、すっきりした形の改正にいたしたいというふうに考えて努力しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/131
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132・亀田得治
○亀田得治君 資料として、昭和三十六年度、三十五年度に国庫補助を受けた人十四名の資料を出してもらいましたが、これを拝見しますと、たとえば七番目、十番目というようなところの人を見ますと、年令七十七才ですわね。十番目は昨年なくなられましたが、昨年のなにでいくと七十四才ですか、そんなことで、きちんとした裁判の執行なんて私はとてもできないと思うのです。それから収入面を見ましても、こういうふうに非常に低い。第一番の大村さんの場合を見ましても六十才ですね。最低保証給が普通の仕事としては得られない。そして国の補助を受けているわけですが、奥さんに娘が二人、これはそんなことじゃとてもやっていけないわけですから、必ず依頼者から何がしかのやっぱり裏の補助を受けるというような格好になる。そういうことでは、この執行面で、やはりどうしても執行を受けるほうに対してはつらく当たる、必要以上に。執行というのは、どっちにしても受けるほうはつらいことなんだから、必要以上にやはり行き過ぎがあったりするということが派生的に起こるわけですね。
それから、ちょっともう一つ、もしわかったらお伺いしたいのですが、執行吏の一番収入の多い層ですね、これは年間どのくらい得ているわけですか。実際上の収入と、表に出ている収入と相当違うように私も思っているわけですけれども、これは期間でも相当開きがあるわけなんですよ。ともかく同じ判決の執行で、一方は最低の収入が得られるか得られないか青息吐息でそうして七十何才までやっている。一方では、東京や大阪などでは、ずいぶんいろいろなところで収入があると、こういうことでは、もうはなはだ体をなしていないと思うのですよ、国家の制度として。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/132
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133・桑原正憲
○最高裁判所長官代理者(桑原正憲君) 執行吏の収入につきましては、手数料以外にもございますので、料の関係ではある程度裁判所として把握できるわけでございますけれども、そういったもの以外で最高額が一体どの程度実収入があるのかということは、なかなか実態がつかみにくい状況なのであります。そういった点で必ずしも最高額が幾らかということをここで申し上げるような資料を持ち合わせていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/133
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134・亀田得治
○亀田得治君 これは官公吏であればそれは上と下と幾ら違うといったってちゃんと限度があるのがあたりまえ。ですから、これはぜひ、先ほど津田さんから、そういう基本的な点についての検討をおやりになっているということですが、やはりこれは前から非常に裁判事務の最末端の処理の問題として、ほかの部面とちょっとつり合いがとれなさ過ぎるわけですね、現状は。だから、そういう点でやはり結論を急いできちっとやっぱり整備してほしいと思うのですね、一日も早く。
まあその程度にしまして、質問を一応終了します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/134
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135・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 他に御質疑はございませんか。——なければ、本案に対する質疑はこの程度にしたいと思いますが、御異議ございませんか。
「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/135
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136・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
速記を止めて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/136
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137・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 速記をつけて。
これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/137
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138・亀田得治
○亀田得治君 本案に賛成いたしますが、二つの点だけ希望を申し上げておきます。
一つは、証人に対する日当の支給の仕方につきまして、本委員会においてもいろいろ質疑をしたわけですが、必ずしも具体的に明白ではないと考えます。本委員会でいろいろ各委員から指摘されたような点等を十分考えて、最高裁において実際の実情に合うように支給基準というものを作ってもらうことを要請いたします。
もう一点は、執行吏制度の根本的な検討を早く終了して、そうして新しい制度というものを確立してほしいと思います。これは執行吏に関するいろいろな問題が出るたびに絶えず問題になることでして、ともかく現状のままではいけない。やはり司法制度に対する信用の問題にも関係すると思うのでありまして、そういう点の整備方の要望を強く申し上げまして、本案に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/138
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139・井川伊平
○井川伊平君 自民党を代表いたしまして、本案に賛成の意を表します。なお、亀田氏より執行吏制度の問題について御意見がありましたが、これは相当尊敬すべき御主張とは存じますけれども、司法上の権利は権利者におきまして自由の処分ができるということの建前を忘れてはならぬということを申し上げたい。言いかえれば、裁判の判決にならぬ前におきまして、訴訟の取り下げも放棄もできる。裁判の確定後においてもこれができなくてはならない。ゆえに執行吏に執行を委任した後におきましても、執行を中止してもらうとか、期日を延期してもらうとか、執行の行使について自由な権利が執行吏のほうになくてはならない。お役所の仕事にしてしまったから、お役所の権限でやるのだというように押し切られてしまうことは、国民の権利の侵害になるのではないかというような考え方もありますので、それこれ十分ごしんしゃくを賜わりまして、新しい制度が生まれるようにお願いを申し上げまして、賛成の意を表します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/139
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140・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 他に御意見もないようでありますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/140
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141・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 御異議ないと認めます。
これより採決に入ります。
訴訟費用等臨時搭魔法等の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/141
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142・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成等につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと思いますが、御意議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/142
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143・松野孝一
○委員長(松野孝一君) 御異議ないと認めます。さよう決定いたしました。
次回は三月二十二日午前十時より開会することにいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時二十四分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015206X01319620320/143
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