1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十七年四月二日(月曜日)
午後五時二十五分開議
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議事日程 第十五号
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昭和三十七年四月二日
午後二時 本会議
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第一 国税通則法案(内閣提出、
衆議院送付)
第二 国税通則法の施行等に伴う
関係法令の整備等に関する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、請暇の件
一、日程第一 国税通則法案
一、日程第二 国税通則法の施行等
に伴う関係法令の整備等に関する
法律案
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015254X01619620402/0
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001・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015254X01619620402/1
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002・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
この際、お諮りいたします。野村吉三郎君から、病気のため、会期中請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015254X01619620402/2
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003・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015254X01619620402/3
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004・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 日程第一、国税通則法案、
日程第二、国税通則法の施行等に伴う関係法令の整備等に関する法律案、
(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015254X01619620402/4
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005・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長棚橋小虎君。
〔棚橋小虎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015254X01619620402/5
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006・棚橋小虎
○棚橋小虎君 ただいま議題となりました二法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、国税通則法案について申し上げます。
現行の税法体系は複雑難解であり、納税者の税法に対する理解を容易にするという観点より、政府は税制調査会に諮問して、その検討を求めてきたところ、昨年七月、答申を得たのであります。
この答申された事項のうち、学会、中小企業等より異論の多かった実質課税の原則、質問検査権等の項目については、なお今後の検討にゆだねることとし、これを除いて提案されたものであります。
本案は、以上の趣旨より、今次税制改正の一環として、国税について現行税法の体系的な整備をはかるための基礎とし、各税法を通ずる基本的な法律関係及び共通的な事項を統一的に定め、納税者の理解を容易にするとともに、納税者の利益に着目しつつ、各種加算税制度、争訟制度の改善合理化をはかろうとするものであります。
そのおもなる内容は次のとおりであります。
第一に、総則的なものとしては、本法律案は九章九十六条より成り、その目的としては、税務行政の公正な運営をはかり、国民の納税義務の適正かつ円滑な履行に資するものとしております。他の国税の法律との関係については、本法案は通則法であるので、他の国税の法律に規定があるときはそれによることとし、その他、人格のない社団等に対する本法の適用については、法人とみなす規定等が定められております。
第二は、租税債権の成立、申告等の法律関係の明確化であります。現行では、納税義務の成立の時期や、納付すべき税額の手続並びに申告納税方式及び賦課課税方式の意義がいずれも明らかでないので、各税法を通ずる基本的な法律関係及び共通的な事項を統一的に整備したものであります。
第三は、納税者の利益を中心とする納税面の具体的な改善合理化であります。すなわち、利子税を延滞税に改めるとともに、日歩三銭を二銭に引き下げ、無申告加算税を現行の一〇%ないし二五%の四段階より、一率一〇%に改める等、附帯税の軽減をいたしております。
また、納税者の不服申立制度につき、行政不服審査法の制定にあわせて改善統一的に規定し、その他、賦課権の期間制限、申告手続等について、現行の不明確な点を明定しております。
なお、衆議院において、人格のない社団等に関する規定について、現行の課税関係に変化を加えるがごとき規定の仕方をすることを回避し、実質的に現行法を維持することとするため、所要の修正が加えられたものであります。
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次に、国税通則法の施行等に伴う関係法令の整備等に関する法律案について申し上げます。
本案は、国税通則法の制定等に伴い、所得税法その他の関係法令の整備を行なおうとするものであります。
なお、衆議院において、人格のない社団等の両罰規定等を削除する修正が行なわれております。
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委員会におきましては、両案一括して審議を行ない、利害関係者、学識経験者等の間に反対意見が強く、議論の尽くされていないものを何ゆえ急いで制定するのか。本法の制定は納税者の理解を容易にするためというが、真の目的は徴税強化にあるのではないか。答申のうち本案に盛られなかった項目を今後どうするのか。基本法であるならば納税者の権利を保護する規定が必要ではないか。税務訴訟における証拠申し立ての順序等、権力行政的な規定があるのではないか。衆議院の修正により、人格のない社団等に対する適用関係はどうなるか。延滞税、加算税等は納税者にどのように有利になったか。通達行政を改めない限り納税者には救済とならないのではないか。本案のごとき重要法案については、公聴会を開くべきではないか。本案の成立がおくれた現在、施行期日について政府は修正の必要がないとしているが、いかなる理由によるのか。その他、人格のない社団等に対する課税関係の実情等について、慎重審議が行なわれましたが、高橋委員より、質疑打ち切りの動議が提出され、多数をもって可決されました。その間の質疑の詳細につきましては、会議録によって御承知願います。
質疑を終了し、討論に入りましたところ、木村委員より、「第一に、本案は各税法の共通事項をまとめ、納税者の利益をはかるものであるというが、それは表面上の理由で、納税者の保護の規定もなく、真の目的はナチスの税法を参考にした徴税強化法である。第二に、本案の制定の前に、税負担の軽減、特に資産所得との負担の公平をはかる減税をはかるべきであり、本末転倒である。第三に、利害関係者、学識経験者の意見を十分徴すべきであって、本案は時期尚早である。第四に、審議が不十分であり、公聴会も開かれていない。第五に、昭和三十七年四月一日となっている施行期日を修正しないのは違法であり、以上の五点から両案に反対する」との意見が述べられ、次いで、永末委員より、「質疑打ち切りにより審議が尽くされず遺憾である。通則法である限り、租税徴収体系の是正を望んでいたが、国民の利益を担保した規定がなく、また名前、目的に反し、徴収手続法にすぎないものである。すなわち、五項目の将来制定されるおそれがある。推計課税の残滓が残っている。質問検査権を、各税法でなく、この法律で明らかにすべきである。等がその具体的反対内容である。以上の理由により両案に反対する」との意見が述べられ、次いで、須藤委員より、「政府は納税者の利益に資する法律であるというが、まっかなウソである。納税者の利益に資するのが真の目的であるならば、質疑打ち切りというようなことはせず、審議を十分にすべきである。申告納税方式は形式的にはアメリカに模倣したものであるが、その精神はナチスの租税徴収法からとったもので、全くえせ民主主義的な税務行政を強化するものである等の理由から、両案に反対する」との意見が述べられました。
かくて、討論を終了し、両案一括して採決の結果、それぞれ多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015254X01619620402/6
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007・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 両案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。木村禧八郎君。
〔木村禧八郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015254X01619620402/7
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008・木村禧八郎
○木村禧八郎君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました国税通則法案並びに国税通則法の施行等に伴う関係法令の整備等に関する法律案に対して反対するものであります。
反対理由の第一は、先ほど大蔵委員長からも説明がございましたように、政府の提案理由は、税法が複雑であるからこれを統一する。各税法に共通な部分を統一するのだ。あるいはまた、非常に税法が難解であるから、わかりやすくするのである。また、税制調査会の答申によって制定したのであるから、各方面の学識経験者の意見も徴してある。特に、税制調査会の答申の中で、いわゆる五項目と申しますか、国民の権利義務を侵害するような重大な答申があるわけですが、そういうものは除いてある。ですから、大した法律でない。現行の徴税規定を整理統一したものであるから大したことはないのだ。こういう政府提案理由の説明がございましたが、しかし、それは表面の理由でありまして、この国税通則法の真のねらい、また通則法の本質というものは、結局これは、税金をとる側の権力者の立場に立って、いかに国民から税金をとりやすくするか、そういう立場に立って規定されたものでありまして、これは、この憲法三十四条あるいは八十四条に規定されておりますいわゆる租税法律主義の精神に反すると、私は思うのであります。租税法律主義は、税金をとる側の立場に立っての法律であると同時に、納税者の立場に立って、権力者が税金をとる場合の限界について、これはやはり定めているものであります。ただ法律によれば税金が幾らでもとれるというのじゃなくて、納税者の立場を保護するために、その限界をやはり規定するのが租税法律主義でありまして、これはもう、いうまでもなくフランス革命の人権宣言——代表なくして課税なし、この精神から出ているわけであります。ところが政府は、納税者の救済もこれは拡大してあるのだと、こう言っております。大した法律じゃないと言っておりますが、税制調査会の答申は、先ほど委員長からも御説明でございましたが、実質課税の原則に関する規定とか、あるいは租税回避行為の禁止に関する規定、あるいは黙秘権の否認に関する規定、一般的な記帳義務に関する規定と質問検査に関する統合的規定、あるいは特定職業人の秘密義務と質問検査権の関係の規定、資料提出義務違反についての過怠税の規定とか、あるいは無申告脱税犯に関する改正規定、こういうものを含んでいる。特に、この中で、特定職業人の秘密を守る守秘義務と質問検査権の関係規定などは、これは重大な問題を含んでおります。これは、たとえば弁護士とかあるいは税理士等の黙秘権を否認するものであります。憲法で保障されている——自己に不利益なる供述は強要されないということになっているのに、国税に関しては、それを拒否することができない、こういう内容の答申がなされているわけです。これなどは、税をとる立場に立って、そうして憲法で保障されている国民の権利の侵害をしているわけなんです。徴税権を強化するという考え方です。憲法に規定された人権、それを税法に限っては優位に立つという考え方なのであります。これはナチスの租税適用法の精神がそうなんであります。こういう精神に基づいて答申がなされているのです。ですから、答申を一貫して流れる精神は、権力規定の強化、徴税の強化ということがねらいになっているのです。ですから、かりに五項目が削られたといいましても、その精神は変らないのであります。この国税通則法に流れる精神は、税金をとる側に立って、いかにして国民から税金をとるかという立場に立っての規定でございますから、そういう意味で答申の精神を尊重しているのであります。そこが問題なのであります。ですから、この提案理由の表面的な説明だけで、この税法が大したことはないというのは、間違いであります。国民は、税金が非常に高いから、なるべく税負担が軽くなるように、合法的な範囲、あるいは、ときによっては合法的でない場合もあるかもしれませんが、なるべく課税を免れようとして努力しているのが実態であります。それは税金が重いからなんです。そういう国民の税金負担を免れるという努力、また最近では、国民の民主的な自覚が高まって、税法等について国民の権利を守る意識が非常に高くなってきております。ですから、徴税強化に対する抵抗が非常に出てきています。そういう実態でありますので、国税通則法を制定して、そうして徴税を強化しよう、こういう立場に立っていると思うのであります。ですから問題は、国税通則法を作って徴税を強化する、あるいは権力規定を強化するということは、国民の側において非常な重い税金を免れようとして努力している、それを押えようということにあるのでありますから、税金をもっと思い切ってここで安くすれば、減税をすれば、国民はそんなに税金を免れようとして努力しないと思うのです。いわゆる取られる税金というよりも納める税金になると思うのです。ですから私は、国税通則法の制定は本末を転倒していると思うのです。この通則法を出す前に、もっと政府は、税制調査会の答申にあるように、今の日本の税金は諸外国に比べても戦前に比べても非常に重いのであるから、まず何よりももっと思い切った減税をすべきである。税制調査会が答申したように、ここ当分の間は国民所得二〇%程度に税負担をとどめて、そうして、それ以上の自然増収は、思い切ってこれは減税に充てるべきである。それからもう一つは、たくさんの資産所得、働かないで得る所得が課税の範囲の外にのがれている。株式の譲渡所得あるいは土地値上がりによる売買所得、あるいは租税特別措置法による減免税、本年度は千六百九十億でありますが、働かないで得る資産所得がたくさん課税の外に置かれている。ですから、全体から見ると、税金は非常に不公平です。この租税負担の不公平を緊急にここで直すべきです。そういうことが急務であって、そういうことの努力をしないで、この国税通則法を制定して、それで国民から税金を取る。この第一条では、「納税義務の適正」とか「円滑」とか、あるいは「税務行政の公正な運営」という言葉を使っておりますが、そういう名目のもとに徴税を強化しようとしているわけです。明らかにこれは徴税強化の性格を持っているものでありますし、そういう根本的な精神に基づいて立案されたものでありますから、納税者の立場に立って、これはどうしても容認しがたいのであります。これが反対の第一の理由であります。
それから第二の理由は、百歩譲って国税通則法の制定が必要であるとしても、時期尚早であります。税法学会は、国税通則法制定に関する意見書を発表したのでございまして、この中で、この通則法は、「僅か一年半の間に、しかも外国のこれに関する学説、判例を全く研究することなく、単にドイツ法の条文を参考にして答申が作成され、これに基づき立案されようとしている。」と、こういうふうに述べております。そうして「民主主義国家として先輩国であるスイス連邦においては、一九四七年六月二三日に連邦税基本法ブルーメンシュタイン草案が作成されたが、十四年を経た今日に至るも未だ審議中で、立法化されていない」、こういうふうに、税法に関する基本法は、非常に慎重審議、そして、あらゆる判例、また、国民の権利義務に関することでありますから、各方面の利害関係者の意見を聞いて、慎重審議すべきであって、これは二年、三年を要しても、これは決して十分とは言えないくらいなのでありまして、そのぐらい慎重にこれは考えるべきであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015254X01619620402/8
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009・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 時間が超過いたしましたから、結論を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015254X01619620402/9
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010・木村禧八郎
○木村禧八郎君(続) にもかかわらず、これは十分国民の意見を聴取されておりません。ですから、少なくとも時期尚早であります。これが反対の第二の理由であります。
第三は、この法案の審議は不十分です。衆議院では一日しか審議しておりません。二十七日に衆議院を通って、二十八日に回って参りましたが、(「こっちは二日もやったよ」と呼ぶ者あり)参議院では、たった二日でしょう。しかも、国会法五十一条におきましては、予算案及び重要な歳入法案については、公聴会を開かなければならないということになっているのです。それにもかかわらず、公聴会も開かず、また、審議の途中において、十分まだ審議が尽くされていないのに、不当にも自民党の諸君は、これの打ち切りを提案したのであります。強引に打ち切ってしまったのです。これは国民に対して十分に審議の責任を果たしたと言えましょうか。こんな重要法案を、国会法五十一条の第二項の公聴会を開かなければならぬという規定に違反しているのです。これが反対理由の第三であります。
最後に、施行期日の問題でございますが、この法案は四月一日が施行期日でございます。ところが、本日は四月二日であります。当然、これは法案を修正して衆議院に送付すべきであります。修正がなされていないのであります。そのために、徴税については空白期間ができます。本日は、所得税、法人税以外の物品税、その他については、法律がないのであります。これは空白期間が生じているのであります。これに対しては、法制局の考え方は、一日くらいだったら徴税上差しつかえないということを言っておりますが、日本社会党としては、この見解に承服することができません。当然これは修正して衆議院に送付すべきであります。このような違法な法案でございます。
以上述べました諸点から、私は、この法案に対して絶対に反対をいたします。しかもこれは、その基本精神は徴税強化にありますから、社会党は、今後ともこの法案を廃止させるように努力する決意でございます。
これをもって討論を終わります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015254X01619620402/10
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011・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 高橋衛君。
〔高橋衛君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015254X01619620402/11
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012・高橋衛
○高橋衛君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております衆議院送付の国税通則法案及び国税通則法の施行等に伴う関係法令の整備等に関する法律案並びにこれらの法律案の修正案に対して、賛成の意を表せんとするものであります。
そもそも、今回新たに国税通則法を制定いたします趣旨の第一は、税制の簡素平明化をはかって、税法を納税者にわかりやすいものにしようとする点にあるのであります。御承知のように、現行の税法は複雑難解であります。税制はあくまで民主的でなければなりませんが、そのためには、何よりもまず税法そのものが納税者に理解しやすいものでなければなりません。しかるに、現行の税法は、遺憾ながら納税者にとりましてはなかなか理解しがたいのであります。現行税法をこのように複雑難解にしている理由には、いろいろなものが考えられましょう。しかし、その大きな理由の一つは、現行の税制においては、所得税法、法人税法、酒税法、物品税法等の各税法がそれぞれ単独の税法として存在するだけで、そこにこれらに共通の基盤たる共通法ないし基本法を持たないところにあると考えるのであります。すなわち、共通法が存在しないために、所得税法や法人税法などの各税法におきましては、各税に固有な課税実体に関する規定のほかに、本来各税に共通して同様に行なわれるところの手続に関する事項についても、各税法ごとに一々重複して規定が設けられておるのであります。この結果、各税法の条文が不必要に多くなりまして、いたずらに税法を複雑膨大化せしめ、納税者にとって非常に読みづらいものにしておりますのみならず、さらに、同様な事項についての規定が必ずしも各税法を通じて統一されているとは限りませんので、このような不統一から税法の解釈をむずかしくして、無用の紛争を生ぜしめる原因となっているという欠陥があるわけであります。国税通則法の制定は、右のような現行税制の欠陥にかんがみ、これを抜本的に矯正しようとするものであります。すなわち、国税通則法において、各税に共通する事柄を取りまとめて規定することによりまして、まず、税法の条文数はざっと二百八十条程度圧縮されるのであります。これが税制の簡素平明化に及ぼす効果がきわめて大であることは申すまでもありません。さらに、これら共通の事項は、各税法にばらばらではなく、単独の国税通則法に一本に規定されるのでありますから、現行法に見るような不統一は全く解消するのであります。かくしてでき上がります税法体系は、基本法、共通法としての国税通則法と、課税実体法としての各税法、及び滞納処分手続を中心とする国税徴収法という、三つの柱から成ることとなり、その体系はきわめてすっきりとし、また、納税者に理解しやすい形となるわけであります。このような立法は、わが国税法において全く新しいものであり、また、多年の要望にこたえることとなるのであります。
次に、本法を制定する第二の趣旨は、租税の基本的法律関係を明らかにし、これに関する規定の整備合理化をはかることにあります。
次に、国税通則法制定の第三の趣旨は、各税に共通する諸般の制度について、この際、納税者の利益に着目しつつ種々の改善合理化をはかるところにあります。すなわち、その内容を見てみますと、次のとおりであります。
まず、改正の第一点は、延滞税や加算税等について改善合理化をはかったことであります。これらいわゆる附帯税の制度は、昭和二十五年の税制改正以来ほとんど見るべき改正がなされておりませず、これが改善は一般からも強く要望され、多年の懸案となっていたのでありますが、今回はこれに抜本的改正を加え、納税者の負担の軽減をはかりつつ、制度の簡素化を行なうことといたしております。すなわち、まず現行の利子税額及び延滞加算税額については、この両者を統合して一本の延滞税とするとともに、その課税割合を現行の日歩三銭及び六銭から、日歩二銭及び四銭に引き下げることといたしております。また、各種の加算税につきましても、その課税率の軽減をはかりまして、無申告加算税及び源泉徴収加算税については、現行では一〇%から二五%になっておるのでありますが、一律に一〇%に、また、重加算税については、現在五〇%とありますものを三〇%にそれぞれ引き下げることにいたしておるのであります。
次に、改正の第二点は、課税処分等に対する不服申し立ての制度について改善を加えたことであります。すなわち、納税者が不服を申し立てることができる事項の範囲を拡張して、税務署のした処分のすべてに対して不服申し立てをすることができることといたしております。また、納税者から不服申し立てがあった場合において、滞納処分の執行を停止することは、現在ではもっぱら税務署長の権限によるのでありますが、今回新たに納税者からもその申し立てをすることができることとするほか、納税者が担保を提供したときは財産の差し押えをしない制度を新設することとし、さらに、納税者が不服を申し立てている期間中は、原則として差し押え物件の公売処分ができないものといたしております。なお、不服申し立て制度に関連して、協議団制度の問題がございますが、これにつきましても、協議団の第三者的立場を高め、その議決を一そう尊重するよう、規定の整備をはかり、運用の改善に努めることとする等、各種の改善を加えて、納税者の権利利益の救済に遺憾のないよう措置しているのであります。
次に、改正の第三点は、申告手続に関する規定の整備改善をはかったことであります。すなわち、申告納税方式における申告手続は、期限内申告については各税法の規定によることとし、期限後申告、修正申告及び更正の請求等については、国税通則法に取りまとめて、わかりやすく規定することとしておりますが……。(発言する者多し)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015254X01619620402/12
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013・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) お静かに願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015254X01619620402/13
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014・高橋衛
○高橋衛君(続) これに関連して、納税者の住所等が移動した場合の申告書の提出先については、現行法では必ずしも明らかでないのを改めて、これを新住所の所轄税務署とする等、規定を明らかにし、また、申告書等を郵送した場合には、郵便局の通信日付印に表示された日に申告書の提出があったものとする等、納税者の便宜を中心として改善をはかっているのであります。
次に、改正の第四点は、国税の課税権の期間制限について合理化をはかったことであります。すなわち、国税の徴収権の時効につきましては、現在別段の問題はないのでありますが、国税の更正や決定、すなわち課税権の行使をすることができる期間につきましては、現行法では必ずしも明らかでなく、しかも直接税と間接税との間において不統一の点も見られますので、今回これを、時効とは違って、中断や停止等をすることなく、一定の期間経過後はすべて権利を行使することができなくなる、いわゆる除斥期間として明らかにするとともに、その期間を原則として三年とする等の改善合理化をはかることとしているのであります。
以上が国税通則法の制定の趣旨とそのおもな改正点であります。
次に、国税通則法の施行等に伴う関係法令の整備等に関する法律案におきましては、国税通則法の施行に関連いたしまして、所得税法等の関係法律について、その整備をはかるため、所要の改正を行なっております。これによりまして、各税法の規定は大幅に整理され、納税者の税法に対する理解に資することとなるのであります。
なお、毛利松平君外二十五名の提出にかかる両法律案の修正案は、いわゆる人格のない社団等に対する税法の規定についての改正案を修正いたしまして、現行の税法の規定をそのまま維持しようとするものであります。これは、人格のない社団等に対する課税関係に変更を加えるがごとき改正はこれを行なわないこととしようとするものでありまして、今回の国税通則法制定の趣旨にもかんがみまして妥当なものと考えるのであります。
以上申し述べましたとおり、国税通則法の制定及び関係法令の改正並びにこれら法律の修正は、税法の民主化をはかりつつ、あわせて納税者の権利利益に着目して諸制度の改善を行なうものであり、昭和二十五年にシャウプ税制が行なわれまして以来の大改正でございます。社会党の諸君が、この税法に対して、あるいは民主的な現代日本と全く関係のないところのナチスの税法を持ち出したり、または反対のいろいろ理由をお聞きいたしましても、その理由がわれわれにはとうていわからない、全く反対のための反対をなされているかのごとき感じを抱きますことは、私どもの衷心より遺憾とするところでございます。
以上をもちまして私の賛成討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015254X01619620402/14
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015・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
これより採決をいたします。
両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015254X01619620402/15
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016・松野鶴平
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます、よって両案は可決せられました。
次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後六時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104015254X01619620402/16
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