1. 会議録本文
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000・会議録情報
本国会召集日(昭和三十八年十二月二十日)(金
曜日)(午前零時現在)における本委員は、次の
通りである。
委員長 川野 芳滿君
理事 有田 喜一君 理事 關谷 勝利君
理事 塚原 俊郎君 理事 西村 直己君
理事 山田 彌一君 理事 井手 以誠君
理事 久保 三郎君 理事 肥田 次郎君
木村 俊夫君 佐々木義武君
進藤 一馬君 壽原 正一君
高橋清一郎君 高橋 禎一君
中馬 辰猪君 南條 徳男君
西村 英一君 長谷川 峻君
細田 吉藏君 増田甲子七君
松田 鐵藏君 井岡 大治君
勝澤 芳雄君 下平 正一君
田中織之進君 松原喜之次君
矢尾喜三郎君 内海 清君
佐々木良作君
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昭和三十九年一月二十九日(水曜日)
午前十一時九分開議
出席委員
委員長 川野 芳滿君
理事 有田 喜一君 理事 關谷 勝利君
理事 塚原 俊郎君 理事 西村 直己君
理事 山田 彌一君 理事 久保 三郎君
理事 田中織之進君 理事 肥田 次郎君
佐々木義武君 進藤 一馬君
壽原 正一君 高橋清一郎君
高橋 禎一君 中馬 辰猪君
南條 徳男君 西村 英一君
長谷川 峻君 細田 吉藏君
増田甲子七君 井岡 大治君
勝澤 芳雄君 泊谷 裕夫君
矢尾喜三郎君 山口丈太郎君
内海 清君
出席国務大臣
運 輸 大 臣 綾部健太郎君
出席政府委員
運輸政務次官 田邉 國男君
運輸事務官
(大臣官房長) 今井 榮文君
運 輸 技 官
(船舶局長) 藤野 淳君
運 輸 技 官
(港湾局長) 比田 正君
運輸事務官
(鉄道監督局
長) 廣瀬 眞一君
運輸事務官
(自動車局長) 木村 睦男君
委員外の出席者
議 員 勝澤 芳雄君
日本国有鉄道総
裁 石田 禮助君
日本国有鉄道副
総裁 磯崎 叡君
専 門 員 小西 真一君
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昭和三十八年十二月二十日
委員井手以誠君、下平正一君及び松原喜之次君
辞任につき、その補欠として泊谷裕夫君、野間
千代三君及び山口丈太郎君が議長の指名で委員
に選任された。
昭和三十九年一月二十九日
理事井手以誠君昭和三十八年十二月二十日委員
辞任につき、その補欠として田中織之進君が理
事に当選した。
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昭和三十八年十二月二十日
日本鉄道建設公団法案(内閣提出第五号)
昭和三十九年一月二十三日
鉄道新線建設緊急措置法案(久保三郎君外八名
提出、衆法第二号)
同月二十七日
相馬港の早期完成に関する請願(齋藤邦吉君他
一名紹介)(第八六号)
磐越東線の輸送強化対策に関する請願(齋藤邦
吉君他一名紹介)(第八七号)
磐越東・西線の電化促進に関する請願(齋藤邦
吉君他一名紹介)(第八八号)
水郡線の準急増発に関する請願(齋藤邦吉君他
一名紹介)(第八九号)
常磐線の全線電化及び複線化に関する請願(齋
藤邦吉君他一名紹介)(第九〇号)
熱海海岸にモノレール設置反対に関する請願(
福田繁芳君紹介)(第二〇八号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
理事の補欠選任
国政調査承認要求に関する件
日本鉄道建設公団法案(内閣提出第五号)
鉄道新線建設緊急措置法案(久保三郎君外八名
提出、衆法第二号)
昭和三十九年度運輸省及び日本国有鉄道関係の
予算等に関する説明聴取
陸運に関する件
海運に関する件
港湾に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/0
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001・川野芳滿
○川野委員長 これより会議を開きます。
この際、理事の補欠選任についておはかりいたします。
理事の井手以誠君が去る十二月二十日に委員を辞任いたしましたので、理事に一名の欠員が生じました。
つきましては、その補欠選任を行ないたいと存じますが、委員長において理事を指名するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/1
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002・川野芳滿
○川野委員長 御異議なしと認めます。よって、田中織之進君を理事に指名いたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/2
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003・川野芳滿
○川野委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。
衆議院規則第九十四条により、委員会は、会期中に限り、議長の承認を得て、その所管に属する事項について調査ができることになっております。
つきましては、今国会におきましても、
陸運に関する事項
海運に関する事項
航空に関する事項
日本国有鉄道の経営に関する事項
港湾に関する事項
海上保安に関する事項
観光に関する事項
気象に関する事項
以上の各事項につきまして、調査をいたしたいと存じますので、この旨議長に申し出たいと存じまするが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/3
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004・川野芳滿
○川野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/4
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005・川野芳滿
○川野委員長 日本鉄道建設公団法案を議題として、提案理由の説明を聴取することといたします。綾部運輸大臣。
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日本鉄道建設公団法案〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/5
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006・綾部健太郎
○綾部国務大臣 ただいま議題となりました日本鉄道建設公団法案の提案理由について御説明申し上げます。
わが国の産業経済は最近目ざましい発展ぶりを示し、国民生活も著しく向上してまいったのでありますが、さらに経済の均衡ある発展をはかりますためには、地方経済圏の整備、低開発地域の開発、臨海工業地帯の整備、新産業都市の建設等が必要であり、そのための基盤として鉄道新線の建設が強く要望されていることは御承知のとおりであります。
従来鉄道の建設は日本国有鉄道が行なってまいりましたが、日本国有鉄道といたしましては、独立採算制のたてまえと既設線の大幅な整備増強計画に力を注いでいる関係上、鉄道新線の建設についてはこれを積極的に推進し得ない状況にあるのであります。
ここにおいて、昨年五月鉄道建設審議会は、今後の新線建設については日本国有鉄道と別個の組織を設け、政府、日本国有鉄道等がその財源を負担して、強力にこれを推進すべきであるという建議をいたしました。
政府といたしましては、この建議の意を体し、具体策について検討いたしました結果、今後の新線建設を積極的に推進するため、この新線建設事業を日本国有鉄道から切り離し、独立の機関を設けて専心この事業に当たらせるべきだとの結論に達したのであります。
この法案の内容は、政府及び日本国有鉄道の出資により、新たに日本鉄道建設公団を設立し、鉄道新線の建設に当たらせ、もって鉄道交通網の整備をはかり、経済基盤の強化と地域格差の是正に符与させようとするものであります。
次に、日本鉄道建設公団法案の要点について、御説明申し上げます。
第一に、この公団の資本金は、政府出資五億円と日本国有鉄道からの出資金及び現物出資の額の合計額としております。役員としては、総裁一人、副総裁一人、理事六人以内、監事二人以内を置くことにしております。
次に、公団の業務でありますが、公団は鉄道新線にかかる鉄道施設を建設し、その施設を日本国有鉄道に貸し付け、または譲渡することを主たる業務としております。この場合、後進地域その他特定の地域の開発等のため無償とする特別の必要がある場合は、無償で貸し付けることができることといたしております。なお、公団は設立にあたって、現在日本国有鉄道が行なっている新線建設事業を承継して、事業を行なうことになっております。
その他、公団の財務及び会計に関する事項、監督に関する事項、罰則、公団の設立手続、諸税の減免等について規定しております。
以上がこの法律案を提出する理由であります。
何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成いただきますようお願い申し上げます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/6
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007・川野芳滿
○川野委員長 次に、久保三郎君外八名提出の鉄道新線建設緊急措置法案を議題とし、提案理由の説明を聴取することといたします。勝澤芳雄君。
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鉄道新線建設緊急措置法案〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/7
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008・勝澤芳雄
○勝澤議員 ただいま議題となりました鉄道新線建設緊急措置法案の提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。
この法律案は、日本国有鉄道が行なう鉄道新線建設の、緊急かつ計画的な実施を促進するため、鉄道新線建設十ヵ年計画の策定とその実施に要する国庫負担等について必要な規定を設けようとするものであります。
御承知のとおり鉄道新線の建設は国の産業開発、経済発展、あるいは地域格差の是正のためには大きな役割を果たすものであります。したがって、鉄道敷設法第一条別表により定められています予定鉄道線路は総数において二百三十一線に達する多きを数えております。
ところが、そのうち現在建設工事を進めておりますいわゆる着工線はわずかに四十三線であり、また次に着工を予定されています調査線は十八線という実情であります。しかもこれらの着工線及び調査線につきましても、現在国鉄が行なっております毎年六十億ないし八十億程度の建設資金の投資規模では、今後十年先はおろか、二十年先になっても完成を見ないのであります。今日までの建設のテンポをもって今後を予測しますならば、着工線及び調査線の合計六十一線をすべて完成さするためには、四十年ないし五十年の歳月を見込まなければなりません。加えて、鉄道敷設法第一条別表の予定鉄道線路二百三十一線の全部を完成させるとすれば、これは何百年もかかり、その必要とする建設資金もこれまた天文学的数字となるのであります。
鉄道新線の建設が必要とされながら、なぜこのようにそれが進まないのか、その理由は大きく分けて次の三点にあると考えられます。
その第一は、現在の国鉄の経営方針であります。国鉄はその経営が苦しいあまり、いわゆる企業性の追及に急となり、独立採算制というたてまえからも、金のもうかる面にのみその力を注ぐといった経営の方針にならざるを得ない状態にあります。そのため、その本来の使命である公共的任務についてややともすれば欠けるうらみを持つのであります。しかも最近における輸送の逼迫は、鉄道新線の建設よりも、現在線区の輸送力を増強し、激増する輸送の要請にいかにこたえるかが、重要な問題となってきております。すなわち輸送力増強と輸送の近代化が緊急の仕事となっているのであります。これらは、三十二年度から始めた国鉄第一次五ヵ年計画及び三十六年度からの第二次五ヵ年計画を通じて示された今日の国鉄の偽らざる姿であります。
このままの状態を続けておるならば、新線建設の面においてもきわめて大きな問題が横たわっていると考えるのであります。現在、建設が進められている着工線と、近く着工する予定の調査線の全部について建設を完了するまでに必要とされている総工費は合計して五千億円といわれております。これらの資金についてどのように確保するかが大きな問題であります。すでに国鉄は第一次及び第二次五ヵ年計画を通じ、今日までの長期負債の総額は六千億円に達しています。先日発表されました国鉄諮問委員会の答申によりますと、今後とも現在の投資規模を維持して国鉄が輸送力の強化、輸送の近代化を進めますならば、昭和四十五年には負債の総額は二兆四千億円をこえ、支払い利子のみでも年間約千六百億円、つまり予定される収入の二割が利子の支払いに当てられるという国鉄経営の破局を予測しているのであります。さらにこの推計には鉄道新線の建設を含めておりませんから、これに今日以上に鉄道新線の建設を行なうこととし、そのための借入金を増加することとすれば、破局が一そう早く訪れるであろうことは論をまちません。
鉄道新線の建設のために巨額の資金を必要とし、その資金措置の困難さが、鉄道新線の建設が進まない第二の大きな理由なのであります。
加えて、鉄道新線の建設は、その資金が巨額であるのみならず、完成までの懐妊期間が長く、未稼動資産となって、経営上にもまた多くの圧迫を加えるのであります。これらの点よりしますならば、その建設資金の手当てをどうするかを考えない限り、問題は解決しないのであります。
また、第三の理由として指摘しなければなりませんのは、建設された鉄道新線の経営の問題であります。戦後鉄道新線の建設が再開されましたのは、名目的にせよ日本が独立したといわれました昭和二十七年からでありますが、その後今日までに約六百億円にのぼる資金をもちまして、合計五十五線、二千百十八キロメートルの新線を建設しているのでありますが、そのうち開業いたしております線区は全線二十五、部分九の三十四線、七百八十五キロメートルにすぎません。しかもこれらの新線は今日に至るもすべて赤字経営であります。今後建設されるであろうところの新線につきましても、資料によりますと、海峡連絡鉄道を除きまして、そのいずれもが、すべて赤字経営が予想されておるのであります。かりに先ほど申し上げました現在の着工線及び調査線につきまして、すべて完成したときの経営について予測してみますと、営業上生ずる赤字は、利子負担を含めまして何と年間六十四億円をこえると予想されるのであります。このようなことでありましては、新線の建設が進めば進むほど国鉄の経営はますます苦しくなり、ごく最近の機会に決定的な破局を迎えるであろうことを予想しないわけにはまいりません。
また一般に、鉄道経営は巨大な固定資本を必要とするにもかかわらず、一方では安い運賃で大量輸送を行なうという公共的使命を持つものでありまして、投下資本に対して利潤の少ないのが特徴とされておる事業であります。したがいまして、従来から営業しております線区と、新しく建設された線区では、その減価償却費に大きな違いが生ずるのでありますが、それを理由として、線区ごとに違う賃率を適用し、事実上鉄道新線のみ高い運賃とするようなことは許さるべきではないと考えます。したがいまして、今日のままの状態で鉄道新線の建設を促進いたしますならば、結果において全体の運賃値上げを早い機会に導き出すこととなり、これまた私どもとして容認すべからざることとなるのであります。
鉄道新線の建設について考えます場合には、以上のような現実に立って、これを一つ一つ解明し、その解答を与えてやる立場に立たねばならないのであります。
そこで、政府提案の鉄道建設公団法案は、卒直に申し上げて、これらの根本的な問題には何らの解決が与えられておらないように考えるのであります。公団をつくれば新線の建設が促進されるというがごとき、ごく単純な理解しかなされていないのではないかといわざるを得ません。同法案によれば、本年度の政府出資はわずかに五億であります。他は国鉄出資七十五億を予定しているのでありまして、この限りにおいては何ら従来の建設規模と変わりがありません。このようなものであるなら、別に公団を設ける意義がないと思うのでありまして、どうも納得ができない点が多いのであります。その上公団でつくりました新線は、「原則として有償」で国鉄に貸すか譲渡するというのであります。自分で金を出してつくったものにさらに金を出して借りるといった不合理な規定が書いてあるのであります。しかもそれは、前にも申しましたようにすべて赤字が予想される線区でありますから、かりに無料で借りたといたしましても、赤字の重圧に悩まされるのは当然のことであります。しかも同法案は、赤字経営によって生ずる国鉄の負担について何らの規定もいたしておりません。それはつまり、赤字は国鉄で始末せよとのことでありましょうが、これはたいへん不合理な話であります。その上、公団ができますと、せっかく長い間の経験を持つ国鉄工事要員を二分することとなり、第二次、第三次という五ヵ年計画の過程ですでに不足が伝えられています工事要員をさらに縮小し、その弾力的運用を失わしめるといった損失、或は公団役職員、特に管理者のポストのみが増加する結果になるといった大きなむださえ生むのであります。
要するに公団の設置は百害あって一利なしという結果になるのであります。
もちろん政府提案の鉄道建設公団法案が出されるに至った経過は簡単なものではございません。その基本は、鉄道建設審議会の一昨年五月に出されました建議に基づくものであることは十分承知をいたしております。ところが、この建議の根幹をなすものは実は建設資金の確保に関するものであって、すなわち「鉄道新線の建設は一般国民に与える有形無形の便益の増大と国家経済に与える効果の多大なることに鑑み、国家的な政策上の見地から論ずべきであり、日本国有鉄道の企業的立場からのみこれを論ずべきではないことは明らかである。従ってこの矛盾解決の方法としては、鉄道新線の建設を道路、港湾整備等と同様に政府の公共投資とする以外にないものと思料せられる。よって今後の新線建設については、政府が公共事業として、その主たる財源を負担する」ことが適当であると述べており、この前提に立ってのみ、国鉄と別個の組織を必要とする旨示唆したものにすぎないのであります。ところがいつの間にかこの本末を転倒し、枝葉の部分のみが持ち出され、幹の部分は置き忘れられている感が強いのであります。
このような政府案の基本的欠陥を正し、今日の国鉄の実情及び新線建設のあり方などの諸点を正しく理解する中から、ここに鉄道新線建設緊急措置法案を提案する次第であります。
申し上げるまでもなく、この法案は、鉄道新線の建設は、従来どおり日本国有鉄道をして行なわしめることを前提とし、建設公団といったような別な組織によることを考えておりません。それは、すでに申しましたところで明らかなように、国鉄か公団かが現在、新線建設の問題点ではないからであります。国鉄の技術陣をもってすれば、今日予定されております鉄道新線の建設は決して不可能ではございません。
いな、むしろ国鉄の技術陣の手に待たなければ、かえって多くの障害さえ予想されるのであります。さらにつけ加えて申し上げますならば、政府は現在ある公団その他の政府機関につき、なるべく合理化し、その縮小をはかろうとの方針と承知しておりますときに、公団を新たにつくるというのでは筋が通らないかと考えます。いたずらに組織をつくり、機構を複雑にするようなことは厳に慎むべきでありまし上う。
鉄道新線の建設が遅々として進まない理由として、冒頭三つの点を指摘いたしました。この三点について、どのように解明するかによって、新線建設の正しい回答が与えられるのであります。この提案は、この三点について次のように措置することが骨子となっているのであります。
その第一は、鉄道新線の建設は、単に国鉄といった企業的な立場だけから見ることを排除し、政府において、日本国有鉄道及び鉄道建設審議会の意見を十分に聞き、高い見地、広い視野より、国の政策として、本年度以降十ヵ年計画を定めることとした点であります。
もちろんこの十ヵ年計画の策定にあたりましては、法案に規定いたしました必要な手続を経ることは当然でございますが、特に、その計画を具体的に樹立するにあたって、いやしくも世間から政治路線の指弾を受けますような、政治的圧力によってそれが左右されることのないように、厳正に取り扱われることは絶対の要件であります。しかも路線の選定にあたっては、個々の路線について、他の輸送機関、たとえばバスとかトラックとかの自動車輸送との競合がどうなるのかといった問題、あるいは鉄道新線の建設よりも道路建設のほうがより住民福祉の向上に役立つのではないかといったような問題など総合的な立場に立った科学的な検討が加えられ、今後の経済発展、地域の開発とも関連した十分な配慮がなされなければなりません。
計画がいわゆる総花式となりますと、いたずらに予算の乱費となり、十分な経済効果を発揮しないのみか、国としても過大投資、あるいは二重投資、三重投資の弊害となり、大きな損失を招く結果となるのでありますから、この点は、ぜひとも慎重の上にも慎重を期さなければなりません。
なお、十ヵ年間の新線に対する投資規模はおおむね三千億円程度が適切妥当ではないかと考えるものであります。
第二点は、十ヵ年計画に基づく鉄道新線の建設に要する経費の半額を国において負担し、国鉄経営に加えられる圧迫を幾らかでも緩和するとともに、新線建設の隘路となっています建設資金の確保をはかろうとしている点であります。この点については、すでにるる申し述べたとおりでありまして、多くを申し上げる必要はございません。しかしながら特に次のことについてのみ触れておくことが必要であろうと考えます。
それは、国の負担をなぜ半額としたかということであります。本来ならば、日本国有鉄道は全額政府出資の公共企業体でありますし、きわめて苦しい経営をいたしておるのでありますから、全額政府負担であっても当然ではないかと考えるのであります。
またそういう意見もしばしば聞かれるのでありますが、現在におきましては、他の政府機関、或は他の道路、港湾といった公共事業に対します国庫の負担割合を勘案し二分の一と定めた次第でありまして、この点は十分な御議論を承りたいと考えるところであります。
第三の点は、国鉄の新線を完成後、その営業にあたって生じた欠損について、国から補助を行なうことを明らかにした点であります。これは現在予想される鉄道新線のほとんどが赤字経営であろうと推測されることにかんがみ、新線の建設によって生ずる国鉄の経営上の圧迫を幾らかでも排除し、それによって、健全な経営を維持するための措置でありまして、補助をする具体的な額は、毎年度の予算によるのでありますが、その基準となります計算の方法は運輸省令で定めることにいたしております。
以上がこの法律案の提出理由及びその要旨でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/8
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009・川野芳滿
○川野委員長 次に、昭和三十九年度運輸省及び日本国有鉄道関係の予算等について、政府当局より説明を聴取いたします。綾部運輸大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/9
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010・綾部健太郎
○綾部国務大臣 昭和三十九年度の運輸省関係の予算について御説明申し上げます。
初めに、予算の規模について申し上げます。
まず、一般会計について申し上げますと、歳入予算総額は十五億九千七十一万三千円、歳出予算総額は八百六十七億三千七十九万七千円であります。この歳出予算総額を前年度予算額と比較いたしますと、三十八億九千三十一万五千円の増加となっており、約五%の増加率を示しております。
この増加額の内訳を見ますと、行政部費では三十六億三千十六万二千円、公共事業費では二億六千十五万三千円の増加となっております。なお、ただいま申し上げました歳出予算総額のうちには、他省予算に計上され当省に移しかえて使用される予算七十八億四千四百二十一万二千円が含まれております。
次に特別会計について申し上げます。まず木船再保険特別会計の歳入歳出予算額は、三億五千四百六十二万九千円で、前年度に比較して約一千四百万円の増加となっております。自動車損害賠償責任再保険特別会計につきましては、保険金の支払限度額を大幅に引き上げましたことと自動車数の増加に対応いたしまして、歳入歳出予算額を前年度予算額の約三倍に当たる三百億三千七百九万三千円といたしております。港湾整備特別会計の歳入歳出予算額は、港湾の整備を推進するため、前年度より約四十二億七千四百万円増額され、四百七十二億九千六百十一万六千円となっております。また、三十九年度より新たに設置する自動車検査登録特別会計の歳入歳出予算額は十五億二千四十三万四千円となっております。なお、以上の経費のうちには、一般会計、特別会計を通じ、定員三百四十四名の純増に伴う経費が含まれております。
このほか、昭和三十九年度財政投融資計画中には、当省関係分といたしまして約二千六百九十一億円が予定されております。
昭和三十九年度予算におきましては、当省は、開放経済体制下における国際収支の均衡と経済の安定成長に寄与するため、貿易外収支の改善、海陸空の輸送部門を中心とする社会資本の充実、交通保安及び防災対策の強化並びに運輸関係科学技術の振興の四点に重点を置き、次に申し上げる諸施策を強力に推進する所存であります。
以下、部門別に重点施策の要旨を御説明申し上げます。
まず、海運関係では、第一に、外航船舶の建造に必要な資金として日本開発銀行からの融資二百四十七億円を予定しております。これによりまして、昭和三十九年度において六十四万二千総トンの船舶の建造を行なう予定であります。特にOECDへの加盟に伴い、海運の国際競争がいよいよ激化することを考慮し、十九次船以降は大型油送船及び専用船への財政融資の比率を従来の七〇%から八〇%に高めて国際競争力の強化に資することとしております。
第二に、外航船舶建造融資利子補給に必要な経費として、市中金融機関分七億三千四百四十二万四千円、日本開発銀行分九億二千八百六十八万円を計上しております。これは外航船舶の建造融資にかかる海運企業の金利負担を軽減し、わが国外航海運の国際競争力を強化するため、市中金融機関及び日本開発銀行に対し利子補給を行なおうとするものであります。特に昨年来推進してまいりました海運企業の集約化も順調に行なわれつつありますため、集約を完了した企業に対しては、十八次船以降の融資について船主の負担が市中金融機関からの融資については年六分、日本開発銀行からの融資については年四分となるよう補給率を引き上げることといたしております。また十八次船以降の利子補給について新たな契約限度額として、市中金融機関分二十四億一千九百六十一万七千円、日本開発銀行分百七億七千八百六十万円を計上いたしております。なお、海運業の再建整備方策として、集約化を実施した海運企業に対しては十七次船以前の融資にかかる利子の支払いを猶予いたしますため、その利子に相当する額を日本開発銀行に交付することとし、大蔵省所管予算に七十億五千万円が計上されております。
第三に、三国間輸送助成に必要な経費として九億六千万円を計上しております。これによりまして、三国間輸送を促進してわが国海運の市場の拡大と外貨の獲得をはかろうとするものであります。特にニューヨーク航路の維持安定策として同航路の経営の一本化を推進することとし、その結果生じた余剰船腹を三国間輸送その他に有効に転用することにより、国際収支の改善をはかるため、ニューヨーク航路を経営している企業に対しては、本助成金の交付率を一般に比して高めることといたしております。
第四に、海運の国際競争力強化対策の一環として、外航船腹の船質改善を進めることとし、これに必要な資金として、日本開発銀行からの融資十億円を予定しております。これによりまして、老朽化の著しい船舶の代替建造と標準型油送船の改造を行なう予定であります。
第五に、移住船運航費補助に必要な経費として四億六千五百十二万六千円を計上しております。これは国の移住者輸送計画の円滑な遂行をはかるため、昭和三十八年度における移住船の運航によって生じた欠損に対し補助を行なうものであります。
第六に、内航海運対策に必要な資金として、財政融資二十五億四千八百万円を予定しております。わが国の内航海運は国内貨物輸送分野で大きな比重を占めつつありますが、その経営基盤はきわめて脆弱な実情にあります。昭和三十九年度におきましては、内航海運の近代化をはかるため、特定船舶整備公団との共有方式により、老朽船、運炭機帆船、沿岸木造タンク船の代替建造を推進することとし、これに要する財政資金を同公団に対し融資することといたしました。
第七に、離島航路整備費補助に必要な経費として五千九百九十万三千円を計上しております。これは離島住民の交通を確保するため、航路の性質上経営が困難な離島航路事業者に対して補助金を交付しようとするものであります。
第八に、老朽国内旅客船の代替建造に必要な資金として、特定船舶整備公団に対する財政融資九億円を予定しております。これによりまして、老朽旅客船の代替を緊急に推進し、海難事故を防止して旅客の安全をはかりたいと考えております。
次に、船舶関係につきましては、第一に、船舶の経済性向上に必要な経費として一千四百七十六万八千円を計上しております。これによりまして、最近の船舶の自動化、船体構造の合理化等の趨勢に対応し、わが国海運並びに造船業の国際競争力の強化に資するため、高経済性船舶の試設計及び調査指導を行なうこととしております。
第二に、中小型鋼船造船業の合理化促進に必要な経費として三百八十八万円を計上しております。これにより、前年度に引き続き船舶の標準設計の作成を行ない、これら造船業の技術の向上と経営の合理化を推進いたしたいと考えております。
第三に、原子力船の開発に必要な経費として百六十四万六千円を計上し、これをもちまして原子力船の第一船建造を円滑に進めるため、安全審査、設計承認等の業務を行なうこととしております。
なお、原子力船の建造計画を推進するため、別途総理府所管原子力予算として、日本原子力船開発事業団に対する政府出費三億二千百万円が計上されております。
次に、船員関係につきましては、第一に、海技行政の強化に必要な経費として百五万三千円を計上しております。これによりまして、船舶の自動化と技術の革新の進展に伴う船員の教育制度、船舶職員制度、海技試験制度の改善と調整をはかるため、昨年設けられました海技審議会の一そうの充実を進めることといたしております。
第二に、船員厚生施設の整備に必要な経費として二千五百万円を計上しております。これは船員の福祉を増進するため、国内における船員厚生施設を整備する公益法人に対して施設費の一部を補助するものであります。
次に、港湾関係について申し上げます。
第一に、現行の港港整備五ヵ年計画が昭和三十六年度に策定されて以来、予想を上回る貨物量の増大、新産業都市の建設をはじめとする最近の地域開発諸施策の推進、船舶のふくそうによる海難防止の必要性の増大等の新情勢が現われておりますため、これらに対応し、今回昭和三十九年度を初年度とする新たな五ヵ年計画を策定して、港湾の整備を急速に推進することといたしました。
このため港湾整備事業費として、当省所管一般会計予算に二百七十一億四千七百五十四万三千円を計上し、総理府並びに労働省所管予算に六十五億五千五百十万円を計上しております。この合計額三百三十七億二百六十四万三千円を前年度予算額と比較いたしますと、約二一%の増加となっております。これに対応しまして、港湾整備特別会計の規模を四百七十二億九千六百十二万六千円といたしております。これによりまして、横浜港ほか三百十八港の整備を行なうとともに、石油港湾として横浜港ほか三港、鉄鋼港湾として千葉港ほか六港及び石炭港湾として苫小牧港について特定港湾施設の整備を行なう予定であります。
第二に、港湾の整備に並行して荷役機能の強化をはかるため、財政融資四億円をもちまして特定船舶整備公団と港湾運送事業者との共有方式により、引き続き、はしけ及び引き船の整備を行なうほか、三十九年度より新たに荷役機械についても同様の方式によりその増強をはかる予定であります。また、港湾管理者による荷役機械、上屋、引き船等の整備拡充のため、地方債の起債のあっせん八十億円を予定しております。
第三に、臨海工業用地及び都市再開発用地の造成を促進するため、地方債の起債のあっせん三百八十一億円を予定しております。これによりまして、臨海工業用地等の造成を計画的に推進し、わが国工業の振興と地域格差の是正をはかる予定であります。
第四に、港湾都市防災事業の推進に必要な経費として、当省所管予算に八十七億六千七百二十五万五千円、総理府並びに労働省所管予算に二億一千百五十三万円を計上しております。これによりまして、港湾都市を高潮、地盤沈下等の災害から守るため、東京湾、大阪湾、周防灘地区及び裏日本海岸等の危険港湾都市の海岸事業を計画的に進めるとともに、災害の復旧を強力に推進する所存であります。
次に、鉄道関係につきましては、第一に、国鉄五ヵ年計画の推進に必要な資金として、財政融資一千三百三十億円を予定いたしております。なお、国鉄関係予算につきましては、後ほど別途御説明させていただきたいと思います。
第二に、日本鉄道建設公団に対し、産業投資特別会計からの政府出資十億円を計上し、財政融資として十億円を予定いたしております。これによりまして、鉄道新線の建設を推進し、国土の開発、地方産業の振興をはかりたいと考えております。
さらに、日本国有鉄道に対し、昭和三十五年度から三十八年度までの新線建設費の一部を補助するため九億百一万五千円を計上いたしております。
第三に、大都市における地下高速鉄道網の整備を促進するため、建設資金として、帝都高速度交通営団に対する財政融資百五十億円、及び、東京都、名古屋市、大阪市、神戸市に対する地方債の起債のあっせん二百五十五億円を予定するとともに、地下高速鉄道建設費補助に必要な経費として二億四千七百三十万八千円を計上しております。これは、地下鉄道の建設費が巨額にのぼっている実情にかんがみ、昭和三十八年度における建設費の一部を補助しようとするものであります。
第四に、大都市における輸送力の増強をはかるため、地下鉄と郊外私鉄との相互乗り入れ、及び高架または地下による都心部に達する鉄道の建設を促進することとし、次に申し上げる踏切道の立体化の促進のための融資とあわせ、財政融資四十五億円を予定しております。
第五に、踏切道の抜本的改善策として、主要な踏切道の立体化を進めるため、財政融資を予定するとともに、踏切保安設備の整備を促進するため四千二百十一万七千円を計上しております。この経費は、踏切道における保安設備の整備を行なう地方鉄道、軌道事業者に対して、その費用の一部を補助するものであります。
次に、自動車関係につきましては、第一に、自動車の激増に対処し、自動車の検査及び登録の業務体制を拡充強化するため、新たに自動車検査登録特別会計を設けることとし、さきに申し上げましたとおり、歳入歳出予算額十五億二千四十三万四千円の規模で発足をみることとなりました。これによりまして、三十九年度には、車検場一ヵ所を新設し、九ヵ所を拡張するほか、車両検査施設の整備につとめるとともに、八十名を増員して、サービスの向上と業務の能率化をはかることとしております。
第二に、自動車事故の増加傾向にかんがみ、被害者の救済を強化するため、保険金の支払い限度額を大幅に引き上げることとし、これに伴い自動車損害賠償責任再保険特別会計の規模を、前年度の約九十六億八千七百万円から一躍三百億三千七百九万三千円に拡大することとしております。この結果、自動車事故の被害者に対する保険金は、死亡の場合を例にとれば、五十万円から百万円に引き上げられ、さらに後遺症についても最高百万円まで支払われることとなっております。
次に、航空関係について申し上げます。
第一に、日本航空株式会社に対する助成策として、産業投資特別会計からの出資十七億円を計上し、同社の発行する社債三十億円について債務保証を行なうこととしております。これによりまして、日本航空株式会社の経営する国際線を増強し、激化する国際競争に備えるとともに、資本構成の健全化をはかろうとするものであります。さらに、国際航空路線の充実のためには、乗員の増強が急務であることにかんがみ、日本航空に対し国際航空路線の乗員訓練費の一部を補助することとして、三億五千万円を計上いたしております。
第二に、新国際空港の計画並びに調査のための経費として一億円を計上しております。現在の東京国際空港は、航空機の急増傾向から見て、遠からず能力の限界に達するとともに、やがて就航を予定される超音速旅客機を受け入れることができないため、早急に新国際空港を建設する必要がありますが、新空港の建設はきわめて規模の大きい事業となりますため、さらに慎重に計画並びに調査を行なうことといたしました。なお、この計画調査を行なうための組織を新たに設けることとし、二十五名を増員することといたしております。
第三に、大阪国際空港の整備に必要な経費として二十七億三千四百万円を計上しております。これによりまして、航空旅客数の増大と大型ジェット機の乗り入れに応ずるため、大阪国際空港を拡充整備することとし、用地造成、エプロンの新設並びに現有施設の改良を行なう予定であります。
第四に、国内空港の整備に必要な経費として当省所管分十四億六千四百四十二万人千円を計上し、ほかに北海道及び離島の空港整備費として、総理府所管予算に九億一千六百三十万円が計上されております。これによりまして、青森空港ほか十一空港の整備を続行するとともに、新規に鳥取空港の整備に着手し、名古屋空港ほか十一空港の改良、南紀播磨等の空港調査を行なう予定であります。
第五に、航空の安全強化に必要な経費として三億四千八百三十七万二千円を計上しております。これによりまして、航空交通管制本部の対空通信施設の増設、三沢地区管制所の移設、九州地区管制所の整備及び航空保安施設の整備を行うこととしております。
次に、観光関係につきましては、第一に、国際観光事業に対する補助に必要な経費として、五億九千二百四十五万九千円を計上しております。これは国際観光の振興をはかるため、ジュネーブの海外事務所の新設その他海外宣伝網の充実、宣伝資料の作成、総合観光案内所の運営等に必要な費用及び管理費の一部を国際観光振興会(仮称)に対して補助するものであります。
第二に、ユースホステルの整備に必要な経費として、五千二百八十六万四千円を計上しております。これによりまして、内外青少年の交歓による国際親善の促進と健全な国民旅行の発展をはかるため、十ヵ所の公営ユースホステルの建設を行なうこととし、その整備費の一部を補助することといたしております。
第三に、国際観光施設の整備に必要な経費として三千万円を計上しております。これは、わが国に来訪した外客の旅行を便宜快適ならしめるため、重要な国際観光地に有料休憩所及び観光案内地図板を整備することとし、その費用の一部を地方公共団体に対して補助するものであります。
第四に、オリンピック東京大会時における外客の増加に対処するために必要な経費として、九十五万四千円を計上し、ガイドの臨時試験、講習会等を実施して、ガイド不足の解消をはかることといたしております。
次に、海上保安関係について申し上げます。
第一に、海難救助体制と海上治安体制の強化をはかるため、老朽巡視船艇九隻の代替建造を行ない、航空機の増強、航空基地の拡充をはかることとし、九億五千九百九十七万八千円、国庫債務負担行為額三億三千八百四十四万円を計上しております。さらに、密航、密輸等続発する海上犯罪の広域化、悪質化に対処し、高速機動艇の増強、ロラン受信機の整備等を行なって、海上警備力を強化するとともに、海上保安組織を強化し、通信施設を整備するため一億八百四十一万九千円を計上しております。
第二に、船舶の航行の安全と運航能率の向上をはかるため、航路標識の整備に必要な経費として、十二億六千五直万円を計上しております。これによりまして、港湾標識、沿岸標識等を新設するほか、既存航路標識について、老朽標識の代替、集約管理体制の強化等を推進し、その機能の向上をはかることといたしております。
次に、気象関係について申し上げますと、第一に、防災気象業務の整備に必要な経費として五億四千五十九万円を計上しております。これによりまして、富士山及び福井に気象用レーダーを設置し、九州西部沿岸に沿岸防災用観測施設を設け、その他、水害、地震及び火山の観測施設を整備するほか、防災気象官六名を増員して、台風、豪雨雪、高潮、地震等の災害防止体制の充実強化をはかるとともに、農業気象業務の対象地域を拡張する予定であります。
第二に、気象関係通信施設の整備に必要な経費として一億六千百七十五万七千円を計上しております。これによりまして、無線模写放送施設及び気象官署間の通信施設の整備を実施するとともに、国際気象通信施設を整備して、わが国の国際的気象中枢としての機能を高めててまいりたいと考えております。
最後に科学技術関係について申し上げます。
第一に、船舶技術研究所の整備拡充に必要な経費として五億九千五百九万二千円、国庫債務負担行為額三億一千二百四十二万八千円を計上いたしております。これによりまして、三十八年度に引き続き基本的な研究施設たる大型高性能試験水槽の新設工事を推進するほか、電子航法評価試験体制の強化をはかり、研究試験の充実を期しております。
第二に、港湾の建設及び防災に関する技術の向上をはかるため、港湾技術研究所の研究施設の整備に必要な経費として三千四百八十万三千円、国庫債務負担行為額五千百三十万円を計上しております。これによりまして、港湾施設の耐震性に関する研究等の重要研究を推進する予定であります。
第三に、気象研究の推進に必要な経費として四千二百十八万一千円を計上し、集中豪雨雪の研究をはじめ、宇宙線観測、地球の内部開発等国際的協力のもとに展開される研究の推進をはかることといたしております。
第四に、科学技術応用研究費補助に必要な経費として七千百五十万円を計上してております。これによりまして、民間が分担する試験研究を促進し、運輸に関する科学技術の振興をはかる所存であります。
以上をもちまして昭和三十九年度の運輸省関係の予算についての御説明を終わります。
次に、昭和三十九年度日本国有鉄道予算の概況につきましてご説明申し上げます。
昭和三十九年度の予算の編成にあたりまして、まず、三十九年度におけるわが国経済の見通し及び国鉄輸送需要の動向並びに昭和三十九年十月に開業予定の新幹線を考慮して、収入を見積もるとともに、国鉄の輸送力の増強及び輸送の近代化並びに保安対策の強化に重点をおいて支出予算を組んだ次第であります。
以下、収入支出予算について、損益、資本及び工事の各勘定別に御説明申し上げます。
まず、損益勘定について申し上げます。収入といたしましては、鉄道旅客輸送人員を六十三億六千五百万人、輸送人キロを一千六百三十七億人キロと想定いたしまして、旅客収入を対前年度一六・四%増の三千八百三十二億円と見込み、また、鉄道貨物輸送トン数を二億一千九百万トン、輸送トンキロを六百二十五億トンキロと想定いたしまして、貨物収入を対前年度二・七%増の二千二百二十億円と見込んでおります。以上の旅客及び貨物収入のほかに、雑収入等を見込みまして、収入合計六千二百六十六億円を計上いたしております。
他方、支出といたしましては、経営費のうち、人件費につきましては、三十九年度の昇給と期末手当、奨励手当三・七ヵ月分を見込みまして、給与の総額を二千六百五十五億円といたしております。物件費につきましては、節約に特段の努力を払わせることといたしておりますが、おもなものといたしまして動力費四百五十三億円、修繕費八百二十六億円等を見込んでおります。これらを合わせまして、経営費総額は四千四百七十八億円となっております。以上の経営費のほかに、受託工事費四十億円、利子及び債務取り扱い諸費三百九十九億円、減価償却費六百八十五億円、資本勘定へ繰り入れ五百九十九億円を見込みまして、支出合計六千二百六十六億円を計上いたしております。
次に、資本勘定について申し上げます。
収入といたしましては、先ほど申し上げました減価償却引き当て金六百八十五億円、損益勘定からの受け入れ五百九十九億円に、資産充当四十一億円、鉄道債券を一千五十五億円、資金運用部等からの借入金四百七十億円券加えまして、収入合計二千八百五十億円を計上いたしております。
他方、支出といたしましては、このうち二千三百九十七億円を工事勘定に繰り入れるほか、借入金等の償還に三百六十六億円、日本鉄道建設公団(仮称)及び帝都高速度交通営団等への出資に八十七億円を予定いたしております。
最後に工事勘定について申し上げます。
三十九年度は輸送力の増強及び輸送の近代化並びに保安対策の強化に重点を置き、本年開業予定の東海道幹線増設工事を完成するとともに、主要幹線の複線化、電化・電車化、ディーゼル化、さらには通勤輸送の混雑緩和、踏切及び信号保安施設の改良等をはかるために、二千三百九十七億円を計上いたしております。
以下、工事勘定の内容について御説明申し上げます。
まず、東海道幹線増設工事につきましては、昭和三十四年度に着工してから六年目を迎え、工事も最終段階に入り、工事費の最終年度分として六百四十三億円を計上いたしております。
次に、通勤輸送対策につきましては、東京付近八十五億円、大阪付近十六億円、電車増備七十六両十六億円、計百十七億円を計上し、輸送需要の増大に対処するとともだ、混雑緩和をはかることといたしました。
次に、幹線輸送力増強につきましては、前年度より三百四億円と大幅に増額いたしまして八百億円を計上し、東北本線、常磐線、上信越線、中央本線、北陸本線等輸送能力の限界近くまで利用されている諸幹線の輸送力の増強をはかり、これらの線区における輸送の隘路をできるだけすみやかに解消することといたしました。
次に、電化・電車化につきましては、工事費六十一億円、車両費三十四億円、計九十五億円を計上し、現在工事中の東北本線、常磐線、信越本線、北陸本線、中央本線及び山陽本線の電化を促進いたしますとともに、既電化区間の電車化を積極的に行ないまして、列車回数の増加等輸送力の増強をはかるとともに、サービスの改善と経営の合理化に資することといたしました。
次に、ディーゼル化につきましては、施設費十一億円、車両費六十三億円、計七十四億円を計上し、電化されない区間のディーゼル化を促進することといたしました。
次に、諸施設の取りかえ及び改良につきましては、前年度より百四十五億円増額いたしまして、五百六十一億円を計上し、緊急に整備を要する踏切及び信号保安施設の大幅な改良をはじめとして、諸施設及び車両の取りかえ及び改良をはかることといたしました。
以上のほかに、総係費百七億円を加えまして、支出合計二千三百九十七億円を計上いたしております。これらに要する財源といたしましては、資本勘定から受け入れます二千三百九十七億円を充てることといたしております。
以上、御説明申し上げました日本国有鉄道の予算につきましては、予定されました収入をあげ、予定されました工事計画を完遂するために特段の努力が必要であろうと考えられますので、公共企業体としていま一そうの経営合理化をはかり、もってわが国経済の発展に資するよう指導監督してまいる考えであります。
以上、昭和三十九年度日本国有鉄道の予算につきまして御説明申し上げました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/10
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011・川野芳滿
○川野委員長 次に、今国会に予定されております運輸省関係の政府提出法案について説明を聴取いたします。今井官房長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/11
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012・今井榮文
○今井政府委員 御説明いたします。
提出法案の総計は現在十三件を予定いたしております。この中で予算関係は四件、その他が九件ということになっております。なお、国会承認案件が一件ございます。
第一は、日本鉄道建設公団法案でございます。これは本日提案さしていただいたものであります。
その次に、運輸省設置法の一部を改正する法律案でありまして、これは三点ございます。第一点が、昭和三十六年から伊勢湾台風の災害復旧のためにつくりました伊勢湾港湾建設部を第五港湾建設局に改組するということでありまして、これは名古屋、四日市あるいは清水等の東海地区の港湾工事が非常に増大いたしまして、これを恒久的に所管するため、つくることがより能率的であるという見地から、第五港湾建設局に改組したいということでございます。第二点は、東京陸運局の自動車部を自動車第一部、自動車第二部に分けるという改正でございまして、現在東京管内の自動車数あるいはそのほかの免許案件等につきましても、三分の一以上に達しておりますので、これを貨物と旅客に分けまして所管しようということでございます。第三点は、定員の増加でありまして、二百六十四名でございます。
その次が特定船舶整備公団法の一部を改正する法律案でございますが、これは今度の予算でお願いいたしまして、老朽貨物船、運炭機帆船の代替建造あるいは港湾荷役機械の新造をすることになりましたので、この点で改正をお願いすることにしております。
その次が、道路運送車両法の一部を改正する法律案でございますが、これは手数料の改正に関するものでございまして、小型が二百円を三百円、大型が三百円を四百円にするという内容のものでございます。
その次が、国際観光ホテル整備法のの一部を改正する法律案でございますが、これはことしのオリンピックを控え、外国の旅客の接遇の充実に資するため、登録ホテルあるいは登録旅館につきまして宿泊約款に関する届け出制度をつくる、あるいはまたホテルの施設につきましての登録基準を整備する、こういう内容のものでございます。
水先法の一部を改正する法律案でございますが、水先が現在非常に少ないということと、それからさらに水先の業務の重要性にかんがみて、運輸大臣の監督権を強化したいという趣旨のものでございます。
その次が海上運送法の一部を改正する法律案でございますが、これは内航の旅客定期航路につきまして運輸大臣の監督権を強化したい趣旨のものでございますが、外国関係につきましては問題がいろいろございますので、現在外務省その他と法案の内容等について折衝いたしておる段階でございます。
それから次が海上衝突予防法の一部を改正する法律案でございますが、これは海上人命安全会議におきまして灯火あるいは新たに出てまいりましたレーダー等に関する規定が変わることになりましたので、これに対応して国内法である本法を改正しよう、こういう趣旨のものでございます。
その次が小型船海運業及び小型船海運組合法の一部を改正する法律案でございますが、これは現在五百トン未満のものに適用しておりますのを内航船全部に適用したいということとそれからさらにこれによりまして現在の内航の過剰船舶の船腹調整をやりたいという趣旨のものでございます。これは一連の内航対策に関連する法案でございます。
それからその次が臨時船舶建造調整法の一部を改正する法律案でございますが、これは従来から時限法で延長をお願いしてまいったものでございまして、今度三月三十一日限り効力を失いますので、さらにこれを四年間延長させていただきたいという趣旨のものでございます。
それからその次が道路交通に関する条約の実施に伴う道路運送車両法の特例等に関する法律案でございますが、これはオリンピック等を控え、外客の相当の増加が期待されますので、外客の日本における行動を便利ならしめるために、道路交通に関する条約に加盟いたすということになりますと、国内法を改正いたしまして、登録、検査等についても特例をもうける必要があるわけであります。
その次が日本観光協会法の一部を改正する法律案でございますが、これは日本観光協会を国際観光振興会に改めまして、政府の補助は国際観光に完全にこれを集中いたしまして、観光協会そのものを純化しようという趣旨のものでございます。
それからその次が旅行あっ旋業法の一部を改正する法律案でございますが、これは外客の増加を一応予想いたしまして、旅行あっせん業者の不正行為等の防止に万全を期するため、現在の営業保証金額をある程度引き上げるということによりまして、業者を制限していきたい、こういう趣旨でございます。
以上が法律案でございますが、に現在お願いしております海運局等の出張所の新設につきましては、地方自治法におきまして国の行政機関をつくる場合に国会の承認を受けなければならないというものに該当いたしますので、これの承認をお願いする案件でございます。
以上、簡単でございますが、御説明を終わります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/12
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013・川野芳滿
○川野委員長 次に、海運に関する件及び港湾に関する件について調査を進めます。
質疑の通告がありまので、これを許します。久保三郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/13
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014・久保三郎
○久保委員 ただいま御説明になった予算あるいは法律案等につきましては別の機会にまたお尋ねしますが、さしあたって大臣に二、三お伺いしておきたいのですが、一つは昨日まで開かれました日米合同委員会で、シップ・アメリカンに対してそれぞれ日本の立場からその改善について御要求なさったと思いますが、これに対してどういう反応がございましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/14
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015・綾部健太郎
○綾部国務大臣 いわゆるトーキング・ペーパーと申しますか、一般の議題のときにおきまして、私は私の所管として、御指摘のシップ・アメリカンの問題のあるいはボナー法に対する見解等につきまして、向こうの担当官であるホッジス氏に言ったのでございますが、ホッジスさんは所管のほんとうの大臣じゃないらしいですね。それで要領を得ないのです。そしてそれは自分はよくわからないから帰ってよく運輸大臣に——意のあるところをそれぞれ責任者に伝えるという話でありましたから、われわれはこの問題については日本海運の再建に関して非常に重要な影響があるものであるからして、今後駐米大使を通じて執拗に聞きただすつもりであるから、さよう御了承を願いたいということで、一般の場合に個別に、昨日二時半から約四十分間ホッジス氏と個別会談いたしましたときもそれを強く要望いたしましたが、依然としてそういう答えであって、駐米武内大使を通じてさらに交渉を進めたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/15
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016・久保三郎
○久保委員 お尋ねしますが、合同委員会の討議の案件と申しますか、そういうものについては、事前に相互交換されてやっておられると承知いたしておるわけですが、そういう方法を今回とられておるでしょうか。おるとするならば、前もってこちらの側のシップ・アメリカンに対するところの考え方、これは一応向こうに伝わっていると思うのですが、これはどういうふうになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/16
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017・綾部健太郎
○綾部国務大臣 あらかじめトーキング・ペーパーというものを用意しまして、各自の主張を相互に申し合っておるのであります。しかし向こうのホッジスさんは、それについて適当な答えができないという一点ばりで、私もはなはだ遺憾としておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/17
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018・久保三郎
○久保委員 前もってトーキング・ペーパーを渡しておられれば、ホッジス商務長官はなるほど担当ではないようでありますが、担当でないとするならば、アメリカの代表としていらっしゃるのだから、やはりアメリカ国内において意見調整をしてこの会議に臨まれるのが好ましい姿だと思うのであります。どうもお話を聞いておりますと、そういうこともなくて、ただ自分の所管外であるからいずれ帰ってからそれぞれの向きに伝えようというので、言うならばアメリカ側の一方的な考えといっては語弊がありますが、どうも日本は軽くあしらわれたかっこうだと思います。せっかく貴重な時間を両方ともさいて日米の案件を友好裡に解決しようというような貴重な会合だったと思うのでありますが、どうもこういうことでは何か儀式みたいであって、実質的な討議ではなさそうに思うのです。運輸大臣は初めて御出席だと思います。もちろんいままでの運輸大臣というものはこの会議から除外されておりました。出席したことは一つの進歩でありましょうが、扱いとしてはやはりいままでどおり進歩はない。しかもかような問題は御承知のとおり昨年の国会で大きな論議をいたしまして、言うなれば政府の強権にもひとしいような形で集約合併をやろうという、そのさなかにおいて一番大きなガンは、ただいま提案の中にもありましたように、対米航路の調整の問題であります。ところが何ら前進がないばかりか、最近においてはさらに書類提出の問題も出ている。幸い運輸大臣は国内海運会社に対してその提出を見合わせるように指示をしておるようであります。そういう差し迫った問題がひとつも解決しない。解決しないどころか、話はとにかく所管外だから承って帰ってからにいたしましょうというのでは、どうも用が足りないと私は思うのですが、いかにお感じでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/18
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019・綾部健太郎
○綾部国務大臣 大体、あなたのおっしゃるような趣旨を私も強く要望いたしました。そういたしましたところが、結論はただいま私が申し上げたとおりでございまして、はなはだ遺憾であります。私はこの点についてホッジスさんに極端にわたることを強く言ったのですが、どうしてもそれ一点ばりでどうにもならなかったということは、私は非常に遺憾であります。そして海運対策を国内で幾らやったってあなたの国がかってにやっていることで非常に何されて困るということを強く重ねて要望いたしておいたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/19
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020・久保三郎
○久保委員 けさ新聞に発表になった共同コミュニケを見ますと、運輸大臣がおっしゃるような考えはへんりんも、一つも入っておらぬで、まことに友好裏に終始して成果があがったように書いてありますが、共同コミュニケの草案をつくる場合に、それぞれ外務省の審議官か何かがやっておりますが、共同コミュニケにもそういうことを入れるようなことはしなかったのですか。ある程度外交的な問題でありますから、ここでお話するようなわけにはまいらぬと思うのでありますが、少なくとも日本側の意のあるところは、共同コミュニケに重要な問題として、シップ・アメリカンの問題は入れるべきだと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/20
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021・綾部健太郎
○綾部国務大臣 共同コミュニケにつきましては双方から委員をこしらえまして、そして日本は外務省の黄田審議官が、アメリカ側は何とかいう人があたってやったのですが、黄田審議官にそのことを私も言うたのですが、どうもやはり採用にならなかったのです。いかなる理由によるか、私もすこぶる遺憾に思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/21
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022・久保三郎
○久保委員 日米合同委員会は名前の示すとおり経済と貿易が主体でしょう。でありますから、もちろん今度の合同委員会が中共の問題を、中国問題を含めて政治的な問題に終始したことは、これは時期的にもわかります。わかりますが、問題の本質はそういう政治的な問題とは別に——政治といっては語弊がありますが、少なくとも合同委員会の性格からいって、貿易、経済の問題に力点が置かれないことは、これははなはだしく会議の性格をゆがめたのではないかと私は思うのです。しかも中国問題が当面の問題であります、一番大事です。これは日本にとっても大事、アメリカにとってももちろん大事ですが、討議するなとは言いませんが、これに力点を置いただけであって、本来の貿易、経済問題については、特にシップ・アメリカン、バイ・アメリカンの問題については前進がない。その中でもシップ・アメリカンについてはどうものれんに腕押しといいますか、どうも言っただけで聞いておきましょう、こういうことでは何のために会議をおやりになっているのか、私はどうも不可解に思うのです。運輸大臣はどう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/22
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023・綾部健太郎
○綾部国務大臣 私も一非常に遺憾に思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/23
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024・久保三郎
○久保委員 これは閣議であとの成果というか、合同委員会についていろいろ御検討なさると思うのです。まだなさっておりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/24
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025・綾部健太郎
○綾部国務大臣 さきに申しましたように、向こうがどうもよく問題の本質をそこまで了解していないようなんです。そこで私はあらためてこういう趣旨をいろいろな資料をもって武内駐米大使を通じてさらに話を進めたいから、よく考えておいてくれということを強く要望して会議は終わりました。
それから共同コミュニケにつきましては私ども出席しないし、要望だけはしておいたのですが、運輸、航空関係についてお話をしたということだけ記載されて、その内容が記載されないことは、どうも向こうがよくわからないし、向こうに不利なことは書かなかったのだろうと思って、私も非常に遺憾に思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/25
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026・久保三郎
○久保委員 とにかくこの成果についていずれ近いうちに御検討なさると思うのですが、いまここでお述べになった考えをぜひ会議の中に入れて、もう少しいまのシップ・アメリカン中心に問題を解決の方向に持っていってもらわなければならぬと思っております。
もう一つ、合同委員会に関連して航空の問題でありますが、いわゆるニューヨーク乗り入れ問題、いわゆるビヨンド・ニューヨークの問題を出したと思うのですが、それについて新聞に伝えるところによりますと、ビヨンド東京・香港ということが向こうから出ているそうでありますが、そのとおりでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/26
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027・綾部健太郎
○綾部国務大臣 向こうからはそういう要求はありませんでした。私のほうだけは、海運の問題が一朝一夕に国力の相違でございまして、アメリカでも非常に苦慮しているところでなかなか承知せぬと思いますが、少なくとも航空についてビヨンド・ニューヨーク問題は何とかして解決したいと思いまして、ずいぶん食い下がったのでございます。そこでアメリカから個別会談においてもあなたがいまおっしゃったようなことはないです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/27
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028・久保三郎
○久保委員 そうしますと、大臣から御要求があったこれだけを向こうと討議しただけですか。いわゆるビヨンド東京・香港といいますか、そういうものの申し入れはなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/28
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029・綾部健太郎
○綾部国務大臣 東京・香港の話は一つも出ません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/29
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030・久保三郎
○久保委員 それではニューヨークの問題はいかような結論を得られましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/30
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031・綾部健太郎
○綾部国務大臣 もし日本がそれをやるというと世界一周の航路を日航が持つことになりまして、非常にむずかしいということを言っておりましたが、私は期限を切って、オリンピックにはこの問題が相当重大な影響を日本に及ぼすから、オリンピックまでに何とか解決するように努力してくれ、こう言って、これはあとでラスク長官も午さん会のときに武内大使にそのことについて協力するような意味のことを言うたらしいです。武内大使から言ったのです。武内大使から聞きまして、それに関する資料を整えて、さらにさっき申しましたように強く要求することに努力しております。これもまた向こうの人がどこで宿泊しているやら知らぬのですよ。所管の人はどこかと聞いても、非常に長い間随員が行ったり来たりして、CABか航空委員会というようなものがあるのだろうということで、所管省すらきまっておらないような実情で、来ている人が向うの都合の悪い、役所の責任者が来ていないのは私は非常に遺憾に思ったのですが、実情はそういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/31
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032・久保三郎
○久保委員 そこで一つ提案をいたしますが、この問題は会同委員会では、大臣所管の問題については成功というようなことにはとてもいかない。むしろ未解決のそのままであって、ちっとも前進しておらぬというならば、この際アメリカ側の責任者とあなたとの間の会合を一ぺん早急にやるべきだと思うのですが、いかがでしょう。合同委員会でちっとも話に乗らないような人をよこして合同委員会をやりましたと言ったって困るのであります。これは当然あなたはきのうの席で要求なさるのがほんとうでありますが、あらためて一つ運輸関係のこの海運と航空の問題について話し合いをしようじゃないかこういう提案をなさるべきだと思ったのですが、なさらぬようでありますが、それは近くあなたの責任においてやるべき仕事だと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/32
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033・綾部健太郎
○綾部国務大臣 私は武内大使の交渉の結果に基づきましてそういうことを言うようになるかもわかりませんが、武内大使に一両日のうちに会って、主張その他をやって何しまして、その結果に基づいてそういうことを要求するかもわかりません。それで難問題は、お互いに両国の大使がおるのだから、大使同士でやっていくように持っていったらどうかという意味のことも思っておるものですから、ライシャワー大使に言うか、武内君の報告を待ちまして善処いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/33
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034・久保三郎
○久保委員 大使がおるからそれで事足りるのでありますれば、大使がおれば合同委員会の必要もないのですよ。実際これは大使では始末に負えないというのが今日までの問題じゃないですか。シップ・アメリカン一つとっても長年の懸案、あるいはニューヨークの問題一つとっても長年の懸案事項ですよ。そこで合同委員会という特殊な会議が必要であったと思うのです。だから運輸省関係からすれば、いまのお話のように、従来どおりの大使を通じて話し合いをしよう、単なる外交的な普通のやり方でやっていこうということでは前進はないと思うのです。もう少し本腰を入れて、乗り気になっておやりになるべきだと思うのです。これは提案でありますから私は別に固執しませんが、もし解決するならどういう方法でもけっこうです。どうも成果がちっともあがっておらないし、軽く見られたのではないかと私は思うのです。またアメリカが、非常に難問題なので、問題を回避するためにそういう配置をしたのではなかろうかとさえ推測するのでありますが、これはいずれかわかりませんが、いずれにしてもこの二つの問題は大きな問題だろうと思うのです。
そこで時間がありませんから次の問題に入ります。次にプラント輸出の問題と輸出所得控除制度の問題についてお聞きしたいのであります。御案内のとおり、輸出所得の控除制度は、この三月でなくなるわけであります。ところがプラント輸出のすでに契約したものが相当あって、しかも引き渡しが四月以降になるものがだいぶある。これは船舶もその一つ、あるいは重電機あるいは鉄道車両がございます。運輸省関係では鉄道車両と船舶と二つあります。しかもお聞きしますと、約六千億くらい既契約分があるそうであります。そのうちの半分以上が船舶だといっております。この制度をやめるということも、これは時代の進運に伴って万やむを得ないところだと私は思うのです。しかしながら、すでに契約した分は、輸出所得控除制度があるという前提に立ってそれぞれ契約しているわけです。ところが引き渡しがおそいためにこの控除制度が全然適用にならぬということでは、ここでプラント輸出に大きな打撃を与えるだろうと思うのです。そういうことを考えると、この制度の暫定措置というか、経過措置というものは、やはり当分あるべきだろうと思うのです。少なくともいままでの契約については、その制度を活用するということくらいの配慮がなければ、プラント輸出、特に船舶、車両、こういうものは打撃を受けると思うのです。この交渉はなさっておると思うのですが、どういうようになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/34
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035・綾部健太郎
○綾部国務大臣 もちろんそれはやっております。やっておりますが、これは大蔵省がなかなか聞かないので、実は弱っているのです。まだ結論に達しませんが、事務的段階においては、大蔵省が控除しないという方針のもとに予算の収入に見込んであるからなかなか困難だという一点ばかりで、いまなお停とんいたしておるのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/35
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036・久保三郎
○久保委員 事務的折衝で停とんしておるというが、もし運輸大臣のお考えが、いま私が言うとおりに、さしあたり既契約分についてのみはやるべきだという御主張なら、事務的折衝でだんだんやっていけば、三月で切れてしまう。だからこの際はもう事務的折衝段階でなくて、いわゆる政治折衝段階だろうと思うのですが、大蔵大臣とは御折衝なさっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/36
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037・綾部健太郎
○綾部国務大臣 事務的折衝がまだ結論に達しませんから、私はまだ大蔵大臣とは政治折衝はいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/37
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038・久保三郎
○久保委員 そうしますと、大臣は事務的折衝の段階で解決するような見通しでもおありなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/38
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039・綾部健太郎
○綾部国務大臣 私はそういうことを期待しております。もう当然のことですから、そういう前提で契約をしたのです。日本が日本の法律で既契約分をそれからなにしないということは不合理ですから、私は事務的に解決するものと期待して、まだその結論を得ませんので、結論を得たら大蔵大臣と交渉しようと思っております。しかし大蔵省の言い分としては、すでにそれをないものとして一方的に予算の収入の部類に計上しておるやに事務的折衝の間に聞いており、なかなか困難であるということを聞いておりますが、まだ望みを捨てずに折衝しておるようですから、その結果を待ちまして交渉しようと思っております。いずれにいたしましても、造船その他につきましては、おそらくは通産省も、輸出に関することですから、私のほうよりもより深刻な関係があってやっておるだろうと思いますが、いよいよ事務的に折衝ができないという場合には、大蔵大臣に折衝するつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/39
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040・久保三郎
○久保委員 通産大臣とはお話しになっていないようですね。いづれにしましても、事務的折衝に期待を持っておられることはけっこうでありますが、お話の中から推測すれば、どうも事務的折衝では事は解決しない。たとえばお話の中にあった予算に組み込んであるということになりますれば、大蔵省の事務官僚としてはなかなか計算できませんから、これにイエスという答えを与えることはできないと思います。そこでこの辺でやはり不安動揺を一掃して、既契約分についてのみは暫定措置をとるならとるという御方針を打ち出すなら打ち出して、やはり閣議の席で決定するとか、そういう政治折衝の段階だと思います。これまた一つの要望でありますが、そのけじめを早くつけたらいいのじゃないかと思います。そうじゃないと、これは海運関係の集約に伴って、特に船舶の問題、造船のほうは、御承知のように来年度もそうたくさんの船腹増強というか、新造はなさそうであります。そうなりますれば、そうでなくてさえ中小造船その他の問題もあるわけでありますから、やはりこういう造船業の全体を見てこの問題を処刑されることをひとつ考えてほしいと思います。
次に申し上げたいのは、港湾整備五ヵ年計画でありますが、先ほど御説明になりましたとおり、三十九年度を初年度とする新五ヵ年計画を策定しておやりになるそうでありますが、これは聞くところによれば、五ヵ年計画全体の規模はまだコンクリートされていない、閣議決定していないということでありますが、これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/40
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041・綾部健太郎
○綾部国務大臣 それは全体の五ヵ年計画のアフターケアの一つとして、全体に対する手直しと申しますか、考え方につきまして、一応経済企画庁の中に審議会のようなものがありまして、その審議会に従いまして、港湾はどのように直す、何はどのように直す、そうして来年度の収入の見通しはどうというようなことについて協議し、審議会の答申を待って、それに基づいてきまるものであると心得ておりますから、五ヵ年計画を策定するということには正式に決定しておりますが、三十九年度は予算がきまっておりますから、四十年度以降五ヵ年の見積もりにつきましてはその結果を待たなければきめられないということは、実際は私はそうであるべきだと思っております。それがきまりますればわれわれの要求もたぶんきまるものと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/41
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042・久保三郎
○久保委員 五ヵ年計画を改めるということでありますから、アフターケアの問題を勘案して五ヵ年計画全体をきめるべきだと思いますね。その中の初年度三十九年度だと私は了解する。そうでしょう。そうだとすれば、全体がきまらないのに三十九年度をどういう方向でつけたのかわからない。全体計画が七千二百億という要求だそうでありますが、七千二百億だとすれば、三十九年度を一年目としての考えでしょう。全体計画がコンクリートされていないのに、これで新しい計画だと言っては、これは実際理屈として合わないですね。だから三十九年度の初年度の問題はどういうふうな方向でやるのですか。なぜコンクリートできないのですか。本来ならば、アフターケアで、いま経済企画庁がやっているその作業に合わせてやはり五ヵ年計画を全部改定する。その改定の中の第一年目の三十九年度ということなら話はわかるのですが、三十九年度が先に出てきて、あとはあとで全体をきめるのだというのでは、権威がなさそうに思うのですが、どうでしょう。三十九年度の港湾整備計画は、いうならばいままであったところの五ヵ年計画と、これからできようとするところの五ヵ年計画のあいのこである、こういうふうに思っていいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/42
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043・綾部健太郎
○綾部国務大臣 それは、私どもといたしましては、七千二百億の五ヵ年計画を、私のほうで港湾の行政の立場からそれを考えまして、それは毎年予算に必要なだけ要求する。その収入の見通しが立たないのだから、しばらく時間をかすより私は方法がないと思っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/43
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044・久保三郎
○久保委員 とにかく運輸大臣、去年はあなたはたいへん精力的にいろいろおやりになったようだが、ことしはどうも点数は減点ですぞ。大体五ヵ年計画を改める、新五ヵ年計画と説明されながら、新五ヵ年計画全体はまだきまりませんでは、これは、予算委員会にこれから参りますが、ちょっと通らぬのではなかろうかと私は思うのです。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/44
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045・綾部健太郎
○綾部国務大臣 その、五ヵ年計画は、まとまらぬというのではない。五ヵ年計画はまとまっているのです。その三十九年度の予算が本年、四十年度、それからそれ以降につきましては、ただいま申しましたように、全体のバランスを見て、そうしてわれわれは七千二百億なければいかぬという私のほうの主張を通すつもりでやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/45
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046・久保三郎
○久保委員 そうしますと、この予算の、いま御説明になったのは違いますぞ。あなたが御説明になったのはそう言っておられませんぞ。「三十九年度を初年度とする」とここに書いてありますよ。渡された印刷物の十八ページですが、「今回昭和三十九年度を初年度とする新たな五ヵ年計画を策定して港湾の整備を急速に推進することといたしました。」こう御説明なさったのです。いまの御説明とはちょっと違うのではないですか。新しい五ヵ年計画は、七千二百億策定するといっているが、それは運輸省だけであって、閣議決定になっておらぬじゃないですか。緊急整備法に基づくところのコンクリートができてないでしょう。そこがおかしいではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/46
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047・綾部健太郎
○綾部国務大臣 それは一つも私は矛盾してないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/47
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048・久保三郎
○久保委員 とにかく港湾計画が七千二百億要求しておることはわかっています。ところがこれは閣議決定されてない。決定されてないのは案ですよ。運輸大臣の手元にあるものは案でありまして、経済企画庁の長官なり大蔵大臣と協議して、閣議の決定承認を求めるということになっていますね。それで五ヵ年計画は策定できるのです。五ヵ年計画は固定するのです。いま七千二百億というのはあなたの案ですよ。案だけであって、この予算の三十九年度初年度というのは、国会として受け取る場合には、おかしいです。そうでしょう。だから、これをなぜできないかという問題がある。あなたがおっしゃるように、アフターケアの問題を策定して云々とおっしゃるが、そうではなくて、やはり政治的な問題ではなかろうかと私は思うのです。ここらのところに、先ほど替ったように、減点分があるのではないかと私は思うのです。これはやはり予算審議中にコンクリートしないと、大きな問題になると思うので、一番申し上げておきたいと思います。いずれそういう問題は予算委員会でおやりになりましょうから、私も都合で出てまいりますから、そのときまでにひとつコンクリートしておくように要望しておきます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/48
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049・川野芳滿
○川野委員長 次に、陸運に関する件について調査を行ないます。肥田次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/49
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050・肥田次郎
○肥田委員 私は大臣に、陸運行政の関係で大臣の考え方を少しただしておきたいのですが、先般、東京の大手のバス会社が運輸大臣を相手どって行政訴訟を起こす、こういうニュースが出ております。新聞にもちょっと載っておりましたが、あれはもう何か実際に行政訴訟をやっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/50
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051・綾部健太郎
○綾部国務大臣 いや、まだ行政訴訟をやる段に至っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/51
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052・肥田次郎
○肥田委員 そこで私がお聞きしておきたいのは、昨年の夏に大阪のタクシー料金の値上げの申請をして、そうしてそれが陸運局で許可になりました。許可になったところが、これに対して中央で文句がついて、一時延期するという状態になりました。そして一時延期をしたようなかっこうになったところが、業者が、そういうことならタクシー料金の値上げを強行するといういわゆる強硬な態度に出て、結局は、はっきり記憶しておりませんが、二十日くらいでしたか、いわゆる認可になつたといわれる日からおくれてこれが実施された、こういう状態が起こりました。いわゆる陸運局長の権限内で認可をされたものが、閣議で問題になったり、あるいは経済企画庁長官が文句をつけて、それで実施をおくらすというような実質上の問題が起きてきたということは、料金を値上げするとかしないとかいう問題とは別に、行政上のあり方として、そういうふうな姿が運輸省内にあり、地方と中央とそれから政府内でこういう問題が起こるというのは、どうも奇異の感じを持つ。昨年の年末におきましても、東京都のタクシーの料金の値上げについて、これもごたごたしておりましたが、結局今年の一月一日から値上げを実施する、こういうことになった。こういうふうなことが起きてきて、そして結局またこのたび行政訴訟を起こす、しかもその言い分としては、運輸大臣が不当に料金を抑制しておるからというような言い分があるようです。そこで、この最近のバスあるいはタクシーだけにかかわらず、早晩起こってくる問題は、海上その他の輸送料金の問題が表向きになってくると思うのですが、そうすると、運輸大臣が地方に出て言われる言葉と経済企画庁長官が地方に出て言う言葉とが全く相反しておるのですね。経済企画庁長官は公共料金は絶対に上げないと言っておる、それから運輸大臣は必要に応じてはやはり上げるような口ぶりも出てくる。こういう結果がこういう公共料金類似の輸送料金に対していろいろと個々の解釈が違ってくるだろうということも、予想される。そこで私が大臣にお聞きしたいのは、要するにいまの公共料金あるいはそれに類するところの輸送料金というものについて、実際にどう考えておられるのかということが一つなんです。たとえば経済企画庁あたりで盛んに言うところの横浜その他の六大都市のバス料金は、要するにバスの料金を上げなくても、人件費が高過ぎるのだ、人件費を下げれば公共バスは赤字にはならないのだ、こういうふうな言い方をしておりますが、この点については私ら全く反対な考え方を持っておる。従業員の労働対価であるところの賃金が高いとか安いとかいうようなことは、その経営の内容によって公々すべきものじゃない。本質的に最低の生活を維持するところの賃金というものは払わなければならぬ。それを、あたかもバスの従事員の賃金が高いからこのような赤字が出るのだ、そういうふうな口実をもって六大都市のバスの料金の値上げを押えようとするやり方というものは、これは全くこそくなやり方なんです。だからおのずから料金というものと地方公共企業におけるところの交通事業のあり方というものとは別な見方をされるべきなのに、それを一つのものにからみ合わせていろいろと言っておる。結局料金についていまの料金が妥当なのかどうかという考え方をひとつはっきりさしてもらいたい。それから料金が政治的手段において押えられたりあるいは引き上げられたりすることは当然だと私は思う。その点を運輸大臣としてはっきりしてもらわなければ、われわれがいわゆる料金問題を議論する際に、運輸大臣がこう考えておられるだろうと思って、われわれもその線でできるだけと思ってやっても、どうも違ってくる場合があるのですね。この点ははっきり大臣の考え方というものを聞かしてもらいたいと思うのです。それから、言うように、事実行政訴訟を起こしたというような場合には、はたして大臣はその祭にそういう点についてどういうふうな判断をもって対処されるのか、いわゆる料金というものと行政上の問題をどういうふうに大臣は処理されるのか、この点をひとつ聞かせておいてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/52
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053・綾部健太郎
○綾部国務大臣 今回のバスの料金につきましては、その本質的の論議以前の問題として、内閣の方針でそうきめざるを得ないようになったのでございまして、これはあなたの言う本質論を超越しているのです。それで私もはなはだ遺徳に思いますが、政府の方針だから、私はこれに従っている、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/53
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054・肥田次郎
○肥田委員 どうもわからぬのですが、大臣の考え方と政府の考え方と相反するけれども、これは方針だからと、こういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/54
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055・綾部健太郎
○綾部国務大臣 私は経済の純理論からすれば植上げすべきであると思うのです。しかし世の中のことは理屈どおりにいかぬことがたくさんあるのですよ。その一つが、この公共料金を純経済論としていかなくて、政治的に上げないときめたということで、そこに意義があると思うのでございまして、私はそれに従わざるを得なかったからそれに従ったのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/55
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056・肥田次郎
○肥田委員 そうすると、くどいようですが、料金の適否についてはおのずから考え方は別だ。しかし六大都市やあるいは東京都の私営バスというものについては政府が上げないという方針だから、その方針に従っておる、こういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/56
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057・綾部健太郎
○綾部国務大臣 そのとおりです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/57
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058・肥田次郎
○肥田委員 そうすると、大臣に対して今度はいろいろと聞きたいことがありますけれども、これはまたの機会に聞くことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/58
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059・久保三郎
○久保委員 ちょっと関連して。——大臣、いまのお話でありますが、そうだとするなら、公共料金の物価に対する影響、特に心理的な影響も多いと思うので、これのストップというか、そういう方針はそのとおりでいいと思うのです。しかし経営の問題を担当される大臣としては、政府の方針を是認されてストップだけでは、これは担当大臣としては、少し足りないのではないかとわれわれは考えております。御案内のとおりその経営内容は、特に都市交全体ではありませんが、六大都市に例を引いてもかなりの経営困難を来たしでおります。でありますから、これは別な面からのいわゆる公営企業に対する資金の手当がなければ、残念ながら経営ができない。経営ができなければ輸送量に対する要請にこたえることができない、あるいは保安対策もできない、こういうことであります。こうなりますと残念ながら単純な公共料金ストップだけでは問題は解決しないと思うのです。そこでやはり政策として何かを立てなければならぬ余地があるのです。われわれが申し上げているのは、いわゆる公共料金ストップ、これは実際はやるべきだと思う。しかし経営が困るのでありますから、そういう面に対しては、たとえば公営交通に対して債務を、海運というかそういうものにもありましたように、一定期間たな上げする、あるいは利子の補給をしていくというような方向でこの急場をしのいでいくということが一番妥当な道じゃなかろうかと思うのです。そういう政策を寡聞にしていまだお聞きしないのでありますが、そういう政策を度外視して公共料金ストップだけでは、残念ながら輸送は円滑にいかないと思うのです。そういう御用意はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/59
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060・綾部健太郎
○綾部国務大臣 もちろんそれがあるからこそそう言っておるのでありまして、このことのために経営が困難になった場合には資金の援助をするとか、あるいは一定の期間あなたのおっしゃるような債務負担を延期するとか、そういうことは施設の経営者の申し出によって善処するようにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/60
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061・久保三郎
○久保委員 いま初めてお聞きするのですが、申し出によって善処することの御方針でいまやっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/61
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062・綾部健太郎
○綾部国務大臣 ええ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/62
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063・久保三郎
○久保委員 それじゃそういう債券その他の方法についてはもう一応確立しているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/63
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064・綾部健太郎
○綾部国務大臣 それは幾らになるかわかりませんから、そのときによりまして開発銀行それから中小企業金融公庫その他適当な金融機関、あるいは大蔵省がどういう債券を見つけてくれるかわかりませんが、大蔵省と相談をいたしまして、それによって交通の安全と、それから停滞のないようにするという話になっておるのであります。ただ、いま言ったように、理由はどうしたってないのですけれども、上げることをやめるということだけをきめて、ほかは全部きめてないというのじゃないのです。適当な方法があって適当な額がわかれば、それに対して救済といいますか、善処方を考えるつもりでそういうことに閣議では話がなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/64
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065・久保三郎
○久保委員 いまの大臣のお話では、大体債務の肩がわり程度の問題だと思うのでありますが、債務の肩がわりで救い得ないのが今日の、特に六大都市のいわゆる公営企業である交通運輸の仕事だと思うのです。だから先ほど私が言ったように、債務負担を軽減するという方向にある一定年度置かなければこれは無理だろうと私は思うのです。この点についても御検討いただきたいと思うのです。単なる債務の肩がわりでは、残念ながらこの急場はしのげないと私は見ているのです。いまの大臣の御答弁だとそういう資料も整っていないように思うのですが、運輸省自体ではあるのじゃなかろうかと思うのです。いずれの機会においてか論議しますけれども、単なる債務の肩がわりだけでは、とてもじゃないが、やっていけないと私は思っております。
以上申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/65
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066・川野芳滿
○川野委員 次会は来たる三十一日金曜日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。午後一時散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603830X00119640129/66
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