1. 会議録本文
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000・会議録情報
三月二十五日
赤澤正道君が委員長を辞任した。
同月二十六日
臼井莊一君が議院において委員長に補欠選任さ
れた。
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昭和三十九年三月二十七日(金曜日)
午後零時六分開議
出席委員
委員長 臼井 莊一君
理事 安藤 覺君 理事 正示啓次郎君
理事 高瀬 傳君 理事 古川 丈吉君
理事 戸叶 里子君 理事 穗積 七郎君
理事 松本 七郎君
菊池 義郎君 鯨岡 兵輔君
佐伯 宗義君 竹内 黎一君
野見山清造君 福井 勇君
三原 朝雄君 赤松 勇君
黒田 寿男君 平岡忠次郎君
帆足 計君 松井 誠君
永末 英一君 川上 貫一君
出席国務大臣
外 務 大 臣 大平 正芳君
出席政府委員
外務事務官
(条約局長) 藤崎 萬里君
委員外の出席者
外務事務官
(経済局ラテン・
アメリカ課長) 奈良 賀男君
外務事務官
(経済局スター
リング地域課
長) 橘 正忠君
外務事務官
(条約局外務参
事官) 須之部量三君
外務事務官
(条約局外務参
事官) 兼松 武君
外務事務官
(国際連合局外
務参事官) 力石健次郎君
通商産業事務官
(通商局市場第
二課長) 末岡日出徳君
専 門 員 豊田 薫君
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三月二十六日
委員竹内黎一君辞任につき、その補欠として三
池信君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員三池信君辞任につき、その補欠として竹内
黎一君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
通商に関する日本国とオーストラリア連邦との
間の協定を改正する議定書の締結について承認
を求めるの件(条約第四号)
通商に関する日本国とエル・サルヴァドル共和
国との間の協定の締結について承認を求めるの
件(条約第一〇号)
外交関係に関するウィーン条約及び関係議定書
の締結について承認を求めるの件(条約第一一
号)
関税協力理事会を設立する条約の締結について
承認を求めるの件(条約第一二号)
遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約の
締結について承認を求めるの件(条約第一三
号)(参議院送付)
国際情勢に関する件(日韓問題)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/0
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001・臼井莊一
○臼井委員長 これより会議を開きます。
この際一言ごあいさつを申し上げます。今回はからずも私が当外務委員会の委員長の重責をになうことになりました。練達たんのうなる委員各位の御協力を得まして、大過なきを期してまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。簡単でございますが、一言ごあいさつ申し上げる次第でございます。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/1
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002・臼井莊一
○臼井委員長 通商に関する日本国とオーストラリア連邦との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、通商に関する日本国とエル・サルヴァドル共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。
質疑の通告がありますので、これを許します。戸叶里子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/2
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003・戸叶里子
○戸叶委員 二、三点お伺いしておきたいと思います。
この日豪通商条約は、昭和三十二年に国会に提出されましたときにすでに質疑をいたしましたが、今回のはそれを改正する議定書でございますので、一、二点質問をしたいと思いますが、今回の改正議定書によってどの程度の貿易が伸びるという見通しを立てておられるのか、この点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/3
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004・橘正忠
○橘説明員 お答え申し上げます。
過去三年間くらいに日本とオーストラリアとの貿易が約四割程度伸びてまいりましたので、今度の新しい議定書によります通商関係で、こうした増加の趨勢は大体継続して、さらに発展していくものと期待しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/4
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005・戸叶里子
○戸叶委員 すでに四割程度伸びてきたので、今後この趨勢でいくというのは、大体四割程度伸びていく、この新しい議定書によって四割程度さらに伸びるというお考えでございますか。
それから、そのうちで特に伸びた品目ですね。その点を述べていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/5
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006・橘正忠
○橘説明員 お答え申し上げます。
数字的にどの程度伸びますか、正確なところはなかなかむずかしいと思いますが、日本の買っておりますものも売っておりますものもたいへん伸びておりまして、買うものは、従来羊毛を主として、最近は石炭のようなものも入っております。それから、輸出する品目では、繊維品、それから、最近は機械類が非常に有望な品目となっております。こらしたものに往復ともに貿易が伸びることを期待しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/6
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007・戸叶里子
○戸叶委員 今回の議定書によってガット三十五条の援用を撤回したわけでございますが、いまなお日本との間にガット三十五条を適用しておる国はどういう国があるかを参考のためにおっしゃっていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/7
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008・須之部量三
○須之部説明員 現在ガット加盟国は六十一カ国あるわけでございますが、ヨーロッパのほうで従来三十五条を援用しておりました国は、もうすでに、イギリス、フランス、ベネルックス等ほとんどなくなりました。あと残っておりますのは、ヨーロッパのほうで申しますと、オーストリア、ポルトガル。その他スペインで援用するかもしれないというので、しないように話をしております。大きなところでは大体そんなところになっております。ただ、最近アフリカ諸国が独立いたしまして、その独立後ガットに加入しました際に、イギリスないしはフランスが三十五条を援用しておりましたために、その結果として三十五条を援用した形になっておる国が、小さい国でございますがございます。数から申しますと現在二十六になりますが、大部分がアフリカ諸国でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/8
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009・戸叶里子
○戸叶委員 そうしますと、そういう国々が近い将来において二十五条の援用を撤回するような動きが見られるかどうか、その見通しはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/9
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010・須之部量三
○須之部説明員 これらの国のうちでも、もうすでに日本との二国間の話し合いで三十五条援用撤回をした国も若干あるわけでございます。同時に、今回のガットの会議等の場におきましても、それから二国間の話し合いでも努力しておるわけでございますが、これらの国は、実体的にといいますよりは、むしろ独立の際の法的効果として援用した形でございますので、私どもとしてはなるべく早く正常なガット関係に入ることを期待しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/10
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011・戸叶里子
○戸叶委員 日本側としてはそういう期待をお持ちになっていらっしゃるのですけれども、大体見通しとしては、ことにアフリカ諸国などはその援用を撤回するような状況にあるような見通しを立てていらっしゃるかどうか、それとも、いまおっしゃいましたような二十六カ国は当分このままの状態で続くものと思われるかどうか、その辺の見通しのことをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/11
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012・須之部量三
○須之部説明員 見通しの点、具体的にいつまでというようなことはなかなか申し上げにくいわけでございますが、三十五条を積極的に援用したいという意図をはっきり表明しておりますのは、ナイジェリア、タンガニーカの二つでございます。そのほかは法的な効果ということでございますので、おそらく、話し合いを進めてまいりますれば、特に従来のヨーロッパ諸国のような具体的な問題はございませんので、その点は解決できるものではないかと期待しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/12
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013・戸叶里子
○戸叶委員 いまの改定議定書に対しての質疑は、これでけっこうでございます。
次に、日本とエル・サルバドル共和国との通商協定につきまして一、二点質問をしたいと思います。これはほかの国との通商に関する協定と大体同じだと思いますので、特にエル・サルバドルに関することだけお伺いしたいと思います。
エル・サルバドル共和国と日本との間では、どういうようなものを主として輸入し、またどういうものを日本から輸出しているかということ、それから、その大体の金額をここで発表していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/13
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014・奈良賀男
○奈良説明員 初めに輸出入品目について申し上げますと、日本から輸出されております品物のおもなものは、綿織物、絹、合繊のガラス繊維などの織物、それから、機械類、鉄鋼、金属製品、その他となっております。日本がエル・サルバドルから輸入する品目は、繰り綿が大宗でございまして、その他コーヒー、ココアがございます。一昨年、一九六二年日本から輸出した総金額は八百十万ドルほどになっております。それから、日本が輸入した金額は二千五百三十万ドル。昨年の実績を見ますと、日本からの輸出が九百二十万ドル、輸入が三千八百万ドル。いずれもかなりの入超になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/14
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015・戸叶里子
○戸叶委員 相当の入超になっているわけですけれども、何か特にこういうものを買っているから入超であるというようなことがあるわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/15
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016・奈良賀男
○奈良説明員 サルバドルからは綿をたくさん買っております。昨年の実績で見ますと、サルバドルから総額で三千八百万ドル輸入しておりまして、繰り綿が三千七百万ドルですから、ほとんど九十数%でございます。あとコーヒー、ココアその他のものはごくわずかでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/16
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017・戸叶里子
○戸叶委員 そうしますと、今後においても相当入超の傾向があるということを認めていらっしゃるわけでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/17
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018・奈良賀男
○奈良説明員 サルバドルとの貿易関係は、先ほど数字は六二年、六三年を申し上げましたけれども、六〇年以降を見ますと、毎年入超になっておりまして、ことしあるいは来年にこのバランスが著しく改善される、あるいは逆になるということは予想しがたいところでございますけれども、中米共同市場を背景にしましたサルバドルは非常に工業化ということをはかっておりますので、資本財の需要が漸次増大しております。日本側もこの資本財の売り込みに相当努力しておりますので、バランスが逆になるということまでの見通しはできませんけれども、相当の改善を私どもは希望し、そういうふうになるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/18
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019・戸叶里子
○戸叶委員 この協定を結ばれた機会に、あまり輸入超過にならないようにできるだけの努力をしていただきたいと思うわけです。
それから、第二の問題で、ここに自由職業に関する公換公文というのがあるのですけれども、これによってどんな自由職業が制限されているのか、具体的に述べていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/19
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020・須之部量三
○須之部説明員 自由職業に関する交換公文でございますが、できました経緯から申し上げますと、日本の要望としましては、いわゆる事業活動のほかに、フリー職業に関する最恵待遇を期待しているわけでございます。それに対して、先方では、主として中米諸国及びスペイン語の国との間に資格互認協定——たとえばほかの国で医師なら医師として認めた者はサルバドル国でも医師として認めるという資格互認協定を持っている国が若干あるのでございます。かかる資格互認を最恵国待遇により日本にも認めるわけにいかない申しまして、最恵国待遇を入れることをいやがったわけでございます。その点の趣旨はわかるのでございますので、ちょうど日本とペルーとの通商協定をつくりましたときに同じ問題が起こりまして、同じような書簡の交換を行なったのでございます。したがいまして、ペルーの方式に従いましてこの問題を解決したわけでございますが、自由職業を制限するわけでございませんので、結局、日本人が自由職業をサルバドルで行ないたいという場合には、サルバドルの権限のある当局、大体大学ないし弁護士については最高裁判所だそうでございますが、それが資格を認めた場合には、日本人がサルバドルで自由職業ができるということを書いたものでございまして、したがいまして、制限したものではございませんで、日本人が自由職業をサルバドルで行ないます場合には、こういう条件で行なえるということをきめたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/20
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021・戸叶里子
○戸叶委員 直接制限したものでないにしても、ある職業によっては一応国籍を持たなければならないということになるわけでございますね。ですから、そういうふうに制限されないようなものがほかにあるのかどうかということを伺っておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/21
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022・須之部量三
○須之部説明員 私どもで特に問題になりましたのは医師と弁護士でございますが、この場合は国籍のあれはございません。おそらく実際に予想されるのもその程度ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/22
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023・戸叶里子
○戸叶委員 日本の場合でも国内法で何か制限しているわけですか、他の国との間で。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/23
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024・須之部量三
○須之部説明員 実は、日本の場合は、この条約事項が、エル・サルバドル人が日本で自由職業に従事いたします場合にはこの条約の規定外でございますから、これはもっぱら日本の国内法にまかされておるということになっておるわけでございます。特にいま国籍条件が特殊の自由職業にあったかどうかという点でございますが、私の承知しておるのは、弁護士でも外国人の弁護士もたしかございますし、それから医師の場合でも同様でありますし、特に国籍を条件としておる自由職業は、私ちょっと詳しくは存じませんが、ないのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/24
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025・戸叶里子
○戸叶委員 そうしますと、エル・サルバドル人は日本の国内においてはどういう職業にもつけるということですか、この条約外ということは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/25
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026・須之部量三
○須之部説明員 それぞれの資格認定試験があるわけでございます。したがって、その試験に合格いたしますればできるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/26
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027・戸叶里子
○戸叶委員 それじゃ、これだけ伺っておきますが、そういう意味から言うと、これは一方的で双務的じゃないように思いますけれども、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/27
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028・須之部量三
○須之部説明員 もし条約上の義務になりますれば、国内立法でサルバドル人は日本で一切自由職業につけないという立法もできないわけでございますが、これは、理論的に申し上げますれば、条約外でございますから、日本としては、国内立法を改正いたしまして、サルバドル人が日本で自由職業につけないという立法もできるわけでございます。したがいまして、その点で別に片務的とは考えておりませんし、むしろ、私どもは、条約上日本人がサルバドルである程度できる道が開かれておるという点では、かえって有利なものではないかというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/28
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029・戸叶里子
○戸叶委員 けっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/29
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030・臼井莊一
○臼井委員長 右両件に対する質疑はこれにて終了いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/30
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031・臼井莊一
○臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、両件に対する質疑は終局いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/31
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032・臼井莊一
○臼井委員長 これより討論に入りますが、別に討論の通告もありませんので、直ちに採決いたします。
右両件はいずれも承認すべきものと決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/32
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033・臼井莊一
○臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、右両件はいずれも承認すべきものと決しました。
おはかりいたします。ただいま議決いたしました両件に対する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/33
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034・臼井莊一
○臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
〔報告書は附録に掲載〕
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/34
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035・臼井莊一
○臼井委員長 次に、関税協力理事会を設立する条約の締結について承認を求めるの件、外交関係に関するウィーン条約及び関係議定書の締結について承認を求めるの件、遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約の締結について承認を求めるの件、以上三案を一括議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。大平外務大臣。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/35
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036・大平正芳
○大平国務大臣 ただいま議題となりました関税協力理事会を設立する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
この条約は、関税の賦課、徴収、通関手続等諸関税技術を国際的に調和統一し、簡素化するため、これに関する諸問題を研究することを目的とする国際協力理事会を設立するためのものでありまして、一九五〇年十二月に作成され、一九五二年十一月に発効し、その当事国は、現在、EEC諸国、EFTA諸国等を含む三十三カ国であります。
この理事会の業務は、関税率表における分類の統一、税関における評価方法の統一、税関手続を簡素化するための諸関税条約の作成、関税行政についての国際協力等であり、また、最近においては、低開発国の関税行政についても積極的な援助を行なっています。
わが国は、関税行政に国際性を持たせることの必要性を痛感しておりまして、従来この理事会の諸会議へオブザーバーの資格でできる限り出席し理事会と接触を保ってまいりましたが、このたび、この条約に正式に加入し、理事会の構成員としてその活動に積極的に参画し、関税行政の能率化、統一化等の面で国際的役割りを果たすことといたしたいと思います。また、かようにすることによって、対外的には関税事項につき諸外国と十分な意思の疎通をはかることができ、対内的には関税行政全般の事務改善、合理化を期待することができ、ひいては、わが国貿易の発展に大いに役立つこととなると存じます。
よって、ここにこの条約の締結について御承認を求める次第であります。
次に、外交関係に関するウィーン条約及び関係議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
従来、国家間の外交関係並びに外交上の特権及び免除は、歴史的に形成されてきた国際慣行と礼譲によって規律されてまいりましたところ、近時国際関係がますます広範かつ緊密なものとなるに伴いまして、諸国間の外交関係の円滑な運営及び外交使節団の任務の能率的遂行を確保する見地から、その成文化が強く要望されるようになってまいりました。このような国際的機運を背景に、国際連合は、その国際法法典化事業の一環として、外交関係及び外交特権・免除を取り上げ、国際連合国際法委員会が作成した草案を基礎に昭和三十六年三月にウィーンにおいて条約採択のための国際会議を招集し、わが国をはじめとする八十一カ国がこれに参加して審議いたしました結果採択されたものがこの条約及び議定書でございます。
この条約は、外交関係の開設、外交使節団の派遣、使節の階級及び席次並びに外交しの特権・免除等に関する国際慣習を成文化したものであり、また、関係議定書である、紛争の義務的解決に関する選択議定書は、この条約の解釈または適用から生ずる当事国間の紛争を国際司法裁判所による解決その他の平和的解決手続に付すべきことを規定したものであります。この条約は二十二カ国による批准書または加入書の寄託により効力を生ずることになっており、現在、二十カ国が批准書または加入書の寄託を了し、さらに、英、米、独、ソを含む諸国が当事国となるための手続を進めている趣でありますので、近く効力を生ずる見通しでございます。
わが国は、諸国家間の関係が条約、確立された国際慣行等国際法の定めるところに従って平和と秩序のうちに規律されるべきであるとの一貫した考え方に立って、昭和三十七年三月二十八日にこの条約及び議定書に署名を行なった次第でございますが、わが国は、この条約及び議定書の当事国となることによりまして、国際法の法典化に寄与することとなるとともに、外交関係及び外交特権・免除のよるべき準則について条約の明文に準拠することができることとなるものであります。
よって、ここにこの条約の締結について御承認を求める次第であります。
最後に、遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
この条約は、遺言の方式の分野で国際私法の統一をはかろうとしているものでありまして、一九六〇年のヘーグ国際私法会議で採択された条約案をもととして一九六一年に作成され、一九六四年一月に効力を生じたものであります。
遺言の方式に関する実質法は、国によりそれぞれ異なっております上、国際私法も国により異なっております。このため、国際的性質を持つ遺言が、遺言の関係する国のうち、ある国では方式上有効とされ、他の国では方式上無効とされることがあり、遺言が遺言者の意思どおりに実施されないという不都合が生じております。この条約は、遺言が、行為地法、本国法、住所地法、常居所地法、不動産についてその所在地法のいずれかに従ってされたときは、その遺言を方式上有効とするという法制を採用すべきことを定めているものでありまして、現在見られるような不合理を解消し、遺言者が本条約の定める方式に従ってした遺言は、原則としてどの関係国でも有効と認められるようにすることを目的としているものであります。
この条約の定める制度は、妥当と認められますし、各国がこの条約の制度を取り入れることとなれば、遺言者及び遺言の受益者の受ける利益も少なくありません。
よって、ここにこの条約の締結について御承認を求める次第であります。
何とぞ御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/36
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037・臼井莊一
○臼井委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。
質疑の通告がありますので、これを許します。
平岡忠次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/37
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038・平岡忠次郎
○平岡委員 冒頭にお尋ねいたしますことは、外電の報ずる丁外相の辞任の真偽、第二番目に、金鍾泌氏の明二十八日の帰国が二十五日のソウル学生デモの即時召還要求と関係があるのかどうか、この二点であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/38
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039・大平正芳
○大平国務大臣 お尋ねの二点につきましては、私どもとしては全然承知いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/39
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040・平岡忠次郎
○平岡委員 私が前段にお尋ねしましたのは、韓国の二大新聞の一つである東洋通信が伝えておることであります。ジュネーブの国連貿易開発会議に出席中の丁韓国外相は本国政府に辞任の電報を送ったという記事であります。外務省で真偽は調査されておると思いますが、重ねてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/40
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041・大平正芳
○大平国務大臣 私どもでは全然承知いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/41
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042・平岡忠次郎
○平岡委員 それはイエスかノーかでちょっと答えてもらわぬと困るのです。外務省はこれを知らぬということはないと思います。何か入っているでしょう。情報は入っていませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/42
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043・大平正芳
○大平国務大臣 全然承知いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/43
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044・平岡忠次郎
○平岡委員 外相のおっしゃられるのは、その事実はないのだろうということにアクセントを置いてのお答えですか、ほんとうにあなたは何も御存じないということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/44
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045・大平正芳
○大平国務大臣 ほんとうに何も存じないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/45
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046・平岡忠次郎
○平岡委員 この事実関係は即刻お調べを願います。
それから、後段の金鍾泌の明日の帰国、これは間違いございませんか。これは二十五日のソウルの学生デモの要求による即時召還に見合っての帰国であるのかどうか、もう一回お尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/46
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047・大平正芳
○大平国務大臣 それは御当人にお聞き願いたいと思います。私にはわかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/47
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048・平岡忠次郎
○平岡委員 去る二十一日のソウルにおける日韓会談反対集会、越えて二十四日、二十五日、二十六日、三日間にわたり同じくソウルにおける学生の一大デモンストレーションを転機といたしまして、韓国の情勢は急速に変転しつつあります。先ほど私の質問にお答えはなかったが、韓国首脳部をゆり動かすほどの非常な影響力を持ったところのデモンストレーションと私どもは理解いたしておるわけであります。この事態を直視いたしまして、日韓会談に対処すべき政府のかまえはいやが上にも慎重でなければならないはずでありますが、今日の時点において外相はいかなる所見であられるのか、お伺いをしたいのであります。
右、一連の事件は単なる偶発的なものと見るか、それとも根強い朴政権に対する韓国国民の不信に由来するものと見るのか、ご判断をお聞かせ願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/48
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049・大平正芳
○大平国務大臣 ここ二、三日来、ソウルはじめ韓国各地における学生を中心にしたデモが展開された、しかも大規模に展開されているという情報は受け取っております。また、これの動機、背景等についても、私どもは私どもなりに解明してみたいと存じて、つとめているところでございます。しかしながら、私ども日本政府の日韓交渉に対する態度は、いま平岡さんがおっしゃたように、終始慎重にやっているわけでございます。今日といえどもちょっとも変わりはないわけでございます。こういうことがあったからといって日本側の態度にちょっとも変化はございません。既定の方針でまいっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/49
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050・平岡忠次郎
○平岡委員 交渉は相手方のあることでありますから、先方の実情を直視して日本の外交を進めていくのが、私は外務大臣に課せられた任務と思っております。この一連の事件は、ソウルに端を発しまして、大郷、釜山、光州その他各都市を中心に全国的に燎原の火のごとく波及しつつあり、単なるソウル学生層に限られた浮き上がったデモではないのであります。報道によりますと、その影響たるや、かつての日本の全学連の比ではないと言われておりますし、加うるに、ソウルに結集された学生デモは四年前李承晩政府を倒した原動力であったという歴史的事実に徴しまして、この伝統を受け継ぐ今回の学生デモを過小評価はできないはずであります。事態はこれほど深刻であり、韓国政府は.重大な政治的危機に立っていると言っても過言ではありません。これをしも押して会談を続行していくのかどうか、重ねてお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/50
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051・大平正芳
○大平国務大臣 そういうことに対処いたしますのは韓国政府が対処するわけでございまして、私どもといたしましては、日本政府の態度は、先ほど御答弁申し上げましたとおり、既定方針に何ら変更はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/51
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052・平岡忠次郎
○平岡委員 議論となりますので、質問に入ります。
今度の事件で、韓国国民の日韓会談に対する反対意思の熾烈であること、根の深いことが明瞭に浮き彫りされました。他方におきまして、わが政府は、日韓両国の友好関係を確立するためにこの会談を行なっていると言っておりますが、この事態では、たとえ妥結したとしても、日韓両国民の間に友好関係が樹立されるとは思いません。そうなれば、現会談の続行は無意味であるばかりか、むしろ有害であると考えなければならぬと思っております。しからば何のための会談かとの疑問が当然生ずるのであります。政府は、もともとこの会談が朴・金一統のための会談であって、彼らとの間に妥結さえすれば事足れりとでも考えておられるのか、やぼな問いただし方かもしれませんけれども、この点あらためてお聞きいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/52
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053・大平正芳
○大平国務大臣 日韓両国は隣合わせる国でございますし、現在すでに事実上いろいろ一種の人の交流等あるわけでございまして、この両国の関係の根本は何と申しましても両国民の理解と信頼ということが基調になければならぬと思うのでございます。私どもは、ひとり韓国に対してばかりでなく、どこの国に対しましても、外交関係を担当していく場合の根本の基調はそこに置いているつもりでございます。信頼と理解が深まってまいりまして、その基盤の上に立って国交の正常化ということが合理的な内容においてできるということを希求しながら進めておるのでございます。この方針にはちっとも変化はないわけでございます。いままでもそういう方針でまいりましたし、今後もそれでやってまいらなければならぬことは当然だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/53
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054・平岡忠次郎
○平岡委員 まあ日本側の一方的な判断がそうであろうと、現実の事態というものは、日韓交渉を進めることから日本政府のねらっている日韓両国民の間に友好関係をつくるということにはならぬと思います。それに対して御反論があるのでしたら、御反論ください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/54
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055・大平正芳
○大平国務大臣 先ほど申しましたように、事実上日韓の間にはいろいろな関係がございまするし、また、政府間におきまして正常化への交渉が長きにわたって行なわれておるわけでございます。これら一連の過程を通じまして、私は、日韓の両国民間に信頼と理解が漸次深まりつつあると考えておるわけでございます。日韓双方とも民主体制をとっておりまするから、日韓交渉というイシューに対しまして、これの評価をめぐっていろいろな見解があの、それをめぐっていろいろな運動が展開されることは、当然これは考えられることなんでございます。しかし、基本は両国民の間の理解と信頼というものをつちかっていくということ、これは、ひとり日韓交渉ばかりでなく、すべての関係を通じましてそのように考えていくことが、われわれの当然の任務でございます。今日までそれでやってきたのでございまして、今後も一貫したそうした方針でやってまいるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/55
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056・平岡忠次郎
○平岡委員 私があなたに聞いているのは、事実関係の誤認があるのではないかということなんです。デモ隊は、日韓会談反対の理由の中心柱として、対日屈辱外交をあげておるのであります。韓国の国民感情として会談をそのように受け取る理由は那辺にあると考えられるのか、ではお答えを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/56
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057・大平正芳
○大平国務大臣 いま申しましたように、日韓交渉という特定のイシューについては、そういう問題につきましてそういう意見があり得ることだと思うのでございます。私が申し上げておるのは、そういういろんな意見があるが、両国民の間の信頼と理解というのは漸次深まりつつあるということでございまするし、それから、日韓交渉全体につきましても、日本におきましても韓国におきましても、正常化すべきであるという意見が圧倒的に強い、私はこう見ておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/57
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058・平岡忠次郎
○平岡委員 まあ見解の相違ということであなたは私との議論を避けようとしておりますが、私は、この事態におきましては、やはり、政府といたしましては、韓国の対日屈辱外交だという一大デモンストレーションに対しまして、正確にこれを分析する必要があると思うのです。現博点であなたは正確な分析をしているとは思いません。そういう相手方の分析が足らずに誤認の上に外交を進めるなら、とんでもないことになると思うのであります。いま申したとおり、韓国の学生は、単なる浮き草のような学生ではなしに、かつては李承晩を倒した原動力なわけです。その伝統を受け継ぐところの学生の総決起でありまして、過小評価をすることは間違いであると考えるのであります、屈辱外交と規定いたしておる事柄につきまして、私どもはあなたと逆な判断に立っておるわけですが、そのことを申し上げてみますと、第一に、日韓併合以来の植民地統治の反省が日本政府に見られないという主張に立っているということ。第二の理由としては、この会談が韓国民のほんとうの意思から出たものでないと、これを不満に思っている。第三に、日本がアメリカのドル防衛の肩がわりをして経済協力という形で韓国の市場に進出しようとする意図が、韓国民に危惧されているということ。第四番目に、これが一番大事なんですが、これまで既得権として何ら疑問を差しはさまなかった李ラインを譲歩することは、国の一部を売り渡すと見ており、ちょうど日韓統合のときの李完用の役目を朴大統領や金鍾泌氏がしていると学生が感じているということ。こういう深い背景があるわけなんです。韓国民の受け取り方は、日韓会談は、日本のほうは五億ドルもただでくれてやるのだからといって大いばりの顔つきをしていますけれども、これを受ける側の韓国民の感情はまるで逆なんです。この点に思いをいたして、正確な分析をしなければ、日韓会談は何のためにやっているかという、とんでもない、政府の意図とは逆なところに乗り上げるということを私どもは心配せざるを得ないのです。
そこで、いま私が申したような要因をあげて、あなたにただすわけでありますが、私のいま申し上げた要因を、あなたはことごとく否定なさいますかどうですか。四ついまあげましたが、その一々につきましてお答えをいただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/58
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059・大平正芳
○大平国務大臣 私が先ほどお答え申し上げましたように、日韓会談の評価について、韓国内にいろいろな意見があることは承知しておりまするし、あなたがいまおあげになったような見解も、韓国内にあるのでございましょう。私どもは、これはどこの国におきましても、こういう重要な外交案件につきまして、いろいろな見方、考え方、評価があることは当然だと思うわけでございます。ただ、問題は、そういった問題をどう処理していくか、どのようにそしゃくし、消化していくかということは、韓国政府の処理すべき問題でございまして、私がここでお答えする問題ではないと思います。私がお答えできる限界は、日本政府はどうするのだということでございますが、日本政府は従来の方針に変わりはありませんということをお答え申し上げて、それで私は十分だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/59
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060・平岡忠次郎
○平岡委員 政府のお答えはきわめて不誠実です。問題をはぐらかすといいましょうか、とうかい的なそういう態度は、私どもは了承できかねるのであります。私が申したのは、事実問題として、今回のデモの支柱となったスローガンが、対日屈辱外交を葬れということであったのでありますから、対日屈辱外交ではないんだということを外交折衝を通じて韓国国民に説得し得るだけの根拠が日本の側において用意されておるかどうか、韓国の現状に対する世論の帰趨とか、そういう問題に対して正確な分析がなされておるかどうかということをお伺いしておるわけです。どうですか、そういう分析は十分ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/60
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061・大平正芳
○大平国務大臣 冒頭に申し上げましたように、韓国の状況につきましては、いろいろ、私どもとしては、関心を持ち、その解明につとめておらなければならぬことは当然でございます。そういう努力を外務省として怠ってはならぬことは、御指摘のとおりでございます。私どもといたしましては、両国の間が正常でない状態にあるから、国交を正常化するために、過去の行きがかりにとらわれないで、新しい関係がお互いの理解の上に打ち立てられないものかということについて、鋭意折衝しておるということでございます。私は、こういったことがだんだんと両国民の間に広く理解が逐次行なわれて、理解が徹底していくものと期待いたしておるし、希望いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/61
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062・平岡忠次郎
○平岡委員 大平さんのお答えは、二十日前まではそれでよかったと思うのです。二十一日の反対集会、越えて二十四日、二十五日、二十六日の連続三日間にわたる大デモンストレーションが起こっておるわけですから、今日の時点においてそれでいいのかということなんです。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/62
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063・大平正芳
○大平国務大臣 それはもう全然私はあなたと見解を異にするので、二十日前であろうと二十日後であろうと、日本政府はそんなにふらふら態度が変わっちゃ困りますよ。そういう外国で起こった示威運動というもので日本の政府が一喜一憂しておったら、それは、あなた方野党は、そういうことじゃ困るじゃないかと言って、私を怒るのがほんとうじゃないでしょうか。そういうことは私は全然理解に苦しみますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/63
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064・平岡忠次郎
○平岡委員 ちょっと回り道になるかもしれませんが、お聞き願いたいのであります。実は、これはきょう首相がおいでになればお聞きしたかったことなんですけれども、私が一月に、総理に対する代表質問の中で、OECDが東西関係を解決するものでないばかりでなしに、南北問題も解決するものではないのではないかとの見解を出しましたところ、首相は、認識不足もはなはだしいと応答せられたのであります。私は具体的に当時インドネシア等現地に出向き調査をしてまいってきておりました。そして、インドネシア、 マレーシアの紛争は、インドネシア側に新植民地主義に反抗する根深い闘争心のあることから、マフィリンドは幻想であって、事態はロバート・ケネディ来日による楽観ムードの逆目となるであろうことを確信いたしまして、私の所見を述べたのであります。ところが、先ほど申したとおり、首相からは、認識不足に驚き入るとのおしかりをこうむったし、さらに、社会党は日本の外交をよりよくしようとせず、事もないうそを言いながら引っぱろうとするのだという汚名をちょうだいいたしたのであります。ところが、その後事態は、マレーシア問題は悪化の一途をたどり、私の予見したとおりであります。なお、今回開かれておりまする国連貿易開発会議でも、OECDの低開発地域開発については全く無視されてしまっているではありませんか。このことからも、私の見解は決して間違っていなかったと確信いたしておるのであります。
日韓会談についての本日の私の見解も、しかく正しいものとの自負を持っているのでありますが、願わくば、政府も、単なる野党の反対意見だと聞き流すことなしに、虚心に御検討あってしかるべきだと思うのでございますが、その御用意、心がまえがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/64
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065・大平正芳
○大平国務大臣 私が評論家であれば、十分お相手するつもりでありますが、私は日本政府の外交を担当し、ささえておる立場の者でございまして、日本政府としての外交についての見解を申し述べるのが私の任務でございまして、今回ソウルを中心にして各地で行なわれた、あなたの指摘された事実をどのように見るかということについて、私がここでそれについていろいろ論評を加える立場でないことは、あなたも重々御承知のとおりだと思うのであります。日本政府の態度は変わらぬということを私が申し上げたことで十分ではないかということを申し上げたわけなんでございます。
それから、物事の見方でございまするが、あなたの予言が正しいかどうかということでございますが、平岡さんの予言、賢明なあなたの予測でございますから、私はあなたの御勉強やお見通しを尊重いたします。尊敬いたしますが、しかし、外交問題というのは、まだみんな非常に流動的にあるわけでございまして、いま御引例のマレーシア問題にいたしましても、まだプロセスにあるわけなんでありまして、どの時点をつかまえて解決というのか、そういうような断定をくだすには、私はそういう意見はなかなか持ち合わせないのであります。まだまだ一つのプロセスになっている。解決ならざる解決というものをずっと繰り返しながら流動していっておるわけなんでございまして、マレーシア問題なんというのは、まだまだこれから、その過程の中にあると私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/65
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066・平岡忠次郎
○平岡委員 議論が平行線をたどりそうですから、最後にお伺いしておきます。
変転しつつある韓国政治情勢を無視して、朴・金一党との間に会談妥結を強行いたしたといたしましても、現実に韓国の国内情勢は逆縛しがたい事態も十分予測できるのでありますから、あなたが私どもの善意の勧告を無視して妥結を強行した後に、韓国においてこれをはばむ事態が発生したときは、政府はいかなる責任をとられるか。早川さんがやめさせられたケースと同様なものとして、担当大臣のあなたがやめるくらいでは事は済まない。当然総辞職ものと思いますが、総辞職覚悟であえて会談の妥結に猪突せられるのかどうか、覚悟と決意のほどを御表明願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/66
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067・大平正芳
○大平国務大臣 外交問題というのは、先ほど申しましたように、非常に流動いたしておりまして、日韓の間は、国交正常化しようがしまいが、事実上のいろいろな接触があるわけでございます。国交正常化したからといって問題はなくなるわけでも何でもないので、隣合わせの国でございますから、年々歳々、日々問題が起こってくると思うのであります。そういう問題を適切に処理してまいるのが外交当局の任務なんでございまして、正常化交渉もその一環でございます。これは普通国交のないところを正常な国交にしましようということだけをやっておるわけでございまして、あなたは非常にかみしもを着てこの問題を非常に重大な案件のようにお受け取りになる認識に立たれているようでございますが、そんなに固苦しくお受け取りにならないように、これはもうあたりまえの国交を持ちましょうということを考えておるにすぎないものでございます。
それからまた、これは交渉中でございまして、いつ妥結するのか、その見当もつきかねているときに、妥結して、それがうまくいかなかった場合にどうするんだというようなことをゆうちょうに考えるほど私もひまがございませんので、交渉に精一ぱい努力すべきものと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/67
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068・平岡忠次郎
○平岡委員 のれんに腕押しのひまは私にもございませんので、私はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/68
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069・臼井莊一
○臼井委員長 戸叶君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/69
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070・戸叶里子
○戸叶委員 いまの平岡議員の質問に対して関連して一点だけ伺っておきたいと思います。
いま平岡議員がいろいろソウルのデモの問題などについて質問をされて、大平外務大臣の答弁を伺っておりますと、ああいう外国のデモに対して一喜一憂をする必要はない、日本はその信ずるところに向かっていくのだというふうにおっしゃっておられますが、今度のソウルを中心とした学生デモの分析をどういうふうにしていらっしゃるかということを私は伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/70
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071・大平正芳
○大平国務大臣 一応ただいままでの情報に基づきまして私どもが見たところを簡単に申し上げますと、これは学生を中心にした運動である、こういう性格を持っておると思います。それから、政府の日韓交渉という特定の政策に対する意見の表明であるという性格を持っておると思います。それから、日韓交渉のやり方についての意見の表明である、そういう性格を持っておると思います。つまり、私どもがうかがい得たところでは、国交の正常化をやっちゃならぬ、そういう運動ではなく、政府の外交交渉に対する不満というものが出ておるというように私どもは見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/71
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072・戸叶里子
○戸叶委員 やっちゃいけないというふうなものではない、こういうふうに断定をされているわけでございますが、私は、そのやり方、つまり、そのものずばりに言えば、条件がどうのこうのということは抹消的なものではないかというふうに考えます。むしろ、一つの条件をこういうふうに有利に取ってほしいとかなんとかいうのじゃなくて、外交交渉に臨む姿勢を一体どうするかという、もっと根本的な問題じゃないかと思うのです。それが今回の学生デモになってき、そして、その学生を取り巻いているところの大衆というものが、聞くところによりますと拍手を送っているということを聞いておる。警官は一応学生を抑えないけれども、しかし、もしもそこで警官が手を出せば、大衆がぐっとそれに呼応するというかまえさえあることを現地のほうから報道があったということを私は聞きました。これは、ちょうど一九六〇年のあの暴動といいますか、あれにも似たものになりかねないということも聞いておるわけです。政府は非常に甘い考え方で、条件の問題である、一つ一つの態度の問題であるというふうに言われているわけでございますけれども、むしろ、いままで黙っていた大衆に対して、学生が指導的な立場に立って、日本の日韓会談に臨む態度というものはけしからぬ、その姿勢が好ましくないという、そういうふうな気持ちが出てきているのじゃないか。したがって、これを単なる条件の問題であると見るのは少し甘過ぎるのじゃないか。もっと謙虚に、この日韓会談というものを考え直さなければならないように、このデモを見ていただきたい。私は国民としてそういうことをお願いしたいわけでございますけれども、この点はどういうふうにお考えになるか、伺っておきたいと思います。いずれあとの機会で私はゆっくりいろいろな問題でお伺いしたいと思いますが、きょうは、関連質問ですから、その点だけを確かめておきたいのですが、いまのような甘い考え方でこのデモを見ていては、私は将来非常に間違いが起こると思います。条件というよりも、日本の態度というものに非常に不満を持っているのじゃないかというふうに私は考えるわけでございますが、この点を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/72
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073・大平正芳
○大平国務大臣 日本の態度は非常に謙虚でございまして、国交の正常化を何とか納得のいく線でやりたいということでやっておるわけでございます。私は漸次日韓両国民の理解が得られることを心から希望するわけでございます。
それから、そういう運動につきましては、戸叶さん御指摘のようにいま私は了解いたしておりませんけれども、しかし、あなたが御指摘のように、私どもといたしましては、十分この解明にはつとめておかなければならぬ、これは当然のことと思います。しかし、日本政府の態度としては変わりません、こう申し上げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/73
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074・臼井莊一
○臼井委員長 松井誠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/74
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075・松井誠
○松井(誠)委員 私もいま行なわれております日韓交渉のことにつきましていろいろなことをお伺いしたいと思いますけれども、その前に、やはり、いま平岡さんや戸叶さんから危惧が表明されました現在の韓国の情勢について、くどいようですけれども一度念を押しておきたいと思うのです。
いま大臣の御答弁では、何か日韓交渉という特定のイシューに対する反対だというように、つとめて軽くごらんになっておるようでありますが、実は、そうでなくて、日韓交渉反対だという形と、日本に対する反感というものとが複雑にからみ合っておるのじゃないか。これは、単なる通常の、外交交渉に朝野の意見が分かれるという、そういうよくある例ではなくて、日本と朝鮮との古いつながり、不幸なつながりというものに対して朝鮮の国民が持っておる感情、そういうものと深く結びついておるのじゃないか。大臣も御承知のように、日韓交渉反対というスローガンに、最近になっては朴政権打倒というスローガンが加わってきた。そして、日韓交渉反対という国民の心情の底には、日本に対する、特に最近の日本が犯した罪悪に対する反省がない、そしてほんとうに大っぴらに帝国主義的な経済進出をやっていっておるという、これはあとでいろいろお伺いをしますけれども、そういうものに対する反感が積もり積もってきたのじゃないか。そして、いまこそまだそのスローガンには出ておりませんけれども、これはもう少しあとで触れますが、おそらくは、この政治情勢が進展していけば、南北統一というスローガンも出てくる可能性が韓国国民の中にあると私は思う。そうしますと、これは、単に手続的な日韓交渉反対という、あるいは条件闘争的なものでなしに、まさに、朴政権に対する反対、そして朴政権が日本の支配者となれ合っているという、そういう形に対する反対、そして、そういうものが南北統一を妨げておるということに対する朝鮮民族の悲願というか、そういうものから来る反対、そういう非常に複雑な要素を持っておるのじゃないか。私は、率直に言って、いま韓国でこういうように政治情勢が不安になってきたということは、先ほどちょっと平岡さんも触れましたけれども、むしろ池田内閣にとっては命拾いじゃなかったかと思う。これを無理やりに強行する、そして妥結した、妥結したあとで朴政権が崩壊をする、あるいは批准の段階でそれが流れてしまう、そうすれば、これは池田内閣は存続する理由がなくなってしまう。しかし、そこへいかないで済み得る情勢というものがいま出てきた。私は決して取り越し苦労じゃないと思う。先ほど大臣は、国交が不正常なところを正常にするのはあたりまえじゃないかと言われた。それは、もちろん、前後左右の問題を全部切り離して、国交を正常化するのはあたりまえじゃないかという命題で言えば、これは当然です。いずれの時代だって、だれも反対する者はないわけです。しかし、現在の時点で、韓国とこういう情勢の中でやることがいいか悪いかということです。先ほど大臣は外交情勢は流動するものだと言われましたが、まさに流動するからこそ、そういう前後左右を切り離したような形で問題を考えるわけにいかぬじゃないですか。ですから、私は、まさに流動するそういう情勢の中で、政府は当然一喜一憂するのがあたりまえだと思う。既定方針だからといって、何でもしゃにむに猪突猛進をするのはいいことではないと思いますが、私は押し問答になりますからこの点はここでやめますけれども、やはり、いまのそういう情勢というものを考えていただいて、既定方針を貫くというそういうことを言わざるを得ない大臣の立場は私はわからぬではありませんが、しかし、それをほんとうに心底から考えて、いまの韓国の国内情勢というものを甘く見ると、それこそまさに命取りになるんじゃないかと思いますので、その点を強く再考をお願いをいたしておきたいと思います。
そこで、いろいろお伺いをいたしたいのですけれども、最初に、先般の大臣の中間報告に対する松本議員の提案、つまり、南北朝鮮と日本との三者会談ということを提案されたわけですけれども、これに対して、池田総理は木で鼻をくくったような御答弁をされた。大臣もおそらく結論としてはもちろん総理と同じ御意見だと思いますけれども、どういうわけでそういうものが一顧だに値しないのか、全然考慮の余地がないのかという理由をまずお伺いをいたしたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/75
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076・大平正芳
○大平国務大臣 結論から申しますと、日本は北鮮の当局とは交渉を持つような立場にないということでございます。私どもとしては、一九四八年の国連決議によりまして、朝鮮の人民の大部分が住んでおる地域を有効に支配する韓国政府ができた、それが唯一のこの種の合法政府だという決議、そして加盟国が国交を回復せんとするときにはこの事実を考慮するように要請しておる、この決議の趣旨をすなおにとっておるわけでございます。わが国ばかりでなく、世界各国もそうでございまして、韓国を七十三カ国が承認し、北鮮の政府を十九カ国が承認いたしておりますが、両方とも関係を持っておる国というのはないのです。したがって、日本としては、ただいまのところ北鮮を相手にするという立場にないわけでございます。したがって、松本先生の御提案にございましたけれども、三者会談をひざを交えてやろうじゃないかという御提案に対しては、賛成できるという立場にないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/76
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077・松井誠
○松井(誠)委員 そうしますと、いまの御答弁では、単に手続的な問題、つまり政府間の正式な国交がないからというそれだけの理由で、考慮の余地がない、こういうように御答弁になったと理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/77
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078・大平正芳
○大平国務大臣 それからまた、実際問題として、三者会談というのは、考えることはできるかもしれぬけれども、実行は不可能だと思うのでございます。三者の意見が一致しなければいけないわけでございますから、いまのような南北の状態でそういうことができると見るのは、私は松井さんもそう見ないだろうと思うのでございます。日本の立場としては、いま北鮮と交渉を持つ立場でないという立場において、せっかくの御提案だけれども、賛成できぬ、そういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/78
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079・松井誠
○松井(誠)委員 一つは、手続的な、何といいますか、国際法的な関係、もう一つは、事実上実現不可能だということです。私はこの二つとも理由がないと思いますけれども、それはまたあとで申し上げたいと思いますが、もしもこういうことが克服できるならば、もう障害はないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/79
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080・大平正芳
○大平国務大臣 国際情勢が展開してまいりまして朝鮮の統一ができるという状態なれば、あなたの言われる問題も片づいてくるわけであります。で、統一はできないが北鮮という政権に対する世界の見方がこれからどのように変化してまいりますか、逆賭できませんけれども、日本としては、いま合法政権としての韓国との関係しか考えていないわけでございますから、先ほど御答弁申しましたとおりの態度に変わりはありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/80
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081・松井誠
○松井(誠)委員 一つ一つ理由をお尋ねして、それが障害だということでありますから、その障害がなくなればいいかといえば、また新しく何やら理由を言われる。ですから、むしろ率直に、そういう会談そのものに日本は反対なんですよという御答弁があれば、私は、それはそれなりにまた筋が通ると思う。しかし、そういう本心の腹でありながら、何か国際法的にできないんだとか実現が不可能だと言って逃げられることに、むしろ政府の態度として非常に問題があるのではないか。
それで、お尋ねをしますけれども、一体、北朝鮮の政府、これを国連は朝鮮問題の解決のためにしょっちゅう招請をしておる。国際的に、つまり正式に国交が回復をしていなくても、そのものと外交交渉を持つということは幾らでもあるわけであります。ですから、日本が北朝鮮と国交が回復をしていないから何か三者会談の場を初めから持ち得ないということ、そのこと自体がどだい筋が通らないと思う。
もう一つは、こういう会談の可能性はないと言いますけれども、私は、その会談の可能性というものは決してなくはないと思う。もしその会談の可能性というものを初めからこわすというものがあるとすれば、それは何かといえば、あなたがいま一生懸命に国交を正常化しようとしている韓国と、そのうしろにいるアメリカにしかすぎない。ですから、三者会談の実現の可能性をはばんでいるものは何かといえば、世界情勢ではないのです。韓国である。ですから、私は、そのように大臣が御答弁になると、疑わざるを得ないのですけれども、一体、日本の政府は、南北の統一というものに対して、これを願っておるのか願っていないのか、そういう根本的な疑問を持たざるを得ない。率直に言うならば、南北の統一は反対なんだ、南朝鮮というものを反共のとりでにして、きちんとわれわれの陣営の中にはめ込んでおきたいのだ、そのためには南北の統一は困るのだという底意が最初からあるから、いろいろな理由を口実にして、南北の統一というものに全然動こうとしないのが日本政府の態度ではありませんか。率直に御答弁願いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/81
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082・大平正芳
○大平国務大臣 統一を希望いたしております。統一の問題は、たびたび申し上げているように、朝鮮民族の問題でございまして、南北を分割された民族は、この問題は真剣に考慮いたしておると思います。私どもは統一実現を希望いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/82
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083・松井誠
○松井(誠)委員 南北の統一を希望するというのは、これは単に朝鮮民族の問題だけではなしに、まさに、統一をされるということが、世界の平和、日本の平和、したがって日本の利益にも合致をするという、これはもう念を押すまでもない当然のことですけれども、そういう問題だと思う。したがって、あなたがよく言われる日本の国益という立場から考えても、まさに南北の統一というものは日本政府が希求すべきものである、そのように考えますけれども、これはもちろん問題はございませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/83
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084・大平正芳
○大平国務大臣 朝鮮民族として真剣に考慮され、検討されておる問題でございまするし、国連におきましても、この問題が討議されたし、現にまた討議されておるわけでございます。私どもは、半島が統一をされるということは心から希望いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/84
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085・松井誠
○松井(誠)委員 その南北の統一のために、いい悪いはまたあとでいろいろ議論があると思いますけれども、ともかく国連で朝鮮問題というものを連年討議をしておる。その中で一体日本の代表は、日本の政府はどういう役割りを果たしておるのですか。つまり、国連の朝鮮問題の討議の際に、日本政府はどういう役割りに回っておるのですか。詳しい毎年のことは要りません。ここ数年のことでけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/85
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086・大平正芳
○大平国務大臣 この朝鮮復興委員会には日本は参加いたしておりません。この委員会ができたのは、日本が国連に加盟する前からできておりまして、わが国はまだそれに参加するに至っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/86
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087・松井誠
○松井(誠)委員 朝鮮問題の討議がされて、南北朝鮮を呼んでどうするという問題が連年起こるわけでしょう。そして、いまの朝鮮復興委員会ですか、それの存続すべきやいなやという問題が連年起こってくるわけです。そういう問題の討議の際に、日本政府は国連の中でどういう役割りを果たしておるかということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/87
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088・力石健次郎
○力石説明員 第十一回総会以来、毎年国連で朝鮮問題の決議が出されておりますが、これに対しては、日本はことごとく賛成をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/88
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089・松井誠
○松井(誠)委員 賛成というのは、アメリカを中心にして、つまり、北朝鮮をその場に呼ばないで、そして復興委員会は依然として韓国に駐留する、そして、その復興委員会の手によって、あるいは国連の手によって統一ができるまでは駐留するという、そういう趣旨の決議案に日本はいつでも賛成をしておる、こういうことでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/89
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090・力石健次郎
○力石説明員 北朝鮮につきましては、第十五回総会及び第十六回総会におきまして、国連の第一委員会のほうで、朝鮮問題を取り扱う国連の権威と権限を明白に受諾するということを条件としまして、北朝鮮代表をもその国連の審議に参加させようという決議がなされましたが、北朝鮮はこれを拒否いたしまして、北朝鮮代表の国連における朝鮮問題審議の参加はまだ実現されておりません。韓国のほうは朝鮮問題に関する国連活動に対する全面的協力を約束しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/90
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091・松井誠
○松井(誠)委員 一九六一年、いまあなたが言われた条件つきで北朝鮮を招請しようという上案が出たときに、この案そのものは、元来もう北朝鮮が拒否をするだろうという、そういう見通しでやったからくりにすぎないと思いますけれども、そういう問題について、日本の松平代表が、北朝鮮からなかなか返事が来ない、これではもう会期末になっていつまでも待っているわけにはいかぬじゃないか、だから韓国の代表だけを着席させて、そして朝鮮問題の結論を出そうというような演説をぶっておる。ほかのアジアやアフリカの国が南北統一のためいにろいろな具体的な提案をしているその中で、日本はそういう役割りをやっておるわけです。それは御存じでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/91
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092・力石健次郎
○力石説明員 松平大使の演説は、きょう持ってまいりませんでしたが、そうであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/92
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093・松井誠
○松井(誠)委員 そのためにずいぶん議事が混乱をしてという、そういう役割りまで日本の政府は果たしておるわけです。その次の六二年には岡崎大使、六三年には松井——私じゃありませんけれども、松井大使、これがやはり南北の統一を阻害をするような発言を積極的にやっておる。この内容も大体御存じでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/93
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094・力石健次郎
○力石説明員 私は、松平代表がいまさっき申されましたような韓国だけを呼ぶという演説をされたことは存じておりますが、岡崎代表、松井代表についてはそういうことはなかったんじゃないかと思います。いずれにいたしましても、朝鮮問題を国連で討議する際に、北も南も両方の代表が出てくるということが一番望ましいのでございますが、だれもいないのに朝鮮問題を討議することも困難でありますし、それが統一を阻害するというふうには考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/94
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095・松井誠
○松井(誠)委員 岡崎大使は韓国を非常に礼賛する。これは、あなたも言われたように、韓国は非常に国連に協力をするという礼賛をする。そして、北朝鮮はきわめて非協力的だといって非難をする。松井大使に至っては、昨年、韓国の政治情勢は非常に安定をしておるというような賛美の演説をやっておる。私は大臣にお尋ねをしたいのですけれども、この朝鮮の問題が、朝鮮戦争が起こったあとからだけ考えても、国連で討議をされたことがもうすでに十年、何らの進展がない。一体この基本的な原因というものはとこにあるとお考えになるのか。これほど長い間国連で議論をされ、中国問題と並んでいわばたな上げになっている双ヘきです。一体このガンはどこにあるか、このガンを打開する道は一体どこにあるのか、そういうことをお考えになったことはございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/95
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096・大平正芳
○大平国務大臣 この間私の報告にも申し上げましたとおり、この背景にはやはり国際勢力の対立があるわけでありまして、これはもう周知の事実であろうと思うのでございます。十九カ国が北鮮政府を承認し、七十三カ国が韓国を承認しておるという状況、両方認めた国はないということは、先ほど私が申し上げたとおりであります。このような分野に分かれておるということも、国際的にそのように朝鮮をめぐりましての勢力分野がそのように示されておるわけでございます。したがって、国連といたしましては、何らかの方式によりましてこの統一をはかるべくつとめてきたわけでございますが、いまなお成果を見るに至っていないということで、国連の方式から申しますと、北朝鮮側が国連の介入を拒否しておるというために進捗しないという姿になっておるわけでございます。この統一が実現しないのを日本政府の責任にされたのでは非常に迷惑だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/96
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097・松井誠
○松井(誠)委員 私は何も日本政府の責任だと言うのではない。日本政府が統一促進のために何にもやってないじゃないか、むしろそれを阻害するほうの要素に回っておるじゃないかということを言いたいわけです。現に、たとえば、一九六一年にはインドネシアなどが、国連という場ではもう膠着状態で解決ができない、だから国連の外で関係国会議を開催したらどうだという具体的な提案をしておるわけです。六二年にはガーナやその他が、いまの韓国に駐留をしておる国連軍という名前の軍隊を再編成をして、ほんとうに米ソ、東西のどっちにも属しない中立国からなる文字どおりの国連警察軍をつくって、それを出発点にすべきであるという提案をしておるわけです。それからまた、昨年は、インドネシアなどが、南北両朝鮮のあっせん役に国連が回るようにという提案をしておるわけです。国連という場ではなかなか膠着状態を打開ができないから、こういう具体的な提案をしておるわけです。そういうものに対して、日本政府は元来朝鮮と最も深い関係がある、そしてわれわれの犯罪というものをやはりここで償いをしなければならない、その立場にある日本が、一体何をやっているかということなんです。
私はお尋ねをしたいのですけれども、この国連という場で朝鮮問題が焦げついてしまっておるという一番大きな理由は、いまもちょっと申しましたけれども、韓国におる国連軍というのが実はアメリカ軍でしかないという、そして、そのアメリカ軍は中立的な立場にあるものではなくて、米韓の相互防衛条約というものを結んでおること自体を考えても、まさに南北の中立的な立場にあるわけじゃないわけです。そして、その国連軍こそが実は北朝鮮と戦争をした交戦の当事者である。この交戦の当事者である国連軍が一体南北統一のために具体的な動きができるかどうか、これは常識上わかるじゃありませんか。ですから、いま韓国におる国連軍と称する、実は北朝鮮との交戦当事者である軍隊、その圧倒的な部分が米国軍と韓国軍、あとはほんの少々であります。そういうものが何か国連というにしきの御旗をしょって中立であるかのごとき行動をしていて、調停の役割りを果たそうとする姿勢そのものに、むしろ問題があるのではないか。この点についてはどうお考えですか。つまり、いまの韓国におる国連軍というものを名実ともに中立的な国連軍というものに編成がえをするという.この一昨年のガーナなどが提案をした考えについては、どういうようにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/97
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098・大平正芳
○大平国務大臣 いま国連の外で統一問題を取り上げるべきであるという議論もあるという前段の御質疑、それから後段の国連軍の問題でございますが、松井さんの言われたこの二つの問題とも、まだ国際世論に発展して現在の朝鮮復興委員会の決議をくつがえすという段階にまで至っていないわけでございます。つまり、世界の世論はそこまでいっていないわけでございます。私ども国連の現在の機能はなるほど十分であるとは思いませんけれども、しかし、この審議を通じまして、世界平和を維持していく上においてあらん限りの力をしぼってまいりますのは、われわれの外交の基調の一つでございます。私どもは、国連において世界世論というものを形成し、そしてその実現ということに全力をあげてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/98
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099・松井誠
○松井(誠)委員 例によって、国連の空気とか世界の世論とかと言うのは、でき上がったものに日本政府があとからのこのこついていくということであって、いつでも、その国際政治の中における、世界の世論の形成の中における日本の指導的な役割りというものを全然お考えになろうとしない。私は、率直に言って、お考えになっているのだと思うのです。お考えになっておるけれども、しかし、いろいろしばられて動けませんよというなら、まだ話はわかる。大平さんともあろうようなりっぱな政治家が、ビジョンを持ち理想を持って、世界を動かそうという理念を持たないはずはないと思う。それを、いつでもそういうことは一言もしゃべらないで、何か国連が決議をしたら、世界の世論がそうなったらあとをついていきます、これでは、それこそ、池田内閣には行政はあって政治がないというようなことを言われますけれども、そう言われてもしようがないのじゃないか。むしろ、ほんとうに南北の統一が大事だということになれば、国連の中でそういう空気をつくり上げることに日本は動こうと思えば動けるんじゃないですか。韓国におる国連軍というのが、スエズやコンゴあるいは西イリアンなどで果たした国連の警察軍というものとは質的に違っておった。それが現在まで依然として国連という場を通して朝鮮問題が焦げついておるという最大の原因じゃないかと思う。御承知のように、北朝鮮は、この朝鮮問題自体を国連で討議されるということに反対をしておる。それは、国連憲章の百七条というものに違反をするという、あるいは朝鮮問題は純粋に国内問題だという立場から反対しておる。それはそれなりに理由があると思う。しかし、国連を通して統一の具体的な提案をするということは差しつかえないし、やろうと思えばできるし、現に中立的な国がそういうことをやっているわけです。しかも、これからあと国連の空気がどうなるかというと、もうフランスの中国承認ということからいろいろなことが考えられると思うのです。日韓問題と日中問題とはうらはらだというようなことをよく言われますけれども、それは、単にアメリカの封じ込め政策というそういうつながりだけでなしに、このフランスの中国承認ということから、いままでフランスが朝鮮問題にとっておった考え方、あるいは、中国の代表権が認められて、いままでの中国の代表は入れかわってくる、そこから来る国連の空気の変化、そういうものを考えると、国連の中でも今度は朝鮮問題については雪解けが来るということも私は見通しとしてあり得ると思う。そういう時期まで一体待てないか。そういう時期まで、南北朝鮮の統一ができるという具体的な可能性が出てくるまで待てないか。待てない理由は一体どこにあるかということです。つまり、国連の中で、朝鮮問題のガンはいろいろある、そのガンがだんだん取り除かれそうになってきておるこの事態というものの見通し、そうして、そういうものに対して日本政府はやはり猪突猛進をされていこうとするのか、念のためにもう一ぺんその点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/99
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100・大平正芳
○大平国務大臣 たびたび申し上げておりますように、韓国を合法政府として認めて、それとの国交を正常化するということをいまやっておるわけでございまして、私どもは基本的にこれが南北の統一を阻害するとかあるいは分断を恒久化するとかいうように考えていないことは、たびたび申し上げておるとおりでございます。そういうことをやっておるのにすぎないわけでございまして、統一問題と日韓交渉というのを妙にそういう次元にまで取り上げられて議論されるということは、いささか私には不可解なのであります。しかし、それは別といたしまして、国連も流動的な国際情勢を取り扱っておるわけでございまして、朝鮮問題というものが今後どのように討議されてまいるかということ、これは今後いろいろな進展があるかもしれないと思います。ただ、肝心なところは、国連の中で討議するという以上は、やはり、国連が要請いたしておるように、北朝鮮のオーソリティーも国連の委員会に御出席いただいて、そこで一緒に討議をするという態度が私どもとしては望ましいと思うのであります。私どもとしてはそれを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/100
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101・松井誠
○松井(誠)委員 北朝鮮自身が、たとえば一九五六年には、この朝鮮問題というのは、元来南北朝鮮が自主的に解決をすべき問題だという基本的な立場をとりながら、必ずしも関係国会議には反対ではないという、そういう態度を見せたことがあったわけです。あるいはまた、さらに具体的には、一九六〇年には、非常に柔軟性のある連邦制、それにいかなくも、少なくとも経済委員会というものを設けて、南北の統一のためにできるところから手をつけようじゃないかという具体的な提案をしておるわけです。これをやはり大臣は、それは朝鮮の内部問題だから朝鮮民族自身が解決をすべきことで、日本が意見を言うことは何か内政干渉であるかのような受け取り方をいまでもされておりますか。そうではなしに、やはりそういう南北の統一というものが現実に両方の民族だけでできかねるという事態にあるときには、その具体的な会談の場所をつくるなり、あるいはそういう空気をつくるなりということこそが日本に与えられた使命ではないかと思うのです。
それはもう時間がありませんからあらためてお答えはいただきませんですけれども、実は、私、このあと、日本の資本がいま韓国にどういう形で進出をしておるかということ、これが実は最近のデモで日本の商社を襲撃をしたりあるいは日本商品のポスターをはいだりするそういう韓国民の感情になってあらわれてきておるので、こういう非常に無神経な日本の資本の進出のしかたについてもいろいろお伺いをしたかった。あるいは、もう少し、法律的な問題ですけれども、国籍の問題についても、重要な問題ですからお伺いをしたかった。しかし、これは時間がございませんのでこの次にいたしたいと思います。
ただ、一点、私は、この間から大臣が機会があればすぐ持ち出される例の一九四八年の国連の第三回総会の決議、これを金科玉条としておられるようですけれども、この解釈についてだけお尋ねをしておきたいと思うのです。これはもう国会のいろいろな答弁や何かでけりがついたと私は思っておりますけれども、これは、朝鮮における唯一の合法政府という意味ではなくて、端的に言えば南朝鮮における唯一の合法政府というのが、あの第三回総会の決議の趣旨だ。これは何度もあったかもしれませんけれども、私の目にとまった限りでは、岡田春夫委員の質問に答えて中川条約局長が、趣旨はそういうことです、しかし、その南朝鮮における唯一の合法政府以外に合法政府があるかないかということについては、この決議は何にも触れていないという答弁をされておるわけです。したがって、あなたが何か朝鮮全体の唯一の合法政府であるかのようにこの総会の決議を解釈されておるような口吻がうかがえますので、そういう趣旨ではないだろうと思いますけれども、お伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/101
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102・藤崎萬里
○藤崎政府委員 いまの総会の決議は、「朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮の部分に、有効な支配と管轄権を及ぼす合法な政府が樹立されたこと、この政府が、朝鮮の前記の部分の選挙民の自由意思の有効な表明であったし、また、臨時委員会が観察した選挙に基くものであることと、この政府が朝鮮における唯一のこの種の政府であることと」と言って、「この種の」というのはその前段に述べたすべてにかかっていると思います。それから、「朝鮮における唯一のこの種の政府」でございまして、ほかにも合法な政府があることを排除するものではないのではないかという御質問に対しては、「朝鮮における唯一のこの種の政府」と言っておりますから、ほかに合法な政府があるということはここでは認めていないと解釈すべきものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/102
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103・松井誠
○松井(誠)委員 時間がありませんからあとでまたお伺いをしたいと思いますけれども、あなたの言われるように、「この種の唯一の政府」、私も原文を持ってきておりますけれども、オンリー・サッチという、そのサッチというのはどこまで含むかということです。そのサッチというのは、いまあなたが言われたように、前段いろいろな条件つきの政府、そういう条件つきの政府としてただ一つの合法政府だということ。その条件つきの条件の中には、朝鮮全部を支配しておるということじゃなしに、大多数の人民というそういう条件ではありますけれども、やはり一部の支配だという条件がついておるわけです。ですから、そういう意味で、これは南朝鮮の合法政府だということを言ったにすぎないのであって、朝鮮における唯一の合法政府というものとは違う。サッチという表現そのものがあいまいですから、具体的にぴしっときまらないでしょうけれども、しかし、政府が何か一点の疑いもないように考えておるやに見受けられる朝鮮における唯一の合法政府というふうには必ずしも考えられない。このことは間違いないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/103
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104・藤崎萬里
○藤崎政府委員 同じことの繰り返しになるかもしれませんけれども、最後の結びのところで「朝鮮における唯一のこの種の政府」と言っていることは、朝鮮の北のほうも頭の中に置きながら国連がそういう判定をしたという意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/104
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105・松井誠
○松井(誠)委員 時間がありませんので、私いまいろいろ問題を残しておりますので、このあといまの問題から始めていろいろとお伺いをいたしたいと思います。きょうは私の質問はこれで終わりにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/105
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106・臼井莊一
○臼井委員長 川上貫一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/106
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107・川上貫一
○川上委員 二時までやります。私は日韓会談を非常にお聞きしたいので、どうも、十五分くらいでやろうといっても、これはできない。あとに残しますが、韓国の学生を中心とする反対運動、これについての社会党の質問は私は非常に道理にかなっておると思う。同時に、これに対する政府の答弁は少しも道理に合わぬと思う。このことについてはいま時間がないから触れていられませんが、政府は、おそらく、こういう態度でおられたら、近い将来に非常に当惑される、困惑される事態が必ず来るに違いないということをはっきり申し上げておきたいと思います。同時に、私はこの問題は次の機会に時間をもらって質問することにして、一体、この日韓会談というものは、相当陰険で、不条理で、不明朗で、妙な会談なんだ。そのことを一そう明らかにしなければならぬので私は二、三の質問をするのですが、時間がないからまとめて質問しますから、ひとつまとめて答えてください。
平和条約の第四条、これをちょっと読みます。「この条の(b)の規定を留保して、」、これは留保して、「日本国及びその国民の財産で第二条に掲げる地域にあるもの」、第二条とは朝鮮です。朝鮮の地域にあるもの「並びに日本国及びその国民の請求権(債権を含む。)で現にこれらの地域の」、朝鮮の地域の「施政を行なっている当局」、これらの地域で施政を行なっている当局「及びそこの住民(法人を含む。)に対するものの処理並びに日本国におけるこれらの当局及び住民の財産並びに日本国及びその国民に対するこれらの当局及び住民の請求権(債権を含む。)の処理は、日本国とこれらの当局との間の特別取極の主題とする。」、これがサンフランシスコ条約の第四条の規定です。これは日本は守らなければならない条約です。そこで、これらの地域です。施政を行なっている地域の当局、これは、政府は、南のほうは韓国、こう思っておるのだろうと思う。思わなければならぬ。そこで、私の質問は、この地域で施政を行なっておる当局、それの地域は三十八度線以南と政府は考えておるのか、停線ライン以南と考えているのか、これはどっちなんですか。これが第一問です。
第二問は、政府が考えておる一定の線より以北の当局、これは何だと思っているのか。これが第二点。
第三点は、この平和条約第四条によって、朝鮮で施政を行なっておる地域、これの当局との間でなければ請求権債権、少なくともこれの取りきめはできないのでありますから、韓国がどこで施政権を行なっておるかということを前提とせなければ、いまやっている日韓会談の妥結はできない。そこで、この日韓会談の結果で、その最後の公文に、施政を行なっている地域をどういう形で表現するか。同時に聞きます。表現するのかしないのか。どういうふうに表現するのか。しなかったならばたいへんなんです。これが第三点です。
第四点は、李承晩ライン、あれは認めないというような意味の政府の答弁がいままであったと思うのですが、李承晩ラインというものは、あれは一方的な宣言なんです。認めないということになれば、最後の公文で李承晩ラインは認めないということをはっきりしておかないと、李承晩ラインは消えません。残ります。これはどういう形で公文化するつもりか。これが一点。
最後に、在日朝鮮人の権利の問題、これについてはどういう文面で公文に規定するつもりであるか。
私のきょうの質問はこれだけですから、一つ一つを外務大臣はお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/107
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108・大平正芳
○大平国務大臣 条約の問題でございますから、局長からまず答弁させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/108
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109・藤崎萬里
○藤崎政府委員 第一点の、三十八度線か休戦ラインかということでございますが、実際上施政が及んでおるのは休戦ライン以南であります。ただし、それは大部分三十八度線で、東と西で多少でこぼこがあるだけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/109
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110・川上貫一
○川上委員 三十八度線以南といままで政府が答弁しておるのは間違いだな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/110
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111・藤崎萬里
○藤崎政府委員 大部分が重複しているから、簡単にそう申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/111
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112・川上貫一
○川上委員 正確にはどうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/112
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113・藤崎萬里
○藤崎政府委員 休戦ラインでありますが、ラインが休戦ラインであるからそれを採用するというわけではなくて、最初に申し上げましたように、施政が及んでおる範囲を区切っているラインが問題なわけであります。
第二点は、以北はどういう状態かという問題でありますが、以北の問題には及ばないわけでありまして、以北の請求権は、したがって未処理のままに残るわけであります。
第三に、地域の限定をどう表現するかということでございますが、これはほかの事項と同様まだ交渉中の条約案件でございまして、条約上の表現がどうなるかということまでは、ここで申し上げることは差し控えたいと思います。
第四の、李ラインについても、同様です。
第五の、在日朝鮮人とおっしゃいましたのは、これは南、北を含めてでございましょうが、条約上の表現の点はまだ答弁の時期に至っておらないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/113
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114・川上貫一
○川上委員 外務大臣に聞きますが、公文に書くのですか書かぬのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/114
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115・大平正芳
○大平国務大臣 たびたび申し上げておるように、いま実体の討議をやっておりまして、煮詰まった段階でどのような表現をするか考えてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/115
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116・川上貫一
○川上委員 すると、日韓の交渉の結果で、書くか書かぬかわからぬというのですか。書き方の問題じゃない、書くのか書かないのか、これは大事な点です。書かなかったらえらいことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/116
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117・大平正芳
○大平国務大臣 まとまりますれば国会で御審議いただかなければならぬわけでありますので、私どもといたしましては、実体を煮詰めた段階でどのようにいたしますか、とくと考慮いたしまして善処したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/117
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118・臼井莊一
○臼井委員長 お約束の時間がまいりましたので、本日はこの程度といたし、次回は四月一日は午前十時より、池田総理も出席されますので、理事会を開かず直ちに委員会に入ることといたし、本日はこれにて散会いたします。
午後二時散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104603968X01319640327/118
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