1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年五月十五日(金曜日)
午前十時十八分開議
出席委員
建設委員会
委員長 丹羽喬四郎君
理事 加藤 高藏君 理事 瀬戸山三男君
理事 廣瀬 正雄君 理事 福永 一臣君
理事 岡本 隆一君 理事 兒玉 末男君
稻村左近四郎君 大倉 三郎君
正示啓次郎君 堀内 一雄君
山本 幸雄君 井谷 正吉君
金丸 徳重君 久保田鶴松君
西宮 弘君 原 茂君
米内山義一郎君 吉田 賢一君
農林水産委員会
委員長 高見 三郎君
理事 長谷川四郎君 理事 本名 武君
理事 赤路 友藏君 理事 足鹿 覺君
理事 芳賀 貢君
伊東 隆治君 池田 清志君
加藤 精三君 仮谷 忠男君
坂村 吉正君 笹山茂太郎君
藤田 義光君 細田 吉藏君
角屋堅次郎君 栗林 三郎君
東海林 稔君 中澤 茂一君
楢崎弥之助君 西村 関一君
松浦 定義君 湯山 勇君
稲富 稜人君 小平 忠君
出席国務大臣
建 設 大 臣 河野 一郎君
出席政府委員
建設事務官
(大臣官房長) 平井 學君
建設事務官
(計画局長) 町田 充君
委員外の出席者
農林事務官
(水産庁漁政部
漁業調整課長) 横尾 正之君
参 考 人
(早稲田大学教
授) 佐藤 立夫君
参 考 人
(東京大学教
授) 大内 力君
参 考 人
(全国漁業協同
組合連合会専務
理事) 浜田 正君
専 門 員 松任谷健太郎君
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本日の会議に付した案件
土地収用法等の一部を改正する法律案(内閣提
出第一四五号)
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〔丹羽建設委員長、委員長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/0
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001・丹羽喬四郎
○丹羽委員長 これより建設委員会農林水産委員会連合審査会を開きます。
先例により、私が委員長の職務を行ないます。
土地収用法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を行ないます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/1
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002・丹羽喬四郎
○丹羽委員長 本案について、その趣旨説明は、お手元に配付いたしております資料で御了承願うことにいたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、東京大学教授大内力君、早稲田大学教授佐藤立夫君、全国漁業協同組合連合会専務理事浜田正君の、主君の御出席を願っております。
この際、参考人の方々にごあいさついたします。
本日は、御多用中にもかかわらず、本連合審査会に御出席いただき、厚くお礼を申し上げます。参考人におかれましては、どうぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますよう、お願いを申し上げます。ただ時間の都合もありますので、最初に御意見をお述べいただきたく、時間はお一人大体十分程度に願い、後刻委員から質問もあろうかと存じますが、そのおり、十分にお答えをいただきたいと存じます。
それでは、佐藤参考人よりお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/2
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003・佐藤立夫
○佐藤参考人 十分ということでございますが、少し長くなるかもしれませんが、お許しをいただきたいと存じます。
今度の土地収用法等の一部改正法律案を拝見いたしまして、問題点になります点を若干申し述べてみたいと思います。
今度の収用法の一部改正法律案を見ますと、従来特別措置法にある多くの条項が、収用法案のほうに移譲いたしておりますが、この立法的な趣旨はどういう点にあったかと申しますと、私、実はこういう考え方には前から賛意を表しておるのでございまして、土地収用というような一般の国民に重大な利害関係のある法律案は、同じこの対象について法規が二元主義をとって複雑である点は、非常に国民の側から見れば不利益な場合が結果する、こういう点で、なるべく将来とも、基本法である土地収用法に入れるものは、やはり整理していくべき方向をとる必要があるのではないか、こういう点で、本案の改正案にはまず見るべきものがあるのじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
それから第二の問題でございますけれども、現在土地収用の場合に、用地の取得にかなりの期間をとっておるわけでございます。短いのでも三年以上、長いものになりますと八年以上かかっておるようなケースをわれわれは聞いておるのでありますが、なぜ土地収用並びに特別措置法の活用が十分に行なわれていないだろうか、そういう原因がどこにあるだろうか、こういう点を考えてみる場合、私は起業者側とそれから土地所有者の二つの側から問題点があるのじゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。起業者の側から見ますと、現在の収用法は手続はきわめて煩瑣であります。そこで実際には任意買収、そういうようなケースになるだろうと思います。土地所有者の側から見ますと、どうしてもやはり収用法あるいは特別措置法となりますと、強権の発動というにおいが非常に強い。いずれからも敬遠されておるというのが、従来の土地収用法を十分に活用していないおもな原因じゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。これにつきましては、御承知のように、現在特別措置法の第三条でございましたか、住民に対してPRするような規定がありますので、若干こういう条文の活用によって、こういう欠陥もこれからは補充せられていくのではないかと思います。
それから、もう一つ土地収用法が活用せられていない理由といたしまして、現在の収用委員会の機構ないし運営の上に若干問題があるように考えられるのであります。御承知のように、現在の収用委員会の委員は非常勤でありまして、専任の事務局もございますが、実際には都道府県の部局の職員がこれを兼務しておるような実情であります。こういうことでは、収用委員会が能率的な事務処理というものを発揮する上には多くの欠陥があるのじゃないか、そういう点で、今度の改正案を見ますと、収用委員会に専任の職員を置く、しかも委員を常勤にする、こういうような規定があるのでございまして、この点はやはり今度の改正案の一つの特色ではないか、特に改正案では、委員は地方公共団体の議会の議員もしくは地方公共団体の職員との兼職を禁止しておりますが、これは現在地方公務員法中の特別職の中では、たとえば人事委員会の委員の諸君がやはり兼職を禁止されておるわけでありますが、人事委員会の委員とは必ずしもこの職務は同じでございませんけれども、やはり裁決処分という準司法的な権限というものを現在の収用委員会が与えられておるのであります。そういう意味からいって、兼職禁止の規定には見るべきものがあるのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
それから問題点といたしまして、現在の特別措置法の改正案には、特定公共事業にかかる収用委員会の緊急裁決は、二月以内にしなければならない。当該期間中に緊急裁決がなされない場合には、建設大臣の代行裁決権を認めたわけでありますが、これはよほど慎重に検討いたしませんと、将来問題を残す規定になるおそれがあるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。現在の特別措置法自体が、実際には収用委員会の裁決を緊急裁決と、それから補償裁決に分けておりまして、緊急を要する場合には、損失補償に関しまして審議を尽くしていない場合といえども、概算見積もりによるところの仮補償金の支払いによって、収用を認めることになっておりますが、この規定は、御承知のように、土地収用法の第四十八条あるいは四十九条並びに九十五条の補償金の先払いの原則に違反するおそれがある。実はその点に対しても重大な例外規定だ、こういうような学説もあるようでございますが、しかし土地収用法に関する先払いの原則に違反するにいたしましても、現在の憲法第二十九条の第三項の正当な補償というのは、必ずしも先払いの原則をうたっておるわけではない。憲法違反にはなりませんと思いますし、また判例も大体そういう判例が最近出ておる。しかし収用法のこの先払いの原則に対しては重大な例外規定だ、こういう点でやはり一つの問題点を投げかけておるようであります。
また、これに関連いたしまして、先ほど申し上げました建設大臣の代行裁決権の問題でございますけれども、御承知のように現在の収用委員会というものは、都道府県知事の所轄のもとに独立の職権を行なう権限を持っておる行政委員会であります。しかるに事業の認定ということと、それから裁決処分ということは、全く行政処分としても別個な性格を持つもので、それを建設大臣が独占するということになりますと、多くの問題をやはり残す。特に所轄ということは、私から申し上げるまでもなく、非常に独立性の強い規定でございます。もしこの代行裁決権が認められるということになりますと、たとえば古い土地収用法の第二十九条並びに第七十二条に、収用審査会が不成立の場合の地方長官の裁決処分、それから主務大臣によるところの収用審査会の裁決の取り消し処分、こういう規定がかつてありましたが、それがしかし収用委員会の現在の性格から、上級機関の指揮、監督を受けないということで、こういう規定が削除になっている。それをさらに代行裁決権というような新しい制度を考えます場合においては、何らか旧法に対して復活するような傾向にあるのではないか、こういう点できわめて今後問題を残す規定ではないかという点で、これは相当に検討を要すべき問題ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
それから、現在の特別措置法の第二条の改正案を見ますと、特定の公共事業の対象の特別措置法二条各号の列記事項と同じ程度の公共性なり緊急性のある事業を政令で定めることをこれに加えよう、こういう改正案であるようでございます。こういうようなきわめて緊急性なり公共性のあるものを政令で定めるということは、あまりにも当局の裁量権というものを強めるおそれがある。現在の措置法の第二条に掲げてあります事業の種別を見ましても、大体大規模な公共事業のほとんどが網羅されておる現状であります。なぜ政令でこういうものを定めなければならないのか、私自身、この案には必ずしも賛意を表するわけにはいかないわけであります。ただ、しいて政令で掲げようとするなら、むしろ政令ではなく、特に公共性なり、緊急性の強い公共事業の基準というものを法律で定めたほうがいい。実際に、特別措置法というものは収用法の特別措置として、例外的にわれわれは考えておるわけであります。なるべくなら、特別措置法の適用事業の範囲というものはできるだけ狭めることが立法政策として望ましい方向ではないか、こういうふうに考えております。そうでありませんと、特別措置法そのものが、実質的には土地収用法に関する一般法のような性格を持つわけであります。政令でかってに定めるということになりますと、結果から見ますと、これは起業者側にはきわめて有利になる規定だと思います。しかし収用される側から見ると、不利になる結果を招くのではないか、こういうふうに考えられるわけであります。私は、そういう政令で定めるというような緊急的な必要がありとするなら、それはむしろその基準を法律で定めるべきである、こういうふうに考えておるわけであります。
それから第六の問題になりますけれども、現在、御承知のように、用地の需要がきわめて増大化の傾向にあるわけであります。この点について措置法案ではいろいろな観点から検討を進められておるように思います。私はやはり、現在の地価の値上がりがきわめて高いということは、究極的には土地の需要供給関係の不均衡にある、こういうふうに考えておるわけであります。やはりその解決策といたしましては、宅地の大量の造成以外にはないのではないか、こういう点につきまして、すでに建設省あたりでは、住宅地開発法案とか、あるいは土地区画整理法案、こういうような案も考えておるようでございますが、しかし問題点として残るのは、宅地造成のための用地というものは、鉄道やあるいは道路のような公共事業とは異なるわけであります。つまり私人の用に供せられるので、公益性というものはその観点から見れば少ないのではないか。しかしこれに対して土地収用法を適用する、そういうところに問題があると思うのであります。
しかし、他方、これに関連いたしまして別の考え方が実はあるわけであります。実際に宅地開発地域に指定されますと、収用権の対象となる土地というものは国土総合開発計画の一環として考えられるわけであります。結局、そういうことは公共の利益あるいは土地収用法にいう国土の適正かつ合理的利用、こういうことになるわけでありますから、その点について収用権の発動もまたやむを得ないのではないか、こういう見解もあるわけであります。こういう両方の観点を十分に踏まえながら、この問題については今後相当に検討の余地があるのではないか、ただ問題は、建設省あたりで考えましたこういう法律案が、実際問題としますとやはり憲法に保障されておる私有財産権に対する重大な侵害になるわけであります。それを公共の福祉の立場から制約する、こういうことになるわけでありますから、実際問題として、宅地の造成にどの程度の公益性を持たせたらいいか、あるいは区域指定の基準というものをどこに求めるか、こういう問題が将来やはり最後まで十分に検討をしてかからないと、法文化の段階でいろいろ問題点を残すのではないか、こういうふうに考えるわけであります。
最後に、土地収用に関する損失補償の問題でございますけれども、現在、御承知のように、土地収用に関しましては、たとえば三十七年に閣議決定を見ております公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱、あるいは建設省の基準とか、あるいは農地局長通達による土地改良要綱等、たくさんあるわけでございますが、御承知のように、閣議決定とか通達というものは、これはあくまでも役所は拘束されますけれども、相手方自体を拘束する法的権限は何らないわけであります。そこにいろいろ問題が出るわけでございます。実際に現在は、御承知のように、任意買収、つまり民法上の契約問題としてこれを処理しておる点がきわめて多いわけであります。ただ任意買収の場合には、それがまとまらない場合においては、最後の、収用権の発動という体制をとっておるわけでございますが、実際にその収用権の発動にいくことはきわめて少ないので、現在まででも年間二十万件くらいの買収処分が行なわれておりますけれども、ほとんどそれはもう任意買収で、収用権の発動という例はきわめて少ないのだ、そこに一つの問題があるわけでございます。ただ実際に閣議決定なりあるいは建設省の基準等を見ましても、各ばらばらに補償するということは、土地所有者の側から見る場合においては、土地収用法の規定でなく、そういう要綱なりそういう基準でやった場合に、有利になることが十分考えられる、そういう意味から、これに応じておる傾向があるのではないかというふうに考えるわけです。これはやはり私は損失補償という問題については、単独に統一的な立法化をしたらどうか、いままでの基準そのものは、要綱はこの原則はくずしておりませんけれども、そういう原則を踏まえながら、これを単一立法化する段階に現在ではきておるのではないか。と申しますのは、任意買収の場合におきますと、不当に価をつり上げて利益を得る人、それから過小補償により非常に不当な損をこうむる人、二つあるわけであります。これはいずれも、過大な補償ということは、つまり一部の土地所有者の利益において国民の財政負担を増加するということを結果するわけであります。過小な補償ということは、公共の利益において土地所有者に不当な犠牲を負担させる。これがつまりわれわれの言う公平の原則に反するおそれがある。そういう意味からも、何らかの形で補償項目なりあるいは補償評価基準というものを決定いたしまして、正当な補償の内容を確定しておく段階にきておるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。それは、実際には、現在のような任意買収の場合には、正当な補償の実現を目ざしておりますけれども、実際の補償の内容は、起業者によってまちまちである、こういう点に問題点があるように思うわけであります。ただ、最後に指摘申し上げたいことは、御承知のように、現在の補償問題は、農山漁村いずれの場所でもきわめて大きな社会問題を提起しておるわけであります。単なる経済的な補償のみでなく、生活再建の保障とか、そういう形で問題が出ておるわけであります。たとえば国土開発縦貫自動車道建設法なんかを見ますと、必要な土地を供したために生活の基礎を失う者がある場合には、政府は、その受ける補償と相まって、生活再建または環境整備のための措置について、その実現につとめなければならないのだ、従来考えられなかったような政策的な補償と申しますか、そういう点を掲げておるわけでございます。また、これはある県でございますけれども、起業者が、これは県でございます。その地元の漁業協同組合と地元民のために造成した土地に立地して工場が立ちましたが、その工場に優先的に就職をあっせんする、こういう例もあるのであります。実際には、従来の損失補償の観念をはるかにこえた漸進的な措置をとっておるわけであります。これは、われわれが従来考えました市民的法治国家における補償という観念ではなく、福祉政策的な意味を持った補償、そういう点で、われわれとしては今後新しい問題として検討をしなければならない問題ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
実は、忙しいために十分に改正案も検討しないで、ただ、いただいた資料を一通り見て、問題点だけを指摘して委員各位の御参考に供したわけであります。御清聴ありがとうございました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/3
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004・丹羽喬四郎
○丹羽委員長 ありがとうございました。
次に、大内参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/4
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005・大内力
○大内参考人 私は、法律学者でございませんので、土地収用法なりあるいは特別措置法なりについて、法律的にこれを問題にするという能力は全然ございません。したがって、主としてきょう申し上げたいと思いますのは、当面の案件からは多少離れるかもしれませんけれども、むしろ日本全体としての、土地問題と今日呼ばれているようなものをどういうふうに考えたらよいだろうかということを中心として、日ごろ考えておりますことを申し上げまして、御参考に供したい、こういうふうに考えているわけであります。ただその前に、収用法の改正につきまして、いただきました書類を拝見しておりまして、その法律的な意味ではございませんが、これの運用の側面について、私としては幾つかの疑問を持った点があります。もちろん、日ごろそういうことを専門に勉強しているわけではございませんから、これは単なるしろうとの考えかもしれませんが、私どもとしてはどうも十分納得のできない点がございますので、本題に入ります前に、ちょっと簡単に、この法律の範囲の中で、私が多少疑問ではないかというふうに考えました点が二、三ございますので、この点をまず申し上げさしていただきまして、それから全体としての土地問題について考えているところを申し上げたいと思います。
その私が疑問といたしました点は、今度のこの法律の改正の趣旨を拝見いたしますと、幾つかの要点があるようでございますが、そのかなり重要な要点になっておりますのは、土地収用の手続をいわば簡素化をして、事務の迅速化、あるいは事業の迅速化をはかる、こういう点にかなり大きなポイントがあるように拝見をしたわけであります。私もこのこと自体は原則として賛成でございます。と申しますのは、もちろん、今日の日本の社会は、私有財産制度の上に立っているわけでありますから、私有財産権を尊重しなければならないということは、憲法にもうたわれているとおりでございます。しかし、同時に、これは日本だけではございませんで、いずれの、しかも社会主義国家ではなくて、資本主義国家を考えましても、やはり公共のために私有権をある程度制限しなければならない、こういう考え方が最近は非常に発達してきている考え方だろうと思う。ことに、ほかの私有財産と比べますと、土地というものはかなり特殊性がございまして、本来土地というものは、つまり公共的に使わざるを得ないものだというふうに私は考えております。したがって、ほかの私有財産権以上に、土地の所有権なりあるいは土地の利用権なりというものは、公共の制限に服するのが当然であるというふうに私は考えるわけでございまして、そういう精神がここにも反映しているものだというふうに了解できますならば、基本的な考え方としては、私は簡易化する、あるいは簡素化するということに賛成でございます。そういう意味で、国民の共有財産である土地、しかも、ほかには代替物のない土地、こういうものを公共的な立場から利用する、こういうことがより円滑に行なわれるようにすることは、きわめて合理的な考え方ではないかと考えます。
ただ、この点に関連いたしまして一、二疑問と考えられますことは、一つは、公共事業あるいは土地収用法の対象になります公共的事業、こういうものの範囲でございます。これにつきましては、法律的には、土地収用法及び特別措置法にそれぞれ法的に規制されておりますし、今度の改正では、そのほかに政令である程度のものが加えられる、こういう規定になっているようでございます。これは政令で加えることの可否につきましては、いまお話がございましたとおりで、私も多少疑問といたしますけれども、それよりも、より根本的に申しますと、今日経済がだんだん発達してくるにつれまして、公共的な事業と申しましても、どこが公共的であり、どこまでが私的であるかという区別がはなはだつけにくくなってくるという傾向が多いように思うわけでございます。もちろん、国なりあるいは公団なりが行なうこういう事業につきましては、その主体そのものが公共的な性格を持っている。したがって、それを公共的であるというふうに考えることは当面差しつかえないと思いますけれども、しかし、御承知のように、この法律の対象になりますのは、国なり地方団体の行なう事業だけではございませんで、あるいはそれに準ずるもの、あるいは公的な団体の行なうものだけに限られておりますので、たとえば電力に関連をした発電設備なり、送電設備なり、あるいは私鉄のような、私的な営利事業として行なわれているようなもののあるものにつきましては、公共的である、こういうような地位が与えられているわけであります、他のものにつきましてはその範囲に入らないという区別が行なわれている。しかし、この区別そのものは、はなはだあいまいにならざるを得ないわけでございまして、なるほど電力や私鉄は比較的多数の人が使うから公共的だというふうに考えられないこともないと思います。しかしよく考えてみますと、たとえば特定の工場施設をつくるにいたしましても、それは日本経済全体の立場から考えればきわめて緊急のものである、こういうことも十分考えられるわけです。その辺で公共的な事業というものの線を、どこで引くのかということがどうもはっきりしないように考えられます。この点はあとでもう一度問題にしたいと思いますが、私はそういう意味で、ある特定の事業だけが公共的であるとかないとかいうよりは、もう少し広い国全体の計画の中において、何が必要であるか、何が一番緊要であるかという考え方のできるような法体系を将来考えてみるべきではないか、こういうふうに思っておりますが、そのことは後にもう一度申し上げるといたしまして、さしあたり私が一番疑問といたします点は、いま申し上げましたように、公共的な事業と言われているものを営む主体のほうにも、実は私的な営利会社がかなり入るという形になっているわけでございます。この場合にそういう私的な営利事業として行なわれていることと、それから土地収用といういわば伝家の宝刀まで抜いて、他人の私有財産権を、その限りにおいては侵害をする、こういう関係とどういうふうに調整するかという問題は、どうも割り切れない問題が残るような感じがいたします。もちろんここの土地収用法の対象になっております、たとえば電力とかあるいは私鉄とかいうものは、それぞれ一定の規制を受けておるわけでございまして、全く私的な営利事業として行なわれているとは言えない側面がございます。ことに、御承知のとおり、私鉄なんかの場合では一番問題が起こる点でございますけれども、私鉄そのものの経営はある程度公共的な規制に服して、運賃やその他も自由にはきめられないという形になって、公共的な規制に服しているといたしましても、私鉄をつくること自体によりまして、その周辺の、たとえば土地の値上がりというものを見越しまして、私鉄会社が非常な利益を受けるということはしばしば見られる事実でございます。またしばしば指摘されている事実でございます。そういう純然たる私的な営利目的と、公共性ということとの関係がどうもあいまいになっているのではないか、こういう感じがいたしまして、そういう意味で、こういう法律制度を適用いたします場合に、特に国や地方団体の行なう事業、あるいはそれに準ずるものの行なう事業以外の、私的な営利事業として行なわれておりますような事業に対してこれを適用いたします場合には、いま申し上げましたような点がほかの方法によって十分に規制をされる、こういうことがございませんと、おそらく国民としては納得がいかない、こういう感じが残るのではないか、こういう点が一つの疑問点でございます。
それから第二番目の疑問点は、おそらくこれは当然出てくる疑問点だと思いますが、御承知のとおり、軍事施設に関連いたします土地の収用が、自衛隊、駐留軍を問わず、土地収用法を準用するという形で行なわれるわけで、これにつきましては、おそらく国民としてはいろいろな疑問を持つ者が多いだろうと思います。もちろん今日の自衛隊なり、あるいは安保条約による駐留なりというものが、はたして違憲であるかどうかということは、はなはだむずかしい問題でございます。私は個人的には考えを持っておりますが、いまそのことは問わないといたしまして、かりに一応それが合憲であるといたしましても、しかし少なくとも国民の過半数とは言わないまでも、相当多数の国民がその点につきましては、かなりの疑いを持っているという事実は否定できないことだと思います。そういたしますと、こういう土地収用法を簡易化するという手続がそういうケースにも当てはめられるということになりますと、これはおそらく国民のかなりの部分にとっては、相当大きな疑問を起こさせる原因になりはしないか、こういう感じがいたします。したがってこういう問題は、事が憲法の精神に関するところまでいく非常に重要な問題でございますし、十分国民の納得を得た上で行なうべきことだというふうに私は考えますので、むしろそういう軍事基地関係の土地収用というものに関しましては、この法律に除外例をつくりまして、さらに慎重な手続を必要とする。こういう措置をとるほうが当然ではないか、こういうことが第二番目の私の持った疑問でございます。
それから、第三番目にもう一つだけ申し上げますと、これは先ほどのお話にもちょっとございましたが、土地収用委員会、あるいは委員というものについての問題です。この点につきましては、私も具体的なことをあまりよく存じませんので、あるいは見当違いなことを申し上げるかもしれませんけれども、今度の法改正で、市町村長なりあるいは議員なりが、土地収用委員からはずされるという形になるようでございますが、このことは、私はある意味でけっこうな措置ではないかというふうに考えております。それは、あるいはこういうことを申し上げますと語弊がございまして、皆さんからしかられるかもしれませんが、どうしても議員の方は、やはり地元の利益ということを主にお考えにならざるを得ない立場におありになるわけでございまして、ことに地方の議会なりあるいは市町村会なりの議員なり長なり、こういうものになりますと、かなり狭い地域の利益というものに束縛されるという傾向が非常に強くなります。ところが今日の公共事業というようなものは、県単位でも終わらないような、国全体の計画の中にはめ込まなければ解決できないような、非常に大きい視野を必要とする、こういう問題でございますから、そういう意味で、私はむしろ議員や長の方が参加されないことが適当であろうというふうに考えております。しかし同町に、今日の委員が、知事の、たとえば任命という形で行なわれるということにつきましては、やはりいささか問題があるように思うのでございますが、それがもう少し広い視野を持った、そして相当の専門的な知識と見識を持った人を公平に選ぶような、何かそういう一つの保障というものが必要ではないか。こういう法律的な措置が強められ、土地の収用が簡易化されればされるほど、それだけますます収用委員会というものは、だれにも納得ができるような構成を持ち、その点において不公平なことがあったり、あるいは知識なり能力なりの不足によって過誤が行なわれる、こういうことをできる限り避けなければならないといたしますと、土地収用委員の選定の方法なり、あるいはどういう資格のものをそれに充てるというふうに規定するかという点につきましては、もう少し研究を必要とするのではないかという感じがいたします。もちろんこれをすぐに専門にするということが一番いいかどうかは、私よくわかりませんけれども、しかし専門にいたしますと、かえってまた当面の利害関係者が非常に入り込んでしまうという弊害を生じますから、専門家万能だというふうには考えませんけれども、その点につきましては、少なくとももう少し明確な規定をするような、そういうくふうを必要とするのではないか、こういう感じを持ったわけでございます。
以上申し上げました三点が、収用法の中で考えました場合に、私が疑問と感じた点でございます。それは先ほど申し上げましたように、前置きみたいなようなものでございまして、もう少し今度は広く、収用法という法律の外に飛び出してしまいますが、日本全体としての、今日のいろいろな土地問題というふうに呼ばれておりますような問題について、どういうことが考えられなければならないかということを、少し申し上げてみたいと思うわけであります。その点で、都市の土地問題、あるいは工業、交通業、その他建設業、その他の非農林業関係の土地問題というものもいろいろあるわけでございますけれども、私は農業問題のほうを専門にしておりますので、どちらかと申しますと、農業問題の立場から考えまして、土地の問題をどう考えたらいいかということに焦点を置かせていただきたいというふうに思います。この点もいろいろ申し上げたい点はあるのでございますが、時間が限られておりますから、簡単に、四つばかりの点を申し上げたいと思います。
一つは、今日の土地問題というものを考えます場合に、やはり日本の、いわば国土計画とでもいうような基本的な計画がきちんとできていないということが、いろいろな局面におきまして、土地問題を紛糾させているという事実があることは、だれでも異存がないところではないかと思うのであります。これは特に農業の立場から申しますと、今日の農家のかなり多くの部分は、自分がいま耕作している農地が将来宅地化するとか、あるいは工場敷地化するとか、あるいは道路になるかもしれないというような、そういうことをずいぶん感じております。それが一面におきましては、ある意味では農業を続けていく上に非常な妨げになりまして、ことにその土地について基本的な土地改良をするということに対する熱意を失わしめ、それから将来に対しまして、ただ土地の値上がりを待つというような形で、本来農地を持つべからざるような零細兼業農家までがいつまでも残存してしまうというような弊害を生んでおります。こういうことを考えますと、農業の問題だけから考えましてもそうでございますが、できるだけ早い機会に、国全体といたしまして、どういう地帯は農業地帯として将来ともに育成していく地帯であるか、どの地帯は工業地帯として将来開発をはかるべきか、こういうことをやはりきちんときめるべきだろうと思います。もちろん、こういうものを非常に長期にわたって計画化するということははなはだむずかしいことでございまして、計画をつくりましてもなかなかそのとおりにはいかないという問題も出てまいりましょう。しかしそれにいたしましても、十年なり二十年なりというような相当長期的な見通しを持ちました国土計画というものを持つのは当然のことだと思うのであります。これなしには、土地問題を根本的に解決するということはどうもできないように私は思う。こういうことを一つ申し上げたいと思います。
それから第二点で申し上げたいことは、土地価格の問題でございますが、これにつきましては、特に公共用地のような場合に、しばしば、いわゆるごね得というような傾向が起こってまいりますし、それによってまた地価が非常につり上げられてしまって、事業費がべらぼうに高くなるという、そういう弊害を生んでいることは御承知のとおりであります。この点につきまして、私は基本的に疑問に思いますことは、土地のそういう公共的な取得ということを考えます場合に、いわば事後的に、つまり先に、ある道路なら道路をつくるという計画ができまして、そうしてその計画ができたあとで土地の買収にかかる、そうしてその買収にかかったときに地価についてのいろいろの決定が行なわれる、こういう方式をとることがいろいろな問題を大きくする原因ではないかというふうに考えます。そうではございませんで、これを逆にいたしまして、むしろ日本の全体の土地につきまして、それぞれあらかじめ地価というものを規定しておく。と申しますと、一種の公定価格制度のような形になりますけれども、これは固定的な公定価格をきめるということではございませんで、不動産評価の相当の組織をつくりまして、年々これを、いまの固定資産税の基礎になるような評価をもう少し技術的に厳密にいたしましたような、そういう評価の組織をつくりまして、あらかじめ土地価格を決定しておく、そうしてたとえば公共的な収用の場合におきましては、その土地価格を動かさないということを原則とするという形にすべきではないかと思います。私は外国の立法例をよく知らないのでございまして、私がまいりましたおりにちょっと耳にはさんだ程度で、あるいは不正確かもしれませんが、たとえばアメリカなんかにおきましては、州によって違うかもしれませんけれども、少なくともある州においては、そういう措置がとられていることを聞いたことがございますが、むしろそういう考え方をすべきではないかというふうに思います。ただその場合に一番問題になりますことは、土地の公定価格制度というものはなかなかうまくいかないことが多いわけでございまして、それはつまり、土地の売買というものはほかの品物の売買と違いまして、特定の土地の相対取引になる傾向がございますので、公定価格をきめましても、やみ取引をされるということを防ぐことがなかなかむずかしいという技術的な問題がございます。したがって、これにつきましては、私はやはりその土地の買収につきましては、個々の事業体にまかせるということをいたしませんで、むしろ国の責任において、そういうものを買収するような方法を考えたらどうかというふうに考えております。ここで最初に申し上げました公共的な事業という問題とも関連いたしますが、したがって特定の事業のほうから先に規定するということではございませんで、いま申し上げましたような国土計画との関連におきまして、国としてどうしてもこの用地が必要だ、こういう決定が行なわれましたときには、国自身の責任において、特定の土地を定められた価格で買収する、こういうような措置を考えるべきではないかという感じがいたします。もちろんその場合には、それは素地の価格の問題でございまして、その上にございます補償の問題、いろいろな地上物件の補償の問題あるいは転業補償の問題は別でございますが、少なくとも素地価格としては、そういう措置を考えるべきであろうというふうに思います。
それから第三番目に、農林関係の問題といたしましては、特に今日非常に大きな問題になっておりますのは、私は山林原野の問題であろうというふうに考えます。今日の土地収用法では、山林原野につきましては、一般的にこれを農業のために収用するという方法がないわけでございます。もちろん農道をつくるとか、そういう特定の場合には収用の方法を持っておりますけれども、一般的にはそれがないわけでございます。ところが、今日の日本農業の発展の方向を考えますと、山林原野を農業的に合理的に利用するということが、畜産言の発達にいたしましても、あるいは果樹作の発達にいたしましても、最大の問題でございまして、しかも今日、たとえば構造改善事業というようなものが行なわれます場合も、しばしばその山林原野を開拓いたしまして、草地化するなり、あるいは果樹園化するということは、構造改善の非常に重要なポイントになりながら、しかもその山林原野の言開放が行なわれない、あるいは地主が売る場合も、構造改善事業が行なわれるとなると、急に地価が引き上げられまして、私の知っている例でも、たいていの村では、構造改善事業が始まりますと、山林の素地価格が一ぺんに五倍とか十倍にはね上がるというような問題が起こりまして、そのために構造改善事業が足踏みをしてしまうという問題にぶつかっております。したがって、この点につきましては、私はことに山林原野の所有権なりあるいは使用権、こういうものに、ある程度公共的な性格を持たせる必要がありはしないかと思います。もちろんそれをすぐに個々の農家に分けてしまうということではございませんで、むしろ地元の農業構造改善の計画とあわせまして、その計画の中に入るようなものは、山林原野を公共的に利用できる、こういう道を開くということが非常に重要な問題ではないかというふうに考えます。
それから最後に、もう時間がございませんから、大急ぎでもう一つだけ申し上げさせていただきますが、農地についての問題でございますけれども、農地の問題につきましては、二つにある程度話が分かれるのではないかというふうに思います。一つの点は、つまり土地基盤整備に関連いたしました事業を行なう場合でございますが、これは今日の土地収用法の考え方で申しますと、農道とか川排水設備をつくる土地は土地収用法の対象になるという形になっております。土地改良事業そのもの、あるいは基盤整備事業を行ないます全体の土地につきましては、おそらく問題が残るわけで、もちろん土地改良区の事業というのは、御承知のとおり、土地所有者の三分の二以上の同意があれば行ない得るという規定が別にございますけれども、この場合には、今日非常に困りますのは、実際には土地所有者の頭数でまいりますと、御承知のとおり、兼業農家化いたしました零細な農家というのが頭数では案外多いということであります。しかもそういう頭数の多い農家というものは、必ずしも基盤整備というようなことに関心を持たない。そのために、専業的に経営を発展させようと思う農家までが、土地基盤整備に取りかかれないというはなはだやっかいな問題を持っておるわけであります。したがって、これをもちろん、土地収用法でいくほうがいいのか、土地改良区、土地改良法の改正でいくのがいいのか、その辺の法律的な技術的な問題は別といたしまして、私は、いまのような三分の二以上の同感がなければ云々というような規定については、再検討を必要とするのではないか、特に将来離農を促進すべき零細兼業農家までが、一人一人の頭数として入ってくるということには相当大きな問題が残るように思いまして、この.点、まず何らかの解決方法を考える。たとえば、頭数ではなくて、土地の面積について考えるというのも一つの方法でございます。あるいは将来の発展性というものを考えまして、構造改善事業に取りかかるということになれば、そのときには必ずしも個々の農家の同意を必要としないでも、土地基盤整備が国の事業として行ない得るというような方法も考えられると思います。この点につきましては、しかし前提になりますことは、土地改良事業というものを、いまのように地元の土地改良区が行なうということをやめまして、これは前に農林水産委員会で申し上げたことでございますから繰り返しませんが、私は、土地改良事業というものは、国営事業として末端まで行なうべきだというふうに考えておりますので、もちろんそのことを前提といたしまして、必ずしも個々の農民の同意なしでも、基盤整備をやり得るような措置を考えたらどうかということが一つの問題であります。
それからもう一つ残っておりますのは、農地のいわゆる団地化という問題でございまして、つまり経営規模を大きくしたい農家のところに土地をなるべく集中させるような方式というものが必要になってまいりますが、この点につきましては、法律的にそれをどういうふうに土地所有権に手をつけるという問題ではございませんで、これも、前に農林水産委員会で一月か二月ごろ申し上げたので、繰り返しませんが、むしろ特殊な金融的な措置をつける、こういうことによりまして、土地の流動化をはかるということが先決問題ではないか、こういう感じを持つのであります。
十分意を尽くしませんでしたので、申し上げ足りないことは、後ほど御質問でもあれば補わせていただくことにいたしまして、一応私の申し上げたいことは、以上であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/5
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006・丹羽喬四郎
○丹羽委員長 ありがとうございました。
浜田参考人、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/6
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007・浜田正
○浜田参考人 全漁連専務の浜田でございます。土地収用法等の改正法律案につきまして、意見を申し上げます。
まず結論から先に申し上げますならば、最近における社会資本充実の要請がだんだん席まっておるときでございまして、公共事業優先という、その基調といいますか方向につきましては、十分是認いたしまして、ただ二、三点につきまして、強い希望を申し上げまして、今回の法律改正はやむを得ないもの、かように考えております。
二、三の希望として申し上げます第一点は、沿岸漁業等振興法、これが昨年制定されまして、その第三条によりますと、国は、沿岸漁業振興の目的を達成するために、政策全般にわたって、必要な施策を総合的に講じなければならない、かように規定しております。具体的施策といたしまして、一から十一まで掲げてございまして、その劈頭で、第一号に漁場の効用の低下及び喪失の防止等につきまして、措置をはからなくてはならない。漁場の効用の低下といいますのは、御承知のとおり、水質汚濁によって効用が下がってくるということであります。喪失の防止というのは、収用などによりましてなくなってしまう、これを防止するということについて、必要な措置を講じなければならない、かように規定されておるわけでございます。今回の土地収用法の改正によりまして、敏速に漁業権の収用、漁場の埋め立てが行なわれるということに相なると思うのでございますが、昨年制定されました沿岸漁業等振興法の規定と、この場合、一つの政策衝突が起こってくるのではないだろうか、かように考えるわけでございます。国は政策全般にわたって総合的に施策を講じる。そしてその中の、漁場喪失の防止ということにつきましては、現在の時点におきまして、まだその政策はあらわれておりません。
それで希望いたします点は、早く沿岸漁業等振興法による漁場の喪失の防止の具体策をお立て願いまして、そして沿振法と土地収用法との調整といいますか、運用をはかっていただきたい。それでないと、片方はことばだけで、片方は具体的になっておりまして、土地収用法が、公共事業の名において一方的にまかり通るということになると、われわれの心配がそこにあらわれてくるわけでございます。沿岸漁業等振興法はあれは農林省でやったことである、土地収用法は建設省でやったことである、タイミングとスピードを別々にして、それぞれが別々にいくということでは、建設省も農林省も両方合わせて、区別しないで、ひとしく政府であると考えている漁民からいたしますならば、そこにいささかちぐはぐな感じを持つわけでございます。もっと具体的に言いますならば、現在国の非常に重要な施策といたしまして、沿岸漁業構造改善事業というものが行なわれております。その一番中心をなしますものは、浅海における漁場の造成ということであり、その中でさらに花形をなすものはノリ漁場の造成、これが強く進められております。したがいまして、一方で漁場を造成し、片方においてこれが喪失していくということに、現地において政策の衝突が起こってくると思うのでございます。
結論的に申し上げますならば、土地収用法の一部改正という分野を越えて、沿岸漁業等振興法、土地収用法両方合せた、もっと商い視野から総合的に御検討をお願いしたい。建設委員会と農林委員会が合同審査を願いますのは、我田引水に申し上げますならば、そういうことに相なっておるのだろうと大いに喜んでいる次第でございます。その総合的の御検討をお願いしたい、これが第一点の希望でございます。
第一点は、漁業権の収用、当然補償の問題でございます。この点は先ほど佐藤先生もお触れになりましたが、収用がスピードアップされましても、補償は適正に行なわれるものとは存じます。しかしながら、問題は金銭補償で万事オーケー、解決ということでないということを、先生方に申し上げたいのであります。純収益の八%の利子率で資本還元するのが補償の価格でございますが、漁民が、農民が問題にします点は生活の問題でございます。収用後の生活が一体どうなるのかというのが漁民や農民の問題にする点でございます。ダムをつくりますと、典型的にあらわれてくるのでありますが、ダムは当然山奥につくられます。山奥のたんぼや畑は生産力が低いのでございます。最近はどうなったかよく知りませんが、たとえばこのような田んぼは反当二石何斗しかとれない、そういうものの純収益の資本還元をやりますならば、その田んぼの値段というものは非常に安い。まあ一般の経済価値率といいますか、あるいは商品の取引価格からするならば、それが適正かもしれません。しかしながら、先ほど言いましたように、農民、漁民が問題にする生活ということから言いますならば、これは銭金にかえられる問題ではございません。しかしながら補償するというならば、何とかして銭金にかえざるを得ない。したがって、無理に銭金で評価しようとするならば、二石何斗というふうな経済価値でなくして、何といいますか、生活のための生存価値といいますか——生存価値というふうなことばはいまこしらえたのでございますけれども、生存価格といいますか、そういうものでなくては話はおさまらぬということでございます。しかしながら、そういう生存価値を建設省の補償でやれというのは、これは話が無理かもわかりません。だからといって、農民なり漁民の生存を否定するわけにはまいりません。したがって、ここでぜひとも御登場願わなくてはならないのは農林省でございます。田が水没するならば、その補償金を自己負担として、その上に農林省のいろいろの補助金政策をつけ加え、また融資もつけ加えて、たとえば田が水没するならば、残った林野を利用するとか、そこで畜産の開発を積極的にはかるとか、あるいは漁場がなくなったならば、その前面に漁礁などの設置をやるとか、あるいはその付近に漁礁の設置をやるなどして新しい漁場をつくっていく、こういうことをやることが生存価格の補償ではないか、こう思うのでございます。これもまた、もう一ぺん言いますが、この公共事業は建設省さんがやっているんだからそれはそれ、こちらのほうは農林省さんであれはあれというので、別々のプリンシプルで別々の方針に基づいてやっておったんでは、やはり生活価格の補償にはならない、こう思うのであります。具体的の例を申し上げますならば、よく補償交渉におきまして、えらい人が農民や漁民を前にして、この当該事業の公共事業というものの国家的必要性を演説されるわけでございます。そして長々と演説されて、その結果において、ただ一人の者が、そうはおっしゃるけれどもわしは売る気がない、この一言で話が御破算になってしまう。といいますことは、話はわかるけれども、もう一つ腹の底にずんとおさまらぬという点が、何といいますか、生活の問題に対して聞かんとすること、問題にすることを答えていないということがそのあらわれでございます。したがいまして、御希望を、御検討をお願いしたいのは、補償の話と同時に、具体的に総合的施策を集中するという約束と実行という考え方といいますか、進め方といいますか、そういうことでやっていただきたい。そのことは公共事業を施行される側から見ましても、話し合いが円滑にいき、事が早く済む根本の理由になるのではなかろうか、かように考えておりますので、銭金の問題ではないんだ、生活価格だということを、それを根本にして話を進めていただきたいというのが第二の希望でございます。
それから第三点は、これは私が申し上げる筋合いのものでもなく、またあるいはよけいな心配だから、そんなことは心配せぬでもいいとおっしゃられればそれまでであり、あるいはへたな法律論であるかもしれませんが、先ほど佐藤先生も触れられましたが、特別措置法の改正によりまして、特定公共事業の範囲が政令で広がるというしかけに相なっております。法律案を見ますと、政令で広がるというしかけではございますけれども、列記事項と同程度の公共性、緊急性のある事業というふうにシャッポはかぶっておるわけであります。シャッポはかぶっておりますけれども、そのシャッポの解釈は、立法府と関係のない政令でそれをやっていくというたてまえ、こういうたてまえは、われわれがいままで理解しております土地収用法なり特別措置法なりが、何といいますか、制限列挙主義といいますか、あるいは狭く解釈するといいますか、そういう基本原則からいたしますならば、いささかこの基本原則を踏み出しておるのではないだろうか、かように思うのであります。これは法律論としてそうではないのだということを言われますならば、こっちも法律は弱いのでございますから、ああそうかということになるのでございますが、だからといって、これがはみ出してきやしないかという心配まで解消するということには相ならぬのでございますから、そめ点は法律論と同時に、そういう制限列挙主義だとわれわれが理解している、それがちょっとしたら国会と関係なく広がってくるのではないだろうかという心配は、法律論を越えた問題でございます。
以上、沿岸漁業者の感じております気持ちを先生方に申し上げまして、御善処を願いたいと思うのでございます。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/7
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008・丹羽喬四郎
○丹羽委員長 以上で、参考人の御意見の開陳は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/8
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009・丹羽喬四郎
○丹羽委員長 本案につきまして、参考人並びに政府当局に質疑の通告がありますので、順次これを許します。
なお、佐藤、大内両参考人は、都合により正午で退席されたい旨の申し出があり、また質疑の通告者が多数ありますので、質疑は簡潔にお願いいたします。楢崎弥之助君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/9
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010・楢崎弥之助
○楢崎委員 私は、最初に、おもに第五条改正とからみまして、いわゆる海面漁業権の収用対象について御質問したいわけです。
土地収用法は、原則として収用対象を大体土地に限定しておるわけです。ところが現行法におきましても、河川の敷地を公共の用に供する場合には、その敷地と関連のある内水面の漁業権を収用の対象としておるわけですが、それでもなお、現行法では海底をのけておったわけです。今回海底を公共の事業の用に供する場合に、その海底と関係のある漁業権あるいは埋め立て、干拓をする場合に、その造成された土地が公共事業と関連のある場合には、その公有水面の漁業権を収用の対象にするというように、土地解釈を拡大した点についてどのように思われるか。もちろん漁業法によりまして、漁業権は物権として、土地に関する規定を準用するようにはなっておりますけれども、収用法の対象として、このように土地解釈を拡大した点について、御意見を承りたいのです。というのは、単なる不動産の土地と違いまして、漁業権は、多くの関係漁業者が集まって、あるいは寄り合って、そして生活の基盤をなしておるのがその漁業権、いま浜田参考人がおっしゃいましたように、一つの生活をする基盤になっておる。そういう漁業権と単なる不動産の土地というものを一緒にするような考え方についてどのように思われるか、御意見を承りたいと思います。浜田参考人と佐藤参考人にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/10
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011・浜田正
○浜田参考人 先ほども考え方で触れましたが、とにかく土地収用法、特別措置法がだんだん拡大していくという考え方は、いささか不安があるということを申し上げました。この点につきましては、変わりはございません。ただ一つは、これは政府側の答弁みたいになるかもわかりませんが、いままでの漁業権は、何といいますか、海を海として利用する場合、それが海でなくなるというのでなくして、海として利用する場合を規定しておるので、公共事業のために海底を埋め立てしたりあるいは利用したりする、そういう点は、漁業法では、その範囲を出る、こういう御解釈でございますので、そういう法律解釈ならば、その点はやむを得ないということできたわけでございます。
〔丹羽建設委員長退席、加藤(高)建設委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/11
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012・佐藤立夫
○佐藤参考人 ただいまの御質問でございますが、漁業といいましても、実際問題として、土地収用の場合には、最近のような港湾の干拓事業のような、実際にどんどん、こういう意味では、漁業権の侵害になりますけれども、大体私、漁業権というものは、これは私のしろうと解釈ですけれども、農業における土地に該当するものではないか。もちろんこれは譲渡性のない物権でございますが、そういう意味でやはり実際土地収用の場合に、港湾の干拓ということになる場合に漁業権の収用を入れませんと、土地収用そのものが、実際問題としてその目的を達するわけにいかないので、そういう意味で、法律論からしても、実際論からしても、漁業権の収用ということは、現在の収用法自体がそういうことを頭に置きながら考えておるわけでございます。ただ、それを法技術的に整備した改正ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/12
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013・楢崎弥之助
○楢崎委員 現行法で、河川の敷地を対象にしておりますが、海底を入れてなかった、これは法の不備だというふうに説明をする向きもあるのですが、はたしてそのようなお考えがあるのでしょうか。昭和二十六年にこの河川だけ入れたわけですが、河川の敷地、いわゆる内水面の漁業権を現行法では収用の対象にしておる。だから海面のほうも入れなければおかしいじゃないか、いわば二十六年制定当時は、むしろこれは抜けておったのだという説明をする向きがあるかもしれませんが、その点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/13
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014・佐藤立夫
○佐藤参考人 大体、私もそういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/14
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015・加藤高藏
○加藤(高)委員長代理 この際、委員各位に申し上げます。大内、佐藤両参考人退席の時間も迫ってまいりましたので、両参考人に対する質疑を先にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/15
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016・楢崎弥之助
○楢崎委員 それでは、これは第五条と関係のない一般的な問題ですが、事業認定の機関と収用裁決の機関、これは別個であるという佐藤参考人のお話ですが、裁決機関である収用委員会は、事業認定に拘束されるかどうか、その点について御意見を承りたい。つまり、収用委員会は、事業認定があった以上は、その事業認定に対する批判は加えることはできないのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/16
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017・佐藤立夫
○佐藤参考人 それは、認定機関と収用機関とは別個な機関でございますから、認定がありましても、必ずしも収用委員会は拘束される必要はない、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/17
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018・楢崎弥之助
○楢崎委員 それでは大内先生に御意見を聞きたいのですが、大内先生の話で、いわゆる米軍の用に供する土地等の特別措置法の関係は重大だとおっしゃったわけですが、特に特別措置法の三条、米軍の用に供することが、「適正且つ合理的」ということばを使ってありますが、その「適正且つ合理的」、米軍の用に供する場合の「適正且つ合理的」という、その基準はどのようにお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/18
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019・大内力
○大内参考人 最初に申し上げましたように、私は法律家でございませんので、法律解釈としてどういうふうに考えたらいいかということを申し上げる資格はございません。ただ、先ほど申し上げましたように、駐留軍の存在、これにつきましては、非常に多くの国民が疑問を持っておる。過半数ではないかもしれませんが、とにかく非常に多言数の国民が疑問を持っておりますし、私自身も疑問を持っておる者の一人です。したがって、その適正かつ公正ということにつきましても、きわめて厳格にそれを解釈して、国民の疑惑を招かないように運用する、そういう精神を法律にも生かしていただきたい、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/19
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020・楢崎弥之助
○楢崎委員 ほかに質問者がありましょうから、あとでまた、浜田参考人にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/20
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021・加藤高藏
○加藤(高)委員長代理 西宮弘君。時間がありませんから、できるだけ簡潔にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/21
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022・西宮弘
○西宮委員 それでは、委員長の御注意もありましたので、個条書きにして、一ぺんだけお伺いしたいと思います。これは大内先生にお伺いしたいと思います。
今度の法律改正は、従来の特例法にうたわれておったような原則を、全部一般法、普通法、その中の原則にしてしまったわけであります。それがいいかどうかという問題が第一であります。といいますのは、従来の特例法、いわゆる公共用地の取得に関する特別措置法ですか、あの法律は、特に公共性が強い、さらにまた緊急性の強い、こういうことを条件にして設けられた特例法であるわけでありますが、あの中に扱われております手続などが、今度は一般法の中に原則としておさまってしまったということは非常に問題だと思うのであります。その点についての御見解。
それから先ほど浜田参考人も言っておられましたが、いわゆる従来の制限列挙主義——私どもはこういうものは当然制限列挙主義であるべきだと思うのであります。ところが今度は政令にまかせる事項が相当ふえてきた。関連事業を政令にまかせる、こういうふうになったことは、原則としてたいへん重大だと思うのでありますが、その点。
それから新しい法律の三十八条の三だったかと思いますが、収用委員会が決定をしない場合に、大臣がかわって代行裁決をするという規定が新たに設けられたのでありますが、これなどは、起業者であるべきものが委員会の裁決まで行なうということは、一つの人格が二つの仕事を、しかも利害の相反した二つの仕事をやるということになるので、その点非常に問題じゃないかと思うのであります。
実は、まだお尋ねしたいこともたくさんあるのでありますけれども、時間がありませんから、その三つほどお伺いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/22
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023・大内力
○大内参考人 いまの御質問の、法律に関しますことは、私には何とも申し上げられないのでございます。したがって、基本的な考え方だけを申し上げまして、ごかんべんを願いたいと思うのでございます。
公共性とか、緊要性とか、あるいは政令にまかせるとか、制限列挙制がどうかというような点につきましては、先ほど申し上げました趣旨は、一つ一つの、むしろ個別的な事業を取り出しまして、そしてたとえば、ここに鉄道を敷くのは公共性があるとか緊要性が非常にあるとかないとか、こういうことで従来事が処理されてきたのではないかというふうに考えます。そしてその場合に、先ほど申し上げましたように、鉄道ならば公共性があるけれども、たとえば工場敷地をつくるのは公共性がないというような扱い方になっていると思うのでありますが、この点にむしろ私は根本的な疑問を持つわけでして、今日の経済の実情から申しますならば、先ほど申し上げましたように、国全体としての経済計画、それに即応いたしました国土計画というものを持って、その国土計画を達成する範囲において、どれだけのものが公共的なものと考えられざるを得ないか、こういうことを決定するというような、全体の中に個々の事業をはめ込みまして、その国全体の計画の中における公共性なり緊要度を判定する、こういう考え方でなければおかしいのではないかというのが、私の本来の趣旨でございまして、そういう意味で、個別的事業をいきなり、これは公共的であるとか、これは公共的でないとか、これは緊要であるとか緊要でないというふうに分けること自体に、むしろ私は疑問を持っておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/23
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024・西宮弘
○西宮委員 ただいま御説明いただきましたが、実はいわゆる公共性の問題、あるいは緊急性の問題という点について、実は私ども、抽象的な見解としては、ただいまのお話でよくわかるのでありますが、問題が具体的な場合にどう適用するかという問題になるので、そういう点は、ややもすると非常に乱用されるおそれがあると思うのです。そういう点が出る可能性が、危険性が十分にあるということを、実は深刻に心配をしているわけでございます。ただ、これは先生にお尋ねしても無理だと思います。
もう一つだけ最後に、さっきお尋ねいたしましたいわゆる代行裁決の問題でありますが、これは佐藤先生にちょっとお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/24
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025・佐藤立夫
○佐藤参考人 今度の改正案を見まして、私最も重要な問題は、建設大臣の代行裁決権の問題であると思うのであります。私、結論から申し上げますと、この代行裁決権については、よほど慎重におやりになりませんと、問題を将来に残すのじゃないか。それで私先ほど申し上げましたが、認定処分ということと、それから裁決処分というのはこれは全く別個の行政処分でございまして、それを一人の大臣が掌握するということになりますと、実際問題としてどういうことになるだろうか、そういう点であります。半面から言いますと、収用委員会は、現在では行政委員会として独立機関でございます。しかも収用法によりまして、都道府県知事の所轄のもとに、独立してその職権を行なうという規定があるわけであります。所轄ということばは、すでに皆様御承知のように、たとば人事院が内閣の所轄のもとにあるというように、上級官庁の監督に服しないのが所轄ということばの意味であります。そういう、現在の土地収用法にある規定が、今度の改正で全く空文にひとしくなるのではないか。しかも収用委員会の法律的な性格の最も重要な機関の意思決定が、建設大臣のほうに裁決処分というような形で全然移ってしまう、こういう点は、私はどういうお考えでこういう規定をつくったか存じませんけれども、おそらく土地収用取得をスピードアップしよう、そういう考え方であろうと思いますが、スピードアップされるにつきましても、先ほど申しましたように、これは昔の明治年代に出た古い土地収用法に逆行するおそれがあるのではないか。この点については、私は代行裁決権制度について幾多の疑惑を持っているというのが実情であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/25
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026・加藤高藏
○加藤(高)委員長代理 岡本隆一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/26
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027・岡本隆一
○岡本委員 いまの代行裁決権の問題でありますが、二カ月以内に緊急裁決が行なわれないときは、建設大臣が代行できる、こういうことになっているということは、いわば収用委員会の裁決の期間にある一つのピリオドを打つ。これまでにやれということをいわば強制している、こういうように解釈できないこともない。そういう意味において、この収用委員会があまりいつまでもぐずぐずしておられると困る。ことに特定公共事業というようなものに指定される事業については、非常に緊急性がある、だからそういう意味において、収用委員会に早くきめてください、こういう意思表示というように理解できますか、できませんか。なお、そういうように理解してもなおかつ緊急裁決があるということは、非常に大きな障害になるとするならば、それをもう少し具体的に教えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/27
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028・佐藤立夫
○佐藤参考人 いまの御質問、まさしく私もそういうふうに理解しております。二ヵ月ということでありますが、おそらく伝家の宝刀という意味で、こういう規定になっていると思いますが、そういう意味で、二カ月の緊急裁決処分が今後実際に行なわれ得るならばいいのでありますが、いままでの実情から見ますと、どうもそういうように二カ月くらいで行なわれないから、こういう伝家の宝刀で、こういうことを規定したのではないかと思います。私は、法理論としてはこれはきわめて重要な問題でありますので、もしこういう法律案が通過するようなことになりますならば、なるべく代行裁決処分にいかないように、二カ月以内で処理していただかないと、代行裁決処分という形に問題が持ち込まれますと、いろいろ将来に問題を残すのではないか、こういうように理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/28
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029・加藤高藏
○加藤(高)委員長代理 吉田賢一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/29
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030・吉田賢一
○吉田(賢)委員 佐藤先生に一点だけ伺います。
いまの公共用地の特別措置法の二条の改正の件であります。政令委任の点でありますが、これは当委員会におきまして、先般河川法改正にあたりましても、たまたま問題になった点でありますが、これは結局先生におかれましても、そういうことを政令にゆだねることは違憲であるというところまでお考えになるのでしょうか、やや疑問だということなのでしょうか。その辺はどんなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/30
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031・佐藤立夫
○佐藤参考人 私は違憲というふうには、そこまでは考えておりません。しかし、こういうような重要な問題を政令に依存するくらいなら、もう一項目起こして、はっきり書いていいのではないか。そして法律改正でございますから、それはいろいろ新しい問題が出るたびに、国会にかけて改正していくべき問題である。こういうような特定公共事業というものを、政府の一存で決定するということは、これは違憲ではないにいたしましても、立法政策としては好ましいやり方ではない。特に土地収用というような問題は、国民の私有財産権にきわめて関連の深い問題でありますから、そういうような特定公共事業というものは、やはり国会の審議の場で十分に論議するチャンスというものを与えられるべきではないか、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/31
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032・吉田賢一
○吉田(賢)委員 註解日本国憲法、これは田中、兼子、團藤、このような諸氏の編集でございますが、これの五七〇ページに述べているところによりましても、憲法二十九条の説明といたしまして、やはり相当の補償を要求するという規定もあって、これは法律に規定すること、並びに土地収用法が例示されておるのであります。こういうことから帰納いたしまして、やはりこの法律をつくる際には、立法政策として好ましくないという程度に考えるという、そういう意味でなしに、もっと突っ込んで、やはりこれが違憲であろうかどうかというところまで精査していくということにしないと、今後このような例があとを断たぬということになるならば、やはり行政優位の思想が支配する危険も生ずるのではないか。これは憲法に重大な悪影響、憲法に背反する傾向と言わねばならない、こうも考えられますので、その点なお突っ込んで明確にしておいたらと思ったのでありますが、何かございましたら、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/32
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033・佐藤立夫
○佐藤参考人 いまのお話は、おそらくそういう著者の考え方——ぼくはまだ読んでおりませんが、こういうふうに考えるわけであります。つまり土地収用ということは、国民の権利に関する重大な侵害であるわけであります。現在の憲法のたてまえでは、そういう権利義務に関するものはすべて立法事項にするというのが原則であります。そういう考え方から、いまのような考え方が当然出てくるのじゃないか。そういう意味で、そういう見解も十分に可能だ、こういうふうに私は考えております。つまり、財産権というものは、国民の権利の中で最も重要な問題です。そういうものに関連するものを、単に政府の一方的な命令で処理するということは好ましくないということと、さらに突き詰めていえば、それが違憲だ、そういう考え方が一部にあることは否定し得ないと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/33
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034・吉田賢一
○吉田(賢)委員 大内先生にちょっと簡単にお教え願いたいと思うのであります。
地価の問題は、やはり公共事業の遂行の上に、最近非常に大きな問題になっておりますのみならず、一般に宅地造成におきましても、その他、地価問題はどこでも頭を打っているらしいのであります。そこで、いまアメリカの一つの例をお引きになりまして、地価の評価を事前に公定してはどうだろうか、計画が先行するのではなしに、買収が先行するくらいにしてはどうだろうか——買収が先行して計画があとになるということは、これまた論理が合わないような感じがしますけれども、いずれにいたしましても、地価が不自然に高騰してい、ということが非常に妨げになっておりますことは重要なことですが、これはなんでしょうか、なかなか結論が得にくいようでありますが、公定をしておくということは、これはもっと具体的に言うならば、鑑定でもして、そしてその鑑定の値段を政府もしくは国の責任で指示しておく、こういうような方法でもするという御趣意なんでしょうか。やはりそうなりますと、また一方におきまして、一方的に値段がきめられるということで、それはよほど強力な強制力を与えるか何かいたしませんと、単に公示的なものでは、法的保護がこの背景になければ、それ自身がまた別の障害の原因になるのではないかというようなことを考えまして、何か、同じく評価を公定するということであるならば、突っ込んだ背景を持った力で公定するというところまで一体いくのかどうか、ただばく然と鑑定評価を表示するということでは意味がないんじゃないか、他に方法はないものだろうか、こう考えますので、その点をちょっと伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/34
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035・大内力
○大内参考人 いまの御質問の点は、私も十分具体的に研究をしておるわけではございません。まだ未熟なものでございますが、地価の公定ということについて申し上げますのは、先ほど申し上げましたように、どうせ固定資産税のために土地の評価をしなければならないわけでございますから、問題は、むしろ固定資産税における土地評価というものをいかに適正にするか、という問題で解決するのではないかというふうに考えております。これは税金に関しますので、実は具体的な利害関係は非常にやっかいな問題がたくさんございます。しかし御承知のとおり、今日固定資産税の運用が、ともしますと税負担が重くなるのは困るという声に押されまして、評価のほうを低くしてしまうとか、あるいは評価をなるべく変えないようにするとかいうような考え方がわりあいに強く行なわれております。これは私ははなはだ不健全だと思うのでございまして、固定資産税が重過ぎるか重過ぎないかということは、もちろん租税政策として考えなければなりませんが、固定資産税を軽くする必要があれば、むしろ税率を下げるという形で軽くすべきでありまして、評価のほうをそのためにいじるということは、はなはだ不明朗なことになります。かつ、租税負担の均衡を維持するという点におきましても、はなはだ不合理だと思います。したがって、私はこの固定資産税における不動産の評価というものを、もっと実情に合った合理的な評価に改めまして、その上で、もしそれが固定資産税の税そのものの過重負担を招くというようなおそれがございますならば、税率のほうを変えていけばいいのではないか。ところが、今日の固定資産税の評価というものは、御承知のとおり、市町村にゆだねられておりますが、大体は自治省から評価の基準が与えられておりますけれども、市町村だけにまかせますと、なかなか地域的な均衡が保たれないという問題が出てまいりますし、それから、いま申しましたようないろいろの利害関係から、それがゆがめられるという危険性が非常にございます。したがって、私どもは、固定資産税の評価そのものは、やはり国が統一的な方式をもちまして、相当の専門的な技術者を使って評価をする、こういう方式を確立すべきではないかというふうに考えております。そうしてそれを一応公定地価のような形で規定しておきまして、あと公共のために土地を収用するときには、その固定資産の評価額というものを動かさない、つまりそれを収用価格とする。ただし、さっき申しましたように、地上物件なりあるいは生活権なりの補償という問題はもちろん別に考えるべきでございますが、土地それ自体としては、そういうものを考えるべきである。その場合に先ほど申し上げましたように、実際には、土地の公定価格制度を維持するのは非常にむずかしい、むずかしいといわれておりますのは、相対の取引のために、なかなかそれが守られないという傾向がありますから、少なくとも公共のための用地の取得につきましては、これを一元化して国が買収にあたるというような方式を考えたらどうだろうか、こういうのが私の試案でございます。
〔加藤(高)建設委員長代理退席、丹羽建設委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/35
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036・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 関連して、大内参考人に……。いまの問題ですが、私ども実は地価の問題では国会でも非常に苦しんでおるわけです。苦しんでおるというのは、適当でない、何らかの措置を講じなければならない。ところが率直に言って、なかなか名案がございません。いま参考人の言われましたようなことも考えておるわけですが、ただこの一点をこの際承っておきたい。
公共事業の対象になる土地、あるいは土地収用の対象になる道路とか、そういうものをつくりました市街地開発の住宅地帯、こういうものを、かりに固定資産税評価額等の一つの基準を何とかしなければならぬと思いますが、その際に、公共用地として対象になる地域はいいけれども、接壤地帯は、いわゆる現在公共事業でやっておりますように、まず市価——市価といいますか、普通の値段でやっておるわけです。それとの開きがどうしても出てくる。その矛盾をどうするかということで非常に悩みがあるわけなんです。その点について、何かお考えがあったら、この際参考人に承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/36
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037・大内力
○大内参考人 いまの御質問の点は、はなはだむずかしい問題をたくさん持っておりますが、一つの方法は、先ほどちょっと申し上げましたように、やや大ぶろしきみたいな話になりますけれども、国土計画の中で、たとえば地域的な開発計画というものがきちんとできますならば、公共用地というのが、おそらくいまの土地収用法で考えておりますような、制限列記をされておりますような用途のものだけがそれに当たるということには必ずしもならない。つまり特定の地域を開発いたしますための全体としての必要性というものを考えまして、それに一番合ったような土地の配分方法というものを何らか計画を立てるということができますならば、その範囲で、先ほど申し上げましたように、公共的にそれを接収する、国が買収するという方式を考えてもさしつかえないのじゃないか。もちろん地域計画が恣意的に行なわれるというのは大問題でございます。地域計画そのものにつきましては、かなりこまかいところまで立法措置が行なわれたと思います。一たび立法措置ができれば、そういう方法で解決できるのじゃないか、そういうふうに考えております。しかし、それでもどうしてもはずれる私有地がございまして、そこの値上がりという問題が起こると思いますけれども、これにつきましては、私は、おそらく唯一の考えられる方法は、やはり土地増価税を課するという方法しかないだろうと思います。土地増価税につきましては、昔からいろいろな議論がございまして、課税技術としてはかなり技術的にむずかしい問題をいろいろ持っておりますけれども、しかしやはり地価の問題を最終的に押える残された唯一の手段は、私は土地増価の分に対しまして、相当高率の課税をするという方式以外にはないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/37
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038・丹羽喬四郎
○丹羽委員長 この際、大内参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、お多用中のところ、当連合審査会に御出席くださいまして、貴重なる御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。
質疑を続行いたします。楢崎弥之助君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/38
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039・楢崎弥之助
○楢崎委員 それでは、第五条の改正問題について、質問を続けていきたいと思います。
先ほど浜田参考人がおっしゃいましたように、この五条の改正問題は、少なくとも、昨年本院で可決をいたしました沿振法とは逆行する考え方だと私ども思うわけです。建設省が、農林水産関係の法案がどういう動きになっておるかというようなことを何も知らずに、とにかく何でも強権の対象にしておけば安全だということで、強引にやってきておるという印象が深いのです。こういう点は、いずれ審議のときに明らかにしたいと思うわけですが、浜田参考人が先ほどおっしゃいました沿振法との関連において、少なくとも今度の土地収用法一部改正で、この海面漁業権を収用の対象にするという点は、漁場の喪失の問題と非常に関連がありますから、沿振法の精神からいくと、この条項の改正については、沿振法にありますように四月一日からは沿岸漁業等振興審議会が発足するわけですが、それまでは、この法律の施行に関しては、農林大臣は中央漁業調整委員会の意見を十分聞いていかなくちゃいかぬと沿振法の附則でなっておる。したがって、この一部改正については、当然中央漁業調整委員会の意見を農林大臣は聞かれたであろうと私ども拝察するわけですが、そういう点で、浜田参考人としましては、私が言っているように、当然これは意見を徴されたものというふうに思われましょうか。その間の事情をもし御存じの向きがございましたら、御説明をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/39
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040・浜田正
○浜田参考人 私、調整委員でも何でもございませんので、そういうことは聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/40
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041・楢崎弥之助
○楢崎委員 当然聞くべきである。沿振法の精神から言うと、聞くべきであると思いますが、その点はどう思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/41
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042・浜田正
○浜田参考人 これは話が前後するのでございますけれども、法律で、先ほど言いました一番から十一番まで——こう書いてございます。それを逐次——逐次とは書いてございませんけれども、政府は総合的に施策を実行するんだと書いてあります。どういうふうな施策をどう実行するのかというときに、お聞きになるようなたてまえと存じております。したがいまして、私が希望申し上げましたのは、土地収用法が改正になるときは少なくとも同時に、あるいはできるだけ早く、農林省としてのそういう沿振法に基づく立場をわれわれにもお示し願えば非常にけっこうだ、これはできるだけ早くお願いしたい、そういう希望を申し上げたのですが、そういうことで政府がおやりになるときに、お聞きになるというたてまえと考えます。まだおやりにならぬので、お聞きにならぬのだろう、こういうふうに解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/42
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043・楢崎弥之助
○楢崎委員 時間がないそうですから、もう一点だけお伺いしておきたいと思います。
現行の漁業法からまいりますと、いわゆる公益上必要があるときには、都道府県知事は漁業権の分割あるいは変更もできるし、あるいは制限または条件を付することもできるし、そしてまた第三十九条のごときは、それを明らかに書いてあるわけですね。「漁業権の変更若しくは取消又はその行使の停止」ができる。したがって、私はほとんどこの漁業法で、そういう漁業権の停止、消滅等は可能だと思うわけですが、浜田参考人の御意見を聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/43
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044・浜田正
○浜田参考人 先ほど先生の御質問にも答えましたところと関連するのでございますけれども、漁業法のたてまえは、漁業調整、それから船舶の航行、係留云々と書いてございまして、海を海のままとして利用するというたてまえのものがほとんどでございます。ところが現在の土地収用法のたてまえは、漁業権を収用して、建設省が漁業権を実行するわけではございませんので、ある海を海以外のものに使用するというたてまえでございますので、この点は、先ほど法の不備かどうかということをおっしゃいましたが、私は法の不備とは思いませんけれども、たてまえの相違といいますか、そういうことで、土地収用法へ持っていかれるという法律論、実際論から見まして承認したわけでございまして、ついでに申し上げますならば、そうかと言って、漁業法と土地収用法とのその関係が、もう無関係になってしまうんだということではございません。先生先ほど言われましたように、次は、その収用とかいうことになりますと、今度また漁業法へ返りまして、漁業調整委員会の意見を聞いて、漁場計画の変更なり漁業権の一部変更ですか、そういう手続はまた漁業法へ返ってやる。ですから、土地収用法と漁業法とは行ったり来たり、この辺はありますので、へたな法律論をしますと間違いかもわかりませんが、この辺の交通整理が必要になってくるんでないだろうか、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/44
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045・楢崎弥之助
○楢崎委員 最後に一点だけ……。いまお話を承りますと、漁業法においては公益ということはたくさん使ってありますが、漁業法上の公益という概念と、土地収用法で言う、公共の事業に供するというその公益の概念は、いま参考人の話では、やや内容が違うような感じを受けますが、そうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/45
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046・浜田正
○浜田参考人 内容は違って申し上げていないのです。土地収用法に列挙してあるようなものを、公益だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/46
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047・楢崎弥之助
○楢崎委員 漁業法の審議のときには、漁業法の公益は、単なる土地造成のための埋め立てなんかは入らないということになっておるのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/47
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048・浜田正
○浜田参考人 そのとおりでございます。私の言うのが、あるいは舌足らずだったかもわかりませんが、私企業といいますか、その辺の工場などがやっていくというふうなのは、漁業法によっても公益とは解釈しておられません。水産庁の通牒にもそういうことが書いてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/48
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049・楢崎弥之助
○楢崎委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/49
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050・丹羽喬四郎
○丹羽委員長 兒玉末男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/50
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051・兒玉末男
○兒玉委員 浜田参考人に二、三お伺いしたいのですが、先ほど浜田さんが要望として三つの点を主張されたのですけれども、その中の二点で指摘された点ですが、漁業権の収用となりますと、その対象が私は非常に不確定過ぎたと思うのです。特に沿岸漁業等の場合は零細な漁民が多いわけですが、浜田さんのお考えとしては、こういうふうな収用される場合、自分の生活権を奪われるわけですが、そういうふうな場合の対象といいますか、交渉をするというのは、たとえば漁業協同組合等がそういう折衝の衝に当たるのか、その辺はどうなっておるか。あるいはまた実際に権益が侵害される場合におそらく組合に加盟してない人もあるんじゃないかと思うのですが、現在その辺がどういうようになっているか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/51
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052・浜田正
○浜田参考人 現在は漁業協同組合が当たり、調整委員会というものがございまして、それが側面的には協力する、こういう形になっております。先生の言われました加盟してない人があるということは、それは法律的には任意加入、任意脱退でありますから、あり得ると思います。しかしながら、現在ほとんど加盟してないというふうなものはございません。かりに加盟してない者があったといたしましても、それは村としては加盟しておろうがいまいが、大問題でございますから、現実には、漁業協同組合が全部を代表して折衝をやっているというふうな形でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/52
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053・兒玉末男
○兒玉委員 さっきの説明の中で、漁業権の収用の場合に、補償ということが、単に金銭でオーケーというわけでは困るということを特に主張されたようですが、金銭的補償以外に補償すると言えば、たとえば具体的にどういうことをさしておるのか、その辺の見解をひとつお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/53
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054・浜田正
○浜田参考人 つまり生活を保障するという考え方でございまして、生活をできるようにしてやるべきだということ、生活をできるようにするについては、農地でも漁場でも同じでございます。それだけのものを収用するならば、どこかの場所において生活できるようにする、具体的に農業で言いますならば、林野を利用して酪農を振興するとか、あるいは漁業で申し上げますならば、その前面あるいはその付近に漁礁を設置するとか、漁場をこしらえるとかいうことにして、農林省でも各種の補助金をそこに集中し、融資をそこに集中し、同時にまた、新しい仕事をやりますから、指導をそこに集中して、あわせて一体として、生活の保障というふうなお考えでやっていただきたい。農林省と建設省が、農林省は農林省、建設省は建設省ということでなくして、合わせてプラスすれば、生活の保障ということになるではないか、そういうふうにやっていただきたい、こういうのでございます。したがって、その付近またはその前面に新しい漁場をつくっていただきたい、こういう意味で申し上げたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/54
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055・岡本隆一
○岡本委員 関連して。今度の法改正の中で、海底の収用ということが問題になってきたのは、今度の首都高速道路の羽田−浜松町間の建設について、補償の問題その他をめぐって、非常に海面の利用に支障があったというようなことが、直接の動機であるというふうに承っておるのでございますが、計画局長のほうから、その当時の海面の利用の問題、それと漁業権との衝突、さらにまた、それについてどのような補償措置を講じられたかというふうな点について、なぜ海底を収用の対象にしなければならないということを決意されたかということについて、政府の見解をこの機会に承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/55
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056・町田充
○町田政府委員 具体的な首都高速一号線の建設にあたりまして、実施計画が海面の一部を通るというふうに決定いたしましてから、この漁業権の交渉が妥結いたしまするまでに、実は数年を経過しておるわけでございますが、そういった公共用地のために海面を使用して、それの対象になる漁業権を収用するという手続規定がございませんために、現在あります公有水面埋立法によって交渉を進めてまいったわけでございますが、公有水面埋立法では、漁業権者の関係権利者の同意があるときに初めて埋め立ての免許ができる、そのほか二、三の免許ができる場合がございますけれども、なかなか発動し切れないという、関係権利者の全部の同意があったときに初めて埋め立ての免許ができるという条項によりまして、極力関係権利者——世帯数で申しますと、約三千六百の世帯があったわけでございますが、これについて、同意を得るという交渉を数年にわたって継続してまいったわけでございます。そこで、具体的の首都高速一号線の用地に供します部分は、その中のごく一部でございますけれども、その一部を解決いたしますためには、東京都が持っておりました埋め立て計画全体についての話し合いがつかないと、その部分も解決しないということでありまして、当時東京都が持っておりました埋め立て計画は二千五百万坪、こういった広い範囲にわたっておったわけでございます。そのうちの首都高速一号線の用地と申しますのは、延長二キロメートル、幅約四十メートルの、ごく一部分でございますけれども、その一部分の用地を解決いたしますためには、二千五百万坪に上る東京都が計画中の埋め立て計画につきまして、関係権利者の同意を得なければならぬ、しかもその関係世帯数は約三千六百、関係の漁業協同組合にしますと約二十ほどを対象にして、話合しいを進めておったわけであります。そこでやっとたしか三十七年だったと思いますが、三十七年の秋に妥結を見たのでございますが、それに要しました補償金額は、全体で申しますと三百三十億でございます。一部は現金で払い、一部は交付公債で払うというふうなことで、すでに支払いは完了しておるはずでございますが、総額三百三十億、したがいまして、三千六百世帯というものに平均的に見てみますと、一世帯約九百六十万というふうな相当大きな補償額になっておるわけでございます。交渉は主としてこの協同組合を相手に交渉をしたわけでございますが、協同組合の中におきます組合員に対する配分につきましては、それぞれ配分の協定書というものをつくりまして、東京都が指導いたしまして、個々の組合員に対する配分を行なっておる、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/56
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057・岡本隆一
○岡本委員 浜田参考人にお伺いいたしますが、漁業協同組合のほうで、三百三十億の補償金配分をどういうふうにされたか、そういう点について——一世帯九百六十万というふうな補償金でありますと、これは非常に大きな金額だと思うのでございますが、その場合、その配分が均等に漁民全体に行なわれておれば、これは非常にけっこうだと思うのでありますが、それがはたして均等に行なわれたのか。あるいは網元のようなものがあって、それが非常にばく大なものをとって、実際に日々命をかけて海に出ておるような人たちには案外少ないのではなかったか、というふうなことを私どもは心配するのでございますが、そういうふうなことがはたしてなかったかどうか。その点、その間の事情を参考人のほうでおわかりでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/57
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058・浜田正
○浜田参考人 まことに恐縮でございますが、私それを一切開いておりませんので、もし御必要ならば、聞いた上でないと御返事できません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/58
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059・岡本隆一
○岡本委員 もう一点お伺いいたしておきたいのでございますが、ああいうふうな道路をつくるために、海面が使われる。なるほど魚が寄りつきにくくなって、漁業が侵害されるということはわかります。しかしながら、あれだけの道路一本で、漁業者への補償が三百三十億もかかるというふうなことになってまいりますと、それは全部国民が額に汗をした税金でもって補償が行なわれるということになってくると、私どもも漁業者の立場はわからないではございませんが、しかしながら、やはり海の場合も土地と同じように、ある程度の収用権というものが発動されなければ困るのじゃないかというふうな常識的な判断が出てまいりますが、こういう場合に、漁場を別につくれというおことばが先ほどから何回かございまして、とにか生きていけるようにしてくれればいいのだというふうななにでございますが、そうすると、具体的に言って、これから後に東京湾に埋め立てをやろうとか、あるいはまたその他の、堰堤をつくって締め切ろうとか、いろいろな計画がたくさん出ておりますが、そうすると、こういうふうな漁業権というものに対する補償が、あの一部の道路をつくるための補償だけで三百三十億もかかることになりますと、東京湾にこれから手を大きく加えようとすれば、非常に大きな補償というものをわれわれは覚悟しなければならぬ、こういうふうなことになってまいりますと、ある程度収用権というものにわれわれは必ずしも反対するわけにいかぬ、というふうなことを考えざるを得ないことになってまいりますが、そういう場合の漁民の生活の保障というものを、漁業だけでいくというのでなしに、他の産業に吸収していくというふうな考え方も同時にあわせて考えていかなければならぬ。また農地の場合でも、ダムなどをつくる場合に一部落が全部水没する、一村水没というようなことがある場合もございますが、そういう場合には、やはり立体的な考え方に立って、それらの人を、先ほど大内教授がおっしゃったように、他の山林原野といったところを政府の手で開拓して、そこへ一部落移住させるというふうなことも、今後われわれは補償の立体化という形で、国の政策として考えていかなければならない問題だと思うのです。したがってやはり漁業の問題も、非常に大きな広い海面がなにされる場合には、それをたとえば沿岸漁業から近海漁業に切りかえるとか、そういうような立体的な形を考え、漁業の運営の指導と助成とを国が行ないつつ、その補償とあわせてやっていくというふうな考え方をあわせて行なうと一緒に、やはり海面を収用の対象にするということもやむを得ないというふうにお考えになりますか。それはそれとして、漁業者としては、海面の収用は困るのだというふうなお考えでございましょうか、その辺を承らしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/59
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060・浜田正
○浜田参考人 冒頭に申し上げましたように、基本的な方向については漁業者といえども理解するけれどもということで、強い希望を申し上げました。その一つの中で、先生御指摘の漁業者だけというふうな言い方を、私は実はしたのでございますが、国会に御要望書として出しております文章は、それだけではございませんので、時間の関係上、典型的な一般的なものにしぼって申し上げたのであります。国会に御要望申し上げた点は、漁業者は漁業だけとは言わぬ、そのほかにも職業のあっせんなり、あるいは職業の訓練なり、そういうことで、ともかくも生活を保障するのだ、銭金で買えるのじゃないのだというお考えでやっていただきたいということは、実はここで申し上げるのが漏れておりましたので、先生のお考えに賛成でございます。ただここで先生方に申し上げたいのは、何しろずっといままで漁業でやってきておりました者が、口では一般的に簡単に言いましても、とたんにそう簡単にはいかないのでございます。先生も御承知のように、名神国道の農家でも、補償金をもらいまして、さてもうかったということで、どこかのバーに投下したら、とたんにあくる日暴力団にやられて、パーになってしまったということもあるでしょう。だから一般的に言いましても、そうはいきませんので、一般的でなくして、その人その人について具体的に話をして、あなたはここの会社のどこへ、あなたは自動車の運転手なら運転手の訓練、あなたはここへ漁場をつくるからこうするというふうにやっていただかないと、一般論だけでは承知がならぬということを申し上げたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/60
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061・丹羽喬四郎
○丹羽委員長 吉田賢一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/61
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062・吉田賢一
○吉田(賢)委員 ちょっと簡単に、漁業及び漁業権をめぐりました補償について二点だけ伺いたい。
一つは政府当局に伺いたいのですが、漁業権は、いわゆる免許を受けた漁業法の六条に規定してあるものに限っておるのであろうか。あるいはそうでなくして、さらに補償の対象になるところのものは、知事などから許可を受けた許可漁業の範囲にまで及ぶ、こういうようにお考えになっているのだろうか、この点をまずお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/62
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063・町田充
○町田政府委員 土地収用の対象としては、都道府県知事の許可漁業についても及ぶというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/63
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064・吉田賢一
○吉田(賢)委員 そういたしますと、知事の許可漁業に及ぶという場合に、海面の埋め立てをした場合、直接埋め立ての海域が漁業権並びに知事の許可漁業の区域になっておらぬが、それの埋め立てによっていろいろと被害を受け、損害を生ずる場合があるのでありますが、これはいまの収用法の八十八条に「通常受くる損失の補償」という規定がございまして、これは判例などによりましても、かなり広い範囲に認定をしておるようであります。またあるいは公共用地審議会の答申によって見ましても、淡水漁業の点でありましょうが、その辺はかなり広く対象をきめておるようであります。そのような通常受ける損害と認められるような場合には、これはかなり多くの場合が想定されるのでありますが、実例をもって申しますと、実はこれは地元の兵庫県に起こっている事実なんです。埋め立ての場合に、海底の土砂をしゅんせつして埋め立てをする、こういったときに、その区域はたまたま稚魚の繁殖の場だったようであります。そういうために、稚魚が繁殖をしなくなる。そうなりますと、その付近の、いまの許可漁業の区域の漁師は、だんだんと成長する魚をとる手を失って損害が生ずる。あるいはまた潮流のはげしいときは、沖合い何キロまで埋め立てていきますと、潮流の変化によって下流のほうは沿岸を浸食される。あるいは上流のほうには相当どろ並びに土砂などが沈でんしていく、こういう大きな変化が生ずるようであります。この点は科学的にも相当明らかで、過去の幾多の実証もあるようであります。こういうようなときにはたちまち、自分たちの許可を受けておる海域が直接埋め立て等によってなくなるのではないけれども、隣接した海域まで、埋め立てすることによって受ける損害であることは、何人が見ても明らかであります。このような場合に、これはやはり収用法の八十八条の適用によって、広い意味の漁業権並びに許可漁業の損害と見てよいのでしょうか。この辺だけはっきりさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/64
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065・町田充
○町田政府委員 お尋ねの事業が必ずしもはっきりいたしませんので、明確なお答えになるかどうか知りませんが、ある事業をやりますために、たとえば埋め立ての事業をやりますために、どうしてもある特定の場所から土砂をくみ上げなければならぬというふうな場合でございますと、そのくみ上げるところに何らかの施設を設けてくみ上げるということになりますと、これはその埋め立て事業を施行するために必要欠くべからざる施設ということになりまして、その施設自体がやはり一つの収用の対象になり得る。現在の三条に書いてございます各種の収用の対象となり得る事項の最後に、前各号の一に掲げるものに関する事業のために欠くことができない通路、橋、鉄道あるいは土石の捨て場というようなものが列挙されておるわけでございますが、そういうものの一つとして、収用の対象として考えるということもできましょうし、かりに三十五号に該当いたさないといたしました場合にどうかという問題になるわけでございますが、それはある事業をやりますために、必ずしも収用の対象とならない周辺の人たちに対して、騒音であるとかあるいは砂の散乱であるとか、そういうようなことで影響を与えるというふうな場合に、そういった人たちに対する手当をどう考えるかという問題と同様の場合でありまして、損失補償の基準要綱では、そういう問題は社会通念上受忍すべき程度のものは受忍していただく、その程度を越えるものになれば、損害賠償の問題として措置をしなければならぬというふうな考え方で処理をいたしておるわけであります。したがいまして、第八十八条「通常受ける損失の補償」ということにずばり該当いたしません場合でも、それが社会通念上受忍すべき程度を越えるというふうに認められる場合には、損失補償の対象にはならなくても、損害賠償の対象にはなり得るのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/65
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066・吉田賢一
○吉田(賢)委員 浜田さんにちょっと伺いますが、あなたは漁民の生活権の問題を収用法の上で非常に重視せられました。まさにいまのような場合は典型的に、外形的には漁業権の侵害があるかないかはっきりしない、しかし実質的には漁業を失っている。もしくは甚大な被害を受ける、こういうことでありますので、やはり生活権というものは、百姓の離作料というものが問題になりますように、相当広く解して問題を考えなければ、海面を利用した、船を持った漁師の生活が、いま申しましたような事情からだんだん狭められ、失われるということになると、まさに生活権の重大な侵害だと思います。この点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/66
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067・浜田正
○浜田参考人 そのとおりでございます。たとえば道路をつくる、その土砂をこの辺に流すというつもりが、実はもっと広がったりして、その辺のワカメの漁場が壊滅したというふうなことがあります。したがって、しからばワカメの漁場をそのままにするような施設なり、あるいはまたどうしてもできぬならば、タコつぼをこの辺につくるように補助金を出すなり、あるいはまた魚礁に適するところは魚礁をやるなりということにして、ともかく金の出どころはどこであろうとも、漁師から見れば、さいふの口はどこでもいいのでありますから、禍を転じて福となすような政策を総合的にやっていただきたい。またやるべきである、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/67
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068・吉田賢一
○吉田(賢)委員 もう一点、それじゃ水産当局に伺いますが、いまのような場合には、一たん許可した漁業が、そのように公共事業あるいは海面の埋め立て等によって損害を受ける、危殆に瀕する、こういうことになってくれば、水産行政の見地から見ましても、相当介入してしかるべきだと思う。あるいは善後対策、あるいは一般補償等、積極的に関与して、漁業の立場を守っていくという必要があろうと思うのですが、その辺はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/68
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069・横尾正之
○横尾説明員 ただいまの御質問につきましては、仰せのとおりでございまして、先ほど浜田参考人のお話にもございましたが、考え方の方向といたしましては、まさにそういう方向で今後善処してまいりたい。具体的にはケース・バイ・ケースで、どのような措置を講ずるか、漁業行政の内部でできることと、それだけでできないこととございますので、まず第一次的には、漁業行政の内部で措置し得ることにつきましては、新しい漁場の確保でございますとか、あるいは他種漁業への転換の措置でありますとか、そういったことを考えますと同時に、そういった措置が不可能なもの、他省等に関係するものにつきましては、他省との連絡を十分はかって、善処するようにしたい、こういうように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/69
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070・吉田賢一
○吉田(賢)委員 ことに、公共用地の買収あるいは海面の埋め立て等におきましては、収用法を適用するというよりも、任意に話し合いを進めるという場合が事実上多かろうと思いますので、したがいまして、そういう場合には、よほど法の趣旨に従って運用の適切を期しませんと、漁業権というような文字がありますので、漁業権の文字にとらわれて、許可漁業は漁業権ではないではないかというようなことにでもなりましたならば、いま計画局長も申されたような趣旨に全く相反することになって、そして審査会等にかからない、話し合いのうちに、被害が地方的ないろいろなトラブルになっていくおそれもあるわけですから、この点はやはり漁業者の立場なりあるいは事業が公正に適切に行なわれるという趣旨から見ましても、何か積極的にこの趣旨を明らかにして、そして将来起こるであろう——沿岸の漁業協同組合等にもこの法の趣旨とするところを流してもらっておくことが、そのような紛糾を未然に防ぐ一つの手ではないか、こう思いますが、水産当局はそういうような積極的な行政指導をせられてはいかがかと思うのですが、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/70
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071・丹羽喬四郎
○丹羽委員長 時間の関係がありますので、簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/71
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072・横尾正之
○横尾説明員 従来、個別的に、いまお話がございましたような方向で、努力をしてまいっておるわけでありますが、今後につきましても、検討の上、さらに善処してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/72
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073・丹羽喬四郎
○丹羽委員長 他に参考人の方々に対する質疑の通告はありませんので、参考人各位に一言お礼を申し上げます。
本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本案審査に資するところ大なるものがあったと存じます。どうもありがとうございます。
これにて、本連合審査会を散会いたします。
午後零時四十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604179X00119640515/73
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