1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年四月十五日(水曜日)
午後一時五十八分開議
出席委員
委員長 小泉 純也君
理事 青木 正君 理事 宇野 宗佑君
理事 辻 寛一君 理事 渡海元三郎君
理事 加賀田 進君 理事 島上善五郎君
理事 畑 和君
上村千一郎君 押谷 富三君
亀岡 高夫君 久保田円次君
篠田 弘作君 野原 覺君
堀 昌雄君 松本 七郎君
山中日露史君 山下 榮二君
出席国務大臣
内閣総理大臣 池田 勇人君
自 治 大 臣 赤澤 正道君
出席政府委員
内閣法制局長官 林 修三君
警 視 監
(警察庁刑事局
長) 日原 正雄君
自治事務官
(選挙局長) 長野 士郎君
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本日の会議に付した案件
公職選挙法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一四三号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/0
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001・小泉純也
○小泉委員長 これより会議を開きます。
公職選挙法の一部を改正する法律案を議題といたし、審査を進めます。
前会に引き続き質疑を行ないます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。島上善五郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/1
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002・島上善五郎
○島上委員 私は、ただいま提案されておりまする公職選挙法の一部改正に関連して、総理に若干の質問をいたしたいと存じます。
法案の内容に入る前に、その前段として、二、三お伺いしたいことがあります。かねて私は総理に伺ったこともございますが、どうも選挙は最近年を追うごとに、回を重ねるごとに金のかかる選挙になっている。いわゆる物量選挙ということばが使われるようになってきておる。そしてその金のかかる選挙というものは、これは当然のことではありまするが、悪質違反の増大となっておる。私は昨年の選挙のかなり前にこのことについて総理に伺ったことがありますが、このような物量選挙、悪質違反増大の選挙はこのまま放置できないと思うのです。民主主義の土台がどんどん腐っていくというような事態の進行はこのまま放置できない重大な問題であろうと思います。総理もこのことについてはたいへん憂慮をされておりまして、防止のための措置をとるということをお答えになっておりましたが、ところが残念ながら昨年の総選挙はさらに以前の選挙に比べて、物量選挙となり、悪質違反増大の選挙となっております。警察庁の方がまだおいでになっておりませんが、このことはあとで来たら数字でもって立証いたしますけれども、私の記憶するところによりますれば、件数においても、検挙の人員におきましても倍近くふえておる。そうしてそのふえた中でいわゆる悪質違反、買収供応等々の悪質違反が目立って、きわ立ってふえておる。遺憾ながらこれは動かしがたい事実でございます。こういうことに対して、時の自治大臣早川君も心配されたと見えて、選挙法を守る友の会というものをつくって、たいへん力を入れたようです。ところが皮肉にも、いま申しましたように依然として選挙法は守られていない。はっきり申しますと、その違反者の圧倒的多数は保守党側でございます。池田さんが総裁をしておられる保守党側に圧倒的に多いということも、これまた事実でございます。こういうようなことに対して総理は今後いかなる方法によってこれを防止し、あるいは改正し、粛正しようとなさるか、そのお考えがありましたら、まず承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/2
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003・池田勇人
○池田国務大臣 お話のごとく、選挙に金がかかり過ぎるということは、国民全般に言いふらされ、また非常に憂慮しているところでございます。選挙に金がかかるということは、これは選挙違反につながることもありますし、またそれでなくてもそれ自体がもう候補者にも非常な重荷である。そうしてまた、選挙ばかりでなしに、日ごろの状態のときにも相当金がかかる。政治家がほんとうに自分の俸給から出して選挙をやろうということになると、非常にむずかしくなって、ほとんど困難、不可能という程度にまでなるんじゃないか。私のことを言ってまことに恐縮でございますが、選挙を絶対に公明にしなければいかぬ。私はあとから届け出の書類を見ましたが、一尺五、六寸くらいの書類になっております。それで百七十何万円かかかっておる。これは応援に来てくださった人の旅費は寄付として取り扱っております。とにかく極力やって百七十万。私が初めて立ちましたときは、六十万円くらいのあれでやったかと思います。法定費用も三倍くらいになった。そういうような必要経費としてかかるのはやむを得ませんけれども、それが違反につながったり、また事前運動につながるということは非常によろしくない。島上さん御存じのとおり、前から極力言っておるわけでございます。ことに昨年の地方選挙につきましては、私は予備金を支出いたしまして、来たるべき衆議院の選挙のためにもと思って、相当公明選挙の宣伝費、取り締まり費をいままで例のないほど出したわけです。また、昨年の選挙のときにも公明運動のためにいろいろ手を尽くしてきましたが、お話のとおり十分実効があがったとは言えません。まことに遺憾なことでございます。しかし、今後におきましても、民主主義の根本でございますから、公正な公明な選挙ということは政府としてできるだけ努力いたしたいと思います。もちろん政治資金規正法の問題、あるいは政党資金の問題等々、法律の改正を要する点もございますが、それにもまして、やはり公明選挙ということを国民に十分に理解し、そうして実行してもらうという方法をとることが必要であろうと考えております。構成の問題につきましても十分検討し、またPRの面につきましても、努力していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/3
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004・島上善五郎
○島上委員 法律も現行法では不十分なところもありますので、私は法律改正も必要だと思うのです。特に政治資金規正法の改正が必要だ。この前、選挙法と政治資金規正法両面にわたって若干の、それこそ一歩前進程度の改正をいたしましたけれども、これとても選挙制度審議会の答申に比べますと非常に後退したものでした。私は、その方面の改正も必要だ、その他の選挙運動にわたる、あるいは連座制にわたる点の改正も必要だと思うのです。その点は総理もいまの御答弁でお認めになっているようですが、そのほかただいまの御答弁を伺いますと、公明選挙運動が必要だ、こういうことでしたが、私は公明選挙運動も全然必要はないとは申しません。ないとは申しませんが、より必要なのは政党自体、候補者自体の自粛と反省の実を示すということだと思う。この点が欠けていやしないかと思うのです。私はたしか前の予算委員会で総理に伺ったときに、悪質違反で本人が買収、供応等の容疑で起訴されておるものがあり、それが裁判の結果にまたなければなりませんが、あるいは失格につながるとも思われるような事件がありましたが、その際私は、そういうような本人が悪質違反で起訴されておるような場合には、次回に公認しない、このくらいのことは政党として自粛すべきことではないかと言いました際に、総理は、たしかそういう最も悪質なものについては、公認については考慮する、こういうお答えがあり、その結果を私見ておりましたら二名ほどは公認しなかった者があります。そうしてその人は去年の選挙では落選しております。しかし公認した者もあります。私は名前はこの際申しませんが、その公認した際の理由として、私の承知しているところだと、多分無罪になるであろうから公認した、こういう理由を付しております。私はこういうことではやはりほんとうに政党が自粛したとは言えないと思う。少なくとも候補者本人が当選した場合であっても、落選した場合であっても、悪質違反で本人が起訴されておる、もちろん裁判の結果をまたなければわからぬといえば、それはそのとおりに違いありませんけれども、起訴するからには相当の証拠があって、根拠があってすることですから、その程度の人は政党は次回の選挙には、本人の反省を求むる意味においても、また選挙民に公明選挙に協力を求める意味においても公認しない、このくらいのきびしさはあってしかるべきではないかと思います。政党自体、候補者自体の自粛について、私はいま申しましたような意見を持っておりますが、総理はどのようにお考えですか、伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/4
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005・池田勇人
○池田国務大臣 政党の公認につきましては、いろいろ党内においても議論がございます。また、沿革的にもいろいろ変化が見られておるのでございますが、さきの選挙につきましては起訴せられたからというので、これを全部公認しないということは少し行き過ぎではないか。それが裁判所に係属中でございましても、一審あるいは二審で有罪を受けて係属中の者はこれは公認しない、こういうことにいたしております。だから起訴されたからというので公認は一切しないということにはしていない。前は一審、二審で有罪であっても公認した例がございます。最近ではそういうことをせずに、一応係属中でも有罪の判決を受けた者はしない。単に起訴中だからというのでこれを非公認にするということは少し行き過ぎではないかという、こういうさきの選挙では結論であったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/5
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006・島上善五郎
○島上委員 私はそういうことでは少しゆるやか過ぎると思うのです。そのお考えはもちろん今後の公認の際にも貫かれると思いますが、選挙法の改正が必要であるという点をお認めならば、私はここで伺っておきたいのですが、どういうわけで選挙制度審議会というものを、去年の十一月任期が切れて以来、法律にあるのに、新しい委員を委嘱しないでストップ状態にしておるか。これは私どもには理解できない。早川大臣はさしあたって諮問することがないからというような答弁を堀委員にいたしておりますが、これはとんでもないことであって、選挙制度審議会は前から審議の案件が残っておるのです。いわば継続審議の状態にあるのです。政治資金規正法の問題もしかり、選挙区制の問題もしかり。それから特に私ども去年の選挙の実態にかんがみて、違反がより悪質になり、また新しい形の違反がふえておるという実態にかんがみて、これらの改正について選挙制度審議会に当然政府が諮問し審議を継続さるべきものだ、こう考えておりまするが、いま申しましたように、昨年の十一月以来選挙制度審議会はストップと申しますか、開店休業ではなくて開店もしていない、委員がいないのですから。法律はあって委員の委嘱をしない。来年四月から新たに委員を委嘱する、こう言っていましたが、四月一日から委員を委嘱するというのは、一体どういう根拠ですか。選挙制度審議会には任期はあるけれども三月三十一日をもって年度が切れて新年度になる、そういう制度はないはずでございます。この点を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/6
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007・池田勇人
○池田国務大臣 選挙制度審議会は非常に必要なことであり、今後また十分御検討願わなければならない問題も相当ありますので、任命のいま準備中でございます。ただいま御審議願っておりますように、前の審議会で早急にこれだけはやれという答申がございました。まずそれを片づけてから、また片づけながら委員の任命を準備しよう、こういうことで自治省のほうでは進んでおると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/7
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008・島上善五郎
○島上委員 それは怠慢です。同時に選挙法改正に対する政府の熱意がきわめて薄いというあらわれだと思うのです。私はただいまの御答弁では満足いたしませんが、政府のお考えはわかりました。お考えはわかりましたが、選挙法改正ということはあまり熱心でないというふうに受け取るしかないわけであります。しかし四月一日を待たずに委員を早急に委嘱して、必要な改正に関する審議をしていただくように取り運んでもらいたいと思います。
政治資金規正法についても選挙制度審議会が結論を出さないまま、いま言ったような事情で審議を中断しておるわけですが、選挙に金がたくさんかかるということは政治資金の規正が不十分であるということにも一つの原因があると思うのです。さっき申しましたようにほんのちょっぴりの改正を前回いたしましたけれども、あの程度の改正でははなはだ不十分でございますから、私は金のかかるその根源である政治資金の規正をもっときちっとすべきではないか、こう考えますが、総理はその点についていかようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/8
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009・池田勇人
○池田国務大臣 選挙制度の改正について不熱心だというおしかりでございますが、私は施政演説にもこれは特にあげておりまして、選挙制度のことを考えなければならぬということは二回続けて言っているので、決してこれをおろそかにしているわけじゃございません。
政治資金規正につきましては、やはり金のかかる選挙を排除する意味におきまして、合理化しなければ、良識化しなければいかぬと私は思っております。わが党内におきましても、とにかく国民協会というものをこしらえるように働きかけまして、いまこれがほとんどの県にできておる、こういうことで、党の資金をまかなっている。また党内におきましても個人の政治結社におきまして集める金額の制限等も検討を従来したようでございます。私はだんだんこの問題につきましては国民の納得のいくような方法にしなければならぬと考えて、努力しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/9
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010・島上善五郎
○島上委員 時間がありませんからはしょりますが、選挙制度改正について熱心に考えているということでしたならば、私はそのことばを信用したいわけですが、ひとつ四月を待たずに——もう四月になっちゃったけれども、四月一日から審議を再開すると言っておったのが四月半ばになってもまだ委員の選考、委嘱の準備中とおっしゃいますが、これはもう委員の委嘱にそう時間がかかるというわけはないと思うので、もしお因りでしたら相談願えば適当な委員候補者が私のほうにたくさん用意してございますから、早急に委員を委嘱して、名実ともに再発足を行なうように取り計らっていただきたいと思います。
そこで、選挙制度審議会が審議を再開いたしますると、最も大きな問題の一つとして取り組むと思われるのは、選挙区制の問題でございます。これはいままでの審議の経過からしてそうです。これについてはもういままでの審議の中にもいろいろの意見が出ておりますが、先般当委員会で赤澤大臣に同僚議員がお伺いしたところ、将来の方向としては小選挙区である、そういうお答えがありましたが、私はこれは少し独断ではなかろうかと思うのです。選挙制度審議会の中では、必ずしも将来の方向としていわゆる一人区の小選挙区ということを考えている者が多数ではございません。むしろ多数はそれとは別で、小選挙区と比例代表の混合方式と申しますか、西ドイツのような方式、これにも具体的な内容についてはいろいろありますから、どういう方式をとるかということまでは進んでいないようですけれども、大勢の考えとしてはその考えが多数を占めておるように私ども理解しております。ですから。将来の方向としては小選挙区だということは、いささか個人の意見もしくは独断ではないかと思います。もし総理が将来の方向について何かお考えがありましたら、この際伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/10
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011・池田勇人
○池田国務大臣 選挙区制の問題は選挙制度で最もむずかしい、非常に影響のあることでございます。私もいろいろ研究はいたしましたが、やはりこういう問題は選挙制度審議会で十分御審議いただくことが一番だと思います。私池田個人としてのみならず、総理、総裁としてこういうことをいま申し上げることは、これこそ時期尚早だと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/11
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012・島上善五郎
○島上委員 それでは、前の答弁は時期尚早だということがはっきりされましたが、それでこの問題についてもう一つ伺っておきたいのは、これは選挙制度の基本にかかわる重大な問題ですから、どのように改正するにしても、これはたいへんな大改正になるわけです。私は、選挙制度審議会のようなところで、各国の事例等も参考にして、十分に時をかけて検討することが望ましいと思いますが、同時にこのことは、国会に議席を持っておる与野党の間においても、多数党だから多数党の都合のいいような制度をとるというような考えを捨てて——これはかつてごうごうたる非難を浴びたゲリマンダーを出して、廃案になったことがありますが、ああいうように一党の都合のいいような制度というものは、たとえ多数党であっても、それで押し切るというようなことをすべきものではない。与野党の意見の一致——完全なる一致ということがかりにできないにしても、大綱について意見が一致するということも重要な要件の一つではなかろうかと思うのです。選挙制度審議会で十分審議していただくということと、国会において、あるいは国会の審議の以前に、与野党の委員も入っておりますから、与野党の意見の一致を見る、いずれかの一党に都合のいいような制度をしゃにむに押し通すということをすべきものではない、こういうように私考えておりますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/12
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013・池田勇人
○池田国務大臣 区制の問題で意見を言うことは時期尚早というのは、これは私は、総理、総裁として、また池田として言うのが尚早でございまして、こういう問題は私以外の人が十分論議なさることは、私は適当じゃないかと思います。総理、総裁としてはちょっと早過ぎる。あなたにしましても赤澤さんにしましても、おやりになることはけっこうだと思います。それがこの問題の市大性を意味するものであって、私は赤澤さんの言われたことを時期尚早という意味ではございません。池田勇人としてこう言うのであります。どうぞその点御了承願います。
それからいまの区制の問題で、小選挙区か、あるいは中選挙区か、あるいは小選挙区に比例代表制を入れるとか、あるいはいろいろな方法がございましょう。ございましょうが、いずれにしてもこれは国民の意思を反映するのに何が一番いいかということをまず考えて、そしてこれは党利党略でいくべき問題じゃないと思います。長い間の基本になることでございますから、与野党とも十分論議することが望ましい。しかし論議することが望ましいと同時に、それはあくまで国民の意思決定に非常に役立つような方法で——党利党略ということを考えたのでは、望ましい姿ではなくて、建設的な議論が出ないことになりますから、お互いに国民のためにという気持ちで、自分自身のことを考えずにやるということがいいのじゃないか、そういう意味におきまして、選挙制度審議会等でお出しくだされば非常に参考になる、また、よって立つべき道があると思います。まずそういうところから出まして、そしてそれを具体的に与野党で審議することは必要なことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/13
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014・赤澤正道
○赤澤国務大臣 前会の私の答弁を御指摘になりましたので、私の真意を申し上げておきますが、私、目下答弁の見習い中でございまして、総理の横におりまして、答弁はこうするものだということの勉強をしておるわけなんです。この前申しましたのは、速記録をごらんになっていただければわかりますが、あなたはどう思うかということでございましたから、私は、先進国はやはり一人一区です、次の段階で、選挙制度審議会が出発する場合にはこういう方向へ向くのじゃないかと思うということを申し上げたつもりでございます。私、あなた方に御反対のこと、この中にも御反対の方もあるし、わが党にもなかなかむずかしい問題でございますし、そういう軽率なことは申さなかったつもりでございます。御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/14
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015・島上善五郎
○島上委員 刑事局長が参りましたので、私は先ほど総理に伺った抽象的なことばをはっきりと数字で裏づけする意味で刑事局長に伺っておきますが、去年の十一月の選挙をその前の衆議院の総選挙に比較いたしまして、違反の件数がどのぐらいふえておるか。検挙者の数、これも相当ふえておる。相当ということばではばく然としておりますから、なかんずく買収、供応等の悪質違反がその中でどれだけの比率を占めておるか。件数と検挙者の人数をこの際発表していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/15
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016・日原正雄
○日原政府委員 昨年の末における選挙違反の検挙の状況、三カ月後にまとめました数字でございますが、これは最終の検挙数字になるわけでございますが、総数で一万七千九百四十一件、人員で申しますと三万四千八百六十五名でございます。そのうち買収が一万四千五百三十八件、検挙人員が三万一千二百十名ということでございます。前回の昭和三十五年の総選挙と比較いたしますと、件数で七百六十四件、四・四%、人員で二千九十七名、六・四%、これだけ増加をいたしております。
それから買収、利害誘導、これは増加の傾向を見せておりますが、前回に比べまして千百九十二件、八・九%、人員で二千五百三十六名、八・八%の増加を示しております。検挙総数の中で買収、利害誘導の占める比率でございますが、件数で申しますと八一%、人員で九〇%の比率を示しております。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/16
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017・島上善五郎
○島上委員 総理お聞きのとおりです。私先ほどばく然と質問したのですが、買収、利害誘導等のいわゆる悪質違反と称するものが、件数にして八一%、人員では九〇%を占めておるということは、圧倒的な数であるということであります。もちろんこのほかに、文書違反とか自由妨害とか、比較的軽微なものもあるわけですが、こういう実態であるということを私先ほど指摘しましたが、こういう悪質違反を防止するために、私は、今後法律改正の必要なもの、それから政党自体が自粛し、反省し、公認の際あるいは選挙運動の際に十分その実を示すということ、さらに行政措置をもって防止するというようなことを十分ひとつ今後考えていただきたいと思います。これは先ほど質問しましたからお答えは要りません。いま数字がはっきり示されたので、さらに総理に十分今後お考えを願いたい、こういうことです。
そこで今度は、今回出された法案の内容に若干触れてお伺いいたしたいと思いますが、これは昨年の選挙の直前に選挙制度審議会から答申されたものに基づいて出されたものと思います。提案理由の際にもそういう説明をしておられます。ところが、重要な点でこの答申に基づかない部分がある。アンバランスを是正するというのですから、人口が非常にふえたところをふやす、人口が著しく減ったところを減らすというのがそのたてまえのはずです。いまの選挙区に対する議員の配当は人口を基礎にして昭和二十一年につくったものです。その基礎を踏襲して、それによって著しく人口のふえたところ、著しく人口の減ったところ、いわゆるアンバランスを是正しようというのが昨年の答申ですから、その答申に忠実であるならば、ふえたところだけふやして、減ったところはただ一区だからそっとしておこう——私は、一区だけ減らしたというのも厳密に言うと必ずしも公正妥当な案とは思われないと思うのです。しかしこれは去年の十月、実は選挙制度審議会の人々は、去年の総選挙に間に合わせるためのことを頭に入れてわりに妥協した案、実現可能ということを考えた妥協した案だと思うのです。そういう意味において私は認めますけれども、ところがその中にあった減のほうをそっとはずしてしまって、増のほうだけ出しているということは、私はこの選挙制度審議会の答申に忠実な案とは思われませんが、総理はいかようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/17
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018・池田勇人
○池田国務大臣 この人口の移動によりまして、増減をやるという答申が出たのでございます。この答申の出ます基準を見ますと、一人当たりの人口を十三万ないし二十七万でしたかの基準でやっております。しかるところ、兵庫県の五区は十三万というのが十二万八千七百何ぼ、とにかく一%未満の状況でございますので、私はこの際はやはり二人区ということもいかがなものかと思います。原則は三人ないし五人区としておりますから、二人区という——奄美大島のようなところは別でございますが、この際としては、次の大きい改正があるやに想像される節もございますので、千二百人あれしたからというのですっとやめるというのはいかがなものかと考えまして、減のほうはそのまま改正せずにいくことがこの際としてはやむを得ないのじゃないか、こういう考え方でやっておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/18
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019・島上善五郎
○島上委員 それではアンバランス是正という筋が十分に通っていないということになると思うのです。二人区はいかがかとおっしゃいますけれども、何もその区だけのことを考えないで、隣の三人区と合わせて五人区をつくったって、別にいまの三名ないし五名区のたてまえに反しないわけですから、やろうと思えばやりようは幾らでもあるのです。残念ながら、政府の提案が、これはいつものことでありますけれども、選挙制度審議会の答申の都合のいい部分だけをとって、都合の悪いところはそっと捨てるといういつものやり方をまた今回も踏襲しているといわざるを得ません。残念ながらこの案は厳密な意味のアンバランスの是正ではない。二十万を中心にして上七万、下七万ということ自体も私は厳格な議論をすればおかしいと思うのです。二十七万と十三万です。これは半分以上のアンバランスがあるのですからね。しかし私はこの議論はここではこれ以上しようとは思いませんけれども、減のほうをそっとはずしたということにはどうも納得できないということだけを申し上げておきます。
それから、たしかこの前の委員会でも出たと思いますが、現在の制度は人口を基礎にしております。そうしてこのアンバランス是正の案も、いま言ったように二十万を中心にして上下七万の大きな開きがありますが、やはり人口を基礎にしておる。将来大きく制度を変えるというときのことは別にいたしまして、現行制度はあくまでも人口を基礎にしておるのですから、人口を基礎にしていくべきものだ。この前の委員会では地域の考慮を払うべきだというような御議論もありましたが、それは選挙制度大改正の際の議論としては聞きますけれども、現在の制度のたてまえを貫いていくというからには、やはりあくまでも人口をもとにしていくべきものだというのは、この次に伺いますが、分区という問題もありますので、その際の参考のために、私どもの考えはやはり人口を基礎にして配分を考えるべきものだと思いますが、総理はどのようにお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/19
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020・池田勇人
○池田国務大臣 原則としてはそういう考え方が正しいと思います。これは原則でございます。やはり国全体のことを見ますと人口だけでやるというわけにもいかない。いままでの制度のなれた点もありましょうし、また、地形とか産業とかいろいろな点もありましょうから、私は人口だけでいくということはいかがかと思います。地形その他、現在のいろいろな点がやはり私はいいのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/20
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021・島上善五郎
○島上委員 地形とかいろいろ言いますけれども、山が高いとか谷が低いとか川があるとかいうことも、議員の配分の際にそう考慮する必要はないと思いますが、これも時間がありませんからこれ以上伺いません。
そこで、今度出された案でございますが、六人区、八人区というものがあります。選挙制度審議会の答申によりますれば、これは解釈のしようもございましょうけれども、六人区、八人区は分区すべきものだと考えるということを答申の中にはっきりとうたっております。将来の大改正の際は別といたしまして、現行制度の上に立ったアンバランスの是正であります以上は、やはり現行制度の三名ないし五名というたてまえで、それをこえるものは分区、区域を二区に割るということが適当ではないかと考えております。この法案が提案をされる前のいきさつは新聞やその他でいろいろ報道されましたが、自民党筋においても分区のための幾つかの案をお考えになり、自治省においてもいろいろお考えになったようです。行ったり来たりして最後には分区しないまま出されましたが、もちろん国会は法案を審議する場所ですから、この審議の過程で分区の修正をいたしたいと私ども考えておりますが、この点については総理はどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/21
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022・池田勇人
○池田国務大臣 選挙制度改正に関する答申のうちにもいままでの原則、三人、五人をたてまえとするということをはっきりうたっております。また、先ほど申し上げましたごとく、この際としてはこういうふうに出すけれども、こういう答申でありますので、私はあなたと同じようにぜひこの委員会で六人区、八人区を三人あるいは五人区に分けてもらいたい、先ほど議論のありましたように、与野党で十分審議なさいまして適正な区分をしていただきたいと考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/22
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023・島上善五郎
○島上委員 それから沖繩について四名の議員を配当するという意見がかなり有力に出ております。いま直ちに選挙して国会に参加させることができるかできないかについては、私も承知しておるつもりですが、沖繩の人々はぜひこの機会に四名の配当を別表に実現してほしいという強い希望を持っておるようです。早川自治大臣も一時はそのような意見を、これは非公式であったかもしれませんが、私どもの承知しておるところでは新聞に発表したことがあります。ところが、これはいつの間にか消えてしまって、政府は全然考えていないようですが、いま直ちに選挙を実現することができない困難な事情にあるにしましても、一歩前進の意味において、また沖繩の同胞の希望に光を与える意味においても、この際沖繩の四名区ということを別表に考慮すべきではないかと考えますが、総理はいかようにお考えでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/23
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024・池田勇人
○池田国務大臣 われわれは沖繩の施政権を一日も早く日本に返してもらいたい、その間におきましては、沖繩の方々の生活水準の向上、福祉施設の改善、発達をはかっていく、これがほんとうのやり方であると考えておるのであります。主権が日本にあるのだから、国会において、いますぐ選挙できなくてもという議論があるようでございますが、私はこの点につきましては、将来早く施政権を返してもらう上においてどれが一番便利がいいか、一番いい方法であるかということをいましばらく考えたい、検討したいと思って、今回は出さなかったのでございます。十分この点につきましても、今後検討していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/24
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025・島上善五郎
○島上委員 同僚の堀君が関連質問をしたいそうですので、私はこの一問で終わりますが、山下君と約束した時間がありますから、関連質問を許してほしいと思います。
今回のは衆議院の選挙区の定数と人口のアンバランスの是正でありますが、これに関連して当然考慮しなければならぬのは、参議院の地方区においても現に著しいアンバランスが出ておるということです。二名ずつ改選する区、つまり四名の区よりも一名ずつ改選する区のほうが人口がはるかに多くなっているという例もありますし、東京などは四名、四名の改選で八名ですが、人口比例からいうならば十四名くらいになるべきものだ、こう思います。今後参議院の地方区のアンバランス是正ということをお考えになっているかどうか。お考えになっているとすれば、選挙制度審議会に諮問されるお考えがあるかどうか。これはずっと前に自治大臣をしておった安井君の時分には、自分が参議院の地方区出身であるというせいでもあるまいけれども、参議院の地方区のアンバランスも衆議院の次には当然考えなければならぬものだというふうに答弁されております。この点いかがお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/25
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026・池田勇人
○池田国務大臣 参議院のほうは、衆議院の制度以上に県別というものがございますから、人口比例によらぬ地区の県別ということがありますから、衆議院よりもっと人口比例によらぬようになっていると思います。しかし最近の状況によりまして、やはりアンバランスが強くなってきているということは事実でございます。したがいまして、選挙制度審議会におきましても、参議院のアンバランスについて今後検討していくという、こういう意向のようでございますが、私は適当だと思います。やはり検討していくべきことだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/26
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027・小泉純也
○小泉委員長 堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/27
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028・堀昌雄
○堀委員 二点だけお伺いをいたしたいと思います。
第一点は、公職選挙法十三条では、「衆議院議員の選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数は、別表第一で定める。」となっています。それで別表がございまして、そのあとに「本表は、この法律施行の日から五年ごとに、直近に行なわれた国勢調査の結果によって、更正するのを例とする。」こういう法律になっているわけであります。今回は昭和三十五年度の国勢調査をもとにいたしまして、選挙制度審議会が今回のような答申をいたしました。そういたしますと、この法律によるところの「直近に行なわれた国勢調査の結果によって、更正するのを例とする。」ということになりますと、昭和四十年にはまた国勢調査が行なわれますから、四十年をこえました時期には、またアンバランスの問題が、やはり近年都市進中化が非常に激しゅうございますので、当然議題になってくるのではないかと考えられますが、政府としては、この法律に沿って今回アンバランスの是正が行なわれるわけでありますから、これからこの法律に従って直近に行なわれた国勢調査によってアンバランスの是正を行なうという意思があるのかどうか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/28
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029・池田勇人
○池田国務大臣 これは法律の問題と実際の問題とのかね合いと思います。直近の国勢調査によってアンバランスを是正するのを例とする——しなければならぬとも書いてないのですが、気持ちはするべきだ、例とするというのはそうです。それならば、もう国勢調査が四十年ならば、四十一年にしなければならぬということになるわけでございますが、過去の事例はそうではないので、いまここで御質問で、例とするということになっておりますから、やります、こう言っても、それはいつやるかということで、またこれは情勢を見てやるということになると、それは法律の規定を無視する、こういうことになってまいりますが、いまの分でも、この前の国勢調査の傾向が相当あらわれてきております。その後の分が、やはり選挙人名簿と調査とが違ってきておりまして、その傾向はふえてきている。ですから、今後においても、四十年の国勢調査の情勢を見まして、例とするという趣旨に沿って、実情に沿ったような措置を講ずる必要があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/29
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030・堀昌雄
○堀委員 実はこれまで例となっておりながら例としなかった点に問題があったわけでございますので、今度は一応そういうふうに新たに是正が行われたわけでありますから、少なくとも都市集中化の激しい今日でございますから、やはりできるだけ例とするという方向で処理をしていただきたい。
実はいま選挙の粛正の問題で一番重要な点は何かと申しますと、二回にわたる選挙制度審議会の中での最も集中をいたしました議論の一つは、選挙資金及び政治資金の規正に関する問題でございます。この問題は、第一次の審議会におきましても、第二次の審議会におきましても答申が行なわれましたけれども、実はこれについて政府はきわめて不熱心であるという感じがいたします。その第一項を申し上げますと、「寄付金きょ出の原則」というのがございまして、「選挙資金および政治資金についての寄付は、個人に限る。会社、労働組合その他の団体からの寄付は禁止するという第一次審議会の答申を再確認するものとする。」こういう形で実は重ねて答申をいたしているわけでございます。これについて選挙制度審議会設置法は、審議会の答申を尊重するということになっております。このことは、この前、総理とも私は論議をいたしましたが、尊重するということは、必ずしもそのとおりにやれということではないという御答弁がこの前はございました。しかし少なくとも私は選挙制度審議会の答申を政府が検討を進め、それについての何らかの考え方を明らかにする責任が政府の側にあるのではないかという感じがするわけでございます。
そこで、この選挙制度審議会の答申の中で問題になっております点は、この最初に特に急いでやってくれという要望の議員提出の不均衡是正の事項が取り上げられているだけでございまして、私どもが一番重要だと思う政治資金の規正の問題というのは、今日まで政府側としては何ら正式の御発言がなかったわけでございます。しかしこれは選挙制度審議会できわめて重要視をされておる。こういう点につきまして、今後この答申をどのような形で具体化をされるのかについて、ひとつお考えを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/30
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031・池田勇人
○池田国務大臣 選挙を公明にし、金のかからないようにすることがぜひ必要でございます。私はその選挙制度審議会の答申あるなしにかかわらず、わが自由民主党といたしましても、これを公正にしなければいかぬというので、国民協会の発足を促して、その方向にいっておるのであります。いまの日本の現状としまして、あの答申のとおりにできるかということになりますと、私はできないという考え方が多いんじゃないか。もちろん理想論としてけっこうでございます。それだけの体制ができておるか、心がまえができておるかという問題になりますと、なかなかむずかしいのじゃないか。先ほど問題になりましたが、区制の問題にしましても、小選挙区がいいという議論が昔は多かった。しかしこの前については、島上さん言われるように必ずしもそうなっていない。こういう問題はやっぱり実態を見きわめて徐々に改めていくような方法で考えるべきであって、これが理想だからこうやれという答申にすぐ沿っていくということは、かえって摩擦を多くするのじゃないか。それで私はそういう実態をつくるべく、いま、自分のことを言って恐縮でございますが、国民協会をつくって党の資金の正常化、恒久化をしよう、そしてまた派閥の政治資金の関係はやめよう、こういうので徐々にそういうことが実行できるような素質をつくっていこうというのが私の考え方でございます。しかし、この問題はそのままでないがしろにしておくわけにいきませんので、やはり今後選挙制度審議会におきましても、この問題につきまして十分検討を加えてもらいたい。こういう意味で先ほど島上さんの言われましたように、委員を任命いたしまして検討を願いたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/31
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032・堀昌雄
○堀委員 実は第一次の審議会でも、寄付を個人に限るという原則がございまして、第二次でもいろいろ論議をいたしましてやはり個人に限る。これはアメリカ等の例がすでにあるわけでございますが、こういうことになっております。そこでいきなり個人にできないという問題もあるかもわかりません。しかしそうすれば一体どこでどういうふうにするかというめどもなしに、ただ遷延をされておるのでは、私は選挙制度審議会としては、この問題を今後審議する熱意を欠くではないかという感じがいたします。
そこで私どもも、なるほど実態等の中に相当の開きがありますから、来年やってもらいだいとかいうことにはならないかもしれません。しかし少なくともある程度のめどを置いて、その方向で処理をするなら処理をするというその姿勢を明らかにしていただかないと、漫然と日を延ばしておるのでは、選挙制度審議会としてもおそらくこの問題を今後どう扱うかについて、非常に困難な問題に当面をするだろうと思うのです。委員の皆さんも熱意を欠くことになるのではないかという感じがいたしますので、いま一歩具体的に、もちろんこれは一ぺんにはいかないにしても、段階的な問題について、政治資金規正について、政府としては本年また次の通常国会等において、政府として適当と考えられる規正の段階において、政治資金の規正をされる意思があるかどうか、その点をひとつお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/32
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033・池田勇人
○池田国務大臣 先ほど申し上げましたように重大な問題でございますので、政府としてもまた党としても検討を加えておりますが、やっぱり審議会におきまして、この問題を理想論だけでなくて、実際にどういうふうな方向でだんだんやっていっていいかというふうなことも、ひとつ御検討願いたいと思っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/33
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034・小泉純也
○小泉委員長 山下榮二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/34
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035・山下榮二
○山下委員 選挙法の改正は民主主義政治の基盤をなすのでありますから、きわめて重要なことでなければならぬと思うのであります。総理は一月二十一日の衆参両院における施政方針演説の中で、公党の倫理性を高めるとともに、政治の基礎をなす選挙制度の合理的な改正を行なわなければならぬということを述べておられるのであります。まことにもっともだと考えるのであります。そこで私は、先ほどもお話しになりました選挙制度の中にいろいろの選挙区の制度がございます。あるいは大選挙区、中選挙区、小選挙区、比例代表制、いろいろございますが、お話を伺っておりますと、総理、総裁として、それに確たる答弁をすることは差し控えたいというがごとき御答弁があったのでございまするが、しかし一党の総裁として、あるいは総理として、どういうことが一番理想であるというお考えがあらねばならぬであろうと思うのでありますが、そういう選挙区制についての総理の理想についての御意見を伺いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/35
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036・池田勇人
○池田国務大臣 先ほど申し上げましたように非常に重要な問題でございます。しかもまた選挙制度審議会を設けて答申をまとうとしておるその重大な問題のときに、総理、総裁として私見を言うことは、これは差し控えたほうがいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/36
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037・山下榮二
○山下委員 それでは今回提案されました定数是正は、旧選挙区を基本としたものでなければならぬ、私はこう思っておるのですが、提案されました中には、従来の中選挙区の定員の定義、あるいは慣例、こう申し上げますか、三名ないし五名という定員が、今度の増員によって六名ないし八名という区ができておるのですが、しかし政府はそれらを区割りをせずにそのまま国会に提案をされて、国会の審議の中で適当におやり願いたいというような趣旨の提案であるととっておるのでありまするが、私はこういうことがもう一つ納得がいきにくいのであります。先ほども申されまするように、選挙区区割りというものは、きわめて議員の利害得失に重大な影響を与えるのであります。その重大な影響を持つ個々の議員が、いかに委員会とは言いながら、ここで区割りを行なうことは、世間から見てゲリマンダーのそしりを受けることは論をまたないのであります。区割りは、よろしく私は議員を離れた第三者の立場の人が公正妥当に区割りを行なって国会に提案をすべきではないか、こう考えるのでありますが、これに対して総理のお考えを伺いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/37
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038・池田勇人
○池田国務大臣 選挙制度全般を、小選挙区とか中選挙区、大選挙区あるいは比例代表制をどう加味するか、こういう問題については重大な問題だから申し上げません、こう言っておるのであります。いま御審議を願っておるのは、中選挙区のもとにおいて、答申にもありますように三人ないし五人の区割りを妥当とする、こういう基本的考えのもとに立って審議会が答申せられたのであります。六名、八名——そこでその真意は、やはり政府かあるいは国会において適当に処理願いたいという気持ちだと思います。われわれ分けて出そうかという考えもございましたが、これは実情から申しますと、分けることに賛成の人も不賛成の方もおられましょう。しかし原則は三人ないし五人ということを答申しておりますので、その分け方につきましては、やっぱり国会で与野党で御審議願ったならば、ゲリマンダーということにはならないと思います。えてしてゲリマンダーというのが非常に強く国民の間に入っておりますから、私はこういう十九名の増員のときには、これは委員会で与野党で話し合いくださって結論を得ることが一番民主的で、全体とは違いますけれども、この際としては適当じゃないか、こういうので、分けるというたてまえのもとで御審議願いたい、こう説明しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/38
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039・山下榮二
○山下委員 それではお伺いいたしますけれども、先ほどもお話しになりましたが、答申案の中では兵庫県第五区は一名減ということになっておるのを、一名減せずに、現在の定員の三名でそのままにしておられるのですが、これはやはりいまお話を伺っておりますると、中選挙区というものを貫くためには、ここを二名にすると中選挙区の制度がくずれ去っていくというおもんぱかりもあって、これは現在の三名ということにされたということに解釈していいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/39
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040・池田勇人
○池田国務大臣 中選挙区だからこうやるんだというのが唯一の理由じゃないのです。いかにも定員を減らすのが、十三万人を基準としておるのが十二万八千七百人というようなことであって、一%程度の差がある、そこで一人減らすというのはいかにもこの際ひどいじゃないか。十三万五、六千の区もあるわけでございます。だからこの際は中選挙区制もさることながら、主たる理由はやはりそういうちょっとの違いで定員を一カ所だけ減らすということはいかがなものかというので、答申の線とは違いますけれども、皆さん方にこういう意味で御審議願いたいと言って、改正しない案でいっているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/40
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041・山下榮二
○山下委員 次に伺いたいと思うのは、奄美大島群島の問題でございます。奄美大島群島が昭和二十八年に日本に復帰いたしまして、直ちに政府は島民に国政へ参与さすべきであるということから、特別区をつくって、衆議院の選挙を行なわれたのであります。そのときの自治省の担当大臣であった塚田さんはどういう答弁をされておるか、こう申し上げますると、来たるべき次の選挙法改正のときには、これを本土の選挙区内に戻して、特別区をなくいたします、こういう答弁をされておるのであります。しかるに今回提案になりましたのを見ますると、いままでは暫定措置として行なわれておった特別区が、やはりそのまま恒久化してあとへ残る、こういうことになっておるのでありますが、そういたしますると、これは三名ないし五名という中選挙区の定員の制度というものが、ここでくずれ去ったということに相なろうかと思うのでありますが、これに対して総理は一体いかようにお考えになっておるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/41
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042・池田勇人
○池田国務大臣 奄美大島復帰という歴史的事実にかんがみまして、あのときは一人区を設けておったが、将来は一緒にしようということも、塚田君が答弁したやに聞いておりますが、しかしいまこの問題は、将来永久に一人区制を考えておるというのではない。最近の機会にそういうことも予想せられますので、今回は従来どおりにとどめておった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/42
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043・山下榮二
○山下委員 それでは、大体今度の選挙区制の提案のやり方が、臨時的処置として提案されておるのでありまするが、その提案の前提を考えてみますると、先ほど堀議員から質問もございましたように、昭和四十年度に控えました国勢調査の結果、選挙区というものの定員比率というのを大幅に改正するという意図をお持ちであるから、今度暫定的な臨時処置としておやりになったのかどうか、その辺を伺いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/43
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044・池田勇人
○池田国務大臣 この選挙区制の問題は、国勢調査とつながっておることは、定員の問題はつながっておりますが、区制の問題は必ずしもあれとつながっておりません。しこうして区制の問題は、公明選挙を行なう上においても非常な重大な問題でございます。選挙制度審議会でもこれを論議されると思います。したがいまして、国勢調査があったときの定員のアンバランスの是正ということと、選挙区制の問題とは観念としては別個でございます。われわれは選挙区制についての改正につきまして十分検討を片一方で加えると同町に、国勢調査に基づきまする、アンバランス改正を例とするという規定にも沿いながら、今後検討していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/44
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045・山下榮二
○山下委員 時間がまいったようでございますから、いろいろまだ、先ほどお話しになりました参議院の地方選挙区のアンバランスの問題、その他伺いたいことがたくさんございますが、すでに時間がまいっておるようでございますから申し上げません。
最後に、一つだけ伺ってみたいと思うのであります。これも先ほどお話しにはなりましたが、沖繩問題でございます。御承知のとおりケネディ大統領は、一九六二年三月十九日に、沖繩の行政改革案を発表されたのであります。その大統領声明の中で、琉球は日本国の一部である、こう正式に認めた旨の声明を行なわれておるのであります。私は、いままで潜在主権がどうのこうの言っておる以上の重大な大統領の発言である、こう思っておるのであります。このことばからいっても、いまここに改正されようとする衆議院の議員定数の改正にあたりましては、ぜひ沖繩にその定数の割り当てを行なうということが、この大統領のことばにもこたえるゆえんであり、さらに将来沖繩の日本復帰への一つの足がかりになるのではなかろうかと思うのでありまするが、これに対して総理はいかようにお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/45
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046・池田勇人
○池田国務大臣 先ほどお答えしたとおりに、われわれは一日も早く沖繩の施政権を取り戻したいという念願で進んでおるのであります。ケネディ大統領とも話をしました。ケネディ大統領の気持ちもよくわかっております。しかし、どうしたほうが一番いいかということにつきましては、私はこういう選挙法の改正のときにこの際ということでなしに、もっと根本的に検討していきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/46
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047・山下榮二
○山下委員 いろいろ伺いたいことがございますけれども、時間がまいったようでございますから、いずれその他のことについては担当大臣たる赤澤大臣に後日伺うことにいたしまして、総理大臣に対する質疑はこれをもって終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/47
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048・小泉純也
○小泉委員長 総理大臣に対する質疑はこれにて終了いたしました。
次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午後三時八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604219X00619640415/48
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