1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年二月十一日(火曜日)
午前十時三十四分開議
出席委員
委員長 田口長治郎君
理事 小沢 辰男君 理事 亀山 孝一君
理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君
理事 河野 正君
伊東 正義君 浦野 幸男君
熊谷 義雄君 小宮山重四郎君
坂村 吉正君 竹内 黎一君
地崎宇三郎君 西岡 武夫君
西村 英一君 橋本龍太郎君
藤本 孝雄君 粟山 秀君
渡邊 良夫君 亘 四郎君
伊藤よし子君 高田 富之君
滝井 義高君 長谷川 保君
八木 一男君 八木 昇君
山口シヅエ君 山田 耻目君
吉村 吉雄君 本島百合子君
吉川 兼光君 谷口善太郎君
出席国務大臣
労 働 大 臣 大橋 武夫君
出席政府委員
労働事務官
(大臣官房長) 和田 勝美君
労働事務官
(大臣官房会計
課長) 鈴木 健二君
労働事務官
(大臣官房労働
統計調査部長) 大宮 五郎君
労働基準監督官
(労働基準局
長) 村上 茂利君
労働基準監督官
(労働基準局賃
金部長) 辻 英雄君
労働事務官
(婦人少年局
長) 谷野 せつ君
労働事務官
(職業安定局
長) 有馬 元治君
労働事務官
(職業安定局失
業対策部長) 住 榮作君
労働事務官
(職業訓練局
長) 松永 正男君
委員外の出席者
専 門 員 安中 忠雄君
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二月七日
委員伊東正義君辞任につき、その補欠として松
浦東介君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員松浦東介君辞任につき、その補欠として伊
東正義君が議長の指名で委員に選任された。
同月十日
委員小宮山重四郎君辞任につき、その補欠とし
て小坂善太郎君が議長の指名で委員に選任され
た。
同日
委員小坂善太郎君辞任につき、その補欠として
小宮山重四郎君が議長の指名で委員に選任され
た。
同月十一日
委員松山千惠子君辞任につき、その補欠として
竹内黎一君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員竹内黎一君辞任につき、その補欠として松
山千惠子君が議長の指名で委員に選任された。
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二月十一日
全国一律最低賃金制実施に関する請願(井原岸
高君紹介)(第二九七号)
同(藤田高敏君紹介)(第三五三号)
母子栄養改善強化並びに児童福祉施設栄養士設
置に関する請願(小川半次君紹介)(第二九八
号)
同(中村幸八君紹介)(第四一三号)
同(沢田政治君紹介)(第四五五号)
同(田中龍夫君紹介)(第四七三号)
国民健康保険制度の改善促進に関する請願(亀
山孝一君紹介)(第二九九号)
生活保護基準の引き上げ等に関する請願外一件
(江崎真澄君紹介)(第三〇一号)
同(内田常雄君紹介)(第三〇二号)
同(亀山孝一君紹介)(第三〇三号)
同(野田卯一君紹介)(第三〇四号)
同(古井喜實君紹介)(第三〇五号)
同外一件(卜部政巳君紹介)(第三〇六号)
同(江崎真澄君紹介)(第三四五号)
同(早川崇君紹介)(第三四六号)
同(伊東隆治君紹介)(第三五九号)
同外一件(江崎真澄君紹介)(第三六〇号)
同(江崎真澄君紹介)(第四一二号)
同外一件(江崎真澄君紹介)(第四三四号)
同外一件(江崎真澄君紹介)(第四五二号)
同外一件(江崎真澄君紹介)(第五三二号)
国民健康保険制度の改善に関する請願(古井喜
實君紹介)(第三〇七号)
中小企業退職金共済制度の充実に関する請願(
原茂君紹介)(第三二四号)
同(松平忠久君紹介)(第三二五号)
同(下平正一君紹介)(第三七三号)
療術の制度化に関する請願外一件(赤路友藏君
紹介)(第三三九号)
同(伊藤卯四郎君紹介)(第三四〇号)
同(小金義照君紹介)(第三四一号)
同外四件(八木徹雄君紹介)(第三六二号)
同外二件(宇野宗佑君紹介)(第三八七号)
同外三件(受田新吉君紹介)(第三八八号)
同外三件(小山長規君紹介)(第三八九号)
同(井手以誠君紹介)(第四〇五号)
同外二件(瀬戸山三男君紹介)(第四〇六号)
同(高瀬傳君紹介)(第四〇七号)
同(床次徳二君紹介)(第四〇八号)
同(三原朝雄君紹介)(第四〇九号)
同外一件(村山喜一君紹介)(第四一〇号)
同(八木昇君紹介)(第四一一号)
同(三池信君紹介)(第四三七号)
同外一件(大久保武雄君紹介)(第四五三号)
同(上林山榮吉君紹介)(第四五四号)
同(小山長規君紹介)(第四六六号)
同(田中龍夫君紹介)(第四七四号)
同外一件(神田傳君紹介)(第四七五号)
同(伊東隆治君紹介)(第五三〇号)
同(三池信君紹介)(第五三一号)
結核による重度身体障害者の福祉対策に関する
請願(安宅常彦君紹介)(第三四二号)
全国一律最低賃金制の確立に関する請願外一件
(佐々木良作君紹介)(第三四三号)
戦争犯罪関係者の補償に関する請願(江崎真澄
君紹介)(第三四四号)
国民健康保険制度の改善促進に関する請願外一
件(丹羽喬四郎君紹介)(第三六一号)
P・T制度化に伴う経過措置に関する請願(伊
藤よし子君紹介)(第三八六号)
結核対策の充実に関する請願外一件(吉村吉雄
君紹介)(第三九〇号)
同(華山親義君紹介)(第五三三号)
国立小諸療養所の医療業務監査並びに医局改善
強化に関する請願(松平忠久君紹介)(第四一
四号)
児童福祉施設従業職員の処遇改善等に関する請
願(金子一平君紹介)(第四三五号)
じん肺法の一部改正等に関する請願(篠田弘作
君紹介)(第四六五号)
視力障害者のP・T受験資格等に関する請願(
床次徳二君紹介)(第四七六号)
水源の汚染防止に関する請願(二階堂進君紹
介)(第四九二号)
水利の水道優先に関する請願(二階堂進君紹
介)(第四九三号)
精神衛生法の改正に関する請願(柳
田秀一君紹介)(第五三四号)
消費生活協同組合の育成強化等に関する請願外
六件(川村継義君紹介)(第五三五号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
労働災害の防止に関する法律案(内閣提出第六
号)
労働保険審査官及び労働保険審査会法の一部を
改正する法律案(内閣提出第五四号)
労働関係の基本施策に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/0
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001・田口長治郎
○田口委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の労働災害の防止に関する法律案、労働保険審査会及び労働保険審査会法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/1
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002・田口長治郎
○田口委員長 提案理由の説明を聴取いたします、大橋国務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/2
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003・大橋武夫
○大橋国務大臣 ただいま議題となりました労働災害の防止に関する法律案につきまして、その提出理由及び概要を御説明申し上げます。
労働災害の防止につきましては、従来から労働基準法その他労働者の安全衛生に関する法令の実施を通じ、鋭意努力を重ねてきたところであります。殊に昭和三十三年八月以降におきましては、産業災害防止対策審議会の答申の趣旨に沿って、産業災害防止総合五ヵ年計画のもとに国民運動を展開いたし、これによって災害発生率はかなり低下いたしたのでありますが、他面、その間における雇用労働者の著しい増加等の事情もありまして、いまだ絶対数として相当多くの労働者が災害の犠牲となっており、かつ、重大災害の発生も見られる実情にあるのであります。
かかる実情にかんがみまして、わが国産業の進展に伴う労働災害の発生状況に対処するために、この際政府といたしましては、労働基準法等の施行と相まって、総合的かつ計画的な労働災害防止対策を講じますことはもちろん、特に民間の緊密な協力によってこの対策を一そう推進いたしたいと存じまして、労働災害の防止に関する法律案を第四十三回通常国会に提案いたしたのであります。同国会では、衆議院においては、政府原案どおり可決されたのでありますが、参議院において審議未了となりました。同国会における審議経過等にかんがみ、若干の修正を施した上、これを第四十四回臨時国会に提案いたしたのでありますが、最近における労働災害の発生状況にかんがみ、これを防止する対策を一層推進する必要が痛感せられ、そのため、この法律案に基づく措置を早急にとることが必要と考えられますので、これと同内容のものを、ここに重ねて提案いたした次第であります。
次に、この法律案の概要を御説明申し上げます。
第一に、政府は、労働災害の防止のための計画を作成し、かつ、これを公表し、関係各方面と協力して、労働災害の防止につとめることとしたことであります。
第二に、この労働災害防止計画に沿う事業主の自主的な労働災害防止活動を促進するため、労働災害の防止を目的とする事業主等の団体について定めるとともに、これらの団体に対して政府の助成措置を講ずることとしたことであります。
この法律による労働災害の防止を目的とする団体といたしましては、全産業的なものとして中火労働災害防止協会、特に労働災害の発生率が高い業種に設立されるものとして労働災害防止協会があり、それぞれ、その設立、業務、管理等について所要の準則を定めているわけであります。
これらの労働災害防止団体は、労働災害の防止に関する技術的な事項について、安全管理士及び衛生管理士をして、事業主等に対する指導及び援助を行なわせるほか、中央労働災害防止協会にあっては、事業主、事業主の団体等の行なう労働災害防止活動を促進すること、労働災害の防止に関する教育及び技術的援助のための施設を設置し、運営すること、その他労働災害の防止に関し必要な事項を全産業的規模において行なうこと、業種別の労働災害防止協会にあっては、特に当該業種の労働災害の防止に関して、労働災害防止規程を設定することを、それぞれ主要な業務といたしております。
右の労働災害防止規程は、労働災害防止協会の構成員であります事業主が、労働災害の防止のために措置すべき事項について、労働大臣の認可を得て定めるものでありまして、これによって、法令の定める基準を、当該業種の実態に即して具体的に補充し、労働災害防止措置の改善向上を行なうことを趣旨とするものであります。
なお、労働災害防止団体には、労働災害の防止に関し、学識経験を有する者を参与として置くことにより、その行なう業務の適正な運営を確保することを期しております。
以上の労働災害防止団体に対しましては、労災保険特別会計の予算の範囲内におきまして、その業務に要する費用の一部を補助することといたしております。
第三に、請負関係にある事業等につきまして特別の規制措置を講ずることとしたことであります。
すなわち、労働基準法等従来の安全衛生に関する法令におきましては、個個の使用者と労働者との関係について、労働災害の防止に関し所要の規定を設けているのでありますが、建設業等に多く見られるように、請負関係にある数個の事業が同一の場所において同時に行なわれる場合につきましては、これらの事業の労働者が同一の場所で作業することから生ずる労働災害の防止に関しまして、特別な規制を行なう必要があるのであります。そこで、この法律におきましては、これら請負関係において最も上位にある元方事業主等に対し、統轄的な安全御生管理の措置、下請負人の労働者に使用させる建設物、設備等について必要な労働災再防止措置等を講ずる義務を課するとともに、関係請負人及び労働者も一定の義務を負うべきこととしたのであります。
そのほか、労働災害発生の急迫した危険があり、かつ、緊急の必要があるときは、都道府県労働基準局長は、必要な限度において、使用者に対して作業の一時停止等の措置を命ずることができることとして、労働災害の防止に万全を期することとしたのであります。
以上がこの法律案の主要な内容でありますが、このほか、国家公務員、地方公務員、船員、鉱業等についての適用範囲ないし特例に関する規定及び所要の罰則を設けるとともに、附則におきまして、この法律の制定に伴う所要の経過措置等を定めることといたしております。
以上が本法律案を提案するに至った理由及びその概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
次に、ただいま議題となりました労働保険審査官及び労働保険審査会法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
御承知のとおり、労働保険審査会におきましては、労働者災害補償保険法、失業保険法及び炭鉱離職者臨時措置法による再審査請求の事件並びに中小企業退職金共済法による審査の事務を取り扱うこととなっておりまして、過去三ヵ年の年間平均受理件数が二百六十件をこえ、なお、逐次増加の傾向を示しております。
しかもこれらの案件の当事者は、業務上の災害を受けた労働者もしくはその遺族または失業者等でありまして、その生活の実情にかんがみ、これらの案件を、迅速かつ公正に処理することが強く要請されているところであります。
このような事情にかんがみ、政府といたしましては、労働保険審査会について、委員を増員するとともに、その運営に関する規定を整備し、案件の迅速かつ適正な処理をはかるため、労働保険審査官及び労働保険審査会法の一部を改正する法律案を提案いたした次第であります。
次に、この法律案の概要を御説明申し上げます。
第一に、現在、委員三人をもって労働保険審査会を組織しておりますが、新たに、委員三人を増員し、六人をもって組織することとしたことであります。
策二に、再審査請求の事件及び審査の事務につきまして、委員のうちから労働保険審査会が指名する三人の審査員で構成する合議体がこれに当たることとし、特に労働保険審査会が定める場合においては、委員の全員を審査員とする合議体がこれに当たることとしたことであります。
第三に、再審査請求の事件及び審査の事務以外の会務の処理は、委員全員の会談の議決によって行なうこととしたことであります。
その他、改正に伴って必要な条文の整備等を行なっております。
以上が、本法律案を提案するに至った理由及びその概要であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/3
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004・田口長治郎
○田口委員長 両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/4
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005・田口長治郎
○田口委員長 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。吉村吉雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/5
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006・吉村吉雄
○吉村委員 きょう私は労働行政の中で、特に雇用の問題について、大臣の所信あるいは関係当局の見解を承っておきたいというふうに考えます。
労働省が発表いたしておりますところのすべての統計あるいは調査の資料、こういうものを見ますると、現在の日本の雇用状態というものは改善の方向に進んでおる、こういうことを基調といたしながらも、なおかつその中には地域的に非常に問題がある、あるいは中高年齢者がその就職が非常に困難であるのにもかかわらず、年少者の労働力というものは非常に不足をしておる、あるいはまた技能労働者がこれまた不足をしておる、こういった事柄を指摘いたしておるのでありますけれども、言いかえますと、それは今日の労働力というものが地域的に、あるいは年齢的に非常に過剰というものと不足というものとが同居しておる、これをどうにかしなければならないというのが今日の日本の雇用問題に対する最大の課題であるというふうに言われておるのでありますけれども、そこでまず初めにこういうような問題を解決をしていくために、その行政の責任者としての労働大臣として、いま申し上げましたような雇用上の多くの問題を解消するためにどういう考え方、具体的にどういう施策を持って対処をしようとしておるのか、あらためてまずお伺いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/6
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007・大橋武夫
○大橋国務大臣 お話のとおり、今日雇用が年々改善の基調にありまするが、しかしながら地域的に、あるいは年齢的にいろいろ憂慮すべき傾向もあらわれておるのでございます。そこでまず、地域間の労働力の調整の問題でございまするが、労働省といたしましては、この地域間の労働力の流動化ということをできるだけ円滑に進めることによって、幾ぶんなりともこの地域間の問題を解消する方向に進みたいと思っておるのであります。そこで各地区地区に技能工の訓練所を設け、また移動を容易にいたしまするために需要地に住宅あるいは合宿の施設などを政府の資金によって経営し、あるいは補助して事業主にこれをつくらせる、また移転、就職の際の財政面の援助をいたすというような措置も講じまするし、特に需給を適合せしめますためには、全国の求人求職をすみやかに的確に把握するということが必要であると思いますので、いわゆる労働市場センターの施設の整備を急いでおるような次第でございます。
次に、若年労働者の不足の問題でございます。この傾向を緩和いたしますためには、逆に過剰になっております中高年齢者をもってできるだけ労務を代替していくということが必要だと思いまして、中高年齢者の適職の研究をいたし、また求人に際しましては、中高年齢者をもってかえ得るものについてはこれを勧奨するというような措置を講じ、また中高年齢者の教育訓練、それから移転就職のためのいろいろな援助などをいたすことにいたしておるのであります。中高年齢者の過剰につきましては、結局若年者の不足とうらはらの問題でございます。私どもは、今後の日本の経済成長ということを考えますと、中高年齢者をいかにして安定職場に向けていくかということがこれからの労働行政の実施面における最重点的なものであろう、かような考えのもとにいろいろと施策を講じつつあるわけであります。
あわせて、技能工の不足につきましては、雇用促進事業団による訓練施設、あるいはまた技能工の検定あるいはいわゆる技能オリンピックというようなものでできるだけ技能工の養成の機運をつくり、またその養成施設を進めていきたい。また、民間の方面に対しましても技能工養成のための施設については極力政府といたしましても援助をいたす方針でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/7
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008・吉村吉雄
○吉村委員 そこで、いま答弁によりますと、地域間の労働力のアンバランスについてはその流動化をはかっていく、そのためには労働市場センターというものを急速に設置するというようなこと、あるいは中高年齢者の問題については職訓を強化していく、こういうことでございますけれども、これらの主要な問題を推進していくために、労働省がその政策推進のための裏づけとなる予算の問題について若干お聞きをしておきたいと思うのであります。
事務当局からまず答えていただきたいと思いますが、昭和三十五年ごろからでいいと思いますけれども、労働省予算が三十六年、三十七年というぐあいに三十九年度にかけてどういうふうになってきたのか、あるいはまた労働省の一般予算の構成というものを見てみますと、一般財源のほかに失業保険の特別会計あるいは労災の特別会計、こういうものから構成をされておるようでありますけれども、この特別会計からの繰り入れ額の変移というものはどういうふうになっているのか、この辺のところを数字をあげて明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/8
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009・和田勝美
○和田政府委員 三十五年度からの一般会計につきまして手元に資料がございますので、前もって申し上げまして、繰り入れの問題につきましてはいま資料を見ておりますので、しばらく御猶予いただきたいと思います。三十五年度は一般会計におきまして四百十七億一千二百万円、三十六年度は四百七十九億五千四百万円、三十七年度が五百八十一億九千六百万円、三十八年度が七百二十九億二千七百万円、三十九年度予算としてお願いをいたしておりますのが八百二十一億四千二百万円でございます。
両特会の問題につきましてはしばらくお待ちを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/9
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010・鈴木健二
○鈴木(健)政府委員 両特会からの繰り入れにつきましては、三十五年当時の資料をここに手持ちがありませんが、参考までに三十八年度、三十九年度について申し上げたいと思います。
労災保険で三十八年度が三億七千九百万円、三十九年度で七億六千九百万円。それから失業保険につきましては三十八年度が大体八十億、三十九年度におきまして百五十四億程度でございます。繰り入れと申しますのは、特別会計の国庫負担金とは別に一般行政費の中で特別会計負担分の金額を申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/10
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011・吉村吉雄
○吉村委員 私がいままでのこの三会計の状態を調べたところによりますと、三十五年度以降の状況でありますけれども、大体特別会計の負担額というものが年ごとにだんだんふえてきておる、こういう傾向があります。その特別会計が負担をしておるのはいろいろ問題があるところでありまして、この委員会でも何回か論議されたはずであります。特に私がここでお聞きしたいのは、特別会計からの繰り入れ額というものがだんだんと多くはなってきておるのでありますけれども、その特別会計はそれぞれの目的を持って設置をされておるわけですから、一般の行政費に回ってくる金額というものがふえてくることが必ずしもよいものだというふうには考えられません。しかも失対のほうが黒字だから、あるいは労災のほうが黒字だからということで一般行政費のほうに回ってくることが無制限に許されるとするならば、これはたいへんなことになるだろうと思います。したがって、特別会計から一般行政費のほうに繰り入れる金額というものは何らかの基準があってしかるべきではないかというふうに思うのでありますけれども、一体そういう基準というものがあるのですかないのですか。何に基づいてやっておるのですか、そこを明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/11
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012・和田勝美
○和田政府委員 お答えいたします。
労災保険につきましては、労災保険法にあります福祉施設等の経費として保険全体の事業の経費が、形から見ますと労働省施策の重要な面もありますので、特別会計の経理としてそういうものを行なっているわけでございます。それ以外につきましては、労災の職員が勤務をいたします監督署等につきまして、当然その部分の庁舎経費が必要なわけでございます。そういうものについて労災保険が経費を支出しておるということでございまして、特に国庫の一般会計でやらなければならないものについて労災のほうで見ておるということはございません。
それから失業保険のほうにつきましては、これは失業保険にやはり福祉施設がございます。たとえば、総合職業訓練所とか、そういうものが福祉施設でございますが、そういうものにつきましては失業保険の福祉施設の経費として失業保険で、計上をしておる。その財源は過去におきましては積み立て金の運用収入のワク内で調達をいたしておりましたけれども、最近におきまして特に炭鉱離職者等のために移転用の労働者宿舎をつくらなければ、かつて被保険者であった炭鉱離職者についての施策が十分に行なわれないという場合におきましては、やはり福祉施設として住宅を建てることにいたしております。それがここ二、三年のことでございます。この件につきましては、その必要な施策を進めていく上において運用収入だけではまかなえない面が出てまいりましたので、一応保険料収入の中に食い込む。その限度はもちろん十分に注意をしなければならないところでございまして、はっきりとした確定はもちろんいたしておりませんが、一〇%程度までが私どもとして限度として考えております。しかしこれも一般会計で当然やるということでございませんで、失業保険法に定める福祉施設として行なっておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/12
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013・吉村吉雄
○吉村委員 これは国際的に見ればどういうことになっておりますか。何か基準というようなものがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/13
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014・和田勝美
○和田政府委員 労災につきましては基準局長から御答弁申し上げます。
それから失業保険のほうにつきましても、特別に国際的にどうこうという基準はいまの福祉施設等につきましてはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/14
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015・村上茂利
○村上(茂)政府委員 労災保険につきましては、労働者に対する面接災害補償のための研究費以外に、災害防止のために予防的な面において経費を支出するというのが諸外国大体そのような傾向を持っておるわけです。日本におきましては、先ほど官房長からお答えがございましたように、労災保険につきましては保険法の二十三条に保険施設等についての規定がございます。そこで御承知のような療養施設、労災病院、あるいは義肢の支給といったような事項が保険施設としてある、こういうことになっております。二十三条の規定自体には保険施設として第五号で「その他必要と認める施設」という項目があるわけでございまして、この必要と認める施設の解釈の問題でございますが、この保険法第一条の目的から見まして、必要と認められる労働者の福祉に関する施設を行なうということがあるわけでございます。そういうことからいたしまして、労災保険では直接保険給付的な費用のほかに、福祉施設としてかなり幅の広い経費支出を行なっておるというような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/15
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016・吉村吉雄
○吉村委員 いまの答弁によりますと、基準というものは別にないというお話でありますが、そうしますと、労働省の予算というものを編成するにあたって、なかなか大蔵省から予算が獲得でき得ないというようなことになりますと、どうしてもこの特別会計からの繰り入れ額というものがふえざるを得ない。もちろんそれは労働者の福利厚生というものに限られているとはいうものの、本年度の予算を見てまいりましても、当然これは一般の行政予算の中から支出さるべきではないかと思はれる公務員の住宅とか、あるいは本省のどうとかというところにまで失業保険からのお金が使われているような節も見られますから、こういう点につきましては私はやはり一定の基準というものが法的に規制をされてしかるべきではないかと思うのです。そういう点がどうも明確でないものですから、どうしても労働省としては特別会計からの負担というものを多くしていく。幸いにして両方の会計が黒字でありますからそういうことができるのでしょうけれども、本来はこの両特別会計ともにそれぞれの目的を持っておりまして、労災の補償金額等についても、すでに今日の状態においてはこれでいいという状態ではない。あるいは失業保険についても同様なことが言えるわけでございますから、むしろそういう点の内容を充実するという方向にこのお金というものは向けられてしかるべきであって、本来労働行政の中で当然国がしなければならない事柄については、一般の行政費の中でこれをやっていくという方針が貫かれなければならないと思うのです。
そこで、私はこの点は再三この委員会で議論になっておりますから特に申し上げたいと思いますことは、年がら年じゅう議論になることをそのまま放置をするというそういう態度がいけないと思います。ですから、この特別会計からはどのくらいの割合で負担をしていいのだとか、そういうような一定の基準というものを法的に規制する、こういうふうにしていくことが非常に問題を少なくする道ではないかというふうに考えますので、そういうようなことをこれからやっていく意思があるかどうかを、ひとつ大臣のほうから明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/16
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017・大橋武夫
○大橋国務大臣 特別会計から一般会計に繰り入れておりまするものの中には、これらの特別会計を経理し、あるいは特別会計に含まれまする各種の保険業務を管理するための必要経費というものが当然にあるわけでございまして、これらにつきましては、もとより基準を設けるということは当然考えられてしかるべきであろうと思います。ただ、先ほど申し上げました福利厚生施設であるとか、あるいはまた失業者に対しまする住宅施設というようなものは、考え方によりますると、それ自体が災害を積極的に予防し、あるいはまた失業を解決するという失業保険なりあるいは労災保険なりの制度をつくり上げまする根本的な目的と全く同じ方向に使われる金である、こういうふうに思われるのであります。もちろんこれらの支出が、一般の保険金の支払いの基礎になっておりまする積み立て金の額を危うくするような程度に相なりますと、これは会計経理の上から言って問題でございますから、そういう意味で、たとえば保険料の一〇%程度にとどめるとかというようなことは、当然考えらるべきだろうと思うのであります。しかしながらこれらの福利施設であるとか、あるいは住宅施設というようなものは、やはりそのときどきの産業労働界の情勢あるいは経済界の情勢、そういうものを頭に置きながら、その規模を決定する必要がありまするので、おおよその目途は何%というところに置いておりましても、必ずしも厳密にそれに拘束されるのは、かえっていかがなものであろうかというふうにも考えられるのであります。しかし御質問の御趣意は、これからの会計の経理の基礎を堅実にするということが必要であるという御趣旨でございまして、この点は全く私どもも同感に存ずるのでございますから、今後十分研究をいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/17
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018・吉村吉雄
○吉村委員 いまの結論的な答弁については了解をしますが、その答弁の中で少し気にかかりますのは、たとえば労働者の住宅を建設をするというようなことも、最終目的的には失業を防止するというものと一致する、こういうお話でございまするが、そこまで議論を発展をさせますると、すべての政策目標というものは国民の生活というものを安定せしめていくということに一致するわけですから、これは問題にならないと思うのです。
そこで、いま政府あるいは与党が盛んに宣伝をしておりまして、一世帯一住宅というようなことも言われておりますけれども、そういった事柄は、本来政府全体の政策としてこれを実現していく、こういうことでございますから、一般の政策として、一般行政の中でそれが行なわれていってはじめて正しい意味での国民に対するところの政策になるのだと思うのです。そういう事柄を建設省なら建設省が中心になってやっていく、こういうことであろうと思うのですけれども、それらの事柄を、労働省なりあるいは建設省なりその他が総合的に全国民に対して住宅を供与していくという、そういう政策は一般の予算の中で行なわれてしかるべきものであって、他の特別の目的を持ったところの予算というものからそれが充当されていくということでは、私は少し問題があるというふうに思います。
ですから、最後に、大臣も答弁をされましたけれども、特別会計から一般の行政費のほうに繰り入れをするということにつきましても、年じゅう議論をしておっては困るわけですから、一定の基準というものを設けて、そうしてともに納得をした上でその政策というものが実施に移されていくという、そういう基準というものをぜひ早急に確立をするように要望しておきたいと思うのです。
それから労働省の予算全体の中で特に気がつくことでありますけれども、本年度の労働省の予算総額というのは八百二十一億ですか、これを前年度の予算と対比をいたしてみますると、その伸び率というものは一二%ということになるようです。一般会計の予算の伸び率は、御存じのように一四%でございますから、その点からしますると、数字的にはその伸び率というものは労働省の予算は少ない、こういうことになります。私は、労働省の予算の伸び率というものが少ないということは、いまの政府の政策の中で労働行政というものが軽視されておるということになるのかどうかは別としまして、ややもしますと、やはり数字的にはそういう印象を受けやすいと思います。今日の日本の経済なりあるいは将来の産業の動向、こういうものから考えてみまして、先ほども大臣が主張されましたけれども、雇用の問題というようなものが非常に重要になっておる、こういう中で雇用問題を特に重点的に取り扱っていかなければならない、あるいはその他の災害の問題あるいは労働力の流動の問題、こういう問題等を取り扱っていくところの労働省の予算というものが、一般会計の予算の伸び率に比較して少ないということは、どうも納得しかねるのでありますけれども、これは内閣全体として労働行政に対する認識というものが薄いのではないかというふうに考えられてしょうがないのですが、この点に対する大臣の見解は、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/18
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019・大橋武夫
○大橋国務大臣 確かに今年度の一般会計の総額は、昨年の総額に比べまして一二%の増、したがって、政府の予算全体の伸び率一四%を下回っておることは事実でございます。しかしこの予算の内容をさらにこまかく点検いたしてみますと、労働省の政策的な経費といたしましては、前年比二四%増ということに相なっておるのでございまして、これは総経費として、その半分の一二%増ということにとどまっておりますのは、労働省の業務の性質上基準監督あるいは職業安定等の多額の人件費を含んでおりまして、したがって、人件費、事務費の率が他省より非常に多いものでございまして、この方面は、今年は例年に比べて相当増員をいたしてはおりますものの、何分大きな人件費の中でございますので、増加率が非常に低い、これをおしなべて一二%ということになった結果でございまして、一四%より下回っておることは、確かに残念だとは存じますが、しかし政策面におきましては、相当な伸びを示しておる、こうひそかに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/19
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020・吉村吉雄
○吉村委員 政策面が伸びておるというお話ですけれども、特に目新しいのは、労働市場センターの設立、こういうことで特にこれぞというものは、私の見る限りではないのでありますけれども、たとえば問題だと考えられますのは、この労働省予算の八百二十一億の中で、本省関係の予算として組まれているのが七百十五億くらいあるようですが、七百十五億の本省関係の予算の大部分を占めるものは、大体失業対策関係、こういうことになっておるようでありますけれども、非常に問題だと思いますのは、大臣も御存じのように、このごろ労働災害というものの発生が非常に多い、あるいは労働者の移動というものが季節的に非常に多い、こういったことから、仕事というものが第一線の安定所あるいは監督署、基準局、こういうところでは非常に仕事の量というものがふえているはずだ、このように考えられるのでありますけれども、題一線の現場で使われる金というものを調べてみましたところが、大体三十一億前後にしかすぎないという状態のようです。私はこの第一線の監督行政というものが、ほとんどこれは人件費だろうと思いますけれども、この程度の予算、この程度の人員というもので、一体頻発をするところの労働災害というものを防止するための監督というものが十分に行なわれるのであろうか、あるいはまた季節労務者等が非常に多くなっておって、それに対応するところの安定所業務というものをスムーズにやっていけるのかどうかということについて非常に疑問を感じておるのでありますけれども、この第一線の状態というものは一体どういうふうになっておるのか、ここらを明瞭にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/20
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021・和田勝美
○和田政府委員 御指摘をいただきました予算の問題でございますが、確かに労働省の予算の性格といたしまして、失業対策費が非常に大きなウエートを占めておりますことは御承知のとおりであります。しかしそれも全体予算における比率を見ますると、最近それ以外の経費が非常にふえてまいりました。三十五年度における失業対策費は、労働省の一般会計の中に占めますウエートが五二・八%でございましたものが、三十九年度でお願いをいたしております政府原案では四三・九%、金額それ自体はもちろん二百二十億が三百六十億というようにふえておりますが、予算全体に占めるウエートは、いま申し上げましたように九%程度落ちておるということで、それ以外の予算が相当私どもとしては順調に伸びておるものと考えております。
なお一般的な、事務費的なものについて申し上げてみますると、労働基準局関係では三十九年度予算でお願いしておりますのは、事務費関係だけで二億七千百三十六万九千円でございまして、三十八年度予算に比較をいたしますと二〇%の増でございます。それから職業安定局関係の事務費を見ますと、六億四千六百四十四万七千円でございまして、三十八年度に比較をいたしまして一億三千七百万円、二七%の増ということでございまして、事務費系統も二〇%、二七%というようにふえておるわけでございます。それ以外に人員につきましては、全部で七百五十人の増員でございますが、本省におきます労働市場センター、研修所等を除きますと、ほとんど基準局、安定所の第一線機関の増員でございまして、そういう点からいたしましても、もちろん万全とは言い得ませんが、漸次労働行政の一般的な経費も伸びつつあるのではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/21
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022・吉村吉雄
○吉村委員 そこでお尋ねをしたいのは、基準局のいわゆる現場の事業所の基準行政を監督する、そういう基準行政に携わっている第一線の監督官というのは一体全部でどのくらいあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/22
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023・村上茂利
○村上(茂)政府委員 基準局の定員を申し上げますと、三十九年度におきましては総計八千九百三十八人を予定いたしております。三十八年度が八千七百六十九名でございまして百六十九名ばかりふえておりますが、そのうちの監督官は約二千四百名でございます。これが適用事業場の監督に当たるわけでありますが、適用事業場の数といたしましては、三十九年度は百八十六万九千事業場を予定いたしております。この適用事業場に対しまして監督を徹底的に実施をするということにつきましては、率直に申しましていろいろ問題がございます。ただしかしながら、この適用事業場の大部分は、御承知のように中小企業でございますので、この中小企業に対する監督につきましては、御承知のように個別指導のほかに別に集団的に産地とかあるいは地域的に集団をなしております中小企業を対象にいたしまして、集団的指導を行なうといったような配慮もいたしまして、監督の徹底を期しておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/23
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024・吉村吉雄
○吉村委員 いまの答弁によりますと、監督官が約二千四百というのでありますけれども、この中には基準局長とかそういった管理的な立場に当たっておる人も含まれておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/24
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025・村上茂利
○村上(茂)政府委員 管理的な職にある者としては、地方の労働基準局長、それから監督課長といったような地位にあります者は監督官でございます。しかし、庶務課長とかそういった課長はもちろん監督官でないわけでございます。したがいまして地方局の局長、特定課長は監督官である、こういうことでありますけれども、大部分が第一線の労働基準監督署に配置されておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/25
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026・吉村吉雄
○吉村委員 この二千四百名という、先ほどの数字の中に、基準局長とか次長とか課長とかたくさんありますけれども、これらは入っておるのかというのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/26
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027・村上茂利
○村上(茂)政府委員 基準局の局長、次長は監督官でございます。それから監督署の署長、次長は監督官であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/27
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028・吉村吉雄
○吉村委員 そうしますと、この二千四百名の中には、職制上の、実際に現場に行って事業場を監督するあるいは指導する、そういう仕事をしない人も含まれておるということになるのでありますけれども、これらの数というものは一体どのくらいになって、結果的に言いますと、本来の意味での事業場に対する指導監督、こういう仕事に携わり得る人数というのはどのくらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/28
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029・村上茂利
○村上(茂)政府委員 地方の局あるいは本省も同様でございますが、それが第一線あるいは事業場の監督を全然しないということではないのでありまして、たとえば具体的な例を申し上げますと、地方の基準局におります安全衛生課の監督官といったような人は、みずから検定検査に出かけるとか監督もいたすわけであります。したがいまして地方の局におる者は第一線を監督しない、監督署だけが回るのだ、こういうかっこうにはなっておりませんで、適用事業場を回るという点につきましては、監督官はほとんど適用事業場を回っておる、かように申して差しつかえないと思うのであります。したがいまして、この二千四百のうちどの程度までは事業場を回って、どの程度回らないのか、パーセンテージをいまここで数字的に申し上げるのは困難だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/29
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030・吉村吉雄
○吉村委員 もちろん現地第一線の監督官ですから、どういう職制にあろうとも、その監督の業務に携わっているということは、そういう意味ではいえると思うのですよ。しかし現実に監督署のほうに行ってみればおわかりだろうと思いますけれども、それらの方々が一々事業場に行って、それで指導監督、そういう仕事をやっているという例は少ないはずであって、それらの方々はほとんど職員の監督指導、こういうものに当たっているはずです。ですから、私の知る限りでは、この予算書でもわかりまするように、全国では基準局長というのは四十六名もおる。次長は十二名、課長は百九十一名、それから課長の補佐が百四十七名、係長が三百二十五名、こういうぐあいになっておりますから、実際には第一線で事業場の指導監督に当たっている、実務に携わっている監督官というのは、非常に局限された数字ではないかというふうに思います。私はなぜそういうことを申し上げるのかといいますると、非常に災害やその他が発生をする、にもかかわらず、その原因というものを突きとめるということになりますと、災害が起こってからはいろいろのことをやるのでありますが、本来災害を起こさないための監督なり指導というものについては、第一線の人数が不足しておって、とうていやり切れない、こういう状態であることを二、三の例から私は知ってまいったわけでありますけれども、いまの基準局長の答弁にもありますように、監督をしなければならない事業場の数というものは百八十六万にものぼっておる。こういうことでございますから、これらの膨大な事業場というものを、管理職にある人を含めて二千四百名の方々によって指導監督をしていこうということそれ自体が、どだい無理ではないかというように思うのです。こういう点を改善をしていかない限り、災害の発生あるいは障害というものの撲滅というものはとうてい期し得ないのではないかというふうに考えますから申し上げたわけでございます。このような人数に対して非常に私は少な過ぎる、こう思うのでありますけれども、この点は局長としてはこの人数で責任を持ってそれらの第一線の仕事というものをやっていけるという自信をお持ちになっておるのかどうか、明瞭にしていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/30
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031・村上茂利
○村上(茂)政府委員 ただいま御指摘の点、率直に申しまして、適用事業場の増加、あるいは各般にわたる監督指導事項の増大に伴いまして、さらに監督官の増員を希望しておりますことは、これは当然のことでございます。私どもも心から適正な監督官の定員増を期待しておるのでございますが、来年度の予算編成時におきましては、はなはだ微力ではございましたが、災害関係で約五十名の定員増をしたのでございます。実は労働基準監督関係の定員増はきわめて困難でございまして、過去十数年の間に一般会計で増員が最大に認められたのが十五人でございまして、過去においても定員増が非常に困難でございました。来年度初めて約五十人の定員増加が認められたような次第でございます。これも最近の災害多発状況その他等から見まして、定員の必要ありというような認識のもとに増員を認められたと信じておりますが、今後におきましても、必要な定員の増加をお願いいたしますと同時に、職員の研修訓練による質の向上、あるいは機動力の強化といったようなほかの手段方法も考えまして、監督の適正化をはかりたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/31
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032・吉村吉雄
○吉村委員 次に安定所の業務のことでございます。先ほども少し申し上げましたけれども、このごろ非常に季節労務者というものが多くなっておる。ある資料によりますると、これが一年の間に非常に波がありまして、たとえば十二月から一月になりますと、よそへ出る人が非常に多くなる。こういうようなことで、安定所の業務というものが非常に波があって、現地においてはなかなかこの仕事を消化し切れない、こういうような問題があると聞いておるのでありますけれども、この傾向は、確かに季節労務者というものがどんどんふえているという状態の中では当然起こってくるというふうに考えます。ですから、現地のそういう状態の変動に対して、一体安定所業務というものをどのようにやっているのか。これをやりこなすために、職員の配置というものはどういうふうになっておるのか。こういう点について、安定局長のほうの見解を承っておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/32
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033・有馬元治
○有馬政府委員 安定所の業務の運営につきましては、先生御指摘のとおり第一線の業務は非常に繁忙をきわめておるわけでございますが、第一線の職員は一万四千五百三十六人で、安定所の業務を運営しておるのでございます。これに対しまして、来年度の予算におきましては就職促進、それから業務量の増、こういう事態に対処いたしまして、五百五十人の定員増を認められて予算を編成してまいっております。また、ただいま御指摘がありましたような季節労務者の増でございますが、これも御指摘のように三十四年当時は二十一万五千程度の季節失業者があったわけでございますが、今年度におきましてはそれが四十二万、四十万をこすような季節失業者の失業保険受給者が出てきておるわけでございます。しかも、これらの季節失業者の受給者が、十二月から三月という時期に東北、北海道地区の安定所に殺到するというふううな事態がございまして、第一線の窓口は非常に立て込んでおりまするが、これに対処いたしまして、このピーク時の業務を円満に解決いたしまするために、正規の職員のほかにことしは約一万人の賃金職員を用意したわけでございますが、これは延べの数字でございますが、来年度の予算におきましては二万人分を予定いたしまして、これらの季節失業者の失業保険金の支払いに対処して万全を期してまいりたいと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/33
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034・吉村吉雄
○吉村委員 いまの職安業務の問題につきましては、延べ一万人ということで処理をしてきた、しかしそれでもどうにもならないので、二万人の要求をしておるということですけれども、この程度の職員の配置ということでは現地の状態はとうていやっていけないような状態ではないかと思うのです。私が調査をしました資料によりましても、たとえばこの失業保険の認定業務のごときは、月によってはほとんど判こを押してやるだけの、そういう実態にあるということも聞いております。したがって私がここで申し上げたいのは、先ほどの基準局長の答弁、あるいは安定局長の答弁、こういうものから見まして、労働省の第一線にあって活動しておる、基準行政なり、あるいは職業安定行政なりに携わっている人たちの苦労は並みたいていのものではない、そうなってきたところの原因は、日本の雇用状態が非常に大きくゆれ動いている、こういうところに原因があると言わなければならぬと思うのです。労働省としましてはそのような情勢の変転に対応して万遺憾なきを期していかなければならないと考えるのであります。ところが、どうも予算の状態からだけ見まするならば、第一線に対する費用というもの、あるいはその職員の配置というものはきわめて不十分である。先ほどの基準局長の答弁から見ましただけでも、適正な要員を今後も要求をしていきたい、こういうことでございますけれども、これは非常にたくさんの職員を配置しなければ労働行政、いわゆる安全というものも期し得られないでありましょうし、あるいは季節労務者が非常に多くなっていくという状態に対応もできないのではないか、こういうふうに考えられますけれども、大臣としてはこのような状態に対して、一体職員の増員、こういうものについてもっと本腰を入れて、現地第一線の業務が円滑にできるように、そういう配慮なり何なりをしていかなければならぬと思うのですけれども、これについての大臣の考え方はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/34
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035・大橋武夫
○大橋国務大臣 職業安定機関の要員の不十分ということは、私どももそのように考えておりまして、あらゆる機会に増員をはかって、事務の円滑な運営を可能ならしめたい、かように存じて努力をいたしておるわけでございますが、なかなか微力でございまして、今日までたいした増員をすることもできずにおりますことを残念に思っておりますが、今後ともできるだけ各方面の認識をいただきまして、安定機関の充実につとめたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/35
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036・吉村吉雄
○吉村委員 いまの問題についてはさらに機会をあらためて質問をしていきたいと思います。
次の問題について質問をいたしたいのですけれども、いま日本の雇用の問題の中で大きなガンになっていると思われるのは、やはり潜在失業者の問題ではないかと思うのです。前回の本委員会におきまして、大原委員の質問に対して、安定局長のほうから潜在失業者のことについて答弁がありました。この答弁の中で、潜在失業者の数の把握については、労働省は労働省として調査に乗り出しておる、それから雇用審議会のほうでも調査を始めておる、こういう趣旨の答弁があったと記憶をするのでありますけれども、そのとおりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/36
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037・有馬元治
○有馬政府委員 労働省におきましては、来年度予算で調査費を組んでおりますので、来年度におきましては、潜在失業者の実態につきまして必要な調査をいたしたいと思います。また雇用審議会におきましても、三十四年五月当時の調査がございますが、これは非常に古いデータでございますので、雇用審議会においてもこの問題は新たな角度から検討がなされて、おそらく調査がなされるのではないか。そちらのほうは確定的なことではございませんが、私のほうからもそういった問題を持ち込んでおりますので、審議会で検討いたしました結果は調査をするというふうなことになるのではないかと思います。その場合に、わがほうの調査とどういうふうな調整をするか、その辺の相談になってくるかと思いますが、われわれとしては不完全雇用の解消ということが雇用政策の大きな目標でございますので、これを来年度は実態を把握した上で、ぜひ的確な施策を講じてまいりたい、かようなつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/37
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038・吉村吉雄
○吉村委員 潜在失業者の把握のしかたについては、たいへん問題があるわけですけれども、従来の労働省で進めておりましたところの潜在失業者に対する定義といいますか、概念といいますか、これは意識調査が主体になっておるようですけれども、これによって得られる潜在失業者の数というものは、労働省の方式でやれば一体現在どのくらいというふうに把握をされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/38
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039・有馬元治
○有馬政府委員 労働省ではいままで独自な調査はやっておらないので、総理府の統計局が、いま御指摘のありましたような意識面から見た定義によりまして、三十一、三十四、三十七年と過去三回にわたって調査をしております。その結果は御承知のような数字でございますが、三十一年は二百七十八万、三十七年は二百一万、こういう数字が出ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/39
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040・吉村吉雄
○吉村委員 それから雇用審議会で昭和三十四年に採用した、所得を基準にしたところの方式、こういうもので現在にこれを伸ばしていった場合には一体どのくらいの数になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/40
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041・有馬元治
○有馬政府委員 三十四年五月当時に、所得面から見た、審議会で調査をした数字は六百七十八万、こういう数字が出ております。これは調査時点が非常に古いのと、それからまた実際にこの時点で調査をしたのですが、実態をつかんだ時期というものは、それからさらにさかのぼりまして、三十二年ころの実態をつかんでおるわけでございます。三十二年と申しますと、御承知のような景気の不況時期を経過したときでございますので、これは今日の雇用、失業の情勢から言いますと、非常に大きな違いが出てきているのではないか、こういった雇用、失業情勢の推移を計算に入れて、所得面からの定義による潜在失業者の推定をしなければならぬわけでございますが、いかにも背景になりますところの雇用、失業情勢が非常に大きく変わってまいっておりますので、この定義をそのままに当てはめて今日の事態に即応した推定数をはじき出すことは非常に困難だと思います。これはもしそうした必要があってやってみるということになりましても、かつて出した六百七十八万という数字は大きく変わってくるのではないか、かように推測されます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/41
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042・吉村吉雄
○吉村委員 確かに経済的な条件なりその他の雇用の状態というものは大きく変わっておりますから、むずかしいことには違いないと思うのです。しかしあの方式は所得を基準にしておるわけですから、当然労働省としましては、別荘の、この各階層の所得がどのくらいになっておるか、人数なり何なりというものは把握されているはずだと思うのです。ですから、物価の変動なり何なりというものをかけて、そうして換算していけば、あの方式でやった場合には、現在この数字が推定をされるというものがあってしかるべきだと思うのですが、それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/42
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043・有馬元治
○有馬政府委員 あの当時所得基準で推定をいたしましたのですが、たとえば十八才以上は七千円、十八才未満は五千と、ここで線を切って推定をしておりまするが、今日の時点におきまして、この一定水準の所得というのをどのように換算して推算をすればいいのか、この辺にもいろいろ問題がございますので、雇用審議会が推算をいたしました数字は、当時におきましても政府としては、これを公式に使っていなかったと思います。今日の時点において、所得水準をどこに基準を置いて潜在失業者の定義をするか、これは学者間においても非常に議論のあるところであります。また国際的な専門家会議においても、昨年ILOで議論されましたけれども、結局結論が出なかった、こういうしろものでございますので、この面からの調査というものはなかなか困難ではないか、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/43
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044・吉村吉雄
○吉村委員 まあ困難といえばそれはあるだろうと思うのです、潜在失業者というもの自体がたいへんむずかしい問題ですから。しかし潜在失業者というものの把握なくしては、完全雇用ということが実現しないことも明瞭です。ですから、私の知る限りでは潜在失業者の解消策については、国会においても再三にわたって、取り上げられて承ります。
そこで、第四十三回の国会だったと思いますけれども、この委員会で私は大臣に次のようなことを聞いております。これは明瞭に大臣が答えておりますから、その点は間違いないはずですけれども、雇用審議会でいうところの潜在失業者の把握の仕方と労働省の調査の仕方というものについてたいへん数字が異なっておる。私はその際も申し上げましたけれども、もしこの調査の仕方の相違によって、五万、十万の差ならばそう問題にすることはないかもしれない。しかし片方は八百万といい、片方は二百万前後だというのでは、これはたいへんな開きになってまいります。こういうような状態のままでは完全雇用への政策というものは、とうてい立てようがないではないか、こういうことを申し上げましたところが、大臣もその際明瞭に答弁をされましたのは、雇用審議会も政府の重要な雇用問題に対する機関でありまするので、労働省と雇用審議会との潜在失業者の把握の仕方について、潜在失業者とは一体何かという概念の統一について、できるだけ統一見解をまとめたい、こういうことを答弁されたはずです。同時にまた、その統一見解というものを出すために専門的な機関というものを設置する、こういう趣旨の答弁もされたはずでありますけれども、いまの安定局長の答弁によりますと、そういう問題について何ら触れられていない。しかも雇用審議会の方式で推定をすればどれくらいかということについても、これまた故意かどうかわかりませんけれども、困難だという理由のもとに何らの答えも出されていない。
そこで私は、この前の本委員会におけるところの大臣の答弁というものは一体どういうふうになったのか、その場限りの考え方で答弁をしたのなら、これはたいへん問題だと思うのですけれども、一体両者の見解を統一するための専門的な機関というものについては発足させたのかどうか、この点について、大臣からひとつその後の経緯を明瞭にしてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/44
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045・大橋武夫
○大橋国務大臣 局長からその後の経過を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/45
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046・有馬元治
○有馬政府委員 いまの問題につきましては、総理府の雇用審議会にごく最近に諮問をいたしまして、そこで御討議の結果、この問題に対する考え方が出てくると思いますので、それに従ってわれわれも調査をいたしたいと思っております。ただ従前は諮問がおくれておったわけですが、これは雇用審議会の人選手続その他で非常に時間がかかって、おくれおくれになっておりましたが、この前の審議会で総理大臣からの諮問発せられました。これに関連をいたしまして、私どももぜひ雇用審議会で潜在失業者の考え方について結論を出していただきたい。それによってわれわれの調査も的確なものにしてまいる予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/46
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047・吉村吉雄
○吉村委員 私の申し上げているのは、これは何回も言いたくないのですが、労働大臣が変わっていないので申し上げますけれども、潜在失業者の問題というのはずいぶん長いこと国会では議論をされておるのですよ。しかも、潜在失業者の数の把握については十分関係機関と協力しあってやっていきますという答弁は何十回となく事務当局で行なわれておるのです。私がこの前申し上げたのは、同じようなことを何回かやりとりをしてもしようがないのではないか、だから完全雇用というのが目標なんだから、そのために非常に大きな障害になっておるところの潜在失業者の数の把握に労働省と雇用審議会がまるきっり違う方法によって、しかもその出た数字というものは非常に開きのあるような数字を出しておいたのでは、完全雇用への政策というものは樹立のしようがないのではないか、こういうことを申し上げましたところが、それはそのとおりなので、統一見解を打ち出すようにするための専門機関を設置する、こういうことを大臣は明瞭に答弁をなさっておるはずなんです。ところが、いま聞いてみますると、それらについての事務的な作業というものは進んでない。安定局長が変わったからというだけでは、私は済まない問題だと思うのです。そういうことを放任しておくということでは、非常に怠慢のそしりをまぬがれないと思うのです。いまの答弁によりますと、雇用審議会のほうにそのことを諮問をするということですけれども、もし雇用審議会の答申というものが、雇用審議会独自の考え方によって出された答申だとするならば、一体労働省としてはどうするのですか。雇用審議会では潜在失業者の問題については、三十四年にこれこれのものであるということを、所得を基準にして答申をしておるはずなんです。だからそういう点については労働省と見解を異にしておるから、私は問題にしてきた。ところがいまだにそれがなされていない。こういうことでは完全雇用を実現するのだということを口にしながらも、何らそれに対するところの熱意というものがない、こう言われてもやむを得ないと思うのです。大臣、この前の答弁との関連でこの点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/47
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048・大橋武夫
○大橋国務大臣 前会お答え申し上げましたにもかかわりませず、まだ具体的な回答が出せない状況であるとはまことに申しわけない次第であります。ただこの問題は、もともと雇用審議会におきまして特に見解を明らかにしておられるような実情もございますので、労働省といたしましても、その後雇用の情勢、労働事情等も変わってきておりますから、現段階において雇用審議会が潜在失業者についてどういう考え方をなすっておられるか、あらためて御検討いただいて、その御検討に際しましては、もちろん労働省の事務当局といたしましても審議会の御審議にできるだけ御協力申し上げて、そして労働省の考え方を含めてより高い立場で、雇用審議会で統一見解をつくっていただくということが、従来からの行きがかり等から見決して最も適当であろう、こういう判断のもとに二月の四日にこの問題について諮問を発したような次第でございまして、できるだけすみやかに結論を出してもらいますように私どもも極力お願いいたしまして、一日もすみやかに具体的なお答えを政府として統一見解として申し上げることのできるようにいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/48
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049・吉村吉雄
○吉村委員 大臣が退席されましたので非常に残念ですけれでも、これは大臣の前の答弁との関連もありますから、機会を改めてこの点は私は質問を続行していきたいと思います。
非常に問題だと思うのは、労働省の各局長がときどきかわるわけですけれども、かわるのはしようがないとしましても、一定の政策というもの、あるいはやらなければならないというものについては、ちゃんと引き継ぎをしてきちっとやってもらわなければ困ると思うのです。いまの有馬局長になってから、あらためてまた潜在失業者の問題について雇用審議会に諮問をしました、しかもいまの答弁では二月四日とか言いましたね。二月四日ということになりますと、この国会が始まってからですが、また国会でうるさくなるからというふうに考えてこれはやったのかどうかわかりませんけれども、そう思われてもしようがないと思うのです。一年過ぎておるのですから。しかもさかのぼれば、潜在失業者の問題を委員会で議論をしているのはたいへんな回数です。そういうことについてきちっとした結論というものを出すまでは、労働省としては真剣に取り組んでいただかなければならぬと思うのです。私は、そういう何回もの議論というものを避ける意味で、雇用審議会と労働省の見解を統一をしてもらいたい、政府としての見解を明瞭にしてもらいたい、その明瞭になったものを目がげてどうするかという政策の相違は、与党野党に差があってもいいと思うのです。しかし、対象となるべき数字については、あるいは四角なんだ、まるなんだということについては明瞭にすることがまず当然先決問題だと思います。ですから、それが行政官僚の手によって怠慢のために放任をされているということは、これに非常に重要な問題だと思いますから、私はいまの答弁ではどうしても納得できない。雇用審議会のほうに諮問をするといいましても、その諮問のしかたによって、異なってくるとは思いますけれども、雇用審議会としては潜在失業者をどう考えますか、現在の潜在失業の状況はどうでございましょうかという諮問したとすれば、その結論と皆さま方の判断というものが異なった場合には、また同じような問題を繰り返すのですよ。これではいけないから、労働省と雇用審議会との見解の統一をするための機関を設置してもらいたい、こういうことについて、そうしますという約束をしておる、こういうことですから、そこは少し角度を変えて、そうして完全雇用を実現をしていくために、潜在失業者の問題をどういうふうに処置していくかということについて、政府としての責任ある方針を打ち出すように努力をしていただかなければ困ると思うのです。同じような問題ですけれども、実は完全雇用ということは所得倍増計画の中でも一明瞭にうたわれておりますし、福祉国家を実現していこうとする者にとっては当然の政策目標になります。この完全雇用をどうして実現をしていくかということについては、たとえば雇用審議会のほうからはどういう答申がなされておるかといいますと、一つの例は、完全雇用の実現のためにいろいろの調査、統計、こういうものを専門的に検討するための機関を政府の中に設置をすべきであるという答申が出されたこともあるのです、ところがこれすらもまだ実現をされていない、こういう状態です。加えて今度のような状態です。これでは完全雇用というものを一体やる気になっているのかどうか、故意に潜在失業者の問題に触れようとしないのではないかと勘ぐられてもしようがないと思うのです。したがってこの点については強く要求をしておきたいと思うのですけれども、ここで議論をされて結論が出たことについては、行政官庁としては直ちに実施に移していく、こういうことにしていただくように強く要望しておきたいと思うのです。それから、その次に少し質問を申し上げたいのは、現在の雇用問題の中で非常に大きな問題になりつつありますのは、言うまでもなく技能労働者の問題だと思います。そこで、技能労働者の不足数というものは、労働省で把握している数字では、現在では、一体どのくらいになっておるのか、一番新しい数字を明確にしてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/49
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050・松永正男
○松永(正)政府委員 ただいまの吉村先生の御質問の技能労働者の不足数でございますが、これは毎年労働省におきまして、二月に事業所につきまして一回調査をいたしております。その調査結果を申し上げますと、三十五年の二月の調査におきましては、技能労働者の不足が八十一万一千三百五十四人、三十六年が百十六万三千六百四十二人、三十七年が百二十五万六千八百四十二人、三十八年が百十万八千二十六人という数字になっております。この調査は、事業所の数におきまして七千七百九十八事業所について調査をいたしたのでございますが、見込みといたしましては、今後六ヵ月間にどの程度の技能労働者が不足するかということについての各事業所の訪問調査の結果でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/50
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051・吉村吉雄
○吉村委員 そうしますと、三十九年度二月現在のはまだ把握されていないわけですけれども、労働省の見込みとしては、三十八年二月から見て、現在の状況は一体どういうふうになっているかという推定はできますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/51
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052・松永正男
○松永(正)政府委員 現在調査中でございますので、その調査結果の集計が出てまいりませんと、正確な数字はわかりませんけれども、多少のでこぼこはございましても、不足傾向につきましては、大体同じような傾向が出てくるのではないかというふうに推量いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/52
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053・吉村吉雄
○吉村委員 そうしますと、三十九年二月の調査の推定は昨年の二月と大体似たようなものというふうに、いまの答弁からしますと、理解をされます。
この技能労働者の不足というものを、労働者としては、主として職業訓練、転職訓練等によって解消しよう、こういう対策を立てておるようでありますけれども、そうしますと、今日までも職業訓練というものは実施をされてきた。この職業訓練の実施によって、大体どのくらいの人たちが転職をしたり、あるいはこの技能労働者不足を解消するための政策に、職訓というものがどのくらい貢献をしておるのか。もっと具体的に言いますならば、どのくらいの数が訓練所を終了した数になっておるのか。もしわかるならばひとつ年次的に知らせてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/53
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054・松永正男
○松永(正)政府委員 労働省におきまして、技能労働者の需要に対しまして、これを養成いたします長期的な計画を、昭和三十五年につくっております。これは所得倍増計画とも関連をいたします技能労働者の長期的な養成計画でございますが、この内容といたしましては、公共職業訓練におきましてどの程度の技能労働者を養成するか、事業内訓練におきましてどの程度の技能労働者を養成するかというふうな二つの部門に分かれておりまして、この計画に基づきまして、公共職業訓練につきましては一応事業を進めておるわけでございます。年度別に申し上げますと、公共職業訓練におきましては、三十五年におきまして、五万七千人の技能労働者を養成する。それから、少し飛ばしまして三十八年度におきましては九万三千人、三十九年度が十万四千人、四十年度十一万四千人、四十五年度十五万二千人というような長期計画を立ててございます。これに対応いたします実績は、年度ごとに多少でごぼこがございまして、たとえば三十六年度、七年度等におきましては、計画数に比べまして実績が下回っております。三十八年度におきまして、特に中高年層を中心にいたします転職訓練の必要が非常に増大をいたしましたので、一般訓練所、総合訓練所等の公共訓練施設の大幅な拡充をいたしました。その結果、三十八年、三十九年度におきましては、たとえば、三十九年度の計画数が十万四千人でございますが、これに対しまして、三十九年度の現在政府部内で決定をいたした予算におきましては、十二万一千七十五人の養成ができるというような計画になっております。これはもちろん転職訓練を含めてでございますが、そうなっておりますので、ほぼ長期計画の線に見合うようなところにまで実績が伸びてきておるという現状でございます。
これに対しまして、事業内訓練におきましては、これは直接労働省がやるわけではございませんで、各事業におきましてそれぞれ計画を立てて事業内訓練をやるわけでございますが、これに対しまして、労働省からは財政的な援助あるいは技能的な援助あるいは公共訓練所の施設を貸与するというような施設面の援助、さらにまた三十八年度からは訓練施設に対します融資の方途を新しく創設をいたしまして、これを三十九年度で拡充をいたす。このような面からいたしまして援助をし助成をいたしまして、事業内訓練を伸ばしたいという計画をいたしておるのでございますが、事業内訓練につきしては、計画線に対しまして実績としては相当下回るような現状になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/54
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055・吉村吉雄
○吉村委員 安定局長、この技能労働者が非常に不足をしておる。ところが、他の一面の雇用問題として考えられるのは、中高年齢者が非常に就職が困難である。こういうことです。これは技能労働者の不足というものは、必ずしも中高年齢者と直接の関係を持つものではないのですけれども、雇用問題として政策的にとらえるとするならば、やはり中高年齢者というものを、技能労働者不足を穴埋めする方向に転職の訓練をしていくという、そういう方向が必然的にとられざるを得ない、また現在とられつつある、こういう状態のようです。そこで、職業訓練というその対策が、中高年齢者の就職に対してどういう貢献をしているかということについては、やはり現在までの職業訓練を終了した者の年齢構成を見てみる必要があると思うのです。私は、これは詳細な数字は調べてはございません。しかし職業訓練所を現地に見てまいりますると、年齢の若い人たちが非常に多い、こういうふうなことを知っておりますので、その点から考えてまいりますと、中高年齢者の転職、就職を増大する、こういうような政策に対して、現在の職業訓練方式というものが果たしている役割りというものは非常に少ないのではないかというふうに考えられるのですけれども、安定局長はこの点どうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/55
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056・有馬元治
○有馬政府委員 中高年齢者の職業訓練につきましては、実は昨年の法改正以降、本格的に取り上げてまいってきておるのでございますが、今年度この三月までのところは、大体中高年訓練のための施設の拡充ということに重点が置かれて、まだ中高年訓練を本格的に開始するというようなところまでは実績としてはいっておりませんが、来年度からは設備の拡充と相まちまして、本格的な中高年の職業訓練を訓練局において実施してもらう。これには御承知のように大体三十五歳から四十歳前後の——四十の手習いといいますか、非常にむずかしい年齢層でございますので、訓練としても非常にいままでの若年訓練とは違った御苦労が多いことと思います。しかし昨年の職安法の改正によりまして、技能者の不足あるいは労働力の不足に対処しまして、中高年に職業訓練をすることによってその就職を容易にしていく基本的な積極的な雇用政策を打ち出しておりますので、私どもとしては来年度の予算におきましても約四万人程度の中高年齢者を対象に訓練を実施してもらうという計画にしております。いま申しました四万というのは訓練所で行なう訓練でございますが、そのほかに職場適応訓練というような、事業主に預けまして訓練を行なう方式も考えておりますので、それらを合わせますと七万八千という相当大きな計画をもちまして中高年の職業訓練を本格的に実施する、こういう予定にしております。これは訓練上技術的にも非常にむずかしい問題が多いと思いますが、ぜひ各方面の御協力によりましてこの中高年の訓練を完ぺきにして就職の確保をはかってまいりたい、かように考えております。したがいまして年齢構成その他の実績資料が今日までのところございません。石炭につきまして若干の実績がございますが、それによりますと、就職率は八五・四%、訓練終了をいたしました者の就職が非常にいいわけでございます。したがってこの炭鉱方式、炭鉱の実績を一般にも拡大をしてまいりまして、今後の中高年就職の万全を期したい、かように思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/56
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057・吉村吉雄
○吉村委員 訓練を終了した者の就職率がいいということはわかりますけれども、ただこの中で中高年齢者が占めておる割合というのは非常に少ないだろうと思います。それはいまの局長の答弁によりますと、本年度あたりから本格的にということでございますが、中高年齢者の問題が問題になったのは、いまに始まったことではない。たいへんその点は私はおくれておるというふうに言わざるを得ないと思います。しかも技能労務者の不足数というものは、若干の減少を見たとはいうものの、なお百十万にも上っておる。そうして若年労働者というものはどういう企業にでも引っぱりだこの状態になっておる。したがってこの対象になるのは当然中高年齢者というふうになってこざるを得ないと思いますので、この点はよほど思い切ったところの職制施設というものをつくって、そしてそこが終わったならば雇用が安定をする。そういう一貫した総合的な政策がなければ、これは失敗に帰するのじゃないかというふうに思います。そこで私はこの際お聞きをしておきたいのは、日本の雇用問題の将来を考える場合に、所得倍増計画によって示されておりますのは、農業労働力というものを第二次産業のほうに吸収をする、そしてその数は、昭和四十五年度を目標にして二百四十三万人の農業労働力を二次産業に吸収をしなければならないということになっておるようです。こうなってまいりますと、中高年齢者対策といいましても、その中には現在のように大企業から資本のもうけ主義のためにはみ出してしまったところの不幸な方々がおると同時に、農業労働者の中での中高年齢者がおる、こういう方々に対するところの転職というものを積極的にやっていかなければ、いまの池田内閣が中心目標としておるところの所得倍増政策のもとでの雇用対策というものは実現をしないことになるだろうと思います。そこで職業訓練所に農業労働者が希望して入ってくるという場合に、その生活の保障といったものについては一体どういう積極的な対策がとられているのか。これは他の企業からはみ出したところの就職活動者と違った対策がとられておるのかどうか。この点は一体どういうふうになっておるのかひとつ明瞭にしていただくと同時に、いま私が申し上げましたところの農業労働力の吸収ということについて当然そうしなければならない計画になっておるわけですから、これらについての労働省としての対策はどういうふうになっておるのか、お聞きしておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/57
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058・有馬元治
○有馬政府委員 御指摘のとおり、所得倍増計画におきましては、農業から二次、三次産業へ労働力が移動する、こういうことが当然予想されて、現実にも昨年の実績によりますと七十一万何がしの労働力人口が農業から二次、三次産業に転出、流出しております。その大部分は若年労働力でございまするが、中高年齢層の離農者も相当おるわけでございます。したがいまして私どもの考え方といたしましては、企業から失業する中高年者と同じ立場において農業から工業その他の二次、三次産業へ入ってくる中高年者に対しましても、同じ措置によって就職の促進をはかってまいりたい。すなわち就職活動におきましても、指導手当を支給しながら安定所の窓口において積極的な就職指導をいたしますし、また先ほどの訓練所の入所の場合におきましても、同じ条件において訓練手当を支給しながら訓練を施していく、もちろん訓練所に入所する場合もあるいは終了して就職する場合も、その前後を通じて安定所が一貫してお世話をする、こういう就職促進措置をとっておるわけでございまして、その点は、企業からはみ出たというか、離職した中何年者と全く同じ積極的な促進対策を講じておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/58
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059・吉村吉雄
○吉村委員 念のために聞いておきますけれども、そうしますると農業労働者の場合には、農業経営者として一定の所得があるという方々についても、企業からはみ出したところの中高年齢者と同じように、その所得にかかわりなしに、たとえば訓練手当その他の手当の支給というものがある、こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/59
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060・有馬元治
○有馬政府委員 農業の経営者でありましても、農業をやめて転職をするという場合には同じような扱いをいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/60
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061・吉村吉雄
○吉村委員 農業労働力の問題については、所得倍増計画がそういうことを期待をしておる。私どもはそれに必ずしも賛成という立場ではないけれども、ただ政府のそういう政策になっておりますから、それを推進をする立場の労働省としての見解を聞いておくわけです。たとえばいまも局長からお話がありましたけれども、確かに農業労働力というものは二次、三次のほうにどんどんと流入している。しかし農家戸数というものは減っていかない、こういうことがたいへん問題である。しかも若年労働者がその大部分を占めておるということも一つの問題としていま議論されておるわけです。私はこの職業訓練の問題につきましては、どうしても技能労働者の数というものが全雇用労働者の数の中で少なくとも五〇%以上、そういう数字を占めなければ先進諸国のような工業国にはなっていかない、こういうふうに国際的な数字を見ても比較できますので、技能労働者の養成というものが今日の日本にとっては非常に重要な問題だろうと思うのです。そこで、これをやっていくための職業訓練というものを現在強化しつつあるのですけれども、この程度のことで一体そういう政策目標に到達できるのであろうかという不安というものを感ぜざるを得ないのです。いまの答弁によりましても、大体来年度の訓練養成の計画人員というものは七万八千人くらいだというお話です。そのほか事業内訓練というものもある。しかし事業内訓練は、これはそう多くを期待するわけにはいかないのが実情だという先ほどの答弁もありました。こういうふうになってまいりますと、現在すでに百十万からの技能労働者が不足しておる。しかも将来においては日本が先進国並みの工業国たらんとするには、技能労働者というものをもっともっと養成していかなければならないということは言うまでもないと思います。こういう状態から判断をいたしますと、職業訓練については相当思い切った施策をとらない限り、現在のような状態ではびほう策にとどまってしまうのではないか、こういうふうに考えられます。しかも聞くところによりますと、施設は相当できたのだけれども現在収容されておるところの、希望してここに入ってくる人たちは非常に少ない、こういうことも聞いております。これは何か大きな欠陥があるといわなければならぬと思うのです。施設は増大をしてどんどんやっている。ところがそこに入所をしてくる希望者が非常に少ない、こういうことになっているとするならば、これは非常に重要なことになってくると思うのですが、現在の状態というものはその点心配がないのかどうか。施設があるけれども入所希望者というものは少ない。しかも入所希望者の大部分は若年労働者である、こういう実情にあるのではないかと思いますが、実態は一体どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/61
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062・松永正男
○松永(正)政府委員 訓練所の入所希望につきましては、全体的には入所希望が非常に多くて入る人が入り切れないということが一般的に言えるわけでございます。それは、たとえば若年労働力につきまして、中学を卒業して就職をしたい、その前に訓練所に入りたいという者の数からいいますと、入所希望のほうが約二倍近くなっている。それからいま吉村先生が御指摘になりましたのは、特に転職訓練のうちの中高年層の分ではなかろうかと思います。中高年層の対策につきましては、御承知のように安定法改正によりまして失業対策を改正するという角度からできるだけ訓練をしまして就職ができるような方向にいたしたいということで、三十八年度から訓練の施設を大幅に拡充いたしたわけでございます。この制度が動き出しましたのが昨年の十月からでございますから、その関係で施設のほうは整備をして待っておりませんと、希望者があって施設がないということになってはぐあいが悪いので、これは急速に整備をいたしたわけでございます。安定所の窓口におきまして十月から就職指導をやりつつ、それぞれ訓練とか、講習とか、あるいは直ちに就職するとか振り分けをしつつあるわけでございますが、まだ制度発足以来日がたっておりません関係で、全体計画と比べますと訓練所入所計画よりはずっと下回っているという状況でございます。したがいましてこれは制度がだんだん進んでまいりますと、この施設に対する入所の状況というものも改善されてくる。そこで実際問題といたしましては転職訓練に重点を置いております関係で、一般の若年労働者で入所したいという希望者にがまんをしてもらって、転職訓練のために施設を現在はあけておるという状態でございます。この辺につきましては、若年労働者の訓練と、それから中高年齢の訓練と、実情によりましてウエートに応じた適切な割り振りをしなければならぬと思うのでございますが、現在中高年齢対策の制度が発足して日が間もないという状態で、施設のほうがやや遊んでいるというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/62
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063・吉村吉雄
○吉村委員 転職訓練、特に先ほど来私が主張しておりますのは、中高年の対策の問題ですから、訓練所といいましても、そこを重点として話をしてきたつもりです。いまのお話によりましても、転職訓練関係については施設が遊んでおるという状態だ、これはまだ制度が発足してから期間が過ぎていないのでというお話ですけれども、私が心配しますのは、いままでの職業訓練の中でも、相当中高年齢者も入ってよい状態になっておった。ところがこれに対して希望者が非常に少なかった。これは一体どこに原因があるのかといいますと、ここを修了しても、若年労働者の雇用は安定するけれども、中高年齢者についてはその就職割合というものも非常に少ない。したがってそうなってまいりますと、それを伝え聞いておる人たちはそういうところに入ろうという気持ちにならないのは当然だと思うのです。私はこれはこの制度なり施設ができてからまだ間もないのでこうなっておるのだという問題でなくして、修了して以降の雇用というものが安定をしない、あるいはまた支給されるところの賃金というものが、家族全体が生活し得るところの額に達しない、こういう点が非常に重要な問題になっているのではないかと思うのです。そういう点を解決していかなければ、施設を幾らつくっても持ちぐされになる、そういうおそれなしとしないと思います。ややもすると、官庁の仕事というのは、安定局では訓練なら訓練のことをずっとやる、こういうことで訓練が終わって、就職の活動というものについて、あるいはその後の安定した職場というものについて一貫したところの方針がとられていない、そういうきらいがあるのではないかと思うのです。私はこの技能労働者の不足の問題、これを解消する一環としての職訓の制度、こういうものについてぜひ注意してもらいたいと思います。番重要なことは、終わってからの雇用の安定と、その生活が安定する、そういう職場というものを発見して、安心して生活でき得るような職場を見つけてやる、そういうことについて一貫して労働省の行政というものが責任を持ち得る体制をぜひ確立してもらわなければならぬと思うのです。そうでないと先ほど申し上げましたように、この職訓の制度あるいはその対策というものは、皆さんが考えたような結果にならない、こういうふうに思いますので、この点は、職業訓練所の施設を十分にもっともっと整備拡充すると同時に、そこを修了する方々についての安定職場発見のために努力をしていただくようお願いしておきたいと思うのです。
そのほか、実は大臣がいなくなってしまったので残念なんですけれども、現在の雇用問題の中でやや重大な問題になりつつあるだろうと思われるところの出かせぎ労働者の問題、こういうものについて労働省の対策なり雇用政策上の見地からの出かせぎ労働者についての対策を承っておきたいと思ったのですけれども、大臣もおりませんので、あと機会をあらためてこの問題についてはやっていきたい、こう思います。きょうぜひ有馬局長に強く要望しておきたいのは、潜在失業者の問題についてはもっと真剣に取り組んでもらいたいということであります。それなくしては雇用全般の問題は解決しない、こういうことだけはわかっているはずですから、それを事務的に進めて、この作業だけはあなたが責任を持ってひとつやってもらわなければ困ると思うのです。そのことを最後に強く要望しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/63
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064・有馬元治
○有馬政府委員 吉村先生からいろいろ御指摘がありましたので、簡単に結論的に申し上げます。
一番最初に福祉施設の問題がございましたが、これは大臣からも御答弁がありましたように、石炭の離職者用の住宅、あるいはやがて発生する駐留軍の大量解雇に伴う住宅、こういったことが来年度には予見されますので、一万戸という相当思い切った住宅対策を福祉施設の中で講じたわけでございますので、この辺の事情をよく御了解いただきまして、ぜひ失業保険の福祉施設の点は御了解いただきたいと思うわけであります。
第二点の潜在失業の問題は、これはいままで労働省としては本格的な調査をしていなかったわけでございますが、ことしの予算でようやく一千万円ちょっとの調査費を最後に認めていただきまして、ぜひこの問題には本格的に取っ組んでまいりたい、こういうことで来年度予算に計上していただいたわけでございます。私どもとしてはこの問題を回避するつもりは全然ございません。そこで来年度の予算に計上すると同時に、雇用審議会に諮問をいたしまして、その御意見を尊重しながら実際の実施計画を並行的に進めてまいりたい、したがって雇用審議会の最終結論が出なければそれまで調査ができないというしろものではなくて、大体の御見解を聞きながら調査計画は並行的に進めて、時期的にあまりおくれないように実態の把握をしてまいりたいと思います。
また、中高年の訓練と就職対策の問題ですが、これは私も訓練を担当しておったことがございますし、中高年の場合には特に入所から就職までという一貫した就職対策を積極的に講じていくという基本的な態度で訓練局と提携しながら進めておりますので、その点も御了解いただきたいと思います。また中高年の再就職賃金についても、生活の安定が確保できるように、賃金の条件等の指導についても安定所の窓口を通じて積極的にやっておりますので、再就職賃金が不当に安く買いたたかれるというようなことのないように、これは窓口を十分指導しております。実績におきましても最近は相当再就職賃金が改善されてきておりますし、これはなお一そうこの方向で努力してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/64
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065・田口長治郎
○田口委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十二日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。
午後零時四十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X00719640211/65
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