1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年三月二十四日(火曜日)
午前十一時二十八分開議
出席委員
委員長 田口長治郎君
理事 小沢 辰男君 理事 亀山 孝一君
理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君
理事 大原 亨君 理事 河野 正君
理事 小林 進君
伊東 正義君 浦野 幸男君
熊谷 義雄君 小宮山重四郎君
坂村 吉正君 竹内 黎一君
地崎宇三郎君 中野 四郎君
西岡 武夫君 西村 英一君
橋本龍太郎君 藤本 孝雄君
松山千惠子君 粟山 秀君
渡邊 良夫君 亘 四郎君
伊藤よし子君 滝井 義高君
長谷川 保君 八木 一男君
八木 昇君 山田 耻目君
吉村 吉雄君 本島百合子君
吉川 兼光君 谷口善太郎君
出席国務大臣
労 働 大 臣 大橋 武夫君
出席政府委員
労働事務官
(労政局長) 三治 重信君
労働基準監督官
(労働基準局
長) 村上 茂利君
委員外の出席者
専 門 員 安中 忠雄君
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三月十九日
重度精神薄弱児扶養手当法案(内閣提出第一一
二号)
国有林労働者の雇用の安定に関する法律案(藤
田藤太郎君外三名提出、参法第一〇号)(予)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案
(内閣提出第八九号)
労働関係の基本施策に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/0
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001・田口長治郎
○田口委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。吉村吉雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/1
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002・吉村吉雄
○吉村委員 中小企業退職金共済法につきましては、これが制定される当時、中小企業経営者はもとよりでありますけれども、零細企業で働いておる労働者等には相当期待感を持って迎えられたわけでございます。それ以来五年近くになり、相当日時もたっておるのですけれども、この適用の状況というものは、どうも必ずしも当初期待したほどの普及をしていないかのごとく考えられます。そこで、現在のこの法律の適用の状況というものがどうなっているのかということをつまびらかにしておく必要があろうかと思いまするので、まずお尋ねをしておきたいのは、現在の法律のもとで二百人以下、この中小企業のもとでそれぞれの規模別に適用されるべき企業数は一体どのくらいで、それから被共済者となるべき労働者の数は一体どのくらいで、また、この法律が実際にその中でどういうふうに適用になっているかを労働省の発行しておる資料、すなわち一人から四人、五人から九人というぐあいに規模別のものがありますから、それに基づいていま申し上げた適用されるべき企業の数、それからそこに働いておる被共済者の資格を持った労働者の数、同時にこれに対する適用の割合、これはどういうふうになっているのか、当局のほうから明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/2
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003・三治重信
○三治政府委員 現在の規模別の企業者の数につきましては、事業所統計調査というものがございまして、必ずしもこれは企業の数とは一致しません。たとえば中小企業でも二つ工場を持っておる場合には二つ規模別に出てくるのでございますけれども、その点までは詳細はわかりませんが、一応事業所統計調査によりますと、現行法のもとで、は事業所の数が百五十二万、労働者の数が約一千万人というふうに推定されます。現在規模別の契約の締結状態につきましては、一人から四人の場合におきましては、共済契約、いわゆる事業主が一万九千四百四十人これが全体の二九・七%を占めております。それから共済者の数が四万九千八十九人で全体の数で五・八%、五人から九人の規模で、事業主の数が一万六千五百八十九人、これの百分比が二五・三%、労働者の数が十万三千七百七十一人、百分比で一二・三%、十人から十九人のところで事業主が一万五千百九十五人、百分比で二三・〇%、労働者数が十八万七千二百四人、二二・三%、二十人から三十人のところで事業主が六千九百七十四人、百分比で一〇・六%、労働者の数で十五万一千百五十人、一八%、三十一人から五十人で軒業主が四千四百四十人、六・八%、労働者数が十五万三千二百二十七人、一八・三%、五十一人から百人のところで事業主が二千六百二十一人、四%、労働者数が十五万二千九百二十四人、一八・二%、百一人から二百人のところで事業主が四百二十人、〇・六%、労働者数が四万三千二百五十五・一%でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/3
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004・吉村吉雄
○吉村委員 そういたしますと、この適用の状態というのは、非常にかんばしくないというふうに考えられるけれども、これはどういうところに原因があってこういう状態になっておるのか、労働省として検討されたと思うのです。さらにその検討をされた結果、この普及のために具体的にどういう対策を立てて実施をしておるのか、その点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/4
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005・三治重信
○三治政府委員 全体の数からいきますと、必ずしも十分でないというふうに考えておりますが、第一点はいわゆる強制加入ではなくして、自由加入制度をとった。しかも事業団が東京の本部に一つありまして、出先機関がない、それからこれが行政的な措置として行なわれていない、もちろん出先の行政機関を通じて援助はしておりますけれども、正式に労働省そのもののプロパーの行政の対象として出先機関を使うように法の体系ができていないというところが非常に大きな点ではないかと思います。それで何と申しましても、まだ旧知宣伝が十分でないという点が考えられます。
それから第二点といたしまして、これだけの長期の積み立て制度でありますのが、一般の市中の金融機関に退職金の積み立てなり、そういうことで相当積み立てておきますと、それの見返りに還元融資が受けられるわけでありますが、事業団のほうは全部取りっぱなしであるということで、事業主が従業員のために積み立てるのですけれども、その金が事業なり従業員のために、資金的に見返りの融資が全然得られないという点があるのではないかと思うのです。したがいまして今度この点につきまして、われわれのほうも民間機関と同じように還元融資の道を考えたほうが、事業主に資金の有効利用という点で、民間の金融機関と同列になるわけでございますので、その点を今度の改正で入れていただくようにしたいと思います。
それからなお今後は、中小企業の零細部面につきましては、職業安定機関のほうで、零細企業についての労務不足対策として、いろいろ集団的に事業主に求人充足対策を行なっていく予定でございますので、それとも関連して、集団的にこういう退職金に加入していただくような奨励方策をとっていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/5
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006・吉村吉雄
○吉村委員 そこで、労働省として直接にこれを管理しているというものでないということなんですが、この中小企業退職金共済の事業月報を見てみますと、地域的に適用状況がたいへんアンバランスになっているというふうに考えられるのです。これは具体的な県をあげるまでもないと思いますけれども、このアンバラの状態が相当ひど過ぎるのじゃないかというふうに考えられるのです。これはどういうところに原因があって、このようになっていると判断されていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/6
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007・三治重信
○三治政府委員 これのアンバラの第一の原因は、この事業団が行なっている退職金共済制度の周知徹底のアンバランスだというふうに考えます。それからやはり労務管理について、中小企業者のうちで非常に関心を持つ事業主が音頭をとっているところがその付近で一つできると、そこから影響するというところで、その県については非常にいい中小企業の労務管理の集団があると、そこを見習って隣もまねるということで、その県が普及がよくなる。そこで初めそういうふうな指導的なリーダーの人がいないところではそのままになっている。これは要するに一つの周知徹底についての足がかりが、この事業団の本部が東京にあるだけのために、そういうことがいえるのではないかと思います。
それからもう一つは、何と申しましても零細企業の求人充足の程度、これについて非常に関心を持って、従業員の待遇改善について何か措置を講じたいということで役所側と連絡をとっている中小企業の多いところと、そうでないところの差ではないかというふうに考えております。いずれにいたしましても、このアンバランスの点につきましては、今後とももう少し中心となるような人たちについて周知徹底をはかっていくような方策がとられる必要があるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/7
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008・吉村吉雄
○吉村委員 次にお伺いしておきたいのは、この法律のもとでは、加入してから一年未満の場合には、退職しても全然退職金は支給されない。それから表を見てまいりますと、二年ぐらいまでの分については、積み立て金よりも少ない額しか退職金としては支給されない、こういうふうになっておるようです。そこで主として中小、特に零細な企業で働いておる労働者というのは、短期間に離職あるいはまた再就職という企業間の移動を行なう人たちが非常に多いはずだと思います。そうなってまいりますと、掛け金を積みっぱなしにして、この法律の恩恵といいますか、そういう適用を受けられないような人たちが非常に多いのではないかと想定をされるのですけれども、労働省としては、二年未満でやめて、転々として歩くような労働者の数はどのくらいになっているか、調べて把握をされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/8
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009・三治重信
○三治政府委員 短期の移動につきましては、われわれのほうとして新規学卒の中学卒業者についての調べしかないわけでございますが、これにつきましては、多いときで、百人に対して三十五人ぐらい一年未満で移動するという結果が出ております。いずれにいたしましても、この法律の趣旨は、中小企業の福祉対策として、労働者が当該企業にできるだけ安定をしてつとめるようにするために退職金制度をつくったわけであります。大企業が年功序列型で、しかも終身雇用だ、そこには非常に将来の見込みもあり、雇用も安定しているということで、定着がいいわけであります。中小企業は退職金もないし、そういういわゆる年功序列型賃金までにいかないということになりますと、転々としてかわる、したがってそこに労働不足がきた場合には、労働者問題として中小企業は立ち行かないということから、この中小企業退職金の共済制度の一つの目的として、雇用の安定、いわゆる従業員の長期勤務を奨励するということから退職金表が考えられております。これが当初の案では非常に極端で、五年以上の者について非常に有利に、五年未満の者は非常に不利に、五年未満で早くやめた者の余りを五年以上積み立てた者に、ぱっとたくさん退職金が出るように、最小限五年くらいまでは当該企業で安定するようにということでございましたのですが、その目的が十分達せられなくて、先年も改正のときに、それでは中小企業の実態に合わないということで先ほど先生がおっしゃったように、一年未満まで退職金を払うように、また金額も若干増加したわけでございます。それでもなお先生のような御意見があるのは、その反面からいえば、短期の移動が非常に激しいのだということがいえると思うのです。これがまたそういう短期の移動を好むような事業主、またいつでも労働者が得られるから賃金を上げないうちに、一年なり二年使って労働者がかわって行くのは自由だ、そうすれば自分のところはいつでも雇い入れる、こういうような企業の態度のときにはそれでもいいのですが、現在のところはとめておいても出て行くというのが実際でございますので、その退職金の問題とは特別いまの労働移動は関係ないというふうに私たちは判定しております。労働力不足になると労働移動が激しくなる、労働力過剰になると労働移動はあまりありません。これは退職金の金額と必ずしも関係はないというふうに考えておりますが、いずれにしてもその退職金につきましてはあまり短期の者に出すということ、また短期の者も長期の者も同じようにするという退職金額表のつくり方には反対です。これは大企業を見ましても、短期には少なく長期には厚いようにできております。これが企業の労働者の雇用の安定ということを考えれば、当然そういう政策が出てくるのはあたりまえのことだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/9
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010・吉村吉雄
○吉村委員 次に、この退職金制度といいますか、この法律が退職金制度の中で特徴的だと考えられますのは、他の退職金制度、大企業ないしは官公庁あたりの退職金制度というのは、ほとんど退職金計算の基礎というのは退職時の賃金を基礎にして計算をされておるわけです。ところがこの法律のもとでは掛け金を基礎にする、こういうことになっておりますから、この点が他の退職金制度とは根本的に違うところだと思うのです。このようになってまいりますと、本来退職金というようなものは——制度自体については私はいろいろな意見は持っております。持っておりますけれども、政府がこういうものを必要として認めて法制化している、そういう前提に立って話をするのですけれども、そうなってまいりますと、この退職金というものは相当長期の展望に立って、そして将来の生活安定というものをはかっていこうという期待を持っているはずだと思うのです。いまも局長からの話がありましたように、同一企業の中に安心してとどまっていけるようにしたいという、そういう趣旨でもあったということからそのことは思考されると思うのです。ところがこの二十年後、三十年後ということを考えてみますと、掛け金によってやるということは、その人がその会社あるいは工場、企業をやめる場合に貨幣価値というものが相当変動をする、こういうことが当然にして心配になってくると思うのです。ここのところが他の退職金制度と根本的に異なる点であって、しかも退職金制度という観点からするならば、やはり労働者の気持ち、あるいは期待というものを満足させるということにならぬではないか、この法律が十分普及し得ないところの原因というものは、実はこの制度の持ついま申し上げたような欠陥に最も大きな原因があるのではないかと思えるのですけれども、この点は一体どのようにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/10
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011・三治重信
○三治政府委員 ごもっともの御質問と思います。しかしこの点につきましては、社会保険につきましては先生のおっしゃるとおり厚生年金におきましても、そういうふうな賃金の額によって高下があるわけであります。ただこれはわれわれのほうの考え方では一応事務の整理上こういうふうに金額を等級別に分けて各企業者の選択にまかしたということで、これを加入者についてはその従業員の賃金の何%から何%までというのも一つのきめ方だと思います。しかしそれにいたしますと、退職金表がまた非常にむずかしくなるということ、それからまたそういうことも機械化できていけばそちらのほうも事務的には私は不可能ではないと思います。ただ問題は、実際の動きを見ますと、そういう疑問に対して事業主はどういう解決策をとっているかと申しますと、当初は従業員が二十人おるところで大体二百円なら二百田を一律掛けまして、それが二年たつと賃金の上のほうの人には二百円増し、三年たつと一律またもう一級の上を上げていくというふうに当初は低い掛け金でやりまして、二年、三年たつと従業員の賃金の金額あるいは勤務年限によって逐次各人別に退職金の額を上げて、掛け金を増加さしていく。それも先生のおっしゃる賃金に対して別個の積み立て金制度になっておりますけれども、事業主はこの掛け金の変更は自由でございますので、現実には加入者が年がたつとともに従業員の掛け金を逐次上げつつあります。それによって解決されていくように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/11
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012・吉村吉雄
○吉村委員 運用の面では、いまの法律では二百円から千円までです。ですから勤続年数が長くなった者はだんだん掛け金額を大きくすることはできるしかけにはなっているようです。もっとも善良な企業主の場合にはそういうことをやっているところもないとは私も申し上げません。労働力確保というような観点からもそういうことは行なわれていると思います。ただ退職金というものは労働条件として団体交渉の対象事項として他の企業、あるいは官公の労使の中では取り扱われているわけですね。ところがこの法律のもとではその団体交渉を別に規制したりあるいはやってならぬというようなことは全然ありませんけれども、御承知のように現在の零細な企業におけるところの労使関係というものの中では、正当な意味での団体交渉というようなことは容易に行なわれてはいないと思うのです。したがってその掛け金の増額等についても主として企業主の一方的な意図のもとに行なわれてくる、こういうことになってきているのではないかと思うのですが、そのようにもしなってきているとするならば、これは労働条件に対するところの団体交渉権というものを一方的に企業主がきめていくということになるので、労働者の権利の上から見ますと非常に重要な問題になってくると思うのです。私は大体いまのようなこの掛け金の増額等については本人の意向を聞きながら増額をしているものだとは思うのですけれども、それはあくまでも本人の意向であって、団体としての労働組合の意向というようなものを聞くということにはなっていないわけです。ですからこの法律が、一面この労使関係というものを安定させるという役割りを果たしてはおりますけれども、同時に労働者の権利というものに対して制肘を加える役割りを他の一面で果たしつつあるのではないかというふうに考えられるのです。退職金は、先ほど申し上げましたように、一般に労働条件として団体交渉によってきめられる、こういう性格のものでありますから、そういう観点からすれば、この退職金の基礎になる掛け金の決定等についても、当然団体交渉によってきめるという形でなくてはならない、こういうふうに思うのですけれども、この労働者の権利の問題と、この法律がこれらの労働者の権利に対してややもすると、その権利を制肘するようなきらいがあるということについて、この点は大臣はどういうふうにお考えになっておるか、非常に重要な問題を内包しておると思うので、大臣の見解をひとつ伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/12
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013・三治重信
○三治政府委員 その前に、ひとつ事実を御説明しておきたいと思います。確かにこの退職金は労働条件の一つであるわけでございますので、団体交渉事項になることは当然でございます。それで、初めの場合に一部、これは国家の法律に基づいてやるのだから、こういうものは団体交渉事項にしなくて事業主がかってにやるのだというふうに宣伝された部面もありますが、今度の審議会におきましても、私、はっきり申し上げておきましたのですけれども、これは当然団体交渉事項である、現に最近におきましては団体交渉でこの退職金をきめて、その労働協約で掛け金の金額もきめて、中小企業の事業団に払い込むということまで協約で締結している事業が、組合があるところでは非常にふえております。この点は、したがってわれわれのほうも、だいぶ世論も直ってきておると思いますが、さらにそういう部面がある場合には、私たち労政事務所を通じて、団体交渉事項としてきめて、その上で事業団にこの協約に基づいて掛け金を払い込むというふうな慣習を普及していきたいというふうに考えております。また、そのほうが組合のある事業におきましては、当然労使もなお安定するというふうに考えております。
さらに、これはまあ珍妙な現象ですが、事業主がいままで掛け金をかけておった、そこへ組合ができて団体交渉で、その事業主が事業のためにかけている掛け金以上に労働協約できめて、その分については、事業主が自分で払うという責任の協約を結んでいる、これは若干、ちょっとまあ何と申しますか、法の運用からいえば、われわれのほうから見ればちょっと誤解があるのじゃないかと思うのです。そういうふうに事業主が一方的に法令に基づいてかけておって、今度協約で結んだのがそれ以上だったならば、事業主は当然こちらのほうに一緒にして掛け金を増額してやってもらえば一本でいくはずですが、二手に分かれて、二本立ての退職金になっている面もあります。こういうのは逐次解決していきたいと思っております。労働省としては、この退職金共済法に基づく事業団への掛け金というのは、やはり一つの制度であって、労働協約の締結を排除するものでは決してないわけで、むしろ奨励されるべきもので、協約に基づいてこちらの事業団のほうへ加入していただくというふうなのを奨励していきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/13
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014・吉村吉雄
○吉村委員 そういう労働省としての指導のあり方については、当然そうなくてはならない、こう思いますので、それはもっと積極的にやってほしいと思うのですが、私が心配をするのは、そういうことは行政指導の面として行なうということだけで事足れりとする問題ではないのです。やはり法律を制定する以上は、その法律が労働者の権利を伸張せしめていく、そういう姿でなくてはならないだろう。ところがこの法律全体の思想は、いま局長が言われたような事柄について特に触れている条項はない。あくまでもだれにどのくらいの掛け金をするかということは、企業主の判断によってできるという仕組みになっているのですよ。そのことは、本来労働者の権利に属するこの団体交渉事項というものに対して、この法律自体がその権利を制約する、制肘する役割りを果たしかねない、こういうふうに私は考えるので、そういう点については少し重要なものを含んでいるように思いますから、この点はひとつ大臣の見解を承っておきたい、このように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/14
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015・大橋武夫
○大橋国務大臣 先ほど来政府委員から申し上げましたるごとく、退職手当の額をいかにするかということ、すなわちこれは労働協約事項でございます。この法律の目的は、中小企業において労働条件の一つとして退職手当の制度を普及しようというのであることは間違いございません。しこうして、その退職手当として、中小企業において採用されるべき退職金の金額をいかにするかということは、これは労働協約において決定されるべきものなのでございます。しこうしてこの法律の目的は、退職手当制度として採用された金額の確実なる支払いを退職時において保障するための助成措置であると考えているわけでございます。したがって私は、中小企業において支払われる退職金は、この法律の規定しております金額以外には支払われるべきではないという考えではないのでございまして、これは退職金として支払われるべき金額の中の根幹的な部分がこれによって保障され、そのほかに団体協約できまった金額がさらにこれを超過している部分については、退職金として残余の金額が経営者から支払われる、こういうことが十分あり得るのではなかろうか、こういうふうに考えます。したがって各企業ごとに決定されます退職金について、それに合わせて事業団において一々の企業ごとに金額を決定する、またそれに応じて保険料を決定するということは、取り扱い上とうてい不可能なことでございますから、したがって事業団としては、標準的な金額ごとに標準的な掛け金をきめる、こういうことにいたしたものと思うのであります。したがってこれで足りない部分は、退職の際に当然事業主が追加支給するということもあり得るわけでございます。要するに退職手当の制度というものが設けられることは、日本の現在の労働関係から見て適切である。それが長期にわたる契約に相なりますから、その支払いを担保する方法として経営者に積み立てさせる、それがこの事業団の制度である、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/15
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016・吉村吉雄
○吉村委員 大臣のいまの答弁から見ますと、中小企業に働く労働者の退職金支払いというものを確実にさせるという目的を持っているというお話ですが、私はそれも一つの大きな目的を持っておるとは思います。しかしこの法律が提案されたその説明の中には、経営の安定、同町に零細な企業に働いておる労働者が大企業のもとで働く労働者に比較をしてすべての待遇の面でその条件が非常に劣悪である、したがって雇用は安定をしない、これらの不安定のものをなくしていくためにこの法律を制定するのだということが述べられておるわけです。ですから、広い意味でいいますと、大臣がいまお答えになったものも当然入ってくることは事実です。私が問題としてお尋ねをしておりますのは、本来、今日の日本の状態の中では、退職金というものは団体交渉の対象の事項になっておる。そしてきめられるべき退職金制度あるいはその金額というものが、この法律のもとでは企業主が一方的な判断に基づいて掛け金をきめることができるわけです。掛け金をきめるということは、退職金の金額をきめるということになるわけです。それは労働者が本来持っておるところの団交の権利というものをこの法案が否定する、制肘する役割を果たしているのではないか。たいへん象徴的に考えられるのは、この法案と同時に、現在問題になっておる最低賃金法案が同じ時期に提案をされているはずです。最低賃金法もこれまた企業主の一方的な判断によって賃金の額がきめられるということについてたいへん問題になって今日に及んでいることは大臣も御承知のとおりなんです。同じような観点から見て、この法案は確かに零細な企業に働く労働者の将来を安定させるという目的を持ってはいる、あるいはその目的を一応不十分ながらも果たしつつある。しかし同時に、本来労働者に権利として与えられているところの団体交渉権というものを、この法律があるために制約を受ける、現実にそうなっている。そういうふうに考えられますから、これはその労働者の権利との関係でどのように考えられるか。団体交渉によってできた協約をこの法律の適用を受けるように操作も運用もできるわけですから、それはできないことばないのです。ただおそらくこの法律の適用を受けているところには、他のこれを上回る退職金というものは、あったとしましてもこれは微々たるものだと思うのです。またその協約ができた以降にこの法律の適用を受けるという、そういう慣行をやっているというのも、これまた微々たるものではないか、こういうふうに思えるので、権利の問題としては非常に問題がある法律のように考えられます。もしそういう権利というものを否定をするものではないという考えが強いとするならば、この法案のどこかにでき得るならばやはり労使の団体交渉によって掛け金をきめるとか、こういう一項が盛られてしかるべきだというふうに私は思うのです。そういう項目というものは全然ない、そして企業主の判断によって掛け金がきめられるというところに非常に問題があると思いまするので、この点はいま一度そういうことに対する大臣の見解というものをお尋ねをしておきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/16
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017・大橋武夫
○大橋国務大臣 御承知のごとく、民法によりますると、雇用契約というものは当事者の一方が労務の提供を約し、一方がこれに対し賃金を支払うことを約することによって成立するわけでございます。したがって雇用の基本的体系は、労務の内容が契約され、そうしてこれに対する賃金が契約されればそれで契約が完全に成立いたしておると考えるべきだと思うのでございます。しかしながら近来の労使関係におきましては、労働組合が認められまして、そうして労働組合と経営者の間には常に団体交渉によって契約の内容がそのつど決定されていくという特徴を持っておるわけでございます。しかしながらこの団体契約というものは必ず雇用契約においてはなければならぬというものでもございませんので、団体契約というものは労使間の話し合いによって初めて成り立つ。基本的な問題は労務の提供と賃金の支払いが契約されるということでございます。したがって賃金以外には団体契約が成り立っておらない場合、あるいは事業主が自分の決定したる条件が雇用契約の内容として契約されている以外の場合におきましては、労働者は雇用契約上の権利はないわけでございます。したがって事業主が一方的に、団体契約に基づかず、また雇用契約において契約されざる場合において一方的に掛け金を支払いましても、それは直ちに労働者の権利が発生するものとは考えられないと思うのであります。かりに発生するものといたしましても、それは雇用契約上の問題ではなく、それが当事者の一方、すなわち事業主の一方的な行為として、ただ労働者が反射的に利益を受けるという関係だと思うのであります。しかし一般的な場合におきましては、大体事業臓が掛け金をする場合においては、それが直ちに雇用契約の一部となるというふうに認められる場合が多いでございましょう。したがって、この掛け金に対して直ちに労働者の権利が発生するというふうに法律的には一般論として考えていいと思うのでございます。厳密に法律の議論をすればただいま私が申し上げたようなことではないかと思うのであります。したがって雇用主が一方的に掛け金を積み立てた場合におきましては、労働者は雇用契約で初めからそれを予定した場合以外にはそれに拘束されるものではございません。また雇い主がきめた金額を雇用契約によって認めた場合におきましても、労働組合の団体交渉はそれに拘束されるものでございません。したがって団体交渉を通じあるいは労働者は自己の意思によりまして掛け命について要求を出すことは当然の権利として認められるわけなのでございまして、その場合にそれが認められれば、その団体交渉によってきめられた金額、あるいは要求に基づいて新たに契約された金額、それが法律上の退職金の金額になるわけでございます。したがって、それと事業団に契約されておる金額とがそごした場合におきましては、ことに事業団の契約した金額が不足した場合においては、当然法律上の権利として追給を要求することはできるわけでございます。これは法律上当然のことでございますので、あえて共済法の中にそのことを明らかにする必要はなかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/17
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018・吉村吉雄
○吉村委員 いまの議論を発展させていきますと、日本独特の制度でありますところの退職金制度というものがどういう性格を持つものかということになってくると思うのです。この議論は賃金あと払い説もありますし、あるいは社会保障の補完的なものだという説もありますし、いろいろありますから、いまここで触れようとは思いません。大臣も肯定をされておりますように、日本の今日の実情の中では、この退職金の問題については、一般に団体交渉の対象として扱われておる、こういう前提に立って私も議論をしてきたつもりなんです。基本契約上の問題としては、いま申し上げたように、退職金制度そのものの問題がありますからこれは別問題として、今日の日本の状態の中で、どこの官公庁あるいは大企業におけるところの労使関係を見てまいりましても、退職金の問題は団交事項として扱われてきておる、こういう前提に立って話を進めてきたわけです。私がここで特に最低賃金法との関連を申し上げたのは、最低賃金法も、賃金決定の場合に労働者の意見というものが直接反映をされる、そういうことがないということがいま問題になって政府のほうでも再検討をされつつある、こういう時期です。この退職金共済法の中にも、これを審議するところの審議会があります。この審議会の構成の中に、もし労働者の代表というものが入っておれば、私はよほどがまんができるのです。ところがこの審議会については公益代表だけの十五名、これによって構成をされる。これでこの法律の改正なりその他というものが審議をされるということになっておるわけです。そうなってまいりますと、いまの日本の零細企業における労使の関係、すなわち力関係から見て、労働者の意見というものが、この退職金の問題について巨桜交渉のような形をとって反映をされるということはほとんどないといってもいいくらいだと私は思うのです。まあ百人なり二百人なりのそういう企業になれば別ですよ。ところが零細なところに対してというのがねらいであるところのこの法律からしまするならば、五人以下みたいなところで労働組合をつくって、対等な立場に立って退職金はこれこれというようなことは、今日の状態ではとうてい想定をされないわけです。したがって、その企業主の一方的な判断によって掛け金というものがきめられ——掛け金がきめられるということは退職金がきまるということになる。それは団交権というものを結局において否定をすることになってしまう。そういう実態ですから、少なくともこの法律を改正をしたりあるいはその重要な審議に携わるところの審議会の構成の中には、当然労働者の代表が入ってしかるべきではないか、こういうふうに思いますけれども、現在のもとでは入っていないわけです。この点はどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/18
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019・三治重信
○三治政府委員 この退職金の審議会につきましては、法律は公益、学識経験者ということになっておりますが、これはこの法律の制度を運用する場合におきまして、前提として先ほど先生おっしゃったように、そういう零細企業には労働組合の組織が非常に少ないということから、必ずしも労働者代表、使用者代表といってみてもどうかということで学識経験者という表現にしてございますが、中身の実質はそれぞれ労働組合の各方面の代表を入れております。たとえば総評からは加藤さん、新産別から薄命さん、総同盟から藤原さんというふうに、労働四団体でつくっている福祉協議会の関係の方に入っていただいております。それからこの法律の条項では二十五条の第二項に「退職金共済契約を締結しようとする場合においては、従業員の意見を聞かなければならない。」というようになって、基準法上の就業規則をつくると同じように労働者の意見を聞いて契約をするというふうになっております。それから第三には、先ほど申し上げましたように、審議会でも先生の御意見のような意見が審議されたわけでありますが、労働省の意見といたしましては、労働協約をされてこれに加入される、組合のあるところは労働協約が結ばれる、これがすなわち第二項の意見を聞いたことになるわけであります。労働組合のあるところは意見を聞いてやるということで法を運用していきたいということで御了承をとっております。したがって事例といたしましても、労働協約を締結してこれに加入している場合もあるし、先ほど大臣が申されましたように掛け金にプラス・アルファした労働協約も締結されておるということは事実であります。ただそれが何%、どれくらいいっておるかということになりますと、現在の事業団の資料からは得られませんけれども、今度われわれがそういう審議会の意向で調べたところによりますと、各県相当に、団体交渉事項として、組合があるところは行なわれるようになっておるという報告を聞いておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/19
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020・吉村吉雄
○吉村委員 いま局長が答弁をされた第二十五条、これには「従業員の意見を聞かなければならない。」という項があります。私が問題にするのは、三治局長とか大橋労働大臣のように労働者を保護するという立場に立ってこの法の運営なり何なりをはかっていくということならばいいかもしれません。しかしこれはどうにでも解釈できる条項でしょう。従業員の意見を聞かなければならないということば、必ずしも労働組合の意見というものでもないし、労働者全体を代表する者の意見ということでもないようにこれはできていますから、そういう点では運営の問題として労働者の代表の意見を聞いているということは、今日の段階としてはそれで不十分ながらもいいかもしれませんけれども、やはり労働者というのは一人々々では当然その権利を守ることが困難だということで組合法がつくられ、団結権というものが認められているのですから、したがって労働者保護の立場に立つとするならば、ここももっと明確に労働組合の代表ということが入っていいのではないかと思うのです。あるいは施行規則にそういうことが書いてあるのかどうかわかりませんけれども、書いていないとするならば、いまの答弁のような運営をしているとすれば、それをもっと確実に、将来間違いのないようにしていくということが、法制定としては正しいあり方ではないか、こう考えるのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/20
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021・三治重信
○三治政府委員 そういう御恩児もあるかと思いますが、この二項は、を調べてみますと、この前の法案審議のときに修正されて、与野党の妥協でこういった条項が入っておりまして、そういうことで、この従業員の意見というのは、単に加入者ということではなくして、その従業員全部の代表というふうになっている、しかもこの場合におきましての解釈といたしましては、労働基準法の就業規則をつくる場合に従業員の意見を聞くという規定と同一のものであるというふうに了解しているわけでございます。
労働協約との関係につきましては、これはまたその労働協約の場合を一々各法律で書くというのは立法政策としてどうか。解釈上、労働組合法にあれば、これは自由に、労働組合ができたところは当然そういう権利を主張できるわけですから、それをわざわざ各事項別の別個の法律に一々書く必要はない。書けばなおはっきりするという意見もあるかもわかりませんが、立法政策としては、われわれのほうとしてはそういう解釈で十分できる問題であると思うわけであります。立法上各項目の中にそういうことがあること、またそういうことが望ましいという場合に、それを一々書かなければならない、そうしなければ権利が十分保障されないというものではなくて、解釈上当然出てくる問題ですから、立法政策としてもそこにわざわざ書く必要はないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/21
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022・吉村吉雄
○吉村委員 立法技術上の問題もあるでしょうけれども、私が心配するのは、現在の零細企業におけるところの労使関係、こういうものは本来の意味で労働者の権利というようなものが守られるような姿になっていないわけです。ですから、それを何とかしなければならないということでこういう法律もでき、その他の保護法律というものもできてくるということになってきていると思うのです。そういうような今日の実情から考えますならば、労働者の権利であるところの退職金の問題等についても、労働者が団結した姿の中でその意見が反映される、こういうように明瞭に、だれが見てもわかるようにしておかないと、この法律の意図する目的というものが労働者の側からなかなか理解されない。そうなってまいりますと、いまのように普及状況というものも必ずしも芳ばしい成績にならないという結果になるだろう。先ほども局長が答弁をされましたが、この法律が制定されてから相当の口数がたっておりますけれども、この法律があることすらわからない零細な企業に働いている労働者はおそらく数多いと思うのですよ。そういう点からしますならば、まず労働者の側にこの法律の内容というものを十分徹底する、同時にこの法律によって労働者の権利というものが十分保護されるような形になっていることが一目りょう然にわかるという姿のほうがいいのではないかと考えますので、私は申し上げておったのですが、それらの点については立法技術上の面もあるというのであるならば、もっと他の方法を通じてこの法律の意図というものが十分浸透するような努力をしてもらわなければならぬと思うのです。さらに再三申し上げますけれども、掛け金の決定のあり方については、それが労務政策に利用される危険が十分にある。これは私が指摘するまでもなくあると思うのです。二十五条はそういう不利益な扱いをしてはならないということをいっておりますけれども、不利益な扱いをされるかされないかということは、労使の力関係の中できまるものなんです。労使が五分の力を持っている中で初めてこういう法律が生きてくると思うのですよ。ところが、零細な企業になればなるほど労働者の発言権というものは非常に弱い、こういう中ですから、この不利益禁止の条項といえども、決してこの条項が意図するような形でだけ運用をされてはいないだろうと私は思うのですよ。結局Aのものに対しては高い掛け金を、Bのものに対しては安い掛け金を、こういうことが任意にできる危険性を持っている。これを排除していくためには労働者の権利、すなわち団交権を尊重していくという慣習を植えつけることが大切ではないかと思いますから、この点は労働省のほうの今後の指導の面で十分徹底を期してもらいたいと思う。
それから最後に、中小企業退職金共済審議会の答申が出ておるのですが、その答申はほとんど法案の中に具体化されているようなんですけれども、ただ一つ、給付に対する国の補助、これは現行のもとでは掛け金二百円分についてだけ国が補助するという仕組みになっているのですね。これを五百円までの部分について国庫補助を講じなさい、あるいは納付月数については、五年以上は一〇%、十年以上は一五%というようなことについて配慮をしてもらいたいという答申が出ておるのですが、これだけが今度の改正法案の中には全然盛られていないのです。これは一体どういう事情によるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/22
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023・三治重信
○三治政府委員 答申の中で補助金の引き上げがありますが、これは予算の折衝で、私たち最後まで頑強に折衝したわけでございます。ことに中小企業の対策を革新的に行なおうというふうな政府の基本的な態度があったものですから、われわれとしてはこの際補助金の引き上げをぜひ実現したいということで、事務当局としては最大限やったわけですが、ただ、何と申しますか、補助金等合理化審議会というのが大蔵省にありまして、それの答申によると、補助金でも奨励的な補助金については、補助金の合理化という見地から、大蔵省はできるだけ制限しなさい、零細補助金は廃止する、奨励的な補助——この奨励的な補助金にこれが該当するわけですが、これは本法を制定する場合においても最後まで補助金を退職金につけるということは、すなわち賃金の補助をするというふうな基本的な問題があるのではないかということから、非常に頑強に反対された経験があるわけでございます。あれこれ考えまして、どうしても理屈の上でいきますとやはりそういう奨励的な補助には間違いないということで、最後にこの補助金額の引き上げについてはおりざるを得なかった。ただ、それともまた別個にここに新しく建設業の退職金制度を分けて、これにつきましての補助金をやはり同じようにつけていくわけですが、その退職金制度に対する補助金としては、相当増加する制度を新しくつくるということで妥協せざるを得ないというふうで、はなはだ残念ではございますが、財政当局としては、こういう奨励補助は一定の目的を達成すれば、あるときに打ち切るべきである、それからまた、増額なんというのはとんでもないことだという気持ちを非常に強く持って、この点は、まあいまから考えれば、中小企業の対策を革新的にやるという政府の対策だから、ぜひやりたいというのがわれわれの気持ちだったのだけれども、その補助金の性格上、どうしても財政当局としてはそういう性格のものについて応ずるわけにはいかないということで、建設業の組合に対する補助を獲得して終結したというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/23
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024・吉村吉雄
○吉村委員 いまの局長の説明は、これから社会党にでも入党してどんどん言ってもらったほうがいいような意見みたいなんですけれども、私は、局長の答弁にもありましたけれども、補助的なものには違いないと思うのですよ。だけれども、いまの池田内閣としては、中小企業については、局長も言ったように、革新的な保護政策をとる、助長政策をとる、こう言っているわけですね。そういう面から考えてみても、いま中小企業が困っておるというのは、たとえば若年労働力を確保するのにも非常に困る。賃金だけが幾ら同じようになっても、そういう福利厚生施設というものについての魅力が非常に少ないということで、若年労働者がなかなか集まらないというようなこともあるわけでしょう。労働力確保の面から見ても、中小零細企業はたいへん困っておるわけですよ。こういうような困難というものをなくしていくためにも、政府が宣伝をしておる中小企業対策の面から見れば、これは当然この答申の趣旨に沿って措置をするということが妥当ではないかと思うのです。今度の改正案によりますと、いまは掛け金は最高千円でありますのが、今度二千円までできるわけですね。そのような場合に、最低額の二百円部分についての国庫補助しかしない、こういうことでは、これから十分にこの法律を普及し、適用を普及しようといっても、容易にそれは実現しないことになってくるのじゃないかと思うのですよ。局長は私と同じような意見の答弁をしていますが、これは池田内閣が中小企業について革新的な保護助成政策云々といっている中からすれば、このぐらいなことを認められないという話はないと思うのですけれども、大臣はどのようにこの問題について対処をしてきておるのか、あるいはこれからどうしようとするのか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/24
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025・大橋武夫
○大橋国務大臣 補助金の引き上げは、私はやはりこの制度の改善の上の一つの大きな項目であると考えておるのであります。しかし御承知のとおり、この制度の改善にもいろいろ今後なすべきことがたくさんございまして、それらのたくさんの項目のうちから今回一部を選んで御審議をいただいておるわけなのでございます。これに残っておりまする点もあるわけでございます。これらにつきましては、逐次順を追うて実現につとめたい、こう思っておるのでございます。明年度において補助金の増額を行なうことはできませんが、将来十分に努力をいたしたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/25
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026・吉村吉雄
○吉村委員 この事業団の会計の状況を見ますと、支払い金額というのはごくわずかで、積み立て金が多い。これはほとんど政府の運用資金の中に入っているわけですね。これから千円から二千円に増額されていく。しかもこの適用企業というものが二百人から三百人にふえていく、こういうことになってきますと、相当の金が積み立て金として入ってくるというふうに予測をされるわけです。そこでこの改正案の中にも、融資をもっと拡大するということになってきたと思うのですけれども、ここは融資をするにあたって積み立て当事者であるのは企業主ではありますけれども、本来その支給を受けるのは労働者ですから、この融資等の決定にあたって、資金の運用のあり方については、これは具体的にどういうふうにいままでやっておったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/26
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027・三治重信
○三治政府委員 この積み立て金を余裕金と法律上申し上げておりますが、余裕金につきましては、ほとんど商工組合中央金庫の債券、商工債を買っております。預金部資金には余裕金の一〇%を預ける、これは事業団の事務費を全額一般会計で持ってもらっておるわけでございますので、それだけ頭金部資金にひもづけされているということでございます。
それから、この還元融資は来年度は十億あって、大体私たちは全体の余裕金の一〇%程度を還元融資に回していきたい。この資金の運用につきましては、もちろん審議会に御報告しますとともに、これは通産省と共管になっておるのでございまして、通産省のほうは、中小企業対策のために非常にその債券を買えと言うし、われわれのほうは、今後そういうものを労働福祉対策に還元融資をしていきたいということで、今後通産省とも中小企業対策として十分連絡をとって、余裕金の運用に万遺憾なきを期したいということを考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/27
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028・吉村吉雄
○吉村委員 大体この法案の中での問題点と見られるようなことをお尋ねをしたわけですが、やはり将来にわたって、私はここで強調しておきたいのは、掛け金の額の決定のしかた、これについては企業主の一方的な意向によってそれがきめられていく、そういう危険性というものがどうしても残る。それはひいては企業主が労務管理のために悪用される危険性というものを持っている、こういう点がたいへん私は問題だと思うので、先ほども申し上げましたけれども、労働者の団体行動の結果としての掛け金の決定、そういうものを一〇〇%実施できるように、実現できるように十分な指導をしてもらいたいと思うのです。
それから将来の問題ですけれども、やはりこのように貨幣価値というものが変動をするという中においては他の退職金制度と同じように、その人がその企業を退職するときの賃金、こういうものが基礎になるという姿のほうが大企業と関連をして考えた場合には今日の状態ではいいのではないかと思うのです。これもいろいろな説があります。賃金に比例をして退職金が多い、少ないということについては問題のある点ではありますけれども、しかし現在の官公の退職金あるいは大企業における退職金の制度というのが、ほとんど退職時の賃金というものを基礎にしておるという、それに近づけていくということがこの制度にとっては必要な措置じゃないかと思うので、そういう方向に十分今後検討を加えられて、そうして労働者からも魅力のあるそういう制度にしていく必要があると思いますから、十分この点は検討をしてもらうようにお願いしたいと思います。
それから、最後に申し上げましたこの余裕金の運用、このことについてもいままでの状態では相当遊んでいると思われる金もありますから、いま局長が言われましたように、私どもの立場としては労働者の福祉厚生、そういう方面にもっと増額でき得るような、そういう運営のしかたをしてもらうようにしていただきたいと思うのです。
なお、これは一つの企業に就職をしておって、その企業がその制度に入っておる場合には適用されておりますけれども、やめて次の企業に行った場合は、他の企業がこれに加入をしていない場合には何にもならないことになります。したがって中小零細な企業で働く労働者の今日の状態というのはやはり移動が多いわけですから、移動して行っても、なおかつ相当年輩になって老後の生活を考えるような時期になった場合には、退職金というものを全期間にわたってもらえるという形にするためには、いまのような普及率ではとうてい目的を達成するわけにはいかないわけですから、この制度がある翻りにおいては対象企業は全部これに入る、強制はできないかもしれぬけれども、そういうような制度にほとんど入るような、相当きつい指導というものを行なってもいいのではないか、こういうふうに考えますので、以上三つのことを最後に要望をして、一応私の質問は終わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/28
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029・三治重信
○三治政府委員 御要望の三点につきましては、運用につきまして今後十分御趣旨を生かせるようにしていきたいと思っております。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/29
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030・田口長治郎
○田口委員長 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。八木昇君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/30
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031・八木昇
○八木(昇)委員 非常に時間がおそくなっておって申しわけないのですが、また大臣はいまテロ事件が発生してライシャワー大使の見舞いに行かれましたので、やむを得ませんので基準局長にお伺いをいたしたいと思います。ちょっと緊急を要しますのできょう質問をするわけでありますが、できるだけ要点について短時間質問をいたしたいと思っております。
基準法の時間外協定に関する問題であります。三十六条に関する問題であります。まずお伺いをいたしたいと思います点は、たとえば従来、時間外労働について従業員代表との間に協定が結ばれていた。その有効期間の途中においてその事業場に労働組合ができたというような場合にはそれまで結ばれておった時間外協定の有効期限というものは最初の協定どおりでよろしいかどうか。労働組合がそこでできたとするならば、あらためてその時点からその組合との間に協定をやり直さなければならないものであるかどうか、その点ちょっと伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/31
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032・村上茂利
○村上(茂)政府委員 労働基準法三十六条に定めております条件といたしましては、「労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては」云々ということばになっております。また労働組合がございましても過半数を代表するかいなかということが問題になるわけでございます。したがいまして労働組合ができましても、それが過半数を代表しているかいなかということによって判断すべきものと考えます。その際には過去の協定が、労働組合がない場合においても過半数を代表しておったかどうかということに問題のポイントがあるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/32
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033・八木昇
○八木(昇)委員 そればむろんそうですが、過去にありました協定の時代には、それが過半数を当然代表しておったものと考えられますが、しかしながらその後労働組合ができて、その労働組合は従業員の過半数以上を組織しているという場合のことを聞いているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/33
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034・村上茂利
○村上(茂)政府委員 労働組合が設立されました際に、意思表示の形としては黙示の意思表示と明示の、つまり協約にある限り締結する場合と二つあると思うのであります。したがいまして労働組合が結成されても黙認したような形であらためて三六協定を結ばないという場合があろうかと思います。
〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
その場合の問題と明らかに反対の意思表示をいたしましてあらためて労働協約を締結した、こういう場合と二通りあるかと思います。その場合に労働組合が結成されましたけれども、依然として従来の三十六条協定をそのまま黙認しておったというような事実が認められる場合には、その三六協定は有効であるというふうに解せざるを得ないと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/34
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035・八木昇
○八木(昇)委員 後者のほうの場合を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/35
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036・村上茂利
○村上(茂)政府委員 明らかに反対の意思を表示いたしまして、別個に労働協約を締結したという場合にはそれに従うべきが当然でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/36
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037・八木昇
○八木(昇)委員 それではさらにもう一点伺いたいのですが、すでに労働組合があった。これは一つの実際の事例があるわけでございますが、従業員が八十名である、その八十名の中には課長などの役付職員がいますから、労働組合を初めからつくることができない者も含んでおるわけです。その八十名の従業員のうち女子従業員が六十名おる。この六十名の女子従業員が全員で労働組合をつくっておったわけですね。すでに労働組合が存在していたにもかかわらず、会社の工場長がみずから従業員代表ということで時間外協定をかってに会社側の社長との間に結んで、そうして基準局にそういう申請をして承認を得ていたという事実があるわけなんです。すでにお聞き及びかと思いますが、もしあれであれば具体的にそこの会社をあげてもけっこうなんですが、そういう事実があるわけであります。当時は女子従業員の人たちは労働法規についての知識が乏しかったわけでございましょうから、そういう点について直ちに異議を申し立ててはおりませんが、しかしその後そういう事実がわかったわけです。そうしてその異議を一定期間を経過して後に申し立てておるわけなんです。そういう場合には一体その協定の効力というものはどうなるのか見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/37
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038・村上茂利
○村上(茂)政府委員 事実認定を要する点もあろうかと思いますので、その点十分実態把握しておりませんので、あるいは実態に合わないお答えになるかと思いますけれども、まず労働組合が結成されておったという場合に、課長が入るかいなかという問題は事実認定の問題でございまして、労働組合法第二条ただし書き第一号の解釈の問題でございます。組合が自主的に判断すべきであるということで、これは私の直接所管するところではございませんけれども。次に、工場長が労働者の過半数を代表する者として協定を行なった場合につきましては、工場長がいわゆる労働者と解せられないという立場にありますならば、その者の名義において協定書を締結して届け出をいたしましても、その協定は労働基準法三十六条に言うところの協定とは解しがたいというふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/38
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039・八木昇
○八木(昇)委員 その点は私もそのとおりだと思うわけでございまして、非常に明快でございますが、現に労働組合が存在しておる、全従業員のおおよそ八割の従業員を占めておる労働組合が現に存在しておるのに、工場長がそういう協定を結んでいるという場合、それはもう明らかにそれ自体が——工場長の資格が労働者代表と認められるかいなかとは別個に、よしかりにその工場長が労働者だという立場が認められるとしても、それとは別個にこれは無効じゃないかと私は思うのですが、その点はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/39
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040・村上茂利
○村上(茂)政府委員 これも事実認定の問題がございますけれども、御指摘のような場合には一般に無効と解せられる場合が多いと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/40
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041・八木昇
○八木(昇)委員 そうしますると、この協定は無効じゃないかということを組合の代表が申し出をしましたならば、その時点以降は当然この協定は無効だと解していいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/41
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042・村上茂利
○村上(茂)政府委員 無効かいなかというのは、それが判明した時点ではなくして、その協定が成立したと一応認められる時期において、当初からこれは法律的には不存在の状態にあるわけですから、無効なものを生かすということはできない。ただあとでそういう事実がわかったということになるであろうと思うのでございます。そこで無効になった場合に、しからば従来やっておった超過勤務労働とか、そういうのはどうなるかというのはまた別個の問題であろうと思います。なおさらに言及いたしますれば、そういう事実が申告によって所轄の監督署でわかったようでございますが、争議継続中でございましたので、争議中は労使間に介入するということを避けまして、ある程度労使関係が安定した時点におきまして至急措置をとる、こういう指導をいたしておりますので、争議解決後に協定の締結し直しをいたしたというふうに聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/42
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043・八木昇
○八木(昇)委員 その後段のほうは、ぼくが質問をしないうちに答弁のほうが先にあったわけですが、その前に伺いたいのですが、そういう協定書を作成して時間外労働をやらせてきたという工場長の行為、これは明らかに労働基準法違反であって、当然処罰の対象になると私は考えるのです。百十九条の適用になる、こう考えるのですが、その点どうでしょうか。端的にお伺いをしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/43
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044・村上茂利
○村上(茂)政府委員 百十九条に触れたという理由で告発するかいなかという点につきましては、その問題をめぐる各種の条件を調査いたしました上で処理することでございまするので、その点かりに犯罪構成要件に該当するとしても、主観的な要件においてどのような問題があるかとか、いろいろ総合的に判断せざるを得ないというふうに考えるわけでございます。したがいまして具体的なケースにつきまして私がお答えすることによって直ちに告発とか送検とかいったような措置がとられ得るということになりますれば、ちょっと問題が直接的でございますので、その点については答弁は遠慮さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/44
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045・八木昇
○八木(昇)委員 これは鳥取県の事件でございますけれども、この事件についてどうするかという問題については、もちろんいまここで事実を的確に把握した上でないと答えられないだろうと思うのです。しかし現実に労働組合が存在しておるのに、それを無視してかってに協定書なるものを工場長が作成して、そうして基準監督署に提出して偽りの協定書によって許可を得て、時間外労働をさせておった、こういうような事実がもしそうだとするなら、それは当然百十九条違反ではないか。百十九条適用がなさるべきではないかという質問でございますが、その点そういうふうに理解してお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/45
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046・村上茂利
○村上(茂)政府委員 御指摘の問題につきましては、工場長が独自の判断でみずから代表者名義を用いたかどうか、あるいは労働者の意見を一応代理したような形で届け出たものかどうかという点について、事実をよく確かめる必要があるだろうと思います。したがいまして百十九条の罰則適用の問題につきましては、そういう点も考慮して処置しなければならぬと思うのでございますが、ただ非常に悪意に出た処置でございますれば、これは不当なものでございますから、厳正に処置いたさなければならないということになろうかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/46
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047・八木昇
○八木(昇)委員 これは悪意に出たかどうかなどというような解釈をする余地はないじゃないですか。現に全従業員の過半数で組織する労働組合がある場合には、労働組合との間に協定をしなければならぬという基準法上の条文の明文がございましょう。それなのにその労働組合を無視して、そして従業員の意向を代表して工場長が協定を結ぶということは許されぬじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/47
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048・村上茂利
○村上(茂)政府委員 一般的に申しますと、不当と解される場合が多いと思うのでございます。ただ事実関係として、協定書とそれから届け出る場合の届け出人の名義がだれになるかという問題もありますので、その点の事実認定を十分しなければならぬということを私は申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/48
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049・八木昇
○八木(昇)委員 ぼくが聞いておるのはそうじゃないのでございます。労働組合との間に協定をやらないで、そしてかってにやることができるかと言っているわけです。雇い主側は、現に従業員の過半数を組織する労働組合があるのに、それとの間に協定を結ばないで、そして時間外労働について基準局に申請をすることができるかということを聞いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/49
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050・村上茂利
○村上(茂)政府委員 問題が二つあるわけでございます。一つは協定を結ぶこと自体が可能かどうかという問題でありますが、協定が結ばれてないのでありますから、結ばれていない協定を何ぴとといえども、その協定の締結当事者の代理人として届け出もすることができない。それから次の問題は、協定はできておるのだが、届け出をする場合の届け出人の名義がだれになっておるかということは、また別の問題でございます。したがいましてそういった点を事実につきまして判断しなければならないということを申し上げておるのでございます。一般論としては先ほど来お答え申し上げておりますとおり、不当と解される場合が多いであろう、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/50
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051・八木昇
○八木(昇)委員 いまの御答弁は、基準法第三十六条にありますように、「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし」云々、こう書いてあるわけですから、現に労働組合が存在している以上は、いずれにしてもその労働組合との間に協定をしなければ、時間外労働をさしてはならぬという一般的な解釈は、そのとおりだというふうに解釈していいのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/51
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052・村上茂利
○村上(茂)政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/52
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053・八木昇
○八木(昇)委員 これはまことに当然過ぎることを私は聞いておるつもりなんですが、中小企業では、なに女の子がちょこざいな、労働組合をつくって。こういうようなことで、いま私が申し上げたようなことは必ずしも厳格に行なわれていないという状況はたくさんあるのですよ。
それで、そういうような今日状況にあるわけなんですが、最近一カ年間あるいは昨年度一カ年間でもけっこうでございますが、基準法の罰則適用をして使用者を処罰した実例はどのくらいあるか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/53
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054・村上茂利
○村上(茂)政府委員 最近の状況を申し上げますと、まだ三十八年度分は出ておりませんが、三十七年におきましては、違法事件として処理した件数が四百九十四件、三十六年におきまして四百五十一件、三十五年におきましては四百九件、三十四年におきましては三百六十九件というように、逐年送検件数は増加いたしておるわけでございますが、この点につきましては、労働基準行政機関といたしましても、法に触れるものは厳正に処置するという方針で臨んでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/54
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055・八木昇
○八木(昇)委員 百十七条では「一年以上十年以下の懲役又は二千円以上三万円以下の罰金に処する。」、百十八条では「一年以下の懲役又は一万円以下の罰金」、百十九条では「六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金」、百二十条等は省略をいたしますが、ということになっておりますが、体刑処分になった例がございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/55
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056・村上茂利
○村上(茂)政府委員 そういう例はありますけれども、いま手持ちの資料といたしましてちょっとございませんので、何年は何件という数字をいま申し上げかねるのでございます。体刑に処せられた例はもちろんございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/56
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057・八木昇
○八木(昇)委員 それはしかしごく微々たるものじゃございませんか。大体のところはおわかりじゃないでしょうか。と申しますのは、罰金何千円というようなのでは、これは問題にしておらぬのですよ、そういう中小企業では。それで実際体刑にどのくらいなっておるか、おおよそのことはわかりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/57
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058・村上茂利
○村上(茂)政府委員 手元に件数を調べた資料がございませんので、お答えいたしかねるのでございますが、ただ労働基準監督機関といたしましては、そういう違法事件は送検いたしますが、送検いたしましたあとの起訴の問題、それからどのような罰則あるいは体刑ないしは罰金が科せられるかということは、これは裁判所の判断で行なうことでございますので、われわれとしてはその点については裁判所の判断にまかせるよりほかないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/58
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059・八木昇
○八木(昇)委員 時間の関係もありますから、最後の質問をいたしておきたいと思うのですが、先ほど御答弁がありましたように、鳥取県でいまのようなできごとがございまして、非常に実は紛糾をし、それから現地の新聞等でも、相当大々的に実は報ぜられておるわけでございます。
〔小沢(辰)委員長代理退席、亀山委員長代理着席〕
ところがこの問題について、現在あるところの時間外労働の協定は無効ではないか。それからまたそういうような無効の協定書を基準監督署へ持っていって、そうして許可を得て、時間外労働をさせていたということについては、これは明らかに基準法違反であって、処罰すべきではないかという点を組合側が強力に異議を申し立てたわけですね、基準監督署並びに基準局に対して。ところが、こういう回答を基準局はやっておるそうでございます。労働基準法第三十六条に基づくこの事件は、そのことが直ちに人命に影響するものでもなく、重大な災害が予測されるものでない。第二は、現在労使間で争議中であり、このような事態の中で介入することは労使の円満な争議解決に支障を来たすおそれがある。三番目に、したがって争議終了のような適当な時期を見て平常な状況下で調査をしたい。こういうことでもって事態の解決を直ちにはかろうとしなかった。そのときの質疑応答の中でこういう発言がある。極論すればたとい違法行為と考えられるものが明らかであっても、争議終了時までは放置することもやむを得ない、こういう趣旨の発言が監督署においても基準局においてもあったという話ですが、労働省としてもそういうふうにお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/59
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060・村上茂利
○村上(茂)政府委員 労働省といたしましては、労働基準監督官執務規範というものを監督官に示しておりまして、争議行為に介入するような監督はできるだけ避けるようにというふうに指示いたしております。したがいまして、現地の労働基準局なり監督署におきまして争議行為に介入するというおそれのある場合に、問題の処理をきわめて慎重な態度で扱うということは、これは本省の指導方針に従ったものと思うのであります。しかし、違法な場合であっても云々という点につきましては、その違法と申しましても生命、身体に直接危害が加わるような緊急性のあるものとそうでないものと、いろいろ種類があろうかと思うわけでございます。したがいまして、一がいにそういうふうな言い方をするのは必ずしも適当でないと思いますけれども、その点につきましては現地の実情をよく承知しておりませんので、さらに調査した上で判断をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/60
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061・八木昇
○八木(昇)委員 なお、いま申し上げましたような基準局の見解というものは、これは出先のその基準局独自の見解ではなくて、労働省の本省からのそういう通達といいますか、そういう見解に基づくものだ、こう言っておるそうです。この件について具体的に何らかの連絡がありましたでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/61
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062・村上茂利
○村上(茂)政府委員 お尋ねの件につきましては話を聞いておりません。おりませんが、一般論としては、先ほど申しましたように争議に介入するなということをいうておりますので、態度をとっておるだろうと思います。ただ違法云々の問題につきましては、先生のお話のような表現でございますと、これは非常に誤解を招くおそれがありますので、十分実情を調査したいと思います。ただ本件につきまして一応私どもが推測いたしますれば、三十六条に基づく協定が違法であるかいなかという問題と、それが違法でありかつ無効であっても、労働関係の実態は事実としては存在する、したがって、その事実関係として存在する労働関係の上において超過勤務が行なわれた場合に、三十七条に基づく割り増し賃金がどう払われるかといったような問題と、それからそういうような法違反の措置をした当事者に対しましてどのような罰則の適用があるかということ、つまり比婆上の問題と刑事上の問題が別個に扱われ得るわけであります。そういった問題がございますので、おそらく一日処置がおくれたからというて人が死ぬわけではないというような言い方をしたのではなかろうかと想像するわけでございます。しかし、先生御指摘のような一般的な包括的な表現を用いたとすれば必ずしも適当ではないというふうに思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/62
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063・八木昇
○八木(昇)委員 この最後の一点で終わりますが、たとえそれが争議中であろうとなかろうと、もう明瞭に労働基準法違反の疑いがある、大いに疑いがあるという場合に、実情を調査してもらいたいという要請が労働者側からあったという場合には、基準法の精神はあくまでも労働者保護ですから、そうして基本的には労働者は週に四十八時間をこえて働かしてはならぬ、それが最高限度だ、しかし特に例外として協定を結んだ場合にはこの時間外労働をさせることができるという基準法の精神からいっても、そういう実情調査の要請があったならば直ちにその要請に応じて実態を調査する、それで結論をいつ下すかは多少政治的な考慮の余地があると思うが、実情調査の要請があったならばこれに応じて直ちに調査をするということが正しい態度ではないか、それは決して争議介入とかなんとかという問題とはならない、私どもは当然そう考えるのですが、基準法というものの労働者保護の精神からいってこの点どうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/63
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064・村上茂利
○村上(茂)政府委員 問題が平穏なときには目をつぶっておって、争議になると基準法違反の問題を持ち出してそれを争議に利用するというような場合も間々あるわけでございます。したがいまして、争議中の問題については慎重にという方針は労働省でも示しておるわけでございます。そしてまた御指摘のような事例におきましては、三十六条に違反しているからというても、争議中でございますから三十六条に基づく協定が直ちに締結されることが期待し得ないという場合におきましては、協定ができない以上は依然として法違反の状態が継続する、しかも争議中でございますから、場合によっては三十二条の労働時間原則規定に違反をしないという場合もあり得るわけでございます。いずれにいたしましても、争議中はそういう特異な状態にありますので、争議中であっても依然として三十二条の労働時間原則規定に違反するような労働がなされていれば格別でございますが、しかし争議中であって三十二条にも違反していないという場合に、ことさらに三十六条に基づく協定を締結さすということが事実問題として非常に困難であるという立場から慎重な態度をとるということはあり得ることじゃなかろうかと思うわけでございます。したがいまして先生の御指摘の趣旨は十分私ども了解いたしておりますし、さようでなければならないというふうに思いますけれども、争議中の問題につきましてはやはりかなり慎重な態度を要するというふうに思うわけでございます。しかしはなはだしき実害があるということであれば、直ちに三十六条の問題としてでなくて、三十二条の問題に戻りましてその違反を是正さす、そうして三十六条による協定は別個に協定さすということであろう極かと思います。現に、先ほど聞いたのでございますが、昨日、三十六条協定は締結したそうでございます。それはそれとして一応解決されたようでございます。御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/64
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065・八木昇
○八木(昇)委員 この事件そのものはいずれ解決するということが大体見通されてはいたわけなんですけれども、一般的な問題として私も要望しておきたいと思うのですが、平常時は黙っておって、争議時期になると基準法違反を出してくるということもそれは間々ありますけれども、しかしそれは、たとえば公務員なんかの場合も、ストライキ権を持たない、やむを得ず争議の手段の一つとして時間外労働拒否、こういうようなことなどもあったりしますと、これは民間でも若干ないわけではないのですが、しかしたった八十人くらいの従業員がおって、そのうち六十名女の子だというようなところにおける問題であるということを、紋切り型に争議終了後でなければ云々というような態度はとってもらいたくない。
それからまた争議中、と一口に言っても、一体いつからいつまでを争議中と言うのか、無期限ストライキをやっているわけではないですから、あるいは時間外労働をずっと終始拒否しているわけじゃないですから、要求書を出して、そしてその要求が解決しないで紛争をしている間を争議中と、こう言うのでしょうか。だからこれは賃上げの問題らしゅうございますから、賃上げ問題が解決するまでの間は争議中だ、こういう見解をとられた日には、これは実際小さな企業においては労働者のほうが弱いわけですから、それはもう問題にならない。争議中と一口に言っても、一体どこからどこまでか、自体明確でない。ですからやはり非常に私は言いのがれだと思いますが、こういう態度をとらないで、非常に明瞭に基準法違反の疑いありというような、そういう疑いが感ぜられる場合、労働者の要求がある場合には、直ちに実態調査におもむく、そういう前向きの態度で基準法を守ってもらいたい、そういう行政指導をしてもらいたいと実は考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/65
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066・村上茂利
○村上(茂)政府委員 労働基準法違反がございました場合には、原則といたしまして、その違反状態をすみやかに是正するということは当然のことでございます。争議中と申しましても、問題は争議行為が展開されておるという場合を中心にしておることも当然でございまして、その点は時期があいまいなのにいたずらに是正措置をおくらすということば、厳に慎むべきだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/66
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067・亀山孝一
○亀山委員長代理 暫時休憩いたします。
午後一時三十三分休憩
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〔休憩後は会議を開くに至らな
かった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X02319640324/67
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