1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年四月二十一日(火曜日)
午後一時五十五分開議
出席委員
委員長 田口長治郎君
理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君
理事 亀山 孝一君 理事 澁谷 直藏君
理事 田中 正巳君 理事 大原 亨君
理事 河野 正君 理事 小林 進君
理事 長谷川 保君
伊東 正義君 大坪 保雄君
熊谷 義雄君 小宮山重四郎君
坂村 吉正君 竹内 黎一君
地崎宇三郎君 中野 四郎君
西岡 武夫君 西村 英一君
橋本龍太郎君 松山千惠子君
亘 四郎君 伊藤よし子君
滝井 義高君 八木 一男君
八木 昇君 山口シヅエ君
山田 耻目君 吉村 吉雄君
本島百合子君 吉川 兼光君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 小林 武治君
出席政府委員
厚生政務次官 砂原 格君
厚生事務官
(大臣官房長) 梅本 純正君
厚生事務官
(児童局長) 黒木 利克君
厚生事務官
(年金局長) 山本 正淑君
委員外の出席者
厚生事務官
(年金局企画課
長) 高木 玄君
厚生事務官
(社会保険庁年
金保険部国民年
金課長) 福田 勉君
専 門 員 安中 忠雄君
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四月十八日
委員浦野幸男君、松山千惠子君及び亘四郎君辞
任につき、その補欠として大高康君、木部佳昭
君及び羽田武嗣郎君が議長の指名で委員に選任
された。
同日
委員大高康君、木部佳昭君及び羽田武嗣郎君辞
任につき、その補欠として浦野幸男君、松山千
惠子君及び亘四郎君が議長の指名で委員に選任
された。
四月二十一日
理事大原亨君同日理事辞任につき、その補欠と
して長谷川保君が理事に当選した。
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四月十六日
原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の一部を
改正する法律案(中村順造君外四名提出、参法
第一四号)(予)
同月二十日
清掃法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
六〇号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
理事の辞任及び補欠選任
国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正す
る法律案(内閣提出第一〇五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/0
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001・田口長治郎
○田口委員長 これより会議を開きます。
この際おはかりいたします。
理事大原亨君より理事辞任の申し出があります。これを許可いたしますに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/1
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002・田口長治郎
○田口委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
これより理事の補欠選任を行ないたいと存じますが、その選任は委員長において指名することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/2
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003・田口長治郎
○田口委員長 御異議なしと認めます。よって、長谷川保君を理事に指名いたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/3
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004・田口長治郎
○田口委員長 内閣提出の国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案を議題とし審査を進めます。
質疑の申し出がありますのでこれを許します。滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/4
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005・滝井義高
○滝井委員 国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案について、まず先に予算の面からちょっと二、三お尋ねをしたいと思います。
ことしの国民年金の予算を見ますと、保険料の収入が二百五十一億あるわけです。それから一般会計からの受け入れが、端数を切り捨てますと百四十五億。その百四十億円のうちに免除分が十九億六千万円程度、約二十億あるわけです。この免除の対象になっておる総数は、人数にしたら一体幾らになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/5
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006・山本正淑
○山本(正)政府委員 三十九年度の予算では、免除対象人員は二百五十一万と見込んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/6
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007・滝井義高
○滝井委員 もっとこまかく聞きたいのですが、時間の関係がありますから、次に積み立て金の運用収入が八十四億あるわけです。この八十四億の運用利子収入を得るためには、積み立て金の累計は一体幾らになっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/7
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008・山本正淑
○山本(正)政府委員 三十八年度末で千七十八億でございます。それから三十九年度分の見込み額を四百六十億見込んでおりまして、三十九年度の分につきましては月割りで入ってまいりますので、したがいましてそれに対する利子というのが段階的になってくるわけであります。そういうふうな見込みであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/8
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009・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、八十四億円程度の運用収入が出るためには、三十八年度末千七十八億と三十九年度の四百六十億、約千五百三十八、九億くらいの積み立て金の累計の中から八十四億の利子が出る、こういうことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/9
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010・山本正淑
○山本(正)政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/10
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011・滝井義高
○滝井委員 その積み立て金の運用のことは、いずれ次会にお尋ねします。
次は、現在国民年金は一体どういう状態で具体的な適用が進捗をしておるかということなんです。現在国民年金に加入している人は、大ざっぱにいって被保険者二千万人、それから福祉年金を受けている人が三百万人、こうなっておるわけです。これは年々新しく二十歳になってくる人と、妻のように任意適用者がおるわけです。それから、この制度ができたときに、われわれも反対をしたのですけれども、そういう反対の宣伝が浸透しておってなお現在宙ぶらりんでどの保険にも加入していない、特に国民年金加入の有資格者であるにもかかわらず加入していない、こういう人が相当おるはずです。そこでまず三十八年においては未適用の人がどのくらいあって、そうして三十八年満二十歳に達して適用対象になった人が幾らあった。それは三十九年度の予算を編成する現段階で予算書を見てみますと、平均被保険者数は千九百八十五万九千人になっておるわけです。この千九百八十五万九千人になるためには、いまのような未適用者がどれだけ適用になり、それから新たに二十歳に達して適用対象者になる人がどの程度だからこういう数になるのだということを三十八年の実績と三十九年の推計でひとつ示してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/11
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012・福田勉
○福田説明員 ただいまのお尋ねでございますが、三十八年度の適用につきましては合計で二千五十七万の適用を終わっておりまして、これは制度当初以来の適用の合計でございます。その中で三十八年度二十歳の新規加入は約十三万五千人でございます。昭和三十九年度につきましては二十歳の新規適用につきましておおむね四十万人の適用を見込んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/12
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013・滝井義高
○滝井委員 どうも、私の質問するのをよく聞いておいてもらわぬと……。いいですか。いま平均三十八年度末の適用累計が二千五十七万、こう言われたわけです。その二千五十七万になるためには、妻などのように任意適用の人なり、それから当然強制的に適用されなければならない人がおるわけです。こういう人が一体幾人三十八年度に適用になりましたか、それから同時に、新たに二十歳に三十八年度になった人は幾ら加入しましたか、その数は十三万五千人、こうなったわけです。前者のほうの答弁はまだないわけです。妻とかあるいは適用漏れになった人が相当おるわけですよ。こういう人はどういうぐあいに適用対象に三十八年度にはなってきましたかということの質問なんです。これがはっきりしないと、予算に出る千九百八十五万九千人、いまあなたが言われた三十八年度末の適用二千五十七万という数字が出てこないわけなんです。なぜならば、三十八年度にわれわれにあなた方が予算審議のときに説明した数字は千九百五十七万人なんですよ。千九百五十七万人が千九百八十五万九千人とこういうふうにふえていっておるわけです。ふえていった三十万というのはどういう層がふえたかということが問題なんですよ。いまので見ると、二十歳になった人は十三万人しか入ってないということになると、あと十六、七万が新たに適用漏れの人が入ってきたとしか考えられない。その数字の内訳を説明してもらわないといかぬ。そのためには、これは資格喪失の人がおるのです。二千五十七万の中から、今度は脱落するのが出てくるわけですから、この数も合わせると、問題になってくるわけです。なぜ私がこういう質問をするかというと、先に質問の結論を言うのですが、それはあなた方の年金適用の仕事がうまくいっておるかどうかということなんです。これを見れば国民年金が生々発展する方向にあるのか、停滞の状態になっておるのかということがわかってくるわけです。それを私は知りたいわけなんです。一番大事なところをしっかりしておいてもらわぬと、予算編成のかなめですからね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/13
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014・福田勉
○福田説明員 申しわけございませんが、新規適用の資料だけでございまして、後ほど数字をお知らせいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/14
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015・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、これは大臣にお尋ねすることになるのですが、大臣いまお聞きのとおり、三十八年には満二十歳になった人が十三万五千人しか国民年金に入っていない。御存じのとおり、いま二十歳になる人は、ベビーブームのときに、大体それと相前後して生まれてきた人でしょう。そうしますと相当の数が満二十歳になっておるわけです。ところがその満二十歳になった人が、これはもちろん厚生年金とかその他にもいっております。共済組合とかにもいっておりますけれども、相当の者が国民年金に加入するような、中小企業とか農業とかで従事して満二十歳になっておるわけなんです。ところがそれが十三万人なんですね。そうすると、ここで十三万の数が多いか少ないかの議論をするためには、国民年金の対象となる満二十歳の者は、いまから二十年前に出生をした者、この当時は二百万人ぐらい出生しておると思うのです。あるいはもっと多いかもしれぬ、二百三、四十万かもしれません。いま百五十万か六十万しか生まれていないのですが、当時は相当生まれておると思うのです。そうしますと、これは一体どの程度が国民年金の対象になるとあなた方は把握しているのですか、満二十歳になった人は。これも大臣おわかりにならなければ——。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/15
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016・福田勉
○福田説明員 三十八年度中におきましては、全国的に約四十万人を新規適用、二十歳に達した者を見込んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/16
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017・滝井義高
○滝井委員 いや、見込むのではなくて、適用対象となる数は幾らですかということなんです。その適用対象者から、あなた方が見込んだのは二十万しか見込んでいないのでしょう一〇〇%見込んでおるわけではない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/17
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018・福田勉
○福田説明員 二十歳に達した者の対象者数は、約六十一万ぐらいだと思います。その中で約四十万の適用を見込んでおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/18
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019・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、三十九年の予算編成がそうなんです。ところが三十八年はいまの六十一万に該当する者は一体幾らなのかということなんです。これはもう実績が出てこなければならぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/19
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020・福田勉
○福田説明員 ただいま申し上げましたのは三十八年度における見込みでございます。三十九年度におきましては——いま調べましてのちほど申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/20
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021・滝井義高
○滝井委員 これがはっきりしないと質問がなかなか進まぬのですが、ちょっと待っておりますから、落ちついて調べてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/21
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022・福田勉
○福田説明員 三十九年度におきましては二十歳に達する者を六十四万人と見込んでおります。六十四万人が対象者の総数でございますが、その中で、これは市町村の段階別に異なりますが、おおむね七〇%の適用を見込んでおります。その数は四十四万九千人になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/22
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023・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、三十八年度の二十歳に達した対象者は一体幾らであったかということになる。その実績は十三万五千人という答えは出ておるけれども、前がないわけですね。前の二十歳に達する対象者数、三十九年度六十四万に見合う分は幾らですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/23
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024・福田勉
○福田説明員 三十八年度におきましては六十一万人でございます。六十四万人に見合うものが六十一万人でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/24
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025・滝井義高
○滝井委員 ここまでくれば、大臣いまおわかりのとおりです。そうしますと、ことしは六十四万人の満二十歳に達する対象者がおる、その七割の四十四万を目標にして予算が組まれておる。ところが、昨年は六十一万人対象者がおったが、実績は十三万五千しか加入しなかった、こういうことなんです。そこで、まずこの対策をどうするかということが一つの問題なんです。満二十歳に達したら強制加入なんですから当然加入しなければならぬわけです。ところが、これは五分の一しか加入しないわけですね、十三万ですから五人に一人です。これではたいへんなことになる。したがって一体大臣としてはこの対策をどうお講じになるつもりなのかということです。これはことし七割といわれているけれども、われわれの見るところでは七割の半分くらいしかいかないのじゃないか、半分いけば上々のほうじゃないかと思うのです。ほんとうは三十七年度のも聞いてみると、おそらく似たり寄ったりだと思うのですが、この点が一つ大きな隘路としてあるわけです。あるいは大臣にはこういうところまで事務当局が御説明になっていないのじゃないかと思うのですが、これは大臣どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/25
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026・小林武治
○小林国務大臣 これの加入率はだんだん増してきますが、いま集金だとかあるいは切手の貼付とかこういうふうないろいろなことをやっておりますが、そのほうの組織といいますか、その人員の整備、こういうことを待って個々に具体的に当たるということが唯一の方法であろう、こういうふうに思っております。むろん宣伝とか啓発ということが非常に必要でありますが、具体的の効果を上げるものはいまのような市町村の関係者の訓練とかあるいは増員とか、そういうものによって個々の家に当たるということしかない、こういうふうに思っております。いま申すように成績はだんだん上がってはきておりますが、まだ不十分だ、こう言わざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/26
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027・滝井義高
○滝井委員 組織とか人員の整備とか宣伝、市町村のこういう事務を担当する者の増員等が必要だ、だんだん成績は上がってきておると言うけれども、実はあまり成績が上がっていないのですよ。もう一歩これは突っ込んでいってみるとよくわかるのです。いまのはこれは満二十歳に達して新しく年金に加入する資格ができた者のことを取り出してきたわけです。それならばすでにできてしまって加入をしていない人は一体幾らおるのか、任意加入の妻等でまだ宙ぶらりんになっておる人は幾らおるのか、そうしてその中から三十八年度には幾ら加入をし三十九年度には幾ら加入をする見込みなのか、これをひとつ説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/27
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028・福田勉
○福田説明員 三十八年度中におきまして二十七万三千人が適用済みになっております。その中で先ほど申し上げました十三万五千人が二十歳の適用でございますので、その他の残りの約十三万五千人が従来の適用になるべき人で適用にならなかったいわゆる適用漏れ者あるいは任意加入を含めた数字でございます。それで三十九年度におきましては年度当初の適用漏れ見込みを約百五十万人と見込んでおりまして、それに対しまして適用率を少なくとも六〇%は適用を終わるという予定でございまして、その数が約九十万人と見込んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/28
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029・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、三十九年度においては百五十万人の適用見込みというのは、これは満二十歳に達する六十四万人も入っているわけですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/29
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030・福田勉
○福田説明員 別でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/30
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031・滝井義高
○滝井委員 別でございますということですが、別だとすれば三十九年においては満二十歳に達する人の七割の四十四万人が加入をして、そして今度は三十九年でなお前年度から繰り越して未適用になっておる百五十万を九十万適用するとすれば、百三十万人を三十九年度に適用対象にする、こうなるわけです。過去の実績は私の調べたところでは三十万ずつくらいしかふえてないでしょう。ここ一、二年は三十万ずつしかふえてないでしょう。その三十万人ずつしかふえていない国民年金の対象者を、一挙にその四倍をこえる百三十万に上げようというのならば、よほど革命的な——池田さんじゃないけれども、中小企業に革命的な政策をやるというその革命的な年金政策で、いま大臣の言われたような組織、人員、宣伝、それから市町村の増員というのを革命的な方式でやらないと百三十万はむずかしいですよ。それは自信があるのですか。そういう具体的な数字は、やはり過去の実績の積み上げの中からこういうものはやらなければ、三十万しか加入しなかったのに一挙に百三十万人も、四倍も五倍もやるということはとてもそれは木によって魚を求むるよりむずかしいですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/31
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032・福田勉
○福田説明員 三十九年度におきまして約百三十万人の増を見込んでおりますが、資格の喪失を差し引いて実質三十万人から四十万人近くの適用が毎年度伸びておるわけでございます。これは先生のおっしゃるとおりでございますが、三十七年度及び三十八年度は拠出制国民年金制度の保険料収納の面に相当の重点が注がれております。適用においては遺憾ながら若干進展がおそかったわけです。三十九年度におきましては、この面で努力いたし、大都市及び二十歳に達する者の新規加入というものを中心にいたしまして、適用の事務の徹底した体制を確立する予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/32
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033・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、結局いままではここ一、二年三十万そこそこしか加入しなかったのは、保険料の収納に重点を置いた、しかし三十九年は新規加入促進に重点を置く、こういうことのようです。しかしこの結果を論議をするのは、これは来年になるかと思います。しかしそれならば、資格喪失というのは一体どの程度ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/33
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034・福田勉
○福田説明員 ちょっと手元に資料がございませんので、後ほど……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/34
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035・滝井義高
○滝井委員 およそでけっこうですが、適用対象数と、適用対象が実際に適用された数が相当ある。そして資格喪失の者が相当出てくるといえば、差し引きしてこそ、初めて千九百八十五万という数字が出て、昨年より三十万ふえた、こうなるわけなんですね。およその数字、ラウンド・ナンバーでけっこうですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/35
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036・福田勉
○福田説明員 およその数は、大体五十万人見当でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/36
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037・滝井義高
○滝井委員 私はなぜこういう質問をするかというと、被保険者の増加が、あなた方が三十九年度に指向されておるように、百万をこえて増加をしてくるということになれば、保険経済は相当確実な伸びを示していくわけです。ところが、この長期の金のたくわえを必要とする国民年金に年々三十万か四十万しか新たな加入者がないということになりますと、しかもそれが二十歳の、長期に金を置いておく層の金が少ないということになると、そのことは一体何を意味するかというと、国民年金の財政規模が非常に先細りになることを意味するわけですよ。ここなんですよ。これは厚生年金と違う。御存じのとおり、国民年金は四十年かけて、五年の据え置きをおいて、金をもらうわけですからね。したがってもらうのは六十五歳からもらうのです。その間における運用の利子その他の役割というのが非常に重要になってくるわけです。厚生年金のように二十年ではない、四十年です。そして五年の据え置きがある。したがって若いほうから確実に加入させておかないと、年とった人ばかりが加入をしておったんでは、保険財政というものは先細りになるのです。したがってどうしてもここに加入促進の具体的な対策というものが必要になってくるわけです。ところがどうもいまの質問等を通じても、ここらの加入促進の具体的な対策というものが、なかなか数字的に出てこぬところを見ると、ここらあたりがイヤマークされて、具体的な対策が立てられていないという感じを私いま受けたのです。このことはやはりもうちょっと事務当局にしっかりやってもらわなければいけないと思うのです。ここが年金の一番基礎なんですから。このことが同時に年金が国民にどの程度支持されておるかという一つの目標、指標にもなるわけです。こういう点にもう少しはっきりした認識を持つと、今度は事務費の問題になってくるわけです。大体いま大臣が言われたように、市町村の増員をやる、あるいは組織の確立をやる、PRをやるということになると、昨年百二十円であった事務費が百三十円にしかなっておらぬ。これで一体三十万年々加入しておったものを、一挙に四倍ないし五倍の百三十万とか百五十万に伸ばせるだけの力を——十円上げただけで四倍の加入率の飛躍的な躍進になるのかどうかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/37
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038・山本正淑
○山本(正)政府委員 いま年金の計画としての非常に重要な御指摘があったわけでございまして、確かにおっしゃるとおり、加入人員の伸び、特に若年層の伸びというものが保険経済に非常に大きな影響を持つわけでございます。この意味におきましては、国民年金そのものが、産業構造の変化に伴います被保険者層の推移というものが急激に変わってまいっておりますので、今後そういう面がどういうふうな影響をするかということは、国民年金にとりまして相当重大な問題でございます。そこで、社会保険庁におきましては、現実問題として国民年金の加入の促進と、それから保険料の収納の徹底、これは被保険者本人の利益の問題にどちらも影響する問題でございますので、この二つを柱としてやっておるわけでございますが、特に加入の促進並びに保険料の収納につきましても、収納組織というもの、納付組織を結成してやっていくほうがより成績があがるという現実に即しまして、各地におきまして納付組織が非常に発達してまいっておりまして、現在約千三百人ほど納付組織の傘下にあるという現状になっておるわけでございます。ただいま御指摘のような点につきまして、さらに本来加入すべきものであって加入してないという国民層に対しましては、適用をさすということを強力に推し進めなければいかぬ面があるわけでございますが、ただ御承知のように、この問題につきましては、大体において大都市が成績が悪いわけでございまして、大都市の国民年金の対象者についてこれの適用を徹底していくということにつきましては、単に事務費が幾らであるということによって解決できない問題があるわけでございまして、そういうところにさらに保険庁としてもくふうをしてやっていくというような体制におる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/38
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039・滝井義高
○滝井委員 御指摘のように、新しく満二十歳に達した人と、特に東京とか大阪とか名古屋というような大都市が非常に適用がおくれているわけですね。これは、大都市はそれだけ移動も激しいし、あるいは中小企業その他の収入が少ない、とても年金で現金を百円とか百五十円とか毎月取られるのはかなわぬというようなこともあるのかもしれません。あるのかもしれませんけれども、やはり大都市におけるいろいろな事務が多くて、住民に直結しなければならない事務が多くて、やはりいろいろな仕事で事務費というものがよけいにかかるわけです。それは国民年金も国民健康保険も例外でない。そうしますと、大都市における年金事務を円滑にやるためには、対象が国民健康保険と国民年金とは同じですから、この関係をあなた方は一体どう考えておるかということです。国民年金は事務費は百三十円、国民健康保険は百五十円、二十円の事務費の開きがあるわけです。また健康保険組合のようなものは幾らやっておるかというと、あれはやはり百四十円ぐらいですか、こういうように、同じ仕事をやるのにも事務費がみな段階ができているでしょう。百三十円、百四十円、百五十円、こういうところにも一つ問題があるのではないか。同じ対象であるならば、ちょうど今度の予算編成で問題になったように、労働省が労災の調査をやる、それから失業保険の調査をやる。あなたのほうは健康保険の調査をやる。こういうように、同じ対象者、同じ事業主に対して、厚生省、労働省が違った資料を要求する、同じような社会保障制度に対して。そこで、これはいかぬということで、事業主の側からも不満が出て、ことしの予算編成ではそういう事務を一本化しようという話がでておるでしょう。そうなると、これは労働省と厚生省の間でできたんですから、厚生省の中の年金と、同じ隣に住んでおる保険局長のところと、小山さんと山本さんが話し合って、ひとつこの調査は一緒にやろうじゃないかということになると、この金を合わせれば二百八十円になるわけです。それを別々に各省各局でやると、年金のほうが、何だ同じ仕事をやっておるのに健康保険は百五十円、おれのほうは百三十円だということになって、市会の受けも悪いですよ。国民年金課長、市会の受けあるいは県会の受け等も悪くなる。そこらあたりを何か考える必要があると思うのですよ。そして調査その他は一本化していく、そうすると、国保の被保険者は、即そのまま国民年金の対象者として把握することが可能なんだから、労働省と厚生省が話をしておるのに、あなた方は一体やったことがあるかどうかということです。しかもアンバランスなもの、こういうものは私は問題だと思いますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/39
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040・山本正淑
○山本(正)政府委員 おっしゃるとおり、いろいろ調査等につきまして、合理的にやるという必要性がありまして、だいぶことしは予算におきまして、たとえば五人未満の事業所、これは労働省、厚生省におきましては保険局、年金局それぞれ予算がついておりますが、一本で調査をしようという方針でおるわけでございます。いまの国民年金と国民健康保険、実はこれは私のほうではなしに保険局と保険庁の予算の問題でございますが、この国民年金制度をつくります際に、実は先生がいま御指摘のような問題があったわけでございまして、その当時、健康保険がある、そこで、国民年金の制度をつくる際に、国民年金の制度と一本化してやったほうがいいのかどうかという議論の結果、別個に発足したほうがより成績が上がるであろうという——これだけの理由じゃございませんけれども、そういう要素があったわけでございます。ただ、実施いたしてみまして、その結果、先ほど申しましたが、納付組織といったようなものを考えないと、なかなか伸びていかない面があるということも出てまいりまして、事務費の問題ということが非常にやかましくなりました。事務費の算出の基礎からいいますと、これは仕事の分量が違うわけでございますから、差がつくのはやむを得ぬと思います。たとえば、国民健康保険と健康保険組合の例を言いますと、健康保険組合の場合には、被保険者の本人一人につき百四十円といった積算になっておりますが、国民健康保険の場合には、家族も含めて一人一人の被保険者という積算になっておりますから、簡単にきめるわけにいきませんし、国民健康保険と国民年金ではいろいろ帳簿の整理、そのほか医療担当者の関係といったような事務が違いますので、この積算の基礎からいいまして、違う数字が出てまいるわけでございます。ただ、受けるほうの市町村の側からいたしますと、国民年金も健康保険も同じような性質のものであって、開きがあるのじゃないかといったような素朴な意見が出ることは事実でございまして、そういった問題をどう調整していくか、かつまた、いまおっしゃられましたように、事務の面において、より能率的に、同じ金額が効果を上げるという意味におきましては、さらに研究しなければいかぬ面が相当あると思います。これは私どものほうとしましても、また保険庁といたしましても十分検討してまいりたい、かように思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/40
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041・滝井義高
○滝井委員 御承知のとおり、国民健康保険の年間平均の被保険者は四千三百万程度と見ておるわけですね。あなたのほうは千九百八十五万程度。こういうことになりますれば、すでに長い歴史と伝統を持っている国民健康保険のほうは、相当市町村において把握しておるわけです。何人か把握していないところはあろうが、相当把握しているわけです。これは新しく失業したり、あるいは定年退職をしたというような人はすぐにはなかなか把握しにくい。あるいは生活保護に転落していって、また浮かび上がって国保の対象者になったというような人は漏れておりますけれども、しかし、実績の四千三百万というものは、相当なものでしょう。そうなると、この把握しているカード、台帳を基礎にして、あなた方がそれを借用してやるということになれば、やはりそれだけ事務費がはぶけるということになる、共通の台帳をつくればよいのだから。これは二十歳に達したものだけチェックしておけばよいわけですから。そういう点ではやはり両者が相提携して促進をしていけば、これは事務的にも非常によいと思うのです。御存じのとおり、現在市町村が赤字で困るというのは、何といっても国民健康保険の特別会計に市町村の一般会計から金をつぎ込むということに地方財政の赤字の大きな原因があるということは、自治省も指摘しているとおりです。その赤字の大きな部分は何かというと、事務費です。国は百五十円くらいしかくれぬ。実際は大都市は二百五十円、三百円もかかる。半分以下ではどうにもならぬといいながらも、やはり住民の福祉を増進するために市町村長はやらざるを得ないでやっている。ところが、年金というのは、すぐ目の前の問題ではない。はるかかなたの四十五年、先の問題である。だから、それほどぱっと火がしりについたような感じというもの、カチカチ山のタヌキみたいな状態にはならぬわけです。そこで、カチカチ山のタヌキの状態になっている国保と、ゆう然としている年金とを結びつけるということが今後の年金を推進する一つのポイントじゃないかという感じがするのです。そのためには、この二つのものを合わせて、事務費を大蔵省に要求して、三百円とか三百二、三十円くらいは一挙に出して躍進をせしめていくという対策をとるべきだと思うのです。そうすると、これは一本化するから補助金の合理化にもなる。小さな補助金をちょこちょこ分けてやるよりか、大きなものにしてよけい取って推進する。最近は福祉国家における非福祉国家性という論文がよく出る。福祉国家と池田内閣は銘打っておるけれども、実際つくっておるのは非福祉国家であるという論文を書いている人がありましたけれども、そういうことを言われないためにも相当事務費をつぎ込んで能率的にやっていくという形になれば、市町村も悪い気持ちにはならぬと思う。こういうところに自信を持って、来年度予算においてはぜひ大蔵省に要求してやってもらいたいと思いますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/41
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042・小林武治
○小林国務大臣 私は、ただいまの御意見は参考としてわれわれも十分検討しなければならぬ点だと思います。この事務費の関係、国保のほうは一種の補助金、年金のほうは一つの国の委託事務と申しますか、そんなような性質上の相違はあると思います。しかし、これをどういうふうにして調整するかという問題をひとつ検討いたしまして——お話のように、私は、連絡をすれば相当に役に立つ部面があると考えます。ただ、その経費の性質上の差異をどういうふうに調整するかという問題はありますが、これはひとつ十分検討してみたい。重ねて申しますが、おっしゃるようなことは、私は、この問題の推進のために非常に役立つことじゃないかと、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/42
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043・滝井義高
○滝井委員 ぜひひとつ両事務費の調整をやりて、年金の加入促進のためにこの事務費が役立つような形をつくってもらいたいと思うのです。
そうしますと、具体的な事務費の問題へここで入ってみたいと思うのは、市町村に一人当たり百三十円、昨年に比べて十円アップした百三十円の市町村交付金、これは二十五億程度ですね。事務の取り扱いの経費に差し上げるわけですね。そのほかに印紙の売りさばきの手数料というのがあるのです。それで、これは八億四千九百十八万四千円程度あるわけです。この問題については、小山さんが保険局長のときにも一応御質問申し上げたのですが、これは現在は一体どういう売りさばき手数料の配分のしかたになっておるのか、それをまずちょっとお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/43
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044・福田勉
○福田説明員 国民年金印紙の売りさばき手数料の立て方でございますが、現在三種類ございまして、一般手数料、これは一般に印紙を市町村に売り渡した額の三%でございます。それから加算手数料というのがございます。これは一・五カ月分以上売り渡した場合に、その一カ月をこえる部分につきまして二%を加算しておるわけでございます。それから、特別手数料でございますが、これは印紙売りさばき額が年間の印紙需要額をこえました場合に、検認率のいいところ、現在九〇%以上でございます。そういうところに購入額の一%を手数料として出す、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/44
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045・滝井義高
○滝井委員 成績のいいところに報償金を出すということは非常にいいことなんですが、これは国民健康保険でもこういうことをやっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/45
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046・福田勉
○福田説明員 国民健康保険にはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/46
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047・滝井義高
○滝井委員 同じ強制適用の国民年金にこういう制度ができたというのは、あるいは社会党等が反対をしたために、ぜひひとつこれはこういう制度をつくらなければいかぬ。同時に、還元融資の場合でも、成績のいいところに金を貸す、悪いところは貸さぬという、いわばむちの役割りとあめの役割りをこれは一緒に含んだものです。金を借りたいというならば、検認率をよくしてこい、これもむちになるのかもしらぬ。しかし、よかったらあめをちょっとしゃぶらせるぞということで、八億の売りさばき手数料を出しておるのかもしれませんけれども、何かちょっとこの制度は抵抗を感ずる気持ちがするのです。というのは、御存じのとおり、強制適用で福祉国家の理想を立ててやるという制度に、事務費のほうは百三十円程度しか出さないが、別にまた二十五億の交付金の三分の一に当たる八億程度のものは別建てであめをしゃぶらせてやるということは、何かちょっと厚生行政としては邪道のような感じがするのです。いま子供にあまり不当な景品をつけて子供をつってはいかぬと世の中は言っておるわけですね。そんなことをしたら、子供が射幸心を起こして不良化するのだと言いながらも、政府がこういう社会保障政策に、何かそこらで宝くじを売っているのと同じようなぐあいに、うんと上げてくれればよけいにつけてやるぞというようなことがなければ、国民年金の加入促進ができないほどいまの国民年金は魅力がないのです。逆説的に言えば。ここらあたりはやはり少しく反省をしてみる必要がある。むしろこういう金があれば、やはり事務費を出してやったほうがいいんじゃないか。それなら、一体こういう制度がいまあるのだが、それはどう考えるのかということ、いま銀行が定額五万円の貯金をさせるわけです。それで、五万円をお預けになっておれば、あなたの国民年金の保険料は私のほうでずっと全部事務的にお支払いをいたします。こういうことをやってくれてみんな加入しています。その場合は一体市町村が手数料をもらうことになるのか、銀行がもらうことになるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/47
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048・福田勉
○福田説明員 ただいまのお尋ねの件は、銀行に五万円の定期預金をしまして、その利子でもって年金の保険料を積み立てるという年金預金の制度であろうと思いますけれども、これにつきましては、現金で前納いたしますので、手数料はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/48
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049・滝井義高
○滝井委員 その定額預金を銀行がどんどんとって回るわけですね。そうしますと、たとえばその対象者の半数以上をとってしまって、銀行は利子を市町村に納めればいいわけで、市町村はやることがないわけです。国民健康保険の被保険者は全部銀行がしてやって、そして銀行が国庫に払い込めばいいわけでしょう。市町村を通さずに払い込むことだってできるわけです。そうなると、当然これは一般手数料とか加算手数料とか特別手数料は銀行に払わなければならぬことになるわけです。私はこういう制度ができたときに、小山さんに、一体こういう制度をどうするんですか、こういう制度をずっとやっていいというのなら、これは郵便局その他に全部やってもらう。国民は簡易保険その他に全部入っておる。最近は国民年金ができたために簡保資金は伸びが少し停滞しておりますけれども、これは同じ層が入っております。そうすると、もしこういう仕事を郵便局がついでにやってくれるということになれば、定額の五万円の郵便貯金をしてもらったらいいと思う。私はこの制度は悪くないと思う。ある意味では一つのいいアイデアを銀行マンは出したという面もあると思うのですよ。いま言ったように、定額の五万円の貯金をしておけば、あとは百円とか百五十円を毎月納める必要が全然ないのです。一体そういうものは全国でどの程度ありますか。全国で保険料が二百五十一億入るんだが、二百五十一億の保険料の中で、そういう銀行の定期預金を通じて払い込まれるものはどのくらいあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/49
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050・福田勉
○福田説明員 現在はっきりした数字をつかんでおりませんが、おおむね一万人程度がその対象の被保険者になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/50
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051・滝井義高
○滝井委員 その程度でしょうか。そうすると、この制度はどんどん普及をする情勢にあるのですか。これは被保険者は何もしなくてもいい、定額預金だけでいい。市町村も事務費がちょっとも要らぬわけです。金を五万円預けておけば自動的にいく。とにかくこの制度が変わらぬ限りは、五分五厘かの利子でまかなってもらえるわけです。この行き方は一つのアイデアとして非常にいい。しかし、対市町村事務との関係はどうなるかというと、ちょっと私にはわかりかねるのです。三、四年前、この制度ができたときに小山さんにもちょっと質問したのです。小山さんもそこらあたり明確でなかったが、一応質問しておったので、あなた方その点も研究されて明確な御答弁ができるのかなと思ったが、そこらがどうもはっきりしないようですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/51
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052・福田勉
○福田説明員 銀行の定期預金制度によります年金預金は、現金による一年前納をたてまえとしております。したがいまして、初めに五万円の預金者の口座をつくるわけです。この五万円の対象に現在なっておりますのは、実態から見ますと、ほとんどが強制加入者ではなくて、任意加入者でございます。なお言いますと、厚生年金等の公的年金の加入者の配偶者の方が入っていらっしゃる、こういう実態がほとんどでございます。その数は、先ほど言いましたように、全国で約一万人程度でございますけれども、市町村との事務的な関係におきましては現金徴収、いわゆる年金の預金利子の中から銀行がそれぞれ手続をして各市町村に入る、普通の一年以上の現金前納の場合と同様な取り扱いをいたしております。そういう意味では市町村の事務はございません。手帳をつくって交付する、適用の段階におきましては、一般の任意加入あるいは強制加入の場合と同様でございますけれども、保険料徴収におきましては、銀行が直接国の機関に払い込む、現金といたしまして、社会保険事務所あるいは現業課に払い込むという手続になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/52
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053・滝井義高
○滝井委員 市町村を通ぜずに、社会保険出張所等に払い込むということになりますと、私の知っているある銀行では、満二十歳になると、お宅の子供さんは二十歳になりました。国民年金に、学生さんでも加入しなければなりません。だからひとつ五万円の貯蓄をしてくださいといって勧誘して回っております。ずっと勧誘して回っている。そうすると、今度、いま言ったように、そういう制度ができるということになれば、だんだん大ぴらになってくればどういうことになるかというと、今度は農協もやろうということになる。農協はやることが可能なんですよ。農協もやろう、相互銀行もやろう、こういうことになって、各銀行なり金融機関がこれを競ってやり始めたときには一体どういうことになるかということです。こういうことを考えておかぬと、御存じのとおり、生命保険会社にしても信託会社にしても、だんだん金を集める余地が少なくなってきつつある。そこで生命保険でも信託でも、年金の比例報酬部分を何とか事業主と話し合いながら企業年金なり調整年金の形で持っていくという姿が出てくる。そういう形が普及すれば人間というのは必ず考えつく。すでにうまい銀行マンは考えついているわけです。そうしますと、その銀行の支配する地域はわけなく取れるのですよ。市町村は百二十円か百三十円の事務費しかもらわないのに、一々回って年金に加入してくださいといって追い帰されながらも——追い帰されるというよりか、銀行さんにやってもらえばずっと能率が上がるわけです。そのかわりにあなたが一年分私のほうに納めてくれれば、この特別手数料で九〇%以上になれば一%の手数料ももらえるしするから、これはあなたのほうに全部あげますということになる。銀行は預金もふえるし、手数料も市町村からもらえる、こういうことになるわけです。市町村は百三十円のところだけまるまるもらってじっとしておれば、仕事はやらぬで銀行が全部やってくれるのです。そしてその銀行が市の金庫あたりになっておれば、多々ますます弁ずるわけです。私が銀行だったらそういうふうにやりますよ。こういう制度は私悪くないと思うのです。いまのところ、私が研究した限りでは弊害がない。順当に大体いっておるようである。弊害がないから悪くないと思いますけれども、そうなると、市町村のこういう事務処理の関係が一体どうなるのかということをやはりはっきりしておかないと、だんだん市町村の事務がなくなってしまう可能性が出てくるのです。これを今度は郵便局がやるということだって禁止できないわけでしょう。やっていいわけでしょう。いままだ郵便局はそういう制度をつくっていないようでありますけれども、郵便局は定額の貯金というものは非常に喜ぶわけです。そして四十年間預けてくれるということになったらたいへん長期の金なんですよ。非常に有効に使えるわけです。だからこういう金融政策と結びついていくという形、これは、いま財政投融資と言っているけれども、銀行が非常に長期の金を持つことになるわけです。いわば五万円という原資を持って、その銀行が逆に、あなた方の納めた百円が積もり積もって千五百何十億の積立金を運用しているが、もっと多くの金を銀行は原資として持って運用することになるのです。こういう、国民の金が大企業のために動くという形になってくるわけです。私はそれを悪いとは言いませんけれども、ここらあたりで一万人くらいのときに、この制度をどうするかという方針を確立しておかぬと、あとになってひさしを貸して母屋を取られるようなことにもなりかねませんぞということなんです。そうでしょう。元が五万円の金を銀行に預けているのですから、それが場合によってはもっとよく動くことになるわけです。いま一万人くらいだけれども、これが千万人にもなってごらんなさい、相当大きな力になりますよ。それならば銀行にやらせずに市町村みずからがやってもいいわけです。市町村みずからが五万円預かって、五万円預かりの証書を出して、市町村がそれを運用しながら、百三十円の事務費を、何もせずにふところに入れて、おまけに運用の利子の上前も市町村が取ることになりかねない。だから、私はこの制度を悪いとは思いませんが、いろいろ考えてみるとなかなか問題があるような気がする。まだ一万人くらいだから私も二度ばかり言うくらいで、大して問題がないような感じがするけれども、だんだん大きくなると、いつも言うように基本はみずからの目的貫徹のために大きく動き始めますからね。これは少し研究して、この制度を育てていくのか、あまり育てずにそのままにするのか。いま銀行では盛んに二十歳に達した人たちを勧誘して回っています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/53
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054・山本正淑
○山本(正)政府委員 この問題は問題が二つあるのじゃないかと思います。一つは社会保険の保険料というものの支払いをそういったような形でするのが適当かどうか、相当問題があると思います。大体常識的に見ますと、恒常的な所得の中から社会保険の保険料を支払っていくというのが普通の形であるし、それ以上に貯蓄の運用によって保険料を支払っていくといったような形が好ましいということはちょっと言い得ない問題ではないか、かように考える次第であります。そういうようなことができる階層というのは一部の階層である、どっちかというと条件のいい階層であるということになりますと、市町村の場合にそういった者、要するにいい階層だけがピックアップされて銀行に持っていかれるということになると、市町村としてはかえって徴収がむずかしい階層だけ残り、事務的にむずかしくなるという意味では歓迎しないという面もあるじゃないか。そういたしますと、いま先生が言われましたように、社会保険料の納入形態として問題があるじゃないか。それから先ほど御指摘がありましたような、市町村の事務の面から見ると、悪いというか、むずかしい面だけが市町村に残されて、市町村では問題があるという、二重の意味におきまして私どももう少し検討いたしまして、根本的な態度をきめなければいかぬじゃないかと思いますが、ただ今日の段階でこういった形のものは望ましいということは言えないじゃないかというように感ずる次第ございます。
〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/54
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055・滝井義高
○滝井委員 そういたしますと、望ましいと言えないような制度が公然と行なわれている。そういうことについてはあなた方も知っているはずです。一万人もあるのだということを知っているのですから、何らか対策を講じなければならぬ。これは三年か四年くらいになります。制度が発足のとき間もなく出てきたのです。初め私がここで指摘したとき、小山さんは異様な顔をしていましたから気づいていなかったかもしれませんが、気づかないはずはない、銀行が単独でやれるはずがない制度なんですから。いま言ったように結局いいところが抜かれて苦しいところだけ残れば、平均して百三十円の事務費を差し上げているわけですが、苦しいところばかりで百三十円でやるということになれば、百三十円を上げなければならぬということも問題が出てくるわけで、ぜひそこらあたりを御検討願いたいと思います。
それから苦しいところばかりが残るので、今度は印紙売りさばきの手数料を、嗜好的なあめのような役割りとして、段階をつけなければならぬということがますます濃厚になってくることになる。こういうところにはね返ってくると思うのですよ。そういう点をひとつぜひ御注意を願いたいと思うのです。
事務的な、予算的なことはそのくらいにして、あと運用の問題がありますけれども、これは次会にさしてもらいたいのです。
もう一つ、今度は大臣にお尋ねをしたいのは、一体年金制度というものにいろいろと付録をつけることがいいかどうかということです。付録をつけるということを別なことばで言えば、たとえば今度重度精神薄弱児扶養手当法という新しいものが出てきておる。それからいま一つは生別母子に対する児童手当がある。いわばこれは国民年金に付随した政策なんですね。何かもうちょっと勇断を持ってやれば、国民年金に入り得る制度なんだから、それをやらずにやはりそういう付随的なものをつけていく、一体こういうことがだんだんできてきていいのか。
それからいま一つは、この問題の答弁は大臣にお願いしたいのですが、福祉年金と生活保護を一緒に併給してもらっている。それから福祉年金と公的年金二万四千円、あるいは公務扶助料等の八万円を限度とする併給、こういうものが一方にある。ところが一方においては、厚生年金と労災のような場合は、同じ障害については併給してはいかぬ。わずかにけい肺のごときは、厚生年金をもらう資格があっても、五割七分か何がしかになってしまうわけですね。四割程度削減するわけです。一方ではそういうように削減をしておる。一体政府は、こういうたてまえが違うものを併給することを基本方針としてやっていくつもりなのか、併給しないでやっていくのか。あるいはあるときには併給し、あるときには併給しない、あるときは削減する、ちっとも一貫した方針がない。福祉的な政策をやろうとすれば、万人平等に、ある程度基本方針だけは貫いてもらわなければならぬ。そして所得その他格差があるならば、その上で所得その他の格差の問題は考慮してもらうことにして、基本的な原則だけははっきりしてもらわなければならぬ。それがはっきりしていないですね。これは選挙対策といえばそれまでかもしれませんけれども、はっきりしていない。この二点を、大臣御答弁を願いたい。どういう方針でいくのか。今後ともなお依然としていろいろな付録を国民年金にはつけていくのか。それともそれらのものを整理して、一本化の方向へいこうとするのか。あるときには併給をやる、あるときには併給をせず、あるときは減額して併給をやるという、こういう三つのケースがあるが、一体どれをもって将来の基本的なものとしようとするのか、ひとつ御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/55
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056・小林武治
○小林国務大臣 これは一言で申せば、将来は当然調整とか統制をして一本化するというのが私はあるべき姿である、こういうふうに思います。何しろ御存じのように、終戦後やっとこういうものが始まったばかりでありまして、そのときどきの必要によってこういうものがばらばらに出てきておるということで、私は過渡的の現象としてはやむを得ないと思いますが、たとえばいまの福祉年金等にいたしましても精薄が限時法でもって、こういうふうな理論にとらわれるものだからして、やむを得ずこんなものが出てきておるのでありまして、私の考え方としてはこういうことをせざるを得ないことは非常に遺憾でありまするが、まだそこまでの理論の整理ができておらぬ。こういうことで理想の形としては、こういうものはいろいろなものを出すべきでないと私は考えております。したがっていまの公的扶助料とか、こういうものは、これもいまのところ過渡的な問題であるからしてやむを得ない。したがって併給をするか減額をするかというややこしい問題が出てきておりますが、こういうものも時期がくればやがてすっきりするのだ、私はこういうふうに思っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/56
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057・滝井義高
○滝井委員 御存じのとおり、国民年金法ができたのが昭和三十四年なんです。拠出制は三十六年なんです。経済白書が、もはや戦後でないといってからこれはできた。そしてもう三十五年、三十六年は総合調整の問題が起こっておって、厚生省も総合調整をやるということを言明するし、それから社会保障制度審議会にその答申を求めておった段階です。大臣のいま言われるように、国民年金に関する限りは、初めから総合調整をやるということで、これは通算年金までつくっておったわけです。ところが、だんだん制度が一本化していかなければならぬのに、児童扶養手当とか、こういう重度精神薄弱児の扶養手当というものがぶら下がってき始めておるわけでしょう。だからやはり一本化していくべきだという感じがするわけです。
それから併給の問題も厚生年金、これは大臣の所管です。厚生年金と労災でもなかなか一本化しないでしょう。厚生年金はわれわれみずからが事業主と折半をして、保険料を納めておるのだが、労災は、事業主は自分の使っておる労働者が業務上の災害を受けた場合に払ってやるべき制度、全然たてまえが違う。ところが労災の打ち切りを受けたら六年間は厚生年金はストップしますよ、こうなっておる。けい肺はようやくわれわれが押して押して押しまくったために、それじゃ減額して厚生年金を労災から、けい肺、脊髄損傷の場合に差し上げましょう、こういうことになって幾分過渡的な形が出てきておる。しかし私は、やはり一本にしてどちらか足した分をやるような制度をやるべきだと思う。それを中途はんぱにするため事務が非常に複雑になってくる。役人の側はこれは労働省、厚生省と分かれて、それぞれ自分の専門の事務をやっておるからいいが、受ける側の、労働災害を受けた滝井義高は、両方に手続をしなければならぬことになる。そういうことはいたずらに住民を混迷におとしいれるだけです。こういう制度は一つにすべきだ。それで私がこういう質問をしたらどう言ったかというと、いや、あれは実は一本にするところだったんだ、ところが労働省、厚生省とはもともと一つの省にあったものが分かれた。分かれるときに自分のほうの所管のものを持っていかなければいかぬというので労働省は労災の分を持っていく、もう一つの厚生年金は厚生省に残すというふうに二つに分かれたので、ああいうことになった。全く一本にすべきだということを言う人も役人の中にいる。厚生省、労働省の分離過程における歴史的な悲劇が労働者に及んできておる。分離するのは悲劇じゃなかったかもしれぬが、分離の際の権限争いの意識が労働者にきておる。こういうことをある役人がこっそり説明をしてくれたが、ああそうだったかということになって、それならば妻だけは何とか実現しようじゃないか、妻は四十歳以上でなければ未亡人になっても年金をもらえぬということになっていた。そういうばかなことはない、どうしてかというと、四十歳以下なら再婚ができるからだということ。今度は小林厚生大臣の努力で四十歳以下でも未亡人になれば遺族年金がもらえるようになりましたけれども、そういう何か全くわれわれの常識の外のことがそういう形であらわれてくるというのは困ったことだと思うのですよ。それなら、ひとつここらあたりで、総合調整の問題もあるのだから、基本的な線で確立をしてもらわなければならぬと思うのです。ところが、依然としてそういうものが改正のたびに出てこないのですね。そして、ますます複雑になってくるでしょう。ぼくがあとでいろいろ質問しますが、おそらくあなた方、簡単に答弁できぬような複雑な形にだんだんなりつつあると思うのです。ぜひひとつ大臣、そういう点は、大内兵衛先生じゃないけれども、蛮勇をふるって是正をしてもらいたいと思うのです。
そうしますと、今度新しくこういうように国民年金が改正をされることになったんだが、この解決をされる点は、カタツムリが歩くように、遅々としてなかなか進まないわけですね。毎年毎年改正をされるけれども、一項目か二項目ずつ、ちょびちょびと改正をされていくわけです。ところが、一方、経済というものは、異常な速度で進んでいっている。池田さんじゃないけれども、これから十年したら所得を二倍にしてあげます。生活保護の皆さん方は、昭和四十五年には実質三倍になるんだ、こういうことなんです。生活保護でも実質三倍になるのですからね。実質ですよ。そうすると、当然、生活保護を受けないようにするのが年金なんですね。これは救貧政策じゃない。防貧政策なんだから、貧乏生活にはさらさないのだからということなんですからね。そうなりますと、厚生年金は、曲がりなりにも一万円年金を実現しようというし、共済組合も、少しは保険料を上げても前進しようじゃないかと大蔵省も言っておるし、そうすると、わが国民年金は、依然として四十年掛け金、五年据え置き、月 千五百円、こういうことになりますと、これは一体どういうことになるのかということです。そうすると、大臣は、いやいや、それは昭和四十一年がちょうど再計算のときなんだから、そこまで待ってくれとこの前答弁しておりましたけれども、しかし、生活保護は、大臣御存じのとおり、東京で、一級で一万四千二百八十九円が一万六千百四十七円になったのですから、一割三分上がったわけです。昭和四十五年に生活保護が実質三倍になるならば、少なくとも、掛け金をかけておる国民年金も、やはりそれになるような方向にいってもらわなければいかぬわけですよ。ところが、これは予算がないからいけぬということになるわけだけれども、それならば福祉国家の看板をおろしてもらわなければならぬ。三千五百円では、現在はもう生活保護以下です。生活保護以下になっちゃったのです。四十一年の改定まで待てというなら、四十一年になったときには、生活保護はもっと上がっていますよ。生活保護がもっと上がると、それならば、一体、その生活保護に追いつけるだけの保険料を納入する態勢が、日本の農民と中小企業者に、客観情勢から見てできるかといえば、できないでしょう。できないとすれば、これは、四十一年になっても、生活保護と同じ程度の拠出制の年金の引き上げというものはできないということを意味するわけです。これが四十一年にはできるというならば、四十一年には、一体いかなる構想の輪郭をお持ちなのかということなんですね。これを説明してもらわなければならぬと思うのです。もう現実の状態では、こんなものは魅力がなくなって、掛け金をする人は少なくなるという可能性があると私は思う。それならば、早くアドバルーンを上げて、ビジョンを国民に与える必要がある。四十一年のビジョンは一体何か。もう来年、再来年ですから、いまからそのビジョンというものを出してもらわなければいかぬと思うのです。それを、何にもわからぬで、四十一年の再計算の時期になったら考えるというのでは、長期のこういう年金については時期がおそい。いまからアウトラインだけは出してもらいたい。一体、厚生行政の長期構想というものを先日来大臣はそれぞれの所管の部下に命じられておるわけですから、大臣としても、命じられるからには、こういう方向でひとつ検討してみてくれという方向がなければいかぬと思うのです。何もなくて、医療協議会みたように、やってくれ、やってくれじゃ話にならぬと思うのです。そこで、こんな急激な経済成長で、厚生年金、共済組合等の長期給付というものが相当な前進を見ようとしておるときに、一体国民年金はいかにして追いついていくか、その方策を示してもらいたい、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/57
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058・小林武治
○小林国務大臣 これは先般もお答えしましたとおり、これはしかられるかもしれませんが、拠出年金というのはまだ本格的に始まっておらない。それで、現に、これを受けているものはいまでも九万七千人、こういう数でありまして、むろん、わずかな数というわけではありませんが、要するに、いままだ拠出年金というものは本格的には始まっておりません。それで、必要、必要といいますが、必要だからすべてやるという、こういうわけには、やはり国家財政全体の問題からいかない、こういうこともありまして、私どもは、一応の基準になる厚生年金というものも、ことし、ああいうふうにしてお願いをしようと思っておりますから、厚生年金がふえるということは、国民年金はほうっておいていいのだ、こういう結論には絶対になりません。大蔵省が厚生年金の改正に協調した、こういうことも、国民年金というものが頭にあるからやっておるのです。私は、いま、それじゃ幾らにするのだ、保険料はどうなるのだ、こういうふうなものは持っておりません。しかし、いずれにいたしましても、一万円年金というものができるということは、当然国民年金によい影響を与える、こういうことになるのでありまして、これはいま幾らになるかということは私は持っておりません。しかし、少なくとも、厚生年金が一万円になったということは、この問題の前進のために非常な大きな期待を国民が持てる、こういうふうにいま考えておるのでございます。それで、この間もお話がありましたが、それなら、拠出年金はそれで待つとしても、現に交付しておる福祉年金をことし上げなかったことは非常に適当でない、こういうふうなお話もありまして、私も、まあそういう感はいたすのでありますが、実は、これも前に申し上げましたように、昨年とにかくわずかでも上げた、こういうことでございまして、何かそういうことを言うとまたしかられますが、一年置いて、そうして適当な幅で次の機会に解決したらどうか、こういうことで、これも見送りになっておるのでございます。そういうものをつくれといえばつくれないこともありませんが、いまのところは、その拠出年金の改定の腹案というものはまだ持っておりません。しかし、こういうものは、数字の上でつくることはそうむずかしい問題ではありません。共済年金等のいろいろの関係を考慮すると同時に、これは財政負担を相当しなければなりませんから、それを無視してこれを進めるというわけにはまいりません。したがって、われわれも、ぜひこういうふうな共済あるいは厚生年金の引き上げに調子を合わせたいと思いまするが、やはり財政上の関係もありまするので、これらの協調というものが非常な大事な要素になってくる。こういうふうに申し上げざるを得ないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/58
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059・滝井義高
○滝井委員 私が大臣に求めようとするのは、いまここで、どのくらいの額に福祉年金なり拠出制の年金をしてくださいという、それほど厳格なものを言っておるわけではないのです。現在、客観的に見て、一体国民年金をほんとうに厚生年金なり共済組合のあとを追いつき——追い越せとは言いません、追いつくだけの客観的な情勢があるかないかということです。いまここで数字を検討しておるとかしていないとかというそういう厳格な意味でなくて、日本の客観的な情勢から考えて、この高度経済成長のもとで、四十一年になったらほんとうに一万円年金に追いつき得るだけの客観的な可能性があるかないかというその判断なんです。やはりお互いに政策論争をやるのですから、ここらの判断をお互いにきちっとつかむ必要がある。その判断でお互いに意見が一致すれば、前進し得る可能性があるならば保守党としては額は一体どのくらい出せますか、社会党はこのくらいですよ、こういう第二段階になってくるわけです。そこで私としては四十一年になって——厚生年金を少なくとも今年実現しようとしている、非常に不満であるけれども、定額を四千円か五千円に厚生年金がする、そしてそれに比例報酬部分をつけて、二十年保険料をかけて標準報酬が二万五千円くらいの労働者ならば一万円年金がもらえますよというような形に少なくとも近いところまでぐらいはいかなければいかぬのじゃないか。近いところまでというのは、いまの三千五百円が六千円なり七千円くらいまではいかなければいかぬということになるわけです。一体そういう客観的な可能性があるかどうかということを私は聞いている。私はどうもそれは非常に困難じゃないだろうかという心配をしておるわけです。なぜならば、御存じのとおり、ことしの予算をごらんになってもミンナニイイヨという予算をつくっておる。三兆二千五百五十四億円ですよ。ミンナニイイヨという予算をおつくりになったのだから、これはみんなによくなくちゃならぬわけです。ところが年金のために六百二十七億円の金を拠出と無拠出で出しているわけでしょう。それから医療のために千九億程度出していますよ。これは結核その他を除いて社会保険に千九億です。これをいま言ったように、少なくとも三千五百円を倍にしようとすれば、国庫負担というものは六百二十七億が千二百億程度にはならざるを得ないですね。それは池田さんは経済はどんどん伸びておる、心配するな、おれにまかせておけ、こうおっしゃるけれども、これは数字としてはつつましやかな要求ですよ。四十年掛け金をかけて五年据え置いて六千五百円か七千円程度の二倍の年金を四十一年には実現をしてもらいたいとすれば千二百億の国の財源が要りますよ。少なくとも無拠出もその程度に応じては上げてやらなければいかぬのです。百円とか二百円とか上げたってばく大な金が要るわけですからね。御存じのとおり拠出は百四十四億、無拠出は四百十五億ですから、ばく大な金がすぐに要るわけです。一体そういう客観情勢があるでしょうかということをことしの予算から見たら、どうしても私たちは出てこないのです。大臣は四十一年になったらやるが、ただいま構想はないから待て、こうおっしゃるから四十一年まで待ちますけれども、その客観情勢だけはある説明をしてもらわなければいかぬわけです。四十一年には前進する客観的な情勢があるという説明をしてもらわなければならぬ。そうすると、私が言いたいのは、御存じのとおりミンナニイイヨという三兆二千五百五十四億円の予算の中で公共事業の経費、しかもこれは五カ年計画に予算をとられているのですよ、道路整備五カ年計画は二兆一千億が四兆一千億になった。そうすると、五カ年計画にとられているのだからこれは確実に食っていくわけです。むしろ二、三年すると修正されてもうちょっとふえるかもしれません。そういう情勢です。そうすると、三兆二千五百五十四億円の予算の中で道路、港湾等の公共事業に使われる経費は一割八分ですよ。そして交付税の中に含まれている公共的な経費は、六千億ちょっとこえる交付税の中でやはり一割八分程度です。三兆二千五百五十四億の三割七、八分は公共的なものに食われてしまっていると、予算の弾力が非常に少なくなっている。この予算の弾力が少なくなっておる中で現金をもらわなければならぬのですよ、年金、社会保障というのは手形じゃだめなんだから。そうすると確実に予算を食うわけです。そこで私たちは歴代の厚生大臣に向かって、河野さんという実力大臣が建設大臣になったら二兆一千億程度のものが四兆円をこえる五カ年計画ができるならば、貧しい階層の低所得階層のための社会保障のためにも長期計画をつくりなさい、そして確実な予算の伸びをしないとこれはたいへんになりますよということを言ってきておる。それがまだ実現しない。したがって、もはや三十九年度予算というものは非常に弾力がなくなってきたでしょう。弾力性がなくなってきて結果は一体どういうことになっておるかというと、いま言ったように社会保険だって千九億程度で、それを今度は三百億、四百億伸ばすなんということは非常に不可能です。そうすると、一方においてはかちかち山のタヌキのしりに火がついたような緊急な医療費の前進をやらなければならぬ、医療費の緊急是正がある。保険料の負担は低所得階層はできないというなら、保険料も見なければならぬというので、医療費のほうで金を食われれば、大臣が言うように、本格的な拠出の始まっていないというこの非常に緩慢な要求しかない。年金に金が回る可能性はないのです。予算全体は非常に弾力性を失った。そして火急な医療問題が出ておる。そして長期構想で公共事業が金を食っていくというならば、長期の本格的な拠出の始まってない年金に金が来る客観情勢はないです。だから、この客観情勢のない年金制度を、バラ色でなくてもいいですから、ささやかな夢を一体どうやって国民に与えるかということです。ここの基本的な構想が厚生大臣として打ち出せない限りは、われわれがここで百万べん年金の問題を論議したって前進がないのです。だから、この根本的な問題の前進の見通し、四十一年になったらその構想をやるのだと言われるならば、四十一年における客観情勢を、私のいま言ったことを反論して、こういう点で滝井君だいじょうぶだ、池田さんが経済のことはまかしておけ、こう胸をたたいたように、ひとつ年金の前進についておれにまかしておけ、その理由はこうだ、こういうことを御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/59
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060・小林武治
○小林国務大臣 あなたは困難だ困難だと言われる。むろん困難な問題であります。困難だからといってほうっておくわけにはいかない。厚生年金なり共済年金の今日のような姿をこれから前進しようということで、私どもはこういうふうにします。こういうことはいま言えないが、しかし、困難だからといってほうっておくわけにはいかないのです。あとう限りの努力をする、こういうことを申し上げておるわけでありまして、これが倍になるか幾らになるかというようなことは、これはわれわれが計画をたとえ持ったところで財政事情というものは必ず大きな一つの制約になる。しかし、政府としては、社会保障の前進のためにあらゆる努力をしなければならぬということしかいまのところは申し上げようがない。とにかく厚生年金が一万円になるということは、ほかのことはどうでもいい、これだけやるのだ、こういう考えでは政府としても出発はできないので、非常な困難の中にも何とかこの問題を少しでも前進させなければならぬ、こういう立場にあるというふうに私は考えておるのでありまして、何か滝井さんは私が困難だと言い切ればそれでいいようにもとれるような御発言をなさっておりますが、私どもむろん困難だと思っております。困難だが、困難だと言うてはおれない問題ではないか、年金の改善についてはもうすでに足を踏み出しておるのだ、そういうことを私どもは考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/60
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061・滝井義高
○滝井委員 私は大臣に困難だという発言を求めようとしておるのじゃないのです。ナポレオンではないけれども、わが辞書には不可能はないということを言ってもらいたいのです。そのためには踏み出した足が停滞してはいかぬ、足踏みをしてはいかぬのです。踏み出した足が一歩でも二歩でもいいから前進する体制を、いまの苦しいこの弾力性を失った予算の中からどう一体活路を見出していきますか、これをお聞かせ願いたい。われわれも悩み、苦慮してその方法がなかなか見つからぬで困っております。こういうことなんです。われわれが分析した結論はそこに達しております。だから、あなたのあとう限り努力するということは、お互いにあとう限り努力したいのです。しかし、努力をする限りにおいては、こういうところとこういうところと押えたらこういう前進ができるのだという答弁がなければ、政治家の答弁にならぬわけです。私たちは納得がいかないのです。だからそうなれば私がさいぜん主張したように、結局それはチャチなその場限りの改正になっていって、国民にバラ色とまでは言わないが、ささやかな夢も与えられないことになりますよ、それではいかぬから、ひとつ何とかしようじゃないかというのが私の持ちかけなのです。したがって、大臣に不可能なんて言わせたらたいへんだ、大臣が不可能だというならば、大臣かわってもらって、可能にする大臣に出てもらわなければならぬことになるわけで、私はあなたが可能にできるだろうと思って、可能の方法をひとつ探究してもらいたい、何かありますか、こういうことなのです。前向きで議論をしているのですよ。建設的な意見を言っているつもりなのです。そのためにはこういう大きな壁がありますよということの壁だけは出す必要がある。その壁をあなたがいかに乗り越えるか、克服するかということは、現実に政策を担当していらっしゃる政治家としての小林厚生大臣の任務である、その任務を果たすためには一体どうしますか、こういうことを質問しているのです。だから、その壁を乗り越えてくれる、壁を克服する政策を言ってもらわぬ限りは、ただあとう限り努力するのだ、困難なことはわかっているということだけでは答弁にならぬですよ。だから、そこをひとつ御指導願いたい。これは大臣がそこまで行かなければ、専門にやっている局長のほうで、こういうぐあいにやってみたらどうでしょうか——何も額は言う必要はないのですからね。それがなかったら政策は立たぬですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/61
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062・山本正淑
○山本(正)政府委員 確かに滝井先生がおっしゃるようなむずかしさがあるということは、私どももよく承知をいたしております。そこで国民年金の、特に拠出年金の改正問題というのは、いろいろのくふうをこらしてみなければいかぬと思うのでございまして、現在も国民年金審議会におきまして、次の改正というものについては基本的にどういった態度で臨むべきかということについて御意見を伺っておるような次第でございまして、具体的に申しますと、年金の額をいかにするかということも一つあるわけでございますが、いま御指摘もありましたように、負担能力という問題が一つあるわけでございます。
現在の定額百円、百五十円の保険料、私はこれが全然動かせないものというふうには考えておりません。どこまで上げ得るかという限度の問題はございますが、この制度ができました以降におきます国民所得の上昇、これは平均的には参らぬと思いますが、それから見ましても、保険料のある程度の引き上げ、どこまでということは別として、そういう方法による面が一つ。
それからまた、現在フラットで百円、百五十円というふうな保険料になっておりますのを、これをもう少し所得に比例させた面を付加していく。これがどう使われるか、この所得に付加した面を再分配に使うか、それとも一部は再分配に使って、一部は本人に返ってくるような使い方にするかということのくふうも一つ可能ではないかと考えます。
それからまた、現在の立て方におきましては、再分配の場合には国庫負担金によってまかなわれておるわけでございますが、その平均的にまかなわれておる形と、これまた所得の少ない者と多い者とに分けまして、国庫負担の再分配の機能を分けて考えてみる、そういったくふうも可能であるのじゃないか。
いま申しましたようなことを総合的に考えてまいりますと、ある程度拠出年金の改正というものは可能であるというふうに考えておりまして、それを幾らにするか、また幾らにすることによって保険料がどうなるかということは今後の問題でございますが、そういった要素を私どもいま検討いたしている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/62
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063・滝井義高
○滝井委員 大臣いまお聞きのように、結局負担能力という点に目をつけて、今度の一万円年金を実現しようとする場合にも、千分の三十五の労使折半の保険料を千分の六十に上げよう——これは保険ですから、当然給付がよくなればある程度の保険料の引き上げというものは忍ばなければならぬ。これは農民や中小企業、高度経済成長政策のしわ寄せを受けている層でも、老後を保障する制度がほんとうに確立されようというならば、ある程度の引き上げにも応ずると思うのです。しかし、ある程度の引き上げには応ずるけれども、これの限界というものはそう高くない。非常に低いところにしか引き上げの限界というものはないのではないか。そう高度の引き上げはできないのじゃないか。
それからいま一つは、フラットの所得を報酬に比例をさしていくということになると、三千五百円とかいうような低額の年金を差し上げる場合に、医療保険ならばわりあい短期で片づくのだけれども、長期のこういう老後を保障するものに再分配機能をあまり強くつけるということになると、保険料が集まらぬという可能性が出てくる。それならば、私はこの金は自分で信託にでも預けておいたほうが得ですよということになりかねない。ここにも限界があります。そうしますと、再分配機能を発揮しますために、国の税金でまかなっていくという形になる。これを加味せざるを得ない。ところが、これもさいぜん言ったようになかなか限界があるということになりますと、これはなかなかうまくいかないのですね。
そこで問題なのは、こういうような医療の面を見ても——私いずれ小林理事さんとも相談をして、あしたかあさってやはり一ぺん医療費の問題をやらしてもらわなければならぬ時期が来たと思う、緊急是正というわけだから。去年やらなければならぬものが、だんだん延びていって緊急でなくなっておるのですから、やらなければならぬのですが、この問題がいま火がついて相当の予算を食うという客観情勢が出てきておるわけですね。そうしてこの年金を四十一年にはやらなければならぬ。四十一年になると医療費の問題がまた本格的に出てくる。緊急是正ではない。そうすると、これは長期の老後保障と短期の医療保障との間にシーソーゲームが起こって、たいへんな財源を食うことになる。
そこで山本さんに、事務当局として——大臣はなかなかそこまで御検討になっておらぬようであるから、あなたにひとつ尋ねてみたいのだが、ここらあたりでひとつ、あまり国の金ばかりをたよりにせずに、あなたが第二番目に指摘をされたように、相当の報酬比例的な制度を確立しようという御意見もあるので、それをもう一歩前進させて、ここに社会保障という目的税をとって、長期と短期のこの行き詰まりつつある日本の社会保障をひとつ転換をする研究をしたことがあるかどうか、社会保障という目的税をとって転換を考えたことがあるかどうか、事務的に検討したことがあるかどうかということですね。これはまだ自民党の政策でないわけですから、壁が厚ければ厚いほど何か転換政策を考えなければならぬときが来たと思う、日本の社会保障は。それは医療問題にしても年金の問題にしても、労働組合が反対をしてくる、医療問題は療養担当者側と支払い側と両方から反対をするというようなことは、明らかに行き詰まりが出てきておるということですよ。だからここらあたりで抜本的な何か方向転換をやらなければ福祉国家は建設できない。私が冒頭に指摘したように、福祉国家論を唱えておるけれども、福祉国家よりか非福祉性というものが非常に濃厚にあらわれておる。だからこれを打開するためには、やはり所得の多い人から相当の金をいただこうというならば、もう目的税以外にないのではないか。その目的税のやり方は、物品税の付加税とか奢侈税とかいろいろあると思うのですが、そういう方向にいかざるを得ない形になっておるのではないか。そうしていまあなた方が考えておるプール資金なんというものは、反対があってできないだろう。特に健康保険における——これは健康保険のときに論議しますが、できないだろう。それならば、もはや一挙に全国民から金を集めていくという形をとらざるを得ないのではないか。それでこの社会保障の弊害を乗り切る以外ない。それが四十一年における日本の年金制度確立のてこではないかという感じがするのですけれども、こういう点について何か検討したことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/63
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064・山本正淑
○山本(正)政府委員 ただいま御指摘がありました意味におきまして、そういう、抜本的にといいますか、構想を根本的に考え直す時期に来ておるか、将来くるかという見通しの点につきましてはいろいろあるかと思いますが、御承知のようにこの国民年金制度をつくろうと言った政府においてもまた国会においても論議が出てまいっておりました当時において、厚生省におきましても委員をあげて問題を御論議願ったのですが、その際においてやはり目的税による国民年金の創設という意見が出ておったのでございまして、ただこれについては非常に問題が多いということから一つの意見として出ておりましたが、これを具体的に課するということにはならなかったわけでございます。そこで年金制度において将来そういったような問題を考えるかどうかということになりますと、大きく言いまして確かにいまおっしゃられたような目的税の制度というものを考える余地があるかどうか、具体的な方法があるかどうかということが一つだと思います。それからもう一つは、厚生年金という制度に現在五人未満をまだ拡張しておりませんし、これはごく近い機会に五人未満に拡張していかなければならぬだろう、そういう努力をするつもりでおるわけでありますが、そういたしますと、独立自営業者というところまでも含め得るかどうかといった問題もいずれ派生してくる問題じゃないか。そうして産構造が変わりますので、厚生年金というものを母体にしてずっと包含していくという方法があるかどうかということも私ども研究しなければならぬと思います。またいま滝井先生の御指摘になったような方法もそれと並行して研究しなければならぬ時期がくるのじゃないか、かように考えておりますが、それは研究という意味においてだけでございます。その点そういうふうに御理解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/64
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065・滝井義高
○滝井委員 国民年金の昭和三十四年に発足する当時に目的税の論議が起こった。その当時そういう目的税を論議するからには相当の資料を集めたと思いますが、何かそういう集めた資料ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/65
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066・山本正淑
○山本(正)政府委員 詳細な資料はないと思いますが、実はその当時厚生省におきまして五人委員会というものができまして、その委員会において議論がされたわけですが、その委員会における論議としてそういうものが出ております。いま資料があるかどうか存じておりませんけれども、そんなような段階のことを承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/66
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067・滝井義高
○滝井委員 五人未満に使用されておる労働者が約二百万人程度と私聞いておりますが、あるいは数字は少し間違っているかわかりませんが、二百万人程度おったと思うのです。こういう層を厚生年金に入れるのだが、いま国民年金に加入していることになっておるわけです。ところがこういう層は脱落が多い層なんです。したがってこういう五人未満に使用されている人たちを厚生年金に入れたにしても、あるいは国民年金に入れたにしてもその制度の足手まといというか非常に大きな制度に対しては過重になる、負担が重くなるということは明らかなんです。すなわち国庫負担がよけいに要るということなのです。そういう形になってくることは火を見るより明らかなんです。そうしますと、何かやはりここらでほんとうに皆保険政策なり皆年金制度というものを実現しようとすれば、ある程度思い切った対策を立てていかない限りにおいては厚生省の行政についての財源はなくなる、非常に枯渇してくる。しかも集めた零細の金は大企業中心に取られてしまって特別勘定をつくってもらいたい。二割五分を四割とか五割にしてもらいたいというけれども、一向に百年河清を待つに等しく実現をしていかない。こういうことによってやはりみずからの独自の社会保障制度確立の政策というものをうたい出して大蔵省と折衝していく以外にないと思うのです。そういう点では小林厚生大臣も、自民党の池田さんはなかなか税金取りの名人ですからそういう方面の大家だから十分相談されて検討してもらいたいと思うのです。それからもし過去においてそういうことを検討された資料があればどういう点が具体的な論議の問題になったのか、どういう点に目的税をつくった場合に隘路が出てくるのか、そういう資料があればあとでいただきたいと思います。
次は、大局論をやりましたから、少し今度は具体的に……。大局論はどうも議論がかみ合わぬのでおもしろくなかったけれども、もう少し議論がかみ合うように考えてもらいたい。年金の土俵というのは、単にこの年金という一つの幅の中だけでものを考えたっていかぬのです。むしろ一国の運命とともにある年金です。われわれの人生を左右するものなんだから人生的な立場で長期の展望でやっぱり考えてもらわなければだめですよ。
次は具体的なところに入るが、今度のこの改正を見ますと、いままでの外見的な身体障害者のみに限っておった障害年金の範囲を、結核とか精神病等に拡大をした、いわゆる内部障害まで拡大してくれたわけですね。そこで今度は少し具体的になるんですが、具体的になる前に、この前個人的にはお話しましたけれども要望をしておきたいのは、国民年金法及び児童扶養手当法というこの法律の条文が非常にむずかしいということです。これはたったこのくらいのことですけれども、これをていねいに読んで理解しようとすれば、この六法全書の、この改正前の国民年金法と首っ引きで条文を読んでいかぬとわからないんですよ。それを読んでもよくわからぬ。非常にむずかしいのです。おそらく大臣もたとえば児童扶養手当法の九条の一項なら一項をすらすら読んで、これは何が書いてあるかすっとはなかなかわからぬと思うのです。これは相当専門家でなければわからぬのです。そこで先日個人的にお話をいたしましたように、労働省は法案を出すときには逐条説明を出してくれるのです。まず改正条文の一条なら一条の要旨を簡単に書いて、そうして次にはその一条の一項のこのことはどういうことを言うておるかというその要旨を、各条項について逐条説明を、いわゆるコンメンタールと同じような要約した説明を書いて、われわれに一冊の書物にして法律の改正をくれるわけです。これは労働省は当委員会に出す法案の数も少ないのでそういうことができると思う。しかし厚生省は非常に数も多いのではなかなかそこまで官房のほうで手が回りかねると思います。そこで全部の法案についてそういう無理な御要求は申し上げません。やはりこういう国民年金のようなむずかしい法案については逐条解説をやったものを議員にお配りになる。まあ手のうちを見せてしまうと議員が勉強して質問したら困るという、そういうけちな気持ちを起こさずに、その要旨を読んでお答えになったらいいのだから、そういうようにひとつぜひ今後国民年金法の改正については特にまず要望したい。これは非常にむずかしいんですよ。とにかくはち巻きをして読んでもこれだけで五日ぐらいかかる。ていねいに逐条的にやると五日ぐらいかかる。したがってぜひひとつ……。これを審議する上においては、われわれがわからなければ、一々国民年金法の支給条件を改正した三十条を、山本さん一体これをどう解釈するのかねと一々あなたに電話をかけて聞くのも、あなたも繁雑でうるさかろうし、われわれも一々電話をかければ電話料も損する。なかなかたいへんなんですよ。貧乏代議士だから電話料も惜しむことになるのです。ぜひひとつそうしていただきたいと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/67
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068・山本正淑
○山本(正)政府委員 確かに労働省のやり方は非常に親切と思いますので、私たちも親切なやり方を勉強いたしまして、次会にはそういう趣旨に沿った形にいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/68
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069・滝井義高
○滝井委員 厚生省が不親切なわけじゃない。厚生省もなかなか親切だけれども、どうもこれはむずかしいので、ぜひひとつ議員に親切であってもらいたい、こういうことです。
それではこれからちょっと具体的になりますけれども、今度内部障害が年金支給の対象になるというように範囲が拡大をされておるわけです。まず結核による全障害、それから非結核性疾患による呼吸器機能の障害というように結核と非結核のものを分けてきておるわけですね。それからいま一つは、精神病質、神経症、精神薄弱を除く精神障害、こういうふうになってきているわけですね。これだけのものを今度は対象にしてくるわけです。そうすると、この具体的な区別はだれが一体どうやってやるのかということです。先日ライシャワー事件が起こりましたね。ライシャワー事件で新聞を読んでみると、暴行を加えた青年は、ある新聞は精神分裂病者だと書いている。ある新聞を見ると、あれは精神病質者だ、こう書いているわけです。そしてある学者は、朝日新聞だったと思うのだけれども、あの青年を精神病質者だというのは間違いだ、あの青年は精神分裂病だ、こういうふうに言っているのです。そうすると、おそらく普通の人は新聞を見て、精神病と精神病質者とは大して変わらぬ、どっちでもいい、これは頭のパーなやつがやったのだ、こういう簡単なことになっている。ところが、今度はどっこい、年金になるとそうはいかない。ライシャワーさんを刺した青年は、精神分裂者であろうと精神病質者であろうと、とにかくちょっと左巻きの青年だったということで世の中は済んでしまう。ところが、いざ今度は、その青年がこの年金の金をもらうかもらわないかということになると、ライシャワーさんの刺されたときの新聞を出してみると、こっちは分裂病になっている、こっちは精神病質者になっているぞ、これはどっちだということになる。この区別はだれが一体どういうようにしてやってくれるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/69
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070・高木玄
○高木説明員 いま先生のおっしゃるとおりに、精神病質、異常性格と精神病の区別はなかなかむずかしいと思いますが、この精神に関します障害年金の診断書の作成は、必ず精神衛生法による精神鑑定医が診断書を作成するということにいたしております。そうしてその審査は県のほうに精神の専門医を置きまして、その人がその診断書を見て障害年金の認定をする、こういうふうにいたす所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/70
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071・滝井義高
○滝井委員 これから自民党のほうで何か部会をやるそうですから、各論に入ります私の質問は後日に留保して、きょうはこれでやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/71
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072・小沢辰男
○小沢(辰)委員長代理 本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後三時五十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03519640421/72
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