1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年四月二十七日(月曜日)
午前十時四十三分開議
出席委員
委員長 田口長治郎君
理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君
理事 亀山 孝一君 理事 澁谷 直藏君
理事 田中 正巳君 理事 小林 進君
理事 八木 昇君
伊東 正義君 浦野 幸男君
大坪 保雄君 熊谷 義雄君
小宮山重四郎君 竹内 黎一君
地崎宇三郎君 西岡 武夫君
西村 英一君 橋本龍太郎君
藤本 孝雄君 松浦周太郎君
松山千惠子君 伊藤よし子君
滝井 義高君 八木 一男君
山田 耻目君 本島百合子君
吉川 兼光君 谷口善太郎君
出席国務大臣
内閣総理大臣 池田 勇人君
厚 生 大 臣 小林 武治君
出席政府委員
内閣法制局長官 林 修三君
厚生事務官
(大臣官房長) 梅本 純正君
厚生事務官
(児童局長) 黒木 利克君
厚生事務官
(年金局長) 山本 正淑君
厚生事務官
(社会保険庁年
金保険部長) 實本 博次君
委員外の出席者
厚生事務官
(年金局企画課
長) 高木 玄君
厚生事務官
(社会保険庁年
金保険部国民年
金課長) 福田 勉君
厚生事務官
(社会保険庁年
金保険部福祉年
金課長) 安福 信雄君
専 門 員 安中 忠雄君
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四月二十四日
委員本島百合子君辞任につき、その補欠として
栗山礼行君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員栗山礼行君辞任につき、その補欠として本
島百合子君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十七日
委員本島百合子君辞任につき、その補欠として
栗山礼行君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員栗山礼行君辞任につき、その補欠として本
島百合子君が議長の指名で委員に選任された。
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四月二十二日
毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案(
内閣提出第一三〇号)(参議院送付)
同月二十四日
保健所において執行される事業等に伴う経理事
務の合理化に関する特別措置法案(内閣提出第
一三七号)(参議院送付)
同月二十三日
公衆浴場業の健全経営維持管理の特別措置に関
する請願(浦野幸男君紹介)(第三〇六八号)
同(穗積七郎君紹介)(第三一三八号)
同(野原正勝君紹介)(第三一七九号)
同(中曽根康弘君紹介)(第三二六六号)
同(笹山茂太郎君紹介)(第三三六三号)
母子福祉法制定に関する請願(志賀健次郎君紹
介)(第三〇六九号)
戦争犯罪裁判関係者の補償に関する請願(羽田
武嗣郎君紹介)(第三〇七〇号)
同(中村寅太君紹介)(第三一三七号)
療術の制度化に関する請願外四件(森山欽司君
紹介)(第三〇七一号)
同(黒金泰美君紹介)(第三二〇八号)
同(古川丈吉君紹介)(第三二〇九号)
国有林労働者の差別待遇撤廃等に関する請願外
八件(八木昇君紹介)(第三〇七二号)
石渕ダム建設に伴う補償関係者救済に関する請
願(千葉七郎君紹介)(第三一六二号)
戦傷病者特別援護法の改正に関する請願(羽田
武嗣郎君紹介)(第三一七〇号)
同(松野頼三君紹介)(第三一七一号)
同(羽田武嗣郎君紹介)(第三二七七号)
同(松澤雄藏君紹介)(第三二七八号)
同(赤澤正道君紹介)(第三三二六号)
同(大坪保雄君紹介)(第三三二七号)
戦傷病者戦没者遺族等援護法による傷害年金、
一時金の不均衡是正に関する請願(羽田武嗣郎
君紹介)(第三一七二号)
同(松野頼三君紹介)(第三一七三号)
同(羽田武嗣郎君紹介)(第三二七三号)
同(松澤雄藏君紹介)(第三二七四号)
同(赤澤正道君紹介)(第三三二二号)
同(大坪保雄君紹介)(第三三二三号)
戦傷病者中央援護福祉施設建設費助成に関する
請願(羽田武嗣郎君紹介)(第三一七四号)
同(松野頼三君紹介)(第三一七五号)
同(羽田武嗣郎君紹介)(第三二七五号)
同(松澤雄藏君紹介)(第三二七六号)
同(赤澤正道君紹介)(第三三二四号)
同(大坪保雄君紹介)(第三三二五号)
戦傷病者の妻に対する特別給付金支給に関する
請願(羽田武嗣郎君紹介)(第三一七六号)
同(松澤雄藏君紹介)(第三二七九号)
同(赤澤正道君紹介)(第三三二八号)
同(大坪保雄君紹介)(第三三二九号)
戦時中の軍需品生産に対する軍部前渡金に関す
る請願(西村直己君紹介)(第三二〇七号)
理学療法士及び作業療法士の法制化に伴う経過
措置に関する請願(菅野和太郎君紹介)(第三
二四三号)
全国一律最低賃金制の即時法制化に関する請願
(村山喜一君紹介)(第三二四四号)
公衆浴場営業用上水道及び下水道料金減免に関
する請願(鯨岡兵輔君紹介)(第三二八四号)
同(四宮久吉君紹介)(第三三三五号)
同(天野公義君紹介)(第三三七二号)
生活保護基準の引き上げ等に関する請願(正示
啓次郎君紹介)(第三三三八号)
全国一律最低賃金制の確立に関する請願(谷口
善太郎君紹介)(第三三三九号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正す
る法律案以)(内閣提出第一〇五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/0
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001・田口長治郎
○田口委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/1
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002・八木一男
○八木(一)委員 厚生大臣が来られる前に、年金局長に少し詰めた話で伺っておきたいと思います。
今度の国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案について、社会保障制度審議会の答申が出ております。この答申はいままで各具体的な法案についての諮問に対する答申とはだいぶ異例なことが書いてあると思うのです。それについて事務当局の責任者としてどのように理解をしておられるか伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/2
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003・山本正淑
○山本(正)政府委員 おっしゃるとおり、毎年法律改正案を立案いたすに際しまして、各種審議会に諮問いたしまして御意見を伺っておるわけでございますが、今回社会保障制度審議会に諮問いたしました答申につきましては、一般的にこの原案をどうするということのほかに、具体的に項目をあげまして「至急検討実施すべきものと考える。」というふうな趣旨で、六項目が提案された次第でございます。この六項目につきましては相当基本的な問題を含んでおるわけでございます。まず一番の「年金額の引き上げ」、これは非常に基本的な問題でございますし、かつ二番目の「福祉年金の所得制限の緩和並びに所得水準上昇に伴うスライドの実施」、特にスライドの実施というのは基本的な問題であります。それに三番目の「老齢福祉年金の開始年齢の引き下げ」、これも財政的にも大きな問題のあるところでございます。それから四、五と出ております「夫婦受給制限の撤廃または緩和」、「障害(福祉)年金に関するなど扶養加算の新設」、これはおそらく配偶者と子供だと思います。そういった問題、それから六番目の「障害等級の適用範囲の拡大」、こういった項目でございますが、いま申しましたように、基本的な問題と、それから今後福祉年金を改善する際において優先的にといいますか、特に取り上げていく方向で考えなければいかぬ事項、かように理解いたしておりまして、今回の改正におきまして、直ちにその結果をそのまま盛るということにはまいりません事項でございますが、今後の改善につきまして、そういった方向で考えていかなければならぬ事項と考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/3
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004・八木一男
○八木(一)委員 今後の改正と言われると、事務当局の責任者として、これは来年度の改正には必ずこれを全部盛り込むというような努力をされなければならないと思いますが、それについて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/4
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005・山本正淑
○山本(正)政府委員 実は毎年改正案を出しておりまして、そしてそれに伴いまして附帯決議を実は衆参両院ともいただいておるわけでございます。今回の改正につきましても、おそらくそういったことを御指摘されることと思いますが、附帯決議をまず一番先に私どもは考えなければいかぬことでございまして、それについて絶えず速急にできるもの、翌年度の予算においてぜひやりたいもの、それから翌年度の予算においてぜひやりたいもの、それから翌年度といかなくとも制度的に考えなければいかぬもの、こういうふうに分けまして、極力それに沿うようにいたさなければならぬ、かように考えております。もちろん国会の附帯決議のほかに、こういった審議会の御指摘の事項というものは方向としては大体同じようなものが多いわけでございまして、その意味におきましてはどちらを優先とかいうような必要はないわけでございますが、やはり国会の附帯決議の事項との関連におきまして、こういった審議会の御指摘の事項というもも十分前向きで考えなければいかぬ、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/5
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006・八木一男
○八木(一)委員 国会の附帯決議を最優先する、けっこうであります。そのとおりであります。しかし、こういうような審議会の答申の事項もできるだけ尊重してもらわなければならぬ。ところで、両方が競合してないものですね、同じ方向に、国会の衆議院の社会労働委員会の附帯決議がつき、参議院でも、この前も全然同文書のものがつき、それから社会保障制度審議会でも同じものがついた、そういうものができないとすればこれはとんでもないことだ。来年度から十分にこういうものが中に入るということでなければならない。それについてもう一回事務当局の責任者としてのはっきりした前向きの御答弁を、簡単でけっこうですから願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/6
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007・山本正淑
○山本(正)政府委員 事務当局といたしましてはその線に沿った事項をできるだけ実現するという方向で立案いたしたい、かように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/7
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008・八木一男
○八木(一)委員 いま山本年金局長から六項目を出されましたけれども、その前に「今回の改正点については、概ね了承するが、」とあります。「概ね了承するが、まず第一に、障害者の範囲に精神薄弱者を含めるなど範囲を拡大すべきであり、第二に、公的年金との併給の緩和については、戦争公務によるものとそれ以外のものとの間にある不均衡について検討する必要がある。」このように、第二の事項では「検討する必要がある。」第一項では「範囲を拡大すべきであり、」と指示してある。そこで「概ね了承するが、」と書いてありますが、というのは、その点を除いて了承するという意味に、これは日本語の文章上解釈されるわけです。ですから、この改正点はおおむね了承するけれども、障害者の範囲に精神薄弱者を含めるなど範囲を拡大しなければならないということをはっきり指摘しておるわけです。それについて、何ゆえに、提出されるまでの間にそれを手直しをして提出されなかったのか。その点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/8
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009・山本正淑
○山本(正)政府委員 私の誤りでなければ、たしかこの国民年金法の改正案を諮問いたしました当時におきましては、重度精薄児手当法は諮問されておらなかったと思いますが、したがいましてこの精神薄弱者に対する政府の施策というものが何を考えておるかということについて、公に審議会に対してこういうふうな考えでいきたいという方向を諮問いたしていない段階におきまして、精薄者については、国民年金法の改正に際して考えるべきだという意味もあったのじゃないかと実は理解いたしたのでありまして、その後におきまして、重度精薄児手当法というものを別途に立案いたしまして、審議会の審議をわずらわしたという結果に相なっておりまして、彼此総合いたしまして、現実の問題としては精神薄弱者対策というものをどうするかということが現実的な要請でありまして、これをどういう手段によってやるか、これは技的術な問題もあるわけでございまして、そういう意味におきまして、問題は実態に即した政策を実現するということで、今回の国民年金の法律において処理をしなくともよろしいというふうに、事務当局としては理解いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/9
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010・八木一男
○八木(一)委員 いままで年金局長に御質問申し上げておりましたが、厚生大臣にこれから御質問を切りかえる予定でございますので、ひとつ厚生大臣にお願いいたします。
いまの事務当局の御説明それから事務当局的な理解は誤りで、精神薄弱者対策について施設の問題が一番大切であることは論議の過程にも出ておりましたし、そのプロセスがどうであろうと、それが一番大事なことであることは自明の理であります。金の問題以上に施設の問題であります。それは自明の理でありますが、今度は事、金の問題になりますと、重度精神薄弱児扶養手当法案が出ております。それ自体は、何にもないところにこれだけ出たのだからその点ではプラスであります。施設の問題はそこで訓練をし、自立が完全にできないとしても、これから人間らしい気持ちで一生涯を送れるような訓練をするということは非常にいいことです。その点ではもう絶対的なことですが、金の問題になると何かというと、これは精神薄弱というような精神障害があって、所得能力がない、生活能力が少ないという状態になると、金の問題でどの人が一番手当が必要かということになれば、これは全般的には成人した精神薄弱者であります。子供の場合には親がおります。おるのが普通であります。おらない不幸な子供もございますけれども、普通の状態においては親が扶養をするということになっている。二十歳をこえた者になったならば、これは普通の状態においては自分で生活をしなければならない。それだけのハンディキャップをしょって、この競争の激甚な社会で暮らすときにいろいろな労働力、生活能力が少ない者に対する金の手当てという面では、これは二十歳がいいか、十九歳がいいか、十八歳がいいかは別として、ある程度自分で自立しなければならない年齢以上の人に対する金の手当てのほうが大切である。重度精神薄弱児手当法案、あるいは児童扶養手当法、これはそういう子供をかかえた親御さんたちを激励する意味では、それにお金を出すことはプラスで、もちろんけっこうであります。しかし金の問題になると、それ以上の年の問題の人をより重視しなければならない。そういう点が精神薄弱児並びに精神薄弱者に対しては、リハビリテーションの意味でとにかく施設が一番大事であることは、社会保障制度審議会の論議の中においても、またもちろん論議がなくとも、一般的に絶対的に大事でありますが、施設の問題が十分に進んでいないというのがいまの厚生省の行政の非常な欠点でありまして、そこでお金の問題を出した、それ自体は悪くはない、悪くはないが、金の問題を出したときに、そういう年配の人に対する金の問題を放置することは許されない。それで、こういうものが出ている論議の過程では、施設を重視する論議が出ました、私も出しました、聞いておられたと思う。しかし、これとこの答申とは関連がない。施設をしっかりしなければならないということは、この前の総合調整でも出しましたが、この答申は年金法に関してですから、そこのところでうたってもいいけれども、別のところで指摘するのが適切である。それでうたっていないけれども、一番大事なのは施設がである。この年金法及び児童扶養手当法の改正に関連しては、片一応に法案が出されていなかったならば、もちろんもう一つの重度精神薄弱児扶養手当法案が出されておったとしても、私どもとしてはこの問題は消滅するものではない、それはおわかりだと思う。その点で、ここで「概ね了承するが、まず第一に、障害者の範囲に精神薄弱者を含めるなど範囲を拡大すべきであり、」というのは、明らかに、この法案を了承するについてこれだけは変えるべしという意思表示をしているわけです。第二段は「検討する必要がある。」とありますから、これは少しずれてもかまいません。公的年金とのバランスの問題でありますけれども、第一段は変えて出さなければならぬ。それをなぜ変えて出さなかったか。これは社会保障制度審議会の答申していることを無視していると思うが、いまの質問の関連上、厚生大臣と年金局長、双方に御答弁をお願いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/10
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011・小林武治
○小林国務大臣 この問題は、この委員会で私は再三はっきり答弁を申し上げております。私はこの点に満足しない、すなわち精神薄弱者も入れたい、こういうことを考えておったが、いろいろの都合で入らなかった、このことを私ども厚生省としては非常に申しわけなく思っておる、こういうことで結果的には入らなかったが、私は入れるべきものであるということを考えておったができなかった。それで、これは近い将来に必ず解決しなければならぬ問題であるということを、この委員会で私ははっきり申し上げております。
それで議論としては私は、実はいまこういうことを申し上げてもしようがありませんが、あの重度精神薄弱者の中へ成年者も出したのであるが、いろいろの都合でこれをも実現できなかったということでありまして、私の本意ではない。またこのことが、これは保険事故でないというふうな、理屈か議論か私は知りませんが、そういうことのためにいままでこれが実現できなかった。したがって、私はそういう議論にとらわれておるべきものじゃない、だからして別途の法律で出してもらいたいということでやったことも、もう御承知になっておることと思います。そういう事情をひとつ御了解願って、この際これを入れなかったことは私どもとしては非常に遺憾である、何らかの方法によってこの欠陥を補うべきである、このようにかたく考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/11
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012・八木一男
○八木(一)委員 厚生大臣の前向きの御答弁で、非常にこの点は力強く存じます。そこでその御決心を進めていただきたいのですが、この前と重なるようですけれども、大切なことですからもう一回申し上げて、それを御検討願いたいと思いますが、重度精神薄弱者扶養手当法案の中に成人を入れる場合に、いまの金額に、普通の場合だと同じようにならわれてしまうと思うのです。さらにそれを熱心にして、金額をふやされることもお進めになると思います。しかしながらあの法律体系で、いまの政府のベースだとそう飛躍的に金額のふやせる要件が少なくなる。
そこでいまおっしゃった保険事故その他の問題であります。その問題を三大学者のチェックに対して、小林厚生文臣のほんとうの現象に対する熱意と、その政治力で、そのようなささやかな、下らないチェックを排して、精神薄弱児に——精神薄弱児は重度精神薄弱者手当法案をもっと拡大強化されることでいいかと思いますが、精神薄弱者に対しては年金法を適用するということにされるべきであると思うのです。年金法の場合にはいまのところ精神薄弱の状態が重度であり、一級内障害に当たる者になりました場合には、いまの年金改正がされてない状態においても最高四万八千円まで一級でありますから出ることになっております。ところが重度精神薄弱者手当法を適用拡大しても、いまの金額をそう二、三年で飛躍的に直されることはむずかしいのではないかと思う。そういうことで、薄弱者のほうは年金法の適用をされるという道をぜひ小林厚生大臣の手によって進めていただきたいと思う。それについて厚生大臣の御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/12
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013・小林武治
○小林国務大臣 この答申にもそう書いてありますし、何とかそういう理論を調節してもらって私は入れてもらいたい、こういうふうにかたく考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/13
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014・八木一男
○八木(一)委員 たいへん前向きの御答弁で満足をいたします。どうか厚生大臣の熱心な御努力によって急速に実現することを期待をするわけであります。
それから本日厚生大臣に対しての御質問を予定しておりましたほうに入りますが、方々で質問をしましたけれども、厚生大臣にまだ質問申し上げてなかったかと思います。もしダブっておりましたらおっしゃっていただきたいと思います。前に年金のスライドのことを一般的には申し上げましたが、国民年金法のスライドについて小林厚生大臣に本国会では御質問をしてなかったと思います。それでさらに重ねてその点について御質問をいたしたいと思うわけでございます。
国民年金法の、特にこれは拠出綱年金におもに関係がございますが、国民年金法が発足の当時に、国民の理解の不足もございましたけれども、内容が乏しいとか、組み立てが不十分であるとか、あるいは一部分曲がっている点があるとかいうようなことで、国民のほうでこれに対して評判が悪かったわけであります。その中には無理解によるものもあればいろいろなものもありますけれども、私どもの詰めて考えましたところ、無理解とは言い切れない点が一つあるわけであります。それは拠出制年金で保険料を払わなければならない義務がある。払って、四十年間たって、それで六十五才になれば最高額月三千五百円が支給されることになりますけれども、四十年という長い間、支給まで四十五年という間、もちろん年金でありますから、最初は最初の貨幣価値のもので、だんだん最終末に近い貨幣価値のものに、でこぼこにならないで同じ傾向の物価変動を示すとすればそうなってまいりますけれども、しかしそういうことに対して、納めた保険料の値打ちが下がってしまって、もらう年金の実質的な値打ちが下がるという心配が底流として現存するわけであります。それについて、いま年金局長が指で縦にさしましたけれども、不十分なスライド規定がございますが、そのスライド規定は、「生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、」というようなあいまいもことした文言になっておるわけであります。「著しい」ということになると、人間が判定することになりまして、相当の程度物価変動があっても、また生活水準の変動があっても、まだ著しくないのだということによって、その改定をしないでほったらかすことができるわけであります。また「生活水準その他」という文言でいっておりますと、生活水準だけに固着をして、物価変動に対して対応しなくてもいいというふまじめな逆解釈もできないことはないでしょう。まじめな熱心な方が担当されるでありましょうから、ほったらかしにされないと思いますけれども、これだけ物価変動があってもまだ年金額が数年間改定されないところを見ると、まじめな方が努力をされても、そのまじめな努力を踏みつぶすようなふまじめな圧力が、あるいは壁があるというような状態もあるわけです。したがって、これを法律的に、物価変動に関しては一定以上のものは自動的にその率に応じて改定をしなければならないという要件を一つつくり、もう一つはまた、生活水準の向上についてはそれに比例して直さなければならないという要件をつくるということをはっきり書くべきであると思います。ことに今度の社人会保障制度審議会で、厚生年金保険法の改正案についてはっきりと書けということが答申に出ております。これは厚生年金保険法のほうでございますけれども、そういうことをひとつよく煮詰めていただいて、ぼやけた規定ではなしに、はっきりとした規定になさる必要があろうと思います。それについての厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/14
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015・小林武治
○小林国務大臣 これは社会の常識からいって、貨幣価値の変動等があれば当然それにスライドすべきだということは、一応の議論として私どもも肯定いたしておりますが、この問題は国民年金だけでなくて、各種の民間の商業保険あるいは簡易保険、郵便年金いずれも同じような問題が生じてきております。ことに郵便年金のごときは、非常な貨幣価値の変動によって世間に不満を与えておる事実もあるのでございます。しかしわれわれ常識的に考えてそういうふうな調整をすべきだと思いますが、何ぶんにもこれは大きな問題でありまして、これだけでもってどうこうということができないために、まだわれわれの、あるいは世間の満足するような規定が持てない、こういう事情にありまして、今日の厚生年金法の改正におきましても、まだ私ども自身もきわめて不満足な答えしか出ない、こういうことで、考え方としてそうあるべきだということは何人も争うことのできない問題でありますが、財政上あるいはその他のいろいろな大きな問題があり、またこの問題につきましてはそういうふうにしてスライドした費用をだれが負うか、こういうふうな大きな問題もなかなか解決ができないでおるので、遺憾ながらまだ御期待に沿えない、しかしそういう考え方は実現すべきものである、こういう方向だけ私ども考えておりますが、いまはまだそこまでいっておらぬということをひとつ申し上げなければならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/15
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016・八木一男
○八木(一)委員 これは非常にむずかしい問題ではないのですけれども、政府筋ではむずかしい問題だというふうに考えておられます。そうなると、いつになってもこれはむずかしい問題ということになる。だれか非常に熱心なりっぱな厚生大臣が踏み切らなければ、いつまでたってもむずかしい問題、むずかしい問題でずらされる。それで国民年金をはじめあらゆる年金制度に対する国民の信頼がつくられないということになる。年金に対する信頼がつくられなければ、自分で貯蓄をするなり、直接の退職金をとるなり、それによって自分の才覚で老後のことを運用していこうという気持ちが抜け切れないことになる。それでうまくいった人はいいけれども、当てがはずれて、それで退職後のいろいろなもの、老後のいろいろな用意をした金をすってしまって非常にあと困る人もある。そういうことのないために、この老齢年金制度ができております。その老齢年金制度が確実にいってない一番の欠点は、このスライドの制度の明確な規定がないということであります。非常に大事な問題であります。困難な問題である以上に国民にとって、政治として非常に大事な問題である。ですからそれをだれかのときに踏み切っていただかなければならない。小林厚生大臣は非常に厚生行政に熱心だ。このときにぜひ踏み切っていただきたいと思う。だれかが踏み切らなければならない。確かに厚生大臣のおっしゃったことを少し分析をしてみますと、一つはむずかしい事情は、むずかしいとわかる事情があります。一つはこれは厚生大臣の本旨じゃないと思いますけれども、理由にならないこともおっしゃる。というのは、民間の保険だとか民間の貯金とかあるいは郵便年金のお話をされました。これも現象としては同じ問題になりますけれども、これはあくまでも任意保険なんです。途中解約すればそれは損をします。しろうと目にとっては損のようだけれども、その中でも民間保険の費差益だけは二十年なり三十年なりの間を見積もった費用を見積もっていますから、それを五、六年で解約すればその分だけは確かに損をしますけれども、その他についてはやはり合理的計算をするので、これは貨幣価値の変動で損をすると思えば解約して解約返戻金をとることができる、自分の判断で。ところが、政府の強制保険はそういうわけにいかない。物価が上がって貨幣価値が下がって、そして年金が実質的に損になるということがわかっていても、そういうような解約返戻金をとるというような運動もできない。また、それではこれから掛金をやめたというわけにも法律上ではいかないことになる、強制保険ですから。そういうものに対しては民間の保険などと違って、政府はほんとうにシビアーに国民の気持ちにこたえなければならない。
その次に、大蔵省の財政当局あたりでいろいろな困難があるという問題がある。それは実際的にいま年金制度に対する信頼があまり強くありませんので、本来年金制度があらゆる点で非常に信頼のおけるものになれば、給付額ふえることに対して保険料が比例してふえるということに対しては、これは普通のことであるという理解が高まる。だからそれはあまり困難ではない。ところが、いままでの年金制度が非常に不信用であったために、掛け金を払うということについては、国民がそれをよしとしない。払いたくない気持ちがある。したがって、年金額を上げるときにその問題の壁にぶつかるために困難だという事情があることはわかります。わかりますけれども、なぜ国民が保険料を払いたがらないかというもとは、その物価スライドのところがもとになっておる。もとを直さなければ、年金制度はほんとうの意味で発展をいたしません。そういう状態にある過渡期として、たとえば国民年金制度がいま完全積み立て金方式をとっている。世界じゅうで、これだけの完全な積み立て金方式をとっておるのはほとんど類例がない。保険計算をする人とすれば、完全積み立て金方式としたら心配はない、気持ちがいいというような考え方がある。しかし、そんなものは政治にはならない。国民の気持ちを安定させ、年金制度を発展させることにならない。世界じゅう、最初は完全積み立て金方式であったかもしれないけれども、後に次第に時勢に応じて修正賦課方式に変わってきている時代に、日本の国民年金制度だけを完全な積み立て金方式にしなければならない理由はないわけです。その点を考慮すれば保険料の値上げなどせずに年金額を上げることができる。生活水準の向上について年金額の目標を上げることができるという条件があるわけです。それについてどうか——小林厚生大臣は、もちろんよく御存じでございましょうけれども、そういう要素がございますので、勇を鼓していまの年金額の改定に対しても将来の支給する年金額の物価に対するスライド、それを主体としたスライド制をお考えいただきたいというふうに考える。それについて熱心に前向きに御検討を願って、至急にその実現をはかっていただきたい。厚生大臣から御答弁いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/16
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017・小林武治
○小林国務大臣 私もこの問題はいつになるかわからない、こういうふうな状態でおくべきではない。私は試案としましては、政府部内でこの問題の協議会でもつくってほんとうに取り組んでみたらどうか、こういうふうに考えております。昭和四十一年にも、前々からお話しのように国民年金法の問題も相当根本的に変えなければならぬ時期がきておりますので、私はまだその他の大臣と相談したわけじゃありませんが、試案としてはこの問題はやはり政府部内で協議会みたいなものをつくって考えてみたらどうかというようなことをいま考えております。いま間に合って御期待に沿うわけにはまいりませんが、そういうふうなまず取り組む姿勢を持ちたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/17
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018・八木一男
○八木(一)委員 繰り返しては申しませんけれども、ぜひいま申し上げたこと、前から申し上げたことも全部からみ合わして、私どもの論議を参考にしていただいて前向きに進んでいただきたい。総理大臣がおいでになったときに、これは重大な問題ですから重ねて御質問をし、また厚生大臣にもそのとき御質問することがあるかもしれませんが、これはひとつ御了解をいただきたいと思います。
その次に、運用の問題でございますが、運用の問題については方々の各委員会でも附帯決議もあり、いろいろ論議をされ、また各審議会で言われておりますが、その問題についてほんとうの国民年金の精神に沿うたほうに運用される必要がある、特別勘定を設ける、厚生省が所管をして、大蔵省あたりの指示を許さないで、資金の全部——全部と言いたいが、全部ということができないとしたら、その大部分、少なくとも厚生年金を含めて、これから入ってくる分の四分の一というようなことではなしに、その全部を厚生省のほうに取り返す。さらに、これから返還したものも全部厚生省のほうに取り返す、そうして年金制度から言って適当な母子福祉、老齢者、身体障害者の施設、さらに国民の住宅の問題、そういうようなところにこれの融資がスムーズに十分にできるようにしていただかなければならないと思います。それについての厚生大臣の御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/18
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019・小林武治
○小林国務大臣 お話しのようなことができれば、厚生省はすかっとすると思いますが、政府全体の問題として考えると、そう急激な変革というものは言うべくしてなかなか行なわれない。おまえの力が弱いからと言われればさようでございますと私は申し上げてもよろしゅうございますが、改善をしていく、そうして少しでもお話のような期待に沿えるようにする、こういうことが私どもの考え方でございまして、われわれも政府の構成員であってみますれば、国全体の財政投融資というようなこともやっぱり相当大きく考えなければなりません。ことに、厚生年金、簡易保険、郵便貯金、この三つが三本の柱となって、日本全体の経済を動かしている財政投融資に使われておる、こういう現状は私どもとしても否定することはできませんので、したがって、いまお話しのような考え方を厚生省は持っておりまするが、結果的に申してむずかしい、しかし、われわれはそういう考えを今後押し進めることにはやぶさかでありません。強い態度でもって臨みたいと、かようには考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/19
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020・八木一男
○八木(一)委員 強い態度で臨んでいただきたいのですが、強気の小林さんとしてはいまの御発言は少し弱気だと思います。もう少し強気を出していただきたい。というのは、大蔵省はかってなことを言いますけれども、とにかく厚生年金は、今度、いろいろな欠点がありますから、通るかどうかわかりませんけれども、厚生省の計画によれば、とにかく保険料が上がる、それだけふえるわけです。それから国民年金は数年前までなかったところの保険料の収入がある。そのふえたずいぶん大きな部分を大蔵省が持っていって管理をしようというのは大間違いである。これは働く国民の資金であって、そういう保険料の値上げがあったりあるいはまたそういう新しい制度ができなかったならば、この人たちはそのつつましい金で何らか自分たちのことをした。将来のために合理的な制度だからということで保険料を徴収して将来のための用意をされる制度は悪くはありませんけれども、その金の運用については——そういう強制適用されたり保険料値上げがなかったら、その国民はおのおの自分で自分の必要な、たとえば年寄りになったときのいろいろな用意、たとえば家の用意、そういうことをするわけです。それを強制的に取ったわけですから、それはもちろん融資でありますけれども、それを活用するのは国民にじかに役に立つものに活用すべきものなのです。政府のほうはほかの要請で資金が必要であるといっても、ふえた分を、国民の直接の福祉のためにつくった制度で金を吸い上げているものを、その運用については、国民に回すのがあたりまえと思います。それを、それに便乗して、ふえたものの大部分まで持っていく。とんでもないことです。国民年金制度なんかは一つもいままでなかった。それで財政計画を組んでいた。それを、そのうちの四分の三ほど取って、新しいほうの四分の一だけ厚生省に回す。こんな強盗みたいな——強盗と言ったらおこられるかもしれないけれども、こんなめちゃくちゃな役所はないです。かってに人の金を持っていって融資をする。ですから、国民の金の預かり主たる厚生省のほうは、断固として、一部は使うのはいいけれども、四分の一みたいなことじゃなしに四分の三はこっちによこせ、四分の一ぐらいは国民の了承を得て公のことだから少しは回してやってもいいというくらいな強気でいっていただく必要があろう。それから、前に貸してしまったもので返ってきたものを、これは大蔵省の範囲のものだというようなおこがましいことを大蔵省に思わせないで、返ってきたものは新しく考える、それは国民のものだから、四分の三はおれたちが国民の声を聞いて国民のために運用するのだというふうな態度でひとつぶつかっていただきたい。どうか厚生大臣のさらに強気の御答弁をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/20
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021・小林武治
○小林国務大臣 これは強気で当たるということは申し上げましたが、しかし、えらい砕いて申しますれば、これは別だ、あとの要求は何でもいれろ、こういうふうにはなかなかできない。同じ役所が同じ役所に対していろいろな交渉をする。こういうことで、私は実は昨年厚生省に参りまして、純増分の四分の一はいい、ところがどうも非常に不可解なのは、返ってきたものが、回収されたものが全部そのまま何も関係がない、これはおかしいじゃないかといって、厚生省の事務当局に私は注意を喚起したのであります。要するにしり抜けというのはこのことだ、貸すときは自分で貸しておいて、返ったものは全然自分は関係ない、そういうものは一体ほかの機関にあるだろうかということまで私は事務当局に注意したのでありますが、そういう強気でやる前に、まだこんなしり抜けなところがあるのじゃないかということを私は考えて、大蔵当局にも、この問題について、これではあんまりおかしいじゃないかということを申しておりまして、こういうことを改善しても相当規模の資金が使える、こういう余地もありますので、これなんかは、私は非常に不合理だ、まずもって、こういう不合理は当然改正しなければならぬ、こういうことに考えておりましたが、実際問題として予算のやりとりをしておるうちに抜けてしまった。こういうふうなことで、私は、あまり正直に申し上げてはなはだ恐縮でありますが、抜けてしまった。しかし、こういう問題はまずとにかく私ども厚生省としては当然要求すべき問題であると思います。その他の特別勘定等につきましても厚生省はいつもそういう態度で当たってやっておる。しかし、表はそういうことをやっておったがしりが抜けておった、こういう実態もはっきりいたしましたので、こういうこともまず改善しなければならぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/21
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022・八木一男
○八木(一)委員 この問題については世論は厚生省の味方なんです。国民の大部分は味方だし、各審議会もそういうことを言っておるわけです。ですから大いに勇敢にやられれば、奪還は十分に可能であります。
それからもう一つは、形式の問題ですが、額の割り振りも一回厚生省のほうでやって、それから大蔵省から、こういうことをやりたいからひとつ回してくれないかというふうにやらせる必要があると思う。大蔵省が握っていて本家本元のほうが一部これを使いたいから、こんなばかな話はない。厚生省のほうが全部握っていて、大蔵省が頭を下げてきて、これくらいならばよろしかろう、そのくらいなら融資を回してやろうと主体をこっちに取る必要がある。そういう点で厚生省関係のそういうものについては厚生省がまずこれを管理する。それから政府全体の協議により、大蔵省の要請により、一部分をそういう必要なものに融資を回してやるというふうなシステムにする必要があろうと思う。それについての小林厚生大臣のお考えはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/22
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023・小林武治
○小林国務大臣 普通の筋からいけば、そういうことが考えられるのでありますが、ともかく、ものが一たん始まってある程度いろいろのもの、既成事実ができてきたことを変えるということは非常に困難です。これはむしろ始まったときの問題なら解決がしやすかったと思いまするが、こういう既成事実ができてきておるということになると、それは言うはやすくして、なかなか実行はむずかしい。それからこんなことを申し上げるのはどうかと思いますが、資金の管理にしても、予算の要求にしても、同じ役所がしておるものですから、なかなか一方だけむやみに強気でやって、片方もうまくいくということはこれは実際——私はただ実際問題を申し上げておるのでありまして、それのよしあしを言うわけではありません。たとえば、予算要求にしましても、ある予算を私が強硬に主張して取ったら、ほかのことはだめだ、こういうふうなことも、これは人情として出てくるのはある程度やむを得ない。これはいいとは申しませんが、そういう関係でなかなかむずかしいことであるということはひとつ御了解を願いたい。私もお話しのようなことが一つの筋であるというふうに考えますので、そういう主張はいたしたつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/23
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024・八木一男
○八木(一)委員 大臣も厚生省の各局長も熱心にやっておられるのに、正しい筋が通らない、そういう現状は非常に残念なことであります。国民も大部分皆さん方と同じ考え方を持っておるし、また政党のほうも与野党ともそういう考え方を持っておられると思う。ひとつぜひ元気でがんばって、正しい筋を通していただきたいし、われわれもそれについては全面的に支援をしたいと思います。勇を鼓してがんばっていただきたいと思います。
さらにこの問題について続けて御質問を申し上げますが、積み立て金というものはいかなる性質のものであると厚生大臣はお考えになるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/24
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025・小林武治
○小林国務大臣 非常にむずかしい問題ですが、支払い準備金と私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/25
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026・八木一男
○八木(一)委員 そうなりますと、それに対しての発言権はだれが一番持つべきであるというふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/26
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027・小林武治
○小林国務大臣 これは私どもは、支払いに支障の生じないようにするべきである、したがって支払いを担当しておるものが一番注意をしなければならぬ、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/27
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028・八木一男
○八木(一)委員 管理をするのは支払いを担当するものですね。それはそうですか、その間の、支払いができなくなるようなことは、もちろんいけませんが、その間の資金の運用についてはだれが一番発言権を持つべきものであるか、もちろん支払いができるという確実な——たとえば流れてしまうところに貸すとか、法外にただで貸すとか、そういうことはしないというたてまえにおいて、では、だれの要望に従ってこれを運用することが積み立て金の性質上一番適切だというふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/28
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029・小林武治
○小林国務大臣 これは簡易保険にも同じ問題がありますが、要するに保険料を払ったものの代表者、こういうことでやっぱり、たとえば郵政省なりあるいは厚生省なりがそれに責任を負う、こういうことでありますから、そのものが発言権を持つのが当然じゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/29
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030・八木一男
○八木(一)委員 それはちょっとお考えが違うと思う。たとえば、簡易保険は、小林さんが簡易保険契約をする、受け取り人は、満期のときには小林厚生大臣、不幸にして事故があったときには奥さんというようなのがシステムでありますね。結局、積み立て金というものは、民間保険では、解約返戻金というものがありますから、払った人に戻る要件がありますけれども、契約がずっと進行していけば、とにかく満期のときには小林さん、不幸なときにはその遺族、大体小林さんのところに返ってくるわけです。それはその積み立て金が、要件が完成したときに返ってくべき人、その人に発言権が一番ある。その人のものだ。今度は公的な年金になると、さらにその要素が増すわけです。途中でおれはつまらぬから一文でも返してもらうんだということの要件はないわけです。ですから、その金はどこにいくかというと、しまいに年金受給者にいくわけです。ですから、年金受給者になるべき者が、それらの要件に達するまで、管理をしている人が、なくならないように、利殖がうまくいくように、預かっておる。その金は将来被保険者のものになる。そういうふうに考えますが、小林さんのお考えはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/30
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031・山本正淑
○山本(正)政府委員 ただいまのお考えでございますが、厚生年金という制度をつくっておる以上は、政府といたしましては、その制度によって、具体的にいえば、法律によってきめられた給付年金というものを被保険者に渡す義務がある。したがって被保険者の側からいいますれば、法律によってきめられた年金をもらう権利があるわけであります。これはもう当然のことでございます。そこでその際において資金はどういうふうに管理するか。これは先ほど先生も御指摘になりましたように積み立て方式もある、賦課方式もある。年金資金の調達の方法につきましては、技術的な方法がいろいろあるわけでございますから、したがいまして積み立て金を積み立て制度でやっておる際において、やはりその積み立て金というものを最も確実に有利に運用するには、その資金のそういった預託を受けておる、政府の場合には政府が責任を持つわけでございます。それは原資を有利、確実に運用するという責任であるわけでありまして、被保険者としてはきまった年金をもらう権利があるということになるわけでございまして、その間において、この資金はだれのものであるといったようなふうに直接関連づけて考えることがいいかどうか、これはいろいろ議論のあるところじゃないかと思うのでありまして、その点について、どちらがどうである、こうでなければいけないというふうに私どもは考えていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/31
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032・八木一男
○八木(一)委員 やはり慎重な回りくどい答弁ですが、とにかく厚生大臣、午前中時間がありますから、率直に私の考えを申します。それはもう私が考え抜いて、私が気違いじゃない限り絶対に正しいことですから、ひとつ参考にしていただきたい。
積み立て金という性質は、積み立て金ですから、その間は管理者がその責任を持ち、権限を持っておるわけです。ただしかし義務も持っておるわけです。それについては被保険者のために確実に有利に運用してやるという義務を持っておる管理者が自分でそれをふところに、ぽっぽに入れたり、そんなことができる性質のものじゃない。ですから、これは必ず被保険者のために管理をしているわけですね。被保険者のものと言い切れないまでも、被保険者のものに将来なるべき金なんです。ですからそれに対しての発言権は絶対に被保険者にあるべきものである。そうなると、たとえば厚生年金その他ではそれを受け取る厚生年金の被保険者、国民年金ではそれを受け取る被保険者そのもののものになるべきものですから、その運用についても、その人たちの意見が全部通ってもしかるべきだが、ただ個々の人では運用上についての経済上のいろいろな知識を持っていないので、その意見だけでは運用を誤まるおそれがあるから、それに関係しておる政府なりあるいは団体なりが管理をすることは当然ですけれども、その方法をどうするか、このくらいの金だからこのくらいの利息で貸すというようなことは管理者がやらなければならないけれども、運用の方法をどうするかということを主体的に一番主張できるのは被保険者です。ところがいまの運用ではあらゆる制度で間違いが起こっておる。保険料を払ったものが平等に同じように権利を持つという間違った考え方がある。たとえば厚生年金保険においても被保険者の代表の意見も聞くこともあれば、保険料を払った事業者の代表の意見を聞くこともある。これがあたりまえなように考えられておる。こういう間違ったことが流布されておるわけです。保険料を払った以上は、その事業主のほうは返してくれと言うことはできない。すでに被保険者のものとして積み立てられて、管理を政府なりあるいは団体がしているだけである。それならば事業主がそれに対して、その運用についてとやかく言う資格はないわけです。あくまでも被保険者の意見に従って運用する。運用の成功を期するために、役所がこれに対してタッチをする。そういう性質のものでなければならない。そういうことになります。ところで、そうなれば、国民年金及び厚生年金のお金を、さっきの問題に関連しますが、厚生省が管理される場合に、これはあくまでも被保険者のものであるという立場に立って運用すべきである。年金の被保険者、たとえば遺族年金というものがあるからそういう母子のものに使ってもよろしい。障害年金というものがあるから障害者のための施設やリハビリテーションのものに使うことも当然だろう。老齢年金というものがあるから老人のために使うことも当然でしょう。医療施設に使ってもいい。それからこれは金が相当に余ります。それでその次に一番重要で、量的にも一番多くて、被保険者が困っておるものは住宅である。そういう問題にこれを使うのが当然である。これが本筋でありますから、そこでいままで言ったように、金を払ったんだから、使用主の意見を相当入れるべきだというようなことを残しておくと、そういうような資本家が大蔵省に頼んで、資本家のいいような公共役資に回してくれというようなことを根底づけることになる。積み立て金というものはあくまでも被保険者のものである。被保険者に直接必要なもの、そういうものに使うべきである。たとえば、道なら臨海工業地帯の道ではなくて、そういったような被保険者が毎日歩くような道、そういうような考え方にならなければうそだ。これがいままでぼんやり考えられておったり、間違って考えられておったわけであります。積み立て金というものは、あくまでも被保険者のものであるという立場で、意見を聞くとするならば、被保険者の意見、管理をするのは公的な役所あるいはまた団体、そういう立場で運用せらるべきだと思うのであります。私はこれは考え抜いて、絶体にそれが正しいという結論に達しました。先輩の厚生大臣に非常になまいきなことを申し上げるようでありまするけれども、いま直ちに御答弁はしていただかなくてもけっこうでございますが、この考え抜いたことについて、御理解を賜って、その方向で問題が進むように、特にこういう積み立て金等を擁しておるいろいろな制度の中で、それを一番多く管理されておる厚生省としては、特にそういう方向で問題を進めていただく必要があるので、前向きの御答弁を、ばく然とでもけっこうですから御答弁いただきたいと思います。そういうことをぜひ御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/32
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033・小林武治
○小林国務大臣 私自身としてはいまの御意見には多少の異論もありますが、せっかくの御意見だから十分検討してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/33
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034・八木一男
○八木(一)委員 多少の異論もあるということでは困るのですが、その異論はごく少部分の異論であって、大部分は同じような考え方で御理解をいただけたというふうに思いたいのでございますが、それはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/34
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035・小林武治
○小林国務大臣 幸いにまだはっきりした答えは要らない、こういうことでありますから、そういうことで、私もいまのようなはっきりした御意見というのは初めて伺ったわけでありますから検討いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/35
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036・八木一男
○八木(一)委員 近い機会にまたそれについてお考えを伺いたいと思います。また私の一生懸命申し上げた問題について御理解をいただいた御答弁を期待するわけでございます。どうか前向きに御検討を願いたいと思います。
引き続いて伺いたいのですが、時間が少し迫ってまいりましたので、具体的な問題に入りたいと思います。一ぱい質問を申し上げたいことがあるのですが、緊急な具体的問題点、おもに福祉年金について伺いたいと思います。
いまの福祉年金制度について、いろいろな点で不十分でありますが、普通に役所のほうでいま第二段階で考えておられるほかにもっと大切なものがあろうかと思うのです。それは老齢福祉年金の支給年齢の引き下げの問題であります。これは役所のほうも考えておられるとは思うのです。しかしやれば金が要るもんですからなまけておるわけです。これは非常に困る。金が要るということはその効果が多いということで、必要なものであって効果の多いものをそのまま置き去りにされては、国民としては非常に困る。この問題にほんとうに積極的に取り組んでいただかなければならない。ところで先ほど山本年金局長は、委員会の決議、これを一番最重点として重視をしなければならない、そのとおりにしなければならないという御答弁をされておる。この引き下げの問題については当委員会で数回決議をしているわけです。参議院においても決議をしているわけです。それをいままでほったらかしておかれたのは、これは怠慢といわなければならないと思うのですが、それについて、厚生大臣から御答弁いただいてもけっこうですし、年金局長からでもけっこうでございますから、ひとつ伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/36
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037・山本正淑
○山本(正)政府委員 確かにお話のございましたように、年齢引き下げはだいぶ前の当委員会におきまして附帯決議としてつけられておるわけでございますが、先生も御承知のようにおおむね年齢を一年下げますと三十万ないし四十万人という被保険者の受給者がふえるというかっこうになるわけでございまして、したがいましていまの福祉年金の額からいいまして、やはり大体三、四十億あるいはそれより若干こえるぐらいの所要財源が一年引き下げのために要るという結果に相なるわけでございます。この問題につきましては、これは制度ができました当時から拠出年金の支給年齢より押え、福祉年金は七十歳である。そうしてその問の五年間というものについては、一挙でなくても順次年齢を下げていく方向をなるべくとるべきであるという御意見もございました。また事務当局といたしましても、この前の保険局長のときからずっと前向きで研究をいたしてまいっておる次第でございます。ただ、それだけ金を食う、具体的に言いますとそういうことでございまして、福祉年金につきましては、毎年現状ではいけないという改善を要する事項がございまして、しかもこの福祉年金の額といったものも、その後の情勢によりまして問題になっておる。こういったことを総合いたしまして、全部一緒にやった場合に何から先にやっていくかということにつきましていろいろ検討の結果、あるいはまた実現の可能性ということからいいまして、検討はいたしましても折衝に至らないというような事項もあります。折衝の結果だめだという事項もありますので、そういった問題も考えまして、どれから先にやるかというようなことに経緯してきておるわけでございます。今後におきましては、まだ年齢の問題以外にも、実は先般来御指摘がありましたようにたくさん問題がありますので、そういったところはやはり慎重に検討いたしまして、政策として何を取り上げるかということを大臣の御指示によりましてやっていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/37
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038・八木一男
○八木(一)委員 厚生大臣、いまの年金局長は、まじめで熱心に答弁はしておられますけれども、ちょっとスタミナが足りないと思うのですよ。いろいろな要求があるけれども、これを言うとこっちが引っ込むというようなことを原局が言っておられたのでは困るので、当然のことは並べて要求して全部通したらいい。そういう点で、スタミナのある厚生大臣からひとつがんばっていただかなければいけない。
それで、いまの年齢引き下げ、これは厚生大臣、ほんとうに大切なことと思うのです。年金制度には不可避的な不公平があります。というのは、長生きをした者は多くの給付を取る、早死にをした者はもらえないということになっている。これは生きている人間に対して所得保障をするという制度だから当然そういうことになるわけですが、人間の年齢というものが、人間の健康なり生命なりそういうものが、人間の数えた歴年のものとぴったりマッチしていないわけです。老齢保障というのは、老齢になって労働能力が低下して、所得能力が少なくなった者に対して、人間らしい生活を少しでもできるように保障するわけです。ところが七十三でもぴんぴんしておる人もあれば、六十八でぐたっとなっている人もいるわけです。そういうような年金制度といういい制度でありますが、それに不可避的な欠点がある。それを少なくする、具体的には国民の要望に沿わない点を沿うようにするという点では、年齢を引き下げることをしなければ、それができないわけです。その引き下げも、たとえば私は、六十五なら六十に、五十五なら五十に、四十五なら四十に、そんなに引き下げろということは言っておりません。言っておりませんけれども、七十なんというものはめちゃくちゃで話にならない高年齢である。そういうところに福祉の年齢があるようでは、これは意味をなさない。残念ながら苦労をしてきた人は早く老衰をします。また早く子供をなくしたり、子供の事業がうまくいかなかったり、そういう心配がある人は、親としても安心ができないから、心配をして早く老衰をする。自分が楽な生活をし、子供がちゃんとなっているような人はわりに元気なんです。ところが、その子供の苦労をした人のほうは早く老衰をしますけれども、六十から老衰をしていても、まだ年金制度がなくてもらえない。うっかりすれば六十八くらいで死んでしまう。期待をしていた年金を一文ももらわないうちに死んでしまうわけです。しあわせな人はわりに長生きしてぴんぴんしておるのに、七十歳でもらえる、七十二歳でももらえる、七十四歳でももらえるということになる。その弊害を少なくして、ほんとうに苦労をしておる老人に対して年金を差し上げるためには、これは当然年齢は下げなければならぬ。これは私どもは六十から支給をしなければならないと思います。これについてはいろいろな論議もあり、また残念ながら一ぺんにいかない事情も——これは反対であります。それはけしからぬと思うけれども、現在の制度の中で一ぺんに六十まで下げろと言っても無理だということはわかります。ですから、少なくとも六十五に下げるということはなさなければならない。それについての小林厚生大臣の御意見をひとつ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/38
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039・小林武治
○小林国務大臣 それはまことにけっこうな御意見でありますが、何といたしましてもいまこういう不平、不満がありながらも、もう支給額が年額四百億以上にもなっておる。こういうふうな始末でありまして、やはり無拠出年金につきましては財政との関係はもう断つということはできません。したがって、そういうことをやってはいけないのでございますが、厚生年金についてどのくらい金額を増すか、こういうことになると、金のあんまり大きいものは敬遠をされる。これはいい、悪いの問題でなくて、実際問題としてそういうふうになります。いま、これから一番大きなものは、金額をふやすことと、年齢の引き下げの問題、これに一番たくさん金がかかるということで、私どももそういうことじゃいけないと思うが、とにかく財政の制約を受けるということはあることは、やむを得ないということであります。私は御意見としてはまことにそのとおりでありまして、少しでも引き下げる方向に進むべきである。厚生年金もとにかく六十五歳にきまっておりますし、これの拠出年金も六十五歳ということになっておりますから、福祉年金もやはり目標としてはそういうほうへ進むべきであると考えております。どうせこの問題もこのまま七十でいつまでも置くというわけにはまいるまいと思うわけでありまして、できるだけ御期待に沿うような努力をいたさなければならぬ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/39
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040・八木一男
○八木(一)委員 何といいますか、岸内閣のときにいままでなかったものができたのですね。それでそのときは適用者の調査でいろいろ違いますが、平年度にしたら約三百億くらいのものができる制度がゼロからぽんとできたわけですね。いま老齢を一年下げても三十億、五年下げても百五十億、岸内閣当時よりも財政のワクもずいぶんふえておりますし、池田内閣は岸内閣よりも社会保障、社会保障としょっちゅう言うておることを考えれば、六十に下げても岸内閣とバランスがとんとんくらいになる。一ぺんに六十に下げて金額を三倍ぐらいにしても、とんとんということになる。せめてその公約を果たそうとすれば、六十五歳に下げて金額を三倍ぐらいにするということに踏み切らないと、岸さんのときにゼロからあれになった。池田さんのときはちょっとした手直しだけで、ほうかむりということでは看板が泣くことになろうと思います。これはあとでまた池田さんに申し上げますけれども、池田さんを補佐なさった厚生大臣は代々ございましたけれども、その中で熱心な小林厚生大臣としては、国民に対する内閣の責任上、この問題をぜひ小林さんの手で打開口をつくっておいていただきたいと思うのです。それについてひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/40
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041・小林武治
○小林国務大臣 私はひとつ逆にお聞きしておきたいのでありますが、年齢引き下げと金額引き上げ、両方大事でありますが、八木委員はどっちに重点を置かれるのですか。その点をひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/41
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042・八木一男
○八木(一)委員 当然のお考えです。金額については三要件あります。金額は、まず第一に、年金制度が貧弱な程度で発足をしましたから、それを完成するために、物価がそのままであっても、生活水準がそのままであっても、絶対額をふやさなければならないという要件が一つある。その次に、生活水準が上がっているのに比例してふやさなければならないという要件が一つ。その次に、物価が上がっているのだから、当然実質価値を保持するために上げなければならない。この三つの要件がある。本質的に両方同じくらいに重要度があろうと思いますが、そういう点で金額については三要件があります。それともう一つは、金額という問題は、老齢だけではなしに、障害も母子も関係があります。三つ要件があるということ、老齢、母子、障害の三つに関連があるという点で、その点では金額を重視しなければならない。
ただ老齢に限って観点を集中すると、金額の問題と、それからもう一つの問題は、物価水準や何かは当然のことでやられることと仮定すれば、これは下げることが非常に大切ではないかというふうに思うわけです。たいへんあいまいもことしたものですが、老齢福祉年金の問題に限れば、もう少し御質問に対して的確に言えるわけですが、障害福祉年金、母子福祉年金を上げなければならないという考えでいけば、金額を重視しなければいけない。金額について当然のスライド規定があって、スライドされていれば、三要件のうち一要件は片づいているから、あとの二要件であるということになれば、今度は年齢引き下げの重要度が上がってくるわけです。そういう点で考えておる。その問題だけにしぼっていくと、老齢の境目だけに限っていくと、金額の引き上げと年齢の引き下げ、これは同程度か、年齢の引き下げのほうをより重視しなければならないというふうに考えます。観念的に考えると、金額のほうが大きいという意見がありますが、実質的に苦労した人がもらえない、楽をした人がもらえるという点を重視すると、年齢引き下げのほうがより重大ではないか。そのポイントだけに限ってそういうふうに考える。これは私の考えであります。ひとつその点を御参考に御判断願いたいと思うのですが、おっしゃること、これは両方とも無視できない。ですから六十五まで来年にできなければ、少なくとも六十七までに下げる。片方が五千円にできなければ、少なくとも三千円に上げるというような両にらみでやっていただくことが必要であろうというふうに考えるわけです。それについて御理解をいただけましたかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/42
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043・小林武治
○小林国務大臣 御意見として承っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/43
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044・八木一男
○八木(一)委員 その次に、それではもっと具体的なものに移りたいと思います。時間がありませんから、端的に急速に申し上げます。今度厚生省のほうで夫婦受給制限についての用意をされました。夫婦が老齢福祉年金を受給されたときの減額制度をやめるというような提案をされました。厚生省のほうで、年寄りの夫婦が老齢福祉年金を受給されているときに四分の一を減額することが適切でないので、それをやめるという提案をされたわけです。まことに適切な提案であろうと思います。それについて予算その他の現状でそれが今度の改正案の中に盛り込まれなかったのは非常に残念でございますが、これも来年度の法案で必ず実現をしていただきたいということについて、ひとつ厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/44
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045・山本正淑
○山本(正)政府委員 御指摘のように夫婦受給制限の緩和につきましても、国会の委員会において何回か附帯決議として御指摘をされておりました。これを撤廃いたしますと、年間二十二、三億くらいあるいは二十四、五億くらいの経費がかかる問題でございます。これにつきましては、いろいろ議論があるわけです。ただ現実問題といたしまして、私どもは現在金額で両方とも二五%ずつ控除するというのはあまりにも実情に沿ってないという観点に立っておりまして、ぜひとも受給制限は緩和でなしに撤廃いたしたいという考えでおるわけであります。ことしは実現できませんでしたけれども、さらにできるだけ近い機会に実現するように努力いたしたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/45
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046・八木一男
○八木(一)委員 来年度改正案に必ず盛っていただきたいと思います。それは何回も議論済みのことでございまして、厚生省も今度お出しになりましたが、小林厚生大臣にこの点をひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/46
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047・小林武治
○小林国務大臣 局長からお答えになりましたとおりに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/47
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048・八木一男
○八木(一)委員 それは来年度の改正案に御提案になるという意味に理解をしたいと思います。
それからその次に、いまの年金制度にはずいぶんとんでもない条項があるわけです。とにかく世界じゅうに聞かしても恥ずかしいことこの上ないという条項がありまして、これは日本の名誉のためにも、日本政府の名誉のためにもずばりと直ちに取るという決意を御表明願いたいと思うのです。それは配偶者所得制限という条項です。厚生大臣十分御承知だろうと思いますが、いまの福祉年金については所得制限をして、それ以内の者に支給するということになっていますが、その中で本人所得制限が十八万円ぐらいです。それからややっこしい言い回しで、扶養義務者の所得制限と言っていますが、普通観念的にいえば世帯所得制限にあたるものがゼロ人のときに四十万、五人平均のときに六十五万ですか、それ以下のものの対象者に出すというふうになっていますが、その間に配偶者所得制限という奇妙きてれつな所得制限がある。配偶者所得制限ということが税法上の規定になっていますが、二十七、八万のところが制限に具体的にはなっている。たとえば年寄りのおばあさんがいて息子さんが六十五万円の所得がある、おばあさんに所得がない、このときには老齢年金をもらえるわけです。ところが、六十五万円も稼いでくれる息子さんが死んでしまって家族が路頭に迷って、そこでおじいさんがいまして、おじいさんが老いの身で一生懸命に稼いで、とにかく二十八万円の収入を得た場合は、これはくれないことになる。そのおじいさんが自分のものをもらえないのみか、自分が十八万円以上の所得があるという労働能力を幾分残しているわけですから、当然くれないのは現制度上しようがないと思いますけれども、おばあさんのほうにもおじいさんの働きがあるからといってくれないわけです。ところがおじいさんの働きはたった二十八万円です。六十五万円の働きのある親孝行の息子、嫁のある人にはくれて、息子、嫁が死んでしまって、悲しんで、楽をして長生きをしてもらいたいおじいさんが腰曲げて働いている、そのおばあさんにはくれない。これは配偶者所得制限という奇妙きてれつな規定でございます。世界じゅうさがしてもこんなものはありません。これはなくしたところで、年間平年度にたった一億、一億円でこれをなくすことができるわけです。これは小林厚生大臣の政治力だったら、五十億くらいのものは決心されたら直ちにやるという政治力をお持ちだと思いますが、その五十分の一にも満たないような軽少な額で、しかもその背景たるや実に恥ずかしいものです。その恥ずかしさをなくして、日本の国民年金制度は完成しつつあるということを世界に誇り、そして国民にも喜んでもらうために、ことしでも一億ぐらいできますけれども、ことしやっていただけるか、少なくとも来年の改正案にはそういうような不合理な夫婦受給制限というものは、断じて撤廃するという厚生大臣の御答弁をぜひお願いをいたしたいと思います。これはありとあらゆる面から非常に不合理なものであり、それを撤廃しても、財政上で大蔵省がこんなものに文句をつけるのだったら、大蔵大臣というものは気違いにひとしいというような内容のものであります。ですから厚生大臣は、ぜひ来年度にやっていただくようにお願いをいたしたいと思います。それについての御答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/48
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049・小林武治
○小林国務大臣 ただいまのことは、私十分な知識を持っておりませんから、局長からお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/49
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050・山本正淑
○山本(正)政府委員 夫婦受給制限は、いま御指摘のように所得税の免税点というものが基準になっておりまして、制度ができました当時、たしか二十七万円くらい、二年目から二十八万円くらいになった。これは税制の改正に伴いまして限度額が上がっておるわけでございますが、おそらく具体的には、いまの御提案というものは、夫婦受給制限というような項目をなくしてしまって、扶養義務者の所得制限はやむを得ないからそれに包含して、被扶養者何人の場合というような扱いをしたら合理的じゃないかというような御意見ではないかと思う次第でありまして、確かにそういう考え方があるわけでございます。私どもも従来検討はしておりますが、なおこの問題につきましては一そう検討いたしまして、そういった方法がとれるということになりますれば、すぐとりたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/50
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051・八木一男
○八木(一)委員 局長にもう一回検討いたしますと言われるが、いまここで持ってないからけしからぬということを言ったってしようがないから言いませんけれども、これはほんとうに恥ずかしいし、それをやめて実現するのに、こんなもの大蔵省は、主計局長だってすぐうんと言うと思うのです。一億ぐらいのことは大臣に言わなくたって、すぐ言えるものです。そんなものはすぐやろうと思えばできるのです。これは政治力のある小林厚生大臣を補佐されて、来年からすぐやるようにしようじゃございませんかということをすぐこの場で言われてもいいことだと思うのです。検討というようなことばじゃなくて、局長は来年度の法案に盛る、それから厚生大臣が信頼する局長が言っているのだから、すぐやりたいというようにお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/51
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052・小林武治
○小林国務大臣 いまの問題が、八木委員の言われるようなことであれば、さようにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/52
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053・八木一男
○八木(一)委員 いまのようなことでありますからひとつ……。
その次に、社会保障制度審議会の今年度の答申にあるのですが、具体的にひとつお考えを願いたいのは、世帯所得制限、扶養義務者の何とかというのは長いですから、かりに世帯所得制限と申しておきますが、本人所得制限の所得向上についてのスライドというものが、初めて今度の答申にそういう思想がある。具体的にはいままでなまけた時代もあり、かなり熱心な時代もある。この前六十万円にして、六十五万円にするという、世帯についてはやられましたし、本人についても逐次変えておられます。それは毎年毎年変えていただいてももちろんいいのですが、しかしやはり所得水準の上昇に従って、前と同じ年寄り、同じ未亡人、同じ障害者が、来年はもらえなくなる。ことしはもらえたけれども、ちょっとした差で来年はもらえなくなる。しかも行政的に一年ごとにしか変えられないから、それをちょっと忘れたときには、当然かかってもいいところが適用にならないということがあるので、そういう所得水準の上昇に従う所得制限額のスライドということを考えていただく必要があるのじゃないか。これは非常に合理的な考え方だと思う。この点初めての思想ですから、ひとつ前向きに御検討になっていただきたい。内容は適切なものであり、単純なものでありますから、御検討はすぐ済むと思う。御検討になって、来年度でも実施のために御努力願いたいと思う。それについての厚生大臣のお考えを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/53
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054・小林武治
○小林国務大臣 検討いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/54
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055・八木一男
○八木(一)委員 その次に障害年金の問題について少し触れたいと思います。
いまの福祉年金にずいぶん欠陥がありますが、その中のまた最大の欠陥の一つであります。厚生大臣は障害年金に家族の扶養加算がついていないということについてどのようにお考えか。いま考えておられることがございましたら、ひとつお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/55
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056・小林武治
○小林国務大臣 ただいまのところ、その向きのことを勉強いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/56
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057・八木一男
○八木(一)委員 母子福祉年金に、また本来の拠出年金のほうにもございますけれども、母子福祉年金に多子加算というのがあるのです。というのは、母一人、第一子に対して母子福祉年金が出る。それから第二子があれば、家計がそれだけ苦しいであろうからということで第二子に対して加算がつく、第三子に対して加算がつく。これはそういうふうに家族構成がふえたら、福祉年金の対象者の生活がよけい苦しいだろう、それを少しでもバックアップしょうということでこの加算制度ができておるわけです。それ自体はいい考え方であります。ところがこれは母子に限られておって、障害にはないわけであります。もっと考えれば、年寄りが孫、ひ孫を扶養しているときにも考えなければならないかもしれない。いままずすぐ考えがつくのは、障害者に子供があり、また奥さんがある場合に、それだけ生活が苦しくなるのではないかということがあります。奥さんの場合には、奥さんが働けばいいという考え方でできているということは困るのであって、やはり日本の普通の場合は、男子が生計の中心になって、奥さんが家計を持って、しかも子供がたくさんの場合には、奥さんは子供の保育に当たらなければならないという状態がありますから、当然奥さんのことも考えなければなりませんが、それ以上に大ぜいの子供によって生活の苦しい状態がふえますから、加算をして母子福祉年金と同じようなバックアップをするということが当然考えられなければならないわけです。そういうことについて最初に仕組みのときに考えられなかったこと自体があやまちです。このあやまちを早く改めなければならないけれども、じんぜんとして四、五年を費してしまった。いまからでもおそくないから、急速にこのあやまちを改めなければならない。障害福祉年金について、老人が孫、ひ孫を扶養している場合、そういうような老齢福祉年金の場合について、家族についての扶養加算をさらに積極的につける必要がぜひともあろうと思う。それについての厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/57
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058・小林武治
○小林国務大臣 実は技術的な詳しいことは、大事なことでありましても私が十分に知識を持たないことが多いのでありまして、局長に聞いてまたお答えするというのは非常に非能率的でありますので、局長からお答えをさせ、その責任を私が持つ、こういうことにさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/58
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059・山本正淑
○山本(正)政府委員 扶養者加算につきましては、わが国の各種制度について実はばらばらになっておりまして、厚生年金、それから恩給にはすべて加算制度がある。それから共済制度には、公務員共済の場合には加算制度がないというふうに、ばらばらの制度になっておりまして、これはいろいろそれぞれの歴史的な事情もあると思いますが、こういった問題をどう解決するか、特にこれは配偶者と子供と二つに分類して考えられるわけでございまして、子供の加算という問題につきましては、いずれまた児童手当といったようなものがどういった形で制度化されるかということによって、そっちのほうで解決すべき性格のものが非常に強いわけでございますが、それじゃまた配偶者の加算というものをどうするか、これにつきましてはまた別途の問題が、厚生年金と被用者年金における妻の座というものは年金制度として考えることが可能であるじゃないか、またそのことが適当じゃないかといった議論もありますので、そういった問題との関連が、実は今後の問題としては出てくるわけでございます。ただ、現在までのところにおきましては、制度を通じましてそういったアンバランスどいいますか、加算のある制度もあればない制度もある。国民年金には拠出年金のほうにそれをつけなかった。したがって福祉年金のほうにもこれとの関連でつけてないというのが実情でございまして、国民年金にこれをつけるといたしますれば拠出年金のほうを改正して、拠出年金につけるという制度にしないといかぬじゃないかというふうに考えられます。いずれ拠出年金を通じましての制度の改正というものを近い機会に考えなければならぬときにきておりますので、十分検討をしなければならぬと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/59
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060・八木一男
○八木(一)委員 その事情はわかっております。けれども少なくともバランスの問題というよりも、そういう必要があるということは局長も理解していられる。それからバランスの問題で、制度間のバランスよりも制度内のバランスがとれてない。国民年金制度内で、片方に多子加算があり、片方には扶養加算がない、それをまず解決されなければならない、それをほっといたらいかぬ、そういうことです。各制度間にあるということよりも、国民年金制度の中で片方に多子加算がある、母子あるいは母子福祉年金にある。ところが障害あるいは老齢のほうにはないということがある。ですから全体のバランスを大きく考えられるのはけっこうですが、そのようなことをもとにして、いま制度内のアンバランスをほっとかれるということはいささか怠慢である。ことにこの問題がいい悪いという議論のものではない。所得が少なくて困った家庭にそういう扶養家族があったならなお困る。それについては補てんをしなければならないということは、なまけて制度ができてない制度と先行してできている制度とがあっても、それはいい方向であるということは明らかです。そういう問題について、制度内でアンバランスがあるから、当然全部一ぺんに来年解決されるならそれでかまいません。しかしそれについては時間を要すると思います。いまの役所内のいろいろな連絡という中から少なくとも国民年金制度内におけるアンバランスを先に直しておかれなければならない。直しておかれるのが逆の方向にはなりません。将来の方向としては、ここだけでも直しておけば、あとは直す部分が少ないので、将来の障害年金、老齢福祉年金の扶養加算、さらに老齢年金及び老齢福祉年金について、これは僅少な例であると思いますが、老人が孫、ひ孫等を扶養しなければならぬ場合の扶養加算、そういう場合等について改正をされる必要がある。それについて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/60
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061・山本正淑
○山本(正)政府委員 母子年金というのは、申し上げるまでもなく子供のある場合にしか起こらぬわけですから、したがって子供についての加算もするのが一番適当な制度であると考えております。それから障害、老齢年金につきましては、それはつけるのがいいと思っております。ただ現在ない。しかしそれは母子年金との関連において制度内のアンバランスとなっているかどうかという点につきますと意見があるところだと思いますので、その点御了承願う意味で申しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/61
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062・八木一男
○八木(一)委員 時間がないから論争しませんが、それはちょっとおかしいですよ。片一方いいことができていて、片一方いいことができていなければ、これはアンバランスです。理屈は、もっと学問的な理屈も言えますよ、所得能力が少ない、扶養家族があれば、少ないことの影響がかなり多い、これを補てんするために加算をつける加算制度、母子であろうが障害であろうが、その理屈でいけば同じですね。所得能力が少ないから年金制度がある、そこに扶養家族があれば、よけいに生活が困難だからそれを補てんさすために加算をやる、これは障害であろうと老齢であろうと母子であろうと同じです。ですから母子ということで、別に特に違った概念があるということは、年金制度のたてまえからない。片方は、ほかの社会的現象としては母子と障害は違いますけれども、年金制度では同じです。ちょっと時間がないから、それ以上申し上げませんけれども、たてまえとしてはどうしてもやらなければならぬと思います。
その次に障害年金及び障害福祉年金について、たとえば障害年金では二級までしか支給がない、障害福祉年金では一級までしか支給がない、これはその境目ではどこでも不公平ができますけれども、この片一方のところでぽかっと区切られているところは、たとえば一級なら支給するけれども二級なら支給しない福祉年金、片一方は二級なら支給するけれども三級なら支給しない障害年金、そういう境目における非常な不公平が起こりますので、そういう問題についてさらに適用を拡大することによって、そういう該当者は非常に助かる、また不公平も少なくなる。そういうことで、障害年金の適用の範囲拡大ということは、前向きに取っ組んでいただきたいと思います。厚生大臣の御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/62
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063・山本正淑
○山本(正)政府委員 障害年金の範囲拡大につきましては、るるこの委員会でも御意見がございましたし、今後障害年金の範囲を拡大して内部障害について他の疾病も加えていくというような姿勢をとっていきたい、かような考えでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/63
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064・八木一男
○八木(一)委員 では午前中の区切りで厚生大臣、実は毎年毎年国民年金法の改正が出されております。その中で一回だけややましな改正が出されました。それもかなり与党の方と野党のわれわれの協議によって、それをさらにもう少しいいものにして見るべき評価すべき改正点が一回だけありましたけれども、あとはちびちびしたものばかりであります。ちびちびが二年続いておりますが、来年においてはもっと喜べるような十分な改正案を当然出していただけるであろうと思います。来年の改正案において、いま申し上げたようなこと、前から各委員の申し上げておるようなことを十分に盛った積極的な国民年金法の改正案、または付属して扶養家族、児童扶養手当法の改正案というものが出される必要があろうと思う。熱心な厚生大臣は、当然前向きに十分な改正案を出される御意思をお持ちになると思いますが、それについての厚生大臣の明確な前向きな熱心な御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/64
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065・小林武治
○小林国務大臣 結果論として、何を出してもこれは御満足いただけるということはなかなかできないと思いますが、政府としてはあるいは厚生省としては精一ぱいのことをいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/65
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066・田口長治郎
○田口委員長 午後一時まで休憩いたします。
午後零時十八分休憩
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午後一時十分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/66
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067・田口長治郎
○田口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続けます。八木一男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/67
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068・八木一男
○八木(一)委員 内閣総理大臣に御質問を申し上げたいと存じます。
総理大臣は、民主政治を進められる意味におきまして、国民の世論を尊重されまして国民のための政治を行なうつもりで政治に当たっておられると存ずるわけでございますが、それについて総理大臣の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/68
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069・池田勇人
○池田国務大臣 御質問の点がよくわからないのですが、およそ政治というものは、国民のための政治が民主主義の政治であろうと思います。そういうことに立って努力さしていただいております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/69
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070・八木一男
○八木(一)委員 それの具体的なやり方といたしまして、国民の代表である国会の諸決定を実行されまして、論議を尊重されまして、また民主的な諸手続、法律によってできております各審議会の答申、勧告、そういうものを尊重して政治に当たられるというお考えであろうかと存じますが、それにつきましての総理大臣の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/70
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071・池田勇人
○池田国務大臣 大体そのとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/71
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072・八木一男
○八木(一)委員 池田内閣をつくられましてから、総理大臣は、社会保障政策をその最重点の一つにされるということで、いままで政治をとってこられたわけでございます。そのお考え方にもちろん変わりはないと思いますが、それにつきましての総理大臣の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/72
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073・池田勇人
○池田国務大臣 すでに施政方針演説で自分の所信をはっきり申し述べております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/73
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074・八木一男
○八木(一)委員 一昨年の八月に、社会保障制度審議会で、その三年前に岸内閣当時に諮問されました総合調整に対する答申、並びにその時点に即した勧告が出されたわけでございます。その答申、勧告について十分尊重して政治を進めていただくべきであろうと思いますが、それについての総理大臣の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/74
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075・池田勇人
○池田国務大臣 大体答申の趣旨を尊重してやっております。御承知のとおりいろいろな委員会がございますけれども、その答申どおりということは、財政とかいろいろな事情で不十分な点も、これは免れないかと思いますが、大体の方向としては答申を尊重していくことにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/75
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076・八木一男
○八木(一)委員 この社会保障制度審議会の答申、勧告は、最後の答申、勧告が出ましたときに総理大臣は官邸でその決定をお待ちになっておられました。そのときに、委員の一人である今井一男君が、議論の途中で吐血をして倒れられました。そのために答申、勧告が数時間おくれまして、せっかくお待ちになった総理大臣に対して、答申、勧告を申し上げるのは翌日になったという経過があることを御記憶であろうと思います。そのように非常に熱心にやられた会議でございます。総会がたしか十六回、全員委員会が三十六回、それから各種の分科会が数十回ございました。その内容も、私もそれに参加をいたしておりましたけれども、この一回の委員会は少なくとも四、五時間、長いときには七、八時間というようなことで、非常に熱心に討議をされたものでございます。それについて、いま一つ一つについてまだできていないというようなことをきょうの場で申し上げるつもりはございませんけれども、そのような熱心な結論につきまして、十分尊重して急速に実現の方向に向かって問題を進めていただきたいと思いますが、それについての総理大臣のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/76
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077・池田勇人
○池田国務大臣 社会保障制度審議会の委員の今井君は数十年来の親友でもありますし、彼の識見、経験を私は非常に高く評価しております。また大内先生は大先輩でございます。非常に熱心な方で、またこの道の最高の権威者といわれる。そういう方々が、しかもほかに例を見ないほどの熱心な御審議のことも承っております。われわれは、そういう先輩、同僚、しかも非常にりっぱな方々の答申でございますから、常に尊重していきたいという心がまえでいっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/77
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078・八木一男
○八木(一)委員 総理大臣に大内会長から御答申申し上げましたときに、審議会の決定事項で「十年後における社会保障の総費用(暫定試算)」というものを、総理大臣にこの答申書と一緒にお渡し申し上げるということになっておったと思います。このような紙でございますが、総理大臣は御記憶であろうと思いますが、御記憶であるかどうかひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/78
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079・池田勇人
○池田国務大臣 昭和四十五年度を期しまして先進国並みにしたいということは聞いております。またわれわれもそういう方向で進んでおるわけでございます。ただ年度別、社会保障の規格別のものは十分拝見しておりません。あるいはその当時拝見いたしましたか、はっきりした記憶はございませんが、四十五年度を期してやろうということにつきましては、私も異存はないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/79
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080・八木一男
○八木(一)委員 お忙しい総理大臣でございますから、個々のことあるいは表などについて、どんなに聖徳太子みたいな記憶でも御記憶にならないことはよくわかります。しかし、大切なことですから申し上げておきたいと思います。表の全部については申し上げませんが、政府の所得倍増計画に従って、この社会保障の計画もそれに準拠してつくられたもので、それに対して東大の鈴木教授が主体となられて、財政的な点を配慮しつつこの試算表をつくったわけであります。その試算表によりますと、昭和四十五年度においては、国費の直接支出分——これは狭義の社会保障費ですが、国費の直接支出分が一兆二千五百三十億になる試算に相なっております。そういうような試算で、各年度、何と申しますか、最初のスタートがおそくて非常にしり上がりになるのではなしに、大体平準してそういう支出をして、このような制度を完成するようにするべきであるという考え方から、このような試算が出ています。それから経済成長その他が変わっておりますが、大体において昭和四十五年度において一兆二千五百三十億の狭義の社会保障に対する直接の国費支出、そういうものでありますことをひとつ御記憶願いまして、いろいろこれからの計画をお立てになるときに、重要な参考点として政治をおとりになっていただきたいと思うわけであります。なお、この試算表につきましては、厚生大臣に伺いましたけれども、厚生大臣が、それからはごらんになっておりましたけれども、そのときには事務的な手続の不行き届きでごらんになっておりませんでした。そういうことではいけませんので、厚生大臣あるいは大蔵大臣が——もちろん内閣総理大臣を先頭としてこのような熱心に取り組まれた、しかも政府の所得倍増計画に従って熱心な財政計画を立てましたことを重要な参考として、個々の施政をしていただきたいと思うわけでございますが、それについての総理大臣の御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/80
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081・池田勇人
○池田国務大臣 先ほど来申し上げましたごとく、社会保障制度の拡充ということは政治の根本でございます。りっぱな方々の意見を十分聞きながら、またそれにマッチするように所得倍増を実現していきたい、そして御期待に沿いたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/81
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082・八木一男
○八木(一)委員 この社会保障制度審議会の答申、勧告については、最初に公準、公の基準の意味でございますが、公準を書いてございます。ごく簡単に申し上げますと、第一の公準は何かというと、「社会保障は、国民生活を安定させる機能をもつとともに、なおそれが所縁再分配の作用をもち、消費需要を喚起し、また景気を調節する等の積極的な経済的効果をもつ。この点からいえば、社会保障は、国の政策として、公共投資および減税の施策とならんで、あるいはそれ以上重要な意義をもつこと。」というふうに意見の集約を見ております。それから第二の公準として、「国民所得および国家財政における社会保障費の地位については、今後十年の間に、」——この十年というのは昭和三十六年を起点にした十年であります。「日本は、この制度が比較的に完備している自由主義の諸国の現在の割合を、少なくとも下廻らない程度にまで引き上げるべきこと。」というふうになっているわけであります。
そこで総理に私の考え方を申し上げたいことは、ここで論議が二つに分かれまして、このようになっておりますが、「公共投資および減税の施策とならんで、」というよりは、それ以上先にしなければならない意見が約半数あったわけであります。あとの半数は「公共投資および減税の施策とならんで、」という意見であった。これは内閣のほうでこの点について御判断になろうと思いますが、少なくともそういう意味で、社会保障が政府の重点政策として最優位にあるべきであるということになるのではないかと思うわけであります。それからこの具体的な内容並びに計数の試算というものが、第二の公準にありますように、「今後十年の間に、日本は、この制度が比較的に完備している自由主義の諸国の現在の割合を、少なくとも下廻らない程度にまで引き上げるべきこと。」といっておりまして、昭和三十六年の時点で十年後に追いつくという内容の、ごく控え目な内容であります。十年の間に諸国の制度は前進をするわけであります。まだ非常に控え目で、財政事情その他を頭に入れて遠慮をして、十年後に三十六年度のほかの諸外国の制度に追いつくというような、ごく控え目な答申、勧告であります。したがって、それについては当然その内容を完全に実施をしていただく、あるいは政府がより積極的に、そのような控え目のものであってはいけない、池田内閣は社会保障政策に非常に重点を置くのだから、控え目なことではなしに、十年後の諸外国の程度に追いつくような勢いでやるのだ、この答申、勧告より以上にやるのだというような姿勢でやっていただく必要があるのではないかと思うわけであります。それについての内閣総理大臣の御決意のほどをひとつ伺わせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/82
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083・池田勇人
○池田国務大臣 社会保障制度というものは、単に人道上の問題とかなんとかいう意味で論ぜられるのは昔の考え方であります。最近におきましては、社会保障制度の経費というものは、いわゆる財政金融上、景気の調節の非常な作用を持つものであるという考え方が台頭いたしまして、そこでいまお話しのように、公共事業か減税か社会保障かという問題が出てきて、半分の人が、公共投資あるいは減税よりも社会保障が経済財政政策からいっても非常に必要なんだという議論が出てきたことと思います。この三つを、どっちを先にするかということは、これはその国の状況によっていろいろ違いましょう。たとえばいまのような状態のときには、是が非でも、とにかく交通を緩和するためという公共事業が先に出るかもしれません。しかしこれによって経済が伸びていくならば、今度は社会保障のほうがうんと力を増してくると思いますが、それはそのときどきの状況によって考えなければいかぬ。減税にしても、あるいは公共事業にしても、少なくともこれは恒久的なものだが、社会保障制度は恒久で、しかも限度のないものなんだということだけは違うと思います。だから私は、社会保障というものは政府の根本理念としてやっていかなければならぬと考えておるわけであります。
そうしてまた、第二段の昭和三十六年を基準にして昭和四十五年の分が、四十五年の世界の先進国でなしに、三十六年の先進国のところまでは少なくともいかなければならぬということは、非常に考えられた、日本の実情を御存じの人の結論だ——控え目というお話がございますが、控え目ではあるが、やはり実質的に考えられる節度のある考え方、それは御承知のとおり、先進国の国情に比べまして、国全体としては世界の五番目、六番目ということになりましたが、一人当たりの所得、そしてまた過去の蓄積から申しますと、四十五年に所得倍増をいたしましても、アメリカやあるいはドイツ、イギリス、フランス等に比べたらまだそこまでもいかぬ、あるいはノルウェー、スウェーデン等のほうにもいかぬ、あるいは豪州、ニュージーランドのほうにもいかぬということになりますと、三十六年の世界の先進国並みに四十五年の所得倍増でもいかぬということになりますと、控え目というか、適当な分といいますか、われわれとしては、先ほど申し上げましたように社会保障は限りのないものでございます。できるだけやっていきたいと思いますが、私は所得倍増の暁には、三十六年度の先進国並みには少なくともいかしたいという気持ちで進んでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/83
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084・八木一男
○八木(一)委員 そこで、私どもの考え方を申し上げて、ぜひそういう考え方になっていただきたいと思いますのは、財政の負担その他の点で諸外国にすぐ追いつかないし、段々的に追いつくというお考えのようであります。ところが問題の本質から考えますと、社会保障というものは、健康で文化的な生活を国民に保障するという憲法二十五条の条文から出ているわけでございます。日本の現状は、それを保障されていない状態があまりにも多い。半失業が非常に多いというような問題、あるいは年寄りが自分の蓄積を持てない、老後の生活については非常に心配が多いというような問題、あるいはまた、最近病気については残念ながら諸外国よりも多く、最近は体位が向上しておりますが、いままで苦労してきた人の体位は、あまり諸外国の人よりもよくないのであります。そういう点で長い病気になる人が多い。病気とかあるいは老齢の問題、あるいは失業の問題、そういった問題について社会保障で対処をしなければならない要件が非常に多い。それから、いままでにそのようないろいろの防食政策が完成していなかったために、現在貧乏に悩む人が非常に多い、その程度が非常に高いというような問題から考えると、諸外国の倍も熱意を持ってやらなければならないし、諸外国よりも程度の高い社会保障をやらなければならない状態があるわけであります。その点を、社会保障に熱心だと言っておられます総理大臣に深く考えていただく必要があろうと思う。
その問題はさらに別な機会に申し上げるとして、そういう状態でございますので、いま御答弁にありましたように、社会保障制度審議会の答申が、そういう状態にありながらいろいろな財政その他の問題を加味して、ごく控え目に、少なくとも最低限度としてこれだけのものは必要だということを答申、勧告いたしましたものについては、値切ったことを一つもなさらないで、急速にやられるということが、政治の中枢の責任を持っておられる方の責任であろうかと思います。この制度審議会の答申、勧告について、いろいろと意見が分かれて結論が出ていない部分も部分的にはございますが、具体的に数字その他完成の年度をあげて示している点については、必ずそれを実現させる、実現するということをお約束いただく必要があろうと思うのです。それについての内閣総理大臣の明確な御答弁をいただきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/84
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085・池田勇人
○池田国務大臣 先ほどからも申し上げておりますごとく、あらゆる審議会の答申につきましては尊重いたします。しかし年次別に、事項別にどうこうということを、いま私がお約束する立場にはございません。やはりその方向によって努力する、そして年次別の問題につきましては国会であなた方に十分御審議いただくように、そうしてそのときに足らなければ翌年度どうするか、いろいろな議論をする必要がございましょうが、私が先ほど申し上げたように、四十五年をあれとして先進国に近い状態、少なくとも三十六年の先進国並みにいかしたいという努力は、今後も続けていく覚悟でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/85
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086・八木一男
○八木(一)委員 具体的にいろいろ指摘がされてあるものもありますが、時間も幾ぶん制約されているようでございまするし、その内容の分量が非常に大きいので全部を申し上げることはできませんけれども、たとえば生活保護基準については、物価変動は別として、実質価値で昭和四十五年には三倍にしなければならない、おそくとも、少なくともこれにしなければならないというようなはっきりと指摘をしている部分、あるいは社会保険の医療保険の給付については、四十五年までにおいては少なくとも九割以上の給付をしなければならぬ、当面、少なくともあらゆる国民について、七割以上の給付をすぐしなければならないというような指摘がしてございます。あるいは身体障害者や精神薄弱者、そういう人たちの施設をどんどんつくらなければならないというような問題、あるいは社会保険において、低所得者に対してはその保険料負担を減額、免除、あるいはそのほかに本人負担を免除するということを進めていかなければならないというような問題、あるいは年金については、二十年の保険料の納入期間のものについては少なくとも六千円以上の定額部分を持たなければならない。これは三十七年現在における物価の話でありますから、いまは修正をしなければなりませんが、ともかく二十年納入済みのものについては少なくとも定額を六千円以上、四十年納入済みのものについては、これは国民年金ですけれども、少なくともその当時の貨幣価値で七千五百円以上のものにしなければならないということを言っている。あるいは国民健康保険、日雇い労働者健康保険等には、非常に大きな厚い国庫負担をしなければならないというような問題、あるいは社会保障につきましては、それを必要とする者については必要な給付をすることができるようにする、社会保険的に保険料の納入に比例をしてその者が受け取るということでは、ほんとうの社会保障はできない。社会保障というものは、保険の概念ではなしに、必要な人に必要な給付がいくことがほんとうの社会保障である、そのように各社会保険制度をだんだん、急速に改造していかなければならないという問題について、指摘がされているわけでございます。個々のことについて、何年に改正案を出される、何年にどうされるということは、幾ら総理大臣でもいまは御答弁はできないと思いますけれども、そのような大ぜいの意見がきっちりと一致をし、少なくともこれだけはしてもらわなければならないと言っておりますその内容につきましては、それを実現するために最大の努力をされるというような御決意を、ぜひ御表明を願いたいと思いますが、総理大臣のお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/86
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087・池田勇人
○池田国務大臣 だんだんのお話でございますが、大体の傾向としては、ずっと実現に向かって効果をあげていると思います。生活保護にいたしましても、私は、昭和三十年に比べまして、八割程度名目で上がっていると思います。それから医療関係でも、今年度からはだんだんと家族につきましても七割給付ということをやることにしております。大体の方向は、私は十分ではございませんが、実現の方向に向かっていると思います。それは、何と申しましても、国民の努力によりますいわゆる経済の成長がこれをもたらしたというふうに考えておるのでございます。いろいろ非難はございますが、私はやはり、経済の成長が社会保障制度を実現する上に一番効果的である、できるだけ今後もその方向に向かって、あなた方の御希望を実現するためにも努力をしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/87
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088・八木一男
○八木(一)委員 いろいろ非難はございますがとおっしゃっているが、私は、きょうは前向きの政治に取り組んでいただくつもりで質問をいたしております。政府のほうのことをそう非難する気持ちはなかったのでございますが、そのように少し実績を誇られますと、その点については不十分な点を指摘しなければならないことになります。少なくとも、いまの七割給付をすぐ実現しなければならない、四十五年には九割以上の給付をしなければならない——これでは私どもは不十分だと思うのですが、制度審議会の答申ではそうなっている。私どもは、これを全部十割にしなければいけないと考えている。少なくとも、七割をすぐしろという答申が昭和三十七年に出ました。国民健康保険については、最初一家の世帯主しかやれなかったけれども、今度はそういうことを突っつかれて、数年間に段階的に七割にする方向を示しておられます。それ自体は前よりもけっこうでございますが、制度審議会の答申は、三十七年にすぐ全国民について少なくとも七割以上にしてほしい。そうなれば、国民健康保険の被保険者というものがここ数年間かかって七割では、最低の遠慮した答申を満たしたことにはなりませんし、また日雇い労働者健康保険や、政府管掌の健康保険におけるその家族の七割ということの定義がまだされておりません。これは、制度審議会の答申では国民健康保険だけのことを言っているわけではございません。そういう点で、非常に遠慮がちな最低の答申確保についても、それだけ十分にされていないわけであります。しかも池田内閣は、社会保障について一生懸命に取っ組むということを言っておられます。また、今度の予算委員会において山花秀雄君の減税が少ないという質問に対して、社会保障を大いにやっているからいいではないかというような意味の御答弁をしておられます。そのようなことを考えたときに、一方で最低の答申どおりいっていない、そのいうことでは、ほんとうの国民に対する責任をとっておった立場とは言えないと思いますが、それについて内閣総理大臣のもっと前向きの、積極的な御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/88
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089・池田勇人
○池田国務大臣 社会保障制度の拡充は政治の根本でございます。社会保障制度ばかりではございません。政治には、やはり国を守ったり、あるいは他の、教育を振興したりとか、いろいろな点がございますが、社会保障制度審議会の答申が第一であって、ほかの答申を見ないというわけのものでもございませんから、均衡のとれた、いわゆる万民の喜ぶ政治ということを考えますと、特にその専門家についてはおくれがちだという非難もあるかもわかりませんが、全体としては、私は社会保障制度の拡充が基本であるということで進んでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/89
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090・八木一男
○八木(一)委員 いままでしてこられたことについて、総理大臣としては、やはりそれだけしかできなかったことについて、行政上しかたがないという立場をおとりになりたいのでございましょうけれども、それは池田さんのお立場であって、客観的に見て、あのように一番遠慮がちで、少なくともこれはということについて十分にできていない。ほかのいわゆる減税に対する主張に対しては、減税は少ないといわれるけれども、社会保障をやっているからいいじゃないか、社会保障制度を進めているから減税が少ないのだという議論はそう当たらぬじゃないか、そっちでは減税に対してはそういう答弁をされ、ここではまたそのような消極的な御答弁をされる、これでは私は困ると思うのです。いままでのことをそう鋭くは追及しませんが、今後ほんとうにそのようなお気持ちを固めて推進をされる、そういう決意をひとつ国民のために表明していただく必要があろうと思う。もしそれがおできにならないならば、社会保障制度を大いにやるのだということの看板はおろしていただきたいと思う。御答弁をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/90
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091・池田勇人
○池田国務大臣 先ほど来から言っておりますとおりでございます。社会保障制度拡充の看板をおろすなら、その前に内閣を投げ出すほうが政治の本道じゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/91
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092・八木一男
○八木(一)委員 その御答弁は非常に決意のほどが披瀝をされておりますが、総理大臣のメンツもおありかもしれませんけれども、いままで十分ではなかった、それを十二分にするために、今後前よりも積極的に取っ組むというような御答弁を願って、裏からの御答弁ではなしに、前向きの御答弁をひとつお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/92
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093・池田勇人
○池田国務大臣 いままでも相当前向きだったと思います。私は、この委員会のみならず、大蔵委員会に行けば減税だとか金融だとか、いろいろなものがありますので、やはり総合的に均衡のとれた形から申しますと、私のあれで社会保障関係の方々も大体御了解願えるのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/93
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094・八木一男
○八木(一)委員 これから申し上げることは非常に長い時間をかけて申し上げたかったのですが、ごく簡単に申し上げますから、ひとつ御答弁を願います。
それは、内容の問題ではなくて、総理大臣の御決意とお気持ちの問題になりますが、というのは、昭和三十七年八月に制度審議会の答申、勧告が出ましたときに、これは非常に重要な答申、勧告であるので、政治の最高責任者たる池田さんのそれについての御決意を承りたいということで、当社会労働委員会では、総理大臣の出席を求めることを、与野党の理事が意見一致をいたしました。そして、その当時の秋田大助委員長も積極的に賛成をされまして、総理の出席について非常に努力をされたわけであります。ところが、そのときには、国会の中での戦術というようなことを国会対策委員長は言われました。社会労働委員会に総理が出席をすると、ほかの委員会にも出席をしなければならないというような、筋の通らない、政治のひん曲がった理屈によって、会期中に実現を見なかった。それならば、休会中の審査でもいいから御出席を願いたいということを、秋田委員長が非常に骨を折られてやられたわけであります。それに対して自民党の国会対策委員長や内閣の番頭役である官房長官が、非常に表面は丁寧でございますが、実際はいんぎん無礼の形でそれの実現をしようとされない。私は、それについて秋田大助委員長が総理官邸まで行かれて、総理大臣にお会いになったか官房長官に会われたかどっちか知りませんが、非常に熱心に努力をされながら、そのときには実現をしなかったということを熟知いたしております。その後、年を越えて、昨年の通常国会中にもこの問題について出席を求めましたところ、これが実現をしておりません。こういうことは非常に残念なことだと思います。もっと強く言えば、許しがたいと言っても過言ではないと考えております。残念なことでございますが、私は総理大臣のお気持ちを伺いたいのですが、総理大臣が前にこの社会労働委員会に来られまして、私と小林進委員が質問をしましたときに、論議の過程で、その論議が政治を進める意味において大いに参考になった、特に小林さんに対してありがとうございましたということを最後に言われました。非常にりっぱな総理の態度であったと思うわけであります。そういう意味で、委員会には積極的に御出席になって、たとえばそういう重大なものについて政府みずからこれを尊重するとか、どういうふうにやっていくというような意見を表明される、委員会の討議を通じて、それを吸い上げて国政をなされる参考にされるということが必要だろうと思うわけです。先日、水上勉氏の手紙についてお取り上げになって、厚生大臣と両方とも御努力になって、それに対応する重度精神薄弱児手当法案というものを出された、それ自体はよいことだと思います。しかしながら、直訴について尊重されるならば、それとともに、それ以上に、あらゆる世論を集約し、与党、野党の人がそれを討議をし、またそれについて内閣の意見をただすという場に積極的においでになることが、政治を欠陥なからしめるゆえんではないかと思います。総理大臣は、ほんとうの意味で政治に一生懸命に取り組まれる気持ちをお持ちになっておられると思いますけれども、それであれば、お忙しいからしょっちゅうというわけじゃありませんけれども、お忙しいとしても時間の余裕があるわけでございまして、そういうときには積極的に御出席になるという意思をお持ちになってしかるべきだと思います。総理大臣が持っておられたら幸いでございます。持っておられないで、国対委員長並びに官房長官の申し伝えに対して、そういうめんどうくさいところには行かないというお考えを持っておられるようであったならば、これはゆゆしき問題であります。またそうでなしに、総理大臣が積極的にそういうふうに取り組む意欲を持っておられるにかかわらず、官房長官なりあるいは与党の国対委員長が、自分たちの間違った考え方で、総理が積極的に政治に参加するのをそのような茶坊主的なことで食いとめようというようなことがあるならば、これは重大なことであります。その点で、自民党総裁として国対委員長の誤った考え方をただされるか、官房長官の誤ったことをしかりつけて直させるか、それとも御自分が政治を担当するのがいやで逃げられたか、その三点のどれかについて、はっきりさしていただきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/94
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095・池田勇人
○池田国務大臣 いろいろ内外のことがふくそうしておりますので、特に社会労働委員会だけを忌避しているとか、出たがらぬということはないのでありまして、全体の問題として十分国会あるいは内閣のほうと連絡をしながら、つとめて皆さんにお会いするように、そうしてつとめて建設的な御意見を拝聴したい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/95
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096・八木一男
○八木(一)委員 それでは、その間の経過については総理大臣の良識をかりに信頼いたしまして、それ以上追及をいたしませんが、今後重大なときで、しかも時間について総理大臣の日程を勘案しながら御出席を要望したときに、その間の人がブレーキをかけるようなことがありましたときには、総理大臣から厳重にしかられる、それが再三にわたりましたときには、総理大臣、総裁としてそのような不適な者はその任をかえるというようなことを、ぜひしていただく必要があろうと思うわけであります。そのことについては、総理大臣がそういうお気持ちでおられると理解いたしまして、これから質問を具体的に進めさしていただきたいと思います。
その次に、国民年金法及び児童扶養手当法の一部改正案について御質問を申し上げたいと思います。
この国民年金につきましては、昭和三十四年の通常国会において、岸内閣坂田厚生大臣の時代に提出をされました。そのときに、総理大臣並びに厚生大臣は、いろいろな論議の中で、非常に内容のシステムが不十分な、間違っている点があるのじゃないかという指摘に対して、最初のスタートだからかんべんをしてもらいたい、年々歳々急速にこれを完全にしてまいりますからということをさんざん言われたわけであります。しかしながら、あまりに不十分、不完全でございますので、私どもは、わが党の完全な案をもってそうすべきであるという点でわが党の案を主張し、政府案に反対をいたしましたが、与党の多数の賛成によって、この不十分、不完全なものが通過し、現在の法律になっておるわけでございます。その後数年間、毎年毎年幾ぶんずつの改正案が提出をされまして、直ってまいりました。一回だけ、かなり見るに足る修正案が出ました。さらに委員会の努力によって、修正によってさらにそれを大きくしまして、ある程度の間違ったものをまっすぐにする努力が行なわれましたけれども、その後の改正案というものは非常に微々たるものでございました。非常に残念なわけでございます。そのようなわずかなものしか今度お出しになりませんでしたことにつきましては、総理大臣はどのように考えておられるか、もしお考えがあれば伺わせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/96
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097・池田勇人
○池田国務大臣 先ほど申し上げましたごとく、できるだけ努力をいたしておるのでございます。いろいろな財政経済上の事情もございますので、徐々に、しかし心がまえとしては急速にやっていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/97
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098・八木一男
○八木(一)委員 お気持ちの急速はいいのですが、非常にゆっくり過ぎるのです。実を言いますと、まず金額の問題について申し上げてみたいと思いますが、国民年金法は六十五歳になって四十年間保険料を納入した、あるいは免除になったという要件、一番要件がよくなったときで月三千五百円、拠出年金のほうであります。現在の生活保護法の基準は、今度の改定で、一級地の場合に四人世帯で一万六千円をこえております。これは世帯別、地域別あるいは年齢別、性別によっていろいろ違いますから一がいに申せませんけれども、とにかく一級地においては一人当たり四千円をこえておるわけです。ところが片一方の拠出年金のほうは、四十年間納入あるいは納入と同じ要件をつくって、それからさらに五年後の四十五年後に月三千五百円の給付ということになっておる。これでは、どういう観点からいってもあまりにも少な過ぎるということになろうと思います。賢明な総理大臣は、これが少な過ぎるということはもうぴたりと前からおわかりになっておられると思います。これではあまりひどいので、どうしてこれを引き上げる努力を厚生大臣に命じてされなかったか、あるいは厚生大臣が言われたのに、どうして閣議においてそれがとまったのか、そういう経過について総理大臣のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/98
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099・池田勇人
○池田国務大臣 国民年金につきまして、お話のとおり四十年払い込んでそうして三千何ぼ、しかも六十五歳といういろいろな点がございましょう。しかし、すでに私も他の機会で御答弁申し上げたごとく、昭和四十一年を期しまして計算し直すということが出ておる。しかもいま、拠出年金のほうでは支給をしていない状況でございます。だから、あれをこしらえましたときから後の経済事情の変化、国民の負担力等々から考えまして、四十一年には一応妥当な案をでっち上げよう、こういうことでいま進んでおるわけでございます。片一方の、たとえば生活保護基準のごときは、実際がもう昔のように四人家族で八千円とか九千円ではとてもいきませんので、一級地で一万四千円ばかりにいたしていると思います。事柄が違いますから、四十一年のときに十分考えていきたい、こう思っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/99
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100・八木一男
○八木(一)委員 それでは四十一年が改定期でございますが、さらにそれは早いに越したことはございませんから、四十年を期待いたしますが、ごく近い将来において、その拠出年金の金額を大幅に引き上げる努力をされるということを確認さしていただいてよろゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/100
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101・池田勇人
○池田国務大臣 それは当然のことじゃございませんか。実社会に沿わぬような年金制度をやったって、これは意味をなさない。そういうことじゃ、また年金制度の趣旨にも反する。やはり老後を安心して過ごせるように、拠出年金でありましても、自分の力に応じてかけていこう、また政府もそれに応じて経済を成長して、三分の一の補助を確保しよう、こういうようなことでいかなければいかぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/101
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102・八木一男
○八木(一)委員 その年金の額の増大について、国民の負担の能力というものが出てくると思います。それについて、年金額を上げるのならば保険料を上げるのが普通だというふうな、ごく平易な、世の中の実情を見ない意見が一応ございます。それも、観念的にはそういう理屈もあるわけです。ところが国民年金については、第一に、金額自体が最初非常に魅力がなかったことと、それから貨幣価値の変動によって実質価値が完全に保持されるかどうかという危惧、あるいは国民の年金制度という長期の制度についての、むずかしいですから、理解の不足等がありまして、拠出制年金の発足は非常に難儀な状態にあったわけです。そこで、根本的に世の中の経済が進んだに比して、国民年金の適用者は、自分の所得がほかのものに比して非常に伸びていないという条件がありますから、保険料の値上げということについては、非常に国民は理解を持たず、これに対して抵抗があり、これに対して快くしない状態があろうと思います。年金額を上げることは当然でございますけれども、それについて、日本の国民年金制度は世界で類例がなく、ただ一つ完全な積み立て金方式をとっているわけであります。ただ一つであります。世界じゅうにこういう例はございません。そこで修正賦課方式をとる、入れるというような考え方、あるいはまた、国庫負担の率をもっとふやすというような考え方を持って、国民の理解しがたい保険料の値上げなどをしないようにして、なるべく年金額を引き上げるというような御努力をぜひお願いをいたしたいと思うわけなんです。これは重大な問題ですから、総理大臣といえども即時明確な御答弁は都合がお悪いと思いますが、私の申し上げましたようなことをひとつ御理解をいただいて、前向きに御検討を願いたい。それについての総理大臣の御意見をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/102
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103・池田勇人
○池田国務大臣 昭和三十四年に国民年金法が制定せられまして、あのときの事情でいろいろ議論がございました。百円なり百五十円なり毎月出せるかどうかという問題、しかし、いまでは経済の進歩でそれがあまり心配ない、少な過ぎるという議論もあります。だからこれは、やはり社会の進歩の状況、負担の状況あるいは国としての分担をどれだけするかということは、先ほど申し上げました社会保障制度の拡充、年金と社会保障、生活保護、これは柱でございますから、こういうものにつきましてできるだけ政府も考えていこうということで答えになると思います。やはりこのことは、一般の方にもなかなかのみ込みにくい事柄でございますから、できるだけ説明をし、国民のためになるのだというPRをし、そして政府も一般国民もその気持ちになるということが、制度の運用拡充に一番いいことだと思います。だから、その意味において政府としては、できるだけ政府の負担も今後考えていかなければなりますまい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/103
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104・八木一男
○八木(一)委員 政府の負担をできるだけ積極的にお考えになるという答弁は、非常にけっこうだと思います。さらに、修正賦課方式についてもひとつ御検討願いたいと思います。私ども申し上げた意見も参考にされて、御検討いただくということをひとつ前向きにお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/104
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105・池田勇人
○池田国務大臣 修正賦課方式というのは、内容をよく知りませんので、検討してからにいたしたいと思います。こういうことは非常に国民経済、財政に影響することでございますから、十分検討の上で、やはりそういうものを入れる入れないにつきましても、四十一年の改定期につきましては十分検討の結果あらわれてくると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/105
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106・八木一男
○八木(一)委員 時間がありませんから、先に進みます。
同じく金額の問題でございますが、福祉年金の金額であります。福祉年金の金額については、障害福祉年金、母子福祉年金もございますが、その中枢は老齢福祉年金になります。昨年度の改正で、一月当たり千円のものが千百円に増額になりました。増額になっておるのはいいのですけれども、岸内閣当時の発足した当時からの物価変動についての公式の見解を政府に求めました。政府委員からの答弁によりましたら、その当時より本年まで、二五%の物価の上昇があったという御答弁でありました。これはこの委員会で再三確認しております。そういたしますと、いまの千円はその当時の八百円の値打ちしかない。百二十五で割りますから、そういうことになるわけであります。現在の老齢福祉年金月千百円は、岸内閣当時の八百八十円にしかなっておらないわけであります。社会保障について熱心に取っ組まれておると言われておる池田さんに、このような穴があるわけであります。千円のものが八百円になる、千百円であっても八百八十円の値打ちしかない。年金の金額というものは、年金の制度が出てからまだ幼稚なものでありますから、それ自体成育させるために、積極的に金額その他について発展をさせなければならない要件がある。そのほかに、生活水準の向上に従って発展をさせなければならない要件がございます。そのほかに、物価に対応して変えていかなければ実質価値が下がってくるという、三つの要件がある。その最低の最低の、三つの要件の最低の要件すら、いまの年金は果たしておらないわけであります。池田さんは、社会保障に熱心に取り組むと言われながら、岸さんの時代よりもこの老齢福祉年金について実質価値が下がっておる、こういうことであってはならないと思います。本年度の改正には、その改定が出てこなかった。少なくともこの老齢福祉年金というものは、残念ながらいま過渡的な制度になっておりますが、早くしないと、二、三年後を待っていてはその間に老人は死んでしまったり何かして、もうもらう機会がなくなります。ですから、これは即時改定を要するものでございます。少なくとも来年度においてその問題について、老齢福祉年金あるいは母子福祉年金、障害福祉年金について大幅な金額の改定の必要があり、それを直さなければ、総理大臣としてのいろいろの公約に対しての態度とそぐわない、相反することになろうかと思います。ぜひ、一番の責任を持ち、また、力を持っておられる総理大臣が、これについて来年度から大幅に引き上げるという御意思の御表明をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/106
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107・池田勇人
○池田国務大臣 社会保障施策は各方面にわたっております。一つが物価の値上がりに合わないからと、こういうので非難される、これはそのことだけ見れば非難に値するかもしれません。社会保障全体としては、相当力を入れているわけでございます。先ほどお話しになりました、いまの生活保護基準にいたしましても、物価の値上がりの倍、あるいは三倍くらいには私はしていると思います。そういうところはほっておいて、片一方の上げ足らぬところをどうだとおっしゃられても、これはまたわれわれのほうも言いわけのつくことでございまして、しかし、いずれにいたしましても、どの分を上げるかということにつきましては、やはりそこに前後の区別は置いていただかなければならぬ。お話のとおり初めの千円、これも国民に相当喜ばれました。変なことを言うようでありますが、私の実の姉ももらっておりまして、非常に喜ばれた。だから、これはふやしていきたいという気持ちは持っております。しかし私は、やはり全体を考えないとなかなかむずかしいので、そのことだけでひとつ非難をせずに、これは少しやり足らぬから今度はやったらどうか、こういうことならば私は拝聴いたしますけれども、この分はやらぬ、やらぬというのでは、全体の上から言っていかがなものかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/107
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108・八木一男
○八木(一)委員 私は野党だから、与党のことを悪口を言ったらすっとします。すっとしますけれども、そんなことばかりでは政治が進まないので、国民に喜ばれることが政治であって、与党と野党の政党的な立場などは二の次だと思う。池田さんがいままでの欠点を認められて、来年度から急速に直すと言われるのならば、過去を追ってもしようがないから、そういう悪口はあまり申しませんしかし、そういう欠点があるのに、いろいろ大局的というようなあいまいなばく然とした御答弁で、直すということを言われないのならば、これについては追及をしなければならないことになるわけです。ですから、いままでのことはいままでのこととして、そういうふうに積極的に上げなければならない要件、生活水準の向上について上げなければならない要件、物価について対処しなければならないような、その最低の要件すら満たしておらない。そういう状態でございまするから、来年度において、福祉年金の金額を相当大幅に努力をして上げられるというお気持ちを、ぜひ総理大臣から御表明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/108
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109・池田勇人
○池田国務大臣 福祉年金について、老齢の分は一割三十八年には上げておる。百円の一割。しかし、母子年金につきましては、千円を千三百円にしている。これは三割、物価の値上がり以上に上がっている。それから障害年金は千五百円を千八百円。だから、これをごらんくださいますと、この次にはどれが一番必要かという問題になってきますと、あなたの言う千円を千百円、一割の分を考えなければならぬ問題だ。しかして母子年金の上げ方を多くすることが私は順序じゃないか。それから障害の人は初めから相当出ておりますから、これはあまり物価にも影響がないかもしれぬ。だから問題は、いまの千百、千三百、千八百のどれを一番先にするかということは、沿革的に言えばやっぱり老齢かもしれぬ、しかし、母子の状況も考えなければいかぬ、こういうことになってまいりますから、どれをどうこうということはない、全体としてやはりこういう問題につきましてはひとつ財政の状況を見ながら考えていくべきだ、こう私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/109
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110・八木一男
○八木(一)委員 総理大臣は日本の重要な、国家の総理大臣ですから、もっと自信を持って、そのくらいのことを即答で言っていただきたい。いまの母子年金、障害年金をたくさん上げたことは、これはその当時として、金額は幅は少ないけれども妥当です。というのは、最初にできたのは、選挙民の給付が非常に数が多かった。年寄りは世の中に多い、年寄りを先にされる娘さん、むすこさんが多い、そういうことで老齢福祉年金に重点が置かれて、それよりもはるかに所得保障の必要な障害福祉年金、母子福祉年金に対する手当てが少なかった。それについて数年間追及した答えとして、ごくちょっぴりと三百円値上げしたのです。それは前のことのカバーだ。三百円値上げしたから、障害年金や母子年金がいいという問題ではありません。しかし、保障する分は、質的に見て障害、母子という順番でございますけれども、その対象人数が多い、考え方の中心として老齢がその中の大部分を占めている、老齢を引き上げるかどうかが福祉年金を上げるかどうか、あるいはまた年金制度を上げるかどうかということの中心課題になる。老齢は、もちろん上げなければなりません。それとともに、母子も障害も、前より以上に上げなければならない。内閣総理大臣が、そのようにこっちを上げて、こっちを上げて、小幅なことではなしに、世界の一流国だということを言っておられるのですから、社会保障についても一流国に近づくような気持ちでおられたならば、こんな小さな千円を千百円にするようなことを、総理大臣から言えば一ぺんに三千円にします——これは大蔵大臣が何とか言っても、財政については池田さんのほうが専門家だから、大蔵大臣を教えたってさせる、そのような態度で御答弁を願いたいものであります。こういうように非常に乏しくて、おくれて、しかも岸内閣当時よりも老齢福祉年金は少なくなっている。障害年金は千五百円に対する三百円ですから二割でありますが、障害年金は、ごくわずかでありますが岸内閣よりも少なくなっている。母子年金についてやっととんとんです。とんとんでは、これはとまったことになる、前進したことにならない。そういうことでございますから、その三福祉年金全体について、あるいは準母子年金も入れて四福祉年金について、これは池田さんの決意で、厚生省がなまけていたらしかりつけて、大幅に金額を引き上げるということを国民のために御表明願いたいと思います。御答弁をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/110
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111・池田勇人
○池田国務大臣 教育費もあまり出さなくてもいいし、あるいは道路もそのままほっておけ、減税もしなくてもいいということになれば——とにかく千円を三千円にしますと六、七百億円の費用が要りますから、減税もしない、あまり積極的な施策もしない、老齢年金だけを上げろということにもいきますまい。だから、全部を勘案しながら適当にやっていくよりほかないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/111
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112・八木一男
○八木(一)委員 さすがに財政の大家だけあって、そういうことを言われるならば、三千円は、いま財政の大家でも数百億円が要るからこれは無理だ、三千円は支給しないけれども、来年度は少なくとも二千円くらいにはできると思う、そういうような御答弁、これは大事な御答弁であろうと思う。そういうようなお気持ちでやっていただきたいと思います。それでは、そういう点について御努力を願えるものというふうに理解をいたします。それはいかぬとおっしゃるなら、また総理大臣おっしゃってください。そういうことでなければ、池田内閣の公約無視だと思われるのです。
その次に、あと、かけ足でいろいろと申します。福祉年金について、いろいろのバランスがとれてない点がたくさんございます。端的に具体的なものを申し上げますと、たとえば夫婦支給制限というのがございまして、おじいさんとおばあさんが老齢福祉年金をもらう条件に達しておる場合に、そのわずかな千百円、千円というものが四分の一に減らされるということになる。これについては、これは不合理なので、厚生省のほうでその減額の制度をやめたいという原案を持っておられましたが、諸種の都合で遺憾ながら今度は差しとめになりました。しかし、これは当然次年度においては実現されるべきものであろうと思います。それについてと、まだほかのことを続けて申してしまいます。
その次に、世界に恥ずべき点が一つある。というのは、配偶者所得制限という、総理大臣も御記憶ないと思うのですが、妙ちきりんな制度があるわけです。この福祉年金についてはたくさん上げなければならないけれども、金額がまだ十分でないから、ある程度の収入の人は少し待っていただきたいという制度で、所得制限がございます。それについては、本人が十八万円以上の収入があるときにはこれを支給しないという条件がある。それからまた、通常で言えば世帯所得制限、正確に言えば扶養義務者の所得制限というのですが、五人家族のときに、今度改正案が通ったとして、六十五万円以上の人は差し上げないということになっておるわけです。その間に配偶者所得制限という妙なものがありまして、これは税法で規定してありますが、二十八万円をこえますと支給されない。具体的に言うと、おじいさんが働いておばあさんを養っておるときに、おじいさんに二十八万円以上の収入があるとくれないというわけです。そこで総理大臣、ぜひお考えをいただきたいのは、非常にしあわせなおばあさん、むすこさんが親孝行、お嫁さんがあれで、ちゃんと家庭がしっかりしていて六十四、五万円の収入がある。そのおばあさんには老齢福祉年金がいく。ところが、むすこさんもお嫁さんもなくなってしまって、精神的にも物質的にも困っておるときに、おじいさんが、しようがない、腰を曲げて働いて二十八万円の収入があると、おじいさんは自分の収入があるからくれないのはしようがありませんが、おばあさんにも来ない。これは全く不合理です。世界じゅうどこの国をさがしても一つもないです。こんな妙なものがあって、これをなくしても平年度として年間一億円足らず。そんなものが未解決です。こんなものはけしからぬから、すぐ直せということを、総理大臣から厚生省におっしゃっていただきたいと思う。そういう点がございます。
続けてあと申しますが、母子福祉年金には多子加算という制度があります。これは基本的な年金額のほかに、子供が多いと生活の苦しい程度が多かろうというわけで、金額は違いますが、拠出制のほうも無拠出制のほうも、二番目の子供から加算を多くして少しずつ上げることになっておる。それは妥当でございますが、障害の場合にはそのような家族扶養加算がございません。これはバランスを失しておりますし、障害者の場合も、偶然に子供さんをたくさん持っておられたら生活の苦しい程度が多いわけでありますから、母子年金の多子加算と同じように扶養加算が必要であろうと思います。こういう点で未完成でございます。池田内閣の間に完成をさせていただく必要があろうと思う。そういう点についても直していただきたいと思う。
かけ足で申し上げて失礼でございましたが、まだまだありますけれども、以上三つについて総括的にひとつ御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/112
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113・池田勇人
○池田国務大臣 社会保障制度相互間におきまする併給の問題は、私が一昨年か一昨々年に主張したことがございました。従来からのやりきたりの既成事実、既成観念もあります。また、片一方では財政負担ということも強く主張されまして、十分でないところがあると思います。しかし、これは徐々にやはり先進国型に改めていくよう努力しなければならぬ問題だ。いまいつから改めますとは申し上げられません。やはり財政の問題もありますし、いままでの経過の問題もあります。所得制限なんかというものは、理屈でというよりも、やはり財政上の問題が相当あると思います。しかしこれは何かにつけましても、たとえば先般の引き揚げ者の問題も所得の制限をつけましたし、いろいろな点があると思いますが、今後十分研究していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/113
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114・八木一男
○八木(一)委員 さっきのような経過で、一つは厚生省の原案に入り、一つは年間平年にしても一億というようなわずかなことで済みますので、ぜひ来年度の改正案に盛られるように総理大臣から御指示をひとつお願いしたいと思います。
それでは、残された時間で一番大切なことを申し上げたいと思います。年金制度については、国民が期待を持ちながら、別な面で不信の念がございます。不信の念があるというのは何かと言えば、これは戦後のインフレによって、あらゆるそれに似た制度に自分が出した金が、実質価値がなくなったということについて非常に痛手をこうむっておりますので、非常に不信の念があるわけです。そういう点について、国民年金にはばく然とした規定はございまするけれども、その規定では非常に不十分でございます。国民年金法の規定では、生活水準その他の条件が著しい変動を来たしたときには調整を加えるということを書いてあるわけでございまするが、著しいということばでは、国民は、相当程度の変動があっても著しくないということでごまかされて、それで実質価値を失ってしまうというふうなことを考えるわけです。また生活水準その他では、生活水準にスライドするほかに、物価にスライドしなければならないということがなおざりにされてしまうという気持ちを持つわけです。こういうような気持ちのために、拠出制のいろいろな年金に対して国民が積極的に協力し、それに期待を持つということが広がらないわけです。でございまするから、当然このようなスライドについて、たとえば物価と生活水準の向上、その両面について具体的に、割合に応じていくという明確な規定に直される必要があるし、また、ないものについてはそれを規定される必要があろうと思います。それについての総理大臣の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/114
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115・池田勇人
○池田国務大臣 非常に重大な問題でございまして、いまお話しのとおり、五年ごとにということもございますが、五年ごとにということは五年でわかりますけれども、著しい変化ということについては定義がむずかしい、こういうことでございます。これはやはり、四十一年度のあれをつくりかえますときに十分考慮に入れる必要があると思います。物価の変動ということについてはわりに計算がしやすうございますが、生活水準の向上ということは、これはなかなかむずかしい問題でございます。いずれにいたしましても、これは年金制度の基本に関係する問題でございます。各国の事例等も十分検討しなければならぬ。それよりまず、やはり物価が上がらないように——生活水準はうんと上がるように、物価は上がらないように、こういうことでいかなければならぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/115
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116・田口長治郎
○田口委員長 あと一分半ありますから、その間に結論をおまとめ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/116
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117・八木一男
○八木(一)委員 いまのような考え方で物価を上げないようにすることも必要ですが、もし上がったときに年金その他の関係者が損をすることがないように、それに対して信頼ができるように、ひとつ総理大臣のいまおっしゃったようなことでがんばっていただきたいと思います。また厚生省、大蔵省あたりに、そういう考え方で積極的に取っ組めということをひとつ御指令を願いたいと思います。
その次に、もう一回だけ申しますが、資金の運用についてでございます。国民年金あるいはそれと似たような制度につきましては、資金の運用が、新しい原資、新しく保険料収入があったものの四分の一が、いわゆる還元融資に回っているような状態であります。大蔵省のほうで、そのような資金をその他の融資資金に使いたいというような状態があることはわかっておりまするけれども、これではあまりにほんとうの対象者に対する還元が少ないと思うわけであります。いままでの投融資計画でも、いままでやってきたわけでございますが、国民年金というものは数年前から新しくできた制度でありますが、厚生年金がもし今度保険料が上がるとすれば、新しく原資が入るわけであります。そういうものについて、相当多くの部分についてはこの被保険者に還元されるようにする必要があろうかと思います。具体的には年金制度に合うような老人ホームであるとか、障害者の施設であるとか、母子家庭であるとか、または被保険者に直接に非常に関係のある住宅の問題であるとか、そういう問題に融資を回されるように、せっかくの方針を進めていただきたいと思うわけであります。厚生省も熱心に取っ組んでおられますが、大蔵省と競合しますので、厚生省がもっともっと言わなければならないのに、非常に御熱心でおありになりながら腰弱なように思います。制度の本質上、この積み立て金というものは、被保険者に支払うべきものが積み立てられておるわけでありますから、被保険者のために使用するということが第一義的に必要だろうと思いますので、被保険者に還元する金額を非常に多くする、またその管理については厚生省というような省が当たるように、政治を進めていただくようにお願いをしたいわけであります。総理大臣の前向きな御答弁を期待いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/117
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118・池田勇人
○池田国務大臣 国民年金の制度を創設する場合にもその問題がございまして、私は両方の意見を取り入れてやったのでございます。また今度の厚生年金につきましても、企業年金のあり方についていろいろ議論があったようでございますが、そういった点については、第三者の意見を取り入れて妥結できたようでございます。両方に議論がある。しかしその両方に議論があるということは、いまの社会保障制度の必要性と、片一方、資金が不足しているわが国の現状において資金をいかに国家的に有効に使うか、これは社会保障の分であるからこれは厚生省だ、この見方は議論の存するところだと思います。これはやはり全体として調和のとれた方法でいくべきだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/118
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119・八木一男
○八木(一)委員 いまの御答弁、それぞれのお立場、私もわからないではありません。しかし両方の言い分があっても、被保険者の言い分がいままであまりにも軽く扱われてきた。両方の言い分はありますけれども、そのバランスを被保険者のほうに重く見るようにひとつ政治を進めていただきたいということを御要望申し上げまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/119
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120・田口長治郎
○田口委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/120
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121・田口長治郎
○田口委員長 ただいま委員長の手元に、伊東正義君、伊藤よし子君及び吉川兼光君より、国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案に対する修正案が提出されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/121
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122・田口長治郎
○田口委員長 修正案の趣旨の説明を聴取いたします。伊東正義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/122
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123・伊東正義
○伊東(正)委員 私は、ただいま議題となっております国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案に対する自由民主党、日本社会党及び民主社会党三派共同提案にかかる修正案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
お手元に修正案が配付してありますので、朗読は省略いたしますが、今回地方税法の改正に伴いまして、従来老齢者等の住民税の均等割りの非課税限度額が十八万円とされていましたが、これが二十万円に引き上げられることになりましたので、福祉年金及び児童扶養手当の受給者本人の所得による支給制限の限度額も、これにならって十八万円から二十万円に引き上げようとするものであります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/123
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124・田口長治郎
○田口委員長 この際、本修正案について、国会法第五十七条の三による内閣の意見があればお述べ願いたいと存じます。小林厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/124
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125・小林武治
○小林国務大臣 ただいまの修正案につきましては、地方税法の改正に伴うものでありまして、この際やむを得ないものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/125
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126・田口長治郎
○田口委員長 修正案について御発言はありませんか。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/126
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127・田口長治郎
○田口委員長 御発言がなければ、これより修正案及び原案について討論を行なうわけでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。
これより内閣提出の国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案及びこれに制する修正案について採決に入ります。
まず、伊東正義君、伊藤よし子君及び吉川兼光君提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/127
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128・田口長治郎
○田口委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。
次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/128
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129・田口長治郎
○田口委員長 起立総員。よって、国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案は、伊東正義君外二名提出の修正案のごとく修正議決いたすべきものと決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/129
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130・田口長治郎
○田口委員長 この際、松山千惠子君、八木一男君及び吉川兼光君より、国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案について附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨の説明を求めます。松山千惠子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/130
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131・松山千惠子
○松山委員 私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党、三派共同提案にかかる国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案に対し附帯決議を付するの動議を提出いたします。
案文を朗読いたします。
国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は国民年金制度の重要性にかんがみ左記事項につき速やかに実現するよう検討努力すること。
一 左の大綱に従つて改善を行なうこと。
1 各年金の年金額を大幅に引き上げることとし、厚生年金の改正との均衡をはかること。
2 老齢年金、老齢福祉年金の支給開始年齢を引き下げること。
3 福祉年金の給付制限を緩和すること。
4 保険料、年金額、給付要件、受給対象等すべての面において社会保障の精神に従つて改善すること。
5 右の実現のため大幅な国庫支出を行なうこと。
二 特に左の事項については可及的速やかに実現するよう努力すること。
1 各種福祉年金額を大幅に引き上げること。
2 各福祉年金の所得制限額を引き上げるとともに、所得水準上昇に伴い、これが自動的に引き上げられるよう検討すること。
3 夫婦とも老齢福祉年金をうける場合の減額制度を廃止すること。
4 老齢福祉年金及び障害福祉年金における配偶者所得制限を廃止すること。
5 母子福祉年金、準母子福祉年金については、精神薄弱者を扶養する場合は二十歳に達するまでこれを加算対象とすること。
6 障害年金障害福祉年金に関して配偶者並びに子につき加算制度を設けること。
7 内部障害の適用範囲をすべての疾病による障害及び精神薄弱者に及ぼすこと。
8 福祉年金と他の公的年金との併給の限度額の不均衡を是正すること。
9 保険料の免除を受けたものの年金給付については、更に優遇措置を講ずること。
10 拠出年金について物価変動及び生活水準向上の二要件に対応する明確なスライド規定を設けること。
11 年金加入前の障害についても拠出制年金の支給対象にすると同様なる給付を行なうこと。
12 傷害年金障害福祉年金とともに障害の範囲につき拡大をはかること。
13 年金受給に達しない者の実納保険料がその被保険者のものとして確保されるようすること。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/131
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132・田口長治郎
○田口委員長 本動議について採決いたします。
本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/132
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133・田口長治郎
○田口委員長 起立総員。よって、本案については、松山千惠子君外二名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。
この際、小林厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。小林厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/133
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134・小林武治
○小林国務大臣 ただいまの附帯決議の趣旨を尊重し、善処いたしたいと存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/134
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135・田口長治郎
○田口委員長 ただいま議決いたしました本案についての委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/135
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136・田口長治郎
○田口委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
〔報告書は附録に掲載〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/136
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137・田口長治郎
○田口委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十八日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。
午後三時十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X03719640427/137
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