1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年六月二日(火曜日)
午前十一時二分開議
出席委員
委員長 田口長治郎君
理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君
理事 澁谷 直藏君 理事 河野 正君
理事 小林 進君 理事 長谷川 保君
大坪 保雄君 熊谷 義雄君
小宮山重四郎君 坂村 吉正君
竹内 黎一君 地崎宇三郎君
西岡 武夫君 西村 英一君
橋本龍太郎君 松山千惠子君
粟山 秀君 渡邊 良夫君
亘 四郎君 伊藤よし子君
大原 亨君 滝井 義高君
八木 一男君 八木 昇君
山田 耻目君 吉村 吉雄君
出席国務大臣
労 働 大 臣 大橋 武夫君
出席政府委員
労働政務次官 藏内 修治君
労働事務官
(大臣官房長) 和田 勝美君
労働基準監督官
(労働基準局
長) 村上 茂利君
労働基準監督官
(労働基準局労
災補償部長) 石黒 拓爾君
委員外の出席者
専 門 員 安中 忠雄君
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六月一日
国民健康保険の療養給付費国庫負担率引き上げ等
に関する請願(池田清志君紹介)(第四〇九九
号)
国民年金事務費の全額国庫負担に関する請願(
池田清志君紹介)(第四一〇〇号)
離島、へき地診療所の医師確保等に関する請願
(池田清志君紹介)(第四一〇一号)
療術の制度化に関する請願(倉成正君紹介)(
第四一一〇号)
同外二件(小平久雄君紹介)(第四一一一号)
同(綱島正興君紹介)(第四一一二号)
同(西岡武夫君紹介)(第四一一三号)
同(馬場元治君紹介)(第四一一四号)
同(藤尾正行君紹介)(第四一一五号)
同(白浜仁吉君紹介)(第四一一六号)
同(永山忠則君紹介)(第四一三一号)
同(石橋政嗣君紹介)(第四一四八号)
同(中村重光君紹介)(第四一四九号)
診療報酬引き上げに関する請願(谷口善太郎君
紹介)(第四一一七号)
同(永末英一君紹介)(第四一一八号)
同外三件(稻村隆一君紹介)(第四一二六号)
同外三十四件(田川誠一君紹介)(第四一二七
号)
同外九十九件(玉置一徳君紹介)(第四一二八
号)
同外六十三件(谷垣專一君紹介)(第四一二九
号)
同外五十八件(本島百合子君紹介)(第四一七
五号)
重度肢体不自由児援護に関する請願(辻寛一君
紹介)(第四一三〇号)
看護人の名称改正に関する請願(松原喜之次君
紹介)(第四一三二号)
原爆被害者援護法制定並びに原子爆弾被爆者の
医療等に関する法律改正に関する請願(大原亨
君紹介)(第四一五〇号)
動員学徒犠牲者の援護に関する請願(亘四郎君
紹介)(第四一九一号)
業務上の災害による外傷性せき髄障害者援護に
関する請願(小金義照君紹介)(第四二一九
号)
公衆浴場営業用上水道及び下水道料金減免に関
する請願(唐澤俊樹君紹介)(第四二三八号)
届け出により療術行為を認めるあん摩師、はり
師、きゅう師及び柔道整復師法の改正反対等に
関する請願(山下榮二君紹介)(第四二三九
号)
業務外の災害による外傷性せき髄障害者援護に
関する請願(安藤覺君紹介)(第四二五一号)
じん肺法の一部改正等に関する請願(黒田寿男
君紹介)(第四二六〇号)
同外四件(亀山孝一君紹介)(第四三〇〇号)
人命尊重に関する請願(松山千惠子君紹介)(
第四二七三号)
全国一律最低賃金制の確立に関する請願(有馬
輝武君紹介)(第四二七四号)
全国一律最低賃金制の即時法制化に関する請願
(有馬輝武君紹介)(第四二七五号)
理学療法士及び作業療法士の制度化に関する請
願(長谷川保君紹介)(第四二八〇号)
公衆浴場業の健全経営維持管理の特別措置に関
する請願外一件(宇野宗佑君紹介)(第四二八
三号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
労働災害の防止に関する法律案(内閣提出第六
号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/0
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001・田口長治郎
○田口委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、労働災害の防止に関する法律案を議題とし、審査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/1
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002・滝井義高
○滝井委員 先日、七条の勧告の問題についていろいろ議論をしましたが、大体その内容がわかりましたので、七条はそのくらいにして、次は十二条の安全管理士及び衛生管理士に関連をしてでございますが、一九四九年当時においては、労働基準法の適用事業所は七十万そこそこだったと思うのです。最近はそれが約百七十万ぐらいの事業所数にふえておるわけです。そうしますと、七十万の事業所を監督しておった監督官の数は、たぶん当時二千四百人そこそこだったと思うのです。この基準監督署の監督官の数は、現在むしろ減っておるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/2
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003・村上茂利
○村上(茂)政府委員 法施行直後におきましては、確かに御指摘のとおり適用事業所が百万に達してなかったのでございますが、昭和三十八年四月一日現在においては百八十六万九千に達しておるわけでございます。これに対しまして、労働基準行政職員の数は約七千人程度でございますが、同じ昭和三十八年四月一日におきましては八千七百六十九名、それが三十九年度におきましては、定員の増加を見ましたので八千九百三十七名、この中における監督官の数が約二千四百名というふうに相なっておるわけでございます。したがいまして、適用事業所数の増加率と職員の定員の増加率を比較いたしましたならば、適用事業所数の増加率のほうがはるかに上回っておりますので、監督実施につきまして、法施行当時よりも行き届かないのではないかというような心配が生ずる、これは数字から比較いたしますと当然そういう形になろうと思います。この点につきましては法施行当時よりも十数年を経過いたしましたので、監督技術の面におきましても、あるいは自動車その他の機動力の点におきましても、かなり充実されておりますので、監督を重点的に行ないまして、遺憾なきを期したいというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/3
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004・滝井義高
○滝井委員 ちょっと雑音があって、声が小さくて聞こえなかったのですが、いまから十六、七年前に比べて、職員の数はなるほど相当ふえておりますけれども、労働基準監督官の数というものは、事業所がふえたのに比例して明らかにふえていないのですよ。いま約二千四百人程度の数を言われましたけれども、この中に労災の事務をやっておる人が相当おるわけです。労働基準監督官という身分を持ちながら労災保険の事務をやっている人が相当おると思うのです。私は七、八百人か千人近くおるのじゃないかと思いますが、それは幾らくらいおりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/4
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005・村上茂利
○村上(茂)政府委員 一般監督の面におきましては、昭和二十四年の行政整理に伴いまして、一般会計の監督官は、二千二百十九名おりましたそれが、千百十八名というふうにかなり減少したわけでございます。これは、当時基準行政発足して間もないころでございまして、監督官の資格ある者がそれだけそろわなかった、欠員もあったという関係もございまして、あの行政整理の当時監督官の定数は削減されたのでございます。一方特別会計のほうは、当時四百九十六名でございましたが、昭和三十八年には八百五十五名というように、特別会計の監督官定数はふえておるのでございます。しかしながら一般計算事務のようなデスクワークをしておる方と申しますと、この特別会計の監督官といえどもそういうような仕事をしておるのではございませんで、業務傷害の認定、それから災害が生じた場合に、故意または重大な過失があったかどうかという点についての調査をいたしますので、安全関係とうらはらの業務を執行しておるということが言えるかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/5
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006・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、いまのその八百五十五名というのは二千四百何ぼの中に入っておるわけでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/6
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007・村上茂利
○村上(茂)政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/7
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008・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、とにかくこれは純粋な監督行政をやるわけではないわけで、いわゆる労災保険事務に関連をする監督面を担当しておるわけで、したがって二千四百名程度から八百五十五名程度を引いてしまいますと、これはもう千何ぼになって非常に少ない数になるわけでしょう。だから千五、六百名になってしまうわけです。それで事業所の数は百八十六万、もう二倍以上にふえておるわけですね。ここに一つ大きな問題点があると思うのです。そうしてしかも御存じのとおり、最近における新しい技術革新というものが工場、鉱山等における生産体制というものをがらりと変えておるわけです。だからここに古い労働力が新しい労働力にとってかわらなければならぬという悲劇も起こっておるわけでしょう。年功序列賃金体系が一つの危機に直面するのは、そういう技術革新に基づいておるわけです。したがって当然そういう形になると、この労働基準に基づく監督官の制度というものも相当数をふやして、そして新しい技術体制に即応する監督官体制というものをつくらなければいかぬと思うのです。そういう点が行なわれていないところに問題があると思うのです。私はこういう点から、ほんとうに新技術の導入に対応した高度の専門的、技術的な監督体制がうまく確立されておるかということに一つの疑問を持つわけです。これに対する対策というものですが、あなたの御説明になった「労働災害防止上の問題点と対策」というものの中にもそういう点の指摘が簡単にされているのです。具体的には詳細に出ていませんけれども、指摘されているわけです。おそらくこういう歴史的な経過から見て、労働基準監督官の数というものが、事業所が飛躍的に増加したにもかかわらず増加していない。先日八木昇委員がやはり質問をしておったけれども、そんなことでは十年とか十二年に一回くらいしか回れぬじゃないかというふうな質問をしておったのをそばで聞いておったのですが、そういう形があると思うのです。災害は忘れたころに来るのではなくて、いつも災害が起こる姿というものは、監督官行政の面からのそういう人的な、技術的な不足の面で絶えず脅威にさらされておると思うのです。一体これの体制をあなた方がどう整えていくかということです。私はそういう体制が、この労働災害防止における安全管理士とか衛生管理士、こういうものでは整えられないと思うのです。やはり役所プロパーで自主的に専門的、技術的な監督体制を確立をすることが先決だと思うのです。その具体的な対策は一体どうするのだということを私たちは聞かしてもらっておかなければいかぬと思うのです。一体人員の面でどうするのか。御存じのとおり、そういう高度の技術的な専門的な知識を持っている人が、いまの安い官庁の中に簡単に入ってくるかというと入ってこない。こういうところも問題があると思うのです。だからそういうものも合わせた体制の確立をどうするのかをまず御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/8
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009・村上茂利
○村上(茂)政府委員 御指摘のとおりでございまして、現在の労働基準法適用事業場の増加趨勢から見まして、監督体制についてさらに充実、強化をする必要があるという点につきましては、五月二十日にございました中央労働基準審議会の答申の中にも御指摘をいただいておるわけでございます。答申の中には、専門部局の新設と行政機構の確立、大幅な増員、それから専門官制度の新設といったような問題につきましてすでに答申をいただいておるのでございますが、この点につきましては来年度の予算編成も間近いことでございますので、このような答申の線に沿いましてできるだけ組織、定員の充実につとめたい、増加につとめたいというふうに考えておる次第でございます。しかしながら災害対策の基本は、上から監督して指導するというだけでは真の効果を上げることができないのでありまして、事業主が真に事の重要性に目ざめまして、自主的に安全活動を展開するということが事柄の基本であろうと存ずるのであります。その点につきましては、災害多発業種における災害防止体制の整備が十分でございませんので、ただいま御審議いただいておるような災害防止に関する法案の成立を待ちまして、団体の設立につとめ、自主的な安全活動の展開を期待したい。かつその際にいわゆる団体的活動が一つのお祭り行事的なものであって、技術的な専門的な指導が十分でないということであってはいけませんので、先ほど御指摘の安全管理士、衛生管理士という知識経験の豊かな人にそのような称号を与えまして、コンサルタント的に技術的な指導、教育を行なってもらうという、器とそれから中へ盛りますところのこういった啓蒙指導の中核といったようなものを両々考えまして、今後災害防止体制を強化充実していきたいというふうに考えておる次第でございます。
重ねて申しますが、監督とそれから自主的な指導、自主的な災害防止活動の展開といったような事項はそれぞれ相関連しておりますので、一方だけを強化すれば足るものではない、総合的に充実する必要があるということを痛感しておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/9
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010・滝井義高
○滝井委員 そういう答弁をするだろうと思って実は質問をしたわけですが、あとのところは私、賛成です。それは監督の体制とそれから自主的な災害防止活動の展開、これは賛成です。そこで私が言わんとするのは、監督の者だけを強化して天下り的にやっても困るというけれども、まず監督の体制が強化されていないのですよ、いまの私の質問でもわかるとおりに。事業場が百八十万にも百九十万にもなろうとしているのに、実際に監督行政をやる人が千五、六百人ということではどうにもならぬじゃないか。八木委員も指摘したように、十年か十二年に一回しか回れぬじゃないですか。それは監督行政がまず確立していないということです。だから監督体制を確立するためには、いまあなたの言われるように、専門部局をつくりなさい、大幅な増員をしなさいということを言われているわけですね。同時に専門官制度、新しい技術革新による技術的な専門的な監督体制をつくらなければいかぬということを言われている。やはりいままでと質の異なった専門的な監督官というものを採用しなければならぬということです。そういう点に対する自主的な監督体制、自主的な災害防止体制、これが両々相まって総合的な災害の防止ができると思うのです。ところが悲しいかな監督体制が確立していない。私の言いたいのは、そいつをまずやってください、幸い答申もそういうふうに出ているならば、それに対する具体的な構想というものをやはり確立してもらわなければならぬ。これはひとつぜひ、われわれはこの法案を通すためには、それが大前提だと思うのです。ただ大幅増員をします、専門監督官の制度を新しくつくりますといったところで、それが具体的に四十年度の予算にこういう形で実現をするという構想が明らかにならぬと、絵にかいたもちになるのです。だからそういう構想を、きょうはなんでしょうから、やはり次会までには、こういう形のものをやるのです、増員はこの程度を第一年度としてはやりたいというくらいの構想のアウトラインくらいは出してもらわなければいかぬと思うのですが、それは出せますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/10
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011・村上茂利
○村上(茂)政府委員 大幅増員というのはただ口だけのことでなくて、実の伴ったものにしたいというのが私どもの心からの念願でございます。ただ、先ほど御指摘のように、労働基準監督官には一定の資格制度がございまして、定員をふやしたから何千人も一ぺんにすぽっと採用できるという性質のものじゃございません。試験を経て監督官の研修をやり、身分を与え、そして業務につかせる、こういうことであるわけでございます。それから安全専門官にいたしましても同様なことでございまするので、定数をいきなり飛躍的にとったからといって直ちに人が得られるかどうかというような問題もあるわけでございます。そういう点から、私ども少なくとも三カ年くらいにわたる見通しを立てまして増員につとめたいと思うのでございます。ただそれが千人がいいか三千人がいいかといったような問題につきましては目下検討中でございまして、来年度予算編成も七月、八月に行なわれることでございまして、その際に具体的な数字は計算をいたしたい、目下検討中でございますので、次会までと申し上げましても、ただ抽象的な数字でございますと、これはかえって失礼に当たりますので、慎重に検討さしていただきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/11
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012・滝井義高
○滝井委員 基準局長さん、自治省では交通巡査が五千人、六千人毎年ふえますよ。去年のごときは予備費でぱっとふやした。これはおまわりさんも簡単に右から左にできるのじゃないのです。やはり試験をして講習をしてやるわけでしょう。それよりかはこれはむつかしいと思うのです、監督官は。だから私はさいぜん言うように、監督の自主体制を確立するためには、いまのような官庁の給料が安いところではいい技術的な専門家というものは来ませんよ、だから相当慎重な年次計画を立ててやる必要がありますということを言っているわけです。だから、あなたが三カ年計画をお立てになろうとするならば、百八十六万にも事業所がふえているのだから、そしてしかも非常に高度の技術革新が行なわれておるのだから、その中でいまの千五、六百人の純粋な監督官というものを一体何カ年計画でどの程度の規模にふやしていくかという計画はやはり知らしてもらわなければいかぬと思うのですよ。これは自治省あたりは割合簡単におまわりさんをどんどんふやしていくのですね。毎年ふえていきますよ、五千人から六千人。これは交通がひんぱんになるから。自治省のおまわりさんがふえていくのだから——おまわりさんは交通整理で人命を守る。あなたのほうも職場で人命を守るのですから、やはり自治省に負けないくらいの要求を出してやっていく。これは筋が通ると思うのですよ。こういうところは非常にじみで、縁の下の力持ちの役割りだけれども通ると思う。そして、それはおまわりさんのように五千人も六千人もふやさなくても、やはり千人や千五百人は一年にふやしていくという体制をとってもらうということだと思うのですよ。御存じのとおり災害というのは大企業より中小企業に多いわけでしょう。そうすると、百万とかそれ以上もある中小企業の事業場をやはり十分指導していくためには相当の数が要るわけですよ。そういう点でひとつあまり心臓——ちょっと心臓が弱いですよ。いまの答弁、非常に消極的で、もうちょっと積極的に言わないと、とてもそれじゃ大蔵省にいまのことばでは勝てぬ。私が主計官だってとてもそれでは——百人もふやしてやればたいへんですよ。もうちょっとやはり基準局長、心臓を強く言って大臣のバックアップをしないと、いまのような答弁じゃちょっと話にならぬですね。そこで私が疑うのですよ。いまのような心臓だから、ちょっと私が疑いたくなるのはどういう点かというと、おそらくあなた方は、もうふえぬから今度は労災協会をつくって、そしてその下請をここにさせるのじゃないかという疑いを持つわけです。それには、下請というとぐあいが悪いから、自主的な労働災害の防止体制、こういう形で、もう自分のほうの監督官の体制のできないことを今度は労災協会で肩がわりしようとするのじゃないかという疑いを持つのです。それじゃいかぬのですね。やはりあなたのことばのとおりに、わがほうも自主的な監督体制をつくって大幅に増員をし強化していく、したがって民間のほうもひとつ自主的な労災防止体制をつくれ、これが車の両輪で両両相まっていく、総合的にやる、こういう形でないといかぬのですよ。そうでないと、ちょっぴり労災の特別会計から金を出しておって、それでひとつやれ、やれと言うだけでは、これはいわゆる監督行政の下請化ではいかぬのです。私はどうもそういう疑いをいまのような消極的な答弁では持つのです。そうして一応そういう疑いを持ったので、持ったところの立場でまず質問をすると、この監督官と協会の立場ですね。この関係は一体どういう形になるのか。特に安全管理士、衛生管理士とあなたのほうの監督官との関係ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/12
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013・村上茂利
○村上(茂)政府委員 定員の増加の問題につきましてはかなり心臓を強く要求をいたしたいと思っております。千人、千五百人というおことばがございましたけれども、まあ要求としてはそれは少なくとも最小限の数字で、われわれもっともっと掲げておる次第でございます。ただ研修能力、その他考えませんと、現在は五十人、五十人——年間百人の監督官を新たに養成しまして研修しておる、それをどういうふうに研修能力を拡大するかといった総合的なからみ合いがございますので慎重にとこう申しておるのでございまして、定数そのものは大臣のお力をいただきまして相当増加いたしたいというふうに考えておるところでございます。
次に災害防止協会ですが、これは下請というのじゃなくて、現在安全衛生規則で一般的な安全基準は定めておりますけれども、きめのこまかいそれぞれの業種に特有な安全規程を定めるということになりますと、直ちに施行命令という命令の段階にまで引き上げるのが非常に困難でございますので、業種ごとの災害防止規程をつくらせましてそれを労働大臣が認可いたす、そうしてそれを守らす、守らす形が就業規則との関係において法律的な効力が出てまいるわけでございまして、そのことは業者団体に自由に事を処理さすというのじゃなくて、安全についての自主規程をつくらせましてそれを守らすということでございますので、いわば義務を課すという体制において事を考えておるのでございます。下請的にすべてを下にやらす、こういう考えではございません。
協会と労働基準監督官の関係でございますが、法的には労働大臣と協会に対する監督関係があるわけでございまして、個々の監督官と協会には法的には関係はございません。しかし事実上は労働基準監督官は法定規準を守らすという監督を行ない、そうしてコンサルタントは所属事業場の安全衛生に関する技術的な指導をやるコンサルタント、一方においては相談活動、一方は上からの監督といったような関係におきまして事実上は非常に密接なる関係を持つ、こういうことになろうかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/13
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014・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、この中央協会の安全管理士、衛生管理士というのは、人数はどの程度置くことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/14
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015・村上茂利
○村上(茂)政府委員 三十九年度におきましてはこれから法案の成立を見ましても、この安全管理士、衛生管理士を直ちに大幅に資格を与えるということは困難な事情もあろうかと思いますので、三十九年度におきましては中央協会三十人、業種別の協会九十九人という予定をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/15
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016・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、中央三十人と業種別が九十九人、百二十九人ということになるわけですね。これは三十九年はこのくらいですが、四十年、四十一年とだんだんふえていくわけでしょう。そうすると、その上昇カーブは大体どの程度になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/16
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017・村上茂利
○村上(茂)政府委員 御承知のように、設立されます災害防止協会は民間の団体であるわけでございます。そこで今後におきます安全管理士、衛生管理士の人数の問題につきましては、次年度以降の増員は協会設立後直ちに協会と話し合いをいたしまして、その数字を確定いたしたい。相当数増加したいという意向を持っておりますけれども、具体的な人数をただいま申し上げる段階に至っておりません。協会発足後に至急相談いたしまして、その人数を確定いたすことにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/17
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018・滝井義高
○滝井委員 相当増加をしたい、そうすると、大体これは機構的にだんだんわかってまいりました。まず監督官というのは主として上から管理監督をやっていく、それから安全管理士なり衛生管理士のほうはコンサルタント的な役割だ、しかもそれを専門的に技術的にいろいろ相談に応じていく、こういう形ですね。これで役割がはっきりしてきました。
そうしますと、もう一つ問題なのは、法律上の安全管理者、各職場に安全衛生規則での安全管理者がおるのです。この安全管理者との関連というものは一体どういうことになるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/18
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019・村上茂利
○村上(茂)政府委員 御承知のように安全管理者は、労働基準法適用事業、つまり個別企業におきまして、労働基準法に定められた安全衛生に関する基準を、使用者にかわりまして責任を持って処理する。こういう地位にありますので、基準法上の責任を持っておるわけであります。そのように個別企業において法律に基づき命ぜられたものであり、法定義務を持つ。それから一方安全管理士、衛生管理士は、個別企業にとらわれず、当該業種を横断した立場で個別企業の相談に当たるということでございます。そして法的には基準法を順守するとか、そういったような義務は負っておらない。こういうことで全くのコンサルタント的な活動であり、安全管理者は法定の地位と責任を持つ。しかも個別企業に置かれておるという点に相違があると存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/19
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020・滝井義高
○滝井委員 概念的にはよくわかったのです。しかしこれは十二条で、やはり安全管理士なり衛生管理士と、それから安全衛生規則上における、いわゆる労働基準法上当然責任を持っておる安全管理者との関連というものを、ある程度明らかにしておく必要があると思うのです。と申しますのは、業種別にだんだん組合が強化をされてきますと、ことし九十九人置こうとされておりますが、業種別の管理士というものの数がだんだんふえていきますね。そうしますとへまをすると、適当な人がないので、企業の安全管理者を引き抜く可能性が出てくるという関係が出てくるわけです。いまの日本ではこういう技術者というものは不足しておるわけですから、しかもあなたのほうが、労働者の定める資格がなければ、安全管理士なり衛生管理士になれないということがあるでしょう。それから安全管理者だってそうでしょう。したがって引き抜かれる可能性がある。たとえば、最近通産省で保安監督官を増員しなければならぬということになった。そうすると、炭鉱の保安の責任者が、われもわれも炭鉱よりも監督者になったほうがいいのだということで、みんな炭鉱をやめて役所の試験を志願する人が出てきた。坑内にいってひどい目にあうよりも、監督者の立場で坑内を回ったほうがよいというので、優秀な技術者がみんな逃げようとしておる。炭鉱は逃げてくれるな逃げてくれるなととめておるのです。それと同じですよ。だからあなたのほうの監督官、それからこの法律における管理士、それから基準法上の義務のある安全管理者というこの三者の形をやっぱり一線に並べて、それぞれの総合的な計画を立てておかないと、これはたいへんなことになるわけです。こんなものはみんな共通の資格を持っておるものですからね。私がどうも下請の可能性があるというのは、もし役所よりも協会の待遇がよいということになると、協会に人間が集まって、役所が協会の下請となる可能性がある、こういうことです。こういうことはおそらくあなた方、考えておったかおらなかったか知らないけれども、私は図をかいてみた。しろうとで専門家でないけれども図をかいてみると、どうも人間的にどっかに片寄る可能性があるという危惧を感じたわけです。こういう点についてはお互いにその技術者を奪い合わないように、それぞれところを得てうまく三者がチームワークをとって労働災害の防止体制の確立をはかるということを気をつけていないと、ちょうど炭鉱にいま労働者がいなくなってしまったような形が各企業に起こってきますよ。安全管理者というものがいなくなるという可能性が出てくる。そういう体制は十分考えておるでしょうな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/20
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021・村上茂利
○村上(茂)政府委員 御指摘のような問題は十分懸念されるところでございます。その点については、安全管理士及び衛生管理士に対しまして、その仕事に相応した待遇をどの程度のものにするかということとも関連いたしておるわけでございますが、それとは別に、安全管理士及び衛生管理士は中央協会に置くように義務づけておるわけでございます。これとのうらはらの関係におきまして、この管理士の養成、訓練は中央協会において行なうように計画いたしております。そこで個人としてなりたいという希望者がおりましても、この教育訓練実施の問題と関連させまして行政をしてまいりたいというふうに考えております。御懸念の点十分われわれも留意いたしまして、そういった混乱を生じないように注意いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/21
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022・滝井義高
○滝井委員 ぜひひとつそこらの関係を明白にしつつ、お互いに人間の奪い合いのないように、これは唇歯輔車でなくして、三者がうまくいく体制をぜひつくってもらいたいと思います。
それからその十一条の業務の中をごらんになると、「中央協会は、労働災害の防止に関し、会員間の連絡及び調整を図る」というように「調整」ということばがあるわけですね。この調整というのは一体どういうことなのかということです。たとえば、労働災害防止について中央協会がカルテル行為をやるということにもとれないこともないわけです。というのは、三十六条ですか、さいぜんあなたの御説明になっておった労働災害防止規程等をつくることになるわけです。そこで中央協会というのは、業種別の協会が加入してきておるわけですから、全国的に災害の多発するものに横断的の一つの統制が自主的に加えられるわけです。そうしますと、この中央協会が、たとえば非常に独裁的な人が会長になり、そうして業種別の団体の統制をやるということになると、カルテル的な行為もやれることになる。しかもそれは法律で裏づけのあるいま言った三十六条のこの労働災害防止規程、これも三十七条にあるように、防止規程というのは非常にいろいろなものを規定することができるわけでしょう。そうしますと、これは横断的に一つのカルテル的な組織を労働災害防止についてつくり得ることになるわけです。こういうところをもうちょっとあなた方の見解を聞かしておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/22
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023・村上茂利
○村上(茂)政府委員 労働災害防止規程がカルテル的な機能を実質的に発揮するようになるのではないかという点につきましては、災害防止規程の内容となる事項、つまり適用範囲とか、機械、器具その他の設備、作業の実施方法等について、といったような問題につきましての、災害防止規程によりまして基準がそろえられるわけであります。しかしながら、この点につきましても、そろえるといたしますれば、いわば最低ないしは平均的な線にそろえるわけでありまして、それ以上にさらに十分な施設、機械の改善を行ないたいという問題もあるわけでございますから、そういう意味におきましては、現在の基準法が最低の基準をそろえまして、ある程度のコントロール的な働きを持っておりますが、カルテル的な機能を持つかどうかという点につきましては、異見の存するところだろうと思います。災害防止規程につきましては、平均ないしは最低の基準をそろえるという意味において機能を果たすものでございまして、ことばの意味どおりのカルテル的なものになるかどうかという点については、私どもさらに研究をいたしたいと思っております。
なお、十一条の「会員間の連絡及び調整」という「調整」は何かということでございますが、御指摘のように、災害防止規程によるところの「調整」ということは、実質的に大きな部分を占めているわけでありますが、そのほかに、中央協会としましては、災害防止に関する基本計画及び実施計画に即応いたしますように、会員間の活動を調整するという問題がございます。たとえば安全週間を実施するとか、準備月間を実施するといったような、いろいろな行事もあるわけでございますが、そういったもろもろの行事につきましても、基本計画及び実施計画に即応するように会員間の調整をするということに相なろうかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/23
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024・滝井義高
○滝井委員 私がどうしてそういう質問をするかというと、三十七条の二項をごらんになると、「協会が労働災害防止規程に違反した会員に対する制裁の定め」というのがあるわけです。しかも制裁の定めがあって、同時にできたこの労働災害防止規程は、四十一条で就業規則に優先するわけです。就業規則より力が強くなるわけです。こうなりますと、まず中央協会は、加入する業種別の団体に対してぴしっとした規制を持ち得るわけです。この規程をもって一貫をした統制をとり得るわけです。そうなりますと、一体どういう問題が出てくるかというと、組合活動との関係が出てくるわけです。労働組合は団体協約で就業規則をつくったわけです。ところが、労働組合が団体協約で就業規則をつくったにもかかわらず、事業主の団体は、全国的に統制をして、そしてこの就業規則を骨抜きにすることができるわけです。これを私は懸念をするのは、いま最低賃金は業者間協定だからだめだと労働組合が言っておるわけです。そうすると、労働災害について業者間協定をつくることになる。この点は私、大臣にぜひひとつ意見をお伺いしておかなければならぬ。こういうように調整の形をもって全国的な規程をつくり、それが労働組合が団体交渉でつくった就業規則を上回る、より力が強いというものになると、この労働災害に関する業者間協定は、労働組合がこれにぶち当たろうとしても、就業規則で話し合ったものを上回ったものが企業を支配しますから、労働運動の制約になるわけです。これはそういうことのないように——いまわれわれが条文から読むと、そういう仕組みになっておるわけです。だから、最低賃金制度というものが業者間協定でできないような、労働災害の業者間協定ができる可能性がある。そして、しかもそれが労働組合の団体交渉権をチェックするということがある。この条文からそう読み取れるのですよ。だから、そういう点がないならばないような解明をひとつ大臣からしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/24
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025・村上茂利
○村上(茂)政府委員 ちょっと法案の内容についてでございますので、私から御答弁申し上げます。
御懸念の点につきましては、理論上もないと思うのでございますが、法文上も明らかにしておく必要があると存じまして、この四十一条の第三項の規程に、「前二項の規定は、労働災害防止規程が会員の事業について適用される労働協約と抵触するときは、その限度においては、適用しない。」というふうに法文上も御心配の点が解明されますように規程が設けてある次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/25
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026・滝井義高
○滝井委員 ところが、その前の二項は、就業規則、これは規程よりか力が弱いわけです。就業規則をつくるときは当然団体交渉をやるわけです。あるいは事業主が天下りでやることもあるけれども、労働組合が意見を言うわけです。意見を言うて、両者の合意で就業規則をつくった。ところが、今度の事業主の労働災害防止規程はそれを上回ることになる。だから、ここに労災防止の業者間協定というニュアンスが出てくるわけです。しかも、この規程に違反をしたことをやる業者はびしびし制裁を加えられるという規定になっている。その限りにおいては、労働運動を制約するわけです。だから、事業主が労働組合に天下りにやってくる。おれがやらなければ罰せられるのだから、そうなってくる。そういう形にこれはなる。なるほど労働協約そのものはよい。しかし、団体交渉でもし就業規則をつくっておったとすれば、それはだめになる。労働組合の意向はそこで無視される形になる。そういう点で、これは業者間の労災防止法ではそういう疑いが出てくるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/26
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027・村上茂利
○村上(茂)政府委員 御指摘の点は、労働協約をどう見るかということに関連をいたしておりますが、私どもの考えております就業規則と申しますのは、労働基準法の八十九条で、使用者が作成義務を負い、その作成するにあたっての手続として、第九十条で「労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。」という形で作成される規則であるというふうに考えているわけでございます。御指摘のように、労働組合が団体交渉という手続を通じまして合意に到達したもの、これが労働協約であるというふうに解しますならば、それはもはや就業規則ではありませんから、この労働災害防止規程との抵触関係を就業規則として考える必要はない。労働組合として使用者との間に意思の合致がございまして、書面において合意をしたという場合には、むしろそれは労働協約と解すべきであります。それがこの労働災害防止規程に優先するわけでありますから、御指摘のような、団体交渉権を制限したり、労働組合の活動を抑制するような形になりはせぬかということについては、私ども、いま申し上げましたような形に考えております。
なお、労働災害防止規程は、業種別の労働災害防止協会において作成するわけでありますから、その点、会員に対する規制力が及ぶといたしましても、当該業種の会員についてだけということでありまして、全国一律という形にはもちろんならぬわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/27
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028・滝井義高
○滝井委員 なるほど就業規則は事業主がつくりますけれども、いま言うように、過半数で組織する組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者の意見を聞くわけですね。その限りにおいては、これは労働者の意思がそこで無視されることは変わりがないわけです。これはある場合には、就業規則は団体交渉でつくっていることもあり得るのです。お互いに話し合いをして就業規則というものはつくるわけです。そうなりますと、その限りにおいては、労働運動が明らかにそこでチェックされることになる。業者間協定のほうが力が強いわけです。就業規則は事業主がつくるでしょう。そうすると、その事業主が自分でつくって労働者の同意を得ておった就業規則というものを、その自分の加入をしている協会の規程によって、やはりチェックされるということになるわけです。ここらが、やはりこの法律が労災防止の業者間協定であるといわれる一つの大きなポイントだと私は思いますよ。だから、そういう点については、自主的な監督体制、それから自主的な防止体制という、労働災害の防止体制をおつくりになる。しかし同時に、そこには、労働者がこれに協力的でないと、なかなか事業主だけでは労働災害防止はできかねる、責任は事業主になるわけだけれども。そこで、数ある労働組合の意見が反映される姿というものを絶えずつくる必要があるわけです。そういうことで、この前からわれわれがいろいろ主張した結果、あなたのほうが、参与の制度ですか、これは二十七条ですかね、二十七条に参与の制度というやつを入れてくださったわけですよ。ところが、その参与の資格とか権限というものがはっきりしていないわけです。ただ参与を置くというだけです。労災防止の責任というものは、責任という形においては事業主にあります。しかし、法律上の責任は事業主にあるけれども、ほんとうに災害をなくそうとすれば、やはり労働者の全面的な協力態勢がないとうまくいかない。だからしたがって、一応、事業主の団体に労災保険の特別会計からお金を出すんでしょう、それから同時に、協会に加入する会員からも金を取るのでしょうが、この参与の役割というか、権限というか、これは一体どうするつもりなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/28
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029・村上茂利
○村上(茂)政府委員 第二十七条に規定する参与は、第三項に定めておりますように、労働災害の防止に関し技術的専門的な知識を持つ者のうちから委嘱したいという考えでございます。事柄の性質上、学者などのほか、労働災害の防止に経験、見識のある労働者につきましても、参与の人選の範囲に含まれるわけでございますが、この参与は、一体何をするのかという点につきましては、第二項に規定してありますように、「中央協会の業務の運営に関する重要な事項に参与する。」こういう定め方になっておりまして、具体的な運営の方法につきましては、第四項の規定により、「定款で定める。」というふうにいたしております。法文の形としては、参与に関する規定は、まあ、このような形が常識的ではなかろうかと考えておりますが、労働者の意見を正しく反映するようにという趣旨の実現につきましては、具体的な定款を定めまする場合に十分に配慮したいと考えております。かくいたしまして、上は、中央協会においても労働者の適切なる御意見を反映し、それから、労働災害防止規程の作成にあたりましては、第四十条の規定で、「関係労働者を代表する者」の意見を聞くというふうに、意見を聞くということを法律上義務づけるという措置を講じて、いわば上の段階においても、具体的な防止規程作成の段階においても、労働者の意見を反映させるような手段を講じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/29
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030・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、当然この参与は、「学識経験がある者」というのは、学者だけではなくて、労働者自身も代表として入り得るわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/30
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031・村上茂利
○村上(茂)政府委員 労働組合の安全関係の担当者、あるいは会社におきます安全担当の労働者の中には、かなり高度の学識経験を有する方がおられるわけでありまして、今後参与を選任する場合におきましても、私どもは、適格者があるというふうに考えておるわけでございまして、学者に片寄るという考えは毛頭持っておらないのでありまして、参与制度が、真にその目的を果たしますように、十分運用に注意したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/31
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032・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、参与というのは、労使、それから学者と、こういう三者構成みたいな形になるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/32
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033・大橋武夫
○大橋国務大臣 参与というのは労使じゃないんで、これはもともとなかったものを、労働者の代表、労働組合の代表の意見を加えなければいけないと、こういうことになりまして、それで、労働組合の代表者ということをもとにして考えたものでございます。主体となるものは、労働組合の代表者であり、必要に応じて、同じ制度がありまするから、学識経験者も場合によったら入れたらよかろう、こういう意味で規定をしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/33
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034・滝井義高
○滝井委員 それが私はほんとうだと思うのですね。というのは、協会というのは、使用主の団体なんだから、使用主の団体に意見を一番具申をするのは、やはり労働者の代表でなければいかぬと思うのです。そして同時に、それが、使用者なり労働者の意見のほかに、第三者の学者の意見も聞こう。使用主は、協会をつくってみんな入っておるわけですからね。私は、ひとついまの大臣の答弁のようにしていただきたいと思うのです。労働者代表を中心とする、必要に応じて学者諸先生方の意見を聞こう、こういう形にしておいてもらいたいと思うのです。そうしないと、使用主の団体にまた労使双方の学識のある人、安全衛生その他に経験のある人ということになると、労働者の意見が何か薄められてしまって、今度はまたその諮問機関みたいになって意味がないと思うのですよ。それはいまの大臣の答弁のとおりでいいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/34
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035・大橋武夫
○大橋国務大臣 そういうつもりで立案したものでございますから、そういう考えで運用したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/35
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036・滝井義高
○滝井委員 それから、これは三十六条の三項でアウトサイダーにも適用されるわけですね。「事業主の団体で会員でないものに対して第一項第二号の業務を行なうことができる。」だから、三十六条の業務というものをアウトサイダーに適用することになるわけです。この場合の——いま中小企業団体組織法あるいは環衛法、理容とか美容等ですね、これも、アウトサイダーへの適用をやる規定があるわけです。この労働災害防止規程もアウトサイダーに適用になるわけです。それで、ちょっとこのアウトサイダーの規定の構想、その予想される場合のケース、それを御説明いただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/36
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037・村上茂利
○村上(茂)政府委員 「第一項第二号の業務を行なうことができる。」と、こう規定しておりますが、事柄の性質上、たとえば技能に関する講習を行なう、あるいは情報、資料を提供するという場合に、これは何も会員だけを対象とせず、同種の事業主でありまして会員でないというものについても、これは拒む理由がございませんので、こういった協会の事業は、会員外のものに対しても行なうというふうに定めたわけでございます。格別それ以上の意味はないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/37
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038・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、ここの読み方は、三十六条の一項の一号の防止規程は入らないんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/38
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039・村上茂利
○村上(茂)政府委員 入りません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/39
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040・滝井義高
○滝井委員 「第一項第二号の業務を行なうことができる。」と書いて、その二項を見ると、「協会は、前項の業務のほか、」こうなっているわけです。したがって、前項の業務のほかにこれこれだから、第二項の中には一項は含まれませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/40
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041・村上茂利
○村上(茂)政府委員 会員でないものに対して行ないます業務は、第一項第二号の業務です。すなわち「会員に対して、労働災害の防止に関する技術的な事項について指導及び援助を行なうこと。」というこの第二号に限りまして業務を行なうことができるわけでございます。したがいまして、技術的な事項についての指導及び援助を行なう、しかもそれは協会がみだりにやるのではございませんで、「労働大臣の要請があったときは、」こういう要件のもとに認めておるのでございます。法的に災害防止規程を適用してどうこうということは予定いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/41
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042・滝井義高
○滝井委員 これはなかなか微妙なところですね。というのは、労働災害防止規程にいかなる内容のものが規定をされるかということが、まず問題なのです。そうしますと、この二項をごらんになると、機械及び器具についての試験、検査、労働者の技能に関する講習、情報や資料の収集及び提供、調査及び広報、それから前各号の業務に付帯する業務を行なうこうなっておるわけです。そうすると、こういう機械、器具の試験とか労働者の技能とかというようなことに付帯をするものだということになると、とり方によっては、幾らでも範囲が広くなるわけです。
そこで、実は疑うわけではない、思ったことを全部質問しておるわけですが、これはアウトサイダーでこういうことをいろいろやると、どういう形になるかというと、結局中小企業の団体法その他と同じように、これは一つのアウトサイダーに対する系列化、下請化をこれでやることになる可能性も出てくるわけです。そういうことだってできるわけです。それから、さいぜん申しましたように、調整という形でのカルテル化を心配したのですが、そういう形が今度はアウトサイダーにも及ぶ、こういうふうに条文は疑いが持たれるわけですね。これは悪いことでないから、それがいい方向に使われることならば、アウトサイダーで労働者が災害にさらされるという危険があるのですから、むしろこれは使い方によっては伝家の宝刀になり得るわけです。しかし、場合によっては、それが大企業への系列化、下請化というものに使われても困るという一面もあるわけです。もろ刃の剣になる可能性があるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/42
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043・大橋武夫
○大橋国務大臣 この三十九条は読みにくいかもしれませんけれども、こういうふうに読んでいただきたいと思います。
協会の行なう業務ですが、第一番は「労働災害防止規程を設定すること。」このことは、会員以外には絶対に影響を及ぼさない事柄でございます。
それから「会員に対して、労働災害の防止に関する技術的な事項について指導及び援助を行なうこと。」この二号は、「会員に対して、」とありますから、本来第一項の第二号は会員に対するものだけなのです。
そこで、この第三項に、労働大臣の要請があったときは、会員でないものに対しても、第一項第二号の、すなわち「労働災害の防止に関する技術的な事項について指導及び援助を行なうこと。」ができる、こういう趣旨で書いたわけでございます。
それから第二項にあります事柄は、会員についてということは書いてございませんから、これは全部できるわけです。しかしこれは強制力はございません。
第一は、機械、器具について試験及び検査を行なう。これは申し込まれた機械及び器具に限るわけです。
それから二の、労働者の技能に関する講習、これも希望者に限るわけです。したがって、会員外の場合においても、必要があればやることは法律的に差しつかえないわけであります。
それから情報及び資料の収集、これも会員に限ったことはないのでございます。普通は会員でございましょうけれども、協会が決定すれば会員外に対してやっても差しつかえない。ただし、相手が承諾しなければいけない。
それから調査及び広報、これは一般の調査、広報でございますから、会員には関係ない。またそれらに付帯する業務、こういうふうに読んでいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/43
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044・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、三十六条の一項の二号の「会員に対して、労働災害の防止に関する技術的な事項について指導及び援助を行なうこと。」という、これがいわば労働大臣の要請があった場合にやることである。他の規定はもう全部だめ。それから二項に書いてある一号から五号までの機械とか労働者の技能とか情報とかいうようなもろもろの問題は、これはたいして悪いことじゃないのだから希望だ、こういうことになるわけですね。なかなかどうも一言い方がむずかしいのだけれども。
そうすると、労働大臣の要請があったというような場合、これをちょっと例をあげてみてくれませんか。一体どういう場合に労働大臣が労働災害に関連をして要請することになるのか。そうするとわかりやすくなる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/44
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045・村上茂利
○村上(茂)政府委員 たとえば、貨物取り扱い事業でございますと、貨物取り扱い事業について労働災害防止協会ができたと想定いたします。その際に、貨物取り扱い事業における災害防止計画を労働大臣が定めまして、さらに実施計画をつくるわけでございます。その実施計画を達成いたしますために、いろいろな指導、援助という活動が出てまいります。その中にはいろいろな活動がありますけれども、当該協会の会員だけでは十分でない。実は災害は会員でないものにもかなり出てくるのではないかというような問題がございましたときには、この技術援助を労働大臣の要請によって行なう、こういう形になってくると存じます。これは思いつきでやるのではなくて、むしろ実施計画の達成というような問題と関連いたしまして、会員外にも技術的な事項についての指導及び援助を行なう必要ありと判断をいたしました際に要請をするということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/45
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046・滝井義高
○滝井委員 ちょっとわかったようなわからないような答弁ですが、きょうはこれでやめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/46
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047・田口長治郎
○田口委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明三日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。
午後零時八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X04919640602/47
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