1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年六月十七日(水曜日)
午前十一時一分開議
出席委員
委員長 田口長治郎君
理事 井村 重雄君 理事 澁谷 直藏君
理事 田中 正巳君 理事 河野 正君
理事 小林 進君
浦野 幸男君 大坪 保雄君
熊谷 義雄君 坂村 吉正君
竹内 黎一君 地崎宇三郎君
中野 四郎君 西岡 武夫君
西村 英一君 橋本龍太郎君
藤本 孝雄君 松山千惠子君
伊藤よし子君 高田 富之君
滝井 義高君 八木 一男君
八木 昇君 吉村 吉雄君
本島百合子君 吉川 兼光君
谷口善太郎君
出席政府委員
総理府事務官
(恩給局長) 増子 正宏君
厚生政務次官 砂原 格君
厚生事務官
(大臣官房長) 梅本 純正君
厚生事務官
(援護局長) 鈴村 信吾君
委員外の出席者
総理府事務官
(恩給局第一課
長) 白井 正辰君
専 門 員 安中 忠雄君
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本日の会議に付した案件
戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す
る法律案(内閣提出第一〇六号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/0
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001・田口長治郎
○田口委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/1
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002・河野正
○河野(正)委員 この戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案の審議に際しまして、まず第一にお伺いをいたしたいと思いまする点は、過ぐる日華事変あるいは大東亜戦争というような大戦が、われわれ国民に対しまして多大の犠牲なり惨禍を与えてまいりましたことは御承知のとおりでございます。特に軍人軍属あるいはまた準軍属として動員され、そのために戦没したり戦病を受けたり、あるいはまたそういう大戦によって不具廃疾というような不幸な事態を招いた国民というものが非常に多いわけでございまして、実に二百万をこえているといわれておるわけでございます。御承知のように、戦後、これらの軍人軍属あるいはまた準軍属等に対しましては当初は何らの処遇がなかったのでございますが、昭和二十七年四月二十八日、いわゆる平和条約なるものが発効いたしまして、以来戦傷病者戦没者遺族等援護法が公布をされまして、そうしてある程度の処遇を受けることに相なってまいったのでございます。その後昭和二十八年におきましては軍人恩給が復活をし、そのために、軍人及びその遺家族の大部分が傷病恩給また公務扶助料の支給を受けるという事情に相なってまいりました。国民のすべてが大戦によって非常に大きな惨禍、犠牲をこうむったのでございますけれども、これらの国民に対しまする処遇というものが逐次制定をされてまいったのでございます。
そこで、いまも若干大づかみに経緯を申し上げましたが、その後そのような制度の中で、たとえば公務の範囲の拡大あるいは対象者の拡大、それから同じ負傷者の中でも不均衡がございますが、そういう不均衡を是正する、こういう処置が行なわれてまいりました。ところが、静かに昭和二十七年より今日まで振り返ってまいりますと、それらの処遇に対します一貫性が非常に欠けておる。そうしてあるときは圧力団体の意向によって、いろいろその意向というものがこの法案の中に盛り込まれてくる、またあるときは国会の激しい追及を受けて、そのためにいろいろと処遇の改善が行なわれる、そういうことで改善ないしは進歩がはかられてまいりましたことについては、私どももこれは同慶に感ずるところではございますけれども、しかしながら、そういうような改善なり不均衡是正なり、あるいはまた対象の拡大なり、そういうものが行なわれるまで、実は大戦によって被害をこうむり、あるいは惨禍を受けてまいりました一部の国民の方々が生活上非常な苦痛を味わわなければならぬ、こういう運命をたどってまいっておるわけでございます。そうなってまいりますと、今日のような改善、改正が行なわれることはけっこうでありますけれども、やはり抜本的な改正なり是正というものが当然考えられなければならぬ。いま申し上げますように、圧力団体の要請や、あるいはまた国会の要求や、あるいはまた思いつきでいろいろそういう制度の手直しをやるということでなくて、やはり抜本的に、この際これの改善の方策というものを講じなければ、そういう改善なり不均衡是正が行なわれるまでは一部の国民が犠牲にならなければならぬ。犠牲の上に犠牲を重ねるという結果になりますから、この点は、やはり相当思い切った改善を行なうべきであるというように私ども考えておるわけでございます。そういうような制度に対します一貫性が欠けておる。こういう点に対して政府はきびしい批判を受けるべき立場にあろう、私はこういうことを考えております。
そこで、この戦傷病者戦没者遺族等援護法等の改正の審議を行なうに際しまして、まずそういう国民の犠牲者の方々の処遇に対します基本的な態度、あるいはまた方針というようなものを率直にお示し願いたいし、またお示し願うことが、そういう犠牲者に対して政府がこたえていく唯一の道であるというふうに私どもは痛感をいたしますので、そういう意味で率直な御意見をお聞かせいただきたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/2
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003・砂原格
○砂原政府委員 河野先生から、国民の犠牲になり、国家の犠牲になられた方々に対して温情あふるるおことばをいただいて、地下に眠る方々あるいは現在戦傷を受けておられる方々は、さぞかし先生の御温情に感激せられることと思うのであります。戦争のよしあしという論議は別といたしまして、今日の日本の国民生活、日本の国家的存在を今日あらしめますことは、まことに幾多のとうとい犠牲の方々、あるいは今日戦傷によって不遇な生活をなすっておる方々の、ほんとうに国にささげられた誠意の発露が、今日の社会現象をつくることができておるのだと思うのでございます。この意味から申しますと、先生の御意見のように、そうした痛ましい方々に対しては、できるだけの抜本的処遇改善等は行なわなければならないと政府も考えておるのでございます。ただ、まことに表現のしかたにおいて欠くる点があるかもしれませんが、やはり多くの人数でございます。日本の経済、国家経済という立場から、今日までそうした御遺族の方々の御満足をいただくような処遇のできなかったことははなはだ遺憾に思っておりますが、それがために少しずつでも真実をかけて改善の努力をしていかなければならないと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/3
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004・河野正
○河野(正)委員 大戦によりまして二百万をこえる国民が、ある者は戦没をし、ある者は戦傷を受け、ある者は不具廃疾となって経済的その他に非常に大きな打撃をこうむってまいったのでございますし、また、いま上程されております法案そのものが、そういう犠牲者に対しまして何らかおこたえしよう、あるいはお報いをしよう、こういうことでそれぞれ改善が行なわれつつあるわけでございますけれども、しかしながら今日までの改善なり是正というものが、先ほど私が指摘いたしましたように、全く継ぎはぎだらけの結果になって、そのために一部は救済されるけれども一部は救済されない。そういうことになりますと、一部の国民の方々というものは、救済されたといってもそれが十分のものではございませんし、また救済されないほうは、この戦争で非常に大きな被害をこうむった、あるいは犠牲をこうむった、その上さらに犠牲をこうむる、犠牲に犠牲を重ねるという結果になるわけでございますから、やはりいまのような継ぎはぎというようなことでなくて、いま次官からもお答えがございましたように、この戦争の犠牲によって日本の民主主義なりあるいは平和建設というものの基礎をつくったわけでございますから、そういう意味ではやはり一日も早くおこたえする、お報いするという態度をとらなければならぬことは当然のことで、何人もこれを否定することのできないところであろう考えます。ところが、いま申し上げますようになかなかその実があがらぬというようなことで、なるほど次官からも、処遇改善というものはすみやかに行なうべきだというような抽象的なお答えはいただきますけれども、いまのお答えの中にはやや具体性に欠ける点があったと思います。そこで当面して、それらの点についてどういうようなことをお考えになっておりますか、具体的な方針等、お示し願える点がございますればひとつお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/4
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005・砂原格
○砂原政府委員 具体的にと申しますと、今回の法改正などで御審議を願っております案件も、前進をした姿で、たとえば準軍属の処遇の問題というようなことも、今日まで放置されておったものをひとつ改善しようというような、いろいろあげてまいりますればその例はたくさんあると思います。今回の改正点としてお願いをいたしております法案等も、究極としてこれらは処理されなければならぬ問題である、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/5
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006・河野正
○河野(正)委員 そこで今後あらためて御検討をいただき、善処を願わなければならぬ点もあろうと思います。なおまた、いままでいろいろと振り返ってみますと、なるほど改善のあとはあった、しかし、なお国民の側から見ますると十分でない、そこでそのために、遺家族あるいはまた国民の方々が非常に困った実情におられる、こういう点が非常に多いと私は思うのです。そこで、この戦傷病者戦没者遺族援護法の改善をはかる際におきましては、やはりそういう点について私どもは真剣に考えてみなければならぬというふうに考えます。
そこで私は、二、三の問題を取り上げて御所信を承ってまいりたいと考えますが、その一つは、邦人の引き揚げ問題についてでございます。これは厚生白書によっても明らかでございますけれども、最近におきます海外からの日本人の引き揚げは、昭和三十七年が百四十七名、三十八年が百十二名。外地におります日本人で日本に引き揚げたい、こういう希望のある方々が、ソ連地域で二百名、中共地域で五百五十名、北鮮地域で十名、こういう方々が実は内地に引き揚げたい、これは厚生白書によりましても、留守宅に対する通信でその点が明らかになっておる、こういうことでございます。ですから、これはもう確実に御本人が内地に引き揚げたい、こういう希望を持っておられるというふうに理解しても差しつかえなかろうというふうに考えます。そこで私は、遺族援護等の改善をはかってまいる際の一つの問題点として、やはりこの引き揚げ問題というものに当然検討を加えなければならぬというふうに考えるわけです。そういう意味からは、その希望者の希望をかなえてやるのが、やはり援護の一つであろうというふうに私ども考えます。しからば、そういう点が厚生白書の中でも明らかになっておるわけですけれども、厚生省が一体その希望者に対して具体的にどのような方策をとってまいられたのか、ひとつお聞かせをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/6
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007・鈴村信吾
○鈴村政府委員 お答えいたします。
いまおっしゃいましたように、外地に残留しておられる邦人で、日本へ帰ることを希望しておられる方が各地に若干おられるわけでありますが、これらの方々につきましては、一つは外交ルートを通じまして、相手国の政府に帰還についての協力を依頼する、あるいは外交関係が樹立されておりません国に対しては、赤十字等のルートを通じましてやはり関係団体に協力をお願いするというような方法をもちまして、そういう帰国意思の明確な人に対してはなるべく早く帰っていただくように努力をしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/7
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008・河野正
○河野(正)委員 この内地に帰りたいという希望の方々の実数というものがすでに把握をされておるわけでございますので、これがわからぬというなら別でございますけれども、実数というものが把握されておるということだといたしますならば、やはりこの希望というものが早急にかなえられる、帰還が促進されるための万全の措置というものがとられなければならぬと思う。いま外交ルートでやるところは外交ルートでやる、そうでないものは日赤を通じてというお話でございましたけれども、それならば、その外交ルートを通じてどういう交渉をなされたのか、あるいは一体日赤がどういうことをやったのか、それらについてもぜひひとつお聞かせをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/8
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009・鈴村信吾
○鈴村政府委員 たとえばソビエト連邦に対しましては、こちらから未帰還者の名簿を送りまして、それの実態の調査を依頼する。すでに調査を依頼したものにつきましては、ある程度の報告が参っております。その報告によりまして、生存の事実及び内地帰還の意思が明確な者、あるいはすでに内地へ引き揚げた者の調査によりまして、やはり内地帰還の意思が明確な者等があります場合には、これを早急に帰国させていただくように相手国のソビエト政府に依頼をしております。
それから中国につきましては、現在のところまだ国交が樹立されておりませんので、日本の赤十字社から相手国の中国紅十字会に対しまして、やはり名簿等を送付いたしましてお願いをしておるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/9
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010・河野正
○河野(正)委員 実態調査をお願いして報告がきておるということでありますが、もちろんそういう報告がきておるから、いま私が説明しましたように、それぞれ外地におって内地に引き揚げたいという希望の方々の実数というものが出ておると思うわけです。そこで要は、それらの方々は内地帰還の意思が明確でございますから、それならばその意思をどうやってかなえてやるかということが、政府に課せられた任務だと思うのです。それについて外交ルートや日赤ということでいろいろ交渉中だということでございますが、それならばそのできない理由が一体どこにあるのか。たとえば外交ルートを通じて交渉したけれども、それがどうして今日まで実現できないのか、あるいは日赤を通じて交渉したが、どうして今日まで実現できないのか、当然その理由があると思うのです。理由なくしてただ漫然と手をこまねいて、交渉しております。交渉しておりますでは、これは御本人のためにも非常に残念だし、また遺家族のためにまことに申しわけない点だというように考えます。そこで、その点はやはり明確にしてもらわぬと、われわれは、交渉しております。はいそうですかというわけにまいらぬと思うのです。交渉なさったなら、どこにどういう隘路があるのか、それを実現するためには、隘路が明らかであるならば、その隘路を克服するという努力が尽くされなければならぬと思うのです。今日まで外交ルートあるいは日赤を通じて交渉なさったが、一体どこに隘路があるのか、この点もひとつ明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/10
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011・鈴村信吾
○鈴村政府委員 先ほどソビエトとの関係で申し上げましたが、たとえば内地にすでに帰還しておる者からの通信等によりまして、あるいは向こうにおりましたときのその人の知り得た情報によりまして、何某がどこどこにいて内地に帰りたがっているという消息があるわけでございます。ところがソビエト政府のほうでは、必ずしもその特定の個人についてはそういう情報は、持っていないというような、情報の食い違いと申しますか、そういうものが一つございます。
それから中共地域につきましては、最近内地へ帰ってまいりました人の証言と申しますか、ことばを日赤を通じて聴取した例がありますが、いままで帰国の意思があっても現実問題としてなかなか出国の許可が認めてもらえない例があった、しかし最近少し出国の許可がゆるめられたというようなことも当人は申しておるようであります。そういうような現地の官憲と申しますかの出国許可がおりないということが、帰国を妨げておる一つの例であると考えております。それから現実には旅費がなくて帰れないという方もかなりおられますので、そういう方につきましては、わかり次第やはり日赤を通じて日本政府から旅費を支給してあげるという手も遅滞なく打っております。ただ中には、そういう旅費の支給があるということを知らないで、そのために帰れないという方もあるかと思われますので、そういう点についてもできるだけ周知のできるよう努力をいたしておるわけであります。
以上申しましたような理由でございますが、いずれにしてもそういう個々の障害につきましては早急にさらに打開の努力をしてまいりたいと思いまして、現在もそういう線で努力をしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/11
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012・河野正
○河野(正)委員 厚生白書は一体どなたがおつくりになったか知りませんが、厚生省の責任でおつくりになったと思うけれども、厚生白書の内容といまの答弁と食い違っていると思うのです。そういうことなら、私どもはあの厚生白書というものは返上しなければならぬと思うのです。どうもいまの御答弁と厚生白書の内容は非常に食い違いがございます。そこで私はその点を明らかにしたいと思いますけれども、いま局長の答弁によりますと、情報の食い違い——それは情報の食い違いのあるケースもあるかもしれません。しかし実は、私は厚生白書の資料に基づいてお尋ねしたわけです。それによりますと、ソ連地域で二百名、中共地域で五百五十名、北鮮では十名、これらは留守宅に対する通信によって帰国の希望があることが明確になっておる、こういうように書いてあるのです。ですから、私どもは厚生白書を信頼しようとすれば、いまの局長の御答弁については納得するわけにはまいりません。これは留守宅に対する通信その他で帰国の意思があるということが明らかである。その数字がいま申し上げた厚生白書に示されておる。だからそういう数字について食い違いがあろうはずがない。それ以外の数字については、あるいは情報の食い違いがあるかもしれません。しかし、少なくとも厚生白書に示された数字については、私は食い違いがあろうとも考えない。そこで御答弁いただいた第一の点については、私どもは納得するわけにまいりません。それから中共では出国の許可がおりぬということであるとするならば、なぜおりないのか、それらの事情をひとつお示しいただきたい。それから旅費のない場合には、これはお困りなことは当然でございますけれども、しかし厚生白書によりますると、旅費がない者には国が出すのだと書いてある。そうすれば、いま局長の答弁では、旅費を国が出してくれることがわからぬけれども云々とおっしゃるけれども、少なくともいまの数字についてははっきりしておるわけですから、そういう人たちについては、もう金がなければ国が出すんですよというくらいの親切心というものがあってよかろうと私は思う。ですから、この厚生白書に示された以外の数字について、あるいはそういうような御意見であるならば、私どもはそれはやむを得ぬと思いますけれども、しかし、少なくともこの数字について、旅費がない者については国が出してやるのだということを知らないということは、私は理由にならぬと思うのです。当然この数字について厚生省はわかっているわけですから、金がなければ国で出してあげますよと言うくらいの配慮というものが当然必要なことだと思うのです。ですから、私は、援護局というのは、そういう戦争で犠牲になった方々の窮状を救ってやる立場の援護局だろうというふうに考えますけれども、それにしてはどうも援護局というものは不親切だ。これは日赤だって不親切ですよ、私もいろいろやってきたけれども……。日赤と厚生省とどういうお答えをしているかわからぬけれども、全く日赤というのは不親切です。あれでよく日赤だ、社会奉仕団体だと言えるかどうか、私どもは非常に疑問を持っているわけです。日赤もさることながら、援護局も私はいまの答弁を聞きますとまことに不親切だ、こう指摘せざるを得ぬと思う。そこで、いま申し上げましたように、端的に申し上げますならば、厚生白書の内容といまの答弁というものは非常にズレがある。次官、一体われわれはどっちを信頼したらいいのですか。もし局長の答弁が責任ある答弁だとするならば、ひとつ次官、ここで、厚生白書を配りましたけれどもあれはPR雑誌です。もう一つの国会の答弁を信頼して、あれは信頼せぬでよろしい、こういう責任あるお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/12
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013・砂原格
○砂原政府委員 おしかりをちょうだいいたしておるのでございますが、先ほど援護局長が御答弁申し上げたうちで、旅費等のない方には国のほうから差し上げますというようなことは、それぞれ留守家族のほうへは援護局のほうから申しておるので、すでにそのことは留守家族の方は御承知くださると思います。ただ、留守家族の方から、それをさらにそれぞれの国におられる方々へ連絡をなさる、その連絡がうまく届いておるかどうかということについては、ちょっと知ることができないわけです。特にソ連のほうの分の留守宅、このほうへは、現地におる、こういうことの連絡があるのでございます。今度公式にこちらのほうからソ連のほうへお願いをいたしました場合には、ソ連のほうでは、いや、そういう者は、それぞれ帰りたい者は帰しておるから現在いない、こういうお答えでございますので、そうした答えを先ほど局長がいたしたわけでございます。厚生白書のほうの主体性というものは、留守宅へ連絡をいたしてまいりましたものを調査いたしまして白書に書いておるわけで、今度日赤または外務省を通じて交渉をいたします場合に、相手国のほうが、もうそういう者は帰って、いないとか希望者は帰したとか、こういう扱いになりますと、自然相手方があるだけに、そこへ踏み込んで調査ができないというような点から、多少御満足のいかないような面が起こっておるのではないかと思います。さような意味でございますから、局長のことばの足りなかった点がありますなら、御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/13
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014・橋本龍太郎
○橋本(龍)委員 関連。先日私、この援護法で御質問申し上げましたときにお答えをいただいたのも、同じ援護局長と政務次官の二人だったと思います。そのとき未帰還問題に触れた際、政府としては最大限の努力をしている、そうして、現在外地に残っておられて、帰国を希望しておるが何らかの事情でいまだに帰られない人数はこれこれであるということであった。ところが、いま河野先生の御質問を承っておりますと、厚生白書に記載されている帰国希望の方々の数字と、また、現在それをもとにして質問されたのに対し、援護局からのお答えでは、はっきり数字に食い違いがあるのです。私はたまたまこの間の速記録を手元に持っておりませんから、どちらの数字でお答えをいただいたかわかりませんが、たぶん援護局長の言われた数字でお答えをいただいたと思います。政府は帰国希望者に対しては対外的に最大限の努力をしている、そういうお答えがありながら、しかも厚生省が出しておられる厚生白書というものは、政府の刊行物の中で最も信頼度の高いものであると信じておりますし、むろん国民もそう信じて読んでおられるのであります。その資料と答弁の内容の数字に食い違いがある。いまの次官のお答えではまだ納得のいかない点があります。最大限の努力を傾けておられる、対外的に交渉を続けておる、そういうお答えにもかかわらず、未帰還者の御家族の方々、あるいは外地からの個人個人の御返事、帰国希望者がこれだけあるのだ、そういう数字があるにもかかわらず、その方々がおられる国と正式に政府が交渉した場合、そういう方はお帰しておる、そんなに残っているはずはない、それは対外的考慮か何か知りませんけれども、それをまるのみにされているわけですか。数字の面でこういうふうな食い違いがあるということは、私ちょっと納得がいかないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/14
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015・砂原格
○砂原政府委員 先ほど河野先生にもお答えをいたしたとおりでありまして、やはり相手国があるのですから……。わが日本の国内でございますればどういう調査の方法でもできるわけでございますが、どうしても相手国のほうに依存しなければならない。その相手国に照会をしたときにそういうお答えがある場合に、当然こういうことが起こるのであります。
それから、厚生白書に書いておりますのは、三十九年一月一日現在の数字でございます。先ほど局長の答えましたのは、その後に帰国せられた方々等を除きました数字を申し上げておりますから、数字的に多少の食い違いがあるということは御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/15
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016・橋本龍太郎
○橋本(龍)委員 その後に帰国を希望せられた方、どこの地区から一体何人くらい希望せられたか、その点お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/16
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017・鈴村信吾
○鈴村政府委員 ただいまお尋ねの数につきましては、後ほど調べてお答えいたします。
私、ちょっとここで補足して申し上げておきますと、先ほどやや説明不足の点がございましたが、一つはこういうのがあるわけでございます。本人は、非常に帰りたいということで、遺族あてに帰国の希望を表明しておる。ところが、これは特に女の方に多いわけですが、結局帰る場合には御主人及び子供を向こうに置いてくるというケースが非常に多いわけでございます。したがいまして大体帰ってこられる方は、単身で女の方が帰ってこられる。御主人、子供は向こうに置いてくる、こういうケースが非常に多いわけでございまして、そのために、別れることを決意するまでに相当時間がかかる。したがいまして、具体的な希望は持ちながら、いざ夫や子供に別れるという決意をするまでにかなりの時間がかかるというようなこと、あるいは場合によっては、帰国したいけれども結局家族に引かれて向こうに残るというようなことで、そのために、かなり希望はありながらおくれておるという例があるようでございます。
それからもう一つは、これもどの程度こういうケースがあるかわかりませんが、最近ありました例では、内地にきょうだいが二人おって、結局帰るには内地で引き受ける人がいなければならぬ。ところが、二人のきょうだいが、必ずしも本人が外地から帰ることを希望しないというケースがある。したがって、親ならそういうことはないはずでございますが、きょうだいの場合には、いま外地から帰ってこられては困るということで身元引き受けをしない。そのために、本人は帰りたいけれども二、三年帰れずに延びておる。そういう方につきましては、やむなく日赤が身元引き受け的な立場に立って、帰国のあっせんをするというような例も最近あるわけでありまして、そういうふうな、具体的に受け入れの問題でおくれておる例もないわけではない。
それからやはり大きな理由は、いま申しましたような、家族と別れて帰ってくるというようなことが、かなり障害になるということもあるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/17
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018・橋本龍太郎
○橋本(龍)委員 受け入れの点の援護局長の御説明は納得をいたします。ただ、先ほどのお答えの中に、一月一日現在、これが厚生白書の数字である、いま申し上げた数字は現在の、その後引き揚げられた方等を計算しての数字である、それが食い違いの原因であるとお答えになったのですが、その後、つまり一月一日以降に日本に帰国せられた方、どの地区から何名、その結果こういう数字に変わったという資料、これをお示しいただきたいと思います。私どもはそれこそ与党の立場で質問さしていただいたわけですから、政府の答弁というものを信頼してお答えをちょうだいしておるのです。政府からいただいたお答えは正しいものだ、正しい数字だと信じて伺ってきたわけなんです。そうしたように、野党の先生方が非常に勉強されて質問をされた場合、与党の私どもでもこうして不審な感じを持つ、関連質問をしなければならないような答弁というものは、注意をしていただきたい。こういったような問題は、非常に政府に対しても不信感をわかすもとですし、また議事録等でいろいろな方が読まれた場合に、非常に変な感じを持たれるもとですから、よほど注意をしてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/18
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019・河野正
○河野(正)委員 橋本委員は、一応この数字の問題についてはあとに残されておるのでございますけれども、私どもはそういうことで承知するわけにまいりません。昭和三十九年一月現在においては、いま私がお示し申し上げたように、それぞれ実数というものが示されておるわけでございます。食い違いの原因というものが、その後帰還者があったので食い違っておるということならば、一月から、まだいま六月ですよ、半年です。その間にどの地区から何人くらい引き揚げてきたか。それがこの委員会の席でお示しできぬような不誠意な援護局の態度については、私どもは承知するわけにまいりません。それも二千、三千というような膨大な数字ならけっこうでございますけれども、いま私が示しましたように、ソ連地域だけでも二百人、中共地域が五百五十人、北鮮が十人です。その中から若干帰ってきたとするならば、おのずから、その数字というものがどのくらいかということは大体見当がつくと思う。しかも、それも二年も三年も前、あるいは前局長時代の話ということなら別ですけれども、最近のことでございますし、また現局長のもとでございますから、それらの若干の数字についてもお示し願えぬようなことで、こういう援護法の改正について誠意を持っておられるというふうに私ども理解するわけにまいりません。ですから、これは数字だけぜひこの委員会でお示し願いたい。お示し願えなければ、政府はこの援護については、私は誠意がないのだというふうに理解したいと思いますが、それでけっこうかどうか。それでけっこうでございましたならば、お示し願わぬでもけっこうだと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/19
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020・砂原格
○砂原政府委員 河野先生におわびを申し上げるのでありますが、その資料を持ってまいっておりませんことはまことに申しわけないと思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/20
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021・河野正
○河野(正)委員 資料なんか要らぬですよ、一月から六月ですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/21
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022・砂原格
○砂原政府委員 しかし、こういうことは大切なことで、調査をしてすぐわかることでありますから、調べましてお答えをさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/22
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023・河野正
○河野(正)委員 三十九年の一月一日現在の数字は明らかになっておるわけです。数字が食い違っておるのは一月以降でしょう。きょうは六月ですけれども、この半年間に何人か引き揚げてきたということで数字が食い違っておるならば、何人引き揚げたかという数字くらいはこの委員会でお示し願わなければ、何人が引き揚げてきたかその数字は知らぬというようなことで、遺族援護について政府は誠意を持っておるというふうに私どもは理解しがたい、こう言うのです。それは二年も三年も前のことなら別です。前局長の時代のことなら別です。ですけれども、この半年間に何人引き揚げてきたかわからぬというようなことで、遺族援護について熱意があるというふうに理解できますか。それで一方では、法律は上げてくれ上げてくれ、促進ばかりおっしゃるけれども、そういうことで私どもは納得するわけにはまいらぬと思います。大体どのくらい一月から六月の半年間に引き揚げてきたか、それくらいのことはお示し願えるのじゃないですか。そういう不誠意なことで、あなた、この審議の協力はできませんよ、進行できませんよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/23
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024・砂原格
○砂原政府委員 いま申し上げたのは、お尋ねをいただいておりますのがどの地域から何人引き揚げてきたかというお尋ねでございますので、地域等を間違えてはと思いまして、それを十分調査してお答えをさせていただく、こう申し上げておるのでありまして、すぐ調べてまいりますから、それは誠意を欠いておってという意味では決してないという点だけは御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/24
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025・河野正
○河野(正)委員 何もむずかしい問題ではないですよ。この厚生白書によりますと、三十九年一月一日現在でソ連地域が二百名、中共地域が五百五十名、北鮮地域が十名、こういうふうになっておるわけです。ところが、さっきの橋本議員の発言によりますと、先ほど示された数字というものがその数字と食い違っておる。ところが、そのお答えについては、それはこの一月から六月までに引き揚げてきた方がおられるので食い違っておる、こういうふうにおっしゃっておるわけです。何も私はむずかしい質問をして、むずかしいお答えを願おうとしておるわけではないのです。ですから、ソ連地域からこの一月から六月までに何人引き揚げてきたか、中共地域から一月から六月までに何人引き揚げてきたか、北鮮から一月から六月までの間に何人引き揚げてきたか、それもお答えできぬようなことでは、私は、援護について政府は熱意を持っておられると理解できないと思う。何もむずかしいことじゃないじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/25
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026・鈴村信吾
○鈴村政府委員 われわれ、厚生白書の数字と、この間橋本委員に御答弁いたしました数字との関連を十分究明しないでおりまして、非常に不勉強で申しわけないと思いますが、いまその両者の数字の関連を十分検討した上でお答えしたいと思います。不確かなことをお答えするのは非常に失礼だと思いますので、両者の関連を十分検討した上で、自信のある数字をお答えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/26
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027・河野正
○河野(正)委員 それならば、端的に申し上げますが、この一月から六月までの間に、ソ連地域から何人引き揚げてきたか、中共地域から一月から六月までの間に何人引き揚げてきたか、北鮮地域から一月から六月までの間に何人引き揚げてきたか、それについてお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/27
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028・鈴村信吾
○鈴村政府委員 本年の一月から六月までの数字をいま調べに参っておりますので、わかり次第すぐお答えしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/28
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029・河野正
○河野(正)委員 それぐらいのことが局長で御答弁願えぬのでしょうか。それでは私は、遺族援護について誠意を持っておる、熱意を持っておるというふうには理解しがたいと思うのです。それは二年も前、三年も前のことなら別ですよ。ところが、この一月から六月までの間に中共から何人引き揚げてきたか、ソ連から何人引き揚げてきたか、北鮮から何人引き揚げてきたかもわからぬようなことで、遺族援護について熱意を持っております。そういうことに私は受け取りがたいと思うのですよ。それすらもお答えできぬのでしょうか。それではあなた、もうこの議事進行には協力できませんよ。誠意がない、熱意がないです。誠意がない、熱意がなければ、何も議事進行に協力する必要はないじゃないですか。私ども、遺族のことを考えて——実は自民党の諸君からいろいろ要請がございます。ですから、私ども一刻も早くこの法律を成立さしたいという気持ちは、もうやまやまございます。ですけれども、そういう不誠意なことで、私たちは協力するわけにはまいりませんよ。それぐらいの数字がどうして示されぬのですか。そういうことで熱意があるというふうには理解しがたいじゃないですか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/29
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030・鈴村信吾
○鈴村政府委員 たまたまいまここにお答えするだけの数字を持っておりませんので、至急いま取り寄せておりますので、その上でお答えしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/30
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031・河野正
○河野(正)委員 ちょっと休憩してください。答えを待ちます。委員長、休憩してください。進行できません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/31
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032・田口長治郎
○田口委員長 ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/32
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033・田口長治郎
○田口委員長 速記を始めて。
午後一時まで休憩いたします。
午前十一時五十七分休憩
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午後二時四十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/33
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034・田口長治郎
○田口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続けます。河野正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/34
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035・河野正
○河野(正)委員 午前に引き続いて、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正についてのお尋ねをするわけでございます。
午前中、海外よりの引き揚げ問題について、数字についていろいろ問題を提起いたしたわけでございますが、この点については午前中の質疑の間におきまして明確にされておりませんので、ひとつあらためて厚生省のお答えを願いたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/35
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036・鈴村信吾
○鈴村政府委員 午前中御指摘になりました数字につきまして、その後確かめて御報告いたすことにいたしておりましたが、先刻御指摘いただきました厚生白書の数字、これはソ連地域に約二百人、中共地域に約五百五十人、北朝鮮地域に約十人という数が載っております。これはことしの一月一日現在の数字でございます。厳格に申し上げますと、二百人と申しますのは端数を若干切ってありまして、二百七人というのが一番正しい数字でございます。中共地域の五百五十人というのは五百四十八人、北鮮地域は十人ということであります。
その数字に対しまして、橋本委員にこの前、われわれのほうからお答え申し上げましたのは四月一日現在の数字であります。その数字は七百十人という数字をお答えしております。これはこの前、この席で大臣からお答えしたわけでありますが、七百十人というのは若干まるくお答えしておりまして、正確に申し上げますと、ソ連地域が二百人、中共地域が五百十八人、北鮮地域が十人ということでございます。
結局、一月の数字が、ソ連地域におきましては二百八人が二百人になって、一月から三月までに八人が引き揚げられており、中共地域は、五百四十八人が五百十八人という数字になっておりますので、三十人引き揚げられておる。北鮮地域は引き揚げがゼロ、こういうことになっております。
参考までに、ソ連地域八人、中共地域三十人というのが一月から三月までの引き揚げの数字でありますが、一月から六月の実績を申し上げますと、ソ連地域が八人、中共地域が六十五人、北鮮はことしに入ってからゼロということになっております。
以上、補足してお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/36
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037・河野正
○河野(正)委員 いまの数字を承りますと、三十九年の一月一日現在の実数は七百六十六人でございます。そうしてその後それぞれ引き揚げが行なわれたようでございますが、そういたしますと、現在外地に残っております。しかも帰国を希望する方々の総数は何人になるのか、ひとつお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/37
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038・鈴村信吾
○鈴村政府委員 まるい数字で申し上げまして三千七百人というのが四月一日現在の生存見込みでありまして、七百二十八人というのが引き揚げを希望している者の数、その後に、先ほど申しましたようにソ連地域はゼロ、中共地域からさらに三十五人引き揚げておりますので、結局六百九十三人というのが、六月末における引き揚げ希望者の数ということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/38
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039・河野正
○河野(正)委員 厚生白書なるものは、御承知のように厚生省として取りまとめられた正確な資料でございます。しかも一般のものである場合には、端数を切り捨てるようなことも数字の関係であり得ると思いますけれども、事いやしくも、特に留守家族の皆さん方が非常に深刻な気持ちで本人などの消息というものを考えておる、こういう外地の人々に対してある場合は切り捨てる、ある場合は繰り上げる、こういう不正確な数字をお示しになって、それを天下に公表なさることが適切な方策であるのかどうか。事人命に関する問題でございますから、たとえ一人といえども、二人といえども、その人の状況というものはきわめて重大な要素を持っていると私は思う。そういう人の問題を、ある場合は切り捨てておる。たとえばソ連地域の場合は、二百八人のところを二百人というふうに八人は切り捨てておる。それから中共地域の場合は、五百四十八人を五百五十人、これは実際におりもせぬのに二人ふやしておる。こういうような不正確な数字を天下に公表されることが——しかも人命の問題であります。そういうことは適切な処置であるのかどうか。そういうふうに、ある場合は水増しする、ある場合は切り捨てする、そういうことで発表なさるような厚生省であるから、私は、たとえこの援護法の一部改正手直しをやるといたしましても、その中にはほんとうに遺家族を思い、また外地におられる方々の心情を思う熱意というものが欠けておる、こういうように指摘せざるを得ないと考えるわけです。厚生次官、一体どうですか。いまのように、ある場合には人間を切り捨てておる、ある場合には人間を水増ししておる、こういう内容を示した厚生白書というものが、ほんとうに人道的立場に立った厚生省の示す厚生白書と言えるのかどうか。厚生省こそそういう人の人命、あるいはまたいろいろ問題を持っております国民の方々の窮状というものを、ほんとうにその立場になって考えなければならぬ、そういう当局と私は考えております。それがいま申し上げますように、ある場合は切り捨ててみたり、ある場合は水増ししてみたり、そういう数字を厚生白書という名のもとに天下に公表されることが適切であるのかどうか、この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/39
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040・砂原格
○砂原政府委員 御指摘のとおり、いやしくも人の問題でございます。完全にそれだけの人数が存在する場合には、厚生白書にも的確な数字を記載することが妥当だと思います。ただ、この場合、白書をつくる事務の者の何かの不用意であった、私はかように考えまして、この点は御指摘のとおりだというふうに考えます。今後十分気をつけるように措置をせねばならぬと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/40
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041・河野正
○河野(正)委員 そこで私どもは、この席上で無理を申し上げようとは考えません。ですけれども、いま局長から御報告になったような的確な数字があるとするならば、厚生白書の中でもその的確な数字というものをお示しになる、これがやはり遺家族におこたえをするゆえんの道だというふうに指摘せざるを得ない。そういう意味で、少なくとも人間一生の問題を、ある場合には切り捨ててみたり、ある場合は水増ししてみたり、そういうことでは血の通った厚生省の政策の方針というふうには言えぬと思うのです。こういう資料一つにしても、そういう遺家族の方方の心情を思う際には、やはり血の通った資料というものが当然示されなければならない。この点は、次官のほうから遺憾の意を表されたので、私どもも、今後もう少し血の通った資料を示し、またその資料に基づいて政策というものを推進する、こういう方向で善処していただきたいと思うし、また当然していただかなければならぬ、こういうふうに強く厚生省の注意を喚起しておきます。そういう、これは一例でございますけれども、事人命に関する重要問題が非常に軽率に扱われる、そういうところにいまの厚生行政のあり方にはかなり重大な問題があると思うのです。
そこで、そのことに関連をして、もう一つ疑問がございますから、さらに指摘をして御所見を承ってまいりたいと思います。それは、これまた厚生白書に示された数字でございますけれども、昭和三十八年十二月一日現在におきます地域別の未帰還者数の資料がございます。これを拝見しますと、総数で八千八百七十七名、そのうち生存見込み者として考えられる数字が三千八百四十名、こういうことになっております。その内訳をもう少し詳細に見てまいりますと、ソ連地域の未帰還者数が八百七十一名、うち生存見込み者が四百二十名。中共地域が未帰還者数が六千七百十七名に対しまして、生存見込み者が三千三百三十名。北鮮は、未帰還者数が四百三十名に対して、うち、生存見込み者が九十名。さらに、南方その他におきましては、未帰還者数が八百五十九名、ところが、うち生存見込み者というものは不明ということになっている。そこで問題は、この南方その他の地域はどういう地域かわかりませんけれども、八百五十九名の未帰還者がおる。しかもその生死というものが、生きておられるのかなくなられたのか、全然わからぬという資料が明らかにされておるわけです。そこで私は、この外地におきます引き揚げ者問題と関連をして、やはり厚生省のやっておられますことに対して、血の通った施策というものが行なわれない。そうした点から、南方その他において八百五十九名の未帰還者がおるにかかわらず、その間の動静、事情というものが全く把握できておらない。その事情がどういう事情か私はよく承知をいたしませんけれども、どうもいまの未帰還者の実態等から私ども判断いたしますと、これまた厚生省は、ことばでは戦傷病者戦没者遺家族のために非常に熱意を持っているようなことを言っておるけれども、実際には血の通った措置が行われておらない、こういうように指摘してもやむを得ぬではないかと思うのです。これは一体どういうことからそういう数字になってあらわれておるのか。私はこの数字を見て、よくぞこういう資料をのうのうと掲げたものという印象を実は持ったのでございます。そこで、そういう資料についてどういう事情であるのか、ひとつその他の事情をお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/41
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042・鈴村信吾
○鈴村政府委員 ただいま仰せになりました八百五十九名の南方方面の未帰還者について、生存見込みが一名もないのはどういう事情かというようなお尋ねでありますが、これは、先ほども申しましたように昨年の十二月一日現在の数字で、いまのような数になっておるわけでございます。その後四月一日現在の数字がございますが、それによりますと、未帰還者全体の数が約八百名余り減っておるということで、南方も若干減っておりますが、あまり変わっておりません。結局、昨年の十二月からことしの一月までに約八百名の未帰還者の数が減っておる。大半の者は、戦時死亡宣告を受けた者がこの間にかなりあるというのが一番大きな理由——その他いろいろございますけれども、一番大きな理由はそういうことでありますが、南方地域につきましては、過去いろいろな方法によりまして調査等もいたしておるわけでありますが、生存を思わせると申しますか、裏書きするような資料が全然把握されないということで、いまのところ非常に生存見込みがない、可能性が全然ないという判断をいたしておるわけであります。もちろんわれわれ、こういう現在生存の資料がない方々につきましてもあらゆる努力をいたしておりまして、決してこれをあきらめておるわけではありません。引き続き、できる限りの手段を講じております。たとえば本年度におきまして、未帰還者の調査に関する件につきましては相当に重点を置きまして、地方の担当主務課長会議も近く聞きますが、そこにおける大きな重点項目は、未帰還者の調査をさらに強力に進めるということでありまして、われわれもできるだけの努力はいたしておりますが、いまのところ南方の八百五十九名につきましては、どうも生存に関する資料が得られない。したがって、やむなく、いまのところは一応生存見込みをゼロというふうにいたしておりますが、決してこれはあきらめておるわけではない。むしろ積極的に、あらゆる努力をしておるという状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/42
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043・河野正
○河野(正)委員 それなら八百五十九名の中身について詳細をお知らせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/43
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044・鈴村信吾
○鈴村政府委員 南方方面の八百五十九名についてやや詳細に申し上げますと、二十七年、二十八年以降は何ら資料がないわけでありまして、二十年から二十七年までは、それぞれ生存に関する資料のある方があったわけでありますが、八年以降は全然資料がないということになっておるわけでありまして、現在の生存資料のない八百五十九名の内訳を申し上げますと、ビルマが二十八名、タイが十八名、南ベトナムが六十六名、北ベトナムが四十六名、マラヤ、シンガポールを合わせて六十五名、ボルネオが十一名、スマトラ三十四名、ジャワ三十一名、セレベス十九名、比島が百五十七名、中部太平洋九十一名、ニューギニア、ソロモン合わせて九名、台湾七十九名、香港十八名、マカオ一名、沖縄四名、南鮮が百八十二名、合計八百五十九名となっております。
それから、いま申し上げました人員のほかに、自分の意思で帰還しないということが認定されて、もう未帰還者から除外されたという者があるわけでありますが、その数は、南方が六百二十九名ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/44
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045・河野正
○河野(正)委員 いま南方地域におきまする未帰還者八百五十九名の中身について、いろいろお答えを願ったわけでございますが、その中で一つ疑問に思いますことは、二十八年以降、ことしは三十九年ですから十一年に及んで、何ら新しい資料が出ておらない。そこで、あらゆる手段で消息の調査をやっておるというようなお話でございました。ところが、十一年間もこの八百五十九名に対する消息資料というものが集まらぬというようなことで、はたして積極的に消息調査ということを実行せられてきたかどうかということに対し、まず疑問が一つ出てまいります。なるほど、南方といえどもいろいろ諸外国の事情等もあろうかと思いますが、私は無理は申さぬつもりですが、しかしながら沖縄のごときは、もうすでに慰霊祭等も行なわれ、またこれは一応潜在主権でございますけれども、日本の国内ということでもございます。そういうところにおいても、この十一年間というものは全然資料が集まらぬ、そういうことで、はたして積極的に消息調査を推進されてきたかどうか。ことばではなるほどそのとおりでございますけれども、しからば実際にそういうことが行なわれてきたか。私どもは、いまの数字あるいはお答えの内容から見てまいりますと、すなおにそれを聞き取るわけにはまいらぬと思います。この十一年間、全然八百五十九名に対しまする資料というものが集まらなかった理由というものはどこにあるのか。これはどういうふうにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/45
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046・鈴村信吾
○鈴村政府委員 私申し上げましたのは、先ほど申し上げましたように、八百五十九名のいわゆる生存見込みのない未帰還者の数、このほかに、自己の意思によってもう帰還しない者として、未帰還者から除外されたという人が南方で六百二十九名あるわけでありまして、したがいまして南方の方でも、かなり消息がはっきりしてもう帰らぬという人は、いま申し上げましたような数、六百二十九名を数えております。したがいまして、こういう人については、もちろんわれわれも従来生存の資料があるわけでありますけれども、帰還の意思がないということで除外した。したがいまして、それよりもやや多い八百五十九名という数になります。これらの方々につきましては、都道府県におけるいろいろな調査とか、それから関係者を通じての調査というものによりましても、依然として消息がはっきりしないということで未帰還者のまま残っておる。もちろん、先ほど申し上げましたように、すでにことしに入りましてからでも相当数が戦時死亡宣告という措置を受けておりますので、その意味ではこの数は逐次減ってまいるわけでありますけれども、遺憾ながらこれらについては依然として消息がわからない。ただし、都道府県等におきましては、常時必要な努力を続けておるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/46
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047・河野正
○河野(正)委員 ことばではいろいろお答え願うわけでありますけれども、それについての裏づけをする具体的な成果というものが全然あがっていない。そこで私は、いまのようなお答えをそのまま受け入れるわけにはまいらぬと思います。そこで同じくこういった問題と関連をするいろいろな事情がございますから、私はさらに一つ御指摘を申し上げてお伺いをいたしてまいりたい。
それは、いまのお答えの中にも出てまいりました戦時死亡宣告についてであります。未帰還者のうち、調査によりましてその死亡が確認されたものは死亡公報を発することになっておりますことは、もう御承知のとおりでございます。具体的に申し上げますと、死亡の日時、場所を確認することはできないけれども、消息を断った時期、場所等から総合的に判断をして死亡と断ぜざるを得ないものは、留守家族の承認を得て厚生大臣が家庭裁判所に戦時死亡宣告の申し立てを行なうことになっておることも、これもあえて申し上げる必要ないと思います。この制度で死亡宣告の確定したものが逐次ふえてまいっておることは、先ほど御報告にもございました。昭和三十八年十二月一日現在、一万四千二百九十名がこの死亡宣告の確定を受けております。これらの人々の遺族には遺族年金、遺族弔慰料の支給が行なわれている、こういうようになっているわけです。しかしながら、なお厚生白書によりましても八千八百七十七、これは昨年十二月一日現在でございますけれども、そういう未帰還者がおられる。ですから、その死亡が確認されぬでも、もう戦後二十年近い歳月でございますから、どこかでその終戦処理と申しますか、この戦時死亡宣告の確定をする時期というものが——私は、それはもちろん留守家族の御意思もあろうと思います。ですけれども、やはりどこかですみやかに終戦処理をする段階に、もうそろそろ戦後二十年ですから、そういう段階に来ておるのだろうというふうに判断をいたします。そういう事情を厚生省はどういう形で消化しようとされておるのか、この辺の事情等につきましても、ひとつここで率直にお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/47
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048・鈴村信吾
○鈴村政府委員 未帰還者留守家族等援護法の中に、この法律施行後九年を経過した以後におきましては、過去七年以内の生存資料のない未帰還者の家族には留守家族手当を支給しないという規定があるわけでありまして、すでにこの規定によりまして、相当数の者がいわゆる留守家族手当の支給を受ける権利を失っておるわけでありまして、一時は相当数の方々が留守家族手当を受けておられましたのに、現在わずか百人足らずの者しか留守家族手当を受けておられないという実情にあるわけであります。こういう点にも関連いたしまして、一定期間以上生存資料のない方につきましては、もし家族がこれを希望されるならば、やはり戦時死亡宣告というような措置をとることによりまして、失踪宣告の措置をとることによりまして、それにふさわしい援護法上の給与、援護法的な給与をすることが適当であろうということで、未帰還者に関する特別措置法という法律によりまして、戦時死亡宣告を受けた者の遺族につきましては、もちろん全部ではございませんけれども、大部分の者が公務傷病死の取り扱いを受けまして、そして年金等が支給されるという道があるわけでございますので、むしろこの際、いまのような留守家族手当の支給をとめるというような規定とも関連いたしまして、必要に応じて戦時死亡宣告をすることによって、留守家族の方々に対する援護措置を講じたほうがいいのではないかということで参っておるわけであります。すでに昨年十二月現在で一万四千人以上の宣告確定者、審判確定者を見ております。さらに本年に入りましても千名近くの宣告が確定しておるわけでありまして、これによりまして、むしろ留守家族の方と申しますか、遺族の方に適切なる援護措置ができるのではないかというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/48
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049・河野正
○河野(正)委員 行政上の運用としてはそのとおりだと思うのです。ですけれども、それが血の通った形で実際に実行されておるかどうかということが、きわめて大切だと思うのです。私どもが申し上げておるのも、その点を御指摘申し上げておるわけです。
そこで私は、具体的な例をあげて申し上げたほうがいいと思いますので、あえて私は具体的な例をあげて申し上げますけれども、それはことしの二月十七日の新聞紙上に大きく取り上げられておるケースでございますが、それによりますと、戦後十九年、いまだに戦争中の死亡が確認できず、戸籍面では生きている人がいる、このため残された家族は、遺族扶助料ももらえず、何とかしてほしいと、このほど九州管区行政監察局に訴えた。ところがこの九州管区行政監察局の談話を拝見いたしますと、終戦のどさくさにまぎれて、いまだに解決できないという気の毒なケースである、身分と死亡が確認できないために、みすみす遺族扶助料ももらえない状態だ、こういう九州管区行政監察局の談話が発表されているわけです。そしてこのたてまえとしては、一定期間生存資料がない場合には、遺族の承認を得て家庭裁判所に申告をして、厚生大臣が戦時死亡宣告を行なうということになっております。ところが、そういうことにはなっておるけれども、現実にはいま申し上げるように戸籍ではまだ生きておる、そのためにこの遺族扶助料ももらえぬで困っておる、こういうような具体的な例があり、またそれを新聞が取り上げ、またこの九州管区行政監察局も、それをちゃんと新聞談話でそれぞれの所感というものを発表いたしておる。九州管区行政監察局、これも政府機関の一つでございます。そうしますと、同じ援護措置が、同じ政府機関の中で何かちぐはぐの感じを持つ。この感じを持つのは、これは単に私一人ではないと思うのです。こういうことで、ほんとうに厚生省が血の通った行政をやっておるというふうに言えるでしょうか。ほんとうに手の届いた行政をやっているというふうに言えるでしょうか。いまいろいろと局長からりっぱな答弁をいただきますけれども、実際に、そういう答弁というものが現実に実行されておるかどうか、私どもは非常に大きな疑問を持たざるを得ない。この社会で、そういう暗い谷間で困っておられる方々、そういう方々を救済するということが厚生省の強い念願でなければならぬし、また立法に携わっておりますわれわれもそういう方々を一日も早く救済したい、そういうことで、やはりこの遺族援護法等の手直しを早くやろうということになっておると思うのです。ですけれども、厚生省でやっておられますることはから回り、仏つくって魂入れずと申しますか、要するに歯車がから回りしておる、こういうちぐはぐな点を指摘せざるを得ぬと考えますのが、率直な私の心境でございます。こういう点についてどういうふうに厚生省はお受け取りになっておるのか、この点は、せっかく厚生次官おすわりですから、厚生次官の口から国民にお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/49
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050・砂原格
○砂原政府委員 まことに申しわけのないことなのですが、ただいま御指摘のような事情を、まだ厚生省の援護局のほうで実は承っておらぬような実情でございます。そういう実態を早々に調査いたしまして、御遺族の御要望等も十分聞き入れまして適当な処置をいたしたい、このように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/50
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051・河野正
○河野(正)委員 私は、やはり法律を改正したり法律を手直ししてこれが前進だといっても、その精神そのものが完全に実行されなければ、何にもならぬと思うのです。そういう意味で、私はいま厚生省からお答えを聞くけれども、どうも厚生省のやっておられることはから回りのきらいが非常に強い。それではせっかく私どもがこの法案の成立に協力しようとしても、実質的にはその遺族援護というたてまえから前進にならぬ。そこで、やはりこの法律を改正し、法律を是正し、法律の手直しをやるということになれば、それが即実際面にそのまま移される、そうして遺家族をすみやかに救済する、こういう方向でいかなければ、いまここで熱心に法案の審議に取り組んでも結果的には無意味に終わると思うのです。ですけれども、私どもはそういうことをやかましく言うのが能でございませんから、要は法律を改正したならば、その法律というものがそのまま国民の間に消化されていく、こういう点に対してもう少し厚生省は血の通った、ほんとうに下部の国民の意思に沿うた行政をやっていただくことを私は強く要望したいと思います。その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/51
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052・砂原格
○砂原政府委員 河野先生のお話のごとく、もちろん数多いことでございますから、中にはそういう厚生省自体が実際に知らないような場合もあると思います。厚生省としては、できるだけ国民の出先の役所だというような気持ちの上に立ちまして、国民一人一人に当たってしあわせをもたらすような行政措置をとりたいと考えておるのでございます。数多い中には、そういうように厚生省のほうへお知らせをいただかないで、あるいは地方の県のほうへも言わないでやっておられる方もあるかと思うのであります。今後、そういうお話を先生方がお聞き取りをいただいたときには、すみやかにひとつ御指摘をいただきますならば、厚生省としては誠意をもってそうした問題に取り組んでまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/52
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053・河野正
○河野(正)委員 今日まで二、三問題を取り上げてまいりましたけれども、そういう二、三の例を取り上げてまいりましても、必ずしもいまの厚生省の政策は血が通っているというふうに判断しがたい、この点はまことに遺憾に感じます。
そこで、さらに遺家族の立場からもう少し突っ込んでお尋ねをしてまいりたいと思いますが、その一つに戦没者の慰霊行事という問題がございます。これは私がいまさら御説明を申し上げるまでもないと思いますけれども、昭和三十六年、戦後十六年でございますが、ソ連の第一回の墓参が行なわれました。私どももソ連の好意に対して非常に喜んだわけでございますけれども、さらに続いて、三十七年には第二回の墓参が行なわれたのであります。また私どもの長い間の懸案でございました中共に対します墓参も、いま遺族六名の代表が墓参のために中国に参られておりますことについては、私どもも全く同慶にたえないところでございます。それからさらに、昭和三十七年には沖縄で国をあげての慰霊祭が行なわれまして、十八万に及びます軍民戦没者の霊を慰めることを得たのでございます。ところが実際には、中国、沖縄を問わず、南方におきましては幾多の激戦地がございます。外地のかつての戦野に多数の遺骨が草むしておるというのが、私は率直な現況であろうと考えます。たとえばビルマにおきましても、敗戦末期におきまする非常に悲惨な状況が出ておりますし、またフィリピンにおきましても、敗戦末期におきましては非常に悲惨な状況が出ております。そこで、そういったかつての激戦地に草むしております遺骨収集というのは、これはもうなかなか困難な事情にあることは、私どもも十分承知いたしております。ソ連におきましても、先ほど申し上げましたように二回にわたります墓参が行なわれた。中国では将来どうなるかわかりませんけれども、いずれにいたしましても第一回の墓参が行なわれた。沖縄では慰霊祭が行なわれた。やはり戦後二十年になんなんといたしますから、この大戦の忌まわしい記憶をすみやかに払拭したほうがよかろうと考えます。そういう意味で、遺骨が帰ってまいっております遺家族は、一応ねんごろにその霊を慰めることができますけれども、遺骨のない遺家族は、感情としてはやはり遺骨がほしいという気持ちがございましょう。現実ができぬとすれば、どこかで墓参が行なわれるか、あるいはまた慰霊祭を行なうという形によって、戦後そろそろ二十年ですからどこかでけじめをつける、これはやはり日本の国民感情でもあると思います。そういうことが、一方におきましては戦時死亡宣告という問題と並行して考えられるべき問題じゃなかろうかということを私どもは考えるのでございますけれども、そういう点についてどのようにお考え願っておりますか、この際ひとつ全国の遺家族に対してお示しをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/53
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054・鈴村信吾
○鈴村政府委員 お話のように、外地における遺骨の収集、調査あるいは追悼というようなことにつきましては、これは終戦後二十年に近い時期がたっておることでありますので、もうとうに完了しておらなければならぬわけでありますが、遺憾ながらまだ一部の地区については完了していないわけであります。しかしながら、過去におきまして昭和二十七年以来約十回にわたりまして、沖縄をはじめ南方、北方方面に遺骨の調査、収集あるいは追悼のための、あるいは墓参等のための団と申しますか、政府職員、遺族、宗教代表等からなる墓参団なるものを派遣いたしまして、それぞれの地におきまして収集、追悼等を行なっておるわけであります。ただ一部にそれがまだ完了してない地域がございます。たとえばインドネシアの一部でありますとか、それから今回中共につきましては遺族代表が向こうへ墓参に参っておられますが、旧満州、いまの中国の東北地区でありますが、この地区につきましては、遺骨の収集等について全然まだ手がついていないという状況でございます。そういうふうなインドネシアの問題あるいは満州の問題等については、やはり将来の問題といたしまして、なるべく早くそのような行事もいたしたいというふうに考えておる次第であります。幸いにインドネシアにつきましては、近い将来何とかなるのではないかという見通しがございますが、旧満州地区につきましては、中国との関係もございまして、率直に言いましてまだ何らの見通しもついていない状況でございますが、これもできるだけ早い機会にそのような催しをいたしたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/54
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055・小林進
○小林委員 その問題に関連いたしまして、一言だけお伺いをいたしたいのであります。
いまの局長のお話では、沖縄、南方、北方、中国大陸等、一部を残して遺骨の収集、墓参等——インドネシアはいまのお話のとおりであります。そういうことも行なわれているとおっしゃったのでございますが、それ以外で海の中へ沈んだ者に対してはどういうふうな御処置をされるのか。これば墓参ということが一体できるのかできないのか。現に私の弟も学徒動員で日本の港を出ていって、そして遺骨と称するものだけは、家族に取りに来いと言うので二、三年たってもらいに行ったのでありますけれども、箱の中に砂利だか石だか入っているものをいただいただけでございまして、どこで死んだかわからない。ただわれわれの想像で、海の中に沈められたのではなかろうかと思うだけの話であります。もちろん援護局からは、お前の子供はどこどこで死んだなんという話なんですけれども、そんなのは信憑に値するものかどうか、それもわからない。個人の問題はそれといたしましても、海の中では相当に死んでいる。これは墓参できますか。遺骸の収集ができますか。あるいは遺骸の収集について幾らかでも御努力願えますか。墓参の問題等々についても、それに類似する何らかの行為でもお考えになっているのかどうか。遺族にしましては、大陸で死ぬも海で沈むも、北方で死ぬも南方で死ぬも、沖縄で死ぬも、戦争で受けた犠牲の点においては同じなのですが、こういうものに対していかようにお考えになっておるか、この機会にひとつお伺いをいたしておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/55
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056・鈴村信吾
○鈴村政府委員 ただいまお尋ねの沈没艦船等に乗っておられた方の遺骨の問題でございますが、これはあるいはフィリピンの方面、あるいは朝鮮近海といろいろございますが、すでにフィリピン方面その他におきましては、東海地区で沈船の引き揚げが行なわれました際に遺骨を引き揚げていただきまして、それを現地で火葬にいたしまして、それを当時の艦船に乗っておられた方の遺族にお分かちするということで措置をしたものがある程度ございます。その場合には、たとえばフィリピン等でありますと現地の日本の在外公館が大体関与しておりまして、サルベージの会社との関係で了承を得まして、もちろんその費用は援護局等である程度負担しておりますが、現地で火葬していただきまして、そこである程度の追悼式等も行なった上で日本へ持ってまいる、上陸地で簡単な追悼の式等をやりまして、それを援護局が責任を持ちまして当時の乗り組み員の家族に灰を分かちするというようなことはすでに処置しております。それから最近話がありますのは、韓国の近海でやはりかなりの船が沈んでおりまして、それを韓国のほうが近く引き揚げをやるということで、当然ある程度の日本人の遺骨もあがるであろうから、これを何とかして丁重に扱いたいというお話がありまして、われわれもその際には必要な謝礼等は出しますからということで連絡をいたしまして、おそらくそのうち引き揚げが始まると思いますが、その際には、韓国近海の艦船の遺骨につきましても、やはりいま申し上げましたような措置がとり得るのではないかと考えております。したがいまして沈没艦船につきましても、できるだけそのような措置によりまして追悼あるいは慰霊等のことを行ないたい。それから艦船を引き揚げた際の遺骨収集の場合には、海上の慰霊祭というものも行なっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/56
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057・小林進
○小林委員 沈船の引き揚げ等で、その入っている遺骸に対しては父兄に引き取りを通知をしたり、お祭りをしたりしてくださったというのでございまするけれども、一体その船にだれが乗っているのかということは、あなた方のほうでおわかりになっているのかもしれませんけれども、私ども被害者のほうでは、何という船に乗っていってどこで沈没したのかわからないのです。だからわれわれのほうから言わせれば、戦争に軍人を乗せていった船は全部どこかに記録があって、またその船にどういう氏名の者が乗っていたというのを一覧表でも見せていただければ、われわれはその部厚いものの中から一つ一つ名前をさがしていって、そうしてこの船に乗っていたのだということを見出す以外にはないのです。あの学徒動員で持っていかれた者は、見送り人も来ちゃいけないし、作戦上どこへ行くかということも教えるわけにはいかないし、乗っている船も教えるわけにはいかないというので、現実に船に乗せられて日本の港から離れていったことだけはわかるけれども、船の名前も行き先も方向も何もわからない。遺族にとっては、いかに沈船を引き揚げて、そこで戦没軍人の遺骸が見つかったところで、それは他国の話みたいなものである。縁もゆかりもない話になるのであります。こういう立場にあります者を一体どう処置してくださるのか、お考えがあればひとつお聞かせを願いたいと思うのであります。もし個々に乗った船もわからなければ、沈んだ場所もわからないような人たちに、せめて名前だけでも出してくれたらさがしてやるとおっしゃるような御通知を公式にいただけるならば、私は名前をその筋に提出をいたします。乗った船、沈んだ場所くらい、あらためてお聞かせ願えるものならば、そういう方法もひとつとっていただきたいと思うのですが、事情がどうなっているのかお聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/57
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058・鈴村信吾
○鈴村政府委員 お名前を私のほうにお知らせいただきますれば、もちろんその船名、それからその船がどこで沈んだかということは大体わかることになっておりますので、どこにその船が沈んでおるか、あるいは引き揚げられたのか、そういうことはもちろんわかるわけであります。ただ引き揚げられたものが全部でありませんので、引き揚げられていないものについては、大体この辺に沈んでおるであろうかというようなことはわかるわけでありますが、もし特定の方についての御要望がありますれば、できるだけの調査はわれわれのほうでいたすつもりでございます。
それから、先ほども申しましたように、引き揚げられた艦船の遺骨については一定の慰霊の措置等はいたしており、また遺族に灰をお分かちするようなこともいたしておるわけでございますが、全体的な追悼の問題といたしましては、昨年から行なわれております全国戦没者追悼式、あるいは象徴的な遺骨の一部が葬られております千鳥ケ淵戦没者墓苑、こういうところにおきまして、年一回あるいは五年に一回というようなことで、さらに丁重な慰霊の催し等はいたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/58
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059・小林進
○小林委員 これは新しいことをお聞かせ願ったものであります。名前を言えば乗っていった船と沈んだ場所はお知らせしますというようなことが、いつから可能になったのでありますか。それをひとつ。実に新しい御答弁なんです。いつからそういうふうに名前を申し上げていけばわかるような制度になったのか、お聞かせを願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/59
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060・鈴村信吾
○鈴村政府委員 決していままでも秘密にしておったわけではございませんので、個々に特にお問い合わせがあれば、できるだけ調べてお知らせしておったわけでございます。特に今回戦没者の叙勲も行なわれるようになりまして、その際に初めて、自分のむすこはそういう船に乗っておってそういう死に方をしたのかということを知られたというようなケースもあるわけでございますが、何ぶんにも二百万に及ぶ方でありますので、作業は困難をきわめるかと思いますけれども、従来でもそういう御希望があればできるだけの協力はしておるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/60
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061・小林進
○小林委員 これは実に異なことを承るのでございますが、そういう御親切があるならば、そういうことこそ遺族の方にいま少し親切に教えてあげたらいい。私は人の話をしているのではない。私の身近なことですから、何のかけ引きのない話を申し上げるのでありますけれども、現に私の義理の弟が学徒動員で死んだのであります。その死んだ場所もわからぬし、船もわからぬが、母親は、自来十数年陰ぜんを据えましたよ。朝は必ずめしを供えてきましたよ。何回聞きに行ったかわからない。まだ死んだような気がしないから、うちのむすこはどこでどういう船で死んだのか教えてくれと何百回行ったかわからないですよ。それをわかりませんと言って、箱一つ持たしたきりで答えないから、親は死んだとは思えないといって毎朝陰ぜんを据えた。子供の帽子を飾ってあたたかい御飯を供えたが、とうとう死にましたよ。死ぬときは、何も要らないから一人むすこの学帽だけを棺おけの中に入れてくれと言った。帽子と一緒に死んでいったじゃないか。そういう現実に苦しんでいる者——ぼくは身近な義弟の話をした。この船に乗ってここで死んだということがわかればあきらめますが、わからないと言うから、親にしてみれば死んだとは思えない。だから十数年も、一日も欠かすことなくかわいいせがれの前に学帽とめしを供えて死んでいった。死んでいくときには、何にも要らない、自分のせがれの写真と学帽だけを一緒に葬ってくれと言って死んでいった。そういうことがあるならば、あなた方は、それだけの希望で生きている者になぜそれを教えないのか。いまここにきて、何月何日からではありません、もとからそうしておりますだなんて、それは国会向けの答弁じゃないですか。事実やっていたのかどうか。そういうことが、末端の援護に関係しているところまでちゃんと通じておったのかどうか。あまりに不誠実な、人を泣かせているようなことを平気でおっしゃってはいけませんよ。それは間違いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/61
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062・鈴村信吾
○鈴村政府委員 もちろん戦争中におきましては、防諜の問題がございましたので、特定の人がどの船に乗っておるとか、どこで死んだということは発表の限りでなかったわけでありますが、終戦後におきましては、そういうような必要もございませんので、わかっている限りは個々にお調べしてお知らせしております。ただし、中には調査してもなかなかわからないのもあるということでありますので、そういうものについては別でありますけれども、わかるものについてはお知らせしておるというふうにやっておるはずであります。もし従来、仰せのような態度をこちらがとっておりましたとすれば、非常に申しわけなかった次第でございますが、わかるものについては十分調査の上お知らせいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/62
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063・小林進
○小林委員 こういうことは、ぼくらも思い出すといやだから聞かないけれども、死んだ人はしかたがない。死んだ人はしかたがないけれども、その援護業務がほんとうに血の通った業務をしていれば、それに関係して泣いている人の涙だけはとめることができるのですよ。死んだ者はいいけれども、死んだ人のために、何十年もそういうことのために泣いたり命を縮めたりしている者がある。あなた方の援護行政の形の中で、もう少し親切に教えてやれば、そのために精神的にも救われる者があるのです。もうちょっと親切に教えてくれれば、死なないで、もう少し長生きしたかもしれない。そういう形で泣いている人の問題が、あなたたちの行政の中で一つも生きていないじゃないか。いま初めて、そんなことは言ってもらえればできるだけのことはいたしましたにもかかわらずと言うけれども、末端の機構は現実にそれをやっていなかった。いまからでもおそくないのですから、どこで沈んだか、行くえ不明でわからないという人たちが聞けばわかるというものならば、末端の機構に通牒を出して、できるだけやるように措置してください。やれますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/63
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064・鈴村信吾
○鈴村政府委員 従来、実は積極的にこういうふうにしますということをPRしてなかったという点はあると思いますが、戦没者叙勲も改正されまして、遺族の方々もそういうことに非常に関心を強くしておられますので、むしろ県の主管課長会議等におきまして、そういうような希望者については、できるだけの便宜をはかって調査の上お知らせするようにということを明示したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/64
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065・小林進
○小林委員 これはいまあなたが約束をせられましたから、そのことばはひとつ肝に銘じて私は調査いたしまして——これは私だけの個人のことを言っているのじゃない、そういうような形で泣いているのがたくさんいるのです。だれからも救われない、だれからも親切にされないで、そしてそういうグループだけで寄り合って泣き合っている者がたくさんいる。私は今度その実例がいま一つ出てさましたら、断じて了承しないで、いまの約束をたてにとって弾劾をいたしますから、それだけ覚悟をして生きた行政をやっていただきたいと思います。勲章なんかあとでもよろしい。そんなえらい人の勲章や、生きている者の恩給なんかあとでもいいから、そういう人たちの行政を何より先にやるように、ひとつやっていただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/65
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066・河野正
○河野(正)委員 引き続いてお尋ねをいたしたいと思います。
いま局長のお答えをだんだん聞いておりますと、大体この遺骨の収集あるいは墓参問題は、旧満州地区とインドネシア地区を除けば完了したというふうなお答えがあったようであります。それならば、一体どういう形で完了したというふうにおっしゃっているのか、ひとつ具体的な事実をお示しいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/66
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067・鈴村信吾
○鈴村政府委員 昭和二十七年以来、政府職員あるいは遺族、それから宗教代表等を加えまして、約十回にわたりまして南方、北方各地域に遺骨の収集調査団を派遣しておる次第であります。もちろん収集と申しましても、そこにある全遺骨を持ち帰るということは不可能でありますので、非常に多い地域については一部持ち帰るというようなことにいたしたわけでありますが、その際に、インドネシアにつきましては、現地の軍人会の反対等がございまして、必ずしも当時行なえなかったというような事情があるわけであります。そういうことで、インドネシアについては、近くそれを残っているものについて行ないたい。二十七年から三十七年まで、約十カ年にわたって継続をいたしたわけであります。それから中共は、現在墓参団が行っておりますが、満州については、今後の問題ということは先ほど申し上げたとおりでありますが、それらの収集いたしました遺骨をそれぞれ現地の、その地域の象徴的な遺骨といたしまして、千鳥ケ淵の墓苑におさめてあるということでございます。政府といたしましては、政府職員以下による派遣、これはおおむね戦闘地域となりましたところについては、いま申し上げましたような経緯によりまして一応派遣をいたしまして、象徴的遺骨の収集を終わったということに考えておりますので、大体の経過としていま申し上げたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/67
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068・河野正
○河野(正)委員 どういう根拠で、インドネシアと旧満州地区を除いて遺骨の収集、調査というものが完了したというふうにおっしゃっているのか、私ども国民は納得いかぬのですよ。いずれその具体的な例をあげてお答えを願いたいと思いますけれども、しからば二十七年から三十七年にかけて十カ年間、政府職員あるいは遺族、あるいはまた宗教団体の方々がそれぞれ現地に行って遺骨収集をやり、調査をやり、そしてそのことが完了したということは、どういうことで完了したというふうにおっしゃっておるのか納得いきませんので、もう少し突っ込んで説明していただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/68
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069・鈴村信吾
○鈴村政府委員 一応われわれといたしましては、過去の戦場となりました、しかも日本の軍人が戦死いたしました地域においての象徴的な遺骨収集は終わったと考えておりますのは、もちろん、先ほど申しましたようにあらゆる地域について全部というわけにはまいりませんので、その地域の一部のものの収集に終わったところもあるわけでありますけれども、それにいたしましても、当該地域については一応そういうような収集団を派遣して、現地追悼の式も終わったわけでありますので、もちろんそれで完全だということは言えないかもしれませんが、一応の行事は終わったというふうに理解している次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/69
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070・河野正
○河野(正)委員 お役所仕事でおやりになったことを、完了したというふうにここで公言されることについては、私どもは了承できません。それはできる地域、できない地域とあります。戦線も非常にふくそうしておると思うのです。そこで、現在できる範囲において、具体的に一部ですけれども、一部においてやったという御報告なら私どももいただきますけれども、このフィリピンとかビルマとか一かつての参謀であった白井さんそこに御出席ですけれども、これは戦線が非常に拡大しておるわけですから、十年の間に十回行ったということですが、その中でどの程度おやりになったか知らないけれども、その程度をお示しいただかないことには、私どもはそれをもって完了したというふうには理解するわけにはまいりません。それをどうしても完了したとおっしゃるならば、私はあえて例をあげてあなたの責任を追及いたします。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/70
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071・砂原格
○砂原政府委員 この問題は、私は局長のことばが足りない点もあると思いますが、お説のように広域にわたって戦線が展開されたので、したがって全地域に行き届いた、きめのこまかい、いわゆる慰霊の道が講ぜられたとは私たちも考えられません。したがって、重点的な面を、とにもかくにも一応すべて、御遺族の方なり、また戦没せられた英霊に対する霊を慰めることを一応終わりました、かような意味に答えておるものだと思うのであります。なお今後、これですべてが終わったというような考え方ではなくして、将来、いわゆる相手国のあることでございますが、許される範囲内においてあらゆる角度からそうした地域に、小さい角度まで行き届いた慰霊をしなければならぬと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/71
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072・河野正
○河野(正)委員 いま政務次官が厚生省を代表して、幾らか良心的な御答弁をなさったわけですが、私も、率直に申し上げまして大東亜戦争の末期に参加した一員です。でございますから、大東亜戦争の末期というものがどういう実情であったかということは、身をもって体験しておるわけです。そしてそれに対して援護業務としてやられたことが、いま小林委員からもいろいろ御指摘がございました。私も、例をあげて申し上げようとすればいろいろございます。そういうことを考えてまいりまする場合に、遺族の立場から申し上げますると、いま私がたびたび御指摘申し上げたように、二十七年から三十七年の十カ年間に十回それぞれの代表がおいでになったということですけれども、それだけでも5すでに遺族に対する一切の終戦処理というものが完了したというふうな御理解に立つならば、私はあえて申し上げなければならぬと思うのです。私はこういう公の席上で申し上げることは実は慎みたいということで、いままでことばを慎んでまいったわけです。私も北部ルソンに参りました。そして御承知の方がおられると思いますけれども、バレーテ峠で、兵たん病院で第二半部長で私が病院を開設いたしておりました。ところがたまたま私の義弟は、私のおったそこで戦死したことになっておるわけです。そこでやはり援護業務が完了したとおっしゃっても、遺族としては納得できぬ問題があるわけです。全然離れ離れで戦地へ参ったわけですけれども、帰ってみたところが、私のおったところで頭部貫通で死んだというふうに公報できておるのです。遺族としては全くはっきりしないものがあるわけです。しかしそれはそれとして、フィリピンにおいても、またビルマにおいても、戦線というものが非常に錯綜しておるし、また最終的には非常に深刻な状態でございました。私は身をもって体験しておりますから、それらの遺骨が一つ一つ収集できるというふうには理解しておりません。ですから、一つ一つが収集できないならできないだけ、より遺家族を納得させる処置というものをとらなければならぬ。にもかかわりませず、お役所仕事でその辺をちょろちょろ回って、それですべてが完了したというふうにこの国会の席上で言われるなら、私は厚生省の責任を徹底的に追及しなければなりません。遺家族はそんなことじゃ納得できませんよ。そこであなた方が、将来の問題はあるけれども、できる分については現在この段階まで完了いたしましたということならけっこうです。ですけれども、それでもう一切が終わったのだという理解に立って今後援護業務をやるなら、われわれは、厚生省の作業に対して協力することはできません。これは絶対にできませんよ。遺家族として承知できません。私は、そういうことを公の席上で申し上げることは、私ごとにわたりますからいかがなものであろうかということで実は遠慮しておった。ところがたまたま、いみじくも小林議員からいろいろ御指摘があったにもかかわらず、厚生省が依然としてそういうお茶を濁すようなことで援護業務が一切終わったのだということであるとするならば、私ども国民の一員として、遺家族の一員として納得できません。この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/72
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073・鈴村信吾
○鈴村政府委員 私のことばが足らないために若干誤解を招いたようでありますが、私も、いままで国のやったことが完全無欠で、もうこれでいいのだというようなおこがましい気持ちで申し上げたのではないわけでありまして、現段階においては一応終わったと考えておりますけれども、もちろんこれは、遺家族の方々から見れば非常に不十分なものであろうと思います。そういう意味では、将来においてさらに反省の上、これを補うというようなことは当然あると思います。しかしながら現段階において一応は終わったと考えておるという意味で申し上げたのでありまして、決してこれが完全で、もう全部終わったのだというような意味ではございませんので、御了解を得たいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/73
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074・河野正
○河野(正)委員 そういう答弁では遺家族として納得できませんよ。誤解というようなことばで過ごされるなまやさしい問題ではないのです。いま小林議員からも、いろいろ遺家族の心境というものが述べられました。遺家族の立場に立って考えると、そういう誤解ということで片づけるようななまやさしい問題ではない。現段階で終わったということでなくて、現段階ではここまでやりましたということなら、私はさらにいろいろ遺家族のために今後も作業をやっていただくだけの希望がある。ですけれども、現段階では一応完了したということならば、今後の問題については非常に消極的じゃないですか。それでは残された遺家族はどうしますか。やってもらった人はけっこうでしょう。それでは残された遺家族に対してはどういうふうにお答えになろうとするのか。私も残されたほうですから、納得できませんよ。ですから、いまのような局長の答弁ではこれは進行するわけにまいりません。いやしくもこの援護法の改正案なるものは、遺家族の福祉なり遺家族の援助ということで提案されたというふうに私どもは理解しておる。そういう意味で私どもはこの法案については協力しよう。自民党の諸君からもいろいろ要請がございます。私ども、その要請については了といたしておりますけれども、そういうことでは全く仏つくって魂入れずじゃないですか。私どもの気持ちや意向というものが入れられない援護法ならば、ほんとうの遺家族援護の援護法であるというふうには理解いたしがたいと思うのです。こういうことを言うことは私は元来がふえてです。けれども、きょうの厚生省の答弁を聞いてまいって、はたして遺家族のためのほんとうに血の通った援護法をこの国会で成立させようという御意思があるのかないのか、私どもは非常に疑問を持たざるを得ないと思うのです。第一、法律を上げてくれと言いながら、厚生大臣は黙って欠席をする。もちろん災害ですから、災害地の見舞いに行かれることについては、私どもとやかく言うものではございません。けれども、やはり災害地に行くなら行くで、この法案についてはどうするんだという立場が明らかにさるべきだと思う。そのくせ厚生次官は知らない。こういうことで血の通った援護法というものが一体できるのかどうか、私どもは非常に疑問を持たざるを得ない。遺家族援護のためにやろうという法案ならば、提案なさる政府といえども、やはり血の通った立場でこの問題に取り組んでもらわなければならぬ。それをやらないから、死亡宣告だって地方では困っておられる。同じ国の機関でございます九州行政管区監察局が困った困ったと言っておる。厚生省でそういうことばないはずですと言っても、現地では、同じ国の機関がそういうことを言っておる。そういう実態があるじゃないですか。全くこの法案の審議において、私ども厚生省の態度については了解できません。これは法文の問題ではないと思うのです。精神の問題だと思う。気持ちの問題だと思うのです。たとえりっぱな文句でも、りっぱな手直しの法案でも、血の通っておらない法案だったら私は意味がないと思う。そういうことで血が通っておると言われますか。こういうことで時間を費やすことは、私はまことに遺憾に感じます。ですけれども、午前、午後のいろいろな質疑応答の中でも、厚生省の血の通った気持ちがこの法案の中に流れておるというふうには必ずしも理解しがたいと思うのです。そういう意味で、私は厚生省の態度については全く納得するわけにまいりません。先ほど小林議員からも、いまの厚生省のやり方は国会乗り切りのための答弁だ、こういうきびしい御批判もございました。私はいまの御答弁を聞いておりますと、やはり小林議員同様に、いろいろけっこうなことを言っておるが、それは国会を乗り切るのための回答だというふうに指摘せざるを得ないと思う。まことに私ども国民の一員として、遺家族の一員として残念に感じます。本来から申し上げますと、大臣から率直な意見を聞きたいと思いますけれども、大臣も不在でございますので、ひとつ政務次官から国民に申しわけの立つような、遺家族に申しわけの立つような答弁を切に願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/74
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075・砂原格
○砂原政府委員 河野先生の指摘のとおりでございまして、現地の戦没者等に対しましては、先ほど申し上げましたように、一部には相手国の理解を得ましてその弔いをすることができる、あるいは遺骨の収集等も行なわれておるのであります。しかし、御指摘のとおりに広い戦線でございますし、終戦前の特に激戦地帯におきましては、まだまだ容易にこれの収集等が完了するものではない、私もさように考えております。したがって先ほどから局長の申しておりますのは、一応何が何でも、一カ所でも早くそうした霊を慰めるために処置をとりたいというので、そういう処置をとれます個所だけをとりあえずやったということでございます。今後といえども厚生省といたしまして、また国といたしまして、当然相手国の理解を求めながら、広い範囲に、できるだけこまかくこうした処置をとっていかなければならない。先ほどからの御指摘のとおりに、遺族の皆さん方のお気持ちは河野先生のお話のとおりだと思います。また小林先生のお話のとおりだと思います。そういう面につきましては、ことのほか心をこまかく使い、国民の皆さん、御遺族の皆さんの御満足のいくように、今後といえども積極的に進めてまいりたいと考えておるのであります。ただお許しをいただき、また同時に御理解をいただきたいと思いますことは、当面の一つだけが厚生省の善意のない、誠意のないものであるということではないのでございまして、表現のしかたの上において、はなはだまずい点もありましょうが、問題が真実をかけて、遺族の皆さん方の心を心として、今後といえども厚生省は処遇に努力を重ねてまいることをかたくお約束申し上げるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/75
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076・河野正
○河野(正)委員 いま政務次官からいろいろお答えをいただいたわけですけれども、政務次官自身も非常に理解の不十分のようなところがあると思います。相手国といろいろ話し合いでといったお答えもあったわけですけれども、それは先ほど局長が言っておるように、インドネシアとかあるいはまた旧満州地区では、相手国と今後いろいろ話し合いをして進まなければならぬというように私どもは理解しているから、インドネシアと旧満州地区につきましてはいろいろ申し上げておらぬわけです。ですけれども、話し合いがついて、たとえばフィリピンとかビルマとか、すでにそれをやって、そして十年間十回行ってやったのだから完了しておる、こういうふうにおっしゃったから私どもは、いま申し上げるように完了したと言えるのかという問題の提起をやっておるわけです。ですから、いま厚生次官からいろいろ前向きのお答えを聞いたと思うのですけれども、それ自身少しピントが狂っておると思うのです。少しきちんと整理をして、相手国の事情のあるやつは事情のあるやつ、そういうふうに解決をしてやられる。たとえばフィリピンだとかその他、こういうところを整理して私は御指摘申し上げたつもりです。できるところとできぬところをごっちゃにして申し上げたつもりはない。ところができるところにおいても、一部お役人仕事でちょこちょこやっておいて、それで完了したとおっしゃるから、それでは遺骨が浮かび上がれない、私はこういうことを指摘しているわけです。ですから、その辺について次官も少し認識が欠けておると思うのです。私はそう無理なことは申し上げぬつもりです。局長がお答えになったようなことでこの問題を糊塗されるとするならば、国民の一人としても、遺家族の一人としても納得することはできない。
それなら伺いますが、フィリピン、ビルマではもうすでに完了したとおっしゃっておるわけですが、どういうことで完了したとおっしゃっておるのか、また遺家族はそれで納得しておるのかどうか。私たち国民の一人として、どういう方向で解決されたのか十分承知をいたしておりませんので、全国の遺家族が納得するような方法でおやりになっておるのかどうか、その辺の実情についてもはっきりここでお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/76
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077・鈴村信吾
○鈴村政府委員 いまのお話でございますが、私が先ほどインドネシア、それから旧満州以外は完了したと申し上げましたのは、どうも少し舌足らずでございましたが、一応現在までにこういうことをやったというこを申し上げたので、もう済んだからあともういいんだ、そういう意味では毛頭ございませんので、いままでやったところを一応御報告いたしたわけでありますが、フィリピンにつきましては、航海訓練所の銀河丸によってやりました。それからシンガポールにつきましては、航空機によってやっております。やり方の詳細については、私ちょっといまここにあれしておりませんが、関係の者が来ておりますので、また御説明さしてもけっこうでありますが、いずれにしても厚生省としては、やったところは今後やらないということではなくて、現地でなくなられました遺族の慰霊あるいは追悼ということについては、今後も慎重な配慮をしてまいるという考えでおりますので、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/77
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078・河野正
○河野(正)委員 完了したとおっしゃったけれども、具体的に聞きますと、フィリピンでは銀河丸でやったんだ、シンガポールでは航空機でやった。何をおやりになったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/78
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079・砂原格
○砂原政府委員 いまの局長のことばの点を、私からはっきり申し上げておきます。さっきから幾たびかお答えを申し上げたように、完了いたしたのではございません。主たる個所からその慰霊を行なってまいりましたが、今後も引き続いてこうしたことを続けてまいりたいという考え方でありますから、この点は、私の責任においてはっきり申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/79
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080・河野正
○河野(正)委員 今後も続けておやりになるということだけれども、その前提を確認しておきたいと思う。と申し上げますのは、いまいろいろ局長にお尋ねをしたところが、フィリピンについては銀河丸でやった、シンガポールについては航空機でやった。それが前段のように遺骨の収集、調査、墓参を完了したということであるとするならば、いま政務次官からもいろいろお答えをいただきましたけれども、そういうことが前提で今後やられてもらっても、私どもは納得するわけにまいりません。遺骨の収集や墓参や調査をやったとおっしゃるけれども、いまお答えになったように、フィリピンでは銀河丸でやった。一番フィリピンで死んだのは北部ルソンです。山の中の収集を銀河丸でどうしてできますか。シンガポールは、航空機で遺骨収集がどうしてできるのです。そういうことを前提として今後も続けるのだとおっしゃっても、私は次官のおことばに、はいそうですかと言うわけにまいりません。ですから、その前提が非常に問題です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/80
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081・砂原格
○砂原政府委員 これはどうも局長の説明が誤解を招く点が多かったので、参りましたのは船で参りました、あるいは飛行機で参りました、そしてその上で、それぞれの遺族なり厚生省の者やあるいは宗教団体の方々に同行を願って慰霊をいたした、あるいは遺骨収集をいたした、かような意味でございますから、どうぞ御了解を得たいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/81
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082・河野正
○河野(正)委員 それならば具体的にお聞きしますけれども、おいでになるのは銀河丸でおいでになっても、飛行機でおいでになってもけっこうです。私どもが希望しておりますのは、遺骨を収集していただいたり、あるいは調査をしていただいたり、墓参をしていただきたい、慰霊祭をしていただきたいというのが私ども遺家族の願いですから、おいでになるのは船でおいでになろうとかまったことではございませんけれども、それならば、フィリピンは銀河丸で行った、シンガポールは航空機で行ったと言うが、どういうことをやってきたか、その辺の事情をひとつ明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/82
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083・砂原格
○砂原政府委員 いま現地のほうへ参りました者がこの席におりませんので、あらためてまた現地に参りました者からつぶさに御報告さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/83
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084・河野正
○河野(正)委員 それは現地に行かれた方がおられるとするならば、いずれしさいについての御報告ができることについては了承いたしますけれども、しかしながら要は、問題はどこまで国民なり遺家族にこたえるような血の通った処置が行なわれたか、この辺が非常に問題だと思うのです。ところが、少なくとも私どもは、いままで厚生省のやられたことが、完了をしたということはおろか、遺家族なり国民なりの切なる悲願なり要望にこたえるような処置をやられたというふうには、正直のところ理解をしておりません。そういう意味では、なるほど今度の法改正というものが前進的な処置であることは私ども了承いたしますけれども、しかし、法の手直しをしょうが、法の改正をしょうが、要は厚生省がどういう心がまえ、どういう姿勢で国民にこたえ、また遺家族にこたえていくかという、そういう精神、心がまえというものが私は一番大事なことだと思うのです。そういう意味で私は、まことに残念ですけれども、いまの厚生省の態度については了承するわけにまいりません。はっきり申し上げます。
そこで、さらにひとつお尋ねをいたします。なるほど政府ではいろいろ積極的におやりのようですけれども、実際にはそういうことばの裏づけがないということは、もうしばしば御指摘を申し上げたとおりです。お待ち願っております政府委員もございますから、私もいろろ申し上げたくございませんけれども、さらに具体的に一例を取り上げて申しますと、これも昨日の新聞でございますけれども、「太平洋戦争の末期、オーストラリア各地の捕虜収容所などで死んだ旧日本兵の墓地が、日本政府とメルボルン市にある英連邦墓地委員会の協力でカウラ市に造られ、今年十月に開園の見通しとなった」、そこで、当時この収容所に収容されておりました生存者の諸君が、ぜひひとつ現地に行って戦友の霊を慰めたい、こういうことで準備をいたしておるというようなことが新聞に報道されておるわけでございます。厚生省は、口を開きますと、遺族援護のためにいろいろ積極的にやったとおっしゃるけれども、これもその一例ですが、遺族や生存者が立ち上がるまで厚生省は傍観をしておる。こういう問題があったら、ひとつ積極的に厚生省がまず取り組むべきだというふうに思いますけれども、それぞれ大戦のためにとうとい命を失ったそういう方々の霊を慰めようということで、厚生省でなくて生存者や遺家族が立ち上がっておる。それを厚生省が手をこまねいて見ておるというのが今日の事態だと私は思うのです。このように、一々具体的な例を申し上げると枚挙にいとまがないのです。どれもこれも厚生省のやっておることは血が通っておらぬ、こういうことです。私は、こういう記事が出てくること自身に非常に問題があると思うのです。時間の関係等もございますからいろいろ申し上げませんけれども、厚生省はこういう事態を一体どうお考えになりますか、これでも厚生省は血の通った援護行政をやっておるのだというふうにお考えになりますかどうか、ひとつ率直にお聞かせをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/84
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085・鈴村信吾
○鈴村政府委員 いまのカウラ地区の件でございますが、これは外務省のほうで経費を出しまして、公園的な施設に整備をするということでやられたようであります。もちろんこれは、外務省が経費を出してやるにつきましては、厚生省の意見も過去において聞かれたことがあるようでありますが、一応そういう方々の霊を慰めるという意味におきましてそういうような施設をされたということで、われわれ、現地でなくなられた方にとっても非常にけっこうなことだというふうに喜んでおるわけでありますが、そこへ民間の方が参られるという話は、実は昨日でございましたか、新聞で初めてわれわれも承知いたしたわけであります。まだ詳細に承知しておりませんが、非常にけっこうなことであるとは感じておりますけれども、まだこの詳細については承知していない次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/85
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086・河野正
○河野(正)委員 いまの答弁を聞いても納得できない。遺家族援護については当然厚生省が担当しておやりになる、先ほど申し上げますように、すでに完了したというくらいに非常に高姿勢である厚生省が、この問題については外務省だ、こういうことについては私はちょっと納得できぬと思うのです。それでは、同じ答弁を聞いてまいりましても歯車がかまぬじゃないですか、この点はどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/86
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087・鈴村信吾
○鈴村政府委員 すでに過去におきまして外務省からそういう意向が厚生省に表明されまして、厚生省側においても非常にけっこうだということで同意いたした経緯があるようでありまして、もちろん厚生省でこれをやることを拒否したということでなくて、むしろ外務省がやられると積極的に意向を表明されたのに、厚生省が賛成を申し上げたということのように了解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/87
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088・河野正
○河野(正)委員 これはどういうことでしょうか。こういう援護業務というものは厚生省所管だというふうに理解をしておるわけです。そこで、もうすでにインドネシアと旧満州地区以外では一切終わったというくらいに非常に高い姿勢で御答弁なさった厚生省が、このオーストラリアの問題は外務省だ、厚生省も賛成でございます。こういうことで援護業務に厚生省が熱を入れておる、力を注いでおるというふうに言えるのでしょうか。一体これはどういうことです。厚生政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/88
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089・砂原格
○砂原政府委員 ただいま御指摘の問題は、多少事情があるようでございまして、厚生省が直接取り扱います事案と少し立場が違っておるようでございます。内容等を申し上げますことは差し控えますが、そういう関係で外務省のほうに最終的にお扱いを願っておるというような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/89
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090・河野正
○河野(正)委員 ちょっと内容は言えぬけれども、この事案については事情があるから外務省に譲る。ところが私どもはやはり国政審議に携わる一員ですから、その間の事情というものが明らかにならなければ、われわれは了承するわけにはまいりません。援護業務というものは当然厚生省の所管です。ところがこの業務は事情があるから外務省だ、この案件は事情があるからどこだ、こういうことでは行政に一貫性がないじゃないですか。先ほどもたびたび指摘しますように、厚生省はもう一切墓参、遺骨収集というものば終わったのだというふうな高姿勢の厚生省が、このオーストラリアの問題は事情があるから外務省です。われわれは賛成だけいたしますというようなことでは、私どもこの問題を進行するわけにはまいりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/90
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091・鈴村信吾
○鈴村政府委員 これは新聞にもちょっと出ておりましたけれども、一般の戦死者とかなんとかということではなくて、非常に特殊なケースの方々、しかも特殊な死に方をされた方々について、外務省がたまたまあちらこちらに散らばっているのをまとめてお墓にして、公園みたいなものに整備するということのようでありまして、そういう特殊な事情にある方々のことでもありますし、外国のことでもありますので、外務省におまかせしたというようなことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/91
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092・河野正
○河野(正)委員 ますます納得いきません。一つは、いやしくもこの大戦に関連をして死亡された方々に対して、特殊な事情ということで差別待遇をされることについては了承できません。もう一つは、外国だという理由ですけれども、外国ならばフィリピンとかビルマとかあるいはインドネシア、これはどうして厚生省がやろうとおっしゃるのですか。これは納得いきません。つじつまが合わぬですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/92
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093・砂原格
○砂原政府委員 戦没者の場合と、またただいま御指摘の場合とは、非常に特殊的な事情があるわけであります。したがって外交的な交渉等も必要といたします。単なる遺骨収集とか慰霊とかもいうような扱いだけでは、処理のできない問題であります。したがって本件を外務省が処理したほうが適切であるというので、外務省のほうへおまかせをしておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/93
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094・河野正
○河野(正)委員 今日まで援護法の改正が行なわれてまいりました。この改正によって対象範囲を拡大したり、あるいはまたその内容を拡大したりということで、いろいろ前進を見てきたと思うのです。その基本を流れるものは、やはり大戦に関連するものはすべて援護法で救済しようというのが、私は援護法改正の今日までの精神だったと思うのです。そういたしますと、いま次官からお答えがあったように、このオーストラリア案件というものは、その内容については私どももつまびらかにいたしませんけれども、いずれにしても大戦に関連を持っておる。ところが援護法の改正というものは、一切この大戦に関連をしたものはこの援護法で救済していこうということで、軍人軍属が準軍属、さらには満鉄の職員というふうに拡大されてきたということば、もう私どもがあえて申し上げる必要はないと思うのです。援護法の改正では、そういうふうに拡大していこうというたえまえをとっておる。ところが一方では、大戦に関連あるけれども、これは特殊な事情だったということで差別待遇をする、同じ大戦に関連をしておりながら差別待遇をするということについては、われわれは賛成できません。いま一つは、外国で起こったのだから外務省ということならば、これは当然、フィリピンにおいても、ビルマにおいても、あるいはインドネシアにおいても、全部外務省がやるべきだと思うのです。そういう議論でございますならば……。ですから、いまの局長の答弁では納得するわけにまいりません。そういう思想でございますならば、私どもはこの議事を進行するわけにまいりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/94
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095・鈴村信吾
○鈴村政府委員 ただいまのケースは非常に特殊なケースの人たちでありますので、本名を使っていないわけであります。全部偽名を使っているわけであります。したがいまして遺族との関係といいましても、結局そういう偽名を使っておりますので、遺族として自分の肉親とは思っていないという人たちばかりでありまして、そういう特殊な方々ばかりでありますので、たまたま外務省からもそういうお話があったということで、もちろん厚生省がこれを扱うことを避けるとかなんとかいうことでなくて、たまたま外務省からもそういう意向の表明がありまして、そういう公園の整備の費用が外務省関係の経費から出たというだけでありまして、別にわれわれがこれを追悼する気持ちあるいは援護の気持ちを持たないということとは、そういうことは全然関係がないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/95
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096・河野正
○河野(正)委員 前段についてはいろいろ注釈が加えられたわけですけれども、後段の外国でやったことだから外務省だということなら、これは根本的にいままでの答弁というものと食い違うじゃないですか。内地における遺骨の収集だとか調査ということは必要ないので、全部外地の問題ですよ。それが外国の問題は外務省だということになるならば、いままでの遺骨収集調査等の一切のお答えと私は矛盾すると思うのです。そのいうことじゃ議事の進行はできませんよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/96
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097・鈴村信吾
○鈴村政府委員 外務省の経費と申し上げましたのは、現地で墓をつくられるわけでありまして、厚生省が経費を出しておりますのは、厚生省から人を派遣する、あるいは遺族を同行する、あるいは追悼式の経費ということでございますので通常厚生省からの経費になるわけでありますが、そういうものと全然別個な経費でありますので、たまたま外務省から出たというのであります。外国との関係を申し上げましたが、その点は取り消します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/97
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098・田口長治郎
○田口委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十八日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。
午後四時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604410X05619640617/98
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