1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年二月二十八日(金曜日)
午前十時四十七分開議
出席委員
委員長 二階堂 進君
理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君
理事 始関 伊平君 理事 中村 幸八君
理事 早稻田柳右エ門君 理事 板川 正吾君
理事 久保田 豊君 理事 中村 重光君
内田 常雄君 浦野 幸男君
遠藤 三郎君 小笠 公韶君
小沢 辰男君 岡崎 英城君
神田 博君 佐々木秀世君
田中 龍夫君 田中 正巳君
田中 六助君 野見山清造君
長谷川四郎君 南 好雄君
村上 勇君 山手 滿男君
大村 邦夫君 加賀田 進君
桜井 茂尚君 沢田 政治君
島口重次郎君 楯 兼次郎君
藤田 高敏君 森 義視君
麻生 良方君 伊藤卯四郎君
加藤 進君
出席国務大臣
内閣総理大臣 池田 勇人君
通商産業大臣 福田 一君
出席政府委員
内閣法制局長官 林 修三君
公正取引委員会
委員長 渡邊喜久造君
通商産業政務次
官 田中 榮一君
中小企業庁長官 中野 正一君
労働事務官
(職業安定局
長) 有馬 元治君
委員外の出席者
専 門 員 渡邊 一俊君
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本日の会議に付した案件
中小企業近代化資金助成法の一部を改正する法
律案(内閣提出第七二号)
中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案(
内閣提出第七三号)
中小企業指導法の一部を改正する法律案(内閣
提出第七四号)
中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案
(内閣提出第七五号)
中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫
法の一部を改正する法律案(内閣提出第八七
号)
商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案(
内閣提出第八八号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/0
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001・二階堂進
○二階堂委員長 これより会議を開きます。
まず、内閣提出の中小企業近代化資金助成法の一部を改正する法律案、中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案、中小企業指導法の一部を改正する法律案、中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案、中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案並びに商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案、以上六法案を議題とし、質疑の通告がありますので、これを順次許可いたします。藤田高敏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/1
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002・藤田高敏
○藤田(高)委員 私は、主として中小企業関係の問題に集約をして、以下数点質問をいたしたいと思います。
まずその第一は、すでに今国会始まって以来、各委員会においてもしばしば質問をされ、あるいはその方向づけ毛あらかた出てきたようにも感じるわけでありますが、いわゆる歩積み、両建ての問題についてであります。
質問の結論を先に申し上げますと、歩積み、両建ての妥当、不当性の限界は何によってきめるのかということでございます。私どもの立場は、特に中小企業の金融に対する歩積み、両建てはいけないという立場に立っておるわけでありますが、金融機関の元締めともいうべき井上全銀協の会長の意見、たとえば昨年の十月末に全国銀行の拘束預金がどれくらいあるかということで調査をいたしておりますが、それによりますと、一兆四千三百四十七億のうち九割までは妥当性のあるものであって、いわゆる妥当な貸し付け、担保性があるものであって、歩積み、両建てとして自粛しなければいけないものは、その一兆四千何百億のうち、パーセンテージにすればわずか四・一パーセント程度であるというようなことを言っているわけであります。また水田全銀協の専務理事も、問題は歩積み、両建てについては行き過ぎがいけないのであって、いわゆるその内容によるのだということをいろいろ新聞その他でも発表をいたしております。さらには手形割引につきましても、一般的な常識としては平均三%程度までの歩積みは、不渡りの危険性ということを考慮に入れた場合に、これは取引上の条件として十分妥当性があるんだ、こういうことをそれぞれ金融機関のいわば代表者とも称すべき人が主張をいたしておるわけでありまして、こういうことがこういった金融関係の商取引の中で許されるといたしますなれば、幾らこの国会論議を通じて歩積み、両建てについては、衆議院の予算委員会ではございませんけれども、刑事罰に近い罰則規定を設けて歩積み、両建てをなくするのだといっても、実質的な商取引の中ではこういう実態が持続されるのではないか、こういう懸念をするわけであります。したがって政府当局としては歩積み、両建ての妥当ないしは不当性の限界というものはどういう条件によって、いかなる基準によって設定をしようとしておるのか、お考えを聞かしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/2
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003・福田一
○福田(一)国務大臣 御質問の問題は主として大蔵省関係であると思いますが、通産省としましても政府関係機関、いわゆる中小企業金融公庫、商工中金、国民金融公庫等には関係がございますが、この三庫については、歩積み、両建ての問題は、これはわれわれとしては認めておりません。ただ市中銀行の問題になりますと、これは欧米各国でもある程度、いまあなたも仰せになったように、どの度合いがいいかということが問題になるのであって、これは全然いけない、禁止すべきものであるというものではないわけであります。したがいまして、われわれとしてどういうふうな感触を持って見ておるかといえば、願わくば、せいぜい多くても一〇%前後くらいまでには将来なったらいいんじゃないか、そういう感触を持っておりますが、しかしいま現実に市中銀行で行なわれておる歩積み、両建てを一挙にそこまで持っていけるか、これは商慣習とかいろいろな問題もあるでありましょうし、それが起こる事情もあれば、また金融のときの条件等もございましょうから、私は将来そういうところへはだんだん持っていってもらいたいという希望はいたしております。しかしこれは私の所管で申し上げるよりは、むしろ大蔵大臣の立場で公式にお答えをするのがいいんじゃないか、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/3
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004・藤田高敏
○藤田(高)委員 その限界につきましては、一応通産大臣の感触ないしは希望という見解を私は承ったという程度にいたしまして、現実の問題として、これだけ国会論議を通じましても歩積み、両建ての問題がやかましくいわれておる段階にもかかわらず、常識はずれの歩積み、両建てがなされておるという代表的な事例を提示いたしまして、それに対する政府当局の見解を承りたいと思います。
たしかこの二月の二十六日のある有力商業新聞であったと思いますが、たとえば関東地区における中小繊維問屋の融資条件の中で、融資されたうちの七割三分までが歩積み、両建てとして拘束され、それに対して一割五分の金利を課せられておる、こういうことになりますと、形式上はなるほど二割七分のものが融資されたということになりますけれども、実質的にこの種の金利を計算しておれば、これは何も融資してもらわなかったと同じような実態になっておるんじゃなかろうか、こういうひどい事例があるわけであります。
これを代表的な一つの例といたしまして、これまた昨年——所管が若干違うかもわかりませんが、大蔵省が昨年の十一月末に調べた一般預金中の債務者預金、いわゆる金を借りているものの預金の調査をいたしておる統計資料がございます。それによりますと、都市銀行では五二・六%、地方銀行では約五〇%、これがいわゆる債務者預金として預金されておるわけであります。これを全部が全部歩積み、両建てであるとは私は申しませんけれども、相互銀行、信用金庫の債務者預金を見ますと、そのうちの大半以上が歩積み、両建てと見て差しつかえないような内容を持っておるというふうに理解するわけであります。
時間がありませんので、この点は詳しい内容は申し上げませんけれども、都市銀行、地方銀行のそういった拘束預金ともいうべき債務者預金あるいは相互銀行、信用金庫等におけるこれまた債務者預金の実態等というものを、先ほどの例と関連して判断いたします場合に、歩積み、両建てのワクというものは相当大きいと見ております。ただいま通産大臣の言われた、長い将来に向かっての希望条件としては一割程度ということはある意味において理解することができるとしても、今日段階においては相当けたはずれの歩積み、両建てがなされておるのではないかと思うわけであります。したがって歩積み、両建てをなくするための具体策について、政府機関なり政府当局なり、特に公取としてはどういうふうな対策を講じようとしておるのか、また歩積み、両建ての実態調査ないしは実態把握については、いかにしてこの実態を正確に把握しようとしておるのか、そういう点についての見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/4
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005・渡邊喜久造
○渡邊政府委員 いまお示しになりました数字は、昨年のたしかいまごろだと思いますが、銀行局が検査部を通じまして、全国の銀行について幾つかの支店を選んでのサンプル調査をした数字だと思います。全国銀行の数字全部を調べることはそう簡単にいかぬと思っています。お示しになった数字はいわゆる債務者預金というものでございまして、片方で金を借りながら片方で預金している、これはどの会社にもあることでございまして、問題はその中でいわば歩積み、両建て、しかも不当な歩積み、両建てといいますか、預金者の意図に反して、かつ正当な理由がないのに拘束しているものというものがわれわれの一番目をつけている対象であり、同時に、一般の会社あるいは特に中小企業者が一番不満を持っている点だというふうに解しています。この実態につきましては、私のほうの手でサンプル的に調べることは不可能ではありませんが、しかし全体的に調べることはやはり相当大蔵省のほうの協力を得るということでないとできないと思っていますが、大蔵省としても御承知のように、この問題をなくすることにつきましては非常に熱心になっております。銀行協会のほうもいろいろな数字を持ってきております。その数字について私はまだ納得できないものですから、それについてもう少し納得いくようないろいろな説明を求めている最中でございます。全体としましてこの歩積み、両建てをなくすことにつきましては、いろいろな席でいろいろ大蔵大臣からも話があり、私も申し上げておりますが、第一義的には銀行がその気になり、大いに自粛してもらう。しかしそういうふうなことだけでかなり長年にわたるこの悪風が、そう簡単になおるということを期待するのもちょっと甘いんじゃないかというふうな感じがしております。したがいまして私のほうとしてはもう少し様子は見ますが、しかし特殊指定といったようなかっこうで、公正取引というものの基準をはっきりさせるということで、やはり銀行が自粛する上においてもおのずから一つのめどがつくわけでございますから、その準備を進めておりますが、かなりいろいろな形態があります。それから自発的でないといったようなことにつきましても、結局最後は契約になるのですから、よほどきめをこまかくいろいろな場合を考えていきませんと、抜け穴的なことも考えられますので、いまそういった面におきまして一応銀行の自粛案をもとにしながらわれわれのほうで検討し、さらに大蔵省のほうとも連絡をとって、とにかく至急そうしたものをつくりまして、必要があればいつでもこれが指定できるという準備態勢をまず整えるということが、私のほうとして考えておることであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/5
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006・藤田高敏
○藤田(高)委員 中小企業の金融問題に関連して、この歩積み、両建てが相当中小企業自体の経営を圧迫をして、いわゆる戦後最大といわれるような倒産事態が起こっておるわけです。そういう倒産状態というものが、ここで論議をしておる段階においてもなおかつどんどん進行しておる。少なくとも高原状態ないしは上向きのカーブで進行をしておるのではないかと判断をするわけでありますが、そういう条件の中で、いわゆる役所仕事としての検討をするとかいう段階は、やはり専門的ないろいろな条件を公取としてもあるいは大蔵省としても持っておるわけですから、そういうものを総合的にスピーディに判断をして結論を出して、いわば一企業たりとも倒産を防いでいく、こういうタイムリーな処置を講ずること、いわゆる生きた行政でなければいかぬと思うわけです。そういう立場からいいますなれば、いま少し政府当局が検討をしておる段階というものを、早く結論を出して、具体的な歩積み、両建てに対する抑制措置を講ずる、行政措置というものをすみやかに講じていく必要があるのではないかと思うわけですが、それに対する見解を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/6
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007・福田一
○福田(一)国務大臣 私は、お説のようにいま中小企業が非常に困っておるときでありますから、歩積み、両建てをなるべく早く解消するような方向で努力をするということについては、お説に賛成でありまして、またそう努力はいたしておるのであります。しかし、いままでの経緯から見て、そう簡単に——また数の関係等もございますから、全部が全部きれいさっぱりに水で洗って流してしまうというような簡単なものではないということも御理解を賜わっておるところと思うのであります。できるだけ御趣旨に沿って努力をいたしてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/7
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008・藤田高敏
○藤田(高)委員 ただ先ほど私が指摘しましたが、二、三日前の新聞に代表的な例として載っておったような、歩積み、両建てのワクとして七割から歩積み、両建てをさせられておるというようなところについては、いま少し立ち入り検査というのですか、そういう積極的な行政措置を講じて、そうしてその実態というものを世間に公表していく、そういう中から歩積み、両建てに対する金融機関の自粛というものをさらに強化していくという措置が必要だと思うのです。そういう点については、少なくともこういう悪徳金融機関ともいうべきものが具体的にわかっておれば、そういうものに対しては適切な措置を講じていくという積極的な努力が必要ではないか。その点に対する見解を承りたいのと、いま一つは、これだけ歩積み、両建ての問題がやかましく言われておる段階で、政府系の金融機関の代理業務をしておる金融機関が公然と歩積み、両建てをやっておるということが、これまた新聞で報道されておる。この内容については、私は公取ないしは政府機関のお調べになった事情を承りたいと思っております。私の知っておる範囲では、たとえば一千万だったら一千万の政府融資を行なうときに、その銀行の金を五百万融資をして、千五百万に対する貸し出し金利をとって、そうして五百万に対しては預金金利をとる、こういう形の中で利ざやをかせいでおるというような状態が新聞で報道をされておるわけであります。これはいやしくも政府系の金融機関の代理業務をやっておる金融機関が、いわばこのような悪徳金融をやるということについては、一般の市中銀行等と違いまして、政府はやはりその道義的な責任を明らかにする立場からも、また政治的な責任を明らかにする立場からも、この種の金融機関に対しては、いわば業務停止を命令するくらいな積極性があってもよろしいのではないか、それだけの意欲と積極性がなくして、この歩積み、両建てというものをなくしていくということは不可能ではないかと思うわけでありますが、それに対する政府の見解、公取の見解をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/8
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009・中野正一
○中野政府委員 いま御指摘の政府関係の金融機関の代理貸しにあたりまして両建てというようなことをやることにつきましては厳重にこれを戒めておりまして、特に、最近の情勢にかんがみましてこの監督を強化いたしまして、再々にわたって監査を実行しております。昨年の実績で申し上げますと、これに対して、そういう両建てをやっておるような疑いのあるものにつきましては、まず貸し付けワクの削減をやっております。さらに、それでもなかなか効果があがらないという場合は、いま御指摘のあったように、業務停止、貸し付け停止をやっておりまして、三十八年度におきましても貸しつけワクの削減を十件やっております。それから配分停止につきましては、三十七年度中に一件ございました。今後もそういうことの絶対にないように、厳重に監督を強化してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/9
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010・渡邊喜久造
○渡邊政府委員 初めのほうの、非常に顕著な例について、公取でというお話でございますが、これが具体的につかまればもちろんわれわれのほうとしては処置いたします。ただ、そういうものもあるのではないかと思いますけれども、具体的にあらわれてないというものについて、すぐわれわれのほうで、どこにそれがあるかという点で全国銀行の中をさがして歩くというのは、ちょっと事務的に、そう簡単にできることじゃない。ただ、その点につきましては、私、大蔵省のほうから聞いておりますところでは、大蔵省のほうで銀行検査などの際に、そういう事例があれば銀行に対してやかましく警告してやめさせておるという話は聞いております。それから、政府機関の問題につきましては、いま政府が直接監督が届きますからそういうことをやっておりますが、しかし、同じような問題があれば、われわれのほうとしても、問題として取り上げるということにちゅうちょするものじゃありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/10
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011・藤田高敏
○藤田(高)委員 ただいまの答弁では、そういった政府系の金融機関の代理貸し業務をやっておるところで、いわば悪質な歩積み、両建てをやっておるような機関に対しては貸し付けワクの削減をやった、これも確かに私は一つの措置だと思います。しかしながら、やはりこの種のいわゆる不当、悪質な両建て、歩積みと目される状態が発生しておる場合は、そういったなまぬるい措置ではなくて、こういったものに対してはやはり政府みずからが責任を持って処置をするといういわば一種の規律あるといいますか、商行為といえども、商行為の中に規律のある行政措置というものを講じることが政府施策に対する信頼度というものを高めていく、そのことによってやはり一般の市中銀行も自粛度というものが高まってくる、こういうふうに思うわけでありまして、そういう観点からいいますならば、やはり私は業務停止を行なうくらいな積極的な措置というものが伴うべきではないか、こういうふうに思うわけでありますが、その点についての見解を重ねてお尋ねをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/11
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012・中野正一
○中野政府委員 先ほども申し上げましたように、政府資金の代理貸しにあたって歩積み、両建て等のことをやるということは厳に戒めておりまして、貸し付けワクの削減あるいは場合によりましては貸し付けワクの配分の停止——厳密な意味の業務停止ということになると、これはどっちかというと大蔵省のほうの監督、一般の銀行の監督の問題になるかと思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/12
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013・藤田高敏
○藤田(高)委員 配分の完全停止ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/13
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014・中野正一
○中野政府委員 完全停止をやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/14
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015・藤田高敏
○藤田(高)委員 業務停止につきましては所管外であるようでございますので、これはひとつなお別の機会に大蔵当局の見解をお尋ねすることにいたします。
次に私は、実は通告をしておらなかったために、労働省の関係の安定局長が他の会議に出席するということでございますので、ちょっと順序を変えて中小企業関係の雇用問題について質問をいたしたいと思います。
これは多くを申し上げるまでもなく、大企業と中小企業との資本装備率あるいは生産性を初めとする企業間の格差、こういうものによって、今日大企業と中小企業の格差というものはますます増大をし、二軍構造は深まる一方だと思うわけであります。特に高度成長による技術革新によって、若年労働者に対する需要というものが非常に増大をされてきた。金融面あるいは下請条件、あらゆる面において中小企業にしわ寄せをされておりますが、労働力の面においても同じような形で大企業に若年労働者というものが吸い上げられていって、中小企業は、ことしの求人率等から見ますと、中卒において三・九倍、高卒において三・四倍程度の求人率を示しておるわけであります。これは中小企業の近代化あるいは中小企業の育成強化という立場から見ましても、労働力の欠除ということは非常に大きな問題だと思うわけでありますが、この中小企業の求人に対応する対策について、労働省の見解をお聞かせ願いたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/15
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016・有馬元治
○有馬政府委員 中小企業の人手不足は、先生が御指摘になりましたように非常に深刻でございますので、私どもとしましても職安機関をあげて中小企業の労務確保対策に努力をしておるわけでございますが、何せ若年労働力が非常に不足してまいっておりますので、若年の、特に学校卒業者のみをもって求人を充足するということは不可能でございますので、どうしても中高年の離職者をできるだけ中小企業も雇っていただく、こういった考え方で雇用主も経営を考えていくというふうなことを経営者に対しては指導をしてまいっております。また大企業との格差が非常にありますために募集が困難だという点も御指摘のとおりでございますが、最近は幸いにいたしまして初任給等においては非常に格差が縮まっております。しかしその他の福利施設、特に住宅の問題につきましては、まだまだ大企業と比べまして条件が悪うございますので、私どもとしましては住宅を中心に福利施設の条件が大企業に近づくようにいろいろと指導をしてまいっておりますが、住宅につきましては、雇用促進の融資をいたしまして、ことしは四十億程度の貸し付け総額を予定しておりますが、そのうちの八三%程度を中小企業に向けております。来年度は六十億程度の雇用促進融資を予定しておりますが、これもやはり八〇%前後は中小企業に融資されるものと考えております。まあそういった条件をよくすることによって中小企業の労務の確保をしてまいりたい、こういう考えで積極的に指導しておる状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/16
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017・藤田高敏
○藤田(高)委員 私もいま答弁のありました点を特に強調したいと思っておったわけでありますが、なるほど答弁に断りましたように、そういう方向に努力目標がいささかなりとも向いておるということにつきましては理解をするものでありますけれども、やはり急テンポで高度成長というものがどんどん発展していく経済条件の中で、こういった微温的な措置をもってしては私は非常に不十分だと思うわけです。したがって、これは労働省だけの問題でないと思いますが、いわゆる中小企業向けの共同宿舎に対する助成、あるいは一般商店街と中小企業を含めた共同給食センターの設置、あるいは設備近代化促進のための助成策ないしは大幅金融、こういう具体的な条件整備を政府において積極的に進めない限り、中小企業のこの求人難を排除することができないと思うわけですが、それに対する積極的な見解を承りたい。と同時に、いま一つ非常に大事なことは、やはり初任給の面においては、なるほど大企業とその格差が縮まりつつあるといいますけれども、まだまだ初任給においても非常な格差があるわけです。これは名目的な初任給だけではなくて、やはり賃金の比較ということになれば、実質賃金の比較においてどういった開きがあるかという実質論で検討しなければならぬと思うわけでありまして、そういう立場からいきますなれば、やはり私は今日の、俗ににせ最賃といわれておる業者間協定による最賃制というものをなくして、やはり全国一律の最賃制というものを、特に中小企業対策としても、中小企業向けの求人難をなくする立場からも、つくる必要があるわけですが、これに対する労働省の見解をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/17
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018・有馬元治
○有馬政府委員 最賃の所管は私でございませんので、別の機会に基準局長かだれかにお尋ねいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/18
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019・藤田高敏
○藤田(高)委員 私も初めて出てきたものですから、だれにかれにという相手につきましては十分わからないところがあるわけですが、率直に言って、あの種の答弁は、ある意味においては非常に責任を感じた御答弁かもわかりませんが、一つには、いわゆる役所セクショナリズムといいますか、非常に責任のがれの答弁だと思うのです。私どもは、決して政府機関を責めるということだけでなく、こういう論議を通じて、生きた政治、生きた行政をやりたいということが念願でありますから、そういう点についてはいま少し、答弁ができなければ本日の午後なりとも、あるいはすぐ基準局長を呼ぶとか、そういう積極的な答弁があってこそ、初めて私は国会論議が生きるのではないかと思うのですが、これは技術的な問題になりましたので、ぜひそういう方向で——これはひとり労働省に限らず、そういう努力を委員会審議を通じてやってもらいたいということを強く要望しておきます。あわせまして、いま私が質問したことに対する通産大臣の——政府閣僚ですから、単に、おれたちの所管じゃないということじゃなしに、池田内閣としての責任ある見解というものがあると思いますので、大臣の所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/19
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020・福田一
○福田(一)国務大臣 最低賃金制を全国統一的にやってはどうかという御質問と承ったのでありますが、これは政府答弁ということになりますと、これまた労働大臣ともよく話し合った上でしなければなりませんが、私の感触を申し上げたいと思います。
私は、全国一律にするということはむずかしかろうと思います。あなたの御意見だと、そうしたほうがいいようなお話ですが、やはり事業事業は、それぞれ生産性の問題とか、その他において度合いが違っております。資本の関係においても違っておるし、すべてのそういう条件が違っておる。その場合に、最低賃金制を一律にきめることは、事業によっては影響を受ける度合いが非常にきつくなると思うので、そういうことも一つ問題があろうかと思っております。ただしかし、いま突然に御質問がありましたので、私の感触を申し上げたわけでありますが、後刻また労働大臣あるいはまた所管の局長等から、これについて政府としての公式の見解を申し述べさせるようにいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/20
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021・藤田高敏
○藤田(高)委員 私の質問のまずさかもしれませんが、大臣の御答弁の中には二回にわたって感触ということばが出たわけでありますが、この感触ということは、どの程度の政治的な責任を伴う見解として承ったらよろしいのか、これをひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。そうしないと、どうも次の質問ができないように思いますので。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/21
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022・福田一
○福田(一)国務大臣 感触と申し上げましたのは、私がその問題についてまだ十分なる基礎的な検討をいたしておらない。したがって、私として公式な責任あるお答えはいま差し控えさせていただきたい。しかしこの場合におけるあなたの御質問に対する私の気持ちを申し上げてみたい、こういう意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/22
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023・藤田高敏
○藤田(高)委員 個々の問題についてはそういった意味の御答弁もあろうかと思うわけですが、最賃制に関する問題は、すでに国会においても幾たびか法案としても論議をされた問題でもありますし、そうして、これはILOの八十七号条約ではございませんけれども、最賃制の問題は、近代国家、民主国家においては少なくとも全国一律最賃制というものがしかれておるわけですから、そういう点からいけば、保守党内閣といえども、この最賃制に対する考えは、個々の大臣の感触程度の見解ではなくて、統一した見解というものがなければいかぬと私は思う。そういう点では、ただいまの答弁は何かその場のがれの答弁のように思えてしかたがないわけです。いわんや池田総理の施政方針以来政府が強調をいたしておりますことは、貿易の自由化、開放経済に向かっていく企業の近代化ということを非常に強調してきております。こういう中小企業の近代化を促進していくという立場からいきますなれば、全国一律の最賃制がしけないというようなことで——最賃制をしいたことによってその企業の存立条件があぶなくなる、存立を維持することができないということでは、これは中小企業の近代化ということはおぼつかないじゃないかと思うわけです。そういう観点から、雇用問題に関連をして、やはり中小企業の賃金を中心とする労働条件が劣悪なために弱年労働力が不足をしておるわけですから、そういう立場から見て、この最賃制に対する見解をいま一度お伺いをいたしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/23
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024・福田一
○福田(一)国務大臣 御質問の点でございますが、あなたも御承知のように、中小企業と大企業との生産性についてはまだいろいろの格差がある。それを取り返そうというのでいま努力を続行しておる段階で、終局の目的において、あなたのおっしゃるように、いわゆる全国統一の最賃制をつくるという方向に向かって順次進めていくということはけっこうでありますが、いま直ちにこれをやるということは困難であろう、こういうことを私は申し上げておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/24
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025・藤田高敏
○藤田(高)委員 なるほど一気にやることのむずかしさは、私も理解ができるわけです。しかし、私はやり方の問題として、これは仮定でありますが、全国一律の最賃制をしいたことによってどれだけの中小企業が、経営上どういう点に困難が生ずるかという問題点をクローズアップさして、そうしてその問題点を克服するために金融の面からはどうすべきか、技術の面からはどうすべきか、あるいは設備の面からはどうすべきかという措置を講じていくこと、そういう総合的な経済政策、中小企業育成ないしは近代化の諸施策を樹立することが、私はほんとうの意味における中小企業の育成策であり近代化の道でないかと思うわけです。それに対する大臣のお考えを聞かしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/25
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026・福田一
○福田(一)国務大臣 賃金の面からすべての問題を見ていくということは、やはり事業経営という意味からいっては困難かと思います。何といっても事業の経営には資本あるいは経営、技術、労務、いろいろな要素があることはあなたも御存じと思います。それを総合的に見て解決していく。そうして生産性を向上して大企業との格差をなくするというのがいま目的でございます。そういう場合に、賃金の面から見てすべてのものを律していく、その方面から全部を考えていくということも悪いこととは思いませんが、しかし、今度は経営の面から見てものを考えていくということも、われわれの考えとしましては大事だと思う。そういう観点から見ますと、あなたのおっしゃるように、賃金の面から見てこれをすべて律していくということは非常にむずかしかろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/26
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027・藤田高敏
○藤田(高)委員 私の質問は、経営面を無視するという立場はとってないわけです。これはひとつお間違えないように願いたいと思うのです。やはり中小企業が近代的な中小企業として発展をしていくためには、全国一律の最賃制をしいても、その最低賃金をこなす程度の経営ができるようにするためには、それがどうあるべきかということを政府としては考えるべきじゃないか、こう言っておるわけです。したがって、なるほど大臣は、経営というものの観点は、主として経理とか金融とかそういった面から言っておるかと思いますが、やはり経営の土台は人じゃないですか。人なくして——資本と労働力が結合して経営がなされるわけですが、いま中小企業で多くの問題がある中で、その肝心な労働力が、先ほど指摘したように、求人率が三倍も四倍もになっておる。この人を得るためにはやはり最賃制がしかれるぐらいな条件が整備しないと、中小企業自身の近代化あるいは中小企業本来の育成発展というものがなされないのじゃないか、こう言っておるわけですから、その点に対する見解をなお念のためにお尋ねしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/27
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028・福田一
○福田(一)国務大臣 事業は人だという意味では、おっしゃるとおりだと思います。事業から人を抜いて事業はございません。しかし人のうちには経営する者もあれば、労務を担当される方もおありになる、こういうことであります。また事業というものは、その土地、いわゆる環境がかなりその事業に影響しておる面もございます。それから気候が非常に影響しておるものもございます。そういうものが一律のレベルに立つように自然の条件を克服し、あるいはそういう環境を克服するということは理想でございます。そうありたいものであります。しかしそれまでいかないうちに一本の賃金でこれを縛っていくという形がいいかどうかということになりますと、これは問題があろう、こういう考えを私は申し上げておる。あなたは非常にまじめな考えで、よく御勉強になって御質問されておりますので、私も実は非常に敬服をしておりますが、しかしこれはだんだん突き詰めていきますと、あなたが立っておるスタンド・ポイントといいますか、いわゆる統制的なものの考え方と、われわれがいま立っておりまする自由主義的な考え方との問題に帰着してくるのではないかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/28
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029・藤田高敏
○藤田(高)委員 この点は、私は非常に釈然としないまま、質問を、持ち時間の関係でこの程度で終わりたいと思いますが、率直に言って、いまの政府の経済政策なりやり方というものは、これは失礼な言い分ですけれども、非常にこま切れ的な施策におちいっておるのじゃないか。やはり雇用と経営、労働省と通産、通産と大蔵という総合的な立場から、中小企業の育成なり、日本の大企業と中小企業の格差をなくしていく問題なり、そういう点についての総合的な、まじめな検討というものを私は強く要望しておきたいと思います。これは後日あらためて質問することにして、私は今の大臣答弁に関連する質問は留保いたしておきたいと思います。
次に、中小企業向けの金融問題についてお尋ねをしたいと思うわけですが、本会議あるいは委員会等でも、しばしばこの中小企業対策ないしは金融問題については、三十九年度は革新的とかあるいは革命的とかいうことばを使ってまで政府は力を入れておるのだ、こういうふうに承っておるわけですが、その内容は、新人議員が新人議員らしく調べてみますと、いわゆる一般予算においては、前年度対比で一四%のアップに対して三九%のアップ率を示しておる。財政投融資の面では、前年度対比で二一%のアップに対して二五%のアップを示しておる。まだ内容はありますけれども、そういう点を中心として、特に政府金融機関に対する財政投融資として千六百十七億の投資が、前年度対比で二七%のアップ率を示しておるとか、あるいは部分的なことでありますが、商工中金に対しては前例がないところを三十億の出資計画をしておるとか、こういう一、二の例を出しますなれば、この種のことがなされておるために革新的であるとか革命的であるとかいうことばを使われておるといたしますなれば、はなはだもって国会というところは——国会というところよりもむしろ政府というところは、ことばを遊戯的にもてあそぶことを非常に得意としておるというふうに私は感ずるわけであります。これは非常に失礼な言い分かもわかりませんけれども、この内容をしさいに検討してみれば、中小企業向けの予算というものが一般予算の中に占める比率は、三十八年度はわずか〇・四%、三十九年度はわずか〇・五%にしかすぎないわけです。財政投融資の面においても、前年度が一一・八%で、三十九年度が一二・八%にしかすぎないわけであります。若干長くなりますけれども、私はいまここに幾つかの資料を持っておりますが、この金融機関の中小企業向けの貸し出し残高というものを、ここ十年にわたってずっと調査したものがございます。それによると、若干の違いはありますけれども、たとえば三十年、三十一年当時は、全金融機関中の中小企業向けに対する貸し出し残高というものは、かれこれ五〇%を占めておった。それが一昨年の段階では四一%に減っております。同じような立場から全国銀行の金融機関の状態を見ますると、三十、三十一年度はピーク時としてかれこれ三七%程度の率を示しておったものが、三十六年には一三%に減り、おととしは三六%程度にこれまた下降をしておるわけであります。さらにこの金融機関の中小向けの貸し出し残高というものを二十五年から三十七年まで——これは先ほどちょっと落としましたが、先ほどのは輸出入銀行のワクが入っておるわけですが、それを除いた都市銀行、地方銀行、長期信用銀行、信託銀行、こういった四つの銀行を中心とした比率から見ましても、三十年、三十一年が三七%程度の段階から、三十七年の十二月段階では、驚くなかれ三割を割って二八%程度に落ちておるわけであります。さらにそういった関係の資料をいま幾つか提示いたしますなれば、全国銀行信託勘定の関係では、これまた三十一年当時が一三%程度あったものが、中小企業向けに対して、驚くなかれ三十七年はその半分の六%程度に落ちておるわけであります。さらに都市銀行で見ますると、同じく三十一年が三二%に対して、三十七年末が二三%、地方銀行では六一%のものが五〇%というふうにずっと落ちておるわけであります。ひとり相互銀行と信用金庫の関係が若干伸びを示しておるだけでありまして、その他はもうことごとくといっていいくらい中小企業向けの金融ワクが全体的に減少をいたしておるわけでありますが、こういうことでは、単に革新的とか革命的とかいうことはことばの遊戯に終わるわけであって、政府が具体的に市中銀行ないしはそういった一般金融機関をも含めて、中小企業向けの金融に対して積極的に努力しておるということは言えないと思うわけであります。私はそれに対して、政府系の金融機関に対する融資ワクを大幅に増額する必要があると思うわけでありますが、これに対する政府の見解をお聞かせ願いたい。これが第一点。第二点は政府の一般市中銀行に対する、金融機関に対する、このような傾向を排除して中小企業にもっと重点を置いた金融措置を講ずるための行政的な指導方針をお聞かせ願いたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/29
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030・田中榮一
○田中(榮)政府委員 ただいま非常に詳しい資料によって御質問がございまして、われわれもたいへん参考になると存じております。まことにありがたくお礼を申し上げます。
そこで三十九年度の中小企業関係の予算につきましては、革新的であるとか革命的であるとかいろいろ前からいわれまして、それに対してどういう予算が出るかということで、各方面で非常に御期待を持っていただいておったのでありますが、ただ現実の問題といたしましては、やはり国家財政という大きな制約のもとにおいて中小企業関係の予算が編成をされるのでありますから、予算面におきましては、私はなるほど三十八年度の予算に比較いたしまして非常に多額の増額になっておるというところはないと思います。しかしながら予算の数字だけでなくして、いろいろ政府といたしましては、さきの通常国会におきまして皆さんの御協賛をいただきました中小企業基本法の精神に沿いまして、今後中小企業政策を一つ一つ具体的に具現をしていきたいという意欲に燃えているわけでございます。ただ数字だけで申し上げまするとどうかと思うのでございまするが、たとえば中金に対する出資につきましても、過去五、六年間やはり何とかして、中金に対する出資を増額いたしたいという努力をいたしておったのでございまするが、それができなかったのであります。幸いに三十九年度の予算におきまして少なくとも三十億の政府出資ができたということは、ある程度政府としても努力をした結果であると考えるのでございます。それからまた中小企業金融公庫に対しまして百億の中小企業公庫債を発行できる、そしてそれによってまた融資ワクを増大させるというのも、一つの努力の結果であろうと考えております。そのほか中金の利子を三厘方引き下げ、あるいは短期のものにつきましては日歩五毛ほど引き下げた。その引き下げ率についてはまことに少なかったかと存じまするが、しかしこれもやはり数年間努力してできなかったものがようやく三十九年度において実現をいたしたような次第でございます。そのほか金融面につきましては、政府三金融機関につきまして、前年度よりも二一%あるいはそれ以上に増額した融資ワクを持たせたものもございまするし、数字的に申し上げますると、あまり革命的じゃないじゃないかというおしかりを受けるかもしれませんけれども、政府としてはせいぜい努力をしたはずでございます。
そのほか行政指導の面におきましてもいろいろなことをやったのでございます。たとえば市中銀行に対する中小企業向けの融資につきまして一定のワクを設けたらどうだというようなこともあったのでございますが、今回異例の措置といたしまして、大蔵省の銀行局長から一般の市中銀行に対しまして、できるだけ中小企業の金融に対して最善の努力をしてほしいという通達も出されたのでございまして、こうしたことを一つ一つ申し上げますとたくさんございますが、今後政府といたしましては、単に予算面の数字にとらわれずに、いろいろの面におきまして、中小企業の振興のためには中小企業基本法の精神に沿いまして努力していきたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/30
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031・藤田高敏
○藤田(高)委員 この問題につきましても掘り下げて質問したいわけでありますが、当初委員長からのああいった要望もございますし、審議の関係もありますので、これに関する問題は後日続いて質問させてもらうということにして、最後に下請代金の支払い遅延問題に関連をして、質問点を三つばかり羅列をしますから、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
注釈は省きますが、下請代金を、遅延防止法の精神に沿って、いわゆる六十日以内に現金として支払い、手形決済が行なわれるようにしてはどうかという論議は、これまた今国会で非常にやかましく論議されてきたところです。政府当局もその後ずっと国会審議を通じまして、六十日以内というのを九十日ないしは百二十日くらいにしてはどうかというような努力方向が出ておるようでありますが、先ほど私が指摘しましたように、こういう論議をしておる過程においても、中小企業の倒産状態は既成事実として進行しておるわけです。したがって、この種の措置は、やはり早く政府の方針を決定して、タイムリーな行政的な措置を講じていかなければ、これは生きた行政にならないわけです。そういう立場からいって、政府としては、私の新聞で見た限りにおきますと、今週中に六十日にするかどうかについては結論を出したいというふうに閣議においても検討されておるやに理解をしておるわけでありますが、これは少なくとも法の精神からいって、六十日以内ということに限定をする必要があると思うわけです。いわゆる六十日以内に手形の決済ができるように義務づけをすることが必要だと思うわけでありますが、それに対する決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
第二は、これは先ほどの歩積み、両建てではございませんけれども、下請代金の支払い期間を半ば合法的に延長するための手段として、下請企業が親企業に納める製品の検収期間を設けて、その検収期間を必要以上に長くして支払い代金を遅延さすような、これまた悪質な親企業がおるわけであります。したがって、六十日の中にこの検収期間を入れていくということになれば、検収期間を悪用する親企業のそういった悪徳行為を防止することができると思うわけですが、それに対する見解をお聞かせ願いたい。
第三点は、なるほど歩積み、両建ての問題あるいは金融一般の問題も大切でありますし、先ほど指摘しました下請代金を少なくとも六十日以内に支払うということも大事なことでありますが、いま一つ中小企業にとって非常に大きな問題は、この下請するときの価格が非常に格安で、不当な価格で下請をやらされるというところに一つの問題点があると思うのです。したがってこの点もこの際、法の趣旨を徹底さすという方向に沿うためにも、またこの下請代金の法四条の五項の精神に沿うためにも、この親企業が下請に仕事を発注する場合の発注単価は、親企業でやっておる時間当たりの単価の九割を割ってはいかぬとか、中小企業が大企業でやっておる製品単価に十分見合って、不当な価格にならないような発注条件というものを、やはり国の方針として、国の法律の精神として設定をしていく、そういうことで、いわゆる弱き者の中小企業に対して、国として保護をしていくという条件をこの法律の中に設定をしていくことが必要ではないかと思うわけですが、以上三点に対する見解をお聞かせ願いたい。
それと最後にもう一点は、中小企業近代化促進法の中に印刷業が入っておりません。これは時間がありませんので内容は申し上げませんけれども、昨年はたしか二十業種がこの法律の対象になっておった。いま数多くのものが、業種指定としてワクに入れてもらいたいという陳情もたくさんきておるようですが、私は、印刷業というのは、たいへんオーバーな言い方かもわかりませんけれども、実質的には自由な言論を紙の上に印刷をするという、実に重要な仕事をしておる業種ですから、これは近代化促進法のワクには当然入れていくということが大切ではないかと思うのですが、それに対する見解をお聞かせ願いたいと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/31
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032・中野正一
○中野政府委員 最初の点からお答え申し上げますが、第一に検収期間ですが、下請代金支払遅延等防止法二条の二に、「下請事業者の給付を受領した日から起算して、六十日の期間内」で支払い期日を定め、その定めた支払い期日の間に支払いをしなければならぬというのが法律の規定でございまして、その六十日を動かすとか動かさぬということで論議が行なわれているわけではございません。
それから検収は、当然受け取った日からですから、この六十日の中に入るわけでございます。これは解釈上非常にはっきりいたしております。
それから六十日以内に手形で払ってもいいんだ、その手形は、手形で払いさえすれば何日長い手形でもいいんだというようなことを、一部の事業者が誤解をしておるんじゃないかということがございましたので、われわれのほうと公正取引委員会と協議をいたしまして、実は本日付をもちまして関係の団体、それからおもな親事業者に対して解釈通牒を発することになっております。実は昨日は経団連に私のほうの担当の部長が参りまして、この下請法の趣旨、それから今度政府が運用を強化する趣旨というものを十分徹底するように説明をいたしまして、いろいろ疑問点も出たようでありますが、最終的には政府のそういう方針に対して親事業の側から十分協力をしたいということになっております。その解釈をちょっと申し上げますと、これは通達が出ますので、また通達をお配りしたいと思いますが、下請代金の支払いとして手形を交付する場合、この手形を受け取った下請事業者が、物品購入等の給付を行なった日から起算して六十日以内に通常の金融機関で割引等によって現金化できるものでなければ支払いと認めないということでございます。この場合の通常の金融機関というのは、一般の銀行、信用金庫、信用組合、商工組合中央金庫等の金融機関をいって、いわゆる町の貸し金業者というのは含んでおらない、これは当然のことであります。したがいまして、親事業者が手形を交付する場合には、下請事業者がこれを金融機関に持っていって割引能力の有無を十分考慮し、その能力がないような場合には、親事業者がその銀行に対して保証を行なうというような方法で割引能力を付するというようなこともやるべきである、ここまで相当厳重にやっておりますので、この通達が出れば、いままで法二条それから四条の解釈について少しルーズに考えておられた親事業者も、この点ははっきりするのではないかというふうに考えております。
それから第三点につきましては、四条の五項の問題でありますが、これは法律でいっておるのは、ほかのいろいろな下請事業者に出しておる単価より著しく低いものじゃいかぬ、こういうことでありまして、親事業者がそれをやった場合に、それの何掛けというような考え方で法律ができておらないと思います。そこまでやろうということになれば、法改正になるかと思いますが、われわれのほうはまだそこまで研究しておりません。
それからもう一つ、近代化促進法に印刷業が指定されてないじゃないかというお話でございますが、この法律が昨年施行されまして、御指摘のように二十業種指定をしたわけでありますが、来年度の分といたしまして、いま関係省、関係の局と相談をして審議中であります。できるだけ多くの業種を取り上げたいというふうに考えておりますが、御承知のように、促進法では相当指定にあたっての制限というか、基準がございまして、当該業種に属する中小企業の生産性の向上をはかることが産業構造の高度化または産業の国際競争力の強化を促進し、国民経済の健全な発展に資するため特に必要であると認めるもの、そのうちから政令でもって指定するということになっておりますので、印刷業がこの中に解釈上入るかどうか、それから実際は政策をいろいろやっていきますので、指定の減税効果等もありまして、そういう政策的なワクといいますか、毎年の指定をするワクというものも実際上はあるわけでありまして、そういう点をいろいろ考慮いたしまして、十分いま御指摘の点については研究してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/32
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033・藤田高敏
○藤田(高)委員 下請代金支払い条件につきまして、そういった努力方向が出ておりますことについては、一応了とすることができるわけですが、四条の五項に関連する法律の趣旨は私も十分理解しておるわけです。しかし、いま私が指摘したように、中小企業の真の育成を考えるという積極的な立場からいけば、やはりせっかく下請代金遅延防止法というものができておるわけですが、この法律にさらに積極的な意味を持たしていくという立場からいけば、この問題は類似行為の五項よりも、大企業と中小企業との発注条件ですね、ここにやはり一つの大きな問題点があるわけですから、この隘路を克服していくという条件をつくらないと、これがやはり——一般的にいままでざる法と言われてきた。しかし、それ以上に大きなざるがあるわけですから、この点をやはり私はいまの御答弁のように、研究しておらないということだけで逃げられるのではなくて、やはりそういう真に中小企業の声として出ておるものをこういう法律の中に入れていくとか、あるいは行政指導の中でそういうものができるものは克服していくとか、あるいはこの中に入れることがむずかしいのであれば別途の法案をつくるとか、そういう積極性がほしいと思うわけでありまして、その点に対する御見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/33
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034・中野正一
○中野政府委員 法の施行にあたりましては十分厳正にこれをやっていくつもりでございまして、したがいましてこの法の趣旨が十分生かされるように、実施面において実行してまいりたい。ただ、私が申し上げましたのは、法改正についていますぐどうということは考えていない、こういうことを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/34
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035・二階堂進
○二階堂委員長 午後は正一時より再開することとし、暫時休憩いたします。
正午休憩
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午後零時五十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/35
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036・二階堂進
○二階堂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
中小企業関係六法案についての質疑を続行いたします。
内閣総理大臣に対する質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。森義視君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/36
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037・森義視
○森(義)委員 時間の関係もございますので、数ある中小企業問題の中で、特に私は雇用問題に限定して二、三総理にお尋ねをしたいと思います。
その第一は、今日の中小企業における深刻な若年労働者の雇用の問題について、その原因がどこにあると総理はお考えか、お尋ねしたいと思うわけです。昨年の三月新中を卒業いたしました卒業生の規模別の充足率を見てみますと、五百人以上の大企業におきましては五七・七%、ところが百名以下の中小企業におきましては二六%、すなわち、十人の求人に対して二・六人しか確保できない、こういう状態にあるわけです。しかも、大企業が雇います若年労働者というのはより抜きの労働者です。それのよりかすが、極端なことばで言えばかたわでない程度の者が中小企業に就職していく。いわゆる量的な不足だけじゃなくして、非常な質的な低下を来たしているわけです。この原因について、総理はどういうところにその原因があるとお考えかということをお尋ねしたいわけです。
先に私の考え方を申し上げますと、これは総理から反駁されるかもわかりませんが、その最大の原因は、あなたの無計画な高度経済成長政策によって大企業が飛躍的に発展拡大をし、そうして新規労働力を、若干の労働条件の有利性と福利施設や厚生施設の有利性を利用して吸収した。そのために、そのしわ寄せを受けて、中小企業にはほとんど人が集まらないで困っている、こういうことではなかろうかと私は思うわけです。
質問の第二は、このような若年労働力の急迫が中小企業の発展にとってどのような影響を与えているとお考えなのか。今日、中小企業では、このような若年労働力の人手不足を克服するために、まず第一に福利厚生施設を充実するということに乏しい資金をさいております。さらに第二には、求人開拓を民度の低い遠隔地に求めている。このためにばく大な経費を使っている。私の地方では、一人の新中卒業生を獲得するための経費が五万円かかります。そして連れて帰って、それを収容するいわゆる寮設備なり、そういうものを建てなければならない。これでも、なおかつ先ほどのように十人を要請して二・六人しか確保できない、こういう状態ですので、やむを得ず中高年労働者に新しい求人を開拓していく、こういう形になっているわけです。実はけさほどの質問の中で有馬職業安定局長は、若年労働者の絶対量が足らないので、職業安定局としては中高年労働者の就職に力を入れている、こういうふうな御回答があったわけですが、今日、中高年労働者の就職状況を見てみますと、大企業に対する就職率、これは一昨年の一月から十二月までの状態ですが、五百人以上の大企業に対しては中高年の労働者は一年間で一一・三%就職している。それに対して百人未満の中小企業では二五%、このように中高年労働者の中小企業に対する就職率は非常に高いわけです。総理も御承知のように、石炭離職者の就職率を見てみましても、いわゆる百名以下の中小企業に非常に多く就職しているわけですが、このような中高年労働者の賃金を調べてみますと、大体中小企業においても大企業においても、中高年労働者の初任給というのはほぼ同額でございます。この統計が出ておりますが、男子で大体三五歳で二万二、三千円である。そうなりますと、若年労働者を雇えないために、中高年労働者を高い賃金を払って中小企業は雇わなければならない、こういう状態になるわけです。こういうことでは、若年労働者の非常に質の悪い者をもらい、高い賃金を払って中高年労働者を収容しなくてはならない、こういう状態の中ではたして中小企業というのは成り立っていくのかどうか、こういうことを非常に心配するわけです。
さらに、若年労働者の中で非常に能力のある子供は、まず一、二年おればそこですぐもう技術を覚えて、大企業のほうに身売りをしていく。いわゆる中小企業における労働力の定着性というのはきわめて低いわけでございます。特に技術を必要とする中小企業におきましては、あたかも大企業の技術工の養成所のような観を呈しておるとさえいわれておるわけです。こうなりますと、文字どおり中小企業の近代化だとか、あるいは中小企業の振興だとか、こういうふうにお約束をされましても、事実問題としてはたいへん困難な状態にある、こういうふうに思うわけです。
そこで、質問の第三は、このような中小企業の雇用難をどういうふうにすれば打開できると総理はお考えなのか、打開の方法についての明快なお考えをお聞かせ願いたいと思うわけです。午前中の職業安定局長の御答弁では、中小企業では圧倒的に福利厚生施設が劣っている。したがって、福利厚生施設に特別な政府資金を出すという形で、大企業とのそういう面における格差を縮める努力をしている、こういう御答弁がございました。そのことも一つの方法だと思うのです。しかし、福利厚生施設といえども、今日企業自体が負担をすることに困っているような零細企業には、これは全く手の施しようがないわけでございます。そういう点について、総理がさらにもっとはっきりとした、この求人難を打開する方途をお考えならばお聞かせ願いたい、このように思うわけです。
以上三点についてお答えを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/37
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038・池田勇人
○池田国務大臣 この問題は重要な問題でございまして、あなたが三点にわたって御質問になった問題が対策の中心でございます。御質問のうちに、私は、大体もうあなた自身も対策が見つかっているのじゃないかという気がするのでございます。私は根本的の問題について申し上げますと、とにかく経済の成長進歩の過程におきましては、こういうことが起こるのでございます。起こるのは当然なことでございます。四、五年前には農村の次男坊、三男坊あるいは中小企業の次男坊、三男坊をどうするかということが一番問題でございました。そこで私は、所得倍増計画というものを立てて、雇用増大の機会をつくろうとしたのであります。これがいわゆる人の値打ちを上げ、ほんとうに働く場所を見つけるためには、あの明治時代からの人口過剰を解決するためには、そうして働く人に働く職場を与えることは所得倍増以外にないと、こう私は考えて倍増政策をやりました。次男坊、三男坊の行く道をあれしました。ことに、戦後の昭和二十一年、二十二年、二十三年のときには、日ごろよりもほとんど倍近くの子供さんができました。そうして、それがいわゆる新規の労働人口に入ってくるのが昭和三十六、七、八年でございます。したがいまして、所得倍増は七%程度のあれで十年間に倍増するのだが、この新規に出てこられる過剰の百七、八十万の新規労働者をどうするかということが私の頭にありますので、七・二%でいいのだが、九%ぐらいでいって、次男坊、三男坊のみならず、急激にふえた労働人口のはけ場を見つけようというのが、倍増計画の当初の三年間九%のあれであるのであります。私は九%程度ならばこれでいいと思ったのですが、自由経済のもと、思うとおりにはまいりません。非常な発展、片一方で私の予想以上の、名目では倍に相当する発展をいたしました。そうしてまたもう一つの違いは、所得倍増と同時に、教育に対する考え方が非常に進んでまいりました。いまではほとんど先進国の倍近くの割合で高等学校へ行かれる。ある学校につきましては、中学を出たならば一〇〇%高等学校に行くんだ、こういうことになってまいりますと、私の見込みがだいぶん変わってまいったのであります。それがいまの若年労働者の引っぱりだこということばで申しますか、非常に労働の個所が急激にふえてきた。だから最低賃金、四、五年前に皆さん方が言っておられました十八才八千円というのが、もういまでは十四、五才で一万円になってしまった。これは経済過程におけるうれしいことであると同時に、心配な苦しいことであるのであります。これは日本ばかりではございません。最近とみに経済の発展したあのイタリア、四、五十万人の労働者がドイツあるいはベルギーのほうに行っていたものが急に帰ってきた。イタリアの労働力不足のために、四、五十万人の人が帰ったのみならず、イタリアでも労働力不足、後進国のポルトガル、スペインがイタリア人にかわって西ドイツその他へ行こうといっておる状態です。だからこれは経済の発展に伴ういいことでもあるし、非常に苦しいことでもある。これを乗り越えなければならないのがいまの状態でございます。だからといって、次男坊、三男坊の就職に困るような事態に、あと向きではいけません、これをどうやって解消するかということは、これは二の問題、三の問題と一緒に私はお答えいたしますが、やはり人の、労働力の効果をあげる、生産性の向上でございます。それがいわゆる設備の近代化でございます。そしてまたもう一つは、その少ない人ができるだけ能率をあげる、近代化と同時に、少ない人をまんべんなく流動性を持たせて、そうして効率をあげることでございます。全国的に流動化をいたしまして、これをあげることであります。それは若い人もいまの中高年齢層もそういう単位に置いていくべきである。そこでいま問題は、若年労働者は一万円でいい、しかし三十二才のものは二万二千円という、ここにいわゆる日本の労働賃金問題の根本に触れる問題がある。年功序列制の賃金組織というものをどう改正すべきかという問題、これは初任給が非常に上がってまいりましたし、あるいはまた最低賃金制度が今後相当幅広く実施できるようになってきますと、いわゆる年功序列制がだんだん変わってくるようになるという、あらゆる策を講じなければなりません。そしてまた、いまの最後にお話しになりました中小企業と大企業との格差は、三十人以下の中小企業に働いておる人は、昭和三十三、四年ごろは五百人以上に対しまして四七%であったのが、いまでは六十数%まで上がってきております。新規労務者だったら、大企業も中小企業も同じ賃金で、あるいは越えておる場合もある、こういう状態です。しかし賃金を越えさせなければならぬのはどういうことに原因があるかというと、いままでの中小企業の方々が労務管理において足らぬところがあり、また昇給その他についておくれておるところがあり、技術の勉強にその職場が十分適応していない、また福利厚生施設等々、万般の点に大企業との差がついておる。これではやはりいい人が大企業に行って、悪い人が下のほう、こうなりますので、こういう大企業と中小企業との格差をできるだけ少なくしていこうということが、いまの所得倍増計画をやりつつでき上がることでございます。私は、大体私の気持ちと私の努力目標とあなたの問題点とが似ておりますから、お互いにここでひとつ議論をしながら、前向きで中小企業の労務者対策を今後も考えていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/38
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039・森義視
○森(義)委員 時間がありませんので、いまの答弁について一つだけお伺いしておくのですが、最近の新規労働力の逼迫の原因については、総理と私と見解は同じです。ところがその表現の方法が違っております。私は無計画な高度経済成長政策という。総理は、予想以上の発展を遂げたからだ。これはやはり計画性のあやまちからくるこういう急速な雇用の逼迫だと思うのです。だからそういう点から考えるならば、原因が明らかなんですから、総理と私と同じなんだから、やはり高度経済成長政策というものの手直しをやらなければ根本的な解決にならない、私はそう思うわけです。その他の問題については時間がありませんのであれしますが、この点についてもう一回ひとつ総理のお考えをお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/39
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040・池田勇人
○池田国務大臣 所得倍増計画は計画でございますが、たびたび説明しておりますごとく、こういう姿が望ましいということなんでございます。私は計画経済をやっておるのじゃございませんよ。こういう姿が望ましいというので、一応望ましい姿を想定してやっておるわけでございます。だから、こういうふうにしなければいかぬのだというのじゃない。したがって、望ましい姿よりも行き過ぎましたから、いまそれを行き過ぎないような状態にしておるのが、いまの状態でございます。計画が間違いだとかなんとかいう問題とは違います。根本的な頭の置きどころが違う。望ましい姿はこうあるべきだと言っておるわけです。私は変える必要はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/40
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041・森義視
○森(義)委員 時間がございませんので、これで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/41
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042・二階堂進
○二階堂委員長 島口重次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/42
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043・島口重次郎
○島口委員 質問と答弁で十分程度に制約をされておるそうでございますから、金融問題だけにしぼりまして総理の所信をお尋ねしたいと思います。
政府の三金融機関と称する中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工中金の融資ワクは、三十八年度におきまして一千二百八十三億に対しまして、三十九年度におきましては二五%の三百三十四億を増ワクしておるにすぎないのであります。こういう状況では、せっかくの手形割引保証制度ができましても、意味がないと考えます。一般会計におきましては、中小企業者を対象といたしました近代化補助金は、三十八年度の予算におきましては四十一億円、三十九年度におきましては四十五億円でありまして、約一〇%よりも増額をしておりません。中小企業の実情は総理も十分御承知のとおりと思いますが、昨年の十一月には戦後最高の倒産者記録を出しておりまして、さらに十二月、一月、二月におきましても、少しもその衰えを見せておらぬのであります。しかもこの統計は資本金一千万以上のものの統計でありまして、小規模業者の倒産者ははかり知れないものがあると思うのであります。一方大企業におきましては、三十六年度におきまして四兆一千億、三十八年度におきましては四兆二千億というような膨大な額を投資をしております実情と、まことに対照的なものがあると思うのであります。このままの状況で推し進めるならば、中小企業がいつの日に近代化が完成されるかどうかを、第一番にお尋ねをしたいのであります。
私は以上の観点からお尋ねをしたいのでありますが、昨年の末からの金融引き締め対策によりまして、市中銀行では政府の金融機関に融資のあっせんを要請しておるような実情でありまして、この現状を打破いたしますためには、年末融資のような臨時的なものは除外いたしまして、少なくとも中小企業金融公庫なり国民金融公庫なり商工中金等には、一挙に倍額の財政投資をする必要があると考えますが、総理の見解をお尋ねしたいのであります。本年度三十九年度の予算のように、わずか二五%増の財政投融資でありますならば、保証割引制度ができまして、保証協会から保証を受けましても、資金量が不足でありまして、その恩典に浴することができない。勢い町のやみ金融なり、高利に依存せざるを得ない。これが倒産破産につながるのではないかと思いやられるのであります。
第二点におきましては、設備の近代化資金のねらいは、政府の金融機関のべースに乗れないものを救済することがねらいだと考えておりますが、三十八年度におきましては、先ほど申し上げましたように四十一億円、三十九年度におきましてはわずかに四億増でありまして、私の出身地である青森県の例から申し上げますれば、半分以内にとどまりまして、半分以上はこの恩典に浴することができないのであります。そういう面から、希望者があるとするならば、十分消化のできるようにワクを増ワクをする必要があると思いますが、この点はどうお考えでございますか。
さらにこの制度が、国から県に補助金を出します、県は国民に融資をいたしますという制度でありますが、都道府県の財政力が弱ければワクの拡大ができない。そこで現行制度である、政府が二分の一、県が二分の一というのを、国を七にして県は三の比率に改める必要があると思いますが、この点どういうお考えであるかをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/43
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044・二階堂進
○二階堂委員長 島口君に申し上げますが、時間の都合もありますので、ひとつなるべく簡潔にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/44
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045・島口重次郎
○島口委員 第三点は、政府の金融機関の返済期間の延長であります。ただいまは五年でありますけれども、五年といたしますと、一年に二割の返済でありまして、利息、経費等を計算いたしますと、三割以上の利益がなければ返済できない。これでは本質的な救済にならぬと思います。そこで外国の例におきましては十五年間の返済期間もありますけれども、日本の経済的なことを考えまして、十年程度に延長する意思がないかどうかお尋ねしたいと思います。
第四点は、町の高金利に対する問題でありますが、いわゆる金利取締法等の規則によりますと、日歩三十銭まで認められておりまして、これでは月九分であります。一年たちますと元金の倍額になります。中小企業がどんな努力をいたしましても金利に追いついていけない、こういう状況では、中小企業や零細企業は金利が高いために倒産破産するような状況でありますから、日歩三十銭のような悪法は廃止をいたしまして、利息制限法に定められておりますように十万から百万までは一割八分、百万以上のものは一割五分程度に引き下げることが妥当だと考えますが、そういう日歩三十銭というような法令を廃止する意思があるかどうかをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/45
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046・池田勇人
○池田国務大臣 七分で御質問でございますから、三分でお答えをいたします。
まず第一の中小企業に対します金融的措置でございますが、これは画期的と申しますほどやっております。また予算上におきましても四割ということは、いまだかつてない増加でございまして、私は相当通産当局の努力と大蔵省のこれに対する態度を感謝しておる次第でございます。この金融の問題はいつの時代に完成するかということは、やはり制度をつくり、政治家やあるいはまた金融機関、そしてそれにもまして中小企業の方々の心がまえだと思います。だから私は、いまから十年前のことを申しますと、中小企業金融関係の相互銀行あるいは信用金庫等の預金は、十年間に、倍じゃございません、十何倍にふえております。これは相互銀行という制度を設けたためにふえておるのであります。そこでいまお話しの、中小企業金融公庫とか商工中金の問題も、私はもっと頭を働かすべきだと思います。多年問題もあって、相当反対があったようでありますが、中小企業金融公庫の債券発行百億円でございますが、何ぼでも発行させたらいいじゃございませんか。何ぼでも発行さすべきだ。しかも政府保証でなくて、中小企業金融公庫それ自体国のあれでございますから、どんどん発行してしかるべきだ。商工中金なども、中小企業金融公庫と反対の立場に立たずに、昔のように、商工中金債、割商というものを、興銀や長銀と同じように六分二厘三毛の割引債券にする。昔は割商というものは興銀やあるいは長銀よりも高かった。高くてもいいじゃありませんか。七分三厘とか七分四厘の社債を発行させる、あるいは六分二厘三毛というのを六分三厘とか六分五厘にしても、商工中金の貸上付けが今度九分でございます。そうすれば二分の差があるわけです。どうにでも採算がつくわけです。だから商工中金、中小企業はもっと前向きに、職場争いをせずにどんどんやるべきじゃないか、私はそう考えております。しかし、私はやれと言ったのだけれども、なかなか問題があって百億に切られたわけですが、こういう頭じゃなく、中小企業金融の資金ワクをもっと広げたらどうです。長期信用銀行は十年間に五千五百億の債券を発行できたじゃありませんか。こういうことを考えると、もっと前向きに、通産省も大蔵省も考えて、あなた方にも考えてもらいたい。やらないのは、政治が少し悪いという気が私はしておるのであります。どんどんやるべきだ、そうすれば、あなたのおっしゃる高金利も解決いたします。金融制度をもっと前向きに、既存の金融機関をもっと活用すべし、これが必要であると思います。私は今年あそこでいわゆる幕があいた、今度は末広にやっていきたいということを考えております。
なお設備の近代化資金の問題は、私は無利子の考え方はよくないと三、四年前から言っておりました。これはあのときに設備近代化資金を無利子でやっておったが、無利子はやめて、やはり二分とか三分とか、安い金利にして、そしてもっと広げさすことがいいと思います。
それから地方と国との割り前は、いろいろ問題がございましょうが、利子をとることにして、ワクを拡大すれば、府県と国が半々でもけっこうじゃないかと思います。
なお返済期間の問題、これは五年を十年ということは、ちょっと——中小企業の資金の性質にもよりますが、五年であっても——国民金融公庫は別でありますよ、生業資金でありますから、商工中金あるいは中小企業金融公庫は相当、借りかえもありますし、長くできると思います。それから国民金融公庫はその性質上、私は五年くらいでいいのではないかと思います。しかし、これは実情によりまして将来考えてもいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/46
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047・二階堂進
○二階堂委員長 中村重光君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/47
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048・中村重光
○中村(重)委員 昨年の総選挙で、総理は、非常に成長性のおそい中小企業あるいは農業、これに対しては革命的な政策を行なうんだ、こういうことで、これらの関係の業者に非常な期待を与えた。ところが、三十九年度の予算の中において明らかにされておる予算の伸び率にいたしましても、あるいはまたいま当委員会に提案されておる中小企業関係の法律案を見ましても、革命的だということは感ぜられない。総選挙の際に、総理の念頭にあったものは、いま提案されているような形のものでなくて、何かもっと画期的な、いわゆる総理のことばで言えば革命でありますが、そういうものがあったのではないか。だとするならば、この際その点を明らかにしていただきたい。そういうことにおいて中小企業の期待あるいは農業の人たちの期待にこたえてもらいたい。こういうことをひとつ総理にお尋ねしてみたいと思うのであります。総理の答弁いかんによっては、相当この問題に対して議論をしなければならぬと思いますが、時間がございませんから、次には企業間信用の問題についてお尋ねをしてみたいと思う。
総理も御承知のとおり、企業間信用が膨張の一途をたどっておる、こういう状態であります。この企業間の信用は、元来金融がゆるむと取りくずしになる、金融引き締めになると膨張するということが常識でありますけれども、ゆるめても膨張する、引き締めても膨張するという、全くゴムが伸び切ってしまって縮まないというような状態にあるようであります。この企業間信用がこのように膨張するということは、経済全般に対しては、言うまでもなく、財政金融の面におきましても問題点でありましょうし、このことは中小企業等に与える影響が非常に大きいわけであります。この企業間信用の取りくずしに対して、総理はどのような考え方を持っておられるのか。まずこの二点に対してお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/48
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049・池田勇人
○池田国務大臣 中小企業に対しまして革新的施策を講ずるということを印しております。私もこの結果を見まして、革新的施策に入る、入った、これが、私がいま考えておりますのは、一年で十分達成したとは思いませんが、予算上の伸び率からいってもいままでにない伸び率でございます。そしてまた金融の面につきましても、財政投融資でも、相当ほかのよりも伸び率がよろしゅうございます。また、先ほど申し上げました中小企業関係の金融機関の業務の拡大ということを私はもっとはかりたかったのですが、いま言ったような状態でございます。しかし、中小企業に債券発行の道を開いたということは画期的でございます。これをどんどん伸ばしていく。そして商工中金の金利を下げたというのも、これは画期的とは言えませんが、めったにないことなんです。三年に一ぺん、四年に一ぺん。三年目に一ぺんくらいでございます。しかも、これは私が先ほど申し上げましたように、もう一段大蔵省、通産省が踏み切ってくれて、九分三厘のものを九分に下げるということならば、九分で十分間に合える。商工組合金融を強化するために割商の発行をもっとたくさんできるようなくふうをするべきだ。昔はしておった。三年くらい前に割引債券の税の問題からごたごたごたごたしまして、昔からの伝統的に商工中金に認めておった分をやめて、興銀や長銀のような大銀行と同じような状況にしたら売れ行きがなかなかむずかしくなった。こういうことはもっと大蔵省、通産省は考えるべきだとぼくは思う。昔の歴史を見て、これはどんどんこれからやってもらいたいと思う。私はそれを期待しておった。中小企業にしましても、政府の保証の必要はない。中小企業金融公庫で出せば、しかもあそこの陣容で押していくならば、三百億や五百億の分は集め得るという確信がある。それをやっぱり押えられた。これは両方の機関が競争だとほのかに聞いておりますが、これがいかぬことなんです。しかしこれは今後やめさせまして金融の範囲を拡大していこう、その緒についたのが中小企業金融公庫の法の改正であります。それからまた企業間の信用ということにつきましても、保証協会の拡充も、これをやる上において非常に役立ったと思います。そうしてまた税の問題につきましても、やっぱり税を軽くしていく。そして将来の発展の基盤をつくる。昭和三十八年度、昭和三十七年度は減税いたしましたが、三十七年度も三十八年度も中小企業に対する減税は百五十億ないし百六十億円でございます。しかし、今回は、当初大蔵省では五百二、三十億と言ったが、六百億をこえる中小企業の減税をしろ、こう命じまして、中小企業に対しまして、六百億をこえる平年度の減税は、いまだかつてない、前年、前々年の四倍もこえる減税でございました。これはやはり革新的と言えると私は思っておるのであります。これは革新といっても、そのときだけ一ぺんではございません。長い目で見て、そうしていま革新的対策の緒についたと私は言えるのであります。
次に企業間の信用の膨張のお話、企業間信用は、これはまだ定義はよくわかりませんが、たぶんみんな融通手形でどんどんやっておることだと思います。これは金融の正常化でだんだん解消していっておると思います。去年の春から夏にかけて、この問題につきまして大蔵大臣に指示したことがございます。おととしの暮れから、去年の春、夏、秋、だんだんこれは解消していくことと思いますが、あくまでこれはやはり金融の正常化がそのもとをなすものでございます。正常化に向かって努力を重ねておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/49
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050・中村重光
○中村(重)委員 総理の認識は私は誤っておると思います。企業間の信用の問題においてもしかり、さらにまた総理は、商工債をもっとじゃんじゃん発行しろ、公庫債もいいじゃないか、これが革新的だとあなたは言われますけれども、これは私は非常に無責任な考え方ではないかと思う。公庫債を百億発行した、このことは総理はどのようにお考えになっておるのか。また、この法律案の審議にはまだ入っておりませんから、審議の中においてつまびらかにしていきたいと思いますけれども、これはシンジケート団をつくって、日本興銀が幹事役になってこれを消化する、こういうことでありますけれども、都市銀行のオーバーローン、またいま政府のやろうとしておる都市銀行と地方銀行または相互銀行間の協調融資いうようなことが考えられる。このことは結局、地方銀行の資金というもの、あるいは相互銀行の資金というものを都市銀行に吸い上げていく。このことは、大企業に対する資金の緩和に役立っても、中小企業の金融には、私はむしろ非常に圧迫する状態が生じてくるということを憂うるわけです。さらにまた、いまの公庫債の問題におきましてもしかりであります。必ずこのことは協調融資という形になってまいります。それは系列融資という形になってまいりますから、このことはよほど運用をうまくやらなければ、大企業の資金の緩和に役立つという形であって、中小企業金融は現実にはこの公庫債によるところの金融問題をもっては私は解決しない、そのようにすら考えておるのであります。
さらにまた企業間信用の問題におきましても、この企業間信用、手形の発行というものは、なるほど総理答弁のように、それは融通手形というものもありましょうが、そういうものがいまの企業間信用が膨張していくという形にはなっておりません。大企業が安い金利に依存をする、中小企業は非常に高くつく企業間信用に依存しておるという事実、しかもまた、企業間信用というものは、企業の規模が小さくなるほど、その企業間信用に依存する率が高くなっておるということを考えてみますとき、この企業間信用の取りくずしというものに対しては積極的に取り組んでもらうのでなければ問題は解決しないと思う。
もっといろいろと指摘したいのでありますけれども、時間がありませんから、この程度をもって、総理の再度の御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/50
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051・池田勇人
○池田国務大臣 簡単に申し上げます。私の言うことを聞き誤りと思います。興銀や長銀は債券を発行して協調融資をやりますが、中小企業金融公庫は債券を発行しても協調融資をしないのです。あなたの言われるように、興銀、長銀がどんどん相互銀行あるいは都市銀行、地方銀行から金を集めて協調融資をする、それならば、それの向こうを張って商工中金や中小企業金融公庫に債券をどんどん発行さして、発行し得るようにして、協調融資に向かわさずに、中小企業に向かわすべきだというのが私の議論です。私の答弁をもう一ぺんお読みになったら、あなたの再質問というものは見当違いだということがおわかりになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/51
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052・中村重光
○中村(重)委員 企業間信用の問題。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/52
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053・池田勇人
○池田国務大臣 前言ったとおりです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/53
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054・二階堂進
○二階堂委員長 時間がまいりましたから、ひとつ次にお願いいたします。
久保田豊君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/54
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055・久保田豊
○久保田(豊)委員 時間がありませんから、端的に二点ばかりお伺いいたします。
総理は、大体三月危機というものはない、来ない、こうお考えのようでありますが、最近、中小企業に対して政府のとっております態度は、三月危機を目ざした対策が大部分であります。特に最近打ち出しておりまする対策は、ほとんどそれが大部分であります。
そこで、第一点は、この三月がいわゆる危機であるかどうかというふうな議論はどうでもよろしゅうございます。しかし私どもはおそらく今回は、三月は一つの決算期ですから山にはなるが、いまの経済情勢の中では、中小企業の三月に匹敵するような非常に困難な状態は相当長期に続く、これは必然だと思うのであります。そこで総理は、中小企業の困難がいまのあなたの政策ないしは経済情勢のもとで相当長期に続くかどうか、この点についてどういうふうな御認識を持っておるかということが第一点。
それから第二点は、これに対処する対策は幾つかありますけれども、何よりも大事なことは何といっても金のことであります。この金がいまのような金融制度のもとでは、とうてい長期に続きまする中小企業の困難ということを切り抜けることは困難だと思うのであります。したがってここでよほどしっかりした、大がかりなといいますかがっちりした、いわゆる相当長期といいますか、そういう金融体制というものをつくらなきゃとうていだめだ、こういうふうに思うのですが、この点は具体策をお持ちかどうか。特に私はこの点について、いま中小企業の上層といいますか中堅どころのところまでは、御承知のように大企業に一歩おくれましていわゆる合理化過程に入っております。しかもこれが今度の金融引き締めで中途で打ち切られようとする危機にあるわけです。特に国際収支改善の一番期待ともいうべきこの中小企業の合理化資金について、これのはっきりした確保策をとらなければこれはだめであります。同時に長期の融資についてもはっきりした対策をとらぬことには、とうていこれはうまくいかない。片方におきましては御承知のとおり国際収支がだんだん悪くなった。あなたのお見込みよりはずっと悪くなった。このままでいけば六月、七月には相当ドラスティックな金融引き締め政策をやらざるを得ない。その場合におきましてはどうかといいますと、大企業のほうはどうかといえば、これも御承知のとおり借金でやってきていますから、収益の分岐点が非常に高くなっておりますから、なかなか減産はできません。金が締まって減産ができないで、しかも国のほうで長期の引き締めをやるといえば、そのしりはどこへ寄るかといえば中小企業に寄るのはきまっています。これは下請だけではありません。系列関係でもそうです。したがってこういう下請や系列関係の中で少なくとも国民生活にとって、あるいはこれからの国際経済に対処していく上において必要な、しかも合理化を始めたようなこの中小企業に対しましては、私は長期資金というものをもっとはっきり確保してやる具体的な対策、同時に長期運転資金を相当程度確保してやるということがぜひ必要だと思うのです。この具体策として私どもは、さっきも話が出ましたけれども、いまの程度の政府三銀行の資金ワクの増大では話になりません。それはいままでの中小企業の設備投資のワクの中でどれだけ占めておるかといったら、政府三銀行で二〇%程度がせいぜいでしょう。これでは話になりません。しかもそのあとの長期資金は何かといったら、みんな短期資金を借りて借りかえをやっている。金利がうんと高くなっている。こういう体制ではだめであります。少なくともこの点については政府はもっと責任を持ってやるべきだと思いますが、こういう点から見て、この二点についてどうお考えになるかお伺いをいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/55
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056・池田勇人
○池田国務大臣 戦後において三月危機というのは、昭和二十五年以来今回で四回目と思うのであります。しかし危機といわれるときに危機はないということは実績が示しておる。また危機があってはならないので、政府としては万全の策を講じておるのであります。したがいまして、いまの三月危機は長く続くというお話でございますが、これは人によりけりで、中小企業全般は私はかなりいいと思います。ただ特殊の人が、今年の特異な状況によって起きてきた。いまの千万円以上の借金のある人の破産の状況を見ましても、これはどっちかといったら、中小企業ということよりも相当上のほうなんです。しかも原因は相当思惑のところがあるのであります。私はこういうものを捨てておくわけにはいきませんから、いわゆる三月に倒れそうなものにつきましてはできるだけの努力はいたしております。全体の問題といたしましては、中小企業に常に——中小企業のいまの状態がいつまでも続くというわけのものではございません。しかし、これが早く解消するように政府はやっていきたいと思います。また中小企業の金融の問題につきましては、いま公取あるいは通産省でお考えの下請代金の支払いについての改善等もあります。また先ほど来申しておるように、中小企業を相手とする金融機関の業務範囲の拡大ということもあります。また地方銀行、都市銀行につきましてできるだけ中小企業に力を注ぐようにする、行政指導の問題もございます。私はそういうことをやっていくならば相当改善していくことと考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/56
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057・久保田豊
○久保田(豊)委員 この金融のやや長期的な設備投資やなんかの問題は、行政指導やなんかの問題では片のつく問題では絶対ないと思うのです。これはやはり新しい一つの金融体制をつくる以外にはないと思うのですが、総理はあくまで現在公取なりあるいはその他の通産省なり大蔵省なりがやっている程度のいわゆる行政指導でこの問題が片づくとすると、これは私はごまかしだと思う。そういう簡単な問題ではないと私は思う。なるほど中小企業というものを厳格に言えば、あなたの言っているように、いま倒産し出しているのは中小企業より少し上かもしれない。しかしいまの中小企業の上層というものはだんだん大きくなってくるのは、これは当然です。そういう点。それから、こういう中小企業のいまできている倒産が、これは思惑をやったせいだ、あるいは気象の変化でどうだ、あるいは放慢経営をやった、こういう認識は私はひど過ぎると思う。こういうことでなくて、これはあなたの高度成長政策の必然的に生んできた構造的な一つのゆがみであります。それがいま一番金融面にはっきりあらわれてきている。これはもう時間がありませんから私は具体的に申しませんけれども、総理が、あれは思惑をやったんで倒れたのだからそんなにたいしたことはないんだ、こういう認識では私はけしからぬと思う。そうじゃないのです。あなたがいままで三年間続けてきた高度成長政策が——いい面もあります。私は全部悪いとは言わない。言わないが、少なくともこういう面に構造的にしわ寄せできるような、しかもいま一番ひどくなる段階にきておる。こういう点の認識を根本的に改めてもらわなければ困ると思います。そしてさらに、これに対処する金融対策というものは——私はよけいなことを言っているわけではない。少なくとも国の全体の経済が大きく伸びて、外へ伸びて競争のできるような条件をかち取るための最低のものは、私は単なる行政措置で、あるいは行政指導でできるものとは絶対に思いませんが、この点についての総理の御見解をもう一度お伺いしたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/57
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058・池田勇人
○池田国務大臣 議論になりますから、議論の点はやめますが、先ほど私の申しましたことで、私は繰り返すことを避けます。あえて変わった答弁はできません。ただ問題は、全部が見込み違いだとか、思惑とか何とか言っているわけではありません。そういう人も中にあることを私は個々に調べて言っておるのであります。大体きょうなんかの新聞を見ましても、そういう気持ちの議論が多いようです。しかし、ほっとくわけにはいきません。これは大蔵大臣、通産大臣が考えているように、できるだけ事前、事後の方策をとらなければいかぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/58
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059・二階堂進
○二階堂委員長 板川正吾君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/59
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060・板川正吾
○板川委員 総理に伺いますが、総理は総選挙を前にして新聞記者会見をして、中小企業、農業の革命的な近代化をはかる、こういうことを発言をされた。そのときに総理は、どうもわしは革命ということばはあんまり好きじゃないが、何かいいことばはありませんかということを言いながらも、少なくとも革命的な中小企業の近代化をはかるということを過般の総選挙の前に国民に公約したのであります。私どもは、それはおくればせであろうと、中小企業、農業に対して革命的な施策を打ち出すということは大いに歓迎するところでありますから、期待しておったのです。ところが今回の通常国会に出されました中小企業の六つの法案の中には、何ら革命的な対策というものがないのです。具体的に一つもないのです。総理はただいま、中小企業予算は三五%もふえておるからこれは画期的だ、こう言われました。その三五%というものは、中小企業対策の予算が昨年の八十五億からことしは百十五億になった、三十億ふえたということです。これは三兆二千億の予算のワクからいったら全く九牛の一毛程度のものであります。そのある部分を比較して、それで三五%、四〇%ふえたから画期的なんだというのは、私はごまかしじゃないかと思う。それから財政投融資にいたしましても、なるほど全体から見れば二〇%のところが二五、六%にふえたのですから、若干ふえていますが、若干ふえたというだけじゃ私は革命的だとはいえないと思う。池田総理が総理大臣になられました昭和三十五年、全国官民の金融機関の中小企業向け貸し出しの割合というのは四六・四%、ところが三十七年、昨年度は四一・五%、逆にそれは減っておって、この減った割合すら今度において改善をされていない。こういうことを考えますと、池田総理は総選挙を前にして革命的な近代化をはかると言ったのは、結局国民にうそを言ったことになるのじゃないかと思うのですが、総理の所信はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/60
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061・池田勇人
○池田国務大臣 先ほどお答えしたように、予算面におきましても財投面におきましてもまた税制面におきましても、そうしてまた中小企業関係金融機関の今後のあり方、見通し等につきましても、板川さんも長いこと商工委員をしておられるので、いままでの分と今度を比べてごらんになれば、非常に革新的だと私はいえると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/61
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062・板川正吾
○板川委員 総理はパーセンテージだけを言っておって、パーセンテージのもとになる数字が八十五億から百十五億になった、それで革命的だというのは、どうも私は数字の都合のいいところだけ利用しておるのじゃないかと思うので、実体を言っていないと思う。
もう一つ、私は総理に言いにくいのですが、総理は御承知のように過去において中小企業問題では苦い歴史を持っておる。その苦い歴史をそのままにしておいちゃ、私は池田さんが将来吉田茂さんのような立場になったときに、池田さんの人生としてもあまりいいものじゃないだろうと思う。そこで考えたのは、せっかく革命的な中小企業対策を打ち出すというようなことだから、私はせめてこの点だけは池田さんの総理のときにはっきりとやられたらどうか。そのやられたらどうかという点を申し上げてみますと、第一は下請関係の抜本的な対策をやるべきじゃないか。いま下請代金支払遅延防止法というのがありますが、なるほどそれは代金支払い遅延防止が主となった法律であります。現行の法律では六十日内に現金化して払うということは一応たてまえにはなっているけれども、明白ではない。だから誤解を受けて適当な措置がされておったのでありますが、この六十日現金払いという原則を明確にするとか、それから親会社が下請会社と下請条件をきめる場合に対等な条件できめてない、親会社が一方的に押しつける、こういう下請条件の問題等についても、私はもっと法律の面から中小企業を擁護するような下請関係法といいましょうか、代金ばかりでなくて、そういった取引関係にまで及ぶ抜本的な下請法の整備をしたらどうだろうか。さらに先ほども出ました歩積み、両建て問題でありますが、これはもう私が説明するまでもなく裏金利の問題であります。中小企業が近代化できないという最大の原因は、この歩積み、両建てで高い金利の金を使わせられておる、こういうことが大企業との格差がますます拡大する大きな原因であることはもう私が言うまでもないと思います。しかしこの歩積み、両建て問題は、大蔵省が中心にいま自粛通達をして、銀行協会等が自粛をすると言っておる。しかし法制がいまのままでは、やがて時期が来て内閣がかわり人がかわれば、歩積み、両建て問題は、従来の経験からいいまして、もとへ戻ってしまうのじゃないか。したがってここで歩積み、両建て問題を独禁法の特殊指定にして、これこれの条件のもとでこういうことをやってはいけないという特殊指定にすみやかに踏み切るべきではないか。これはもちろん総理大臣の権限というよりも公取委員長の権限でありましょうが、内閣としてそういう方針を決定されれば、私は公取もその点ではやりいいだろうと思う。
それからもう一つは、全国一律の最低賃金制をすみやかにしいて、そうして全国における中小企業で働く労働者に最低賃金を国が保障する。これは通産大臣は、統制経済じゃないからそういうことはできないと言っておりましたけれども、アメリカでは統制経済でなくても最低賃金制があるのです。一時間一ドル以下で人を使ってはいけない、こういう法律があるんじゃないですか。ですからいまの企業者が中心になって、最低賃金制と称するものでなくて、全国一律の最低賃金制を行なう。少なくともこの三つの問題を池田さんの時代に真剣に取り上げて解決されるならば、全国の中小企業者や中小企業で働く労働者が、かつての苦い思い出というのを払拭するような気持ちになるだろうと私は思う。総理の見解をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/62
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063・池田勇人
○池田国務大臣 苦い思い出とか苦い歴史とかいって遠慮がちにおっしゃるが、私はそうじゃない、ほほえましい私の一生の歴史だと思います。私はそういうあれで、とにかくあの日本のやみ経済、インフレを押えるのにはなまじっかのあれじゃいかない。だから私は、いまではそういうことは言いませんが、あのときにはああいうことでとにかく建て直さなくてはいかぬという信念は私はいまでも変わりはございません。しかしあの当時から、中小企業金融につきましてお考え願いましても、当時は無尽会社であったのを昭和二十五年、六年に相互銀行と衣がえをいたしまして、千二、三百億の全国の預金が二兆円になっておるじゃありませんか。信用金庫でももう一兆五千億になっておる。非常に発展した。これはほほえましい歴史の結果だと私は喜んでおる、こういうことでございます。
いまお話しの中小企業に対しましての金融、ことに下請代金支払遅延防止法につきましていろいろお話がございましたが、金融というものは一方を見てはいかない。そしてまたいままでの既成事実を一挙に改めようとすると、これは角をためて牛を殺すのそしりを免れません。だから六十日で現金支払いにしろということを強くやっていったら困るのはだれかといったら、大企業ではなしに中小企業が困るのではございますまいか。また親会社、子会社あるいは下請が対等の立場に立ってといっても、自由主義経済ではやはり売り手市場、買い手市場もございます。どちらかといったら、下請のほうが少々長くてもよろしゅうございますから注文してくださいというのが、いままで相当あったのではございますまいか。こういう点を十分お考えいただきたい。
また歩積み、両建ての解消もまた私の年来の主張でありまして、極力これをやっていこうとしております。しかし歩積み、両建てを全部どういう方向でやめるか、その間の経過規定を設けないとなかなか——これは生きものでございますから、そういう点は大蔵省、通産省も考えておりますし、また多年金融財政に造詣の深い渡邊公取委員長も十分お考えになりまして、そういう大きい旗じるしのもとに、いわゆる円滑に正常化できるようにやっておられることと考えるのであります。
なお最低賃金制の問題は、ちょっと前も触れましたごとく、もうあなた方でも十八歳八千円というようなことをおっしゃらぬようになりました。もう時代が変わってきておる。この状態でいくならば、私はできるだけ早い機会に、全般的にいわゆる先進国のような型に向かっていく地歩がだんだん固まっていっておると考えておるのであります。せんだって労働者代表の方々と会いまして、もう十八歳八千円ということはおっしゃらぬようになったでしょうということを私から申し上げました。そのとおりだ。そうなってくると、それは経済成長のおかげでございます。これをだんだん進めていって、あなたのおっしゃる理想的な最低賃金制が、できるだけ早く実現することをわれわれ念願して、所得倍増計画を強力に進めていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/63
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064・板川正吾
○板川委員 池田総理は、通産大臣をやっておられるときに、ここで私の質問に対して、物価は上げないで所得倍増計画をするんだ、こういうことを答弁しておる。ところが、実際は所得倍増計画は非常な物価高騰をもたらしておる。そこで、この物価が所得倍増によって——なるほど床屋さんとか、そういう合理化や機械化ができないところで多少上がるのはやむを得ません。そういう床屋銭が上がるとかフロ代が上がるのは多少はやむを得ないとしましても、私は、池田さんの所得倍増計画が一番くずれた原因は、物価政策がなかったということ。特に機械化し能率が上がり、生産性が上がり、しかも高配当を続けておる会社が、少しも価格を引き下げないでおる。しかもそれが少数の企業者——板ガラスとか珪素鋼板とかブリキとか、二社か三社でその品種の日本の総生産の九割から一〇〇%近くを占めておる、こういうような寡占状態における管理価格と称せられるもの、これは過般の総選挙の際に、自民党においても管理価格については適当な措置を講ずると言っておるのですが、これは現在の独禁法では、協定をして価格を引き上げたり、引き下げをしなかったりする場合には、これは違反になります。しかし二社か三社でお互いに暗黙のうちに値上げとなり、価格引き下げをしないということは、これはいまの独禁法ではできない。そこで独禁法はその点を手直しをして、管理価格に対する規制を加えるべきではないかと思うのですが、この点をひとつ伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/64
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065・池田勇人
○池田国務大臣 所得倍増に物価政策がなかったとおっしゃるが、私の予定しておった所得倍増なら物価政策は要らないのです。あなた方はいまの状態をごらんになって、物価政策がなかったとおっしゃるが、日本のあのとき置かれた状況からいいますと、いわゆるGNPとか、国民所得が三%程度の伸び方だったならば物価が下がる。昭和三十二年、三十三年に卸売り物価は下がります。消費者物価は下がるし、賃金の上昇はなしにボーナスは少なかったのが昭和三十二年、三十三年の状態であります。だから三%程度では日本の物価は三%下がる。それだから七%程度ならば、大体物価政策は要らなかった、名目で七%か九%程度ならば。それが二〇%、実質一四、五%上がったということで、物価が急激に上がるようになった。そして、その原因は、合理化その他をやりまして——卸売り物価を見てごらんなさい。あなたのおっしゃる管理価格というものはおおむね下がっておるか横ばいでございます。しかも、それの下がりようの少なかったのは、私はしかられるから申しにくいのですが、はっきり申し上げましょう。賃金の上昇はどうです。卸売り物価は三十年を一〇〇といたしまして日銀の統計では二、三%、あるいは昭和二十七年を基準にいたしまして、日銀統計では一〇二、三%です。しかし、企画庁の新しい現在に沿った調べ直しの卸売り物価は下がっておりましょう。だから、管理価格を云々する場合には、まず聞きたい、管理価格のうちで上がったものがどれだけあるか。おおむね、中には上がったものもありますが、全体としては下がっておる。鉄鋼、繊維あるいは化学薬品等々を見ると下がっておる。だから、消費者物価あるいは卸売り物価が上がった原因は、とにかく労働賃金が三十年を一〇〇として九〇%から一〇〇%になっておるじゃありませんか、名目で。しかし、卸売り物価は上がっていない。消費者物価も最近において三年間で二七、八%、三〇%上がっておるが、賃金は一〇〇%近く上がっておるじゃありませんか。管理価格を云々する場合に、賃金とかなんとかいうものを総合的に考えてもらわぬとりっぱな議論にならないと思う。だからといって、管理価格を上がるままにほっておくことは言っておりません。このごろ新聞でごらんのとおり、通産省でも公取でも十分調査いたしまして、管理価格において不当なものがあり独禁法違反のものがあるならば、十分それによってやろうとしております。時間がありませんから先に答えておきますが、独禁法の適用をもっと適正、拡大すべく、人員もふやしたし、事務所もふやし、取り引き部門も設けております。いろいろな点をやっておることを御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/65
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066・二階堂進
○二階堂委員長 伊藤卯四郎君。総理の時間がございませんので、はなはだ恐縮ですが簡単にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/66
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067・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 時間がないということでございますから、きわめて具体的な問題を二点だけお尋ねいたします。
昨年の通常国会のおりに、池田総理に私は、通産省に従来つくられてあるエネルギー部会ではエネルギー界の混乱を解決することはできない。よってエネルギーの全責任を持つような動力省を設置したらどうかということは与党側のほうからも強く質問されておったようでございます。しかし、それができないなら、それにかわるような権威のある国家の機構をつくって、そうしてエネルギーを総合調整して需要供給の数量、価格、そういうものの安定、指導をされるようにすべきではないかということを質問いたしましたところが、池田総理の答弁の中に、これは速記録に出ております。独立省をつくることは考えていないが、エネルギー部会を強化拡充して、そうしてもっと権威のあるものにする。いわゆる行政運営の上において強化手段をもってやるようにする、こういうことを明言をされております。ところが、なぜこのことを繰り返して池田総理に再度お尋ねするかということは、御存じのように石油業法をつくりましたがざる法といわれております。先日政務次官もざる法だということを御答弁のときにされております。これは政府側のほうでもざる法といっております。したがって何らの権威もございません。われわれに法律をつくらしておいて、行政のほうでこれをざる法というようなことじゃ、立法の府を侮辱するもはなはだしいといわざるを得ない。まずその問題はそれとして、そういうことでありますから石油業界の混乱は依然として続いておる。たとえば出光の問題、これは通産省がようやく調停に乗り出して話し合いをつけたという。丸善の問題も、この混乱の中に耐え切れずして外資問題等で幹部総辞職をせねばならぬということになってしまった。国内の石油開発、ガス開発、これらの問題も、やはり帝国石油が経営困難におちいって社長以下総辞職、こういうことになっておる。それから石炭の問題も、御存じのように、需要供給等の問題は依然として安定をいたしませんので、いわば不安の中に続いておるという状態である。日本産業はもちろん、あるいは輸送、交通、そういう点におけるエネルギーは、食糧とも言うべき、原動力とも言うべきものなのでありますが、この需要度についてであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/67
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068・二階堂進
○二階堂委員長 伊藤さん、この際申し上げますが、いま議題が中小企業ですから、中小企業に関連してお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/68
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069・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 日本が現在使っているエネルギーは、量は、石炭に換算すれば、七千カロリーの石炭として二億二千万トンも使っておる。昭和四十七年になると四億四、五千万トン使うということになって一おります。これほど大きな問題を池田総理は依然として、どうも調整し、権威ある行政機関としてこれらを指導するということをほとんど約束どおりとられていないように思いますが、これはきわめて重大な問題でございますから、この点についてまず先に一点お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/69
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070・池田勇人
○池田国務大臣 エネルギーに関する非常な卓見を持っておられる伊藤さんのあれで、年来また御主張になっておられるところでございますが、先般もお答え申し上げましたように、非常に重要な問題でございます。したがって、通産省における産業構造調査会のうちにエネルギー部会というのがございまして、過去二年近い研究を遂げまして、昨年の暮れ、十二月に答申があったのでございます。私は、この答申によりまして、いわゆる権威あるエネルギー行政を執行する、進めていく態勢を整えたい、こういうので、答申に基づいていま検討を加えておるのでございます。いずれ案ができましたらごらんに入れまして御協力を願いたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/70
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071・二階堂進
○二階堂委員長 伊藤さん、総理は二時十五分に退席されますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/71
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072・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 十分間は特権を与えられておりますから、委員長そのおつもりで……。
いま一点は、日本の鉄鋼業の拡大発展をこのままに放任しておいていいかどうかという問題でございます。日本の鉄鋼業の実力はいま世界の四位になっております。アメリカ、ソ連、西ドイツ。ところが最近にたっての粗鋼は、西ドイツを追い越して世界の三位になっております。ここおそらく一、二年のうちには全鉄鋼が、生産は世界の三位になることは必至といわれております。したがって輸出も三十七年度より三十八年度は三四%も伸びております。そういう点から、世界のこれらのおもなる国々から、日本は鉄鋼の安売りをしておるということで、相当政府にいろいろ文句をつけられておることは御存じのとおりでございます。われわれが問題にする重大な点は、ソ連が五千五再トンの溶鉱炉をつくり、アメリカも四千トンの溶鉱炉をつくっておる、おそらく近い将来に一万トンの溶鉱炉をつくるであろうといわれておる。そういうふうに非常に大きな設備近代化が進められておる。したがって、日本もこれに負けておるわけにまいりませんので、これに追いつき、これを追い越そうとするために、大手筋では同じような設備拡張を非常に盛んにやっております。そういうところから、昨年の十一月現在の鉄鋼業のおもなところの借金を調べてみると、九千七百八十八億円、一兆円をこしておるといわれております。これが九分の利子といたしますならば、とにかく九百億円、あるいは一千億円の利子を払っておると言ってもいいわけでございます。ところが鉄鋼労働者がいま組織されておるものは十六万人おるといわれております。この人々の一カ月の平均賃金は大体三万円であります。ところが三万円の労働賃金を得るために、金融資本に対する利子払いが一カ月に、労働者一人当たりから五万五、六千円の金利を払っておるということが大体概算上出ております。そういうところから、鉄鋼業の代表者の諸君も、このままで通しておいたら、三、四年前と同じような減産あるいは平炉封鎖、そういうこと等が起こってくるのじゃないか、そうしたら日本の経済界に重大な影響を与える、だから何とかしてひとつこの安定化のために法的処置を講じてもらわなければならぬ、こういうことを言われております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/72
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073・二階堂進
○二階堂委員長 伊藤君に申し上げます。時間が参りましたから、簡潔にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/73
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074・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 したがって、政府のほうでもこれを放置されることはできないと思いますから、こういうことについての、同じようなものを競争してつくらせるということについての何らかの規制、あるいは法的措置によっての安定が他に与える影響、こういうこともきわめて重大でありますから、こういう点について総理は一体どのような事前措置を講じ、こういう危機を引き起こさせないようにしようとお考えになっているか、この点をひとつ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/74
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075・池田勇人
○池田国務大臣 ただいまおっしゃっておられるように、三十八年の第三・四半期の日本の製鉄業の生産状況は西ドイツを突破いたしました。来年はもちろん、特別の規制を加えざる限りにおいては三位になると思います。しこうして、いま鉄鋼の輸出は、原材料の輸入をまかない得る近くまで鉄自体の輸出並びに船その他でまかなっております。ちょうど往年の綿紡が原綿の輸入代金をまかない、それをこえるだけの繊維製品の輸出の状態が、いま鉄鋼にかわりつつあるのであります。そこで、いまやアメリカにおきましても、ヨーロッパにおきましても、日本の鉄鋼の需要は非常に進んでおります。四千トンの鉄鉱炉、一万トンの鉄鉱炉ということは私は聞いておりませんが、いまの日本は鉄鋼精製技術におきましては、世界では一、二位を争っておる。これはやはり鉄鋼会社の非常な努力であるのであります。しかもその資本の相当部分はアメリカから借り入れておるのであります。行き過ぎた過当競争はいけませんが、いままでのようなやり方なら、私は規制するということはいかようなものかと思います。やはり日本の鉄鋼業が世界の鉄鋼業になった、この経過を考えますと、過当競争によるむだは省かなければなりませんが、適正な設備拡張は私は必要であると考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/75
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076・二階堂進
○二階堂委員長 次回は、来たる三月三日火曜日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後二時十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X01419640228/76
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