1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年四月二十五日(土曜日)
午前十時三十二分開議
出席委員
委員長 二階堂 進君
理事 小平 久雄君 理事 始関 伊平君
理事 早稻田柳右エ門君 理事 板川 正吾君
理事 中村 重光君
伊東 隆治君 海部 俊樹君
神田 博君 小山 省二君
佐々木秀世君 田中 六助君
中村 幸八君 野見山清造君
長谷川四郎君 村上 勇君
加賀田 進君 沢田 政治君
島口重次郎君 森 義視君
麻生 良方君 加藤 進君
出席国務大臣
通商産業大臣 福田 一君
出席政府委員
通商産業事務官
(大臣官房長) 川出 千速君
通商産業事務官
(大臣官房参事
官) 宮澤 鉄藏君
通商産業事務官
(公益事業局長)宮本 惇君
特許庁長官 佐橋 滋君
委員外の出席者
専 門 員 渡邊 一俊君
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四月二十五日
委員大石八治君辞任につき、その補欠として伊
東隆治君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員伊東隆治君辞任につき、その補欠として大
石八治君が議長の指名で委員に選任された。
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四月二十四日
特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出第
一一九号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出第
一一九号)(参議院送付)
電気事業法案(内閣提出第一三六号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/0
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001・二階堂進
○二階堂委員長 これより会議を開きます。
まず、昨二十四日付託になりました内閣提出の特許法等の一部を改正する法律案を議題とし、通商産業大臣より趣旨の説明を聴取することにいたします。福田通商産業大臣。
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特許法等の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/1
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002・福田一
○福田(一)国務大臣 ただいま提案になりました特許法等の一部を改正する法律案の提案の理由及びその概要を御説明いたします。
本法案は、特許庁事務の機械化に伴いまして、特許法、実用新案法、意匠法、商標法の登録関係の条文を改正しようとするものであります。
最近、特許等の工業所有権に関する社会一般の関心はとみに高まっておりまして、出願件数は逐年累増し、昭和三十八年の特許、実用、新案、意匠、商標の出願件数は二十六万件の多きに達しております。
出願件数の増加は、審査に要する期間の延長をもたらしているのみならず、出願受理事務、書類の進達発送事務、登録事務等の特許庁の一般事務の遂行に深刻な影響を与え、これら事務の遅延、停滞を生じ、また、これら事務に過誤を生じる例が多くなるなど、全般的に事務遂行に円滑を欠くに至っております。
このような事態に対処いたしまして、出願、登録等の事務処理方法に画期的な改善を加えるため、昭和三十九年度からは、電子計算機を利用して事務を機械化いたしまして、事務処理の迅速、正確を期し、能率向上をはかることといたしました。
これは、従来帳簿に記載しておりました事項を、電子計算機に記憶させることにより、出願、登録関係の事務処理を可能な限り機械的に行なおうとするものであります。
このように事務を機械化いたしますと、特許権等の登録を行ないます場合に、登録事項は磁気テープに記録されることとなり、これに伴いまして関係条文を改正する必要を生じましたため、ここに特許法等の一部を改正する法律案を提出した次第でございます。
次に、本法律案の概要を御説明申し上げます。
第一は、登録の原簿を磁気テープ等をもって調製することができることとすることであります。従来は、登録事項は原簿に登録することとなっておりましたが、磁気テープ等を従来の原簿の概念に含ませることには少々無理がありますので、磁気テープ等をもって原簿を調製できることを法文上明らかにしようというものでございます。
第二は、これに伴いまして、登録の原簿のうち磁気テープ等をもって調製した部分に記録されている事項を記載した書類の交付を請求できることとし、その場合の手数料の最高額を定めることであります。
以上が、本法律案の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、可決せられますようお願い申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/2
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003・二階堂進
○二階堂委員長 以上で本案についての趣旨の説明は終わりました。
本案についての質疑は後日に譲ることにいたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/3
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004・二階堂進
○二階堂委員長 次に、内閣提出の電気事業法案を議題として審査を進めます。
質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。始関伊平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/4
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005・始関伊平
○始関委員 福田通産大臣は、電気の問題は特にお詳しいようでありますし、私の質問は概して大まかな質問でありますので、なるべく大臣から御答弁を願うように、あらかじめ希望申し上げておきます。
最初に、電気事業法案と電力の企業形態との関係についてお尋ねをいたします。
電気事業法は、電気事業を監督しようとするものでありますから、ある形における電気事業というものを前提としておる、一定の企業形態を持った電気事業を前提として電気事業法が制定されておる、これは明らかだと思います。しかしながら、電気事業法は、電気事業の企業形態そのものを直接に規制するものではない。これは十二、三年前の再編成の当時にも、再編成については、電気事業再編成令という別のポツダム政令が出たことによっても明らかだと思うのでありまして、この点はまたあらためてお尋ねをするまでもないかと思いますが、一応大臣の御見解をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/5
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006・福田一
○福田(一)国務大臣 電気事業の今度の法律改正によって目途いたしておりまする電気事業の形態は、一応九つの電力会社の電源開発株式会社、あるいはまた自家発、公営等のいろいろの形態があるかと思いますが、これに対する一つの規制といいますか、電力に関する諸問題を包含して解決をしようというか規制をしよう、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/6
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007・始関伊平
○始関委員 私の質問に対して直接の御答弁がございませんでしたが、形を変えまして、電気事業の企業体制は将来変わるかもしれない。たとえば、これは全く仮定の問題ですが、いわゆる九電力が八電力になる、あるいは七電力になるということも予想できるわけでございますが、その場合には、現在の電気事業法でそのまま当てはまっていくと思います。しかし、電力の企業形態が根本的に変わるというようなことでありますと、電気事業法そのものも改めていかなければならぬことになると思いますが、電力企業形態のどの程度の変化にまで今度の電気事業法というものは適用できるのかという点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/7
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008・福田一
○福田(一)国務大臣 極端な例を申し上げれば、電力を一社化して国営にするというような形をとる場合は、もちろん電気事業法では無理ではございますが、たとえば、いま九つある電力会社を、区域を四つにするとかあるいは五つにするとかという程度のことであれば、現在提案しておりまする電気事業法で適用し得る範囲である、こう考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/8
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009・始関伊平
○始関委員 ただいま大臣がお答えになりましたように、電気事業法は電力の企業形態を直接に規制するものではないのですが、しかし、現在の企業形態を一応認めて、その前提の上にこの電気事業法が制定されておる、こう理解してよろしいわけですね。
そこで、最初の問題は、現在の電気事業からいえば間接の関係になりますけれども、企業形態というものをそのまま認めるべきかどうかということが、電気事業法の審議に際してわれわれが論及しなければならぬ第一の問題であると考えます。ところで、たとえばイギリスあるいはフランス、こういう国は自由主義国家でありますけれども、電気事業についてはだいぶ前から国営というたてまえをとっておるようであります。私どもの見受けるところでは、それはそれとしてある程度の成果をあげているように思うのであります。なお、イタリアあたりでも最近では電気事業を国営にしたという実例もございますので、日本でかりに私どものような保守党の人間が、電気事業のような地域的独占事業であって公共的な使命を持つ公益事業について国営ということを考えたって、それほどとっぴだとかおかしいということは言えないと思います。しかしながら、問題はそういうイデオロギーの問題ではなしに、この時点において、日本の経済的、社会的な背景、あるいは労働事情というもののもとにおいて、国営という形が適当であるかどうか、こういう見地から判断すべきだろうと考えます。
実は、二月ばかり前でございますが、ある雑誌の主催で社会党、民社の代表の諸君と私と入りまして、座談会をいたしました。その際、その中の一人が、電力についてはもちろん国営が望ましいんだが、自民党の政権下において国営をやってもだめだ、政権の体質が問題なんだ、こういう議論をいたしました。私はそれに対して、そういう議論もあり得るのかもしれないけれども、しかし問題は、むしろ役職員あるいは労働組合のほうも含めました日本人の意識というようなものが問題なんじゃないか——国営もしくは国営に近い形になりますと、とかく親方日の丸式な考え方に流れやすいということは、私は否定できないことだと思うのであります。あとでお尋ねをいたしますが、国営に近い形でやった日発当時と、その後の現在の体制下における電力事業との間の企業管理の体制、あるいは労働運動のあり方というような点を考えてみますと、そういう点が非常にはっきり出ておると思うのでありますが、電力事業の国営化という議論に対して大臣の御所見、それから電気事業審議会でこの問題を審議されたと思うのでありますが、これについては大体どんなふうな考え方で、どういう結論に到達したのか、これは局長から御答弁を願います。この二点についてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/9
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010・福田一
○福田(一)国務大臣 電気事業を国営でやるがいいかどうかという問題でございますが、私は、原則論として見れば、国営論というものも時と場合によっては必ずしも反対ではありません。しかし、いまの現状から見て、これを直ちに一社化する、国営に移すのがいいかどうかということになりますと、私は現段階においては不適当だと思っております。その理由はいろいろあるわけでありますが、とにかく一応日発が解体されて九電力ができ、さらにまたこれに電源開発株式会社が加わったいまの十社化体制というものによって、やはり電源開発は相当量行なわれております。また、電気料金自体もその形をとったことによって非常に上がったかというと、電気料金がよその国と比較してそれほど高いというわけでもない、わりあいにうまく需要に対して供給が行なわれてきたと私は考えております。ただ、問題がありといたしますならば、九つの、いわゆる私企業のような電力会社が、いわゆる利益を追求して仕事をしていくということになるのでありますから、その間において、電気のような国民にとって必要欠くべからざるものに格差が生じておるというようなことが一つの問題点になろうかと私は思うのであります。もう一つは、そういうような私企業的なものでありますから、お互いがもっと協調したり仲よくしたりして、そうしてむだを排除するくふうをすればいいのに、それが、自己の利益を追求する、その会社の利益を追求するということに急であって、これがうまくいかないという場合がある、これは大きな立場から見て損ではないか、こういうことがあると思うのです。この二つが特に考えられなければならない問題であると思うのでありますけれども、私はさきのいわゆる料金の問題について見ますると、これも分割をいたしましたときと比べてだんだん情勢が変わってきた。なぜ情勢が変わったかといえば、火力発電というものがだんだんウエートを占めまして、水主火従といったものが火主水従に変わってきた。そうして火力の中心がいわゆる油に変わった。油の陸揚げをする、いわゆる油を持ってきて発電をする場合には、たいていのところでこれが発電できる、わりあいに人口稠密なところへ持ってきて発電ができる。いわゆる送電のロスというものがなくなることやらいろいろのことがございまして、しかも原価がどこでも大体同じで手に入れられる。水力の場合ですと、非常に落差が多いとか、あるいはまた工事がしやすいとか、いろいろな問題が影響するのですが、火力の場合はほとんどこれがない。だから、火力をつくった場合にはみんなその値段というものは大体似通ったところへ落ちつくわけでありますから、そういうものがどんどんいまできつつある段階においては、いわゆる原価の差というものが順次狭まりつつあるというのが現在の状況だと思うのであります。そういうことから見て、電力料金全体を見てみるとだんだんと格差が縮まってまいりまして、当初のうちは北陸電力と九州電力とは一に対して二・二倍というような率であったのですが、今日では一番安い北陸電力と中部電力を比べて、一に対して一・五というような数字になりつつある。すなわち格差が順次解消してきているというような段階であります。問題は、電気料金の中でも特に電灯料金が問題になるのでありますが、これも順次こういう形において解消しつつある、だんだんと近づきつつある、こういうことであります。
〔委員長退席、早稲田委員長代理
着席〕
一方、それを今度は全然なくしてしまったらいいじゃないかという議論もありますが、これはあとで御質問があるかと思いますが、これは問題がそこに伏在していてなかなか簡単にはまいりませんので、料金の問題については一応この程度に御答弁をさしておいていただきますが、一方、利益を追求することによっていわゆる公水力等々のいわゆる電力というもの、あるいはエネルギーをどううまく使うかというような、そういう意味でいわゆる国の政策とも非常に大きな関係を持つ発電、それから発電したものの配電というものが私の利益のみを追求するような形で行なわれておることはいけないということは、当初九電力が分割されたいわゆる再編成のときには、特にこの点を私たちは追及をいたしまして反対をしたことは御案内のとおりであります。しかしその後順次そういう弊害を痛感して、そういうような広域運営をするというか、お互いが融通し合う、電気を建設する場合においても、あるいは予備電力を持つ場合においても、あるいはまた融通し合う場合もできるだけそれをしようというような、いわゆる広域性を認識する運営のしかたが順次高まってまいりまして、これは通産省自体としても十分その指導をやってきたつもりでありますが、最近とみにその空気が高まってまいりましたので、ある程度の広域運営ができる、徹底した一社化に比したならばそこまではいかないかもしれないが、ある程度できる。先ほど始関委員の言われたように、一社化した場合におけるいわゆる日の丸的経営の弊害と、いまのように利益を追求さしておいて、一方において広域運営をやらせるというやり方と、どちらのほうが利害があるかということは慎重に検討してみなければなりませんが、少なくともいまの段階においてこれを一社化するというような形をとりますことは、私は相当な混乱を招くと思う。現に九電力に分割いたしましたときに、実を言うと二年間くらいの間は会社自体が人事の問題でごたごたしました。ほんとうの仕事がうまくいかなかったようなことで、ようやく三年目ぐらいから一社としての機能を発揮し出した。全部が全部そうではないが、そういう傾向が多分にあったわけです。今日これをいじることがいいか悪いかということになりますと、すでにある程度の効果をあげております。またいろいろの利害の関係もありますから、これは慎重に検討していかなければならないのではないか、こういうふうな考え方に基づきまして、一応現在の体制を認める形においてこの電気事業法案というものを提出いたしておるのであります。
なお、審議会においてどういうような意見があったかについては、局長から答弁させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/10
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011・宮本惇
○宮本政府委員 電気事業審議会におきましては、いま大臣のおっしゃいましたように、特に企業体制につきまして慎重に論議が行なわれたわけでございます。問題は、近年におきます発電技術の進歩とか、あるいは電力系統の容量が非常に大きくなるというようなことから、電力の経済圏と申しますかそれが広がってくるという要請と、いま御指摘の経営能率を最大限に発揮させる、あるいは需用家にサービスをよくするというような二つの要請をどう調和するかという点に重点が置かれたわけであります。この観点から、国営論あるいは全国一社化論、ブロック別合併論というようなものがいろいろ慎重に審議されたのでございますが、九電力会社を中心にいたします現在の企業体制は確かに御指摘のような料金面、経理面の若干の格差はございますものの、過去十年間の実績を見ますと、おおむね健全な発達を遂げて、豊富、低廉、良質な電気を供給するという電気事業の使命にこたえておると一応認められましたので、この現状の上に立ちまして、摩擦の大きい企業形態の変更を行なわなければならない積極的な理由はないと判断されたわけでございます。しかしながら、答申には一応こういうふうに書いたのでありますが、それでも片づかない場合には、企業形態について再検討をしなければならないということも付言されております。しかしながら政府としては、現在大臣の言われましたような方向でやれば現在の企業体制を維持することで支障はないというふうに考えまして、この法律案を提出した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/11
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012・始関伊平
○始関委員 この日発という会社には民間の資本も入っておったと思うのでありますが、しかしこれはいわゆる国策会社、特殊会社でありまして、電力国家管理の体制のもとにおいて、料金についてもいろいろ政策料金があり、九つの配電公社がその下についておりまして、十の会社の間に一種のプール計算が行なわれるということがもとの体制であったと思います。これは国営ではないけれども、国営に準ずるような形として認識して間違いないと私は思うのでございますが、再編成によって、地域的には九つの地域に分割されて、発送配電一貫の民営企業をたてまえとする電力の企業形態になってまいった。この前とあととを比較してみると、これは国営もしくは国営に近いものがいいかどうかという点について、非常に大きな参考資料になるものだと思います。そういうような見地から、ただいま大臣、局長から御答弁があったのでありますが、いま企業間の格差あるいは料金格差、またこの九分割の弊害を補うものとしての広域運営というものについてお話がございましたが、再編成前とあととの電力の体制というものとを比較してみまして、いま大臣からお話のありました事柄のほかに、非常に目につく事柄があるのではないかと思います。たとえば、従前においては送電のロスが非常に多くて、二三%ないし二四%ということで、これはどうしても直らなかったが、現在はそれが半分ぐらいになっておるようであります。これなんかもいろいろな技術の進歩というようなことがあるかもしれませんが、再編成の結果、企業が自主的な経営責任を持てるようになって、その結果、電力事業の経営管理が維持改善されてきたということのあらわれではないかと思いますが、その辺につきまして重ねてひとつお話を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/12
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013・福田一
○福田(一)国務大臣 お説のとおり、これはいわゆる利益を追求する場合と、単に仕事をすればいいんだというような形との差であったかどうか、あまりそれを大きく取り上げなかったのは、私はあまりそういうことを言いたくなかったからでありますけれども、実際には九分割いたしましたあとの送電ロスは、技術面の進歩が非常にあったことも事実であり、いわゆる大型の送電線をつくったことも一つの理由でありますが、二三%から最近はもう一一%前後まで送電ロスは落ちてきたと思うのでありまして、これの与えた好影響は相当大きなものであると思っております。それからこれは送電の場合だけではありません。そういう御指摘がございましたからでありますが、配電は前からそういう体制でやっておったのでありますが、いわゆる民間の工場その他に対する送電その他においても、いわゆる直接送電をした部分等についても、そういう面があったと私は理解をいたしております。いずれにいたしましても、国営にいたしました場合には、いま御指摘があったような一つの問題点がどうしても出てきがちであります。これはやり方いかんでございまして、出るとは限りませんが、出てきがちであります。ところが私企業という形になると、損をしては困るということでありますから、どうしても合理性というものがそれだけ出て管理の体制もそれだけよくなるし、またサービスもある意味においてよくなる。配電までも一ぺん国営にしてみたらどういうことが起きるだろうかということを想像してみると、これはわれわれとしては非常に不愉快な面のほうが浮かび上がる可能性が多いのであります。配電だけは切り離せばいいじゃないかということであれば、また考え方が別になりますが、しかし配電だけ切り離してやれるかどうか、いわゆる売電の場合、そういうことも考えてみると、これはなかなか問題が多かろうかと思うのでありまして、米の配給をやった場合を考えてみた場合でも、かなりいろいろの問題点があったわけであります。もう全部国営というような形がはたして適合するかどうか、こういう点を考えてみますと、相当の問題点があろうかと私は考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/13
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014・始関伊平
○始関委員 大臣は電力の再編成の当初には反対派の一方の旗頭であったと思いますが、その後の状況についての認識は大体正しかろうと思います。
そこで問題を進めまして、現在の電力体制の一つの特色は、九電力という民営事業の中に電発という特殊会社、国策会社が入っておることだと思います。それでこの電発というものが九電力の間にはさまっておりますことの意義、それから電力体制全体における役割りといったようなものについて簡単にひとつお話を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/14
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015・福田一
○福田(一)国務大臣 実はただいま御指摘がございましたとおり、私は電力の再編成には反対をしたのであります。ところが、これは率直に言って、ポツダム政令によりまして九分割ということになったわけであります。ところが、これは前のことを申し上げて恐縮ですが、当時の電力事情は電気を非常に必要とする、そこで九電力会社自体が電源開発をどんどんやらなければいけないわけでありますが、そういう場合には、国家資金も場合によっては直接投資をするような形において必要であるというような構想が高まってまいりまして、電力会社からいわゆる国の資金を大幅に得ようとするような動きも若干あったのであります。しかも低利なものを得よう、こういうことであったのであります。そういうようないわゆる資金問題もありましたが、どうも当時の電力会社の発電力というものを考えてみると、発電意欲がそれほど伸びていなかった、電源開発か進まなかった。そこで何としても一番大事なエネルギー問題を解決するためには、どうしてももう少し国として力を入れた発電会社を持つ必要があるのじゃないか、こういう考え方が出てまいりまして、それに基づいて電源開発株式会社というのが、当時のGHQの反対を押し切って実現いたしたというのが当時の実情でございまして、まあ私も片棒をかついだ一人でございますが、その電源開発株式会社というものは、国がほとんど出資をいたしておるのでありますから、国のコントロールができる、いわば一つの株式会社ではあるけれども、非常に国営的な色彩の強いものであります。現に総裁等は政府の任命ということになっているところを見てもおわかり願えると思うのであります。まあそういう性格でございますが、いまの電力界においてどういう役割りをつとめ、どういうことをしておるかといえば、すでに二百五十万キロワットのいわゆる大規模の水力の開発を行ないまして、それを電力会社に売電をいたしておる、設備の譲渡ではないのでありますが、とにかく電力を売っておる、そうしてその売る場合においても、若干公益性を加味いたしまして、相当な考慮も一部にはしてある面がございます。同時にまた九つの電力会社は、何といっても利益の追求が先に立ちますから、そしていろいろな発送配電等の問題が起きたときにも、広域的な運営をするという場合においても、利害の衝突がありますが、そういう場合にいわゆる広域運営の推進役のような形をいま電発がとっておるわけであります。もっとも最近はだんだん九電力におきましても、この必要性を非常に認めてまいりましたので、かなり協調的な広域運営が行なわれつつありますけれども、しかし何といっても利害の衝突が、私企業でございますから起こるのであります。そういう場合にも電発というものが広域運営の推進役をしておるという意味においては、私は大きな特徴があろうかと思います。要するに自分では配電をしない、そして電力会社に売電をする電力は起こす、こういうことでありますが、そういうようなことをいままでやってまいったわけであります。一方、最近になりますと、石炭問題等も出てまいりましたので、そこで石炭をどのように使うかということから、これは何としても電力会社が使わなければいかぬが、しかしまたこれを電力会社が全部発電所をつくっていくということもなかなか困難な事情になっておりますので、その大きな部分を占めるものに——大きな部分といっても一割か一割五分にしか当たりませんが、さしあたり二千五百五十万トンの石炭を使うとしても三百万トン前後のものが、今度は電発が火力として発電をする、その発電所をつくる、こういうふうに、総合的なエネルギー問題の一環ではありますが、石炭問題の解決の一翼を今度電発がになってまいったということは、一つの大きな特徴であろうかと存ずるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/15
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016・始関伊平
○始関委員 電発ともとの日発とは非常に違う。違いますが、何となく似ておるようなところも見えるのでございますけれども、簡単にずばり一言で言いますと、旧日発と電発との基本的な相違点は何かという点をお答えを願いたいと思います。
それからついでに、電発法の規定によりますと、将来発電するものは譲渡するというようなことも規定があるのでありますが、いまいろいろ大臣から電発の機能についてお話がございましたが、そういう機能は将来ともそのまま持続させていくほうがよろしいとお考えかどうか、一つには見通しの問題になると思いますが、その二点について御説明を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/16
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017・福田一
○福田(一)国務大臣 日発の場合は、これはもう御案内のように全国のおもな水力を全部持って、いわゆる発電所を持っておったということでありまして、そうして総合的にこれを発電し、配電をしておった、こういう形であったと思うのであります。ところが電発の場合においては、九つの電力会社でできないことをになって、そしてこれに協力しつつ全体としての電力供給、配電等に資する、こういう立場だと思うのであります。なお、この形態につきましては、今後も私は相当程度この形態でやっていくべきではないか、こう考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/17
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018・始関伊平
○始関委員 電気事業法案の中身に入りましていささか質問をいたしますが、電気事業というものは、本来地域的な独占事業である。電気事業法というものは、その地域的な独占を法律上保証すると申しますか、ギャランティしておるものだと思います。そこでこの地域的な独占という特権を認められておるかわりと申しますか、それと見返りに、電力業者にはある責任と義務とが課されておると思います。そのおもなものは供給責任だと思いますが、それとともに、一方におきまして政府が監督を加えて、独占の弊害というものが出てこないようにいろいろと考えてまいる必要があると思うのでありますが、この法案におきましてはどういうような新しい措置がとられておるのか、そういう点がございましたら御説明をいただきたいと思います。先ほど来大臣がお話しのように、もし利益の追求ということに走るのあまり独占の弊害が出るということではたいへんでありますが、その辺についてのお考えも承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/18
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019・宮本惇
○宮本政府委員 御指摘のように電気事業はその性質上、地域的に独占をさせるということは必要やむを得ないことではございますが、独占によります弊害を除去し、それから使用者の利益を保護するということは当然でございます。そのためにこの法案におきましては、従来どおり電気事業者に対し供給義務を課しますとともに、料金とか経理の規制を行なう。これによって私企業の利益追求を十分にチェックする。それから特に一般電気事業者に対しましては、いままでにございませんような電圧あるいは周波数を維持する義務を課す。供給に関する業務の方法の改善命令を出す規定を新しく入れまして、サービスの確保といったような点に配慮をしてございます。その他苦情処理の規定あるいは監査というような規定も新しく設けておりまして、こういう規定の運用とそれから行政指導によりまして十分に独占の弊害を除き、使用者の利益の保護に遺憾なきを期したい、こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/19
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020・始関伊平
○始関委員 それは私は独占の弊害の防止ということに多少役に立つ面もあるのではなかろうかと思いますが、自家発電というものですね、これはむしろ私は奨励するくらいの気持ちでやってみていいじゃないか。電力業者の独占というのは営業用電力の独占でございまして、自家発電には及ばないはずだと思うので、自家発電というものに対する当局の御方針、特に最近では共同自家発、営業用と自家発との共同発電所と申しますか、そういうようなものもできておるようでありますが、自家発電なり、それと同じ範疇に属してやや規模の大きくなったものとして共同自家発といったようなものに対しての当局の御方針をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/20
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021・宮本惇
○宮本政府委員 自家発電につきましては、大多数の場合は電気事業者によります大容量設備による供給のほうがコストが普通安くなると思われますが、場合によりましては廃ガスの利用とか、その他自家発のほうが利点がある場合もございます。したがいましてわれわれの立場といたしまして、自家発の建設自体について保安的な意味から規制を行なうだけでございます。それ以外にも、もし経済ベースが合うならば、特にいかぬというつもりは毛頭ございません。したがいまして、すべて問題は経済性によってきめられる、こういうことでございます。
なお共同自家発の場合も、これが使用によりまして経済性が高められるという場合には許可をする方針でございます。ただ実際問題として、大体の場合は発電会社から買置されたほうが安いという場合が多いので、そういう場合はおやめになるわけで、決してわれわれが押えたり、たとえば独占擁護のために押えるということはいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/21
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022・始関伊平
○始関委員 先ほど大臣から論及されたのですが、広域運営の問題につきまして三点をお尋ねいたします。
項をあげてお尋ねいたしたいと思いますが、最初に、広域運営につきましてはいろいろ批判もあって、一つのごまかしのようなものだというようなことを言う人もおりますが、広域運営というのは、広域運営の面から設備面の建設について考えるということはあと回しにいたしますので、現在でき上がっておる設備についての広域運営というものがどんなふうに行なわれているのか、それがいままでのところでキロワットアワー、あるいは金額でいってどの程度の利益を電力業界に及ぼしておるのかということをお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/22
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023・宮本惇
○宮本政府委員 御承知のように、広域運営は昭和三十三年以来九電力と電発が一緒になりまして行なわれておるわけでございますが、現在までの広域運営を分けますと三つございます。一つは、既設の設備の合理的運用を目的とするいわゆる経済融通というものが一つ、それから事故などが起こりましたときの異常時融通、それから第三番目に、電源の振りかえ建設に伴ういわゆる特定契約融通という形で行なわれております。三十三年以来五年間の実績を見ますと、融通電力量では、経済融通が十八億キロワットアワー、異常時融通が十五億キロワットアワー、それから特定契約融通が三十四億キロワットアワー、合計六十七億キロワットアワーにのぼりまして、それによります経費の節減額というものが、経済融通だけでも二十八億円というふうに一応試算されるわけでございます。
経済融通の具体的な実例といたしましては、たとえば電発の佐久間発電所は、常時は発電機を二台ずつ東京電力と中部電力に向けて運転されておりますが、たとえば東京電力の能率の悪い設備の運転をやめまして、中部電力が高能率の設備の稼働率を高める。そうしてかわりに佐久間発電所の中部電力分を東京電力に振り向けるというようなことで、東京電力と中部電力の両者の設備の運用が合理化されて、発電経費の節減の効果をあげている次第でございます。
さらに、先ほど申し上げました特定契約融通というものの具体的例でございますが、これは大阪火力融通といっております。これは関西電力が北陸電力のために大阪火力四号機、これは十五万六千キロワットでありますが、つくりまして、その発生電力量の十億キロワットアワーと同じ量の電力を、関西が富山県に持っております発電所から北陸へやる。これによりまして、たとえば送電線を長く引っぱるのが助かるというようなことで、相当な経費の節減を見ておる次第でございます。その他中部電力の四日市火力もやはり北陸との間で同じようなことをやっておる次第でございます。一応融通面からいきますと、まあ相当な効果をあげているのじゃないかと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/23
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024・始関伊平
○始関委員 広域運営という考え方を電力の施設の建設面に取り入れてまいりますと、これはかなり効果が大きいのじゃなかろうか。いまお話がありましたように、はるかによけいな効果、か期待できるのではないかと思います。たとえば予備発電所なんかを少なくするとか、あるいは並行送電線を一本で用が足りるようにできるとか、いろいろあると思いますが、将来こういった点についてどんなお見通しを持っているかということを、ついでに伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/24
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025・宮本惇
○宮本政府委員 御指摘のように建設面で広域運営を促進するために、今度の法案では施設計画の届け出義務、それからこれに対する変更勧告というような規定を整備しておりますが、この面での利益は確かに大きいと思うわけでございます。たとえば、西地域の中国電力、四国電力、九州電力が、電源の輪番開発というようなことも考えておりまして、予備力あるいは送電線の建設の面において大きな効果をあげるものと期待しておる次第でございます。たとえば、今後の計画といたしまして、三十七年から四十五年までの期間で試算いたしますと、百九十万キロワットのものが予備力が減るわけでございまして、建設費の節減が千二百億円くらいになるのじゃないかと考えております。また、送電線の建設につきましても、たとえば北陸電力の松岡という地区に対して、関西電力の富山県にある山元から直接送るということで、今度は北陸電力が必要な送電線の建設費が節減になるというような例はたくさんございまして、今後建設面にもできるだけこれを取り入れていきたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/25
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026・始関伊平
○始関委員 広域運営に対する質問の第三点といたしまして、従前は、これは電力会社の相互の協力、役所のほうからいえば行政指導ということでやっておったと思うのでありますが、今度は、何か法的に根拠を持ってこれを強力に進めていきたい、こういうことかと思いますが、この法的整備によって、広域運営というものは具体的にはどんなふうに進め得るようになるのかという点と、それから、あわせて、これは広域運営によりまして当事者の双方が利益を受ける、あるいは少なくとも一方が受けるという場合はいいと思いますが、一方が損をするというところまで広域運営はできかねると思いますが、そういった意味などにおいて、広域運営というものはおのずから限界があろうかと思います。そういう点についてお尋ねをしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/26
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027・宮本惇
○宮本政府委員 広域運営の具体的やり方といいますと、現在もやっておりますし、これから相当力を入れてやるというのは、たとえば、ブロック別の単一計画というものをつくる、あるいは、いま申し上げました輪番開発、共同開発というようなことをやることになると思いますが、同時に、確かに先生御指摘のように、おのずからそこに限界がございます。と申しますのは、いまおっしゃいましたように、片一方が損をしてまでこれをやれるかということになりますと、そこにおのずから限界がございます。ただ、われわれといたしましても、損はしないが、いままでのそこから出てまいりました利益を折半をするという思想、利益折半のあれを多少弾力的に運用する。たとえば一と九、二と八というような利益の分け方によって済むのじゃないか。それから、どうしても損をするというような場合には、ここに電源開発株式会社が出ていっていろいろなことをやるということもございます。したがいまして、もちろんこれを完全に進めるということになりますと、理屈からいえば一社がいいということになりますが、そうでなく、この広域運営の促進でも、いままでよりは数段の進歩で、これでいままでよりはかなりうまくいくのじゃないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/27
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028・始関伊平
○始関委員 次に、料金の問題について若干お尋ねをいたします。
再編成の当初は、とにかく地域格差が非常に大きくて困った。そのために、水火力の調整金制度というようなものもあったわけでございますが、これは実は先ほど大臣から、私のお尋ねより先にもう御答弁のほうがありましたので、重ねてお尋ねはいたしませんが、要するに、火力発電への依存度が、九電力の各地域を通じて共通して高くなるということに伴って、料金は少なくとも平準化の傾向にある。したがって、料金格差が大きいから、いまの企業形態はいけないんだという一種の非難と申しますか、攻撃というものは、私はあまり有力には主張できないような情勢になってまいった、このように考えます。この点は、御答弁のほうが先にございましたのでお尋ねはいたしませんが、ただ、これに関連いたしまして、今度は逆に、東北とか北陸とか、地域はあまり具体的に申すのはどうかと思いますが、安い電力をもって地域発展の原動力の一つにしようという考え方があるわけです。しかし、そっちのほうには故障が出てくるという、逆な問題のほうがむしろいまでは目立っておると思うのでありますが、これは結局は、安い電力でその地域の工業開発あるいは地域振興ということを考えるということは、いまの時勢では無理だということになるのか、その辺どうお考えか、これは大臣からお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/28
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029・福田一
○福田(一)国務大臣 これはこの格差の是正の問題ともからみまして、なかなか議論のあるところである。それからまた一方、電気料金というものは全国的になるべく平均化したほうがいいのじゃないかという問題もあります。そこで、私は、これは議論の分かれておる問題であると思うのでありまして、そういうような地域は大体いわゆる開発度の低いところばかりでありますから、そういう地域からいえば、できるだけ安い電気料金で工場を誘致しよう、産業を興そう、こういうような考え方にやはりなってくるわけでございまして、またそうしなければ、地域格差の是正はできないではないか、こういう議論も成り立ってくるわけでございます。しかしおしなべて、大きくいえば、私は、いま始関委員が言われたように、今後、そういうことによって地域の格差をなくするというやり方はだんだんむずかしくなるんじゃないか、ということは、まだまだ電気の需用がふえる。そのときに、ほとんど火力でこれを補っていくというような形になってまいりますと、高い火力を使わないわけにいかない。その高い火力を使って、しかも全国的には平準化されていくというような場合に、前の工場は、水力発電の安い電力を使っていたからというので、ある程度は安い電力を供給してやれるでしょうが、新しくいまここに工場を興すという場合に、その安い水力でできた電気を持っていってやるということは、これはもうほとんど困難な事情になってきておる。どうしてもその高い火力ということになる。しかし、高いとはいいながら、その火力は全国ほとんど同じなんでありますから、そういう意味からいって、安い電気を使っていわゆる地域開発をはかっていこうということは、なかなか困難になるのではないかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/29
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030・始関伊平
○始関委員 いまの問題は、大臣のおっしゃるとおり、やむを得ないことだと思いますが、これもすでに先ほど大臣の御答弁の中に出てまいったのでありますが、電灯料金の問題でございます。電力には要するに産業動力用の電気、あるいはその他原料用もございますが、産業用の電力と電灯と二つございます。キロワットアワー当たりの料金にいたしますと、三倍とか三倍半とかいうことになるのでありますが、これを単純に比較いたしまして、家庭用電力が高いという議論は、全くしろうとの議論で問題にはならぬと思いますけれども、しかし、配電費と申しますか、あるいは負荷率の相違、そういう点を考慮しても、まだまだ電灯のほうが高いという意見と申しますか、見方があるようでございますが、この点につきまして、この際、御意見を伺います。
なお、ついでに、日本の電力料金というものは諸外国に比べて少し高いんじゃないかという意見もあるようでありますが、実例につきまして、どこよりは高い、どことは同じくらいだ、どこよりは安いというふうな資料がございましたら、簡単にお話を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/30
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031・宮本惇
○宮本政府委員 電灯料金が単純に電力料金の三倍であるというような御意見に対しましては、先生もおっしゃいましたように、それなりの費用がかかるわけでございますから、同じというわけにはまいりませんが、ただ、いま御指摘のように、電灯料金のほうがそれにしても高過ぎるのじゃないかという御意見でございます。しかしながら、われわれといたしましては電気料金をきめます場合には一応綿密な原価計算を行なって、原価の個別配分を行なっておりますので、電灯料金が電力料金に比べて特に高いということはないのじゃないかと思います。外国に比べてどうかという御質問でございますが、これは外国の電気料金のシステムが非常に違いますので一がいには比較はできませんけれども、住宅用の料金はイギリスとかアメリカが概して安いのでございますが、フランスは日本よりは高いようでございます。イタリアでは特別の賦課金とか消費税がかかるということで、実払い額は高いようでございます。いずれにいたしましても、生活水準とか生活様式の相違によって需用構成も異なっておりますので、すぐ比較はできませんが、日本の平均的な使用料でございます八十キロワットアワー程度では、日本は比較的安いものと考えられております。それから電力料金につきましては、西独とかイタリアは日本よりは高うございますが、その他の諸国はほぼ同様でございます。したがいまして、概してみますと、世界水準に比べるとどちらかといえば安いということが言えるのじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/31
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032・始関伊平
○始関委員 料金格差の問題に関連いたしまして、企業格差の問題についてお尋ねをしておきたいと思います。これもすでに大臣から先ほどお触れになったのでありますが、好むと好まざるとにかかわらず、また利害得失を別にいたしまして、料金格差のほうは漸次縮小いたしまして平準化の傾向にある。これは否定のできない事実だし、平準化がだんだん進みましてほとんど全く同じになるのではなかろうかという気が私自身としてはいたしておりますが、そういうような傾向を前提にして考えますと、企業格差というものもだんだん減ってくるのじゃないか、ほとんど企業格差のないような状態にまでなるのじゃなかろうかという気持ちがしますが、その点についてどういうお見通しを持っておるのか。また料金平準化がある程度進んでも、企業格差があって一、二の企業はやっていけないということであると、そこに企業形態論というものがまた持ち上がってくるおそれもあると思うのでございますが、この点について当局はどう考え、また電気事業審議会ではどんなふうに考えているのか、この点をお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/32
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033・福田一
○福田(一)国務大臣 企業格差と料金格差との問題でありますが、いままでの姿は大体水力の非常に多いところは電気料金は安いという形できめられておる。ところが最近だんだん火力がふえてまいりましたので、全体としては平準化の形にはあるが、しかし料金の値上げを申請してきましても、もともと低いところの料金というのはそう上がるものじゃありません。いまでもやはり先ほど申し上げたように、一と一・五くらいの比率の料金の格差があるということは、いわゆる企業格差にはたいへんな影響を持つものだと思うのでありまして、これはどうしても順次平準化はいたしていくだろうと思います。また、料金が全部一緒になった場合には、私はかなり企業格差というものがなくなると思うのでありますが、しかし、それでも東北地方のような末端需用電力に比して送電量の非常に多いところと、関西地方のような密集地域といいますか、送電線に比較しては非常にたくさんの売電ができるというようなところでは、送電ロスの関係からいっても、また設備資金の関係からいっても、たいへんな違いがやはりあると思うのでありまして、私は、こういうことから、ある程度の料金の逆格差というものができないと実際には企業格差は縮小しないということも起こり得るとは思うのであります。しかし、それではそのウエートがどれくらいかということになりますと、料金格差がほとんどなくなった形においてならば、むしろそれほどの差がない、そして差がある場合は、逆にそういうような密集地域の電力料金を下げるという形も将来は起こり得るのじゃないか。東北電力と大阪の電力料金とが同じであるという形になった場合において、それは相当高水準になったときのことでありますが、そういうときには逆の考え方も起こってくるのじゃないか、こういうふうに私は考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/33
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034・始関伊平
○始関委員 火力発電への依存度が大きくなったことと、火力発電設備の近代化と大容量化によって、いままでは電力料金の問題が起こると、値上げの問題だけであったけれども、いまのお話だと値下げということも将来だんだん考えるようになるということでありまして、私もそういうことが可能であるし、そうしたいものだと思う次第でございまして、この点の見通しにつきましては大臣の御所見と私の考え方と一致をいたしております。
その次に、最低限度の日本国民の文化生活を確保するという意味からいいますと、少なくとも未点灯部落というものがまだ残っておる。しかも電気の普及率は世界でも高いほうだそうでありますけれども、まだ未点灯部落が残っておるということはたいへん遺憾であります。のみならず、電力業者としてのいわば根本の責任であります供給義務との関係においてもおかしいのではないかと思うのでありますが、これらの点についての御所見、また未点灯地区の現状なり今後の解消計画というものがあれば、お話を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/34
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035・宮本惇
○宮本政府委員 御指摘のように、わが国の電気の普及率というものは世界でも最も高い九九%以上ということでございます。しかしながら、現実問題として昭和三十八年の三月末現在で、全国に約五万戸の未点灯部落がございます。この未点灯部落の解消ということにつきましては、電気事業者それ自体従来から努力はしておりますものの、またさらに御承知の農山漁村電気導入促進法あるいは離島振興法というような法律によりまして補助金とか融資の措置が講ぜられておりますので、昭和三十八年度には九千戸を解消いたしましたが、引き続き三十九年度に九千戸、四十年度に七千戸というふうにだんだんと減らしていく計画でございます。ただ問題は、いま残っております未点灯部落というものがほとんど山間の奥地あるいは離島というところに分散をいたしておりまして、これがための工事費が非常にかかる。それから、同時にまた長い配電線を引っぱるわけでありますが、それの維持に多額の費用を要するというような非常に条件の悪いところでございます。したがいまして、主として工事費の負担力の問題から電気の導入が遅延している実情からいって、それがすぐ供給義務違反であると言えるかどうかは別といたしまして、いずれにいたしましても、これを早期に解決するように、今後一そう関係各省とも連絡をいたしましてその解消をはかりたいと思います。ただ、北海道あたりでも電灯だけの問題ではなくて、電報も行かない、それからお医者さんもいない、そういうところが非常に多いのでございます。したがいまして、もちろん電力もあれでございますが、地域開発としての全体の施策でお願いしなければならぬ面が多いのじゃないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/35
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036・始関伊平
○始関委員 供給義務違反であるかどうかは別としてということでありますが、その辺は大事な点だと思いますので、もう一ぺん説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/36
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037・宮本惇
○宮本政府委員 御承知のように法律には、正当な理由がない限り拒んではならないという規定がございますが、供給規定によりますと、たいがい、ある程度遠いところに引っぱる場合には工事負担金をいただいて工事することになっておるわけであります。ただ金が非常にかかる場合に、しかも地元に負担能力がない。いままでは、通常の場合農山漁村電気導入促進法その他の補助金なんかでやって、ある程度施設をつくる、それをあとから買い上げるという方法をとっておりますので、工事負担能力とからみまして、正当な理由というのは、工事負担能力がないという場合には正当な理由ということで送らなくてもやむを得ない。もちろん送るように努力はいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/37
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038・始関伊平
○始関委員 これは大臣にお尋ねいたしますが、日本の水力資源は非常に豊富、だといわれておったのでありますが、最近は非常に枯渇してきておるようであります。しかし、水力というものの重要性は今後といえども非常に高いのではなかろうかと思いますが、今後の開発についての御方針、それから水力発電の原価高騰の原因の一つは、補償費の増加が大きな原因になっておると思うのでありますが、補償費の軽減の問題、特にごね得をなくすることに配慮すべきであると思いますが、この点についての大臣の所見を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/38
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039・福田一
○福田(一)国務大臣 お説のように、日本は水力資源が非常に豊富だということでございましたが、包蔵資源三千六百万のうち、約半分は開発してしまいました。残りのほうは、やはりどうしても開発しますに多額の経費を必要とする、いわゆる非能率といいますか、前と比べれば高価な電力しか得られないようにはなっております。ただしかし、ピーク時を補うためのいわゆる水力電気というものはますます必要になってくると思われますので、今後もわれわれとしてはできるだけやはり水力発電を順次行なっていく。大体いまのところの計画では、年間発電計画のうちで二〇%ぐらいはやはり水力を開発していくというような形でやってまいりたい。年間四百万キロぐらいという予定をしております。したがって八十万キロぐらいは水力の開発をしなければならぬのではないか、こういう感じで見ておるわけであります。
それから補償の問題でありますが、確かにおっしゃるとおり補償で値段が非常に高くなりつつあることは事実であります。この補償の問題は電源開発だけではなくて、道路とかあるいはその他の公共的な事業を行ないます場合に常に出てくる問題でありまして、そういう問題とも関連して解決をしなければならないという意味で、いろいろいまくふうをいたしておりますが、まだ直接的な、全般的な法律案というものはできておらない。いままでのいわゆる既設の法律ではなかなかうまくいかないということであります。しかし、それではいけないというので、今度はまあ公共用地の収用の問題、これを強力に適用するというような形でだんだん直してきております。電源開発の場合においても、できるだけそういうことの少ないようにというくふうはいたしておるのでありまして、私のいま見るところでは、いまのところ特にその問題で隘路になっておるというところはないと思っておりますが、しかしやはり依然として相当な高額な補償費を払っておるから実はないわけでありまして、今後としては、これは一つの大きな課題として研究をしていかなければならないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/39
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040・始関伊平
○始関委員 これは局長に伺いますが、私が電力の再編成の問題のありました当時、GHQにおりましたアメリカ人に聞いたところでは、アメリカでは民間の電力施設の監督というものはほとんどやっていないということでありました。日本の場合には、電力施設の監督ということが電気事業法の大きなアイテムになっておると思いますけれども、民間の技術も非常に発達してきた。今度は主任技術者という制度も置くのでございますから、施設の監督を全くやめろというのは言い過ぎかと思いますが、相当大幅にゆるめていいのじゃないかと思いますが、今度の法律ではどう考えているか、所見を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/40
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041・宮本惇
○宮本政府委員 御指摘のように、アメリカでは電気施設の監督というのは連邦政府が設備能力の竣工検査、定期検査を行なっておりますが、具体的な監督は州政府または地方公共団体が担当しております。州なども数が多いので取り扱いはまちまちでございまして、必ずしも一様ではございませんが、たとえば検査などは、主要な施設のほとんどにつきまして州あるいはそういうものから委託されました保険会社がやっているのが普通でございます。ただ日本の場合、保険会社がそういうことができるかといった点は、まだそのままわが国には適用できないのでございますが、これは将来の研究問題ではあると思います。そこで、この法律案では、いま御指摘のように自主的に保安規定を設けさせる、あるいは主任技術者を置かせるということで、自主的な保安体制の整備をはかる、技術の進歩に即応する必要性があるというようなことで、認可制度の合理化、簡素化というものをいままでに比べますと非常にはかりまして、国の監督は公共の保安を確保するための必要最小限度にとどめるように配慮してございます。したがいまして、いままでは非常に許認可の書数が多いというようなことで、いろいろいわれておったのですが、今度の法律でいきますと、具体的には政省令できめることになりますが、少なくとも半分ぐらいは書類が減るということで、なるべく先生のおっしゃいましたような線で監督をしていきたい。ただし規模が大きくなりますと、保安という問題の監督だけは、やるべきことはやりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/41
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042・始関伊平
○始関委員 大臣にお尋ねいたしますが、最近火力発電所のばい煙なんかによる公害の問題が相当うるさい問題になっていると思います。特に重油だき、あるいは生だきによる火力発電所については、この問題が相当うるさいのではないかと思うのでありますが、これは別の見地から非常に重要な問題と思いますので、現状と御所見を大臣から御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/42
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043・福田一
○福田(一)国務大臣 お説のとおり、火力発電所のばい煙あるいは亜硫酸ガスによるところの被害というものは最近特に問題になりました。具体的には四日市等において問題が起きております。そこで、これについては九電力会社におきましても、いろいろこれを取り除くための施設を講じ、あるいは煙突を高くするとかその他いろいろそれを取り除くくふうをこらしておりますが、しかしながら公害という問題は非常に重要でございますので、われわれといたしましては、今後公害が起きるような場合には、発電所の建設についてこれを認可しないというたてまえをとらざるを得ないわけであります。現にただいまアラビア石油が沼津において精油所をつくる、またその近所で東京電力の火力発電を行なおうといたしておりますが、これ等についても調査団を派遣しておるところでありますが、もしそういう場合においても公害が非常にあるということであれば、われわれとしてはこの認可も考慮せざるを得ない、こういう考え方でおるわけでございまして、今後日本の場合においては公害を十分考慮しながら、また産業政策を考えていくというふうにいたしてまいらねばならないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/43
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044・始関伊平
○始関委員 たいへんどうもはっきりした御答弁でございますが、そうであるとすれば重油だきについてもそういう問題が多いと思いますけれども、特に生だきの場合には認むべきでないという結論に到達するかと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/44
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045・福田一
○福田(一)国務大臣 それはちょっとあれで、重油のほうがたいへんなんで、重油ですと、サルファー分がうんと圧縮されますから、なまだきのほうがまだ、ガソリン分がたくさん入っていてあれですから、いいということになるかもしれません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/45
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046・始関伊平
○始関委員 日本の発電量が年間一〇%とか一二%とかいうことでだんだん伸びてまいります。幾らか落ちついてはまいりましたが、今後ともこの増加の趨勢というものが続くわけだと思いますが、そうなりますと、国内石炭には限度があるわけでありますから、いままでのところでは重油なり原油なまだきというようなことで、この分量が実は非常に膨大なものになる。これは、発電用エネルギー源の確保という意味、あるいは輸送、貯蔵というような意味で非常に問題が多いと思うのであります。こういう点について、まあ数字はそれほどおっしゃっていただかぬでもよろしゅうございますが、大体順調にいくものとお見通しか、大局的な点の判断を大臣に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/46
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047・福田一
○福田(一)国務大臣 お説のとおり、これからまだ相当水力、火力ともに伸ばさねばいけないと思います。特に火力においての燃料の問題でありますが、それは先ほどもちょっと触れましたが、火力の問題では、四十二年度には石炭を一応二千五百五十万トン使うという計画でありますが、四十五年度くらいになりますと、これはもう三千万トンというような数量まで伸ばさねばならないかと考えております。一方、その場合において、まだいわゆる石油燃料といいますか、そういうものは相当程度海外から輸入をいたしてまいらねばならないのでありますが、特殊の事情が起きない限りにおいては、私はこれは、世界的ないわゆる石油供給事情から見て、まあまあ大体供給は受けられる。ただ、値段の問題等もございますので、今日の状況でいけばそれほど影響はないと思いますが、これが非常に高騰するような実情でもあれば、われわれとしてはたいへん問題としなければならない。したがって、今日やはり日本としては、日本の支配の及ぶような地域において、できるだけアラビア石油的なあるいはスマトラ石油的ないわゆる石油資源の開発も考えていかなければならないだろう、こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/47
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048・始関伊平
○始関委員 いまの発電用のエネルギー源の確保の問題に関連いたしまして、実はアメリカのように国内に各種エネルギー源の非常に豊富な国は別といたしまして、たとえばイギリスのように——イギリスの石炭は日本の約四倍もございますけれども、しかしイギリスでも将来発電設備というものが非常な勢いで伸びていく、その場合に、発電燃料源を外国から持ってきた重油なり石油燃料に求める、それのみに求めるということはいろいろな意味で非常に危険だという考え方が非常に強い。世界各国のうちでイギリスが原子力発電というものに非常に熱心なのは、私はそういったイギリスの特殊の事情からきておると思います。まさにイギリスと同じような立場にあるのが日本のエネルギー事情だと思うのでございまして、国内に有効な核燃料があるかどうかは別といたしまして、かりに外国から輸入いたします場合でも、核燃料というものは非常に分量も少ないし、手に入りやすく価格も安い。それよりも何よりも根本的には貯蔵が非常に容易だということに着目して、やはりエネルギー源というものは、大臣のおっしゃるように、石油の供給源を方々に分散する。日本人の手で石油を掘るということも大事でありますけれども、私はやはり原子力発電というものにもうちょっと関心を持って、これに力を入れていくべきではなかろうかと思います。油送船あるいは貯蔵設備その他の問題においても、私は石油の場合には非常に問題があろうかと思いますが、原子力の場合には簡単である。ただ問題は技術でありますが、原子力発電をやるということは、日本の科学技術水準の立場から望ましいのみならず、いま申し上げたような意味から、根本的にはそういう意味から必要性を理解すべきであろうと思うのでありますが、どうもこの点はあまり進まないように思います。私の考えとしては、非常に大規模なものをやれば採算的にも合うということのようでありますが、こういうものはいわば将来においては石炭なり石油なりに代替してやっていかねばならぬものですから、必ずしも特殊会社的なものでやる必要はないので、九電力のそれぞれにこれをやらすということのほうが望ましいと思うのでありますが、原子力発電の今日までの進捗状況と、それからいま申し上げましたような点についての大臣の御所見を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/48
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049・福田一
○福田(一)国務大臣 お説のとおり、これは原子力発電がコストが大体似通ったものになるならば、またいわゆる公害を防ぐといいますか、これによる人体への影響等を防ぐ施設は大体できておるのでありまして、そういう危険も私はなくなってきたと思いますが、それでも、それに対する不安感を持っておるというような空気が一掃されていかなければならないと思います。そうすれば原子力発電非常にけっこうだと私たちは考えておるのでありますが、いまの段階においては、当初予想したほどには原子力発電というものは実は経済性が高くない。いまの考え方でいきますと、やはり二十年後になっても原子力発電が占め得るであろう地位というものは、エネルギーのいわゆる電気の問題においても大体一〇%までいければもうたいへんなものじゃないか。世界的に見ても私はそういうふうに聞いております。日本においても、いま先生の言われるような観点から、原子力の発電については大いに努力をいたさなければならないわけでありまして、しかもこれは経済性があるということがたてまえになれば、何も電源開発とかそういうことでやる、いわゆる国家的な機関でやらなければならないというものではございません。したがって、ただいま東海村でやっておる発電所に続きまして、もう一カ所は福井県の敦賀で最近年度内に着手して、二十五万くらいの——二十万キロくらいになるかもしれませんが原子力発電所をつくる予定になっております。一方、お説のように、これは電力会社のほうでも時勢に乗りおくれてはいけないというので、東京、中部、関西というようなところは、それぞれ原子力発電の計画を持っておりまして、関西等はすでに敷地を、先ほど申し上げました敦賀の反対側に購入いたしまして、来年から着手する。これは今年じゃなく来年から着手だと思いますが、これまた二十万キロくらいのものを一つ着手しょうというふうに開発を進めております。が、どうもそういうふうにいわゆる原料を運ぶとか、原料の貯蔵とかいう意味では非常に便利なんですが、まだコストの面でそれだけの利益があがる見通しが完全についていない。私は、これはコストがそこまでくれば、まだまだこの方に力が入ってくると思うのです。
〔早稲田委員長代理退席、委員長
着席〕
そこで、むしろコストが高いうちは国でやったらいいんじゃないか、もっとやったらいいんじゃないかという問題も逆に出てくるんじゃないかと私は考えるのでありますが、しかしいずれにしても、民間といわず国といわず、私は、新しい第四の火である原子力の開発ということについては、今後大いにやはり積極的に努力をいたすべきである、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/49
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050・始関伊平
○始関委員 原子力発電についての私の知識はきわめて不十分でありますが、私の承知いたしておりますところでは、大体原子力発電五十万キロワットくらいの単位になりますとほぼコストが見合う、ほかの発電と比べてコストが見合うというふうに聞いておりますが、五十万キロワットの規模を持った発電所をつくるということは、日本ではそう簡単にできませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/50
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051・宮本惇
○宮本政府委員 規模だけから申し上げますと、御承知のように最近の重油火力でも六十万、五十万というのが出てきておりまして、原子力発電で五十万キロワットのものが不可能ということは申し上げられないと思います。ただ、まだアメリカにおきましても五十万キロワットのものがほんとうに経済的に運転されるかどうかといった点が、多分に何と申しますか実験的な運営がされておりまして、これがほんとうに日本へ持ってきた場合に、たとえば二円幾らというような値段で発電ができるかどうかという点は、まだアメリカにおきましてもはっきりいたしておりません。したがいまして、近き将来におきましては五十万あるいは六十万、さらには百万程度の原子力発電所というものは日本でも技術的には可能であろう、こう考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/51
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052・始関伊平
○始関委員 原子力発電の問題は、いまアメリカというお話しだが、むしろお手本はイギリスのほうがよくはないかと思いますが、その点はその程度にしておきましょう。
最後に私、もう一ぺん企業形態の問題に返って大臣にお尋ねをいたしますが、要するに現在における電気事業法制定にあたっての最大の問題は、私企業というたてまえと電力事業の公益事業としての公共的使命というものとの調和という問題になると思うのであります。利益を追求する、ですから経営管理が非常に締まってくる、能率があがるというふうな点はこの体制の長所でありますが、一面におきまして、国家的要請に即応できないという面があれば私は非常に困ると思うのでございます。最近では、たとえば先ほども大臣の御答弁の中にもございましたが、国策的な総合エネルギーの観点から石炭を使ってくれというような点につきましても、これは私は必ずしもわかりがよかったとは思いませんが、ある程度の日時を経まして現在ではそれも納得しているというような、これは国策的な様相の一つだと思いますが、だんだんと公益事業としてがまんすべき点と申しますか、受忍していくべき点は受忍していくということになっていると思います。大臣も二年ばかり通産行政を最高責任者としておやりになってまいったわけでございますが、電力会社が私企業というたてまえであっても、とにかくその長所を発揮しながら、公益企業としての使命にも相当にこたえてくれておると申しますか、こたえておるというふうにお感じになっておられるかどうかという点を最後にお尋ねいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/52
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053・福田一
○福田(一)国務大臣 お説のように約二年間やっておりまして、しばしば電力会社の経営者ともいろいろの問題で折衝したり話をしたりしておりますが、私はそういう意味でいわゆる公益性をどの程度認識されておるかという意味では、かなり認識をして事業の経営をやってもらっておると思っております。たとえばこの間東北電力の値上げの問題が起きましたときに、広域運営的な考え方で、東京電力がかなり協力をいたしております。もちろん電発が協力するのはその会社の性質上当然でありますが、東京電力が協力しておる。また北陸電力と関西電力との電力融通の関係等におきましても、かなりそういうことを認識しつつ、全体として損をしないようにするということであれば、できるだけのことをしょう、こういう空気が出てきておると思うのであります。ただ、いま考えてみますというと、やっぱり経営の苦しいところ同士ではなかなかこれはうまくいかない面があるわけでありますが、しかしそれもさっき局長から申し上げましたように、利益の配分を一対九にするとか、二対八にするとかという形において、できるだけやらなければならぬという考え方になってきておりますので、まあ私としましては現在のところ満足すべき状態である、こういうふうに結論をさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/53
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054・二階堂進
○二階堂委員長 次会は、来たる四月二十八日火曜日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することにし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604461X03719640425/54
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