1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年二月四日(火曜日)委員長の指名で、
次の通り小委員及び小委員長を選任した。
税制及び税の執行に関する小委員
臼井 莊一君 小川 平二君
大久保武雄君 金子 一平君
田澤 吉郎君 濱田 幸雄君
原田 憲君 藤井 勝志君
小松 幹君 平林 剛君
堀 昌雄君 武藤 山治君
春日 一幸君
税制及び税の執行に関する小委員長
濱田 幸雄君
金融及び証券に関する小委員
小川 平二君 大久保武雄君
押谷 富三君 金子 一平君
田澤 吉郎君 原田 憲君
藤井 勝志君 吉田 重延君
有馬 輝武君 岡 良一君
佐藤觀次郎君 松平 忠久君
竹本 孫一君
金融及び証券に関する小委員長
大久保武雄君
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昭和三十九年二月六日(木曜日)
午前十時九分開議
出席委員
委員長 山中 貞則君
理事 臼井 莊一君 理事 原田 憲君
理事 藤井 勝志君 理事 坊 秀男君
理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君
理事 堀 昌雄君 理事 武藤 山治君
天野 公義君 伊東 正義君
岩動 道行君 宇都宮徳馬君
大泉 寛三君 大久保武雄君
押谷 富三君 金子 一平君
木村 剛輔君 木村武千代君
小山 省二君 砂田 重民君
田澤 吉郎君 福田 繁芳君
藤枝 泉介君 渡辺美智雄君
卜部 政巳君 岡 良一君
小松 幹君 佐藤觀次郎君
田中 武夫君 只松 祐治君
野原 覺君 日野 吉夫君
平林 剛君 松平 忠久君
春日 一幸君 竹本 孫一君
出席国務大臣
内閣総理大臣 池田 勇人君
大 蔵 大 臣 田中 角榮君
出席政府委員
大蔵事務官
(大臣官房財務
調査官) 松井 直行君
大蔵事務官
(主計局次長) 中尾 博之君
大蔵事務官
(理財局長) 吉岡 英一君
大蔵事務官
(銀行局長) 高橋 俊英君
大蔵事務官
(為替局長) 渡邊 誠君
委員外の出席者
大蔵事務官
(理財局証券部
長) 加治木俊造君
専 門 員 坂井 光三君
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二月五日
委員岩動道行君辞任につき、その補欠として倉
石忠雄君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員倉石忠雄君辞任につき、その補欠として岩
動道行君が議長の指名で委員に選任された。
同月六日
委員田中武夫君辞任につき、その補欠として山
花秀雄君が議長の指名で委員に選任された。
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二月五日
外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する
法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六二
号)(予)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
国民金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣
提出第四〇号)
日本開発銀行法の一部を改正する法律案(内閣
提出第四二号)
日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案(内
閣提出第五一号)
昭和三十八年産米穀についての所得税の臨時特
例に関する法律案(内閣提出第二九号)(予)
税制に関する件
金融に関する件
証券取引に関する件
外国為替に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/0
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001・山中貞則
○山中委員長 これより会議を開きます。
税制金融等当面の基本施策について大蔵大臣より説明を聴取いたします。田中大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/1
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002・田中武夫
○田中国務大臣 本国会におきまして御審議を願うべく予定いたしております大蔵省関係の法律案等で、すでに提出が確定いたしておりますものは、昭和三十九年度予算に関連するもの十三件を含め三十件でありまして、このうち法律案二十七件及び承認案二件について当委員会において御審議を願うことになるものと存じております。何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたしたいと存じます。
なお、この機会に、財政、金融政策及び国際経済政策に関する所信の一端を申し上げたいと存じます。
本年はわが国が本格的に開放体制へ移行する年であります。OECD加盟、IMF八条国移行等開放体制への移行こそは、日本経済が国際経済社会においてさらに大きく発展していくためにみずからが選んだ発展への道であります。しかし、同時にわが国経済が世界経済の影響をより直接的に受け、また国際経済上の要請に一段と積極、機敏に応じていかねばならないこととなるのも明らかなところでございます。私は、このような事態に即応し、わが国経済が堅実な発展を続けてまいるためには、日本経済に内在する成長力を国際経済の動向、国際収支、物価の動き等内外の諸要因の推移に応じ、適切に調整しつつ、社会、経済の各部面において所要の体質強化を着実に進め、国民経済全体としての生産性をさらに高め、安定的な成長を実現してまいることが肝要であると考えておるのであります。
昭和三十九年度予算及び財政投融資計画におきましては、このような見地から、国際収支の改善と物価の安定を主眼とし、財政が景気に対し刺激的な要因となることを避けるため、健全、均衡財政の方針を堅持することにいたしておるのであります。支出内容におきましても、将来にわたる国力発展の基盤を充実し、経済各部門の均衡ある発展に資するため、農林漁業及び中小企業の近代化、社会保障の充実、社会資本の整備等の重要施策に対しまして資金を効率的、重点的に配分し、その着実な進推を期しておるのであります。また、税制面におきましては、国民負担の軽減、合理化をはかり、あわせて企業資本の充実等所要の体質強化を進めますため、中央地方を通じ、平年度二千百八十億円に及ぶ画期的な大幅減税を行なうことといたしておるのであります。さらに、財政と金融とは一体となって運営さるべきものでありまして、今後の金融政策の運用にあたりましても財政上の諸施策と相まって、経済の安定的成長とその体質強化を期してまいる所存であります。
税制改正のうち国税関係法案につきましては、いずれ当委員会において御審議を願うこととなるのでございますが、主要な税制改正法案についてその概要を申し述べますと、所得税におきましては、国民生活の安定に資するため、広く基礎控除、配偶者控除、扶養控除を引き上げるとともに、専従者控除及び給与所得控除の改正、譲渡所得課税の適正合理化等所要の改正を行なうことといたしております。
法人税におきましては、企業の経営基盤の強化をはかるため、機械設備を中心に固定資産の耐用年数を平均一五%程度短縮するとともに、中小企業の負担の軽減をはかるため、難波税率の適用、所得限度額及び同族会社の留保所得課税控除額の引き上げを行なうことといたしました。さらに、企業の国際競争力の強化、科学技術の振興、企業資本の充実等当面要請される諸施策に即応する特別措置を講ずることといたしたのであります。
このほか、相続税及び贈与税につきましては、基礎控除の引き上げ等の措置を講ずることにいたしております。
また、地方税におきましては、市町村民税の負担の不均衡を是正するため、その制度の合理化をはかるとともに、固定資産税の負担の調整、電気ガス税の引き下げ、法人及び個人の事業税の軽減等の措置を講ずることといたしたのであります。
他方、道路の整備財源の拡充をはかるため、道路整備計画の改定と見合って揮発油税、地方道路税及び軽油引き取り税の税率をそれぞれ引き上げることといたしております。
なお、関税率につきましては、経済の諸情勢に応じ、所要の調整を行なうとともに、とん税及び特別とん税につきましては、国際収支の改善に資するため、その税率をそれぞれ引き上げることといたしたのであります。
金融政策につきましては、最近における国際収支の推移、生産及び物価の動向、金融機関の貸し出しの趨勢等に顧み、昨年十二月日本銀行による準備預金率の引き上げが行なわれたのでありまして、企業の資金需要及び金融機関の貸し出しの増勢は鎮静に向かうものと期待をしておりますが、今後とも経済の動向を慎重に見守りながら、期に応じて適切な施策が実施せられ、資金需給の調整を通じて経済活動が適正に保たれるよう意を用いてまいる所存であります。
その際、近代化、合理化により新たな発展への道を求めつつある中小企業等の真剣な努力が、これによって阻害されることのないよう一そう細心の注意をいたしてまいる所存であります。
次に、開放経済への移行に伴い、企業の自己資本の充実と長期安定資金の確保の必要性はますます強まり、金融及び資本市場の重要性は一段と高まってきておりまして、この際、各金融機関に対しましては、国民経済的視野に立った節度ある融資態度が、また証券業者に対しましては経常の健全化、投資勧誘態度の適正化が一そう強く要請される次第でありますが、政府といたしましても健全金融の推進、資本市場の育成強化について、今後とも細心の配意を加えて願いる所存であります。
わが国は近くOECDへ正式に加盟し、世界の主要先進諸国との協力関係を一そう緊密化するとともに、四月一日を目途とするIMF八条国への移行に伴い、わが国の円は交換可能通貨として広く世界の諸国から認められることとなるのであります。このような事態に対処するための努力の一環として、わが国がかねて進めてまいりました対外取引の自由化につきましては、本年において外貨予算制度の廃止、渡航制限の緩和等を行ない、経常取引に対する為替制限の撤廃を一応終了いたしたいものと考えております。
また、国際金融協力につきましては、IMF借り入れ取りきめ参加十カ国蔵相会議の一員として、国際流動性確保のための対策の検討に今後と本積極的に参加いたしてまいる所存でありますが、関税の一括引き下げ、低開発国問題につきましても、これらの動きに積極的に対処しつつ、わが国難業界の実情をも勘案して今後の関税政策を進めてまいりたいものと考えておるのであります。
国際収支につきましては、輸出は順調な伸びを示しておりますものの、輸入が国際商品価格の高騰等、一時的な要因もさることながら、生産の大幅な上昇から顕著な増加を見せ、海運その他の貿易外収支における赤字幅の拡大と和まって経常収支は昨年年初来一貫してかなりの逆調を呈するに至っておるのであります。政府といたしましては、基本的には財政金融政策等、各般の施策において万全を期しつつ、貿易収支の均衡回復と貿易外収支の赤字基調是正につとめてまいるとともに、出面は国内資本の不足を補い、国際収支の波動に対処する準備を手厚くするため、優良な安定外資の秩序ある導入をはかってまいる所存であります。
以上、財政金融政策及び国際経済政策について所信を申し述べました。私は、これらの施策を着実に推進してまいるにおきましては、国民の努力にささえられて、わが国経済はますます発展し、より豊かな国民生活が築き上げられるものと確信しておるのであります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/2
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003・山中貞則
○山中委員長 次に、国民金融公庫法の一部を改正する法律案、日本開発銀行法の一部を改正する法律案、日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案及び昭和三十八年産米穀についての所得税の臨時特例に関する法律案の四案を一括して議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/3
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004・山中貞則
○山中委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。田中大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/4
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005・田中武夫
○田中国務大臣 ただいま議題となりました国民金融公庫法の一部を改正する法律案外三法案につきまして、提案の理由及びその概要を御説明申し上げたいと存じます。
最初に、国民金融公庫法の一部を改正する法律案について申し上げます。
国民金融公庫は、銀行その他一般の金融機関から資金の融通を受けることを困難とする国民大衆に対して、必要な専業資金を供給することを目的として昭和二十四年六月に設立されて以来、国民大衆の旺盛な資金需要に対処して、その業務の推進をはかってまいったのでありまして、昭和三十七年度末において、その設立以来の融資総額は八千十九億円、その融資残高は一千六百十四億円に達しておるのであります。
昭和三十八年度におきましても、普通貸し付け一千五百七十億円、恩給担保貸し付け百七十億円、その他の諸貸し付けを含めて総額一千七荷六十二億円の貸し付けを予定しているのでありますが、その他の諸貸し付けのうち、農地被買収者で銀行その他一般の金融機関から生業資金の融通を受けることを困難とする者に対し、二十億円の貸し付けを行なうことといたしております。
以上申し述べましたような計画に対応し、必要な資金として三十八年度内に政府資金六百七十五億円を新たに供給することとしておりますが、公庫の経営基盤の一そうの強化に資するため、政府資金のうち二十億円は一般会計からの出資金を予定しておりますので、これに伴い、公庫の資本金二百億円を二十億円増額して二百二十億円とする必要があります。
次に、日本開発銀行法の一部を改正する法律案について申し上げます。
日本開発銀行が、設立以来、長期設備資金の融通により、わが国経済の再建及び産業の開発に寄与してまいりましたことは、御承知のとおりでありまして、今後とも同行の業務活動に期待するところはきわめて大きいものがあると考えます。
次に、今回提案いたしました改正法案の概要を申し上げたいと存じます。
第一は、同行の業務として土地造成資金の貸し付け業務を追加することであります。近年、地域間の均衡ある発展をはかるため地域開発がますます重要なものとなっておりますが、この地域開発には企業の進出等に対処するため用地の造成が必要でございます。現行の日本開発銀行法におきましては、自己の事業の用に供する土地の取得につきましては融資を行なうことができることとなっておりますが、このたびこれに加えまして、経済の再建及び産業の開発に寄与する事業の用に供する土地にあっては、譲渡を目的とする土地の造成についても融資の道を開こうとするものであります。
第二は、理事及び参与の増員であります。同行の業務は、設立当初においては基幹産業に対する融資を中心に運営されておりましたが、その後地域開発融資等が加わるなど逐年多様化いたしておりますとともに、その融資残高も昨年十二月末においては八千二百五十九億円の巨額にのぼっております。このような同行の業務の推移にかんがみ、同行の業務の円滑な運営をはかるために理事及び参与の定数をそれぞれ一名増加しようとするものであります。
次に、日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案について申し上げます。日本輸出入銀行が、設立以来、プラント輸出金融を中心として輸出入及び海外投資に関する金融を行ない、わが国貿易の振興並びに経済協力の推進に格段の寄与をいたしてまいりましたことは、御承知のとおりでありまして、今後とも同行の業務活動に期待するところはきわめて大きいものがあると考えるのであります。
次に、今回提案いたしました改正法案の概要を申し上げたいと存じます。
第一は、同行の業務として外国政府等に対し貸し付けられた民間資金にかかる債務の保証業務を追加することであります。東南アジア諸国等に対する経済協力の推進はわが国貿易の振興上きわめて重要な課題となっており、すでにインド、パキスタン等の諸国に対して数次にわたり借款を供与いたしておりますが、その供与にあたっては、民間資金の活用をはかるため市中銀行の協調融資を求めるのが例となっております。今回の改正は、市中銀行が日本輸出入銀行とともに外国政府等に対し、わが国からの設備等の輸入に必要な資金を貸し付けた場合、その協調融資分にかかる債務について日本輸出入銀行が保証することにより、市中銀行の融資を容易にしようとするものであります。
第二は、同行の業務としてわが国からの設備等の輸入による債務の履行に必要な資金を外国政府等に対して貸し付ける業務を追加することであります。わが国からの輸入代命等の支払いが、その国の国際収支上の理由から著しく困難な場合に、その国の要請に応じて主要な債権国において債務の履行の繰り延べ等が行なわれることが確実と認められる場合には、日本輸出入銀行が当該債務国の政府等に対し、その債務の履行に必要な資金を貸し付けることができるようにするものであります。
第三は、政府が予算で定める金額の範囲内において日本輸出入銀行に追加して出資できることとし、この場合において同行はその出資額により資本金を増加するものとしようとするものであります。輸出の振興をはかるためには、日本輸出入銀行の資金の充実が緊要であります。このため刑に御審議願っております昭和三十八年度補正予算におきましては、産業投資特別会計から日本輸出入銀行に対し六十億円を、昭和三十九年度予算におきましては同じく二百二十五億円をそれぞれ追加出資することといたしておるのであります。
第四は、同行の業務範囲の拡大と業務量の増大に対処し、同行の業務の円滑な運営をはかるため、理事の定数を一名増加しようとするものであります。
最後に、昭和三十八年産米穀についての所得税の臨時特例に関する法律案について申し上げたいと存じます。
この法律案は、昭和三十八年産の米穀につき、事前売り渡し申し込み制度の円滑な実施に資するため、米穀の生産者が、同年産の米穀を政府に対し事前売り渡し申し込みに基づいて売り渡した場合においては、同年分の所得税について、売り渡しの時期に応じ、玄米換算百五十キログラム当たり千七百五十円ないし千百五十円を非課税とする措置を講じようとするものであります。
以上が国民金融公庫法の一部を改正する法律案外三法律案の提案の理由及びその概要であります。
何とぞ御聴講の上すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/5
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006・山中貞則
○山中委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
各案に対する質疑は次会に譲ることといたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/6
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007・山中貞則
○山中委員長 これより税制金融等の基本施策について質疑を行ないます。
総理におかれましては、本委員会の持つ歳入委員会としての特色に敬意を払われまして、特別の出席をいただきましたが、出席時間は一時間でございますけれども、予定時間十一時半に総理の遅刻の時間三分を足しまして、十一時三十三分までといたしますので、その間において十分の成果をあげられるよう、委員の御協力をお願い申し上げます。
質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐藤觀次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/7
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008・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 先日、池田総理がわが党の横路委員の質問に対しまして、国民の利益になることならば自分はどんなことでもやるという、こういう発言をされました。私は、御承知のように、いま中共貿易がだいぶ問題になっておりますが、これはいま台湾と中共のどちらと貿易をやったほうがいいかということが問題だと思うのです。この間総理は、恩義もあるからということでありますが、恩義という問題と貿易の問題とは別個だと思うのです。そういうような場合に、日本の現在の事情を考えて、どのような処置をされるかということについて伺いたいと思うのであります。
御承知のように、最近イギリスでは、アメリカがあのくらいきらっているキューバヘバスを百五十台売ったといわれております。イギリスほどがめつくやらなくてもいいけれども、現在の日本の経済の事情を考えて、思い切った施策をやるべきではないかというふうに考えております。私はそういう点から、韓国とか台湾とかいうような小さいものではなくて、もっと大きい見地から、総理はこの際考え直す必要があるのじゃないかと思いますが、総理はどういう御意見を持っておりますか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/8
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009・池田勇人
○池田国務大臣 政府といたしましては、国家国民全体のための利益を考えてやらねばならないのであります。もちろん貿易の振興ということは、国家の利益になることはお話のとおりでございます。しかし国の安全と平和、長い目で見ての国の繁栄、世界の平和ということを考えますと、一国との貿易の増大のみというわけには参りません。したがいまして、私は日本の置かれたアジアにおける地位、また世界における日本の立場等を考えまして、近隣と仲よくすることはもちろんでございまするが、そういう広い大きい立場から中共問題を考えていこうとしておるのであります。もちろん中華民国政府とは、御承知のとおり日華平和条約を結んでおります関係上、しかもまたいまのアジアの情勢からいって、中共政権と中華民国との立場を考え、いますぐ思い切ったと申しますか——人によっては思い切った貿易を池田内閣はやつていると言う人もありましょう。私は政経分離の立場から、できるだけ貿易をふやしていこうという方針でただいまのところはやむを得ないのじゃないかと考えております。
なお、イギリスがキューバにバス等を輸出したことにつきましては、これはイギリスの立場でございます。これに対していろいろの批判もあることを聞いておりますが、しかしそういうことは他山の石とすべきでございますが、イギリスがそうやったからといって日本が中共に特にどうこうということは、私はいま考うべきではない、われわれはわれわれの立場で中共と適正な民間貿易を進めていくことによって、相当の利益が上がるのではないか。御承知のとおり、昭和三十八年度は一億二千万ドル余りのものが出ました。これは前年に比べますと五割余りの増加、そしてまた前々年、二年前に比べますと三倍近く、ほとんど幾何級数的に近いほどの貿易の増加が見られつつあるのであります。私はこういうたてまえで中共貿易を進めていくことがいまの日本としては一番適正な方法と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/9
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010・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 総理はアメリカとの関係もあるしとおっしゃるが、御承知のようにケネディがなくなってからのアメリカは、総理が考えている意味とはだいぶ違っている。ケネディとジョンソンとはだいぶ幅も違っているし、おそらくいまのアメリカ政府というのは、国内のことだけで一ぱいではないか、こういう中にあって、ちょうどフランスの中共問題が出てきまして、それと同時に、最近日本の貿易が、御承知のようにソ連、北鮮向けというような方面がふえてきたということは、二、三日前の新聞を見ればわかるわけでございますが、御承知のように日本のいまアメリカに出しているのは、写真機とかトランジスターとか綿業などというものが非常に多い、いわゆる軽工業が多いのですが、いま中共が求めているのは、やはりトラクターとか肥料、建築資材等で日本が売りたいというようなものが非常にたくさんあるという現状でございます。こういう点について、時期というのがあるので、現にオランダは中共と貿易を非常にやっておって、建築資材を盛んに輸出しているようでありますが、やはりあなたの党でも松村さんとかあるいは高碕さんたちは中共貿易に対して非常に熱意を持っておられます。そういう立場を考えるときに、あとでお伺いしたいと思いますが、日本は非常に不景気だという現状から考えて、やはりこの際思い切って、池田さんも三年も総理大臣をやっておられますから、もうそろそろ池田さんが何かこのくらいのことをやったということをやるべきだと思いますが、そういう決心がつかないのでありますか、お伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/10
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011・池田勇人
○池田国務大臣 日々これ新たに、新しいこと、そうして国のためになることはどしどしやっておきたいという気持ちで進んでおります。
中共との貿易につきましても、額につきましては先ほど申し上げたとおりでございます。お話の肥料、トラクターあるいは重工業品も出ております。肥料も五十万トン硫安換算で出たと思います。また鋼材も六百万ドルばかり出ております。御承知のとおりこっちも売りとうございます。向こうも買いたい、この気持ちは合っておりますが、何と申しましても、向こうは政府貿易でございます。そうして所有外貨にも制限がございますので、ほとんどバーター的になっているものでございますから、日本は売らないというのではない、向こうが買う能力がそれだけ十分でないということが実情だと考えるのであります。したがいまして、チンコムの制限を受けざる限りにおきましては、私は向こうに売るのにやぶさかではございません。ただ向こうの支払い能力を十分考えていかなければならぬということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/11
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012・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 中共貿易はそれぐらいにいたしまして、最近非常に日本で目立っておるのは、貿易外の収支が非常に赤字が多いということであります。これは御承知のように、三十八年度で四億一千万ドル、それから三十九年度で大体四億五千万ドルぐらいの赤字が出るように計算されておるようですが、そうするとまごまごすると一年に十億ドルぐらいの赤字が出るのではないかといわれております。これは船舶などの問題についても、最近は船舶の合併の問題が出まして、おいおいということになるかもしれませんけれども、いわゆる貿易以外の赤字が非常にふえておるという現実はいろいろ矛盾が出ておるのではないか、この点について首相はどのようにお考えになっておられますか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/12
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013・池田勇人
○池田国務大臣 貿易外収支の赤字をできるだけ少なくするためにいろいろ私も考えまして、昨年措置いたしましたことは、いわゆるとん税、上屋の使用料の引き上げ、私はとん税を調べてみますと、日本のとん税は非常に安い。だからこれは大いに上げるべきだ。なぜ上げないかというと、やはり日本の船会社の収支があまり芳しくないから、船会社に直接相当の負担がかかるというので、とん税を各国よりも非常に安くしておった。ぼくはそれはよくない、各国並みあるいはそれ以上に上げてもいいじゃないか、そうして外国の船舶にもとん税の負担をよそ並みにさすべきだ、よそ以上にさしてもいいじゃないか、そして日本の船会社が困るのならば固定資産税を安くしろ、こういうことでとん税の引き上げをやった。これは金額にしてはそうたいしたものではございませんが、考え方としてそう進むべきだというので、昨年その措置をとったのでございます。しかしそれにいたしましても、その金額は微々たるものである。何としても貿易外収支の赤字のおもなる原因はやはり船賃でございます。毎年輸出入が一割以上ずつふえていく国は世界にほとんどございません。しかも日本の輸入は非常にかさが多いものばかりで、船賃でかかる費用は相当なものなんでございます。そこで私はまず第一に、船会社の整理、そしてまた日本の船をたくさんつくる。私は誤りであったとは申しませんが、いままで輸出のために、相当外国船の受注を受けて、年に百万トン余りも、平均で百万トン以上、いまは二百万トン以上になっておりますが、そういう船を日本でつくって外国に持たす、その外国の人が日本の品物を運んで船賃をとる、こういうことはよくない。輸出船は非常に輸出貿易の促進に役立つというので奨励したのですが、もう一ぺん考え直して、輸出船もさることながら、日本の船をつくったらどうだ、こういうことで昨年来私は強くこれを言っておるわけであります。したがいまして、船会社の整理ができ、そして政府がもっと力を入れていくならば、私は貿易外収支の赤字を少なくする上に一番必要だ。所得倍増計画で申しますると、大体輸出入の六、七割を日本の船で運ぶということになりますと、千三、四百万トンの船が必要であるのであります。私はそういう方向で船腹の増加をはかっていくべきだ、こういう方針をいま立ててこれに向かって進んでおります。またその他の貿易外収支の赤字はいわゆる特許料、金利等でございます。特許料なんかも、日本の戦争によりまする科学技術のおくれを取り戻すために相当やってまいっておりましたし、またそれも必要であったのであります。これを一がいにとめるわけにはまいりませんが、これは国内の科学技術の進歩によってだんだんこれが減ってくることをわれわれ期待いたしております。また金利の問題につきましては、日本の経済の成長のために、商売を繁盛させるのに銀行から借りるのも一つの手であります。これは適正な借り入れ金ならやむを得ない。これは今後減るとは考えられないが、ふえていくものはやはり船腹によって補う。また一方は観光事業でそれを補っていく、こういうことで、私はこの前本会議で、貿易外収支を黒字にするのには四、五年かかるだろうと言ったら、意外に長いというようにお考えになりますが、四、五年でなかなかこれはむずかしい。六、七年かかるかもわかりません。しかしそういう方向で、日本の長期に見た国際収支の均衡をはかるようにいまから強力に施策を講じなければならぬ。もちろん貿易の振興も必要でございますが、日本の置かれた立場では、戦前のごとく貿易外で黒字をとるということがやはり基本方針でなければならぬというので、そういう方向で今後強力に進んでいきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/13
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014・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 日本の貿易がうまくいかないという理由はいろいろあると思うのですが、もう一つは、大きな観点から言いますと、大蔵省と通産省とが意見が違う。非常に調整がうまくいっていないというようなことを聞きますが、総理はどういうようにお考えになっておられるか。それからもう一つ、昨年ブラジルに行きまして、例のウジミナスの鉄鋼の問題がありまして、いま大きな問題になっておりますが、こういうように計画的なことがない。途中でいままでの資金の三倍も要るというようなことになったらしいのでありますが、ブラジルのインフレの傾向もありますけれども、国として一定の計画性がないというようなそしりを免れないと思いますが、こういう点については総理はどういうようにお考えになっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/14
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015・池田勇人
○池田国務大臣 大蔵省と通産省と貿易その他の施策についてちぐはぐであるというお話でありますが、これは各省各省いろいろな考えを持ちますから、全部完全に初めから一致というわけにはいかぬ場合もございます。しかしそれは通産、大蔵の間でいろいろ連絡をし、そうして協調的立場で日本の産業、金融につきまして適正に私は措置されておると思います。もちろん背為替管理等が非常に窮屈であったときは、外資導入その他によりまして、時間的に相当むずかしい点があった場合もございますが、最近におきましてはそういう為替関係の問題も毎週一回両省で協議会を開き、そうしてまた重要な問題につきましては大臣間で協議し、またそれでまとまらないときは私が入っていく、そうして非常にうまく私はいっておると考えております。私は各省間でやはり通産省と大蔵省が一番話がうまくいっているのじゃないかというくらいに考えておるのであります。
次の御質問のウジミナスの問題、これはお話のとおり、ブラジルにおけるインフレの南進によりまして、予定どおりいかぬ場合がいままで多かった。これはウジミナスの問題ばかりでなしに、ブラジルそのものの財政金融状態がああいう状態で、各債権国、ヨーロッパその他の債権国がブラジルの経済再建とインフレ防止のためにいろいろ手を尽くしております。こういう特殊の事情でございますので、予定よりも金がかかるということはこれはお話のとおりでございます。しかしせっかく手をつけたものが無駄になってはいけませんので、インフレの高進中におきましても、やはりウジミナス製鉄の完全な運営ができるように、増資の場合につきましても、向こうの持ち分の六〇%の増資につきまして、こっちが貸し付け金をやるとか、とにかく予定の規模で、予定の生産のできるよう、われわれとしては適当な助力をいたしまして、予定の生産のできるよういま努力いたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/15
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016・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 御承知のように、本日の新聞の経済欄を見ますと、三月危機というのが非常にいわれております。これは毎日毎日であって、私の愛知県などでも昨年の暮れから繊維業界はもとより中小企業が非常にたくさん倒れております。おそらくこれはきょうの新聞にも日銀の総裁の大丈夫だろうということが出ておる。政府があぶないということは言いっこないのですから、政府関係者は大丈夫、田中さんも何とか融資をしてということになっておりますが、非常に危機が迫っておる。三月危機は三月でなくて二月にすでに来ておると言われております。こういう点については私はやはり高度成長の失敗が原因だと思う。池田さんが大丈夫だ、大丈夫だと言っておられますけれども、何といっても高度経済成長政策の失敗、そのひずみがここにあらわれておると思うのでありますが、考えを直す御意思はありませんか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/16
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017・池田勇人
○池田国務大臣 三月危機ということが一番強く叫ばれたのは、昭和二十五年の一月、二月、三月でございます。これがなぜ起こったかと申しますると、昭和二十四年に、いわゆる第三次吉田内閣で、私が大蔵大臣としてあのインフレを防止するために非常な強力な超均衡財政をして非常に不景気にしたときでございます。これは日本の経済立て直しのために非常ななたをふるったその余波が来まして、二十五年の三月に中小企業の大危機と叫ばれたのでございますが、しかしこれは首尾よく通過いたしました。だからいま高度成長だから三月危機が来るというのじゃない。不景気政策をやったときのほうがもっとひどくくるわけなんです。その後数回にわたって三月危機というのが出てまいりました。三十三年の三月、またさかのぼりますと二十九年の三月、こう出ておりますが、いままでずっと切り抜けておる。危機ありというときにはなかなか危機がないのです。通り越えられるものだ。うっかりしていると危機がくるということがある。私は日銀総裁のきのうの話は、日銀総裁として相当自信のあることばだと考えております。高度成長によって危機があるのじゃない。今回の倒産の問題は、私は予算委員会でも申し上げましたが、個々の会社をずっと見てみますと、かなりいわゆる思惑の点があったのじゃないか、そうしてまた主として繊維関係ともう一つ特殊な化学関係でございますが、この繊維関係というものがどうもいつも三月危機、中小企業の危機ということになると一番先端を行くわけです。ことにことしは暖冬異変あるいは取引関係でこういうのが起こったと思うのでございますが、個々の会社を大蔵省の報告から見ますと、かなり思惑の点もあった。そしてまた思惑をやったんだからいかぬというので、銀行がまたひどく引き締めた場合もある。だからそういう原因を究明いたしまして、私は三月のいわゆる危機の起こらないように、いま万全の方策を大蔵省、日銀でとってもらうように進めておるのであります。もちろんこういうことは避けなければなりませんが、これが経済の成長によってくるものだとすぐお考えになることはいかがなものか。そして昭和二十五年にもあったので、不景気のときにもくるのであります。その点はそのときの様子を見てあれしなければいかぬ。いま大蔵大臣のメモによりますと、百億円のオペをやるし、また中小企業関係に別に百億円の融資をする、こういう手配をしておるようでございますから、ひとつ全知全能をしぼりましてその危機を乗り越えたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/17
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018・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 池田総理の周辺は金持ちばかりですから、そういうようなのんきなことを言われますけれども、思惑ではいけないといっても、思惑をやらせるのは、やはり政府が所得倍増なんてできもしないことを盛んに言うからそうなるわけです。現実にはやはり物価がどんどん上がってきている。三十八年度のように七・六%も上がってきておれば、十年たてば物価も二倍になりますよ。こういうひずみがあるということを総理は率直に認められて、経済のことはおれにまかせろと言われました。けれども、このごろはその自信はなくなりましたかわかりませんが、総理はやはり謙虚な気持ちになって——実際私どもの愛知県は繊維関係が多いから、一ぺん池田さんに来てもらいたい、一ぺんこの姿を見せてやりたいというくらい強く言っているわけです。池田さんはいつも不景気のときにぶつかって非常にお気の毒でありますけれども、やはりもっと考えていただきたい。
それからいま不渡りの手形が出ておりますが、これは空前絶後と言われるくらいの大きな不渡り手形が出ております。戦後最高だと言われております。おそらく池田さんや田中さんたちには、これは雲の上のような生活ですからわからぬかもしれませんが、私たち大衆の目から見ればこれは非常にあぶない点があるのじゃないか。だから私たちは全部が全部池田さんの罪だとは言いませんけれども、しかしやはり何と言っても総理でございますから、手形の問題も私はある程度責任を持ってもらわなければならぬと思っております。いまはお産手形とか台風手形とかいって、昔は一年に二回くらいで決済したのに、一年に一回の決済しかやらぬというようなルーズな生活になっております。こういう点もやはり直していただきたいと思うのでありますが、手形の問題を私は考えてもらいたい。これは田中さんがこの間加藤清二君の笠岡に対して刑罰を科すると言っておりますが、刑罰を科すれば直るというものじゃない。やはりそういう原因をつくらないような経済状況にしてもらわなければ困ると思っております。
時間がありませんから、あとで野原君からいろいろ質問があると思いますが、私はもう一つ最後にお伺いしておきたいのは、いまのところ税制調査会がいろいろ問題になっております。しかし税制調査会の問題でも、取りてしやまんという声があって、非常に過重な税金を取るような傾向がまだある。同時に御承知のようにいまの苦しい中小企業者には徴税はなかなかきびしいという現実も私は知っております。池田総理は主税局長から大蔵大臣とずっとやられた経済専門家でございますが、租税の問題についてももう少し考えていただきたいと思うのでございますけれども、その点はどうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/18
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019・池田勇人
○池田国務大臣 手形の問題でございますが、七夕手形とかお産手形とかいろいろあるようでございます。これはいまに始まったことではございません。もう前からあるのでございますが、これは何と申しましても商売人は自分の資産以上の手形を出すということはいかがなものかと思います。それで刑罰論も起こり、また外国ではそういうことをやっているところもあります。しかしこれは刑罰でもってどうこうということはなかなか困難で、やはりその人の良識による以外にはないと思います。不渡りの出るようなことをすること自体がもう思惑なんだ、そういうことはよくない、こう私は思っております。だからこれは今後におきましても、いまの支払遅延防止法その他を活用して、そしてみんなが能力以上の不渡りの起こる手形を出さないような気持になってもらう以外にはないと思う。また商売をしている方々でございますから、ある程度の不渡りがあるにしても、それは銀行との話し合いで何とかそれがすぐ不渡りになって破産に導くようなことのないように、銀行もやはり公的な気持でやっていただくべきだと思う。しかしこれは予算委員会で申し上げましたように、政府といたしましては、支払遅延防止法とかいろいろな既存の法律の適用を考え、また銀行の指導もいたしまして、そういうことがあまり多く起こらないようにつとめていかなければならぬと考えておるのであります。
なお税制調査会の問題につきましてもいろいろ批判があると思います。私も一部の新聞のふに落ちぬことがあるということを言ったと思いますが、こういうものは政府関係ばかりではなしに、やはり民間の有識者の意見を聞き、また民間の有識者の調査会が一般の人の意見を聞いて、そして一番大切な、国民の利害休戚に一番関係のある税制をみんなの納得のできるようないい税制にしなければならぬということは、これは政府としてつとめなければならぬことでございます。今後におきましても調査会の委員の方々とよく相談いたしまして、御期待に沿うようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/19
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020・山中貞則
○山中委員長 野原覺君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/20
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021・野原覺
○野原(覺)委員 時間が限られておりますので、きわめて簡潔にお尋ねしたいと思うのであります。
まず第一は予算編成のあり方について、総理の御所見をを承りたいと思いますが、私、いつも感ずるのでありますが、毎年、年の暮れになりますと、政府は予算を編成する。その予算編成のあり方を見ておりますと、各省の役人が自民党の各省に属する部会を組みまして、ちょうどプロレスのタッグマッチのように大蔵省に乗り込んでいって、圧力をかけて予算をふんだくっておるのです。私はそういうあり方を見て、そういうあり方で予算が作成されましても、結果において——国会の審議でなるほど予算委員会は開かれております。予算委員会が幾ら審議をしても、今日の国会では事実上修正をするということは困難な状態ですね。国民としては聞かなければならぬ問題もあるし、国会の審判に待たなければならぬ重要な問題がたくさんあるわけでございますが、それらの問題はなるほど議論としてはなされまするけれども、完全にたな上げされてしまって、実際は国の大事な予算が、予算のぶんどりで事実上決定されておる。このことについて総理はどのようなお考えを持っていらっしゃるか、お考えを承っておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/21
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022・池田勇人
○池田国務大臣 議会政治、民主主義の予算であらねばならぬ関係上、やはり与党の公約その他、意見を聞くことは私はやむを得ないことであり、またそうしていくことがよりよい予算ができることだと思います。ただ、お話のとおり、一部の人の圧力で予算がどうこうなってはいけない。それは大蔵大臣や閣議におきまして、十分これを検討して最後の決定をするわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/22
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023・野原覺
○野原(覺)委員 なるほど政党政治でございますから、与党の意見が予算に盛り込まれるということは私も了解できます。しかしながら、総理の率直な御見解を私はただしたのでありますけれども、事実はなかなか与党の公正な意見ではないのですね。これはあなた自身も腹の中ではいろいろお考えがあろうかと思います。私がここで申し上げておきたいことは、国民の批判に待たなければならないような重要な問題、たとえば農地補償の問題があったのです。これはほんの一例でございますけれども、たくさんの問題があるわけですね。そういう問題が実際は幾ら予算委員会で論議をされても、本会議でどのような審議がなされても、あるいは新聞がどのような批判を加えても、なかなかこれが国政に反映をしていないのです。このことに対して国民は非常に割り切れない気持を持っておると私は思うのです。池田さんは何とかして国会を国民の信頼の場に持っていかなければならぬ、政治が国民から信頼されなければだめだ、これが立憲政治のあり力であるし、私は政党政治のあり方ではないかと思うのでありますが、そういう点から考えて、私は今日の予算ぶんどりの実態はきわめて遺憾にたえない。このことはあなたが自民党の総裁でもございますから、これ以上の答弁を私は要求しませんけれども、この点については総理としては慎重な御検討を将来行なっていただきたいということを要望しておきたいと思うのであります。
その次にお尋ねしたいことは、アメリカのジョンソン大統領が一般教書の中で、総理も御承知のように、貧乏追放を提唱されました。そうしてジョンソンは国防費の十億ドルを貧乏追放のために削減するということを声明されておるのであります。片一方ソ連のほうでも、フルシチョフが国防費の削減を提唱しておる。世界のどこの国を見ても、今日国防費が削減されている傾向を示しておるにもかかわらず、ひとり日本だけは国防費が毎年ふくれていっておるのであります。これは一体どういうわけでございますか、承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/23
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024・池田勇人
○池田国務大臣 予算のあり方につきましては、今後というお話でございますが、いままででも私としては十分世論の動向を考えながらやっておるのであります。いま話題にのぼりました農地の報償の問題につきましても、世論の調査を十分いたしまして、最後の決をいたすつもりでおります。私が一部の人に押されてどうこうというんだったらずっと前にやっておるはずであります。なかなか押されはいたしません。私の信念でやります。
次に、国防費がよその国は減りつつある、こういうことでございますが、大体国の防衛費は日本ほど少ないところはない。アメリカにいたしましても、予算の中で半分以上国防費をとっておったということは御承知のとおりでございます。ソ連においても相当なものでございます。日本は国民所得の一・三%、どこの国にそういう防衛費の少ない国がございましょう。そこでわれわれとしては、自分の国は少なくとも自分の力でできるだけ防衛したいということで、経済の上昇、国力の伸展に応じて漸増するという方針にいたしておるのであります。しこうして今回防衛庁の予算が三百六十億ふえておりますが、このうち、内容を見ればおわかりいただけると思いますが、人件費の増加でございます。人がふえたわけではございません。俸給と食費の増加がその半分近くを占めておるという状態でございまして、日本の国防費がこの程度ふえるということは、外国の人から見れば、ふえようが少ない、大体もともと少ないじゃないかという議論が定説でございます。しかしわれわれは憲法の命ずるところに従いまして、われわれは憲法に違反しない程度で最低限にして最大限、こういう考え方でおるのであります。今回ふえたからといってそう世界の大勢に逆行するというようなことでなく、もともと日本は少な過ぎるということを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/24
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025・野原覺
○野原(覺)委員 総理も御承知のように、日本は平和憲法のたてまえをとっております。たてまえではなしに、憲法第九条は明らかに軍備を禁止しております。そういう国の日本の国防費と、そういう憲法を持たない外国の国防費を比較して議論をされるということは、私ども納得できないのであります。そもそも憲法に対するあなたのお考え方というものはいかがなものかということをいつも私ども指摘してまいったのであります。
そこでお尋ねをいたします。それではあなたのおっしゃることをそのまま肯定したといたしましても、どれだけの防衛措置が今日の日本には必要なんですか。あなたは国民所得に対する割合でいつも議論をされますが、どこまでいけば日本の防衛措置というものは十分なのでございましょうか。この点を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/25
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026・池田勇人
○池田国務大臣 防衛は、私が申し上げておるように、日本の防衛に必要な最小限度にとどむべきだ。それはやはり人口の増加、国の発展等によりまして、限度はこれこれというべきものはございません。私は国力の増進に伴って最小限度の防衛費というととでいっておるのであります。いまの国防費の予定は、第二次防衛計画によりまするあの計画に沿った防衛費をつくろうとしておるのであります。今回ふえた原因というのは、給料関係その他のものが相当部分を占めておる。ことしふえたからといって、第二次防衛計画以上にやってはいないということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/26
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027・野原覺
○野原(覺)委員 そこで日本にとって最低限の自衛措置、これは総理がいつもそういう御答弁をされておる。あなたの最低限の自衛措置は毎年毎年上がってきておるわけです。どこまでいったら最低限なのか、われわれにはわからない、国民にはわからぬのです。だから日本にとっての最低限の自衛措置というものはどの限界でございますか。どこまでいったらいいのか。もっと具体的に言えば、アメリカもソ連も核ロケットを持っておりますね、その段階までいくのでございますか。一体どこまでいけば総理としては最低限の自衛措置だというお考えをお持ちになられますか。お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/27
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028・池田勇人
○池田国務大臣 最低限の自衛措置は第二次防衛計画できまっております。われわれはいまその計画どおりにやっておるのであります。しこうしてこれは四十一年まででございますが、その後におきまして第三次防衛計画をつくりますときには、そのときの状況を見まして、世界の情勢その他を勘案して最低限の防衛費を計画するつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/28
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029・野原覺
○野原(覺)委員 第三次防衛計画が完了すれば第四次防衛計画と発展するのでしょう、あなたのお考えでいけば。それから第五次の防衛計画に発展をしていく。そこで国民が疑問に思うのは、一体その限界はどこなんだということなんです。もちろん、日本は核兵器は持たないということもあなたはしょっちゅうおっしゃっておるわけですから、私は、核兵器、ロケットを持つまでが限界だという御答弁はあなたもなさろうとは思いませんが、何かしらん、やはり池田総理のお考え方の中には、第三次防衛計画はこの年度まで、これがきたらここまで、という一つの考え方を持っていらっしゃるように思う。お示し願いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/29
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030・池田勇人
○池田国務大臣 それはそのときの世界の情勢によってきまることでございます。たとえば陸上につきましては、私はいまから十年前、陸上部隊最大限十八万人ということを、これは非公式でございますが、池田・ロバートソン会談のときに言ったことがあります。この十八万人はいまも堅持しております。やはり国の情勢によりまして、そのときどきにきめるべきものでございます。しからば海上自衛隊のほうはどうかということになりますと、やはりいろいろな兵備の世界の情勢等から、そのときに考うべきだ。いまのところは第二次防衛計画のそれによってやって最小限であり、また、これで十分だと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/30
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031・野原覺
○野原(覺)委員 非常に重大な御答弁があったと思います。そのときの世界の情勢によって日本の防衛を考えるとあなたはいまおっしゃったのです。すると、そのときの世界の情勢いかんによっては原子力潜水艦も持つ、核兵器も持つ、ロケットも持たなければならぬ、そういうお考えに発展すると私は思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/31
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032・池田勇人
○池田国務大臣 それはそういうふうにお考えになるのはあなたの誤りだと思う。核兵器とかあるいは交戦的の兵備はしないということは憲法のもとでございます。憲法の範囲内におきまして、そしてわれわれが声明している基本方針のもとにおいてやるのでございまして、憲法を誤ったり、あるいは核兵器を持つとか、攻撃的兵備を日本が持つということは初めから考えていないのでありします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/32
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033・野原覺
○野原(覺)委員 それではお尋ねしますが、憲法の範囲内における十分なる防衛措置とはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/33
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034・池田勇人
○池田国務大臣 交戦的でないということでございます。日本の自衛力という基本的国のたてまえから、防衛に必要な最小限の力を持つということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/34
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035・野原覺
○野原(覺)委員 交戦的でない防衛措置——あなたは、核兵器、ロケットは交戦的であって、軍隊がふえて、それから軍艦を持って、飛行機に爆弾を積んで、焼夷弾を落とす、それは交戦的でないという考え方をお持ちであればたいへんであると思う。私は交戦的でない防衛措置ということは理解できないのです。しかし、このことはいまあなたとここで議論をしても時間がありませんから、他日に譲りたいと思いますが、憲法の範囲内における十分な防衛措置ということは、私はこれにも重大な問題があるということを指摘しておきます。いずれ速記を読んだ上で、適当な機会にお尋ねをしたいと思うのであります。
次にお聞きしたいことは、あなたの官房長官の黒金さんが、新聞によりますと、自民党の総務会に呼ばれてさんざんこづき回された、こう書いてあります。つるし上げと書いてありましたかね。その理由は、自民党は党議で防衛庁を国防省に昇格するということをきめておるのに、一体政府はこれに対する何らの対策もとってこぬじゃないか、こういってさんざんやられた、こう書いておったのでございますが、自民党は党議で国防省昇格を決定されておるのかどうか。及び、このことについて池田総理としてはどのような御見解を持っておるか、承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/35
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036・池田勇人
○池田国務大臣 交戦的と言ったのほ攻撃的ということを言ったので、そういうふうに御了承願います。
なお、国防省、防衛省の設置問題の御質問でございますが、総務会におきましては一応そういう決定を見たようでございます。したがいまして、申し出がありまして、政府のほうでこの問題につきましてただいませっかく検討中であるのであります。まだ結論を出しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/36
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037・野原覺
○野原(覺)委員 結論が出ていないとすれば、私はその結論を注目したいと思います。
私は、次にお聞きしたいことは租税の負担率の問題です。これは、お聞きしますと予算委員会でも議論をされたようでございますが、三十九年度の予算の租税負担率は総理御承知のように二二・二%、過去十年の最高になっておりますね。この点について、総理としては、先進国で高いのは当然なんだ、英、米、仏、独とも三〇%前後なんだ、負担率というものは固定的に考えるべきでないのだ、社会保障の充実が先決であるし、OECDその他国際協力にも十分の負担を持たなければならぬということをお述べになっておられるようでございます。しかしながら私は、この負担率というものは国民所得に対する割合でございますから、国民の生活を高めていくためには一定のめどがなければならぬと思います。これはどうあってもよいというものではないと思う。日本の場合にはどのくらいのめどが負担率としては妥当だとお考えになりますか、承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/37
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038・池田勇人
○池田国務大臣 よく議論されるところでございますが、やはりこれはその名の示すごとく負担率でございますから、その人の、国民の所得によってきまるべき問題と思います。したがいまして、私は予算委員会で——イギリス、ドイツは三三%、フランスが二九%、そしてアメリカが二七、八%、イタリアが二六%と記憶しております。そういうふうな場合において、イタリアと日本との一人当たりの所得と申しますと、向こうがいまでは四割くらい多いのじゃございますまいか。イギリス、ドイツ、フランスは日本の三倍半ぐらいございましょう。そうして三〇%前後を負担しておる。だから、負担率でございますから、やはりその人その人の能力から考えるべきことであります。だから金持ちはうんと負担しましょうし、所得の少ない人は所得税を負担しないということで、一がいには言えません。しかし私は、この租税の負担率が二%でいいという、二一%というときのあの考え方は、一人当たりの所得が何ぼのときだったでしょう、たぶん三百六、七十ドルか四百ドル足らずのときの状態だと思います。いまは、五百ドルくらいになっております。そうしますと、三百四、五十ドルのときの一二%の負担率と、五百ドルをこえた一人当たりの国民所得のときの二二%の負担率がどうかということをお考えいただければ、租税の負担率というものは、そう〇・何%を云々すべき問題ではないと思います。しかもわれわれは、社会資本におきましても、社会保障制度におきましても、他国に比べて非常に落ちておる、所得税を納めない人の数が相当あるというときに、所得税の負担率が多いとかなんとかいうことばかりに議論がとらわれて——もちろん低いに越したことはございません。減税をそれだからずっとやっておるわけでございます。低いに越したことはございませんが、租税の負担率にとらわれて、ほんとうの福祉国家に必要な社会資本や社会保障制度をおろそかにすべきじゃないというのが私の考え方でございます。したがいまして、片一方におきましては、どこの国でも日本くらい毎年減税しておる国は世界にございますまいと私は考えております。そしてそれと同時に片一方で、日本のごとく急速に社会資本、社会保障制度の拡充強化をやっておる国もいま世界にございますまい。だから私は、政策として、減税と社会保障、社会資本、文教の増進、これを政策に掲げておるのでございます。だから税の議論をされる場合においては、片一方の社会保障や文教や国づくりをひとつお考えになったならば、いまの二二・二%は私は適当じゃないか、こら考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/38
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039・野原覺
○野原(覺)委員 時間がありませんから、負担率の問題は、これはあとに残したいと思います。大蔵委員会で適当な機会がございましたら、ぜひ総理にも御出席いただいて、ただいまの御発言に対する私どもの見解を申し述べたいと思います。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/39
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040・山中貞則
○山中委員長 只松祐治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/40
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041・只松祐治
○只松委員 初めて出てまいりましたので、ひとつお手やわらかに。
あなたの敬愛されるジョンソン大統領が、重要な施策の一つに貧乏追放ということをうたわれております。池田総理も、かつては麦めしを食らえ、こういうことをおっしゃったことがありますが、たいへん成長されまして、今度の施政方針では、豊かで平和な生活を営むことが究極の政治の目標である、こういうことをおっしゃいました。しかしそうおっしゃいましたが、ジョンソンと同じように、池田さんも貧乏をなくす、こういうことの意思あるいは努力目標がおありかどうか、ひとつお聞かせ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/41
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042・池田勇人
○池田国務大臣 これは、私は施政方針の冒頭に述べましたように、平和な豊かな生活ができるような国をつくることが政治の目標である、みんながその職場を持ち、そうして一生懸命に働いて、自分がよくなると同時に他の人もよくなる。こういうことが私の政治の基本の理念でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/42
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043・只松祐治
○只松委員 そういたしますと、政府の発表によっても、高度経済成長のために二二%から物価が上がっておる。しかし池田内閣ができる三年前十円だったとうふが、小さくなって、二十円になっておる。ちょうど一〇〇%でしょう。消費物資というのは、奥さんにお聞きになれば御存じでしょうが、大体五〇%前後上がっておる。そういたしますと、低所得者あるいは恩給、年金生活者あるいは退職金で生活している人、いわゆる生産に従事してなくて所得のない人々、こういう人々は、こういう生活必需物資の急速な値上がりで非常に困っております。このことを御存じであるかどうか、それが一点と、もし御存じであるとするならば、こういういわゆる生産に従事しないで所得の増大しない人々、こういう人の生活が非常に困窮しておる、いわば貧乏人にますますなってきておるし、池田の高度経済成長政策の結果貧乏人がたくさん日本には出てきております。貧乏をなくすという意思と、現実に貧乏人が日本にたくさん出てきておる、こういうことをどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/43
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044・池田勇人
○池田国務大臣 私が内閣を組織する前の昭和三十四年度と比較いたしますると、お話のとおり、消費者物価は二割あまり上がっておりますが、しかし所得が五割上がっておる。実質的には、三十七年度で申しますると、物価の値上がりを差し引いても三割以上上がっておるのであります。これは全体の問題でございます。それなら貧しい人はどうかということになりますと、生活保護費は、昭和三十四年に比べますと、三十九年度は八割一分上がっております。物価はそう上がっておりません。一番貧乏な人はどうかということになると、生活にお困りになる生活保護費をおあげする方々に対しては、八判一分生活保護費がふえております。これは物価の上昇の三倍以上でございます。それで貧乏な方々はどうか。内閣統計局でいろいろ調べておりまするが、五分位表の最低のものは、四年前に一万二、三千円でございましたが、いま最低が一万九千円から二万円になっておるということは、五分位表の一番下位の人の収入が非常にふえたことを示しております。八割ふえております。
そこでお話の、問題のいわゆる恩給生活者、そして何も仕事をしていない恩給のみでやっておる人、これはお気の毒でございます。何とかしなければならぬということで、いま恩給についての調査を始めて、いわゆる生活保護にはいかないけれども、恩給だけでやっている昔の官吏の人等につきましてはどういう措置をするか、実態調査をこれからしていこうとしておるのであります。全体から申しますと、ただいま申し上げたとおり、貧乏人には、生活保護費は八割以上上がっております。こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/44
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045・只松祐治
○只松委員 いま諸外国では、大体定年が六十歳から六十五歳くらいになりつつある。日本では依然として、五十五歳なんです。したがって、わずかな退職金あるいは年金、恩給、こういうものをもらっていても——いまは調査の段階ということですが、調査でなくて、現実に池田内閣になって、すでに言いましたように、消費物資は五〇%前後上がっております。そういうことになりますと、現実に困っているわけです。計画経済というのは、三年先、五年先に国民に希望を持たせる、こういうことがありますが、皆さん方のやっておる自由主義経済というのは、今日の段階にどうやって国民に安定した生活、一歩でもより高い生活を与えていくか、これが資本主義経済の要諦なわけです。あまり先のことでなくて、現実にこうやって毎年々々五十五歳でやめていかなければならない人々に対してどういう施策を持っているか、あるいはそういう定年を延長する意思があるか、そういう問題から始まりまして、さっきから言いまする恩給、年金、退職金等で生活している人々に、当面具体的に何か政策をお持ちであるか、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/45
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046・池田勇人
○池田国務大臣 いまからやめていく方は、いわゆる退職金の制度がございますから、それでやっていっていただけると思います。そうしてまた退職金制度自体がこれからの日本に適応するかどうかという問題につきましては、いろいろ議論がございますので、いわゆる厚生年金制度の拡充強化をはかって将来に向かって進んでいこうとしておるのであります。いま私が言っている問題は、過去の俸給所得者あるいは官吏等で、その他に仕事のない、収入のない人が、物価の二割余りの値上がりでお困りになっているのにどういう措置をするかということをいまやっておるのであります。これはボーダー・ラインの上のほうの人で、なかなか調査がむずかしゅうございますが、ひとつ考えていかなければならぬ問題として、いまの恩給受給者の生活状況というものを考えていこうということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/46
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047・只松祐治
○只松委員 時間がありませんので、次に移りますが、日本の一番大事な問題で、いわゆる貿易の問題がございますが、先ほど佐藤議員も貿易外収支の問題についてお尋ねをいたしました。総理は、繰り返し、四、五年で黒字になす、こういうことをおっしゃっておられますが、時間があれば、具体的に年度別にひとつどういうふうに黒字になしていくかということをお聞きしたいわけでございますが、きょうは時間がございませんので、これはあとで、もし機会があればまたお聞きをいたしたいと思います。
ただそこの中で一番大きな問題は、さっきもお話になっておりましたように、貿易額が増大すれば、船賃が多くかかりまして、いま大きなのは船賃でございますから、赤字が増大してまいります。四、五年で急速に船ができるかといいますと、そういうふうに急速にはできません。そうすると、四、五年で具体的にどうやって赤字を解消されるか、ひとつ総理の御見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/47
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048・池田勇人
○池田国務大臣 できれば四、五年で赤字の起こらないようにしたい、その方向に努力すると言っておるのであります。その方法といたしましては、やはり日本固有の船をふやすことでございます。先ほど申し上げましたことく、所得倍増計画でいくと、日本の船がいま七百万トン余りでございますが、これを千三百万トンくらいにもっていかなければならぬ。そしてまた観光事業をあれすれば、もしイタリアのそれのごとく観光事業で入るとすれば、百億ドルは入ってくるわけでございますから、それまではもちろんいかぬでしょうけれども、観光事業をふやしていく、こういうことが主たる方法だと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/48
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049・只松祐治
○只松委員 海運は世界的には約十年日本は立ちおくれておる、こういうことがいわれて、それが一番大きな貿易外の赤字になっておるわけですが、この十年ということはなかなかたいへんお耳が痛いわけですが、ちょうど十年ぐらい前に造船疑獄というものが起こっておる。佐藤さんが引っかかられて指揮権を発動せられておる。この造船疑獄といろものが起こってから海運関係にほとんど政界がタッチしなくなった。このことが今日の日本の海運業の大きな立ちおくれの一つの要因である、こういうふうに言われておる。そのことをお認めになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/49
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050・池田勇人
○池田国務大臣 日本の船舶増強がおくれたということは何も造船疑獄じゃないのです。あれだけのいわゆる世界有数の海運国が、戦時保険によりまして、保険料をもらわずにいままでの蓄積資本が全部飛んだということがもとであるのであります。その後いろいろ施策はいたしましたが、日本の船会社の実情がごらんのとおりの状況でございましたので、まず船会社を立て直さなければいかぬということでああいう船舶増強の方法をとったのでございます。これはやはり外国と違いまして、日本の船会社は資本金も何も飛んでしまって、借金ばかりしてやっていかざるを得ぬような状態になったのが問題でございます。何も造船疑獄その他との関係でございません。根本は戦時補償の打ち切りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/50
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051・只松祐治
○只松委員 まあ貿易額が増大すると船が要る、したがって海運業を急速に進めなければならぬ、こういうことは当然わかっておるわけであります。ところが、今日まで、いまおっしゃったように一、二の原因をあげられましたけれども、そういうことに十分対処しない。そうして、今日貿場外の赤字の非常な増大をもたらし、本年度六十一、二億ドルに貿易額が上がれば、さらに船賃の赤字が多くなってくる、こういうことになるわけですが、こういうことに対して政府あるいは与党である自民党は、今度その点多少対策をお立てのようでございますが、十年間ほとんど放置されておった。そのことは造船疑獄とは何ら関係がない、そういうことをおっしゃっておりますが、それではなぜ、船が要るということがわかっているのに放置されておったのか、そうでないとすれば、放置されねばならないということ、放置された原因——まあ論争になりますから、時間がございませんから、その点だけお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/51
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052・池田勇人
○池田国務大臣 放置しておったわけではございません。御承知のとおりいまは第十九次造船でございまして、外国が船をふやすのに負けないように日本もふやしておるのであります。しかし、いかんせん、急激な貿易の増大でございます。それに向かって持つべき船会社の整備がおくれた、所得倍増のときからもそういうことはわかっておったのですが、船会社の統合整備に期間がかかりました。それが主たる原因でございます。しかし、幸いにしてできました。政府もそういった考えを持っておりますので、先ほど来佐藤さんの御質問に答えたように、今後船を極力増強していく、そうして日本がいま三百万トンばかりの外注を受けております。そうすると、船台が一ぱいじゃないかといち考え方もありますが、最近は三、四年前の船をつくる期間の半分くらいの期間でつくることができるようになりました。だから私は、いまある船台を十分活用すると同時に、大型船台を今後もっとふやして、そうして外国船もさることながら、国内船の増強に極力力を入れていこう、こういう考えでいっておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/52
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053・山中貞則
○山中委員長 総則は約束の時間でございますから、けっこうでございます。
ただいまの只松祐治君の発言中、後刻速記録を調査いたしまして、もし不穏当の点がありますならば、与野党の理事相談の上で削除することがあるかもしれません。申し上げておきます。
佐藤觀次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/53
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054・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 総理大臣に残った問題で、田中大蔵大臣にお尋ねしたいことが五、六件ありますのでお答え願いたいと思います。
その第一は、御承知のように日米経済合同委員会で問題になっております利子平衡税の問題でありますが、私はニューヨークへ参りまして、これはおそらく日本の言うようなことはだめだろうというような観測を持っておりますが、田中さんは一体どういうように受け取られておるのか、日米経済合同委員会におけるところの利子平衡税の問題について、率直な御意見をひとつ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/54
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055・田中武夫
○田中国務大臣 利子平衡税につきましては、御承知のとおり昨年大平外務大臣をアメリカに派遣をしまして、政府の意向は十分アメリカ政府当局に伝えてあるわけであります。その後大平・ラスク共同声明がありまして、御承知のとおり日本の国際収支が悪くなるような場合には、お互いが検討をしながら利子平衡税の免除その他に対して措置をする、こういうことになっているわけであります。またその岡にいろいろな打ち合わせをするために、共同作業をする特別連絡委員会もつくられているわけであります。これらの問題については、昨年の九月IMF総会に出席しました当時、ジロン財務長官との間にも長時間意見の交換を行なってまいったわけであります。当時の考え方としては、昨年の十一月の日米経済閣僚会議の場合には、この法律案の通過のめど、修正のめどがつくと予想しておったわけでありますが、その後は事情が変わりまして、ようやく下院の歳入委員会を通過したというような状況でありますが、現段階においては、おおむね三月の半ば程度をめどにして両院を通過するだろうというような意思が明らかにせられております。私がこれらの問題に対して申し上げましたのは、カナダに特免条項があるにもかかわらず、より密接な関係にある日米の間において日本にそのような特免条項が適用せられないという差別的な待遇に対しては承認をするわけにはいかないのだ、こういう立場から、ただ利子平衡税という問題だけではなく、より高い立場から再検討を強く要請をしたわけであります。同時に大平・ラスク共同声明により、日本の国際収支が悪くなったときというような考え方ではなくて、悪くならないように、日本側が良質長期の資本の導入をはかりたいといっているのだから、現時点からでもこれらの問題に対しては積極的に考慮をわずらわしたいということを強く申し述べているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/55
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056・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 田中大蔵大臣からいろいろ意見を承りたいと思いますが、何といいましても、利子平衡税の問題は、日本側にとって非常に大きな痛棒でございます。証券界が非常に乱れたのはその例でございますが、私が現地で受け取った場合に、カナダと同じような除外例は日本には適用しないだろうという観測を持って帰ってまいりました。これは田中さんがいろいろ努力せられていると思うのでありますが、不可能だというような見通しを持っております。それと同じように、武内大使にも日米綿業問題についてのいろいろのお話を承っておりますが、アメリカは今年度大統領選挙があります。そういう点で日本の経済のことなどは考えていない。申しわけ的に表ではそういうふうに言っておりますけれども、実際には日本の経済のことなどを考えているとは見受けられない点が多々あると思います。そういう点で先ほどから首相にも申し上げましたが、日本では独自の経済政策を立てて、アメリカをたよりにしないような方法をとらなければ自滅をするのだといふうに考えております。特に田中さんは御承知のように官僚出身の大蔵大臣でなく、頭の切りかえも早いし、勘のいい大臣であります。そういう点から考えて、思い切った経済の施策をこれは大蔵大臣だけでやるわけにはいきませんけれども、そういう転換をするいま絶好の機会じゃないか、ちょうどいまフランスの中共問題とからんで、日本が、一番近い中共との貿易とかあるいは朝鮮全体の貿易の問題は、この際もっと検討して早く手を打たないと、私は、日本は手おくれになるような危険を感じているわけでございますが、その点についての率直な御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/56
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057・田中武夫
○田中国務大臣 国際収支の長期拡大安定ということを考えますと、御承知のとおり借り入れ金にも限度があるわけでありますから、できるだけ自前でバランスをとっていくということに意を用いなければならぬことは当然であります。その意味で開放経済に向かう日本といたしましては、長期国際収支安定策に対しては十分の配慮を行なっております。その一つに海運の集約化を行ないまして、海運企業の再建整備をはかろうということで、わずか十数億であったものを三倍、四倍に財政支出をふやして、開発銀行に対する肩がわりをやってやったり、海運に対しては国内施策も大いに行ない、特に船腹の増強に対しても六十四万二千トンの船腹拡充計画を修正なく全額認めておるという姿勢に徴しましても、政策の考え方はおわかりになると思います。同時にいま税制案を検討しておりますが、海運会社の内容等を考えながらまた強化、育成の方向をとるためには、輸出所得控除の制度が三月の末になくなるわけでありますが、ガットの範疇にない海運収入という問題に対して毛、何らかの処置を講ずることができるならば考えようということで、いま前向きで検討いたしておるのであります。なお貿易の振興に対しましては御承知のとおり税制改正で貿易振興諸施策を強力に進めております。ガットで問題にならない、国際慣行上認められる最大限の努力を続け、貿易の伸長とあわせて貿易外収支の改善に意を用いておるわけであります。近く自治省から出されると思いますが、観光その他についての外客に対する宿泊料、飲食料等に対する税額の免除等の法律案を御審議願おうというのも、あわせてこの国際収支の安定強化をはかろうという考え方に出ずるものであるということは御了解いただきたいと思います。
基本的にはこうでありますが、何しろ戦後荒廃の中から、無一文の中から立ち上がった日本でありますので、やはりひとり立ちができるようになるまでの間、どうしても自己資金ではまかなえない範囲で外資にたよらなければならないということで、現在まで良質な外資は導入をしてまいったわけであります。しかしアメリカ市場だけということではなくヨーロッパ市場に対しての開拓も行なっております。御承知のとおり昨年は英貨債の発行もできましたし、また民間債二千万ドルの発行もできましたし、大阪府市債二千五百万ドル、一億ドイツ・マルクの発行も終わっておりますし、アメリカ市場一辺倒ということではなく、世界的市場からも安定的な外資を入れるように幅広く考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/57
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058・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 利子平衡税の関係で一番影響のあった日本の証券の問題でありますが、突如日本共同証券という会社ができて一時ささえられましたけれども、きのうあたりの新聞を見ますとダウ千三百円台を割っているような形になっております。証券局が大蔵省にできるようになっておりますが、政府にはどういう施策があるのか。共同証券の問題について、田中さんと興銀の中山素平さんがいろいろと画策したといううわさが出ておりますが、こういう問題についての人為的なやり方では証券界の現状は直らないいわゆる根本的な問題がある、その点についてどういうお考えを持っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/58
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059・田中武夫
○田中国務大臣 この際、共同証券の問題につき策して明らかにしておきますが、過去にもそのような例があるということから、証券会社、銀行等で共同証券式なものが必要ではないかという意見のあることは私も承知いたしておりました。しかし今回の共同証券の設立に関しては私は関与いたしておりません。また私は行政的にも指示もいたしておりません。ちょうど私は七、八年ぶりで伊豆の伊東に参っておりますときに電話があって、共同証券ができましたから御報告申し上げますというわけで、全く任意、自主的にできたものであります。共同証券の設立に対してはいろいろな議論がありますけれども、通常よろしきを得れば将来の資本市場育成のために一助になるであろうということを考えておるわけであります。証券市場というものに対してはいままでもこの席で私も何回も御究明を受けましたけれども、何か証券を持つ者が国民の一部有産者だけであるというような考えではなく、いま佐藤さんが言われたとおり外国から金を借りないで済むような日本になるには、お互いが自分の金で、自己資本でこれをまかなえるということが原則でなければならないわけであります。西ドイツは戦後十八年間であのくらいに大きくなりましたけれども、彼らは自己資本を主としてやったわけであります。日本にはそれほどの力がなかったので外資に依存しながら今日になったというだけが違うのでありまして、開放経済に向かうときに、やはり自己資本比率を上げていかなければならぬということは、もう議論ではなく現実の問題として、最大の重点施策としなければならないということで、昭和三十八年、九年の両年度にわたる税制改正においても、各般の施策を行なったわけであります。今度は大蔵省に証券局をつくるということでありますから、この設置法はぜひ通していただきたいと思いますが、これは大蔵省が証券市場に関与したいというようなことではなくて、銀行局が長い歴史を持ちながら現在の日本の金融制度を築き上げたように、やはり政府も可能な限りにおいてこれを援助しながら、また行政的に指導しながら、資本市場の拡大強化をはからなければいかぬという考え方で、貯蓄の増強、資本蓄積、資本市場の育成ということに対しては開放経済に向かって特に重点的に施策として考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/59
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060・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 いろいろ聞きたいことがありますが、時間がないので二、三の点にとどめます。
御承知のように、政府は今度自然増収を六千億近く見込んだ。予算に対しまして自然増収で毎年増加していることは、税の取り方とかに非常に無理があるのではないか。この点について、私は少なくとも税制のあり方としては不自然じゃないかというふうに考えておりますが、大蔵大臣はどのように考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/60
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061・田中武夫
○田中国務大臣 いままでは税収の見積もりが多いといわれたことはないのでございまして、大蔵省はいつでも次の補正財源として税収を低く見積っておる、こういうことはけしからぬ、こういうお話ばかり承っておったわけでありますが、今度は目一ぱい見積ったわけであります。六千八百二十六億というのは、前年度の自然増収に比べて非常に大きいというふうにごらんになるかもしれませんが、三十九年度の増収の六千八百二十六億のうち、御承知の三十八年度予算の第二次、第三次補正の御審議をいま願っておりますが、これを入れますと、今年度の自然増収は二千億ということであります。でありますから、三十八年度の年度を通じての歳入税収を基準に見ますと、六千八百二十六億から約二千億引けるわけです。そういう意味からいいますと、四千八百億程度の増収を見積もっておるのでありますから、税目別に積み重ねて、しかも名目成長率九・七%で加算した数字でありますので、今度は国会論議を通じて、皆さんの御意向も十分反映しながら、まじめな立場で積算した歳入でありますので、この六千八百二十六億が過大であるとも過小であるとも考えておらない、適正な歳入見積もりである、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/61
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062・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 田中さんはなかなか口がうまいので、国民はそれを納得すると思うのでございますが、私たちはどう考えましても納得できない点がたくさんあります。一つの例は、御承知のように減税二千億というようなことを盛んに選挙で宣伝して、実質的には減税にならぬような結果がたくさん出てきております。これは雑誌「エコノミスト」に、「とりてしやまん」という題目で出ていますが、苛斂誅求と言わざるも相当徴税方法において無理をしておるという現状において、自然増収というのは私は取り過ぎだと思う。初めから取らぬでもいいのを取って、そして予算に使うというような悪い習慣があると思う。これは予算からすれば、収入と支出がバランスが合ってこそ予算だと思うのでありますが、最近の歳入のやり方はそうではない。こういう点について十分な注意をする必要があると思うのであります。
それからもう一つは、先日も予算委員会で池田総理大臣が、日本の税金が二二%だとすれば、フランスやイギリスあたりに比べれば低いというようなことを言われておりました。これは国の事情、生活の事情も違うので、私はそういう点についての質問をしたかったのでありますが、総理がおられませんので申しかねますけれども、少なくとも、いまの日本の税金というのは、田中さん自身大蔵大臣として税金を払っておられる立場を考えられても、過重な税金であると考えるわけです。今度の場合は、御承知のように、減税をする以上に物価騰貴でどんどんものがしがる。おそらく最近は——今度法案がかかっておりますが、文部省の予算で、一部学校の予算が特別会計になりまして、いろいろ理由があると思うのでありますけれども、おそらく、国の学校は月謝を上げないでいいけれども、私学は月謝を上げざるを得ない問題が出てくる。こういういわゆるひずみをどのようにして政府は考えてやるか。少なくとも、現在の場合においては、大体私学が七割くらいの学生を収容しておる。これは幼稚園から大学に至るまで、たくさんの人を私学が背負っております。そういう中で、一体国がこういう法案に対してどのような——月謝を上げるな、しかし、人件費が上がれば月謝を上げるより仕方がない。これは経済のABCであります、こういう矛盾が非常に多くあるように考えております。大蔵大臣は民間出の人でありますから、そういうことはわかってしかるべきだと思うのでありますが、あなたがやはり唯々諾々として官僚の机の上の案に乗っていかれることを非常に心配しておるわけであります。少なくともそういう点では、そろそろ田中さんも田中財政くらいの名前が出てきてもいいのじゃないか。田中さんらしい財政が一つも出てこない。これはまことに遺憾なことだと思うのでありますが、そういう観点についてどういうお考えを持っておられますか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/62
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063・田中武夫
○田中国務大臣 私学に非常に重点が移りつつあるということは、御発言のとおりであります。私学に対しては何らかの措置をしながら、私学が大幅な授業料の値上げ等をしないで済むようにすべきであるということは、もう与野党を通じて長い間検討をせられてきた問題でありますが、御承知の憲法解釈の問題等がありまして、現在私学振興会を通じて財投でいろいろめんどうを見ておるということになっておるわけであります。昨年は、十二億の出資に二十億、初めて私になってから財政投融資をやったわけであります。それが今年度予算の一般会計においては前年度対比一四・二%、財政投融資については二〇・八%と、こういうときにもかかわらず、私学振興会に対する財投は二十億から四十億に、まさに一年間に倍増しておるわけであります。ささやかなものではありますが、こういうところに財政の片りんがある、こういうふうにお考えいただければよいわけであります。しかも、私学というものに対して、いま私も各大学の学長の皆さんや理事長の皆さんから意見を徴しているわけでありますが、東京とか、大阪とか、大都市の中に学校が集中しておりますので、学生諸君の経費も高くなるというような問題もあるので、一部はもっと合理的な、理想的な、大都会以外に集団移転をしたいというような考え方もあるようであります。そういう計画書などができましたら、大蔵省とも相談をしていただいて、できるだけ合理的な、環境の整備された学園を育てていきたいという熱意を持っておるわけであります。今年度の予算はわずか四十億であり、また財投の十二億が十六億になったということではありますが、私学に対する政府の基本的な態度というものは御承知願えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/63
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064・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 最後に、現在の池田内閣は、田中さんも含めてでありますが、オリンピックの事業以外はやっていない。何か河野さんのやっている建設関係以外は何もやっていないという感じがするわけでありますが、そういう点のないように、いま田中さんの言われました私学振興のことについては、ほかの大臣より熱心にやられたということはこれを認めますけれども、もっと抜本的な、世界がこれくらい動いている時代でありますから、フランスのドゴールが中共を認めるというような時代でございますから、やはり思い切って新しい施策をしなければ、せっかくの池田内閣も何にもやらなかったという結果になるではないかと思うのでありまして、そういう点についての今後の施策に対してわれわれまた機会がありますればお伺いしたいと思うのでありますが、十分に検討をしていただきたいことを申し上げまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/64
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065・山中貞則
○山中委員長 野原覺君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/65
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066・野原覺
○野原(覺)委員 大蔵大臣の財政演説を見てみまして、一番大事な個所でございますが、「昭和三十九年度の予算編成にあたりましては、国際収支の改善と物価の安定を主眼とし、いやしくも財政が景気に対し刺激的な要因となることを避けるため、健全均衡財政の方針を堅持することといたしております。」この点があなたの財政方針の演説の中で最も重要な個所のように私は思います。そこで、この点を中心にお尋ねをしたいと思うのです。
一般会計予算の三兆二千五百五十四億円、これは前年度の当初予算に比して四千、五十四億円の増、その比率は一四・二%、これもあなたの財政演説の説明書きに書いておるわけですね。ところが、この一四・二%という比率でございますが、これには若干からくりがあることを大蔵大臣は御承知だと思う。あなたがよく知っておられるそのからくりを説明してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/66
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067・田中武夫
○田中国務大臣 からくりの御発言は、どうも表現が私にはぴったりきませんが、きっと学校会計の特別会計に移した金額、それから、自動車の特別会計をつくったということだと存じますが、これを全部特別会計にしないで一般会計、とそのままの数字ではじいた場合は一五・〇、前年対比一五%ということでありまして、これは必要性から特別会計に移して、そうすることが国民のためであるという考えに立ったものでありまして、一五%をわずか〇・八%切って健全性を保持するためにやったからくりではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/67
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068・野原覺
○野原(覺)委員 どうせそのくらいの御答弁があるだろうと思っておった。あなた、いいかげんなごまかしを言っちゃいかぬです。そこで、私は、その点はだんだん明らかにしてまいりますが、そのからくりですが、それは特別会計だけではございませんね。操作をまだ加えておるでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/68
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069・田中武夫
○田中国務大臣 他に操作は加えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/69
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070・野原覺
○野原(覺)委員 では申し上げますが、電気ガス税の減税のかわりに、市町村タバコ消費税引き上げによる一般会計歳入の専売納付金は減少しておりますね。これは当然歳入として計上されなければならなかった性質のものである。それから第二点は、ガソリン税増税の一部を地方道路譲与税として地方団体に回すことにより国の取り分が減収になっておりますね。これはからくりの中に入らないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/70
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071・田中武夫
○田中国務大臣 これはからくりの中には入りません。これは御承知のとおり、法制の建前上も、ずっと過去においても皆さんが御議論なさったことであります。道路譲与税のほうは、国が全額とった例もありますし、道路譲与税をつくったときは、国会では当然地方の単独財源だ、こういう議論もあったわけでありますから、これは普通から言えば、今度やったように減税をする場合には、当然国と地方と別々に分けて減税をする、こういうことが国会の意思でもありました。ただ国が当時の財政事情によって一括いただいたということもあるので、当初は国が今度はいただきたいという意思表示をしただけでありまして、与党折衝その他最終的な閣議で調整をしましたときに、法律の建前に沿って両方やるということでありましたから、からくりではありません。
それからもう一つ、電気ガス税一%減税分でありますが、これは現在まで自由民主党の党議として、最低年額一%以上ずつ減税をすべしということになっている。同時に、国はたばこ消費税その他によって補てんをせられたい、こういうただし書きがついておる党議があるわけであります。また政府もそれを了として、三十八年度予算編成のときも一%分、五十三億か五十四億だと思いますが、同じ措置によって行なったわけでありますが、地方財政の確保をはかる立場でそういう措置をとったことはよろしい、こう言って去年はおほめにあずかったわけであります。同じことをやったのであって、これが当初から考えておった歳入財源を地方に移譲したということをもってからくりである、一四・二%にするための処置であるということは当たらないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/71
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072・野原覺
○野原(覺)委員 あなたの御答弁は一応きょうは御答弁として承っておきます。あなたには総理と違って機会がありますから、そのからくりは後日究明したいと思います。
そこでもう一度もとに戻りまして、あなたの財政演説の一番大事な、国際収支の改善と物価の安定が今日当面の経済政策の、日本政治の課題だ、こうあなたは御認識なさっておられる。ところがその課題を解決するために、さて一四・二%はごまかしであることをお認めになったのです。これは実質は一五%なんです。当然そうですよ。だからその実質一五%のこの予算増というものは、この二つの課題を解決するために、はたして妥当なものであるかどうかということは、やはり問題だと思うのです。なるほど社会保障の充実その他社会資本、公共投資、いろいろな面で立ちおくれておることはこれは認めます。しかしながら、それよりもあなた方、池田さんにしてもあなたにしても、日本の当面の課題は国際収支の改善と物価の安定なんだ。そうすると、当面やはりその問題を解決することが予算案を立てていく上に最も重要でなければならぬ。そこで実質一五%の対前年度比の増は、はたして妥当であるかどうかという問題です。これは私が質問をしたら、妥当ですと、こうお答えになることでございましょう。そこであなたはIMFのフリードマン為替制限局長とお会いになられて、いろいろお話をされたらしいのですね。これは田中角榮個人が話したのではない、大蔵大臣としてフリードマンさんとお話になったのです。だからその中身をここでお述べ願いたい。新聞はいろいろ書いております。しかしあなた御自身から承ることが最も真相だろうと思うから、フリードマンさんとはどういう話し合いをしてこられたのか、お聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/72
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073・田中武夫
○田中国務大臣 フリードマン氏と話をしましたのは、フリードマン氏も私もIMFのいすのままでお話するのではありません、個人の立場でお話を申し上げる、こういうことでありましたし、私も何回かお会いしている知己でありますから、いろいろなことを話し合ったので、二人の会談は正規なものでありませんから、この内容をここで申し上げることはどうかと思いますが、しかしどんなことを言ったかという大筋だけは申し上げられると思います。日本は世界に例がないほど健全財政をおやりになっておる。大体において国債を発行しておらぬということは、内国債に対しはたいへんな御努力だと思います。歳入を当該年度の税収をもって、九五%に近い当該年度の歳入でもってやっておられるということに対しても敬意を払います。しかも自然増収があった場合には、財政法の規定に基づいて二分の一を国債整理基金に入れるというような、とても政党政治にはできないようなところでそういう問題を堅持しておられるということに対しては、これはアメリカでも他の国でも勉強しなければならぬ問題だ、そういう意味でわれわれは日本の財政金融に対しては危惧はありません。ありませんが、ただ日本が四月にIMFの八条国に移行する、しかも九月の第一週には東京ににおいて記念すべきIMFの総会及び世銀の総会等が開かれるのでありますから、戦後わずか十八年間でたくましく育った日本に世界の専門家が集まって、いろいろなエコノミストが言っておるように、見たい、聞きたい、調査をしたいという考えでおられるときに、その記念すべき時期に国際収支が悪くなるようなことは万ないと思いますけれども、できるだけ国際収支の安定ということに対して意を用いていただくことが、友人として特にお願いしたいことでありますと、こう言ったわけであります。私はそれに対していろいろ申し上げて、健全性は将来も守っていくつもりでありますし、——あなたがその間の事情を述べろというのは、そのときに今度の予算も一〇%程度で押えたいと言ったことを言えということだと思いますが、それは一〇%程度で抑えたいということは閣議にも出しておおよその根回しをしております。しかし二四・三%、二四・四%、対前年度比ふえてきておる予算を、ことしの、すなわち去年の段階ですから、ことしの三月三十一日まで執行してきたのでありますから、十二月という、わずか六、七カ月しか過ぎておらないときに、二千五百億ないし三千億という金を切れればたいへんだと思いますが、まあ政党政治でもありますし、議院内閣制でもあるので、与党との意思の疎通もはかりながら最終的な予算をきめるわけでありますが、できるだけ健全性を、特に超健全というような方向で守っていきたいということでありますから御了解願いたい、こういうような話をしたように記憶をいたしております。これは私の記憶に基づいての発言であることを御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/73
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074・野原覺
○野原(覺)委員 率直な御答弁には敬意を払いたいと思います。フリードマンさんは、やはり新聞の報ずるところによっても、あなたに対しては過大な財政支出の排除を強調された。あなたはそれに対して一〇%程度の伸び率でいきたい、こういう意見を述べておられる。このことにフリードマンは満足して帰っておる、そういうことです。ところが実質一五%の伸びになってきた。この実質一五%の伸びは、あなたがただいまもお触れになられましたが、昭和三十六年には二四・四%、三十七年には二四・三%、三十八年は一七・四%だから、過去三年間に比べれば一五%というのは低い水準じゃないか、こういうようなお考え方であなたが予算を組まれたとすれば、これは大問題だ。私が一番先に指摘いたしました、とにかく三十六年や三十七年、三十八年とは比べものにならない国際収支の悪化じゃありませんか。しかも物価の安定にやっと池田さんは腰を上げて真剣になってこようという池田内閣でしょう。これはこのときの経済情勢とは違う。だから、同じ経済情勢の頭から見れば低い水準かもしれませんけれども、物価の安定と国際収支の改善が今日当面の日本経済の課題なんだ。その課題を解決するための伸び準としては、私ははなはだずさん過ぎる、放漫過ぎると思う。しかもフリードマンに約束したことと違うと思う。これは外国人に約束したからどうだというのじゃございませんけれども、一応あなたがIMFの為替局一長とこのことを約束をして、そうして一〇%に抑えようとつとめた。抑えようとつとめたけれども、あなたのいまの御答弁にもあったように、自民党内の圧力、先ほど私が言った各省、各部会との大蔵省に対するタッグマッチのような暴力的交渉であなたはふらふらになって妥協してしまったのです。私は大蔵大臣としてのあなたの見識をここで疑いたい。あなたは政治家ではない、日本の財政を預かる大蔵大臣です。あなたが国会の財政方針演説でこの二つの課題に置くのだということを高々と述べているならば、なぜ二五%をもっと切り下げた対前年度比でいかないのか。一五%でこの二つの課題を解決できるのかできぬのか、できるとすればその理由、根拠、これをお述べ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/74
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075・田中武夫
○田中国務大臣 財政演説でも述べましたとおり、開放経済に向かう日本でもありますから、わが国の国際収支の安定と、当面物価の安定に対して重点的に配慮することは当然のつとめでおります。この基本線に立って、予算編成方針をつくり、予算を編成し、現在御審議を願っておるのであります。
野原さんの、対前年度比一五%は一〇%に切ったほうがいい、こういうお話でありますが、私も考えたのです。ここでひとつ田中財政をつくるために一〇%で中央突破するかと考えてみたのですが、それは誤りだということを私はそこで承知をして、現在御審議を願っておる予算を組んだわけであります。それはなぜかというと、予算によってすべて国際収支や物価の安定を期せるものではない、予算とは別な意味を持っているものであります。社会資本の不足を補い、また国内不均衡を是正し、社会保障を行ない、文教を拡充、刷新し、こういう長期的な国の目標を達成するための大きな目的に沿って動いておるものが予算制度であります。でありますから、物価の問題等に予算が心理的な影響を与えるので、政府が国民に対して一年間の姿勢を出すときには一五%よりも一四%、一四%よりも一〇%が確かにいいこととは思いますが、予算委員会の御発言にもありましたとおり、革命的にやるといった中小企業に対して一体どうなんだ、農業政策に対してこればかりの金を出して一体これが革命的なのか、生活保護費は一三%上げたが、なぜ一五%以上上げなかったかと、御質問のすべては、やはり日本が新しい国づくりをするために必要な予算が負わなければならない、財政が負わなければならない面が強調せられておるのであります。でありますから、少なくとも財政というものが経済に及ぼす影響というものを考えるときに、経済に対してのコントロール、調整というものは金融がその面を非常に大きく持つわけであります。でありますから、私は、財政と金融が一体になって調和のとれた運営が行なわれることによって、国民の負託にこたえて、国際収支の安定をはかりながら物価の安定に対して各段の協力を求める、こういうふうに言ったわけでありまして、これは一〇%ができればそれも一つの行き方であろうと思いますが、そうでなくとも倒産が出ておるから一般会計から金を出せ、また金利を引き下げるには商工中金に出した金も少ないじゃないか、こういう相異なる国家目的を調和をしておるのでありますから、財政金融あわせて政府が所期しおります効果をあげたいというふうに考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/75
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076・野原覺
○野原(覺)委員 予算が膨張したが、それは国民のためだという考えを持ったらとんでもないことです。私どもは今度の予算に対してはその内容を重点的に効率的に組みかえる自信を持っております。いずれそれは予算委員会でお目にかけますが、来年度の三十九年四月一日からIMFの八条国に移行するということになれば、為替面からの調節ということは不可能なんです。そうなればどうしても財政金融政策によって景気調整をやる以外にないじゃありませんか。国際収支の安定をはかるのは財政金融政策による以外ないじゃありませんか。あなたは道路をつくれば何かしらぬ国際収支が改善するかのような言辞をを弄されますけれども、これはとんでもないことです。私は、そういう考えで財政の方針を立てられ、その運営に当たられることを非常に不安に思うし、それではあなたが国会で言明されたあの二つの課題は解決できません。時間がないので非常に遺憾でございますが、しかも財政投融資を見てみますと一兆三千四百二億円、こうなっておる。そしてこの財政投融資の中身を見てみると、きのうも私ども社会党の大蔵部会を開いて検討いたしましたが、その原資はもうあらゆるところからとり尽くすだけとってきておる。そして外債というのがありますね。これは全く海のものか山のものかわからぬ何百億かの外債まで原資にして、一般会計の三兆二千五百五十四億ではとうていまかなっていくことができないから、そのしわを財政投融資に寄せて、驚くなかれその伸び率は二〇・八%だ。私は、財政投融資と一般会計と二つを持ってきて健全財政かどうかということを問題にしていかなければならぬと思うのです。そこでいま私は財投を申し上げておりますが、これは大蔵大臣御承知のように、一般会計以上に景気を刺激するものではございませんか。これはあなたがよく御承知のとおりだ。国鉄、道路公団や電電公社に投資をすると、その影響は鉄鋼会社、セメント会社の投資を誘発してきます。一般会計以上に景気を刺激する財政投融資の伸び率を二一%に近い空前の伸び率にして、どうして一体物価の安定と国際収支の改善が期されますか。あなたは、またそれはその結果を見なければわからぬと言うかもしれぬが、全くこういう膨張財政をとられて、そして表向きだけ二つの課題を解決するのだということはわれわれは納得できない。御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/76
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077・田中武夫
○田中国務大臣 先ほども申し上げましたが、景気調整の役割りは金融が主であります。財政はその補完的な任務を行なう、こう言っても間違いはないと思います。財政投融資は御承知のとおり一般金融を補完するという立場で制度上認められておるわけでありますが、財投が昭和三十八年度に比べて非常に大きく伸びた、二〇%余である。これは初め一六、七%、できれば一八%程度に押えられればということを考えたことも事実であります。最終的には二〇%になったわけでありますが、この財投というものもそう景気を刺激をするというふうに考えていただかないほうがいいと思います。
もう一つは、財投の原資が目一ぱいだというのですが、実際は目一ぱいだということで申し上げておりますけれども、ほんとうはどうかというと全く目一ぱいぎりぎりであとどうするのだというようなお話であるとすれば、それは誤りであります。その中の原資の調達で資金運用部資金、特に郵便貯金を原資としたものを二千七百億見ておりますが、これはもうすでに三十八年三月末で二千七百億が達成せられるという事実も御承知のとおりであります。三十八年度の末で二千七百億の郵便貯金が達成せられる、その原資をそのまま三十九年度原資として見込んだのでありますから、このような問題に無理はないと思います。
その次には、民間資本を非常に吸い上げておるということでありますが、これは御承知の金融機関資金審議会で財投の原資を引き受ける金融機関の方々が全部おるわけであります。この方々には、御無理であれば削りますよ、こういうことでざっくばらんにお話をしたのでありますが、現在の貯蓄率は戦後最高でありますし、このような実際の中で、この程度のものは私たちのほうで引き受けます、こういうことでおきめを願ったわけであります。でありますから財投の総ワクをきめるときには、もうすでに引き受けの民間団体との話し合いをして無理はないということであります。政府保証債の発行限度というものは非常に大きくなるじゃないかというのですが、もうすでに十一月、十二月は月間平均百五十億のベースで発行をしておるのでありますから、三十九年度幾らか経済も大きくなるという事実から考えてみますと、この民間資金の活用というものは無理な見込みで目一ぱい見積もったわけではございません。
もう一つだけ申し上げたいと思いますが、これはひとつ大きな立場で考えていただきたいのでありますが、戦後非常にたくましく伸びたといいますけれども、皆さんの御質問のすべてといってもいいくらい国内不均衡をどうするのだ、また日本のあらゆる業種間の格差をどうするのだ、こういう問題に対しての御発言がありますが、確かに政治、行政の上でこれらを解決して国際競争力にたえていかなければいかぬということは政治目標の最大のものだと考えます。そのときに自主運用というところである民間資金の金融だけでこれらの調整が行なわれるかというと、これは必ずしも書い得て求められるものではないのであります。そういろ立場から考えるときに、国内不均衡というものが焦層の急であればあるほど、一般会計及び財政投融資の任務というものは補完的なというよりも、より高い立場からその制度上の効果が要求せられるわけであります。私はその意味において一般会計及び財政投融資の率を、ただワクを小さくするというよりも、現在の日本、現在のわれわれ日本人にとってやはり政府が国会で審議をしながら、国会の審議を経た一般会計及び財政投融資で効率的に投資が行なわれることによって、よりよい日本の基盤が築けるのだ、こういうことに思いをいたしていただいて、一般会計及び財政投融資を見ていただくと、あと残るものは、では金融をよほどうまくやれ、きっとこういう御発言になると思いまして、私も財政金融一体論を申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/77
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078・野原覺
○野原(覺)委員 時間がないのでもう簡単にこれで終わりますが、私は一番最初にあなたに指摘したように国際収支の改善、物価の安定、この課題解決、そのために三十九年度の予算が編成されなければならぬ、あなたは終始それを主張してこられた。主張してこられておきながら、あなたはお人よしというのか、政治的な幅が広いというのか知りませんけれども、とにかくもうだれにもかれにも妥協しちゃって、そうしてどんどん要求はのむだけのんで一五%というこの予算をつくっておる。これではできませんよ。これは申し上げておきます。これは議論ですから何時間でも私は議論したいと思いますけれども、時間がないからこれはいずれ他日また論議いたしましょう。
そこで、この問題に関連いたしますが、アメリカだって過去十年間の伸び率は四・九%だ。英国は五・四、フランスは八・五、西独は九・六ですよ。日本だけが二〇%近い伸び率を三年間続けてきた。しかもその日本だって過去十年間の平均は一一・七ですよ。この経済的な非常時、大時代的なことばかもしれませんが経済的な非常時と言われる今日、何ですか。この平均率の一一・七ぐらいなとこみで抑えるべきだ。そうしなければ財政を預る大蔵大臣とは言えませんよ。このことを申し上げておきたいと思う。
それから、なおまたあなたの予算をしさいに吟味してみますと、非常なごまかしがあるのです。当然増ですね、これを今度の予算で二五が一六、一七になると大へんだということをお考えになられて、あなたは六つも七つもこの当然増の約束を与えてしまっておる。あなたのあとを継ぐ大蔵大臣が困りますよ。日本の経済は本年でおしまいじゃないのだ。あなたが与えておる当然増は何か。港湾整備新五カ年計画、来年度から実施いたします。それから国民健康保険の家族給付率の七割引き上げ、これも四十年一月から四年間で実施いたします。やるならなぜ今度これを考えないのか。それから厚生年金の給付改定、四十年四月から実施いたします。ことしじゃない、来年度の予算。国鉄の債務負担行為で四百億円あなたは認めておる。農地報償は法律がきまれば三十九年度は三百億を予備費から出します。これは予備費の問題もたくさんあります。目一ぱいの自然増収で災害があったら一体何でまかなっていくつもりなのか、公債でも発行するつもりなのか、これは聞きたいところだが、その次は一番私が問題にしたい元利補給特別保証債の問題、あなたは先ほどフリードマンとの話の中で内国債は発行いたしませんということを言われた。内国債を発行しないから健全均衡の基調をくずさぬ、こうあなたはおっしゃいましたけれども、住民税の減税によって地方団体が減収穴埋めをして、あなたが認めた元利補給特別保証債なるものは、これは何ですか、これは償還のしりぬぐいを国がやるのでございます。国債でしょう。これを国債でない、形式的には地方債かもしれない、しかし三分の二のしりぬぐいは国が完全にやるのでしょう。これは実質的には国債じゃございませんか。内国債の発行をしないと言いながら、こういうことをあなたはやろうとしておる。こういった放漫ずさんな三十九年度の予算になっておるのです、遺憾ながら……。全くずさん放漫な予算になっておる。私どもはこのことは予算委員会その他でまたこれは十分論議をして、その対案を私ども出したいと思いますが、以上申し上げて時間もございませんから、大蔵大臣私にいろいろ言いたいこともあるでしょうが、いつでも私は望むところでございまして、せいぜい大蔵委員会に、予算委員会もございますけれども、出てきて、私どもにもあなたの御見解をお述べいただきたい。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/78
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079・田中武夫
○田中国務大臣 元利補給債だけの問題に限って申し上げます。
これは港湾五カ年計画、道路五カ年計画とか、家族納付の問題とか、これは国会の意思を体してかかることをやったのでありまして、かかることはもう健全財政をより貫く一つの手段だと考えております。この住民税減税に伴う元利保証債を出したということに対して、これは国債だ、赤字公債だということを言われるわけでありますが、これは国債ではありません。赤字公債という考え方を持っておりません。これはまあ議論のために議論を申し上げるのではありませんし、もう野原さんも御質問を終わったのでありますから、私もそういう意味ですなおに申し上げますが、これは御承知のとおり非常に財政力の乏しい山間僻地の市町村団体が、普通の基準以上にとっておるものを基準までに引き下げようということであります。東京や大阪のように国の投資が行なわれておるところではなく、恵まれない、国の恩恵の及ばないところに住みながら、財政がない、地方自治という新しい制度をつくられたために、より高い住民税を納めなければ学校も建たない、道路もできないというような状態であることは、政府としてはこれをこのままにしておいてはならない、こういう考え方から住民税の減税を行なったわけでありますが、これは急激にやれば学校の半建ちのものをあと一体どうしてくれるのだということになるわけであります。当然起債を今度見るのだし、一般の財源を賦与しておるのだから起債でやればいいのじゃないかということになれば、起債はいつか払わなければならない、こういうことになるわけであります。でありますから当然地方が、その自治体が負担すべき、人よりもよけいとっておったものを人並みにしなさいということでありますから、これを国がめんどうを見るのはおかしいという議論は当然ありますが、より高い立場から考えますと、北海道でもって同じ問題がございます。固定資産税は北海道はなぜ一体高くとるのだ、北海道は千万よりも四百万、三百万になる、この事実に徴して同じ元利保証債で救済したことがあります。また災害の激甚地帯であって高率な補助をしておるけれども、それでもなお立ち上がれないという特別の場合に同じことをやり、皆さんの御賛成を得たわけであります。今度の対象市町村が地方自治団体の中には当然財源の調整を行なわなければならないという論が一部にあるにもかかわらず、なかなか行なえない現況において、いままでとっておった財源を取り上げる、やめるわけでありますから、ある期間限って、お互いが、国がめんどうを見ようということでありますから、これが国の赤字公債だという議論はうなずけないのであります。同時に、皆さんに御審議を願い、また御決定を願った政府保証債の制度また債務負担行為、これらのものがみな赤字公債だ、国債だ、こういうふうに認定をするには少々無理があるのじゃないかというふうに考えます。まあそういう議論よりもやはり住民税の減税は必要なんだ、そうしてそれに対して必要以上にとっておったのだから、君たちだけでもってまかなえというのはあまりにも理論にすぎるということで、この程度のあたたかい調整の措置を国が行なうことは適切である、こういうふうに御理解賜わればはなはだ幸甚であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/79
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080・只松祐治
○只松委員 政府は本年度予算で画期的な大幅減税を行なっておる、こういうふうに予算説明書の中でも宣伝をしております。また経済の成長率を本年度は七%に押える、こういうことで例年を大幅に下回っております。しかし自然増収というのは六千八百億、こういうことでかつてなく大きく見積もっております。
〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕
世の中にはいろいろなうまい話がありますが、こういうふうに減税はする、成長率は低くする、しかし税金は、実質上は一番多く自然増収を見積もる、これはどこかにうそがあると思います。野原委員はからくりがある、こういうふうなことばで聞きましたが、あとでお聞きしますが、どこかにからくりがある。私もこう思いますが、あるいは財界の見通しによると、経済成長率は一二・三%ぐらいになるだろう、こういうふうに言われております。こういう見通しが正しいか正しくないかは年度末になればわかってきますけれども、はたしてこのとおり、経済成長率あるいは物価の騰貴にいたしましても四・二%、こういうふうに政府は言っておりますが、答申で示されたとおりいまだに確信がありますか、その見通しに間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/80
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081・田中武夫
○田中国務大臣 予算を提出いたしますときに申し上げた国際収支と物価、こういうことでありますが、私は、総理大臣が毎度お答えしておりますとおり、物価はできるだけ下げるというよりも、安定的な物価の状態、特に年度間を通じて三%、対三十八年度比四・二%で押えなければならない、抑えたいということを深刻に考えておるわけであります。三十九年度の経済成長率は名目九・七%、実質七%と抑えておるわけでありますが、いままでは四・五%といえば七%になり、六%と抑えれば八・一%になる。このような状態から考えまして、一部で言っておられるという御発言でございますが、三十八年度は八・一%ではなく、三十八年度は政府が考えておるよりももう少し伸びるのじゃないか。三十九年度の名目九・七%という政府の考え方が一二%になるというふうに考えておられるとしたなら、これは物価もしがるし、国際収支も非常に悪化する、こういうことになりますので、今度は名目九・七%にどうしても押えたい、抑えるようにあらゆる立場から努力をしたい、こういうふうに考えておるのでありまして、予算と財政投融資、また金融等を通じまして、私は、名目九・七%以上にならないように国民各位の理解を求めながら、今度こそ一〇%をこさないということだけはひとつ十分達成をしなければならないのじゃないか、それが政治、行政の最も大きな目標だろうとさえ考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/81
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082・只松祐治
○只松委員 一〇%を絶対こさせない、こういうことでありますが、そういうことになりますと実質上六千八百億というのは全くぎりぎりの自然増収といいますか、予算増収の見通しになるだろう、まあ一ぱい一ぱい予算、こういうことになるだろう。そうなってまいりますと、たとえば官功労でいま一律五千円のベースアップを要求しております。去年は人事院の六・七%の勧告でも百二十一億円の補正予算が細まれておる。世界の資本主義国の三本の一つの柱、こういうように政府もこれを宣伝しておりますが、そういうことになれば五千円のベースアップは当然のことで、それでもまだ低いわけです。これをお認めになるかどうか、認めるとすればこれは人事院がまず勧告するわけですが、とにかく人事院勧告があればそれを認めるかどうか、そうするとこれだって相当大きな金が必要です。あるいは災害その他が起これば必要になってくる。ぎりぎり一ぱいの予算を組んでおいてそういうものにどう対処する見通しでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/82
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083・田中武夫
○田中国務大臣 災害につきましては災害予備費百億、こういうものを新しく設けたわけであります。でありますからこの意味では健全性の中にも健全性を新しくうたったわけであります。(「自画自賛だ」と呼ぶ者あり)それはいままでなかった。二百億プラス百億でありますから、これは新方法としてお認めいただきたいと思います。
人事院勧告の問題でありますが、これは御承知のとおり物価五%ということでありますが、今年度は開放経済に向かっておるのでありますから、少なくとも物価は年度間を通じて三%以内に抑えたいということを先ほどからるる申し上げておるわけであります。政府が企図しておりますようなこの状態が続けば私は人事院勧告がないであろうというふうに考えますし、あなたと先ほどからお話をやっておりますように、政府が企図しております年度間を通じて三%をこすということになれば人事院勧告もまた当然そこで出てくるわけであります。しかしここ一番将来の日本のお互いの生活を考えるときには、物価と賃金の悪循環がどこまでも続いていくというようなことはどこかで断ち切りたい、また断ち切らなければいかぬ。これは政府だけの考えよりも国民すべての協力のもとに、やはり開放経済に向かうときにはえりを正して、ほんとうに将来の日本のために、そうすることによってわれわれの実質賃金が上がるのだ、またそうなれば物価論争と思って、物価が上がったよりも賃金が上がった率が低いとか、お互いがそういう議論をいつもしておるよりも、より前向きなことを考え得るようにするためにも、物価の安定というものは絶対に必要であるというふうに考えておるのでありまして、人事院勧告をいま答弁申し上げるのは時期的にも非常に苦しいわけでありますが、私は人事院が出さなくても済むように物価を抑えたいという立場でいま考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/83
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084・只松祐治
○只松委員 いま私から言わせれば、春闘を前にしてたいへん重大な発言があったのですが、人事院勧告を出さないようにしたい、その前には人事院勧告はないような発言がありました。これはきわめて重大な問題ですが、財政投融資その他二〇%をこすものがあり、いろいろなものを合わせると一四・八%の伸びではなくて、私、全部計算しておりませんけれども、おそらく本年度も一七、八%のいろいろなものの伸びがあるわけです。そういう中で、財界あたりも銀行その他を見ましても、ほとんどのものが一〇%をこすと本年度の物価高を見越しておる。政府が表面上はこういうことを言っておる。私が一番最初にうまい話だと言ったように減税はする、それから経済成長率の伸びは抑える、自然増収を多く見積もる、そういうことを言いながら結局何かやはり政府の腹としては、そういうことで経済成長率はなかなかとどまらない、物価は上がっていくだろう。そこで年度末には何とかしなければならないだろう、こういうことは考えておられると思うのです。いま人事院勧告が出ないで済む、こういうことをおっしゃいましたが、それはそのこととして人事院勧告だけ切り離すということはあれですけれども、大蔵大臣でありますから、これがないということになりますと、いまきわめて重要な問題であります。ただ物価の問題だけからですか、それとも人事院勧告はしない、こういう腹づもりで……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/84
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085・田中武夫
○田中国務大臣 私は先ほども申し上げましたとおり、現時点で人事院勧告の問題にお答えすることは非常にむずかしいことでございますが、せっかくの御発言がございましたので、お答えできませんということではと思いまして、私の現時点における立場で申し上げたわけであります。まあいろんな御発言がありましたから、人事院勧告に対しては、人事院勧告が出たときに政府としては慎重に誠意をもって考えるであろうということだけを申し上げて、前言は取り消してもけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/85
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086・只松祐治
○只松委員 時間がございませんので次に移りますが、開放経済に移行していろんな問題が起きてまいりますが、その中の一つの租税特別措置法との関連をお聞きしたいと思います。開放経済と、ある特定の産業を税の特別措置をして守っていく、こういうこととは一見矛盾するわけですが、これを矛盾するとはお考えになりませんか、当然とお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/86
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087・田中武夫
○田中国務大臣 ただ一つの人及び法人等を救済するためにいろいろな法律を出す、また特別措置を行なうということになると議論の存するところでございますが、国全体として考えたときに、国の利益を守るためにこうしなければならないという立場で考えた場合の特別措置というものは必要であるという考え方を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/87
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088・只松祐治
○只松委員 時間があれば、この特別措置法が、大正二年に重要物産の免税という法律を制定されて、戦時中、シャウプ勧告その他ずっと変遷してきた、こういうことについてもひとつお伺いしたいところでございますが、時間がございませんのでその点省きますけれども、特別措置法を制定してこの数年間、減税額というのは幾らになっておるか。それから、その減税をしてから具体的にどういう効果があらわれているか。全部というわけではなく、特に効果があらわれてきておるようなものがあれば、ひとつお示しをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/88
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089・田中武夫
○田中国務大臣 三十八年度のベースで考えて千九百九十億だそうであります。
それから効果の問題は、租税特別措置の各項目別に申し上げれば、いまの輸出特別措置があったために輸出が非常に伸びたということは一つの大きな例でありますし、またその他各項目にまたがって申し上げれば、そうすることによって倒れる企業も倒れなかったし、またそれによって国際競争力がついたしというような問題は各般にわたって立証できるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/89
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090・只松祐治
○只松委員 たとえば東洋レーヨンが、特別措置を受けながら三割というような配当をしておったことがあるわけです。こういう点はたいへん誤りといいますか、矛盾といいますか、特別措置法の行き過ぎというふうにお考えになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/90
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091・田中武夫
○田中国務大臣 租税特別措置法の問題のときには、特にそういう問題が出るのであります。私が今度造船及び海運等に対して特別措置をやらなければならぬ、こう言ったときに、いみじくもある人が——これは税制調査会の委員の方でありますが、あなたは石炭企業に対して特別措置をやらなければいかぬし、場合によっては税金の中からもやらなければいかぬ、そうすることによって社会不安はやはりなくさなければいかぬし、将来の資源を守らなければいかぬと言われたけれども、かつてはもうかったし、何割配当もしておったし、経営者の悪さによって石炭企業はこうなったのだ、こういうことを考えないでどうして特別措置をやるのですかという御議論がありましたが、それについて私は時間がなくて反論はしなかったけれども、特別な事例だけをあげて、こういう不当な租税特別措置は要らないのだというようなお話もありますけれども、全般的に国の立場から見て、輸出企業が絶対にそういう措置が必要であるとか、また海運とか、造船とか、石炭とか、国内石油に対しての措置をとっておるとかというような、こういう一般の国税だけではなくて地方税、関税その他においてもそうですが、特殊な制度をとっておるというととは、必要があってやったわけでありますし、その特別措置の効果は十分国に還元をせられておるというように考えております。東洋レーヨンの問題は私はよくわかりませんが、三割配当をしておるというような大企業に特別措置がいっているということがいいのかという議論に対しては、議論があると思います。しかしそれは何割配当に制限をするというような法律例もあります。いま私鉄助成法については、一割配当をする場合には国から受けた助成金は返還をしなければならない、こういう制度があるわけでありますが、東洋レーヨンがどういう特別措置によって利益を得たかという問題に対しては、市税当局から検討してお答えを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/91
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092・只松祐治
○只松委員 そういうふうに、結局高配当をしながら特別措置を受けるとか、いろいろな矛盾があるわけでありますが、これは考えようによっては税金の前払い、こういう形のものにもなると思います。しかもいまの答弁で、昨年だけでも千九百九十億のぼう大な額にのぼるわけでありますが、これはこういうふうに特別措置をするのではなくて、ひとつ出すものは出す、そのかわりにやるものはやる、補助は補助でやるという補助金制度を別個に考慮する必要はないか。現行の特別措置法をそのままに維持することが正しいというふうにお思いですか。それとも今後これを検討し変更していく、こういうお考えがあるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/92
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093・田中武夫
○田中国務大臣 税の問題に対しては議論のあるところでありますので、税制調査会で四十一年までかかりまして税法のあり方も含めて検討する、しかもこれは徴税をする側だけわかっておって納める国民はわからない、私も読んでもよくわからない点がありますので、そういうものをひとつ抜本的に検討していただきたい。特にいまの特別措置の問題も、これを補助金制度でやるほうがよいのか、あわせて補助金制度の合理化審議会がございますので、これらの機関で、政府の立場というような特殊な立場ではなくて、民間有識者の意見で中立的な高い立場で御検討願うということにしておるわけでありますので、これが答申を待ってきめたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/93
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094・只松祐治
○只松委員 この千九百九十億、二千億近い金がほとんど国会の審議を経ないで——税というものは国会の審議を経て使うわけですが、この特別措置というものはほとんど通産省のあれで処理がなされておる。行政機関の手に握られて処理されてしまうわけでありますが、もう少し国会に事前にかける、あるいは国会審議の対象にする、そういう考えはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/94
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095・田中武夫
○田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、三十八年ベースに換算すれば千九百九十億というふうなお答えを申し上げたわけでありますが、この中には金融機関に対する資本蓄積の問題とか貯蓄増強とか中小企業に対するいろいろな償却制度の問題、そういう問題を全部含んでおるわけであります。これをこまかく年度間において報告する、こういうことになりますとなかなか——御質問があればいまお答えしましたようにこうしてお答えをするわけでありますが、税制調査会等においては十分資料を提出しております。いままで二十五年以上国税でもって減税したものが一体いまのベ−スに換算して何兆円になるのか、また所得の控除の限度をしげたというものが一体幾らになるのか、また特別措置をやったものがどうなるのかというような計算はそのつどやって、税制調査会の審議の御参考に供しておるわけでありますが、国会にそのつど何らかの方法でということに対しては、これはなかなか膨大なものになると思いますので、こうして大蔵委員会等で御審議のときに関連資料として提出を求められれば、私のほうではいつでもお出しをして審議の参考にいたしたい、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/95
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096・只松祐治
○只松委員 報告をしろというのじゃなくて、税金と同じように国会審議の対象にする方途を考えるべきじゃないか、こういうことを言っているのですが、時間がございませんのでまた他日に論議することといたします。
最後に一点。日本信託銀行というのを御存じだと思いますが、大蔵省でどの程度銀行管理、監督してやるか、その中で——時間がございませんので一緒にまとめて聞きますが、資本金二十四億円程度の中から日本ロールというのに十六億円近い融資がなされておる。こういうこともありますし、あるいはまたこの信託銀行では争議をやっておりまして、その闘争が長く続いております。こういうことを御存じかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/96
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097・田中武夫
○田中国務大臣 ちょっと記録によってお答えします。
日本信託銀行から日本ロールに対して金融をいたしております。日本ロールが信託銀行の株を持っておるものは、総株数四千八百万株のうち六十三万株所有をいたしております。
それから日本ロールと信託銀行及び労働組合との問題等について、これは私の手元にあるものを申し上げますから、一方的であるというふうにお思いにならないように、悪ければ訂正いたします。
〔吉田(重)委員長代理退席、委員長着席〕
御質問によりお答えいたします。
日本ロール株式会社は、昨年二月従業員三十三名を解雇いたしました。解雇された者は、不当解雇なりとして会社を和平に闘争中、本社前にテントを張ってがんばっております。
第二は、彼らは全国金属労働組合の応援を得て、日本信託銀行に抗議文を出したり、預金者組合と称するものをつくって、日本信託の各支店に十円ずつの預金のさみだれ預金などをしております。それからそのほかにも日本ロールヘの融資を打ち切れというような申し出もしております。
第三点は、日本信託におきましては、三十五年に組合の委員長と副委員長を解雇、その事件は現在中労委において係争中であるが、全金属は日本ロールの解雇事件が似たような事件で、その背後に日本信託がいるという断定のもとに抗議をいたしております。
第四点は、日本信託においてもかかる問題に対しまして、預金者組合の実態がはっきりつかめないということで、現在困っておるということであります。
参考に申し上げますと、日本ロール製造株式会社の社長は青木運之助氏ということであります。資本金二億六千万円、従業員は千三百八十一名、月の商い高が三億二千万円、利益は半期約二千万円程度、借り入れ金三千億円、このうち日本信託から借りているものが十四億円でありまして、都市銀行との取引等によっておりまして、ロールメーカーとしては一流企業であります。日本信託とは十年以上の取引であります。
以上がいままで私の手元で知り得る報告であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/97
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098・只松祐治
○只松委員 日本ロールヘの融資について額が示されませんでしたが、それがわかったらあとでお知らせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/98
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099・田中武夫
○田中国務大臣 十四億円です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/99
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100・只松祐治
○只松委員 それから内容を申しますと、三菱信託が三菱系統で一番大きいのですが、これが六億三千万円ぐらいしか貸していないので、ずば抜けて日本ロールには非常に大きい額が融資されておるわけです。そこでまた、日本信託そのものに争議が起こっておりまして、従業員が約七百人くらいおる中で役付が半分、十人の役付と五人の平社員しかないということで、どんどん役付にして信託会社の信託業務に差しつかえておる、こういうことも起こっております。時間が経過いたしましたので省略いたしますが、そういう点についてひとつ十分大蔵省の御監督を要望いたしまして私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/100
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101・山中貞則
○山中委員長 午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。
午後零時五十五分休憩
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午後一時四十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/101
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102・山中貞則
○山中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行します。春日一幸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/102
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103・春日一幸
○春日委員 私は、本委員会が所管しております当面する重要なる諸問題三、四点について、質問いたしたいと思います。限られた時間が五十分でありますから、私も要約いたします。御答弁もしかるべくお願いいたします。
第一番は、利子平衡税に関する問題でありますが、午前中の質疑応答によって承知いたしますと、大平・ラスク共同声明においては、国際収支が日本において悪くなった場合、免除あるいは特別の措置をとるとまず協約がされておる、こういうことであります。私もそれは当時新聞において承知をいたしておるのでありますが、ここに国際収支の悪くなった状態とは、日本の外貨準備高がどの程度に減少した状態をいうものと両国間に了解されておるのであるか、この点をお示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/103
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104・田中武夫
○田中国務大臣 大平・ラスク共同声明によりますと、深刻な経済上の困難がきた場合ということでありますから、深刻な経済上の困難ということがどういうふうに該当するかという問題については、基準を申し上げることはできないと思いますが、外貨準備、国際収支、日本の国内の経済動向等によりまして、総合的に検討、判断さるべきものだ、こう考えております。大平・ラスク共同声明はこういうことになっておりまして、今度の日米合同委員会で毛確認をされたわけであります。しかし私は、こういう問題とは別に、昨年の九月IMFの総会のときも、随時特免を行なうように、こういうことを言っておるのでありますから、これらとあわせて絶えず免除という問題に対しては交渉を続けてまいりたいというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/104
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105・春日一幸
○春日委員 当時大平外務大臣は、この問題が日本経済に与える影響の重大性にかんがみて、急逝訪米され、ラスク長官との間で話し合いが深くなされ、その結果として、あのような共同声明によって、両国の共通の理解といろものがここに表明されておるのでございます。あなたとジロン長官との間においても、しばしばそういう問題について話し合いがされたが、これは田中大臣が一方的に要請されたにとどまって、相手からは格別の保証は得られてないと伺っております。したがってわれわれは、この利子平衡税がわが国経済に与える重要性にかんがみて、しかもわが国が当面いたしております最も大きな政治課題は、本年度においては、しばしば論じておりますとおり、国際収支の改善、それから物価の抑制にあると考えます。したがってアメリカにおける利子平衡税の日本に対する適用のいかんという問題、これは除外措置は当面されないということはわかっておるが、しかし悪くなった場合においては特別の措置をとるというのでありますから、したがってはなはだ悪くなった場合とは何ぞや、こういう問題について、ある程度具体的な共通の理解というものがなければならぬと思うのでございます。二十数億ドルに比べれば、十八億何千万ドルの現在だってそんなにいい状態ではありませんし、また本年度の国際収支の逆調は、すでに悪化する方向にあると、これは推測されておるところでございます。だからいかなる状態が国際収支がはなはだしく悪化する状態であって、またその悪化した時点においてアメリカが利子平衡税の免除をするとか、あるいはそれにかわる特別措置をとるとか、アメリカの言う友情を示されるのは一体どういう状態なのであるか。当然共同声明の趣意にかんがみまして、共通の理解というものが取りかわされておってしかるべきであると思うが、この点についてどうなっておるのか、伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/105
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106・田中武夫
○田中国務大臣 この際明らかにしておきますが、利子平衡税の問題に対しては、三つに分けられるわけであります。その一つは、利子平衡税がまだ通過をしておらないので、ニュヨーク市場がオール・ストップして、通過したときよりもまだ梗塞状態にあるという問題が一つ。もう一つは、利子平衡税が通過をした場合、特免条項がきめられない場合を想定して考えますと、現在の利子に対して〇・七五ないし一%よけい利子を払わなければいけないということでございます。六%に対して七%払わなければいけない。もう一つの問題は、アメリカが特免を認める、こういうことであります。でありますから、特免問題に対しましては、私のほうでは大平・ラスク共同合意書に基づくものはもとよりでありますが、十八億ドル、二十億ドルと言わないで、この合意書ももとよりではあるけれども、日米間の友好の問題、それからいやしくもカナダに対して特免を行なう、こういったことにかんがみまして、日本も差別待遇を受けるようなことは困る、こういうことで、利子平衡税がまだ法律にならない現在でも、絶えずこれが特免を訴えておるわけであります。でありますから、経済上の困難に逢着した場合はもちろんでありますが、困難に逢着しては困るので、日本政府側としては逢着せざるために、利子平衡税の免除を求めておるという実情であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/106
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107・春日一幸
○春日委員 その点はわかっております。ただ問題は、この問題の重要性にかんがみて、当時わが国を代表して大平外務大臣がアメリカに参り、ラスク長官との間に這般の話し合いが行なわれ、しこうして共同声明にそれが集約をされて世界に明らかにされた。それは日本の経済状態が著しく悪化した場合において特別の措置を講ずる、こういうことになっております。われわれが期待するその特別の措置が講ぜられるその状態とは、日本の経済状態、すなわち外貨準備高がどのように減少した時点であるのか、共同声明のその権威にかんがみて、この点については大まかな話し合いが当然なされておってしかるべきであると思うが、共通の理解があるのか、それともその点については何ら具体的な話し合いはなされていないのであるか、この点を御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/107
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108・田中武夫
○田中国務大臣 この深刻な経済上の困難というものに対しては、このとおり表現されておりますし、このとおり理解をしております。しかし私は、財政当局者としては、別な立場から、深刻なる経済上の困難がきた場合はもとよりであるが、それよりも前に、日米友好のためにも、現在の時点において法律が通った場合には——あまり好ましい法律ではないということさえはっきり言っておるのでありますから、好ましいことでもないし、やむを得ず通るとしたら、日本に対して特免条項を適用せられたいという、去年の七月のケネディ教書発表当時からの姿勢は、くずしておらぬのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/108
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109・春日一幸
○春日委員 あなたが何と申されても、日本国を代表した大平君が、アメリカを代表するラスク長官との間において、この利子平衡税の制度というものはもはや通るものとして、しかもカナダは特免をするが、日本は特免しないものという前提の上に立って、しかも現段階においては三月中ごろには両院を通過するであろう、そういうような現時点において、しかもわが国の国際収支はいまのように日を追うて悪化の徴候にある。この時点において、いわゆるこの共同声明の中身は何を意味しておるのであるか。日本の国際収支というもの、すなわち悪化状況というものは、外貨準備高がどの程度減少した時点を著しく悪化した状態と想定するという、そのような共通理解があるのか、また全然そういうことについてはないのであるか、この点を端的に御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/109
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110・田中武夫
○田中国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、外貨準備の問題、国際収支の状況、国内経済動向等を土台にしまして、現在ワシントンに日米間のこの問題に対する特別協議会が持たれておるのであります。大蔵省から参っております山下公使が中心になって、先般日米合同委員会に参りましたブリット財務次官補等との間に、随時打ち合わせをしておるのでありますが、外貨準備が十五億ドルになったとか、十三億ドルになったとか、十億ドルを割るときとか、それからIMFからスタンドバイを借りなければならないとか、そういう特定な目標、水準を置いて言っておるのではないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/110
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111・春日一幸
○春日委員 日本の経済事情が極端に悪化したというたところで、それが集約的に象徴されるものは、この外貨準備高にあるのでございます。では私は大臣に伺いまするが、田中大蔵大臣は、わが国の外貨準備高がどの程度に減少した時点、状態、それをわが国の経済状態が著しく悪化した状態と考えるか。いわゆるラスク・大平共同声明の中に示されておりまする著しく悪化した状態とは、田中大蔵大臣としては、わが国の外貨準備高がどの程度に減少した時点を考えておられるのであるか、この点を明らかにされたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/111
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112・田中武夫
○田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、深刻な経済上の困難、こういうものに対して基準はきめておらないのであります。私はだから大平・ラスク共同声明の線に沿ってではありませんが、私が財政責任者として考えておる段階におきましては、IMFからのスタンドバイをやらなければならないとか、また特別借款をやらなければならないとかいうような事態が来ないように、いま配慮をしておるわけでありまして、十五億ドルになったら、十三億ドルになったら悪化した状況だというような、どうも春日さんの質問に端的にお答えをするわけにはちょっといかないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/112
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113・春日一幸
○春日委員 この問題は、あなたもいまや財政経済の半くろうとになったといわれておるのでありますが、私は経済の情勢を象徴するものは外貨事情にある。したがって外貨事情がどの程度減少した状態、これがわが国の経済がどのように困難な状態になった状態、こういうことは私はあなたが言おうとずれば言い得ると思うのだけれども、いまやそうなったときになおかつアメリカの特別措置が受けれないような場合を想定して、あなたが慎重にその見解を示すことをためらっておられると思う。このことは田中さんのような純真可憐な大蔵大臣が、正直に自分の意中のことを吐露されないということは、私は遺憾に思う。そういうようなことでは国政の審議はなかなかできませんぞ。実際の問題の核心をうがって、アメリカの確たるその保証が取りつけてあるのであるか。それともまた困った状態になったら、それはそのときにあらためて相談をしようというような気休め的な共同声明であるのか。このことは今後そのような事態になったときに、日本国政府がアメリカ国政府と交渉するときに大きな意義を持つものであるがゆえに、私はある時点、ある状態というものを。ポイントアップして、共同声明の権威の裏づけというものは、何かそこに含蓄があるかと思って聞いたのであるが、なかなかあなたも述べられておらぬが、述べられないことがわが国の利益であるならば、このことは私はあえてただそうとは思いませんけれども、どうかひとつあなたはわが国の財政を背負って立つ最高の責任者であるという立場において、わが国の外貨準備高がどの程度減った状態、このような状態はわが国の経済がはなはだしく困窮に陥った状態である、こういうようなことはこのような委員会を通じて、国民の前に明らかにし、全国民の協力を求めて、そうしてアメリカに対してももの申す、こういうような見識があってしかるべきだと思うが、これについてさらに何らか答弁されることはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/113
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114・田中武夫
○田中国務大臣 春日さんも承知をされて御発言をしておりますので、私も逡巡がちな答弁をしておるわけであります。これはいまの大平・ラスク介意書というものとは別に、全然別個な議題として、日本の国際収支が危険であるというような場合をどこに置いておるかということであれば、お答えをします。しかし御発言の前提が、大平・ラスク共同声明、合意書というものの中に盛られておる深刻な経済上の困難というものは、基準を一体どう置いておるかということであるから、私は答弁をためらっておるわけであります。これは率直に申し上げますと、国内的の問題とすれば、五十億ドル片道貿易であるときに、まあ十五億ドル、十四億ドルは必要であるというふうに考えておるものが、六十億ドルになり、七十億ドルの片道貿易になるときに、日本の外貨が二十億になり、二十五億になることは、これは好ましいことであります。過去においてどのようなときに引き締め政策がとられたかというと、戦後最高であった外貨保有高が十四億ドルに減ったときに、御承知の引き締め政策がとられたわけであります。でありますから、現在の段階で申し上げて十三、四億ドルということになれば、いずれにしても引き締め政策とか、また国際収支上の問題に対して困難な状態になったと、こう考えることは常識的だと思います。しかしこれは私は先ほどから申し上げておりますのは、大平・ラスク合悪書に基づいては、深刻な経済上の困難が来たときには、当然アメリカは特免すると私は了解しておるのでありまして、私はそうではなく、この大平・ラスクの共同声明はもとよりのこと、現在の段階においても日米友好の立場において、日本を経済的困難な状態に追い込んではならない。その意味ではアメリカは特免をすべしだ、こういうことを真剣にいま外交交渉をやっておるのであります。でありますから、その問題の経済上の深刻というものと、国内的な財政経済理論からいう深刻の度合いとはどうかという問題とは、ひとつ分けて御質問をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/114
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115・春日一幸
○春日委員 わかりました。しかし大臣も政策マンとして御承知であらせられるけれども、数々の日本国政府からの要望にも顧みず、下院はすでに原案どおり通って、上院も三月の中旬には通ろうとしておる。だとすれば、このような経過を直視するならば、われわれにとって救済になるものは、この共同声明しかないのですよ。ところがしばしば交渉しておると言っておるけれども、下院の委員会においても何ら交渉の成果はあらわれていないのである。だからわれわれは、ラスクと大平との共同声明というものの中に一個の含蓄があって、ある時点に至るならば救済される。だとすればそのある時点とは何か、こういうようなことは日本国民としても、われわれこの大蔵委員会としても腹に置いて、今後の政策論争をしなければならぬと考えておるがゆえに伺ったことであるが、しかしその問題は今後の含蓄に残しておくといたしまして、私は質問を進めまするが、この間今澄君が予算委員会で、たまたまその外貨準備高の明細を伺って御答弁がありました。そこの中で外国銀行に預託されておりまする七億ドルかれこれのものがございます。これについて伺いまするが、それとまた政府手持ちの米国財務証券ですね。これはわが国が現在相当の長期対外債務を持っておると思うが、そういうような各種の債務に対応して、これらの預金が拘束を受けておるようなことはないかどうか、この点はひとつ明らかにしておいていただきたい。すなわち完全に十八億七、八千万ドルは自主的流動性を確保し得ておるかどうか、この点を明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/115
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116・田中武夫
○田中国務大臣 予算委員会で申し上げましたとおり、十二月末の外貨準備高は十八億七千八百万ドルでありまして、金の保有高が二億八千九百万ドル、それから外貨定期預金が約七億ドル、それに外国の財務証券が約七億ドル、その他の当座預金等が約二億ドルの合計十八億七千八百万ドルでありまして、この外貨準備は十分流動性を持っておりまして、自由に処分できるものであり、何ら拘束を受けておるものではないことを明らかにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/116
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117・春日一幸
○春日委員 次に質問を進めます。歩積み、両建ての禁止について伺います。この不当な歩積み、両建て預金の問題につきましては、これは本委員会においてもしばしば論ぜられ、商工委員会においてもまた同様。過ぐる本会議におきまする私の質問に対しまして、総理大臣は、これは大蔵大臣が決意をいたしておる、公正取引委員長はこれに対して重大な関心を持って解決に進んでおると述べられておる。総理みずからも、この歩積み、両建ての廃止について、今後は以前以上に力を入れていくことを誓うと述べられておるのであり、これは少なくとも国民に対する行政府の誓約であります。大蔵大臣は、この総理の言明に基づいて、その禁止について、いかにこれの実現をはかっていかれる御決意であるか。ことさらに本会議において、大蔵大臣が決意をいたしておる、それから公正取引委員長はこれを重大関心を持って解決に進んでおる、総理は、十年来の持論であるから、私はこのことを解決することを国民の前に誓うと述べられておる。このことにかんがみて、もはやこの問題は大詰めに入った段階であると思うが、いわゆるその大臣の決意なるものは何であるか、この際国民の前に明らかにされたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/117
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118・田中武夫
○田中国務大臣 歩積み、両建ては長い間の商習慣の一つでありますが、戦後、特にこの四、五年来、歩積み、両建てが弊害を伴っておる状況でありますので、これが解消に対しては遺憾なき処置をとろうという考えを持っております。その一つの具体的なやり方としましては、銀行検査を行なったわけであります。第二の問題としましては、相互銀行に対して歩積み、両建て解消に対し、一つの目標を定めて、具体的な解消方法の提示を求めて実行を迫っておるということであります。その第三点は、都市銀行を含む市中金融機関に対しましても、歩積み、両建てに対して、これを解消するために自主的に具体的な方策の樹立を求めておるということであります。銀行も、歩積み、両建て問題が非常にやかましくなってまいりましたので、まじめな態度で、大蔵省に迷惑をかけないようにして、歩積み、両建ての解消に対して遺憾なきを期すということで、現存鋭意歩積み、両建て解消方策に対して立案をいたしております。第四の問題としては、政府三機関の窓口である金融機関であって、自分の協調融資の負担分に対して歩積みを求めておるというようなものに対しては、これが業務の取り消しを命ずるという手きびしい通達も行なっておるのであります。こういうものに加えまして、第五点として、やむを得ざれば、公取が特殊指定を行なっても、歩積み、両建ての解消に対して積極的に対処するという体制でありますので、歩積み、両建ての解消の方向に進んでおるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/118
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119・春日一幸
○春日委員 いまようやくにしてその解消の方向が示されたというだけでは、きわめて遺憾でございます。総理大臣の答弁は、重大な決意、それから解決に向かって進んでおる、こういうことを言っておる。ところがあなたのいまの御答弁によると、解決の方向へちょっと姿を見せておるのだ、こういうような程度のことで、きわめて遺憾です。仄聞するところによりますると、金融機関の白粛措置と称するもの、これは銀行局との間にそれぞれの連絡があって作成されたものであると思うが、これによりますると、相互銀行では、債務者預金が総預金の三〇%をこえる場合には、その超過分を二年間で減らすこととし、それから全銀連の方法では、債務者預金の二〇%ないし二五%を占めている拘束性預金の比率を、二年間に二〇%減らすことに努力する、同時にまた苦情処理機関等を併置するというようなこともありますが、こういうような二つの自粛案に対して、大蔵省がこれを了承し、その自粛措置と称するものを監視していくという方針に固まりつつあると伺っておるのであるが、事実関係はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/119
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120・田中武夫
○田中国務大臣 具体的なこまかい問題に対しては銀行局長から答弁させますが、この歩積み、両建てという問題に対しては、商習慣であるということと、それから故意に無理をして歩積み、両建てを強要しておるというような問題、なかなかむずかしい問題があるのであります。そういう意味で、現在の段階においては、相互銀行に対しては、求めた歩積み、両建て解消の方策を了承しまして、これを必ず守らせるようにということを考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/120
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121・春日一幸
○春日委員 私はまことに異様なことを承ると思うのであります。少なくともわれわれは長い時間をかけて、商工委員会でも本委員会でもこのことを深く論じておる。金融機関はまだこの歩積み、両建てが、独禁法に違反する疑いのある行為であるということについて何らの認識がない。このような明白かつ単純な論理を、金融機関に正しく理解せしめていないということは、監督官庁として一体どうしたことでありますか。たとえば、いまかりにこのような相銀方式にしろ、あるいは全銀連方式にしろ、これを実施していくということになると、どういうことになるか。すなわち相銀方式によれば、総預金の三〇%までの歩積み、両建てばいいということになるのです。また全銀連方式によると、債務者の預金の二〇%の二割、これを減らしていくというのだから、四%引いた一六%、これまでの歩積み、両建てはやってもいい、合法化される、こういうことになるのですよ。私はこの問題については、ひとつ大蔵大臣に深甚なる検討を願いたいと思う。同時に大蔵当局、関係担当官も、深く本質、根源に触れて検討願いたいと思う。歩積み、一両建ての問題は、このような程度の問題ではなくして、個々の行為に関する質の問題なんです。よろしゅうございますか。程度が少なければそれでいいという問題ではこれはないのです。たとえばどろぼうですね。五百円まで盗んだら、そんなものはどろぼうではないということではないのですよ。五百円盗んだ個々のどろぼうは、いわゆる窃盗罪として処罰を受けなければならない。これは不当なる取引行為、不公正な取引行為ですね。程度の問題ではなくして、質の問題なんです。よろしいか。あなたのほうがいま相銀方式にしろ、あるいは全銀連方式にしろ、それは債務者総預金の中に占める割合が三〇%までのものはいいというようなことになってくれば、これはものにたとえて言うならば、五千円極度までは盗んでもよろしい、ところが五千五百円以上盗んではいけない、その盗んだ分は被害者のところに返そう、こういうようなばかなことはいけないと思うのです。このことは、日本の中小企業がいま特に資金梗塞で苦しんでもおるし、のみならず開放経済において企業の金利負担を軽減しなければならぬということは、あなたみずからが提唱されておるところである。公定歩合の問題よりも、歩積み、両建てをなくさなければならぬということは、あなたが在野当時しばしば提唱されたところである。
〔委員長退席、原田委員長代理着席〕
日本銀行総裁すらもこれを強調しておるところである。そういう意味で、これはなくさなければならぬと言い、総理は本会議において、重大な決意をあなたが持っていると言い、私もいままで以上に熱心にこの問題の解決を国民に誓う、こう言っておりながら、三〇%までの歩積み、両建てはよろしいとか、あるいはその中の一六%までのものは歩積み、両建てにしておいてよろしいとか、これに対してあなた方が了解を与えて、今後そういうふうにしていくように監督するとは何事か、これは程度の問題ではないのである。これはその行為の個々にわたる質の問題である。不公正なる取引、不当なる取引行為、これは独禁法が禁止しておるところなんだから、立権法治国において法律に違反する行為をあなたのほうが奨励するという手がありますか。この問題はわが国の経済、この健全なる発展ですね。そうして公正なる経済秩序を確立せねばならぬという、お互いに課せられておる重大使命にかんがみて、このことは銀行が迷惑をされようとどうしようと、そのことは問題の本質に触れて解決せなければならぬ問題であると思うが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/121
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122・田中武夫
○田中国務大臣 歩積み、両建ての解消ということに対しては、私も非常に深刻な考えを持ってやっております。これは春日さん、ひとつお認めをいただきたい。いまあなたがお話の中で、刑法犯罪と同じように言われましたが、これはちょっと違うのです。万般承知の上こうお話しになったと思いますが、これは刑法犯罪であれば、もちろん五百円であっても犯罪を構成するわけでありますが、この歩積み、両建てというのは、金融機関の持つ一つの特殊的な商慣習として、これは世界じゅうに存在をするのであります。これは金融機関が預金を集めるということと、その預金をもとにして貸し出しをするという金融機関の業務からくる必然性でありまして、これはある程度の歩積みというものは許されるのであります。これはどこの新聞にも出ておる決算のバランスを見ても、資産表を見てもすぐおわかりのとおり、三百億を借り入れしておきながら、反対欄には二百億の預金を持っておる。二百億の預金を持っているなら、なぜ相殺勘定を起こして、百億借り入れて現金ゼロにしないかということであります。経済が動いておるのでありますから、そういう意味で両建て方式をとっておるということはあり得るのであります。ただいまあなたが言われておるもの、私が考えておるものは、借り主の弱みにつけ込んで銀行が強制的に歩積みを行なわせる、いわゆる借り主の意思に反して重大な不利益を強要しておるところに、大きな問題があります。でありますから、こういう問題をどうしても取り締まらなければならない、こういうことでありますが、この商慣習による歩積みと強制的な歩積みというものに対して、なかなか区別ができないのであります。でありますから苦情相談所を設けるとか、苦情相談所を設けるならば大蔵省に設けたほうが一番いいと、きょうも春日さんからそういう質問があると思いますので、場合によっては大蔵省にひとつ苦情があったら金融機関を指定してどんどん出してもらう。これを発表せよといっても、これはよほどでなければ銀行とけんかをして、金融機関とけんかをしてまでやらない。そういうことを知りながら、金融機関が正常なる歩積みでありますということを強弁しておる問題に対しては、何らかこの事実を明らかにして、歩積み、両建てを排除しなければいかぬ、こういう非常に強い態度でおるわけでありますが、一挙にこれを全部解消をしてしまうということは、求めてなかなか得がたい事実であるといろことを承知をしておるわけであります。でありますから、次に質問があるかもしれませんが、私はこの間銀行、金融機関の合併論というようなものを考えたのも、歩積み、両建てをやっておって借り主から利息を取っておって、それで銀行や金融機関の経営が成り立っておるとしたなら、これは合理化をしなければならぬ。正さなければ、これからのほんとうの金融機関の使命を果たせない、こういう考え方を持ったわけでありますから、やはり春日さんと同じような考え方で、より積極的に歩積み、両建ての排除に邁進をしようという考え方を明らかにします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/122
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123・春日一幸
○春日委員 これは大臣がまだこの歩積み、両建てが、独禁法に違反をする疑いのある行為であるということについて、正当な認識がないのではないかと私はおそれる。私はここにあらためて申しますが、ここに歩積み、両建ての違法性の根拠になるものは、これをやめさせなければならないとする論拠となるものは独禁法で、独禁法の第二条第七項は明白に不当な取引行為、これを指摘しておるのであって、そうしてこの独禁法の中では、この条項では、過当な取引行為というような問題についても片言隻句も触れてはいないのです。度を過ぎたとかいうようなことは問題ではないのです。不当なそのもの自体がいけないとしておるのですよ。不当ということと過当ということは、これは本質的に違っておる。言うまでもなく不当ということは、当を得ていないことであり、道理にかなわないことであります。そのもの自体がいけないことである。過当ということはある程度の、適度にとどめていけば適当なことであり、これはいいことである。過当ということは度を過ぎなければ、それはいいことなんですよ。それから不当ということは、そのもの自体が当を待ていないことであり、いけないことなのです。多くても少なくてもそのことは不当なことなのです。独占禁止法の第二条七項には、その不当ということをいっている。それを受けてきめられておりますところの不公正な取引方法の指定の中の第十項は、みずからの地位が相手方に比べて優位に立つことを利用して、相手に不利な取引をしいるの行為、不当取引、過当などということはいっていない。ところがいまあなた方がそれぞれ金融機関に臨んでいる態度は、この不当という問題を忘れてしまって、過当というところにそのポイントが置きかえられておる。適当なものならばよろしいというのだ。適当なものがありますか。少なくとも金を借りたい人から命を預金させる。五分五厘で預金させておいて、九分三厘で貸し与える。四分近いところの利ざやを取る。そこで金融機関は膨大な利潤を占めているではありませんか。町々の角々から盛り場ことごとく宮殿パレスである。そして町の中小企業者は疲弊こんぱいの中にあえいでいる。金融機関というものは太ったって何もならないのです。実際は産業がほんとうに興隆されなければならない。産業が王さまであって、金融機関がそれに仕えるサーバントである。逆になっているところに、わが国経済のひずみが随所に発生してきている。だからわれわれは大蔵大臣に特に御認識を願いたいということは、あなたがその気にならなければ、われわれがここでどんなにわめいたって、問題の解決にならないがゆえに、私はあなたに再考あるいは認識をいただきたいと思いますことは、これが問題になるのは、根拠法は独禁法なのです。独禁法は、ほかの条項ではその過当の問題があるが、この二条七項というところでは過当なんということはいってはいない。不当なんだ。不当ということは、その行為がどんなに小さくてもいけないことなんです。五円盗んだってどろぼうとして、窃盗犯で処罰しなければならない。たとえばこの独禁法の問題だって、このような取引を現在しいられた者は公取に望めば、審問、審決してそれぞれの処断ができるけれども、そのことは本人がそんなことを言うて行かれない弱い立場にあるがゆえに、われわれ行政府がそれによって基準を示して、過去のことを問わず、将来そのようなことをなくすということによって、日本経済の健全な発展をはからなければならぬ、そういう立場でわれわれは論じているのですよ。だから、いまあなたが指導せんとされているところは、過当なことをなくしようとされている。過当なんということは問題でない。不当性そのものを払拭しなければならない。金融機関というものは公的な使命をにのうている。このような公的性格をになうところの金融機関から、一切の邪悪と不公正を払拭する権威ある金融機関たらしめるために、われわれはこのことを論じておるのですよ。だからその立場において、この過当性というようなことをあなたは念頭から払拭をして、あと十分と堀君が言ってきたので、あと十分で銀行の問題と証券の問題をやらなければならぬが、これはどうですか。過当と不当の問題について頭を切りかえていただきたい。これは真剣なんですから、あなたの良心的な御答弁をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/123
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124・田中武夫
○田中国務大臣 歩積み、両建ては、すべてが不当であるということではないのでありまして、いままで申し上げましたように、商慣習として世界的にどこでもある程度の歩積み、両建てが行なわれていることは、これはもう先ほど申し上げたとおりであります。ところが近年不当に近い、不当と言わるべく歩積み、両建てが横行しているところに問題があるのでありまして、現在の状態では少なくとも不当な歩積み、両建て、いわゆる借り主の意思に反しての強制的なもの、また不利益をしているような、あなたが言われた独禁法に当然該当するようなものは、これは直ちになくさなければならぬ、こういう考え方を持っていま対処しておるのでありますから、またきょうの特別な御発言もありますので、いよいよひとつ努力いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/124
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125・春日一幸
○春日委員 不当と過当というものは、ある段階において質的に変化するものではないのです。よろしいか。たとえば水蒸気がある一定に冷却されると水になる、気体が液体になるというような問題ではないのです。最初から不当なもの、だから私が申し上げているのは、歩積み、両建てを禁止しようなんと言っているのじゃない。われわれの所論は、当初から不当な歩積み、両建てということを言っておる。適当な歩積み、両建てなんというものはあり得ない。不当な歩積み、両建てをなくさなければならぬということを言っておるのであって、商習慣に照らしてあることである。また本人の意思があることである。父祖伝来の財産がよそにあって、これは別に別個財産として預託するのだ、別に歩積み、両建て資金として借りるのだ、これを禁止しろというようなやぼなことを言っているのではない。われわれは大蔵委員会のベテランである、そういうくだらぬことを言っているのではなくして、不当な歩積み、両建てということを言っておるのであるから、頭のポイントを切りかえてください。わかりましたか。
次に質問を進めます。金融機関の合併について、このほどあなたは四日の日でありますか、閣議において見解を述べられております。しこうしてあなたはいままでの一県一行主義よりも、ブロック別にこれを再編成すべきであるというような方向を、記者会見で述べられております。これはまことに重大なことであると思うのです。みんながお互いに揣摩憶測をして、いろいろな動揺があり、またいろいろな騒動がある。だから私はこの際、銀行を再編成するというのが大蔵大臣の意思であるならば、また政府の方針であるならば、やはりそのような再編成あるいは合同の基準というものを、ここに明確に示される必要があると思うが、この機会はそれを明らかにいたされたい。たとえば都市銀行と都市銀行の合併を何と考えるか。地方銀行と都市銀行の合併を何と考えるか。あるいは地方銀行相互間の合併をどう考えられるか。あるいはまた信託銀行と一般の銀行の合併をどのように考えておるのであるか。本日時間がないとすれば、適当のときに発言を求められて、銀行の再編成あるいはまた企業統合、これについての大蔵大臣の、もしくは政府としての確固たる基準を明らかにされる必要があると思うが、これはどうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/125
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126・田中武夫
○田中国務大臣 いずれ機会を見て御質問にお答えをすることにしまして、時間に間に合うように簡単に申し上げます。
銀行の合併につきましては、従来から客観的に合理性があり、国民経済上プラスになるものであれば認めるという方針をとってきたわけでありますが、今度考えておりますのは、銀行当事者で円満に話し合いが行なわれて、合併の必要性が客観的に認められ、合併条件が適正であるというような、また合併後の効果が認められるというようことが言えるわけであります。当面予想される合併の事例としては、地方銀行同士の合併、都市銀行と地方銀行間の合併が考えられるわけであります。これは地方銀行同士の合併については、同一都道府県内にあるものというようなことを銀行局では考えておるようであります。それから都市銀行と地方銀行の合併という問題に対しては、歴史的、沿革的に相互の関係が密接なもので、当然合併をしたほうがいいというふうに認められるものは合併を促進していく、こういうことであります。この銀行の合併論ということに対して私が述べたととに対して、その面だけが非常に強く言われているので、責任の立場にある人の発言というものは、とられ方によってはなかなかたいへんになるのだということで、いま慎重に考えたわけであります。ところが、これはこの際でありますからちょっと申し上げますと、春日さんが先ほど言われましたように、歩積み、両建ての問題とか、いろいろなことを開放体制に対処して、金融機関も国際金利にさや寄せしていかなければならない方向であるにもかかわらず、公定歩合が上がればいながらにしてもうかるとか、歩積み、両建てとしたところで、そう簡単に片づくものでありません。これを裸にしてしまえば、実質預金というものはうんと減ってしまって、月給も払えなくなる。もしそういうことが虚実であるならば、お互いはかかる問題に対して真剣に取り組んで、もっと合併ないしいろいろな合理化の支度に対しては、国民の前に明らかにできるような姿勢をとるべきである。そういう気持ちで合併されるならば、また合併することが、海運会社が六つのブロックに大きく、長い歴史を振り捨てて合併をするのが、そのために大きなメリットがあるというならば、金融機関も例外であり得ない。そういう気持ちで合併のお申し込みがあるならば、大蔵省は引き受けます。いままでのような及び腰でありませんから、そういうこと自体を金融機関自身もお考え願いたいという趣旨の発言をしたのであります。
また第二のブロック別の問題につきましても、太政官時代につくられた府県行政区域を中心にして、地方銀行はそれでいいのだという考え方が一体合理的ですか。東京都というものでもって千万人も住んでおったり、年間日本の産業の四割も五割も、極点に、過度に集中しているようなところと、少なくとも山梨県とか、また北海道とか、また鹿児島県とか、こういうところの行政区画と、金融の現行の制度を一緒にしなければならぬという考え方自体に対しては、われわれはやはり勇気を持って考えなければならぬ、こういうことを申し上げたのでありまして、この破綻が非常に大きいので、大蔵省としても早急にこれに対する基本的な態度を考え、政府としての統一見解を明らかにしたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/126
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127・春日一幸
○春日委員 もはや時間が迫ってきて、私はこれは三日間もかかって勉強したのですが、えらい答弁ばかり長々となりまして、これは質疑妨害もはなはだしいのですが、証券の問題と銀行の問題は後日に譲るしかありませんが、ただ問題は、なるほどあなたのお説のとおり、この廃藩置県時代の府県を単位としたところの現行ローカル・バンクのあり方について再検討と言われるけれども、しかしいざそれをやってみれば、たとえば小さい県と県とで両方の銀行が一つになると、いずれか一方が本店にならざるを得ない。支店になれば、支店銀行というものは何となくその重点が本店に移っていくというようなことで、これは金融機関というものの持つ一個の営利専業としての本質上、そういう性向はいなみがたい。だとすれば、それはそれとして措置するようないろいろな基準というもの、制約というものが定められなければならぬであろうし、またそれにしても府県統合という問題も、地方行政の面において同時に並行的に改革がなされなければならぬ。いまあなたが唐突に、銀行の統合が日本経済の高度の成長にかんがみて、そして昔の地域といったところが、あれは何といっても地方の地場産業を擁護するために、そこに本店銀行というものが一行なければならぬという、一個の経済ポリシーからそういうものが出てきた。それを直すとすれば、総合的に直していかなければならず、合併した場合のそれぞれ支店の制約とか機能とか、また過当競争の排除とか集中融資の規制とか、そういうものがなされていかなければ、これはなかなかうまくいかない。あなたは当然そんなことは研究されていると思うが、ただ断片的に、思いつきと言ってはなにであるけれども、少なくとも大蔵大臣が銀行統合についてそういうような意見を述べられた以上は、相次いで内閣の方針として、き然たる基準を示してもらうのでなければ、末端は信用金庫、信用協同組合、相互銀行から相当の蠢動がある。いかにすべきかという動揺があると思う。すみやかにこれに対して基準を示されるよう、あるいはそういうことが全然念頭にないとするならば、そういうような疑念を払拭するような適切な措置をとられるように強く要望いたしまして、まことに残念無念でありますが、私の質問は、以下は後刻に譲ります。これにて終わり。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/127
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128・原田憲
○原田委員長代理 小松幹君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/128
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129・小松幹
○小松委員 ただいま春日一幸君から大臣に銀行合併の論議が出ましたが、私も主としてこの問題について承りたい。
いま大臣の答弁を聞いてみると、まことに思いつきであった、いかにもアイデアマンとして一発打ったのだ、こういうように聞こえましたが、はたしてそうなんですか。あなたの考えなりあるいは実行力なりというものが、どう行政に反応していくか、その辺をお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/129
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130・田中武夫
○田中国務大臣 春日委員の御発言にありましたとおり、銀行の持つ根本的な使命、またわれわれの生活、経済の中に占める大きな影響力を考えますと、これらの再編成その他に対しては軽々に言うべきでないということに対しては、お説のとおりであります。しかし私が先ほど申し上げたように、銀行協会の昼さん会で述べたのは、開放体制に対して銀行のあり方を主として述べたのであります。それがだんだん銀行の再編成という面に対して強くあらわれてきたようでありますが、こういうことに対しては十分考えなければならないというふうに考えます。ただ私は、思想的なものの考え方としては、銀行といえども開放体制に向かって、また国民の要望に対して現状のままでいいという考えは持っておらないのであります。春日さんが言われましたように、歩積み、両建ての問題は、中小企業に対しては死命を制する問題であります。でありますが、この問題をいま大蔵省で考えておるようなことだけで一体片づけられるのかという、先ほど春日さんの手きびしい御質問がございましたが、私も心の中ではそう考えております。現実問題として歩積み、両建てというものが、不当といわれるか、過当というふうにいわれるかは別といたしまして、これらを全部整理をしたときに、立ち行かない金融機関があるとしたならば、現状のままにしておくわけにはいかないのであります。そういう意味からこの歩積み、両建て問題だけを幾らここでやっておっても、解決しないのであります。私はその意味で銀行協会でいろいろな提起、いろいろなお話を出したときに、あなた方は合理化メリットというものを非常に高く評価している。海運に対してはこうなさい、また石炭に対してはこうだということを言いながら、金融機関だけは大きな保護のもとにあるから、現状のままでいいのだという考え方でおることには、遺憾ながら賛成できない、こういう私の思想を述べたのでありまして、私は現在のものが直ちに再編成をしなければならないとは考えておりませんが、合理化というものに対して例外たり得ない企業であるという考えは、根に持っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/130
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131・小松幹
○小松委員 そこで私は二つの問題点をあなた自身が提起したと思うのです。あなた自身の中に思想として持っていることと、大蔵大臣として、行政担当者として責任上持っている二つのことについて私は質問をしたい。
いまあなたは歩棲み、両建ての問題等をいろいろ言って、かような銀行行政の中に押しやられているから、合併したらいいのだという一つの論理が、あなたの口の中から引き出されたのです。私は歩積み、両建てを銀行合併によって解消しようなんということが考えられる甘っちょろい考え方なり、論理の飛躍した考え方を持っている大臣の思想というか、考えというものが、とんでもないと思うのです。歩積み、両建てなんというのは、銀行の大きい小さいで考えられるものではない。別個のところから出てきたものだと私は考える。歩積み、両建てよりももっと大事なことは、開放体制に向かったら銀行合併すべき条件というものは一体何を——開放体制に向かうというときに銀行が大きくなるというのは、どういうことを意味するのか、その資本力というのか、金の力というのか、いままで銀行の過当競争を防ぐために銀行を合併しろとか、あるいは資金コストが高くなるから銀行合併しろとかいう、いわゆる評論家あたりの提言は二年前からあったはずなんです。しかしそれは評論家の提言としてそのまま忘れ去られておった。突如としてあなたがここに銀行合併を出した。そうしてその前提が開放体制に向かうからだというならば、開放体制に向かう経済として、銀行金融というものはどうあらねばならぬお考えなのか、その辺をひとつあなたなりに御釈明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/131
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132・田中武夫
○田中国務大臣 銀行の小さい大きいということに対しては、歩積み、両建ては別だという御発言がありました。それにからんで答弁するわけではありませんが、小さな金融機関ほど歩積み、両建てが大きいのであります。これは事実であるのであります。非常に高額な歩積み、両建てを要求するのは、これは企業が小さいので、非常に無理なものをやる。特に政府三機関から貸し付けたものにさえも歩積み、両建てを要求するという問題に対して、歩積み、両建て論がそこから起きてきたのでありますから、国会の審議の状況に徴しましてもこれは明らかなことであります。
それから、これは私が軽卒であったといえばそうかもわかりませんが、先ほどからるる申し述べておりますように、銀行の合併をしなければならない。
〔原田委員長代理退席、委員長着席〕
またいまするのだという考え方で、私が発言をしたのではないのであります。これはさっきから申し上げたとおりなんであります。歩積み、両建てというものをいま解消すれば、つぶれますよということを平気で言う人がいるのです。実際において金融機関の中においても現におります。そして私が毎日春日さんに御質問を受けて、私が一生懸命やります言ったところで、それは一体どうなるのですかという具体的な問題を私も提起をしたわけであります。
それからもう一つは、これから国際経済に向かっていけば、原材料を持たない日本が、原材料を持っている国と対等に競争しなければならないのでありますから、やはり外国で、先進国でもって四%であるなら、三%であるのがいいし、先進国が三%であるならば、少なくとも日本の金利も三%であるべきでありますが、開放経済に向かうときに、公定歩合を引き上げなければならないという議論が一部にある。日本の現在を考えるときに、われわれは十分その事実に徴して、どうしたら一体国際金利にさや寄せができるのかということに、真剣に取り組むべきだと私は思う。そういうことを全然政策として考えないで、前向きに対処しないで、国際経済にいってごらんなさい。材料がないのです。運賃かけて原材料を持ってきて、日本で加工して、また運賃をかけて外国に出して、国際マーケットで競争しなければならないということになれば、今度労働法規によって一応一律の労働条件になって、同時に材料はない、金利は高い、どうして一体国際競争力がつきましょう。私はそういうことからいえば、少し気が大き過ぎるかもわかりませんが、まじめな態度で取り組む時期にあるだろうという考え方を申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/132
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133・小松幹
○小松委員 私は何もそれに反対しているわけではないのです。大蔵大臣の言ったことが、どれだけ根があるのか、根なし革なのか、ふろしきなのかあるいは根があるのかということを確かめておきたかったのです。何もそれに根本的に反対しているとかなんとかいうのではなくて、実現の可能性があるのかという、もっと現実的な問題から言っている。
先ほどの歩積み、両建てにえらいひっかかりますけれども、大きな銀行はやっていない。小さな銀行、信用金庫、相互銀行なんかがやっている。あなたが歩積み、両建てを解消するために、相互銀行の合併をどのようなかっこうで進めようとしているのか、信用金庫をどのようにしようというのか。その具体策は何もなくて、その関係の発言をなさるから、歩積み、両建て解消のために銀行を合併するという妙な論議が出てくる。歩積み、両建てを解消するのは、皆さんの銀行局なり、政治あるいは行政の力で解消していく形をとっていけばいいのであって、銀行合併というのは私はもっと違うところにあるのではないかと思うのですけれども、それはそれなりに聞いておきましょう。
それならば、あなたは信託といわゆる銀行とを一緒に合併してもいいというようなことも言っているわけなんでうが、これはいままで過去長い間、何年か知らぬが、おそらく終戦後ぐらいでしょうか、いままでの大蔵省なり銀行局の考え方は、信託の分離ということを考えていない。信託は信託として発足させて、それで成長させていくといろ考え方に終始している。あるいは今日までそうであろうと思うのですが、その考え方と大蔵大臣の考え方はずいぶんかけ離れている。これは、ここに銀行局長も出ていると思いますが、銀行局長、信託分離は大臣の御答弁どおりに合併してもいいという考え方になっておるのですか、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/133
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134・田中武夫
○田中国務大臣 普通銀行と信託銀行と合併したほうがいいというふうには、私はどこにも言っておりません。どこかの何か間違いだろうと思います。現在の段階において普通銀行と信託銀行は合併をしないという方針で、何年か進んできたのでありますから、私もそれを現在の段階では踏襲をしていくつもりであります。しかし将来金融機関の再編成ありとせば、これは皆さんがこうして金融機関に対して議論をすることこそ、民主主義の原則に基づき、事が重大であればあるほど議論するのがいいのでありますから、また制度の上では金融制度調査会もありますから、十分世論を聞らながら将来の問題に対処して、こうあれという結論が出ればそれに従いたい、こういうふうに考えます。しかし私は信託銀行を分離したという問題では、もう信託銀行というものはいつまででもいまのままでいって、どんな要請があっても他の銀行が信託部門を併設をしたいという場合に、それがたとえば特殊銀行であっても、それは絶対に方針にもとるからやってはならないということが、事実に徴していいか悪いかということには疑問がありますが、行政の責任者として現時点で考える場合に、信託銀行をもとどおり合併せしむるというような考えはありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/134
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135・小松幹
○小松委員 あなたが四日ですか、銀行協会の午さん会か何かで言ったのには、——相当漫談的に言ったかもしれませんけれども、信託を一緒に合併してもかまわぬのだ、大蔵省の事務当局なり銀行局はそんなことにこだわっておるけれども、おれはこだわらぬのだ、こういう言い方をして——これはあなたが言わぬと言えばそれまでなんですが、方々のニュースなりには、信託といわゆる地方銀行なり都市銀行なりとの合併も、やればやってもいいのだというような方針を——大蔵銀行局は別だ、おれはそのとおりには言うことを聞かないのだ、こういうような言い方の発言をしておる。そこでいままでの銀行局の運営がオールマイティというわけではないでしょう。けれどもその方針が、いままでの大蔵省の方針と田中大蔵大臣の現時点の考えとが、少しずれておると思うのです。この点、どうなんですか。ずれていない、やはりいままでどおりの信託分離という一本は通すという考え方に立っておるとおっしゃるのですか。その点、明確にしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/135
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136・田中武夫
○田中国務大臣 先ほどからお答えをいたしておりますとおり、現在時点において大蔵大臣としては大蔵省でやってきました信託分離の方針で進みますということであります。しかし銀行のみではなく、あらゆる行政に対する考え方が、何年前にきまったからということでなく、このようにテンポの早い国際情勢に対処して、機に応じて組織を改めなければならぬということは、絶えず検討、研さんを積まなければならぬ問題であるという考えだけは、明らかにして申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/136
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137・小松幹
○小松委員 何も田中大蔵大臣の検討なり研さんなり研究をやめろなんということは言っておりません。これはあなた、死ぬまで研さん、研究することはいいが、大蔵大臣として責任ある地位にある者が、銀行協会の目の前でそれを言えば、それはあなたの行政担当期間中に、そういうことが具体化するであろうということはだれしも想像するでしょう。だからやはり、アイデアは別なときに言っても、言うべきときにはそういうことをはっきり明確に言っておかないと、混乱が起こる。混乱といっても大したでもないけれども、それより放言としか受け取れなくなってしまうわけなんです。だからいっそ放言ということもなにだから、理由をつくれば、公定歩合論の肩すかしをして銀行再編論に持っていこうという田中の妙な考えではないか、ゼスチュアではないかというようなことも言われておるけれども、その考え自体に含まれていることは、決して悪いことではないと思うのです。悪いことではないと思いますけれども、大蔵大臣の現時点の考え方として、それがどう行政に生かされるかということを、やはり私どもは一番考えるわけです。
そこでひとつ突っ込んで質問したいのは、信託合併はしない、いままでの方針でいくのだ、まあそれが十年も二十年も私はわからぬ、そういうならばそれでいいが、それでは信託合併はしないというならば、具体的に大蔵脚はあなたが発言したようなかどで一つの基準を示し——もうおそらく銀行局では基準が出ておる。前の月の十四日に基準を内示したとも言っていますが、その基準によって行政はどう動くのか、その動き方ですね。基準はぱあんとしっぱなしで、あと行政的に動かなければ、それはただ基準のしっぱなしになるが、これは動くのですか。実際に合併させるべく、ほんとうにイニシアをとって動こうとするのですか。基準を示したばかりで、やろうがやるまいがほったらかしというのですか。その辺はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/137
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138・田中武夫
○田中国務大臣 先ほどから申し上げますように、私には個人的な考え方、思想にありますが、事重大な問題でありますから、これを行政的な止揚で、いわば一方交通的な過去の行政のあり方のような考え方で、政府が基準を示して一方交通でやろうという考えは絶対にありません。特に金融機関に対しては、自主的な立場で——先ほど春日さんにお答えをしましたが、いろいろな条件に適応するということであり、円満に話し合いがつくことであり、合理化によってよりメリットが大きいと認められるものに対して、皆さんがお持ちになって請えば、前向きで対処いたします。いままでのように、当然合併すべきだというようなものでも、いやそれをいかぬ、そんなものを一つやると、また連鎖反応が起きるからというような責任回避的な行政はやりません、こういうことを申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/138
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139・小松幹
○小松委員 最近の銀行は、私はある程度山にきておるとも言い得ると思うのです。それは資金をどのようにして集めるか、いわゆる小さい銀行あたりは、今度相互銀行で一割預金とかいうような形の商品化的な預金もすすめるようなかっこうでございます。それにしても店舗をどのように拡大していくかという、この店舗の問題が私は多くなると思う。海外支店の問題も出てくるだろうし、大は大、小は小に、それぞれシェアの拡大をはかるために、店舗という問題が出てくるでありましょうが、私は銀行合併よりも店舗の拡大のほろが、大蔵省に突き上げてくる率が多くなると思うのです。店舗拡大はあなたは相当認めるという方面にいっていると思うのですが、銀行合併と各店舗の拡大とは、どう組み合わせていったらいいのですか。その辺のはっきりした考え方があるのですか。田中国務大臣 店舗の問題につきましては、池田総理大臣も明らかにいたしておりますとおり、私もまたそのとおりの態度を明らかにしておるわけでありますが、いままでのように一律といいますか、あの銀行にやったからこの銀行にもやらなければいかぬ、この鉄石はこういうところへ支店を設けなければならないという事実は認めるが、均衡上この銀行をつぶせ、こういうような過去のやり方は、ある時期においては必要であったと思いますが、そこまで干渉することが、金融の当主性、また金融の中立性、また金融の正常化という問題に資するのかどうかという問題には疑問がありましたので、事務当局等とも相談をしながら、店舗行政に対しては金融機関の自主的な能力を発揮せしむる方向で、いままでよりもより自由に認める方向を確立したわけであります。しかしこれは無制限でどこまでやってもいいのだという考え方ではありませんが、いずれにしても二つ一つ非常にこまかいがんじがらめな、ますの中以上は絶対に働けないというような店舗行政は少し広げよう、こういう考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/139
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140・小松幹
○小松委員 いままでの大蔵省銀行局が銀行に臨んでおった態度は、指令や通達ももちろんあります。日本銀行なうば資金の切り盛りでいったけれども、大蔵省としては指令や通達でいったけれども、それを動かしているてこは店舗行政にあると私は思うのです。それにはそれなりの意義があったと思うのです。あるいは銀行のそれぞれの育成なり、あるいは過当競争を防ぐ意味でバランスをとりながら、チェックしながらいったということはあると思うのです。そういうことによって今日まで一応現銀行八十八行というものを育て上げてきて、それをここで合併の方向に持っていくという形のテーマが出た以上は、一つの銀行の方向性というものを、都市銀行は現状のままでいいのだ、地方の銀行はどのくらいに減すべきだ、あるいは相互銀行が多過ぎるのだとかいうような考え方がここにぴしっと出ないで、ただばく然と銀行合併だ、こういうやり方というものは私は何の意味もないと思う。もし大臣の言ったことがほんとうに意義があるならば、私がいまから質問すること、いわゆるそういう店舗行政に対して、銀行の合併によってどういうような今後の銀行の運営をやっていくのだとか、あるいは相互銀行は多過ぎるから、相互銀行はこのくらいに減さなければならぬのだという一つの計画的なもの、あるいは考え方がおありになるならば、それを言っていただきたい。ただ出たたとこ勝負で、こちらからタケノコが出ればこれをつみ、そちらから出ればそれをつむというような自然発生的なものか、そうでないのか。いままでいわゆる支店、店舗というものをチェックしてきた大蔵省としては、銀行局としては、何かの一つの理想なり未来像があるはずであります。未来像がないで、適当にチェックばかりしてきたのか。そうなれば、いわゆる銀行局は銀行行政の上にあぐらをかいて、未来像がなくして、ただ単に官僚統制だけでチェックしてきたとののしられる。それをののしられないためには、官僚機構にありながらも、一つの銀行行政の未来像というものがあったはずなんです。その未来像が何であるか、お考えを聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/140
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141・田中武夫
○田中国務大臣 小松さんはもう十分おわかりになって御質問しておられると思いますから、率直に申し上げますが、戦後非常に荒廃をして、日本の経済分布図も相当変わったわけであります。それが十八年間という短い時間に異常な発達をして、今日になったわけであります。そういう経済情勢を背景として、金融機関も今日まで戦後の混乱から脱して、新しい体制に順応できるような体制づくりをやってきたわけであります。しかしこれはある一走の時点において、すべてのものが合理的につくられたわけではなく、御承知の信用金庫の営業範囲や、また信用金庫の目標とするものや、また相互銀行も無尽よりも相互銀行法によって相互銀行に仕立て上ぐべきであるというような考え方、同時に、逆に相当大きな面を持っておった特殊銀行である日本興業銀行や勧業銀行が、一般のコマーシャル・バンクに切りかえられた。しかもその中には日本人だけが考えたのではなくて、相当強い占領軍のメモランダムによって、かかる銀行の存在は許さない、こういう考え方もあったわけでありまして、それらの事情はみな御存じのとおりであります。でありますから、その短い時間に異常な発達をした経済に対応しながら、今日の銀行というものが、また金融機関が発展してきたのでありますから、その間において何らかの交通整理が必要だったということは、もう当然であります。そういう意味で戦前の日銀法及び銀行法等に対しては、政府の権限が非常に強かったのでありますが、新しい憲法の姿勢からいって、金融の中立性、自主性を守るためには、行政はできるだけ干渉してはならないという現行体制になったわけでありますから、そういう意味で大蔵省の銀行局としてやらなければならないものは交通整理の役目、当然行政の範疇にある交通整理をどうしてやろうかということで、店舗行政に対しては相当な考え方を持ち、基準を持ち、慎重に配慮をしながら、金融機関相互間の混乱を回避しつつ今日に至ったということは、御承知のとおりであります。しかしそれがこれから未来永劫に続くものであるかという問題に対しては、店舗行政の集約、集中というものに対して、新しい立場で考え、判断をすべきだ、こういうことを私も大蔵省に参ってからすぐ、銀行局の諸君とも十分意見の交換をしたり、また総理も専門家でありますから、そういう意味で店舗行政は、まあいままでは効果は十分あったが、ここらでいままでのようにがんじがらめよりも、弾力的な行政に切りかえたほうがよかろう、こういう考え方になって、しかもそれが野放しというのではなく、いままでの倍くらいのワクをきめて、この中で十分やれるだろうという考え方で、新しく考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/141
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142・小松幹
○小松委員 銀行局長がおでになったから、店舗行政について今後の考え方をちょっとお伺いしたい。特に相互銀行あたりでは店舗を拡大する意欲は相当ありますが、お認めなのかどうか、その辺どういう考えなのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/142
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143・田中武夫
○田中国務大臣 いま私が基本的な問題を申し上げたとおり、個々の申請に対しましてはいままでよりも弾力的な考えで行政を行ないますということを明らかにいたしております。銀行局長と私の間には意見の相違はありませんから、銀行局長答弁いたしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/143
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144・小松幹
○小松委員 大臣、私は別に差をつけてどうとかいうことではないのですが、あなたのは未来永劫にとか、何だか自分が万年大蔵大臣をやっているような、評論家的なイデオロギーみたいなことを言っておっても、現実の行政というものはそんなものではないと思うのです。やはり現実の行政というのは、イエスかノーか、やるかやらぬかということなんです。やるかやらぬかということのけじめをここでつけなければならないと思うから聞いておるわけなんです。そうするとあなたのいわゆる銀行合併論というものは、これは店舗を拡大する一つのすりかえだろうというふろにしか考えられなくなってくると思うわけなんです。現実にどうなんですか。東海銀行は店舗拡大をしてきていませんか。東京都内に十カ所ほど拡大を望んでいるといいますが、それはなぜかというと、朝日銀行と第一銀行との合併によって、そこのいわゆる内部事情があっただろうと思うのですが、どういうような約束を大蔵省でしておったか知りませんが、結局は銀行合併というのが店舗拡大になる。東海銀行が店舗拡大すればおれのほうもやるということになってくれば、あなたの銀行合併論ということは、打ち上げた花火がやがては店舗拡大のシェアの競争をかり立てるようになってくるのです。それでなくとも地方の相互銀行あたりでは、もう満を持してこの店舗拡大をねらっておるわけなんです。そこら辺のところをどう判断していくのか、東海銀行の店舗拡大はどう判断していくのか、その辺を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/144
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145・田中武夫
○田中国務大臣 どうも具体論からお入りになっておるようでありますが、先ほど私が間々答弁申し上げておるのです。銀行行政、銀行の合併に対しましては、一方交通的に過去の行政のようなそういうことはやりませんと。銀行同志間で先ほど申し上げたような基準で合併したり、合併メリットがあるというような問題に対しては、いままで大蔵省に持ち込んでもどうにもならなかったということでありましたでしょうが、今度はあなた方が自主的に、円満に、よりそうすることがいいという考えでまとまったものは、お持ちになってくれば前向きで処理をいたします、こういうことを言ったわけであります。でありますから、それが店舗拡大競争に拍車をかけることであるというふうには考えてはおらないわけであります。しかも店舗行政に対する基本は、私が昨年中に新しい店舗行政の方向を示してから、一体前年に対比して何倍店舗を認め、自主的な方向をとらしたかということは、事実をもってもう御承知のとおりであります。今度の朝日銀行の合併論は、大蔵省に持ち込まれたかわかりませんが、私のところにまだ正式に上がっておりませんが、これに対して過去のいろいろな問題、いきさつ等があって、もしこのまま第一さんに合併をされれば、私のほうで当然持っておった分ぐらいは何とかなりませんか、こう言ってきて、こういったようなことも一部聞いておりますが、これはこのままのむということであるならば、これはもう自主的に弾力的にやるというのではなくて、全く行政なしということでありますから、そんなにめちゃくちゃなことを考えてはおるわけではありません。まだ成規に申請書類、合併申請をしたのが何も出てもおりませんし、出るときには双方円満協調した場合というのだから、過去の経緯にあれして、大蔵省に二十カ所くれと言ってもくれないだろうから、ここらで昔に返って、昔の東海銀行の持っていた店舗だけは東海銀行にやれといろ案が出るかもわかりません。これは私が何か想定し、おるわけではありませんが、円満協調ということが前提でありますから、こんなことさえもできないで、こんなことまで大蔵省にさばいてくれというなら、大蔵省も相当一方交通的な行政をやらざるを得ないわけでありますから、そんな問題は現在そういうことを言っている人はあるかもわかりませんけれども、銀行の合併ということをお考えになっても、私のほうは一向に差しつかえありませんよと言ったことが、店舗の乱造に通ずるものだとは考えておりません。
もう一つだけちょっと申し上げますと、どうも小松さんの御発言の前提に、非常に重大な影響を持つ金融機関の問題については、相当一方交通だと言われてもいいから、政府が確固たる基準をきめて、方策をきめてでなければ話してはならない、こういう非常に慎重な御配慮がうかがえるのでありますが、私もこれを発言したときはそう考えたのです。考えたのですが、一部には銀行屋などというものは、とても手に負えるものじゃないぞという御意見も実際においてあるのです。歩積み、両建てを一体どうしてやれぬのか、金融機関に対して政府・与党はまっこうから取り組まないのかという御意見はたくさんあったのでございまして、そういう意味で大蔵省が方向をすっかりきめてやることであれば問題はありますが、そうではなくて、いわゆる開放経済に向かって、金融機関の方に正月に会って、一ぱいきげんのときに、皆さんも姿勢を正してください、こういうことを言うことが、そんなに悪いことだとは私は考えないのです。もう一ぺんそこのところをお考えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/145
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146・小松幹
○小松委員 そこまであなたが言えば、正月のきげんのいいときに言ったということですましていれば、それでいいですよ。けれどもそれでは大臣、重みがなくなりますよ。銀行屋というのは、いままでどっちかというと甘やかされて、モンロー主義をとってきた。象牙の塔でひとり安閑として夢みてきた。それに対する大臣の反発があったように、われわれだって長い間の反発があるけれども、自分の具体策なり、現実の行政機構というものでがっちりつかまえて、その基準なり未来像なりを持ってやるという決意をもってやらなければ、田中が浪花節を語ったというだけで、大田がそんなことを言ったってできるものかと、鼻であしらわれるだけで、いよいよその価値というものが評価されるだろうということを私は考える。それだけやるならば、あなたに決意を持ってやってもらいたいと思う。私は銀行合併に別に反対しているわけではない。やってもらいたい。ただやるだけの能力とその考え方としっかりした根気がないで、ただ一発ぶって、ちょっと正月の話題をさらってやるというだけでは、あとがない。あとがない、あとがないでは相撲は終わりだということになるから、相撲の終わりのあれでは意味ないと思う。そういう意味であとをどうするか。そうしたら結局あとは銀行合併というよりも、店舗拡大の競争に発展していったというたのでは、いよいよこれは実もふたもなかったということになる。すでに東海銀行のあれが出てきておるわけなんだ。東京に十カ所拡大する。あるいは相互銀行あたりでも、私の聞いただけでも相当出ていますよ。あなたのところに出ておらぬでも、とにかくやりたいな、やりたいなというのがあるのです。それはそうなれば結局店舗行政の確保をどうしていくかという問題と、これから先にそれを拡大していく——当然それは拡大せねばならぬでしょう。永久に銀行も同じであり、店舗も同じということはないけれども、しかし銀行合併の理想というものにどの程度生かされるかということを考えると、そこに問題点があるわけです。だから私は思い切ってやるならやってもらいたい。それはあなたの政治力に期待するものがあって、やってもらいたいと思うけれども、線香花火のようにやっただけであとは続かないでは、どうにもならぬといろ感じです。
それともう一つは地方開発、あなたは地方開発の資金についていろいろ考えておられる。私ども地方からも陳情を受けておりますし、九州開発の開発銀行くらいはつくってもらいたいということを言うたこともあります。今度は開発銀行法を少し修正して、土地造成費の予算などもつけていくようになりましたが、地方の銀行に土地造成費、低開発地域あるいは新産業都市の形を持っていく場合に、いまの地方銀行にそれを負託していくというのでは、とてもやり切れぬのではないか。そうなれば地方開発のためにどのような形の銀行をつくるのか、つくらないのか。それによって合併して、たとえば勧業銀行との合併によって、あるいはそういうことによって地方開発の資金をプールするところの銀行をつくっていくのか、こういう一つの考え方が出てくるのではないかと、ひそかに大臣の年頭の発言というものを楽しみにしておったのですが、結果はどうもそうでもないようです。その辺どう考えていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/146
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147・田中武夫
○田中国務大臣 確かに東京、大阪の過度集中をしておるような状況を、これから十年、二十年続けられるわけではないのでありますから、東京、大阪は理想的な産業都市に改造をしなければなりません。しかし同時に地方を開発をしなければならぬということは、これは政治の焦点であることは御承知のとおりであります。そういう意味から、一体これから相当膨大な先行き投資を必要とする場合の資金源を、どこから仰ぐべきかという問題については、金融機関も検討しております。金融機関ではあなたがいま言ったように、地方銀行が地方で金を集めながら、都会に投資をするようなことでは、格差は開くばかりだから、地方銀行が投資をしたいけれども、危険負担に耐えられない。また資金量の関係でなかなからまうまくいかぬ。ここで地方銀行及び政府が資金を出すなら、地方開発銀行のようなものをつくってほしいという議論も存在することは御承知のとおりであります。また自由民主党などは、地方開発公庫をつくるべし、北海道東北開発公庫があるのと同じに、四国、九州、中国等の開発促進法が出ておる現在、東北、北海道のためにある東北開発公庫と同じものをつくることは、けだし当然である。こういう議論もありまして、地方開発公庫が党議できまったときもあると思います。私も地方開発公庫式なものの存在が、やがて必要になるであろうということは考えております。しかしこれはいま大蔵大臣としてどうしようという考え方で言っておるのではありませんが、こういうことは当然膨大な資金量を持つということになれば、当然そうなるのではないか、またそうならねばならぬだろうということを、かつて発言したこともあります。しかし御承知のとおり中国や四国、九州等の特別委員会で、最終的には皆さんの間でお話がついて、公庫の設立よりも、開発銀行に地方開発の部門を設けようということで、結論が出たようであります。何年か前から地方開発資金を開発銀行で流しておる。しかも今年はいま法律で改正をお願いしまして、土地の取得の金も貸すようにひとつお願いをしたい、こういうことを言っておるのですが、開発銀行で、はたして膨大な金融を将来とも一体できるのか。右手には機械や設備に対して、左手には地方開発というようなことがうまくできるのかどうかという問題は、やはり皆さんの御意見等も聞きながら慎重に、進展する地方開発の情勢に対処しながら考えていくべき問題だろう、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/147
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148・小松幹
○小松委員 結局銀行行政に一本筋を通すという形になれば、最近は企業でも鯨取りが豚を食うたり、何でも屋になる時代になりましたからね。銀行も最近は銀行デパートなんていって何でも屋をやって、あらゆる金をあらゆる形でやって、デパート式に全部送り届けから海外投資までやろうという考え方と、あくまでも、先ほどの信託分離というように、それぞれの使命に向かって分離して、その分離の中に最大限の使命を果たしていくという考え方とあるわけなんです。そうした場合に地方開発の考え方というのは、どういう考え方で、何でも屋式、デパート式な金融行政の中に地方開発を置こうとするのかどうか。あるいは今後の銀行行政というものを、筋を一本通した中に、長期資金、短期間業資金というものをほぼ分野に分けていくのか。問題はそこにはっきりした筋を持つのか持たぬのか。持たないで風の吹くままに、そのときそのときの情勢でいく風来坊的な銀行行政か、一本筋を通していくのかということの質問が私にあるわけなんです。その点についてどう考えておるのか。デパート式銀行経営論をやはり考えるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/148
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149・田中武夫
○田中国務大臣 大蔵省の銀行行政は風来坊的ではないです。御承知のとおり、先ほども明らかにしたように困難な戦後十八年間をこうして、少なくとも現在の金融機関の組織をつくってきたのでありますから、これは明らかな方針に基づいてきたわけであります。この総合経営のほうがいいのか、専門店組織がいいのかというのは、なかなかむずかしいのですが、やはりこの問題は新しい課題として、お互いの間で検討さるべき問題だと思うのです。これを西ドイツと日本の中小企業と比べますと、日本の中小企業はふいごから吹いて最後まで仕上げるという機能を持っておりますが、西ドイツの中小企業はパーツだけ、一つ一つのものをつくって、総合的に組み立てるというところに違いがあるわけですが、これは中小企業と同じことで、倒れるときも総合的なものは非常にあぶない。専門店式は非常にいいのでありますし、特に占領軍のメモは再分割方式ということで、集中力排除法、財閥解体、専門店式、再分割しろということで、それにも合理性があって、現在までは地方銀行、都市銀行、相互銀行、信用金庫、信用組合、信託銀行と、全く専門化しておりますけれども、さてここで、あなたがいま言われた土地投資もやれ、こういうことになりますと、土地は五十年にしなさい、二十五年最低限、建物二十五年、土地は五十年だ、百年というのもある。こういう御説がこの間ありましたが、そうなりますと専門店では、国がやる以外なくなってしまう。これはもう合理性というものは生まれてこないのです。中小企業の専門店的なものは、景気がいいときはいいけれども、景気の悪いときはばたんと倒れてしまう。デパートになるとつぶれない。何でもやっておるから安定しておる。国際的な金利にさや寄せしていくことが絶対に必要であると考えた場合に、専門店というものが急激に金利というものを引き下げていけるかどうかという問題が当然あるわけです。これは当然もっと高い立場でお互いに検討する問題ですから——そんなことを申し上げると、また放言したというふうにとられては困りますからやめますけれども、こう問題を真剣に検討していかないと……。私は将来の日本の、われわれの生活に対応できる金融機関その他のものができていくのであろうかという問題は、真剣に前向きで検討していくべきだろう、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/149
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150・小松幹
○小松委員 その考えはあなた自身の考えであるか、あるいはそういう本格的な考えというものを大蔵省の銀行局あたりが真剣に考えておるのか、それともいままでどおりにチェックして、店舗行政で何らかの官僚の発言の場所だけは残して銀行行政をやっていこうという考え方に立っているのか。役人というのは、どこか一つのなわ張りを、ひっかくところ、かぎを一つこしらえておかなければ運営ができませんし、言うことを聞きませんから、それで次官通達や通牒を出しても聞きません。一つだけひっかくところをつくっておきたいというのが、官僚の特性でしょう。それだけで安閑としておるのか。大臣のお考えのような形で暗中模索をしておるのか。私は善意に解して、大臣は暗中模索をしているのだというふうにも考えますが、暗中模索して一人で踊っているとも考えられるし、あなたの背後の大蔵省の行政当局は、一体どういう協力体制であなたとコンビになってやっているのか、その辺どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/150
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151・田中武夫
○田中国務大臣 現行銀行行政に対しては、法制もありますし、しっかりしておりますし、またいままでのずっと方針もありますから、これに対しては先ほどからるる申し述べておりますとおり、ごうもゆるがないのであります。しかし将来のことに対しては思いをいたしてはならない、それがから踊りをしているのだという考えになると、これはおかしいのです。私はあなたのような建設的な発言を受けて、それに議論して対処していくということが、前進的な行政であり、政治であるという考え方を持っていますし、いやしくも政党政治家でありますから、こういうことに対して前向きに、絶えず事態に対処しながら検討していくということは、一向差しつかえはない。いままであまりそういうことをしなかったのか、ほんとうに考えておりながらも、そういうことを言うとひっかかるから、タブーにしておいたというところに間違いがあるので、私はあえて火中のクリを拾ったのかもしれません。しかしそういうことが新しい行き方だということを、私みずから政治の姿勢を信じながらやっておるのでありまして、私はただここで考えておるということを発言しておるのではありません。私も一日に何回か省儀を開いておるのでありますから、初めは銀行局もいやな顔をしますが、そういやなことを言うな、店舗行政だけで銀行はうまくいくものではないから、もう少しオーソドックスにやろうじゃないかということを言っていますし、いま銀行局と大臣との間に意思の疎通を欠いていることはありませんので、まさにこん然一体であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/151
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152・小松幹
○小松委員 そこで私は最後に、銀行の合併論議が、これは集約ですが、それならばそれらしく、大臣が発言した直後銀行協会に持ち出したものならば、持ち出したことを実が実るような方向に秩序を立てて、論理をはっきりして未来図を描きながらやるべきだ。それが違った未来図を描きながら、信託分離ということを将来もやっていこうと考えながら、それはどうでもいいのだとまごうようなことを言って、いいかげんな略言にならぬようにしてもらわないと、将来の銀行行政のあり方というものが非常にぼやけてくると思うのです。
それともう一つは、そういうことをたびたび経過していくうちに、大臣の問題は別にして、現代の政党人であるあなたが、金融界を何らかひっかき回すことによって、いわゆる金融というものを政党人であるあなたが、ひっこ抜いてくるというあがきにとれる場合もあるわけなんです。私ども野党から見れば、もちろん金融行政を大蔵省官僚が握って、そしてチェックしていって、官僚独善な一つの銀行行政をやっておる。それに対してもいい意味で中立性というところもあると思うのです。ところがその裏を返せば、やはり官僚独善的なものがあるわけなんです。ところがそれを政党人である大蔵大臣が入っていって、しゃにむにひっかき回すことによって、政党政治のあなたの火中に、金融というものを抱き込んでしまうという傾向も見られる。そういうあがきにひっかき回しがなっているのではないかということも、これは野党のひがみでありますから、そこら辺は了承してもらいたい、そう感ずるわけなんです。たとえるならば、公定歩合を引き上げるか引き上げないかという問題についても、公差歩合の引き上げについて、日本銀行が判断をすればいい、あるいは金融の中立性で自然に上がるものは上がる。下がるものは下がる。それを低金利政策という政党政治の一つのポイントを持つことによって、あくまでも公定歩合を上げないで、窓口規制あるいは準備金の積み立て両系をやっていくことによって、自分の、わが意を通していくということもあり得るわけです。そういうこともあってもいいが、何だか政党大臣である田中大臣が、金融界に飛び込んで全くあがいておるのだ。そしてあがきの果ては、結局あなたの下にある得度の店舗金融あたりの決済権を大臣が取り上げてしまっていくような傾向に見える。こういうように見ると、どうも政党大蔵大臣のあがきが、やがては金融を政党が支配していくのじゃないかというようなあがきにも見えてくるわけなんです。それは私がさっき言ったように野党のひがみであるかもしれぬ。それはことばの限りではありませんけれども、そういうように感ずるわけでございます。それはやはり責任政治を祖当していく者は、ある程度あがいても、もがいても、押えつけても、ときには金融財政というものを抑えていかねばならぬ、それは当然なんです。責任政治をやる者は、それはもう何と言われようが、押えつけていくべきときは抑えていかなければならぬときがあると思うが、何らか未来像を描かなければならぬ。はっきり描かない限りにおいてあがいておるのだ、こういうようにとれるのです。
逆を返せば、ある一部の銀行家、あるいは一部の政治利用家、ある一部の利権屋が大臣をおだて回すと、とっぴもないことを発言したりするのじゃないかというきらいが出てくる。いわゆる利用される政治になってしまうのじゃないかというおそれがある。それがはっきり未来図を描く、こういう一つのしっかりした信念と方策と行政指導能力を持ちながら、その方向に不退転の決意を持ってやっていくというならば、われわれも拍手をもって、その大臣の行動を見守っていきたい。先ほど私が一つずつ聞いたのは、その未来像があるか、どういう考え方によっておるかということを聞きただしたのですが、それがあまりはっきり出ない。出ないで、言うときだけはぼいんと何か天下をとったようなことを言うてしまうから、どうもあれは利用されているのじゃないかな、どうもあっちのほうから、何々銀行の頭取から、ちょっと茶話で聞いて、いや銀行が合併したほうがいいですよ、なんて聞いたら、うんそれはいいかもしらぬなんて利用されるかもしれないし、あるいはこれから先は、あなたが気を害したら悪いけれども、たとえば第一銀行と朝日銀行が合併する。そういう話をちょっと仄聞した。いやどうせ合併するならば、ひとつおれが最初に一発ぶっておいて、そのあとから合併が出てくるというような思惑的な行動も出てくるのじゃないか。あなたが銀行合併論を言ったすぐあとで、ぱっと朝日銀行とあれとの合併が出てきた。こういうことは何だか裏で話し合わせて、大蔵事務当局が知らないうちに、大臣とそういう一部の者とが話し合わせて、そしてやっていこうとする根性から出たのじゃないか、あるいはそういう機会があったのじゃないかというようにも見るわけなんです。
だからやはり未来像というものをしっかり描いて、その未来像というものをはっきり国民の前に鮮明にして、銀行行政というものは今後こうするのだ、あるいは信託分離はこういうふうに、いまから先もこう考えていくのだ、あるいは長期資金のプールはこういう形でするのだというような、一つの形が国民の前に示された上で、その線上の、そのルートの上に乗って銀行合併なり、店舗の改造、拡大をしていくならば、なるほどああいう形だからこういう線になってきたのだろうと納得もするわけです。何かどこから出てきたのかわからぬようた発言なり論理がぽこんぽこんと出てくると、ひがみたくもなるのです。この点は大蔵大臣もよほどよく考えて、国民の前に銀行行政のあり方というものをぴしゃっと示してもらいたい。通達だけで、地方の銀行を締め上げていくだけでは、通達だけではきかないようになってしまうのじゃないか。先ほどの歩積み、両建ての問題でも、なかなかそれは、片の通牒くらいではききはしませんよ。
その点は、最近社内版金のことについても通牒を出したそうでございますが、どういう通牒を出したか、はたしてそれがきくのかどうか、可能性があるのか、その辺のところをもうちょっと最後ですから、聞いておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/152
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153・田中武夫
○田中国務大臣 社内預金につきましては、労働省の労働基準局長と大蔵省の銀行局長の共同通達を行なっております。これは財務局長及び都道府県労働基準局長あてに送っておるわけであります。これは労使間の問題としてできたものでございますから、できるだけ労使間でお話をしていくことがいいと思いますが、しかしこういう問題が、初めの社内預金というような制度から、非常に紊乱をして、金利が非常に高いからといって、親や兄弟や友人、知己の金まで、一労働者の名において預金をされておる。しかしそれが倒産をした場合、一体どうなるのかという問題に対して、法律的にもあらゆる意味で労働者の権利を確保するということができておらない前提において、無責任にこの制度を認めていくということは、これは非常に危険なことでありますので、主体を労働省に置いておりますが、銀行行政の立場から、労働省とも十分話し合いをしながら、少なくともこれが乱に流れたり、一時の金利の高いというようなことに目がくらんで、元も子もなくするようなことになっても困るし、もっとより合理的な、在来の社内預金の制度以上を越えないようにという通達を出したわけでありまして、このように運営せられることを切に期待をしておるわけでありますが、また通達を出しても、あなたの言うとおり一片の通達ではその効力を持たない、こういう事態がくれば、これは労働者とも十分意見の調整をしながら、政府はやはり金融機関との相互の関係、また法律上の関係、また預金者の保護という立場から、何らかの処置をとらざるを得ないというふうに考えるわけであります。
もう一点、先ほどの問題でありますが、小松さんと私は非常に友人であり、知っておりますから、口ほど腹の悪い人でないということも承知しておりますから、少しも腹は立ちませんけれども、小松さんが非常にじゅんじゅんとお説きになっておるから、私もすなおに聞いておるのですけれども、いろいろな立場から、新しい仕事に取り組もうというときには、批判は確かにあります。しかしいやしくもある一定の人との話し合いや耳にこばさんだということだけで発言をしたり、アドバルーンを上げておるというような代議士でもないし、人間でもないといろことは、ひとつ友情に免じて一ぺん十分考えていただきたい。私はいまあなたの発言を聞いておるとき、なるほど金融機関というものは、とても大臣くらいでは歯が立たぬということを言うと同時に、しようがないから、こういう議論が出てくるようでは、ちょっと気の弱い者は逃げ出してしまう。私もいまあなた方が金融機関を現行のままでいいというなら、それでひとつやります、こう言おうと思いましたけれども、これは歴史を開いていくためには、お互いが批判しながらやはり努力しなければいかぬ、この思っておりますから、あなたの失言は十分ひとついただいておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/153
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154・小松幹
○小松委員 最後でございますから……。銀行の取り締まりという点で、最近別府の信用金庫の算入問題が起こったわけなんですが、これはわずか百万円程度の金の導入によって、三、四十万円をまた貸しして、利権屋や導入屋が問題を起こしておりますが、こういう大蔵省の通達も——何かちょっとそういうことが最近あったようにも聞いておるのですけれども、こういうような取り締まりというもの、あるいは監査といいますか、こういうものはどの程度に大蔵省として責任を持ち、やったらいいのか、この辺がないと——相手は善良なる小市民なんです。実際はわからぬのであります。これは証券ブームのときに、証券会社の支店長が妙なことをやったことはたくさんあるわけです。証券会社の性質上隠しておりますが、私の知っておるだけでもずいぶんたくさんある。こういうように金を扱う者は相当知恵にたけておる。しかし小市民は、金融なりあるいはそういうものには、全く知恵が乏しい。こうした部分に大蔵省なりあるいは銀行局なり監督官庁は、どのような態度で監査を進め、これを善導するかということの、もう少し責任ある面を聞きたいのです。ただ倫理的に、道義的にそういうことはやってはいかぬという通牒できかないような状態、いままではあまりきいていないのです。そういう場合に監督官庁にあるものはどうしたらいいのか。監督行政というものは、もっと深刻な反省なりあるいは監督なりをすべきじゃないかと思うのですが、この辺について、責任あるおことばを承りたい。それで私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/154
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155・田中武夫
○田中国務大臣 ごもっともな御質問であります。御承知のごとく東京昼夜信用金庫の問題、不動信用金庫の問題、その他、例がありますが、善良なる預金者が、これがために預金の払い戻しも受けられないという事情に対しては、これはもう非常に深刻に考えております。こういう問題に対して銀行局が随時監査を行なうということが一番いいと思いますけれども、これは銀行局にも限られたものがありますし、いままでは金融の中立性、自主性というものをなるべく侵さないということで、財務局に対しても、あまり金融機関に立ち入らないように、特にそういうことをやっておったわけです。しかしこういう問題が起きてくるということになりますと、やはり銀行局でもってやれるようにするか、それから財務局をしてやらしめるか、もしくは日銀で——日銀から貸しているところは別でありますが、日銀法の中で金融機関に対して中央銀行として監査を随時するというようにするのか、そうすれば、銀行局がやるよりもまだ金融の中立性は侵されないということになる。それも少し強いというのなら、各連合会、中央会というのがありますので、そういうところで特殊な機関をつくってやらなければならないのか。どうもこういう問題に対しては非常に頭を痛めておるわけであります。こういうことが絶対に起こってはならないというために、一体どうしようかということに対しては、いま検討いたしております。
この間の財務局長会議に、一つだけ指示をしましたのは、倒産が起きた場合、なぜ一体倒産が起きたのかということを、財務局でもって徹底的に調べろ、一体どこに隘路があって倒産をしたのか、これは財務局の仕事でありますから、正規な仕事として、こまかい問題に対して報告を求める。同時に、不渡りが出た場合に、不渡りというのは一体どうして出たのかという問題をひとつ調べなさい。もう一つ、不渡りが出るような企業にどうして銀行が貸しておって、どうしてとめたのか、何か救済の方法はなかったのか、こういう問題を財務局長は慎重かつ勇気をもってやりなさい、こういうことを説明したわけであります。これは、先ほど言った倒産の問題とか、中小企業金融の実態をつかみたいとか、また不渡りが出て黒字倒産になっては困るというような状態からでありますが、やはり二面においては、金融機関の実態というものも、ぶつかってみなければわからぬということではなく、お互いがやはり自然のうちに理解ができる程度の体制は必要であろうという考え方で、現行法の許す範囲内でかかる措置をとっておるものであります。しかしこれによって、いまあなたが質問されたものは全部片がつくなんという自信は全然ないのでありまして、国民大衆の利益保護のためには、真剣に措置すべきだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/155
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156・山中貞則
○山中委員長 堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/156
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157・堀昌雄
○堀委員 最初にちょっと資料要求をいたしますから、お願いをいたします。
為替局でありますけれども、戦後、外国からの借り入れ金、各種外債、その他、資本取引のかっこうで日本に入ってまいりましたととろの外貨の状況と、昭和三十九年度以後毎年それの利子として出ていくもの、償還として出ていくもの、あるいは外債の償還を含め、そういうかっこうで出ていく姿を、過去のものと同時に昭和四十九年までの十カ年間について、ひとつ資料として御提出を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/157
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158・山中貞則
○山中委員長 ただいまの資料、要求については、武藤山治君からも別途資料要求の申し出もありますから、明日の予定の理事会で御相談をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/158
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159・堀昌雄
○堀委員 それでは、本日はただいままで各種の問題が出てまいりましたが、残っておりますのは、実は資本市場の問題についてはまだ論議が残されておりますので、私は主として今後の資本市場の問題についてお伺いをいたしたいと思います。
その前に私、実は大蔵大臣と本日質疑をいたしますのは、昨年の通常国会以来約半カ年、大蔵委員会で論議をする機会がございませんでした。その間実はわれわれとしては、いろいろと奇異な感じのする発言を新聞報道等で聞いておったわけであります。
それでまず第一点として最初にお伺いしたいのは、昨日の夏の暑いころだったと思いますけれども、株式の価格というのは大体ダウ千四百円くらいが適当である、大いにこれにてこ入れをして、もし下がるようなら私財をなげうっても千四百円を維持したい、こういうことが新聞報道に伝えられたことがございます。そとで、大蔵大臣は当時そういう御発言をされたと思いますが、現在は一体それでは何円が適当で、どうお考えになっておるか、同時にそのようにほんとうにお考えになったのかどうか、その二点をちょっとお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/159
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160・田中武夫
○田中国務大臣 国会における発言でございますから、できるだけ私の国会における発言をもととしていただくことをお願いいたします。しかし公の立場にあるのでございますから、新聞、雑誌その他の発言に対しても責任を負わないということでは絶対にありません。御質問があれば進んで申し上げます。しかし千四百円と夏ごろ申し上げたというのは、これは公式発言ではないのであります。これはその間の事情を率直に申し上げます。そこに聞いておった私の対談の相手は、裏のほうに財研の諸君がおられますからちょっと申し上げますと、これは私と雑談をしておりますときに、大臣一体これは賢いですか売りですかというような、ほんとうの雑談であります。これは正式な記者会見というよりも、雑談のときに、千四百円くらいはいいところであって、私なら買えるですがね、しかし大蔵大臣は全然そういうことをしてはいかぬので私は全然あれですが、お金を持っておったらいま買っていいと思います、しかし下がったらどうします、こう言いましたから、下がっても千四百円くらいには回復するということは、これはだれが考えても大体そういうことだろうというような話が、何か埋め草にされて使われたと思います。そういう意味で、公式な発言や記事になるとか、あなたの質問になるというふうな感触で答えたわけではないのでありまして、これはひとつ御了承を願います。でありますから、今日幾らが妥当であろうなどということは、現職の大蔵大臣として言うべきでないということで、お答えできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/160
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161・堀昌雄
○堀委員 委員会ですから、慎重な御発言だと思いますから、私もこれ以上伺いませんけれども、先ほど小松委員の御質問にもありまして、私も全くそのとおりだと思ったことが一つございます。
これは金融行政についても、金融行政のほんとうのビジョンがないというお話がございました。資本市場についても、私はまさに現在の政府には、資本市場についての将来的なビジョンがないと思っております。そこでどういうことが起きるかというと、実はいろいろな対策がその場その場の対策に終始をして、それがかえって私はいろいろな問題の混迷をもたらしておる大きな原因になっておると思います。私は医者ですが、背の内科の医者の病気の治療法というものは、実は熱が出たらアスピリンを飲まして熱を下げる、おなかが痛かったら鎮痛剤をやるという時代があったわけです。しかし今日医学は非常に進歩をいたしまして、もう熱が上がったら熱さましだけを飲ますのではなくて、根本的な、要するにその熱の原因を取り去るような治療薬というものの発達によって、抜本的な治療ができるという段階に来た。このことが現在平均寿命が非常に伸びてきたということにあらわれてきておるわけです。私はやはり政治というものも同じ角度から問題が取り上げられていいのではないか。そういうふうな対症療法といいますか、問題が起きたごとにばんそうこうの継ぎはぎをしていたのでは、これはかえってその病気の真因がわからなくなる。熱が出ているものに熱さましをやって熱を下げていたら、一体その熱はほんとうはどうなのかということがわかならくなる。そういう熱さまし的な処理が証券問題等についても、これは金融もありますが、金融は触れませんが、あまりに多過ぎるから、そこで病気がなおらないままに、なおったかのような形でいくから、すぐ再発をする。再発をして何回も繰り返しておると、そのうちに病気は慢性になる。これが私はいまの日本の証券市場の姿だと思う。すでに病気は慢性状態に達しておるということです。そうすると、この病気が慢性に達しておるのをなおすのはどうすればよいのか、これはかなり抜本的な、そして長期の見通しに立った方法がとられない限りは、これはなおっていかない。そういう前提でまずビジョン、あなたがもし持っておられるとすれば——なければいいですが、資本市場に対する今後のビジョンというものがあるのかないのか、一ぺんお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/161
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162・田中武夫
○田中国務大臣 どうも事務当局と話をしておらぬものをまたここで申し上げるのはどうかと思いますけれども、私のビジョン、こういうことでありますからお答えをします。
まあ戦前の日本の自己資本比率は六一%であります。現在それが二四・五%まで下がっている。公表されておる数字は三〇%を割った、こういっておりますが、年々下がっておるのであります。この二四・五%を割っている自己資本比率のときに、IMF八条国に移行しなければならぬわけであります。OECDに正式に加盟をして、資本の自由化に対応せんとするものであります。こういう事実を考えてみますときに、少なくとも日本の産業が高度成長で非常に強い成長をしておりますから、その反面自己資本比率が下がっておるということはありますけれども、やはり究極の目的としては、できるだけ早い機会に戦前水準まで持っていくように、どうすれば一体自己資本比率は上がっていくのかということは、一つのめどとしては当然考えられる問題であり、私も随時答弁等の中にそういうことを申し上げておるわけでありまして、これからの開放経済体制に将来永久に向かっていくのでありますから、一年、二年、三年の短い時間でこれが戦前のように復旧できるということは、戦後の経済成長度合いが非常に大きいだけにむずかしいとしても、これはやはり抜本的な施策をしながら、この問題と正面から取り組んでいかなければならないときだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/162
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163・堀昌雄
○堀委員 きょうは時間がありませんから、その抜本的の中身を聞かなければ、抜本的にやりたいといったって、どっちを向いてやるのかわからないのですから、まああれですが、一応あとへ残しまして、ちょっと事務当局のほうに先にお伺いをいたします。
お答えを願いたいのは、昨年の、これは年度で言うとかえってわかりにくいかと思いますが、年度で伺いますが昭和三十八年度の、まだあと三カ月ほどありますからちょっとはっきりしない点もありましょうから、見通しでけっこうですが、起債の総額は一体幾らになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/163
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164・吉岡英一
○吉岡政府委員 お答え申し上げます。政府保証債、地方債、それから事業債を加えまして、いわゆる起債の合計額の見通しでございますが、三十八年度の四月から十二月までの実績は三千三百十一億円になっております。それにあと三カ月、多少の見込みが入るわけでございますが、見込といたしましては約四千五百億円余りに見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/164
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165・堀昌雄
○堀委員 そうすると来年度の起債予定は、大体どういうことになっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/165
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166・吉岡英一
○吉岡政府委員 来年度の起債全体の見込みにつきましては、まだはっきりした数字を出すところまでいっておりません。おそらくもう間もない間に企画庁等で取りまとめまして、産業資金需給の計画の数字が出ると思いますが、そのときに明らかになると思いますが、大体のことを申し上げますと、御承知のように政府保証債は財政投融資計画におきまして千八百十億円を予定いたしております。それから地方債は三百六十億円を予定いたしております。それに、まだ十分な見当がついておりませんが、事業債が加わるわけでありますが、その辺を検討いたしまして、ことしの総額の四千五百三十億円よりはある極度上回った数字が出るかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/166
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167・堀昌雄
○堀委員 政府保証債は、昨年度に比べて本年は幾らふえますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/167
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168・吉岡英一
○吉岡政府委員 三十八年度の政府保証債の当初の計画は千三百三十二億円でございます。それに対しまして、先ほど申し上げましたように三十九年度の数字は千八百十億円であります。したがって率といたしましては三六先ほど伸びることに相なります。ただし三十八年度の千三百三十二億円は当初の計画でございまして、途中に追加の改定を行ないました。ただいまのところの計画では千四百八十二億円に相なっております。したがってこの現在の計画から申しますと、三十九年度の千八百十億円は二二・一%の増に相なります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/168
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169・堀昌雄
○堀委員 地方債のほうはどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/169
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170・吉岡英一
○吉岡政府委員 地方債は、三十八年度二百六十億円の計画に対しまして、三十九年度は三百六十億円の計画でございます。したがって百億円の増という計画に相なっております。地方債につきましては、改定計画というような形をとっておりませんが、四月から十二月までの実績が二百八十四億円になっております。おそらく年度間の見込みは四百億円に近くなるかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/170
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171・堀昌雄
○堀委員 いまの四百億円になるというのは、三十八年度が四百億円になるのですか。そしていまの当初計画は三百六十億円というのは、そうすると昨年よりはことしは出さないということなのか。またこれは改定その他でふえるということになるのか。そこはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/171
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172・吉岡英一
○吉岡政府委員 地方債につきましては、お話のようにことしの見込みが四号億円に対しまして、三百六十億円という見込みを立てておりますが、従来の慣例から申し上げまして、地方債は年度途中に多少当初計画よりふえる傾向にございます。したがって三百六十億円が実際に一年間に——もちろん金融情勢によりますが、通常の場合はこれよりも多少ふえることになるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/172
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173・堀昌雄
○堀委員 大臣にお伺いをいたしますが、いまのお話のように、当初計画でにらめば地方債百億、それから政府保証債は約四百九十億ぐらいですか、両方合わせて五百九十億円という起債が、実は本年度の財政投融資計画の膨張のために増加をすることになりますね。ところが実際の起債の状況は、昭和三十七年は大体二千六百億ぐらいだったと思いますが、それが三十八年度に実は急増して四千五百億円ぐらいになってきたわけですね。ところが三十八年は前半は金融がゆるんでいたからいいでしょうが、三十八年後半、これから金融が締まるというのが財界の前提になっておるときに、地方債、政府保証債で六百億近くワクが広がっていくということになれば、当然私は一般事業債がそれだけ圧縮をされることになるのだろうと思うのですが、その点は、こういう政府保証債、地方債の計画を組まれるときに、本年度の起債の見通し——さっきはまだはっきりわからない、こういうことになっていますけれども、私は事業債のワクの中だけで見れば、ことしと同じ発行もなかなか困難ではないか、こういう感じがしますけれども、その点についての大臣の御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/173
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174・田中武夫
○田中国務大臣 御承知のとおりことしは預金の伸び率は戦後最高であります。来年度の政府保証債その他の民間資金の活用を含めまして、慎重に配慮したわけであります。これをきめますときには、資金運用審議会にはかりまして、各民間金融団体の皆さんとも十分相談をしながら、この程度のワクであれば消化が可能であろうということで、お引き受けを願ったわけであります。現在、十一月、十二月の月間の消化がすでに百五十億ベースになっておりますので、これから将来を見通しますと、そんな無理な、民間資金をうんと圧迫するような状態ではないだろう、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/174
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175・堀昌雄
○堀委員 民間資金を圧迫しないということは、そうすると少なくとも本年度は、昨年度起債額の総計——いま理財局長、四千五百億円くらいですかの見当になると言っていますが、そうすると起債ワクは、当初計画としては政府保証債と地方債とで五百億ですか、幾らか違うわけですからね。違うということになれば、これは五千億の起債ベースということになりますね。こういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/175
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176・吉岡英一
○吉岡政府委員 お話のように民間の一般事業債が、政府保証債、地方債等と同じような率で伸びるということにいたしますと、四千五百億の総体の起債のワクがそれだけ伸びなければ、それだけのものは消化できないという計算にはなります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/176
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177・堀昌雄
○堀委員 いや、私は計算を聞いているのではない。私は起債が無限にできるとは思わないのです。だからやはり所管庁の中で、落ちつくところに落ちつくのではないか、そういうふうに落ちつくところに落ちつくということになりますと、政府保証債、地方債優先でしょう。そうなれば事業債が圧迫されることになるのではないかということを聞いておるので、裏返して言えば、大臣はいま専業債は圧迫しない、そういうことになれば、これは五千億は当然なるのだということに、ロジックからして計算がなりますね。だからそういうめどであなた方も考えておるのかということを聞いておるだけで、計算のあれはだれも言わなくても出てくるわけですからね。そういうめどで、実際に考えているのかどうか、そこのところを伺っているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/177
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178・吉岡英一
○吉岡政府委員 お話のように、数学的にはそういうことになるわけでありますが、堀先生十分御承知のように、事業債のことしの大体の見通し約二千六百億円というものは、金融機関におきます預金の純増二兆数千億円の中の話であるわけでございます。したがって起債がどれだけ出るかという問題は、銀行貸し出しと、起債として産業資金を供給する形を、どういうふうにもっていくかという問題だと思います。したがって民間資金を圧迫するかどうかという問題は、全体の姿をお考え願ったほうがいいのではないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/178
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179・堀昌雄
○堀委員 大臣にちょっとお伺いいたしますが、いまの議論は私はちょっとおかしいと思うのです。年間に二兆円は預金残高が伸びるといたしますね。年間二兆円の預金残高が伸びて、日銀の貸し出しがふえないという状況の中でなら、私は事業債がどういう振り合いになったっていいと思う。結局いまのは押せ押せになっていって、政府保証債を五百億出した。そうするといまの金融機関は、ともかくあと事業債その他を含めて五千億なら五千億とりなさいと言われたとしましょう。それだけとってくれば、銀行自身が貸し出す部分が預金の中から減ってくるのですから、そうするとそのしわは日銀の貸し出しにくる。こういうことになれば、政府保証債の発行というものは日銀の信用造出ということになってくるのじゃありませんか。だから私は、これまでの国債論議の中には、いろいろけさも論議がありましたけれども、金融全体の中で見て、ものを考えてもらわないといけないと思います。そういう中で、政府保証債を出したしわが、押せ押せでしりが日銀へいくということでは、これは政府保証債を日銀に買わしたのと何ら変わりがないことになるのではないか、こう考えるわけです。そこで、そういう意味で無理のない形のものであるのかどうか。いま理財局長は、全体で見てくれと言われたが、それはそのとおりです。そこのところを伺っているわけです。こういうことによってそれが日銀貸し出しを膨張させるものではないということになるのかどうか。金融引き締めをやるという前提の上でですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/179
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180・吉岡英一
○吉岡政府委員 ただいまの点に関しまして補足的に御説明申し上げますが、三十九年度の千人百十億円の政府保証債の数字は、月間のベースにいたしますと月平均百五十億円になります。それから地方債の三百六十億円の計画は、月のベースにいたしますと三十億円のベースでございます。そこで、先ほど大臣から申し上げましたように、十二月、一月、最近の発行ベースを見ますと、政府保証債につきましてはすでに百五十億円になっておりますし、地方債は、十二月が二十九億、一月が三十七億というふうに、三十億のベースをやや突破したかっこうになっております。したがって来年度の計画は、現状程度よりもより事業債のほうに圧迫を加えるような数字ではないというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/180
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181・堀昌雄
○堀委員 いまのあなたのお話を聞いていると、何か自然に流通市場があって、どんどん百五十億ずつはけているように聞こえますけれども、実際は割り当てて買わしているでしょう。ほうっておいて、いまこうやって実際買えるかどうかというと、私は買えないと思うのです。あなたのほうで計画を立てて、金融機関はこれだけ買ってください、これだけ買ってくださいと持っていって、消化されているのじゃないですか。自発的に、政府保証債非常にけっこうです、買いましょうということになっているとは思わないのです。だから、オープン・マーケットができていないということは、私はそこに関係があると思うのです。押しつけをしているわけです。計画をして押しつけているではありませんか。だから、そういう押しつけをすれば、結果としてはしわが寄るのではないかということを第一段に申し上げておるわけです。
それはそこまでにしまして、いまそういう資本市場で大体五十億くらいの起債が行なわれるというめどがつきましたが、次に、ことしの増資のめどは大体どのくらいと考えていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/181
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182・吉岡英一
○吉岡政府委員 三月までのはっきりした数字をいま持っておりませんが、大体の見当といたしまして四千億余りになる予定であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/182
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183・堀昌雄
○堀委員 三十七年はたしか五千九百八十三億円くらいだったと思います。三十八年は四千億くらいでしょう。そうすると、三〇%ほど三十八年は増資できなかった。それでは三十九年は大体どのくらいに考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/183
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184・吉岡英一
○吉岡政府委員 今後の増資の見込みにつきましては、そのときの株式市場の状況等によるわけでありまして、現在のところまだ確たる見通しはございませんけれども、おそらくことしの四千億をやや上回る増資需要はあるかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/184
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185・堀昌雄
○堀委員 増資需要は、実際は六千億くらいあるでしょうね。だから、いまここではっきり言いなさいと言っても無理かもしれませんけれども、私はさっき大蔵大臣にひとつビジョンを持ってくださいという話をしましたね。抜本的——抜本的もいいのですが、いま本年増資が大体どのくらいになるということが明らかにされるぐらいの、いろいろな問題の提起が必要になってくるのではないか。というのは、行き当たりばったりに、よさそうだったらすぐぱっとふくらまして出して、それで出過ぎたら株が下がるから、今度はあわてて抑制さして、また先へ延ばす。これでは事業会社のほうとしても事業計画は立たない。そこで私が申し上げたいのは、もっとマクロ的に——いまの社債のほうは簡単でしょう、銀行に買えと言って無理に買わせてしまえばいいのですから。これは非常に簡単だけれども、株のほうはそうはいきません。そこで私は、今度それをひとつ何とかしようというので、共同証券というものができてきたのではないかという感じが実はしているわけです。
そこで少し共同証券の問題について。さっき大蔵大臣から、これはわれわれ関知しませんというような答弁がありましまね。私は関知しないわけにはいかないと思うのです、証券業者なんですから。証券業者である以上、大蔵大臣のほうが監督をすることに法律しなっておりますからね。あなたのほうが関知をしないわけにはいかない。そこでちょっと共同証券の問題について少しお伺いをしたいのは、この定款を見ますと、この定款は目的として、第二条、本会社は次の業務を営むことを目的とする。(イ)株券の売買、(ロ)前号の業務に附帯関連する一切の業務。こういうことになっておりますね。要するにここは株を売ったり買ったりするということだけが仕事で、目的です。こういうことできまっておるようです。そこでお伺いいたしたいのは、この問題には実はたくさんいま問題があると思います。今後の監督の立場上問題がある。ここで株を買うということが起きますね。そうすると、その株を買うということが起きたときという、そのときですね。その時点の価格というものは、これは非常に問題になると思う。どこで株を共同証券が買い出すかという点に、ひとつ問題があると思う。それ財なぜかというと、投資信託が買うのとは、ちょっとこれはわけが違うと思うのです。投資信託というのは、大衆がそこへ金を払って、信託にして、委託をして、そしてこれが買うことによって、この人たちは利益を得よう、こう考えているわけですね。ところがこの会社の目的というのは、どうもずっといろいろ読んでおると、要するに株の売買でもうけようということなのかどうなのかという点が、非常に明らかでないのですね。その点から、この会社は営利会社なのか何なのか、それからひとつお伺いしていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/185
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186・田中武夫
○田中国務大臣 共同証券は証券業法に基づいて許可をしたのでありますから、証券業法に基づく業務を行なう普通の法人であります。ですから営利業務を行なうわけでありますが、これを申請をしてきたときの話を聞いたり、その後の話を聞いておりますと、安いときに仕入れておって、高いときに放出をしようというような考えではありません。日本の開放経済に向かっての資本市場の問題を考えたり、また現在低迷しつつある資本市場の状態を考えるときに、一つの機関投資家の弱体ということもありますし、もう一つは投信の一——三月に対しての払い込みということもありますし、実際上は、これは機関投資家というような問題よりも、国民大衆が資本参加をするというところまで持っていかなければならないのでありますから、あらゆる企業は独自にこういうことをやるよりも、銀行、金融機関、証券会社その他、まだまだいろいろな人たちをこの中に網羅する予定でありますが、そういう意味で、資本市場の育成のために株を買おう、こういうことでありますから、これを高いときに売ってもうけるというようには理解いたしておりません。そのときに大蔵大臣の考えはどうですかと、こういうことを聞かれますから、そういうときには、あなた方がこういろ仕事に取り組まれたことは時宜を得たことだと思いますが、これが株価を左右したり、いろいろな市場の悪い面を起こしてはなりませんし、あなた方がそういうものをおつくりになった以上、ひとつ国民大衆が資本参加ができるような、そういう要望をするような機運になったときに、持ち株を手離すというような方向こそ望ましいし、またそんなお考えですか、こういう私の考えに対して、まあそのとおりで、全く公の立場に立って資本市場の育成に資したい、こういうことであります。先ほど、御承知でありましょうが、許可ではなく、登録でありますから、登録要件を具備しておりましたので、そのまま認めておるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/186
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187・堀昌雄
○堀委員 そこでいまのお話を聞いておりますと、国民大衆が株を買えるようになるまで買うのだということになりますと、たいへんな株を買わなければいけないのじゃないですか。いま私が新聞紙上等で見ておりますところでは、何か資本金百億円ですね。払い込みは二十五億ですか、とりあえずは百億になる。フルに動かしても二十五億円内外の問題でしょう。実際にいまの業界で買えるものは、いまのままならばですよ。これからいろいろと融資をする。これは融資をする先は銀行でしょう。銀行は今度は融資をする。そこで私はちょっとお伺いをしておきたいのは、これから金融を引き締めるということで、窓口規制をやる。ともかく貸し出しはできるだけ抑えていこう、こういう段階にきていますね。こういう段階にきたときに、片面証券市場に対してひとつ買いましょうということになって、各銀行がそこへ融資をするときには、さっきお話をしたように、ともかく日銀の貸し出しに依存しないで、やるならばこれは問題はないと思うけれども、やはり依然として日銀の貸し出しは続いている中で出すということは、これまでの事業会社に対し融資をしておったベースの上に、共同証券に対する融資額がふえるわけですから、ふえた分だけ貸し出しでまかなうということに結局なっていく。これも日本銀行が共同証券のある機構を通じて信用進出をするのと変わりない結果が、まだ百億や二百億のうちはいいが、一千億になり二千億になってくれば、これはかなり重大な問題になってくるのではないか、こういうふうに考えるのですが、この日銀との関係はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/187
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188・田中武夫
○田中国務大臣 共同証券の設立の目的を先ほど申し上げましたが、共同証券が日本の金融界を中心にしたあらゆる人たちで網羅をされて、資本市場の育成をやろうとするならば、必要ならば千億でも二千億でも買うであろう、またそういう目的で設立をせられたものだと理解いたしております。しかし千億も二千億も買わなければならないように、資本市場が悪くなるというふうには考えておりません。ですから、共同証券は少なくともいまの授権資本は百億でありまして、四分の一でありますが、近く倍額に増資するか、また協調融資も何か進んでいるようであります。それも十四行でありますか、そういう人だけでは困るので、これからまだ入ってくる方がたくさんありますので、こういう方々の参加も十分してもらうのだ、歓迎してやるのだ、こういうことで、十四行でもって満額にしたりということではなく、できるだけ広い人たちからやってもらおう、こういう考えでありますから、私は、共同証券が何千億も日銀の世話になるようなところまで買わなければならないような、資本市場にしてはならないというふうに考えているわけでございます。しかしいよいよ必要な場合の仮定論でありますし、そうでなくても何百億という金が要る場合にはどうするかということでありますが、これは御承知のよりに窓口規制をやっておりますので、前年の実績に対して、各銀行に対しては抑えておりますから、このかんぬきはありますので、これを越して増資するというような考え方ではないようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/188
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189・堀昌雄
○堀委員 後段の話を聞きましたら、一応それが有効に窓口規制が行なわれておれば、これは完全なしり抜けではないと思いますから、その点はけっこうだと思います。共同証券で問題になるのは、一体どういう銘柄を買うことになるのか、どういう時期に一体どういう量を買うのかという問題、これが特に問題になりますのは、要するに投信十四社が持っている銘柄だけを買うということになれば、要するに投信の基準価格の下がっているものをささえるための、投信十四社のためのものではないかというような誤解も生じてくる。もう一つは、これは会員になっておりませんから、会員、業者を通じて買うことになるでしょうね。そうすると、いまの会員というのは七十ぐらいあるのじゃないですか。ちょっといまはっきり記憶していないが、これに対する公平の問題というのは一体どうなるかという取り扱いの問題。どこから買うかということになると、そこから買ってもらったものはマージンが入りますね、これは一体どうなるのか、そこら辺について大蔵大臣はどういうふうに考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/189
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190・田中武夫
○田中国務大臣 これは堀さん、何でも御承知の上で御質問でありますから、私もざっくばらんに申し上げますが、これは大蔵省はあまり関係しておりません。こういうことをやること自体が、大蔵省が株価に介入するようなことになっては、いかにえんきょくでありましてもよくないわけでありますから、これは証券業法に基づいて届け出を受理し、資格を認めただけでありまして、これは自由におやりください、しかし資本市場育成のためにつくられたあなた方の精神が、金もうけや市場混乱に回らないようにぜひ御注意くだされば幸甚です、こういう言い方をしておるわけであります。いままでは銀行が株を買うような場合には、御承知の投信から目ぼしい銘柄だけ指定をして買う。こんなことであればどうにもならないので、これは普通の証券業者として市場からお買いになるのでしょうか、いやそういうつもりでございます、こういうことでございます。銘柄はどうして選定するかというと、これは十四行入っておりますし、今度どんどんたくさんになりますから、そこから一人ずつエキスパートが選出をされて社員になったようであります。ですから、この諸君はその道の専門家でありますし、そういう意味で十分検討をしながら、市場育成という立場に合致するものを拾っていくのだろうというふうに考えておりまして、行政的にこれを指導していこうという考えは全くありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/190
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191・堀昌雄
○堀委員 もうそろそろ終わりにしますが、いま大蔵省はノータッチだとおっしゃるのですが、私はノータッチでいけるものならたいへんけっこうだと思うのです。実際はノータッチでいけない条件が必ず起きる。きょうここで私はちゃんとくぎをさしておきたいと思います。それは資本主義の世の中ですから、要するにそこの共同証券自体が金もうけをしようと思わなくても、それに関連をする問題は複雑ですよ。ちょっと理財局長なり証券部長でもいいですが、今度の一月の投信設定の中で事業会社が面接買ったのはどのくらいあるか、調査しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/191
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192・吉岡英一
○吉岡政府委員 正確な数字ではございませんが、大体二割見当と見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/192
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193・堀昌雄
○堀委員 大体私は投資信託を専業会社に買わせるというあり方は、率直に言って問題があると思います。事業会社に二割買わせる。公社債投信が始まったときも同じようなケースが起きておる。事業会社に買わせておいて、金融が締まってきたら事業会社はすぐ売り出す。買うときの条件というのは、いろいろ私の耳に入ってくるのは、ここの投資信託を買ったら、自分のところの株を投資信託で買ってくれというようなことになっておるのです。現在の持ち株禁止の裏を抜けることになるだけのことであって、こういうのは百害あって一利なし。ともかく見せかけ上、これはまた投信の過当競争をやる。私はここで何べんも過当競争をやめるようにということを言ってきたけれども、依然として姿勢が改まらなくて過当競争をやっておる。そうして事業会社から、あれを二割とる。この間の投資信託は総計で幾らですか。一月の投資信託の設定の総額は幾らですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/193
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194・吉岡英一
○吉岡政府委員 一月の投資信託の設定の総額は八百億余りでございます。
それからただいまの事業会社と申しますか、法人に持たせないようにというお話は、堀先生のお話のとおり、かつて問題があったことを十分承知しておりますので、金融引き締めになるとすぐ引き出されるような、いわゆる短い金で公募させてはいかぬということは、厳重に言っております。ただ方針といたしましても、投資と申しますか、そういう資産運用と申しますか、そういうことで持つのまで禁止するというようなわけにはまいらないというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/194
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195・堀昌雄
○堀委員 私はそれが売られなければ、ずっと一般の投資家と同じように持っておりますれば、混乱も起こらないから、別に禁止する必要もないと思いますが、過去の例でも、金融が締まってきたら一斉に売っておるわけです。それが投資信託に非常に大きな影響を与えてきたわけです。今度も金融引き締めが起こる条件の中では、非常に問題があると思います。そこで私は大蔵省としても、今後投資信託についてその事業会社が買うときは、一定の間は必ず持っておるかどうかということを確認をしてもらわなければ、金融が締まってきたからといって二カ月や三カ月でどんどん売られたのでは、投資信託の価格は非常に大きな影響を受けるのではないかと思うし、その余波が株式市場にまたはね返ってくるわけですから、そういう点については証券会社自体が考えるべきことなんです。証券が価格を維持したいと言いながら、実はその価格の下がることを予想し得るようなことをやっていくことは間違いだと思います。もうすでに慢性状態で、ちっとやそっと注射してもなかなかなおらないけれども、やはりあの手この手で指導方針を高いところに置いて問題を処理しなければならぬと思います。
時間が制約されておりますので、本日はこれまでにいたしますけれども、この問題については、後日あらためて根本的に検討さしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/195
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196・山中貞則
○山中委員長 次会は明七日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00319640206/196
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