1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年二月十九日(水曜日)
午前十時三十八分開議
出席委員
委員長 山中 貞則君
理事 臼井 莊一君 理事 原田 憲君
理事 藤井 勝志君 理事 坊 秀男君
理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君
理事 堀 昌雄君 理事 武藤 山治君
天野 公義君 岩動 道行君
宇都宮徳馬君 大泉 寛三君
大久保武雄君 奥野 誠亮君
押谷 富三君 金子 一平君
木村 剛輔君 木村武千代君
小山 省二君 砂田 重民君
田澤 吉郎君 濱田 幸雄君
福田 繁芳君 藤枝 泉介君
渡辺美智雄君 卜部 政巳君
小松 幹君 佐藤觀次郎君
田中 武夫君 只松 祐治君
日野 吉夫君 平林 剛君
松平 忠久君 春日 一幸君
竹本 孫一君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 田中 角榮君
出席政府委員
大蔵政務次官 纐纈 彌三君
大蔵事務官
(主税局長) 泉 美之松君
国税庁長官 木村 秀弘君
委員外の出席者
大蔵事務官
(国税庁間税部
酒税課長) 江口 健二君
専 門 員 抜井 光三君
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二月十九日
委員野原覺君辞任につき、その補欠として堂森
芳夫君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員堂森芳夫君辞任につき、その補欠として野
原覺君が議長の指名で委員に選任された。
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二月十八日
国立学校特別会計法案(内閣提出第八二号)
租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第九八号)
関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提
出第九九号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
国立学校特別会計法案(内閣提出第八二号)
租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第九八号)
関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提
出第九九号)
所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
三六号)
法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一五号)
金融に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/0
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001・山中貞則
○山中委員長 これより会議を開きます。
国立学校特別会計法案、租税特別措置法の一部を改正する法律案及び関税定率法等の一部を改正する法律案の三案を一括して議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/1
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002・山中貞則
○山中委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。大蔵政務次官纐纈彌三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/2
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003・纐纈彌三
○纐纈政府委員 ただいま議題となりました国立学校特別会計法案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
政府におきましては、教育の重要性に顧み、従来国立学校の施設の整備及び内容の充実について特段の配慮をしてまいったのでありますが、昭和三十九年度におきましても、同様の方針のもとに所要の予算を計上して別途御審議をお願いしているところであります。さらに国立学校の充実に資する上から特別会計を設置し、一般会計と区分して経理することが時宜に適するものと認め、ここにこの法律案を提案することといたした次第であります。
次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
第一に、この特別会計は、国立学校にかかる経理を行なうことを目的とするもので、文部大臣が管理することとしております。
第二に、この会計は、一般会計からの繰り入れ金、授業料、入学料、病院収入、積み立て金からの受け入れ金、借り入れ金、財産処分の収入、寄付金及び付属雑収入をその歳入とし、国立学校の運営費、施設費、奨学交付金、借り入れ金の償還金及び利子、一時借り入れ金の利子その他の諸費をその歳出としております。
第三に、国立学校の附属病院の施設を整備するため必要があるときは、この会計の負担において借り入れ金をすることができることとしております。
第四に、この会計の毎会計年度の決算上剰余金が生じた場合においては、将来の施設整備費の確保をはかるため一定の計算のもとに積み立て金として積み立てることとし、なお、残余があるときは翌年度の歳入に繰り入れることとしております。
その他この会計の予算及び決算の作成及び提出に関し必要な事項をはじめとし、一時借り入れ金の借り入れ、国庫余裕金の繰りかえ使用、余裕金及び積み立て金の資金運用部への預託、奨学交付金の委任経理等について必要な事項を定めるとともに、一般会計所属の財産を国立学校の用に供するため、この会計に所管がえ等をし、または使用させる場合は、当分の間無償として整理することとして、この会計の財政の安定に資することとするほか、この特別会計の設置に伴い必要な経過規定及び関係法の諸規定の整備を行なうことといたしております。
次に租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
政府は、昭和三十九年度税制改正の一環として、さきに提出いたしました所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案等の改正諸法案に引き続き、企業の国際競争力の強化及び自己資本の充実、資本市場の育成並びに科学技術の振興等の措置を講ずる必要があるので、ここにこの法律案を提出いたす次第であります。
以下、この法律案の内容につきまして、その大要を申し上げます。
第一は、輸出所得の特別控除制度は、本年三月末にその適用期限到来と、同時に廃止するわけでありますが、国際収支の安定改憲をはかることが緊要でありますので、この際企業の国際競争力の強化等に資するため、次の措置を講ずることとしております。
その一は、輸出割り増し償却制度にいてその適用期限を三年間延長するとともに、普通償却範囲額に輸出割合を乗じた額の八〇%に相当する額を割り増し償却の範囲額とすることとし、制度の簡素合理化をはかることといたしております。
その二は、技術輸出所御控除制度につき、その適用期限を五年間延長するとともに、取引基準にかかる控除割合を、海外への技術提供による収入金額の五〇%から七〇%に引き上げ、さらに、その適用対象に対外支払い手段を対価とするコンサルティング業務の収入及び輸出貨物の運送その他対外支払い手段を対価とする運送業務の収入を含め、この場合の取引基準にかかる控除割合は、それぞれ収入金額の二〇%または三〇%とすることといたしております。
その三は、海外市場の開拓に必要な特別の支出に備えるため、昭和三十九年四月一日から五年間、商社については輸出取引額の〇・五%、製造業者については同じく一・五%相当額の損金算入を認める海外市場開拓準備金制度を創設することであります。
なお、右の準備金にかえ、中小企業が共同して行なう市場調査費用等に充てるため、商工組合に対し輸出を行なう所属組合員が納付する賦課金でその賦課基準が当該組合員の輸出取引額の二・五%以下のものについては、これを損金に算入するとともに、その賦課金の納付を受けた商工組合についても、それに見合う中小企業海外市場開拓準備金の設定を認めることにより、その賦課金の非課税留保を認めることといたしております。
その四は、新開発地域に対する投資を促進するため、昭和三十九年四月一日から五年の間に行なわれる新開発地域に対する特定の投資について、その取得価額の二分の一相当額以下の金額の損金算入を認める海外投資損失準備金制度を創設することであります。
第二は、企業の資本充実に資する見地から、支払い配当に対する法人税率を二八%から二六%に軽減することといたしております。これに伴い、年所得三百万円以下の部分に対応する支払い配当及び特別法人の支払い配当に対する法人税率も、二四%を二二%に、二〇%を一九%に、それぞれ軽減することといたしております。なお、配当受け取り株主の益金不算入割合及び配当控除割合は据え置くこととしております。
第三は、資本市場の育成に資するため、新たに次の措置を講ずることといたしております。
その一は、証券投資信託の収益分配金について、昭和四十年三月三十一日までに支払われるものに対し、五%の税率による源泉分離課税方式を採用することであります。
その二は、証券取引において生ずる事故についての証券業者の補償責任の明確化をはかる措置の一環として、昭和三十九年四月一日から五年の間、売買株式数を基準として一定の割合で積み立てた証券取引責任準備金の損金算入制度を創設することであります。
第四に、科学技術の振興に資するため、次のような措置を講ずることとしております。
その一は、現行の試験研究用機械設備等の初年度三分の一特別償却制度及び開発研究用機械設備等の初年度十分の一特別償却制度を統合して、その拡大をはかり、昭和三十九年四月一日から三年の間に取得した開発研究機械等については、初年度において取得価額の九五%相当額を償却できることとすることであります。
その二は、鉱工業技術研究組合に対する支出金の特別償却制度について、その償却割合を、初年度において七〇%、自後二年間にそれぞれ一五%としておりますのを、初年度において一〇〇%償却できることとすることであります。
その三は、需要国産技術の開発に資するため、一定の条件のもとに、国産第一号機の取得につき初年度三分の一の特別償却制度を創設することであります。
第五に、以上のほか、特別償却制度について次のような改正を行なうことといたしております。
その一は、住宅建設の促進に資するため、現行の新築貸し家住宅に対する割り増し償却制度の償却割合を、昭和三十九年四月一日から三年の間に新築したものについて、現行の十割増しを二十割増しに、耐火構造のものについては二十割増しを三十割増しに、それぞれ引き上げることであります。
その二は、工業用水法に規定する井戸から工業用水道への強制転換施設につき、初年度三分の一の特別償却制度を創設することであります。
その三は、現行の重要産業用合理化機械の特別償却制度につき、その償却割合を初年度三分の一から四分の一に縮減することであります。
その四は、現行の探鉱用機械設備の特別償却制度につき、その償却割合を初年度九〇%から初年度九五%に引き上げることであります。
第六に、海運業再建整備に伴う措置の一環として、船舶の減価償却に関し、運輸大臣の承認を受けた整備計面の実施中は、船舶についての償却不足額の打ち切りを行なわないこととするほか、その整備計画に基づく合併等に際しては、償却不足額の引き継ぎを認めることといたしております。
第七は、協同組合に対する課税の特例といたしまして、農業協同組合、漁業協同組合、事業協同組合、事業協同小組合及び商工組合等のうち、一定の要件に該当するものに対しては、留保金が出資の四分の一に達するまでは、昭和三十九年四月一日から五年の間に終了する各専業年度における留保所得の二分の一について、法人税を課さないこととする制度を創設することといたしております。
第八に、森林組合が森林組合合併助成法に基づいて合併した場合には、現行の資産の評価益分の清算所得に対する課税の繰り延べ措置のほか、新たに被合併組合の積み立て金からなる部分の清算所得につき非課税とする措置を講ずることといたしております。
第九は、医療法人に対する課税の特例として、医療法人のうち、その事業が公益の増進に著しく寄与し、かつ、公的な運営がなされるものとして大蔵大臣の承認をするものについては、その所得に対する法人税率を、現行年二百万円超三八%、年二百万円以下三三%から、一律に二八%に軽減することといたしております。
第十は、石油資源開発株式会社の昭和三十四年三月期及び昭和三十五年三月期の欠損金については、その繰り越し控除できる期間を、五年から八年に延長することとしております。
第十一は、法人の交際費の損金不算人制度の改正であります。
すなわち、この制度の適用期限をさらに三年間延長するとともに、最近における交際費支出の状況に顧み、その控除額を、現在の年三百万円と資本金額等の千分の一との合計額から年四百万円と資本金額等の千分の二・五との合計額に引き上げるとともに、損金不算入割合を二〇%から三〇%に引き上げることとしております。
第十二は、開墾地等の農業所得及び土地改良事業施行地の後作所得に対する所得税の免税措置について、その適用期限を三年間延長するとともに、適用対象農産物の整理合理化をはかることといたしております。
第十三は、贈与税の課税の特例でありますが、農業を経営する個人が推定相続人に農地を贈与して、その農業経営を行なわせる場合には、一定の条件のもとに、贈与税の納期限の延長を認めるとともに、その後相続があったときには、その農地を相続財産に含めて、相続税を課することとし、贈与税との調整をはかることといたしております。
第十四は、ブドウ糖の消費促進をはかるため、一定の規格のブドウ糖混和糖水については、砂糖消費税の税率を一キログラム当たり十二円から七円に軽減することといたしております。
第十五は、昭和三十八年度末に期限の到来する特別措置のうち、特定のものについての期限の延長であります。すなわち、航空機の通行税の軽減措置については一年、増資登記に対する登録税の軽減措置、農地の交換による所有権取得登記及び開拓農地の取得登記に対する登録税の特例措置等については三年と、それぞれその適用期限を延長することといたしております。
最後に、商法改正に伴う規定の整備をはかるほか、最近における石油化学工業の進展に即応するため、石油化学製品の製造のための用途に消費される揮発油に対する免税規定等の整備合理化をはかることといたしております。
最後に、関税定率法等の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
政府は、最近の経済情勢の変化に対応する等のため、関税定率法及び関税暫定措置法に規定されている税率について所要の調整を行なうほか、国産原油の購入にかかる関税の特別還付制度を新たに設ける等関税定率法、関税暫定措置法及び関税法の一部について所要の改正を行なう必要があるのでこの法律案を提出した次第であります。
次に、この法律案の内容につきまして、その大要を御説明申し上げます。
現行関税率は、昭和三十六年に全面改正が行なわれ、次いで二回にわたる部分改正を経て今日に至つているのでありますが、最近の経済情勢の変化に対応する等のため、一部品目につき、関税率を調整する必要があると認められるのであります。関税率の調整につきましては、昨年十一月以来、関税率審議会は、現行関税率をいかに改めるべきかとの諮問に対しまして、個々の関税率について詳細に検討し、慎重審議の結果、昨年十二月及び本年一月の二回にわたって答申を行なったのであります。この法律案により関税率が改正されることとなっておりますものは、これらの答申等に基づくものでありまして、関税定率法及び関税暫定措置法を通じ、実行税率が変更されることとなるものは、八十二品目となっているのであります。その内訳は、税率を引き上げるもの二十品目、税率を引き下げるもの四十四品目、従価税率から従量税率に切りかえるもの二品目、従価従量選択税率に切りかえるもの二品目、関税割当制度を採用するもの二品目、関税割当制度を廃止するもの八品目、その他四品目となっております。
なお、関税暫定措置法では、関税率の調整に関し期限を付して暫定的特例を定めることとされているのでありますが、重要機械類の免税制度等十二の暫定免税等の制度の期限が本年三月三十一日となっておりまするので、それらの期限をさらに一年延長いたしますとともに、関税暫定措置法に規定されている税率で本年三月三十一日に適用期限の到来する八十四品目のうち、四十五品目について、その適用期限を延長することといたしております。
また、この法律案では、国産原油の購入に関しまして、関税の特別還付制度を新設することといたしております。すなわち、国産原油の引き取りの円滑化をはかるため、国産原油を購入する石油精製業者がこうむる負担増加の補てん措置として、その者が納付した原油関税のうち自動車用等ガソリンにかかるものを還付する制度を新設することとしているのであります。
また、豚肉につきましては、豚肉の国内卸売り価格が畜産物の価格安定等に関する法律による安定上位価格を越えて騰貴している場合には、関税定率法第十二条を準用することとし、輸入豚肉の価格が国内卸売り価格を越えて上昇しているときに、関税を減免することができることとしているのであります。
このほか、減免税制度に関しましては、低開発国貿易を拡大するため、デーツシロップ製造用なつめやしの実及び落花生油製造用落花生を製造用原料品の減免税の対象に加え、輸出入取引の円滑化に資するため、輸出入貨物を試験または検査する機器に再輸出免税を適用することができることとし、新規産業を育成するため、ブラストサイジン・エスまたはしよ糖脂肪酸エステル用砂糖を新たに減税するとともに、現在免税されている給食用脱脂粉乳が変質した場合等に配合飼料製造のために転用されるときの規定を整備することとしております。
なお、関税法につきましてその一部を改正して端数計算に関する規定を改訂するほか、所要の規定の整備を行なうことといたしております。
以上が、国立学校特別会計法案外二法案の提案の理由及びその概要であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御賛成下さいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/3
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004・山中貞則
○山中委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
各案に対する質疑は、次会に譲ります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/4
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005・山中貞則
○山中委員長 次に、金融に関する件について調査を進めます。
質疑の通告がありますので、これを許します。松平忠久君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/5
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006・松平忠久
○松平委員 田中大蔵大臣に、輸出入銀行法の改正案の通過の前に質問したいと思ったのだが、時間がないので、きょうに延びたわけです。大臣は、去年の九月十五日、新聞記者会見において、海外経済協力基金を輸銀に吸収するという意向を持って、事務当局に検討させておるということを記者会見で発表されておるわけであります。事務当局との間の質疑応答については、その後そういう構想がなくなったという答弁を得ておるわけでありますが、昨年九月における大臣の記者会見の当時においては、おそらく大蔵大臣としては、輸銀に基金を吸収したほうがいいという考え方で、この記者会見で発表になったものと思うのですが、これは当時企画庁長官等と話し合いをした上でもってこういう構想を立てられたのかどうか、このことをまず伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/6
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007・田中角榮
○田中国務大臣 当時経済企画庁及び私のところ及び外務省との間で、経済協力基金の運営に対して話し合いを進めておったわけでございます。ところが、御承知のとおり、なかなか基金が動かなかったという事態がございます。これはまあ相手国の事情その他もあったわけでありますが、いずれにしても、これだけの協力基金が動かないということはどうも不活発だ、こういう考え方で、私と経済企画庁、外務大臣との間にいろいろな話をいたしました。いたしましたけれども、まあ検討しようというところで結論も出ないままになっておったわけでありますが、時あたかも、毎日のように記者会見がありますから、そんなような状況で一体経済協力基金に対しては、大臣、何と心得ますか、こういうことでありましたから、これかまあ動けば——動くことを前提にしてやったんだけれども、いろいろな事情でなかなか動かない。それで、経済協力基金というのは、できれば輸銀の中に吸収したほうがいいというのも一つの案である、こういうふうに答えたわけであります。ところが、これが各方面に影響しまして、外務省からねじ込まれました。こういう問題に対して事務当局は、まだ話を受けておらぬのに、大臣同士の話だけで一方的に大蔵大臣おやりになるのですか、ほんとうにおやりになるのですか。まあ国会でおほめにあずかるほど動けば、何も好んでこんなことを言うことはないのですが、どうもさっぱり動かないということで、いろいろな議論のあるところでありますから、特に、経済協力基金でやるような仕事まで輸銀に持ち込まれておるというものもありましたし、また、ウジミナスの問題とかその他のあとの問題で、なかなか経済協力基金式なものでやるべきだというようなものまで、輸銀で取り扱わなければならぬというような問題も当時ありましたので、輸銀と経済協力基金が仲が悪いように思われておるなら、いっそ一つにして、そうしてこの部分は経済協力基金から出す、この部分は輸銀から出すというほうがより合理的じゃないかという考え方に立って、私はそういう発言をしたことは事実であります。が、その後、両方とも、私の発言に刺激をされて、会議を持ちまして、そうしていろいろこまかいケースケース別に話を詰めておるようでありまして、このごろは非常に輸銀と経済協力基金との間にも意思の疎通がはかられておるようでありますし、経済協力基金そのものが本来の目的に向かって動き出してきつつありますので、現在の心境は当時とは相当違うということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/7
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008・松平忠久
○松平委員 この新聞によりますと、いま大臣から答弁があったような発言をされたわけでありますが、当時事務当局に、この吸収の検討を命じた、こういう発言をされておるわけであります。そこで、その事務当局において吸収の検討をされていたかどうかということをちょっと伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/8
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009・田中角榮
○田中国務大臣 事務当局が私の当委員会に出席をいたしておらないときにどういう答弁をいたしたかわかりませんが、実際は検討を命じました。それで、事務当局も検討いたしたわけであります。こういう問題は絶えず検討をする問題でありますから、検討はいたしましたけれども、私が先ほど申し上げたとおり、協力基金と輸銀とを早急に合併するというような問題は官庁間の権限紛淆を来たすというような問題が先行して、案外、考え方としては一つの考え方であり、前向きであり、積極的であるようであっても、事実の問題としては、こういうことを契機にして、輸銀と経済協力基金がより積極的に前向きで協調していくということでもって足りるんじゃないかというような結論、結論らしき結論が当時出たと思います。でありますから、これは全く大蔵省内部の問題でありまして、私の考え方に対して事務当局が、まあ一部は、それはいいことだというふうな気持ちもあったようでありますが、慎重に検討した結果、私が申し上げたような結論に達したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/9
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010・松平忠久
○松平委員 日本の海外経済協力の機構というものが複雑なんですよ。いろいろ分かれておる。そもそも基金をつくるときにいろいろな争いがあってしょうがないから企画庁へ持っていったんだろうといういきさつも当時あったわけであって、そういうところに実際に非常に無理があると私は思っているのです。今日なお、その無理が、いろいろ紛淆を来たしておる一つの遠い原因ではなかろうかと思っております。そこで、その後大臣の考え方が変わってきて、現状でいこう、こういうことになったようでありますが、そういうことはやはり記者会見でもずっと発表なさっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/10
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011・田中角榮
○田中国務大臣 私何でも申し上げますから、大体私のそのつどにおける心境の変化その他に対しては十分記者会見はしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/11
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012・松平忠久
○松平委員 そこで私は、根本的にいって、これを二つに分けるとかあるいは一つにするとかいう意見が出てくるのは、日本における政府の海外援助に関する考え方と申しますか、検討を含めたものが、すでにこの基金ができる前から非常に紛淆を来たしておるところに原因があると見ておるわけです。そこで、お伺いしたいのは、現在のこの輸銀の投資金融並びに基金のほうの投資金融、その間に、法律的にはなるほど抽象的な、ベースに乗らないというものを基金でやるというような抽象的なことが書かれてございます。しかし実際にやっておることは、いまあなたが答弁なさったように、基金でやるべきものをすでに輸銀でやっておったわけであります。ウジミナスにいたしましても、あるいはその他の投資金融にいたしましても、最高十五年ということでやっておるわけであります。
そこでお聞きしたいのは、日本におけるいまの考え方において、投資金融の条件で最も緩和されたものは現在どの程度になっているか、また今後それをそのまま続けていくつもりか。すなわち長期のものは十五年、あるいは利息は三分五厘なら三分五厘、そういう一つのけじめのようなものを政府は持っておられるかどうかということです。言いかえるならば、輸銀においては大体十五年以上はやらないとか、基金のほうは十五年以上もやるとか、そういう区別があればはっきりしていいと思うのです。商業ベースに乗らないということについては、個々のケースに当たってみなければできないということがあるから、問題が非常に複雑化してくると思うのです。ですから、投資金融について一つの基準を設けて、基準以上のものは基金でやる、そのほかは輸銀でやるということにしなければ、現行法の規定のしかたでは、どうしたって紛淆を来たすわけですよ。ですから、その点の検討を加えて、やはり何らかの法改正はしなければならぬじゃないか、こういうふうに私個人は思っておるわけですが、その点について、将来紛淆を来たさないようにするためにはどうしたらいいかということをお考えになっておるかどうか、この点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/12
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013・田中角榮
○田中国務大臣 投資案件につきましては、輸銀は大体最高十五年という目標を置きましてやっておるわけであります。しかし、当分の間十年をめどにしよう。もう一つは外貨分が比較的多いかどうかという分担の問題でございますが、輸銀は大体五割以内という目標をつけておるわけであります。しかし当分の間は三割以内という堅実性を持っておるわけであります。
しかし、御承知のとおり海外経済協力基金ができましたときも、外務省の問題、通産省の問題、遂に経済企画庁へ持っていった。当時は、経済企画庁は他の省で意見がまとまらざるものをやる省なのかということを新聞に書かれたくらい問題があったものであることは御承知のとおりであります。
でありますが、輸銀もウジミナスの問題、また投資までやるというような問題から、権限紛淆のような、だんだんと重なってきておることは事実であります。でありますから、いま申し上げたように、一つの線は引いておりますし、また個々の案件に対しては輸銀のほうと基金のほうと両方出まして、お互いに、これは基金にしよう、これは輸銀でやるべきであるということを具体的にきめておるわけでありますが、大ざっぱに言いますれば、輸銀はいわゆるコマーシャル・ベースに乗るものということでいくべきでありますし、基金は低開発国に対する援助とか、国と国とが行なう賠償に伴う経済援助から起こってくるもので、いろいろな問題があるわけでありますから、純経済的、純政治的、政治にウエートを置いたものと分けられるように機構的にはできておるわけであります。
これは相手の国がありまして、だんだんと延べ払いの条件が長くなる、また初めは三割でとめておったものが四割になり五割になり、あるところにおいては五割を越さなければ話がまとまらぬというものもあるわけであります。でありますから、厳密に線を引いて、輸銀と開銀とのように非常にはっきりした区分ができるとは思いませんけれども、やはり原則的に輸銀と経済基金が行なう区分は、いま常識的につけておくのは必要だろうというふうには考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/13
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014・松平忠久
○松平委員 この問題については、いろいろ諸外国の制度として参考になるものがあるように思うのですが、アメリカの輸銀とAIDのようなかっこうにするのも一つの方法ではなかろうか。イギリスの場合はまた非常に紛淆を来たしておるように思うのです。ですから、イギリスの海外援助というものが金の出るときになかなか手間がかかるというのは、あの国の制度に保証制度のようなものがありまして、つまり日本でいう輸銀と経済協力基金の投資援助についての条件等についてなかなかはっきりしていない制度をあの国は採用しておる、そういうところに関係があるように思う。
そこで新聞等に伝わっておりますところの、たとえば韓国の問題について、有償二億ドルというようなものが出てきた場合には基金を使うべきだという議論があるわけであります。これらの問題については、政府部内において一体どういう金融機関を通じてやるのかというようなことについての考え方はいまあるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/14
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015・田中角榮
○田中国務大臣 これは、日韓交渉が最終的にまとまらなければならないわけでありますが、いま外務省で検討をしておる段階でありまして、私たちは輸銀を使うほうが一番いいという考え方をとっておるわけでありますが、これから最終的な段階において経済協力基金をどのくらい使うのか、また全額使うのか、またそうでなく輸銀と分担をしてやるのかというような問題は、将来の問題として検討はいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/15
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016・松平忠久
○松平委員 そういう場合におけるものの考え方、つまり輸銀を使うほうがいいならば吸収したほうがいいと思う。だけれども、分けるというのだったら、おそらくその場合においては大部分がいわゆる商業ベースに乗らない金融になることは間違いない。そういうことから、これは分けてやらしたほうがいいということになるわけだろうと思うのです。というのは、大臣の頭の中ですでに紛淆を来たしておる、いまあなたの答弁によると。だから、その辺のところは、将来日本の海外投資というものが、だんだん多くならなければならない段階になってきておるのだから、もう少しはっきりとした区別をつけていかなければならぬというふうに考えられます。重ねてお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/16
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017・田中角榮
○田中国務大臣 御質問の点は非常によくわかりますけれども、なかなかそこがむずかしいのです。むずかしいこともまた御承知だと思うのです。私たちは、大蔵省でありますから、海外援助に対してはできるだけコマーシャル・べースに乗せたい、こういう考え方で、南方諸国に対しましても賠償に伴う経済協力を協定いたしておりますが、こういうものに対しても動いておらぬというのは、向こう側としては、金利を安くしろ、もっと長くしろ、こういう考え方で経済協力基金を使え、こういうような方向でこちら側に要請がある。こちらは協定のときの考え方は、コマーシャル・ベースに乗せるという考え方でありますから、現在十五年という目標でありながら十年としておるということで、それ以内でやってもらいたい、こういうことを言っておるから両国の間でなかなか問題が進まないというのが事実あります。ありますけれども、どうもこの問題は、はっきり分けて、十五年以上は基金でやるとか、また三分五厘以下の金利のものはやるというふうにもなかなか分けられない問題であります。これはだんだん輸銀の業務が拡張してまいりましたら、またウジミナスのように特殊な状況が出てまいりますときには、初めの計画よりも、第二期、第三期、第四期という長期計画になりますと、契約条件も違ってまいりますし、投資条件も違ってまいりますので、個々のケースで最終的なことになってまいりますと、輸銀と経済協力基金との業務分野にまたがるようなものも出てまいります。一応のめどとしてつけておくのもいいなという気持ちもわかりますけれども、またこれとは別に事項別に両方で検討して分けておりますから支障はないわけであります。すっきりするようにといえば、先ほど申し上げたように、輸銀法の趣旨にのっとりまして、将来日本の貿易の拡大というコマーシャル・ベースに乗るものは輸銀であり、また賠償に伴うものとか、また日韓交渉のような請求権式なものに伴うものとか、両国の国交の問題、外交上の問題から、大きな世界政策の上から低開発国に対する援助とかいうような問題については、やはり経済協力基金が当たるというように、いまの段階においては大別できるということ以外に法律を改正しなければならぬということになると、法律上の条文そのものもまた非常にむずかしい問題であり、特にこのような条件は外国との取引がありますので、外国の出方を見て、こっちのやりたい仕事に対しては、向こうが十年と言えば十一年にしなければいけないし、やりたくない仕事には、向こうが十五年と言っても、こっちは十年を絶対に守りますという商売上の問題がありますので、なかなかこの委員会で明確に区分しろと言われても、事実むずかしい、こういうことを申し上げざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/17
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018・武藤山治
○武藤委員 関連して。いま松平先輩がいろいろ心配をして、政府に反省を求めている理由は、海外経済協力基金をいろいろ検討していくと、ボリビアとかチリに対する融資が、銅山開発がほとんど失敗しているわけです。これははっきりこの間企画庁の係官を呼んで尋ねたわけです。せっかく貸した金が五億なり六億なりが何ら効果をあげなかったというような問題が出ているわけです。国の税金ですから、そういうような非常な無計画な、見通しのないそういう投資が行なわれておる、その欠陥は何かといえば、やはり総合的な調査能力あるいは現地の状況、そういうものを把握していないで、めくらめっぽうに投資をするから、そういうことになるのです。
そこで、私は一つお尋ねをしたいのですが、外務省の管轄で海外技術協力事業団というものがある。こういうようなものは、海外の地理的条件あるいは輸送、その他外務省関係でその土地の事情をよく知っている、そういう立場で技術協力をやろうとしておる。そういうものと、海外経済協力基金と輸銀とばらばらで、一つの頭脳から、センターからこれをひとつ融資をして、開発をしようというような経済効果を的確に考えないでやっておる。ここにやはり問題があると思うのです。この外務省関係の海外技術協力事業団と海外経済協力基金との関連、そういう点について現状が好ましいか、経済効果を十分あげておるか、あるいは政府の資金というものを有効に使用しておるか、そういう点については、大臣はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/18
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019・田中角榮
○田中国務大臣 どう考えるかと言われれば、率直に申し上げますれば、言論の存するところであります。これは海外経済協力基金と事業団の性格が歴史的に違うわけであります。一つは移民問題からどうもうまくいっていない、ボリビア移民等の問題もありまして、こんなことではだめだ、政府が買ったところには、人はさっぱり行かないし、人の行くところには土地がない、こういうような問題がありますので、より広範な立場から検討しなければいかぬ、もっと合理的な投資をしなければいかぬ、こういうことでつくられたわけでありまして、いまあなたが言われるように輸銀と協力基金また事業団と同じようなことをやっているので、これを一つにしたほうがいい、昔拓務省というものが一つありましたが、こういうものにしなくても、何か総合調整をして、効率的なものにしなければいかぬということはわかりますが、どうも戦後の考え方というものは、ものの必要性に向かって全部専門的というか、いまの金融機関もそうでありますが、専門的なものになっているので、横の調整があまりきかない、ということは、特に海外経済問題に対してはあるようであります。これは率直に申しますと、われわれの中でも議論しておりますが、外務省は投資をしても両国の国交上プラスになるという考え方が主になっているようでありますし、それから通産省は貿易をするのには投資をしないでエビタイということがあるじゃないか、いずれにしたところで投資もしないで、貿易が拡大できるものかという考え方であります。大蔵省はいやしくも国民の税金を使うのだから、投資をしたものは絶対に回収をしなければいかぬという、こういう考え方がどうもぶつかって、おのれの分野だけを強調するところに、いろいろな問題があることは事実であります。でありますから、私も今度の大蔵省設置法の中で、できれば新しい立場に立って、大蔵省が金を出すのではなしに、国民の税金を預かっておりますから、海外投資資金局でもつくりたかったし、そういう意味で交渉してみたのですが、それは各省が反対して、なかなかむずかしくてだめだからということで、私はついに断念したわけでありますが、こういう問題に対しては、やはり前向きに、積極的に検討すべきでありまして、大蔵委員の皆さんの御発言等を契機としまして、将来の行政の統一というか調整的な問題もあわせて検討すべきだろうとは思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/19
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020・松平忠久
○松平委員 いま率直な大蔵大臣の答弁ですが、全くそのとおりではないかと思います。やはり各省にまたがるいろいろなことがありますので、いろいろな事務連絡会議のようなものもやっておられるようだけれども、私はやはりもう少しむだをはぶきながら、なおかつ効率的にというようなことのために何らかやはりいまの連絡機関のようものをもう少し法制上のものにでもするか、あるいはそういうぐあいにして、いま大臣が言われたような方向での検討をぜひお願いしたい、こういうことで、これは質問を打ち切ります。
ただ、この機会にもう一つ伺っておきたいことは、日本のいわゆる為替関係、将来のIMF八条国移行に伴うところの、為替の自由化に伴うところの一つの方法として、BISとコネクションを結びたいという考え方が日本の金融界にあるように思います。すなわちスイスの国際決済銀行の出資者に日本がならなければならないという方向がだいぶあるように思いますが、その問題についてはどういうふうにお考えになっているのですか。たしかいま外貨も預けているのではないかと思います。おそらく欧州の決済同盟というか、決済の関係の中に日本が入っていきたい、こういう気持ちがあるように思うのですが、その点についての政府の考え方はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/20
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021・田中角榮
○田中国務大臣 将来の希望としてはなくはありませんし、そういう方向にだんだんいくと思います。また相互金融協定等も日銀は行なっておりますし、国際金融の中にだんだん入っていくということは、方向としては正しいことであり、事実そうなると思いますけれども、いま現実問題として出資するとか、また出資の要請を受けているとか、そういうような状態ではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/21
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022・松平忠久
○松平委員 そこでもう一つ心がまえをお伺いしたいのですが、日本の財政金融政策というものは、かなり国際的な圧力というか影響というか、そういうものを受けてくると思うのです。つまり独自の立場で日本の金融財政というものをやっていくことはなかなかできにくい、そういう要請がくると思うのです。かつて西ドイツあたりはまさにそのとおりだった。西ドイツが自分のところでもって金融財政政策をやっていくと、EECから圧力を受けて、自分たちのやろうとした金融財政政策というものを途中でやめなければならぬ、こういうことがあったわけです。それにドイツが耐えられるだけの財政力があったから耐えてきたと思いますが、日本の場合においては、それがなかなかむずかしいのではないか、いまの財政状況からいえば、そこで日本はかなり独自の立場でそういうものを主張しなければならぬ段階にいまあると思いますが、そこのところが、実際申しますと、いま政府がお考えになっている方向、その切りかえというものが、その点において西ドイツの場合と比べて心配になるわけです。そこで今後の財政金融政策というものは、そういうものをかなり受け入れていかなければならぬ、こういうことになると思うのですが、その辺の心がまえというか、そういうのはどういうふうに感じておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/22
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023・田中角榮
○田中国務大臣 八条国に移行し、OECDに正式加盟をしたいということでありますから、国際的な財政金融政策に協調的態度になければならないような状態になるだろうということは御説のとおりであります。しかし、いままでに西ドイツがEEC諸国から受けたような、またEFTA諸国のようなまわりの国々からいろいろな注文があったというような事態とは違うので、御承知のようにヨーロッパというのは国境がありますし、民族意識も国家意識も非常に強いけれども、事経済政策に関してはヨーロッパ諸国は国境なしということは過去十二、三年来やっておるわけであります。でありますから、そういう意味で西ドイツのとる財政金融政策そのもの、経済政策そのものが周辺諸国に対して影響が非常に敏感である、強いというところにお互いが財政金融政策を批判し合ったわけでありますし、一つの調和点を見出したという事実もありますが、日本の場合は地球上における位置も違いますし、日本がこれから財政金融経済政策に対していろいろなことをするとすれば国際的な立場に立ってIMFの場において、また世銀の場において、それからOECDの場において、主要工業十カ国としての国際流動性の問題、財政金融政策等が論じられるのでありまして、私はEEC諸国から一部拘束を受けた西ドイツの状況のようなことは日本にはないということを考えます。ただ御承知の国際連合の中でも、またIMFの総会や世銀の中でいろいろ考える国際的な問題は、OECDの第三作業部会が時期的に早いので、そこで主要諸国が大体事前に検討してしまうという問題があるわけでございます。アメリカも出かけてまいりますし……。でありますから、今度大蔵省の為替局長を近く二十二日からOECDのオブザーバーの会議に出しますけれども、第三作業部会にどうしても早く入りたい、OECDに加盟をすることによっていわゆる国際連合やIMFやそういう国際機関で討議される前に、主要国としての日本の立場を十分に明らかにしておきたい、こういう考え方でOECDの加盟を促進願っておるわけでありまして、私は必ずしも全然影響ないというわけにもいきませんが、拘束を受けるというよりも国際財政金融政策に対して日本の発言力というものが、正式なメンバーとして強くなるという利益のほうが開放経済に向かってはあるだろうという考え方に立っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/23
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024・松平忠久
○松平委員 もう一つ最後に伺っておきたいのは、大体一年半ですべてのものを検討するということになっておるわけです、OECDにいたしましても。一年半もしくは三年、こういう周期と申しますか、そういうところで日本のもろもろの経済政策を新しくするとか現状維持とかいうことをきめていかなければならぬと思うのです。政府もおそらくそういうめどを立てておやりになっておると思うのですけれども、そうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/24
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025・田中角榮
○田中国務大臣 御承知の今年の九月の第一週には東京においてIMFの総会が行なわれるわけであります。この総会をめどにして国際流動性の問題に対して一応のめどをつけたいということで話し合っておるわけでありますが、私は九月のIMFの東京大会で流動性という問題に終止符を打つというような時期にはならないだろうと思います。がしかし、この東京大会を契機にして非常に白熱的なものになり、相当積極的な、お互いの集約した意見が出されて、少なくとも次のIMFの総会をめどにした動きになると思います。でありますから、こういう問題、こういう時点を契機にしまして、私たちも四月一日の八条国移行を九月まで、また九月の東京大会の実情を見ながら来年までというような考え方で財政金融政策に対しては国際的な視野に立って新たな立場で検討いたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/25
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026・松平忠久
○松平委員 終わります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/26
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027・山中貞則
○山中委員長 次に、所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
質疑の通告がありますので、これを許します。平林剛君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/27
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028・平林剛
○平林委員 昨日私は所得税の減税は過少である、少な過ぎる、こういう立場に立って、課税の最低限、租税の負担率、給与所得控除額の引き上げをサボったことにつきまして、政府の見解をただしたわけであります。きょうもその問題につきまして引き続き政府の猛省を促したい、こう考えて質問を続行いたします。
税制調査会で昭和三十九年度の税制改正に関する答申をされたのは、昭和三十八年の十二月であります。税制調査会がこの答申を検討された当時、政府のほうで税の自然増収につきまして、あるいはまた物価の上昇につきましてどういうような説明をなさったか、これをお尋ねいたしたいと思います。例年税制調査会の資料によりますと、政府の税収その他について触れているのですけれども、今度はその点少しも触れていません。どういうところを判断されてこういう答申をなさったかという点が明らかでございません。そこで政府の当時の問題でお尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/28
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029・田中角榮
○田中国務大臣 税制調査会に諮問をしました総理大臣諮問案、またこの問題に対して私が説明を申し上げた問題で、なお当時参考付属文書として提出をしました経済見通しその他の具体的な問題に対しては主税当局から答えさせます。問題としましては御承知のこの税制調査会は一年こっきりのものではございませんで、昭和四十一年を目標にして答申を求めておるわけであります。この中につきましては、税法のあり方、日本の税体系のあり方、それから間接税や所得税等を含めたもの、また国税、地方税のバランス、将来の問題点、こういう問題で各般にわたって御審議をわずらわしておるわけであります。そのつど予算編成期までに当該年度において必要と思われるものに対しては中間答申を願いたい、こういうことを言っておるわけであります。ただ最終目標は税法を国民にわかりやすくわかるようにしてください、こういう問題まで注文をつけて相当大きな荷物をお願いしておるわけであります。その当時の三十九年度の中間答申を求める前提としては経済成長率も低かったと思いますが、今年度は正常な経済の発展がされるだろう、ある意味では来年度はそう急激に締めるわけにいかないので、今年度は正常引き締めができれば三十九年度、すなわち来年度はもう少し経済成長率が伸びるだろうという考え方で、その時点に対する認識と見通しで参考書類をつくったわけであります。それが今度の三十九年度の歳入歳出の見通しがつきましたときには逆転をしておることはまた後ほど申し上げますが、いずれにしてもそのような認識のもとに参考書類を出したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/29
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030・泉美之松
○泉政府委員 昨年の十月十八日に税制調査会の総会が開かれまして、それから小委員会を設けまして、十月二十五日に小委員会が発足したわけでございますが、その小委員会を発足いたしました十月二十五日に、三十九年度の自然増収の見通しあるいは経済の見通し等につきまして御説明を申し上げました。そのときの説明におきましては、三十九年度の自然増収は六千五百億程度であろうということ、それから経済につきましては約九%程度の生産の伸びがあろう、卸売り物価につきましてはたいして上がらないけれども、小売り物価につきましては四%から四・五%くらい上昇するではなかろうかというようなことを申し上げまして、それを基礎に税制調査会において御検討になったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/30
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031・平林剛
○平林委員 そうすると、当時から比較をいたしますと、税の自然増収については約三百億円くらいの伸びが現在では想定をされておるわけですし、経済の成長率についても九%から九・七%という説明に変わっておるわけでございますが、そういうふうに考えてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/31
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032・泉美之松
○泉政府委員 お話のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/32
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033・平林剛
○平林委員 税制調査会の会長の中山伊知郎さんが去年でしたか、この大蔵委員会に見えられまして、昭和三十八年度における税制改正を答申するときの判断として意見を述べられました。昭和三十八年度に基礎控除、配偶者控除、扶養控除、専従者控除をそれぞれ一万円ずつ引き上げると、最低所得層における物価上昇からくる事実上の増税を避けることができると判断した、こう述べられておる。つまりこの税制改正をやれば事実上物価上昇からくる増税ということを避けることができる。そのときの基礎は、昭和三十八年度における物価上昇率を政府発表のとおり二・八として計算をされておるわけですが、御承知のとおり実際の物価騰貴というのは八%をこえておる。そういう意味では、税制調査会によって答申をされ、かつそれに基づいて実施された税制改正は、すでにその基礎が失われている。しかも昭和三十八年度の税制改正においてはそれぞれ一万円ずつ引き上げろというのに、政府では基礎控除一万円の引き上げを五千円に削ってしまったわけです。ますますその基礎はくずれておるわけでございます。こういう経過の上に立って今回の税制改正においても勤労者控除というものを削ってしまっておるわけです。毎年税制調査会から答申をされるものに対して、政府の取り扱いというものは勤労所得者に対して偏見を持っているのじゃないか。特にこれだけ常に削っておる。どうも大蔵大臣に勤労所得者に対する偏見があるのじゃないか、こう私は思うのですけれどもいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/33
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034・田中角榮
○田中国務大臣 勤労所得者に対する偏見はありません。もしありとすれば、非常に優遇しなければならぬ、こういう考え方のほうがありまして、勤労あって初めてわれわれの生活がある。私自身も勤労者出身でありますし、給与所得者でありますので、これらの問題に対して熱意を失っておるものではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/34
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035・泉美之松
○泉政府委員 ちょっと大臣の御答弁を補足して申し上げますが、お話のように、三十八年の税制改正の際におきましては、配偶者控除あるいは扶養控除、専従者控除などにつきまして、税制調査会の答申一万円引き上げというのを五千円引き上げにとどめたのでございますが、お話のように、その当時想定しておった物価の二・八%の上界が実際には八%程度の引き上げになったという点がございますが、同時に賃金のほうにおきましても、給与所得者の場合は予算において六%の賃金増加というふうに見ておったのでありますか、この実績が一一%にもふえたのでございます。その意味におきましては、なるほど物価の上昇はございますけれども、賃金の上昇がまた非常に大きかったということによりまして、実質的な給与所得者の収入の増加というものが見られておるわけでございます。そういう意味では物価の上昇によるものをすべて税制改正による所得税の負担軽減によってのみ避けるということはなかなか困難でございまして、賃金の増加によってこの物価の上昇を捨象していくという点が働いてくるという点を十分お考えいただきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/35
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036・平林剛
○平林委員 いま泉さんが説明した考え方は私はもう根本的に間違っていると思う。確かに所得は増加しているでしょう。しかし所得の増加に伴ってそれに対する累進課税などがございますから、税金そのものも昨年より多くなってくるという矛盾に逢着しているのですよ。政府は毎年減税をやるなどと言っておるけれども、いつも税金が高くなる。減税をやって税金が高くなるということは、あなた方の政策以外に何もありませんよ。現に税負担率というものが高くなっているわけですからね。それから大蔵大臣も給与所得者に対しては厚遇しなければならぬというけれども、口先だけですよ。実際には厚遇してないじゃないですか。私がいま指摘したとおりです。だから私は、ことばでなくて実際にその措置をすべきだ、こういうことを申し上げておるわけです。特に国民所得の増加率と国税の各税収入の増加の割合を検討してもらいたいと思う。たとえば昭和三十一年から三十五年までの五カ年間に国民所得は一一・六%増加しておる、これは事実であります。しかしその同じ年度におきまして源泉所得税は二四・二%と二倍増加しているのですよ。同じ年次におきまして国民所得が一一・六%しかふえておらないときに、法人税も二三・六%というふうにふえておりますけれども、特に勤労所得税に対する増加割合というのは著しいものがあるのです。この事実から見て、大蔵大臣は、いや勤労所得者に対しては厚遇しようと思っておると言うけれども、現実は違っているじゃありませんか。最近の傾向はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/36
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037・田中角榮
○田中国務大臣 実質国民所得を統計によって見ますと、一人当たり名目所得指数を申し上げますと、対前年度比でありますが、三十一年が一一一・九、三十二年が一一一・〇、三十三年が一〇〇・二、三十四年が一一四・五、三十五年が一一八・〇、三十六年が一一八・三、三十七年が一一一・三、このように所得は上がっておるわけであります。それから税負担の数字はいまないようでありますが、このように国民所得が上がっておりますし、あなたがいま言われた数字に対しては検討いたして御答弁申し上げますが、そういうことを申し上げていいかどうかわかりませんが、実際経済成長率よりも勤労所得は上がっておるということだけはお認めになっていただけると思います。そういう意味で、その水準が非常に上がっておりますので、税の一人当たりの負担率も倍になったようでありますが、実質所得の金額は一万円のものが二万円になっておるというような勘定からいたしますと、税のふえたものと所得のふえたものがどちらが大きいか、これは所得のほうがはるかに大きい、こういうことには事実上なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/37
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038・泉美之松
○泉政府委員 補足して申し上げますが、お話の三十一年から三十五年までの国民所得の伸び率とそれから税負担の伸び率の点につきましては、平林委員は国民所得のほうは国民所得の全体の数字の伸び率で見ておられますし、所得の税のほうは給与所得だけでごらんになっておられるわけでございますが、御承知のように国民所得のうちでも所得の種類によって伸び率が違うわけでございまして、その場合の比較のベースにすべきものは給与所得の伸び率でなければならないと思うのでございます。したがいまして、その点につきましては後刻数学的に調べまして御報告申し上げたいと存じますけれども、給与所得の伸びは、御承知のように最近給与の人員がふえますと同時にその初任給が非常にふえております。したがって、国民所得の平均伸び率より相当多い伸び率になっておるはずでございます。また、それが反映いたしまして給与の税収入がふえるということにもなっておるわけでございます。お話のように、所得が伸びれば税負担もふえるということは確かでございます。したがって、物価と給与の伸びと両方を考えます場合には、名目所得の伸びとそれの物価の上昇によって生ずるところの実質所得の伸びとそれから名目所得に対する税負担、その実質所得をかりに所得の計算の基礎の所得とした場合における税負担のあるべき姿、これらを見比べまして、実質的な所得の増加に対応する税の増加はこれはある程度やむを得ない姿ではないか。しかしながら、所得税は名目所得に課税されますので、名目所得と実質所得との差があるときに、名目所得に課税されることによって実質所得に課税される額よりも非常に多くの負担がふえるということは避けなければならない。できるだけ実質所得において負担の軽減がはかれるようにしなければならぬというのが、所得税の減税の考え方であろうと思います。私どもといたしましては、そのような見地に基づきまして所得税の控除について検討いたしておるわけでございます。数字的な点については後刻詳細に調べましてお知らせ申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/38
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039・平林剛
○平林委員 私は政府や大蔵大臣に現在の勤労所得税が重過ぎるということをわかってもらえばいいわけです。いま国民所得と源泉所得税の比較をしておるというお話でございますけれども、確かに国民所得が一一・六に対し、源泉所得税が二四・二と二倍になっている。違うものを比較している、こうおっしゃって御説明がございました。そしてあたかも勤労所得者の所得の伸びがずいぶん違うのだというような印象を与えようとしておるけれども、そうじゃありません。その点はあなたに聞かなくても、勤労所得の昭和三十一年から三十五年の伸び率は一二・八%です。源泉所得税は二四・二%です。やはり二倍になっております。普通所得の伸びに対する税収というものは一・六くらいに計算しなければならぬけれども、勤労所得税については二倍になっております。それだけ勤労所得税に対する過重がきておるということは事実でしょう。特に課税人口とその分布状況の立場から考えてみてもわかると思うのです。最近の資料はどうなっておるか、私の資料と照らし合わせて答えてもらいたいと思いますけれども、課税人口全体を所得別に分類してまいりますと、年間所得三十万円以下で税金を取られておる国民層が四千三百九十七万人、三十万円から五十万円の年所得で税金を取られておる人が四千五百四十九万人、全体の七二・四%です。五十万円から百万円の人が二千九百三万人、つまり私の言いたいことは、これは昭和三十六年当時の資料でございますけれども、納税人員で九五・九%というのは百万円以下の所得者です。そしてその課税負担額も所得税総額の五五%となっておる。最近はどういうふうになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/39
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040・田中角榮
○田中国務大臣 いま正確な資料を申し上げるためにちょっと……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/40
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041・泉美之松
○泉政府委員 平林委員の先ほどのお話は、給与所得者の納税人員全体の数字から見て三十万円以下の人が四千万もおるとかいうようなことには当然ならないわけでございまして、その数字は違っておると思うのでございますが、三十七年の所得税納税者につきまして実績を申し上げますと、給与所得税の課税人員全体が千七百十六万七千人でございますが、そのうち百万円以上の所得者は六・三%に相なっております。百万円以下の人が九三・七%に相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/41
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042・平林剛
○平林委員 先ほど私が言ったのはけたを一つずつ間違えておりますからこれではあまり大きくなり過ぎるが、しかしいずれにしても、百万円以下の所得で税金を取られておるのが九三・七%というのは、かなり低い人にまで税金が行き渡って取られておることは間違いない事実だと私は思うのです。そうしてこれだけ課税人口の中で百万円以下の人が九三七%とられている。これを昭和十年当時と比較をすると、昔は百万円以下の人は七二%ぐらいであったのが九三・七になっている。そうしてまた当時の百万円以下の所得者の税金の割合というのは一〇・三%、全般の十分の一程度であったのがいまでは五〇%をこえているというふうに、ここに集中されたような形があらわれておるわけなんです。私はこういういう点から考えましても、給与所得控除をはずしたというのは、まことにけしからぬことだと思う。それで大蔵大臣にもこの点を私追及しておるわけですけれども、ことばでは優遇しているとか、何とかせねばならぬと言うけれども、実際にはそうじゃない。何か言い分ありますか。給与所得者が低いということは認めますか。
〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/42
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043・田中角榮
○田中国務大臣 税というのは、日本の財政事情から見ての問題であり、しかも先進諸外国との比較によって検討するものであります。また第三点からいいますと、財政支出の問題との関連もあるわけでありますから、一がいには言えませんが、毎度申し上げておりますように、所得税も年々減税をやってまいっておりますし、三十九年度減税はその十年の中の一こまであるし、また将来もこのような基本的な姿勢で考えてまいりますとこういうことでありますので、一律でもってすべて合理的に片づけてしまおうということでばかり片づくものではありませんので、いろいろな時の情勢に対応しまして、ことしのように、開放経済に向かうのであるから他の減税も行なわなければならぬという問題もありますので、こういうような面を十分検討しながら将来とも前向きでやってまいりたい、こう考えます。この前の税法の審議をお願いいたしますときには、いやしくも一万円のものを五千円削った、その五千円分だけは必ず来年やるか、こういうことでありましたから、それは職をかけてもやります、こう申し上げて、ことしはそれ以上にやっているわけでありますから、非常に積極的であるということだけはひとつお認めをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/43
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044・泉美之松
○泉政府委員 ちょっと補足して申し上げますと、先ほど申し上げました三十七年の課税実績によりますれば、百万円をこえ戸給与の所得者は人員で六・三%でございますが、税額の割合では五六・四%になっておりますし、それから三十九年度の見込みにおきましては、百万円をこえる所得者の割合は課税人員が千九百二十四万二千人のうち九・一%になっております。またその税額の割合は七三・二%と百万円をこえる所得の人の割合が納付する税額のほうも多くなっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/44
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045・平林剛
○平林委員 きのうときょう私が議論した中で必要な資料は、また最近の事例に基づいて政府に請求をいたしますから、今後の参考のためにそろえていただきたいと思います。ただ今回の所得税の減税が何か大幅減税のような印象を与えようとしておるのですけれども、私は平年度七百三十七億、初年度六百四十九億円というのはちっとも大幅減税じゃない。この点について大蔵大臣はだいぶ方々では大きな減税をやったような印象をばらまいていますけれども、いまでもそう思っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/45
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046・田中角榮
○田中国務大臣 まじめな考え方で国家財政の現状等を見ながら、しかも政府が歴年減税に対して努力をしておるという観点に立ちましてすなおに考えまして、可能な際限一ぱいに行なった、こういう考えを持っておるわけであります。
まだ申し上げてよろしゅうございますか。それではもう少し申し上げますが、減税も確かにあなたのような積極的な国民の側に立った御発言は、な御発言であります。また政府もそういう御発言に対処して、これから大いに努力をしなければならぬことは言うをまたないわけであります。また私たちも立場を変えていえば、確かに日本の税というものに対してもっともっと減税をしたいという気持ちもあります。同時にいま主税局長から申し上げましたように、九%の納税人口でありながら七〇数%も税額においては百万円以上の給与所得者のほうが納税をするということになりますと、九〇%の人たちで二〇何%の税額を確保するのでありますから、そのために徴税機構も非常に繁雑になっておりますし、また徴税人員を整備するにしても非常にむずかしい問題がありますので、私たち自身も可能な限り低額所得者の減税をしたい、また課税最低限を引き上げたい感じはあなたと同じ考えを持っておるのであります。しかし今度の減税が二千億などというのはほらだと言っておったものが二千億になり、やがて二千百億になり、二千百八十億になり、きょうの地方税の四百九十数億余を入れると、二千二百億をこすような状態にもなる。また実質の減税をやるともっと大きくなる、こういうことでありますから、確かに前向きであるということはひとつ御理解いただけると思う。しかも六千八百二十六億という多額の自然増収を見積もっておりますけれども、前年度剰余金の千八百億余の減を見込みますと、実際の歳入になるものは四千九百億という金額になるわけであります。この実質歳入になる金額と当該年度における減税額との比率は一体どうかと申しますと、一七・一%になる、これは三十二年以後最高の減税率を示しておるわけであります。でありますから、減税に対しては歳出もいま非常に要求があり、衆参両院を通じての国会の御議論の中で大体九〇%くらいは歳出が足らない。中にはインベントリーを取りくずさなければいかぬとか、また公債を発行すべきである、こういう議論もある中に、健全性を貫きながら、しかも二千億以上の減税をやろうとすれば、大体人間の力でもってやれる一つの限度というものがあるわけであります。でありますから、歳出の重要性と減税の重要性を十分承知をしながら、今年度は可能な際限内一ぱいでかかる税法の改正をやったわけでありますが、将来は引き続いてひとつ減税に対しては大いなる努力を傾けたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/46
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047・平林剛
○平林委員 大体大蔵大臣は、大蔵省関係でもあるいは政府与党の中でも、いわゆる政策減税派に属しておるから、私はきょうは洗脳してやろうと思ってしつこくこの問題をやっておるわけであります。もちろん減税という一つの政策を所得税の減税に向けるべきか、あるいは他のもっと日本経済に即応したほうに向けるかという議論はございましょう。どうもあなたは所得税のほうを軽視するような傾向があるものだから、まことにけしからぬと思って——首を振っているところを見ると、今度は転向して所得税についてしっかりやろうという考えはあるわけですね。特に昭和三十二年以来の大規模の減税をやったはずだと言われますけれども、所得税だけを例にとってみますと、昭和三十二年の千百二億円は当時の自然増収千九百二十二億円の五七%を占めている。今度は三十九年度は七百三十七億ですから、自然増収六千八百億円とすれば、一〇・八%です。これっぱかりしかやっていないのですよ。私がいま指摘したように相当過重であり、あなたもこれから所得税派のほうに振りかえるような気持ちが少し動いてきて、現実にはその重いということを認めながら、今回の所得税に対する減税というのはこれだけなんです。財源がないと、こうおっしゃるけれども、財源がないわけじゃない。私はそれならばこういう形でお尋ねしておきますけれども、現在当初予算に対して六千八百億円の自然増収を見込んでおられるけれども、もし政府の見通し以上にこれが増加するというようなぐあいになったときには、それじゃひとつ所得税の減税について考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/47
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048・田中角榮
○田中国務大臣 これは税制調査会がございます。その税制調査会の御検討に待ちながら政府はそれに対処してまいるわけでありますから、そういう問題に対してはあげて税制調査会の検討に待つべきものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/48
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049・平林剛
○平林委員 どうもあなたは税制調査会の答申を待ってと言って逃げるけれども、現に給与所得控除は税制調査会の答申どおりやっちゃいないじゃないですか。きのうの本会議における池田総理大臣の発言のごときはまことにけしからぬと私は聞いておった。税制調査会に対しては諮問はするけれども、それを受けて採用するかしないかはおれのほうのかってだ、政府のほうではもっと大所高所に立って、どういう減税をやるかかってにきめるんだという趣旨のごとくに聞き取れる発言をした。あれは池田勇人ではなくて池田勇み足くらいに、失言くらいに属するものだと思うのですけれども、あなたはそう言われるけれども、私はきょうあなたのお話を聞いておりまして、当然自然増収があった場合には所得税の減税に踏み切ってもらえるものだと解釈をしたいのです。しかし、税制調査会の答申を待ってというふうに言われますけれども、きのうの総理の発言を考えてみてあまり信用できない。いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/49
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050・田中角榮
○田中国務大臣 今度の税収は見積もり過ぎだという御議論がたくさんありまして、私のほうは輸出の問題もございますし、物価問題もございますので、名目成長率はびっしり押えたいという考え方でおりますので、税収はこれ以上に過大に見積もれるような状態にならないだろう。なれば物価が上がるのですから、こういうことに絶対になってはならないというふうに考えておりますので、今年度はただいま御審議を願っております税法でひとつ減税をやらしていただきまして、昭和四十年度の問題につきましては、政府は年々減税に取り組んでいるのでありますから、希望を託していただきたい。私たちもこの発言に対しては大いに努力をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/50
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051・平林剛
○平林委員 私はただいまの答弁にはなはだ満足しません。しませんけれども、私が指摘をしたかった点については、十分政府においても頭に入れてくれたと思いますから、今後の政府のとり方を十分注意してまいりたいと考えております。
なお、所得税法につきましては、他の問題についてもいろいろお尋ねしたい点がございますけれども、きょうはこの問題だけにはしょって質問を終わりまして、他の問題についての発言、質問は留保いたしまして質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/51
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052・吉田重延
○吉田(重)委員長代理 午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。
午後零時十四分休憩
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午後一時二十四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/52
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053・山中貞則
○山中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。武藤山治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/53
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054・武藤山治
○武藤委員 最初に、所得税の問題についてお尋ねをするわけでありますが、緊急に尋ねておきたい所得税以外の問題が一つございますので、ちょっと大臣のお考えを尋ねておきたいと思います。
それはいま酒の小売り商人が、貿易自由化に対応して、おそらく国税庁が国内の小売り業者まで基準を緩和して、現在のような小売り業者許可基準というものを撤廃してしまって、自由に酒屋ができるようになるのだろう、こういう心配で、かなり多くの人たちから反対陳情が舞い込んでおるわけであります。一体大臣は酒の小売り業というものを、現在の許可基準を存続するつもりでおるか、それとも、これを緩和するとするならば、どういう程度まで緩和をするつもりなのか、その辺をひとつ最初に伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/54
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055・田中角榮
○田中国務大臣 小売りの免許基準につきましては、無制限にこれをはずすというような考え方はありません。明らかにいたしておきます。私のところにもそのようなことが起こっては困る、起こるような動きがあるのかというような照会はございますが、長いこと、戦前、戦中、戦後を通じまして、小売りの諸君も納税等に対しては非常に努力をして今日まできておるわけでありますから、その意味においても、開放経済であるからといって小売りの免許基準をすべて撤廃してしまうというような考え方はありません。ただ、いままでの免許の中に、近接地の同業者のすべての商人が必要であるとか、それから新しい団地等ができても、これに対しても旧来どおりの一律画一的なものの考え方もあるようであります。まあそういう問題に対して実情に合うように、しかもいままでの小売りの制度、基準ということが大幅に侵されない程度でお互いが納得し得る段階において、多少新しい観念も入れまして弾力的な運用が必要であろうというような気持ちは持っております。持っておりますが、これらの問題に対しても、先ほど申し上げたように、長いこと御苦労された諸君の利害関係もあることでありますし、また新しい憲法のもと、新しい考え方も必要でありますので、これが調和をとりながら、いやしくもいまの小売り業者の権益を害して混乱に導くというような考え方は持っておらないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/55
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056・武藤山治
○武藤委員 国税庁は来ておりますか。——国税庁で何か具体的にそういう基準を大幅に近々に改定をしようという計画はおありなんですか。それとも、そういう業者がわれわれのところにたいへんな金をかけて陳情をしておるわけですが、事実そういう作業が全然進んでいないとするなら、何か流言飛語をもとにしてそういう運動が始まったと考えられるのですが、実際は国税庁としては何かそのことについて作業をやっておるのですか。やっておるとすれば、その進行状況をちょっと聞かしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/56
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057・江口健二
○江口説明員 ただいまの御質問の点につきまして、昨年の八月の二十一日に大蔵省の省議がございまして、その際に、公正な競争関係を考慮に入れて免許基準についてもそのあり方を検討しろ、こういうことになったわけで、それ以外われわれのほうで事務的な段階で問題点を煮詰めておったわけでございますが、今日までまだ成案を得ておりません。ただこの問題は、ただいま大臣からお話がございましたように、非常に重要な内容を含んでおりますので、われわれのほうだけで案を固めますと、無用の混乱を生ずるあるいは無用の心配をなされるというような観念がございますので、できるだけ事前に関係の業界にわれわれの考え方というものをまずお示しいたしまして、そこで十分の討議をした上で案を逐次固めていきたい、かようなつもりで従来も関係各団体の理事会あるいは全国会長会議等で多少の方向づけというものを御説明いたしまして、それに対する質問あるいは要望なりも承っておりますが、本日も実は午後から関係小売り業中央会の方にわれわれの考え方を一ぺんお示ししまして、業界の方の率直な意見をお聞きしたいという段取りに実はしておるわけでございます。具体的な方向といたしましては、ただいま大臣からお話がございましたように、衛星都市、それから都市部では、特に団地等の場合に、現在の基準ではなかなか免許しにくいというような具体的な事例がございます。東京都内でも先般実態調査をいたしてみますと、たとえば松戸の団地等を見ますと、約一万世帯があるにもかかわらず、その周辺に十軒程度の小売り業者しかない。住んでおる方々は非常に不便をしておる。それから団地の中にも四軒の免許業者がございますが、残念ながら距離基準等がございまして、全油類の免許店は一軒しかない。あと残りの三軒は洋酒類だけというようなことで非常な御不便をかけておるという向きもございます。そうした問題についてこの際改正したらどうか、ただ改正する場合にどういう方向をとるかということについては十分業界の方と話を煮詰めた上でわれわれの案を持ち滞りたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/57
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058・武藤山治
○武藤委員 そういたしますと、現在、距離基準とそれから世帯基準がございますね。一行政区域あるいは一地域における世帯数が二百七十戸以内とか、あるいは以上とか、そういう原則的な基準もいじることになりますか。それとも特殊なそういう団地とかあるいは衛星都市という行政区ごとに、特例みたいなものを中に入れて許可基準を緩和する、それとも原則的な距離基準と世帯基準というものも変えるという方向に進みつつありますか、これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/58
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059・江口健二
○江口説明員 いまの点につきまして、いろいろな考え方があるわけでございます。距離基準を全部やめたらどうかというような考え方もございますし、いまのところ一部短かい距離といたしましては、都市部で百メートル以上なくちゃいかぬ、こういうような基準があるわけでございますが、従来あります基準はどうも人口関係と——人口と申しますのは消費者関係でございますが、消費者と業者の関係を非常に平面的な場でとらえておるという感じがございますが、最近は都市にどんどん人口が集中してまいります。そういたしますと、立体的にそのことを考えなくちゃいかぬのじゃないかということになりますと、どうも百メートルを縮めて五十メートルにするということそのことも合理性がないというような感じがいたしますので、むしろ距離基準をやめにいたしまして、特殊な例の場合には需給調整上のバランスを一番大きなウエートに持つというような考え方もございましょうし、その辺についてはまだ煮詰まっておりませんので、具体的な基準をはずして抽象的な基準を立てるかどうか、あるいは抽象的な基準も非常にむずかしいものですから、需給調整一本の計算方式によってきめるかというようなことにつきましても、業界の方と具体的に打ち合わせをしてみたい、かように考えております。それからそのほかに、いまのは場所的な要件でございますが、人的な要件というのも一つの基準になっております。これはたとえば酒屋さんですと五年あるいは三年の経験がなくちゃいかぬ、あるいは食糧品店でございますと五年の経験がなければ酒屋さんの免許はおろさない、こういうふうな条件も一つあるわけでございますが、そういたしますと、新規に酒屋さんをやりたいという方々についてはまずまず三年ないし五年以上、特定の業種について経験を積まなくちゃいかぬ、こういうふうなことになりまして、非常に時間がかかって不便を与えてしまうというようなことになりますので、この辺につきましても、経営能力あるいは記帳能力というようなものからの判定もできましょうし、あるいは資金関係の判定からも結論が出るというような感じがいたしますので、これらにつきましても話し合いを進めていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/59
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060・武藤山治
○武藤委員 この問題は本筋ではありませんからこれで打ち切りますが、そういたしますと、いま話し合いを進めておるというのは小売り組合連合会の首脳部と話し合いをしておったのですか。そうすると、かなりの抵抗もあるような気がいたしますが、小売り組合のほうの意向はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/60
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061・江口健二
○江口説明員 昨年の暮れあたりから、大体抽象的な考え方では理事会その他の場を通じましてわれわれの考え、方向というものを御説明してまいったわけでございますが、最近ようやく具体的に考え方が煮詰まる段階になりましたので、ぼつぼつ少しずつわれわれのほうで議論の煮詰まった点を披露申し上げているわけでございますが、これに対しては、全国的に各組合ごとに見ますと、地方によって多少違いますけれども、どうも免許制度が撤廃されるのではないかというような声が非常に地方に強くなりまして、これはわれわれが地方まで行ってわれわれの考え方を披露するチャンスがなかった関係で、どこからどういうふうな考え方に変わってきたのかわれわれ察知するわけにはいかなかったわけでございますが、どうも地方に行けば行くほど免許制度が撤廃になるのだ、こういう声が強くなっております。これに対しては先々週の土曜日でございますか、これの全国大会がございまして、その際私が参りまして、撤廃の気持ちは現在のところはないということをはっきり申し上げてございます。したがいまして、撤廃に対する反対運動というのは今後はないのではないかという感じがいたしております。ただ三年、五年先のことはわれわれでもなかなか想像がつきませんし、開放経済がどうなるかということとにらみ合わせて考えていかなくちゃいかぬと思いますし、また一面生産関係につきましても、三十九年度から合理化計画を立てることになっておりますので、生産のほうと流通関係、販売機構との関係ということも新たな観点から検討しなければいかぬということになりますと、現在考えております合理化のあり方というものは、また一両年のうちには変わらざるを得ないのではないかというような感じがしておりますが、それらの打開策ということについてはわれわれなかなか踏み切るまでの考え方は現在のところ固まっておりません。小売り組合のほうといたしましても、中央会の幹部の方々は、撤廃については現在そう急にそういう状態にならないということについては十分理解しておられるようでございます。ただ一般的に形式的な基準を取り払ってしまって、いわゆる基本的な基準だけを残すということになりますと、可能性としてはかなり数がふえる。現在十二万五千ほどの小売り業者がございますが、形式的な基準をはずしてしまいますと、理論的にはかなりふえるのではないか、こういう心配をしておられる向きが確かにあろうかと思います。われわれとしては、かりに形式的な基準をなくしましても、現在の十二万五千が戦前のように三十何万になるというつもりは全然ないわけでございますが、その辺が何と申しますか、われわれのほうの認める立場と、認めては困るという立場との気持ちの上の相違ではないかというふうに感じておりますので、その辺についても十分に具体的な内容でもって話し合いをしてみたい、かように感じているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/61
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062・武藤山治
○武藤委員 所得税法の問題に入りたいと思いますが、過般の衆議院本会議において大蔵大臣に、まず一つの問題としてこういうことを私は尋ねたのです。当初税収を見積もる際の経済成長率を一二%に見積もって計算をしておったではないか、そのときには六千五百億円程度の自然増収がありそうだと発表された、しかるに今度は九・七%に見積もると、落として逆に自然増収が六千八百億円とふえるのはおかしいではないか、これは一体どちらが正しいのかという質問に対して、あなたはどちらも正しい。どちらも正しいという意味が私にはわからなかったわけです。どちらも正しいというのはどういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/62
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063・田中角榮
○田中国務大臣 それは作為的に初めは低く見ておったものを、計算をして最終的には多く見たとか、それから最終的にきめたものが水増しであるとかいうような手心を加えたようなものでは両方ともないわけであります。両方とも正しい状況において積算をしたものである、こういうことを申し上げたわけであります。それはどういうことかといいますと、ちょっと見ますと一二%名目成長のときに六千億ないし六千五百億であったものが、これを九・七%に下げたときには税収入が減るのがあたりまえなのに、どうして六千八百億になったかということでございますが、これは昭和三十八年度の成長率がもっと低いと思っておったわけであります。でありますから、低いものを土台にして、明年度はなだらかな上昇過程をたどってまいりますと、二・二%ぐらいの伸びになるだろうというふうに考えておりましたところ、十二月になってから十分税収の状況等を見ながら、税目別に積み上げ計算をいたしましたら、昭和三十八年度の第三・四半期から非常に高い成長率になってまいった。一時は実質一五%になったというような成長率が見込まれたわけであります。それでは困るというので、第三・四半期、第四・四半期を相当押え目に見て三十八年度一ぱいを通じて大体実質八・一%になる、こういうこともいま見込んでおります。八・一%をこすだろうという議論もあります。もうすでに第二次、第三次補正予算で税収見積もりをいたしまして、国会の議決を得たわけでありますが、もうすでに今年度において二千億以上の自然増収が見込まれるということで、来年度の成長率の基準にするベースが非常に大きくなっておるわけであります。でありますから、九七%名目成長でも六千八百二十六億という数字が十二月になってはじけたということでありまして、八、九月ごろ、十月ごろの考え方としては、三十八年度の成長率を低目に見ておりましたので、三十九年度の自然増収も基準になるベースが小さいものですから、六千億ないし六千五百億と、こう健全な見方をしたわけであります。それが徴税実績等から見まして六千八百二十六億、こういう計算をしたのでありますから、作為がないということで、両方ともまじめな立場で積算をしたことであります。両方とも正しい、こう申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/63
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064・武藤山治
○武藤委員 主税局長にちょっとお尋ねがありますが、年内に一二%程度の成長率で計算をした場合には、租税のほうは一二%の経済成長という基礎があっても、別に徴税実績を積み上げて大体このくらいは租税収入があるなという、経済成長率ということを一切頭からはずして、実際の税収を積み上げて計算をして六千五百億円という数字が出たと思うのですが、それとも政府の言う経済見通しというものを、全体のワクにぶっかけてこのくらいは税収が伸びてこうなるだろうという計算をしたのですか。どちらからの計算をして六千五百億程度の自然増収が出そうだという発表をしたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/64
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065・泉美之松
○泉政府委員 当初私どもが三十九年度の自然増収が、六千億ないし六千五百億程度ではなかろうかと言っておりましたときの計算の仕方は、最近の税収の実績に基づきまして、来年の経済成長率を見ました場合に、全体としてこれくらいになるであろう、税目別にこまかく積み上げた数字ではなかったわけでございます。それが、先ほど大臣からお話申し上げましたように、三十九年度の経済成長のベースがわれわれの考えておったよりも大きくなった。そのために来年の名目成長率は九・七%と落ちますけれども、それは先ほど平林委員にお答えいたしましたように、ベースを三十八年の実績ベースに置き直してみますと、いままで一二%と見ておったのが約九%の成長率になるわけであります。九・七%になることによって六千五百億から六千八百億程度に税収がふえてまいるという関係に相なったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/65
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066・武藤山治
○武藤委員 これは企画庁の所管になって大蔵大臣にはちょっと無理かもしれぬですが、名目九・七%という成長率が、はたして今日の経済動向から見て、あるいは鉱工業生産の指数から見て、妥当であるかどうかということにもかなりの議論があるわけですね。私は専門家ではありませんから、そういう積算の基礎をここで論議しようとは思わないのですが、経済成長率について、勧業銀行やあるいは富士銀行、三菱銀行、三和銀行、それぞれの機関が経済見通し全体についてやはり数字を出しております。そういう数字と比較すると九・七%という成長率というものはどうもあまりにも低いのですね。たとえば勧業銀行の場合には二一・五%、富士銀行の場合は一三・八%、三菱は二二・二%、それぞれみな一二%あるいは一四%という高い成長率を見ておるわけです。政府は九・七%と見ておるのですが、いま実際の三十八年度三・四半期の経済の動向から見て非常に拡大された、上昇された、だから税収もばっとふえてきたのだ、こういう説明を大臣はいたしましたが、三十九年度も九・七%という見通しよりは、他の銀行が見通しておるような成長性を持っておるのではないだろうか、私はそう思うのですが、そこらの点について大臣はどんなお考えを持っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/66
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067・田中角榮
○田中国務大臣 いままでの経済見通しを立てますときには、今年度の実績を基礎にいたしまして来年度かくなるであろう、こういう見通しを立てておるわけであります。ところがことしは御承知のとおりIMF八条国移行という重大な時期を控えておりますので、予算を編成する前提となるものとして、国際収支の長期安定、拡大、もう一つは輸出の振興、もう一つは物価の安定、こういう三つの問題を大きく政策的に取り上げて、これを前提として予算の編成方針をきめたわけであります。でありますから今年の成長率が高い、鉱工業生産が一四%にもなっておるものを九%に押えるということは確かに非常に無理であるという議論もありますけれども、この三つの前提条件を実現していくためには、どうしてもある政策努力が必要である、こういうことになりまして、相当な政策努力を加味いたしまして、年率にして経済成長率七%、それから名目成長率九・七%、物価は年度間を通じまして三%、対前年度比四・二%、輸出、輸入六十二億ドル、こういうふうな政策的な立場も加味しながら、また政策が浸透していくという考え方で、この数字をはじいておるのでありますから、こういうような政策をやるならばこういうふうにやり得る、またこうしなければ物価の安定はない、こういう非常に厳しい気持ちに立って算定をいたしておりますので、各銀行がやっておるような在来方式の経済見通しというふうなものとの食い違いがあることは、これはもうやむを得ないことだと思います。銀行はいま貸し出すわけでありますから、そう急に引き締められないという考えから見れば、まあ一二%をこすだろう、鉱工業生産を九%に押えるということになると、政府がいま言っておるとおり三十八年の実質成長率が八・一%でおさまればよいけれども、第三、第四・四半期の実績を見れば、九%をこすということになれば、鉱工業というものは横ばいで持っていかなければならぬという数字になりますので、これは無理だ、そういう意味で一二・三%に押えよう、こういう希望的観測を盛っておるのが、銀行がつくっているものでありますし、私たちは国民に対して三十九年度の財政を通じましてこうありたい、またこの目標実現に政府は努力いたします。こう言っておるのでありますから、一応の開きはあることは御承知のとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/67
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068・武藤山治
○武藤委員 大臣は、銀行は金を貸す立場だから、そう急に締められない、どんどん成長するという期待がこめられた数字だから、銀行の見通しが高いのじゃないかという邪推をしていますが、不幸にして、三十八年、七年の見通しを当初の数字で見ますと、政府の見通しよりも銀行の見通しのほうが実績に近いのです。ですから銀行の統計というものもかなり精密な調査の上に、いろいろなデータを集めて、単なる期待で、政府のように九・七%だ、いや少しいじろうなどと言って閣議でいじれるような数字でないような気がするのです。私はこういう金融機関の数字のほうが、より現実の経済動向というものを把握しておるのじゃないかと思います。しかしその議論はいずれとしても、九・七%と低く抑えておきながら、実際の税収というのは、一二%程度経済が成長するという腹の中では考えで、だからこのくらいの税収を見積もっても心配はないだろうということで、本年度の収入を計上しておると私は思うのです。そういう点を九・七%どんぴしゃりで計算をしたとするならば、昨年の暮れに六千五百億の一二%で出てくるということ自体が私は納得いかぬのですよ。やはり実際は九・七%と発表はしておるが、経済の動向はもっとずっと成長するのだという見通しを大蔵省では持っているのじゃないですか、税収の係としての主税局あたりでは。そこで私は予算編成においての収入の見通しというものが出たのじゃないかと考える。それとも各税目別に一つ一つ過去五年間なり三年間なりの実績を積み上げてみて、これだけの税収は確保されるのだという計算で、企画庁の経済見通しにはあまりこだわらずに実績を積み上げて積算をしたものなのか。主税局長それはどっちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/68
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069・泉美之松
○泉政府委員 私どもの税収入の見積もり方は、過去の実績をベースにいたしまして、それに経済企画庁のほうでつくられます経済見通しの数字を当てはめまして計算するわけでございます。お話しのように経済成長率は名目九・七%になっておりますが、たとえば御承知のように全体の税収が二兆九千億のうちで法人税収入が一兆百五十億ございまして、半分以上が法人税の収入に相なっておるわけでございます。御承知のように法人税の収入のベースとそれから経済見通しのベースとは、その間期間的に約半年の差があるわけでございす。法人税の収入からいたしますと、三十八年の下期と三十九年の上期の数字が基礎になるのでございまして、三十九年の下期の経済の数字は三十九年度の法人税収入にあまり響かないのでございます。そこで御承知のとおり現在の段階におきましては、三十八年の十月、十一月ごろの生産は対前年同期に比べまして一五%も伸びております。そういったことを基礎にいたしまして法人税収を見積もっておるのでございますから、経済企画庁の九・七%の数字を期間別に使っているのでございまして、これを無視して税収を計算しておるのではもちろんないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/69
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070・武藤山治
○武藤委員 ですから三十九年度の上期のほうは九・七%という成長率で押えて、半分は去年の下期の実績を基礎にして積算しておるわけでしょう。ですから九・七%というものはプールしたものにぶっかけて出した数字じゃないのですね、税収は。それはそうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/70
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071・泉美之松
○泉政府委員 お話しのとおり税収見積もりと経済見通しの数字との間には期間のずれがございますので、それを考慮した調整は行なっておりますが、しかしそれはあくまでも九・七%、来年度の年度間の平均の経済成長率が九・七%であるということを前提にした上での数字でございますので、これをベースにしてないというわけではないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/71
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072・武藤山治
○武藤委員 それじゃ主税局長にお尋ねします。たいへんこまかい質問に入って、大きな問題はあとでまた大臣にお尋ねしますが、各税の見積もり方法の資料によりまして源泉所得税の人員が四%前年よりふえる根拠を明らかにしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/72
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073・泉美之松
○泉政府委員 雇用の増加につきましては、企画庁の数字でも御承知のとおり三・八%の増加を見込んでおります。ただわれわれのほうはそれを四%し見ているのでそこに差があるじゃないかというお話かもしれませんが、この〇・二%の相違と申しますのは、企画岸の数字は日雇い労務者あるいは家事従業員も含んだ数字でございます。ところが税収の基礎になりますのは、そうした日雇い労務者あるいは家事従業員を含んでおらない数字でございますので、そこに若干の違いがあるわけでございますけれども、これは全体の雇用の増加が大体四%程度であるという過去の実績——過去の実績は実は三十八年度におきましては四%でなしに少し多いのでございますが、御承知のように、本年は高等学校の卒業生あるいは中学校の卒業生が減る関係に相なりますので、それで雇用の増加を前年実績より少し少な目に四%と見ておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/73
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074・武藤山治
○武藤委員 それを実数で明らかにしてもらいたいのですが、去年は四・五%の納税人員の増、本年は四%、過去の実績と比較して本年四%と出した理由はわかりますよ。その説明はよくわかるのですが、それを実数でどうしてそうなるかというあなたたちの判断を明らかにしてもらいたい。こういう根拠で四%に必ずなりそうなんだというそれを明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/74
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075・泉美之松
○泉政府委員 雇用の人員を申し上げますと、三十七年度におきましては二千百四十五万二千人でございまして、対前年伸び率は五・六%でございまして、三十八年の予算におきましては、人員を二千二百六十一万人、対前年の予算に比較いたしまして四・五%の増と見込んでおったのでございます。これに対しまして三十九年度におきましては、二千三百二十一万人、対前年伸び率四・〇%ということに見込んでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/75
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076・武藤山治
○武藤委員 それからその下の一人当たり給与額、前年は六%の増と見込んだのですが、本年は九・一%増と見たのはどういう積算の根拠ですか。この計算をひとつ明らかにしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/76
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077・泉美之松
○泉政府委員 賃金の数字につきましては、民間給与の賃金の伸び率と、公務員の給与の賃金の伸び率が違っておりますので、三十七年度の実績で申し上げますと、公務員の給与の伸び率は二・二%でございますが、民間のほうが少し伸び率が争うございますので、総合いたしますと一一・九%という実績に相なっておるわけでございます。それを三十八年度の予算の見込みにおきましては、公務員が七・二%、民間が五・六%、合わせまして六%という増加に見ておったわけでございますが、拝聞その他のあれによりまして、賃金の増加は予算で見ておりましたよりも相当大きくなりまして、公務員のほうではベース改定も加えまして一三・七%の伸び、それから民間のほうでは一一・六%の伸び、合わせまして一二・一%の伸びというふうに見込まれるのでございまして、これに基づきまして、先般第一次及び第二次補正の源泉の所得税の収入見積もりの改定を行なったわけでございます。三十九年はこれを受けまして、民間におきましては従来の三十七年が一二%、三十八年が二・六%といったような数字を基礎にいたしまして、まず多少賃金の増加が減るとしましても一〇%程度は見込めるのではないか。それから公務員につきましては、昨年十月の公務員のベース改定と定期昇給を見込みまして六・二%の上昇、合わせまして九・一%の上昇が見込めるのではないかというところから給与所得の計算をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/77
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078・武藤山治
○武藤委員 その場合、民間給与所得者の数と公務員の数との比率はどんなぐあいになっていますか。実数でもいいし、パーセントでもいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/78
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079・泉美之松
○泉政府委員 給与の人員で申し上げますと、これは納税者でなしに税制改正あるいは税制改正前においてすでに納税者でない者も含めまして、全部の給与所得者を含んで計算しておるわけでございますが、民間の給与所得者の総数が千九百十九万四下人、公務員、これは国家公務員及び地方公務員全部、それに国家機関の職員を含めまして四百一万六千人、合わせまして二千三百二十一万人を基礎にいたしまして、これから階級別表に基づきまして控除したものを計算いたしますと、そのうち納税者となる者は千六百八十一万一千人ということに計算いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/79
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080・武藤山治
○武藤委員 そうしますと、九・一%の伸びということを、全体をプールして計算した場合と、公務員のアップ率と民間のアップ率と、そういうものを個々に分解をして計算をしてみないと正確な収入捕捉というもの、見積もりというものはできないのじゃないですか。そういう点もやはり正確に分解して、公務員はこれだけ上がる、民間はこれだけ上がる、これだけ上がったから課税をされた場合にこれだけの税収が民間と公務員とでふえてくる、そういう積算はやはりやって、この計算を出しているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/80
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081・泉美之松
○泉政府委員 お話のように公務員の階級別表と、それから民間の階級別表とは違っております。そこでそれぞれ違った伸び率をかけまして、その出てきた階級別表を合わせましたところで、そこから基礎控除を幾らにすれば幾ら人員が減る、扶養控除を幾らにすればどれだけ人員が減るというような計算をいたしておるわけでございまして、階級別表を合わせるところまでは伸び薬の違った数字でやっているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/81
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082・武藤山治
○武藤委員 大蔵大臣にちょっとお尋ねしますが、政府は税収のほうで、民間で一〇%、公務員で六・二%、明年度水準が上がる。平均にしてそれだけの伸びがある。しかるに日経連あるいは資本家団体は、来年度、三十九年度は五%以上の賃上げは認めるな、とにかく五%で抑えろという強い要請をしておるわけですね。いまこの春を迎えて大いに賃上げをしなければ物価高に追いつけないといって、労働組合の諸君はこれらの経営者と交渉しようという気がまえでおる。政府の公式な租税収入の見積もりは、これだけの収入を見積もっておるのですが、五%で押えろというような経団連に対して、いや政府としてはこれくらいの伸びは日本経済を運営していく上に当然なんだ、見積りはこうなんだということで、一割程度の——最低でも平均して九・一%ですね。そういうようなことに対して、何か政府はもう少し積極的に、所得が上がるような暗示を経済団体などにもしてもいいのではなかろうかと思いますが、そこらのことについて、大臣はどう考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/82
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083・田中角榮
○田中国務大臣 これはもう労使は、御承知のとおり自主的にやるべきであって政府がいやしくも一方にくみするがごとき発言は慎むべきだと思います。これはもう全く税収見積もりの基礎的数字を申し上げたのでありまして、こういうことを政府が民間企業に申し出るというようなことはなすべきではないというふうに考えます。しかも固持に、今度の税収見積もりで使った数字は、経団連が言っておるような数字よりも高くこちらはとりましたけれども、しかし過去には私たちがとったものの倍以上も実質的に賃金の引き上げが行なわれたという例もあるのでありますから、こういうものに対しては、個々の企業が自主的な立場において労使円満に協議の上決定をせらるべき問題であって、政府が関与すべきではない、このように考えます。しかしあなたがいまこうして大蔵委員会で御発言をなさってわれわれが答えれば、こういうことはいろいろな人が知るであろうということはわかりますけれども、政府が春闘などの給与に関して何らかの発言をすることは遠慮すべきだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/83
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084・武藤山治
○武藤委員 次に、申告所得の中身でございますが、これは主税局長が答弁したほうが適切かと思いますが、常業は去年と同じ一一〇。農業は、昨年は一〇二・〇、本年は五・八%伸びるという見通しを立てたわけですが、これはどういう資料をもとに、どういう計算で五・八%農業が伸びるのか。営業のほうは全然伸びないというのはどういう根拠であるか。それを明らかにしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/84
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085・泉美之松
○泉政府委員 御承知のとおり、三十八年の麦は非常に不作でございました。そこで三十八年の課税実績見込みにおきましては、それによる減収が出ておるわけでございます。しかしおそらく三十九年度も引き続いてそういった麦の不作があることはなかろう、麦は大体平年作に戻るであろうというふうに計算いたしますと、農業の三十八年に対する伸び率は五・八%に相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/85
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086・武藤山治
○武藤委員 だから五・八%になったその積算の基礎を私は聞いておるのであります。ただ麦が不作であったから昨年は悪かった、それは五・八%伸びた理由にはならぬのですよ。五・八%という積算はどうして出てくるのか、その根拠をひとつ明らかにしてもらい発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/86
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087・泉美之松
○泉政府委員 農業所得者の所得の計算にあたりましては、米と米以外と分けて計算をいたしておるのでございますが、米は最近毎年豊作が続いておるような状況でございますので、三十九年におきましても大体三十八年と同程度、つまり一〇〇%として計算いたしました。それから米以外におきましては、先ほど申し上げましたように、麦が昨年は非常に減収でございましたか、今年はそれが平年作に戻るだろうというふうにして計算いたしますと、一四%の伸びになるわけでございます。それで、米のウエートが六一・五%でございまして、米以外のウエートが三八・五%になるわけでございます。そこでこれらを総合いたしますと、一〇五%の伸びになるわけでございます。その農業所得者には、農業所得以外に営業その他事業の従たる所得がございますので、その従たる所得の伸びを営業の場合の一〇%の伸び率で見ますと、主たる所得のウエートが九四・六であります。従たる所得のウエートが五・四%でございますので、そのウエートで見ますと、全部総合いたしますと一〇五・八%の伸びになるというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/87
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088・武藤山治
○武藤委員 農業の伸びが五・八%というのは、グリーン・レポートや何かを読んでみても、少々見積もりが納得いかぬのでありますが、しかし五・八%伸びるか伸びないかという議論をここでしても始まりませんから、農業問題についてちょっと角度を変えて、主税局長と国税庁の徴収という立場からの意見を聞きたいと思うのであります。
御承知のように、目的税であるガソリン税を今日徴収をしておる。ガソリン税は、道路を直すために高い税率で納税をしてもらう。ところが船舶や飛行機は道路を走らないから、ガソリン税が免税になっておる。農民の使う自動耕うん機、こういうもののガソリンはトラックやバスと同じだけのガソリン税を取られておる。これはどう考えても不合理だと私は思うのですよ。道路を使わない自動耕うん機は当然ガソリン税を免税すべきだ。そこで、農林大臣はこの前私の質問に答えて、その分だけ別な角度で農業構造改善事業なり、あるいは生活改善事業費の中にそういうものを見返りとして農林予算をふやすからひとつ了解してほしいという答弁をしておる。前の水田大蔵大臣は、これはなかなかいい着想だから十分検討してみたいと答えた。それぞれそういう答えはあっても、このガソリン税というものを根本から免税にするという措置を政府はとろうとしない。これはやはり私は不公平だと思います。道路目的税なのでございますから、ひとつ農業用のガソリン、これは一切免税にすべきだと思うのです。それを所得税の計算の中で一年間使用した自動耕うん機のガソリン税分だけでも控除するというような検討なり、考慮をしたということはありますか。主税局と国税庁のほうはそういうことをやるのはなかなか技術上できないんだ、徴税事務上できないという障害があるのかどうかは国税庁のほうに伺いたい。主税局のほうはそういう検討をしたかどうかを聞かしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/88
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089・泉美之松
○泉政府委員 揮発油税の増徴をはかりますときには、常に農業用の耕うん機に対する揮発油の免税をすることができないかどうかということが問題になるわけでございまして、これは昭和三十六年の増徴のときにもはっきり申し上げておりますように、航空機用の揮発油はオクタン価が非常に高うございますので、一般の揮発油と明らかに違っておるのでございます。そこで免税する。しかもまた航空機会社というのはごくわずかでございますので、免税をする手続が比較的とりやすいのでございまして、そこで免税をいたしておるのでございますが、農業用の耕うん機に使う揮発油となりますと、自動車用の揮発油と同じ品質のものでございまして、そこで免税を行なおうといたしますれば、これを正確にやろうとするためには間税職員を非常にたくさん増加しなければ技術的にできないという難点がございます。そこで、従来から農業のそういった耕うん機用の揮発油と、それから農家の子弟がモーター・バイクに乗るというような場合となかなか免税を一かりに免税を行なった場合、その免税された揮発油がどちらに使われたかということまではっきりいたさないわけでございます。そういう点からいたしまして、徴税技術上免税することは困難であるということからいたしまして、しかしそういう揮発油の増税が行なわれることによって農家の負担が増すということは農家に対して気の毒でありますので、農道の改善であるとか、あるいは農業構造改善という面におきまして予算を増加いたしまして、それによってがまんをしていただくということで、今日まいっておるのでございまして、三十九年度の予算におきましても、農道の補助のために相当多額の金を計上いたしておるというようなわけでございます。農業関係の予算を増額するということでやっておるのでございます。それから、お話のように、農業所得の計算の際に、それでは農耕のために使った揮発油、これはもちろん農業所得の計算の上におきまして経費として落ちるわけでございます。したがって、それをさらに経費で落とした上で控除するという必要はないものと考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/89
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090・武藤山治
○武藤委員 その農民の場合は、耕うん機に使うか、あるいはバイクに使うか、なかなか見分けがつかぬ。だから横流しをするかもしれぬし、耕うん機以外に使うかもしれぬ。農民を疑えばそういうことは幾らでも考えられると思います。しかしながら戦時中農家に対する油を免税にしたことがあります。これは全部地方事務所を通じて県が市町村にチケットを渡して、大体一年間で何町歩田を耕すにはどのくらいのガソリンが耕うん機に要るかということは計算はできないことはない。したがってこれは、技術的にできないと断定するのはおかしいと思う。やろうと思えばできますよ。徴税技術上こんなことができないということはないと思います。やろうとする気がないからできないと簡単に片づけているのであって、戦時中のようなチケット制にすれば簡単にできるではありませんか。できませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/90
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091・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 ただいま主税局長からお答え申し上げたところで大体尽きておると思いますが、特定の用途に使用した場合に免税するということになりますと、その用途に使われたかどうかということの確認を必要といたします。したがって税率が高ければ高いほど、そのものについて横流しをする危険性というものは高くなるわけでございまして、そのものがはたして農耕用に使われたかどうかということの確認、また農家の中でも農耕用と非農耕用との区別、そういうものの確認は、これは理論的に絶対できないということではございませんけれども、それを厳密にやろうとすればするほど、それに要する監視関係の職員を相当増員を必要といたします。したがって行政効果という面から見れば、やはりそういう特定用途の免税の道を開くことによって、相当ばく大な経費を必要といたしますので、でき得ればそういう面は実施面といたしましてもできるだけ御遠慮をいたしたい、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/91
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092・武藤山治
○武藤委員 主税局長、飛行機はオクタン価の高い油だからという理由で、さらに件数が少ないから、飛行機会社は少ないから……。船の場合はどうなんですか、同じガソリン税をそっくり徴収しているわけですが、船はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/92
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093・泉美之松
○泉政府委員 船舶の場合は、たしか外航船舶と漁船につきましては軽油引取税の免税の措置をとっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/93
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094・武藤山治
○武藤委員 なぜですか、その理由を明らかにしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/94
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095・泉美之松
○泉政府委員 これにつきましては、外航船舶はすでに登録されておりますし、その他漁船につきましては、それぞれ漁港の港籍地がございますので、それらを基礎にしてできるということでやっておるわけでございます。農家の場合には、お話のように技術士やろうと思いますればやれないというわけではもちろんないわけでございますが、そういたしますには先ほど国税庁長官から申しましたように、横流しの防止、的確に免税が行なわれたかどうかということを確認するために間税職員を多数増加しなければ、実際問題としてやれないという点がございますので、それらの点を考えますと、行政効果から見て、それほど税務職員を増加してそういうことをするのが妥当であるかどうかということは問題でございますので、農業用の場合に原動機等に使う揮発油につきましては免税措置をとることが困難であるというふうになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/95
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096・武藤山治
○武藤委員 租税は公平でなければならぬ。道路目的税であるガソリン税を自動耕うん機からとるということは、理論的にはこれはまことに不公平です。船はとらないでしょう。自動耕うん機は県道や国道を走って金もうけをする機械ではないのですよ。牛や馬のかわりにたんぼに飛び込んで耕す機械ではありませんか。それから税金をとるという、トラックやバスと同じだけの税金をとるということはどう考えても私は不合理だと思うので、これはやはりやめるべきだと思う。それが徴税吏員をたくさんつくらなければできないというのは、農民を疑い過ぎるからでありますよ。自動耕うん機は全部鑑札が必要なんですよ。運転手は全部免許証が必要なんです。だからどこの村のだれが免許証を持っているかということは役場でもすぐわかるのです。したがって、そこのうちが何反歩耕作しているかはその町の農業委員会ですぐわかります。一年間に何町歩たんぼを耕すのには幾らのガソリンが要るかはすぐ計算が出るのです。その証明書を持っていけばチケットを税務署でくれて、そのチケットをガソリンスタンドへ持っていけばチケットと引きかえに無税のガソリンが得られる。だからそんなに徴税吏員をふやさなくてもできるはずです。やろうとする前向きの姿勢がないから吏員をふやさなけれぱならぬ。百姓は文句を言わないから、弱い者にしわ寄せがいく。不公平が押しつけられる。こういう政治ではありませんか。私はこういう姿勢はやはりもっと真剣に取り組んで改むべきだと思う。大蔵大臣の所見はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/96
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097・田中角榮
○田中国務大臣 この問題については予算折衝の過程において、大蔵大臣と農林大臣との間で十分検討いたしました。いたしましたけれども、究極の結論としましてはこれを免税にするというようなことはしない、こういうことになったわけであります。これはどういうことかといいますと、いま主税当局や徴税当局からいろいろな御答弁がありましたが、税務署というのはそう農村の各村に一つずつあるのじゃなくて、なかなか遠いところにあるのです。これを村から一人ずつ行ったらなかなかうるさいことでありますから、やはり農業政策ということから考えますと、こういうこまかいことに配慮をする、きめのこまかい政策もさることながら、やはり農山漁村の課税限度というものを上げるというようなもっと抜本的な方向にいくべきである。同時に農山漁村の保護政策や振興政策がありますので、予算の面からも農家が前向きでもっていろいろな構造改善事業等に取り組む場合の無利子の制度を設けましたり、低利、長期というようなものにも格段の配意をすべきである、こういう考え方にその結論がついたわけであります。これは確かにきめのこまかい面からいいますと、農民が横流しをするともし仮定したところで大したことはないじゃないか、そんなものは絶対量からいって知れたものであるし、また農協等でもって一括購入もできるのだからやったほうがいい、もしこれをやらなければ、別に農林省に減税分に該当する基金を設けてやれ、こういう話もあったのですが、その程度の基金を設けることよりも、もっと農林政策には革命的というより革新的な施策をやろう、こういっているのですから、もっと大所高所から考えて農林漁業に対してはもっと前進的なものを将来とも考えていこう、こういうことで、実際徴税技術の問題もありますし、実施面からいうとなかなかむずかしい問題がございますので、そういう面に対して合意に達したわけでありまして、いまこの税をまけるぐらいなもの以上に、農林政策に対してはひとつ大いに前向きで対処してまいりたい、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/97
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098・武藤山治
○武藤委員 支出のほうと取るほうとは次元が違うのです。それを混同してはいかぬ。だから私は先ほど二つの意味を提案しておったわけです。一つはガソリン税を免税にして農民に使わせる方法はないかということと、もう一つは自動耕うん機を持っておる農民に対する所得税の中で、ある程度持たない人とは違った意味の減税を考える方法はないか。自動耕うん機を持った場合にはこういう特別な損金算入制度というものをひとつつくってやろう、そしてガソリン税を取られる不公平さというものをそちらでカバーしていこう、それも一つの私の提案として質問の中に加味して先ほど来述べているわけです。主税局長や国税庁はそれすらもやろうとした場合には事務的にむずかしくてできないかどうか、これはどうですか。もしそれをやるという場合には、事務上できぬのですかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/98
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099・泉美之松
○泉政府委員 先ほど申し上げたのでございますが、農家が自動耕うん機を使って農耕をいたしております場合におきましては、当然農業所得の計算におきましてそれが経費となって落ちるわけでございます。したがって、その経費となって落ちる額以上に何らか特別の控除を設けるということは必要がないのではないかということでございます。ただお話のように、農業所得の課税にあたりましては標準率でやっておる場合が多うございますので、具体的にそれでは耕うん機を使っておる場合と使ってない場合とでどれだけ経費に差が出てくるかということになりますと、デリケートな問題があろうかと思いますが、たてまえはそういった自動耕うん機を使っておる場合はそれに要した揮発油の額というものは経費として引くということになっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/99
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100・武藤山治
○武藤委員 そんなことはあたりまえです。生産するために必要な資材や消耗品、それが経費になることはあたりまえな話ではありませんか。ぼくが言っておるのは、ガソリン税という目的税を道路を走らない機械から取るということは不公平だ。船や飛行機から取らないと同じように自動耕うん機からも取るべきでないという議論です。特別にもっと損金算入を、さらに経費以外にガソリン税を取られるという立場の農民に考慮する必要があるのではないかということなんです。主税局長、意味はわかりますか。そういう点を今後も十分検討すべきだ、こういう提案に対してあなたの見解を尋ねておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/100
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101・田中角榮
○田中国務大臣 この問題は先ほど申し上げましたように農林大臣と非常にこまかく検討したのです。したのですが、一般の中小企業のように税の問題に対してこまかくやってやるということを言っても、なかなか農民はそういうことは困る、また徴税当局でもっていろいろなことをしてやるにしてもなかなかむずかしい。ですから、問題の解決をするのには二つ三つやり方はある。そういうこまかいものをやるよりも、農山漁村というものに対して、農業生産者というものの税の算定のしかたを保護産業的な立場から見て、将来もっと大幅な農業経営者の所得税の控除の限度を別にきめられないかという問題が一つありますし、もう一つは金融とか一般歳出の面からやろうという問題もあるということで、この問題はいまあなたが言われたとおり——しかしいろいろなことを言っても、どうも道路の特定財源になっておるガソリン税の中に入るということはおかしいというようないろいろな問題がありまして、耕うん機を使う人が困っておる、農道に対しまして補助の道を開こう、こういうことをきめたわけであります。でありますから、議論としてはあなたがいま主税当局に聞かれるような議論がありますけれども、与党の内部でも、また各大臣の間でもそういう問題を検討した結果、農道に対する補助を開くというようなことで、帳面の上や議論の上では非常に筋が通っておっても事実上の問題からいうとなかなかむずかしい、こういうことよりも実質効果のある道を開こうということに結論がいったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/101
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102・武藤山治
○武藤委員 私が言っておるのは、所得税の中で標準率をつくるときに十分そういう点を参酌しなければいかぬという意見を述べておるのですが、大臣は別な角度で、全体の公平化という形でなくて、農業政策全体としてそれをとらえようとしておるところに私の聞こうとしておる意図とまるきり並行線でありますから、この点は別な機会に譲ることにいたします。
次に、歳入全体の問題に関係するわけでありますが、専売益金が三十九年度は減収になるという歳入予算でございますけれども、どういうわけで専売収入が減るのでしょうか。大蔵大臣、ひとつお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/102
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103・田中角榮
○田中国務大臣 最終的に電気ガス税の減収補てんのために専売納付金で入ってくべきものを地方に移譲したということによって減るわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/103
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104・武藤山治
○武藤委員 従来の決算額をずっと見てみますと、予算額と決算額の違いというものがかなり出ておると思うのですが、そういう点からいって本年の専売益金の計上というものは従来の決算額から見ていった場合には少々少ないのじゃないだろうか。というのはこの前専売公社総裁は、昭和四十二年までの五カ年計画を一応公社内部で立てて、売り上げがずっと伸びていくということをここで答弁をしておるわけであります。そういうような専売公社の計画から見た場合に、本年の専売益金の見積もりというものは少々少ないんじゃないだろうか、その点いかがですか。決算と比較してひとつ御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/104
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105・田中角榮
○田中国務大臣 専売の問題に対しましては常に問題がありますけれども、御承知の葉たばこの収納価格や小売り手数料等が引き上げられておるにもかかわらず、その後長いこと小売り価格は据え渇きになっておるわけであります。またたばこの販売に対して過当とも言われるような販売政策をとってはならない、財政専売であるというたてまえから、私が就任しましてからあまりはでな広告宣伝等やるべきではないということを言っておりますので、例年のような大きな増収を見込めない、頭打ちになりつつあるという事実は御承知のはずであります。特に肺ガン問題等も起きましたし、そういう意味から考えても、専売納付金が過去の例のようにふえるというような状況にないということだけは申し上げられるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/105
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106・武藤山治
○武藤委員 肺ガンの関係では、専売公社では全然その売れ行きは減らぬとここで答えておるのですよ。ほとんど影響がない。しかもこれを決定したのは去年のうちで、肺ガン論争が起こる前に専売納付金の予算を計上したのです。大臣、だめだ、そんな行き当たりばったりなその場都合の答弁は通りませんよ。去年つくった原案ですからね。肺ガン論争はことしの一月になってからです。どうですか大臣、そうじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/106
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107・田中角榮
○田中国務大臣 肺ガンということは、それは私がいまの時点でつけ加えてお話を申し上げ、例年のように相当見込めない一つの要因となったということを申し上げたわけでありまして、実際問題といたしまして、専売納付金かこれ以上ふえていくというような実際の見通しには現在ないようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/107
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108・武藤山治
○武藤委員 それから一応所得税の質問に関連しながら、収入の問題に一通り目を通したいと思って質問をしておるわけですが、官業益金及び官業収入の中で——それよりも政府資産整理収入のほうが大臣にはおわかりになっていると思いますから…。今度国有財産法の改正を国会に提案をする。その提案に関連をして、国有財灘の処分というものがふえるのか、あるいは売却や貸し付けはそのままの状態が続くのか、本年の国有財産売払収入あるいは有償管理換収入、こういうようなものか特に国有財産法の改正によってふえるという方向に進むのかどうか。それからもう一つ、その説明書きの中に、三十九年度において処分を予定される財産等勘案して積算をした、こう説明をされておるわけでありますが、国有財産収入はどんな基礎で計算をしたか、ひとつお知らせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/108
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109・田中角榮
○田中国務大臣 こまかい説明は政府委員から答弁いたしますが、政府資産の整理収入はそんなにふえないという見通しであります。これは国有財産法の改正によりまして、合理的に売り払いをやるのじゃないかというような考え方も一部にありますけれども、私たちがこまかくしさいに検討いたしますときに、今度の国有財産法の改正がその払い下げに重点を置くためにやるのではなく、国有財灘の合理的な使用、管理ということを目途にしてやっておるわけであります。でありますから、これから都市内における児童公園とかまた風致地区とか、自動車のターミナルの場所とか公共建物の用地とか、合同庁舎の用地とか、それから国設宿舎の用地とか、こういう問題に対して、十分広範な立場から考えながら、売るものは売って、雑収入として入れ、そしてこれをまた歳出としてやるために、国会の建物の例を見るように、何年も何年も年度区分で分割して仕事をやるというようなことを排して、もっと国有財産の効率的、合理的な運用を考えようと思って、国有財産法の改正を企図いたしておるのでありますから、政府資産の売却収益が非常に大きくふえていくというような方向にならないということは御承知いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/109
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110・山中貞則
○山中委員長 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/110
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111・山中貞則
○山中委員長 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/111
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112・武藤山治
○武藤委員 大蔵大臣に非常に常識的な判断でお尋ねしたいのですが、今回の税制改正で一つの例を取り上げて考えた場合に、かりに一年間に賞与を四カ月分もらうとして、一万一千円月給のある独身者に税金がかかるようになる。そうするといまの生活状態から見て、大臣、一万一千円の月給で洋服を買って、靴を買って、三食御飯を食べて、一体感じとしてずいぶん税金が高いもんだ、こんなわずかな収入でも税金を取られるのか、こういう感じを持ちますか、いや、月給一万一千円取れば税金納めるのは当然だとお考えになりますか。その辺の大庭の感じはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/112
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113・田中角榮
○田中国務大臣 現行法ではやむを得ざる現象だと思いますけれども、一万円までは税金がかからないということでありますが、一万一千円程度のものに税金がかからないような日本をつくっていかなければならぬ、こういうようにほんとうにしみじみと感じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/113
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114・武藤山治
○武藤委員 一万一千円から税金がかかるのじゃしみじみと感ぜざるを得ないですね。大里やわれわれの生活でちょっと考えてごらんなさい。一万一千円で独身者がいままでの詰めえりの金ボタンからせびろに着かえて靴をはいてどこかにつとめることを考えてください。一体どんな生活状態かを想像しただけでも、私はまことに気の毒に感ずるのです。これでも課税最低限度は日本の実力からしたら当然なんだ。この間総理大臣は、本年の減税は最もいい減税だ、最もいいという語意を強めて本会議で答弁しておるのですが、私は一万一千円や一万二千円の諸君に税金をかけるということはまことに残酷だと思うのです。私もかつて戦前税務署につとめておったことがあるのです。実は税金をとりに歩いたのですが、つとめ人で国税を取られた人なんてないですよ。当時税金を取りに行っても、所得税を納めなければならぬというのは一つの村で五軒か六軒です。それがいま一万一千ちょっぴりもらうと税金を取られるというのはまさに苛斂誅求ですね。低所得者に対する税金は重いですね。感じとして大蔵大臣も先ほど肯定なさいましたが、なるほど課税最低限度は日本の場合は低過ぎるが、それを精一ぱい減税したのだ、あれもやりたい、これもやりたい、一ぱい支出の需要があるからやむを得ず減税できなかったと先ほど大臣は平林さんに答弁しておったのですが、私はそれが問題でなくて、問題はバランスだと思うのです。ほかの政策減税とのバランスにおいて、今日の所得税の減税というものはまことに納得のいかぬ減税だ。国際競争力を強化するためだ、やれ日本の経済の体質を強化するためだという美名のもとに、所得税のほうを削ってまで政策減税を拡大するという、このものの考え方、この減税の姿勢に問題があると私は思う。そこで、こういうような低所得者に対する課税というものは、完全に解消するという決意で——独身者でも一万六、七千円では、生活するのにいまやっていけませんよ。特に東京へでも就職して下宿するなんといったら、とてもやっていけない生活状態なんです。そういうような人にまで税金がかかるということは過酷ですから、あなたもしみじみ感ずるところがあるというのですから、今度はひとつ政策減税ばかりに重点を置かずに、所得税を根本的に——ドイツは独身者は課税最低限が二十五万四千円です。日本と比較した場合に問題にならぬですよ。幾ら物価の高いドイツといったって、二十五万四千円と日本のそれでは私はとても問題にならぬと思う。一挙に二万円にしろとは申しませんが、この次は独身者——常識的に考えても、なるほどこれじゃかわいそうだなという答弁をしなくても済むような所得税の大減税を私は強く要求いたしますが、大臣の所見にいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/114
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115・田中角榮
○田中国務大臣 今度の税法改正で、十七万八千百五十三円、約一万三千円くらいまでは免税になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/115
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116・武藤山治
○武藤委員 賞与四カ月分を入れた月給取りですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/116
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117・田中角榮
○田中国務大臣 賞与も含めまして十七万八千円、こういうことでございます。しかし国務大臣でありますので、そう主税局のような答弁ばかりできるわけではございませんので、あなたがいま申されておるような方向に進むべく努力をいたしておるわけでございます。しかし何ぶんにも、国土狭隘の中で一億になんなんとする民族がうごめいておるのでありますから、そういう現実をやはり考えられて——十八年前にはやはり敗戦という現実があったのだ、その無一文の中からここまでお互いの努力によって築き上げてきたのでありまして、やはり十年間、毎年々々精一ぱいの努力を続けてまいりまして、もう一万円まで減税という声を聞いたときには、お互いにほっとして、日本もここまで来たかという感じがするのもまた事実であります。でありますから、われわれの世代に努力することによって、次代の国民の時代には、やはり先進国のどこにも負けないような税の体系になっていきたいという考え方は、皆さんと同じ気持ちを持っているわけであります。私、この間同じような問題を議論をしましたときに、最後まで黙っておった人がありましたが、その人が最後に発言をされて、こういうことを言いました。私の立場も少し理解をされたのだと思いますが、まあ親のすねをかじって、学校を出て、一万二、三千円もらって、一番初め税金を幾らかでも納めることによって、私も一人前の国民になったのだなという自覚を与えることにもなる——これはおほめなのか、現在の政府の減税政策に対する批判なのかは別にいたしまして、やはりそういう議論もありますけれども、できるだけお互いが努力しながら、日本の産業基盤をよくしながら、長期的に安定をし、しかも課税最低限がだんだん上がっていくという方向でいくべきだと思います。
また今度政府が出しておりますこの減税方針に対して、企業減税が優先しているという前提に立っての御質問でありますが、バランスを十分とりながら、その重要度も十分しんしゃくしながらきめたものでありますので、来年度、再来年度、またこれから何年か毎年々々減税に努力いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/117
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118・武藤山治
○武藤委員 この政策減税あるいは企業減税とバランスを考えながらやったと申しますが、本年度の減税は、所得税と政策減税はやや同額ですよ。だから、三十九年度はどうかといえば、所得税七百三十七億、それに対して租税特別措置と両方入れたら、これはやはりやや同じような数字になってしまう。いかにも政策減税に力を入れ過ぎています。私はその減税の姿勢が問題だというのです。こういうような姿勢でやったのでは、いつになったって課税最低限がほんとうに生計費に食い込まぬような思い切った減税はできないです。だから減税の姿勢を変えなければいかぬですよ。
そこで、その問題については、また議論がありますから、来週にでも質問を続けたいと思いますが、もう一つ主税局長にお尋ねしておきたいのは、生計費の計算の基礎、主食四十八円八十六銭、副食百一円十八銭、これは税調の資料ですが、これの内容は、一体どういうものが主食——米を幾らに計算して、一日何合食べて、あるいは副食はどういうものを計算してという資料が全部そこにありますか。これは国民衛生研究所ですか、そこの資料、つまりそういう献立のできるだけ詳しい内容、それを資料として要求いたします。(春日委員「おかずの名前まできちっと出せ」と呼ぶ)いまおかずまで書いたものという民社党の要求もありますから、それも加えて資料を要求しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/118
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119・山中貞則
○山中委員長 委員長において、すみやかに資料を提出させるようにとりはからいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/119
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120・平林剛
○平林委員 関連して。ついでに私のほうからも資料の要求をしておきたいと思います。なるべく早く整えてもらいたいと思います。
一つは、国民所得と教育費、社会保険費、公共事業費の増加一覧表昭和三十年以降三十九年まで、第二の資料は、所得税ですが、課税人口とその分布状況の割合、区分として年所得三十万以下、三十万から五十万、五十万から百万、百万から二百万、二百万から五百万、五百万をこえる、こういう区分にして、その比率、それから税額とその比率もおのおのの区分に従って昭和三十五年以降のものをそろえてもらいたい。第三は国民所得の増加と国税の各税収入の増加との比較、昭和三十一年から昭和三十五年の五カ年間の平均増加率と、これに対比して昭和三十六年から三十九年まで四年間の平均、第四が各年度の国税の自然増収に対する税制改正による限度額の割合、初年度ベースでけっこうですから、そろえていただきたい。第五がマーケットバスケットによる食糧費を基準にして算定した生計費と課税最低限との比較、これをいま大蔵大臣が答弁しておりましたが、さっきあげた数字は、税制調査会で整えたものでございます。ですから、ほんとうは政府案で提案したものは、給与所得控除を抜かしているわけですから、それはさっき大蔵大臣が説明した数字よりも違ってくるはずだと思う。この点を、違っていなければけっこうですが、それだけひとつ出してもらいたい。そしてこれにくっつけて、昭和二十五年以降の課税最低限の推移を、第六として、そのほか税制調査会に提出してある資料があれば、その資料をまとめて提出をして、われわれの参考に供してもらいたい、これを要求をしておきますから、委員長においてよろしくお取り計らいを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/120
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121・山中貞則
○山中委員長 それは必要な資料のようですから、取り計らいますが、しかし税制調査会が毎年出した資料は毎年当委員会に配付してありますので、あなたが御必要と思われるものは、要求の形ではなしに、大蔵省に残っております各年度の税制調査会の提出資料を自分で入手されるようにしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/121
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122・平林剛
○平林委員 私がいま申し上げた第六のものを除いては、昨日ときょう私が展開した議論というものを各委員にも頭に入れてもらいたい、それからまた今後の議論をする場合の参考として必要なものですから、各委員に配付してもらいたいと思います。第六の資料につきましては、私は積極的に政府が委員会に対して配付することを希望しておきます。そうしてわれわれの審議の参考にしてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/122
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123・山中貞則
○山中委員長 いや、私の言っているのは、委員会に毎年その年の分を出しているのです。あなたはずっと昔のものをあらためて全部にまた出せということですから、それはあなた個人に委員として大蔵省からお渡しするように……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/123
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124・平林剛
○平林委員 そうじゃないです。ことしだけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/124
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125・泉美之松
○泉政府委員 御要求の資料はさっそく調整して提出申し上げますが、税制調査会にお配りいたしました資料は差し上げておると存じますが、「昭和三十九年度税制改正に関する臨時答申及びその審議の内容と経過の説明」という厚い冊子ができ上がっておりますが、全部その中に入れてあるのでございまして、これをごらんいただきますれば、そういった点はおわかりになると思いますが、なお御要求の資料はこのほかにないものもございますので、それは取りそろえて提出いたします。
なお午前中の御質疑の際、昭和三十年度をベースにいたしまして、三十一年から三十五年度までの勤労所得の伸びと給与所得税の伸びとが、給与所得税の伸びのほうが大きいではないかというお話がございましたが、調べてみますと、分配国民所得の年伸び率の平均は三十六年度をべースといたしまして一二・二%、それからそのうちの勤労所得の伸び率は年率にいたしまして一二・八%という伸び率になっておるのでございますが、給与所得税の伸び率は、年率にいたしまして四・一%でございます。平林委員のおっしゃいました二四・二%という数字は、もし税制改正を行なわなかったとしたならば、これだけの年平均率で伸びたであろうという数字でございまして、実際は税制改正を行なっておりますから、年平均伸び率は四・一%でございます。勤労所得の伸び率の年平均率二一・八%に比べますと、税のほうの伸び率は少ないわけでございます。その点を申し上げておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/125
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126・平林剛
○平林委員 議論してもしようがないが、いまの主税局長の話、あなたも少し見間違えているんじゃないですか。国民所得は昭和三十一年から三十五年の五カ年平均で一一・六%の伸びに対して、勤労所得の伸びは一二・八、それは確かにそのとおりですが、源泉所得税だけを比較してみますと二四・二%になっているということなんですよ。そこをよくごらんになっていただきたいと思うのです。
それから第六の資料のほうは、私は今度もらった新しい税制調査会の報告書は入手しておりますからそれは要りませんが、ここに掲げられておる資料というのは、税制調査会が答申をするに必要な資料に限られているわけですから、そのほかにも参考になるものがあったら積極的に提出してもらいたい、こういうことなんです。おわかりですね、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/126
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127・山中貞則
○山中委員長 そのように計らいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/127
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128・泉美之松
○泉政府委員 平林委員がおっしゃっておられる数字は、三十六年の暮れに税制調査会が答申いたしましたときの資料に出ている数字だと思うのでございますが、それは明らかに税制改正をもし行なわなかったとしたならば、これだけ源泉所得税では伸びたであろうという数字でございまして、これは間違いございません。したがって税制改正を行ないました結果、年平均の給与所得の税の伸び率は四・一%ということになるわけでございます。
それから武藤委員の先ほどの資料の点でございますが、ちょっと申し上げておきますと、私どものほうで国民栄養研究所にお願いいたしまして、成年男子が二千五百カロリーをとる場合の春夏秋冬のそれぞれの季節ごとの栄養価値等を考慮した献立をつくっていただいておるのでございまして、それを出したいと思いますので御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/128
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129・武藤山治
○武藤委員 たいへん時間が経過してまいりましたので、最後に一つ聞いておきたいのでありますが、寄付金控除の、今度引き上げが行なわれる改正案が出ておるわけですが、この番付金控除の引き上げによって減収は何ぼくらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/129
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130・泉美之松
○泉政府委員 寄付金控除の引き上げによりまして、これは平年度、初年度同じになるわけでございますが、二億円の減収を見込んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/130
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131・武藤山治
○武藤委員 特定寄付金の種類別の金額、教育とか科学技術とか種類別がありますね。それと金額、それから全国で、これに該当する寄付金の総額というものは、控除になった金額じゃなくて、寄付金の全体額、私立学校や何かに審付されたという、損金に算入されない寄付金を含めて一年間にどのくらいあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/131
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132・泉美之松
○泉政府委員 私どものほうの資料からいたしますと、損金に算入される寄付金のほうの数字はあるのでございますけれども、損金に算入されない寄付金のほうの数字はちょっとわかりかねるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/132
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133・武藤山治
○武藤委員 では損金に入れられる寄付金の額はどのくらいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/133
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134・泉美之松
○泉政府委員 ただいま手元にそのこまかい数字の資料を持っておりませんので、後刻お知らせ申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/134
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135・武藤山治
○武藤委員 所得税法第十五条の六という条文はなかなかやっかいで、ちょっとわからないのでありますが、すぐ起算のできる、かりに百万円ならば幾らまで、三百万円なら幾らまで、そういう計算をざっとしてみて、私はこれでは人つくり政策を主張する池田総理大臣のもとにおける学校関係に力を入れるという観点から見ると、いささか不満足のような気がするのです。特に私立学校の経営者は、私学に対する寄付金というものは全額寄付者の所得から損金算入として落とせるようにしてほしい、こういう要求が非常に強いわけです。特にアメリカのように私立学校の多いところでは、私学に対する番付金というものは非常に膨大である。しかも人つくりをする私学の予算というものが、どうしてもそういう寄付金でまかなう以外に方法がない。それが税金の対象になるためになかなか金が出せない。どうしてもこれは学校法人の規定が適用される法人の場合には、ひとつ全額損金算入を認むべきだ、こういう強い要望があるし、私ども私学振興協会の中に入っておる議員も党派を超越して、再三大蔵大臣にもお願いをしておるし、政府にもぜひそういう態度に切りかえてほしいという要求をしておるのでありますが、全体の寄付金額もわからぬ、あるいはどの程度今日寄付金があったかわからぬという状態では、あまり寄付金について関心を持っていないようでありますから、こまかい点を聞いても無理だと思いますが、私学に対する寄付金というものを全面損金算入、こういう方針について、どういう見解を持っておられますか。ひとつ大臣の所見を承っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/135
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136・田中角榮
○田中国務大臣 本件に対しては、予算委員会でも御質問がございましたが、私学の重要性というものを私も非常に認識をいたしておりますし、できるだけ私学振興に資するような各種施策を行なっておることも御承知のとおりであります。この税法上による損金非課税措置の問題につきましては、長いこと陳情、請願等もありますし、また識者の間においても、このような意見の存在することも承知をいたしております。ことしは数々の特定寄付の問題に対しては、一〇%を二〇%に上げる、二〇%を三〇%に上げるというような措置をとっておりまして、予算委員会においては財政上の問題が一つありますし、もう一つは税理論からいう均衡の問題もありますので、税制調査会の答申を待って、こういうことを御答弁申し上げておるわけであります。しかし、全廃しなければならない、なぜ全廃するのかというと、ちょっと問題があるようであります。これはもう国会においては議論が尽きている問題であって、私の発言が何か間違った発言のようなことを言われた方もありますけれども、これは御承知のことだろうと思いますので、あえて申し上げなくてもいいと思いますが、いろいろな問題もありますので、諸般の情勢を勘案しながら、現行法のもとで妥当性あり、もちろん違法性はないというような最大の方向にだんだん進みつつあるという事実をひとつ御了解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/136
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137・武藤山治
○武藤委員 主税局長、ちょっとお教えを願いたいのですが、いま百万円の総合所得があったとしますね。幾らまでは非課税になりますか、寄付した場合。その金額はどのくらいになりますか。何か表がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/137
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138・泉美之松
○泉政府委員 お話の寄付金控除、個人の場合におきましては、税額控除方式をとっておるわけでございます。法人の場合におきましては、その寄付金を損金に算入しておりますことは御承知のとおりでございますが、そこで個人の場合にも税額控除方式でなしに所得控除方式をとったらどうかという御意見と承るのでございます。諸外国の制度を調べてみますと、税額控除方式をとっている国と、所得控除方式をとっている国とがございまして、概して申し上げますと、所得控除方式をとっている国のほうが比較的多いようでございます。この点につきましては、税制調査会におきましても、その検討をいろいろいたしたのでございます。ただ累進税率をとっておりまする制度のもとにおきましては、所得控除方式にいたしますと、いかにも所得の高い人が非常に寄付金控除による恩典を受ける。したがって、かりに上積み税率が六五%というようなところで寄付金をいたしましたとすれば、寄付金をした、それを所得控除いたしますと、国のほうで六五%を出し、個人のほうが三五%で出したと同じ結果になる。そこまで優遇するのがはたして適当であろうかどうかというようなことを検討いたしました結果、寄付金控除を三十七年から設けたわけでございますが、その際に税額控除方式のほうが適当であろうということで今日に至っておるわけでございます。ただ税額控除方式をとるにいたしましても、現在の上積み税率の想定二〇%というのは、いかにも低過ぎるからというので、今回三〇%に引き上げることにしたわけでございます。それでお話の総所得が百万円の場合の計算でございますが、これは寄付金が百万円の三%をこえるものがなくてはいかぬということでございますので、三万円をこえる番付金でないと寄付金控除の対象にならないわけでございます。それから、上のほうの制限が所得の一〇%ということになっておりますから、十万円という限度があるわけでございます。したがって、三万円をこえ、十万円までの金額の七万円につきまして、いままでは二〇%税額控除する、一万四千円を税額控除する、こういう制度であったわけであります。今度改正を行ないますと、三%というほうは変わっておりませんので、上のほうの十万円という限度が所得の二〇%までに引き上げられますので、今度は十七万円に対して適用になる、そしてその税率は三〇%ということでございますので、五万一千円の税額控除が行なわれるということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/138
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139・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 ちょうどいいところに来ましたから、関連して田中大蔵大臣にお伺いするのですが、国立大学に寄付すると税金が無税で、困っている私立大学に寄付すると税金をとられるという、こんなばかげたことはどうして直されないのか、この点をひとつお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/139
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140・泉美之松
○泉政府委員 法人の場合におきましては、国立の学校に対しまする施設拡充等のための寄付金は指定寄付金として公示されておりますので、当然損金に算入されるわけであります。ただ私立学校の場合におきましては、大蔵大臣が告示を出しましてその指定寄付金といたしました場合には、国立学校の場合と同じように損金算入が認められることになっておるわけでございまして、ただ手続上、国立学校の場合には当然損金算入になるし、私立学校の場合には大蔵大臣のほうで一々審査いたしまして、その結果指定寄付金として告示いたしたものだけが損金算入が認められるという差があるわけでございまして、損金に算入されるという内容は両方とも同じなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/140
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141・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 泉主税局長の解釈はそれでいいと思うのですが、しかし政治的に考える場合に、いま私学がいかに困っておるか。月謝の値上げが起きても大問題になると思うのですが、そういうようないきさつを考えると、私学は人件費その他が上がってくる。現実的には、いま言われるように私学でも免税される場合はあり得るわけです。これはわれわれ知っていますけれども、そうではなくして、寄付をする場合には、やはり大学の経営の問題、これは憲法の問題がありますから、私はわかると思いますけれども、しかしそれは非常に不公平ではないか。これは泉さんから言わせれば、立場はわかるのですが、やはり私たちは、そういう点について、大蔵大臣としては国立と同じように何とか方法を講ずべきではないかというように考えております。それは、いままでの大蔵大臣は大体東大出や国立の大学出が多いから、そういう実情を知らないのでしょう。それから、第一、大蔵省の役人の方々はほとんどが国立大学を出た秀才ばかりです。だから、私学の苦しいことなどは全然わからない。しかし、田中さんは東大出でも京大出でもございません。私は大蔵大臣はわかっておると思いますから、せめて大蔵大臣になればそれくらいのことはわかって、大蔵省の官僚の頭のいいのを飛び越えて、あなたから指示してもらえるかどうかということをお願いがてら御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/141
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142・田中角榮
○田中国務大臣 いまの佐藤さんの御発言を十分体して、将来検討いたします、こういうことでお許しをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/142
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143・武藤山治
○武藤委員 主税局長にも、大臣は十分検討するという答えを出しましたから、検討していただきたいのでありますが、法人税法第七条の得付金の問題と、こういう個人所得税法の番付金の問題とのバランスということも十分考えて、たとえばいなかの小学校のプールの寄付金だの、あるいは図書館の寄付金だの出しても、三%というあれがあるものですから、三万円出しても、あるいは二万円出しても、七十万くらいの収入の人は全く控除されないわけですよ。そういう点で、非常な不合理もありますから、もっと実態をじっくり調べて、全国でどのくらいの学校に対する番付金があるか。池田総理が人つくりを盛んに言うわけですが、人つくりは説法だけではいかぬのですから、やはり具体的に教育をする場に寄付金を出した場合、公立であろうが民間であろうが、寄付金には税金をかけない、こういうことを強く要望しておきます。あとの通告者もありますから、ここで一応質問は終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/143
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144・山中貞則
○山中委員長 竹本孫一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/144
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145・竹本孫一
○竹本委員 私は、自然増収の問題についてまずお伺いをしたいと思います。
池田内閣になりましてから、国会の政治の論議の上で数字が非常にはんらんをするようになりました。大事な人の心の問題、そういうものよりも数字が尊重せられるということは、それ自身一つの問題でありますけれども、特に困りますのは、数字の魔術によって政治の論議が、強くいえばごまかされるような点があるということであります。特に財政の論議におきましては、先般来自然増収という問題が非常に中心になっておる。極端に申しますと、財政論議マイナス自然増収で、一体何が残るかということも言えるだろうと思います。さようにひんぱんに使われる自然増収ということの概念規定をまず私は明確にしていただきたいと思うのであります。
御承知のように、自然増収ということばには二つの意味があるのであります。歳入の実績が予算をこえた部分をさして言う場合があります。次には、税法をそのままにしておいた場合に、前の年度よりも次の年度のほうがふえる、その歳入の差額を自然増収と呼んでおるような場合もあります。一体、いま政府でよく使われる自然増収は、その二つのうちのどちらを意味するものであるか、それをまず大臣にお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/145
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146・田中角榮
○田中国務大臣 ただいま御発言がございましたとおりの考え方をしております。現行税法で当初見積もりました税収と実際の税収との差額でありますし、また翌年度にわたりましては、現行税法のまま今年度を基準にして伸びていく、その数字との差額を自然増収と一般に言っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/146
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147・泉美之松
○泉政府委員 ちょっと補足して御説明申し上げたいと存じますが、いわゆる自然増収と申しますことばもいろいろ意味がございまして、大きく分けまして、三つあると思います。それは、一つは先ほど竹本委員のお話のように、予算を編成いたしまして、その当初予算に対しまして、年度経過中に税収が増加いたしまして、したがって、その結果、当初予算に対しまして決算の数字がふえる、これを自然増収という場合がございます。
それからいま一つは、前年度の当初予算に対しまして、その次の年度の当初予算の増加、この分を自然増収という場合がございます。この場合にはもちろん税法は前年度のままで当年度の改正を行なわない、当年の改正前の自然増収に相なるわけでございます。
それからいま一つは、前年の決算に対しましてその次の年度の当初予算を比較いたしまして、これを自然増収と呼ぶ場合と、三つあるわけであります。
したがいまして、自然増収と一口に言う場合には、これらの三つの内容のうちどの部分をさしておるのかということを厳密に区別していただかないといけないのでございます。政府のほうで自然増収六千八百二十六億と申しておりますのは、先ほど申し上げましたものの中では二番目の、三十八年度当初予算に対しまして三十九年度の当初予算の税収の伸びか六千八百二十六億ということであります。その三番目の三十八年度の決算見込みの数字に対しましては、四千数百億の自然増収にしかならないわけでございます。そこに自然増収ということばを使います場合に、その内容がそれぞれ違っておりますことを注意していただかないといけないだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/147
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148・竹本孫一
○竹本委員 注意して使わなければならぬというお話でございますけれども、実際の場合に、いまお話しのように、二つもしくは三つの内容を含んでおりますから、これは今後の財政論議の場合に非常に重要な問題でございますので、できるだけ早い機会に大蔵省あるいは政府で使われる自然増収というものは、その三つの中のどれかということを早くきめていただくようにこれは希望しておきたいと思います。
次に、税収入のいまの自然増収の問題でございますが、三つのどれかということは省きますけれども、一般的に論じまして、自然増収を六千億とかあるいは最初の予算よりも決算の場合には非常にたくさん自然増収があるということで、最近におきましては自然増収の多いということがあたかも池田内閣の政治が成功した証拠であるというような受け取り方が非常に多いと思うのであります。しかし、これは財政の立場からいって間違いである。大体税の収入というものは、対象になる基本の数字、それから滞納の見込み、あるいはそれのとらえ方、いろいろな点から考えてみまして、実績プラスアルファということで、大体の見通しはやや正確につくべきものであります。したがいまして、自然増収、特に当初の予想よりも非常に収入がふえる、それか二千億だ、四千億だ、あるいは六千億だ、こういうような形で宣伝をされるということは、いまでは経済政策の少なくとも成功であるかのように害われておりますけれども、私は厳密に財政学的な立場から論じますと、それは結局極端に申しますと、当局の見込み違い、プラスの間違いであるか、マイナスの見込み違いでございますか、それは別といたしまして、とにかく見込み違いであるということは間違いないじゃないか。すなわち、そこには財政当局としては失敗があるのではないか、見込み違いがあるのではないか、かように思いますけれども、その点についてもお考えをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/148
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149・泉美之松
○泉政府委員 自然増収と申します場合におきまして、先ほど三つの使用例があることを申し上げたのでございますが、そのうちの、前年当初予算に対しまして次の年度の当初予算がふえるということは、これは申すまでもなく、国民所得がふえてそれに応じて税収がふえることでありまして、これは当然でございます。お話しの当初予算に対しまして、決算の数字が非常にふえていくということになりますと、それは収入見積もりが間違っていたことになるではないかという御質問だと思うのでございます。ただこの一兆何千億にのぼります税収におきまして、収入児枝もりの正確を期さなければならぬことは申すまでもないわけでございますけれども、なかなか各税につきまして、こまかい計算をいたしてはおりますけれども、経済の動きは生きものでございますので、なかなか当初予想したとおりの経過をたどらないことが多いのでございます。ことに最近におきまする経済成長は、当初に見込んでおりました生産の増あるいは物価の上昇といったものを相当上回る実際の結果を生じております。そのために、そういった生産物価を前提といたしまして収入を見積もっておりましても、ベースになるそういった生産物価が違ってまいりますと、自然税収入の見積もりも合わないという結果になるのでございまして、この点は私どもとしてはまことに遺憾でございますので、できるだけ正確を期するように毎年努力をいたしておるのでございます。なお、まだ必ずしも十分正確になり得ない点を残念に思っております。しかし、三十九年度の予算の見積もりにおきましては、そういった点で従来の御非難を考慮いたしまして、相当正確に見積もったつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/149
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150・竹本孫一
○竹本委員 そこで正確に見積もる努力をされて、しかしなかなかやはりある程度まではやむを得ませんけれども、問題は程度の問題でございますが、収入見込みが毎年見込み違いがあるという点と、また一方において、私非常にふしぎに思いますのは、財政の収支というものは、当然歳入歳出相見合っていかなければならぬと思いますけれども、その歳入歳出の出し方あるいは合わせ方がいまの予算においてはあまりにも機械的と申しますか、形式的であると思いますが、たとえばことしの予算は御承知のように三兆二千五百五十四億三千八百三十一万円でございます。こういうような数字を出してある。これは歳入についても歳出についてもイコール・ゼロということで、とんとんになってぴちっと合っておるということで、非常に財政学的に見ると潔癖でありますし、非常に正確に見えるのでございますけれども、いまお話のありましたように、収入見込み違いとかいろいろな問題が相当大規模に行なわれる。こういうときにいたずらに形式的に三十一万円というところまで厳密な数字を出すということは、これはあまりにも形式的であるじやないか。むしろこういうふうに歳入歳出はぴたっと合わなければならぬということは、財政学の教科書の問題としてはわかりますけれども、実際の政治のあり方としては、むしろごまかしを意味しておるものじゃないかと思いますが、この点についての大蔵大臣のお考えを承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/150
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151・田中角榮
○田中国務大臣 歳出は御承知のとおり、国会の議決を経ればそのとおり決定するわけであります。しかし歳入に対しましては、予定をして税収見積もり、見込み等を行ないますために歳入源に異同が生じたり、いろいろな問題があることは御承知のとおりであります。でありますから、普通の法人等は予算を出しますときには、差し引きゼロというのではなく、大体この程度の黒字が出るだろうということになるわけでありますが、国家予算でありますので、歳入歳出ゼロということがずっと過去の恒例になっておるようでありまして、しかし厳密な感じから言うと、あなたがいま言われたとおり、行うべからざる数字を合わしておるということだから、初めから幾らか信憑性を持たざる予算形式であるというような感じはわかりますけれども、予算書の形態としては大きな歳入欠陥ということはいままでもほとんどなく、三十七年に一回歳入欠陥を起こしたことがございますが、おおむねその後の経済成長が当初見込んだよりも成長率が高いために、自然増収のほうがよけいに出ておるということであります。でありますから、予算の形式としてどうあるべきかという問題は別といたしまして、私はいま踏襲してお出ししております予算形式以外にないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/151
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152・竹本孫一
○竹本委員 これは意見になりますけれども、外国にもやはりその例があるように、大体決算に近い歳入歳出というものを考えて、その場合にやむを得ない場合は、一方は他のほうよりも多いとか少ないとかいうこともあっていいんじゃないか、日本のいまの予算の歳入歳出は、あまりにも無理をして合わせ過ぎておる。それがために結果から見れば、いま指摘されましたように、自然増収その他の見込み違いが相当大規模にあるときに、何十何方、三十一万という端数まで形式的に合わしておくということは、人つくりということがいわれる今日において、実はまことに一般から考えましても奇異な感じを与えて、政治というものはそういうただごまかしの数字を合わせることに力を入れておるというような感じを一般に与えると思うのです。そういう意味でも外国にもすでに例があることでありますから、こういう形式主義は一度再検討を願ったらどうかと思うのであります。
次に移ります。これと関連をいたしますけれども、日本のように自然増収に財政がたよっておりますけれども、こういう場合にイギリスあたりのやり方を一ぺん考えてみたらどうかと思うのでありますが、御承知のようにイギリスの場合には、予算演説が行なわれますときに、過年度の歳入実績、過年度の税制をそのまま本年度に延長した場合の歳入の見積もりと、本年度の歳出予算案とを比較する。次にこれらについてとるべき増税もしくは減税といったようなものをちゃんと考えまして、そこでイギリスの所得税は一年税である、一年ごとに大体方法を変える。そうしてとにかくべらぼうな自然増収なんかは出ないように努力をいたしておると思いますけれども、そういう工夫を日本の財政をあずかっておられる大蔵大臣がされる御意思はないか、と申しますのは、自然増収は先ほども申しましたけれども、経済政策の非常に成功であるかのように国民に宣伝される点が一つ、もう一つ私どもは非常に遺憾に思いますのは、この自然増収六千億なら六千億ある。そのうちから二千億円の減税をやる。何だか非常に恩恵を国民に与えてやるといったような態度でこの問題が取り扱われるのでございますけれども、実際は国民の側から見れば何も恩恵を受けるわけではないのだ。そういう意味で財政というものはやはり当面の必要財政需要を充たすだけの収入を上げることに努力をすべきであって、あとからたくさん税金を取り過ぎた、自然増収があり過ぎたというような考え方になってきたり、あるいは初めからこのままにしておけばこれだけ税収が上がるということで、その上がってきたものを自然増収という考え方で何だか政府のポケットマネーでもできているような考え方でこれを受け取るという、その政治のあり方に非常に問題があると思いますけれども、イギリス等の考え方をわれわれ参考にしながら日本のそういう予算の立て方を根本的に考えてみたらどうだろう、大蔵大臣の所見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/152
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153・田中角榮
○田中国務大臣 予算の問題につきましては、財政制度調査会等で御検討を願っておるわけでありますが、税等の問題に対して抜本的に考えろといういまのイギリスのようなやり方とは体系を異にいたしておるわけであります。予算は単年度主義でありますが、税法は恒久制度をとっておりますから、しかも戦後の混乱期につくられた税法でありますものを、今日まで国力の回復と相まちながら、税目別のバランスをとりながら、また間接税と直接税とのバランスもおおむねていさいを整える状態まできたわけであります。でありますから、諸外国の例等も考えながら、また会計年度の問題もありますし、そういう問題等に対しては、衆知を集めて、より合理的なものにすることに大いなる努力をすべきだと思います。この自然増収という言葉に対して、先ほど主税局長から申しましたように、また、あなたからも御発言がございましたように、いろいろな立場で自然増収ということを使われます。特に一番問題になっておりますのは、当初の予算額と決算額との間に非常に大きな開きがある。これは国民に返すべきだとか、また現行制度では、災害その他がありました場合には、補正予算の形式で国会の審議をわずらわしておるわけであります。なお、余ったものに対しては、二分の一は国際整理基金に入れるというような制度上の制約等をいたして完璧を期しておるわけでありますが、これは自然増収ということを政府のつかみ金であるというような考えは持っておらないのです。そしてまた、当然取り過ぎであるというような一般論に対しましても、もっと国民の間によく理解をしていただくように政府も努力をすべきだろうということを考えておるわけであります。いずれにしても、国民から預かった財政でありますから、これをどういうふうに貯蓄をし、どういうふうに還元をし、どういうふうに歳出に盛り込むことがいいのかという財政法上の問題は、法規も含めて、広い立場で常に前進的な検討を進めていくべきだろうとは思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/153
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154・竹本孫一
○竹本委員 そこで、三十九年度の自然増収の問題に入りますけれども、六千八百二十六億円ということをいわれますが、地方税を含めた場合に、これは全体どのくらいのお見込みでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/154
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155・泉美之松
○泉政府委員 国税のほうが六千八百二十六億でございます。それに地方税が二千五百億程度になると思います。したがいまして、九千三百億余りの金額に、国税、地方税合わせますとなるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/155
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156・竹本孫一
○竹本委員 ただいまの九千三百億円のいわゆる自然増収というものは、九・七%の成長率を前提にしたものと考えてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/156
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157・泉美之松
○泉政府委員 先ほど武藤委員の御質問にお答えいたしましたように、企画庁で作成いたしておりまする経済見通しをベースにいたしまして見込んでおるわけでございますが、ただ、経済見通しの年度間の数字とそれから税収見積もりに用いまするこの九・七%という経済成長率の数字にいたしましても、期間のズレがございますので、したがって、九・七%を前提とした税収見積もりではございますけれども、税収額そのものとしましては違った結果が出るということは、先ほど武藤委員に御説明申し上げたとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/157
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158・竹本孫一
○竹本委員 そこで、この際関連いたしまして——まあ九・七%の関係で時間的なズレの問題は当然でありますから別といたしまして、私この際、大臣にもお伺いいたしておきたいと思いますけれども、大体政府の発表される数字というものが、経済情勢、特に内外の情勢もありますけれども、あまりに変わり過ぎるのではないかということについて御所見を伺いたいと思います。たとえば三十八年度につきましても、三十七年末に発表したものと三十八年の年末に修正して考えた経済の見通しというものは、次のごとく変わっております。名目成長率は八・一%から修正された場合には一三・六%に変わっておる。実質成長率は六・一%から八・二%に変わったと思います。鉱工業生産につきましては、六・〇から一三・六%に二倍以上に伸びております。消費者物価につきましても、二・八%があるいは八%といい七・二%といっている。こういうふうに考えてみますと、二倍もしくは三倍に、わずか一年、しかも当面の年の成長率やその他が狂っておる。一割か二割狂うというならば、これは一つの見通しとしてやむを得ないということが言えると思いますけれども、国の経済政策あるいは財政計画あるいは税収のそういったものの基本をなす経済の動きというものに対する見通しというものが、かくのごとく同じ年度の中において、同じ一年の中において初めと終わりでは倍になり、へたをすれば三倍になる、こういうことで一体経済の見通しといったようなものが、見通しということばに値するかどうか。これは私は今後の池田経済政策の問題点としても非常に大きな問題であろうと思いますが、ひとつ大臣のお考えを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/158
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159・田中角榮
○田中国務大臣 経済見通しの数字が非常に動く、物価も特に動くという問題に対しては、いろいろ御議論のあるところであります。しかしこれは見通しでありますから、実質との間には相当な開きがあります。これは西ドイツとか——西ドイツは少しまだ問題があるようでありますが、フランスとかイギリスとかカナダとかアメリカとか、こういう戦前から同じ形態のもとで国民が生活をし、産業基盤もそのとおりのままに年々前進をやっておるものに対しては比較的に予想もしやすいし、また予想数字と実際の数字の間には狂いはないのであります。三・五%の実質成長を四%にするためにどうすればいいかということで、国をあげて議論しておるのであります。でありますから、こういう正常な状態における経済成長率というものに対しては、見通しと実質との間に開きは少ないのでありますけども、日本は何しろ御承知のとおり、全く世界中の専門家が二十二年、三年、四年と三カ年間あらゆる角度から検討して、再び日本経済の復興はあり得ない、こう断じたその日本が、今日わずか十五、六年間にここまで経済復興をなし遂げてきているわけであります。これにはいろいろ問題があると思います。そういうような、非常に急送に経済成長が遂げられてきておる日本でありますので、政府が六%だと押えても八%になり、七・二%と押えれば一〇%になり、九%といえば一二、三%になるというような、とにかく経済成長率が政府が当初所期したものよりも相当高い水準にある。その結果、一面においては輸出が非常に伸びたし、また一面においては物価が非常に上がったしというようないろいろな現象を伴いながらも、確かに経済成長率が政府が所期したものよりも上回っておるということは事実であります。しかしこれも開放経済を迎える日本国民の気持ちの上でも、国際競争力をつけるためにはどうしても設備の近代化もしなければいかぬ、設備投資もしなければいかぬ、こういういろいろな本能的なものの考え方が経済成長にもあらわれておりますから、戦後の意欲的な日本人の頭脳と科学的な進歩、技術の進歩等が経済成長率を非常に上げておるというような特殊な事情があるのでありまして、これからやはり何年かたって、日本の国民も経済も正常な状態になる時期は私はそう遠いものではないと思うわけであります。しかしその正常になるまでの間に、戦前十カ年間、戦後の二十年間、約三十年間にわたり国際経済からシャットアウトされてきた日本人の生活や産業基盤や科学技術の水準が、国際競争力にたえていけるような状態にまでしなければならないわけでありまして、そういう特殊な状況下にある日本の経済には、やはり波はあるのだということを申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/159
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160・竹本孫一
○竹本委員 いま大臣が、見通しだから狂うというお話でございますけれども、その点が非常に問題でありまして、一割か二割狂うならば、これは見通しと言える、私の考えではそういう意味です。ところが生産の場合には、鉱工業生産は六%が一三・六%、これは二倍以上であります。消費者物価も三倍以上であります。これだけ狂って一体見通しといえるかどうか、これは非常に問題でありまして、もう経済見通しということばはひとつやめてもらわなければならぬ、これは見通しということばに値しないと私は思うのであります。
それからもう一つ、いまお話しになりました、日本の経済が戦後二十年、どこの国も想像しないほど非常に高度の成長を遂げたということでございますけれども、私は一度また機会をあらためて論議をしたいと思いますけれども、一言触れますと、これは池田経済政策の根本に大きな問題があると思います。それは、先ほど来年度の経済の見通しについて銀行側のパーセンテージと政府のパーセンテージの違う点が御指摘がございましたけれども、そのときに、銀行側のほうが過去においてもむしろよく当たっておるというお話もございました。これは私当然だと思います。どうしてかと申しますと、日本の経済の行政分析の問題になりますと、政府の見通しの根本に大きな誤りがある。それは私どもの考えでは、いま日本の経済は借金亡国だと思います。この点について、たとえば不景気になりまして生産を落とすというのが常識でございますけれども、景気調整の過程において生産が全然落ちない。これは落とせば、労働者の問題もございますけれども、何ぶんにも膨大な借金をして、その元利の償還に追われている企業経営の立場の人からいうならば、どうしても生産を落とせない、無理をしても生産を続けて、いわゆる自転車操業をやる以外にはない、こういう情勢でございますので、生産が落ちるはずがないのです。また成長が伸び過ぎたという問題につきましても同じでございまして、これほどばかげた借金をやり、またやらせて、それで高度の成長をかちとっていこうということは、世界の経済人の常識では考えられないと私は思うのです。御承知のように日本の会社の自己資本が二五%前後だ、七五%、四分の三までは借金である。もちろん資本の蓄積がない戦争直後ではやむを得ないと思いますけれども、それがいつまでも、しかも毎年毎年借金経済で、オーバーボローイングでやっておる。そうしてまたその元利の償還に追われる。それがために生産を押えるべきときにも押えることもできない。それがためにまた輸入がどんどんふえていく。押えようと思っても押えることができない。今日の池田内閣の経済政策の破綻は、この借金亡国という問題についての認識が徹底的に欠けておる、その点に私は問題があると思うのです。そういう意味から申しまして、世界の予想を裏切って日本の経済は予想以上に成長した、こういう点だけ言いますと、いかにも日本の政府の経済政策は非常に成功したようであるし、日本の国民も生産的エネルギーを動員して非常によく働いておるという、いい面だけを特に過大に宣伝するように私には受け取れるのでございますけれども、私に言わせるならば、むしろ日本の戦後の経済のあり方、特に池田内閣の経済のあり方には、敗戦国としての、あるいは資源が貧弱、資本もない日本としてのまじめな経済政策の取り組み方というものがないのだ。池田さんは世界じゅうの人がみなほめておるというようによく演説をされますけれども、われわれが外国の雑誌を見ると、ある人は申しました、日本の設備投資のごときは、天井を知らない設備投資をやって、天井までいったらそこでとまるかと思ったら、天井を突き抜けてさらに設備投資の上に設備投資、毎年四兆円ずつ繰り返して設備投資をやっておるといって批評したアメリカの人もおる。またあるドイツ人は、日本の経済はとまることを知らない馬に乗ったようなものだと言った。それで壁にぶつけたわけでございましょうけれども、そういう走り方をしておる、しかもそれはみんな借金経済である、それに対して政府のコントロールも指導もほとんどない、こういう情勢でございますので、政府の見通しといおうか、あるいは一般外国の人でも考えられないような行き過ぎをやっておるわけなんです。この点は政府の経済政策の根本にかかわりますので、あらためて論議をいたしたいと思いますけれども、いずれにいたしましてもこの借金亡国、世界の常識を裏切ってまで行なわれる借金経済、それによる高度成長経済、こういうものを前提にいたしますと、政府の見通しが狂うのは当然でございまして、私どもから言わせると、日本経済全体のあり方について、政府がもう少しまじめな指導というもの、もっと賢明なる計画性のある経済運営というものを考えなければならぬのではないかと思いますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/160
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161・田中角榮
○田中国務大臣 野党の皆さんから非常に御激励をいただいてほんとうにありがたいと思います。私もこういう問題を真剣に取り組みたいという考えでおります。いまの借金政策ということに対しては、無制限な借金をしていくというような考え方を政府も持っておるわけではないのであります。できるだけ外国から借金をしないで済むように自己資本比率を上げて、戦前比より以上の日本の状態を築きたいという考え方は持っておるのでありますが、端的に申し上げると、確かに竹本さんのような御批判もございますけれども、しかし、日本がかつて十七、八年間を通じてとった経済政策の方向が間違っておったのだということには私はどうも了解できないのであります。お隣の中共は、自己資本を持っており、膨大な国土と資源と労働力を持って、これは借金政策ということをいわぬけれども、資本を外国に仰がなかったということによって、過去十八年間非常に苦しい状態であることは御承知のとおりなんです。日本はそれに比べて、この狭隘なる郷土に一億になんなんとする国民を持っておるのですけれども、ある時期に、あの爆撃の中で、国敗れて山河あり、何もなかった日本人が、開放経済までに十七、八年間になろうとするには、外国の力も借りなければならない、資本もある程度入れなければならぬ、これはもうお認めいただけると思う。私たちが昭和二十年から二十五年までの間にどのような生活をしていたか、二十五年から貿易ができ、だんだんと外資が入るようになってから、われわれの生活も確かに向上をしてきたことは事実であります。でありますが、これが無制限に続くものだと考えておるわけではない、西ドイツは日本と違って、マーシャルプランによる援助の金も全部労働者住宅に向けたというような、全く日本とは違う面で経済再建をしましたけれども、しかし、借金がないのだから、今度は生産性を上回る労働賃金の要求になっている。コストインフレについては、西ドイツは二、三年前とは全然違う状態で、非常に困っているという状態は御承知のとおりなんです。だから西ドイツも、今度は国内に投下する資金を国外に投資する人が非常にふえてきておるという事実、ですから、自己資本だけでやってきたドイツにもやはり壁にぶつかる面があった。同時に日本は、これからの経済再建に対しては、自己資本比率を上げなければいかぬ、いままで借りた借金はこれから働いて返さなければならぬということで、労使も、国民自体も自覚をしておるのでありますから、この功罪というものは私は一律に論ずるわけにはいかない、こういうふうに考えます。いままで、財政に対しては大きいとか小さいとかいろいろな議論がありましたけれども、金融政策に対しては、まあ中小企業の年末金融に幾ら出せというようなことは大いにわれわれもやりましたが、何か、金融は金融専門家にまかすので、政府が金融に容喙してはならぬ、ちょうど占領軍が日本に言ったと同じような感じを戦後十五、六年間持ち続けてきたのじゃないか、私はそんな感じさえする。だから、今日金融というものが経済成長や物価問題にどんな大きなウエートを持っているのかということをお互いがようやく議論をするようになったのでありますから、私は、開放経済を契機にして、金融が物価や成長率というものを調整するには一番大きいのだということを十分承知をしながら、財政、金融との一体論ということを出したわけであります。しかし戦前と違って金融は戦後全く中立的で、政治がこれを支配することができないという原則が立てられておるのであって、私は、ここらでお互いに財政と金融との一体をはかるための具体的な策はどうするかということが真剣に望まれるのであって、いま政府がやっておる経済政策が誤りであるというような考えではないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/161
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162・竹本孫一
○竹本委員 この問題は先ほどから申しますように、機会をあらためてもう少し真剣に討議をしたいと思います。私どもは走り過ぎた経済、過ぎたということ自身が誤りなんでございまして、方向としてもちろん戦後蓄積のない日本が借金経済であるということは、これはその功績もその必要も認めるにやぶさかでございませんけれども、もはや戦後でないという経済白書が出てから数年たちますが、ますますもって借金経済のほうに走っておるいまの日本経済のあり方、あるいは政府の経済政策のあり方というものには、われわれは根本的な疑問というものを持っております。これはあらためてこの論議をいたしたいと思いますが、いまついでに、大臣のお話もありましたが、金融と財政が一体にならなければならぬという最後の結論は私も賛成でございます。これも機会をあらためて論議いたしますけれども、われわれの見るところでは、最近政府の財政のほうはいわゆる放漫財政と申しますか、積極財政と申しますか、おやりになっておるけれども、すべてのこの経済危機のしわ寄せは、あるいはその解決の重大な任務は金融のほうにおっかぶせておる。それがために金融引き締めがまた必要以上に手きびしく行なわれて、中小企業の倒産もまれに見る高い数字をいま出しておるというふうに思いますけれども、この点は全く考え方が違いまして、私どもはいま財政が財政の責任を十分に果たしていないで、逆にそのしりぬぐいを金融にやらしておる。これは非常に間違いであって、最後に大臣が言われましたように、財政と金融が一体になって、あるいはむしろ財政のほうが先に立って日本の経済再建のためにもう少し真剣な取り組み方をしなければならないのではないかと思います。しかし問題は別に論議さしていただくことにいたしましょう。
そこで自然増収という問題にもう一ぺん返りますが、かつて千億減税、千億施策ということが言われました。そのときには、二千億円のものについて千億は減税に振り当てる、千億は施策ということにしたわけでありますが、これと比較いたしますと、今度の減税というものは非常に少な過ぎるじゃないかという問題であります。そこで先ほど来いろいろ議論もありましたけれども、今後の減税のしかたというものは少なくとも千億減税、千億施策と言われたときと比べると、減税のしかたが足らないのじゃないか。したがいまして、予想以上に収入がある場合には、まず施策の第一に、先ほども御指摘がありましたけれども、減税に重点を置くということは大臣はお約束できるのかどうかという点をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/162
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163・田中角榮
○田中国務大臣 千億減税をいたしましたときの歳入額に対する減税額の比率はいま調べてお答えをいたしますが、御承知のとおり今年度は六千八百二十六億の自然増収を見積もっておりますけれども、御承知の前年度分剰余金が千八百余億減っております。でありますから実際の歳入財源になるものは四千九百億、約五千億弱であります。これに対して平年度二千百八十億余の減税規模が論じられるわけであります。今年度の国税の減税が比較されるわけであります。その比率は一七・一%だと思います。これは歳入財源に対する当該年度の減税額としては昭和三十二年以降最大のものだというふうに承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/163
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164・竹本孫一
○竹本委員 国民の税の負担率の問題を、次に伺いたいと思います。この場合、通常国民所得と比較して、その何%ということがよく言われるのでありますけれども、私は、この出し方は非常にラフで、あまり意味がないと思います。個人々々の生活あるいは一人一人に人間らしい生活を保障するという憲法のたてまえから考えまして、一番大事なことは一人一人の生活が豊かになるということでございます。高度成長の問題にいたしましても、所得倍増計画——私は計画ということにはことばがもう全く値してはいないといういまの政治のあり方だと思いますが、それは別といたしまして、そういう場合にも国民総生産あるいは国民所得というものを中心に論議をしておりますけれども、聞いている国民のほうはみな一人一人の収入がふえるというような受け取り方をしておりますが、これはしかし国民のほうは、生活の実感としてむしろもっともな受け取り方であって、そういうような錯覚を国民に与えながら、所得倍増というものを、政策といいますか、選挙の際に強く打ち出された政府の政治的な良心を私は疑うわけであります。いずれにいたしましても、国民の負担率といった問題も国民所得に対するパーセンテージだけで考えてみてはいけないと思うのであります。そこで最近の問題になりますけれども、国民一人当たりの所得が日本で四百六十一億ドル程度だと思いますけれども、一体これは世界で何番目くらいのものと考えておられるのか。高度成長世界一ということをよく言われますが、その高度成長の中で、大きな政府収入があがって、またその中から減税もやれるんだと、すでに申しましたように、この高度成長あるいは自然増収という数字の魔術で、国民は非常な間違った錯覚を持っておるわけでございますけれども、具体的な場合といたしましては、一人当たりの国民の所得というものをどの程度に考え、またそれは世界でいま何番口ぐらいであるのか。
さらに私の伺いたい点は、政府の今後の施策の重点の一つとして日本の国民の一人一人の生活というものを——一人一人ですよ、国民総生産とか国民所得ということではなくて、一人一人の生活内容、なかなかむずかしい問題でございますが、大づかみに言って、大体どこの国を目標にして、どの程度までに何年計画で持っていくというお考えであるのか、また税のあり方にいたしましても、負担率にいたしましても、その点についての基本的な考え方が必要であろうと思います。欧州並みの賃金ということを総評では言っておられますけれども、欧州並みと申しましてもなかなか国が多いのでどこを言っているか私にはよく理解できませんが、いずれにいたしましても、日本の政府はもはや戦後ではないとか、世界で三つの自由主義国家の中の大きな柱になったんだと思うということをよく言われますけれども、国民の生活水準というものは、いま世界で一人当たりの所得が何番くらいであって、日本政府の政策の目標の一つとして一体何年計画で、たとえばドイツはどのくらいになるのか、何年計画でイタリアに追いつくのか、あるいは追いつけないのか、一体政策の大きな目標というものをどの辺に貫いて論ぜられておるかということを、ついでに伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/164
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165・田中角榮
○田中国務大臣 三十九年度は国民所得五百七十ドル換算くらいになるという数字でございます。全世界で何番目か。こういうことになりますと、いますぐ数字は持っておりませんが、ざっくばらんに申し上げると十六、七番目から二十二、三番目くらいの間だろう、こういう感じであります。どの程度にすればいいのか、こういうことは国情によってみな違うわけでありますから、いわゆる現時点を基礎にしましてやはり高い理想を持って着実に一歩一歩前進をしていく。社会保障はスエーデン並みに、また国民所得はアメリカ並みにというわけにはいかぬでしょうが、まあイタリア、フランス、西ドイツ、イギリスにというふうに、だんだん近づくように努力をしていかなければならぬわけであります。そういう意味で、西欧先進諸国が成長率四、五%ずつでもって進んでいってこれから十年後どうなる。日本はそれに対して七・二%程度の所得倍増年次計画の数字で経済成長を進めていった場合どうなるかといったような問題で、いまあなたが言われたような数字もひとつ想定をしながら、もっと夢多き計画を立てていきたいというふうには考えております。ただここで一つ申し上げたいのは、日本は若年労働者が非常に不足であるということを言われておりますけれども、実質の問題として考えるときに戦後乏しい中で潜在失業者をお互いに抱えながら一人が働くことによって一人の生活を守っていくという相互扶助のこの民族的な動きが今日まできたためにようやくここまできたのであります。でありますから一面において若年労働者が非常に少ないといいながら、中高年齢層に対しては国が職業訓練までやらなければならぬ、一般の税金の中からこういうことをしなければならぬという事実があるわけであります。でありますから、だんだんと日本の生産性を上げて、合理化していきながら、その過程において潜在失業者を完全に雇用せしむるという一つの大きな問題がありますので、ただその目標だけを高々と掲げて、こういう目標に向かって全部いくのだということも、まあ重要なことでありますけれども、やはりほんとうに国民の中で一人も働く場所がないというようなことではいけないのだという一つの社会的な政策も十分加味しながら進めていかなければならぬということだけは申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/165
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166・竹本孫一
○竹本委員 夢多き施策を考えるというお話でございますけれども、日本のこれからの経済政策の根本につながる問題でございますが、今日のこの税負担の問題のときに、総理も言われましたが、問題は国民の所得と施策の内容といろいろな関係で、いまの二二・二%の負担率、これがいいか悪いかということは論議しなければならぬというようなお話もあったと思いますけれども、私は、夢多き次の社会を考える前に、現実の問題として、先ほどお話がありましたように、世界で二十何番目、戦後の一人当たりの国民所得は低いのだ、こういう国の実勢から考えまして、やはり今度の予算も、ごろを合わせてみなにいい予算ということになっておるようでございますけれども、はたしてみんなにいい予算であるかどうかがすでに問題がありますけれども、かりにみんなにいい予算であるとしても、この量というものは非常に大きな問題だと思います。したがいまして、非常に良薬であるといっても、飲み過ぎてはどうにもなりませんので、どんなにいい内容を持ったものばかりだといたしましても、国の予算の規模というものは、おのずから一定の限度があると思います。その限界を考える場合に、特に日本の一人当たりの国民所得、一人一人の生活の内容というものを考える場合に、私どもはやはり税の負担率というものは、二〇%というものをむしろ現存においては限度として考えるべきじゃないか、戦前のように一二・九%ということにはならないと思いますけれども、少なくとも二〇%の負担率ということが大蔵当局としては予算を組む場合の一つの基本的な目標になってしかるべきだと思います。それは国民の生活の一人一人の所得の内容、水準というものがかくのごとく低い現在においては、どんなにいい施策がかりにあったとしても、それを一ぺんに国民に負担さしていくというような、したがって、それだけの税収入が必要だといったような、そういう財政あるいは予算の立て方というものは間違いではないか、やはり当面国民の租税負担率というものは、どうしても二〇%をこさせない、こういうところに一つの限界を置くべきだと思いますけれども、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/166
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167・田中角榮
○田中国務大臣 なかなかむずかしい問題であります。前々から申し上げておるわけでありますが、日本及びイギリス、フランス、イタリア、西ドイツというような国の租税負担率を検討いたしておるわけでありますけれども、どうも現在の二二・二%を、税制調査会からの御要望があったように、二一・五%に下げ得るかという問題も事実問題としてはなかなか問題があります。しかもアメリカやイギリス、フランス、イタリアの例をとるまでもなく、非常に租税負担率は高いのであります。荷いかわりに、御承知のように道路もよくなっておりますし、町づくりもできておりますし、公園や環境整備も行なわれております。どうも日本人は、二面においてアメリカのように道路は全部舗装しろ、完全に水も下水も処理をしろ、また社会保障も先進国並みにやれと青いながら、一面においては租税食掛薬というものは下げていくべきだ、確かにそのとおりなんです。二律背反するものを何とか調和せしめていくことが政治ではありますか、やはり道路にしても四兆一千億、五カ年計画でやらなければいかぬ、それから年々二〇%、二二、三%増加せしめておる社会保障に対してもまだ不足である、一三%に引き上げました生活保護基準までも少ない、それから二〇何%という前年対比で伸びているところの農林、中小予算も少ない、こういうようにいわゆる歳出面の要求が非常に多いのでありますから、やはり国民として考えるときには、総体的に一億になんなんとする国民が、ある時期は歳出というものを非常によけいしながら、その一面において税負担は高いけれども、税を納められる人が払って、そして税を納めない国民が、国民全体が思想を受けるのでありますから、こういう面のバランスに対してはやはり慎重に考えていかなければならぬ問題であります。でありますので、いま二〇%前後とした国民の税負担率は好ましいことでありますけれども、政府の財政責任者として、では何年間で二〇%に下げますというようなことは、とても言えない実情であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/167
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168・竹本孫一
○竹本委員 時間もたんだん迫っておるようでありますが、いまの二二・二%というようなことで、税収入二兆九千四十二億円でございますが、これだけの収入がある。われわれからいえば、今度の予算における元利保証債のごときは、形を変えた公債であるというふうに思います。
そこでひとつこれに関連してお伺いしたい点は、キャピタル、バジットの問題でありますが、今度国立学校特別会計というものができることになりますが、これは一体どういう意味であるか。将来は独立採算をねらっておられるものかどうか。
さらにこれに関連いたしまして、これも予算制度のあり方の問題に関することでありますけれども、いまおっしゃいました道路四兆一千億、これらの投資にいたしましても、その他の国が果すべき事業というものが非常にふえてまいります。そこで、この辺で日本の予算のあり方に関連しまして、やはり根本的な再検討を願って、租税収入でまかなう予算と、それから場合によっては、公債を出してもよろしい、借金でもよろしいといったような資本勘定的な予算というものに組みかえていく考え方について、大臣はどういうふうにお考えであるか。国立学校特別会計の設置を契機といたしまして、一部にはこれが独立採算になる、さらには将来一つの事業会計にでもなっていくような期待と申しますか、考え方もあるようでございますが、お考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/168
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169・田中角榮
○田中国務大臣 この学校の特別会計は、完全に収支ペイするような企業にしようというような考え方で独立会計にしたのではありません。これは明らかにしておきます。学校の特別会計をいま考えましたときには、一体いま一般会計の制度の中で千億余にのぼる歳出を一般会計でまかなっておって、二百億程度の授業料収入でもって、いままでのように一三、四%、多くても二〇%、もっと詰めれば二〇%程度で一体国立学校が整備されるのかということに疑問を抱いたわけであります。中には要らない土地を持っておって、決算委員会でも問題になったように、ゴルフ場に使っている土地を売れば、学校の二つ、三つできるにかかわらず、そういうものは大蔵省でうんと言わない、こういうことで学校というものは一体うまくできるのかということを契機にして、この問題を考えた、その例で東大というものをいま新しく東京のごちゃごちゃの中から理想的な環境に移すのには幾らかかるかということを概算させましたら、大蔵省ではじいてもまず六百億くらいかかる、学校ではじかしたら千億かかるというのであります。東大一つを合理的に移転させるというようなことを仮定しても、一千億かかる、これではいまの会計制度の中では不可能であります。でありますから、特別会計に移して、財政投融資からも融資を考え、またその他これからいろいろお互いが検討していくうちに、日本の新しい学校制度というものはどうあるべきかという問題が出てまいりますから、どうしても金のかかる仕事でありますから、こういう問題に対して対処できるようにまず制度を新しく発足させよう、こういうことを考えて、これを実行に移したわけであります。一部において授業料を値上げする前提じゃないか、授業料を幾ら値上げしても六百億、千億にはならないのでありますので、そういう意味ではなく、もっと弾力的な学校の再建ということに資したいという意図に出たものであることを申し上げておきます。
それから財政の問題は、こういう意味で、一般会計から全部財政投融資に持っていく、そんなことは困る。そういう意味で財政全般に対しまして再検討しなければならぬという声が一部にありますけれども、財政の健全性というものは確かに守っていかなければならぬし、また日本も守ってまいりました。全世界の各国から見てとにかく国債をほとんど持たないで、当該税収入で九〇何%もまかない、経常収入をもって経常収支もまかなっておる国というのは一体日本以外にあるのかということさえいわれておるのであります。しかし、これに安心をしてこれでいいというのではありませんが、現存の制度というものはほぼ合理的、妥当なものであるという考えのもとに、しかし後世のために一歩々々前進をして、より合理的な制度をつくるように努力すべきだと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/169
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170・竹本孫一
○竹本委員 この辺で一応私の質問を打ち切りましょうか、まだ続けてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/170
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171・山中貞則
○山中委員長 竹本君は機会を見てまた続けてもらうことにいたします。
お待ちかねの春日一幸君の発言を許します。春日一幸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/171
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172・春日一幸
○春日委員 今朝米わが国の税制に対する基本的な熱心な論議が行なわれまして、私もわが国の税制についてはいろいろと政府との間に意見を交えたり、また新しく提起もいたしたいことがあります。一冊の本に書いてあるほど豊富にあるわけでありますが、時間も十何分しかございませんので、当面する問題についてお伺いをいたしたいと思います。
大臣は、過般来衆参両院のそれぞれの委員会で、中小企業者が当面する金融梗塞の現状にかんがみて、徴税上何らかの特別措置を講ずる必要がある旨述べられておるのであります。本日の新聞の報ずるところによりますと、大臣のこの方針に基づいて徴税当局はこれに対する具体的な措置について研究がなされておると言われておるのでありますが、当然本委員会はそれらの問題を集約的に所管いたしまする委員会といたしまして、この際、国税庁当局が大臣言明に基づく徴税猶予についていかなる具体策を講ぜんとしておるのであるか、これをお述べ願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/172
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173・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 先日大臣から、最近の中小企業の金繰りの状況から見て、税法上許し得る限りの徴税上の特典を、国税局に対して指令を出せというような話がございました。ちょうど十四日かに徴収部長会議をまで開いておりまして、とりあえず、口頭でもってその旨を指示しますと同時に、本日付でもって文書を発送いたしております。その内容のおもなところは、所得税並びに法人税の延納をこういう困った企業の方々にできるだけPRして、積極的にその一語をとり、延納の措置を構じなさいという点が第一点でございます。それから第二点は、納税の猶予、換価の猶予、これを指示してございます。第三点は、予定納税額、あるいは法人の中間の納付額で還付の手続を早めて、特別の場合を除いてはすみやかに還付をしなさい。大体そういう内容の通達を出しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/173
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174・春日一幸
○春日委員 大臣に伺いますが、ただいま長官が述べられたところによりますと、現行徴税制度の上において、制度上許し得る範囲の限界ということでありますが、そんなものならば、当然のことであって、特別の措置でも何でもありはしない。国税徴収法上すでにあらゆる機会において納税者に国が与えている権利を彼らが行使することであって、当然のことであります。たとえば延納に関する制度においては、延納を求めるの権利がある。還付については、当然出し過ぎるものであるならば、すみやかにこれを還付することが国家の責任である。滞納処分については、それぞれの事情があれば滞納処分を猶予しなければならないことが国税徴収法上明記されていることであって、何も特別の措置ではない。私が強調いたしたいことは、過般来の国会論議は、当然とされておることを当然やれというようなことを言っているのではございません。すなわち開放経済に差し向かって現実に近代化、合理化のおくれております中小企業がさまざまなしわを身に受けているということ、それから事実上金融梗塞の状態がまいっている。現に金融引き締めがございます。選別融資が強化されております。しこうして現象的には中小企業の破産、倒産相次いでいる、そういうことが明示されてきている。このような時点に立って、そのような中小企業の破綻、また破綻に至らざるといえども、その苦しみを緩和することのための特別措置が必要である。このことを国会は政府に向かって要求をいたしているのでございます。かくて大臣は、その要請にこたえて、何らかの特別の措置をとらなければならぬ、これは国会に対して答えられております。特別の措置とは、すでに法制上制度化されております問題を行なうというのは特別措置ではない。それは当然措置と称すべきものである。特別措置とは何ぞや、いま国税庁長官の答弁された見解をもって、政治家田中角榮としてこれを了とされるものであるか、その点をひとつ御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/174
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175・田中角榮
○田中国務大臣 政府といえども法律を守らなければなりませんので、現行法制のもとで可能な限り最大の努力をいたします、こういうことを言っているわけでありまして、これは石炭企業が非常に不況にあえぎましたときに産炭地にもとったことでありますので、特に年度末のこれらの事情に対処して徴税機構はできるだけ便宜をはからうように、こういうことを言っておるのでありますから、特別の処置だとお考えいただきたいと思います。
なお、中小企業の開放経済体制に向かういろいろな助成策といたしましては、これは別な角度から検討せらるべき問題でございまして、御承知の今年度の税制改正において、中小企業向けに対して各般の施策を行ない、その減税総額六百億をこすという措置もいたしておるのでありますから、これらとあわせてお考えいただきたいと思います。
なお、金融につきましては、三機関の資金源をふやすという措置を行なうとともに、異例の銀行局長通達等も行ないながら、特に日銀総裁も中小企業の年度末金融に対しては談話を発表するというような相当誠意を持った積極的な施策を行なっておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/175
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176・春日一幸
○春日委員 ことばじりをとるわけではありませんけれども、政府が法律を守らなければならないことは論を待たないところであります。したがって、私が申し上げておることは、現行法律規則に定められておる範囲内において処理するというようなことは、これは特別措置にもならないし、何らの政治的配慮が加えられたものとは言いがたいということを申し上げておるのであります。現在制度上納税者の権利として認められておることを、彼らが権利を行使することを容認することは当然のことでございまして、いま中小企業者が当面しておる金融梗塞を、さらにプラスアルファの施策を加えて緩和する、このことにはならないではないか、このことを申し上げておるのでございます。法制というものは本日ここにありまするが、この分は改正されればすぐ直るものである。国民の要望は現行制度が過酷であるがゆえに、したがってこれをさらに緩和を受けて当面の窮状をしのぎたいというところにあるのでありますから、現行制度にプラスアルファの施策が講じられることなくしては、特別の措置とは申しがたいと思うのであります。この点の御理解はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/176
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177・田中角榮
○田中国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、現行制度のもとではいま国税庁長官の申したとおりいろいろな配慮を行なっております。また行なっておりますだけではなくて、これからも制度のもとでできるあらゆる角度から検討いたして、実施をしたいということは御理解いただけると思います。新しい法律的な法制上の問題としては、税法の改正によりまして中小企業に六百億以上の減税をしようという法改正をいま御審議いただいておるわけであります。それが少ないということであれば別でありますが、政府はこの減税の法案の中では最大の努力を払ったということであります。ただ金融上の問題は、先ほど申し上げたとおり各般の措置をとっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/177
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178・春日一幸
○春日委員 それは私は明確にいたしておきたいと思うのですが、国会で論述されておりますることはすなわち一月−三月、第四・四半期においては財政の揚げ超がある、金融引き締めがある、選別融資がある、さまざまな悪条件が中小企業にしわ寄せとなってこれがかたまってまいるので、これに対して何らかの特別措置を講じなければならぬ。一方においてはやはり第三・四半期に対する財政投融資の増額等もあるであろうし、一方においては来年度における減税措置等も現に審議中の案件がある。けれどもあなたに要望されておることは、この第四・四半期、一月−三月において特に困難でもあるし、それについてさらに困難が深刻化してくるであろうから、徴税制度の上において現行制度にプラス何かの施策を加えて、これを緩和する必要があるであろう、このことを要望し、そういう方向に向かって努力したい、こういう答弁がなされておるのでございます。でございますから、このことの事例をさらに具体的に申し上げるならば、たとえば年末時における中小企業のその多忙性、あるいは金融の繁多性、こういう点にかんがみて本委員会において要望がなされて、そういうような場合には、二十日過ぎたら正月の十日ごろまで調査に行かないとか、あるいは競売、換価処分にかけるということはこれを行なわないというような、制度の上を越えたところの手心が現実に加えられ、それが通達になって出されておること、これまた御承知のとおりであります。われわれが要望し、本委員会において議決をいたしましたそのことは、中小企業者の窮状にかんがみて、そういう問題について救済することのために制度の上にプラスして、言うならば行政上の手心といいまするか、そういうものが講じられておる一例でございます。われわれは、願わくばこういう時点においては、国税通則法でありまするとか、あるいは徴収に関する諸法規の中において、制度の問題は別途論ずるとしても、その徴収の面において特別の猶予措置を、これは制度の問題として考える、あるいは運営の面において配慮をする、こういうことを望んでおるのであって、そういうことについて何らかの措置を講ずる意思はないか。ただいま国税庁長官の答弁されておるところによりますと、これは国税通則法で定められておる措置を求めがあったらやる、そんなことは当然のことですよ。延納、分納のことも、困った方に対しては一年の延納を認める、それで処理できない場合には二年間の分納を認める、これは当然のことです。払い過ぎに対しては還付する、そんなことはあたりまえです。特別の猶予措置でも何でもありはしない。いままでも定められておる措置を、ことさら別途に通達にして印刷して出すだけであって、何もそんなたいしたことはない。ありきたりのことはやるが、この際は何もやらない、そういう冷酷無比な、無感覚な残酷無類な状態であるならばそれでもいいし、そうではなくて心を痛めて何らかの措置をとりたいのだ、いま研究しておるのだというならば、そういう心を示していただきたい、こういうことを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/178
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179・田中角榮
○田中国務大臣 日夜心を痛めております。現行制度のもとで可能なあらゆる措置をとりながら、年末黒字倒産等が行なわれないように各般の配慮をいたしたい、こういう考えであります。法制を整備して国税通則法の改正案を出して、中小企業の年末対策に対してはこうするというようなことをやらなければ特別の配慮ではない、こういうふうに春日さんも思ってはおられないと思います。それはいままででも国税通則法による国民の権利であるとは言われながらも、国税庁通達を出して特に税務署も徴税という血から一歩離れて、中小企業の身になって、こういうことに対しては十分の配慮をしなさい、また中小企業者の皆さんにも、そういう問題に対して同知徹底をさせるように努力をするのでありますから、これは特別の配慮をしておるものだということは御理解願えると思います。そうでないとあなたは一体何をどういうふうにしなければ特別の配慮じゃないのか、こういうことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/179
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180・春日一幸
○春日委員 それは国税通則法にいたしましても、あるいは徴収に関する諸法規の中でも、たとえば延納あるいは分納、処分猶予の問題、それはみな定められておるのですね。そうでございましょう。現在法律によって定められておるそのことをきちっとやるというようなことはあたりまえのことでしょう。法律によって定められておる権利を国民が行使することについて、国がそれを拒否することはできませんよ。ですから現行の制度をきちっと行なえというようなことは、こんなことは官公吏の服務規律一般に関する問題と同じことであって、そのための特別の配慮にも何にもならないのです。だからこの際特別措置をやるということになればどういうことであるかと言えば、その法律をできるだけ拡大解釈をして、運用の面において手心を加える。一例を申し上げるならば、たとえば年末年始における徴収上の通達が出ておりますでしょう。たとえば換価処分はやめよとか、あるいは立入検査を手控えよ、こういうことが出されておりますでしょう。それは法律に基づいてはそういうことはできませんよ。年末年始、特に忙しいとき、また困ったときにそういう状態だから手控えようということで、本委員会の議決に基づいて出されております。そういうふうであなたは予算編成で本委員会にもちょっとさぼって出てこられないから、そういう切実な心理というものはよく銘記されておらないけれども、われわれ議員の立場は、事実上心を痛めながら——あなたのようにのほほんしゃあとして心を痛めておるのではない。切々として本委員会は心を痛めて、そのような通達を出してほしいと要請し、現に長官通達となって、中小企業にそういった面が及んでおる。だからいまここに私が申し上げるのは、やはりこの揚げ超によって資金が国に民間から吸収される、金融梗塞というものは現実の問題としてある。あなたのような大庶民的政治家がそういう感覚のないはずはない。ここに書いてありますけれども破産倒産相次いでおる。ただひとりこれは繊維業界ばかりではなしに、ずっとこれの連鎖反応をいまや起こそうといたしておる。これはあなたと池田さんの三カ年にわたるところの財政金融政策が破綻をいたして、ここに国民のいろいろな生活の面にザクロの口を開いたと言うべき状態であるのでありまするが、この功罪はまた別にながめるといたしまして、ここであなたに御銘記を願いたいことは、こういう状態になってきておるんだから、いまこそ特別の措置を講ずべきである。現行制度にプラスアルファして何らかの緩和措置をとるべきである。こういうことを中小企業者は要望し、衆参両院にまたがって各委員会の委員たちは、そのように心を痛めてあなたにこれを要望しておるわけです。あなたはそれにこたえて何らかの指示を出された。ところが国税庁徴税当局は依然として官僚だものだから、結局は打てば響かないのですね。しゃくし定木のことで、言われたとおり、さりげなく書いてきたものは、現在の法によってすでに与えられておるものを、あらためて与えるがごときかっこうをして、ここに何らかの措置をとろうとしておる。そのことは国会の意思に沿うものでもなく、またあなたの指示にこたえるものでもない。だから何らかのプラスアルファ、一例を申し上げれば、年末年始における長官通達のごとき、運用上の手心を加えていくとか、さらにそれでもいかぬということならば、特別災害が起きたときに、特別の法律や何かを緊急につくって、その事態の救済に備えてきておることでありまするから、何もそう法律をつくったり特別の措置をとることをためらう必要はないのでございます。
でございまするが、私はいまここに限られた時間にその根本論をしようとは思いません。したがって、この際できるだけすみやかに返すとするならば、納め過ぎている分を還付するとするならば、できるだけすみやかにということは、いままでどおりということと実際は同じことなんです。できるだけすみやかにというようなことは、できるだけゆっくりということと同じことなんです。そんなことは、行政府というものは幾日以内に返さなければならないと明記されれば、できるだけすみやかにするが、そういうような実態にかんがみて、一体どういう特殊効果を期待されておるのであるか、その点ひとつ大臣から、昨年そういう特別通達を出したという事実関係を念頭に置かれて、この時点において何らかの特別措置あらば、いかなることをなし得るか、この点を御考慮の上答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/180
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181・田中角榮
○田中国務大臣 別法をつくってお出しをするというような考えは、いまのところございませんけれども、現行法の解釈上許される最大一ぱい何でもいたします。こういうことをお答えいたしたいと思います。年末等に対していろいろとられた措置に対しては、当然それらと同じより以上のものでもとろうということでありますから、大体市日さんの御意思に沿える措置を考え、実行しようということであります。具体的な例示を求められれば、国税庁長官から申し上げますが、とにかく私どもにいろいろなことをやらして、まずそれを見ていただくほうがかえっていいのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/181
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182・春日一幸
○春日委員 いまあなたが御答弁されたこと、私はこれはプラスアルファの何らかの措置を年末年始の通達とあわせ考え、これを念頭に置きながら、現行法律の定められておる範囲内において、できるだけ拡大解釈をし、その救済の実が納税者に及ぶように、さらに何らかの措置を継続的に考慮していく、こういう御答弁がございました。そのように理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/182
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183・田中角榮
○田中国務大臣 春日さんの中小企業に対して非常に御熱心であるということは、十分承知いたしております。私もまた同じ考えであります。また徴税当局も今度は私より以上にその深刻さを十分考えておるのであります。でありますから、現行制度下においてでき得る限りのこと、またあなたが先ほど言われたとおり、年末年始等にとった措置は非常によかったという意味のことを言われましたので、もちろんそういうものも合わせまして、可能な限り最大の努力をいたします。こう御理解願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/183
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184・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 現在の国税通則法あるいは国税徴収法等の構成は非常によくできておって、こういう場合の措置として非常に欠けるところがあるというふうには私には考えられません。ただ、その非常に優秀な法律の規定の運用上の問題、運用が及ぼす役割というものも相当大きいものがあると存じます。たとえば先ほど非常に説明をはしょりましたけれども、還付の促進の問題でございますが、従来御承知のように、五万円以下の還付についてはすみやかに還付する。五万円以上のものについてはかなり詳細に調査をして還付をするというようなことになっておりますが、今回の通達によって、明らかに過大な還付の申告だと認められるものを除いては、直ちに還付をしなくてはいかぬ。これは所得税関係でございますが、なお法人税の中間納付額の還付につきましても、納税の成績が特に悪いというようなものを除いては、直ちに還付をしなさいというような点、そういう点は、従来の運用から見てかなり国税庁としては踏み切ったつもりでおります。また、延納あるいは納税の猶予等にいたしましても、案外地方でこういう特典を御存じない方もおられ、また税だから、どうしても支払いの期限までには納めなければならぬというような方が大多数でございまして、そういう方に対して、税務署が積極的にこういう特典がございますから、無理がある場合には、十分そういう特典を御承知おきくださいということを窓口でもってお知らせするということは、必ずしも、当然の特典だから皆さん御存じで、そういうことは問題ないじゃないかとおっしゃいますが、しかし私は、実際の行政の場面といたしましては、この運用がいいか悪いかによって、相当中小企業の方々の資金繰りには影響を及ぼすものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/184
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185・春日一幸
○春日委員 終わります。私は申し上げますが、いま国税庁長官が言われておりますことは、依然として——あげ足なんかとろうと思わないが、ただ国税通則法に欠けるところがないなどと言われているが、制定の時点においては完全であったけれども、その制度そのものが、本時点、さらに国民の窮乏の度を加えた時点において完全であるかどうか、これは言いがたい。これはレーニンが言っているごとく、真理は可動的でありかつ条件付である。したがって刻々に変わっていく条件の中で、ある時点においてつくったものが完璧であるなどというようなことをあなたが言うことが間違っておる。それは絶えず念査をしながら、直すところはないか、足らざるところはないか、その補完的な措置は、われわれもその義務をになうており、その役割を果たしておるのであるから、そんな要らぬことを言ってもらう必要はない。
そこで最後に、私は大臣に申し上げますが、とにもかくにもこの通則法は、このような開放経済に対処して、破産、倒産相次ぐ場合には、さらにプラスアルファ、何ものかを加えなければならないのではないかという配慮があってしかるべきである。そういう問題については、結局は国会を代表してあなたが大蔵大臣であられるのであるから、その点においては、国会で御答弁なさったような心でもってやはり政策指導というものがなされてしかるべきであると踏み切られたときには、法案の改正、御提出がある場合もあるであろうが、その儀に及ばずというのならば、ただいま御答弁になった年末年始の特別通達等もあるので、運用の面において、なおその心を相手方に通じさせていくというそういうあり方もあるのです。納税者は敵ではない、国家の敵ではないのです。だからそういうほんとうに内輪の家族がいま悩んでおるときにどうしたらいいか、こういうような問題については現行制度を越えて、特別の通達とかそういうような格別の配慮、こういうものがなされてしかるべきであり、しかもこのことは、継続的に大臣の責任と見識においてそれがなされていくという御答弁でございますから、このことを深く御期待をいたしております。
長官においては、当然最大限の拡張解釈をもって、その好意のあるところを十分徴税の現場に反映されることを強く要望いたします。
政策理論については、ただいま有馬理事からも御注意がありまして、金曜日にそういうような大きな理論はみっちりやられてはどうかということでございますから、本日はこれでやめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/185
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186・山中貞則
○山中委員長 次会は明後二十一日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X00919640219/186
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