1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年二月二十五日(火曜日)
午前十時五十分開議
出席委員
委員長 山中 貞則君
理事 臼井 莊一君 理事 原田 憲君
理事 藤井 勝志君 理事 坊 秀男君
理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君
理事 堀 昌雄君 理事 武藤 山治君
伊東 正義君 岩動 道行君
大泉 寛三君 奧野 誠亮君
押谷 富三君 金子 一平君
木村 剛輔君 小山 省二君
濱田 幸雄君 藤枝 泉介君
渡辺美智雄君 佐藤觀次郎君
田中 武夫君 平林 剛君
春日 一幸君 竹本 孫一君
出席政府委員
大蔵政務次官 纐纈 彌三君
大蔵事務官
(主税局長) 泉 美之松君
国税庁長官 木村 秀弘君
委員外の出席者
大蔵事務官
(大臣官房財務
調査官) 中嶋 晴雄君
専 門 員 抜井 光三君
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二月二十一日
相続税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一六号)
国有財産法第十三条の規定に基づき、国会の議
決を求めるの件(内閣提出、議決第一号)(参
議院送付)
同月二十四日
納税貯蓄組合法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一一一号)(予)
同 日
政府関係機関に対する大蔵省の賃金抑圧並びに
不当干渉即時撤回に関する請願外一件(五島虎
雄君紹介)(第五五八号)
同外一件(多賀谷真稔君紹介)(第五五九号)
同外一件(吉村吉雄君紹介)(第五六〇号)
同外二件(足鹿覺君紹介)(第五八一号)
同(小林進君紹介)(第五八二号)
同外一件(日野吉夫君紹介)(第五八三号)
同外二件(河野正君紹介)(第五九四号)
同外六件(楢崎弥之助君紹介)(第六六四号)
同(長谷川保君紹介)(第七一二号)
音楽、舞踊、能楽等の入場税撤廃に関する請願
外二件(藤本孝雄君紹介)(第五六一号)
同(藤本孝雄君紹介)(第六二七号)
入場税撤廃並びに労音、労演に対する不当課税
の取消し等に関する請願外一件(野間千代三君
紹介)(第五九五号)
元満州国政府等職員期間のある非更新共済組合
員の在職期間通算に関する請願外六件(田中龍
夫君紹介)(第六二六号)
同(田村元君紹介)(第七九五号)
同(原茂君紹介)(第八四二号)
農業協同組合に対する法人税及び事業税等の撤
廃に関する請願(佐伯宗義君紹介)(第六八四
号)
特高罷免及び武徳会追放等による警察退職者救
済に関する請願(大平正芳君紹介)(第八一四
号)
砂糖消費税及び関税の減免等に関する請願(春
日一幸君紹介)(第八一五号)
酒類販売の免許制度存続に関する請願(岡良一
君紹介)(第八四三号)
同(益谷秀次君外二名紹介)(第八四四号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
二月二十四日
軽自動車税の賦課徴収事務の簡素化に関する陳
情書
(第七二号)
中小企業信用保証制度の改善に関する陳情書
(第七八号)
国有地にある市道敷地の所有権名儀変更に関す
る陳情書
(第八七号)
年金積立金還元融資の資金わく増額等に関する
陳情書
(第一二
四号)
葉たばこ収納価格引き上げに関する陳情書
(第二四六号)
揮発油税等の増徴反対に関する陳情書
(第二六二
号)
同
(第二六三号)
同
(第二六四
号)
同
(第二六五号)
同
(第二六六号)
同
(第二
六七号)
同
(第二六八
号)
同
(第二六九
号)
同
(第二七〇号)
同
(第二七一号)
同
(第二七二号)
同
(第二
七三号)
同
(第二七四
号)
同
(第二七五号)
同
(第二七六号)
同
(第二
七七号)
同
(第
二七八号)
は本委員会に参考送付された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
相続税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一六号)
納税貯蓄組合法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一一一号)(予)
所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
三六号)
法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一五号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/0
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001・山中貞則
○山中委員長 これより会議を開きます。
所再税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
質疑の通告がありますので、これを許します。堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/1
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002・堀昌雄
○堀委員 本日は、所得税法について少し根本的な問題の論議をいたしたいと思います。
所得税法の中で現在の所得税の負担の状態を見ますと、最も大きな負担というのは給与所得であります。そこで、今回も給与所得控除の改正が提案をされておるわけでありますけれども、まず第一に給与所得控除というものの基本的な概念といいますか、ここがはっきりしないと今後の給与所得の控除をする場合にもいろいろと問題が出てくる、こういうふうに考えます。そこで、本年度の給与所得控除を提案するにあたって、給与所得控除というものは一体何なのか、どういう理由でそれが行なわれるのかということを第一としてお伺いをいたします。
〔委員長退席、坊委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/2
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003・泉美之松
○泉政府委員 給与所得控除の本質が何であるかということにつきましては、かねてから当委員会でいろいろ御論議のあったところでございますが、給与所得控除にはいろいろの意味がある。まず第一には、給与所得につきましては御承知のとおり特別に経費控除をいたしておりません。しかしながら給与所得者といえども、その収入を得るために必要な経費があることは当然でございますが、これを各人別に経費を計算することはとうてい困難でございますので、その概算的控除として給与所得控除を設けて、収入を得るために必要な経費の概算的控除とする、これが一番大きな性格であろうと思うのでございます。その第二は、給与所得につきましては、御承知のとおり毎月源泉徴収をされます。申告納税の所得者に比べまして、納期がやや早いということがあるわけでございます。そういった点から納期の早いことによる利子部分がある、これが第二でございます。第三番目は、給与所得の性格は事業所得に比べまして、担税力の観点から見て弱い点があるという点でございます。それから第四番目は、これは税の理論だけでなしに実行上の問題も加わっておるわけでございますが、給与所得者の所得の把握は源泉徴収によりまして正確に行なわれる。事業所得者の場合にはその所得の把握が必ずしも十分適切に行なわれがたい性格がある、こういった点から給与所得と事業所得の両者の把握のバランスが必ずしもとれていないといった面をも考慮して、給与所得控除を設けるべきだというのでございます。およそ以上申し上げました四つの点を考慮いたしまして、給与所得控除を設けるということにいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/3
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004・堀昌雄
○堀委員 そこで一つ一つについて少し論議をしてみたいのですが、概算控除の経費というものといまの給与所得控除のあり方は今度改正になりまして、基礎控除的な部分として二万円、それから四十万円までが二〇%、それをこえて一〇%最高十四万円という改正になるわけでありますけれども、そこでその概算的控除経費というものの出し方ですね。どこかで例をとってもらってもいいのですけれども、要するに給与所得控除の中における——これはみな性格がちょっと違いますからね。概算的控除というもののウエートというのは大体どのぐらいになっておりますか。利子部分に見当たる部分を大体どのぐらいに見て、担税力が確かに事業所得に比べてそのときは私は同じだろうと思うのですが、給与所得者が死亡したりした場合におけるその後の問題という形で全体を含めてみると、確かに弱い。それから把握率とかいろいろあると思うが、何となくこれをかきまぜて何となく抽象的に出したというかっこうでは、少し説得力が弱い。そこで、このウェートをどういうかっこうに考えておるのか、ちょっと答えてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/4
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005・泉美之松
○泉政府委員 給与所得控除につきましては、先ほど申し上げましたように四つの性格があるということでございますが、それではその中で第一の概算的控除のウエートがどのくらいであるかということはまことにむずかしい御質問でありまして、先ほど申し上げましたように、概算的経費の部分が非常に大きい。源泉徴収を月々行なうことによる利子相当分というのはわずか千円にも足らない程度の金額でありまして、これはウエートが小さい。問題は、給与所得が他の所得に比べて担税力が弱いという点と、それから他の事業所得なんかに比べて所得の把握が正確に行なわれる、そのバランスという点はなかなか数字的に申し上げることはむずかしいのでございます。私どもといたしましては、この四つの部分につきまして金額をはじき出して、それだから給与所得控除は幾らであるべきであるという議論を、いろいろいたしてはおりますけれども、正確に公の権威を持って申し上げるほどまだわれわれその点の検討を十分にいたしてはおりません。そのためにたいへん恐縮でございますが、その内訳で幾らのウエートというのはいま少し検討させていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/5
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006・堀昌雄
○堀委員 いま少し検討してもらいますが、一体いつごろになったら答えられるか、いま少しというのはどのくらいの時間ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/6
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007・泉美之松
○泉政府委員 御承知のように税制調査会は来年の七月まで存続することになっております。もちろんその後も委員が交代いたしまして税制調査会は続けていかれるわけでありますが、しかし税制調査会として現在の委員によって、少なくともここ当分の税制調査会の基本的方向はこうあるべきであるという答申を本年中にいただきたいというつもりで私どもとしては税制調査会の審議の促進をお願い申し上げておるのでございます。私どもといたしましては、できるだけ本年中にそういった点につきまして答申をいただきたいと思っておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/7
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008・堀昌雄
○堀委員 実は私がたいへんむずかしいことを聞いておりますのは、どうもこういうことになっておるようですが、抽象的概念では数字をはじき出すときに現実につながらない。そこでやはりこういう税の問題については多少理論的な何かをきちんとしないと、皆さんの税制改正というのははっきり数で出ることですね。片方は数で出て片方は抽象的なものがこうあると、一体それは何できめたのかと言われると、どこかに恣意的な判断というものが入らざるを得ない。その判断の適否ということで、非常に問題が複雑になる要素があるので、私は、少しそういう意味で、どこかにひっかかるようなかっこうのものを規定をしないと、今後の問題の取り扱いのたびに、ここへ問題が常にひっかかってくるおそれがあるということを強く感じておるわけです。
私は、今度のこの給与所得控除の問題の中にちょっとわからない点があるので、ひとつ御説明をいただきたいのは、税制調査会の資料によりますと、要するに、基礎控除のところに一つひっかかったものの考え方が出されております。「概算経費的要素のうち、固定経費的な部分に着目して、これを控除するため、」三十六年度に創設をされた。その創設をされたときの取り扱い方によって、「基礎控除額の外枠において二〇%の定率による給与所得控除の適用を受ける」という一つの設例ですが、こういう考え方は具体的だから、これが一つのルールとして確認をするのなら、そのときの固定的経費として定額控除に織り込むべき金額は一万円程度になる。半分見たわけですね。そうすると、このルールでいくと、今度は、一体、基礎的控除部分というのは、固定経費的な部分というのは幾らになりますか、このルールのままなら。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/8
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009・泉美之松
○泉政府委員 御承知のように、この定額控除の制度は、昭和三十六年の税制改正の際設けたのでございますが、これをその当時の考え方で申しますと、固定経費的な部分が当時は二万円あって、その半分を定額控除でやっていくということだけであるわけでございます。今度御承知のように、基礎控除を一万円引き上げることになりますので、そういう算式でいたしますと、固定的経費の部分が四万円ということに相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/9
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010・堀昌雄
○堀委員 いまの四万円というのは、そうすると、この前の二万二千五百円の見合いなのか、半分にした一万円の見合いなのか、ちょっとわからないのですが、それはどちらの見合いになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/10
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011・泉美之松
○泉政府委員 二万二千円のほうの見合いでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/11
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012・堀昌雄
○堀委員 そこで、一応税制調査会は、今度の答申を含めて二回ですね、こういう一つの取り扱いをしたわけですね。そうすると、これはもう今後ひとつルールにしたらどうか。要するに、基礎控除がもし上がってきたときには、二〇%の外ワクによる定率によって出てきたものをひとつ固定経費の部分と見て、その半分だけは、今後もしそっちが上がったら自動的に給与所得も必ず動かす、こういうことになれば、私は、非常に問題ははっきりしてくると思うのです。だから、こういうふうな一つの概念規定のようなものが、こういう委員会の中で確立される必要がある、私は、こう思うのです。これは後に大臣に出てきていただいて、大蔵委員会と大蔵省側との統一見解として、私は、確認をしていこうと思いますけれども、そういうふうな考え方をひとつ土台にすることが、こういう給与所得控除を今後取り扱う上において、非常に必要でないか。それでないと、私、あといろいろ問題が起こると思うのです。今度給与所得控除の引き上げをする必要性の問題を、税制調査会は、「給与所得者の負担が、他の所得者に比べ相対的に重くなっているものと認めた。」これが一点ですね。二番目は、「専従者控除の控除限度額の引上げにより、事業所得者の負担軽減を勧告していることとも関連して、事業所得者の負担軽減との権衡を図るためにも、給与所得者について、その負担軽減を図ることが特に必要である」この二つあるわけですね。一つのほうは、いまの一、二、三、四のほうの問題で、まあ問題は片づきますね。片づくけれども、片づかぬ部分と見ておるのは、いまの固定分については、いまの半分ということで見たわけですね。そうすると、あとの残りのほうですね。定率部分、二〇%、一〇%、頭打ちのこの定率部分についても、何かここにルールをこの際確立をして、その他のいろいろな関係の変動に応じて、こちらも動くんだというような考え方をしたほうが、税制改正というものの合理性がよりふえてくるんじゃないか、こういうふうな感じもするんですね。主税局長は、どう考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/12
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013・泉美之松
○泉政府委員 お話のように、給与所得控除を設ける場合の一定のルールというものをつくり得るかどうかという点でございますが、先ほど申し上げましたように、三十六年の改正のときの考え方、給与所得の固定経費的部分が幾らあるか、これは実は三十六年の改正のときに、いま申し上げましたようなこの数式論だけからでなしに、実額の面から見て、実際給与所得者がどの程度経費が本来かかっているものかどうかということにつきまして、いろいろ試算をいたしたのでございます。ところが、御承知のように、給与所得者でもいろいろ千差万別でございまして、その固定的な経費あるいは固定的でない経費、これを正確に計算することが困難でございます。結局、わが国の昔からの給与所得控除の額というものを基準にしてやっていかざるを得なかったのでございます。お話しのように、しかしそれでは給与所得控除について一定の理論がなくては今後の検討の際に困るではないかということ、まことにごもっともでございまして、私どもとしましては、そういう点からいたしまして、税制調査会におきましてそういった点の検討をお願いいたしておるのでございます。ただ、そのルールは、一応もちろん原則的なルールをつくる必要があろうかと思いますが、基礎控除を動かした場合には必ず給与所得控除を動かさなければならないかと申しますと、やはりそのときどきの減税財源とのからみ合いもございますので、基礎控除一万円を動かしたら給与所得控除は幾ら動かさなければならないというルールはなかなか確立しがたいかと思いますが、しかし一定の理論をそこに見出して、そうしてやっていくべきであるという御意見はまことにごもっともであると思いますので、今後そうした方向で理論づけを検討いたしてまいりたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/13
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014・堀昌雄
○堀委員 実は私少しこの給与所得を調べてみたのですが、沿革を調べてみますと、これは非常に日本の場合には過去には給与所得控除というのは大きくあったわけですね。ずっと大正二年に始まって、その後大正九年に改正をされて、大正九年の改正なんというのは、いまから考えてみると、まことに給与所得者にとっては優遇措置であるし、それは大正十五年においてもさらにだんだん前進をしてきておって、戦前における給与所得者というものは非常に優遇されておった。ところが、これがこういうかっこうになったもとを考えてみますと、これはシャウプの税制勧告でがさっとここで変更しておるということが非常にはっきりしておりますね。これはシャウプがなぜこの給与所得控除についてこういうふうな大なたを振るったのかという点には、私は、やはり国情の相違というものが非常にはっきりあると思う。いまのあなたのほうで問題にしておる四番目の把握率の問題については、おそらく私は、アメリカにおける給与所得と事業所得の把握率の差というものは、もしあったとしても、きわめて少ないものじゃないか。アメリカのいろいろな国民性なり、こういう税負担に対する国民常識といいますか、国民道徳といいますか、そういう考え方から見ると、非常にここに相違がある。そういう前提のもとに、また当時のシャウプが行なった税制改正のいろいろな日本の過渡的諸条件というものの中で、こういうふうに大幅な変更がされてきた。それからまた徐々にいま戻りつつあるというのが現状ですけれども、残念ながら戦前の姿に全然戻ってこないわけですね。一体いつになったら戦前の姿になるか予想もつかないというほどのゆるい歩みといいますか、私はそこに日本の特殊性といういろいろな問題、これは把握率の中で特に大きな問題があると思うんです。こういうことを考えてみると、私はどこかに必要な理論的な裏づけをきちんとして、もう少し給与所得については思い切った措置が必要であるし、そのことはどういうことにつながるかというと、著しく給与所得の納税者がふえてきておるわけですね。そして、現実には事業所得の納税者はだんだん減りつつあるということですね。ですから、日本の所得税の大半というものは、給与所得によってまかなわれるということになってくるならば、所得税の全般的な問題もさることながら、給与所得というものに対する考え方は、所得税問題を論議する上に非常に私は今後の問題点になるだろうと思う。それをなぜ私は特に強調するかというと、現在とられておる自由民主党政府のやり方というものは、こういう所得に対するよりも利子所得その他の資本所得をきわめて優遇するというかっこうが片面にあるわけですね。片面のそれを優遇するのならば、私はやはり給与所得もそれに見合ったようなかっこうで、多少おくれるにしても、優遇措置を講ずるのが国民のための税制として当然だ、こういうふうに考えるわけですね。そこであなたがいまお話しになったように、理論的にきっちりとつけるのはいいけれども、財源の関係で問題がある、こういうことはもちろん当然のことでありますが、理論的にはっきりしておれば、財源ができたらそこからやらなければならぬということになる。理論的な問題が少し不明確なために、その時点における力関係のようなものが入ってきて、この給与所得の控除の問題がややもすれば不十分な形で取り残されていくということは、これは一千七百万人近い給与所得者の立場から見てどうしても納得ができない、こういうふうに考えるわけです。
そこでもう一つお伺いをしたいのは、今度税制調査会のほうから出た答申案、これが実は政府案では変更になりましたね。これは実は政務次官もいないしするから、政治的な問題は大臣に聞きますが、事務当局側で一体その答申が実現できなかったのはどの点に問題があったのか。これは三つあると思うんですね。要するに理論的なことが薄弱なためにそれが実現できなかったのか、他との権衡の関係があってできなかったのか、財源がなくてできなかったのか、できなかった理由というのは三つくらいだろうと思うのですが、事務当局としてはできなかった理由はどこにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/14
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015・泉美之松
○泉政府委員 今回の税制改正にあたりまして、税制調査会の給与所得控除引き上げの答申の一部を実施できなくなった理由といたしましては、二つあるのでございます。一つは、御承知のように、税制調査会の答申は定額部分を一万円引き上げまして二万円の控除にするというのが一つと、いま一つは定額控除後の給与の収入金額五十万円まで二〇%にするというのが一つと、いま一つは最高限度の十二万円を十五万円に引き上げるという、この点にあったわけでございます。私どもは定額部分を一万円引き上げる点はこれを採用することができる。ただ定額部分を一万円引き上げた際に、上のほうの最高限度を三万円引き上げるということは、低い所得者と現在頭打ちしております。十一万円以上の所得者、給与収入者のバランスから見て、この上のほうを三万円上げることははたして適当であろうかどうかということを考えまして、上のほうは三万円引き上げでなく二万円くらいでいいのじゃないか。もちろん下とのバランスからいいますと、一万円引き上げという意見もあろうかと思いますが、しかし最高限度の十二万円というのは御承知のとおり、昭和三十二年からずっと据え置かれておるわけです。三十六年に定額控除の一万円が設けられましたときにも、最高限度は十二万円に押えてあったわけであります。そういった点を考えますと、二万円くらい引き上げることは適当であろう。しかし三万円引き上げることは、いかにも給与所得者の七十一万円以上の収入の者に有利になるという感じで、七十一万円以下の収入者との間のバランスが問題になるのじゃないか、こういう点、たまたま私ども主税局の首脳部がその七十一万円以上の収入の階層におりますので、世間からお前らだけがよくなるのはおかしくはないかという批判も受けるのではないかとも考えられるので、この点は二万円引き上げにとどめるのがよくはないかという判断をいたしたのであります。
それからいま一つの定額控除後の給与の収入金額、現在は四十万円まで二〇%となっておりますが、これを五十万円まで二〇%とするという点につきましては、四十一万円まで二〇%という制度がかなり長い間据え置かれておりますので、実はこれはできれば答申の趣旨をくんでやりたかったのでございますが、財源の関係でこのほうはむずかしいということに相なったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/15
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016・堀昌雄
○堀委員 そうすると後段のほうですね、いまの四十万円まで二〇%を五十万円まで二〇%にした場合における減収の差額は幾らですか。財源上の問題ですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/16
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017・泉美之松
○泉政府委員 これは平年度約六十五億から七十億くらいの計算になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/17
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018・堀昌雄
○堀委員 そうすると、上の三万円を二万円にしたというのは、大体二十五、六億ということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/18
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019・泉美之松
○泉政府委員 さようでございます。大体二十五億から三十億の間でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/19
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020・堀昌雄
○堀委員 そこで今度はちょっと角度を変えて、実はいまの日本の所得の状態ですね、これは日本の中だけを見てもどうにもならぬので、皆さんが出しておられる「主要諸国における給与所得者の所得税負担額の比較」というのがこの資料の十一ページにあります。これを見て私は日本の租税の負担のあり方について特に強く疑問を感じるのは、ちょうど上から四段目のところにドルで二千四百ドル、それから円で八十六万四千円という所得階層のワクがありますね。ここでようやく独身者、夫婦者、夫婦及び子二人というところにおおむね諸外国とも課税が行なわれるところが出てくるわけですね。日本の場合にはいまあなたのお話のように、、実は課税所得で五十万というのは、それはいろいろ家計の状態もあるでしょうけれども、給与の面から見ると、おおむねここらへくるのじゃないかという感じがいたします。そこで、独身者を一〇〇として、一体日本の場合における夫婦者と夫婦及び子二人というのは、諸外国との関係でどうなっておるかをちょっと調べてみますと、日本の場合は独身者が一〇〇%のときに夫婦者がその独身者の七六%を負担しておる。夫婦及び子二人だと六三%の負担になる。アメリカの場合は独身者が一〇〇に対して夫婦者が六一%ということで、夫婦及び子二人はこのときにはまだ税金はかからないのですね。今度はイギリスへいくと、同じように独身者を一〇〇とすると、夫婦二人のものの場合は七三、それから夫婦及び子二人は二八%とがさっと下がるのですね。三分の一になってしまう。それから西ドイツの場合にも、まあ夫婦ものは七三%くらいですが、夫婦及び子二人のところへくると三一%とこれもやはり三分の一ほどです。一番顕著なのはフランスで、独身者を一〇〇としてみると、夫婦ものが五一%で、夫婦及び子二人のところは八%しか負担していないのですね。こういうふうに諸外国の例を見ると、いままで設定をしたところが、国民所得その他の関係でどうかということはいろいろ議論があるでしょうけれども。日本の場合に、夫婦及び子二人という家計というのは夫婦二人に比べていろいろな点で非常に費用のかかる状況なんです。二人あるいは三人みんなそうですけれども、非常に費用のかかる条件のところが、諸外国の場合は独身者に比べて大体三分の一くらい。ところが日本の場合は三分の二なんですね。これは今後の日本の税を考えていく場合に非常に考えなければいけないところではないか。それはなぜかというと、だんだん文化が進歩をしていくにつれて一人の消費するいろいろなものというのはだんだん上がると思う。教育の問題にしても、あらゆる意味で文化が進むにつれて経費というものが一人ふえるごとにふえる比率というのは高くならなければいかぬはずです。本来そういう自然の姿があるのなら、税制の面でもそれが配慮されていかなければならぬと私は考えるのです。そうしてみると、いまの給与所得控除の問題は、いまの下の固定的部分が二万円ならばもちろん少な過ぎると思うけれども、やはり上のほうの中堅層というところが、子供が大学に行く、高等学校に行く段階で考えてみると、私は必ずしも現状でいいとは考えられないわけですね。これは諸外国を含めて、少なくとも池田さんは日本も先進国になったんだということをよく言われるのなら、やはり税の面でも私はある程度先進国並みの考え方をとるということが非常に重要じゃないか、こう考えます。ひとつ主税局長は、いま私が提起をした問題について一体どう考えるか、日本の場合、今後それじゃどういうふうな方向でこういう問題を処理していこうとするのか、ちょっとお答えをいただきかい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/20
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021・泉美之松
○泉政府委員 お話のように、諸外国の所得税とわが国の所得税を見ました場合には、独身者に比べまして扶養親族の多い世帯の税負担というものが諸外国の場合に比べてかなり重くなっております。これは御承知のとおり、アメリカにおきましては、基礎控除も、配偶者控除も、扶養控除も一律に一人六百ドルということになっておりますので、わが国のように、基礎控除は今度の改正によって十二万円になり、配偶者控除が十一万円になり、扶養控除が年齢十三歳以上が五万円、十三歳未満が四万円というような大きな差異があるのに比べまして、そういう点で非常に違います。また、イギリスにおきましても、一律ではございませんけれども、扶養控除のウエートが日本の場合よりもかなり高いのでございます。そのために、お話のように八十四万円の所得者のところで、諸外国と比較いたしますと、わが国の場合、独身かあるいは夫婦ものに比べて、夫婦子二人の場合の税負担はかなり重くなっております。これは結局わが国の税制の沿革に基づいている点があろうと思うのでございます。御承知のように、戦前のわが国の所得税におきましては、扶養控除は税額控除でございました。それが戦後所得控除に改められまして今日に至っているわけでございますが、何ぶんにも税額控除を所得控除に直しました関係上、所得控除の額が、出発点がかなり低めであったわけでございます。その後だんだんと改定をいたしてまいっておりますけれども、まだまだ配偶者控除、扶養控除の額が基礎控除に比べまして低いという点を免れないのでございます。そういう点からいたしまして、たとえて申しますと、昭和三十五年をかりにベースといたしまして比較してみますと、一人世帯の課税最低限は、三十九年度改正によりますと、改正案が実施されることを考えますと一四五・六伸びております。これが二人世帯では一五〇、これは三十六年に配偶者控除を創設したことがかなり大きく響きまして、二人世帯は一五〇になります。ところが三人世帯になりますと一四六・五、独身世帯よりは少しいいですが、ほとんど変わらない。それから五人世帯になりますと一四三一八ということで、独身者世帯の場合の課税最低限の引き上げよりもおくれている。これは結局扶養親族控除がまだ低いからであるというふうに考えられるのでございます。そういった点から申しますと、今後のわが国の所得税の改正におきましては、いま申し上げましたように、配偶者控除、扶養控除の改正に相当重きを置いてしかるべきではないかという点が考えられますと同時に、給与所得者につきましても二〇%の控除をする階層をもう少し上のほうに持っていくということが必要であろうと考えているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/21
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022・堀昌雄
○堀委員 いまの答弁のように、やはり私は今後の税制のあり方として、基礎控除的なものの中に一番概念的な普通の基礎控除の問題ももちろんあると思いますが、やはりこれはもう少し差を縮めないと、要するに西ドイツ、イギリスの倍負担をしているのですね。フランスとの関係なら八倍負担しているのですよ。実際この四人家族はね。こういうことはやはり今後日本が少なくとも所得水準が上がり、文化が全体として進んでいく過程では、よほどこれは真剣にひとつ税制調査会でもこれを取り上げてもらって、過去の沿革が低かったらいつまでたっても低いのだということではなくて——過去の沿革の時代と現在とはいろいろと世帯の構成のあり方も違うのですね。昔は大学にいまのようにたくさんの人が行かなかったし、高等学校にいまほど私の中学の時代は行かなかったのではないか、要するに教育水準というものは非常に上がってきているし、その他諸般の情勢から見るならば、私はどうも課税最低限というようなものが、標準生計費というか、最低生計費というようなことに比重がかかっておるあの考え方は、やや私は問題があろうかという感じがするのです。最低のところという問題のとり方では、私は今後の問題は解決しないんじゃないかという気がするのです。なぜかというと、最低生計費のあの中で私はちょっと聞きたいのですけれども、子供はどういう学校へ行っておるのか。あなた方の標準世帯は夫婦と子供三人ですね。あの生計費で出しておる中の子供の就学状態をどこに設定しているのか、それをちょっと聞きたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/22
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023・泉美之松
○泉政府委員 何度も申し上げるようで恐縮でございますが、私どもといたしましては、マーケット・バスケットによる食料費を基準にして算定した生計費というのは基準的な生計費でございまして、最低生計費という考えではないのでございます。その点を断わっておきます。
いまのお話の標準世帯、これは家計調査からいたしまして、統計上一番出てくる頻度の多いいわゆるモードのところを出しておるわけでございますが、これは標準世帯におきまして夫は四十二歳、妻は三十八歳、第一子が十三歳、第二子が十一歳、第三子が四歳、こういったところが家計調査の上からモードとして出てまいるのでございます。この点からいたしますと、十三歳というのは中学一年、十一歳が小学校四年、四歳はこれから幼稚園に行くという状態になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/23
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024・堀昌雄
○堀委員 それで見ると、要するに教育負担というようなものはこの中には見ていないわけですね。大学へ行っている子供、高校へ行っている子供、これに対して子供の年齢を上に五年ずらすと大体大学へ一人、高校へ一人、小学校へ一人、こういうかっこうになるんですね。義務教育でも負担がかかっているのですけれども、しかし高校、大学の負担に比べると義務教育のほうは何といっても少ないです。そう考えてみると、いまのそれはモードですからまあいいですけれども、私は基準というのもどうかと思うのです。私は日本の場合には最低生計費だと思うのですね。なぜかというと、保護世帯と比べて一体どうだ、保護世帯との比べ方で見ても、保護世帯というのは食えないのです。生活保護というものは食えないというのはわれわれ実態調査ではっきり実証している。大体生活保護費の五〇%増ということでようやく生きていっているのが現状であり、保護されている生活費なんですが、そういうものにこだわると、いま問題を提起しておる諸外国との関係というものは実際問題としてベースに乗ってこなくなるのです。そこで、権衡の問題というものを国内だけでなく世界的な視野で見るということは、私は当然必要じゃないかというふうに思いますから、この点についてはひとつそういう日本の文化的な発展段階に応じた標準的生計費というものを、一ぺん私は税制調査会で考えていただきたい。少なくとも子供が大学にも行き高等学校にも行っておるという状態で、そうなると当然私はマーケット・バスケットは変わってくると思います。子供の年齢の相違によって変わってくると思う。それからまたこの間実はわれわれの同僚が新聞に書いておる中で、日本人の背の低いのはやはり良質たん白質が不足だということを指摘しておりますが、私はその点は同感だという感じがいたします。どうしても高たん白なものを食べるということになれば、これは生計費も上がってくることですから、こういう基準生計費もいいでしょう。しかし今度は、考えられる標準生計費というか、そういうものもひとつ問題として提起して、それとの間の問題を討議しながら、諸外国のいまのような方向に順次近づけるようにひとつ努力をしていただきたい。
その次に、ここで第一点というものが終わって、第二点目に、給与所得の権衡は事業所得その他の所得との問題、専従者の問題というのが出ておりますね。そこで国税庁長官に、この論議をする前に、いまの日本の事業所得者の実態をひとつ御説明をいただきたい。それは何を伺いたいかというと、まず最初に事業所得者の中には商業その他の一般的な事業に従事しておるものと、それから農業、水産業その他もありましょうが、農業といまの事業という二つに分けて、三十八年でけっこうです。七年でもいいですが、全体が一体農業所得の納税者というのは幾らあって、事業所得の納税者が幾らある、その中の青色と白は、実数はいいですが、ウエートとして見ると一体幾らと幾らか、これをちょっとお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/24
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025・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 昭和三十七年度で申し上げますと、営業所得者が約百万でございます。それから農業所得者が二十四万九千人でございます。そのうち青色申告をされておられる方が、農業につきましては約一万で、ほとんどとるに足りない数字でございますが、その他の営業につきましては約四十五万でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/25
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026・堀昌雄
○堀委員 そうしますと、結局農業の場合は確かにこれはほとんどが普通の白の申告だと見て間違いがないのですが、営業の場合は半分しか青はないですね。あとの半分より少し多い目が白ですね。まずこの点を最初に確認をしておきたいと思います。
その次にちょっとお伺いをしますのは、いまの四十五万の青色申告の中身になるのですが、四十五万の青色申告の中で、そのまま申告を認めたのが一体幾らで、修正申告になったのが幾らで、更正決定をしたのが一体幾らあるのか、ちょっとお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/26
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027・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 ただいま申し上げました四十五万の青色申告者のうち当初申告を是認いたしましたのが約二五%でございます。それから修正申告を出されたものを是認いたしましたのが約一〇%、それから更正をいたしましたのが千七百ばかりで、ほとんどパーセンテージはゼロでございます。それからそのほかに調査省略をいたしましたのが四五%ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/27
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028・堀昌雄
○堀委員 ちょっとよくわからないのですが、四十五万の内訳は、是認が二五%ですね。修正が一〇%、更正決定はゼロですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/28
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029・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 ゼロではございませんが、千七百人千七百人でございますから、パーセンテージとしてはほとんどゼロに近いパーセンテージになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/29
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030・堀昌雄
○堀委員 調査打ち切りですか、調査何とかというのは四五%で、総計して一〇〇%にならないのですが、あと何かあるでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/30
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031・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 もう一度申し上げます。当初申告を是認いたしましたのが二五%、修正申告を是認いたしましたのが一〇%、調査の省略をいたしましたのが四五%、更正がゼロ、それから無資格等として処理いたしましたのが二〇%でございます。合計して一〇〇%でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/31
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032・堀昌雄
○堀委員 そうしますと、さっき青色が四十五万ということになっていますが、無資格というのは要するに白になってしまったわけでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/32
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033・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 この無資格と申しますのは青色の取り消しではございませんので、納税の資格なしという意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/33
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034・堀昌雄
○堀委員 要するに課税対象ではなくなったということですね。そうするとやはり二〇%は落ちますね。四十五万あると言ったけれども、このうちの二〇%というのは落ちるわけだから、九%落ちたら三十六万ということですね。正確にいえばそういうことになりますか、お答えください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/34
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035・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 そういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/35
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036・堀昌雄
○堀委員 わかりました。そこで私これを拝見して、調査省略というのが四五%あるのですね。調査省略というのはどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/36
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037・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 これは税務署におきます事務量からいたしまして、そこまでは手が回らない、したがって当該年度においては調査を省略するものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/37
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038・堀昌雄
○堀委員 調査を省略して当初申告を是認したとこういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/38
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039・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 調査した結果、申告を是認したということではございませんけれども、結果的にはその申告をそのまま認めた、そういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/39
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040・堀昌雄
○堀委員 ちょっとおもしろいことになってきたからここだけ少し聞きます。そうすると調査を省略して結果として一回是認をしたのですね。次の年度になるとひっくり返ってきて、調査しないで是認していたからといって、あれをもう一ぺん修正しろということが起きるか、起きないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/40
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041・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 そういう場合もございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/41
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042・堀昌雄
○堀委員 そうすると、これはペンディングにしておいてあるということですね。是認じゃないですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/42
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043・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 結果的には先ほど申し上げましたように是認という結果になります。もちろん次年度以降においておかしい点が出てくれば、前年度以前にさかのぼって調査をし、あるいは修正をしてもらうとか更正をするとかということがございますが、しかしながら実際問題としては前年度以前にさかのぼって更正をいたしたという例は非常に少ないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/43
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044・堀昌雄
○堀委員 そうすると、変な言い方ですが、いま全体の中の四五%あるものが、またウエートが変わってきますね。二〇%というのは無資格だから、二〇%の分だけ四五%のウエートがふえるわけですね、全体にかぶってくるから。だから八〇%の中の四五%ということは、大体五四、五%くらいのところへ調査省略が返ってきましたね。要するに青色申告というのは、そういうふうにお話を聞くと、半分は運がよかったら大体そのままでいくんだ、あとの運が悪いのが修正——是認が二五%、だからまた上がって三〇%近くになりますか、これは是認でいいですね。修正も一二、三%ということになると、実は青色申告とはいいながら、実質的にはそれがほんとうに確認をされているのは半分に満たないということは間違いないということですね。私がちょっとしつこくこういうことを聞いているのは、今度の専従者控除の問題を税制調査会で論議をされた中で、白色と青色の専従者控除に差がついているのが気になったので調べてみる気になった。青色の専従者控除を立てる考えは、同族会社の家族給与の支給状態というものから問題を発展さしてきて、そうしてこれはちょっとわからないので聞きますが、要するに十五万円と十二万円にきめたんですね。ところが、これは中身はあとから聞きますが、片一方の白のほうは農業所得者が大体多い。だから農業所得者の家族労働の評価をしたら九万円である。そこで白は農業における家族労働の評価から九万円を持ってきて、片一方で同族会社のほうから十五万円、十二万円持ってきたですね。いまのこれで見ると、この営業者が百万いるわけですね。ところが二〇%落ちますから、実態として課税対象になるのは九十一万ですね。営業所得の九十一万の中で青色申告をしているのは三十六万で、あとのものは白なんですよ。その白の専従者控除の二十五万の中の一万が減るから、二十四万の納税所得者が白になるからこれへ持ってきたというのは、論理的に全然合わないですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/44
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045・泉美之松
○泉政府委員 これは答申にも書いてありますように、営業所得者は本来記帳しさえすれば白色申告から青色申告に移ることができるものでございます。ところが農業所得者の場合には、記帳をして青色申告をやりなさいと言っても、御承知のように農業所得の実態からいたしまして記帳自体が非常にむずかしい。農業の場合にはその記帳のやり方も簡易なものにいたしておりますけれども、なおかつ農業所得の本来の性格から見てその記帳がなかなかしにくい。そこにわれわれは農業の場合は本来的に青色申告になりにくいという点を認めまして、そして白色申告の場合の専従者控除につきましては農業の場合を標準にしておるのでございまして、営業所得者の場合には白色から青色になりやすいのでできるだけ青色になってほしい、こういう意味を含めまして、専従者控除の金額をきめますときに、従来から青色の場合には同族会社の親族従業者に対する給与を基準にいたしまして、白色申告の場合には農業従事者の家族労働報酬を基準にいたしておるのであります。なるほど数字からいえば、白色申告をしているものの中に占める農業所得者のウエートは営業所得者より少ないのではないか、これはおっしゃるとおりでございます。しかしいま申しました考え方に基づいてわれわれは専従者控除に区別を設けておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/45
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046・堀昌雄
○堀委員 私、全然納得しません。税制というのは、最初から言っているように合理的、理論的でなければならないと私は思うのです。それと権衡の問題が非常に重要ですね。これは私が皆さんに申し上げるまでもなく、当然のことですね。そこであなたはいま非常に私の納得のいかないことを第一点におっしゃっているのは、農業所得は青色申告ができにくい。確かにできにくいけれども、あるのですよ。一万やっているのだ、できないのじゃないじゃないですか。できにくいかどうか知らないけれどもできるんですよ。同じ角度でものを見るならば、青色申告に両方がしたいというのなら同じことじゃないですか。それではこのルールでいけば農業所得の青色申告をした場合でも同族会社の恩典に浴すことになるでしょう。一体農業所得の家族従事者と同族会社の給与とどういう関係があるのですか。この一が人に適用している分です。それをちょっと説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/46
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047・泉美之松
○泉政府委員 これは青色申告を慫慂するために、青色の場合は専従者控除を多くしておるのでございます。お話のように、農業所得者でも、青色申告をすれば、同族会社の親族従業員と同じような控除を受け得ることになりまして、その点では白色の場合との差が大き過ぎるじゃないか、この御批判まことにごもっともでございます。ただ、私どもとしては、税務行政の実際を考えまして、できるだけ納税者の方が青色申告をしていただく。その青色申告をすれば、したがって控除が多くなって有利になる、それによって青色申告がふえるということを期待してそういうことにいたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/47
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048・堀昌雄
○堀委員 そういう言い方になると、これは論理的でなくなってくるのですよ。青色申告に変わってもらいたいからというのは、抽象的なあなたの希望です。抽象的な希望では、どうやって金額にあらわしますか。中身に振り返って触れますと、ちょっと私はこの資料だけではわからないからお伺いいたしますが、ここにあなた方の資料が出ていますね。同族会社の家族給与支給状況調というのがここにあるのですよ。この中で、三一ページにこういうことが書かれている。「これらの従業者ば事業主と世帯を別にしている者も多いと思われるし、個人事業者の場合も、生計を一にしない親族に対し支払われる給与は全額経費とされるので、このような者を除外してみると、」この資料ではここがどういうことになっておるのかよくわからないのです。「このようなものを除外してみると、個人換算所得百万円以下では、配偶者は約十三万円、その他の者についても、男子は十二万円から十三万前後、女子は十万円前後となっており、」云々、こういうことになるのです。あとずっと書いてあるのですが、この資料にちっともつながらない。いまの生計を一にしない者はこの中でどうなっているかということを見ても、この資料ではちっともわからないのです。それでは、一体何からそういう資料は出てきておるのか、それをちょっとあったら先に出してもらいたい。この資料では出ない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/48
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049・泉美之松
○泉政府委員 同族会社の家族給与の場合におきましては、これはますが、事業主と生計を別にしております場合には、個人事業者の場合でも、それは経費に落ちております。
そこで同族会社の場合の親族従業員がいろいろございますが、そのうちの個人事業主の専従者であって、生計を別にしているものに相当するようなものを、この統計の中から除いてみればということでございまして……(堀委員「資料では除けないじゃないか」と呼ぶ)資料にはそれが出ておりませんが、原資料には、特にあの中でもちょっと出ておりますように、専従者で配偶者がある者(堀委員「親と一緒にいる者がたくさんいる」と呼ぶ)それはもちろんでございますが、専従者で配偶者がある者、そして子供のある者あるいは別居している場合があるわけでございます。そういうふうに列挙しておりますものは本来個人事業者の場合の専従者の中で当然全額経費とされるものが入っておるわけであります。これを除いて考えたという趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/49
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050・堀昌雄
○堀委員 これを見ましたら、サンプルが非常に少ないですよ。一体これはどういうサンプリングをしたのか、抽出の仕方をちょっと聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/50
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051・泉美之松
○泉政府委員 これは本来からいいますと、全国の国税局について調べるのが適当か思うのでございます。ただ取り急いで税制調査会に提出する必要がございましたので、もよりの東京国税局と関東信越国税局とこの二局にお願いいたしまして調査をしていただいたのでございます。
サンプリングのやり方は、普通の階層別任意調査でございまして、特にこの階層がたくさん出てくるようにということでサンプリングをいたしたのでございます。特にそこには恣意的な要素は入っておりません。ただお話のように、全国的な規模でこういう調査をすべきであったとは思っております。したがいまして、その点は今後考えまして、全国的な調査をいたしたいとは思っておるのでございます。ただ常識的に申しまして、東京国税局及び関東信越国税局の管内におきましては、全国標準からいえば、おそらく高いほうではないかというふうに考えられますので、これを基準としてやれば、少なくとも少な過ぎるという批評はないのではないかというふうに考えてやったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/51
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052・堀昌雄
○堀委員 あとでちょっときめのこまかい資料を拝見しますけれども、ともかく私はこう考えるんです。青色申告の特典は専従者控除だけではない。ちょっと一ぺんあげてみてください。白と青との特典の差と、大体どこを基準として、一体金額的に見たら、一般的、標準的な例でいいですが、どのくらいメリットがあるか、それをちょっとお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/52
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053・泉美之松
○泉政府委員 青色申告と白色申告の差につきましては、まず第一は特別償却でございます。その次は価格変動準備金、それから退職給与引き当て金、貸し倒れ準備金、これがおもな制度の差でございます。そのほかに執行面におきましては、青色申告をいたしておりますれば、その帳簿について調査した上でないと更正ができない。それからまた滞納処分の執行等におきましても、特典が与えられているわけでございます。
お話しの、青色申告をした場合と白色申告をした場合において課税標準がどの程度違うかということになりますと、これはいま申し上げました特典の貸し倒れ準備金、価格変動準備金、退職給与引き当て金とかいったようなものをどの程度設けているかということによって必ずしも一律に申せないのでございますが、過去の統計からいいますと、三十六年の統計しか正確に出ておらないのでございますが、各種の特典を利用いたしましたものが約四十五万人おるわけでございますが、その一人当たり平均青色申告によって課税標準が軽くなった額は十八万三千円に相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/53
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054・堀昌雄
○堀委員 私は、いまのあれで、この青色申告によるメリットは必ずしもそんなに小さくないと思うのです、十八万三千円ですね。そうしてみると専従者控除というものの基本的なものの考え方というのは、一体どこにあるかというと、これはいまの営業所得について言うならば、やはり同族法人との見合いでものを見るわけでしょう、そこのほうが第一だと思うのです。その見合いで見るのならば、白であろうと青であろうと専従者控除については私は同じであるのが当然だと思うのです、率直に言って。だからもしあなた方が農業所得の場合こういう考え方でするならば、私は農業所得に関する専従者控除は幾らである、営業所得に関する専従者控除は幾らであるということにするのなら私はまた多少納得しますよ。しかしそうではなくて、あなた方は業態が違うものを根拠に出しながら、同族法人における従業員の給与というものを片一方に出し、片一方の根拠として農業所得の中における家内従業者の賃金的な要素というものを見て、こっちが白でこっちが青だなんということは、これはもうだれが聞いたって論理的に全然通らないと思うのです。しかしここでそういう白から青にいくことについては私も賛成です。しかし白で残っておるものの業態の中身も考えてあげる必要が私はないかと思うのですよ。それはなぜかというと、青をするためにはある程度の所得水準に達してこないと、もうぎりぎりのところでやっている人の場合には、私はなかなか青をやりたくてもできない条件もあると思うのです。まあきょうはそんなに時間がないから、あとの問題がありますから触れませんが、青色申告におけると白との分析の問題というのは今後残して考えなければならぬと思いますが、そこで私は率直に言って、専従者控除は一律にしてもらいたいと思うのです。こういう個々の中にメリットを設けるという考えは権衡を害すると思うのです。
そこで私ちょっと国税庁長官にもう一度伺っておきたいのですが、修正申告一〇%の今度は中身ですが、これは収入の面で否認をしたのと支出の面で否認をしたのと二通りあると思うのです。収入の面の否認が一〇%の中で一体どのくらいで、支出面、経費面の否認が一体どのくらいあるのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/54
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055・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 御指摘のとおり両方あると思いますが、その内訳は統計にとってございませんので、遺憾ながらお答え申しかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/55
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056・堀昌雄
○堀委員 これは一ぺん調べてもらいたいです。私がなぜそれにこだわるかといいますと、その否認のしかたによりて経費の面で問題が提起をされておるものは、私はこれは自己申告と非常に違う問題だと思うのです。これは青色をちゃんとしておったためにそこでそういう問題が起きておるのだから違いますが、収入の面で否認をしたやつは、裏返していったら白とたいして変わりがないと思うのです、率直に言って。収入が否認されるということは、ないものをあるようにしているわけでしょう。税務署のほうが間違っている場合もあるかもしれないけれども、私は一応税務署が正しいという前提で考えますよ。非常にあなた方に敬意を表して言いますけれども、それを正しい前提だとしたら、そこよりもたくさん水増しの収入があったなんということは、これはおかしいですよ。白と大差ないわけです。それを下げてきたということは、私はもう白とその面では大差がないと考える。そういうふうに考えてくると、青の中身で二五%是認されたものはほんとうにいいですが、その他のものについてはわからないということなんですよ、率直に言えば。収入が多くてどうなっているのか、あるいは経費がどうだかもわからない。要するに調査省略をしてノータッチのものが相当たくさんある。おまけに修正したものもあるので、是認されたものが二五%ということになるならば、いまの白と青とのメリットを考えるのに、専従者控除の中までに立ち入る必要はない。そこで考え方をいまのような答申の考え方なんかをもとにするなら、営業所得における専従者控除は白、青通じて同じである。農業所得における専従者控除が、白青通じて同じであるということにするのならまだ私は筋が通っていると思う。このやり方全然筋が通らないですよ。泉さん、あなたこれ筋通ると思いますか、どうですか。これだけはもうきょうポイントをとりますからね。あなた筋が通っているというなら、これから筋を通してきちっと説明していただきたい。何時間かかってもいいから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/56
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057・泉美之松
○泉政府委員 お話し申し上げておるように、私どもとしてはできるだけ事業所得者は青色申告をすることが比較的容易なことだから、青色申告になっていただきたいという考え方のもとにやっておるわけでございまして、事業所得者の場合には、青色申告の場合も白色申告の場合も、専従控除は同額にすべしという御意見ではございますけれども、おことばを返すようですが、それはまた日本の実情から見た場合には適当ではないのではないか。お話しのように白色申告の場合、人数の少ない農業だけを基準にして、農業の家族労働報酬を基準にした専従者控除を営業者の場合にも適用しているという点については、これは確かに問題があると思っておりますが、しかし営業所得者の場合には青色も白色もすべて同じ専従控除にすべしという点につきましては、なお将来検討はいたしてみるつもりでございますけれども、すぐには応じかねると思うのでございます。と申しますのは、お話しのように、青色申告になるにはある一定の所得水準以上にならないとなりにくいという点は確かにございますが、現在の実情を見ますと、所得が相当水準以上でも白色のままやっておるのがあるのでございます。これはなぜかと申しますと、結局先ほど長官からお話しがありましたように、税務署の事務の量からいたしまして、納税者について全部調査することができない。三年一巡とか、二年一巡とかということにならざるを得ないわけでございます。そういうことからいたしまして、白色のほうが得だという点でそういうふうにやっておる人がかなり多いわけでございます。そういう点から見ると、白色と青色の場合は多少差を設けていいのではないか。それから御存じのとおり、専従者控除のやり力が青色と白色では違っておるわけでございまして、白色の場合には給与を幾ら払っておるかどうか、そういうことに一切かかわりなく、専従者が一人おりますれば定額を引くわけでございます。今度はそれが九万円に引き上げられるわけでございますが、九万円控除するわけでございます。青色の場合にはその専従者に給与を払っているかどうかということを見まして、その給与支払い額を損金に算入する。その給与支払い額の限度について今度二十歳以上の場合は十五万、三十歳未満の場合は十二万という限度を設ける、こういうふうなことでございますので、控除のやり方が違っておるわけでございます。それではこれを同じようにするかということになりますと、白色と青色の性格の相違からいたしまして、なかなか一律には同じには持っていきにくい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/57
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058・堀昌雄
○堀委員 全然納得しません。なぜかというと、いまお話しの農業所得の基準で営業所得をやるのはおかしい、これはもうだれが見てもおかしいですね。それじゃもし同族会社の従業員というものを基準として考えるならば、青であろうと白であろうと、実態は同じことじゃないでしょうか、その角度で見るならば。同族法人の中に白なんということは私はないと思うのですよ。法人であって白の申告というのはありますか。ちょっと聞いておきたいのだけれども国税庁。法人で白の申告というのはありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/58
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059・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 大体二割から三割くらいございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/59
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060・堀昌雄
○堀委員 二割から三割は同族の中にあるというのですが、それはどういうことなんでしょうね。帳簿はあるんでしょうね。法人で帳簿もなくて私は成り立たないと思うんです。要するに法人になっている以上、帳簿がありません、何にもありませんが法人ですなんということは認められるはずはないんだから、帳簿はある。ただ青色の申告をしたかどうかの差でしょうかね。それはどういうことなんでしょうかね、二割から三割あるというのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/60
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061・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 同族法人の中にも規模の大小がございまして、いわゆる八百屋さん、魚屋さんでもって法人のなりをしておるというようなものも相当数ございます。帳簿は、もちろん何らかの帳簿はございますけれども、しかし青色として承認を受ける程度のまとまった帳簿、いわゆる適格性を持った帳簿というものはございません。そういうものは相当数あるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/61
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062・堀昌雄
○堀委員 そうすると、その同族法人のその白の場合、これは従業員の経費というのはどう見るのですか、実態の関係で。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/62
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063・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 そういう白色の同族法人の従業員の給与は署員の聞き取り調査でもって大体のところをきめておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/63
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064・堀昌雄
○堀委員 そうすると、署員の聞いたので幾らにするということですね。今度はひとつこれは主税局と共同していまの白の同族法人のその従業員の分析というのを一ぺんそれじゃこれからやってみてください、一体、どういうことになっているのか。私はちょっとどうも納得できないんだけれども。法人で白というのは、私は法人としていかがかと思いますが、それは法人として認めているということだったら、私は、法人でないほうとの権衡の問題というのは、これは重大な問題が残ってくるんじゃないかと思うんですがね。きょうはそんなことばかり言っていたら横道にそれますから、あとこの問題はひっくくって一ぺんやり直しますけれども、その二割ある同族法人ですね、これは一体所得階級別にはどういうふうな分布をしておるのか、その会社の構成内容、業態ですね、一ぺんこれはちょっとこまかく分析をしてもらいたいと思うんですが、そういうのは、いまの一般的に最近急激にふえてきておる法人なりそういうもののほうが多いんですか。これはいま大体の話でいいですがね。どういうことなんですか、その白の二割ぐらいというのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/64
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065・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 これは先ほど申し上げましたようにむしろ個人に類似したような法人——いわゆる個人類似法人とわれわれ申しておりますが、そういう法人に多うございます。したがって御指摘のように、必ずしも厳密に法人としての取り扱いをするのは実際上はあまり適当でないというような法人でございまして、現在国税庁といたしましては、こういう個人類似法人につきましては所得税課の係員が調査をする、こういう方法をとっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/65
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066・堀昌雄
○堀委員 まあこれは一応ここまでにしますが、しかしおかしいと思うんですよ、こうなると。法人だからそこで払われる人件費というのは給与ですよ。こうなったら今度はその給与が聞き取りできまるなんということだったら、これは力関係か何かできまることで、もうまことによくわかりませんから、これはあとでやりますが、ちょっと私も予想外のことなんで、私、そんなものはないだろうと思っていたので、予想外のことでありましたが、まあ本題のほうに戻りまして、ともかくも権衡を考えるというならば、私は青色申告による同族法人が権衡の土台になると思うんですよ。どっちにしたってです。それとの見合いでものを考えるということになるのなら、いまの最高限度というものと実態との関係を一ぺんまた聞きたくなるわけです。大体家族従業員であっても十二万円、二十歳未満で十二万円というのは、一体いま幾らになりますか、月給で考えてみたら。一カ月に一万円でしょう。これで大体どんなところでもまあ賞与というのは出さなければなかなか人は働かないですよね、外部の人を使おうとすれば。外部の人を使っていまあなた方のほうで一体初任給——日本の現在の初任給賃金の上がっておる中で、要するに基本給に時間外手当等入るでしょう。それに賞与を含めて中学卒業で一体ことし幾ら金を出したら雇えると思っておりますか。ちょっとそのほうから聞きたいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/66
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067・泉美之松
○泉政府委員 いろいろの御質問がございましたが、まず法人の中に白色法人があるのはおかしいじゃないかというお話でございます。現在三十七事務年度の普通法人数は六十五万九千八百八十四でございますが、そのうち青色申告をいたしておりますのが五十二万三千五百五十一でございまして、十三万五千、先ほど長官が申し上げましたように、約二割は白色申告をいたしておるのでございます。さような実情にあることをまず御承知おきいただきたいのでございます。
それからお話のように、現在初任給は、私がしばしば申し上げておりますように、三十六年以降急激な値上がりをいたしております。もちろん初任給の額は、その雇い主が大企業であるか、あるいは中小企業であるか、あるいは東京であるか、いなかであるか、これらによってかなりの相違があることは堀委員の御承知のとおりでございます。中学卒業生の場合におきましては、われわれの調査しておるところによりますと、最低が約七千五百円くらいから上のほうは一万三千円くらいまでの間に初任給は散らばっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/67
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068・堀昌雄
○堀委員 七千五百円としてそれの十四カ月としましょうかね。十四カ月で幾らになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/68
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069・泉美之松
○泉政府委員 十万五千円でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/69
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070・堀昌雄
○堀委員 十万五千円というような、これでいまあなたは地方と東京、都会と言われましたが、実際は地方にはあまり中学卒業者はいないんですよ。ほとんどこれは都会に集中してきている。都会は高いですからね。資本主義の原則で七千五百円と一万三千円と出されて、私は七千五百円のほうがいいですとは言わないんです。やはり一万三千円のほうがいいですからね。そこに人口移動が急激にいま起こっていることは御承知のとおりです。だから七千五百円というのは例外で、この間総理大臣なんかがいろいろ答弁しておるのを聞いても、一万円くらいになっておるとか、いろいろな答弁があるわけです。これから見ても私はいまの同族推計にもいろいろ問題があると思うんです。そのことは白であろうと青であろうとかかっておるのに相違ないでしょう。やはり専従者控除を認めるという精神は、かかった費用をその分について認めてやろうという、こういう考え方でしょう。専従者がいて、その専従者が家族従業員であるために正当な費用がもらえない、あるいはたまたま同居しておるためにもらえないから、それをその他の従業員の立場において考えてみたときに幾らということで専従者控除というものは設定された沿革があると思う。そうして個人では白と青に差をつけるというのならば、まず同族法人のほうの資料から持ってきたものを白において、その上に幾らかのメリットは青につけるというのならば私は理解するのですよ。あなた方は低いほうばかり常に見ているんですよ。メリットというならばどういうかっこうででもいいですよ。それならば青色にしたって平均というのは、ともかく分散している中の平均値でしょう。だから平均値でなければいかぬという理由はないんです、こんなものは。メリットを平均値より少し上に上げましょう、しかし白の場合には平均値しか上げませんよというのならば、私は筋が通ると思う。
そこで私が最初からきょういろいろ論議してきたのは、税額のいろいろな数をきめるについては理論的な背景がなければ説得力がないと思う。こんなあれで私は主税局の今度の資料を見て、率直に言って、日本の主税局も落ちたりと思った。よく恥ずかしくもなくこんな資料を青と白について持ってきた。これは私は、大蔵省の主税局の権威にかけて、万人が納得するような理論的な背景を持ったものを出してもらいたい。国民の権利はこういうことでは守られないですよ。これは税制調査会にも、特にひとつ今度は中山さんがおいでになったら、こういうことはわれわれ納得できないと言ってやりますが、この専従者控除のあり方は、少なくとも平均的なものは白青共通して認めて、ただしメリットを考えるならば、その上に上積みするという考え方を今後とってもらわぬことには、この所得税法に賛成できないし、また今後延々として質疑は続行されるものとひとつ覚悟していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/70
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071・泉美之松
○泉政府委員 おしかりをいただきまして恐縮に存じておりますが、専従者控除の場合にどの程度の控除をすべきか。お話のように私どもとしましては同族会社の親族従業員の経費、給与を基準にいたしまして、その平均的なところをとってまいって個人の青色申告の専従者控除の限度額といたしたのでございます。これをどういうふうに持っていくかということについては、いろいろ御意見はあろうかと思いますが、ただ私どもとしては白色申告の場合、青色申告の場合、それから法人になっている場合、その法人の場合も白色の場合と青色の場合、いろいろ形態が違います。それらを総合して適正な控除というものをきめる必要があるんではないか。お話のように同族会社の給与の平均を控除額とすべきか、それとも同族会社の白色の場合にはその低いほうを基準にすべきではないか、青色申告の場合には平均よりも少し高目のところ——最高のところを基準にすべきではないと思いますけれども、平均よりも少し高目のところを基準にして限度を設けるか、あるいは青色申告の場合でもいわゆる配偶者を持っており、あるいは扶養親族のあるような相当の年齢に達しておる青色申告の専従者については、もはや限度を設けないで、正当なる給与の対価が払われておるものと見るべきかどうか、そういった検討を今後いたしたいと思っておるのでございます。ただ私どもは、先日金子委員のほうから、主税局のほうで専従者について給与の支払いを認めないものだから、給与の支払いが行なわれないのだ。もし主税局のほうで給与の支給を認めれば給与の支給をするのだというようなお話がございましたが、白色の場合、はたして親族従業員にほんとうに給与が払われておるのかどうか。単なる必要のつど小づかい銭をやっているのにすぎないのではないか。こういった点の実態をいま少し十分検討してまいりたいと思うのでございます。やはり給与としてほんとうに支払われておるという実態がありますならば、それはそれに応じたような控除にすべきである。もし給与として支払われておらない、単に小づかい銭を必要のつどときどき与えておるにすぎないという実態であるならば、これは給与として認めていくわけになかなかまいりかねる点があろうかと思うのであります。そういった点の実態をなおよく調査いたしまして、今後検討いたしてまいりたいと思っておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/71
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072・堀昌雄
○堀委員 私は現状の分析の上に立って、十分科学的にひとつきめてもらいたいということです。この提案は私は認めません。この農業所得を持ってきて、いきなり白に置きかえて、農業所得はこうだから白において九万円にしたというのはやめてもらいたいのです。出ているものをやめてくれと言いませんよ。こういう考え方はやめてもらいたい。合理的でないのです。だから現状の分析の上に、われわれを説得するに足る経過があって、こういうことで実態を調べたらこうでしょう、そこでここにこういたしましたというのならまた私は別の角度で理解いたしますが、少なくともここに提起されておるこういうかっこうだけは納得しません。この点をひとつ明らかにしておきます。
最後に、今度はちょっと方向を変えまして、損害保険について所得控除が本年度から創設をされました。この大蔵委員会で私が問題を提起し、大蔵大臣がそれに賛成をされて、世界的に珍しい所得控除だといわれておりますが、私は非常にいい方向だと思う。可燃性の建物が多い日本の場合には、何も不燃性の建物の多い諸外国の例を学ぶ必要はないだろうと思うので、これは非常にけっこうだと思うのです。この間金子委員の質問の中で、主税局長が、大体二千円の所得控除の限度というのは、損害の保険額として六十九万九千円ぐらいを平均値といいますか、調査をした結果出ておるので、これの見合いとして一応二千円を控除することにした、こういう御答弁でしたね。そこで、六十九万九千円でしたか、その金額と、その中に占める建物の保険額と、要するに家具その他の保険額がこの中に含まれておるという御答弁だったのですが、一体建物が幾らになって、家財が幾らになっているのかをお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/72
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073・泉美之松
○泉政府委員 先般申し上げましたように、掛け捨てのいわゆる短期の火災保険の損害保険金の平均額が六十九万九千円に相なっておるわけでございまして、そのうち住宅の分が幾らで家財の分が幾らというのは、これは総合保険の数字をとったと思いますので、別に区別して出ておらないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/73
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074・堀昌雄
○堀委員 銀行局にお伺いいたしますが、いま総合保険では区別がないというお話でしたが、銀行局の調査ではどうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/74
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075・中嶋晴雄
○中嶋説明員 三十六年度の火災保険の契約高で申し上げますと、不動産の元請保険料が二十三億六千六百万円、動産が七億九千三百万円、そのほか混合したものがございまして、これが二十二億八千百万円ございます。合わせまして五十四億四千万円でございます。したがいまして、不動産と動産をはっきり分けたものだけで比率をとりますと、大体不動産のほうが動産の三倍ということになりますけれども、混合形態のものが不動産程度ございますので、はっきりした比率は出ません。
〔坊委員長代理退席、委員長着席〕
なお件数で申し上げますと、不動産のほうが百三十五万一千件、動産が五十七万三千件、混合形態のものが九十八万六千件、合わせて二百九十一万件ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/75
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076・堀昌雄
○堀委員 そこでいまの六十九万九千円という平均値が出てきたのは、いまの五十四億幾らを総件数で割ったということなんでしょうか。この損害保険の中には住居部分もあれば事業所その他いろいろなものがあると思うのですよ。住居部分として分けられていまの六十九万九千円が出たのかどうか、その点をちょっと伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/76
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077・泉美之松
○泉政府委員 先ほど申し上げました平均保険金額の六十九万九千円は、住居及びその住居の中にある動産が入っておるわけでございます。先ほどの動産と言われるのは、宝石とかそういったあれも入っております。家庭用動産だけではないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/77
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078・堀昌雄
○堀委員 そこで、これはどこへ伺っていいのかわかりませんが、いま木造家屋を建てるとして、六十九万九千円を機械的に割るのがいいかどうかは別として、一対三の比率と考えて、これの四分の三、五十五万円くらいが住居部分の保険としますと、火災が起きて五十五万円入ってきたとして、五十五万円で建てられる木造家屋というのは一体何坪くらいですか。全国的にいろいろ高い安いもあるでしょうが、最近東京で建てるとしたら五十五万円で何坪の家が建つか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/78
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079・泉美之松
○泉政府委員 大体現在の木造家屋の単価といたしましては八万五千円くらいはかかることば御承知のとおりでございます。この点からいたしますと、これで建てられる坪数はわずかでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/79
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080・堀昌雄
○堀委員 八万五千円で家を建てると何坪ですか。五十五万円くらいとしてちょっと計算してみてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/80
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081・泉美之松
○泉政府委員 約六・五坪でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/81
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082・堀昌雄
○堀委員 六・五坪というと畳敷きにして十三畳しかないわけです。これは常識で考えて、大体この程度の家にはしばらくいられても、家族が五人もいたらこれはどうしようもないですね。そこで最初の創設でありますから、いろいろな諸条件の中で六十九万九千円になったということについては、これは多少やむを得ない問題があると思うのですよ。ただ私がこの間話を聞いておりますと、要するにこれまでの保険のあり方としては、残存価格といいますか、時価といいますか、評価額以上には保険金がかけられないというルールがあるわけです。そうなると実際は保険というのがかけたくてもかけられない家というのが相当にあると思うのです。戦前の家で古くなっているとすると、評価が非常に小さいからかけたくてもかけられない。しかし火災保険というのは一体何のためにかけるのかということになると、火災が起きてもあとその人たちが住むのに困らないようにするということがその最大の眼目だと思うのです。率直に言えばそれはできるだけ同じようなものが建つのが一番望ましいわけです。だから小さくなるにしても、一ぺんに六・五坪に下がったのでは、わざわざ保険をかけた価値があまりないようなことになると思うのです。
そこで銀行局長のほうにお尋ねをいたしますが、そういう趣旨で少なくともいま建物はなるほど評価額としては古いから五十万円しか評価できない。
〔臼井委員長代理退席、委員長着席〕
しかし広さは三十坪あるのだという建物があるといたします。それが火災になって三十坪の建物をもし同一に建てるならば、さっきの例で二百五十五万円くらいはかかるわけですね。そうすると現在ある建物の広さというようなものを土台にして新しく建築価格までは保険がかけられる。ただしそれが現在の新しい建築価格との間に著しい差があって、そういう保険をかけると家建てかえのために火事が起こるようでも困るので、そこらには何らかの基準があってしかるべきだと思うのですが、しかし方向としてはそういうかっこうの保険が望ましいと思うのですが、銀行局ではどういうふうに考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/82
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083・中嶋晴雄
○中嶋説明員 お話のように現在超過保険は認められておりませんので、古い家になってまいりますと新築したときに比べてかなり減価してまいりまして、十分に最築価格が補償ができないということになります。これは現在の火災保険そのものの仕組みがそうなっておるわけでございまして、商法、保険業法等の体系からそういう形になっておるわけでございます。しかし仰せのように火災保険にかけるのは家が焼けた場合にそれを再築するということが一つの大きな目的ではないかというお話でございます。またそういう事情も実際に世間にあるわけでございます。そこで新しい保険の種類といたしまして、実は再築価格そのものを補償するような保険は時価主義のたてまえからしてできないにいたしましても、若干それに近いものができないだろうかということで現在算定会を中心にいたしまして検討中でございます。その骨子を申し上げますと、経年減価度がかりに年々何パーセントか下がってまいります。しかしながら個人の住居に対する利用価値はそこまでは下がらないのではないかという点に着目いたしまして、減価よりもさらにゆるやかなカーブでその効用価値が下がっていくというふうに想定して火災保険をつくっていく。まあ一種の新価保険でございますが、そういうものをいま検討しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/83
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084・堀昌雄
○堀委員 そこでいまのようなことで、そんなにむずかしい問題でもありませんが、私はいまの二千円という控除額は生命保険料の控除と見ましても権衡を著しく失していると思うのです。ただ制度創設ですから、私は創設されたことに意義を認めてこの額については触れませんけれども、大体この制度を設けた趣旨は、要するに火災保険に入りなさい、そうして火災になったときに被害を最小限度に食いとめるようにしなさいという政策意思のほうが非常に重要に作用しておる創設だと考えますから、そういう政策意図に沿った方向で今後もひとつ逐次この控除額の引き上げ等の措置が講じらるべきである、こう考えるわけですが、あわせて生命保険料の控除との権衡も考えながら、ちょっとこれは質は違いますけれども、しかし片方がどんどん上がって片一方は据え置くというのは、いまの必要限度に達すればそれ以上のことは言いませんが、それに達するまでの間にはかなり積極的な考え方を持つべきではないか、こういうふうに思いますが、主税局長はどういうふうに考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/84
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085・泉美之松
○泉政府委員 お話がございましたが、生命保険料控除と損害保険料控除とはやや性格が違っております。生命保険の場合、今度の改正によりまして最高限度額が三万五千円に相なるわけでございますが、その三万五千円の保険料を払うことによって加入できる生命保険金——将来三十年あるいは二十五年たって得ることのできる生命保険金というのは、加入者の年齢によっても違いますが、約九十万から百二十万くらいの間だろうと思います。そういうぐあいになっておるわけでございますが、損害保険金につきましては、お話のように、本来日本のように火災によって失われることの多い家屋につきまして、その損害が起きたことについて、できるだけ早く家屋の復旧ができるようにという趣旨で、できるだけ損害保険に加入しておいたほうがよろしいですよ、という意味で設けるのでございますので、お話のように、家屋の復旧ができる程度ということが目安になることとは思うのでありますが、何ぶん制度創設の初めでございますし、それからまた中嶋調査官から申し上げましたように、現在のところはまだ時価までしか保険がかけられないという制度になっておりますために、平均保険金額が六十九万九千円といったような姿になっております。これらの点から二千円ということをきめたのでございますが、それはお話のような趣旨から今後検討いたしまして、いま少し控除の額を上げるようにはいたしたいと思っております。ただ、くれぐれも申し上げておきたいのは、損害保険と生命保険とは性格が違いますので、生命保険の金額を基準にすべしとは私はなかなか言えないと思うのです。そうして損害保険の場合、何といたしましても財産、特に家を持っておる人がその利益を受けやすいという形になるのでございまして、家を持たない階層がまだ相当あるような現状におきましては、やはりそのバランスも考えなくてはならないということもありますので、そういった点を考えながら、今後そういった控除について検討してまいりたい、かように思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/85
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086・堀昌雄
○堀委員 方向としてはいまの主税局長の答弁でけっこうでございます。
そこで最後に主税局にお願いしておきたいのは、制度が創設をされたのでありますから、そこで今年度控除が行なわれますね。要するに、損保の控除の行なわれ方を、この一年間に、今度の申告その他を通じて十分に準備をしておいていただきたいと思うのです。今後どういうかっこうであったかの分析をしてみたいと思いますから、これから行なわれる三十八年度の申告、それと同時に、納税のこの法律が適用されて四月一日から行なわれるわけですが、給与所得者については——事業所得は本年度起きませんね。給与所得だけですね。給与所得についてどういうかっこうでどの程度控除が行なわれたかというようなことを、いまお話の一体どの程度の所得階層にそういう家を持っておるか持っておらないかという関係が出てくるわけでございますから、含めて分析のできるような調査をひとつお願いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/86
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087・泉美之松
○泉政府委員 損害保険料控除は、給与所得者につきましては、生命保険料控除と同じように、年末調整で行なうということになっておりますので、本年の十二月に年末調整のための資料が出る。したがいましてその統計をとりまして分析するのはどうしても明年のことになるわけでございます。それから申告所得者につきましては、来年の三月の申告でないと間に合いません。したがいまして、おそらく来年の国会の際にその資料を御提出申し上げることはちょっとできにくいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/87
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088・堀昌雄
○堀委員 それは可及的すみやかにということでけっこうであります。
以上で一応私のきょうの所得税に関する質問を終わりにいたしますが、さっきちょっとあなたのほうでお答えになった中でも、三十五年から三十九年の間一人世帯が一四五に対して五人世帯は一四三・八では、さっき私が話した方向が逆の方向へ行きつつある。これはここで申し上げた考え方をよほど明らかにしていただかなければ、諸外国の方向に近づくどころではないので、困ると思いますので、その点十分これらの資料をもとにして、日本の変わりつつある世帯構造の中身なり生活の中身をもう少し考慮に入れながら、税制調査会に給与所得の諸問題、それからいまの配偶者及び扶養者控除の問題等特に十分御検討いただくように、大蔵省のほうへお話しを願いたいと思います。
最後に、いまの専従者控除の問題についてはひとつ本年じゅうに御論議をいただいて、来年度は税制改正としてこのような筋の通らないことが起きないことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/88
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089・山中貞則
○山中委員長 次に、相続税法の一部を改正する法律案及び納税貯蓄組合法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/89
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090・山中貞則
○山中委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。政務次官纐纈彌三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/90
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091・纐纈彌三
○纐纈政府委員 ただいま議題となりました相続税法の一部を改正する法律案及び納税貯蓄組合法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。
最初に、相続税法の一部を改正する法律案につきまして、御説明申し上げます。
政府は、今次の税制改正の一環として、相続税につきまして、相続税及び贈与税の負担の軽減合理化をはかるため、これらの基礎控除を引き上げるとともに、民法の一部改正に伴い相続財産法人から財産の分与があった場合における相続税の課税につき所要の規定の整備をはかる等の改正を行なうことといたしました。
以下、この法律案についてその大要を御説明申し上げます。
第一は、相続税及び贈与税の課税最低限等を引き上げることであります。御承知のとおり、相続税の課税最低限は、中小財産階層について課税が生じないような配慮のもとに、その金額を定めているのでありますが、最近における所得の増加に伴う個人財産の増加の状況、さらには、今後における経済発展の見通し並びに農業経営の近代化と自立経営育成の必要件等を考慮いたしまして、この際、相当規模の農家及び中小企業その他一般世帯の中小財産階層に相続税の課税が生じないようにするため、現行の遺産にかかる基礎控除額について二百万円と相続人一人当たり五十万円との合計額を二百五十万円と相続人一人当たり五十万円との合計額に引き上げようとするものであります。また、贈与税の課税最低限につきましても、現在の財産価額の状況から見てきわめて少額な贈与が大部分であること及び相続税の課税最低限の引き上げとの関連を考慮して、贈与税の基礎控除額を現行の二十万円から四十万円に引き上げることとした次第であります。
なお、相続税の課税最低限の引き上げに関連して、各相続人及び受遺者の納付税額を計算する場合の控除額についても、現行の相続人については五十万円、受遺者については二十万円の金額を、相続人については七十万円、受遺者については四十万円に、それぞれ引き上げることとしております。
第二は、さきの民法の一部改正に伴う相続税法の規定の整備に関するものであります。御承知のとおり、民法の改正により、相続人が存在しない場合の相続財産については、被相続人と特別な縁故があった者に対し、相続財産の分与ができることとなりました。この場合の課税については、従来所得税を課税することとしていたのでありますが、その性格にかんがみ、これを遺贈による取得とみなして相続税を適用するとともに、その取得者について相続税の申告等の特別規定を設ける等、その課税関係を明らかにいたしたものであります。
次に、納税貯蓄組合法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
御承知のように、納税資金の貯蓄を助成して租税の容易かつ確実な納付に資するため、現在、納税貯蓄組合制度が設けられております。政府は、この制度の現状にかんがみ、その一そうの健全な普及発達をはかる必要があると考えますので、この法律案を提出する次第であります。
以下、この法律案の内応につきまして、その大要を申し上げます。
第一は、納税貯蓄組合預金を取り扱う金融機関について、新たに商工組合中央金庫を加え、中小商工業者等その利用者の便宜をはかることといたしております。
第二は、納税貯蓄組合連合会について、その法制化をはかって、規制と助成の措置を講ずることとし、当該連合会が、翼下の納税貯蓄組合を指導、育成し、またはその連絡、調整等の事務を行なうのに資することといたしております。
第三は、納税貯蓄組合預金について、それが納税以外の目的に引き出された場合において、引き出し額に応ずを利子に対する所得税を課さないものとする場合の引き出し限度額を五万円から十万円に引き上げ、預金者の便宜に供することとしております。
以上が相続税法の一部を改正する法律案及び納税貯蓄組合法の一部を改正する法律案についての提案の理由及びその概要であります。何とぞ御審議の上すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/91
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092・山中貞則
○山中委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
両案に対する質疑は次会に譲ります。
次会は、明二十六旧午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時五十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01119640225/92
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