1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年二月二十六日(水曜日)
午前十時四十一分開議
出席委員
委員長 山中 貞則君
理事 臼井 莊一君 理事 原田 憲君
理事 藤井 勝志君 理事 坊 秀男君
理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君
理事 堀 昌雄君 理事 武藤 山治君
天野 公義君 宇都宮徳馬君
大泉 寛三君 奧野 誠亮君
押谷 富三君 金子 一平君
木村 剛輔君 小山 省二君
砂田 重民君 田澤 吉郎君
濱田 幸雄君 福田 繁芳君
藤枝 泉介君 渡辺美智雄君
岡 良一君 小松 幹君
佐藤觀次郎君 田中 武夫君
只松 祐治君 野原 覺君
日野 吉夫君 平林 剛君
松平 忠久君 春日 一幸君
竹本 孫一君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 田中 角榮君
出席政府委員
大蔵政務次官 纐纈 彌三君
大蔵事務官
(主税局長) 泉 美之松君
大蔵事務官
(銀行局長) 高橋 俊英君
大蔵事務官
(為替局長事務
代理) 鈴木 秀雄君
国税庁長官 木村 秀弘君
委員外の出席者
総理府事務官
(経済企画庁調
整局参事官) 庭山慶一郎君
大蔵事務官
(大臣官房財務
調査官) 中嶋 晴雄君
専 門 員 抜井 光三君
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二月二十五日
委員野原覺君辞任につき、その補欠として加藤
清二君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員加藤清二君辞任につき、その補欠として野
原覺君が議長の指名で委員に選任された。
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二月二十五日
地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、
税関支署及び税務署の設置に関し承認を求める
の件(内閣提出、承認第二号)
保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一一三号)(予)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、
税関支署及び税務署の設置に関し承認を求め
るの件(内閣提出、承認第二号)
保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一一三号)(予)
所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
三六号)
法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/0
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001・山中貞則
○山中委員長 これより会議を開きます。
地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、税関支署及び税務署の設置に関し承認を求めるの件及び保険業法の一部を改正する法律案の両件を一括して議題といたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/1
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002・山中貞則
○山中委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。大蔵政務次官纐纈彌三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/2
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003・纐纈彌三
○纐纈政府委員 ただいま議題となりました地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、税関支署及び税務署の設置に関し承認を求めるの件及び保険業法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその概要を御説明申し上げます。
まず最初に、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、税関支署及び税務署の設置に関し承認を求めるの件について、御説明申し上げます。
まず横浜税関に小名浜税関支署を設置することでありますが、これは、現在の同税関小名浜出張所を税関支署とすることであります。同出張所は、横浜税関から距離的に遠隔の地にあるため、税関業務の処理上不便な点が多いこと及び近年港湾造成計画の進捗に伴い小名浜港等が整備され、今後相当の貿易の伸長が期待されているところでありますので、同出張所を税関支署として独立性を付与し、現地における税関業務をさらに迅速かつ円滑に処理しようとするものであります。
次に、東京国税局に向島税務署ほか二税務署を、名古屋国税局に名古屋中村税務署ほか一税務署を設置することであります。
最近における経済の発展は、大都市において特に著しく、この間の事情を反映して、都会地税務署の管内の納税者及び課税物件等は年々増加してまいりますとともに、これらの税務署の事務量、人員ともに過大となり、事務管理の面及び税務指導等納税者に対するサービスの面で支障を生じようとしております。
このような事情に対処して、墨田税務署の管轄区域のうち、旧向島区の地域を分離して向島税務署を、江東税務署の管轄区域のうち、旧城東区の地域を分離して江東東税務署を、川崎税務署の管轄区域のうち、川崎市の中原地区、高津地区及び稲田地区を分離して川崎北税務署を、名古屋西税務署の管轄区域のうち、中村区を分離して名古屋中村税務署を、それぞれ設置するとともに、昭和税務署の管轄区域のうち、千種区を名古屋東税務署に移管した上、名古屋東税務署の管轄区域のうち北区と、尾張瀬戸税務署の管轄区域のうち守山区とをそれぞれ分離して、新たに、北区及び守山区を管轄する名古屋北税務署を設置し、納税者の利便と税務行政の円滑な運営をはかろうとするものであります。
以上の理由によりまして、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づいて、国会の御承認を求める次第であります。
次に、保険業法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。
昭和三十七年四月二十日公布の商法の一部改正は、主として株式会社の計算規定の整備、合理化を目的としたものでありまして、それにより、資産の評価につきましては、従来の時価以下主義が原則として原価主義に改められたのであります。その結果、株式会社たる保険会社につきましては、改正商法の規定が全面的に適用されることとなったのでありますが、その計算規定が適用になる時期までに、相互会社たる保険会社につきましても改正商法の計算規定を準用して、その規定の調整をはかることが適当であると考えられるのであります。また、保険事業の相互扶助的特質に照らし、契約者利益の確保並びに増進をはかる見地から、取引所の相場のある株式の評価に関し、商法の特則を設ける必要があると考えられますので、これらの点に関し保険業法に所要の改正を加えようとするものであります。
以下、この法律案の概要について御説明申し上げます。
まず、相互会社たる保険会社についても、商法改正の趣旨に従いまして、株式会社の資産の評価等に関する改正商法の規定を準用することとし、会社と相互会社との計算規定の統一をはかることとしております。しかしながら、保険事業の特質にかんがみ、保険会社の資産のうち取引所の相場のある株式の評価につきましては、株式会社、相互会社ともに、主務大臣の認可を受け、かつ、評価がえにより計上する利益を契約者のための準備金に積み立てる場合に限り、時価までの評価益を計上することができる道を開いておくこととしております。なお、これに関連いたしまして罰則その他所要の規定の整備をはかることにしているのであります。
以上が地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、税関支署及び税務署の設置に関し承認を求めるの件及び保険業法の一部を改正する法律案の提案の理由及びその概要であります。
何とぞ慎重御審議の上すみやかに御賛成くださいまするようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/3
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004・山中貞則
○山中委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
両件に対する質疑は次会に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/4
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005・山中貞則
○山中委員長 次に、所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
質疑の通告がありますので、これを許します。平林剛者。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/5
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006・平林剛
○平林委員 私は、法人税法の一部を改正する法律案につきまして、きょうは、基礎的な資料を得るためと、問題を提起するという意味で、政府の考え方あるいは政府の資料をお尋ねいたしたいと思うのであります。
まず初めに、最近のわが国の会社数はどの程度ございますか。
〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/6
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007・泉美之松
○泉政府委員 法人税を課税いたしまする法人全体は七十一万二千百十五でございますが、そのうち普通法人が六十五万九千八百八十四でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/7
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008・平林剛
○平林委員 ただいまお話がありました会社、つまり法人を資本金の階級別に区分いたしますと、どういうふうになっておるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/8
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009・泉美之松
○泉政府委員 まず第一に大きく分けまして、税務署所管の場合、これは御承知のとおり資本金が五千万円未満の場合が税務署所管で、五千万円以上の場合が調査課所管になっておりますが、それで見ますと、税務署所管が六十四万四千百七十一、調査課所管が一万五千七百十三と相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/9
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010・平林剛
○平林委員 ちょっとこまかく私もお尋ねしたいのですけれども、できれば一千万円までのもの、それから五千万円、一億、十億、五十億、こういうふうに区分をして説明していただきたいと思うのです。前の調査が大体そういう区分でいたしてありますので、これと対比してみたいと思いますから、そういう資本金階級別で区分して説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/10
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011・吉田重延
○吉田(重)委員長代理 計算しますからちょっと待ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/11
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012・泉美之松
○泉政府委員 百億以上の資本金の法人が七十でございます。それから五十億から百億までの法人数が九十六、一億以上五十億までの法人数が三千四百二十六でございます。それから五千万以上一億までの法人が二千八百二、五千万未満が六十一万七千九百十四、そうなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/12
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013・平林剛
○平林委員 資本階級別に区分いたしますと、五千万未満のものは比率としてはどのくらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/13
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014・泉美之松
○泉政府委員 資本金五千万未満の法人は九八%程度になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/14
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015・平林剛
○平林委員 わが国の現在の会社数を資本金階級別に区分いたしますと、その九八%が五千万未満のものであるということがわかりました。
そこで、会社の所得階級別に区分をいたしますと、現在の状態はどうなっておるでしょうか。これもたいへんこまかいことで恐縮でございますが、前の調査と対比する意味で、ただいまお話になったような区分に従って御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/15
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016・泉美之松
○泉政府委員 所得金額別の法人数になりますと、利益のない法人がございますので、法人の総数が、いま申し上げました数字と合わないことは平林委員御承知のとおりでございますが、それで申し上げますと、所得一億円をこえる法人数が二千八百六でございます。それから所得のほうでは一億超と十億超というふうに分けておりまして、百億以上という数字を統計でとっておりませんが、そのうち十億超の所得の法人が三百四十四でございます。それから一億以下五千万円超の法人数が二千六百七、五千万円以下の所得の法人数が四十七万五千八百でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/16
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017・平林剛
○平林委員 今度政府が提案をなさいました法人税法による軽減税率適用の限度の引き上げによりますと、三百万円以下はその適用限度を引き上げるということになっておりますが、三百万円以下ばどのくらいございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/17
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018・泉美之松
○泉政府委員 所得三百万円以下の法人は四十万二千二百三十四でございますが、今回の改正によりまして軽減を受けますのは、いままで所得二百万円までは三三%の軽減税率を受けておりましたので、二百万円から三百万円の階層の法人になるわけでございますが、その法人数は二万七千九百四十四でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/18
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019・平林剛
○平林委員 私、昭和三十三年度末の資料で一億円以上の所得のある会社の所得が全所得の五五・四%になっておるという資料を得たのでありますけれども、いまお話がありました一億円をこえる会社二千八百六社、これは全所得の中の何%を占めているということに最近はなっておるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/19
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020・泉美之松
○泉政府委員 所得一億円超の法人の所得は全体の五〇・三%になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/20
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021・平林剛
○平林委員 大体これで私のこまかいほうの質問は終わります。いま政府の資料をお尋ねいたしますと、日本の会社数全般の九八%が五千万円以下の資本金階級別に属する。そしてこれを会社の所得階級別に区分いたしてみますと、一億円をこえる会社二千八百六社、パーセントにすると多分二%か三%くらいになると思うのでありますけれども、そのごく小数の会社の所得が全所得の五〇・三%を占めておるということがわかったわけでございまして——そういうことになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/21
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022・泉美之松
○泉政府委員 失礼いたしました。いま五〇・三%と申し上げましたのは計策の誤りでございまして、六〇・八%でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/22
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023・平林剛
○平林委員 そうすると、なお全法人の三%程度の会社が全所得の六〇・三%を占める、こういうことに相なろうかと思うのでありまして、たいへん参考になりました。これを私どもこれからの審議の上の参考にし、また絶えず頭の中に描きながら次の問題についてお尋ねをしてまいりたいと思います。
法人税法の改正によりまして今回政府がその理由として、開放経済への移行に備えて企業の経営基盤の強化をはかるため、機械設備を中心に固定資産の耐用年数を平均一五%程度短縮する、また、中小企業の負担の軽減をはかるために軽減税率の適用所得限度額と、同族会社の留保所得課税控除額の引き上げを行なうことにしたとございますけれども、それぞれの減収見込み額は幾らになるか、これもまた基礎になる数字でございますから、明らかにしてもらいたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/23
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024・泉美之松
○泉政府委員 今回の法人税法の改正によりまして、耐用年数の短縮によりましては平年度六百十一億、初年度二百四十七億減収になるのでございます。次に、軽減税率の適用範囲を拡大することによりまして平年度四十六億、初年度三十億、また同族会社の留保所得の課税の控除を引き上げることによりまして平年度三十六億、初年度二十三億の減収になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/24
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025・平林剛
○平林委員 耐用年数の改正その他による減収額初年度の二百四十七億はわかりますが、平年度は六百十一億と説明なさいましたけれども、間違いじゃございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/25
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026・泉美之松
○泉政府委員 四百十一億でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/26
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027・平林剛
○平林委員 四百十一億円ですね。——わかりました。
それでなおこまかく聞きます。耐用年数の改正によりまして初年度二百四十七億、平年度四百十一徳ということはわかりましたけれども、今回政府が考えておられる中には減価償却制度の合理化というのも含まれておると聞いておるわけでございます。この減価償却制度の合理化の中には有形固定資産に対して取得価額の五%に達するまで償却を認めることと、固定資産に計上することを要しない資産の限度額を三万円に引き上げること、及び企業が資産の種類別、業種別に応じて異なる償却方法を採用し得るようにしておる点があげられておるわけでございますけれども、それぞれについて区分いたしますと、減収見込みはどういうふうになるのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/27
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028・泉美之松
○泉政府委員 先ほど耐用年数の短縮と申し上げましたが、短縮とあわせて減価償却制度の改正を含めました減収額が、先ほど申し上げました平年度四百十一億、初年度二百四十七億でございまして、いまお話の点はその内訳になるわけでございますが、その内訳を申し上げますと、耐用年数の短縮だけによりましては平年度三百九十三億、初年度二百三十六億、それから残存価格を五%に引き下げることによります減収が平年度十三億、初年度八億、それから取得価格の固定資産に計上することを要しない限度額を一万円から三万円に引き上げますことによる減収が平年度五億、初年度三億ということになるわけでございます。
〔吉田(重)委員長代理退席、委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/28
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029・平林剛
○平林委員 いまお話しがありました分類に従って少しお尋ねいたしますけれども、普通法人に対する法人税の軽減税率の適用範囲を引き上げるということは、先ほど私お尋ねいたしました会社、法人の中でまず大多数の中小法人にその受益といいますか恩恵というものはいくように考えられます。また同族会社の留保所得税についての控除額を引き上げるという点につきましても、大体そういうふうに考えていいのじゃないだろうかと思うのであります。しかし耐用年数の改正あるいは減価償却制度の合理化という点になりますと、必ずしもそういうふうな理解のしかたではないものがあるように感ぜられるのでありますけれども、もしかりに、大企業と中小法人というふうに区分いたしますと、どういう受益の割合になるでしょうか。まあこれは中小法人と大法人といいましても、幾らを限度にするかということがむしろ問題でございますけれども、政府自体が述べておられます基準というのはどこにとって、その基準をとればどういうふうな受益割合になるかということをお話しいただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/29
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030・泉美之松
○泉政府委員 その耐用年数の短縮によります受益が大法人と中小法人でどういうふうになっておるかという点から申し上げますと、大法人と中小法人とをどこで区別するか。さっき申し上げましたように資本金五千万円で調査課所管と税務署所管が分かれておりますが、そういう区分でやるか、あるいはほんとうの意味の中小法人という場合には資本金の二百万円程度までくらいと見るべきか、これはいろいろ議論のあるところだろうと思うのでございますが、法人企業統計によります固定資産の保有高を見ますと、資本金二百万未満と資本金二百万以上の場合が大体一〇対九六というふうに、資本金二百万円以上の法人が資本金二百万円未満の法人の九・六倍保有しておるというような関係になっております。したがいまして、いまの減収額平年度四百十一億というものをおよそ一〇対九六あるいは一〇対一〇〇くらいの割合で計算してみれば、中小法人といいますか二百万円未満の法人の受ける利益は大体四十一億程度、それから資本金二百万円以上の法人の受ける利益が三百七十億程度というふうに見ることができようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/30
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031・平林剛
○平林委員 いまお話しになりました固定資産の保有二百万未満あるいは資本金二百万未満に区分をされまして御説明がありましたけれども、政府のほうでいわゆる中小法人というのはただいまのようなことを基準にして考えればいいとおっしゃるのですか。この点ちょっと明確でないからお尋ねをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/31
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032・泉美之松
○泉政府委員 政府が今回の中小企業に対する減税を六百億以上行なったというふうに申しております場合におきましては、資本金五千万円で実は中小企業とその他を区切っておるわけでございまして、その場合におきましてはこの耐用年数の短縮によりますと資本金五千万円以下の中小法人の受ける利益はおおよそ百五十億円と見込んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/32
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033・平林剛
○平林委員 それで大体今度の法人税法の一部改正に対する政府案の概要ということがわかってきたと思うのであります。まず普通法人に対する法人税の軽減税率の適用範囲を引き上げることによって、初年度四十六億、同族会社の分につきましては三十六億、合計八十二億円くらいに平年度はなると思うのであります。しかし耐用年数の改正あるいは減価償却制度の合理化等におきましては、ただいまお話がございましたように平年度四百十一億円でございますけれども、これは大法人と中小法人とに区分をすると、かりに五千万円未満ということで計算をいたしますと、中小法人に与えられる受益というのはおおよそ百五十億円、残額の二百八十億円ほどは主として大法人の受益あるいは恩恵に属するもの、こういうふうに理解することができるわけでございます。そこで私は政府にお尋ねをいたしたいと思うのですけれども、しばしば政府は中小企業に対して六百億円の減税を行なうという御説明をなさっておるわけでございます。私は六百億減税という中身を寡聞にして承知いたしませんので、一体どういうふうな計算をしてこの六百億円になるのかという点を、泉さんから御説明していただきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/33
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034・泉美之松
○泉政府委員 今回の税制改正によって、中小企業に対する減税額が平年度計算によりまして六百億円以上になるという根拠を申し上げますと、まず大きく分けまして国税におきまして三百七十億、それから地方税におきまして二百四十八億というのでございまして、合計いたしまして、国税が正確に申しますと三百六十七億でございますので、合わせまして六百十五億という数字に相なっておるわけでございます。国税のほうの内訳を申し上げますと、これは中小企業、もちろん個人、法人も含んでおるわけでございますが、まず所得税の諸控除及び税率の改正によりまして、個人の中小企業についての減税額が六十八億円、これが所得税の減税でございます。
〔原田委員長代理退席、臼井委員長代理着席〕
それから法人税のほうにまいりまして、いま申し上げました耐用年数の短縮等による減収が百五十一億円、それから同族会社の留保所得課税の軽減が三十一億円になっております。先ほど平林委員に同族会社の留保所得課税の軽減によりまして平年度三十六億というふうに申し上げましたが、この同族会社の中には資本金の一億以上のものもございますので、中小企業の同族法人として見ますと三十一億になるわけでございます。それから、軽減税率適用範囲の拡張によりまして四十三億円、これは先ほど平年度四十六億円と申しておりますが、大法人のほうでもこの二百万円から三百万円の部分については軽減税率の適用を受けることになるので、中小企業としましては四十三億円の減少になるわけでございます。それから、配当課税の改正、配当軽課を行なうことによりまして三十億円、それから輸出振興関係の中小関係の特別措置がございますが、あれの創設拡大等によりまする減収と輸出所得控除制度廃止による増収との差が六億円、それから試験研究用機械の初年度九〇%償却や貸し倒れ準備金の改正、これが三十八億円減収になりますので、それを差し引きますと、法人関係で二百九十九億円、個人の六十八億円と合わせまして三百六十七億円ということになるわけでございます。地方税のほうにつきましては、住民税の諸控除及び税率の改正によりまして七十億円、それから事業税の控除を引き上げ、また法人事業税の軽減税率の適用範囲を広げておりますが、これは法人と同じように広げておるわけでございますが、それによりまして、合わせまして五十七億円、電気ガス税の税率引き下げによる中小企業の受ける利益が二十二億円、それから国税を改正することによりまして、それが地方税に、法人住民税あるいは事業税にそのままはね返ってまいります分が九十四億円、その他が五億円ございまして、合わせて二百四十八億円。国税、地方税あわせまして六百十五億円という数字に相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/34
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035・平林剛
○平林委員 次に、耐用年数の改定の問題について少しお尋ねをしておきたいと思うのであります。今回は機械設備を中心にして耐用年数の改正をやられるわけでございますけれども、これは大蔵省令の改正あるいは政令か何かの改正でおやりになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/35
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036・泉美之松
○泉政府委員 耐用年数の改正は、大蔵省令及び大蔵省告示で改正することになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/36
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037・平林剛
○平林委員 それはもうでき上がっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/37
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038・泉美之松
○泉政府委員 現在作業中でございまして、今月末に成案を得る目途でいろいろ各省と協議し、また各業界の意向も聴取いたしてまいりましたが、まだ完全にでき上がるまでにまいっておりません。三月中句までには完全にいたしたい、かように考えて、せっかく努力をいたしております。
〔臼井委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/38
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039・平林剛
○平林委員 耐用年数の改定にあたっては、どういうふうな要素を重要視されてこれの改定をなさろうとしておりますか、その基本的な考え方をお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/39
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040・泉美之松
○泉政府委員 耐用年数の改定にあたりましては、まず第一は、最近の技術革新の著しい業種におきまして、技術革新の結果旧設備がほとんど陳腐化してしまうといったような面があらわれておりますので、そういった業種については陳腐化の程度を考慮いたしまして耐用年数を短縮する。それからその次は、わが国の輸出振興が非常に重要でございますので、その機械を使用して輸出をいたしております製品の多いものについての耐用年数短縮をできるだけはかりたい、これが第二の基本方針になっておるわけでございます。とは申しても、平均一五%という減収の関係からいたしましてワクがございますので、その数字の中でできるだけそういう方針のもとに改定をいたしたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/40
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041・平林剛
○平林委員 減価償却制度の合理化の中で、企業が資産の種類別、業種別に応じて異なる償却方法を採用し得るようにするということがございましたけれども、これはいわゆる自主償却制というものになるのですか。私この点わからないものですから、はっきりしていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/41
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042・泉美之松
○泉政府委員 これはいわゆる自主償却制度ではないのでございまして、ただ、従来の償却制度の規定におきましては、企業がたとえば定率法をとりますと、その企業の有しておる有形固定資産全部につきまして、定率法でやっていかなければならない、あるいは定額法を採用しますと、その有しておる有形固定資産全部について定額法でやっていかなければならないという規定になっております。また、鉱業権、坑道などマイニングの関係の資産につきましては生産高比例法でやっていかなければならないという規定になっておったわけでございますが、最近のように企業がいろいろな業種を営む場合、あるいは古い設備と新しい設備とを持っております場合、こういった場合におきましては、一律に定額法あるいは定率法ということを強制しますことは適当でなく、その実情に合わないという面がありますので、事業の種類あるいは資産の区別に応じまして、たとえば新しい設備については定率法でやっていく、古い設備には、もうだいぶ償却されているから償却を取り急ぐ必要はないと思いますから、定額法でやっていく、こういったことを認めようというのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/42
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043・平林剛
○平林委員 そうすると、有形の固定資産については、原則として定率法あるいは定額法というものが、各界の意見を聞いてまとめたものがある。それに従ってやるのだけれども、企業によってはそのどちらを採用してもいいというひとつの自主性を与えるということになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/43
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044・泉美之松
○泉政府委員 いや、それは従来から企業が坑道あるいは鉱業権などのマイニング用の固定資産以外の資産につきましては、定案法をとるか定額法をとるかは企業の任意であったわけでございます。企業が選択して届け出ればいい。ただ届け出なかった場合におきましては、法人の場合には定率法でやっていく、個人の場合には定額法でやっていくという法定償却制度になっておったわけでございますが、その企業が定率法を選択した場合におきましては、その企業はすべての有形固定資産について定率法でなければいけなかったのでございますが、それを、事業の種類あるいは資産——たとえば最近は事業を兼営する場合が非常にふえておりますので、一つの企業でもいろいろな事業を経営いたしております。そういたしますと、事業の種類によっては、定率法でやったほうがいい場合もあるし、あるいは利益があまり上がらないから定額法でやったほうがいい場合もあります。そういったことで、いままでは一つの方法を選択しますと、その方法全部をとらなくちゃならぬというわけだったのでありますが、それを資産の種類、あるいは事業の区別に応じて異なった償却方法をとることができるということにしようというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/44
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045・平林剛
○平林委員 その認定をする場合、税務官庁がやるわけだと思うのですけれども、その認定にあたって、これはどちらにするかしないかという場合に、何かやはり意見の違いが出てきて、紛争が起きるというようなことはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/45
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046・泉美之松
○泉政府委員 これは企業か自分で選択いたしまして、自分はこれこれとこれこれの資産については定率法でやりたいが、今度規定が変わったから、これこれこれこれの資産については定額法でやりたいということを申請して届け出るわけでございます。大体は企業の自由にまかせたいという考えを持っております。著しく利益調節をはかるうというような意図でない限りは、下さるだけ企業の意思を尊重いたしまして、企業の選択した方法をそのまま認めるようにしたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/46
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047・平林剛
○平林委員 実情を尊重してやるということであっても、やはりその判定を個々のケースによって当てはめた場合に、いろいろな紛争が起きてくる心配があり、またいまお話がありましたように、その企業の中で利益を操作するというような余地が生じたり、またはこういう専門的なことをできるのは、中小法人より大企業のほうがやはり専門的な知識を持っているだけにやりやすい。結局これを操作する場合に、大企業のほうが有利になっていくというような傾向が生まれてくるんではないかという心配があるのですけれども、そういう点はだいじょうぶなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/47
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048・泉美之松
○泉政府委員 その点につきましては、かねて業界のほうから、一つの企業がいろいろな事業をやっておる場合に、その事業の種類によっては、定額法でやっていったほうがいい場合があるし、あるいは定率法でやったほうがその企業に適当だ、と申しますのは、減価償却というのは、結局その売り上げに対して資本投下したものの費用をどうチャージするかという問題でございますので、企業の業態の実情によっては、定率法でやったほうがいい場合もあります、あるいは定額法でやったほうがいい場合もありますので、従来からこういう場合に、自分の会社は定額法でやりたいんだけれども定率法でないとやっていけない、困るといったような陳情がいろいろケースが出ております。したがいまして、今後企業からそういった減価償却方法の採用変更の届け出が出ます場合におきましても、そういった従来から問題になっておりまする点を通達にいたしまして、税務官吏のほうに、こういう場合には認めて差しつかえないんだというふうなことで流しますと、そういったトラブルは起きないと思います。また業界といたしましても、従来から話し合いまして、こういう場合に認める、こういう場合には認めないというような一定の基準を示しまして、業界の意向も聞いておりますので、そういった点からトラブルは今後起きるとは思いません。ただ、お話のようにそういう減価償却の変更をすることによって利益を受けるというか、必ずしも利益を受けない場合もあるわけでございまして、定率法でやっていかなければならないようにいままでなっておったのが、むしろ定額法でやっていくということになりますと、償却額は減るわけでございますので、それはむしろ企業の実態に即してやっていくということだと思うのでございまして、利益を得る得ないということは、さして問題になることではないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/48
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049・平林剛
○平林委員 いずれにしても、耐用年数の改正あるいは減価償却制度の合理化によって、平年度において四百十一億円の減税が行なわれるわけでございますけれども、それが目的に応じて合理的に処理されるかどうかということは、われわれわからなくなってしまうわけであります。一切がっさいが税務当局の通達という形において行なわれ、そしてその妥当性については私らちょっと知ることができないということになってしまうおそれがあると思うので、この政令ですか、につきましては、でき上がりましたならば、われわれに提出をしていただくことができますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/49
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050・泉美之松
○泉政府委員 いまお話の、全部一切がっさい通達にまかされるというようなお話でございますが、そうではございませんで、減価償却に関します大蔵省令及び大蔵省告示で基本をきめておるわけでございます。そしてまた、先ほど申し上げました事業の種類あるいは資産の種類に応じて償却方法の変更ができるという場合の基準も、省令できめることになっております。ただ、その省令を運営する上の通達を出すということを申し上げたのでございますから、もちろんそうした省令あるいは告示につきましては、当委員会に御提出いたすつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/50
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051・平林剛
○平林委員 次に、私は大法人といわゆる中小法人との実効税負担率の問題につきまして、最近の事情をお聞きしておきたいと思うのでありますが、税制調査会の資料によりますと、昭和三十三年度において資本金が一千万円未満のものが三三・八%であり、大法人については三〇・六%とございまして、租税特別措置あるいはその他の手段によりまして、法定されておる税率と最終的には変わった実効税負担率になっておるということを聞いておるわけでございます。その後一体どういうふうになっているのかなと思って、実は昨年の大蔵委員会の会議録を読んでみますと、当時の村山主税局長が、最近はだいぶ違っておるんだ、租税特別措置法を適用したあとにおいても、大法人のほうは実効税負担率は三一・二%ぐらいになって、中小法人も三一・九%であるから、その差はだいぶ縮まってきたというお話が載っておるわけでございます。私、最近の事情についてはどういうふうに変化しておるのか、承知しておりませんので、実態がどうなっておるかということを少し詳しく、わかりやすく説明をしていただきたいと思うのであります。特にこれからの参考にいたしたいと思いますので、大法人、中小法人の区分につきましては、先ほど質疑をいたしましたものとつながりのあるように、五千万円程度に区分をしてお話をしておいていただきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/51
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052・泉美之松
○泉政府委員 大法人と中小法人の実効税率がどうなっているかという点につきましては、先般、昨年の国会で村山主税局長がお答えいたしました当時、これは三十五年から三十六年にかけての事業年度につきまして調査したものが最終の調査でございまして、その後調査をいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/52
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053・平林剛
○平林委員 その後調査をしておらないというお話ですけれども、昨年の村山主税局長の説明が私わからないのです。ですから、最近期における資料に基づいてどういうぐあいになっておるかということを説明していただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/53
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054・泉美之松
○泉政府委員 その資料はいま手元に持ち合わしておりませんので、後刻資料として提出いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/54
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055・平林剛
○平林委員 この大法人と中小法人の実効税負担率の御説明がないというと、私その次の質問の展開ができないわけなんで、あとで資料として提出をしてくださるというならば、私この点についての質問は少し留保しておきたいと思うのです。また、資料が提出されましたら、あらためてこの問題について少し私の見解を申し上げたいと思うのであります。
そこで、社会党としては、中小企業の税負担率軽減の一つの方法といたしまして、法人税の税率を現行二段階になっておるのを四段階くらいに区分をいたしまして、中小法人に対する税率を下げたらどうかというような検討をいたしておるわけでございます。たとえば、先ほどお話がありましたように、わが国の会社数の九八%は大体において資本金五千万円以下の会社である。先ほどお話がございましたように、会社の所得階級別で区分いたしてみましても、その大多数が中小法人に属する。しかも、三百万円以下の法人は三十九万二千二百三十四社ということになっておるわけでございまして、私どもとしては少なくともこういう状態であるならば、所得金額のうち百万円程度のものは二五%くらいに引き下げるべきでないか。実効税率についではお話がございませんでしたけれども、大法人、中小法人の実効税負担率の現状から考えましても、こういう程度の措置はさしあたりやっていいんじゃないか。少なくとも政府では中小企業に対しては革命的な措置をやると言われておるようなときでございますから、同じ法人会社の中でも、ただいま上げましたような程度につきましては、もう少し税率の点についていじることはどうだろうか、こう考えておるのですけれども、政府のほうのお考えがございましたら、ひとつ伺いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/55
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056・泉美之松
○泉政府委員 法人の税率につきましては、平林委員御承知のとおり、各国の法人税の制度におきまして、法人を擬制説的に考えるか、あるいは実在説的に考えるかという、法人税をいかに観念するかという根本問題があるわけでございまして、わが国は平林委員御承知のとおり、シャウプ勧告以来、法人を擬制説的に考えまして、法人税は個人の配当所得の課税を行なう前の前取りであるというふうに観念いたしまして、今日にまいっております。したがいまして、法人税の税率につきましては、できるだけ一本税率が望ましいのだという考え方をとっておるのでございます。これはもちろんわが国だけでなしに、擬制説的な考えを取っておる諸外国はもちろん、法人について実在説的な考え方をとっておりますドイツ、フランスなどにおきましても、税率は一本でございます。ただ、アメリカだけが二万五千ドル以下の所得の場合と、それから二万五千ドルをこえる所得の場合とで税率を違えておりますが、それ以外の国では、法人の税率といが多いのでございます。わが国の場合に、お話のように中小企業がきわめて多い関係からいたしまして、その大法人と中小法人との実際の負担の問題がどうか、法人をかりに擬制説的に考えるとしても、両者の間にバランスがはかられなければいかぬのじゃないかという考えから、従来しばしば中小法人について軽減税率をもっと設けたらどうか、こういうような御意見があったわけでございます。しかし、わが国としては、まず根本的に法人というものをどういうふうに観念すべきかという基本的な問題につきまして、なお税制調査会において検討いたしておる状態であります。その上にどういうふうに持っていくかということは、したがって税制調査会の検討を今後待った上で考えたいと思うのでございますが、ただ基本的にはいま申しましたような点がございますのと、それから法人税というのは、結局個人の事業者に対する課税、これとの課税のバランスも見なければなりません。御承知のように、現在毎年三万をこえる法人のなにがあるわけでございます。結局これは法人になったほうが税負担が軽いというのでありまして、そのほかにもちろん金融上の利便その他対世間の信用、こういったいろいろな問題があろうかと思うのでございますが、しかし、それにしても法人のなにが三万人以上あるという状況におきましては、やはり個人の営業者に対する所得税と法人税とのバランスを考えなければならないと思うのでございます。にわかに法人税率をいまの二段階をさらに四段階にするということについては、よほど慎重に検討しなければならぬと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/56
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057・平林剛
○平林委員 きょうは私は基礎的な資料について入手いたしたいと思ったので、政府との間にこまかいやりとりをしたわけでございますが、いまの件については昭和三十三年度の調査で百万円以下の所得階級の会社が二十五が七千四百四十七社、全法人の全所得金額の中で占める所得の割合は七・七%でございまして、これが先ほどの最近の例としてお話しになりました具体的な数字から考えましても、割合としてはむしろ低下しておるのではないか。かりに百万円というふうに限定いたしますと、その後の経済成長に伴いまして割合は低下しておる。そうなりますと、減収見込み額というものはそうたくさんない。いまのような法人擬制説か、あるいは他のつり合いがどうかという点については、かなり論争が残っておるかと思いますけれども、さしあたり中小企業の税負担軽減の一つの方法としては、現状から見てこの程度のことはやってよいのではないかということを私ども考えておるわけでございます。しかし、これは論争になってしまいますから、私どもの意見としてお伝えしておきたいと思うのでありますが、政府においても、特に日本の会社の実情から考えまして、この方血についても検討してもらいたいということを要望したいと思うのであります。それで、きょうは事務的なことだけ伺いまして、各委員の方も興味なさそうでありますから、この程度できょうの質問は終わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/57
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058・山中貞則
○山中委員長 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/58
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059・山中貞則
○山中委員長 速記を始めて。
午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。
午前十一時五十一分休憩
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午後一時三十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/59
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060・山中貞則
○山中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/60
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061・堀昌雄
○堀委員 実は昨日主税局長との間で所得税法に関する問題を具体的に少し論議をいたしました。しかしこの問題の中には政策的な判断を必要とするものが非常に多いわけでありますから、そこでこれから大蔵大臣に主として所得税法関係としてお伺いをいたします。
昨年の予算委員会におきまして、昨年度御承知のように基礎控除、配偶者控除、扶養者控除等の関係で税制調査会の答申が守られなかった事実がございます。少なくとも本年度においてばこれらの分は最低減税をしてもらいたいということについては、大臣のほうで御確約をいただいて、それは本年度実現を見ました。しかし、ずっと所得税全体の問題を詳しく見ておりますと、いろいろな点に問題はありますけれども、現在日本の税収の伸びをささえておりますものは、一番比重の高いものは法人税が一番比重が高いのでありますけれども、それに次いで、全体の約三四%という、これはちょっと非常にきめのこまかい計算をお願いしてあるわけですが、本年度の 大体これまでこの委員会でいろいろ論議をされます自然増収という論議が、当初予算対当初予算というかっこうでの自然増収がよく論議になるわけです。ところがこの当初予算というのは推定でありまして、その後に税収がどんどん入ってきて、最近の経緯を見ますと、当初予算のまま決算がその額の近くで行なわれた例がないわけです。毎年一千億なり三千億近くもの、決算を当初予算額との間には、差が生じておる。そこで、ほんとうの意味で増収ということを論ずるとするならば、これはやはり三十八年度の決算見込みと申しますか、それと三十九年度の当初予算との間でものを見ませんと、これはほんとうのものにならないと私は思います。そこで実は資料をきょうお願いをして、三十八年度の決算見込みというのは先般の補正後のものを考えるのが当面妥当かと思いましたから、補正後のもので見ますと、その差額が一般会計分として四千七百五十七億円ですか、あるわけですね。これが実際生じてくる自然増収だと私は考えるわけです。いろいろ自然増収については考え方があります。予算対予算、決算対決算、いろいろあるわけですが、私は論議をする場合にやはりこれが一審適当ではないかという判断をしておるのです。その中で、いま申し上げたように、所得税が三四%、法人税が三八%。ですからこの四千七百五十七億円の七二%というのはまさに所得税と法人税のそういう増加分によってまかなわれておるというのが、本年度予算の実態だと私は思うのです。法人税は網承知のように租税特別措置その他がありまして、法人税自体も税率が高いという議論もありますが、これは諸外囲との権衡を調べてみますと、必ずしもそう高くはないように思いますが、日本の所得税の現状というのは、これはどうひいき目に見ても高いです。これは大臣もお認めになると思うのですが、まず最初にその諸外国に比べて日本の所得税は高いか安いかということからお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/61
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062・田中角榮
○田中国務大臣 高い安いということはなかなか申し上げられないわけでありますが、数字の上から見まして、所得とそれに対する税負担の状況を考えますと必ずしも高くない、大体先進国並みになりつつある、このような考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/62
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063・堀昌雄
○堀委員 いまの答弁、私全然不満です。所得との見合いでという話でありますが、国民所得の何%とか、私はそういう考え方でものを見ようと思わないのです。なぜかというと、国民所得なんというものはわれわれの生活には直接関係がないわけですから。私どもはやはり生活をしておる人間の生活の中のあり方でものを考える必要がある。実は私きのう、諸外国との関係で、いまちょっとその資料を持っておりませんが、大体八十六万円くらいの所得のある日本の場合、それから、アメリカ、西ドイツ、イギリス、フランス、こういう場合を設例いたしまして、独身者対夫婦子供二人だったかの比率を税制調査会の資料で見ますと、日本の場合は大体一対三くらい、三倍くらい独身者よりもたくさん税金を負担しておる。諸外国は著しく低いわけです。フランスなんというのは八%くらいです。もうまことに少ないのです。こういう状況を見ますと、日本の所得税の負担は、特に扶養家族があるときに非常に負担が重くなっておる。きのう議論をしました中で、年齢が標準的なところと見られておるところが幾つかといいますと、十三歳と何歳か、要するに小学校、幼稚園か何かくらいの年齢だということになっておるのです。ところが実際はいま一番困っているのは、子供が大学に行き高等学校に行っておる、そういう子供を持っておる家庭は、いまそういう意味の費用が高くかかって非常に困っておる。にもかかわらず、そういう点が非常に従来見られていないわけです、率直に言って。私はそういう意味で昨日議論をしたのは、所得税全般の問題、特に配偶者及び扶養家族等の控除はもう少し大幅にならないと、日本人の生活の内容がだんだん変わって文化的になり、あなたのおっしゃったように先進国に近づこうとしておる段階できわめて不十分な状態である。さらに所得税の中に占めております源泉分、要するに給与所得というものがその中のほとんど大半でありますから、特にこの給与所得の諸君の問題というのは非常に大きな問題がある。今年度は御承知のように本会議で私ばお尋ねをしたように、税制調査会の答申は九十六億日分ほど削られたわけですね。そこで私は、それは議論ですから高い安いは除きますけれども、今後の方針として、本年度の給与所得控除のあり方についてはあのとおりで、どうという議論は、いろいろ問題もあろうかと思いますからいたしませんが、少なくとも本年度に税制調査会が答申をした減収額平年度百億程度のこれは、昨年の例にならって来年度は給与所得についてひとつ減税をやっていただきたい、こういうふうに考えます。大蔵大臣、あなたがいる、いないの問題はこれは別の問題です。大蔵省の大臣として、大臣田中角榮ではなく、大蔵大臣という資格においてひとつお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/63
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064・田中角榮
○田中国務大臣 確かに独身者、夫婦者というようなものに対しては諸外国に比べて遜色のない率になっておるという統計が出ておりますが、夫婦及び子供二人というような扶養家族に対しては税負担が高いということは確かであります。これらの問題に対しては十分将来配慮しなければならぬということを考えております。来年度減税ができるかどうかという問題は、現段階で想定することばむずかしいと思いますが、いずれにしても例年減税をやっておるのでありますから、減税をするということが前提になれば、当然これらの問題は最優先的に考えらるべきだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/64
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065・堀昌雄
○堀委員 表現は最優先的にということでありますが、過去の例を見ましても、これは純減税額でありますけれども、昭和三十二年ぐらいから見ますと、三十二年が七百二十億、三十三年が二百六十一億、三十四年が百三十三億、三十五年は減税がないようですが、三十六年が六百四十七億、三十七年が千二百十五億、三十八年が四百九十九億、三十九年が八百三十六億、こんなふうで最近ずっと見ますと、最低二、三百億の減税というのは毎年行なわれておるわけですね。そこで私は、特にいま申し上げたように、税収の伸びというかっこうを見ますと、伸び率だけで申し上げると、ことしと去年とは勤労所得につきましては、決算見込みと本年度予算との差というものは二五%ふえることになっておるわけですね。そして法人税は二〇%という増加が見込まれておるわけでして、まさに源泉分というものは本年度予算の中に占めておりますところの比重は、先ほど申し上げたように、ウエートから見ても伸び率から見ても非常に大きなものを負担をしておるということでございます。ですからこの点は来年度も当然所得税は減税をされるべき性格のものである。これは本年度の終わりに、来年のいまごろになって三十九年度の決算見込み額と四十年度予算についてまた予算委員会なりこの場で論議をいたしますが、この内容の分析をしてみますと、どうしても所得税というものは毎年ある程度は減税をしなければならぬ性格のものだ、こう考えるわけです。特にその中でも源泉分、要するに給与所得の問題が非常に大きな比重を占め、伸び率も高いわけです。申告分は伸び率は二一・二%片一方は二五%ということで、源泉分は非常に伸び率も高いわけでありますから、いまの最優先に取り計らうということを、これは大蔵大臣としてひとつ確認をいただいたと理解をいたします。
その次に、ちょっと問題はこまかいことでありますけれども、昨日は損害保険の問題について少し論議をいたしました。そこで実はきょうの新聞にもずっと出ておりますが、大蔵省側として新価保険ということで、新しい保険の制度を六月ごろからやるということを実は中嶋調査官のほうから御答弁いただいたわけです。そこで私は、実はこの前あなたとここで論議をして、私が損害保険についても、日本は可燃性の建物が多くて、火災が年に三万件以上も出ておるという中で、もっと火災保険の普及をして保険料も安くなるということで国民の被害を食いとめたいと考えたのですが、実は控除される二千円というものは六十九万九千円の保険額に見合うものだということであります。その中で建物の部分は一体幾らかというと、五十五万円ぐらいらしいです。それを坪当たり八万五千円くらいで建てると、六坪あまりのものしか建たないということがわかったわけですね。これではあまりにも火災が起きた場合には困るじゃないかというので、今後ひとつ、最初の制度でありますから、二千円、これもある程度やむを得ないという感じがいたしますが、しかし今後は新価保険の設定に伴って、これは適宜情勢に応じて控除が増額をされるのが至当じゃないかというふうに考えるわけですが、大臣のそれに対してのお考えを承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/65
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066・田中角榮
○田中国務大臣 この損害保険料控除の問題につきましては、いままでの考え方からいいますと、財産を持っておる者は特別な人たちであるから、一般国民に対する減税を優先さすべきだということでありましたけれども、いつまでも最低のものだけを対象にするよりも、やはり希望を持って、だんだんと日本人の地位も内容も向上してきつつあるのでありますから、時の事情に徴して必要なものに対しては特別の措置を行なうということで新しく踏み切ったわけであります。現在二千円というと確かに少ないというような議論もございますけれども、新しく例を開いたことでありますし、もう一つは、この六十万円ということになると、国民大多数が大体打てるというような議論に結びまして考えられたものでありまして、国民の財産がだんだんと大きくなっていくという趨勢にありますので、現状に合わせながら将来余力があればこれらの金額も引き上げていくという方向になることは、これは例を開いたのでありますし、この制度も必要性を認めてやったわけでありますし、これが給与所得者の控除と同じ性質を持つものだという考え方から、その一環として考えられたものでありますので、公平を害さないということを前提にして、余力があれば引き上げていくような方向にあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/66
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067・堀昌雄
○堀委員 実は損害保険の問題というのは、その性格は復旧を助けるということでありますから、そういう制度が創設された時点でありますから、私はいまの大臣のお話で了解をいたします。
ちょっと主税局長にお伺いをいたしますが、いまの二千円の控除がもし三千円になるとしたら、一体減収はどのくらいになりますか。ざっとしたことでいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/67
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068・泉美之松
○泉政府委員 損害保険料控除の創設によりまして、本年度御承知のとおり十三億八千八百万円の減収を見ておるわけでございますが、かりにそれを二千円という限度を三千円に上げますれば約その五割、結局六億六、七千万円というものが出ようかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/68
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069・堀昌雄
○堀委員 それからもう一つ、長期保険は限度額が五千円でございますね。これはもし一万円になるとするとどのくらい減収が出ますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/69
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070・泉美之松
○泉政府委員 長期保険のほうは御承知のように農協がやっております建物更生保険が大部分でございます。したがって金額はこの五千円から一万円に上げるということはかなり大きな金額の引き上げでございますけれども、減収額としましては約二億円の見込みでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/70
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071・堀昌雄
○堀委員 なるほど金額はあれですから、減収額はそうだと思うのですが、私、ちょっといま答弁の中に、なるほど農業関係のものがおもですけれども、たしか昨年ぐらいから一般の民間の損害保険にも長期保険が、数は少ないのでしょうが、たしか新設をされていると思うのです。その点ちょっと銀行局のほうから答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/71
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072・中嶋晴雄
○中嶋説明員 お答え申し上げます。
昨年から長期保険を損害保険につきましても一部実施いたしました。二社でございますが、まだ発足早々でございまして、はっきりした統計が出ておりません。概算で申し上げますと、月に一千万円程度の収入であろうか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/72
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073・堀昌雄
○堀委員 そういう状態でありますから、そこらの問題は今後当委員会でいろいろと論議がまだされることだと思うのですが、やはり税制の問題の中にはいろいろ権衡の問題というのも含まれておるということをちょっと申し添えて、この問題はここで終わりにいたします。
次に、税収の見積もりの問題に入りますけれども、実は私ずっとこまかい資料をいただいてちょっと気がつきましたことは、どうもいろいろな税収の見積もりのしかたが、非常に低目に低目にこれまで行なわれているという感じがいたします。これは給与所得について少し申し上げてみますと、昭和三十六年には当初予算のときに雇用の伸びを四・五%増、賃金を六・六%増と見積もって、給与所得は一一・四%を前年度に比べて増額をするということで、実は当初予算の税収が立てられました。ところが三十六年の実績は、雇用が五・八、賃金が一四・六と上がりまして、相乗では一二一・二ということで、実は最初に立てた一一・四の伸びに対して二一・二という大幅な増加になっておるわけであります。三十七年も同様に一〇・三という伸びを立てたのに対して、一七・七という実績になっておりますね。三十八年はどうでしょうか。当初予算は一〇・八の伸びというふうに考えられておりますが、見込みは現在のところで、大体幾らになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/73
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074・泉美之松
○泉政府委員 現在のところ、第二次補正予算に見込みましたとおり、一六・六でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/74
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075・堀昌雄
○堀委員 そこで本年度は一三・五——人員について四・〇、給与額が九・一、一三・五ということになっておるわけですね。これまでに比較しますと、土台がたいぶ上がってきたと思います。しかし本年度は、一六・六、一七・一、二一・二というような過去における伸び方から見ると、これもやはりまだ少し内輪過ぎないですか。この過去の例から見ると、経済の成長が三十八年よりは三十九年は少し低目には見積もってあるようですが、私どうも低目にならない——企画庁長官に来てもらってやりたいのですが、まだ来られないので、どうもそういうふうにならない感じがするのですが、そこらのところは大蔵大臣どうですか。これは経済全体の見通しの関係で非常に問題がありますが、その点についてどういうふうにお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/75
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076・田中角榮
○田中国務大臣 いま御指摘がありました数字のように、三十六年、三十七年、三十八年、三十九年と見てまいりますと、三十六年は一一・四が二一・二になり、三十七年は一〇・三が一七、七になり、三十八年は一〇・八が一六・六になって、非常に安定的なものになってきておるのであります。今度の三十九年は一三・五でありますから、三十八年のように八・一%以上に経済成長率がいくというようなこともありませんし、大体三十九年度の見積もりは、いままでのように、四%の成長率を見たときに八%にいく、六%のときに八・一%になるというような大きな成長を考えておりません。これは国際収支と、それから輸出と物価という問題と相当強く取り組んでおりまして、九・七%名目成長ということはもう動かしたくないということで各般の施策を進めておりますので、大体三十九年度の税収見通しは過小では絶対ありません、まあ適正である、こういう考え方を持っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/76
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077・堀昌雄
○堀委員 実は私は、三十九年度の名目のGNPの伸びの九・七というのります。それはどうして上回るという判断をしているかというと、ここの一番大きなもとはどこにあるかといえば、私はやはり大蔵大臣にあると思うのです。と言うと、たいへんどうも、風が吹いておけ屋がもうかるような感じかもしれません、が、その点について、時間もありませんから少し論議をしますが、昨日の新聞の伝えるところによりますと、一月の貿易収支の赤字は一億五千万ドルになっておりますね。この赤字の状態を、ここに書いてあるとおり見ますと、経常の取引の中で輸入は依然高水準にあります。そこで、実は本日、御承知のように、ロンドンのポンドの相場が非常に下落をしてきて、一月の貿易収支じりで一億二千万ドルの赤字が出た、大体昨年の第四・四半期の平均値が六千六百万ドルくらいであるのが一億二千万ドルになったということで、ポンドが非常に軟化をしてきたということから、過熱をとめるためには四%の公定歩合が動くかもしれないということを外電が伝えておるわけです。ちょっと為替局に伺いますが、イギリスの貿易の大きさと日本の貿易の大きさとを比べたら、私はだいぶんイギリスのほうが大きいと思うのですが、向こうの一億二千万ドルという赤字と、日本の一億五千万ドルというのでは、これはずっと問題が大きいのじゃないか。向こうは一億二千万ドルでもう公定歩合が動こうかというところにきているのに、日本の場合は、一億五千万ドルの赤字が出ても、なかなかそういう措置もとられないようなかっこうに推移しつつあるのではないかという感じがしますので、為替局のほうで大きさの比較をちょっとお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/77
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078・鈴木秀雄
○鈴木(秀)政府委員 イギリスの輸出入は、一九六二年、これは暦年でございますが、IMF統計によりますと、輸出が百十一億、輸入が百十三億ドルでございます。いま堀委員から一月のイギリスの貿易の赤字が一億二千万ドルと申されましたが、あれは一億二千万ポンドですから、約二・八倍をしたらドルになるわけです。日本のほうは、御承知のようにほぼ五十八億とかいうところでございますから、それによって御比較願えるわけです。それから先ほど堀委員が貿易収支が一月で一億五千と仰せられましたが、これは経常収支が一億五千で、貿易収支だけで見ますと一億三千二百万ドルでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/78
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079・堀昌雄
○堀委員 なるほどいまのは私の見間違いで、ボンドならばだいぶウエートが違いますからわかりました。私ちょっと見ていて、ドルかと思ったものだから、その点は問題を別に考えますけれども、しかし最近の経過をずっと見ておりますと、日本の鉱工業生産は昨年来どんどん高くなってきて、なかなかまだ落ちつく様子がないわけです。その鉱工業生産の伸びに見合って、食糧等もあるようですが、実は頂材料の輸入が相当行なわれておるのが、依然として前年に比べていまの輸入の高さをささえておるのじゃないかと思うのです。
そこで私がちょっとお伺いをしたいのは、財政のほうはこれまでいろいろ御議論があって、一種の中立予算というふうにわれわれは聞いております。いろいろ見方がありますから、それはいいのですが、政府は中立予算と言っている。そうすると金融のほうが多小締まらないと、いまの上がり方を抑制をして、政府の見通しの方向に誘導することは、かなり困難ではないかというふうな感じがいたします。そこで窓口規制ということをやっておるのだと思うのですけれども、公定歩合等は大企業に非常にウエートがかかっておりますから、そういう点が少し操作されるような金融上の措置が、いまの国際収支の動きを見ておると、どうも必然的に生じてくるのではないかという感じがするのですが、いまの国際収支の動き、経常収支の一億五千万ドル、貿易収支の一億三千万ドルの赤字は大きなものです。企画庁の見通しはこれですっかり狂うと思いますが、これに対して金融上現在の措置で十分なのか。もちろん中小企業対策は重要でございますが、全体としての金融政策という面で見て、はたしてこれでいけるかどうか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/79
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080・田中角榮
○田中国務大臣 公定歩合操作の問題のほうは、中央銀行の問題でございますので、ここで言明する限りではないと思います。一般的な金融論から見ますと、十二月から種々な金融調整手段を日銀がやっております。特に窓口規制ということになりますと、大企業に対して相当強い規制になっておるわけであります。でありますから、中小企業年度末対策をやると同時に、日銀は両建て式な調整処置をやっておるわけであります。一月のこの経常収支の一億三千万ドル余の赤字の状態を見ますと、政府が当初考えました年度末の外貨準備の状況等に対しては、相当大きな狂いが出てくるではないかというお話でございますが、現在のところは三月末で十七億六、七千万ドル、それで政府が考えておりました年度末の外貨準備は維持できるだろうというような考え方をいま持っております。ただ外貨準備の問題だけでなく、経常の赤字が非常に大きくなってくるという問題に対しまして、一体いまのままの金融でいいのかということになりますが、これは非常にむずかしいところであります。これが、経済成長率がアメリカのように、 いま三・五%とか四%とか、イギリスもそのとおりでありますが、普通のノーマルの状態といいますか、そういう状態で推移しているときには別でありますが、日本は戦後早く、無からすぐ立ち上がらなければならないということで非常に努力してきたわけでありますし、特に四月一日から開放経済に移る、こういう特殊な状態がありますので、世界一般の財政金融政策をそのまま日本に当てはめられる状態でないということが一つあります。もう一つは、いまの金融の状態を見ますと、ただ金融操作を、国際収支の面だけで引き締めをやらなければならないという考え方で、画一一律的な引き締めと私は申しておるわけでありますが、一体そういうことをやれる情勢にあるのかないのかということに対しては、相当の問題があります。企業間信用が非常に膨張しておる、また三月が期末である、こういう考え方からしますと、やはりある時期に金融の正常化ということが前提でないと、非常に及ぶ影響が大きい。角をためて牛を殺すというような状態が危惧せられますので、回り道ではありますし、その間国際収支のある程度の悪化というようなことはあっても、やはり日本の企業の状態、産業の実態を確実に把握をしながら、なるべく引き締めによる倒産その他の被害を最小限に食いとめながらやらなければならぬという問題の存在することは御承知のとおりであります。いまの状態において思い切った金融引き締めをやらなければならないというようなときではないし、またそのようには考えておりません。国際収支の改善対策をあわせて強力に進めて、開放経済に向かって前進していくというときじゃないかといま考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/80
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081・堀昌雄
○堀委員 企画庁長官が入りませんから事務当局にお聞きしますが、本年度の在庫投資の増加が前年比で八四・二%という見込みをしておりますね。これは昭和三十七年、四五・七と、非常な引き締めをやったあと下がった年があります。しかし私はいまの全体の状況をにらんでいると、在庫投資がこれほど減るとも思わないし、それから設備投資が三%の増しかないのですが、これもどうも低過ぎるのではないか。個人消費もこれまでの状態で見ますと、今度は一一・七%ということで、三十七年、八年が一五・三%であったのに対して、これも非常に低く見積もられているわけですね。だけど私はいまの全体の状態を見ると、個人消費も一一・七%ということにはならなくて、実際はもうちょっと伸びるだろう。設備投資もやはり三%では落ちつかなくて、伸びるだろう。在庫投資も八四までは下がらないのじゃないだろうか。本年は一六四ふえて、在庫投資の繰り越しがあると言えばあるかもしれませんが、この経済見通し、こういうものを土台として出してきたGNPの伸びの九・七というのはやや低目に——もっとも経済見通しというものは、低目にありたいという願望をも含んでいるでしょうから、必ずしも客観的な分析を伸ばしたということにならないかもしれないけれども、どうもこれは全体としてやや低目に見過ぎてある。いまいろいろお話がありましたが、いま日本で財政の面では、今後もうちょっと先へいけば新年度予算をさっそく少しコントロールをして、いろいろと繰り延べその他をしなければならぬような事態も起こるかもしれませんとも思いますが、財政上は予算がああいうかっこうで出ている以上、財政によるところのコントロールというのは、ちょっとなかなか急には出てこないわけですから、そういうことになれば、やはり金融上のコントロールがかなりきいてこないとこういうようなかっこうにはならない。いまの、大体鉱工業生産の伸びの状態を過去ずっと出してみると、そうならないという感じがするのですね。そこで企画庁が八四・二と財庫投資を見たのは、一体どういうことを土台として見たのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/81
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082・庭山慶一郎
○庭山説明員 この在庫投資が前年度の伸びよりも今度のほうを少なく見ましたのは、去年は調整期から回復期にございまして、そこで在庫の回復があった、こういう関係で去年は大幅に伸びたのでありますが、ことしは正常な状態に移っていくということでございますので、その伸び方が減るだろうということで、今度八五%程度にしたわけでございます。これは御承知のように在庫投資が減るのではなくふえ方が減るのでございますから、このもとになる何と申しますか、水面以下にあります数字は八兆くらいの数字でございます。大体この程度でいいのじゃないかと考えております。
それから、国民の個人消費支出なり設備投資の問題についても御意見がございましたが、おことばにもありましたように、この経済見通しというものは、やはりあるべき姿といいますか、ありたい姿というのも若干考慮に入れまして、先ほど大蔵大臣から答弁も去りましたように、物価面、金融面に、厳正な態度で日本経済をよくしていきたいということでございますので、そういうビジョンのもとにつくられました数字でございます。この設備投資が三%といいますのは、これは戦後何回も繰り返しました設備投資の行き過ぎなどもありますので、投資態度も今後は相当慎重になるだろうということも、一つのそういう数字をつくりましたもとになっております。大体四兆一千億という線は戦後非常に設備投資の盛んでありました最高のところに合わせてございますので、まず大体その辺でおさまるのではないかという見込みでございます。
なお個人の消費支出につきましても、一番問題になりますのは、もとになりますのは賃金の伸びでございますが、賃金の伸びも去年よりは、ことしはそのパーセンテージが、先ほどもお話がありましたように、ボーダレスな数になるのじゃないか、そういうことから大体その辺におさまるのじゃないかという見通しを立てたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/82
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083・堀昌雄
○堀委員 それは議論をしても始まらないことなんですが、実は企画庁のこれはいつでも変わるのですよ。これは変わるのがあたりまえなのかもしれませんけれども、要するに個人消費は昨年に、三十七年、八年を見通したとき一〇%の増をたしか見なかったのですよ。ところがことしも、これはまだ三十八年が実績見込みで——この実績日込みでまた実績見込みが、実績となると動きますから何とも言えませんが、大体動くことは動きます。これが実績のほうが実績見込み以上という実例はあまりないのです、ずっと過年度から見ていますが。そうすると、私はこれで見て、昨年一〇%の個人消費の伸びを見ておったのが一五・三になるのですよ。実績見込みの中で一五・三。そうすると、これはやはり実績になるとまだもう少し伸びるんじゃないだろうか。今度はまた個人消費が一一・七こう出ているわけです。一一・七これだけで見ると昨年は一〇・〇という見通しを立てたわけでしょう。今度は一一・七という見通しを立てているわけですからね。去年よりは伸びるんだということであってあたりまえじゃないんですか。見通しの関係で見たらそうじゃないですか。そうすればこれが来年のいまごろになってくると、今度はいまの実績見込みとの関係になってくると、これはまたおそらく一四か一五くらい私は伸びるんじゃないだろうか、こう思うのですよ。これは同じように設備投資についても昨年は九七・二%伸びた。こういうふうに見たわけですね。ところがことしはどうかというと、実績見込みとの関係でありますが、いま出ているわけですね。四%増こう出ているわけですね。こういうふうな状態をずっと毎年見ておると、それはあたるも八卦あたらぬも八卦くらいの見通しだ、だからそう目に角を立てて論議するほどのことはないかもしれないけれども、しかしこれがやはり税収見積もりのほうにずっと関係をしておるので、私は簡単ではないと思う。そこで私はこれまで長官にたびたび暦年の見通しを出しなさいというのを要求しておったんですが、今年は暦年の見通しというものはあわせて計算されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/83
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084・庭山慶一郎
○庭山説明員 お答え申し上げます。暦年の見通しというものは立てておりません。実績は御承知のように四半期ごとに発表いたしておりますので、したがって暦年の見通しをなぜ立てないかということにつきましてはいろいろ御意見もございましょうが、現在の見通しというものは、これは政府が来年度の予算、歳出なり歳入を見通しております。その予算をつくります場合に、政府全体として一つの経済の見方を統一をはかろうと申しますか、まあ見解の一枚をはかろうということで主としてやっておりますので、やはり年度できめるのが実際的であろうというようなことがございます。同時に暦年のものもつくっていいわけでございますけれども、その三カ月のズレたものをつくるだけの必要を現在私どもは認めておりませんので、つくっておらない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/84
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085・堀昌雄
○堀委員 私は暦年をなぜ言っているかというと、あなたはいま政府の収入支出と言ったけれども、政府の収入のほうの所得税というのは、年度でとりますか、とらないでしょう。どうですか、企画庁。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/85
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086・庭山慶一郎
○庭山説明員 この所得税のうち、申告所得税は暦年課税でございますけれども、その他のものはやはり法人税なんかにいたしますと、法人の事業年度によってきめられてきますし、その他の税金も一括課税のものが多うございますので、その意味から、年度の見通しで足りるのではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/86
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087・堀昌雄
○堀委員 主税局に伺いますが、ここの租税及び印紙収入の中にいろいろ書いてある伸び率ですね、幾ら伸びるというのは、これは年度対年度で書いてあるのですか。源泉所得ですね、さっき私が触れた給与所得の対前年比等でいま論議した数ですね。これは私は暦年計算になっているのではないかと思うのですが、これは年度計算ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/87
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088・泉美之松
○泉政府委員 税収の見込みに関しましては、御承知のとおり税の種目によりましてその年度の収入になるものが違ってくるわけでございます。たとえば給与所得で申し上げますならば、国家公務員については四月、三月に払ったものが当年度の収入になりますし、民間の会社それからまた地方公共団体におきましては、三月、二月という間に払ったものが当年度の収入になるということでございますので、私どもの収入見込みにおきましては、そういった期間を考慮しまして、おおむね給与所得でございますと、三月、二月対三月、二月の比較で見ておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/88
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089・堀昌雄
○堀委員 そうすると、三月、二月で見たのでは年度のズレがありますね。一体そうすると、私は何も年度にしてしまえというのではないですよ。年度もあっていいけれども、暦年のものもあっていいんじゃないかということをこの前から企画庁長官に何回も言っているわけです。そうしたら、確かにあなたのほうは、そういうものを一ぺんやってみましょうというお話だったんです。私はきょうは大臣も見えておりますから、こまかいことは触れませんけれども、やはりそういう資料はつくってつくれないことはないと私は思うのです。そういう点では、きょう企画庁長官も出てこられないから、また目を見ていずれやりますけれども、ひとつ企画庁側としても検討してもらいたいと思います。
時間が大体まいりましたから、大臣に最後にお伺いをいたしますけれども、私は今年度わりに、いろいろな資料を拝見をして、これまでに比べて、積もっておられるという点は、私はそれなりに評価をしたいと思います。なぜ私はそれなりに評価をしたいかというと、これまでは十分に税収が予想せられるにもかかわらず、私がさっき言ったように、毎年低目に出してはより高く入るというのが繰り返されておりながら、いわゆる自然増収なるものの発表の仕方が内輪であるために、税制調査会は、それをもとにして減税を適正に行なうことができなかったわけですね。だから、要するに、あとに生じた増収分というのは、実は減税対象になってないわけなんです。だから、私に言わせるならば、ほんとうはこれまでのような形であるならば、前年度に予想をした当初予算額、それから出てきた決算額との間の差額がありますね。昭和三十八年について言うならば、決算の見込みと当初予算との間の差額、金額では、いまさっき触れた四千七百五十何億ですか、こういうものを土台に減税の問題が考えられなければならないと私は思います。——それはちょっと違いました。いま当初予算の間の差額を土台にして議論がされるんですけれども、そうではなくて、当初予算で余分に減税対象にならぬ分が残っておるわけですね、決算のところへくるときには、あとで当初に予想したよりもたくさん入ったわけですから。その分を含めて減税対象ということで考えないと、その分だけは減税対象から抜けたのが毎年実際は出てきている。これだけしかないという前提だから、これだけ減税をしたということにいつもなっているわけですよ。ところが、とってみたら、これだけしかないと思ったら、これだけあったんだ。残りのこれだけの分は減税対象にならない分が前に押しやられてしまって、またその次の年もそういうかっこうで、いつも減税対象として、当然その分の中から、同じ割合をとってみても、幾らかは減税に回らなければならぬものが落とされたままで減税というものは進んでいるという減じがするのです。そういう意味では、いま申し上げたように、税収をたくさん見積もることはその幅が狭くなりましたから、その点で今度の予算の税収見積もりはこれまでに比べて私は進歩だと思います。裏返して言えば、そういう補正予算等の弾力がないということにもなるかもしれませんが、私は、やはり単年度主義の原則からいくならば、できるだけ正確に見積もって、そうしていろいろな年間における計画を立てるというのが私は当然だと思いますからね。ところが、そういうことでよくなっているんですけれども、依然として昨年度の要するに予算と見積もりの差額ですね。これが三千九百二十一億ですね。昭和三十八年度の当初予算と実績見込みとの差額。租税及び印紙収入では、当初の予算額に対して、第二次補正後のあれが——差額幾らになりますか、ちょっとそっちで言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/89
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090・泉美之松
○泉政府委員 三十八年度の当初予算におきましては、三十七年の当初予算に対しまして、三千百三十一億円の自然増収を見込んだわけでございますが、現在まで、三十八年度の第三号補正までにおきまして、二千六十八億の自然増収を見込んでおるわけでございます。したがいまして、三十七年の当初予算に対しましては、三千百三十一億と二千六十八億と合わせました五千百九十九億というのが、三十七年当初予算に対するいわば収入の増加ということになるわけでございます。ただ、実績見込みで、三十八年の二千六十八億というのを入れてみるときには、三十七年の当初予算に比較するのはおかしいのでございまして、三十七年の決算に対して比較するのが正しいかと思います。そういうふうにいたしますと、三十七年の決算に対しまして、三十八年の第三号補正後の数字の増収額は三千七百五十八億円でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/90
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091・堀昌雄
○堀委員 ちょっと複雑なことですからわかりにくかったのですが、私がいま触れたいのは、実は三千百九十億について三十八年度の減税は考えられたと思うのです。ところが、二千六十九億実は税収の伸びがあったわけですから、これだけは実はわからないのですね。この三十八年度の減税計画を立てるときはわかってなかった。ところが、実際には二千六十九億あったわけですね。ところが、これは今度の見通しを立てるときには出てこないのですよ。この二千六十九億というのは出てこなくて、また当初予算と当初予算の間でものを見られるかっこうになるから、これだけはさっきから言うように、いつも落ちてしまう、減税の対象になっていないということ、こういうことを私は言いたいのです。ですから、ひとつこういう面を、いまのこれがだんだん幅が狭くなるでしょう、いまのような見積もりでいけば、これは非常にけっこうだけれども、幅が狭くなっても、なおかつ、こういうことがあるということを大臣、ひとつよく頭に入れていただいて——減税をやるときに財源がないということがよく言われるわけですが、私は、所得税の問題については、さっきの九十六億ですか、給与所得、その取り扱い方が適当であるかどうかの問題は別といたしましても、金額としてはそれくらいの減税をやってもよかったと思うのですよ。それはなぜかというと、来年また三十九年度が終わったときに、さっき私が申したように、これでもなおかつ少し低目に見てあるから、経済の伸びということによってまた、こういう決算見込み額に今年度当初予算よりも余りが出てくるはずです。その余りの分を要するに今度は見落さずに、四十年度の減税というものはやってもらいたい。わかりましたね、意味は。そういうことを私はきょう申し上げて、それに伴って、さっきの所得税及び給与所得の減税を四十年度はさらにひとつ大幅に考慮をしてもらいたい。する意思があるかどうか。このあれをひとつ見落とさずに、主税局の側も、税制調査会等に、十分な財源があるという——これは人間ですから、見通しの問題だから、それは一〇〇%当たるとは言いませんよ。その精度を縮めることは私は主税局側の責任でもあるというふうに考えますから、その点でひとつ大臣の御答弁を伺って終わりといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/91
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092・田中角榮
○田中国務大臣 税制調査会の方々はもう非常に専門でありまして、三十九年度の予算編成にかかる減税案を決定しますときには、三十八年度はこうであろう、三十七年度の実績もございます、三十六年度の実績もあります、また、大体経済成長率もわかりますので、税制調査会では、あなたがいま言われたようなことを加味しながら答申をされたようであります。でありますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/92
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093・堀昌雄
○堀委員 そうじゃない。それじゃ中山さんに今度来てもらって、明らかにしますよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/93
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094・田中角榮
○田中国務大臣 いやいや、非常に専門家でありまして、もう十分そういうことは加味せられておる、こういうふうにお考えいただけばいいと思います。しかしわれわれもひとつ、税制調査会にいろいろな参考書類を送付をしましたり、審議に必要な書類を出しますときには、いろいろないまあなたが述べられたような問題等も含めまして、もっと審議に必要な書類を提出すべきであるということは同感であります。
それから、その年の減税額が少ない、また多いというような問題は、やはりいま減税は日本のように年々やっておるのでありますから、実績によってまた答申が出るということであります。とにかく予算を組むときに歳入となる金額に対する当該年度の減税額との比率というものはずっと過去にも出ておるわけでありますから、そういうものは十分比較をさるべきであるし、また考慮さるべきだろうと思います。いずれにしましても、減税に対しては政府も積極的な考えを持っておりますので、将来とも減税はできるだけ続けていきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/94
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095・堀昌雄
○堀委員 ちょっと答弁が不十分なので、確認だけしておきたいのですが、要するに、さっき私がここで触れた三千百九十億ですか、というのが表に出た自然増収で、それに二千六十九億という決算で伸びてきたものがあるわけですね。その二千六十九億というのは当初予想されてなかったものですから、三千百九十億に対してしか減税のプランはできないと私は思う。ここは中山さんに来てもらって確認をしますが、そうすると、今後二千六十九億に見合う分、そういう分を多少は見越して減税をやる必要があるのではないか、これが見落とされていますよということを確認したいわけです。それを見落とさずに——見落とさずにと言ったって結果でしかわかりませんが、そこを過去のいろいろなトレンドから見てある程度考慮にいれて減税をするという姿勢になってもらいたいということを私は言いたいわけですが、そこのところをはっきり答えてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/95
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096・田中角榮
○田中国務大臣 そういう姿勢でありますので、答申にないものまでやっておるということもお考えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/96
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097・堀昌雄
○堀委員 そういう返事じゃちょっとやめられぬな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/97
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098・田中角榮
○田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、この内閣は減税内閣といわれるぐらいに毎年減税をやっておるのでありますから、とにかく今後調査会でいろいろな資料を要求されるときには過去の例にも徴してできるだけ正確な資料を出して、答申に誤りがないようにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/98
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099・堀昌雄
○堀委員 終わります。また機会を見て……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/99
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100・山中貞則
○山中委員長 春日一幸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/100
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101・春日一幸
○春日委員 私は企業組合に対する法人税、企業組合に対する所得税、これらの課税のあり方について当面する重大な疑義をただしたいと存じます。この問題は非常に高度の徴税理論を判断の材料とせなければなりませんだけに、特に主税当局の御意見も伺いつつ、またこれはやはり政策上の重大な問題でございますから、特に大臣からそれらの諸問題についての御意見を承りたいと思うのでございます。
このほど全国中小企業団体中央会から各党に対して企業組合の問題について要請がございました。申し上げるまでもなく、全国中小企業団体中央会は中小企業の共同組織としてのわが国の基本組織でございまして、国からも年間一億をこえる運営上の助成が行なわれておる団体でございます。したがいましてその社会的な地位は高く、したがってその団体が立てます意見というものはやはり高度の見識を持つものとして評価をされなければならぬと思うのであります。ここにこの団体が要請しておりますことを集約いたしますと、最近の経済成長は中小企業近代化のための施策が強力に推進されるようになっておる。この場合、小規模事業対策の強化に特に配慮すべきであり、しこうして小規模事業者の近代化、合理化のための合同組織としては、組合員の利益が公平に擁護される企業組合の組織がより適応することを強く主張したいと述べておるのでございます。私は大臣にあらためて御認識を願いたいと思いますことは、同時にまた徴税当局においても十分公正に評価を願いたいと思いますことは、従来企業組合というものは何となく税金を軽くすることのための共同組織、さらにこれを悪く表現いたしますと、七、八年前にはいろいろの事故が累積いたしました経過もございまして、脱税的共同組織であるというような非難もまた免れなかったのでございます。
〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕
そのような注意や警告、またそのような批判にこたえまして、これら企業組合がその後数年間これはこれなりに鋭意研さん、努力を積み重ねてまいりまして、いまではこの中小企業の団体の中央会が、これらの企業組合こそは零細事業者の合同組織としての究極的な理想的なスタイルである、かくのごとくに断定するに至ったということは、やはり実態に相当の改善改革が加えられたものと見るべきであると思うのでございます。したがいまして、本委員会におきましても昭和二十七年以来しばしば企業組合に対する課税のあり方が論じられておりましたが、しかしこのことは、それらの共同組織が何となく脱税臭ふんぷんたるというような、そういう印象の中において、これについて論理的にその究極をきわめるということなくして過ぎ去ってまいっておると思うのでございます。私が本日この時点において特にこの問題を取り上げるに至りましたことは、中央会かすなわち零細事業者の合同組織としての究極的な理想的なスタイルである、このような意思決定を行なったということについては、これは相当の改善改革があるのであるから、したがってそういうものを対象として、すなわち純粋の共同組織として、すなわち政策上の共同組織としてこれを直視しながら、それに必要な施策を講じ得るの客観的な情勢、いろいろな背景が整備されたものとしてこれを論じていきたいと思うのでございます。そういう意味におきまして当局の御答弁をわずらわしたいと思うのでありますが、だといたしますと、われわれこの中小企業等協同組合法を読んでみましても、その立法の目的、行為、またその政策意図などから考えまして、事業協同組合と企業協同組合とは税法上同一の取り扱いをなすべきものではないかと考えるのでありますが、当局の考え方はいかがでありますか。もし同一の取り扱いをしてはいけないというのでありますならば、その理論を明確にここに列挙してお述べを願いたいと思うのでございます。まず第一番にその点についてお答えを願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/101
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102・泉美之松
○泉政府委員 春日委員すでに御承知のとおり、企業組合が設立し始められました昭和二十七年当時共栄企業組合といったような大規模の企業組合ができたりなどいたしまして、当時企業組合は脱税法人ではないかというようなことからいろいろ大きな騒ぎがあったわけでございます。そこで、税法におきましては、企業組合は法人税法九条七項の事業協同組合からはずして一般株式会社並みに課税するという措置を現在までとっております。それではなぜ事業協同組合から除いてそのような措置をとっておるかと申しますと、一つは企業組合というのが、小売商をやっておる、あるいは肉屋をやっておる、氷屋をやっておるという事業主が集まって従来のそれぞれの販売場あるいは事業場におきまして、そのまま事業場の長になって、いわば看板を塗りかえたにすぎないのではないか。したがって、それが法人を組織しておるといっても、従来の個人企業とあまり変わりないのではないかといったような点が見受けられますので、御承知のとおり法人税法及び所得税法に特別の規定を設けまして、そういった従来の個人企業形態とあまり変わらないようなものは、法人たる企業組合と認めないで、個人として課税していくという措置をとったのでございます。しかし、その後企業組合の中でも法人として認めていいものがあるということで、国税当局におきまして、法人として課税して差しつかえないような実体を備えておるかどうか、つまり単に脱税を目的とする組合でなくて、ほんとうに法人としての共同意識に燃えて、単なる従来の個人企業がそのまま表面上組合になったといったような姿でなくして、全体が一つの法人としての実体を備えるに至っておるかどうかということを検討いたしまして、企業組合として法人格を認めていいものは法人として認めて、法人課税を行なうということにいたしてまいったのでございます。ただ、その場合に、御承知のように事業協同組合でございますと、事業分量に応ずる配当というものがございまして、これを損金算入にするという取り扱いが行なわれておりますのは、これはそういった事業分量に応ずる配当につきましては法人に課税しないで、それを組成している個人に課税するというたてまえになっておるわけでございますが、企業組合の場合におきましては、その点が事業協同組合と違っておると認められるのでございます。そういった点からいたしまして、事業協同組合と企業組合とは、先ほど春日委員は中小企業が共同事業をやっていく場合の一つの理想的なタイプであるというふうに企業組合を規定されましたけれども、はたして理想的なタイプであるかどうかは別といたしまして、その利益処分の形などが事業協同組合と企業組合では違っているというふうにわれわれは認識いたしまして、今日まではそういう区別した取り扱いをいたしておるのでございます。ただ春日委員のおっしゃるように、現在企業組合は、一時たくさんできましたが、その後つぶれるのはつぶれまして、現存残っておりまする企業組合というのは純粋の企業組合として認めるべき性格を持っておると言われるような点が出てきておるというふうにお聞きしておりますので、それらの点につきましては、今後さらに実態を検討いたしまして、どのような課税を行なうのが適切であるか検討いたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/102
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103・春日一幸
○春日委員 本委員会も、この問題については、歴史的に、経過的に相当論じ合う機会があったのでございまして、一個の理論の骨子というものはすでに論じ合い尽くされておる面があると思うのでございます。ただ、この際泉局長に申し上げたいのでありまするが、いまからかれこれ十年くらい前でありまするが、本委員会において企業組合が純粋に体をなしていないというような場合は類推課税を行なうことができる、個人所得としてこれを捕捉することができる、こういうようなことがなされようといたしましたとき、本委員会は特に附帯決議を設けまして、税務署長ではそういうことはできないのだ、そういうことをやろうとする場合においては、課税懇談会を国税局ごとに設けて、国税局長が諮問を発し、その答申を待って国税局長がみずからこれを決定する、これは私も十年前の記憶でありまするから、おぼろでありまするが、たしかそういうような制限を課することによりまして、この企業組合を撲滅せんとするところの国税庁当局のその残酷な仕打ちを阻止し得たことがございました。これは記憶でございますが、十分御検討願えばわかることでございます。けれども、そのときになおかつわれわれが抜本根塞的な解決をはからないで今日までこれがペンディングのまま残されてまいりましたというこのことは、その当時企業組合の組合の経理、それから組合員個々の経理というものが、全体的にわれわれが確信を持って政策理論を展開するだけの実体を持ってはいなかった。そこで企業組合に対しては、これを法律に合わせてその経営を合理化するようにこれにいろいろと指導がなされてまいりまして、その後企業組合に対する課税の統一通達が長官名でなされたり何かしながらだんだんと改善の道を歩んでまいったこの事実関係は、十分御存じおきを願いたいと思うのでございます。
そこで、いまここで問題となっておりますること、かつは中央会が国会に向かって要請をいたしておりますることは、事業協同組合と企業組合というものがはたして異質のものであるかどうか、異質のものでありまするならば、その税のかけ方が変わっておっても、これはやむを得ないものである、しかし同じものであるならば、法律の前に平等でなければならぬ、そういうような意味合いにおいて、同一の取り扱いをしてくれいという、こういう要望にこたえて、われわれはこの政策理論を十分きわめなければならぬという立場にいまあるわけでございます。だからそれを念頭に置いて、ひとつ大臣も御判断を願いたいと思うのでありまするが、私はいま泉局長が申された、違っておるようだから違った取り扱いをしておるというこのお説は、いまは、漫然と常識的に社会通念的にそれがそのように論じられておることである。けれども、実体がはたしてそういうものであるのかどうか。この際この企業組合というものが何がゆえにわが国において制度化されたのであるか。歴史的に、かつは実体的に、かつはまた立法政策的にその根義に触れてこの問題を明らかにしていかなければならぬと存ずるのでございます。
まず第一番に、歴史的な考察でありまするが、このことは相当の研究がされておるではございましょうが、これは十九世紀におきまするヨーロッパにおける零細業者の共同組織、これを規範として、これを日本の国情に合わせたようなぐあいに模倣し、改善してわが国に取り入れられました。当時片山内閣において水谷長三郎氏が通産大臣のときにこの制度をつくりました。その当時の政策理念、立法政策の原理というものは、やはり今日生かされていかなければならない。初心忘るべからずということがあるんだから、当初何がゆえにこの企業組合というものが制定されたのであるか。その立法の目的というものは滅却されては相ならぬ。ゆがめられて、国税庁当局のそのような恣意によって解釈されては相ならぬのでございます。なるほど人を見たらどろぼうと思えということばがある。いわんや国税当局は、やはり昔から収税吏としての陰険悪らつな人柄からいたしまして、納税者を見れば脱税者だ、こう思う。でありますから、そういうような考え方の上に立って判断をするということは、制度上いなみがたい面があるといたしましても、しかしそれは正しい態度ではない。国家の徴税官吏というものは、やはりその法意に基づいて、正当に理解して、そして公正なる執行を確保していかなければならぬ。独断によっていろいろな処理をなしていってはならぬのでございます。だからそういう意味において私は申し上げるが、ヨーロッパにおける協同組合運動、これが日本の国情に合わせて改善、改革された。そうしてヨーロッパにおける配給を中心にしたところの協同組合運動というものは生産活動に重点を置かれて、これが生産組合になり、その後ドイツにおいてもイタリアにおいてもそれがずっと盛んになってきて、協同組合の究極の姿というものは、結局生産組合によってこれが象徴される。結局日本の企業組合というものもやはり生産組合の一個の変形である。これは歴史的に学問的に十分論証されているところであると思うが、この点についていかが御理解をされておりますか、御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/103
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104・泉美之松
○泉政府委員 企業組合が中小企業協同組合法に設けられました当時の理念につきましては、なるほど春日委員のおっしゃるとおりのような理念に基づいて設立されたことかと思うのでございますが、当時、御承知のとおり所得税の負担がまだたいへん重かったというような事情も加わってのことかと思いますけれども、御承知のとおりあの法律ができまして、企業組合の設立ができるというときになりましては、いわば従来の所得税の負担を免れるために、形式的に企業組合をつくったのだ、だから自分らは個人ではないのだというような姿で課税を免れようとされました。また国税当局といたしましては、実態は変わっていないじゃないか、法人という姿になっていないじゃないかということから、両者の間にいろいろトラブルのあったことは春日委員の御承知のとおりでございます。それが先ほども申し上げましたように、単に税負担を軽くなろうとするだけの意味では企業組合というものは成り立たない。やはり一つの事業共同体としての経営の合理性を持っていなければ、企業組合としてはやっていけないということから、単に税負担を免れようとするだけの意味の企業組合はつぶれていきまして、現在残っておりますのは、そういった企業組合の経営の合理性というものに基づいて残っているものが現在の企業組合であろうと思います。ただ各地の実情をいろいろ承りますと、必ずしもそれほど準備がされていないような企業組合もあるようでございます。したがって、私が先ほど申し上げましたように、企業組合につきましてはなおその実態を十分究明いたしまして、その実態をつかんだ上でそれに対してどのような課税をすべきかということを検討いたしたいと思うのでございまして、お話のようにこの企業組合の法律ができました当時の精神というものは私どももよく承知はいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/104
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105・春日一幸
○春日委員 私が大臣に御理解を願いたいと思いますことは、この企業組合という制度は、脱税者が脱税をしやすいようにということでこんな制度ができておるわけのものでもないのであり、脱税者がこの制度を悪用して脱税をばかろうとする共同組織ではないのでございます。いま申し上げましたように、これは歴史的に経済学者や社会評論家がヨーロッパにおいてその政策を立てまして、しこうしてそれが理論的に、政策的に、これが究極的な一個の理想的スタイルであると評価されて、ヨーロッパの各国においてこの組織がとられて、わが国もそのような有益な組織を取り入れることによってわが国における零細事業者の合理的な経営、これを通じて国民生活の健全なる発展をはかろうということで、かくのごとき企業組合という制度ができ上がったのである。
〔吉田(軍)委員長代理退席、委員長着席〕
したがって、それが周知徹底しないような政策の理念というものや、その高揚というものが十分PRされない過渡的時点において、さまざまそういうような脱税者たちがこの組合を悪用した。けれどもそれは本質的なものではない。ですからあくまで歴史的に企業組合というものはいかにして構想されたのであるか、このことをやはり十分念頭に置いて企業組合に対する課税の方式というものは考慮される必要があると思う。まずこれが歴史的考察の第一点でありますが、第二点は実態的考察であります。すなわち事業協同組合と企業組合が違っておるということが、はたして実態的に違っておるのであるか、実態的に違っておるならば課税方針が違っておってもようございます。ところが実態がもし変わっていないとするならば、課税の方針は同様であらねばならぬと思う。申し上げるまでもなくこの事業協同組合法の中にはずっと総則がありまして、こういう商売のものはこういう共同組織を持つことができる、こう書いてある。そうしてこの事業協同組合法に言う協同組合とは、共同組織とは何々か、こういうことになりますと、これは六つ制限列挙してあります。すなわちそれは事業協同組合、事業協同小組合、火災共済協同組合、信用協同組合、協同組合連合会アンド企業組合、こういうふうに六つをきめておるのであるから、したがってこの協同組合法におけるフェーバーは機会均等でなければならぬ。しかるに実質的の中身はどうであるか、実態的な考察を加えてみるといたしますならば、とにかく対外的な経済活動を行なうのは事業協同組合が合体することによって弱い力を一つに強めて、そうしてより多く利益をはかろうとする一個の共同組織である。すなわちこれは大企業にも太刀打ちができるようにすなわち共同仕入れ、共同販売、共同事業、こういうようなことをやって対外的に利益をよりはかることのための営利を目的とする団体である。営利団体であることについては事業協同組合も企業組合も何にも違うところはございません。対外的には営利をはかることのための共同組織である。対内的にはどうであるかと申しますと、事業協同組合はお互いのコストダウンをはかるためであり、組合員構成メンバーの利益をはかることのためであって、それはその組合員を対象として、その組合員から利益をはかろうとするものではありませんね。したがってこのことは組合員と取引関係があろうとなかろうと、事業協同組合だって、あるいは企業組合だって、組合員から利益をはかろうとはしていない。だからこれは営利を目的とするものではない、対内的には。利益があったならば事業協同組合については従事分量配当としてその利益は組合員にそれを配当還元してしまうのです。それから企業組合においては利用分量配当としてこれまたその剰余利潤が発生しましたときには組合員にこれを還元してしまう、そのことが許されておる。それだから組合自体としてその利益をはかるものではございません、組合構成メンバーを相手としては利益をはかるものではない。
そうすると、事業協同組合と企業組合との相違点と申しますものは、対外的には営利を目的とする共同組織である、対内的には利益があったならばみなその構成メンバーに事業協同組合は利用分量の配当として還元する、企業組合は従事分量の配当としてこれを還元する、何も営利を目的とするものではない、同じことではございませんか。事業協同組合も企業組合もその実態関係については同じものであると見るべきではございませんか、いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/105
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106・泉美之松
○泉政府委員 春日委員の仰せではございますが、事業協同組合の場合におきましては各個の企業というものは存続しておるわけです。存続しておってそれが共同して協同組合をつくりまして共同仕入れ、共同販売というようなことをして協力してやっていくということであります。したがいまして、利益が出ました場合には、従事分量に応じまして配当を行ないます。その配当は、存続しております個人または企業体に帰属する所得といたしましてそれに課税するのであって、専業協同組合においてはそれは損金と認めて課税しない、こういうたてまえをとっておるわけでございます。ところが企業組合の場合におきましては、従来の個人企業体は一応なくなりまして、企業組合の第一販売所あるいは第二販売所、あるいは第三事業所あるいは第四作業場、こういったことになるわけでございまして、個人企業体としての性格はもはやなくなって、株式会社の一事業所あるいは販売所というような姿になったと同じ結果になっているわけでございます。そこで、企業組合におきまして利益が生じました場合には、その利用分量に応ずる配当は、株式会社におきまして収益が出まして配当を行なう場合と同じであるというふうに観念されるのでございまして、それは株主として受け取る利益であるというふうに考えられるのであります。個人企業がなお残っておって、その個人企業の上に従事分量に応じた配当がなされて個人企業の所得に加えられるという性格とは違う、そこに事業協同組合と企業組合とは異なった性格があるというふうに私どもは見ておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/106
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107・春日一幸
○春日委員 問題は大臣、ここなんです。泉局長の述べられたところは、いままでの観念がそういうものであったということなんです。いままではそういうふうに見られてきたが、いまこそ政策の根源にさかのぼって課税の方式というものを考え直すべき段階ではないか、それはやはりその政策目的にのっとってあるべき姿にこれを直すべきときではないか、こういう立場に立っていま論じておるわけでございます。いま泉さんが言われたように、協同組合は極端なことを言えば九〇%まで共同事業をやって、一〇%だけ個々の独立した自分の経営というものが残されておる。協同組合の組合員は、自分の商売は自分でやりながら、しかしある部分を共同でやるというのですから、その部分たるや一〇%の場合もあるし九九%の場合もあると思うのです。では九九%と一〇〇%とどこが違うかという問題なんです。企業組合の場合は個々の企業が企業組合の中に溶解してしまうから、したがって一〇〇%の共同組織なんです。ところが事業協同組合の場合は個々の事業というものが残っておりますから、したがってそれは異質のものだというのであるけれども、しかし、いまわが国の組合が何を望んでおるかというと、これは零細事業者の協業化ということです。中小企業の協業化ということは、いまや中小企業政策の一個の定説になっておる。中小企業団体法においても中小企業基本法においても、その協業化のためにさまざまな助成措置が講じられておる。だから、協業化のための理想的スタイルをどこに求めるべきかということです。問題はここだと思う。七〇%がいいのであるか九〇%がいいのであるか、それとも一〇〇%がいいのであるか、私は問題は歴然たるものがあると思う。一〇〇%がいいにきまっています。協業化をしようと思えば、中途はんぱな協業化よりも全的協業化のほうが望ましいにきまっておる。だからこそ本日この中小企業団体中央会、年間一億円以上の助成を国から受けておるところの権威高き社会的地位の高い中央会が一個の意思決定を行なっておる。すなわち、わが国の経済の高度成長に見合って中小企業わけて零細事業の近代化、合理化をはからなければならぬが、その理想的なタイプというものはすなわち企業組合である、こういうぐあいに断定的にここに意見を述べておるのです。そのことは、私がいま申し上げたように、九九%より一〇〇%がいいということです。事業協同組合は九九%までの共同事業を認めておりますね。そうでしょう。五〇%まででなければならないとか、六〇%でなければならないとか、三〇%をこえてはいけないとかいうことはない。九九%やってもよい。その場合には、その利用分量の配当は損金扱いを受けておる。ところが企業組合の従事分量の配当は、これは損金処分を認められていない。理想的なスタイル、一〇〇%のものはいけない、九九%のものはよい、こういうような課税のあり方というものは、これは政策理論として合致しないではないか。いまこそこれはやはり立法政策の根源に触れて協業化を指向しながら共同組織として中小企業等協同組合法でこれを制度として認めた以上、さらに中小企業基本法二十三条において、零細事業のために税法上金融上特別の措置を講じなければならないと、宣言規定にしろ訓示規定にしろ法律に一カ条を設けて国に義務づけております以上、やはりこういうような倫理の合う問題については、この際問題を処理すべき段階ではないかと思うが、田中大蔵大臣いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/107
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108・田中角榮
○田中国務大臣 法律にはもちろんありますし、春日さんの言うことも非常によくわかるのですが、協同組合と同じように将来はなるのだから現在においても同じ取り扱いをしろ、こういう御説であるようであります。
税の問題につきましては非常にこまかくやっておるわけでありまして、春日さんの御説を聞いておりますと、いますぐここでそうありたいとか、そういたしたいとか、そういたしますという答弁をしたいような気持ちもいたしますけれども、在来の経緯もございますし、これを機会にひとつ十分検討して、法律がただ宣言的規定であって、いわゆるこういう組織がどの程度の基準に合致すれば同じ取り扱いをするとか、いろいろな細部の問題に対しては検討していきたいと思います。しかし、いやしくも中小企業振興に関する各種立法の中にあるもので、それに飛びついて脱税行為をやろうとか、擬装行為を行なうとかいうような考えではどうにもなりませんから、またるるお述べになりましたように、だんだんと中小企業、零細企業の将来あるべき姿に邁進しつつあるというのでありますから、どのような基準をきめられるのか、場合によっては法律改正が必要になるのか、また政令等によって基準をきめてだんだん育成するような方向になるのか、これらの問題に対しては少し勉強してみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/108
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109・春日一幸
○春日委員 こういう深遠な徴税理論という形になりますと、これはしょせんわれわれのごとき専門家でないとなかなか論じられないので、そういう意味で渡り鳥みたいな大蔵大臣には即答は困難であろうと思うが、ただ私が申し上げたいことは、あなたのような、いいものはいい悪いものは悪い、大胆にやっていこうというような人がその衝におられる間に、こういう懸案を良心的に解決したい、こういうことです。実際問題はこういうことなんですよ。私の言う理論が論理に合わなければ、また道義、条理に合わなければやむを得ない。けれども、われわれもやはり一個の常識を持っておりますから、脱税臭ふんぷんたるときにおいては、われわれはこういう論理は出さなかった。ところが団体中央会もこのようなギャラをしてきておるのです。中央会も、企業組合というものは全く改善、改革されて、そういうような昔の悪い点は払拭されたいまこそことごとく政策上の取り扱いを受けるべきときである、こう言っておる。それからここ三年来、四年来中小企業団体法の制定を契機といたしまして、零細事業者に対する国の施策がさまざま講ぜられつつあるということですね。それは近代化の問題でありますとか、合同の問題でありますとか、税法上においてもあなたがやってくださった中に、この中小企業者が固定資産を購入したる場合における圧縮記帳、税法上の特例、これなんかいろいろやってきたわけですね。だからいまこの段階において何か違うならばいいけれども、いま泉さんが述べられたことは何年か前に論じたことである。これは大閤さんが日吉丸といったころの物語で、全然情勢が変わってきているのですね。だからそのような古典的な政策理論は当然通用しない。がらっと世の中が変わって零細業者のためにあらゆる手だてを尽くそうというときなんだから。それで私は大臣に御勉強願いたいことは、中小企業協同組合法の第一条です。これはやはり企業組合も含めてその政策のフェーバーを与えようとしておる。そうして明示しております協同組織の中に企業組合を入れておる。それから企業組合と事業組合とは同質のものである。すなわち零細事業者の協同組織がその合理的な経営を指向する理想的なタイプであるといたしまして、そこにいろいろな政策が集中されておる。その実態においても事業協同組合は対外的に営利を目的とする団体である、協同組織である。対外的には利益があったならば事業協同組合は利用分量の配当、企業組合は従事分量の配当というものをそこに残しておかないのですね。だから組合員に対しては営利を目的とする団体ではない。それが片一方においては損金の扱いを受け、片一方においては益金扱いを受けておる。それでは企業組合を大きく育てていくことができないではありませんか。だから私はこの際そのような益金処分、損金処分の統一をしてもらいたいということと、協同組合が特別法人として特別の税率をもって課せられるといたしますならば、企業組合においてもやはり一視同仁の取り扱いがなされてしかるべきである、このことを主張しておるのであります。この問題は高度の政策的な問題でありますから、どうかひとつ大臣の良心によって実態に即した処理をすみやかに講ぜられることを強く要望しておきます。これについて大臣の御答弁を願っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/109
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110・田中角榮
○田中国務大臣 るるお聞きをすれば、私も中小企業に対しては熱意を持つものでありますので、非常によく拝承いたしたわけであります。企業組合とか事業組合とか協同組合とか、こういうものに対して定義をきめて、だんだんとその政策目的に合致するような法制上の措置も必要であろうと思います。あなたの議論は現在やっておるものまたこれからやらんとするものが協同組合と何ら目的にも事実においても違わないじゃないか、違わなければ同じ税の適用をしろ、こういう御説でありますが、裏返せばある一定の基準をきめて、これのワクに入るものに対しては当然自動的に同じ取り扱いができるということも言い得るわけであります。これらの問題に対してはいま主税当局にもここで言ったわけでありますが、こういう議論を十年間もやっておられるということでありますし、私も中小企業関係法の審議の過程において承知をした問題でもありますので、徴税上もまた税制上も妥当であり、しかも中小企業対策になるようなものに対してはひとつ十分検討して、議論だけで終始をするよりも、具体的にどういう措置をすれば一体どうなるのかというような問題に対しては、主税当局に検討をさせるつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/110
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111・春日一幸
○春日委員 それではもう一言だけお願いをいたしたいと思いまするが、零細事業者に対しまする課税の所得区分の問題でございますね。これは私は昨年も大臣に述べたと思うのでありまするが、本年度の税改革の中においても実現をいたしておりません。中山会長にも意見を述べましたけれども、本年度の税調の答申の中にもあらわれてまいっておりません。このことはやはりなおその認識が十分ではないと見るべきであると思うのでございます。それで、現在の徴税制度、所得の区分というものが、御承知のとおり給与所得と財産所得と二つに分けられておるのです。ところが純粋にこの二つだけであるかというと、実態はそうではないと思う。実際の零細事業者の所得は、やはり自分の営業によるところの、すなわち資産から発生するところの所得と、それからその事業者がみずから働いた勤労の対価として発生する所得との合算所得だ。だから私はこの際、所得の実態にかんがみて給与所得の類別と財産所得の類別と給与所得と財産所得の合算所得の類別と、この三つをやはり立てるべきであると思う。立てなければその実態に合わないと思う。それが私の述べんとするところの政策理論の骨子になるものでありまするが、だといたしますればこの零細事業者の所得の中には、これは資産所得としてことごとく課税されておるけれども、勤労の対価として発生した所得部分に対しては何らの措置が講ぜられてはいない、その所得を得るに必要なる経費というものの控除措置というものが講ぜられてはいない。給与所得者に対しては給与を得るに必要なる経費ということで概算的に勤労控除がされておる。ところが、大工だとか、とびだしか、左官は一体勤労者とどこが違いますか。時計屋さんだって洋服の仕立て屋さんだってみんな同じなんです。そのような所得者の中の下積み何十万円かはこれを勤労の対価として発生した給与所得とみなす、それに対してはその所得を得るに必要なる経費として概算的にやはり一定の、たとえば特別勤労控除ですね、これに見合うものを引いてやるのでなければ、私は零細事業者に対する税法上の特別措置というのはこれ以外にないと思う。基礎控除も扶養控除もいろいろなものを引き上げていく、これは一般的な問題です。ところがそのような零細事業者のほんとうの勤労の対価として発生した所得に対してはそれに必要な経費が当然あります。うどん屋さんが十時まで働けばやはり夜食の一つも食わなければならぬ、寒いときには暖をとらなければならぬ、とうふ屋さんが朝六時に起きていこうと思えば、当然寒いからセーターの一枚も余分に着なければならぬ、車を引いていけば手袋の一つも買わなければならぬ。そういう経費は営業上の経費として認められておりません。だからそのような所得を得るに必要なる経費というものを、勤労所得に対する基礎控除と同じように特別勤労控除、こういうふうで引くべきであると思うのですね。この問題はいかがでありますか。それは徴税理論として述べてもいいけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/111
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112・泉美之松
○泉政府委員 春日委員の高邁なる御主張はかねてから承っておるところでございますが、お話のように、世のある所得というものを分類いたしますと、勤労による所得、それから資産ないし資本から生ずる所得、それから資本ないし資産と勤労との合算による所得、こういうふうに分けられることはお説のとおりだと私は思います。わが国の所得税法が所得を九分類に分類いたしておりますが、これの分類の基礎は、やはりそういった所得が、勤労による所得、資産ないし資本による所得、あるいは資産ないし資本と勤労と合算による所得、こういうことが基礎になりまして、さらにその形が事業所得であるか、山林所得であるか、退職所得であるかといったような性格を加味した上で、九つに分類いたしておるわけでございまして、お話のように考えていくべきという筋合いはお説のとおりと思うのでございます。
ただ、それでは事業所得者のうち、零細所得者に特別勤労控除を認めるべきかどうかという点になりますと、なるほど給与所得者に給与所得控除を認めております。これは昨日も堀委員にお答えいたしたのでありますが、給与所得控除の根拠といたしましては、およそ四つあろうかと思うのであります。一つは、給与所得を得るに必要な経費の概算的な控除である。それから二つ目は、給与所得は、担税力が弱い。御主人が病気とか、死亡いたしますれば、所得が発生しなくなる。それから三番目は、給与所得と事業所得との間におきましては、実際問題として、所得の把握の程度において差があるのではないか。それから第四番目は、給与所得は毎月源泉徴収されるのに、事業所得は申告納税によるため金利の差がある。この四つの差があるわけでございます。
先ほど春日委員は、この零細事業所得者のうちの特別勤労部分を認めるのは必要経費の概算的控除の性格というようなことを御主張になられたと思うのでございますが、ただ先ほど申し上げましたように、給与所得の中には給与所得者と事業所得者との間の所得の把握の違いといったようなものも入っております。この点につきましては、実は昨日堀委員から、それではこの四つのウエートがどういうふうに入って給与所得控除というものが構成されているのかということを言われたのでございます。この点につきましては、実はまだ正確にどのウェートが幾らということまでは十分検討いたしておらないのは残念でございますが、これらの点につきまして十分検討いたしてまいりたいという気は持っておるのでございます。
また現に春日委員すでに御承知のとおり大工、とび、左官、板金の業者につきましては、所得のうち一定部分は勤労——これは所得の形態が雇われていく場合と、自分が請負としてやる事業といろいろあるものでございますから、そのうち雇われていく部分については給与所得的に扱うということでやってきておること御承知のとおりでございます。そういう点からいたしまして、特別に給与所得控除、給与所得として扱っておることになるのでございますが、それ以外のものについて、それでは特別勤労控除を認めるべきかということについては、いま申し上げました給与所得者に対する給与所得控除の性格、そのウエート、こういったものとにらみ合わせて、なお今後検討すべき問題であろうと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/112
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113・春日一幸
○春日委員 私は大臣に申し上げます。というのは現行税制が、府県税の事業税に関係を持つ問題なんです。シャウプ勧告によって税体系が改められましたね。そのときには事業税を廃止して、そうして付加価値税を制定したのです。ところがこれはその後実情に合わないので、これは廃止してしまって、そして事業税をまた復元いたしました。御承知でございますか。そういう関係でございますから、事業税というものはやはり二重課税というもののそしりを免れない。これをやめてしまってそうして付加価値税を創設するということで、シャウプの勧告というものは一つのバランスの上に立って、均衡がとれた一個の徴税制度であった。ところが付加価値税をやめてしまって事業税をまた復活したものだから、そこにアンバランスができちゃって事業者に対する二重課税というそしり、非難が生じております。これは歴史的に非難事項として訴えられておるものである。ところがいま申し上げたように、それを緩和することのためにも零細所得者の中で、すなわち事業税においては、給与所得者に対しては事業税は課せられない、もっぱら事業所得者だけにしか課せられないのですね。その中において、この零細所得者の中の下横みの何十万円、たとえばこれを六十万円といたしますと、六十万円までは事業所得ではない、給与所得である、こういうことが法律によってきちっと規定されますと、事業税は現行の——ことし二十二万円になりましたが、これがかりに六十万円に上がるか、さらにその上八十万円になりますか、それだけ事業税において軽減措置が講ぜられて、ここにシャウプ勧告に基づくところの一個の税体系というものが、均衡の度合いを幾らかでも調整することができるというその効果もあるのでございます。いま泉さん言われたのでありますが、現在の制度といたしまして、大工、左官、とび、植木屋、これらのものに対しては、所得の中の一定部分は、勤労の代価として発生した所得であるとして、村山達雄君が直税部長たりしころ、その政策理論というものの妥当性と合理性を認めて、法律によらずして通達を出しておる。そのことは救済せなければならぬ、政策理論として正しい、こういうことで通達を出しておる現実にかんがみて、私はその政策理論が正しいのであるならば、いまこそ団体法があり基本法があり、そうしてそういうような零細事業者の所得に対しては軽減措置を講ずべしと国家はあなた方にこれを訓示し、かつ宣言しておる。それにこたえて何らかの作業をせなければだめではありませんか。いま泉さんが徴税を類別するとすれば、給与所得、財産所得、給与所得と財産所得の合算所得、この三つに類別することが正しい、こう言われた。だとすれば、いまそれに対してためらう四つの条件をあげられましたが、その四つの条件も私の著書の中に書き加えられておる。きちっとはっきり反論も書き加えられておる。給与所得者は担税力が弱いというけれども、零細事業者の担税力も給与所得者と見合うべきものである。というのは、給与所得者はその地位を雇用ということによって身分が保障されておる。ところが零細事業者は、商売を自分の責任でやっておるのであるから、相手が金をくれなければ、結局貸し倒れもできましょう。したがってその所得というものはきわめて不安定である。寄らば大樹の陰ということで、そこにおって日暮れ、腹減って、遊んでおるとは言わぬけれども、いずれにしてもその生活というものは保障さわておるが、零細事業者は、自分自体の個別の責任においてその利益を求めていかなければならぬ。しかも自分の貸したるものが貸し倒れになってしまえば、その所得というものの不安定さというものは、給与所得者に比ぶべくもない。そのことはやはり担税力の中に加えて、その脆弱性というものは評価しなければならぬ。
それから、何といってもそのような所得を得るに必要な経費というものは要るのです。大工さんの仕事を考えてごらんなさい。左官、とび、みなそういうものはそれなりに自分の責任において利益を追求していかなければならぬから、そのために非常にいろいろな費用がかかります。たとえばコーヒーの一ぱいもお得意さんと飲まなければならぬ。こんなコーヒー一ぱい飲んだといって経費の中に書きようがない。そういうような概算的性格の費用というものは見てやらなければならないという合理性がある。そういうことで私は、この問題、そのほかにもいろいろありますけれども、これは理事会の申し合わせでございますし、私も特別理事としてそれに参加しておるので約束は守らねばなりませんから、結論にいたします。
大臣、そういう意味で、この問題はその論理のファウンデーションというものは、いま泉さんによってこれは当然のことだと容認されておる。ただ四つの非難事項、ためらい事項というものをあげられておるけれども、それは私に説得力を持たない。いわんや当事者たちに対しては説得力を持たない。だからこれはひとつ、ぜひとも政策的に御研究をいただいて、最もすみやかなる機会にこれを制度化していただく。このことはただ単に国税の面において若干の調整をするということではなくして、シャウプの税制勧告を読んでいただくと、あれは、どうしても付加価値税というものを置かなければ均衡がとれないのです。どんな大企業をやっておったって、損したら全然納めなくていいのですから、そんなことでは、警察なんかずいぶん使っておるし、消防も百貨店も使っておる道路施設、そういうものに対する工事費の負担というものは全然ないのですよ。だから零細事業者に対してダブル課税になっておる面を、それが勤労の対価として発生したものというみなし課税によって、給与所得者と同じがように軽減することができる。これは徴税という行政の合理化ですよ。そうしてシャウプ税制の政策的なコンストラクションというものを十分把握して問題点を少しでも解消すれば、一歩前進の姿になると思う。この点はぜひとも深く御研究いただきまして、全国の零細なる業者諸君の歴史的な要望に、あなたの御熱意によってこたえられますることを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/113
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114・山中貞則
○山中委員長 佐藤觀次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/114
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115・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 所得税の問題に関しましていろいろ議論がありますが、私はきょうは大臣の時間の許す限り伺います。いろいろ問題にのぼっております徴税方法について、過酷なことがないかどうか、大臣は国税庁にまかせ切りでありますが、現在の税金の公平、不公平の問題は、大臣として徴税方法に行き過ぎがあるかないかという問題について伺いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/115
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116・田中角榮
○田中国務大臣 法律に基づいて徴税をするわけでありますが、いやしくも過酷といわれるような徴税をしてはならないということは、もちろん強く指示をいたしておるわけであります。現在の状態では国税通則法も法律としてつくっていただきましたし、いま考えております段階において、過酷な徴税をしておるというふうには考えておりません。ただ、いろいろな法律で救済条項があるにもかかわらず、大衆がこれを知らないということによって昔のままであるというような感じもあると思いますので、今度税務署には、こういうものがあるのですということを納税者に十分PRをして、納税者の利益を守るという立場でも、ひとついろいろ配慮をするようにという異例な考え方も通達をしてございます。
それからもう一つの問題は、いままで税務署というものは非常に強く潔癖性を要求せられて、税法に雄づいて徴税をしますけれども相手の相談等に応じてはいかぬ、またそういうこと自体が税務官吏としてよろしくないのだというような、妙にかたい、非常に潔癖性を要求されておったようであります。しかし私は、そういう時代もあったと思いますけれども、徴税に対しては納税をする国民の立場に立って、要求をすれば還付をするけれども、法律を知らないで要求をしなければそのまま収入になるというようなことは、いやしくもあってはならない、そういうことに対しては積極的に税務相談にも応ずるようにということで、新しく税務署にそのような機構さえもつくっておるのでありますから、特別な事例があれば別でありますが、総体的に私はまじめな立場で徴税が行なわれておるというふうに確信をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/116
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117・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 まあ官吏の出でない田中さんが大蔵大臣でありますから、ある程度までは私たちも納得できることもありますが、何といっても膨大な組織でありますし、それから地方において、個々別々に考えますと相当行き過ぎのあるような問題もある。それがいろいろな問題となって、各地に反税運動に似たような連動もわれわれば見受けるし、同時に、その中にも相当の犠牲者があって、あまりにも徴税がきびしいためにその商売がつぶれるような場合も私たちは現実に見てきたことがあるのであります。一方においては六千億に近い自然増収がある。また一方においては、国の税金を納めないという理由で会社なり個人の商店なりをつぶす。こういう政府の行き方というのは、私は行き過ぎではないかというように考えております。そういう点について、税金のとり方については通達その他でいろいろやっておられるようでありますけれども、私は、現在のような経済的に非常に不振な場合においては、もっと親心を持って徴税に出たる必要があるのではないか、こういうように考えておりますが、田中大蔵大臣はその点をどういうふうに解釈しておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/117
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118・田中角榮
○田中国務大臣 税は、国民のために、また国家のために歳出財源を得るということでありますので、妙に乱れてはならないことは、これはもう言うまでもありません。しかし徴税ということは国民の権利義務に関する問題でありますので、実情に照らしていやしくも過酷になってはならないということは言うをまたないわけであります。総理大臣らも、私も税を長いことやったけれども、大体税務署はよろしくないことがある、君は知っておるか、こういうことをこの間言われました。それは一体どういうことかというと、はがきでもって呼び出し状を一本出す。行ってよろしく答弁をしてくると、また同じことでもってはがきがくる。この間行ったのに、何またあるのかと思って二度目に行くと、人がかわったから、こういうことである。こういうことはよろしくない。こう言うので、私は、確かに、予算の問題もありますし、徴税コストの問題もありますが、そういうことはよろしくないので、直ちに直そうと思いますということで、国税庁長官にもその件を指示したわけであります。そうしましたら、今度は税務署から、では、はがきでは申しわけないですから、私のほうで出向いてまいります、また総理も、出向いていくべきである、こういうことでありましたから、出向いてまいるようにいたしたわけでございますが、今度は各人から、おいでいただかなくとも私のほうで参ります。これはなかなか税のむずかしさがそこにあるわけであります。そういうこまかいとこるまでいま指示をしたり、実情を聞いたり、また配慮をしておるのでありますから、まあ将来とも——徴税官吏というのは非常にむずかしい仕事をやっておりますし、いままであまりほめられるような事態にありませんが、やはり非常にりっぱな重要な仕事をやっておるのですから、国民にもこの徴税官吏の苦労というものを知ってもらって、そしてお互いが、税務吏員であれば嫁をやろう、婿にもらおうというような理想的な徴税機構と官吏をつくりたい、こういう熱意にいま燃えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/118
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119・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 田中さんのような人なら婿にももらいたいのですけれども、いまの一般大衆の税務署に対する考え方というのは、そういうなまやさしいものではないので、全くその点については、田中さんの微に入り細にわたってのお考えはありますけれども、なかなか下のほうまで通じていない。そこできょうはちょっと問題にいたしますのは、実は「エコノミスト」の二月四日分に「とりてしやまんの徴税体制」というちょっと長い文章があります。田中さんの名前で、同じ田中ですが、田中秀雄という名前で書いてありますが、これを私は一度だけ読んで、もう二度沈み返しました。これはどういうお方がお書きになったか、私はわざわざ「エコノミスト」の編集部の人も知っておりますけれども、わざわざ行って聞く必要はありませんけれども、この中に非常に私は共鳴するとかしないという問題ではなくて、相当すごいことが書いてある。これは大臣がその後、きのう国税庁の総務課長に会ったようでありますが、はがきをお出しになると聞いておりますけれども、もしこういうことがかりにあったとすれば、相当問題じゃないか。そういう前提のもとに、田中さんという大蔵大臣がおられるのにかかわらず、末端の中にはこういうことが事実あるかないかということを非常に心配いたしまして、私は税金の取り方について、こういう事実があったかどうかということを、また田中さんにもお伺いし、木村さんにも一ぺんそういうことを伺っておきたいと思って、この問題を中心にして少しお話しを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/119
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120・田中角榮
○田中国務大臣 税につきまして、週刊誌等いろいろなマスコミが取り上げるときには、大体こういう傾向が過去にあったようであります。しかし、この問題に対しましては、ここに書いてありますような事実があってはならぬということで、われわれも先ほどから申し上げておりますような、愛される税務署員、愛される徴税機構ということに意を用いておるわけでありますが、しかし、これも国家として非常にむずかしい仕事であり、しかも人のいやがる仕事をやって、今日の日本を維持してくれておるのでありますから、私は、しかし税金というものを納める、自分から取られるものはみな悪いものだ、こういう考え方を前提にしていただきたくない。今日のわれわれの社会生活というものが維持されて、向上しておる陰には、やはり税務署というものがあるのだ。私はこの一番初めの書き出しがもう少しゆるやかであると、私もこれは徹底的にひとつこの「エコノミスト」を全部このまま税務署員に一人残らず渡るように送りたいとも思いましたけれども、この一番初めに「火事だ、どこだ、税務署だ」もしくは警察だ。警察の例を取りますと、車がちょっときのうの雪でとまっても、警察は一体どうしたんだ。だれか押し売りが来ても、警察が一体いないのか、こういうぐあいに警察は大切だということを承知しながら、火事だ、警察だ、ほうっておけ、こういう国民はあまりないと思うのです。でありますから、これは少し誇大ではないかという感じを持っているのですが、なかなか専門家でもって、国会の論議その他も全部抄録しておりますから、権威ある人が書いたものだというふうに思われますので、こういうものに対しては一つずつ玩味をしながら、徴税機構の中でこういうことを書かれるようなことのないように、やはり自戒していかなければならぬだろう、このようには考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/120
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121・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 大臣は警察のことを言っておりますけれども、この中には「国税庁=酷税庁」と出ている。「コク」というのは国の「国」でなくて残酷の「酷」という字であります。「火事だ、どこだ、税務署だ、ほうっておけ」ということを書いてありますから、私は普通の週刊雑誌、暴露雑誌のようなものならばそう気にしないのでありますが、もともとこういうようないわばまじめな「エコノミスト」とか、「東洋経済」とか、そういうふうな比較的まじめな雑誌にこれが載っているので、ちょっと内容についてどうしても聞いておかなければならぬということで、私は大胆にいまこんなことを言ってもあれですから、木村さん、この問題についてどういう処置をあなたのほうの直税課長に、総務課長にちょっと伺いましたが、この論点の中に、あなた方がこんなことは絶対にないというそういう根拠があると思うのですが、そのことがあればこれは重要な問題でございまして、徴税の問題についてこういうことだということになれば私はたいへんなことになると思うのですが、その点について国税庁のほうはどういうふうにお考えになっておりますか、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/121
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122・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 私もこの「エコノミスト」の「とりてしやまんの徴税体制」という文章を読みまして、この中に書いてある点を総合して、三点について毎日新聞社の社長さんに抗議を申し込んだのでございます。その第一点は、ただいま佐藤委員がおっしゃったとおりでございまして、何か権威のない市井にはんらんをしておる雑誌と違って、少なくとも一流の新聞社が発行しており、また専門の経済雑誌であると一般に認められておるものがこういう文章を出したことは非常に遺憾である、その第一点は、私たち税務関係の職員は批判的、建設的な御批判、あるいは御意見というものは快くこれを受けて反省の資にするということは当然でございますけれども、しかしこの中には税務機構なり、あるいは税務職員をやゆする、誹謗するという文句がある。この点が第一点であります。それから第二点は、この中には一方的な言い分だけを取り入れて、そうして事実と違ったことが書いてある。これが第二点でございます。最後に、事実とは合っているけれども、しかし国税庁がやろうとしていること、その真意を全くねじ曲げたような書き方になっている。こういう三点についてははなはだ遺憾であるから、私はもちろんこの言論あるいは出版の自由というものにとやかくけちをつける、干渉するという意図はございませんけれども、しかしこういう点については将来のこともあり、十分考慮をしていただきたいということを申し込みまして、毎日新聞の社長さんもこの内容を読んで、これは確かに「エコノミスト」というような雑誌の品位をそこなうものであるということについてはあなたと同意見である。今後こういうことがないように内容を十分見て、そして載せたいという御回答がございまして、私はそれで十分満足をして引き下がったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/122
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123・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 大臣がおられませんから木村長官に伺いたいと思いますが、実は二面にはこういう調査方法などについても、あなたは御存じないと思いますけれども、末端には行き過ぎがあるような場合が間々あると思うのです。そこで、一体あなたのほうでこういうような指令を出しておるかどうか知りませんけれども、あなたは責任者でありますから……。調査方法は、「怒ったら調査は負けだ、」「入ったら相手の動きに注意せよ、からはじまって、相手の目はどこにゆきたがっているか、事務室がある店舗ならそこを動くな、メモはないか。とくに卓上メモ、黒板、電話機のそば、ついには、臭いと思ったら便所を借りよ、」と書いておるわけです。こういう指令をわれわれが見ると、一面にはまた真理もあると思うけれども、一体こういうような殺人をした人を調べ上げるような過酷なことをやっておられるのではないか。実は私も選挙区から、相当疑いを持たれて調査された場合にも——これはあなたのほうからは聞いておりませんけれども、当人からそういうような非常にひどい目にあったことを二、三聞いておる例があります。これは先ほど春日委員からもいろいろ話がありましたが、われわれは御承知のように庶民からの票をもらって出てくるので、いま選挙区に帰りましても、こういうような税務署に対する訴えが非常に多いのです。大体十のうち八くらいは税金の関係の問題がいまでもあるわけです。だから中央においてわれわれが国税庁の人に相当いろいろなことを追及したり、また行き過ぎがないようにということを絶えず注意しておりますけれども、なかなか末端ではそういうことが行なわれるような事実があります。そういう点でこの中にたくさん文句はありますけれども、私はあなたのほうの調査方法などについて、やはり行き過ぎがあるのじゃないかということを考えておりますが、こういう内容のことについてはあるのかないのか、将来われわれも研究しなければならぬ問題でありますが、あなたから承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/123
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124・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 ここに「税務講習所の教える税務調査の要領からみてみることにしよう。」とありまして、かぎがあって、いま御指摘になったことばがありますが、税務講習所で教える調査要領にはこういう文句はございません。ただ従来の調査の経験からいたしまして、講習所の講師がこういう場合もあった、こういうこともあったということを調査の事跡として講義の際に口頭で触れることはあるかもしれませんが、しかし調査要領としてこういうものを麗々しく掲げて指導をするというようなことはやっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/124
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125・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 それから鳩山さんのことが書いてあるのですけれども、鳩山さんはおとなしい人だからそういうことはないと思いますが、「日本人は、ヘソの下の行為と税金のごまかしに対して罪の意識がない」ということから始まって、「まさに、人をみたら脱税者と思え、」という税務行政をやっておるというようなことが書いてあります。これは私たちも徴税の問題については身に近い問題でありますから、ときどき国税局へ行ったり税務署へ行きますと、そうひどいことはやっていないように思いますけれども、やはり税金を納める側の人は、いま警察なんかはそんなにおそれておりませんけれども、税務署を非常におそれておる。先ほど田中大臣からも言われましたけれども、いま一番おそれられているものは警察よりも税務署です。それはやはりそういう身につまされた問題がどこかにあるのでそういうことになるのじゃないかと思います。この中の内容についてもあなたが反駁するような材料があればここで出していただきたい。われわれの党にも税務関係の特別委員会がありますので、よく調べて、こういうことが少なくとも「エコノミスト」に載ったということになりますれば、私は相当問題だと思うのです。普通にはあまり疑いませんけれども、どうも後味の悪い文章でもあるし、同時にこういうことの一端についてはいろいろ経験したこともあるので、木村さんにお伺いをするのでありますが、一体そういうことについてあなた方がどれほど反駁ができるか、やはりこういう大蔵委員会などで十分にあなた方のほうでこれに反駁できる材料があれば反駁して発表していただきたいと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/125
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126・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 ただいま鳩山直税部長が関東信越国税局長時代に発言をしたと書いてございました点につきましては、私ども毎日新聞社の社長に会います前に、一体こういうことを言ったかどうかということを質問応答いたしておりますが、これは全く笑い話になったのでございます。大体署員に訓示とございますが、こういう役所の代表者であり、少なくとも一局の指導をしております責任の地位にある者が職員を集めて、こういうへその下の話をするというようなことは、もう常識から考えても考えられぬことじゃないかと思います。もちろん私は四六時中ついていたわけではございませんから、あるいは酒の席でそういう「罪の意識がない」というようなことを言ったかどうか知りません。しかしながら、少なくとも職員に対してそういう訓示をするというようなことは、事実でもございませんし、またありようはずは私はないと思います。
それからこれに対して一々反駁してはどうかというお話でございますが、いろいろ私たち庁内で検討をいたしましたけれども、少なくともこういう下劣な文章に対して真顔になって答えるのはいかにもおかしいじゃないか。たとえば一例を申しますと、税務署員の笑いは「客から金をしぼりとるための遊女の笑い」だというようなことがこの中に書いてございますが、こういう感触でもって書かれておる文章に一々反駁を加えるのはおとなげないという感じから、先ほど申し上げました社長さんとの話し合いの席上では、現在の国税庁が考えておることを率直に出して、「エコノミスト」に載せてもらいたい、また私のほうもその点は賛成です、一々これに反駁を加えることはしたくないということでお別れをしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/126
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127・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 それからもう一点あるのですが、「神武景気の花やかなころ、法人税課長会議の席上「いまこそ思う存分とる時だ。とりてしやまんの精神で調査にのぞめ」とハッパをかけた某国税局の幹部があった」ということが書いてありますが、私はきたない文章に反駁をせよと言うのではありませんけれども、あなた方に材料があれば、「とりてしやまん」という文章の中を一貫しておる精神を書いた内容ですね、この問題について、このままではあなた方が一いま木村さんのように一々反駁はできないと言われますけれども、反駁がないならば、読んだ人たちは、やはりやっておるのだというように思うのです。そういう点について、これは長官でなくてもけっこうですが、係の人がおるでしょう、もしおられるならば——この問題は徴税の過酷な苛斂誅求という一面において、こういうものが出るということになれば、一般のこれを読んでおる人は相当真実性のあるものだと思う。あなたはこの中の文章がきたないから一々反駁しないと言われるけれども、真相は真相として——実に具体的にたくさんあがっております。それは鳩山さんのことは私も当人から聞いていますからうそだと思いますが、「新潟税務署員は、納税者に予告もせず不意打ちの調査におとずれ、生死の境にある病人があり、とても調査がうけられないと説明したにもかかわらず、長時間ねばった」ということもありますし、具体的な問題が出ておるわけです。だから文章のきたないとかきれいということでなくて、少なくともそういう事実がないというくらいのことは知らしてもらわなければ、私たちは結局これの内容がほんとうじゃないかというように考えられるのでありますが、そういう点について事実を調べられたのかどうか。これは非常に社会的の信用として相当問題があると思う。だから部分的にはこういうことはないだろうという想像は、私たちは大蔵委員会で一々あなた方から説明を聞いてそういうことを信ずることはできますけれども、一般大衆は反駁文を出しても読まない人がいますから、おそらく信用するという問題が出てくるのでありますが、そういう点については、あなた方がほんとうにこういうことがないという事実があれば、ないという反証をあげてもらわなければ私たちは信用できないということになるのですが、その点はどういうようにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/127
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128・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 この中で、某局の法人税課長とありますが、これは一体どこの局のことであるか調べる方法がないので、常識論から考えてこんなことを言うはずはないだろうという程度で、私は反駁する材料はございません。しかしながら、ただいま御指摘がありました具体的な事実、いろいろ羅列してございますが、これは実は昨年の九月十九日に全商運、いわゆる全国の民主商工会の上部組織でございますが、全商運から私あてにもっとこまかい、このほかにいろいろ事実を羅列した公開質問状が参っております。その内容は非常にこまかいものでございますが、これを私たちとしては、一体そういう事実があったかどうかということで各局に照会をいたしまして、回答を全部とってございます。ただし、この公開質問状の意図するところは、やはり外部に対しての宣伝的な意味があった。私に公開質問状が届きます前に新聞記者諸君を集めてこれを発表いたしております。そういう点から見ても、また内容に事実と違う点が多い、ほとんどが事実と違っております点から見ても、そういう彼らの意図するところがあまりにもはっきりいたしておりますので、私はこの公開質問状には返事を出してございません。ただし、何か個々の問題について御質問がございますならば、調査は全部いたしておりますので、真相はお答えできると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/128
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129・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 木村長官にお願いしたいのは、ごめんどうなことでありますけれども、これは国の徴税の方法についての重要な問題でございますから、この内容についての反駁をされる、されないは、これは御自由でございますから、私たち大蔵委員には、こういう事実がないということをやはり書面か秘密書類でけっこうでございますが、いただけると非常にありがたいと思うのですが、そういうことはできませんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/129
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130・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 一々の内容について書面でもって御返事をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/130
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131・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 きょうは大臣が都合が悪いので十分な質問はできませんけれども、最近の徴税方法については、この十年間いろいろ苦労をされて、第一線の税務署の署員も私たちが昔考えたほどでなく、だんだんよくなっておられることは事実でございます。しかし、それかといって、これは人間のやることでございますから完全とは申しませんけれども、しかし、間々行き過ぎの場合がある。初めから事を起こすのは悪い者である、脱税者であるときめつけて処理をするような問題も間々あったと私は思っております。そういう点について、少なくともこういうものが出たということは、私は一面においてこれを裏打ちするだけの材料があると同時に、これを「エコノミスト」の編集長が取り上げるには取り上げるだけの理由があってやっておると思う。その内容についての個々の問題は国税庁自身がいろいろ反駁されるのはけっこうでありますけれども、しかし、いい悪いは別にしてそういう空気の全然ないものを取り上げることはないと私は思います。そういう空気があるときにおいてどのように改めていかれるのか。現在のままでは、私たち大蔵委員でもやはりこういう問題をいろいろな点で経験をすることがありますけれども、われわれは国税局の人も知っておりますし、それから税務署なども僕らが行けば大体了解していただいておりますから、事は済んでいくからいいものの、済んでいかないものがあるのじゃないかという憂慮があるわけでございます。そういう点について長官はどういうようにお考えになっておりますか、伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/131
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132・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 私たち税務関係の行政に携わっております者は、それでなくてさえ、普通の態度であってさえ誤解を受けやすいと申しますか、あるいは権力をかさに着るというような感じを受けられることは、これはやむを得ないところかと存じます。したがって、局署に対します指導のあり方としては、できるだけ態度をやわらかくして、また態度だけではなく、その背後にある心がまえというものを、先ほど大臣からもお答えをいたしましたように、ともかく現在の制度は自主的な申告、自主的な納税ということが骨格になっておりますので、税務職員はこれを側面から助けるのだ、そういう申告なり納税が円満に行なわれるように側面からつえを差し出すのだという感じで、できるだけのことをしなくてはいかぬということで、御承知かと思いますが、昨年の五月から税の匿名相談を、一定の日にちをきめまして、全国の税務署を開放して、その日はあらゆる事務に優先をして相談事務に携わるという方法も講じておりますし、また小企業納税者のために、特に記帳から決算報告に至るまでの一貫した継続的な指導を、税理士会、青色申告会等と提携をいたしまして、実費またばごく低廉な費用でもって相談、指導に応ずる、こういうことをやってきておるのであります。
そこで、ただいま御指摘のありました、大体において税務署というものは非常に苛酷だというムードがあるということでございますけれども、私はこの「エコノミスト」の記事というものは、最近問題になっております民主商工会等の反税的な流れをくむ人の執筆したものである、こういうふうに考えておるのであります。先ほど申し上げましたように、内容そのものが決して建設的な批判ではなくて、やゆする、あるいはこれを不当に非難をするという内容になっております点から見ましても、これはやはり相当傾向のある論文であるというふうに考えております。したがって、これに対して一々反駁はいたしませんけれども、私は、先ほど申し上げましたようにやはり責任者に会って、こういう点は堂々と抗議を申し込んでおる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/132
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133・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 時間もおそくなりましたから、私は長官に要望しておきたいのでありますが、「とりてしやまん」というような、かって「撃ちてしやまん」ということばがはやったことがありますが、非常に不愉快なことばでありまして、税務署の署員が税金を受け取って自分のふところに入れるわけではないので、国の税に入るわけでありますが、一般にいま不況の時期でもありますし、それから税金の問題についてはだれでも非常に不愉快な問題が決してないとは言えませんから、そういう点を考えて、特に末端の第一線の人に対しては行き過ぎのないように、愛される税務署になるというのもなかなかむずかしいと思いますけれども、少なくとも警察よりおそれられるような税務署にならぬように、ひとつ木村長官から末端までそういうことのないように、特に私は要望しておきまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/133
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134・山中貞則
○山中委員長 次会は、明後二十八日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01219640226/134
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