1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年三月六日(金曜日)
午前十時五分開議
出席委員
委員長 山中 貞則君
理事 臼井 莊一君 理事 原田 憲君
理事 藤井 勝志君 理事 吉田 重延君
理事 有馬 輝武君 理事 堀 昌雄君
理事 武藤 山治君
天野 公義君 伊東 正義君
岩動 道行君 宇都宮徳馬君
大泉 寛三君 大久保武雄君
奧野 誠亮君 押谷 富三君
金子 一平君 木村 剛輔君
木付武千代君 小山 省二君
砂田 重民君 田澤 吉郎君
濱田 幸雄君 藤枝 泉介君
渡辺美智雄君 佐藤觀次郎君
田中 武夫君 只松 祐治君
日野 吉夫君 平林 剛君
松平 忠久君 春日 一幸君
竹本 孫一君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 田中 角榮君
出席政府委員
大蔵政務次官 纐纈 彌三君
大蔵事務官
(主税局長) 泉 美之松君
大蔵事務官
(理財局長) 吉岡 英一君
大蔵事務官
(銀行局長) 高橋 俊英君
厚生事務官
(医務局次長) 大崎 康君
委員外の出席者
大蔵事務官
(理財局証券部
長) 加治木俊造君
参 考 人
(税制調査会会
長)
(一橋大学名誉
教授) 中山伊知郎君
専 門 員 抜井 光三君
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三月五日
委員田澤吉郎君辞任につき、その補欠として千
葉三郎君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員千葉三郎君辞任につき、その補欠として田
澤吉郎君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
三六号)
法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一五号)
租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第九八号)
相続税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一六号)
揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する
法律案(内閣提出第一七号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/0
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001・山中貞則
○山中委員長 これより会談を開きます。
所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案、相続税法の一部を改正する法律案、揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
本日は、参考人として中山税制調査会長が出席されております。中山会長には御多用のところ御出席をいただき、ありがとうございます。
本委員会におきましては、昭和三十九年度税制改正各案につきまして審議を重ねているのでありますが、本日中山会長より御意見を伺いますことは、本委員会の審査に多大の参考になるものと信ずる次第でございます。中山会長におかれましても、何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。
それでは、まず中山会長から御意見を述べていただきたく存じます。中山税制調査会長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/1
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002・中山伊知郎
○中山参考人 中山でございます。
ただいま委員長から御指示のありましたように、本日は特に本年度の税制改正に関しまして、税制調査会としての立場からの意見をまず中心に申し上げたいと存じます。もちろんここで御審議になっておられます問題は、税制調査会の答申そのものではございませんで、政府案であることはもとより承知しておりますけれども、私どもの立場として本日申し上げます主たる事項は、得に税制調査会の立場の意見であることを御了承願いたいと存じます。なお、それに関連いたしまして、政府案との相違につきまして、私ども、どのように考えているかもあわせて機会があれば申し上げるつもりでございます。
まず第一に順序といたしまして、税制調査会の審議状況でございますが、この調査会は一昨年の八月に発足いたしました。前から続いておりますけれども、三十七年の八月に機構を改正して発足いたしておりますこと御承知のとおりでございますが、その間に総会、部会、小委員会を含めて、すでに百二十三回の会議を開いて、そうして税制に関する問題を審議してまいりました。その成果の一部が三十八年度及び二十九年度の税制改正に関する臨時の答申になっております。
なお、そのほかに税法整備並びに税理士制度に関する答申も行なっておりますが、それはいずれもこの活動の中でございます。
今度の税制調査会の趣旨は、この新しい機構ができましたときの総理大臣の諮問事項にございますように、昭和四十年を目途といたしまして、経済情勢の変遷に対応するような税制の基本的なあり方を検討する。これが目的になっております。経済情勢の変遷と申しますのは、一言で申しますれば、機構変動を伴う経済成長、これが大体日本の経済の今日のあり方だと存じますが、それに応じてこれからの税制がどうあるべきかということを諮問されております。したがいまして、毎年毎年の税制改革に対して意見を申し上げることは、必ずしもそれが主たる職務ではないのでございますけれども、ただそのことは、基本的な問題にも関係いたしますし、また具体的な問題といたしまして、あるいろいろな政策が重ねられて、毎年毎年やられてまいりますというと、かりに昭和四十年になりまして、ある改正案を答申いたしました場合におきましても、その手直しは非常にむずかしくなる危険もある。このような意味から毎年毎年の税制改正に対する問題につきましても、できるだけ意見をまとめて答申をしているというような状態でございます。
さて、昭和三年十九年度税制改革の基本的な構想は何か。これはまず減税の規模から申しますと、平年度二千三百億というのを答申案の骨子にいたしました。この数字は過去の減税規模に比べましても長大の一つであろうと考えておりますが、自然増収に対する減税の割合が少し少ないのではないかという議論もございますし、また国民所得の負担率から申しますと、これが大体二二%強になりまして、かつて昭和三十五年の暮れに、負担率は大体二〇%見当が当分の間妥当ではないかと答申いたしました税制調査会の意見に矛盾するではないかという御批判のあることも承知しております。この問題につきましては、後刻御質疑に応じて、なお詳しく申し上げたいと思います。そういう場合に、減税規模は減税規模といたしまして、調査会の答申がどのような点に重点を置いていたかということを申し上げますと、三十八年度の税制改革、その前の二十七年度の税制改革を一貫いたしまして、なお私どもの基本的な態度は、所得税の減税が減税方針としてはなお堅持さるべき基本的なものであるという点に意見の一致をみております。このことは、さかのぼって申しますと、日本の国民生活水準の問題、それに関連いたしまして所得税が占めておりますウエートの問題、さらに間接的な問題といたしましては所得税と間接税との比率の問題、やや日本的な、つまり日本特有の事情の問題といたしましては、中央と地方、つまり国税と地方税との問題、そういういろいろな問題がございますけれども、これを一貫して私どもはなお租税の負担が——非常に粗雑な言い方で恐縮でございますけれども、もし許されますならば、日本の国民生活の今日の状態ではなお重いと考えられる。この点に重点を置いて過去三年間一貫してこういう減税案の趣旨をとってまいりました。この点におきましては三十九年度の方針にも変わりはございません。ただ今度の場合には、開放経済体制への移行という非常に重要な問題を控えまして、企業課税のほうももっと減税しなければならないという主張が非常に強く起こりました。これに関しましては、おそらく皆さんの非常に御関心をお持ちになっておられます特別措置の点で相当の考慮をいたしましたけれども、しかし企業の法人課税そのものを税率として軽減するというような答申はついにとることができませんでした。もっとはっきり申しますと、私どもは、今日の状態が比較的に申しまして、企業課税が重いとは考えなかったということでございます。これも非常に大ざっぱな言い方でございますから、同じ企業課税と申しましても、大法人と中小法人の相違がございますし、またその点に関して地方税と国税との間の相違もございますから、あまり一般的なことは申し上げられませんけれども、所得税と並べて考えますと、特に今日の状態で法人を中心とする企業課税の軽減を一般的に考える時期ではないと考えました。したがいまして今度の減税規模では、いろいろな措置を合わせまして所得税が大体六〇%強、それから企業減税と考えられる面が総合いたしまして四〇%弱というような措置になっておると存じます。詳しい数字はまたあとから申し上げる機会があれば申し上げます。そのような意味で問題を所得税中心において考えてまいりますと、もちろん税制の立場から最も重要な考慮の点は負担の公平ということでございます。ところが、この負担の公平という問題を徹底的に考えてまいりますことは非常にむずかしいのでありまして、一番徹底的に考えますれば、公平な取り方をするということなんでありますけれども、この一つが実は税制の制度の問題からいたしましても非常にむずかしい。もしもほんとうに正確な税の取り方をいたそうといたしますれば、おそらく徴税費でもって相当の部分収入を帳消しにしなければそういう実績はあがらないでございましょう。そうなりますと、残された範囲の中で、ある程度の不公平というのは事実上やむを君ないという点の前提の上で公平というのをどうしてやっていくか。非常に不明瞭な議論になってくるわけでございますが、そうなりますと、どうしても常識的にどこに一番多くかかっているかという点にわれわれの重点がいかざるを得ない。はなはだ理論的にはつじつまの合わないことになるかもしれませんが、そのような観点から問題を集約してまいりますと、常識的な話でありますけれども、給与所得に対する課税が一番重いというところに落ちつかざるを得ない。これは金額においては必ずしもそうでありません。人数においては非常に多いのであります。八三%強の納税者が給与所得者であることは御承知のとおりであります。そして給与所得の実情と申しますのは、税制的には非常に厳格に把握されるものでありますから、したがってどうしても租税の負担がきつくなるというきらいを持っている。そこで今度の場合におきましても、給与所得に関してできるだけの軽減を考える若干の措置をいたしました。この措置自体につきましては、すでに改正案の中に盛り込まれておりますから、ごらんくださればこの趣旨は大体御了解がいただけると思うのであります。ただもしもこの趣旨を徹底して考えていきますと、おそらくは給与所得に対してだけ別の税率の課税の方針をとったらどうかというところまでいきませんと、この問題は徹底いたしません。この点につきましても議論をいたしましたけれども、われわれの現段階ではなおそこまで問題を持っていくことができないということでございました。この点は、四十年の答申のときには、再度中心的な考慮の問題になるということを私どもは考えております。
以上のほか、同じ公平の問題といたしましては、地方税の課税方式が、いままで本文方式とただし書きとに分かれておりまして、相当激しい超過課税が行なわれていたという状態でありますので、特に給与所得者につきまして、ある県から隣県に働きに行っている労務者につきましては、はなはだしい負担の不公平が起こっております。この点を調整するために、課税方式をなるべく早く本文方式に統一する。将来著しい超過課税が発生しないように考えながら現行の準拠税率を標準税率に改める。一ぺんにやるのはどうかという議論が相当出たのでありますけれども、税財源の措置を適当にやることができますれば、ことしのうちに平年度三百億に達する減税でありますけれども、減税措置とともに、ことしのうちに行なうほうがよかろうというので、その税財源の補てん問題につきましては、非常に議論があったのでございますけれども、これを思い切ってことしの減税案の中に読み込んだのであります。
なお電気、ガス税、その他の減税措置については、従来の方針、つまり過去三年間の方針を踏襲して、順次に電気、ガス税の負担をなくしていく方針で進んでおります。
企業課税自体につきましては先ほどすでに申しましたし、特別措置について、おそらく最も新しい一つの問題は、海外市場開拓のためにある措置を講じたということでございますが、市場開拓準備金というのを創設いたしました。これは従来、租税特別措置の中に、輸出所得控除という制度がありまして、この制度によって、おもに日本の中小の輸出業者が相当に潤っておりました。金額的には、毎年およそ二百三十五億という減税になっていたものでございます。これが一挙になくなりますことは、特に中小の輸出業者に非常に大きな打撃を与えますので、それにかわる措置を講じたいというところから、ガットその他との関連を考慮しながら案出されました一つの構想が、市場開拓準備金ということでございます。運用いかんによってこの効果がわかることでございますから、何ともいま申し上げられませんけれども、この方策ならば、おそらくガットの規定には触れないで、しかも輸出振興の効果を相当にあげることができるのではないかというのが、われわれの考え方でございます。
その他申し上げたいことがございますが、私に命ぜられましたことは、二十分の間になるべく簡単に話をまとめろということでございますが、あともうちょっと、五分ばかり政府案との相違という点に触れて申し上げたいと思います。
減税の規模といたしましては、政府案のほうが少し多いのでございます。つまり減税額を平年度二千三百億円に対して、政府案では最近確定いたしました地方税の減税額を含めまして二千二百五十六億円の減税になっております。この数字は、表面的には税制調査会の案より少なくなっておるように見えますけれども、これは政府案の減税額が、輪唱所得控除の廃止による減収額を差し引いて計上しておるという計算上の問題がございますので、実質上は政府案のほうが、平年度で百五十六億円、国税で五十三億、地方税で百三億円ばかり実は減税が多くなっておるのでございます。このことはもう少し説明を申し上げないとわからないのでございますけれども、減税額の立て方でちょうど二百七十一億、国税と地方税で変わってまいります。その一番大きなものは、いま申しました輸出所得控除をどうはじくかということなんでありますが、政府案のほうでは、これを差し引いて勘定しております。つまり調整済みでやっておりますし、それから税制調査会のほうの二千三百億のほうには、調整しておりませんので、これを調整ますと、政府案の減税総額は平年度でございますが、国税で一千三百七十六億円、地方税で八百八十億円、合計二千二百五十六億円、税制調査会の答申案は 国税で一千三百三十五億円、地方税で七百八十二億円、合評二千百十七億円となりまして、その差約百三十億円強のものが少なくなっております。このことは表面的に申しますというと、税制調査会の勧告いたしました減税よりも、政府のほうでよけいに減税をされたということでありますから、まことにけっこうだと申し上げる一面を持っております。しかしながら他面におきまして、その結果の出ましたことは、いろいろわれわれの答申いたしました以外に、政策的な減税が加わっているということでございまして、その中には私どもまだそれを検討している機会は持ちません。つまり、国会でこれを御討議になっておりますただいまの一、二カ月は、ちょうど税制調査会休会中でございまして、やっておりません。(だめだ、通ってしまいますよ。)これはまことに……。正直に申し上げますが、いまのところやっておりませんので、これを一々問題にする機会がございませんけれども、もしこれを問題にいたしますれば、残念ながら、おそらく政府の御見解に対して、異議の出るようなものが含まれているかと存じます。私はいま税制調査会長の資格でございますから、会は代表しておりますけれども、しかし皆さんと御相談しないのに、私一個でかってな意見を申し上げることはできませんので、その点は御了承願いたいと存じますが、その中の政府案の問題ですぐに私どもがいささか不満だと申し上げられることは、給与所得の控除について、低額控除の二万円引き上げだけはよろしかったのでありますが、最高控除額を十五万円に引き上げることについて、これは二万円抑えられた。これは先ほど申しました給与所得にウエートがかかっているという点から申しますと、いささか、残念でございまして、この点は私はもう今日の場合、どのような審議の過程になるかは知りませんけれども、私どもとしては原案を固執したかったということを考えております。
それから企業保税及び特別措置の減税につきまして、政府案が配当軽課措置の拡大をやられたということは、配当軽課措置を認めたこと自体がこれは一つの例外なんでございますから、例外に例外を加えたという点では、あるいはのみ得られる変化であるかもしれませんけれども、それに続いて証券投資信託の収益分配令の分離課税というものを創設されたのは、実は私どもとしてはどうも賛成しがたいのであります。
簡単に申しますと、今日の投資信託というものをそのままにほうっておることは、これは庶民の金融機関と考えますれば、政府としては放置できない問題でございましょうけれども、これを是正する本質は、証券会社自体をもっと、安全にする、健全にするということでありまして、それから出てくる所得、配当を軽減してやるという措置は、これはいささか回り道であり、場合によっては効果が疑われることではないかということを心配しております。
その他住宅の特別償却割合の引き上げその他につきましては、あるいはむしろ税制調査会のほうで入れたかったけれども遠慮したものを、政府のほうで取り上げてくれてありがたいと、こういう意見が出るかもしれません。その点いろいろ問題がございますけれども、政府案との相違につきまして、私の個人的な考えをつけ加えまして一応の御報告にいたしたいと思います。あとは御質問に応じてお答えを申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/2
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003・山中貞則
○山中委員長 続いて質疑に入ります。
質疑の通告がありますので、これを許します。有馬輝武君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/3
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004・有馬輝武
○有馬委員 最初に、中山先生にお伺いをしたいと存じます。
なお、訪欧の旅から帰られまして、お疲れのところさっそく国政の審査のために御協力をいただきますことを、冒頭に御礼を申し上げます。
さっそく伺いたいと存じますことは、去る二月十八日衆議院の本会議におきまして、わが党の堀昌雄議員の質問に答えまして、池田総理がきわめて重大な発言をいたしております。それは誤りがあるといけませんので、会議録を読ましていただきますが、税調の無視ではないかという堀君の質問に対しまして、総理は、「税制調査会の答申にないことを政府がやるとおっしゃるが、私は、税制調査会に意見を聞くだけで、税制調査会の言うとおりにいたしません。」こういう発言をいたしておられるのであります。少なくとも政府が設けられました税調の意見を聞くつもりはありません。これは重大なる発言であります。もちろん先生はそのころ向こうを回っておられたかもしれませんし、また帰ってこられていま税調は休会中であるという御発言がありましたが、当然このような重大な発言に対しましては調査会を直ちに招集して、やはりこれは調査会の基本的な問題でありまするし、姿勢を正してまいらなければ、せっかくこの会長をはじめとする各委員の御努力が、国民の期待に沿い得ないということに相なりますので、このような総理の発言に対しまして、先生の御見解を明らかにしていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/4
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005・中山伊知郎
○中山参考人 お答え申し上げます。
私たまたま旅行中でございまして、その事実を存じておりません。ただ、問題になりましたことは、私ども常識で考えますと、すでにいままでもたびたび事実上問題になっております。私思い起こしますと、昨年同じような機会にこの衆議院の大蔵委員会に参りましたときに、三十八年度の税制調査会の答申は、皆さんも御承知のように、不幸にして相当大幅な修正を政府から加えられました。具体的に申しますと、所得税の控除の一部が相当圧縮されたのでございます。そのときに、皆さんのどなたかから、お名前を正確には記憶しておりませんので申し上げませんが、そういう取り扱いをされて税制調査会というのは一体存在の意義があると思っているのか、政府は税制調査会の意見を尊重していないと思うがどうか、こういう御質問を一受けました。ただいまのような総理の非常にはっきりしたことばとしてではございませんけれども、これはむしろ事実として同じことを指摘されたのでございます。そのとき私はお答えを申し上げました。確かに、昭和三十八年度の税制改革につきましては、政府のなさった修正は、残念ながら税制調査会としては十分にその意向をくんでもらえなかったといううらみを持っております。しかし、その前の三十七年度は、ほとんど九五%ぐらい私どもの意見が通っていると存じました。したがって、こういう問題はお互いにひとつ信頼をもって、長い間の経過で見ていこうではございませんか、長い間には政府もわれわれの答申を次第に尊重されることになりましょうし、尊重しなければおそらく国民がおさまらないという状態がくるだろう、私はそれを楽しみにして、そして政府にそういうような答申を申し上げているのだということをお答え申し上げたのでございますが、ただいまの総理の御発言に対しても、もちろんこれは私個人の問題ではございませんし、同じように憂いを持たれる委員の方々がおられると存じますので、必ず機会があればこれは問題にいたしたいと思います。そしてすでにある程度までは具体的に問題にしております。
それは、皆さま御承知のように、こういう答申案をつくります場合に、一体政府に受け入れられる答申案をこの審議会はつくるべきであるか、それとも政府からかりに受け入れられなくても、われわれが良心的に考えたものを出すべきであるか、そういう議論を火はわれわれ内部ではしょっちゅうやっておるのであります。一番悩みは、これはもう正直に申し上げますけれども、私それは審議会の席上でもたびたび申したことでございますから、申し上げていいと思うのでございますが、もしも政府と一〇〇%同じような案ができますれば、それはいいかもしれませんけれども、残念ながら妥協の産物であります。それ以外にできません。もし一〇〇%採用してもらえるような案しかできなければ、実は残念ながら税制調査会というのは存在の価値がないかもしれません。逆に何にも採用されないような極端な案が出ますれば、これは理想と現実の一〇〇%の離反で意味がありません。この中をどのように調節していくかというのがこういう審議会の悩みであり、同時に、まあやりがいのある一点ではないか、こう私は思っておるのでございます。その点につきましては、どうぞ御批判をいただくと同時に、御協力をいただきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/5
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006・有馬輝武
○有馬委員 確かに、先生のおっしゃるように、政府が九十何%採用したこともあり、また重要な点についてこれを無視したこともあります。そういう経緯については、いま先生おっしゃるように、長い目で見てまいらなければならないかもしれませんけれども、尊重するにしろ、尊重しないにしろ、実質的にはそういった経緯があったかもしれませんが、少なくともことばの上では、常に現在までは税制調査会の答申を尊重するという立場をとってまいりました。ところが今回はまるっきり逆であります。そういう点につきまして、私はいま先生のおことばで、すでに取り上げる機会があれば、機会をつくって検討したいということでありましたけれども、これは会長個人でもやはり政府に対して税調としての見解を発表されるべき重大なる筋合いのものであろうと存じます。私は先生がお帰りになってから、新聞なりテレビなりその他を注意深く拝見いたしておりましたけれども、それにもかかわらず、いまだこの機会までそういった見解の発表がございませんでした。その点についての真意をお伺いいたしたいと思うのであります。
といいますのは、いまも先生のおことばの中に、あとでお伺いをしたいと存じておりましたけれども、悩みがある、それが税調の姿勢の中にもそういう悩みがあったのでは、私はこれは重大なる問題であろうと存じます。具体的な内容の問題ではなくて、そういう点からあえて重ねてしつこいようでありますけれども、お伺いをいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/6
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007・中山伊知郎
○中山参考人 お答えを申し上げます。
いささかこの問題につきまして、私単に税制調査会のみならず、他の政府の審議会にもいろいろ顔を出していることがございまして、その意味で一体そのような審議会がどのような形で政府に意見を申し上げ、かつ政府との間の関係を持っていくかについてたびたび自分も反省し、またお互いに議論をするような機会を持つことがございました。その感想を申し上げましてお答えにかえたいと思うのであります。
私は、全体といたしまして、戦後いろいろな審議会でわれわれ中立者と申しますか、あるいは学校の教授というような資格の者がいろんな意見を徴される機会を持つことが多くなりましたことを、私は非常にけっこうなことだと思っておるのであります。世界の大勢を見ましても、いままでそのような経験の非常に少なかったフランスあるいはイギリス——イギリスは特別にはございますけれども、一般的にはそういう審議会は非常に少なかった。もっともできますと、それは非常な権威のあるものであったことは御承知のとおりでございますが、そのような国々につきましても、戦後ではこのような審議会が相当出てまいり、かつ活用されております。私は全体として日本が同じような筋合いにあることを喜んでおるものの一人でございます。ただしそうなりますと、どこの国でもどういう場合でも起こりますことは、一体そのような審議会がどのような権限を持ち、どのような実際上のインフルエンス、影響を持てるかという問題でございまして、制度的には諮問機関でございますから、おそらく極端に申しますれば、諮問はした、意見は聞いた、採用しなくてもよろしいという場合もございましょう。しかしそれでは先ほど申し上げましたように、信義の上から申しましても、信頼関係からもしましても、そういう審議機関の力というものはだんだん失われてまいります。そして実効がなくなります。そのような意味におきまして、結局においてある程度尊重されなければならない。どの程度か。一〇〇%というわけにはまいりますまい。私は率直に申したのでございますが、税制調査会がどのような仕事をしてまいりましても、一〇〇%政府がのむ案をつくりますならば、それは私は正確に申し上げまして妥協の産物だと申し上げる。それ以外には方法はございません。私はそういうことを期待すべきものではないと思うのであります。ただ筋道については、先ほどから申し上げておりますように、だんだん尊重されていくことが私は望ましいし、そうなっていくだろうということを期待しております。ただただいまの御質問は、総理がそのような基本的な考え方をいままで持っておられたにかかわらず、今回突如としてそれに反する発言をなされたということでございますので、私その前後の事情をまだ十分承知しておりませんから、これからひとつそれを調査いたしまして、それにふさわしい措置をとりたいと思います。そういうお約束をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/7
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008・有馬輝武
○有馬委員 税制調査会のレーゾン・ゲートルというよりも、むしろ国民の安い税金という大きな期待にこたえるために、いまのおことばのとおりをぜひ実現していただきたい、このことを強く御要望を申し上げたいと存じます。
次に、具体的な点につきまして、時間の制約がありますので簡単にお伺いをいたしますが、少なくとも戦後シャウプ勧告によりまして現在までたどってまいったわけでありますけれども、しかし数次の改正によりまして、そのシャウプ税制というものがまるで寄せ木細工みたいになってまいっておることは先生も御承知のとおりであります。少なくともシャウプが勧告をいたしますときに、これは体系的税制なのだから、全一的に採用するか、それとも廃案か、二者択一だと言ったことと思い合わせますときに、少なくとも税制の全般的な体系を根本的に再検討すべき時期にまいっておると思うのであります。この点につきまして私どもが大きな期待を寄せておるわけでありまするけれども、毎年税制調査会の答申を見ておりますと、少なくともこの問題は先に先にと押しやられてまいってきております。その原因につきまして、どのような隘路があったのか、この際明らかにしていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/8
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009・中山伊知郎
○中山参考人 お答えを申し上げます。
ただいまの点は、まことに御指摘のとおりでございまして、実は私ども税制調査会の委員全体が考えておりますことは、諮問のあるなしにかかわらず、実はシャウプ税制以後のこの体系のくずれた状態をどのようにして新しい態勢に持っていくかということを答申したい、これが念願でございます。そして一昨年の八月にできました新しい形の税制調査会は、その意味で初めから三年という期限を限りまして、先ほど申し上げましたよりに、昭和四十年を機会に新しい形の基本的な税制の改革案を答申すべく目下準備中でございます。今度は昭和四十年度には、その年度の税制改正案のリコメンデーションもいたしますけれども、必ずそれと付帯して基本的な税制の案を答申いたします。これははっきりお約束を申し上げます。ことし一年間をわれわれはそのために全部使うつもりで四月以降のスケジュールを立てております。そのために、すでに昨年基礎問題小委員会というのを設けまして、一体日本の税負担率はこれでいいのだろうか、あるいは自然増収に対する措置は今後どうしていったらいいかというような問題、あるいはもう一歩先に申しますというと、公債というのは、財政問題になりますけれども、一体この税制度の関連で発行していいのかどうかという問題をも含めて基本的な案を考えるべく準備をしておりますので、これは私ども任期の最後の仕事でございますし、私ども自体が逃げることのできない任務と考えておりますので、どういう内容のもので、それが御満足のいくものかどうかはお約束できませんけれども、必ずある形で答申を申し上げることをここで確約申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/9
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010・有馬輝武
○有馬委員 その現在までいま先生がおっしゃったことが延びてまいった理由についてはお答えがなかったわけでありますけれども、私たちが推測いたしますに、やはりさっきも悩みがあるということをおっしゃいましたけれども、減税分と施策の充当費というものをやはり税制調査会自体で頭の中に入れつつその答申を作成されるところにも一つの原因があるんじゃなかろうか、また租税特別措置なんかの改廃に追われておるところにもその一つの原因があるんじゃなかろうかといろいろ推測をいたすわけでありますが、いま一度この現在までできなかった理由についてお答えをいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/10
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011・中山伊知郎
○中山参考人 ただいまの御質問、ほとんどそのとおりでございますとお答え申し上げるほうが正直であろうと存じます。
第一に、確かに当面の問題にある程度時間をとられているということが基本問題を一取り扱う態度にやや十分でないものが見られた理由だと存じます。そのことを反省いたしましたために、特に昨年から基礎問題小委員会というのを内部につくりまして、これは外部の相当若い少壮の財政学者を集めて、その意見を聞きながら現在その成案を急いでおりますが、そういうものをつくることによって、通常の審議会の仕事がいささか通常的な問題、当面の問題に流れるのを防ごうという努力をやっと昨年から始めた。はなはだおそきに失したようでございますけれども、それに気がついてそういうことをやっているという事情でございます。これが一つの問題。
もう一つは、政策的な問題ということ。これはまあ問題のしょっちゅうそういうところにあることは御無知のとおりでございますし、また、いよいよ税制改革案を税調でつくるという段階になりますといろんな運動がまあ出てまいるということも私どもの経験でございますし、皆さんも御承知のとおりだと思うのでありますが、実はその点にはあまりわずらわされておりません。これは私、内部から、申しまして強がりを決して言っているのではござい任せんけれども、あの委員会の空気をごらんになりますれば、おそらくそのような政策的な減税に関連した運動というようなものの力というのは案外少ないのではなかろうか、少なくとも委員の大部分はそれにはわずらわされないで仕事をしておることをひとつ御信頼いただきたいと思うのであります。その点は割合に少ないのでございますけれども、しかし事実上は第一に申し上げました理由。御指摘になりました第二の理由、すなわち当面の問題が案外大きな問題でであるということ、これは委員方の悪口になりますので申し上げにくいのでございますけれども、私、会長としての立場から申しますと、当面の問題にならないと熱心にならない委員の方もおいでになるということ。これははなはだ申し上げにくいのでありますけれども、そういうこともございまして、いま御指摘になりましたような遅延の理由が生まれてまいりましたことをお答え申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/11
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012・有馬輝武
○有馬委員 次にお伺いしたいことは租税負担率の問題であります。今度の国会におきましても、この負担率の問題につきまして、二二・二%がどうだ、また三十五年の二〇%の線を堅持すべきである、こういった点をめぐりましていろいろ論議がかわされております。がしかし、私は、総理がよくアメリカなり、イギリスなり、フランスなりの租税負担率を取り上げて先進国は云々というような言辞を弄されるのでありますが、これは大きな誤りだと思うのであります。私はやはり可処分所得はどういうぐあいになるか、国民所得の立場からとそれからやはり租税公課の面、歳出の面から検討してまいるのが筋ではなかろうかと存じますが、いずれにいたしましても今度はこの租税負担率の問題につきまして固定的に考えなくてもよろしいのじゃないかというような答申の意向と受け取りました。そういう考え方を出されました経緯についてお伺いをいたしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/12
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013・中山伊知郎
○中山参考人 ただいまの問題は少し誤解があるように存じます。最初に申し上げますが、私個人の立場といたしましては、昭和三十五年に出されました答申案における二〇%程度というのが今日の国民生活の状態から見て妥当であるという考えにいまも違いはございません。ただしその前に二〇%というパーセンテージに正確にくぎづけにするという意向はあのときから持っておりませんので、やはり二〇%程度というところでいいのじゃないかと思っております。しかしそれをいまの御質問は、変更したのではないかというお話でございますが、変更しておりません。それ以後税調といたしまして租税負担率を正確に議論した場はございません。それが出てまいりましたのは、先ほどちょっと触れました基礎問題小委員会におきまして、あまりこれにこだわる必要はないのじゃないか、現実はすでに二一%半あるいはことしの場合でも二二%二というようなところにいっている、そういう現実を見れば、いつまでも二〇%にこだわっている必要はないし、理論的に見てもそれは常に国民所得の水準と相対的な問題であるから、だからこだわる必要はないのみならず、むしろ国民所得の水準の変動に応じて可動するもの、ベアリアブルなもの、変動し得るものと考えたほうが合理的であるという見解を表明いたしました。しかしこれはあくまでもまだ基礎問題小委員会の内部の一つの見解でございまして、税調全体の同意を得たものではございません。税調としてはあの三十五年の二〇%前後を妥当とするという意見をまだ変えておりません。その点少し御質問の過程にはあるいは誤解があるのではないかと推察いたしましたので、その点をあわせてお答えを申し上げます。
そうして結論的に申し上げますと、その問題は、基礎問題小委員会のいま一度の検討を経た上であらためて最終答申を作成する場合の税調の基本問題に取り上げたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/13
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014・有馬輝武
○有馬委員 先ほどの御答弁と関連をいたしますが、自然増収の問題についてお伺いをいたしたいと存じます。
〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕
政府が自然増収の見積もり額を毎年出すのでありますが、これが増収合計では毎年もう常識をはずれた自然増収になっておるわけであります。三十二年で二千九百五十二億、三十三年で千百九十億、三十四年で二千九億、三十五年で四千九百十三億、三十六年で七千四百四十三億というぐあいに、ものすごい増収があるのでありますが、これは大蔵省の意図的なものも含まれておるのでありましょうし、経済成長の自然的な結果もありますのでしょうし、いろいろ原因があろうと存じますが、この自然増収と経済成長の問題についてどのように見ておられるかお伺いをいたしたいと思うのであります、少なくとも政府が見ます経済成長、私は近ごろ宮沢式数字——当たらないことを宮沢式数字と現代川語辞典に一語加えなければならぬと言っておるのでありますが、勧銀なり何なりの見たほうが常に当たっておりまして、政府のものはもう当たらない。いずれにいたしましてもこの異常な自然増収というものは看過すべからざる問題だと思うのであります。この点について御見解を伺いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/14
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015・中山伊知郎
○中山参考人 自然増収の問題は、日本の税制あるいは税制の政策面を取り扱う場合に、常に根本に置かれる問題でございますが、ようやくその考え方の基本がいま明瞭になってきているように思うのでございます。つまり自然増収と申しますといかにも何かふしぎなからくりで予定以上の税収があがった場合ということでございますけれども、そういう観点から見ますといかにも見積もり額が大きい、またでたらめであるような印象を与えるのでございますが、からくりの中身を見てみますと、何もふしぎはない。それは経済成長率掛ける税収の率、つまり経済成長率がある程度参りますれば税収も自然に大きくなることは御承知のとおりでございます。その上に成長率に対する税収の割合というものはまた上回ってまいります。たしか国税だけについて申しますと一・五くらい、それから地方税については少しその率が少ないのでございますけれども、一・三、そんなものでしたか、平均して一・五でしたか、いずれにしましても、かりに成長率を、これは例でございますが、一〇%といたします。そうすると、一〇%にいたしま してかりに一兆五千億の所得増がございますと、その所得増に応じただけの税収増がもちろんあるのでありますけれども、それにさらに五割を掛けないと税収のふくれをあらわすことにはならない。つまり税収の弾力性というのは常に所得の弾力性よりも大きい。このことが当然自然増を生み出すのでありまして、したがって自然増の数字は二つの数字を掛け合わせてみれば直ちに出てくることなので、別にふしぎはないのであります。その上にもう一つ、税収の弾力性というのは、所得の水準が上がれば上がるほど大きくなってまいります。つまり一般水準が上がれば高い累進税のところに税金の率がかかってくるわけでございますから、したがって所得の増加率に比べて税収の率はずんずん大きくなっていく。これが自然増収のからくりだと私は考えております。そうなりますと一体自然増収というのは、本来全部国民に還元すべきものであるかどうであるかという問題が続いて出てまいります。自然にほうっておきますればこれは当然負担増になりますから、負担増にならない程度の還元というのは必然的に必要であると私は思うのです。しかし全部を返さなければ負担増にならないかどうかというのは、私は問題だと思うのであります。それは実は非常にむずかしい、むずかしいというよりもこれはめんどうな問題になるのでありますけれども、そういう所得増が国民経済全体として、たとえば一〇%なら一〇%という所得増が出ます場合に、実は企業としての投資が政府の支出として行なわれている場合がある。そうしますと所得増のあるものはそのもとに返って政府の支出に基づいての所得増であるというような場合があるわけであります。一般的な場合ならばちっとも差しつかえないのでありますが、それが特殊な場合でありますと、それはむしろ政府に還元してもいいものではないかという理屈も成立する。もう一つ、そういう所得増が上がりますためには、かりに大きな立場から申しますと、政府の仕事もふえます。政府の仕事がふえれば、政府の雇用している役人の数もふえるでしょう。それを養っていくための費用というのは、その自然増の一部からどうしても差し引いて払わなければならない。具体的に申しますと、毎年々々の予算を政府が立てられる場合に必ず起こってくる問題は、必然的な経費増でしょう。たとえば給与を増加していく、あるいは一定の率でもって増加していく仕事に応じての人数の給与は増加していく。そういう自然増的な必然的な経費増、これは毎年大体千億ないし千五百億ぐらいはあるんじゃありませんか。正確な数字を私いま覚えておりませんが、そういうものは、実はその翌年の自然増の必要の経費であって、したがって翌年にそれを期待する場合には、その費用だけは自然増の中から差し引いても差しつかえない。ですからこのような計算を重ねてまいりますと、自然増の全部を返さなければ財政上不当であるという理屈は出てこないのであります。ある人が何か雑文の中で、自然増を黙ってふところに入れているのは、会費を取り過ぎて、そして横領しているのにひとしいという議論をしたことがございますけれども、そういう簡単なものでもないでしょうということだけを私はここで申し上げたいのであります。ただ、ただいまの御質問に関連いたしまして、自然増というものをどう考えるかという御質問でございましたので、あるいは少しよけいなことを申し上げたかもしれません。その点はお許しを願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/15
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016・有馬輝武
○有馬委員 いま先生おっしゃったことと同時に、私たちが問題にいたしておりますことは、先ほど申し上げました大蔵省の意図的なもの、また徴税の強化というような観点からも、私たちはこの自然増収の問題を真剣に取り上げてまいらなければならない、このように考えておりますが、いずれ機会をあらためてこの問題については深くお伺いをいたしたいと存じます。
私十三分までということで委員長から申されておりますので、あと一問だけお伺いをいたしますが、先ほど先生は悩みとおっしゃいましたけれども、時の政府に非常に迎合的な面のあらわれております一例といたしまして、ガソリン税の問題がありますが、少なくともガソリン税が大衆課税であることは、現在の時点におきましてはきわめて明瞭でありまして、このガソリン税の増徴に対して消極的になられた理由について、最後にお伺いをいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/16
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017・中山伊知郎
○中山参考人 ガソリン税の問題につきましては、非常に議論がございました。最後にあのような答申になりましたのは、あそこに出ておりますように、外国の例に比べて——外国と申しますのは、特に石油を輸入している国の例でございますが、したがって、まあ一番的確な例はイタリアということになりますが、そういうところの例に比べますと、日本のガソリン税にはまだ増徴の余地がございましょう。したがって増徴の余地を利用して、ほんとうの道路建設に適当に使われるというようなくふうがございますれば、くふうの余地はございましょう。しかしそれには十分慎重な考慮をしていただきたい、これが答申案の前文でございます。その結果が、政府において余地があるならばひとつ増徴しようじゃないかということになったことは、そう簡単にお考え願ったのはいささか残念でございますけれども、しかしそのような余地を残しましたのは答申案でございますから、もしその責めを負うということになれば、私どもは政府と一緒にその責任を負わざるを得ません。ただ私は、個人といたしましては、実は負担の問題もございますけれども、当時御承知のように、物価問題の懇談会をしておりました、そのときに、これは物価に響くという点では何とかして押えてもらいたい、その意見は終始強く持っておりまして、今日でも持っております。したがいまして、いま御指摘になりましたように、大衆課税という問題と同町に、むしろそれよりも強く、いまの段階では、物価の問題として御考慮がほしかったという気持ちは持っております。しかしもしもあの答申を政府のほうでそのように受け取って、増徴の余地があるという点に重点を置いて問題を措置したといわれますならば、その責めは税制調査会にあることを私は十分に認めるにやぶさかではございません。これをお答えにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/17
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018・吉田重延
○吉田(重)委員長代理 原田憲君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/18
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019・原田憲
○原田委員 私に与えられた時間が十三分削られましたので、簡単にひとつお尋ねを申し上げたいと思います。
まず冒頭に、中山先生、本日は御苦労さんでございます。
私のお尋ねをいたしたいと思っております問題は、今回の税制調査会の答申と直接関係のある問題ではございませんが、先生も御存じであろうと思いますが、外人旅客の税の問題でございます。これはただいまお聞きいたしております中にも、特に今度の税制調査会の答申の中で、国際収支の問題とからんで、特に市場開拓準備金制度を設けておるということは、いまの中にもございました。わが国の国際収支上の問題として、今回の予算審議の際にも大きく取り上げられてまいりました外貨獲得の政策でございますが、これに対しまして、政府は観光政策に力を入れて外貨を獲得していきたい、こういうことを考えておるわけであります。それに対して、その一方策といたしまして、外人旅客に対するところの免税措置を講じておったのでございますが、これがたしか昭和三十五年、六年の町年度にわたる税制調査会の答申の中では、簡単に申し上げますと、オリンピックをやるとか、あるいは先ほど申しましたような政策のために、外人旅客に対するところの免税措置を講じたらよいという意見に対して、諸外国では料理飲食税ですか、これに対する特別措置をしておるような例はないから、これはおやめになったほうがよかろう、こういう答申がございまして、これは私どもは実は税制調査会の答申というものを尊重しなければならないという立場に立ちまして、当時の運輸大臣に対しましても、この答申を重要視しなければならないんじゃないかと申しまして、三十七年三月三十一日まで、一年延長して、三月三十一日に打ち切られたと私は記憶しておるのでございます。ところが今度は、政府がこの問題につきまして、当分の間これを実施するんだということを提案し、これは地方財政計画にも変更になるんじゃないかというような議論がなされ、そのような政策は、ここにおいでの春日委員などは、植民地根性まる出しの政策であるから反対であるというようなことを申されておるのでございますが、その問題について、その後税制調査会では問題にされておりませんので、ここでお尋ねすることはちょっと不適当かと思いますけれども、そういう問題が事実現実に起きておりますので、調査会の会長である中山先生にあまりお目にかかる機会もございませんので、先生の所見を一応お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/19
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020・中山伊知郎
○中山参考人 ただいまの問題につきましては、昭和三十五年、六年、つまりただいま御質問にございました、このような特例を廃止したほうがよろしいといった時分から、私は税制調査会長として責任がございますので、一貫してお答えができると思います。私の考え方は、これまたはなはだがんこなようでございますけれども、この問題につきましては、それだけの措置をする値打ちはないだろうということ、むしろ外国に例があるかないかということは付帯的に出てきた事実でございますけれども、それだけのことをいたしましても、特に外国人の旅客が日本に集まってくるという効果というのは少ないんではなかろうか、逆に申しまして、私どもが、あるいは私どもの若い連中が外国に参りまして、宿賃を払う、飲食の代金を払う、その場合に少しくっついております税金のことをほとんど気にしないのが普通ではないのでございましょうかというようなことを議論いたしまして、方針としては、特別の措置はむしろもっとほかの点にやられるべきじゃなかろうかということを申しました。したがいまして、本年の答申案におきましても、あれを復活しなくてもよろしゅうございますということを一言つけ加えてあるのでございますけれども、何か今度の政府の決定では、オリンピックを控えて特別の場合だからということで、あれが認められたようでございます。オリンピックにすべてのことをかけるという意味では、一回限りでございますから、どのくらいなことになりますか、金額も大したこともございませんし、いいだろうと思いますけれども、私どもの意見としては、残念ながらそのような方策には賛成いたしかねるということでございますので、御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/20
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021・原田憲
○原田委員 実は私もいまの会長の仰せのような考えを持っておったのでございますが、いろいろ研究の結果そうではないという考えを持つに至りまして、ただいまお尋ねを申し上げるのでございますが、これをもって君は態度を豹変したというおしかりを委員長やあるいは坊君から受けたのでありますが、君子は豹変することがあるということでちょっとお尋ね申し上げたいと思いますが、一つの問題点としては、これが地方税でございます。この地方税でとっておる、この課税の対象になる人たちが外人である。この外人たちは地方税の対象となる——私は税の専門家ではありませんが、応益税とか応能税というものが租税の負担公平のもう一つ前提となって論ぜられる、そういう対象にならないじゃないかというのが私の考え方であります。応能税の問題からいいますと、外国からわざわざ日本に来るんだから、相当金を持っているだろうというようなことも考えられるかと思いますけれども、現在日本に旅行に来る人は、決して金持ちだけじゃない。金がなくても、現在では金をこつこつためて、ひとつの楽しみとして外国を回ろうというのがこのごろの傾向であります。ゆえに、金持ちだけが旅行しておるのではない。また、日本へ来てその人たちはある一定の期間、わずか短い時間に旅をして、そして自分の国へ帰っていく。そうしますと、自分の子供を学校に入れておるわけでもなければ、あるいは小便はしますけれども、水も飲みますけれども、それも特別長い間やっておるわけではない。だから、こういう問題から考えますと、地方税の対象として取り上げるべきものじゃないじゃないかという点から考えて、この問題は、料理飲食税が地方税でございますから、全般の問題を論じようと思いませんけれども、その対象に外人旅客というものを当てはめなくてもいいじゃないかという点が、一点、私の疑問を持つに至った点でございます。
もう一つは、やはり政策として観光旅客を日本に集めるという政策を論ずる場合に、先生はただいま、われわれが外国に行った場合には決してそういう特別扱いはしてもらっていない、こういうことでございますが、ビジネスとか、あるいは特別な研究とかいう場合は別にしまして、外国へ出かけていくというのは、その外国の持つ魅力というものが根本になっておる。いつも、観光で外貨を一番獲得しておるのはイタリアであるということがよく言われております。イタリアの国際収支の面で大きな力を発揮しておるのは、この外貨と外客と、そして出かせぎして故郷に金を送る、これが大きな働きをしておる。どうしてイタリアがあれだけの外国人を吸収する力を持っておるのか、こういうことを考えますと、それはいろいろ見方があると思いますが、これはやはりイタリアの持つ特殊的な地位というものであると考えます。そのイタリアの持つ一つは文化であります。これはカトリックの木山バチカンがローマにございます。これは心のふるさとと申しますか、日本人でいいますと、よく本願寺参りということを言いますけれども、年に一度、あるいは一生に一度は自分たちの心のふるさとに参る。キリスト教の信者が多いことは言を待ちません。この人たちが戦後二十年の間に相当の経済の拡張により収入がふえ、所得がふえた、金がたまった。一ぺん本山であるところのバチカンへ行こうじゃないか。これはイタリアにある、ここへ行こうじゃないか、こういうことで旅をしておる。一方もう一つは、やはり人間には帰巣本能というものがある。どうしても自分の巣に戻りたい。白人の歴史をたどっていくと、その発祥はいわゆるローマに通じていく。一度はそこを見たいという、これがイタリアへ人の集まってくる一番大きな原因じゃなかろうか。特に戦後におきましては映画であるとか、この映画も大型になってきまして、シネラマであるとか、あるいはテレビの発達というようなことから、特にそれらが大きく紹介されていく。ますます一度行ってみたいということがイタリアに人の集まる大きな原因をなしておらないだろうか。日本は政策として観光に力を入れるというが、一体何に力を入れるのだ。景色がいいというが、確かに日本は景色はよろしゅうございますけれども、このくらいの景色は外国にもたくさんございます。だから、景色だけで日本に外人を誘致しようとしてもなかなかそうはまいりません。やはりイタリアの持っておる一つの文化というものに匹敵するものは日本では何か。これは戦争の最中でも焼かれなかった奈良、京都、これは世界の一つの文化である。こういうものを大事にして日本の特有性のものを外国に紹介する。もう一つは親切である。外国のどこへ旅行しても、われわれ国会議員もよく旅行するということで紙上をにぎわすのでありますが、その旅行をしたときに国会議員に限らずだれでも最も印象に残り、もう一ぺん行きたいというようなところは、特に親切にしてもらったところというのが印象に残る。日本を紹介する場合に、よくフジヤマ、ゲイシャガール、だということが過去に言われたのでありますが、世界じゅうで言われておることばに日本の女性を女房に持て、それで西洋館に住んでシナ料理を食ったら、これが一番いいのだ。この日本人の女性を女房に持つというのは何かというと、これは親切だ、こういうことから出発しておると私は思うのです。しからば親切というものを何によって、示すかということになりますと、それは先ほど先生はそんなことはたいしたことではないと言われましたけれども、いまのホテル代は日本は伺い。その中でまた税金がかかるということを除外することは決して効果が少ないことではない、私はそのように考えてきたわけです。特に政府登録の旅館だけに税金を免除して、ほかへ行った場合には取られる。これは税というものに非常に敏感な外国人にとっては、すぐにこれは何だと思われる問題でありますから、それは取らないのなら全部取らないほうがいい、こういうように考えてきたのでございますが、このようなことについて、先生はどうお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/21
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022・中山伊知郎
○中山参考人 すでにお答えを申し上げたところで大体は尽きておりますけれども、ただいまの御説明の一点、地方税としての性格上外人に対するこのような税金を免除することを適当と考えるがどうかという御質問に対しましては、これは正直にお答えを申し上げますが、実はその点は私ども考えておりませんでした。税一般として考えておりましたけれども、地方税としてどうだという点までは追及しておりませんでしたので、この点はあらためて今後またおそらくこの問題を考える必要が、いまのような情勢で起こってまいりましたので考えたいと存じます。
第二の点は、イタリアと比較されて、日本の魅力は何かということでございますけれども、確かに安いほうがいいにきまっておりますけれども、それまでの効果がありますかどうか、私はなお疑問にそれはしておりますが、もし、しいてイタリアがヨーロッパの中でなぜあれだけの観光客を集めておるかということを問題にされますならば、ほかのたくさんの原因の中で、イタリアは物価が安いということを私はひとつお忘れにならないようにお願いいたしたい。したがって日本にほんとうに観光客を求める長期の最も確実な方策というのは、それは景色なんかは急には変えられませんから、一番確実な方策は物価安定、そうして物価の中でも特に生活費を確実に安くするということにあることをひとつどうぞお忘れにならないようにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/22
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023・原田憲
○原田委員 僕はまだ三分残っておりますけれども、臼井君がその三分を関連してやりたいと言われますから譲ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/23
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024・臼井莊一
○臼井委員 ちょっと関連してこの機会に一言。
これは質問というより、実はホテル・ニュージャパンでロータリー.クラブに出ましたときに、私の隣に外人がいて、私が国会議員だという話が出たら、国会議員なら実は陳情があるのだが、日本に来て、ホテル代が非常に高い。そこへ税金がかかる。税をかけるのはやむを得ないけれども、どうもちょっと高過ぎるということの陳情を受けております。私は外国の税金の例を知りませんが、そこで今度の税制改正でも、ホテルに泊まる税金は、やはりそういう意味ではそういう外人の非常に税に敏感なこと、特に日本のホテル代が高いのでよけいそういう点を注意するのかもしれませぬけれども、まあ、これはある程度軽減するようなことがよかろうという意見を申したのですが、ただ今度それに政府のほうで期限を——期限は別といたしましても、他の飲食の場合までこれを広げたということは、私はまことに奇怪千万だというくらいに極端に言えば考えるのですが、ただホテルに泊まるについてはそういう陳情があったので、そこで日本もいま貿易外の収支が非常に問題になっておる際に、日本の観光資源を利用して外人にできるだけ多く来てもらおうという意味においては、ホテル代の税金については、やはり考慮の必要があろう、こう考えましたので、将来ひとつ税調におかれての審議の場合に、外人でもそういう点に非常に関心があるということの一例だけ申し上げまして、ひとつ御参考に願いたいと考えますので、ちょっと申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/24
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025・吉田重延
○吉田(重)委員長代理 武藤山治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/25
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026・武藤山治
○武藤委員 中山先生から冒頭に税調の御苦心をいろいろ承りましたので、参考人の先生にそうこまかい点をお尋ねいたしましても御無理かと思いますが、特に給与所得が非常に高くなり、国民負担率も上昇の傾向にある。こういうときでありますから、私は三、四点について先生の御見解を承っておきたいと思うのであります。
その一つは、先ほども有馬委員からお尋ねがございましたが、税負担率が昨年よりも高まり、三十五年当時先生のおっしゃった二〇%前後が一つの歯どめとしていいのではないだろうか、そう固定したものではないが、まあ歯どめ程度のものがなければ、これが上昇傾向にあるということは好ましくない、こういう見解を私も以前に承ったのでありますが、そういう傾向がだんだん打ち破られて、企業減税あるいは政策減税という方向に非常なウエートがかかっていっております。昨年の利子配当を一割から五%にしたのもその傾向でありますし、そういう歯どめというものがなくなってしまうと、一つの圧力あるいは大きな力を持った政治的発言力のある者に非常な恩典がいってしまって、公平化というものが非常に乱されてくるような心配があるわけであります。そこで減税をやる場合には、ただ単に租税全体の収入と国民所得の比較ということでは、私は実質生活の程度と税負担の関係というものはわからないような気がするのです。そこでやはり所得税と納税者との負担の割合とか何か別な資料で国民の可処分所得をふやしていく、そういう資料というものは精密につくる必要があるのではないだろうか、そういう点について先生はどうお考えになっているかということが一つ。
それからもう一つは、日本とアメリカと比較すると、生活水準は日本はアメリカの五分の一、ヨーロッパと比較して二分の一斜度だとそれぞれ聞かされておるわけでありますが、実質生活水準が非常に日本は低いのでありますから、税を取られることによる犠牲感、犠牲をしいられるという感じというものは諸外国よりも非常に日本の場合は重いと思うのです。
〔吉田(重)委員長代理退席、委員長着席〕
そういう国民が税を払うための犠牲感というようなものをもっと調査をしないと、ただ国全体の歳入と国民一人当たりの比率がどうなっておるかという大ざっぱな資料では、ほんとうの意味の生活水準を高めるための税制というものはできないのではないだろうか、こういうような感じを実は私は持っておるわけであります。そういう点についてもひとつお尋ねをいたしたい。
もう一つ、政府の所得倍増計画によりますと、昭和四十五年度の税負担率というものを一二・五%程度と押えておる。昭和四十五年に二一・五%程度の負担率という目標がすでに昭和三十九年度に二二・二%になるということでは、あまりにも現実にマッチしない計画のような気がいたします。そこで政府のそういう所得倍増政策で考える租税負担率と税調の考えておるこれからの負担率の推移というもの、こういうようなものは一体どういう関係になるだろうか、この点をもひとつあわせてお尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/26
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027・中山伊知郎
○中山参考人 ただいまの御質問、三点にわたっておると思いますが、その一つ一つについて簡単でございますがお答えを申し上げます。
第一の御質問、つまり負担率を測定する場合に、一方に国民所得を置き一方に税負担額を置いて、その比率だけでたとえば二〇%であるとか二二%であるとかいう計算で負担率、負担の重さをはかるのは、これは不完全ではないかという御質問でございますが、そのとおりでございます。これは一つの指標にしかすぎませんので、極端に申しますれば、その中の税金の取り方いかんによって非常な相違が出てまいります。税率の建て方、それから累進の程度のあり方、あるいはもう少し進みまして間接税で取っているか直接税で取っているか、それだけでもって非常に違うわけでございますから、これだけでもって一つの正確な指標ができるということはもちろん申せません。したがいまして、われわれが二〇%、二一%というような議論をしておりますのは、現在のような日本の直聞比率——直接税間接税の比率、これは大体六対四というような比率になっておりますが、そういう比率で現在のような累進税率の建て方で、現在のような基礎控除の持ち方で、そうして一体負担率がその中で動いたらどうなるだろうか、こういうことを考えておりますので、これは決してこれだけでもって十分というわけではございません。
したがいまして、第二の御質問に関連いたしますが、アメリカその他と比較する場合に、国民所得の頭割りでアメリカが六倍であるとか、あるいはヨーロッパが倍であるとかいった場合に、それとの比較において負担率を考える場合にはもっといわば負担の実感の出るような調査が必要ではないか、そのとおりでございます。したがいまして、はなはだ不完全ではございますけれども、たとえば昨年の税調の答申案の中には、物価の家計に及ぼす影響というものを取り上げまして、そうして標準家族、つまり夫婦と子供三人という家計において、いままでの税率でまいりますと、どうしても最低の課税限度がすでに生活の最低限度を刷るというような結果になってくるから、物価の点から申しましてもある程度の基礎控除の引き上げをやらざるを得ないという結論を出しました。その資料になりましたのは生計費の分析、それから個々の所得者層の実際の生活状態の検討でございまして、こういうような調査をさらに重ねていくことができますれば、いま御質問のありました、あるいは御要求になりましたような実感に近い失態調査がもっと完成するだろうと存じます。われわれは調査会自体といたしましては何の調査費用も持っておりませんので、もっぱら大蔵省と自治省とに依頼してこの調査をしておるのでございますけれども、そういう点では今後もひとつ大きな援助を得てもっと正確な調査をしていきたいということを念願としております。
それから第三の点で、昭和四十五年度に完成される、つまりもとの所得倍増計画、これでの税負担率が二一・五%になっておりますのは、これはちょうど昭和三十四年度があの倍増計画の基礎的な数字の年でございましたので、あれを大体延長して考えていたというふうにお答えすることができるのじゃないかと思います。この数字の算定の基礎は、さらにさかのぼりまして国民所得に対する政府の支出の限界、つまり歳出の限界というものを大体一一%ぐらいに抑えましてその計算ができていると存じます。したがいまして四十五年にこういう数字で落ちつきますかどうですか、よくわかりませんけれども、案ができましたときのアイデアは、いま申し上げたような、そのときの状態を大体横に延長して考えた以上に深い大きな意味はなかったと存じます。ただこれも御承知のように、この四月から新しく所得倍増計画のアフターケアの一つといたしまして新しい五カ年計画というようなものの策定が始まります。そうなりますと、その中でこのような問題ももっと現実に即した形で取り扱われるようになると存じます。
以上、三点に対してお答えを申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/27
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028・武藤山治
○武藤委員 次に減税の規模でありますが、従来自然増収が二千億円か二千八百億円程度で一千億減税、こういうような減税が行なわれた年がある。そういうような常識的な国民の目から見た場合の減税規模というものを考えると、本年のように六千八百億円の自然増収がある。そういうときに地方税、国税合わせて平年度二千億円ちょっと、これでは減税をしようという熱意がこの金額の数字であらわれておらないのではないかという国民の批判があると思うのです。会長は率直に常識的に考えてみて、従来の減税規模から見て六千八百億円の自然増収の中で本年程度の所得税の減税ということは一体がまんのできる数字なんだろうか、この点はどのように御認識なさっておるか、ひとつ見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/28
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029・中山伊知郎
○中山参考人 お答えを申し上げます。
その六千八百億に近い自然増収の金額から申しますと、その減税の割合が比較的に少ないのではないか、実は最初に税制調査会の議論の席上では三千億減税案というのが出ておったのでございます。これは内部を申し上げて恐縮でございますが、またそれは言いのがれになりますのでではございませんが、そういう議論がございました。しかし、さらにそれを追及してまいりますと、本年度の六千八百億の自然増収に対応して、前年度の繰り越しの減というのが約二千億ございます。これを差し引きますと、四千八百億に対する二千三百億というこの比率は昭和三十二年の比率にほとんど近いものでございまして、この数年間あるいは三十二年からでございますから約七年ですか、七年間にわたって最大の比率及び金額の規模を持っているものということを確認いたしました。これが二千三百億についに落ちついた事情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/29
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030・平林剛
○平林委員 ちょっと関連して。ただいまの中山会長の御意見を反駁して恐縮でありますけれども、私は今回の税制改正は、政府案においても、税制調査会の答申におきましても、所得税の減税が少な過ぎるという見解を持っているのです。なぜこう申し上げるかというと、昨年中山会長はこういう説明をなさいました。昨年の所得税の減税案を考えるときに、三十七年度の自然増収は大体政府からの説明では二千億か二千三百億円ぐらいしかないという話であった、それであるから結局小幅の減税を勧告せざるを得ないという条件で案を考えましたと説明をなさっておるわけてあります。そこで二千億ないし二千三百億円であったと想定をいたしまして案を出したところが、あにはからん三十七年は四千八百七億円の自然増収になりまして二倍あったのでございます。かりにいま会長の御説明のように四千八百億円、つまり前年度のものを除いて六千八百億円と言われるが四千八百億円だという御説明がありましたが、所得税の減税は、初年度ですが、六百八十七億、これは今回の自然増収のおおよそ九%にしか当たらない。私は、いかに自然増収をいきなり減税に振り向ける必要はないという御見解がございましても、これではあんまり低過ぎるではないか、少な過ぎるではないかという感じを持つわけでございます。いま中山会長がお話しになりました数字をとりましても、今回の所得税の減税は税制調査会においても少な過ぎた。そこでその上に今回政府は給与所得控除の分を調査会の答申より削ったのですから、なお少ないということに相なるわけであります。
この事情をひとつ御検討くださいまして、少なくとも本年度にさらに政府の見通しよりも税の自然増収があった場合——なかなかきつく見積もっておるというお話でございますから、あるいはないかもしれませんが、私はやはり四百億や五百億円の差は必ず出てくると見ておるのでございます。その場合にはたとえ年度内におきましても、先ほどお話がありました全般的な問題とあわせてこれについてはひとつ御検討いただきたいという希望を持っておるのでございますが、ひとつ調査会長の御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/30
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031・中山伊知郎
○中山参考人 ただいまの一般的な印象としての所得税減税がもう少しあったほうがよかろうという御意見に対しては、最初に申し上げたとおり私は賛成でございます。したがって、反駁を申し上げる理由は何にもございません。
ただ今度の案をきめる場合に、かりに四千八百億であったとしても、なぜ政府なり大蔵省なりあるいは自治省なりの言うことをそのまま信用したか。前にもっと苦い経験を持っていたじゃないかと言われますと、前にそうであったから今度はうそだろうということはなかなか言えませんので、それはちょっとわれわれ調査会といたしましては、これまたはなはだ気の長い活でございますけれども、毎年毎年こういうことを重ねていく間にお互いにひとつ良識をもって客観的な水準をつくっていくという以外には、はなはだ気の長い話でございますけれども、むずかしい問題だろうと存じます。
なお、給与所得自体につきまして、わずか一万円でございますけれども、最高の控除額のところが減らされたということ、並びに二十万円、四十万円の格差のところであるアジャストメントが見のがされてしまったというようなこと、そういう点は非常に小さいようでございますけれども、おそらく金額的には少ないでしょうけれども、給与所得全体の地位から申しますと、ことにこれを納めておる人の数が圧倒的に多い、八五%に及ぶという日本の現状から申しますと、これについてもう少しあたたかい心の配り方をしてほしかったと考えております。そのことだけをお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/31
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032・武藤山治
○武藤委員 たいへん会長明快にお答えをしてくれておりますか、実は私もその点にたいへん問題があると思うのです。せっかく税調が給与所得者の税負担を軽くしなければならぬという今日の経済情勢を十分認識をして答申をなされた、その答申の中で給与所得控除を九十四億円答申案より値切って——九十四億円というのはわずかな金だといえば、国家財政全体から見ればわずかかもしれませんが、その給与所得控除の九十四億円減らした分を基礎控除なり扶養者控除なりに回したのならば私はまだ許せると思うのです。ところがその九十四億円の給与所得分を減らして配当の軽課措置にその財源を振り向けて税調が答申をしない減税をしておる。すでに会長さんも御承知のように、調査会が答申をしない特別措置の金額が百六十四億円になっております。配当軽課措置の拡大で九十九億、収益分配金の分離課税で八億その他外三件の特別措置で五十七億円、百六十億も減税に資金を回して、所得税の九十四億円の控除を減らしたという政府の態度、これは私は許せないと思うのです。会長は、先ほどそういう政府の暴挙は長い目で見ておれば国民は黙っていないでしょう、国民がどこかで腹を立ておこるでしょう。それ以外になるほど今日の政治体制の中ではきちっとこれをこらしめる歯どめにする基準はないと思いますが、しかし私は、ことしだけこれだけ削られたのならばまだがまんはできます。しかし昨年も所得税を減らして、基礎控除を減らし、扶養控除を減らし、そうして一割の利子配当課税を五%に安くする、こういう政策減税を行なったわけです、三十八年度も。二年間連続こういう態度を政府がとるのを会長として黙って見ておっていいものでありましょうか、ここに私は大きな問題があると思うのです。
そこで、私はこれからの会長さんの決意のほどを伺いたいのでありますが、これだけ政府が百六十四億円の答申にあらざる政策減税を行ない、勤労控除九十四億円を減らした、値切ったというこのやり方に対して、一体何%ぐらい答申が守られたとお考えでございましょうか。まず第一に、先生は三十七年度はやや一〇〇%近く、九八%答申が尊重されたと先ほどお話がございました。本年は一体何%程度あなたたちの答申が受け入れられたとお考えになりますか。この点は非常に重大であります。
第三は、こういう暴挙を二年連続政府が行なうのに対して、調査会としてのき然とした抗議をしてしかるべきだと私は思うのです。もし抗議をしても力足らず効果がないとお考えになるならば、この際国民にこの態度を見せるために総辞職をするなり天下に声明をするなり、国民全体のふところの問題に影響する重大な調査会の性格から見て、私はこの辺で何らか態度を明らかにする必要があると考えるのです。その点、会長さん円満な人格者でございますが、国民の側に立って、この二年にわたる暴挙に対してどのような見解をとるか、ひとつ承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/32
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033・中山伊知郎
○中山参考人 私、先ほど最初の委員の御質問に対してただいまの問題にお答えしておりますので、繰り返してこれを申し上げることを遺憾いたしたいと思いますが、私の考え方は率直に申しまして、長い時間をかけてお互いにこの問題を考えていきましょう。そして政治をしていきましょうということで、これを非常になまぬるいとおっしゃれば、なまぬるいことを私は覚悟しております。しかし民主主義というのはそういうなまぬるい過程を通して一歩二歩いいところにいくのが本筋じゃないかと思っております。具体的に申し上げまして、ただいまの御質問に対して率直にお答え申し上げます。
それは、給与所得のほうで削った上に特別措置でこれだけやっている、それに対してどう考えるということでございます。私のお答えは、特別措置でそういうことをなさるのなら、せめて給与の措置のほうでそういう九十数億の金を節約しないでほしいというだけを申しあげる、なぜならば税制調査会は決して政府自体じゃございません。したがって政府がやりたいと思うあるいはやらなければならぬと思っていることのすべてを私どもが察知して項目に並べることは不可能でございます。これをもしやりますれば、その事前に政府筋と打ち合わせる以外に方法はありません。そんなことは私どもはしたくございません。したがって政府がある意志を持って、しかも国民の総意を得られてある特別の措置をされる、これが必要であるとお認めになれば、それは国民が承認する以上税制調査会といえども、私は客観的にこれを認めざるを得ない立場があると思います。しかし税制調査会の良識に従って、苦労してつくったその案だけは守って下さい、そのほかのことは少しやってもよろしい、これは私の率直な考え方なのでございます。したがいまして、前者を考え、後者を相殺し、これに総合点をつけることは少し遠慮いたしたいと思います。これは学校の卒業試験におきましても秘密会議になりますからここでは申し上げません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/33
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034・武藤山治
○武藤委員 参考人の先生にあまりきつい御質問をするのもいかがかとは考えておるのでありますが、しかし事は非常に重要な、非常に納税人員の多い所得者の問題でありますから、私も少々切り込んだような質問をして恐縮でございます。
そこで、給与所得控除の九十四億円を値切ったことによって、かなり所得の高い人たちでせがれが大学へ行っておる、高校へ行っておる、こういう年齢の方々の控除額ががくっと減ったわけであります。そういうことで一体いまの課税最低限度の実態を考えたり、諸外国の実質生活水準というものを考えた場合に、税調の考える課税最低限を割らないかどうかという心配も一つ出てくるわけでありますが、その辺の会長さんの御見解はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/34
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035・中山伊知郎
○中山参考人 ただいまの問題につきましては、私ども正確に計算をいたしましたのは、物価の昨年度の騰貴がその最低限を割るか割らないかという点について、ちょうど昨年いたしました検討と同じ検討を加えました。しかしそれ以上に進んで、生活程度が上がったことを前提として考えた場合に、つまりいままでだったら課税最低限を割っていないといわれても、生活程度が世間並みにずっと上がった状態を考えてみると割っているじゃないか、そういう点について、つまり基礎的な生活水準そのものが一年、二年の間に上がったことについての考慮というのは、実はしておりません。今度このような案をつくります場合には、物価騰貴に対する保障というのは今度の措置で十分であろうということは考えました。その点の計算はしております。しかし、それ以上に上がった水準に比べて課税最低限を割っているか割っていないかという詳細な検討はまだしておりません。私は昨年に比べてことしという、この一年間の変化を見ました限りにおきましては、特にそこに問題があろうとは存じませんけれども、しかし御指摘でございますので、なお機会があるときにそれを検討してみたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/35
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036・武藤山治
○武藤委員 次に、こまかい問題になりますが、過般も大蔵委員会で与野党の委員からいろいろ質問がありまして、とにかく日本の実質生活水準は低過ぎる。したがって、基礎控除額と配偶者控除額というようなものは同額にすべきだ。二分二乗課税ではないけれども、特に主人の所得の源泉というものは、家庭におって妻が助けておる比重というものが非常に大きい、したがって、基礎控除と配偶者控除の差額がだいぶん開いてきて本年は一万円になってしまった、これは好ましい方向ではないのじゃないだろうか、これはひとつ改めようではないかという意地が非常に強いのでありますが、この点について会長はどう考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/36
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037・中山伊知郎
○中山参考人 この問題はここ数年間繰り返して議論されたことでございまして、理論的に申しますと二分二乗方式というのが一番すっきりしているのじゃないかということだけは認められているのでございますけれども、日本のような現状ではたして一分二乗でもってやっていたほうがいいのか、それともウェートをやはり主人側に置いて、そこに基礎控除を重ねていくという方式がいいのかという点についてなお議論が進行しております。その進行している最中に、しかし結論が出ないから見送るというわけには参りません。したがってちぐはぐな結果になったかもしれませんけれども、これは残念ながら昨年の税制措置が完全でございませんでしたので、ことしまたそれが下におりてまいりまして、ついに一万円という大きな相違ができたことになったのでございますけれども、その点につきましては今後は同じような措置を繰り返さないで、もう少し趣旨のすっきりした形で問題を取り扱っていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/37
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038・平林剛
○平林委員 私、文句を言うほうばかりになって恐縮でございますけれども、この点は税制調査会長に一言わかっていただかなければならぬと思って、実はきょう待っておったわけであります。それはなぜかと申しますと、配偶者控除というのが生まれたのは昭和三十五年の十二月の答申からでございまして、このときに配偶者控除を九万円にする、そうしてこれは基礎控除と同額になさったのでございます。この創設にあたりましては税制調査会も相当議論を重ねられましてこのような答申をなさったのでございまして、私はその点敬意を表しておったわけであります。昭和三十六年の十二月に再びこの問題が取り上げられまして、このときの答申によりますと「配偶者控除の制度の創設の経緯にかえりみ、配偶者控除の額を当然に基礎控除と同額にすべきであるという立場もなりたつ。」「したがって、基礎控除が十万円に引き上げられるならば配偶者控除もまた十万円にすることを適当と考えた。」とありまして、このときも基礎控除、配偶者控除は同額になさったのであります。昭和三十七年の十二月の答申におきましても、同様に基礎控除、扶養控除、配偶者控除について、それぞれ一万円ずつ引き上げる、こういう答申をなさって、前後三回にわたって、このバランスは同一に進んできておるわけであります。ところが、政府は配偶者控除を五千円削り取ったわけです。ところが三十八年十二月の税制調査会の答申は、このことに一言も触れておらないのであります。そうしてこの段階になりますと、配偶者控除を十一万円に引き上げましたけれども、これは政府案の前回おやりになったことをそのまま肯定されている。ことばをきつく申し上げますと、答申を尊重しなかった政府案の措置に対して、妥協なさった形である。今回の答申には何も出てない。これは私は税制調査会としては、どういう理由があったのだろう。理由は一言も書いてない。そうして妥協なさっておる。まことに遺憾でありますので、きょうはこの点だけは税制調査会長に一言断わりを言っていただきたいと思っておるわけです。何らかの是正措置を講じなければ、先ほど申し上げましたように、まだ全般的に所得税の過重というものが重なってきておるわけでございますから、私はこの点から考えても、勤労者の所得控除もございますけれども、このことは妻の座を低めてしまう。妻の座を低めることに調査会も妥協なさって、何らの弁明もいたされておらない。いかなるお考えであるか、こういうことを私は伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/38
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039・中山伊知郎
○中山参考人 ただいま、さっきの御質問にお答え申し上げましたように、不幸にして昨年の五千円問題以来、問題が同じような形で積み重ねられて、今日一万円の大きな相違ということになってしまいました。しかしこれは私どもの真意ではないということは、先ほど申し上げたとおりでございます。ただ本年の答申、あるいは勧告案におきまして、その点に少しも触れないで、そしてただ五千円の回復を主張したということは、あたかも昨年の政府の措置を事後的ではございますけれども、あとから承認した、追認したことになるのじゃないかというおしかりでございますが、まことにそのとおりになると思います、客観的には。ただ、なぜ税制調査会でその妻の座を確保するために同額にするという点を主張しなかったかと申しますと、それははっきり申しまして、減税金額の算定からでございます。その点から申しますと、もしも基礎控除のほうを一万円でなしに、たとえば八千円とか七千円とかいうような刻んだ金額でできますれば、もちろん一方をそろえることができたのでございます。しかしこれは政策の面から申しましても、実質の面から申しましても、何か基礎控除に刻んだ数字を掲げるということは、事実上できません。そのためにこちらをとるかあちらをとるかといういわばジレンマに押されて、ついに一万円の幅までわれわれは譲歩したことになったのでございます。この点まことに遺憾でございますので、率直に私はお断わりを申し上げます。税制調査会でそのような議論をかわしながら、しかも過去数年にわたってのプリンシプルを持っておりながら、そのような妥協になったということは、まことに遺憾でございまして、私自身その責めを負わざるを得ないと思っております。しかしこれは先ほどもお答え申しましたように、このような形勢をこれから続けていく意図ではございません。必ずこの昭和四十年に提出します最後の答申案、これは基礎的な答申案でございますが、その中にうたうか、あるいはこれをさらに具体的にいたしまして、四十年度の税制改革案のいわば答申案の中に盛り込みますか、必ずその措置をつけたいと存じます。
それからついでに申し上げますけれども、私どもの任期は昭和四十年でございますから、何の遠慮もございませんので、その点も御承知を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/39
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040・武藤山治
○武藤委員 いよいよ割り当ての時間もなくなりますので、尋ねたいことはあと五、六点あるのでありますが、しぼってお尋ねいたします。それは生計費の計算の基礎でありますが、マーケット・バスケット方式による食料費を計算をするわけでありますが、会長さん、おそらく国立栄養研究所へ行って、この献立を見たり食べたりしたことがあるかどうかということが一つです。私は過般その献立表を資料として取り寄せましたところが、私どもの命をつないでいくのが精一ぱい程度の献立であります。そのことについて、日本経済新聞の今月の四日号に、実際にあの献立で食べてみた実感を記事にして報道しております。これを見ましても、いかに机上のプランが生計費の基礎になっておるかということが明らかであります。時間がありませんからこまかいことは申しません。そこで、栄養大学の実際の調査では、一人百五十円、食費だけでどうしてもかかる。主婦連の調査では百五十円から百八十円、東京友の会は百六十五円、栄養改善普及会では百八十円はかかるといっておる。しかるに、答申の中に出ておる資料では、標準世帯一人一日百二十二円六十銭です。百二十二円六十銭どういうものが食えるかということになると、実際の生活とは実にかけ離れた金額であります。卵も食えない、牛乳も飲めないという数字であります。これは大蔵省から資料を取り寄せておるから、大蔵省はできるだけ課税最低限度は上がらないように、あるいは税収が減らないようにという考慮から、国立栄養研究所にこういうような献立を裏でこっそりつくらせて——この程度では命を保持するのがようよう程度の予算ですよ。会長さん、今度この献立を食べていただいて、なるほどこれでいいか悪いかということをひとつ体験をしてみてもらいたいのであります。この一人百二十二円六十銭で標準世帯の家庭が食っていけるかどうか、この点のあなたの実感をお聞かせ願いたいと思うのです。
さらにもう一つ、最後に、所得税及び法人税法に関する整備に関する答申というものが出ております。ところが、過般本会議で総理大臣に私が尋ねましたところが、そういうものが出ているという認識すら持っていないのです。まことにけしからぬ話です。今国会においても、この整備に関する答申は何ら実践をされるような傾向にもないのでございます。私は調査会として一言何か政府に対しても——十月早目に答申を出した理由は、今国会に整備をさせようというねらいがあって調査会は早く出したものと思います。これについても、怠慢だとのそしりを受けまするから、ひとつ調査会としての見解もお聞かせ願いたいと思います。
以上で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/40
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041・中山伊知郎
○中山参考人 国立栄養研究所に参りましてその献立で食事をしたことがございませんので、まことに残念でございますが、お答え申し上げることができません。ただ、私自体、他の関係でマーケット・バスケットとか、あるいは労働科学研究所の栄養研究とか、統計局の生計費調査とか、いろいろなものに関係しております。あるいは賃金問題等の関係で、労働組合の諸君と、たとえば全繊の組合員の食べている献立というものを研究したこともございます。あれは非常にむずかしいもので、私はある参考程度以上にあれを利用しようというのは非常に無理なのじゃないかということを考えております。あれを完全にするためには、おそらく生活のすみずみまでが鏡に照らされたような生活でなければできないのじゃないのだろうかということを考えておりますが、なお、その点は私食べておりませんので、これ以上のお答えができません。
第二の点につきましては、確かに整備が急がれる問題、つまり期限つきの問題がございますので、あれだけを取り上げて先に答申をいたしました。それが全然政府のほうで取り上げておられないというのは、私ちょっとわからないのでございますけれども、おそらくなおそれを具体化するための措置で時間がとられているのじゃないかと思っております。と申しますのは、税制調査会には、整備の上で期限つきのものがあるから早くしろという注文があって、あの作業を非常に忙しい中で、人手をさいて委員の方に御苦労願ったのでございますから、これを政府の側で全然取り上げておられないということは、実は私、全然予想もできない事柄でございます。もしそういう点がございますれば、なおその点を確かめたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/41
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042・武藤山治
○武藤委員 時間でございますから、終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/42
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043・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 関連。中山さん、一つお伺いしたいのです。先ほど有馬君の質問の中で、給与所得者が八三%という話がありまして、これの調整がかからないので、それについていろいろお考えになっておると申されましたが、この次には何らかの措置をしていただけるのかどうか、その点ひとつお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/43
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044・中山伊知郎
○中山参考人 この次にどういう措置をするかという問題につきましては、おそらくいままでの税制調査会のやってまいりました措置を延長して考えますと、基礎控除の引き上げ、その他それに類することであって、税額控除とか、そういうところまではなかなかいかないと思うのであります。ただ一つの考え方、それは私個人の考え方でございますので、税調の考え方としてはお受け取りなさらないようにお願いいたしたいと思いますが、私は、もしほんとうに勤労所得のある特別の措置を考えるならば、それだけ税体系を別にするところまで思い切ったことをやらないと、ほんとうの措置ができないのではなかろうか、基礎控除をみなほかの人と同じように引き上げていくというだけの措置では、これは勤労者の特別の措置にはならないうらみがあるのではなかろうかと考えております。ただ、不幸にして、これまた外国の例になりますけれども、そんなことをやっている国はどこにもございません。どこにもないところでそういう制度を創設できるかどうか、この点は非常に重要な、困難な問題だろうと思いますけれども、私はその線に沿ってなお考えを進めていきたいと考えております。これだけをお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/44
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045・山中貞則
○山中委員長 春日一幸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/45
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046・春日一幸
○春日委員 私は、まず冒頭に、税調の運営について、会長に対して一個のアドバイスを行ないつつ、所見を伺いたいと思うのであります。と申しますのは、このように徴税行政の基本についていろいろと論じつつあるのではありますが、しかし、現実には答申が行なわれた後において、かつまた、予算がすでに組まれ、それぞれが制度化された後において論じております。言うならばあとの祭りでございます。私、考えまするのに、この徴税行政なるものは、とにもかくにも国民の財産というものに決定的なる影響力を与えております。かつはまた、行政費歳出の大多分のものがこの国民の税の負担によってなされておることにかんがみまして、国政全般の中において占める徴税行政のこの役割りの度合いというもの、これは決定的なものであり、きわめて重要な問題であると思うのでございます。こういう重要な問題が、政党の意見が十分税調の中に反映せしめ得ない。当然税調の機能から判断いたしまして、そういう意見に影響される、影響されないということは別個の問題といたしまして、とにもかくにも国民全体の財産権に決定的影響を与えるであろうとおぼしきその税調の答申、これに対して各政党の意見を反映せしめる、せしめないは別問題といたしまして、どのような考え方を持っておるのであるかということを、系統的、総合的にあなた方が把握されて、しこうして、かれこれ勘案されて答申をなさるということが、その使命、機能からかんがみまして、私はベターな運営ではないかと思うのでございます。ことに自由民主党は直接税調との間の接触もあるでありましょうし、あるいはまた主税局を媒介として、その意思の疎通が現実にはかられておると思うのでございます。ところが野党においては、それぞれその系列の委員の参画はあり得るでありましょうけれども、それは直接のものではない。しかしながら、その徴税行政の重大性にかんがみまして、各党とも徴税行政については政策として一個の体系を持っておるのでございます。こういうものをあなた方が調査の過程において知悉されるということは、さらにあやまたざるところの答申を国民のためになされるという意味において必要なことではないかと思うのでございますが、今後の答申に先立って、各政党の意見を正式に正面切ってこれを聴取するという機会をお持ちになる御意思はないかどうか、この点伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/46
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047・中山伊知郎
○中山参考人 ただいまの御意見の中心でございます税調がその意見をまとめるにあたって、各方面の意見をできるだけ広く参酌すべきであるという基本的なお考えについては、私は賛成でございます。したがいまして、本年は特に税制の各面にわたりまして相当稠密な調査表をつくりまして、これをつくりますだけに数カ月を要したような緻密なものでございますが、それを政党のほうはもとよりのこと、学識経験者の皆さんに、特に税制に関係のある方には全部配付いたしまして、そして調査を取りまとめ、これを参考意見にいたしており、また、現にそれを続けております。ただ、具体的にいま御質問のありました与党、野党、あわせて政調会その他の特に税制に関する意見を正面切って聞く機会を持ったらどうかという御意見に対しては、私は、現在ややちゅうちょした立場を持っておることを御了承願いたいと思うのであります。その意味は、先ほども申し上げましたように、かりにいろいろな意見をお伺いいたしますけれども、一番中心になりますのは、現に政権をとっておられ、政治の責任を持っておられる自民党でございましょう。自民党の御意見を政調会あるいはその他を通じて正確にわれわれが事前に選択され、正確にその意図をわれわれに示された場合に、そして議論をしました場合に、おそらく九〇%あるいは九五%に近い成案が得られるかもしれません。しかし、それにもかかわらず、そこには違った意見があって、しかもそれは容認ができないものだということが初めからわかっている意見を組み込むためには、税調の中にかえって相当の抵抗も生まれましょう。私は、御意見を拝聴し、また、その意見に対して税調自体が知識を持つことの必要は十分同感するのでございますけれども、公式の席上でもってそのような意見の交換会を持つことの是非については、いささか懐疑的であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/47
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048・春日一幸
○春日委員 せっかく御答弁ではありますけれども、税調の歴史を考察いたしますと、これはかつて大蔵大臣の私的な一つの諮問機関にすぎなかった。けれども、その答申の及ぼす国民への影響力をわれわれ委員会はおもんばかりまして、このような重要な答申を行なうところの税調を単なる大臣の諮問機関として無資格なグループの形として扱うのは適当ではない。よってこれを内閣総理大臣の諮問機関として、一つの国の機関として法律を制定し、法律に基づいてその運営がなさるべきであるという、この指標の上に立って、われわれは、この税調の法制化を主張し、その実現をはかった次第でございます。よって、これは一個の国の機関でございます。国の機関が国民の意見を十分取り入れてその答申にあやまちなきを期すべしという努力を払われることは望ましいことであると思うのであります。かかる意味において、われわれは、国会の場所を通じて、会長を通じてこういうようなさまざまな基本論を述べる機会がなくはないのであります。しかも本日は十二時半までという限られた時間である。あなたのほうから資料があるといったところで、そういうようなものをやはり政調なりそれぞれの機関で検討はいたしておりますでありましょうが、それによって決定された意思を正面切って正式にあなた方に表明する機会がないということは、このことは、言うならばあとの祭り、お祭りが済んでからさまざまなちょうちんをあげてみたり、催しものをしてみても意味のないことであろうと思うのであります。御反省を願いたいことは、ここに憲法調査会がございますが、これは野党がことごとくこれをボイコットいたしまして半身不随の形でいまあの運営が行なわれていることにかんがみまして、すべからく国の機関である税調こそはほんとうの国の機関として、かつは各党により推進されたものであるという歴史的経過をも尊重されて、野党の意見も、あまねく国民の有益な意見を徴して、その答申に権威をさらに充実していこうという、このようなおもんばかりがあってしかるべきだと思う。もとよりそのことに対する影響があるなしということは、あなた方の自主的な権威がこれを決定することでございますから、それは十分聡明な委員各位の御判断によって、それは自主的な御決定があってしかるべきだが、ことさらに聞く機会を設けること、そのことが、税調の答申を妨げるとか、結論を得ることに災いになるというような見解は私は民主主義の基本的原則に照らして適当ではない、御反省を求めます。
そこで私は、なお十分ありまするので、当面の問題について一つだけお伺いをいたしておきたいと思うのでございまするが、いわゆる当面の問題については熱心、基本的な問題には不熱心という会長のお話もございましたが、その熱心に訴えて私はぜひともひとつ実現を願いたいと思いますることは、企業組合に対する課税の方式についてでございます。法人税、所得税に関連いたすのでありますが、由来企業組合なるものは一個の営利会社と同じような税法上の取り扱いを現在受けておるのでございます。私はこの問題についていろいろと中小企業等協同組合法その他の法律を政策的にいろいろと検討をいたしてまいったのでございまするが、このことは事業協同組合と企業組合とは異質のものであるという概念のもとにそのような相異なる税法上の処分を受けておるということはこれは誤りであるという一個の結論を私は持つに至りました。時間がありませんから、私はその理由を端的に申し述べますので、これを十分ひとつ御検討を願いたいと思うのでございます。まず、これを実態的にかつまた立法政策的に考察を加える必要があろうと思うのでございまするが、事業協同組合は、何といっても事業主体というものがここに残って、そしてその中のある部分が協同化されるのである。企業組合は事業主体というものが共同体の中に埋没してしまうのである。そういうことから異質のものであるというような一つの考え方で処理がなされておるようでありますが、しかし、その機能は何であるか。これを分析をいたしてみますると、協同組合も企業組合も対外的には営利行為を行なっておるのでございます。すなわち、よりいい品物をより安く売ろうという努力、あるいは買うときには安く、売るときには高く売ろう、営利を追求する基本的な行動をこれは同じように行なっておるのでございます。したがって、対外的経済活動については企業組合も事業協同組合も同じでございます。対内的にはどういうことであるかと申しますると、このことはやはりそこから利潤があがったならば、その利潤はことごとく組合構成員にこれを還元するという、これは法律上明確に相なっておるところでございます。中小企業等協同組合法の九条には「組合の所得のうち、組合事業の利用分量に応じて組合が配当した剰余金の額に相当する金額については、その組合には、租税を課さない。」税法上、そういう損金算入の制度を認めつつ、その利益というものは組合員に還元せなければならぬ。それから企業組合については、これは五十九条三項に「企業組合にあっては、前項の規定にかかわらず、剰余金の配当は、定款の定めるところにより、年一割をこえない範囲内において払込済出資額に応じてし、なお剰余があるときは、組合員が企業組合の事業に従事した程度に応じてしなければならない。」ですから、対外的には結局あがったところの利益というものは、その組合構成員に全部還元せなければならない。こういうことが事業協同組合法の中に明記してあるのでございますから、このことは一般の営利事業の会社と、確然として本質的に違っておるのであります。したがって、事業協同組合とそれから企業組合というものは同質のものである。しかも法律的にこれを調べてみますると、これは特に私は会長の立法政策的に十分御考察を願いたいところであると思うのでございまするが、事業協同組合法の第一条の中には、この法律は中小企業者が協同してその利益を得ることのためにこれをやるんだ、こういうぐあいにうたいまして第五条にはさまざまな規定をずっとつくって、「剰余金の配当は、主として組合専業の利用分量に応じてするものとし、」こういうふうにきめて、そしてこの協同組合組織というものは六つある。それをきちっと列挙してこれを明示して、その中に企業組合を事業協同組合と同列に考えてこれを制定いたしておるのでございます。したがって、立法政策的考察の上においても、またその機能の内実においても事業協同組合と企業組合と何ら違っていない。違っていないものを、片方はその益金処分を、利用分量の配当は損金、事業組合については、利用分量の配当は益金収入、このようなことは私は政策上の誤りである、立法過程における一個のこれは手落ちになっておったのではないか、戦後の倉皇の間に定められたところの中小企業等協同組合法の中において、これは当然事業協同組合の中で、これは租税を課さないと法に明示してあることを、ここにそれを書くべかりしものを書き落としたのである。ここに出資者に対する配当制限が一側ときめて、残りのものは配当しなければならない、事業組合も配当しなければならない、それは損金だ、片方はこれは益金とも書いてない。益金処分とも書いてない。にもかかわらずこれを益金処分にしなければならぬ、しておるという現状は、これは明らかに立法政策上の手落ちであると思うのです。この点について私は限られた時間にあなたからここで御回答を得るといいましても、三十分までということでございますから、こういうことは非常にむずかしい徴税理論、われわれは長い間この理論を積み重ねてまいっておりまして、思いつき理論を述べておるのではございません。したがって私の申し上げた理念、後ほど文書によっても提出したいと思いますが、十分立法政策的にかつは実質的に、かつはまた企業組合の生成の歴史過料を十分御分析をいただきまして、あやまたざる税法上の措置をとっていただきたい、このことを強く要望いたします。
なお、重ねて私は昨年この御意見を拝聴いたしまする機会において会長に申し上げました。すなわち現在の徴税制度は給与所得と資産所得、この二つの分類しか行なわれていない。ところが零細専業者の所得は資産所得と給与所得の合算所得であって、したがってそうそう新しい分類をつくるべきである、租税実態主義というのであれば実態に即してしかるべきである。ところがそれがなされていないからそれをなしてください、なした以上は、そういう零細所得者がその下積みの勤労の対価として発生したとおぼしき所得に対して、その所得分に必要なるところの経費控除があってしかるべきではないか、これを申し上げましたが、昨年はあなたとの間は十分に意見の合致を見ることができませんでしたし、また短い時間だから十分なる御認識を得られなかったけれども、幸いにこの問題については私は政策理論が煮詰まったとは申しませんけれども、ある程度これはもう煮え上がってまいりまして、もう食べていただくことのできる状態にまで話がととのってまいっておると思います。十分ひとつ御検討を願いまして、これら全国の勤労事業者のための要望にこたえられますように、本年度こそはこれらの諸懸案について適切なる御答申あらんことを強く要望いたしまして、時間がありませんままにこれにて終わり。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/48
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049・中山伊知郎
○中山参考人 たいへんに時間を考慮していただきましてありがとうございます。
ただいまのいろいろな点、確かに承ってこれから研究すべき問題が多いので、そのようにいたしたいと思います。ただ、ただいまの企業組合、事業組合と、それから企業の課税問題、この問題につきましては、一つだけわれわれはそれに触れた議論を待つ場面がございました。それは御承知の今度の特別措置としての市場開拓準備金、あれの積み立てに中小企業者がどのような配意ができるか、こういうことで中小企業の場合にもこれに均てんができるような措置をとろうというところで組合の問題が出ましたけれども、それ以上にはついに触れることができませんでしたので、いまのような根本問題についてはさらに検討を続けたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/49
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050・山中貞則
○山中委員長 中山会長との約束の時間がまいりましたので、御退席をいただいてけっこうでございますが、会長におかれましては帰国直後のお疲れもいとわず、当委員会に長時間の御出席を願いましたことを深く感謝申し上げます。陳述されました御意見はたいへん貴重なものとして、今後の当委員会審議の参考にいたしたいと存じます。
ありがとうございました。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/50
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051・山中貞則
○山中委員長 続いて大蔵大臣に対し質疑を行ないます。通告がありますのでこれを許します。堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/51
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052・堀昌雄
○堀委員 実は三日の日に大蔵大臣が記者会見をされました際の発言をもとにいたしまして、三日の証券市場は二十四円六十二銭という旧ダウの暴騰を来たしたという事実がございます。この問題を中心に三十分間ちょっとお伺いをいたしますけれども、まず最初に、この前の委員会でも私ちょっと申し上げましたときに、ここで言ったこと以外はどうも信用してもらっては困るというような意味の御発言がございましたけれども、私は本日は少し念のために新聞記者諸君に会いまして、その発言の内容を確かめました。ですからきょうは私はここでそういうことは言わなかったということは、これは通らないということをひとつ確認をさしていただいて、少し論議を進めたいと思います。
そこでまず最初に、一体この日本共同証券というのはどういう目的のために設立をされておるのかということについてお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/52
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053・田中武夫
○田中国務大臣 共同証券の件につきましてはもう堀さんも十分御承知のことと思います。金融機関それから経済界等の主要な諸君が集まられて、証券業法に基づく証券会社をつくって、証券市場の安定、育成、強化というようなものに資したいという気持ちに基づいてかかるものが設立をせられた、このように承知をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/53
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054・堀昌雄
○堀委員 いまのお話しで、その目的は安定と育成だというふうなことでありますが、それじゃ一体どうやってこれを安定をさせ、どうやって育成をするのか、それをちょっとお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/54
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055・田中武夫
○田中国務大臣 どうやってということを申されても、私は当事者でありませんからよくわかりませんが、昨年度以後ケネディ・ショックと言われる事態から株式市場が低迷をいたしておるわけであります。その中には実勢以下に実に無気力であるというようなことも言われておりますし、いろいろな面から開放経済に向かっての日本の資本市場はどうあるべきかという問題に対しては真剣に検討が進められておるわけであります。私も就任以後開放経済に向かっての資本市場の育成強化というものに対しましては、格段の配慮をいたしておるわけであります。このような考え方に基づいて、新しい立場から共同証券というものが設立をされたわけであります。しかしこれは法律に基づく特殊会社でもありませんし、大蔵省からも人を送っておるというようなわけでもありませんし、大蔵省としては純然たる法律に基づいて届け出がなされたものに対して届け出を受理したということであります。しかしそう申し上げても全く自然に生々発展してきたというような会社でないことも御承知だと思います。いずれにしましても金融機関が自発的に将来の日本の資本市場の強化、育成に資するためというような気持ちが底流にあって設立をされたということだけは承知をいたしておるわけであります。しかしどうして育成するのか、こういうことになりますと、相当な人たちが集まって相当な機関が投資機関として設立をしたわけでありますので、場合によっては買う、場合によっては売る、こういうことで刺激にもなると思いますし、またかかる趣旨によってつくられたというだけでも、まあ日本の資本市場育成の過税における一つのポイントにはなるという考え方で設立をせられたようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/55
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056・堀昌雄
○堀委員 伝えられるところによりますと、大体需給関係を改善するということが主たる目的だと言われておるのでありますけれども、そこで私は、今度の大蔵大臣の発言の中に、非常に重要な問題が二点あったと思います。
その一つは、御承知のようにこの証券市場というものは非常に人気といいますか、そういう情報等によって異常に動く本来の性格を持っておることは私が申し上げるまでもないわけです。ところが三日の日に大蔵大臣の発言があって証券市場は上がった。あとでの御発言では、何か買う予定だったけれども、上がったから買う必要がなくなったのだろう、こういうような御発言もあったと聞いておるわけでありますが、一番私ここで重要なことは、何か政府が共同証券との間にパイプか何かが通じておりまして、それを買う指示を与えたわけではないでありましょうけれども、何か報告があったり、それが政府の発表になったりするということは、要するに共同証券という会社と政府との関係ということに大きな疑惑を私は招いてきておる、こういうふうな判断をせざるを得ないわけであります。
そこでまずはっきりここで確認をいたしたいことは、この共同証券というのはいまのお話しのように民間の会社でありますから、この民間の会社が、大体われわれが伝え聞くところによれば、中立性を重んじたいということで人事配置についても格別な配慮がされておるというふうに聞いておりますので、今後この共同証券の中立性に影響を与えるような発言は、ひとつ大臣としては厳に慎んでいただきたい。そのことが公正な市場価格が生まれるためにも私は当然必要なことではないか、こう考えますので、この点をひとつ確認をさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/56
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057・田中武夫
○田中国務大臣 共同証券は法律上は一般の証券会社と同じものでありまして、証券取引法等に基づいて大蔵大臣がやらなければならないもの以外に何らかの示唆を与えたり、またこれを利用したり、これを左右したりというような考え方は毛頭ないことを明らかにいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/57
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058・堀昌雄
○堀委員 そういたしますと、今後今回のような式の発育は行なわれないものと確認をいたしますが、よろしゅうございましょうか。ちょっとしつこいようですけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/58
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059・田中武夫
○田中国務大臣 今回の発言の内容、真偽等については発言の機会があれば申し上げますが、まあ、あのような発言で堀さんの質問を惹起したということだけでも、これは相当影響があるということになりますので、そのようなことはないように十分慎重な配慮をすべしということは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/59
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060・堀昌雄
○堀委員 そこで一応共同証券の中立性、そういう疑惑を生ずるような発育はおやりにならぬということでまず第一点の問題は終わりにいたしますが、いまやはり証券の問題というのは日本経済にとってなかなか重要な問題になっております。重要な問題になっておる一つの大きな問題点は、実は投資信託の急激な解約の中に問題がございます。御承知のように投資信託は過去におきまして大きな残存額をふやしてまいりまして、昭和三十五年には二千七百四十一億、昭和三十八年は四千二百二十六億、それから昭和三十七年になりますと、急に下がってまいりまして、それでも一千三十七億という元本の増加があったわけであります。ところが三十八年になりますと、これが元本の増加額は三百九十七億ということに、実は急激に減ってまいりました。解約のほうを見ますと、昨年の十月が百二十七億、十一月百十三億、十二月は百九十七億と、二百億に迫ってまいりました。一月は二百八十億でございまして、二月が百八十三億、いま投資信託の解約の状態は、私は静かなる取りつけ現象だというふうな理解をしておるわけであります。これがもし加速度を増してまいりますならば、いま残存元本一兆三千億近くのこの投資信託というものは、まさに戦前における銀行の取りつけ状態と同じような事態が起こりかねないほどに、実は内部的には大きな問題がある、こういうふうに理解をしておるわけです。ですから、そういう意味では、日本の資本市場の今後の問題というのは非常に私は重要だと考えておるわけです。ところが、どうもそれを見ておりまして、政府の政策の中には一貫した対策が感じられないということを非常に痛感しておるわけです。第一に、実は昨年の七月に大蔵省のほうでは、財務管理に関する通達を出しておられるわけです。この財務管理に関する通達は、私全く適当な通達である、当然必要なものであると思ったのですが、一体これがどうしてこんな時期まで出されなかったのかという点に、大蔵省の指導が非常に不十分な問題があった。これは、いまお話をいたしたように、昭和三十六年に投資信託も四千二百億余りの増加を来たしておる。一般的にいって株価が非常に上がっておるときに当然行なわなければならなかったものを、そういう時期に行なわないでおいて、要するに非常に急激に悪くなってきた条件の中で、財務管理を強行するということになれば、結局持っておる持ち株をさらに証券会社は売らなければならない。要するにいまのこの市場の問題というのは、需要と供給のアンバランスに原因をしておるわけでありますから、そういう際に供給面を押える問題が一つありましょうし、需要面をある程度確保するという問題があるはずなんです。ところが、その問題自体はきわめて当然なことでありながら、タイミングを失した処理がされたということは、現在非常に根を引いておるのではないか。御承知のケネディ・ショックもありますけれども、御承知のように、これは昨年の七月の五日に出されておるわけですね。内部にいろいろ問題はあります。証券は改善を自主的にしてもらわなければならぬ問題がたくさんあるのですけれども、当面この静かな取りつけが起こりつつあるという条件の中で、こういう形のものが強行されるということは、私は、やらなければならぬけれどもタイミングが悪いんじゃないかというふうな判断をいたすわけですが、これの取り扱いについて、大蔵大臣は一体どういうふうに現在考えられておるのか、ちょっとお伺いをしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/60
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061・田中武夫
○田中国務大臣 投信等の問題につきましては十分検討して証券業者の内部をよくしながら、国民大衆の利益を守らなければならないということは、当然大蔵省の責任でございます。でありますが、俗に言う依命通達、こういうことでございますが、この問題に対しては、やらなければならないことを、もっと早くやるべきであったことをやらないでおって、ケネディ・ショックが起きたか起きそうなときにやったということから言うと、時期が適当でなかったじゃないかということは、私も現在そのとおり考えております。やはりいいことでも時を選んで十分な慎重な配慮の上になさなければならぬことは、言うをまたないわけであります。私もその問題については、その当時はあまり——まだ一年目でありましたし、事務当局を重んじ過ぎたということもあるようであります。でありますから、こういう問題に対しては、大臣もやはり一応、出してきても、幾ら忙しいとき、でももう少し慎重に考えて、いやしくも依命通達というような場合、みずからが責任を負えるという判断に基づくまでは慎重さが必要であったということは、十分考えております。でありますから、通達を出しましたけれども、昨年の末ごろまで約半歳にわたって、この通達の趣旨と精神は十分理解してもらいたいと思いますが、これが運用については、前向きで弾力的な方法をとろうということをしいて私からは事務当局に申しつけて、これが昨年中期以後における株式業界の低迷の一つの大きなものだったとは考えておりませんけれども、まあ時期、タイミングはあまりうまくなかったということだけは、みずから認めております。かかることのないようにしたいというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/61
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062・堀昌雄
○堀委員 そこで、実は今度は共同証券に関してでありますけれども、この取り扱いは私は非常に、いま注目を浴びておりますから、問題が起こる可能性が一つある点を指摘をしておきたい。それは共同証券の資金というのは、御承知のように資本金五十億円、協調融資が可能になったものが百億円、百五十億円というのが当面使い得る資金であります。どうも大蔵大臣、たびたび数百億円で買うというようなお話が出るのですが、これは私は非常に誤解を生ずるおそれがあると思うので、それは将来いろいろな条件の中でどうなるかということは別問題といたしましても、当面は私は百五十億円の限度で問題が処理をされるものだ、こう実は理解をいたします。そこで、そういたしますと、あまり一般の人たちが共同証券というものに大きな期待感を持ち過ぎてはいけないのではないかということであります。それは、この一月の株式投信の設定額は八百四十七億円でありまして、解約その他を差し引くと五百四十六億円の残存元本の増加になっておりますけれども、ところが資金として大体使えますものは五百二十億円くらいなもんです。しかし、この五百二十億円という金が一応証券会社の手元には一月には入っていたわけですから、その、五百二十億円の金を証券会社が持ちながら、実は一月というのはああいう姿で推移をしておるわけですから、まして百五十億円の共同証券が買うからといって、あまり過大な期待を一般の投資家その他に与えてはいけないのではないか。だから、これはまさに何らかのモメントを与える力はあるかもしれないけれども、実質的に株価をある程度買いささえたりするような機関ではないのだということが明らかにならないと、私は一つ問題が生じてくるおそれがあると思います。これが第一点。
第二点は、おそらくこれから買う場合には、四社を通じて最初は買うことになりましょう。これは四社がこの共同証券の出資者でもありますししますから、おそらく最初はそういうことになるだろうと思います。そこで、その場合に、それでは百五十億の資金全部を一ぺんに買っちまったら、もうあとあくる日からはどうにもならないわけですから、ある程度しぼられたことで買うでしょう。そういうことになれは、あまり多数の銘柄を買うということはモメントにもならない。ある程度しぼられた株数になるでしょう。それがある証券会社を通じて買えば、その証券会社は共同証券が何を買うかということがわかるわけですね。そうすると、その証券会社はその上に乗っかるという行き方が生じてくるとするならば、その問題の中には、利害いろいろな問題が生じてきて、それがもし四社にしぼられるならば、四社の内部では、共同証券が何を買うか、どういう銘柄で買ってきたかということがわかる。そうすると、ここの部分はそれをたくみに利用できるけれども、それ以外のところはつんぼさじきということも起こり得るわけですね。実はこの問題は、今後の買い方については、非常に微妙な株価の動きとその問題を生ずる可能性があるわけですね。そこで、私は大蔵省当局としての指導が少し必要ではないか。要するに、できるだけわからないように、共同証券が買うということについては、何も個々に指導する必要はありませんけれども、共同証券に対して、特定の会社との結びつきによって特定の銘柄が利用をされるようなおそれを共同証券が起こすようなことのないような配慮は、私はこの際——こういう機関は、普通の場合なら設立されないのですから、この共同証券、いま証券会社だとおっしゃったんですが、いまほかの連中がこんなものを持ってきてやりますといったって、おそらく登録はされないと思います。やはり民間会社であっても、特殊な条件における特殊な要請を受けておる会社でありますから、それが特定のものの利益につながるようなことのないような配慮が十分されるべきであるし、そのことが私は、大臣の発言を含めて、より慎重でなければならぬ問題ではないのか。この共同証券のいろいろな問題というものは、そういうふうな角度で政府としては考えておるのかどうか、今後そういう面における指導をどう考えておるのか、その点をちょっと伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/62
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063・田中武夫
○田中国務大臣 共同証券は確かに証券業法に基づく一般の会社ではありますが、あなたの言われるとおり特殊な事態において生まれた会社であるということでありますから、やはりこれが自主的な業務の運営に対して大蔵省が関与すべきではないことはもちろんでありますが、しかし特殊な状態においてつくられたという立場で特定の銘柄とか、また特定の業者のみを指定するとか、そういうことは絶対やってはならないということは、大蔵当局としてはやはり会社当局に言うべきだと思います。こういうことを言わないでも、向こうのほうでもそんな気持ちになっておるようであります。非常に慎重でありかつ神経質であり、大蔵大臣などとつながりがないにもかかわらず、あるように思われては心外であるというように、共同証券に対しては全く一般と考えてもらいたい、こういう立場をとっておるようでありますし、私たちもそのように考えていますが、しかしそうだからといって、一般の会社の報告を待っておるようなことであってはならないと思います。そこはなかなかむずかしいことだと思いますけれども、あなたがいま言われたことはポイントを突いておるのです。一般の会社ではありますけれども、これは法制上大蔵省はそう言うだけの話であって、そういう事態を前提としてつくられた会社であるということに対しては、やはりいろんな問題を起こさないように、公正な市場の育成、強化ということが害されるようなことがあってはこれは全く問題でありますので、そのような面に限ってではありますが、大蔵省としてもそのような趣旨に沿って運営せらるべきことを要望し、指導すべきだということは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/63
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064・堀昌雄
○堀委員 いま私が申し上げたのは、単に共同証券に対してだけではなく、共同証券自身で買えませんから、たとえば四社なりどこか証券会社を通じてしか売買ができません。その場合に、そういう諸君のほうがそれをあからさまに、要するにきょう共同証券が何々という銘柄を大体幾ら買えといって出してきたというようなことを、証券会社の側が自粛をするといいますか、全体のそういう公共性の問題において考えないと、要するにそのことのためにいまの片方はできるだけ極秘で他に利用されることのないように配慮をしようとしておっても、市場側にそういう問題が出てくるならば、これは共同証券側の努力なりそういうものは烏有に帰するものです。そこらを含めて、要するに、市場全体に対する証券業者を含めて、買いに出る証券業者を含めて、市場全体に対してそれがいまのようなことにならないように、それは結局は一部特定のものの利益をそれによって生ずるようなおそれがありますから、その点を含めて指導をする必要があるのではないかということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/64
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065・田中武夫
○田中国務大臣 個人で銘柄を選択をして証券会社を通じて買うわけでありますが、かかるものも一くせあるべきであるということは論を待たないわけであります。しかしその上になお共同証券の持つ性格というものを考えれば、当然極秘裏に行なわなければならないということが一つと、もう一つは四社に限定してはならないというようなことは当然言い得ると思います。御発言もありますので、そのような趣旨で行政指指導するようにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/65
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066・堀昌雄
○堀委員 時間がありませんから、そこで私、この前もちょっと触れましたけれども、この需要と供給をどうするかという問題のきめ手がないと、実はなかなかいまの問題は解決しないことになる。いま需要の面で共同証券というものは一つはできたと思いますけれども、しかしこれはまさにそういうモメントを与える程度の問題であって、本質的な問題ではないということですね。この共同証券の問題は。ここをまず十分理解をしていただくと、あとは需要をどうするか、供給をどうするかということのバランスを、これは政府がかなり大きな場所から考える必要があるのではないか。きょうは時間がありませんから、日をあらためて、企画庁長官をも含めて、日本経済の今後の見通しの中における、要するに産業資金の調達のあり方あるいは設備投資その他を含めての経済の動きのあり方、これらの問題を全体的に考えていかないと、あまりこういう小手先のことだけでは問題は解決しないのだということを、やはり政府がもう少し真剣に考えていただかなければならぬ段階にきておるのではないか。そうすると、どうしても今後の増資の見通し等について、いま五千億といわれているものがもし四千億にとどまるならば、一応本年度予想されている五千億の需要に見合う分が一千億だけ余裕ができるわけです。だからまさにここは需要と供給をどういうふうなかっこうでバランスをさせて適正な条件に置き、そういう条件のもとにいまの投資信託のこういうような緩徐な取りつけ状態を改善するかということにつながってくるのではないか。だから私はここで特にきょう注意を換起しておきたいことは、ややもするといまの大蔵省、特に大臣がそうそうサイドの問題というか、共同証券のようなモメントを与える程度の問題のほうに比重をかけ過ぎて、本来の需給調整の問題にやや比重がかからないためにこういうことの発言が起きるし、同時にその発言がああいう変化をもたらすということになる客観的な問題があるのではないか、こういう感じがしますので、やはり私は正攻法で現在のこの問題をどう解決すべきかということについて、次会までに政府側の見解をひとつ統一して御発表を願いたい、こういうふうに考えます。しばらく時間の猶予をいたしますから、企画庁長官を含めて一週間か十日のうちに御出席を願いますから、それまでに本年度の資本市場に対する政府側の統一した見解を定めて、経済閣僚懇談会等を開いて、その上で御答弁をいただくように要望したいと思いますが、そういう要望にこたえていただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/66
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067・田中武夫
○田中国務大臣 非常に重要な問題でありますが、政府としても当然やらなければならぬ問題でありまして、かかる問題に対しては検討を進めておるわけであります。検討ができれば時期を見て国会でも御説明を申し上げたいと考えます。
私が共同証券等に対して非常にウエートをかけておるというふうな見方をされておりますが、事実は逆であります。私は共同証券ができたという話を聞きましたときに、好ましいことではない、こう私は育ったわけであります。戦後の非常に困った時期にこういうことが一時あったけれども、このようなことができることによってこの運営を誤るとますます市場の拘束性を強めることであって、私は自由主義者ですからこういうことに対してあまり感心せぬ、こう言ったのですが、しかしこの事態に対処していろいろの人が考えて自発的におつくりになったのでありますから、大臣もそういうふうに言っちゃ水をかけるようなことになりますので、ということを事務当局は言いますから、私はしょうがなくてかかる事態に有識者がかかるものをつくられたことは好ましいことでございましょう、こう答えただけの話でありまして、私も実際こういうものにはあまり賛成していないのです。しかもいまあなたが数字をあげてずっと申されたとおり、三十八年度には四千三百億の増資が行なわれているわけでございますから、開放経済に向かって資本市場はどうあるべきかということを考えなければならないのであって、このものにウエートがかかり過ぎるとか、共同証券ができて千億の金ができれば市場が安定するのだというふうに考えるほうが私は間違いだと思う。そういう投機的なものの考え方、他力本願で日本の資本市場というものはできるものではありません。私はもっと日本人がまじめになって資本市場というものがほんとうにわれわれの生命線だという考え方に立って考えていただきたい。私自身もそういうようなことをいつも申し上げているわけであります。でありますから、前に放言だとおしかりを受けましたけれども、税制改正までは確かに法人の配当を損金にできないかとか、それから分離課税もできないかとか、それだけではなく何年間か資本蓄積ということ、いわゆる戦前の六一%の自己資本比率まで上げるには一体どういう方法があるのか、どういうふうなかっこうで国民の支持を得なければいかぬのか、それだけではなく、公社債市場の流通ということが前提であれば証券法六十五条をもっと検討しなさい、ある場合においては証券業者と金融業者とほんとうにひざを突き合わせて研究しながら、そのある時期だけでも金融機関の窓口でもって公社債を売って、国民自体がその公社債を持つような事態になったら、また証券法六十五条のいまの精神に返ってもいいじゃないですか。私はいろんなことを考え、いろんな協力を要請しておるわけでありますから、資本市場の育成というものに対しては、ほんとうに抜本的な姿勢で取り組んで長期的な安定に資さなければいかぬ、このように考えておるわけであります。そういうことが契機になって——私はあとから聞いたのですが、第一金融機関と証券業者がけんかしているのはおかしいじゃないか、証券業者が物を買うときには金融機関から金を借りるじゃないか、そして金融機関も証券業者に金を貸しておるじゃないか、同じことであって、なぜ資本と貯蓄というものが一体になれないのですかと、私は一月七日に銀行の合併論みたいなものをぶったのです。——ぶったというわけじゃないのですが、そのときにそれだけではなく、いまの銀行と証券業者が日本の資本蓄積というもの、いわゆる産業資金というものの調達方法に対してもっと研究できませんかということを私は言ったわけであります。そういうところから、共同証券の設立という機運にも急速になったのだろうというような事務当局の意見もありますので、一つのこう薬ばりでもって何とかできるというような考え方は、小手先は絶対いけません。私自身も大きな立場で日本の将来の資本市場の育成をはかってまいりたい、そういうような基本的な考えに立っておりますので、共同証券の問題等に対してこう質問があると、事実に基づいてそのまま答えるというようなことが、あなたの御発言になったわけでありますから、私はそういう意味で抜本的な広範な立場で政府自体もまじめに考え、また国民の協力を得ながら資本市場の育成に尽くしていくべきだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/67
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068・堀昌雄
○堀委員 それで、いまの政府の統一した見解というのはいつごろまでに出してもらえるか、ちょっとめどを聞いておかないと困るのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/68
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069・田中武夫
○田中国務大臣 大蔵委員会もずっと長いのでありますし、そう性急にものをやってもなかなかまとまるというものではないのであります。これから総理大臣命で、新しく所得倍増計画の後期五カ年間に対して、公共投資はどうあるべきだ、またその中で財政金融問題等もいろいろ出てくるわけでありまして、結局年率七・二%の経済成長率とはいいながら、前半において非常に高い成長率を示しましたので、後半はいかにあるべきか、開放経済に向かってどう考えなければいかぬかという問題まで全部検討しながら、それによって産業資金の必要性ということが出てくるわけでありますので、論文のようにきっちりしたものを政府で話をしながらお答えをするということはできないと思います。しかし大蔵委員会で、大蔵大臣として証券、金融その他財政等を預かっておる立場でできるだけの資料を集め、また十分検討して、その時点における大蔵省の考え方、いわゆる政府の考え方については申し上げられると思います。そこらでひとつ御了解賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/69
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070・堀昌雄
○堀委員 大蔵委員会も長いのだということですが、しかしそういうところで一番必要なのは、そういう問題が早くわかるかどうかが実は大きな問題なんです。それがいつまでも答えが出なければ、依然として私はいまの状態が続くと思うのです。
そこで私のほうで要望しておきますが、三月はわれわれも税法その他たくさんあって忙しいのでなかなか時間をさく余裕もありませんから、四月上旬にはひとつあらためて通産、企画及び大蔵大臣の御出席を願ってこの論議をいたしますので、そのときまでには、何も私はきっちりしたものを要求するわけではありませんが、大体の考え方なり将来の問題が少しは明らかにされないことには、私はこの問題は前進をしないと思う。共同証券等くらいではどうにもならないところにきているということを注意を喚起いたしまして、質疑を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/70
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071・山中貞則
○山中委員長 本会議散会後に再開することとし、暫時休憩いたします。
午後一時五分休憩
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午後二時一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/71
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072・山中貞則
○山中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。有馬輝武君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/72
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073・有馬輝武
○有馬委員 主税局長にお伺いいたしたいと存じますが、それは去る二月二十一日の当委員会におきまして、長期的な減税政策の方向を明らかにされたのでありますが、そのよって立つところについてお伺いをしたいと思います。
主税局長はその中で、おもに所得税関係では引き続いて課税最低限の引き上げをはかること、それから従来の減税が中堅所得層の税負担軽減に不十分な面があるので、今後は年収四百万円以下の所得層を中心に税率の引き下げを行ないたい、それから三番目として、資本蓄積減税の一環として、借り入れ金と増資の間の課税の不均衡を是正したい、こういった点に主眼があったようであります。大蔵省がいままでともすれば徴税面という点からほとんどの税制を考えておって、国民の立場、納税者の立場に立つ、こういった検討がなされなかった面に比べますと、飛躍的な進歩だし、その努力に対しまして敬意を表するのでありますが、現在日本の税体系について基本的な方向を出したものといたしましては、先ほど中山税制調査会長からもお話がございましたが、税調の中間報告、それから日本社会党の租税大綱があるのであります。それからいま一つ総合政策研究会の租税政策に対する一つの提言というものがありまして、それぞれのカラーを持っておりまして、私は日本の税制に対するそれぞれの立場からの意欲的な仕事だ、このように理解いたしております。日本社会党のものが反体制的であるのに対しまして、あとの二者は現体制的といいますか、現状に即した形での提言であります。泉さんがこの前減税の長期政策を出されたよって立つところについて以上あげたような三点が中心になっておりまするけれども、その意のあるところをお聞かせ願いたい。
もう少しかいつまんで申し上げますと、とにかく現在毎年毎年減税ということがいわれ、また実際にそれが調整減税を含んだものであるにいたしましても、ある程度のものが行なわれてまいりましたが、しかし国民の税負担は軽くなっていない。この事実を私たちは見詰めてまいらなければならぬと思うのであります。そういった立場からお伺いをいたしておりますので、この点についてこの長期政策を出された基本的な方向、またそのプログラムについてお聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/73
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074・泉美之松
○泉政府委員 先般金子委員のほうから、主税局として将来の税制改正について何らかビジョンを持っていないかというようなお話がございましたので、ビジョンと申し上げるにははなはだお粗末ではございますけれども、私どもとしましては一応かように考えておるということを申し上げたのでございますが、まだその具体的な内容は固まっておるものではございません。ただ私どもとしましては、税制調査会の基礎問題小委員会におきまして、そういう点の議論を煮詰めていただきまして、できればきょう午前中に中山会長から御発言がありましたように、現在の税制調査会の任期が終わる前に、税制の基本的な方向について答申を出していただくことになっておりますが、その答申の中に、そういった方向を織り込んでまいりたい、かように税制調査会と一緒になって仕事をやっていきたいという気持ちでおるわけでございます。そういった気持ちからいたしますと、いまのわが国の税負担を見た場合にやはり問題になるのは、何といっても所得税の問題ではなかろうか。所得税につきましては昭和二十五年以来御承知のとおりほとんど毎年減税を行なっておりますけれども、国民所得の上昇、生活水準の向上、物価の騰貴、こういったいろいろな情勢を考えますと、まだまだわが国の所得税の負担は重いのではなかろうかということが考えられます。特にその場合問題になりますのは、低額所得についての課税、特に先般来から問題になっております課税最低限をもう少し上げるのが必要ではなかろうか。御承知のとおりアメリカは標準世帯の場合には非課税限度は百二十万円、ドイツの場合が八十三万円、イギリスの場合が七十三万円、こういった状況にございます。これに比べてわが国の標準世帯の非課限度が四十八万円ということは、もちろん国民所得水準の一人当たりの水準が低いという事情によることではありますけれども、しかし今後わが国の国民所得が年々増加いたしまして、やがてイタリアに追いつき、ドイツに追いつくということを目ざすとするならば、やはり課税最低限の引き上げを第一に取り上げるべきではなかろうか。それと同時に課税最低限の引き上げだけではなしに、いわゆる中堅所得層の負担が、累進税率ののぼり方が急激でありますために、重過ぎることになっておりますので、この点を緩和する必要がありはしないか。この中堅所得層をそれではどこの水準に置くべきかということにつきましてはいろいろ議論のあることと存じます。課税所得にいたしまして二百五十万円以下というふうにとる考えも一つございます。それから収入金額のほうから見て四百万円くらいはどうだろうか。所得がふえていくとすればそれくらいの水準を考えるべきではないかという見解もございます。それらの点を考え合わせまして、いずれにしても、その辺の税率をもう少し緩和する方向で考えたいというふうに感じておるわけでございます。
それと同時に、けさ中山会長からお話がありましたように、企業課税につきましては、現在それを直ちに、非常に諸外国に比べて市過ぎるから軽減しなければならぬというほどの必要性は認められないにしましても、わが国の経済発展の特異性からいたしまして、借り入れ金によって設備増強を行ない、そのあとで増資に振りかえるということが行なわれておりますために、自己資本比率が非常に低下し、二七%という数字が、さらに企業によっては二〇%にもなっているような企業もあるわけでございます。こういった点を考えますと、それは高度の経済成長に伴うやむを得ない状況であり、一概に見過ごすわけに参らない点があろうと思うのでありまして、そういった点から借り入れ金による場合と、増資による場合との税負担の差が、企業に及ぼす影響を十分考えまして、その間のバランスをはかるようにしなければならぬのではないか。
それと同時に、当委員会で繰り返し申し上げておりますように、企業課税の本質を擬制説的に考えるべきか、それとも実在説に基づくような考え方をとるべきか、この辺の問題を考えていくべきで、わが国の現在の擬制説的な考え方は、必ずしもわが国の現在の企業の実態に即応しておらない面があるのではなかろうか、こういった点を検討いたしておるのでございます。
それと同時に、直接税と間接税の比率につきましては、そのとき金子委員にもお答えいたしましたが、現在の大体五五対四五くらいの比率が——けさほど中山会長は六〇対四〇と、こうおっしまいましたが、五五対四五くらいの比率が適当なのではなかろうか。そういたしますと税収の弾力性からいたしまして、直接税のほうは所得がふえると、収入がそれ以上にふえがちであります。間接税のほうは所得がふえ、消費がふえる割合と同じ割合しか伸びませんので、いずれにしてもその比率を維持しようとすれば、直接税の減税がおもになり、間接税のほうは、もちろん減税をしなければならぬ必要が起きたときやらなければなりませんけれども、それは毎年減税するということではなくて、間接税は何年かに一回というようなことによって、何者のバランスをはかっていくべきものではなかろうかというふうに考えられるということを申したのでございます。
各方面のそれに対して御意見がいろいろおありになることと存じますので、そういったいろいろの御意見を取り入れまして、税制調査会の審議の参考にしながら、われわれとしても考えてまいりたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/74
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075・有馬輝武
○有馬委員 いま課税最低限の問題なり、所得階層別の問題等についてお話がありましたが、その所得階層別の問題につきましても、私は、やはり戦前の状態と比べてみる必要があるんじゃないか。また納税人口の問題も、現在のように毎年ものすごく納税人口がふえてきておる。池田総理に言わせますと、所得が伸びて納税者が多くなることが望ましいということを言っておられるのでありますが、しかし私は戦前の状態と厳密に比べてみまして、この点については多くの問題を含んでおると思うのであります。
大体昭和十年を標準にとってみました場合に、五十万円以下が約二%、それから五十万円から百万円までが八・三%、百万円から二百万円までが一三・三%、二百万円から五百万円までが一八・八%で、五百万円超が五七・六%というような数字になっております。これは税制の審議の内容と経過によるものであります。ところが戦後、ことに最近の昭和三十六年をとってみますと、いまの比率でいきまして五百万円超がわずか九・三%、二百万円から五百万円までが一四・九%というぐあいになっております。とにかく百万円以下の納税者が、昭和三十六年度では九五・九%というような人員になりまして、納税金額の五五・六%を占めておる。この事態について、私たちはこれは重大なる問題を含んでおるのじゃないかと思います。この納税人口を所得階層別に分けた場合、主税局長としてはこれをどのように見ており、またこれをどのようにしていこうとするのか。そこら辺について先ほどの上長期の納税政策、そういう立場からどのように把握しておられるかをお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/75
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076・泉美之松
○泉政府委員 お答えいたします。
所得税の減税を問題にいたします場合に、ほかの経済問題のときにはしばしは戦前比較——しかも比較的戦前において落ちついておりました経済状態ということから、昭和九年ないし十一年というものが基準にとられることが多いのでございます。しかしこの税制の場合におきましては、昭和九年ないし十一年といったものは、わが国の所得税制がごくまだ不完全な当時でございまして、御承知のように当時は直接税のウエートが全体の収入の二、五%、間接税のウエートが六五%といったような時代でございまして、それを基準にすることはなかなかむずかしいのではないか。納税者からいたしましても、百万人足らずの納税者の場合でございますので、現在の状態と比較して、それを基準にものごとを考えるのは、なかなか困難ではなかろうかと思っております。
その昭和十年当時におきましては、有馬委員のおっしゃるとおり所得の低い者が納める税額はごくわずかでございまして、所得の多額な人、現在の所得に直しますれば百万円以上といったような、いわゆる比較的高額の所得者が所得税の大部分を納めておった。これは財閥などもおりましたし、そういうことで非常に高額所得者が多かった事情によることであろうと思うのでございまして、現在のように財閥が解体されまして、それほど高額の所得者も少ないという前提のもとにおきましては、昭和十年当時のような比率で各階層が納税をする、税負担をするということは、困難ではなかろうかと思っております。
これはひとりわが国ばかりではなくて、諸外国におきましても、戦前と戦後では国民の納税人員はきわめて大きく変わっておるのでございます。もちろんわが国の変わりようはきわめて大きい。アメリカやイギリス、西ドイツといったような国の変わり方に比べると、わが国の変わり方が大きいことは御案内のとおりでございますけれども、しかしそういったよその国の状況とも見比べてわが国としてみた場合、なかなか昭和十年当時のような状況にはなりにくい。私個人的なことを申し上げるようでありますけれども、私が税務署長になりました昭和十五年におきましても、税務署で所得税を納めておったのは、私と直税課長と間税課長の三人でございました。あと庶務課長はまだ納税するに至っておらなかったような状態でございまして、今日の状態と比べますと、非常な相違があったことを思うのでございます。もちろん、今日のようにあるいは高等学校なり、中学校を卒業して就職した人が、すぐに税金を納めるようになるとかいうような場合があることは好ましくございませんので、常識的に考えれば、少なくとも学校を出て三、四年、できれば四、五年たった後に初めて納税資格が出る程度のところにまで所得税の負担が軽くなることが望ましいとは考えておりますけれども、さりとて昭和十年当時のような状況にはなかなかなりにくいのではなかろうか、かように考えております。これは一つは国民の所得階層別の分布の状況にもよることでございまして、先ほど申し上げましたように、戦前は財閥等もございまして、大所得者が相当多額の所得を得ておった。それに比べて戦後は所得が平準化されまして、大所得者というものが比較的少なくなったということによるものと思うのでございます。ただ、有馬委員も御承知のように、経済成長が著しくなりかけました昭和三十五年以降、いわゆる大所得者——百方円以上の所得者がかなりふえてまいりました。これは結局経済成長が行なわれるに伴いまして企業が発展し、その企業の重役等の所得がふえてまいったことと思うのでございまして、それらとのバランスは十分見ながら、今後の税制改正というものを検討してまいりたいと思います。しかし、現状におきましては、百万円以上の所得者というのが残念ながら八%程度でございまして、まだ一〇%をこえるというまでにまいりません。所得の額からいたしますと、相当ふえてまいりましたけれども、まだまだでございまして、そういった国民所得の上昇というものをよく見きわめながら、今後の税制改正を考えてまいりたい、かように考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/76
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077・有馬輝武
○有馬委員 税調の中間報告で、今後の財政支出の増加率は国民所得の成長率を若干上回るものと予想するのが適当だというようなことで、財政事情の動向から見て、公共投資や社会保障の拡充が要請されておれば、高価な政府もやむを得ないのじゃないかというようなことが言われておるのでありますけれども、私は税調の答申を受けとめ、また政府というよりも、内閣の意向を受けとめる大蔵省の主税局長として、財政支出と成長率との問題についてどういう形で今後基本的に受けとめていこうとしておられるか、それをお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/77
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078・泉美之松
○泉政府委員 この点を申し上げるのは、私は実は立場上はなはだ苦しいのでございますが、毎年自然増収が出ますと、そのうちそれを減税財源に幾ら充て、歳出要請に幾ら充てる。歳出要請のうちにおきましても、御承知のとおり、いわゆる当然増として法律上役務的に当然増加する経費と、それから、いわゆる新規政策費として当面要請されるいろいろな経済政策のために支出を要請される金額の両方がございますが、そういった歳出と、減税にいかに割り振るかということは、大蔵省内におきまして一番論議の的になる問題でございまして、私どもとしては、できるだけ減税の財源を確保して国民の税負担を軽くするような方向で臨みたいし、また、主計局その他の部局では、歳出の要請が強いから歳出の増加の要求も強いということになるわけでございます。その間醜い取り合いにならないようにいたしてまいっておるわけでございます。やはりわが国の財政全体をながめますと、有馬委員御案内のとおり、当面社会保障と公共投資の立ちおくれということが一番問題になるところではなかろうかと思います。そういった点からいたしますと、社会保障と公共投資のためには、やはり今後相当歳出をふやしていく必要があろうかと思われるのであります。そういたしますと、その歳出のふえ方は、おそらく国民所得の増加率よりも多いのではなかろうかということが当然予測されるところでございます。そこで、減税とそういった歳出要求とをどうやってかみ合わすかというところに財政当局の苦心があるわけでございますが、大ざっぱに申し上げまして、税制調査会の基礎問題小委員会の基本的な考え方として、自然増の三分の一を減税に充て、三分の二をそういった歳出の需要に充てることもやむを得ないのではなかろうかというふうな考え方が一応打ち出されております。これにつきましては、先ほど中山会長からお話がありましたように、基礎問題小委員会だけの考えでございまして、これを税制調査会全体としてどういうふうに考えるかということがこれから論議になるわけでございます。私どもとしましても、そういう論議を税制調査会としてしていただきまして、税制調査会の方針を尊重してまいりたい、かように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/78
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079・有馬輝武
○有馬委員 私は、税調の答申を受けとめる主税局の態度についてお伺いをいたしておりますので、その観点からお聞かせをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/79
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080・泉美之松
○泉政府委員 これは、私どもとしましては、できるだけ減税財源を確保するという気持ちでおるわけでございまして、税制調査会の答申を無視して独走するわけにもまいりませんし、やはり税制調査会を一緒になってそこは考えていくべきであろう。そうでないと世間の同情も得られないであろうし、やはり税制調査会と一体となっていくつもりで、別に主税局だけ独走するつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/80
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081・有馬輝武
○有馬委員 さっきもお話がございましたように、この前金子委員に答えられた主税局長の長期政策というものが意義を持ってくるかどうかという点については、そこら辺のものの考え方がコンクリートになっていなければ前向きにならないと思うのであります。ですから、これは税調の答申を尊重するという基本的な態度がなければならぬことは前提として当然のことでありまして、その前提の上に立って、長期政策、もちろんその内容にはわが党の租税政策大綱からすれば多くの問題があります。さっき吉田委員が雑談の中で、言うだけ言って自分のことは何にもないのだから気楽なものだということを言っておられましたけれども、与党のほうには長期租税政策大綱というものがなくて、野党第一党である日本社会党にそれがあるということの事実を主税局長としては十分考えて、せっかくできている日本社会党の租税政策大綱はどうだとよく勉強されて、しかも主税局長としてせっかく出されたあの長期政策に対する受けとめ方といいますか、答申があった場合にはわれわれはこういう形で、こういう基本方針があって受けとめるのだというあれがあってしかるべきだと思います。再度お答えをいただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/81
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082・泉美之松
○泉政府委員 私どもとしましては、税制調査会の御意向が先ほど申し上げましたような基本的な方向とあまり変わらないという考えは持っております。したがって、税制調査会の答申は、おそらく、私が先ほど申し上げましたような方向と変わらないような答申になるだろう、したがってその答申を受け入れてやっていきたい、こういう気持ちでございまして、したがって私どもといたしましては今後とも税制調査会と密接に連絡をいたしまして、税制調査会の意向をくみつつ、また私どもの考え方も固めていくということで進んでまいりたいのでございます。お話しのように社会党のほうの大綱の内容も私承知いたしております。ただこれは私どもの目から見ますと、いま直ちに実施することにはなかなか難点がある。将来の大理想としてまことにわれわれの参考になる点が少なくないのでございますけれども、いま直ちに、たとえば昭和三十九年度なりあるいは昭和四十年度の減税政策として実施に移すには難点がある点があろうかと思います。結局、これは人後わが国の経済成長と国民所得の上昇という点をにらみ合わせながら実施していくべき姿ではなかろうか、かように考えておるのでございます。私ども一行政官でございますので、あまり大きなことを申し上げるのは適当でないと思いますから、この辺でごかんべんいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/82
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083・有馬輝武
○有馬委員 将来のために日本社会党の租税政策大綱は参考になるとおっしゃったのですが、私どもはきめのこまかい配慮を加えておりまして、保守党政権下、社会党政権下、社会主義政権下においてはどうあるかという三段階において、この租税政策大綱はまとめ上げられておりますので、そういう点からぜひ見ていただきたいと思うわけであります。
きょうは委員長と大体三十分ぐらいというあれで出発をいたしておりますので、あと一問で終わりたいと思いますが、先ほども税調会長からお伺いをいたしたのでありますけれども、租税負担率の問題であります。やはり私はさっき会長にも申し上げたのでありますが、問題は所得と特に生計費との関連、こういったことを中心にして考えるべきではないかと原則的に考えておりますが、現在の、たとえば標準五人世帯で可処分所得を平均でどの程度見るかというようなことが一番のささえになってこようと思います。そういう点について、これは非常に抽象的過ぎますけれども、主税局長としての現在持っておる原則的な考え方というものをお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/83
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084・泉美之松
○泉政府委員 国民の租税負担を考えます場合に、国民所得に対する租税負担率だけでは、一つの参考資料にはなりますけれども、十分でないということはけさほど中山会長のおっしゃられたとおりで、私どももそう思っております。したがいまして、私どもが所得税の負担の検討をいたします場合には、まず所得のうち、食料費を除いた所得に対する税負担がどうであるか、わが国と諸外国とを比べてどうであるか、そういった点の検討もいたしております。またわが国の場合におきましても、マーケット・バスケットによる食料費を基準とした生計費を算出いたしまして、それも一つの参考にいたしておるわけでございますが、ただマーケット・バスケットによる食料費から算出いたしました生計費というものにつきましても、いろいろの問題があることは私どもも承知いたしておるのでございます。ことに先般堀委員からも御指摘されましたように、標準世帯というものは十三才の者が長男あるいは長女になっておりまして、現在の標準世帯だとすれば、そういったまだ中学校へ入るかどうかという程度でなしに、大学とか高等学校というものをやはり考えなくてはいかぬじゃないかというような御批判、それからまたこれは予算委員会のほうで問題になったわけでありますけれども、エンゲル係数の問題、こういったいろいろの問題がございます。したがって、中山会長ともお打ち合わせいたしておるのでございますが、今後の税負担の検討にあたりましては、そういった点をさらに改良を加えて検討すべきではなかろうか、このように考えておるわけでございます。そういったいろいろの資料をもとにして初めて税負担をどのように軽減していくべきかということを検討すべきだ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/84
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085・有馬輝武
○有馬委員 いま一つ伺っておきたいと存じますことは、先ほど申し上げた総合研究会あたりでは、とにかく財政需要が伸びていく、しかし租税収入には限界がある、そういう場合にはむしろ公債なり何なりということで一応の線を引くべきではないかというような考え方があるわけであります。そこら辺について歳入歳出の面をどうまかなっていくか、そのリミットはどうあるべきかという点について考え方があったならば、これは主税局長は私たちが言うべきことでないという答弁をされるかもしれませんけれども、やはりそこら辺についても大蔵省としての考え方を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/85
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086・泉美之松
○泉政府委員 公債発行の問題はなかなかむずかしい問題を含んでおりまして、私どもが軽々しくお答えすべきことではないと思うのでございますが、いずれわが国におきましても、現存のように租税収入で財政をまかなっていくということはなかなか困難な事態が生ずるであろうということは予想されるところでございます。その場合に公債発行という問題が当然出てまいるわけでありますが、考えようによりましては、現在におきましてもいろいろな政府機関の債券を発行しておる点がありまして、これは一種の公債ではないかというような議論もあるわけでありまして、公債の問題は、結局それが発行されることによって日銀引き受けになり、インフレを助長するというこの一番おそろしい点がどうなるかということにあろうかと思うのであります。したがって単に財源調達の問題としてだけでなしに、日本経済全体をどういう方向に持っていくかという根本的な考え方に基づいて検討するのでなければいけないと思うのでございます。そういう意味で、単に財源調達の問題としてだけ論ずることは適当ではないので、公債発行によって資金がどういうふうに流れるか、また現在の状態におきましては、とうていそういった公債発行をして民間で消化する資金の余裕はございませんから、勢い日本銀行が引き受けるということになりますとインフレのおそれがありますので、私どもとして、現段階におきまして公債を発行することは適当でないと思いますけれども、いずれ将来におきましてそういった問題が出てまいろうと思います。その場合には公債発行に限度が設けられるような一つの仕組みが必要ではなかろうか。たとえばそういう財源調達の金だけに限定することができるかどうか、それから民間資金で消化できるかどうか、こういった点につきましての慎重な検討を経た上でないと、公債発行という問題を論議するわけにまいらないのではないか、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/86
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087・山中貞則
○山中委員長 藤井勝志君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/87
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088・藤井勝志
○藤井委員 私は本論の質問に入ります前に、いま有馬委員の最後の質問に関連いたしまして、一言あらためてお尋ねしたい。これは主税局長にお尋ねするということはいささかどうかと思うのでありますけれども、やはり関連もございますし、政務次官と一緒にひとつ局長も御答弁できればお願いしたいと思いますことは、いまお話のごとく、公債発行の問題は、時を誤り、また制限なくやればインフレーションというおそれが十分あることはよく承知いたしております。ただしかし、御承知のように、現在日本は工業国としては世界の五大国と申しますか、その中に入ってきておるにかかわらず、国民所得はきわめて低い。そこで、できるだけ減税は毎年続けなければならぬという要請がここにあらわれておることは他言を要しないと思うのであります。片や、よく言われます社会資本というものは非常に立ちおくれておる。道路、港湾、住宅いろいろ産業基盤の育成、こういった面がきわめておくれておることは、何人も否定することはできないと思うのであります。ところがやはり社会資本と民間資本とは、バランスがとれて初めて経済の健全な成長があるわけでございます。そこで社会資本は、われわれが一代限りでこの利益を受けるのではなしに、そのことによってむすこも孫も助かる、しかも現在社会資本が充実してないために、すなわち民間資本と社会資本のアンバランスのために、経済の発展が阻害されておる、こういう事情があるとするならば、やはりわれわれが一年で稼ぎ出した税金だけですべてをまかなうということは、これは理屈上から言っても不合理ではないか。すなわち、むすこや孫にも片棒をかつがせるという、こういう意味における建設公債の発行は積極的に考えるべき段階がきておるのではないか。私は、四十年以降建設公債の発行ということを、いま主税局長からお話がありましたような注意を払いながらも、積極的にこれに取り組まなければ、日本の経済の健全な発展はあり得ない、こういうふうな考え方を持っておる一人であります。これにつきまして、関連質問が先ほどありましたので、ひとつ見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/88
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089・纐纈彌三
○纐纈政府委員 お答えします。公債の問題につきましては、先ほど主税局長からもお話がありましたようなわけでございまして、今日の日本の財政状態からいたしまして、民間消化がなかなかむずかしいじゃないかという問題もありますし、大体御承知のように、所得倍増のなにからまいりまして、相当経済は伸びております。しかし、なおなかなか安定をいたしてないということもございますので、やはりいまは安定を見るまでは、政府といたしましては、健全均衡財政をとっていくべきじゃないか。そういう意味合いにおきまして、私はそれを待って公債発行の問題を検討してもいいのじゃないか。お話のように、公共事業は非常に長く続くものでございます。ことに建設公債について御意見があったのでございますが、なるほど道路が非常におくれております。しかし最近、いろいろの形におきまして、相当の伸展を見ておることは御承知のとおりでございます。が、先ほども主税局長が申しましたように、今後の情勢におきましては、税収入のみをもってすべての経費を負担するということは無理があるということも考えられるわけでございますが、いまのところといたしましては、直ちに公債発行に踏み切るには条件が十分整っておらぬのではないか。しかし近き将来においては、この問題も相当検討をして、ことに建設公債等につきましては、大いに検討する必要があるのじゃないか、こういうふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/89
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090・泉美之松
○泉政府委員 ただいま政務次官がお答えになりましたとおり考えており費して、私どもといたしましては、建設公債ということはかねてからいろいろお話があるわけでございますが、かりに公債問題を考える場合には建設公債ということが出てくる。またそれは考えやすい問題であるということになるわけでございますが、建設公債の中でもさらに建設公共事業のうちのどの費目といったようなものに限定しないと、公共事業一般ということになりますと、これは限度がなくなるおそれがありますので、やはりそこは、たとえば道路財源のためであるとかいったような、特定の財源に限定しなければならない問題ではないかと思います。いずれにいたしましても、昭和四十年度からというおことばでございましたが、四十年度から公債発行に踏み切るべきかどうかということになりますと、これはなかなか問題の存するところでございまして、先ほど申し上げましたように、民間でそれを消化するような余裕が四十年度にはまだないというふうに見ざるを得ないのではないか。したがいまして、そういった問題は将来の問題としてはいろいろ検討しなければならぬかと思いますが、いますぐ四十年度の問題として検討するのはなお時期尚早ではないか、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/90
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091・藤井勝志
○藤井委員 私も四十年度以降ということばを使ったわけでありまして、何も四十年度からというふうに育ったわけでございませんけれども、ただ考え方として、これは本論に入りたいと思いますので御答弁は必要ございませんけれども、やはり民間投資と公共投資の不均衡によって経済の発展が非常に不合理、非能率になっておる。このバランスをとるために、しかもそれができることによってむすこや孫も助かる。それをわれわれだけで、毎年の汗でためた金をこれに充当するという、この考え方は改めていいではないか。こういう考え方は一ぺんあらためて検討して、バランスがとれた経済発展のための財源対策を考える必要があるのではないか、こういう考え方を理解してもらいたい。政務次官も前向きで検討したいというお話でございますので、きょうは大臣のかわりの御答弁として、大蔵省でこの問題は積極的に、私が申し上げたような考え方の上に立ってひとつ御検討願いたい。もちろん私はインフレーションを望むものではございません。ただこの問題は、昔のような鉄砲玉になる軍備調達のための公債発行とは全然趣きが違うという認識の上に立って御検討願いたいということを要望いたします。
ところで、このたびの租税特別措置法の一部を改正する法律案の中で、医療関係の問題についてお尋ねいたしたいと思うのでありますが、質問をいたします準備といたしまして、今度特定の医療法人の法人税率が二八%に改正される案が出ているわけでございます。この問題の過去における経過をいろいろ調べてみますと、大蔵省と厚生省との間に非常に見解の相違が横たわって今日に尾を引いておる。したがって、まずこの問題の本論に入る前提として、医療法人の設立された趣旨というものを厚生省はどのように理解し、大蔵省はこれをどのように受け取っておられるか。これをお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/91
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092・大崎康
○大崎政府委員 医療法人制度の制定の理由といいますか、それについて御説明申し上げますと、医療法人そのものは、申すまでもなく、医療というものを行なうわけでございます。それで、いま医療法人制定の前におきましては、医療というものは非営利でございますが、積極的に民法法人のごとく公益を遂行するものではないという解釈が行なわれておりまして、法人とする制度がなかったわけでございます。そのために医療法人制度ということが行なわれた一つの理由でございます。それから法人制度をとるということになりますと、その結果といいますか、そういうふうなものから、いわば医療機関の永続性ということがはかられるということになるわけでもありますし、また医療機関を整備するために要する資金等につきましても、集めることが容易になる、こういうふうなことになるわけであります。私がいま申し上げましたような理由から、医療法人制度が行なわれるようになったものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/92
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093・泉美之松
○泉政府委員 医療法人ができました当時、実はそういった法人制度をつくるのだということにつきまして、厚生省のほうから大蔵省のほうに御相談がございませんで、そのために医療法人についての医療法の改正が行なわれましたあと、われわれがながめてみますと、まあ医療法人に、財団法人である医療法人と、社団法人である医療法人、その社団法人の中に持ち分のあるものと持ち分のないもの、いわばこういう三つの医療法人ができるということになったわけでございますが、そうしますと、まず財団法人でありまする医療法人につきましては、財団法人になりますと、その後従来医療をやっておられる方がなくなられましたときに相続の問題が起きましても、その財団法人の財産になっておるものにつきましては、相続税を課税することができない。したがって、これは財団に、財団法人設立のときに、贈与税を課税せざるを得ないということになるわけでございます。それから持ち分のある社団法人につきましては、これは持ち分がありますから、医業をやっておられる方がなくなられましても、その持ち分について相続税を課税すればいい。したがって、持ち分のある医療法人につきましては、医療法人設立のときに贈与税を課税する必要はない。ただ設立のときに株式会社に現物出資すると同様に譲渡所得税は課税せざるを得ないであろうということになるわけでございます。それから持ち分のない社団法人でございますと、これは財団法人の場合と同じように持ち分がございませんので、その後医業をやっておられる方がなくなられましたときに相続税の課税ができなくなってまいります。そこで、やはりそういった社団法人設立の際に贈与税及び譲渡所得税を課税せざるを得ないということになるわけでございまして、そこでただ医療というのが先ほど厚生省からお話がございましたように、従来民法三十四条法人で、医療を行なう場合には公益的な法人として公益法人並みの課税、つまり収益事業でないから、それに課税しないといったような扱いもなされておりまして、そういった点を考え合わせまして、医療法人を設立する場合に、きわめて公益的な医療法人になるのであれば、これについての先ほどの贈与税あるいは譲渡所得税は課税しないのが適当だ。しかし単純に従来の診療所あるいは病院といわれるものを看板を塗りかえて、今日からは医療法人でございますといわれてもそうは参りかねます。そこでその実態を十分調べました上で、公益的なものにつきましては贈与税、譲渡所得税を課税いたしませんけれども、そうでないものにつきましては贈与税を課税し、あるいは譲渡所得税を課税する場合が生ずるというふうになっておるわけでございまして、それにつきまして今回の租税特別措置法の改正は、さらに譲渡所得税、贈与税だけでなしに、医療法人を普通の株式会社と同様に見て課税するのは、そういった医業というものの公益的な性格から見て適当ではないではないかというような御意見もございますので、そういったきわめて公益的な医療法人につきましては、特別法人並みの法人税率にするということを考えたらどうかということから今回の改正案ができておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/93
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094・藤井勝志
○藤井委員 ただいまの主税局長の御答弁は、私が次に尋ねようとした質問に関連しておりますので、これは後ほどお尋ねしたいと思いますが、私は医療法人制度そのものに対して大蔵省はどのような考え方を持っておられるか、どうもときどきあることですが、大蔵省と各省との意見が一致しないということは、同じ政府のもとで受け取る側の国民大衆はまことに迷惑するわけでございます。私は当時の議事録そのほか資料を取り寄せてみたんですが、昭和二十五年医療法人ができるとき、医療法人をつくる趣旨というものが先ほど厚生省からお話がありましたように、医療の永続性という問題、同時にまたお医者さんが近代的な設備をして、そうして大いに医療の完ぺきを期するというためには資本を集中しなければならぬ、資金を集めなければならぬ。こういうことのためにひとつ灰療法人をつくれば、これは税法上にも恩典がある。こういったことが堂々と所管委員会の社労委員会において提案趣旨の説明を厚生大臣もしておる。こういう実情になっておるわけであります。そういったことから発足した医療法人でありますから、大蔵省は現在そのような認識の上に立っておられるか、そんなことは知らぬぞということでこれに向かっておられるのか、その点をひとつ御答弁願いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/94
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095・泉美之松
○泉政府委員 医療法人ができました当初におきましては、厚生大臣は、これは医療の永続性と医療の向上をはかるためであって、税負担の軽減を目的とするものではないというお話があったのでございます。しかし私が先ほど申し上げましたように、医療法人ができますと、結果的に相続税を課税することができなくなる、そういった点からいたしまして、これは結局税負担の軽減になるということが問題になりまして、それから私どものほうとしてはそれでは困るから、いま申し上げましたように、贈与税あるいは譲渡所得税を課税すべき場合には、そういう課税をするのだという趣旨を明らかにしたというのが医療法人設立に伴う税制の経過でございまして、私どもといたしましても医療の永続性を保ち、また、医療の向上がはかられるということは望ましいこととは思っておりますが、しかしそのために不当に税負担が軽減されるということにならないように、やはりほかの事業の場合とのバランスをとったある程度の課税の負担はしていただかなければならないもの、かように考えておるのでございます。結局厚生省のほうでは、必ずしも税負担の軽減は意図してないといわれますけれども、結果的に税負担の軽減になるというところに私はやはり問題があったのではないか、そこにわれわれの考え方と厚生省の考え方との間には若干ニュアンスの相違があった、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/95
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096・藤井勝志
○藤井委員 この医療法人に対していろいろ制約をつけておる。まず設立認可ということがかってにできるわけでなくて、審査委員会といったもので認可され、同時にまた利潤、いわゆる剰余金の配当は全然禁止されておる、こういったこと、それからまた、知事は適宜会計の監査をやる立場に立っておる、そういう関係が都道府県知事と医療法人との間にはある、あるいはまた解散がかってにできない。こういうふうないろんな制約を受けておるということは、裏を返せば、医療法人の永続性あるいはその設立の趣旨というものは、私が先ほど述べたような事情がある。それだけのことを条件とし、制約としている以上は、やはり税金の面においても当然かげんがされていいのではないかというふうに、私は常識的に考えざるを得ないのです。当時のなにがどう言ったこう言ったといっても、済んだことですからやむを得ませんけれども、医療法人にすれば、従来は、病院長が死んだらごっそり相続税がかかってどうにもならぬ、医療法人をつくればそういったことはありません、こういう回答が——これは厚生省のほうからでありますけれども、なされておる。これは受け取るほうの側では、それを体して医療法人に切りかえた。ところがおやじさんが死んだら、ごっそり相続税を取られてたいへん困ったという実例が多々あることも、私は関係者から聞いておるわけでございます。したがって、この問題は、私は振り返っていろいろせんさくしようとは思いませんけれども、いま申しましたような事情から考えると、ただ、営利を目的とする株式会社とは全然違った、取り扱いを税法上も考えてしかるべきだと思うのでありますけれども、この問題について主税局長としては、どういう理由で、それは特別扱いをする必要はないのか、この点をひとつお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/96
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097・泉美之松
○泉政府委員 お話のように、医療法人の設立につきましては、都道府県知事の認可によってできるし、またそのあげた利潤の配当は認めない、残余財産の分配につきまして一定の制限のあることはお説のとおりでございます。しかし厚生省の上医療法人に対する監督、あるいは都道府県知事の医療法人に対する監督につきましては、いわゆる民法三十四条の公益法人に対する監督ほどの監督はいたしておらないのが実情でございます。もちろんこれは医療業という特殊な性格によることとも思いますけれども、しかし医療法人さえつくれば医療の永続性が保たれ、税負担が軽減されるのだということになりますと、これはやはり問題ではなかろうか。やはりそういった法人を設立するときには、少なくともほかの場合と同じように、今後相続税がかからないのであれば、設立の際には贈与税を納めていただく、あるいは譲渡所得税を納めていただくということも必要なのではなかろうかと考えるのでございます。
いま一つ、それでは医療法人の所得に対する課税はどうかということになってまいりますと、おことばではございますが、医療法人は概して給与という形であがった収益を分けてしまうという傾向がございまして、所得税としての課税はいわばほとんどないに近い姿になっております。また、あげた収益で、これは当然のことでありますけれども、医療機械を整備するとか、そういった医療施設の充実につとめておられまして、そういった点からいたしますと、所得は多額に生ずるということはまず考えられないことでございまして、そういう点で、もちろん医療法人を株式会社並みに扱うのがいいかどうかという議論になりますと、そこには問題はあろうと思います。わが国の法人税の考え方は、御承知のとおり、一般株式会社並みの課税が、あるいは九条七項の特別法人並みの課税のやり方か、あるいは公益法人として収益事業のみに対して課税するやり方、いろいろあるわけでございますが、そのうちで、医療法人が一般株式会社並みであるべきだという論拠は私はあまりないと思います。と申しますのは、配当も禁止されておりますので、そういった点から見ますと、少なくとも株式会社並みに扱うのは適当でない、かように考えます。さればといって、それではいまの法人税の他の課税方式であります特別法人並みあるいは公益法人並みにすぐ扱うべきかと申しますと、やはりそこに問題があるのではないか。そこで医療法人に対する課税、特に所得税に対する課税を今後どういうふうに持っていくかということにつきましては、慎重な検討を要する点がありはしないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/97
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098・藤井勝志
○藤井委員 ただいまの局長の御答弁、ある程度医療法人に対する認識ないしは医業に対する課税のあり方についてのお考えというものが非常に柔軟な態度というか、弾力的な解釈を持っておられるようで、私はいい面を理解したいと思うのでありますが、ともかく、なるほど医療法人の中にはただ看板をかけて、極端に言えば、脱税といいますか、そういった不心得のお医者さんが時にあったかもしれない。しかしながらそれをもって医療法人設立の当時の考え方、同時に現在もう一回——ことしは間に合いませんけれども、医業というものの使命を考えれば、何かそこに公益法人ではない、しかし利潤追求の私的法人ではない、その中間に立って国民医療の完ぺきをはかっていく、しかもその医業がその地域にあることによって大衆の生命が守られる、こういう医療の公共性、そうしてそれが永続することによって大衆の生活が守られる、こういうお医者さんの特殊な社会的地位、使命を考える場合には、税法上からも特別の配慮をなされてしかるべきではないか。私は厚生省と大蔵省との意見の不一致からスタートしたこの医療法人の過法にさかのぼって議論しようとは思わないわけでございまして、前向きに、いま申しましたような考え方に立って検討を要すべき点が医業の課税については特に目立っておるというふうに私は考えざるを得ない。
一例を法人税のみならず相続税について引用いたしますと、これは皆さん方も具体的な例はよく知っておられると思う。特に最近町場で足場のいいところにお医者さんがある場合、これがむすこに相続する。相続税は土地、建物とも時価で評価されます。これではそこで医業はできない。そうすると、そこにお医者があるということで、はじめて交通事故があってもお医者さんへかつぎ込める。ところが二代目は、相続税のためにごっそり持っていかれてしまって、裏長屋のほうへ入る、あるいはまた閉業しなければならない、こういう状態に相なっておる実例は多々あるのであります。
こういう点を考える場合に、過去の医療法人が脱税的な傾向で悪用されたというあつものにこりてなますを吹かないように、ただすなお角度から医業に対する特殊な財政措置を講ずべき必要があるのではないか。特に最近、御案内のように、お医者さんの収入というものはいわゆる健保か国保かでほとんどマル公であります。しかるにお医者さんの相続税、贈与税、こういった場合は、極端に申しますと幾らでももうけができる他の事業会社と同じような租税の取り扱いをされておることが、国民医療の観点から、生命を守るという、大げさに申しますと民主主義の精神から考えて、人命を尊重するという観点から考えて、私は租税制度においてそれこそ特別措置を講ずべきであるというふうに考えるわけでございますが、泉さんこれに対してどのようなお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/98
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099・泉美之松
○泉政府委員 医療法人の問題を含めて医業全般に対する課税の問題ということになりますと、これは藤井委員御案内のとおりと思いますけれども、いろいろ問題がございます。私どもとして一番問題と思いますのは、現在とられておりますところの社会診療による収入については経費率が法定されている、これはわれわれの税制の立場からいたしますと問題があるのではないか。やはり医業の場合にもその専門が異なるに従い、また個々のお医者さんによって経費率は異なるべきがあたりまえではないか、それを法定するということには無理があるのではないかという考えを持っております。それからさらに医療行為、これは医療法人で営む場合もあり、あるいは民法三十四条法人で営む場合もあり、またかつて認められたということで株式会社組織の医療行為をするところもあります。また個人という姿でやっている場合もあり、あるいは大学の付属病院、農協の付属病院、あるいは市町村立の病院、こういったいろいろな形の医療行為が行なわれております。そういった点を全部ながめて、どのように医療に対する課税があるべきかということになりますと、なかなか多くの問題を含んでおりますが、ただ先ほど藤井委員おっしゃいましたが、私どもは、お医者さんがなくなって相続税でごっそり取られて医療行為が継続できなくなったというような事例はまだないと思います。なるほどわが国の相続税の負担は決して軽いとは申し上げかねるかもしれませんけれども、まださような事態は起きておらない。ただ、ことに土地の値上がりの多いところにおきましては、相当広い面積の土地を持ち、その上に建物が建っておるというような場合におきましては、相続税の負担が相当多額にのぼるであろうから、もし相続が起きた場合にはたいへんなことになりはしないかというような予測が行なわれていることは承知いたしておりますけれども、事実問題として医者ができなくなって裏長屋に引っ込んでしまったというようなことはまだなかろうと思います。しかしながら、そういう可能性があるということでいろいろ今後検討すべき点はあろうかと思いますが、これは結局今後の医療行為のあり方の問題として、私経済の形態で医療行為を続けていくべきか、それとも公共的な組織なり何なりのほうで医療行為を行なうように持っていくべきか。これは私どもの所管でございませんけれども、医療のあり方として今後なお検討さるべき問題ではなかろうか。医療という行為が社会、公共的な性格を持っているだけに、それについて私としての事業という杉で行なうことが、たとえ営利行為ではないにしましても問題がありはしないかというふうに考えるのでございまして、その点からいたしますと、いま申し上げましたような種々雑多な医療行為を行なう場合に、どういうふうな課税をそれぞれに行なうべきかということはいろいろ問題の存するところでありまして、私どもといたしましても、そういった医療の今後の動き方というものをも考えながら検討いたしてまいりたい、かように思うのでございます。ただ何ぶんにも医療ということの性格からいたしまして、営利を目的としないとはいわれておりますけれども、やはり対価を得ることになりますので、そこに所得が発生するということになりますと、ほかの必ずしも営利を目的としていないようないろいろな事業がございますから、そういった事業とのバランスということもやはり考えなければならぬ点があろうと思うのでございまして、そういったように、結局医療というものを行なう組織なり形態の問題とからみ合わせて、今後そういった医療というものに対する課税のあり方を検討していくべきではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/99
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100・藤井勝志
○藤井委員 政務次官にちょっと関連してお尋ねしたいのですが、私が特に相続税に言及してお尋ねをしたゆえんのものは、今度の租税特別措置の改正法案の中に農地の生前贈与に対する軽減措置、こういった配慮がなされておる。これは農業の近代化と、農地の細分化を防ぐという配慮であります。これとは別の配慮においていま私が申し述べたように、これはいろいろ関連し、連鎖反応を起こして主税当局としてはたいへんなまた御苦労があるかと思うのでありますけれども、いま申しましたような医業に対して、先ほど泉局長からこの問題に関連して重大な御発言がございましたが、私的医療機関を認めない、こういう方向に行くのなら何をか言わんやであります。私的医療機関というものはこれはこれでそれ相応の存在の理由と特徴がある。その私的医療機関というものの永続性というものを考えなければならぬという観点から、相続税の問題は他の業種とはおのずから違った使命、社会的な地位というものがありますので、この問題に対しては、農地生前贈与に対する特別措置とまた別の理由によって特別措置が考えられてしかるべきではないかというふうに思うのであります。これに対して政務次官としてのお立場から御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/100
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101・纐纈彌三
○纐纈政府委員 お答えします。
先ほど主税局長から、医療の形態につきましては各種の問題があってなかなか一律にはいかないので、苦慮しておることをるる申し上げたわけでございますが、ただいま藤井委員からお話のように、医療というものはなかなか重大な問題であり、ことに公益性もあり、また永続性を持ち、そして医療の目的を達成よるような意味合いにおいての医療法人というものができたわけでございますから、簡単に直ちにここでどう結論を出すかということは、私どももなかなかむずかしい問題だろうと思いますので、ただいまの藤井委員の御意見に従いまして、十分検討いたしまして、農地の相続税の問題等とは、お話のようにだいぶ性質も違っておる問題でございますが、また医療機関といたしましても、お話のような意味合いにおいて特殊な考えもあるわけでございます。それらの点も十分検討いたしまして結論を出すように努力いたしたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/101
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102・泉美之松
○泉政府委員 ちょっと誤解があるといけませんのでお断わりしておきますが、私は私的医療機関を認めないということを申したのではもちろんないのでございまして、医療機関が今後どうあるべきかという大きな問題があるのではないか。そのときに私的医療機関がどの範囲でどの程度であるべきかということは大いに検討さるべきではないかということを申し上げただけでございまして、私的医療機関が今日多数存在いたしておりまして、またそれが医療行為を行なって、大いに社会公共のために尽くしておられる事実は十分認めておるのでございます。
そこで、相続税について農地の生前贈与と同じような考え方をとるかどうかということになりますと、農地について今回特例を設けようというのは、あの条項にも出ておりまするように、わが国の農業というものが土地を基礎にしてでき上がっており、そこに土地というものを基本とした農業が行なわれておるだけに、それを考慮して、農業の後継者を養成し、細分化を防ぐという特殊の理由から出ておる事柄でございまして、医療のような場合についてこれを認めるということになりますと、中小企業の場合はどうであるかといったような広範な問題を提起いたしてまいりますので、これにつきましては、農地の生前贈与を認めたのだから医療の場合にも認めるべきだというふうには簡単にまいらない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/102
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103・藤井勝志
○藤井委員 だいぶ時間が経過しておりますから、先を急ぎたいと思いますので、簡単に結論に移りたいと思いますが、今度の六十七条の二で、特に医療法人のいわゆる二八%に減税する場合の条件が政令で定められるということに相なっておる。政令でございますから、当然法律ができてから関係厚生省との相談の上に結論を出されることだと思うのでありますけれども、私は、これがどのような条件で行なわれるかによって、受ける医療法人側の実益の点において重大な関係があると思いますので、一応大蔵省の考え方、また厚生省のほうでこれがどういう折衝の過程にあるか、関係当局から御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/103
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104・泉美之松
○泉政府委員 お話のように、今回の租税特別措置法の制定に伴いまして、特定の医療法人に対する税率を二八%に軽減することになるわけでございますが、その場合の適用を受ける医療法人の要件といたしましては、現在租税特別措置法第四十条の規定によりまして、医療法人を設立する場合の譲渡所得の非課税について、従来厚生省と大蔵省との間で話し合いの結果成立している一つの要件基準というものがございます。それを参考にして今回の場合も考えたらどうかということを基本として考えておるのでありますが、それにつきましては、医療法人が一定の規模以上の医療法人であることが一つの要件、つまり従来からありました診療所を単に看板を塗りかえたという程度でなくて、今後医療の向上、普及といいことに大いに寄与する程度の相当規模の医療法人であることが第一の要件。それから、第二の要件といたしましては、その医療法人の役員の構成につきまして、特定の関係者だけが多くおるということになりますと、医療法人の経営ということが、そういった特定の人たちの意思に左右されることになりがちでありまして、それでは公益的な性格を有する医療法人と言いにくい面が出てきはしないか、さように考えまして、そういった役員の構成について、一定の制限を設けなければならないのではないかというふうに考えておるわけであります。それと同時に、医療法人の経営と申しますか経理と申しますか、その場合におきまして、たとえば設立者及びその子孫が必ず理事長になるといったような規定でなくて、理事長の選任についてはしかるべき機関において選任することになっておるとか、あるいはその給与の支払いにつきましても、その設立者あるいは設立者の家族等に特別の給与を払うのでなくして、医療行為を行なうことに伴う対価としてふさわしい給与以外の給与は払わないというようなことであるべきではないか、こういったようないろいろな要件を考えておりまして、これらの要件につきましては、なお法文にいたします際にこまかくしなければなりませんけれども、そういったことにつきまして、これから厚生省と折衝いたす予定になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/104
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105・大崎康
○大崎政府委員 医療法人は御案内のように剰余金の配当禁止という規定もあるわけでございます。それから営利を目的とした病院診療所等の開設許可は与えないことができるという規定があるわけでございます。そういうふうな関係から、私どもといたしましては、医療法人に対する税の問題につきましては、でき得る限り軽減をするというふうなことで、いろいろ大蔵省のほうにも御連絡をとり、意見を申し上げてきているわけであります。そのような態度から、今度の特別措置法の政令につきましては、ただいま主税局長から御答弁があったようでございますが、厚生省のほうにも御協議があるそうでございますから、御協議を受けました具体的な条件につきまして、厚生省の意見を十分申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/105
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106・藤井勝志
○藤井委員 ただいま主税局長からも政令の要件の内容についてのお話がございましたが、私は、特に公共性ということをつかむ場合に、物的な施設というものをあまり基準にするということは、これはいかがなものであろうか。それはもちろん程度はあります。おんぼろ小屋で、掘っ立て小屋のようなかっこうで公共的な医療というものが完全に行なわれるとは思いませんけれども、しかしあまりそれを制約するということは、これはちょっと受け取りがたい。特に先ほどお話がありました譲渡所得税やそれから贈与税の場合の基準は、税金を全然取らない場合の基準であるわけであります。したがって 今度の場合は二八%ともかく取る、ただ営利を目的とした株式会社とは違った取り方をして少し下げようということである。しかも先ほど申しましたように、医業というものの特殊性、継続性、公共性、こういったものを考えると、私は、条件というものはきわめて寛大にすべきである、この寛大にすることが医療法人でなくて一般の医業を営む人とのアンバランスがあれば、むしろ一般に営む医業自体の税金というものを軽減してバランスをとるべきである、こういうふうに考えるわけでございまして、特に私は、この医療施設の規模というものと公的性格を判断する基準とは原則的には別である、あまりそれがひどい施設であればもちろんいけませんけれども、ある程度その点は非課税の場合の基準を前提にして話を進められたのでは、これは困る、不適当である、私はこのことを強く指摘して話を終わらしていただきますが、最後にもう一つ、この六十七条の二で「財団たる医療法人又は社団たる医療法人で持分の定めがないもの」——持ち分の定めがある場合は除外されておる、こういった改正の趣旨でございますが、これは持ち分があればそれだけ個人の爪あとが残る、こういう配慮から持ち分の定めなきものに限られたように私は思うのでありますけれども、これは持ち分の定めのないものよりも定めのある医療法人が絶対多数でございます。したがってこれが今度は、それじゃこういう恩典に浴そうというので、持ち分の定めなき社団に切りかえる、その時分に今度は贈与税、こういったものにひっかかる、これでは、実際の恩典が全然均てんできないということにならざるを得ない、したがってこの点はよほど考えてもらわないと、実益のない法の改正に終わるおそれがあるので、これについては主税局長としてはどのような御方針でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/106
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107・泉美之松
○泉政府委員 お話のように、今回の租税特別措置法の六十七条の二の改正規定は、持ち分のある社団法人たる医療法人には適用いたさないことになっております。その趣旨は、先ほど藤井委員のおっしゃいましたように、持ち分の定めのある社団法人たる医療法人の場合におきましては、その社団法人設立の際に持ち分を持っておった者の影響が当然医療法人に及ぶわけでございまして、医療法人が公共的な性格を持っておる場合に法人税率を軽減しようという趣旨から見て適当でない、かように考えまして、持ち分のある社団法人たる医療法人には適用しないで、財団法人たる医療法人及び持ち分の定めのない社団法人たる医療法人に限定いたしておるのでございます。なるほど医療法人の中にはお話のように持ち分の定めのある医療法人が相当多いということは私承知いたしております。しかしこれは、過去のいろいろないきさつのあったことは藤井委員の御承知のとおりでございますが、公共性という点からいいますと、持ち分の定めのない医療法人になっていただきたい。なるほどいまの持ち分の定めのある医療法人から持ち分の定めのない医療法人になろうとすれば、贈与税の問題が起きてまいります。しかし贈与税は一時の問題でありますが、法人税の問題は長い将来の問題であります。したがって一時贈与税を納めるということくらいはしんぼうしていただかなければならないのではないか。また租税特別措置法四十条の規定によりますと、非常に公共性の強い場合におきましては、その贈与税も課税しないことになっておるわけでございますから、その点を考え合わせて御検討いただきたいと思うのであります。私どもといたしましては、持ち分のある医療法人にはこの特別措置を適用すべきではない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/107
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108・藤井勝志
○藤井委員 それでは、最後にお願いをして質問を終わりたいと思うのでありますが、過去の医療法人を中心にした経緯を顧みますと、政令でいろいろ条件を定められるにあたりまして、医業の直接の担当責任省である厚生省と大蔵省は緊密な連絡をとっていただいて、どうか完全な意見の一致の上に法律施行をしていただくように切にお願いをいたします。なるほど税源確保ということ自体大切なわれわれ大蔵委員会のつとめでありますけれども、しかし、われわれはまた政治家として、全般の医業というものがそのそれぞれの社会的地位に応じて取り扱われる、こういう点においては厚生省という所管の主管官庁がありますので、主管官庁の意思をよく尊重していただく——税金を取る、収入を増す、こういうことだけはもちろん大蔵省主税局が指導権を握っていいわけですけれども、医業行政という面からいえば、厚生省の意見を十分に参考にする、そこで合わせて一本というところでいい結論が出るわけでありますから、その点をとくと御配慮願うことを希望いたしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/108
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109・山中貞則
○山中委員長 小山省二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/109
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110・小山省二
○小山(省)委員 早朝からの審議でたいへん皆さんお疲れのところ恐縮でございますが、提案されております租税特別措置法の質問に先立って、私は銀行局長に二、三お尋ねを申し上げたいと思います。
御承知のとおり、昨年でございましたが、地方庁の指揮監督下にある某信用組合が多額な不正融資を働きまして、多くの預金者に迷惑を及ぼし、当時当委員会におきましても種々質問がされたやに承っておるわけであります。当時、一部の人のいろいろな御批判によりますと、そうした不正融資が未然に発覚しないという問題については、その指導監督に当たる地方庁のいわゆる検査能力に問題がある。したがって、将来金融機関の指導監督を大蔵省に一言化したらどうか、こういうようなお話も出たやに聞いておるのであります。今回、大蔵省の監督下にある東京の某信用金庫が、当時の信用組合の不祥事件を上回るような、二十四億に近い不正融資を行ないまして、ただいまこれが整理途上だと聞いておるわけであります。したがいまして、そのような金融機関にいろいろな不祥事件が起こるということは、必ずしも指導に当たる監督官庁のいかんではなくて、この信用機関の運営に当たる経営者のいかんにあるというふうに私は考えておるわけであります。この点について、ひとつ銀行局長の御見解をこの機会に明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/110
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111・高橋俊英
○高橋(俊)政府委員 ただいま御指摘を受けました信用組合並びに信用金庫の不祥事件につきましては、特に信用金庫の場合には財務局が監督に当たっておるわけでございまして、そういう不都合を生じまして、事前に非常に小さい問題のうちにそれを解決できなかった点について深くおわびをしなければならぬと思います。いまお話しのとおり、数から申しましても、信用金庫は財務局が主として監督しておりますが、五百三十余りでございまして、非常に数が多いという問題が一つあります。信用組合も現在ではかなりの数で、大体似たような数になっておると思いますが、最近では、信用金庫につきましても数をやたらにふやさないという方針を何年もとっておりますが、監督上その経営者について非常に問題があるという点は、まことに同感といいますか、私どももそう感じております。特にその経営者が他に職を持っておる、つまり兼業の問題であろうと思いますが、自分で事業を営んでおって、その事業にいわば資金を導入するために組合を運営しておるんじゃないかというふうなケースがあるということ。信用金庫の場合も、先般起こりました事例を見ますと、これはいわゆる導入預金と称する額は、お話の二十何億ではございませんで、その約半分の十二億数千万でございまするが、いずれにいたしましても、一般の貸し出しに比べてそのほうがずっと多いという形でございまして、この場合を見ますと、理事長は確かに表面的には事業を営んでおらないわけであります。つまり今度の導入預金の相手方となった事業会社の役員その他には一切なっておらぬ。つまり表面ではなっておりませんで、会社のほうは社長が非常勤の役員になっておった。つまりいかにも普通業務の執行には関係のないような形をとっておりましたけれども、あとになってわかったところでは、その理事長が実際はある会社の経理担当者みたいな立場にあったということで、これはまことに不都合なわけでございまして、一企業のためにその金融機関がほしいままにされておるというふうな事例がございますので、こういった内情を掘り下げることは、非常に外からは発見しにくい場合がございますけれども、自今そういったおそれのある者は兼業をやめてもらうか、あるいは常勤理事をやめてもらうか、何かそのようなふうに指導していかなければならないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/111
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112・小山省二
○小山(省)委員 いま御答弁承りまして、私の質問の要点というものは、そうした一連の不正事件の起こるよってきたる原因というものは、その指導に、あるいは監督に当たる官庁のいかんではない、こういうことを御理解願えるかどうか。いま聞きますると、この信用金庫は整理途上でありますから、あまり私も内容にわたって本委員会で御質疑を申し上げることは御遠慮したいというふうに考えております。いま局長のお話の中に出ました金融機関の責任者の兼業の問題でございます。かつて問題の起こりました信用組合も、その責任者が他の大きな事業を行なっておって、そうした方面に自分の組合で集めた資金を独断的に流した。いま問題にはなりませんが、そうした金融機関の責任者で大きなスーパー・マーケットを経営しておるとか、百貨店を経営しておる、そういう人が金庫、組合を通じて相当数あるということは、これは否定できない事実であります。したがって、将来そういう預金者に迷惑を及ぼすおそれのある事項についてもう少し指導、監督に当たる銀行局がそういう面の改善策を強力に御指示願い、あるいは政令等によって禁止をする、そして真に預金者が安心して金融機関を信用できるというような体制を早急にひとつ御考慮願いたい。これをひとつこの機会にお願いを申し上げたい。
いま一つは、御承知のとおり中小企業の信用組合あるいは金庫等、つまり中小企業を対象としたそういう金融機関が最近は非常に業界の中に浸透しまして、預金量も年ごとに伸びておる。一例をとってみまするならば、信用組合にしても今日五千億以上の預金量を持つようになった。金庫においては二兆か三兆の預金量があるわけであります。この預金が、御承知のとおり法によって支払い準備金として自由な運用が禁止されている。たとえば定期性においては一割、流動性においては四割というものはかってな貸し付けができないわけです。この資金をできるだけ有効に生かそうというのが当然経営者の考え方になるわけです。したがって、それらの支払い準備に充てべき預金がコール市場を通して大企業の資金源になっておるということは、今日の預金量から見まして相当な額であるということは、これは事実であります。私どもは、零細な中小企業の預金が少なくとも中小企業者自体に還元されなければならぬというこの金融機関の使命から考えまして、いたずらにいまそういう余裕金をコールに出し運用しているというその事実を黙過するわけにはいかない。これは中小企業金融の本来の使命からいっても強力な指導がなされなければならぬ。これは単なる当局の希望では実効をおさめることはできないと思う。しかし金融機関といえどもやはり一つの営利機関ですから、できるだけ高率に運用するという基本的な考えを全然無視できない。私は、したがってこの余裕金で商工債券なりあるいは今後実施されるであろう中小企業公庫の発行する債券なりを持ってもらう。そうしてその資金が再び中小企業に還元されるような形において運用してもらわなければならぬと思う。しかし金利その他において、それは言うべくして困難でありますから、そういうふうに犠牲を払って協力をした中小の金融機関に対しては、政府が出しておる特別な低利資金というものは、そういう協力した金融機関に限定するというような形をとってこれを保護しあるいは奨励するという今後の金融政策を、ぜひ私は大蔵当局において御指導願いたい、こういうふうに考えているのですが、局長の御見解をひとつお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/112
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113・高橋俊英
○高橋(俊)政府委員 最初のお話の金融機関、信用金庫や信用組合の役職員の兼業問題につきましては、これからも実態をもっと深く、突っ込んで調査するようにいたします。
信用金庫は、御承知のごとく兼業は一般的には法律上禁止されているわけです。特に大蔵大臣の認可を得た場合だけ兼業ができるとなっております。財務局で認可しておりますので、実態を、どの程度のものがあるかいまは把握しておりませんが、認可されている金庫の場合にはそれほど多くはないというふうに聞いております。
信用組合になりますと、中小企業の経営者である限りはあえて兼業は禁止されておらぬ。大企業の経営者は兼業できませんが、中小企業の事業を営む場合においては、一般的には法律上は禁止されておらない。しかし常勤役員である場合にはやはり好ましくない。信用業務というものはそう片手間にできるものでもございませんし、それ以外に、先ほどのような弊害が十分に考えられますので、これは都道府県知事が監督しておりますが、その監督にあたりまして、いままで出たような不祥事件——先ほど御指摘になりました、ある信用組合が理事長の経営する会社に非常に多額の貸し付けを行なって、その会社がまた不渡りを出したというふうな事件もございました。非常に私物化しているんじゃないかという感じもございます。そういうことが起こってくるのは、やはりどちらにほんとうの目的があるかわからぬような理事者が常勤役員として実権を持つということにあるわけでありますので、自今そのような不祥事件を防ぐためには、どうしてもいかがわしいと思われるケースはなるべく兼業をやめてもらう、いまやっておりましても今後やめるように指導するということを都道府県知事にも要請したいと思います。そういうことによって、なるべく変な事件を起こさないように注意したいと考えております。
それから次のお尋ねの点でございますが、コールというお話でございましたが、実は信用組合の場合にはコール放出は禁止されておるわけでございます。相互扶助の精神で協同組合法によってつくられた信用組合でございますので、コールに放出するというふうな道は実際は禁ぜられておる。しかし、実情はと申しますと、信用組合連合会の場合で申しますと、私どもは、昨年以来、一般的な金融機関が受け入れて払っている特利を非常にやかましく禁止したわけでございます。若干まだ漏ればございますけれども、一般的にはいろいろな金融機関の預け金でありながらコール並みの金利を払うというふうな事例が間々あったわけでございます。これを禁止しましたところ、農協においてもそうですか、中央機関にその金が吸い上がってくる。信用組合で申しますと、最高は一銭七厘まで預金に対して払えることになっているわけです。しかしながら、金融機関の預け金というものは一銭五厘が最高でございまして、それ以上の金利を支払ってはならぬことになっておる。しかも、連合会の場合におきましても、コールの放出資格は与えられておらない。法律上運用の項目に入っておりません。そういうことでありまして、非常にそこに問題がありますが、何分コール市場というのは、しばしば非常に高い金利が生まれることがある。そういたしますと、中小企業金融に振り向けるべきものが、そういう中央に吸い上げられて、これが非常に金利が高いのに引きずられてそちらに金が向くものが多くなってしまう。そういうこともございますので、相互扶助のための信用機関である以上、そういう金利が高いからという理由で大企業の融資に向けられるようなふうに金を流すということは好ましくないという観点から、コールの放出が認められてないわけですが、かと申して、現在は金融機関同士の預け金は最高一銭五厘であるということになりますと、預かるほうは最高一銭七厘で、預けるほうは一銭五厘だという逆ざや運用になる。そういうことからこれを調べてみますと、預かったほうの都市銀行はこれを借り入れ金として経理している。預けたほうは、貸し付け金はできませんから、預け金という形をとっておる。非常におかしなことになっておるわけであります。結局やみをやっておるということになるわけでございます。これらの点につきまして、政策的な配慮の見地からいかがすべきかという点を前向きで考えなければならぬと私ども思っておりますが、少なくとも現行の法律のたてまえにおきましては、違反行為が半ば公然と行なわれておるような状態にあります。いろいろ政府の云々というお話もございました。これらの機関の余裕金をもって金融債、商工債券等を買い入れたものに対しては、政府が何か助成をするというお話がございましたが、どうもそこまで政府の助成ということを考えるのは、やや行き過ぎであるというふうな感じがいたします。逆ざやということでございますが、一銭七厘の預かり金利が守られている限りにおきましては、実は商工債券に運用いたしましても逆ざやにはならないわけでございます。これは二銭には回るわけでございますから、それでいいのではないかと思いますが、実際はその一銭七厘の金利が守られてないのじゃないかという感じがいたします。相当高い金利が払われておる。つまり、コールのレートを基準にして都市銀行から利子の支払いを受け、またそれより若干低いレートで各単位信用組合に支払っているというふうな実情も見受けられます。これらは非常におかしな実情になっておりますので、とにかく何らかの形でこれをもっとすっきりした形にしなければいかぬ、そういう指導をこれから強く考えていきたいというふうに存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/113
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114・小山省二
○小山(省)委員 いまの局長の御答弁を承りまして、私も大体了承しております。業界の内情について、本委員会で私はあまり申し上げることは差し控えなければならぬというふうに考えていますが、事実上においては相当の金額が連合会を通してコールに出ている、そういう形で運用している。また、それぞれの取引銀行を通しても、名目上はどうであっても、一番高率に資金を運用しようという考え方の上において、いろいろ名目をつけてその資金がコール市場に出ていることは、これはもう争えない事実なんです。したがって、単に私はこれを取り締まるというだけでなく、むしろそういう方向から救い上げてやるというような指導が必要じゃないか。いま局長のお話を承りますと、政府の低利資金を出すことは非常に困難だというふうなお話ですが、かりにこれを農協にたとえてごらんいただけば、農協の資金、それははたしていまの農協が集めた資金を農家に貸し付けて、それで農家の経営が完全に金融的にはうまくいくか、なかなかそうはいかぬ。そこで、むしろ農家から預かるのは高い金利で預かる、農家に貸し付けるのはむしろ政府が別に低利の資金を多額に出す、これは農協等の実情を見たってそういう形をとっておる。私は、農業振興対策も中小企業対策も、国家の施策として考えた場合に、いずれを重点に置くという、そういう比重はない、したがって、中小企業対策あるいはむしろ零細企業の対策というたてまえから見まするならば、農協等に政府が多額な低利融資を行なっていると同様なことが決して不可能でないというふうに考えておる。十分ひとつ御検討を願って、できるだけ早く正常な形において、そういう中小企業の専門金融機関に集まった資金が、中小企業者のために役立つような方向にいくように、強力な御指導をひとつお願いしたいと思う。
いま一つ、信用組合の中にいろいろな組織がございますが、職場を単位とした信用組合、職域の信用組合というのがある。たとえば東京でいくと警視庁の信用組合、あるいは教育者だけ集めた教育者の信用組合、あるいは逓信信用組合というような、これは私は労働金庫とほぼ同じような性格を持つ金融機関だろうというふうに考えております。ところがこの信用組合が、その職場の便宜から住宅金融公庫の代理をやって、住宅資金についてあっせんをしようという申請を幾たびか出しておりますが、大蔵当局のほうでは信用組合に対して代理業務を許可しない。たとえば恩給関係の金融をやるために、そういう職域の信用組合が国民金融公庫の代理業務をしたいという申請を出しておりますが、これも全然許可にならぬ。地域の信用組合においては行なわれておりますよ。地域を単位とした信用組合においては行なわれておりますが、職域の信用組合については全然政府がそういう代理機関を禁止しておる。労働金庫においては、政府の資金も相当労働金庫を通して低利な資金が出ておるのに、同じような性格の金融機関である職域の信用組合については、政府の低利資金はもとより、そういうあらゆる代理業務を全部門戸を閉ざしておるというようなことは、ちょっと納得ができにくいのであります。将来、そういう職場を単位とした信用組合に対しては、従来どおりそういうふうな公庫の代理業務は認めない、こういう方針で御指導なさるお考えであるかどうか、この点を一つ承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/114
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115・高橋俊英
○高橋(俊)政府委員 特定の職域を単位とする信用組合の場合には、代理業務を認めておりません。労働金庫と同じようなものじゃないかとおっしゃいますけれども、労働金庫の場合はもっと範囲が広いといいますか、やや一般的である。特定の会社あるいは特定の勤務場所、そこに勤務する人々だけのためのものではない。つまり、やや一般性が高いという観点に立っております。こういう住宅公庫の金なども全額財政資金でやっておるわけでございますが、そういう財政資金をもって融資する場合の融資対象というものをできるだけ一般的なもの、広い範囲を対象とするようなものは代理業務を認めていいけれども、ある特定の会社とか職場だけを対象にするものにそういう財政資金を取り扱わせるというのは過断でないのじゃないか、そういう観点で認めておらないわけでございます。信用組合だとすればこれはかなりの数、いま二百以上代理業務を認めております。だから信用組合だからという意味じゃありませんが、職域単位の信用組合はちょっと適格性を欠くのじゃないか、そういうことで現在までは認めない方針をとっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/115
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116・小山省二
○小山(省)委員 いまお話のように、政府の財政資金を、そういう職域の組合には代理業務を認めない。国金あるいは中小企業公庫とか、商工中金とか、そういうふうなすべての政府関係の金融機関の代理業務という意味でなく、たとえば職域の信用組合に対しては当然代理業務を許して差しつかえない状態にある。たとえば住宅金融公庫、これはもうそういう関係者、勤労生活者の人々だけでやっておるわけですから、そういう人が職域の組合にせっかく入っても、そういう代理業務のいろいろの便宜をはかってもらうがために、また別の労働金庫のほうに二重に加入しなければいかぬ、あるいはせっかく自分の職場につくってある組合以外の他の地域の信用組合に加盟しなければいかぬ、こういうふうなことになって、そういう関係者から非常に不便だからぜひひとつその職域にとって必要な公庫に限定して許可をしてもらいたい。たとえば県庁あたりの信用組合は、県庁をやめても相当組合員としては残っておる、そういうのが恩給業務を国金でやっておるわけですが、せめて国金の代理業務くらい県庁の職員信用組合には許可してもらいたい。東京の教職員を打って一丸とした教員信用組合などは住宅公庫設置を許可してほしい、こういうような要請をして、ここ数年来熱心に運動を続けておるわけです。私どもはそういう特殊的職域信用組合の性格を十分分析して、可能な範囲においては許可をしてやってもらいたい、こういうふうな考え方を持っておるわけです。いま直ちにここでそれに対する確実な御答弁はあるいは困難かもしれません。十分ひとつ御研究をお願いしたいというふうに考えております。それではどうもありがとうございました。
それでは私は租税措置法の問題について少しお聞きしたいと思います。総括的ないろいろの問題についてはいずれ審議を通しまして、わが党のほうの代表者からそれぞれ御意見の発表もあることでございますので、あまり事前に党の考え方と抵触するような質問もどうかと思いますので、私はごく一部御質疑を申し上げたいと思うのであります。
その御質問を申し上げます前に、先ほど午前のこの委員会におきましても、社会党の同僚議員から先般の本会議における総理の税制調査会の答申に対する答弁の問題についてお話が出たようでございます。私もその後、この大蔵委員会の速記などをずっと読んで見ますと、大臣の答弁は終始税調の答申を尊重して今後の税制改革に処していきたい、こういう考え方を述べられておる。総理が税調の意見はあくまで意見として、税制の問題は独自な考えでいくのだと言ったこの考え方は、おそらく総理の真意ではないように思うのであります。しかし今回の租税特別措置法の内容を見ますと、こまかく分析しますと大体三十項目ぐらいあるのです。そのうち約半数、十五項目というものは答申のなされておらない税制改革というものがなされている。したがって、極端なことばで言えばどっちをとって今度の改革がなされたか、単なる答申だからあくまで内閣の責任において改正案を出したのだ、ということも言えば言えないことはないように思うのであります。したがって私は、今後それらを審議します上において、政務次官でけっこうでございます。もう一度税制調査会の答申というものをどのようにお考えになり、どのように今度の改正案の中に取り入れられておられるか、その御見解をお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/116
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117・纐纈彌三
○纐纈政府委員 その問題につきましては、いま小山先生から御質問の中にありますように、認否会の答申については十分の敬意を払って、その答申に従うという大方針につきましては全然変ったことはありません。あくまでもその線でいくべきものであると私は確信をいたしております。ただ個々の問題になりますと、先ほど中山会長からもお話がありましたように一〇〇%あるいは九五%答申と同じだということになると妥協があるということでございまして、そういうようなこともありまして、やはりある程度独自の立場でやっておられることがありまして、そういう問題につきましてはもちろんそれを来年度の予算に必ずやらなくてはならぬという——とにかく諮問機関でございますから、それを全部取り入れるということは絶対必要条件ではないと思うのであります。ただその趣旨をあくまでも、来年いけなければその翌年でも通すとかそういうような方針で、やはり私どもは税制調査会、政府が設置した調査会、しかも権威のある調査会でございますから、その答申はあくまでも尊重しつつ政策に連ねていくようにしなくてはならぬ、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/117
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118・小山省二
○小山(省)委員 いまお答弁をいただきまして私もそのとおりだろうと思っておったのであります。従来も税調の意見は尊重されているし、今後におきましても税調の意見は尊重して税制改革にあたられる、こういうふうに解して差しつかえございませんね。
それでは局長にもう一点先にお伺いしておきたいと思いますことは、今度の租税特別措置法の改正にあたって、この中の一、二の項目に該当するわけですが、中小企業に対する税の考え方、農業に対する税の考え方、そのウエートをいずれに置かれておるか、そういう点について事前にちょっと局長の見解をお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/118
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119・泉美之松
○泉政府委員 小山委員御承知のとおり、中小企業の所得税あるいは法人税の納税額、地方税であります事業税を含めましたそうした所得に対する課税の納税額と申しますか、負担額に比較いたしまして、農業の場合の所得に対する税は、所得税と農業生産法人の場合の法人税——事業税は御承知のとおり農業の場合にはかかっておりません、その額と比較いたしますと、これは御承知のとおり農業の場合は所得税におきましても二十数億といった程度でございまして、中小企業者の所得税、法人税の税額に比べますと比較にならないほど税額が少ないわけでございまして、今度の税制改正におきましては、ひとり租税特別措置というだけでなしに、所得税や法人税の改正を通じまして中小所得者に対する負担の軽減をおもにはかる。したがいまして、農業所得者も中小商工業者も中小所得者という範疇においてその負担の軽減を十分はかるということが趣旨になっておるわけでございます。ただ納税額といいますか、負担額にかなりの差異がありますために、結果的にあらわれました減税額といたしましては中小企業のほうが、総理がいつも言っておられますように、国税、地方税を合わせまして平年度六百十五億といりた金額になります。農業の場合は、その金額はきわめて少ないということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/119
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120・小山省二
○小山(省)委員 私は、その減税される額を問題にしようという意味でなくして、ここに行なわれておる税制改革の内容を見て、農業関係の減税に重点を置いて、ややもすると中小企業関係の減税というものは軽視をされておるが、そういう点について公正にどちらも同じようなお考えでこの改革案に当たられたか、こういうふうに、その点を局長の見解をお尋ねしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/120
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121・泉美之松
○泉政府委員 それはもちろん今回の税制改革におきましては、総理からも特に所得倍増計画の達成上においてとかくおくれがちな中小企業と農業との近代化が一番大切なんだから、その両者に重点を置いて考えろというお話でございますので、私どもといたしましても、中小企業と農業、この両者に重点を渇いてその両者のバランスを考えながら減税を行なうことにしたわけでございまして、農業のほうに重点を置いて中小企業をないがしろにしたというようなことは毛頭ないわけでございます。ただ税負担額が違いますために、結果的にあらわれた減税額にかなりの差があるということを申し上げているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/121
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122・小山省二
○小山(省)委員 その御見解を承りましたから、私、ひとつ内容に入ってお尋ねをしたいと思うのですが、この中に農業協同組合等の留保所得の特別控除というのがございまして、農業協同組合、漁業協同組合、事業協同組合あるいは事業協同小組合等あるいは商工組合、これらの特別控除が規定されておるわけであります。この中にそれらの連合会ということが含まれておる。当然農業協同組合の母体である信連もこの対象に入るわけであります。したがって、農業を対象とした信用事業を営む信連はこの恩典に浴して、中小企業を対象とした金融機関である信用組合の連合会、これはこの恩典から除外をされる。私の聞いておることは、農業に金融をつける仕事も、中小企業に金融をつける仕事もその性格の上において比重に変わりはない。にもかかわらず、農業協同組合あるいは農家を対象とした信連等までもこの対象の中に入れてその恩典に浴さすような特別措置が講ぜられておる。私はこの点に強い不満を感じておるわけであります。その点私は局長の御見解をひとつ——先ほど中小企業にも農業にもいずれにも偏しない、この二つの対策は池田内閣の重大な政策でもあるから十分考慮している、こういうお話なので、そのお考えとこの条項とは私は非常に矛盾しているように考える。その点の御見解をひとつ承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/122
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123・泉美之松
○泉政府委員 今回租税特別措置法の第六十一条を改正いたしまして、農業協同組合等の留保所得につきまして特別控除の制度を設けることにいたしたわけでございますが、実はこれにつきましては小山委員御承知と思うのでございますが、長い間の沿革があるわけでございます。農協あるいは特定事業協同組合につきましては再建整備ということが行なわれまして、その再建整備を行なう場合におきましては、留保いたしました所得が出資金額の四分の一に達するまでは所得に対する法人税を課税しないという制度が昭和二十八年の整備からとられておりまして、それがだんだんと再建整備が終わって、三十六年ごろ大かたの再建整備は終わったわけでございますが、なお現在におきましても一部再建整備を行なっております。ところが再建整備を終わっていよいよその特例の適用がなくなってくるという状況において考えてみますと、先ほど申し上げましたように、所得倍増計画で立ちおくれがちな農業あるいは中小企業の近代化をはかっていこうという場合において、農協あるいは事業協同組合、商工組合等の内容が必ずしも十分でないようなものがかなり見受けられる、それではそういう組合員の中小企業なり農業の近代化をはかるという上において十分ではない、したがって景気の変動に対処してそういった農協とか事業協同組合、商工組合といったものの内容を強化して、組合員が安んじてやっていけるようにしようではないかということから、今回農業協同組合等の留保所得の特別控除を設けることになったわけでございますが、従来再建整備を行なっております当時からいたしまして、信用事業及び共済事業を営む信用協同組合あるいは火災共済組合、これは再建整備の対象にもなっておりません。したがって従来からそういった留保所得の非課税の特典もなかったわけでございます。そこで、今度農業協同組合等の留保所得につきまして、留保した金額が出資金額の四分の一に達するまでは、留保した額の二分の一に対しては法人税は課税しないという特例を設ける際に、どういう協同組合に適用すべきかということにつきましていろいろ検討いたしました際に、一つは現在基本法の出ておりまする協同組合、つまり農業基本法に基づく農業協同組合あるいは沿岸漁業振興法に基づく漁業協同組合、こういったもの、それから中小企業基本法が出ておりますので中小企業協同組合、こういったものに適用するということが一つの問題になったわけでございます。それからそういった協同組合が営んでおる事業の中でも信用事業と共済事業、これは小山委員御承知のとおり、比較的安定した収益を生むことを前提として事業を営んでおりますので、したがいまして、農協とか漁協といったようなもの、あるいは事業協同組合の中でもそういった信用事業とか、共済事業以外の事業を営んでいるものと違いまして、経営が比較的安定いたしておるわけでございます。したがって、景気の変動に対処してその内部留保の充実をはかっていくという必要性があまり認められないという性格があるわけでございます。そこで農業協同組合あるいは漁業協同組合等につきまして、そういった信用事業あるいは共済事業を営んでおるものについては、今回の特例の適用対象からはずすかどうかということが問題になったのでございますが、御承知のとおり農協などはいろいろの事業の一環として信用事業なりあるいは火災共済の事業を営んでおるわけでございます。そういった点からいたしますと、農業協上同組合の単協の農家からそういった信用事業を除外する、あるいは共済事業を除外するということができにくいという事情がございます。
それからまた農業協同組合連合会の場合におきますと、単協とそういった連合会とは、いわゆる農協一体観念というものがございまして、単協と連合体とが一体という観念でもって今日まで運営されてきておりますので、したがって、そういった農業協同組合の連合会の場合におきまして、信用事業を営む信連を除外するあるいは共済連を除外するということができにくいという事情があるわけでございます。これに対しまして、信用協同組合あるいは火災共済協同組合は、初めから単位組合のほうがいま申し上げましたように信用事業あるいは共済事業を営むということからいたしまして、比較的安定した経営を行なっており、特に内部留保の充実につとめなければならぬというほどの必要性が認められないという点からいたしまして、単位組合も留保所得の特別控除の対象にしないし、したがって、またその連合会につきましても、この逆用対象にしないということになっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/123
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124・小山省二
○小山(省)委員 ちょっと局長の御答弁では納得しにくいのですが、本来この項目は税調の答申にはない項目になっておる。そのない項目の中で従来なかった信連、共済連をさらに加える。この全体が税調のあれにはないんです。しかし政府の考え方として、これを取り上げて、ここに盛り込まれておる。私はそのことについて政府の考えは正しかったように思うのです。しかし税調の答申項目にはない上に、従来やっていない共済連から信連までまた加えて、そうしてむしろ必要を感じておる森林組合等は離してしまう、この恩恵から切り離してしまう、これはちょっと私は大蔵当局の考え方というものが首尾一貫していないと思う。御都合主義でこの対象に入れたり、はずしたり、大蔵当局の考え一つでこの中に加えることもできれば、はずすこともできるという印象を強く一般国民の中に植えつけるのじゃないか。その点でもう一度私は明確な御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/124
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125・泉美之松
○泉政府委員 これは決して大蔵当局の一方的な考えだけで入れたり入れなかったりという性質のものではございませんで、先ほど申し上げましたように、基本法の出ておりまする農業、漁業、それから中小企業、こういう協同組合について特例を設けようというわけでございまして、森林組合につきましては、まだ基本法が出ておりません。で、私どもとしましては、森林組合につきまして、基本法ができれば、これは従来の経緯もございますので、森林組合はこの対象に入れたい、かように考えておるわけでございます。
それから信用協同組合あるいは火災共済協同組合というものを対象にしなかったことにつきましては、先ほど申し上げたとおり、その事業の安定性という点から見まして、特に内部留保を充実するほどの必要は認められないという見地からでございます。ただそれが農協なり、漁協の場合におきましては、一体となっておって、それを分離しがたいという事情があるからでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/125
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126・小山省二
○小山(省)委員 いまの御答弁でも私ども少し納得しにくい、ということは、もちろん基本法ができているということは、有力な根拠にはなると思いますが、しかし従来森林組合は必要があって、この恩典に浴している、今後も浴させるという考え方においては変わらない。いままでも必要があり、今後も必要があると考えているにもかかわらず、基本法がないためにこの機会にはずしてしまう。これはこの恩典に浴させるのはそれなりの必要性があってやるので、基本法があるからどうという問題ではないと思う。ですから、従来なかった連合会まで今度特別に拾い上げて、この恩典に浴させている。基本法という考えだけでいけば、当然中小零細企業を対象とした信用組合関係のものはこの恩典に浴されなければならない。そして必要性という面からいけば、森林組合というものは従来もあるし、今後ともやろうというお考えなら、この機会にこの指貫法の中から引き離してしまうという考え方についてはどうも首尾が一貫していないような感じを持つわけです。明年また多少の改正があるので、この点は十分御考慮をお願いしたいと思う。
それからあとは、先ほどちょっと話題に出ました特定医療法人の法人税率の特例でございますが、一体この特例をしきまして、どの程度の減収というものがあるのですか。その点をちょっとお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/126
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127・泉美之松
○泉政府委員 医療法人につきましては、今回の特定の二八%という税率を適用することによってどの程度の減収が生ずるか、実態を調査しなければまだ判明しない面があるのでございますが、しかし先ほど申し上げましたように、現在の医療法人は、概して医者並びに看護婦等従業員に対する給与の形で支払いまして、それからそのほかのものは医療設備の改善ということのために使っておりますので、剰余金というものが比較的ございません。そのために今回の措置をとることによりまして生ずる減収額というのは、歳入予算の編成上におきましては、一億足らずのごくわずかな金額になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/127
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128・小山省二
○小山(省)委員 その減収額はきわめて少ないようでありますが、特に今回この税制改革の中で取り上げなければならぬといたしますならば、金額のいかんにかかわらず、その制度の持つ重要性というものを大蔵当局が特にお考えになって、このような措置がなされたろうと思いますが、この事業が公益の増進に著しく寄与し、かつ公的な運営がなされるもの、こういう判定は大蔵当局がいろいろ税収の面から考えておやりになるのか、この考え方というものは厚生省に一任して、大蔵省では全然タッチなさる必要がない、こういうふうにお考えになっているのですか。その辺をちょっと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/128
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129・泉美之松
○泉政府委員 この租税特別措置法六十七条の二の第一項におきまして政令で定めるというふうに書いてございます。したがいまして、政令でございますので、大蔵省だけできめるというものでなしに、大蔵省と厚生省とよく相談いたしまして、何者の意見の一致したところで政令で定めるということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/129
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130・小山省二
○小山(省)委員 とにかく、この税制改革にあたってこれだけの特別措置を講じようという以上は、事前に十分調査がなされて、その対象となるべき医療法人というものの数なりあるいは必要性というようなものの調査が十分に済んでおる、また、そういうことでなければここで特にこの特別措置を講ずるという必要はないわけです。今後調査をして、来年度なら来年度、それらの調査の資料に基づいて税制改正の中に入れなければならぬはずだ。したがって、そういう必要性というものは、こういう公的な医療法人があって、それが全国に効果をあらわしている、あるいは税制の一面でこんなに苦しんでいる、だから特例を設けなければならぬ、こういうふうな形においてここにあらわれてこなければならぬはずだ。これから十分に厚生省と相談をして政令その他をきめる——どうも、特にこの医療法人の税率を引き下げる重要度というものがちょっと認識しにくいのですが、どのくらい全国にこれを適用する医療法人というものがあるのか、ちょっとお聞かせをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/130
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131・泉美之松
○泉政府委員 現在医療法人の総数は全国で千六百八十六というふうに計算されております。このうち財団組織のものが三日一、社団組織のものが千五百ほどでございます。これは、われわれのほうで計算してある医療法人数といま財団組織三百と申しましたのは、厚生省の調べと実は一致いたしておらないのでございます。そこで私どもとしては、なぜその両者が一致しないかということからいたしまして、先ほど多少ばく然とした御答弁を申し上げたのでございますが、今度基準をきめることで、現在厚生省とこれから交渉する予定にいたしておりますが、財団組織の三百というもののうちには相当数この適用を受けるものが出てこようと思います。それから社団組織のもののうちでは持ち分の定めのあるものがきわめて多いようでございます。したがいまして、私どもの考えでは財団組織の三百一のうちでも全部は適用にならない。規模その他からいたしまして、適用にならぬものが出てこやしないか。それから社団組織のもののうち、持ち分の定めのあるものには適用いたしませんので、持ち分の定めのないもがごくわずかでございますので、全体として今度の適用を受けるものは、医療法人としては三百数十程度ではなかろうか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/131
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132・小山省二
○小山(省)委員 私の聞きました範囲においては、それほど多数の該当医療法人はないように聞いているわけであります。しかし、大蔵当局でお調べですから、そのほうが権威があると思いますが、この特定医療法人の法人税率の軽減も税調の答申にはないわけです。ないのに、しかも事前の調査がやや不十分のような感じを受けるのです。つまりこの特定の医療法人が税制上特に恩典を与えなければならないような状態の調査、そういうふうな恩恵を与えなければ公的な医療法人としての活動が非常に困難だという実態調査が私はいささか欠けているように思う。税調の答申にないのですから、特に政府がその必要度というものを著しく感じた場合において、税調の答申のいかんにかかわらずこういう条項を入れるべきものである。ところが著しく必要性を感ずるという調査が十分でないように、私の感じですが、率直のところ感ぜられる。私の聞いた範囲では、本年度はこれに該当するような医療法人というものはきわめてわずかだろうという、そのきわめてわずかな特定医療法人のために、特に税調の答申を無視してここに拾い上げなければならぬという、そういう根拠を考えていきますと、私は残念ながらその根拠はきわめて薄弱だというふうに断定せざるを得ないのですが、しかし、これはいずれも政府当局においてお取り調べのことですから、これ以上は申し上げません。
それから証券投資信託の分離課税でございますが、これも御承知のとおり、あまり好ましい行き方ではないと思うのです。こういう形で順次いろいろな配当等まで分離課税に移行するおそれがないではない、その一つのあらわれのような理論といえばいろいろな理論がそこに成り立ちますから、これにはそれなりの理由が書いてありますが、しかし税調の答申等を見ました場合に、特別措置は一たび設けられると、政策目的ないしは措置の効果の有無にかかわらず、既得権化することが多い、こう指摘している。特別措置の機動的な改廃については積極的な態度で臨む必要があると思いますが、特に税調が指摘をしているところを見ましても、私はそれが既得権化するおそれが多分にある、こういうふうな考え方を持っております。今後の運用において十二分にひとつ御注意を願いたい。
意見を申し上げまして質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/132
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133・山中貞則
○山中委員長 次会は、来たる十日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時四十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01619640306/133
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