1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年三月十一日(水曜日)
午前十時五十五分開議
出席委員
委員長 山中 貞則君
理事 臼井 莊一君 理事 原田 憲君
理事 藤井 勝志君 理事 坊 秀男君
理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君
理事 堀 昌雄君 理事 武藤 山治君
天野 公義君 伊東 正義君
岩動 道行君 大泉 寛三君
大久保武雄君 奥野 誠亮君
押谷 富三君 金子 一平君
木村 剛輔君 木村武千代君
小山 省二君 砂田 重民君
田澤 吉郎君 福田 繁芳君
藤枝 泉介君 渡辺美智雄君
岡 良一君 佐藤觀次郎君
田中 武夫君 只松 祐治君
日野 吉夫君 平林 剛君
松平 忠久君 春日 一幸君
竹本 孫一君
出席国務大臣
国 務 大 臣 佐藤 榮作君
出席政府委員
総理府技官
(科学技術庁計
画局長) 村田 浩君
総理府事務官
(科学技術庁振
興局長) 杠 文吉君
大蔵政務次官 纐纈 彌三君
大蔵事務官
(主計局次長) 中尾 博之君
大蔵事務官
(主税局長) 泉 美之松君
国税庁長官 木村 秀弘君
委員外の出席者
大蔵事務官
(為替局外資課
長) 堀 太郎君
大蔵事務官
(国税庁直税部
長) 鳩山威一郎君
通商産業事務官
(工業技術院総
務部長) 小林 貞雄君
通商産業事務官
(中小企業庁指
導部長) 吉田 剛君
専 門 員 抜井 光三君
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本日の会議に付した案件
所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
三六号)
法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一五号)
租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第九八号)
相続税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一六号)
揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する
法律案(内閣提出第一七号)
物品税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
九五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/0
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001・山中貞則
○山中委員長 これより会議を開きます。
所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案、相続税法の一部を改正する法律案、物品税法の一部を改正する法律案及び揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
質疑の通告がありますので、これを許します。佐藤觀次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/1
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002・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 この間中山会長からいろいろ意見がありましたが、給与所得者の税金が非常に高い。そこで現在の所得者のうちの八割三分を占めておる給与所得者に対して、何らかの考慮をしなければならないということをるる述べられたのでありますが、泉さん、主税局長として、こういう問題についてどういう経路をたどってお考えになったのか、またどういう方法を立てたらいいかということを、主税局長の立場から率直な御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/2
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003・泉美之松
○泉政府委員 お話のように、給与所現者は源泉でその所得を把握され、他の所得者との間の負担に差があるということがよく言われるのでございます。今回の所得税法の改正におきましても、そういう点から給与所得控除の引き上げをはかることにいたしておるわけでございますが、それでもなお不十分だという御意見があるのでございます。それでは給与所得者の負担の軽減をはかるためにはどうすべきかということになりますと、先般中山税制調査会の会長は、給与所得者について何か別個の税制を考えたらどうかというような御意見があったのでございますが、私ども主税局といたしましては、中山会長の御意見ではございますが、具体的にそれではどういうふうにすべきかということになりますと、なかなか問題の多いところでございまして、私どもといたしましてはやはり給与所得控除というものをもっと引き上げる方向で考えるべきであって、給与所得者に対する税制を他の所得者に対する税制と別にするということは、技術上にもなかなか困難がございまして、やりにくいことではないかというふうに感じておるのでございます。給与所得控除の引き上げをもっと行なうという方向で今後検討したい、かように思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/3
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004・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 いろいろ問題がある、難点があると言われておりますが、いまの一般俸給生活者の低い層がどんなに困っておるか、生活費の中に相当食い込んでおるのです。だからこれは月々月給から差し引かれるから納められるようなものの、もしそれを月給から差し引かないで、三月の申告のようなときに出すとしたらどうなるだろうかということを考えますと、非常に気の毒な面があると思いますが、その点はどういうようにお考えになっておられるのか。
それからもう一つ、問題があると言われますが、やる意思はあるが、やる方法は全然ないのかどうかということについて、あなたは問題がむずかしいという点がどこにあるかを、ひとつ明示してもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/4
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005・泉美之松
○泉政府委員 中山会長のお話の給与所得者に対する税制を別にするというのが、具体的にどういうことであるか、会長はまだ具体的に明らかになされないのでございまして、私どもその方向につきましてはっきりわからないのでございますが、おそらく考え方として出てきますのは、たとえば分類所得税の形式を考えまして、かつて昭和十五年の税制改正で行ないましたように、分類所得税と総合所得税、こういう二つの所得税のかみ合わせでやっていく、そうして給与所得者につきましては、相当高額なものは別として、そうでないものについては分類所得税だけで済ますというのが、一つの考え方がと思うのでございます。ただそういたしますと、分類所得税の場合には比例税率でやっていくのが普通の考えでございまして、その場合に累進税率を適用することには難点があるのではないかというふうに考えられます。そこで昭和十五年以後の分類所得税の税制がとられたときの状態から見ますと、そういう点においてやはり比例税率だけでやっていくというところになかなか難点がありはしないか、そしてまたどこから以上を総合するという点についても、いろいろ難点がありはしないか。そういうことよりも、現在の総合所得税の考え方のもとにおいて、給与所得控除をもっと引き上げるという方向のほうがよりいいのではないか、かように考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/5
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006・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 それは取るほうにとっては簡単なことでございますが、しかし御承知のように中小企業者には納税組合、青色申告その他いろいろな方法で税を納めやすくする方法と同時に、いろいろ便宜が与えられておるわけでございます。ところが御承知のようにいまの給与所得者というのは、天引きのようになって、そのまま納付される関係で、徴税費というものがほとんどかからない。これを何とか何らかの方法でその面だけでもひとつ考えてやる意思はあるのかないのか、また絶対考えられないのかどうかということを、これはおそらく中山さんがあれくらい言われたことですから、今度の税調でも問題になると思います。われわれもこれは相当問題にすべきことだと考えておりますが、その点はどのようにお考えになっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/6
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007・泉美之松
○泉政府委員 お話のように給与所得者は、給与の支払いの際に源泉徴収されますので、徴税当局といたしましては徴税費があまりかからないという利点がある。その反面、農業所得者あるいは事業所得者は申告納税でございますので、その点給与所得者と違うという事情はお話のとおりでございます。そこで前々から申し上げておりますように、給与所得控除というのは、単に給与所得者の概算経費的な控除であるばかりでなく、給与所得が源泉で早めに徴収される、それによって納税が簡易に行なわれる、したがって利子分が他の事業所得者等と違うといったような面も含めて、給与所得控除を設けたわけでございます。そこで給与所得控除の中で、概算経費的な控除をどれくらいに見、利子部分はどれくらいに見というような中身を、いままではごちゃまぜにいたしておりますけれども、それを分析をいたしまして、その点から給与所得控除について考え方を明確にして、給与所得控除の引き上げをはかるというのが筋ではないかと私は思っております。いずれにいたしましても中山会長の御意見の表明がございましたので、今後税制調査会におきましてその点を十分検討してまいりたい、かように考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/7
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008・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 木村国税庁長官が見えましたからお尋ねするのでありますが、先日私が「とりてしやまん」のことをここで御説明いたしましたが、谷川さんの名前で「納税者のための税務行政」というのがやはり記事に出ました。私はこれも買って読みましたが、しかしせっかく谷川さんが勉強されて書かれたものでありますけれども、これは「とりてしやまん」の批評にはなっていない。納税の義務とか、いろいろなものをお書きになっておりますが、国税庁の立場だけで言えば、これは非常に都合のいいものでありますけれども、第三者から見れば、あなた方がこういうものを書いても、税金を納める人は必ずしもいまの税務署に対してそんなに好意は持っていない。金を取られることに対して好意を持っていないのは当然だとお考えになるかもしれませんけれども、ここにるるとして書いてあるような快く納めるというところには、なかなか道は遠いように考えられます。そこで木村長官も三年くらい長官をやっておられますが、あなたのほうで、国民が、喜んで税を納める人はありませんけれども、ある点までこのくらいならやむを得ないというような気持ちで納めるような、何らかの施策を講ずる必要があるのではないか。私も「とりてしやまん」という文の中には、何か含んだものがあるということはわかりますけれども、しかしこういうものが出ることによって、第三者としては税務署のほうに味方をせずに、書いたほうの人に味方をするような感じがするわけでありますが、その点については長官はどんなふうにお考えになっておりますか、承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/8
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009・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 エコノミストに掲載されました「とりしてやまん」という税務の誹謗記事でございますが、この前のときに佐藤委員の御質問に対して申し上げましたように、この記事に対して一々反駁を加えるということは、この記事の内容そのものが税務に対する公正なる批判、あるいは建設的なる意見ではなくて、誹謗記事としかわれわれには受け取られませんので、こういうものに対して反駁を加えるということは差し控えたい。そのかわり国税庁は一体何を考えておるか、行政の方針としてどういうことをやろうとしておるかという点を、赤裸々に記事として載せることを考えております。こういうことを私はお答えしたのでございます。ただいま御指摘になりましたように、確かに一般の納税者の方々が現在の税務行政に対して、あるいは税制に対して、完全に満足をして納税をせられておるかどうかということについては、私もただいま佐藤委員が仰せになったように考えております。それはなかなかそこまでは現在の段階ではいっていないということは私も感じております。したがって今後において、どういうふうにして納得をして納めていただくかという点につきましては、やはり税務の行政が公平適正に行なわれておる。自分だけがよけい納めて、隣の人、ほかの人は少なく納めておるのだという感じがなくなるように、すべての人が公平に公正に納めておるのだということを、実感をもって感じていただくということが、まず第一の要件であろうと私は思います。また国民、納税者の方々が、ほんとうに税の使途と申しますか、税が国民のために使われているのだという確信を持っていただくこと、こういう点が全部備わってこないというと、税に対する嫌悪感というものはなくならないのではないかというふうに感じておるわけであります。そこで国税庁といたしましては昨年からことしにかけまして、特に一般の小所得者の方々で、専門の税理士さんに相談をするだけの余裕のない方、そういう方に対する税務の相談なり、あるいは小企業経営者であって専門の経理マンを貫いておられないというような方々に対する記帳なり、決算なり、あるいは申告の指導というものを、昨年からことしにかけて推進をしていくというつもりで、現在仕事を進めているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/9
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010・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 この「とりてしやまん」の記事の中で、具体的な問題が出ておりましたことは、これは谷川総務課長から特別記事をもらいまして、その行き過ぎがあったということも了解ができました。しかしいまあなたが言われるような、あの記事がすべて誹謗記事だということについては、これは私たちが第三者として見ても、必ずしも誹謗だけとは言えない。やはり税務署に不信があるということは、これはもう国民一般が知っておるので、それだからこそ国税庁をいやがり、税務署をいやがるような空気が出るのだと思うのであります。この点はひとつ反省していただきたいと同時に、今度の予算で六千億に近い税の自然増収があるわけであります。そういうときに苛斂誅求と思われるような徴税方式が一面にある。これは私は具体的にここあそこというふうなことは言いませんけれども、相当の悲惨な状態もわれわれは見聞きいたすのでありますが、そういう点について木村長官たちは矛盾を感じられないか。一方においては六千億に近い自然増収があるというのに、一方においては納められぬような人にも、これは税務の方式できまったのだから当然じゃないか、できるというやり方は、どうしてもわれわれは第三者の立場に立って、非常に無理じゃないかというように感じておるのですが、この点については木村さんいろいろ冬税務署、各地方の国税局をはじめ、いろいろ総括しておられますから、そういうことのないようにといういろいろな指令や通達を出しておられるようでありますけれども、まだ今日といえども「とりてしやまん」というような、そういう思想と現実があるのじゃないか。あればこそ、エコノミストのような雑誌からも、そういうことがあるので私は記事として出たのではないかと思うのでありますが、ただ誹謗だというだけでは済まされないような、やはり国民全般にいまの税務署のやり方について不満な点が、私たちもいろいろ訴えられておるわけであります。少なくとも私たちが選挙区に帰るときには、十のうちの七つくらいまでが、税務署の税金の問題が絶えずあるわけでありまして、私は大蔵委員でありますから、税務署の署長に話せば、話にも乗ってくれますし、理解もしてくれますけれども、そういう私たちのほうへも言い切れない納税者があるのじゃないかということが心配されるわけであります。そういう点について私は、一方においては六千億に近い自然増収があるというのに、納められぬような人にもしいて法律をたてにとってやるということが、一体国民の納税意識を高めるに役立つか役立たないかというような判断は、これは長官、しておられると思うのですが、その点はどういうようにお考えになっておりますか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/10
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011・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 私もただいま佐藤委員がおっしゃったことには同感でございます。実はちょっとした例を申し上げますが、昨年北陸地方に豪雪がございまして、私のところに先日投書がまいっております。その投書は、中小企業の経営指導員の方からの投書でございますが、これはてまえみそになるようではなはだ恐縮ではございますが、この投書を読んでみますと、昨年豪雪のときに金沢局管内の、税務署の名前はちょっと私失念いたしましたが、署で、役所のうちでは一番先に豪雪地帯を見にきてくれたのは税務署だ、そうしてその際に延納あるいは納税の猶予その他の措置、あるいは経費として落とせるようなもの、特別にどういうものがあるかという指導をやってくれた。ところで自分たち経営の指導に当たっておる者は、そういうことを言ってくれたから、それに便乗して税を出し渋るというようなことがあってはならぬ。かえってそういう気持ちになって、それで指導に当たっては、実際の損害の額を適正に申告をしましょうということをみんなで申し合わせた、こういう手紙をいただいて、私は非常に感激をしたのでございます。やはり納税をしていただく以上は、そういう方々の実情というものをよく見て、そうしてしゃくし定木に法規を適用するということではなく、もちろん法規の外に逸脱することは許されませんが、法規の許す範囲内において、できるだけ納税者の言に耳を傾け、事情を察して、そうして実際の仕事をやっていくべきであるという感を持っておるのでございます。御承知のように、最近この委員会でもお取り上げになりましたように、現在中小企業の方がかなり金融難で困っておられるというような実情もございまして、特に延納とか、納税の猶予、あるいは還付の促進というようなことについては遺憾のないように、また法律を知らないがために、これらの恩典を受けられない人がないように、積極的に広報活動をやりなさいということを、各局署に対して通達をいたしておるのでございます。一般にやはりただいま御指摘になりましたように、税務署というものは苛斂誅求をするとか、あるいはこの「とりてしやまん」の記事に響いてございますような、いろいろな目でもって税務署を見ておられる、またわれわれもそういう目で見られておるということを常に感じておるのでございます。しかしながらこのエコノミストの記事は、ここに引用してございます税民連あるいは全商連、こういうような団体がどういう団体であるかということを御認識いただければ、この記事の内容がはたして正確であるかどうかということについても、御想像が願えるのではないかというふうに考えます。
それで予算によって見積もられた税収というものが膨大になるから、それをどうしても取るということになると、苛斂誅求という感じが出るのではないかという仰せでございますが、私たちは予算で見積もられたために、その額に拘束されて、どうしてもそれを取らなければいかぬのだというような感じでは仕事をしておりません。またそういう指導はいたしておりません。やはり税法を厳正に執行するという気持ちで指導をいたしておりますので、自然増収がどうなったから、その分だけは無理して取るのだという感じは絶対に持っておりませんし、そういう指導は絶対にやっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/11
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012・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 泉主税局長にお尋ねするのでありますが、あなたは主税局長の前に関東国税局長をやっておられましたから、いろいろな事情を知っておられると思うのであります。実際いまの給与所得者の中で税金を納められる階層、その最低の階層というのはどんな生活をしておるのか。あなたは現在日本でたった一人の主税局の局長として、いまはいろいろなそういう問題についても責任のある方でありますが、一方においては給与が上がると、給与の上がる関係で、大切なお金が税金に取られるということになっておるのですが、それらの人が生活できるかどうかということを、実際にあなたはお調べになったことがありますかどうか、これを承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/12
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013・泉美之松
○泉政府委員 お話の給与所得者の生活の実態ということになりますと、私も税務署の職員の実態ということでいろいろ調査もしましたし、またいろいろお聞きもいたしたのでございます。わが国の現在の所得税負担のもとにおいて、いろいろの問題がございます。一つは先般も申し上げたのでございますが、現在の基礎控除、給与所得控除の状態におきましては、学校、ことに高等学校を卒業いたしまして就職した者のうち、都会で就職しましてかなり初任給の高いところでは、学校を出てすぐに所得税を納めなければならないという事例が出ておるのでございます。この点につきましては大学へ行っている者と、それから大学へ行くことができなくて就職した者、その就職した者がすぐに所得税を納めなければならぬという状態になることは、問題ではないかと考えられます。この点につきましてはそういう点を考慮して、できるだけ基礎控除、給与所得控除を上げまして、学校を出てすぐに所得税を納めなければならぬ、しかも高等学校を出てすぐに納めなければならぬという状態を、できるだけなくすような方向で考えなければいかぬ、かように考えるのでございます。
またそういった独身者の場合でございますが、そういった独身者の場合は、まだいわば生活が親がかりである面があるわけでございますけれども、さらに結婚しようという段階になった年齢層、年齢からいたしまして二十五歳から三十歳くらいまでのところでございますが、ここのところでなかなか結婚するに足るだけの所得がない。しかも所得税は納めなければならぬというところに、やはり問題は相当あるのではないかという感じを持つのでございます。それとともに、よく世間で百円亭主というようなことを言われるのでございますが、結婚しておりましても所得の低い者、この階層におきましては、やはり生活が苦しい面があろうと思います。そういった点は、今後の所得税制を考えていく場合において十分問題にすべきではないか、かように感ずるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/13
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014・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 私たちが大学を出た昭和三年ごろには、御承知のようにわれわれサラリーマンはほとんど税金は取られなかった。そこで実はきょう質問をするので、きのう私の知った会社を二つばかり回ってきたのでございますが、結婚をしろとすすめましても、税金と収入の少ないのと両方で、なかなか結婚ができないということを、私は現場に行って伺ってきたのであります。いまあなたが申されたような、高等学校を出たくらいで税金を取られるような立場にある人たちに対して、反省をさせられるということも伺ったのでありますが、最初に中山税調会長が言われるようなことが起こるのは、現在大学を出て就職をして、そして少し俸給が上がれば、——いまの公務員などはボーナスが非常に安い。そういうことはわりかた少ないわりに、税金が引かれるのでありますけれども、民間会社ではボーナスを年に四つか五つは取るという立場から、ほとんど所得税がかかる形になっておるわけであります。それだから、結局現在の社会の通弊として、結婚がおくれてくる。同時に女の人が余る。余るからやはりつとめているということで、いまは御承知のように新しい人物難で、いまは非常にいい状態でありますけれども、私は少なくとも大学を出て二、三年たってお嫁をもらうくらいの生活をしている人に税金をかけるということは、少し苛酷じゃないか。最近の日本の物価高で、なかなか苦しい生活をしておるのじゃないかということを感ずるのでありますが、何といっても給与所得者というものはおとなしいし、それから団結をして税金をまけろというような反税闘争もないから、取りやすいところから取る。文句を言うやつからは取りにくいから、取りやすいやつから取るというふうな風潮が流れておるのじゃないかということを痛感するのであります。そういう点について何らかの窓をあけたり、国税庁、主税局も、こういう面ではこういう思いやりをやっておるというような案を考える必要があるのじゃないか。泉主税局長は取るのが商売でありますから、そんな手には乗らないということを言われるかもしれぬが、これは木村長官にもお願いしたいのでありますが、もう少しゆとりのある、思いやりのある税法を考えたり、また税の徴収をすれば、国税庁を酷税庁と非難されることはないだろう。国民の大部分は税金の必要なことは知っておりますけれども、私は自分たちが大学を出た時分と今日とを考えますと、あまりに隔たりが多いことを痛感してお伺いするのでありますが、そういう思いやりというものがなければ、私は谷川さんが幾らこういうものを書いても、国民は乗ってこないと思うのでありますが、そういう点については長官、主税局長、どういうふうにお考えでありますか、思いやりの点について……。これは簡単なことばではありませんけれども、もう少し考える必要があるのじゃないか。公務員のベースアップというものがあるために、上がった分だけは税金に取られるような、そういう矛盾も多々あるように聞いております。この点はどういうふうにお考えになっておりますか。ひとつ泉さんと長官に御回答を求めたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/14
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015・泉美之松
○泉政府委員 お話の税制を立案するに探しましても、思いやりのある気持ちでやっていくべきだという御意見、ごもっともでございます。私たちもただ税収をあげるだけというつもりでやっておるわけではございません。ただ税の場合におきましては、国民と徴税当局との間に、取るのだ、取られるのだというような観念があるのは、いけないことだと私は思うのであります。やはり税は納めるのだ。取る、取られるという観念でなしに、私はやっていかなければならないものと思うのでございます。したがいまして税制の企画立案にあたりましても、お話のような思いやりのある気持ちをできるだけ盛り込んでいきたいと思いますが、そのためにはやはり税制だけでなしに、歳出面におきましても、できるだけ歳出を効率的に使うようにいたしまして、歳出の膨張をできるだけ避ける。そうしないと減税もなかなかできにくい。減税をやる際には、いまお話のような思いやりのある気持ちをできるだけ生かしていくという方向でなければならぬ、かように感ずるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/15
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016・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 私もただいま佐藤委員がおっしゃったことには全く同感でございます。執行面といたしましては、やはりできるだけ税制面で低所得層に対する思いやりのある配慮というものがあってしかるべきであり、またそれがなければ執行面でもいつまでたっても税は過酷だという感じを持たれることは、これはもう必然でございまして、私はやはり税制面のそういう配慮が、ぜひわれわれの立場においても望ましいと考えております。ただ執行面といたしましては、現在の税法のもとにおいて、先ほど申し上げましたように許される限りの納税者に対する特典、これを一部の人が心得ておる、ことに職業である税理士さんに相談のできる余裕のあるそういう人たちだけが税法の特典を心得ておる、あるいは理解するということでは困るのでございまして、そういう面ではこのむずかしい税法をすべての人に理解してもらうということは、これはとうてい望むことはできませんけれども、しかしながら何らかの形で税務官庁なりあるいは民間の協力団体、そういうような方々のお力もかりまして、執行面でも十分思いやりの感じを生かしていく、そういう考えを基本にして税務の執行に当たるということには、私は全く同感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/16
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017・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 また泉さんにお伺いするのでありますが、今年度は政府が減税をうたっておるわけでありますが、最近における国民所得に対する租税負担率は、三十六年が二二・一%、三十七年が二一・八%、三十八年の補正後が二一・五%、三十九年度の予算では二二・二%となっております。これは三十七年以降一時低下しておったものが 来年度の予算では三十六年よりさらに重くなっておる、こういう結果になりますが、これはどういうように解釈してよろしゅうございますか。減税より増税になっておる率になりますが、この点を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/17
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018・泉美之松
○泉政府委員 お話のように国民所得に対する国税、地方税を合わせました租税負担率は、三十六年の二二・一に対しまして、三十七年二一・八と下がり、三十八年度は二一・五と下がったのでございますが、それが三十九年度の見込みにおきましては二二・八になるところを減税の結果、二二・二ということに相なっておるわけでございます。ただこの国民所得に対する租税負担率と申しますのは、国民の負担率をはかる上の一つの指標でございまして、この率がふえたから増税だとか、この率が下がったから減税だということは、私なかなか言いにくいと思うのでございまして、税法上減税と申しますのは、もちろん税法上の負担の軽減でございますので、今回行なうような改正による減税ということは、事実として減税であると思うのでございます。ただそういう減税を行ないます場合に、他方において所得の増加があり、あるいは物価の上界があります場合に、実質的な負担の軽減になる方向で考えなければならないというお話と考えますと、それはまことに仰せのとおりでございまして、税制の企画立案の際におきましても、できるだけそういう気持ちで実質的な負担の軽減が行なわれるようにすべきだという感じを持っておりまして、今回の場合におきましても所得の低い者につきましては、所得は上がりましても物価騰貴による影響を遮断して、実質的な軽減がはかられるようにいたしておるのであります。したがいまして国民所得に対する租税負担率が上がったから、すぐに税負担が増税になったのだというふうに考えるべきものではないと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/18
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019・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 私は泉局長に、あなたが国税局長をやっておられたときにも直接部下を知っておられるので、この人たちがどんな——あなたの前では言わぬかもしれませんけれども、最低の税金を納める立場の人はどんな苦しい生活をしておられるかということについていろいろ質問したのでありますが、少なくともあなたのほうではいろいろな理屈をうまくつくる。結局国民の生活というものをそう一々考えておったのでは、主税局長はつとまらぬと思いますけれども、しかし私は国民のほんとうの租税負担率はどのくらいだといえば、この間の中山さんも大体二〇%程度が日本の税金からいわれれば妥当な税率だ、こういうふうに言われております。そこで一体今度のように、またあなたがいろいろ理屈を言われますけれども、とにかく表向きには三十六年度よりも高くなっておるというこの現実、これをどういうように御説明していただけるのか。一体、あなたは都合のいい数字を並べて、率は上がってもいいじゃないかということを言われますけれども、私たちは日本の税率というのは国民所得の大体二〇%以下でやらなければ、それ以上は過酷だというように考えておりますが、あなたはどういうお考でありますか、伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/19
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020・泉美之松
○泉政府委員 中山会長が先般のお話の際申されましたのは、三十五年のときにまあそれまでの税負担率を考慮して、国民所得に対する租税負担率は二〇%程度が適当であるというふうなお話をなさったのでございますが、そのときにも中山会長がおっしゃいましたように、二〇%程度ということでございまして、二〇%というきまった、確定した率ではないのであります。二〇%をあまり多く出ない程度という意味と解しております。もちろんこれは佐藤委員御承知のとおり国民所得、特に一人当たり国民所得がふえますと、租税負担率が上がっていくということは、欧米各国の事情から見ましても、各国の国民所得に対する租税負担率は三〇%とか、二八%、あるいは二六%、イタリアでさえ二六%というような事情にございますので、そういう点から考えますと、国民所得がふえていけば、租税負担率がある程度上昇する傾向にあるのは、まあ各国の事例に見られるところだと思うのでございます。しかしわが国の国民所得、これは佐藤委員御承知のとおり、所得倍増計画が立てられました三十六年以降、急激に国民所得が増加いたしております。そういった関係から国民所得に対する租税負担率は上がってきておるのでございますが、しかしさりとてこれが上がるということはあまり好ましくないことは、仰せのとおりでございます。したがいまして私どもとしてもそういう点を考慮しつつ、毎年減税につとめていくという心がまえを持っておるわけでございます。ただ本年の場合には御承知のとおり前年度剰余金が千九百八十八億も減少するということからいたしまして、自然増収としては六千八百二十六億出ましても、前年度剰余金の受け入れ減ということから、実質的な減税財源としては四千七百億くらいしかない。そこの中で減税をやっていくというために、このような結果になっておるのでございます。今後国民所得が増大していくことを考えますと、まあ国民所得に対する税負担率が上がりぎみにあることは否定できないと思います。その間においてできるだけ二〇%程度のラインをあまりくずさないように、毎年減税につとめていくべきものと、かように考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/20
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021・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 泉さん、外国の例をあげられますけれども、イギリスとか、西ドイツとか、フランスというところと日本はだいぶ事情が違いますし、イタリアでさえと言われますけれども、イタリアともいろいろな事情が異なっておりますから、そういう外国の例をここでとらえましても私たちは納得がいかないということと、もう一つは給与所得者に対しましていろいろ税調でも問題になりまして、所得控除の限度額を十五万円にしておったにもかかわらず、今回の改正案ではこれを一万円削っております。それがためにこの点に関する減収額は、答申案よりも約百億に近い金が少なくなって、給与所得が多くなっておりますが、その点については、あなたとしてはどういうふうにお考えになりますか、伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/21
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022・泉美之松
○泉政府委員 税制調査会の給与所得控除の引き上げに関する答申のうち、御承知のとおり定額控除の一万円引き上げというのは政府案にも実施したのでございますが、定額控除額の、収入金額五十万円まで二〇%控除という点と、それから最高限度十二万円を十五万円に引き上げるという点を一万円削って十四万円にとどめた、この二点によりまして九十四億、前年度におきまして税制調査会の答申より今回の政府案は減少いたしておるのでございます。その内訳を申し上げますと、五十万円まで二〇%にするほうで約六十億、それから最高限度十五万円を十四万円にとどめたことによって約三十四億、こういう減少になっておるのでございます。この点につきましては、私どもといたしましては減税財源がもっとあればそれができたと思われるのでございますが、最高限度の十五万円の点につきましては、この前もお答えをいたしましたように、定額の部分が一万円しか引き上げにならぬのを、上のほうで三万円引き上げるということについてはいかがであろうかというような考え方から、二万円だけ引き上げることにいたしまして、一万円削ったというのが実情でございます。この点につきましては先ほど申し上げましたように、今後給与所得控除につきまして検討を加えまして、定額部分と合わせて引き上げることを検討すべきものだというふうに考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/22
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023・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 あとで平林委員からもこの問題について質問されると思うのでありまするが、あまり詳しいことを言いませんけれども、私はあなたに不満を持つのは、この百億円というのが一体どういうふうに織り込まれたかといいますと、答申案に全然なかったところの配当軽課措置の拡大等の数字とちょうど見合っておるのであります。つまり給与所得者のほうを犠牲にして、そうしてこの配当軽課措置のほうに回した。結局金持ちのほうに同情して、弱いものによけいかけるというような、まことに泉さんにしては人情のないやり方のように私は考えておるのであります。大体私はきょうも給与所得者のことについていろいろ御説明を求めたわけでありますけれども、そういう点では片手落ちだと思う。答申案のほうのいいところだけはとるけれども、そういうような給与所得者は、弱いものは文句を言わないから、弱いものから税金をよけい取ってやれというような心持ちが、ここにあらわれておる。この百億の減税というものは給与所得者にとっては、全体の数からいえばわずかなものであるけれども、そのやり方については、今度の税調にせっかく案が出ておるものを、わざわざそういうようなあなた方の、これは大臣にも聞いたほうがいいのでありますけれども、私はそういう点で政府のやり方は弱いものいじめだ、どうせ給与所得者というのは大ぜいだけれども黙っておるのだから、そうして向こうに回したのだと思われますけれども、その点はどういうふうに御説明していただけますか、お伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/23
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024・泉美之松
○泉政府委員 お話のように今回の税制改正案におきましては、税制調査会の答申事項のうち平年度九十四億を、初年度七十九億を削りまして、その財源をもって税制調査会の答申になかった事項で、租税特別措置をいろいろ実施することになっております。この点につきましては中山税制調査会長が先般申されましたように、私どもとしてはできればそういった租税特別措置をやらないか、あるいはやるにしても税制調査会の答申をやった上で、その上でできればよかったというふうに感ずるのでございます。ただお話のように租税特別措置がいろいろ今回とられましたのは、開放経済体制に向かうわが国の現状として、そういった租税特別措置を講ずべしだという要望が非常に強い、こういった以下の経済情勢からやむを得なかったものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/24
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025・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 ちょうど圧力団体に押されたようなものでありますが、これは政治的になりますから、泉さんを責めてもしかたがないと思うのでありますが、私たちは給与所得者に対して納得ができない。やはり弱い者いじめをやっているというような反証になると思うのであります。
それから今回の改正案で、寄付金控除の引き上げをやっておりますが、この制度が現在教育や科学の振興などにどのくらい影響を与えておるか、私は私学振興の特別委員長を党でやっておりますが、私学の寄付金に対しては免除がない。公立の大学に寄付をしたときには免税措置をとって、私学に対しては免税措置をとらぬような片手落ちのことがあるわけであります。私学の寄付に対しては特定のものに限ってだけは与えられておりますけれども、これは外国の例を引けば、アメリカ、イギリスなどでは私学の寄付金に対しては免除を全部している。私学の問題については特別会計の法案が出ますから、そのときにお伺いしようと思っておりますが、非常に私学の経営がむずかしい。膨大な月謝値上げという問題が出てきて、学生運動の発展する可能性もありますが、そういうところにはなかなかやらないでおいて、科学振興というような名前でおやりになりますことはけっこうだけれども、一体どこでどういうようにしてやられるのか、どういうことになっているのか、一体どれほどの効果があるかということについて、この際泉さんに伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/25
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026・泉美之松
○泉政府委員 学校の建設あるいは教育施設の拡充のために、寄付金を募集いたします際におきましては、お話のように国立の学校の場合におきましては、法人税法に基づきます告示におきまして、そういった寄付金は国立、道府県立及び市町村立の場合におきましては、損金算入をいたします。それから私立学校の場合におきましては、二つ方法があるわけでございます。一つはそういった教育のための場合におきましては、一般の資本金の千分の二・五、所得の百分の二・五という寄付金の限度額と相当額まで、一般の寄付金の限度額の外でそれと同額まで寄付した場合に、損金に算入するという道が開かれておるのでございます。しかし実際におきましては、会社はそういう寄付金だからといっても、なかなか番付をしたがらない、そういうことから、寄付金についてそれが損金に算入されるというお墨つきと申しますか、そういうものを持っておいでにならなければ私のほうは寄付をしませんといったような、寄付を断わる一つの口実に使われておるようでございます。そこで私立学校の場合におきましては、大蔵大臣の指定によりまして告示を出しまして、それに基づきまして募集されました寄付金につきましては、損金算入を認めるということにいたしておるのでございます。この指定につきましては、もちろん学校のことでございますので、申請があればそれをできるだけ認めるようにいたしておるのでございます。ただ学校によりまして相当大きな計画を立てられますと、なかなかそれが集まりにくいというような事情がございまして、私どもの現在の取り扱いといたしましては、一年一年それを更新いたしまして、三回までは更新を認めるけれども、四回までということになりますと、だらだらやっておったのではなかなか寄付金が集まらないので、一ぺん一年以上ぐらい休んでから募集をまた開始するというようにされたほうが、かえって寄付金が集まりやすいのではないかというふうにいたしておるのでございます。
ところで、個人の場合の寄付金控除につきましては、いままで所得の一〇%に限っておったのでございますが、その実情を見ますと、所得の一〇%というのではいかにも低過ぎる。アメリカなんかにおきましても、所得の二〇%まで認めておるというような関係からいたしまして、今度の改正におきまして、あれは昭和三十七年に初めて認めた制度でございますので、限度が低かったというふうにも考えられますので、所得の二〇%までの寄付金を認めようということにいたしておるのでございます。この寄付金につきましては、個人のほうで見ますと、大体一年間そういった寄付が十五億程度あるように見受けられるのでございます。もちろん寄付金といたしましては、実はこのほかによくいわれまするPTAの会費、これは寄付みたいにとられる、あるいはお祭りなんかのときの寄付、こういったものもあろうかと思います。したがいまして、こういった寄付金控除の対象にならないいろいろな寄付もあろうかと思いますが、現在におきましては私どもの見るところでは、個人の寄付金控除の対象になっておるものとしては、その程度の金額であるというふうに見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/26
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027・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 学校の法案が出るときにまたお伺いしますが、もう一つ泉さんに伺っておきたいのは、戦争の前まで直接税が大体三五%、間接税が六五%というようなぐあいに税体系がなってきておりました。ところが戦後には御承知のように直接税が六〇%、間接税が四〇%ということになっております。これは一体直接税と間接税の比率をどの程度にやったら妥当かということについて、お考えになったことがありますか。また政府はどのような考えを持っておられるのか、これも伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/27
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028・泉美之松
○泉政府委員 お話のように、昭和九年−十一年当時におきましては、直接税が三五%で間接税が六五%であったわけでございます。これはだんだんと戦時中、直接税の割合がふえてまいりましたその結果、だんだんと面接税の比率が上がりまして、今日におきましては直接税の割合が五八%程度、間接税の割合が四一%余り、こういったような比率になっております。そこで税制の考え方として、戦前のように間接税の比率を上げるべきかどうかということになりますと、わが国の税制としては、間接税の点については御承知のように逆進的傾向がございますので、間接税をあまり上げるということは、国民に対する税負担という観点から見ますと適当でないのではないか。やはり直接税のほうがどうしても所得に対する累進効果ということから見ると、間接税のような逆進的な効果がないだけにいいものだというふうに考えられます。しかし直接税の割合をあまり上げるということになりますと、先ほど申し上げましたように、低額所得者のほうからも所得税を納めてもらわなければならないということになりまして、所得税の負担感というものがきわめて高くなります。したがって現状程度の、直接税が六〇%をこえない程度で間接税が四〇%余り、こういった姿でやっていくのが、当面の租税政策としては適当ではないかというふうに考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/28
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029・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 最後に、租税特別措置の問題で伺いますが、税調の答申案になかったもので、改正の中に租税特別措置を大きく織り込まれたのが大体十五くらいございます。これは全部御説明をしていただくとだいぶ時間がかかりますので、一つの例をあげてお伺いするのであります。
配当軽課そのものが特例中の特例のようになっております。どういう意味でこういうことをおやりになったか。まだたくさんございますけれども、これだけ一つ泉さんに伺っておきたいと思います。どういう意味でなっておるか、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/29
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030・泉美之松
○泉政府委員 配当軽課につきましては、佐藤委員御承知のとおり、昭和三十六年の税制改正の際に、わが国の税制によりますと、借り入れ金によって資金を調達した場合には、その利子が損金に算入される。しかし増資によって設備を拡張いたしました場合には、その増資分に対する配当は損金に算入されない。そのためにわが国の自己資本比率がどうしても低下して、借り入れ金によってやっていったほうが企業としては楽だということになりますので、できるだけ借り入れ金による場合と、増資による場合との企業の資本コストの差を少なくしようという見地から、いろいろ問題になったのでございます。しかし御承知のようにドイツは留保に対して五一%、配当に対して一五%というような、かなり大きな差を設けておるのでございますが、わが国の場合には昭和二十五年のシャウプ勧告に基づく税制改正によりまして、配当控除あるいは法人間配当の場合の益金不算入の措置がとられております。そこで配当軽課をいたしますと、本来配当控除とかあるいは益金不算入ということは、すでに法人税が課税されるから、それを受け取った株主の場合には二重課税を調整しようという点からできておるものでございますので、配当に対して税率を軽くいたしますと、理論上どうしても配当控除率なりあるいは益金不算入割合というものを下げなければならないということになるわけでございます。そこで昭和三十六年の税制改正にあたりましては、そういった両面のことを考えまして、配当軽課を約四分の一、つまり三八%の税率を一〇%軽減いたしまして、二八%にする。反面、配当控除率を二〇%から一五%に四分の一低くする、配当の益金不算入割合も一〇〇%から七五%に四分の一圧縮する、こういう措置をとったのでございます。ところで、それではまだ借り入れ金の場合と、増資の場合との資本コストのバランスが十分に是正されておりません。そこで配当軽課を今後さらに進めるのか、あるいは配当軽課というやり方でなしに、むしろ配当の一定率は損金算入を認めるか、そのいずれかの方向でやるかということを、税制調査会においていろいろ検討いたしておるのでございますが、税制調査会におきましては、まだその点の検討が十分に行なわれませんので、今回の答申にはなかったのでございます。しかし政府の税制改正におきましては、開放経済体制に向かうわが国企業のそういった借り入れ金と増資の場合の資本コストの違いというものを考慮いたしまして、できるだけ配当軽課を進めたい。他方、しかし配当軽課を行なうことによって、配当控除卒なりあるいは益金不算入割合を下げるということになりますと、投資家、特に機関投資家の不利益になるということからいたしまして、配当控除率なり益金不算入割合を下げないで、どの程度配当軽課を行なうかということが論議されまして、結果的に配当控除率あるいは益金不算入割合を変更しないでやれる限度として、二%の軽減をするということになったものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/30
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031・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 最後に要望しておきますが、その特別措置のことについておそらく堀委員からも質問があると思いますが、きょうは私は大体八三%を占める給与所得者の税の軽減についていろいろ質問したのでありますが、税調の中山会長もそういう意思でありますし、それからおそらく泉さん自身も身近な問題としていろいろとお考えになっておるようでありますが、どうかひとつ給与所得者、特に下のほうの所得者に対しては、一段の考慮を伝われて、生活の苦しい中を税金を納めさせるような、そういうことのないように配慮していただきたいことを要望しておきまして、私の質疑は終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/31
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032・山中貞則
○山中委員長 平林剛君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/32
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033・平林剛
○平林委員 私は租税特別措置法の改正につきまして、いろいろ質問の通告はいたしておきましたけれども、一時までにやめなければならぬので、あまり時間がありません。だから残った問題については、いずれ大蔵大臣がお見えになったときに締めくくりの質問のときでもやらしていただくことにいたしまして、きょうは主税局長に資料の点から質問を始めたいと思うのであります。
〔委員長退席、原田委員長代理着席〕
先般租税特別措置及びその減収額一覧について、大蔵省の調査による提出がございましたけれども、これによりますと、貯蓄の奨励による三十九年度減収額が千二百七億、内部留保の充実による租税特別措置が三百四億、技術の振興及び設備の近代化による減収額二百二億、産業の助成が三百十一億、その他合計いたしまして二千九十八億円とございます。ただこの中で、私はどうも前々から取り扱い方として適当でないのじゃないかと思いますのは、交際費課税の特例でございます。その他の中に含まれて、増収百三十三億円とございまして、その結果合計が二千九十八億円になっておるわけでございます。もしこの交際費課税の特例の増収を除けば、全般で三十九年度の特別措置の減収額は二千二百三十一億円になるべきところでございますが、これがあるために二千九十八億円と相なるわけであります。これをどうしてこの増収のほうにあげて取り扱うのか、つまり交際費課税の特例を増収百三十三億円として、しかも租税特別措置及びその減収額一覧の中に加えて出すのか、この点が私は疑問に思うのでございまして、その理由を御説明いただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/33
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034・泉美之松
○泉政府委員 交際費課税の特例は、御承知のとおり交際費は会社が交際費として使用したものでございまして、本来ならば損金に算入すべきものでございます。もちろん交際費と認められないものにつきましては、損金算入しないことは当然でございますが、交際費として確定しました金額は、損金に算入するのが税制のたてまえになっておるわけでございます。しかしながら最近の交際費の支出の状況を見ますと、かなり社用消費的な面が多うございます。そこでこれにつきましては、昭和二十九年以降その交際費支出額のうち、一定金額は損金に算入しないということにいたしまして、今日にまいっておるわけでございます。ただその一定金額を損金に算入しないやり方につきましては、その間いろいろの変遷がございました。現在におきましては御承知のとおり、所得の年所得三百万円と資本金額の千分の一との合計額をこえる交際費支出額のうちの二〇%は、損金に算入しないということになっておるのでございます。そこで従来から租税特別措置法による減収額を計算いたします場合におきましては、これによる増収、租税特別措置のうちで、この交際費課税の特例だけが唯一の増収措置でございます。あとは全部減収措置になっておるわけでございます。そこでそれを計上いたしまして、差し引いて、全体の租税特別措置による減収額を計算することにいたしておるのでございます。ただお話のように、これは別掲すべきだ。これを差し引かない前で租税特別措置による減収額を出して、そこから交際費課税の特例による増収は別にこれだけございますということにすべきだという御意見ならば、そういうやり方も一つのやり方であろうと思います。従来ずっとこうやってきておりましたので、それを踏襲したというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/34
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035・平林剛
○平林委員 私の言いたいところも、最後にあなたが答弁なさった点なんです。大体租税特別措置法の交際費の課税の特例のうたい方だけは、他の特別措置に比較してあべこべのうたい方をしておるわけです。つまり日本の各会社、法人が使用した交際費の中で、一定の基準を設けて損金に算入するものと算入しないものというふうに区分をして、今回の改正によれば百三十三億円増収になります。つまりそれだけ損金に算入を認めないことになるから増収になるというのが、今回の租税特別措置法の交際費課税に対する特例になっているわけです。ですからそういう意味からいくと、逆に言えば相当数が損金に算入しているわけですね。損金に算入することが当然であるという立場に立てば別ですけれども、損金に算入してやるということがむしろ税制の特別措置であるとすれば、これは逆にうたわれてこなくちゃいけないわけです。私は、一般の租税特別措置の減収とはいささか趣を異にするものである。ですからこの中に加えて提出をするというのは、実際の租税特別措置による減収額の実態をつかむのを見誤らせるもとになるのじゃないか、こう思うのです。百三十三億円増収というのは、損金に算入されない額がこれだけふえました、その結果増収になりますということになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/35
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036・泉美之松
○泉政府委員 お話のように、交際費は相当多額に支出されておるのでございますが、そのうち今度の改正では、年所得四百万円と資本金額の千分の二・五の合計額をこえる交際費支出額のうちの三〇%は損金に算入しないということになりますので、その三〇%部分を損金に算入しないことによる増収額が、昭和三十九年度におきまして百三十三億と見込まれるということでございます。したがいまして、従来のとおり二〇%損金に算入しないことによる増収額の上に、今度の措置が加わるのでございまして、今度の措置におきまして損金に算入しないことによる増収額としては、予算書にありますように平年度二十三億、初年度五億七千七百万円でございます。百三十三億というのはいままでの分がございますので、その分が下積みになりまして、全体として見れば損金に算入しないことによる増収額が百三十三億になるという数字でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/36
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037・平林剛
○平林委員 私は主張としては、今後政府が租税特別措置の減収額の資料を提出するときは別ワクにして、備考として交際費課税の特例としてこうなっておるということを明らかにする必要があるのではないか、かねてそう思っておるのであります。昭和三十九年度にこの交際費の課税の特例が創設せられましてから、毎年のように六十億とか七十五億とかいって中に入れられておる。だから他の特別措置は、それだけしょっちゅう少な目にお話のように提出をされるわけであります。こういうことからいって私は、いささか性格を異にするものであるから、むしろ別ワクにして、その実態を国民の前に明らかにする必要がある、こういう考えを持っておるので、できればそういう取り扱いをしてもらいたいと思っております。
ところで、三十七年度の税務統計をちょっと読んでみますと、これは税制調査会の資料にも書いてございますけれども、昭和三十七年度の交際費の中で損金に算入しなかったものは、三十七億円という資料があるのです。ところが実際に政府が提出をしたいろいろな資料によりますと、こう書いてないのです。損金に算入せざるものを例年こうして減収額の増として見ておるとすれば、何かそこに数字の大きな開きがあるように感ぜられたものでございますから、これはどういうふうに解釈したらいいかということをお尋ねしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/37
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038・泉美之松
○泉政府委員 お話のように、三十七年度の税務統計に基づきますと、その後精査したところによりますと、利益を計上している法人におきまして交際収支出額のうち、この規定によりまして損金算入を否認されたものが二百九十九億、それから欠損会社で否認されましたものが三十九億、合わせまして三百三十八億損金算入を否認されておるわけでございます。損金算入を否認されますと、税額としましては三百三十八億というのは損金に算入しなかった分でございまして、その税率をかけて出しますと、いまのように減収額としては百三十三億、もっともこの数字は平年度計算の数字でございますが、そうなるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/38
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039・平林剛
○平林委員 私は、法人の交際費の課税に関する特例の規定、つまり六十二条が他の特別措置と反対に、損金に算入しないことが特別措置という形になっておるので、ちょっと一般の考えと別なような形になる。むしろこれは逆にいえば、今度でも一つの会社について四百万円とか、資本金について千分の二・五をこえるものの三〇%ですか、これは損金に算入しないというのですが、逆にいえば四百万円と千分の二・五をこえる金額の七〇%は損金に算入するということなんですね。だから交際費そのものをどういうふうに取り扱うか、法人だけに特に損金算入を認めるということが特別措置なのか、あるいは一定の基準をしないほうが特別措置なのかというのは、これは議論のあれがありますけれども、法律があべこべに書いてあるからこういう取り扱いになると思うのです。ただ一般の個人から見ると、交際費は別に特例を受けておるわけではないのです。われわれでも、またサラリーマンでも、一般の国民でも、源泉徴収を受けた残りの分で交際費を支出をしておるわけです。隣のうちに不幸があっても、近所に何かおめでたいことがあっても、支出する交際費はすべて源泉徴収を受けた残りからやっておるわけでありますから、法人だけが交際費について課税の特例を受けるということは、むしろ損金に算入するものが特別措置といってもいいのじゃないか。限度額は私はあると思います。限度額はつくることはいいと思います。たとえば一般の勤労者でも、勤労所得控除だとか、あるいは扶養控除だとか、いろいろな控除がありますから、それに相応する部分については損金に算入してやってもいいという比較対照はできるかもしれませんけれども、どうも程度がこえておるということを考えますと、いきなり損金に算入することがあたりまえで、算入しないのが特別措置だという解釈は、あべこべじゃないかという見解を私は持っておるわけであります。
そこでこの法人の交際費の損金不算入の解釈のしかたは、むしろあべこべに規定するほうが適当ではないかという見方を私はしておるわけですが、この際、最近の法人の交際費の状況についてどうなっておるか、いま御説明がございましたように、改正によって損金に算入しないもの総体において、増収として百三十三億円になったという御説明がございましたけれども、もととなる交際費、最近の法人の交際獲が非常に膨大なものになっておると言われましたけれど、実際にはどのくらいの交際費が支出をされておるのでございましょうか、これを明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/39
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040・泉美之松
○泉政府委員 おことばではございますが、なるほど給与所得者の場合におきましては、交際費支出は別段経費という控除がございません関係もございますが、所得税を払った後の所得から交際費を支出することになるわけです。個人の場合におきましても、事業を経営しておるものの場合におきましては、事業経営上必要な交際費は、損金算入を認めておるのでございます。法人の場合におきましても、法人の出した交際費につきましては、いろいろ論議はございますけれども、やはり法人として経営をやっていく上において必要な交際費と認められますので、その支出をしますと、会社の外に出ていったわけでございますから、本来からいえば、法人税の所得を計算する場合に、総益金から総損失を差し引くということになれば、当然その損失の科目に計上されるべきものというふうになるわけでございます。しかし法人の実態を見ますと、その交際費の中にはどうも社用的な交際費が相当多いという点からいたしますと、全額損金算入するのは適当ではないのではないかということからいたしまして、損金算入の限度を設けております。これは各国のやり方を見ますと、いろいろなやり方があるわけであります。一つは交際費として認めない費用をきめまして、そういったものは損金に算入しないのだ。たとえばアメリカでよく話題になることでございますが、法人が会議を催す、そのときに欧米流のやり方でありますと、御主人が会議に出席すると同時に、奥さんも連れていく。しかし奥さんの部分は交際費には認めないのだ、本人の分だけが交際費なのだというようなやり方もございます。各国の事例でも分かれておるようでございますが、わが国におきましては昭和三十六年以降、一々あまり中身に立ち入って検討するのは容易でございませんので、一定の基準を設けまして、先ほど申し上げましたように年所得三百万円とそれから資本金額の千分の一とその合計額をこえる交際費出額については、二〇%は損金に入れませんよというやり方をやってきておるのでございます。しかしこれにつきましてもいろいろの批判がございます。そこでいままでの批判を見ますと、二〇%だけ損金に算入されない、税負担としてはその一割にしかすぎないから、交際費をどんどん出したらという意向もあるやに聞くのでございます。そこで今度は交際費不算入割合を二〇%に引き上げる。しかしそうしますと中小の法人の場合に、御承知のとおり前から物価も上がってきておることでもございます。したがって交際費の支出額もふえておることを考えまして、中小の場合には三百万円を四百万円に引き上げる。それから大法人の場合にはその百万円の引き上げは大して効果がございませんので、資本金額の千分の一を千分の二・五に引き上げるということにいたしたのでございます。
お尋ねの交際費支出額につきましては、三十七年度の実績を見ますと、利益法人の出しております交際費支出額が三千二百九億、欠損法人の支出いたしております交際費支出額が五百七十七億、合わせまして三千七百八十六億、約四千億に近い交際費が支出されておると認められるのでございます。そのうち損金に算入されなかったのは、欠損法人のほうは否認されました額はごくわずかで、先ほど申し上げたように三十九億、利益法人のほうでは二百九十九億、合わせまして三百三十八億が損金に算入されなかったという数字になっております。交際費支出額の全体に対しましては、否認額は一割足らずという額になっておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/40
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041・平林剛
○平林委員 ただいまお話がありました利益法人三千二百九億、欠損法人五百七十七億、合計して三千七百八十六億円という交際費は昭和三十七年度ですね。もっと近いものはわかりませんか。三十八年度あたりのものはまだ出ておりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/41
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042・泉美之松
○泉政府委員 いま申し上げました昭和三十七年度の税務統計の数字が一番新しい数字でございまして、三十八年度の数字は、今年の十一月か十二月ごろにならぬと集まらないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/42
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043・平林剛
○平林委員 おそらく三十八年度は、この傾向から見ますというと四千五、六百億円になっているのじゃないかと思われるのです。なぜかというと、あなた首をひねったけれども、昭和三十五年当時は資本金一千万円以上の計算ですが、千億ないし千二百億円ですよ。もしかりに全法人にすれば、三十五年当時、おそらく二千億から二千五百億円くらいと見ていいのじゃないですか。資本金一千万で計算をしますと従来五〇%、五〇%くらいの区分に分かれておりますから、三十五年当時二千億ないし二千五百億円。三十七年度になりますと、いまお話のとおりに三千七百八十六億円、こうなりますから、おそらく昭和三十八年度はこの統計上からながめまして、四千五百億円くらいにはなっているのじゃないか。あまりにも大きい交際費の支出の状況だと考えられるのですけれども、これはどうしても何らかの規制をしなければならぬ。国税局の方おいでになると思うのですけれども、大体資本金一千方円くらいの法人は、どのくらいの交際費を使われておりますか。あるいはまた資本金一億とか十億というように区分して、大体の見当はどのくらいだというような資料なり、実際の徴税にあたっての感触がございましたら、御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/43
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044・泉美之松
○泉政府委員 先ほど三十七年度の交際費の支出額を申し上げましたが、このうち利益法人の三千二百九億のうち、資本金一千万円未満の支出いたしております交際費は千五宵七十六億でございます。交際費の支出ということは、景気の動向ともいろいろ関係いたしますので、景気があまりよくないときは会社の経理方針として、交際費の支出を締めるということになります。お話のように三十八年度の状況から見ますと、それほど増加しないのではないか、御承知のような景気の状況でございますので、そういうふうに見ておりますが、いずれにいたしましても三千七百八十六億、したがって四千億に近いという交際費の支出額は、相当多額な支出であると思っております。そこで資本金の少ない法人について、どの程度の交際費支出額になっておるかという点でございますが、調査したところによりますと、これは税務署所管と国税局所管との違いのあれになっておりますが、資本金二千万円未満のところで見ますと、交際費支出額のうち損金に算入されない割合というものはごく低いのでございまして、建設業でございますと七・七%、印刷業で一二・六%、製造業で一一・八%、こういうふうになっております。資本金一億以上の大法人の場合について調べてみますと、その交際費支出額のうちの損金に算入されない割合が相当多額でございまして、先ほど申し上げました建設業について見ますと、大法人の場合には交際費支出額のうちの一九・四%が損金に算入されておりません。それから印刷業でございますと一九・一%が損金に算入されておりません。それから製造業というのが、大法人の場合はたくさんとっておるのでございますが、たとえば製鉄業で見ますと一七・八%、電気機器の製造業でございますと一八・二%というふうに、いずれにいたしましても大法人のほうが損金に算入されない割合が高くて、中小法人の場合には損金に算入されない割合が低くなっております。これは控除が中小企業にとって有利になっている関係と、それから交際費支出額が総体的に少ないといった何方の事情によるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/44
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045・平林剛
○平林委員 私が聞いたのは、資本金一千万円くらいの会社法人ではどのくらい交際費を使っておりますかということなんで、あなたが答えたのは損金不算入の率なんであります。一千方円くらいではどのくらい使っておりますかということに対して、的確にお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/45
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046・泉美之松
○泉政府委員 いま資本金一千万円という的確な数字はないのでございますが、資本金二千万円米満の法人について調べた実例を申し上げますと、飲食店でございますと、これは資本金額がここに書いてございませんのではっきりいたしませんが、二千万円未満の法人として見た場合でございますが、五百八十六万円支出いたしております。建設業の場合には一千三万円支出いたしております。印刷業の場合は千六百四十二万円支出いたしております。これは資本金二千万円未満の法人の数字でございますので、一千万円米満ということになりますと、これよりかなり低い数字になろうかと思います。しかしいずれにいたしましても、二千万円の場合でこれくらいでございますので、一千万円の場合には大体その五、六判は支出いたしておるのではなかろうかというふうに考えられるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/46
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047・平林剛
○平林委員 私もいろいろな資料を方々から引っぱり回してみるのだけれども、ちっともこの資料が見つからないのです。それであなたも御説明のように、二千方円を基準にしてとられる。いつか私、おおよその資料を大体一千万円なら一千万円に統一してやってもらわなければ、いろいろな比較はできぬということを申し上げたことがあるのですけれども、何かというと基準が違ってくるものですから、いろいろな面で比較対照できない。
私なぜこんなことを聞くかというと、今度交際費の課税特例について、
一年四百万円という限定をなさったわけです。一年間について四百万円と資本金の千分の二・五の合算額をこえるときは、こえる金額の三〇%を損金に算入しない、こういうふうに、一応従来三百万円であったのを四百万円というふうに引き上げたわけでございますけれども、こういう算定の基準は、どういうことでなさったのかということを確かめたいと思って、いまの質問をしたわけであります。これをいまのような一つの限度額にしたというのは、それではどこに根拠があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/47
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048・泉美之松
○泉政府委員 先ほどの数字がちょっと間違っておりましたので、訂正させていただきます。一社平均にいたしますと、建設業は五百万でございます。印刷業は八百二十万でございます。飲食店の場合は、これは五百八十六万でございます。
今回三百万円を四百万円に上げるということは、従来交際費損金算入の特例を設けました当時、一番最初は資本金五百万円でやっておったと思いますが、だんだん資本金がふえていきますので、それを一千方円に上げておったのを、三十六年度の改正のときに、もうそういう資本金額の区別なしに、全部の法人に対して適用するということにいたしたのでございます。その際の考え方としては、従来一千万円未満のような中小法人に対しましては、そういった中小法人の性格からいたしますと、交際費といっても、これは事業経営上必要やむを得ない交際費が多いのであって、いわゆる社用的な交際費は少ない。したがってそういった中小企業の場合には、交際費の損金算入を制限することは適当でないという考えのもとに、資本金基準でやっておったのでございますが、しかし交際費の支出が相当多額にのぼっておりますので、どうも資本金基準だけでも適当でなかろうということから、全法人に適用することにいたしたのでございます。もう一つは、そういうことをやっておりますと、大法人が資本金の小さい会社をつくりまして、そこを通じて交際費々出し、そして交際費の損金不算入を免れるという傾向がございますので、すべての法人に適用したほうがいいのではないかということで、そういう改正をいたしたのでございます。しかし本来中小企業の法人に対しては、損金入算入をできるだけしないという考え方をとっておりましたので、その当時の中小企業の交際費の支出額というものを参考にいたしまして、三百万円と資本金の千分の一の合計額という限度を設けたのでございます。ところがその後先ほど申し上げましたように、物価も上がって交際費支出額もふえておりますので、今回四百万円に上げることにいたしたのでございます。それはいま申し上げましたような中小法人の場合の交際費支出額については、できるだけ損金算入を制限しないという考え方に基づいておるものでございまして、先ほど申し上げました三十七年度の交際費支出額の実績で見ましても、資本金一千万円未満の法人の場合は、損金不算入額は五十億円でございます。支出額の千五百七十六億に比べますと総体的に少ない。ところが一億円以上の資本金の法人でございますと、交通費支出額が千七十一億円でございますが、そのうち百八十八億は損金に算入しないということになっておりますので、そういうような点を考え合わせまして、中小企業の法人の場合には、損金不算入にできるだけかけないという趣旨で、四百万円に上げることにいたしておるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/48
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049・平林剛
○平林委員 税務当局でも実際に各法人の調査を行ないまして、これは交際費、機密費、贈答費、いろいろな名目がございますけれども、否認をしたり、あるいはこれを認めたりするのは、大体どういうような根拠でおやりになっておりますか。実例についてお話をいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/49
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050・鳩山威一郎
○鳩山説明員 交際費の損金と認めるかどうかという点につきまして、これは非常にいろいろなケースがございまして、これは一律に、簡単に申し上げるということはたいへんむずかしいかと思いますが、庁のほうで統一的な運用の方針を各局に示して実行いたしております。大ざっぱな場合を申し上げますと、非常に似たものとしてたとえば寄付金というようなもの、あるいは広告宣伝費とか、あるいはリベート関係のいろいろな金の出し入れ関係、あるいは従業員に対する福利厚生のためのいろいろな支出がございますが、こういうものと限度が非常にあいまいな場合もあるわけでございますが、大体いま申し上げましたようなそれぞれ行付金あるいは広告宣伝費というものは、その実態によって交際費とはいたしておらないわけでございます。
〔原田委員長代理退席、委員長着席〕
交際費と認められるようなものは、一般の普通交際に要する経費、商売のために必要な交際に要する経費あるいは接待費、そういうようなものが主体になるわけであります。なお、会社でいろいろ記念事業みたいな、何年のためにお客さんを接待するとかいう場合がございますが、そういう場合は交際費はいろいろ具体的なこまかい場合によってそれぞれ扱いをいたしております。ただ私ども現実にやって非常にぐあいが悪いのは、いわゆる使途不明の場合の関係でありますが、これは支出したということが明らかでないと、同様な交際費とは認めがたいというような問題があります。御質問の点、これで意を尽くしておるかどうか、答えられているかどうかわかりませんが…。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/50
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051・平林剛
○平林委員 泉さんはさっき私の質問に対して、交際費というのは損金に算入するのがむしろ当然くらいの青い方をして、私の指摘に対してあまり肯定しなかったような形です。あなたの場合にはなかなか疑問が実際問題としてあるわけです。領収書があれば交際費と認めるわけですか。たとえばバーならバーに行って領収書をもらってきた。あるいはどこかの会社の品物を買ったというような領収書があれば、全部それは交際費に認めておるわけですか。私は実際の行政の場合に、どういうふうにして交際費、つまり三千七百八十六億円もあるのを調べているかということを、かねがね疑問に思っているのです。この判断を何とかして押えていかなければならぬという感じを持っているわけです。広告費のほうは入れていないというお話で、きのうの国民生活白書を見ると、一年間の広告費だけで二千四百三十五億円もあるというお話です。これは三千七百八十六億円もある。実際の取り扱いにおきまして、領収書があれば全部交際費に認めるというようなやり方をとっておるのですか、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/51
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052・鳩山威一郎
○鳩山説明員 その支出の目的が、事業のために必要であるということはもちろんであります。かりに領収書がありましても、これが第一に架空であれば当然否認をさるべきものでありますし、これは脱税をはかっておるというような場合もあろうかと思います。これは場合場合によりまして違いますので、実際の税務の第一線におきまして、すべて全部疑ってかかるということもなかなかむずかしいかと思いますけれども、この辺は実際の税の執行の問題でございますので、私どもはすべてを疑ってかかるというわけにはまいりませんが、いろいろな疑いがある場合には、相当こまかい点まで追及をして調べているということもあるかと存じます。一がいにはちょっと申し上げられないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/52
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053・平林剛
○平林委員 三千七百八十六億円もある交際費の中から、実際に否認をされるのは三百何十何億かというお話でありました。逆にいえば三千五百億円は認めてしまっておるというわけですね。それは大体領収書において認めておる、こういう勘定ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/53
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054・鳩山威一郎
○鳩山説明員 ただいま限度超過の額は、これは交際費として支出されたものにつきまして、限度を超過したからといって損金算入を認めないというものであります。現実に経費を否認されるものはこのほかに相当あるかと思いますが、こういったものは交際費の支出自体を認めないのでありますから、そういった否認は相当額にのぼっておる。ただ、ただいま数字が手元にありませんし、ちょっとそういった資料は急にはできかねると思いますが、交際費の支出を否認するといったようなケースは、私もたびたび接しております。相当額にのぼるのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/54
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055・平林剛
○平林委員 そうするとたとえばその企業において、どうもこの目的には合致しない、怪しい交際費の支出だというようなものは、認められるほうにどんどん伝票を整理してしまっておいて、はっきりしたものだけを税務署のほうの調査でお願いします、こうやれば、怪しいもののほうは全部使途目的が明瞭でないし、また企業の実際上の必要の経費としての交際費であるかどうかわからぬものは全部整理してしまって、あとわかるものだけ税務署の点検を受ければいい、こういう勘定はできるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/55
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056・鳩山威一郎
○鳩山説明員 税務署の調査でございますが、大体支出の確実であるかどうかということは、点検をするはずになっております。したがって税務署のほうでその点はいろいろ勘を働かせまして、領収書がたくさんある場合におきましても、怪しい領収書を税務署のほうがむしろさがし出すというところが税務署の、仕事のよくできる税務吏員でありますと、そういうことをいたすのであります。それほどうまくいっておるかどうか、税務第一線も非常に多忙でございますので、そこまで目の届きかねるものもあろうかと思います。それはできる限りのことはいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/56
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057・平林剛
○平林委員 実際の税務行政になったら、一番わかりにくい問題だろうと思います。そしてまたここに一番問題がある。だからそういう意味では、交際費に対するところの課税特例のしかたについては、もし大蔵大臣が演説で述べられておりますように、企業においては自己責任の原則に立ち、慎重かつ合理的な経営を通じて、資本内容を充実するなどということを望むなんて言われるならば、こういう点こそもっとしっかりやらなかったならば、いつまでたったって企業においての合理的な経営なんということはできないのではないか。そしてまた実際の調査におきまして、いまお話しになったとおり、あるいはもっとそれ以上に複雑であり、そして困難な問題でありということになりますと、この税法の陰に隠れて交際費というものが激増していく、これが一般の国民に対して相対的な貧乏感を感ずる。私はあまり行きませんけれども、銀座や新橋でも行って、自分のふところから銭を出して飲んでいる人は、おそらくいないだろうと思います。たまにはあるかもしれませんが、おそらく大体つけにして、交際費のほうでやるというのがかなり多い。いま金額が三千七百八十六億円という数字になっている。例をとりますと、昭和三十年度から比較いたしますと、まず五、六倍の増加ぶりです。
さっきの景気、不景気に影響されるというけれども、ちっとも影響されておりません。昭和二十八年に七百五十億円で、不景気と見られる三十年、三十一年当時はかえってふえている。だからあなたがさっき説明されたように、景気、不景気に変動なくこの分はふえている傾向です。泉さんなんか、景気によっては多くなったり少なくなったりというようなお話をしましたけれども、統計をごらんください。だんだんふえているだけで、決して景気によって左右されているものではないですよ。私は税法そのものにこれを許している根本的な欠陥があるからだと思うわけであります。三十七年度で三千七百八十六億円、私は今度は四千五百億円を突破しているだろうと言ったが、泉さんは頭をひねったが、傾向値から見ると必ずそういうところに達しますよ。こういうようなことは大蔵大臣の財政演説の考え方とも反する。いわんや私は大蔵大臣が来たら言うてやろうと思うのですけれども、「家庭生活にありましても、この際、心を新たにして、むだを省き、健全な消費生活を営み、貯蓄につとめられることが望ましいのであります。」と書いてある。一般の家庭生活にこんなお説教を聞かしてもらわなくてもいいのですよ。お説教をしなくてはならぬところはこういうところにある、私はそう考えるのであります。特にこういう角度で政府においても検討してもらいたい。同じ法人が交際費を年間三千七百八十六億円使う。同じ法人がしからばその年においてどのくらい株主に対して配当を行なうか、こういう比率はどういうぐあいになっておるかということを、あなたのほうで資料で説明をしてもらいたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/57
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058・泉美之松
○泉政府委員 いまそういった資料を手元に持っておりませんので、対応するような資料がうまく出ますかどうかわかりませんが、できるだけそういった態様がわかるような資料をつくってみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/58
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059・平林剛
○平林委員 これはぜひつくってもらいたいと私は思うのです。なぜかというと、同じ企業が健全な経営をやる場合に、むしろ交際費にこれだけの多額の金を使うよりは、株の配当にしたほうがまだ健全です。利益があれば株主に対して配当に回すということは、やや民主的な方向に進んでおるわけですから、この株の配当と交際費の比率というのは、あなたのほうは比較対照して、絶えず検討していくという態度が望ましい。私にもひとつその資料をいただきたい。そしてまたこの問題について議論したいと考えております。
ただ私の主張したい点は、大蔵大臣あるいは政府が、企業資本の充実だとか企業の合理的な経営をやれ、 こうおっしゃる前に、こういう問題について的確な資料を整えて、今回の改正したような程度ではこれは十分ではありません。私は、たとえば資本金一千万円あるいは一億円、十億円、五十億円ということで、大体の交際費の見当をつけてみたのですけれども、この程度の抑制では、いま膨大化しつつある交際費、しかも税法の陰に隠れて飲み食いをする。そして消費生活を、これができない国民層に対して相対的な貧乏感を与え、かつ最近の軽佻浮薄な傾向の最大の原因に私はなっていると思う。ですから、一千万なら一千万以上なり、一億以上なりでもけっこうですから、交際費と配当の状態とを見て、政府でも大いに考えてもらわなければならぬ。こういうことを私は主張しておきまして、だいぶ時間も過ぎましたから、他の問題については時間をあらためまして、すでに通告をしておる企業資本の構成の問題その他につきまして、質疑をしてまいりたいと思います。きょうはこの程度で終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/59
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060・堀昌雄
○堀委員 ちょっと関連して。いま資料を要求されておりますから、あわせて私の資料をそれについてお願いをしておきたいのは、諸外国の交際費の特例は、一体どういうことになっておるのか。現在、それは泉さんの言うように、これはもう経費なんだからといって無制限に認めておるのか、あるいは何らかの制限は当然あるのじゃないか。とにかく日本ほど飲み食いをして女性のはべるところなどというものは、世界にないわけですから、おそらくこういうことは私は日本の特異的現象じゃないかと思いますから、ひとつ諸外国の、主要資本主義諸国のいまの交際費の取り扱いについて、資料として御提出を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/60
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061・山中貞則
○山中委員長 それは間違いなくできますね。
それでは午後二時より再開することとして、暫時休憩いたします。
午後零時五十二分休憩
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午後二時二十六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/61
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062・山中貞則
○山中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。岡良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/62
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063・岡良一
○岡委員 以前当委員会で、たしか水田大蔵大臣に、外資法の運営について、わが国における科学技術振興という立場からいろいろお尋ねをいたしました。きょうは御提案の租税の特別措置法並びにその改正案を含めまして、このあり方がわが国の科学技術振興の立場から見て、はたして適当であるかどうか、率直に私どもの見解を申し上げ、また担当の佐藤大臣をはじめ、各局長の御見解を承りたい。
そこで改正案では、第十三条の技術等海外取引に関する改正、その趣旨は私どもも理解できますが、一体現在のこの規定が制定されてから年次別の控除額はどの程度のものであったか、相手国は一体どういう国であったか、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/63
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064・佐藤觀次郎
○佐藤国務大臣 事務当局から説明いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/64
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065・岡良一
○岡委員 ではあとでまたお聞きをすることにいたします。
それでは昭和二十五年に外資法が制定されましてから今日まで、外国技術の導入に対して払った総額、これが一体幾ばくであるのか、あわせて昭和三十一年から昭和三十八年までの年次別の導入件数及びその期間における年次別の支払い総額、これをお聞きしたい。これならば資料は持っておられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/65
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066・堀太郎
○堀説明員 お答え申し上げます。外資法の制定以来、三十八年の十二月までに支払いました対価の総額は、六億六千万ドルでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/66
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067・岡良一
○岡委員 円にして幾らですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/67
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068・堀太郎
○堀説明員 二千三百七十六億円に相なります。
それから年次別に申し上げますと、これは年度でございますが、昭和三十三年度が四千六百万ドル、三十四年度が六千万ドル、三十五年度が九千四百万ドル、三十六年度が一億一千百万ドル、三十七年度が一億一千三百万ドル、三十八年度は四月から十二月までで一億八百万ドルと相なっております。
次に導入の件数でありますが、外資法の制定以来三十八年十二月までの件数は、二千四百八十七件でございます。なお年度別の件数は、三十三年度の導入件数が九十件、三十四年度が百五十三件、三十五年度が三百二十七件、三十六年度が三百二十件、三十七年が三百二十八件、三十八年度は四月から十二月までで四百八十九件と相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/68
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069・岡良一
○岡委員 いまお伺いをいたしました点ですが、第一にこれはいつも申し上げることですが、一体こういうことでいいのだろうかということなんです。外国から邦貨にして二千三百七十六億というばく大な技術の導入をしている。しかし、いただいた資料によると、日本はこの十数年間に約十八億程度しか技術を輸出しておらない。これは大臣も先般OECDの会合にお出になったので、そのときおそらく御調査になったことだと思いますが、アメリカは別にいたしましても、OECDの諸国で外国の技術の導入が一〇〇とすれば、自分の国の技術の輸出が少なくとも二五%か三〇%、わが国ではここ一両年の間にはまあそこそこ四%程度になったようでありますが、大体平均をすれば二%、こういうように非常に外国の技術に依存しておる。こういうことではたして日本の科学技術の発展が期待できるか、この点、大臣の率直な御所見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/69
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070・佐藤觀次郎
○佐藤国務大臣 いま岡さんからお話のように、わが国の科学技術の外国依存度は非常に大きい、また国産技術の輸出はりょうりょうたるものだ、こういうことではいかぬのではないか、こういう御指摘でございます。確かにこれからは科学技術こそ、その国の産業の盛衰を左右するもの、かように考えて、特に自国の科学技術、これを高度に発展さすべく、あらゆる努力をいたしておるわけであります。ただわが国の廃業の特質といたしまして、長い戦争の結果、全部を破壊あるいは烏有に帰して、新しくスタートした。そういう場合に、わが国の産業がそのときにおける最も優秀な技術を導入した。このことによってわが国の産業的な地位が高まった、かように言えるのではないかと思います。過去を取り返す意味において、最も能率のいいものを導入した。しかもわが国の科学者そのものは、こういう進んだ科学技術を導入しても、それを十分理解し、しかもそれを自分のものにする、こなすことができた、こういうところにわが国の経済発展の特徴があるのではないかと思います。これは今日までの経過においてそういうことが言える。しかしこれから先のわが国の産業界の力をつけていくためには、申すまでもなくわが国の独自の科学技術の開発が最も必要になってくるのだ、かように考えておるのであります。そういう意味で私どもの責任がたいへん重い、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/70
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071・岡良一
○岡委員 先ほどお答えになった数字を見ましても、いわば高度経済成長政策のたてまえ、あるいは貿易の自由化がちまたに叫ばれておる。そうすると三十三年度から三十四年度へと非常に導入件数もふえ、また金額も三十五、六、七年はやや中だるみだが、また八年はふえている。そういうような実際の数字に即して考えますと、いわば言ってみれば、現在の政府の高度経済成長というものは、外国の技術でささえられておる。そこでいま長官はこれからだと言われるのですが、私はここまできて、一体これから具体的にどうされるかということを、もっと具体的な御所見を承りたい。なるほど私どもが荒廃した日本経済を復興させるためには、外国の技術をどんどん導入してこれに学ぶということは、私はもちろん必要だったと思います。しかしいまでは戦後ではないとも言われておる。しかも言ってみれば、このような巨額を投じて外国の技術を導入しておる。これは外国の花園に育った切り花を日本のお座敷に飾っておるにすぎない。花を囲いてもしぼめば実を結ばない。こういうようなことをここまでやってきて、日本の科学技術の振興はこれからだ、責任を感ぜられるというが、いよいよ自由貿易ということで、資本が技術をおんぶしてどんどん入ってきょうとしているときに、一体具体的にどういう御施策を持っておられるか、聞かせていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/71
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072・佐藤觀次郎
○佐藤国務大臣 ただいま過去はともかくとして、こういう急速な発展をする、それについては御了承がいただけたと思います。そこでこれからは科学技術を振興さす、こういう意味のあらゆる努力をするわけでございます。問題になります点は、わが国として科学技術の基礎的な研究がはたしてできておるだろうか、それからいきなり開発、利用へ進んでおるものがあるのではないだろうか。わが国の研究の一つ一つをとってみると、とかく基礎的な研究がおくれている。そうして開発、利用、その方面に力が入れられた。この点がいままでも——戦後の特質ではございません。わが国の科学技術者というものは、模倣だとか、あるいは他のものを利用することは非常に得意だ、しかしどうも基礎的なものを欠いているがゆえに、みずからが開発するという点にはおくれるのではないか、こういうことが指摘されております。したがって今後私どもがわが国の科学技術を外国へ輸出するような、また自慢のできるようなものにするためには、この欠陥、欠点を補うようなことをしなければならない。そのためには基礎的研究が十分にできるような、そういう環境を整備することが必要である。あるいはまたせっかくできました発明その他のものの利用が、資金的におくれておる。こういうものに対しましては補助金の制度によってこれを利用さすとか、さらにまた全然新しい方面への開発もはかっていき得るように、財界、利用家がそれにたえ得るように税制も整備していきたい。要はいろいろ税制や資金の面、その他におきまして足らない点を政府が補って、そうしてそういう環境を導き出してあげる。そうしてこの科学技術を振興さすようにいたしたいものだ、かようなことを考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/72
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073・岡良一
○岡委員 そこで私は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/73
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074・山中貞則
○山中委員長 先ほどの質問で保留してありましたのを大蔵省から答弁させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/74
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075・岡良一
○岡委員 答弁は要りません。この次に……。
そこで現在われわれが問題にしておる租税の特別措置法、なかんずく特別償却制度のようなもの、これは目先を急ぐ諸君によって、外国の技術導入がかえって拍車づけておるのではないか。なるほど最近は若干、日本のほうの技術を外国で買ってくれておるといわれておりまするけれども、実態を私はよく検討する必要があると思う。古くは東洋高圧の窒素肥料の製造にしても、それはバデッシュのハーバー法の改良にすぎなかった。有名なソニーのエサキ・ダイオードにしたって、ベルのトランジスタの方向を変えた改良型ともいえるのではないか。倉敷ビニロンにしたって、これはデュポンのナイロンに発したものです。だから日本の独創的な発想から出発した研究の成果が実用化されたものだとは、私は言い得ないものだと思う。そういう姿にいまなってきておる。それでは日本の技術を外国へ持っていくといっても、必ず限度がある。しかも一方では特別措置法というような、特に特別償却制度、技術補助金の形で、むしろこの外来技術の導入を拍車づけておる、こういうようなあり方を、大臣はこの際思い切って善処する必要があると私は思う、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/75
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076・佐藤觀次郎
○佐藤国務大臣 これは見方の問題だと思います。ただいまの特別償却制度を設けることは、外国の技術の導入を促進するのだ、むしろ自立した経済の科学技術の発展、こういうほうからは縁遠いものだ、こういうことも見方によっては当たるかと思います。しかし研究というものは自分でそれを利用しながらも、同時に新しいヒントがつかめるものだ、だからこの償却そのものを特別措置をしないで在米どおりにしておけば、おそらく事業体としてはその負担にたえないとか、新しいものを持ってくることができない。そのために日本の経済水準は非常に低い、そういうものに甘んじなければならない。しかし新しい技術を導入し、そうして特別な償却を認めてくれれば、その事業体は必ず外国に比べてひけをとらないような実力を持ってくるだろう。同時にまたそういう技術を利用するその過程におきまして、新しいものがまた出てくるのではないか、そういう意味で事業体自身の研究投資というものが行なわれておる。なるほど外国から新しい技術も導入すると同時に、それに関連しての新しい研究もみずからが続けていっておる、こういう実態がございますので、ただ償却の問題だけを取り上げて、自分のほうで勉強しないで、新しき技術の導入にばかり熱が入るのではないか、これはやや酷な批評ではないだろうか、私かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/76
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077・岡良一
○岡委員 大臣は基礎研究にうんと力を入れるべきだとおっしゃる。そこでそれでは一体現実に日本はどうであるかという問題、御存じのように研究投資というものは総額からいえば、アメリカ、ソ連に比べれば絶対額では問題ではないでしょう。かりにOECDの諸国に比べましても、一体政府の研究投資、民間の研究投資、その比率がどうなっておるか、諸外国では民間が一の投資をしておれば、政府は二をやっている。これは科学技術庁の白書に出ている。ところが日本では民間が二をやって、政府はその二分の一以下もやっていない。こういうやり方で、どうして一体基礎研究というものを高めることができるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/77
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078・佐藤觀次郎
○佐藤国務大臣 政府が確かに基礎研究につきましてもたいした予算を取っておらない、御指摘のとおりのような点がございます。私どもは大体、本来事業的な採算の見込みのあるものは、民間にやらせていいのではないだろうか。まだ今日の段階において事業としての成功の見込みの非常に薄いもの、その危険を民間に持たすことはどうだろうか。こういう部門について政府が積極的に開発すべきではないだろうか、研究を進めるべきではないだろうか。ただいまやっております。原子力研究所のごときは、そういう意味の部類に属するのだと思います。本来、事業の改善に役立ち、民間においても十分成功の見込みある、こういうものは民間にやらす。しかしもっと政府が積極的に各面において予算的措置を講ずべし、この御指摘については私どもも異存はございません。ただわが国の現状といたしましては、いわゆるまだ長期計画なるものができておりません。長期計画を策定するその実情でないと、こういう点にもわが国の政府の力の入れ方の弱さが出てきているのではないかと思います。しかしさらにそれ自体の研究整備が進んでまいりますと、おそらくこういう部門についても長期計画を立てるようになるだろう。そうすると政府の予算的措置も目に見えて変わってくるのではないだろうか、そういうことを期待しておりますが、ただいまの状況は遺憾ながら御指摘のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/78
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079・岡良一
○岡委員 とにかくこれは大蔵大臣にもぜひ適当な機会に、所信をお伺いしたいと思っております。とにかく日本のこの予算の計上のしかたと申しますか、少なくとも科学技術振興ということに対しては、まことに私のほうから言うと納得いたしかねる。科学技術振興の予算などというものはこれまでのように、ことしこれだけのお金を出せばこれだけ実が結ぶというようなものではない。かえって実を結ばないというところから、新しい成果ができ得る可能性だって、科学の歴史の上にはある。だからこういう予算の従来のようなやり方でなく、ほんとうに自然界の法則を探求して、発見をして、これに基づいて実用化し、技術を開発して、人のために、経済の繁栄のためにという、これは最も貴重な投資であるという考え方で、この研究投資というものをはっきり把握をしていただかなければならない。これがない限りはどうしてもやすきに流れて、すぐ外国の技術に依存していく。根本は、政府のこういう科学技術の振興あるいは科学技術そのものに対する根本的な認識にあると思うので、この問題はぜひこの機会に大蔵大臣からも私は御所信を承りたいと思いますので、委員長からお取り計らい願います。
それではこの措置法に入りますが、そこでこの外来技術の導入には、いろいろ条件が伴っておるはずでございます。まずロイアルティー、これは私ども聞くところによれば、高いものは八%のロイアルティーを払っておるということです。あるいはまたミニマム・ペイメントといって、販売実績が一定量以下でもやはりロイアルティーは支払わなければならない。私どもとすれば、いわば非常に一方的な条件を付されておる。それでも頭を下げて外来技術を導入しなければならないということが、これまで言われておった。最近のこのロイアルティーの程度は、大体どの程度になっておりますか。最高のものは一体ここ二、三年の間で幾らくらい払っておるか。平均してどの程度と私どもは見ていいのか、お答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/79
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080・堀太郎
○堀説明員 ただいまお尋ねのロイアルティーにつきましては、一律に申し上げることはたいへん困難でございます。と申しますのは、導入技術の種類、あるいはそれによります生産費引き下げ、あるいは輸入の防遏、輸出の促進ということの効果等を総合的に勘案いたしまして定められますために、一律に申し上げることは困難でございますが、大ざっぱに申し上げますと、大体三%から五、六%くらいのものが一番多いと申し上げてよいかと存じます。
それからお尋ねの第二点のミニマムの問題でございますが、これにつきましては、外資審議会の審査にあたりまして、なるべくミニマムの規定を削除するようにという指導をいたしております。ただ契約の内容によりまして、かりにミニマム事項がございましても、実際のロイアルティーの支払い額が規定されましたミニマムの額を相当上回るだろう、したがってミニマム条項の実害が考えられないというふうな場合には、場合によってそのまま認めておる例もございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/80
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081・岡良一
○岡委員 日本の製造工業の利潤が、大体八%から九%という数字をこの間拝見いたしました。そこで政府のほうでは、重化学工業を推進する、こういう方針をとっておられます。ところが重化学工業ということになると、まず鉄鉱石にしたって、強粘結炭にしても、そういう原料は外国から輸入する。しかもロイアルティーが三%、五%というふうなものがある。しかも日本では、企業にしてみれば資本は、特に最近は弱体だといわれておる。金利も高い。そういうところへ一体こういう九%の利潤に対して五%のロイアルティーなんというものを払ったら、企業としてはたいへん重い負担になると思うのだが、そういうものを甘受して、しかもいわゆる高度経済成長政策で繁栄をうたおうというのには、どこかにしわ寄せが来なければならない。こういう矛盾はやはり技術導入に依存するところから出てきておる。こういう問題についても佐藤大臣はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/81
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082・佐藤觀次郎
○佐藤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、経済を時期を失しないで発展させていく、それも一つの国際競争力を確保するゆえんだ、かように私は思います。したがって今日非常に高いロイアルティーを払いながらも、その技術を導入している。それによって非常に生産を増加することができている。これはやはり国際的な、競争的な立場に立って、そうしていわゆるひけをとらないような状況になってきている、かように思いますので、いまの経済成長、今日のような国力を示しているところのものは、これはひとえに技術の導入だ、こう言ってもいいだろうと思います。問題は、第二の飛躍、そういう場合に、絶えず新しい技術ばかりを導入してこなければいけないのか、みずからがつくり出すのはないのか、こういうことになってくると、高いロイアルティーでは問題が起こるであろう、これからの問題としては、引き続いていままでやってきたと同じようなことを繰り返してはいけないのだ、そこに開放経済に対処する道があるのだ、かように私考えますので、みずからがその過去の事実をさらに利用し、またこれを基礎にして第二の発展をはかっていく、絶えざる努力を必要とするのではないか、かように私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/82
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083・岡良一
○岡委員 佐藤大臣の言われることは、私は非常に正しいことを言っておられると思います。またいまの開放経済に備えて、いよいよ海外において経済競争をやろうとすれば、もはや今日の段階においては製品の競争ではない、むしろ技術の競争だ、これは当然で、そのとおりだと思います。しかし今日まで外国技術に依存し、先ほど申しましたように原料はないから、外国から買ってくる、高い船賃をアメリカに払わなければならなかったり、しかも資本が弱体であり、金利は高い、しかも高いロイアリティーを負担しなければならぬということになれば、そうして日本がとにかく高度経済成長政策を誇っているということになれば、どこかにしわ寄せがある。それはやはり下請なり労働者がしわ寄せの犠牲になっている。ここにも外来技術に依存している政策というものの持っている非常に大きな矛盾がある。これはこの特別措置法の随所に見られる。だから大臣がほんとうに日本の国産技術の開発、基礎研究の充実ということを言うなら、私は現在の特別措置法についてもいろいろ問題点があろうと思う。
それよりももう一つ開放経済と言われましたが、この外来技術を導入いたしますと、いろいろな制限条項の中で、その技術によってつくったものの海外の市場の制限がある。これは調べていただいた結果を申し上げますと、昨年の四月からことしの二月までに導入された外国の技術四百六十件について、まず輸出地域の無制限あるいはほとんど制限のないもの、これが四六%、それから相手方の承認がなくては輸出のできないもの、これが一番おそらくシビアーな条件かと思いますが、相手国あるいはその地域、アメリカから輸入すればアメリカ、あるいはカナダ、中南米には出せないというような、相手国及びその地域に輸出ができない、また東南アジアに限る、こういうようなシビアーな輸出市場の制限を甘受しているケースが五四%、こういうことです。大臣は開放経済に備えるため貿易の自由化と言われるが、しかし海外技術を導入することによって、みずから輸出市場の制限も甘受しなければならぬ。ここにも私は技術導入というものの持っている大きな矛盾があると思う。こういう点についてどういうお考えなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/83
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084・佐藤觀次郎
○佐藤国務大臣 ただいま言われるように、主としてアジア圏に限定しておるものが四一%、無制限あるいはその制限のないもの、これに近いのが四六%、こういうことのようです。これはこういう地域にその外国のパテントが製品として競争する、そういう立場から、外国の技術導入の場合にこういう制限を受けるのだ。これこそ、先ほど申し上げますように、国産技術ならばこういうことは受けない。したがって国産技術の開発が必要だ、こういう議論になるわけなんです。ただ、いまの現状においては、遺憾ながらこういうものは外国のものを買ってきて、そして販路に制限を加えられても、まあしんぼうせざるを得ない。これに対抗する技術がないので、製品の点においておくれる。一つの例で申せば、キャタピラなどはそのいい例ではないかと思います。最近は小型のものをどんどんわが国でもつくるようになってまいりましたが、大型のものだと、キャタピラに国際的に市場を独占されておる。したがってその会社から技術を導入する限りにおいては、その制限を受けざるを得ないという結果になっております。したがって、こういうものをそれより以上の技術を生み出して、こういう制限なしにわが国の製品が闊歩できるような、そういう素地をつくる必要があるだろう、それは何といっても国産技術の開発以外にはないのだ、かように思います。しかし今日はどうしてもそれができておりませんから、そうすると現状において自分たちの事業を守る面から見ると、ある程度の制限を受けても外国の技術を導入したほうがいい、こういう結果になるのだろう、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/84
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085・岡良一
○岡委員 国産技術開発、基礎研究の充実、これはうたい文句みたいに言われるが、具体的にそれが政府の施策の上に出ておらないということを私はさっきから言っておる。むしろ外来技術の導入を促進するような政策が、特別措置法の中にちゃんと出ておる。だから、ほんとうに国産技術の開発を促進しようと思ったら、こういう条件といの意気込みがあってしかるべきではないか。予算的な措置もきわめて不十分である。一体貿易の自由化自由化と言いながら、こういうふうに外米技術の導入によって、輸出市場が制限されておるというこの矛盾、こういうものをこのままに放任をすべきものではないと私は思うが、これは外資審議会等の運営において、具体的にどういう施策を持っておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/85
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086・堀太郎
○堀説明員 ただいまの輸出地域の制限の問題でございますが、御指摘のようにある程度制限条項のある契約があるわけでございますが、外資審議会の審議にあたりましては、もとより極力これを削除せしめる、あるいは緩和せしめるということを、一貫した方針としてやっておるわけでございます。ただ、たとえば外国投資家のほうがほかの国のライセンシーに対しましてすでに輸出地域を協定して与えておる場合、あるいは自分の販売地域を守るために制限する場合等々の事由がございまして、必ずしも一〇〇%当方の思うようにまいっておらないのも事実でございますが、審議にあたりましては、ただいま申し上げましたように極力これを削除、緩和させまして、実質上なるべく日本側の技術導入いたしました企業の製品が、できるだけ自由に輸出できるようにということに重点を置いて、審査いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/86
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087・岡良一
○岡委員 ところが、それが実際外資審議会の今日までの運営においては、実を結んでおらない。なるほど外資審議会では国産技術の開発のためと、あるいは輸出市場の制限をなるべく受けないようにという行政指導はやるのだということは、私も承っておる。ところが現実にはそれがされておらない。それが五〇%以上も輸出市場が制限されるいは国産技術の問題にいたしましても、一昨々年のポリプロピレンのあのミラノ参りなんかどうですか。ああいうことでとにかくお互いに日本の会社がポリプロピレンの技術導入のためにどんどん頭金をつり上げる、しかも高いロイアルティーをがまんする、しかもお互いに輸出市場を制限する、そうして国内では二重、三重の投資をやっておる。そういう傾向があるのに、しかも外資審議会ではそれのコントロールができていない。それがおそらく膨大な設備投資の大きな原因の一つになっておると私は思う。だからこういうような外資審議会がこれまでのようなやり方でやられたのでは、私ども心もとなくて見ておれない。外資審議会には当然科学技術庁は大きなパートナーとして、その決定に参加しておられる。一体大臣としてこの外資審議会の運営には、もっと責任ある態度をとってもらわなければ、あなたの言われる国産技術の開発も基礎研究の充実もない。どういう御所信を持っておられるか、この点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/87
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088・佐藤觀次郎
○佐藤国務大臣 先ほど来申し上げておることの繰り返しに終わりますが、現在における状況と、それから理想の姿と、その二つをやはり分けて考えていただきたいと思います。今日のわが国の技術の立ちおくれというものを取り返す、こういう意味においての外資あるいは外国技術の導入というものが盛んに行なわれておる。しかしそれは本来いいことではない。だからそういう場合において、あるいはただいま外資課長から説明いたしましたように、わが国の技術の発達に支障を来たすもの、たとえばしばしば中小企業などにおいてそれを見受けるのでありますが、新しい技術を導入することによって、わが国の中小企業に非常な打撃を与える、こういうものにつきましては、外資導入を制限しておるとか、あるいは停止しておるとか、またお互いが競争し合って技術の導入をはかっておる、これなどは自由にまかせておいたら、確かにいま御指摘のとおりにお互いに値段をつり上げたり、ロイアルティーの一高いものを払ったり、しかもそれが二重、三重の投資になる、こういうことができますので、その辺は外資審議会としては、やや行き過ぎかわかりませんが、適当なる自粛を促しておる、こういうことをいたしておるようでございます。しかし現状において、非常に技術のおくれておる状況においてはやむを得ないのだ、しかしこの現状に甘んじないで、今後しばらくは苦しくても、みずからが新しい発明開発をしていく、こういうところに努力をしていかなければならない、そういう点から外国技術の導入ばかりでなくて、わが国におけるりっぱな発明もあるのだ、そういう発明がなかなか実用化されておらない。いろいろな理由にもよりますが、その理由を十分に究明して、別途にそういう発明を、実用化していくという努力もまたしていかなければならない。また積極的にそれを奨励するような仕組みも一考えていかなければならない。ただいまのところわずかに報償制度がございますが、これだけでは不十分ではないだろうかと思いますので、さらによい方法があるならばこれも考えていくとともに、積極的にその発明を進めていく、こういうようなことであらゆるものを取り入れてみないといけない。それはどこまでも現在において立ちおくれておる、その立ちおくれを取り返すという意味においての外国の技術導入でなければならない、それは安易な外国技術の依存ということであってはならない、かように私は思うのでございます。そういう意味において外資審議会なども、最近の技術の導入についてはなかなか慎重な態度で臨んでおるように見受けます。ことにまた私のほうの科学技術庁といたしましても、その影響するところ非常に大きいのでありますので、これは十分発言の機会をとらえて、そうしてただいま申し上げるような諸点につき考慮してまいるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/88
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089・岡良一
○岡委員 私は別にいま直ちに外国の技術導入をやめろなどという乱暴なことを申し上げているわけではない。ただよほど慎重な態度をもって臨んでいかなければならないということを申し上げておるわけです。現状においてやむを得ないとか、私の申し上げることが理想であるというふうな印象を持たれたようですが、私は理想を申し上げたつもりではないのです。戦後荒廃した日本の経済を立て直すためには、外国のすぐれた技術の導入はやむを得ない。むしろものによっては急いでもよろしい。しかし外国の技術導入を急いで、その加速度がいま全力運転というような状態です。だから政府の行政指導というものが手のつかない状態なんです。それが開放経済か自由貿易という名のもとに合理化されてきている。現にたとえば先ほど例に申しました。ボリプロピレンにしても、日本の大手四社が競合して別個にそれぞれ導入している。しかしこれは業者側に自覚があり、政府の指導が強ければ——オーストリアからちょうど同時ごろに輸入した純酸素吹上転炉、あれは日本鋼管が当事者として導入したサプライセンスで、日本の製鉄事業が全部それを利用している。せめて業界にもそれくらいな自覚がなければならないと思う。外資審議会はポリプロピレンの例に見るように、むしろ業界の要請のままに押し流されておる。業界は戦後外国技術を導入した。それがそのままに認められておったために、加速度をもって導入した。もはやなかなかとめがたい状態になっておる。これに対して外資審議会がいまも申し上げたようなことであっては、これは国産技術の開発なんということを何百万べんお経のようにやったって、実際に実を結ぶものではないと思う。だから外資審議会の運用にあたっては、よほど覚悟をもって当たってもらいたい。この点もぜひひとつ、大蔵大臣が主管大臣と聞いておる、いかなる所信を持っておられるか、別の機会に承りたい。
それからいま大臣がお触れになりましたが、外資審議会の運用等で、中小企業のいわば育成を妨げるような技術浮人については、ある程度コントロールしようというような御意見だったが、それもうまくいっておりません。これも昨年の四月から本年二月までの四百六十件の技術導入でございますが、これを受け入れ側の資本規模から見ますると、平均して大体二五%くらいが中小企業、七五%は大企業、しかもいわゆる重化学工業といわれるような機械、金属、化学の分野、こういうところでは中小企業は一〇%、二〇%以下という状態です。ほとんど大企業が技術を導入しておる。はっきり数字で出ておる。こういう状態をそのままにしておったのでは、外国の技術というものはますます大企業に集中して、中小企業と大企業の格差というものは解消できない。生産の格差、所得の格差といったって、問題は技術の格差だ。技術と設備というものは不可分の問題です。この格差をますます拡大させるような政策をとりながら、どうして一体中小企業の革新的近代化なんていうようなことが言えるのでしょうか。こういう点からもやはり外資審議会の運用と申しますか、外来技術の導入というものについては、よほど政府は意を用いてもらわなければならぬと私は思う。重ねてひとつ大臣のお答えを求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/89
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090・佐藤觀次郎
○佐藤国務大臣 先ほど来私の申しましたことも、岡さんの言われておることも、そう違っておるわけではございません。私が理想の姿だ、かような表現をいたしましたのは 岡さんはそれをつかまえて言っておられますが、そういう理想の姿という意味でなしに、これは白紙の状況でものを考えた場合、そうすればみずからの技術を開発することだ、外国に依存しないことだ、安易な外国技術への依存は避けるべきだ、そういう意味で外資審議会なども十分協力する、慎重に努力する、こういうことを申しておるので、その点はあまり気になさらないように願いたいと思います。ただいまお話しになりました中小企業向けのものについての影響、これはいままでもしばしば問題を起こしておりますし、いままではそのつど、大企業の自ままな外国技術の導入をやらさないで、中小企業がこれに対応し得るようになりましたあとに外国技術の導入を許しておる、こういう例が幾つもございます。また逆の場合もある。非常に中小企業に迷惑を与えておる例もあります。ことに私がこの際中小企業と申しますのは、わが国の産業構造から申しまして、輸出産業に関連しておる中小企業は非常に力があるのでありますから、そういう意味で中小企業はただ規模が小さいというだけ、しかし技術は第一流、第一水準のものを持ってもらいたい、こういう意味で中小企業の技術の向上につきましても、特段の留意をするつもりでございます。御承知のようにただいままでのところ、設備近代化等については政府も特別な助成金、補助金を出しておりますが、ただ設備の近代化だけでなしに、新しい技術、それは先ほど来申し上げますように、中小企業がいろいろ発明をしておる、これがなかなか実用化されておらない。それが資金の面であったり、あるいは助成の面において欠くるがゆえに、実用化されておらないというものもございますので、そういうことに気がつけば、私どもは実用化を進めていくということを申しておりますし、また他の委員会でいま御審議を願っております科学技術の情報センターなどの利用の状況なども、中小企業においては十分だとは思いません。これなどもあらゆる機会を使って、みずからの技術を一流の水準に上げるように、中小企業の方々の努力もお願いするが、われわれもあらゆる機会を通じてその技術の向上に援助したい、協力したい、かように考えておるのでございます。したがいましてこれからだんだん変わってくるのではないだろうか、こういう意味で希望を持って、ただいまの施策の遂行をしておるというような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/90
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091・岡良一
○岡委員 どうもきわめて政治的な御答弁でございますが、私は事実を数字などで示しましたが、現実に外国のすぐれた技術が大企業に集中しておる。しかもそれが中小企業には技術的におろされておらない。これはこの間国会にお出しになった中小企業等に関する報告も、私は拝見をいたしました。資金の面において、技術の面において、設備の面において、ますます拡大的な傾向にあろうとしておるというような表現も、しばしば見受けられた。こういう状態にあるにもかかわらず、外資審議会なり大蔵省当局あたりが、むしろ大企業の圧力に押されながら、ますますもって不当な条件を甘受しつつ、外来技術の導入というものに対して無責任な取り扱いをされるということは、ぜひひとつこの機会に決意を新たにして臨んでもらわなければならないと思います。
それから三年か四年前でございましたが、中小企業の鉱工業技術研究組合でございましたか、免税措置がとられるということで、私ども審議に参加したことがあります。あれはいま幾つぐらい研究組合がございますか。資本金の規模と資金の規模は大体どういう程度になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/91
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092・小林貞雄
○小林説明員 御指摘の鉱工業技術研究組合法は三十六年の五月に施行されまして、現在まで二年半余りたっておるわけでございます。数といたしましては現在結成されましたのが九つございまして、全体の投資として研究投資いたしました額は十二億七千万円の研究投資を、鉱工業技術研究組合としてはいたしております。いろいろのテーマを選んでおりますけれども、高分子原料関係、あるいは高級アルコール関係、それから染色技術、クリープ試験の問題、光学工業、つまりレンズの研究、それから羊毛の溶剤染色の研究、電子計算機の問題、優先精錬技術のテーマを選んでやっております。それからこれは非常にローカルなものでございますが、浪速地区の者が鋳物の研究組合を結成しております。あと申請その他結成中、準備をいたしておりますものが二件ほどございます。現在のところそういう状況になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/92
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093・岡良一
○岡委員 大臣、お聞きになったような実情です。この特別措置法の改正案では、技術研究組合に対する出資金は損金にみなすような何か改正があるようですが、この前も免税措置などについて、これを前提として鉱工業技術研究組合法を三、四年前に発足せしめた。ところが九つしかできておらないわけですね。そして総資本が十二億幾らだが、これは私は何もしなかったと同じだと思うのです。こういう状態なんです。
これは私見になりますけれども、日本の研究、特に中小企業を中心とする研究体制というものは、どうしても共同研究体制が必要だ。まあソビエトは国家の権力でやっておるが、アメリカは民間投資がデュポン一社で、日本の一番大きな化学会社の一年間の総売り上げ高に近いようなものを、研究投資で出しておる。これはとても及びもつきません。だからこれは力を合わせてやらなければならない。大臣も御視察になってごらんになったと思うが、ヨーロッパでも、フランスでも、とにかく縦割りで、鉄なら鉄、石炭なら石炭、石油なら石油で、大企業も中小企業も非常に緊密な共同研究をやっており、この体制を育成していく。少しばかり税金をまけても、三年かかって九つできて総資本が十二億というのでは、問題にならない。むしろこういう面に具体的な資金援助を与える、補助金をやるなり、助成金を交付するなりして、思い切った共同研究体制を推進していく、こういう方針がぜひ必要だと思う。こういう点は、今後の問題ではあるが、ぜひひとつやってもらわなければならぬと私は思うのでありますが、大臣のお考えをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/93
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094・佐藤觀次郎
○佐藤国務大臣 中小企業は、組合を結成し、これを強化するという方法以外にないと思います。特にこの技術研究組合は、たいへんいい施設だと思います。ただしかしわが国の場合においては、共同して研究をするということは、なかなかなれないというか、非常に弱い。ことにまた学者にいたしましても、相互間の派閥がなかなかきつい状況でございますので、これまた思うにまかせないものがある。ことに最近の技術の開発となりますと、すべてが総合的な所産であるということを考える場合に、お互いに協力し合う、しかも協力の範囲が非常に拡大しておる、そういうことに留意をすれば、当然いままでのような派閥的な小さなかたまりではいかぬだろう。もちろん個々ではいけない。したがいまして、これは国民性からくる非常に弱い点、さように一部では考えておりますが、そういう点のないようにして、ただいまお説のような研究組合、共同研究に力を入れるということにいたしたいものだ、かように考えます。お説のとおりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/94
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095・岡良一
○岡委員 最後に申し上げたいのですが、何はともあれ、いま共同しろといっても、どうもみなそれぞれ共同したがらないというようなことなんです。かと思えば、今度租税の特別措置法の改正の中では、商業上の秘密を尊重するというようなことをはっきりうたってある。私は、こういう政府の行政指道守といいますか、ものの考え方の中に問題があると思う。大きくつかんで言えば、さっき申しましたヨーロッパ諸国の共同研究というものは、一国の国境を越えて、鉄鋼なり、石油なり、石炭なり、電力なり、原子力なり、全部ヨーロッパ全体の国が共同しようというところまでいっておる。日本の国では、商業上の秘密ということが行政の前提となって、法律の改正をやるということになると、日本の企業というのは何かといえば、国際的に見るならば、中小企業であったり、零細企業であったり、しかも外国からの技術算入に依存しておりますから、目隠しをとってみたら、大体同じ水準にしかきておらないような商業上の秘密を、政府が尊重しようというような方針でおられるから、なかなか共同というものは進まないと思う。こういう点は、ぜひひとつ決意を新たにして共同を進める。これには税金をまけてやるというのでなくて、ほんとうに補助金を考え、必要な助成措置をする必要があると思います。
それからこの特別措置法は、そういう意味で、この科学技術振興のために側面的にプラスであるというようなことをうたってありますが、私はどうもそう考えられない節々がたくさん現状にはあると思います。ただ一言、これはむしろ皆さん方にお願いをいたしておきたいと思いますのは、中小企業の研究は、国会に寄せられた報告を見ても、研究員も少ないし、研究費もない。だから共同でやらなければならぬが、最近は毎月毎月倒産が出てきておるというようなことがある。それなら下請代金支払遅延等防止法はどうかといえば、実際空文のような形だ。なかなか思うようにやられていない。私は一つの非常に教訓的な実例を申し上げて、ぜひひとつ大蔵省のほうで御調査を願い、委員会に御報告願いたいと思います。これはドイツの例なんですが、ドイツでは——四、五年前に私はほんの通りすがりの旅人として説明を聞いたのです。御案内のようにあすこでは下請企業というものはほとんどなく、専門的な協力工場という形なんです。一から親工場が技術の指導をやったり、資金援助をやる、それだけではなく、もし協力工場が納品をいたしまして、それをすぐ即金で払いますと、それに対して法人の所得税のある程度の免除をやる、これが非常に有効にいっておるということを、その当事者は申しておりました。私はもちろんそのほうの専門家でもございません。しかしただ聞いた範囲ではまことに巧妙な、私は大岡さばきだと思って聞いてまいりましたが、この点は実は参考になりますので、大蔵省としても御調査の上、御報告を願えればけっこうだと思います。
私はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/95
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096・山中貞則
○山中委員長 次会は明十二日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後三時三十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X01819640311/96
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