1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年三月十九日(木曜日)
午前十時三十七分開議
出席委員
委員長 山中 貞則君
理事 臼井 莊一君 理事 原田 憲君
理事 藤井 勝志君 理事 坊 秀男君
理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君
理事 堀 昌雄君 理事 武藤 山治君
天野 公義君 伊東 正義君
岩動 道行君 大泉 寛三君
大久保武雄君 奥野 誠亮君
押谷 富三君 金子 一平君
木村 剛輔君 木村武千代君
小山 省二君 砂田 重民君
田澤 吉郎君 登坂重次郎君
西岡 武夫君 濱田 幸雄君
福田 繁芳君 藤枝 泉介君
湊 徹郎君 森下 元晴君
渡辺美智雄君 卜部 政巳君
佐藤觀次郎君 田中 武夫君
只松 祐治君 野原 覺君
日野 吉夫君 平林 剛君
松平 忠久君 春日 一幸君
竹本 孫一君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 田中 角榮君
出席政府委員
大蔵政務次官 纐纈 彌三君
大蔵事務官
(主計局次長) 澄田 智君
大蔵事務官
(主計局法規課
長) 相澤 英之君
大蔵事務官
(主税局長) 泉 美之松君
大蔵事務官
(関税局長) 佐々木庸一君
国税庁長官 木村 秀弘君
文部事務官
(大臣官房会計
課長) 安嶋 彌君
委員外の出席者
大蔵事務官
(大臣官房財務
調査官) 鈴木 秀雄君
大蔵事務官
(銀行局特別金
融課長) 新保 実生君
農林事務官
(農政局農政課
長) 八塚 陽介君
農林事務官
(畜産局参事
官) 吉岡 茂君
農林事務官
(園芸局総務課
長) 古西 一郎君
運輸事務官
(海運局次長) 澤 雄次君
建設事務官
(道路局次長) 三橋 信一君
日本開発銀行副
総裁 石原 周夫君
専 門 員 抜井 光三君
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三月十九日
委員宇都宮徳馬君、小川平二君、押谷富三君及
び藤枝泉介君辞任につき、その補欠として西岡
武夫君、湊徹郎君、森下元晴君及び登坂重次郎
君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員登坂重次郎君、西岡武夫君、湊徹郎君及び
森下元晴君辞任につき、その補欠として藤枝泉
介君、宇都宮徳馬君、小川平二君及び押谷富三
君が議長の氏名で委員に選任された。
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三月十八日
外国為替及び外国貿易管理法及び外資に附する
法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六二
号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
三六号)
相続税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一六号)
揮発油税法及び地方道路税法のを改正する法律
案(内閣提出第一七号)
関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提
出第九九号)
とん税法及び特別とん税法の一部を改正する法
律案(内閣提出第七〇号)
日本開発銀行法の一部を改正する法律案(内閣
提出第四二号)
国立学校特別会計法案(内閣提出第八二号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/0
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001・山中貞則
○山中委員長 これより会議を開きます。
所得付税法の一部を改正する法律案、相続税法の一部を改正する法律案、揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案、関税定率法弊の一部を改正する法律案、とん税及び特別とん税法の一部を改正する法律案、国立学校特別会計法案及び日本開発銀行法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
質疑の通告がありますので、これを許します。佐藤觀次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/1
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002・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 関税局長にお尋ねいたします。御承知のように貿易外の収支の赤字が非常に多いということは、私がこの二月六日の日に総理に質問をしたときにもいろいろ話がございましたが、現在貿易外収支の赤字が非常に多くなっておるのですけれども、今度の法律の改正では外国に比べて非常にとん税が安過ぎるということが問題になっておりますが、諸外国の例はどのようになっておるのか、この比率をまず伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/2
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003・佐々木庸一
○佐々木政府委員 諸外国における港湾諸経費について申し上げますと、わが国の諸経世は欧米に比べましてかなり安い水準にあると認められるわけであります。これは比較をいたしますいろいろの条件がございますので、若干申し上げさせていただきします。七千トンの船、これはグロストンであります。これはネットウエート四千トンになりますが、これが荷役しないで三日間停泊したということにいたしまして比較いたしますと、現在の横浜港におきましては、水先料、曳船料、綱とりはなし料、係船料、とん税等を合計いたしましてほぼ五百三十三ドルになるものと見られております。これをニューヨークについて見ますと千三百十五ドルになるのではないかということでございます。それからロンドンは非常に高うございまして四千七百七十一ドルになるのではないかということであります。ハンブルグは二千百十七ドル、ロッテルダムでは千四十ハドルという数字が出ております。東南アジアにおきましてはシンガポールは八百九ドル、香港は非常に安うございまして二百三十一ドルというふうにいわれておるわけであります。われわれの調べましたところでは、外国の平均は日本の三倍近くになると見ておるわけでございますが、ロンドンがきわめて高いものでございますから、その数字がかなり影響しておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/3
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004・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 それでは今度の値上げの増徴はどのくらいになるのか、大体その計算は立てられておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/4
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005・佐々木庸一
○佐々木政府委員 先ほど横浜につきまして五百三十三ドルと申し上げました数字が、とん税、特別とん税を倍にいたしますことによりまして、七百三十三ドルになると見ております。この七百三十三ドルに上げましたところで外国と比較いたしますと、 なおニューヨークは横浜が一〇〇といたしまして一八〇ぐらい、八割高くらいに見られます。ロンドンは六五一と出ております。六倍半という数字でございます。ただ東南アジア地域におきましては、シンガポールが横浜に比べて一割高程度に縮まる、香港は日本の三分の一くらいという数字になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/5
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006・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 そこで関税局長にお尋ねしますが、今度のこの値上げによって大体いままでのどれくらいの率にふえるのか、その計算は大体できておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/6
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007・佐々木庸一
○佐々木政府委員 概算いたしまして、これによりますと国際収支上の改善の程度は四百四十万ドル程度ではないかと見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/7
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008・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 先日私が総理に質問したときに、実はこの貿易外収支の赤字は四、五年ではなかなか回復ができない。少なくとも六、七年はかかるだろうということを池田総理が言っておられます。そこでせっかく普通の貿易が黒字が出てもいまの貿易外の赤字、いろいろに原因はありますけれども、少なくともその一つであるこの港湾の赤字が続くので、六、七年もそういうような赤字が続くということになればたいへんなことでありますが、将来、これは今度はこのくらいで、この次にはまた上げられるようなそういう計画があるのか、その点をひとつ伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/8
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009・佐々木庸一
○佐々木政府委員 貿易外収支の赤字傾向は、御指摘のとおり最近貿易の伸びにつれましてかなりふえております。最近のところ、三十八年度の見通しでは四億一千万ドルの貿易外の赤字が見込まれておるわけでございますが、先ほど申し上げました四百四十万ドル程度では一%程度の改善にしかならないわけでございますが、この小さいものをつり上げて貿易外収支の改善をはからなければならないと考えられておるところでございます。ところで、今後の問題といたしまして、とん税、特別とん税をなお上げる案があるかという趣旨の御質問でございますならば、差しあたりのところそのような考えはございません。
それから港湾諸経費の荷役料等につきまして、外国と比べましても労賃の違いから日本はかなり安いということになっておりますが、水先案内料その他の料につきましては、いろいろ運輸省のほうで上げ方を検討しておられるようでございますが、全般的に公共料金を値上げしないという方針との間にはさまれておりまして、この値上げの問題というのはなかなかむずかしい情勢にあると見ておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/9
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010・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 これだけの赤字があるのに、なぜいままで見送られてきたのか、何かそれは原因があるのかどうか、それも伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/10
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011・佐々木庸一
○佐々木政府委員 貿易外収支の赤字問題は最近になってやかましく論じられてきたところでございますが、いままでも貿易外収支の赤字の増大につきましては、いろいろ検討が重ねられたところでございますが、この赤字の内訳を見ますと、貿易付帯経費、運賃、保険料、手数料、海外の本邦商社の支店の経費の送金、そういう貿易の増大に伴いましてふえてきました経費による赤字の増加が一番大きいように思います。その次には外資の導入が非常に行なわれました結果、利払いやロイアルティーの支払いの増加というものもかなりのウエートを占めておるように思います。受け取りの中では特需収入の減少等がかなり響いておると見られるわけでございますが、これらにつきましては、全般的な対策は御承知のとおり、海運関係で運賃の収入を上げますとか、三国間輸送の助成をはかりますとか、いろいろの対策が講ぜられてまいりました。港湾経費につきましては、いままでのところあまりウエートが大きくありませんでしたので、去年あたりから非常に論じられてきたと考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/11
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012・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 どうも最近、特に国際収支の赤字が目立ってきたのでありますが、日本の商品をどんどんふやして外国に出す。そうすれば日本の船で運ぶ。運ぶと赤字になるというような矛盾が出てくると思うのですが、こういう矛盾は何かどっかで断ち切らなければ、結局赤字の上に赤字というようなことになるし、貿易がふえるたびに貿易外の収支が赤字になるというような矛盾がなかなか解消できないと思うのであります。こういう点は今度のとん税の改正でどれくらいに緩和されるものであるか。またこういうことがいつまでも続くのであれば、いつまでたっても貿易収支の赤字がどんどん出るということになるのですが、この点の見通しがどうなるのか、この点も伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/12
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013・佐々木庸一
○佐々木政府委員 とん税以外の部分が非常にウエートを占めておりますので、私から申し上げるのも不適当かとも思われますが、今後の見通しは、そう楽観的にはできないと思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/13
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014・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 それでは為替局長、あとで来るそうですから、その次の関連がありますから、そのときに話をいたすことにしまして、関税定率法のことについて関税局長に伺います。
御承知のように、今度四月から開放経済になるのでありますが、開放経済ということは、自由貿易になれば、自然と関税などというものもある程度までフリーになるべきでありますが、今度フリーな貿易になって関税の障壁を高くするようでは、せっかくの開放経済というものは意味をなさぬように考えておりますが、こういう点について、くだものなんかの関税は、内地のくだものを保護するため、そういうことが感ぜられるのでありますが、一体関税を上げる場合の理由、それから下げる場合の理由、この二つのことをまず伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/14
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015・佐々木庸一
○佐々木政府委員 関税は御承知のとおり産業保護を目的にして設定されておるわけでございますが、保護の程度が非常に厚過ぎますと、国内需要者に対していい影響を与えない次第でございます。そこらから、関税を上げたり下げたりします場合に、国内における当該品目の生産者と消費者の利害の調整ということに考慮を払いまして率をきめておるわけでございますが、今回提案いたしております関税率の改正の部分を、実際に効果を生じます分について申し上げますと、上げたものが二十品目、下げましたものが四十四品目となっておる次第でございますが、上げるものにつきましては、法案の初めのほうに出てまいります肉類につきましては、国内産の保護の程度を厚くするという観点から、外国から入ってきますものと国産でできますものとの価格差を関税でで埋めるというところに重点を置きまして、改正をお願いしておる次第でございます。なお、本年中に自由化を見込まれますものにつきましては、自由化のショックをやわらげますために若干の引き上げをはかっておるものがございます。たとえば写真用の、十六ミリ、八ミリに使われますテクニカラーのフィルムとか、鉛関係の関連品等がそういうものでございます。なお、下げましたものにつきましては、下げましても国内の生産に影響を与えないものというものを選びまして、これを引き下げることにいたしております。鯨肉、魚油その他がそうでございます。
また、自由化を行ないます際、そのショックを緩和しますために一時関税を上げましたものを、その後の推移を見ました結果、輸入が急激にふえ撹乱的な影響を国内にも与えていないと認められるに至りましたものは、これを下げることにいたしまして、ベリリウム銅合金関連製品がそのようなものの例になるかと考えておる次第でございます。それから、腕時計関係もその例に入れて申し上げてもよろしいかと思います。
なお、下げましたもののうちには、後進国の経済発展のために、最近ガットにおいてないしは国連の場において、いろいろ後進国の輸出関心品目について貿易の障害となるものを排除してくれという要求が出ておりますが、そのような要求と国内に対する影響とを考慮いたしまして下げましたもののうちには、唐木類、熱帯産の木材で堅いものでありますが、カリン、ツゲ、タガヤサン、シタン、コクタン等の木材について無税にするという下げ方をしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/15
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016・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 関税局長にお尋ねしたいのですが、今度税率を引き上げるものと、それから税率を引き下げるものの品目の中で、簡単な理由で、これはこういう関係だからということをちょっと御説明願いたいと思います。それは税率を引き上げるものの中で、国民生活に非常に関係の深いものだけお聞きしますが、牛肉と家畜肉、天然色のフィルム、発電機等、その他二十品目になっておりますが、この四品目を何で引き上げるのかということ。それからもう一つは、税率を引き下げるものの中で、鶏肉と、バナナ、ナフサ、新聞用紙、腕時計など、この五品目について税率をどれだけ引き下げるか、何か理由があって引き下げられると思うのですが、簡単な説明でけっこうですから、ちょっと九品目につきまして御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/16
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017・佐々木庸一
○佐々木政府委員 牛肉につきましては、年末から二月にかけまして非常に値段が上がりました。これは消費者物価の引き上げになった有力な品物であったことは御承知のとおりでございますが、今回そのような値段の上がったものについて税率を上げるということに御疑問を持たれるのは当然かと思いますが、これは税率を上げまして輸入量をふやしていこうという考え方でございます。肉類一般に一〇%という税率を一律に持っておったわけでございますが、この中身をしさいに見てまいりますと、牛肉についてはニュージーランド、豪州等から入ってまいりますものと国産品との間にかなりの価格差がございます。それを関税で埋める程度を明らかにいたしまして、国内の和牛等の飼育をされている方々に対して保護の程度を上げたものをはっきりさせて、輸入量をふやすことによって、年末年始等の牛肉の値段が非常に上がりましたときに、牛肉の輸入を行ないまして値段を下げられるような措置をとりたいという考え方から出たものでございます。
第二番目の家食肉と申しますのは若鶏の肉でございます。御承知のように、ヨーロッパでチキン戦争ということで去年非常に騒がれました。その結果ドイツにおきましては、四五%程度という実質税率になると思いますが、高い、可変課徴金と称しておりますが、関税に相当するものを取りましてアメリカからの輸入を防遏したわけでございます。その影響もあろうかと思うわけでございますが、衣食肉類は三十七年度では年間二百トンぐらいの輸入でございましたものが、去年の年末ごろになりますと、十月一カ月で二百トン入ってまいりました。十一月になりまして千トンをこえてまいりまして、十二月は千七百トンという入り方でございました。ヨーロッパにおけるチキン戦争の影響というものが、かなり日本に余波が及んでくる形勢も明らかでございましたので、養鶏という事業は日本の得意とする部門でないかと思いますが、これを今後育成しまして、アメリカの大きな事業に対抗し得るようにするためには若干時間がかかるわけでございますが、その間の保護をいたしますために税率を二〇%と上げたわけでございます。
次はテクニカラーフィルムの関係でございますが、これは現行税率はロールフィルムにつき三〇%、映画用のフィルムも、八ミリ用のものも十六ミリ用のフィルムも三〇%、印画紙につきまして二五%という税率になっておりますのを、本年中に自由化される予定になっておりますので、そのショックをやわらげますために三品目とも四〇%に上げることにいたしております。これは御承知のとおり品質差がかなりございます。それから技術的にも、国際的に大きなコダックでありますとかアグファとかゲバー等とかいうものと比べますと日本の技術は弱いように思います。そしてまたいま申しましたような会社は技術提携というようなことをやりませんでして、技術独占的なかっこうになっておりまして、日本のこれらの産業が、いま盛っております税率ではなかなか競争に耐えられないということでございますので、四〇、%という高い税率に改正することを御提案申し上げておる次第でございます。どうも外国の大きなこういうフィルムを生産しているようなところは、化学工業全般についてかなり手広くやっておりまして、染色、染料でございますとか合成繊維みたいなもので、やっておりますが、そのような巨大な産業に対して競争していきますためには、関税をこの程度上げるのはやむを得ないかと思う次第でございます。上げるほうは三つでよろしゅうございますね。
それから下げるほうの豚肉でございますが、豚肉は先ほど牛肉等について申し上げましたと同じように一〇%の関税を盛っております。ところが昨年の状況を見ますというと、日本が国内で豚肉が高くなりまして、外国から輸入しようといたしましても、輸入先の価格がまた高いというのが豚肉の特殊事情としてあらわれてまいりました。三年くらいの周期で価格がフラクチュエートしているわけであります。日本が高いときは外国も高いということでありまして、日本の豚肉をふやすために、農林省で割り当てをやられまして、輸入をやられましても、関税をかけておったのでは国内の価格よりも高いものになってしまうという事例が生じました。三十七年度あたりはそうなっております。したがいまして、そのような場合においては、関税を減免し得る規定を、いまの主食について減免する規定のありますところへ入れていただきまして、農林省できめておられます畜産物の価格安定に関する法律によります安定上位価格をこえているような場合には、関税の減免を行ないたいというものでございます。ただ佐藤先生御承知のように、最近は豚肉が非常に下がってまいりました。この規定をすぐ働かすということはまずないかと思うものでございます。
それからナフサでございますが、これは御承知の石油化学製品製造用の原料となるものにつきまして、今回暫定的にキロリットル当たり二百五十円の税率に引き下げることを提案しておる次第でございますが、現行ナフサにかかる税率は、自動車川ガソリンにかかります税率と同じキロリットルあたり二千百五十円いうことになっております。石油化学工業の育成のために原油にかかりました関税を還付しておるような状況にありますので、そのような状況下に国内で売られておるナフサと輸入ナフサとの均衡をはかりますために、ガソリンの税金をそのままでは高過ぎるものでございますから、二百五十円という低い税率を提案した次第でございます。
時計につきましては、それを三十六年十月自由化いたしますときに、三十九年三月三十一日まで基本税率に対して一個当たり六百円の従価税率を併課いたしております。これは三月三十一日までで従量税分をやめるという予定でございましたが、最近のところ全部やめるというのでは、まだ不安が残るということでございましたので、いままでの従量税率を一個当たり半分にいたしまして、三百円という数字にいたしまして提案いたしてございます。
それから新聞用紙は、現行税率七・五%となっておるわけでございますが、最近新聞用紙の消費は非常にふえてまいりましたので、供給はようやく追いつきぎみといいますか、やや先にいって不足するのではないかと見込まれておりますが、特にオリンピックの時期を控えまして、新聞紙の紙面が非常に拡大するという状況下におきましては、いまの設備では不足を来たすということになりまして、これを輸入せざるを得ないことになりました。この新聞用紙の輸入価格を見ますと、国産価格よりも若干高いという情勢にございますので、新聞用紙の特殊性にもかんがみまして、これを暫定的に免税することにいたしている次第でございます。
なおバナナにつきましては、これがほかの国産くだものと競合するかしないかという御議論が去年のちょうどいまごろの大蔵委員会でも非常にございましたが、政府といたしましては、自由化に際しまして、その衝撃を避けますために、七〇%という高い関税を置きまして、これを一年ごとに下げて、基本税率の三〇%にするという案の予定を組みまして、その予定に従いまして、今回政府提案としましては、第二年度の五〇%というものを提案している次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/17
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018・武藤山治
○武藤委員 関連。ただいまの御説明の中で牛肉、さらにブロイラーの若鶏の税率でありますが、これに関連してちょっとお尋ねいしたいのでありますが、牛肉の場合は、年末から値がたいへん上がったので、今回価格調整という意味で二〇%にするような意向のようでありますが、一体牛肉の国内生産量とさらに輸入の量をどの程度でバランスをとろうと考えているのか、そういう量のほうはどういう状況になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/18
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019・吉岡茂
○吉岡説明員 牛肉の輸入につきましてお答えいたします。
御承知のように牛肉と申しますか、現在の食肉全体の需給の状況を申し上げますと、鶏肉を除きまして大体五十万トンくらいと私たちは見込んでおりますが、そのうちの三十万トンが豚肉でございます。そして牛肉は約十五万トン、残りの五万トンがその他馬なり綿羊等で占められているわけでございます。そして牛肉につきましては、大部分は国内で自給しておりますが、過去の例を見ますと、三千トン、多いときで六万トン、そのくらいの輸入の実績があるわけでございます。
将来の趨勢はどうかと申しますと、私たちの推定では、肉牛の飼養頭数というのがこれから現在以上に大幅にふえるという可能性というのは非常に少ないのではないか。三十七年度から始まりまして四十六年度で一応目標をつけております家畜改良増殖法に基づきます家畜改良増加計画におきましても、現在和牛というのは二百三十万トン前後ございますが、それを二百五十月頭くらいと一応推定いたしているわけでございます。そうして一方におきましては食肉の需要というのは年に一五%、強いときには二〇%というようなときもございまして、食肉の需要量というのは相当大幅にふえております。そこで、その供給のほうはどうなるかと申し上げますと、やはり一番大きな供給源というのは豚肉であろうか思っておるのでございます。そして先ほど話題になりましたブロイラーの国内増産というのも、大幅にふえるであろうということを考えております。ただ牛肉につきましても、現在特に関西方面では牛肉についての需要が非常に強いわけでございますが、一応嗜好というものも相当ございますし、需要も相当強いのではないか、そういう意味におきまして牛肉輸入というものもこれからはむしろ漸増ではないか、そういうように私たちは見ておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/19
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020・武藤山治
○武藤委員 私の聞いておるのは、そればかりではなしに、結局国内産の牛肉がたいへん高くなった、それは量が足りないから高くなったのだ、そこで輸入しよう、しかし安いまま輸入されたのでは日本の農民がたまったものではない。保護されない。そこで、とにかく税率を下げて外国からある程度これを入れてこようということになれば、国内の農民のほうは値がまた下がってくるんじゃないかという心配で相当の不安があるわけです。そこで税率を引き下げて輸入をふやす場合には、一定のめどがないとたいへんなことになるのではないか。だからかりに率を上げた場合に国内価格にそれがどういう影響を与えるか、あるいは下げた場合には量でもって農民へどういう影響を与えるかという関係があるわけですから、今回の場合の措置で国内産の牛肉の価格と輸入価格とはどういう水準になるのか、またどの程度量がふえた場合にはそのバランスがどう変化するのか、そこらの見通しについてはどう考えておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/20
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021・吉岡茂
○吉岡説明員 現在豚肉につきましては畜産物格安定法に基づきまして安定基準価格、安定上位価格という仕組みがございまして、現在の値段は下が二百六十円、上が三百四十円ということになっておりますが、もしそれをこえて低落をするというときは畜産振興事業団が買いささえをする、こういうことになっておりますが、牛肉につきましてはそういうように畜産振興事業団で買いささえということになっておりません。これはいろいろ技術的な問題がございまして、規格の問題、取引の問題がございますので、まだそこまではまいっておりません。ただ今回の関税引き上げ、こういうものとも関連いたしまして豚肉と一つの関係を持たした価格というものを行政上の措置として考えておりまして、それを目途といたしまして輸入なりを考えたい、そういうように考えておるわけでございます。それではその値段をどういうようにするかという問題でございますが、実はこの豚肉の安定基準価格なり安定上位価格、これは毎会計年度価格審議会の議を経てこれを告示するということになっております。三月二十三日から価格審議会を開く、そういう予定でおりますが、それとも関連いたしまして慎重に考えていきたい、そういうような段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/21
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022・武藤山治
○武藤委員 それでは見通しについては資料を持っておらぬようでございますから、実績についてひとつお尋ねをいたします。
去年の一年間の実績で一〇%のときにはこの程度入ってきた——三千トンからまあ六千トン程度の幅があるわけですが、一〇%のときこれくらい入ってきて、二〇%にしたら輸入はふえる傾向にあるか減る傾向にあるか、二〇%にした場合の国内生産価格と輸入価格との差というのは一体どういう価格になるのか。去年の実績でいいですよ。特に牛肉の場合には安定基準価格がありませんから、豚肉との関連でややこの程度という一つの目安はあると思うのです。だからこれからの見通しは局長か何かもっとえらい人に聞かぬとわからぬような答弁でありますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/22
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023・吉岡茂
○吉岡説明員 牛肉につきましては現在外貨割当て制をとっておりまして、これは輸入価格関税によりまして輸入量が動く。そういうようにはなっておりません。したがいまして、昨年度は一応需要の型通しから五千トンの割り当てをした、そういうことでございます。そうして私が先ほど三千トンないし六千トンと申し上げましたのも、これは価格によりまして自動的に入ってくる、そういうような量ではございません。そのときの国内の需要と価格の実勢を見まして一応外貨割り当てをして、その結果入りました数字がそういう次第でございます。それから価格につきましては、これは現在の国内と国外の価格を比較してみますと、国内が三百五十円というような価格にいたしましても、ニュージーランド、豪州から入ってくるもの、これは一キロでございますが二百円というような価格もございまして、ときどきの価格によって変動いたしますが、もちろんそれにつきましては関税以外に品質の格差、それからあと冷凍処理をいたしておりますので冷凍の格差、そういうのも見る必要がございますが、それをただ裸のままで計算いたしますと相当の開きがあるというのが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/23
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024・武藤山治
○武藤委員 そういたしますと、開きが非常に大きいから一〇%を二〇%にしても、外貨割り当てさえいじらない限りそう農民には影響はない、こういう判断ですか。もう一つは去年五千トン輸入を判り当てたのを来年度の外貨割り当ては一応どの程度予定をしておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/24
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025・吉岡茂
○吉岡説明員 三十八年度は、先ほど申し上げましたように一応需要の動向を見まして五千トンという数字を割り当てたわけでございますが、三十九年度の数量につきましては、現在統計調査部におきます出荷予想なり飼養頭数の統計の数字を見た上で、自分たちといたしましては価格の変動を見ながら慎重に検討いたしたいと思っております。したがいましていまここで私が何千トンと申し上げるだけの数字を持っておりません。ただ価格の動向等を見ながら国内生産に阻害的な影響を与えないというような方向で、量につきましては慎重に検討いたしたい、さように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/25
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026・武藤山治
○武藤委員 そうすると三百五十円の国内生産価格と外国の二百円の価格とでは百五十円も差があるわけですね。こういう差がある場合に、これはどういう基礎かわかりませんけれども、日本に入ったときの小売価格はプールしてしまって同じ価格にしておるのかどうか、まだ聞いてないのですが、とにかくこれだけの差があるものを一〇%から二〇%に上げただけで、輸入は、外貨割り当てはできるだけしないようにしていこうという傾向ですね。関税率だけで操作をしようということになってきたときには、まだまだで二割の税率では相当大量に入ってくるという心配もありますけれども、大蔵省のほうではどの程度こういう具体的な見通しについては計画を立てて二〇%に引き上げたのですか、その基礎をひとつ明らかにしてもらいたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/26
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027・佐々木庸一
○佐々木政府委員 大蔵省といたしましても、牛肉の輸入を自由化するというような前提では関税率を考えていないわけでございます。関税率によって価格が形成されると申し上げますよりも、割り当てられる輸入量によって価格の形成が影響を受ける点が強いと思っておる次第であります。そういう状況のもとに関税を組みます場合に、現在のところ、価格差はいま申し上げております関税率よりも高いかと思われますが、高い関税率を盛ることによりまして、消費者価格がまた下げ渋ったのでは非常にぐあいが悪いという面もございます。これは昨年の年末から一月にかけまして、消費者価格問題が非常にやかましい時期にこれを検討いたしまして、関税を上げましたことが消費者価格に影響を及ぼさない範囲内において上げておきました。これがまた国内における飼育業者の方々にかなりの程度の保証になるというところでやっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/27
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028・武藤山治
○武藤委員 どうも農民に聞かせたら、たいへん不安な、先の見通しに対してまことに不確実で、これという二〇%にした確たる基準もない。価格をどの程度に水準を保って、農民にどの秘匿の所得が保障されるかという価格保障も考えていない。不満ですよ、いまの答弁は。
そこで、農林省にお尋ねいたしますが、特にこれから需要がどんどん伸びていく、ところが生産は、どうも四十六年度までの計画で推移をはかってみると、さほど伸びない。したがって、輸入に待つ以外にない。こういうような考え方のように、先ほど答弁をいたしておりますが、牛肉をふやすこと、あるいは他の肉類をふやすということは、これは人為的に簡単にできるのです、農林省がやる気になれば。したがって、外貨を節約し、大切に使おうと池田総理が幾らがなっても、農林省がそういう計画を具体的に立案できないというような能力では、私は外貨は大切にできないと思うのです。たとえば、牛肉をふやすためには、全国五千軒なら五千軒、一万軒なら一万軒の農家に農林省が委託して、とにかく小牛の生産能力が一年間幾らなのか、その小牛を食肉牛にどのくらい、あるいは農耕にどのくらい、そういうことは一定の農家を指定して農林省がやる気になればできるのです。十年計画なり、あるいは十五年計画なり、必ずできるはずなんです。そういう計画を怠っておって、いまのような答弁で、将来がまことに不安な農民に、とにかく価格状態もはっきり答弁できない。もう来年度というのは、あと一週間か二週間ですから、その来年度の肉の値段がどうなるかはこれから審議をしてきめるのだなどというずさんなことで、税率だけ今度一〇%から二〇%にするというごときは、まことに不満ですよ。農民に対して不親切ですよ。私はもう一回これからの肉の需給関係はこうなっていく、農林省はそれに対して根本的にこういうことを考えている、ただ、大蔵省が金を出さぬためにその計画ができない、実際はこういうプランがあるのだ、そういうようなものがあったら、この際明らかにしておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/28
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029・吉岡茂
○吉岡説明員 先ほどのほうとも関連いたしまして、お答えいたしますと、関税局長からも御説明がありましたし、私からも申し上げましたように、現在牛肉の輸入は外貨割り当て制という制度になっております。したがいまして、私たちといたしましては、国内生産に阻害的な大きな影響がある輸入をする、そういうようなことを考えておるわけではございません。ただ、一方におきまして、これは重要な食料品でございますので、ただむやみにこれの値段が高いということばかりがよい、そういうようなわけにもまいりません。したがいまして、私たちといたしましては、行政上の一つの目安として値段をきめまして、それに合わすように輸入量をコントロールしていこう、そういうように考えているわけでございます。そして、将来の方向といたしましても、農林省といたしまして、牛肉についてこれを自動承認制にする、そういうようなことは考えておらないわけでございます。そういう意味におきまして、ただむやみに輸入がふえて国内生産が阻害されるというような心配はないではないか、そういうように考えているわけでございます。ただ、将来の生産対策の問題でございますが、特に牛肉につきまして申し上げますと、これは和牛というものが将来どうなるかということでございます。従来牛というのは役畜牛として現在まできたわけでございます。ところが、終戦後農業を取り巻く情勢が変わりまして、農業の機械化ということとも関連いたしまして、役畜牛の機能というものはなくなってまいったわけでございます。そこで、肉専用種というような方向に和牛というものが見られ、そしてまた飼育される、そういうような段階になってきたわけでございます。ただ、和牛につきましては、これは草食性動物でございまして、良質な草をどのように供給するかという大きな問題がございます。したがいまして、先ほど問題になりましたブロイラーを飼育して急速にふやす、そういうような方向にはなかなかまいらぬのではないか。それは日本の資源の広さ、草の量、そういうものとも関連をいたすわけでございます。ただ、量をふやすという問題は、その生産性という観点から考える必要があるのではなかろうか、そういうように考えておるわけでございます。そういう意味におきまして農林省といたしましても、草地改良事業なり必要な財政投資をいたしまして、生産性の向上、そういうような方向に和牛を持っていこうというふうに考えておるわけでございまして、足りなければ全部輸入に仰ぐ、輸入さえすればよい、そういうようなことは毛頭考えておらないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/29
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030・武藤山治
○武藤委員 大蔵省にお尋ねします。そうしますと、現在は外貨割り当てをしているから、需給のアンバランスのときにそのつどそのつどの判断で輸入をする。そうすると、三十九年度の外貨割り当ては牛肉に対してどの程度割り当てようかという一応の目安はないですか。やはり去年の実績程度、五千トン程度積っておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/30
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031・佐々木庸一
○佐々木政府委員 この数量をいかにきめますかは農林省の所管のことでございますが、意見といたしましては、年末年始の程度非常に値上がりしました際は、あの時期におきましては相当大幅にふやすべきではないかという議論をいたしました。最近のところ、御承知のように、豚肉の値段も非常に下がっております。牛肉の値段もたいへん下がってまいりました。私どもの考え方もまたそれにあわせまして再検討をしなければならぬかと思いますが、いま農林省は統計数字その他を収集されまして作業中でございます。それらの資料が集まりましたところでまた検討をさしていただきたいと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/31
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032・武藤山治
○武藤委員 もう一問。
若鶏の肉のほうの件ですが、これも先ほどの説明の中で、養鶏家保護のために実は二〇%に引き上げた。二〇%に引き上げることによって日本の養鶏家の去年までの姿、あるいは一昨年までの姿がどういう形でどの程度保護されますか、それをひとつお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/32
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033・吉岡茂
○吉岡説明員 ブロイラーについて申し上げますと、これは先ほどからも論議がありましたように、三十九年度から従来一〇%の関税を二〇%に引き上げる、そういうような方向で御審議を願っておるわけでございますが、その理由は、先ほど税関局長からもお話がありましたとおりでございます。実績を見ますと、昭和三十七年度におきましては二百七、八十トンの輸入量であったわけでございますが、三十八年度は三千トンをこえる輸入量になったわけでございます。要するに、三十七年度から三十八年度にかけて輸入量が十倍にふえた。そうして、一月から二月にかけましても、月に五百トンくらいの輸入が出てきておるようなわけでございます。この理由を考えてみますと、昨年の秋ごろから豚肉が非常に上昇した。卸売り価格で四百七十円前後にまで上昇したということとも関連があろうかと思うわけでございますが、それに伴いまして、国内産の鶏肉についても影響があることは当然でございますが、ブロイラーにつきまして私たちが考えておりますのは、日本の養鶏業というのは、非常な技術と経験と歴史を持っておるわけでございます。ただブロイラーにつきましては、専用種がございません。そういう意味におきまして、アメリカのブロイラーと競争した場合でも、えさ効率も若干違うという点もございます。そういう意味で、こういう関税を引き上げると同時に、国内産のブロイラーを積極的に品種改良なり、技術を改良していくという方向に持っていくべきであろうと思いますし、日本の養鶏業というのは先ほど言いましたように、技術も経験も非常にございます。ただこれは一〇%から二〇%に引き上げるということで、数量的にどういう影響があるか、所得がどうなるか、国内のあれがどうなるかということをすぐ数字で出せ、こうおっしゃいましても、私、ただいまその数字をここに持っておりませんが、日本の養鶏業というのは、歴史と技術と経験もございますし、専用品種という方向からいけば、遠からずして外国艇のブロイラーと太刀打ちできることになるのではないか、私たちはそういうように考えております。また食肉の需要と供給の全体を見ても、豚肉とブロイラーの二つが大きな柱になって、一本の食肉供給の大半を占めるのではないか。将来の姿としては、そういうように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/33
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034・武藤山治
○武藤委員 そういたしますと、三十八年度の三千トン前後は、三十九年度は大体どの程度輸入を仰がなければならぬか。この点について一つ。
それからもう一つは、きょうは関税定率法の審議でありますから、農林行政の根本問題をここで議論することは時間が許しません。したがってそれは私はいたしませんから、資料としてひとつ要求をしておきたいのは、先ほどの牛肉、それから豚肉の需給関係、それから輸入の今後の見通し、推移、価格の今後の相関関係、輸入品と国内産とのそれをできるだけ詳しく、ひとつ資料として提供を願いたい。
第二にブロイラー、豚肉についても同様な形式で資料をひとつ提出を願いたい、いまの質問だけひとつ聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/34
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035・吉岡茂
○吉岡説明員 先ほどの資料につきましては、私たちにできるだけの資料を提出いたします。
それからブロイラーの三十九年度の輸入量、これをどう見るかということでございますが、一月から、一月くらいは非常に輸入量がふえております。これは昨年の暮れ、豚肉が高かったということとの関連と、もう一つは四月から関税が上がるという二つで、かけ込み輸入といいますか、先を見越しての輸入も若干あったのではないかと考えられます。
それからもう一つは、豚肉の急落と関連いたしまして、輸入されたブロイラーが相当倉庫にあるのではないかという観測も私たちはしております。したがいまして、これはまだ相当先のことでございますので、確定的なことを私らが申し上げるわけにはまいらぬかと思いますが、いまのところ三十八年度より大幅にふえる、そういうようなことはないのではないか、私たちはさように見ているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/35
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036・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 ちょうど一年前の大蔵委員会で、バナナのことについて関税局長にいろいろ説明を聞いたのですが、三十八年度には七〇%にするけれども、三十九年度には五〇%に下げるというようないろいろな説明がございまして、これは内地のくだものと外国のくだものとの関係で、関税定率法の重要な問題でありますが、その点については、バナナを代表して関税局長の率直な意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/36
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037・佐々木庸一
○佐々木政府委員 バナナの輸入が、国産のくだもの一般に対して非常な影響を持つか、あまり影響がないかという問題につきましては、非常に判定しにくい問題であるように思われます。過去の数字をつかまえまして、その価格の動きと、供給量の動きというものをトレースしてみますと、国産くだものの価格に対する影響はかなりはっきりあらわれておるように思います。ところがバナナを入れましたところでは、どうもそのようなはっきりした関係が出てこないという統計上の事実はございます。しかしながらバナナの入り方というものは、非常に不規則でございまして、そのために統計処理がはなはだしにくいかっこうになっておるのではないかと思われる次第でございます。われわれは数字上で見ますというと、そう密接な関係があるとも考えておらぬ次第でございます。ただ、リンゴの値段などを見ますと、かなり落ちておるのもございます。この落ちておるものをみますと、流通過程において非常なマージンがあるように思われます。青森県で一箱二百五十円のものが、東京で売って二千円だというようなことを、予算委員会の分科会で御指摘になったのでございますか、流通過程にかなりの問題があるのではないかと思われます。その二百五十円に買いたたかれますときに、バナナの輸入量がふえてくだものが下がるから、向く買えないというふうな買い方があるように思われます。その範囲においては輸入量のふえましたことが、やはり価格に響くかと思っておる次第でございます。ただしかし、問題の重点は流通機構にあるのではないかと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/37
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038・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 農林省の方に、外国からくるバナナの国内産のくだものに対する影響についてひとつ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/38
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039・古西一郎
○古西説明員 バナナの輸入の自由化が国産果実にどういう影響をもたらしておるかという御趣旨の御質問かと思いますが、先生の御指摘のように、バナナの輸入の自由化によって、国産果実に影響がなかったということは言えないと思います。ことに昨年の十一から十二月にかけて、リンゴ等は、前年の価格に対比いたしまして、一割ないし二割の価格の下落を示しておるという事実があるわけでございますが、われわれといたしましては、たとえばリンゴの価格の下落というものは、なるほどバナナの輸入の自由化によって若干影響があったということは否定できないにいたしましても、むしろリンゴの増幅、これは三十七年度に比べますと約一四%増産がなされておるといったようなことで、増産の影響ということは無視できないのではないかというぐあいに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/39
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040・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 バナナにはリンゴの気持ちはわからぬだろうと思うのですが、実際、問題があるのは、最近全国的にバナナを売る店が非常にふえて、これは相当目立ってきておるのでありますが、しかし先ほど武藤委員からいろいろ農林省の吉岡参事官に質問をされたように、牛肉にしても豚肉にしてもくだものにしても、百姓のつくるものは非常にむずかしい。私たちの学生のころに農林省が、それ、肉をやれ、養豚をやれといったり、にわとりをどんどんやれというように奨励すると、必ず大暴落、これは昭和二、三年ごろから四、五年ごろには農業恐慌という問題があって、百姓は農林省の言うことの反対をやればだいじょうぶだという定説が生まれたことがあります。それだけになかなか理屈どおりにいかない問題があることは私は承知しておりますけれども、しかし一年の間にいろいろな変化もあり、また先ほど吉岡参事官から説明があったように、牛肉の輸入の問題でもあるいは豚肉の輸入の問題でもなかなかむずかしい問題が出てくる。けれどもただ国内の産業を保護するということだけで政策を立てるならば一体消費者はどうなるか。ましてこのような物価の上がるムードの中で、俸給生活者なんかの生活というものは、こういうようなことで脅かされる面があると思うのです。その点国内の産業の保護も大事であるけれども、消費者の立場も考える必要があるのではないかということを考えるわけでございますが、リンゴとかミカンとかはバナナと味が違うと思うので、私はそうおそれる必要はないと思うが、現実はなかなか青森県出身の代議士などは目を白黒させておる。そういう点で先ほど佐々木関税局長はそれほど影響はないと言われるし、いまあなたは国内のリンゴの増産のためになったのだというような声もあるのでございますが、一体その点は、御承知のように農業を保護するという立場から、現在国内のくだものに対して農林省はどんな政策をとっておられますか。この点もう一ぺん伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/40
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041・古西一郎
○古西説明員 果実は選択的拡大をはかるべき成長農産物であるという認識のもとに、これが長期見通しを立てまして、その長期見通しに即した増産をはかっていこう、こういう基本的態度でおるわけでございます。その場合に単なる増産ということではなくて、極力生産性を高めるという方向において、たとえば大型機械の導入を助成するとかあるいは果樹園の合理的な経営計画を樹立せしめてそれに対して融資を行なうとか、その他流通の面といたしましては、全国の流通改善協議会というものをそのつど開催いたしまして、これによって出荷の調整並びに市況の通報といったような事業を行なっておるわけでございます。なお特にリンゴにつきましてはガス貯蔵と申しまして、これはアメリカで相当普及をしておる技術でございますが、ガス室にリンゴを貯蔵させる、それによって約三カ月ないし四カ月貯蔵せることによって不需要期、たとえば夏場に新鮮なリンゴを供給できるようなそういう施設に対しては、三十八年度二カ所、三十九年度にもさらに二カ所助成をするというようなことで、その合理的な消費興の増産をはかってまいっておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/41
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042・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 大臣が来られましたから少しお尋ねしたいと思うのであります。
実はいま貿易の振興の問題で、総理に質問した問題をいろいろ話をしまして、私が残念ながら予想したことが刻刻とあらわれてまいりまして、池田さんや田中さんには申しわけないのでありますけれども、いまや公定歩合は絶対に引き上げないというのに、山際さんがやむを得ずやらざるを得なくなった情勢に追い込まれたという事実は、これは否定できないと思うのです。そこでいままで低金利政策ということと、それから高度成長政策というのは池田内閣のほんとうの錦の御旗であったのでありますが、残念ながらその錦の御旗を下げざるを得ないような情勢に追い込まれておると思うのですが、田中さんはどういうようにその点をお考えになっておられますか、これも関連してお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/42
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043・田中角榮
○田中国務大臣 池田内閣は御承知のとおり高度成長ということを言っておるのでございますが、実際上は超高度成長になりつつありますので、そういう意味で、正常な経済成長をはかるために、いわゆる高度といわれております成長をはかるための金融調節手段としての公定歩合の引き上げを行なったわけでございます。公定歩合の引き上げを行なわないということを言っておったのが、いま君子豹変で行なった、こういうことを参議院でも言われてまいったのでございますが、公定歩合の質問に対して私たちは答えられないわけであります。その答えられないことを質問を受けるものですから、非常に困るという事実も御承知いただけるわけでございます。公定歩合ということに対して、これは日銀の調節機能でございますからとお答えすると、その上にしかし大蔵大臣はどう考えるかという、こういうことでございまして、経済諸般の情勢を御説明申し上げて御理解をいただいておるわけでございまして、日銀がやっておりますものは、これは公定歩合は御承知のとおり日銀の政策委員会がきめまして大蔵大臣に届けるということでありまして、また法制上は準備率の引き上げや窓口規制については大蔵大臣の認可を得ておるわけでございます。だから認可を得るものに対してもうすでに十二月、一月にやっておるのでありますし、公定歩合というものはいままで日本人は非常に重く考えておりましたが、これは金融調節機能の中の一つでございます。でありますから、そういう意味でもう政府の姿勢というものは時々刻々に移り変わる現状に徴し、私は本会議でも申し上げたとおり、機に応じての適切なる処置をいたします、こう言っておるのでありまして、今度のものも全然また違うものではないということはひとつ御理解をいただいて御協力を賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/43
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044・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 それは田中さんなかなか豹変が上手で、そこのところがなかなか——だから一面においては政調会長のときには放言居士といわれたのですけれども、大蔵大臣になりましてからはなかなか慎重になられたことは、これは進歩だと思いますが、ただ現実には、これは池田内閣、田中さんばかりの責任じゃないが、池田さんは少なくとも証券のダウ千三百円説を唱えておられましたけれども、最近ではいわゆる共同証券ができても千二百円台があぶないというようなことがいわれております。それから大蔵大臣の責任ではないと言われればそれまででありますけれども、経済の情勢は御承知のように十二月、一月、二月、三月危機といわれ、今度はまた先へ延びて六月危機といわれるようになってきておりますけれども、現実的には御承知のように非常に中小企業者の倒産が多い。そういうようなことが目立って出てきておる。だからきのうの新聞を見ますと、あなたのほうの国税庁長官から、中小企業の金を、まあ税金についても一年や二年は猶予してもいいような、そういうあたたかい、あたたかいのか冷たいのか知りませんけれども、とにかくそういう指示を出さざるを得ないような情勢に追い込まれていると思う。これは私は何といっても所得倍増というようなできもしないようなことを言ったり、それからそれにからんできて労働賃金は非常に上がってきた。これは物価が上がれば賃金は上げざるを得ないような情勢で、御承知のとおり春闘もかつてないほどの大きなひずみが来ておるわけです。こういう点について国民が非常に心配しておるのですが、田中大蔵大臣はそういうことについてはどういうようにお考えになっておられますか、ひとつあなたの大抱負をここで伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/44
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045・田中角榮
○田中国務大臣 時間もございませんから大抱負を申し上げることもできないわけでございますが、ただ公定歩合の引き上げがどういうことで行なわれたか、ここの席で申し上げたわけでありますが、一つには八条国移行を前提としまして、国際通貨になる円の価値、信用を維持確保してまいりたいということが一つでございます。もう一つは国際収支の長期安定に資したいということでございます。あと戻りのできないときでありますので、十分な長期的な見通しを立てて、このように健全な歩みを進めなければならないということに資したい。第三点は申し上げましたとおり、今度の国会で政府の姿勢の根本を申し上げましたのは、国際収支の安定と物価の抑制ということでございます。その意味で三十八年度下期の成長率を見てまいったわけでございますが、政府が庶幾したものよりも高い水準を続けておるために輸入も月々増大しておるわけでございます。このような状態がそう長く続くわけではないのでありまして、より健全な成長率を確保すること、いわゆる健全定安的な成長率を確保することに資したいという三点をもってやっておるわけでございます。八条国移行を前にして、日本の経済が悪いんだとか、国際収支が悪いんだとか、どこを見ても、だれの話を聞いても、知恵のある人、私たちが偉い人だと思うような人たちはみなそういうことを言っているわけでございます。これは政府が実際の状態をより積極的にPRをしない結果でもあるかと思いますけれども、私はそんなに苦しいときではないというふうに毎度申し上げておるとおり考えておるわけであります。外貨も、政府が申し上げたとおり三月末は十七億六千四百万ドル、こういった数字をほぼ維持できるわけであります。しかも国際的にはもう日本の外貨準備として発表されておるゴールド・トランシェの一億八千万ドル分が日本の外貨からは落ちておるわけであります。そのほかに東京銀行や、また為替銀行十一行に対しての預金を合わせれば、約四億ドルに近いものもあるわけであります。まああまりにも日本政府は健全性を誇っておったというところにいろいろな誤解や危惧が生ずるのかと思いまして、この三月三十一日を期して、新しい思想でもってひとつ国民の前に事実を明らかにしておるような状態でございます。こういうことを申し上げる予定にしておったわけでございます。でありますから、私は七・二%の、内閣や自民党が考えております成長率を維持していきたいと考えておるのでありまして、いまは超高度——七%が九%なり一〇%なり、ことしは名目一四%にもなるというようなことでは長続きがしないということで、いろいろな施策を行なっておるわけでありまして、この事実は十分御理解をいただいて政府の金融政策を含めた経済改築にも理解あるひとつ態度をお願いしたい、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/45
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046・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 スイスの外債がうまくいったそうでありますが、しかしその反面、アメリカでは御承知のようにドル防衛がああいうふうになって法律が通ったということになっております。
それから、田中さん御承知のように、日本の貿易収支の赤字というのを先ほどいろいろ事務当局に質問したのでございますが、これは総理もせんだって答弁の中で、なかなか貿易外収支は黒字にならぬということを非常に心配されておりますが、そういう点で、なかなか経済の前途決して楽観できる——この六月か七月になると、日本のドルの在荷は十五億ドル台になるんじゃないかということを心配されておるわけですが、この点については大蔵大臣としてどういうような見通しを持っておられますか、この点についてひとつ伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/46
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047・田中角榮
○田中国務大臣 国際収支の見通しにつきましては、この三月三十一日で特別借款を一億ドル返済しまして、大体九千万ドルないし一億ドルの赤字ということでございまして、その期末外貨の数字が十七億六千四百万ドルというのでございますから、先ほど申し上げたとおり、これは大体維持できるということでございます。特別借款を返済してなお維持できるという数字は確保しておるわけでございます。
昭和三十九年度一ぱいにつきましては輸入、輸出六十二億ドルということでございます。貿易外の数字、五五億千万ドルの赤字を含めて、大体年間を通じて一億五千万ドル程度の赤字になるだろうということでございます。でありますから、私は、いまの状態、公定歩合の引き上げその他の状態等を勘案してみまして、八条国移行後これから一年間を考えますと、政府が発表しております一価五千万ドルの外貨準備の減りということで、総合において赤字が出るという政府の考え方は大体維持できると考えております。一億五千万ドル減ると——まあこれは赤字と、外貨準備が減ることは別でございますが、総合において一億五千ドルもし赤字になるとしましても、いままでは、国際統計で入っておったゴールド・トランシエの一億八千万ドルが入っておらなかったわけでございますから、これで十分カバーできるということになるわけでございます。それだけではなく、去年からことしの春にかけて、ずっとアメリカの市場というものは、利子平衡税の問題で、ほとんど市場が閉鎖されておったという面もございます。非常に小さかったヨーロッパの市場も、先ほどあなたが言われたとおり、日本の新聞や雑誌には日本の国際収支があぶない、あぶない、こういっておるにもかかわらず、ヨーロッパ市場では転換社債を出せば、一日で売り切れてしまう、プレミアムがつくというような実情であることは御承知のとおりでございます。こういう事情から推算をしますと、いま金融調節を早目にやって、政府が庶幾しておりますように名目九・七%、実質七%程度の成長率が維持できるという正常な発展に抑え得るとしたならば、私は、日本の国際収支の将来というものに対しては不安はないという考え方は、現在も変っておらないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/47
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048・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 まあ田中さんの話を開いておると非常に楽観で、安心できるような、できないような気がするのですが、田中大蔵大臣にお伺いしておきたいのは、どうも池田内閣は、これは七月の総裁選挙の関係もあるだろうと思うのですが、自分たちの計画した高度成長計画、所得倍増というものにとらわれ過ぎて、どうも手順がおくれおくれ、手おくれするようなそういう情勢が生まれているのじゃないか、おそらく私は、まあ山際総裁が今度政府の考えと違った意味で公定歩合を二厘引き上げたということは、これは少なくともあの人は自分は総裁をやめる覚悟を持ってやられたようにも想像するわけです。この点はまあわれわれ野党は弱いから、少なくとも二百人もあれば当然いまの内閣はかわっておりますけれども、残念ながらわれわれ社会党におりますけれども、野党が弱い、これくらいの失敗をすれば、当然外国なら内閣総辞職しなければなりませんけれども、なかなかそう簡単にいかない、こういう点を考えると、それほど大きな経済的な変動のあるときでありますけれども、少なくとも国民のためにこの際、いままでの、できない高度成長であるとか物価倍増のような政策を思い切って変える意思がないかどうか。田中さんは官僚出身じゃないのですから、案外とらわれない人でありますが、そういうことを思い切ってひとつ転換したらどうかと思うのですが、その点はどういうようにお考えになりますか、伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/48
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049・田中角榮
○田中国務大臣 公定歩合を引き上げたから内閣が総辞職しなければならぬというような考え方、これは引き上げを日銀から要請されて、押えて破局にいったら内閣総辞職ということがありますが、これは適切な処置をやったわけでありまして、私はそういう考え方はどうもいけないのじゃないかと思います。公定歩合というものが非常に大きく考えられ過ぎておるところに公定歩合操作というものが案外機能を発揮できない、弾力性を失っている、こういうことがあるのでありまして、公定歩合などは、上げるときはぱっと上げて、下げるときはぱっと下げる、こういう金融調節機能としての遺憾なき効力を発揮すべし、こういうことでなければ金融調節機能などは発揮できないわけであります。これは私はそういう意味で——これは日本だけが公定歩合が非常に大きな問題になっておるのであって、先進諸外国というのは公定歩合というものが非常に弾力的に運用せられております。でありますから日本の法制上も、公定歩合に関しては日銀の政策委員会が決定をして大蔵大臣に届け出る、しかし準備率の引き上げその他に対しては、大蔵大臣の認可を得なければならぬ、こういうように国会の意思決定がなされておるのでありまして、私はそういう意味から考えても、公定歩合というものをそう強く、政治的な責任まで追及しようとするからこそ弾力値がなかなかなくなってしまう、こういうことであって、これは八条国に移行する新しい情勢でありますので、こういうことに対してひとつ新しい考え方でお考えをいただきたい、このように考えておるのでございます。
それからもうひとつこの機会に申し上げておきますが、新聞記事等にございまして、日銀総裁が職をかけてというようなことを言われましたが、やはり公定歩合というもの自体を非常に大きく取り上げておるところにそういう議論が出てくるわけであります。公定歩合をやるたびに日銀総裁が職をかけたらたまったものではございません。私はそういう考え方自体が誤りであるということをはっきり申し上げておきます。政府は日銀総裁からそのような強い決意を持って臨まれたのではないのであります。私はこの際明らかにいたしておきますが、政府と日銀の間で、公定歩合の問題は、これは日銀に主体が置かれておりますけれども、実際国民に与える影響というものを考えて、日銀だけでやっておりません、事前に十分政府の意向もただしながら、私のほうでもよろしい、機を失せずして輸入担保率の引き上げその他も行なっておるのでありますから、そういう意味で政府と日銀との間には意思の疎通を十分はかってやっておるのであります。同時に十二月には認可権のあるところの準備率の引き上げを認めておるのであります。同時に窓口規制も認可をしたのであります。そういう意味から考えまして、それで私たちも機に応じて適切に処置をいたします。こういうことでありますので、日銀総裁の意見を私の意見が全然食い違っておるということはないのであります。食い違っておれば私はこの公定歩合の引き上げを認めません。そういうところが私の野人性でございまして、私はそういうことよりも、議論は起こるであろうけれども、一内閣や一人の大蔵大臣の考えよりもこれはやはり日本の将来の経済というものに主点を置くべきである。まずみずからを滅しておるのでありますから、そういう意味でひとつ心情を御理解賜りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/49
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050・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 公定歩合の引き上げという問題をそうたいしたものでないと言われるのは、われわれもそう思っておるわけなんですが、総理大臣や田中さんがいろいろ新聞記者に聞かれると、絶対に公定歩合の引き上げをやらぬと、言われたから世間の声も大きくなったと思うのです。
もう一つだけ伺っておきたいのですが、日銀、中央銀行のあり方というものと、この公定歩合の問題というものがあると思うのですが、田中さんは一体いまの日銀のあり方について、公定歩合の関係上こういう問題がある場合に、これでうまくやっていけるという確信を持っておられますか。またいま日銀のあり方を変える意思があるのかないのか、この点も関連してひとつお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/50
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051・田中角榮
○田中国務大臣 開放経済に向かってまいりますので、日銀の機能というものがより以上に大きくなるであろうということは、私も理解をいたしております。日銀法に関しましては長い間たなざらしになっておるわけでありまして、できれば開放経済に向かう前に日銀法を含めた金融関係法の整備をはかっていくということは、これはもうけだし当然なことだったと思います。なぜ一体これらのものに手をつけなかったか。これに対しては政府、特に当事者である私の責任も十分痛感をいたしております。これはしかし金融関係法などに手をつけることはタブーのような気持ちがびまんしておったところに、私も忙しかったし、就任日浅いということで日銀法や金融関係法まで手が届かなかったということがあるのと同時に、慎重の上に慎重を重ねたということで、歴史的な八条国移行を前にこれらの法制が新しい立場で検討されなかったことは遺憾であります。これは明らかにいたしておきます。しかし、きのうの朝日新聞等にもありますとおり、こういう機会に日銀総裁も大蔵大臣も日銀法の改正をやろうと期せずして一致したのだから、フェアな立場で議論を巻き起こして、いろいろな角度から議論を巻き起こすことによってよりいい日銀法をつくるべきだという談論もあるのであります。私もしごく同感であります。そういう意味で日銀の中央銀行としての中立性、また実際に新しい事態に対処して中央銀行の機能が遺憾なく発揮できるように法制も整備さるべきだという考え方でございます。しかしあまりにも拙速をたっとんで非難をこうむったり、より弾力性が欠けるよりになっては困りますので、十分配慮しながら、実情を検討しながら、将来の日銀のあり方に対して検討を進めてまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/51
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052・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 もう一点きのう河野建設大臣がここへ見えられて、堀君や武藤君が質問をいろいろしたのですが、ガソリン税を目的税にして独立会計的な方法でいくという問題が、日本はまだ道路が非常に悪いですし、将来の問題になると思うのですが、これは御承知のように物価の問題とからんでくるし、それから増税すれば、ほとんど三年おきくらいにガソリン税は増税が行なわれておるのですが、田中大蔵大臣はガソリン税の問題についてどういうようにお考えになっておるのか。この点はいろいろな関連がありますので、私は事務当局にお伺いいたしませんが、大臣の考え方をひとつ伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/52
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053・田中角榮
○田中国務大臣 佐藤さんも御承知のとおり、佐藤さんも建設委員会におられました昭和二十七年に、私が提案者になって道路整備費の財源等に関する臨時措置法をつくったわけです。議員提案であります。当時大蔵省事務当局あげて反対でありました。しかし日本の道路整備というものに対してどうしても必要であるということで、議員提案のかっこうで衆議院は全会一致で通り、参議院でもって百日間も慎重審議をされたといういわくつきのものでございます。しかし当時八十六億ないし八十七億しかなかった国の道路予算が、わずかに一カ年で一兆四千億に改定されたという画期的な事実も国民は見ております。しかしその後歴年減税をやっておるにもかかわらず、ガソリン税に対しては自来四回にわたって引き上げが行なわれておるのであります。それはガソリンというものに対して、消費量が非常に大きくなっているということと、もう一つは道路が悪いために、トラック、車の損耗度が非常に大きいので、ガソリン税を引き上げて特別財源式にして、道路整備が可能になるとしたならば、将来運輸業者等の負担が非常に軽くなる。いろいろな計算をした結果、これを目的税式な、いわゆる道路整備の財源等に関する法律では、当該ガソリン税収入相当額を道路整備財源に盛らなければならないという法律ができたわけでございます。私は今度のガソリン税につきましても、非常に慎重な態度であったわけであります。私自身が、四回のガソリン税引き上げのうち三回関係をいたしております。だから非常に深刻な考えに立ったわけでありますが、しかしまだいまの状態では、道路の整備が急であるという考え方で引き上げをお願いしたわけでありますが、もうここらで大体いいところへきているのだと思います。これは西欧諸国に比べてもいいところまできておるわけであります。ところがこれ以上税率を上げるということになると、道路整備の必要性と、ガソリン税引き上げによる負担との両方について、非常に厳密な計算をしなければならない。税率を引き上げないということになりました場合に、ある時期工事量を引き揚げる必要があるということになると、ガソリン税収入を将来の財源として、これを見返りに公債を発行しろという御議論にすぐつながるわけでありますので、政治的に非常にむずかしい問題があります。この一五%引き上げることが原案でありまして、一五%もし引き上げるとしたならば、これはもう最終であろう、こういうことを私は言ったわけであります。いまのところ一〇%に削られたわけでありますが、将来上げたとしても五%が限度だろうというのが、私の偽らない心境でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/53
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054・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 どうも河野さんは、日本はガソリンがとれないのだから、外国並みにもっと上げてもいいじゃないかという議論なんですが、これはここでもうこれ以上のことは申し上げませんが、最後に、先会にも総理に質問したときに、貿易外収支が赤字で非常に困っておる現状でございます。これはせっかく日本の国が貿易で黒字を出しておりながら、貿易外で赤字を出しているということは、イタリアあたりと逆の情勢でございまして、非常に残念なことだと思うのですが、この点について池田さんは四、五年あるいは六、七年かかるのではないかと言われておりますが、これはとん税の値上げがある問題もからんで、何か貿易外収支の赤字というような不始末な問題、少なくとも日本の貿易の中で、せっかく輸出を増大しても、船舶が赤字になってくるというようなことは、これはイタチごっこのような情勢になってくるのですが、こういう点については、大蔵大臣はどういうようにお考えになっておりますか、最後に伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/54
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055・田中角榮
○田中国務大臣 貿易外収支の問題に対しては、国民的な問題として常に検討していかなければならぬ問題でありますし、実際政府もバランス面などから離れて、貿易外収支の改善には積極的な施策をしなければならぬということは言うを待たないのであります。貿易外収支が四、五年やっておるうちに特需収入が減りますし、それからどうも観光収入も去年は百万ドル、ことしは九百万ドルの赤字でございますが、ことしは四月から百ドル制限を出しましても、五、六千万ドルこちらから持ち出しだろう、こういうことをいわれておるのでございます。そういうことをずっと考えますと、やがて十億ドルの赤字にもなるということが議論せられておるわけでございます。この観点としては三つあります。一つはイタリアのように観光収入を年間七億ドルも取っておるところがある。イタリアと比べて日本が悪いとは思いません。しかし日本はどうも来る人が少ないということであります。香港まで来ても日本に来ない。その意味で外人の遊興飲食税などの免税もお願いしたわけでありますが、修正をされてしまった。まことにままならぬ、こう考えておるわけであります。その意味でホテルなどもどうにもならないように非常に高いわけです。新しい外人向きのホテルをつくるのは——昔のホテルではだめだということで、新しい金利体系のもとでつくるということで、償却を含めますと、ホテルの経営も楽ではない。開発銀行等に融資のワクをつくりまして、去年の三十億が六十億、六十億が九十億というふうにやっておるわけでございますが、観光収入というものに対しては相当やはり国民的に新しい立場で考えていただかなければならぬ。
もう一つは外航船舶の問題であります。これは積み取り比率は、五〇%から六〇%、七〇%に上げていきたい、戦前程度にやりたいということでありますが、どうも海運にはブランクがあり過ぎた、これは事実であります。戦時補償の打ち切りとか、占領軍が、日本の経済力の発展を阻害するために、海運に対して力を尽くしてはならないという思想がやはり今日まで引き続いてきたところに大きなハンディがついてしまった。海国日本というのはほとんど見るべきものがないということで、ことしは六十川が二千トン、運輸省の要求どおり認めましたが、私はこれでもいかぬと思います。これからできるだけ早い機会に外航船舶の建造ということに対しては新しい視野でひとつ施策を立てるべきだと思います。
最後にもう一つ明らかにしておきますのは港湾使用料その他の問題です。これはあなたから前にも御質問がございましたが、日本と外国との賃金差があります。そういう意味で、やはりこれから貿易がだんだん大きくなってきますと、外国船舶を使う、それから外国の港湾使用料が高いということで、今度とん税にしてもらうわけです。これもまた運輸省から反対があったわけですが、計算をして、最後になってみるとなるほど日本の船舶は得をするのだということになり、ようやく意見がまとまったわけです。日本に来る外国船舶に対しては港湾使用料は安い。日本船が行ったときに外国は非常に高い。こういうものを勇気を持って直していかないと、港湾使用料が非常に赤字になる。これらの問題を全部抽出いたしまして、一つずつ解決をしていきたい。私はある時期に、昭和四十五年には経常収支は黒字になるようにということを申し上げましたが、できればそれ以上にもっともっと積極的な施策をして経常収支の大幅な黒字をはかってまいるべきだというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/55
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056・山中貞則
○山中委員長 堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/56
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057・堀昌雄
○堀委員 私はこれから関税定率法、相続税、揮発油税について質問をいたします。
最初に関税定点率法につきましては、すでにただいま論議がたくさん行なわれましたので、ちょっとこれに関連をした部分だけを伺っておきたいのですが、実は牛肉——これは冷凍その他なま肉の関税率は変更になりましたが、かん詰めの肉はどういうことになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/57
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058・佐々木庸一
○佐々木政府委員 コンビーフその他気密容器入りの関税は二五%の基本税率がいま働いておりまして、改正その他提案しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/58
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059・堀昌雄
○堀委員 そうすると肉の水煮というかボイルしたというか、そういうものを含めて二五%、こう理解していいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/59
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060・佐々木庸一
○佐々木政府委員 肉を調理しましてかん詰めにいたしましたものを二五%ということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/60
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061・堀昌雄
○堀委員 そこで、先ほど牛肉は関税割り当てになっておるという答弁が農林省からありました。いまかん詰めの肉の取り扱いはどうなっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/61
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062・吉岡茂
○吉岡説明員 お答えします。これも同様に外貨割り当てになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/62
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063・堀昌雄
○堀委員 大体いま年間どれくらい輸入割り当てをしておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/63
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064・吉岡茂
○吉岡説明員 お答えします。かん詰めにつきましては現在外貨割り当てはありますが、ホテル用等の特別のもの以外は輸入をいたしておりません。実績につきましても約三万ポンド程度のものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/64
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065・堀昌雄
○堀委員 ホテル用しか割り当てがないという話ですが、私ども町に出ますとリビーのコンビーフというようなかん詰めを一般に売っておりますが、これは密輸ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/65
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066・吉岡茂
○吉岡説明員 先ほどの私の表現がちょっと悪かったので訂正をいたします。当初ホテル用ということで出発いたしましたが、雑輸入という形に変えまして輸入しておる、それが町に出ておるそうで、そういうふうに私たちは理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/66
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067・堀昌雄
○堀委員 私がいまこの問題に触れましたのは、昨年私ども大蔵委員がアルゼンチンに参りまして、アルゼンチンで向こうのいろいろな方とお話をしたときに、アルゼンチン側としては、実は肉を少し日本に買ってもらいたい、こういう話が出ました。ところがアルゼンチンの牛には口蹄病というものですか、病気があるために、アメリカもなま肉、冷凍肉等の輸入を禁止しておるようであります。当然日本もそれに伴ってそういうものを禁止しておるということのようでありますが、最近アメリカはシチュー用に使う肉はこれを加熱して滅菌をしておるということで、輸入を認めるということになっておるようであります。そこで、これはアルゼンチンとの貿易の状況については大蔵省側でちょっとお答えをいただきたいと思うのですが、もしそういうことでアルゼンチンからの輸入品目の中に向こうの非常に熱望する肉をかん詰めの形でなら輸入をすることは私は危険はないと思うのですが、それについて大蔵省側でちょっと対アルゼンチンとの貿易の関係をお答えを願いたいのと、それから農林省側ではアルゼンチンの特に希望するそういう肉類のかん詰めの輸入等の問題についてはどういう考え方を持っておるのかを、ちょっとお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/67
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068・佐々木庸一
○佐々木政府委員 アルゼンチンとわが国との輸出入を見てみますと、三十六年にはアルゼンチンに対する輸出は四千百万ドル、輸入は六千五百万ドルでございました。三十七年は輸出が七千百万ドル、輸入は三千四百万ドルでございます。三十八年に入りまして、これは十月までの統計が出ておりますが、一月から十月まで輸出は二千万ドル、輸入は三千四百万ドルという形になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/68
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069・堀昌雄
○堀委員 三十七年だけが輸出のほうが多くて、あとは輸入のほうが多いようでありますが、まあ金額としてはあまり大きな問題ではないようでありますから、アルゼンチンとの友好関係という問題から見ますと、アルゼンチン側の希望するそういう牛肉のかん詰め、アメリカからいま主として輸入をしておるようでありますが、そういう問題については農林省側はどうでしょうか。まあ大きなものを輸入しろとは私も言いません。いまの全体のバランスがありますから。ただそういう国際的友好関係を増進するという意味において肉類のかん詰めの輸入についてはどう考えるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/69
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070・吉岡茂
○吉岡説明員 現在かん詰めの輸入は先ほど言いました雑輸入でやっておりますが、これは一応地域はグローバルということでございまして、特にどこを縛るというようなことはいたしておりません。御説のようにアルゼンチンにつきましては、なまないし冷凍の肉につきましては輸入をいたしておりませんが、かん詰めにつきましては一応グローバル、こういうことになっております。ただこれをふやすという問題は全体のかん詰めの輸入量をどうするか、そういう問題と一緒に考えていきたい、そういうように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/70
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071・堀昌雄
○堀委員 わが国の出先の諸君も出先で仕事をしておる上では、やはりアルゼンチン側のいろいろな要望も少しは日本側でこたえてもらいたい、そういう希望もございましたので、ひとつこれは農林省等においても積極的に、金額のことは私は大きなものを期待いたしませんけれども、そういう出先におる諸君の立場も考慮して配慮をひとつしてもらいたいということをお願いをいたしておきます。
そこで、大蔵大臣にお伺いをいたします。今度いよいよ八条国になりますし、だんだんと貿易の問題というものはさらに自由化の問題が進められなければならぬところに徐々にではあってもまだまいるであろうと思います。そこで一体に日本の関税率は全体としてかなり私は低いと思うのです、率直に言って。いろいろな過去の経緯があって低いと思うのですが、今後それではこのガットの中でいま見ておりますと、万事問題が受け身の形で生じておるように感じられてなりません。今後われわれの立場として国際競争力の問題については、先ほども佐藤委員の触れられた金融上の問題もありますが、諸般の問題から見て、なかなかわれわれ競争力の問題で困難な立場に立つ際に、いまのような関税の状態では十分競争していけるのかどうか。一体今後いろいろいま一括関税の問題その他、欧州、アメリカ等で論議はされるわけでありますが、日本としてのこれに対する態度を、ひとつあまり長い答弁でなくて簡潔にお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/71
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072・田中角榮
○田中国務大臣 日本の関税率はEECとアメリカの中間くらいで低いということはないわけであります。ガットの場合における関税一括引き下げということに対しては前向きの態勢でおりますけれども、しかし関税政策は自由化に対してはいろいろな問題がありますので、緊急関税その他の制度もございますし、関税政策の運用ということに対しては将来の問題もありますので、慎重に考えていかなければならぬだろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/72
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073・堀昌雄
○堀委員 いまのようにアメリカとEECとの中間にあるわけですけれども、私は個々の問題一つ一つをとっても論議になりませんから、全体の問題として、自由化の現状で、私はこれまで自由化になった場合における輸入増の問題というのを、三、四年来今日あることを予想して論議をしてきたわけですが、最近の実情を見ても、やはり輸入というものは相当に増加をしております。この中には、昨日も物品税でちょっと議論をいたしましたけれども、実は自動車用のクーラーなどというようなものは著しくアメリカと日本の場合には差がある。それを結局バランスをとっているのは一体どこがバランスをとっているかというと、小売り商がうんとマージンをとってバランスをとっておる。こういうことは私はおかしいと思う。向こうの機械が五万四千円、日本のものが十二万円というほど価格に差のあるものが、関税率が三〇%ということで関税をかけても八万五千円と十二万円、これだけの開きがあるわけですね。だから私は国内的に見るならば、もっと外国の品物が売れて、日本品との間に四万円もの差があれば日本品は競争ができないと思うので、聞いてみると、どうも小売屋の段階かどこかの流通段階でうんとマージンをとって、ほぼ国産品との間の価格が二万円か二万円の差になるというようなことで処理がされておるというような事実があるわけでありますが、こういう問題についてはまさに私は緊急関税かどうかは別としても、はたして三〇%の関税率でいいのかどうか、非常に問題があるところだと思うので、物品税による措置などというものは、私は向こうからくるものもこっちからのものも同じように物品税がかかるのだから、そうしてかかるとするならば、向こうのものは土台が小さいから物品税は土台の小さいもののほうは低くなるわけです。ここらの問題については一体どうでしょうか、お答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/73
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074・田中角榮
○田中国務大臣 関税率の非常に低いものに対しては、これを引き上げるということも当然考えなければならぬと思いますが、国際的に関税率の問題はいろいろな問題を起こしておりますので、国際的な情勢も十分見ながら関税率の問題はやっていかなければならぬと思います。しかし確かに事務機械の問題とか、いろいろの問題を私も知っております。こういうものに対して国際的な問題がありますし、また日本もそういうことによって対日差別待遇を撤回さしたり、日本の輸出を伸ばしていくという面もありますので、実際上入らないようにできないか、関税率だけではなくということでいろいろ考えておるのですが、どうも舶来品を好きな日本人でありますし、どうも習性として困ったものであります。ですからまず国産品愛用という運動を起こすことと、もう一つはやはり不要不急の輸入に対しましては、今度も担保率を引き上げたわけでありますが、もう少し高額の引き上げ等がやれないかということもひとつまじめにこれから取り組んでみようという考えであります。いやしくもそういう問題に対して金融上優遇するというようなことは避くべきでありますから、国産品愛用という意味からもそういうものに対しては真剣に取り組みたいという考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/74
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075・堀昌雄
○堀委員 自由化になる段階において、もうすでに関税率等もだいぶこの前も下がってきたわけでありますけれども、たまたま物品税だけの論議をいたしましてもこういうものが出てくるわけで、こまかく洗ってみれば私はかなり問題がある品目はまだ相当多いのではないかという感じがいたします。きょうはあと二法案の質疑がありますからこれだけにいたしておきますけれども、ひとつ関税局としては個々のそういう実態について十分な調査をして、あまりに光のはなはだしいものについてはいろいろ抵抗があろうと思いますけれども、しかしだれが見ても五万四千円の品物と十二万円の品物が競争できたりすると思わないわけですから、そういう異常な価格の差のあるものについては、やはり適当な考慮をすることでないと、なかなか物品税ぐらいを下げても国産を伸ばしていこうということにはならないだろうと思いますから、その点をひとつ十分少しきめのこまかい検討をさらにやっていただきたいと思います。
次に揮発油税についてお伺いをいたします。二月二十七日の予算委員会におきまして、大蔵大臣は井手委員の質問に答えて「御発言の問題につきましては、四十年度以降において発言の御趣旨を体して減免につき考慮いたしたいと存じます。」こう発言をしておられます。間違いありませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/75
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076・田中角榮
○田中国務大臣 予算委員会においていろいろ井手委員との間に、御質問に対して答えたわけでありますが、私との意見がなかなか合わないということで、少し混乱状態になって、各党の理事が話し合いをしまして、まあこういう答弁ができないかという結論が出たわけであります。私は政府部内の意見も徴しまして、やむを得なかろうということでお説のような答弁をいたしたと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/76
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077・堀昌雄
○堀委員 そこでこの問題を少し詰めておきたいのでありますが、表現が四十年度以降という表現になっておりますから、四十年度以降というのは四十年度は入る、こういうふうに私は理解をいたしますから、それでよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/77
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078・田中角榮
○田中国務大臣 ここは歳入委員会でありますからひとつはっきりと申し上げておきたいと思いますが、農業用に消費されるガソリン税の減免の措置につきましては、従来から技術的その他の理由できわめて困難であると考えられてきたのでございます。しかし政治的見地から見て圃場等で農業生産用機械に使用される揮発油につきまして、揮発油税等を課税するのは適当でないとの意見もあります。技術的にはきわめて困難な点があると思われますが、事務当局にその減免措置を行なう場合の方法について検討を命じておるところでございます。しかしこの議場から四十年度以降云々の答弁をいたしておりますので、この答弁の線に沿って、財政が許せば私がお答えをしたようなことが実現するように前向きで対処したいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/78
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079・堀昌雄
○堀委員 私が伺いましたのは、その四十年度以降というのは四十年度も入るのかということを簡単にお答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/79
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080・田中角榮
○田中国務大臣 四十年度以降でございますから、四十年度ももちろん入るわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/80
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081・堀昌雄
○堀委員 ただいま技術上の非常にいろいろと問題があるというお話しがありました。事務当局に少しお伺いをいたします。まあ事務的に——大臣もここではっきり確言をしていただきましたから、四十年を含めて、四十年度以降にはそういう問題が起こるとわれわれは考えます。しかし起こると考えてみたところで、方法がさだかでなければこれはどういうふうにやっていいかということになりますから、ここで少し事務当局側に考え得る方法について御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/81
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082・泉美之松
○泉政府委員 お答えいたします。
農業用ガソリン税につきまして減免の措置をとることができないかという問題は、すでに数年来問題になりまして、私どもに技術的な方法はないか、何か検討せよということをしばしば自由民主党のほうから言われまして、私ども検討いたしました上、技術的に非常に困難があるという旨を申し上げて今日に至っておるのでございます。技術的な点を申し上げますと、第一は農業用ガソリンを減免する場合の趣旨、それからその場合の範囲についての問題が第一になるわけでございます。これにつきましては揮発油税及び地方道路税は御承知のとおり、道路財源として目的税に類似した性格を持っておる税でございます。そこで減免の範囲をどう考えるべきか、道路を通行する自動車に使用する以外の用途の場合に減免するかどうかということになりますと、農業用だけでなしに林業用、漁業用、さらに溶剤用、あるいは窯業用、こういったいろいろな広範囲な道路を走る自動車以外の用途があるわけでございます。そこで農家に対しまして農家の使用しまする農業用機械についてのガソリンの減免を行なうとした場合にどこに線を引くべきか。その場合に考えられますことは、一つは農業だけでなしに、農林漁業といったところは生産性も低いし、担税力も低いからそこまでに限るべきという議論もございましょうが、その場合に窯業とかあるいは中小企業の使用する場合、これらの場合にはたしてどうであろうかという問題があるわけでございます。それからその次に減免を考慮するとかりにいたしました場合におきまして、その場合に、今回引き上げることによりまして揮発油税と地方道路税とを合計いたしますと、一キロリットル当たり二万八千七百円の税率になるわけでございますが、御承知のとおり道路整備財源として揮発油税及び地方道路税を使用するようになりましたのは、揮発油税について昭和二十九年以降、地方道路税が創設されましたのはそれよりあとになっております。そこでいまの引き上げ後の二万八千七百円の金額からどこまで減免すべきかという問題があるわけでございます。その際考えられますことは、二十九年以前の税率は道路財源に特に使用するという趣旨でなくて、揮発油に道路財源として使用する以外の担税力があるということで課税になっておったものでございますので、一万一千円の部分は減免すべきではないじゃないかということになりますと、一キロリットル当たり一万七千七百円を減免するということになるわけでございます。その場合におきまして計算いたしますと、農業用のみの場合におきましては三十九年度の消費量を基礎にいたしますと、と申しますのは四十年度の消費量がまだ判明いたしませんので、三十九年度の消費量を基礎にいたしますと、農業用のみで五十九億円、それから農林漁業用のみで六十六億円の減収になるわけでございますが、道路整備財源として使用することになっておりますので、それだけの減免を行ないますことによる影響が、道路財源にいかなる影響を及ぼすかということを考えなければなりませんし、かりに非道路用の用途全部に減免するといたしますれば、百億円の減収を来たしますので、これらの点から道路整備財源としての重要性にかんがみて問題があるということでございます。
次に、具体的な減免税の方法につきましては、およそ二つ方式が考えられると思うのでございます。
一つは、減免税の切符を発行いたしまして、いわゆる玉がえ方式というやり方でやるのでございまして、わずらわしゅうございますから農業用の場合についてだけ申し上げますと、農業用の耕うん機につきまして標準の燃料消費量、それから耕面積等を基礎といたしまして切符を発給いたしまして、その切符に基づいて販売業者から安い値段でガソリンを購入することができるようにいたします。販売業者はその切符について販売したということの確認を税務署に求めまして、そこから卸売り業者を通じて製造業者まで切符がまいりまして、その製造業者はその切符をもとにして税務署長の承認を受けて、軽減した税率の揮発油を卸売り業者を通じて販売業者にまで渡すという、いわゆる玉がえの方式でございます。この場合に問題になりますのは、まず第一は耕うん機ごとの消費量の決定、これがはたして適正にできるかどうか問題があるわけでございます。それからいま申し上げましたような手続をとりますために、減免税の切符の発給、版元の確認、軽減された税率で製造業者が出荷することの承認、こういった税務当局の事務量がきわめて膨大になるわけでございまして、現在の国税庁の試算におきましては、これがために約千人の税務官吏の増員を必要とするという計算になっておるのでございます。それからそういうふうな減免の切符を発給いたしますと、それが売買されるおそれがあるわけであります。またかりに売買されなくて、農家が減免された価格で購入いたしたといたしましても、それを耕うん機用に使わないで、モーターバイクに使うとかあるいは農産物の出荷のために三輪車あるいは自動車に使用するということも可能でありますが、そういった場合の取り締まりということは事実上きわめて困難である、そういう意味で問題があるというわけでございます。
それから減免切符を発給する場合に税務署の事務量がそれほど多量になってたいへんであれば、その事務量の軽減をはかるために農家一戸一戸に減免切符を発給する方式でなしに、たとえば農業協同組合を通じて一括切符を発給いたしまして、農業協同組合において安くガソリンを購入して農家に分けたらどうかという考え方もあるわけでございますが、これはいまの玉がえ方式の一つの変形ということができると思います。現在工業用のA重油の輸入関税の免税についてとっている方式に類似した方式でございますが、この場合におきましてもいま申し上げました事務量のほうは若干減ると思いますけれども、やはりその購入されたガソリンが農耕の耕うん機のため以外に使用されるということについての取り締まりの困難という点は存在するわけでございます。
その次の方式といたしましては、これはアメリカでやっておる制度にならって、消費者への税額還付方式というものがあろうかと思うのでございます。これは結局農家にガソリンの購入量及び使用量を記帳させておきまして、一年たった後に消費者から購入したガソリンのうち耕うん機に消費した数量を記入させまして、ガソリン税減免申告書を提出させまして、税務署長はその申告書に基づきまして調査をした上で、適正に消費されたと思われる分を還付するというやり方でございます。このやり方につきまして問題がありますのは、金銭の交付事務を伴いますので、その管理がいろいろ問題があるということと、一々農家からそういう申告書を出させて還付するといたしますと、還付特別にはきわめて多量な事務が集中すると思われるのでございまして、農業用だけで考えましても約三百八十万件の申告書が出てくる。農林漁業用ございますと、それが四百四十万件くらいの数になりはしないかというふうに考えられるのでございます。それから農家に記帳させるということが要件になるわけでございますが、現在の農家の実態から見ましてそのような記帳をしてもらうことには非常な困難がありはしないかという問題がございます。
さらに還付は調査した後に行なうか、あるいは申告件が出ますれば一応還付しておいてそのあとで調査するということになろうかと思いますが、実際問題といたしまして消費数量の申告が万一不相当であったというような場合、還付金につきまして一たん還付しておいてまた徴収するといったいろいろなトラブルが起こる可能性があろうかと思うのでございます。
そのように方式としましては大きく分けまして二つの方式、玉がえ方式のほうでこれを側々の農家に発給する方法と、農業協同組合を通じて発給する方法とに分けることができようと思いますが、それぞれにさきに申し上げましたようないろいろの技術的な難点があるわけでございまして、そういった技術的難点をはたしてどのように処理すべきかという点について現在検討をいたしておるのでございます。同時にそういう減免の方式でやることが困難であるとすれば、財政支出のほうでこれを処理したらどうかという考え方もあるわけでございますが、これにつきましては主計局のほうで検討していただかなければならないと思います。いずれにいたしましても、この問題はひとり主税局だけでなしに、主計局を含めまして大蔵省全体としてどのように処理すべきか今後検討いたさなければならぬ問題だ、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/82
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083・堀昌雄
○堀委員 いま主計局のほうで財政支出での問題があるという主税局長の答弁でありますから、主計局として考えられるもの、主税局がおそらく希望しておるであろうところのものはどういうものであるか、ひとつ主計局側で答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/83
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084・澄田智
○澄田政府委員 主計局としてお答え申し上げます。
ただいま主計局と打ち合わせているいろいろな問題があるというようなことでございますが、まだその点についてわれわれとして今後四十年度以降の問題としての検討をいたして、それがある秘匿の具体的な問題として考えるというようなところまでには至っておりません。ただ私、いま与えてみましていわゆる歳出面でもってこれを戻すということを考える場合に、直接個々の農業用にガソリンを消費したその農民に直接還付すると同じような形で補助をするというようなことをもし歳出面で考えるといたしますならば、これはただいま主税局長から答弁いたしましたような困難、消費量あるいはそれをどうして把握するかというような点について、今度は歳出面で同じことをやらなければならない機構を、これは農業面であるからというので、かりに農林行政の系統の機構でやらなければならぬということになる場合には、市町村とかあるいは組合とか、そういうことになりますが、こういうところでやはり同じ問題を把握しなければならないわけでありますので、これは行政の効率から申しましてもはなはだ手数がかかる。それができるくらいならやはり徴税面で還付することもできる、こういうことになりますので、ストレートに使用する税額に相当する金額を補助金として歳出をする、こういうような問題ははなはだおかしいことで、これは考えられないことではないかと思うわけであります。
次はその金額に相当するものを何らかの意味で農業面に歳出として立てるということでありますが、これは従来からいろいろ御議論もありますし、また現にやっておることでもあります。たとえば農道とかあるいは林道上か、そういうようなものに対する支出としては、かりに三十九年度で見ますと、農業用ガソリンの課税としては、金額は的確にわかりませんが、先ほど申し上げましたように、三十七年で五十億ないし六十億というものが、三十九年でいろいろなものを入れまして九十億程度と仮定いたしましても、これに対しまして農道とか林道の予算というのは三十八年度で百十一億、三十九年度で百四十六億ということになっておりますので、これをオーバーしている、こういうことになります。そういう意味の結びつきを考えますと、農道、林道だけをとってみましても、ガソリン税よりもはるかに上回っているということになりますので、そういう意味の歳出面ということではやっておるじゃないかということになるわけであります。しかしそういうあれがございまして、従来も農業機械化研究所の出資を三十七年度にいたしました。これは農業機械化という面にガソリン税の一部というようなものを結びつけてそういう要望があったために、農業機械化研究所に出資をして農業機械化を進めるということになった。それからまた、本年御承知のように要求の話といたしましては、農業改良資金の増勢のための財源として使用するということになりまして、本年十八億増額をいたしたということになります。主計局の面で歳出を考えますと、いままでそういうことをすでにやってきておるという面もあるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/84
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085・堀昌雄
○堀委員 いまの主税局長及び主計局次長の話を聞いておりまして、やはり政治というのは常識でなければなりませんから、常識で考えてみますと、これは税金でありますから、税の減免はやはり税の面でやるというのが、私は筋だろうと思います。財政支出に振りかえるということになれば、いま主計局長が申したように直接にはできない。間接になんてことになればこれはもうどうでも理屈はつくわけでして、農民個々にガソリン税が減免されたとは理解できないわけで、私はそういう観点から、この問題は主税局がやはりみずから行なうべきである、大体こういうふうに考えます。
そこで先ほどからいろいろなネックを申されましたから、そのネックを一つずつ少し詰めておきたいと思うのですが、まず二つの問題が提起をされております。切符を出して農家個々に対して処理をする場合、それから農業協同組合に対して一括して切符を発行して処理をさせる場合、及び消費者への税額還付方式、こうなっておるようでありますが、まず率直に言って、現在の農家の皆さん、非常に事務的にひまがあるというわけでもないと思いますし、どうもアメリカ方式の還付方式というのは、それでなくても忙しい農民の皆さんにより以上の負担をかけることになる、これは私はあまり適当でないと思います。同時にその還付に要する事務は徴収に要する事務とほぼ同じ、あるいは場合によってはさらに手数がかかるかもしれない。ということは、大体税金を見ておりますと、税務署は取るほうは非常に気楽にお取りになるけれども、返す段になると非常にきびしい手続になるわけですね。大体返したがらないというのが実はいまの税務署の考え方です。ですから還付方式で返すとなると、取るとき以上に、その量が一体幾らであったかとか、どうとかいうことをシビアに調べることになれば、結局農民に非常にいろいろな面でトラブルの起こる可能性もあるし、むだな労力を使われることになるのではないかという気がしますから、まずそうすると還付方式というのは大体常識的に考えて無理だろう。そうすると残ってくるのはやはり切符を発行する形によって農家個々に対して問題を処理をするか、農業協同組合を通じて処理をするかという問題であると思います。そこでその問題の中では消費量の決定がどうか、こういうお話がございました。こうなるとこれは水かけ論のようなことで、消費量の決定というものは大体ある機械を耕作反別どのくらいを使うかによってきまるでしょうけれども、しかしその使い方によってもこれは違います。同じ人が同じたんぼの同じ面積のところを使っても、きょうやったときとあしたやったときではまた違うわけですから、これは厳密という程度をどこに置くかということの程度の問題であって、私はそういう意味で消費量の決定がこういうことに対してそれほど根本的な要因になるほどのものではないというふうにまず第一に思います。手続のいろいろな問題で事務量が増加をする、約千人ほど人が要るそうであります。私は、千人の人がふえるとするならば、国の財政支出はどれだけ増加をするのかちょっとお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/85
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086・泉美之松
○泉政府委員 現在の国税庁の人件費等から算出いたしますと、千人の税務職員をふやすことに要する所要経費は約八億円と認められます。
〔委員長退席、吉田(重)委員長代
理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/86
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087・堀昌雄
○堀委員 いまのお話しで約八億円。それから現在大体農民が負担をいたしておりますガソリン税は約百億くらいということのようでありますから、百億の減税をするために八億の歳出を要するということになるわけでありますが、これは筋が通っておる問題でして、筋を通すために必要なことであるならば、私はそのために税務職員がふえても、これはその程度のことは当然国が考えるべきことだろう、こういうふうに考えます。
その次に切符の売買が行なわれるのではないか。これは切符というものを発行すればおそらくそういうことが起こるでありましょう。これは他の使用との関係もそうですが、要するにガソリンにはついていないのですよ。切符を出した農業用ガソリンは黄色いガソリンだというようなことになっているわけではありませんから、そこで割り当てを受けたものをあるいはオートバイに使うかもしれないけれども、今度は動力耕うん機を使うときには判り当てを受けないやつを買ってきて使わなければならないわけです。切符の売買と他の使用の問題は、さっきの消費量がきちんときまっておるならば——動力耕うん機は使うために農民は多額の金を出して買っているので、動力耕うん機を買って積んでおく、モーター・バイクや三輪車ばかりに農業用ガソリンを使うということのためにこの高価な動力耕うん機等の農業機械は買いませんから、そういうことをおっしゃるのは、私は皆さんが農民の実態を知らなさ過ぎると思うのですよ。農民というものはいま一番労働条件が悪い。過重な肉体労働がしいられておるわけですが、それが合理化をしたいということで農業機械を買っておるときに、それを転売をしたり他に使用しても同じことだということで、この二点は問題は全然ないのではないか。そういうふうにしぼっていきますと、消費量の決定も、これはなるほど程度の差で、ある程度のアローアンスは私は考えていいと思うのです。そうなればあと手続の問題となれば、これは八億の金をどうするかという問題だけなんです。そういうふうに考えてくると、残ってくるのは、農協を通じてやるのがいいのか、個々にやるのがいいのか、これはいろいろと問題がありましょう。ですから、それらの長所、短所についてまで私はここで詰めて議論をしようと思いませんけれども、まあ大体いまのお話を伺っておると、こうしぼられてくるところはこの方法ということにならざるを得ないのではないか、こう思うわけです。いま私が申し上げた消費量の決定、これについては、農林省側として可能な範囲で実際に使う消費量に近いものは出し得ると思いますが、農林省として一回答えてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/87
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088・八塚陽介
○八塚説明員 お答えいたします。先ほどお話にありましたように、どの程度の厳格さを要求するかという問題にかかってくると思います。御承知のように、型式あるいは規模いろいろございまして、それぞれ使用量が違うわけでございますが、厳格さという問題を考慮に入れながらの原単位というものは、一応技術的に確定と申しますか、判定できるのじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/88
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089・堀昌雄
○堀委員 専門の担当者であるところの農林省のほうで消費量の決定は——私もそうだと思うのですが、その誤差の問題の範囲であって、この点はまず問題がない。
そこでちょっと大蔵大臣にお伺いしますが、いまお話を聞いておられたように、大体切符制で減免をするという場合を仮定をしますと、事務量がふえて国税庁は職員が千人要るというのです。八億要るそうです。しかし私は、その八億はなるほど国民の負担の一部ではございましょうけれども、しかし全国の農民が現在何十億と負担をしてきたわけでありますから、その程度の問題というのは、これはもし処理をするという方針がきまれば、財政支出としてそんなに大きな問題ではない。大蔵大臣はこの前の予算分科会で井手委員の質問に答えて、いや農道にこうしています、ああしていますと、いま次長も答えられましたが、いろいろやっていらっしゃる。それはわかりますが、いまの農民の立場を考えるならば、農民が百億減税になるというために八億の事務費をかけてもこれはちっともかまわない、こう私は思いますが、大蔵大臣、私と同じような考えかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/89
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090・田中角榮
○田中国務大臣 これもこの間の質問で、とにかくこういう答弁をしなければ進まないということで、やむを得ず答弁したわけでございます。それでまた一ぺん答弁した以上、堀さんにも同じことを申し上げるわけでございますが、実際合理的に考えるとむずかしいのです。むずかしいということはいままで事務当局からもお答えしたとおりなんです。だから結局あなたの言うとおり、これは一年に減免できるか、二年になるかということは見当があるわけでありますし、私がいやしくも答えたのでありますから、そういう方向でもって検討するわけでありますが、百億のものを減免していくということで、その過程において八億か十億の事務費がかかったて、それよりもより大きな農業政策になるじゃないかという議論と、もう一つは、この百四十六億九千九百万円のうち農業用機械に対して二十一億七千八百万円、農道整備に七一十四億二千三百万円、これを合わすと大体農業用ガソリンに合う金を出しているわけです。これはいままでの経過から申しますと、なかなか技術的にむずかしいので、いただいたくらいは出します、こういうことでやっておったわけです。ところが今度は農道整備もやりながら農道も舗装をしろということになっているわけですげそういう方向の歳出面が確立したものだから、今度は農業用の税金を負けろ、こういうことになったわけです。これは農業政策ですから、前向きで政府もやるということですから、あえて私たちも異論をぐずぐず言うわけではありませんが、非常にむずかしいということになりますと、さっき申したように、林道用ののこぎりの問題をどうするかとかいろいろな問題が出てくるわけです。ですから八億の問題が波及するところが大きいというようなところで、道路整備のほうもできなくなると困るということで、最後になって林道の予算を除きまして、農道整備と農業用機械だけで当該年度のガソリン税の収入以上編成すべしとか、農道だけでそうすべしとか、ガソリン税収入の何十%をこえるように農道に金を出せとか、そういうことに国会でもってどっちがいいということをやはり検討してみなければならぬと思うのです。だからそういう問題は十分検討してもらって、そうしていよいよやったけれども、農道の予算はこれから据え置きでもいいからとにかくガソリン税はまけるのだ、こういうことになれば、これはどちらが効率的だという問題は私のところでもいま考えさせておりますし、私自身も申し上げることは言ったし、言ったことには責任を持たなければいかぬしということになってくるのですが、事実は、いろいろ案をつくって皆さんにも御相談すればいい知恵が出るだろう、こういうふうに考えているわけです。ですから、こういう農道の問題も、農業用機械の問題その他も、まあ堀さんにも合理的な問題があったらひとつまた考えていただいて、これからの大蔵委員会の過程において、四十年の減税政策をやるときにはまだ時間がありますから、十分ひとつ検討していただきまして、専門家でございますから私はよくわかっていただけると思う。こっちもそんなに逃げようという考えはないのですから、そういう意味で協調いただければ私のほうでも大分検討いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/90
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091・堀昌雄
○堀委員 いまのお話は前に分科会でも実は出ておるわけです。ただ、私は、なるほど農業機械に対して国が出資をしている、それはいいことだと思いますよ。いいことだと思いますけれども、しかしいまの問題は性格が少し違うと思うのです。農業機械が安くなるということで、買いやすくなる問題はあるでしょう。しかし、それは買ったその一時期の問題なのです。ところが、農業用ガソリンを使うということは恒常的な問題なんですよ。この問題は性格がちょっと違うのですよ。だから、農業機械が安くていいものができるようにするのは、私はそういうガソリン税とかの問題をこえて、農業政策の基本問題だと思うのです。近代化をやらなければならぬ段階で、この低い農業所得者をいかにしてその他の所得者に近づけるかということには、農業の近代化、合理化をやる以外にないわけですから、そのために出しておるものであって、それを農業用ガソリンの見合いだと考えるのは、これはいま論理的にも私が分析したように間違いです。
次に、農道の問題ですが、農業もやはり道路が要ります。やはりこれは道路が整備されてこなければ、出荷その他いろいろな問題がありますから、これも当然行なわなければなりません。しかし、農道という問題も、言うなれば、たまたま片方のガソリン税というものが、その大きな道路に対しての見合いだという関係からそういう考え方があるかもしれませんが、これも私は違うと思うのです。農道というものが整備をされることも、私は農業本来の基本的な施策の一つでなければならない。農業本来の施策であるものをガソリン税の問題とすりかえようというものの考え方は、率直に言って間違いだと私は思うのです。だから、それを財政支出との関係で、見合いで見ようというのでは論理が立たない、筋が通らないですよ。やはり農業に対するかまえをきちんとするならば、農道をつくって、農業生産が合理的になるようにするのはあたりまえですよ。農業機械が安くできるようにそこへ出資をし、いろいろ努力する、これはあたりまえなんです。そのあたりまえのこととあたりまえではないことを差し引きしようという考えは、これは率直に言って私は整理をしてもらいたい。だから、あと残ってくる問題で、非常にこれまで議論がありまして、技術上困難だという問題を、では一体ほんとうに技術上困難だということはどこだということをきょうはここで少し詰めておきたいと思って議論しておるわけです。そうして、いまのお話を聞いてみると、消費量の問題は、主管省は、それは精度の差はありますけれども、できます。これはだれが考えたって精度の差はありますよ。しかし、いまの税法は、少なくとも給与所得の源泉徴収については程度は一〇〇%ですよ、しかし、それ以外の問題については精度一〇〇%と言えるかどうかについては、私はいろんな点で大きな疑問があります。だから、精度の問題というものは、その置かれておる政治的な諸条件できまるわけですから、その中では、いまの常識的な判断をするならば、農林省が考え得る精度の範囲で十分だ。切符の売買と他の使用の問題は、これは問題ありません、そうすれば、残っておるのは手続による事務量の増加、これはもうだれが見ても明らかです。残っておるのは八億円を財政支出として考えて、百億円の減税をするかどうか、第一点ではここだけに実は残っておる。第二点で残るのは、他の事業との関係だと思います。
そこで、ちょっとお伺いをいたしますが、さっき三十九年度の消費量を基礎として、農業用ガソリンで減免する場合は五十九億の減収、それから農業及び林業でやれば六十六億、その他が三、四十億というふうなお話がありました。その他の三、四十億は何が幾らで何が幾らだというのを、その積算の基礎をちょっと教えてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/91
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092・泉美之松
○泉政府委員 農林漁業用以外の用途に使われますのは、この金額はまだ正確でございませんが、建設機械用の揮発油でございまして、ブルドーザー、排水ポンプ、これは道路に使わないという意味で、それが相当ございまして約三億幾ら、それから小型船舶、モーターボート用、これも三億余り、それから鉱業機械用——さく岩機とか排水ポンプ、これがやはり一億、それからそのほかはライター、それから懐炉に使う揮発、これは数量は相当多いのでございます。それから洗浄用——機械の洗浄をいたしますとか、えりをふくとかいった場合の揮発油、これも相当数量ございます。それから印刷インクとか塗料を溶かすために使う溶剤用でございます。これらを全部合わせましてやはり二十数億ございまして、合計が三十四億ということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/92
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093・堀昌雄
○堀委員 私は論理の筋からすれば、一種の目的税的な性格を持っておるガソリン税ですから、その用途以外のものについては減免をされるのが筋だと思います。しかし、ものにはやはり順序があると思うのです。これまでのいろいろな論議の経過を考えましても、おそらく減税、減免すると言っても、政府のほうは財源がこれから困難な状態でしょうから、なかなか一ぺんにすぽっとやるというわけにいかないかもしれません。そこで私は、順序としてはこの農業用ガソリンの問題がまず第一順位になるだろうと思うのです。それからあとのものも、筋として順次行なわれることが望ましいと思うけれども、当面はやはりこの問題が一番優先をして行なわれることが必要だ。それはなぜかといいますと、いろいろな業態もありますけれども、率直に言うならば、その他の業態の多くのものはそれに対する利益対象というものが一つの材料になっておるわけです。ところが、農業の場合は非常に重い労働を農業用機械によって行ない、置きかえるということによっていまの農業の非常な重労働を緩和するということで、私はやや性格が異になると思いますので、筋としては、目的税に準じておる形では問題があるけれども、ともかく順序として農業用ガソリンの問題をまず第一に取り上げるべきだ、こう考えます。
この問題にここで締めくくりをつけておきますが、そこで大蔵大臣に、これは最後のガソリン税の質問としてお聞きをしておきたいのです。まだいろいろ残されておる問題がありますが、要するにどこまで引くかという問題、二十九年以前は一般的消費税の性格であった。二十九年以後が道路目的税的の性格であるという問題もあるかもしれません。あるいはそういう減収によって道路計画の問題があるかもしれません。しかし、昨日建設大臣は私の質問に対して、これはもう大蔵大臣もあのように答えたのは私も聞きました。私も閣僚の一員としてそういう方向で処理されることを望みますと、建設大臣みずからここで私にきのう答えたのです。だから、道路財源としての問題は、その責任者である建設大臣がぜひそういうようにしてもらいたいと言っておる以上、これは私は第一に解決しておると思うのです。ですから、そういう問題を含めて、少なくとも政治に筋を通してもらうという意味において——いまの諸問題でまだ詰めなければならぬ問題も残っておりましょう。われわれも参加をしてもちろん論議をさせてもらいますけれども、ここでどういう形であるにしろ、来年度以降という表現はどうも非常に抽象的なんで、来年度からやるということにひとつ答弁をしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/93
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094・田中角榮
○田中国務大臣 予算委員会で申し上げましたとおり、また先ほど申し上げましたとおり、来年度以降前向きで対処いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/94
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095・堀昌雄
○堀委員 どうも私、非常に納得しないのですけれども、ここで押し問答してみても同じでしょうからやめますが、そうすると、事務当局としては一体そのやるやらないはその時点における財政上の問題もあるから、ただいまの技術上の問題とか何だとかいう問題とは別の問題があるから、私も一応そこまでにしておきますが、事務当局としては、いまの大臣のああいう発言があるのだから、四十年の予算を行なうまでには問題は詰めておいてもらわなければいけない、どういう形にせよ。詰められますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/95
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096・泉美之松
○泉政府委員 技術的な問題のむずかしさは、先ほど申し上げました点でございますが、堀委員がおっしゃるように、消費量の決定は簡単だとおっしゃいますけれども、そうはなかなか簡単にまいりません。
それから、税務官吏千人の増員をやれとおっしゃいましても、これもなかなかむずかしい問題でございます。私どもとしては問題点がここにある、これをどういうふうに技術的に解決すべきか、解決できない点はここだという点を明らかにはいたしたいと存じます。結局最後にはそれを行なうかどうかという大きな政策決定が必要であろうかと思います。そういった政策決定は、おそらくわれわれ事務当局より以上の段階で行なわれるべきものと考えます。私どもはそういった政策決定の資料に十分なだけの技術的な検討は遂げたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/96
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097・堀昌雄
○堀委員 以上で一応揮発油税の問題は終わりますが、これはいろいろと与党も関係があるから、政府側も答弁が非常に慎重のようでありますけれども、私はこの問題は率直に言って与党、野党の問題じゃないと思うのです。ですからその点は与党の諸君も私どもの意のあるところを十分におくみいただいて、非常に重労働で苦しい生活をしておる農民の立場をお互いに推進をしていくように御検討をお願いしておきたいと思います。
次に、相続税の問題について少しお伺いをしておきます。今度、相続税が減税になりますことは、私もたいへんけっこうだと思います。そこで相続税は最近なかなか税収入がふえてきておりまして、昭和三十五年には百二十二億でありましたものが、三十九年の予算では三百六十五億、約三倍の税収入が見込まれるに至りました。そこでこのように増加をしてまいりましたのは、数の上での増加がもちろんあると思います。それから所得額といいますか、その財産の増加もあったと思います。一体それは低い人がたくさんに増加をしておるのか、比較的数はふえてなくて、財産額がふえてきておるのか、ちょっとそこらの点をお答えいただきたい。
〔吉田(重)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/97
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098・泉美之松
○泉政府委員 相続税につきましては、堀委員御承知のとおり、昭和三十七年に改正が行なわれまして、基礎控除の引き上げなどが行なわれたわけでございます。その後三十八年、九年と相続税の税収はきわめて顕著にふえております。その内容は、相続件数がそうふえたというのではございませんで、要するに、財産価額が非常にふえた。これは一つには、特に不動産、土地の値上がりの影響が三十六年以降非常に大きく反映しておるという点と、それか全三十六年以降の所得の増加がきわめて大きいために、遺産がそれに応じてふえてまいっておるというのでございます。被相続人の死亡の件数からいたしますと、相続税課税対象になるものが一万一千件ぐらいで、ほとんどふえておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/98
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099・堀昌雄
○堀委員 いまのお話で、増加をいたしておりますのは、単位額の増加であることが明らかになりました。これは所得階層別にいろいろと問題がありますから、どこかを切ってお答えをいただければけっこうですが、その相続税の中に見合う、いま非常に上がっておるいわゆる不動産分、それから有価証券、それから預金その他の現金に近い預金類、こういうものに分けて、どこでも適宜なところを切ってもらっていいですが、どのくらいの割合で財産が相続をされているのか、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/99
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100・泉美之松
○泉政府委員 先ほど申し上げましたように、相続の件数がふえておるというよりも、財産価額が非常にふえておるのでございまして、たとえて申し上げますと、三十七年度の、実績数字から言いますと、相続一件当たりの相続価額が千二百八十六万二千円になっておるのでございますが、三十九年度見込みにおきましてはこれが千四百三十一万三千円といったふうにふえております。
それから財産の内訳をウエートで申し上げますと、小さなウエートのものもございますので、千分比で申し上げますが、一番多いのが宅地で、相続財産全体を一〇〇〇といたしますと、四三五を占めております。その次に多いのが有価証券の一七六、それから家屋の七六、その次が現金及び預金の六〇、それから畑が五六、田が四三、事業用財産が三五、山林原野が二七、保険金及び退職金が二七、立木が二二、その他が四三という割合を示しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/100
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101・堀昌雄
○堀委員 実はこれまで当委員会でしばしば論議しております問題の中に、利子の分離課税の問題があります。この利子の分離課税という問題は、確かに一面的に相続面の問題だと称して分離をされております。その年度年度における所得税の問題でありますが、しかしこれは個々の相続税の問題として実は非常に大きな問題点なんです。いまの状態を見ますと、相続税の中で一番大きいのは宅地で四三五、その次に有価証券が一七六ということに対して預金現金が六〇ということですね。この六〇という数は、その他のあれで見れば、家の七六よりも少ないことになってくるわけです。これは実はいまの預金の分離課税によって大きな影響をもたらしておる、こう考えるわけですが、大蔵大臣は——あとで事務当局とはちょっとこまかい話はしますが、この点についていまの相続税の財産の中に明らかに影響があるということを私どもは認めておるわけですが、あなたはどう考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/101
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102・田中角榮
○田中国務大臣 私も分離課税をやるときに、そういうことがあってはならぬということで、事務当局にただしましたところ、あまり影響はない、こういうことであります。私も初めは影響ないということはおかしいなと思ったわけですが、相続税の内容を十分話を聞いてみますと、どうもそこまでやるのかというくらいよくやっているようであります。でありますから、生前の収入の状況とか、どこの銀行と、取引があったとか、付属書類に対しては、私たちとしてはどうもそこまでやらぬでもいいじゃないかと思うくらいのものでも、法規裁量であるために相当よくやっております。でありますから、分離課税というような問題で財産が秘匿されるというようなものは大体あまりないようであります。それから預金のほうは六%であるということが一つの原因でもあります。しかし相続財産の中で、無記名の預金とか、それから有価証券の他人名義のものとか、これは分離課税という制度ということとは全然別に、初めから捕捉しがたいものは捕捉できないということがあるわけでありまして、そういう分離課税の制度をとったために、預金、現金というものが補促しがたくなって、相続税の徴収に大きな支障を来たしておるということはないということが事務当局からの報告であります。私も事情を聞いてみて、まあそうかなと思う、了解できる状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/102
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103・堀昌雄
○堀委員 そこで、それでは事務当局にお伺いをいたしますが、いまのはどっちかというと、大臣の答弁よりは事務当局がそう言っているからそうかなと思ったということですが、事務当局のほう、この相続財産についてはいまの分離課税は影響がないと言えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/103
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104・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 一般的に見まして、土地、家居あるいは事業用の資産というような表現資産に比べて有価証券とか預金とか現金というような不表現資産の把握は非常に困難であることは事実でございます。そこで、ただいま問題になっております損金についてでございますけれども、われわれはできるだけこの不表現資産を的確に把握するという方面に相続税については重点を注いでおりますので、一応はこの相続税の申告者に、取引銀行の名前を報告していただくことに相なっております。したがって税務当局といたしましては、取引銀行に照会をするなり、あるいは調査をするなりして、預金の把握につとめております。しかしながら、やはり場合によりましては、被相続人の生前の財産、収支と、それから相続税で申告をされました財産価額との照し合わせをいたしまして、必要がある場合におきましては、被相続人が生前一体どういう銀行を利用されておったか、現金なり小切手の動きを見まして、そして取引銀行に照会をし、あるいは必要ある場合には調査をいたしておるのでございます。
預金の利子の分離課税との関連につきましては、むしろ問題は分離課税にあるのではなくて、預金が架空名義になっておったり、あるいは他人名義になっておったり、そういうような方法で相続税の逋脱が行なわれておる。したがって、もちろん堀委員が御指摘のように、分離課税が影響なしとは申し上げません。申し上げませんが、しかし相当の大口の資産家でもって相続税を通脱しよりというよりな人は、ほかの方法によってやっておるということは申し上げられると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/104
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105・堀昌雄
○堀委員 なるほど分離課税そのものがということではないと思いますけれども、しかしこれは総合課税になっておれば、預金の問題というのは、これは日常把握しておらなければ課税ができないわけですから、相続のときだけに調査をするのではなくて、日常にやはり調査をしなければならぬという問題が出てきますから、私は、やはりより正確な調査が歴年的に積み上げられておりますから、その点はやはり分離課税というものの持つ性格はその捕捉を不十分ならしめる要素の一つであることに間違いがないと思うのです。いまお話しのように、問題は確かに分離課税そのものにあるのではなくて、その架空の名義といいますか、そういう形の問題にあるわけですから、その問題がもしきちんとされてくるならば、これは問題は非常に少なくなるわけですから、その点は多少角度が違いますが、きょうは銀行局が来ていないと思いますけれども、そういう処理がされることを望みたいと思います。
そこで最後に贈与税の問題で、今度は引き上げになりました。そこでちょっと伺いたいのは、いま贈与税の第二十一条の三に「法人からの贈与に因り取得した財産」は贈与税を課さないということになっておりますね。これはどういう形で行なわれ、現実にはどういうことになっておるのか、ちょっと簡単に答えていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/105
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106・泉美之松
○泉政府委員 法人からの贈与は一時の所得でございまして、これは所得税が課税になるのでございます。贈与税は、御承知のとおり相続税の補完税として、個人が死亡ないし包括遺贈を行ないます場合に相続税がかかるわけでございますが、その相続税の負担を免れるあるいは負担の軽減をはかる趣旨で贈与を行なう場合に、贈与税でそれを補完しようというのでございます。法人の場合には本来相続ということはありっこないわけでございますので、したがいまして、これは一時の所得として所得税を課税するのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/106
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107・堀昌雄
○堀委員 時間がありませんから、私、いまの問題はいろいろと考えれば問題があると思うのです。思うのですが、きょうはやめておきます。
その次に、いま贈与税はその贈与の起きた翌年の二月一日から末日までに申告することになっておりますね。そしてこの贈与税というものは、いまの形で申告が出る問題と、いろいろな資産課税の問題にからんで贈与であったということで出る問題と、私、二つあるのじゃないか。こう思いますが、いまの状態は、たとえば家をだれかが買った、あるいは家を建てた。そうすると、その家の金は一体どこから来たかということになりますと、そのときに、いやこれは贈与でございましたということで出てくるというような問題のほうが多いのではないかという気がするのですが、贈与税のいまの申告の実態をちょっと伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/107
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108・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 実際問題といたしましては、ただいま堀委員が御指摘になったような場合が非常に多うございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/108
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109・堀昌雄
○堀委員 そこで、いまこれまでの実績で見ると、大体八割くらいまでは五十万円以下くらいの贈与になっていて、あまり多額の贈与というものは実際起きていない。私、起きないと思うのです。いまの税率を見ましても、贈与税の税率というものは非常に高いわけですね。百万円も贈与したのでは、これは率直に言ってもう意味がないのですよ。だからこの税率自体がこういう高いものを出させないようになっておるので、私は、いまの贈与の問題は、この前只松君もいろいろ議論をいたしておりましたけれども、実は非常にたくさん行なわれておるけれども、しかし現実に贈与税という形で出てくるものはこういう形のものにしかなっていないということではないのか。おまけに自発的に申告するような条件がなくて、家を建てたとかなんとか資産税関係から問題が出てきたときに、実際の贈与はもっと行なわれておっても、何とか贈与はこういうことでということになっておるのではないかという感じがするのですが、そういう意味では、この贈与税の税率というものを、ちょっと高過ぎるから、せめて相続税に近い形にもう少し下げてもいいのじゃないか、そうしてそれによって申告をさせて、死んだときに渡すのも生きておるときに贈与するのもそう変わらない、ところが贈与のほうには基礎控除はいまのところはわずかでして、遺産相続のときには大きな基礎控除が起こるわけですから、そこから考えると、この贈与税の税率の問題というのはもう少し検討してみる必要があるのじゃないかと思いますが、皆さんのほうはどう考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/109
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110・泉美之松
○泉政府委員 先ほど申し上げましたように、贈与税は相続税の補完税ということになっておりますので、贈与税の税率は相続税に比べまして相当高くなっております。これは結局、相続税を免れ、あるいは相続税の負担を軽減しようと思いまして、生前毎年毎年贈与を行なうということによって、毎年贈与税の控除額がございますので、そういうやり方によって相続税を納めた場合よりも贈与税で納めたほうが負担が軽くなる、もちろんその間に貨幣価格の変動もございますから。そういうことをしないようにという意味で、かなり高い税率になっております。しかしこれは相続税と合わせてでございますが、贈与税の税率と相続税の税率との間にどの程度の差があるべきか、堀委員のおっしゃるように同じにすることは全然危険でございますので、できないと思うのでございますが、現在ほど差を設ける必要がはたしてあるのかどうか、かりに相続人三名ないし四名といたしました場合におきまして、どの程度の税率を盛り込むのが適当であるかということにつきましては、確かに問題がございます。したがいまして私どもとしましては、現在の国民の財産状況から見まして、相続税自体についてどの程度の税率であるべきか、同時にそれを前提として、いま申し上げましたような見地から、贈与税についてどの程度の税率にあんばいすべきか、今後検討いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/110
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111・堀昌雄
○堀委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/111
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112・山中貞則
○山中委員長 有馬輝武君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/112
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113・有馬輝武
○有馬委員 政務次官にお伺いをしたいと存じますが、ガソリン税はここ十年間に増徴に増徴を重ねてまいりまして、私はすでに限界にきておると思うのであります。ところが、毎年の例を見ておりますと、今回だけに限りませんで、イージーな形で、増税でき得る面にすべてを求めていく、水の低きに流れるような形でガソリン税にたよってきておるというのが現在の趨勢ではないかと存じます。これは政務次官もお認めのことだろうと存じます。しかし私は、その租税負担能力には限界があると存じますし、特にこういった消費税につきましてはおのずから常識的な限界があると思うのであります。私はその限界にきておると存じます。簡単にお伺いいたしますけれども、ここでとどめるのか、またいままでみたいなイージーな形でさらに増徴を道路財源として考えていくのか、政府の所信をこの際明らかにしておいていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/113
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114・纐纈彌三
○纐纈政府委員 お説のようにガソリン税は引き続き増徴されておりますが、きのうも建設大臣がお話しになったように、諸外国の例を見てもまだ安いというようなお話があったわけですが、これは諸外国の例をわが国に直ちにとるべき筋合いのものではないと思うのです。ただ私といたしましては、公共事業、特に道路の整備の問題につきまして相当の費用が要るということになれば、その受益の非常に多い、また道路がよくなることによって利益を得る業者から取ることが絶対いけないとは私は思っておりませんが、一応ほとんど限界に近くきておるものじゃないか、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/114
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115・有馬輝武
○有馬委員 私のお伺いいたしておりますのは、限界にきておると思われるものを今後もまたいままでみたいな形で続けていかれるのか、これでとどめられるのか、政府のまとまった所信を伺いたいということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/115
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116・纐纈彌三
○纐纈政府委員 限界に近いと私は申し上げましたが、同時に道路整備の問題等については、やはりガソリンを使います業者が相当いろいろの形において利益を得るわけでございますから、この際私といたしましては、もう一切やらぬと言明はできないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/116
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117・有馬輝武
○有馬委員 さっき申し上げましたように、イージーな形で続けていくのならば、これは租税政策とは申せないと思うのです。これは単なる事務的な仕事にすぎないです。
主税局長にお伺いしたいと思いますが、フランスなりイタリアなりの租税体系と日本の租税体系が違う中で、あるいはイギリスとの形が違う中で外国との比較をきのうからされておるのですけれども、その根拠についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/117
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118・泉美之松
○泉政府委員 揮発油税の負担がどの程度まではいいかということになりますと、昨日来申し上げておりますのは、小売り価格に対して税負担額が諸外国と比べてどうなっておるかという比較を申し上げたのでございまして、単純に小売り価格に対する税負担の割合だけでものごとを処理するわけにはまいらぬと思います。ただわが国の場合には揮発油の生産がごく少のうございますので、どうしても輸入国としての体制が必要であろうと思いますが、その場合におきましても、輸入国として比較をし得るのはイタリアだと思います。しかし、イタリアのように七六・二%の負担率になるまでも揮発油税の増徴を行なうべきかどうかということになりますと、これはなかなか問題ではないか。ことに現在の石油精製業界は、有馬委員御承知のとおり、自由化ということでかなり混乱をいたしておる状況にありますので、私ども税当局といたしましては現在のところ、今回の引き上げ後さらに引き上げをする余地というものはきわめて少ないのではないかというふうに感じておるのでございます。しかし、今後そういう自由化によりまして、業界の体制が円滑にまた強固になっていくというような事態がかりに生じました場合におきましては、あるいはその際また考え直す点も出てこようかと思いますが、現状につきましては引き上げの余地はきわめて乏しいというふうに感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/118
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119・有馬輝武
○有馬委員 昨日建設大臣が、新道路五カ年計画に基づいて予算要求をする、その財源については大蔵省を信頼し、大蔵大臣を信頼しておまかせする、この答弁は、閣僚の一人としてはどうかと思いますけれども、建設大臣としてはきわめて当然なものの言いぐさだと思うのであります。それをさばくのが大蔵省であります。その点について、いまの御説明でははなはだ納得がいきがたい。きわめて乏しいと思いますが、またその節考えます、そういうことを毎年繰り返してきておるわけです。基本的に大蔵省の考え方をいま一度お聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/119
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120・泉美之松
○泉政府委員 現在のところ、三十九年度から始まりまする四兆一千億計画の場合におきましては、揮発油税の引き上げは今回のままでいくべきではないか。四兆一千億円の計画が今後改定されるような事態が生ずればともかくといたしまして、現在の四兆一千億の計画の場合におきましては、今回の引き上げのままでやっていくべきだというふうに感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/120
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121・田中角榮
○田中国務大臣 先ほど堀委員にお答えをしたとおりでございまして、ガソリン税は昭和二十七年の法律制定以後ずっと四回も上げてまいっておりますから、いままでは外国と比べて非常に安かったということで、道路の整備の必要性というものとあわせてガソリン税の引き上げをやってまいったわけであります。私は今度の原案は二五%、こういっておったわけであります。ですから二五%上げれば、もうこれが最後だな、とこういうことを、ざっくばらんに申し上げる話でございますが、主税局にも言っておったわけであります。ところが一〇%になって、一〇%で四兆一千億五カ年計画ということになったわけでございます。でありますから私ももう十一年間ばかりでもって四回引き上げたガソリン税のうち三回関係しましたので、もうガソリン税の引き上げはここらでという気持ちもあります。ありますし、また上げる可能性としても、私が考えた一五%と一〇%の間、五%くらいは上げ得るかという議論の余地はございますが、四兆一千億の計画をことしから始めるというのでございますから、建設大臣はまた来年でもひとつときを見てやろうということを発言しておられるようでありますが、政府は、少なくとも国会に対しては四兆一千億五カ年計画のそれをいま御審議願っておりますので、いまの段階においては四兆一千億五カ年計画遂行に必要な一〇%上げということでお願いをしておるわけでありまして、これ以上の引き上げをもし必要とする場合がありとしても、相当慎重に皆さんの御意見等も十分拝承しながら結論を出すべきものだというふうに考えております。軽々にこれを引き上げるというようなことはなかなかむずかしいんじゃないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/121
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122・山中貞則
○山中委員長 建設大臣もまた来年度さらに引き上げてもいいということは言っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/122
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123・有馬輝武
○有馬委員 いまの外国との比較論というのは、主税局長にも申し上げたのでありますが、フランスなりイタリアなり、またちょっとニュアンスは違いますが、イギリスのあり方は日本とは違っておりますので、こういった比較は、これは租税負担率の池田総理の詭弁と全く同じであります。社会保障費や軍事費の予算に占める割合を考慮しないで、ただ単に負担率を云々する、この詭弁と全く同断でありまして、そういった外国との比較は問題にならない。もし比較するとするならば、車の種類がどういうものであるかということから先に比較すべきでありまして、アメリカなんかの乗用車のあの膨大な数と率というものと日本の場合を比較して、応能原則に照らしてこのガソリン税というものは考慮していくべきだと思うのであります。私が伺いたいのは、いまの大蔵大臣の答弁を聞いておりますと、限界だと思っておるけれども、また新道路計画面で建設大臣から予算要求があればそのとき考慮するんだ——上げますという答弁と同じであります。私は、少なくとも現在は限界にきておる、もし道路財源を考慮するならば、ほかに求めるべきであって、ガソリン税に求めるべきではないという立場からお伺いしておるのでありまして、この私の考え方に対して御同感ならば同感と率直に答えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/123
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124・田中角榮
○田中国務大臣 ガソリン税の引き上げということに対しては、ほかの税金がみな減税の方向に向いておるときに、特定財源に指定をせられておるということで増税になっておるわけであります。でありますから、いま五カ年計画四兆一千億を御審議願っておるのでございますから、いまの段階においては一〇%でよろしい、こういう考えを持っておるわけであります。ま、しかしこれから将来のものにつきましては、有馬さんの鹿児島の状態を見てみましてもおわかりになるとおり、道路というものはやはりやらなければならぬということになると、そこでまた国会の審議をわずらわすわけでありまして、これは非常にむずかしい問題なんです。ガソリン税が道路整備というものと全く不離一体であるということでありますので、それはその事態においてまたあらためて議論せらるべきであります。しかし私は少なくとも一〇%の増徴の法律案を御審議願っておるのでありますから、現状においてはガソリン税を引き上げることに対しては、いかなる状態がきても非常に慎重でなければならぬと思います。もう限界に近い状態であるという考え方は、先ほどからるる申し上げておるとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/124
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125・有馬輝武
○有馬委員 引き上げるときに慎重でなかったことはないわけです。私が伺いたいのは、上げるのか上げないのか、もし財源が必要であるならばほかに求めるべきではないかという点を伺っておるのでありまして、そこら辺について、三回も関係されたのですから、上げてこられたのですから、この際はっきり答弁してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/125
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126・田中角榮
○田中国務大臣 現在の段階においては一〇%でけっこうであるということでありますから、引き上げる考えはございません。しかし何しろテンポの速い時代でありますので、そのときは私たちが一方的にやるなどという考えではなく、これはもう先ほどから申し上げておるように、減税減税できておるときに、ガソリン税だけがやむにやまれぬ事情でこうして御審議をいただいておるという特殊な状態に対しては非常によく承知をいたしておりますから、その間の事情は十分御理解いただきたい。いま有馬さんの御発言等を体して十分政府も自重してまいりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/126
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127・有馬輝武
○有馬委員 これは、もうこれ以上追及いたしましても、それ以上の答弁は出そうもありませんので、これはほかのことであれするほかございませんので、私の質問はこれで終わりたいと存じます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/127
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128・山中貞則
○山中委員長 関税定率法等の一部を改正する法律案に対しまして田澤吉郎君他二十三名より修正案が提出されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/128
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129・山中貞則
○山中委員長 この際、提出者の趣旨説明を求めます。田澤吉郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/129
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130・田澤吉郎
○田澤委員 ただいま議題となりました修正案について、提案の趣旨及びその内容を簡単に御説明申し上げます。
修正案の案文はお手元にお配りいたしておりますので、朗読は省略させていただきます。
修正の内容は、原案において、現行の七〇%から五〇%に引き下げることとしているバナナの関税率を、現行どおり七〇%に据え置こうとするものであります。
御承知のとおり、バナナの輸入は、昨年四月から自由化となったのでありますが、その輸入量は、年間約二十六万トンに達し、前年に比して三・二倍という急激な増加を示しております。一方、国内産果実、特に私の県のリンゴに例をとってみましても、一割程度の豊作の影響もあったとはいえ、生産者手取り価格は二割以上も減少しておるのであります。この点に関して、大蔵省がいかに否定しようといたしましても否定し得ない現実であるのでありまして、いま少し大蔵省はリンゴの気持ちを理解していただきたいのであります。すなわち、多量のバナナの輸入により、国内産果実の消費拡大が阻害されているという実情にありますことは、私から申し上げるまでもないところでありますので、なお一年間、バナナ関税を現行税率に据え置くこととし、国内産果実生産者に急激な打撃を与えないようにいたそうとするものであります。
なお、私はこの際政府に一言申し上げたいのでありますが、バナナの秩序なき輸入が、バナナ業者自体の経営の悪化をもたらすのみならず、国内産果実生産者に対しても甚大な影響を与えていると思量されますので、今後政府は秩序ある輸入体制の確立と適正な価格対策について、十分検討されますよう要望いたすのであります。
以上、修正案についての提案の趣旨及びその内容の説明でありますが、何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/130
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131・山中貞則
○山中委員長 ただいま議題となっております各案中、相続税法の一部を改正する法律案、揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案、関税定率法等の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案並びにとん税法及び特別とん税法の一部を改正する法律案の各案に対する質疑はこれにて終了いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/131
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132・山中貞則
○山中委員長 これより順次討論、採決に入ります。
まず、揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案並びに関税定率法等の一部を政正する法律案及び同案に対する修正案の各案を一括して討議に入ります。
通告がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/132
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133・堀昌雄
○堀委員 簡単に反対の趣旨を申し述べます。
揮発油税につきましては、すでにこれまでも論議をされましたように、非常に高額の揮発油税を課することによって、やがては一般の諸物価にはね返ることも予想されますので、現在の物価高騰の際にこのような措置を講ずることは、第一適当ではないと思います。
さらに第二点で、本日も論破をいたしました農業用ガソリン等、道路税に見合わないものについても百億に余る税を取っておりますということは、まことに当を得ない措置でありますので、これらの諸点を含めて、日本社会党は揮発油税の改正に対して反対をいたします。
関税定率法につきましては、これまでもしばしば論議をいたしておりますけれども、この関税定率の中には、いろいろと問題の多いものがたくさんあるにもかかわらず、ただきわめて部分的なものの処理をしておるし、さらに、本日の論議でも明らかになっておりますように、各種の農産物等の関係におきましても、きわめて不十分な措置であるとわれわれは考えております。このような点から、関税定率法につきましてもさらにより慎重な討議が行なわれることを必要といたしますが、きわめて不十分な措置しか提案をされていないということについて、反対の態度を明らかにするものでございます。
以上で討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/133
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134・山中貞則
○山中委員長 竹本孫一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/134
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135・竹本孫一
○竹本委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、まず、ただいま議題になっております樺発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案に対して、反対の意見を表明せんとするものであります。
政府の道路計画は朝令暮改で、まことに無定見きわまるものであります。すなわち、昭和二十九年度を初年度とする総事業費二千六百億円の計画から、三十三年度を基点とする一兆円の計画に、さらに三十六年度を基点とする二兆一千億円の計画へと、たびたび変更、拡大されました。今日また実施後三年口に入っておる現行五カ年計画を改定して、新たに三十九年度を初年度とする四兆一千億円の五カ年計画を策定しようとしておるのであります。このようなたび重なる五カ年計画の改定は、一面において政府の見通しの甘さを暴露するものでありますとともに、他面において政府の高度成長政策の矛盾、なかんずく地価の高騰等を反映したものといえるのであります。
しかしながら、この点はしばらく別といたしまして、道路整備計画の改定に見合って、揮発油に対する消費税の税率を大幅に引き上げようとすることについては、次の理由によって特に反対をしなければなりません。
第一に、減税と物価抑制の公約にこれが反するということであります。政府は昨年の総選挙のときにも二千億円の減税を国民に公約しましたけれども、増税のことは何も言っておりません。揮発油消費税は、道路整備の財源に充当されるという意味で確かに目的税ではございますけれども、目的税ならば幾ら上げても減税の約束には違反しないという論理は成り立ちません。揮発油消費税の増税は、直接にはトラック、バス、タクシーなど業者の負担増加となり、またガソリン消費の大宗を占めておる中小商工業者など、一般企業の自家用自動車による運送費の上昇となり、間接にはこれが波及をして一般の利用者、消費者の負担増加に帰着することは、消費税の性格上当然であります。その結果、せっかくの所得税、法人税の減税効果もかなり減殺されてまいるであろうことを憂うるのであります。同時に、この揮発油消費税の増税は、一般的に値上がりムードを助長して一般物価をつり上げ、政府の物価安定政策の一角をみずからくずすことになろうと思うのであります。
第二に、揮発油消費税はすでに著しく高率であり、かつ巨額に達していることであります。揮発油消費税は、昭和二十九年度に目的税となったときに、税率が一キロリットル当たり一万一千円から一万三千円に引き上げられて以来、整備計画の改定のたびごとに大幅に増税が行なわれ、現在ではすでに一キロリットル当たり二万六千百円と、当初の倍以上になっております。また、その原料である原油に対する関税も増税されて、現在では一キロリットル当たり六百四十円になっており、これらの税率は、小売り平均価格四が四千二百円に対しまして、実に六〇・五%にも達しまして、特級酒の五六・七%やビールの五二・三%などよりもさらに高率な課税になっております。また、これを精製業者や元売り業者の税抜き価格に対する割合で見ますと、実に二三一%という高率なものになっておるのであります。また、その税収額は、たび重なる増税と消費の伸びとによりまして、二十九年度の二百九十三億円が三十八年度ではその約八倍の二千二百四十七億円にはね上がっており、租税収入の約一割に達しておるのであります。しかも、今後の消費の伸び率に照らしまして、安定的な成長税としてこの税は数年後には酒税を抜いて、法人税や所得税に次ぐ地位を占めることも考えられるのであります。
以上のことからいたしましても、体ガソリンのような基礎物資に対する課税がいかに目的税とはいえ、こんなに高率で、しかも国税収入中でこんなに大きなウエートを占めることがはたしてよろしいかどうか、はなはだ疑問であります。
第三に、道路整備の財源は揮発油消費税だけに求めるべきではなくて、一般財源収入の大幅増加によるべきであろうと存じます。道路は、産業、経済、文化の大動脈であって、その恩恵を受けるのは国民全体であります。しかるに、道路整備計画の財源を見ると、その大半を揮発油消費税でまかなっており、しかもその上、道路利用者は別途有料道路使用料さえも支払わされておるのであります。
また、揮発油消費税の負担階層について、その構成を見ますと、トラック、タクシーなど、営業運送業者が全体の一九%、官公庁の自家用車が三・五%でありまして、残りの大半、少なくとも全体の、五〇%程度は一般商店、町工場などの中小商工業者の自家用小型トラック、ライトバン、三輪車などが使用しておるというふうに推定されるのでありまして、この高率課税の現状では、これらの中小企業者の負担はすでに限界にきておるといわなければなりません。
さらに、揮発油消費税の負担階層の中には、先ほど来問題になっておりますように、農家も含まれており、その税負担は九十五億円といわれております。さらにまた、全国に四万軒ありますクリーニング業につきましても、揮発油消費量は年間四万二千キロリットルに達しており、そのうちで三万キロリットルはドライクリーニング用であるというふうに考えられるのであります。
いずれにいたしましても、道路財源の受益者負担という考え方からすれば、こういうような不合理な課税は一日もすみやかに廃止すべきでありまして、道路整備を大規模かつ急速に行なわなければならないという理由であるならば、負担の公平の原則からしても、社会資本という道路の性格から考えましても問題のあります財源を、この揮発油消費税だけにしぼって求めていくということについては、反対せざるを得ません。
第四に、税率の国際的比較から申しましても増税論は不当でありまして、わが国の実情を無視したものといわなければなりません。揮発油消費税の税率を西欧主要国と単純に比較して、増税の余地があると即断するがごときは、各国の税制の立て方や国民所得水準の差異などを無視した考え方であります。
以上、簡単でありますけれども、ガソリン税に対する反対討論を終わります。
続いて関税定率法等の一部を改正する法律案について、政府原案に反対し修正案に賛成の意見を表明するものであります。
わが国の開放経済体制への移行は、日本経済のためになるという自主的判断から意識的に進められている面ももちろんありましょうけれども、しかしわれわれの感ずるところでは、かなり外からの圧力に押されて受け身の形で、一本の経済の都合をあまり考慮することなく強制的に推進されておるように見受けられるのであります。したがって、開放経済に対処する国内体制の整備、特に農業や中小企業の体質改善と近代化は、大企業の高度成長に比べて非常に立ちおくれております。しかもこのような国内体制のゆがめられた状態におかれたままに、近くはIMF八条国移行、OECD加盟が実現し、わが国は本格的自由化の段階に入るのでありますが、政府のこれまでの施策の貧困を私どもはこの際指摘しなければなりません。
特に関税制度について一言申し上げますが、産業構造の変化と貿易の自由化に対処するために、このわが国の関税は三十六年度に大改正が行なわれ、次いで自由化の操り上げ等に対応するため、三十七年、三十八年と引き続き改正が行なわれ、さらに今回重ねて改正を行なおうとしておるものでありますが、これらの改正はどちらかというといずれも当面を糊塗するびほう策にすぎず、しかも外国の圧力に押されてわが国の関税自主権をみずから放棄するやの疑いもあるわけであります。
開放経済下の関税政策がいかに大切であるかということは言うまでもありませんが、要は国民的利益に立脚をして、国内産業保護と消費者保護をいかに調整するかという点を考えまして、その上に立って処置していかなければなりません。特に開放経済下にあっては、関税政策が国内産業を保護する唯一の手段になっておることに深く留意すべきだろうと思います。わが国は昨年九月に九二%の自由化を達成し、自由化率に関する限りは一応西欧並みになってまいりましたし、今後さらに自由化が進められて工業製品の、残った大部分のもの、さらには農産品につきましても自由化が強制されようといたしております。
しかしながら、いま世界に完全な輸入の自由化をやっておる国はほとんどないのではないでしょうか完全な自由化をやっておるといわれるアメリカですらも競争力がないために輸入されては困るものにつきましては、御承知のように相手国に自主規制という形で自国の産業の保護をいたしております。さらに関税率につきましても、自分の都合の悪いものにつきましては、七〇%、八〇%というような非常識に高い関税をかけておるのであります。日本では工業製品で四〇%以上のものはほとんどないというのに、アメリカのほうでは七〇%から八〇%の高い関税をかけておるというごときは大いなる矛盾でございます。ヨーロッパ諸国は為替制限こそしておりませんけれども、直接に物品そのものを押えて輸入制限をいたしております。すなわちガット三十五条の援用を撤回した後におきましても、日本に比べて自国に競争力のないものにつきましてはいわゆるセーフガード条項、緊急輸入制限、あるいはセンシティブ・アイテム、要注意品目といったようなものを設けまして、依然として対日差別待遇を続けております。こういった点からいたしまして、開放経済下の関税政策がいかに重要であるかということは論を待たないのであります。
最近におきましても、アメリカとEECとの間に鶏の肉に関するチキン戦争という例もありますように、各国は自国の生命線、自国の産業を守るということのためにはあくまでも自国の主張を強く貫徹しておるのでありまして、日本の政府として十分に反省をしていただきたい点であります。
また近くガットの場において行なわれる関税一括引き下げにつきましても、アメリカとEECとの間にある関税格差を理由にいたしまして、なかなかケネディ・ラウンドもスムーズに進行いたしておりません。
さらに来週から国際連合の貿易開発会議が行なわれようというのでございますけれども、工業中進国である日本の立場として非常にデリケートなことを忘れてはならぬと思うのであります。
以上申し述べましたけれども、要するに開放経済下のわが国の関税政策については最も慎重を期したものでなければなりません。現在日本の関税は、先ほど大蔵大臣も言われましたように、アメリカとEECとの中間に置かれているという程度のものでございます。しかるに今回の政府の改正案では、国民的利益を守る点において必ずしも十分な配慮が行なわれておりません。また、たとえばとかく非難のある重要機械や給食用脱脂粉乳の暫定免税の適用期限を延長しておる等、不当なものも多々ございまして、さらに関税政策の裏打ちとなる農業、中小企業の近代化施策も徹底を欠いているということを見のがすわけにまいりません。
こういう理由によって私どもは政府原案に反対でありますが、ただ先ほどのバナナの暫定税率の据え置きに関する修正案につきましては、国内産果実の生産業者保護の立場から考えまして妥当な措置と認めてこれに賛成いたすものであります。
以上をもって私の討論を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/135
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136・山中貞則
○山中委員長 これにて討論は終局いたしました。
続いて採決に入ります。
まず、揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/136
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137・山中貞則
○山中委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。
次に、関税定率法等の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案について採決いたします。
まず、田澤吉郎君外二十三名提出の修正案について採決いたします。
本修正案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/137
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138・山中貞則
○山中委員長 御異議なしと認めます。よって、本修正案は可決されました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
これを可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/138
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139・山中貞則
○山中委員長 起立多数。よって、本案は修正議決いたしました。
この際、ただいま可決されました修正案について念のため内閣の見解を徴しておきたいと思います。
田中大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/139
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140・田中角榮
○田中国務大臣 関税定率法等の一部を改正する法律案に対する修正案について意見を申し上げます。
関税定率法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきましては、内閣としてはやむを得ないものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/140
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141・山中貞則
○山中委員長 次に、とん税法及び特別とん税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案の両案につきましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
おはかりいたします。
両案を原案のとおり可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/141
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142・山中貞則
○山中委員長 御異議なしと認めます。よって、両案はいずれも原案のとおり可決いたしました。
ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/142
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143・山中貞則
○山中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
〔報告書は附録に掲載〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/143
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144・山中貞則
○山中委員長 本会議散会後再会することとし、暫時休憩いたします。
午後二時二十九分休憩
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午後十時七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/144
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145・山中貞則
○山中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
所得税法の一部を改正する法律案につきましては、先刻本院の承諾を得て、内閣において修正いたしましたので、この際、政府よりその修正の趣旨について説明を聴取することといたします。田中大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/145
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146・田中角榮
○田中国務大臣 本日、本会議において院の承諾を得ました所得税法の一部を改正する法律案中修正につき、その趣旨を御説明申し上げます。
この修正の内容は、さきに提出して御審議をお願いしております所得税法の一部を改正する法律案中別表第三の給与所得の所得税源泉徴収額票の一部に誤謬がありましたため、その修正を行なったものであります。
御承知のとおり、この別表は、法律の本文において定められた基礎控除、配隅者者控除、扶養控除等の諸控除及び税率をもととして計算されるもので、これらの諸控除等の改正が行なわれる場合には、それより自動的に算出されるべき性質のものでありますところ、遺憾ながら、計算上の手違いから別表作成に際し、誤謬を生じたものであります。
これにより、国会の審議の過程において御迷惑をおかけしましたことにつきまして遺憾の意を表し残すとともに、修正後の所得税法の一部を改正する法律案の審議につき御協力をお願いいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/146
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147・山中貞則
○山中委員長 ただいまの田中大蔵大臣の発言に対し、質問を通告されておりますので、これを許します。有馬輝武君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/147
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148・有馬輝武
○有馬委員 大蔵大臣にお伺いをいたしますが、国会法第五十九条との関連において、本修正がいかなる意義を持ち、またいかなる取り扱いをされるか、予算三条との関連においてお伺いをしたいと思います。
少なくとも、歳入の大宗をなす所得税、これについて、直接関係はないといたしましても、重大なる影響を持つものとして、予算三案は論議され、すでに三月二日本院を通過いたしております。この架空の誤ったものをもととして論議された予算三案が、すでに本院を通過いたしておりますけれども、その取り扱いについては、どのように考えておられるか。またその政治的な責任について、お伺いをいたしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/148
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149・田中角榮
○田中国務大臣 先ほど修正の御説明を申し上げました後段におきまして、遺憾の意を表明いたしたわけでございます。先ほどの説明にも申し上げましたとおり、この税法の本文の改正によって自動的に計算さるべきものであるとは言いながら、付表の数字をつくりますときにはより細心の配慮をすべきであることは言うをまたないわけでございます。その意味におきまして、参議院でいま予算の御審議をいただいておりますので、衆議院でこのような事態がありましたことを参議院にも十分御説明、おわびを申し上げて、御審議に遺憾なきを期していただきたい、このように考えるわけでございます。将来かかる問題に対しましては十分戒心をいたして国会審議に御迷惑をかけないようにいたしたいと考えますので、御了解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/149
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150・有馬輝武
○有馬委員 第二点といたしまして、いまの政治的な責任の問題でありますが、ただ参議院でおわびして云々ということでありますけれども、私がお伺いしておりますのは、予算三案とは関係あるのかないのか、この点を明らかにしていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/150
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151・田中角榮
○田中国務大臣 有馬さんも御専門で、長いこと大蔵委員会におられて、私たちよりもいろいろ御研究になっておられるわけであります。この税法の付表でありまして、私たちは国会の審議をお願いするわけでありますから、付表といえども正確でなければならないということは当然であります。当然でありますが、三案の審議をお願いしましたときに、この付表が誤っておったということをもって三案に重大な影響があったというふうにはお考えになっていただかないことを願いたいわけであります。これが基礎数字が間違っておるために、三条に関係のある地方税の計算も土台が全部逆っておったということであれば、これはたいへんなことであると思いますが、そうでなく、この御審議までに作成をしましたものにつきましては、四月の一日から新しい年度が始まるわけでありますから、その前には何回も何回も計算をし直して遺憾なきを期しておるわけであります。ちょうどこの付表の誤りも、そのような意味で国会に提出をしましたあと、人を変えて何回も何回も計算をしてみましたところ、このような誤謬を発見したわけでございますので、この誤謬が早期に発見をせられたということで、予算三条の基本や内部の数字に影響があるものではないわけでありますので、その間の事情は十分御理解をいただきたい、このように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/151
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152・有馬輝武
○有馬委員 少なくとも今度の修正されましたもの、それ以前のものの及ぼす影響を考えますと、納税者が一千六百八十二万人といたしまして、約二〇%三百四十万人に及ぶ、しかも税額にいたしますと、平均百円といたしますれば大体四十億前後になろうかと思うのでありますが、少なくともこの三百四十万人の人たちに四カ月近く不安と苦悩を与えた責任は非常に大きいと思うのであります。その点についての御見解をこの際伺っておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/152
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153・田中角榮
○田中国務大臣 厳密に考えれば、有馬さんの言われるとおり、いやしくも大蔵省が国会に提出をする資料に誤謬があったということは許されがたいことであると考えます。しかし、これは四月になってからわかったわけではございませんし、税収見積もりがこれによって左右されるということではないわけでございます。本文において明らかに税率は規定しておるのでございまして、ただ新しい改正税率によりますと、このようになりますという付表の計算が間違っておったわけであります。でありますから、国民各位に間違いのない大蔵省にも間違いがあるのだというような気持ちを与えたということは事実であります。じゃ私たちがいままで納めておった税金も間違っておらなかったかということも、考えればそれはそのとおりでありまして、私もそこまで考えております。でありますから、税の問題に対しては非常に深刻な考え方で将来に対処したいと思いわけでありますが、事前にこの誤謬を発見せられて、国民に迷惑を与えるといっても精神的なもので、非常に大きなあやまちを犯さないで済んだ事実だけはひとつ御理解いただいて、将来こういう誤りがないように私たちも十分な戒心をいたします。その意味でひとつ御寛容賜りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/153
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154・有馬輝武
○有馬委員 私も年末調整や確定申告によって正さるべき性格のものであることは存じながらいまの質問をいたしておりますので、何だか甘いムードでやんわりとやられる点については、ことばの先ではあやまりながら心の中ではたいしたことないのだというような態度が歴然として見えておりますので、この点は大蔵大臣として十分戒心していただきたいと存じます。
それから、最後に私はお伺いしたいと存じますが、電子計算機の誤りであるとかなんとかいうようなことを言っておられますが、このたびのこのあやまりというものは、池田総理なり田中大蔵大臣の責任でありまして、実際の事務の衝に当たりました者はむしろそういった労働過剰におちいっておると考えなければいかぬと思うのであります。やはり政府は責任体制というものを明瞭にしていかない限り、政治の姿勢というものは正されていかないと存じます。そこら辺について、本日は総理ほお見えになっておりませんけれども、閣僚の一人として大蔵大臣の見解を伺っておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/154
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155・田中角榮
○田中国務大臣 内閣は連帯して責任を負っておるわけでありますが、事予算及び予算関係の法律案、特に税法等につきましては、その直接の責任は法律上も大蔵大臣である私にあるわけであります。しかも先ほどから申し上げておりますように、かかることが絶対に将来ないように十分な戒心をいたしますことを申し上げておるわけでございます。大蔵省は、確かに私も大蔵省に一年半ばかり行っておりますが、非常に少ない人員でおそるべきたくさんの仕事を持っておるということは、私はそのとおりに考えております。でありますから、私はそういう意味で大蔵省自体が非常に少ない人員の中であれでよく誤りがなかったとさえ、私自身回ってみて驚いておるわけであります。これは予算のときの一つの例を申し上げますと、自治省関係の、あのすべての計算をわずか十何人でやっておるわけでありまして、一体これで間違いがないのかということを心配したようなわけでございます。そういう意味で古いからの中で、こういう組織の中でがまんしなければいかぬのだというような気持ちに大蔵省の職員の諸君もなっておるようでありますが、こういう事件を契機にしまして、大蔵省職員も普通の人間でありますから、あまりにも過重な労働がかからないように、新しい立場から再検討すべきだというふうにも考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/155
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156・有馬輝武
○有馬委員 なおつけ加えて聞いておきたいと存じますが、私たちは電子計算機を各自持っておるわけではございません。今度修正せられたものがはたして正しいやいなやについても、そのすべを知らないのであります。その点について、今度の修正されたものが正しいという根拠を、この際大蔵大臣からお伺いをしておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/156
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157・田中角榮
○田中国務大臣 電子計算機を使おうが何をしようが、正確なものでなければいかぬということは事実でございます。電子計算機を使って計算をし、その上なお電子計算機を使った諸君が、同じメンバーで計算をしても誤りがなかったわけでありますが、もう一ぺん計算してみようということで、事、税に関する問題でありますので、何回か人をかえて検算をしてみてようやく誤りがあったことを、誤謬を発見したわけであります。今度は、この誤りを土台ら、私は絶対に間違いがないという確信を持っております。しかし一体、ほんとうにどうして証明するのか——私がそろばんをとってやったわけじゃありませんから申し上げられないのですが、いやしくも政府が誤謬を訂正で出しておるのでありますから、その信憑性はありということをひとつ御認識いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/157
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158・山中貞則
○山中委員長 関連質問を許します。只松裕治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/158
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159・只松祐治
○只松委員 大蔵省あるいは国税庁で電子計算機をお使いになり得る人は何人くらいおいでになりますか、ひとつお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/159
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160・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 国税庁におきましては、一昨年の十月から、将来国税に関する事務を電子計算機にかけましてこれを機械化して、内部事務を圧縮するという方向で進んでおるのでございます。そのために現在は、それから約一年半、法人税の決議書を主体といたしまして、約八千件くらいの実験をやっておる段階でございます。現在それに従事しております人間は約十人でございますが、これはプログラマー及びオペレーターでございまして、機械そのものは社会保険庁及びIBMのものを借用いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/160
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161・只松祐治
○只松委員 いまお聞きしますと、国税庁で十人、男が何人か女が何人かおっしゃいませんでしたが、この十人で一体こういう大きな作業ができるかどうか。おそらくなかなかできないから、こういう重大なミスが起こったと思うのですが、今後こういう国税庁の仕事をやる上において、たった十人で全部できるかどうか、ひとつお伺いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/161
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162・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 ただいま申し上げましたように、ただいまの段階では試験の段階でございまして、昭和四十一年度の終わりから四十二年度にかけまして、本格的に機械を採用する段階になりますまでに、徐々に要員を訓練養成していくつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/162
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163・只松祐治
○只松委員 いま、今後の考えである、こういうことで、具体的な答弁はなさいませんでした。しかし、現実に大きな法人関係ではIBM、こういうものを使っております。そこでお尋ねいたしますが、現在法人関係で、電子計算機を使っておる会社は幾つありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/163
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164・田中角榮
○田中国務大臣 これはちょっといま、調べなければわからないと思いますし、まあ通産省か何かで調べて、いつか御報告ができればいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/164
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165・只松祐治
○只松委員 これはほんとうは法人のところで——この前科は、ほかの問題もなにして、大蔵大臣がお見えになればひとつお聞きしたいということで、一応留保しておる問題もあります。この問題も、ほんとうは法人のところで質問したかったわけですが、また質問しなければならないのかと思いますが、いま電子計算機の誤りの問題が出ておりますから私はここで問題にしておるわけですが、徴税をする場合に——各会社が電子計算機を使っておる。私は実際に税務署にいろいろ聞いております。税務行政を行なうものが、電子計算機で計算したその計算がわからない。いま国税庁で十人で、目下養成中、こういうことで、法人関係で実際上電子計算機で出した計算がわかる道理はない。それがわからなければ、ほんとうに全国の——私はこの前多少聞いたけれども、全国十億以上のものが一〇〇%の調査、八〇%の更正決定と、いろいろなことを国税庁長官は言った。しかし、電子計算機ができて、その電子計算機をできる者がいなくて、どうして誤りを摘発することができますか、その点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/165
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166・木村秀弘
○木村(秀)政府委員 電子計算機を採用しております会社から出してもらいます事業概況報告書、決算書あるいは申告書等につきましては、これはやはり文字に直して出ておるのでございまして、電子計算機にかけたなまのままの資料が出ておるわけではございません。したがって、調査の際に、十分その出ておる申告書等と実際の資料を照合いたすことはできるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/166
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167・只松祐治
○只松委員 これで質問を終わりますが、決算書の結果だけ見たってわかるものじゃない。すべての伝票、帳簿を見た上でないとその内容はわからない。したがって、これは中小法人なり事業所得というのはそういう調査方法をなさっておられる。ところが、いまの話では、大法人はそういうことでなくて、決算書だけ見てわかる、こういうことなんですが、こういうところにも大きな問題があります。私はここで本日は、主題でございませんから申し上げませんが、やはりこういうふうに産業の近代化あるいは計算の近代化、こういうものが行われるならば、当然に大蔵省あるいは国税庁当局も、それに対応するそういう人々を養成し、そしてその誤りなきを期する、このことが一番大事なことなんです。ところが、そういうことはほとんどなさっておらない。したがって、私は税務署の名前をあげても——他日この問題を出しますけれども、こういう大きな会社を私たちは調査することができません——こういうことを明確に税務署の署長さんも言っておるし、署長さんだけでなくて、署員も言っておる。しかし、国税庁長官は、のうのうと、そういうことはありません、全部わかります。——こういうでたらめなことを言っておる。そういうことではなくて、私は本問題はきょうはこれ以上追及いたしませんけれども、国税庁当局がもう少し、こういう機械化、近代化に対応してそういうものを備える、そういう訓練をするということを要望いたしまして、質問を終わります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/167
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168・山中貞則
○山中委員長 次に、本法律案に対しまして、金子一平君外二十三名より修正案が提出されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/168
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169・山中貞則
○山中委員長 この際、提出者の趣旨説明を求めます。金子一平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/169
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170・金子一平
○金子(一)委員 ただいま議題となりました修正案について、提案の趣旨及びその内容を簡単に御説明申し上げます。
修正案の案文はお手元にお配りいたしてありますので、朗読は省略させていただきます。
御承知のとおり、今回の改正案におきましては、新たに損害保険料控除の制度を設けることとし、その際農協の行なう建物更生共済等長期契約のものについては、年五千円までの控除を認めることといたしておるのでありますが、その限度額を一万円に改めることとするほか、長期損害保険契約とされる保険期間を、原案では十五年以上と定めておりますのを十年以上に改め、契約の実態に適合させるとともに、短期保険契約との均衡をはかろうとするものであります。
すなわち、控除限度額の引き上げにつきましては、三十七年中に行なわれた建物更生共済の新契約金額が平均四十七万円となっており、これに対応する共済掛金が約一万一千七百円となっております事情及び全契約物件のうちに占める住宅物件の割合が約十五%となっておりますこと等を考慮して、これを一万円に引き上げることといたしたのであります。
また、保険期間につきましては、三十七年以前六カ年間の実績を見ますと、保険期間が十年に該当するものの件数は年平均十四万五千九百二十六件に達しており、十五年ものよりもむしろ一万五千五百件も多いという実情にありますので、これを十年に改めることといたしたのであります。
なお、この修正による減収額は、初年度約一億五千万円、平年度約二億円を見込まれますが、皆さますでに御承知のとおり、さきに関税定率法等の一部を改正する法律案が本委員会を通過する際に行なわれましたバナナ関税の修正によりまして、約二十一億円の増収が見込まれることとなっておりますので、予算の執行に支障を来たすおそれは全くないもあと考えられる次第であります。
何とぞ御審議の上すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/170
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171・山中貞則
○山中委員長 ただいま議題となっております各案中、所得税法の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案に対する質疑はこれにて終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/171
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172・山中貞則
○山中委員長 この際、金子一平君外二十二名提出の修正案に対し、内閣において御意見があれば述べていただきたいと思います。田中大蔵大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/172
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173・田中角榮
○田中国務大臣 所得税法の一部を改正する法律案に対する修正案についての、国会法第五十七条の三に規定する内閣の意見を申し上げます。
政府原案の損害保険料控除の限度額は、最近における長期及び短期の損害保険の支払い保険料の平均額等を基準として、保険期間等が十五年以上の長期損害保険契約等については五千円、保険期間等が十五年未満の短期損害保険契約等については二千円として提案したものであります。
標記の修正案は、長期損害保険契約等について控除額の引き上げ等を行なおうとするものであるが、長期損害保険契約等のうちの大部分は、農業協同組合が実施している建物更生共済であって、この修正が農家の住宅対策の一環として行なわれるものであることを考慮するときは、この修正はやむを得ざるものと考えます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/173
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174・山中貞則
○山中委員長 これより本案並びに修正案について討論に入ります。通告がありますので、順次これを許します。平林剛君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/174
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175・平林剛
○平林委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案に対し、これに反対する討論を行ないたいと思います。
最近における国民の税負担の現状から見まして、昭和三十九年度の税制改正はどこにその重点を置くべきかの基本的目標について、私どもは生計費には税金をかけないという原則に立って、所得税負担の軽減をはかり、従来より大企業に偏向する租税特別措置は、これを大胆に整理するよう政府と論争を続けてまいりましたことは各位の御承知のとおりであります。
特に池田内閣の施策によって異常な物価騰貴が続いておる今日、低所得者層の課税最低限度は大きな影響を受け、その税負担は最低の生活にさえ重圧を加えておりますので、所得税に対する大幅減税は目下の急務といわなければならないと思うのであります。しかるに、政府の重点施策としての税制改正は、実質的な税負担の軽減を要求する国民に対してはなはだ不満足のものでありまして、私どもとしてはこれを容認することができないのであります。
所得税法の改正に対して反対する第一の理由は、その減税規模があまりにも過小であって、これでは国民生活にとって実効の薄い見せかけの減税にすぎないという点であります。御承知のように昭和三十九年度におけるいわゆる税の自然増収は六千八百億円という巨額でありまして、これに対する所得税の減税規模は初年度六百四十九億円で、わずかにその九%、納税者一人について計算してみますと、平均月に二百八十円ないし三百円程度にすぎないのであります。これを政府のように昭和三十二年度以降の大減税とみえを切られましては、腹を立てるより情けないというのが国民の偽りのない感情であると思うのであります。(拍手)
大体政府は昭和三十九年度の税制改正を、口を開けば中央地方を通じて二千億をこえる減税と称し、一般の国民に対してあたかも大幅減税のような錯覚と幻想を抱かせようとしておりますが、初年度における国税の減は正味千三億円、そのうち所得税の減税は六百四十九億円というのは、まさに最近とみに批判の的である誇大広告と軌を一にするたぐいであると指摘しておかなければなりません。(拍手)
第二の問題点は、今回の税制改正によりましても、最近の物価上昇に伴い、税金が国民の最低生計費にまで食い込んでいる傾向でありまして、その実情は私ども黙視することができないのであります。政府提案によりますと、中小所得者を中心に負担の軽減をはかるため、基礎控除を初め諸控除の引き上げ措置を講じ、たとえば夫婦子供三人の標準世帯を例にとりまして、所得税を課せられない限度額は、給与所得者において四十八万円、事業所得者では青色四十三万円、白色で三十七万円とありますが、これではたして最低の生計費に食い込まない税制と言えるのでありましょうか。人事院が調査した最近における生計費の動向を示す資料によりますと、五人家族の標準世帯において、昭和三十八年度五十万七千四百八十円でありまして、明らかにいずれも課税最低限度を上回り、マーケット・バスケットによって食糧費を基準にして算定した生計費でも、昭和三十八年の献立で計算して四十七万六千二百六十二円、政府提案の課税最低限四十八万円では、給与所得者の場合でもその差は年間わずかに三千七百三十八円であります。政府の経済見通しによれば、昭和三十九年度の物価上昇は四・二%ということでありますから、もしこれをこえるとすれば、税金は仮借なく最低の生計費を食いつぶしてしまうわけであります。政府与党の中には、ことしも国民所得の増加があるからその批判は当たらないとの説もありますが、所得水準か上がれば累進課税で税金は増加し、またマーケット・バスケットによる食糧費の基準も上げるのは、いやしくも福祉国家を口にする以上当然のことといわなければなりません。
第三に指摘すべきことは、このような国民生活と税負担の現状に対して思いやりを欠く政府の認識は、昨年度、すなわち昭和三十八年度において税制調査会が答申した、いわば小幅の税制改正案から配偶者控除、扶養者控除、また専従者控除の引き上げ措置を削り、今回もまた答申を無視して給与所得控除引き上げ分の九十四億円を削り扱ったことであります。
このような結果、政府が毎年のように減税をしていると自慢するのにかかわらず、所得税の課税人口はかえってふえるばかりで、昭和三十年度における千九十七万人の課税人口は今回の税制改正によりましても、千九百二十四万人をこえ、わずかに十年足らずで納税人口の倍増という驚くべき傾向になっておるのであります。しこうして課税人口の五七・二%は年所得五十万円以下の低所得階層が占めておる現状で、これが納税人口の増加は国民の所得水準の高まった結果で、望ましい傾向と思い込んでおる総理大臣に対しましては、私は猛省を促しておきたいと思うのであります。特に最近は給与所得者において暫しい納税人口の増加が見られまして、税制調査会の資料にも、今期学卒者の六一・四%は勤続一年未満で税金を納め、大学卒では九〇・七%、高校卒でも六四・五%、中学卒では一九・四%が就職したその年から所得税を納めていると述べているように、試験地獄、通勤地獄を突破したこの階層は、職場において過重かつ深刻な税金地獄にあると言えましょう。かくして国民所得に対する租税負担率は、税制調査会が当分の間なお二〇%程度が妥当であるとの指標に対し、昭和三十九年度においては、二二・五%をこえ、昭和三十年度の一九・六%から比較いたしますと、約三%と相当の高まりを示しておるのであります。もとより租税負担卒から国民の税負担の実情を検討する場合、その課税対象の内容や、歳出における効果などもあわせて考慮する必要があるとの議論は、私もある程度了承することにやぶさかではありませんが、昭和三十年度における租税負担率一九・六%を当時の社会保障関係費及び文教科学振興費などの国民所得に対する割合は三・五%、昭和三十九年度において租税負担率が三%も高まったのに対し、この分野ではわずかに〇・八%の伸びという状態でありまして、しばしば政府の答弁する内容と大きく食い違っておるのであります。また政府与党の一部には税金を納めることのできない低所得階層がいることも考慮せねばならないとの議論もございますが、しからば政府は物価騰貴に対してどんな対策を講じたのか、またこれら階層に大きな関連がある酒、たばこの減税また物品税の撤廃に対してどれだけの積極的意欲を見せたかを反論しなければならないと思うのであります。その上欧米並みの福祉国家になるため、租税負担率はもっと高くてもよいという一部の見解は、欧米における生活水準の内容に対して認識のない議論でありまして、同時に政府与党がその所得倍増計画の中に、昭和四十工年度の租税負担率は一二・五%と伸びていることを忘れた公約違反であり、公党として許されない出張として私は断じて認めることができません。(拍手)
以上私どもは、今回の所得税法改正案に対する反対理由を述べてまいりましたが、大蔵省の電子計算機でも誤謬を起こすというのは、減税といいながら、実質的負担はかえって重くなる税制改正に対して抗議をするという天の配剤と、私は政府はそう考えて深く反省することを要求するとともに、今回の税制改正は減税という名に値しないものであることを明確にいたしまして、反対討論を終わりたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/175
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176・山中貞則
○山中委員長 砂田重民君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/176
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177・砂田重民
○砂田委員 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案及び同修正案に対して賛成の意を表明するものでございます。
申し上げるまでもなく、今回の所得税法の改正は、昭和三十九年度における税制改正の一環として行なわれるものでありまして、その特徴は、中小所得者に重点を置いて所得税の負担を軽減することといたしておる点でございます。先般法人税及び租税特別措置法の改正案が本委員会を通過いたします際にも、わが党の代表が討論いたしたところでございますが、昭和三十九年度におきましては、国税、地方税を通じて平年度二千二百五十六億円、国税においては平年度千三百七十六億円に及ぶ大幅な減税を実施せんとするものでありまして、これはわが党が昨年秋の総選挙に際して公約をいたし、国民多数の支持を得た二千億円減税のスローガンを実現したものでありまして、きわめて満足の意を表するものであります。野党の皆さんは、国税の自然増収六千八百二十六億円に比べて減税の規模が小さいという御批判を、この委員会においてたびたび表明されたのでありますが、前年度繰り越し剰余金の減少分を差し引いた実質的増加財源四千八百九十億円のうち、その一七・一%に当たる部分を本年度の減税に振り向けたものでありまして、この割合は、昭和三十二年以降においての最高の割合を示しており、一方において社会資本投下の増大、社会保障の拡充等、現下緊急の歳出要請を満たしながらも、また一方においてこのような規模の減税を実施しようとすることは、財源の許す限り最大の減税を行なったといっても過言ではなく、野党の皆さんの御批判は、失礼ながら当を得ていないと思うのでございます。
この改正の内容につきましては、基礎、配偶者、扶養、専従者、給与所得及び生命保険料のそれぞれの控除を引き上げることといたしております。この結果、夫婦、子供三人のいわゆる標準世帯におきましては、所得税が課税されないその所得の限度は、給与所得者では、現存の約四十三万円までであるのが約四十八万円までに、また事業所得者のうち、青色申告者については、現在の約三十九万円までであるのが約四十三万円までに、白色申告者については、現在の約三十三万円まででありますのが約三十七万円までに、それぞれ引き上げられることになっております。また退職所得につきましては、この種の所得が他の所得に比べて担税力が弱いという見地から、その特別控除額を引き上げることといたしておるのでございまして、その結果、たとえば二十二歳で就職して、三十三年間勤務した後、定年で退職した者についての特別控除額は、現行の百二十一万円から百六十五万円に引き上げられることとなるのであります。
さらに今回の改正では新たに損害保険料控除の制度を創設するとともに、譲渡所得者の特別控除額の引き上げ、及び寄付金控除の引き上げ等をはかることになっております。
要するに、いずれも中小所得者の税負担の軽減をはかることを真剣に考え、それをねらいとしたものでありまして、きわめて適切妥当なる措置であると確信をいたすのであります。
また修正案につきましては、当該保険の契約の実態及び短期保険契約との均衡等にかんがみ、まことに時宜に適したものであると認めます。
以上申し上げました理由によりまして、私は原案並びに修正案に対し、全面的に賛意を表しまして討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/177
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178・山中貞則
○山中委員長 竹本孫一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/178
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179・竹本孫一
○竹本委員 私は民主社会党を代表して、ただいま議題となりました所得税法の一部改正法案及び同法案に対する修正案につきまして、前者に対しましては反対、後者に対しましては賛成の意見を表明せんとするものであります。
第一に、今回の所得税法の改正によって、初年度六百四十九億円、平年度七百三十七億円の減税が見込まれておりますが、これは先般の法人税及び租税特別措置法案の討論の際にも申し上げましたとおり、来年度の膨大なる自然増収額や、国民所得に対する租税負担率二二・二%等の事情を考え合わせますと、きわめて不十分な減税といわざるを得ないのであります。
事実、所得税は昭和三十四年度二千七百四十八億円であったものが、三十七年度には五千七百十二億円と倍増し、三十九年度七千七百二十二億円となっているのであります。これでは所得倍増ではなくて、実は所得税の倍増であり、三倍増であります。
第二に、政府は今回の改正で、広く基礎控除、配偶者控除、扶養控除、給与所得控除等を引き上げる結果、たとえば夫婦及び子供三人の給与所得者の場合、課税最低限は四十二万八千円から四十八万、五千円に引き上げることになり、中小所得者の所得税の負担は著しく軽減されると強調されております。しかしながら、最近の消費者物価の動向は御承知のように、三十六年度六・二%、三十七年度六・七%、三十八年度は大体七・六%と上昇の一途をたどっております。景気調整のさなかにおける物価高の奇現象として注目されておるのであります。この物価高を考えると、中小所得者にとっては実質的にはほとんど減税の効果はないといわなければなりません。
第三に、われわれは元来生計費に食い込む課税に絶対反対する立場に立って、標準世帯の給与所得年収六十万円までは免税とすることを主張いたしております。また、年所得百五十万円以下の小規模事業者につきましては、その所得六十万円で二〇%の特別勤労控除を設ける措置を講ずるのでなければ、真に中小企業者、勤労所得者に対する減税とはなりがたいと思うのであります。
今回の改正で、事業所得者の専従控除の引き上げが行なわれ、青色申告者については、二十歳以上は十五万円、二十歳未満十二万円、白色申告者については九万円となりましたけれども、これによって法人企業と個人企業との税負担のアンバランスを解消するわけにはまいらないと思うのであります。したがって、個人経営の小規模事業者には特別勤労控除制度を設けまして、年所得百五十万円以下の申告所得に対し、その所得の下積みの六十万円までを事業主自身の勤労所得とみなして、この所得を得るための必要経費として、その勤労所得分の二〇%を特別控除として控除するならば、小規模事業肴の税負担は著しく軽減せられ、かつ、法人企業との税負担の不均衡も是正されるものと思うのであります。
第四に、給与所得者の給与所得控除の引き上げでは、政府案は給与の収入金額から二万円の定額控除を行ない、その残額について、四十万円までは二〇%、四十万円超一〇%、最高十四万円の控除を行なうことにしておりますけれども、御承知のように、税制調査会の答申では、定額控除後の残額について、五十万円まで二〇%、五十万円超一〇%、最高十五万円の控除を行なうことになっております。その結果、政府原案は課税最低限度において税調案の四十九万四千円が約九千円低くなっておりますし、減税額においては税調案よりも九十四億円の下回りを見せておるわけであります。しかもこれは税調の答申にない配当軽課措置に回したものと考えられるが、かくのごときは大所得者優遇のために勤労所得者に犠牲をしいるものでありまして、弱い者いじめのそしりを免れることはできないと思うのであります。
以上申し述べました理由によりまして、今回の政府提案の所得税法改正案に対しましては、われわれは強く反対するものであります。
なお、本案に対して先ほど修正案が提案されましたけれども、この修正案は、建物更生共済の損害保険掛け金の控除限度を引き上げて、より一そうの優遇措置を講じようとするものでありまして、われわれとしても賛意を表するものであります。
以上をもって私の試論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/179
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180・山中貞則
○山中委員長 これにて討論は終局いたしました。
続いて採決に入ります。
まず、金子一平君外二十三名提出の修正案について採決いたします。
本修正案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/180
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181・山中貞則
○山中委員長 御異議なしと認めます。よって、本修正案は可決いたしました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
これを可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/181
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182・山中貞則
○山中委員長 起立多数。よって、本案は修正可決いたしました。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/182
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183・山中貞則
○山中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
〔報告書は附録に掲載〕
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/183
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184・山中貞則
○山中委員長 参考人出席要求の件についておはかりいたします。
金融に関する件について、来たる二十六日山際日本銀行総裁に、また来たる四月二日井上全国銀行協会連合会会長及び束全国相互銀行協会会長に、それぞれ参考人として委員会に出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/184
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185・山中貞則
○山中委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。
次会は来たる二十四日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を閉会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後十時五十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02319640319/185
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