1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年三月三十一日(火曜日)
午前十時五十五分開議
出席委員
委員長 山中 貞則君
理事 金子 一平君 理事 原田 憲君
理事 藤井 勝志君 理事 坊 秀男君
理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君
理事 堀 昌雄君 理事 武藤 山治君
天野 公義君 伊東 正義君
岩動 道行君 宇都宮徳馬君
大泉 寛三君 大久保武雄君
奧野 誠亮君 押谷 富三君
木村 剛輔君 木村武千代君
小山 省二君 砂田 重民君
田澤 吉郎君 濱田 幸雄君
福田 繁芳君 藤枝 泉介君
渡辺美智雄君 卜部 政巳君
岡 良一君 佐藤觀次郎君
田中 武夫君 只松 祐治君
野原 覺君 日野 吉夫君
平林 剛君 松平 忠久君
春日 一幸君 竹本 孫一君
出席国務大臣
外 務 大 臣 大平 正芳君
大 蔵 大 臣 田中 角榮君
出席政府委員
経済企画政務次
官 倉成 正君
外務事務官
(経済局長) 中山 賀博君
大蔵政務次官 纐纈 彌三君
大蔵事務官
(為替局長) 渡邊 誠君
通商産業政務次
官 田中 榮一君
運輸事務官
(海運局次長) 澤 雄次君
運 輸 技 官
(船舶局長) 藤野 淳君
委員外の出席者
議 員 田中 武夫君
総理府事務官
(経済企画庁調
整局参事官) 庭山慶一郎君
大蔵事務官
(主税局税制第
二課長) 川村博太郎君
大蔵事務官
(関税局監視課
長) 丸山 幸一君
通商産業事務官
(通商局次長) 大慈弥嘉久君
通商産業事務官
(企業局産業資
金課長) 新田 庚一君
専 門 員 抜井 光三君
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三月二十七日
酒税法の一部を改正する法律案(有馬輝武君外
十二名提出、衆法第三〇号)
製造たばこの定価の決定又は改定に関する法律
の一部を改正する法律案(有馬輝武君外十二名
提出、衆法第三一号)
入場税法の一部を改正する法律案(有馬輝武君
外十二名提出、衆法第三二号)
同月二十八日
元満州国政府等職員期間のある非更新共済組合
員の在職期間通算に関する請願外一件(石橋政
嗣君紹介)(第一五六一号)
同(笹山茂太郎君紹介)(第一六三〇号)
同外二件(大石武一君紹介)(第一六八〇号)
同外一件(永山忠則君紹介)(第一七四六号)
同外一件(内藤隆君紹介)(第一八一四号)
同(永山忠則君紹介)(第一八五四号)
税制改革に関する請願(鈴木茂三郎君紹介)(
第一五六二号)
同(稻村隆一君紹介)(第一五八七号)
同外一件(神近市子君紹介)(第一六一四号)
同外二件(河野密君紹介)(第一六一五号)
同外一件(帆足計君紹介)(第一七九七号)
旧令による共済組合等からの年金制度に関する
請願(田村元君紹介)(第一五六三号)
同(淡谷悠藏君紹介)(第一六一一号)
同(長谷川正三君紹介)(第一六一二号)
同(山花秀雄君紹介)(第一六一三号)
同(田澤吉郎君紹介)(第一六三一号)
同(鴨田宗一君紹介)(第一七〇二号)
同(河野一郎君紹介)(第一七〇三号)
同(小山省二君紹介)(第一七〇四号)
同(田川誠一君紹介)(第一七〇五号)
同(辻寛一君紹介)(第一七〇六号)
同(野田卯一君紹介)(第一七〇七号)
同(松山千惠子君紹介)(第一七〇八号)
同(大原亨君紹介)(第一七二六号)
税理士の試験制度改正反対に関する請願(渡辺
美智雄君紹介)(第一五六四号)
同(野原覺君紹介)(第一五九〇号)
同(河野密君紹介)(第一六二八号)
同(木村武千代君紹介)(第一六二九号)
同(砂田重民君紹介)(第一八五一号)
入場税撤廃並びに労音、労演に対する不当課税
の取消し等に関する請願(石野久君紹介)(第
一五八六号)
同外一件(下平正一君紹介)(第一六一八号)
同(久保三郎君紹介)(第一七二七号)
同(松浦定義君紹介)(第一七九八号)
揮発油税等の増税反対等に関する請願外二十五
件(横山利秋君紹介)(第一五八八号)
政府関係機関に対する大蔵省の賃金抑圧並びに
不当干渉即時撤回に関する請願(村山喜一君紹
介)(第一六三二号)
減税と税制民主化等に関する請願(楢崎弥之助
君紹介)(第一七七三号)
入場税撤廃に関する請願(高瀬傳君紹介)(第
一八五二号)
同(渡辺美智雄君紹介)(第一八五三号)
税制の改正、民主的税務行政確立に関する請願
外三十件(野原覺君紹介)(第一八五五号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する
法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六二
号)(参議院送付)
印紙税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
九六号)(参議院送付)
酒税法の一部を改正する法律案(有馬輝武君外
十二名提出、衆法第三〇号)
製造たばこの定価の決定又は改定に関する法律
の一部を改正する法律案(有馬輝武君外十二名
提出、衆法第三二号)
入場税法の一部を改正する法律案(有馬輝武君
外十二名提出、衆法第三二号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/0
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001・山中貞則
○山中委員長 これより会議を開きます。
外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案及び印紙税法の一部を改正する法律案の両案を、一括して議題といたします。
質疑の通告がありますので、これを許します。佐藤觀次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/1
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002・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 あしたから貿易自由化になりますが、ちょうどきょう毎日新聞を見ましたら、自由化になったら、最近日本の国際収支の赤字がどんどん出ており、大蔵省は御承知のように自由化のためにいろいろ手はずをきめておられるようでありますけれども、現状を見ると、オリンピックを控えていろいろ外国の人も来るわけでありますが、日本の外貨がどんどん出て心細くなるのではないかということを言っておるわけです。大蔵省は自由化に対してどのくらいの準備を進めておるのか、まず大臣に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/2
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003・田中榮一
○田中国務大臣 自由化に対処して、どのくらいの外貨準備があったほうがいいのかという問題に対しては、すでに何回もお答えをいたしておるわけでございまして、貿易の決済その他の決済ができ得るということでございます。例を申し上げると、イギリスは貿易支払いの約三カ月分くらいであります。西ドイツ等は七カ月くらいございます。イタリア、フランスも四カ月から五カ月というところでございます。日本は現在、三月の末で、ゴールド・トランシュ分を含めまして約二十億ドルということでございます。なおその上に、スタンドバイ・クレジットの設定をやっておりますので、一億二千五百万ドルがございますので、二十一億余の外貨準備の手当てはしておるわけでございまして、支払いに事欠くなどということはないわけでございます。まあしかし外貨というものは多いにしくはないわけでございまして、外貨獲得ということは、輸出の振興、貿易外収支の改善等によって十分はかってまいりたい、このように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/3
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004・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 当委員会でたびたび大臣、総理大臣にも質問したのでありますが、御承知のように、貿易外収支の赤字が、まごまごすると十億ドルぐらいになるのではないかといわれておりますが、そういうほうのことは手当てがうまくいっておるのかどうか。こういうような手だてがあるから貿易外収支はだいじょうぶだ、そういう自信は大臣にありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/4
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005・田中榮一
○田中国務大臣 貿易外が赤字になっていくということは、昭和三十九年度で大体五億五千万ドル程度の赤字ということでございますので、これらの赤字幅は大きいものでございます。でありますから、将来ともこれを大きくしないように、各般の施策を行なっておるわけでございます。その一つは、外国船舶によっておりますものを、邦船の建造を行ないまして、邦船の積み取り比率を高めたいということでございます。もう一つは、港湾使用料が日本においては非常に安いということでありますので、今度とん税法、特別とん税法の御審議をお願いしましたが、そういうことによって港湾経費を適正なものにだんだんと移行してまいりたいということでございます。それから観光収入も、三十八年度は百万ドル、三十九年度は九百万ドル程度の受け取りでございましたが、四月一日から一口五百ドルでございますが、渡航の自由化がはかられるということでございまして、出ることが多くなるということが考えられますので、観光収支をより好転させるために、ホテルに資金を出したり、いろいろ観光の対策も行なっておるわけでございます。なお、これから大きくなると予想される外資の元本の返済、利子の支払い、それから技術導入等に基づきましてのロイアルティーの支払いとか、その他各般のものがあるわけでありますが、こういうものに対しましてもただ外資の導入一本ではなく、国内資本の充実をはかるとともに、貯蓄の増強等に進みながら、この面につきましてもできるだけ国内資本でまかなうというような面にも格段の努力をしながら、貿易外収支の改善を大幅にはかってまいりたいということでございます。中期経済計画をいま諮問いたしておりますので、これによって四十三年ないし四十五年の経済見通しが大体つきましたら、それに合わせて経常収支の改善対策を進めてまいりたい、こういうように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/5
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006・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 渡邊為替局長にお伺いしますが、先日総理大臣は、貿易外収支の赤字が早くて四、五年、おそくなれば六、七年くらいに大体黒字に転換するような計画があるように言われたのですが、為替局ではそういうことについて、どのくらいの程度で大体黒字に転換するというような見通しなどを計画されたことがありますか、またそういうような統計がありますか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/6
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007・渡邊誠
○渡邊(誠)政府委員 貿易外収支は年年赤字の幅が大きくなっておるのでございまして、たとえば本年度につきましては約四億ドル、来年度は一応五億三千万ドルというように見積もっておるのでございます。これは貿易外収支のうち支払いの大部分は、貿易に伴う種々の経費の支払いでございます。またロイアルティーの支払い等につきましても、これは一種の貿易的なものと見られるわけでございまして、外国の技術を入れて輸入の防遏をする、あるいはそれでつくった物を輸出するというようなことで、貿易の拡大に伴いまして貿易外収支もふくれていくのでございます。しかしながらわが国の状況では、ただいま申し上げましたとおり、貿易外収支の赤字幅が最近急速に拡大しつつあるのでございまして、先ほど大臣がお話し申し上げましたように、海運につきましては国内船の建造を急速かつ大幅に進めることによりまして、海運収支の悪化を避け、できれば海運収支の赤字を減らしていきたい。それから観光等につきましても、もちろん日本の観光収入は観光資源の割合に比しましてまだ少ないのでございますから、観光収支の増大をはかる。その他の経費につきましては、もちろんたとえば商社の経費等は、自由化に伴いましてできるだけ商社自身も合理的な運営をはからざるを得ないというようなことで、貿易の伸びに比べましてもできるだけ節約するという方向に向かうだろうと考えておるのでございます。
ただいま御質問のございました五年か七年くらいの間に貿易外収支を均衡さすというお話でございますが、これは努力目標といたしまして、それに向かって最大の努力を傾注するということではないかと存じます。私どもといたしましても、たとえば外資の導入がふえておりますので、外資関係の果実の支払いというものも早急に減らすわけにはまいらないのでございます。そういうことで、貿易外収支の改善がいつ均衡するかということにつきましては、私としてはまだ的確な御返事は申し上げられないのでございますが、政府といたしましては中期の経済計画というものを練っております段階でございまして、私どももその目標に向かって作業を進めたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/7
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008・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 大臣にお伺いしますが、先ほどお話がありましたとん税の改正が今度できまして、それで貿易外収支が黒字に転換する一つのあれができる。それから内国船の建造、そういうようないろいろな題目がございましたが、「エコノミスト」の予想によりますと、このままでいけば来年あたりには十億ドルくらいの赤字が出るのじゃないかということが言われておりまして、大まかな話でけっこうでありますけれども、これはイタリアあたりでは貿易外収支がかえって七、八億ドルの黒字になって、非常に経済の再建をやったのでありますが、日本は貿易が黒字で貿易外収支が赤字という、非常に悲観的な材料が多いのでありますが、その点についてとん税の改正で何億ドル、内国船の建造でどのくらいというような大まかな計画があるのかないのか、これは大臣にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/8
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009・田中榮一
○田中国務大臣 船は六十四万二千グロストンの建造を考えているわけでありますが、これを一体百万トン程度に上げられるのか、八十万トンでいいのかということは、この間も経済閣僚会議で議題になっておるわけであります。今年は計画造船が六十四万二千トンに、自社船が約二十万トンあるわけでございます。こういう状態よりも一歩前進いたしまして、開銀で自社船を融資の対象にしようとか、また現在の六十四万五千トンをどの程度上げられるのか、財政上の問題もありますので、二回、三回と会合を重ねながら、これらの建造の問題に対しては検討いたしております。
それから特別とん税等の御審議を願いましたときにも申し上げたと思いますが、港湾経費が非常に安いわけであります。しかしこれを急激に引き上げるということになりますと、日本の国内船主の負担もありますので、国内船主の負担は、地方税の固定資産税の減免等によって緩和するわけでありますが、まだそのほか、二重料金等をとるわけにもいきませんので、国内船主の負担を何らかの形で軽減をすることによって、外国船の港湾使用料というものはやはり上げていくというような方向でなければならぬと思われるわけであります。冬外国と比べて非常に安いわけでありますので、これらの問題もいま検討いたしております。
これが建造によってどれだけ、それから港湾経費によってどれだけということを、いま申し上げることはなかなかむずかしいと思いますが、中期計画ができまして、年率七%から七・二%になるか、七・五%になるかわかりませんが、いずれにしても経済成長率がきまりますならば、それによって輸入、輸出の最もおおむね想定できますので、そういうことによって外国における港湾使用料とか、輸出、輸入の付帯経費等も算定されるわけでありますので、そういう状態を考えながら、できるだけ現在よりも貿易外収支の赤字幅が多くならないということをまず第一番の目標とし、第二段階においては経常収支のバランスをとるということが、究極の目的として考えられるわけであります。イタリアは年間七億ドルも観光収入があるということでございますが、日本には、観光国日本々々と言っておりながら、どうもあまり観光客は来ないわけであります。香港まで来ても日本には来ない。なぜか。ホテルの滞在費が非常に高いという問題が一つございます。これも外人向けの新しい施設というものは金利が高い。いまの状態でもってこれから建造されるものは、敷地が高いという問題もたくさんあるわけでございまして、こういう問題も解決しながら、貿易外収支の改善対策というものは、積極的に取り上げていくべきだというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/9
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010・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 大成大臣にもう一つ大きな問題で伺っておきたいと思うのですが、どうも日本は御承知のように貿易外収支の赤字が七億ドルあっても、いままでに何も考えていないような感じで、経済閣僚会議もあるらしいのでありますが、少なくとも貿易の問題は、日本の円の国際的な意義を保つためにも、非常に重要な問題であると思うのです。そこで私たちが外国へ行きまして感ずることは、どうも大蔵省の考え方と通産省の考え方が違っているのではないか。貿易についてもどうも矛盾があるのではないかと思われるような節が、いろいろな土地に行きまして感ずるわけです。西ドイツなんかはそういう点においては一貫した一つの国家的な計画があるわけですが、日本では少なくともそういうようなことがばらばらになっておる。それだから第一線で過当競争をやったり、それからいろいろなつまらぬ摩擦でみずから日本の貿易を悪くしているような、そういう点を私たちは直接見たり、聞いたりしているわけなんですが、こういう点についてもう少し国際収支の貿易の問題については、大蔵省だ、通産省だ外務省だというようなことを言わないで、一貫した一つの計画を立てられる考えがないのか。特に大蔵大臣は民間出の人でありますから、そういうことについては理解があると思うのですが、そういう点で事務当局がお互いに大蔵省の出身だとか、あるいは通産省の出身だということで、それぞれの立場で事務的な折衝や事務的な仕事をやっておられると思うのですが、こういうような大きな問題は国家の一つの大きな機関で、何かもっときちっとした日本の貿易が黒字になるような、そういったような方法をとられる必要があるのではないかと思うのですが、その点は大臣どういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/10
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011・田中榮一
○田中国務大臣 確かにこういうような広範な問題に対しては、政府部内で十分な意思の疎通をはかるということは必要であります。しかし大蔵省は大体健全性ということを考えておりますし、通産省は御承知のとおり貿易さえできればということで、やはり貿易重点ということでありますから、過程における意見はたくさんあるわけでありますが、政府としましてもそういう窓口だけの折衝ということよりも、高度な、より広い視野に立って政策をタイミングよくきめたいということで、経済閣僚会議の組織をつくっておるわけであります。また輸出最高会議という会議もつくっております。そういうことで、あまりじんぜん日をむなしゅうしないということで、経済閣僚会議にかけ、総理も加わりながら内閣総理大臣としても最高責任で判断をするということでやっておりますので、現在の段階において通産省、大蔵省、農林省、外務省といったような貿易関係の閣僚の意見が、ばらばらであるというようなことはないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/11
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012・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 田中さんはそういうふうに思っているかもしれませんけれども、私の感ずるところは、日本の貿易の政策、あるいは外貨の獲得の問題については、国として一貫した方針がないのではないかと思われるような点があるのです。実は池田総理は大蔵省の出身でありまして、そういうことが専門であるにかかわらず、いわば国内の高度成長とか、あるいは国内の所得倍増というようなことに目をくれて、実際は日本の全体の立場として前向くような、そういうようなことの施策が欠けておったのではないかということが今日思われるわけです。私はこれから質問いたしますけれども、少なくともそういうような大乗的な見地に立って、もう少し日本の貿易の前進ということで、国全体が、私たちの観測では、へたをすると六月ごろまでには、日本の在外ドル資金は十億ドルくらいになるのではないかということが診断され、私たちもそういうようなことを経済評論家、専門家に聞くのでありますが、そういうことについては一体いつごろから前向くのか、いつごろからいまの十八億ドルをふやすという自信があるのかどうかということを、これは大臣からひとつ伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/12
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013・田中榮一
○田中国務大臣 四月の一日に八条国に移行するときに、二十億ドル外貨を持っておるわけです。そのほかにIMFのスタンドバイ・クレジットとして一億二千五百万ドル、大ざっぱに申しまして二十一億二千五百万ドル、こういうことになるわけであります。こういう状態で三月を越し、八条国に移行するわけでありますし、いま金融調節機能を発揮しておりますので、私は輸入は鎮静すると思いますし、経済も順調に経済成長をたどるであろうという考えを持っておりますので、こういう状態で国民的協力を得ていきますれば、外貨繰りが非常に困難になるということは考えないでいいのではないか。またそういう状態にならないように、適切な施策を行なっておるわけであります。六、七月ごろに相当減るだろうということでございますが、これは十二月に御承知のとおり十億ドルは輸入しておりますので、その決済になるわけでありますから、外貨準備高が減るにしても、その後は非常に正常な輸入状況になってもおりますし、またなるわけであります。輸出は依然好調を続けておるわけでありますから、外貨準備の上で非常に不安があるというような考え方は、政府は持っておりません。またそのような心配はありませんから、その心配のないような各般の措置をとっておるわけですから、御理解を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/13
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014・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 田中さんを信用しないわけではないのでございますが、この間山際総裁を参考人として呼んでいろいろ話をしたのです。山際総裁のように政治にかかわらない人のことばだと信用しますが、田中さんは公定歩合を引き上げると、おれは知らない、日本銀行でやったのだからしようがないというように言う。池田さんもそうですか、田中さんも政治家ですから、いいときには自分のやったことにして、悪いときには日本銀行にまかせるというように、私は悪意的にやるとは思いませんけれども、どうもいまからいろいろ考えますと、これは田中さんには関係はないと思いますが、池田さんはやはり七月の総裁選挙を考え、いろいろ施策をやっておるのではないか。それでやっておるけれども、あとでこんなふうになると、これはおれの責任ではない、国民が悪いのだということになる。私は田中さんがそうだとは思いませんけれども、どうもそういうような節があって、国民はいつも政府の言うことを真に受けて、絶えずひどい目にあっておるというような考え方がなきにしもあらずだというように思うのであります。それでここで最近二十一億ドルになるということは、これは田中さんのことばに、責任者でございますから間違いないと思うのですけれども、しかし一般の批評家、評論家は、しかも山際さんたちの考え方では、楽観を許さない。日銀などの調査表を見ましても、田中さんが言われるようなことは、私どもどうも大蔵委員会で聞く話と、それから表に出ておることは、納得がいかないような面があるように思うのです。実際は三月か四月たってみればわかるわけですが、これは内閣がかわれば別ですけれども、なかなかそうはいかない。やはり国民は大蔵大臣や総理大臣の意見を聞いて信用し、またいろいろやってきておるということになるわけです。だから、私はどうも外貨準備の問題は、いま田中さんの明言にかかわりませず、なかなかわれわれしろうとから見ましても、そうは楽観はできないというふうに心配しておるわけです。いよいよあしたから自由化になるのですが、そういうような心配は絶対にないと申されるのか、もう一ぺん念のために聞いておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/14
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015・田中榮一
○田中国務大臣 まず第一番目に、七月の公選を目標にしてやっておるのではないかということでございますが、そういうことはございません。そういうことでないから、公定歩合の引き上げなどをやるわけです。そういうことを考えるならば、公定歩合の引き上げなどもやらないで、だらだら何かうまく引っぱっていくということも考えられるわけですが、そういうことをしない。全く必要があれば機に応じて臨機応変に施策をやっておるわけですから、それはひとつ誤解でございますので、それはお解きいただきたい。
それから国際収支の問題ですが、国民各位が皆さんのように心配してくだされば、非常にありがたいと思っておるのです。ところが日銀とか、マスコミとか、経済学者とか、あなた方とかいう方々は、非常にあぶないあぶない、こう言ってくださるのですが、さっぱり国民の側はあぶながらないで、どんどんと経済成長をやる。こちらが六%と言えば一〇何%、七%と言えば一二、三%にもいきそうだ。こういうようなところに問題がある。問題があるけれども、これはひとつ非常にたくましさ——日本人、日本企業のたくましさで、これあるがゆえに日本が今日になったわけでございますし、このままほうり出しておけば、日本人のたくましさで相当行き過ぎる、こういうことがありますので、金融調整その他をやっておるわけでございます。でありますから、あぶないあぶないということが国民の皆さんにほんとうに通じまして、そして経済成長率七%、名目九・七%になることを私は希望しているのですが、七%の実質成長率を遂げるような正常な状態を続けてくだされば、外貨準備に問題はないのです。一二、三%も実質の成長が高度に進めば、これは輸入の増大になりますし、また港湾経費その他貿易外の収支の赤字幅も大きくなるわけでございます。そういう意味で、正常な経済を維持したい、そうすれば輸入も減りますし、物価も下がりますし、そうすれば国際収支もよくなる、こういうことを考えておるのでございますから、きょう雨が降るかもしれぬといって、かさを持って出られることはいいことでございます。いいことでございますけれども、どうもきのう雨がどっしゃ降りであったにもかかわらず、きょうはようやく天気になった、けれどもきょうも降るだろう、降るからかせぎに行かぬことにしよう、こういうことになると、これは行き過ぎでございますので、そういう観点から外貨準備の必要性を考えておるのであります。先ほど各国の例についても申し上げましたが、三十九年は六十二億ドルでバランスする、こう言っているのです。六十二億ドルというと、五億三、四千万ドルが一カ月でございますから、三カ月で十五億から二十億ドルということを言われておるのは、そういうことでございます。特別借款も全部返してこの程度のことでございますから、これ以上あるにしくはない、それは多々ますます弁ずでございますけれども、これはあまりあり過ぎると、なかなかむずかしい問題もございます。ちょうどいまのイタリアとかフランスとか西ドイツとか、四、五年前に非常に努力をして国際収支がよくなった、今度は非常に外貨をかせいでしまった、その外貨のためにコスト・インフレになっておる、これでとにかく引き締め増税政策をやらなければいかぬ。こういうこともあるのでございますから、経済というものは適度に国民を刺激するような状態であって、適度に引き締めの状態であるというのが正常であるわけでありますので、各般のことを考えてみて、まじめな意味でわれわれが努力をして、正常な経済成長を進めれば、外貨は不足はないということでございます。また不足のあるような状態まで過熱せしめてはならない、こういうことで御理解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/15
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016・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 田中さんはもとより楽観論者でありまして、顔を見たって悲観するような顔じゃない。あなたの意思どおりならば、われわれ安心しておるわけですが、今度外貨予算制度がなくなって、直接的に輸入制限とか為替制限のようなことがなくなります。そこで、私は前から日本の産業は、まだまだ自由貿易をやるぐらいの力はおそらくないという考えを持っておったのでありますが、一面にはいい面もありますけれども、日本の産業には保護政策をしなければならない産業が非常に多いと思うのであります。こういう点については、日本の産業には打撃は来ないのか、自由化になっても大丈夫だ、こういう自信を持っておられますか。私どもは少なくとも中小企業なんかは、相当打撃を受けるのではないかという心配をしておりますが、そういう点、どういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/16
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017・田中榮一
○田中国務大臣 自由化に対しては、三十五年からずっと進めておるわけでありますから、おおむね対応できるような状態を徐々につくりつつあります。しかし政治の考え方からしますと、自由化によって国内産業がどうにもならないようになってはいかぬ、ならないような施策を十分すべきだ、こういうことが先行するわけであります。まず自由化というものをやらないで済むならば、やらないでいいわけでございますが、やらなければ、貿易依存の日本はだめなのであります。対日差別待遇をたくさん持っておりますし、そういう意味で自由化もせず、関税の引き下げもしないで、日本が食っていけるならば問題はないのでありますが、一方においては国内産業に対して打撃を与えないように、いろいろな配慮もしなければならない。と同時に、貿易依存の国でありますから、輸出を伸ばすためには、対日差別待遇の撤廃をさせなければならない。そのためには、こちらの門戸も開かなければならない、こういうことでございます。でございますから、この二律背反するものの調整をとりながら、輸出も伸び、国内産業にも影響がない、こういうことをやらなければならないというところに、経済の非常なむずかしさ、困難さがあるわけでございます。
私は自由化のベルをみずから押したので、自分でも事業をやってきましたので、全く深刻に考えてきたのです。いまから数年前に石油化学製品、いわゆる無水フタール酸、無水マレイン酸とか、こういうものの自由化をやるときには、日本は二分の一であったわけであります。太平洋を越えてアメリカから入ってきて、船賃を入れてちょうど二分の一でありましたが、現在日本触媒とか川崎化成とか、こういうポリエステルの原材料をつくっている重要な仕事をしている方々の業績はどうかというと、苦しい時代もあったけれども、国際競争力にたえたということがあります。これは結局日本人の持つ技術、学問の力ということだと思いますが、そういう意味で自由化にたえてきておるのであります。特に国内において物価の抑制という面もありますので、そういうものから考えて、自由化を野放しにやるという考えではありませんが、やらないで関門を通り抜けるわけにはいかないわけでありますので、そういう諸般の情勢に目をおおうことなく、十分しさいな観察をしながら、十分な施策を行ないつつ、自由化に踏み切ってまいったわけであります。
私は、確かに病人のように、鎖国的な状態であったものが、これからひとりで働かなくちゃいかぬ、薄着もしなければいかぬということでありますから、苦しいときもあります。あると思いますが、かぜがなおればいいのでありまして、これで根本的に参ってしまうような経済をつくってはいかぬということで、三十九年度の予算でも経済の施策を行なっておるわけでありまして、あすからの八条国移行ということが、国内産業に打撃を与えないように、政府に万全の態勢をとるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/17
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018・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 今度の制度で、為替の制限によらないで輸入貿易の管理をしようと考えておられるようですが、それはどういう方法によるのか、その点を伺っておきたいと思います。それから数量制限による輸入貿易の管理が考えられているのでありますが、数量制限ということになりますと、原則的に禁じたガット十一条の関係はどうなるか。これはこの間ジュネーブから来られました青木大使にもちょっと聞きましたが、その点は、為替局長でもけっこうですが、どういうふうになっておりますか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/18
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019・田中榮一
○田中国務大臣 今度為替管理を行なえないわけでありますので、通産大臣を主にして経済閣僚と連絡をとりながら、数量制限その他やっていくわけでございますが、数量制限はIMFでは制限規定がなく、ガットではいろいろ問題がありますので、禁止規定があるということはありませんので、これらの問題は各国と十分話をしながら——数量制限で対抗する緊急関税制度もあるわけであります。そういう意味で、為替管理を解きましても、慎重かつ時宜を得た考えで進めていきますので、八条国に移行いたしましても支障があるというふうには考えておらぬわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/19
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020・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 これは先ほどちょっと問題にしましたが、外貨を獲得するためには、もっと輸出振興が大きな問題になると思います。大蔵大臣は積極的に輸出の振興ということについて、何かお考えになっておるのか。それから御承知のように、 アメリカでもそういうようなことを考えておりますが、もう少し国産品愛用運動について、私たちも大体常に日本のものよりも、外国のものがいいという先入観念があるわけでありますが、国産品の愛用という問題について、政府は自由化の前に十分展開すべきじゃないかと思うのでありますが、そういう点について大臣はどのようにお考えになっておられますか、これも伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/20
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021・田中榮一
○田中国務大臣 日本の品物は、私は世界で最高のレベルにあるという考えでございます。いままで日本で外国の品物がいいといったものは、高度というよりも、非常に規模の大きい発電機、電子計算機等だけでございます。あとはもうみな日本のほうが安いし、いいわけでございますが、どうも日本人は、明治からハイカラとか、舶来品とか、そういうことが非常にいい、こういう考えでございます。これは灯台もと暗しで、自分のつくっておるものが一番いいということに対して理解をしてないということでありますが、国産品愛用に対してはできるだけ努力をしなければいかぬということで、私もこの間主婦連の方々や婦人団体の方々が参りましたので、あなた方が私のところに陳情に来て物価を下げろと言いながら、帰りにはデパートに寄って外国のおしろいを買っていくようでは、物価も下がりませんよ、国際収支もよくなりませんよ、こういうお話をしたわけでございますが、やはり国民一人一人が国産品を愛用するのだという気持ちにならないと、なかなかむずかしい問題でありまして、来年度あたりから主婦とかいわゆる消費層、消費行政という面から、今度経済企画庁に国民生活局ができますから、こういう面を大いに進めることによって、国産品を愛用をしてもらうとともに、輸入、いわゆる消費財の輸入に対しては、できるだけ防遏するような方向で進んでまいりたい、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/21
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022・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 しかし田中さんがおっしゃるように日本の商品がりっぱなものであるにかかわらず、国内自体でそう評価されないという点は、日本の昔からの伝統的な考え方が国民にこびりついておるのでありますが、いまの日本の国産品で独特のものは中にはあります。けれども時計にしても写真機にしても、ラジオ、テレビジョン、そういうような方面にも、大体外国のまねをして日本でつくったような感じがしないわけではないわけであります。これは私はスイスに行ったり、ドイツに行ったりして、たびたび文句を食ったのでありますが、日本人はまねがじょうずだということで、非難を聞いてきました。あなたは通産大臣でございませんから、そういう管轄のことは私はどこまでも伺う気持ちはありませんけれども、しかしそのくらい優秀なものが、なぜ世界にもっと広がっていかぬかということになりますと、そこに隘路があったのじゃないか。これは税金の問題もありますし、いろいろな問題がありますけれども、しかしせっかく日本のいまあなたがおっしゃるような国産品が、国内自体においてどうも信用されないという点には、何か欠陥があるのではないかと私は思うのでありますが、その点についてあなたのお気づきの点がありましたならば、これは参考のために、どういうふうにお考えになっておりますか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/22
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023・田中榮一
○田中国務大臣 確かに戦前も日本人は非常にものまねが早い。戦後も自由化にずっと引き続きまして、日本の製品は自国の製品と同じことだ、自国でもって何年も何十年もかかってやったものを、日本は同じものをつくる。自動車などでも、アメリカからくる自動車と国産自動車でもって型はほとんど、日本のほうがむしろ小型なんかよくなった、こういうことは確かにあります。これはしかし国際的な問題として紛争を起こさないように、十分努力をしなければなりませんが、結論的にいいますと、日本人の消化力が非常に高い、日本人の知識水準、科学水準が高いということになるわけであります。まあ相手の国は日本人がまねをしたと言いますが、日本人のつくっておる連中に言わせますと、そんなことはないのだ、わしらがちょうど検討しておって最終段階になったら、外国がそういう製品を出したので、時あたかも同じものになったので、何も意匠登録を盗んだのではない、こういう説が非常に多い。私も産業人の言うことをそのまま聞くわけではないのですが、大体その程度の技術、科学の水準に日本人はあるということだけは事実であります。ですから戦前のように日本人はすぐものまねをするといいますけれども、私はやはりそうでなく、日本人の技術、科学の水準というものはこれだけ高いのだということも、外国人にもPRをしなければならぬ。日本人も相当戦前には世界の三大強国、五大強国と言いましたが、アフリカやその他に行くと、日本はシナの一種じゃないかということさえもまだ言っておるような者もあるのですから、私はやはりもっと、日本の実力、日本の実態、こういうものをよく見ていただければ、こういう誤解も解けるだろうと思う。九月から十一月にかけてIMFの総会がある、世銀の総会がある、オリンピックがありますから、今度は百何十カ国から全部来るわけでありますので、私はそれで日本の実情を見れば、日本という国はおそろしく先進国なんだということは十分認めていただけると思う。私の友人のある代議士が中国とソ連へ行きまして、中国とソ連の機械工場はたいへんなものだ、こういう話を聞きましたが、君はそれでは大阪のナショナルの工場を見たことがあるのか、いや全然見ません。ナショナルの工場などは世界で最高水準にある、西ドイツから来てびっくりしたほどでありますから。そういうことをやはり外国人にもっと理解していただくということが、大きな問題だと思います。
もう一つ、国内は、やはりわれわれ代議士などが選挙区などで話をするときでも、代議士の言うことというものは国民はなかなかよく聞いてくださいますから、国産品が安くていいのだということを、与野党一致でひとつ推進をしていただく。政府もそれに対してできるだけの努力をするというようなことをしていく以外になかなかない。私はそれよりも消費行政という面で、婦人団体にひとつ大いに国産品愛用の大運動を起こそう、そういうことに必要な予算などはばりばりつけよう、こういう考え方を持っているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/23
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024・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 御承知のように四月一日から観光渡航自由を実施するために、大蔵省から具体的な方法が発表されました。それによりますと、外国へ観光渡航の費用は、円払いで運賃除いて一人一年一回五百ドルの範囲で、為替銀行限りの承認で認めることになったということであります。しかしそうかといっても民間では観光のことを商売にしておる銀行もあるし、それから観光会社なんかがそういうようなことをいろいろやっておるのですが、もし為替制限がないといえば、この制度をいつまで続けていかれるのか、この点の見通しはどうなっておりますか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/24
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025・田中榮一
○田中国務大臣 観光旅行に対して一年一回五百ドルという制限は、好ましいことではありません。こういうことはできるだけ早い機会に撤廃をしたい、また撤廃をさるべき問題でございます。しかし何分にも三十年間も鎖国状態を続けてきた日本でありますので、いまからもう実際、テレビ、雑誌、何を見ても、トリスを飲んでハワイへ行こう。ハワイは全く日本の州のような考えでありますが、あくまでも外貨を使うのであります。こういうように日本人が、どう考えてもどうも外国へ行きたい。日本じゅう全部を知らないで外国へ行きたい、こういうのですが、日本でも外国のようにいいところがたくさんあるのであります。観光はまず日本から、こういうことから政府は大いにやりたいと思いますし、そういうことをやっているうちに国際収支がだんだんよくなってくる、日本の貿易も大いに伸長する、こういうことになれば、戦前のように自由に行くということになるわけでありまして、IMFでも特認事項になっておりますが、こういうことは国民の努力によって、できるだけ早い機会に撤廃さるべきである、撤廃されるような事態こそ好ましい、こういう考えでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/25
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026・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 大臣もよく御存じだと思うのですが、最近はいまおっしゃるように外国へ行く海外ブームというものが、レジャー・ブームと同じように非常に大きなブームになると思うのですが、一体そういうようなことをしておいて、先ほど私が心配しておりましたように、外貨がますます不足するというような危険はありませんか。ただ私らはそれによって外貨の外国へ出るという率が、非常にふえるのじゃないかと思うが、そういう点についてもどのくらいの程度までになるかということを、為替局あたりでお調べになったことがあるかどうか、大臣はどんなようにお考えになっておるか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/26
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027・田中榮一
○田中国務大臣 先ほど申し上げましたように、今年度は九百万ドルから千万ドル程度の受け取り超過でありますが、私はやはり三、四千万ドル、多ければ五、六千万ドルくらいよけいに出るのではないかというような考え方でございます。同時に、ことしは三十年間も先ほど申し上げたように、押えておったものが急に自由になるのでありますから、五百ドルという制限があっても、やはり出るほうが多い。しかし時あたかもちょうどIMFの総会と東京のオリンピック大会というのがございますので、よくしたもので、ちょうどうまく、出るというときには向こうからもよけい来る。ですからことし一年間、ぴっちり国民の協力を得まして、今度はもう再び門戸を閉じないのでありますから、あわくって行くことはない。いつでも出れるのであります。いままでは出れなかったのでありますから、何とかして出ようということでありましたが、自由になると——いつでも買えるということになると、物は買わないのであります。同じことであります。いつでも出れるのでありますから、健康も十分考えて、一番いいときに出てもらいたい、こういうことを大いに国民的に運動も起こしてまいりたい、このように考えます。
社用消費の中でもって、社長がやめるとか、会長がやめるとか、部長が退職するときは、大体いまほとんど海外旅行を二カ月くらいやってきてからやめる、こういう問題に対して、この間国税庁で話をして、税金を取っているのか、こう言いましたら、議員の手当等に対してもいま検討しておるのでありますから、かかる外国旅行に対して、社用消費しておるのは当然検討しなければならぬということでありまして、私のほうで憎まれて、税のほうでやりますよというようなことを言うわけではございませんが、やはり税負担の公平論という意味からも、海外渡航というものが、どこから金が出ているのだというような実態調査もやっているようであります。こういうことはいろいろやっているうちに落ちつくだろう、こういうように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/27
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028・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 田中大蔵大臣は大体楽観論者でありますから、あまりわれわれのようないろいろ悲観的な話はしたくないのでありますが、三十八年度は御承知のように八百万ドルぐらいの赤字が出ております。おそらく今度オリンピックで相当来るだろうと思われますが、しかし今年度から——田中さんのような、大蔵大臣で外国へちょいちょい行けるようなそういう方が考えるのと、一生涯に一度だけでも行きたいというような考え方の人たちとは、私は相当考え方の相違があると思うのです。それでおそらく私たちの考え方では、日本人はまた特に外国へ行きたがる。国会議員もそうでありますが、そういう癖がありますので、私はなかなかブームはとまらぬのじゃないかというように心配しておりますが、こういうような点では、これは大蔵省の管轄でないかもしれませんけれども、どれくらいの目安を置いておられるのか。今年度はオリンピックの関係で、いま田中蔵相が御説明あったように楽観しておりますが、新聞広告やいろいろな広告で見るように、今後相当こういうような点でいろいろな方法、あるいはくじ引きに当選したり、そういうような賞品をつくったりするような計画が非常にあるわけですが、そういう点についていろいろ心配される面もなきにしもあらずでございますが、その点はどんなように考えておられますか、お伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/28
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029・田中榮一
○田中国務大臣 先ほどの数字にちょっと誤りがありましたので、訂正しておきたいと思います。三十四年度は千三百万ドルの黒字、三十五年度は四百万ドルの赤字、三十六年度はゼロ、三十七年度は二百万ドルの赤字、三十八年度は千二百万ドルぐらいの赤字ということであります。三十九年度は先ほど申し上げたとおり、オリンピックもありますので、いろいろ差し引き増減をして、六、七百万ドルの黒字だろう、まあとんとん、こういう考え方であります。
私たち自身が外国にいつでも行けるからという考え方では——私はあまり外国へ出ることは好きではありませんから、議員としても一回ヨーロッパに行ったきりで、あとは大蔵省に参りましてから矢つぎばやに公式な出張として参るわけであります。しかし一生に一ぺん行きたいという人の気持ち、その実情であるということ、わかります。でありますから、そういう実情というものをよく把握をしながら、適正に、国民の協力を得るように施策を進めていかなければならぬということは、非常にむずかしいことでございますが、政府、国民各位一体となってそういう施策を進めていくべきであるし、先ほども申し上げたように、外国人が来る——どんなに抑制しても出るものは出ますから、やはり外国人を誘致する、誘致することによって日本を見てもらう、日本を見てもらうことによって理解してもらう、理解することによって日本品を買うようになる、こういうことでございますので、外客誘致という問題に対しては、先ほども申し上げたように、ホテルの問題、新幹線なども一つにはその目的もあったわけでありますし、国内航空路の充実、その他観光施設の充実に対しては、金融上その他財政上の措置もできる限りやってまいりたい、このように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/29
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030・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 田中大臣がそういうようにお考えになって、海外渡航のために出国税というのをお考えになりましたね。あれはなかなか田中さんらしい構想で、おもしろいと思うのですが、何かそれにかわるようなほかの方法があるのか、またそういうようなことをやって——これは制限ということはよくないことでありますけれども、やはり国の財政当局とすれば、いまのようないろいろな赤字が続いておるときに、そういうようなことを考えるのはもっともな点があると思うのですが、田中さんの出国税の問題について取りやめになったというようないきさつや、そのほかに何かいい方法があるかどうかということを、ひとつ聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/30
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031・田中榮一
○田中国務大臣 私は出国税は悪い方策ではないというふうに考えておったのです。ところが評判はあまりよくありませんでした。外国も悪いし、また日本の新聞、雑誌その他もよくない、こういうことであります。私はあまりそういうものは気にしません。また気にしませんばかりではなく、大蔵大臣という職制から、私がどんな批判を受けても、国家のまた国民の財政及び国際収支のためにプラスになるならばあえてやろう、あえて火中のクリを拾おう、こういうつもりで十万円取ろう、こういうことで出したわけであります。これに対して、IMFからも参りまして、国内税としてお取りになるのでありますから、財源確保のためにお取りになるというならば、IMFは何ら申し上げることはない、しかし日本というものはいままでしみ一つなし、羨望の的できたのでありますから、さような段階でかかることをおやりにならないことが、日本としては最もほめられるのではないか、こういうことです。いや、ほめられなくても、事実の国際収支の問題その他から考えて私はこれをやりたい、こういうことを言っておったのでございますが、その後も、出国税を取ると言ったことでもって、いかに外国に行くことが重大なことかということに対しては、国民自体も十分理解をされたと思うし、ほかにも方法はないわけではないじゃないですかというような、記者諸君とかいろいろの人たちの良識が、私にいろいろなことを申し入れたわけでありまして、大蔵省事務当局も、初めは非常に意気込んでおったわけでありますが、別にも方法がありますのでということで、御承知の、持ってくるみやげに対して非常に甘かったのでありますから、こういうものに対しての制限をやろうとか、こっちから持ち出す日本円は、絶対に持ち出してはいかぬことになっておるのですが、事実持ち出しておる形跡があります。これらを押えようとか、もう一つは、さっき申し上げたように国税庁は、何でもやるわけではございませんが、海外に行けるような人は、一体行った費用はどこから出たかというような問題もひとつ考えよう、こういうようなこともいろいろありましたし、大臣の言う出国税に当たるものくらいは、ちゃんと実効をあげられますよという話がありましたので、私はあきらめたわけではありませんけれども、いずれにしても今日の段階において、八条国移行の段階において、これをやることは好ましいことではないというような議論がありましたので、一応取り下げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/31
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032・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 これは大臣以外の事務当局の方に——いま大臣から、いろいろの制限をやって埋め合わせができるというようなあれがありましたが、これは事務当局でけっこうでありますが、だれか御答弁願えませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/32
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033・渡邊誠
○渡邊(誠)政府委員 海外渡航につきましては、年一回五百ドルという旅費をもって観光渡航に参ることが、明日から自由になるわけでございます。しかしながら御承知のとおり外貨事情が、必ずしも海外渡航が非常にふえるということを許すような状況にはないわけでございます。八条国移行というのは、結局、従来政府が為替管理で抑えておりましたのを、今後は国民各位の自覚によって、国際収支についても十分な考慮を払っていただき、良識を持って外貨の使用をはかるという点に、一つの意味があると思うのでございます。政府が従来管理しておりましたのを、国民が自分の問題として、外資をいかに有効に使用するかということについて考えていただく一つの機会になると考えておるのでありまして、結局は国民の良識に待つ点が大きいというふうに考えております。
技術的には、四月一日から旅行者の持ち帰り品、携帯輸入品につきましては、従来日本は非常に甘かったのでございます。たとえばウイスキーやブランデーを六本持ち帰れる、その他香水、時計、ゴルフバッグというようなものも持ち帰れるようになっておったのでございますが、これは諸外国に比べますと非常に甘いのでございまして、大体諸外国の例を参照いたしまして、携帯輸入品の数最を、たとえばウイスキーにつきましては三本というふうに制限をすることになっておるのであります。これは一つは持ち帰り品によります外貨の流失を少なくしたいという考え方でございます。
なお、観光渡航は非常にお金がかかるのでございまして、たとえばドイツ人がフランスへ観光渡航するというような場合には、ガソリンの費用だけで参れるわけでございますが、日本の場合には、飛行機でもって何十万円という航空運賃を支払い、かつ、ついでだからということで一カ月とか一カ月半とか、長い旅行をなさる場合が多いのでございます。そこで旅費五百ドルというものが、一つの渡航の制限になるだろうと思うわけでございまして、それにつきましてはIMFでも特認をとっておるのでございます。
なお、いま申し上げましたとおり海外渡航は非常に金がかかりますから、それだけの所得源泉があるかどうかという点につきまして、国税庁のほうでいろいろ御心配していただきまして、国税庁のほうは徴税の見地から、海外渡航者につきましては、渡航費を捻出するために、不当に税を免れているというような事態が起きないようにしようということで、場合によりましては観光渡航者の旅費等について、調査をするということもあるのでございます。
そういうふうにいたしまして、こまかいことではございますが、いろいろと対策を考えております。これはもちろん観光渡航を政府の力で抑えつけようというのではございませんで、国民各位が常識的に行動していただきたいということにつきまして、側面から注意を喚起しておるというような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/33
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034・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 渡選局長にもう一つ伺いたいのですが、外国の例——日本は御承知のようにウイスキーは六本、時計が三個ですか、たばこが百本とか、無税になっておりますが、制限のやかましい国、それから制限の率の少ない国というような例を知らしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/34
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035・丸山幸一
○丸山説明員 今回いろいろの免税基準を非常にきびしくしたわけでございますが、大体みやげものに免税するという規定は、どこの国にもないわけなのです。身の回り品については免税するのだ、いわゆる無税とするということであります。しかし実際に時計を二個持っていた場合に、これが自分のものであるか、あるいはおみやげであるかということは、ちょっと判断ができないわけです。したがいましてある程度の身の回り品、携帯品の適当の量と考えられるものについては、免税しようということであります。各国ともそういう方式でやっております。特に嗜好品である酒とかたばこというようなものは、国際的な条約もございますし、大体各国とも一本か二本、あるいはたばこで言えば二百本というようなぐあいになっております。従来日本は酒六本とか、あるいはゴルフ・セットとか、こういったものを免税で認めておったわけでございますが、これは終戦後ずっとのしきたりできたことでありまして、今回観光渡航の自由化ということになりましたので、国際水準並みに免税基準をきびしくしようということでございます。アメリカにおきましても、数年前従来五百ドルまで認めておりましたのを、百ドルに制限してございます。大体日本もその程度に今回制限したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/35
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036・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 ついでにもう一つお伺いしたいのですが、いままでの状態から、免税されるという額が一年に、おおよその見当だけでいいですが、どのくらいの額になるかわかりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/36
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037・丸山幸一
○丸山説明員 免税額については、いまちょっと下持ちの資料がございませんけれども、大体時計につきましては十一万個程度入ってきております。これは日本に入ってきます高級時計、いわゆる鑑定価格六千円以上のものとしては大体同量になっております。ゴルフ・セットもかなりの量が入っておりまして、大体日本の輸入量の七五%というものが携帯で入ってきております。またウイスキーにつきましても大体八十六万本入ってきております。これは日本のウイスキーの総輸入量が百万本でございますので、大体八十何%入ってきておる、こういうような状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/37
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038・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 もう一つお伺いしたいのですが、日本では密輸入が毎年出ておりますね。そういうウイスキーとかブランデーとか、あるいは時計、宝石類、そういうものは毎年の統計でどのくらいになっておりますか、概略でいいですけれども、わかりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/38
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039・丸山幸一
○丸山説明員 いまここにはちょっと資料を用意してございませんが、最近の密輸の傾向と申しますのは、食料品とか、そういうものはわりあいに少なくなっておりまして、貴石、金属、そういうものが多くなっております。また国内でまだ輸入割り当てをしておるようなもので、簡単に輸入のできないようなもの等で、国内で非常に需要の高いもの、あるいは国産品の価格をかなり引き上げておって、そうして外国製品のほうが安いというもの、こういう品物につきまして密輸入が行なわれております。こまかい食料品とか、そういうものの輸入の傾向はだんだん薄れてきております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/39
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040・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 もう一つ伺いたいと思うのですが、ブランデーとかウイスキーのいいもの、そういうものも相当やみで回っておるようにバーなんかで聞くのですが、そういうのはどういうふうになっておりますか、これも現状を説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/40
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041・丸山幸一
○丸山説明員 先ほど申しましたとおり、ウイスキーとかブランデーが相当携帯品で入ってきております。それからまた、これは必ずしも普通の旅客、観光客あるいは業務渡航のお客に限らず、船員についても一本程度のウイスキーの持ち込みを認めておるわけでございます。そういう船員からの横流れとか、あるいは香港を往復しておる普通のお客さんが帰りに六本まで持ち込めるので、それを六本持ってきて、そうして横流しをするというようなことも考えられるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/41
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042・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 大臣にお伺いをするのでありますけれども、そういうような例がたくさんあるのでございますが、これは日本に限りませんけれども、ドル、ポンドの持ち出しとかいうことについてかなりやかましい国は、外国ではイギリスが一番ひどいのじゃないかと思うのです。しかしわりかた不快な念がないという点は、このごろイギリスもだいぶそういう点では寛大になりましたが、日本ではいま言われたようないろいろな例があるけれども、どうも少し語学がわからぬ点もあるかもしれませんが、横浜の税関とか羽田の税関というようなところで立ち会う人が、非常に官僚的であるというような批判を聞くのであります。今度オリンピックで人が外国から来るような場合に、そういうことのないようにわれわれは心配しておるのですが、そういうような行き届いた方法をこれから講ぜられるのかどうか、これも大臣か係の人に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/42
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043・田中榮一
○田中国務大臣 税関の職員の態度その他に対しては、国際的になるようにということで十分注意をいたしております。またオリンピック等に対して特別な陣容を置かなければならぬという問題に対しても、そのように考えております。国税局とか税関とか、特に人に接する者に対して、将来もう少し待遇をよくしたり、また高級な教育をしなければいかぬというようなことも、十分考えておるわけであります。
日本が非常にいままで悪かったというのは、お客の質も悪かったのです。これが問題なんです。相手が悪いことをしておらなければ、税関検査もそんなにこまかくやるわけはないのですが、先ほど申し上げたように、時計でも何でも、とにかく日本に入ってくるものの八〇%、八六%というふうに入っておるということでありますし、それも制限額よりも大体よけい持ってきておる、こういうことなんです。そういうところに問題があるわけです。
もう一つ、やはり日本を取り巻く環境ということもあるわけです。密輸が非常に多い。特に密輸の中に麻薬関係がある、こういう問題もありますので、これは外国人に対してはできるだけアメリカや西ドイツ、またイギリスの例を見ましても、もっと迅速にもっと親切にということでありますが、なかなか犯罪摘発ということも別に兼ねておりますので、そういう意味であまり甘くすればどうにもならなくなってしまう。少しやると調べられるほうはがんがん言う。こういうところは問題があるわけでありまして、特別な事情、地域的な事情、また持ち込み方が非常に多いという特別な状況、こういうことで必要やむを得ざる処置だったわけですが、それにしても、もっともっと合理的にやらなければいかぬということで、税関職員もうんと合理的になるかわりに、持ち込み制限もやろう、こういう両建てでいま合理化をはかっておるわけでありまして、少なくともオリンピック等に対しては、外国人観光客などに不快の念を持たせないように慎重な態度でやりたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/43
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044・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 もう一点違った点でありますが、外資の流入、御存じのように最近ロンドン、それからスイスで、いろいろ外債をうまく募集されておるようでありますが、この外資の流入ということは、せっかく国内で景気過熱の問題について調整をしようという、一つの金融政策の効果を減殺するあれがあるのじゃないかということが考えられますが、その点は十分にお考えになっておられますか、伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/44
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045・田中榮一
○田中国務大臣 確かに国内が引き締めの状態のときに、一つの抜け道であるということで、外資あさりをされては困るということは事実であります。また半面、外資は必要であるということにもなっておりますので、これが調整に対しては十分配慮いたしておるところでございます。でありますから、大蔵省が一々件名別、内容別に審査をして、資本流入に対しては許可をしておるわけでありまして、これが国内の金融引き締めをやっておる状態のときに、外資をあさって、その会社、その企業だけが、潤沢な資金によってまかなわれるために、政府が行なう施策があと戻りをする、影響を受けるというようなことのないように、十分な考え方でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/45
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046・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 イギリスとスイスでは、一応日本の外債は成功したのでありますが、今後そういうような方法をヨーロッパでとられる意思があるかどうか、これも伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/46
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047・田中榮一
○田中国務大臣 御承知のように去年の七月からアメリカの市場では、ほとんどオール・ストップという状態であります。西欧市場は、アメリカの市場に比べて小さいことでありますけれども、戦前の縁故もありますし、日本の経済成長に対する関心も非常に強いようでありますので、御承知のイギリスの外貨債の書きかえを契機にしまして、打診をいたしましたところ、その後政府が企図した立場で順調な流入ができたわけであります。しかしものには限度がありまして、これ以上幾らでもできるというものではないわけでありまして、ヨーロッパ市場の状況、特に日本の信用維持という考え方から、慎重にケース・バイ・ケースで考えておるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/47
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048・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 アメリカの利子平衡税の問題については、われわれも現地に行っていろいろ伺ったのでありますが、田中さんが期待されたとおりいかなかったということは、ケネディ大統領の急死というような問題もあったと思うのですが、私はこの点について、アメリカでだめならヨーロッパという点は、転換が早くてうまかったと思うのであります。アメリカという国のいろいろな情勢が変わっているということは、ジョンソン大統領ではなかなかケネディ大統領のようにはいかないということは、総理大臣、大蔵大臣たちも十分に認識されていると思うのでありますが、やはりそういう転換をする場合に、将来の日本のことを考えて、ヨーロッパとの関連を十分にさせるということが必要であると思うのです。こういう点については、国としてはいままでアメリカにいろいろ依存をしておったけれども、これはアメリカのドル防衛という国内情勢のためにやむを得ないということでありますが、そういうような転換ということは、やはりこれからヨーロッパにいろいろな金融市場を求めるということについての腹案があるのかないのか。そういうお考えはありますか、どうですか。伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/48
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049・田中榮一
○田中国務大臣 アメリカにしろヨーロッパにしろ、限りあることでございますから、国際的な金融市場を撹乱したり、また無制限に発行するというような考え方は絶対持っておらぬのであります。外貨債の発行は内国債と違いまして、外国市場の制約を受けるわけでありますし、やはり国際的な信用の維持、確保という問題があります。ものにはおのずから限度があって、外貨債が発行されておるわけであります。利子平衡税以後、アメリカの市場はストップでございますけれども、日本がかつてアメリカで発行しましたものも三分の一ないし半分くらい、あるものに対しては半分近くヨーロッパ市場で消化されているわけであります。でありますから、日本の銘柄その他に対して理解があるということで転換も非常に早かったわけでありますし、われわれが当初考えたよりもヨーロッパ市場というものが、金融市場がゆるんでおったということも言えると思います。イギリス等も御承知のとおり、経済成長率を上げたいということで、今年度四%という見通しを立てておりますが、なかなかうまくいかぬという問題もあります。また外貨を非常に近年持っておるフランス、イタリア、西ドイツの場合も、コスト・インフレ的になって、企業の収益率という問題とコスト・インフレの問題で、企業もなかなか高度な成長を遂げられないということで、金融市場、資本市場というものが多少ゆるんでおるということが幸いしたと思います。それだからといって無制限に出せるものではないのでありまして、アメリカ市場、ヨーロッパ市場等を十分ににらみ合わせながら、今年度も昨年と同じように外貨債は一億二千五百万ドルの発行をお願いしておるわけでありまして、民間債等につきましても無制限にならないように、大体アメリカの市場で発行しておったものをベースに考えながら、日本の経済成長率とバランスをとっていきたいという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/49
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050・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 最後に、これはわれわれもびっくりしたのでありますが、通産省が消費物資の二十五品目を調べたところによりますと、昨年の輸入実績は一年前に比べてバナナが三倍、それからインスタントコーヒー、チョコレート原料が二倍、てんぷら材料のエビが四倍、ダイヤモンドが二倍、食料品から宝石に至るまで、実にばく大な消費輸入物資の増加になっておりますが、こういう点については、大臣はどういうふうにお考えになっておられますか。いろいろな問題をわれわれが考えるときに、先ほど大臣も国産品の愛用という問題、あるいは日本経済のことについて、外貨の問題について御心配されておったと思いますが、どうも国民の関心と政府のPRが非常に少ないのじゃないか。おまえらかってなことをやれ、高度成長、所得倍増ということを言ったから、良心的に言えないのかもしれませんけれども、どうもあしたから自由化になる場合においては、国内のそういうものに対する対策がどうも手薄じゃないかというふうに私は考えるわけでありますが、そういう点について、大臣はどのようにお考えになっておられますか。私たちは愛国心ということばは古いことばで、使いたくないけれども、日本の外貨がどんどんなくなっていく、円の信用が薄くなっていくというような問題については、国民一人一人がやはり損をするのでございますから、相当重要な問題だと考えておりますが、こういう点について、大臣、どのように考えておられますか、伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/50
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051・田中榮一
○田中国務大臣 原材料を輸入しなければならない国であるにもかかわらず、消費物資が多量に輸入されているということは、非常に遺憾であります。これはあなたの御指摘のとおりであります。そういう意味で、政府が引き締めをやったことを悪いと言う人もございますが、それと同時に、引き締めをやらなければならないほど消費物資を入れているということが原因であります。でありますから、国民的に十分考えていただかなければならないことでありますし、政府も絶えずかかる国産品愛用という問題に対してはPRをしていかなければならぬ。ただ消費物資に対しては、特に食料品等は、国内価格の調整という意味で緊急輸入を行なう場合もございます。しかしそうではなく、もう製品であるものが非常にたくさん入っておる。特にバナナが五千万ドルも六千万ドルも入っておる。これは一時的な現象だと思います。バナナというものは、そんなに長くもつものではございませんし、一時的なものだと思います。戦前などは、バナナのたたき売りといわれたほどの歴史を持っておりますから、これは何年も続くものだとは思いませんけれども、相当なものである。あ然としていかんともしがたいというところでございます。またインスタント・コーヒーなどよりも、お茶でも飲んでくれれば、健康にはますますなると思いますけれども、どうもこのごろは、風潮としてそういうような、かんでもってちょっと切れるのがいい。これはちょっと教育の問題その他いろいろな問題があるので、これは国民的な運動として片づけていかなければならないでしょう。またしかしそれまでに政府は打つ手はないのか、こう言えば、打つ手はないわけではないので、この間輸入担保率の引き上げを三五%まで引き上げたが、これでいいのかという考え方もございます。これは国際会議でも問題にはしておっても、禁止条項ではないわけでありますから、こういうものももっと常識的に——いままでの常識を越えた新しい視野に立った常識でもって、制度上も考えなければいかぬだろう、こんな考え方でいまおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/51
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052・佐藤觀次郎
○佐藤(觀)委員 最後にお願いもし、また要望もしておきたいのですが、どうも豚の肉が高くなると、すぐ外国から輸入する。これは農林省の所管でありますけれども、そういうことで、どうも政府は自由化をやりながら、ときにそれと逆行するような政策をとる。朝令暮改という感じを持たれるような——これは新聞やラジオの発表ということで、よけいそういう感じがするのかもしれませんが、どうも政府全体として一貫した考え方が乏しいのではないかというようにわれわれは考えるわけであります。特にいま重要な問題になっておりますが、日本に消費物資が外国からどんどん入ってくる。これはいま大臣が言われたように、日本のものが悪いのではなくて、外国のものがいいというような感じも、これは心の底にありますけれども、どうも日本人の最近の傾向は、いろいろな国全体の利益を考えずに、そういう点については不必要な方法をとっているのではないかということが考えられます。こういう風潮は——これは戦争に負けてからすでに二十年もたっている。日本は戦後ということは言いがたいような現状にあると思いますが、そういう点について大臣はどのように考えておられるか。これは私たちもやはり外国に行けば、日本の国のいろいろなことについて不利のようなことがあってはならぬということは、一人の国民として考えるわけでありますが、そういう点について、大蔵大臣というのは、重要な閣僚の一人でございますから、その点のことをお伺いしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/52
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053・田中榮一
○田中国務大臣 私は、戦後ということばはあしたからなくなる、こういう考え方で、四月一日の八条国移行は非常に重要な、歴史的な瞬間であるというように考えておるわけであります。でありますから、内閣声明も発表いたすつもりでございます。もうあと戻りは二度とできないことでございます。政府は、いや政党というものは、政府が失敗すればかわれば済むわけでありますが、国民というものの利益というものは長期に、永久に続いておるのであります。そういう意味で、政府が言うことに対しましては、国民は批判するだけではなしに、その真意をよく理解していただきたい。同時に、国民自体を新しく——もう戦後戦後と言っておった時代を過ぎて、ほんとうに一人で動かなければならないときでありますので、長期的展望に立って、まじめな、堅実な前進を続けるという考え方で、新しい国民性といいますか、教育に対しても——お互い戦後の民主化、自由化ということになれ過ぎておったような面もないわけではありません。ですから、もっとお互い将来というものを考えながら、堅実な方向をたどっていただくように、政府もあらゆる角度から国民に訴える、また事実を国民の前に明らかにして、協力を願うというような体制をつくってまいりたいというように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/53
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054・山中貞則
○山中委員長 定数を欠きましたから、暫時休憩いたします。
午後零時十七分休憩
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午後零時二十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/54
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055・山中貞則
○山中委員長 再開いたします。
この際、有馬輝武君外十二名提出の酒税法の一部を改正する法律案、製造たばこの定価の決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案及び入場税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/55
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056・山中貞則
○山中委員長 提出者より提案理由の説明を聴取いたします。田中武夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/56
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057・田中武夫
○田中(武)議員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました酒税法の一部を改正する法律案、製造たばこの定価の決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案及び入場税法の一部を改正する法律案につきまして、三法を一括して、その趣旨を御説明申し上げたいと存ずるものであります。
まず最初に、これらの法律案を提案するに至りましたゆえんのものは、次の二つの主要な理由に基づくものであります。
すなわち第一は、最近の諸物価の値上がりは異常なものがあり、大衆生活、特に低所得者層の生活を著しく圧迫しているということであります。物価抑制のためには、何よりも政府が率先して物価上昇ムードの根幹である高度成長政策を転換するとともに、思い切った物価抑制のための施策を実行せねばならないことは申すまでもないことでありますが、これらの諸施策とあわせて、大衆生活必需物質の間接消費税を大幅に引き下げ、その結果を確実に末端消費者価格の引き下げに反映させることにより、物価抑制、値下げへの方向を強力に推進することが必要であります。
第二は、今国会に提出されました政府の一連の税制改正案は、直接税に片寄ったものであり、かつあまりにも申しわけ的な少額であります。間接消費税の軽減は全く取り上げられていないということであります。これは間接消費税が逆進的傾向が強く。しかも高率の大衆課税となっている現実からみて適切を欠く措置といわなければなりません。
このような政府の物価、減税政策に強く反省を求めるとともに、物価高の中で直接税の減税から取り残された広範な低所得者層に対する対策を重視し、酒税、製造たばこの定価及び入場税につきまして、それぞれ次のように軽減することといたしております。
酒税につきましては、酒税法の一部を改正いたしまして、大衆酒の大幅減税を行なうことといたしております。
すなわち清酒二級につきましては、一・八リットル当たり四十円、合成清酒は同じく三十円、しょうちゅう同じく二十円をそれぞれ減税し、ビールにつきましては大びんにつき十五円を減税し、標準小売価格を百円とすることにいたしております。
次に製造たばこの定価につきましては、製造たばこの定価の決定又は改定に関する法律の一部を改正いたしまして、大衆たばこの定価をそれぞれ、いこい二十本詰め現行五十円を四十円に、新生二十本詰め現行四十円を三十円に、ゴールデンバット二十本詰め現行三十円を二十五円に値下げするよう、それに見合って法改正をいたしております。
また入場税につきましては、入場税法の一部を改正いたしまして、入場税の免税点を大幅に引き上げることといたしております。
すなわち、入場料金が一人一回の入場につき免税点を舞踊及び能楽を除く映画、演芸、レコードにより聞かせるものまたはこれに類する音楽、スポーツまたは見せものを多数人に見せ、または聞かせる場所及びこれらの場所に類する場所で、政令で定めるものにあっては三百円以下とし、前号に該当するものを除く演劇、舞踊、能楽または音楽を多数人に見せ、または聞かせる場所及びこれらの場所に類する場所で、政令で定めるものにあっては六百円以下とし、それぞれ所要の措置を講ずることといたしております。
以上が三法案の提案の趣旨並びにその内容の概要であります。
なお念のため申し上げておきますが、これらの三法案の改正に伴い、初年度約九百億円、平年度約一千二十億円の歳入減となるとの見込みでありますが、これらは税の自然増収約七千億円をもって十分にまかない得るものと信じております。
何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同賜わらんことを切望いたしまして、提案説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/57
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058・山中貞則
○山中委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
各案に対する質疑は次会に譲ります。
この際暫時休憩いたします。
午後零時三十一分休憩
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午後六時二十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/58
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059・山中貞則
○山中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案及び印紙税法の一部を改正する法律案の両案を議題として質疑を続けます。武藤山治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/59
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060・武藤山治
○武藤委員 大蔵大臣に最初お尋ねをいたしたいと思いますが、いよいよ明日から八条国移行、さらにOECD加盟等による完全開放体制に入るということで、いろいろ私ども野党の立場からも、日本の今日の経済情勢とそういう体勢とのからみ合いなども非常に心配いたしておるわけでありますが、まず、科学的に、大臣に、主観を交えないで、八条国移行ということは一体日本資本主義にどういう得失があるのか、利益になる面とマイナスになる面、この両面を、特に財政をあずかる大蔵大臣という立場から、ひとつ明らかにしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/60
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061・田中榮一
○田中国務大臣 毎度申し上げておるわけでございますが、大きな意味では、日本はだだ背伸びをして八条国に移行しようというわけではないのでございます。貿易依存の国でありますから、これから輸出を伸ばしていかなければならないというときでありますので、ただ輸出を伸ばすわけにはいかないわけでありまして、日本も自由化に応じ、また為替制限等をしないという意味で門戸を開く、こういうことで、究極の目的としては、国際社会、各国の理解を得て、輸出の振興をはかっていかなければならないわけであります。そういう意味においては、大きな意味で国際収支が大いに改善をせられ、外貨の安定もできるわけであります。
また大蔵省としまして、財政面からのマイナス面といいますものをしいて申し上げるとすれば、自由な状態になるわけでありますので、国際競争に耐えない農業、中小企業その他の部面に対して、国際競争に耐えるまでの間、財政上、税制上、金融上、あらゆる立場でこれをサポートし、援助をし、また育成をしていかなければならない、その過程において国家財政の上で大きな支出があるわけでございます。
また経済全体の面から考えますと、どこまでも不自由な為替管理を行なえる状態ではおれないわけでありますので、いつかは通らなければならない関門とも言えるわけであります。そういう意味で、関門を通ることによって、長いこと病院生活等をやっておった人が、なかなか表へ出ることはたいへんだと言っておっても、一生病院におれるわけではないわけでありますから、思い切って出てみることによって抵抗力ができる、更生もできてまいるということでありますので、そういう意味では、私は、大きなプラスをもたらすものである、こういうふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/61
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062・武藤山治
○武藤委員 マイナスの面は、中小企業、農業というおくれた産業、こういうものに対する、圧迫、あるいはこれをはねのけるための保護のために税制、金融の面でたいへん資金を必要とする、こういう程度がマイナスの面だとおっしゃるが、もっと大きな日本の国内における、たとえば外資が非常にゆるく入ってくるために外国資本に産業支配を行なわれるとか、あるいは国内産業秩序を乱されるとか、その他特に短期の外資の激しい流入によって国内金融市場の撹乱をされるとか、そういう幾つかの心配の種があると私たちは認識をしておるのでありますが、大臣はそういう点についてはどのような認識を持たれておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/62
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063・田中榮一
○田中国務大臣 先ほども申し上げましたように、生みの悩みであり、いつの日にか通らなければならない関門を通る、こういうことを申し上げたわけでございます。ですから、その過程において、あなたがいま御指摘になるようなことが皆無とは言えませんが、ただそのマイナス面とプラス面とどっちが多いかといえば、プラス面が多いことは言うをまたないわけでありますから、プラス面の多い道を選び、マイナス面に対してできるだけ万般の措置を行なうことによって国民に迷惑をかけないようにするということに尽きると思います。それは歴史が証明しておりますし、事実が証明しております。明治初年の状態から、開国に踏み切ってから今日まで九十年の姿、それから戦後昭和二十年から二十四、五年までの間、管理貿易から独立後の貿易をして、外資の導入もさることながら、外界との貿易の道を開いたということで、日本の経済やわれわれの生活がいかに向上したか、または鎖国経済をやっておる中共やソ連とかそういう地下資源を物質を十分持ち、労働力もあるけれども、自分が考え、研究し、行ない、すべてのものを完成するということがいかにかたいかは、人類の歴史が証明しておるのであります。人類がより広く交易をするところに非常に進歩発達が急速にあることは、世界の歴史であります。そういう意味からいっても、やはり日本が物資を持たず、狭い国にこれだけの人間を持っておるのでありますから、私は、やはりその道が日本人としては、好むと好まざるとにかかわらず、そうすることによってのみ生き得るのだという一筋の道でありますから、やはりその道を選びながら、マイナス面に対しては万般の措置を行なう、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/63
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064・武藤山治
○武藤委員 日本が裸で自由経済の体制の中に飛び込むことは、やがては受けなければならぬ試練であるけれども、現状は対日差別や何かをして、アメリカにしてもあるいはフランスにしても、そういうガットに入っておる国々が対日輸入制限などをしておる、あるいは品目を定めておる、こういう状況をはずさせるという前提条件のもとに、こちらが裸になって入っていくなら、私はまだがまんできるが、そういうものはそのまま存置されておって、そうして今回のような八条国に入るということは、少々日本にとって分が悪いのではないだろうか、こういう心配を私はするのですが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/64
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065・田中榮一
○田中国務大臣 分が悪いという考え方をこちらは持っていないのであります。分をよくしよう、こういう考えであります。御承知のとおり六十余カ国を相手にしてけんかをした日本でありますから、相手は日本は負けたのだ、われわれは勝者なんだという考えで、相当な考えを持っておる事実は私も承知をいたしております。でありますから、二国間交渉でもって対日差別待遇を一つ一つ撤廃させることがいかにかたいかということは、過去の歴史がそのとおり証明しておるわけであります。でありますから、総理がヨーロッパを回って、ベネルックス三国やフランス、イタリア等急速にガット三十五条援用撤回に踏み切ったということ、またそれは総理が回ったからだけではなく、日本のガットにおける一括関税引き下げに対する基本的態度を明らかにしたこと、OECDに対して加盟をするということ、またガット等において、低開発国援助に対しては、世界の先進工業国と歩調を合わせて努力をするという世界的な立場に立って日本の基本的な立場を明らかにしたことが、戦後十六、七年間も片づかなかったガット三十五条の援用撤回が急速にできておるという事実、また低開発国に対する援助その他によって、南アメリカ諸国も競って日本との間に差別待遇を撤廃する、こういうような状態になっておりますので、私は、一つずつのものを片づけることもさることながら、やはり国際機関に加盟をして、国際機関の場において多数の力もかりながら、またお互いの立場で議論をしていくことが、差別待遇を撤廃する非常にいいことだというふうに考えます。
もう一つは、IMFの問題に対しての実情でございますが、これから国際経済に伍して、日本がいま十五億ドルでいいのか、二十億ドルでいいのか、二十五億ドルであってもいいのか、こいう問題が絶えず国会においても行なうわれますが、IMFになぜ加盟したか。日本の円が国際通貨としての価値が認められるということだけでは一なく、これからは自分一人でもって国際経済の波濤に対処するということは、言い得てなかなかむずかしいことでありますから、IMFとか、世銀とか、また国連とか、そういう場において、お互いが共同の責任で通貨の安定をし、貿易の調整を行ない、経済の発展に資しよう、こういう機構でございますから、分担金を払っても入っておるわけです。ですから、スタンドバイ取りきめなどもできるわけです。イギリスが三十億ドルのスタンドバイをやって今日に至っておるという事実、日本もかつて三十六年にスタンドバイを三億五百万ドルやりましたが、あえて使わなかったけれども、経済は非常に復興したし、また今度三億五百万ドルのスタンドバイ取りきめを行なっておる。こういうような、いわゆるお互いが中小企業として立ち上がる場合でも、自分の金、兄弟の金、身内の金だけでもって立ち上がるほうがいいのか、銀行とのつながりをつけて、銀行の力も十分利用しながら伸びていくのがいいのかということは、あらゆる意味で近代的な体制はいずれの道かということもわかるわけでありますから、十四条にとどまることが日本自体のためになるということではないのでありますから、八条国移行ということが裸になってあぶないというけれども、明治初年に鎖国か開港かという議論も同じ立場で議論されたわけでありますし、私はやはり開港論ともいうべき八条国移行は前向きでこの道を選ぶべきである、こういう気持ちでおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/65
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066・武藤山治
○武藤委員 かりに企業が拡大をしていくためには借金をしなければならぬ、あるいは銀行から借り入れをしてさらに生産を増強していくとか、さらに工場規模を拡大していく、それはわかります。必要な資金を外国からそういう形で国が仰いでくるということもわかります。それには、今日の対外債権債務というようなものを検討しても、あまりにも安易に日本の経済は外国資金にたより過ぎておる。そこで八条国移行になっても、そういう借り入れ金によって日本の国力を強め、経済を拡大するためにはいいんだ、大臣はそういうお考えでありますが、しからばその借りたもの、あるいは外国資金というもの、こういうものをいつどういう段階で返済をし、また日本の国力がそれによってこの形までレベルアップされるのだ、そういう青写真というのは一体どの程度のことを大臣としては想定しておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/66
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067・田中榮一
○田中国務大臣 外国から金を借りないでやっていければ一番いいことであります。西ドイツは戦後同じ復興でも民族資本によって今日を築き得たわけであります。日本はあれだけの爆撃の中でどうにもならない状態でありましたので、外資にたよって今日を築き得たわけであります。私は外資に無制限にたよるというのではありません。ありませんが、少なくとも無資本の状態で立ち上がっていくには、ある程度外部からの借り入れにたよらなければならない。またそのたよったことが返せないような状況ではないというのは、明治初年も同じことで、日本の電力とか鉄道とかは外資によって立ったわけですが、外国にこれを取られたとか、外国に支配されたという例もなく今日にきておるわけであります。そういう意味で、必要なものに対してやむを得ざるものは外資にたよることは間違った道ではない。しかしでき得べくんば、いつまでも自転車操業できるわけではありませんから、ここらでひとつ外資もさることながら、国内も物価が高いし、また消費も堅調過ぎるというくらいであって、輸出振興のために、企業基盤の確保のために、内需を刺激しなければならぬというよりも、もう行き過ぎているくらいに国内消費は堅調であります。そういう意味で、やはり私はここで資本蓄積、貯蓄増強、こういうことも考えなければいかぬ、こう言って私はいろいろな税制上の施策などをやっておるのですが、どうもおしかりばかり受けておるわけであります。しかしこれは、国内において資本調達もできない、外資も借りるなと言えば、座して死ななければならぬ、こういうわけでありますから、座して死を待つわけにはいかぬ。いままででもって、日本人がとてもこのままで満足できるわけはないのでありますから、やはり車の両輪のように、内部においては自己資本の充実と貯蓄の増強をはかりながら、外部からはやはり外資の導入も良質なものはこれを入れていく、これを返せるか返せないかということは、これはもういままで借りたものを返しておる、こういうことでありますし、私は日本の経済の成長はこれを返して余りあるものだ、こういうことを考えておるわけであります。どういう経済的な見通しを持っているかというのは、いわゆる所得倍増、こういう政策をいま立てておるわけでありますから、所得倍増政策をやることによって外資も楽楽と返せるようにしよう、こういうことでございまして、ぶつかったところ勝負という考えでもありませんし、やはりあしたのために思いをはせて、十分慎重かつ勇気を持って対処いたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/67
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068・武藤山治
○武藤委員 所得倍増論のこれからの十年間の見通しや、その経済政策がはたして適切でありやいなやということについては、後刻ひとつ質問を続けたいと思いますが、せっかくきょうは調印式のお疲れのあと出席を願った外務大臣に先にひとつお尋ねをして、早い時間にお帰りをいただくようにしたいと思いますので、まず外務大臣にお尋ねをしたいと思います。
最初、常識的な質問でありますが、今日の日本は、先進国というのか、一体何と定義したらいいのか、大臣の所見を先に承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/68
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069・大平正芳
○大平国務大臣 これはいろいろどういうところに判断の目安を置いて定義するかということによりまするが、先進国ともいえるし、中進国ともいえると思うのでございます。ただ大事なことは、現実の経済外交を推進いたしてまいる場合におきまして、のみならず国内の経済政策もそうでございますが、日本の経済の実態に即してやってまいるということでございまして、先進国的に非常にすぐれた部門もございますが、また非常にバック・ワードな部面もあることは武藤さんも御承知のとおりでございます。したがって、問題のテーマのとり方によりまして、先進国ともいえるし、中進国ともいえる。現実の政策は実態に即してやらなければいかぬ、私はそう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/69
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070・武藤山治
○武藤委員 一定の基準の取り方によって先進国ともいえる、あるいは中進国ともいえる。どんなデータでどんなものを基礎にして日本の国を表現した場合先進国といえるか。また、どういうものを要素として勘案した場合にはまだ先進国とまではいかぬのだ。大臣は、一体どういうことを基準にして先進国あるいは後進国、あるいは中進国と表現をされますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/70
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071・大平正芳
○大平国務大臣 いまお尋ねの問題は、ガットその他でも原則的にしょっちゅう問題になることでございまするが、一国の国民総生産というようなところをとらえてみますと、わが国は、世界で上から数えて五番目というような立場におりますので、そういう角度からいえば確かに先進国といえるわけでありますが、しかしパー・ア・ヘッドのインカムから申しますと、まだ二十位内外のところを紡ごういたしておるというわけでございまして、そういうようなところに分析のメスを入れてみますと、文字どおり先進国の域に達したというわけにもまいらないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/71
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072・武藤山治
○武藤委員 昨日ですか、企画庁長官が国連貿易開発会議出席にあたって、日本は中進国である、だから中進国の立場をこの国際会議において強く主張してまいりたい、こういう談話を発表して飛行機に乗ったということが記事に報道されておるわけでありますが、企画庁長官のこういう中進国だという規定の仕方、これに対して外務大臣は一体どのようなお考えを持っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/72
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073・大平正芳
○大平国務大臣 国連の貿易開発会議の問題として、この間あなたの本会議の御質疑にもありましたように、プレビッシュの提案等をめぐっていろいろな論議が行なわれております。その中で第一次産品の問題、特恵の問題を取り上げてみましても、先進諸国とわが国が受ける影響を見た場合に、よほど様相が違っておるわけでございまして、低開発圏との間の貿易の比重が非常に重いということばかりではなく、わが国が農業という非常に腰の重い部門を広範にかかえておる事情もございまして、ああいう急進的な提案には容易に先進国と同一歩調をとり得ない立場にあるという意味を宮津さんは中進国という感じで言われたものと私は了解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/73
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074・武藤山治
○武藤委員 総理大臣は再三国会答弁で、国民向けの場合には日本は自由主義陣営の三本の柱ですでに世界の一等国だ、あるいは先進国だ、こういう印象を国民に与えようとする意識的な答弁が聞かれる。今度は不都合だと思われるときには、中進国だといって日本を出発する。一体同じ閣僚の中で総理大臣の認識、あるいは企画庁長官や外務大臣の認識が一致していないというのは私はおかしいと思う。そこで一体日本は先進国なのか、中進国なのか、その閣僚会議なりあるいは閣僚の意見統一なりというのは、そういうものは全然なされていないのですか。日本の表現の場合にそれはどうですか、外務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/74
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075・大平正芳
○大平国務大臣 総理といたしましては、国民を鼓舞、激励するという政治的な意味合いで大いに先進国であるという誇りを持つように国民に要請いたしておると思うのでございます。ただ冒頭に私があなたにお答え申し上げましたように、個々の問題に対してどのように対処するかということにつきましては、日本の経済の実態に即して前進をはかってまいらなければなりませんので、政治的に国民を鼓舞するというだけでは処理できないと思うのでございまして、そういったところをいろいろくふうしてまいるのがわれわれの任務ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/75
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076・武藤山治
○武藤委員 あなたは池田さんの直系の大臣として、そういう国民向けの国民を浮き浮きさせるような所得倍増論にしても、あるいは先進国感覚にしても、そういうことで今日の日本の経済が皆さんが意図しないような形に動いてしまっておる。これはやはり国民の心理的効果というものを無視しておるからですよ。経済を数字だけで律しようとする大きなあやまちを犯しているからだと思う。そういう点で不用意に国民向けとそういう外国向けと、都合のいいときだけどうもそういう概念というものを乱用するということは慎まなければいかぬと思うのです。
しかし、そういうことを論議しておりますと先へ進みませんから、次に具体的な質問をいたしますが、過般十九日の新聞でありますが、キューバの工業相が特に日本の名をあげて、これから日本やあるいはフランスなどとも大いに貿易を拡大したい、特に輸入についても今後拡大をしていきたい、こういう意味の放送をいたしております。キューバに対する日本の態度あるいは外務省の方針、こういう談話に対する日本政府の態度は一体どういうことをおきめになっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/76
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077・大平正芳
○大平国務大臣 キューバ貿易は武藤さんも御承知のように、わが国としては相当の分量の貿易をいたしておりまして、現在わが国が非常な輸入超過であるということも御承知のことと思うのであります。私どもの態度といたしましては、これは純商業ベースの貿易でございますので、どういうものを輸出するか、どういう配船をするか、そういったことにつきましては、民間の判断にゆだねておるわけでございます。アメリカのキューバ政策というものがございますけれども、それに対して特にわが国の政府として抑制的な措置をとってはおりません。したがって、工業大臣が日本との貿易拡大についての希望を表明されたということは、私も新聞を通じて承知いたしておりまして、実は現地の大使館に詳細の報告を求めておりますが、まだ参っておりません。わが国の対キューバ貿易というのは純粋の民間ベースでやってきておりまして、相当な実績をあげておるということでございます。
それから、政府間の通商協定でございますが、それは六十一年の七月にできまして、最恵国待遇を関税その他に与えておるわけでございますが、三年たちまして、これが期限が満了いたすわけでございますが、これを変えるつもりはないので、私どもとしては引き続き現行の通商協定によりまして民間貿易を実施して処置してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/77
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078・武藤山治
○武藤委員 そういたしますと、キュバ貿易についてはアメリカの干渉、今日の貿易規模というものに対しあるいは貿易品目に対して、アメリカ側からとやかく日本の外務省に対して申し入れがあったというようなことは、今日まで一度もまだありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/78
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079・大平正芳
○大平国務大臣 一番問題になるのは砂糖でございますが、砂糖は現にキューバ糖を入れないと日本の需給計画は立ちませんので、必要量は入れておるわけです。それに対してとやかくの批判はございません。配船は民間のほうで事実上やっておりませんので、アメリカ側の政策とのフリクションは起こっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/79
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080・武藤山治
○武藤委員 企画庁政務次官がお見えになっておりますが、一昨日ですか、昨日ですか、輸出第一主義という大きな見出しで企画庁のこれからの貿易の見通し、計画と申しますか、そういうものが発表になったわけでありますが、キューバ貿易についてのこれからの趨勢というものはどういう見通しを立てたわけですか、その基礎はどんな計算になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/80
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081・倉成正
○倉成政府委員 キューバ貿易についてのこまかい検討資料を持ってきておりませんので、後刻お答えしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/81
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082・武藤山治
○武藤委員 次に、外務大臣にお尋ねいたしますが、これもつい最近の報道でありますが、アメリカ商務省が正式に発表したところによると、中共輸出というものを、アメリカでつくった機械を輸入をして、生産をした国では中共に対する貿易を今後緩和をしてもよろしい、こういう商務省の発表がございますが、この発表に対する日本政府の見解はいかがですか。さらに、これからの見通し、中共に対する貿易の考え方、見通し、これをあわせてお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/82
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083・中山賀博
○中山政府委員 お答え申し上げます。去る十九日付で商務省から発表されましたが、従来戦略性物資の生産に関する技術的データを輸出しようとするときには、その技術データ自身と、それから直接つくられる生産物を第三国に売り渡さないという約束を取りつけをしなければならなかったわけでございます。そこで、今度これによって規約が改正されたのですが、その一つの大きな改正点は、こういうものが従来財務省の主管であったものが、全部商務省に移されたということが第一点でございます。
第二点は、いままではいわゆるその技術から直接生産されるもの、つまり中共、北鮮向けの、これをダイレクト・プロダクト、直接財と呼んでおりますが、直接財の輸出禁止は、あらゆる物資を対象としておりましたのに対して、今度その範囲が限定されまして、消費物資は除かれるということになりました。それから第三には、従来北ベトナムとキューバは全然規制の対象となっていなかったのでございますが、今後は中共、北鮮と同様にこれが入れられる。北ベトナムとそれからキューバが入るということになったわけでございます。これが重要な改正点でございます。そこで、いま申し上げましたように、消費物資は対象からはずす、そのかわり範囲が中共、北鮮に加えて北ベトナムとキューバが入ったということで、出入りはございますが、この措置は非常に今後の共産圏輸出に重大な影響があるとはわれわれも考えておりませんし、それからアメリカ自身でも考えていないように報じられております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/83
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084・武藤山治
○武藤委員 ただいまの商務省の措置が日本にさほど影響はない、こういう見通しのようでありますが、その根拠は一体どういう根拠からそういうことが言えるのか、これが一つ。それからもう一つは、キューバとベトナム向けも、今後はアメリカとして消費物資以外のものは制限をできるだけしたい、逆の面ですね。これによる日本とキューバとの取引に対しては影響はあるのかないのか、この二点をまずお尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/84
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085・中山賀博
○中山政府委員 確かに消費物資が除かれたということは、ある意味ではもちろん影響があるわけでございます。ただ、従来からアメリカの技術を入れて、そして、それでつくった消費物資を出すということよりも、むしろそういう場合は生産財のほうが多かったのじゃないかと思います。その意味で私は申し上げたわけでございます。
それから第二点は、確かに地域も加わりますので、北ベトナム及びキューバが加わってまいりますれば、その点についてはもちろん問題が生じてくるわけでございます。ただ、従来からキューバ等に出している品物は、むしろ繊維品とかあるいは鋼材というようなものでございまして、特にアメリカの技術がひっかかっているというものは比較的少なかったのじゃないか、かように承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/85
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086・武藤山治
○武藤委員 外務大臣と大蔵大臣の見解をただしたいのでありますが、やはりつい最近の話でありますが、アルゼンチンから中共が小麦を買い付ける、ところが中国は外貨がないために、その買い付けが思うようにできないということで苦慮しておったところ、イギリスとフランスの銀行が中国に融資をする、そこでアルゼンチンから小麦の輸入ができた、こういうフランス、イギリスの銀行のとった措置を見ると、日本の今日の態度というものは非常にかたくなで柔軟性がなくて、国家的利益とか、そういうようなものに対する敏感さがないような気が私はするのです。よその国のできごとでありますから、あるいは外務大臣は、それはフランスやイギリスの国のこっちゃと言ってお答えにならぬ点もあろうと思いますが、中共に対する、イギリスとフランスの銀行が外貨を貸し与えて小麦の輸入を助けるという、こういう態度ですね、これはあなたは新聞をお読みになって、日本の外交をあずかる責任者としてどんな感じを抱いておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/86
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087・大平正芳
○大平国務大臣 私はそういう事実を確かめておりませんので論評の限りでないわけでございますが、私ども日本の対中共貿易に対する態度は、誤解があっては困りますので申し上げておきますのは、別に制限的に考えているわけではないのです。共産圏貿易といえども貿易に間違いはないわけでございまして、これは結局のところ、輸出、輸入はバランスをせなければいかぬわけでございますから、日本の輸出能力、先方の輸出能力が見合っていくという性質のものだろうと思うのでございます。したがって、現在行なっているLT協定下の貿易等にいたしましても、非常に厳密に民間ベースで輸入計画というものを立てて、コンペティティブな価格で、品質で、必要なものを入れるということでございまして、現在の共産圏貿易が非常に顕著な伸び方を見ないというのは、むしろ輸出能力に限界があるからでございます。政府の政策が制約的であるからではないと思うわけでございまして、私ども別に制約を加えるということでなくて、もう少し先方に輸出能力があればもっと伸びてしかるべきものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/87
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088・武藤山治
○武藤委員 大臣はいま、中共貿易に日本としては制限をしておらぬ、こういう態度で、民間ベースで自由にどんどんおやりいただきたいという気持でやらしているという意味の発言がありました。この近い中国と日本の関係をわれわれが考えるときに、何ら制限をしないというのだったなら、しからばなぜ政府間協定を結ばぬのか、政府間協定を結べない最大の原因は何か。さらに繰り延べ決済を認めて大いに今日の貿易構造の改善をしたらいいとわれわれは思うのでありますが、これをやらぬという最大の原因、外務大臣、これは一体どういうところにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/88
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089・大平正芳
○大平国務大臣 前段の御質問に対しては、中共との間に政府が協定を取り結ぶという立場にないから、そういうことをやっていないということでございます。
それから延べ払いの問題だと思いますけれども、これは日本の延べ払い信用の供与状況をごらんいただけばおわかりになりますように、自由圏であろうと共産圏であろうと、最近の貿易攻勢の推移に応じまして、相当多額の延べ払い信用を与えております。現在の対外援助の大半は、延べ払い信用の供与になっておることも御承知のとおりでございます。むしろ共産圏のほうに対しては延べ払い信用が少し供与し過ぎるじゃないかという議論さえあるほどでございます。私どもといたしましては、特に共産圏だから延べ払いはうんと締めてかかるのだというような偏見を持っておるわけでは決してございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/89
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090・武藤山治
○武藤委員 それでは次にお伺いいたしますが、中国に対する延べ払いの額は大体どのくらいになっておりますか。さらにゆるめるならばもっと貿易額が増大するという傾向はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/90
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091・渡邊誠
○渡邊(誠)政府委員 中共に対する延べ払いの承認実績を申し上げますと、これは農業機械とか、鉄鋼製品とか、塩安とか、非常に期間の短い延べ払いと、それから先般承認いたしましたビニロン・プラント二千二百七十七万ドルというような大きな設備輸出の延べ払いがございまして、現在一月までの実績を申し上げますと、四千二百六十万ドルにのぼっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/91
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092・武藤山治
○武藤委員 私がなぜ外務大臣にこういうことをお尋ねしておるかというと、今日日本経済の大きな問題になっておる外貨準備の問題、あるいは対外債権債務とのバランスの問題を考えてみますと、昭和三十六年にどうも外貨危機だといって引き締めをやる、三十七年もそれぞれ続く、どうやら今度は横ばいだといって一年間ゆるめた、昭和三十八年も年の終わりになってきたらまた同じような傾向が出てくる、ほんの一年、間を置く程度でまたまた急激な金融引き締めが行なわれる、これでは国民がえらい迷惑です。国民の立場に立って見ても、そうちょいちょい急激に経済の情勢が変わるというように、変動幅が非常に近い期間にくるということは資本主義の好ましい姿とはいえないと思うのです。安定が長ければ長いほど国民は安心していられるわけでありますが、こういうことが一年目くらいにくるというような形で、しかも予測ができないでおったのでは国民はえらい迷惑ですよ。
そこで、こういうような経済の状態がなぜ起こってくるのか。資本主義の循環のパターンからくるのか、それとも日本の貿易構造の欠陥からくるのか、そういう構造的なものなのか、資本主義の単なる循環パターンなのかという認識の問題が、日本の経済にとって今日の大きな政策的な問題として議論されなければならぬ問題だと私は思うのです。そういう点でやはり貿易構造を変えなければならぬという立場から、共産圏貿易、特に中共貿易あるいはキューバなり他の低開発国の貿易というものに対する日本政府の姿勢、認識のしかたというものをこの辺で転換をさせなければならぬと私は思うのです。変えなければ、日本の今日の構造的な経済情勢というものは切り抜けるわけにいかぬと私は考えてるのです。大蔵大臣、外務大臣は一体どのような認識に立たれておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/92
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093・大平正芳
○大平国務大臣 経済変動が激しいのは資本主議の循環と見るべきなのかどうなのかという御質問でございますが、私は日本政府の見解を申し述べるわけにもまいりませんが、私の意見としてということでございますから申し上げますが、いま非常に変革期にあると思うのでございます。日本の経済は、おそらく史上空前の変革期にあると思うのでございます。異常な技術革新が非常なスピードで進んでおりまするし、しかも世界的に変革期にあるわけでございますから、今日の経済を運営することは、もう非常に至難事中の至難事だと思うのでございます。したがって衝に当たられておる大蔵大臣はたいへん御苦労いただいておると思うのでございまするが、それは別といたしまして、いまあなたは、それを供給する一つの手段として、日本の市場転換というものを通じて、これをもってマイルドな安定した姿に持っていけないものかという御提案でございますが、これは一つの考え方だと私は思うのです。考え方だと思いまするが、武藤さんのおっしゃるようになかなかいかない事情があると私は思うのです。と申しますのは、市場の転換ということを自由企業体制のもとでやろうといたしましても、粗悪な高いものを別な地域から買えと政府が強制するわけにはまいりません。やはり共産圏、自由圏を通じまして、いい安い品物を獲得するように企業は行動するわけでございます。したがって自由圏、非共産圏で九五%以上の貿易が行なわれておるということは、非常に片寄り過ぎておるのではないかとおっしゃいますけれども、それが経済性に合っておることなんでございまして、これをどのようにやってまいるかということは、いままさにあなたの御指摘のように問題になっておる南北の貿易拡大の問題、援助の問題をどのようにいまから方向づけて、あなたが言われるような基礎をつくってまいるかということでございます。急にこれをやろうとしても、それは無理な話でございまして、いまわれわれがかかえておる課題といたしましては、あなたが言う市場転換という問題の糸口として取り上げた南北の問題というようなものに、日本政府が今日あるがままの実態の経済をかかえながら、どのようにして前向きに対処するかという問題に結局翻訳されてくるのではないかと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/93
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094・武藤山治
○武藤委員 時間が割り当てられておりますので、あまり同じことを長く質問できませんので次に進みますが、高碕達之助先生、さらにそのあとを受けた岡崎嘉平太さんがつい最近も、これからのLT貿易のあり方というものに対して、どうしても政府間協定というものを結ばなければならないと、中国貿易に対する見解をその筋の専門家が言っておるわけです。こういう貴重な日中間の橋渡しをされておる岡崎さんのような発言に対して、政府間協定を結ぶことに対して外務大臣はどう考えますか。いかぬと言いますか。時期尚早と言いますか。いかぬというならば、その理由は一体どういう根拠でいかぬと言いますか。そこをひとつ明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/94
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095・大平正芳
○大平国務大臣 いま中共とは政府が関係を持つ立場にないわけでございます。それがいいか悪いかという御批評はあると思いますけれども、私どもといたしましては、いま中共と政府間レベルにおきまして、貿易協定であれ何であれ、一切のことはやらないというたてまえで、いまのわが国の中国政策は打ち立てられておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/95
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096・武藤山治
○武藤委員 政府間で取りきめをするということはやらないという大方針でやっておる、その理由、その根拠をひとつ明らかに教えていただきたい。あなたは資本主義者ですから、資本主義の立場でもいいから、あなたの立場からそれを明らかにしないと、ただ大方針として政府間の取りきめでやることになっておるからやらぬのだということでは説明にはなりません。その理由をひとつ明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/96
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097・大平正芳
○大平国務大臣 これはきわめて明々白々でございます。中国は一つでございまして、国民政府は、自分のほうが正統政府だと言っておりますし、北京政権は自分のほうだと言っておる。わが国は国民政府と関係を結んでおりますので、北京政府と関係を持つことができないというのがいまの私どもの立場でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/97
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098・武藤山治
○武藤委員 先ほども、日本政府の考え方はかたくなで弾力性がなくて非常に硬直をしており、これは日本の百年の将来に非常な災いを残し、日本の国民的利益というものを考えた場合に、今日の政府の態度というものは国民の利益を失う方向の外交だときめつけなければならぬ。それが証拠には、フランスはいかがですか。フランスもイギリスも自由主義陣営の国ですよ。アメリカを中心とするこれらの国々は、歩調をそろえていこうという一様の密約をきめておる国じゃありませんか。そういうフランスが台湾とどういう関係があろうが、やはり北京政府を承認をしよう、それで貿易も大いにやろう、フランスも失地を回復しよう、こういう国民的利益、国家的利益の上に立って、やはり自由主義陣営のきずなをある程度ゆるめても国民的利益を守ろうとする態度、これは私はやはり政治家としては考えなければならぬ態度ではなかろうかと思うのです。それを台湾と日本は日華条約を結んでおるから北京政府とはやれないのだということでは、どうもどこかの国の言いつけをあまりにも忠実に守ろうとしておるからそういうことになるのではないか。何かあなた自身の自主的な判断じゃないような気がするのです。大平さんはもっと良心があって、日本の国家的利益、国民的利益、百年後の日本の大計というものはどうあるべきであるかという、アジアに位する日本の立場をあなたはよく理解しておると思いますが、台湾と条約が結ばれておる限り、どうしても北京政府と政府間協定を結ぶことも、貿易の取りきめをすることもできないのですか。政府間ではどうしてもできないのですか。それはアメリカからそういうサゼスチョンを受け、そういう約束をしているからでぎないのですか、どういうことですか。それとも蒋介石にそういうことはしないでくれと言われたその信義を守らんがためですか。その辺をひとつ明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/98
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099・大平正芳
○大平国務大臣 フランスはフランスの判断でやったことでございまして、フランスのまねを必ずしもやる必要はないわけで、日本は日本としての判断によって外交をやるべきでございます。一つの中国に対して、一つの政府とつき合っておるわけでございますから、その政府を相手にしながらほかの政権を相手にするなんということは、外交上不可能なことでございます。そういうことは世界でやった例もございませんし、不可能なことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/99
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100・武藤山治
○武藤委員 私はこれ以上外交問題で議論をしようとはいたしませんが、しかしイギリスにしてもフランスにしても、あるいはヨーロッパの中国と貿易をしようという国々の態度というものは、日本と比較して非常に柔軟なんですよ。非常に国家的利益というものを中心にものを考えておりますよ。そういう点からいって、いまあなたのやっておるこの外交のやり方というものは、百年後の歴史家が評価するでありましょうが、私は日本国民の立場から見て、あまり知恵のある適切な外交方針だとは感じないのです。しかしそのことはここで議論をしても始まりませんから、先の問題に移りたいと思います。
つい最近、外務省は低開発国援助政策の基本的な問題点を新聞で発表いたしました。それを見ますと、直接借款に重点を置いて国民所得の一%程度を低開発国援助に向ける、こういう内容のものが発表されておりますが、国民所得の一%程度を低開発国に向けるという基準は一体何か。
第二には、今日のような外貨準備というものが非常に流出の傾向になっておって——絶対量は足りなくなくて、最低必要限度は心配ないという大蔵大臣の再々の答弁でありますから、そういう点は心配ないにいたしましても、流出傾向が強いということだけは明らかであります。しかも経常収支でこれをカバーできない情勢にあることも明らかであります。そういう情勢のときに、国民所得の一%程度を低開発国に援助するということがはたしてすぐ可能であるのかどうか、そこいらの大蔵省との打ち合わせはどうなっておるのか、その二点についてまずお尋ねをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/100
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101・大平正芳
○大平国務大臣 外務省の一部局が試案として考えておったものが新聞に漏れておったようでございます。私が承知していないことでございまして、外務省の見解ということでのお尋ねといたしますならば、そういう性質の、一部局の試案程度のものであるというように御承知を願いたいと思います。
それから一%云々の問題でございますが、私どもといたしましては、わが国の生産物、わが国の生産力系列がだんだん伸びてきた場合に、これを国内の消費、官庁の需要、輸出それぞれに振り分けて消化されるわけでございますが、南北の問題が焦眉の問題になってきておる現段階におきまして、経済援助という一つのアイテムにわが国のこの膨張してまいる生産力を振り向ける一つの糸口を考えて、経済計画を立てる場合も考えたいものだという希望は持っております。それを私どものほうの一部局が一%程度ぐらいはどうだろうかというような一つの目安を立てたものだと私は思います。それが経済計画としてサイザブルなものであるかどうか、ということは十分検討に値する問題だと思います。
それから外貨がままならぬときに援助の問題を考えるのはどうかというような御反問でしたが、経済援助は、武藤さんも御承知のように、わが国の生産物、役務の援助でございまして、外貨と直接関係ないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/101
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102・武藤山治
○武藤委員 大臣は、いま一部局の試案であるという答弁をしたわけでありますが、一体どういう部局のだれがこれを作成したのか、ここにおったらここで答弁をしてもらいたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/102
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103・大平正芳
○大平国務大臣 私のほうで経済協力局という局がありまして、そこで私が経済協力の問題をもっと組織的に勉強してくれと注文をいたしまして、そして経済協力局の連中がまとめつつあったものが新聞に出たにすぎないわけでございまして、局長が私のところへまいりまして、一部漏れましたけれどもこれはこういう経緯でございますということでございます。したがって一切の責任は私にあるわけでございまして、私がいま武藤さんにお答え申し上げましたように、私のほうの一部局の一試案であるというようにおとり願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/103
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104・武藤山治
○武藤委員 新聞によりますと、ちゃんと「大平外相の指示によるもので、」とあなたの名前までちゃんと出ておる。国民がこれを読めば外務大臣の指示によってコンクリートされた外務省の基本政策であると思うのはあたりまえですよ。先ほどあなたの言われたように、一部局の試案であるというような軽々しく扱うべき基本政策ではないと私は思う。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/104
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105・大平正芳
○大平国務大臣 武藤さんも御承知のように、外務省というところは金がないところなんでございます。経済援助をするにいたしましても、ここにおる大蔵大臣の御了解を得なければびた一文も出ないわけでございまして、外務省がいろいろな試案を考えて、そしてこれを政府部内で相談をして、政府の意見といたしましては閣議できめていただかなければ政府の見解にならぬわけでございます。大きな役所があって、たくさんのスタッフが働いておるわけでございまして、いろいろな作業が毎日行なわれておるわけでございます。新聞社のほうも盛んに取材活動をやられておるわけでございまして、たまたまそういったことが新聞社の目に触れたというにすぎないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/105
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106・武藤山治
○武藤委員 そういたしますと、かりにこれは試案で、一部局のもので大臣の責任はないといたしましても、これだけの大きな記事で各新聞社が一斉に取り上げた問題でありますから、私はさらにこれを少々お尋ねしたいのでありますが、これだけの、国民所得の一%を低開発国援助に回すという場合の取り扱い機構ですね、外務省のどういう機構でこれをやるのか。そしてまたその金を流していくのは一体どういう機関がやるのか、開発銀行がやるのか、海外経済協力基金でやるのか、何でやるのか。その機構まで一応考えなければ、こういう問題は軽々しく発表できないと思うのでありますが、どういうシステムでやりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/106
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107・大平正芳
○大平国務大臣 いまの経済援助は、御承知のようにいろいろな形において行なわれているわけでございまして、いままでは、そしてここ当分そうでございますが、賠償という形でやるのが一番多く行なわれておるわけです。これが一九六九年にはピークに達しまして、それから漸減する方向をたどると思います。それまでは、まとまったものといたしましては賠償が第一だと思います。
それから先ほどあなたの質問に対して答えた、つまり輸出信用、延べ払いですね、これを普通経済援助というカテゴリーでは、私ども五年以上の延べ払いというものを援助的なものとして勘定に入れて考えております。これは輸出に伴ってファイナンスが行なわれていくわけでございます。賠償のほうは賠償協定によりましてその手続がきまっていくわけであります。それから民間の投融資という形で外国に工場をつくったり、外国の株式を取得したり、いろいろな形で日本の個人または法人が他国に進出してまいる。それも相当今日まで出ております。ウジミナスだとか、あるいは呉羽紡績であるとか、いろいろな形で出ておりますが、ああいったものはそれぞれ所管の省のお許しを得て出ておると思うのでございます。いま私どもが考えておりますのは、このように生産力系列が伸びる段階におきまして、そして賠償がやがてピークに達するであろうという段階におきまして、今後の経済協力は、日本の経済計画のワク内でどうあるべきかというような問題について、そろそろ勉強をやろうじゃないかというて始めたばかりの段階でございまして、これから皆さまからも御論議いただき、私どもも大いに究明していかなければならぬと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/107
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108・山中貞則
○山中委員長 関連質問を許します。有馬輝武君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/108
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109・有馬輝武
○有馬委員 いまの点に関連して一つだけお伺いいたします。
先ほどの武藤君の質問に対する第一点の外務大臣の答弁は、どうしても納得が参りません。いまの外務大臣の御答弁は答弁技術でありまして、ほんとうの答弁でありません。答弁してないということは外務大臣自体が御承知のはずです。
それから第二点といたしまして、この問題について宮澤さんは外務大臣、大蔵大臣とどういう打ち合わせで基本方針をきめて臨まれたのか、これが第二点であります。
それからこの問題についてコンクリートになるのはいつなのか、これが第三点であります。私も簡単に質問いたしましたので、簡単に、そらさないで答弁をしていただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/109
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110・大平正芳
○大平国務大臣 経済援助の問題は、先ほど申し上げましたように、いまからあるべき経済援助というものはどう考えたらいいだろうかということで、外務省として勉強を始めておりますという段階でございまして、田中さんや宮澤さんの御意見を伺う段階にまできていないということでございます。新聞にわれわれの試作の段階のものが漏れたということにつきましては重々おわび申し上げますけれど、それは試作中のものが漏れたというようにおとりをいただきたいと思うわけでございます。したがって政府部内の閣僚レベルの話し合いというようなところへはとうていまだ至っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/110
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111・有馬輝武
○有馬委員 宮澤さんのほうはどう言っているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/111
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112・大平正芳
○大平国務大臣 いま申し上げましたように、宮澤さんと御相談するような段階にまだとても至っていない、われわれの部内の試作の段階であるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/112
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113・有馬輝武
○有馬委員 倉成さんにお伺いいたしますが、いまのようなことで宮澤さんはのうのうと出かけたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/113
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114・倉成正
○倉成政府委員 ただいま外務大臣からお答えされたとおり、まだ外務省から詳しく伺っておりません。経済協力の問題については、私どもで経済協力基金の関係がございますので、この協力のあり方についてもう少し合理的な方法はないか、輸出入銀行との関係等についてただいま検討しているところでございまして、何%が適当であるかどうかということについてはまだ伺っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/114
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115・有馬輝武
○有馬委員 倉成さんに再度お伺いいたしますが、宮澤さんは一国の国務大臣としてあの会議に出席されるはずなんです。外務大臣がいいかげんな答弁をするのは、外務大臣として委員会の作戦もあるかもしれませんけれども、少なくとも一国を代表して宮澤さんが出かけるときに——倉成さんは何も外務大臣に遠慮していまみたいな答弁をする必要はないのです。ほんとうのことをおっしゃい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/115
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116・倉成正
○倉成政府委員 お答えいたします。
全くほんとうのことを申し上げているわけでありまして、パーセンテージ、幾らが適当であるかというようなことについては全然伺っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/116
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117・有馬輝武
○有馬委員 田中経企庁長官にお伺いいたしますが、私はこういった問題については行き当たりばったりでは問題が解決しないと思うのです。たとえば卑近な例がウジミナスの問題であります。ブラジルがああいったものすごいインフレの状態にあるということは、これはもう七、八年前からわかっておることなんです。そして私たちが行って向こうの副社長なんかに聞きますと、心配ございませんと言う。心配ないはずはないのです。そういった点を指導するのが日本政府の、しかも大蔵大臣なり経企長官なりの仕事ではないかと思うのであります。にもかかわらず、いまの外務大臣それから倉成さんのお話を伺っておりますと、その場当たりでこういった問題についてやっておるとしか考えられないわけです。そういう点について経企庁長官の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/117
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118・田中榮一
○田中国務大臣 経済協力につきまして、これから一体何年間ぐらいでどれくらいのものをやれるのかというような数字はまだ内閣で決定いたしておりません。経済閣僚会議を開いて、今度の宮澤長官の国連貿易開発会議に出席することを前提にしまして、これからひとつそういうものと取り組もう、こういう考えでございます。ただ、過去の例から申し上げますと、賠償、賠償に伴う経済援助等がありまして、三十六年には三億七千万ドル、それから三十七年には二億八千万ドル、こういうことで、世界でもってアメリカ、イギリス等を含めて五位の高い水準にある、こういう事実があります。でありますが、いま現在で国民所得とそれから貿易の量を比べますと、西欧先進国よりも非常に少ないということであります。国民総生産に対して一〇%がいいのか一五%がいいのかというような状態から考えますと、現在のように九%ないし一一%というような水準ではとても低いということで、これから一〇%、一三%、一五%と伸ばしていくためには、特に日本のように低開発国に輸出をしている量が非常に多いという特異な状態にある日本としては、そういう事実に徴しまして国民総生産の何%、国民所得の何%というような数字は、一応試算の段階においては出るわけでありますが、そういう力が一体あるのかどうかという問題もありますので、数字はひとつ十分これから検討しよう。しかし前向きでやらなければいかぬという考え方に立って、現在まだ全く未定の状態でございます。ただそういう状態において宮澤経済企画庁長官が国連貿易開発会議に出るのでありますから、どういうことかといえば、これも一回、二回でもって片づく会議ではない。また第一回の会議でありますから、日本としては前向きに低開発国援助に対しては対処するという基本的な考え方であります。過去に対しては実例が十分ありますし、金額も明らかになっておりますし、またインド等に対しては債権国会議のメンバーでありまして、たな上げ等にも応じているわけであります。ブラジルの問題、アルゼンチンの問題、そういう問題に対してはみな世界各国からメンバーが出て、日本もその一員として行っておるのでありますから、そういう状態で前向きに低開発国問題に対しては対処しようという基本的な政府の考えをきめて、それを持って宮津長官が出席をしただけでありまして、新聞に漏れている数字とか、また宮澤長官が出席する場合にある程度の具体的な方針、また数字をきめて行ったものでありません。またいろいろな会議の状態において訓令を受けてくるわけでありますから、政府部内で十分意見の調整をして事態に対処して外務大臣から訓令するということでありますので、この間に数字をきめてというような状態ではないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/118
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119・有馬輝武
○有馬委員 いまの田中経企庁長官の御答弁を伺っておりますと、二カ月並の日米合同委員会における大平外務大臣の答弁をまた伺ったような気がいたすのであります。こういう問題についてコンクリートになっていないものが漏れるというはずがないのでして、その外務大臣の答弁もおかしいのでありますが、いまの問題についても同じようなことを繰り返す、コンクリートのものを持たないで宮津さんが出ていって前向きだと言っても、それはちっとも前向きになりはしませんよ。小は小なりに一つのカテゴリーの中で問題をコンクリートにして持っていって初めて会議に参加する意義が私はあると思うのです。それを前向きになんと言ったっていつもの田中さんの答弁技術以外の何ものでもありませんので、やはりこういった点については、倉成さん大蔵委員会におきましてこうい論議があったということをしっかり記憶にどとめておいていただきたいと思います。
関連質問でありますから、私はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/119
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120・武藤山治
○武藤委員 外務大臣に一問だけ簡単に答えだけいただいて、七時半という約束をまことに恐縮でありますが……。いま日韓会談が進められておりますが、有償二億ドルということはやや確定だ。これはおそらく閣僚級の話し合いの中で三億ドル、二億ドルというものは確定だ、こう承っておりますが、それ以外に漁業協力というものはこの二億ドルの中に含まれるものなのか、漁業協力というものは別ワクで何か低開発国援助ということで新たに出すのか、ここらは一体いまの閣僚の中ではどういう意思統一をいたしておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/120
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121・大平正芳
○大平国務大臣 経済協力は、韓国に対する経済協力としていま考えておりますのは、無償三億ドル十年間、有償二億ドル十年間に供与しようということでございます。それは金額と条件につきまして政府が責任を持つことでございます。その他は民間のレベルにおける借款でございます。民間のレベルにおける借款というのは、先方から日本のメーカーに、たとえば漁船の注文がある。それを輸銀に持ってきて、輸銀が一定割合の融資をする。これは普通の輸出金融でございます。そういったことで、政府レベルの、政府が責任を持つ経済協力というのは三億ドル、二億ドルだけでございまして、あとのものは全部民間レベルの借款である、そういう理解でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/121
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122・山中貞則
○山中委員長 武藤君、御協力願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/122
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123・武藤山治
○武藤委員 そうしますと、漁業協力というものは政府は全然ノータッチで、いま農林大臣が交渉しておるその中身がかりに決定をいたしましても、政府の責任でやるのではない。だれがやるのですか、その主体は。政府が日韓会談の中身まできめておくものを民間で漁業協力というのを出すということは、一体どういう形式でどこを経由して出ていくのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/123
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124・大平正芳
○大平国務大臣 向こうの民間と日本の民間との契約でできるわけでございます。これはインドネシアとの場合、ビルマとの場合等にありますように、政府としてこれを促進するというか、そういう道義的な立場は持っておりますけれども、金額、条件についてコミットするわけじゃ決してございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/124
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125・武藤山治
○武藤委員 それでは、ただいま委員長から協力を願いたいという話もございますので、実は、大蔵大臣と本論に入らぬうちに時間になりましたので、また四月にひとつゆっくりやらしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/125
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126・山中貞則
○山中委員長 平林剛君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/126
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127・平林剛
○平林委員 ただいま武藤委員から、あしたから始まる開放経済への移行につきましていろいろな角度からお尋ねがありました。今度の国会におきましても、この問題につきましては各委員会でいろいろな角度から検討されましたけれども、何といっても今日の日本の経済の中で国際収支の面に大きな不安がある。これがどういうふうに今後の日本経済に影響を与えるかということは、お互いに重大な関心を持たなければならない段階にあると思うのであります。そこでこれについてどんな方針と展望を持っているかということはいろいろ議論をされてきたのでありますけれども、私が特にお尋ねいたしたいと思いますことは、経常収支のうち貿易外収支の赤字をどうやって克服するかという点でございます。貿易外収支といいましても海外旅行から海運問題から、あるいは投資収益、特需、特許権の使用料、フィルムの賃貸料、手数料などいろいろございますけれども、特に注目しなければなりませんことは、この総体的に収支が赤字傾向をだんだん拡大しておるという点だと思うのであります。昭和三十七年度に総計的に見ますと二億五千万ドルの赤、昭和三十八年度に四億一千万ドル、昭和三十九年度におきましては五億五千万ドル、こういうように、だんだんに拡大をしてきておる。そこで私は、明日から開放経済へ移行するといいましても、この点について明確な政府の考え方というものが明らかにされませんと、やはり国民は大きな不安を抱くだろうと思うのであります。そこで、この経常収支の改善策につきまして、いろいろ答えはありましたけれども、国民がほんとうに納得できるような改善策を政府はお持ちになっておるかどうか。私は、国民がほんとうに納得できるような改善策を、きょうは大蔵大臣から御説明いただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/127
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128・田中榮一
○田中国務大臣 経常収支のバランスをとらなければならぬということは、御承知の、おりでございます。でありますから、輸出振興に対しては各般の施策を行なっております。また、貿易外収支の改善につきましては、外航船舶の建造、それから積み取り比率の向上、港湾経費等の国際水準へのさや寄せ等の施策を行ない、また、観光施策等に対しても各般の施策を行なって、いま努力をいたしておるわけであります。
それからもう一つは、資本収支の面でございますが、確かに利払いとかまた元本の返済とかロイアルティーの支払いとかいうものがありますが、かかるものは、日本の経済の復興、近代化というために導入をされたものでありまして、そのためにこそ輸出の伸長も行なわれてきておるわけでありますから、私は、この元利、またロイアルティー等の支払いには十分応じていけるという考えでございます。しかし、いつまでも借り入れ金をやっておるということになりますと、国際経済にも左右される率が多いわけでありますし、昨年の利子平衡税等の問題もあるわけであります。日本の企業においても、銀行間の日銀自体のオーバーローンの解消、また企業自体のオーバー・ボローイングの解消の問題等々と取り組んでおると同じように、日本自体も自己資金でまかなえれば、あえて外資のやっかいにもならなくていいわけでありますから、外資も良質のものはある程度導入も避けられないことはありますけれども、国内資本の充実、貯蓄の増強等もあわせて行なうということで、施策を強力に推進をするつもりでございますので、私は、日本の開放経済に向かっての国際収支というものに対しては、不安なからしめるようにしなければならない。政府がその意味で非常に積極的に取り組んでおるということで、一体戦前というものは、日本の貿易外収支は非常に黒字であったということを、われも言い、また人も言うのでありますが、一体どういう状態で黒字であったのだろうということで非常に検討しましたが、各省にもなかなか書類がないのです。大蔵省にはあるだろうということで、大蔵省のあらゆる倉庫をひっくり返しましたらありました。それと取り組んで検討してみましたが、事実は違っておりました。戦前も案外赤字だったのです。どういうことかといいますと、運賃は全部輸入の中にぶち込んで計上しておったということでありますから、ちょうどIMFの統計のようなものでありまして、日本のいまの国際収支の中の中身を明確に経理区分をしておるというものとは違うわけであります。案外われわれの考えが間違っておったということであります。が、しかし、同時にそのときには外資を入れなければならぬし、国内においては国債発行ということで財政をまかなっておったのでありますから、そういうことはやりたくない。だから、国債も発行したくない。それから、外貨債だけでもそんなに無制限に外資を入れるべきものではないので、国内で資本蓄積をやろう、こういう考えで、国際収支と取り組んでおるわけであります。でありますから、二十億ドルの外貨を持ちながらも公定歩合の引き上げも行なうという、非常に開放経済に対しては厳密な、慎重な考え方をとっておるわけであります。私はやはり四十三年度までとか、四十五年度までとかいう論がありますが、これは中期経済計画のこれからの三カ年、五カ年の経済成長率というものをきめれば、輸出入のおおむねのワクがそこで積算されるわけでありますので、それによって運賃は一体どうなるのか、保険料はどうなるのか、港湾経費はどうなるのかという事実をつかみながら、一つずつ解決をしていこう、まずさしあたりとしては、六十四万二千グロストンの開銀の融資による建造はひとつ繰り上げて四月一日から思い切ってやろう、それも十カ年間の荷物保証などということを言わないで、とにかく船をつくろう、それに対してなお財政が許して必要であるとしたならば、百万トンまでもつくってもいいじゃないかというような議論もいま盛んに戦わされておるわけでありまして、前向きで積極的にこの問題と取り組んでおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/128
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129・平林剛
○平林委員 いまのお話を聞いただけでは国民は納得をしない。また、政府の具体的施策につきましても、私これからお尋ねしてまいりますけれども、やはり私どもが心配しておる経常収支のうち貿易外収支の赤字を克服できるかどうか、きわめて疑問なんであります。これからその問題についてお尋ねをしてまいります。
その前に、私、大蔵大臣にお尋ねしておきたいのでありますけれども、政府がこの二月IMFにに対しましていわゆるスタンドバイ・クレジット三億五百万ドルを取りきめるように要請をいたしまして、この結論が出たようでございますけれども、こういう取りきめの要請をいたしました理由というのはどういうところにあるのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/129
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130・田中榮一
○田中国務大臣 これは、金がなくなったからやろうというのではなく、八条国移行に対しまして、第二線外貨準備を厚くすることによって国際経済の波動に対処したいということが一つであります。そういう意味で、スタンドバイ取りきめはやったわけでございます。またスタンドバイ取りきめに対しては、IMF当局も、これをひとつ自由に引き出してもらいたい、こういう考え方であります。いままではどうも借金をするのだというような考えで、自分のしておる金を、まあ両建てみたいになっておるわけであります、歩積み、両建てのようなものでありますが、それさえも借りないということはよくないので、これから国際流動性の問題、国際の通貨価値の安定の問題、いろいろな問題をいま検討いたしておる過程において、これを自由にひとつ取り出してもらったり、またこれを使うことがIMF設立の趣旨にも連なるわけでありますのでという——IMFで資金が相当だぶついておるという状態もあります。そういう状態で、去年の春あたりから非常にIMF当局の考え方も変わってきたということが一つであります。
もう一つは、いままでIMFからの借り入れは借り入れ金である、こういう考え方でもって、非常に日本人は厳密にものを考えておったわけです。これは私もいいことだと思うのです。借りないで済むことは非常にいいことですが、まあインドなどは借りてまた債権国会議を開いて、たな上げをしてまた貸せろ、こういう勇気のある国もあるわけでありますから、全然自己資本だけでやることが正しいのだということは、経済の法則にももとるわけでありますから、やはりもう少し新しい視野と角度に立って国際機関を利用するということは、これはもう新しい立場でいいことだと思うのです。そういう意味で、三億五百万ドルのスタンドバイを取りくずすとかいう考えで取りきめをしたわけではありませんが、御承知の、こういう自分が積み立てておるという問題に対しては、これは絶えず使うということでいくべきだという考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/130
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131・平林剛
○平林委員 大蔵大臣はたいへん御説明になったのでありますけれども、そこで私端的にお尋ねをしますけれども、国際収支の先行きに対して不安を感じてこの取りきめ要請をしたのでない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/131
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132・田中榮一
○田中国務大臣 不安があってというわけではありませんが、いずれにしても第二線準備を厚くすることによって国際的信用もありますし、また日本の通貨価値の安定という面もありますので、そのような新しい立場ということでスタンドバイ取りきめを行なったわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/132
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133・平林剛
○平林委員 この点、なかなかほんとうの気持ちを言いませんから私にもわからぬのでありますけれども、それではこういう角度からお尋ねしておきたいと思うのであります。
昭和三十九年度末における保有高は、政府といたしましては大体十六億一千万ドルという見通しを立てておるというふうに承知しておるわけであります。政府はいろいろ各般の施策をするわけでございまして、もしこれがうまくいかなければ、これより減るかもしれないというのは宮澤企画庁長官もしばしば述べられておるので私承知しております。ただこのスタンドバイ・クレジットを三十九年度内におきまして借りてくるというような事態は予想されないかどうか、この点をひとつ聞いておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/133
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134・田中榮一
○田中国務大臣 スタンドバイ・クレジットはいつでも自由に引き出せるという段階でありますので、第二線準備の外貨を厚くするということから考えますと、ゴールドトランシュ分の一億八千万ドルだけでも引き出しておいたほうがいいかということも考えたわけでありますが、金利がかからなくても手数料が要る問題でありますし、それを使わないで済めばしくはないという考えでありますので、現在引き出すようなことは考えておらないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/134
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135・平林剛
○平林委員 ただ大蔵大臣があまり楽観をしておられるような感じなのです。先ほどの答弁から承っておりましても、国際収支におきましても多少不安を感ずるぐらいのことを言うていただければ私これ以上詰めないのでありますけれども、最近の池田内閣の経済政策にいたしましても、開放経済に立ち向かう日本の立場についても言うておることは、きわめて楽観的な調子が多いのでございまして、私はその点におきまして、政府の態度は少し慎重を欠くのじゃないかという感じがするので、こんな角度からお尋ねをするわけであります。
いまお聞きしている限りにおきましては、私が指摘した点についてずばりそうだというお答えがございませんで、まあ借りておいたって借りなくたってどっちでもいいよというような言いようをされる。借りるということは別にどうということではないのだというような御答弁をなさっている。こういう点から、ただいまのようなお尋ねを私はしたわけであります。かりにただいまのようなきわめて楽観的な考え方から昭和三十九年度移行いたしまして先行きどういうふうになるか、いろいろ考え方の違いがございます。ありますが、もしかりに今後近い将来、一年以内におきましてこれを借りてこなければならぬというような事態が生まれた場合におきましては、先ほどから説明なさったお答えはどうも飾りがあるということに相なるわけですね。また政府の理由は、国際収支に対して強がりを言っておったということに相なろうと思うのであります。もっといえば、事態に対する見通しが楽観過ぎた、こういう政治的な責任は追及されなければならぬと思うのでございます。かりにそういうことがあった場合に、私がいま指摘したような主張を将来しなければならぬ事態がこないように望みますけれども、きた場合、そういう主張をせにゃならぬ。いかがでしょうか、参考のために大蔵大臣の御所信を承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/135
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136・田中榮一
○田中国務大臣 どうも少しおかしい議論ですな。借りるためにスタンドバイをやったのですから、借りる事態がきても引き出すにすぎないのであります。現在の時点において日本の国際収支が一体不安定なのかどうか。政府は強がりを言っておるわけではありません。事実に基づいて言っておるわけであります。どうも日本ではいままで——私は率直に言いたいのですが、雨が降ると困るからかさを持って出るということはいいのですが、絶えず不安感を持つ。もの知るがゆえにかえってそう思うのかもしれませんが、私はそういう不安を絶えず言うことが政治の要諦ではないと思うのです。事実を述べる、そして国民の協力を得るという姿勢をとるべきでありまして、不安があるのだ、不安があるのだと政府が言うことによって——そうでなくても中小企業はいま困っておるのです。どうにもならない状態になっておる人もあるわけであります。そういうときに追い打ちをかけるような、そういうことを言うことが一体政治なのかということもひとつ御理解いただきたい。ですから事実をすなおに国民に訴えて、国民の協力を得ればスタンドバイも取りくずしをやらないでいいかもしれませんけれども、しかしまた大きな成長をする場合には、その過程において波動があるわけでありますから、前進体制がくずれない程度において前進を続けていくということでありますから、私は事実の問題として、国際収支がいまどうにもならない状態にはならないということを申し上げただけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/136
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137・平林剛
○平林委員 私は、遺憾ながら大蔵大臣とその点の姿勢が違うのです。国民に対してやはり真実を明らかにし、そうして協力を求めるという形でなければならない。それがほんとうの政治だと思うのです。その実態をはぐらかして飾りだけりっぱにさせてあとで大きな失望を与えるというのはむしろ政治のとるべき姿ではない。池田内閣がおやりになってきたのはみんなそれなんです。今日までだいじょうぶだ、だいじょうぶだというお話を発表されながら、今日の経済的な危機、国民の不安というものは、私は、国民に対して真実を明らかにしないでムードだけでやってきたところに大きな原因があると思うので、これはとるべき政治の態度ではないと思うのでありまして、大蔵大臣とはその点は見解を異にするのです。この点はなおほかの問題から申し上げます。
そこで次の問題について少しお尋ねしますが、ただいま私議論しております貿易外収支の中で赤字の最も大きな要因は、第一には海運収支の赤字でありますし、第二に技術導入に伴う特許権使用料の支払い増、第三には外資導入に伴う利子配当など果実の支払い増の三つになっておると承知しておるのでございます。この中でも海運収支の赤字増の原因はなかなか検討を要するものがあると思うのでございますけれども、いろいろ会議録その他の意見を調べてみますと、最大の原因は日本船の貨物積み取り比率の低下にある。そこでこのような積み取り比率の低下をもたらした要因は何であるか。これについて正しく理解をなさっておるかどうか。政府のお考えをお聞かせいただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/137
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138・田中榮一
○田中国務大臣 いろいろな原因があるわけでありますが、最大の原因はやはり戦後の海運の再建が非常におくれたということであります。絶対的な船腹量が足らないということ。もう一つは、戦後初めての貿易再開というものが管理貿易であったということで、日本船を使うということもさることながら、外国船を使用したということ。第三は、外国船のほうが外貨の非常に不自由な二十三、四年、四、五年、六、七年というときに、日本の船主がやれないような条件で日本の市場を相当確保したというような問題がたくさん重なっておるわけでありますが、いずれにしてもこれらの問題は、一番大きな積み取り比率が非常に低下したことが原因であるというふうに理解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/138
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139・平林剛
○平林委員 私、その点もまだ大蔵大臣正確にお答えになっておらぬのではないかと思うのであります。最大の条件、要因は高度成長政策のもとで輸入の商品構造とそれから市場構成の大きな変貌にあるのではないか。その点がこの積み取り比率の低下をもたらした大きな壁であるというふうに理解しておるわけでございますけれども、まあようござんしょう。ただ、経済閣僚懇談会におきまして、このような積み取り比率の向上をはかりたいということで、またはかるべきであるということを御相談になったようでございますけれども、どうやってこれを向上させていくか、私はその点について政府の考えというものを聞きたい。もっとも、この積み取り比率の低下の原因について、私と正しく意見が合っていないとこの答えは出てこないと思うのでありますけれども、積み取り比率を向上させていく施策、具体的にはどういうものがございましょうか、大蔵大臣でなくて運輸省なりあるいはその他の機関からお答えになってもけっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/139
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140・田中榮一
○田中国務大臣 積み取り比率を向上させるということに対しては、運輸省それから通産省でも思い切って取り組もうということになっておるわけでありますが、これを急速に変えていくという問題でも、なかなか障害があります。第一、常識的に見て、政府管掌の会計の中で、なぜ一体八割も外国船を使っておるのか、こういう問題があるわけであります。食管会計の中で飼料だけでも千四百億も購入しておりながら、八割は外国船である。計算ではいろいろな問題が出ます。どうせ外国の港湾料が非常に高いのだから、実際は外国船を内国船にしたところでそう国際収支が黒字になるわけではないというような数字が出ますが、国内的な計算は日本の計算でいいのですが、外貨を得るという場合にはそういう計算は当てはまらぬわけであります。私は、そういう計算の間違いが今日を築いたものだ、こういう考え方であります。でありますから、まず政府としては食管会計等の中で膨大なものを輸入をしておるのでありますから、こういうものに対してはもう去年からタンカーを二隻改良しておりますが、こんなことは焼け石に水であるということで、業者自身の自粛に待ちながら、業者自身の外国船とのリベート問題とかいろいろ問題があるようでありますが、そういうものは安くということでありながら、元も子もなくなるような方法はいかぬので、ある場合には内国船を使用すること、これは大蔵省などでも、いままではそうすれば当然運賃の差額だけは食管の赤字がふえる、こういう議論はあります。議論はありますが、そんなことを言っておってもこういう貿易外の赤字は解消できないわけでありますから、まず食管会計等においてこれに手をつける。それから自社船の建造を一つ考えておりますので、これによって年々増すところの原油の引き取りというものを内国船でやろう。それから各商社に対しても愛国心ということであります。自分たちがほかの船を使って多少そのときにもうけても、引き締められれば元も子もなくなるのですから、もう少し国家的な立場に生きてもらいたいということに対しては行政指導を強くやらなければいかぬ。なお船腹の建造をやろう。とん税、特別とん税等で海運の港湾使用料も外国並みにだんだんと上げていこう、そのときには内国船主の負担が重くならないように地方税その他でもっていろいろな配慮をしていこう。政府としてもそういう施策を一つずつ取り上げながらシラミつぶしに貿易外収支の改善をはかろうという考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/140
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141・平林剛
○平林委員 政府のお考えを聞いておりますと、私がただいま指摘しました積み取り比率の低下を改善する方策は船をふやせばいいのだ、それにウエートがかかっておるように聞けるわけであります。私もこれは専門家でございませんから、いろいろな雑誌その他から読み取ってまいったのですけれども、その中にこういう意見があるのです。先ほど私が指摘しましたように、高度成長経済のもとで輸入の商品構造と市場構成の大きな変貌が最も大きな壁である。たとえば産業構造が軽工業から重化学工業と高度化するに伴いまして、石油だとか鉄鉱石、石炭の比重が高まって、これがだんだんふえてきた。石油などは原油で八〇%が中近東地域から輸入されるようになりまして、東南アジア方面からの輸入というものは減少してきた、そういう変化がある。このために平均輸送距離が昭和十一年当時は四千海里くらいであったけれども、昭和三十年には五千七百六十海里になり、三十七年には六千三百海里になって、だんだんふえてくる。比例をして船の保有というものは少なくなってくるわけですから比率が下がってくる。石油の場合でもそうですし、あるいは鉄鉱石の場合でもそうだ、こういうことを考えますと、ただ船をつくれば、貿易外収支の中で特に大きな赤字を占める海運収支、その中でも重要な原因である積み取り比率の改善というものはそれだけでは解決できない。外務大臣にこの点私はお尋ねをしようと思ったのでありますけれども、そういう見解についてどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/141
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142・田中榮一
○田中国務大臣 確かにあなたの言うことも一つの理屈であります。一つの理屈でありますが、そういうものも含めて貿易外収支の改善に役立つものの中に、船をつくるということに最大のウエートを置いていいことであります。船がなければどうにもならないわけでありますから、なければ全部外国船を使うということになるのであって、問題は船腹の建造にあるということは論を待たないところであります。ただ構造上の問題は、あなたがいま指摘されたような問題、また日本の輸出の状況、だんだんと精巧な品物を送るようになったり、雑貨をやるよりは精巧なものを送れば船も少なくて済むということになるわけでありますから、これはいろいろの問題があります。ただ日本の宿命的な問題でありまして、原材料という重いものを輸入をして、それに加工をして十分の一、二十分の一の軽いものにして同じところへ出している。こういう原材料を持たない宿命的な問題があるわけでありまして、こういう問題と取り組むためには、あなた方の言っているように国内石油資源の開発をやれ、国内ガスの開発をやれ、国内鉄鉱資源の開発をやれ、いろんなことがいわれておるわけでありまして、石油もさることながら、外貨問題を考えれば石炭にもっと力を入れろ、こういって石炭対策に力を入れているのはそのとおりでありまして、ただ雑誌にある経済学者が発表していることがすべてを解決することではないので、それも一つの方法ではありますが、やはり広範にあらゆるものでも取り上げて貿易外収支の改善に資しようということでなければとてもこの問題の成果はあがらないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/142
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143・平林剛
○平林委員 運輸省の方もおられますから、せっかく呼んだのだから尋ねなくては悪いと思いますけれども、もう少し大蔵大臣にお尋ねしたいと思うのであります。
三月の二十六日に経済閣僚懇談会を開催されまして、いま大蔵大臣がお答えになっておりますように、海運助成策を進めるという方針を大筋にして、国際収支改善策の諸方策の検討をなさった。そこでいろいろ出た結論が、私一般の商業新聞で見たのでございますけれども、答弁の中にもありましたけれども、開銀の融資ワクを従来の六十数万トンを百万トンまでやる、こういうことが報ぜられているのでありますけれども、もしこの百万トンにするとなりますと、資金計画というものは一体どうするのかという問題が起きてくると思うのであります。これについてはどういうお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/143
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144・田中榮一
○田中国務大臣 百万トンにするというふうにきめたわけではないのであります。現在、三十九年度の財政投融資計画におきましては、御承知のとおり六十四万二千グロストンの建造を考えているわけであります。その一部は三分の一工程、四分の三工程というものもございます。そういうことで開銀に対する資金の計算をしておるわけであります。そのほかに自社船が約二十万トンございますので、合計合わせますと八十四、五万トンというところであります。これを自社船を含めて百万トンにした場合、あと十四、五万トンの追加ということになるわけでありますし、自社船は除いて、開発銀行のワク六十四万二千グロストンを百万トンにするということになれば、三十五万八千トンを加えなければならぬということになるわけであります。しかし、これは財政当局の財政上の事情もありますので、これらの問題はひとつ運輸省、また大蔵省、通産省、経済企画庁、そういうところでもって十分何回か練ってやろう。ただ、その数字がきまるまで何ら手をつけないではいかぬので、まず六十四万二千グロストンのものは四月一日から、予算が通ったら、受付着工するようにしよう、それで繰り上げるようにひとつ考えて、それまでに中期五カ年計画も答申があるわけでありますから、そういうときになれば、大体三十九年度を起点にして四十三年まで幾らつくればいいか、四十五年度まで何トンつくればいいかという問題が自然にはじかれるわけでありますので、そういうことを前提として検討しようということであります。でありますから、六十四万二千グロストンの中で四分の三工程、二分の一工程というようなものを全部繰り上げることによって幾ら一体金が要るのか、あと追加するものに対して、それを全工程三十九年度に竣工するのか、四十年度に何分の一残すのかという工程をきめなければならぬ、百万トン全部つくるということで、いままでのものも全部繰り上げて百万トン自体を三十九年度でもって全部やるということになると、三百億くらいの財政資金が必要じゃないかというふうにおおむね、大ざっぱでありますが、そんなふうに考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/144
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145・平林剛
○平林委員 運輸省のほうにちょっとお尋ねいたしますけれども、いま大蔵大臣と質疑をかわしております海運収支の件につきまして、大体昭和四十二年くらいまでには現在の赤字を克服してとんとんにしていくというような計画がおありだと聞いておるわけですけれども、具体的にはどういうような計画になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/145
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146・澤雄次
○澤政府委員 運輸省のあれは計画ではございませんで、運輸省の海運局におきまして、昭和四十二年度におきまして、海運の運賃収支をとんとんにかりにするとすれば、どれだけの船腹を要するかというのを試算いたしましたわけでございまして、具体的な計画につきましては、ただいま大蔵大臣が言われましたように、大蔵省、通産省、企画庁、その他関係各省と検討を進めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/146
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147・平林剛
○平林委員 大体いまお話しになった海運局では、今後五百三十八万トンくらいの船舶を三カ年で計画をしていく、この場合の積み取り比率は、現在輸出が五二%であるのを六一%にまで持っていく、輸入は四七%であるのを七二%に持っていく、こういう一応の試算で計画を進められておるという話を私、承知しておるわけですけれども、いま大蔵大臣がお答えになった点について、やはりもっとはっきり言っておいてくださいよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/147
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148・澤雄次
○澤政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、これは試算でございまして、いろいろな試算をやりましたわけでございますが、そのうちの一つとして昭和四十二年度におきまして運賃面だけをとんとんにすれば、どのような船腹が要るかという試算をいたしまして、ただいま先生が言われたような数字が出たわけでございますが、しかし具体的計画の作成につきましては関係各省と打ち合わせをしなければなりませんし、それから中期計画——経済企画庁において中期計画を立てておられますので、これとの関係におきまして初めて具体的な長期計画ができるもの、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/148
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149・平林剛
○平林委員 海運収支の赤字につきましては、いま私が申し上げておる積み取り比率だけでなくて、港湾の経費であるとか、あるいは船の油や用船料などにおきましても大きな原因になっておる。運賃のマイナスが二億一千二百万ドルですか、港湾経費その他で二億一千万ドルということになっておりまして、この港湾経費につきましても一体どういうふうにして改善をしていくつもりなのかという点を、あなた方の計画として私は承知したいのですけれども、私のほうがしゃべっちまって、あなた具体的にちっとも言わないので、もう少し積極的にどういうふうにするかというようなことは、きょうは大臣いないんだから、あなた大臣の代理のつもりでしゃべっておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/149
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150・澤雄次
○澤政府委員 ただいま言われましたのはIMF収支——この国際収支にIMF収支と為替収支の二つがございますが、IMF収支で運賃面が二億一千万ドル、港湾経費が二億一千万ドル三十八年度におきまして赤字になる見込みでございます。それで港湾経費のうち油代につきましては、これは改善の余地がございません。と申しますのは、日本を出ますとき使います油も、これは御承知のようにボンド油でございまして、これは通関しておらない油でございますので、外貨払いになるわけでございます。その他の港湾施設の管理費、それから荷役料、大別してそのようになると思いますが、港湾の施設費につきましては日本の主要港におきましては、戦前ほとんど全額国費で港をつくりまして、いわば道路のような概念でこれを使っておりましたので、諸外国に比較いたしまして港湾の施設料も比較的低くなっております。それから荷役料はこれは労務費が安い関係その他から、諸外国に比べましてはるかに低くなっております。これは大蔵大臣が言われましたように、漸次これらの港湾施設費用も上げてまいらなければならないかと思いますが、しかしこれを上げますと、現在の低い港湾施設料をもとにしまして、輸出の秩序、また船会社の取引の秩序ができておりますので、これを急激に上げることはいろいろなところに弊害をもたらすと思いますので、それらを勘案しながら大蔵大臣の言われましたように漸次上げてまいりたい、このように思っております。それからこの運賃収支に対します港湾経費の比率は漸次下がってまいると思います。と申しますのは、従来は定期船、ライナーが主でございましたが、ライナーなどの港湾経費は非常に高うございまして、運賃の総水揚げに対しまして四〇%くらいが港湾経費になっておりました。しかし今後増加いたしますのは鉄鉱石専用船でありますし、それからタンカーでございますが、これらの港湾経費率は運賃総水揚げに対しまして一六%くらいになっております。したがいまして、今後運賃の水揚げが上がるに比較しまして港湾経費の上がり方の率は漸次低くなってまいる、このように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/150
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151・平林剛
○平林委員 この港湾経費につきましては、まあ参議院の大蔵委員会でも木村禧八郎さんがなかなか詳しく質疑をやっておるわけであります。特に私も興味を持ってそれを読んだのでありますけれども、引き船料というのですか、これはトン税だとかあるいは燈台税だとか、入港税、いろいろなものを合算をいたしますと、日本を一〇〇としてハンブルグでは四三〇、ロンドン九七〇、ニューヨークは二六七というように、国際的な比較において日本は実に大きな違いができている。それからまた私はこういう専門的なことはわからないのですけれども、船をつなぐ料金などについても、日本を一〇〇とすればロンドンでは三一七六ですか、これは私あまりにも違うのでびっくりしているのですけれども、三一七六、ハンブルグで一一四一だとか、 ニューヨークで三五三だとか、平均したって日本の一〇〇に対して六五七くらいの違いがあるというのです。これは木村さんの発言を私は取ったので、あるいは正確でないかもしれませんけれども、とにかく国際的な比較において大きな違いがあるということなんです。この違いがどうしてこんなふうに起きてきたのかという点が私はわからない。
それからまた、いまあなたは改善していく上においていろいろな面に弊害がある、それを考慮せなければならぬというお話でございましたけれども、一体どういう方面にどういうような影響があるかということをひとつこの機会に聞かしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/151
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152・澤雄次
○澤政府委員 ただいまの数字でございますけれども、日本を一〇〇といたしまして、港湾の施設のほうを申し上げますと、ニューヨークは二六七、それから先ほど出されましたロンドンは九七〇になっております。これは私のほうの資料でございます。
それから荷役のほうは、ニューヨークは日本の六・七倍、ロンドンは二・七倍、ロサンゼルスで七・四倍、このようになっております。香港、バンコクその他のところは、日本より低くなっております。
それから弊害があると申し上げましたのは、これは日本の輸出は非常に薄い利益で輸出をいたしておりますが、この港湾荷役料が上がりますと、それだけ競争力が落ちてまいるわけでございます。これは荷主が持つ荷役費についてでございます。それから定期船の荷物につきましては、船内の荷役費は、船会社が負担いたしております運賃の中から払っております。それでいまのような不況のときに運賃を上げることはなかなか困難でございますので、船内荷役料が上がってまいりますと、船会社の経費がふえてまいりまして、それで再建整備に取り組んでおります船会社に対しまして、非常に大きな負担になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/152
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153・平林剛
○平林委員 なるほどそういうものですか。私もしろうとでございますから、たいへんな違いがあるものだ、どうしてそれを克服できぬのかということを実は聞きたかったのであります。ただ私は、そこで今後大蔵大臣にも考えてもらいたいと思いますことは、今度の国会を通じまして、海運の振興をはかるということが具体的な政府の施策として浮かび上がってきたことは事実でございます。また今後開放経済に向かうにあたって、これが重要であるということは、私は否定するものではありません。しかし先ほど来申し上げましたように、船をつくったから、それで必ずしも国際収支の改善に役立つというようなものでないということもまた私が申し上げたとおりでございます。
そこで私は、これからいずれにいたしましても、政府におきまして、海運につきましては相当の振興策を講ずることになると思うのでありますけれども、その前提を少し考えておいてもらいたい。というのは、海運界につきましては、もう数年来いろいろな議論がございまして、いまもお話があったように、かなりいろいろな面において手厚い保護を加えてきておるわけでございます。港湾のいろいろな施設、経費の問題その他においても、比較にならぬほどの状態になっておるというのも、どこにネックがあるかといえば、海運業界に対する保護といいますか、そういう配慮ということに重点を置かれている。こういう面で、これから政府が相当援助を加える場合に、今日の海運業界がそういう援助を受けるに値するような自発的、自主的な考え方を持っておるかどうかということは、私は従来の経緯から見まして、相当配慮しなければならぬということを感じておるわけであります。
そこで私は、大蔵大臣に注文しておきたいのでありますけれども、こういう一つの国策に甘えて、海運業界が自分でしっかりするというような考えがなくてはいかぬ、そういう問題についてどういう配慮をなさるかということを、特に金を握っておるほうの大蔵大臣から聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/153
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154・田中榮一
○田中国務大臣 戦後そういう議論が先行しておったので、海運の再建がおくれたということも事実であります。石炭などに対しても、そういうことが言えるわけでありまして、もっと先に企業者が自覚をし、政府も適切な手を打てば、こんなことにならなかった。いまになって何倍も金を出さなければならぬということになったわけであります。そういう意味で、今度は政府としても踏み切りまして、海運の集約を前提にしまして、集約するならたな上げも認めよう、利子補給もしよう、建造もさせよう、こういうことになったわけであります。でありますから、海運界も相当荒っぽい減資等もやりまして、少なくとも法律の趣旨に沿って、いま再建整備を行なっているわけでありますので、やはりこういう状態であれば、政府も前向きで助成していく、また海運業者というものが倒れてしまって困るのも、倒れる海運会社だけではなく、やはり政府自体も困るでありますから、大いに自覚を求めて、大いに企業の再建整備をやってもらうと同時に、政府もやはり積極的にこれを助成していくという考えで、相補なってこういう問題が解決できるのだ、こういうように考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/154
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155・平林剛
○平林委員 そこで私はこんな話を聞いたんですよ。海運界における経営者の自粛、心がまえの欠ける点について、この話を聞いたときに、私はびっくりした。昨年ですか、海運界の合併が進められまして、ある合併をした一方の会社の社長と副社長が辞任をすることになったわけですが、この二人の首脳に対して、役員の退職金、慰労金を二人合算して五千二百万円出している。これは決算書類でもって私は確かめたのでありますけれども、こういう状態です。内規を調べてみると、内規では、社長は大体四千六百万円くらいもらえるようになっているのだそうです。副社長のほうは三千万円くらい、合計すると、社長と副社長が、合併になって、辞任するだけで七千万円から八千万円の金が必要なんです。運輸省のほうもこれはあまりひどいじゃないかということで、内面指導をされて、先ほど申し上げたように五千二百万円、これだってひど過ぎるんですよ。私は今日海運業界あるいはその方面におきまして、毎期のように赤字を生じているということも承知しておりますし、また多額の負債を持っているということも知っております。そして国家としては、利子補給として今日まで約四億八千万円からのお金を国税から恩恵として与えているわけであります。その他の金融資金だって、政府資金だって相当なものがあります。そういうようなときに、この合併をした会社の首脳部が——それは長年の功労はあったかもしれませんけれども、これだけの退職金や慰労金をとるという考え方がけしからぬと思うんですよ。それでこれからも政府が海運政策につきまして力を入れて、これを振興する場合に、こんな量見の首脳部に金を幾らやっても、たいへんなことになるということを感ずるのです。政府がこれからの日本の状態を考えまして、海運の振興をするということを私は否定するわけではありませんが、一方の受け入れ態勢において、こういう状態がまだ残っているということは、やはり重要な関心を呼ばないわけにはいきません。私はそういう面において、特に運輸大臣にもこの点はお尋ねしたかったのですが、ひとつ大蔵大臣から所信を聞かせておいてもらいたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/155
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156・田中榮一
○田中国務大臣 政府が補助をするのでありますし、政府も共同してこれが再建に当たろうという考えでありますから、経営者もしっかりしていただきたいという考え方であります。しかしこういう事態に対して八千万円が二人で五千万円になったというのですが、これは商法上の問題であり非常にむずかしい問題があるわけであります。政府機関等においても、その間に受けた給与の六割というようなことでありますから、そういう例を引きますと五十万円で年六百万円、その十年で六千万円、二十年といえば一億二千万円、その六割といえば一人八千万円になるわけです。ですからこういう計算自体が——これは配当しておるものではないですから、非常に悪い時期に自分が退陣しなければならぬということですから、そう一ぺんに計算しないで、この再建が完了したら、その再建の土台となるところには多くの人の犠牲があるわけでありますから、そういう場合、出世払いというふうにしてもらうか、こういう問題は運輸省当局として十分検討してもらわなければならぬ問題だと思います。しかし、これは政府が、やめなければ金をやらぬということを言っているわけではないのですから、これは常識の問題、良識の問題であります。中には大きく減資をして株主に迷惑をかけておるという問題もありますので、これは一つの常識、良識の問題として片づけられなければならぬ問題であります。私はこういう問題で非常に困っておるわけでありますので、一体どうすれば解決できるのかと思って私もいろんなことを検討してみましたが、これはやはり戦後の一つの風潮でもあります。これからやはりこういう問題が起きてくる可能性がありますのは、戦後は資本蓄積をやって小さいものがだんだん大きくなった長い年月、歴史があります。ですからその会社自体に対しても、一つの家憲もありますし家風も出てきたし、それから資本に対しても、ある人が相当大きなウエートを持っておったわけですが、だんだん大衆資本を導入してきますと、どうもみんなが雇われ重役であるいうようなことで、赤字が出ても黒字が出ても、かまわずつとめたら退職料はもらうのだ、こういうことをやはり十分考えていかないと、こういう問題は根本的に解決できないわけであります。資本主義の立場に立って昔がいいということを私は言っているわけではない。これからはどうしても大衆資本を導入しなければなりませんが、やはり経営者の態度というものに対しては強く要請せられる時代だろう、このように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/156
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157・平林剛
○平林委員 私は今後国際収支の改善の面だけでなくて、日本の貿易の面を拡大する上において政府の海運振興策がとられるだろう、しかしその面において特に注意をしてもらいたいということをこの際申し上げておきたいと思うのであります。この点は特に御留意をいただきたいし、私自身も今後この点については厳格な態度をもって臨んでいきたいということを申し上げておきたいと思うのであります。
そこで次の問題に移りますが、これから政府が開放経済に移行するにあたりまして、あまり心配することなく楽な気持ちで金を借りよう、外資導入をはかろうという御両説を先ほど聞きましたが、この問題もしばしば議論してまいりましたけれども、外資を入れる場合に、こういう注意をしなければいかぬということを私どもが追及いたしますと、総理もまた大蔵大臣も、優秀な資本は歓迎するということを述べられるわけであります。そうすると優秀ならざる外資もあるんだなと私は思うのであります。優秀なる外資、優秀ならざる外資、こういうものはどういう基準で判定をなさるのでございましょうか。今後とうとうとして外資を導入するような事態になった場合に、一つの参考としてその基準というものを明らかにしてもらいたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/157
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158・田中榮一
○田中国務大臣 良質な外資というのは長期低利であります。また、あまりよくないのは短期高利ということになるわけであります。その上になお問題になりますのは、日本の企業を支配しようとか、日本の市場を独占しようとか、こういう日本の市場を撹乱するような要因を持つ外資を入れたくないというのは、これはどこの国でもやっておることでありまして、やはりせんじ詰めていえば、長期であって安ければ、これを優秀であり良質というわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/158
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159・平林剛
○平林委員 私はその点についての議論はあとに回しまして、いま大蔵大臣の言われましたように、これから外資が相当入ってくることを予想しなければならないと思うわけでありますが、その場合に、外国資本の支配を強く受けるような危険はないかという点は国民感情としても——あなたのようにはっきり長期低利は優秀だなんて割り切って考える人は別でありますが、国民の側としては、そういう点について、国民感情として不安を覚えることは事実です。長期低利だから優秀であって、それによって日本の産業が外国資本の支配を受けてもなお優秀だなんてのんきなことは言うておられない、私はそこに国民感情の許さざるものがあると思いますし、また日本の経済の将来を考えますと、やはりその点に一つの基準というものがなければならぬと思うのであります。
そこで通産省にお尋ねいたすのでありますけれども、現在日本の企業の中でその株式の半数以上を外国資本で持っておるような企業というものがございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/159
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160・新田庚一
○新田説明員 お答えいたします。
外資法で認可しました合弁会社は現在約二百件ございます。この中で五一%以上を占めておる会社が約二十七件ございまして、これは大半戦前からありました会社で、外資法ができてから増資とかローンなどを認可したというケースでございまして、貿易商社とかいろいろな連絡事務のための会社が多いようでございます。現在までのところ過半数を占めておる会社は比較的少のうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/160
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161・平林剛
○平林委員 過半数でなくとも、大体外国資本の入っておる会社はどのくらいございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/161
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162・新田庚一
○新田説明員 ただいま申し上げましたように、外資法で認可した会社は二百社でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/162
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163・平林剛
○平林委員 これは私、具体的に承知したいのですが、私、神奈川県なんですが、神奈川県にも日本ナショナル金銭登録機という会社がございまして、その持ち株は大体七〇%を占めておりますね。非常に注目してながめておるのでありますが、そういうように、日本の企業の中で大体どういう会社がどういうふうになっておるかということを、あまり小さいものは必要ございませんが、承知したいわけでございまして、発表して差しつかえないと思うのですが、きょうでなくともよろしゅうございますが、その具体的な資料を御提出いただきたいと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/163
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164・新田庚一
○新田説明員 ただいま詳細なリストを持っておりませんので、後刻お渡ししたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/164
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165・平林剛
○平林委員 大蔵大臣にもう一度お尋ねします。
先ほど、外資を入れる場合に、どれが良質でありどれがそうでないかということを聞きましたけれども、こういう考えはいかがなんでしょうか。今後の外資導入については、大企業の過当競争の手段として乱用しないようにする、それから国内のいろいろな企業の合併を通じて国内産業を支配したり、私的独占の傾向がないように配慮をする、こういうような基本的態度で外資を迎えるということは、一つの基準として考えられると思うのですけれども、その点について政府の考えを聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/165
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166・田中榮一
○田中国務大臣 あなたの考えているとおりのことを考えて、一つずつ審査をして厳重にやっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/166
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167・平林剛
○平林委員 ただ現行法を見ますと、日本経済の復興に悪影響を及ぼすものと認められる場合というようなことが書いてあるくらいのものだと私承知をしておるのですけれども、何か私が申し上げましたようなことを規定してあるのでしょうか。たとえば産業秩序を著しく乱すものと認められる場合はどうだとか、中小企業を不当に圧迫するものは考えるとか、あるいは企業の育成を阻害するものと認められる場合はどうだとかいうようなことを、何か政令か何かで規定をしておるのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/167
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168・田中榮一
○田中国務大臣 まああまり外国に言いたくないことでありますが、御質問がございますからお答えをすれば、あまりこまかく規定をすると、規定をした条文にひっかかるものだけしか規制ができないということになるわけでありますが、日本経済に影響があるものといえばあらゆる角度から検討できるように法律はうまくなっておるわけであります。ですから、外資委員会等で十分考えてやっておるのでありまして、どうもこれにこまかいいろいろなことを入れて縛るということよりも、外資委員会がうまくいっているかどうかという問題でありまして、やはりその運営に対してはいろんな内規、基準的なものをつくりながらやっておるということでありますから、法制上の整備はこまかくしないで何でもやれるということのほうが原則的にはいいというふうにいまの状態を解しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/168
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169・平林剛
○平林委員 ただ、私が指摘したような点については十分配慮をしておるというふうに理解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/169
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170・田中榮一
○田中国務大臣 そのとおりです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/170
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171・平林剛
○平林委員 そこでもう一つ別な角度からお伺いしておきたいと思うのでございますけれども、円ベースによる外資算入の状況についてはどうなっておるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/171
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172・渡邊誠
○渡邊(誠)政府委員 円ベースによります投資の現状を申し上げます。
円ベース会社につきましては、昨年の十一月に省令を公布いたしまして、報告を求めたわけでございます。一月末日で締め切りました結果を申し上げますと、既往の円ベース投資は、円ベース会社といたしまして二百八十九社ございます。それから円ベースで日本に支店を設立しておりますものが二百七十三社、それから円ベース株式投資者数が八百七十七名ございます。投資額で申し上げますと、非居住者による円ベース投資額は帳簿価格で一億四千万ドル程度と認められるのでございます。それから既往の円ベース投資によります果実の発生でございますが、現在の収益状況に大きな変化がないということを前提といたしまして、利益金は一千三百万ドル程度と見られるのでございます。なお、円ベースは過去におきまして果実の送金を認められておらなかったのでございまして、したがって、過去に蓄積されました利潤が四千万ドル程度あると認められるのでございます。この四千万ドルはすでに私どもは資本化しておるものと考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/172
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173・平林剛
○平林委員 いまお話しになった円ベースによる外資導入を許しておる会社、業種別に言うとどんなふうになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/173
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174・渡邊誠
○渡邊(誠)政府委員 業種別の円ベース会社の数を申し上げますと、製造業が百二十でございます。それから商事貿易が百九、サービス業が四十六、その他十四ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/174
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175・平林剛
○平林委員 この円ベースによる外資というのは、さっき大蔵大臣言われたどっちのほうの部類に属するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/175
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176・田中榮一
○田中国務大臣 本件は条約上認められたものでありまして、良質とか良質ならざるものとかいうものではなく、両国の協定によってやったものであって、日本経済のためにもマイナスはないということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/176
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177・平林剛
○平林委員 今後元本に基づきまして相当の利潤が発生をされる。今回の外資法の改正によりましてこの問題についてしっかりした処理方針というものをきめておく必要があると思うのですけれども、どういう態度で臨まれるか、これを明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/177
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178・渡邊誠
○渡邊(誠)政府委員 円ベースの投資につきましては、これを外資法のほうに移しまして、今後は円ベース会社というものの発生は考えられないのでございます。したがいまして、円ベースの会社については、過去の分をいかにして処理するかという問題だけが残っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/178
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179・平林剛
○平林委員 じゃ、この問題もう少しお尋ねしようと思いましたけれども、次の問題に移りましょう。
いよいよきょうは三月三十一日でございます。きょう現在におきまして、外貨準備高というものはどういうふうになったのかということを発表していただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/179
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180・田中榮一
○田中国務大臣 まだ現在の時間ではわかりませんが、十八億ドルをこしておることは事実であります。それにゴールド・トランシュ分を加えれば十九億九千万ドル、二十億近い——二十億かもしれません。大体二十億前後、こういうところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/180
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181・平林剛
○平林委員 内訳を御説明いただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/181
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182・田中榮一
○田中国務大臣 内訳はあまり発表しないことになっておることは御承知のとおりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/182
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183・平林剛
○平林委員 他の委員会においては説明しておるじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/183
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184・田中榮一
○田中国務大臣 それは、いまの時点において三月末の内訳を申せといっても申せるわけでもありません。私がいま申し上げられるのは、大体金が二億九千万ドル余、それから財務省証券が約七億ドル余、それから預金等が同じく七億ドル余、そのほかポンドの預金とかいろいろなものがあるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/184
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185・平林剛
○平林委員 私の承知しているところでは、諸外国の対外支払い準備というものは、きょう現在というわけではありませんけれども、最近の資料によりますと、大体アメリカで百六十八億ドル、西ドイツで七十四億ドル、フランスで四十八億ドル、イタリアで三十七億ドル、イギリスで三十二億ドル、スイスで二十七億ドル、カナダで二十六億ドル、日本はいまお話しになったとおりでございます。そうすると、これは、政府の考えというのはしばしば本会議その他で私聞いておりますから、答弁なんというのは大体わかっていますけれども、しかし先ほど来質疑をしてまいりましたように、なお国際収支の面におきましては私は相当の不安をはらんでおると思うのでございます。こういう点ではやはり少し心細いものがあるのではないかと思うのであります。そこで一体どの程度あれば私らの不安というものをなくすることができるのか。いまでも心配ないじゃないか、こう言われればそれまでですけれども、大体どのくらいの準備高があればいいというような考えを持っておられますか。私は、なぜこんなことを聞くかというと、政府にしっかりした目標というものがないのではないかと思うのであります。これにつきましては、いろいろな意見があることも事実です。たとえば日本の貿易の輸入高について何分の一にしろとか、あるいは何か一つの基準を立てまして、その割合をどのくらいにしろとか、いろいろな論があると思うのですけれども、どうも日本の政府にはそうしたものがない。そうして、ただ、心配することはない、こうだ、ああだという理屈だけ言っているだけでありまして、何かしっかりした基準とか目標というものがなくて、その場しのぎでやっている。その場しのぎでやっておって、そのつど理屈を考えて、ああだ、こうだ、こうやっているような感じがするのですけれども、大蔵大臣としてひとつわれわれが傾聴に値するような学説なり抱負というものをお持ちじゃないでしょうか、この点を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/185
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186・田中榮一
○田中国務大臣 これは、私が申し上げるよりも、総理大臣からも何回も申し上げましたし、私からも何回も申し上げたことでありまして、いまあなたがお喜びになるほどの御答弁ができないことをはなはだ遺憾といたします。あるに越したことはありません。が、しかし、私はその後いろいろなことを勉強しましたが、あり過ぎるといかぬという議論もあります。やはりほどほどでないといかぬ。こういうことは、あると思って浪費をしているうちにどうにもならなくなった、これは西ドイツ、フランス、イタリア、この問題は非常に大きな問題にいまなっておりまして、西ドイツはコストインフレの問題とまっこうから取り組んでおりますし、フランス、イタリアの例をとりましても、イタリア等は増税を行なわなければいかぬ、今度スタンドバイ取りきめを十億ドルもやらなければいかぬ、こういうことでありますから、こういう事態からいいますと、非常に努力をして外貨準備は非常によくなったけれども、その反動としてインフレが高進したり、労働生産力が非常に落ちるというような問題もあるようでありまして、やはりものにはほどほどということがよくわかってまいったわけであります。いま日本においては一体どのくらいあればいいかということは、いままで申し上げたように、なかなかむずかしい。経常収支がバランスしているということになれば、外貨の手持ちは一銭もなくなってやれるわけであります。だから、理論的に傾聴に値するようにという前提で幾らということはなかなかむずかしいことであります。でありますから、イタリアは貿易の何カ月分というと四カ月分くらい、フランスが六、七カ月、西ドイツは七カ月くらい、イギリスが三カ月、日本はいま二十億ドルということになりますと、どうなりますか、五億ドルで、四カ月であります。でありますから、まあまあというところでありまして、御心配になるほどのことはない。まあ適正というか、もう少しほしいなというような状態だ、こういうところだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/186
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187・平林剛
○平林委員 まあほどほどがいいということは、処生訓としてはわかりますけれども、日本の対外準備というものは表にあらわれた十九億とか二十億ドルといいましても、ユーロダラーその他のことを考えますと、まだまだ心細いということは事実です。私は、ある意味におきまして外貨準備高の高さというものはその国の力というものを示す、現段階においてはそういうことが言えると思うのでありまして、きょうも大蔵大臣から傾聴に値するような御意見を聞けなかったことはきわめて残念であります。しかし、たいへん時間もおそくなりましたから、私の質問もほどほどにいたしまして、この辺で終わっておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/187
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188・山中貞則
○山中委員長 春日一幸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/188
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189・春日一幸
○春日委員 私は、時間も迫っておりますので、問題を一点に集約して大臣の所見を伺っておきたいと思うのであります。
このことは、われわれのかねての持論でありまする中小企業産業の擁護の立場からの質問でございます。御承知のとおりこのOECDへの加盟、八条国への移行、漸次完全開放経済へと向かっていくのでありましょうが、こういうような場合、外国の資本、技術がこの国土に上陸をいたしまする場合に、何といってもわが国の産業が相当の圧迫を受けることは火を見るよりも明らかであります。わけて現在の中小企業の後進性から判断をいたしまして、特に中小企業が受けるであろうところの圧迫というものは相当甚大なものがあろうとおもんぱかられるのでございますが、政府はこれに対して何らかの対応策を具体的に講ずるところがあるのであるか、問題はここでございます。どういうよな対応策を講じられようとしておるのであるか、それを具体的に御明示を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/189
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190・田中榮一
○田中国務大臣 外資導入につきまして、日本の産業特に中小企業に影響があってはならないということでありますので、今後につきましても入り口でスクリーンをするという制度をとっておりますから、中小企業等に対しては影響がないように十分配慮して入り口でスクリーンする、入れるときにすでにこまかく内容を検討して、中小企業等に圧迫にならないようにスクリーン制度をとっておりますので、心配ない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/190
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191・春日一幸
○春日委員 ただいま平林君の御質問に答えられて、そういう問題はいろいろなやりようになっておると言われておられます。しかしながら、日米通商条約の規定もございまするし、またOECDの宣言もありまするし、それぞれの国際制約のもとにおいて、入り口でやると言ったって、やり得る限界があるでありましょうし、また法的根拠というものがあると思うのでございます。なければ外貨に関する法律の第八条一項、二項の規定は必要でございません。その一項、二項において、こういうような場合においては積極的に許可がなし得る、こういうような場合には消極的にこの問題を取り扱える、これは一項、二項に分けて区分明記をいたしてあるのでございます。したがいまして、ここの中に何らかの法律の根拠がなくんば入り口で制限をするといったってできっこございません。あなたが何かやると言われたけれども、そういうことはまるでサウジアラビアのサウド王のようなことを言っておられるけれども、そんなばかなことがなし得るはずがございません。法律の根拠なくんばなし得るはずがございません。いかなる法的根拠を基にして中小企業というものをその影響から守るというこのことがなし得るのであるか、この点をひとつ、国民が、わけて中小企業者が納得できまするように御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/191
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192・田中榮一
○田中国務大臣 自由化自由化といいますけれども、資本の自由化ということはないのであります。でありますから、資本に対してはいままでの議論は一体日本に資本が入ってくるかという議論だけが多かったわけでございますが、少なくともそのような状態で外資がほしいというような考えのときであってさえも、大蔵省がものわかりが悪いというくらい非常に手をきびしく内容を検査をしておったわけであります。個別に検査して、絶対間違いないというものでなければ入れないという原則を貫いてきたわけであります。でありますから、これは大蔵省がオールマイティの権力を持っておるというわけではなく、資本の自由化ということは現在の世界の状態においてもあり得ないのだということを原則にしておりますので、もちろん中小企業に対しては影響があってはならないということで、個別に非常にこまかくスクリーンをしておりますから、あなたの言われるように、法制上こういうものはいかぬと——先ほどの質問と同じでありますが、そういう意味で心配はないというふうに御理解いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/192
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193・春日一幸
○春日委員 それでは具体的にひとつ質問をしたいと思うのでありますが、かつて本委員会は、シンガーミシンと国内某ミシン会社との提携によるところの外資の導入、技術の導入、こういう問題についてまさに許可されんといたしまして、このとき全国のミシン関係労働者とその企業家の猛烈なる国民運動の結果、本委員会の激しい論述によってこれを阻止したことがございました。あるいはまた当時フレキシボードが——アメリカのジョンス・マンビルという大会社の製品でございますが、これが国内の某セメント会社との技術提携によって国土に上陸しようとした。そのとき、おそらく日本のセメント産業に対して大衝撃を与えるであろうという立場から、これまたセメント関係労働者とセメント企業の総反撃のもとに、また本委員会が民族産業擁護の立場から激しい論議を行なって阻止したことがございます。その当時それは許可する、許可しないということのすれすれの線でございました。許可しようと思えばできる、まさにしようとしておった。けれどもそういうような国民総反撃のもとにおいてこれはかろうじて食いとめ得たのでございますが、今後OECDへの加盟それから八条国への移行、ここにOECDの了解、覚え書きがございますが、その中においては、直接投資の条項においてこれこれの場合でなければ却下することはできないと明記いたしておるのでございます。直接投資の場合それから技術提携の場合、いろいろといままでの鎖国経済のときに比べてさらに困難の度を加えてまいったものと見なければ相ならぬのでありますが、いままでのあのシンガーミシンの場合やフレキシボードの場合、かつてOECDに加盟せざる、八条国に移行せざる場合はこれを阻止し得たのであるが、今度開放体制下において同様の申請があった場合どういう結果になるのであるか、私はこの際ひとつ通産省のほうから御答弁を願ってみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/193
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194・田中榮一
○田中(榮)政府委員 お答えいたします。
今後OECDの加盟等によりまして相当外資によるところの直接投資あるいはまた技術導入等によりまして、国内における事業等が行なわれるものと考えておりますが、従来におきましても、たとえば豊年リーバ等の問題におきましても主務省である農林省、通産省と十分に協議をいたしまして、かりに外資導入による事業を興しましても国内の中小企業者との十分なる連携、提携を保持させまして、相互に協力するというような条件によって事業開始を許可しておるというような状況でございまして、今後ケース・バイ・ケースによりまして、事前におきまして十分慎重に考慮いたしまして、こうした中小企業に対する重圧が加わらないような方法で努力いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/194
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195・春日一幸
○春日委員 言われるところはよくわかるのでございます。ただ私が何っておりますのは、いままで不許可になし得た事案も今後OECDに加盟し八条国に移行することによりまして、それを不許可にするということがだんだんと困難を加えてくるのではないか。これは大幅に許可せなければならないような情勢下に置きかえられるのではないか、このことは伺っておるのでありますが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/195
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196・田中榮一
○田中国務大臣 八条国に移行いたしましても資本取引の自由を要求いたしておりませんし、OECDの場合でも必要なものはみな留保しておるということでございますので、いままでよりも自由になるということはありません。明らかにいたしておきます。
それから、この具体的な取り扱いにつきましては関係者が全部集まりまして非常に慎重に一件一件審査をしておるのでありますし、国会で御発言になったりおしかりを受けるようなものに対しては当然そこで審議をしておるわけであります。それよりもひとつ法律でこまかく書いたり何かつくったらどうかというのですが、資本取引は確かに自由化はされておらなものであっても、こういうものでなければ入れませんという法律をつくることは、世界の各国でもやっていないことを日本がそれまでのことをやって一体いいのか悪いのかという問題もあるわけでありますから、要は実効をあげて、中小企業が迷惑になるようなものを入れないということのほうが合理的だという考えでありまして、もし不必要なものでも入れようものならすぐ春日さんにこうして指摘をされるものですから、そういうものに対してはやはりお互いに事実を十分各省で検討して、許可するものは許可するということでありますので、現行の制度のままで足りる、私はこのように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/196
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197・春日一幸
○春日委員 大臣はそういうことを言われておりますけれども、法律の中に明記してあるのですよ。たとえび外資法第八条の第二項では、日本の復興を著しく阻害するおそれあるような場合は外資の導入を許可しない、そういうような否定条項があるのです。それからOECDの中の直接投資の条項の中にも、特別に有害な影響を与えるおそれがある例外的な場合のほかはこれは許可しなければならないと書いてあるのです。いまの御答弁によると、そこに幾ら書いてあってもへっちゃらだ、こういうことなのですか。こういうものは書いてあったところで、大蔵大臣がこれはいかぬと思ったら私はやめるんだから心配するな、こういうことなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/197
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198・田中榮一
○田中国務大臣 OECDのいまの御指摘の条文に対してはまだ確定的な解釈ができておらぬということで、OECD加盟を前提としたコンサルテーションがあったわけでありますが、この条項に対してどうか、IMFで制限をしておらないこの種の問題、特に日本に対しては、中小企業という特殊性があるのでこういう問題に対しスクリーンをするという原則でどうなのか、それでよろしいという解釈が示されておりまして、私たちはそのように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/198
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199・春日一幸
○春日委員 解釈が出されておらぬというたところで法律条約案ですね。(田中国務大臣「OECDの問題を言ったから……」と呼ぶ)OECDの問題ですけれども、それは国会に提出されておる案件の一つでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/199
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200・田中榮一
○田中国務大臣 春日さんからいま、OECD等に加盟をすると自由化を迫られるのではないかという趣旨の御質問がございましたので、OECDの規約には、あなたが指摘をされるような条項はございますけれども、この条文の解釈は確定しておりませんので、日本の立場で資本の導入に対してはスクリーンをするということで、一体OECDの規約はいいのか、こういうことを言いましたら、それでよろしゅうございますということでありますから、OECD加温によって——IMFではもちろん制約はないのでありますし、OECD加温によって資本の流入に対して規制ができなくなるなどということは絶対ありません、こう申し上げているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/200
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201・春日一幸
○春日委員 そういうふうに思われるかもしれぬが、少なくとも議案書を国会に出しておいて、この議案書について政府はまだその解釈について定説を打ち立てていない。(田中国務大臣「OECDの規約です。」と呼ぶ)OECDの規約といったところで、日本国政府との間の了解、覚え書きというものですね。これはやはりこういう文言が示されておりまする以上、これに対する一個の解釈の定説なくして、どうしてこんな覚え書きを国の名において署名をしたのですか。署名をしているのですよ、パリにおいて。了解も定説もない、それで判を押してきたというのは、いかにもサウド王みたいじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/201
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202・田中榮一
○田中国務大臣 どうも何かどこかに考え方の行き違いがあるようでありますから、ちょっとすなおに考えていただくと、あなたの御質問は、資本の自由化に対しては、いままでは十分審査ができたという事実に対して、今度八条国に移行するとどうだ、八条国は資本に対しては自由化を規定しておりませんから、現行どおりでよろしゅうございます。ではOECDに加盟すると、OECDの規約の中にはいろいろなことが書いてあるがどうか、こういうことになるわけです。OECDの規約の中にある条文の解釈は定説がないわけであります。ないわけでありますから、その条文に対して、日本がこういう状態で八条国に移行しますけれども、資本に対しては相当規制をいたしますよ。これに対して、一体規約は抵触をするのですかという日本政府側の意見に対して、それは日本政府側の考えでよろしゅうございますとこういうことでありますから、OECDに加盟することによって資本に対して自由化を迫られることはない、現状のとおりであります、こう申し上げておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/202
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203・春日一幸
○春日委員 それでは一歩踏み込んでお伺いをいたしますが、日本政府はかくのごとくに解釈をするから、それでよいかと言ったら、向こうがよいと言った、こういうような経過の上に第九項目があるのです。第三部の第九項目の中には、「対内投資に関しては、特に次の要素に対して考慮を払うであろう。」とある。そこの中の(a)項に「産業の発展の調整。特に中小企業に配意する。」とあるのです。だからこのことはあからさまにいうならば、中小企業に著しく圧迫を加えるおそれのあるような対内投資に対しては、前八段においてこれは申請を許可しなければならぬ筋合いではあるけれども、特別の考慮を払う——特別の考慮を払うということは、言うなれば消極的であり、言うなれば否定的であるということでしょう。だから、その第八項の定説があいまいもことしておるところを、第九項において明確に出しておるわけです。すなわち産業の発展の調整を阻害する、特に中小企業に著しく圧迫を加えるおそれあるような場合においては、これは直接対内投資について許可しないことがあり得る、こういうように書いてあるでしょう。OECDにそういうふうに書いてあったら、外資法においてもそういうものを受けて、法的根拠を確保する必要がないかどうか、こういうことを申し上げておる。ということは、やはりこの第八条の中の第二項にある国内の産業の復興を妨げるというような文章は、戦後のあれでございますけれども、すでに戦後ではない。復興というものはすでになされた。復興という問題は程度問題ですよ。戦前の生産レベルあるいは経済スケールというものに追いついて、はるかに追い越して、いま大いなる高度成長を遂げておるのが日本の現状なんですね。したがって、言うなれば、日本の産業の復興を著しく阻害するおそれがあるというような条項は、もはや有名無実だと思ってもいいと思うのです。そう思いませんか。思うでしょう。だとすれば、OECDの中にこういう宣言がなされておることは重視すべきである。かくのごとき宣言をOECD加盟国が容認しておるということは、すなわち、日本に対して、中小企業を著しく圧迫するおそれのあるような技術並びに資本については、やはりOECDに加盟し、八条国に移行した後といえども、日本国政府がこれを却下することができるということが、国際的にここに容認されておる実証であると思う。私は、こういうような実績を活用して、この際、外資法を直すときに、八条の中にもう一項設けて、しこうして、その外資の申請について許可を与えなければならない場合、これこれと書いてありますね、それからいけない場合、法律に違反をした場合とかいろいろありますね。そこの中に、中小企業に対して著しく圧迫を与えるおそれある場合は許可しなくてもいいという法律の根拠を明文化して、これを国際的に明示する、そしてそういう申請があったときに、中小企業に圧迫を与えるからこれはだめです、国内法によってこれは禁止されておるから許可できませんと事務的に却下できます。それから国際的に文句を言ったら、これはOECDのジュネーブ宣言の中でもうみんな認めておるのだから、そんなことに文句を言うのはおかしいじゃないかと言って、ぽんとはねられますよ。あなたの腕力ならなおさら唯々諾々たるものだと思います。だから私はこういう民族産業を擁護する、特に後進性のある中小企業産業を開放経済に対処して擁護するだけのプレパレーションというものが必要だと思うが、何と思われるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/203
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204・田中榮一
○田中国務大臣 確かに了解覚書のうちの九項に書いてございますから、当然OECDに加盟しても、中小企業等に影響のある場合は申請を拒否するということでございます。それも外資法の中に入れろということでございますが、これは入れなくても、現行法でもって規制をしておるわけでございます。IMFでも資本の自由化を要求しておらぬのでありますから、資本の自由化を要求するに近いOECDの覚え書きにさえかくのごときものがあるのでありますから、入れろといって入れないこともありませんが、入れなくても現行法で十分できる。しかも入れて益があるのかないのか、あなたは覚え書き第九項、外資法の第何条によって却下する、こういうために使うには非常に明文になりますけれども、しかしそうでなくても、前向きの体制を世界に宣言をしておるときでありますから、事実は日本の国内に悪影響のあるものは絶対に許可しないという原則が現行法でできるのに、麗々しくまた外資法の中にかくかくしかじかの条件のものに対しては申請を受理しないことあるべしとか、申請を却下するとか、却下することができるとかいう明文を置く必要が必ずしもあるかどうか、それが日本のためになるかならないか、なかなかむずかしい問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/204
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205・春日一幸
○春日委員 私はくどくど申し上げるわけでもなく、また唐突にいまここで思いつきで申し上げておるわけではないのでございます。この問題は政策論議を深く行なったその成果として、外資法の中に民族産業擁護、わけて中小企業を擁護することのために、このような法律の条文の設定が必要であるということをかねがね主張して、すでにそのような改正法律案を、これは先国会において参議院に出したかと思うが、とにかく議員立法の形で提案し、そのような政策のあり方を天下の世論に問うておるのです。だから私は、国際経済協力機構と日本国政府との間にそのような制限を加えることが了解され、しかもそれが署名されたというこの事実は、日本国においてこれを重視せなければならならない。このチャンスを取り上げて、その覚え書き了解事項を受けて立って、そして外資に関する法律の中の第八条の中に一カ条を設定するということは、これは民族産業擁護のために、得るところまことにはかり知れないものがあると思う。いままではいろいろと日米通商航海条約の制限があって、なかなか拒否することができなかった。そしてまた拒否し得るところの国内的な法律の設定というものがなかった、法律の根拠がなかった。けれどもこの際八条国に移行することを契機として、しかも国際経済協力機構の中のサポーテーション、これを一個のよりどころとして、そのような法律をつくると、こういう申請があった、これは中小企業に圧迫を加える、外資に関する法律第八条第何項によってこれは却下と、事務的にできますよ。いつも大臣が政治的な判断の上に立って、やっさもっさといろいろやった結果、その断を下さなければならぬというような煩瑣を避けることができる。私はもう時間でありますから、いまこの法律があがるというときに、この問題を言うたところで、ここでいま最終的決定はなし得ないと思うが、願わくは通産省も大蔵省も外務省も、十分ひとつ合議を願って、一九六三年七月二十六日パリで署名されたこの国際経済協力機構に了解を取りつけた成果の上に立って、外資法をその点において改正されることを強く政府に要望いたしまして、私の質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/205
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206・山中貞則
○山中委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/206
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207・山中貞則
○山中委員長 これより順次、討論、採決を行ないます。
外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案について討論に入ります。
通告がありますので順次これを許します。堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/207
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208・堀昌雄
○堀委員 ただいま議題となりました外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、日本社会党を代表して反対の討論をいたします。
いよいよ明日から、IMF八条国に移行をするわけでありますけれども、実はこのIMF八条国移行につきまして、日本ほど不十分な条件でIMF八条国に移行する国はこれまで例がございません。現在国際流動性の問題につきましては、十八回IMF総会におきましてあるいはパリ・クラブにおきましていろいろと検討が進められております。この検討のあり方は、一つにはIMFの流通性をさらに高めるためにIMFのワクの中で問題を処理しようという考え方とあるいはパリ・クラブの中におきましては、これらの金準備の平準化等を伴うところのいろいろな角度から検討が進められておりますけれども、いまの金準備の問題を一つ取り上げてみましても、IMFの統計によりますと、一九六三年第二・四半期において、アメリカはその金外貨準備の九二・七六%を金で持っておりますし、イギリスは七五・九七%、西ドイツが五一・九八%、フランスが五九・九六%、イタリアは六五・一七%、オランダは七二・三%というように、いずれも十分なる金準備を持っておるのでありますけれども、わが国は異常な低さでありますところのわずか一三・八八%しか金準備がないわけでございます。ところが現在のこの国際流動性の問題というのは、実は次第にキー・カレンシーでありますところのアメリカのドルはだんだん減ってきておるわけでございまして、最近においてはついに百五十億ドルに近くなっておることは、アメリカの発表しておるところであります。そうでありますから、フランスを初めとするところのパリ・クラブの欧州側のメンバーは、少なくとも今後の状態についてあまりドルの権威を認めようとは実はしていないにもかかわらず、日本の場合には、全的にドルを信頼する形においてアメリカに協力をしながら、IMFの八条国に移行するということであります。なるほど外貨準備はゴールド・トランシュを含めますと、この期末におきましては二十億ドルに近くなると思うのでありますけれども、その中身を調べてみますならば、一番大きな問題になっておりますところの資本収支じりの中で二月末までには大体三億一千六百万ドルの取り入れ超ということになっておるようでありますが、この三月の間に五千万ドルものユーロダラーの流入があって、これがおよそ三億六千六百万ドル、長期の資本収支じりにつきましては二月末までが四億三千五百万ドルでありましたけれども、この点につきましては五千万ドル程度のインパクト・ローンがありましたために、これが四億八千五百万ドル、合計八億五千百万ドルということで経常収支の赤字を償うというような形になっておるわけでありまして、そのことによって起きた二十億ドルの中身の中には、きわめて不安定な三億六千六百万ドルという短期の資金が含まれておるわけでありまして、これらを考えてみますならば、諸外国のIMF移行の時期に比べまして、きわめて貧弱な状態で移行しなければならぬという形になっておるわけであります。特に、最近のユーロダラーの中身を調べてまいりますならば、一般的に一カ月未満のものは五%、一カ月もので二〇%、三カ月もので四〇%、六カ月もので三〇%、一年以上で五%というのがこれまでの一般的な例でありますけれども、最近におきましては一カ月ものまでで四〇%をこえるというような状態で、ユーロダラーの中身もきわめて不安定なホットマネーで満たされておることは、実に、わが国のこれらの外貨準備の中身というものがいかに惰弱なものであるかということをあらわしておると思うのであります。こういうような角度で、われわれの今後の見通しということは、来年度の政府の見通しは、経常収支の五億五千万ドルの赤字を資本収支四億ドルで埋めようと言っておりますけれども、御承知のように昨年のケネディ・ショックといわれる利子平衡税の問題で出てまいりました背景を考えてみますならば、一九六一年に日本のアメリカにおきますところの証券の取得は六千万ドルでありました。一九六二年にはこれが一億百万ドルになり、一九六三年の第一・四半期は四千二百万ドル、第二・四半期は六千六百万ドルと、こういう異常な伸び方に対して、アメリカが利子平衡税を採用したわけであります。ところが、われわれがここで考えてみなければならないのは、実は日本のこれらのアメリカにおける外貨の取得のあり方に比べて、カナダは一九六〇年には二億二千七百万ドル、一九六一年には二億三千七百万ドル、一九六二年には四億五千七百万ドルと、日本に比べて常に四倍近いところのアメリカのドルを獲得しておりながら、利子平衡税ではカナダは除外をされて、そのしわは日本だけに寄っておるというような事実が反面にあるわけであります。さらに、本年の二月十三日のジロン財務長官の新聞記者発表によりますれば、アメリカにおける一九六二年の銀行の借款は四億ドルでありましたけれども、これが一九六三年には十二億八千万ドルに増加をしておる。その主たる原因は日本の借り入れによるものであるということを明らかにいたしておるわけであります。このようにアメリカにおきましても締め出され、さらに欧州におきましても、現実にはいま日本の起債その他は欧州に向いておりますけれども、これらについても、時間がありませんから省略をいたしますけれども、欧州における起債市場というものも決して日本の楽観を許すようなものではありません。
要するに、こう考えてみますと、日本の経常収支の赤字というものを資本収支の黒字で埋めるにはもうおのずから限度がきておるわけでありまして、このような非常に困難な時期にIMF八条国に移行をして、そうして為替制限その他ができないような条件になるということは、まさにまる裸で敵のやりぶすまの中に飛び込むにひとしいわけでありまして、このことが日本のいろいろな弱小企業を含めての中小企業一般に与えます影響というものは、まことに重大なものがあるとわれわれは考えざるを得ないのであります。こう考えてまいりますと、これらの不十分な措置の上に現在この法律の改正をいたしましたところで、本質的な危機を回避することはできないのでありまして、そのような意味におきましては、さらに十分なる検討が必要であったのではないかと思うのでありますけれども、まことに時宜を得ない措置であると考えざるを得ないのであります。
以上が私どもの反対討論の趣旨でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/208
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209・山中貞則
○山中委員長 竹本孫一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/209
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210・竹本孫一
○竹本委員 ただいま議題となりました外国為替及び外国貿易管理法及び外資に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、私は、民主社会党を代表して賛成の討論をいたしたいと思います。(拍手)
開放経済への移行は、好むと好まざるとにかかわらず、世界経済の大勢でありまして、わが国も、いわゆる中進国は中進国なりに、この数年来、世界各国の強い自由化要請を受けて、為替、貿易の自由化に努力を続けてまいりました。その結果、昨年の八月末には、貿易の自由化率は九二%となったわけであります。われわれが、この自由化に関連いたしまして最も大きな関心を持っております点は、第一に、わが国が西欧各国に見られない独自の経済構造を持っておることであります。第二には、その現実の上に立って、十二分の準備をすることなくして門戸を開放して、あらしの前に立とうとしておることであります。すなわち大企業と中小企業、また工業と農業との間の格差が日本でははなはだしい。この産業の二重構造のもとにおいて、国際競争力の脆弱性がはなはだ大きい、産業の自由化によって受ける影響がまことに大きい、この点であります。
幸いにも、今日までのところ自由化の直接的な影響はそれほど深刻なる事態を招来するに至らず、とにもかくにもIMF八条国移行という歴史的時期を迎えるに至ったのであります。
今回の改正法案は、この新しい事態に対応して、外為法においては主として外貨予算制度を廃止しようとするものであり、外資法においては従来の複雑なる外資導入規定を簡素合理化して、外資法のみによる規制に改めようとするものであります。
外貨予算制度は、その発足当時におきましては、確かに名実ともに国際収支上の理由からする支払い制限の一つの制度であったことは明らかでありますが、最近におきましては、同制度の運用の実際を見ますと、きわめて弾力化されており、一種の支払い見積もりの性格を帯びていたのであります。
また外資法の改正は、これまで外為法と外資法の二本立てで規制をし、さらに多数の政令で規制されておりました制度を簡素化するものであると理解いたします。ただこの際、OECDにおいても認められておる条項について、日本の中小企業のために外資法の中に特別規定を設けることを忘れている点は、われわれとしてはなはだ遺憾に存ずるところであります。
要するに、外資導入には、国際収支のポジションを改善し、国内資金の不足を充実するというプラスの面があるとともに、国内の景気調整のための金融引き締め政策の効果を減殺したり、貿易外収支の悪化の原因をつくったり、また場合によりましては日本の産業や市場の支配をねらって日本の経済混乱を招来したり、特にまた中小企業に大打撃を与える危険性を持っておる等、幾多マイナスの面のあることを否定できません。これらの点を十分勘案して、長期的、総合的観点に立っての外資導入の基本政策をつくること並びに国内総合経済政策を確立することが、現在の時点において非常に必要でありまして、われわれはこの点に目を向けて、政府今後の行政の運用を見守りたいと思うのであります。
私は、真に今日重大な問題になるべきものは、ただいま議題になっておりますこれらの法案ではなくして、実に国内の財政金融経済政策そのものであろうと思います。これこそが今後のわが国の国際経済における地位と役割を決定的に動かすものであることを強く指摘して、政府の注意を喚起し、私の本案に対する討論を終わります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/210
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211・山中貞則
○山中委員長 これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。
本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/211
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212・山中貞則
○山中委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。
次に、印紙税法の一部を改正する法律案につきましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。
おはかりいたします。
本案を原案のとおり可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/212
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213・山中貞則
○山中委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。
ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/213
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214・山中貞則
○山中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
〔報告書は附録に掲載〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/214
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215・山中貞則
○山中委員長 次会は、お疲れでもございますので、明四月一日午前十一時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後九時四十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X02819640331/215
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