1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十九年四月二十四日(金曜日)
午前十時四十六分開議
出席委員
委員長 山中 貞則君
理事 金子 一平君 理事 原田 憲君
理事 藤井 勝志君 理事 坊 秀男君
理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君
理事 堀 昌雄君 理事 武藤 山治君
天野 公義君 岩動 道行君
大泉 寛三君 押谷 富三君
木村 剛輔君 木村武千代君
小山 省二君 島村 一郎君
砂田 重民君 田澤 吉郎君
谷川 和穗君 濱田 幸雄君
福田 繁芳君 藤枝 泉介君
渡辺美智雄君 小松 幹君
佐藤觀次郎君 田中 武夫君
只松 祐治君 日野 吉夫君
平林 剛君 春日 一幸君
竹本 孫一君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 田中 角榮君
通商産業大臣 福田 一君
国 務 大 臣 宮澤 喜一君
出席政府委員
大蔵政務次官 纐纈 彌三君
大蔵事務官
(主計局次長) 澄田 智君
大蔵事務官
(理財局長) 吉岡 英一君
大蔵事務官
(管財局長) 江守堅太郎君
大蔵事務官
(為替局長) 渡邊 誠君
委員外の出席者
総理府事務官
(経済企画庁調
整局調整課長) 長橋 尚君
通商産業事務官
(企業局企業第
一課長) 本田 早苗君
専 門 員 拔井 光三君
—————————————
四月二十二日
保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一一三号)(参議院送付)
自家用自動車の一時輸入に関する通関条約の実
施に伴う関税法等の特例に関する法律案(内閣
提出第一四〇号)(参議院送付)
同月二十三日
砂糖消費税及び関税の減免等に関する請願(池
田清志君紹介)(第三〇九一号)
元満州国政府等職員期間のある非更新共済組合
員の在職期間通算に関する請願外三件(愛知揆
一君紹介)(第三一二七号)
同外二件(保科善四郎君紹介)(第三一二八
号)
税制改革に関する請願(板川正吾君紹介)(第
三一二九号)
税務職員の待遇改善に関する請願(只松祐治君
紹介)(第三一三〇号)
減税と税制民主化等に関する請願(堀昌雄君紹
介)(第三二四一号)
戦傷病者の国税等減免に関する請願(松澤雄藏
君紹介)(第三二七二号)
同(赤澤正道君紹介)(第三三二〇号)
同(大坪保雄君紹介)(第三三二一号)
公衆浴場業に対する所得税、法人税及び相続税
減免に関する請願(鯨岡兵輔君紹介)(第三二
八二号)
同(四宮久吉君紹介)(第三三三三号)
同(天野公義君紹介)(第三三七〇号)
は本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
国民金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣
提出第四〇号)
国家公務員共済組合法の長期給付に関する施行
法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一二
四号)
国有財産法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一二五号)
国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律
の一部を改正する法律案(内閣提出第一五〇
号)
国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律
案(安宅常彦君外九名提出、衆法第五号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/0
-
001・山中貞則
○山中委員長 これより会議を開きます。
国民金融公庫法の一部を改正する法律案、国家公務員共済組合法の長期給付に関する施行法等の一部を改正する法律案、国有財産法の一部を改正する法律案、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案及び安宅常彦君外九名提出の国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
質疑の通告がありますのでこれを許します。有馬輝武君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/1
-
002・有馬輝武
○有馬委員 私は、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に関連いたしまして、開放経済下の日本経済のあり方についてどのような視点から現在の状況を見ていくかという問題につきまして、経済企画庁長官並びに通産大臣から二、三の点について御見解を伺いたいと存じます。
つきましては、昨日の日本経済新聞に企画庁長官が日本経済研究センター開設を記念されて、二十二日大阪で、開放経済と日本経済の前途と題されて、国際収支の改善の問題、消費者物価の値上がりの問題等に触れられて演説をされておられるのでありますが、新聞で報じられた限りにおきましては、現在の問題点を指摘されたにとどまっておるように感じられるのであります。もちろんこの問題点に対しまして、それなりの政策を用意され、この御発言があったものと私は理解いたしておりますので、そういった視点から二、三の問題についてお伺いをしたいと思うのであります。
ここで報じられておりますことは、いまも申し上げましたように、問題点だけで、たとえばケネディ・ラウンドをめぐります関税引き下げ交渉の問題なりあるいは国際分業の問題等々があげられておりますが、これらの問題について政府はこのような施策を用意しておるのだという点についてはっきりいたしませんので、そういった観点からお伺いをいたしたいと思います。
第一の点は、いままで池田内閣で進めてこられましたところの高度成長政策というものが、一応の限界に近ずきつつあるのではないか、そういった立場から新しい環境のもとでの発展を考える時期に到達したのではないかというような一つの考え方があるわけであります。こういう点について、二十二日の御発言のこれらの問題を取り上げられた背景について、企画庁長官の考え方をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/2
-
003・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 非常に広範なお尋ねでございますので、適当な部分から最初にお答えをいたしまして、なおお尋ねの重点に従いまして、次々お答え々申し上げたいと思います。
開放経済体制に入りましたということは、やはり一つは、通貨の価値維持を従来以上に大切に考えなければならないということであろうと思います。また、外貨という面においては、健全な外貨保有の姿がなければならないというふうに考えます。そこから考えてまいりますと、現在の貿易及び貿易外の収支、あるいは資本取引等も含めまして、やはりできるだけ輸出を振興することによって、貿易外収支がしばらくの間赤字になることは避けられないわけでございますから、そこまでをカバーするような気持ちで輸出入の差額の黒字を出していく必要がある、こういうことが一点あると思うわけであります。具体的に輸出をいかにして高めていくかということは、国内及び対外、いろいろな施策が必要であるというふうに考えておりますが、結論としてはそのことが大切である。それから、これと高度成長政策との関係で申しますならば、大企業を中心としたところの設備投資というものは、一部にまだやり足りない点がございますけれども、かなり進行をした、設備の更新というものが相当大幅になされた。国際競争力を、したがってかなりの程度に持つことができるようになったと考えますけれども、他方で中小企業あるいは農業というところの体質改善は非常におくれておりますわけであります。したがって、今後の経済政策の運営としては、いたずらに成長の高きを願うよりは、むしろそのような国の内部にあるところの体質の改善ということにより力をそそぐべきではないか。また、公共投資等の面においてもおくれがございます。そういったような考え方、それによって国の経済全体の生産性をむらなく上げていくような、そういう施策が必要ではないか。また、そのことが、同時に日本経済全体としての国際競争力、輸出を増すことになる。そういうような考え方、これが一部でございますけれども、背景でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/3
-
004・有馬輝武
○有馬委員 いまお述べになりました点に関連いたしまして、まず最初にお伺いいたしたいと存じますことは、少なくとも、高度経済成長下におきまして、日本経済の構造が変わってきたことは事実でありますが、その構造の変化自体に、私があとでお尋ねいたしますところの中小企業なり、あるいは農業なりの問題はありますが、こういった低生産性部門だけに限らないで、いわば日の当たる部門、こういうところにも、開放経済下におきまして、幾多の問題点を残しておるのではないか、私はこう思います。この構造変化が、ただ単に数量的な拡大に限らないで、質的な変化を遂げてきた。数量的な面とこの質的な変化の両面からとらえていかなければならないと思うのであります。いずれにいたしましても、その構造の変化が、いままで温室経済の中にあっての成長であった。為替管理なり貿易管理の中で進められてまいりましたので、いまも企画庁長官が述べられましたところの国際競争力をつけておるかどうか。この点は、いま申し上げました日の当たる分野においても決して対応できるような状況にはなっていないじゃないか、私はこのように見るのでありますが、この点について企画庁長官からお答えをいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/4
-
005・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 ただいま御指摘の点に、私は概して異存がございません。私もそう考えます。企業の財務構成が非常にいびつな構成になっておりますし、また、一般的に金利水準が非常に高いといったようなこと、これらのことは、物的な意味での設備の更新がなされておりますにもかかわらず、経営体としては、御指摘のことばを拝借すれば、それらのいわゆる日の当るところにいる企業そのものが、決して強い財務的な基礎に立っておるとは申せない。これは私は、御指摘のとおりだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/5
-
006・有馬輝武
○有馬委員 まあいわばいわゆる大企業でさえもそういった面を持っておるわけでありますが、それに対して、具体的には競争力をつけるためにどのような手だてを用意されようとしているのか、この点をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/6
-
007・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 これはかなり時間をかけなければならない問題であると思いますが、やはり企業がこれほど大きく外部資本にたよっておる、自己の資金でなく、銀行等の借り入れにこれだけ大きくたよっておるということは、財務構成の問題として非常に問題であります。ことに金利が高いということから問題でありますが、そればかりでなく、もう一つ私が心配いたしますのは、それによって企業家が企業家としてのイニシアチブで仕事が非常にしにくくなっている。いわば金融によって企業家はかなり左右されざるを得ない。ある意味で、したがって、企業を動かすものは企業家自身ではなくして銀行ではないかというようなことまで言われる程度に産業人としてのイニシアチブが発揮しにくくなっているそのこと自身わが国の将来に決してよい影響を及ぼさないというふうに考えますので、その両面からこの事態を直していかなければならないと思いますが、これは本来的にやはり相当時間がかかる仕事であると思います。起債市場の育成ということ等とも関連がございますけれども、長期的に財務比率を直していくという努力を一緒になってやっていかなければならないと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/7
-
008・有馬輝武
○有馬委員 そこで企画庁の事務当局にお伺いをしたいと思うのでありますが、わが国の産業の中でも製造業の中で、いわゆる重化学工業、この比重が昭和三十年ごろが五〇%であったものが、三十六年には六三・二%というぐあいになりまして、欧米の西独なりあるいは英国なり、あるいは米国、こういったトップ・グループのところまで迫っておりますが、ただ問題は、この六三・二%というのは、西独の六三・八%あるいは英国の六二・六%、米国の六二・五%、こういう点まで迫っておりますけれども、国民総生産に占める比重というものでは、まだ低位にあることは事実であります。しかもこの輸出品の中に占める重化学工業品の比重が、いま経済企画庁長官がおっしゃったように、施策を進める上において、私たちは一つの基礎として見てまいらなければならぬと思うのでありますが、数字的に、昨年の重化学工業品の輸出品の中に占める比重についてお聞かせをいただきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/8
-
009・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 ちょっと調査をいたす必要があるかと思いますので、後ほどお答えをさせていただきたいと思います。
一言言わせていただきますと、わが国の重化学工業化が先進国に近づいておるということについて、私自身は、実は重化学工業化というその比率について、ひとつ疑問を持っております。たとえば、全然工業のございません国に、重化学工業の工場を一つ建てますと、それで重化学工業化が一〇〇%になったという数字が出てき得るわけでございます。したがってわが国の重化学工業化率が、相当先進国に近づいておるということは、はたしてどれほどのことを意味するかということに実は私自身で疑問を持っております。
なおお尋ねの数字は、後ほど調べまして申し上げるようにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/9
-
010・有馬輝武
○有馬委員 私は製造業の中で重化学工業がどのようなウェートを占めるかという立場からお伺いをいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/10
-
011・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 はなはだ恐縮でございますけれども、通産省と私どもの事務当局で数字を出しまして、後ほど申し上げることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/11
-
012・長橋尚
○長橋説明員 ただいまの御質問につきまして、いまとりあえず持ち合わせておりますのは、三十七年の通関実績に占める重化学工業品の比率でございます。重化学工業品といたしまして、化学製品、それから金属及び銅製品、機械、こういう三品目でその比率を出しました場合、四五・五%、こういうウエートになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/12
-
013・有馬輝武
○有馬委員 いまの数字でもわかりますように、比率からいたしますと、先ほどの六〇%台で、西ドイツなり米国なりに比較いたしまして、その線まではきておりますけれども、その持つ性格というものは、決して米国なりあるいは西独なりに対しまして、優位な立場まで追いついておるというぐあいには見れないと思うのでございます。この点に関しまして議論は避けますが、少なくともこの二十二日の企画庁長官のお話の中にもありますように、やはり国際的な分業ということが当然考慮されていかなければ——ここで二十二日に企画庁長官は、新経済五カ年計画ですか、新しい経済政策を用意するというような点についても触れておられますけれども、その目標が定まってまいらないと思うのであります。そういった意味で、国際分業というような立場から、目標をどこに置かれるのか、ウエートをどこに置かれるのか。この点を企画庁長官からお聞かせいただくと同時に、通産大臣からもこの点についてはあわせてお聞かせをいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/13
-
014・福田一
○福田(一)国務大臣 重化学工業の問題でありますが、先ほど来お伺いしておって、私も一言お答えをしておきたいと思うのです。日本の重化学工業の中では、相当程度先進国に近づいたものがある。たとえば鉄鋼などを例にとってみますと、設備においては、もうアメリカ以上の設備を持っておる。一番弱いところは何かというと、やはり資本構成が悪いということ、借金によって仕事をしておるというところが一番悪い。もしこの点をのけたならば、日本の鉄鋼業はどこにも負けない競争力をいまや持つに至っておるわけであります。また石油化学のような、いわゆる装置産業であったにしても、あまりいままでに金を使わないで世界のトップ・レベルの技術でもって施設をしたものは、原料の入手において、いささかよそよりは劣っておる面がありますけれども、原料の入手さえ十分であるならば、これまた十分に世界に対抗できるものであると私は思っております。もちろんそういう場合においては、いわゆる資本構成の中における利子の問題等大きい問題があると思うのでありますが、したがってやり方いかんでは、日本の市化学工業は、欧米の先進国に比して、決して劣らないでやっていけるということを私は考えております。
現在のところ、われわれといたしましては、いわゆる軽工業品の部門では、何としても低開発国がだんだん日本の軽工業品の分野を侵しつつありますので、この面においてはどうしても高度化をするというか、他品目あるいは高技術のものをやるということになると同時に、今度は重化学工業の部門におきましては、やはり技術の開発とかあるいは資本における構成の問題をよく考慮していくというようなことをやっていけば、まだまだ伸ばし得るのであり、先進国に決して負けないところまでやれると私は考えております。もちろんどこの国にもそれぞれの工業についていろいろの隘路がある。日本だけが非常にマイナス面ばかり持っておるものとは考えておらないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/14
-
015・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 ただいまの御質問に
一般的にお答えするとすれば、私は、やはり重化学工業製品の中でも、付加価値の高い姿でそれを輸出するということが一番の問題であろうと思います。すなわち、鉄鋼製品を輸出するよりは、むしろそれが機械になった形において、あるいはプラントになった形において、またパーツを輸出いたしますよりは完成された形において、たとえば時計のムーブメントだけを売るというようなことでなく完成された形、あるいはダイオードを売るということでなく電子機械としてでき上がった姿において、そのような付加価値の高い姿で輸出をしていく、このことが目標ではなかろうかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/15
-
016・有馬輝武
○有馬委員 通産大臣からお話のありました資本構成の問題につきましては次にお伺いをいたしますけれども、いま企画庁長官からお話のありました付加価値を高めるという意味で、企画庁でも昭和三十七年度の報告書の中で、単に工業化率を高めるというよりも、高度化という点に重点を置かなければいかぬし、そういった意味合いでの産業構造の変化というものを企図していかなければならぬということをうたわれておるのでありまするが、これは具体的にどういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/16
-
017・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 それはちょうどただいま申し上げましたように、重化学工業製品であっても、できるだけ素材に近い形でなく、完成されたものに近い形で、すなわち付加価値を国内でできるだけ高く加えて、そうしてしたがって外貨の手取り率も高いわけでございますが、そういう形での高度化、それを考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/17
-
018・有馬輝武
○有馬委員 次に、いまの通産大臣が御指摘になりました資本構成の問題でありますけれども、いわゆる自己資本の占める比率というものは、大臣からも御指摘にありましたように、たとえば製造業におきます自己資本の比率を見ましても、これは国会統計提要に出ておりますが、大体昭和二十九年の四一%ぐらいをピークにいたしまして、現在では三〇%台にまで落ちまして、これがさらに低下傾向にあることは御承知のとおりであります。問題は、これは各企業が巨額の投資を続けてきた。投資の点についてはいままでずいぶん論議をされてまいりましたので、問題は高度成長それ自体がこういった形、借り入れ資金に高度に依存しなければならぬという形に追い込んできた結果じゃないかと思うのであります。私はこの点について当然経済企画庁なりあるいは通産省なりとしての指導性というものを発揮されなければならなかったと思うのでありますが、この点について具体的に、こういった自己資本比率の低下の過程においてどのような指導をしてこられたか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/18
-
019・福田一
○福田(一)国務大臣 私は、今日の日本の経済の成長を今日まで持ってきた過程におきまして、いわゆる自己資本比率が非常に少なくなったというのは、やむを得なかったことである。もし私たちが自己資本によっていわゆる技術の導入をはかれとか、あるいはまた工場施設を拡充せいとか言ったならば、おそらく日本の経済全体の規模の発展はもう二割も三割もダウンしておっただろうと思います。そのこと自体が、今度は日本の国民経済全体に与えていた影響というものを考えてみますと、また世界経済の進展に対して非常におくれをとったであろうということを考えてみますと、今日までやってきましたいわゆる自己資本によらずして、しかし設備を増強しあるいは技術の導入をはかってきたやり方はやむを得なかったところであると思います。ところが今日に至ってみますと、ある程度もう設備も大体世界先進国並みのものができ、また技術においてもあまり劣らないものがだんだんできてきております。そうなれば、ここで今度は資本の構成の問題を真剣に検討して、そしてその産業にほんとうの基礎をつけていく、力をつけていくということが今日になって必要であったと思うのでありまして、私たちとしてはしたがってそれほど一もちろん自己資本がたった一〇%くらいで九〇%は借金だというようなものもないわけじゃありませんが、そういうものは石油などにはあったかと思っておりますが、ほかのものではそれほどひどいものはない。だから私たちは、そんなにまで極端なものでなければ、まあまあこれをそういう意味で押えて成長を押えるというようなことはしてこなかった、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/19
-
020・有馬輝武
○有馬委員 通産大臣のいまの御答弁の中に高度成長の一つの一番大きな問題点が含まれておると思うのであります。私たちは、結論から申し上げまするならば、一つのムードはあったけれども政策はなかった、このように受け取っておるわけです。と言いますのは、少なくとも開放経済下で借り入れ金に高度の依存をいたしておりますと、これは私が申し上げるまでもなく、金利コスト、資本コストが高くなってくる。それでいて国際競争に耐え得るのだ。先ほども通産大臣からお答えがありましたが、私たちはこういった面が、借り入れ金に依存しておるという点が一番大きな日本の企業の弱さというものを露呈しておるのじゃないか、この原因が、設備投資を自己の力不相応の大きな投資をやってきたところに原因があったし、それが高度成長によって刺激されてきた、それが勢いいま申し上げますように国際競争力を弱めるという矛盾を露呈してきたんじゃないか、このように見ておるのでありますが、再度通産大臣からお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/20
-
021・福田一
○福田(一)国務大臣 私はそこではちょっと有馬さんとは意見が違うのであります。そういうふうないわゆる外資を導入したりいろいろなやり方はありました。また国内においていわゆる社債を募集するとか株式——株式を気やすのはまだよかった。社債その他によって仕事をする、銀行の借り入れによってやるというようないろいろなやり方をいたしましたが、これはやはり日本の産業が開放経済体制に向かう場合に、開放された場合に世界の産業と大刀打ちできるようなところまで早く伸びなければならない、こういう自然的要請がある。私は、これはもちろん政治の問題もありますが、経済全体から見てもどうしてもそれはせざるを得ないのでありまして、一方において、今度は国民経済ということから考えてみても、できるだけそういう方向に持っていくほうがいいというのがいわゆる池田総理が言われておりまする所得倍増といいますか、樹皮成長の考え方であったと思うのであります。もし自分の資本の許す範囲内だけで、たとえば自己資本と借り入れ資本は半分半分がいいとかあるいは自己資本のほうが七〇%なければいけないのだという原則にこだわっておったならば、おそらく日本の経済の成長率はいまの二分の一ぐらいになったのじゃないか。伸びておらないと思います。それは必然的に今日の事態になってみてたいへんな問題を起こしたわけでありまして、いままで私たちがそういう政策をとっておったならば今日日本の経済は開放経済などを迎えることはできなかったでしょう。自由化も何も私はできなかったと思う。借金ではあったけれども、借り入れたから、そしてここまで設備をしてきたからこれだけのいわゆる開放経済の波に対しても抵抗力がついていると思うのであります。でありますから、自己資本が少ないのにこんなに成長をさせたことは間違いではないかということについては、私は先生とはちょっと意見が違います。ただそういうような姿になった現在の姿でどうしたらいいかということについては、私は自己資本をできるだけ今後充実する工夫をしなければならない。たとえば、これは質問外のことではなはだ恐縮なんですが、よく生産性を配分する問題等々がありますが、欧米並みに問題を解決しなければいかぬというようなお話がよくあるのでありますが、私はこういうこともちょっと違うと思います。欧米のように産業自体に力がつき、経済力自体があるところと、日本のようにこんな資本構成を持っておるところとでは、こういう生産性の配分の問題等についても、欧米とはよほど変わった考え方を持つことのほうが良識である、こういうふうに思っておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/21
-
022・有馬輝武
○有馬委員 ちょっと私の考え方と違うというその大臣のお考え自体に問題があるわけです。そういう意味から私はお尋ねをしておるのでありますが、少なくとも私は比率の問題を申し上げておるのです。あまりにも高率にすぎるのではないか、それが金利コスト等を高めて、勢い国際競争力を弱める結果になっておるのじゃないか。ほどほどという指導性がその間に発揮されなかったから問題を起こしておるのじゃないか、こういうぐあいにお尋ねをいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/22
-
023・福田一
○福田(一)国務大臣 いまのおことばであれば、その限度をどれぐらいにとめておいたらいいかということに帰着しますから、たとえば比率は五〇、五〇がいいか、六〇、四〇がいいか、七〇、三〇がいいか、いろいろあるでしょう。現在は七〇、三〇というような比率になっておるでありましょうが、それ自体は好ましい姿ではないじゃないかということならば、私は有馬委員の御意見に賛成するものであります。しかしいままでの間において、それぞれの産業、それぞれの会社等々に例をとってみますと、もちろん有馬委員の言われるような弊害を起こしたところもありますが、おしなべて、いわゆる大きく考えてみれば、今日のやり方で外資を導入したり、あるいはその他のいろいろなことをやりましたけれども、今日まで育ててきたことがいいのじゃないか、そのほうが正しいのじゃないか、こういう考え方で、これは幾らあなたと質問応答しても意見の相違になるのではないかと考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/23
-
024・有馬輝武
○有馬委員 いずれこの問題については、もう一度機会をあらためて論議をいたしたいと存じます。
次に、企画庁長官にお伺いをいたしたいと存じますが、とにかく技術革新が行なわれまして生産性が上昇しながら製品価格が下がらなかった。もちろん、あるものについては低下傾向を見せたものもありますけれども、一般的にいって横ばいの状態を続けてきたところに、高度成長下における物価問題が取り上げられた一番大きな原因があろうと思うのであります。問題は、先ほど私はムードはあったかもしれないけれども政策がなかったという点を御指摘申し上げたのでありますが、この中で特に管理価格に対して政府が適切な手を打たなかったという事実は、まぎれもない事実だろうと思うのであります。この管理価格について手を触れられなかった理由と、二十二日にお述べになりました今度のあの構想の中で管理価格をどのようにとらえていこうとされておるのか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/24
-
025・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 設備の更新が相当行なわれながら、なお十分にそれが製品の価格の下落に反映されてこなかったということ、ある程度は反映されておりますけれども、もっと反映されてしかるべきではないかということの理由は、私は幾つかあると思います。そのことがいいと申しておるわけではありませんけれども、分析すれば幾つかの理由があると思います。
一つは、先刻申し上げましたように、やはり金利水準がかなり高いということであろうと思います。それからもう一つは、設備更新の結果、不要になるはずである労働力を、企業としていろいろな事情からそのまま抱いていなければならない、これは国全体の施策にも関係がございます。たとえば、いわゆる社会保障制度がもっと高度に発達いたしますならば、企業にそのような過剰の労働力を抱いてもらうことは本来必要がなくなるはずでございますけれども、そこまでわが国の社会保障制度が発達をいたしておりません。したがってある意味で、企業がこれを代行しておるというような形に分析をすればなっておると思います。事の善悪を申し上げておるのではございません。そういうことであろうと思います。したがって企業としては片方で資本の負担をして設備の更新をしながら、他方でそれに見合って整理できるであろうはずの労働力をそのまま持って抱いておらなければならない二重の負担をしておるわけだと思いますので、そこにやはり欧米諸国と比べました場合に一つ問題があるのではなかろうか。従来管理価格の指摘について必ずしも十分でなかったということは、私認めていかなければならないと思いますが、十分に踏み切れませんでした一つの理由は、やはり輸出価格との関連であったと思います。すなわち、ともすればダンピングといわれるような輸出が行なわれやすかった、そういう現状において価格がいたずらに競争的に下げられていくということに多少の問題があった、そういうこととの関連があると思います。しかしながら最近になりましてそういう無秩序な輸出が、長い目で見れば決して国にも企業にも得にならないということがはっきりしてまいりましたので、この懸念はだいぶ薄らいだものと思います。そうしてまた消費者物価が高騰を続けるということから、これについての国民的な関心も高くなりました。したがってこの一、二年はかなり管理価格の問題が国の施策としても取り上げられるようになってまいりました。この点は、今後とも共同謀議が存在するような管理価格については、もちろんきわめてきびしく公正取引の思想に基づいて指摘をいたしていくべきものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/25
-
026・有馬輝武
○有馬委員 いま管理価格の面について取り上げられるような傾向にあるというお答えがありましたけれども、逆に企画庁長官よく御承知のように、新産業体制論というような形の中で、むしろ管理価格に対して、いま企画庁長官がおっしゃったのと反対の方向で動きつつある。これは見のがすわけにまいらないと思うのです。それをどう規制していこうとされるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/26
-
027・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 ただいまお触れになりましたのは、たとえば特定産業振興法などにおける思想を御指摘になったのかと思いますが、これはやはり私は先ほど触れました輸出体制の強化との関連であろうと思います。すなわち自由化に伴いまして、外国からわが国に企業資本が入ってくるわけでありますけれども、それに対処して、わが国の企業の体制が非常に脆弱なものについては、その問のいたずらなる過当競争をやめて、わが国の民族資本が民族資本として守れるように、そういうことによって輸出の体制も高めるし、また国内価格の面で生ずるようなロスを少なくしていこう、こういう考えでございますので、このこと自身は企業の間での市場独占、それによるところの管理というようなことを許す思想とは、私は別個の系列に属しておる考え方だと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/27
-
028・有馬輝武
○有馬委員 私は、その考え方自体が、現在まで日本の企業をして温室経済の中に閉じ込めてきた一番大きな原因じゃないかと思うのです。いまおっしゃったことと、開放経済下においてのとらえ方とは矛盾するのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/28
-
029・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 私どもは、開放経済になりましても経営的に国際的な水準で維持していけるような企業というものは、本来民族資本で維持していくのが筋だと考えておりますので、過当競争によってそれが不可能になっておるような特定の業界に対しては、やはりああいったような法案に盛られましたような思想で民族資本を強化していくということは大切なことであろう。この意味で、高くても何でも国内の物を買えという思想ではなく、国内の企業が国際競争力を備えることによって民族資本で維持されていく、それをまた育成いたしたい、こういう思想でございますから、そのこと自身は開放体制と矛盾をいたしておらないと私は考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/29
-
030・有馬輝武
○有馬委員 その点また私の見解とずいぶん違うのですが、次に大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思います。
けさの新聞でも外資の導入の状況について伝えておりましたけれども、入された外資がむしろ経営参加的な色彩を非常に強めてきておるということは事実だろうと思います。この点で、いま企画庁長官から民族資本ということばが出てまいりましたけれども、この傾向に対して大蔵大臣としてはどのように見ておられるかお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/30
-
031・田中角榮
○田中国務大臣 外資は必要なものを入れるということでございますが、必要なものというよりも優良なものということを言っておるわけであります。優良なものとは、経営権等にあまりめんどうなことを言わないということでございます。いま一部の会社においては外資が入って、経営権そのものが過半数近いものになっておるというようなものもございますが、一般の産業に対する外資で経営権を侵すというような懸念はいまのところ持っておりません。またこれから交通整理を十分やりますので、そういう面から考えましても、経営権自体を侵すとか、中小企業に対して重大な影響があるとかという問題に対しては、十分スクリーニングをしていきたいという考えです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/31
-
032・有馬輝武
○有馬委員 大蔵大臣は簡単におっしゃるのでありますけれども、OECDの加盟条件としまして、証券取得や直接投資につきましては一応の留保条件がついておりますけれども、私が指摘したような傾向というものはますます強くなってきておるわけです。そういう傾向の中で企業が自主的に活動し得る分野というものは、開放経済という一つの目標の中で逆に作用しておるのじゃないか、こう見るのでありますが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/32
-
033・田中角榮
○田中国務大臣 OECDの問題につきましては、いま御指摘のとおり留保条項をつけております。しかも直接投資等に対しては必要な交通整理、スクリーニングを行なうということになっておるわけであります。究極の目的とすれば、これは外資が入ってもおそろしくないというような日本の状態を築くことが好ましいわけでございます。それから日本もまた外国にどんどん投資ができるような状態になることこそ好ましいわけでありますが、何ぶんにも戦中、戦後を通じて長いこと温室経済といいますか、鎖国経済の状態にありましたから、いま急速に無制限に外資を入れるということになりますと、経営権の問題、資本支配の問題、また中小企業との問題等が起きますので、これらに対しては、現在のところ支障がないように調整を行なう段階であることは御承知のとおりでございます。外資に対して非常に危険視をする人もありますが、明治初年、鉄道とか電力とかいうものは、みんな外資によったものでありますが、その危険もなかったわけであります。ただ、明治初年や大正時代と違いまして、いまは日本は非常に大きな市場でありますので、日本に対して担当食指を動かしておるというような状態であることも事実であります。でありますから、私がいつも申し上げておるとおり、開放経済に向かって自己資本比率が、戦前六一程度のものが三〇になり二五になり、現在は二五%を割っておるのです。通産大臣は先ほど三〇と言われましたが、二五%を割っております。現在、自己資本比率は上がる傾向にないわけでありまして、市場においては増資調整をしなければならないという実情であります。そういうことを考えますと、西ドイツがやったように、民族資本というものに対して相当な政策をやらないと困る。こういうことで私は資本蓄積に対しては、最も優先的なものとして、税制上考えたいということを言ったのですが、どうもそういうことを税制上やることはよくない、こういう議論があることは、はなはだ遺憾であります。でありますから、そういう事実を考え、ほんとうに大きな問題として、いまわれわれ民族の将来のためにぶつかっておるのでありますから、やはり政府も勇気を持って自己資本比率を上げなければならない。そうして外国からの外資が入っても驚くに当たらないような事態をつくらなければいけないということを絶えず申し上げておるわけであります。これは御理解いただけると思います。やはり外資をおそろしがってばかりおれば、国際競争力にも負けるのです。また外資を入れることによって非常にいいこともあるのです。これはただ外資理論だけでなくて、非常に高いロイアルティーを払って技術導入をやっておりますものと、外資を入れることによって提携することによって、それらの技術がストレートに入ってくる、こういうこともありますので、外資問題に対しては一律に論ずるわけにはいかないわけであります。やはりケース・バイ・ケースで、少なくともあなたが指摘したように、企業支配をしたりというよりも、まず問題は中小企業や日本の商業界を混乱に至らしめないような措置は十分にとってまいりたいし、とっていけるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/33
-
034・有馬輝武
○有馬委員 大蔵大臣、出発点が違うのですね。私たちがこの資本蓄積に対する税制問題で反対しておるのを取り上げておっしゃったのですが、公平であるべき租税政策というものが、自分たちの高度成長政策のいままで続けてきた指導性の欠陥のしりぬぐいとして利用されるという点について、私たちは反対しておるわけです。これは公定歩合の問題にいたしましてもそうであります。私はこの前日銀総裁にも指摘をいたしたのでありますが、日銀は中立的な立場で山際さんの御判断によってされたのだろうと言って済まされるかもしれませんけれども、問題は新窓口規制なり今度の二厘引き上げというものがタイミングを誤ったという点においてはこれは大きな問題なんです。それは大蔵大臣だってちゃんと御承知のとおりです。その結果のしわ寄せがどこに来るかという点で私たちは問題にしておるわけなんです。そういう意味で私は先ほどから、現在までの高度成長のあり方というものと、おととい二十二日に宮澤さんが発表されたところの今後の経済の見通しに対して、どのようなとらえ方をしてどのような政策がそこに用意されておるかという点をきょうはお伺いしておるわけなんです。たとえば先ほど企画庁長官がお話になりました労働力の問題にいたしましてもそうであります。高度成長によって雇用の問題が解決されたという簡単なとらえ方というものは現在絶対に許せないと思うのです。中高年齢層の問題がある。不足なのは若年層だけなんです。この問題を今後どのように解決していく用意があるのか、この際企画庁長官からお聞かせをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/34
-
035・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 確かにただいま不足しておりますのは若年、新規学校卒業者の労働力でありまして、中高年齢層はいまのところ、どちらかというと余っておるという姿であると思います。しかしこれは昭和四十一年ころになりますと若年層の労働力が、四十一年をピークにして極端に窮迫をいたしてまいると考えられます。それまでの間にやはり中高あるいはこれから中高に入ろうとするような年齢層についての適出な職業訓練といったようなものはぜひとも欠かしてはならないと思いますが、いずれにしても四十一年を過ぎますと労働力の絶対量が不足してまいることが明らかでありますので、したがって技術訓練が進みますのと相待って中高年齢層に需要が及ばざるを得ない、現実にそういう姿になってくることがかなりはっきりいたしておると思います。したがって国の施策としては、それまでにこの中高年齢層に対する新しい職場に対しての必要な職業訓練等をやっていくということが、やはり政策上一番大事なことではないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/35
-
036・有馬輝武
○有馬委員 具体的にどのような政策を用意されておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/36
-
037・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 それは御承知の予算にも盛られておりますが、そういう職業の再訓練等の施策でありますとか、あるいはそれらの労働力が移動し得るための住宅の施設でありますとか、そういった方面でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/37
-
038・有馬輝武
○有馬委員 その点はまたいずれ予算的な面と関連させながらお伺いしたいと思います。
時間も参りましたので——私はいま日の当たる産業についての問題点をとらえてまいりましたが、日の当たる産業自体の中においてもこういったいろんな問題点が存しておる。ましてや中小企業、農業、こういった低生産性の問題、これについてはまた企画庁長官にお伺いをいたしたいと思います。
最後に大蔵大臣にお伺いをしておきたいことがあります。それはもうすぐぴんとこられるだろうと思いますが、税制調査会で中山会長から一つの基本構想が出されるやいなや、総理がこれに対して、調査会の活動を基本的に封殺するような発言をされるということはきわめて不穏当だと思うのであります。前には税制調査会がどんな結論を出そうが、私はそれを聞くだけだ。自分は自分でやるのだというような発言をされながら、今度は逆にあのような発言をされることについて、きわめて遺憾でありますが、この点に対して大蔵大臣の見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/38
-
039・田中角榮
○田中国務大臣 総理大臣がどこでどういう発言をせられたか、私はよう承知をいたしておりません。きっと私と総理大臣が一緒に御飯を食べたという事実、それからきょうどんな話があった、税制調査会の諮問に関しての話をしました、こういうことだけ記者会見で申し上げただけであります。それからいろいろな記事が出ておりますが、その記事をさして言っておるのだと思います。これは総理が税制調査会を制圧しようとか、また税制調査会にいろいろな干渉をしようとか、そういうことを申したのではございません。税制調査会もいよいよ本格的な審議に入るわけですが、内閣総理大臣の諮問機関である税制調査会に対して、一体大蔵省はどう考えておるのだ。諮問というものは新しく出るのか、三十七年に諮問したものでいいのか。大蔵大臣は、総理大臣の諮問機関である税制調査会に対してよく勉強して、遺憾なきを期したまえ、こういうような話を、飯を食べながら話しただけでございまして、総理大臣が税制調査会を押えようとか、税制調査会の動きはどうだとか、それに対して意見を述べたということはございません。大いに勉強して、国民にほめらるべき税制をつくれ、よろしゅうございます、こう申し上げただけでありまして、あまり内容はありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/39
-
040・有馬輝武
○有馬委員 いいかげんな答弁をされるのですが、とんでもない話ですよ。各紙とも具体的に税制調査会で出された基本方針を大きくゆがめる発言をしたということを報じているわけです。これは日ごろからの総理なりあるいは大蔵大臣の税制調査会に対するものの考え方というものが端的にあらわれておるのでありまして、このことは厳重にこの際抗議をいたしまして、本日の私の質問はこれで終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/40
-
041・山中貞則
○山中委員長 平林剛君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/41
-
042・平林剛
○平林委員 初め経済企画庁長官にお尋ねします。十二時までに御都合があるそうですから、二、三問題点について端的にお尋ねします。
開放経済体制への移行を前にいたしまして、公定歩合の引き上げが実施をされたことについては御承知のとおりでございまして、私どもとしては開放経済体制移行に伴って、日本経済にまだいろいろな意味で不安を感じておるわけであります。そこでこれからの日本経済はどういうことになるのだろうかという点の議論、あるいは観測、分析がしきりに行なわれております。今日までの議論を総合いたしますと、田中大蔵大臣は、言ってみれば短期決戦という考え方で、比較的短期に今日の主として国際収支の面の改善ができると見ておられるような発言が繰り返されておるのであります。しかし一方において日銀総裁もこの委員会においでになって、これらの問題についての御意見を拝聴いたしますと、三十九年度一ぱいで権衡するかどうか。少なくとも改善に寄与することは期待できるけれども、長期的な展望が必要だという趣旨のことを述べられておりまして、ある意味におきましては、政府部内におきましても、その観測が、極端ではございませんけれども、分かれておるように思います。そこで昨日も参議院の外務委員会で、この問題について総理の見解がただされたわけでございますけれども、経済企画庁長官としては、これからの経済見通しについてどういう御見解を持っておりますか、これをお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/42
-
043・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 これから数年間のわが国の経済を制約いたすであろう要事は、一番大切なものだけ申し上げますと、三つあるだろうと考えております。一つは国際収支でございます。次に消費者物価でございます。第三に労働力の需給関係、この三つであると思います。
ただいま今後五年間の中期計画の作業をいたしておりますが、その三つのうちで、最後の労働力の需給関係は、計数的にはこれは既知数と考えてよろしゅうございますので、これはあえて、人為的に天井を設けませんでも、電子計算機に入れる数字は客観的に確定いたします。しかし国際収支については、それは確定いたしません。ことに資本収支が入ってまいりますと、確定のいたしようがございませんので、これはある程度人為的に国際収支の赤字がどの程度以上であってはならないということをきめまして、そこに一つシーリング、天井を置く必要があると思います。それから消費者物価につきましても、これも人為的に天井を置きませんと、作業ができませんので、消費者物価が年間にどのくらい以上上がるということは不適当である、その天井を一つ置こうと思っております。二つ天井を置きまして、労働力の需給は既知数でございますから、あと既知数の数式を入れまして、そしてパターンからそれをモデルにいわば食わせまして、成長の幾つかのパターンを出してみよう、こう思っております。したがってこの作業における主点は、成長が高ければ高いほどいいというのではなく、それらの二つの制約のもとにいかなる成長が可能であるか、こういう作業をいたしたいと思っておるのでありますが、それはとりもなおさずこれからのわが国の経済に対して、私どもがそういう見方をしておるからでございます。すなわち、国際収支のいわゆる天井というものが決して高くないという状況は、過去何年かのうちに一つの周期をもって繰り返されております。そのことは今後も急送に改善をされる見込みはないと考えなければなりませんので、具体的に、ことに貿易外収支等を中心に、よほど長期にわたって施策をしてまいらなければならないと思います。また消費者物価についても、わが国の経済の二重構造の底辺に当たる部分が、生産性の向上によって改善されません限りは、相当長期的に消費者物価の上昇ということがあると考えますので、これもかなり長期の施策を要する、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/43
-
044・平林剛
○平林委員 ただいまのお話についても、もう少しこまかくお尋ねをしたいと思いますけれども、時間の余裕がございませんから、そこでこの国際収支の改善策につきまして、しぼってお尋ねをしていきたいと思います。
公定歩合の引き上げのあった際に、当時引き上げ無効論という議論もございました。つまりその論拠は、いままでは設備投資や在庫投資が景気過熱の最大の原因であったけれども、今度の場合はそれと迷う。だから金融を引き締めただけでは効果がないという議論であったと聞いておるわけであります。また国際収支の赤字の原因についても、いまお話しのように、貿易外収支の赤字という点でございまして、いわば構造的なものである。構造的な赤字をつくり出した。こういうひずみをつくり出した原因は、先ほど有馬委員も御指摘になっておりましたように、国際的にも国内的にも借金依存の、バランスを失った成長経済そのものである。もう一つは、海運収支の赤字についても、これを打開するには船をつくればいいというような議論のものでないということを、私かつて申し上げたこともあるわけであります。とすれば、これからの長期的な展望に立ちましてどこに重点を置くか。たとえばその一つとして、石油類とか鉄鉱、石、石炭など、中共とかソ連とか、比較的短距離の国との間において輸入し、輸出をするというような考え方、この長期的展望に立った場合はむしろこれが近道でないかという議論があるわけでございます。これについてあなたの御見解はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/44
-
045・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 その具体的な問題につきましては、私はこう考えます。それらの石油あるいは鉄鉱石、石炭などがわが国の産業で使用し得る程度の品質を持っておらなければならないと思います。次に、コストの面で、それ以外から輸送いたします場合に比べて不利であってはならないということだと思います。それから第三に、この点は大切であると思いますが、それらの供給が政治的あるいはその他の理由によって不円滑であってはならない。つまり、純粋に経済ベースで長期的な供給が可能である、こういうことがなければならないと思います。それだけの条件が満たされるといたしますと、私どもはやはりそういう資源の供給先はできるだけ世界各国に手広く広げて、散らばしておいたほうがいい、そういう考えでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/45
-
046・平林剛
○平林委員 もう一問お尋ねします。最近問題になっておることは、海運収支の赤字を克服する手段といたしまして、最終的にはここにしぼられてくると思うのですが、二つの意見があるように聞いておるわけであります。それは、海運業に対して安い金利で造船をするための貸し出しをしたり、あるいは助成金を与えて改善をしていくという、船をつくってこの海運収支の赤字の改善、長期的には国際収支の安定をはかっていこうとする考え方、もう一つは、むしろ輸出を振興して、それに重点を置いて、輸出船に安い金利で輸出信用を与えるという形から持っていこうというやり方、このいずれがこれからの海運収支の改善をはかる上において効率があるか、どっちが有効であるかというようなことにつきまして、あなたの御見解はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/46
-
047・宮澤喜一
○宮澤国務大臣 その問題は、過般関係の経済閣僚が集まりまして、第一回の討議をいたしました。引き続き第二回、三回ぐらいの討議をいたしまして結論を出したいと思っております。したがって、政府として最終的な結論があるわけではございません。私はどう考えておるかというお尋ねでございますが、やはり船をつくりましただけで海運の問題が解決するものでないことは、御指摘のとおりでございます。バンカー・オイルあるいは海湾経費等々を勘定いたしますと、相当船をつくり、相当積み取り比率を上げましても、なお海運の赤字というものはなかなか解消できない。御承知のとおりでございます。そういう意味では、船をつくるということは案外に外貨手取り率のよくないものでございます。これは認めなければならないと思います。しかし、つくらなければますます赤字幅が拡大いたすわけでございますから、結局そういうものと覚悟しながらやはりつくっていく。つくれば問題は解決するというような安易な立場でなく、やはりいろいろ詰めて考えてみて、つくったほうがベターである、こういうことであろうと思います。したがって、わが国の造船能力が輸出船を多く受注しておりますために、国内船が建造できないというようなことになっては相ならないと思います。したがって、国内船も多くつくるときめましたならば、やはりかなり長期に、造船所が計画を立て得る程度に長期的な建造の見通しを与えてやることが必要でございます。そして、その余剰の力をもって輸出船をつくっていく、こういうことに考えていくべきかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/47
-
048・平林剛
○平林委員 経済企画庁長官はこれでよろしゅうございます。
大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、金融引き締め政策が最近の実情から見ましてどの程度まで浸透していったんだろうかという推測が各方面でかなり行なわれておるわけでありますけれども、大蔵大臣といたしましては、それをどういうふうに観測されておりますか。そうしてまた、先ほど例を申しましたが、短期決戦論者というようなことでレッテルを張りましたけれども、決してそういうふうにレッテルを張るということではなくて、この金融引き締め政策の本格化によりまして、六月ごろには国際収支改善のきっかけをつくることができるんじゃないかという御見解をあなたはお持ちでございましたので、そういう点につきまして、はたして六月ごろまでに国際収支におきまして改善させるようなきっかけをつくることができるといまでも思っておられるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/48
-
049・田中角榮
○田中国務大臣 大体そう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/49
-
050・平林剛
○平林委員 あまり簡単な答弁で、どうも……。具体的にはどういうふうに見てそういう御判断をされるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/50
-
051・田中角榮
○田中国務大臣 金融引き締めの状況に対しましては、きのうの午前中に各地方の問題を聞くために地方財務局長会議も開きました。三厘引き上げた後の事態をじっと見ておりますが、比較的にきかないという議論もありますし、また、きいておるという議論もあります。これはどういうことかと言いますと、去年金の手当てをしておりまして、一時、債務者頭金が非常に多いといわれたものが取りくずされてずっときたわけでございますが、そういう資金の手当てをしておるような企業、また、その下請の代金支払いの状況をずっと調査をしておりますが、九十日の手形が十五日ぐらい延びておるということはございます。しかし、比較的手形のサイトは延びておらぬということであります。中京とか大阪とか、そういう地域別にも十分検討いたしたわけでございますが、いままで八割現今で払っておって、二割手形だったものも、大体それを堅持しておるということであります。でありますから、そういう意味では急速にきいておるというような状態は感じられません。しかし、系列外の中小企業の状態を見てみますと、また、特に倒産をした状況などを十分見ておりますと、徐々にきいておるというふうに見られるわけであります。大体その系列企業の十日ないし十五日というものが十五日ないし三十日、こういうふうに延びておるようであります。こまかい問題はいま調べておるわけでございます。
輸出入の問題は、御承知のとおりようやく四月の第二句くらいに入りまして顕著に輸入は減ってきておる、こういうことでございます。二月、三月一はいは十二月のあおりでずっとやはりわれわれ考えておるよりもまだ高い水準でございましたが、四月の第一句になれば相当違うのではないかと思っておるのですが、四月の二旬くらいになってだんだんきいてきておるというような状態であります。こういう状態で、ずっと通算していろいろ調査をしてみますと、三月三十一日で締めて成長率は御承知のとおり二二%をこす一四、五%というような状態でございます。でありますが、在庫や製品の状態を見て、しかも輸入がおおむね落ちついてきておる、鎮静化しておるという徴候がつかめてまいりましたので、当初考えたように六、七月といえば国際収支の状況も安定的に向上の方向に向かうだろうというふうに考え得るわけであります。いろいろな問題を推定しますと、大体そのような考え方を持っておるわけであります。中には日銀などは九月から第三・四半期に入るというくらいまで見通したほうがいいというような慎重な議論もございます。私たちも何も安易な政治的にどうしようという考えは持っておりません。まじめな立場で考えまして引き締めが比較的に早かったということと、十二月に思い切って輸入がふえたという反動もありまして、大体鎮静に向かったという考え方に立っておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/51
-
052・平林剛
○平林委員 かりに四月ないし五月に国際収支改善のきっかけができたとしても、それは先ほど経済企画庁長官に私お尋ねいたしましたとおり、一時的なものであって、それがすでに国際収支について安定的な方向に向かうという考えは、私は少し早計ではないかと思うのであります。ただ私ども当面最も心配しておりますのは、半委員会でもしばしば議論されましたように中小企業の倒産続出が深刻な問題になっておるということであります。東京の商工興信所の調査で全国企業倒産状況によりますというと、二月で倒産件数が二百三十八件、負債総額で三日五十一億、件数、負債総額とも戦後最高の記録でありました。三月にも倒産二百七十五件、負債額で来京発動機の七十億円を筆頭に負債額一億以上が七十件、負債総額において三百五十五億円とまた最高の記録をしるしておるわけであります。そうなりますというと、今後の経済の見通しから見まして、こうした傾向は非常に憂うべき現象でございまして、政府としてもこれに対して慎重な検討と同時に倒産の理由などについていろいろな角度から検討する必要があると思うのでございます。大蔵大臣として今日まで最高の記録を示された各倒産の状況を判断をいたしまして、どういうところにそういう理由があったと判断をされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/52
-
053・田中角榮
○田中国務大臣 昨年の十月ごろから倒産状況に対してこまかく件別に検討しております。率直に申し上げると、金融引き締めによって倒産をしたという例は、いまのところ私は見出せないというふうに考えております。一つは、非常に過去長いことあぶないあぶないと言っておったもの、銀行に対しても銀行別に違うバランスを出しておった。そうして資本金が非常に小さくて、大体その二十倍や三十倍ではなく、四、五十倍くらいの手形を出しておる。大体どういう経営をしておるのかということで、私ずっと自分自身で検討を進めようと思うのですが、年商が八億円くらいしかないものが、倒産の野点において二十億ないし四十億の手形を持っておる。これはどういうことでもっていままでずっと移ってきたのか私としてはわからないのです。常識的にもどう考えてもわかりません。そういうものがいままでの中には非常に多い。それから第二の理由は、親企業が倒産をしましたために連鎖倒産式なものがございます。こういうものに対しては何とかめんどうを見るようにということを特に強く各金融機関にも言っております。同時に黒字倒産というようなもの、連鎖反応によって倒産したものに銀行はなぜめんどうを見ないのか、そういうことに対して銀行が主力銀行としていままで貸し付けておったものを、一挙に引き揚げれば倒産にいくことはあたりまえですから、そういう原因も十分追及する、こういう態度もとっておるわけであります。
それからもう一つの問題、このごろから私は十分注意しなければならないというのは、いわゆる金融引き締めという実際的な影響が出てくるという、先ほども申し上げましたが、そういう考えでありますので、特にきのうの財務局長の会議にはこれからが非常にめんどうなときであるから、一件ずつ十分めんどうを見るように、こういうことを指示しておるわけでございます。いままで東京発動機の例も、御承知のとおりもう二年前、三年前から経営権が一門の経営から移ったり、四十年も五十年も長い赤字、そのときからもういろいろなことを言われておったわけであります。でありますから、そういう金融界や証券界でそこはかとなく問題があるというようなものや一族だけでもってやっておるとか、ワンマン経営とか、主力銀行を持たないというようなもの、私はこまかく勉強しておりますから、いつか機会があれば御提示申し上げてお互いに検討しなければならぬだろう、こう考えておりますが、少なくとも金融引き締めで黒字倒産を起こすというようなことはないように万全の配慮をいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/53
-
054・平林剛
○平林委員 ただいまのような分析につきまして、また私もあらためて議論をしたいと思いますが、ただ最近公定歩合の引き上げなどによって金融の引き締めがあって一カ月もたたないうちに、ちらほら中小企業の倒産の深刻なことを材料にいたしましてこの緩和論などというのが出ておるようでございますけれども、大蔵大臣はこうした緩和論についてはどういう御見解をお持ちでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/54
-
055・田中角榮
○田中国務大臣 緩和するとか、引き締めるというべき問題ではございませんで、機に応じて臨機応変な処置をとる、こういうことでございますし、またそういう状態で窓口規制を行なったり、準備率の引き上げを行なったり、公定歩合の引き上げが行なわれたわけでございます。先ほども申し上げましたとおり、一面ききつつもあり、同時にどうもきいておらないところもある、こう申し上げたわけでございますから、これらの事情を判断していただければ、少なくとも中小企業の倒産というような声に驚いて——事実は私がいま申し上げたとおり、こまかくしさいに検討して救済措置もとっておるわけでありますから、摩擦がないようにという配慮は十分いたしますが、いま引き締めを解除するという考え方を持っておるわけではないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/55
-
056・平林剛
○平林委員 次に、私は先ほど有馬委員が指摘をいたしました税制調査会に対する政府の干渉について申し上げたいと思うのであります。税制調査会がすでに総会を開いて、あしたからですかの基礎問題小委員会を皮切りに、昭和四十年以降の長期税制のあり方について本格的審議に入るということを聞いておるわけであります。審議の中心は、私ども想定いたしますに、最近の情勢から見て、一つには所得税の減税は恒久的に最優先し、その重点は控除額の引き上げとか税率の引き下げのいずれに置くか、こういう点に私どもとしては深い関心を寄せておるところであります。また、いわゆる企業減税につきましても、自由貿易体制をたてまえとして開放経済に移行した一年目だけに、産業界からあるいは政府の筋からもいろいろと注文をつけられるだろうということを想定をいたしまして、それだけにこれまた私ども関心を持たなければならぬと思っています。そしてこれは今後の経済動向によって変化はあるに違いありませんけれども、減税の規模が一体どの程度に可能かという問題もあるだろうと思うのであります。
きょう私が政府の見解をただしたいと思いますことは二つばかりあります。
一つは、最近税制調査会の会長の中山さんが明らかにした見解と政府の今日までの態度において、明らかに対立していると思われる点があるのです。
その一つは、今度の国会の冒頭から私ども政府と論争してまいりましたけれども、租税の負担率の件であります。中山さんは、最近の税負担率を比較すると、わが国の水準は欧米諸国と比べたら表面は平均一〇%程度低いけれども、その差は国防費の血相の格差によるもので、国防費を除いて計算をしてみると、わが国の税の負担率はすでに欧米並みだという見解を示されておるわけであります。欧米との所得の格差ということをやりますと、それは加重的に現在の税負担率は重過ぎるということも私は言えると思います。したがって、税制調査会では、しばしば述べてきたように二〇%程度というのはせいぜい二一%程度と考えるべきだ、二二%ではもう高過ぎる、こういう見解を最近示されておるわけでございまして、これはこれからの税制調査会の村税負担率を考える場合におきましても、相当基本的な考え方になっていくのではないかと思うのであります。これと今日までの政府の考え方は明確に違うわけでございます。こういう発行に対しまして、大蔵大臣としての御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/56
-
057・田中角榮
○田中国務大臣 中山調査会長が言われましたことは個人的な見解を申されたものだと思います。それから、税制調査会が答申をしましたときに二〇%前後と言われたことも承知をいたしております。そうなることは実に好ましいことであるということも申し上げておるわけでございます。が、なかなか財政事情、また国民側からする歳出の要求、減税もさることながら学校を立てろ、こういう問題もございます。税金を納められる人はまだいいのであって、われわれ生きていけない、社会保障面をもっとやれという人もございます。広い立場で、公平な立場で見て国民のためによりよき税制を答申していただきたい、こういうのが私の考え方でございます。二二、三%か二〇か二一%かというような議論をいま私が申し上げることは税制調査会の審議を制肘することになりますから、いま申し上げたくございません。また税制調査会長の言われたことも二〇%にこだわっておらぬわけであります、公式見解は。ただしその前に、二〇%というパーセンテージに正確にくぎづけにする意向はあのときから持っておらないわけでございます、こうこの席から申し上げておるわけでございます。何ぶんにも税の問題は国民的な問題でございますし、調査会の答申を待ちながら検討してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/57
-
058・平林剛
○平林委員 いずれにしても、政府がいままで議会全般を通じまして、税制調査会が言うておった負担率二〇%程度に押えるという見解は二二%くらいに読みかえてもいいのだというのが政府の独断であったということだけははっきりしておる。私はただ表面にあらわれた負担率だけで議論しようと思いませんけれども、現在の置かれておる客観情勢から見ると、これは二〇%程度が妥当であるというのは文字どおりそういうふうに受け取るべきだと思うのです。それを大蔵大臣は、しばしばこれは二二・二%程度に読みかえてくれなんというのはきわめて独断的な考えであったということだけは最近の中山さんの発言から見てもはっきりしておることでありまして、大蔵大臣もこの点は肝に銘じておいていただきたいと思うのであります。負担率の問題を論ずる場合に、私どもも財政支出の内容を全然論外にしろと言ってはおりません。またその負担階層の相手がだれであるかということも重要視すべきことです。しかし、現在まで私どもが指摘をしてまいりましたように、昭和三十四年当時の一九・六%程度と比較いたしまして、今日の税負担率になるまでに、いまあなたがおっしゃったように社会保障であるとか教育施設であるとかいうような分野が同じ割合でふえてきたかというと、必ずしもそうではなく、低くなっておるわけです。そういう点からみますと、これは私はまだまだ負担率というものは、実際の税金が重いか軽いかということをはかる意味で重視すべきものだと思うのであります。ただ問題は、私はここで聞いておきたいことは、中山さんは租税負担率を二〇%程度に抑えるためには財政需要に応じては、道路建設などのために公債を発行することもやむを得ないなんということを言われておるのでありまして、この見解はどうも私少しついていけない点があるのでございます。大蔵大臣としての御見解を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/58
-
059・田中角榮
○田中国務大臣 私も総理大臣も申し上げておるとおり、公債を絶対発行しないというのではございません。が、しかしいま国民の総需要の状況を見ますと、いまでさえ総需要は多いのでございます。でありますから国際収支の改善、物価の抑制という問題と取り組まざるを得ない状態になっておるわけでございます。道路も航空機も鉄道も港湾も、あらゆるものを一挙に片づけたいという気持ちは私もそのとおりでございますが、ものにはやはり限度があります。とにかく一挙にやってしまうことが経済的にも理論的にもいい場合もたくさんございますが、それによって影響を受けるいわゆる物価の問題とかいろいろな問題があるわけでございます。国民の総需要というものが高いのか低いのかというと、事実それは高いのです。でありますからこういう時期に国債発行の原則論とは別に現実問題として発行できるかどうか、私は発行しないでいくべきだという考えを持っておるわけです。でありますから少なくとも三十九年にはやらなかったのですから、四十年にも私は絶対に国債を発行するという事態には至らないという見通しでございますし、まあ当分の間国債発行というものは、戦前に非常に国債発行でいろいろな苦労をなめておりますから、いまは国債発行をした戦前にいかに苦労をなめたかということを研究することがいい時期であって、少なくとも国債を発行するというような考え方には現在は立っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/59
-
060・平林剛
○平林委員 公債発行についての議論、見解は持っておらぬというお話しでした。少し話が飛びますけれども、きのうの新聞を見ると、最近政府の関係閣僚が旧地主にする報償の問題について見解をまとめたという記事が出ております。十年均等償還で無利子の交付公債を支給する、これを大筋として政府の案を内定したと書いてあるのですけれども、いまのお話しから見るといかがなんでしょうか。公債を発行というふうに一歩踏み切ったような、重要な国家の政策においていろいろな政策がある中でたとえば道路だとかその他についても、現段階においてはそんなこと考えておらぬとおっしゃるのに、こういう記事が出ておるというのはいかがなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/60
-
061・田中角榮
○田中国務大臣 農地報償の問題はもういま御質問ではなく、長いこと国会の問題になっておるわけでございます。これは前には未亡人に対する交付公債を出しました。これは国債、いわゆる債券を発行して資金を得て、これを財源として使おうというのではございません。農地報償というものがもし確定をする、こう考えた場合でも、これは将来にわたって、ちょうど軍艦をつくるのに債務負担行為でもって来年、再来年払うということでやっております。国鉄等に対しても債務負担千四、五百億つけてございます。こういうものとして日本の経済成長というものが大体このくらいある、それから税の税収もこのくらいあるだろう、そういう状態において今日報償をすると国会の意思が決定をしても、将来の財政支出を拘束することでございますから、できるだけ長く、こういうことで、まあやるとすれば十年以内ではいかぬでしょう、こういう考え方を申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/61
-
062・平林剛
○平林委員 これはまたあらためて議論する機会もあると思いますからこの程度にしておきますが、財政法の立場から見ましても問題がございますので、大蔵大臣としては全般的な見地に立って検討することを希望しておきます。先ほど税制調査会に対する政府の干渉といいますか、対立というか、そういう点で第二の問題について少し政府をたしなめておきたいと思うのでありますが、やっぱり税制調査会の大体の空気といいますか、方向というのは所得税の減税を最優先にしていくという考え方であることは、これは明らかです。今日までの関係者の御発言あるいはその動きから見まして、この方向に向かっていくことは当然国民的要望でもあるし、また今日当然とるべき重点の政策でなければならぬ、こう考えておるのであります。ところが池田総理大臣はテレビの会談のとき、私直接これは見なかったのでありますけれども、中山さんと対談を行なわれたときもしきりに企業減税を強調されております。それから先ほど有馬委員が指摘をされましたように、最近も総理大臣は田中大蔵大臣に対して、企業減税について根本的な検討に入るように誘導すべきであるというようなことを、あなたに示唆したということが出ておるわけでございます。まことにけしからぬことだと思うのでありまして、元来こうした問題は税制調査会の答申を待って政府の態度というものをきめていく。そのために税制調査会というものを設けたわけですから、やたらそれを政治的に——これは総裁公選も近いことでございますから、いろいろな政治的な背景があるかもしれませんけれども、けしからぬと思うのですよ。私ば税制調査会がある以上は、すべてこの国家の税負担全般の問題についてはこの答申を政府は待つ。それにあらゆる資料を提供して、十分全般的な立場から結論を出してもらうというような態度に出るべきである、こう思うのでございます。大蔵大臣の御見解はいかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/62
-
063・田中角榮
○田中国務大臣 税制調査会の結論が出るまで政府もあらゆる資料を提供して、税制調査会の検討に資したいという考えはございます。
それから税制調査会の答申は毎年これを尊重するという原則でございます。
それから総理大臣が税制調査会を誘導しろ、こういうことを言ったように言われましたが、そういう事実はございません。誘導に乗るような調査会でもございませんから、これは御承知のとおりで、ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/63
-
064・平林剛
○平林委員 ただ総理大臣が少なくとも企業減税をかなり重視して、それを今度の税制調査会にやろうとする考えがあることだけは、あなたはそばにいてわかっているでしょう。だけれども、そういうような考え方をあらゆる機会に政治的に発言をするのはどうかということを私は聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/64
-
065・田中角榮
○田中国務大臣 総理大臣は記者会見をしておらぬのであります。私が総理大臣とお会いをしたあと、総理と会って一体どういう話だった、こういう御質問がありましたから、質問に幾らかお答えをしただけでございます。でありますから、私は総理大臣が、君はしかるべく調査会を誘導しろなんということを言われたなどということは全然申し上げておりません。これは先ほどの御質問にもお答えしましたとおり、三十七年に内閣総理大臣の諮問機関である調査会に諮問をしておるのであります。これには企業減税の問題も、あらゆる問題を含めて諮問をいたしておるのでございます。税制調査会もいよいよ本格的な活動に入るということを新聞で知ったから、原局である大蔵省は十分勉強しなさい、こういうことでございますから、よろしゅうございます、こう言ったのでありまして、また記者諸君から中山さんの記事が出たから総理が怒っていたのじゃないですか、こういうようなことがあったから、それに対しては怒っておらず、にこにこしておった、こういうことを言ったのでございます。それは事実でございます。でありますから、あまり総理大臣がいろいろなことを申し上げたことは私はしゃべっておりません。私と総理大臣の間で話をしましたのは、あなたが先ほど申されたとおり、所得税減税が重要であることはもう言うをまたないことでございます。また八条国移行にあたって企業減税についてもまた重要だね、こういう話も確かにありました。そういう問題はバランスもございますし、いろいろむずかしい問題でありますので、十分勉強するようにということでありましたから、よろしゅうございます、こういうことでありまして、私は中山さんともお会いしておりませんし、全然そういう行動に出ておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/65
-
066・平林剛
○平林委員 とにかく私は政府の中に、しかも最高の責任者である内閣総理大臣が税制調査会に対してそういうような動きを示すということ自体がけしからぬことだと思うのです。特に御主張のように開放経済体制に移行して、これからは企業と企業とが国のささえなく裸で勝負しなければならぬというときですよ。このためには相当体質的にも、あるいは経営のあり方についても自力でやっていくというような心がまえをしなければならぬときですよ。そういう心がまえがあって、初めて開放経済下にあって企業が世界と勝負できるのですよ。そういうときに内閣総理大臣や政府の閣僚であるあなたがそういう発言をなさらぬように、私はきょう警告しておきます。またその企業を甘やかす、あるいは企業の御都合主義のようなことを、税制調査会の答申に先立ってやたら索制するということは大いに慎まなければならぬ、私はそういうことをきょうは政府に対して警告をしておきたい。それをもって私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/66
-
067・山中貞則
○山中委員長 この際、暫時休憩いたします。
午後零時三十二分休憩
————◇—————
午後一時六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/67
-
068・山中貞則
○山中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
国有財産法の一部を改正する法律案に対しまして坊秀男君外二十三名より修正案が提出されております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/68
-
069・山中貞則
○山中委員長 提出者の趣旨説明を求めます。坊秀男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/69
-
070・坊秀男
○坊委員 ただいま議題となりました修正案について提案の趣旨及びその内容を簡単に御説明申し上げます。
修正案の案文はお手元にお配りいたしてありますので、朗読は省略させていただきます。
本修正案ば、国有財産法一部改正案の審議の過程におきまして、現行規定中に不備な点が指摘されましたので、改正規定を一項目追加しようとするものであります。
すなわち、国有財産法第二十九条及び第三十条におきまして、一定の用途に供させる目的で普通財産の売り払いをする場合には、その買い受け人に対して用途並びにその用途に供しなければならない期日及び期間を指定しなければならないこととし、かつ買い受け人が指定期日を経過してもなおこれをその用途に供せず、またはこれをその用途に供した後指定期間内にその用途を廃止したときば、当該財産を所管した各省各庁の長は、その契約を解除することができる旨規定しております。しかしながら、この規定によります用途指定を行なわないで普通財産の売り払いをいたしました場合、その買い受け人が当該財産を他に転売して不当に利益を得る等、売り払いの趣旨に著しく反するがごとき行為をいたしましても、現在国は法的に何ら必要な措置をとることができないことになっております。
しかして普通財産を処分するにあたりまして、財政面に果たす役割りのみならず、民生の安定、国民経済発展のための基盤強化等、社会的、経済的な効用をも強く要請されておりますわが国現下の社会経済情勢にかんがみ、かかる事例の起こり得る余地を放置しておきますことは、国有財産の持つ高度の公共性からして適当でないと考えられますので、この際現行規定を改正し、今後普通財産の売り払いをする場合は、原則的に買い受け人に対しまして一定の用途に供させることを義務づけることとして、普通財産売り払いの適正を期し、その有効適切な転活用をはかろうとするものであります。
以上が本修正案の提案の趣旨及びその内容であります。何とぞ御審議の上すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/70
-
071・山中貞則
○山中委員長 これにて修正案の趣旨説明は終わりました。質疑を続けます。武藤山治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/71
-
072・武藤山治
○武藤委員 ただいま修正案が提出されましたので、それに関連をして確認をしておきたいと思うのであります。一つは、用途指定契約をした場合に、その指定の有効期間、これは一体どういうことになっているのか、それを今回のこの修正に基づいて年限を変える意思があるのかどうか、ひとつ管財局のほうから答弁を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/72
-
073・江守堅太郎
○江守政府委員 用途指定をいたしました際に、現在その期間を指定いたしておりますが、これは譲与の場合は十年、減額売り払いの場合には七年、時価売り払いの場合には五年ということになっております。今回の修正案によりまして国有財産法が改正になりました後におきます扱いにつきましても、これと同様の扱いをいたしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/73
-
074・武藤山治
○武藤委員 従来の規定に抜け穴があった場合、時価売買の場合に、五年というのは少し短過ぎるのではないか。これをもう少し延長するほうが、中間にブローカーを介在する余地を除いたり、あるいは適正な指定が遂行される。そういうような見地からこの五年というのをもっと延ばすことの検討に対してはどのようなお考えを持ちますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/74
-
075・江守堅太郎
○江守政府委員 用途指定をいたしました際に、この用途指定をいたす期間をどのくらいにするかという問題は、いろいろ検討をいたさなければならない問題がございます。五年よりももっと長くしたほうがいいのではないかというような御意見も十分わかるのでございます。ただ何と申しましても、こういった用途指定ということは、個人の、あるいは企業の財産に対します大きな制限でございまして、一方において制限をつけなければならないという事情と、制限を受けた財産を活用する際に、こういった制限が非常に困るという、その両面をよく考えまして、適当な期間をつける必要があろうと思うのでございます。したがいまして、いわば個人の財産権、一般の財産権に対する制限をどの程度まででとどめるかという問題をいろいろ慎重に考えておるのでございますが、私どもといたしましては、やはり従来五年といたしておりました点をそのままやっておったほうがいいのではないかというふうに考えます。なお五年と申し上げましたが、これはその用途に供する期間が五年ということでございまして、ある工場に売り払ったという場合を想定いたしますと、その工場をまずつくって、それからその仕事をしなければならないわけでございますが、工場をつくるまでの期間を二年と考えております。したがいまして、それと合わせますとほぼ七年ということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/75
-
076・武藤山治
○武藤委員 そういう点を私ども協議をいたした際に、各地における国有財産の払い下げをめぐって非常に短い期間に転売がなされておる。あるいは公共団体に払い下げた際に、それを民間に転売をしてしまう、こういう例もあるわけであります。したがって、この年限の場合には、今回の法律改正を契機にもう一回十分検討して、どういう場合には五年をもっと延長したほうがいい、あるいはこういうものについては五年が適当である、こういう点の再検討をすべきであると思いますが、またするような考えになっていただけるかどうか、ひとつ局長にもう一回念を押しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/76
-
077・江守堅太郎
○江守政府委員 御趣旨の線に沿って十分の検討をいたしたいと思います。ただ従来の経験から申しますと、やはりこの辺がいいのではないかということはただいま考えておりますが、十分検討いたしまして善処いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/77
-
078・武藤山治
○武藤委員 それからもう一つ、この政令事項で用途指定をしない場合の具体例をずっと記載されておるわけであります。その前段のほうはしごくけっこうだと思いますが、七項目目にある現況時価の二割以上の有益費を投じ、かつ原価額の五割以上当該土地建物の時価を騰貴させたものに対しては、この場合には用途指定をつけない、こういうことになっておるようでありますが、どうもこういう場合には用途指定をつけなくてもいいという積極的な意義がよく理解できないのでありますが、具体的によく御説明を願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/78
-
079・江守堅太郎
○江守政府委員 その売ろうといたします国有財産につきまして、その維持あるいは管理等について相当の有益費を投じた、そういったためにそのものの値段も非常によくなったというものにつきましては、国が売り払います際に、やはり売ったあとでその処分について一定期間こういう目的に使わなければならぬという制限をつけますことは、やはり少し穏当を欠く面があるのじゃないかということで、従来ともこういう扱いをしておるわけでございます。この国会のほうでの修正案を御提案になるということがきまりましたのが一昨日でございまして、きのう一日いろいろ政令ではずすというものはどうするかという点を考えたのでございます。その際、従来の扱いで、はずしておったものというようなもので妥当なものと思うのは大体この政令で残そうという方向で考えまして、考えておるのであります。今後こういったものの運用によってもし御指摘のような非常にこれによってかえってまずいというような場合が起こりましたらまたあらためて検討したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/79
-
080・山中貞則
○山中委員長 関連質問を許します。堀昌雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/80
-
081・堀昌雄
○堀委員 実はここに書いてあることば二割の有益費を入れてやる、そのことはその使用している者の都合だと思います。何もその土地の価格あるいは建物の価格を上げるために、評価を上げるために二割の有益費をそこへ投入したのではなくて、使用している者の便宜上、自分の使用している目的にかなうために何らかのそこに措置をしたのであって、だからその売り払いのときにその二割のものについては控除するという、その点については私は問題がない。しかしそれによって五割以上の評価が上がるということは、それはまた五割以上の評価の上がり方に問題がある。その二割以上の有益費を投下したことによって上がったのがはたしてどれだけであって、自然的な条件のためにどれだけ上がったのであるかということは、きわめて判断は困難な問題もあるし、特に前段の借りている者の都合によってそうしていること、それだけが理由になってあとは用途指定ができないのだというのは、これは立場を変えてみるならば、一旦貸した以上は用途指定ができないと同然になるじゃないか。そういう政令の規定があれば何らかのあれを必ずします。そこに二割以上の費用をかけたものは用途指定が自動的にはずれるのだという裏側の措置に道を開くことになる可能性がある。だからそのことは国として必要だからその使用者にそれをこういうことをしてくれといったのならばこれは話は別だけれども、使用者が自分の使用目的のために自己の利益に基づいて行なっていることについて、それは用途目的を指定するのはおかしいのだということにはならないのだ。だからその点については、この問題はそのことと用途指定の問題は別個でありますが、その中に書かれている二割のものを差し引いて売り払うかどうかという問題については、金を投じたものはそのままということでなくて、その分は差し引いてやってもいい。そのことの内容はいいけれども、しかし用途指定からはずすということにはならぬのではないか。この点はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/81
-
082・江守堅太郎
○江守政府委員 有益費の問題は、これを売ります際に本来ならばこれを控除してお売りしなければならないわけですが、この際はこれを控除しないで時価のまま売るということでございますので、国にとって非常に有利な売り払いになるわけであります。したがって反射的な利益と申しますと申し過ぎるかもしれませんが、まあまあ用途指定はつけなくていいかと思います。それから土地の値上がりその他が五割以上になったという場合に、その貢献の度合いがはたしてその本人のいろいろな事情に基づくものなのか、周囲の土地の値上がりその他の事情によってくるものなのか、これはいろいろ個々の問題によって、一つ一つの事例によって異なってくるわけであります。私どものいままでの行政の経験から申しましてこの程度くらいのものまではよかろうということで、従来からこの通達によってやっておったわけでございます。この点はたして、それで十分いいかどうかという点については、今後とも十分検討いたしたいと思いますが、差しあたり、はずすというものの中からは、従来ともこういう扱いをしておりましたので、この際はずしておきたいということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/82
-
083・堀昌雄
○堀委員 いや、私はいまの、従来からやっていたからということは一つ理由としてあると思うのですが、この修正の目的というのは、要するに、いまのようにもし借りているものがそこで何か問題を設定して、有益費を二割投ずることによって用途指定からはずれるのだということの効果を私は見ているわけです。だから、有益費をそういうことにすることについて、ともかくそれは国の必要に応じてやるのだということなら、これはもう用途指定を免除してやっていいと思うんですよ。こちらからの理由で向こうが金の負担から何からしているものについて、それを払い下げたときにそうするのはおかしいと思うのですが、向こうの都合でかってにやっているということならば、今後もし用途指定をはずしてもらうという意図を持つならば、これをルールを拡大解釈していけば、借りているやつがどんどんそこでいろいろなことをやったら、結局その用途指定がはずれてしまう。そうすると今度の修正の意図とやや食い違いが生ずるのではないかという感じがしますから、だからその点を取り上げているわけです。せっかくこういう修正をするなら、修正の意思というものがやはり十分生かされて、抜け道はやはりふさいでおかなければいけないのじゃないか。抜け道をふさごうとして今度の修正が出ているのに、さらに依然としてその中にその抜け道を残しておくのでは、私は今度の修正の意義が筋が通ってこないのじゃないかという感じがするので、いま伺ったわけです。だから、いまの場合、非常に急な場合だからこれまでの政令にあるものは一応そのまま当面は置いておくけれども、しかしいまのような論議の結果として、もう一ぺん再検討が行なわれるというのならば、私は何もきょうすぐこれを取り除けということにこだわりませんけれども、この修正の意図というものはやはり政令との関係において生きてこないと、修正案で水の漏れないようにしようと思ったら、依然として水の漏る穴があったというのでは困るということなんですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/83
-
084・江守堅太郎
○江守政府委員 ただいま考えておりますのは、まだ政令の案の段階でございまして、政令をつくりますまでに各省とも相談しなければなりません。いま私どもが考えておりますのは大蔵省関係だけのことでございまして、特別会計などについても十分検討いたさなければなりません。したがいまして、政令の内容そのものにつきましてまだこれから十分検討を要する問題がたくさんございますので、御指摘のいまの問題は、従来非常にケースが少なかったようでございます。したがいまして、今度の政令に載せるかどうか、政令に載せまして原則からはずすかどうかということについて十分検討させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/84
-
085・武藤山治
○武藤委員 ただいまお尋ねしようと思った点を答弁いただきましたからこれでやめたいと思いますが、いま堀委員がおっしゃいましたけれども、使用、収益を上げるために、あるいは自己の使用目的をかなえるために投下したという場合は、すでに使用者はその利益を受けるのですからね、自分で投下したものをね。そういう場合を一括にこの規定に当てはまるようにしないで、さらに細分化するとか、何かそういう検討を十分するということを約束してもらって、私は質問を終わりたいと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/85
-
086・江守堅太郎
○江守政府委員 御趣旨に従って十分検討をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/86
-
087・武藤山治
○武藤委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/87
-
088・山中貞則
○山中委員長 ただいま議題となっております各案中、国有財産法の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案並びに国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の各案に対する質疑はこれにて終了いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/88
-
089・山中貞則
○山中委員長 これより討論に入ります。
通告があるので、これを許します。武藤山治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/89
-
090・武藤山治
○武藤委員 ただいま議題になりました国有財産法の一部を改正する法律案並びに国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、二法案に対しまして、日本社会党を代表して反対の意思を表明いたしたいと存じます。
今回の改正の、その内容そのものにはさほど私たちの反対をする具体的な条文はないのでありますが、御承知のように私どもは国会審議の案件というものが減ったり、あるいは承認事項というものが減らされていくという傾向は好ましくない。かつての輸出入銀行法の改正やその他、出資金を、決議事項で一切国会の議決を必要としないという改正の際に、社会党は反対をいたしております。その趣旨は、国会はあくまでも最高の議決機関であり、国民の意思をいつもここに集中的に表現をして検討するという場でありますから、国会の議決事項というものが減るような傾向は、わが党としてはとらざるところであります。したがって、今回公園もしくは広場、公共用財産、これらの取得の場合、あるいは減少の場合に、従来三百万円であったものを三千万円に引き上げる、三千万円であった一年間の合計額を三億円に引き上げる、こういう単価を引き上げることによって国会審議にかかる案件が減らされていく、あるいは審議の機会というものが減少していく、こういう傾向は好ましくないと私たちは判断をいたすのであります。さような理由から本国有財産法の一部を改正する法律案に反対を表明いたします。
国際開発協会への加盟に伴う措置に関連いたしましては、すでに本会議あるいは各委員会において議論をされておりますとおり、いま政府はわが国が世界の一等国になる、あるいは先進国になるという宣伝のもとに、外貨の非常な減少の時点、あるいは金融の非常に困難な、情勢を乱すような経済情勢の段階で、これら先進国のクラブに入るということは、私どもとしては時期尚早であり、さらに対岸貿易である中国や朝鮮、共産圏等の関係というものを、私たちが将来へ展望を持つときに非常な憂慮をせざるを得ない問題が含まれておる。私たちは積極中立的な立場から、共産圏国家ともあるいは資本主義国家とも平等互恵のもとに親善友好の経済外交を進めろというのが私たちの主張でありますから、私たちはかような資本主義グループに日本が即座に加盟するという今日の傾向に対しては、賛成をするわけにいかないというのが反対の理由であります。
以上簡単でありますが、二法案に対しまして、社会党を代表しての反対の討論にかえたいと思います。(拍手)
なおこの際国有財産法の一部を、議員提出によりまして修正をいたす案が出ておりますが、これに対しましては国有財産が、中間に介入するブローカーやあるいは買い受け人の悪意によって、これが悪用されないように保障するための改正であります。これは本委員会の山中委員長の鋭敏なる判断によって、即座に改正が通過する運びになったことは、社会党として賛成の意を表したいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/90
-
091・山中貞則
○山中委員長 竹本孫一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/91
-
092・竹本孫一
○竹本委員 ただいま議題となりました国有財産法の一部を改正する法律案に対し、私は民主社会党を代表いたしまして賛成の愚見を表明せんとするものであります。(拍手)
最近の経済事情に顧みまして、国有財産の管理、処分はきわめて重要な意義を有するものでありますが、特に最近の土地価格の急激なる上昇により、今後は一そうその重要性を加えていくものと思います。たとえば、国有財産の総額三兆四千百九十三億円のうちに、土地は二一・一%を占め、七千二百十四億円に達し、その面積もわが国の総面積の四分の一にも相当いたしております。都市においては、最近の急速な発展と市街地の整備に即応して庁舎などの集約化や立体化が進められ、行政財産の使用の一そうの効率化、配置の適正化が特に要請されておるわけであります。
また、道路、河川、海浜地、公園、港湾等の公共用地につきましては、従来その管理が比較的ルーズであったよう見受けます。現状を必ずしも正確に把握していないきらいがあったと思うのでありますけれども、これらについても公衆の共同利用と私的利益の調整をはかるなど、管理体制の整備がこの際必要であろうと思います。
いずれにいたしましても、こうした膨大な国有財産をかかえて、台帳の整備が、なおはなはだ不完全であるということは、特に遺憾な点でありまして、もはや戦後ではないという段階でございますので、早急に台帳を整備して、正確な実態の把握ができることを急がれるように希望いたしたいと思います。
今回の改正案は、国有財産の管理や処分の適正化と、その運営の円滑化をはかる上から、おおむね妥当なものと認めます。もちろん国会の審議権を軽視する方向につながるものであってはなりませんし、また今後の国有財産の行政は、従来のしきたりにとらわれることなく、新しい時代の新しい要請に応ずる合理的な管理、処分の方式を打ち立てまして、普通財産の処理を計画的に、また社会的考慮をもって行なうとともに、行政財産につきましても、大蔵大臣の統轄権を積極的に推し進めて、効率的利用を促進し、国有地の最も能率的な活用をはかられたいと思うのであります。
また、修正案につきましては、先ほど来お話のありましたように、従来国有財産を買い受けて、それを短期間で転売して、不当な利益をむさぼっておる例もありますので、この際買い受け人に対して適切な措置を講ぜんとするものでありますので、きわめて妥当な措置だと存じます。
以上申し述べました理由によりまして、私は、国有財産法の一部を改正する法律案並びにその修正案に賛成をいたしたいと思います。
次に、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に対しまして、賛成の意見を申し述べたいと思います。
低開発国の人口は世界の人口の七〇%を占めておりながら、総生産においては、わずかに二割程度にすぎません。その農業生産性もきわめて低く、特に三十六年から三十七年にかけましての不作は、低開発国の経済に大きな打撃を与えております。また鉱工業生産の伸び率も、一九六一年の九・二%に比べて、六二年は六・二%に低下をいたしております。また最近の一次産品の高騰で、低開発国の輸出は一時的には好転をいたしましたけれども、長期的には対外債務の増大などで、国際収支の見通しは、むしろ悲観的要素を多く含んでおるのであります。
自由主義工業国の政府ベースの援助は、五六年の三十二億ドルから六二年は六十億ドルと約二倍になっておりますけれども、民間ベースの援助は大体二十四億ドル程度で、五六年から横ばいになっておるような状態で、特に民間投資に停滞傾向が見られるわけであります。
総じて先進国と低開発国との経済発展の開きは最近はむしろ拡大する傾向を増し、低開発国からは援助量の増大と援助条件の緩和を求める声が強くなっております。
低開発国に対する援助を二国間援助と国際機関を通じての援助とに分けて考えますと、二国間援助が全体の約九〇%近くを占めておりますが、これは、たとえば欧州諸国においてはアフリカを中心に、米国は中南米に、わが国は東南アジア、こういうふうに政治的、経済的、歴史的な結びつきの深い関係の地域に集中することはまことにやむを得ないところでありますけれども、今後は国際機関を通ずる援助を一そう活発にすることがむしろ必要であろうと思うのであります。これによってひもつき援助の弊害も除去されるのでありまして、今回提案の国際開発協会への追加出資も、こうした意味において意義のあるものだと信ずるのであります。
かくて、世界経済の調和のとれた発展をはかるためには、低開発国自身の努力はもちろん必要でありましょうけれども、それとともに先進国の強力な援助が一段と必要となってくるのでありまして、私は、この観点から、本案に対しても賛成をいたすものであります。
以上であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/92
-
093・山中貞則
○山中委員長 これにて討論は終局いたしました。
続いて順次採決に入ります。
まず、国有財産法の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案について採決いたします。
まず、坊秀男君外二十三名提出の修正案について採決いたします。
おはかりいたします。本修正案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/93
-
094・山中貞則
○山中委員長 御異議なしと認めます。よって、本修正案は可決いたしました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いた原案につき採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/94
-
095・山中貞則
○山中委員長 起立多数。よって、本案ば修正議決いたしました。
次に、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/95
-
096・山中貞則
○山中委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。
ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/96
-
097・山中貞則
○山中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
〔報告書は附録に掲載〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/97
-
098・山中貞則
○山中委員長 次会は、来たる二十八日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時三十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604629X03719640424/98
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。