1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年五月十四日(木曜日)
午前十時三十五分開議
出席委員
委員長 森田重次郎君
理事 渡海元三郎君 理事 中島 茂喜君
理事 永田 亮一君 理事 藤田 義光君
理事 川村 継義君 理事 佐野 憲治君
理事 安井 吉典君
大石 八治君 大西 正男君
奥野 誠亮君 亀山 孝一君
久保田円次君 鯨岡 兵輔君
四宮 久吉君 武市 恭信君
登坂重次郎君 三池 信君
村山 達雄君 森下 元晴君
山崎 巖君 和爾俊二郎君
秋山 徳雄君 阪上安太郎君
重盛 寿治君 華山 親義君
細谷 治嘉君 栗山 礼行君
門司 亮君
出席国務大臣
自 治 大 臣 赤澤 正道君
出席政府委員
自治事務官
(行政局長) 佐久間 彊君
自治事務官
(選挙局長) 長野 士郎君
自治事務官
(財政局長) 柴田 護君
委員外の出席者
警 視 長
(警察庁交通局
交通企画課長) 宮崎 清文君
文部事務官
(初等中等教育
局財務課長) 岩間英太郎君
自治事務官
(行政局行政課
長) 倉橋 義長君
専 門 員 越村安太郎君
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五月十四日
委員大石八治君、亀岡高夫君、亀山孝一君及び
三池信君辞任につき、その補欠として中川一郎
君、四宮久吉君、篠田弘作君及び鯨岡兵輔君が
議長の指名で委員に選任された。
同日
委員鯨岡兵輔、四宮久吉君、篠田弘作君及び中
川一郎君辞任につき、その補欠として三池信君、
亀岡高夫君、亀山孝一君及び大石八治君が議長
の指名で委員に選任された。
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五月十三日
大規模な公有水面の埋立てに伴う村の設置に係
る地方自治法等の特例に関する法律案(内閣提
出第一三五号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
地方自治法等の一部を改正する法律案(内閣提
出第三三号)
地方自治に関する件
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/0
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001・森田重次郎
○森田委員長 これより会議を開きます。
地方自治に関する件について調査を進めます。
質疑の通告がありますので、これを許します。阪上安太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/1
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002・阪上安太郎
○阪上委員 きょう私が質問いたしたいと思っておりますのは、ただいま行なわれております福島県知事選に関しまして、選挙管理委員会の行き過ぎだと考えられるような事例が二、三出ております。そこで昨日急速現地に調査に参ったわけでありますが、選挙の自由という観点から考えるならば、明らかにこれは適当でないという印象を受けて帰ってきたわけであります。なお現地では、いろいろな関係から六五%以下の投票率であるならば社会党に有利である、それから七五%までアップするということになると、これは自民党の候補者に非常に有利である、そういうことがまことしやかに住民の間に宣伝をされておったという状態であります。そういった選挙の雰囲気の中で一部選管がとった態度が、憲法十五条の精神からいうならば行き過ぎであろうという点が出ておるわけであります。これについて自治大臣は、全国参議院議員の選挙以外についてはすべて管理、指導の全責任を持っておられますので、このことについて大臣に見解等を伺いたい、かように考えておるわけであります。
その一つは何かといいますと、選管が婦人会、青年会、消防団を通じて各戸に配布しようとするステッカーがあるわけであります。そのステッカーには知事選についての「投票済の家」ということを明記いたしまして、そしてそれを各戸に配布しよう、こういうような計画であったわけであります。そこで現地でいろいろと調査いたしましたところ、すでに県の選管はそれは行き過ぎのおそれがあるのでやめろということを実は指示しておるということでありますが、この種の具体的な例があがっておるのは福島県の某市の選管がそれをやっておる、こういうことなんであります。こんなものをひっぱり出す必要もないでしょうけれども、こういった外から見て明確にわかるようなステッカーを某市の公明選挙推進協議会、それから某市の選挙管理委員会の名前で出した。そしてこれはどういう意図かということを調べてみたのでありますが、これはやはり棄権防止をねらいとしておる、こういうことであります。そしてどういう効果を考えたのか、棄権防止のどんな効果がこれによって出てくるのか、こういうことをあれいたしますと、これにつきましては、やはり家に張っておくことによりまして、その家は選挙に行ったのだということが明白になる、こういうことのようであります。県の選管の見解によりますと、これは配布されてもこれをもらった者が張らなければ別に問題ではないじゃないかというような考え方があること、それから棄権防止のためであるから相当思い切ってやってもいいのじゃないかというような見解があるのと、いま一つはこれを禁止するということについては、善意のものであるならば禁止するわけにはいかないという基本的な立場をとっておるけれども、今回の場合はかなり大げさにこういった形で行なわれるので、もしものことがあってはいけない、たとえば村八分とか何とかの結果を招来するようなことになってしまってはいけないのじゃないかという意味において、一応これは張るな、張らすべきでないという指示をした、こういうことでございます。
それからいま一つ問題になりますのが、これを配布するのに婦人会、青年団、消防団等を通じて張らすつもりであったということは地元の選管もはっきり言っておる、こういうことなんであります。そうなりますと、これは選管が出したものでありますから、婦人会、青年会、消防団というようなものが自発的にこれをつくってやったのではないのである。したがって、選管がやったのであるから、選管の行政事務を下請するというかっこうになっている。この点につきましても、こういった団体は明らかにこれは行政団体ではないのであります。在来からもこの委員会で問題になっておったように、そういうことをやらすということは適当でない。もしやらすとしても、これは市の選管事務に携わっておる職員等を通じてやるべきであるというような考え方が出てくるわけであります。そこでいろいろと現地でもこの問題を正しく処理する意味の話し合いを選管ともいたしたのでありますけれども、自治大臣としてはこういったことをやることについて、しかもいまいったような弊害が伴ってくるおそれがありますし、ことに選挙の自由というものを圧殺するような結果になりはしないかというおそれもありますが、これに対してこういうことをやることは適切であるとお考えになりますかどうでありますか、伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/2
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003・赤澤正道
○赤澤国務大臣 有権者には投票の自由も、投票せざる自由ももちろんあるわけでございます。その様式についてはいかがかと思いますけれども、それが少なくとも第三者の、つまり消防団あるいは婦人会などの手を通じてどういう形で張ろうとしたのか、あるいはあとで投票の名簿を点検するとか、あるいはその場に来た人をマークしてその家に張ることに計画したのか私は存じませんが、そういうことであったらもちろん行き過ぎであるのは言うまでもありません。ただ選挙が終わった際に、かりに投票所にそういうものを備えつけて、私は投票しましたよという人が、自由にそれを持ち帰って自宅にかってにお張りになるんだったら、まあそれは御自由じゃないかと思いますけれども、いま阪上委員が言われたような、そういう前段のような懸念がある場合には、私は適当でないと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/3
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004・阪上安太郎
○阪上委員 これは私のほうの調べによりますと、先ほども言いましたように、やはり某市の選管では婦人会、青年団、消防団等を通じて事前に配布するという計画であったようであります。これははっきり言っておりました。しかしながら、私どもも最初にこのステッカーを手にしたときに、これが事後張られるということならば問題はちょっと違うニュアンスを持ってくるという考え方を持っておったわけでありますが、やろうとした意図は事前に配布して、そして張らせる、こういうことであったようであります。そういうことは、あとから申し述べますいろいろな事案についても言えることなのでありますが、ただ棄権防止という一つの指導が選挙公示後に、直接にこういった形で行なわれるということについては、かなり問題が深いのじゃないかと思うのです。少なくとも啓蒙宣伝に類する棄権防止というたてまえをとるということであるならば、これは公示前に、引き続き一年なり二年なり三年なりと、執拗にそういう運動を展開していくべきだ、こういうように考えるわけであります。選挙に入りまして、しかも投票の二、三日前にこういったものを配布して、しかも投票が終わったものについてすぐこれを張らすということになりますと、はたしてそういう行為が指導としては適当な指導であるかどうか。ということは、選管が棄権防止を指導する場合に、地元の選挙人がこういうものを張られるということによりまして、自由だとはいうものの、張らなければ村八分にされる傾向が出てくる。あるいはまたこういったものを配っていくプロセスの中で、戸別訪問と関連するような事案が出てくるおそれが十二分にある。これは過去においてもそういうことは言えるのでありますが、例がないことではありませんので、戸別訪問をやる機会というものをむしろ助長してみたり、それから選挙の自由というものを圧殺する、そういうような結果をもたらすような行為を指導するということについては問題がある。そんなことを言えば、手段を選ばず棄権防止をやれというならば、何をやってもいいのかということになるのであります。したがって、選管が行なう指導というものは、公正な選挙をやるためにはその限度があるのじゃないか、こういうように私は考えるのであります。在来とも、こういった大げさなものでなくても、選挙が終わりますと投票済みの小さなものを配っているという例もなきにしもあらずでありますけれども、事前にこういうことをやることについての制限というようなものを加えていく必要があるのじゃないか。棄権防止運動だから非常にけっこうだ、何をやってもいいというようなことで、むしろこういったものをやっても差しつかえないのだという考え方に立っていることについて、それが法的に何らの違反にもならないのだから差しつかえないのだということで済ましておくことは、私は指導上適当ではないじゃないか、こういうように思います。重ねて御見解を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/4
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005・赤澤正道
○赤澤国務大臣 先ほど申しましたように、そういうものを婦人会あるいは青年団等を動員して投票前に配布するということは、それを理由にしての戸別訪問が合法化される可能性というものも多分にあるわけでありますから、やはり限界は、たとえばそういうステッカーを張るといたしました場合には、自由に、張りたい人が投票後におやりになる、これが限界であろうと思います。ただ、それじゃ期間中にいろいろな棄権防止の活動について、何をやってもいいかということになりますと、これは自然に限界ができてきている。たとえば臨時に、啓発のための活動として、選管がトラックにいろいろな標語などを書いて、マイクでずっとふれて歩くとか、あるいは投票方法、また選挙違反に対するいろいろな注意、たとえば酒食の提供をしてはならぬ、受けてはならぬとか、いろいろなことを言って歩く、ここらが限界じゃないか。ただ、私たちは自分でも経験があることですが、そういうステッカーに限らず、とにかく戸別訪問の種をさがそう、これは皆さんも同じでしょうけれども、何か種がないかといってさがした結果、そういうものを各戸に持って回るとか、あるいは、よくありますが、いろいろな署名運動を展開するとか、これは選挙には関係はないと言い条、これを期間中にやることは戸別訪問の種になることでございますので、そういったことについては綿密に規制すべきであるかもしれませんけれども、しかし、そういった点についてはだんだん常識が支配するようになりまして、いまの状態でもそういうことが投票の自由あるいは投票せざる自由にそう大きな関係があるとは考えぬ次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/5
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006・阪上安太郎
○阪上委員 したがって、棄権防止等をやる場合には、いま大臣が言ったように、選管がその地区へ行ってマイクその他によって、いまあなたのところは、現何時何分の段階においては何%の投票率だということは、私は大いにやったらいいと思う。しかしながら、こういったものを事前に配布しておいて、そうしてやるということについては、いま言ったようないろいろな弊害が出てくる。しかもこれが、いまの常識としては選管がこういうことをやることは当然のことじゃないかというふうに考えられておる向きがあります。それがこういうふうな大げさなものになってきて、初めて少しく首をかしげるというようなかっこうになっております。この問題については将来ぜひ御検討を願いたいと思うのであります。
それからいま一点は、やはり同じ某市なんでありますけれども、ここで官製はがきに文書を刷りまして、そうしていま行なわれている知事選は、これはまさに重大な知事選である、したがって、この際みな棄権することなく投票されることを強く望む、ついてはあなたが責任者となって棄権防止に極力つとめられたい、というところの官製はがきを、市の選管委員の名前で準備いたしまして、まさに配付しようとする段階にあった。そしてそれは一種の委託でありまして、そういった棄権防止運動を委嘱するという委嘱状に類するような形だ。これがまた、選管と話し合いをしてみましたところが、これも婦人団体の会長であるとか、青年会の会長であるとか、消防団長であるとかいうような者に配る予定であったということを明白に言っておる。ところが、これもやはり県選管のほうで察知したようでありまして、これも少し行き過ぎじゃないかというような観点からそれは配付しないほうがいいという注意をした。きのう私参りましたら、その前にこれを全部集めまして、約四千枚全部焼いてしまったというようなことであります。結果としては何も起こらなかったことなんでありますけれども、やはりそういったものに対しても、いままでよくこういったことがあったのでありますけれども、これは候補者がそういうことをやったならば、これはもう明らかに違反であります。しかし候補者がやっていけないことを選管がやった場合には違反にならぬというところに問題があるのじゃないかと私は思うのです。こういったことについて、これは法に触れないでしょうか、あるいは公務員の地位を利用したところの、いわゆる選挙法に規定してありますところのそういった関係に抵触するのじゃないか、こういうふうに私は思うのでありますけれども、この点はどうでありましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/6
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007・赤澤正道
○赤澤国務大臣 法律をこまかく調べてのお答えではございませんけれども、やはり私どもの考えとしては選管が平たく全部に、棄権を防止しましょう、投票所に行きましょうというはがきを配布するということは、私は差しつかえないと思いますが、ただ特定の者に棄権防止のためにかり出しをしましょうということであると、私は若干穏当を欠くのではないかと判断いたしますが、法律の面ではどういうふうになっておりますか、——法律的には、それが選挙運動とみなされた場合には、文書図画違反となる、こういうことになっておるようですが、私はそういう判断を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/7
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008・森田重次郎
○森田委員長 この際、阪上委員に申し上げます。
福岡県においては目下選挙を実施中でもありますので、良識ある阪上君のことゆえ手抜かりのないことと存じますが、いやしくも選挙干渉と思われるがごとき質疑は慎んでいただきたいと思います。念のためお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/8
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009・阪上安太郎
○阪上委員 良識あると言われましたが、私は初めからそういう配慮は十分いたしておりますので、御心配いただく必要はないと思います。十二分にひとつ委員長の御意思をそんたくいたしまして、そういうことのないような質問に持っていきたいと考えます。
それからいま一つは、この十四、十五日に地元で小中学生を総動員いたしまして、それから、それで編成いたしております鼓笛隊を総動員して、たまたま交通安全旬間に入りますので、交通安全のパレードをやる、これはどうも現地で伺いますと知事選以前から計画されておったことのようであります。したがって、学校長は大体そういうことについて了承し、教育委員会も了承しておるというような形のようであります。たまたまそこにもってきて投票日が翌々日に迫っておるので、棄権防止運動もこの中に織り込んでやっていこう、こういうふうに地元は考えて進めておった。これに対して県警本部では、伺いましたところ、交通安全運動を非常にやらなければならないし、ことにこれは児童そのものの問題でやらなければならないということでありますが、しかし選挙のまっただ中であるので、しかも旬間は二十一日まで続くそうでありますので、そういう催しは選挙が終わってからやったほうがいいのではないかという注意をしているそうであります。注意をいたしましたということを、これは交通課長でありますが、はっきり言っておりました。ところが、どうも計画が進められてしまったので、いまさらやめるわけにいかないというのが市町村関係だ、こういうことであります。そこでこのことについていろいろ問題が出てくる。たとえば交通安全旬間に、最近では児童が一番輪禍にあうのでありますから、私は大いにいいと思うのでありますけれども、この十四日、十五日は学校を全部休みまして、そして振りかえといいますか、差しかえといいますか、そういった授業をやることによってやるということで、県選管の意向を聞きますと、やはり問題があるのじゃないかと思うので、そのこと自体は問題ないとしても、結果的にまずいものが出てくるのじゃないかと思うので、この点については県のほうからはそういうことをやりなさいという指導などは全然いたしておりません。が、しかし地元は、最初は交通安全運動で出発しておったが、その中でそれをやっていこうという考え方になって、実は首をひねっておるのだという意味のことを言っていましたが、これは、文部省おいでですか。——岩間財務課長さん見えておるようですから伺いますが、こういう振りかえ授業をやって交通安全運動をやるということ、そのこと自体どうだろうか。しかしこれは学校長が承認すれば、それで私はいい問題だと思いますが、事、選挙に関する問題で、そういった中で取り上げられていくということについて、私はひっかかるものがあるのですが、この点についてはどういう見解でしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/9
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010・岩間英太郎
○岩間説明員 大事な知事選挙でございますので、それに対して住民のできるだけ多くの意思が反映されるというふうな意味で棄権防止というふうな運動が盛り上がっておることは伺っております。また棄権防止のために鼓笛隊というものが、ただいま先生の御指摘がございましたように、交通安全の問題とあわせまして実施されるということも伺っておる次第でございますが、一般的に申しまして、学校の振りかえ授業等を認めます権限は、これは市町村の教育委員会にあるわけでございますが、私ども選挙とからめましてこういうふうな運動がされるということを必ずしもいいこととは思っておりません。そういう意味で私どものほうとしましては、振りかえ授業等、大げさと申しますか、そういうふうなことではなくて、授業に支障がないように、たとえば放課後に行ないますとか、そういうふうなやり方でやっていくほうが適当じゃないだろうかということで、県の教育委員会のほうもそのような指導をしておるということを伺っております。しかし事柄に関しましては、先生も御指摘ございましたように、そう悪いというふうなものではないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/10
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011・阪上安太郎
○阪上委員 それから子供に、一年先に例のまた風船を全部配っておるわけです。それで私、なるほど社会教育として、公民教育として子供に棄権防止という考え方を植え付けることが必ずしも全面的に否定されるべきではないと思うけれども、しかしそういった児童の段階でそういうことをすることそれ自体、文部省としてはそれもいいことだ、こういうようにお考えになっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/11
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012・岩間英太郎
○岩間説明員 選挙につきまして、ただいまの棄権防止というふうなことは確かに意義があることでございますけれども、選挙につきまして子供を利用すると申しますか、あまりいいことばではございませんが、子供がそれに使われるというふうなことは、一般的に申しますと、私どもは望ましくないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/12
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013・阪上安太郎
○阪上委員 もう大体問題はそれだけなんです。
警察は見えておりますか。——来てない。それではあとでまた質問いたします。
いま言いましたような選挙の自由、投票の自由、そういったものが何か棄権防止運動という名に隠れて侵されているような傾向が今回の場合ばかりでなく、在来の選挙の中にもずいぶん見受けられる。そうして諸外国に例のないような、たとえば町村等におきまして、投票率が九八%、九九%、こういうような投票率が出てくるケースが間々あるわけなんであります。こういった問題についての考え方としては、大体八五%程度というのが常識じゃなかろうかと一般にいわれております。そして病気その他の故障によって一五%程度は投票できないのだというようなふうに一般にいわれておりますときに、わが国においては実にべらぼうに、九八%、九九%というふうに、部落総ぐるみの投票が行なわれておる。こういうことなんでありますが、こういうことに対して、自治省では在来からそういう投票率の高いところに対しては表彰をしておられる、こういうことなんですが、今回の福島県の場合におきましても、何か前回の選挙に、国会議員の選挙でありましたか、たいへん投票率がよかったというようなことから、全国的に何番目かの表彰を受けておるということでありまして、何かああいったいなかでは、それを非常に名誉と心得て、そして一生懸命そういった意味からのかり出しが行なわれる向きが多い。いわゆる特定の候補者を何とかしょうという考え方に基づくものよりも、むしろそういったいわゆる表彰を受けるといいますか、そういったことに非常な関心を持ってかり出しが行なわれておる。こういった場合に表彰等をなさるということについて、相当これは考えなければいけない問題じゃなかろうかと思うのですが、えらいこまかい問題ですけれども、大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/13
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014・赤澤正道
○赤澤国務大臣 なかなかむずかしいきわどい問題だと思うわけでして、やはり棄権を防止することは、投票する自由、せざる自由、こういったことを害さない範囲で極力やるべきだ。それが何か投票を強制するという姿になることは言うまでもなく戒めなければならぬことでございますが、しかしよく新聞でも伝えますとおりに、山の奥からおじいさん、おばあさんを車に積んでまで投票所へ行って大事な一票を行使した、これは美談として載るわけでございまして、やはりそういった心がまえをつちかうということは、私は非常に必要なことであると思います。しかしそれが、先ほど前段に申しましたような弊害が出てまいりますれば、これはその点をまた戒めることを別に考えなければならぬと思いまするけれども、投票で非常に率がよかったというところを表彰するということは、私はあながち有害であるとは考えません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/14
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015・阪上安太郎
○阪上委員 それから名前はわかっておりますけれども申し上げません。某郡の某村におきまして、その村の選管の職員が公明選挙と書いた腕章をつけて——全部つけているそうであります。そうして村の吏員が全部選管の事務職員を兼務している。それが各戸を回り歩きまして、あなたのところは全体で五票ある。しかし病人がおるから、これはちょっと無理なこともあるだろうけれども、しかし少なくとも三票は確保してもらわなければならぬ、こういうふうなことを、全部が村の職員と両方を兼ねてそういう行動をやっておるということなのであります。これなども、私はいわゆる棄権防止に名を借りた少し行き過ぎじゃないかと思う。結論としてはそういわざるを得ないと思うのであります。そういう事例もあるということをひとつ御承知おき願いたいと思います。いずれにいたしましても、いま公職選挙法の改正の段階にありますが、その要点はいまのところそういったところには向けられていないように思いますけれども、どうも選管としても非常に取り扱いにくい問題だと思いますけれども、こういった棄権防止等の指導をやる場合には、やはり限界があるのだということをはっきり考えて、棄権防止そのものだけ考えれば思い切って徹頭徹尾やってもいいのだが、しかしえてしてそれから派生してくるところのいろいろな選挙違反を誘因することがある場合が多いので、したがって、棄権防止のために何をやってもいいのだという考え方は、この際一掃してもらわないといけないのじゃないか、こういうふうに考えるわけです。特にそういった点についての指導をお願いしておきたい、こういうふうに思います。
これで質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/15
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016・森田重次郎
○森田委員長 門司委員が見えるまで、暫時休憩いたします。
午前十一時十二分休憩
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午前十一時十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/16
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017・森田重次郎
○森田委員長 再開いたします。
地方自治法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。
質疑の通告がありますので、順次これを許します。門司亮君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/17
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018・門司亮
○門司委員 私は事務当局に率直に聞いておきますが、いままでの質疑応答の中で、当局の答弁で一つふに落ちないものがありますから、それをはっきり聞いておきます。
それは清掃関係で、現状のままで区に清掃事業を移すということは不可能である、できないのだというような意味の答弁が政府当局からされております。それはまだ処理場が十分にできておらない、そういうものができるのが四十三年ころになるだろう、こういうことがいわれております。そうだとすると、この案を提出されたこと自体がきわめて不見識だと私は思う。やれないことをどうして一体法律に書いて国会に審議を求めるかということです。これは国会としてははなはだ迷惑です。一体その辺はどうなんです。本気でこういう法律案を——本気でというと少し強過ぎるかもしれませんが、案を出されたのか、どうなのか。その辺の真意を事務当局からひとつ事務的に伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/18
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019・佐久間彊
○佐久間政府委員 政府といたしましては、今回の改正は、普通の市で処理しているような事務につきましては、都からできるだけ大幅に特別区へ移譲をする、そういう方針のもとに検討をいたして立案をいたしたものでございます。どういう事務を移譲するかにつきましては、地方制度調査会の答申に大体従いまして立案をいたしたわけでございます。清掃につきましては、地方制度調査会の答申も、これは原則として特別区に移譲すべきだということでございまするので、そのように私どもも考えたわけでございます。
ただ、ただいまお尋ねの点でございまするが、現在御承知のように一部の事務を除きましては、都におきまして汚物の収集、運搬から処理に至りますまで扱っておるのでございます。そこで、私どもといたしましては、少なくとも収集、運搬はできるだけ早い機会に特別区に移譲をすべきであるという考え方で検討をいたしたわけでございます。いろいろ検討いたしてみますと、現在終末処理場の施設がなお整備の途中にございまして、東京都の計画によりますと、大体四十二、三年ころまでには整備を完了いたしたい、こういう計画でございます。しかし、終末処理施設がどの程度整備をされました際に、この収集、運搬の事務は特別区に移譲できるかという点につきましては、整備の進みぐあいとにらみ合わせまして、なお将来検討をいたしたいと思っておりまするが、いずれにいたしましても、この事務移譲の一環といたしまして、清掃に関する事務も特別区に移譲するということにいたしまして、それから都に残したほうがいいものあるいは暫定的に、経過的に都に置いたほうがいいものというようなものにつきましては、実情に応じて政令で除外をしていくというたてまえがよかろうということで、御提案いたしましたように清掃に関する事務ということにいたしまして、「ただし、政令で定めるものを除く。」ということにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/19
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020・門司亮
○門司委員 いまの答弁ですけれども、最初私が申し上げましたように、政令でこれをやるからいいのだというようなものの見方でこういう都市行政というものは審議さるべきではないと考えておるのです。これらの、ことに大都市の行政というのは、大都市というもの、言いかえるならば大都市自体がほんとうに混然一体となった住民の利益集団であるということが、これは原則なんです。自治行政を論ずる場合に、これをはずれて議論をすべき筋はどこにもない。そう考えてまいりますと、ことに大都市の混然一体性からくる住民の利益集団である、したがって、その利益をいかに守っていくかということが行政上の最大の、あるいは最終の目的でなければならない。ところが、この法案を見てみるときわめて安易なものの考え方で、まあそういうことでいいのではないかということでこれを移していこう、やれない場合は政令ではずしていけばいい、こういう形になっている。そうなってまいりますと、混然一体としての利益集団である行政の中に、ある部分は行ない得るがある部分は行ない得ないという、こういうものが出てくる。そうすると一体性の中から出てくる利益というものに濃淡が出てきはしないか。ある地方は非常によくいっているが、ある地方は非常にまずい形になってきはしないか、いわゆる取り残されたところが依然として出てきはしないか。私は、こういうものがあるとするならば、現行のままでやはりそれを進めていく、そうして一体性が確保せられたとき利益が均てんするようになったときにこれを移していくということのほうが、むしろ行政の一体化からいけばそれのほうがいいのじゃないか。ある区は整っておるからおまえのほうへ一切やらせるが、ある区は整ってないからおまえのほうではやらせないということでは、大都市の一体性と行政の一貫性から考えてくると、混乱を起こす原因をそこにこしらえる、この行政の混乱は直ちに住民の不平になってあらわれてくる。こういうことを考えてまいりますと、今度のこの法案というものは、何か私は都区の問題が非常にやかましいものだから、ひとつ答申案の一部分を取り入れてそしてお茶を濁そうとするような、平たく言えばそういう考え方のもとで出された法案のように私は考えられてならない。
そこで、さらにお伺いしておきたいと思いますことは、一体東京都と区の間の問題を政府はどう見ておるかということでございます。いま申し上げましたような角度からこれを見ておるとするならば、もう少しはっきりしたものがなければならない。ただお茶を濁すという程度だけの問題であってはならないと私は思う。少なくともこの都区の問題は非常に長い問題でありますから、思い切った政策をこの際とる必要がありはしないか。いずれ大臣がおいでになりましたら、根本的なものの見方についてお聞きをいたしたいと思いますが、事務当局として一体どうお考えになるかということを結論的に聞いておきたい。と思いますことは、いまの自治区をそのまま存続することがいいのか、あるいは行政区にこれを切りかえることがいいのかということが、事務的にどういうふうに市民にあるいは住民に影響するかということを、この機会に最初に聞いておきたい。これから先少し実態について聞きたいと思いますが、その前提として一応事務当局から見た行政のあり方はどうすることが一番よろしいかという御意見を、政治的な配慮を抜きにしてひとつお話しを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/20
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021・佐久間彊
○佐久間政府委員 特別区の性格につきましては、自治区とするかあるいは行政区とするかということにつきましては、先生のお説のとおりに従来いろいろな論議があったわけでございます。私ども事務当局としてというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、東京都のような膨大な地方公共団体になってまいりますと、これを行政区としてまいりますことにつきましては、住民の意思を行政の上に反映をしながら、きめのこまかい住民のための身近なサービスをやっていくということができにくいのじゃないか、さりとてこれを普通の市町村と同様な完全な自治体といたしますことにつきましては、先ほど先生も御指摘になりましたように、二十三区を通じまして一体性を保ちながら統一的に処理する必要のある事務が相当あるわけでございますから、これもとるべきではない。そこで私どもといたしましては、ちょうどその中間的な、いわゆる制限自治体という形で区におろして処理させることができるものにつきましてはできるだけ区に移譲して処理させるようにし、しかし、特別区の存する区域を通じて、一体的に、統一的に処理する必要のあるものについては、都が処理をしていく、そういう形の制度が一番実情に合った適当なものであろうという考え方に立っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/21
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022・門司亮
○門司委員 あとは大臣にお聞きしますが、もう一つ事務的に聞いておきたいと思いますことは、いま東京都の推定人口がどれくらいあるか、住民登録による人口と推定人口との差がどのくらいあるか、その点お調べがついているならひとつはっきりしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/22
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023・佐久間彊
○佐久間政府委員 昭和三十五年十月一日の国勢調査人口が九百六十八万三千八百二でございます。それに対しまして昭和三十八年十月一日現在の推計人口でございますが、この推計人口の出し方でございますが、国勢調査人口を基準といたしまして配給台帳の登録数を増減し、参考にいたしまして推算いたしたものでございますが、それによりますと一千四十二万八千二百六十二ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/23
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024・門司亮
○門司委員 私はそれを聞いているのじゃないのです。推計された人口といってもそれは法律上の推計人口であって、登録されている人口であることに間違いはない。私が聞いているのは、登録されている人口と、それ以外にどのくらいあるかということであります。平たく申し上げてみましょう。代議士諸君がここにもたくさんおいでになりますけれども、代議士諸君でもここに住民登録してある人は少ないと思うのです。そういう形で東京都の実態をつかむことができないで幾ら東京都の議論をしたって始まらぬ。東京都の実態がどうあるかということを、われわれはこの機会に知りたい。東京都の人口からくる実態——登録された者、これは登録の集計であります。ただ法律用語として推計といい国勢調査といっている。調査の方法が違っているだけです。私が聞いているのはそれじゃなくて、これは財政その他すべてに関連を持っているから聞いている。東京都を論ずる場合に、それがわからぬで幾ら論じたってほんとうの東京都は出てこない。ほんとうの東京都を出してもらいたいということです。だからまずその一つの段階として住民の数、これはほんとうに大ざっぱでいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/24
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025・佐久間彊
○佐久間政府委員 お尋ねの点につきましては正確な資料は持ち合わせておりませんけれども、登録をしてございませんで実際に東京都に居住いたしております者が、先ほど申し上げました数字のほかに二十万ぐらいあるだろうという推定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/25
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026・門司亮
○門司委員 いまの答弁の数字、私は非常に過小な見積もりだと思います。もう一つの人口の見方の中に、昼間人口と夜間ほんとうにそこに寝泊まりしている者の人口というものがございます。清掃の問題にいたしましても、その他すべての問題を議論をする場合には人間が必ずついて回るものです。ここに住民登録がないからといって、ここで用を足さないわけにはまいりません。そういうものが対象になって初めて清掃事業というようなものの企画が立つのであって、だから東京都が一体どれだけの人口を見て、そうして住宅の政策なり清掃事業というようなものの案を立てているかということです。もしこの数字に誤りがありとするならば、どんなに東京都が毎年毎年仕事をしても実態と合わない。実態とは似ても似つかぬものができてきて争いが絶えない。争いを絶やそうとするには私は思い切ったものが必要になってくると思う。
ついでに財政関係の局長が見えておるようですから話をいたしておきますけれども、財政にしてもそうでしょう。交付税の対象となり得る人口と、実際の人口というものに非常に大きな開きがあって、そして架空とは申しませんが、登録されざるより以上の多くの人口を擁しておることのために、どれだけの行政費が要るかということは、交付税の算定の基礎の中からも除かれるのです。そうすると、東京都の財政というものをわれわれは一体どう把握して、どういう財政収入と財政の需要があるかということを、実態をつかまないで幾ら議論してもわからない。私は東京が富裕団体であるかないかというような議論がどこから出ているのかさっぱりわからない。だからその基準としての、ことに清掃関係の基準としての人口は一体どれだけあって、人口はこれだけだが、しかし清掃関係についてはこれだけの設備を必要とするというようなことがなければこういう法案は出せないはずです。これは区によっておのおの違います。減っている区もあるし、最近ばかばかしくふえている区もある、登録だけ見てもふえてくる区がある。それから昼間人口の非常に多いところまた非常に少ないところ、昼間人口の多いところなどはし尿だけは置いていきますよ、よくても悪くても。しかし、それは清掃の対象になっていないということになると、ここからはみ出したものはどこに持っていくか。そういう基礎的な調査がありますか。なければなくていいが、あったら大体のところを話してもらいたい、なければないでけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/26
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027・佐久間彊
○佐久間政府委員 ただいまお尋ねの数字につきましては、正確な資料は持ち合わせておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/27
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028・門司亮
○門司委員 正確な資料がないということになると、東京都の財政あるいは行政を論ずるのに非常にあいまいなものになってくると私は思う。そうならざるを得ない、こういうことになろうかと私は考えます。
それからもう一つこの機会に、これはある程度明らかになっていると思いますが、東京都政を論ずる一つの大きな目安として、東京都の都民は一体どうなっておるか、東京都民の一人当たりの総所得と、それからこれを比率にした全国の割合を、もしおわかりならこの際示しておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/28
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029・佐久間彊
○佐久間政府委員 ただいまここには持ち合わせておりませんが、後刻調べまして御説明いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/29
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030・門司亮
○門司委員 東京都のこれらの都区の調整の問題にいたしましても、すべての行政を見ていく上に、一つは大体どのくらいの人口がおってどのくらいの排せつ物があって、どのくらいの設備をすればそれで住民の福祉が守られるか、あるいは都民の力というものは、東京都にどのくらい集約されているのかというような、都市の実態というものが把握されなければほんとうの行政というものは困難じゃないかと考える。そこで、それらの問題をほんとうに把握していこうとするには、一つの大きな東京都という形の中で一本でいくことは非常に困難ではないか。したがって東京都の区というようなものは自治区にして、それらの問題が十分に基礎的なものが把握される形を積み上げていきたい。同時に、そのことを基礎として行政を行なっていくということが、そこに住んでおる人の利益のためになると思う。なぜ私がそういうことを言うかといいますと、たとえば昼間人口が非常に多い。これは東京都の住民でないことは間違いがない。しかし自治法には御承知のように、住民だけではございませんで、そこに住んでおる人、そこに来ておる人の生命、財産を保護し、これの利益をはからなければならないということが、一番最初に書いてあるのです。そういう意味からいいますと、登録された人口が多いとか少ないとかいうことよりも、むしろ東京都全体の、あるいは東京都の区なら区における実態というものに合う行政を行なっていきたい。そうすることのほうがよろしいのではないか。そうなってまいりますと、そこにはどうしても区自身のある程度の自主性というものが必要になってきましょう。ここに東京都の自治区でなければならないという理由もあると考えるのです。一方には、先ほど申し上げましたように、大都市の、こん然一体としての住民の利益を守ろうとするには、行政区のほうがよろしいのではないかという議論が生まれてくる。私はどちらがほんとうでどちらがうそか、この機会には申し上げませんが、この二つの議論のいずれにも理屈があると思う。したがって、その中でわれわれの、あるいは政府の行なうべき措置というものは、そこをどういうふうに調整をしていくかということが、今日まで都区調整の非常に大きな問題になっていることは事実であります。こういう形でありますから、一方においては自治権拡充が叫ばれ、一方においてはやれないことはやれないのだということで、何かえこじになって都と区が争っているようなかっこうでありますが、私は、決してえこじになって都と区が争っているわけではない、お互いに住んでおる住民の利益をどう守っていくかということを中心に議論されていると思う。
そこで、この機会に事務当局にもう一つ聞いておきたいことは、区の制度であります。いわゆる法律上の位置づけであります。法律上の位置づけが、特別地方公共団体という名前になっておる。それは、特別地方公共団体という名前の中には、財産区も含まれておる。あるいは一部事務組合も含まれておる。さらに今度できた事業団も含まれておる。そこで問題になってまいりますのは、東京都の区の位置づけ、これをいま申し上げましたような、また法律に書いてあるような行政単位と同様に、特別地方公共団体という位置づけでよろしいかどうか。ここにも非常に東京都の問題の議論の分かれ目がありますので、これをこの機会に聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/30
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031・佐久間彊
○佐久間政府委員 特別区につきましては、先生の御指摘のように、いろいろな特殊性があるわけでございます。現行法におきましては、御承知のように特別区は地方公共団体の一つの種類ということにいたしております。普通地方公共団体は、その性格、機能等の点から見まして、一般的な普遍的な性格、機能を持ったものを申しておるわけでございますが、これは現行制度について申しますと、都道府県と市町村を普通地方公共団体といたしております。それ以外の機能、権能、性格等につきまして、特殊性を持ちましたものを特別地方公共団体ということで分類をいたしておるわけでございます。特別区は、先ほど申しましたような自治区ではございまするけれども、都の特殊性から、他の市町村とは違った制限を受けました自治体でございまするので、その意味におきまして特別地方公共団体の中に入れておるわけでございます。しかし、特別地方公共団体の中には、御指摘のようにいろいろな種類のものが入っておるわけでございまして、どういう点で普通地方公共団体と違った特殊性を持っておるかということになりますと、その種類によりましていろいろニュアンスがあるわけでございます。私どもは、特別区は特別地方公共団体の中では一番普通地方公共団体に近いものである、かような位置づけと申しますか、位置に考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/31
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032・門司亮
○門司委員 私が聞いておりますのは、そういう近いとか遠いとかいうことではなくて、この問題が実はいま都区の最大の問題として議論されておるいわゆる区長の公選問題に発展しておるわけですね。自治法の中で特別地方公共団体と規定している。したがって特別地方公共団体の中には、御承知のように、いま申し上げましたような財産区もある。財産区は、議員だけは関係者で選ぶが、管理その他は市町村長がやっておることは間違いがない。さらに、その前にある一部事務組合等のごときはほんとうの事務組合であって、ここは別にそういう基本的なものを持っておらない。ただ、一部事務組合に移譲した場合に、その町村のそういう機能がなくなるということだけしか書いてない。事業団においてはなおさら基本的なものも何もない。これが法律上同じところに位置づけをされておることのために、区長の公選というものは特別地方公共団体としては考えられない。もし区長の公選をやるならば、結局財産区においても、今日そういう法律上の位置づけをしておる特別地方公共団体に全部そういうことをしなければ筋が通らぬじゃないかという議論が出てくる。同時に、これが憲法ともからんできておって、憲法の九十二条は「法律でこれを定める。」と書いているのであるから、法律で定めていればそれでよろしいという議論に発展してきておる。今日の都と区の争いはここにあるのではないかと考えられる。したがって、東京都の区の位置づけというものは、いまの特別地方公共団体という概念だけでよろしいかどうか。そうしてその考え方の中で、普通地方公共団体に近いのだというような考え方だけで処理するということでは基本の問題は解決をしない。これはどこまでいっても公選制というのが考えられる。東京都の区についてはかなり古い歴史があるのでありまして、自治の本体から考えていけば何度か議論がなされておる。東京都の区ができたのは明治十二年です。まだ市町村制のできない十年前に、すでに東京には区があったはずであります。そういう歴史を持っておる。また東京都制にいたしましても、明治二十九年の第九帝国議会に提案されて、それから昭和十八年にこれが都制としてしかれるまでの間に一体何回出されておるか。そうしてその間に、区の性格等についても、あるいはこれを行政区とする、時の政府の提案もあった。あるいはそういうことを明確にしないで、ただ、いまのような形でやられておる場合もあった。途中においては、御承知のように、京の市の中の区と京都の市の中の区、大阪の区というのが、いずれも自治区であった時代があったはずであります。こういう長い歴史的の関係を持っておる。したがって、東京の区民というものは、自分の区に対する考え方としては、かなり愛着を持っておると考えられる。その区の行政の中で、その古い歴史は別にいたしまして、今日のたてまえからくる一つの問題として、憲法九十三条のものの考え方、この憲法九十三条の、自治体の長、市長あるいは議員というものは公選にするというたてまえは、行政上の処置としてどこから出てきておるかということでございます。少なくとも今日の憲法をこしらえたときの一これは押しつけられた憲法だという議論もあるかもしれませんが、少なくともあの憲法を起草いたしますときの最初の原案として出てきた、アメリカ側から示された原案を見てみますると、そこには明らかに徴税を行なうことのできるものについてはこれを公選にする。いわゆる徴税権と公選が結びついて考えられておる。私はこの理論は、地方行政のたて支えの上からいけば、今日の地方自治法、憲法のたてまえからいけば正しいが、少なくとも国家権力を背景として、住民の税金を権力によって取ることのできるものが、住民のリコールの対象にならない、あるいは直接これを選ぶことができないということは、今日の憲法のたてまえからいけば、いささかふに落ちないところがある。区のように財産だけを処理するわけじゃございませんで、ただ負担金を出すというわけじゃございません。いわゆる徴税権を持つ徴税権者である区長が、区民、住民の手の届かないところにおるということについては、いささか私どもには考えられない点がどうしても生まれる。したがってこの憲法九十三条の解釈、同時にこれができた動機と、それから徴税権と国民のこれに対する権利というものとの関連性をひとつ大臣からこの機会に明らかにしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/32
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033・赤澤正道
○赤澤国務大臣 途中でもありましたので、御質疑り難点がちょっとわからなかったわけでございますが、特別区の長は公選できめるべきであるという御議論ではないかと思うわけでございます。この前の委員会でもそのことについてるる申し上げましたが、東京市、それから都にずっと発展してまいりました段階から考えまして、この前の委員会で私も一都民であるということを申し上げたわけですけれども、東京都と言っても市の大きいものに違いないのでございまして、その中の行政区であるか、自治区であるかということについては、地方制度調査会でもずいぶん議論のありましたところであります。その内容は十分お読みになった上の質疑であると思いますが、普通の市あるいは町村と違って、東京都の中のものには違いないわけでございまして、これは特殊な立場でございますので、こういう制限自治区と申します形をとったわけでございます。憲法の条項も御引用になったわけでございますが、最高裁でも判断いたしておりまするとおりに、憲法上の問題ではなくて、政治的に判断すべき問題であるという立法政策の問題であるという結論を出しておるようでございまするけれども、いまの都政を円滑にやる上におきましては、このほうがいいという判断に立っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/33
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034・門司亮
○門司委員 私が聞いておりますのは、最高裁の判決が昨年出ておりまして、違憲にあらずということが出ております。違憲でないから合憲だということは言っていないはずであります。違憲でないから合憲だということがどうかということは、前段でさっき申し上げました法律でこれを定めよと書いてあるから、法律で書けば、おそらく最高裁は第九十二条を引用していると思います。九十二条で法律で定めよと書いてありますから、法律で定めたからそれでよろしいのだ、したがって残る議論は、自治の本旨が残るものだと思います。自治の本旨は憲法上明らかになっておりません。しかしこの議論をここでやっておってもしかたがない。最高裁の判決は、そういうことで九十二条を引用すると、そういう解釈が成り立とうと思います。法律で定めればそれでよろしい、これが今日の自治区であるか行政区であるかということの境になっておる。法律で特別地方公共団体に位置づけされているのじゃないか、特別地方公共団体は何も公選にせよと書いていないじゃないか。東京都の区もそれと同じ位置づけでやっておるのだから、公選でなくてもよろしいんだ、こういう議論も一応今日議論として成り立っておる。しかしものの見方として、さっき申し上げましたように、少なくとも国家権力を背景として徴税権を持っておる、差し押えすることができる、競売することができる強権を持っておる一つの自治体の長が——一部事務組合などに徴税権がございますか。私はないと思います。財産区についても差し押えをするとか、競売をするとかいうものではないと私は考えます。これは財産処分だけです。そう考えてまいりますと、少なくとも、いま起債権は私はないと思いましたが、あるいは起債権があるかもしれませんが、かりに財産上のそういう起債権があったり、徴税権のあるものを住民が直接選ぶことができないという制度については、何ぼ憲法で、自治の本旨に従って法律できめればいいと書いておるから、それでいいんだといっても、私は住民感情としてはおさまらぬのじゃないかということで私はお聞きをしておるのでありまして、われわれも最高裁の判決は十分了承しておりますし、見ております。以前、三十五年でしたかの区会議長の選挙のときの贈収賄の問題で、憲法違反であるから、犯罪が成立しないんだという判決の出たことも知っております。しかし問題としては、そういうしゃくしじょうぎの法律論でなくて、少なくとも住民感情からいって、あるいは今日の憲法のたてまえからいけば、公選にするということが正しいのではないか。したがってさっきから申し上げておりますように、自治法の中で、東京都の区が十ぱ一からげに特別地方公共団体の中に置かれておることがよろしいかどうか。私はやはり別個の取り扱いをするというたてまえによって、政府のことばを借りれば、ある程度のこれに自治権を与える、普通の特別地方公共団体とは違うんだというたてまえで、取り扱いや運営の中でなくて、位置づけの中にもやはり明確にしておく必要がありはしないかということです。だからその辺についてのお考えはどうですか。どうしてもあの中に入れておかなければ、特別地方公共団体の考え方以外にないということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/34
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035・佐久間彊
○佐久間政府委員 門司先生のおっしゃいますこと、一々ごもっともと拝聴いたしておるわけでございますが、この特別区の性格、実態からいたしまして、他の特別地方公共団体とは相当違った位置づけをすべき内容を持っておるということは、私どももさように考えております。ただ、現行地方自治法の組み立て方が、普通地方公共団体と特別地方公共団体という二つの分け方をいたしまして、普通地方公共団体でないものは、先ほどの先生のおことばを借りますと、十ぱ一からげで、特別地方公共団体に入っておるという、いわば多分に便宜的な分類をしておるという点は、御指摘のように私どもも考えております。でございますから、立法の形式の上からいたしますれば、あるいは何かもう少し別の考え方もあろうかと思いますが、現行法のたてまえでは、特別地方公共団体、普通地方公共団体、二つの分類をいたしておりますので、二つの分類を前提といたしますと、やはり特別地方公共団体に入れるべきだ、かような考え方をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/35
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036・門司亮
○門司委員 この議論をあまり長くしておりますと、いつまでも果てしないと思いますが、もう一つついでに聞いておきたいと思いますことは、したがって今日の区長の選任制度というものが、現行の制度でよろしいというお考えであるかどうかということでございます。このことは、かつて東京都には、御承知のように都制案のできたとき、さっき申し上げましたように明治二十九年のころからこの案は、第九帝国議会からずっと出ておりますから、その内容をずっと調べてみますと、ある場合においては都長官の任命ということがあってみたり、あるいは都議会がこれをきめる、そうして都長官がこれを任命する、こうやったり、ある場合においては、ただ区議会だけできめればよろしいという、一般の市町村の長と同じような形をとったこともあります。むろん、この場合のことでありますから、区議会がきめたからといったところで、都長官が承認を与えるとか内務大臣が勅許を得るとか、いろいろな経緯が、その時期においてはあったと思います。いずれにしても、そういう段階が過去に何回か繰り返されておるということがずっと書かれておるわけであります。そうなってまいりますと、いまの制度は区議会が推選して都知事が任命するという、任命権者が都知事にあることがよろしいのか、住民の意思決定機関である区議会に任命権があるというのがよろしいのか、この辺の判断は一体自治省としてはどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/36
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037・赤澤正道
○赤澤国務大臣 いまのやり方は、最近の経過は御承知のとおりに、私は妥協の一つの産物ではないかと思うわけなんでして、やはり弊害も多々あるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/37
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038・門司亮
○門司委員 弊害のあるということは、もう一つの問題として制度上の問題でございますが、身分の所属、任命権者が都知事であるということと、自分たちの選出した区の、住民の意思決定機関である議会がきめるということは、住民感情では非常に大きな開きがあると私は思う。都知事が任命するということとを自分たちの選んだ区議会がきめるということは、これは一般の選挙と中間の策だと思います。したがって、弊害があるということだけでは済まされないのであって、大臣の考え方としてはどちらがよろしいか。これも私の主張からいえば、さっき申しましたように徴税権を持つ限りにおいては、少なくともこれは公選でなければならないということは、憲法九十三条の趣旨がそう書いてあると私は思う。九十二条に、法律で定めると書いてあるから、法律で定めればいいんだという解釈が成り立っておるところに、いろいろな問題が起こっておるのでありますが、憲法の本旨からいえば、当然徴税権を持つものについては公選でなければならないということは論をまたない議論だと考える。しかし、それが通らないと考えるならば、その次の中間案として、区議会で区長を定めるという案もないわけではない。また、かつてそういう案があったはずである。東京都の歴史の中にはそういうことが書いてある。したがって、かりにそういう中間案というようなものでも一体自治省は考えられるかどうかということです。私はこれがいいとは考えておりませんが、そういうことでも考えられるかどうかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/38
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039・赤澤正道
○赤澤国務大臣 先ほど申しましたように、このことにつきましては制度調査会のほうでずいぶん議論があったわけでございまして、最初からの御質疑ですが、この問題が合憲であるか違憲であるかという問題までさかのぼれば、最高裁の判決が示しておりますとおりに、これは単に立法政策上の問題であって憲法上の問題ではないということは、いま門司委員の御指摘になりましたとおりでございまして、じゃ立法政策的に公選にすればいいじゃないか、公選にしても必ずしも違憲ではないということに私たちは読み取っておるわけでございますが、ただ、そういう判断に立ちました場合には、今日東京都の実態から見てこれが一つの策なのだ。それで、都知事というものは首長なんだ、この首長が東京都を統轄して、いろいろな都の行政を行ないます上において、どういう形態が一番やりいいだろうかということの判断を実はせざるを得ない。これが、東京都というのが普通の道府県と異って、中にぐじゃぐじゃとたくさん独立した自治体がくっついてできる、そういう形にして、都知事を道府県の知事的な立場に立たせて、それで東京都政が円滑な運営がはたしてできるかということになるとむずかしい問題であって、私は疑問があると思います。それは都知事をして言わしめれば、任命制にしてもらったほうが一番やりいいという判断に立つでしょう。しかし、それではやはり現状からして、ただいま御指摘になっております徴税権云々の問題もありますし、やはりこれはただ都政の運営がやりいいからというので、そういう形を単純にとるわけにはまいらない。そういうことをいろいろ勘案いたしますと、どうしても区議会というふうな立場というものが強く表面に出てくるわけでございまして、ただいまでは区議会が推選して知事の同意を求めるということで、知事の立場は、都政を全部統轄して行ない得るという一つの立場を持たせておるのではないかと思うわけであります。私は、弊害はあると申しましたけれども、これはどういう形をとるにいたしましてもなかなかあちこち難点があると思いますので、目下のところは現状でやるしかいたし方がないという考え方に立っております。これで完全であるとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/39
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040・門司亮
○門司委員 私は、当局に考えてもらいたいと思いますことは、行政と区民といいますか、住民の利益ということです。これが非常にむずかしい問題でありまして、行政上はこうしたほうがやりいい、しかしそれでは必ずしも住民の利益にはならない、だから一体どちらに判断を置くべきかということが、次の問題で、どうしてもこの種の問題を議論しようとすれば出てくるわけであります。憲法の示しておりますものは、実はこの点を川治憲法と違って新しいたてまえで出してきておるわけでありまして、住民の福祉というものに合致した行政でなければならないということは、これは憲法の示すとおりだと私は思います。なるほどさっきから申し上げておりますように、九十二条にばく然と書いてあります。自治の本旨に従って法律で定めよなんて書いてあるから、いろいろ問題が起こるものがあろうかと思いますが、指向しておるのはあくまでも住民自治を指向していると解釈するのが私は正しいと思う。それは住民の利益を主として解釈すべきものだと思います。そうだといたしますならば、住民の直接政治の支配者であります区長が自分たちの手の届かぬところにいるということは、憲法のたてまえからいっていささか疑問があり、また不都合ではないか、したがって、住民がどうしても公選がよろしいというならば、私は行政上の多少の不便がございましてもそれに従うべきである。いわゆる今日の自治行政というものが、住民の自覚と責任において行なわれなければならないということは憲法の示すとおりでありまして、したがって、そのこと自体からくる損がかりにあるとするならば、これは当然住民の責務であるべきである。したがって、住民が公選を欲するとすれば、私は公選にしたからといってちっとも差しつかえないんじゃないかということであります。行政上やりいいから今日の状態で続けていくんだということは、これは住民の意思を離れた、ただ行政上の、悪く言うならば事務的の処理でよろしいというものであって、必ずしも住民の利益とは一致しないということにならざるを得ないのじゃないかということが考えられる。そしてその上に立って冒頭に申し上げましたように、大都市行政というものの一つの大きな見方として、網をかけた大きな見方としては、やはりこん然一体としての住民の福祉をどうするかということが一つの大きな土台であることに間違いはない。しかし、区長を公選にしたからといって、その大目的が私はこわれるとは考えられない。これは少なくとも、東京都の区長が公選になったからといって、東京都の外にはみ出すわけではございません。やはり東京都という一つの区画の中にあるものであることには間違いないのでありますから、横の関連性というものは当然あるのだ、こういうふうに考えてまいりますと、いまの大臣の答弁では私ども満足するわけには参りません。これ以上ここで議論することも、時間の関係等もございますので、申し上げませんが、繰り返して申し上げておきますが、少なくとも自治法上の東京都の区の位置づけについては、私は特段の配慮をする必要がありはしないか。ただ法律の中で、これこれこれだけは市町村に適用しておるものを適用するというような文章だけのものでなくして、特別地方公共団体というものがいろいろできてくる、また今度は連合体ができれば、連合体も特別地方公共団体にするというように、両方に際限なく広がっていくような、住民の手の届くところに特別公共団体ができて、その中にあるのだからこれでよろしいという議論がないように、私は位置づけをもう少し当局に考えてもらいたいということと、もう一つはいま申し上げましたように住民の自覚、住民の責任において行なう今日の自治行政というもののたてまえからいけば、私は、住民の輿望にこたえる行政組織をとるべきではないか。単に行政上というよりも、むしろ行政連帯の面から統括したほうがやりいいからこうするんだということで、しょっちゅうこういう争いを起こしておるということは、争い自身というものは私はあまりいい行政ではないと思うのです。実際都会議員と区会議員がいがみあっているなんという姿はあまりいい姿ではありません。これは行政上はやりいいかもしれませんけれども、姿の上からいけばあまりいい姿ではない。やはり都と区が一体となっていくという制度が望ましいのではないか。もしそれがどうしてもいけないというならば、さっき申し上げましたように、いっそ改めて、行政区なら行政区にするという方針をとるかどうか。しかし行政区という方針をとろうとすれば、あまり膨大な、一つの区が六十万も七十万もあるような区を持っているのでありますから、行政区にこれを切りかえていくということはいかがかと考えられるというような面もあるかと私は思います。しかし、いずれにいたしましても、もうこの辺でひとつ腹をきめて、争いがないようにしてもらいたい。
率直に申し上げてまいりますと、都と区の争いを国会に持ち込まれて、そうして国会でまたこれを議論しているということは、あまり能率的ではございませんよ。実際はやはり法律によってこういうものはぴしっときめておいていただくことがよろしいかと思います。
最後に、もう一つ聞いておきたいと思いますことは、今日の東京都政の中で、先ほど申し上げましたが答弁が実はございませんのでわかりませんので、判断を下すわけに参りませんが、財政上の問題についてひとつ大臣にお考えを願っておきたいと思います。そのことは、東京都は、御承知のように、われわれの推測するところからいいますと、東京都に登録されております住民以外の住民が、昼間人口その他から勘案してまいりまして、かなり多数の人がいはしないか。見方によっては三分の一くらいこんなのがいはしないかというような話もある。これは昼間人口と夜間人口の相違から見れば出てくるわけです。これらの人は、いずれにいたしましても、寝るときだけは自分のところで寝ておるかもしれません。しかし一切の行為というものはここで行なわれておる。したがって、いま問題になっております清掃事業というのは、ここに住んでいる以上は、ここで排せつし、ここでごみを散らかし、ここで生活をいたしておることは間違いないわけであります。そうだといたしますと、これらの問題がやはり財政の基本になっております、いわゆる交付税の基本になっておりますこの基本の中に、どの程度か勘案されてきませんと、これはそう簡単に東京都の財政というものは議論するわけにはいかない。やはり行なわれておるところから見た財政規模というものと、実質の財政規模というものに非常に大きな違いがありはしないか。その点が明確にならなければ、一体東京都の都政なるものが、どうしてやっておるかということに私ども疑問があるのです。しかし、当局でそれがはっきりしないということならば、それもいたし方がない。同時に東京都の全貌というものを、もう少し明らかに私どもに教えていただきたいと思うことは、東京の富の力であります。これは全国で、たとえば鹿児島の富の位置づけがどのくらいになっておるか私はわかりませんが、おそらく東京都に集められる富というものは非常に大きなものであると思うのです。人口がかりに全国の一割を持っておるとすれば、常は一割では済まないと私は思う。あるいは二割ないしまごまごすると三割くらいの富が東京都に集まっていやしないか。すべての会社、銀行の本店がここに集まっておって、全国で集められた富が一応東京に集約されるということは事実でありますから、そうすると、この富があることによって、東京都はばく大もなく横に伸びていく可能性がある。東京都へ来れば、その富の配分にあずかって生活ができるという原理が生まれてくる。そうすると、東京へ東京へとみんなが集まるということ、これが私は東京都政の一つのガンであると思うのです。これが資本主義の社会ではやれないというならば、社会主義社会にはっきり切りかえて都政をやるべきであって、資本主義というものを放任しておいてはそれができないということはわかり切ったことである。もう少しこの観点を政府並びに東京都にしましても明らかにしていただいて、そうして東京都をいかにすべきかという、何か根本的に議論を立て直す政府の考え方をひとつぜひ持ってもらいたい。そうしなければ、東京都というものはますますどうにもなりませんし、これはごらんになってもわかりますように、人間が多いとか、あるいは水が足りないとかいいながら、ビルがどんどん建っておる。見てごらんなさい。あれに人間が住めば、水を使い、いろいろなものを消費することは間違いないのです。そういうものが放任されておる。それを単に都市行政のたてまえから考えてまいりますと、金持ちの金もうけの場所になっておるということ、都民の生活の根拠、住民の楽しい生活のできる地方の自治体としての域をすでに脱却してしまっておる。そうして単に金持ちの金もうけの場所と化してしまったところに、私は、根本的に東京都の大きなガンがあると見るべきだと思う。したがって、東京都政というものは、どう考えてみても金持ちのためには非常にいい東京であって、住む人の立場からいえば、富の配分にあずかるということはできるかもしれませんが、必ずしも住民自体の幸福というものは得られない。そこからだんだん都政に対します関心が薄くなっていく。そうして東京都政というものが、どっちかといいますと、東京都民によって比較的関心が薄くなっておるという事態を起こしておると思うのです。私がこういう機会にこんなことを申し上げることは、あまり大それたことを申すように思われるかもしれませんが、東京都の問題がしょっちゅう問題になっておって、実は議会でももてあましておる、われわれももてあましておる問題です。したがって、そういう基本的な数字を出してもらって、そうして国会で審議することがいいとするならばやはり国会で審議をして、そうして東京都がほんとうに東京都民の都政の実行ができるような、金持ちの金もうけの場所にならないように、いまからでもおそくないから配慮していただきたい。したがって、最後に大臣にお聞きしておきたいと思いますことは、そういう東京都の資料をできるだけすみやかに出していただいて、東京都の実態がこうなっておるから、この上にどうするかということの議論のできるようにしていただかぬと、どうも本質論に触れないで、まわりからさわっておるだけで、大きな群盲の象のようなことになると思います。鼻にさわっておる人は鼻だけしかわからない、足にさわっておる人は足だけしかわからないで、全体の象の姿がわかっておらないというところに、私は今日のこういう状態が起こっておるという最大の原因があると考える。したがって、ひとつ資料だけを要求しておきますが、できればそういう資料をすみやかに出してもらいたい、これだけを申し上げて、きょうの私の質問を終わらしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/40
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041・森田重次郎
○森田委員長 午後一時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。
午後零時十九分休憩
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午後一時五十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/41
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042・森田重次郎
○森田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
地方自治法等の一部を改正する法律案を議題とし質疑を続行いたします。安井吉典君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/42
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043・安井吉典
○安井委員 このたびの地方自治法等の一部を改正する法律案の内容の主たるものは、大京都政に関連する問題が大部分でございますが、きょう審議の最終段階に至りまして、私は総括的な御質問を政府にいたしたいと思うのでありますが、その前に一般的な問題につきまして、政府の御見解を承っておきたいと思うわけであります。
東京都の問題は私は二面あると思うわけであります。一面は、現在の東京都の都政の現実のあり方が、東知事もオリンピックにはきわめて熱心で、行政の方向はすべてそれに集中されているような感があって、本来の都民の生活につながるような問題のほうはおろそかにされているというような印象も私どもわきから受けるわけでありますが、いずれにいたしましても、東京都がこのような日本の全人口の一割以上を集めて、しかも毎年二十万人以上も人口がふえておるという、こういうふうな実態がそのままになっているのに対しての制度的な問題も多分にあるわけであります。
それからもう一つは、これは東京都政だけの問題ではなしに、むしろ国の政治のかまえが問題になってくるのではないかと思うのであります。高度経済成長政策の中で、いまのような東京の実態があるわけでありますが、工業の配置分散だとか、農村対策だとか、地域格差の是正だとか、地方文化の発展だとか、そういうようなものに対する政治のかまえが不十分なものですから、いまのような水ぶくれの東京都の姿があるのではないかと思うのです。したがいまして、このような東京都政に対するメスを入れるという考え方も重大でありますが、同時に、国の政治のかまえそのものにも大きな検討が必要である段階であろうと思うわけです。この基本的な問題点については大臣がお見えになってからお伺いをしたいと思うのでございますが、東京都政の改革というふうな考え方を中心にいたしまして、今度の改正法案では、都から区への事務移管の問題を政府は打ち出しておられるわけであります。この問題について若干行政局長にお伺いしておきたいと思うのでありますが、この事務移管の問題については、移管することによって、その事務が都にあったときよりも区に行ったほうが、住民の側からして質的な行政の低下があるとか、あるいは区と区との間のアンバランスが生じるとか、こういうことがあっては困ると思うわけであります。だから、今回のような重大な事務移管というふうな事態によって、むしろ住民の側から見て、行政事務が充実改善されたというふうにならなければならないわけであります。しかし、その保障はどこにあるのかということになりますと、どうも不明確なような気がするわけでありますが、この点についてひとつお考えを伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/43
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044・佐久間彊
○佐久間政府委員 都の事務を特別区に移譲をいたしますことは、特別区の自治権を拡充するという方向からいたしまして、それと同時に、都の行政全体の能率化という点から考えているわけでございます。ただいまお尋ねのように、特別区に移譲をしただけでもって、それだけ住民に対するサービスが充実改善される効果があげ得るかどうか、こういう点につきましては、私どももよく考えてまいらなければならない点だと立案の過程でも考えておった点でございます。本法案におきましては、そういう観点から、一つには区に移譲されました後も、各区の間でアンバランスが起こるとか、あるいは区によりましては行政水準が低下するとかいうようなことの起こりませんように、一つには都区間の連絡調整あるいは特別区相互間の調整ということを、従来よりも円滑に強力に進めるようにしてまいりたいということで、都区協議会というものをつくりまして、そこで都側及び特別区側の代表者が常時連絡協議をしながら処理をしていくということを一つ考えているわけでございます。いま一つは、財政的に特別区の財政自主権を強化をしてまいりたい。と同時に、特別区の間におきましても財政上のアンバランスがあるわけでございますから、その間の調整を従来よりも円滑に行ない得ますように配慮をいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/44
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045・安井吉典
○安井委員 いまの場合一番大事なのは財政の問題だと思いますが、これは後にお尋ねすることにいたしまして、もう一つ大事な問題は、この事務移管に伴いまして職員の身分や待遇が変わるというふうな段階が、あるいは出てくるかもしれないわけでありますが、しかし国の法律による人事異動というふうなことである以上、職員の諸君にいささかも不安を与えてはいけないというふうに考えるわけであります。一体どれぐらいこの事務移管によって職員の数の異動が必要になってくるのか、そしてまた身分や待遇についての、上がっても下がりはしないというふうな保障を何かお持ちですか。またそういうふうな御指導をされることに当然なろうと思うのでございますが、それについての御意向をひとつ伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/45
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046・佐久間彊
○佐久間政府委員 御提案をいたしております改正によりまして、都から特別区へ配属がえになります職員の数は、概数で一万人ちょっとになろうかと思っております。なおこれらの職員の身分につきましては、原則として都の職員の身分を保有をしたいわゆる配属職員ということに扱うということが適当であろうということに考えております。それからその待遇その他の点につきましても、これは都区間あるいは特別区相互間におきましてアンバランスの起こることのないように、区に移管になりましたために低下をするというようなことのないように、それらの点につきましては都区協議会におきましてよく連絡協議をさせていくという考えをいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/46
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047・安井吉典
○安井委員 いまの問題について、特に都にあったときのその人のポストと、それが区に移管になった場合におけるポストとのバランスだとかなんとか、そういうような問題も出てくるのではないかと思うのですが、それについてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/47
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048・佐久間彊
○佐久間政府委員 その点につきましては、都にありましたときより条件が悪くなるというようなことはないように配慮してまいりたいと思っておりますし、都の首脳部も同様な考え方をいたしております。むしろ場合によりますと、都から特例区に出ます者がさらに有利な条件でいけるというようなふうにいたしまして、都と特別区との間におきまして、いまよりも人事の交流が活発に行なわれていくということが、今後の都政の運営上大事なことではなかろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/48
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049・安井吉典
○安井委員 今度の事務移譲の関係で、保健所と優生保護相談所の問題も出ているわけでございますが、これについては施設の管理に関する事務だけが区にいくわけで、そのほか政令に定めるものも区に移管するということになるわけでございますが、本来の仕事はこれは都に残るというふうなことのようでありますが、この改正で実質的な効果の向上はどういう点に期待をされるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/49
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050・佐久間彊
○佐久間政府委員 保健所と優生保護相談所の移譲の問題につきましては、地方制度調査会の答申等におきましては、施設の管理だけではなくて、全面的に区に移管するようになっておったわけでありまして、自治省といたしましてはその方向で検討をいたしておったわけでございますが、いろいろ政府部内ご意見の調整の結果、施設の管理だけが区に移譲になるということになったわけでございます。施設の管理だけ区に移譲になることによりましても、保健所の施設ということにつきまして従来よりも区民の親しみが持てるようになるのではないか。施設の予算が区の予算に計上されることになりますから、施設をよくすることにつきまして区といたしまして関心を持つ、そういうことで、私は一部ではございますけれども、従来よりもいい効果が期待できると考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/50
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051・安井吉典
○安井委員 これについては将来なお検討されるお気持ちがおありですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/51
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052・佐久間彊
○佐久間政府委員 この点につきましては、将来なお検討をしてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/52
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053・安井吉典
○安井委員 大臣がお見えになりましたので、冒頭に申し上げました問題についてお答えをいただいておきたいと思いますが、私、一番初めに申し上げましたのは、この身動きのとれないようなマンモス都市東京ができ上がったその背景は、一面都政の問題であります。都の行政の仕組みにあるわけでありますが、しかし、他面今日の国の政治のあり方が、こういうふうなマンモス都市に当然東京がなるような、そういうふうな政治の方向をおとりになっているところに根本の問題があるのではないか、そういうふうな見解を先ほどちょっと申し上げたわけであります。とにかく交通も麻痺する、水も出ない、道路はごらんのとおり。ただオリンピックヘの道だけをひたすらばく進させられている、こういったような印象でこの東京はあるわけであります。そこで、この東京の問題に対して、市街地再開発だとか、東京湾の埋め立てだとか、皇居を移転するとか、あるいは文教施設を移転するとか、いろいろな思いつき、アイデアは、これはまことに山のようにあるわけであります。しかしながら、もっとこれらを総括した視野の広い立場から、この首都をどうするか、こういうような考え方を政府はお出しになるべきではないかと思うのであります。そういう政府のかまえについてひとつ大臣から御答弁を承っておきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/53
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054・赤澤正道
○赤澤国務大臣 こういうマンモス都市ができて、しかもなおかつ人口がふえつつあるということについて、私どもも非常に残念に思っておりますが、先ほど門司委員からの御質疑では、これは自由主義経済、資本主義から当然こういう形が生まれてくるのだ。自分たちが社会主義でやったら、こんな問題一ぺんで解消すると言わんばかりのことを申されました。あるいはそうかもしれませんが、しかし、社会主義国にだってやはりこういう悩みに似たものは当然あり得るはずであります。いずれにいたしましても、このままで放置しておくわけにはまいりませんので、御案内のとおり、実にたくさんの案がいろいろ表面に出てきております。私は何と言いましてもやはり富の再配分と申しますか、また人口の再配分のためにも、新産都市の計画にいたしましてもそうですし、また近くは東京都の首都圏の周辺にも、いろいろな人口を薄めるような施策を次々と打ち出しておるわけであります。しかし残念ながら、まだそれが十分効果をあらわしていくところまでいっておらぬわけでありまして、この問題につきましては衆知を集めて、この不合理な集中傾向というものを改めていかなければならぬと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/54
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055・安井吉典
○安井委員 私どもはそういう御答弁を常に受けているわけであります。しかし、それが一度も実行されたことがなくて、あしたの新聞をあけてみれば、また別なアイデアが出ているかもしれません。そういうふうな基本的な問題点がたくさんあるわけでございますが、きょうは時間の関係もございますので、論議はあとに譲りまして、今度は財政の問題をちょっと伺っておきたいと思います。
先ほど、この事務移管によって、区の事務にいささかもマイナスが生じないような措置を講ずると行政局長の御答弁がございましたが、その保証はやはり財政の問題だと思うわけです。ところがこの法案によりますと、税源として特別区が増加いたしますものは、軽自動車税や市町村たばこ消費税、電気ガス税、こういったようなものでありまして、一方普通の道府県民税の個人割りに当たる分は都が吸い上げるということになるわけでありますから、三十六億円くらいの自主財源の増でしかないわけであります。事務の内容については大体四〇%くらいふえるようであります。しかし、税源のふえ方は一〇%に少し足りないくらいのようであります。こういうことからいいますと、自主的な特別区の運営という意味合いからいって、仕事がふえたが、税源のふえ方はほんのわずかしかない。むしろ戸惑うような事態が起きはしないかと思うのでありますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/55
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056・柴田護
○柴田政府委員 従来の東京都のたてまえからいいますならば、本来は市町村の税に相当するものを一括して都が徴収をいたしまして、それを東京都の条例で、そのうちの特殊なものをむしろ特別区に移譲する。つまり全部取るのだけれども、その中で適当なものだけを分けていくのだ、こういうたてまえをとっておったのであります。それを今回の改正では、市町村民税に相当するものは、すべてこれを特別区に原則として渡すのだ、こういう形をとっておるわけでございます。むしろ事務移譲のたてまえに沿って、特別区というものの自主性といいますか、財政自治権といいますか、そういうものを全体として強めていく方向をとっておる。かたがた、また従来そういった思いつき——思いつきというと語弊がありますが、適当に市町村民税等若干のものを分けて特別区にやっておった。その結果が財政調整をいたします場合に、いろいろそこにでこぼこが生じまして、そのためによけいな紛擾が巻き起こっておる。これが今回の改正によりますと、事務も相当移譲になりますし、また財政的にも市町村、一般の市としての性格が相当強くなってまいるし、またその間の調整も従来に比べましてあまり妙なでこぼこが出ないような形に落ちつく、そういう形からこのような改正を考慮したわけでございます。
したがっておっしゃるとおり、総体として税源ということからいいますならば、お話のようなことがあろうかと思いますけれども、全体としてみました場合には、財政自治権という立場からみましたならば、今回の措置のほうがはるかに特別区の財政的な基礎が強くなった、このように判断をしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/56
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057・安井吉典
○安井委員 財政調整の問題があるわけですが、これについては、現行の制度においても財政需要の計算のやり方やその他ずいぶん問題が多いようであります。特に単位費用の計算方式に追加需要額は入らないという仕組みにもなっており、最終調整が決定するまで予算執行が不安定な状況であるというようなこと、あるいはまた執行委任制度が相当大きく幅広く行なわれているような問題の指摘があり、そういうようなことから今度は固定資産税の一定額がこの財政調整の資金源に充てられるというふうな考え方のようでありますが、しかし、この一定額といわれたその額そのものが、初めに明らかにならないわけであります。それだけに一体ことしの調整額の総額はどれくらいになるかというようなことが、今度の改正によっても区の財政当局者にはわからない、こういうような問題も出てくるかと思うわけであります。これらの指摘が一般に行なわれておるわけでありますが、この点についてひとつ財政局長から御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/57
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058・柴田護
○柴田政府委員 調整の場合に、たしか法文上は交付税の基準財政需要額の算定に準じてという文句が使ってありますが、御指摘になりましたような問題は交付税にもあるわけであります。したがって、その辺のところの特別区の特殊性をどのように考えるかという問題が残るわけでありますけれども、今後これを具体的にやってまいります場合に、従来の欠点等については十分調整をしてまいりたい、かように存じておるわけであります。またいわゆる自由財源といわれるものにつきましても、従来の幅は慣行十五%程度のものを認めておったわけでございますけれども、これをさらに再検討いたしまして、その幅を広げていくようにいたしたい。結局政令なり条例なりを置きます場合の問題になるわけでございまして、政令ということになりますればわれわれのほうになりますし、条例ということになりますれば指導方針になってまいりますが、いずれにいたしましても従来の幅をさらに広げるような方向で検討してまいりたい、かように存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/58
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059・安井吉典
○安井委員 いまの御答弁でありますが、私は今度事務配分がえがなされた特別区間の格差が拡大するようなことがあってはならない、そういうふうな見地から、たとえば基準財政需要額の算定にあたって補正係数を採用することとか、そういうようなことの考慮が必要であるし、特に固定資産税の一定割合ということになっている点、これは総額をめぐって都と区との間の意見が分かれて論議が起きる、こういうことは火を見るよりも明らかであります。こういうような点、——この審議をいたしております国会の段階でも、もう少し内容を明らかにしていただきたい、そういうふうに思うわけですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/59
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060・柴田護
○柴田政府委員 おっしゃるように、補正係数を使っていないとか、あるいは算定方法が荒いとかいう問題が多々あるわけでございます。法律、政令、法令でも、交付税の基準財政需要額の算定に準じということになっております。そういった欠点は極力これを修正をいたしまして、なるべく御指摘のような線に近づくような方向で考えてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/60
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061・安井吉典
○安井委員 事務配分のやり方そのものについても、問題はまだずいぶんあるし、とりわけこの財政の処置の問題については、私どもも納得しがたいものが残っているわけでありますが、審議の都合もありますので、これらの問題もさらに後に審議を深める機会を持ちたいと思います。
次に、都区協議会の問題について伺っておきたいと思います。この都区協議会は、法律の条文だけではその性格や構成や、そういったようなものが明らかでないわけであります。ほとんど大部分は政令にまかせるというふうな規定のされ方でありますが、政令に政府はどういうふうなことを規定するように予定をされておりますか、まずそれからお尋ねをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/61
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062・佐久間彊
○佐久間政府委員 政令におきましては、この都区協議会を構成するメンバーにつきまして規定をいたしたい。ただいま考えておりますのは、都及び特別区双方から同数ずつそれぞれ代表者を出すということに考えております。なお、メンバーの数も政令で定めたいと思っておりますが、現在のところ、十四、五名程度がいいのじゃなかろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/62
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063・安井吉典
○安井委員 この性格についてでありますが、これは都の機関ですか、都と区の共同設置機関ということですか。つまりこの運営のための経費とか事務機構とか、そういうような問題が出てくるわけでありますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/63
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064・佐久間彊
○佐久間政府委員 これは都の機関でもございませんし、区の機関でもございません。いわば都区共同の機関というようなことに考えております。したがいまして、経費も都側と区側と双方で負担をするというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/64
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065・安井吉典
○安井委員 事務機構はどういうふうになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/65
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066・佐久間彊
○佐久間政府委員 事務機構は、別段法令の上では規定をいたすようにはただいまのところ考えておりませんが、実際問題といたしまして、都区で協議をいたしまして、事実上事務機構が都区双方から必要な人員を出してつくられることになろうかと予想いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/66
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067・安井吉典
○安井委員 都と区と同数というようなさっきの構成員についてのお答えでありますが、学識経験者というふうな第三者を入れる、そういうお考えはないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/67
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068・佐久間彊
○佐久間政府委員 この都区協議会の性格が、都及び特別区の間、あるいは特別区相互間の連絡調整をはかるということでございますから、第三者である学識経験者を入れるということは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/68
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069・安井吉典
○安井委員 この協議会の権能の問題でありますが、意見を聴取するというふうな表現があるわけでありますが、そこできまった意見を尊重する義務をどうするのか、あるいは知事はこの機関によってどの程度の拘束を受けるのか、さらにこの協議会が何かの提案をして発議をする権限はあるのか、それからもう一つ、都側と区側との意見が不調に終わった場合にはどういうふうな処置の方法があるのか、これらの点をひとつ明らかにしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/69
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070・佐久間彊
○佐久間政府委員 これは都側と区側と双方の代表者が出まして、連絡協議会をいたすわけでございますから、ここできまりましたことは当然都側も区側もそれぞれ尊重をして、誠意を持って実行に移すということになろうと期待をいたしておるわけでございまして、ここできまりましたことを尊重しなければならぬというようなことを書くこと自体があまりよそよそしいことだ、こう考えて入れなかったわけでございます。
なお、ここできまらなかったことがどうなるかということでございますが、これは都側と区側と双方で誠意をもって協議を尽くす場所でございまするから、これがととのわなかった場合に、さらに別な調整の手段を講ずるということは考えませんで、十分議を尽くして、お互いに結論を得るように努力をしてもらいたいというふうに期待をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/70
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071・安井吉典
○安井委員 ここでちょっと大臣に伺っておきたいのでありますが、この都区協議会に対しましても自治大臣は助言または勧告権を持つ、こういうふうな規定があるわけであります。そのほか、ほかの場所にも東京都の都区の問題に対しましての自治大臣の統制強化、と言うと言い過ぎかもしれませんが、そういうような規定が見受けられるようであり、この点地方団体に対する中央統制の強化の道に通ずるおそれはないか。それからもう一つは、自治大臣が口を出すことによって、どうも都のほうへ有利に問題が解決して、区のほうは損をするのではないか、こういうような考え方も中にはあるようであります。こういうような大臣の勧告権あるいは助言をする権限、こういうようなものはきわめて重大な権限でありますから、その行使には特に慎重な態度が必要だし、できればこういうようなものは設けないで、先ほど行政局長のお話では、双方の自主的な話し合いで処理するのが一番いいのだというようなお考えもありますので、むしろこれをとってしまうとか、そういうようなことも必要ではないかと思うのでありますが、この点大臣からひとつ御答弁をいただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/71
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072・赤澤正道
○赤澤国務大臣 都と、区との間に摩擦があるということは好ましいことではございませんので、この制度を設けますゆえんは、決して他に目的があるわけではございません。都と区に対する勧告権は在来自治大臣にあるわけでございまするけれども、今度できる協議会に対してはそういう意図もありませんし、法律にもその意味はないはずでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/72
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073・安井吉典
○安井委員 いま大臣の御答弁がございましたが、これは将来に向けて、いま御答弁になったような、そういうお考えでぜひ運営を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/73
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074・阪上安太郎
○阪上委員 関連して。いまの都区協議会のことですが、これはおそらく地方自治法の二百五十二条の二のいわゆる協議会の設置には当てはまらぬという解釈、ということは、二百五十二条の二のこの条項は、普通地方公共団体相互間の連絡というようなかっこうになっておると思うのです。だから、それで当てはまらない、しかしそういう連絡調整の機関が必要だというので、都区協議会というものを法律で新たにこれを設ける、こういうことにしたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/74
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075・佐久間彊
○佐久間政府委員 二百五十二条の二の規定は、これは普通地方公共団体とございますけれども、特別区のところにおきまして、法令に特別の規定のあるもののほかはこの規定が適用になるようになっておりますから、特別区につきましてもこの規定による協議会をつくることができるわけでございます。性格はただいま御提案いたしております都区協議会も二百五十二条の二の協議会の中の連絡調整のための協議会に当たるわけでございますが、それの公正な権能なりにつきまして特別な規定を法律で定めますために、わざわざ二百八十二条の二に規定をいたすことにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/75
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076・阪上安太郎
○阪上委員 そこでこの前も私は御質問申し上げたのですが、そういったことをやるのが都自体の本来の事務の一つではないか。にもかかわらず、何がゆえにこういうものを設ける必要があるのかということに、非常な不審を持っているわけなんです。そこでなぜこの二百五十二条の二というものを適用しないのか。二編にあるところの市に関する規定については全部区に適用することになっておりますから、これを適用すればいいにかかわらず、これを適用さすような方向に自主的にやらせないで、なぜ法律でもってそういう特段の規定を設ける必要があったかということをもう少し明確に言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/76
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077・佐久間彊
○佐久間政府委員 二百五十二条の二で予想いたしておりますのは、同種の事務について協議会を予想いたしておるわけでございます。それからこの都区協議会についてわざわざ規定を置かなくても、都と特別区との間には当然こういうことを考えてやるのが都の機能ではないかという仰せでございます。そういう点はそのように私どもも考えておるわけでございますが、ただ今回新たに都から特別区に事務が相当移譲になるわけでございます。しかもその事務につきましては、従来都が処理をいたしておりましたので、従来都が処理をいたしておりましたものよりも、移譲後におきましては各区の間で統一的な処理を必要とする度合いが強かろうと思うのでございまして、移譲後の各区間の事務処理が、アンバランスにならないように配意をしていく必要があろうかと思うのでございます。そのためには都が権力的な方法によってその調整をはかることではなくして、都と区との代表者が対等の立場で集まって、そこで連絡調整をはかっていくということがいいのじゃないか。したがいましてそういう連絡協議の機関を法定の機関といたしまして、そこでこれを制度的にやらしていくということにすることにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/77
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078・阪上安太郎
○阪上委員 しつこいようですけれども、都道府県と市町村との関係、これについては別段、法でもって強制をしていない。そういう基礎的な地方団体とそれから都道府県との間においても、その程度の地方自治を認めておる。特段に都であるからというだけの理由によって、これを法律でもってきめていかなければならぬというというところに私は何かひっかかる。同時に都の性格というものは、都と区との関係というものは、府県と市町村の関係とまた多少違うということは、私はよく了解している。それならばこそ都が存在するのである。特別区があるから都があるのだ。この場合考えられることは、そういう特段の一体性を持ったところの都政であるということを考えていった場合に、何でこんなことを特段に法律できめなければならぬのか。それならば都が区長会議でも招集してやればいいじゃないですか。一般の場合は府知事が市長会議を招集してやるということは、地方自治の本旨からいって許されないと思いますが、都の場合は差しつかえないじゃありませんか。なぜ端的にそういうことをやらせる方向に指導しないかということを私は非常に疑問に思います。それから三多摩との関係は一体どうなるか。これは在来どおりやろうと思えばやるしやらないと思えばやらない。こういうことになる。こういった関係において、もう少し都の性格を考えて措置されることが必要だと思います。
それから普通地方公共団体と対等のと言われるけれども、この場合何も都と区の関係において対等の意識を持つ必要はないと思う。そこまで持つならば区長公選等を思い切って実施すればいい。そういう体制に持っていけばいい。そういうように持っていかないで、現段階の都制の範囲内でそういうものを設けていくことについて、気持ちの上で非常にひっかかってくる。このひっかかりを大臣、少しここで直せるものなら直してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/78
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079・赤澤正道
○赤澤国務大臣 立法の形のことについては阪上委員ほど私は研究しておりませんが、しかし最近広域行政の問題経済も含めてたいへんやかましく、まだ御審議を願う段階になっておりませんが、大きくは全国をブロックに分けて、地方行政連絡会議法案なども前国会で御審議願ったわけでありますが、小さく考えましても、都と特別区の間でも行政面において全然間隙がないという姿が一番望ましい。それは区長会議を招集して一発できめてしまえばいいじゃないかという考え方もあるかもしれませんが、私はやはり都と区との間にこういう連絡協議会というものを設けまして、そして都が行なうべきもの、区が行なうべきもの、また今回の事務の再配分の問題などを通じていろいろ緊密に、特に連絡しなければならぬ問題が多々あると考えますので、やはりこういう一つの機構をつくることは必要でもありますし、そのこと自体は素直に考えればいい方法じゃないか。ただそれを法文の扱いとしてなぜこの条でやらなかったかといったような議論は、実は詳しく私は調べておりませんが、そうひっかからないで、そういった意味でまるのみにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/79
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080・阪上安太郎
○阪上委員 これでやめますが、自治法の二百八十二条に「都は、条例で特別区の事務について特別区相互の間の調整上必要な規定を設けることができる。」ということになっておりますが、私はこの程度で済むのじゃないかという感じがする。私はいまなぜこんな質問をしたかというと、都区一体の考え方というものをもっと強く当事者は認識する必要がある。何か赤の他人のような考え方でもって、そして法律は普通地方公共団体となっているから、やはり法律でもってこういったものをつくっていかなければできないのだという水くさい考え方を持っているところに東京都政の問題があるじゃないか。だからそういう御質問を申し上げたわけであります。ひとつ今後こういった問題について御検討願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/80
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081・安井吉典
○安井委員 連絡協議会のお話があったわけでございますが、地方制度調査会の首都制度当面の改革に関する答申の中には、行政連絡協議会、これは都の区域内及び都と密接な関連を有する地域内の行政主体や事業主体間の連絡調整をはかるための機関として設けるという答申がありますが、これを設けることのよし悪しは別として、これについて、どういうふうな御検討をなされましたか、伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/81
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082・佐久間彊
○佐久間政府委員 これは都の中だけの問題ではございませんで、都と隣接の県との間に関連する問題についてのことでございます。そこで、そういう問題につきましては、国の行政組織とも関連をいたしまして、御承知のように、地方制度調査会から国の首都行政に関する機構についての意見も出ておりまするので、この問題につきましては、今回の地方制度の問題としては扱わなかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/82
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083・安井吉典
○安井委員 今度の改正において重大な点の一つであると思いますのは、区議会議員の定数を縮小していることです。定数百人を六十人というふうに定数の定限をしているわけであります。現在、一番多い大田区が五十八名で最高ですから、現在の段階ではあるいは問題はないかもしれませんけれども、将来人口が大田区等においてふえてくれば、必ず問題になってくるわけであります。一方今度の改正によりまして、先ほど来申し上げておりますように、特別区の事務はふえてまいります。財政局長がさっき言われましたが、その特別区に対する財政も強化してやるのだ、こういうふうな御意向もあるようであります。ところが一方におきまして、議員を減らそうということは、この二つは逆の方向ではないかというふうな感じを受けるわけでございますが、どうでしょう、大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/83
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084・赤澤正道
○赤澤国務大臣 これは基本的には地方制度調査会の答申が出ておる、その線に沿いまして、単純に考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/84
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085・安井吉典
○安井委員 政府は地方制度調査会の答申のうちの都合のいいところだけをおとりになって、都合の悪いところはみんなはねているわけです。そういう御都合主義であったら困ると思うわけであります。本質的に問題を探求した中から問題を出していただかなければならぬと思うわけです。
そこで、これが東京都の問題だけではなしに、一般の都道府県や市町村の議会議員の定数の問題を将来検討する際に、一つのテストというふうな形になっていくのではないか、こういうふうな疑いすら持たざるを得ないわけでありますが、この点、大臣、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/85
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086・赤澤正道
○赤澤国務大臣 全然そういう意図はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/86
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087・阪上安太郎
○阪上委員 しかし大臣、そうおっしゃるけれども、これは地方制度調査会の答申に基づいておやりになったということで、もとより気持ちはわからぬことはないのです。しかし百名を六十名の定限にするということになりますと、たとえば大田区は五十八名で、かりに、二十万ふえてまいりますと——そうはふえませんけれども、ふえてくる。そういう意味で、実際問題としては、区の人口が六十名に達するところまでは現行法のとおりいってもなかなかいかないだろうと思うのです。それならば百名にしておかれたって別に差しつかえないのじゃないか。それをなぜここで六十名という定限にするかということについては、私はどうも納得がいかないのです。それをほかの自治法全体の定数のところをさわらないで、これだけこういうふうにやってきたということには、何かこれまた引っかかってくるわけです。どうなんですか、それは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/87
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088・佐久間彊
○佐久間政府委員 現在大田区が六十名になっております。今度六十名ということで定限を押えますると、今後もう二、三十万、人口がふえましても、これよりふやさない、こういうことでございますから、現実の問題となることは、差しあたり予想されないと思いますけれども、将来区の規模をどう考えるかというような問題も考えてみますと、そう大きな区ができるということを予想いたしまして、定限を百名ということにきめておくことはおかしいのではないかというような考えも持っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/88
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089・阪上安太郎
○阪上委員 その程度の気持ちならば、たいした害はないと私は思う。しかし地方議会議員の定数については巷間いろいろと問題がありまして、過般大阪府におきましても、直接請求等をやって大騒ぎをした例もある。議会議員の定数を減らせば、そのこと自体非常にいい傾向である。そうして定数を減らすことによって議会経費は縮小されるし、あるいは常任委員会等のあり方等についてもかなり制約を加えることができる。それから市長が議会を運営していく場合の議会対策を講ずる場合に、事は簡単に処理できる。議員を減らすことによってよい議員が出てくる可能性がある。こういう考え方でああいった問題を起こしたのであります。代表制の原理からいって、憲法九十三条が保障しているところの直接公選のたてまえからいって、この点は私は非常に問題になると思う。もしそういう考え方が背後にあってこういう措置を講ぜられたということならば、問題は違った意味で問題になってくると私は思うのです。そういう考え方は全然ないとおっしゃった意味は、そういうことはないという意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/89
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090・赤澤正道
○赤澤国務大臣 それは先ほども言われましたとおり、財政面からあるいは減ったほうがいいと判断している方もありましょうし、いろいろでしょうけれども、自治省としては地方議員の数を減らせという指導はいたしておらぬはずでございます。ただ私の隣の市でございましたけれども、住民の声が非常にやかましくなりまして、市の条例でもって、自粛という意味で、ほとんど三分の二に減らした。境港市でございますが、こういう形で減ってくるということは、私はそれに対して異議を申し立てる必要もありませんし、けっこうなことであります。自主的におやりになるということはけっこうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/90
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091・門司亮
○門司委員 関連。私はさっき区会議員には触れなかったんですが、議員の定数を六十人とするこういう法律をつくるという自治省の考え方がわからぬのです。法律で減らすことができるということで、そんなに地方の自治体を何でもかんでも法律で縛るというものの考え方は、私は近代国家としてはおかしいのではないかと思うのです。これは仕事の量ですから、アメリカでは非常に少ないところもありますよ、あるいは議員のいないところさえありますよ。二万くらいの都市では、市長と公営企業の長官と財務を受け持つ者三人しか選挙しない。あとは議員はいなくてもよろしい。二万か三万くらいの都市であります。日本の法律でも、御承知のように、九十四条には議員を置かなくともよろしいという規定があるはずです。なぜああいう規定を設けたか。いまほとんど九十四条は私は用はないと思っております。しかし法律は生きている。仕事の量と住民の関係からして、仕事の量が少なければ、議員の数は減らしてもいい、仕事の量が多ければ、やはり議員の数はある程度なければ、そうした住民の幸福は得られない。そういうことが基本となって、一応の目安として議員定数というものはきめられている。しかし、必ずしもスライドしなければならぬという規定はないわけです。たまたま議員定数の最高を押えたのは東京の都会議員で、百二十名で押えられている。これは議会の構成その他の関係からそういうものが出てくる。要するに、議会構成というものと、実質上の住民の代表というものと、行政事務の多寡、この三つのものがかみ合わせられまして適当な数字が出てくるのであって、したがって、法律はそれを自主性にまかしている。多いと思えば何も住民の意思で減らせばいいのである。そのくらいの幅はやはり持たしておいたほうがいいんじゃないですか。特別区の議員であるから特別に六十人で押えるという行き方は、私は、ほんとうにどうかと思うのです。もう少し自治体には幅を持たせて、そうして自主性を涵養していく。日本の地方行政というのは、わずかにまだ十七、八年しかたっておりませんから、非常に訓練がされておらない。住民もまた訓練を受けておらない。そういうところに、理想に近いような憲法、理想に近いような法律をこしらえたというところにも、私は、法律の立法の技術上の多少の行き過ぎというか、考え方の行き過ぎみたいなものがあったかもしれぬ。しかし、少なくとも理想に近い憲法であり、それに基づいた理想に近い自治法をこしらえておるのですから、ただ場当たりで、これを法律でどんどん締めていくという行き方は、私らは賛成できない。したがって、私は、いまの大臣の御答弁のようなことでそのままよろしいとは言いません。どこが悪いのですか。自治体自身が自由に増減することができるという——増減といったって、ふやすほうは一定の制限がありますからふやせない。減らすほうは現行法でよろしいのじゃないですか。これは現在の特別区にも適用しているのです。それでよろしいじゃないですか。どうしてもそれをそうしなければならぬという理由がわからぬのです。
それでは逆に聞きます。そういう自主性を持たせた規定が悪いという定義がどこにかございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/91
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092・赤澤正道
○赤澤国務大臣 自主性を持たせれば何をしでかすかわからぬという疑心暗鬼を持たなければならぬことは残念でございますが、しかしながら、これは何も他意あってのことじゃありませんで、そしてまた、地方制度調査会のことをたてにとるわけじゃありませんけれども、特別区としては六十名くらいがすべて議会がものごとを進めていく上におきましても、ちょうどいい数字じゃなかろうかという……。(「六十人と書いてないよ」と呼ぶ者あり)この答申をいま見ますと、地方制度調査会の答申には、「その定限を引き下げる等の方法により縮減するものとする。」ということが出ておるわけです。定限を引き下げるということは、どこまでに引き下げるかということになると、なかなか問題でございますけれども、こういう答申にもなっておりますし、また、特別区で六十名というのは、数は出ておりませんけれども、いろいろな議論の過程等を通じて、都が百二十人、市が百人、町村が三十人、そこで加えて二で割ったわけでもありませんけれども、しかし特別区が六十人くらいが大体並びとしてはいいのじゃないかというのが判断の基礎になっておるんじゃないかと考える次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/92
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093・細谷治嘉
○細谷委員 関連して。先ほど安井委員から、そしていまも大臣の答弁があったのですけれども、地方制度調査会の非常にいいところには、プラスアルファをつけて結論を出しております。ちょっと都合の悪いところは無視しているという感がするんですが、それに関連して一つお尋ねをしたいのです。この中にこういうのがあるのです。「都には高度の財政需要があることにかんがみ、一般の地方公共団体に与えられている財源を特に削減する等の措置は、この際これを取止めることとするとともに、首都の公共施設の整備のため地方債の枠を拡大してぼう大な需要に対応する財政上の特別の配慮をすることが必要である。」こう書いてあります。地方債計画を見ますと、どうも一向考えていらっしゃらぬようでありますが、これをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/93
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094・柴田護
○柴田政府委員 地方債計画の中に特に特記はいたしておりません。しかしながら、従来と比べますならば、東京都の公共投資の必要性は十分あることは私どもも承知いたしておりますし、従来から、東京都のそういった事業を執行いたしますために必要な地方債は、漸次充実してまいっております。地方債計画の中には、事業の種別ことに書いてございますので、特にそれだけを特記いたしておりませんけれども、従来の傾向をさらに強める方向で運営してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/94
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095・細谷治嘉
○細谷委員 もう時間がありませんから端的にお尋ねしたいのですが、ことしの地方財政計画を見ますと、一般会計債で二百八十八億、このうち地方住民税に関係するものを引きますと、一割程度しか伸びておらないわけですね。それから、全体を見ましても、八百三十億、これから百五十億引きますと一そこでこれに書いてあるように、よその公共団体に迷惑をかけちゃいかぬぞ、特別に考えてやれと、こう書いてあるわけです。どうも考えていらっしゃらぬ。地方財政計画そのものを見ますと、支出というのは非常に伸びておる。地方債計画を見ると、それほど伸びておらぬ。その中において、こういうことも考えていらっしゃるのかどうか。どうも都と区との関係だけをきめて、国と都とは一体どうするのか。都は三多摩地区でどうやるのか。そういう点については、全体的な計画、首都圏計画というものが財政的にも裏づけされないで無視されておるんじゃないか、こう思うのです。端的に、一体どのくらい考えておるのかということをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/95
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096・柴田護
○柴田政府委員 具体的に事業が明らかになりませんと、それをどうする、こうするという結論は出ないわけでございます。しかしまた、地方債計画の中に、このために特別のワクを設けるということも、ほかとの関連を考えますと、適当とは考えません。したがって、現在の地方債計画は事業の穂別ごとにその額を一応明らかにいたしておるわけでございますが、東京都の場合につきましては、この答申の趣旨もございますので、この趣旨に沿って、運営にあたりましては、従来の傾向をさらに強化する方向で進めてまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/96
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097・安井吉典
○安井委員 この法案の処理につきまして、過般来、理事会等で打ち合わせをいたしてまいりました。その話し合いに基づき、最終的に特に重大な点につきまして、自治大臣をはじめ政府御当局の御答弁をいただいておきたいと思うわけであります。
まず、初めに、区長公選の問題でありますが、今度の改正法案の中には何ら触れておりません。これまで続いたこの委員会の論議の中でも、終始この問題が取り上げられてまいりましたことは御承知のとおりであります。今日行なわれております区長選任制が住民の間できわめて不評で、たとえば江戸川の区議会で区長選挙にあたって警官導入事件があったり、新宿の区議会で二カ月の空白状態ができたり、そういうようないろいろな事態が起きており、住民、区議会の党派をこえた願いが、この区長公選だというふうにも考えられるわけであります。特別区に自主権を回復する運動、自治体としての基礎的性格を明確にする、そういう基本的な問題がこの問題だと思うのでありますが、この問題についての政府のお考えをこの際伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/97
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098・赤澤正道
○赤澤国務大臣 大体地方制度調査会でも、御案内のとおりに、こういう問題についてはやはり将来検討しなければならぬということを言っておるわけでございます。今回の改正も、御承知のとおりに当面とるべき措置についてやるものでございますので、いろいろ御論議に相なりました問題についてはやはり将来にわたって鋭意検討する必要があると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/98
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099・安井吉典
○安井委員 次に、清掃事務につきましては問題が多いために、今日までの話し合いの中では共同提案による修正をいたそうとの準備が進んでおります。その内容は、当面都から区への事務移管はしないで、現在は主として都で行なっており、一部は区で実施しております事務分担の区分を、おおむね今後も続けるということを確認し合い、その修正案の書き方としましては、原則としては区の事務として一応規定を置きながらも、その部分の規定は、施行を別に法律で定める日からとするという修正の見込みであります。その際この時期というのがいつになるかということはきわめて重大な問題になると思います。そこで、大都市環境整備といいますか、あるいは清掃事業という呼び方でもけっこうでありますが、これは最近の傾向からいいましても、当然たどるべき道として急速に近代化、科学化の方向にあります。きょうの制度はあすはもう古いものになってしまうといったような時代であり、たとえばつい先ごろまでハニー・バケットといわれたたるが、東京の中からほとんど見られなくなって、新しい処理方式になっているとか、あるいはまた今後におきまして下水道が完備をすれば、きょうその事務を都にするのか区にするのかと論議していたことが将来は笑い話になる、こういうようなことにもなりかねない時代であります。したがいまして、この事務分担をどうするかという問題は、軽率にあるいは機械的に結論を出すというわけではなく、将来大都市の清掃事業の全般に関する深い検討の中から結論を出すべきものと考えるわけでありますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/99
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100・赤澤正道
○赤澤国務大臣 お説のとおりでございまして、将来とも、日進月歩の時代ですので、ずいぶん科学的ないろいろな施設あるいは処理の方法等が進んでくると思います。政府としましてはいまのところ終末処理施設の整備の状況、現にやりつつあるわけですが、これなどとよくにらみ合わせましてこの移譲の時期を定めたいと考えておりますが、この委員会のいろいろな御審議の経過にかんがみ、またいろいろ両党でもお話し合いも進んだようでございます。その趣旨をも含みまして慎重に検討いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/100
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101・安井吉典
○安井委員 いまの御答弁のうち、終末処理施設の完成という問題を相当大きな要素としてお考えのような御答弁でございますが、私が先ほど申し上げたのは、清掃事業が全体的に大きな近代化の方向への移行を続けております。そういうふうな全体的な大勢の中からやはり問題を考えるべきだ、こういう趣旨で申し上げたのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/101
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102・赤澤正道
○赤澤国務大臣 何もいまやっている施設の整備だけをにらんでいるわけではありません。前段申し上げましたように、どんどんやり方が変わってまいるわけでございますので、全く同感でございます。御趣旨の意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/102
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103・安井吉典
○安井委員 次に、清掃事務に従事する職員の身分の問題でございますが、さしあたり都区間の事務配分が実質的にはないわけでありますから、現在都の職員である者は当然都の職員ということになると思うのでありますが、この点は別に問題のない点だと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/103
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104・赤澤正道
○赤澤国務大臣 お説のとおりに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/104
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105・安井吉典
○安井委員 次に、こういう事態が将来起きるかどうかは別といたしまして、万一清掃事務が都から区に移譲をされるというような場合を仮定した場合におきましても、東京都における清掃事務の特殊性から、都の職員の身分をそのままとして確保すべきであると考えますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/105
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106・赤澤正道
○赤澤国務大臣 お説のとおりに考えていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/106
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107・安井吉典
○安井委員 道路清掃の問題でありますが、現在都と区と双方が実施をいたしております。これは、都の場合は国道や都道は知事の管理権のもとにあるわけでございますから、当然の仕事としてやっているわけでありましょうし、区のほうは、区道は区長の権限のもとにあり、また都が手の回らない部分については区がやっている、こういうような実態のようでありますが、この改正規定が修正等によって、改正前の現行法の姿に戻る場合も法技術の問題として予想されるわけですが、そのような際におきまして、現行どおりの事務実施という形にしておくことが無理のない方向であり、当然だと思うのでありますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/107
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108・佐久間彊
○佐久間政府委員 かりにお説のとおりな御修正がなされる場合におきましても、道路清掃につきましては現状どおりと考えておりますので、都区間の事務の事項につきましても現状どおりに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/108
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109・安井吉典
○安井委員 最後に、同じく今回の修正に際しまして、農業改良普及員に対する手当を拡大して、農林漁業改良普及手当というふうな形にする改正を実は準備されているわけでございますが、これには若干問題があると思うわけであります。当然同種の業務に従事する人には手当の拡大が行なわれて、不均衡のない支給形態をつくるべきだと考えるわけで、したがっていま農業改良普及員だけに限られているものを、同種の職種に従事している人に拡大するということについては私どもも異議を申すものではありませんが、しかしながら農林漁業だけではなしに、たとえば商工業の指導員でありますとか、保健婦でありますとか、そういうふうな相似た業務に従事している人については、今回の考え方の中には入らないような政府の御意向というふうに聞くわけでございまして、この点残念なことだと思うわけでございます。特に補助金が支給されるということの決定したものにだけ手当を支給する、そういうことになりますと、同じ補助金支給のものでも法律に規定がない場合には支給されないし、補助金が全くない職種については、たとえば都道府県においても農業改良普及員と同じような仕事をしておりながら、定数がないものですから、単なる技術吏員として任命をして、同じような仕事をさせているという実態もあります。市町村においても同様であります。こういうような点から考えますと、今回の手当支給はもう少し範囲を広めて、たとえば業務手当というふうな仕組みで法律の中に規定を置くということのほうが、将来を考慮した場合によい方法ではないかと思います。しかも、昨年の農業改良普及員に対する手当の場合は、農業改良助長法という根拠法規がありました。しかし、今回の場合には農林次官通達といったようなものしかないわけであります。そういうような点においても問題が残ってまいります。
さらにもう一点の問題は、現在の農業改良普及員に対する補助の支給状況を見てみますと、実際支給額の三分の二というふうな看板は、実のところは二分の一ぐらいの程度にしかすぎない、こういうふうな実態があるわけであります。それが地方財政をきわめて苦しめております。むしろそういう実態の救済のほうが先決問題ではないかとも考えられるわけであります。
以上、私は、この手当改正の問題につきまして職員間の不公平が生ずる問題をどうするかという点、根拠法規をどうするかという問題、さらにまた現在の支給状況における不備を根本的に改善しなければならないという点、この三点を指摘するわけでございますが、これについての政府の御見解を最後に伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/109
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110・佐久間彊
○佐久間政府委員 農業改良普及手当は、御指摘のように昨年設けられたわけでございますが、今回同じく農林省関係のもので同種の内容の職務のものにつきまして拡張をいたしたいということで、名称も農林漁業改良普及手当と改めて予算措置をすでに講じたわけでございます。
今後他の同種のものにまで拡張したらいいじゃないかということでございまするが、その他のものにつきましてそれぞれこういう特別な手当を支給するだけの職務の内容におきます特殊性、合理性というものがあるかどうかということを、一々検討をしてまいらなければならないと考えておるわけでございまして、それらの点につきましては、関係省庁とも今後よく相談をいたしまして検討をさせていただきたいと思います。
なお、地方自治法だけでなくて、他の法律にその手当の対象となる職員の資格あるいは任務等につきまして根拠法律が要るじゃないかという御指摘でございますが、法律的には地方自治法を改正いたしますればそれだけで足りるわけでございまするが、しかし御指摘のようにその対象となる職員が次官通達等で設けられておるというものにつきましては、いろいろと明確を欠いて問題も起こるおそれもありますので、私どもといたしましては、できるだけ根拠法律と申しますか、他の法律におきまして対象となる職員の資格要件等も明確にしてまいることが、立法技術上といたしましても適当であろうというふうに考えまするので、そのようなふうに今後配慮してまいりたいと考えております。
なお、補助率の点につきまして、実際におきましては国の算定額が実情に合わないために地方が持ち出しをして、そのことがいろいろ問題を起こしておるという点につきましては、私どもも聞き及んでおりまするので、その点につきましては、これも関係省庁とも連絡をとりまして、今後改善に努力をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/110
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111・森田重次郎
○森田委員長 他に御質疑はありませんか。——なければ、本案についての質疑はこれにて終了いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/111
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112・森田重次郎
○森田委員長 ただいま委員長の手元に奧野誠亮君、安井吉典君及び栗山礼行君から地方自治法等の一部を改正する法律案に対する修正案が提出されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/112
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113・森田重次郎
○森田委員長 提出者から趣旨の説明を求めます。奧野誠亮君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/113
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114・奥野誠亮
○奥野委員 ただいま議題となりました地方自治法等の一部を改正する法律案に対する自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三党共同提案にかかる修正案につきまして、私から提案理由の説明を申し上げます。
修正案の案文は、お手元に配付いたしておりますので、朗読は省略させていただきます。
まず、修正案の第一は、都からの事務の移譲によって、新たに特別区が処理することとなる事務のうち、清掃事務について、その内容を明確に規定するとともに、そのうちで、現在、都が処理している事務にかかる部分については、別に法律で定める日から施行するものとすることであります。
すなわち、今回の法改正により、都から特別区に移譲することといたしております清掃事務は、保健衛生や社会福祉に関する事務と並んで重要な移譲事項でありますが、政府原案では、現在、すでに処理しているものも含めて、包括的に清掃に関する事務を特別区が行なうことと規定しているにとどまり、しかも、政令で定めるものは、移譲の対象から除くこととしておりますので、移譲後における都及び特別区の行なうべき清掃事務の分担の内容については、必ずしも明確ではないのであります。
そこで、本修正案は、特別区の行なう清掃事務を、汚物の収集及び運搬に関する事務等と法文上具体的に規定して、その内容を明らかにしようとするものであります。
他面、特別区の存する区域における清掃事務の実態を見ますと、人口の増加に伴い、その事務量はますます膨大となり、したがって、その効率的、統一的な処理が強く要求されるのであります。したがいまして、本修正案は、かかる実情を十分勘定するとともに、他方、大都市清掃事業の近代化ないしその進捗状況ともにらみ合わせて事務の移譲を決すべきものと考え、特別区に移譲する清掃事務のうち、現在、都が行なっている部分につきましては、本則の規定にかかわらず、別に法律で定める日から施行することとする旨を附則で定めようとするものであります。
その第二は、農業改良普及手当を農林漁業改良普及手当に改めることであります。
御承知のとおり、現在、各都道府県には、農業、蚕業、開拓、林業及び漁業について、それぞれ、改良普及の事業に従事する職員が配置されておりますが、これら普及職員の任務は、科学的な技術及び知識と教育的な指導能力を必要とし、また、巡回指導を主体とする不規則かつ強度の勤務を伴い、しかも、その職務の複雑困難の度は、最近の農林漁業の事情を反映してますます加重しつつある実情でございます。
そこで、昭和三十八年度よりすでに支給できることになった農業改良普及職員に対する普及手当の支給に引き続き、これと勤務の実態が全く同質である蚕業、開拓、林業及び漁業の各普及職員に対しても普及手当を支給できることとするものであります。
第三は、市街地に行なわれている住居表示の円滑な実施をはかるため、町及び字の名称もしくは区域の変更に伴う効力発生の時期を、知事が告示したときとする旨を明らかにすることであります。
すなわち、昭和三十七年に住民表示に関する法律が制定施行されまして、現在、関係市町村は鋭意新制度の実施につとめておりますが、政府も、また、毎年補助を行なうことによって、この事業の推進をはかっているのであります。ところで、この制度の実施に伴って必要となる町または字の名称及びその区域の改廃、変更は、すべての住民または関係諸機関に至大な関係を有するものであるにもかかわらず、現行地方自治法第二百六十条の手続規定においては、その効力発生の時期が明確でないために、種々の支障が生じているのであります。したがいまして、本修正案は町名、町界等の変更についての効力発生の時期を、知事の告示にかからしめることを明らかにしようとするものであります。
以上がこの修正案の趣旨及び提案理由の概要であります。何とぞ委員各位の御賛同をお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/114
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115・森田重次郎
○森田委員長 以上で修正案の趣旨説明は終わりました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/115
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116・森田重次郎
○森田委員長 これより地方自治法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。
まず、奧野誠亮君外二名提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/116
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117・森田重次郎
○森田委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。
次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/117
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118・森田重次郎
○森田委員長 起立多数。よって、地方自治法等の一部を改正する法律案は修正議決すべきものと決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/118
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119・森田重次郎
○森田委員長 この際奧野誠亮君、安井吉典君、栗山礼行君から法案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、本動議を議題とし、その趣旨説明を求めます。安井吉典君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/119
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120・安井吉典
○安井委員 私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三党を代表して、地方自治法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨説明を行ないたいと思います。
まず附帯決議の案文を朗読いたします。
地方自治法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
都行政の現状にかんがみ、政府は、本法の施行に際し、特に左の諸点について配意すべきである。
一、今回の改正は、首都制度の改革のうち、当面執るべき措置についてなされるものであるが、都及び特別、区制度の根本問題についても、今後さらに鋭意検討すること。
二、特別区の行政水準を向上し、特別区相互間の行政格差を是正するため、特別区の財源の充実をはかるとともに、財政調整の合理化について配慮すること。
三、都制の性格にかんがみ、特別区の存する区域における清掃事務の実施に当つては、都区の一体性と作業の一貫性を保持するよう特段の配慮をすること。
右決議する。
以上が案文であります。
次に、提案の趣旨を御説明いたします。
第一は、御承知のように、首都制度の改革は戦後における地方行政の重要な課題の一つとして検討されてきたものでありますが、このたびの法改正は、都行政の複雑膨大化に伴う行政の行き詰まりの状況を打開するため、緊急の要請に応じてとられた当面の措置であります。
しかるに、都行政の現状はどうかといえば、人口及び産業の過度集中傾向は依然としてとどまるところを知らず、その結果、都における行政需要はますます増大し、このため行政構造の根本的改革を迫られている状況であります。しかも、この事態をこのままに放置するときは、都行政の一そうの非能率を招くことはもちろん、住民の不安を増大することとなり、ひいては民主主義の本旨にももとるおそれがあるのであります。
かかる首都制度の現状にかんがみ、このたびの法改正が行なわれた後におきましても、政府はできるだけすみやかに都及び特別区制度の根本的なあり方を検討して、その近代的な恒久制度の確立を期すべきであると存ずるのであります。
第二に、都から特別区への事務の移譲に伴ない、特別区の処理する事務は大幅に増大することになるのでありますが、特別区の財政能力は各区によってそれぞれ異なっており、したがって、行政水準にも著しい格差を生じている現状であります。
しかしながら、首都行政の特殊性と大都市行政の一体性にかんがみ、各特別区における行政水準は、おおむね同一歩調を保つことが必要であることは申すまでもありません。
このような観点から、法改正後においては、特別区における税源の拡大や起債の承認を行ない、基準税率の定め方や基準税額及び基準財政需要額の算定方法の合理化を行なうことなどの措置により、特別区財源の充実とともに財政調整の合理化をはかるよう政府は適切な指導をはかるべきであるとするものであります。
第三は、最近における人口の過度集中と生活様式の変化に伴って、特別区の存する区域においては、し尿及びごみなど汚物の量はますます増大する傾向にありますが、御承知のごとく、清掃事業は、収集、運搬、終末処理の各作業段階に分かれているのでありまして、これが各区間及び都と区との間において個々独立に行なう場合は、相互の調整を欠き、清掃事業の処理に混乱を生じ、その結果住民の身近な行政を確保することの反面、非能率な行政となる懸念があるのであります。したがいまして、今後ますます増大するであろう清掃事務を有機的かつ効率的に処理するためには、清掃施設の近代化に即応して、都区の一体性と作業の一貫性を保持するよう、政府としても特段の配慮を行なうべきであると存ずるのであります。
以上が本決議案を提出した理由であります。何とぞ委員各位の御賛同をお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/120
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121・森田重次郎
○森田委員長 本動議について採決いたします。
本動議のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/121
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122・森田重次郎
○森田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は奧野誠亮君外二名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。
この際、赤澤自治大臣から発言を求められておりまするので、これを許します。赤澤自治大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/122
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123・赤澤正道
○赤澤国務大臣 ただいまの附帯決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分配慮いたしたいと考えております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/123
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124・森田重次郎
○森田委員長 おはかりいたします。
ただいま修正議決されました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/124
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125・森田重次郎
○森田委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決しました。
〔報告書は附録に掲載〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/125
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126・森田重次郎
○森田委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午後三時二十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104604720X04419640514/126
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